クロック的ちっさいおっさん×三橋の続き(起承転-一部地域予定-結の承あたりをジリジリ)
>>ワカンネ
電気はつかない。
唯一室内を照らしていた月を遮りながら、男がにじり寄ってくる。
三橋は男から視線を外せない。逆光の為に相変わらず男の表情は見えない、が。
足を引きずって歩くとせむしのような体が上下に跳ね、その様が、怯える三橋の様子を楽しんでからかっているようにも見えた。
男が近寄ってきたのと同じだけ、尻餅を付いた尻を引き摺り後退する。
上半身を支えていた両腕の、左手の方に硬く大きな何かが当たり、三橋はぎょっとして左手を引っ込めそちらを見る。
その瞬間に小さな男が飛びついて、三橋に馬乗り状態で覆いかぶさる。『ぎゃ……!』
殺虫剤はなんとか離さないでいたが、それは単に強い緊張によって手が硬直し、開かなかっただけだ。あまり意味はない。
飛び掛られた反動で三橋の後頭部が軽く床に当たったが、気絶するほどではなかった。
(気を失えていた方がどんなに良かったかも三橋は判らない)
三橋の両手首は頭上でひとつに纏められ、男の片手で軽々と床に縫い付けられた。
男の頭が、三橋の上半身、首元を無造作に移動する。
鼻を押し付け、まるで三橋の体臭を隅々まで味わうかのように。
練習自体は無かったといえ、逃げ惑った際の汗と失禁で、三橋が自分でも判るくらいの酷い臭いだった。なのに…
─き……もち、悪い…ぃ……!
この変質者…化け物は、胸いっぱいにその臭いを吸い込んでいる。荒く蒸し暑い男の息がシャツ越しに伝わってくる。
首を伝い顎まで来て、ひくひくとさせる男の鼻が三橋の唇に触れた。反射的に顔を背ける。
その様子をちっとも気にせずに、男の関心は顎から首、胸への感触へと戻っていった。
無造作な動きのように見えて、男の鼻は確かに三橋の胸の突起を、何往復も執拗に刺激していた。