SS投稿スレッド@エロネギ板

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467君が望む永遠SS3
 数日後、スカイテンプルまで迎えに来た遙と並んで、孝之は橘町駅前の居酒屋
へと向かう。いまの孝之には遙のお願いは断ることは出来ない。4人で一緒に
飲みたいと言われた日、直ぐに慎二へ連絡を取った。
 飲みに行く約束以外にも、慎二と水月がつきあい始めたという遙の言葉を確かめ
たかったこともある。付き合っているかどうかということを遠回しに探ったが、
上手くはぐらされた感じだった。普段なら単刀直入に聞くことも出来たが、流石に
今回の相手が水月と言うことで聞くことが出来なかった。でも、飲みに行くのはOK
ということで今に至る。
「孝之君の働いているところはじめて見ちゃった。なかなか様になってたよ、孝之君。
 今度はお客さんとして行ってもいいかなぁ?」
「………ああ」
 曖昧な返事を孝之が返す。今日もスカイテンプルに遙が迎えに来たときに天空寺と
玉野さんにいろいろと突っ込まれた。あんまり嬉しい状況ではない。
「駄目なの?」
「いや………、遙が来たいならいつでも」
「ねえねえ、私も一緒にバイトしちゃ駄目? そうしたら、孝之君ともっと一緒に
 いられるよね」  
「……………」 
「あはは。大丈夫、冗談だよ。一緒にバイトしたら孝之君もっと困りそうだもんね」
 凍り付いた孝之を見て、遙はニッコリと微笑んで言った。初めて飲みに行くという
ことで、少しはしゃぎ気味な遙と、少し浮かない表情を浮かべる孝之。好対照な表情が
そこにはある。
「ん………遙。ここだ」
 居酒屋が並ぶ通り、その中一つの店の前で立ち止まる。居酒屋よろこんでと店の
看板が掲げられている。そこそこ安くてそこそこ美味い料理が食べれるお店。孝之の
部屋で飲むとき以外、水月と慎二と3人で良く来ていたお店。前に来たのはいつだっ
たか思い出せない。それぐらいここ数ヶ月の孝之のまわりは慌ただしかった。
「ねぇねぇ、孝之君。わたし3年間寝てたけど、一応成人だよね? お酒飲んでも
 捕まったりしないよね。捕まっちゃったら、お父さんもお母さんも泣いちゃうよぉ」
「…………大丈夫だろ。ほら、入ろう」
468君が望む永遠SS3:01/10/05 16:33 ID:JCeTp.P2
 店内にはいると従業員達の威勢のいい挨拶を受ける。がやがやと騒がしい店内は
今日も繁盛している様子で、テーブルは既に全部埋まっている。先に慎二と水月が
きているはず。孝之は店内を見渡す。そして、店内の一番奥のテーブルに2人の姿を
見つける。別れて以来初めて水月と会う。孝之は少し心苦しさを覚えて、すぐに
テーブルへ行くことを躊躇した。
「孝之君、水月達、あそこにいるよ。ほらほら、行こうよ」
 遙の言葉に背中を押され、孝之は漸くテーブルの方へ向かう。
「よっ。まあまあ、座れよ。おーい、おねえさん、ビール中瓶で2つ」
 テーブルに行くなり、慎二がてきぱきとその場を仕切る。孝之と遙は並んで
椅子に座る。
「水月っ、久しぶりだね」
「……うん。遙も……元気そうで安心した。もういいの?」
「まだちょっと不自由することもあるけど、大丈夫だよ。こうやって、みんなで
 お酒を飲むことも出来るし」
「そうなんだ……。遙が元気になって良かったよ」
 そう言う水月は見た目元気がなさそうだった。まあ、オレと会うのはまだ
早かったのかも……。孝之はそう思いつつ、水月と目をあわさないようメニューを
開く。そのメニューを物珍しげに遙が覗き込む。ピタリと肩と肩が触れ合う。
普段ならそんなことは気にしない孝之だが、今は水月の手前気になる。持っていた
メニューを遙に慌てて手渡す。
 孝之が水月の方を見ると、孝之の方を見ていた水月と目線があった。やはり
気にしていたのか、慌てて水月の方が目線を外した。
「いやいや、仲がよろしいようでお二人さん! なんか、昔に戻ったみたいだな」
「や……やだなぁ平君。そんなことないよね、孝之君」
 少し照れた笑いを浮かべた遙が、孝之に同意を求める。水月の表情はよけいに
曇った感じだ。普段なら気にしすぎるぐらいに気を遣う慎二が、何故こんな事を
言うのだろう。それを孝之は不思議に思った。
「じゃ、ビールも来たし、乾杯しようか。それでは、涼宮の回復と、4人の再会を
 祝して、乾杯」
「かんぱーい」
469君が望む永遠SS3:01/10/05 16:34 ID:JCeTp.P2
 お酒が入った遙は、いつもよりも饒舌でいろいろな話をした。昔の記念日の話
などをばらされそうになり孝之を慌てさせる。孝之も慎二も遙の話に乗せられ、
昔の話などに花を咲かせる。
 ただ、水月だけは頷いたり合いの手を入れるだけで、なんだか元気のない様子。
飲み始めてから今までの間、何度か慎二が水月の耳元で話をしていたぐらいだ。
手に持ったビールグラスの中身を水月はジッと眺めていた。
「水月………どうかしたの?」
「えっ……な、何でもないよ……遙。本当に………何でもない………」
 そう繰り返す事がかえって怪しい。やはりオレと会うのが気まずかったのか。
孝之は水月に悪いことをしたと心の中で謝る。
「あっ……」
 その時、水月が持っていたビールグラスを落とし、こぼれたビールがテーブルの
上に広がっていく。慌てて他の3人がおしぼりでそれを拭き取る。
「おいおい、もう酔っ払っちまったのか?」
「ご……ごめんなさい」
 孝之の言葉に水月が謝る。今日初めて成立した二人の会話。水月は気分が悪いのか
ぎゅっと目を閉じて何かに耐えているようだ。
「本当に大丈夫か?」
「あ……、だ…大丈夫だよ、孝之」
 心配そうに聞いた孝之に、そう答えた水月の声は震えていた。全然大丈夫そうには
見えない。額には脂汗がにじみ、頬が紅潮していた。
「ねえ、誰かの携帯に着信中だよ。ほらほら、携帯が振動している音がする」
「えっ!」
 水月が慌てた様に大きな声を出す。遙の言葉に、孝之は耳を澄ませると喧噪に
包まれた店の中、確かに携帯が振動する様なモーター音がしている。
「あっ、多分オレのだ。大学の講義中に着信音が鳴らないようにとマナーモードに
 してたから」
 そう言って慎二が、テーブルの下に置いてあった鞄の中から携帯をとりだした。
モーター音は止まった。
「おいおい、どっかの女からか!」
「ちがうぞ、うちの親からだ。おっと、ほらほらもっと飲もう」
 慎二はそう言って、孝之と遙のグラス、そして自分のグラスにビールをつぎ足す。
「速瀬は……まだ飲めそうか?」
「えっ……、もういいよ」
「やっぱり気分が悪いのか? 吐きそうなのか? そうならトイレに行って吐いて
 きた方が良い。オレがついていくから、遠慮すんな」
 遠慮しながらも、渋々水月は慎二に付き添われながらトイレの方に向かっていった。
そんな二人を見ながら、孝之はやっぱり付き合ってるのかとの思いを抱いた。