最初から手直ししたので、どうせなので最初からやり直します。
規制に合わせたつもりですが、予想より規制が厳しかった場合は
>>833さんの言うように一旦外部掲示板に載せようと思います。
では、WHITE ALBUM2〜introductory chapter〜もう一度始めます。
峰城大学付属高校3年生・北原春希(きたはら はるき)は成績優秀品行方正で通っている典型的な委員長気質。
頼んでもいないのに厄介ごとを引き受けてしまう仕切り屋で、その上誰にでも説教してしまう説教屋。
その真面目すぎる堅物ぶりに辟易されつつも、彼を知る人からは頼られる存在だった。
そんな彼の頼まれごとのひとつが一ヵ月半後に開催される学園祭の実行委員の手伝い。
付属の大学で開催されているミスコンに倣って裏で開催されている裏ミスコンの参加者にエントリーの意思を確認しに、
入学してから2年間ミスコン女王の座に君臨している学園のアイドル、小木曽雪菜(おぎそ せつな)の所へ向かうと、彼女は参加を辞退したいと言い出す。
だが、周りの男連中の反対を無視して「有名になりすぎても気苦労が多くて困るだろ、本人の意思が大切」と言った春希を見て、雪菜は参加取り消しを撤回する。
基本的に真面目で無趣味な彼のひそかな趣味とも言えるのがギター。
春希は軽音楽同好会に所属しており、裏方とはいえ彼も学園祭に向け準備していたのだが、
同好会の部長である春希の親友にして女好きで有名な飯塚 武也(いいづか たけや)たちメインメンバーが
ヘルプで入っていたボーカルとの女性関係で揉め事を起こし空中分解、文化祭への参加が危ぶまれてしまう。
これで半年の同好会活動も終わりかと、春希は最後に自分の一番好きな曲である『WHITE ALBUM』を弾き始める。
隣の第二音楽室には、春希がギターを練習しているとそれに合わせてくれる謎のピアニストが居て、
春希はその顔も知らない相手とのセッションをとても楽しみにしていた。
心地よく最後の壁越しのセッションを楽しむ春希の耳に、聞き覚えのない歌声が聞こえてくる。
声の主を探して屋上に向かうと、そこには気持ちよく『WHITE ALBUM』を歌う雪菜の姿があった。
お互いに驚愕しつつも、春希は雪菜に話しかける。
「軽音楽同好会、入らない?学園祭でバンドをやる予定なんだけど、ボーカルがいなくて」
「ごめんね…わたしの中では僅差だったけど、やっぱり無理」
翌日。一晩考えてきた雪菜の返事を聞くが、結局断られてしまった春希。
だが、諦められない春希は最後の手段として放課後、商店街へ向かう。
スーパーでアルバイトをしている三つ編みおさげでメガネの地味な女の子、それがもう一人の小木曽雪菜だった。
春希は昨日の初対面の前から雪菜がここでアルバイトしていることを知っていた。
自分の変装を見破られたのは初めてだという彼女は、自身のアルバイトの理由を語り出す。
普通の中流家庭の娘である彼女だが、学園祭のミスコンで優勝してしまったために
「お嬢様」のイメージがついてしまい、そのイメージを守るための新しい服を買うためにバイトでお小遣いを稼いで、
アルバイトのせいで時間が取れずに友達ともなかなか遊べず、付き合いが悪くなるとますますお嬢様イメージが加速して…
という悪循環に陥ってしまったという。
彼女の「いい子」すぎる打ち明け話の眩しさに毒気を抜かれてしまった春希は勧誘を諦めようとするが、
雪菜は春希に「夜10時に駅前で待ってて」と頼む。
「本当のわたしはね…あなたが今思っているようないい子なんかじゃないの」
別れ際の雪菜の言葉に緊張していた春希が駅前で待ち合わせした後向かった場所は…カラオケボックスだった。
8曲ぶっ通しで歌っても平気な顔をしている雪菜に唖然とする春希。
彼女は歌うことが大好きで、趣味は一人カラオケ。
一人で歌う理由は「複数人だと一曲あたりの値段が高くなるし順番待ちがイライラするから」。
学園のアイドルと謳われる高嶺の花の正体は、妙に庶民的で、歌に関してだけは空気を読めない少女だった。
春希に自身の秘密を告白した雪菜は、昨日の断りの撤回と同好会への参加を了承した。
翌日。春希が雪菜を口説き落としたことを話すと、
武也と、武也の5年来の腐れ縁にしてボーイッシュで体育会系な春希と雪菜の共通の友人・水沢 依緒(みずさわ いお)に仰天される。
だが、そこで雪菜の「ピアノの人は?」という質問に、春希は見栄を張って「今日は休み」ととっさに嘘をついてしまう。
その見栄のためだけの嘘を本当にするべく音楽科クラスであるH組へと乗り込む春希。
だが、第二音楽室は音楽科の面々は誰も近づきもしないという。
第二音楽室の主の正体を探るべく、春希は武也の協力のもと窓伝いで外から第二音楽室の窓を覗く。
そこに居たのは今年の初めからずっと春希の隣の席で、遅刻・サボリの常習犯である冬馬かずさ(とうま −)であった。
かずさは世界的な有名ピアニスト冬馬曜子(とうま ようこ)の娘であり、天才的な音楽センスの持ち主。
過去2年は音楽科に所属していたがその才能と曜子の名のために教師達に贔屓され、それに嫉妬されて彼女は音楽科で孤立。
今年から普通科に転属したが、相変わらずの人を寄せ付けない態度からその美貌にも関わらず教師からも生徒からも疎まれ、
毎度毎度お節介を焼きに行く春希以外は誰も好んで近寄ろうとしない孤高の人物。
現在彼女は母親とは離れて暮らしており、ここ3年間ほぼ一人で過ごしているという。
あの時の3人がバンドには必要不可欠と信じる春希はかずさの同好会への勧誘を開始するが、悉く失敗に終わる。
雪菜が春希にどうしてもかずさでなくてはならない理由を聞くと、
夏休みに春希が音楽室で練習していたとき、「ヘタクソ」などと口では冷たいことを言いつつも
初めて自分のギターを真面目に聞いて、丁寧にアドバイスしてくれたのがかずさだったからと答える。
その後、春希がかずさを語る様子に感じるもののあった雪菜は、春希に知らせず一人でかずさに会う。
かずさにはけんもほろろな態度を取られるも、雪菜はかずさとは「趣味が合う」ためにいい友達になれると直感。
かずさの方は自分の気持ちを見透かしたように明け透けに接してくる雪菜を「天敵」として苦手意識を持つ。
後日、雪菜を含めて3人で食事でもしながら話し合おうという流れになる。
雪菜は「この方が安上がりだから」ということで自宅に2人を招待し、手料理を振舞う。
ずっと一人だったかずさは雪菜の打算のないこの行為が理解できず複雑な感情を抱くが、
帰宅した雪菜の父にステージで歌うことを咎められその場の話し合いは中断してしまう。
その帰路で、春希とかずさはお互いの家庭の事情を少し語り合う。
自分は母親に見切られたと語るかずさに、春希は小学校6年までは普通だったが、離婚で父親が家を出て行き、
今では同居している母親とも滅多に顔を合わせず、話もしないほど疎遠になってしまった。
自分は中途半端だからこそ2人どちらの気持ちもある程度理解できると語る。
かずさは雪菜について語る。
「あんないい子だからこそ苦手。きっと死ぬまで同じ価値観を持てないと思う。
不倶戴天の敵か、生涯の大親友になるかの、どっちかだと思う」
かずさは小木曽家を出る直前、雪菜に父親を説得できたら自分も参加してもいいと言い残していた。
翌日。雪菜は父親を口説き落とし、晴れて雪菜とかずさは軽音楽同好会に参加する。
とりあえずメンバー探しを中断し曲決めを始めるが、雪菜は3人の出会いの曲『WHITE ALBUM』を提案。
かずさの仕切りで武也はシンセサイザーで他パートの打ち込みを担当し、3人は自パートを練習するという流れが決定される。
その日の帰路、かずさは春希を自宅へ招く。
かずさの家の地下にはピアノ練習用のスタジオがあり、春希はかずさの指導の下特訓することになる。
結局その日も、その翌日も泊り込みになり、かずさの自宅から登校することになってしまった。
土日は雪菜も含めた3人でかずさの家で合宿。
1曲目がそれなりに完成したところで、2曲目の話が出る。
1曲目が森川由紀の『WHITE ALBUM』なら、2曲目は緒方理奈の『SOUND OF DESTINY』にしようと提案されるが、
その曲は最後にギターソロが入る、春希の腕前では非常に難しい曲だった。
うっかりそれを失念していた春希に、かずさは「あたしが弾けるようにしてやる」と背中を押す。
その頃、雪菜は洗面所で使用された形跡のあるトラベルセットを見つけていた。
支援
つ【 支援 】
日曜日の夜。帰路につく春希と雪菜。
途中、雪菜は春希に「北原くんってあんまりカッコよくないよね」などと冷たい言葉をぶつける。
そして「ごめん、明日になったら忘れて」と言い残して帰ってしまう。
春希はその事をかずさに相談したところ「全部バレてる」と言われたため雪菜に電話し、雪菜に秘密で特訓していたことを謝罪する。
すると、雪菜は3年前に起きた出来事を話し始める。
中学時代の仲良し5人グループ。ある日雪菜はバスケ部のエースに告白されるがそれを断る。
だが、彼は5人組のリーダー格の子の想い人であったために、その日以降5人はバラバラになってしまう。
その時のことが原因で、雪菜は人と近づきすぎることに臆病になってしまった。
二人が仲良くするのはいい。だけど、自分を仲間外れにしないで欲しい。
もう昔の高嶺の花として一人でいる生活には戻れない。
これからも3人で一緒にいたい。学園祭の後も、ずっと3人でいたいと。
電話を切ろうとする雪菜に、春希は約束する。
俺は絶対に小木曽から離れていったりしない、そっちから絶交されない限りずっと友達だと。
雪菜は「これから私のことは、雪菜でいいからね」と返事を返した。
本番4日前、かずさは授業中にノートに落書きをしていたとしてノートを没収されそうになる。
かずさはノートを取られることに激しい怒りを露にし、ノートを奪い返して教室を出て行ってしまう。
この日も春希とかずさは恒例の特訓をした翌朝。かずさは何かを完成させる。
疲れ果てた様子のかずさは、家を出る春希に今日は学校をサボって休息すると伝える。
その夜、かずさの家を訪れた春希は、床で倒れているかずさを発見する。
急遽医者を呼ぶと、3日は安静が必要だと診断され、春希は3日間かずさの面倒を見ながら練習することにする。
春希は雪菜に連絡し、彼女のアドバイスに従って簡単な病人食を作る。
雪菜もその場に来たがるが、本番直前で彼女が喉を痛めれば取り返しがつかないために断念することに。
本番2日前。リハーサルにも姿を見せない二人をいろいろな意味で心配する雪菜。
雪菜はその不安が拭えず、結局リハーサルで声を出すことはできなかった。
その日は週二度のホームヘルパーの柴田さんが来る日だった。
春希は柴田さんからこの家の事情を少し聞く。
元々はピアノの先生やかかりつけの主治医、米屋などとも契約しており、ホームヘルパーも毎日来る予定だったが、
かずさは最低限のホームヘルパー以外すべて自分で止めてしまったらしい。
春希はそのことを疑問に思いかずさに聞いてみると、かずさは静かに答え始める。
子供のころからひたすら母親に認められようとしてひたすらピアノに打ち込んでいたかずさ。
だが、3年前に母親が活動拠点を日本からパリに変える際に「今のあなたを連れて行く意味はない」とはっきり言われてしまった。
だからピアノをやめて冬馬曜子の娘であることをやめようとしたと。
春希はそんなかずさの事情はただの母娘喧嘩であり、バカバカしいことなんだから
本番は楽しくやって母親共々みんなをあっと言わせて見せようと言って彼女を励ます。
本番前日。文化祭の1日目。遅刻して登校してきた春希は、
和服に袴のコスプレ姿でウェイトレスをしていた雪菜の手を引いて校外へ連れ出す。
連れてきたかずさの家で、二人はかずさが作っていたものを雪菜に見せる。それは、新曲だった。
春希が軽音楽同好会に参加していたのは、3年間の集大成を何かしらの形に残したかったから。
とはいってもギターなら自分よりうまいのが二人もいる。
音楽知識のない春希に曲は書けない。だからせめて詩を書いて曲をつけてもらえればと思って書いていた1つの詩。
武也からその詩の存在を知らされたかずさは寝る間も惜しんで秘密裏に曲作りを行って無理をし、倒れてしまったのだ。
北原春希が詩を、冬馬かずさが曲を書いた、小木曽雪菜が歌うための世界で1つのオリジナル曲。
最後の24時間、3人はこの曲の練習に費やす。
支援
本番の日。ミスコン女王の雪菜の話題性もあり客の入りは大盛況。
本番直前、3人はそれぞれに発破をかける。
「楽しくやろうね?そして、みんなをびっくりさせてあげようね?」という雪菜。
「二人とも、迷ったらあたしの音だけ聴け、なんとか導いてみせる」というかずさ。
もうやり残したことはない。3人はステージへと登る。
1曲目は『WHITE ALBUM』。自分の一番の持ち歌である雪菜は歌い出しで観客の心を掴み、
かずさは間奏でキーボードからサックスへ持ち変えるという曲弾きで観客を沸かせてみせる。
2曲目の『SOUND OF DESTINY』ではかずさはベースへと持ち変えてその多芸さを見せつけ、
春希は難関のソロパートを見事ノーミスでやりきって場を盛り上げる。
そして最後の曲が終わったとき、絶賛と拍手の嵐が巻き起こった。
ステージ終了後。雪菜は自分のクラスの喫茶店に引っ張っていかれ、残された二人は第二音楽室に戻る。
春希は心地よい疲れにまどろみながらかずさに語る。
「卒業しても…俺達ずっと続いていたい。ここ最近は俺はもう毎日が楽しくて嬉しくて…
ずっと勝手に親しみを抱いていた高嶺の花が自分から進んで俺の目線に下りてきてくれて、
ずっと友達になりたかった奴と、やっと本音でわかりあえる友達になれて…」
「あいつは『花』であたしは『奴』か……ぅ…」
「どうしたんだ、冬馬?なんで…震えてるんだよ?」
「……寒い…」
「そうか、もうすぐ冬だもんな」
「ああ…『WHITE ALBUM』の季節だ…」
そのまま春希は眠りに落ちていった。
その後雪菜が第二音楽室に戻ったとき、扉の隙間から眠っている春希にかずさがキスをしている姿を見てしまう。
「そんなのってないよ…冬馬さん……」
支援
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
春希が目覚めたとき、そばにいたのは雪菜だった。
二人は今後のことを話し始めるが、雪菜の様子はどこかおかしい。
「学部が違っても、二年になっても、ずっと一緒にいてね。春希くん。
…今日の私は、ずっと夢を見続けて居たい。
スポットライトを浴びて、大好きな歌を歌って、みんなが喜んでくれて…
好きな人に誉められて、だから、調子に乗ってごほうびをねだって…
そしたらその人が、ちょっと苦笑いして、甘えん坊のわたしを、やさしく抱きしめて…
でも、ちょっと想像してたのと違うね、これ。
こんなふうに、自分の方から迫っちゃうなんて、計画のうちにはなかったんだけどな。
あくまでもわたしは受け身で…ちょっとびっくりしたけど、でもずっと待ってたんだからいいやって…
そんな感じの都合のいい夢だったんだけどなぁ…
仕方がないか…自分の心を掴みきれてなかったわたしが悪いんだもんね」
雪菜は春希に近づいていく。
「……よけても、いいんだよ…?」
春希の脳裏に、一瞬別の少女のことが浮かぶも、春希は自らの意志で雪菜とキスをする。
二人の、雪菜の、ファーストキスだった。
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
翌日の後夜祭の後、かずさの家を訪れた春希は、かずさに雪菜と付き合い始めたことをかずさに報告する。
「これからも、3人で一緒にいてくれるか?」という春希に、かずさは答える。
「離れる理由はないよ。あたしと全然違う二人が勝手にくっついただけで、あたしに害なんて…ないよ」
その帰路、春希との電話口で、雪菜は涙を流してかずさの様子と、これからも3人いられるかを心配していた。
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
さらに翌日。放課後の屋上で雪菜はかずさと二人になる。
「小木曽が悪いんだぞ。お前が北原の馬鹿に騙されてのこのこ同好会に入らなければ、あたしは平穏無事な2学期を過ごせたんだ」
「そうだね、わたしが居なければ、冬馬さんはゆっくり春希くんとの絆を深めていくことができたのにね…」
「…話にならないな。まあ、一月の恋が冷めないことを祈ってるよ」
「本当に、いいの?わたし、春希くんのこと取っちゃったんだよ?冬馬さんのものじゃなくしちゃったんだよ?」
「正直、小木曽に北原なんて似合わない。けど、小木曽の悪趣味を満たすためにはしょうがないだろ」
「でも、わたし知ってたんだよ?あの時、冬馬さんが…」
「『かずさ』、だ。雪菜みたいな勘違い馬鹿、嫌いじゃないよ?女の子なら可愛げあるもんな。
だから、この話はおしまいだ。…北原ごときに心配されるのもむかつくから…全部今まで通りにしてやるよ。
あ、1つだけ違ったっけ。どうかな…『雪菜』?」
雪菜は涙を流しながらかずさの胸に飛び込み、かずさは雪菜を優しく抱きしめた。
12月。出席ギリギリ赤点だらけのかずさを無事卒業させるため、3人は雪菜の家で勉強会を行っていた。
だが結局勉強もそこそこに冬休みの話になり、3人で温泉旅館に一泊旅行に行こうということになる。
春希の熱心な指導もありなんとか追試に通ったかずさは出席さえ足りれば卒業できることになった。
かずさはやっとピアノに集中できるようになったんだから、
2年ぶりにコンクールに出るために1日10時間練習の毎日に戻るという。
かずさも3人の輪の中でよく笑うようになり、母親の呼び方も「あいつ」から「母さん」になるなど、彼女の心境の変化ぶりをうかがわせていた。
すべてが順調なはずの3人。だが、春希の心には何か膿のようなものが残っていた。
クリスマスイブ。3人は温泉旅行に出かける。
かずさはサボり生活していた夏休みに免許を取得していたため、予定外の車で行くことに。
運転は半年ぶりのペーパードライバーのかずさの運転にヒヤヒヤさせられながらも、生来のセンスのよさからすぐにコツを掴み、
夜にはなんとか山奥の旅館に到着。雪も降り出しホワイトクリスマスになる。
3人で夕食を取り、そろそろお開きにしようという時。
雪菜の「来年のこの日も、みんなで集まりたい」という言葉にかずさは冷や水をかける。
「約束はできない。あたしは、お前達と進路だって違う。来年の今日のことなんて約束できない。
雪菜だって北原と二人きりになりたい時が来るかもしれない。そんな時今日の約束が足かせになるかも」
「それでも、ずっと3人で居たい。あの日のこと、何年経っても、懐かしく思い出したい。できれば…もう一度、二人の演奏で歌いたい」
「それなら…証明してもらおうじゃないか…永遠の友情を」
かずさはそう言ってシャンパンを取り出し、酒盛りが始まる。
雪菜はずっとかずさの胸で激しく泣き笑いしていた。
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
酔いを醒ましてから、春希は露天風呂に浸かりながら考えていた。
雪菜が会うたびに違う可愛さをぶつけてくるように、
かずさは新しい美しさを見せつけてくる。
友達に、恋人の親友に、そんな目線を向けている自分は最低だと思う春希。
そこに雪菜と彼女に引っ張られてきたかずさがバスタオル一枚で乱入してくる。
必死に背中を向ける春希と二人はそのまま混浴することに。
混浴しながらかずさは呟く。
「あたしみたいな小物はさ、雪菜には一生勝てそうにないよ。ホント、勝てない…」
3人は背中を触れ合わせたまましばらくの間そうしていた。
一泊したその帰路の深夜。小木曽家前に到着し、雪菜と春希はそこで降りることに。
かずさが去った後、春希は別れの寂しさから家先で雪菜と激しいキスを交わし、その体に触れる。
帰宅後も、春希はひたすらに雪菜の感触を想い自慰をし続けた。
今は雪菜のことだけしか、思い出せないように。
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
年明け。かずさは以前から言っていたようにピアノに打ち込んでおり、授業には出るものの即居眠り。
かずさを心配する雪菜に、春希はコンクールが終わりまでそっとしておこうと諭す。
春希はかずさを「本当の親友」として見なせるようになる日まで、かずさと距離を置こうとしていた。
コンクールの日。素人目には素晴らしい演奏をしたかずさだが、結果は選外。
だが、かずさはそれでも「落ちてよかった」とどこかで安堵している様子で、
長らく忘れていたピアノの楽しさをしっかりと思い出せたことに満足していた。
その夜。かずさへ一本の電話がかかってくる。「合格」と。
翌週。かずさは春からレッスンを受ける先生の元に試験を受けに行き、しばらく戻ってこないという。
今週末は雪菜の誕生日。例年では家族とパーティーをしているが、春希は雪菜に今年は二人きりで祝わないかと提案する。
春希は今週末雪菜が二人きりで会ってくれたなら、すべてを洗いざらい告白しようと決心していた。
かずさにも心が揺れていることを。そして、それでも雪菜に惹かれており、本当の気持ちの持って行き場を求めていることを。
そして…雪菜を求めていることを。
だが、雪菜の返事は「ごめん。やっぱりみんなでパーティーしよう」だった。
春希は自分の気持ちのやり場に困りつつも、雪菜の気持ちに応えるべく自制を続けようとする。
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 寝落ちかも 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
つ【 支援 】
週末の2月14日、バレンタインデーの今日は雪菜の誕生日。春希は宝石店で安物のシルバーリングを買う。
恥ずかしながら、「SETSUNA」と刻印を入れてもらって。
だが、雪菜の家に向かう途中、どうしてもかずさの様子が気になった春希は冬馬家のベルを鳴らす。
そこにはかずさは居なかったが、その母である有名ピアニスト・冬馬曜子がいた。
曜子はかずさが毛嫌いしていたようなひどい人間とはとても思えないほど娘を優しく見守っている様子で、
彼女は文化祭のライブを見に来ていたため、彼女は春希のことを「ギター君」として見知っており好意的だった。
彼女にかずさの行方を聞くと、6時に戻ってくるという。
その戻ってくる先とは…成田空港だった。
雪菜に熱が出たと嘘をつき、かずさの許へ向かう春希。自分の嘘で塗り固めた言い訳に吐き気を覚えつつも、
春希は雪菜は家族みんなに囲まれているだろうから寂しくないだろうと自分を納得させていた。
だが、今雪菜の家に居るのは雪菜ひとり…彼女は春希と二人きりのパーティをしようとしていたのだった。
かずさが東京へ戻ってきたとき、雪降る中で春希が待ち構えていた。
今日は疲れたからもう帰って寝るというかずさに、春希は迫る。
「今から雪菜の誕生日パーティに行くんだ。そして、春からヨーロッパに住むことを雪菜に告げるんだ。
約束破るんだからちゃんと雪菜を説得していけ、それが責任だ」と。
文化祭の演奏を聴いていた曜子は、
その演奏からかずさが音楽の楽しさを取り戻したことを感じ、娘に再びチャンスを与えようと思ったらしい。
コンクールに出場させたのもそのためで、選外になったとはいえ伸びしろは十分にあると感じた曜子は
娘を自分の師に紹介し、その入門テストを受けさせた。それに合格したのなら、再び一緒に暮らしてもよいと言った。
そしてたった今、かずさはそのテストに合格して戻ってきた。
つまり、かずさはもうすぐ日本から、春希と雪菜から離れるつもりだったのだ。
こんなことは想定してなかった、準備する時間をくれ、と言い訳して逃げようとするかずさに、春希は叫ぶ。
「どうしてお前は俺の前からいなくなろうとするんだ!」
かずさはそんな春希に激しい感情を向ける。
「そんな台詞は、親友の彼氏に言われる台詞じゃないんだよ!
あたしの前から先に消えたのはお前だろ!
手が届かないくせに、ずっとそばにいろなんて、そんな拷問を思いついたのもお前だろ!
なのに、なんであたしが責められなきゃならないんだ…?
あんな毎日、毎日、心抉られて…それが全部、あたしのせいかよ…酷いよ…!」
春希は雪菜と知り合う以前からかずさに惹かれていたのに、雪菜にも急速に惹かれていって、
雪菜の告白に、本当の自分の一番は誰なのかという気持ちを思い込みとして、
何も言わなかった相手は、自分のことなんて何とも思っていないんだと思い込んで、
目の前の雪菜の告白を受け入れてしまった。
だが、春希は知ってしまった。かずさも以前から春希のことが好きだったと。
春希は自分の気持ちを抑えられず、かずさを抱きしめキスをするが、かずさはそのキスを跳ね飛ばす。
「ふざけるな…ふざけるなよ…なんでそんなに慣れてんだよ!雪菜と…何回キスしたんだよ!
どこまであたしを置いてけぼりにしたら気が済むんだよ!」
かずさが走り去る様子を、春希は呆然と見つめることしかできなかった。
2日後。あの後雪の中で立ちつくしていた春希は高熱を出して倒れてしまった。
そのため雪菜への言い訳はバレずに済んだが、春希はこの2日間雪菜に看病されていた。
雪菜に嘘をつき裏切っておきながら帰り際の雪菜のキスに幸福を感じてしまう自分の罪深さに春希は涙を流す。
新学期。雪菜に遅れた誕生日プレゼントとして胡蝶蘭を渡す。精一杯の真心をこめて。
以前買ったシルバーリングは引き出しの奥に押し込めた。今の自分には渡す資格がないから。
春希が雪菜にかずさの進路と、あの日起きた真実を離そうと意を決しようとしたとき、二人の前にかずさが現れる。
かずさは雪菜に春からウィーンで母親と一緒に暮らすことを告げ、約束を守れないことを謝罪した。
ひさしぶりの家族との生活、という言葉の前に雪菜も反対できず、かずさを祝福する。
「お前たちは、そのままでいてくれ、あたしの帰る場所でいてくれよ」
かずさは『責任』を果たした。あの雪の日の過ちについては一切語ることなく。
それからかずさが登校することはなかった。
卒業式の日。式の後、卒業証書を持った雪菜が、かずさからの手紙を持って春希の現れる。
机の中に手紙が入っていた、ついさっきここにかずさが居たのだと。
武也の制止を振り切り、かずさの姿を求め春希は必死になって町中を探し回る。
だが見つけられずに自宅へと戻ってきた春希のもとに一本の電話が入る。通知された番号はかずさのものだった。
会いたいと言う春希だが、かずさはもう会わないと決めていると言う。
涙声になりながら春希に別れの言葉を告げようとするかずさ。その時春希の耳に救急車の音が二重に聞こえてくる。
電話からのものと、窓の外からのもの。かずさは春希の家のすぐそばに居たのだった。
春希は携帯を握ったままのかずさを抱きしめる。
「なあ…電話なら、声だけだから伝えられる気持ちって、あるよな…?
あたし、お前のことが大好きだった。大好きだったから、雪菜に取られたとき、すごく辛かった…
言っちゃった…雪菜、ごめん。でも、いいよな…?声だけなんだから、いいよな…?
全部、お前のせいなんだ。お前が、弾くことの楽しさを思い出させてくれたのがいけないんだ。
男を好きになる辛さを、教えてしまったのがいけないんだ。
前に進みたくなる気持ちを…この場所から、逃げ出したくなる気持ちを…」
春希は部屋でかずさを抱いた。
雪菜からの着信を無視しながら、二人はお互いに初めて体を重ねた。
「どうして、こうなっちゃったんだろうなぁっ…!」
お互い素直になって、すぐに気持ちを伝えていれば、こんなにも後ろめたい気持ちにはならなかったんじゃないか。
そんな後悔とともに、体を重ね続けた。
そしてその夜、春希が眠っていた一瞬の隙に、かずさは姿を消した。
シーツに赤いシミを残し、春希の制服から2つのボタンを奪って。
翌朝、春希を心配した雪菜が春希の部屋に現れる。
かずさの手紙によれば、かずさは今日午後の飛行機で日本を経つという。
かずさにはもう会うまいと思っていた春希は雪菜に全てを話そうとするが、
雪菜は空港への電車の中でしか聞かないと言い張って春希を引っ張り出す。
電車の中で、春希は雪菜に自分の裏切りの全てを話した。
どんな罰も甘んじて受けるつもりだった春希だったが、雪菜は彼を責めなかった。
二人の気持ちを承知で割り込んで、全てを壊してしまったのは自分。
二人の気持ちが近づいて、自分が仲間外れにされることを恐れて慌てて春希を繋ぎとめようとしたのも自分。
春希が真剣に自分を必要としてくれる人の願いを断ることなんてできないとわかっていて告白したのも自分。
春希は自分の「3人でいたい」という願いに潰されてしまっただけで、自分を裏切ってなんかないと。
故に自分には怒る資格も、悲しむ資格もないとして逆に春希に謝罪する。
「ごめんね…春希くんのこと、好きだけど。かずさほど、真剣じゃ、なかったよ…」
春希が望むならもう追いかけないし、自分をかずさの代わりにしてもいいと言う雪菜。
だが、春希は雪菜の言葉を受け入れられない。雪菜が春希を許すことが許せない。
許されてしまったら、春希はずっと最低の人間のままで、そのままじゃもう二度と恋なんてできない。
雪菜のことを愛することも、できないから。
空港に到着した春希と雪菜。
春希はかずさを見つけると、かずさを力強く抱きしめキスをしてしまう。雪菜の目の前で……
「ごめん…ごめん、雪菜…」
謝罪しながらキスを続けるかずさ。雪菜の目から涙が零れ落ちる。
どうしてこうなるんだろう…
初めて、好きな人ができた。一生ものの友達ができた。
嬉しいことがが2つ重なって、その2つの嬉しさが、また、たくさんの嬉しさを連れて来てくれて…
夢のように幸せな時間を手に入れたはずなのに…
なのに、どうして、こうなっちゃうんだろう…
結局、かずさはウィーン行きの飛行機に乗り二人の前から去ってしまう。
空港の屋上で空を見上げて立ち尽くす春希と、そんな彼を温めようとその背に寄り添う雪菜の上に雪が降り積もってゆく。
♪届かない恋をしていても 映し出す日がくるかな
ぼやけた答えが見え始めるまでは 今もこの恋は動き出せない
(To be continued→closing chapter)
ということでWHITE ALBUM2〜introductory chapter〜 ほぼ無圧縮版終了です。
この後に3レスに押し込めた圧縮版も置いておきます。
とはいっても内容ほぼ一緒で過程の説明を落としただけですが…
正直introductory chapterでは後編の前提知識を出さざるを得ないうえ、
無理に圧縮すると後編でちぐはぐになりそうだったんでクソ長くなってしまいました。
細かい心理描写とかそういうのけっこう削ってるんですが、どうですかね?
自分のクソまとめと違う複線だらけの文章を感じたい方はぜひ体験版をどうぞ。
closing chapterのほうも草稿だけはほぼできてるんで、
圧縮したほうがいいか、クソ長い無圧縮のままでいいか、
コピペすぎだろ自重しろとか、こうしたほうがいいとかご意見ください。
典型的な委員長タイプの主人公、北原 春希(きたはら はるき)は
高校3年の最後の学園祭に軽音楽同好会の裏方として思い出を残そうと思っていたが、
メインメンバーの大量脱退によりそれも絶望的になっていた。
最後の思い出として一番好きな曲である『WHITE ALBUM』を弾いていると、
それに合わせて隣の第2音楽室からピアノが、屋上から歌声が聞こえ始める。
その後、屋上の歌声の主であり、学園のアイドル・小木曽雪菜(おぎそ せつな)と、
隣の第2音楽室の主であり、春希の隣の席の問題児で有名ピアニストの娘・冬馬かずさ(とうま −)が
紆余曲折あってメンバーとして加入。3人はたった3週間という短期間でステージ曲の練習をし、互いに絆を深めていく。
3人は学園祭のステージを見事成功させるが、その夜に雪菜が春希に告白。2人は付き合うことになる。
それでも3人の友情は続いていくものと思われたが、かずさがピアノを本格的に再開し、海外へ移住することになってしまう。
それを秘密にしていたかずさに春希が詰め寄ると、かずさは以前から春希が好きだったことを告白。
そのことで春希は自分の中に押し込めていたかずさへの想いが溢れ出してしまう。
かずさは2人の前から姿を消すが、未練を断ち切れないかずさは日本を発つ前日の夜に再び春希の前に姿を現す。
その夜、かずさと春希はそれが雪菜への裏切りだとわかっているのにも関わらず体を重ねてしまう。
翌日、雪菜は沈んだ様子の春希を空港へと引っ張り出し、その道中で春希はこれまでの裏切りをすべて告白する。
だが、雪菜は二人の気持ちを承知で割り込んだ自分が全て悪いとして春希を責めなかった。
空港でかずさを見つけた春希は、雪菜が見ている前にも関わらずかずさを抱きしめキスをしてしまう。
謝罪しながらキスを続けるかずさと春希を見つめながら、雪菜の目から涙がこぼれた。
結局かずさは飛行機に乗って行ってしまった。
雪の降り出す中、空を見上げて春希は立ちつくし、雪菜はそんな彼を温めようとその背に寄り添うのだった。
(To be continued→closing chapter)
>>918 大作乙
圧縮版でいいと思うけど
誰も書く奴いないし大作投下したけりゃそれでもいいんでね?
CCはどんだけの量になるのやらだがw
921 :
名無しさん@初回限定:2012/02/11(土) 13:14:30.09 ID:gME05rBN0
霧谷伯爵家の六姉妹をお願いします。
それよりもポッキー姉妹の話のほうが知りたい
連投支援がうざいな
避難所に張ればいいのに
次スレの
>>1-2、どうするよ。
このままで変更無しか?
>>926 いいんじゃね?
多分新スレ時期になりそうだけど脅迫3を予約しときます。1でも2でもなくて悪いけど
えろげー!〜Hも恋も開発三昧〜
お願いします!
殻ノ少女お願いしますm(__)m
残り容量どんだけあんの?WA2の人続き投下できんの?
まぁ退避場使ってくれればいいんだけど
もふもふお願いします。
雨あがりの猫たちへお願いします。
ここってPC98とか現行OSでプレーできないようなエロゲーをリクエストしてもいいんですか?
商業エロゲならなんでもOKでしょう
てかリク欄に98作品もあったと思った
WHITE ALBUM2〜closing chapter〜いきます。
どうするか悩んだんですが、前回同様通常版を上げた後、
キリのいいところで圧縮版も出す、という形にしようと思います。
正直closing chapterのほうは長いんで、今日のところは途中で止める予定です。
とはいえ、ただでさえ少ない書き手の中で98を書ける人はさらに稀少だろう
結構98時代やったけどシナリオ書けるほど記憶にあるやつなんて一つもない
実機かエミュ持ってる人なら別だが・・・
今リクにあるのもこの先ずっと残る気がするw
あれから3年。大学3年になった春希は講義を限界まで入れたうえに
数々のバイトを掛け持ちする忙しい毎日を送っていた。
高校卒業を機に始めた一人暮らしの費用捻出のため、というのを表向きの理由にしていたが、
辛いことを考えないで済むように自分を酷使するため、というのが本当の理由だった。
雪菜は女性としてさらに美しく成長し、大学のアイドル・高嶺の花として扱われている。
だが、あれから心から笑うことも、大好きだった歌を歌うこともできなくなってしまっていた。
春希は雪菜を裏切り傷つけた自分を許すことができないため雪菜を受け入れることができず、
かといって大切な存在である彼女と離れることもできないまま、忙しさを理由につかず離れずで逃げ続け、
ごく稀ながら連絡は取り合うも、積極的に会う機会を作ることもない状態を維持し続けている。
その3年の間に、あの時のライブの最後の曲『届かない恋』は峰城大学内限定の冬の定番曲の1つになっていた。
12月。春希のアルバイト先の1つである出版社で、春希は「遠野かずさの元同窓生」という立場から
遠野かずさ特集の記事を書かないかと言われ、春希は悩みながらもその仕事を引き受けることに。
表向きの経歴には一切載っていない、3年前のかずさとの思い出をなぞりながら、春希は記事を書き上げる。
クリスマス直前。相変わらず二人の共通の友人である武也と依緒が春希の部屋にやってくる。
二人の計らいで春希はイブ限定の映画のチケットと高級ホテルでのディナーの予約券を買わされる。
友人たちのお節介に辟易しつつも、春希は雪菜をデートに誘う。
春希の書いた記事の載った雑誌を渡すためという名目で、本当は3年の時を埋め、再び触れ合うために。
クリスマスイブ。ディナーの後、春希は雪菜に提案する。
3年前からリセットし直そう、かずさのことを忘れてこれからゆっくりお互いを知っていこうと。
春希は今日はそれだけで別れるつもりだったが、雪菜は春希に意を決した様子で告げる。
「今日、泊まってくるって言ってきた…
これがわたしのクリスマスプレゼントの代用品。
…わたしの決心が鈍らないうちに、奪って」
雪降る中、二人は3年ぶりに激しいキスを交わす。
支援
ホテルの部屋。シャワーを浴びてきた雪菜。
交代で春希がシャワーを浴びに行くと、ベッドの上には開かれたかずさの記事…
戻ってきた春希に、雪菜は再び問う。
「もう一度答えて…かずさの事を、忘れたの?」
春希が「忘れたよ」と答えたことに、雪菜は「嘘つき」と激しく非難する。
雪菜は春希の書いた記事を既に穴が空くほど読み返していた。
記事の中に溢れる3年前のまま変わらない春希のかずさへの想いに、
雪菜は数日間食事も喉を通らなくなくなるほどに深く傷ついていたのだ。
「さっき、かずさと話してたんだよね?
かずさを諦める勇気を、かずさにもらったんだよね?
あなたは…何年経っても、わたしに嘘をつき続けるんだね。
忘れられるはずのない思い出を、忘れてしまったかのように嘘で塗り固めて、
ずっと、自分を殺して生き続けるつもりだったんだね、ただ、わたしだけのために…」
居たたまれなくなった春希は一人ホテルを後にし、残された雪菜は一人号泣する。
雪菜のことが大切なら、今日だけはやめるべきだとわかっていたのに、
雪菜が無理していることに気づいていたのに、欲望のままに雪菜の体を求めてしまった。
春希は自分の軽薄さの報いに打ちのめされる。
今年も、ホワイトクリスマスだった。
●ノーマルエンド
雪菜に拒絶され、誰にもすがることのできなかった春希。
あの後、雪菜から春希に連絡があったためメールのやり取りだけは復活していたが、
春希は2ヶ月もの間雪菜と顔を合わせることができずにいた。
そこに武也と依緒の二人に強引にスキー旅行へと連れ出される。そこには雪菜の姿もあった。
旅の車中、雪が降り出す。あの時の温泉への道行と同じように。
暦はもうすぐ3月。だが、まだ二人の『WHITE ALBUMの季節』は終わらない。
●杉浦小春ルート
峰城大学付属学園3年、杉浦小春(すぎうら こはる)。
彼女は非常に真面目で責任感が強くお節介な、まるで以前の春希のような性格の持ち主。
小春の仲良しグループの一員で親友の矢田美穂子(やだ みほこ)が春希に告白した際、
春希が「気の迷い」と手酷い言い草で拒絶したことで美穂子が深く傷ついたことに腹を立て、
春希に謝罪させようと呼び出した、という最悪の出会い方をしたため、春希は彼女に敵意を持たれていた。
だが、卒業旅行の資金稼ぎのために始めたファミレスのバイトで春希が教育係になったことをきっかけに
彼の人となりに触れ、春希の抱える事情を知っていくにつれていつしか彼の味方をするようになり、
持ち前のお節介さを発揮し春希と雪菜の間の事情に首を突っ込む中で、彼女自身が春希に惹かれていく。
イブに雪菜に拒絶された春希は孤独を埋めるためにファミレスのバイトに向かう。
傷ついていた春希を心配した小春は春希と接する時間が増え、その中で春希は小春に3年前の事情を打ち明ける。
春希はその後もほぼ毎日ファミレスでバイトしては帰り道を小春と一緒に過ごすようになる。
年明け。小春は美穂子と仲直りしようとするが余計に拗れてしまい、落ち込んでしまったところに春希が現れる。
春希は小春を優しく励ますが、その事で気持ちが抑えきれなくなった小春は春希にキスをしてしまう。
だが、その事を目撃されたために小春は美穂子を裏切ったとされグループから孤立。
さらに、美穂子が小春と同じ進路に進むのは辛すぎる、と言って大学進学を諦めようとしていることを知り、
グループの面々が流した悪い噂によって学校での居場所を失くしていったことで、
小春はますます春希との関係に依存するようになり、二人は一線を越えた関係になってしまう。
それでも、小春は過剰なまでの責任感から春希には学校での事情を話さず、全てを自分一人で抱え込んでいく。
その後、春希は小春の周りの現状を知る。
小春は自分が全て悪い、自分一人が貧乏くじを引けば全て解決すると、春希に雪菜のもとへ戻るように言うが、
春希はみんなが比較的幸せになれる方法を探そうと言って、小春の手を取る。
小春は自分の犯してしまったことへの責任を果たすべく、付属上がりを蹴って別の大学を受験することを決断する。
1ヶ月後、小春の入試の後。雪菜は小春を喫茶店に呼び出す。
雪菜は小春に中学時代に仲良しグループが瓦解してしまった出来事を話す。
初めて会った雪菜の昔話にも、本気で雪名を庇おうとし、
今の状況もすべて自分の行いの報いとして罪を背負おうとする小春を、雪菜は本当に昔の春希そっくりだと感じる。
雪菜は話を続ける。
「なのに、ついこの間、同窓会に行ったらほとんどの人がさっぱり忘れてた。
悔しかったけど、やっぱり、みんな大好きだったから。
あなたも、友達との仲直り、諦めないでね。
あなたが何もかも敵に回してまで手に入れたものには、それだけの価値はあるんだって…信じてもいいと思うよ。
頑張ってね、小春さん」
「ごめんなさいっ!ごめんなさいぃぃっ!」
小春は、この受験が終わったら雪菜に春希を返すつもりだった。
だが、雪菜は2週間前にはもう春希と別れ話を終えていたのだった。
(責任なんか感じなくていい。
ただ、好きな女の子のことなら、必死に守ってあげてよ。そのコのこと、救ってあげなよ…
彼女を、守ってあげてね?昔の私、救ってあげてね?あなたは、治せる人を治してあげてね。
わたしの傷はもう…あなたには専門外だから。あなたにだけは、もう癒すことができないんだから…)
2週間前、春希と笑顔で別れた雪菜。小春が去った後、雪菜は一人涙を流した。
雪菜と別れた小春を春希が出迎える。
あんな素敵で優しい人を傷つけた私は最低だ、と自分を責める小春に、
春希は自分達は最低だ。だけど、どちらを選んでも後悔するなら、一番大切なものを選ぶしかないと諭す。
1年後。浪人してしまったが、小春は大学への合格を決めた。
そこへ一本の電話が入る。
「合格おめでとう…小春ちゃん」
一度は壊れてしまった絆も、もうすぐ取り戻せるだろう。
春希はこれからも、彼女を側で見守り続ける。
●風岡麻理ルート
春希のバイト先の直属の上司、風岡麻理(かざおか まり)はバリバリの仕事人間。
部下となった春希の真面目さと仕事ぶりに好感を持ち、様々な面で特別に目をかけていた。
ある日、春希が冬馬かずさの同級生であると知った麻理は、春希にかずさの特集記事の執筆を任せる。
そのことで麻理は春希とかずさが学園祭でバンドを組んだ関係であることを知る。
クリスマスイブ。雪菜に拒絶された春希は、バイト先の出版社へと向かう。
未だに働いていた麻理と春希は買ってきた特売のケーキで二人きりのささやかなパーティをし、
その席で春希は麻理に昔からかずさが好きで、今でもかずさのことが好きだったことを吐露する。
春希は、この年上の上司に側で話を聞いてもらうことに、安らぎを感じていた。
大晦日の夜。麻理は一緒に旅行していた無二の親友・雨宮佐和子(あめみや さわこ)に勝手に春希へ電話をかけられるが、
うっかりミスで直後に携帯を壊してしまい通話不能になってしまう。
何度かけ直してもいつまでも返事が返ってこないことに、春希は胸が締め付けられるような痛みを覚える。
さまざまな辛さを忘れるべく、どうしても部屋で一人になりたくない春希は
何も感じず、夢すら見ないように、家にも帰らず、一睡もせずに仕事に打ち込み続けた。
1月5日、出社した麻理は、春希が年末からずっと働きづめだったことを見抜き、春希を連れて出版社を出て行く。
自宅の場所を教えようとしない春希に痺れを切らし、麻理は自宅に春希を連れて帰る。
破滅的なまでに自分を酷使する春希を心配した麻理は、春希に事情を聞こうとする。
本人が大晦日のつもりで「あの夜のこと」を聞くと、春希はイブのことと取ってかずさのことを話し始める。
その中で春希が「麻理はどこか冬馬かずさに似ている」と言ったことで、
麻理は自分がかずさの代用品にされていると感じ、春希を残して部屋を離れようとする。
年末から年明けまで海外で、およそ二週間も連絡がなかった麻理。
そんな麻理が、自分を一人置いて出て行く。側に居て欲しい人が自分を置いていく。
春希は一人になりたくない、置いていかないでほしいという気持ちが募り、麻理を押し倒してしまう。
麻理の懇願もあってなんとか挿入だけは避けたが、春希は麻理をレイプしたとして警察に突き出すように言うが、
麻理は大切に育ててきた、自分の後継と見込んだ春希の将来を潰したくないとして彼を許す。
次に春希は目覚めたとき、ほぼ丸2日が経っていた。
春希は、一人でも眠れるようになっていた。
大学が始まり、あのイブの夜から二週間ぶりに雪菜からのメールが届く。
他愛のない新年のあいさつと、春希への心配が綴られた文面。
だが、春希はその返事を送ることができずにいた。
麻理とのことに決着をつけるまでは、雪菜には向き合えないから。
麻理をバーに呼び出し、春希は麻理に3年前からの事情のすべてを話し始める。
だが、今現在の雪菜との関係を話そうとした途端、麻理が吐き気を催してしまい話は中断されてしまう。
麻理の部屋まで戻ってきた2人。
以前のこともありいたたまれない気持ちになり、過ちを繰り返すまいとすぐに帰ろうとする春希。
麻理はそんな春希を呼び止める。この体調不良は、避妊薬の副作用だと。
今は仕事が大切だから絶対に妊娠はしたくない。だが、春希を受け入れたくて準備したのだと言う。
春希は麻理を愛情を持って抱いた。それが裏切りだと自覚した上で。
今の状況を解決する方法は、すべてを白日の下に晒すことしかなかった。
雪菜に会おうとメールを送るが、週末は結局会えず仕舞いに終わり、
平日になっても雪菜は都合が悪いと言って会えない。
決着のつかないもどかしさの中、春希は麻理との蜜月に溺れていく。
一週間後。麻理は海外主張で来週の月曜まで帰ってこない。
学期の終了とともに、雪菜から会うことへの了承のメールが届く。
その指定日時は、来週の月曜、バレンタインデー。雪菜の誕生日だった。
翌週月曜。今日は雪菜の誕生日パーティー。
雪菜は、春希が何を話そうとしているのかに感づいていた。
誕生日パーティーの席でなら、春希は優しいから話せないだろうと確信していて呼んだと話す、
自分で春希を拒絶しておいて、自分から春希が離れてしまうことを認められない自分のみじめさを告白し涙を流す雪菜は、
今まで春希が見てきた強い雪菜とは違う、弱々しい一人の女だった。
支援
パーティーの後、春希は麻理の自宅へ向かう。
麻理の部屋では、暴れた麻理によって家具が荒れ放題になっていた。
何度も連絡したのに、悉く無視したのはなぜか、
私よりも大事な用って何だと詰め寄る麻理に、春希は全ての事情を話す。
麻理は自分は代用品で、慰み者だったのかと自嘲しながら暴れ出す。
それを止めようとする春希に、麻理は自分はもうすぐアメリカ支局へ転勤する、
これで後腐れなくてよかったなと言い捨てる。
麻理は春には離れてしまうとわかっていたのに、自分と付き合っていた。
そのことが春希の3年前のトラウマを激しく抉る。
春希は、別れが待っているのを知っていて最後には自分を捨てるつもりだったと思い。
麻理は、自分を本命の彼女の代用品にして最後には自分を捨てるつもりだったと思う。
互いになぜ自分を捨てるんだと叫びながら、二人は最後の逢瀬を交わし、別れた。
麻理がアメリカに発った後、雪菜とのメールは復活していた。
気持ちが雪菜から離れていたことはわかっていたのに、雪菜は以前と変わらない他愛ないメールを送ってくる。
互いの心の空白に目を避けた空虚な気持ちの春希のもとに、見覚えのない相手からの電話がかかってくる。
電話の主は「雨宮佐和子」。麻理の親友だった。
佐和子は春希の麻理への気持ちの真剣さと、
二人を同時に好きになってしまう自分の悪いところを自覚していることを確認すると、1つの頼みごとをする。
来月にもう1日だけ麻理が帰国してくる。その時に麻理に会ってほしい。
そして、その時麻理をどうするかを決断してくれ。そうでないと麻理はダメになると。
支援
翌月、麻理が帰国する日。
春希は武也、依緒、そして雪菜と長野にスキー旅行に来ていた。
宿で雪菜と二人きりになった春希に麻理からのメールが届く。
その内容は、飛行機の便番号と離陸時刻。
その時春希は、雪菜に別れを切り出していた。
ずっとすれ違っていた3年のことを、自分の好きになった女性のことを、何度も何度も話していた。
雪菜は自分が突き放したから結局この状況になってしまった。
だから、自分はその人の代用品にしてくれてもいいと懇願する。
だが、春希には雪菜を彼女の代用品にされたと思って傷つけた女性の、その代用品にするなど出来るわけがなかった。
春希は雪菜にまだ麻理を諦めてはいないことを突きつける。
それが、雪菜を一番傷つけてしまうことはわかっているのに。
支援
二人は服を着たままベッドで抱き合っていた。
「ねぇ…春希くん。わたしが眠ってしまうまででいいから、こうして抱きしめていて。
一度眠ってしまったら終わりにするから…次に目覚めたら、あなたのことを忘れるから…」
雪菜は春希の胸に深く顔を埋める。
「春希くんの話を聞いて、わかっちゃった。
今春希くんの側にいるべきなのは、この人なんだって…
春希くんを、三年前の明るくて、正しくて、頼もしい春希くんに戻してくれる。
…わたしには、絶対にできないことを、してくれる人なんだって…
だったら、わたしは…もう、春希くんから卒業するしかないって、わかっちゃった…
ねぇ、春希くん。わたしは、やっぱりあなたを照らす光になれなかった。
あなたに当たるべき光を遮る存在でしかない。だから…離れていきます。
さよなら、春希くん。ずいぶん遅くなっちゃったけど、わたし、あなたを…ふってあげる。
だから、頑張って立ち直ってね。そして、素敵な恋をしてね…春希くん…」
雪菜が眠った後、宿を抜け出した春希は佐和子に連絡する。
長野から東京に戻ろうかと考えていたが、東京は現在大雪で交通網がマヒしておりすぐには戻れないらしい。
成田空港も雪で離陸も遅れていた。時間との勝負になる。
麻理の搭乗時刻。空港に春希の姿はなかった。
ニューヨーク。飛行機を降りた麻理の前に、春希が現れる。
成田行きは間に合わないと考えた春希は、中部空港からデトロイトへ飛び、
アメリカ国内線でニューヨークに先回りしたのだ。
「俺…やっぱり遠距離は無理です。側にいないと、いつでも会えないと駄目なんです。
俺は自分の道を行きます。麻理さんについていくっていう、自分の道を」
女に入れ込んで道を踏み外した典型的な駄目男。
そんな男を受け入れてしまった恋愛音痴の女。
二人は空港で抱き合いながら、これからの将来のことだけを話し合う。
二人の間にこだわるべき過去なんて、もうないのだから。
●和泉千晶ルート
春希の大学での同じゼミ生、和泉千晶(いずみ ちあき)。
出席はギリギリ、成績は進級スレスレ、奔放でだらしなく春希は何度も世話を焼かされているが、
春希にとっては男女を感じさせず接することができる存在だった。
千晶の年末レポートが締め切りギリギリだったため、春希は持ち前のお節介さから
彼女を部屋に上げてその手伝いをすることになる。
お節介を焼く日々の中で、千晶は時折今まで見せなかった「女」の態度を見え隠れさせ、春希をドギマギさせる。
イブの夜。雪菜に拒絶された春希は無意識に千晶に電話をかけるが、返事は返ってこない。
とぼとぼと自宅のあるマンションに戻ると、そこにはサンタの格好をした千晶がいた。
傷ついていた春希は部屋で千晶を抱いてしまう。千晶は、初めてだった。
千晶を抱く中で、春希は自分の中に燻る3年前からの痛みが癒されていくのを感じていた。
その後も春希は部屋から出ることもなくずっと千晶と過ごし、幾度も千晶を求め、
千晶はそんな春希の望みをすべて受け入れる。
武也とも、雪菜とも連絡を取ることができないまま年が明けようとする大晦日の夜。
手持ち無沙汰になった時、千晶は3年前の学園祭のDVDを再生し始め、それに映っているのが春希ではないかと指摘。
千晶は春希に3年前の事情を聞いてきたため、今まで誰にも話していなかった複雑な事情も含めた全てを話す。
年明けから数日。春希は千晶に元通り立ち直ることを宣言する。
千晶は、名残惜しそうにしつつも、翌日部屋を去っていった。
●和泉千晶ノーマルエンド
その後、千晶は春希の前からぷっつりと姿を消した。
春希は雪菜に自分のしたことを洗いざらい告白した手書きの手紙を送った。
雪菜は苦しみながらも、春希の前ではそれを見せないように変わらない優しさを向けてくれている。
「俺…浮気者だぞ」
「知ってるよ。わたし、けっこう、根に持つよ?」
「知ってる」
心の痛みを千晶によって癒してもらったことは確かなこと。
今も千晶のことを思い出して痛みを乗り越える強さをもらっている。
もうすぐ3月。季節は雪解けに向かう。
二人の間に降り積もる雪が本当に解ける日は、いつ来るのだろうか?
●和泉千晶トゥルーエンド
その後も春希と千晶はちょくちょく会っては体を重ねていた。
依緒と武也はしばらく連絡の取れなかった春希を訝り、春希の部屋を訪れる。
部屋に残っていた女性の痕跡を発見した依緒は、
また3年前と同じ過ちを繰り返して雪菜を傷つけるのかと春希を非難するが、
武也は好きな女が振り向いてくれない時に他の女に逃げて何が悪いと春希を擁護する。
その後、依緒は最近春希の部屋に居た女性について調査する。
その人物の正体は、武也の記憶に存在していた『宇宙人』だった。
「3年前の文化祭のDVDを最初からじっくり見ろ、和泉千晶はお前が思ってるような生易しい奴じゃない」
武也の言葉に従い、春希はDVDを再生する。
その中の演劇部の一人劇『雨月山の鬼』。
民間伝承を下敷きにした、4人の姉妹が古の鬼の力に運命を翻弄される物語。
その4人の姉妹を演じているのは同一人物。脚本を担当していたのもその人物。
落ち着いた雰囲気の長姉から甘えん坊の末妹までを一人で演じ分け、
舞台の上で圧倒的な演技力を発揮しているその人物の名は『瀬能千晶(せのう ちあき)』、
3年前の両親が離婚する前の千晶だった。
春希は大学の演劇サークル・劇団ウァトスの脚本兼看板女優『瀬能内晶(せのうち あきら)』…千晶の元を訪れる。
自分の正体を見破られた千晶は、春希にこれまでの経緯を語り出す。
彼女は生活のすべてを芝居の勉強と考えているほどの演技の鬼であり、『自分』という人格すら『役』の1つでしかない。
千晶が春希に近づいたのは、彼女が兼ねてからやりたがっていたという『届かない恋』をモチーフにした劇の題材の取材のため。
これまで春希を篭絡するために、春希に近づくための『役』を自分の中に作り上げ演じ続けていたという。
感情のまま千晶を押し倒す春希だったが、殴ることも犯すこともできず、ただ涙をこぼすことだけしかできない。
千晶はそんな春希を「真剣に愛してるよ」と言いながら、その激情ですら芸の肥やしへと変えていくのだった。
その後、春希は何も考えないように体を酷使しすぎたせいで倒れてしまう。
千晶が春希に差し入れをしようと春希の部屋を訪れると、春希の部屋には春希を看病する雪菜がいた。
雪菜が帰ろうとした時、千晶と雪菜が鉢合わせする。
その場を去ろうとする千晶を、雪菜は呼び止める。
「わたしの話、聞きたくないかな?『和泉千晶』さん?」
千晶は『取材』のため、「長瀬晶子(ながせ しょうこ)」を名乗って雪菜と何度か話をしており、友人と言える間柄だった。
だが、雪菜は先程病床で聞いた春希の話と、彼女の態度から、彼女が春希の言う『和泉千晶』だと見抜いたのだった。
「春希くんが、好きなんだね。ありがとう、晶子さん。
彼を助けてくれて、ありがとう。わたしを演じてくれて、ありがとう。
わたしの代わりに、彼をあっためてくれて、ありがとう。
これからもあんなふうに、今は何もできないわたしの代わりに、彼をあっためてあげてね?
大丈夫だよ、千晶さん。あなたは何も考えず、ただわたしになればいい…
空っぽのあなたには、それしか選択肢はないんだよ」
千晶がいくら自分の悪事を並べ立てても知った風な口を聞くだけで一切非難することのない雪菜に、
千晶は吐き捨てるように言い放つ。
「なんて強くて優しくて、そしてなんて愚かな女。馬鹿馬鹿しい、ここで本音出さないなんて、あたしには理解できない」
千晶が去った後、雪菜は一人呟く。
「理解できなくて当然だよ…だって、私の演技、完璧だったでしょ…?」
雪菜は春希から事の顛末を、熱に浮かされて漏らした千晶に対する本音を全て聞いていた。
そして、すべてを悟っていたのだった。
舞台『届かない恋』の公演初日。
春希は雪菜を連れて舞台を見に来ていた。
その姿を見つけた千晶は、目にもの見せてやると闘志を燃やす。
舞台の始まりはびっくりするほどにリアルに即していた。
学園祭がオーディションに変わっていたり、表現が大げさになっていたり、
雪菜をモデルにした『雪音(ゆきね)』の性格がモデルよりお馬鹿っぽくなっていたりするなど
細かいところは違っても、その出会い、その姿は3年前の3人とそっくりだった。
だが、次第に物語は現実から乖離していく。
雪音はオーディション直前、『和希(かずき)』に緊張しないお守りとしてギターのピックをもらい、
その直後に『榛名(はるな)』は雪音が告白する前に、緊張しないおまじないとして和希にキスをする。
オーディションの結果、雪音だけがスカウトの目に止まり、榛名は留学の話を蹴って音楽の道を断念する。
実際のかずさは日本を離れ、二人の手の届かない場所へと行ってしまったが、
劇の中の榛名は彼らのために自分の可能性を潰し友人として二人の側に居続けており、
雪音は和希との恋人関係を維持しつつも夢だった歌手への道を歩んでいた。
だが、夢破れた二人と夢を追う一人の間にはいつしか亀裂が走り始め、ついには榛名と和希は過ちを犯してしまう。
そこで雪音は一人自らの胸中を吐露する。
観客の誰もが、雪音は和希を諦めるものと思っていたが、
雪音は自らの想いも、親友との友情も、歌への情熱も諦めず、死に物狂いですべてを掴もうとすると宣言する。
その姿はすべてを掴もうとして、すべてを失うことも覚悟した、『雪菜』であり、『かずさ』であり、そして千晶でもあった。
「ね…和希くん。わたし…和希くんのことを本当に愛してる!これだけは真実だって…約束する」
この台詞の最中、雪音は両手を胸に当て続けていた。
手を胸に当てる。それは春希が千晶に提案した『本音のサイン』。
舞台の上でどんな嘘でも吐いてみせる天才女優は、舞台の上で一人の男に向けた真実の愛を叫んだのだった。
舞台終了後、倒れた千晶は深夜に目を覚ますが、春希の姿はなかった。
雪の降る道端でみっともなく涙を流す千晶。だが、そこに春希が現れる。
「なんで…あたしの前に現れた?今更どうして?彼女と一緒にあたしを嘲笑っていたくせに。あたしを捨てたくせに」
「それは…捨てたから。よりにもよって、雪菜を捨ててお前を拾いに来ちゃったんだよ、俺は」
春希に抱きしめられ、千晶は子供のように泣きじゃくった。
誰よりも人の感情を俯瞰し観察することに長けた女優の真実の姿は、誰よりも幼稚で残酷な恋をしてしまった少女。
愛しい男に捨てられた慟哭の涙も、愛しい男に抱きしめられた喜びの涙も、決して演技ではない真実の涙だった。
舞台の前、春希は喫茶店で雪菜に別れを切り出していた。
「あいつには、これからも振り回されるかもしれない。裏切られるかもしれない。
だけど、裏切るより、楽なんだ。雪菜と一緒にいるより辛くないんだ。
だって、俺が立ち直りさえすれば済む話なんだから。
俺はもう、雪菜を傷つけたくない。自分に癒せない傷が刻まれるから…
とんでもないエゴだって自覚してる。騙されたし、傷つけられた。酷い女だったけど、
あいつと一緒に過ごした時間は、辛くなかったんだ…ずっと続いて欲しい時間だと思ったんだ…」」
舞台の後、雪降る駅。
「わたしは、なれなかった。春希くんに『あいつ』って呼ばれる存在に、とうとうなれなかった…
これから新しく出会う人にこの気持ちをぶつけるのかもしれない。それとも、ずっとこの気持ちを引きずるのかもしれない…
けれど今は…今わたしとかずさを卒業しようとしているあなたを、幸せにしてあげなきゃいけないと思う。
それがわたしの最後の意地だから。
わたしは…彼女を恨んでるよ。あなたを憎んでるよ……だから…これは返さない。
雪音が和希くんにピックを返さなかったように…一生、大事にしてみせる」
雪菜の腕には、春希が別れを告げる直前に贈ったブレスレット。
「さよなら。わたしの……」
涙とともに、雪菜は春希に別れを告げた。
その後、春希がだらしない千晶を世話しつつ、二人は一緒にいた。
春希は時折心の痛みに苦しみながらも、千晶の存在に救われ、立ち続けることができていた。
春希は思う。だらしない女を世話するしっかり者の男を演じ続け、この女を自分に依存させ側に置き続けてみせると。
千晶は思う。ずっと愛する男の側にいるため、彼の傷の痛みを忘れさせるために、一生ピエロを演じ続けてみせると。
(代わりでいい、代わりでいいんだよ…わたしは誰の代わりにでもなるから。
かずさの代わりに、あなたを支える。あなたの代わりに、全てを受け止めてみせる…
あなたを、あっためてみせるからね?)
その生き方は、3年前に雪菜が空港の屋上で語った『小木曽雪菜』そのものだった。
ということでキリがいいんで今日はここで終了です。
この後圧縮版を置いておきます。予定としては5レス前後です。
●共通部
あれから3年。大学3年になった春希と雪菜はお互いを責め続けたままつかず離れずの距離を維持しており、
春希は一人暮らしを始め、自分を酷使するために勉強とバイト三昧の日々を送っていた。
ある日、春希はバイト先の1つの出版社でかずさ特集の記事を書くことになる。
3年前の記憶をなぞりながら春希は記事を書き上げ、それの載った雑誌は無事出版される。
その後、武也と依緒のお節介により、イブに雪菜とデートし、デート後に雪菜の誘いでホテルに行くことに。
だが、春希の書いた記事から春希のかずさへの想いが変わっていないことを痛感し傷ついていた雪菜は、
「かずさのことはもう忘れた」と上辺だけの嘘をついた春希を土壇場で拒絶してしまう。
●ノーマルエンド
結局春希は誰にもすがれず、その後も雪菜と会うことができないままだった。
二ヶ月後、武也と依緒に強引にスキー旅行に連れ出されると、そこには雪菜の姿もあった。
いつか再び触れ合える時は来るのだろうか?
まだ『WHITE ALBUMの季節』は終わらない。
●杉浦小春ルート
生真面目で責任感が強くお節介、という昔の春希のような付属の3年生杉浦小春(すぎうら こはる)。
小春の親友矢田美穂子(やだ みほこ)が春希に手酷くフラれたことを糾弾しに行ったことで春希と出会う。
小春が始めたファミレスのバイトで春希が小春の教育係になったことをきっかけに、
持ち前のお節介さから春希の事情に首を突っ込んでいき、その中で春希に惹かれていく。
イブで傷ついた春希を心配した小春は春希と過ごす時間が増え、
ついには春希に想いを伝え、春希もそれを受け入れてしまう。
だが、そのことを美穂子への裏切りと取られて友情にヒビが入り、学校で孤立していく。
さらに、美穂子は小春と同じ進路に行くのは辛すぎるため大学進学を諦めようとしていたと知り、
小春は自分の責任を果たすべく別の大学への受験を決心する。
入試後。春希は雪菜と話し合ってきっぱり別れ、小春は雪菜に春希と頑張るよう背中を押される。
1年後、小春が大学進学を決めると、そこに美穂子からの祝福のメッセージが届く。
春希も就職を決め、小春の側で彼女を見守り続けていた。
●風岡麻理ルート
仕事は超有能な春希のバイト先の出版社の上司、風岡麻理(かざおか まり)。
生真面目な春希に好感を持ち、将来を見込んで彼に特別に目をかけていた。
イブの後、些細な行き違いをきっかけに寂しさを抑えきれなくなった春希は、麻理を押し倒してしまう。
仕事のために妊娠したくなかった麻理はその場は必死で拒むが、後に避妊の準備をして二人は結ばれる。
雪菜のことを清算しきれないまま麻理との日々を過ごす春希。
麻理に問い詰められたことをきっかけに雪菜の存在を正直に話すと、
麻理は自分は本命の代用品だったのかと自虐し、春希にもうすぐ海外赴任になることを告げる。
その後、武也らが企画したスキー旅行で春希ははっきりと麻理を選び雪菜へ別れを告げる。
春希は海外まで麻理を追いかけ、二人は空港で抱きしめ合いながら将来の話を始めるのだった。
●和泉千晶ルート
だらしなく甘え上手で男女を感じさせない大学の同級生、和泉千晶(いずみ ちあき)。
春希は持ち前のお節介さから世話を焼かされっぱなしだったが、不思議と千晶との時間に安らぎを感じていた。
イブの夜、傷ついた春希が部屋に戻るとサンタ姿の千晶が春希を待っていた。
千晶の提供するぬるま湯の優しさにすがり、春希は千晶と一線を越えてしまう。
その後年明けまで同棲状態になるが、ある程度立ち直った春希は千晶と一旦離れることを決める。
●和泉千晶ノーマルエンド
その後千晶は春希の前から姿を消した。
今回の裏切りの内容を雪菜に伝えるが、雪菜は辛さを見せずに今まで通りの優しさを向けてくれている。
今も春希は千晶のことを思い出して強さをもらい続けている。
雪菜との関係が本当に修復する日はいつ来るのだろうか?
支援
支援
●和泉千晶トゥルーエンド
しばらく連絡の取れなかった春希を訝った武也たちによって、千晶の正体が判明する。
千晶は天才的な演技力を持つ女優の卵で、生活のすべてを芸の肥やしにしてしまう演技の鬼。
彼女が春希に近づいたのは、彼女がやりたがっていた『届かない恋』を題材にした劇の『取材』のため。
春希は千晶に騙されていたことに深く傷つく。
だが、そこまで手酷く傷つけられても、彼女との一時に確かな安らぎを感じていた春希は雪菜に別れを告げ、千晶を選ぶ。
二人は互いのために『だらしない女』と『その世話をするしっかり者の男』を演じながら生きていくのだった。
支援してくれた方々ありがとうございました。
以前は深夜〜朝方だったんで連投制限で止まってましたが、
この時間ならバイさるの10レス制限のほうが引っかかりやすいみたいです。
続きは新スレになると思います。
>634の深紅のソワレがまとめの一覧でヌルーされてるようなので、今度更新される時入れてくれるようお願いします。
がてん系お願いします
>>924 >連投支援がうざいな
単に「支援」だけでNG登録すると、他のスレッドを読む際に支障をきたしかねません。
あえて「つ【 支援 】」とする事によりNG登録し易い様にしております。
なんだコイツきもい
バカ市民ってなんだ?
そんなことより続きをはよ