阿部「三橋には、やっぱナマがイイね!」

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25潔癖症
http://same.u.la/test/r.so/pie.bbspink.com/eromog2/1190609917/922
いつもとなんら変わらないフォームだった。左足を踏ん張り、ボールを持つ指の力を緩める。それだけでボールは軌道を残し、阿部君のミットに収まる筈だった。
ボールが指先を離れる瞬間か、それより少し前。硬球の縫い目が指に掛った。初めて硬球を投げた時に感じたものと似ていて、全く違う違和感。
縫い目からじわじわ漏れ出した目に見えない液体が、指先を汚していくイメージ。このボールは阿部君が触っていた。阿部君はいい人で、だけど人間の手はバイキンで汚れていて、阿部君の手もバイキンで汚れている。
阿部君が触る前にだって、絶対誰かが触っているボール。使ったボールは磨く。指紋や汚れのついたボールを雑巾や靴磨きで磨く。それは汚れを取る仕草ではなく、染み込ませているように見えた。
瞼の裏側でアリの大群が指から腕、肩へと行進していく映像が再生される。妄想だってわかっている。わかっていても、気味が悪くて嫌悪でごちゃごちゃになる。
(気持ち、悪い……)
――全身の感覚がきえた。