いつもわたしを構わない兄が、まれな休日に、いろいろな理由で都心部に行きたがらないわたしを、
遠くないあちこちに連れ回してくれることがある。
プールやスカッシュだったり、図書館や映画館だったり、単に輸入雑貨屋めぐりだったり。
安心したいか、好奇心を刺激したいか、わたしの気分の波を何も言わないのに兄はくんでくれる。
もしかすると、わたしの生理と関係があるのだろうか。それはわたしにはわからない。
わたしたちはただの実の兄妹でしかない。
連れだって歩くとき、
「なれなれしくしてほしい今」「よそよそしくしてほしい今」というわたしの気持ちが
なぜ兄にわかるのか、わたしにはわからない。
でも兄は、不思議にわたしの思ったとおりにしてくれる。
二人で外出した休日の夜、兄はたいてい言葉に出して言う。「いつもより感度がいい」と。
肯定するのも悔しいが、それが確かならしかたがない。残念だが、その通りのようだからだ。
兄は、誰かとわたしを比べているのだろうか?
昼間も兄と過ごした日は、なぜか我を忘れてしまう。それが「乱れる」ということなのだろうか。
いつか、「てかさ、にぃも舞美とふたりででかけた日は早いじゃん?いっかいめは」とか言ってやりたい。
兄が誰と性交してもかまわないが、兄のベストパートナーの席を誰にも渡したくない。
いままでも、これからも。
わたしに兄が身を預けてくる。兄の重みが、背にまわった兄の腕との間でわたしの胸を心地よく圧迫する。
兄がわたしの中に放出したものが少しずつわたしの中から漏れ出てくるのを感じながら、
こんどはどこに二人で行きたいか、ぼんやりと考えていた。