水谷「え?三橋って米じゃないの?」

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44高校の幽霊の俺・4
前スレ>>938
荒い息の花井と栄口が、睨み合っていた。
「……ごめん」
「いや、オレこそ悪ぃ。続けてくれ」
だが、一瞬の無言の後、二人は互いに視線を外す。
「とにかく、あの二人は行き過ぎだよ」
「だからって別れさせるって……。それはお節介過ぎじゃねえ?」
「……っ」
「野球に支障が出るのは、そりゃ困るけどさ、でも、やっぱりアイツらの問題だろ」
栄口は言葉に詰まったのか、無言で花井を見ている。

しかし一件正論に聞こえるその意見に、どうも栄口は肯えないでいるようだった。
「……花井はさ。見せられた時、ずっと見てた?」
「はぁ?」
「大事なことなんだよ。水谷は?」
「オレ? ……ううん。無理だった」
「オレも……正直」
「オレは見たよ。全部ね。最後まで」
訝しげな花井に対して、栄口は、今度は淡々と話す。一旦激昂したのが落ち着いて、冷静になれるようだ。
「二人ともさ、確かに嬉しそうだったよ」
「ああ、だから」
「でも、それだけじゃないだろ。……泣きそうでも、あったよ。二人とも」

その言葉に、花井は首を傾げていたが、俺は内心舌を巻いていた。
俺はずっと見ているから、あの二人の内側の軋みを理解するのは難しくない。
でも栄口は、そんなこと出来ないのに、聡くも内側の所まで分かってしまったようだった。