205 :
京極夏場所:
「簡単なことです。あなたは最初に吊っておられたのです」
「ほう、何処で吊りましたでしょうや」
「萌えバナで転がった後です。尾島さんが話してくれた。
吊り人は『所詮、妹で悟入は難しい』と云ったと」
――それは私も聞いた。
「ほう。それが如何に?」
――仁秀の声が変わった。口調も違う。
「如何にも何もありません。“妹で悟る”と云うならそれは葱板です。
妹スレは方々の板に伝えられはしましたが根付かなかった。サロンの
妹スレは凡て葱板の流れを汲むもの。つまり全部“萌えバナ”なんです。
犯人はヴャイシャでもクシャトリアでもあり得ないと云うことになる。
ましてや既に兄であるものが口にする言葉ではない。
そうすると残る可能性は幾つもない。妹スレが葱板に関係した禅寺である
のなら、そこに住む者は葱板の首吊りAAスレを伝えているのではないか――
ならばそれはサロンの妹スレでも同じく転がっているあなた――」
「見事。見事な領解である!」
仁秀は堂堂とした声で云った。
「ああ!」
今川が大声をあげた。
「スードラはあなた――だったのですか」
「左様。サロンにて首吊りを致したは如何にも拙僧である。
趙州狗子の領解、見事であった」