阿部「三橋！オメーの席ねーから！」

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ことごとくピントのずれた返答しか返ってこないので問答は諦めた。
だってだんだん三橋が人間離れして見えてくんだもん、通じなさ過ぎて。
未知との遭遇in穴みたいな。ぴろぴろ電波飛ばしてる幻覚が見える前に、俺は方針を転換
することにした。最初から下心満載の話題ばっかってのもアレだしね…。
別に三橋にビビってるわけじゃないからな！
「高校入ってからはあんまり、リアルタイムでナイター中継観られなくなってさ」
「練習　から帰った頃　には、もう終ってる　よね」
「そうなんだよ。オフシーズンなら少しは余裕あっけど、今は練習だけで精一杯で帰った
ら飯食って寝ることしか頭にねーもん。録画しっぱなしで観てねーの溜まってく一方」
「オ、オレも！同じ　だ！」
俺が話振って三橋が口を挟む、ってやり方で話した方が通じ合えるみたいだ。
携帯の明かりじゃ薄暗くてよく見えないけど、三橋は嬉しそうに眼をキラキラさせてた。
くじ引きでもジャンケンでも何でかいつも俺ばっか負けちまってパシリにされてるとか、
三年抜けちゃって寂しいけど秋終って春には中学からの持ち上がり組が顔出すようになる
だろうし、これからは俺達もしっかりしなきゃだな！って迅に言ったらお前はまず自分で
自分の尻拭けるようになれってあしらわれて、チームでのヒエラルキー最下層を思い知ら
されたとか、二年の控え捕手の中村先輩が腰痛治して戻ってきたら俺またベンチで指示係
かも超鬱とか、話を振ってるって言うより半分以上俺の愚痴…。
でも三橋は一生懸命聞いてくれる。
三橋は三橋で今のチームでエース番号背負うには「オレはもっともっと練習しなきゃだ」
って言う身の上らしくて。コイツ以外にもすげー投手候補いるのかな。人数少ないし創部
したてで一年ばっかだし、レギュラー争いも競い合いも無縁で羨ましいなぁなんて思って
たんだけど、少ないなら少ないなりにあるのかもしれない。