【Without a Trace】ダニー・テイラー萌え【小説】Vol.8
スーパーチャンネルでシーズン1を放映中
NHK BS-2でシーズン2を放映中の海外ドラマ「FBI失踪者を追え」
ダウンタウン出身ダニー・テイラーを元にしたエロネタ小説のスレ
現在、書き手1と書き手2にて創作中。
新しい書き手の参加も大歓迎です。
ダニー・テイラー役、Enrique Murciano HP
http://www.imdb.com/name/nm0006663/ [約束]
・荒らしと叩きは相手にしないようにしてください
・アンチを見つけてもスルーしてください
・このドラマの他の関連板に感想などを書くのは控えてください
・このスレッドのURLをこのドラマの他の関連板に書くのは控えてください
[注意書き]
同性愛的要素、過激な描写を多く含みますので、不快を示す方は閲覧をお控え下さいますようお願いします。
これらを理解してストーリーを楽しんで下さる方のみ閲覧お願いします。
注意事項を守らず不快な思いをされてもこちらは一切責任を負いません。
あくまでも自己責任・自己判断でお願いします。
ダニーは声が治ったので一週間ぶりにミッドタウンのフルートへ飲みに行った。
カウンターの端に、手持ち無沙汰そうにグラスを手にしたジェニファーがいるのを見つけ
ついヘラヘラしそうになるのを抑えながら近づく。
「やあ、ジェニファー」
「あら、テイラー捜査官。久しぶりね」
ジェニファーはにっこりして隣の席を勧めてくれた。
ダニーは礼を言って座ると、アイスブレーカーをオーダーした。
5 :
書き手2:2006/06/05(月) 23:31:53
ダニーは勝手にグラスをかちんと合わせると、アイスブレーカーを啜る。
「べっぴんさんがそんな物憂げな顔してると誘いたくなるわ」
「もうっ、テイラー捜査官ってば!人妻相手にそんなこと言ったら本気にするわよ」
「本気にしてくれていいんやで。オレ、ジェニファー好きやもん」
二人は顔を見合わせてくすくす笑った。
6 :
書き手2:2006/06/05(月) 23:32:27
マーティンはダニーがいるかもしれないと思い、フルートに行った。
探すまでもなく、カウンターにいるダニーを見つけた。
声をかけようとして相手がいるのに気づく。
うん?あれはジェニファー?やっぱりジェニファーだ!
ダニーはにんまりとした照れ笑いを浮かべて楽しそうに話している。
ダニーが耳元で何かささやくと、ジェニファーは笑いながらダニーの体を軽く叩いた。
親密そうな様子にショックを受けたマーティンは、踵を返すと逃げるようにフルートを出た。
7 :
書き手2:2006/06/05(月) 23:32:58
マーティンは店を出るとすぐにダニーに電話した。
なかなか出なかったが、ようやくダニーが出た。
「はい、テイラー」
「僕だけど、今どこにいるの?」
「フルートや」
「一人で?」
「一人に決まってるやん。何か用か?」
「・・ううん、なんでもない」
マーティンは電話を切ると思わず駆け出した。
8 :
書き手2:2006/06/05(月) 23:33:31
くさくさしたままモンキーバーに立ち寄り、ギムレットをがぶ飲みする。
空きっ腹のせいか、立て続けに3杯飲むと酔いが回ってきた。
目の前がくらっときたが、かまわず4杯目に口をつける。
「大丈夫ですか?」
バーテンダーが心配そうに尋ねたが、マーティンはうるさそうに手で追いやると
そのままパタンとテーブルにうつ伏せになった。
9 :
書き手2:2006/06/05(月) 23:34:05
何だよ、こいつ・・・スタニックは酔いつぶれたマーティンを苦々しく見つめた。
ダニーに連絡しようかと思った矢先、通りすがりの二人連れが立ち止まった。
「おい、アーロン、どうしたんだよ?」
「待って、僕の知り合いなんだ。マーティン、マーティン」
「うるさいな、あっち行け。お前の顔なんか見たくもないんだ」
「何だこいつ?こんなヤツ、ほっといて行こうぜ」
「ジョン、悪いけど今日はタクシーで帰れよ。僕はマーティンを送るから」
「待てよ、プレゼンの打ち合わせはどうするんだよ」
「ごめん、明日にして」
アーロンの連れは不満そうな表情を浮かべると出て行った。
10 :
書き手2:2006/06/05(月) 23:34:40
「こんなに酔って・・しょうがないな、一緒に帰ろう」
アーロンに起こされたマーティンはフラフラと体を起こした。
「うるさいっ、僕に触るな!」
「わかったからさ、とにかく水を飲みなよ」
アーロンに促され、マーティンは咽ながら水を飲んだ。目がトロンとしている。
スタニックがアーロンにカードを返すと、マーティンは支えられるように帰っていった。
2回めのAAミーティングだ。ダニーはボスと一緒に聞き込みが続いていて、ミーティングに出られそうになかった。
マーティンは心細い気持ちで、ミーティングを終えた。一人で食事でもしようかな。
すると、肩をぽんと叩かれた。
「はい?」
「君、マーティンだよね、僕、エド」
「何か?」
「君の先週のスピーチに感動したんだ。僕もゲイなんだよ。でもカミングアウトできないし、君の勇気に感服したんだ。
もし良ければ、食事でもしない?」
「うん、いいけど」
12 :
書き手1:2006/06/05(月) 23:52:50
エドはいかにもホワイトカラー然としたスーツ姿だった。
怪しい人物ではなさそうだ。
二人は、カッツ・デリカテッセンで名物のパストラミサンドとクラブソーダを注文した。
「君に付き添ってたヒスパニックの人が恋人なの?」
「うん、一応そうなんだけどさ・・。エドは何している人?」
「一応IT企業のオーナーなんだ。ストレスがたまって、思わず酒に逃げた次第。情けないよね」
エドはそう言って、薄く笑った。
13 :
書き手1:2006/06/05(月) 23:55:22
話をすると同い年だし、何故か共通点が多い気がして、マーティンは緊張がほぐれた。
「ねぇ、僕の家に来る?」
「え?」マーティンは驚いた。初めて会った人なのに・・。
「アッパー・イーストサイドなんだけど」
「えっ僕もそうだよ」
「偶然だね。ご近所さんなのか。何だか君の事、自分の事のように感じるよ。仕事は何してるの?」
「一応ホワイトカラー」マーティンは適当にごまかした。
「家が名家だったりして」
「うん、そんな感じ」
「じゃあ、共通点が沢山だ。君さえ良ければもっと仲良くなりたいな」
14 :
書き手1:2006/06/05(月) 23:56:36
マーティンも悪い気がしなかった。
ダニーが毎回ミーティングに出られるとは限らない。
アル中で、励ましあえる仲間が欲しかった。
「今日は遠慮しとくけど、また来週食事しようよ」
マーティンの方から言い出した。
「うん、喜んで!」
二人は固く握手した。お互いの携帯番号を交換してタクシーに同乗する。
エドの家はマーティンのアパートから3ブロックしか離れていなかった。
「それじゃ、来週!」「おやすみ」
友達の少ないマーティンはうきうきした気分で部屋に戻った。
15 :
書き手1:2006/06/05(月) 23:58:46
携帯を見ると、ダニーから着信が入っていた。
「ダニー、ごめんね。ミーティングの後、友達と食事に行ってたから」
「AAミーティングで、友達ができたんか」
「うん、まあね」マーティンは誇らしげに答えた。
「よかったやん。お互い励ましあえるしな」
「いい人っぽいよ。IT企業の社長。ゲイなんだって」
「え、ゲイなん?お前、狙われてるんちゃうか?」
「そんな感じしなかったよ」
「まぁええわ。酒飲むなよ」
「わかってるよ」
「じゃ、おやすみ」
「おやすみ、ダニー」
マーティンは明るい気持ちでシャワーを浴びに行った。
16 :
書き手1:2006/06/06(火) 00:00:21
ダニーは複雑な気持ちで電話を切った。
あいつ、人を疑う事を知らんから、ヘンな事にならにゃーええけど。
歯を磨いているとアランから電話があった。
「ハニー、元気かい?」
「今日は一日ボスと外回りや。もうくたくた」
「また近いうちに家においで。マッサージしてあげるよ」
「ありがと、アラン、愛してる」
「僕もだ、ダニー、おやすみ」
ダニーはにんまりしながら電話を切った。
アーロンは酔ってぐったりしたマーティンを自分のアパートに連れて帰った。
服を脱がせてベッドに横たえると、マーティンはすぐに静かな寝息を立て始める。
隣に寝転んで長い睫毛とぷっくりした頬を見つめているとドキドキしてくる。
「マーティン・・・」
引き締まったしなやかな体に手を触れると自分が抑えられなくなり、
アーロンは夢中でキスをして舌をねじ込んだ。
18 :
書き手2:2006/06/06(火) 22:47:37
「ん・・ぅぅん・・」
マーティンが眠ったまま漏らす声が余計に欲情させる。
アーロンは遠慮なく全身を舐めまわした。
汗とアルコールの混じった体臭を胸いっぱいに吸い込みながら愛撫する。
ペニスの先からはすでにとろとろと先走りが流れている。
そっとアナルに指を入れると、マーティンはぴくんと全身を強張らせた。
「ううっ・・ひっ・ぁん」
あどけない顔が快楽に歪み、切ない吐息が口から漏れる。
19 :
書き手2:2006/06/06(火) 22:48:09
興奮したアーロンはさらに指を出し入れさせた。
弄るたびにペニスが膨張し、先端から溢れた先走りで艶めいている。
「ぅぅん・・ぁぁ・んくっ・・やだよ・・」
「まだまだ感じさせてあげるからね」
うわ言の切ない喘ぎ声を聞きながらコンドームを着けると、マーティンの中にずぶりと挿入した。
「んっあっああ!」
マーティンがはっとして目を覚ますとアーロンが腰を打ち付けていた。
抗議する間もなく快感が押し寄せてきてはしたなく声を上げてしまう。
20 :
書き手2:2006/06/06(火) 22:48:46
「いいの?気持ちいい?ああっ、僕のが先にイキそうだ」
アーロンは何度か激しく突き上げると果てた。荒い息を吐きながらマーティンの体を抱きしめる。
ドクドクと生々しいペニスの脈動が伝わってきて、マーティンは嫌悪感を覚えた。
「僕から離れろ!くそったれ!」
マーティンが押し退けようとするが、がっちりと抱きしめられている。
アーロンは強引にキスすると唇をこじ開けて舌を絡めた。
21 :
書き手2:2006/06/06(火) 22:49:29
「ジェニファーに浮気されたんだろ?女なんてどうだっていいじゃない」
「?!!どうしてそれを・・・」
アーロンはそれには答えず耳をなぞるように舐める。
不本意なのにアナルがきゅっと締まり、マーティンの中に入ったままのペニスがまた
硬度を増してきた。
「やめろ!早く抜けよ!んっ・・ぁぁ・・」
「何だ、感じてるじゃない。今度はきちんとイカせてあげるからね」
22 :
書き手2:2006/06/06(火) 22:50:02
アーロンはまた動き始めた。マーティンの目を見つめながら感じるポイントを探している。
「はぁっ・・ぅぅん・・・」
マーティンが仰け反るポイントを見つけると、アーロンはそこばかり集中的に擦りあげる。
「やだっ!やだってば!うっんんっ・・あぁっ!」
マーティンはアーロンの腕を掴んだまま大量に射精した。
「僕もだ・・・くっ・・マーティン・・」
アーロンはマーティンを見つめたまま果てた。
23 :
書き手2:2006/06/06(火) 22:50:35
「中で出すなんて・・・」
「心配ないよ、ちゃんとコンドームつけたから」
泣きそうなマーティンに気づいたアーロンは外したコンドームを見せた。
おびただしい量の精液がゴムの袋の中で揺れている。
ティッシュにくるんで捨てるとマーティンの頬に手をやった。
やさしそうな眼差しが癇に障り、マーティンは手を払いのけた。
「僕に触んな!」
24 :
書き手2:2006/06/06(火) 22:51:10
「僕が無理やりやったんじゃない、君が誘ったんだ。淫乱な彼女に浮気された腹いせにね」
「なっ!僕がそんなことするもんか!」
「ジェニファーに仕返ししたかったんだろ?誘ったのは君だ」
アーロンは事もなげに言うと、怒りに震えるマーティンのほっぺにキスをした。
「嘘だ!」
マーティンはアーロンを突き飛ばすと、床に落ちていた服を着てアパートを飛び出した。
「ダニー、今日、夕飯どうする?」
トイレでマーティンに尋ねられた。
「そやなぁ、デリバリー続いたから外食でもしよか?」
「うん、じゃあ僕が場所を捜しとく!」
食べる事になると一生懸命やな。捜査もそれ位力入れてやって欲しいわ。
ダニーは苦笑いした。マーティンの禁酒は、順調に進んでいる。
26 :
書き手1:2006/06/07(水) 00:06:46
マーティンはミッドタウンの「DBビストロ・モダン」を選んだ。
マーティンが大好きなフォアグラ入りハンバーガーを出す店だ。
二人はクラブソーダで乾杯し、ハンバーガーにがっついた。
「やっぱり、ここのバーガーは最高だよね!」マーティンは上機嫌だ。
「お前さぁ、最近太らない?」ダニーがふと尋ねる。
「うん、そうなんだよね。お酒やめたら食欲が出ちゃってさ」
マーティンは、あまり気にしていない様子だ。
27 :
書き手1:2006/06/07(水) 00:08:39
「魚中心の食事に変えてみたらどうなん?」
「あんまり魚、好きじゃないし。あ、寿司は別だよ」
「寿司は米、沢山食うからな。炭水化物過多やで」
「何?僕の栄養士になったつもり?」マーティンはぷいっと膨れた。
「機嫌治せよ」
ダニーはテーブルの下で、靴下足になって、マーティンの股間を触った。
「な、何?」思わず顔を赤くして怒るマーティン。
「可愛いな、お前」
ダニーはいたずらっ子の顔をして笑った。
28 :
書き手1:2006/06/07(水) 00:10:13
二人は満腹になって、タクシーを拾った。
「今日は僕の家?」
「そやな。そうしよか?」
ドアマンのジョンが満面の笑みで迎えてくれる。
マーティンのアパートに着くと、留守電が点滅していた。
マーティンは遠慮している。
「聞けよ、俺、小便してくるから」
ダニーはトイレに入ったが、少しドアを開け、耳をそばだてて聞いていた。
29 :
書き手1:2006/06/07(水) 00:11:40
「俺だ、ニック。お前、また雲隠れか?お前に会いたいよ、愛してるんだ。会わせてくれ」
ホロウェイも必死やな。ダニーはニックの気持ちを哀れに思った。
マーティンの声がする。
「ニック、僕だよ。ごめんね、AAミーティング通ったりしてたから忙しかった。
うん、僕も会いたいよ。電話するね。愛してる」
愛してる?マーティンはあいつを愛してるんか?
ダニーは今聞いた言葉を信じたくなかった。
30 :
書き手1:2006/06/07(水) 00:12:43
マーティンは自分のものだとは、とても言い切れない。
自分の感情の半分以上はアランにあるのは事実だ。
でも、マーティンを捨てるなんて出来ない。
自分がいなければ奴はダメなんだと思っている。
ダニーは「歯も磨いてしもうた。もう眠るで」とトイレから出た。
「うん、僕も寝る」マーティンはにこっとしてダニーの方を向いた。
お前、これからどうすんねん?
ダニーは、口の先まででかかった言葉を飲み込んだ。
アパートに帰るとすぐにシャワーを浴び、何度も何度も体を洗った。
嗚咽が漏れそうになるのをぐっと堪えながら熱いシャワーを顔に受ける。
帰りにモンキバーで飲んで、それからどうしたっけ?
なぜアーロンと一緒にいたのか思い出そうとしたが、まったく覚えていない。
ダニーだってジェニファーと浮気してるんだ、僕は別に悪くない・・・悪くないんだ!
自分に言い聞かせるように呟くと、マーティンは髪も乾かさずにベッドに直行した。
32 :
書き手2:2006/06/07(水) 23:09:46
支局に着くと、ダニーがデスクでベーグルをかじっていた。
「ボン、おはよう」
「・・・おはよ」
マーティンはそれだけ言うとスタバで買ってきたカフェラテを飲んだ。
「どうした?機嫌悪いやん?」
ジェニファーと浮気したくせに!
マーティンはそっぽを向くとダニーを無視した。
何や、こいつ?オレ何かしたっけ?ダニーにはわけがわからない。
そうこうするうちにミーティングが始まり、今日も仕事が始まった。
33 :
書き手2:2006/06/07(水) 23:10:20
ダニーはマーティンと聞き込みに行ったが、マーティンは仕事のこと以外口を開かない。
「なぁ、なんで黙ってるん?オレに怒ってるんはわかったから理由教えて」
「・・昨日は何してたのさ?」
「昨日?フルートで飲んで帰っただけやけど。お前んちに寄らんかったから怒ってんの?」
「そんなんじゃない!」
「あー、わかった!オレが電話せなんだからやろ?」
「バカ!はぐらかさないで本当のこと言えばいいじゃない」
「あほか、さっきからほんまのこと言うてるやろ」
「嘘つき!」
マーティンは腕でごしごしと乱暴に目を擦ると、窓の外を向いたままこっちを見ようとしなかった。
34 :
書き手2:2006/06/07(水) 23:11:00
何でオレが嘘つきやねん・・・
ダニーが理由をあれこれ考えていると携帯が鳴った。ボスからだ。
「はい、テイラー」
「ダニー、失踪者をペン・ステーションで確保。昼メシ食って戻って来い」
「了解っす」
ダニーはマーティンにも伝えたが返事すらしてもらえない。
「オレには全然わからへんのやけど、何でなんか教えてくれへん?」
「・・・・・・・」
ダニーはマーティンの手を握ったが、思いっきり振り払われてしまった。
35 :
書き手2:2006/06/07(水) 23:11:40
「わかったわかった、昼メシどうする?」
「・・車停めて」
「嫌や、こんな治安の悪いとこでメシなんか食いたない」
「いいから停めてよ!」
「嫌やって言うてるやろ、しつこいな!どあほが!」
とうとうケンカになった二人はランチも食べずに支局に戻った。
36 :
書き手2:2006/06/07(水) 23:12:15
「お前たち、昼メシ食ってから戻れと言ってあっただろ。一体どうしたんだ?」
ボスが眼鏡の奥から訝しそうな視線を投げかけるが、マーティンは口をつぐんだままだ。
「何でもないっす」
ダニーはそれだけ言うと、マーティンに一瞥をくれてオフィスを出た。
何や、あいつ!怒るんやったら理由ぐらい言えっちゅーねん!
ダニーが支局の下でホットドッグを買っていると、マーティンが通りがかった。
「おい、マーティン!ボン!・・・フィッツィー!」
マーティンは一切無視してすたすたと通り過ぎていった。
ダニーは久しぶりにアランの家でくつろいでいた。
嫌がるアランを説き伏せて、レッチリの新しいCDを聞きまくっていた。
「ハニー、本当は、ボーカリストと寝たかったんじゃないのかい?」
アランが医学雑誌から目を離し、膝枕しているダニーに目を落とす。
「ないない!俺、グルーピーになんかなりとうないわ!」
アランは安心したようにまた医学雑誌を読み始める。
ダニーは、実は少しだけ惜しい事をしたと思っていた。
あのアンソニー・キーディスと寝られるなんて、夢のような話だ。
そんなん言えるわけないやん!アランに殺される!
38 :
書き手1:2006/06/07(水) 23:59:57
「そや、タルト食わへん?ハーブティー入れるで」
「あぁ、ありがとう。頂こうか」
ダニーはカモミールティーの葉をポットに入れてお湯で十分に蒸らしてからカップに入れた。
いつも同様、ベリータルトとアップルタルトを二つに切って、半分ずつ皿に乗せる。
「はい、半分こ!」
アランは声をたてて笑う。
「お前は欲張りだよな」
「うん、だって両方欲しいやん」
39 :
書き手1:2006/06/08(木) 00:01:48
アランの言葉はメタファーだ。
自分とマーティンの事を暗に指していたが、ダニーは全く気がつかない。
タルトを食べ終え、カモミールティーを啜る。
「ストレス沈静効果があるから、ハニーの気持ちも落ち着くかな」
「最近、未解決の事件が増えてな、毎日ストレス溜まりまくりや」
「それじゃあ、バスの後、マッサージしてあげよう」
ダニーはいそいそとバスにお湯を張りに行った。
40 :
書き手1:2006/06/08(木) 00:03:05
好きなラベンダーのエッセンシャルオイルを入れて、バスジェルも加える。
「アラン!お湯入ったから、先に入るで!」
「ああ、僕も行くよ!」
アランの家のバスタブは二人で入っても悠々のサイズだ。
「俺の家もこれ位のバスタブが欲しいわ」
ダニーは泡で遊びながらつぶやいた。
「ここで入ればいいじゃないか」
ダニーの頭に泡を乗せるアラン。
「やったな!」
二人はいつしかディープキスを始めていた。
41 :
書き手1:2006/06/08(木) 00:04:10
「さぁ、ベッドに行こうか」
「うん」
二人は、競うようにベッドルームに駆け込んだ。
ダニーがアランのペニスを咥えて前後動を始める。
「うぅん、はぁ、はぁ」
アランの息が上がってくる。69の体勢になって、アランもダニーのペニスを咥える。
「あぁ、ええわぁ、アランの口、エッチや」
「お前の口のほうがエッチだよ」
42 :
書き手1:2006/06/08(木) 00:05:16
二人は体勢を変えて、アランがローションを自分のペニスと指先に垂らした。
指をアナルに入れられ、思わす悶えるダニー。
「くぅ、うん、いい!」
苦しそうなダニーの表情にアランは満足げに笑うと、指を二本に増やしさらに中をほふった。
「もう、我慢できへん!早う入れて!」
アランはやっと正常位で、ダニーの両足を肩に乗せると、ペニスを挿入した。
43 :
書き手1:2006/06/08(木) 00:06:38
「あぁー!すごい、アラン、俺の中一杯や!」
「それじゃ、動くよ」
アランは摩擦を増やそうと、腰をグラインドさせてさらに激しく突いた。
「あぁん、もう俺、だめ、出る!」
ダニーはアランの腹めがけて射精した。
とろんとした精液がダニーの身体にも垂れる。
アランは「それじゃ、フィニッシュだ」と言うと、スピードを速めて腰を打ちつけ、
ダニーの中に果てた。
ダニーは捜査報告書を書きながらマーティンを盗み見た。
むすっとしたままPCに向かう姿が目に入る。
いらついているせいか、何度もミスって舌打ちしているのが聞こえる。
コトっと音がして顔を上げると、サマンサがマグカップをデスクに置いたところだった。
「はい、コーヒー」
「おー、サンキュ。ちょうど飲みたかったとこやねん」
「でしょ、だから持ってきたの。マーティン、荒れてるわね。どうかしたの?」
「知らん」
サマンサはやれやれと首を振ると、マーティンにもコーヒーを渡しに行った。
45 :
書き手2:2006/06/08(木) 23:48:12
ダニーはトイレに行くと誰もいないか確かめ、スチュワートに電話した。
「あ、オレ。実はお前に頼みがあるんやけど・・」
「頼み?金ならあんまりないぞ」
「そんなんちゃうわ!たぶん今日の帰りにマーティンがお前のとこに行くと思うねん。
その時にオレのことを怒ってる理由を聞き出してくれへんかな」
46 :
書き手2:2006/06/08(木) 23:48:45
「今夜は無理だ。オレ、今DCにいるんだ。明日まで帰れない」
「そうか・・・」
「マーティンのことだからさ、どうせつまんないことで怒ってるんだろうよ。
おっと、呼ばれてる、もう切らないと。じゃあな、またNYで。お前も元気出せ」
スチュワートは一方的に電話を切ってしまった。
47 :
書き手2:2006/06/08(木) 23:49:25
「ダニー、こそこそ何やってんのさ?」
携帯を手にしたまま振り向くと、不機嫌そうなマーティンが立っていた。
「トイレやけど?」
「トイレから電話なんて誰にだよ?さっきから怪しいと思ってたんだ!」
「そんなんちゃうって!トロイに電話しただけや」
「そんなの見え透いてるよ!」
マーティンは怒ってトイレから出て行った。
48 :
書き手2:2006/06/08(木) 23:50:05
勤務が終わり、ダニーはマーティンを探したがすでに姿が見えなかった。
マーティンのアパートに帰ったが、まだ帰っていない。
熱帯魚にエサをやりながら待っていると、部屋の電話が鳴った。
留守電に切り替わり、ヴィクター・フィッツジェラルド副長官の声が聞こえる。
相変わらず傲慢な話し方に嫌気が差す。
副長官がまた来るんか・・あいつ、かわいそうに・・・・
聞いてるうちに気が滅入ったダニーは、デリに行こうと思い部屋を出た。
49 :
書き手2:2006/06/08(木) 23:50:40
エレベーターの扉が開き、乗ろうとするとマーティンが乗っていた。
「あ・・・」
「おう、おかえり。オレ、イーライズに行くけど何かいる?」
「・・もう戻ってこなくていいよ」
「はぁ?お前、何言うてんねん!」
「戻らなくてもいいって言ったんだよ」
ダニーはマーティンの腕をぐっと掴むと部屋まで連れて行き、ドアを開けて中に突き飛ばした。
50 :
書き手2:2006/06/08(木) 23:51:15
「痛いよっ、何するんだよ!」
「お前、オレがほんまに戻らんでもええんやな?」
「いいよ、好きなようにすればいいじゃない!」
「わかった、もう二度と来いひんからな!」
ダニーはドアを思いっきりバタンと閉めるとアパートを出た。
ベランダに出たマーティンは、遠ざかっていくダニーを見続けた。
僕ってバカだ・・・何であんなこと言っちゃったんだろう・・・
マーティンの視界が涙でぼやけ、ダニーの姿も見えなくなった。
ニックはベッドの中でマーティンの電話を受けた。
「おう、お姫様、恋しかったぜ。今から会いたい?今日はちょっと都合が悪い。
明日はどうだ?じゃ、迎えに行くよ」
電話を切ると、ナタリーがニックにしなだれかかった。
52 :
書き手1:2006/06/09(金) 00:27:23
「あの子とまだ切れてないの?新しいモデル探しなさいよ」
「あいつは特別なんだ、ナタリー。君の意見でも聞き入れられない」
「どうでも、お好きなように。私、シャワーするわ」
ナタリは身体にタオルを巻きつけ、バスルームに消えた。
ニックはため息をついて天井を見上げた。
ナタリーを何度も抱いた自分になぜか激しい嫌悪を感じた。
マーティンは特別な存在なんだ。
ニックの心の中には、無垢で純粋なマーティンの姿が常にあった。
53 :
書き手1:2006/06/09(金) 00:29:07
翌日、ニックはマーティンを迎えにフェラーリでフェデラルプラザに向かった。
マーティンがサマンサとビルから出てくる。
「それじゃ、サマンサ、また明日!」
別れようとするマーティンの腕を取り、「ねぇ、紹介してよ!」とサマンサがまとわりつく。
「ニック、こちら同僚のサマンサ」
「あぁ、君がマーティンに運転させてくれないサマンサか!」
ニックはえくぼを見せて笑った。サマンサは言葉もない。
54 :
書き手1:2006/06/09(金) 00:31:03
「初めまして。貴方の記事、読みました。また個展はやらないの?」
やっと言葉を発するサマンサ。
「またやりますよ。今度はオープニングパーティーの招待状を送りましょう。それじゃあ」
マーティンは助手席に乗ると、サマンサにバイバイと手を振った。
「想像してたより、美人じゃないか。彼女がいじわるなのか?」
ニックはマーティンに尋ねた。
「男勝りっていうか。僕の事、子供扱いしてるんだ」
「そりゃ、誰でもお前の事、子ども扱いしたくなるだろうよ」
「ニックのバカ!嫌いだよ!」マーティンはぶすっとふくれた。
55 :
書き手1:2006/06/09(金) 00:33:12
二人は、ヴィレッジの「アニサ」に着いた。女性シェフが腕をふるう名店だ。
当然のようにVIPシートに案内される。
「これに、まだ慣れないんだよね」
「いい加減慣れろよ」
ウェイターがうやうやしくやってくる。
「今日はシェフズスペシャルをご用意しました」
「ありがとう。クラブソーダを2つ頼む」
「ごめんね、ニック、飲みたいよね」
「謝る必要なんかないぜ、俺も近頃飲み過ぎてたからな」
マーティンはニックの優しさが胸に染みた。
フレンチのフルコースを終え、二人はマーティンのアパートに戻った。
56 :
書き手1:2006/06/09(金) 00:34:31
ニックはドアを閉めるなり、マーティンのスーツを脱がしにかかった。
「ちょっちょっと!」
「いいだろ!お前だって欲しいんだろ?」
ニックはマーティンをTシャツとトランクスの姿にすると、自分も脱いで、ベッドルームに向かった。
全裸になり、お互いの身体を見つめる。
「お前、太ったな?」
「言わないでよ。アルコールやめたら太っちゃった」
「俺の被写体でいてくれよ」「うん・・わかった・・」
57 :
書き手1:2006/06/09(金) 00:35:55
二人はベッドに飛び込み、互いの身体を確かめるように愛撫しあった。
ニックの大きなペニスは、すでに先走りの液でぬらぬらしている。
マーティンは、口にペニスを含むと音をたてて味わった。
ニックはローションを手に取り、自分のペニスとマーティンのアヌスに塗りこんだ。
アヌスに触られるだけで、甘いため息をつくマーティン。
58 :
書き手1:2006/06/09(金) 00:38:01
「そんなに欲しいのか。口で言ってみろ」
「ニックの熱くて大きいのが欲しい」
恥ずかしそうな顔でマーティンが言葉を口にした。
ニックは満足気にマーティンを四つんばいにさせて、後ろから一気に挿入した。
「うわー、すごいよ!」
ニックは思う存分動き回り、マーティンの感じる部分を刺激した。
「僕、出ちゃうよ!」
「イケよ!俺もすぐだ!」
二人はほぼ同時に射精した。
59 :
書き手1:2006/06/09(金) 00:39:03
ニックはマーティンの背中に体重を預けた。二人とも息が荒い。
「お前はやっぱり最高だよ!」
ニックはそう言うと、寝転び、寝息を立て始めた。
マーティンはそっとベッドから這い出ると、シャワーを浴びにバスルームに向かった。
ダニー、今頃何してるの?
そう思いながら、熱いシャワーを頭から浴びた。
マーティンの態度に切れたダニーは、まっすぐ家に帰る気にもなれず、
無性に酒が飲みたくなってモンキーバーへ行った。
カウンターに座ると嬉しそうなスタニックが前に立った。
「よう、今日は蒸し暑いな」
「今日もドライ・マンハッタン?」
「いいや、今日はアイスブレーカー」
頬杖をついてうつむいていたダニーは、ミキサーの音で顔を上げた。
怪訝な顔で見ていると、スタニックがフローズンスタイルのアイスブレーカーを作って差し出した。
緑色の傘のピックに思わずにんまりするダニー。
61 :
書き手2:2006/06/09(金) 23:45:01
「前から思てたけど、お前って気が利くな」
「そうでもないよ」
褒められたスタニックは、いつものように照れくさそうにはにかんだ。
「傘は特別におまけだよ。本当はストローだけなんだけど、ダニーは特別だから」
こいつ、かわいいやん。マーティンのすかたんとえらい違いやで、ほんま・・・
ダニーは飲み干すとお代わりを頼んだ。今度は普通のアイスブレーカーが出てくる。
62 :
書き手2:2006/06/09(金) 23:45:40
何か食べようと思い、メニューを見ているとスタニックが話しかけてきた。
「今日はもうすぐ上がりなんだ。よかったら一緒に食事しない?」
「ええよ、お前との約束もまだ守ってなかったしな」
「それじゃ着替えてくるから待ってて」
ダニーは頷くとカクテルの残りを飲んでチェックを済ませた。
63 :
書き手2:2006/06/09(金) 23:46:51
二人は食事を済ませるとスタニックのアパートに帰った。
シャワーの後でスポーツニュースを見ていると、スタニックが横に座った。
「何か飲むなら作ろうか?」
「いいや、何もいらん。そろそろ寝よかな」
ダニーはTVを消すとベッドに入った。
64 :
書き手2:2006/06/09(金) 23:47:39
パリッとしたシーツの肌触りが気持ちいい。ダニーはスタニックの手をまじまじと見た。
仕事や家事で少し手荒れした指は、微かにライムやオレンジなどの柑橘類の香りがする。
「オレの手、荒れてるから・・・」
スタニックが手を引っ込めようとするのを制止し、愛しそうに指にキスをして口に含んだ。
ダニーは手をあちこち軽く噛んだ後、腕にもキスをして徐々に上に向かって舌を這わす。
唇にキスをするころには二人ともペニスが大きくなっていて、お互いを求めていた。
65 :
書き手2:2006/06/09(金) 23:48:15
ダニーはローションを塗るとペニスを押し当て少しずつ挿入した。
すっかり行為に馴染んだアナルは、すんなりとダニーのペニスを受け入れる。
「んふっ・・ひぁっぁぁ・・」
上気した頬を見ながらダニーが動くのをやめると、スタニックは自分からいやらしく腰を擦り付けた。
「あぅっ!いっ・・いいっ!」
自ら動くたびにスタニックのアナルがダニーのペニスを締め付ける。
「んっ・・ぁぅっあっああー!」
果てたスタニックのアナルがひくひくと締め付け、ダニーも我慢できずに射精した。
66 :
書き手2:2006/06/09(金) 23:49:00
ダニーが窓を開けてまどろんでいるとスタニックが水を持ってきた。
水を飲むダニーを嬉しそうに眺めている。
「はい、お前も飲み」
ダニーがグラスを渡すとこくんと頷いて水を飲んだ。
「今日は帰るの?」
「いいや、泊まるで。あ、悪いけど目覚ましセットしといてな」
「うん」
安心したスタニックはダニーの体にもたれかかった。
3回めのAAミーティングの日がやってきた。今日はダニーが一緒だ。
エドがマーティンのそばに寄ってきて、挨拶する。
「ダニー、彼がこないだ話したエドだよ。こっちはダニー」
「よろしく、ダニー」
「エド、会えて嬉しいで」二人は握手した。
ミーティングの後、3人は「ジャクソンホール」でチーズバーガーとクラブソーダで食事した。
68 :
書き手1:2006/06/10(土) 00:06:43
エドと嬉しそうに話すマーティンを、ダニーはずっと見ていた。
「ダニー、今日は静かだね?」マーティンが不思議そうな顔をする。
「俺かて、静かな時位あるわ」
エドが尋ねる。
「その訛り、マイアミですか?」
「あぁ、よう分かったな」
「前にマイアミ出身の彼がいたんですよ。懐かしいな」
エドは熱っぽい目をダニーにくれた。ダニーは思わず目をそらす。
「二人はカップルなんでしょ?」
エドの質問は容赦ない。
「うん!」
マーティンが嬉しそうに答える。ダニーは黙っていた。
69 :
書き手1:2006/06/10(土) 00:08:15
「僕は今、フリーなんだ。うらやましいな」
「エドは男前だし、いい人だからすぐに見つかるよ」マーティンが答えた。
「僕、マーティンみたいな人がいいな」
こいつ、俺にもマーティンにも色目使いよって、何やねん!
ダニーは次第に不快になってきた。マーティンがいつになく饒舌なのにも腹が立つ。
「俺、急用思い出したから、帰るわ」ダニーはそう言って席を立った。
「まだ、いいじゃん!」
マーティンがすがるような目で見るが、ダニーは取り合わない。
「勘定は明日、精算してな。ほなおやすみ、エドも元気で」
ダニーはすたすたとテーブルから去った。
70 :
書き手1:2006/06/10(土) 00:10:20
「何だろう、僕、何か気に触る事言ったかな?」
エドが傷ついたような顔をしてマーティンを見る。
「そんな事ないよ。僕らで楽しもうよ」
マーティンは腹立たしそうに言った。
二人はクラブソーダとオニオンリングをお代わりした。
二人とも満腹で、店を後にする。
タクシーに同乗してアッパーイーストサイドに上った。
「今日は僕の家に寄らない?」
エドがマーティンの太股に手を置いて誘った。
マーティンは時計を見た。まだ9時すぎだった。
「そうだね」
71 :
書き手1:2006/06/10(土) 00:12:16
エドの部屋は無機質なモダンな感じの作りだった。
「へぇー、いかにもIT企業の社長って感じ」
マーティンはソファーに座って、くつろいだ。
「マーティン、マリファナやらない?」「え?」
マーティンは自分が薬物治療のクリニックにいた事は、しゃべりたくなかった。
「いいよ」二人で交互に煙をふかす。
そのうち、どちらともなく、キスを交わしていた。頭がぐるぐるし始める。
独特の浮遊感にマーティンの気持ちは思わず高まっていった。
72 :
書き手1:2006/06/10(土) 00:13:29
マーティンはエドに導かれて、大きなベッドルームに向かった。
服を脱がせ合い、お互いのペニスを触れさせる。
「君は受身がいいの?」
「どっちでもいい」
「僕は攻める方が好きだ、いいかな」
「うん」マーティンはぼんやりとした頭で頷いた。
二人はベッドに寝転び、身体を貪りあった。
「あぅ、んん、エド、すごいよ!」
「君も、すごくきつい!我慢できない!」
マーティンがシーツに射精した後、エドは思う様マーティンの中に果てた。
73 :
書き手1:2006/06/10(土) 00:15:44
マーティンは、携帯の音で目が覚めた。
「ふぁい、フィッツジェラルド」
「お前、今、どこや?」ダニーだ!
「僕、今、エドの家」
「そんな事やろうと思ったで。お前んちで待ってたのに。もう帰るわ」ガチャン。
ダニーを怒らせちゃったよ!
エドは隣りで気持ち良さそうに眠っている。マーティンは、散らかった服を集めて身につけた。
ベッドサイドにメモ書きで「また電話します」とだけ置いて、エドの家を出た。
何でエドと寝ちゃったんだろ!僕って、大ばか野郎だ!
昨日と同じスーツで出勤してきたダニーを見て、マーティンは顔色を変えた。
ダニーはまぶたの腫れたマーティンをチラッと見るが、何も聞かない。
二人はそっけなく挨拶だけ交わすと自分の席に着いた。
マーティンはダニーがまた浮気したと思い、ショックで泣きそうになった。
手にしたカプチーノのカップが小刻みに震えている。
75 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:54:33
トイレに駆け込むと顔をばしゃばしゃ洗いながら、自分に落ち着けと言い聞かせた。
「おはよう、マーティン。うん?お前、目が腫れてるぞ」
入ってきたボスに見咎められ、マーティンは黙って首を振った。
「どうした?」
「いえ、何でもありません」
それだけ言うのが精一杯のマーティンだった。
76 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:55:05
仕事が終わっても二人の間はぎくしゃくしたままだった。
支局を出るとそれぞれ違う方向に歩き出す。
マーティンが立ち止まって見ていると、ダニーは振り返ることもなく歩いていく。
何だよ、バカダニィ・・・・
マーティンはとぼとぼとアッパーイーストに帰ると、ソファにどさっと寝転んだ。
携帯電話を握りしめたまま、ぼんやりと水槽を眺めているとインターフォンが鳴り、出るとスチュワートだった。
77 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:55:39
「あー、疲れた。飛行機は咽喉がイガイガするから嫌いだ」
スチュワートはマーティンの体に寄りかかった。
「何か変わったことはなかったか?」
「・・ないよ、何も」
「そっか。はい、これ、CDCのボールペン。抗菌剤入りなんだ」
「ありがと」
「嘘でももう少し嬉しそうにしろよ、非売品なんだからさ」
スチュワートは苦笑しながらマーティンにキスした。
78 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:56:11
二人はディナーの後でパヤードに寄ったが、
お気に入りのタルトが売り切れていたので、閉店間際のイーライズに急いだ。
チーズケーキを買って車に乗ると、ガツンと衝撃が走った。
「わっ、何だよ!」
「くそっ!オカマほられたみたいだ」
二人は急いで車から降りた。
79 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:56:44
「申し訳ありません、急いでたもので」
ぶつけた相手は謝りながら当てた箇所を確認している。
「アーロン!」
マーティンは驚いて声を上げた。
「マーティンの知り合いか?」
「うん・・・時々ジムで会うんだ」
「すみません、僕が全て弁償しますから」
アーロンは免許証と名刺を取り出した。
80 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:57:18
スチュワートは車の損傷をチェックした。
TVRもBMWもバンパーにかすったような傷がついているが、BMWのほうが損傷がひどい。
「惰性でぶつかっただけだし、傷も大したことないからいいよ。マーティンの知り合いだしさ」
「いえ、そういうわけには・・僕の不注意ですので修理代を請求してください」
「いいんだ、怪我もないから。これからは気をつけて」
「でも・・・」
「行くぞ、マーティン」
スチュワートはアーロンにもういいというように手を振ると、マーティンを車に乗せた。
81 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:57:52
「あいつ、絶対にゲイだ。間違いない」
スチュワートは車に乗るなりきっぱりと言った。
「どうしてわかるのさ?」
マーティンは窺うようにスチュワートを見た。
「オレにはわかる。あいつ、わざとぶつけたんだ。お目当ては君かもな・・子供騙しな手使いやがって!」
スチュワートはマーティンをちらっと見るとぎゅっと手をつないだ。
マーティンは何も言えず、黙って足元を見つめるしかなかった。
82 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:58:24
ベッドに入るとスチュワートはマーティンを抱きしめた。
「なぁ、他のジムへ行けよ」
「スチュー?」
「あいつがいるところなんてだめだ。あいつは危険だ、君に近づけたくない」
スチューってすっげー鋭いや、ダニーは全然気がつかないのに・・・
マーティンはバレないかドキドキした。
「いいな、もうあのジムには行くな」
「ん、わかったよ」
マーティンは指をクロスさせて誓った。スチュワートは満足そうに頷いている。
後ろめたさはあったが、やっとわかってもらえた嬉しさでマーティンは満たされていた。
83 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:58:56
スチュワートの胸に顔を埋めていると、張り詰めていた緊張感が消え、
アーロンにされたことを何もかも打ち明けたくなった。
「あのさ・・」
「うん?」
グリーンの瞳がやさしく見つめている。だめだ、僕は言うわけにはいかない・・・
「ううん、おやすみ」
84 :
書き手2:2006/06/10(土) 22:59:29
「何だよ、気になるじゃないか」
スチュワートはマーティンの頭を顎でかくかくした。
「ちょっ、それ痛いよ!」
「知ってる」
くすくす笑いながらさらにかくかくすると、マーティンが仕返しに肩を噛んだ。
「痛てて・・わかったよ、もうしないからさ」
二人は手をつなぐと目を閉じた。
マーティンはアパートに戻り、ソファーに座った。
ほのかに、ダニーがつけているフレグランスの残り香がする。
ここに座って僕を待ってたんだ、ダニー。
マーティンはしばし、ソファーに寝転び、ダニーの香りをかいでいた。会いたいよ・・
決心して、ダニーの携帯に電話をしたが、留守電になっていた。
マーティンは諦めてシャワーを浴びにバスルームに入った。
86 :
書き手1:2006/06/11(日) 00:06:24
翌日、支局に出勤すると、席でピタサンドをかじっているダニーと目が合った。
「おはよ、ダニー」
「ああ、おはようさん」
その後の話が続かない。二人とも沈黙したままだ。
マーティンも席に座って、ブルーベリーマフィンを食べ始めた。
ミーティングが召集され、いつものように仕事が始まった。
ダニーがトイレに立ったのを見届け、マーティンも追いかける。
「ねぇ、ダニー、怒ってる?」
「その話はしたくない」
ダニーは用を足すと、さっさとトイレから出て行った。
87 :
書き手1:2006/06/11(日) 00:08:13
マーティンは急いでメールを送る。「捜査会議希望」
しばらく考えていたダニーだったが、キーボードを打つ音が聞こえる。「了解@貴宅」
二人は定時を迎え、時間差で支局を出た。
地下鉄の駅で一緒になり、アッパーイーストエンドに上る。
部屋に入ると、ダニーはだるそうにソファーに腰掛けた。
「腹減ったわ、何かデリバリー頼み」
「・・うん」
マーティンはピザボーイに電話をし、オレガノとアンチョビのピザと、ゴルゴンゾーラチーズのピザに
シーザーズサラダを頼んだ。
88 :
書き手1:2006/06/11(日) 00:10:46
クラブソーダをダニーに渡すと、ダニーは一気にぐいっと飲んだ。
「ねぇ、怒ってるの?」
「お前、エドと寝たんやろ?」
「ううん、寝てない!」マーティンは必死でウソをついた。
信じてもらえるか分からないが、ウソを通しぬくしかなかった。
「酒に酔うてもないのに、何で奴の家に行った?」
「話が終わらなくて・・」
「ふうん、ええ友達が出来てよかったやん。俺がもうミーティング行かなくてもええな」
「え?どういう意味?」
「俺かて忙しいんや。もうお前は大丈夫。一人でやってける。それにエドもおるしな」
ダニーは憎憎しげに言葉を吐いた。
89 :
書き手1:2006/06/11(日) 00:12:08
「それって、アル中治療に限ってだよね」
「・・」
「ダニー、何とか言ってよ!こんなの嫌だよ!」
「あぁ、お前のお世話役はもう終わりってこっちゃ」
「僕、しゃんとするよ、ダニーに迷惑かけないよ。だから許してよ」
「考えさせて欲しい。俺にも自分の時間が必要なんや」
二人は届いたピザを、カートンから直接食べ始めた。
無言のうちに食べ終わると、ダニーは「ほな帰るわ」と部屋を出て行った。
90 :
書き手1:2006/06/11(日) 00:13:52
マーティンは呆然とぱたんと閉まったドアを見ていた。
ベランダに出て、ダニーがタクシーを拾うのを見下ろす。
ダニー、寂しいよ、ごめんなさい!
僕がバカだったばっかりに、とんでもないことになっちゃった!
マーティンはベランダの窓を閉め、ピザの残りをカートンごとゴミ箱に捨てた。
91 :
fusianasan:2006/06/11(日) 03:56:03
新参者なんですが、毎日楽しみにしています。
書き手1さんも書き手2さんも、ダニーとマーティンがうまくいってなくて
悲しいです。ちょっとした気持ちや言葉の行き違いなんですよね。
すごく描写が生き生きしているので、思わず感情移入してしまいます。
これからも頑張って続けてください。
ダニーは支局の手前でサマンサと一緒になった。
「見て、前方に女の敵がいる」
「何やそれ?」
サマンサに言われて前を見ると、マーティンがTVRから降りてくるところだった。
スチュワートに話しかけられて、真剣に何度も頷いている。
「あの二人、昨夜もろくでもないことしたに違いないわよ。まったく!」
サマンサはブーブー言ったくせに、スチュワートに愛想よく手を振って近づいた。
93 :
書き手2:2006/06/11(日) 23:27:18
「ドクター・バートン、おはようございます」
「おはよう、サマンサ。最近ちっとも来ないから寂しいよ。元気なのは何よりなんだけどさ」
「えー、本当に?やだ、どうしよ・・」
サムもトロイもよう言うわ、あほらしい・・・
ダニーはマーティンが自分を見ているのに気づいているが、わざと視線を合わさないようにする。
94 :
書き手2:2006/06/11(日) 23:27:52
「あら、ここ傷がついてますけど・・ご存知でした?」
「ああ、うん。昨日オカマほられちゃってね、大したことない。それじゃ、遅れそうだから。
マーティン、具合が悪くなったら電話するんだぞ、いいな」
「ん、わかってるよ」
スチュワートはにんまり頷くとそのまま行ってしまった。
95 :
書き手2:2006/06/11(日) 23:28:26
ダニーがトイレで用を足していると、マーティンが入ってきた。
誰もいないか確かめると、ダニーの横に遠慮がちに立つ。
「あの僕、その・・ごめんなさい」
「何が?オレには何が何やらさっぱりや。お前が怒ってる理由もわからんし」
ダニーはぶすっとしたままだ。マーティンは黙りこくり、おしっこの音だけが響く。
96 :
書き手2:2006/06/11(日) 23:29:03
「あのさ、僕、ダニーがジェニファーと浮気したと思って・・・。スチューから結婚してるって聞いたんだ」
「当たり前や。ジェニファーとは何もない」
「だって、親しそうに内緒話してたじゃない。だから・・」
「だから?話もしたらあかんの?」
「そんなことないけどさ・・・」
用を足し終えたダニーは、ペニスを振ると中にしまってジッパーを上げた。
洗っていない手でマーティンにデコピンする。
97 :
書き手2:2006/06/11(日) 23:29:40
「わっ、きったない!やめてよー」
マーティンはけたけた笑っていて、まったく嫌がってるように見えない。
それどころか、むしろ喜んでいるように見える。
「突っ走った罰や、あほのぼんやりすかたんが!」
ダニーはおもしろがって洗ってない手でほっぺに触れるとさっとキスをした。
「許してくれてありがとう、本当にごめんね」
98 :
書き手2:2006/06/11(日) 23:30:14
「まだ許したわけやない、お前んちにはもう行かへん。オレ、二度と来んなって言われたもん」
「ダニィ・・」
うつむくマーティンにダニーは続けた。
「許してほしかったらな、そこの個室で今すぐオナって来い」
「えー、そんなのやだよ。誰か来ちゃうよ・・」
「あのなぁ、本気なわけないやん。お前って何でも信じるなぁ、ちょっとおかしいのとちゃう?」
「バカ!許して欲しいから信じるんだよ!」
「しゃあない、今回は特別に許したるわ」
ダニーはいじけるマーティンの髪をくしゃっとすると、げらげら笑いながらトイレから出た。
99 :
書き手2:2006/06/11(日) 23:37:55
>>91 はじめまして、感想ありがとうございます。
長く一緒にいると気持ちのすれ違う時もありますよね。
つまらない時もありますけど、読んでいただけると嬉しいです。
ダニーは、アランの家にいりびたった。
「アラン、俺がいるの迷惑?」遠慮がちにダニーが尋ねる。
「まさか、ハニー、嬉しいばかりだよ。今日はポモドーロに行こうか?」
「そやね。久しぶりやし」
二人は歩いて、アランのアパートから程近いトラットリアに立ち寄った。
主人がすぐにテーブルにやってくる。
「今日はいい赤ワインがありますよ。それからホロホロ鳥がお勧めです」
二人はアンティパストミストとホロホロ鳥のソテー、空豆のリゾットを頼んだ。
「ハニー、悩みがあるんじゃないのかい?」
ダニーは苦笑した。
「だから精神分析医と付き合うのは嫌なんや。うん、マーティンにな、友達が出来た」
「良かったじゃないか!」
「それがな、ゲイでな、どうやらマーティンと寝たらしい」
アランは目を見張った。
「なるほど。それでハニーのご機嫌が斜めなのか」
「俺、あいつを突き放す言葉を吐いてしもうた」
「後悔してる?」
「少し」ダニーは正直に告げた。
「でもマーティンもいい年だ。いつまでもお前に依存出来ないだろう?
このアル中治療がひとつのきっかけかもしれないよ」
「うーん、俺、あいつが立ち直るように一生懸命世話してきたつもりやったのに、
浮気しやがって。怒りがおさまらんわ」
「裏切られた喪失感か。少し距離を置くのがいいだろうな。
さぁ、今日はそんな事忘れて、食事を楽しもう」
その後は、アランお得意の「ヘンな患者特集」でおおいに笑い、食べ、飲んだ。
ダニーも次第に上機嫌になってきた。
鼻歌を歌いながらアパートに戻る。
「今日、泊まってもええ?」
「もちろんさ、シャワーするだろ?」
「なんか眠い。このまま寝たい」
ダニーはさっさとパジャマに着替えて、ベッドルームに入っていった。
アランがシャワーを終えてベッドに行くと、すでにダニーは寝入っていた。
小さなイビキをかいている。疲れてたんだな。
アランはダニーの額に軽くキスをすると、ダニーの体の線に沿って、横たわった。
ダニーの体臭がほのかに匂ってくる。このスパイシーな香りがたまらない。
アランは、ダニーを愛撫したい気持ちを抑えて、ベッドサイドの明かりを消した。
翌朝、ダニーはスプーンポジションで目が覚めた。
アランの半立ちのペニスが割れ目に密着している。
アランを起こさないようにベッドを出ると、熱いシャワーを浴びた。
今日は休みだ。ゆっくりできる。コーヒーミルで豆を挽き、コーヒーメーカーを用意する。
冷凍庫からベーグルを出して、解凍させると、冷蔵庫をあさって、
生ハムとハラペーニョクリームチーズを見つけた。
レタスをはさんで、サンドウィッチにする。
アランが眠そうな顔で目をこすりながら起きてきた。
「ハニー、おはよう。朝ご飯作ってくれたのか?」
「うん、アラン、気持ちよさそうに寝てたから」
アランはシャワーを浴びにいった。
窓からセントラル・パークを眺めているうち、ダニーは、ふとマーティンの事が気になった。
あいつ、どうしてんのやろ?今日、家に戻ってから、電話しようか。いや、まだ時間が経ってない。
それまでは、アランに甘えよう。
ダニーは二人のマグカップにコーヒーを注いだ。
>>91 さん
はじめまして。感想ありがとうございます。
ほとんど毎日顔を合わせている二人なので
これからも行き違いがあると思います。
でも、ダニーとマーティンは永遠なのでw
これからもよろしくお願いします。
支局に出勤して、ダニーは先に来ていたマーティンの後姿を確認した。
チョコドーナッツとハニードーナッツを机の上に置いて、もぐもぐしている。
「おはよう、マーティン」
「あ、おはよう」
腫れた目ぶたが痛々しい。
この週末、ずっと泣いてたんか?
ダニーの胸がチクっと痛んだ。
ミーティングの間も、マーティンはうつむいて資料を見ており、
ダニーとのアイコンタクトを避けていた。
しかし、浮気をしたのはマーティンだ。
あっちが謝るまでダニーは、自分からは何も言わない事にした。
4回目のAAミーティングの日、マーティンは早々に机を片つけて帰っていった。
さしずめ、エドと待ち合わせでもしているのだろう。
ダニーは心穏やかではなかったが、そのままブルックリンに戻った。
帰って携帯をチェックすると、着信が入っていた。
ニック・ホロウェイ?何やろ、あいつが俺に?
気になったので、コールバックする。
「お、テイラー。お前に聞くのも悔しいが、マーティン、何してる?」
「今日はAAミーティングや。新しいボーイフレンドと仲良く出てるで。きっと」
「え、何だよ、新しいボーイフレンドって?」
「アル中仲間でエドって言う奴。IT長者や。いけすかない奴やで」
「くそー、マーティン浮気してんのかよ!」
「お前も考えた方がええで。マーティン、ああ見えても結構遊ぶ時は遊ぶから」
ダニーは脚色を加えて、ニックに話をした。
ニックは電話を切ると、早速フェラーリでアッパーイーストエンドへ向かった。
マーティンのアパートの前で待っていると、マーティンが男と一緒に歩いてくる。
かなり親しそうだ。
「おい!マーティン!」
「あれ?ニック、どうしたの?」
「迎えに来た」
「でも、僕、友達と食事しようと思ってるんだけど」
「断れよ、さぁ乗れ」
ニックのただならない雰囲気に飲まれ、マーティンはエドに謝って、フェラーリに乗った。
「お前、今の奴と寝てるんだってな。ゆっくり話を聞かせてもらおうか?」
「え、寝てないよ!」
「ネタは上がってるんだよ!」
ニックはフェラーリを走らせた。まっすぐ自分のステューディオに帰る。
ニックはマーティンをソファーに突き飛ばした。
「ねぇ、ニック、話聞いてよ」
「作り話はよせよ、さぁ服を脱げ」
ニックの目は嫉妬の炎で燃えている。
マーティンはしぶしぶ言葉に従った。トランクス一枚になったマーティン。
「ベッドに行け」
メゾネットのベッドルームに上がると、ニックは道具箱を持ってきた。
「え、そんなの嫌だよ!」
マーティンは反抗するが、ニックはいやおうなしにマーティンの首に革の首輪をはめた。
「わかってるだろうな、俺を裏切ったらどうなるか」
マーティンは心から震撼した。
「ダニー、どっかでディナー食べない?」
みんなが帰るのを待っていたマーティンが誘った。
「オレはええ。遠慮しとくわ」
「・・まだ怒ってるの?」
「いいや、オレは帰ってスペアリブ焼くから。お前も来るか?」
「行く!あっ、でも僕の分ないんじゃないの?」
「あるある、心配すんな」
マーティンは嬉しそうにエレベーターのボタンを何度も押した。
二人はスペアリブを食べながらビールを飲んだ。
「ねぇ、ジョシュから連絡あった?」
「ジョシュ?なんで?」
「僕のアパートのこと。頼んどいてくれるって言ってたじゃない」
「ああ、あれか。いいや、まだないで」
危なー、そんなん頼んでないし、すっかり忘れてたわ・・・
適当に流したダニーは、マーティンの皿にサラダを取り分け、食べるように促した。
「僕、ジムやめるから、アパートも早く見つかってほしいんだ」
「なんでやねん、急にどうしたんや?」
「アーロンがいるからさ、スチューがジムに行くなって」
ダニーは一瞬きょとんとしたが、はじけるように笑い出した。
「トロイってめちゃめちゃ嫉妬深いんやな!あー、可笑しい」
あのトロイが?考えただけで可笑しくて笑いが止まらない。
ダニーのバカ・・・
マーティンは、能天気に笑い続けるダニーを横目にセロリスティックをがしがしかじった。
「ほんまにやめるん?」
「ん、僕はあいつ大っ嫌いだもん」
「オレは親切でええヤツやと思うけどなぁ。命の恩人やし」
ダニーはあいつに騙されてるんだよ!早く気づけばいいのに・・・
マーティンの気持ちはダニーには伝わりそうになかった。
二人はベランダで夜風に当たりながらマンハッタンの夜景を眺めた。
「この下、まだ空いてるかな?」
「さあ、どうやろ?知らんねん」
「僕、ここに越してこようかな。だめ?」
「ここはあかんて言うてるやろ。どうせやったらもっと広いとこで一緒に住もうや」
ダニーはマーティンの肩を抱き寄せ、もたれかかるマーティンにそっとキスをした。
夜中にマーティンが目を覚ますとダニーの腕がおなかの上にあった。
温かい手が気持ちよくて自分の手を重ねる。
ダニィ、ずっと一緒にいたいよ・・・
ほっぺにキスしてもう一度目を閉じると、またすぐに眠りに落ちていった。
マーティンが半休を取った。ダニーは気になったが、マーティンとのいざこざを忘れようと仕事に没入した。
午後になり、顔色の悪いマーティンが出勤してきた。首の周りに赤い裂傷があるのを、ダニーは見落とさなかった。
両手首にも絆創膏がぐしゃぐしゃに貼り付けられている。
マーティンの手を引っ張って、トイレに連れていく。
「離してよ!」
「お前、その首と両手どうした!」
「ニックの折檻。ダニーがニックに言ったからだよ!僕に構わないでよ!」
そう言うとマーティンはトイレから出て行った。
ダニーはやっと自分がとんでもない事をニックに言ったのを悟った。
マーティン、どんな折檻を受けたんやろか。俺のせいや!
午後からの仕事は、マーティンの心配でふっとんでしまった。
ボスからぼんやりしていると叱責を受ける。
浮かない気持ちで帰り仕度をしていると、マーティンが何も言わずに立ち上がる。
ダニーは、わざとヴィヴィアンに聞こえるように
「マーティン、今日はめし食う約束やったな、行こか」と大声で言った。
「え?そうだったね」
ヴィヴィアンの手前、むげに断れないマーティン。
マーティンを先導するように、ダニーは「ほな、お先に」と席を立った。
エレベーターの中で、マーティンが「ダニー、ずるいよ。食事なんてしないからね」と言い放つ。
「お前と話がしたいんや。めし食お」ダニーも譲らない。
ダニーはがっしりマーティンの腕をつかんだ。
「分かったよ!食事するから離してよ!」
ダニーはやっと手を離すと、タクシーを拾った。
ブルックリンのピーター・ルーガーに寄せてもらう。
「ダニー、ステーキあんまり好きじゃないよね?」
「お前に合わせたんや。さ、入ろ」
エビのカクテルとTボーンステーキに付け合せの温野菜を頼む。
クラブソーダでとりあえず喉を潤す二人。
「マーティン、俺、とんでもない事、ニックに言うてしもうた。済まん」
「・・もういいよ、過ぎちゃったことだし」投げやりのマーティンだ。
「その・・エドと付き合うんか?」
「そんなんじゃないよ。ダニー、考えすぎだよ。何でニックに言ったのさ!」
マーティンの青い瞳がダニーをまっすぐに射た。
「済まん。お前がいそいそミーティング行くの見てたら腹が立ってな」
「ミーティング勧めたのは自分じゃないか!話の筋が通らないよ!」
「だから、謝ってるんやないか。お前、ほんまにエドと寝てないんか?」
「寝てません!ニックにそう言ってよね」
マーティンは必死でウソをつき続けた。
「分かった。これから電話するわ。お前、ニックに何された?」
「話したくない」
「手当てしたか?」マーティンは口をつぐんだ。
ダニーは、ニックの携帯に電話をかけた。
留守電になっていたので、エドの件は自分の誤解だったと簡単に告げた。
食事が終わり、「俺んとこ来るか?」と誘うダニーに、マーティンは首を振る。
「ううん、家に帰りたい。ダニーと話してたら疲れちゃったよ」とさっさとタクシーを拾った。
ダニーが無理やり乗り込む。
「アッパーウェストエンドに頼みます」
「えっ、違うよ!」マーティンが口をはさむ。
「お前の手当てが先や。アランにやってもらお」
嫌がるマーティンをタクシーからやっと降ろし、アランのアパートを訪れた。
「こんばんは、アラン」
「おや、二人お揃いとはどうした、喧嘩でもしたのかな?」
「こいつ、診てやって欲しい」
マーティンは観念したのか、自分からジャケットとYシャツを脱いだ。
首の周りの擦過傷と両手首の絆創膏が痛ましい。
「穏やかじゃないなぁ。まだラフプレイを続けているのか?」
アランは呆れ顔で言った。
「そんなんじゃないねん。俺が言わんとええ事、ニックに吹き込んじまって、その結果や」
「話がよく見えないが、とにかく消毒しよう。手首の絆創膏を剥がすよ」
マーティンは静かに治療を受けていた。
傷の場所3箇所に包帯を巻いてもらう。
「これじゃ、仕事に行けないよ!」
マーティンがぐずるのも、もっともだ。
「タクシーで事故に遭ったとでも言えばいい。衣擦れで化膿するともっと長引くぞ」
アランに言いこめられて、マーティンがやっとだまった。
「アラン、サンキュ、俺、こいつ送っていくから」
今までだまっていたダニーがそう言うと、マーティンが顔を上げた。
「あぁ、分かった。今日の分は借りにしておこう」
アランは、マーティンの肩を抱いて部屋から出て行くダニーを、複雑な思いで見送った。
ダニーは下半身がくすぐったくて目が覚めた。
ふと見るとマーティンが一心不乱にペニスを咥えている。
ダニーが見ているのに気づいたマーティンは、わざと見せつけるように舌を這わせた。
「おい、お前朝から何してんねん!」
「気持ちいい?」
「いや、そらええけど・・」
マーティンはフェラチオをしながらアナルにも手を伸ばした。
「んっぁぁっ・・」
ダニーは見られている恥ずかしさと中をかき回される気持ちよさに、呻くような喘ぎ声を漏らす。
マーティンはアナルに指を出し入れさせながら、ペニスの先っぽに吸いついた。
「ダニーのチンチン、ぴくぴくしてる。ぬるぬるもすごいよ」
「あほっ、黙ってやれ!ぅぅっ・・ぁぅっ!」
快楽に頬を上気させて怒るダニーのアナルにローションを塗ると、マーティンはキスをしながら腰を使った。
ダニーがマーティンの目に手で目隠ししようとするが、マーティンは両腕を抑えつける。
「見られるの恥ずかしいねん。なぁ、頼むわ・・」
「僕は見たいんだよ、ダニーが感じてる顔」
マーティンに中を激しく突き上げられ、ダニーは観念した。
よがり声を上げながら自分から腰を擦り付けると、マーティンは動きを緩慢にして弄んだ。
「あぁっ!んっっ・・マーティン!・・」
マーティンはゆっくり抜き挿ししながらダニーの首筋に舌を這わして、
イケないもどかしさにダニーの顔が歪むのを楽しんでいる。
ダニーのペニスはとろとろに濡れている。
マーティンがさっと指で撫でるとダニーの体がぴくんと仰け反った。
「はぁっはぁっ・・あほかっ、お前早よイカせろや!」
マーティンはにやにやしながらダニーのペニスを嬲り続け、
ゆっくり扱き上げながら小刻みに動くと、アナルがびくんと締めつけてくる。
「やめろやっ!ううっ・・くっ・・ぅぁぁ・・イクっ!」
ダニーの精液がドクンと吐き出され、自分も限界を感じたマーティンは激しく何度も突き上げた。
「あぁっ・・すごくいいよ・・んんっ!出ちゃう!」
マーティンは射精するとダニーを抱きしめたまま倒れ込んだ。
お互いに汗ばんだ体をくっつけたまま、二人はひたすらキスを交わした。
いちゃつきながらふと目覚まし時計を見ると8時前だ。
「あっ、また遅刻しそうや。シャワー浴びよう」
「またボスに叱られちゃうね」
ベッドから飛び出すと慌しくバスルームへ駆け込み、急いで支度してアパートを出た。
途中で大きな犬を連れた女性とすれ違い、マーティンは顔が赤くなった。
「ボン、どうした?」
「ん、あのDVD見て以来、大きな犬を見るとダメなんだよね。映像が浮かんじゃって・・」
「いやらしいな、フィッツィー!」
「バカっ!ダニーなんてあれで抜いてたくせに!」
二人はふざけあいながらコーヒーを買うと、支局へと急いだ。
ダニーとマーティンは、仕事以外の事で話をしなくなっていた。
しかし、アランは不安だった。
ダニーがすぐさまマーティンと邂逅するのではないかと思っているからだ。
診察の合間を縫って、ダニーに電話する。
「はい、テイラー」
「ハニー、僕だ」
「アラン、どうしたん?」
「今日、食事はどうかと思ってね」
「うん、今のところ事件がないから、定時に終わると思うで」
「じゃあ、家においで」
「サンキュ。こないだの借り、返させて。ほな」
マーティンは会話をずっと聞いていた。
やっぱりダニーはアランのとこに戻っちゃうんだ。
自分がたまらなく孤独に思えた。
先日の折檻のせいもあって、ニックとは会いたくない。
廊下に出て、エドの携帯に電話をかけた。
「マーティン!電話くれるなんて、嬉しいよ」
「今日、夕飯食べない?」
「いいね、じゃレストラン予約しとく。また電話するよ」
「それじゃ、待ってる」
二人は定時に同時に席を立った。
「お前、家にまっすぐ帰るん?」
「僕・・エドと食事・・」
ダニーの顔色が変わった。
「そりゃ、良かったな、お前に本当の友達が出来たのは快挙や」
ダニーはそそくさとタクシーを拾ってアッパーウェストサイドに上っていった。
マーティンはエドが予約してくれた「ビルトモア・ルーム」にタクシーを走らせた。
ダニー、ごめんね。僕、本当はエドと寝ちゃったんだよ。
マーティンは、ダニーが何かと気を遣ってくれるのに、良心の呵責を感じていた。
いつまでウソがつきとおせるだろう。
もう、告白したくてたまらなくなっている。
そして、二人の関係をリセットしたい気持ちが高まっていた。
チェルシーのレストランに着くと、エドがすでにテーブルで待っていた。
アジアン・フュージョンの洒落た店だ。クラブソーダで乾杯する。
「この間のフェラーリの人って、友達?」エドはおずおずと自信なさそうにマーティンに聞いた。
こんな彼が企業の社長なんて、相当ストレス溜まるんだろうなとマーティンは同情した。
「あ、この前はごめんね。友達なんだけど、気が短くてさ」
マーティンは話をはぐらかした。
「僕さ、マーティンが怒ってると思ってたんだよね。ほら、僕ら・・」
「少し、怒ってた。僕、ドラッグは嫌いなんだ」マーティンはきっぱり答える。
「分かった。ごめん。でも、すごく楽しかった。君とはもう友達以上だよね」
エドは段々、饒舌になっていった。心を許すと打ち解けられる性格のようだ。
エドって僕に似てる気がする。
食事はカツオのサシミ・タイスタイルとインド風チキンBBQ、パッションフルーツのシャーベットで終わった。
「今日は、これからどうする?」エドが期待を込めた眼差しで見つめる。
マーティンは焦った。孤独感から、またエドと寝てしまいそうだ。
「明日、早朝会議があるから、また今度」
「そうか、残念だ。でも、家も近いし、今度、朝ご飯一緒とかもいいよね」
エドはにっこり笑った。
マーティンは笑顔を見ていてふと、思い出した。
エドって生徒に誘惑されて失踪した高校教師に面差しが似てる。
彼もIT長者だったはずだ。
「エド、フルネーム教えてくれる?」
「エドワード・シュローダー、君は?」
「マーティン・フィッツジェラルド」
「あらためてよろしく、マーティン」
「よろしく、エドワード」
タクシーを同乗したが、今日はエドを先に落として、自分のアパートに戻った。
携帯の着信履歴を見たが、ダニーからもニックからもない。
むしょうにウィスキーを飲みたい衝動にかられたが、コントレックスを飲んで、渇きを癒した。
バブルバスに浸かりながら、ダニーと二人でバスタイムを楽しんだ過去を思い出す。
ダニー、僕、すごく寂しいよ!
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悪意ある嫌がらせのためならどうしようもありませんが、
もしも宣伝のためとかでしたらやめていただけませんか。
宣伝していただく必要はありませんので、ご了承してくださると助かります。
恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
ダニーが帰りに立ち寄ったジュースバーでマンゴージュースを飲んでいると、
スチュワートが通りの向こうから手を振っているのが見えた。
器用に車を避けるとすたすたとジュースバーに入ってくる。
「やあ、テイラー捜査官。そのジュースは何?」
「アップルマンゴーや。おいしいで」
「マンゴーか、今日はオレもそれにしよう」
スチュワートはジュースを手に戻ってくるとダニーの隣に座った。
「今日は忙しくてさ、こっちまで病気になりそうだ。お前は?」
「オレは仕事はぼちぼちやったけど、マーティンで疲れたわ」
「マーティンて?」
「朝から寝込み襲ってきよってな、くたくたですわ。あいつ、なんか段々エロくなりよるんや」
「そりゃそうさ、先生がいいからな」
スチュワートはにやっとするとジュースのカップを軽く上げた。
二人が話しているとスチュワートの携帯が鳴った。
ガミガミ言っているジェニファーの声が横にいるダニーにも響いてくる。
「もう行かなきゃ。たくさんお待ちだそうだ」
「ジェニファーって怖いんやな、あんなべっぴんやのにもったいない」
「あいつはきついぞ、うるさいの何の・・」
「まあいいやん、目の保養にはなるんやから」
「わかった、ジェニファーにしっかりと伝えておこう」
こいつやったらほんまに言いよるわ・・ダニーは慌てた。
「あほっ、やめろや!ジェニファーに嫌われるやろ!」
「嘘だよ、バカ。週末にBBQしようか」
「そやな」
ダニーは、またすいすいと通りを渡っていくスチュワートを眺めながらジュースを飲み干した。
ダニーはアパートに帰ると、簡単に夕食を済ませてシャワーを浴び、早めにベッドに引き揚げた。
寝転ぼうとして白く乾いた精液の染みが目に入る。
シーツを換えようかと思ったが、面倒でそのまま上に寝そべったが、
なかなか眠れずに寝返りばかり打っている。
マーティンの携帯に電話したが、マナーモードになっていた。自宅は留守電だ。
あいつ、トロイのとこかな?
無性に寂しさを感じ、ダニーはマーティンの枕を指でなぞる。
オレ、どうしたんやろ?自分でもよくわからない。
マーティンが寂しい時はななめに寝ると言っていたことを思い出し、
仕方なくななめに寝てみると不思議と気分が落ち着いた。
ようやくまどろみかけた頃、携帯が鳴った。
「あ、僕。ごめんね、遅くなって」
「出かけてたん?」
「ん、サムとダヴィンチ・コード観てきたんだよ。どうしてもってしつこくて」
「何でお前と?ジェフリーと行けばええのにな」
「他に女がいたらしいよ。今日もべろんべろんに酔っちゃって、やっと送り届けたんだよ」
「そうか、それはご苦労やったな」
話しているとマーティンがどさっとベッドに座った。
「わーっ、びっくりした!なんや、お前!」
「へへ、びっくりさせようと思って。あれ、何でななめに寝てるの?」
「・・寝てたから知らんがな」
「もしかしてさ、僕がいないから寂しかったんじゃないの?」
「あほか、お前やあるまいし。オレは先に寝るからな!」
「なんだ、つまんない。僕、シャワー浴びてくるね」
ダニーは背中を向けて目を閉じたが、マーティンがいるのがたまらなく嬉しかった。
「マーティン、飯食おうか?」
オフィスに誰もいなくなったのを見計らって、ダニーが残業しているマーティンに声をかけた。
二人とも溝が開いた関係を修復したいと思っている気持ちは同じだ。
「うん、いいね」
「俺、昨日、ニョッキ作ったから、家で食わへん?」
「うわー、楽しみだ」
マーティンは嬉しそうだ。二人でタクシーに乗ってブルックリンに向かう。
マーティンはアパートに着くと、自分のクロゼットを開けて、部屋着に着替えた。
最初からくつろごうとしている。久しぶりの事だ。
ジャケットを脱ぎ、ネクタイをはずす様子が続いていただけに、ダニーも思わずにんまりする。
「DVDでも見るか?」
「ワールドカップの録画ある?」
「えーあんなコテンパンに負けた試合、お前見たいん?」
「チェコのプレイがすごかったからさ」
マーティンはDVDを出してもらって、試合に見入っていた。
ダニーは作り置きのトマトソースを取り出すと、ツナ、茄子、玉ねぎ、ほうれん草のニョッキとあわせて、火にかけた。
最後にケッパースとパルメザンチーズを散らして出来上がりだ。
サニーレタスとアンディーブでサラダも作る。
クラブソーダを出してダイニングに並べる。
「うわ、美味そう!」二人でグラスを合わせ乾杯すると、猛然と食べ始めた。
「どうや、俺のイタリアン?」
「もう、最高だよ。ダニーと暮らしたら、毎日こういう料理が食べられるんだね、夢みたいだ」
「毎日、こうはいかへんで。俺かて疲れてる時あるから。でも料理ってストレス解消にええんよ」
「ふうん?僕、料理出来ないからわからないや」
「お前のストレス解消法って何?」
「ジョギングとかジムのワークアウトかなあ」
「ボンってほんまにマッチョなんやな」
「今知ったの?」
二人とも、以前のような自然な会話に戻っていた。
それが楽しくてたまらない。
食事が終わって、X−MEN2のDVDを見る。
新作が封切られたので、二人で見に行く約束をした。
「ねぇ、ヒュー・ジャックマンってかっこいいよね!」
マーティンは彼の肉体美に釘付けだった。
「俺は、ハル・ベリーの方がええなぁ」
ダニーは、マーティンに力いっぱい腕をパンチされた。
「ねぇ、今日、泊まってもいい?」
「ああ、俺も誘おうと思ってた」
二人はにやっと笑い、手をつないでベッドルームに入っていく。
Tシャツを脱がすと「やっと首輪の跡とかとれたやん」とダニーが言った。
「言わないでよ」
マーティンもダニーのTシャツを脱がせて、二人で全裸になる。
マーティンは着やせするタイプだ。
ビジネススーツの下にこんな強靭な身体が隠されているなんて、誰が想像できよう。
ダニーは劣等感で乱暴にマーティンの両手を磔状態にした。
マーティンが期待で目を濡らしている。
首筋から乳首にかけて丹念に舐める。
そうされるだけで、マーティンはくぐもった喘ぎ声を上げた。
「ねぇ、ペニスも舐めて」
「うるさい!だまっとれ!」
ダニーはペニスをわざと避けて、わき腹や下腹部を舐めまわしている。
マーティンのペニスは最大にこわばり、先走りの液でぬらぬら光っていた。
「あぁ、もう我慢出来ないよ、入れて!」
マーティンが悲鳴に近い声を上げた。
ダニーは征服感が押し寄せてきて満足げに、マーティンの足を肩にかついだ。
自分の腰を押し付け、ペニスをマーティンのアナルにあてがう。
「ほな、いくで!」
「あー!すごいよ、ダニー!もっと奥まで・・」
「こうか?これはどや?」
「いいよ!あぁ、ダニー、すごい!僕、もうだめ!!」
マーティンは身体を震わせ、思い切り射精した。
「じゃあ、俺もイクで」
ダニーは動きを早め、腰をグラインドさせながら「あぁー」という声とともに身体を痙攣させた。
マーティンが目を覚ますと、ダニーが隣りで静かに寝息を立てていた。
長いまつげが影を落として、セクシーな寝顔だ。
マーティンは思わずそっとキスをしたり、頬をつついたりしてダニーを起こしてしまった。
「うーん、ボン、何やねん」眠そうで不機嫌なダニー。
「ごめんなさい・・僕、コーヒー入れるね」
マーティンはシャワーを浴びると、コーヒーメーカーを仕立てた。
ふぅん、ダニーってブルーマウンテン飲んでるんだ。
こんなに一緒にいるのにまだまだ知らない事が多そう。
ダニーが目をこすりながら起きてきた。
「お前が朝食用意してくれるん?」
ダニーがいたずらっ子の顔をして尋ねる。
「僕の役割は終わったから、後はダニーに任せる」
ダニーはアスパラガスとソーセージを冷蔵庫から取り出して、
たまねぎと合わせてオムレツを作り始めた。
器用な手元をじっと見ているマーティン。
「今度は何や?」
「トースト焼くね」
「あぁ頼むわ」
マーティンはいそいそと食パンをトースターに入れた。
二人の時間が静かに流れていく。ダニーはJames BluntをBGMに選んだ。
「ほら、これならお前も野菜摂れるやろ」
「ダニーの料理が上手いからだよ。ダニーは、今日は何するの?」
「そやなぁ、たまった洗濯もん片付けてCDの整理でもするわ。お前は?」
「ジムに行ってワークアウトしてくる」
「そか、じゃあ食べ終わったら車で家まで送るわ」「うん」
マーティンはスーツに着替え、ダニーのマスタングに乗った。
「朝帰りがもろばれやな」ダニーはけらけら笑った。
マーティンがアパートの前で降りると、偶然エドに出会った。ジョギング帰りのようだ。
ダニーがにこやかに挨拶する。
「エド、この前は失礼しました。また3人で食事しましょか?」
「はい、喜んで!」
ダニーの車が遠ざかると、エドはマーティンの格好で全てを察した。
ダニーと夜を過ごしたんだ!
「マーティン、カフェでお茶しない?」
「いいけど・・?」アパート近くのカフェに寄りこむ。
「ダニーとよりが戻ったんだね」
エドが傷ついたような顔で尋ねる。
「うーん、まだ分からないよ」
マーティンもどう答えていいか逡巡してしまった。
「僕が入る隙間はなさそうだね」
「エドとは友達じゃない?そこからじゃだめなのかな?」
マーティンは困惑して尋ねた。
「そうだよね、僕が急ぎすぎているんだ。ごめん」
「それじゃ、またミーティングの後、食事しようよ」
「ああ、嬉しいな」
マーティンはエドと約束をして別れた。
翌日、支局で暇をもてあましていたマーティンは、何気なく「エドワード・シュローダー」を検索した。
「うわー!」思わずのけぞるマーティン。
「どした?」ダニーがPCを覗き込む。
「エドってフォーブスの富豪ランキングに載ってる!」
「わ、ほんまや。すげーな!」
サマンサも騒ぎを聞きつけて寄ってきた。
「この人誰?フォーブスのランキング?え、マーティンの友達?」
にわかにサマンサの質問が多くなる。
「彼は無理だよ。フィアンセがいるから」
マーティンは煙幕を張って、サマンサのそれ以上の詰問を避けた。
週末、三人はスチュワートのアパートでBBQを楽しんでいた。
マーティンとスチュワートがバカみたいに真剣に焼いているので、
ダニーは二人が焼くのをぼーっと眺めながら、デッキチェアでのんびりビールを飲んでいる。
「うわっ、熱!何なんだ!」
「ダニー、ダニー!牡蠣が爆発してるよ!」
「え?なんでやねん!」
これやから任せられへんのや・・・ダニーは面倒くさそうにBBQグリルに近づいた。
「あっちー!」
近寄った瞬間、また牡蠣が爆発して熱い飛沫と牡蠣の殻が飛んできた。
「ちょっ、なっ、うわーっ、めっちゃ熱い!」
「どうしよう・・」
バンッと音がするたびに牡蠣が次々と爆ぜて三人は慌てて退いた。
「水でもかけようか?」
「あほ、そんなんしたら炭がパーやん。トング貸してみ」
ダニーはBBQグリルの蓋を盾に近づき、牡蠣をすべてグリルからのけた。
「もう大丈夫や。しかし、めっちゃ熱かったわー」
ダニーは汁がかかって赤くなった腕を氷水のバケツに突っ込んだ。
「あー、怖かった。牡蠣って怖いのな」
「ほんまや、今度から牡蠣はオイスターバーで食べよう。ボン、戻って来い」
ダニーは遠く離れていたマーティンを呼び戻した。
それぞれ牡蠣の汁で磯臭くなったTシャツを脱ぐと、スチュワートはダニーのおなかの傷に手を触れた。
「これ、痛かったろ?」
「いいや、こんなん平気平気、全然痛ないわ。お前のこの傷はどうしたん?」
ダニーはスチュワートのわき腹にかすかに残る傷跡を指差した。
「これはエドワードとETがチャリで逃げるシーンを真似しててさ、転んで切ったんだ」
「ET?BMXのカゴに乗っててこけたってことか?うわっ、めっちゃあほや!」
「うるさいな!途中でカゴが落ちたんだ、不慮の事故さ」
真っ赤になるスチュワートが可笑しくて、ダニーもマーティンもけたけた笑った。
牡蠣騒動も落ち着き、その後のBBQは何事もなく終わった。
飲み過ぎた三人はベッドに寝転がったまま他愛無い話をしているが、
酔っていて何もかもが可笑しく思える。
マーティンはベラベラと一人でしゃべり続け、やがて急に静かになった。
「ん?マーティン、マーティン」
「あ、こいつ寝てしもてるわ」
「さっきまであんなにしゃべりまくってたのに・・そうだ!」
スチュワートはダニーの耳元でこそこそっとささやいた。
「えっ!そんなんやばいんちゃう?」
「目隠ししてりゃ平気だ。こんなにぐっすり眠ってるんだぜ?
それにお前、前から真ん中やりたいって言ってたじゃないか」
「それはそうやけど・・」
「決まりだ」
スチュワートはサイドキャビネットからアイマスクを取り出すとマーティンに目隠しした。
「そんなもん用意してるってきしょいな。確信犯か、お前は」
「バカ、これは飛行機のアメニティだ。オレを変態扱いするな」
「他はと・・そや、耳栓もしたほうがいいんちゃう?」
「起きたらどうするんだよ、やめろって!」
耳栓をあきらめたダニーは、マーティンのトランクスを脱がせ
ローションをアナルに塗るとそっと中を弄った。
弄るたびにぐんにゃりしていたペニスが少し勃起しかけ、あっというまに大きくなった。
「んんっ!」
ダニーのアナルにもスチュワートの指が入ってきた。冷たい指に体内を嬲られ、体中がぞくぞくする。
「どうだ、そろそろ入れるか?」
ダニーは頷くとマーティンに挿入した。後ろからスチュワートのペニスがゆっくりと入ってくる。
「ううっ・・ぁぁっ・は・っ・・」
前も後ろも気持ちよくて、ダニーは声が漏れないように必死に我慢した。
「えっ、なっ何?前が見えないよ!」
突然マーティンが目を覚まして騒いだ。
ダニーの全身が強張り、強烈な締め付けにスチュワートは声を上げそうになった。
「マーティン、オレや、心配ない。たまにはこういうセックスもええやろ」
ダニーはアイマスクを外させないように両手をつないでシーツに押し付ける。
「あぁっ・・ダニィ・・」
マーティンは安心したのか力を抜いて身を委ねた。
興奮したスチュワートはガンガン後ろから突き上げ、ダニーもマーティンも声を上げる。
「ああっ、僕もうダメ・・イク!うぅっ!」
「・・っ!」
マーティンと同時に果てたスチュワートは、静かにペニスを抜くとバスルームに消えた。
ダニーはマーティンの両手を離すと両膝を掴んで腰を振った。
「んっ・・マーティン!オレもイクで!」
ダニーは射精した。いつもよりたくさん精液が出ているのを感じる。
頭の中が真っ白になったダニーは、ベッドに寝転がると肩で息をしながらマーティンを抱きしめた。
突然の出来事だった。ダニーは、いたたまれない疎外感を感じている自分に気がついた。
ニックといいエドといい、マーティンが親しくなる男は、財力とキャリアが格段に自分と違う。
自分は普通の公僕だし、学歴も劣る。マイアミ市警からのたたき上げでしかない。
アランにしても、良家の出の上に医者だ。
どうして俺の周りってこうも、人生の成功者が多いんやろか。
アランやマーティンが、こんな自分を好いてくれているのが不思議で仕方がなかった。
マーティンかて、エリートやん。近い将来、DCで管理職になるやろな。
自分の上司になるかも知れない。
そんな人間関係の中で、ダニーは一人だけ、場違いな世界に迷い込んだような錯覚に陥っていた。
ダニーは、仕事帰りにブルー・バーに寄って喉の渇きを癒した。
「今日は暗いですね」
エリックがさり気なく、生ハムとチーズのカナッペを出してくれる。
「そやねん」
「僕、もうすぐ上がりなんです。食事でもどうです?」
「そやな。行こか」
エリックは嬉しそうににっこり笑い、交代のバーテンダーに声をかけた。
二人が出かけたのは、ノリータの「カフェ・ハバナ」だ。
キューバ料理とコロナビールで食事する。
「ここだと、俺ら、浮かへんな」
「セカンド・ホームって感じ。でも、ダニーがここ知ってるなんて意外だな。」
「どして?」
「だって、典型的なホワイトカラーでしょ?」
「そうでもあらへんで」
「そうだ、ねえ、これから、サルサクラブ行かない?」
ダニーも嫌いではない。マイアミに住んでいた頃は毎週末通っていた。
「行こか」
クラブの中に入ると、週の中日だというのに大賑わいだった。
早速、エリックが女二人を連れてくる。
「こちらカテリーナとエレナ」二人とも肉感的な美人だ。
「エリック、お前・・?」ダニーが思わず驚くと「ここではヘテロ」と小声で耳打ちした。
エリックはカテリーナと、ダニーはエレナと踊ることにした。
ひとしきり踊ると、女二人がスペイン語でアルコールをねだって来た。
エリックは上手に断ると、「二人とも商売女だったみたいだね」とぺろっと舌を出した。
「でも楽しかったで。久しぶりにサルサ踊ったわ」
「じゃあ、そろそろ帰りましょう」
エリックは、当然のようにタクシーの運転手にミッドタウンにと告げた。
「俺、自分の家に帰る」
「家、どこ?」
「え、ブルックリン」
「こっちの方がオフィスに近いでしょ」
ダニーの身体の中は、サルサでアルコールが血管を走り回っている。
「そやな、ちと休ませてもらうだけやで」
ダニーは、たまらなくだるくなり、エリックの言葉に甘える事にした。
アパートに着くと、エリックはいそいそとバスタオルとジャージの上下を用意した。
「はい、ダニー、シャワーをどうぞ」
「ごめんな」
ダニーはエリックといると、昼間に感じていた疎外感や劣等感から解放されているのに気がついた。
それに、かいがいしく世話してくれるエリックは気がきくし、可愛い。
シャワーを浴び、バスルームを出ると、エリックが腰にタオルを巻いて立っていた。
思った以上に鍛えた身体だ。誰もが俺よりどっかが優れてるんやな。またダニーはへこんだ。
ダニーはベッドルームを指差され、ベッドに寝転がるとすぐに眠りに落ちた。
二人が寝転んでいると、腰にバスタオルを巻いたスチュワートが入ってきた。
コントレックスをボトルのまま飲みながら、さも驚いたように二人を見つめる。
「二人ともどうしたんだ?頬が上気してるぞ」
訝しそうな表情を浮かべ、マーティンの頬を両手で包み込む。
目を覗き込まれたマーティンは真っ赤になってうつむいた。
「オレがバスルームにいる間に何してたんだ?ん?」
トロイ、とぼけるのめちゃめちゃ上手い。
あかん、オレ笑いそう・・ダニーは必死に笑いをかみ殺した。
「ごめんごめん、オレがマーティン襲ったんや」
「まったく、お前はフェアじゃないな。それで、あー、オレを出し抜いた感想は?」
「サイコー!トロイのベッドやから余計に燃えたわ」
「子供っぽいな、テイラー」
二人はわざとらしく視線を交わした。お互いに挑戦的な視線だ。
マーティンはケンカが始まるんじゃないかと心配そうに二人を見つめている。
ダニーはいきなりマーティンの精液を指ですくうと、スチュワートの唇に擦り付けた。
「ちょっ、ダニー!」
「おすそ分けや。どうぞ、トロイ先生」
「どうも、テイラー捜査官」
スチュワートは見せつけるように唇を舐めた後、少し顔をしかめて苦いと呟き、がばっとマーティンを抱きしめた。
「このままキスしたら怒るか?」
「え、あ、いや・・ううん、いいよ」
マーティンは困惑した表情を浮かべて固まっている。
キスされているマーティンを、ダニーは申し訳ない思いで見ながらバスルームへと向かった。
シャワーを浴びて出てくると、二人がキッチンでアイスティーを作っていた。
思いっきり濁ったアイスティーを差し出され、躊躇しながら一口啜る。
ダニーには少し甘すぎたが、二人が不安そうに見ていたので、うまいと感想を言って飲み干した。
「・・オレ、そろそろ帰るわ」
「どうして?お前も泊まるんだろ」
「そう思てたんやけど、洗濯物が溜まってるから。それにもうエッチもしたし」
「ダニィ・・・」
本当は自分も泊まりたかったが、二人の邪魔をしているようで気が引ける。
ダニーは手早く服を着ると、マーティンにキスをしてアパートを出た。
ダニーが帰った後、二人は手をつないで屋上を散歩していた。
マーティンはあまりしゃべらず、生返事ばかりしている。
「どうした?」
「ん、ダニーに悪くてさ・・それにスチューにも申し訳なくて。ごめんなさい」
「謝ることなんてないさ。じゃあさ、今日はテイラーんちに泊まろうか?」
「いいの?」
「ああ。それじゃ、このまま行こう」
「パジャマなのに?」
「着替えるの面倒だろ。着いてもベッドに直行なんだしさ」
スチュワートはマーティンの髪をくしゃくしゃにすると促してアパートを出た。
リビングでサッカーを観ていたダニーは、パジャマ姿で入ってきた二人に驚いた。
「あれ、どうしたん?」
「二人で泊まりにきた。いいだろ?」
「別にかまへんけど・・」
「あ、このマクブライドって少しショーンに似てるよね」
「そやねん、オレも思てた。ほな、ぼちぼち寝よか」
三人できつきつのベッドに入り、ぴったりくっつくと誰からともなく忍び笑いが漏れた。
「こんなことならトロイんちに泊まればよかったな。狭いわ」
「お前が意地を張るからだろ」
「うるさい、トロイ!」
「はいはい、狭いんだからケンカしないの!」
マーティンになだめられ、二人はおやすみを言うと黙って目を閉じた。
ダニーは、背中が燃えるように熱いので目が覚めた。頭を動かすとずきんと痛む。
後ろを振り向くと、エリックが全裸でぴたっとダニーの身体に寄り添って眠っていた。
ダニーはあわてて、自分のペニスに触った。濡れた感触はない。
よかった、知らんうちに浮気してたら、俺、最低やわ。
エリックを起こさないように静かに身体を離し、スーツに着替えた。
枕の上に「楽しかった、またな。D」とメモ書きを置いて、アパートを出る。
夜明け真近で、東の空がうっすらと明るい。
大通りまで出て、流しのタクシーをやっと拾い、ブルックリンに戻った。
サルサクラブでテキーラをショットで何杯も飲んだせいか、頭痛がひどい。
タイレノールを救急箱から出すと、2錠、口に放り込んだ。
まだ起きる時間まで3時間ある。ダニーはベッドの中に潜り込んだ。
携帯の音で目を覚ます。
んん?朝から何やろ?
表示も見ずに電話に出る。
「はい、テイラー」
「何が、はい、テイラーだ!お前、どこにいる!」
ボスの怒る声が響いてきた。
「はぁ、家ですが・・」
「時計を見ろ!」
あかん、もう11時や!
「すんません、寝てました!」
「事件が起きた。今、ブルックリンにサマンサが聞き込みに行くから合流しろ!」
30分もしないうちに、サマンサが電話してきた。
「お寝坊さん、今、アパートの下にいるから、すぐ来て」
クスクス笑いのサマンサと合流する。
「夜遊びのしすぎでしょ?ボス、かんかんだったわよ」
「はい、反省してます」
事件のあらましを聞きながら、聞き込みに当たるが成果がなく、支局に戻った。
ボスの不機嫌な顔がダニーを呼んでいる。
「ダニー、言わなくても分かってるな。資格審査を受けたばかりという立場を考えろ。それだけだ」
言葉が少ない方がボスは怖い。
席につくと、マーティンがFBIマグにコーヒーを入れて、運んできた。
「はい、ダニー」
「お、サンキュ」
「寝坊なんて、らしくないよ」
じとっと見る目つきが、明らかに浮気を疑っている。
「面目ない」それしか言葉が出ないダニーだ。
捜査が進まないまま、一日が終わった。マーティンがしょげているダニーを夕飯に誘った。
カッツ・デリカテッセンでパストラミサンドとシーザースサラダを食べる。
「ダニー、何か悩み事でもあるの?」
「え、何で?」
「このところ元気ないからさ」
「気のせいやろ」ダニーは誤魔化した。
自分の疎外感など、人に話せない。特にあちら側にいる人間には。
「お前こそ、リハビリどうや?」
「うん、何とかうまく行ってるよ」
「エドは支えてくれるか?」
「どうして、そんな事聞くのさ?」
マーティンは怒って答えない。
「俺、思うんやけど、俺よかエドの方が、お前に合うてる違うかな」
「どうしてだよ!」
「二人が似てるから・・」
「そんなのナンセンスだよ!ダニー、どうしたの?やっぱりどっか変だよ!」
「うーん、そうかも知れん」
二人はその後、無言のまま気まずく、デリの前で別れた。
ダニーはまっすぐ家に帰る気になれず、チャーチ・ラウンジに立ち寄った。
カウンターでクラブソーダをオーダーしていると、背後から聞き覚えのある声がした。
アラン?振り向くと、アランが背の高い、いかにも高級スーツを着た男性と談笑していた。
アランがダニーに気がつき、手招きする。ダニーはしぶしぶ近寄った。
「偶然だね、ダニー、こちら、マイルズ・コープ。僕がお世話になっているストックブローカーだ。ダニー・テイラー、僕の親友だ」
「初めまして、ダニー」にこやかに握手するマイルズ。
いかにもなやっちゃ。コロンの匂いが離れていてもプンプンする。金の匂いもしてきそうや。
「食事は終わったかい?これからマイルズと夕食に行く予定なんだが・・」
「もう済ませましたから、お二人でどうぞ」
ダニーは静かにその場から離れた。
アランは、ダニーの不可思議な様子を見逃さなかった。
ダニーが支局に行くと、みんなが真剣に話し合っていた。
「おはよう、朝から誰か失踪したん?」
「ううん、TVショッピングの話。ボディブレードの効果に疑問があるってサムが」
「どうも効果が出ないのよね、三ヵ月もやってるのに。ヴィヴは何か買ったことある?」
「私はパスタがお湯を入れるだけで茹だるのを買ったけど、あれはだめよ」
「それ知ってる!私も買おうとして、アマゾンで詐欺だって何件も書いてあったの読んだわ」
えー、サマンサも料理するの?マーティンは思わず疑いの眼差しを向けた。
「あんたは?」
ヴィヴィアンにいきなり聞かれてマーティンは首を振った。
「僕はいつも見てるだけ」
「そや、オレはクイックブライトっちゅう洗剤買うたけど、別に普通やったな」
「なーんだ、あれもだめか。他は何買ったの?」
「GT88。車の傷隠しやけど、あれもあかんわ」
「もう買うのやめましょう。あれはショーなのよ、買っちゃだめ」
みんなが納得したところへボスが現れ、全員頭を仕事に切り替えた。
失踪した家出少年もすんなり見つかり、それぞれ帰り支度をしている。
二人ともサマンサに飲みに誘われたが丁重に断わった。
「あー、危なかった。今日は本当に予定あるの?」
「ああ、オレはジムに行く」
「じゃあさ、僕も一緒に行くよ。解約の手続きするから」
「お前、ほんまにやめるん?」
「ん、ダニーも他のとこに行こうよ。そしたらまた一緒に通えるじゃない」
マーティンはすがるようにダニーを見つめた。
「あかん、入会金払ろたばっかりやのにもったいないやん」
「ね、僕がダニーの分も払うよ。だからさー」
「オレらの間ではそういうことはしいひん約束やろ」
ダニーは一笑に付すと歩き出した。
「ごめん。けど僕、どうしてもダニーと一緒に通いたいんだよ」
「それやったら今のとこでいいやん。アーロンかていつもいてるわけやない。
大体な、トロイは心配しすぎやねん。あいつあほとちゃう?」
ダニーのバカ・・・マーティンは何も言えずに心の中で呟いた。
「アーロンてええヤツやのになんでそこまで嫌うんや?オレはあいつ好きやけどなぁ」
マーティンは、ダニーがまたアーロンを褒めるので、おもしろくない。
「今日は帰る!」
「え?おいっ、ボン!待てや!」
マーティンは振り返りもせずにダニーと別れた。
マーティンがベメルマンズバーに行くと、ジョシュがいた。
「やあ、今日は一人?」
「うん。あのさ、屋上付きのアパート見つかった?」
「え?」
「うん?ダニーが君に頼んでくれてるって聞いたんだけど・・」
「いや、僕は聞いてない。あれからダニーには会ってないしね」
「そう・・・」
ダニーは頼んでくれるって言ってたのに!
むしゃくしゃしたマーティンは、一気にバーボンを呷るとお代わりを頼んだ。
その夜遅く、アランから電話があった。
「ハニー、具合が悪そうだったが、どうしたんだい?」
「夕べ飲みすぎて、二日酔いやったから」
「それだけかい?」
「うん、そうや」ダニーは心が読まれているようで気が気でない。
「明日、食事でもしようか?」
「あぁ、そやね」極めて普通のふりをして答える。
「じゃあ、また電話するよ。おやすみ、水を沢山摂れよ。愛してる」
翌日になり、事件は簡単に解決した。
客に大損させたブック・メーカーが射殺体でハドソン川に浮いていた。
後味の悪い事件だ。マーティンはAAミーティングの日なので、足早に事務所を去った。
ダニーと地下鉄の駅でばったり会う。
「お前、今日もエドと食事?」
「ダニーとは話したくない」
マーティンは、振り返りもせずに、アッパーイーストサイド行きの地下鉄に乗った。
ダニーがアランの家に着くと、キッチンからいい匂いがした。
前は自然と溶け込めたのに、何故か身体がこわばる。
「おお、来たか。じゃあパスタを茹でよう」
アランはズッキーニと茄子のシチリア風ペンネを作っていた。
ダイニングには、帆立貝のカルパッチョが並んでいる。
「お、美味そう!」「着替えておいで」「うん」
Tシャツとジャージに着替えて、ダニーはテーブルに座る。
冷えたシャルドネがすでにグラスに注がれていた。
「乾杯!」グラスを合わせる二人。
「ハニー、何か悩み事でもあるんじゃないのか?」
ダニーは観念して話し始めた。
「うーん、俺の事、アランどう思うてる?」
「この世の中で一番大切な人物だと思っているが?」
「俺でもええの?」
「何だ?前にも言ったろう。僕はお前がダニー・テイラーだからこそ好きなんだ。何があった?」
「いや、俺の周り見回したら、みんな財力あったり、家柄が良かったりしてるやん。
俺みたいな、底辺から這い上がってきたはみだし者は、居心地が悪いんや」
「そんな事で悩むなんて、お前らしくないぞ。お前の孤高の魂は尊敬に値する。
どんな権威や権力にも屈しない不屈の精神がね。決して卑下するなよ」
「そうかな、俺が神経質になりすぎなのかも。そやな。俺は俺だし、過去だって変えられへんもんな。
それにしても今日の料理、美味いで!」
「それは良かった。今日、良ければ泊まればいい。マッサージでもしてあげよう」
「サンキュ、アラン、大好きや」
ダニーは、自分が元のペースを取り戻しつつあるのを確信した。
マーティンにも謝らなくてはいけない。明日、食事に誘って謝ろう。
ダニーはアランと共に、食器の片付けにキッチンに立った。
アランがダニーの顔を自分の方に向かせ、ディープキスをした。
ダニーは心の平安を得たような思いがした。
ダニーはマーティンを探してベメルマンズバーに行った。
ジョシュと一緒にいるのを見てぎょっとする。
マーティンが乱暴にグラスを置くのを見て、背中を冷たい汗が伝った。
まさか、ジョシュと寝たんがバレたんやないやろな・・・・
ダニーは努めて平静を装い、隣に座ってドライ・マンハッタンをオーダーした。
「マーティン、やっぱりここやったんか。よう、ジョシュ」
「やあ、ダニー」
二人は軽く握手を交わした。どうやら浮気はばれていないようだ。
「やっと見つけたで。今日はピスタチオに火つけへんの?」
ダニーはマーティンをからかうが、マーティンはぶすっとしたままダニーを見据える。
「ダニー、ジョシュは僕のアパートのことなんて知らないって。嘘ついたの?」
「えっ!オレ頼んだやん、ほら、この前イーライズの前で。ほらほら、覚えてへんかな・・」
ダニーはジョシュに目で合図した。
「あっ、そういえばそうだった。ごめん、クライアントとの打ち合わせですっかり忘れてたよ。本当にごめん」
「あ、いや、そんなに謝らなくてもいいよ。忙しいのにごめんね。ダニーもごめんね、疑ったりして」
マーティンはすまなさそうに二人に詫びた。
マーティンがトイレに立つと、ジョシュは意味ありげに含み笑いを浮かべた。
「かわいそうに、すっかり騙されてるよ」
「人聞きの悪いこと言うな。とにかく話を合わせてくれて助かったわ。ここはオレの奢りや、何でも飲み」
「いや、早朝から打ち合わせだからやめとく。それよりさ、また部屋に来てよ。この前みたいに楽しもうよ」
ジョシュは何気なくダニーの太腿に手を乗せた。
いやらしく撫でながら上目遣いでにやにやしている。
「それは無理や。お前とはあれっきりにしときたい」
「そっか、残念。ダニーが来なきゃマーティンをお持ち帰りしたのにな。彼、かわいいね」
「お前な、そんなんオレが許さへん」
「冗談だよ、僕にはかわいそうで出来ない。アパートは調べとくって言っといて。ごちそうさま」
ジョシュはダニーのポケットに名刺を滑り込ませると帰っていった。
あのガキ、こんなもん入れよって!営業慣れしてるから油断も隙もあらへん。
マーティンもあんなガキにかわいそうやって思われるってどないやねん!枕営業でもしとけ!
ダニーが忌々しそうに名刺を見ているとマーティンが戻ってきた。
「あれっ、ジョシュは?」
「朝早いからって帰ったで。アパート探しとくってさ。さ、オレらも帰ろう」
「ん、わかった」
ドライ・マンハッタンを飲み干すと、ダニーはチェックを済ませた。
とろとろ歩きながらアパートへ帰るが、あと数ブロックなのにマーティンは動かなくなった。
「おい、ボン、ボンて!早よ歩けや!」
「んー」
なんやねん、こいつ・・・ほんま世話が焼けるわ!
ダニーは後ろからマーティンを押しながら連れて帰った。
水を渡そうとすると、マーティンは口を開けた。ダニーは仕方なく口移しで水を飲ませる。
「ダニィ、僕ってうざいよね・・ほんと、情けないよ」
「あほ、ややこしいのがお前のかわいいとこや。先に寝とき」
ダニーはまだ何か言いかける唇を指でをなぞりながらベッドに寝かせた。
ダニーは、早速、翌朝、マーティンに電話した。
留守電になっているので、伝言で夕飯を一緒に食べたいと残した。
支局に出勤すると、不機嫌そうなマーティンが、PCに乱暴にかたかた入力している。
メール到着だ。「捜査会議了承」
良かった、断られるかと思ったわ。
ダニーは、マーティンの好きな「ジャクソン・ホール」を選んだ。
マーティンのジャンクフード好きは変わらない。
今晩は、ハンバーガーでご機嫌をとらなくてはいけなかった。
マーティンは、チーズがとろとろに溶けたハンバーガーに
卵とマッシュルームのトッピングを乗せたものを頼む。
ダニーはジューシーなパテに、玉ねぎとトマト、レタスをはさんだものを頼んだ。
「それで、何か話でもあるの?」
マーティンは、ハンバーガーにかぶりつきながら冷たく尋ねた。
「あぁ、この間、カッツ・デリカテッセンで言った事を撤回しようと思うてな」
「ふうん」興味なさそうな答え方だが、神経を集中しているのが分かる。
「お前が、もしエドを選ぶんなら俺は何も言わへん。諦めるわ。それはボンが決めることや。
俺がどうこう言う問題やない。ごめんな」
マーティンも重い口を開けた。
「僕、ダニーに捨てられるかと思って、あの晩、泣き明かしたんだよね」
「ごめん、そんなん思うてなかった。こんな俺でも良かったら、またつき合うてくれるか?」
マーティンは顔を上げ、ダニーをまっすぐ見つめた。
「うん、もちろんだよ。エドはただの友達だし、ダニーは特別な存在だから」
恥ずかしそうに顔を赤くした。
「じゃ、仲直りやな」
ダニーは心の底からにんまりした。
マーティンは、エドと寝てしまった事実を葬り去ろうと心に決めた。
せっかくダニーと歩み合えたのだ。今さら告白しても意味がない。
「ジャクソン・ホール」を出て、タクシーを拾った。
「アッパーイーストサイドまで」マーティンが告げる。
「お前、ええの?」
「うん」マーティンはダニーの手をしっかり握った。
二人は部屋に入るやいなや、キスをしながらお互いの服を脱がせ始めた。
「マーティン、お前が早う欲しい」
「僕もだよ、ダニー」
「ここでするか?」
「ベッドに行こう」
二人はベッドルームに駆け込み、ベッドにダイビングした。
マーティンがダニーを磔にして、わきの下の匂いを吸い込む。
「汗臭いやろ」
ダニーが恥ずかしがると、「ダニーの匂いだよ」とマーティンは満足そうに顔を上げた。
「今日は僕の思い通りにしてね」
マーティンは乳首から腹、わき腹の刺し傷を舌で丹念に舐めていく。
ダニーのペニスはすでに先走りの液でぬれぬれだ。
「お前、今日は入れるん?」
「うん、そうだよ」
マーティンはダニーのアナルに指を差込み、中をほふった。
「あぁ、あかん、俺、指だけでイキそうや」
ダニーはため息混じりに声を上げた。
マーティンは、ココナッツローションを自分のペニスとダニーのアナルに塗りこみ、
正常位でダニーに挑んだ。
マーティンの欲情で濡れた瞳が、じっとダニーを見つめる。
「見るな!恥ずかしい!」
「嫌だ、ダニーが感じているところを見たい!」
マーティンはゆっくり身体を動かし始め、ダニーの感じる箇所をつっついて回った。
「お、俺、もう我慢できへん、イク!」
ダニーは苦しそうな顔をして、生暖かい精液をマーティンの腹めがけて射精した。
その様子に興奮したマーティンは、にわかに速度を早め、ダニーの足を自分の腰に巻きつけると、
身体を痙攣させて果て、ダニーの身体の上にどさりと倒れこんだ。
ダニーがバブルバスの中で物思いに耽っていると、ぼさぼさ頭のマーティンが入ってきた。
「あれ、お前起きたん?」
「ん、一緒に入る」
マーティンがバスタブに浸かると泡の大半が流れ出てしまった。
「お前なぁ・・・」
「ごめん」
ダニーはもたれかかるマーティンの後ろから腕を回した。
乳首に手をやると、少し触れただけでコチコチになっている。
触れながら指摘すると、マーティンは恥ずかしそうにダニーの手を掴んだ。
ダニーは耳を甘噛みしながらもう片方の手で下半身を弄る。
ペニスを扱かれ、マーティンは慌ててその手も掴んだ。
「手離してみ、何もできひんやん」
「やだよ」
ダニーは手を押さえつけられたまま強引に愛撫を続けた。
やがてマーティンの力が抜けて、掴まれていた手が自由になると巧みに扱きあげ、
キスをしながら誘うように自分のペニスを押し付ける。
「どうしたん?足が開いてきよったで」
マーティンは急いで足を閉じようとするが、すぐにまただらしなく開いてしまう。
「僕は寝起きなんだよ。だから・・んっ!」
ダニーが薄笑いを浮かべたままマーティンのアナルをいたぶると、
マーティンの息遣いは荒くなり、完全にされるがままになっている。
ダニーはバスタブに手をつかせると、ペニスの先っぽをあてがって少しだけめり込ませた。
「ふっ・・ぅぅ・・んんっ」
ダニーは何度も浅い挿入をくり返すが、なかなかそれ以上奥には入れようとしない。
「もっと奥まで入れて、もう我慢できないよ!」
「うん?お前が寝起きやから気遣こてるんや」
マーティンはもどかしい動きに辛抱できず、自分から奥まで挿入しようとするが、
ダニーはすっと腰を引いてしまう。
マーティンが泣きそうな顔で振り向くと、ダニーは唇を舐めながらニヤリとして一気に奥まで挿入した。
「んっ・・あっあっぁぁー・・」
声を出して喘ぐマーティンを、ダニーは満足そうに見つめながら腰を打ちつけた。
「うっ・・っあくっ・・お前の中、めちゃめちゃ締まりよる・・・」
「ひぁっ・ぼ、僕・もうダメ!イクっ!」
マーティンは足をがくがくさせながら射精した。
肩でぜーぜー息をしながらぐったりしている。
「おい、大丈夫か?」
ダニーはペニスを抜くとマーティンの体を支えた。
「ん、なんかね、のぼせちゃったみたい」
「しんどいやろ、もう出とき」
シャワーで体を流してやるとバスローブを着せ、冷蔵庫から水を取ってきて飲ませた。
「ごめんね。僕、またダニーに面倒かけちゃって・・・」
「気にすんなっていつも言うてるやろ、ほら寝るぞ」
ダニーはベッドに寝かせると、髪をくしゃっとした。
「ダニィ、もう平気だよ」
マーティンが肩に頭を乗せてぴとっとくっついてきた。
裸のままなのでペニスが直に触れる。ダニーのペニスはかちかちに勃起していた。
「わ、やーらしい!」
「あほ、オレはまだイッてないんや」
恥ずかしそうに手で隠したペニスをマーティンはそっと咥えて舌を這わせた。
「ぁぁ・・そこ、強く吸ってくれ・・」
マーティンはダニーの好きなカリと裏筋を入念に舐めあげた。
「イキそう・・出すで・・んっんん!」
口の中に出された精液をマーティンは飲み込み、舌でペニスをきれいした。
ダニーはそのままキスされそうになり、慌てて頬を押さえた。
「ねー、どうしたのさ?」
「オレの精液飲んだとこやろ、そんなん嫌や」
「だーめ」
嫌がるダニーを押さえつけると、マーティンは強引にキスをして抱きついた。
支局の席で失踪者の通話記録を調べているマーティンの携帯が震えた。
「はい、フィッツジェラルド」
「仕事してるか?」ニックだった。
「あぁ、仕事中」
「明日の晩、開けといてくれないか?」
「いいけど?」
「楽しみにしてろよ。お前と行きたいから」
「えっ、何なの?」
「じゃあな」ガチャン。
呆然と携帯を見つめるマーティン。
聞き込みから戻ってきたダニーが、「お前、携帯とテレパシーでもやってんの?」と突っ込みを入れる。
ヴィヴィアンが思わず吹き出した。
翌日、仕事を終えて、ニックのステューディオを訪れると、ナタリーがドアを開けた。
思わずむっとするマーティン。
「よう、来たか、お姫様、これに着替えろ」
「え、タキシード!?」
「マーティン、時間が押してるから早くしてちょうだい」
ナタリーがプレッシャーをかける。
何がなにやら分からないうちに、タキシードに着替えると、
「じゃあ、行くぞ」とニックに背中を押されて、外に出るマーティン。
外には、黒のストレッチ・リムジンが待っていた。
「ニック、待ってよ、どこに行くの?」
「お楽しみに」
ニックは頬にえくぼを見せて、にやっと笑った。
マーティンはドキドキしながら、窓から外を眺めていた。
アッパーイーストサイドに上がって、リムジンが止まる。
「市立博物館?」
「あぁ、今日は博物館主催のチャリティーイベントなんだよ。じゃぁ、行くぜ」
ニックはサングラスをかけると、リムジンのドアを開けた。
カメラのストロボが各所からたかれる。
マーティンはまぶしくて目を開けていられない。
ニックに手をとられて、建物の中に入った。
市立博物館主催のパーティーは、NYの上流階級が集まるイベントとして良く知られている。
こんな場所に、男と一緒に来たことを支局に知られたら、どんなことになるか、マーティンは想像するのが恐ろしかった。
「マーティン!お前も来たんか!」
声の方向に振り向くと、ダニーがタキシード姿で立っていた。
「ダニー!どうしたの!」
「俺、アランの連れやねん。お前はエドか、ニックか?」
「ニック。写真撮られちゃったよ、僕」
「あのニックの事やから、派手に登場したんやろな。まぁええやん、お前も家柄がええんやから」
アランがダニーの後ろからやって来た。
「ニックに会った。やっぱりいたね、マーティン」
アランのタキシード姿に、マーティンは嫉妬した。すごい似合ってる。
「僕、びっくりしちゃって」
「気楽に楽しめばいいんだよ。見目麗しい男女が沢山いるぞ」
アランはウインクした。4人は揃って、ディナーの円卓に座った。
NY市長、博物館館長とスピーチは続く。
ディナータイムが終わり、ニックはすぐさま女性陣に囲まれた。
マーティンは、サインやツーショットを求める女性たちの迫力に押され、バーコーナーに引っ込んだ。
思わず、バーテンダーにウィスキーの水割りを頼む。
「おい、飲むな!」
ダニーが両手にカクテルグラスを持って近寄ってきた。
「ごめん。つい」
「ニック、すごい人気やなー。お前大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ、ニックを置いて帰るから。」
「アランに送ってもらうか?」
「ううん、自分で帰れるよ」
マーティンは寂しそうに答えた。
ダニーが送ってくれるんじゃないんだ。
「じゃ、これ、アランに渡してくるから」
ダニーが去っていく後ろ姿を、マーティンはじっと見つめた。
深夜、マーティンはダニーのアパートに来た。
室内は真っ暗で静まり返っている。
もしかしていないの?猜疑心に苛まれながら暗闇の中を進み、
足音を立てないようにベッドルームに行くと、ダニーの寝息が聞こえた。
自分も服を脱ぐとベッドにもぐりこむ。
背中にぴとっとくっつくと、ダニーがもぞもぞ動いた。
「ダニィ、僕、来ちゃった」
マーティンが甘えるが、ダニーは何か言うとまた眠ってしまった。
マーティンが背中にくっついて眠っていると、後ろから抱きつかれた。
ん?ダニーは僕の前にいるのに?下半身を手が這い回っている・・・・
「うわー!」
マーティンは大声で叫ぶとベッドから飛び出した。
「何やねん・・・」
騒々しさにダニーが目を覚ました。眠そうに目を擦りながら体を起こす。
「マーティンか、いつきたん?」
「誰かが僕の体を・・・嘘じゃないっ、本当に手が!」
「・・ボスやろ」
「えっ、ボスがいるの?」
ダニーが灯りをつけると、きまり悪そうなボスが布団の中にいた。
「ベッドに入ってくんなって言うてあるのに・・・早よソファに戻り」
寝起きで不機嫌なダニーは、ボスを追い出すとベッドに戻って目を閉じた。
「マーティン、寝るで」
「う、うん・・」
マーティンはごめんなさいの目でボスを見るとベッドに入った。
ダニーは既に眠っていて軽く寝息が聞こえる。
マーティンはボスを手招きするとベッドに入れてやった。
「いい子だ、マーティン。お前はやさしいな」
「しーっ!早起きしてソファに戻らないと怒られちゃうよ」
「ああ、そのつもりだ」
ボスはマーティンの体を弄りながら眠ってしまった。
ダニーが目を覚ますと、隣でマーティンが眠っていた。
口がもぐもぐ動いている。こいつ、寝てる時も食べてるわ・・・
「おい、何食べてるんや」
笑いながら起こすと、マーティンがハッと目を覚ました。
「ん・・おはよう」
「食べ物の夢、見いひんかったか?」
「う〜ん、そんな気がするけど忘れちゃった」
ダニーはかわいくて思わずデコピンした。
「ねー、ダニィ」
マーティンはトランクスを下ろすと、朝立ちしたペニスを恥ずかしそうに見せた。
「朝からエロいなぁ。オレはしんどいから、お前がしたかったら入れてもええで」
ダニーはローションのボトルを渡すと後ろを向いた。
「大丈夫?風邪かなぁ・・」
マーティンはボトルをサイドテーブルに置くと、ダニーのおでこに自分のをくっつけた。
心配そうな青い瞳に見つめられ、ダニーは恥ずかしくて視線をそらす。
ほんまはボスとセックスして疲れてるだけなんやけど、ボンには言われへん・・・
「少し熱いよ。ねぇ、スチューに診てもらえば?」
「ちゃうちゃう、お前がヘンなことするから顔が熱くなっただけや」
「もしかして照れてるの?」
「うるさい!」
「あー、やっぱり照れてるよ!」
「やかましい!」
ダニーはマーティンの髪をくしゃくしゃにするとベッドから出た。
二人がリビングに行くと、ボスが大きないびきをかきながら眠っていた。
「ボス、起きて。遅れるで」
ダニーはそっとつついてボスを起こした。
「なんか首の辺が臭そう。お前ちょっと嗅いでみ」
「やだよ、ダニーがしなよ」
「・・聞こえてるぞ、お前たち」
ボスはむっつりとしたまま起き上がり、首をゴキゴキ回した。
「やっぱりソファで寝ると疲れるな。私もベッドで寝たかった」
「さあ、シャワー浴びよ。マーティン行こか」
ダニーは聞こえてない振りをすると、マーティンと一緒にシャワーを浴びに行った。
二人はシャワーを浴びながらキスをした。
いつのまにか二人とも勃起していて、お互いのペニスが触れ合う。
「マーティン、後ろ向け。声出したらあかんで」
ダニーは驚くマーティンのアナルにローションを垂らすと挿入した。
「んっんん!」
前戯もそこそこにぐっと押し拡げられる感覚に、マーティンは思わず呻いた。
「あほっ、静かにせい。オレのが欲しいんやろ?」
マーティンはボスが今にもドアを開けそうでドキドキする。
「っあっ・・そっそこ・もっと・・あぅっっ・・」
「くっ・・そんなに締めたらもたへん・・」
マーティンがどくんと射精したのが伝わり、少し遅れてダニーも射精した。
ダニーがバーカウンターに戻ってきた時には、マーティンの姿はなかった。
一人で帰ったんやろか、俺も一緒に帰ろかと思うたのに。
ダニーは肩をすくめて、アランが談笑している話の輪に戻っていった。
マーティンは、人いきれで息苦しくなり、博物館のベランダで夜風に当たっていた。
ぼーっと立っていると「パーティーは疲れるね」と話しかける人物がいた。
「エド!」
「またあのフェラーリの人といたね。普通の友達?
それにダニーは年上っぽい人といたし、君たちどうなってるの?」
「色々あるんだよ」マーティンは不機嫌に答えた。
「だから、君がアル中になっちゃったのか」
エドは心から同情した顔を見せた。
「飲みたくない?」
マーティンはふと口にした。
「そりゃ、飲みたいよ、でもダメじゃないか」
「僕、今日、飲もうと思う」
マーティンは決意したように、建物の中に入った。
エドが後を追うが、人が多くてなかなか追いつけない。
エドがマーティンを見つけた時には、マーティンはすでにマティーニを口にしていた。
「マーティン!ダメだ!」
「だまって飲ませてよ、エド。お願いだよ」
「ダメだってば!」
エドはカクテルグラスを奪うと、近くを通りかかったウェイターのトレイの上に乗せた。
「もう、帰ろう、マーティン。ここにいちゃいけない」
エドは嫌がるマーティンの手を引っ張って、博物館から外へ出た。
「アイスクリームでも食べないか?」
むすっとしたマーティンをエドが誘って、二人はバスキン・ロビンスに入った。
「君の好みが分からなかったから、チョコチップにしたよ」
エドがカップをマーティンに渡す。
タキシードを着た男二人が、無言でアイスクリームを食べる様子を、他の客は好奇の目で眺めていた。
急にマーティンが大声で笑い出した。
「僕ら、ヘンだよね!」
「そうだね」
つられてエドも笑い出す。
アイスクリームを食べ終えると、エドはマーティンを家に誘った。
「君が飲まないように監視しなくちゃ」
マーティンも抵抗なく、エドの言葉に従った。
エドのアパートに入るのは2回目だ。
1回目は、寂しさのあまりエドと寝てしまった。
コントレックスを冷蔵庫から取り出して、マーティンに渡すエド。
「疲れたろう。今日、泊まれば?」
「うん、確かに疲れた。人が沢山いる場所は苦手なんだ」
「僕もだよ。本当に似てるよね、僕たち」
エドはマーティンの隣りに座った。どちらからともなく唇を重ね合わせる。
「ベッドに行こうか」「うん」
二人は肩の凝るタキシードを脱ぎ捨てると、ベッドルームへ消えた。
エドがおずおずとマーティンのトランクスに手を伸ばす。躊躇しているようだ。
「どうしたの?」
マーティンが尋ねると「君が弱ってる時に付け込んでるみたいで嫌なんだ」と答えた。
「そんな事ないよ。僕、エドといると心が休まる」
マーティンは自分からトランクスを脱ぎ、エドのを脱がせた。
「本当にいいの?」「うん」
二人は、69の姿勢になり、お互いのペニスを咥えた。
生来ゲイではないダニーと違って、エドの口技は絶妙だった。
フェラチオだけでイってしまいそうだ。
「たんま!」マーティンは待ったをかけた。エドが顔を上げる。
「エドが上手すぎて我慢出来ないよ」
「それじゃ、今日は僕の中に来て」
エドはうつ伏せになると、サイドテーブルの引き出しからオイルを出した。
マーティンはペニスとエドのアナルにオイルを垂らす。
「あぁ、期待で胸がドキドキする」エドが甘く囁く。
「僕もだ」マーティンはエドのひざを立たせると、ゆっくり腰を進めた。
かすかなひっかかりの後、ぐっと奥に差し入れる。
「マーティン、すごいよ!」
「中がひくひく動いてる」
マーティンはすでに爆発寸前だ。
「うっ、締め付けないで、イっちゃうよ!」
「マーティン、もっと奥まで来て!」
エドは急に身体を痙攣させた。
「マーティン、早く!」
マーティンは、スピードを速め、ペニスをあちこちにこすりつけると、エドの中で果てた。
エドが潜って、マーティンのペニスを口で綺麗にする。
「マーティンのって美味しいね」
エドがにんまりすると、マーティンははにかんで笑った。
二人はお互いを抱き締めあいながら、目を閉じた。
リビングルームでは、マーティンの携帯が震え続けていた。
ダニーとニックからの受信が交互に続く。
やがて静かになった。
ダニーは約束どおりスタニックと週末を過ごすことになり、アパートまで迎えに行った。
「さてと、どこ行く?どっか行きたいとこあるか?」
「ダニーの家に行きたい」
「えっ、オレんち?オレんちなぁ・・」
「オレ、アッパーイーストのアパートなんて入ったことないから」
アッパーイースト?ああ、アーロンとの会話聞かれてたからか・・
「ごめんな、オレ、一人で住んでへんから」
「・・わかった」
ダニーは気を取り直すようにスタニックの手をつなぐと車を出した。
バーなんか行ってもしゃあないし、どこ行こかなぁ・・
ミッドタウンを抜けたものの、なかなか行き先が思い浮かばない。
「とりあえずチャイナタウンでメシでも食うか?」
「うん、ダニーにまかせるよ」
「よっしゃ、きまり!そや、何でも好きなCD聞いてええで」
スタニックは遠慮がちにグローブボックスを開き、中にあるCDを選び始めた。
スタニックが選んだのはウェイキングライフのサントラだった。
「これ、映画はもひとつやったけど、サントラは買うてしもた」
「わかるよ、映画でお説教ばかりされるんだよね」
「そやねん。でも、なんか見てまうんや」
ダニーは空いている駐車スペースを見つけて車を停めた。
ジン・フォン・レストランでしばらく並んだ後、ようやく席に案内された。
ダニーは飲茶のカートから適当に見繕って選ぶ。
「ダニー、これおいしいよ」
「ほんまや、いけるな。お前も好きなん選び」
ダニーはスタニックが喜んでいるのを見てほっとした。
店を出ると辺りはすっぽりと夕闇に包まれていた。並んでぶらぶら歩く。
人込みでごった返すキャナル・ストリートで箸を買うと、二人は車に戻った。
スタニックはおみくじクッキーと箸の入った袋を大切そうにぎゅっと握っている。
幼い子供か小動物のようで、ダニーはかわいく思った。
「なぁ、お前、秘密守れるか?」
「もちろん。絶対に誰にも何も言わない」
「約束やで。オレな、ほんまはブルックリンに住んでるねん。エッチできんでもいいんやったら泊まってもええで」
「本当?エッチなしでもいい」
「ほな今から行くけど、マーティンが鍵持ってるからな、油断したらあかんで」
「うん」
スタニックは、前方に見えてきたブルックリンブリッジを期待に満ちた目で眺めた。
ダニーはスタニックを連れてアパートに帰ると、真っ先にすべての部屋を点検した。
心配していたマーティンの姿はなく、窓を開け放すとリビングに戻った。
「大丈夫やったわ。まあ、ゆっくりして」
「うん」
スタニックはきょろきょろしながらソファに座った。
「めっちゃ普通やろ?」
「ううん、なんとなくダニーっぽい気がする」
「それってどんなんやねん!」
ダニーは笑いながら飲み物を取りに行った。
アイスティーを淹れているとスタニックがキッチンに入ってきた。
「ダニー、ミリオンバンブーの水がからからになってるよ」
「あちゃー、もうあかんかもな。ほな、一応水やっといて」
アイスティーを持ってリビングに戻ると、スタニックがベランダに出て夜景を眺めていた。
少し猫背気味の背中に声をかけると振り向いたので、アイスティーを渡した。
「はい、これ飲み」
「ありがとう」
二人は並んでアイスティーを啜った。
スタニックがシャワーを浴びている間に留守電をチェックすると、
完全にへべれけになったサマンサから、ポットラックパーティーの誘いが入っていた。
そんなもん誰が行くか!苦々しく思いながら消去してベッドルームに行き
クローゼットからパジャマを出しているとスタニックが戻ってきた。
「これ着とき。オレのやからサイズは合うと思う」
ダニーは自分もシャワーを浴びに行った。
ダニーが腰にバスタオルを巻いたままリビングに行くと、スタニックが熱心にワールドカップを見ていた。
「フランスはどうやろな?」
「限りなく危ないけど、万一ってことがあるから。それにジダンも見納めだしね」
ダニーは横に座ると一緒に画面を眺めた。トッティのPKシーンがくり返し流れている。
「DVDに録画しといたろか?」
「大丈夫、予約してきたから」
「お前、熱心やなぁ」
呆れたダニーはパジャマを着るために席を立った。
ダニーがパジャマを着ているとスタニックが入ってきた。
「もう見いひんの?」
「うん、ダニーは興味なさそうだから」
「心配ない、オレも付き合うで」
「いい、オレ急に叫んだりするから」
叫ぶスタニックか、それが見たいわ・・ダニーは想像して吹き出した。
スタニックはベッドの端に寝転んだ。二人の間はかなり空いている。
「もっとこっち来い。落ちるやろ」
ダニーは手をぐいっと引っ張るとぴったり密着させた。
蝋人形のような肌が一瞬にして紅潮する。
ダニーは体を上に重ねるとキスをして舌をこじ入れた。
太腿にスタニックの勃起したペニスが当たっていて、思わず自分のペニスを重ね合わせる。
「だめだよ、ダニー」
「いいんや」
ダニーはスタニックのパジャマとトランクスを一緒にずり下ろすと、ペニスに手を伸ばした。
先がとろとろに濡れていて、感じていたのがわかる。
お互いのペニスをくっつけるとぬちゅっと音がして、スタニックが恥ずかしそうに目を閉じたが、
ダニーは執拗に亀頭同士を擦り合わせた。
「ああっはぁっ!」
喘ぎ声を聞きながら、ダニーはそろそろやと思った。自分自身、早く入れたくてたまらない。
唇を舐めながらペニスとアナルにローションを垂らすと、大きく息を吐いてから挿入した。
ゆっくり腰を揺らすとスタニックのアナルがぐいぐい締め付けてくる。
「んっああっ・・あ・ダ・・ダニー」
ダニーは少しずつ速度を上げた。絡みつくような括約筋の気持ちよさに腰の動きがとまらない。
「も、もうだめ・・イクっあっああー!・・」
スタニックは泣きそうな声をあげて射精した。全身がひくついている。
ダニーは放心した体を抱きしめたまま突き上げ、中に射精すると快感に何度も喘いだ。
277 :
fusianasan:2006/06/29(木) 22:56:03
書き手1さん、書き手1さんの不在が淋しいです。お忙しいとは思いますが、
またお話の続きが読めたら嬉しいです。マーティンはエドととても気が合い
そうですが、それからもっと親密になっていくのでしょうか。再開をお待ち
してます。
書き手2さん、ダニーがマーティンやスチュワート以外の人とデートするの
は新鮮で良かったです。スタニックも真面目で素直な感じで可愛いですよね。こ
れからも登場してくれると嬉しいキャラだと思いました。
二人がサッカーを見ていると、ただいまと声がしてマーティンが入ってきた。
抱きつこうとして、ダニーのパジャマを着たスタニックがいるのに気づく。
「おう、おかえり。こいつ、スタニック。アパートが害虫駆除やってるから泊まりにきたんや。
こっちはマーティン。えっと・・オレのルームメイト」
ダニーは一瞬迷ったもののルームメイトとして紹介した。
合鍵を使って入ってきたのだから、マーティンの手前それ以外に言いようがない。
「はじめまして。お邪魔してます」
スタニックはさっと立ち上がるとマーティンと握手を交わした。
「スタニックはバーテンダーやねん。これ、おいしいで」
ダニーはミントジュレップをマーティンに勧めた。
「本当だ、いつもよりおいしいね。どこで働いているの?」
スタニックはちらっとダニーを見たが、モンキーバーだと答えた。
「そ、そうなんだ・・・」
マーティンはグラスを置くと逃げるように手を洗いに行った。
モンキーバーのバーテンダーなんてやばいじゃない!どうしよう・・・
スタニックのことなんてまったく記憶になかったが、
アーロンと一緒に帰ったことを覚えているかもしれないと思い、マーティンは焦った。
それに、僕は今夜どこで寝ればいいんだ?デスクの上かよ?
リビングに戻ったものの、気は重かった。
スタニックはフランスが同点に追いついたときも叫んだが、さらに逆転したところで大声を上げた。
あまりのエキサイトぶりにダニーもマーティンも呆気に取られた。
「なぁ、お前ってフーリガン?」
「まさか!つい熱くなっちゃって・・・ごめん、静かにするよ」
ジダンがダメ押しのシュートを決めて試合が終わった時、スタニックの携帯が鳴った。
「ちょっと失礼」
スタニックは流暢なフランス語で話している。二人にはモンデューぐらいしか聞き取れない。
「ねぇ、僕はどこで寝ればいいのさ?」
マーティンはスタニックの様子を窺いながら小声でダニーに尋ねた。
「ルームメイトやねんから、他の部屋に行くしかないやろ」
じゃあやっぱりデスクじゃん・・・マーティンは力無く頷いた。
「今のうちに家に帰り。あんなとこで寝られへん」
僕が帰った後でダニーに何か話したらどうしよう?それだけが気がかりだ。
「ほら、早よせなあいつが電話切りよるで」
「わかったよ」
マーティンはダニーに連れられて玄関まで来た。
「ダニィ」
じとっと見つめるマーティンにキスすると、ダニーはぎゅっと抱きしめた。
「明日は二人っきりやから。な?」
こくんと頷いたものの、マーティンはダニーのシャツからなかなか手を離さない。
「スタニックにヘンに思われるやん。早よ手離し」
「わかったよ、フランス人によろしくね」
少し嫌味ったらしく言うと、マーティンは胸の部分にくっきりとキスマークを残して帰っていった。
>>277 いつもご感想ありがとうございます。
スタニックも気に入っていただけてよかったです。
>>277 さん
いつもご支援ありがとうございます。
ちょっと遠出をしておりまして不在にしておりましたが
今晩から再開予定です。
エドワードはマーティンと双子みたいな存在なのと、
お互いゲイなので、親密になる可能性ありかも。
またのご感想、お待ちしています。
マーティンは、満ち足りた気持ちで目が覚めた。
隣りでは、エドがすやすや眠っている。
なんでエドといると心が落ち着くんだろう。エドがゲイだから?
マーティンがエドを見つめていると、気配でエドが目を覚ます。
「おはよう、マーティン」
「おはよう、エド」
二人ともはにかんだ笑みを浮かべる。
「バスルームに案内するね」
「うん」
この前は逃げるように自分のアパートに帰ったマーティンだった。
無機質で清潔なバスルームは、マーティンの家の2倍の広さがあった。
「うわ、すっげー!」
「ゆっくりどうぞ」
エドはバスタオルとバスローブを持ってくると、スツールの上に置いた。
シャワーをし終えて、リビングに向かうと、キッチンでエドがジューサーを動かしていた。
「マンゴースムージー、飲む?」
「飲む!」
コーヒーのいい香りもしている。
「エドって料理作るの?」
「たまにね。普段は夜遅くまで会社にいるから、デリバリーか外食。身体に悪いよね」
恥ずかしそうな笑顔を見せる。
ダイニングに座ると、トーストとふわふわオムレツの皿が並んだ。
僕以外、みんな料理が出来るんだ。
マーティンは引け目を感じた。
「簡単でごめんね、人をもてなすなんて、ここんとこなかったから」
エドはあくまでも控えめだ。こんなにエゴのない人間が、会社の社長なのだから世の中変わったものだ。
「すごく美味しい!」
「ありがとう。マーティンと朝食食べられて嬉しいよ」
朝食が済み、マーティンはエドから洋服を借りて着替えた。
休みの午前中のアッパーイーストサイドを、たとえ数ブロックでもタキシードで歩きたくはなかった。
バーニーズの紙袋の中に昨日の洋服一式を詰めて、マーティンはエドと別れた。
エドのお陰で、アルコールの誘惑に打ち勝てた。
これは、今のマーティンにとってとても重要な事だ。
また寝てしまったのには、後悔の念もあるが、エドとはずっと友達でいられる気がした。
アパートに戻ると入り口で、ドアマンのジョンと話しているダニーに出会った。
「あ、ダニー・・」
「お前、ずっと電話してたんやで!どこにおった?」
「あの、エドのとこ・・」
「さよか。お前、飲まなかったよな」
ダニーは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「うん」
マーティンは怒られている子供のようだ。
「それじゃ、俺、帰るわ」
「寄ってかないの?」
「朝食も食ったし、昨日の今日でくたびれたわ、じゃ、また月曜日にな」
ダニーも普段着だった。きっとアランの家に泊まったんだろう。
きっとアランと寝たんだろう。
自分もエドと寝たくせに、嫉妬ではらわたが煮えくり返る思いだ。
僕って、思いっきり自分勝手だ。
ジョンに挨拶をして部屋に入り、マーティンは、洋服のままベッドにダイブした。
ダニーはアランの家に舞い戻った。アランが驚いている。
「ハニー、一体どうしたんだい?」
「マーティンに会うた」
「それで?」
「エドの家に泊まったって」
ダニーは傷ついた顔をしている。
「さしずめAAミーティングの続きでもやっていたんだろう。気にするな」
「でも・・」
「今日は書斎で仕事するが、いたいだけいればいいよ。
CDでもDVDでもピアノでも好きに使うといい」
「ありがと、アラン。そうさせてもらう」
「昼になったら、どこかに食べに行こう」
「うん」
ダニーはニューヨーク・タイムズ片手にCDラックを物色し始めた。
アランは訝った。マーティンがエドと寝ている事は確実だ。
ダニーはどう咀嚼しているのだろう。
自分の存在が、ダニーにとって支えになるのか正念場になるような気がした。
ランチの時間になり、二人はカフェ・ラ・フォチューナで軽くサンドウィッチを食べた。
ジョン・レノンが生前お気に入りだった場所だ。
実際、アランはジョン・レノンに出くわした事が何度かあった。
「アラン、まだ仕事あるん?」ダニーは上目使いで尋ねた。
「その目には弱いな。専門誌に原稿を書く約束をしていてね、まだ終わりそうにない」
「それじゃ、俺、ランチ済んだらブルックリンに戻るわ。掃除とかやることあるし」
「そうか。ディナーはどうだい?」
「や、仕事の邪魔したくないし、またにしよ」
「了解、家まで送るよ」
「買い物あるからええわ」
ダニーはやんわりと断った。
カフェで別れると、ダニーはマーティンのアパートを目指した。
合鍵で中に入る。静かだ。いないのか?
ベッドルームを覗くと、マーティンが洋服のまま大の字になって眠っていた。
子供みたいな奴や。
起こしてキスをしたい衝動にかられたが、エドとの事で心にわだかまりがある。
ダニーは静かにドアを閉め、アパートから出た。
俺、何してんねん!
ブルックリンに戻る地下鉄の中で、ずっと考えていた。
グローサリーを買ってアパートに戻ると、携帯が震えた。
ホロウェイ?何やねん!
「はい、テイラー」
「お前、マーティンを隠しただろう!」
「何ぬかしてんねん。俺は今、一人で家や。あいつはあいつの家におる」
「何だ、一緒じゃないのか」ニックは拍子抜けした声を出した。
「お前こそ、ちゃらちゃら女に囲まれてないで、ちゃんとマーティンが酒飲まないか見張らんと!
あいつ、もう少しで飲みよるとこやった」
「すまない。俺、マーティンの子守役は失格かもな」
珍しくニックは弱音を吐いた。
「あいつと話したいなら電話してみい。ほな、あばよ」
ダニーは電話を切って、ぐったりした。
ニックもエドも、それぞれの方法でマーティンを思いやっている。
今はマーティンがエドといる像ばかりが、目の前をちらついて、掃除など出来そうにない。
やっぱり、あいつんちにずっといるべきやったわ。へんな意地張るんやなかった。
ダニーは、今朝のマーティンとの会話を後悔していた。
翌日、ダニーはスタニックと夕食を食べてからマーティンのアパートへ行った。
ただいまと声を掛けると、ぶすっとしたマーティンがTVから目を離さずにおかえりと答えた。
「またムーラン・ルージュか、飽きひんなぁ。ユアンと浮気か?」
「・・フランス人は帰ったの?」
「フランス人ちゃう、あいつはクォーターや。さっき送ってきた」
「ふうん」
「なんやボン、焼きもち焼いてんの?」
「違うよ、バカ!」
ダニーは拗ねて嫌がるマーティンの頭をよしよしと撫でた。
テーブルの上には、DVDといろんなスナックの空き袋がごちゃごちゃに散乱している。
「うん?お前、一日中DVDばっかり見てたんか?」
「だって、どこにも行くとこないんだもん。ダニーもいないしさ」
「こんなもんばっかり食べて、また太っても知らんで」
ダニーはデコピンするとぷっくりしたほっぺを掴んだ。
「しゃあないな、スカッシュに行くぞ。お前、ちゃんと手加減しろよな」
「ん、やったー!」
マーティンは嬉々として支度を始めた。
スカッシュの後、イーストビレッジに新しく出来た蕎麦屋に行った。
ダニーはスタニックと夕食を済ませていたが、スカッシュのせいか少しおなかが減っている。
サマンサに薦められた天ざると鴨せいろはなかなかおいしい。
「サマンサさ、ここにジェフリーと来てたのかもね」
「そやな、残念ながらもう過去やけど」
ダニーは冷酒を飲みながら頷いた。
マーティンは揚げだし豆腐を箸で摘まむのに神経を集中させている。
ダニーがひょいっと横取りして口に入れると、マーティンが口を尖らせた。
「ひどいよ、あともう少しだったのに!」
「そら残念やったな、今度は頑張り」
ダニーは笑いながら蕎麦を食べた。
ダニーがふと入り口を見ると、ごてごてと着飾った金持ちそうな老婦人が入ってきたところだった。
あれは誰やったっけ?あっ、トロイのとこの理事長や!ということは・・・
思ったとおり、続いて入ってきたのはスチュワートだった。
感情を押し殺して無表情なまま、そつなくエスコートしている。
スチュワートはダニーとマーティンを見て眉をしかめたが、すぐに元の顔に戻った。
二人は少し離れた席に案内された。
こっちを気にしながら、話しかけてくる老婦人に適当に相槌を打っている。
揚げだし豆腐に夢中のマーティンはまだ気づいていない。
ダニーは残りの蕎麦を急いで口に押し込んだ。もう味もへったくれもない。
「ボン、振り向くなよ。後ろにバン・ドーレンがいてるわ。早よ出よう」
「えー、まだ食べてる途中なのに。いいじゃない、もう少しで食べ終わるよ」
「また来たらいいやん。オレがチェック済ませるから車で待っとき」
ダニーはキーを渡すとマーティンを外へ追いやった。
スチュワートのほうを見ると、気のせいか無表情な目がほんの一瞬笑ったように見えた。
ダニーが車に戻ると、マーティンがトム・ヨークのCDをかけながらスチュワートがいると言った。
心拍数が一気に跳ね上がるが、何とか顔に出ないよう努める。
「へー、トロイに会うたん?」
「ううん。だってほら、そこに車が停まってるからさ」
「ほんまや、あいつも買物かなんかかな」
「いつものとこより、あの蕎麦屋がおいしいって薦めてあげようか?」
「そんなんほっとけ、今日は二人っきりなんやから。ほな、バーガーキングに寄って帰ろか?」
「いいね、行こう。あ、新製品が出たらしいよ」
「そうなん?」
マーティン、何も知らへん。オレもトロイも浮気ばっかりや・・・・
ダニーは自分自身にうんざりしながら手をつなぐと車を走らせた。
ダニーは朝から聞き込み捜査に追われ、夜までマーティンと会う機会がなかった。
オフィスに戻ると、マーティンが一人でPCに向かっている。
「通話記録フォローしてんのか?」
ダニーが尋ねると、「いや、お金の流れの方。もう今日は帰るの?」と聞いてきた。
「あぁ、ボスに報告もしたしな、お前は?」
「僕もそろそろ帰ろうかな」
二人は無言のままエレベーターに乗った。「な、飯食わへん?」
ダニーの言葉を待っていたように「お腹すいたもんね」とマーティンは頷いた。
ミッドタウンの「マンジャ」に寄りこみ、テラス席に座る。
「ええ陽気やなぁ」
「やっと初夏が来たね。冬、寒かったもんね」
周りくどい会話が続く。ダニーがやっと切り出した。
「お前、エドと付き合うてるん?」
「え、ただの友達だよ」
マーティンは困った顔をした。勘の鋭いダニーだ。
寝た事が分かってしまったらどうしよう。
「そうか、それならええけどな」
「ダニーがいつも一緒にいてくれたら、友達なんていらないのに」
マーティンは呟いた。
「そんなん無理やん。お前と暮らせへんのは分かってるやろ?」
「どうして?僕らが同じ職場だから?僕が転職したら一緒に暮らせるの?」
突然、マーティンは詰問を始めた。
またこれや。今度はダニーが困った顔をした。
「もし一緒に暮らせるなら、僕、FBI辞めてもいい」
「マーティン!お前が望んで入局したんやろ!そんなんで棒にふるのは良くないで」
「“そんなん”て何だよ!僕らの関係は、ダニーにとっては“そんなん”なの?」
こうなるとマーティンは頑固だ。今日のところはダニーは引き下がる事にした。
「まぁ、落ち着いて。チリバーガーが冷めるで」
マーティンはその後、固く口を閉ざしてしまった。
食事が終わり、店の前で別れる。
「じゃあ明日な」「・・」
マーティンは、まっすぐ家に帰る気になれず、ミッドタウンをうろつき、アルゴンキンのブルー・バーに寄りこんだ。
「こんばんは、今日はテイラーさんとご一緒じゃないんですね」
愛想のいいバーテンダーが近寄ってきた。
「ダニーを知ってるの?」
「いいお客様ですから」
エリックは意味深に微笑んだ。
「マンハッタンください」
「ただいま」
マンハッタンのお代わりを繰り返すうちに酩酊してきたマーティンは、とうとうカウンターに突っ伏した。
「お客様」
他のバーテンダーがマーティンを揺り動かす。
「早番だし、俺の客だから面倒みるよ」
エリックはそう言うと、私服に着替えてきた。
マーティンの片腕を肩に回し、軽々と抱えると、駐車場に向かった。
マーティンは、身体にまとわりつく違和感で目を覚ました。
ここ、どこ?
誰かが自分の股間でペニスを咥えている。
「誰?!やめろよ!」
「フィッツジェラルド捜査官、そんな事言っていいの?」
エリックは顔を上げるとそう言った。
「え!」
「IDと拳銃持ったまま、酔いつぶれるのはよくないよ。恋人の名前を連呼するのもね、ふふふ」
ウソだろ!僕の正体も知られてるし、ダニーのことも!
マーティンは、振りほどこうとするが思うようにならない。
禁酒後のカクテル4杯が身体の自由を奪っていた。
「ここがこんなに固くなってきたよ」
「うぅぅん」
快感がぞわぞわとペニスから身体の芯に伝わってくる。
マーティンは観念して、エリックに身を任せた。
エリックは口を上下させて、マーティンを簡単にイかせると、オリーブオイルの瓶を手にした。
「じゃあ始めるね」
マーティンのアヌスにオイルを塗りこむ。
「ん、んうぁ」
マーティンは腕を噛んで声が漏れないようにした。
エリックは自分のいきり立ったペニスにもまんべんなくオイルを塗ると、
マーティンの両足を持ち上げ、一気に腰を進めた。
「あぁ、ああ!」思わず口から腕を離して声を上げるマーティン。
「すごい締め付けだ!ダニーは幸せ者だよ、ほら、どうだ!」
ぐいぐい奥まで突かれて、マーティンは息が出来ない。
「う、うう!あ、あ」
「あぁ、マーティン、すごいいいよ!それじゃイくね」
エリックはスピードを上げ、マーティンを突きまわった挙句、身体を痙攣させて、やがてぐったりした。
マーティンがスターバックスで並んでいると後ろから肩を叩かれた。
「ん?」
振り向いてアーロンを見るなりマーティンは憂鬱になった。
「やあ、ずっと君を探してたんだ」
「僕に何か用?」
「この前はごめん。携帯見ながら運転しててさ、ブレーキ踏んだけど間に合わなくて・・」
「そう」
本当はわざとぶつけたんだろ、白々しい!
マーティンは壁に押し付けて問い詰めたくなったがぐっと堪える。
「あの人は君の彼?すごくいい人だね」
「お前に関係ないだろ。さっさと用件を言えよ」
「ごめん、車の修理代のこと。小切手の宛先はどうすればいい?」
「スチューがいらないって言ったろ!何なんだよ!」
「ただ弁償したいだけなのに、どうしてそんなに怒るの?」
アーロンは心外だと言わんばかりにマーティンを見つめた。
「あ、ダニーだ。もういいよ、ダニーに聞くから」
「えっ!やめろよ、余計なこと言うな!」
慌てるマーティンを尻目に、アーロンはダニーに手を振った。
マーティンはダニーを探すが、どこにもいない。
「嘘だよ、君の慌てっぷりったら!」
アーロンはくすくす笑っている。
ムカついたマーティンはカプチーノを買わずにスタバを出た。
支局に着くと、ダニーがベーグルサンドを食べながら新聞を読んでいた。
「ボン、おはよう」
「おはよう」
オフィスのコーヒーを淹れて戻ってくると、食べかけのベーグルサンドがデスクに置いてあった。
「ダニー?」
「欲しそうやったから分けたるわ。半分しかないけどな」
「・・ありがと」
マーティンは礼を言うとベーグルをかじった。
ダニーは仕事中も覇気の無いマーティンが気になっていた。
何度か尋ねたが、何でもないと話を逸らされてしまう。
「マーティン、ちょっとええか」
誰もいないのを確かめてトイレに連れ込んだ。
「お前、朝からおかしいやん。病気か?」
「ううん、違う」
「それやったらいいんやけど・・オレ、心配やねん」
「あのさ、ダニーがキスしてくれたら治るよ」
「あほ!人がこんなに心配してるのに」
ダニーは文句を言ったものの、さっとキスをした。
「治ったか?」
「ん、治った」
あほらしい、心配して損したわ・・・ダニーはデコピンすると先に出た。
マーティンがトイレの鏡に向き合うと、貼りついていた作り笑いがさっと消えた。
鏡の中の冴えない男はどうしようもないくらいへこんでいる。
だめだよ、普通にしてなきゃ。ダニーが心配するじゃない・・
そうさ、僕は僕だ!何も悪くないんだ!
自分に言い聞かせていると他の局員が入ってきたので、顔をバシャバシャ洗ってやり過ごした。
ダニーはアパートに帰ったものの、マーティンが気になってアッパーイーストまで来た。
途中で買ってきたバーガーキングの紙袋を手に部屋に入ると、
マーティンが熱帯魚を相手に何やらぶつぶつ言っていた。
「マーティン?」
「あっ、ダニー!」
「魚とおしゃべりか?ほら、お前の好きなダブルワッパー買うてきたで。冷めんうちに食べ」
「ん、ありがと」
特に話はしなかったが、ハンバーガーにがっつく様子を見てダニーはホッとした。
「なぁ、熱帯魚の色がなんか悪くなってない?どれもこれも色がはげてるみたいや」
「そうなんだよ、もしかしたら病気なのかな」
「ボスに聞いてみ、おっさんやったらわかるんちゃう?」
「ん、明日聞いてみるよ」
ダニーは、マーティンがかじっていたポテトを反対側からかじってキスに持ちこんだ。
恥ずかしそうにするマーティンの目を覗き込む。
「お前なぁ、オレらいっつもチューしてるのになんでそこまで照れるねん!」
「だって、こんなのしたことないんだもん・・・」
「ウソやろ?!!マジで?」
驚いたダニーはポテトを咥えてマーティンを誘った。
おずおずと遠慮がちにかじるマーティンがかわいくて何回もやらせる。
ぎこちない不器用さが妙にそそり、ダニーはキスをしながらソファに押し倒した。
じっと見つめると後ろめたそうな怯えた目をしたが、ダニーは構わずシャツのボタンを外した。
肌蹴たシャツの合間からのぞいている薄桃色の乳頭にそっと触れると、マーティンの体が強張る。
「今日はしたくないんか?」
ダニーの問いかけにマーティンは慌てて首を振った。
「わかったわかった、ここやったら嫌なんやろ?フィッツィーは神経質やからな」
ダニーはマーティンを抱き起こすと、背中を押してベッドルームに連れていった。
ベッドに座ったダニーはペニスを扱くとたっぷりローションを塗った。
マーティンに跨らせて少しずつゆっくり挿入する。
「・・っ・・ぁぅっ!」
「動いたらあかんで、そのまま動くな」
根元まで挿入すると、言い聞かせるようにキスをして舌を絡めた。
少し無理して奥まで舌を伸ばすと、アナルが刺激されてマーティンが呻く。
じれったそうに腰を押しつけてくるが、ダニーは何もしない。
マーティンは荒い息を吐きながらダニーにしがみついた。
ダニーがマーティンのペニスを扱くと、すぐさま体が仰け反ってアナルがひくつく。
「ひっ・・っ・・こ、こんなのやだよ、僕・・ね・早く動いて・」
「でも気持ちいいんやろ?」
ダニーが耳を噛みながら下から突くと、マーティンは動きをあわせるように腰を振った。
「あぁっ!ダニー!」
マーティンは我慢できずにダニーを押し倒すと騎乗位になった。
狂ったように腰を振り立てながら苦しそうに喘いで射精すると、
じっとりと汗ばんだ体を投げ出すようにもたれかかった。
ダニーは息が落ち着くのを待って体位を変えると、体を押さえつけて腰を振った。
動くたびにマーティンの汗と精液の入り混じった匂いが立ち上ってくる。
もう少し楽しみたかったが、足が攣りそうになってきた。
「イクで・・んんっ・・出る・・っ・くっ!」
ダニーは中出しせずに腹の上に射精すると、マーティンの上に倒れ込んだ。
余韻に浸っていると、突然ドーンと音がして二人は飛び上がった。
「あー、独立記念日の花火や。ひょっとしたらペランダから見えるかもしれん」
二人は急いでベランダに出た。イーストリバーの方から音だけが聞こえてくる。
「あかんな、見えんわ。なぁ、マーティン」
「ん?」
「いや、何もない」
ダニーはそっとキスをすると肩を抱いた。照れくさくて愛してるなんて言えない。
マーティンはきょとんとしながらくっついていたが、
湿った髪をいつものようにくしゃっとされると満足そうに頭をもたせかけた。
「ここで寝てもいいよ、マーティン」
エリックがささやくように呟いた。
「僕、帰る」
マーティンはベッドの周りに散らばった自分の衣服を集めた。
「IDと拳銃はリビングのテーブルの上だよ」
上半身裸でブランケットから身体を露出するエリックは、とんでもなくセクシーだ。
「ダニーと同じエスニック?」
「うん、俺もマイアミ生まれ。キューバン・アメリカンだからダニーと同じ」
「どれだけ親しいの?」
「ふふ、聞きたくないだろうけど、寝た仲だよ。ごめんね。だから君に興味があったんだ。
ダニーがWASPと付き合ってるなんてね。俺の方が馬があうと思ってたのに」
マーティンはまた裏切られたのだ。
「でも、君の身体って素晴らしいよ。よく開発されてる。最高。また機会があったら、寝てくれる?」
「もうそんな機会は一生来ないと思う」
マーティンは捨て台詞を残すと、アパートを出た。
身体からエリックと自分のザーメンの匂いがにおい立つようで、タクシーに急いで飛び乗った。
アパートに着くと、ひとしきりシャワーで泣いた。
本当はダニーと寝たいのに、どうしてうまくいかなくなっちゃったんだろう。
僕のアル中が問題?エドとの事が問題?
まだカクテルでぼんやりしている頭で、ぐるぐる自問自答を繰り返した。
そのうち睡魔が襲ってきて、マーティンはベッドに入った。
携帯が鳴っている。こんな夜中に何?
「おい、マーティンどこにいる?」
ダニーだ。
「僕の家」
「お前、時計見ろよ」
うそだろ!もう10時じゃないか!
「ボスにはお前が遅くまで残業してたって言うといたけど、早く来いよ」
オフィスに着くと早速ボスに呼ばれた。
「昨日は遅かったのか?」
「はい・・」
「そんなに根を詰めず、帰れる時に帰れ。以上だ」
今日はサマンサの補佐役で一日が終わる。
一体いつになったら、僕の後輩が入ってくるんだろう。
それとも成果があがらないから、いつまでもこのポジションなのかな。
これじゃ、父さんを見返す事なんか出来ないや。
ダニーの顔を見ると、エリックに言われた事が耳に戻ってくる。
「寝た仲だよ、ごめんね」
一体、ダニーは僕が知らないところで何人と浮気してるんだろう。
きっと女とも寝てるに違いない。
マーティンは、身震いがした。女とダニーを共有するなんて、とんでもない話だ。
でも、たまらなくダニーが好きだ。
ニックと会っていても、エドと一緒にいても、この気持ちは止まらない。
涼しげな顔で電話をかけているダニーに一瞥をくれると、マーティンはPCに向かって仕事を始めた。
ダニーは、真夜中にどすんという衝撃で目を覚ました。何や、地震か?
飛び起きて、ベッドサイドライトをつけると、隣りにはマーティンが寝そべっていた。
「何や、お前!来るなら電話くらいせいよ」
「うーん、だまっててよ、眠いんだから!」
ダニーがマーティンに顔を近付けると、ぷんとアルコールの匂いがした。
「お前!飲んだんか!」
「うるさいな、だまっててってば。僕の勝手でしょ!それより寝かせてよ!」
マーティンはすぐにがーがー大きないびきをかいて寝入ってしまった。
ダニーは仕方なく、マーティンのYシャツとパンツを脱がせた。
こいつ、寝ながら勃起しとる!
トランクスの前がこんもり盛り上がり、いびきにあわせて上下していた。
ダニーはやれやれと思いながら、マーティンの傍らに身を横たえた。
明け方、ダニーは身体をまさぐられる感触で目を覚ました。
マーティンがダニーのパジャマをはだけ、トランクスを下ろしていた。
「マーティン、お前・・」
「だまってて!いい気持ちにさせてあげるから」
マーティンは乳首をいたぶっていた両手を下ろし、ダニーのペニスを握った。
丁寧に前後に扱くと、ダニーは甘いため息をついた。
「あっぁああ」
「僕の方が、エリックよりも上手でしょ、口でイかせてあげるから待ってて」
え、エリック!何でこいつ、俺がエリックと寝たこと知ってんねん!
ダニーはマーティンの言い方に身震いがしたが、次の瞬間、快感のうずに飲み込まれた。
マーティンがぬるぬる光っている亀頭を口に咥えて、カリの部分をぐるりと嘗め回したからだ。
裏の筋をとおって、玉を口の中に入れる。
「うぅぅっぅ、マーティン・・」
ダニーのペニスはぱんぱんに膨れ上がっていた。
「だっだめや、いってまう・・あぁあ!」
ダニーはそう叫ぶと身体を身震いさせてマーティンの熱い口の中に射精した。
マーティンはごくりと喉を鳴らしてダニーのザーメンを飲み込んだ。
ぐったりしたダニーの身体を裏返し、膝を立てさせる。
「うっ、お前・・」
「しー、まだ終わってないんだから」
マーティンは、ミントローションを手にとってダニーのアヌスに塗りこんだ。
「くっ、はっああぁ」
「ダニーが僕の事忘れないようにするんだ」
マーティンは、指を引き抜くと自分のいきり立ったペニスを突っ込んだ。
「ああぁー」
ダニーが呻くがマーティンは動きをやめない。
ダニーのアヌスから血が滲んできた。
マーティンは摩擦が多くなるように腰を大きくグラインドさせてさらに奥に進んだ。
「うあ、やめ・・ああ!」
マーティンは動きをさらに早めてリズムを取り、次の瞬間ダニーの中に思う様精を吐き出した。
ダニーは快感と痛みで、涙をにじませながら、背中でマーティンの重みを受け止めた。
ダニーとマーティンがエレベーターを待っていると、後ろにボスが並んだ。
二人ともボスと視線を合わさないようにするが、扉が閉まるなり話しかけられた。
「お前たち、久しぶりにディナーに行かないか?」
二人は思わず顔を見合わせた。
ディナーだけで終わるとはとても思えない。またおもちゃにされるに決まっている。
「どうだ?もちろん私の奢りだ」
「ボス、ほんまにそれだけなので?」
ダニーは疑うようにボスを見た。
「他に何がある?」
ボスはとぼけるとマーティンの肩をポンと叩いた。
「お前はパパと食事したいよな?熱帯魚のことも聞きたいんだろ?」
マーティンが渋々頷くと、ボスは決まりだと言って二人の肩を抱いた。
ボスは二人を連れてミッドタウンのタオに行った。
巨大な仏像が見下ろす妖しい店内はかなり混雑している。
「ボス、ここってすっげーイケてる」
「そうか?メシもうまいぞ」
ボスは得意そうににんまりして、二人に神戸牛のステーキを勧めた。
三人は仕事や熱帯魚の話をしながら食事していたが、ボスがふと手を止めた。
「おい、あれはドクター・バートンじゃないか?」
二人が振り向くと、スチュワートがヒラード理事長と食事をしていた。
人目も気にせずべったりくっついた老婦人が手を差し出すと、
スチュワートはほんの一瞬憎悪の表情を浮かべた後、意を決したように手の甲にキスをした。
「あっ!」
マーティンの持っていたフォークがお皿に落ちてガチャンと音を立てた。
あちゃー、これはやばいで、どうしよ・・・・
ダニーの頭の中はめまぐるしく動くが、あのキスシーンを見た後では
何を言っても嘘くさい気がして考えがまとまらない。
「何だありゃ、スキモノばあさんか?」
ボスはくくっと忍び笑いしながらワインを呷った。
「違いますよ、クリニックの理事長です。オレも捜査の時べたべたくっつかれて難儀でしたわ」
マーティンがじとっと見ているのを意識しながら、ダニーはいかにも嫌そうに説明した。
「現にあいつも嫌そうにしてるやないですか。なんぼなんでもあんなおばはん嫌やわ」
「私もあのばあさんより受付の女がいいな。マローン捜査官って呼ばれたときはうっかり勃起したぞ」
「うわっ、ボスきしょい!」
バカ笑いをする二人をよそに、マーティンは黙って食事を続けた。
「マーティン、心配することなんかないぞ。相手はお年寄りじゃないか」
「・・わかってるよ」
「ほんまに何もないって。誰がばあさんとなんか寝るねん!あほやなぁ」
ダニーはテーブルの下でマーティンの手をぎゅっと握った。
マーティンが蕎麦屋の時に気づいてなくてよかった・・
しっかしあのババア、ほんまスキモノやな。体舐めろって言われたらゲーやわ・・
ベッドでの二人を想像して、ダニーは思わず身震いした。
ダニーは目覚ましの音で目を覚ました。
シーツは二人のザーメンとダニーの血液の後が、ところどころでかばかばに乾いている。
ダニーは今朝方の事が夢でなかったのを目の当たりにした。
マーティンはまだすやすや眠っている。
「おい、マーティン、遅刻するで」
「うぅん、眠いよ」
「だめや、お前、二日酔いやろ。タイレノールやるからしゃきっとせいよ」
ダニーはアヌスの痛みをこらえながら、シャワーを浴びた。
固まった血液の玉が流れ出てくる。
あいつ、何であんな暴力的なセックスしたんやろ。
どうしてエリックとの事わかったんやろ。
様々な疑問が頭をよぎっては消えた。
しかし、朝から私生活でもめたくない。
ダニーはシャワーを出ると、マーティンを促し、バスルームに押し込んだ。
マーティンが置きっぱなしにしているスーツを用意する。
Yシャツとネクタイがなかったので、適当に見繕って、リビングテーブルの上に置いた。
マーティンが頭を抱えながら出てきた。
「頭が痛いよ」
「お前、飲んだんやろ。当たり前や。今日一日辛いぞ、覚悟せいよ」
「うん、わかった」
昨日のマーティンとは打って変わって、いつもの従順なマーティンだった。
もしかして二重人格なんやろか?
ダニーは訝った。
二人で地下鉄で出勤する。マーティンは具合が悪そうだ。
「お前、大丈夫?」
「昨日の事、よく覚えてないんだ。ごめんね。迷惑かけて」
マーティンは恐縮していた。
俺を傷つけたことは覚えてないんやな。昼休みに抜けてアランんとこいって、ナプキンを借りよう。
ダニーは決めた。
昼休みに電話をすると、ちょうどアランがランチを作っている最中だった。
タクシーでアッパーウェストサイドに上がり、ランチをご馳走になる。
モッツラレラチーズとハムのサンドウィッチとクラムチャウダーだ。
「なぁ、アラン、ナプキン貸してくれへん?」
「ほう、どうした?」アランのまゆ毛が上がった。
「切れ痔になっただけや、大きい問題やない」
「傷を見せなさい!」アランの心はかき乱された。
ダニーはしぶしぶパンツとトランクスを脱いで、ソファーに腰掛け両足を上に上げた。
「だいぶ裂けているな。ナプキンに軟膏を塗るから当ててなさい。一体誰がやったんだ?」
「うーん、その、マーティン。奴、夕べ酔っ払って家に来たんや。それで、こうなった」
アランの顔色が曇った。やはり、この子達を引き離すことは出来ないのか。
「そうだ、今晩、ディナーに来ないかい?」
アランは気を取り直して申し出た。
ダニーは一瞬躊躇したが、次の瞬間「嬉しい」と切りかえした。
「じゃあ、ご馳走を用意しよう」
「楽しみや」
定時になり、ダニーはマーティンから逃げるようにオフィスを去った。
昨日の暴力的なセックスが思い出されて仕方がない。
アランの家に合鍵で入る。
するとリビングのソファーで、アランが女性と話をしていた。
「ただいま」
「あぁ、ダニー、おかえり、ほら、マヤ、言っただろう。彼が僕の最愛の人だ」
マヤと呼ばれた女性は日系か中国系のようだ。長いストレートな黒髪が印象的だ。
「本当だったのね、でも私は諦めない」
マヤはダニーに鋭い視線をくれると、部屋から出て行った。
「彼女、誰なん?」
「僕の元フィアンセだ」
「え!」
ダニーは絶句した。
嫌やけど、しゃあないなぁ・・・
マーティンがへこんだ様子で食べているのを見て、ダニーは席を立った。
スチュワートとヒラード理事長のテーブルへ行くと、とびっきり愛想良く話しかける。
「こんばんは、ヒラード理事長。FBIのテイラーです。今夜もお美しいですね」
ぎょっとするスチュワートに構わず、、ダニーは老婦人の手にキスをした。
嬉しそうなヒラード理事長の手を気のある素振りで撫で回すと、老婦人の口元に卑猥な笑みが浮かんだ。
「まあ、テイラー捜査官。この子を助けてくださって本当にありがとう。あなたもご一緒にいかが?」
「いえ、あいにく今夜は上司と一緒ですので。これで失礼します」
ダニーは残念そうに言うと、自分のテーブルに戻った。
358 :
書き手2:2006/07/06(木) 23:58:32
「ダニー、ばあさん相手に何やってんだ?」
すっかり酔っ払ったボスはけたけた笑っている。
「あのねぇ、ああやって手を差し出されたらキスしやなしゃあないやん。トロイも悲惨やで」
気色悪いと言いながらワインを飲むダニー。
マーティンが振り返ってスチュワートを見ると、うんざりしながら話を聞いているのが見えた。
「ほらな、何もないって言うたやろ」
「ん、そうみたい。いくらスチューでも年が違いすぎるよね」
「そや、お前も行ってくれば?おばはん喜びよるで」
ダニーはからかっていたが、ごまかしが成功したことにほっとしていた。
ディナーの後、酔ったボスは二人にアパートまで送らせた。断わる二人を強引に連れ込む。
アパートはそこそこ片付いていて、前のような異臭はしない。
「水!」
「・・はいはい」
ダニーが水を渡すと、ボスは一気に飲み干してソファにひっくり返った。
窮屈そうにネクタイを外して投げ捨てると、服を脱ぎながら二人を呼び寄せる。
「おい、咥えろ!」
二人は顔を見合わせた。どっちがフェラチオすればいいのかわからない。
やがてマーティンがペニスに舌を這わせると、ボスは二人でやれと命じた。
両側から犬のように舐めあげると、ボスは満足そうに二人の肩に手をやった。
ボスのペニスは半分ぐらい硬くなり、不気味な先走りまで垂れている。
「ああっいいぞ、二人とも最高だ。上手いじゃないか」
ダニーもマーティンもお互いの目だけを見つめながらフェラチオを続けた。
感極まったボスはマーティンの頭を押さえつけ、何度か腰を振ると射精した。
イッた後、ボスはガーガーいびきを掻きながら眠ってしまった。
「マーティン、ベッドに寝かせたら帰ろう」
二人はボスの体を持ち上げるとベッドルームに運んだ。
ダニーは重たいと文句を言ったが、マーティンはボスに布団をかけてやっている。
わざと引き離してキスをするとボスの精液の味がした。
「うわっ!」
「あ、まだうがいしてないから・・・」
「いいんや、もう慣れた」
ダニーはもう一度トライした。マーティンの舌と触れるたびにドキンとする。
他の男の精液だと思うと、なぜか無性にめちゃめちゃにしてやりたくなった。
マーティンをボスの横に押し倒すと夢中でベルトに手を掛けた。バックルを外すのももどかしい。
「ちょっ、ダニー!何するんだよ!」
「お前がほしいんや」
ダニーはパンツとトランクスを同時に下ろすとペニスにがっついた。
歯が当たってマーティンが呻いたが、フェラチオしながらアナルを弄くる。
サイドテーブルの引き出しを開けると、チューブが入っていた。
潤滑油代わりにアナルに塗り込み、忙しなく挿入した。
腰を動かすうちに、なんだかペニスがむずむずしてきた。いつもと違う。
虫が這うようなむず痒さにたまらず何度もグラインドした。
マーティンは自分から腰を擦りつけて悶え狂っている。
「ぁぁんっ気持ちいい!もっと・・もっと奥まで・・」
「わかってる、オレもや」
ダニーはマーティンを押さえつけると激しく突き上げた。
「もうだめ、イクっ!」
マーティンはダニーの体にしがみついて射精すると、体をひくつかせながら荒い息を吐いた。
ダニーもこれ以上我慢できずに中に射精した。
シャワーの後で使ったチューブを見ると、時々ボスが使う媚薬入り潤滑油だった。
まさか、これで一人でやってんのとちゃうやろな?
ダニーは訝しそうに眠りこけているボスを眺めた。
「どうしたのさ?」
「何もない。さあ、帰ろう」
こんなに寝てるんや、パチくってもわからんやろ・・
ダニーはチューブをポケットにしまった。マーティンがそれと言いかけるが、唇に指を当てて黙らせる。
二人はアパートを出ると、タクシーを拾うため大通りまで歩いた。
「アラン、婚約してたんや・・」
ダニーはショックを隠しきれない。
「ずっと昔だよ。すまない、夕食の準備が出来なかった。外食しよう」
二人は、行きつけのトラットリア・ポモドーロに行き、
牛肉のカルパッチョとパスタ・ペスカトーレ、ピザ・マルゲリータで食事した。
いつも同様、主人がとっておきのイタリアワインをふるまってくれる。
「いつ頃婚約してたん?」
ダニーは気になって仕方がない。
「フィラデルフィアのERに勤め始めた頃だな。彼女は、インターンだった」
「どうして今頃尋ねてきたん?」
「彼女もここでプラクティスを始めたそうだ。仕事の相談だと思って会ったんだが、話がこじれてね」
「そうなん・・」
アランは苦笑した。
「心配してるのかい?彼女に紹介した言葉を覚えてるだろう?僕の最愛の人はダニー・テイラーだ」
ダニーは心中複雑だった。アランは生来バイセクシュアルだ。
自分同様、女にいつでも興味があるはずだ。
寝たくならないんかな。
「心配顔のハニーを早く家に連れて帰ろう」
アランはチェックを済ませると、ダニーの手をとってアパートまで歩いた。
「照れるで」
「いいじゃないか、公言したいくらいだ。このゴージャスな男が僕の最愛の人なんだって」
ダニーは照れくさそうに笑った。
アパートに戻り、二人でバブルバスに入る。
まだ傷がしみて、顔をしかめるダニー。
アランは、優しくダニーの身体をボディータオルで洗ってあげると、シャワーで泡を洗い流した。
「先にベッドに入っておいで」
「うん」
ダニーがベッドで待っていると、アランが軟膏を手にやってきた。
「傷を見せてごらん」
もう一度、足を上げてアヌスを晒すダニー。
「大分良くなってきたよ。明日には痛みも消えるだろう」
「良かった、オフィスでケツがむずむずして困ってたんや」
「じゃあ、今日はこうしてやろう」
アランはダニーのペニスを口に含んだ。
優しく喉奥に飲み込んでは亀頭まで戻る。
何度かその仕草をされただけで、ダニーはイきそうになった。
「ん、んうぁー、すごく感じるで!我慢できない!」
ダニーはアランの口の中で大爆発した。
アランは口と舌でダニーのペニスを綺麗にすると、満足げな顔をした。
ダニーがザーメンの匂いを嫌うので、うがいをしにバスルームに戻る。
ベッドに帰り、ダニーにディープキスを施した。
「アラン、俺、幸せ。大好きや」
「僕もだよ、ハニー。ずっと一緒にいたい」
二人はお互い顔を寄せ合いながら身体を抱き締めた。
ダニーは静かに目を閉じた。
マーティンは割れるような頭の痛みで目を覚ました。
ソファーにYシャツとスラックスの姿で眠りこけていたのだ。
周囲にはビールの空き瓶が何本もころがっていた。もう日が暮れかかっている。
「うぅーん、頭が痛い」
身体にまとわりつくアルコールと汗と体臭の混じった匂いに、思わずむっとする。
シャワーを浴びても一向に気分が晴れなかった。
こんなんじゃだめだ!またアル中に逆戻りじゃないか!
マーティンは、思わずエドの携帯に電話をかけた。
「やぁ、マーティン!久しぶりだよね!元気?」
エドの声がはずんでいる。
「元気じゃないんだ。ねぇ、エド、頼みがあるんだけど、これから会える?」
「もちろんだよ、どうすればいい?」
「これから家にいってもいい?」
「うん!待ってるね!」
ダニーには合わす顔がない。
エドは満面の笑顔で迎えてくれた。
「ごめんね、休日なのに」
「いいさ、どうせ仕事してたから。どうしたの?」
マーティンは言いにくそうに躊躇したが、意を決して吐露した。
「僕、飲み始めちゃった」
「え!」エドが顔色を変えた。
「どうして!?」
「色々あったんだよ。それでね、一人でいると飲んじゃいそうなんだ。今日、一緒にいてくれる?」
「もちろんさ!」
エドは迷惑そうな顔をするどころか、心から嬉しそうだった。
「それじゃ、夕飯の買い物に一緒に行こうよ」
二人はイーライズに出かけた。
マーティンがカートを押しながら、ぽいぽい買い物するエドの後を追いかけている。
「こんなに買うの?」
「君と夕飯なんて夢みたいだから、色々イメージが湧いちゃって。僕って単純だよね!」
恥ずかしそうにエドが笑う。
クラブソーダも山ほど買って、二人はコンドミニアムに戻った。
「それじゃ今日の献立は、じゃがいものヴィシソワーズ、トスサラダと子羊のロースト、どう?」
「すごい!エド、作れんの?」
「久しぶりだけどね。ソファーに腰掛けて、CDでも聞いてて。あ、クラブソーダだよね」
マーティンはきょろきょろしながら、CDラックからDEPECHE MODEを取り出した。
マガジンラックからGQを取り出して読みながら、ディナーが出来るのを待つ。
「ダイニングにどうぞ!」
マーティンは目を見張った。まるでレストランに来たみたいだ。
「エド、すごいよ!本当に会社社長なの?」
「照れるよ。味見てから言ってよ」
マーティンは、子羊のローストを5本も平らげて、お腹をさすった。
「マーティンって健啖家なんだね。嬉しいな」
エドはもてなすのを楽しんでいた。しかし、これからの時間が問題だ。
マーティンは急に落ち着きを失くしていた。
「どうしたの?」エドが尋ねる。
「今ぐらいからなんだよ。いつも飲むの」
「マーティン、それならさ、他の事しようよ」
エドはマーティンの手をとってベッドルームに誘った。
「エド、僕、汗くさいよ」
「マーティンの汗の匂い、好きだよ」
どちらからともなくキスの応酬が始まる。
服を脱がせあうのももどかしく、ベッドに倒れこむ。
エドが半立ちのマーティンのペニスを咥えた。
柔らかく噛んで刺激を加えると、ペニスが急激に力を増してきた。
「あぁぁん」マーティンの甘い吐息が部屋にこだまする。
エドはマーティンの弱い箇所を見つけては、舌と唇で刺激を与えた。
「うぅん、もうイきそうだよ!」
「今日は僕の中に来てよ」
「うん」二人は体位を入れ替え、エドが四つんばいになった。
「これ使って」
ベッドサイドの引き出しから、グアバローションを出す。
マーティンはローションを手に垂らすと、エドのアヌスに塗りこんだ。
「あぁ、素敵だ」エドがため息をついた。
マーティンはペニスにも十分に塗ると、静かに腰を進めた。
少しの引っかかりの後、すんなり挿入できた。
「うわ、ひくひくしてる」
「マーティン、大きくてすごく固い。もっと突いて!」
マーティンはエドの腰を抱えてさらに身体を進めた。
「もっと!もっと!」
マーティンは我慢しきれなくなり、スピードを速めて腰をグラインドさせた。
エドも自分で腰を動かしてリズムを取っている。
「イく!」「僕も!」
二人はほぼ同時に射精した。荒い息を整える二人。
「これでよく眠れそうだね」
エドは優しくマーティンの乱れた髪に触ると、マーティンの身体を横たえた。
「ありがと、エド。ごめんね。君を利用してるみたいだ」
「気にしないで。お互い様だから。僕だっていつどうなるか分からないもの」
二人は、見つめあいながら微笑んだ。
あぁ、エドといるとどうしてこんなに落ち着くんだろう。
「じゃあ、シャワー浴びよう!」
二人は手をつないでバスルームに消えた。
ダニーが仕事の帰りにクリニックに寄ると、ジェニファーがカリカリしていた。
「なぁ、どうしたん?マジギレやん」
ジェニファーは診察室を指差すと、心底嫌そうにマーキンソンとささやいた。
「トロイは?」
「風邪だって。明日は来ると思うけど」
「そうか。あんまり怒ったらべっぴんさんが台無しやで」
ダニーはジェニファーのほっぺにさっとキスをした。怒られるかと思ったが、吹き出したのでほっとする。
また来るわと言い残し、クリニックを後にした。
風邪ってほんまやろか?昨日の今日なので怪しく思える。
地下鉄に乗ったものの気になり、23丁目で降りてアパートへ向かった。
インターフォンを鳴らしてもまったく応答がない。
携帯に電話すると、機嫌の悪そうなスチュワートが出た。
「あ、オレや。お前のアパートの下にいてるんやけど」
「・・入れよ」
エントランスのロックが開錠され、ダニーはアパートの中に入った。
ドアを開けたスチュワートは腫れた目をしていた。
「お前、風邪とちゃうやん」
「ジェニファーに聞いたのかよ。ったく、おしゃべりな女だ」
「あほ、お前がいいひんから困ってたで」
ダニーは手を洗うと隣に座った。
「めっちゃいんけつな顔してるなぁ。お前でも泣き明かすことってあるんや」
「泣いてなんかない。オレが泣くもんか!」
強がるスチュワートは頑なに否定したが、泣いていたのは明らかだ。
「なぁ、マーティンは気づいたか?その・・オレとババアのこと・・」
「いいや、お前オレに感謝せいよ。オレが捨て身でおばはんの手にキスしたおかげやねんで」
「・・そうだな。すまない、テイラー。蕎麦屋の時のことも感謝してるんだ」
「別にいいんや。あいつのためやから」
ダニーは軽く肩をポンとたたいた。
「晩メシ、何か食いに行く?」
「いいや、こんな顔じゃ恥ずかしいだろ」
「お前なぁ、とことん自意識過剰やな。もうおっさんやのに」
ダニーはからかったものの、気持ちは痛いほどわかった。
「トロイ、オレに車貸してくれる?」
「いいけど、いつだ?」
「今すぐ」
「え?」
「早よ貸せ」
スチュワートからキーをひったくるとダニーはジャケットを羽織った。
「ちょっと買物に行ってくるから、腹空かして待っとけ!」
ダニーはあっけに取られたスチュワートに無理やりキスすると部屋を出た。
チェルシーマーケットでペスカトーレの材料を選びかけ、調理器具も満足にないことを思い出した。
ダニーは散々迷ったものの適当に食材を買って帰った。
部屋に戻ると、スチュワートはデッキチェアに寝転んで空を見上げていた。
ダニーが声を掛けると憂鬱そうに体を起こす。
「おい、BBQするで。火、頼むわ」
「二人で?」
「そうや。マーティンも呼びたいけど、そんな訳ありの顔見られるの嫌やろ?」
「ああ」
ダニーはさっさとキッチンに行くと、手早く下ごしらえを始めた。
二人でするBBQはいつもと違ってしんみりしていた。
「・・マーティンに本当のことを話すべきかな?」
「やめとけ。なんぼばあさんでも女は女やねんから」
ダニーはマーティンがとことん女嫌いなのを知っている。話せばどうなるかわからない。
「そのうちババアも死ぬやろ。ババアも今日のBBQも黙っといたらいいんや。この件は終わり!」
言い切ったダニーは残っていた肉と野菜を全部グリルにのせた。
ダニーがスチュワートと寝転んでいると携帯が鳴った。
着信表示を見るとマーティンだ。ダニーは断わってから電話に出た。
「あのさ、W杯の決勝戦のことだけど僕と一緒に見てくれる?」
「別にええけど何で?」
「だってさ、ダニーをフランス人に取られたら嫌じゃない」
「また焼きもちか、あほらしい。あいつはクォーターやっちゅうねん」
「そんなことはどうだっていいんだよ。僕が先に約束したんだからね!」
「わかったわかった、約束な」
ダニーは電話を切るとやれやれと携帯をしまった。
「よかった、オレのことはバレてないみたいだ」
「だから大丈夫やって言うてるやん。心配ないって」
ダニーはスチュワートの手を掴むと強く噛んだ。
「痛ってー!」
「いつまでも気にすんな。ほら、寝るで」
「わかったよ。それにしても思いっきり噛むことないだろ」
「お前がぐずぐず気にしてるからや。ヘタレが!」
「何だよ、ヘタレって!」
「うるさい!もう寝るんや」
ダニーは背中を向けると目を閉じた。スチュワートが背中に何かを書いているようでくすぐったい。
ん?変態・・バカ・・・ダニーは思わず振り向いた。
「お前、オレの背中に変態バカって書いたやろ!」
「さぁ?オレは知らないな」
スチュワートはとぼけると後ろを向いてしまった。
ダニーはベッドから出るとブリーフケースを取りに行った。
ボスの家からパチくった潤滑油を手にベッドに戻る。
にやにやしながらトランクスの隙間から手を入れ、アナルにたっぷりと塗りつけた。
「っ!痒い!なっ何だよ!んっぁぁ!」
「あれ、どうしたん?変な声なんか出して発情したんか?」
言いながらダニーはアナルに指を差し入れた。少しだけ触ってすぐに指を抜く。
「ぁぅっ!シ、シュウ酸か?あぁっ!」
「知らんがな、そんなこと。もっと触ったるわ」
トランクスを脱がせて指を動かすと、スチュワートは身を捩じらせて悶えた。
そそり立ったペニスの先にも塗ると、ダニーはにやにやしながらいたぶり続ける。
スチュワートは全身をガクガクさせながら快楽に溺れている。
「テ、テイラー・・な、何とかしてくれ・・んんっ!」
「へぇー、初めてなんや、意外やわ。オレのが欲しかったら舐めて」
ダニーは勃起したペニスをフェラチオさせた。
必死にぎこちなく舌を這わせるのを眺めて優越感に浸る。
ダニーは口からペニスを抜くと正常位で一気に挿入した。
がっしりした肩を掴んで腰を打ちつけながら、ダニーはキスをした。
喘ぎ声をかき消すように口を塞ぐ。
何度も突き上げられ、スチュワートは大きく仰け反ると射精した。
イッた直後のペニスを扱きながら、ダニーはさらに動き続ける。
「やめろっ!くすぐったい!ひっ・ぅぁぁ・!」
「あぁっ!すごい締まりや・・イクで!」
蠢くアナルを存分に楽しんだ後、射精して上に倒れ込んだ。
「・・バカ」
スチュワートに頭を軽く叩かれ、ダニーは照れくさそうに胸に顔をうずめた。
エドのお陰で、週末の間マーティンはクリーンでいられそうだ。
でも自分のアパートに戻ったらどうなるか分からない。
マーティンはそれを思うと、不安でたまらなかった。
エドは、決まった時間におろおろし始めるマーティンの気持ちを察していた。
日曜日の晩、パテ・ド・カンパーニュとアンディーブサラダにサーモングリルを食べながら、
エドはおずおずと尋ねた。
「ねぇ、マーティン、提案なんだけど、君が自信を回復するまでの間、ここに住まない?」
「え?本気?」
「うん、ベッドルーム、もう一つあるから、プライバシーは守られるし、リビング、好きなように使っていいよ」
「ありがとう、エド。その方が、僕、その、大丈夫なのかもしれない」
「じゃあ、決まりだ!ディナーの後、洋服を取りに行こう」
エドの車はディープブルーのメルセデスCクラスのスポーツクーペだった。
ドアマンのジョンにエドを紹介する。
「初めまして、シュローダー様」
アパートからとりあえずのスーツやカジュアルウェアをキャリーバッグに詰めて、マーティンは出発した。
僕の新しい生活。ダニーと果たせなかった同棲。マーティンは一瞬遠い目をした。
「ねぇ、聞いてもいい?マーティンの仕事って何?」
「僕ね、実はFBI捜査官なんだ」
エドは驚いた顔をした。
「FBIってもっと強面でおっかない人だと思ってたよ」
「僕、童顔だから。後でID見せるね。仕事が不規則だし、帰れない日もあるかも知れない。
その時は電話する」
「僕も残業が多いから、お互い週日は干渉しないようにしようよ」
「OK」
二人の生活が始まった。ダニーは、毎日落ち着いた様子で通勤してくるマーティンに安心し始めていた。
クリーンに戻ったらしい事は自分の経験上からうかがい知れた。
しかし、エドのサポートがある事など想像の範疇外だった。
「お前、調子良さそうやな〜」
ダニーがランチに誘って、カフェでマーティンと話をしていた。
「うん、ごめんね、こないだは。僕、どうにかしてた」
「もう大丈夫なん?」
「うん、どうにか頑張れてる」
「そりゃ、良かったな。お前偉いで」
その時、マーティンの携帯が鳴った。
「はい、マーティン、あ、エド!うん、今日は定時に終わる。じゃあね」
ダニーは顔をしかめた。
「お前、エドとやっぱり付き合うてるんやな」
「そんなんじゃないよ。僕が飲まないように監視してもらってるだけ」
ダニーにはとても信じられなかった。
「あんなモヤシ野郎のどこがええねん!」
「だって、僕の面倒見てくれるもん。ダニーと違うんだよ」
ダニーの胸に今の言葉が刺さった。
俺かてお前を気にかけてるのに、何で分かってくれへんのや!
喉元まで言葉が出かかった。
ダニーは「ニックに飽きたら、次はエドか。それじゃ、エドと幸せにな」と言うと、
10ドル札を置いて、席を立った。
そんなつもりなかったのに。ダニー、怒っちゃったよ。
取り残されたマーティンは途方に暮れた。
捜査が思うように進まないのとマーティンとの事があり、
むしゃくしゃしたダニーの足は自然とブルー・バーに向いていた。
エリックが嬉しそうに会釈する。
そや!こいつ!なんでマーティンに話したんや!
「エリック、モヒート頼むわ。あとお前に話がある」
「はい、何でしょう?」
「仕事の後、会えへんか?」
「早番ですからあと1時間で上がりです」
「じゃ、待ってるわ」
アンティチョークと生ハムのカナッペが出てきた。
1時間後、二人はモンキー・バーに場所を移して飲んでいた。
「お前、マーティン知ってるやろ」
「ダニーの友達のFBIさんだね」
「何でそれ知ってる?」
「彼、酔いつぶれてさ、俺がお持ち帰りしたんだ。後はご想像の通り」
ははっとエリックは笑った。
「なんで俺たちの事話した?」
「こんなひ弱なWASPがダニーとお似合いとは思えなかったから。嫉妬かな。
すごく傷ついた顔してたね」
エリックはしゃーしゃーと言った。
「ここで一発殴りたいとこやけど、我慢するわ」
「ねえ、彼ってダニーの何なの?」
ダニーは躊躇した。「何って、その、親友や」
「それだけ?だって寝てるんでしょ?」
「そんなん関係ない。とにかくもうあいつには構わんでくれ。
あいつアル中治療中やから、もうブルー・バーに来る事ないやろけどな」
「ふぅん、そうなんだ。ちょっと残念。ねぇ、今日、これからどうする?」
エリックの濡れた瞳がダニーを誘っていた。
「そんな顔しても無駄や。話はもう終わったから帰るわ、お前、ここ精算しとき。一発殴られるよりええやろ」
ダニーはエリックを置いて席を立った。
ロビーを歩いていると、アランの姿が見えた。
声をかけようとして驚いて後ろに引いた。
腕をからめている女性がいる。マヤだった。
ダニーは思わずアランに駆け寄った。
「アラン!何してるんや!」
アランは驚いて声もない。代わりにマヤが答えた。
「あら、ダニー、奇遇ね。私、アパートが決まるまでここに泊まっているの」
そんな!アラン、この女と寝たんか!
ダニーは頭にかっと血が上るのを感じた。
まずい!このままやと気持ち押えきれへん!
ダニーは「失礼」と言ってきびすを返した。
「ダニー、待ってくれ!」
アランがダニーを追いかけ、タクシー乗り場で追いついた。
「お前が何を考えているか想像つくが誤解だ!」
「聞きたくない!」
「一緒に帰ろう」
「嫌や!」
二人はもみ合うようにタクシーに乗り込む。
「ブルックリン頼む」
「なぁ、ダニー、聞いてくれ」
「うるさい!後で聞くわ」
二人はだまったままブルックリンブリッジを渡った。
ダニーのアパートに着き、部屋に入るなりアランはダニーを抱き締めた。
「離せ!」
「嫌だ!誤解されたまま帰りたくない。信じてくれ、マヤとは何もない。食事しただけだ。
僕の心の中はお前だけなんだよ!」
ダニーはアランの腕の中でわなわな震えていた。
たかが浮気なのに、こんなに心を揺り動かされるとは思ってもみなかった。
「ほんま?俺、もう死にそうや。息が苦しい」
ダニーは肩の力を降ろしてアランにもたれかかった。
「本当だ、お前をだますなんて出来ない。愛してる」
アランはダニーの顔を持ち上げ、唇に優しく触れた。
ダニーは唇を開き、情熱的に舌をからめた。
「フランス人と一緒に見なくてよかったね。発狂してるよ、きっと」
「まさか。ジダンは残念やったけど、発狂はないやろ」
そうは言ったもののスタニックのことが気にかかった。
「ねー、ダニィ」
マーティンはダニーの体に腕を回すと後ろからぎゅっと抱きついた。
「おい、暑いから離れろや」
「嫌だよ、ずっとこうしていたい。ピルロだってくっついてたじゃん」
「そんなこと知るか!」
マーティンは気にせずさらにぴとっとくっついた。
ダニーは暑くてたまらないが、嬉しそうなのを見るとそれ以上何も言えない。
そのまま背負うとベッドルームまで連れていった。
背中の上でマーティンは大喜びしてしがみついている。
「お前なぁ、重いんやから暴れるな」
「ごめん、嬉しくてさ、つい・・」
ダニーはどさっとベッドに降ろすと首をゴキゴキ回した。肩がばきっと鳴る。
マーティンはけたけた笑いながらダニーの手を引っ張った。
またぴとっと抱きついてきたが、ダニーはキスをするとそのまま目を閉じた。
ダニーがランチを食べにモンキーバーへ行くと、スタニックとは違うバーテンダーがいた。
あいつ、もしかしてフランスが負けたからずる休みやろか?
ダニーは何も食べずにバーを出るとスタニックに電話してみる。
「オレ、ダニーやけど」
「あ、うん・・・」
「お前、休んでるけど病気か?」
「あ、いや、違うよ」
もごもごしゃべるので、何を言っているのか聞き取りにくい。
ダニーは今から行くと言って電話を切り、スタニックのアパートへ歩き出した。
スタニックはドアを開けて中に招き入れたものの、顔を伏せるようにしてダニーを見ない。
「何や、オレのこと嫌いになったんか?」
「違うよ、誤解しないで」
顔を上げた拍子に、赤く切れた口の端が目に入った。スタニックはさっと顔を背ける。
「誰にやられたんや?言うてみ」
ダニーは痛々しく切れて腫れた傷口に手をやった。
「・・同僚に」
「いつも殴られてるんか?」
「いや、殴られたのは初めてだけど・・オレはフランス系だから気に入らないって」
「そんなんNYやったらめずらしないやん。気にすんな」
「もちろん気にしてないよ」
「よっしゃ、ええ心掛けや」
ダニーはスタニックの肩を抱いた。
「ほな、オレ行くわ。終わったらまた来るから」
「うん・・・ありがとう」
ダニーが抱きしめるとスタニックが痛いっ!と声を上げた。
「ごめんごめん。ちょっと見せてみ」
シャツをめくると殴られた箇所が紫色に腫れて熱を帯びている。
「これはひどいなぁ。病院行くか?」
「いいよ、平気だから仕事に戻って」
ダニーはいつでも電話するように言うとアパートを出た。
帰りにホットドッグを買って、時計と睨めっこしながら食べていると
ランチから戻ってきたマーティンが何気なく隣に座った。
「ねぇ、カフェで待ってたんだよ。ランチ食べなかったの?」
「ああ。スタニックがケガしててな、ちょっと様子を見に行ってきたんや」
「ふうん。やっぱりさ、あいつはフーリガンなんじゃない?」
「ちゃうやろ。けど、後で寄るって言うてあるから今日は一緒に帰られへん」
「ん、わかった。お大事にって言っといて」
お大事にか、ごめんな、マーティン・・・ダニーは適当に頷きながら心の中でつぶやいた。
ダニーは、アランの腕の中で目を覚ました。
起こさないようにこっそりベッドから出て、シャワーを浴びる。
コーヒーを煎れて、手早くフレンチトーストを焼いた。
アランが目を覚ましてリビングにやってきた。
くしゃくしゃの髪の毛が妙に新鮮で、思わず抱き締めてキスをしたくなる。
「シャワーどうぞ。朝食出来てるで」
「ありがとう、ハニー」
ダイニングで朝食を食べる。少しぎこちない。
「ダニー、繰り返すが、僕の気持ちは変わらない。お前のためなら自分の血を流してもいい」
「そんな、アラン、大げさ過ぎるで」
「本当さ。こんな気持ちになったのは生まれて初めてだ」
ダニーは心がチクっと痛んだ。自分の心の中にはまだマーティンがいる。
いつかは選択を迫られるのだろう。
ダニーは話題を変えた。
「今日は忙しいん?」
「あぁ、またTVを見た新患が増えてきてね。今週も予約が一杯だ」
「アランって自分の悩みはどこで解消してるん?」
「お前と一緒にいる時かな」アランは照れくさそうに笑った。
ダニーも内心嬉しかったが、言葉には出さなかった。
「そうだ、近々、ホームパーティーやるから来てくれよ」
「うん、分かった。皆にも会いたいしな」
ダニーは、アランと一緒にマンハッタン行きの電車に乗った。
ダニーは途中で下車し、支局に出勤した。
マーティンがすでに席について、ピタサンドをがっついている。
「ボン、おはよ、えらい食欲やな」
「うん、やたらとお腹すくんだよ」
ダニーは、マーティンが離脱症状を終えたのを知った。
「なぁ、夕飯一緒に食わへんか?」
「ん?いいよ、今日?」
「そやな、捜査次第で」
「分かった」
19歳の女子大生の失踪事件だったが、身代金要求が来て、誘拐事件に変わった。
ヴィヴィアンが両親の家に張り込む。
マーティンは技術担当と送られてきたデジタル写真の解析を行っていた。
ダニーは写真に写りこんでいた外の景色から、ソーホーだと確信して、サムと捜査に出かけた。
部屋を特定し、踏み込む。無事、女子大生を確保し、犯人を逮捕した。
420 :
fusianasan:2006/07/12(水) 00:34:05
気分がめちゃええな〜!
ダニーはマーティンを誘って、回転寿司に出かけた。
マーティンが次々に皿を重ねるのに驚く。
「お前、ほんまにクリーンになったんやな」
「どうにかね」
「この前は失言した。ごめんな。エドとの事、俺が干渉する話やないのに」
「いいんだよ」
マーティンは少し傷ついた顔をした。
いつもダニーは寛大なふりをして、僕の悩みから逃げていくんだ。
「これからどないする?ずっと飲まないで通すか、ソーシャルドリンカーになるか」
「出来たら少し飲みたいけど、今はまだ自信がないや」
「急がんでもええ、お前の出来る道選べばええんや」
「分かったよ。ダニーは7年間飲まなかったんだよね」
「あぁ、俺も怖くて、決心つかへんかった」
「よく考えてみるよ」
マーティンは、家に帰ってからエドと相談しようと決めた。
「ご馳走さま、今日は僕のおごりで」
二人は寿司屋の前で別れた。
ダニーはマーティンが妙に穏やかなのが気になって仕方がなかった。
前はもっとつっかかってきたのに。あのモヤシ野郎の影響か?
訝りながら、地下鉄の駅に降りていった。
ダニーは勤務が終わると、買物をしてからスタニックのアパートに行った。
「ダニー、本当に来てくれたんだ」
「おう、腹減ったやろ。メシ作るからできるまで横になっとき」
ジャケットとシャツをソファに無造作に置くと、紙袋を持ってキッチンに向かう。
きちんと手入れされた清潔なキッチンは、ダニーの意欲をかきたてた。
豚肉を縛ってオーブンに入れ、その間にラタトゥイユの材料を切る。
視線を感じて振り向くと、いつのまにかスタニックが立っていた。
「今日はローストポークとラタトゥイユや。嫌いか?」
「ううん、ダニーって料理もするんだね。見てていい?」
「ええよ。お前んち、シノワとかあってビビッたわ」
「あー、あれか。おばあちゃんがさ、どうしても持っていけってうるさくて・・」
スタニックは恥ずかしそうに説明すると、カウンターの横に座ってダニーの手元を見つめた。
完成した料理をリビングへ運び、二人は食べ始めた。
スタニックは傷に沁みないように、ゆっくりと食べている。
「いけるか?」
「うん、おいしい」
静かに食事をしながら、ダニーは殴った相手のことを聞き出そうと試みたが、
結局イタリア系のフロア係としかわからなかった。
シャワーの後、隠そうとする体を無理やり見ると、肩や胸、背中の辺りが変色していた。
ダニーは湿布を貼ってやりながらもう一度尋ねるが、スタニックは何も答えない。
「わかったわかった、お前もたいがい強情やな」
もどかしく思いながら湿布を貼り終え、捲れないようにそっとパジャマを着せて立ち上がる。
「帰るの?」
「いいや、洗濯してくる」
「いいよ、そんなの悪いから」
「あほ、入れたら乾いて出てくるんやから、いらん気遣うな」
ダニーは床に落ちていたバスタオルを手にベッドルームを出た。
洗濯物を放り込んでベッドルームに戻ると、スタニックが体を起こしてじっと待っていた。
「そんな顔すんな。今日は泊まるから」
ダニーは目覚まし時計を手に取ると、少し早めに設定した。
スタニックが設定時間をチェックしているのに気づいて、ダニーは両手で頬を包み込む。
「お前、朝ごはんなんか作らんでええからな。そんなん作ってもオレ食べへんで」
「・・わかった」
少し残念そうなスタニックにやさしくキスして灯りを消した。
翌日、ダニーは開店準備をしているモンキーバーへ行った。
ひけらかすようにバッジを首から提げて店内に入ると、フロアマネージャーがあたふたしながらやってきた。
「捜査官、うちの店に何か?」
他の従業員も固唾を呑むようにこっちを見ている。その中にイタリア系も何人かいた。
「いや、ちゃうねん。連れに会いに来ただけや。スタニック呼んでくれるか」
「あの、あいにくジェラードは休んでおりますが・・」
「そうか、それやったらいいんや。あいつ、オレの親友やからよろしゅう頼みますわ」
ダニーは店内を値踏みするように見回してから外に出た。
今日は、久しぶりに「ニューヨーク・ロンサム・ハンサム・クラブ」のパーティーだ。
ギル、ケン、ビル、ジュリアン、トム、そして驚いた事にマーティンとエドの姿もあった。
「なんで、エドがおるんや?アラン、知り合い?」
「たまたま彼の会社の株を買ったんでね。直接CEOに会う機会は少ないから、誘ったらマーティンが着いて来た」
アランはすらすらと答えた。心の中はマーティンとエドの仲を自分の目で確認したかったからだ。
ピエールからシェフに出張してもらい、ベランダに大型グリルに設置した、大規模なBBQパーティーだ。
子供用のビニールプールに氷をザクザク入れて、ビールやシャンパンを冷やしている。
ギルとケンは相変わらずいちゃいちゃしていたが、時々、ケンが顔を上げては、
アランとダニーにウィンクするので、二人は苦笑した。
「あんたたち、まだ続いてるなんて快挙じゃない!ダニー、また男前になったじゃない?
まだモデルやる気ないの?」ビルが声をかける。
「俺、もう33やで、無理や」
「え、33歳なの?結構、おじんなのね」
ビルはケンに声をかけ始めた。ケンは笑って恐縮している。
囮捜査中のインターポールの捜査官に出来るはずがない。
ダニーはまた苦笑した。
トムが笑いながら近くに寄ってきた。
「おい、二人とも喧嘩とか不穏な関係になってないのか?」
アランが「残念ながら、お前が思ってるような事はないよ。すこぶる快調だ」と宣言して、ダニーの頬にキスをした。
「そうか、何かあったら言ってくれよ。俺、まだ諦めてないからな」
トムは少し悔しそうな顔でウィンクすると、ジュリアンのそばへ戻って行った。
エドとマーティンは部屋のすみっこでシュラスコを食べながら、クラブソーダで乾杯している。
似たもの同志だな、アランが声をかけた。
「エド・シュローダーだね。今日はようこそ」
「あ、ストックレポートでお名前拝見しました。今日はお招きありがとうございます」
「こんな狭い我が家だが、くつろいでくれ」
「狭いなんて、そんな」
エドは謙虚な物言いをくずさなかった。
ジュリアンがダニーにピアノのリクエストを始めた。
Daniel Powter やColdplay、Radioheadを続々に弾きまくる。
「君の彼って多才なんだね」エドが囁く。
「うん、モテ過ぎなのが問題なんだ」
「ふうん。アランとはどんな関係?」
「アランはダニーの命の恩人。彼、元ERのドクターなんだよ。今は僕より大切な人なんだと思う」
「それが君のアルコール摂取の原因か。恋愛って切ないね。こんな僕で良かったらいつでも君のそばにいるよ、マーティン」
エドはマーティンの手をぎゅっと握った。マーティンも握り返した。
「あら、ここにもお熱いカップルがいるわ。あたし、ビル・トレバー、よろしくね」
「え、あのデザイナーのビル・トレバー?」エドが驚いた。
「そう、それがあ・た・し。あなた可愛いから私のビジネス・ライン着て欲しいわ」
ビルはブティックのカードをエドに渡した。
パーティーの夜は更けていった。
真夜中が過ぎ、ゲストは三々五々帰っていく。
エドがマーティンの手を握ってドアから出て行くのを、ダニーはじっと見送った。
436 :
fusianasan:2006/07/13(木) 03:44:34
書き手1さん、なんだかどんどんマーティンとダニーが離れていくようで
心配です。でもダニーもアランと幸せそうだし、マーティンもエドと付き合えて
ラッキーだった気もします。これからもストーリー楽しみにしています。
書き手2さん、スタニックが段々メジャーキャラクターになってますね。
彼、とても可愛いので愛らしいです。ダニーが面倒みたくなるのも分かります。
マーティンが彼を気に入ってない様子に萌えました。
ダニーはリビングの後片付けを手伝いながら物思いに沈んでいた。
本当は、エドとマーティンを追いかけて、マーティンは俺のんやとエドに言ってやりたかった。
「ハニー、疲れたのかい?」アランが気遣って尋ねる。
「ああん、ちょっと飲み過ぎたみたいや」
ダニーは適当に誤魔化した。心の中を読まれそうで怖い。
「片付けはメイドに任せて、今日はもう寝よう」
「うーん、そやな」
二人はバブルバスに入った。
ダニーがリラックス出来るように、ラベンダーのエッセンシャルオイルを垂らすアラン。
「俺、アランんとこの風呂大好きや。疲れが取れる」
「そうか?身体を洗ってあげるから、もっとこっちにおいで」
ダニーはアランの足の間に身体を進めた。
アランの勃起したペニスがダニーの谷間に触る。
後ろからボディータオルで乳首を優しく愛撫する。
「うぅん、気持ちよすぎや」ダニーは苦笑した。
「いけないのかい?」
「そんな事言ってないで」
手が下の方に降りてきて、ダニーのペニスに届く。
ペニスの先からは先走りの液が出ていた。
「おや、なんだかぬるぬるしているぞ」
「恥ずかしいやん」
アランはダニーのペニスを握ると優しく前後動させた。
みるみる大きく固くなっていく。
「そろそろベッドに行こうか」
二人はバスタオルを身体に巻くと、ベッドルームに移動した。
69の体勢をとって、お互いのペニスを口に咥える。
口から余りそうな大きさのペニスに、ダニーは思わずむせそうになった。
もっと上手くなってアランを喜ばせたい。
ゲイでないダニーはフェラチオが得意ではない。それはアランも同じだ。
二人とも見よう見まねでやっている。
丁寧に舐め上げ、ペニスがこれ以上大きくならないのを見て取ると、
ダニーは自分から四つんばいになった。
「アラン、俺の中に突っ込んで」
「あぁ、行くよ」
アランはミントローションをダニーのアヌスに塗りこむと、一気に挿入した。
みしみしとした違和感の後、ダニーのアヌスの中はアランのペニスで満たされた。
「もっと深く突いて!」
「いいのかい?」
「うん、欲しいんや!」
アランはダニーの腰を両手でつかむと、さらに身体を進めた。
「ああぁ、感じるで、すごい大きさや」
「僕も締め付けでもうイキそうだ」
「アラン、もっと動いて!」
アランは腰をグラインドさせて摩擦を多くした。
ダニーはサルサを踊るようなリズムで、アランの腰の動きに合わせた。
「あぁ、出る!」
「ん、ん、あぁー!」
二人はほぼ同時に射精した。
アランはダニーの隣りにドサっと身体を横たえた。
「はぁ、お前の身体は最高だよ」
「身体だけ?」ダニーはいたずらっ子の目をする。
「存在全部だよ」アランは照れ笑いを見せた。
「もう離れられないよ、ダニー」
「俺も、大好きや、アラン」
ダニーの心にちらっとマーティンが浮かんだ。ダニーはゆっくり目を閉じた。
>>436 さん
感想ありがとうございます。
確かに流れ的にはダニーとマーティン、お互いの相手に夢中かも?です。
でも気長にお待ちください。きっと新しい展開が・・・
マーティンは初めてエドと一緒にバスに入った。
BBQの匂いを取る口実でマーティンが誘ったのだ。
エドは恥ずかしそうにバスタオルを巻いて、バスルームにやってきた。
「何してんの?もうエドの裸見てるじゃない?」マーティンが爆笑する。
「それとこれとは違うよ。僕、マーティンみたいに鍛えた身体してないし」
エドはもじもじしている。
「早くおいでよ」やっとエドがバスタブに入ってきた。
しゃがむ瞬間、マーティンはエドのペニスを口に咥えた。
「あ、マーティン!」
「ご挨拶だよ」
喉の奥まで咥えてしごきたてると、急激に固くなってきた。
「エドのって大きいよね」
「マーティンほどじゃないよ」
二人はお互いの身体を洗いっこした後、バスタオルで身体を拭きあった。
エドがマーティンの唇を求める。マーティンはそれに答えて、濃厚なディープキスを返した。
「うわん、もうペニスが爆発しそう」エドが甘い吐息をもらした。
「早くベッドルームに行こう!」「うん!」
二人は子供のように駆け出した。
ベッドにダイブすると、お互いの身体を慈しむように、舌を這わせる。
マーティンが先に音を上げた。
「もう、エドが上手過ぎて我慢出来ないよ!」
「今日はマーティンが入れて」「うん」
エドは足を高く上げてアヌスを晒した。
ローションを指にとって、マーティンはエドの中を探索した。
指を二本いれると、エドは唸った。
「あぁ、こすれる。すごくいいよ、このままイキそうだ」
「待ってよ!」
マーティンは慌てて自分のペニスにローションを塗ると、ぐぐっとエドの中に入った。
ひくひく中が脈動している。
「すごい、エドの中って。別の生き物みたい」
「照れるよ、じゃこれはどうだ!」
「うわー!」マーティンは悲鳴を上げた。
「そんなに締められたら、もうイっちゃうよ!」
「来て、僕の奥にミルクを出して!」
「うん、あぁ、ん、ん、もうだめ、出る!」
マーティンは大爆発した。
マーティンの痙攣を感じると、エドもマーティンの腹めがけて力強く射精した。
マーティンはごろんと横にころがった。肩で荒い息をついている。
「エドの身体ってすごいや。こんなの僕、初めてだよ」
「ねぇ、マーティンっていつからゲイなの?」
「気がついたら。ずっと隠してきたんだ」
「僕も同じだよ」
「ねぇ、彼とかいたんでしょ?」
「うん、長く交際していた人がいたんだけれど、HIVで亡くなったんだ。
あ、心配しないでね、僕はクリーンだから」
「そうなんだ・・・辛かったんだろうね」
マーティンは痛ましい顔をしてエドを見た。
「うん、すごく悲しかった。それ以来、ずっと一人だった。君が僕の人生に入ってくるまでは」
エドはそう言うと、マーティンの額にキスをした。
「二番目でもいいんだ。僕はマーティンと一緒にいたい」
「二番目なんてそんな、何言うんだよ」
エドはそれ以上言うなという顔でマーティンの唇に指をあてた。
ダニーが帰り支度をしていると、辺りを窺いながらマーティンがそばに来た。
「ねぇ、今日さ、サイゴン・グリルに行かない?」
「あ、ごめん。オレ、スタニックのとこに寄るから」
「えー、またなの?昨日だって帰ってこなかったじゃない」
マーティンはじとっとダニーを見上げる。
「ケガしてるんやから仕方ないやろ。お前とはいつも一緒にいてるやんか」
「嫌だ!」
「そうや、お前もトロイとどっか行って来い。あいつもサイゴン・グリル好きやし」
ダニーは肩をポンとたたくとマーティンを残して席を立った。
エレベーターを待っていると、バックパックを慌てて引っ掴んだマーティンが走ってきた。
「どうしたん?」
「別に。今日もフランス人ちに泊まったりとか?」
「そんなんわからん」
「ふうん」
エレベーターが下に着き、ダニーはじゃあなと素っ気なく言うとマーティンと別れた。
マーティンは黙ったままダニーの後を着いて来る。
「何やねん!」
「お見舞いに行くんだよ。僕が行っちゃいけないわけ?」
「あかんことはないけど・・・その、あんまり会いたくないと思うで」
「どうしてさ?」
マーティンはしつこい。ダニーは渋々嘘を混ぜた理由をかいつまんで答えた。
「殴り合いした顔なんか、あんまりよう知らんヤツに見られたないやろ」
「・・わかったよ。ねぇ、僕がケガしたらどうする?」
「そうやな、治るまで看病する」
マーティンはダニーの答えに満足したのか、嬉しそうにヘラヘラしている。
こいつ、めっちゃ単純や・・・ダニーは苦笑した。
「とにかく今日は帰り。な?」
マーティンはまだぶつぶつ言っていたが、強引に納得させてしばらく見送った。
ダニーは、デリで適当に夕食を買ってからスタニックのアパートに行った。
スタニックは今日もダニーが来たのに驚き、嬉しさのあまり抱きついて痛みに呻いている。
「大丈夫か?オレ今日はくたくたやねん。メシ作る気力ないからデリのメシやけど堪忍な」
「ううん、ダニーがいれぱごはんなんてどうでもいい」
「あほ、オレは腹ペコや」
ダニーはフライドチキンのカートンとコーンブレッドを渡すと、ネクタイを緩めた。
キッチンでセロリの筋を取っていると、スタニックが横に来た。
「オレな、セロリの筋取る作業が一番嫌いや」
「それさ、スティックにする時は仕方ないけど、斜め薄切りにすれば取らなくても済むよ」
「へー、ええこと聞いた。ほんまやな。お前、賢いやん」
筋取りをやめて斜め薄切りにすると、スタニックが後ろからそっと抱きついてきた。
「ダニー、愛してる・・・」
ダニーは背中に感じる真剣さに向き合えない。
「なぁ、お前の気持ちは嬉しいし、オレも好きや。けど、オレは一人やないから・・」
なだめるように抱きしめたものの、どうすればいいのかわからない。
「さ、食べよう」
とりあえずそう言うと、途方にくれるスタニックの背中を押した。
>>436 そうですね、いつのまにかスタニックの登場回数が増えてました。
ダニーは面倒見がいいので放っておけないというか・・。
マーティンは独占欲が強いのでスタニックを嫌ってます。
オフィスでは夏休みの話でもちきりだった。
捜査中の事件もあり不謹慎だが、家庭持ちのヴィヴィアンは早速ボスに掛け合っているようだ。
「なぁ、お前、夏休み取る?」
ダニーは書類を読んでいるマーティンに尋ねた。
「うーん、エドにウェスト・ハンプトンの別荘に誘われてるんだけどさ」
「さすが金持ちはちゃうなぁ、ハンプトンに別荘か。それでどうする?」
「ダニーはどうするの?」
マーティンはじとっとした目でダニーを見据えた。
「俺は、仕事やろな」
「そうなんだ・・」
マーティンはまた書類に目を落とした。その時マーティンの携帯が震えた。
「はい、フィッツジェラルド。あ、ニック、うん久しぶり。え、いいよ、今晩だね。行くよ、じゃあね」
ダニーはマーティンに指でちょいちょいという仕草をし、トイレに誘った。
「お前さ、エドと付き合い始めてるんやろ。ニックはどうすんねん」
「分からないよ。それに、エドとは友達なだけだし」
マーティンはウソをつき通す。
「ニック、めちゃ怒りよるで。また折檻されたらたまらんやろ」
「それはゴメンだよ!」
「うまく言い訳せいよ」
「分かった、ダニーありがとう」
マーティンは一応嬉しそうな顔をして、トイレから出て行った。
なんで俺があいつの恋愛指南せなあかんねん。
ダニーは顔を水でぱしゃぱしゃ洗い、トイレから出た。
事件は進展を見せず、皆、携帯をONにしたまま家に戻ることになった。
フェデラルプラザを出ると、ニックのメタリックブルーのフェラーリが停まっていた。
「よ!早く乗れよ!」
ニックはいつも同様せっかちだ。
「迎えに来てくれてありがと」
「お前が逃げないようにな」
ニックはえくぼを見せて笑った。相変わらず魅力的な横顔だ。
「ねぇ、ニックは僕のどこが好きなの?」
「何だよ、急に。食事しながら話そうぜ」
ニックは、グリニッジヴィレッジの「ヤムチャ」のヴァレットパーキングに車を停めた。
新しいタイプの点心が食べられる話題の店だ。相変わらずサングラス姿で店に入る。
店主が一番目立たない奥の席に案内してくれる。
マーティンはダニーと一緒では食べられない、鳥の足の煮物や、
豚の臓物の黒ミソ炒めなど次々のチャレンジし、ニックを驚かせた。
「お前、変わったな」
「そう?」
「めちゃくちゃ前向きじゃないか。少し紹興酒飲むか?」
マーティンは誘惑に負けた。少し位ならいいだろう。
「うん、少しだけ」
「そうこなくちゃ」
食事が終わり、ニックは聞きもせず自分のステューディオにマーティンを連れ帰った。
「会いたかったぜ」
「僕も・・」
紹興酒でふあふあした気持ちになり答えるマーティン。
「さぁ、ベッドに行こう」
「うん、そうだね」
マーティンはニックに服を剥ぎ取られ、全裸になった。
「お前の身体、大好きだよ」
マーティンはニックに腕をとられ、ベッドルームに上がった。
「ねぇ、今日は道具使わないでね」
「そんな事するかよ、まさかお前、浮気でもしてるのか?」
「してないよ!」
「今日は正攻法でお前を抱いてやる」
ニックはマーティンをはりつけ状態にすると、乳首からわき腹、ペニスに向かって舌を這わせた。
「あぁぁん」思わず声をもらすマーティン。
ペニスに手を添えて、上下動させると、すぐにマーティンは射精した。
「お前、早いな。それじゃ行くぜ」
ニックの赤光りするペニスにオイルが塗布される。
ずぶっと愛撫もなくニックはマーティンの中に挿入した。
「ニック、痛いよ!」
「久しぶりだからいいだろ」
ニックは腰をグラインドさせて摩擦する部分を増やし、そこら中を突いて回った。
「あぁぁん、すごく感じる、ニック早くきて!」
マーティンは意識的にアヌスを力強く締めた。
「おぅ、締め過ぎだ、俺、もう我慢できない!」
ニックはマーティンの中に思う存分射精した。
いつも通りすぐに寝てしまうニックだ。
マーティンは、シーツでザーメンをふき取ると、洋服を着た。
部屋を出て、エドの待つアッパーイーストサイドに戻っていった。
お互いに気まずいまま食事が終わり、
スタニックがシャワーを浴びている間にダニーは食器を片付けた。
困ったなぁ、あいつ、オレに本気や・・・・
ため息をつきながら冷蔵庫からジンとトニックウォーターを取り出し、適当にジントニックを作る。
いつも作るたびに味が少しずつ違っていて、今日のは一口啜って苦笑したが、
ジンが多めのジントニックは今の気持ちにぴったりだ。
TVを見ているとスタニックが出てきたので、飲みと言ってグラスを渡した。
「これは・・ジントニック?」
「一応な。ちょっとヘンになってもた」
ダニーは塞ぎ込んでいるスタニックに新しい湿布を貼ってやった。
「昨日よりマシになってるわ。よかったな」
スタニックは頷くとダニーの肩に頭をもたせかけた。
「オレ、お前のこと何も知らん。年いくつや?」
「24」
「24!若いなぁ、オレなんか33やで。もうおっさんや」
こいつはまだ戻れる、ゲイになんかさせられへん。せめてバイやろ!
ダニーは挑むようにスタニックの目を見つめた。薄茶色の瞳は怯えるように視線を逸らす。
誘惑に負けて痛々しい唇の傷をそっと舐めると、痛みにびくっとした。
「ごめん、痛かったやろ」
「ううん、平気」
ダニーは何か言おうとしたがそれ以上言葉にならず、ただ抱きしめた。
ダニーは黙ってTVを消すとスタニックをベッドに連れて行った。
そっと押し倒して体を重ねるとスタニックがうっと呻き、思わず正気に返る。
「ごめんごめん。今日はやめよう」
「・・今日も泊まってくれるの?」
「泊まってほしいか?」
「ダニーが嫌じゃないなら・・・」
スタニックはこんな時でも遠慮がちな言い方で押しつけがましくない。
ダニーは思わずくすっと笑うと頬をやさしく撫でた。
翌朝、ダニーがマーティンのアパートに帰ると、玄関でマーティンが眠っていた。
こいつ、こんなとこで寝るなよ・・・・呆れながら揺り動かす。
「おい、マーティン、マーティン」
「・・うん?あ、ダニィ!」
マーティンは目を擦るとダニーにしがみついた。
「あ、ダニィやない、こんなとこで寝るな。あほが」
「ここで待ってたら帰ってくると思って・・。だけど、いつのまにか寝ちゃったみたい」
マーティンはあどけない顔で照れ笑いを浮かべた。
シャワーを浴びているとマーティンが入ってきた。
すぐさまペニスを口に含むと熱心に舌を這わせ始める。
「んんっ!おいおい、朝から何すんねん!」
マーティンはそれには答えず咽喉の奥まで咥え込んだ。
舌先で目一杯カリや先っぽを攻め射精を促す。
「あぁ・・イキそうや・・出すで・・うっ!」
マーティンはダニーの出した精液を手のひらに吐き出すと、自分のペニスに塗りたくって扱き始めた。
驚くダニーの目を見つめながら、喘ぎ声を上げて扱き続ける。
「あぁっ!ダ、ダニィ・・僕を見て・はぁっはぁっ・・んっ!」
果てたマーティンは荒い息をしながらダニーに抱きついた。
「もうフランス人には会わないで。寂しいよ」
「マーティン・・・」
ダニーは心細そうな背中に手をやるしかなかった。
「ねぇ、アラン、夏休みって取るん?」
アランのリビングでごろごろしているダニーが尋ねた。
「今のところ予定はないが、お前はどうだ?」
医学雑誌を読んでいたアランが目を上げた。
「俺も仕事の予定。でもな、マーティンがエドのウェスト・ハンプトンの別荘に行くんやて」
「ダニーも行きたいかい?」
「俺、別荘なんて知らんもん、わからへんわ」
「僕らみたいなカップル用のコミュニティーがあるんだよ。コネでどうにか貸し別荘が取れると思う」
「へぇ〜」
「興味あるなら週末だけでも行ってみるかい?」
「うん、そやな、何事も経験や。予約してくれる?」
「分かった、明日手配しよう」
アランは早速ハンプトンのゲイ・コミュニティーにある別荘を借りた。
ちょうど捜査が一息つき、皆が長い週末を取れることになった。
マーティンはエドと別荘に行くのを決めたようだ。
ダニーは自分もハンプトンに行くことを黙っていた。
週末、アランのジャガーに荷物を積んでハンプトンに出発した。
2時間ほどの短いドライブだが旅行気分だ。
ダニーはお気に入りのレッチリのCDを大音量でかけながら、大声で歌っていた。
「上機嫌だな、ハニー」
「俺、別荘、初めてやもん」
「二人で交代で飯の支度をするんだぞ」
「そんなの朝飯前やで」
ハンプトンに到着した。魅力的な女性たちがメインストリートを闊歩している。
中には手を振ってくる女性もいた。
「うあ、すげーな、べっぴんがぎょうさん歩いてるで!」
「こら!これから僕らはゲイ・コミュニティーに行くんだぞ」
「はい、了解っす」
別荘に着くと早速二人は両隣りに挨拶に回った。
みんなNYのホワイトカラーだ。
今晩は隣りのカップル主催のBBQパーティーに誘われた。
別荘は二人だけでは余るほど部屋があった。
庭にはプールとジャグジーがついている。
「うあわー、めちゃ広いやん!もっと小さくても良かったのに」
「ここじゃ、別荘の広さがヒエラルキーを表すんだ。それにハニーにとって初めての別荘ライフだろ?僕のエゴだと思ってくれ」
アランは買って来たビールやワイン、チーズ、生ハム、ラビオリサラダや冷凍食品を冷蔵庫にしまった。
「ハニー、疲れたら、ベッドルームで休むといい。それとも街を歩くかい?」
「俺、街を見たい」
「じゃあ、一緒に行こう」
アランとダニーは手をつないで、ストリートを歩いた。
みんな男性同士のカップルで、手を振ったり、挨拶してくる。
なんて自由なんやろ。抑圧されてるNYの生活とは大違いや。こんな世界があるなんて。
ダニーは目を丸くして、周りをきょろきょろしながら歩いた。
夜になり、隣りのマイルズとデイヴ主催のパーティーを訪れた。
「あ、ダニー!」マーティンがエドと一緒に来ていたのだ。
マーティンは何かダニーに話したそうな様子をしていた。
ダニーは無視して、アランと共にドリンクを取りに行った。
総勢100名位が集まって、そこかしこで話の輪を作っている。
臆しているエドを誘って、アランは皆に紹介した。
「え、あのエドワード・シュローダーなの?」皆が一様に驚く。
「うん、そうです。あ、こっちは、マーティン・フィッツジェラルド」
マーティンは恥ずかしそうに会釈している。
アランは、この二人はひょっとすると本物同士なのかも知れないと思った。
ダニーは、これからの状況をどうとらえていくだろう。
「ハニー、こっちに来て話しよう」
アランが手招きする。お隣はストックブローカーとオークションハウスのオーナーだった。
「ダニーは、仕事は何?」
「俺、司法省」ダニーは手短かに答えた。
「ひぇ、お堅いんだな。精神分析医と司法省の役人か、こりゃユニークだ!」
ダニーはちょっと輪からはずれ、そばにやって来たマーティンに話しかけた。
「楽しんでるか?」
「うん。ねぇダニー、話せる?」
「今日は無理やろ」
マーティンは寂しそうな顔をした。
BBQパーティーは夜中の2時まで続いた。
それぞれのカップルがディープキスを始める。
「うわ、すげーな」ダニーは驚いた。
「僕らもどうだい?」アランがダニーの顔を上げ、唇に触れた。
マーティンも負けじとエドにディープキスをした。
ダニーとマーティンの視線が交錯する。
「それじゃ、また明日!」
二組のカップルは別れた。
ダニーはマーティンを抱きしめるとゆっくりキスをした。
唇からおでこ、瞼へと順番にキスを施すと、マーティンが身を委ねてきた。
「今夜はずっと一緒にいてくれる?」
「今日なぁ・・・」
「またあいつのとこに行くの?どうしてだよ!」
「それはその、ケガしてるからや。かわいそうやろ?」
「かわいそうなもんか!僕だってダニーといたいよ!バカ!」
マーティンは怒ってバスルームから出て行った。
ダニーは慌てて後を追った。ここ数日ほったらかしたのは確かだ。
「わかった、今日は行かへん。お前の好きなようにしてええから」
ダニーは後ろから手を回して抱きしめた。
マーティンの首筋を愛撫しながらささやく。
「ほら、ピルロや。そやそや、パンツもピルロにしよか?」
ダニーはドルチェ&ガッバーナのボクサーパンツを履いた。ペニスを右寄りに修正する。
「ダニーはすね毛が濃いからガットゥーゾだよ」
マーティンはぶすっとしながらも嬉しそうに言った。
自分も履いたばかりのトランクスを脱ぎ捨てて同じのを身に着ける。
「お揃いの下着っていいね」
「あほ、頼むから一緒に病院に運ばれるようなことはするなよな」
「わかってるよ」
二人は視線を交わすとにんまりしてアパートを出た。
エッサベーグルに立ち寄って並んでいると、アジア系のカップルがオーダーするのにもたもたしていた。
「一体どうしたんだろう?」
「ああ、日本人や。ホールウィートって言うの苦手やねん。それでやわ」
「H&Hじゃ問題ないけど?」
「ここの店員は愛想悪いからな。知っててやってんのとちゃう?」
ダニーは小声で意地悪そうに言いながら、いらついて時計を見た。
「何でもええから早よしてくれへんかな。遅れそうや」
ようやく商品を受け取ったものの、遅刻スレスレの時間になっていた。
「くそっ!ボン、走るぞ」
ダニーは言うが早いか駆け出した。
「あっ、待ってよ!」
マーティンが慌てて続く。二人は必死に支局まで走った。
デスクでベーグルにがっつく二人を、サマンサが怪訝そうに見つめる。
「ねぇ、二人ともまた合コン?」
「ちゃうちゃう。エッサベーグルで偶然会うただけや」
「そうだよ、そんなにしょっちゅう合コンなんかしないって」
マーティンは心外だと言わんばかりに言ってのけた。
「誰かいい人がいたら私も呼んでよね」
「はいはい」
二人は適当に返事をするとサマンサにわからないように首を竦めた。
翌日、ダニーはアランのジャガーでメインストリートのフード・パントリーまで買い物に出かけた。
今日は腕によりをかけて料理を作るつもりだった。
店内で、エドとばったり出くわした。
「よう、エド、今晩は自炊か?」
「うん、何作ろうか迷っちゃってさ」
「なぁ、お前たちさえ良ければ、家に来いへんか?2人前作るより4人前作る方が美味しくできるし」
「え、いいの?」
「じゃあ、7時ごろ来てな」
「分かった、ありがとう、ダニー」
ダニーは猛然とシェフ魂が燃えた。
エドが驚くような料理作ったろ。
大きな紙袋2つを抱えたダニーが帰ってくると、アランは目を丸くした。
「その買い物、一体どうしたんだ?」
「今晩、エドとマーティンが家に来るで」
「え?」アランは驚いた。
「俺の手料理の威力を見せつけてやる」
ダニーは早速、スペアリブのマリネソースを作り始めた。
アランは、やれやれと思いながら「僕はプールにいるから」と言って、キッチンから立ち去った。
アランがジャグジーでくつろいでいると、ダニーが飲み物を持ってきた。
「ご主人様、マイタイはいかがですか?」アランは爆笑した。
「まるでハワイかバリのリゾートにいるみたいだよ。ありがとう」
アランはプールから上がり、カクテルを受け取った。
「お前も飲んでるか?」
「味見してるうちに酩酊してきたで」
笑っている。楽しそうだ。ハンプトンに連れてきて良かった。
アランは心からダニーを喜ばせたかった。
「僕に手伝える事はあるかい?」
「今日のメニューに合わせて、ワインを選んで欲しいんや」
ダニーはメニューを説明した。
サーモンと生ハムとピーマンマリネのピンチョス、有機野菜のシーザースサラダ、
山盛りスペアリブと温野菜のグリル、最後はアイスクリームのカプチーノがけだ。
「メインが肉料理だから、ピノ・ノアールかな?」
アランはオレゴン州のワインを取り出した。
「まだ無名のワイナリーだがいいワインを造ってる。それから最初はシャンペンを開けよう。
ヴーヴ・クリコを持って来たから」
「よっしゃ!」
ダニーはスペアリブをオーブンに入れ、アランと一緒にデッキチェアーに座った。
「俺、捜査で行った以外、外国に行ったことないんや」ぽつんと呟く。
「これからいくらでも機会を作ろう。お前の行きたい国を二人で全部回ろう」
アランはダニーに優しくキスした。
こんな上等な男が俺のんなんていまだに信じられへん。
神様は今までの俺の人生の埋め合わせのつもりなのかもな。
ダニーは手首に残る父親につけられた傷跡を触りながら、ぼっと考えていた。
7時になり、エドとマーティンがやって来た。
少し臆している雰囲気のマーティン。エドは、白ワインを持ってきてくれた。
カリフォルニアのシャルドネだ。4人の食事が始まった。
先週、エドが今年のアントレプレナー大賞に選ばれたそうで、祝賀モードになった。
「エドの会社って何してるん?」ダニーが尋ねた。
「ありとあらゆる見積もりを24時間以内に回答するサイトだよ。
家のリフォームから、PCシステムの入れ替え、犬の散歩代行、何でも」
「へぇ、すげーな」
「それほどでもないよ」エドは極めて謙虚だ。
「いつからやってるん?」
「MIT在学時に友達と始めた。最初はどこのピザ屋が一番安いかとかそんなのだったよ」
エドは笑った。笑うと可愛い。ダニーは思わず顔を見つめた。
エドは恥ずかしそうに目を逸らせた。アランが口をはさんだ。
「二人とも、アルコールは大丈夫かな?」
「うん、僕ら決めました。二人でなら飲もうって」
マーティンに代わってエドが答える。
終始エドがイニシアティブをとっているのがダニーは気になった。
マーティンはにこにこ、エドの言う事に頷いている。
こいつ、ご主人様に忠実な賢い犬みたいな顔してるわ。
何やねん、つきおうてないなんてウソつきやがって!
ダニーはメインのスペアリブを取りにキッチンに向かった。
「ダニーってすごい才能あるシェフなんだね、まるでプロみたい!」
エドがスペアリブにかぶりつきながら感嘆した。
「アランのがもっと料理上手いんやで。俺はまだまだや」
「料理が好きなんでね。心の凝りが取れる」アランはダニーの頬にキスしながら答えた。
「それって分かります。僕も作るから。ねぇ、明日は家に来ませんか?僕が作りますから」
アランとダニーは顔を見合わせた。
「ありがたいお誘いだ、行こうか」
「うん、そやね」
「良かった、じゃ明日7時に」
4人のディナーは終わった。
マーティンがダニーの顔を見て、何か話したそうにしていたが、ダニーは無視した。
お前はもうエドのもんやろ。
ダニーは見せつけるようにアランにディープキスをした。
マーティンは仕事が長引きそうになったため、スチュワートの携帯に電話したが電源が切られていた。
ジェニファーと話すのが嫌だったが、仕方なくクリニックに電話する。
「はい、えーっと・・パリセイドメディカルクリニック」
出たのはジェニファーではなく男だ。
「あの、ドクター・バートンをお願いします」
「少々お待ちください」
ピッピッとボタンを押す音が聞こえるが、保留には切り替わらない。
「おい、スチュワート、お前に電話」
「なんでお前が出てるんだよ。ジェニファーはどうした?」
「レセプト持って上に行ったよ。早く出ろよ」
いやに親しそうな様子に、マーティンは胸がぞわぞわしてくるのを感じた。
「・・はい、バートンですが」
「あ、僕だけど・・」
「やあ、マーティンか!何かあったのか?」
「ん、仕事で少し遅れそうなんだ。それだけ言いたくて」
「そうか。それじゃクリニックで待ってるからさ、終わったら電話くれ。迎えに行くから」
誰だよ、あいつ・・・マーティンは電話を切ると急いで仕事に取り掛かった。
クリニックに行くと受付にジェニファーがいた。
「ドクター・バートンを呼んでいただけますか?」
「そちらにおかけになってお待ちください」
スチュワートを待っている間、ジェニファーがこっちを見ている気がして落ち着かない。
居心地の悪さにじっとしていられず、自販機でコーラを買ってソファに座った。
少し飲んだが、すっかり持て余している。
「おい、歯が溶けるぞ」
顔を上げると、白衣のポケットに手を突っ込んだスチュワートが立っていた。
「迎えに行くって言ったろ。わざわざ来なくてもいいのに」
「う、うん・・」
「今日はメディカルスクールの時の友達が来てるんだ。紹介するよ。
ジェニファー、後はやっとくから帰っていいぞ」
マーティンが診察室に入ると、色白の痩せた男が立ち上がった。いかにも頼りなさそうだ。
声から予想していた人物像とは掛け離れていて、マーティンは少々拍子抜けした。
「クリス・ランドルフ、こっちはマーティン・フィッツジェラルド」
「どうも、はじめまして」
二人は握手を交わした。
「クリスは外科医なんだ。それにオレのきっかけでもある」
驚いたクリスは慌ててスチュワートを見た。
「きっかけって?」
「オレの最初の男」
この人が初めての相手?信じられない!
マーティンは驚いてクリスを見たが、失礼だと思い視線をそらした。
「おい、そんなことまで話していいのかよ」
「悪いな、こいつに心配させたくないんだよ」
クリスの見ている前で濃厚なキスをされてマーティンは固まった。
「それじゃ着替えてくるから、なんか適当に話でもしてろよ。お題目はオレの悪口だろうけど」
残された二人は気まずいままお互いを見やった。
こんな時ダニーだったら世間話でもするんだろうな・・・・
マーティンは何を話そうか考えあぐねていた。
「普段のあいつってどんな感じ?素直じゃないだろ?」
クリスはマーティンを遠慮なく見つめながら尋ねた。
口の端にいたずらを仕掛ける子供のような笑いを浮かべている。
「ええ、まあ・・」
「それにとてつもなく意地悪だ」
「スチューは意地悪じゃないよ」
「そうか・・・前は意地悪だったんだけどな」
それっきり二人の会話は途切れた。クリスは困ったようにボールペンをかちかちさせている。
「僕はスチュワートが好きだ」
うわー、僕、何言ってんだろ・・・・
思わず口走った後で後悔したが、クリスは戸惑いながらただ苦笑しているだけだった。
クリスはJamiroquaiのジェイ・ケイに似ていた。左手の薬指に指輪をしている。
これが最初の男か、マーティンは痩せた体を組み敷くスチュワートを想像してドギマギした。
痛がるのに無理やり挿入したのかとかいろんな想像が頭を駆け巡る。
「観察は済んだ?」
クリスに唐突に聞かれ、マーティンはハッと我に返った。
「ごめんなさい、僕、つい・・」
「いいんだよ、あんな話聞かされたら興味あるよな」
クリスは可笑しそうに笑った。
「お待たせ。話は弾んだか?」
着替えて戻ってきたスチュワートは二人の顔を交互に見た。
「スチュワートが好きなんだそうだ。それにお前は意地悪じゃないんだとさ」
クリスはくすくす笑いながら話した。マーティンは恥ずかしくて顔が赤くなる。
「素直でかわいいだろ、オレも大好きだ」
スチュワートはマーティンを抱き寄せて肩を抱いた。
「これからデートか?」
「そうさ。オレたち、メシ食いに行くから」
スチュワートはマーティンのほっぺにキスをした。
「あのさ、僕、今日は帰るよ。お二人でどうぞ」
マーティンは遠慮して言ったが、スチュワートがうんと言わない。
結局三人で食事に行くことになり、クリニックを出た。
スチュワートはホテル・エリゼーの前に車を停めた。クリスもすぐ後ろに駐車する。
「さあ、着いたぞ。今日はカンパチの炭火焼きが食べたかったんだ」
うへぇ、ここってあのフランス人が働いてるバーじゃん・・・・
マーティンは嫌だとも言えずにのろのろ車を降りた。
席に案内されながらカウンターを見ると、スタニックがカクテルを作っていた。
腕を上げる動きがぎこちない。シェイカーを振るたびに微かに表情が強張っている。
本当にケガしてたのか、あいつ・・・
マーティンが見ていると会釈してきたので、同じように会釈を返して席に着いた。
クリスは痩せた体に似合わずよく食べる。話もおもしろくて何度も吹き出した。
二人の話はとめどなく続き、マーティンは自分の学生時代と違いすぎて情けなくなってきた。
「ごめん、マーティンを退屈させたみたいだ」
アーモンドアイスを静かに食べるマーティンに気づき、クリスは謝った。
「いや、違うんだ、すごく楽しそうだなと思って。もっと聞きたいよ」
マーティンは慌てて否定して話の続きを頼んだが、空虚な思いに苛まれていた。
ベッドに入ってからもクリスのことが気になる。愛撫されて体は感じているのに心が上の空だ。
マーティンは体を弄っている手を掴み、思い切って尋ねた。
「・・ねぇ、クリスって今でもスチューのことが好きなんじゃない?」
「どうかな、オレは面白半分にあいつと試してみただけなんだ。それだけさ」
「それだけ?」
「ああ、恋愛感情はなかった。それに、あいつは妻子持ちだから心配いらないぜ」
スチュワートはつないだ手に力を込めた。痛いぐらいだ。
「オレが大切にしたいのは君だけだ。知ってるだろ」
まっすぐなグリーンの瞳に見つめられ、こくんと頷く。
スチュワートは安心したようにキスをすると愛撫を続けた。
知り尽くしたポイントを的確に攻められて、マーティンの体はひくついた。
アナルの中を冷たい指に翻弄され、身悶えするほど感じきっている。
「だっだめ・・・スチュー・・」
すがるような目で頼むと、スチュワートはにんまりしながら挿入した。
入り口をさんざん焦らされた後にゆっくり出し入れされて、マーティンの足はガクガクしている。
スチュワートは射精が近いのを感じると動くのをやめてキスをした。
舌をねちっこく絡めて落ち着かせようとするが、マーティンは限界だ。
「んっふぅ・っ・・っ・やっ!」
ほんの少し中が擦れた途端、我慢できずに射精してしまった。全身がビクンと仰け反る。
「バカ!そんなに・・んんっ!」
果てた拍子にペニスをぐっと締めつけられ、スチュワートもあっけなく射精した。
二人は抱き合ったままじっとしていたが、どちらともなく忍び笑いが漏れた。
二人は汗ばんだ体をくっつけたままぼんやりしている。
「ヘンなこと聞くけどさ、どっちが誘ったの?」
「どちらともなく。なんとなく前立腺に興味があってさ。あいつはたぶん違うだろうけどね」
「クリスは本気だったってこと?」
「そうだと思う。オレ、知ってて気づかないふりをしてたんだ」
僕と同じだ・・・
マーティンにはクリスの切ない気持ちがわかったが黙っていた。
翌日、ダニーとアランは朝からプールとジャグジーで戯れていた。
白昼の陽の下で、誰にも気兼ねせず、キスしたり抱き合ったり出来る幸せを甘受する。
隣りのマイルズがフェンス越しに顔を見せた。
「仲がいいね〜、お二人さん。今日、ランチに一緒に行かないか?いいレストランを見つけたんだ」
「よし乗った!」
車でメインストリートまで出る。
アランはデイヴのオークションハウスに興味を持ったらしく、詳しくシステムを聞いている。
ダニーは、ロングアイランド・アイス・ティーを飲みながら、チキンのラビオリを食べていた。
パスタ・ペスカトーレを食べているマイルズが尋ねる。
「司法省なんて、随分堅い職場なんだろうね」
「普通のオフィスと同じやで。ただ色々手続きが面倒なだけで」
ダニーは適当に話を作った。
「二人は付き合って長いん?」
「今年で7年になるかな、なぁ、デイヴ?」
「あぁ、僕ら、養子をもらう事に決めたんだ」
アランが感嘆した。
「すごいな!二人で育てるのか!」
「あぁ、どっちがママになるか今検討中なんだ」
二人は顔を見合わせて幸せそうに笑った。
ダニーは、こういう家族の作り方が本当にあるのだと実感した。
俺とアランも?
妄想が飛躍した。ブロンドの可愛い男の子と庭で遊ぶ自分たち・・。
まさかな!ダニーは考えを打ち消した。
ランチが終わり、家に戻ると、二人はベッドに直行し、愛撫しあいながら昼寝をした。
夜になり、アランは、ドンペリニオンを持って、「さあ、行こうか」とダニーを促した。
5分ほどのドライブで、エドの別荘に着く。
アランの借りた別荘とほぼ同じ広さだが、エドのは持ち家だ。
ダニーは驚くばかりだった。
これじゃ、もうマーティンはエドのもんで決まりや。その方がマーティンが幸せになれる。
エドのメニューはエビの紹興酒蒸し、豆腐とルッコラのサラダ、紅マスのグリル・ジンジャーソースと
マッシュドポテトにマンゴープリンだった。
「うわー、すごいな、どこで習ったん?」ダニーが思わず漏らす。
「出張でアジアに行く事も多いから、シェフからレシピーもらったりして」
ダニーは完全に負けたと思った。相手は国際的なビジネスマンだ。
一介の政府の役人が勝てる相手ではない。
マーティンは、ダニーの反応をどぎまぎしながら見つつ、シャンパンを飲んでいた。
アランは適当に話に加わっては、皆を笑わせた。
マンゴープリンを食べ終え、4人はワイングラスを持って、プールサイドのデッキチェアーに移動した。
そよ風が気持ちがいい。マーティンが気疲れからか、うとうとし始めた。
「おい、マーティン!」ダニーがつい癖で突っ込みを入れてしまう。
「ん、眠いよ」
「エド、寝室どこや?」
「え、僕が連れてくよ」
「お前にマーティン背負えるか?」
「うーん、たぶん無理。2階の突き当たり。お願いします」
ダニーはマーティンを背負うと、階段を上がってメインベッドルームに入った。
昨日はここでエドと寝たんや、こいつ!
シーツをぐしゃぐしゃにしてやりたい気持ちを抑えて、マーティンを横たえた。
Tシャツとスラックスを脱がせる。
日焼けでほてっている胸のあちこちに小花が咲いたようにキスマークがついていた。
ダニーは、小花の一つにかじりつくようにキスをし、静かにブランケットをかけた。
「ダニー、愛してる」
「え?」
「・・・」
寝言かよ!お前の心はもうエドにあるんやろ、俺を迷わせんといてくれ!
ダニーは静かにベッドルームのドアを閉めた。
ダニーは帰りにマーティンとソーホーの焼き鳥屋に寄った。
無難なささみやねぎまを食べながら、砂肝やグロ系にもがっつくマーティンを興味深そうに眺める。
臆することなく何でも食べているのが少し羨ましい。
「お前、よう食べるなぁ」
「ん、おいしいよ。食べてみなよ」
マーティンはレバーを差し出したが、ダニーは手でいらないと制した。
「そうそう、スチュワートの友達ってさ、50本も食べるんだって」
「へー、それはすごいな。デブか?」
「ううん、ジャミロのボーカルみたいにガリガリなんだよ」
「ちょっとおかしいのとちゃう?胃下垂とかな」
「そうでもないみたい。まともだったよ」
マーティンは気づかずに話していたが、自分もかなりの量の串がお皿の上に堆積されている。
「お前も50本ぐらい食べるんちゃう?結構食べてるで」
ダニーの視線に気づき、律儀に串を数えるマーティン。
「37本だ。いくら僕でも無理だよ」
「そうか?オレはいけると思うけどな。とにかくそんなヤツ、食費が大変やわ」
ダニーはぐいっと冷酒を呷った。酔いが回ってふわふわと気持ちいい。
「あーあー、また目がトロンとしちゃって。飲みすぎなんだよ」
「あほ、全然酔うてないわ」
「何言ってんのさ、もう帰るよ」
マーティンはチェックを済ませるとタクシーを拾って行き先を告げた。
タクシーに乗ったものの、道路はいつもより混んでいてなかなか前に進まない。
「今日からカーニバルやってるからね〜」
ドレッドヘアのタクシーの運転手が事も無げに言った。
「どこで?」
「40番埠頭。今夜は何度も行ったんだ」
「オレらも行くわ。行き先変更や」
マーティンは驚いたが、ダニーは手をぎゅっと握ってニヤリとした。
カーニバルに着くと、ダニーよりマーティンのほうが興奮した。
「ねー、あれ乗ろうよ」
「いきなり観覧車?」
「いいから!」
二人は観覧車に乗り、窓の外を眺めた。前も後ろもキスしている若いカップルが見える。
子供ですらキスしてるのに、おおっぴらにキスできない自分たちが悲しかった。
「なぁマーティン、こっち向いてみ」
「え?」
ダニーはマーティンの顔をぐいっと窓の下に下げさせると素早くキスした。
観覧車を降りるといろいろなブースを渡り歩き、ボール当てやシューティングゲームを楽しんだ。
ダニーは風船を手にしたマーティンがおかしくて、何度も吹き出す。
「迷子にならないようにって持たせたのはダニーじゃん」
「お前、なんかおかしいんやもん」
ふくれるマーティンに笑いが止まらない。マーティンはダニーにも風船を持たせた。
「僕よりダニーのほうが似合ってるよ」
「こんなん恥ずかしいわ」
ダニーは手を離して風船を空に飛ばした。
アパートに帰るとダニーはマーティンにキスをしまくった。
ようやく口を離すと唇が真っ赤になっている。
そのままワイシャツのボタンを外して胸をあらわにさせると体中舐めまわした。
鎖骨の辺りを執拗に舐めると、マーティンがくすぐったそうに身を捩じらせる。
我慢できないマーティンは、かちゃかちゃいわせながらダニーのベルトを外すとペニスを取り出した。
体の位置を入れ替えて口に含むと熱心にフェラチオする。
ダニーもマーティンのペニスを咥えていたが、あごが疲れてやめてしまった。
マーティンは後ろを向かせるとアナルにローションを垂らした。
時間をかけて指でほぐしてからペニスをあてがい、少しずつ挿入する。
十分馴染ませたアナルは柔突起のようにからみついてくる。
「くっ・あっぁぁっ・・」
ダニーのペニスはいやらしい透明な液でぬらぬらと光っている。
手で先っぽを弄るとダニーの体が強張り、アナルも連動して締まる。
マーティンは反応を確かめるように小刻みに腰を動かした。
「んっあっぁぁ・あっそっそこ・あかん!イク!」
「ぼ、僕も出そうだ・・あぁ、ダニィ!んっあっああー」
マーティンは果てたダニーを抱きしめて腰を打ち付けると中に射精した。
夢のような三日間が終わった。ダニーは名残惜しそうに別荘を見上げる。
「また来ればいいじゃないか」アランはダニーの様子に、頬にキスをした。
「だって貸し別荘やろ?」
「8月一杯まで借りてある。また週末に来よう」
「え、ほんま?」
「あぁ」
「アラン、大好きや!」
ダニーはアランに抱きつき、ぎゅっと抱き締めた。
二人は荷物を積むと、ジャガーに乗った。
「なぁ、アラン、ちなみに家賃はいくらなので?」
「今回は6万ドルかな」ダニーは絶句した。
マンハッタンの生活に戻った。
オフィスに出勤すると、サムがダニーの顔を見て「あれ、日焼けしてない?」と聞いてきた。
「ちょこっとな、一層セクシーやろ」少し自慢げに答えるダニー。
マーティンも出勤してきた。マーティンの日焼けの方がもっと顕著だ。
顔が赤く光っている。
「何、マーティンも日焼け?二人でどっかに行ったの?」
サムが訝しげに尋ねる。
「いや、別々や」
ボスが咳払いを始めたので、3人はミーティングデスクに急いで腰掛けた。
ランチになり、マーティンはダニーを誘ってカフェに行った。
「お前、俺に話したい事あんのやろ?」
トルティーヤをかじりながら、ダニーが尋ねる。
「ん、あのね、僕とエドのこと・・」
「そんなん言わんでもええわ。もう分かってる。つきおうてるんやろ」
「ごめんね、ダニー」
「謝る必要ない。お前の自由やん、それにエドのが俺よりお前に合うてるし」
「何言うんだよ」
「俺かてあほやないで。エドの事、調べたんや。お前に似てるやん。
学歴とか家柄とか金持ちなとことか。俺とは違う世界の住人や」
「ダニーだってアランと一緒にいるじゃない」
「アランは俺の命の恩人や。話がちゃうわ」
二人は話がかみ合わないまま、ランチを食べ終えた。
帰りもマーティンはダニーにまとわりついた。
「ねぇ、夕飯食べて帰ろうよ」
「おぅ、そうするか?」
週末、ビッグミールばかりだったので、二人はカッツ・デリカテッセンに寄った。
マーティンがビールを頼んだのでダニーは驚いた。
「お前、飲んでええの?」
「うん、飲みたいんだよ」
パストラミ・サンドとフレンチ・フライを食べながら、マーティンはビールをどんどん空けた。
「おいおい!飲み過ぎやで!」
「いいの!」
あかん、虎になっとるわ。
ダニーはチェックを済ませて、マーティンをタクシーに乗せた。
心配なのでアパートまで連れ帰る。
合鍵で入ると、リビングのソファーの周りはスナック菓子の袋が散乱していた。
相変わらずやな。ダニーは、ぐったりしたマーティンに水を勧めた。
なかなか飲まないので口移しで飲ませることにする。
「あぁ、エド、美味しいよ」
「おい、俺はダニーや!」
「ダニー?ウソだよ、ダニーはアランのところにいるんだよ、だってアランが好きなんだもん!」
ダニーは腹がたってきた。俺がどんな気持ちでエドとお前を見てたんか、わかんのか!
ダニーはべッドにマーティンを引っ張っていき、洋服を脱がせた。
「んん、何するの、エド?今日は出来ないよ」
「俺はお前の好きなエドやない、ダニーや。これからお前を抱くで」
「ウソだよ、ダニーはアランと一緒!」
ダニーはマーティンを乱暴に後ろ向きにすると、ローションを塗りたくり、ずぶっとペニスを挿入した。
「痛いよ〜」マーティンは悶えた。
ダニーはマーティンにお構いなく自分勝手にリズムを取ると、スピードを速めて射精した。
マーティンはペニスを勃起させたまま、眠り込んだ。アヌスから出血している。
俺、何やってるんや。最低や!
ダニーは洋服をまとめるとすばやく着替え、コントレックスとタイレノールをサイドテーブルに置いて、
マーティンのアパートを去った。
ダニーは激しい自己嫌悪に陥っていた。意識のないマーティンをレイプ同然に抱いてしまった。
もうエドと付き合えばいいと割り切ったはずなのに、マーティンと一緒にいると、
どうしても我慢できなくなってしまう。
マーティンが覚えてるやろか。正直に話すもんやろか。
ダニーは迷っていた。
マーティンが出勤してきた。
ちょっと顔がはれぼったいが、いつもと変わらない様子だ。
「おはよ、ボン、元気か?」
「うん、ちょっと頭が痛いよ、昨日、迷惑かけなかった?」
よかった!マーティンは覚えてない!
「いや、いい子やったで」
「子ども扱いはやめてよ!」
マーティンは頬をふくらませながら、チョコチップマフィンを食べ始めた。
ダニーは安心してコーヒーを入れに席を立った。
今日の捜査ではマーティンはサムと組まされ、ダニーは相変わらず一人で聞き込み調査に向かった。
「ねぇ、マーティン、週末どこに行ったの?」サマンサがうるさい。
「友達のハンプトンの別荘に行ったんだよ」
「えー、そんな友達がいるんだ、もしかして、あの富豪の友達?」
どぎまぎするマーティン。
「う、うん、そうだけど・・」
「どうせ二人でナンパしまくったんでしょう。全く男って奴は!」
勝手にストーリーを作って、サマンサはツンツンした。
マーティンは苦笑するしかなかった。
捜査は空転だ。皆、疲れた様子でオフィスに戻る。
ダニーがだるそうに足をぽんぽん叩いていた。
僕がマッサージがうまければな。マーティンはぼーっと考えていた。
ダニーの携帯が震える。
「テイラー。うん、もう帰れる。じゃあ後で」
どうせアランのとこなんだ。
マーティンは自分も負けじとエドに電話をかける。
「僕。今日、会える?良かった。じゃ後で」
ダニーがソフトケースを肩からかけ、「それじゃ」とマーティンに言った。
「あ、僕も帰る」
マーティンもバックパックをかつぐと、一緒にエレベーターに乗った。
「お前、日焼けの手入れしてるか?」
突然、ダニーがマーティンの頬を両手で包み込んで尋ねた。
「え、そんなのしてないよ」
マーティンはドキドキした。
「フォーシーズンズのスパに行ってみ。スージング・トリートメントやってくれるわ。
お前、色が白いんやから、注意せんと。しみになるで」
「ありがと、エドと行ってみる」
マーティンはエドを強調して答えた。
「そやな、カップルルームもあるしな」
エレベーターが1階に着いた。
「それじゃ、明日な」「うん」
二人は別れた。
ダニー、どうして僕をスパに誘ってくれないんだよ!僕、寂しいよ!
ダニーの前では強がりをつい口にしてしまうマーティンだが、心の中は、
まだダニーの事で一杯だ。
エドに済まないと思いつつ、自分の気持ちにウソはつけないとマーティンは思った。
ダニーは覆いかぶさっていたマーティンが鼻を啜っているのに気づいた。
重い体を押し退けると、マーティンがしくしく泣いている。
「お、おい、どうしたんや?どっか痛いんか?」
「ううん、すごく幸せだから・・・ごめん、もう泣かないよ」
「うん?ようわからんのやけど・・・」
「ダニーが僕を選んでくれたことに感謝してるんだ。本当にありがとう」
「あほ、お前はオレのんやっていつも言うてるやろ。ほれ、サルも見てるで」
さっきシューティングゲームで取ったぬいぐるみを体にくっつけると、泣き笑いの変な顔になった。
恥ずかしそうに顔を腕でごしごし拭ったマーティンはダニーに抱きついた。
ダニーもバカでかいぬいぐるみを床に落とすとぎゅっと抱きしめる。
マーティンは胸に顔をうずめてまた泣いてるようだ。
熱い涙でワイシャツが濡れている。
喜びで泣くってこういうことなんかな・・・ダニーは背中を撫でてやりながらふと思った。
「なぁ、お前の気持ちはわかったから。シャワー浴びよう、べとべとで気持ち悪いわ」
「・・ん」
ダニーは髪をくしゃっとするとバスルームへ連れて行った。
熱めのシャワーを浴びるとマーティンも落ち着いた。
二人は裸のままベランダに出ると、夜風に当たりながら水を回し飲みして夜景を眺めた。
お互いに顔を見合わせると、どちらともなくキスする。
「ダニィ大好き」
「あほ」
ダニーは照れ隠しにデコピンするとそのまま部屋に入った。
「何だよ、嬉しいくせに!」
「うるさい、もう寝るで」
さっさとベッドに入るとマーティンがぴとっとくっついてくる。
ダニーに暑いと言われてもマーティンは一向に離れなかった。
二人が眠りこけていた深夜、ダニーの携帯が鳴った。
「ふぁぃ・・テイラー」
ダニーは寝ぼけたまま電話に出た。
「ダニー、誰かわかる?」
「・・リサやろ」
「そう、久しぶり」
「久しぶりて、お前なぁ!」
ダニーは思わず声が大きくなった。慌ててマーティンを見るが、よく眠っているので安心する。
「お前なぁ、今何時やと思てんねん」
「えー、まだ22時やん」
「あほか、夜中の1時やろ」
「ごめん、こっちは22時やから。私な、結婚するねん」
「え、結婚・・・・あ、えっと、おめでとう」
「ありがとう。ダニーには言うておきたかったから・・」
「そうか、元気でな。幸せになれよ」
ダニーは電話を切ると小さくため息をつき、眠りこけているマーティンを無意識に見つめた。
結婚か・・・オレもいつかはするんかな?けど、オレにはこいつがいてるから・・・
無邪気に眠るマーティンの頬にそっと触れると、しばらく寝顔を眺めていた。
「ねぇ、エド、ホテルのスパって行ったことある?」
チキン・ブリトーをかじりながら、マーティンが尋ねた。
「そんな、女が行くとこ、行ったことないよ」
「あのさぁ、僕ら、結構日焼けしてるじゃない?手入れした方がいいみたいだよ」
「ふぅん、マーティンが行きたいなら、一緒に行くけど」
「分かった。予約してみるね」
エドは、チーズ・エンチラーダスをオーブンから出して、マーティンに勧めた。
「エドと食事してると太りそうだなぁ。エドが羨ましいよ」
「僕は、マーティンの逞しい身体、大好きだよ」
そう言うと、エドは頬をぽっと赤く染めた。
ダニーはアランの背中にアフターサン・ローションを塗っていた。
「まだ、ひりひりしてる?」ダニーが背中を噛みながら、尋ねる。
「おい、噛むな!もう大分良くなった。毎日、ハニーにローションを塗ってもらってるからね」
「俺なんか、全然平気なのにな、白人はほんま肌が弱いな」
「今度の土曜日のスパ、付き合ってくれるだろう?」
ダニーは前回、施術の前に勃起してセラピストに笑われたのを気にしている。
「うーん、微妙」
「行ってくれたら、次の週末はまたハンプトンに行こう」
「よっしゃ、了解」
ダニーはさらにアランの背中を噛んで、また怒られた。
土曜日の午後、アランとダニーはフォーシーズンズのスパにいた。
バスローブに着替え、サロンでハーブティーを飲みながら、
部屋が空くのを待っていると、マーティンとエドが出てきた。
思わず凍りつく4人。
「奇遇だな」アランが取り繕う。
「マーティンに誘われたんで」
ほんまに来おったわ、ダニーはマーティンの素直さに少しくすくすした。
「で、どやった?」
「保湿パックを全身にしてもらった」
マーティンは恥ずかしそうに言った。
女の前で全裸になる事など、今までにあったのだろうか。
「僕らと同じだな」
「ショア様、テイラー様どうぞ」セラピストが呼びに来た。
「失礼、それじゃまた食事でもしよう」
アランはそういうと、ダニーの背中を押して、個室の方に向かった。
トリートメントが終わり、サロンで水を飲んでいると、ダニーの携帯が震えた。
「はい、テイラー。何だ、お前か。ふーん、ちょっと待て」
ダニーは携帯を手で覆いながらアランに尋ねた。
「マーティンからなんやけど、一緒に食事しないかって?チャイニーズらしいで」
「ふーん、まぁ4人の方が色々楽しめる事は確かだな。お前さえ良ければ」
「うん、じゃあそうするわ。ああ行く。おお、了解」
4人は夜7時にチャイナ・タウンの「タン・パヴィリオン」に集合した。
紹興酒に漬けたチキンの冷製が有名な店だ。
アジア通のエドがメニューを次々に選んでいく。
ダニーはとんでもないものが出てきたらどうしようかとドキドキしていた。
マーティンがダニーに囁く。
「ダニーは気持ち悪がりだって言っておいたから、平気だよ」
こいつ、余計な事言いよるわ!
ダニーはエドに知られて、思わずむっとした。
エドのチョイスでフルコースを食べ、紹興酒を2本空けてしまった。
心なしかエドもマーティンも声が大きくなり、けらけら笑い転げている。
アランとダニーは顔を見合わせた。
帰り道、アランはダニーにエドを乗せ、エドのメルセデスを運転するように言いつけた。
「あぁ、それのがええな」
ダニーも同意した。エドは恐縮しながら助手席に乗った。
気まずい空気が車内に流れる。
「お前、家どこ?」
「マーティンの家の3ブロック手前」
何やそんなに近所なんか!
エドのコンドミニアムの駐車場に車を停め、ダニーは断るエドを振り切って、
強引にエドの部屋に入り込む。
広々とした空間に無機質なインテリア。
いかにもIT企業のオーナーって感じやな。
きょろきょろと部屋を点検するダニーに、エドは飲み物を勧めた。
「いや、俺はもう帰る」
「待って。ダニー。僕とマーティンの事、怒ってるんでしょう?僕を抱いてくれません?」
「え、何言うんや」
「あなたがどんな風にマーティンを抱くのか、僕知りたいんだ」
エドが突然、身体をダニーに預けてきた。ぎゅっとダニーは抱き締められた。
「アホ抜かすな、水でも飲んで、寝てしまえ!」
ダニーは怒ってエドを突き飛ばすと、部屋から急いで飛び出した。
それぞれ帰り支度をしていると、サマンサに飲みに誘われた。
ダニーはジムに行くからと断わり、マーティンもすぐさま真似して断わる。
サマンサはしつこく誘っていたが、二人はさっさとオフィスを出た。
「危なかった!サムは酔うと絡むからね、かわいそうだけど嫌だよ」
「ほんまほんま、夜中まで帰れんもんな。疲れるわ」
「ねぇ、ジムって嘘なんでしょ?」
「いいや、ほんまに行くで。お前はやめたんやったっけ?」
「ううん、まだ。スチューが行ってるとこは僕に合わなくてさ・・」
「ははーん、どうせ女ばっかりなんやろ?」
ダニーの問いかけにマーティンは嫌そうに頷いた。
「なんかさ、女がやたらとじろじろ見てくるんだよ。あんなとこ、僕には無理だ」
「それやったら今のとこでいいやん。女も少ないし。けどな、逆に怪しいで」
「怪しくなんかないよ。あそこはチャラチャラしてないからいいんだよ」
「ほな、やめることないやん」
「ん、それはそうだけどさ・・・」
僕はアーロンが嫌なんだってば!マーティンの思いはダニーには伝わる由もない。
渋々ダニーと一緒にジムに向かった。
マーティンはアーロンの姿を探したがどこにも見当たらない。
ホッとしていると気づいたダニーにからかわれた。
「あほやなぁ、オレがいてるから心配ない。泳ごう」
ダニーはマーティンの肩を叩くと、先にプールに入った。
ぼやぼやしているマーティンに水を浴びせかける。
「早よこい、フィッツィー!」
「もうっ!その呼び方はやめてって言ってるじゃない!」
マーティンもプールにダイビングするとお返しに水をかけた。
しばらく泳いだ後、ダニーが競争しようと言い出した。
二人はせーので飛び込むとがむしゃらに泳ぐ。
マーティンが必死に泳いでいると、横を泳いでいた誰かにいきなりペニスを掴まれた。
「んっ!わっ・・ごほっごほっ!」
驚いて足をつけると潜っていたアーロンが水中から顔を出した。
「マーティン、ずっと会いたかったんだ」
「なっ・・何するんだよ、ふざけんな!」
「また君と寝たいな。ジェニファーとはどうなってるの?」
「黙れ!」
マーティンは怒りのあまりアーロンを突き飛ばした。
横を泳いでいたダニーが異変に気づいて寄ってきた。
「おい、どうしたん?あれ、アーロンやん」
「やあ、ダニー。久しぶりだね」
アーロンは人の良さそうな笑顔を浮かべた。いかにも優しそうだ。
ダニーがふとマーティンを見ると慌てて目を逸らした。
「お前、オレと競争してるのに何で立ってるねん」
「何でもないよ!」
マーティンは先にプールから上がってしまった。
「何かあったん?」
「さあ?僕は嫌われてるからね。早く行ってあげなよ」
アーロンはそれだけ言うとレーンに戻って泳ぎ始めた。
マーティンどうしたんやろ?けったいなやっちゃなぁ・・・・
わけがわからないダニーはプールから出ると後を追った。
マーティンはシャワーを浴びているようだ。
もうちょっと泳ぎたかったのにな・・・仕方なく自分もシャワーを浴びた。
マーティンがシャワールームから出てくると、アーロンが待っていた。
無視して通り過ぎようとすると、壁に押し付けられて無理やりキスをされそうになった。
「やめろよ!」
「そんな大声出すとダニーに聞かれるけどいいの?」
「・・・・・・」
「そうそう、そうやっておとなしくしてればいいんだよ」
アーロンは舌を入れると存分に中を味わった。
同時に膝でペニスをなぞられ、マーティンのペニスは心とは裏腹に反応してしまう。
屈辱的な思いで怒りに震えながらじっと耐えていた。
ダニーがセントラルパークを横切って、アランのアパートに着くと、
マーティンがリビングでけらけら笑っていた。
「どうしたの、こいつ?」
ダニーがアランに尋ねると、
「帰らないって言い張って聞かないんだよ」アランが困った顔で答えた。
「なぁ、お前、もう今日は遅いねんから、アパートに帰ろうな、送ってくから」
「え、僕、ダニーとアランが愛し合うとこが見たいのに、見せてくれないの?ケチ!」
笑っていたかと思ったら、突然、猛然と怒り始めた。
「見せてくれないなら、ダニーが家に泊まってよ。それなら帰る」
アランは仕方がないなという顔をして、「行ってやれよ、連絡待ってるから」と言った。
「すまん、アラン、こいつ強情やから」
ダニーはぐったりするマーティンを肩にかついで、部屋を出た。
タクシーを拾ってマーティンのアパートに着く。
服を脱がせて、パジャマを着せると「暑いよ!」と言って脱いでしまうマーティン。
仕方なく、トランクス一枚でベッドに寝かせる。
ダニーはパジャマを着て、マーティンの隣りに横になった。
ばたん! マーティンがダニーの上にのしかかって来た。
「お前、重い!」
「うーん、ダニー、僕の事好き?」
ダニーは一瞬躊躇したが、「あぁ、好きやで」と答えた。
「本当に本当?」
「ああ、ほんまや」
「良かった、僕を捨てないでね、むにゃむにゃ・・・」
寝てしもうたわ。ダニーも静かに目を閉じた。
朝、ダニーは下半身に違和感を感じて目が覚めた。
マーティンが必死でダニーのペニスにむしゃぶりついている。
「お前、何や!?」
「見ればわかるでしょ、愛してるんだよ」
またペニスを咥えるマーティン。
マーティンの一生懸命なフェラチオにダニーは弱い。
たちまち、ペニスに力がみなぎるのを感じる。
「うぅぅ、お前、このままやと出てしまう・・」
「だめ、僕の中でイくの!」
マーティンはダニーに跨り、ペニスを自分のアヌスに押し当て、腰を下ろした。
ずぶずぶという感触の中、ダニーのペニスがマーティンの中に埋没する。
マーティンは狂ったように、腰を上下左右に動かし、摩擦を増やす。
「ん、ん、お前、そんなんすると、もう持たへん、出る!」
ダニーはどくどくとマーティンの中に精を吐き出した。
マーティンはダニーを中に入れたまま、自分のペニスを扱きたて、ダニーの胸と顔にめがけて射精した。
「うあ、何すんねん!」
「ダニーは僕のものだ」
マーティンは、すたすたとシャワールームに行ってしまった。
精液でベトベトの顔と身体をシーツでふき取りながら、ダニーは複雑な気持ちになった。
あいつの暴走の理由は、何や?今のあいつにはエドがいてるのに。
ダニーは、洋服を着ると、マーティンに声をかけずに、アパートから出た。
アランとこ帰ろう。
朝のセントラルパークを歩き出した。
ダニーがシャワールームから出ると、マーティンとアーロンが一緒にいた。
「ダニー、今から食事に行こうって話してたんだよ。どうかな?」
アーロンが愛想良く話しかけてきた。
「えっ、そうなん?」
驚いたダニーがマーティンを見ると軽く頷いた。
「ええよ、行こう」
「よかった。それじゃ、ちょっと待っててね。どこに行くか考えといてよ、僕の奢りだから」
アーロンはにっこりするとシャワールームに消えた。
「なぁ、嫌やったら断わってこよか?」
ダニーは着替えながらマーティンの様子を窺うが、マーティンは平気とだけ答えた。
「オレやっぱり断わってくるわ」
ダニーが立ち上がろうとすると、マーティンがぐっと腕を掴んだ。
「本当に平気だから。食事ぐらいなんでもないよ」
「それやったら行くけど・・」
気にはなったものの、本人が行く気なのだから仕方ない。
二人はそれ以上何も話さず、アーロンを待っていた。
アーロンはジムを出ると、駐車していたBMWに乗るように言った。
マーティンがこっそり前のバンパーを見ると、既に修理されている。
「どこに行く?どこでもいいよ」
「アパートに近いし、サイゴングリルはどうやろ?」
「おいしいけどさ、もっと高いとこでもいいのに。遠慮しないで」
「んー、ほな由花は?寿司が食べ放題で18ドルやで」
「ダニーっておもしろいね。マーティンは?」
「・・メアリーズ・フィッシュ・キャンプ」
マーティンはぼそっと答えた。アーロンはダニーの承諾を得るとグリニッジ・ビレッジへ向かった。
外でしばらく並んだ後、ようやく席に案内された。狭い店内は客で溢れている。
アーロンは、ロブスターロールやタコのグリル、クラムフライなどを次々にオーダーし、二人にワインを勧めた。
ダニーはきちんと乾杯したが、マーティンは無視して飲み始めた。
「あっ、おい!ごめんな、許したって」
「いいって、気にしないで。さあ、食べよう」
アーロンはいつもと同じように優しそうな笑顔を浮かべ、料理を取り分けた。
マーティンが黙ったままもくもくと食べ続けるので、ダニーは居心地が悪い。
適当に話題を振りながら食事を続けたが、気疲れで酔いが回ってきた。
帰りの車中で、ダニーはすっかり眠りこけてしまった。
「ねぇマーティン、アパートはどこ?案内してくれないとわからないよ」
アーロンに尋ねられてもマーティンは何も答えない。
「仕方ないな、僕んちに帰るしかないか・・」
独り言を言いながら、アーロンは自分のアパートのガレージに車を停めた。
マーティンはダニーを降ろすと体を支えた。ダニーは眠ったまま体を預けている。
「・・ごちそうさま」
それだけ言うと帰ろうとするが、アーロンがダニーを掴んでいて離さない。
「手を離せよ!帰れないだろ!」
アーロンはにやにやしながら手を離すと、マーティンの手を振り払って素早くダニーを背負った。
「ダニーは泊まるんだって。ヘテロっていいよね。君はどうする?」
言うが早いかエレベーターに向かってすたすたと歩き出す。
マーティンは急いで追いかけたが、追いつく寸前でエレベーターの扉は閉まってしまった。
32階で止まったエレベーターを見上げながらマーティンは焦った。
早く、早く降りてきて!ダニーがあいつにヤラれちゃう・・・・
いてもたっても居られず、ボタンを何度も何度も押し続けた。
ダニーは、熱いシャワーを浴びて、顔と身体を入念に洗うと、アランが眠っている傍らに身を横たえた。
気配でアランが目を覚ます。
「んん、ハニー、もっとゆっくりしてくると思っていたよ」
「あいつん家じゃ、気持ちが落ち着かん。寝かせて、アラン」
疲れた様子で目をつむるダニー。
アランはダニーの短い髪の毛を優しく撫でると、自分も目を閉じた。
ダニーは夜まで眠り続けた。揺り動かされて目を覚ます。
「ん?今、何時?」
「もう6時だよ、ハニー。大丈夫かい?だるいか?」
アランが心配そうだ。
「大丈夫や。捜査で忙しかったから、疲れてたんやと思う。ごめん」
「ディナーを用意するから、もう少し寝ているといい」
「うん、そうする」
ガスパチョとサラダと野菜のリゾットで軽めの夕飯を食べる二人。
「何かあったのか?マーティンと」ダニーのぐったりした様子にアランが尋ねた。
「ううん、何もなかったで」ウソをつくダニー。
「僕は散々言われたよ。ダニーには年寄りすぎるとか、ダニーは自分のもんだとかね」
ダニーはアランの傍らに立ち、ぎゅっと抱き締めた。
「あいつ、酒乱やで、言ってる事、信じてるわけないやろ、アラン」
「あぁ、マーティンは、よっぽど普段抑圧されてるんだな」
「ただな、エドがな、俺に抱け言うてきたんよ」
「はぁ?」
「俺がどういう風にマーティンを抱くか知りたい言うて、抱きついてきよったわ」
アランはぷっと吹き出した。
「それでどうした?」
「どうもこうもないわ、突き飛ばして帰ってきた」
「エドは焦っているんだよ。付き合い始めたマーティンの心が、まだダニーにあるのが明白だからね。
それにしても、元彼に聞くとはなぁ、見かけよりもずっと自信家な奴かもしれないな」
アランは快活に笑った。
元彼か、俺ってマーティンの元彼なのか!
自覚がなかっただけに、アランにはっきりと定義付けられて、ショックを覚えた。
「ハニー、どうかしたかい?」
「ううん、何でもない」
ダニーは白ワインをぎゅっと飲み干した。
ダニーは夕飯が終わると、アランに送ってもらい、ブルックリンに戻った。
部屋から明かりが漏れている。
用心のため、ゆっくり鍵を開ける。
「ダニー、遅かったじゃん。待ってたんだよ!」
マーティンがダニーに抱きつく。息が酒臭い。
「お前、また飲んだんか!」
「そんなのどうでもいいじゃない!早くベッドに行こうよ!」
マーティンはさっさと服を脱いで全裸になる。
自分で扱いていたのか、屹立した太いペニスがまっすぐダニーを狙っていた。
ダニーは驚いた。
「お前、こんなん間違ってるで。早く服着ろ、お前を送ってくから」
「どうして抱いてくれないんだよ!」
「お前はエドとつきおうてるんやろ、抱けへんわ」
マーティンは屈辱に満ちた顔で、服を蹴飛ばした。
ダニーが駆け寄って、服を着せる。
まるで着せ替え人形のように静かにしているマーティンが不気味だった。
「お前が飲んだ事、エドに話せよ」「・・・」
マーティンの部屋に送り、ベッドに入るのを見届けると、ダニーは家に戻った。
深いため息が部屋にこだました。
マーティンが部屋に入ると、ソファに座らせたダニーの横でアーロンが水を飲んでいた。
「やっと来たね。ダニーってお酒に弱いのかな?寝顔がかわいい」
アーロンは言うなりダニーにキスをした。
これ見よがしにマーティンを見つめたまま、ダニーの口の中に舌をこじ入れている。
「んぁ・・ぅぅん・・」
無防備なダニーはされるがままだ。アーロンの手がシャツのボタンを外し始めた。
「ダニーの舌って官能的だ。さっきの生牡蠣みたいでセクシーだよ」
「やめろ!・・・ダニーには何もしないで・・」
アーロンはくすっと笑うと手を止めた。いつもの優しそうな笑顔がひどく傲慢に見える。
「突っ立ってないでこっちに来なよ。眠るダニーの横で僕のを咥えるってのはどうだい?」
「嫌だ!そんなことするもんか!」
マーティンは思いっきり睨みつけた。ダニーに知られたらおしまいだ・・・
唇を噛みしめるマーティンを見てにやつくアーロン。
「そう、それじゃダニーで我慢するとしよう」
アーロンはまたダニーにキスしながらねちっこく舌を絡め始めた。
「わかった、わかったから・・それだけはやめて・・・」
マーティンはアーロンの前に座るとペニスを口に含んだ。
嫌なヤツのペニスをダニーの横で奉仕させられる屈辱に、怒りで頬が紅潮する。
悔し涙で視界がぼやけるが、嗚咽を堪えてフェラチオし続ける。
「いいよ、マーティン・・その表情も最高だ・・あぁっ、すごく気持ちいい」
アーロンは満足そうにマーティンを見つめた。
「うぅん・・暑い・・」
突然ダニーが動いた。首を掻きながらもぞもぞ動いている。
マーティンはさっと離れると様子を窺った。アーロンもペニスをしまうと様子を窺う。
「ダニー、ダニー」
アーロンはダニーを揺り動かした。ダニーは一度は目を開けたものの、また眠ってしまう。
「大丈夫みたいだ。続きをしよう」
「嫌だ、僕はもうしたくない」
頑なに拒否され、アーロンは渋々ダニーを抱き上げるとゲストルームへ連れて行って寝かせた。
嫌がるマーティンを隣のベッドに押し倒すと目をじっと見つめる。
そのままキスされそうになって顔を背けた。
「なんでこんな酷いことをするんだよ・・・僕が何かした?」
アーロンはそれには答えずに無理やりキスをすると部屋から連れ出した。
ベッドルームに場所を移したアーロンはドアに鍵をかけた。
「さあ、これならいいだろ」
パンツとトランクスを一緒に脱ぎ捨てたアーロンは仁王立ちになっている。
マーティンはのろのろと前に座ると、さっきのフェラチオの続きを始めた。
おなかにくっつきそうなほど勃起したペニスを咥え、必死に舌を這わす。
射精させればダニーと帰れる、そう自分に言い聞かせていないと泣き出しそうだ。
「あぁっ、イク!」
アーロンはマーティンの頭を押さえつけると、何度か腰を振って射精した。
マーティンはティッシュに精液を吐き出すとベッドルームを出ようとしたが、アーロンが強引に連れ戻した。
「何やってんの、まだこれからなんだよ」
アーロンの手はマーティンのベルトを外すと素早く動いて、下半身をあらわにした。
萎えたペニスを弄られ、すぐに勃起してしまう。アナルにも指を入れられ、マーティンは喘いだ。
「い、嫌だ・・やめっ・やだ!」
「こんなに感じてるくせに。アナルがひくついてるよ」
アーロンはローションを垂らすと生で挿入しようとしたが、マーティンはコンドームを着けてくれと必死に頼んだ。
言われたとおりコンドームを被せると遠慮なく中に腰を進める。
「あぅっ!やっ・・ぁぁっ・・」
マーティンは声を抑えようとして自分の手を噛んだ。アーロンはますます激しく腰を使う。
「僕は感じている声が聞きたいんだ」
アーロンに両手を押さえつけられ、マーティンは声を押し殺すことに集中したものの、体の中が熱くてたまらない。
ペニスが時々腹に触れ、甘い疼きを先端からももたらす。
「んっ・・っ・・あっっだめ!ああーっ!」
果てたマーティンの体は何度もびくんと痙攣した。満足そうなアーロンを見たくなくて目を閉じる。
アーロンは肩を掴んで腰を打ち付けると射精した。
ドクンと脈打つペニスの感触が気持ち悪い。
マーティンに無理やりキスをした後で、ようやくペニスを抜いた。
マーティンは怒りに震える手で体の後始末をした。ティッシュを力任せにゴミ箱に投げつける。
アーロンはばつの悪そうな顔をしながらコンドームを外していた。
「・・また会おう」
アーロンは出て行きかけたマーティンに言ったが、マーティンは黙って部屋を出た。
「ダニー、起きて。帰ろう」
「ん?ここ、どこや」
「アーロンのアパートだよ。僕と帰ろう」
マーティンは酒臭いダニーの体を支えるふりをして抱きついた。心の中でごめんなさいをくり返しながら・・・
翌日、ダニーはダブルエスプレッソとスコーンをスターバックスで買って、オフィスに向かった。
マーティンはまだ来ていない。ダニーは急いで朝食を済ませてマーティンを待った。
定時になってもマーティンは現われなかった。
「おい、ダニー」ボスに呼び止められる。
「お前、マーティンのアパートを見てきてくれないか。今朝、ヴィクターから電話があって、
マーティンが電話に出ないんだそうだ」
「了解っす」
ダニーは局の車を使ってマーティンのアパートに向かった。
合鍵で中に入る。マーティンはベッドで眠っていた。
ブランケットをはぐと、吐しゃ物の匂いがぷんとした。
こいつ寝たまま吐いたんや!
「おい、マーティン、起きろ!シャワーするで!」
「んん、気持ち悪い」
「当たり前や、飲むな言うてるのに」
ダニーは自分も裸になって、マーティンにシャワーを浴びせた。
ぐんにゃりとダニーの身体に身を預けるマーティン。
こりゃ、出勤は無理そうや。
ボスに電話をかける。
「マーティン、風邪がひどくて今日は無理そうですわ。副長官には電話するよう伝えますんで」
「お前、副長官の電話、無視したらあかんで。心配しはってるんやから」
「うるさいな!分かったよ」マーティンは、ダニーと目を合わそうとしない。
ダニーは手早く卵とミルクのポリッジを用意した。
「これ、ランチ、食え。帰りも見に来てやるから」
「・・・」
ダニーは、吐しゃ物で汚れたシーツを洗濯機に放り込み、ベッドメイクをしてから、部屋を出た。
あかんわ、奴の生活がこんなに荒れていたとは。
ダニーはエドに会うことに決めた。エドのオフィスはミッドタウンにあった。
アポなしでダニーは飛び込んだ。
レセプショニストがダニーの名前を告げると、エドが奥から飛んで出てきた。
「こっちにどうぞ、ダニー」
ミッドタウンが一望に見渡せる高層ビルの一角だ。
「この間はごめんなさい。僕、どうにかしてた」
「もう忘れろよ。俺も気にしてへんから。それよりな、マーティンがまた一人で飲み始めたんや」
「え?」エドは顔色を変えた。
「あんなに順調だったのに、どうして?」
「分からん。お前きちんとAAミーティングに連れてってくれるか?」
ダニーはマーティンが飲み始めた理由を隠した。エドをいたずらに傷つけても意味がない。
「分かりました。自制できるように、僕がしっかり面倒を見ます」
「お前は大丈夫なん?」
「どうにか」
「お前も一緒に崩れたら、俺は、お前を一生許さへんからな」
捨て台詞を残して、ダニーはオフィスを去った。
やっぱり俺が面倒見んとあかんのかな。アランに何て言おう。
俺の生活はこの上なく幸せなのに、マーティンが足ひっぱりおる。
でも俺もマーティンをほおってはおけへん。これはアランには絶対言えへんわ。
ダニーは急いで、支局に戻った。
夜になり、イーライズのデリで適当に夕食を選んでから、マーティンの家に向かった。
合鍵で入ると、キッチンからいい匂いがする。
見るとエドが料理を作っていた。
「あ、お前来てたん」
「ええ、マーティンが心配になって」
「あいつ、どないしてる?」
「ベッドにこもったままです」
またふとん団子か。
「それじゃ」
「会わないで帰るの?」
「お前がいてるんやから、俺に用はないやろ」
ダニーは、アパートから出ると、デリの紙袋をどさっと道端のゴミ箱に捨てた。
虚しい気持ちが湧いてきて、むしょうに泣きたくなった。
目を覚ましたものの、ダニーはだるそうにマーティンにもたれかかったままだ。
まだ目がトロンとしていて、酒が抜けていない。
タクシーを探しながらフラフラと歩いていたが、途中で何度も立ち止まった。
「さ、僕が背負ってあげる。乗りなよ」
「ええってそんなん、オレも割りと重たいで」
「いいから」
マーティンはダニーを背負うとアパートまで歩き出した。
こんな日に限ってタクシーがつかまらない。
ダニーはマーティンの背中に揺られながらレナード・コーエンを歌っている。
あと4ブロックも歩くのかと思うと大変だったが、ダニーの歌を聴きながらゆっくりと歩いた。
「マーティン、お月さん見てみ。めっちゃ綺麗や」
「ん、そうだね」
ダニーの体温で背中が熱かったが、熱さも重さも忘れて月を見上げた。
「なっ、綺麗やろ?」
ダニーは上機嫌でムーンライト・セレナーデを歌い始めた。
アパートに着くと、全身が汗でびしょ濡れだった。
「あー、やっと着いた。降りて」
「ご苦労ご苦労、乗り心地もよかったわ」
「バカ!」
「怒るなって、汗が飛んでくるやん。ほんまは感謝してるがな」
ダニーは裸になったものの、シャワーをパスしてベッドにもぐりこんでしまった。
マーティンは一人でゆっくりとバスタブに浸かると声を殺して泣いた。
翌朝、咽喉が渇いたダニーは目覚ましよりも早く起きた。
ペットボトルごしに水をガブ飲みしてベッドに戻ると、
眠るマーティンのほっぺにそっと触れた。なんとなく顔色が悪い気がする。
「ボン、朝やで。起きろ」
「ん・・やだ」
マーティンはもぞもぞしながら反対側を向いてしまった。
「しゃあないなぁ・・・目覚ましが鳴るまでやで」
ダニーは髪をくしゃっとするとキッチンに消えた。
バナナスプリットを作ったダニーは、ベッドまで運ぶとマーティンの口元にスプーンを運んだ。
そっとアイスを口に押し込むと、マーティンが目を覚ました。
「んんっ・何?何なの?」
「バナナスプリット。お前好きやろ」
ダニーはチョコたっぷりのアイスクリームを口に運んでやった。
「おいしいか?」
こくんと頷くマーティンに次々と食べさせていると目覚ましが鳴った。
「今日も仕事や。ぼちぼち用意しよか」
「行きたくない。ずっとこのままダニーといたいよ」
「あほ、週末まで我慢せい。そや、またケープメイに行こか?」
「ん、行く!」
マーティンはダニーにもたれかかるとキスをねだった。
やさしくキスをされると、昨日の忌まわしい記憶がなくなる気がする。
二人はそのまましばらくキスを交わし続けた。
ダニーは心底疲れきっていた。捜査もうまく進まないし、マーティンとの仲もこじれにこじれている。
オフィスでも全く口をきかない二人に、思わずヴィヴィアンが助言する。
「また、喧嘩でもしたの?いい加減大人になって、お酒でも飲んで水に流しなよ」
「そやね」
生返事のダニー。マーティンは完全無視だ。
ダニーは、定時になるとそそくさと机を片付け、「それじゃ明日」とオフィスを去った。
まっすぐ地下鉄でアッパーウェストサイドに上がる。
合鍵でアランの部屋に入ると来客がいた。トムだ。
「ただいま!」大声で存在を知らしめる。
「やぁ、ダニー、元気そうじゃないか」
トムが満面の笑顔で迎えた。
二人はビールを半ダースあけながら、メジャーリーグのオールスターゲームの録画を見ていた。
「疲れたから、シャワーするで」
「あぁ、いっておいで」
なんでよりにもよってトムがおんねん!
ダニーは熱いシャワーを浴びて、気持ちをしゃきっとした。
ヘインズのTシャツにアディダスのジャージを履くとリビングに戻る。
「あれ、トムは?」
「お前が帰って来たんで帰ったよ。おかえり」
アランがダニーをぎゅっと抱き締める。
「今日はラムチョップなんだが、どうだい?」
「腹すごく減った!」
「ビールでも飲んでいなさい。すぐ用意するから」
アランは冷蔵庫からアンディーブサラダといさきのカルパッチョを出した。
「やっぱ、アランの料理は最高やな!」
ダニーはぱくぱく食べ始める。
ラムチョップとカルフォルニアのメルローでいい気持ちになった二人は、
ソファーでお互いの身体に愛撫を加えながら、週末の予定を話し合っていた。
「今度はうちでBBQでもしようか?」
「ええな、BBQ楽しいもんな」
「マイルズとデイヴにも手伝ってもらおう。彼らはいいカップルだよな」
「俺らかていいカップルやん、そやろ?」
ダニーはアランの胸に顔を押し付けてすりすりした。
「そろそろ、ベッドに行こうか」「うん」
アランがゆっくりダニーのTシャツとジャージを脱がせる。
ダニーのトランクスはすでにテント状態だ。
「お前って若いよな」
アランが羨ましそうにトランクスを下ろして、ダニーのペニスを握る。
みるみる固さを増すダニーのペニス。
「あぁ、期待でこうなったんやもん」
アランは自分も部屋着を脱ぎ、トランクスを下ろした。
ダニーがアランのペニスを咥えてしごきたてる。
「ん、はぁ、ん」アランが恍惚とした表情を浮かべる。
「今日は俺が入れてもええ?」
「あぁ、来てくれ、ダニー」
ダニーは対面座位で座ると、ローションをアランのアヌスに塗りこんだ。
指に粘膜がまとわりつく。
腰を進めると、少しのひっかかりの後、挿入できた。
アランは気持ちよさで背中を反らせた。
「抜けてしまう、もっと前に来て」
ダニーはアランの肩をつかむと、唇を開けさせ、舌を絡める。
「あぁ、ハニー、すごい!中で動いてくれ」
ダニーはゆっくり腰を前後し、アランのペニスを手で扱きたてた。
「あぁ、あっ、もう出る、あぁー」
アランは身体を反らし、痙攣した。
ダニーは満足そうに腰をさらに動かし、自分もアランの中に思う存分果てた。
「なぁ、トムとはもう寝てないんやろ?」
ダニーは天井を見ながら隣りに寝転ぶアランに尋ねた。
「あぁ、僕の心はお前で一杯だ。このままずっと人生を歩んでいきたい」
思いがけない言葉に、ダニーは思わず、アランの柔らかい胸毛に顔をうずめた。
涙がダニーの茶色の瞳からあふれ出た。身体が震える。
アランはダニーの頬に伝う涙をキスで優しく舐めとった。
二人がスターバックスに行くと、アーロンが並んでいた。
渋るマーティンをなだめて後ろに並ぶと、ダニーは声を掛けた。
「おはよう、アーロン。昨日はごちそうさま」
「あ、おはよう。そんな、お礼なんていいんだよ。僕も楽しかったし」
アーロンはマーティンに微笑みかけたが、マーティンは完全に無視している。
ダニーがこそっとつついたが、それでも無視し続ける。
「ごめんな、こいつ寝起きで機嫌悪いねん」
「いいんだよ、僕は嫌われてるからね。仕方ないさ」
謝るダニーに、アーロンは人のよさそうな笑顔で流した。
「あっ、ここはオレが奢るわ。何にする?」
アーロンはいいと断わったが、ダニーは引き下がらない。
二人に向こうで待つように言うと、一人で列に並んだ。
「おはよう、マーティン」
「・・・・・・・・・」
「昨日は楽しかったよ。また二回もイッちゃった。今度はいつにする?」
アーロンは無視されてもしきりに話しかけたが、ダニーが戻ってきたので口を噤んだ。
「はい、ラテのグランデ。お前はカプチーノやな」
「ありがとう。それじゃまたね」
アーロンはコーヒーを受け取ると足早に立ち去った。
「なぁ、なんぼ嫌いでも礼ぐらい言わんとあかんで。失礼やろ」
支局まで歩きながらダニーはマーティンを咎めた。
「あいつ、メアリーズ・フィッシュ・キャンプで300ドルも払ってたで」
「・・・300ドルぐらいくれてやるよ!バカ!」
「ええっ、ちょっ・・何でそんなキレるねん?けったいなやっちゃなぁ」
「もうあいつのことは話題にしないで!」
マーティンの剣幕に、ダニーはびびりながら頷いた。
「マーティン」
「何だよ!」
「口に泡がついてる」
マーティンは慌てて口を拭った。ダニーの視線に頬が紅潮する。
動揺していることを悟られたくない。
「ごめん。とにかくさ、あいつのことを話すのはやめようよ」
「わかった。この話はやめや」
エレベーターを待っているボスが見え、二人は顔を見合わすとお互いに黙った。
ダニーからはマーティンが神経質そうに階数表示を見つめているのが見える。
不意にいたずらしたくなり、人ごみに紛れてこっそりマーティンの手を握った。
マーティンがびびってキョロキョロした後で目が合い、
相手がわかって急ににんまりしているのを眺めていると可笑しくて笑いそうになる。
あいつ、あほや。オレ以外に誰がすんねん!あー、可笑しい!
「ダニー、どうした?」
「いえ、何でもないっす」
「朝から何をにやけてんだ。しっかりしろ!」
ボスは怪訝そうに眉をひそめると先に降りていった。
ダニーは、またアランの家に引っ越した。
今、掴んでおかなければ、幸せが逃げていきそうで怖くてたまらない。
今までの俺の人生に人並みの幸せなんてなかった。
幸せというものに何の執着もなかったのに、今は逃したくない。
こんな気持ち、生まれて初めてや。
アランはゲストルームを改装して、ダニーのプライバシーを確保した。
「最高やで、アラン!どうやってお返ししていいか」
「身体で返してもらっているからいいよ」
アランはウィンクをすると含み笑いをした。ダニーも釣られて笑い出す。
「ハニー、そろそろ僕らの1周年のアニバーサリーだろ?何がしたい?」
「そんなん、思いつかへんわ。今が幸せすぎるから」
アランは思わずダニーの頭を抱えてぎゅっと抱き締めた。
「かわいいことを言ってくれるね!そうだ、ハンプトンにギルとケン、エドとマーティンを招くのはどうだい?」
ダニーはエドとマーティンの名前を聞いて、躊躇した。
「うん、ええなぁ、みんなでオージーするん?」
わざとふざけた様子でアランに尋ねる。
「あはは、それもいいかもなぁ」
アランは早速、皆にメールを打ち始めた。
週末がやって来た。アランのジャガーを先頭に、ギルのBMW、エドのメルセデスが列を成す。
ギルとケンには、ゲストベッドルームを解放した。
ケンが早速、プールに飛び込んで泳ぎまくっている。
ダニーも負けじとプールに飛び込んだ。
ギルとアランはデッキチェアーに腰かけ、ビールを飲みながら、二人の様子を見ていた。
「まるで子供だな。それにしても1年とはなぁ。正直、こんなに続くとは思っていなかったよ」
ギルが口にする。
「なんでだい?」
「ジャックの事があった後だし、その場しのぎの絆創膏程度に思っていたんだ、ダニーのこと。
それが、本物だったとはね」
「あいつは今までの人生が不遇過ぎたんだ。僕はその埋め合わせをしてやりたい」
「まったく、鉄面皮のアラン・ショアがこれほどまでに惚れ込むとはな。よっぽどベッドがいいのか?」
「企業機密だよ」
アランは声を上げて笑った。
プールでは、ケンがダニーのスウィムウェアーを脱がせようとしていた。
「やめろや!」
「裸で泳ごうよ!」
二人は結局裸になって泳いだ挙句、ジャグジーでも戯れていた。
「ねぇ、ダニー、ギルとアランが寝たらさ、二人でどう?」
ケンがダニーのペニスを撫でながら囁いた。
「お前なぁ!ルール違反やで!」
「もう、ダニーのケチ!」
相変わらずのケンの様子にダニーは苦笑した。
これから、BBQの準備の買い物だ。
ホストのアランとダニーがフード・パントリーに出かけた。
リブロース、ソーセージ、チキン、パテ、エビにハマグリ、野菜、バゲット数本にガーリックバター、
ビールとワインを山ほどを買い込んで、家に帰った。
夜になり、隣りのマイルズ、デイヴも招いて、BBQを始めた。
アランとダニーが焼き方に周り、ケンがドリンク係をこなしている。
マイルズは、ストックブローカーらしく、エドの会社の業績に興味津々だ。
「いたって順調ですよ」エドは自信を持って答えていた。
マーティンは驚いた。やっぱり、エドってすごいや。僕には何も自信もって言えるものがない。
それよりも、マーティンはグリルで楽しそうに肉を焼いているアランとダニーが気になって仕方がなかった。
そんなマーティンの様子にエドも気が気ではない。
ちぐはぐな空気が流れた。
ケンが二人にシャンパンを勧める。
マーティンはぐいっと飲み干してお代わりを促した。
「ねぇ、エドってエド・シュローダーでしょ、どうやって出会ったの?」
「秘密!」
マーティンはエドの腕に自分の腕をからめて、ケンに答えた。
そうでもしないと、ケンがちょっかいを出すからだ。
デイヴはアランと養子の話で盛り上がっていた。
グリルにいるダニーに、マーティンが冷たいビールを持ってくる。
「おう、サンキュ」
「もう1年になるんだね、アランと」
「あぁ、まぁな」話が続かない。
「お前らも続くとええな」
「え?」
「お前とエド」
ダニーがとうもろこしをトングでつつきながら言った。
とても目を見てなんて言えない。
「あぁ、僕らも、続くといいと思ってる」
マーティンはシャンパンをぐいっと飲み干して、グリルから離れた。
あぁ、僕とダニーは本当に終わったんだ。
夜空を見上げているうちに、涙があふれてきた。
エドが急いで近寄って、タオルを渡している。
「どうしたの?」
「あ、煙が目に入っちゃってさ」
鼻をすすりながらマーティンは答えた。
エドがマーティンを抱き締めて、キスをしている。
そんな二人の様子を、ダニーはじっと見つめていた。
633 :
fusianasan:2006/07/27(木) 04:40:45
書き手1さん
ダニーとマーティンは本当にもう終わりなんでしょうか。
ダニーはアランと幸せだけれど、マーティンはまだダニーに未練があるようで
切ないです。あと、ニックはもう登場しないのでしょうか?
書き手2さん
アーロンって優しい面差しのわりにとんでもない奴でしたね。でも、マーティンの
事を彼なりに思っている気持ちが伝わってきました。これからどうなるか楽しみです。
夜中、ダニーは寝つくことが出来ず、そっとベッドを抜け出すと、ジャガーのキーを持って、外へ出た。
気がつくと、エドの別荘まで来ていた。寝静まっている。
すると、ドアがぱたんと開き、中からマーティンが出てきた。
手にワイングラスを持っている。
また飲んでるんや、あいつ。
ダニーが心配そうに見ていると、玄関の敷石につまずいでマーティンが転んだ。
「あ!」
ダニーは、思わず車から降りて、駆け寄り、抱き上げる。
「ん?ダニー?」
「あぁ、俺や。大丈夫か?」
「へーき、ちょっと酔っ払っただけだよ」
ワイングラスが粉々に砕け散ったが、幸い、マーティンに怪我はなさそうだ。
マーティンはこの前と違って、妙に静かだった。
「庭に行かない?ベンチがあるから」
マーティンが強引にダニーの腕を掴んで、庭に回る。
プールサイドにマットレスを敷き詰めた大きなベンチがあった。
二人で腰掛ける。どちらからでもなく、唇が合わさる。
ダニーが舌でマーティンの唇を割ると、マーティンが舌を絡めてきた。
「あぁ、ダニー、会いたかった!」
「俺もや」
もどかしそうにパジャマを脱がせあう二人。
マーティンがダニーのペニスを求めて、唇を身体に這わせる。
「早う咥えてくれ、俺もう我慢できへん」
ダニーはマーティンの口にペニスを強引に押し込んだ。
「うぐ、ん、ん」
マーティンの一生懸命のフェラチオにダニーは唸った。
「あぁ、はぁ、お前に、入れて、ええか」
ダニーはマーティンの頭を押さえつけると、腰を前後させて、忙しく射精した。
「俺のを吐き出せ」
ダニーは自分の精液を手のひらに取ると、マーティンのアヌスに塗りこんだ。
中がひくひく誘っている。
「あぁぁん、気持ちいい、ダニー、早く来て」
「あぁ、足上げろ」
マーティンはベンチの背に足を乗っけた。
ダニーは自分のペニスを扱きたて、もう一度屹立させた。
マーティンの足をさらに広げて、蕾を晒すと一気にマーティンの中に押し入った。
「うぁあ、すごいよ、ダニー」
「お前もや、そんなに締め付けると、俺、だめや」
「待ってて。一緒にイキたいんだ」
「あぁ、俺もや、早う、イキそうや」
ダニーは腰の動きを早めた。マーティンもダニーにあわせて腰を上下させる。
「あぁー!」
「う、ううわぁ!」
二人は同時に射精した。荒い息を整え、静かにプールに入って汗と精液を洗い流す。
腕を身体に絡めてキスをしてくるマーティンに
「俺、もう帰らんとあかんわ、ごめんな」とダニーは呟いた。
「なんで謝るんだよ」
「お前と一緒にいられなくてごめんな」
「しょうがないじゃん。ダニーにはアランがいるんだし」
「お前、それでええんか?」
「よくないけど・・よくないけど・・」
マーティンは顔に水をパシャパシャかけた。青い瞳が濡れている。
突然、リビングの電気がついた。
「やばい!エドが起きちゃった。ダニー、帰って!」
「あぁ、またな」
「愛してる」
「俺もや」
ダニーは急いでプールから上がり、パジャマとサンダルをまとめて、裸のまま車に走っていった。
「くっくく!」ダニーは、車の中でパジャマを着ながら、笑い出した。
ミーティングの最中、マーティンがぱたっとデスクにうつ伏せになった。
「何だ、居眠りか?おい、マーティン!」
ボスが声を掛けても反応がない。
「マーティン?」
隣にいたヴィヴィアンが様子を見ると、うつろな目でぼんやりしていた。
「あ、ヴィ・ヴ・・・」
それっきりまたパタンと突っ伏してしまった。
「まあ大変!すごい熱よ!」
「えっ、さっきまで何ともなかったのに」
ダニーもサマンサも驚いてマーティンに触れた。体が燃えるように熱い。
「ボス、病院に行ったほうがいいみたい」
サマンサが額に触れながら心配そうに言った。
「よし、誰か付き添ってやれ」
「それやったらオレが連れて行く」
ダニーは返事も聞かずに立ち上がると、ぐったりするマーティンの体を抱え、エレベーターで地下ガレージに下りた。
「ボン、大丈夫や。すぐに病院に連れて行ったるからな」
ダニーが話しかけてもマーティンは返事をしない。
時々魘されてうわ言で何か言っているが、何を言っているのかわからない。
えらいこっちゃ!意識が朦朧としてるやん!
ダニーは大急ぎでスチュワートのクリニックへ向かった。
路上にめちゃくちゃに車を停め、マーティンを抱きかかえてクリニックへ飛び込むと、
驚いたジェニファーが二人を見てカルテを落とした。
「ジェニファー、トロイは?トロイ呼んでくれ!」
丁度患者と出てきたスチュワートは、錯乱しているダニーを見て走ってきた。
「おいっ、撃たれたのか!」
「ちゃうちゃう、早よ診て、すごい熱やねん」
ダニーは診察室のベッドにマーティンを寝かせた。
「さっき急に倒れたんや。朝は何ともなかったんやで」
「わかった。お前は外に出てろ」
ダニーは廊下のベンチに座るとうな垂れた。心配で何も手につかない。
「テイラー捜査官、これどうぞ」
ジェニファーがコーヒーを差し出した。礼を言って受け取るが飲む気になれない。
しばらくするとスチュワートが出てきた。
「極度の疲労による発熱だな。今は薬で眠ってるけどもう大丈夫だろう」
「よかった・・・」
ダニーは一気に疲れを感じ、ベンチにへたり込んだ。
昨日オレを背負って歩いたせいや・・・くそっ!それにアーロンのこともあいつには負担やったんや・・・
ダニーは自分の不甲斐なさを責めた。
「心配するな、オレが面倒見るよ。帰りにマーティンのアパートまで送ってくから」
「ん・・ほな、頼むな。オレは支局に戻らなあかんから。また来れたら昼休みに来るわ」
本当はこのまま様子を見てやりたかったが仕事がある。
後ろ髪を引かれる思いで支局に戻った。
マーティンが額の冷たさに目を覚ますと、ジェニファーがいた。
心配そうに覗き込まれていてドキドキする。何がなんだか事情が理解できない。
「あら、気がついたのね、よかった。テイラー捜査官がさっきまでいたのよ」
「・・え、ダニーが?」
「ええ、昼休みだからって。フィッツジェラルドさんもFBIだったなんてびっくり。ドクター・バートンを呼ぶわね」
「あ、お願いします」
ジェニファーと入れ替わりにスチュワートが入ってきた。点滴を調整しながら額に手を置く。
「体がだるいだろ?あと一時間ぐらいで楽になるからな」
「・・なんで僕ここにいるの?」
「オフィスで倒れたんだよ。テイラーがパニクっててさ、撃たれたのかと思ったぜ」
スチュワートは笑っていたが、目は笑っていない。
そっとキスされるうちに、マーティンはそのまま眠ってしまった。
>>633 さん
感想ありがとうございます。
ダニーとマーティンは不滅(笑)なので、今日のエピになりました。
ニックは再登場予定です。
マーティンが次に目を覚ますと自分のベッドだった。
ダニーが隣で手を握ったまま眠っている。まだ夜が明けたばかりだ。
「ダニィ」
「ん・・あ、マーティン・・起きたん」
ダニーが額に手をやると熱が下がっていた。
「大分熱も下がったみたいや。よかったな」
マーティンはこくんと頷くと体を起こした。
「まだ寝とき。しんどいやろ」
「・・トイレ」
「そっか、それはしゃあないな」
ダニーはトイレに行くのに手を貸した。マーティンを抱えるようにしてゆっくり歩く。
足元がおぼつかないので、用を足す間も支えてやる。
マーティンは最初嫌がっていたが、あきらめて体をゆだねた。
「恥ずかしいから見ないで」
「見いひん見いひん、わかったから早よしいな」
ダニーは後ろからペニスに手を添えるとおしっこさせた。
「ジェニファーがさ、青い瞳っていいわねぇだって」
用を足しながらぽつぽつ話すので、ダニーは夢の話かと思って笑った。
「ふうん、オレはジェニファーの夢なんか見たことないわ」
「夢じゃないよ。僕のことを覗き込んでさ、そう言ったんだ」
マーティンは困ったように言うとペニスをしまって手を洗った。
「お前の目ってきれいな色やからな。オレも好きや」
ダニーはまぶたにそっとキスをした。
オレンジジュースを飲ませていると、マーティンが急にグラスを置いた。
「あっ、今日はケープ・メイに行く日だ。用意しなきゃ!」
マーティンは慌ててパジャマを脱ぎ始めたが、ふらついてこけそうになった。
へなへなとベッドに倒れこんでいる。
「ほらほら、また熱が出るで。今日は無理や」
「やだ!だって約束したじゃない」
「あかんて!行くんやったら一人で勝手に行け!オレは行かへんからな!」
それでもマーティンは頑なに行くと言い張り、まったく譲らない。
「なぁ、そんなんで行ったって泳がれへんて。今日はやめとき」
マーティンはじとっと恨みがましく見つめるが、ダニーは気にせずキスした。
「また来週行こ。な?」
「・・ん、約束だよ」
キスひとつでごまかされるマーティンは子供だ。
体をぴたっとくっつけるとダニーの手を握り締めている。
ダニーは手を握り返すと、ぎゅっと抱きしめてやった。
眠っていたダニーはいきなり肩を揺さぶられた。
寝ぼけたまま薄目を開けると、バスケットを持ったスチュワートが突っ立っていた。
「わっ!何や、お前!」
「しーっ!マーティンが起きるじゃないか。静かにしろ」
「それに何、お前の格好?毒リンゴ売りの婆さんか?」
「うるさい、誰がババアだよ!」
二人が言い争っていると、マーティンが目を覚ました。眠そうに目を擦っている。
「ん・・どうしたのさ?」
「ごめんな、テイラーがうるさくて」
「はぁ?」
ダニーは憮然としたが、スチュワートは構わず続けた。
「これ、母から。昨日食べたいって言ってたろ」
マーティンがバスケットの中を見ると、ポテトとアーティチョークのグラタンが見えた。
「わー、僕に?やったー!」
一度しか会ったことのない自分のために、他人の母親がわざわざ作ってくれたのかと思うと、うっかり涙ぐみそうになる。
「あ、これ、ここの鍵。昨夜うっかり返すの忘れててさ・・」
スチュワートは鍵を渡すと隣に座った。熱が下がったか額に触れる。
「腹減ったろ?冷めないうちに食べろ。テイラーも一緒に食べようぜ」
「へー、オレの分もあるやなんて意外やわ」
「じゃあ食うな」
憎まれ口を叩くダニーとスチュワート。
「ごめん、先に行ってて」
マーティンに言われた二人は顔を見合わせるとベッドルームを出た。
「あいつ、泣いてへんかった?」
「こういう時はな、気づかないふりをしてやるのが大人なんだよ、バカ!」
「バカは余計やろ!」
マーティンが出てきたので二人はお互いに知らん顔をする。
ダニーがキッチンでお皿とカトラリーを出していると、
水を取りに来たスチュワートが横を通り抜ける時にダニーのおでこにキスをした。
突然のさりげないキスに戸惑い体が固まる。
こんなことでドキドキしている自分が滑稽に思えた。
バスケットの中には、グラタンのほかにパンプキンブレッドも入っていた。
まだふつふつとしてそうなぐらい熱いグラタンを取り分けると、いただきますと言いながらマーティンががっつく。
続いてダニーも食べたが、まったりしていておいしい。すっかり気に入ってレシピが知りたくなった。
「なぁ、これのレシピが知りたいんやけど」
「は?レシピ?」
「そう。お前のおかんに聞いてくれたら助かるんやけどな」
「オレが聞いたってわからないんじゃないかな。ほら、オレは皮むきしかできないし」
「あほ、聞いたとおりにメモってくれたらいいんや。頼んだで」
「わかったよ。母にヘンな誤解されなきゃいいけど・・」
スチュワートはセロリにピーナッツバターを塗るとガシガシかじった。
食事の後でマーティンをベッドに寝かせようとすると、またケープ・メイに行くと言い出した。
「騒々しいな、何やってんだよ。マーティン、寝てなきゃだめじゃないか」
「ほらな、トロイも言うてるやん。早よ寝とけ」
マーティンは二人に強引に寝かされた。布団でしっかり包まれ身動きできない。
「僕はもう平気だよ、熱もないし。今から行ったら明日の朝から泳げるじゃん」
「そうか、ほな勝手に行け!どあほが!」
ムカついたダニーは手を離すとそっぽを向いた。
「ケープ・メイ?」
スチュワートに聞き返され、マーティンは頷くともう一度行くと宣言した。
「来週にしろよ。それにさ、ニュージャージーなら他にもおもしろいところがいっぱいあるんだぜ」
「へー、スチュー、ニュージャージーに住んでたの?」
「いいや、エドワードがプリンストンにいってたからさ」
「そう・・・」
マーティンは気の毒そうにうつむいた。
「なんだよ、そんな顔するな。とにかく今日はおとなしくベッドにいろ。治ったら連れて行ってやるから」
うまく言いくるめられたマーティンは渋々頷くと目を閉じた。ダニーとスチュワートは視線を交わす。
マーティンが眠ったのを確認すると、二人はベッドルームを出た。
「あいつは子供っぽいんだからさ、もっとうまくやれよ」
「そんなん知らん!」
ダニーが頭に乗せられた手を振り払うと、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「お前も子供だな」
耳元でささやかれ、ダニーがドキドキしながら振り向くと、生温かい舌が唇をこじ開けて入ってきた。
「んんっ・・ぁ」
ダニーは自分の漏らした上ずった声に思わず頬が紅潮した。
冷たい指に転がされた乳首はすっかり立っていてそれも恥ずかしい。
「いやらしいな、テイラー」
こりこりと弄られながら指摘され、ダニーの羞恥心はさらに煽られた。
腰の辺りに勃起したペニスが当たっている。ダニーのペニスもお腹にくっつきそうなぐらいだ。
二人はお互いに下だけずらすと黙ったままキスを交わした。
ペニスが触れ合い、ゾクゾクする。ダニーは後ろを向くとソファに手をついた。
スチュワートは挿入しようとしたものの、ローションもオイルもベッドルームだ。取りに行くのはまずい。
テーブルの上のピーナッツバターを手に取ると、自分のペニスに塗りたくり、
アナルに押し当てると少しずつペニスをめり込ませた。
奥まで挿入すると羽交い絞めにしたまま腰を振る。
ダニーは声を上げないように堪えながら快感に喘いだ。
マーティンが出てきたらおしまいだ。二人は辺りを窺いながら行為に耽る。
ダニーは自分でもペニスを扱くと早々に果てた。手の中の精液が生温かい。
イッた余韻に浸っていると肩をぐっと掴まれ、スチュワートが中で射精したのがわかった。
二人はキスを交わすと、何もなかったかのように離れた。
交代でシャワーをざっと浴び、世間話をしながらアイスクリームを食べる。
こんな付き合いも悪くないな、スプーンを持つ指先を見つめながらダニーはふとそう思った。
支局では、さらに日焼けしているダニーとマーティンに、サマンサの鋭い突っ込みが続いていた。
「まさか、ダニーまでハンプトン行ったなんて言わないでよね」
「そのまさかや」
「え!やだー、みんなで楽しんでる!どうせ女子禁制なんでしょ?」
「まぁな、もうええやん、サム」
マーティンはひたすら笑ってごまかしていた。
サマンサがコピーを取りに立ち上がると、二人は身をすくめて、微笑みあった。
ハンプトンの一夜が、二人の中の何かを変えていた。
ヴィヴィアンが安心したように「喧嘩は終わったんだね。ボスも気にしてたよ」と二人に言った。
ウワサをすれば、ボスが二人をオフィスに呼んでいる。
二人はやれやれという顔をして席を立った。
「お前たち、喧嘩していたらしいが?」
「いえ、ちょっとした意見の行き違いでした」マーティンが釈明した。
「もう解決したんだな?」
「はい、それはもうばっちりです」ダニーが付け加える。
「よし二人で聞き込みだ、行って来い」
「了解っす!」
局の車をダニーの運転で出かける二人。
マーティンはギアに置かれたダニーの手をぎゅっと握った。
「何や?」
「嬉しいでしょ?」
「そんなん、嬉しかないわ」
「じゃあ、これは?」
マーティンはダニーの股間に手を伸ばし、パンツの上から右寄りのペニスをなぞった。
「それのが、ええなぁ」二人で笑い出す。
「そんじゃ、捜査に集中するで」
「分かりました、先輩!」
失踪者の女性が飼っている犬の鳴き声で、隣人ともめていた事を突き止めた二人。
犬も一緒にいなくなっているということは、夜逃げか?
大家と話をしている最中、当の失踪者が犬を抱いて戻ってきた。
「ミズ・ミラー?」
「そうだけど?」
「ご家族から捜索願が出ています。FBIです」
「え?」ミズ・ミラーは大笑いし始めた。
「この子と泊まれるモーテルにいただけなのよ。ここじゃ気が休まらないから。ねぇ、プリンス!」
プードルに頬ずりするミズ・ミラー。
「それでは、ご家族に連絡を取ってください。お願いします」
二人は、アパートを出た。
「やれやれやな」
「いつもこんな事件ばっかりだといいね」
「そや、これからモーテル行かへんか?」
ダニーが目を輝かせてマーティンを誘う。
「だって、仕事中だよ!」
「ええやん、ほんの30分や」
二人は、クイーンズのモーテルに部屋を取った。
ドアを閉めるやいなや、服を脱がせあい、キスをしまくる。
ダニーがマーティンのペニスを咥えた。
「え、ダニー?」
困惑するマーティンに「今日はお前に入れて欲しいんや」とダニーが頼んだ。
ジャケットのポケットから携帯用の小さなボトルを取り出す。
「ダニーったら用意してたんだ!」
「お前といつでもええこと出来るようにな」
ダニーは照れ笑いを見せた。
ローションを自分のアヌスに塗りこむと、ダニーは、四つんばいになって、マーティンを誘った。
「早う、マーティン、俺に入れて!」
マーティンはぎんぎんに固くなったペニスをダニーの蕾に押し当てると、ぐいっと挿入した。
「あぁ、お前の大きいで!」
「そんなに締めないで!もうイきそうだよ!」
「かまへん、来てくれ!俺ももたへんから!」
二人は性急に身体を動かすと、前後して射精した。
「さぁ、シャワーや。石鹸使うとバレるから、気をつけんと」
二人で、ざっとシャワーをして、モーテルをチェックアウトした。
モーテルの主人はスーツ姿の男二人の逢瀬に、訳知り顔をして、割引クーポンをくれた。
「あの主人、愛想なしのわりにはええとこあるやん」
ダニーはクーポンをジャケットのポケットにしまうと、支局に電話を入れ、
失踪者発見を報告して、出発した。
ハンプトン以来、ダニー、アラン、マーティン、エドは頻繁に食事に出かけるようになっていた。
表向きは仲のよいホワイトカラーの集まりに見える。
マーティンはエドの助けを借りて、アルコールのコントロール方法を身につけたようだ。
ダニーは一安心していた。
今晩は、アランのお気に入りのスペインレストラン「アランフェス」に繰り出した。
「ここのピンチョスはすごいぞ。僕らが止めるまで、いくらでも出してくれる」
4人はカヴァを頼み、乾杯しながら、ピンチョスを食べ始めた。
シコイワシのマリネや、ホワイトアスパラガスのサラダ、イカ墨煮、
イベリコ豚のチョリソーなどがどんどん運ばれてくる。
マーティンは目の色を変えてがつがつと食べていた。
イカ墨煮を食べて笑ったマーティンの顔に皆が爆笑する。
きょとんとするマーティン。
「お前、歯が全部、真っ黒やで」
「え?」
ナフキンで急いでふき取るマーティン。
エドはそんなマーティンを見て幸せそうな顔をしていた。
メインディッシュはお決まりのパエリアだ。
ホロホロ鳥の赤ワイン煮パエリアとシーフードパエリアを頼み、皆でシェアする。
テーブルの下では、ダニーが靴下足になって、マーティンの股間を愛撫していた。
「あぁぁん」思わずマーティンが唸った。
「どうしたの?」エドが心配して尋ねる。
「えーとね、ホロホロ鳥の骨が歯にひっかかった。トイレに行ってくるよ」
ダニーは、うつむいてほくそ笑んだ。
あいつ、トイレで抜いてくるで、きっと。
アランが急に尋ねた。
「エド、マーティンとはうまくいってそうだね?」
「はい、実は僕、長年のパートナーを病気で亡くしてるんです。
マーティンがいなかったら、一生恋愛出来なかったかもしれない」
「誰も皆、恋愛で傷を負っているものさ。その後リセット出来るかどうかが、それからの人生の鍵だよ」
「はい、ドクター、その通りだと悟りました」
「僕だってこいつに会わなかったら、ミジメな老人になっていただろう」
アランはダニーの肩を抱き寄せた。
アラン、ごめんな、俺、またマーティンと寝てんのや、それも今までよりもずっと情熱的に。
ダニーはアランの顔をまともに見られなかった。
「今日は静かだな、ダウンタウン・テイラー」
アランが、抱き寄せた肩をゆすぶった。
「ダウンタウン・テイラーって?」
エドが意外そうな顔をして尋ねる。
「俺のあだ名。下町育ちやから、自然とついたんや」
「ダニー、ご両親はマイアミ?」
「11の時に交通事故で死んだ」
「そうなんだ・・」
エドは痛ましそうな顔をした。
「でも、今は俺には家族がいてる、ここに」
ダニーは、アランの手をぎゅっと握り締めた。
「二人がお似合いなんで、本当に羨ましいです。僕とマーティンもそういう風になれるのかな?」
「お互いの努力次第だろう」
「僕、頑張ります」エドは強く決心したようだった。
ダニーは心をがさがさとひっかれたような感覚に陥ったが、
顔には出さず、黙ってカヴァのグラスをあおった。
ダニーはうなされていた。
「うわー!」
アランはダニーの叫び声で目が覚めた。
「ハニー!」ダニーの瞳孔が開いている。
急いでキッチンから冷えた水を持ってくる。
「ほら、飲んで。今のは夢だ」
ダニーはアランの顔を見ると「あぁ、アラン!」と抱きついた。
「よっぽど怖い夢だったんだね」
「ジム・バーンズが俺の腹をナイフで裂いたんや」
「それが現実じゃない事は、お前が一番よく分かってるはずだ、さぁ、もう大丈夫だから、また眠ろう」
ダニーはこくりと頷くと、ペットボトルを置いて、うとうとし始めた。
忘れもしない、ダニーが殺されかけたあの事件。
またあのトラウマが蘇ってきたのか。
アランは天井をにらみながら考え込んだ。
朝の目覚めはダニーの方が早かった。
アランを起こさないようにそっとベッドから出ると、
コーヒーを仕立てて、ベーグルを解凍した。
ハラペーニョチーズスプレッドとハム、レタスのサンドウィッチを二つ作る。
アランが目覚めてベッドルームから出てきた。
「シャワーまだなんや、一緒にしよ」
シャワーでお互いの身体を洗ううち、手の動きが次第に愛撫に変わっていく。
ダニーのペニスがみるみる屹立した。
「アラン、俺、したくなった」ダニーがアランを見つめる。
「おい、遅れるぞ」
「しゃあないな、分かったわ」
ダニーは残念そうにシャワーから上がった。
ダニーはベーグルサンドをジップロックに入れると、コーヒーを一気飲みし、
「行ってくる」と出て行った。
アランは、ダニーの若さに羨望していた。
いつ、あいつを喜ばせられなくなるだろう。
悩めば悩むほど、不能に近付いていくようで、不安になっていく。
僕としたことが。セラピーにでもかかるか。
アランは笑って不安を吹き飛ばし、今日1人目の患者の準備にかかった。
昼過ぎ、アランは市立病院を訪れた。トムに会うためだ。
「おぅ、アラン、どうかしたか?」
医局でパソコン入力していたトムが顔を上げる。
「ランチ一緒にどうだい?」
「いいね」二人は向かいのダイナーに出かけた。
「急に何だよ?患者の相談か?」
トムがチキンサンドをかじりながら尋ねる。
「いや、そうじゃなくて、言いにくいんだが、その、お前、自分の男の能力に不安持ってないか?」
トムは一瞬きょとんとした顔をしたが、けらけら笑い出した。
「何だよ、お前、不安なのかよ?そりゃ、20代とは違うけどさ、まだ現役だぜ。お前だってそうだろうが」
「あぁ、ただ、うちの子はあの通り若いだろう」
「そうだな。一回り違うんだっけ?だから俺を選べって言ってるのに。
まぁ、毎回喜ばせるのは大変かもな。回数にもよるけど」
トムは一瞬いやらしい表情を浮かべた。
「なぁ、処方してくれないか、あれ」
「あれかよ!60歳になったら考えろよ、ばかだな、お前って案外」
トムはからから笑い飛ばして「じゃ、仕事に戻るから。のろけ話聞いてやったんだから、奢ってくれよな」
と言ってダイナーから出て行った。
ニックがロンドンの個展を終えて、帰国した。
支局にいるマーティンの携帯が震える。
「よう、お姫様、元気してたか?」
「ニック?帰ったんだ!」
「あぁ、今JFK空港。お前さえ良ければ今晩会わないか?」
マーティンは少し躊躇したが、「うん、分かった。捜査がなければ大丈夫。また電話するよ」と電話を切った。
ダニーがまた指でマーティンをトイレに誘い込んだ。
「お前さ、エドと付きおうてるんやろ、ニックはどうするんや」
「ニックも僕の事、気にかけてくれてるから」
「あいつにとっちゃ、お前はグルーピーの一人なのかも知れないやん、それでもええんか?」
「グルーピーの一人なんかじゃないよ!失礼だ!」
マーティンはぷりぷり怒ってトイレから出て行った。
単純そうで複雑なやっちゃな。ダニーは苦笑した。
ニックはMOMAのレストランにマーティンを連れて行った。
「ロンドンは飯がまずくてさ、辟易したぜ」
シェフのおまかせを頼んで、二人でワインを空ける。
「お前、飲めるようになったんだな?」
「うん、自分でコントロール出来るようになったよ」
それもエドのおかげだ。マーティンは後ろめたい気持ちがよぎった。
「今日は家に泊まるよな。お前の身体が恋しい」
ニックはストレートに言った。
「う、うん、分かった」
マーティンは勢いに押されて返事をしてしまった。
食事が終わり、フェラーリでニックのステューディオに戻った。
ドアを開けると、ナタリーが出てきた。
「なんで知らせてくれなかったのよ!帰りの便!」
相当な剣幕だ。マーティンは思わず脅えて、ニックの影に隠れた。
「急に決めたんでな。今日はお姫様と過ごすんだ。お前は邪魔だよ」
ナタリーは傷ついた顔をした。
「ねぇ、お姫様、貴方一人がニックと寝てると思ったら大間違いよ」
「ナタリー!いらない口叩くな、さぁ帰れ!」
ニックはナタリーを追い出した。
「嫌な気持ちにさせて済まない。ナタリーと俺とは、昔つきあってたんだよ」
ニックがついに白状した。
「ふうん、ナタリーはまだニックに気があるんじゃない?それに鍵持ってるなんてヘンだよ」
マーティンは冷たく言い放った。
「おい、お姫様、機嫌直してくれよ。俺は切ないよ。ロンドンでも誰とも寝なかったんだぜ」
本当なんだろうか?マーティンは訝った。
「な、マーティン、俺、結構お前の事、マジなんだからな」
ニックはマーティンの顔を自分の方に向けると、激しくキスをした。
暴れる舌がマーティンの口の中を味わう。
マーティンは気持ちとは裏腹に、身体が反応するのを感じた。
ニックにジャケットを脱がされ、ベルトをはずされる。
強く抱き締められ、自分のペニスに硬くなったニックのペニスが触れている。
思わず喘ぎ声をあげるマーティン。
「ほら、したくなってきたろう?ベッドに行こうぜ」
マーティンはニックの情熱とテクニックに負けて、
服を自分で脱ぎ捨てるとベッドルームに上がっていった。
僕って、どうしてこう誘惑に弱いんだろう。
やっぱり、ニックとも寝たい。
暑い〜、エアコン効いてへんやん・・・
ダニーのアパートはエアコンの調子が悪いのか、なかなか室温が下がらない。
トランクス一枚でベッドに寝転んだものの、暑くて眠れそうもない。
もう深夜だ。少し迷ったものの携帯を取り出すとマーティンに電話した。
「ふぁぃ・・フィッジェラルろ・・」
寝ぼけたマーティンが出た。よく眠っていたのか声が掠れている。
「あ、オレや。起こしてごめんな」
「ぅん・・ダニィか、いいよ、どうしたの?」
「お前んとこ、エアコン効いてる?」
「うん、効いてる。涼しいよ」
「ほんま?今から行くから」
ダニーは嬉々として電話を切ると蒸し暑いアパートを飛び出した。
街も道路も熱波で空気が澱んでいてもわ〜んとしている。
少し外気に触れるだけで、肌がじっとりと汗ばんだ。
マーティンのアパートに着き、静かにベッドルームに入ると、中はひんやりしていて涼しい。
うはー、サイコー!ダニーの頬は自然と緩んだ。
落ち着いてベッドに目をやると、マーティンはぐっすり眠っているようだ。
汗に濡れたシャツを脱ぎ捨て、起こさないようにベッドに入って目を閉じた。
朝6時、マーティンが目覚ましの音で目を覚ますと、隣でダニーが眠っていた。
ん?ダニー?なんで?・・・ま、いっか!
ジョギングに行くのをやめて、ダニーの体にぴったり寄り添った。ダニーの体は少し汗臭い。
首筋や脇の下を少し舐めてみるとしょっぱい味がする。マーティンの舌はだんだん下に下りた。
朝立ちしたペニスをちろちろ舐めていると、ダニーがううんと呻いた。
自分のペニスもはちきれそうになっていて、トランクスの布地が擦れるだけでペニスがピクンと反り返った。
ダニーのペニスにローションを塗りたくって跨ると、マーティンは腰を擦りつけた。
「んうぅぅ」
起こさないように声を堪えるが、粘膜が擦られるとどうしても声が漏れる。
「ふ・・・・んぅッ・・・あぁー」
「・・マーティン?」
目を覚ましたダニーはマーティンとつながっているのを見ると、下から何度も突き上げた。
マーティンはダニーの動きに合わせるように腰を動かす。
「やっ、ダ、ダニィ・・イク、イっちゃう!」
ドクンと出たマーティンの精液を目の当たりにし、興奮したダニーは体を押さえつけると腰を振った。
イった直後のアナルに締めつけられ、腰が蕩けそうなぐらい気持ちいい。
「ああっ・・オレも限界や、イクで、マーティン!」
ダニーは果てるとマーティンの体を抱きしめた。このまましばらく動きたくない。
ふと時計を見ると、家を出る時間が迫っていた。
「そろそろ着替えよう、また遅れそうや」
「やだ、もう少しこのままでいたいよ」
「あほ、遅刻したらまたボスがうるさいやん。そや、オレ今日からお前んちに泊まるから」
「本当?」
マーティンは嬉しそうに頭をもたせかけた。
「ああ、当分世話になるわ。行こう」
ダニーはいつものように髪をくしゃっとすると、先にベッドから出た。
マーティンも慌ててバスルームに向かう。二人そろって遅刻するわけにいかない。
途中でスターバックスに立ち寄り、モカ・フラペチーノを買うと二人は支局に急いだ。
翌日、マーティンは昨日と同じスーツで出勤した。
ダニーはニックと寝たことを一瞬のうちに見て取った。
あいつ、何やってんねん。
メールを打つ。「夕刻、捜査会議希望」
マーティンもかたかた打ち返してくる。「承諾@貴宅」
やば!俺、アランと住み始めた事、あいつに言うてへんかった。
ブルックリンのアパートにはしばらく寄っていなかった。
ダニーは定時に仕事を終えると、急いで、タイ料理のデリで適当に料理を選び、
ビールとワインを買って、アパートに戻った。窓を開けて空気を入れ替える。
マーティンが疲れた顔でやって来た。
「よう、昨日遅かったんやろ。疲れた顔して。お前、ニックと寝てるんか」
「ダニーには関係ないでしょ」
うだるような暑さのせいか、マーティンの機嫌が悪かった。
「そんな言い方ないやろ!ほら、ビールでも飲んで頭冷やせ」
ダニーからシンハービールの瓶を受け取ると、マーティンはがぶ飲みした。
料理は、牛肉サラダと鶏ミンチのバジル炒め、タイ米にレッドカレーとグリーンカレーだった。
「夏は辛い料理が美味しいね!」
やっと機嫌を直したのか饒舌になるマーティン。
「お前、それで、ニックとエドの事、どうすんねん」
「分からないよ。二人とも違うタイプだしさ」
「俺のことは?」ダニーは一番気になる事を口にした。
「ダニーは特別。誰とも比較出来ないよ」
「エドは本気でお前の事考えてるで」
「うん、分かってる。でもニックとも別れられそうにないや」
マーティンはビールをあおった。
「お前、ほんま寂しがり屋な。ばち当たるで」
「ダニーと一緒に住めたら、もう誰とも付き合わないよ」
ダニーは絶句した。
「そんな無理いうなや。支局に知られたら大変やで」
「分かってる。無理なんだよね」
マーティンはがっくり肩を落とした。
「そんなに気を落とさんと、冷めないうちに早よ食べ」
「うん」
二人は食事を終えて、ベランダに出て、夜風に当たりながらワインを飲んでいた。
「今日は泊まれへんな。お前着替えんと」
「うん、そうだね。そろそろ帰るよ。疲れたから」
「その方がええかもな」
ダニーは元気のないマーティンをマスタングに乗せると、アッパーイーストエンドに上った。
アパート前でマーティンを降ろすと、アランに電話をかけた。
「今、食事終わったとこや、これから帰る」
「ああ、待ってるよ、愛してる」
「俺も」
ダニーは自分だけ安定した生活を甘受しているのに後ろめたさを感じながら、
アッパーウェストエンドに車を進めた。
マーティンの寂しさは、どんなに男と付き合っても埋められないのだろう。
俺、どないすればええんや!
アランがドアで迎えてくれた。
部屋に帰るなり、ダニーをきつく抱き締める。
「どないしたん、アラン?」
「寂しかったんだ、今日は何故か無性に。バスに入るだろ?」
「うん、汗だくや」
「お前の汗の匂いがたまらないんだけれどな」
「臭いだけやで」
アランはバスにお湯を張りに行った。
ダニーは、やっとリラックスして、部屋着に着替えてバスの準備が出来るのを待った。
マーティンは仕事が終わるといそいそと帰り支度を始めた。
「ダニー、行こう」
「へ?あ、ああ、待ってな」
突然急かされ、ダニーもあたふたと帰り支度をする。
「ねぇ、また合コン?」
訝しそうなサマンサの視線が冷たい。
二人は曖昧な返事をするとオフィスを出た。
「お前なぁ、あからさまにオレを誘うな。みんなに怪しまれるやろ」
「ごめん。嬉しくてさ、つい・・」
ダニーに叱られ、マーティンはしゅんとした。
「わかったらいいんや。晩メシ食って帰ろう」
「ん、いいね」
マーティンはけろっとして食べたいものを考えている。
こいつ・・・ダニーは思わず苦笑した。
サイゴン・グリルで夕食を食べ、帰りにイーライズに寄った。
ダニーはシリアルを入れただけだが、マーティンはスナックやアイスを次々とカゴに入れている。
チョコバーやキャラメルポップコーンなど、多種多様だ。
「おい、もうやめとけ。太っても知らんで」
「待って、あとひとつだけ」
お気に入りのレイズのポテトチップスを取ろうとすると、後ろから肩をポンと叩かれた。
アーロンに驚いたマーティンはポテトチップスを下に落としてしまった。
「やあ、二人で買物?」
「そうやねん。ホラーでも見ようかなと思って」
「へー、いいな、おもしろそう。マーティン、これ」
アーロンはマーティンが落としたポテトチップスを手渡した。
「どうもありがとう」
マーティンに礼を言われたアーロンは嬉しそうににんまりした。
あー、僕のバカ!なんでこんなヤツにお礼なんて言うんだよ・・・
条件反射とはいえ、マーティンは忸怩たる思いで自分自身に腹を立てた。
ダニーとアーロンはお薦めのホラー映画について話している。
「ダニー、アイスが溶けちゃう」
マーティンは二人を一瞥するとさっさとレジに向かった。
「おい、待てや!ごめんな、ほな、また」
ダニーはマーティンの隣に並んだ。
順番を待っている間に何気なくアーロンを見ると、同じポテトチップスをカゴに入れているのが見えた。
あれ、あのポテチって筋肉バカ推奨?
一人くすくす笑っていると自分たちの番になり、ダニーはチェックを済ませた。
アパートへ帰ると、ダニーはマーティンをがばっと抱きしめた。
「お前、えらかったな」
「何が?」
きょとんとするマーティンにそっとキスをするが、マーティンはますます困惑した。
「ちゃんとお礼を言うたこと。オレはお前のそういうとこが好きや。きちんとしてるっていうか・・」
「あれは・・」
何か言いかける唇を塞ぎ、ダニーは強く抱きしめると舌を絡めた。
マーティンも背中に腕を回すとぎゅっと抱きついた。
ダニーはオフィスで思いがけない訪問客を迎えた。ニックだ。
マーティンは書類整理で書庫に行っていて席をはずしている。
フロアーに現われると、女性陣が騒然とし始めた。
またこの騒ぎかいな!
ダニーが苦笑する。
急いで、ニックを応接室の一つに押し込めた。
「お前が俺に何の用や?」
「マーティンの事に決まってるだろ。俺さ、忙しさにかまけて、あいつと会ってなかったんだよな。
久しぶりに会ったら、雰囲気が変わってたんで、何があったのかと思って。お前なら知ってるだろ?」
ニックのまなざしは真剣だ。
ダニーはニックも本気でマーティンを想っている事を知った。
「お前がいない間、AAミーティング仲間と会うてたから、それちゃうか?」
へたな事をしゃべると、また折檻プレイをされてしまいそうで、ダニーは言葉を選んだ。
「お前との仲はどうなんだよ?」
「俺か?俺、アランとうまくやってるわ」
ニックは思わず微笑んだ。
「へぇ、それはそれは。ゴールインか?」
「まだ、分からん」
「今度、マーティンと4人で飯でも食おうぜ。しばらくはNYにいる予定なんだ」
「お前とかよ!」ダニーは半ば呆れた。
「俺、マーティンの事、結構マジなんだ。今まであんな奴に会った事なかったから」
ニックは照れ笑いを見せた。えくぼが魅力的だ。
思わずダニーもどきりとする。女子職員が騒ぐのも無理ないわな。
「あいつ、純粋やから、傷つけないで欲しい。ラフプレイもご法度やで」
「あぁ、分かったよ。お姫様だもんな、大切にするよ」
ニックはそれじゃあと立ち上がると、エレベーターホールに向かった。
女性職員が立ち上がって見ている。
サマンサがすかさず寄ってきた。
「ねぇ、ダニー、お願い!一度だけでもいいから、ニックとの食事セッティングしてくれない?」
「はぁ?あいつ、めちゃ女ったらしやで。グルーピー沢山はべらせてハーレム状態や」
「そうなんだ・・私なんか、じゃあ無理だわね」
サムは諦めた顔をして席に戻った。
ダニーは自分の心の中の変化に驚いていた。
前は嫉妬が心の中を荒れ狂ったのに、今はマーティンの幸せを一番に考えている。
マーティンが付き合いたい相手と付き合えばいい。
そして、俺との時間がもらえればええんや。
マーティンが席に戻ってきた。思わずダニーは微笑みかけてしまう。
マーティンはきょとんとした顔をしたが、微笑み返してきた。
俺たち、これでええんや。
ダニーはマーティンをトイレに呼び出した。
「なぁ、今日、お前んとこ行ってもええか?」
「え、もちろんだよ」マーティンはにっこりした。
「それじゃ、後でな」
仕事が終わって、ダニーとマーティンは時差でオフィスを出た。
アパートに着き、ドアを閉めるやいなや、マーティンが抱きついてきた。
「ダニー、あぁ、ダニー、会いたかった!」
猛烈な勢いでキスをしてくる。
ダニーが舌をからめると、マーティンは甘い吐息を漏らした。
「やっぱりダニーだよ」
二人はお互いの服を脱がせあい、ベッドルームに直行した。
ダニーのペニスはすでに臨戦態勢に入っていた。
「俺、もうギンギンや。早くお前の中に行きたい」
「待ってて」
マーティンはローションを取り出すと、性急に自分のアヌスの中とダニーのペニスに塗った。
後ろ向きになってアヌスをダニーに晒すと、「ねぇ、早く来て!」と言った。
ダニーは前戯もなく、ずぶりとマーティンの中に挿入した。
ひくひくする内ひだが別の生き物のようだ。
「あぁ、お前そんなに締めるな、イってしまうで」
「まだだめだよ、もっと突いて!」マーティンは懇願した。
ダニーはマーティンが感じる箇所を擦りながら、奥へ奥へとペニスを進めた。
「あぁ、うぅぅん、ダニー、最高だよ!」
「お前もや!あぁ、俺もうもたへん!」
ダニーは身体を痙攣させるとマーティンの中に放出した。
マーティンは自分でペニスをこすり始め、ダニーと前後して、シーツに精をぶちまけた。
汗まみれの二人は、ベッドに横になりながら、天井を見ていた。
「僕ら、うまく行ってるよね」
「あぁ、そうやな」
「お腹減ったよ」
「ピザでも取ろか?」「うん」
ダニーは裸のままキッチンに行くと、冷蔵庫に貼ってあるピザ・ボーイのメニューから適当に選んでオーダーした。
ビールを冷蔵庫から取り出して、マーティンのところに持っていく。
「何だか前より幸せのような気がする」
マーティンがぼんやりと呟いた。
「ああ、俺も」
二人は、またキスを交わし始めた。
ダニーは、アランが寝ていると思って、そっとドアを開けた。
するとリビングのソファーで、アランが葉巻をくゆらせながらブランデーを飲んでいた。
「ただいま」返事がない。
テーブルの上を見ると、この前モーテルの主人からもらった割引クーポンが置いてあった。
はっと息を飲むダニー。
「ただいま、アラン、起きてたんか」
平静を装ってただいまを繰り返す。
アランはゆっくりブランデーグラスを置き、クーポンをひらひらさせた。
「これの説明をしてもらおうか」
眼鏡の奥の瞳が冷たい。
「それな、この前、聞き込みに行ったモーテルの主人がくれたんや」
「本当だろうね?」
「問題外やで、俺にはアランがいてる。もう他はいらへん」
アランは灰皿に葉巻を置くと、ぎゅっとダニーを抱き締めた。
「心配させないでくれ。メイドからこれを受け取った時は、胸をかきむしられる思いだったよ」
「ごめん・・心配かけたんやな、俺」
「このところ残業も多いし、つい疑ってしまった。済まない」
あのプライドの高いアランがこんなに心配してる。ダニーは驚いた。
「シャワーするだろ?」「うん」
ダニーは浴びてきたとも言えるわけがなく、うなずいた。
シャワーブースで温めのお湯に当たっていると、アランが入ってきた。
すぐさまペニスを愛撫される。
マーティンでイったばかりなのに、大丈夫やろか。
ダニーの心配をよそに、ペニスがむくむくと立ち上がり始めた。
よかった!がんばれ、俺のチンチン!
アランがダニーの手を引いて、裸のままベッドルームに連れて行く。
「濡れてるやん」
「いいじゃないか」
アランはダニーのペニスを咥えると、絶妙な舌使いでダニーの感じる箇所を攻め立てた。
「あぁん、気持ちええ」
ダニーは、アランの頭を押えて、フェラチオさせた。
アランを征服しているようで優越感に浸る。
「さぁ、ハニー、僕の中へ」
アランは自らローションを自分の局所に塗りこむとダニーを誘った。
正常位で、ダニーはアランを抱いた。
アランの脚を肩に担ぎ上げ、ずぶっとアランの蕾に押し込む。
硬いままでいてくれよ、俺のチンチン!
アランは気がつかず、よがっている。
「あぁ、ハニー、お前は最高だよ」
「アラン、そんなに締めると俺、イってまう」
「来てくれ。お前の熱いのが欲しいんだ」
ダニーは性急に腰を動かし始めた。
動きに合わせてアランもリズムを合わせる。
二人はほぼ同時に射精した。
アランの精液がダニーの腹にかかる。
「はぁ、はぁ」二人とも荒い息のままだ。
「ハニー、水飲むか?」
アランが冷蔵庫からコントレックスを持ってくる。
二人で交互に飲む。
ダニーは疲れ果て、そのまま寝入ってしまった。
アランは、疲れたダニーの顔をしばらくじっと見つめていたが、
自分も横になり、静かに目を閉じた。
二人は時間差をつけてオフィスを出た。他愛ない話をしながら地下鉄を待つ。
「なぁ、何か食いたいもんある?」
「うーん、ステーキにしようよ。簡単だしおいしいじゃん」
「えー、昨日も食べたやん」
「僕は毎日でもいいんだよ。それにさ、ダニーが焼くとおいしいからね」
「しゃあない、オレは居候やからな。ボンの仰せの通りに」
「やったー!僕も手伝うよ」
地下鉄を降りた二人はイーライズに寄ると食材を買い、一つずつ紙袋を抱えてアパートへ帰った。
ダニーはTシャツに着替えると、早速料理に取り掛かった。
肉を室温に戻す間に、サラダ用の野菜を洗ってマーティンに渡す。
「あのさ、このまま一緒に住んじゃうってのはどうかな?」
遊び半分でサラダスピナーを回していたマーティンが突然切り出した。
「え?」
ダニーが顔を上げると、真剣な青い目と目が合った。どうやら本気らしい。
「副長官になんて言うねん?一緒に住んでますなんて言えるわけないやろ」
「黙ってりゃわかんないよ、平気平気」
「んなわけないやん、あほか!あの副長官やで?」
ダニーは一笑に付すと、ステーキに岩塩と黒胡椒を振って焼き始めた。
マーティンはそんなダニーの背中に抱きついた。
「ねぇ、一週間も一緒にいると僕のこと嫌いになった?」
「何言うてんねん、嫌いになんかなるわけないやろ」
ダニーによしよしされたマーティンは、ようやく安心したのか体を離した。
ほんまは今日帰るって言うつもりやったんやけどな・・・・
ダニーはとっておきのシャトー・マルゴーを飲んで上機嫌のマーティンをチラッと見た。
ダニーの視線に気づくとにっこり笑いかけてくる。
あかんわ、今日はやめとこ。オレ、よう言わん・・・・
そのまま静かに肉を口に運ぶダニーだった。
ダニーはベッドに入るとマーティンの体に手を伸ばした。
マーティンの体はアルコールのせいでほんのりと薄桃色になっている。
黙って目を見つめたまま体中を撫で回すと、マーティンが体を捩らせた。
「やだ、くすぐったいよ」
それでもダニーは何も言わずに体を触り続ける。
マーティンの息遣いが荒くなってきたのを聞きながら執拗に乳首や内股をなぞったが、ペニスには一切手を触れない。
痺れを切らしたマーティンがダニーの手をペニスに押し付けた。
ダニーは反応を楽しむようにペニスを弄り回す。
ぬるついた亀頭を手のひらで弄ぶと、マーティンは切ない吐息をもらした。
ダニーはローションを垂らして騎乗位で挿入させたが、なかなか動こうとしない。
マーティンは自分から腰を擦りつけると腰を振った。
「ぁぁん!ダ、ダニィ・・・」
「お前はいやらしいなぁ。そんなにええの?」
薄笑いを浮かべたダニーに意地悪く聞かれ、マーティンはこくんと頷き腰を揺らした。
ダニーに下から感じている様子を見つめられ、マーティンは恥ずかしくてダニーに抱きついた。
「っく・・ぁ・・ダニーは?・・僕の中じゃだめなの?」
震える声にダニーがハッとして横を向くと、マーティンが泣きそうになっていた。
「あほ、オレも気持ちええに決まってるやん!」
ダニーは体を入れ替えると、マーティンを抱きしめたまま腰を振った。
「やっ、い、いい!」
さっきとは一転してがっつくように抱かれ、あっけなく射精するマーティン。
「んっ・あぁっ!出そうや・・出してもええか・・うぅっ!」
ダニーはマーティンの中に射精するとマーティンの上に覆いかぶさった。
荒い息を吐きながらキスを交わし、ダニーは隣に寝転んだ。
「うん?今日はなんか明るいな。満月か?」
「待って、見てみる」
マーティンがブラインドを上げると、ほとんど満月の月が見えた。
灯りを消すと青白い月の光で部屋の中がくっきりと浮かぶ。
二人は寝転んだまま月を見上げた。
ニックがアランとダニーをディナーに招待してきた。
「ハニー、どうする?」
「あいつもマーティンの事、まじに考えてるみたいやねん。アランの所見が知りたいわ」
「じゃあ、承諾するか」
4人は、ミートパッキンエリアの「ONO」に集合した。
炉辺焼きの席に陣取る。
サシミ、テンプラ、焼き鳥、魚の炉辺焼きがテーブルに並んだ。
ダニーはお頭つきの魚の開きにびっくりしながら、箸を動かしている。
久保田の碧寿と八海山の大吟醸を次々にオーダーするニック。
「許してくれよ、ロンドンの食事がひどかったんだよ」えくぼを浮かべて弁明する。
「ロンドンにはどれ位行ってたんだい?」
「3週間。次はベルリンで個展の予定があるんだ」
マーティンはどんどんニックが遠くに行ってしまうのを実感した。
「マーティン、寂しくないのか?」アランが尋ねる。
「うん、寂しいけど、AAミーティングで友達も出来たし、我慢できるよ」
強がってみせるマーティン。
ダニーは自分もいてるでと口に出して言いたい気分だった。
イカの塩辛ともずくが並んで、ダニーの箸が止まる。
「うまいんだぜ、イカのワタと酒でつけてあるんだ。もずくは海草だよ」
ニックが勧める。アランも頷いているので、もずくをこわごわ口にする。
「あ、意外にいける!」
「そうだろう。食べず嫌いは相変わらずだなぁ」アランがからからと笑った。
だかイカの塩辛だけは、どうしても匂いと外見がだめらしく、
アランは食べさせるのを諦めた。
4人で腹いっぱいに食べて、「ONO」から出る。
「これからどうする?」ニックはまだ元気一杯だ。
「おじさんは退散するよ、ダニーどうする?」
「俺も、夏ばてやねん。家に帰るわ」
二組は店の前で別れた。ニックはまだ飲み足りないらしくバーにマーティンを誘った。
ほど近い「APT」に場所を変える。
VIPラウンジに案内されて、ドンペリニオンが運ばれてきた。
「フルーツ食うだろ?」
「僕もうお腹一杯だよ」
「お前が?信じないね」
トロピカルフルーツ満載のプレートが出てきた。
ニックは「あーん」と言って、マンゴーをマーティンの口に運んでくれる。
マーティンは恥ずかしがった。
「ねぇ、ニックは性癖がバレてもいいわけ?」
「全く構わないよ。兄貴のジョシュはちゃんと結婚してるしな、俺は勝手気ままさ」
「そうなんだ、僕はカミングアウトなんて一生出来そうにない」
「俺が、お前と一生いたいって言ってもダメか?」
「え?どういう事?」
「俺さ、マジでお前の事が大切なんだよ。こんな気持ち初めてなんだ。考えてみてくれよ。即答はいらないから」
ニックはえくぼを見せながら、マーティンに微笑みかけた。
「びっくりしちゃって言葉もないよ」
「そうだろうな、FBI捜査官だもんな、お前。俺もプロポーズしたことなんて、一生に一度きりだ」
マーティンはダニーとエドの事を考えていた。
そんなの決められないよ!
マーティンはドンペリをぐいっとあおって、ニックの身体にもたれかけた。
帰り支度をしているとマーティンの携帯が鳴った。
「はい、フィッツジェラルド」
「あ、オレ。今日さ、カーニバルに行こうぜ」
「カーニバル?」
素っ頓狂な声を上げたマーティンを見つめるダニー。
「すっげー楽しいぞ。前に連れて行ってやるって言ってたろ」
「ん、そうだけど・・」
「決まり!下で待ってろ」
「あっ、ちょっと!」
スチュワートは勝手に決めると電話を切ってしまった。
「トロイ?」
「ん、カーニバルだって。断わるよ」
「ええやん、行って来い」
これでオレも家に帰れる・・・ダニーは行くようにしきりに薦めた。
「やだ!やっぱり行かない!」
「何でやねん。おもしろいで、行ってき」
「やだ!」
ダニーの態度に不信を抱いたのか、マーティンは頑なに拒むと断わってしまった。
「お前って変わってるなぁ。どっかおかしいんちゃう?」
ダニーに呆れられたが、マーティンは気にしない。
アパートに帰ってピザのデリバリーを待っていると、スチュワートが来た。
「やあ、マーティン。もしかしてオレのこと避けてる?」
大きな体が居心地悪そうにしているのが可笑しい。
マーティンが違うと否定するとがばっと抱きしめられた。
「ねー待って、待ってってば!」
「待てない!」
スチュワートはそのままソファに押し倒してダニーに気づき、照れ笑いしながら体を起こした。
「テイラー・・・」
「どうも、トロイ先生。お盛んなことで」
ダニーはにやにやしながらからかう。スチュワートはきまりが悪そうだ。
「あ、その・・お前がいるとは思わなくてさ・・」
「気持ちはわかるで、ずっと会うてへんもんな。ごゆっくりどうぞ」
ダニーはそう言うとキッチンにビールを取りに行き、ピザ屋に電話して追加オーダーした。
ピザを食べながら、、ダニーはいつ帰ると言おうか迷っていた。
今日やったらトロイがいてるし、大丈夫かも・・・
二人はビュイック・オープンの話で異常に盛り上がっている。
よし、今や!ダニーは思い切って切り出した。
「なぁ、マーティン、これ食べたらオレ帰るわ」
「えー、帰るの?」
「うん。アパートほったらかしやから気になるねん。今日はトロイもいてるんやし」
ダニーは自分のお皿をキッチンに運ぶと帰り支度を始めた。
ベッドルームで着替えていると、マーティンが来た。ベッドに座ってじとっと見つめてくる。
「何?」
「あのさ、僕のこと怒ってる?」
「いいや。何で?」
「・・スチューとも寝てるから」
「そんなん怒ってへんて。心配ない、気にすんな」
ダニーはやさしくキスをすると、ブリーフケースを持って立ち上がった。
マーティンがまだ気にしているようなので、もう一度抱きしめてディープキスする。
リビングに戻ると、ビールを飲んでいたスチュワートが立ち上がった。
「テイラー、オレが帰ろうか?」
「いいんや。ほな、また明日な。寝過ごしたらあかんで。トロイ、こいつのことよろしゅう頼みますわ」
マーティンを押しつけると、ダニーは意味ありげにニヤリとした。マーティンは頬が一気に紅潮した。
「じゃあな」
ダニーはスチュワートと拳をガツンと合わせると部屋を出た。
十日ぶりに帰ったアパートは蒸し暑かったが、
窓を開け放してベッドに寝転がると、家に帰った実感がこみ上げてくる。
冷蔵庫の牛乳が腐っていたが、今のダニーには取るに足りない問題だった。
あー、やっぱり家が一番や!
シーツの上でバタ足すると、ダニーは自分の枕に顔を埋めて唸った。
サマンサは、週末ごとに日焼けして戻ってくるダニーには、もう何も言わなくなった。
もともと褐色のダニーの肌は、ブロンズ色に輝き、より一層セクシーな雰囲気をかもし出している。
マーティンの方は、日焼けの赤みが引いて、それなりの色に落ち着いてきた。
「また、ハンプトン行ったの?」マーティンが聞いてきた。
「あぁ、8月中借りっぱなしやから、もったいないやろ」
「ふーん、そうなんだ」
マーティンは何か言いたそうだったが、引き下がった。
何やねん、あいつ。
ダニーが訝っているとボスがオフィスに来いと言っている。
「はい、ボス、何ですか?」
「DCに出張してくれ。ジョン・ドゲット捜査官の依頼だ」
「はぁ?俺にXファイルには触るなっと言ったのはボスやないですか!」
「まぁ、DCに出張する機会も少ないだろうから、たまには行って来い」
「はぁ」
納得しないままダニーは出張準備のためにアランのアパートに戻った。
アランは診療中だ。走り書きしたポストイットを冷蔵庫に貼った。
「DCに出張決定。電話する。愛してる。D」
DC空港に着くと、ドゲット捜査官が待っていた。
「やぁ、テイラー捜査官、ようこそ」
「ご指名ありがとうございます。でもなんで俺なんすか?」
「君とは気が合ったからかな、これが事件のファイルだ。車の中で目を通してくれ」
一見、普通の失踪事件に見えた。が、同様の事件が5年前、10年前に起こっている。
不幸なことに、過去の事件では、失踪者は死体で発見されていた。
連続誘拐殺人事件か?ダニーは早速、捜査に集中した。
本部で、久しぶりにフィッツジェラルド副長官に会った。
「出張だそうだな、ご苦労。うちの息子はどうしている?」
「すこぶる元気で仕事をこなしてはりますよ」
「たまには連絡するように伝えてくれ」
「はい、了解です」
ドゲットが笑っていた。
「相棒がお偉いさんのご子息だと大変だな」
「ま、それも仕事のうちっすから」
二人はFBIに届いた挑戦状メールを音声解析し、犯人のあじとを突き止めた。
鉄道の踏み切りの隣りのあじとに、二人で突入する。
くしくも、犯人が失踪者ののどにナイフを当ててビデオ撮影している最中だった。
ダニーが犯人に飛び掛り、ナイフを捨てさせた。
ドゲットが失踪者を保護する。
「よかったっすね」
「ああ、無事解決だ。ありがとう。今日は祝杯だな」
ドゲットがウィンクをしたので、ダニーはドキっとした。
今の何やろ。
ドゲットの案内で、DC一という評判の寿司バーに行った。
ドゲットがどんどん日本酒を頼むのに驚いたが、先輩の勧めを断れず、
ダニーはご相伴に預かった。
出張と緊張もあって、べろんべろんに酔っ払ったダニーは、ドゲットにホテルの部屋まで送ってもらった。
「大丈夫か?テイラー?」
「ああ、いい気持ちっす、ははは」
「ご機嫌だな〜。水を持ってこよう」
自分で飲めないダニーに、ドゲットが口移しで水を飲ませる。
思わず、ダニーはドゲットの舌に自分の舌をからめてしまった。
ドゲットの身体が一瞬、硬直した。
しかし、次の瞬間、ダニーはドゲットの逞しい腕に身体を包まれるのを感じた。
「ドゲット捜査官?」
「だまって・・」
ドゲットは、ダニーの服を注意深く脱がせると、自分も脱いでダニーの身体に重ねた。
「これって・・」
「俺、男とは初めてなんだ。だが君を抱きたいと思った。抱いてもいいか?」
ドゲットの猫のような瞳に見つめられ、ダニーは脚を広げ、ドゲットに自分の蕾を差し出した。
「いくぞ」「うん」
ダニーはアヌスがミシミシ裂けるのを感じた。
「あぁん、ふぅ」ダニーは心臓が口から出そうだった。
「こんなに君は狭いのか、俺はもうイキそうだ」
「ジョン、来てください、俺の中へ」
ドゲットは腰の動きを早めると、あぁとため息をついて、身体を痙攣させた。
どさっとダニーの身体の上に倒れこむ。
ダニーは、ドゲットの痙攣を身体で感じ、自分もドゲットの腹めがけて射精した。
まだダニーは胸のどきどきが止まらなかった。あのドゲットと寝てしもうた!
ドゲットは、ダニーの身体の上で、寝息を立て始めた。
ダニーはドゲットの身体を横にずらすと、天井を見つめながら、今の出来事を
反芻していた。
ダニーが裁判所から戻ると、マーティンだけが残っていた。
チョコバーをかじりながら退屈そうにボールペンをいじっている。
ダニーに気づくと、嬉しそうに立ち上がった。
「おかえり、みんな先に帰ったよ」
「そうか。お前も帰ればよかったのに」
「僕はいいんだよ。ねぇ、今日もうちに来るんでしょ?」
マーティンは期待に満ちた目でダニーを見上げた。
「いや。オレんちのエアコン、直ったみたいやねん」
「・・じゃあもう来ないの?」
マーティンはつまらなさそうに口をとがらせた。
「ああ、前と同じや」
「ずっと一緒にいたいよ」
「あほ、いつも一緒にいてるやん。さあ、帰ろう」
ダニーは帰り支度を済ませると、ブーブー言うマーティンを促した。
支局を出たものの、マーティンは何も言わずにただ歩いている。
「マーティン、今日は晩メシ奢ったるわ。どこでもええで」
「本当?じゃあね、モンキーバーがいいな、僕」
「モンキーバーか・・」
何であそこやねん、他にもなんぼでもあるのに・・・・
ダニーは嫌だったが、通りの向こうのホテル・エリゼーに向かって歩き始めた。
モンキーバーに行くと、ダニーのことを覚えていたフロアマネージャーが席に案内してくれた。
不思議そうなマーティンの質問を適当にはぐらかし、オーダーを済ませる。
何気なくスタニックを探すと、カウンターできびきびと働いているのが見えた。元気そうだ。
マーティンはダニーの視線の先に目をやると、足を軽く蹴飛ばした。
「いてっ!何や、急に」
「だって、フランス人の方ばっか見てるんだもん」
「だからって蹴ることないやろ。それにあいつはクォーターやっちゅーのに」
「ダニーのバカ!」
マーティンは、ダニーの食べていたカンパチの炭火焼をぐさっと突き刺すと半分横取りした。
ダニーはマーティンの機嫌をとるため、今日も泊まることにした。
アッパーイーストサイドをぶらぶら歩きながらふと見ると、
ドルチェ&ガッバーナの店頭に、下着姿のイタリア代表のポスターが貼ってあった。
年配の女性たちが興味深そうに眺めている。マーティンも興味津々だ。
ダニーは女性たちの会話に耳を欹てると、マーティンを連れて中に入った。
好みのタイプの店員が寄ってきた。ダニーは店員に何かを頼むと、適当に中を見て回る。
他には何も買わず、紙袋を受け取ると店を出た。
「ねぇ、何買ったのさ?」
「アパートに着くまでは内緒♪」
「わかった!下着でしょ?」
「さあ、何やろね〜」
ダニーはにやにやするだけで、ヒントも何も与えず、マーティンの質問に否定も肯定もしない。
部屋に入ると、ダニーはおもむろに紙袋を渡した。
「はい、開けてみ」
マーティンが急いでラッピングを開けると、中にイタリア代表の写真集が入っていた。
「うわー、すっげー!これ僕に?」
「ああ、そんなもんが58ドルやなんてあり得んわ」
「すごいよ、これ。ダニー、ありがと」
マーティンは慎重にページを捲っている。いちいちにんまりしているのが妙にエロい。
「それ見てしっかりオナれ。そやそや、ACミランのもあるんやて。そっちは自分で買え」
ダニーは髪をくしゃくしゃにするとマーティンの後ろからページを覗き込んだ。
「ねぇ、ダニー、出張どうだった?」
オフィスで無邪気にマーティンが聞いてくる。
「ケースは無事解決や」
「それじゃ、お祝いとかしたんでしょ、その、ドゲット捜査官と」
マーティンの瞳がじとっと見つめる。
「あぁ、たらふく寿司食ったで」
「それだけ?」
「もちろんや、他に何がある?」
「だって、ダニー、ドゲット捜査官の事・・」
サマンサが出勤してきたので、二人は離れた。
やばいやばい、あいつも結構勘が冴えてきてるやん。
PCを立ち上げると、ドゲットからサンキュウ・レターが届いていた。
もう会わへんやろうけど、ええ思い出になったな。
ダニーは、しばらくの間、ドゲットの逞しい身体に組み敷かれた自分を思い出し、思わず頬を赤らめた。
そして、当たり障りのないメールを返信して、仕事にとりかかった。
本当は「もっと一緒に仕事がしたいです」とか書きたいんやけどな。
アランからの電話が震える。
「テイラー」
「ハニー、今日はチャリティーイベントの打ち合わせで遅くなる。外食してきてくれ」
「了解。あまり遅くならんようにな」
電話を切ると、サマンサがニヤニヤしていた。
「まったく、あのダニー・テイラーが「あまり遅くならないように」だなんて、どんな相手なのかしら?」
「うるさい!いい加減仕事せいよ、サム」
ダニーはコーヒーを入れに席を立った。
マーティンはダニーの後を追って、コーヒーメーカーの場所にやってきた。
「何や?」
「今日、アランと会わないんでしょ?僕のとこ来てよ」
ダニーは前回の一晩二回を思い出して、躊躇した。
「お前、エドとは会わないんか?」
「うん明日AAミーティングだからさ」
ということは明日はエドとエッチするんか、こいつ。
「そか、じゃあお前んとこ寄るわ」
「わーい」マーティンは小躍りしながら去っていった。
単純なやっちゃ。だから困んねんけどな。
二人は、ジャクソン・ホールでハンバーガーとポテトフライで腹を膨らませ、ビールで盛り上がった。
「お前、上機嫌な?」
「だって、ダニーと一緒にいられるんだもん」
可愛いよ、こいつ。
ダニーの頬が緩む。
タクシーに乗っている間も、マーティンはダニーの手を離そうとしなかった。アパートに着くと、すぐさまキスを求めてくる。
ダニーのパンツのホックをはずすと、中からペニスを探り出す。
「俺、汗臭いで」「いいんだよ」
マーティンはかちゃかちゃと自分のベルトをはずすと、トランクスも一緒に下げた。
「ねぇ、ここで入れて!」
「だって、ローションないやん」
「いいの、入れて!」
ダニーは唾でペニスを濡らすと、壁に手をついてお尻をつきだすマーティンの腰を両手でかかえ、
前へぐいっとペニスを突き出した。
ローションなしだと、すごいひっかかりだ。
「お前、いいのか?」
「うん、欲しいんだ、ものすごく」
マーティンは自分から腰をグラインドさせて中へ中へとダニーのペニスを導いた。
「うわぁ、そんなんやられたら、俺、もたへんで」
「来て、ダニーが欲しいから」
ダニーはマーティンの腰を猛然と動かし、前後させると、中に精を思いっきり放った。
マーティンも悲鳴を上げて、身体を痙攣させた。
ダニーはマーティンを後ろから抱きかかえると、下腹部に手をやった。
マーティンのペニスは、少し触れただけなのにすぐに勃起してしまう。
「いやらしいな、お前の体。そんなにイタリア男が好きなんや?」
「ちっ違うよ!」
マーティンが慌てて本を閉じるが、ダニーは容赦しない。
「こんなんエロ本ちゃうのになぁ」
耳元でいやらしくささやかれ、マーティンは真っ赤になった。
ダニーの手はシャツのボタンを外し、いつのまにか乳首を転がしている。
こりこりと摘みあげられた乳首は恥ずかしいぐらい感じて硬くなった。
同時に耳を甘噛みされ、ペニスも揉みしだかれている。
「っ・・ぁぁ・・」
荒い息を吐くマーティンをダニーは弄ぶように愛撫した。
ダニーのペニスは服の上からでもわかるぐらいもっこりしている。
マーティンはパンツとトランクスをずり下ろすと、勃起したペニスにむしゃぶりついた。
亀頭をねっとりと舐めまわされ、ダニーの腰は知らず知らずに浮いてしまう。
「んんっ、動いちゃだめだよ、じっとしてて」
マーティンのフェラチオにうっとりしながら、ダニーは労わるように背中を撫でた。
お互いにろくに服も脱がないまま、相手の体を貪りつづける。
「あぁ・・そっ、そこ・・オレ・・うぅっ」
「ダメ!」
マーティンは、イキそうなペニスの根元を押さえつけたが、ダニーはイッてしまった。
マーティンの頬に飛んだ精液がべっとり付着している。
「はぁっはぁっ・・ごめん、ごめんな」
「舐めてよ」
「えっ?これオレのやで?」
「舐めてって言ってるの」
ダニーは冗談かと思ったが、マーティンはこれ見よがしに顔を突き出している。
恐る恐る顔を近づけると、マーティンはにやっと笑って唇を塞いだ。
「ウソだよ、僕が本気でそんなこと言うわけないじゃない。ダニーの精液は僕のだ」
そう言うなり、指ですくった精液を味わうように舐めている。
「オレもお前の飲みたいわ」
ダニーはマーティンのペニスを咥えると、無我夢中でしゃぶった。
いつもしてもらうように下から舐めあげ、先っぽを舌で往復すると、マーティンがかすかに喘いだ。
顎が疲れてきたがかまわず続ける。先走りの粘液と唾液が混じりあってクチュクチュ音を立てた。
「あぁっ、ダニー!出すよ・・うっああっ!」
マーティンのペニスは口の中でひくひくしている。ダニーは精液を残さず舐めとると飲みこんだ。
ダニーは口の中と咽喉に精液が絡みついて何度か咳払いをした。
「ケホッ・・お前の味がする」
「まずいでしょ?ごめんね」
マーティンがすまなさそうに謝ったが、ダニーは首を振った。
「あほ、オレはお前の味が好きなんや。もっとこっち来い」
ダニーに抱き寄せられて、マーティンは体をもたせかけた。
「ダニィ」
「ん?」
見つめあった二人は、引き寄せられるようにキスを交わした。
エドと食事の後、マーティンはアパートに戻った。
珍しくドアマンのジョンがいなかった。
鍵をがちゃがちゃしていると、「すみません」と声をかけてくる女性がいた。
「はい、何ですか?」
「車が動かなくなって」
人通りの少ないわき道に入り、マーティンが振り向いた瞬間、鈍器で殴られ、マーティンは昏倒した。
目が覚めると、マーティンは自分が全裸で、ベッドの四肢に結わえ付けられているのを見て取った。
うわ、何だよ、これ!
「ようやく目が覚めたわね」聞き覚えのある声だ。ナタリーだった。
「ナタリー、どうしてこんなことを・・」
「あなたが私の大切なニックを奪ったからに決まってるじゃない!
これから、あなたにいい事を沢山してあげる、みんな出てきて!」
ドアから下着姿の女性が5人現われた。皆目がギラギラしている。
「あなた、女性としたこと少ないんでしょ、思う存分味わうといいわ」
「嫌だ、僕は女性が嫌なんだ!」
「ふふん、それよ、私が楽しみたいのは」
ナタリーも自らランジェリー姿になって、マーティンのそばに近寄った。
無理やりマーティンの口にキスし、舌をねじ込む。
入れてきた舌を噛むマーティン。
「よくもやったわね!みんな、この子を好きなだけ楽しませてやって!」
嬌声を上げて女性がマーティンの周りに集まってくる。
唇を奪われ、乳首やわき腹、ペニスの周りを愛撫される。
腹に噛みつく者までいる。
「い、痛い!」
ペニスを咥えられた。ナタリーだ。
「ほら、あなたの気持ちとは裏腹に、身体は反応してるわよ」
ナタリーの絶妙な舌の動きで思わず、勃起を始めてしまう。
身体は鳥肌でぶるぶる震えているというのに。
「やめろ!お願いだから!」
「さぁ、みんな、ペニスが立ち上がったわ。これからがショータイムよ」
女たちは、一人ずつ、下着を脱ぎ、我さきにとマーティンに跨った。
膣の気持ち悪いぬるぬるした感触が、マーティンを支配する。
顔にヴァギナを近つけられて、舐めるように強要され、マーティンは吐き気をもよおした。
「もう沢山だ!お願いだから!」
マーティンは悔し涙で視界がぼやけていた。
次々に女が自分の顔に、ペニスに跨ってくる。
「お願いだ!もう止めて!」
ナタリーがコックリングをはめた。
「すぐにはイカせないわよ。存分に女の味を覚えなさい」
コックリングのせいで、マーティンはイクにいけない。
ああ、ダニー、助けて!
マーティンは膣からの分泌液で顔を濡らしながら、嗚咽を漏らし始めた。
「そんなにいいのね、じゃあ、フィニッシュを許してあげる。私の中に来なさい」
ナタリーは女たちを下がらせると、コックリングを外し、自ら騎乗位になった。
「ほら、もっと腰を動かして!そんなんじゃ私はイケないわ」
「お前なんか、イカせるもんか!」
マーティンは自分勝手に動くと、すぐさま射精した。
「まぁ、早漏?こんなんじゃニックが喜ばないはずよ」
ナタリーはからから笑いながらベッドサイドに置いてあった注射器を手に取ると、マーティンに注射した。
「さぁ、これで解放してあげる。さっさとどこへでも帰りなさい」
マーティンは散らばっている服を着ると、部屋から出た。
頭がぼっとして、意識を集中出来ない。
ここがどこかさえも分からない。
タクシーをやっとの思いで拾い、ダニーに電話をかける。
「ふぁい、テイラー」
「ダニー、お願い、助けて」
「お前、どうした!?」
「今、タクシー」
「じゃあ、アランのとこに来るんや、ええな」
「うん」
マーティンはストリートアドレスを運転手に伝えると、気を失った。
ダニーがイーライズにオレンジジュースを買いに行くと、アーロンに出会った。
アーロンはポテトチップスやポップコーンを買い込んでいる。
「よう、今日はパーティー?」
ダニーが尋ねると、アーロンは照れくさそうに首を振った。
「いや、君たちの真似してホラーを見ようと思ってさ。スナックを買いに来たんだ」
「へー、何見るん?」
「悪魔のいけにえとシャイニング。あ、キューブリックのほうの」
「おー、オレもそれ好きや。どっちもめっちゃ怖いよな」
二人は話をしながら一緒にレジに並んだ。
アパートまで歩きながら、二人はホラー談義を続ける。
アーロンのアパートの前で別れかけたが、ダニーは呼び止められて振り向いた。
「ねぇ、よかったら来る?一緒に見ようよ」
「オレと?」
「本当は一人で見るのが怖くなってきたんだよ。マーティンも呼んでさ、三人で見ない?」
ダニーは迷ったが、どうせ今夜は暇だ。それに悪魔のいけにえも見たい。
マーティンに電話することにした。
「あ、オレや」
「どうしたのさ?ジュースが売り切れとか?」
マーティンは不思議そうに尋ねる。
「いや、買うた。あのな、アーロンが一緒にホラー見いひんかって」
「はぁ?そんなの断わればいいじゃん」
「もう行くって言うてもた。ほな、オレだけ行ってくるから、先に寝とき」
「ちょっ、ダニー!」
ダニーは携帯をポケットにしまうと、アーロンについてアパートに入った。
この前の記憶が全然ないダニーは実質初めて来たようなものだ。中に入ると部屋をきょろきょろ見回す。
「ゆっくりしてて、ビールでいいよね」
「あ、いや、お気遣いなく」
わけのわからないオブジェや建物の設計図を見ていると、アーロンがハイネケンのボトルを手渡した。
「それね、今建ててる最中なんだ。さ、見ようか」
スナックのボウルをテーブルに置くと、ダニーに座るよう言った。
アーロンがソファに座りかけると、インターフォンが鳴った。
「はい」
「・・マーティン」
「マーティン!どうぞ、入りなよ」
アーロンはダニーにマーティンの来訪を告げ、ドアを開けにいった。
仏頂面をしたマーティンを出迎えると、アーロンは嬉しそうに招き入れた。
「お前の魂胆はわかってるんだからな!」
ぞっとするほど冷たい目で睨まれても、アーロンの表情は揺るがない。
「マーティン、ここに座り」
ダニーはマーティンを自分の隣に座らせた。座るなりマーティンの手をしっかりと握る。
「ダニー?」
マーティンが慌てて手を引っ込めようとするが、ダニーはそれを許さない。
アーロンが驚いているが、かまわず手をつないだままだ。
「ああこれな、こいつ怖がりやから、ホラーの時はオレと手つなぐねん」
「そ、そう。いきなりだからびっくりしたよ」
「それにヘタしたら抱きつきよるけど、気にせんといてな。おい、今日のはかなり怖いで」
ダニーは事もなげにビールを飲むと、楽しそうにポップコーンをつまんだ。
ダニーは路上で、マーティンのタクシーが着くのを待っていた。
タクシーが停まった。
「お客さん、15ドル80セントです」
ダニーは20ドル渡すと、マーティンをかついで、部屋まで連れ帰った。
アランも起きて待機している。
「どうしたんだ?」
「こいつ、信じられへんけど、女の匂いがする。シャワー浴びさせんと」
ダニーは、マーティンの服を脱がせて、自分も全裸になり、シャワーでマーティンの身体を洗った。
両手足首に縛られたような赤い跡がある。身体中にキスマークが浮かび出た。
何やこれ!
「ダニー」マーティンがやっと口を開いた。
「ああ、俺や、もう心配ないで」
「僕、なんか注射された」
ダニーは急いでマーティンをシャワーブースから出し、リビングに連れて行った。
「薬物を注射されたらしい」
アランは「まずいな。これからERに行こう」と言った。
市立病院に行く間、ダニーがトムに電話をかけた。
入り口でストレッチャーと共にトムが待機していてくれた。
「おいおい、またマーティンか?今度はどうした?」
「何か注射されたらしい。薬物検査を頼む」
「はいはい、おおせの通りに」
マーティンはトムと共に処置室に消えた。
待合室で座っている二人。ダニーの手が震えている。
アランは思わずその手を握った。
トムが奥から現われた。
「注射されたのは、ただの睡眠薬だったよ。心配は要らない」
二人はほっとした。
「奴に会える?」ダニーが尋ねる。
「あぁ、ただし意識はないよ」処置室に入るダニー。
「お前、一体何があったんや」
マーティンはぐっすり眠っている。
朝になり、マーティンが目を覚ました。
ダニーが傍らでマーティンに寄り添うように眠っていた。
マーティンが動いたのでダニーも目を覚ました。
「ここどこ?」
「毎度のERや。お前、大丈夫か。何があった?」
「僕、ギャングレイプを受けた」
「女にか?」
「うん、すごく悔しかった」マーティンの青い瞳に涙が溜まった。
「泣くなや、命は無事だったんやから、不幸中の幸いや」
「でも、僕、僕、身体が汚らわしい!」
「俺が、昨日、念入りに洗ってやった。清めてもやった。もう忘れろ」
「・・・」
トムがやって来た。ダニーは室外で話をする。
「あいつ、女に集団レイプされたらしいわ。相当ショック受けてる」
「マーティンは根っからのゲイだからな。ショックの度合いが心配だ。今日は精神安定剤の処方をしよう」
「頼む」アランに電話をかけ、迎えに来てもらう。
「今日はお前仕事休めや」ダニーが肩を抱きながら話しかける。
「ううん、仕事に行くよ。その方が忘れられそうだから」
マーティンがぽつぽつと話す。
「無理するな」アランも口を出すが、マーティンは固辞した。
アランはマーティンをアパートの前で降ろすと、ダニーも一緒に降りた。
「後でアパート寄って着替える。こいつが心配やから」
「そうだな、分かった」
アランは、寄り添う二人の姿をミラーで確認しながら、車を発進させた。
オフィスに出勤したマーティンに、サマンサが近寄った。
「マーティン、顔色悪いけど、大丈夫?」思わず肩に触れる。
「うぁ!」マーティンは男子トイレに走りこんだ。
「どうしたんだろ?」サマンサが訝っている。
「飲み過ぎで気持ち悪いんちゃうか?」
ダニーは適当に誤魔化して、トイレに入った。
マーティンがゲーゲー吐いている音が聞こえる。
「おい、大丈夫か?」
「・・・」
マーティンは、やっと個室から出てきた。顔面蒼白だ。
「女に触られただけで、胃の底からこみあげてくるんだよ」
「お前、今日は帰れや。帰りに俺が寄るから」
マーティンはボスに不調を訴えて早退した。
ダニーは帰り、イーライズでローストチキンとシーザーズサラダ、トマトのフェットチーネを買って、
マーティンのアパートに向かった。
静かだ。ベッドルームのドアを開けると、マーティンが丸くなって眠っていた。
顔を見ると、涙の跡が頬に残っている。
こりゃ、重症や。アラン、どないしよ。
ダニーは、マーティンが起きたら、すぐに温められるように、
パイロセラムにローストチキンとフェットチーネを移すと、サラダを冷蔵庫に入れた。
メモを書く。「晩飯くらいきちんと食えよ。明日オフィスで待ってる。D」
夜中、マーティンは空腹で目を覚ました。
キッチンに行ってダニーのメモを見つける。嬉しくて涙が出た。
レンジでチキンとパスタを温めると、サラダを取り出し、ワインで流し込んだ。
エドにはこんな事があったなんて言えない。
マーティンは涙を拭きながら食事を終えると、シャワーをした。
女の分泌液がまだ顔や身体についているようで、神経質な位何度も擦った。
涙がこみ上げてくる。
こんなんじゃ、ダメだ!強くならなくちゃ。
マーティンは、ダニーに電話をした。
「ふぁぁい、テイラー」
「あ、ダニー、僕」
「お、お前大丈夫か?」
「食事ありがとう。明日はオフィスに行くからね。それじゃ」
「ダニー、誰だい?」後ろでアランの声がした。
「あ、ごめん、アランと一緒なんだ、じゃあ切るね」
マーティンは心の底から孤独を感じた。
マーティンは怖くて怖くて画面から目をそらすと、ダニーの手を握り締めた。
本当は抱きつきたかったが、アーロンがいるので我慢している。
恐怖だけではなく、被害者のあまりの理不尽さに不快感さえ感じる。
ひたすらダニーの手ばかり見ていた。
「ダニー、僕も手を握ってもいいかな?怖くてさ」
突然アーロンが遠慮がちに頼んだ。
マーティンがキッと睨んだが、アーロンは気づかないふりをしている。
「えっ・・ああ、うん、ええよ。ほら、手貸してみ」
ダニーは断わるわけにもいかず、アーロンと手をつないだ。
アーロンは安心したようににっこりするとまた画面に戻った。
両手を男に握られているなんて、おかしな感じだ。
これって異常やで・・・ダニーは奇妙な感覚にとらわれながら自分の手を一瞥した。
「うわっ!」
殺人鬼に追われるシーンで、アーロンがいきなりダニーにしがみついた。
「ごめん、悪いけどこのままでいさせて」
ダニーは驚いたが仕方ない。そのまましがみつかせてやった。
おもしろくないマーティンは、ダニーの手が白くなるぐらい握りしめている。
「マーティン、手が痛いんやけど・・」
「あっ、ごめんなさい」
マーティンは無意識に握りしめていた手を離した。
「ちょっとごめん、トイレに行きたい」
ダニーはずっと我慢していたが、辛抱できずに断わって席を立った。
ダニーが席を立つなり、アーロンがけろっとした様子で話しかけてきた。
「ねぇマーティン、ダニーっていい人だよね。やさしいしさ」
「一体何が言いたいんだ!」
「別に。ただ君がヘテロじゃないって知ったらどうするんだろうなって思っただけさ」
「いいか、僕にもダニーにも近づくな!」
マーティンに睨まれても、アーロンは人の良さそうな笑顔を浮かべたままだ。
「僕はダニーとは仲良しなんだ。彼に聞いてみるといい」
口を開きかけたマーティンを制すると、嘲笑うように続けた。
「僕とダニーのことは君には関係ないことだ。だろ?」
マーティンは言葉を失った。何も言い返すことができないのが情けない。
悔しくて泣きそうになった。堪えていても視界がぼやけてくる。
「かわいそうに・・泣いてるの?」
アーロンはマーティンの頬にそっと触れた。
手を振り払おうとするとあっという間にキスをされ、マーティンは驚いて突き飛ばした。
アーロンは何もなかったかのようににんまりするとソファに座っている。
見せつけるように唇を舐めているのが腹立たしい。殴ってやりたい衝動を必死に抑えた。
一触即発寸前、ダニーが戻ってきた。何も知らずにソファに座る。
マーティンは食べたくもないポップコーンを口にほうりこんだ。
アーロンがまたダニーにしがみつくのを見ながら、苦々しい思いでポテチを食べ続ける。
ようやく映画が終わり、アーロンは照れくさそうにダニーから離れた。
「あー、怖かった。一人で見なくてよかったよ。けど、夜中にトイレに行けなくなりそうだ」
「うん、これは実話やしな。マジで怖いわ」
「ダニー、帰ろうよ」
マーティンはわざとらしくダニーの腕をつついた。
ダニーは困ったようにマーティンを見た。
「オレら、この後シャイニングも見るんやけど。疲れたん?」
マーティンは黙ってうつむく。ダニーはシャイニングをあきらめて帰ることにした。
「アーロン、今日は帰るわ。こいつ、しんどいみたい」
「えー、帰るの?ゲストルームもあるし泊まれば?」
「いや、でも・・」
「二人とも泊まりなよ。そのほうが僕も助かる」
アーロンは熱心に勧めたが、ダニーは迷ったもののマーティンを見てきっぱり断わった。
1ブロック歩いた時、ダニーはオレンジジュースを忘れてきたことに気づいた。
「マーティン、アーロンちにジュース忘れてきた。どうしよ、取ってこよか?」
「いい、いらない」
マーティンは素っ気なく言うと、ダニーのシャツの裾を握った。
「お前、アーロンがオレに抱きついたから妬いたんか?」
「そうだよ、ダニーは僕のだもん」
「あほやなぁ。そんなん、言わんでもわかってるやろ」
ダニーはくすっと笑うとマーティンの肩を軽く叩いた。
マーティンがギリギリの時間に出勤してきた。ぜぇぜぇ息を切らしている。
ダニーはFBIマグにコーヒーをなみなみと注いで、マーティンの机に置いた。
「あ、ありがと」
「お前、ほんまに大丈夫か?今日も顔色悪いで」
「うん、平気」
「これ、食べ」
ダニーは、ランチ用に買ったチキンサンドを差し出した。
「いらない、仕事しなくちゃ」
マーティンはばたばたとPCを立ち上げた。
ダニーがメールボックスを見ると、マーティンからメールが入っていた。
「今晩捜査会議希望」ダニーは即答した。「了解@貴宅」
幸い、事件がなく皆、内勤の仕事に追われた。
マーティンはサマンサかヴィヴィアンと組んで仕事をさせられないかと、
びくびく脅えていたのだが、杞憂に終わってほっとしていた。
イーライズで、ジャンバラヤ、タイ風チキンBBQ、ラビオリサラダとアスパラガスのソテーを買って、
二人でアパートに向かう。
ダニーがキッチンで皿に料理を移していると、マーティンが後ろから、がしっとダニーを抱き締めた。
「おいおい、こぼしてしまうで。どないしたん」
「僕、寂しい」
「俺がここにいてるやん」
「でも夜はアランのとこに帰っちゃうでしょ?」
「はぁ?」
「とぼけなくても分かってるさ、二人、また一緒に住んでるんでしょ?」
ダニーは言葉もない。
「すまん、いつかはお前に言わな思ってたんやけど、言いそびれた」
「ずっと住むんだ」
「わからん」
「ねぇ、僕の一生のお願いだから、少しの間だけ、僕と一緒に住んで!」
背中に張り付いたマーティンの身体が小刻みに震えている。
Tシャツを通して、じんわり涙が伝わってきた。
「お前・・」
「僕、寂しくて、心細くて、いられないんだよ。また酒飲んじゃうかもしれないんだよ」
「わかった、お前がそんなに言うなら、一緒に住もうな、明日からやで。今日は一人でがんばりや。明日、荷物持ってくるから」
「うん!」
マーティンはやっと背中から離れた。
メルローの栓を開けて、マーティンは一人でベランダで飲み始めた。
アランなら分かってくれるやろ、非常事態なんやから。
二人のディナーが始まった。
「なぁ、お前、話したくないやろけど、その女たちな、知ってる奴らか」
「・・・」
「話してみい」
「・・ニックのエージェント」
「え、あのナタリーって奴か?」
「僕がニックを奪ったって、女5人と僕を慰み者にしたんだ」
みるみるマーティンの青い瞳に涙が溜まる。
「あのあま!許せん!」
「でも、ダニーは何もしないで!僕らみたいな立場が何かしちゃだめだよ。ニックに話してみるから」
ダニーは怒りで手がわなわな震えた。
「ね、ダニー、何もしないで。停職になんかさせられないよ。僕のそばにいてくれるだけでいいんだ、ダニーは」
ディナーの後、二人は、バブルバスに入った。
みるみる浮かび上がるキスマーク。その一つ一つにダニーはキスをした。
「まじないや。もうこれは俺のキスマーク。お前を清めたる」
マーティンはダニーに抱きついて嗚咽を漏らした。
「泣くなや。俺まで悲しくなるで」
ダニーは優しくバスクロスでマーティンの身体を洗った。
むくむくとマーティンのペニスが首をもたげる。
「僕のバカペニス、女でも口でやられて勃起した。ナタリーの中に射精した」
「一層のこと孕ませてやれば良かったのにな」
「嫌だよ、僕の分身があんな女の中に生まれるなんて。ねぇ、ダニー、今日、僕を抱いてくれる?」
ストレートな言い方にダニーはどぎまぎした。
「あ、あぁ、もちろんや。優しく抱いてやる。お前がもういいって言うまでイカせてやる」
二人は、全裸でベッドルームに駆け込んだ。
ダニーはマーティンを過度に刺激しないように、唇のキスから始めた。
耳を甘噛みして頬に下りてくる。喉もとを舐めると、マーティンが喘ぎ声を漏らした。
「ねぇ、もっと下」
マーティンが懇願する。
ダニーは乳首を舌で転がし、硬くなったのを確認すると腹、わき腹、下腹部に降りていった。
「ねえ、咥えて」
ダニーは腹にくっつきそうになっているマーティンのペニスを口に咥えた。
ちろちろと先端のかりの部分を舌で刺激する。
「あぁぁん」マーティンが甘い吐息を漏らす。
裏筋を存分に行き来してから、がぶりと喉の奥まで入れた。
むせそうになるダニー。優しく緩急を織り交ぜて、竿を前後させる。
「ダニィ、僕、もう、イっちゃいそう」
「来いや、俺の口にイっていいで」
マーティンはその瞬間、はぜた。ダニーは懸命にザーメンを飲み込んだ。
「ダニーのを入れて」
「ええのか?」
「うん、だって僕はゲイだもん」
ダニーは手でペニスを扱きたてると、ローションをマーティンと自分に塗りこんで、一気に挿入した。
「これだよ、僕が欲しいのは。あぁ、もっと奥へ!」
ダニーは腰を進めた。ひくひくマーティンの内部が蠢いている。
「お前の中、エロすぎ、俺、もうだめや、あぁー」
ダニーはそのまま身体を痙攣させるとマーティンの中に精を放った。
ダニーのペニスがぴくぴく動いている。
「あぁ、ダニー、愛してる。愛してるって言って」
「お前を愛してる」
ちらっとアランの顔が浮かんだ。
ごめん、アラン。俺、マーティンの関係がやめられへん。
二人は、しばらくの間、ずっと抱き合っていた。
アパートに帰ると、二人は一緒にシャワーを浴びてベッドに入った。
マーティンは暑いのにぴとっとくっついてくる。
「暑いからひっつくな」
「やだ、アーロンだってくっついてたじゃない」
「あれはただ怖かったからやろ」
「バカ!僕だって怖いよ!」
やれやれ・・・ダニーは小さくため息をつくと、暑さを我慢してぎゅっと抱きしめた。
「ダニィ・・」
「ん?おしっこか?」
「ううん。あのさ、アーロンと仲良くしないで。ホラーなら僕と見ればいい」
「またそれか。オレはあいつに興味なんかないし、あいつかてオレに興味なんかないって」
「そうじゃない!あいつは・・あいつは僕の・・その・・」
「僕の?何や、はっきり言うてみ」
ダニーはマーティンの目を覗き込んだ。マーティンはそれっきり黙り込む。
「まただんまりか。わかったわかった、もう行かへん。寝よう、眠たいわ」
ダニーは約束すると目を閉じ、あっという間に眠ってしまった。
マーティンは聞こえてくる寝息を聞きながら、本当のことを話すべきか悩んでいた。
翌朝、二人はスターバックスでアーロンに会った。
眠そうにコーヒーを啜りながら、何度もあくびしている。
「おはよう、昨夜眠れた?僕は怖くて部屋中の灯りをつけて寝たんだよ」
「それ、笑えるなぁ。まるっきり子供やん。オレは平気やで」
ダニーはげらげら笑っている。
「そんなに笑わないでよ、恥ずかしいんだから。ねぇ、マーティンはどうだった?」
「・・別に」
僕に話しかけんな!マーティンは知らん顔でコーヒーの列に並んだ。
「ごめんな、あいつ寝起きで機嫌悪いから」
「いいんだよ、僕は気にしてないから」
ダニーは慌てて謝ったが、アーロンは寂しそうだ。
「なぁ、また今度シャイニング見ようや」
気まずさを払拭したくて、ダニーは思わず昨日の約束も忘れ言ってしまった。
「いいね、楽しみだ。じゃあ、また」
アーロンが出て行くのを見計らって、マーティンがコーヒーを持ってきた。
「はい、エスプレッソのダブル。ん?どうかしたの?」
「いや、何でもない。サンキュ」
あちゃー、えらいこっちゃ、ボンに知られたらまたうるさいで・・・・
マーティンはそれ以上追及せずにカプチーノを飲んでいる。
「行こう、遅れちゃう」
マーティンに促され、ダニーは生返事を返しながら後に続いた。
二人が店を出ると、アーロンのBMWが走り去るところだった。
こっちに気づいて手を振っている。ダニーは手を振ったが、マーティンはまるっきり無視だ。
「そんなに嫌いなん?お前もしつこいなぁ、水かけたぐらい許したり」
「・・・・・・・・」
こうして見てみると冷たい青い瞳はなかなかの迫力だ。
あかん、マジ切れや、こいつ。でもちょっとかわいいな・・・見とれたダニーは思わずにやけた。
「何?」
「あ、いや、お前のそんな顔ってあんまり見たことないから」
「だから何?」
「だから、その・・キスしたくなっただけや」
マーティンは一瞬ポカンとした後、嬉しそうににんまりしている。
「あほ、喜ぶな。行くぞ、キスしてほしいんやろ?」
ダニーはマーティンを置いて歩き出した。
支局に着くなり失踪事件が起こり、キスはお預けになってしまった。
一日中バタバタしていて、キスどころか顔を見合す暇もない。
やっとアパートに帰れたが、もう深夜を回っている。
後味の悪い事件で、二人とも口を利く気力もなくベッドに寝転んだ。
ダニーは無言のままマーティンに圧し掛かると、前戯もそこそこに挿入した。
ローションのボトルが落ちてこぼれたが、かまわず挿入をくり返す。
「ちょっ・・やっ・ぁぁん」
マーティンの萎えていたペニスは、前立腺を刺激されて勃起している。
「んっ・・あっ・・はっはぁ・・」
「いいんやろ?もっと感じろ!」
ダニーは体を密着させると腰を揺らしながら唇を吸った。
動かすたびにマーティンのアナルがぐいぐい締めつけてくる。
「ひっ・・あぁっ・・イ、イク!」
マーティンは射精するとダニーの体にしがみついた。体中がひくついている。
マーティンを抱きしめたまま、ダニーは何度も腰を打ちつけると中に果てた。
ダニーがアランのアパートに戻ると、アランがベランダで葉巻を吸っていた。
ブランデーグラスも持っている。
「ただいま」
「おかえり、ハニー。マーティンの具合はどうだい?」
全部お見通しや。アランには隠し事なんて出来へん。
「昨日、サムに身体触られて、トイレで吐いてたわ。俺な、それでな・・・」
「マーティンのそばにいてやれよ」
「え?」
「今は、エドよりもニックよりもお前が一番必要なんだろう。
医師として意見だ。お前の恋人としては異論ばかりだが、仕方がないさ」
アランはふっと苦笑した。
「アラン・・・」
「僕の気持ちが変わらないうちに、決めなさい」
「分かった。俺、明日からマーティンのとこに泊まるわ。あいつ、酒飲む言うてんねん」
「そうか。じゃあ荷作りを始めなさい。明日、車で送ってやろう」
「そんなん、ええで」
「それが、お前の恋人としての務めだ。頼むからやらせてくれ」
「アラン・・・」
「さぁ、今日はもう遅い。眠ろうか」
アランは葉巻を消すと、ブランデーグラスをキッチンカウンターに置きっぱなしにして、バスルームへ消えてしまった。
ダニーは、ブランデーグラスを洗いながら、驚いていた。
こんなに心の広い男が俺の男?俺にはもったいないわ。
ダニーは、とりあえずスーツ3着にYシャツ5枚と下着類をガーメントバッグに詰めた。
これもアランに買ってもらったTUMIのものだ。
アランに済まない気持ちでダニーは心がつぶれそうになった。
その晩、アランはダニーの身体を求めず、ただ、優しく抱きしめて眠った。
翌朝、アランはダニーをマーティンのアパートに送り届けた。
「アラン・・俺・・」
「そんな顔するな。永久の別れじゃあるまいし」
アランはダニーの頭をくしゃっとすると、車を発進させた。
合鍵で入ると、マーティンはまだ寝ているようだった。
乱雑に散らかっているクローゼットにスペースを確保して、スーツ類をかける。
ガタガタ音をさせていると、マーティンが眠い目をこすりながら起きてきた。
「ダニー、本当に来てくれたんだ!」
「お前にうそつくわけないやろ」
マーティンが身体ごとぶつかってくる。ぎゅっと抱きしめられた。
「おい、遅れるで!早くシャワーせい」
「はーい!」
昨日と打って変わって明るい反応に、ひとまず一安心する。
コーヒーを入れて、ダニーは着替えると、冷蔵庫をのぞいた。
こりゃ、食材を買い物せんとあかんわ
「今日、買い物しよな」
「うん、どこでも一緒に行くよ!」
シャワーから出てきたマーティンが嬉しそうに答えた。
現金なやっちゃ。裏を返せばそれだけ不安だったと言うことだ。
ダニーは一日でもマーティンを一人にした事を後悔した。
仕事の後、二人でホールフードマートに出かけて、食材を山ほど買い込む。
カートを押すマーティンは心から楽しんでいるようだった。
ダニーは、これからしばらく続く、二人の同棲生活に一抹の不安を抱えながら、
食材を吟味しつつカートに入れていった。
「今日は、何にするの?」
マーティンが目を輝かせてダニーに尋ねる。
「そやな、簡単にパスタでええか。買い物で疲れたわ」
「うん、パスタ大好きだ」
ダニーはツナ缶、茄子とトマトを取り出してソースを作り始め、パスタをゆでる準備をした。
マーティンに野菜を適当にちぎれと命じて、ソース作りに専念する。
二人の第一日目が始まった。シャルドネを開けて乾杯する。
「乾杯!僕らの未来のために!」
マーティンは上機嫌だ。ダニーはグラスを合わすにとどまった。
食事が終わると、マーティンはダニーの手を取り、ベッドルームに誘った。
「ねぇ、抱いてくれるよね?」
「あ、あぁ、もちろんや」
マーティンの積極性に辟易しながら、ダニーはうなずいた。
ダニーの服をぱっぱと脱がせると、ペニスにかぶりつくマーティン。
「おい、シャワー浴びへんか?」
「いや、このままで」
ダニーのペニスが反応して立ち上がり始めた。
ダニーをベッドに寝かせると、マーティンは、ローションも使わず、ダニーに跨った。
「おい、お前!」
「だまって!僕が欲しいんだ!ダニー、あぁ、最高!」
マーティンがダニーの身体の上で見せる狂態を、ダニーは半ば呆れて見つめていた。
ダニーは一年ぶりにイースト・ビレッジのコヨーテ・アグリーに立ち寄った。
過激なパフォーマンスに酔いしれながら、セクシーなバーテンダーとのやりとりを楽しみ、
騒然とした熱気に包まれ誰も彼もが興奮しきっている。
一年前となんら変わらない。超満員の店内は興奮の坩堝と化していた。
ダニーもテキーラを飲んで気分が高揚している。
踊っていると何度か視線を感じ、顔を上げるとフロアにいた女と目が合った。
ダニーの好みのタイプだ。女はテリーと名乗り、ダニーも名を名乗る。
二人は少し話すとそのままバーを出た。
テリーは自分からあまりしゃべらないが、セクシーな含み笑いに体が反応し、
ダニーは誘われるままテリーの部屋に行った。
イースト・ビレッジのごみごみした界隈のロフトに案内され、入るなり抱き合う二人。
お互いの服を手早く脱がせあいながら、キスを交わした。
あれっ、なんかちゃう・・・胸を揉んだダニーは違和感を感じた。
豊胸だろうと思いそのまま揉みしだくが、違和感は消えない。
なんだか嫌な予感がしてきたが、気のせいだろうと自分をごまかす。
胸の愛撫をやめて下半身に手を伸ばすと、触りなれたイチモツがそこにあった。
「うわーっ!お前、男か!」
慌てて飛びのくダニー。テリーは平然としている。
「男じゃダメなの?気持ちよくしてあげるからじっとして」
テリーはダニーのペニスを品定めするように弄ったが、ダニーは固辞してその手を退けた。
「オレ帰るわ、ごめんな」
ダニーはシャツとジャケットを引っつかむと、ロフトを飛び出した。
顔はべっぴんやのに男て・・あ、整形なんか?それより気づけよ、オレ・・・・
ヤリ損なったダニーはどっと疲れを感じた。男と見抜けなかった自分が情けない。
タクシーもなかなかつかまらず、途方にくれながら歩くうちに、キールズの前に出た。
そういえば昔の女とここで買物したっけ・・・そんなことを考えながら通り過ぎる。
大通りに出るとようやくタクシーがつかまり、行き先を告げると窓の外を眺めた。
アパートに帰ってバブルバスの準備をしながら鏡を見ると、唇や口の周りがラメでキラキラしていた。
危なっ!こんなんマーティンに見られたらバレるとこや。浮気してへんのに疑われたら悲惨やで。
ダニーは服を脱ぎ捨てると、まだお湯が溜まってないバスタブにどかっと浸かった。
乱暴に顔をごしごし擦り、ラメを洗い流す。
あーあ、テリーが女やったらよかったのに・・・・
半勃ちのペニスを上下に扱きながら未練がましく顔を思い浮かべる。
特に興奮することもなく事務的に射精すると、精液を洗い流してため息をついた。
捜査にあけくれる毎日が続いた。
外回り担当でただでさえ暑さに参っているところに、
毎晩、マーティンから激しく身体を求められ、ダニーは疲れ果てていた。
目の下にくまがくっきり浮かんでいる。
「ダニー、さえない顔しちゃって、どうしたの?」サマンサが軽口を叩く。
「夏ばてや。サムは薄着が出来てええな。男は夏でもスーツやで。FBIの服務規程を変えて欲しいわ」
「男はスーツでいいの!薄着になられたらぞっとする」
ボスが近くを通りかかりこほっと咳払いをしたので、二人はこそこそと離れた。
マーティンが書庫からファイルの山をかかえて戻ってきた。
「サム、これの整理手伝ってくれない?」
「いいわよ」
マーティンの女アレルギーは嘘のように治っていた。
人間の深層心理はわからんわー。俺、絶対に精神科医にはなれないわな。
ダニーはアランの事を考えながら、コーヒーを取りに、だるそうに立ち上がった。
ダニーと離れて暮らし始めて1週間。
アランはトムを訪ねて、グラマシーの自宅を訪れた。
「お前が家に来るなんて、あの時以来だよな」
トムがにやりとしながらドアを開けた。
「まぁ、いいじゃないか、これ、土産」
「ふーん、シーバス・リーガルか。明日は昼から勤務だから付き合うぜ」
「あぁ頼む」
アランは、リビングのソファーに腰掛けた。
「今日はインド料理なんだけどいいか?」トムがキッチンから叫んでいる。
「ああ、何でも」
氷入りグラスとサモサを盛った皿を持って現れたトムが尋ねる。
「お前、何かあったのか?テンション低いな」
「あぁ、今、ダニーがマーティンと暮らしてる」
「はぁ?喧嘩でもしたか?」
「いや、マーティンのために行かせた」
トムがアランの隣りに腰をおろす。
「お前ってそんなにお人よしだったか?冷血漢のアラン・ショアが?」
「自分でも驚いている。そして、たまらなく後悔してるよ」
スコッチをグラスに注ぐとぐいっと一飲みした。
「マーティン、セックスがいいからな」トムが思わず口にした。
「あぁ、マーティンのセックスは確かにいい」
「お前、マーティンとも寝たのかよ?」
トムが驚いてサモサを床に落とした。
「ダニーと付き合うずっと前の事だよ。とにかく今は、胸が痛む」
トムが痛ましい顔でアランを見つめた。
アランは身体を起こすと、突然トムの唇にキスをした。
「おい!お前・・」
「身体の一部が持っていかれたようなんだ。埋めてくれよ、トム」
「本気か?」
「あぁ、親友のお前にしか頼めない」
トムもスコッチをグラスに注いで一気飲みした。
「じゃあ、ベッドに行くか」
「あぁ」
トムの後について、アランはベッドルームに消えた。
その頃、マーティンのアパートでは、マーティンがトイレに入っているすきに、
アランに電話しているダニーがいた。
家も携帯も留守電?こんな夜遅くにどこ行ったんやろ。
マーティンが出てきたので携帯をテーブルの上に置いて、
急いで「ザ・シールド」のDVDを見ているふりをした。
「ねぇ、ダニィー」
またや、この甘ったれ声や。
ダニーはやれやれと思いながら返事をする。
「何や、マーティン」
「お風呂入らない?」
「今日は、お前一人で入り」
マーティンがダニーの隣りに腰掛ける。
「僕が嫌いになった?」
今にも泣きそうな顔だ。
「あほ、そんなんやあらへん。ただな・・」
「ただ?」
「俺にも休みくれへんか?もう毎日でクタクタやねん」
マーティンは、ぷいっと横を向いた。
「分かったよ、今日は別々で寝るって事だね!」
「ベッドは一緒やで」
「でも別々だ」
マーティンはバスルームにこもってしまった。
何でこんなんで気使わなあかんねん。俺、もうアランとこ帰りたい。
ダニーは、夜のバスをスキップして、パジャマに着替え、ベッドに先に入った。
すぐに眠気が襲ってくる。ダニーは、マーティンがバスから出てくる前にいびきをかいて熟睡し始めた。
週末、ダニーはマーティンを連れてケープ・メイに来た。
地味なビーチだが、水がきれいなのでここはダニーのお気に入りだ。
二人分の海岸使用料を払ってバッジをもらうと、
裸足でビーチを歩き、砂のざっくりした感触を踏みしめる。
二人は砂浜を歩きながらパラソルを立てる場所を探した。
「なんかさ、思ってたよりも人が少ないね」
「ああ、みんなアトランティック・シティのほうに行くからな。あ、ここにしよ」
ダニーはパラソルを立ててレジャーシートを敷いた。二人は早速海に入る。
「ねー、あそこまで競争しようよ!」
波打ち際ではしゃいでいたマーティンが突然言い出し、二人はせーのでがむしゃらに泳いだ。
沖合いのブイまで競争した後は、のんびりと波間を漂いながら過ごす。
「なぁ、マーティン」
「ん?」
マーティンはダニーが水中で体に触れてきたのでドキドキした。
「水中でしたことあるか?」
「えっ・・ううん、ないよ」
もしかしてここでしちゃうの?思わず顔が赤らむ。
ダニーはドギマギするマーティンを見つめながら下腹部に触れる。
期待しているのか、マーティンの咽喉がゴクリと動いた。ペニスが少し勃起しかけている。
「えっ、ちょっ、うわっ!」
ダニーはいきなりマーティンの水着を奪うと、思いっきり向こうへ放り投げた。
「ボン、取って来い。早よ行かな流されてまうで」
「バカ!本当に流されたらどうするんだよ!」
マーティンは急いで水着を探しにいった。薄暗い水の中で目を凝らすが何もない。
「お前のケツって白いなぁ。めっちゃかわいい」
「何言ってんのさ、いつも見てるくせに!」
「そうやったっけ?」
「ねー、どこにもないよ・・どうしよう、海から出られないよ、僕・・・」
マーティンは半泣きで困りきっている。
「あの水着、僕のお気に入りだったのに・・・」
「ごめんな、ほんまにごめん。ほら、オレの貸したるわ」
ダニーは自分のを脱ぐとマーティンに渡した。
「そやそや、インナーは返して。それで出るから」
「はいはい」
マーティンはダニーの水着をインナーもろとも遠くへ放り投げた。
「あっ!あほ、何すんねん!」
「仕返しだよ。僕のはちゃんとあるもんね」
マーティンは誇らしそうに自分の水着を掲げた。ダニーのペニスをぎゅっと握る。
「早く行かないとそっちこそ困るんじゃないの?みんなにチンチン見られちゃう」
「このボケが!」
けたけた笑い転げるマーティンに水を浴びせると、ダニーは水着を探しにいった。
くそっ!ここやないんか!
ダニーは必死に探すが見つからない。
マーティンを呼び寄せて二人で真剣に海中を探したが、とうとう見つけることができなかった。
「ごめんね、ダニー」
「まあええわ、先にふっかけたんオレやから。それよりインナー貸せ」
ダニーはマーティンからインナーをひったくるようにとると急いで履いた。
おそらくぱっと見にはピチピチの黒ビキニにしか見えないはずだ。
「これやったら何とかなるわ。そろそろ上がろう」
ダニーはマーティンを促すと岸に向かって泳いだ。
シャワーを浴びると、マーティンは素っ裸でキングサイズのベッドに寝転んだ。
「ねー、この部屋しか空いてなくてよかったね」
「ああ」
「何だよ、すっげー必死にツインじゃなきゃ困るって主張してたくせに」
「当たり前や、ゲイのカップルやなんて思われとうない。嬉しそうにヘラヘラできるか」
「でも本当は嬉しいんでしょ?」
「・・まあな」
あんなに泳いだのに、マーティンは疲れも見せずにまとわりつく。
「今日はしんどいからじっとしとき。オレはもうくたくたやねん」
ダニーが目を閉じると、マーティンがそっとキスをしてきた。
「オレは寝るで、おやすみ」
ダニーはそう言うと横向きになった。マーティンも急いで倣う。
強引に腕枕をしてもらいながら体をゆだねるが、今夜はこのまま眠る気はない。
マーティンは胸に顔を埋めると甘えた。うとうとしているダニーは惰性で体を抱きしめる。
「ダニィ」
マーティンはダニーに体を弄られるのを待っていたが何もしてもらえない。
待ちきれずにダニーの手を自分の股間に押し当てたりするが、
ダニーは眠ってしまったのか規則正しい寝息が聞こえてきた。
隣でもぞもぞと動いても目を覚ます気配はない。
マーティンはペニスをダニーの体に擦りつけた。
ダニーのペニスを扱いて勃起させると、自分のペニスを押し当てて重ね合わせる。
「んぅ・・ぁぁ・」
亀頭を擦られ、ダニーが軽くうめいた。ギクッと固まるマーティン。
「ダニー?」
話しかけても返事はない。
マーティンは起こすのも悪いと思い、ダニーのペニスをしまうと収まりのつかなくなったペニスを扱きたてた。
「ああっぁうっ・・・ん・んんっ!」
射精して荒い息を吐いていると、体をぎゅっと抱きしめられた。
ハッとして顔を上げると、薄笑いを浮かべたダニーがこっちを見ていた。
「フィッツィー、何やってんの?」
「べ、別に・・・」
「別に、か?これは何や?」
ダニーはマーティンの指を口に含むと精液を舐めとった。
「やだ、恥ずかしいよ」
マーティンはうつむいて真っ赤になっている。
ダニーは耳を甘噛みすると体を組み敷いてキスをした。
ローションを塗りたくったペニスをあてがうと、少しずつ挿入する。
マーティンが抱きついてきて動きにくいが、キスをしながら腰を振る。
ダニーはもどかしい動きに我慢できず、手を押さえつけると何度も突き上げた。
「ああっ・・イキそうや・・」
「来て、僕の中にいっぱい出して」
マーティンはダニーの腰を掴むと自分から動いた。
「あかんっ、イクっ!」
ダニーはマーティンの中に射精した。ペニスがドクドク脈動している。
息が整うとペニスを抜き、ふざけあいながらシャワーを浴びた。
翌日、泳いでからランチにシーフードを思いっきり食べた後、歴史的な建築物を見て回るツアーに参加した。
参加しているのは年配者ばかりでダニーは退屈だったが、マーティンは真剣に説明を聞きながら頷いている。
パステルカラーのヴィクトリアン・スタイルの家並みは見ていても照れくさいが、
マーティンに言わせれば見所が満載らしい。
「ここってサイコー!将来近くに住むのも悪くないね」
「そうか?」
気のない返事を返すダニーだが、海のそばに住みたいとは思った。
帰りに前からマーティンが見たがっていた灯台を見て公園を散策した。
人もまばらな公園をのんびり歩いていると、木の陰でマーティンがそっと手を握ってきた。
「ダニィ」
「ん?」
「ありがとう、楽しかった」
「おう、バナナスプリット食って帰ろう」
ほんの数秒手をつないだだけだったが、二人は顔を見合わせると照れ笑いを浮かべた。
今日は、週に1度のAAミーティングの日だ。
心の底で心待ちにしていた自分にはっとするダニー。
俺、マーティンから逃げようとしてんのか?まぁ、ええわ、今日はアランと食事や!
昼休みにランチに出て、カフェからアランの携帯に電話をかける。
「ハニー、元気か?」
あぁ、アランの声や!
「そうでもない。なぁ、アラン、今日、食事一緒に出来へん?」
「マーティンはいいのかい?」
「今日、AAミーティングやねん」
「じゃあ家においで。何か用意しておくよ」
「サンキュ」
思わずダニーはにんまりして、カフェの隣りの客に怪訝そうに見られた。
定時になって、ダニーはそそくさと机の上を片つけていた。
「どっか行くの?ダニー?」
マーティンの目がじとっと見つめている。
「着替え取りにアパートに戻る」
「そうなんだ」
まだじとっとした目がダニーを見つめる。
「お前、急がんとミーティングに遅れるで」
「分かったよ」
マーティンはぷんぷんしながら、バックパックを担ぐと席を立った。
ダニーはマーティンに時間差を置いて、支局を出た。
アランのアパートに合鍵で入る。
「ただいま!」
「やぁ、おかえり、ハニー」
アランがぎゅっと抱きしめてくれる。懐かしいシャネルのエゴイストの香り。
ダニーは胸いっぱいに吸い込んだ。
「今日は、クスクスとシシカバブにブロッコリーのサラダだけど、いいかな?南アフリカのワインも買ってみた」
「最高やで。俺、シャワーしてもいい?」
「もちろん、お前の家じゃないか」
ダニーは久しぶりのアランのバスルームに入った。
ダニーの好きなラベンダーのシャワージェルが置いてある。
ダニーは心ゆくまでシャワーを浴びて、アランが出してくれたTシャツと短パンに着替える。
「あぁ、我が家や」
「そうか?」
アランは嬉しそうだった。アランのチキンソースのクスクスは絶品だ。
シシカバブをつまみながら、赤ワインを飲む。
「やっぱりアランの料理が一番や」
「料理だけかい?」
アランが目を細めて笑う。
「食事中に言わせるなや」
ダニーは顔を赤く染めた。
二人は、食事を早めに切り上げると、どちらからともなく、ベッドルームに移動した。
ダニーの服をやさしく脱がしていくアラン。
乳首を愛撫されて、たちまちこりこりに硬くなる。
「あぁ、アラン、気持ちいい」
「今日はお前が入れるか?」
「ううん、アランに入れて欲しい」
ダニーはマーティンに入れてばかりだったので、入れられたい欲求にかられていた。
アランはダニーのペニスを咥えると、丁寧に両脇やカリの部分を舌で嘗め回した。
深く喉奥に飲み込まれ思わずダニーは唸った。
「あぁぁ、良すぎて気が狂いそうや」
「じゃあ、行くよ」
アランはダニーのアヌスにローションを塗った。
指二本を入れて抜き差しする。
「もう、俺、イキそう」
「待っててくれ」
アランは自分のペニスを扱きたて、硬さが十分になると、ダニーの中に挿入した。
入り口付近で浅く突いてくる。
「もっと、奥へ!」
「待ってろ」
アランはじらすように入り口に入れては出し入れを繰り返す。
ダニーはもどかしそうに自分から腰を動かし、ずぶっと奥までペニスを飲み込んだ。
「あぁ、お前の中が動いてる」
「俺、もうダメ、イっていい?」
「あぁ、僕もイク」
二人は同時に身体を痙攣させた。荒い息を整える二人。
キスを顔中に浴びせるダニーに「お前、どうしたんだ?」とアランが聞いた。
「俺の男にマーキングや」
ダニーは昨日の夜のアランの外出が気になって仕方がなかった。
もしや浮気?そんなんよう聞けへん。
「マーキングなんて必要ないよ。僕はお前のものだ」
ダニーは安心してアランの広い胸に顔を擦り付けた。
「愛してる」ダニーはそのまま目を閉じた。
ダニーが帰りにクレート&バレルに寄ると、ジェニファーが買物をしていた。
フロッシュのボトルを見比べながら迷っているようだ。
ダニーは後ろから近づくと話しかけた。
「オレんちはオレンジなんや。でもソーダもお薦めやで」
「あー、びっくりした。驚かさないで」
ジェニファーは相手がダニーだと気づき、強張っていた表情が和らいだ。
「ごめんな。手荒れするほう?」
「う〜ん、少しはするかな」
「ほな、アロエかオレンジやな。オレンジにしよ、オレとおそろいやから」
ダニーがオレンジのフロッシュを渡すと、ジェニファーは苦笑しながらカゴに入れた。
「テイラー捜査官は何を買うの?」
「オレはピーラーとスパチュラ」
ダニーが言いながらカゴを見せると、ジェニファーが興味深そうに覗き込んだ。
「白?白は色がつくわよ」
「あー、ほんまやな。選んでくれる?」
ダニーはジェニファーがスパチュラを選ぶのを嬉しそうに眺めた。
二人はしばらく買物を楽しんでから店を出た。
「ねぇ、乗ってく?」
ジェニファーは路駐していたシルバーのサーブを指差した。
「え・・・いや、その・・ええの?」
ダニーは突然のことにドギマギした。
「決まりね。さ、乗って乗って」
ジェニファーは可笑しそうに笑うとダニーを促してエンジンをかけた。
ダニーは地下鉄の駅まででいいと言ったのに、ジェニファーはアパートまで送ってくれた。
「ありがとう。ちゃんと帰れる?」
「大丈夫、心配しないで。ヘンなヤツが来たらベレッタで一発バーンや」
ジェニファーがダニーの言い方を真似、二人は同時に吹き出した。
ダニーは車から降りようとしてじっと顔を見つめた。
「何?どうかした?」
「・・キスしたら怒るよな?」
「もちろん怒る」
ジェニファーは怒るといいながらも目が笑っている。ダニーはさっとキスすると車を降りた。
ジェニファーの車が見えなくなるまで見送ると、ダニーはエントランスに向かった。
人妻とキス、それもあのジェニファーやで!そう思うと自然に頬が緩んでしまう。
バカみたいににやにやしながら部屋に入ると、選んでもらったライトグリーンのスパチュラを取り出して振り回した。
「そうや、今日はこれ使おう!」
早速洗うとダニーは食事の支度に取り掛かった。ペンネを茹でている間に、トマトソースを作る。
必要以上にスパチュラでかき回しながら鼻歌を歌った。
上機嫌でペンネ・アラビアータを食べているとよれよれのマーティンが入ってきた。
「おかえり。どうしたん?」
「地下鉄が止まっちゃってさ・・・あー、疲れた。電車の中、蒸し風呂だったよ」
「うわー、悲惨やったな」
ダニーはマーティンの分のペンネを用意してやった。早速がっつくマーティン。
しばらくしてマーティンがフォークを持つ手をふと止めた。
「ねぇ、ダニーは地下鉄じゃなかったの?」
ダニーは一瞬迷ったが、タクシーで帰ったと嘘をついた。
明け方、マーティンのアパートに行くと、ソファーでマーティンがトランクス一枚で眠りこけていた。
何や、こいつ?まさか、また飲んだんか?
顔を近付けて、匂いを嗅ぐが、アルコール臭はしなかった。
くんくんしていると、マーティンが目を開けた。
「わぁー!」
「何が、わぁー!や、お前、何でこんなとこで寝てた?」
「ダニーの帰り待ってたら、寝ちゃったんだよ。今何時?」
「5時半やけど」
「今、帰ってきたの?」
ダニーは口ごもりながら小さく「そうや」と答えた。
何で俺がこんな後ろめたい気持ちにならにゃあかんねん!
「アラン、元気だった?」
じとっとした目でマーティンが見つめる。
「あぁ、いつもの通りやったけど?」
「寝たの?」
「寝てへん」
ここで、寝たなんて言ったら、何を言い出すか分からない。
「それじゃ、これから僕としようよ」
「はぁ?」
「やっぱり、アランと寝たんだ!」
「お前、おかしいで!俺、も少し寝るわ」
ダニーはベッドルームへと退散した。
携帯が鳴っている。
「ふぁい、テイラー」
「ダニー!今どこだ!」ボスの声だ。
「家ですが」
「お前、時計を見てみろ」
やば!10時半やないか!あいつ、目覚まし止めよった!!
「すんません、寝坊しました」
「早く出勤しろ」ガチャ。
マーティンの奴、一体、何やねん!俺の人事評価下げる気か!
ダニーは腹を立てながら急いで出勤した。
ボスが呼んでいる。
「テイラー君、目の下のくまがお前の乱れた生活を物語っているぞ」
「そんなんやありません。今日はすんませんでした」
「そんな体たらくで捜査に集中出来るのか?もっと骨のある奴だと思っていたのに」
「ボスの期待を裏切りません、ほんまです」
「今日から1週間、残業代はなしだからな」
「はい」最悪やん!
ダニーは席につきながら、マーティンを睨みつけた。
マーティンは涼しい顔をしてPCを操作している。
二人は、一日、口を利かずに仕事に専念した。
帰り際、報告書の作成を言いつけられたダニーは、かたかたキーボードを叩き始めた。
ヴィヴィアンとサムはすでに帰宅していた。マーティンがそろそろと近寄ってくる。
「ダニィー、怒ってる?」
「当たり前や、お前とは口利きたくない」
かたかた。キーボードを打つ音が静かなオフィスに響く。
「ダニーがいけないんだよ、アランと寝たから」
「・・・」
「ねぇ、ダニィー、ごめんなさい」
「・・・」
「ダニィー、口利いてよー」
「うるさいな、もう!今日はお前の顔は見とうない、帰れ!」
マーティンは叱られた子供のように小さくなって、バックパックを担ぐと帰っていった。
ダニーは一人きりになると、携帯を取り出し、アランに電話をかけた。
「ハニー、どうした?」
「まだ仕事やねんけどな、今日も帰ってええかな?」
「もちろんさ、どうしたんだい?」
「後で話すわ、じゃあ」
9時になりやっと報告書が仕上がった。ボスの机の上にプリントアウトを置く。
ダニーがアランのアパートに着くと、マーティンが待っていた。
「何や、お前!」
アランが呆れ顔で「お前が戻るまで帰らないと言われてね」と言った。
「話すことがあるんだろ、マーティン?」
アランに促され、マーティンが重い口を開いた。
「ダニー、ごめんなさい!子供じみたマネして、本当に悪かったと思ってます」
ダニーは、ソフトアタッシュをどさっと置くと、直立不動のマーティンを無視して、
顔を洗いにバスルームに消えた。アランが気にして入ってくる。
「何が原因か知らないが、今日のところは許してやれよ」
「あいつのおかげで、ボスの信頼がガタガタやで!」
「まぁ、お前も落ち着いて」
冷たい水の入ったグラスを渡す。ぐびっと飲み干すダニー。
「分かったわ、あいつに話しする」
バスルームから出るとダニーはきっぱり言った。
「今回は許したる。でも、今日限りで共同生活はおしまいや、週末に荷物取りに行くから」
「えっ!」みるみるうちにマーティンの青い瞳に涙が浮かぶ。
「お前の女アレルギーも治ったしな、元気になったやんか。もう俺は必要ないやろ。さっさとエドんとこに帰り」
「そんな、急にひどいよ!」
「俺には俺の生活があるんや、マーティン。残念ながら、それはお前との生活とちゃう」
マーティンは涙をシャツの袖で拭くと、無言のまま出て行った。
「いいのか?あんなに強い事言って」アランが思わず口を出した。
「あいつ、甘ちゃんやから、あれ位言わんと効かへん。アラン、俺腹減った。何か食わせて」
「お前の分はちゃんとあるよ。今日はパエリアとアスパラガスサラダだ」
ダニーは安心したようにシャワーを浴びにまたバスルームに消えた。
アランはやれやれという表情を見せると、パエリアをレンジにかけた。
ダニーは久しぶりに十分な睡眠をとった。朝も快適に目が覚める。
朝立ちしているペニスをにんまり見つめながら、やっと自分の生活リズムに戻りそうだと確信した。
アランがすでに起きて、コーヒーを入れている。
「バゲットサンドを作ったが、支局に持っていくかな?」
「うん、ボスの心象よくしたいから、早めに出勤するわ」
ダニーはシャワーを浴び、ジップロックに入ったサンドウィッチをソフトアタッシュに入れて、
コーヒーを飲み終えると、「じゃ、行ってくる」と出て行った。
アランは、平常に戻った生活に、思わず笑みがこぼれるのが止められなかった。
トムと寝てしまった事に後悔がないとは言えないが、
ダニーが1週間いないだけで、あれほどの孤独感に苛まれるとは思ってもみなかった。
もうあいつとは絶対に離れられないな。
アランは自分の分のバゲットサンドを食べながら、新聞を読み始めた。
あの遅刻事件から1週間たった。
ボスは毎日早く出勤して、遅く帰るダニーを呼び出した。
「調子に乗ってきたじゃないか?」
「ですから、ボスの期待は裏切らないと言いましたでしょ」
「よし、残業代ゼロは解除だ」
「ありがとございます!」
ボスのオフィスからにやにやしながら出てきたダニーを、マーティンはじっと見ていた。
「ボスの機嫌、直った?」おずおずと尋ねる。
「ああ、やっとな」それだけ言うと、ダニーは聞き込みに出かけてしまった。
残されたマーティンはPCに向かいながら、ぼんやり宙を見つめていた。
聞き込みは空振りに終わり、徒労感を漂わせてダニーが戻ってきた。
マーティンがコーヒーをマグに注いで持ってきた。
「お疲れ様」
「あ、サンキュ」
「・・・・」
「・・・・」
言葉が続かない。マーティンはPCの前に座り、メールを打った。
「緊急捜査会議希望」ダニーがPC画面を眺めているのを横目で確認する。
かたかたダニーがキーボードを叩いた。「了承@貴宅」
やったー!マーティンは心の中でガッツポーズを作った。
マーティンは定時直後に席を立った。
イーライズに寄って、ダニーの好きなものばかり買おう!
逸る気持ちが抑えきれず、タクシーの中で鼻歌が出る。
ローストビーフに、小エビとアボカドのカクテル、マッシュドポテトに温野菜、チーズケーキ、
それに奮発してオーパス・ワンを手にした。1本200ドルもするが構わない。
「お祝い事ですか?」レジの女性がにんまりする。
「ええ、そうなんです」照れ笑いするマーティン。
そうだよ、仲直りのお祝いだ!
マーティンがアパートに着くと、すでにダニーが部屋で待っていた。
イーライズの紙袋を見て「買い物だったんなら、俺も行ったのに」と言った。
「今日はダニーはゲストだから、そのまま座ってて」
ジャケットを脱ぐと、マーティンはダニーのまねをして、皿に料理を移し変えた。
バカラのワイングラスを出し、オーパス・ワンを開ける。
「はい、どうぞ!」
「サンキュ」
ダニーが静かにダイニングに移動する。
「何や、今日はご馳走やな」ダニーが目を見張る。
「あのさ、僕ら、仲直り出来ないかなと思って」
「もうしてるやん」
「違うよ、そんなんじゃなくて、ハンプトンの頃みたいにさ」
ダニーはしばらく考え込んでいたが、ふと笑った。
「あのプールサイドのエッチはスリルがあったな」
マーティンも思わず微笑む。
「エドが起きちゃって、ダニー、裸で逃げたんだよね」
二人は思い出して爆笑した。
「さぁ、食おうか」
「そうだね!」
二人はワイングラスを合わせて乾杯した。
「僕らのために!」
ダニーは昼休みにクリニックへ行った。
こっそり中を窺うとジェニファーが仕事をしているのが見える。
一度は帰りかけたが、思い切って中に入った。
「あら、テイラー捜査官」
ジェニファーが怒っていないようなので胸を撫で下ろす。
「昨日はありがとう。迷わへんかった?」
「ええ、迷子にはならなかったわ。ベレッタの出番もなかったしね」
二人は視線を交わすとふふっと笑みを漏らした。
「なぁ、ランチ行かへん?」
誘っていると後ろから頭をバチンと叩かれた。驚いて振り向くとスチュワートが立っていた。
「何やってんだよ、テイラー。ジェニファーを口説くな」
「痛いな、頭叩くな。あほになるやろ」
「とっくにあほだろうが」
「ちゃうわ!」
ジェニファーが堪えきれずにくすくす笑っている。
「まあいい、オレも腹減った。メシにしよう」
スチュワートは白衣を脱いでジェニファーに押し付けると、ダニーを連れてクリニックを出た。
二人は近くのオープンカフェに入った。テラスは暑いが少し風が吹いていて気持ちいい。
オーダーを済ませると、スチュワートはダニーの目をまじまじと覗き込んだ。
「ジェニファーは既婚者だって言ったろ。やめとけ」
「そんなんわかってるって。冗談やんか」
「どうだか!えらく真剣に見えたぜ?」
「それはお前の思い込みや」
ダニーは運ばれてきたパニーニにがっつくと、巧みに話をすり替えた。
ダニーが支局に戻ると空気が一変していた。マーティンが妙に無表情だ。
「おい、何かあったんか?」
マーティンに尋ねると、代わりにサマンサが答えた。
「フィッツジェラルド副長官がさっきまでいたのよ。だから、ね・・」
「へー、オレも会いたかったな。惜しいことしたわ」
「何言ってんの!会わなくて正解よ、すっごくいらついてたから」
マーティンは黙って席を立つとマグカップを持って行ってしまった。
「オレもコーヒー飲もう」
ダニーはマグを引っ掴むとマーティンの後を追いかけた。
「大丈夫か、お前?」
「ん。・・・ううん、やっぱりだめだ、僕」
マーティンはこてんぱんに傷ついていて凹みきっている。
コーヒーを注ぐ手もおぼつかない。ダニーは代わりに淹れてやった。
「ほら、これ飲み」
「・・ありがと」
二人は廊下のベンチに座ると無言のままコーヒーを飲んだ。
しばらくして、気難しい顔をしたボスが戻ってきた。
通りすがりにマーティンを一瞥する目が冷たい。マーティンはますます萎縮した。
ボス、怖っ!またヘンなことさせられそうや・・・
マーティンも同じことを思ったのかマグカップを握りしめている。
「もう気にすんな、な?」
「・・・・・・・」
「大丈夫や、心配ない」
言葉もなくうなだれるマーティンの膝にそっと手を置くダニーだった。
マーティンはある晩、意を決してニックに連絡を取った。
「ねぇ、ニック、今日食事できる?」
「あぁ、こっちは大混乱だが、8時には迎えにいける」
「じゃあ待ってる」
果たして、ナタリーの所業を彼に打ち明けることができるか、マーティンには自信がなかった。
マーティンはダニーと一緒に残業をした。
「お前も残業?」
「今日はニックに会うんだよ」
「そうか、あいつにあの事、話すんやろ?」
「分からない」
「お前の心持ち次第やで、がんばりや」
「ありがと、ダニー」
携帯が鳴り、マーティンは去っていった。
フェデラルプラザ正面にフェラーリが停まっていた。
「迎えに来てくれてありがと」
「お姫様のためだからな。今日はどこに行く?」
「どこでもいいよ」
「じゃあコリアンタウンに行こう」
二人は「チョー・ダンゴル」に出かけた。
ニックが極上ロースやカルビ、ハラミにタン塩をどんどん頼む。
マーティンの箸は進まなかった。
「どうした?いつもの食欲がないな」
「ねぇ、なんで大混乱してるの?」マーティンが尋ねた。
「ナタリーが突然、とんずらこいたんだよ。ベルリンの個展用の経費を持ち逃げしてさ。だから個展は延期だ」
「そうなんだ」
「どうした、顔色悪いな」
「じゃあ、もうナタリーはニックの前に現れないんだね?」
「現れたら窃盗罪で訴えてやるぜ、まったくもう」
ニックはマッコリを飲みながら、ため息をついた。
マーティンは食欲が湧いてきて、肉をどんどんトングで並べた。
「このサンチュって葉っぱでくるむと旨いんだ。知ってるか?」
マーティンは真似した。
「本当だ、美味しい!」
「もっと肉食うか?それとも飯にするか?」
「僕、石焼ユッケビビンバって食べてみたい」
「よし、それでこそ、俺のマーティンだ」
二人は満腹になって、ニックのステューディオに戻った。
「お前、今日、帰る?」
「うん、明日仕事だし」
「じゃあ、さっさとやろうぜ」
ニックはTシャツとジーンズを脱いで全裸になった。
LOSTのソーヤーが全裸で目の前にいる!
マーティンは動悸が抑えられなかった。
「お前も脱げよ。脱がしてやろうか、お姫様?」
「もう、お姫様はやめてよ!」
マーティンは自分でぱっぱと脱ぐとトランクス一枚になった。
二人でベッドルームに上がる。
ベッドに押し倒され、マーティンは熱いキスを受けた。
「会いたかったぜ。お前がいないと、俺、調子が出ないんだ」
「ごめん、忙しくて」マーティンは胸がちくりと痛んだ。
ニックはローションを手に取ると、マーティンのアヌスと自分の屹立したペニスに塗りこんだ。
「指入れるぞ」「うん」
ニックは2本の指でじっくりアヌスをほぐしていく。
マーティンは思わず悶えた。
「いいのか?」
「もう溶けちゃいそうだよ、早く来て!」
ニックは指を抜くとペニスをあてがい、ぐいっと挿入した。
ひとつひとつの動作が乱暴で、マゾの意識を植え付けられているマーティンにはたまらない。
「あぁぁん、すごい!動いて、ニック」
「お前がまとわりつくから動けないよ、もっと緩めろよ」
「無理だよ!だってもうすごく感じてるんだもん」
「あぁ、俺、もうだめだ、中に出すぞ!」
「あぁ、来て!いっぱい入れて!」
ニックの身体が痙攣するのを待ってマーティンは自分も精を吐き出した。
「お前って本当に最高な。もう離れられない」
マーティンはあえて答えず、荒い息を整えた。
「ベルリン行かないでしばらくいるの?」
「あぁ、スケジュールの練り直しだ。お前ともっと会えるようになるよ」
ニックは自分のたくましい胸にマーティンの顔を押し付けた。
マーティンは思いがけず、三股をかけている自分に困惑した。
どうしてこうなっちゃったんだろう。やっぱりダニーがいいよ、僕。
ダニーが僕のものになってくれたら、もう誰もいらないのに。
ニックの胸に抱かれながら、マーティンはぼんやり虚しさと戦っていた。
マーティンはボスに呼ばれてオフィスに入った。
メガネの奥の目がじっとこっちを見据えている。マーティンはこのまま逃げ出したくなった。
「あの、僕に何か?」
「ああ。デスクの下に入れ」
「えっ!あ、あのどういう・・」
「こっちに来てデスクの下に入れと言っているんだ」
ボスはチェアーを引くと、下に入るよう顎をしゃくった。
マーティンがのろのろと下に潜ると、ボスはジッパーを下ろしてペニスを咥えるよう言った。
書類を捲る音を聞きながらフェラチオさせられ、心底惨めな気分だ。
ノックの音がして誰かが入ってきた。ボスは普段どおりに話をしている。
相手がサマンサだとわかった時、マーティンは動揺して体が固まった。
舌を這わせるのをやめると足を蹴られ、呻き声をあげそうになったがなんとか堪える。
「なかなかスリルがあっていいな。ヴィクターだったらもっとよかったのに」
サマンサが出て行った後、ボスは可笑しそうに笑った。
何言ってんだよ、父さんだったら僕の心臓が止まってるよ・・・
マーティンは狭苦しいデスクの下から出たくて、一生懸命奉仕した。
「んぅっ!」
ボスは何の前触れもなしに射精し、マーティンは突然のことに精液に咽た。息が苦しい。
「はぁっはぁっ・・全部舐めてきれいにしろ」
「・・はい」
マーティンがペニスを舐めて後始末をすると、ようやくデスクの下から解放された。
「よかったぞ、マーティン。行っていい。今夜のディナーの約束を忘れるな」
「・・はい、失礼します」
ボスのオフィスを出ると、早くうがいがしたくてトイレに行った。
一通り口をゆすいだ後で鏡を見ると、ネクタイに濃厚な精液がべっとり付着していた。
必死になって染みを取っていると、ダニーが入ってきた。
「どうした?すごい顔やで」
「ネクタイが汚れちゃって・・・。僕、これから父さんとディナーなんだよ」
「なんか生臭いな、これ。もしかしてボスの?」
ダニーがペニスを指差すとマーティンが泣きそうな顔で頷いた。
「貸してみ」
ダニーはマーティンのネクタイを手に取ると、代わりに自分のネクタイを渡した。
「オレので行け」
「でも、これ、父さんに怪しまれないかな・・・」
「平気平気。オレは今日副長官に会うてないし、もし聞かれてもコーヒーこぼしたって嘘ついたらええねん」
「ん、ありがと」
ダニーは両手で頬を包むと、やさしくキスをした。
久しぶりにダニーとマーティンは一緒に聞き込みに出かけた。
聞き込みで成果は出なかったが、車に乗るなりダニーがマーティンの手を握った。
「なぁ、行かへん?」
「え?」
「モーテルに決まってるやん」
「ダニー、ダメだよ!」
「お前のここはそうは言ってへんよ」
立ちかけて膨らんでいるパンツの前部に触れるダニー。
「あぁん」
「な、行こ」
ダニーはこの間立ち寄ったクイーンズのモーテルに車を回した。
鍵を渡す無表情な主人が思わずにやりとした。
部屋に入るなり、お互いのスーツを脱がせる二人。
「汗でべとべとすんな。シャワーしよ」
狭いシャワールームで唇を合わせる。
マーティンのペニスはキスだけで腹に触れるほど立ち上がった。
「お前、元気な」
「だって、ダニィーのキスが上手いんだもん」
恥ずかしそうにするマーティンが可愛くて、後ろ向きにさせ、耳たぶを甘噛みしながら、
アヌスに指を入れる。
「待っててな」
ダニーはジャケットからローションの小瓶を取ってきて、中身を手に取った。
「ダニィ、早く・・」
「あぁ、俺もイキたい」
ダニーはローションをマーティンのアヌスに塗りこんだ。
中がひくひく蠢いている。
「お前すごいな」
ダニーは自分のペニスに塗ると、すぐにマーティンの中に入った。
「うわぁ」
我慢できず、腰をがんがん打ちつける。
「ダニィ、すごい!僕、イク」
「あぁ、俺もや、ん、ん、もう出る!」
二人は同時に射精した。
「早く支度せんとまずいわ」
二人はあたふたとスーツを着ると、チェックアウトした。
また主人から割引クーポンを受け取ったダニー。ふとアランの顔がよぎった。
「ダニー、何?」
「いや、何でもない、早うオフィスに戻ろう」
オフィスに帰り、席につくマーティンのそばをサマンサが横切った。
「うん?マーティン、いい香りがする。シャワーしたてみたい」
「えっ?」言葉に詰まるマーティン。
「デオドラントやないんか、お前?」
ダニーが助け舟を出した。
危ない、危ない、あいつ、ボディーソープ使っておったわ。サムは鬼門やで。
帰り道、地下鉄の駅でダニーとマーティンは一緒になった。
「どっか寄ってくか?」
ダニーが言うとこっくりとマーティンが頷いた。
二人でブルー・バーに立ち寄った。
カウンターの中からエリックが会釈をしている。ダニーも軽く手を上げた。
ドライ・マンハッタンを飲みながらダニーが諭した。
「俺がソープは使うなって言うてたやん」
「つい癖で使っちゃった」
「サムは鋭いからな、気ぃつけんと」「はい」
マーティンは小さくなっている。
エリックがカウンターから出てきて、つまみのカナッペを運んできた。
「捜査官さんたち、お仕事の帰りですか?」
「あぁ」
「お疲れ様です」
去り際、エリックの手が軽くダニーのパンツの前部に触れた。
あいつぅ!
「ダニー、どうかしたの?」マーティンがびっくりしている。
「何でもない」
「エリックともう寝てないよね」じっと青い瞳が見つめる。
「寝てへんて!お前も、もうあんまり飲むなよ」
「もう平気だよ。こうやってダニーと会えるんだから」
マーティンはにっこりした。可愛い奴。ダニーも思わず微笑み返す。
するとダニーの携帯が震えた。アランだ。
「はい、今、帰りや。うん、分かった」
そんな姿をじとっと見つめるマーティン。
「アランから帰れコールだね。楽しかったよ」
マーティンはプンとしてチェックを手にするとカウンターに払いに行った。
これが困んねん。エッチもしてるし、あいつの機嫌ばっかりとっていられへんし、俺。
ダニーは頭を思わずぽりぽりかき、マーティンの後を追った。
924 :
fusianasan:2006/08/22(火) 07:22:16
書き手1さん:
なんだかマーティンがダニーで満たされない欲望をニックで満たしているような
気がします。虚しいセックスが可愛そうです。二人が一緒になることはないんでしょうか?
書き手2さん:
ダニーはやっぱりバイなんですね。ジェニファーとの浮気?の予感がします。
またマーティンが泣くはめになるんじゃないかと心配です。
ダニーが帰ろうとすると、ボスに呼び止められた。
「ダニー、私と一緒に来い」
「えっ、ボスは副長官とディナーではないので?」
「誰が行くか、煩わしい!今夜は息子と二人でお楽しみだろうよ」
ボスは吐き捨てるように言うと、勝手にエレベーターのボタンを押した。
あいつ、大丈夫かな。また困ってるんちゃうやろか・・・
ダニーは地下へと降りていく階数表示を見上げながら、マーティンのことを気にかけた。
ピーター・ルーガーで食事している間もボスは不機嫌なままだ。
シュリンプカクテルのエビを一気に三つ突き刺すと、がしがし口に放り込んでいる。
「あの、ボス?そんなことしたら咽喉に詰まりますよ」
「うるさい、黙って食え」
ダニーは言われたとおり口をつぐむと食事を続けた。料理はおいしいが味気ない。
ボスはワインをがぶ飲みするとステーキにがっついた。
いつのまにかベロンベロンに酔っていて、テンションが高い。一人で盛り上がっている。
チェックを済ませると今夜は泊まると宣言し、車のキーをダニーに投げた。
「帰るぞ、ダニー。早くしろ!」
「はいはい。頭打ちますよ、気をつけて」
ダニーはボスを乗せてシートベルトを締めてやると、アパートへ向かった。
シャワーを浴びた後、恐れていたとおりセックスを強要された。酒臭い口にキスするだけで気持ち悪い。
うへー、きっしょー!おっさん、早よ寝てくれへんかな・・・・
ダニーはため息をつくと嫌々愛撫を続けた。
マーティンが父と別れてダニーのアパートに行くと、ボスとセックスしていた。
背面座位で首筋にキスをしながら、ボスの乳首を撫で回しているダニー。
ボスはうっとりしながら腰を揺らしている。
マーティンは二人の様子を固唾を呑みながら見つめた。
ダニーの手はボスの体を這い回り、そのたびにボスが小さく呻く。
ペチャペチャとキスをする音が響き、目を背けたくても怖いもの見たさで見てしまう。
「ああっダニー・・ぅぅっ出そうだっ・も・もっと突いてくれ!」
「了解っす」
ダニーはボスの腰を掴むと激しくペニスを打ち付けた。
「くっ・あぁっ!イクっ・・・」
ボスは何度も背中を仰け反らせると射精した。
マーティンは思わずブリーフケースを落としてしまい、二人に気づかれてしまった。
「マーティン!」
ダニーは急速にペニスが萎えるのを感じた。
「おー、マーティンか、食事はどうだった?高慢ちきは帰ったか?」
「・・・・・・・・」
「お前も来い、早く脱げ」
マーティンは首を振るとベッドルームのドアを閉めた。ダニーが慌てて追いかける。
「なぁ、マーティン・・あの、オレ・・その」
ダニーは肩に手をやったものの、どう言葉を掛ければいいのかわからない。
唇を噛みしめたマーティンはわなわなと震えていて、今にも泣き出しそうなのを必死に堪えている。
「・・いいんだ、ダニーが僕のせいでボスと寝てるのは知ってる。心の底から悪いと思ってる。ごめんね、本当にごめん」
「マーティン・・・」
そのまま背を向けるマーティンを、ダニーは黙って後ろから抱きしめた。
>>924 ご感想ありがとうございます。
ダニー、この前から浮気の機会を窺ってます。一度目はおかまでしたけど。
マーティンが知らずに済むといいですね。
アランは、午前の予約リストに目を止めた。
エドワード・シュローダー?どうしたんだろう。
午前最後の患者としてエドがやって来た。
「やぁ、エド」
「アラン、今日は患者です」
「そのようだね、話を聞こうか。ソファーへどうぞ」
エドはソファーに深く腰掛けるとぽつんぽつんと話し始めた。
マーティンが前ほど会ってくれないのが不安だと。いつも心がどこか他のところにあるようだと。
アランは、ダニーとマーティンの共同生活の事を言うわけにもいかず、対応に躊躇した。
「残念ながら、恋愛指南は専門外でね。二人で解決するしかないんじゃないか?」
「あの、もうダニーとマーティンは付き合っていないんでしょうか?」
エドは小動物のように不安そうな動作で顔を覆った。
「あぁ、医師としてでなく言うが、もう付き合っていないよ」
アランは自分も信じたい一心でそう答えた。
「良かった!僕、二人がよりを戻したのかと・・」
「お互い、気をもむ相手と付き合ってしまってるね。ランチでも食わないか?」
「ええ、喜んで」
二人は、トラットリア・ポモドーロに出かけた。
カラフェでキャンティーを頼み、シーザーズサラダと茄子のラザニア、ポルチーニリゾットをシェアする。
「アランは、ダニーと一緒にいて不安じゃないですか?」
エドが上目がちにアランを見つめる。
コケティッシュな表情に、思わずアランはどきっとした。
「そりゃ、不安だよ。あいつ、モテるから」
「それはアランも一緒でしょう?お二人は、その、女性も大丈夫だと思うし」
アランは思わず苦笑した。
「その点、君たち二人より悩みが倍増かもしれないな。 僕はもうシングルズ・バー・ライフから卒業しているが、
ダニーはまだ若い。それが一番の悩みの種かもしれない」
「でもお二人を見ていると、心の絆を感じるんですよね。そのうち、マイルズたちみたいに養子でも取りそうで」
「あはは、それはないだろう。あいつがFBIである限りは」
「そうですよね、ごめんなさい」
アランはチェックを閉めた。
「すみません、あの、また会ってもらえますか?」
「もちろんだよ、予約を入れてくれれば」
「そうじゃなくて、二人だけで」
「うん?それでもいいが」
「良かった。僕、友達少ないから。アラン、ありがとう。それじゃ、仕事に戻ります」
エドはそう言うと、愛想のいい笑みを浮かべて去っていった。
治療費節約というわけでもないだろうに。
アランはエドの最後の言葉を訝った。
夜になり、ダニーがへろへろになって帰ってきた。
「暑いよ〜、身体がべとべとや」
早速シャワーを浴びてすっきりするダニー。
「今日の夕飯はなに?」
「ソウメンだよ」
「それ何?」
「冷たいヌードルだ。和食のカッペリーニかな。トッピングもたくさん用意したからね。それに日本酒も」
「ふうん、楽しみや」
ダニーはおっかなびっくり席につく。
白い細いヌードルがざるに盛られている。
トッピングはチキン、錦糸卵、キュウリ、ねぎ、ジンジャー、海苔だ。
アランの真似をして、小さなボールにツユを入れて、薬味を足し、ヌードルに挑戦した。
「へぇ、うまいな。ソウメン」
「もっと薬味を入れて食べてごらん。腹にもたまるよ」
二人はソウメンを食べ終えると、日本酒をイータラのグラスに入れて、ベランダに出た。
デッキチェアーに座って乾杯する。
「アランといるとまるで海外旅行してるみたいや」
「そうかい?」
「いつかは、俺も世界旅行できるかな」
「前にも言っただろう。お前が行きたい国は全部回ろうな」
「うん」ダニーは嬉しそうな顔をして、日本酒のお代わりをアランに甘えた。
「そろそろこれ位にしないと、夜の楽しみがそがれるぞ」
「分かった。俺アランとシャワーしたい」
「そうしようか」
二人は肩を組みながらバスルームに消えた。
>>924 さん
感想ありがとうございます。マーティンが満たされるのは
結局、ダニーといる時だけなんですよね。それが問題です。
「・・・帰るね、僕」
マーティンはダニーの手をそっと退けるとふらふらとドアに向かった。
「あっ、おい、待てや!ボン!マーティン!くそっ!」
ダニーはトランクスだけ身に着けると急いで後を追った。
エレベーターの扉が閉まってしまい、慌てて階段を駆け下りる。
ダニーがエントランスにたどり着いた時、マーティンはタクシーに乗って行ってしまった。
部屋に戻ると、ボスがリビングで水を飲んでいた。
「マーティンはどうした?」
「帰った」
「なんで帰るんだ?おかしなヤツだ。飲むか?」
飲むかって、その水オレのやし・・・・
ダニーは無視するとバスルームで体を念入りに洗った。
何もかも消してしまいたい、セックスの痕跡も、ボスの体臭や体液も・・・
皮膚が赤くなるぐらい擦ると、ようやくボディーソープを洗い流した。
服を着ていると、ボスが体を起こした。
「おい、出かけるのか?」
「ええ、ちょっとあいつの様子を見に。先に寝てていいっすよ」
「まったく親子そろって世話が焼ける連中だ。私は寝るからな」
ボスはどさっと寝転ぶと、腕組みしながら目を閉じた。
「そうだ、鍵は掛けといてくれよ。物騒だからな」
「・・了解っす」
ダニーは灯りを消すと部屋を出た。
マーティンのアパートに行くと、中はもぬけの殻だった。
ブリーフケースもなく、一度も帰った形跡がない。
ダニーが水槽をこつこつ指で叩くと、熱帯魚が寄ってきた。
エサをやりながら携帯に電話したが、留守電になっている。
あいつ、どこ行ったんや?トロイのとこか?
エサにがっつく熱帯魚をしばらく眺めた後、アパートを出た。
ブルックリンのアパートに帰ると、ボスがガーガーいびきをかきながら眠っていた。
一緒のベッドで眠る気になれなくて、ハイネケンのボトルを持ったままベランダに出た。
もう一度携帯に電話してみるが、また留守電につながる。
スチュワートに聞こうかとも思ったが、今夜はそっとしといてやるほうがいいと思ってやめた。
くそっ!オレかてほんまはボスとなんか寝たくないんや!気色悪い!
ダニーはハイネケンを一気飲みすると、天を仰いだ。
AAミーティングの後、マーティンは久しぶりにエドのコンドミニアムに寄った。
「今日は、マーティンが来てくれると思って、料理を作っておいたんだ」
「へぇ、ありがと、エド」
エドは恥ずかしそうな顔をしながら、キッチンで用意している。
「ビール飲む?」「うん」
クアーズライトの瓶を渡され、ソファーに腰掛けるマーティン。
テーブルの上には、新しいウェブサイトのサイトマップらしい図面が置いてあった。
もう大富豪なのに、ちゃんと仕事してるんだなぁ。エド。
マーティンはサイトマップを眺めながら、感心した。
エドに呼ばれてダイニングの席につくマーティン。
フライドチキンのマリネとヴィシソワーズ、アイスバインと温野菜が並ぶ。
「すげー」
「マーティンは肉が好きでしょ?ちょっと偏り過ぎたかな?」
「ううん、大好き!ありがと!」
二人はビールで乾杯した。
早速フライドチキンのマリネにがっつくマーティン。
肉にヴィネガーが浸透して、骨が柔らかくぽろぽろと取れる。
「これ、ケンタのフライドチキンなんだよ。きっとマーティンも作れるよ」
「僕はダメ、からきし料理はダメなんだ」
「ね、やっぱりメイドの料理で育ったの?」
「うん。物心ついた時から乳母つきだったし、料理は全部メイド製」
「家と同じだ。両親が忙しいとそうなるよね」
「でも寂しかったよ」
「僕もだ。友達の家に招かれるとさ、お母さんお手製のミートローフとか出されるじゃん。心底羨ましかった」
「僕も」
「似てるね、僕たち」
「うん」
二人は、ワインを1本空けて、ソファーに移動した。
「ご馳走様、眠くなってきちゃった」
「今日、泊まれば?」
「うん、そうする」
エドは、マーティン用のパジャマを持ってきた。
「サイズ合うかな?」
「僕、でかいからね」
「マーティンのたくましい身体が大好きだ。身体の中も」
そう言うと、エドは顔を赤くした。
「ねぇ、ベッドに行く?」
「うん」
二人は手をつないでベッドに移動した。アロマオイルが焚いてある。
マーティンは身体の芯がかっと熱くなるような気がした。
「マーティン、さぁ、横になって」
マーティンが言うとおりにすると、エドはマーティンのパジャマのボタンを口でひとつずつはずしていく。
胸をはだけると、乳首に優しいキスを施す。
すぐにマーティンの乳首はこりこりに硬くなった。
「あぁ、溶けそうだ」
「じゃあ、これは?」
エドはパジャマの下とトランクスを一気に脱がすと、ペニスの周りに舌を這わせた。
「ねぇ、早く咥えて」
まだエドはじらす。マーティンは我慢しきれず、エドの頭をペニスに持っていった。
やっとエドがマーティンのペニスを咥えた。
裏側を丹念に舐めると、先端をぐるりと舌で一周して、やがて口の奥に包み込む。
「うぅん、エド、すごいよ、もう僕、イキそう」
「僕の口に来てよ。マーティンを味わいたい」
マーティンは身体を痙攣させてエドの口の中に射精した。
ごくんと喉を鳴らしながら飲み込むエド。
「やっぱり、美味しい」
エドは、満足そうな笑みを浮かべると、ベッドサイドのローションの瓶を取って、
自分のペニスに塗りつけた。
「入れていい?」
「うん、エドのが欲しい」
マーティンは四つんばいになって、エドにアヌスを晒した。
エドが指にローションを取って、マーティンの中に指を入れる。
「あぁ、すごく締まってる」
エドはマーティンの腰を両手で持つと、腰を進めた。ずぶっとペニスが吸い込まれる。
「あぁ、中が熱いよ、マーティン」
「僕もう、気が狂いそう。もっと動いて」
エドは優しいストロークを繰り返していたが、やがて荒い息になり、スピードを上げた。
「あぁ、もうすごい!僕、またイっちゃう!」
「僕もだ、マーティン、出る!」
二人は射精した。どさりとマーティンの横に身体を横たえるエド。
「エドってすごいよね」
「マーティンこそ」
二人はくすくす笑いをして、やがて目を閉じた。
「マーティン起きて、朝だよ」
マーティンはやさしく体を揺すられた。何とか目を覚ますとバスローブ姿のジョシュが顔を覗き込んでいる。
「何?ここどこ?」
飛び起きたマーティンは部屋を見回した。
「カーライルホテルの僕の部屋。さあ起きて、今日も仕事でしょ?」
「・・うん」
マーティンは自分がトランクス一枚なのに気づき狼狽した。昨夜の記憶が何もない。
「あの、僕の服は?」
ジュシュは事もなげにそこと指差した。無造作に脱ぎ捨てられた服が散らばっている。
こいつと僕、もしかして寝たんじゃ・・・・思わず寝乱れたベッドを探るように窺う。
「どうかした?」
「えっ、あ、いや・・」
「酔いつぶれてたから僕の部屋に連れてきたんだよ。覚えてない?男同士だし、問題ないよね。
そうそう、バーで80ドル立て替えたんだ。これ、カード明細の控え」
ジョシュの態度はあっけらかんとしていて、とても寝た仲には思えない。
マーティンは礼を言うと100ドル札を渡した。
ジョシュが20ドル札を返そうとするのを、世話になったからと断わる。
何も覚えていないのが怖ろしかったが、妙なことにならずに済んで胸をなでおろした。
ジョシュはバスローブを脱ぎ捨てると着替え始めた。全裸で堂々と着替えるので目のやり場に困る。
マーティンは少年のようなしなやかな体から目を逸らすと、なんとか話題を探した。
「ずっとこの部屋で暮らしてるの?」
「うん、そう。投資は信用第一だからね、会社が手配してくれるんだ」
濡れた髪をくしゃくしゃとタオルで拭きながら答えるジョシュ。薄茶色の瞳があどけない。
「いいね、この部屋。すごく落ち着くよ」
「そう?あ、君のアパートもちゃんと探してるよ。まだ見つからないけど」
「ん、ありがと」
「今度ダニーも誘って三人で食事しようよ。顧客とばっかでつまんないんだ」
「ふうん。クライアントってどんな人が多いの?」
「中年のオヤジやおばさんばかり。あとは年寄りとかね。退屈しちゃう」
ジョシュはいたずらっぽい表情を浮かべると、おもしろおかしく仕事の内容を教えてくれた。
「これ、僕の名刺。デンバーに投資したくなったらいつでもどうぞ」
「でも、僕は・・」
「ウソだよ、投資なんてまだ早いって。遊びのお誘いならいつでも歓迎するよ。ダニーにも言っといて」
「ん、わかった」
マーティンは朝食に誘われたが、断わって部屋を出た。
支局に行くとダニーがベーグルにがっついていた。
マーティンは隣に座ると黙ってチョコチップマフィンをかじる。
辺りを見回すとコーヒーをとる振りをして、ダニーはマーティンの手に手を重ねた。
マーティンがハッとして顔を上げる。
「昨日はごめんな。今日は一緒に帰ろう」
ダニーは青い瞳を真剣に見つめて謝った。
気持ちが伝わったのか、マーティンははにかむような笑顔でこくんと頷いた。
ダニーはマーティンがジョシュの部屋に泊まったことを聞いて慌てた。
マーティンの様子では二人の間には何もなかったようだが、ジョシュは信用できない。
「ジョシュがね、今度三人で食事しようって言ってたよ」
「やめとき、また投資に誘われるだけや。あいつはろくでもないからな」
「え?そんなこと言ってなかったよ。僕らと遊びたいだけだって」
「・・ほんまはな、あいつってかわいいやろ。お前が好きになったら困るやん、オレ」
「何言ってんの、ジョシュは男には興味ないよ」
マーティンはけたけた笑っている。
「とにかくや、お前はオレのやからな!」
ダニーは食べかけのベーグルをマーティンの口に押し込むと、髪をくしゃっとした。
ハンプトンの週末もあと残すところ、2回になった。
ダニーはプールの中から、いとおしむように別荘を眺めていた。
デッキチェアーに座ってシャンパンを飲んでいるアランが声をかける。
「ハニー、どうしたんだい?」
「もうこの別荘ともおさらばかと思うと、何だか寂しゅうて」
「確かにいい物件だなぁ」
アランも同意した。
「今日はこれからどうする?」
「エドたちとBBQでもするか?」
「うん、ええな、それも」
「それじゃ電話してくれ」
「分かった」
ダニーはプールから上がると、マーティンに電話をかけた。
「ダニー、どうしたの?」
「今日な、家でBBQせいへんかと思ってな」
「ちょっと待ってて」後ろで二人が話している声がする。
「エドが喜んでって言ってる」
「それじゃ、7時に来いや」
「うん、分かった。じゃあね」
「二人が喜んでだと」
「じゃあ、昼寝したら買い物に行こうか?」
「うん」
ダニーとアランはふざけて愛撫しながら昼寝を楽しんだ。
午後4時にフード・パントリーに買い物に行き、ラム、チキン、ビーフと野菜をどっさり買い込む。
「ワインはどないする?」
「モンダヴィのピノノアールとシャルドネにしようか」
ダニーは海老とハマグリを買い足した。
サラダ用のアンディーヴやルッコラもたっぷり用意した。
二人で用意するので、午後6時には支度が済んでしまった。
二人で、ソフィア・コッポラのスパークリングワインを飲み始めて時間をつぶす。
ソファーで二人で戯れていると、チャイムが鳴った。
「ようこそ!」
「お邪魔します」
二人ともTシャツにバミューダパンツ姿だ。ダニーが、ワイングラスを渡す。
「コッポラのやつや」
「へぇ、ありがとう」
エドは嬉しそうだ。プールサイドのBBQテラスに席を移す。
ハマグリのワイン蒸しを前菜に出し、ダニーが肉を焼き始める。
エドはグリーンサラダをマーティンの皿に盛り、食べるよう促している。
顔をしかめているマーティンに笑いころげるアラン。
ダニーは、焼いては皆に配るを繰り返し、アランと交代した。
「食ってるか?」
ダニーがマーティンにたずねると、マーティンがにっこり「うん!」と答えた。
こいつ、これだけ見てるとほんまに子供みたいや。
ダニーが思わずにんやりする姿をエドは見逃さなかった。
4人でシャンパン、赤ワイン、白ワインを計7本空け、みなデッキチェアーで談笑を始めた。
酔っ払っているので、声が大きい。すべてがおかしくて、けらけら笑える。
ダニーがマーティンを誘って、プールに飛び込む。
二人でじゃれあう姿を見ながら、エドはアランに声をかけた。
「アラン、気持ちが悪いんですけど、ごめんなさい」
「飲みすぎたかな?ゲストルームで休むといい」
「すいません」
二人はゲストルームに上がった。
ゲストルームに入ると、エドが突然アランに抱きついた。
「お、おい!」
「ねぇ、アラン、僕を抱いて!」
「何を言う!」
「お願いだから!」
二人はもつれるようにベッドに倒れこんだ。
エドがアランのパンツをトランクスともに脱がせ、ペニスを口に咥えた。
「やめろ!」エドはアランに突き飛ばされ、泣き始めた。
「一体、どうしたんだ、エド?」
「僕、寂しいんです。あなたが前に付き合ってた人に似てるんで、会う度に思い出しちゃって」
「君には、マーティンがいるだろう!」
「だって、マーティンの心はダニーのものだから」
そのまま号泣に変わった。アランは、仕方なく添い寝を始めた。
背中をよしよしとさするうち、エドの寝息が聞こえてきた。
やれやれ、一件落着か。
アランはブランケットをかけてやり、ゲストルームのドアを閉めた。
1階に下りると、ダニーとマーティンがデッキチェアーでぐっすり眠っていた。
マーティンの手がダニーの太ももに乗っているのが気になったが、
アランは二人をそのままにして後片付けを始めた。
「夏ももう終わりやな」ダニーがコーヒーを飲みながら、アランに言う。
「なごり惜しいな」
「うん」
「また来年も楽しもうな」
「うん!俺、別荘初めてやったからすごい楽しかった」
「それはよかった」
「それじゃ、行ってくる」
「気をつけて」アランはダニーを見送った。
あの子を喜ばせるためなら、僕は何だってする。
アランは微笑みながら、新聞に目を落とした。
夕方になり、アランは電話を受けた。トムからだ。
「トム、この間は済まない」
「いいんだよ、実は俺もお前が必要になった。これから家に行ってもいいか?」
トムの声に緊張が走っている。
「あぁ、分かった」
トムが家にやってきた。顔面蒼白だ。
「どうした?」
「医療過誤で訴えられた」
「えっ!」
「ギルに弁護を頼んだがどうなることか。俺としたことが」
トムはソファーにどっかり座り、顔を覆った。
「飲むか?」
「あぁ、頼む」
アランはスコッチウィスキーをグラスに注いで運んだ。
トムはぐいっと一気に飲み干した。
「詳しく話してくれ」
「いや、それより、俺、お前が欲しい」
「何だって?」
「この間、お前を慰めてやっただろう、お返ししてくれよ」
「・・」
「お願いだ、アラン、俺とお前の仲だろうが」
アランは、グラスを置いてトムの隣に座った。
「本当にそれでいいのか?」
「ああ、俺のそばにいてくれ」
「分かった」
アランはトムの手を取ると、ベッドルームに誘った。
トムはゆっくり衣服を脱いだ。相変わらず逞しい体つきだ。
筋肉の上にうっすらついた贅肉が男の色気をそそる。
アランも脱いで、ベッドに横たわった。
トムがアランの乳首にキスを施す。スポットを心得たキスだ。
アランがたまらずため息とつく。
乳首の次はへそをぐるりと舌で嘗め回す。
そして、下腹部に到達し、ペニスをちろちろと舐める。
「あぁ、トム、もっと」アランが耐え切れず嘆願する。
トムはなおもじらしながら、裏や玉をちろちろ嘗め回し、やっと竿を口に含んだ。
「うぅん、あぁ、いい」
「俺のも頼む」
トムは身体を反転させ、69の体制をとった。
アランの口の中にペニスを突っ込み、思う存分舐めさせる。
「あぁぁ」
「んん」
甘い息がこだました時、ドサっという音がした。ぎくりと驚く二人。
ベッドルームの入り口に、ダニーが立っていた。
きびすを返すダニー。
「おい、ダニー、待ってくれ!」裸で追いかけるアラン。
ダニーはアパートから出て行った。
ダニーは涙を浮かべながら、アッパーウェストエンドを降りていった。
トムと浮気するなんて、アラン、最低や!
まっすぐ家に帰る気にはとうていなれず、ミッドタウンでタクシーを降り、ブルー・バーに寄った。
カウンターに座るとエリックが近付いてくる。
「顔色悪いですよ」
「ええから、テキーラ頼む」
「はい」
ダニーは、スティック野菜をがしがしかじりながら、テキーラのショットのお代わりを繰り返した。
そのうち、意識が白濁してきて、カウンターにつっぷした。
おいおい、今度はダニーかよ。
エリックは遅番のバーテンダーに後を頼むと、ダニーをかついで、タクシーに乗った。
ダニーが目を覚ますと、エリックが近寄ってきた。
「ずいぶん飲んだね」
「あぁ、ここどこ?」
まだ頭がぐらぐらする。
「俺の家」
「帰らんと」
「まだ足元もおぼつかないくせに。今、水を持ってくるね」
ダニーは水をぐいっと飲んだ。
「何で荒れたの?恋愛がらみ?」
「うるさい!かまうな!」
「そうはいかないね、俺、もうダニーの精液飲んじゃったし」
気が付くと、ダニーは下半身丸裸だった。
「お前!」
「ふふ、今日はこのまま帰してあげる。この借りは忘れないでね」
「何てことや、俺、最低・・」
ダニーはのろのろとトランクスとパンツを身に着けると、立ち上がった。
「タクシー呼んでくれへんか?」
「どこまで?」
「ブルックリンまで」
「分かった」
ダニーは久しぶりの我が家に向かった。
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fusianasan:2006/08/26(土) 01:28:35
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fusianasan:2006/09/04(月) 08:29:00
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fusianasan:2006/09/24(日) 11:59:11
萌えないw
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fusianasan: