「……あたたかい……」
熱くぬめった感触。ひくひくと断続的に震える内側。そして、鍛え上げた彼
女の肢体が、指一本でもきつく締めつけてくる。
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…………」
侵入される異物感のためか、それとも快感のためか、アインの声はもはや、
途切れそうなほど甲高いものになっていた。
僕がほんの少し指を押し入れる。
「ふぅあっ、ああ……」
そのたびに、甘い甲高い嬌声を彼女は絞り出す。細身の裸体をくねらせ、軋
ませて喘ぐその様子は、苦痛に耐えているようにすら見える。
僕は押し込む指を留めると、ゆっくり引き抜き、そして同じはやさで再び指
し入れた。
「ふぅ……はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
ぎしぎしと締めつける内壁の感触。いくつもの柔らかな凹凸が僕の指を震え
ながらまさぐる。溢れる愛液は、前よりも濃く、泡だったものへと変わってい
った。
「はぅ……あむ、むんん……」
投げ出された子供みたいに震えるアイン。彼女をきつく抱きしめ、身体をす
るよせる。触れる身体の隅々で、彼女を愛撫するかのように。
「アイン。愛してるよ」
何度目の言葉だったろうか? 濃厚なキスの後に言った言葉は、ひどく自然
な響きだった。
「……嬉しい……愛してる。私もあなたを」
快感に沈んだ瞳でうっすら笑い、アインは応える。僕は、もう一度彼女の唇
を奪う。
「……いくよ」
そう言って、正面からしっかりと彼女を抱きしめ、挿入を開始した。
「……ふぅ……ああっ!」
じゅぷぷぷぷ
水音を立てて僕のものがアインの中に呑み込まれてゆく。押し入れる分には
抵抗やひっかかりのようなものはあまりない……いや、それどころか彼女自身
がまるで貪欲に吸いこんできているかのような気すらする。
「……熱い……」
挿入の楽さとはうらはらに、彼女のなかは心地いいものだった。挿入してい
るだけでえらく柔らかい表面が僕の固くなったものに強く絡み付く。そのくせ
膣自体は狭く、全体で絞るように僕を締めつける。
「ふぅぅぅ……あああっ……」
彼女が濡れやすいのか、それとも女性はこんなにも濡れるものなのか僕には
わからないが、愛液は抽送のたびに二人の間から零れ落ちるほど溢れ、狭いほ
どの胎内を思うように嬲れるようにしてくれている。
「あん……ああ、ああん……」
そして、彼女の囁くような喘ぎ。
「……ああ……くぅんっ」
「アイン、かわいい、だいすき……愛してるよ」
クールな……殺伐としたと言ってもいい彼女の声がそのまま、子供のような
優しい喘ぎに変わっている。それが、僕をひどく興奮させた。
「はぅぅ、ぁ……ふむむ、うううんっ!」
じゅぶじゅぶと音を立てて彼女を何度も突き刺す。柔らかい内壁が、まるで
いつくもの触椀をもった生き物のように僕を包み、絡めとる。
「あ……ツヴァイ。ツヴァイのいい……きもちいいわ」
包み込まれるたび、僕は彼女の襞全てを味わおうと、こね回すように肉棒を
動かし、そして彼女を味わい尽くす。
「はぁっ! んん!! それ、は……ああっ、はぅぅぅっ」
ひくん、ひくん、と何度かアインの全身が痙攣する。僕が入れてから何度か、
軽くいったということらしい。
深い色の瞳が一瞬焦点を失い。それから、すこし照れたみたいに僕を見上げ
る。
「いっちゃったの?」
「……そうよ。あなたが上手だから」
僕達は僅かに微笑みあい、それから僕は腰の動きを再開した。
「くぅぅんっ! ああ……こ、こんどは……あなたが……ああん」
余韻ごと一気に火をつけられたアインが、息も絶え絶えに言う。きゅうっ、
とたまらない締め付けが僕を包み込む。
「はうう……くぅ、ああっ!」
―――ぐちゅ、ずぷぷ、ごぷ……
粘液の混ざり合う音が淫猥に響く。たまらない衝動が、熱くうねる肉と肉を
ぶつけ合わせる。
―――混ざり合う
そのために僕は、より深く彼女を犯す、柔らかい膣の奥へまで。
熱く火照った白い肌をどこと言わず歯を立てる。まるで、彼女を食らいつく
すかのように。
「ふぅぁっ! くうううううううううっ!! ああ、あう!!」
アインが苦悶に近い表情で背を反らす。小振りな乳房が張り付くように前に
つきだされ、ふるふると震える。その先にあるぴん、と張った先端は、弄んで
くれと、主張しているみたいだった。
「かわいい……もっと。きもちよく。ここ、こうやって……」
「ひゃぁうううううううううっ!!」
こりこり、と音を立てて彼女の乳首を甘噛みし、乳腺を舌先で侵す。もう一
度、隠そうともしなかった瑞々しい肢体が躍動して、悲鳴のような声を上げた。
それは、彼女が大きすぎる快感をどこかに逃がしているようにも見えた。
「あぁぅ……きて……出して、あなたの、なか……あああああああっ!!」
耐えるように、アインは僕にしがみつく。僕は、一気に彼女を突き刺し、乱
暴に動かし始めた。
「きゃぅ、あぅ、ううあ、あああああっ!!」
僕に纏わりつく手が、肢体が、そして膣壁が、突き上げるたびにびくびくと
痙攣する。もう、彼女が何回達したかもわからない。お互い全身を汗と恥液に
まみれされ、狂ったように交じり合う。
快楽を貪る二頭の獣が、そこにはいた。
「ひぅ、あああああっ! そん、あう、ふぅ、っ〜〜〜〜〜〜!!」
「アイン、僕、も、もう……出す……なかに、アインの……」
「きゅぅ、あぁっ、出して、わたし……ほしい、きて、きて! きて!!」
瞬間、猛烈な爆発感が僕を襲った。
――――どく、どく、どく
「きゃううううううううううううううううううううううっ!!」
意識もなにも一気に噴き出してしまったような快感。
僕は、つつみこまれるみたいに、ゆっくりとアインの胸元に崩れ落ちる。意
識を繋いでおくのも億劫だった。
「……優秀よ。ツヴァイ」
眠りの淵に落ちようとしていた僕の視界に映ったもの。それは、いつもと同
じ瞳のアイン。猟犬の瞳を持つ、完璧な殺人機械
「あなたは、きっとわたしを超える」
そう言って、ゆっくりと彼女は僕に口付ける。
猟犬の瞳のままで。
それがなぜか、僕には一番嬉しかった。
「ツヴァイはどうだったかね?」
「優秀です」
マスター・サイスの質問に、私は簡潔な返答を返す。
「……ほう?」
一瞬、マスター・サイスは探るように私を見つめる。久しぶりに見る私とい
う作品を観察する目。
訓練といえど、アインとなって初めて愛情と呼ばれる感情を受けた機械が精
度を狂わせていないか、彼なりに心配をしていたのかもしれない。
「ならばいい。下がれ」
しばらく、マスター・サイスは観察を続け、そしておもむろに興味を無くし
たように私を追い払う。
いや、事実興味を失ったのだろう。
「はい」
そして私は、急ぐように常用のカトラスに乗り込み、ツヴァイの元へと帰る。
全速でハイウェイを駆け抜け、それでも彼の元についたのは、夜半を過ぎて
いた。
「……起きていたの?」
「うん、ちょっと……」
意外なことに……もしくは、当然のように……彼は闇の中、ベッドに腰掛け
て一人、待っていた……多分、私の帰りを。
「えっと。その……昨日の件なんだけど」
彼の顔は暗闇でもわかるくらい、赤くなっている。
「昨晩の訓練?」
私の心拍数も上昇している。多分、彼は気付かないだろうけれど。
「そう、それなんだけど。……その、えっと……また、やるの?」
「訓練が一回で終わったことがあったかしら?」
「……じゃあ今日も?」
「そうね」
何気なく言った声が震えていることに、彼は気づいただろうか? 期待に私
の中の”女”が胸のなかでうねる。
「やはり、あなたはまだ性欲に対する抑制がきかないわ。それを含めて技術面
もレクチャーしておいた方がいいわね」
いいながら、彼のベッドに腰掛け、股を開く……服は、つけたまま。
「……技術?」
ごくっ、ツヴァイが呑みこんだ生唾の音がここまで聞こえた。
「そう、技術。……まずは、指で触れてみて」
ぴったりとしたスパッツに、淫唇を写し出すほど腰を突き出して、私をツヴ
ァイを誘う。
「…………」
憑かれたようにツヴァイの手が伸びる。が、その途中で私はそれを手に取り、
自分の頬へとなすりつけた。
「その前に、言う言葉があるでしょう?」
ごわごわした感触の掌が心地いい。彼は一瞬、驚いたような顔をして、それ
からゆっくりと口に出す。
「……ああ。愛してる。愛してるよ、アイン」
優しく、心地よく。
「…………ぁぁ…………」
じゅん
音を立てて、私の”女”が溢れて、スパッツを汚した。