翔馬はなんとか千紗都に許して貰おうと、必死で目で訴える。
蒸れたような股間に呼吸器を塞がれて、翔馬は息が詰まっていたのだ。
女の股間に組み敷かれて見上げるというのは、なんと屈辱的なものだろうか。
だが、千紗都は無慈悲にも翔馬の頭を鷲掴みにして激しく股間を擦りつけるのだ。
「むぐぅっ……っ」
翔馬は情けなく、まるで豚のようにうめく事しか出来ない。
千紗都の手が少し緩むと、翔馬の目から新たな涙がこぼれ出す。
「あらあら♪ そんなに嬉しいんですか?」
わざとらしく、指先で翔馬の頬の涙を拭ってやる千紗都である。
こうやって相手をからかうようにして嬲るのは、翔馬の専売特許だったはずだ。
何度も何度も、メス奴隷である千紗都の調教の時に使った手段である。
それを、我が身に使われて逆に奴隷に調教されている情けなさが翔馬を苛む。
「私の匂いを、ちゃんと覚えて下さいね」
呼吸困難の状態に苦しみながら、翔馬は千紗都の股間からなんとか空気を求める。
それは千紗都の言うとおり、まるで飼い主に匂い付けされている犬のようだった。
千紗都は、呼吸に喘いで顔を紅くしている翔馬にわざとらしく声を掛けた。
「ちゃんと覚えてくれないとダメですよぅ」
問い掛けながらも、答えられないように自分の股間をもっと強く押し付ける。
「ぐっ……むぐっ」
翔馬の荒い息遣いが、千紗都のショーツに吐き出されてくすぐったい。
その息がまたもや切羽詰ってきたのに気付いた千紗都は、ちょっと腰を持ち上げた。
「はぁっ、ぷはぁっ……はぁっ! ……はぁ」
「息が苦しいんですかぁ?」
荒い息をついている翔馬に、千紗都は余裕充分といった表情で問い掛けた。
翔馬は、そんな瞳に射すくめられて口篭もってしまう。
ただ、情けなく昨日までメス奴隷だった少女に哀願の眼差しを向けて頷くだけだ。
千紗都は、素直になったご主人様に向かって満足そうに言った。
「くすっ……じゃあ、もう一回ご主人様にチャンスを差し上げます」
翔馬を見下ろす千紗都の瞳が、すっと猫のように細められる。
「“5秒間”数えますから、今度こそちゃんと息を吸って下さいね?」
先ほどは自分で息継ぎを妨害しておきながら、平然と笑う千紗都だ。
「…………っっ!!」
翔馬は何か抗弁をしようとするが、しかしそれを諦めた。
何か言えば、言葉尻を捕らえられていたぶられてしまうのは明白だったからだ。
そんな翔馬には構わず、千紗都はまるで子供に言い聞かせるように声を上げる。
「じゃあ、数えますからね♪」
翔馬は、抵抗する意志も消失してしまったように頷く事しか出来ない。
千紗都はゆっくりと口を開いて数を数え始める。
「い〜ちっ……にぃ〜いっ……さ〜ん……」
今度こそ騙されるものか、と翔馬は一気に息を吸い込んでそのまま呼吸を止めた。
これで、3まで数えたところでいきなりカウントを中断されても大丈夫だ、と。
「しぃ〜ぃ…………ぃぃぃ」
千紗都は4まで数えたところで、いつまで経っても先へ進まずカウントを止める。
焦った翔馬は千紗都を恐る恐る見上げるが、千紗都は泰然と微笑んでいた。
翔馬の怪訝な視線を受け止めて、にっこりと笑う千紗都である。
そのまま、30秒程が経過したろうか──さすがの翔馬も息が続かなくなった。
「ぷはぁっ……千紗、都……っ」
翔馬が抗議の声を上げた途端、千紗都の瞳が悪戯っぽく輝いた。
「それっっ!!!」
次の瞬間、千紗都はいきなり腰を落として翔馬の口を自分の股間で押し潰すのだ。
翔馬の鼻に、千紗都の興奮しきった愛液の匂いが押し寄せてくる。
「……ぐむぅっ!」
またしてもろくに呼吸出来なかった翔馬の口を、千紗都が塞いでしまう。
なんと卑怯で卑劣なやり方だっ──翔馬の顔が、千紗都の股間の下で屈辱に染まる。
千紗都はしてやったりという表情で、翔馬の泣き顔を嬉しそうに見つめた。
「たくさん息を吸えましたかぁ? ご主人様♪」
翔馬は完全に顔を押し潰されて、痺れたままの全身を恥辱で蠢かせた。
だが、理不尽にいたぶられる度に少しずつ翔馬の中の被虐心が目覚めていく。
抵抗出来ない諦めのため息が、更にその心を甘く蝕んでいくのだ。
そんな翔馬を見下ろしていた千紗都の表情が、急に妖艶になる。
「……ところで……ご主人様はもう気付かれましたか?」
千紗都はそう言うと、たっぷりと濡れた股間で翔馬の顔を強く押し潰した。
翔馬の視点から殆ど離れていない距離に、千紗都のショーツ越しの秘所があった。
秘裂をくるむ周囲の形はふっくらと盛り上がっており、その上には陰毛が茂っている。
両足を一杯に開いた体勢の為、割れ目は自然に船の形に開いていた。
その奥からどんどん愛液が流れ出しているのは、千紗都が興奮しているからだろう。
千紗都のショーツは、たっぷりと濡れそぼっている。
──千紗都は目を閉じると、声を低くして言葉を続ける。
「このまま私がご主人様の呼吸を止めたら、ご主人様は死んでしまうんですよ……」
ふっと周囲の空気が冷たくなり、翔馬は心臓にナイフを突きつけられた気分になる。
確かに、全身が痺れたままの翔馬にその行為を止める事は出来ない。
少しの間……二人の間に静寂が流れた。
翔馬の心臓は鼓動を早め、全身の毛が総毛立ってしまう。
ゆっくりと目を開いた千紗都は、指を伸ばしてそんな翔馬の鼻を指で摘んだ。
「今、ご主人様のすべてを支配しているのは……私なんですよ?」
尊大に見下ろしたまま、千紗都は翔馬が鼻から呼吸をする事を出来なくしてしまう。
「──……っっ!!!」
昨日までメス奴隷だった少女に、生殺与奪権を握られてしまった翔馬だった。
翔馬は恐怖で全身を痙攣させながら、許しを乞うように千紗都を見上げる。
少しの間、千紗都は何も言わずに翔馬の呼吸を止めたままにした。
「──……んんんんっっ……」
諸馬はぽろぽろと涙を流し、氷のような千紗都の瞳に哀願をする。
翔馬が恐慌状態で身体を大きく揺らすと、千紗都は笑って指を離した。
「くすっ、……冗談ですよぅ」
千紗都は、翔馬が震えながら必死になって息継ぎをしているのを冷たく見守る。
翔馬は、魂を奪われてしまったように虚ろな表情だ。
その顔を指で撫でた千紗都は、再びその股間を翔馬の口に押し付けた。
「うふふふ……」
すると、翔馬は何も命令されてないのに舌を出して千紗都のショーツを舐めるのだ。
「! ……あらあら、お利口さんですね」
千紗都は、くすくすと笑いながら自分の股間を前後させる。
「舐めるのが上手なんて、まるで犬みたいですよ? 御主人様」
そうやって揶揄されても、翔馬はぎゅっと目を閉じて耐えるだけだ。
既に洪水のように濡れている千紗都のショーツを、丁寧に翔馬の舌が奉仕する。
翔馬の媚を売るような舌の動きが、支配の快感に酔う千紗都を心地よく刺激した。
ふと千紗都が翔馬の股間を見ると、隆々と勃起しているペニスが目に入る。
身体を倒した千紗都は、翔馬のペニスをぐいっと乱暴に掴んだ。
「ぐう……っ!」
「あららぁ? 奴隷にいいようにされて気持ち良くなっちゃったんですかぁ?」
翔馬自身も、どうしてこんな酷い目に合わされて興奮してしまうのか判らなかった。
ひょっとして本当に自分はマゾだったのではないかと、翔馬は戦慄する。
千紗都は、そんな翔馬をからかうようにペニスをゆっくり扱き始めた。
「……むぐっ……ぐううっ」
「じゃあ、御主人様をもっと虐めてあげます♪」
恥辱に染まりきった翔馬の心を、千紗都の邪悪な含み笑いが切り刻んだ。
──以下、次回。
他スレとのローテーションでなかなか続きが書けなくて申し訳なく思います。
心より尊敬するこのスレの真の主役、えんぺら氏の御帰還をお待ち申し上げます。
708 :
678:02/09/01 22:03 ID:ZLaVbPiT
来た…………
神が……来られた………
たった10人のROMのために………
ありがとう…GodCO氏……
今回も最高です!
顔面騎乗最高!
何も不満はございません。
これからもよろしくお願いします。
相変わらず、Mのツボをわかってらっしゃる…
例によって(;´Д`)ハァハァさせていただきますた。
710 :
名無しさん@初回限定:02/09/02 00:29 ID:peuxEiX/
ちょっと遅れましたが、点呼12です。
GodCO氏第5話更新、お疲れ様です。また、また来週も・・・ぜひ・・・!!
折れもタイミングのがしてたから。点呼13
ということで、ここの住人で良かったと思う瞬間。
>>707 点呼14。
>えんぺら氏の御帰還をお待ち申し上げます。
例のサイトのみならず、メインサイトまで玄関残して閉じちゃって、
増えた本業(漫画原稿やらエロゲー原画作成)に専念してるって書いてあったから、
正直もう帰ってくることはないと思われ・・・。
もともと、参加型スレなんだから、俺らも昔みたいにネタ出しとか、
架空ソフトの話でもしないとな〜(かといってすぐには思いつかないが)。
713 :
677:02/09/03 19:34 ID:fnuWv17v
神キタ━━(゜∀゜)━( ゜∀)━( ゜)━( )━( )━(゜ )━(∀゜ )━(゜∀゜)━━
、、、でも、住民14人中、支持派が漏れを入れて6人か、、、、
他の住民はどーゆーネタがいいんだろ。
ネタがないんならこのままdat落ちにすべきかと。
(°Д°)ハァ?
(°Д°)ハァ?
(;´Д`)ハァハァ
、、、なんだ? この流れは??
、、、、、それにしても
どこかスレの職人?じゃないけど
漏れは職人さんってウザイくらいレスつけるヤシばっかだと思ってました。
なんかこう素人が作家気取りでファンとの語らいをやってるような、、、
そういう面ではGodCO氏はレスつけなさすぎです。
控え目で思慮深いのはカコイイですがもっと無駄話させてくだちい。
、、、、えんぺら氏に気を遣われているのは重々承知していますが、、、、
一週間近く遅れましたが、GodCO様、お帰りなさいませ。
毎回続きを楽しみにしております。
これからも頑張って下さい。
>>708 こちらこそよろしくお願いしますね。
……ただ色々あって、挫け気味だというのが本音なのですが。
>>709 どんなセリフがツボだったかとか教えてもらえると参考になりますよ。
>>710 毎週書けなくてごめんなさい。来週は純愛ラブコメ書かないといけないんです。
ちなみに某スレの「月光」の続きを書いてしまったのですが読みたいですか?
>>711 私もこのスレの(不定期)住民で良かったと思いますよ。
>>712 私もきっとえんぺら氏とはもうお逢い出来ないとは思うのですが、それでも一応。
私は、「えんぺら氏がいるスレ」の手助けをしたいだけだったんですから。
いつかえんぺら氏が過去ログを見られて、尊敬の気持ちを判ってもらえればなぁ、と。
>>713 私などえんぺら氏の足元にも及びませんから、私が我が物顔でSSを書いている現状を
苦々しく思っている住民さんの方がきっと多いのでしょうね。
>>714 その通りだと思いますが、そうやって書き込むとdat落ちしませんよ?
>>715-718 (笑)
>>719 ……と、いう訳でたくさんレスを付けさせて戴きました。
ちなみに、私は控え目でもなければ思慮深くもありませし当然格好良くもありません。
でも、いつも応援ありがとうございますね。
>>720 ありがとうございます。おかえりなさいという言葉は美しい言葉ですよね。
まあ、そう言われてしまう位に間隔を空けてしまう私が悪いのですが。
>>721 >>710さんではないけど、激しくキボーソです(;´Д`)
某スレであんなこと書いた輩がいましたが、
私はずっと待っていたんで....(;´Д`)
おながいします。
>>710です。
今後はsageます。
「月光」めちゃめちゃ読みたいです。あちらでは別のSSが連載され
そちらはそちらで好きですが、やっぱり香緒里のM→Sっぷりが・・・
生殺しはもうたくさんでございますです ....(;´Д`)
421 名前:名無したちの午後 投稿日:02/09/09 07:01 ID:YiQpG+vi
エンプレススレッドでえんえん自作自演してる、自称神のヘタレSSより、
こっちの方がちょっとはマシかな・・・。
前、SS書いてた人が懐かしくなるくらい・・。
一応、Mゲスレよりコピペな。
いるよなーこーゆー職人さんに嫉妬するヴァカ。
てめー自身がヘタレだって(藁
こーゆーガキは放置でよろ。
わざわざそんなもんココに貼るなよ・・・。
どっちでもいいから(゚ε゚)キニシナイ!!
流れを変えるためにネタフリを。
自分は「メイドにお仕置きされる」というシチュ
(「日頃の行いが悪いご主人様は、お仕置きです」とか言われて
縛られてメイドの足元に転がされ、責められる、等)
を妄想しています。
本来ならご主人様にご奉仕するはずのメイドに、逆にお仕置き(調教)される
というのは、とても摩訶不思議ですが、「ご主人様」と呼ばれながらの調教が
好み(の一つ)です。
(・・・GodCO ◆GodC09p2 さんの逆 N a t u r a l 2 と多少被ってしまってますが)
このような願望を持っている人はいらっしゃいます?
>730
やんちゃな坊っちゃんがメイドさんのスカートめくったりして
「こらっ!おイタするとお仕置きですよ!」
とか言われてお尻ペンペンされたりするのは好きだが。(こっちははじおきと被るか)
メイド(責め)×大人ご主人様(受け)は想像した事が無いな…
……(想像中)
(お仕事ちゃんとしないから、と羽根ペンの羽根でくすぐり責め)
(放蕩が過ぎますよ、と鍵付きペニスサックで性欲管理)
(あげく夢精してしまい、お漏らしする子はこうですとオムツ責め)
いい、すげえいいです(;´Д`)
>>730 別にメイドという限定はないけど、やはり立場逆転はイイ!!
そうでなくても、大人しい娘にいぢめられるのが好き。
むしろそうでないと萌えない罠…
GodCO ◆GodC09p2氏以外でそういう逆シチュエーション、
立場逆転 (;´Д`)ハァハァ SSを書いてる職人やサイトとかってないもんですかねぇ・・・。
734 :
名無しさん@初回限定:02/09/13 11:31 ID:+PuhdAbF
エンプレスの次回作まだ〜〜〜〜??
東京ゲームショーに出展するって噂あるけど
そこで発表かな??
735 :
☆☆金曜だよ!!即やろうよ☆☆:02/09/13 11:55 ID:vEwTBfKw
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736 :
名無しさん@初回限定:02/09/13 12:11 ID:dYLvLhTS
久しぶりに上がってきたね。
現在494kbなので、そろそろ次スレの用意を・・・
a
誰か次スレ立てろーーーーーーー!!!!!!!!!!
蹴りAAやるから。
ヽ\ /::::::::::::::::::::::::::\
\ \ \ /:::::::::/|/|::::::::::::::::ヽ
\ \ \ /::::::/、 \ | /|:::/l::::l ,,,
\ \ \ i::::::=- ー‐ '、―|/ .l:::i /3
\ ヽ,, ソ:::/ / \ ー ' ノハノ / /
\ ソゝ、 〉 -='/ (;;;; ;;)
ヽ⌒ヽ \_/__/::i :ヽヾ/・
\ i. \ \ヽ/ ; )) ;
\ \ ヽ ヽ ( ;
`ヽ\ \ ノ i ・ ソ
\ \ _.ノ ∫
ヽ ヽ( ; ・・
\ \ ・: バシュッ!!
入 ヽ ;
/ 'ヽ i ・ ,.. -──ヽ,.-─-ヽ
/ "\,,, / ∴∵// / /~ ̄ ̄ ̄ ̄ヽ
./ i "''丶,, ノ / i i | ∴ヽ ∀ )
/ `\..,,_,,,..-'' / i (9 (` ´) )
/ ヽノ / ヽ ミ |彡ヽ ―◎-◎-|
/ / / ∵ i i ( Y ̄ ̄ ̄ ̄)
/ / / ,,,,..ノ ∵ .i \____/
/ / / / ヽ i i i i
ひとまず保守
>>741 保守よりできればスレ立てお願いします。
私もスレッド作成試したんですが、私は立てられないようなのでお願いします。
(建てたのは一年前なのに「スレッド建てすぎです」って・・・)
1の名前欄に「ネタスレ」と書いておき、このスレを前スレと書いておけば、
タイトルや1の文章は何でもいいと思います。
保全
746 :
名無しさん@初回限定:02/10/06 18:50 ID:l7Zx5p6X
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「 茨 の 海 」 第 1 章
ティーカップを静かに置いた圭一は、辛そうなため息を吐いた。
そうして、テーブルの周囲に侍っているメイド達に移す。
圭一の視線に気が付いたらしい4人のメイドのリーダー──有希が顔を上げる。
有希は、圭一が生まれる前からこの家に仕えているベテランのメイドだ。
短く揃えた髪の襟足も美しい、一見大企業の秘書といった外見の有希が口を開く。
「落ち着かれましたか? 坊ちゃま」
その冷静な表情と涼しい声を聞くと、圭一はどこか落ち着くような気がする。
午後の日差しが優しく差し込んでくるリビングルーム。
採光がよく考えられている豪華な造りの部屋は、圭一とメイド達しかいない。
圭一は普段は感じなかった寂しさを、その豪華なつくりの部屋に感じていた。
「その遺体が僕の両親だという事に……間違いはないんだよね」
静かに頷いた有希から視線を逸らすと、圭一は幼さが残る瞳に涙を浮かべる。
──圭一の両親が、深夜の自動車事故に巻き込まれたのは昨夜の事だった。
警察からの連絡で我を無くした圭一に代わって、有希が検分に行って来たのだ。
今年ようやく17歳になった圭一にとっては、衝撃的な事件だと言っていい。
「坊ちゃま……」
圭一のすぐ近くに立っている髪の長いメイドが、可憐な声で呼びかけて来る。
彼女は圭一と同い年の新人メイド、紗江だった。
いつもは元気そのものと言っていい瞳を曇らせ、心配そうな表情だ。
なんとか紗江に情けない処を見せないように、圭一は無理に微笑む。
誰も知らない事だが、圭一は密かに彼付きのメイドの紗江と付き合っていた。
まだ手を握ったくらいの関係だが、それでも好きな女に弱みは見せられない。
有希は、そんな圭一の逡巡を知ってか知らずか淡々と言葉を続ける。
「坊ちゃま」
突然、自分に呼びかけられて圭一はびくっと身体を震わせた。
慌てて思考を中断し顔を上げると、有希の表情が酷く冷たく見える。
「……有希さん?」
自分より10歳以上年上の女性にそんな表情をされると、圭一は戸惑うしかない。
だが、有希は冷たい表情を崩さないまま声だけは優しくなる。
「坊ちゃま……お辛いでしょうが、気を確かに持って下さいね」
有希のどこか奇妙な慰めのセリフに、圭一は頷きつつ口を開く。
「ありがとう。みんなが僕を助けてくれるから、きっと大丈夫だよ」
圭一は、両親を亡くした悲しみを振り切るようにつとめて明るく言った。
実際、両親が存命中から日常生活の全てを圭一はメイド達に頼りっきりだった。
今でも、メイド達がいなくては遺産相続や葬儀の手配など何も出来なかったろう。
「そうですわね」
どこかよそよそしく聞こえる有希の声に戸惑って、圭一はそっと紗江を見る。
彼が心を寄せる紗江は顔を伏せており、隣に立つ祥子が圭一を見返す。
「どないしたん?」
いつも圭一をからかって来る祥子も、さすがに神妙な顔つきで尋ねてくる。