エロゲーマー刃牙

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163名無しさん@初回限定

「これっきりにしてほしいものだな、下川」
 高橋の言葉に振り返りもせず、下川は黙々と
モニターに映るアビスボートのデモを見つづけている。
「俺達のやっていることは遊びじゃあない」
 だが、下川は高橋の言葉に耳を貸そうともしない。
「俺達は売るたびにメガヒットを稼ぐメーカーだぞ!!!」
 高橋の怒声に、ようやく下川はゆっくりと視線を返した。
「…………」
「高橋……
 俺にはこの作品、君が考えるよりずっと
大事なもののような気がしているんだ」
「気は確かか、下川
 ……これは一般作だぞ!」
「だから重要なんだよ、高橋」
 下川の表情は自信に満ち溢れていた。
「87年……Willでギャルゲーファンの心を掴んだスクウェアが
FFを売り出して成功したその日から」
「……!」
「ギャルゲーのトップこそが「世界最強のゲーム会社」の代名詞
だったはずだ。
 それを証明するまたとないチャンスがアビスボートなんだ」
「俺達が初めて挑戦するジャンルなんだぞ」
「クス……忘れたのかい、高橋」
 何を言うのだといわんばかりの表情で下川は笑った。
「俺達は下を見ないと言い張ったエロゲーメーカーだぜ!」

 そして、下川は再びアビスボートのデモを食い入るように
見つめ始める。

「…………」

 何かを言いかけた高橋は、だがそのとき。

「!」

 下川の背後にある人物の幻影が浮かび上がったのを目撃した。

「み……!」

 一瞬あえぐように言葉を切ったあと、高橋は幻影の名を叫んでいた。

「宮本!(スクウェア初代社長)」

 宮本の幻影はにっこり笑うと高橋に軽くウィンクしてみせた。