変態じゃないのか。
阿部がそう呟いた。
「ヘンタイ?」
三橋は不思議そうに阿部を見ている。
「隊が、替わる、の?」
――そりゃ、編隊だ。
阿部は心の中で突っ込みを入れた。
「お前のらことだよ。男同士でつきあって何が楽しいんだっつの…」
阿部は蔑むように三橋と水谷を交互に睨む。
「たのしい よ?」
三橋が今まで誰も見たことないような表情で、笑みを作る。
「阿部も知りたい?」
「知りたかねえよ!」
晴れてつきあうことになった水谷と三橋は手を繋いで歩いている。
阿部はそれが気に食わない。
「阿部さあ、今もやもやしてるでしょ?そういうの、世間じゃ何て言うかわかる?」
明らかな挑発を含む水谷の物言いに、冷静な判断力を欠いた阿部が胸倉を掴み掛る。水谷は動かなかった。
「……嫉妬、って言うんだよ」
水谷から手を離すと、阿部は三橋に近付き、手を差し出して言った。
三星戦のことを思い出しながら・・・。
「三橋!もっかい握ってみろ!」
「ちょっと待ってよ。今は試合中じゃないんだから、勝手なことしないでよね」
間髪入れず、水谷が阿部と三橋の間に割って入る。阿部は憤りを感じながらも、手持ち無沙汰になってしまった右手を引っ込めた。
……いつになく強気じゃねーか。クソレのくせに。