Eカードの後編、完成しましたので投稿させていただきます。
18レス分を予定しております。よろしくお願いします。
「薫子お姉さま、陽向さま、ご安心ください」
そう思って立ち上がった矢先、史がそう言ってきた。
「史がお2人のご機嫌を直す余興をご用意いたしました」
史はそう言って自分のカバンの中から何かを取り出してきた。
「ふ、史、それは……!」
〜Eカード 後編〜
「ぱらららっぱらーん♪ 周りの人の脳みそをいい感じに破壊しちゃう爆弾♪」
史! それって前にも似たようなものを持ってきたけど、とんでもなく物騒な名前じゃないか!
だいたい脳みそをいい感じに破壊するってどういうことだよ!?
「史! そんなもの、誰がいつ作ったんですか!」
「史が一晩でやってくれました」
って、またそのセリフ!?
「そんなもの作る必要ないでしょう! 爆発物取締法違反ですよ、それは!」
「ご心配には及びません。(ピーッ)主義による治外法権により、罪には問われませんから」
って、アリか!? そんなのアリなのか!?
「とにかく史、そんな物騒なものはしまって……」
「じゃあ千早、あたしたちに面白くない気分のままでいろって?」
いや薫子さん、ジト目で見なくてもそんなこと言ってないでしょう! 気分を晴らす方法は何もそれじゃなくても……。
「そうだそうだ! 千早お姉さまは1位だから面白いんでしょうけど、こっちはそれでも見なきゃやってられませんよ!」
「ですから、面白い面白くないの問題じゃないでしょう! 身の危険が迫っているかもしれないんですよ!?」
僕が必死に説得しようとすると、意外な方向から攻撃が来た。
「私たち、前の時見れなかったよね、優雨ちゃん!」
「うん、わたしたち、みてない」
初音さんと優雨まで……しかも以前のスイカ物語の時のことを張り合いに出して……。
「というわけで、さっさと火をつけちゃいましょう!」
僕が2人のジト目にさらされているすきに、陽向ちゃんが導火線に火をつけてしまった。
「ちょ、ちょっと……」
ジジジジジジ……ボンッ!!
爆弾が爆発すると、以前同様、白い煙がもうもうと立ち込める。
「ケホケホ……」
「ケホケホ……あ、相変わらずすごい煙ですね」
って、初音さんはともかく、あまり体が丈夫な方でない優雨は大丈夫なのか?
「コホコホ……」
「ご心配には及びません。この煙は直接吸っても人体に影響はありませんから」
史、1人だけ防護服を着たまま言っても全然説得力ないんですけど!?
でも、優雨を見ると、そんな悪影響をもたらしたということもなさそうだ。僕は一安心した。
そんなことを考えていると、食堂のテレビがプッとついた。テレビにはなぜか母さんの姿が映る。
「はーい! 千早ちゃん、寮の皆さん、元気してる? 今年のエルダーマザー、妙ちゃんでーっす♪」
「誰が妙ちゃんですかっ! 誰がっ!」
ブラウン管の中の母さんに言っても聞こえるはずないのに、それでもツッコまざるをえない。他のみんなも唖然としている。
「これを見てるってことは、全員Eカードをやったのよね?
じゃあ、Eカードにちなんだ大会を開催した映像を見せてあげるわね。どーぞー♪」
なんで母さんがまりや従姉さんの作ったEカードを僕たちがやることを想定してるんだ?
母さんの言葉とともにテレビの画面が切り替わり、どこかの屋外のステージらしい場面が映った。
画面には主催者が数人、参加者が約30人ほどいる。何かのイベントらしい、ということまでは一目でわかったけど、
その大会名を見て僕はずっこけた。
「う、ウボァー大会……?」
なんなんだよ、その訳の分からない大会名は?
テレビを見ていると、その大会は1人ずつ舞台の上で「ウボァー!」と叫び、その迫力や面白さを競うというものだった。
しかもなぜか御門家主催になってるし。
「ウボァー!」
最初にエントリーした参加者は、普通にウボァーと叫んだだけだった。
「プッ……」
「くすくす……」
「あははは……」
それでも、ブラウン管の内外から笑い声が聞こえてくる。
「ウボァー!」
次に参加したのは女性だった。勇気があるというか、なんというか……。
ブラウン管の内外から、さっき以上の笑い声が響いてくる。
「ウッボッァーッ!!」
次の参加者は、「ウ」「ボ」「ァー」のそれぞれの発声のたびにパフォーマンスを加えた。
「ぶわはははははは!!」
「あははははははは!!」
「くっ……くくくくくくくく……」
「は……はひはひはひはひ……」
大会の見物人と櫻館の中の笑い声の声量が倍増する。
「ウボァーン♪」
今度は女性が色っぽい声を出して男を誘うように言う。確かに艶っぽくて男心をくすぐりそうだけど、
言う言葉がそれではよりいっそう笑いを引き出させるだけだった。
「あ……あうあうあう……」
「ひっひっひっ……」
そして、すべての参加者が「ウボァー!」を言い終わり、大会が終了すると、
僕たちは一人残らず笑い過ぎによる呼吸困難で筋肉がひくひく痙攣していた。
「ちょ……反則だよ、これは……」
「まったく……なんてことを企画するのかしら、千早のお母さんは……」
「ふ……史も……さすがに笑わずにはいられません……」
脳みそをいい感じに破壊しちゃう爆弾か……なるほど……って……!
「これ、何も爆弾を使う必要なかったじゃないですか!」
「ねえ千早、せっかくだから、あたしたちも“ウボァー!”って言ってみない?」
しばらくして落ち着いてから薫子さんはとんでもないことを言ってきた。そんなかっこ悪くてみっともないこと、
お嬢様学校に通う僕たちが……。
「いいですねえ薫子お姉さま! それやったら笑いの渦になること間違いなしですよ!」
「あ、あのね2人とも……なぜ私たちがそんなことを……」
「まあいいじゃないの。今回だけなんだから、悪い夢でも見たと思えば」
僕が止めようとすると香織理さんまでそんなことを言ってくる。
「わ、私もちょっと興味あるかな?」
初音さんまでどこか申し訳なさと好奇心が同居するような目で言ってくる。どうもこの場は流された方がよさそうだな。
「じゃあ、まずはあたしからね!」
さっそく薫子さんがみんなの前に出てきた。そして、大きく息を吸い込む。大声で叫ぶ気なのか?
「ウウボァー!!」
薫子さんが声を限界まで上げて叫ぶ。僕を含めて全員が思わず吹き出していた。やっぱりこれは何度やっても笑えるみたいだ。
「では、続きまして宮藤陽向、行きます!」
陽向ちゃんはマイクを持ってみんなの前に出る。薫子さんより響くように叫ぶつもりか?
僕がそう思っていると……陽向ちゃんは予想もしなかった行動に出た。
「ウボァーウボァーウボァー♪」
なんと陽向ちゃんはウボァーウボァーと歌い始めたのだ。しかも歌いながら踊ってるし。
僕たちはおなかがよじれるかと思うくらい笑った。
「ま、まったく私の妹はなんてことを考えるのかしら……」
しばらくしてようやく笑いが収まった香織理さんがそうつぶやく。もっともそうなるまでどれだけかかったか知れないけど。
「当然ですよお姉さま! この宮藤陽向、面白くすることには命を賭けてますので!」
賭けなくていい! そんなことに命まで賭けなくていいから!
そう思っていると、次は唐突に訪れた。
「うぼぁー……」
次に僕たちの前からでなく、席に座ったままの優雨が普段と変わらない口調で言う。瞬間、僕たち全員が脱力した。
「うーっ……」
不意打ちとなんとなく力のない「ウボァー」は、破壊力というか、僕たちの精力を奪うには十分だった。
僕が見回すと、まだ倒れたままピクピクと身体を痙攣させている人もいる。
「ウボァーっ♪」
次は、初音さんがにこにこ笑いながらおっとりして緊張感も迫力もないウボァーを口にした。
「うーっ……」
優雨に続いて初音さんの「ウボァー」も、僕たちの精力を奪うには十分だった。
僕が見回すと、やっぱりまだ倒れたままピクピクと身体を痙攣させている人もいる。
「……なんというか、初音と優雨ちゃんの『ウボァー』はすごく危険だね」
「そうね……」
薫子さんと香織理さんが苦笑しながら語る。恐るべし、迫力のない“ウボァー”……。
「では、次は史がやらせていただきます」
続いて史がやることとなった。史は基本的にほぼ感情のこもってない機械的な口調だけど、大丈夫かな?
「ウボァー」
史は、予想通りの口調で「ウボァー」と言った。
「………」
えっと、なんと言っていいのか……周りも沈黙したままだ。
「プッ……」
しばらく沈黙が続いた後、不意に誰かが噴き出した。
「くっ……くくく」
それを聞いた僕も、不意に笑いがこみあげてくる。
「くすくすくす……」
それから、連鎖反応が起こったようにみんなに笑いが広がっていった。一見地味で何の飾り気もない「ウボァー」だったけど、
一度誰かが笑うとそこから笑いが浸透していく。恐るべし、史の“ウボァー”……。
さて、次はいよいよ僕の番だ。どんな“ウボァー”を言うことにしようか……考えてみたけど、何も1つじゃなくてもいいはず。
だったら……。
「ウボァー!!」
まずは、大きく息を吸い込んで、出せる限りの大声で力強く叫ぶことにした。
「あははははは!!」
「くすくすくす……」
まずはお約束通りみんなから笑い声が聞こえてくる。
「ち、千早が力強くやると、“そう”とわかってても違和感すごくて笑えるわね……」
香織理さん……今の言葉に怒りがふつふつ湧いてくるんですけど?
「ウボァーっ♪」
次は淑女の演技で笑顔で上品に言ってみせる。
「………」
今度は寮生全員沈黙してしまった。みんなどうしたんだろう? そんなにつまらなかったのか……?
「プッ……」
「くすくす……」
そう思ったけど、それは間違いだったみたいだ。しばらく沈黙が続いてから、みんな必死でそれをこらえるように笑い出した。
「な……どうして? いったい何が?」
「いや、だってさ、思わず千早に見とれちゃってさ……でも“ウボァー”なんて言ってるのに見とれたのがおかしくて……」
見とれた? あんな間抜けなセリフを言った僕に……?
「まあ、確かに千早ほど淑女のイメージがぴったり合う人はいないからね。間抜けなセリフでも
絵になって見とれてしまうんでしょうね」
「さすが千早ちゃん、貴婦人さんをやらせたら天下一品、ですね!」
「ちはや、上品なとこがとってもきれい」
みんな僕のことを褒めてるはずなのに、なんだろ、ふつふつと湧き上がってくるこの殺意は……。
「いよいよ最後の締めくくりは、七つの声を持つお姉さまですね!」
陽向ちゃんがそう熱演する。そういえばスイカの劇でもその才能を存分に発揮したよね、香織理さんは。
香織理さんはみんなの前に出ると、なんと陽向ちゃんとはまったく別のやり方でウボァー攻めをしてきた。
まず香織理さんの指示で史が食堂の電気を暗くする。そして香織理さんは、自分で考えた物語の登場人物になりきって話を進めた。
「『私の名前はウボァー皇帝。日々よりよいウボァーを追求し、研究に研究を重ねるナイス皇帝さ!』」
ちょ……香織理さん、どこからとってきたんですか、そんな設定!?
「『思えば、ウボァーの修行中、師匠に飲まず食わずで修行をさせられたこともあった!
ウボァーの披露会で、民の笑いものにされたこともあった! しかし私は決してくじけなかった!
くじけずに、常に最高のウボァーを叫び続けてきた!』」
その後も香織理さんは、皇帝以外にもその婚約者、家臣など、いろいろな人物になりきって一人芝居を展開していく。
そのたびに、僕も含めて全員から大爆笑の渦が巻き起こった。
「お、お姉さま、これは反則ですよ!」
「か、香織理さん恐るべし……こんな笑える話聞いたことないよ!」
「香織理ちゃんにこんな特技があったなんて……驚きです」
香織理さんの一人芝居が終わっても、しばらく笑いの渦は消えなかったけど、それがようやく収まってきたとき、
みんなが口々に感想を言う。
こうして、この日の夜は僕たちのウボァー大会の感想の話に花を咲かせながら過ぎていった。
そして、その翌日……。
「こよりさん、私のカードはこれですわ」
朝教室に行くと、こよりさんたちが、僕たちが昨日やっていたEカードをやっていた。なんで!?
昨日の休日にやったばかりなのに、情報もカードもどこからどうやって手に入れてきたの!?
見ると、相手がめくったカードは瑞穂さんだった。
「私のカードはこれですわ」
こよりさんがカードをめくる。貴子さんだ。けど、そう思っていると、さらに予想外の光景が待っていた。
「ウボァー!」
なんと、こよりさんの相手が例の断末魔をあげた。
「な、何よ今の変な悲鳴は!?」
薫子さんもびっくりして問いただす。正直僕も同じ気持ちだ。
「何って、Eカードで負けた時はそう叫ぶのがルールではなくて?」
いや、ない! そんなルールないからっ!
「……千早、あたしたちがやった時はそんなルールなかったよね?」
「ええ。香織理さんからも聞いていませんし、私たちもやりませんでしたが……」
もしかして新ルールなのか? ルールが追加されることや変更されることはよくあることだけど、ここまでの超スピードとは……。
「おや、やっているみたいだね、Eカード」
「そうみたいですね」
そう思っていると、背後から茉清さんと聖さんが教室に入ってきた。
「おはようございます、茉清さん、聖さん」
「おはよう、Wまきよさん!」
「そ、そんな……何度聞いても恥ずかしいです」
「薫子さん……」
2人は恥ずかしそうに照れる。Wまきよというのは、“まきよ”さんと“まき”た“きよ”らさんの名前から
薫子さんが考えた名前で、そう呼ぶたびに2人は恥じらいの表情をするわけだ。
それはさておき、2人は早速今見たばかりのカードゲームの話題を口にする。
「せっかくだから私たちもやろうか、聖さん」
「そうですね」
そう言うと茉清さんが早速Eカードを出してきた。
「ま、茉清さんまで、どうしてEカードを……」
「どうしてって、今聖應中で流行っているじゃないか」
せ、聖應中で!? なんで当然のように言うんだ!? それは金曜日まで影も形もなかったのに……。
「昨日千早さんたちがやっていらしたそうじゃないですか。それで、みなさん、まりやさまにネットでご注文なされたそうです」
いったいどうやってそんな情報が広まったんだ!? それでどうして早速入手できるんだ!? 恐るべし、聖應の情報網……。
支援
そして、放課後、修身室……。
「それでは、本日はここまでと致しましょうか」
「お疲れ様でした!」
今日も僕は雅楽乃と雪ちゃんに呼ばれて華道部に顔を出していた。そして部活が終わり、僕たちも帰ろうとしていた時……。
「あ、あの、お姉さま!」
ふと雪ちゃんに呼び止められた。なんだろ?
「なんですか、雪ちゃん?」
「も、もう1度私と勝負してくださいっ!」
「もう1度?」
今日も僕は雪ちゃんと活け花の勝負をしたわけで、まあ結果は……いつも通り。
「どうしてもと言うのでしたら別に止めはしませんが、もう少し今日のことを考え直してからの方がいいと思いますが……」
「いえ、今度は活け花じゃないんです」
活け花じゃない? じゃあもしかして……。
「Eカード、ですか?」
「ええ、その通りです」
雪ちゃんはそう言うと、ポケットから例のカードケースを取り出してきた。
「あまり遅くなってもいけませんし、1回だけですよ」
こうして僕は雪ちゃんとEカードをすることになった。雅楽乃がカードを繰り、僕と雪ちゃんに5枚ずつ配る。
「私は姉カード3枚と妹カード2枚です。雪ちゃんは?」
「うぐっ……私は姉カード2枚と妹カード3枚です……」
雪ちゃんは苦しげな顔をする。だけど、活け花はともかく、これはお遊びで、運否天賦の要素もかなり含んでいるんだから、
勝敗にそれほどこだわることもないと思うんだけど……。
「まず由佳里お姉さまです!」
早速勝負を開始して1回戦、雪ちゃんがそう言ってカードをめくる。
「私は一子さんです」
「ウボァー!」
僕がカードをめくると、雪ちゃんはやはりというか、例の悲鳴を叫んできた。
「プッ……くすくす」
ダメだ、これは何度聞いても笑いをこらえることができない。
「お姉さま! 負けた人をみっともないってあざ笑うなんて趣味悪いですよ!」
すると雪ちゃんが熱くなってそう抗議してくる。まあ噴き出してしまった時から予想はしてたけど。
「申し訳ありません。ですが雪ちゃん、それは誤解です。今のは“ウボァー!”の悲鳴がおかしくてつい……
そもそも私は負けがみっともないなんて思っていませんから」
「そ、そうなんですか?」
僕がそう言うと、雪ちゃんは怒りの熱を下げたようだ。
「そうです。そもそも私との活け花で雪ちゃんが“負けた”時、あざ笑ったことが1度でもありましたか?」
「い、いえ……」
雪ちゃんは少し弱気ながらも認めてくれたようだ。僕は安心して続ける。
「そもそも、負けは結果にすぎません。そこに恥ずべきことがあるとすれば、それは勝つための努力を怠った、
もしくは自らの慢心で相手を格下と侮っていた、そのどちらかでしょう」
僕が言うと、雪ちゃんも納得してくれたようだ。僕たちは勝負を再開した。
2回戦も僕が勝ち、次いで3回戦……。
「私は貴子さまです。お姉さまは?」
「……まりや従姉さんです。それではいきますよ」
僕が負けがわかっているカードをめくり、やる宣言をすると、雅楽乃と雪ちゃんは好奇心旺盛な瞳で僕を見る。
「ウボァーっ♪」
僕は昨日櫻館でやったように、淑女風に言うことにした。
「……ぷっ」
案の定、雪ちゃんは噴き出した。
「雪ちゃん、今のは、負けた私をみっともないと思ってのことですか?」
僕は穏やかな口調で雪ちゃんに問いかけた。
「ち、違いますから! 今のはお姉さまのウボァーがおかしかっただけですから!」
「では、雪ちゃんも私がみっともないと思って笑ったわけではないと理解していただけますね?」
僕がくすりと笑って言うと、雪ちゃんは決まり悪そうに、慌てたように言う。
「わ、分かりましたから! そもそもその前に2回連続で負けて、みっともないって思えませんから」
「理解していただけて嬉しいわ」
……確かにウボァールールを追加すると、負けた方にはいい罰ゲームになるかもしれないな。
「まあ! 雪ちゃんったらEカードを利用してお姉さまと心を通わせるなんて……相変わらず油断も隙もない策士なんですから!」
「ちょっとうたちゃん! なんでそうなるのよ!」
いつも通りふくれる雅楽乃にムキになって反論する雪ちゃん。
「でしたら雅楽乃、あなたも私とEカードをやりますか?」
「ええっ!? よろしいんですか?」
雅楽乃は嬉しそうに承諾し、今度は雪ちゃんがカードを繰って配り、勝負を開始することになった。
「こんなところ、かしら?」
1回戦、僕は選んだカードを伏せて提出する。雅楽乃もカードを選んで出してきた。
「私は瑞穂さんです。雅楽乃は?」
「奏お姉さまです」
僕がカードをめくると、雅楽乃もカードをめくる。今回は僕の勝ちだ。しかし、なんと雅楽乃は僕の予想外の行動に出てきた。
僕の前で制服の上着を脱ぎ始めたのだ。
「ちょ、ちょっと雅楽乃!? 何をしてるんですか!?」
「何って、こういう勝負で負けた方が脱ぐ……という話を耳にしておりますが?」
雅楽乃はとんでもないことを平然と言う。
「うたちゃん、野球拳や脱衣麻雀じゃないんだから!!」
確かに雪ちゃんのたとえではそういうのはあるけど、雅楽乃はどこからそんな情報を……。
「というか雅楽乃、聖應の生徒なのですから、淑女の嗜みとしてそれはどうかと……」
「今ここには私とお姉さまと雪ちゃんしかいないのですから、大丈夫ですよ」
「いやいや、大丈夫じゃないから!」
雅楽乃は満面の笑顔で言うけど、ほかの生徒が通りかかったらということも考えて……!
結局雅楽乃は上のワンピースの制服を脱いでブラウスとショーツの姿になった。
「2回戦……これにしましょうか」
最初はゲームのつもりだったのに、お遊びどころじゃなくなってしまったぞ……。
僕はまりや従姉さんのカード。雅楽乃は……。
「私は貴子さまです」
つまり僕の負けだ。ってことは……。
「さあお姉さま、脱いでくださいな♪」
雅楽乃が思いっきり艶っぽい表情で言う。そこで僕は雪ちゃんと説得してみたけど徒労に終わった。
「しかたありませんね、では……」
僕は仕方なく靴下を脱いだ。
「それだけですか? お姉さまずるいです!」
「靴下も衣装の1つよ」
僕が言うと、雅楽乃も反論できないのかあきらめてくれた。けど、待てよ?
もしこのまま負けが続くと脱ぎ続けなければいけないわけで、つまり……僕の正体が……!!
負けられない。絶対負けられない。かといって勝ち続けても、雅楽乃を脱がせることになるわけで……どうしたらいいんだ!?
「私は紫苑さんです。雅楽乃は?」
「私は由佳里会長です」
僕は絶句した。また負け!?
「ど、どうして姉カードを出している私が……」
連続で負けるのか、と言いかけると、雅楽乃が答えを言ってきた。
「私は千早お姉さまでしたらどのあたりのカードを出してくるか直感でわかるのです。愛の成せる技ですわ♪」
……これはとんでもないことになってきたぞ。雅楽乃の残りカードは姉カード1枚、妹カード1枚のはず。
僕の残りは奏さんと瑞穂さんだ。
3回戦、僕は何とか股間のものを間に隠してブラウスとショーツ姿になったけど、ここからも連敗だと、
下着も外さざるを得ない。それだけは避けないと……。
「これは……身体測定の時のワイシャツ姿も色っぽくて素敵でしたが、こちらも同じくらい素敵です♪」
雅楽乃は恍惚の表情で僕を見ている。はっきり言って、これは想像以上にやばい……ていうか……。
「身体測定の時、雅楽乃とはまだ出会ってなかったでしょう?」
「ええ、でも、その時の写真を持参していますから。生徒の間では出回って……」
(うたちゃん! それは他言無用だって必殺密売人Mから言われたじゃない!)
雪ちゃんがとっさに雅楽乃の口を塞いだ。なんか僕の知らないところでとんでもないことになってるような……。
4回戦は僕が奏さんで雅楽乃が一子さんだった。それで僕はブラウスを抜いて下着姿になった。
雅楽乃、息が少し荒くなってるような。
5回戦、雅楽乃の残りは姉カード。僕の残りカードは姉カードの中では最弱の瑞穂さんだ。
これ以上脱いだら間違いなくバレるのに……そう思っていると雅楽乃はカードを出した。
「私は瑞穂さんです。雅楽乃は……」
雅楽乃はカードをめくった。僕が焦りながらも見てみると……雅楽乃も瑞穂さんだった。
「た、助かったあ……」
僕は安堵からヘナヘナとなって畳の上に突っ伏してしまった。
「お姉さま! この状態からもう1度Eカードを……」
雅楽乃が表情を輝かせ、桃色の吐息を吐きながらお願いしてくる。
「うたちゃん、これ以上はまずいからやめましょうね」
と、雪ちゃんが雅楽乃をズルズル引きずっていった。
「ああん雪ちゃん! ご自分はお姉さまと心を通じ合わせておきながら、どうして私の時は邪魔をするんですか?」
……し、心臓、泊まる、じゃなくて止まるかと思った……。
危ない危ない、緊張のあまり、漢字まで間違えそうになったよ……。
その翌日、僕はいろんな女生徒に脱衣Eカードを挑まれて逃げ回ったり、みんなが“ウボァー”の思い出し笑いで
授業が成り立たなくなったりと散々だった。
初音さんに報告して、生徒会から脱衣系の賭けとウボァーを禁止してもらってようやく事態は収拾したのだった。
「はあああああ……」
授業が終わり櫻館に到着して、僕は思いっきり大きなため息をついた。
「千早ちゃん、だいぶ疲れてますね」
それを見て初音さんは冷や汗混じりに笑う。
「初音さん、ありがとうございました。正直生きた心地がしませんでしたから」
「い、いえ、生徒会長として当然のこと……ですから……それは……」
初音さんは真っ赤になって縮こまってしまった。どうしたんだろう?
時はさかのぼって、その日、例の部屋……。
「初音お姉さま、千早お姉さまの下着姿とブラウス姿の写真です! 販売されてはいかがですか? お安くしときますぜ?」
「ひ、陽向ちゃん! 私は必殺密売人Mですよお……」
「私は必殺密売人Hですよ?」
「うう……お姉さま方から引き継いだ伝統とはいえ、いつまでこんなことすればいいんですか……?」
「大丈夫よ。この必殺密売人Kが責任持つから」
「うう……ごめんなさい千早ちゃん……」
この日、千早脱衣Eカードの写真が隠し撮りされ、裸電球の部屋の人たちを通じて全校生徒に発売されていることを、
まだ本人は知るよしもなかったのだった。
Fin
以上です。
>>28さん、支援ありがとうございました。
必殺密売人たちのM、H、Kという名前は、彼女たちの名前の頭文字です。
この3人、苗字と名前の頭文字かかぶるので、こうなりました。
3人合わせて某TV局になったのは偶然です(私も書いて初めて気づきました)。
それでは、本日はこれで。お目汚し失礼いたしました。
支援が間に合わなかった。
乙であります
経過報告
半分くらいまでは書けた。
前にも伝えた通り、携帯からの投稿になります。
このスレも人が減ったため、
来週あたりから、1日1カキコを目標に投稿していきます。
全体量は?
たとえば30本を1日1回とかだと、さすがにアレな気が。
わかった。やはり、もう少し書き溜めて
クリスマスあたりから投稿します。
ただ、携帯からの投稿は変わらないので
やはり1日に2~3本の投下となりそうです。
よろしいでしょうか。
>>40 宜しいでしょうかも何も、貴方のペースで投稿するのがよいと思いますよ。
ただ、読み手としては早く読みたいわけでして。。。
なので、私的意見で云うとそれで良いかと。。
個人的な意見でよければ、3,4回で貼り終えてほしい
というか、完成してからでいいと思います
ほしゅ
ho
乙ウボァー
ほちゅ
ほ
しゅ
ほっシュート
ほ
53 :
名無しさん@初回限定:2014/05/30(金) 21:21:55.67 ID:cIFnTj9Q0
ho
syu
55 :
名無しさん@初回限定:2014/06/07(土) 15:04:44.87 ID:QyfA5FNi0
保守
56 :
名無しさん@初回限定:2014/06/13(金) 22:34:14.94 ID:91a7My330
あげ
57 :
名無しさん@初回限定:2014/06/21(土) 17:06:51.60 ID:hwp+14YR0
ほしゅ
58 :
名無しさん@初回限定:
ほ