>>266-267ということで◇2.とりあえず絵を見せてもらう。
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「鍵、閉められなくてゴメンだよ〜」
澄乃は腕を絡めながらふすまを恨めしそうににらむ。
一階を雑貨屋にするために改装してはいるが、
それさえなければこの家は文化財ものなのだろう。
ふすまや障子、その程度のしきりしかない
この家には、個人のために閉じられた空間はない。
澄乃のような娘なら今まではその必要もなかったのだろう。
その澄乃が俺と2人だけの空間を欲しがっている……。
よこしまに解釈しようとすれば、誘っているともとれる言葉だった。
俺の想像よりもはるかに早く、澄乃は女になりつつある。
「いや、今日は本当に絵を見に来ただけなんですが」
動揺からさっきまでの堅さがとれない。
「えぅ…まだヘンだよ……」
「澄乃の絵を見に来ただけだって」
「それでいいよ……でも、ほんとにうまくないよ?」
「それは俺が決めるって。見せてくれよ」
「彼方さんにヘタって言われたら、もう描けないよ……」
決める、と言う言葉がいけなかったのだろうか。
「決めるって、そういう意味じゃないって……」
「ちょっと見てみたいってだけだよ」