処女はお姉さまに恋してるSSスレ 第21話

このエントリーをはてなブックマークに追加
9384
>>90
粗とか矛盾が気になる性質でつい…
気になさったのならすいません

話自体は面白いし、続きも気になるので早急に是非続きを
94名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 00:13:56.71 ID:kN/Xbthv0
>>92
おかげで落ち着いたわthx
ところでプリッツが食べたいんだが
95名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 06:13:47.21 ID:QICny8O60
続きー。
-----------------------------------------------------------------------
しかたがないので一旦仕切り直し。

「かくかくしかじか」
「ははぁ‥、なるほど‥」

転入にまつわる家庭の事情に始まり、香織理や薫子にばれた経緯、
エルダーに選出されてしまった戸惑い等々、正直な心持ちを訥々と説明し。

「いかがでしょうか‥。ご納得いただけましたか?」

相変わらず微妙な表情の初音と陽向におそるおそる問いかける。

「えぇと‥。そうですね。あまり納得はできていませんが、
 とりあえず千早ちゃんの主張は把握できたと思います。」

「なんとも荒唐無稽な話かとは思いますが、
 千早お姉さまがおっしゃるのであれば‥。」

「優雨ちゃんは今の千早の話を聞いて、どう思った?」
「んー。あんまりよくわからない。」

一同納得にはほど遠い。

「千早ー。なんか駄目っぽくない?」
「そうねぇ。このままじゃ話進まないわよ‥」
「薫子さん、香織理さん、そういわれましても‥」

「しょうがないわね。千早。 脱ぎなさい。」
「えっ!」
「ちょっ!!」
96名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 06:21:03.16 ID:QICny8O60

「だってしょうがないじゃない。
 このままじゃ初音も陽向も納得しないわよ。」
「えーとね、香織理ちゃん。
 納得しないとかそういう話じゃないんですけど‥。
 そもそも1年間一緒に暮らしてきたんですから、
 千早ちゃんが男性じゃないことくらいはわかってますし。」

(うゎー、初音ったら断言しちゃったし。。)
(薫子さん。申し訳ないんですが、しばらく旅に出ていいでしょうか‥。)
(駄目よ、千早! ほら、心を強く持ってっ!)

「えーとね、初音。そうじゃないからこそ、この場があるんだけど‥」
「だってだって、千早ちゃん、どう考えても女の子じゃないですか。
 こんなに綺麗で可愛くて。言葉遣いも立ち振る舞いもちゃんとしてますし。
 お肌の手入れの相談にも乗ってもらいましたし、パジャマもお姫様でしたし、
 そもそも、あんなに女の子らしいお部屋で寝起きしてるんですよ?」

(うぅぅ‥。)
(千早、涙を堪えなさいっ!)

「そうですよー。香織理お姉さま。
 お料理はうまいし、洗濯やアイロンがけや掃除を手際よく片付けて
 仕事がないと史お姉さまを嘆かせている千早お姉さまですよ?
 優雨ちゃんへの扱いも、こういったらアレかもしれませんが母性を感じさせますし、
 休日の朝とか、お姉さまのエプロン姿の似合いすぎることといったら、もう。」

(orz)
(あー、こりゃだめかも‥)
(再起動まで時間かかりそうね‥)
97名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 06:26:50.59 ID:QICny8O60

「それに、夏のプールで千早お姉さまの見事な肢体を拝見させていただきましたし。
 そもそも、水着にならなくても、普段着でもわかる見事なスタイル、ウェストのくびれ。
 さすがにこれで男性とかおっしゃられましても‥。」

(あー。千歳さんの件か‥。困ったなぁ)
(そういえば、私もあのあたりは詳しくしらないんだけど‥)
(えっとー。うーん、どう説明すればいいのか‥)


そのとき、救いの一言が。

「ひなた。泳いでたのは、ちはやじゃなくて、ちとせ」
「へ?」

「そ、そうなのよ! 優雨ちゃんよく知ってたわね。
 プールはさすがに誤魔化せなかったから、双子のお姉さんに替え玉頼んだのよ!」
「は、はぁ‥。」
「ほら、初音も知ってるでしょ。
 夏、プールの時だけ千早の様子が変だったことあったじゃない」
「あー、言われてみれば確かに、時々千早ちゃんがとっても可愛かった日がありましたねぇ。
 なんかこう、いつもと違って心の底から純粋に微笑んでる感じのときですよね?」

(あははははは。いつもは不純ですか、そうですか‥。orz)
(いや‥その‥ねぇ?)

***
98名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 07:09:28.59 ID:OkcHpzN/0
支援
99名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 07:26:46.63 ID:QICny8O60

そんなこんなで、見えないダメージを食らいまくった千早が
再起動するまでそれなりの時間を経たあとで。

「さて。結局は証拠を見せないと納得してもらえない感じよね‥。
 薫子。とりあえず千早を脱がせなさい。」
「ちょっ!香織理さん!」

「えぇ!? なんで私が。」
「いいじゃないの。手慣れたもんでしょ?」
「べっ、別に手慣れてなんか‥。///」
「はいはい。ごちそうさま。 薫子が剥かないなら、私が剥くわよ?」
「だ、駄目っ! 私がやるからっ!」
「いや、一人でできますから‥。上半身だけでいいですよね?」

大きくため息をつきつつも。
覚悟を決めた千早は、ゆっくりとブラウスを脱いでいく。
100名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 07:33:48.73 ID:QICny8O60

「あら、今日はつけてなかったんだ?」
「当たり前じゃないですか‥。
 えぇと、こんなものですけれども。とりあえずご納得いただけたでしょうか‥?」

そういって裸体をさらす千早であったが。

「うわぁ‥。///」
「うはぁ‥。///」
「‥‥。///」
「あらまぁ‥。 な、なに薫子も照れてるのよ‥。///」
「えっ、だ、だって、こんな場所で千早の裸みるなんて‥///」

そんな頬を染める一同の反応に
恥ずかしくなったのか慌てて胸を隠す千早。

「千早様。その照れかたはいささか男性らしさが欠如している気がいたしますが。」
「ふ、史っ! ///」

----------------------------------------------------------------------
とりあえず、朝はここまで。 忍者以外にも従来の規制もあるとは‥。
101名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 10:37:07.47 ID:feGfQ4/B0
乙ーん

どんなオチになるのか楽しみ。
いやこのちーちゃん見られただけで十分という気もするけど。
102名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 11:28:39.82 ID:OkcHpzN/0
乙です。
残りが楽しみなのですよ〜
103名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 18:02:15.23 ID:LYvZKdzD0

( ‘д‘)y-~~<続きをはやくたのむ
104名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 20:19:09.21 ID:kN/Xbthv0
朝はここまでって事は夜もあるんだよな?
          _, -‐ ' ´ ̄ ̄ ¨ヽ
       , -'´:. :. :. :. :. :. ___」
     /:. :. :. :. _, - ' ´ ,r'´ ゙̄ヽ      ハーリー!ハーリー!
    く:. :. :. :, -' __, -‐ '´____| 
     ヽ/_, -'´, -ォi'¨´  \ ヽ \ 
      ,ゝ':. :./  /|lト、   ヽ \ ヽ ',
     \/    |-!|ー\、  \ ト、! i
  ミ ミ ミ : :!: :i:: lz=≡   ≡z. {: !l     ミ ミ ミ
 /⌒)⌒)⌒.ハ :_ト:とつ \\\ C V     /⌒)⌒)⌒)
 | / / /: lヽ:|  \ヽ __,.   }l (⌒)/ / / //
 | :::::::::::(⌒) : :}\  /   1  // ゝ  :::::::::::/
 |     ノ ヽ lY `  {_  _,ノイ|://  /  )  /
 ヽ    /   ヘ,、   _「    l/!'   /    /     バ
  |    |   l||l 从人 l||l.!::|イ:::ヽ_./ l||l 从人 l||l  バ  ン
  ヽ    -一''''''"~~``'ー--、/:::::イ;  -一'''''''ー-、    ン
   ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) ):::/}  (⌒_(⌒)⌒)⌒))
105名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 21:41:35.40 ID:QICny8O60
よし。続きいっちゃいます。
----------------------------------------------------------------------

「といったわけで、妃宮は母方の姓であり、千早様はまりやお姉さまの従姉弟になります。
 事情が事情とは申せ、皆様を1年間騙していたことは間違いなく、
 私からも謝罪させていただきます。(ぺこり)」
「本当に申し訳ありませんでした。(ぺこり)」

そういって深く頭を下げる史と千早。

「‥‥。」
「‥‥。」
「‥‥。」

おそるおそる反応を伺いながら、ゆっくりと千早が視線をあげると。
ほのかに納得していなさそうな優雨。
だいぶショックを受けている陽向。
そして、かなーり不機嫌そうな初音である。

***
106名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 21:42:42.07 ID:qzLa1bPW0
支援
107名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 21:47:26.95 ID:QICny8O60

「えーと‥‥。そんなわけなのですが‥?
 ゆ、優雨? 本当にごめんなさいね‥。」

まずは難易度の低そうな優雨を説得しようかと語りかけるが、
口調が1年間ですっかり身についたお姉さまモードなのは、いかがなものか。

「ちはや。」
「は、はいっ!?」
「お母さんは‥平気‥?」
「えっ? あぁ‥。ありがとう、優雨。もう大丈夫なの。
 昨年のクリスマスのときに、薫子さんと、そう、千歳さんのおかげで。」
「ちとせ?」
「そう。千歳さんがまた助けてくれたの。」
「そうなんだ‥。」

古い友人の活躍を小耳に挟んだときような、
懐かしいような嬉しいような、ほのかな笑みを優雨は浮かべる。

「えーと‥。1年間、騙してしまったわけだけど‥。
 優雨は‥許してくれるかしら?」
「んー。 ちはやはちはやだし。
 男の人(?)なのは、まだよくわからないけど。だいじょぶ。」
「ありがとう‥。優雨。」

優雨の前に跪き、その手を取って微笑む千早。

***
108名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 21:48:58.55 ID:OkcHpzN/0
支援
109名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 21:52:47.30 ID:kN/Xbthv0
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
110名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 21:57:25.39 ID:QICny8O60

「おぉ、優雨ちゃんをクリアしたよー」
「まぁあの二人の関係は、謎の母娘的な信頼関係っぽいものがあるしねぇ。
 ふむ。それじゃ、少しは援護射撃でもしてあげますか。」

そういって、香織理が目を向けるのは。

「陽向。あなたがそこまでショックを受けるとは予想外だったけれども。」
「だ、だって。千早お姉さまが男性なんですよ!?」
「事実は小説よりも奇なりって、よくいうじゃない。」
「まったくです。‥こんな面白そうなことに1年間気付かなかったとは〜(がっくり)」

「えっ!? そこなの?」
「薫子お姉さま、あたりまえじゃないですか!
 男の娘で、女装潜入で、しかもエルダーシスターですよ!?
 こんな特上のネタを今更言われても‥‥。orz」
「えーっと‥‥。」

「しかもしかも。なにが悔しいって。
 『そういえば、いわれてみればあのときも‥』とかなんとか
 振り返るべき伏線が、何一つ思いつかないこの情けなさ!!!
 私の眼は節穴ですかー (はぅぅぅ‥)」
「はぁ‥?」
「えーっと‥?」
111名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:03:24.49 ID:OkcHpzN/0
支援
112名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:05:57.71 ID:QICny8O60

予想外のリアクションに返す言葉もない二人。
そこに復帰した千早が口を出す。

「陽向ちゃん。それで‥、あなたを騙していたことについては許してもらえるでしょうか?」
「は、はい! 正直まだ実感は湧いていませんが、
 まぁ済んでしまったことですし。 それに、どちらかといいますと。
 『よくぞ、見破らせなかったな! こんちきしょ!!』とか、賞賛したい気も少しありますから」
「‥はい?」
「いやぁ。さきほど証跡を見せていただきたとはいえ。
 なんというか‥、やっぱり千早お姉さまは、どう見ても女性としか思えなかったりして、
 世界の奥の深さを痛感したというか、真実を見破れなかった私は精進が足りないといいますか。」
「はぁ‥」

「それに、長い人生、どんなことでも糧となり、経験となるはずなのです!
 そうですねぇ。騙されたお詫びというわけではありませんが、
 この1年間の諸々について、今度是非インタビューさせていただければと〜」
「えーと‥、それで陽向ちゃんの気が済むのであれば‥」
「やった! 約束ですよ!」

そんなこんなで陽向もクリア。

***
113名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:08:05.93 ID:OkcHpzN/0
  ∧_∧
 ( ・∀・) ワクワク
 ( ∪ ∪
 と__)__)
114名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:14:52.99 ID:QICny8O60

そして最後に残るのは。

「えーと‥。初音‥さん?(おそるおそる)」
「む〜。」

かなりご立腹の様子。

「千早ちゃん」
「は、はい!」
「香織理ちゃんに、薫子ちゃんも」
「はいっ!(×2)」

「さきほどの説明で、とりあえず経緯はわかりました。やむを得なかったという事情も。
 あと、千早ちゃんが卒業まで話せなかったのも、理解できなくはないです。」
「は、はい。ありがとうございます。」
「で‥。(じろり)
 二人は、千早ちゃんの事情を知っていたんですよね?」
「え、えぇ‥。だいぶ前に気付いたから‥。」
「うん‥。あるときにそれを教えてもらって‥。」

「ふーん‥。
 そうですか、そうですか。二人はだいぶ前からわかっていたんですか。
 で‥。どうして私だけ除け者なんですか? 仲間はずれですか?
 秘密を守るに足りない、信頼できないってことですか!?」
(うわぁ‥そっちですか‥‥)
(あー、初音ならそうかも‥)
115名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:18:51.78 ID:OkcHpzN/0
支援
116名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:20:40.43 ID:QICny8O60

「え、えっとね。初音。そうじゃなくて‥」
「じゃあ、薫子ちゃん。どういうことなんです?」
「えぇと、なんていえばいいか‥、その‥‥。」
(初音はこうなると止まらないのよねぇ‥)

舌鋒鋭い初音の追求にたじたじな薫子。
しかたがないとばかり、千早がフォローにはいる。

「私から、薫子さんと香織理さんに口止めをお願いしていましたから、
 初音さんを信用しなかったとか、仲間はずれにしていた、というわけではなくてですね。」
「千早ちゃんはそういいますけど。
 結局のところ、薫子ちゃんと香織理ちゃんは
 3人で楽しい1年間を過ごしてきたわけですよね。私たちを除け者にして。」
「いえ、除け者にしたつもりはないのですが‥」

「そうですか、そうですかー。じゃあ千早ちゃんに聞いちゃいますけど。
 私がさきほどの話を聞いたとして、嬉々として周りに言いふらすとか思ってますか?」
「いえいえ。まさか。そんなことを初音さんがしないことはわかっていますから。」
「じゃあ、なんで教えてくれなかったんですか?」
「えぇと‥それはですね‥‥。」
(うわぁ‥、初音お姉さま、きっついですねぇ)
(はつね、拗ねてるのはじめてみた)

周囲もどん引きである。

***
117名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:26:50.25 ID:QICny8O60

そんな状況を見て取った香織理が、しかたがないとばかりに事態の収拾にはかる。

「はいはい。初音もそう拗ねないの。」
「べつに拗ねてなんかいませんよ〜」
「まぁ、少しは落ち着きなさいって。千早とも昔に話をしたのだけれど。
 一応ほら、初音って生徒会長じゃない。さすがにまずいかもって話になって。」
「どうせ私は口うるさくて規律に煩い、ガミガミ屋の生徒会長ですよー」

とりつく島もない。

まったく困った娘ねぇ‥。と呟きながら、香織理は席を立ち。
つーんとそっぽを向く初音の前に膝立ちになり、
頑なに握りしめられたその手を優しく撫でながら。

「まったく。自分でも思っていないようなことを言うんじゃないの。
 本当のところ。千早はある頃まで、正直に打ち明けたいといっていたのよ。
 ただね。初音はなんでも一人で背負い込みがちだから。
 下手にこのことを知ってしまうと、生徒会長という立場と親友という立場。
 公人と私人の狭間で悩むんじゃないかって。
 そう千早と相談して、黙っておくことに決めたのよ。」
「香織理ちゃん‥。」

(へー、そんな話もあったんだー)
(千早様、それはいつ頃のお話でしょうか?
(えーと‥。残念ながら、あれは香織理さんのでまかせです‥。)
(えっ!)
118名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:27:02.12 ID:OkcHpzN/0
紫苑
119名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:28:31.95 ID:qzLa1bPW0
支援
120名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:34:23.85 ID:QICny8O60

「それに、うぶでねんねな初音にこんな話を聞かせたら、大変なことになるじゃない。」
「わ、私は別に平気ですよっ。 そんなに狭量じゃないですよ!」
「へー、そう?
 初音、わかってる?
 年頃の異性と一つ屋根の下で1年間暮らしていたってことに」
「えっ?」

先ほどまでの慈愛に満ちていた香織理の表情が、一変し。

「初音が平気だというなら別に問題なかったわねぇ。
 えぇ。風呂上がりの姿を見られたり、脱衣籠に忘れた下着を千早に届けてもらったり、
 うたたねしている寝顔を見られたりしても、初音なら全然気にしたりしないんですものねぇ。」
「えぇっ!?」

「そうよねぇ。初音はそのくらい平気よね。
 千早が男性とわかっていても、今まで通り普通に暮らしていけるわよね。
 体調崩して弱り切ったときに優しく看病されたり、
 夜、寝落ちしたのを担がれて部屋まで運んでもらったりしてても、
 気にせずにいつも通りに振る舞えるわよね。」
「えぇぇっ!?」

香織理の言わんとすることを徐々に理解するにつれ、
頬が染まり、視線が泳ぎ、そろそろぷしゅーと蒸気を噴き出しそう。


しばらくの時が過ぎ。
そんな初音の混乱を再び優しげな視線で見つめていた香織理は、
落ち着きだした頃合いを見計らい、ゆっくりと紅に染まった頬を撫で。

「ね。知らないでいたほうが心安らかに楽しく過ごせた気がしない?」
「う、うん‥。そうかもです‥。///」
121名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:41:59.87 ID:QICny8O60
***

そんなこんなで。
ようやく全員に納得(?)してもらえ。
一年間の感謝と、一年分の謝罪を終えて、
ようやくこの宴もお開きになろうかと‥‥。

「む〜。」
「え、えーと。ま、まだなにかありますか‥?」

まだまだ頬が艶やかな初音がちょっぴり涙目のまま、
恨めしげな(?)視線を千早に向けていた。

「千早ちゃん。」
「は、はい!」
「え、えっとですね。」
「はい。何でもいってくださって構いません。」

「せ‥」
「せ‥?」
「せ‥‥、責任、とってください!!」
「‥‥、はい?」
122名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:44:56.96 ID:OkcHpzN/0
支援
123名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:48:13.31 ID:QICny8O60

「だってだって、お風呂上がりとか寝顔とか洗濯物とか見られちゃいましたしっ!
 そもそも男の人を初めて部屋にいれちゃったことになりますし!
 と、というか、寝てるところ寝室まで運んでもらったなんて聞いてませんし!
 ダイエットのこととか、いろんなこと相談しちゃいましたし!///」
「えぇと。それはもう本当に申し訳なく思っています。」
「く、口先だけの謝罪で許されると思ってるんですか‥?」
「では、どうすれば‥」
「だ、だから、責任を‥。 ///」
「え、えーと‥」

なにか暴走しはじめた初音。困惑している千早。
何が起こったのか把握できていない薫子、史、優雨。
そして、これは面白そうな展開になりそうだとわくわくする残り2名。

「そ、そう言われてもですね。
 先ほども説明させていただきましたが、私と薫子さんはですね‥」

そう千早が口を挟んだ時。

「そ、そうでした! そうなんですよ!
 もう1個、なんか納得いかないことがあるんですよっ!」
「こ、今度はなんでしょうか‥?」
「先ほどの話だと、千早ちゃんと薫子ちゃんが、
 えーと、そ、その‥、お、お付き合い、しているそうですが。」
「はい。その通りです。」
124名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:49:29.51 ID:qzLa1bPW0
支援
125名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:53:58.89 ID:kN/Xbthv0
( ゚∀゚)o彡°もっと!もっと!
126名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:54:09.12 ID:QICny8O60

「‥‥ずるいです。」
「へ?」
「薫子ちゃん、ずるいですよ!」
「あたしっ!?」

「だって。ずるいじゃないですか。
 私の知らないところで、千早ちゃんが男性だって知った上に
 いつの間にかお付き合いしているなんて。」
「それはそうかもしれないけど。。」

「千早ちゃん、こんなに綺麗でかっこいいですし。
 勉強も運動もできますし。料理もや掃除も上手ですし。
 いろいろ気が利いて、とっても優しいじゃないですか!」
「まぁ、それは認めるけど‥。」
「あ、ありがとうございます‥」

「というわけで、私も千早ちゃんがいいですっ!
 わ、私だって、千早ちゃんかっこいいとか思ったことありますし、
 千早ちゃんのこと、薫子ちゃんに負けないくらい大好きですから!///」
「‥へ?」
「‥‥はい?」

「男性とかって正直怖かったりしますけど、
 千早ちゃんならきっとたぶん平気ですし!!
 それにそれに、いろいろ見られちゃいましたし‥。///」
「千早!! あんた、何見たの!!」
「な、なにも見てませんって!」

こっちはこっちで揉めだした。
127名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 22:59:52.92 ID:qzLa1bPW0
支援
128名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 23:01:27.49 ID:QICny8O60

「ねぇ、初音。それって、もしかして。
 千早と初音がお付き合いするってこと?」
「最初はそこからでも構いませんけど‥」
「‥最初は?」
「えぇ。最後は‥責任とってくださいね‥。///」
「そ、それはさすがに飛躍しすg‥」
「ダメーーーーーー!!!!」

薫子が咆哮した。

「ダメよ! 千早は渡さないからっ!」
「なんでですか! 薫子ちゃん、ずるいですよっ!」
「ずるくてもダメなものはダメーー!!」
「だって、千早ちゃん、私の体重とかスリーサイズ知ってるんですよ!!」
「あ、あたしのだって知ってるから!」
「えーと、薫子さんのは知らないんですが‥」
「なんでよっ!」
「か、薫子さん、恥ずかしがって教えてくれなかったじゃないですか‥」
「あたりまえでしょ!!」
「そういうことですから、千早ちゃんには責任とってもらうんですー!」
「ダメーーー!!!」

薫子は千早の胸にすがりつきながら、鋭い視線で初音を牽制するものの。
初音も千早の左腕を引っ張り、譲る気配はない。

(うはー。なんというかまさに修羅場!)
(ふっ。陽向。まだまだ甘いわよ。)
(といいますと?)
(鈍いわねぇ、陽向。 あなたも参戦する資格があるってこと)
(‥‥‥? お、おぉっ! なるほど、了解です。 宮藤二等兵、突撃しますっ!)
(健闘を祈る!)
129名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 23:04:47.52 ID:g+hzEn6x0
支援
130名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 23:06:57.35 ID:QICny8O60
***

「ずるいー」「ダメー」

そんな叫びが飛び交うサロンでは
千早の腕をそれぞれ抱え込み、両側から引っ張り合う大岡裁きな様相が。

「じゃあ、私も立候補させてもらっていいですか?」
「えっ?」「陽向ちゃんっ!?」
「男性とのお付き合いというのも興味深くありますし、私も千早お姉さまなら怖くないですし、
 それに初音お姉さま同様、いろいろ見られちゃってますしねー(えへ☆)」

そう言いながら千早に飛びつく陽向。

(ふふ。みんな楽しそう)
(優雨。あなたも行ってみたら?)
(いいの?)
(もちろん)

香織理に背中を押された優雨も、
とてとてと歩いて千早に抱きつく。

「わたしもー」
「優雨ちゃんっ!?」「優雨っ!?」
「おぉ。優雨ちゃんも参戦ですか! 負けませんよ!」
「わたしも負けないー」「ゆ、優雨ちゃん、ここはお姉さんに譲ってくれませんか?」
「み、皆さん! と、とりあえず一旦離れませんかっ!?」
「ダメったらダメーーーーーーーーー!」

てんやわんやである。
131名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 23:09:27.01 ID:qzLa1bPW0
支援
132名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 23:12:18.24 ID:QICny8O60

「初音ー。どうにも千早がごねるようなら
 魔法の呪文 『ばらすゾ』 を唱えてみてはどうかしら」
「香織理ちゃん!? はいっ! 了解ですっ!」
「ちょっ! 香織理さん。裏切るんですか!」
「ふっ。いまさらなにをいうの、千早。
 私はあくまでも面白くなりそうな陣営の味方よ。(ふふり)」
「なら、私もばらすー」「じゃあ、私はノンフィクションでまとめて夏の祭典に!」
「とにかく責任とってもらいますからー!」「い、いいから皆さん、落ち着いてくださいっ!」
「ダメなものはダメーーーー!!!(涙目)」

窓辺から柔らかな日差しが差し込む春の午後。
淑女たちの賑やかなお茶会は、まだまだ続きそうである。

-----------------------------------------------------------------------
まぁ、こんな感じでー。
初音が気づいていたとかで、ネタの根本部分がぐらついた時にはどーしようかとw
133名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 23:23:26.96 ID:g+hzEn6x0
乙!やー,楽しませていただきましたw
この後これ,どうやって収拾をつけたのやら・・・w
134名無しさん@初回限定:2011/08/18(木) 23:56:50.97 ID:qzLa1bPW0
乙〜
面白かったです
このままハーレム√の続きをw
135名無しさん@初回限定:2011/08/19(金) 00:01:16.59 ID:OkcHpzN/0
乙でした
ぜひ続きを!!
136名無しさん@初回限定:2011/08/19(金) 00:07:30.27 ID:tAKypZDQ0
乙でしたー

・・・これ、初音さん知っててもこの反応で押し通したりしそうで怖いw
なんと言ってもマジたぬきだからなあ…
137名無しさん@初回限定:2011/08/19(金) 20:53:52.21 ID:/NW9NS4U0
続き‥。

ちょいと考えてもいいんだけど、なんというか。
自分の中の初音のキャラ設定と、PSP経験者のギャップが
どれくらいあるのかさっぱりわからんのですなー。
初音メインで動かすとなると、どうしたものかと。

そろそろPSP買うかなぁ‥。
138名無しさん@初回限定:2011/08/19(金) 22:01:20.73 ID:pA6Nd17R0
>>137
真面目にオススメできるから買っとけ
初音さんルートと優雨ルートをやらないのはもったいない
薫子さんルートの追加イベントを見ないのももったいない
スイカの続きを見ないのももったいない
なでなで祭りをやらないのももったいない
139名無しさん@初回限定:2011/08/19(金) 22:07:36.07 ID:FmVHv6WF0
>>137
おとボクの中で√で印象変わったキャラ断トツ一位と言ってもいい位な事になってるw
自分も今回ので本体毎買ったわ

>>138
そいやスイカ見てないわ
下二つ入れるなら夏休みも入れろよw
140名無しさん@初回限定:2011/08/20(土) 02:20:36.04 ID:/nsj3MWs0
>>139
夏休みもイベントが追加されてて、夏休みイベントは必ず発生、その時の好感度で4ルートの中から一つが起きる
141名無しさん@初回限定:2011/08/20(土) 02:21:10.06 ID:/nsj3MWs0
あぁごめん意味読み違えた
リストに書けってことか、すまん
142名無しさん@初回限定:2011/08/20(土) 13:08:38.70 ID:wtSARapf0
PSP、値下げしてくれたら買うのに・・・
143名無しさん@初回限定:2011/08/20(土) 23:43:12.07 ID:OBbNL8Lk0
>>142
禿同
144名無しさん@初回限定:2011/08/21(日) 01:40:35.28 ID:HH5SDYo20
海外向けに廉価版が発表されたけどね。
145名無しさん@初回限定:2011/08/21(日) 13:15:50.17 ID:gpmILvFQ0
3DSで出して欲しい
飛び出すちーちゃん・・・
146名無しさん@初回限定:2011/08/22(月) 06:11:32.03 ID:KMV31Et+0
はっはっは。なんか朝変な時間に目覚めたのでPSPポチってしまった。
予想外の出費だ、こんちきしょー。

しかし、キャラの設定性格が変わってしまうとなると
手持ちのネタ帳がいろいろ没になりそうな気が‥。
147名無しさん@初回限定:2011/08/22(月) 07:08:00.56 ID:19kiq+ym0
多分それ以上にネタがわいてくるから問題ない。

なんせ初音さんの場合ネンネ設定でも「わかっててやってる」が違和感ないから。
優雨は…ごめん、まだクリアしてない(ぇ
148名無しさん@初回限定:2011/08/22(月) 21:24:39.88 ID:xLJFhHkR0
だがちょっと待って欲しい
PC版しかやってない人のためにもそのネタ帳から書くべきではないだろうか

もちろんPSP対応のも書くべき
149名無しさん@初回限定:2011/08/23(火) 22:24:53.56 ID:C2A3k+wN0
まんが日本昔ばなし風のSSを書いてくんろ
150名無しさん@初回限定:2011/08/25(木) 00:31:58.13 ID:iKEsH3Kk0
>>149

『恵泉寺の小さいにゃんこのお話』みたいな?
151名無しさん@初回限定:2011/08/25(木) 19:07:16.54 ID:Oo0S4s3M0
処女寺でいいんじゃね?
和尚 → ちーちゃん
たぬき→その他
152名無しさん@初回限定:2011/08/25(木) 20:25:00.93 ID:8aQca4gk0
たぬき→たぬき
153名無しさん@初回限定:2011/08/31(水) 23:37:45.19 ID:jHBcYXr90
ホシュ
154 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2011/09/06(火) 11:37:47.43 ID:S//WiyGS0
保守&確認
155名無しさん@初回限定:2011/09/06(火) 22:38:19.16 ID:rNz8aILx0
11か

食べ頃じゃの
156名無しさん@初回限定:2011/09/06(火) 22:54:25.07 ID:mHB58Zby0
154の活躍に乞うご期待。
157 忍法帖【Lv=12,xxxPT】 :2011/09/07(水) 11:15:16.98 ID:Rkcg7NFW0
修行完了かな
158154 ◆YxHxmvro0I :2011/09/07(水) 11:23:56.34 ID:Rkcg7NFW0
今晩、とりあえず5本位を、全部で10本を予定
159 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/09/07(水) 22:15:09.83 ID:nC2uGvpv0
マダカナァ
160 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/09/07(水) 22:20:38.05 ID:nC2uGvpv0
…と、BBSPINKではほとんど書き込まない、『PC等』で育てた忍法帖のレベルと一緒だ。
前にBBSPINKと他2chは忍法帖が違うって書き込みがあったけど、一緒かもしれないよ。
161新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/07(水) 23:57:14.42 ID:Rkcg7NFW0
只今帰宅。
これよりうpしていきたいと思いますが、その前にちょっと一息してきます。
162新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/08(木) 00:47:53.70 ID:EuGSSDAC0
うpしたいと思っていましたが、
1(瑞穂)をメインとした話と2(千早)をメインとした話のどちらが良いでしょうか?

かなり眠いので明日の朝にうpします。
キーボードにコーヒーをこぼしてしまった・・・orz
163名無しさん@初回限定:2011/09/08(木) 01:20:16.52 ID:OfBWeMtM0
残念。1希望。
164名無しさん@初回限定:2011/09/08(木) 07:11:14.96 ID:wscz71q70
両方に決まってるじゃなーい。
165新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/08(木) 07:58:57.60 ID:EuGSSDAC0
おはようございます。
まずは1、好評であれば2もうpする予定なので、よろしくお願いします。
-------------------------------------------------------------------------
そろそろ寝ようかとベッドに腰掛けたその時、突然ノックもなしにドアが開いた。
「やっほ〜、瑞穂ちゃん!明日暇?」
「どうしたの、まりや。突然こんな時間に?」
「実は明日皆で映画に行くことになったんだけど、瑞穂ちゃんに伝えるのを忘れてたんだよね・・・」
「まりやったら・・・」

翌日、僕はまりや、奏ちゃん、由佳里ちゃんの4人で映画館を訪れた。

「まりや、今日見る映画だけど、何を見るの?」
「それは着いてからのお・た・の・し・み♪」
「う〜ん、昨日聞き忘れてからずっと気になってるんだけど。。。」
「私達にも教えてくれないのですよ〜」
「だって映画のタイトルを教えたらあらすじとかで内容が分かっちゃうでしょ!!」
とそんな会話をしている間に映画館に到着。

「じゃあ、チケットを引き換えてくるね〜」
とまりやが窓口の方へ向かった。
166名無しさん@初回限定:2011/09/08(木) 08:28:18.82 ID:jdZ6jxhd0
おはようございますですわ
167新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/08(木) 08:51:47.41 ID:EuGSSDAC0
「う〜、ホラーとかだったらどうしよう。。。」
と由佳里ちゃんが少々?青ざめた顔で心配する。

「た、多分大丈夫よ。今この館で上映している作品の中にホラー物は無さそうだから。」
作品名を一通り見た感じ、一応ホラー系に属しそうなものは無かった。

「お待たせ〜、本日鑑賞する作品は此方です!!」
差し出されたチケットを見て一同納得した。

[ナルニア国物語 第1章: ライオンと魔女]

「ホラーじゃなくて良かった〜」
「これは気になっていたのですよ〜」
「確かに原作が有名だからあらすじが分かっちゃうよね。」
「ほら、しみじみ眺めていないでさっさと行くわよ!!」

ポップコーンとジュースを買って席に着くと、斜め前の席に座っている人がとてもある人に似ていた。
間違いないか確認しようと思った時、辺りが暗くなり始めたので後で確認することにしよう。
168名無しさん@初回限定:2011/09/08(木) 09:52:52.16 ID:rXnGMa5e0
支援
169新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/08(木) 21:51:19.81 ID:EuGSSDAC0
「まりやお姉さま、とても面白かったです!!」
「次の章が大変楽しみなのですよ〜」
「最近のCGは凄いよね。ところで、前の席に。。。ってあれ??」
先ほどまで座っていたはずの人物がいつの間にか居なくなっていた。

「どうしたの、瑞穂ちゃん?」
「さっきまでそこに圭さんが居たような。。。気のせいだったのかな。。。」
「グッジョブ」
「うわぁ!?」
振り向くとそこには圭さんが、その隣には美智子さんが立っていた。

「気配を消していたのに気づくとは流石ね。」
「け、気配??」
「冗談よ。」
「やはり圭さんでしたのね。まさかとは思っていましたけど。」
「ホントよね〜、何だか意外だわ。」
とまりやも頷く。
「或る愛の詩を見るつもりだったのだけど、美智子に。。。」
「あらあら、何かしら?」
と黒い?笑顔で圭を見る美智子さん、怖いです!!
「・・・何でもない。」
170新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/08(木) 22:15:22.65 ID:EuGSSDAC0
「さてと、そろそろお昼の時間ね。」
何か云いたそうな圭さんを余所にまりやが切り出した。

「まりやお姉さま、どこか決めている所があるのですか?」
「そんなのある訳ないじゃない!」
「ですよね。。。でしたら、先日オープンしたハンバーグの...」
「却下!」
「え〜、まだ何も云っていないですよ!!」
「いや、ハンバーグって云ったじゃない。昨日の夕食もハンバーグだったからそれ以外にしましょ!」
「そ、そんな〜(><)」
「私はハンバーグでも構わないわよ。」
「瑞穂お姉さま〜!!」
「瑞穂ちゃん、甘すぎ!!」
「え〜っと、そういう事でしたら私に良い案があるのですよ〜」
「奏ちゃん、何処か良い所を知っているの?」
「ハイなのですよ〜。」
171名無しさん@初回限定:2011/09/08(木) 22:32:00.78 ID:+ObP6xEO0
しおn
172名無しさん@初回限定:2011/09/09(金) 22:37:14.62 ID:/FyovFj30
修道会
173新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/09(金) 22:51:47.39 ID:hfsX7us0O
ケータイからでスミマセン。
PCにコーヒーこぼしてしまい、動作がかなり不安定になったので、現在分解修理中です。

もうしばらくお待ち下さいますよう、お願い申し上げます。
遅くても日曜日までには完了出来る見込みです。
174名無しさん@初回限定:2011/09/09(金) 23:09:07.88 ID:1j/dn4WD0
しっかり乾かせよー

…しかしコーヒーとなると中長期的にはまずいかも知れん
ブラックでも大概なところ、ミルクとか砂糖とかPCの天敵じゃないか
175名無しさん@初回限定:2011/09/10(土) 01:10:11.29 ID:UpDalctC0
>>173
マジか。(´Д`;)

急いでくれるのは嬉しいけど、生乾きで電源入れて
ショートさせないように注意してね。
176名無しさん@初回限定:2011/09/10(土) 02:00:50.48 ID:xhCM2fR90
キーボードだけ買ってきたらええのや!!
177新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/10(土) 10:07:30.57 ID:qRWOBunVO
>>174
純水で洗浄したから多分大丈夫かな…と

>>175
乾燥材を活用中です(`・ω・´)

>>176
ノートPCなの…
178名無しさん@初回限定:2011/09/10(土) 11:15:55.57 ID:KWdK7toc0
>>177
新しいノートをIYH(待て待て待て
179名無しさん@初回限定:2011/09/10(土) 12:27:29.46 ID:7UpTCI6N0
ノートPCの側に飲み物を置くのは論外として、
どうしても置くなら、ちゃんとキーボードカバーをする。
安物の簡単に掛けて容易に水が進入する物でなく、キーボード上面全体にシリコンで貼り付け、より水分が進入しにくい物を。
180名無しさん@初回限定:2011/09/10(土) 17:27:35.14 ID:Q32nnN+10
>>177
なんでポンと純水が出てくるんだw
181名無しさん@初回限定:2011/09/10(土) 19:25:57.01 ID:VNEFrC3t0
千早お姉さまの純水

と書くとなんか…
182名無しさん@初回限定:2011/09/10(土) 19:56:27.23 ID:mV3UIBm60
きれいな水ですから!

懐かしいな
183名無しさん@初回限定:2011/09/10(土) 21:53:52.50 ID:b45R775C0
まだー?
184 忍法帖【Lv=15,xxxPT】 :2011/09/10(土) 22:52:18.95 ID:ywzAQM1P0
mada?
185新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/10(土) 23:30:41.85 ID:qRWOBunVO
まだ家に着いていないんたが…

今日は久々のコンサートに参戦してました。

明日の午前中に組立て、午後にはアップ出来る見込みです
186名無しさん@初回限定:2011/09/11(日) 15:17:37.52 ID:J2yTWZJN0
>>179
ノートでそれやると放熱的にまずくないか?
187なー:2011/09/11(日) 16:00:07.37 ID:J/diJLn+0
コーヒー吹かれてたノートPCで起動できなくなった経験者より
キーボードのフィルム基盤注意
フィルム基盤を水洗いしなくてはならんが、プラを溶かして固定してるはずなので、
解かして固定してある部分をデザインナイフ等でt出来るだけ傷つけないように削る。
水洗いしたら最低3日は日陰の涼しいところで分解したまま干す。
部品の喪失。埃に注意。成功しても、キータッチに違和感が出る。
188名無しさん@初回限定:2011/09/11(日) 16:18:35.70 ID:uO2m71Xr0
>>186

ホントかどうかは知らんが、私が使ってるのは放熱も良いと書いてある。
189名無しさん@初回限定:2011/09/11(日) 16:50:57.21 ID:EA8EyXKX0
類似品と比べて放熱性が良いだけで無しと比べたらダメなんじゃね?
190名無しさん@初回限定:2011/09/12(月) 19:16:36.87 ID:rIcULUmy0
まだ続ききてないのか。
1本書き上がったけど、まぁ乱入もアレだろうと待ってみてるんだが‥。
191名無しさん@初回限定:2011/09/12(月) 19:45:31.88 ID:pE4EVDRh0
もう!! あとが混んでるんだから、早くしてよねノーパソ!!
192名無しさん@初回限定:2011/09/12(月) 20:59:02.71 ID:UDP9kxCR0
あんまり待っててもハードル上がって新参者氏も投稿しにくいかもしれんから
>>190氏が書き上がってるなら先に投下してはどうか?
193新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/12(月) 22:20:57.36 ID:bNzZ4TF9O
大変遅くなってしまい、申し訳ないです。軽く分解して乾かしたキーボードをはめるつもりだったのですが、かなり奥まで浸透していたらしく、今は完全にばらした状態です。 キーボードは現在防湿庫に入れて完全に乾かしています。
>>190氏へ
私に是非構わずうpしてください。
194名無しさん@初回限定:2011/09/12(月) 22:56:55.42 ID:bmiIsLbJ0
防湿庫…
レンズ沼に踏み込んだ人だったか
195名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 22:14:51.03 ID:JnJMLwpY0
昔、レンズマンてあったよね
196名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 22:46:52.06 ID:qWrGnNES0
うーん。投稿単位の切れが悪い‥。10+7+6本くらいになりそうな感触。
薫子ルートやってて思いついた最後のネタになります。
-----------------------------------------------------------------------
『援軍』

順一に煽られ、問われ。
ようやく自分の気持ちに気がついた千早は。

「純一さん、薫子さんの家まで連れて行っていただけませんか?
 ‥いえ、なんでもありません。失礼します。」
「待てよ! 千早。おまえ一人じゃ行っても中には入れねぇぞ」
「ですが!」
「まぁ、聞けって。 七々原の家は商売柄、裏から侵入されたりすりゃ
 自動的に警備会社に通報されるようになってんだよ。」
「それでは、どうすれば!」
「決まってるだろ。正面から正々堂々と行きゃいいんだよ。‥‥俺を使ってな。」
「順一さん‥。」
「まぁ、そんなわけだ。22時になったら家の近くまでこい。おまえの携帯に連絡する。」
「‥‥はい。」
「一度戻って、落ち着いてからこい。きっちり肚決めてからな」
「わかりました。それでは‥。」

夕闇の迫る中、千早はそういって順一に背を向けた。

***
197名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 22:52:17.50 ID:qWrGnNES0
その少し後。とある病院にて。

「順一! なにやってんだ、馬鹿野郎!!」
「すんません!親父!」

声を荒げる玄蔵に「ここは病院ですよ、お静かに!」と看護婦から注意の声が飛ぶ。

「ったく、飛び出した子供を庇ったのは褒めてやるが
 手前が怪我してどうすんだ。しかもこのタイミングでよ‥。」
「本当に面目ないっす‥。」
「ふぅ。しかし、‥‥どうしたもんか。」
「俺ならいけますっ!」
「けっ。馬鹿いってるんじゃねぇ。先生には話は聞いてるんだ。
 満足にも歩けない奴が殴り込みとか、冗談も大概にしろぃ。」
「で、ですが‥‥。」

頭に包帯を巻いた順一が項垂れる。

「しかし‥。二人にある程度近しく、事情に通じている人物かよ‥。
 くそっ。正直どう転ぶかわからねぇが、ここは一発賭にでるしかねぇか‥。」
「お、親父?」
「とりあえず、こっちでなんとかする。
 手前はさっさと身体治しやがれ。わかったな、順一!」
「は、はい‥‥。」

病院を後にした玄蔵は、懐から携帯を取り出し。

「あぁ、俺だ。 あと20分くらいでそっちに戻る。
 それまでになんとか鏑木と連絡とれそうな伝手を探っといてくれ。
 そう。あの鏑木の総帥とだ‥。あぁ、すまんが頼んだ。」

***
198名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 22:59:35.35 ID:qWrGnNES0
そして22時過ぎ。

「‥は?」
「お久しぶり。千早くん。」

順一から連絡をうけ、辿り着いた七々原家の門前で千早を待ち受けていたのは、
この状況でなぜかにっこり微笑む瑞穂の姿であった。
さきほど受けた順一からのTELではなんの説明もなく。
ただ「家の前までさっさとこい」と言われただけ。

「な、なんで瑞穂さんが‥?」
「そう聞かれるとそれはそれで困るんだけどね。
 とりあえず、順一さんに頼まれたってことで。」
「い、いや、さっぱりわからないんですが‥」
「まぁ、いいじゃない。些細なことは。」
「ぜ、全然些細じゃないと思うんですが‥。」

戸惑う千早に、瑞穂は鋭い視線を向け。

「千早くん。
 今日の千早くんの目的は順一さんでも僕でもなく、薫子ちゃんじゃないのかい?」
「えっ?」
「君は、今日、ここに。いったい何をしにきたの?」
「‥‥薫子さんに会いに。」
「会ってどうするの?」
「会って‥話をして‥‥取り戻す。
 そう‥、薫子さんをいつもの日常に取り戻すためにここにきたんです。」

そう断言する千早に瑞穂は笑顔を向け。

「それがわかっているなら問題ないかな。じゃあ、いくよ。」
「はいっ!!」
199名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:05:27.78 ID:qWrGnNES0
***

ピンポーン。

軽やかな響きとともに、インターホンから野太い声が応答を返す。

「はい、どなたさまで‥?」
「私、宮小路瑞穂と申しますが、龍造寺順一さんにお取り次ぎを。」
「あぁ、すいません。順一はただいま急用で不在でして。」
「そうですか‥。それでは、すいませんが順一さんに渡していただきたいものがあるのですが。」
「‥‥わかりました。少々お待ちを‥。」

待つことしばし。

ガラガラと玄関の引戸が開く音がし。
そのあと少しして、正門の脇、通用門の扉が開いた。

「すいません、お待たせし‥、うがっ!」

一閃、瑞穂が顔を出した男を打ち倒す。

「み、瑞穂さん‥?」
「すいませんが、すこし眠っていてくださいね‥と。
 千早くん。玄関を入って右手通路をまっすぐ。
 突き当たったら左に曲がって、正面の扉だそうだ。」
「え、えぇと‥‥?」
「今日の主役は君だから。いいねっ!」
「は、はいっ!」

駆けだした瑞穂の背を追って玄関に飛び込んだ千早の視界には、
不穏な気配を嗅ぎつけたのか、様子を見にきた男が一人二人。
200名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:08:44.51 ID:uTNKotJwO
支援
201名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:16:18.72 ID:qWrGnNES0
「なんだ、手前ら!」
「すこし‥お邪魔しますよっと!」
「なっ‥‥げふっ!」

着ていたジャケットをふわりと投げつけ。
視界を覆われた男が怯む隙に、首筋に上段蹴りを決める瑞穂。

「千早くん、いくよっ!」
「はいっ!」

血相を変えて襲ってくる男たちの攻撃を。
ひらりと躱して、一撃で急所を抉る瑞穂と。
腕を取り、引き倒して無力化する千早。

響き渡る男たちの悲鳴と、肉と肉のぶつかる音。
そして、新たに駆けつける男衆の怒声。

常に一対一を保ちつつ前進を続ける瑞穂と千早だったが、
まだまだ邸内には人が居るようで、駆け寄せる足音が遠くから響いてくる。

「これは‥なかなか手強いかな‥‥。
 しょうがない。千早くん! 先行して!」
「み、瑞穂さん!?」
「何度も言わせるなっ! 今日の目的は何っ!?」
「わ、わかりました!」

目の前の男を倒し、廊下を駆け出す千早を。

「その角を左、正面の扉!」
「わかりました!」

励ますように瑞穂の声が響き渡った。
202名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:24:17.46 ID:qWrGnNES0
***

「か、薫子さん‥‥!」
「ち、千早っ!!」

扉を開けた先には、泰然とソファに腰を下ろす壮年の男性と、
あっけに取られたように目を見張る薫子の姿。

「よかった、薫子さん‥。」
「ち、千早‥‥。」
「ほぅ。ここまで来ちまうとはな‥。ったく、うちの若ぇのもだらしねぇな‥」

苦笑いを浮かべつつ。

「挨拶が遅れたな。俺がこの家の主。七々原玄蔵だ。
 我が家になんのご用かな? お若いの。」
「僕は御門千早。彼女の友人です。」
「ふーむ。友人ね‥‥。で、その友人が、この遅くに。
 しかもこれだけ騒いでなんのご用かな?」

その視線はどこまでも鋭く、その問いかけはどこまでも重く。
だが、千早はそれに怯むことなく視線をあげ胸を張り。


「薫子さんに縁談の話が持ち上がっていると聞きました‥。
 それを考え直していただけないかと、そのお願いに。」
「え、縁談っって!? 親父!!」
「そういえば、おまえには伝えてなかったか?」
「聞いてないよ!」
「それじゃ、薫子さんはご存じなかったんですか?」
「って、もしかして、千早はお見合いを止めにこんなことを‥‥?」
203名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:31:05.12 ID:uTNKotJwO
しえん
204名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:35:05.00 ID:qWrGnNES0

傷を負った顔。ぼろぼろの姿。
そしてその鋭く気高い眼光に、薫子の感情はこみ上げてくるなにかで溢れかけ。

「くっくっく。これは残念だな。おまえにこんなボーイフレンドがいるなんてよ。
 それじゃこの見合いは取りやめにせざるをえないなぁ。あぁ、残念だ。
 せっかく、御門千早とかいう、あの鏑木に連なる名家の御曹司との良縁だったんだがな。」
「‥‥は?」「‥‥へ?」

***

そこから先は。
にやりとほくそ笑む玄蔵の種明かしと。
父親の頭上を飛び交う、若き男女の愛の告白。

やれやれと苦笑する玄蔵の耳に。
コンコンとノックの音が響いた。

「おう。なんだ。」
「失礼しまーす。」
「えっ! み、瑞穂さんっ!?」
「あぁ、お久しぶり、薫子ちゃん(にっこり)」

あっけに取られる薫子を差し置いて、
慌てて席を立ち、瑞穂に頭を下げる玄蔵。

「いやぁ、この度はお手数をおかけしまして申し訳ありません。
 私、薫子の父親である七々原玄蔵と申します。」
「あぁ、これはご丁寧に。鏑木瑞穂です。」
「本当に、ご無理をお願いしまして申し訳ありませんでした。
 なんとか、うちの馬鹿娘もようやく素直になったようで。」
205名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:41:57.60 ID:qWrGnNES0

「あぁ。それはよかったです。
 一肌脱いだ甲斐があったってところでしょうか。
 あ、そうそう。すいません。ちょっと多勢に無勢だったこともあり、
 手加減しきれなかったので。すこしばかり、皆さんに怪我を‥」
「いえいえいえ。滅相もございません。
 うちの連中なんぞ、適当に唾でもつけておけば勝手に治りますから。
 それよりも、瑞穂さんはお怪我とかは為されていませんか?」
「いえいえ、たいしたことはありませんから。」

さきほどの伝法な態度とは打って変わり、
急に大人の会話を始める玄蔵と瑞穂に、あっけに取られる薫子と千早。

「あの‥‥瑞穂さん?」
「あぁ、薫子ちゃん。恋愛成就おめでとうございます。」
「は、はぃっ?」
「千早くんも頑張ったようですね。」
「は、はぁ‥。」

にこにこと笑みを浮かべる瑞穂。

206名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:48:41.98 ID:qWrGnNES0

「それでは、本日の状況は私から父に伝えておきますが、
 すいませんが近いうちに一度‥」
「えぇ、もちろんです。
 こちらからご挨拶に伺わせていただきます。
 詳しい話についてはまた別途ご連絡させていただきますので。」

「そうですね。では、家族団欒のお邪魔をしてもアレなので、
 すいませんが私はこのへんで。」
「はい。本当に今夜はありがとうございました。
 今後もどうぞよろしくお願いします。」

じゃねーと笑みを見せながら手を振る瑞穂の姿に、
まだまだ状況を理解できていない千早と薫子。

「ほら、薫子。千早くんも! 瑞穂さんをお見送りするぞっ!」
「いえいえ、ここで結構ですから。」
「そうはいきません。
 ほら、手前ら! いつまで寝てるんだ!!
 客人の前でだらしない格好晒してるんじゃねぇ!」
「はははは‥」

苦笑する瑞穂と、怒鳴り散らす玄蔵。
よろよろと立ち上がる男衆たちも、状況をさっぱり理解できず。

***
207名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:50:25.80 ID:7w8lx8Ed0
支援
208名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:53:34.67 ID:uTNKotJwO
支援
209名無しさん@初回限定:2011/09/13(火) 23:57:55.00 ID:qWrGnNES0

「それでは、失礼します。」
「ありがとうございました。」

深く礼をする玄蔵にあわせ、一同深く頭を下げる。
立ち去ろうとした瑞穂が急に振り返り。

「あー、そうだ。薫子ちゃん。」
「は、はいっ!」
「とりあえず、近いうちに奏ちゃんや紫苑さんたちに、
 千早くんとの交際について、報告してもらいますから。
 心構えしておいてくださいね。(にっこり)」
「えぇっ!?」

「千早くん。」
「は、はいっ!」
「残り2ヶ月と少し。頑張ってね。(にっこり)」
「は‥、はい。」

軽やかな笑顔を後に残し、七々原家を後にする瑞穂は、
いつのまに待機していたのか、少し離れたところに停車していたリムジンに気付くと。
見送る一同に小さく手を振って、車中の人となる。

「いやぁ‥‥。さすが鏑木の御曹司というべきか。
 ありゃたいしたタマだなぁ‥‥。」

見送った玄蔵が感慨深げに呟くその横で。
千早と薫子は、さきほどからの急展開に途方に暮れていた‥。

----------------------------------------------------------------------
今日のところはここまでー。
210名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 00:04:34.01 ID:7w8lx8Ed0
お疲れ様でした〜
211名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 00:52:41.49 ID:igV4XcD80
なんかアムロとカミーユみたいな印象を受けた
212名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 05:48:57.79 ID:Uc1Mt0QP0
変な時間に目覚めたので、続きいくです。朝は規制されるんだよなぁ。
----------------------------------------------------------------------

「旦那さま。」
「どうした、楓。」
「NJF金融の社長を名乗る方から旦那様宛にお電話がはいっているのですが‥」
「NJF金融‥? 特に今まであそこと関係はなかったと思うが?」
「はい。しかも会社ではなく本宅への電話というのも‥。」
「確かにな。」
「いかがいたしましょう。断りましょうか?」
「ふむ‥。いや。なにか気にかかる。回してくれ。
 あとすまんが概略で構わんので、NJF金融の情報を早急にだな。」
「はい。」

珍しく早くに帰宅していた慶行にかかってきた1本の電話がすべてが始まった。

「もしもし。鏑木ですが。」
「は、初めまして。私、NJF金融の七々原と申します。
 おくつろぎのところ、誠に申し訳ありません。」
「ふむ‥。NJF金融さんとは今まで特にご縁がなかったかと思いますが、
 本日はどういったご用件でしょうか。」
「はい。実は‥‥。」

***
213名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 06:03:11.68 ID:Uc1Mt0QP0

とりあえず、総帥本人に取り次いでもらえた。
第一段階クリアということで、一息つきつつ。
玄蔵はその細い糸を切らぬよう、必死に言葉を紡ぎ出す。

「突然の話で誠に申し訳ありませんが。
 鏑木様のご親族に御門家がいらっしゃるかと思います。」
「それがなにか?」
「えぇと、そのご嫡男の千早様について少しお話が‥」
「‥‥七々原さん。それをどこで?」

そう玄蔵が伝えた途端。
電話の向こうから押し寄せる強いプレッシャー。

これが鏑木コーポレーション総帥か‥。
迂闊な言葉を漏らせば即、破滅につながる気がするのは気のせいではなかろう、と
背中を冷や汗に濡らしながら、玄蔵は事情を説明する。

「い、いえ。もちろん本件については一切口外するつもりはありません。」
「七々原さん。私としては、情報元をお聞かせ願いたいのですが?」
「あ、す、すいません。
 うちの娘が聖應に通っていまして、千早様と同級でして。」
「なるほどなるほど。‥それで?」

海千山千、清濁併せて飲み干した経験はそこそこなものと自負していたはずだが、
慶行の少ない言葉に、押しつぶされそうな重みを玄蔵は感じつつ。
214名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 06:16:31.05 ID:Uc1Mt0QP0

「そ、それでですね。
 うちの娘が千早様と恋仲になっているようなのですが、
 なかなか進展がないようで‥」
「恋仲?」
「は、はい。」

玄蔵は汗を拭きつつも、千早と薫子の関係と順一の見立て。
今宵の企みと、順一の事故による計画の狂いについて必死に説明し。

「クスっ」
「か、鏑木様?」
「あぁ、すいません。
 御門の千早くんがそのような状況になっているのがあまりに意外でして。」
「は、はぁ‥。」
「なるほどなるほど。経緯は理解できました。
 事情が事情なのも了解しましたが、それで私にどうしろと?
 そもそも、この電話のご用件はいったいなんでしょうか?」

多少、空気が和らいだのを感じつつ。
玄蔵は下腹に力を込め。覚悟を決めて最後の爆弾に火をつける。

「えぇと、誠に不躾なお願いで恐縮なのですが‥。
 ご嫡男の瑞穂様のお力をお借りできないかと。」
「‥‥なぜ、そこでうちの瑞穂が?」

再び、緊迫した空気があふれ出す。
215名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 07:05:28.27 ID:Uc1Mt0QP0

「うちの娘。薫子が瑞穂様、貴子様にはいろいろお世話になっているようで、
 失礼ながら、経緯につきましては多少確認させていただいておりまして。」
「‥‥。」
「‥‥。」
「‥‥。」

鏑木本家のスキャンダルともなれば、
電話口から押し寄せるプレッシャーは、先ほどと比べものにならないほど、強く重く。
息苦しい沈黙の中、玄蔵の手のひらは汗に濡れそぼり。

永遠とも感じられる沈黙の時を経て。

「詳しい話を聞かせていただきましょうか。」

慶行のその一言に、玄蔵は安堵の溜め息を漏らすのであった。

***

「はい。大筋はそのように。
 では、詳細についてはそちらに織倉というものを遣りますので‥。それでは。」

カチャリと電話を切って溜め息を一つ。
慶行は傍らに立つ楓を見上げ。

「だそうだ。すまんがよろしく頼む。
 って、なぜそんなに嬉しそうなんだ?」
「ふふっ。すいません。
 ですが、今のご時世に悪役に囚われたお姫様を騎士様が助けにいくなんて
 あまりにもできすぎなうえに、騎士役があの千早さんだなんて‥」
216名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 07:15:07.11 ID:Uc1Mt0QP0

瑞穂とは違った意味で線の細かった、幼い頃の千早の姿を思いだし
楓は答えながらもくすくすと笑いを浮かべる。

「ふっ。まったくだ。となると、瑞穂は白馬役ってところか?」
「ふふふ。それは瑞穂さんが可哀想ですわ。」

そんな軽口を交わしつつ。

「それでは七々原さん宅に行って参ります。
 あぁ、お屋敷から数人お借りしてもよろしいでしょうか。」
「それは構わないが、いったい何をするつもりだ?」
「ふふっ。せっかくのシーンを見逃すのはあまりにも惜しい、ということですわ」
「‥‥まぁ、やりたいようにやって構わん。よろしく頼む。
 あと行きがけに瑞穂と貴子さんを呼んでくれんか。」
「はい、わかりました。」

そして、数分後。

「お呼びでしょうか、父様」
「おぉ。瑞穂に貴子さん。すまんな。」
「いえ、構いませんが‥‥、何かありました?」

問いかける瑞穂に、児戯めいた笑みを浮かべつつ。

「急で済まんが、ちょいとおまえにアルバイトを頼みたくてな。」

***
217名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 07:26:17.65 ID:Sp+lmzMOO
しえん
218名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 07:33:07.25 ID:Uc1Mt0QP0

「ただいま戻りました。父様」
「瑞穂さん。お帰りなさい!」
「おぅ。瑞穂。どうだった?」

まもなく日も変わろうという頃合いに、ようやく瑞穂が戻ってきた。

「とりあえず、無事に七々原家とは姻戚関係になりそうです。」
「ほほぅ。それはご苦労。」
「瑞穂さん。お怪我とかは平気ですか?」
「大丈夫ですよ。貴子さん。
 まぁ多少打ち身とかありますので、あとで湿布を貼るのを手伝ってくださいね。」
「えぇ、まかせてください。」

なぜか嬉しそうな貴子。

そんな会話を続けているところに。

「旦那様。ただいま戻りました。」
「楓か、ご苦労。遅かったな。」
「一通りの後片付けを済ませてきましたので。
 あと七々原様との面会については、明後日の11時からで調整済みです。」
「ふむ。わかった。」

219名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 07:46:51.39 ID:Uc1Mt0QP0

「楓さん、いろいろ奔走していたとはお義父様より伺っていましたが、
 もしや現地にいらっしゃっていたのですか?」
「えぇ。可愛い息子になにかあった場合に、直ちに駆けつけられるようにしておかないと(にっこり)」
「いや。できれば、なにかあるような現場に送り込まないようにしてほしいのですが‥。」

「それで、成果は?」
「えぇ。お任せください。」

そういってどこからか記録媒体を取り出した楓は、
慣れた手つきで執務卓のPCを操作し始め。

 『いい‥、相手は千早がいいっ! あたし、千早のことが好きっ!!』
 『薫子さん‥‥、僕も、薫子さんのことが‥大好きですよ』
 『千早ぁっ、 好き、好きっ! 大好きぃっ! うぅっ‥‥。』

ディスプレイになんとも恥ずかしい場面が映し出された。

「ほほぅ。これはなかなか。」
「うわぁ‥‥///」「あらあら‥‥///」
「編集はこれからとして、クライマックスはこんなところでしょうかね。」

「でも、こんなのを撮影してどうするんですか‥。」
「そりゃ、披露宴で流すに決まってるだろう。」
「えぇっ!!!」

***
220名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 08:00:29.52 ID:Uc1Mt0QP0
「あと、瑞穂さん大活躍のシーンもありますよ〜。(カチカチっと)」

 『しょうがない。千早くん! 先行して!』
 『何度も言わせるなっ! 今日の目的は何っ!?』

「ちょっ!! 楓さん! なんでこんなの録画しているんですか!!」
「そりゃ、息子の活躍くらい記録に残したいだろう。」
「えぇ、母親役としては当然ですわ。」
「楓さん、さすがですっ!」

なぜか感動してる貴子。

「いや、というか、どうやって‥。」
「そりゃ七々原家にわざわざ設置させてもらったに決まってるだろ。
 って、なんだ。おまえ。一発もらったのか。‥情けない。」
「あぁ‥。さすがに後ろに目はついていませんから。」
「いやいや。そこはこう立ち回ってだな‥。」
「父様、ここで実演してくださらなくて結構ですから!」

執務室もそこまで広くはありません。

「あっ、楓さん。いまの瑞穂さんの横顔素敵でした! ちょっと巻き戻せます?」
「ふふっ。それなら別の角度からのもありますよ。」
「あぁ、これも素敵ですわ。」
「こちらもそのうち編集して、ライブラリに保存いたしますから。」
「ぜひ私にも編集をお手伝いさせてください!」
「えぇ、もちろんです。(にっこり)」
「うぅ‥‥、貴子さんがすっかり楓さんに染められてしまった‥。(涙)」

そんなこんなで鏑木家の夜は更けていくのでした。

-----------------------------------------------------------------------
221名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 09:19:00.65 ID:v0ZCrbgw0
披露宴の恥ずかしいネタw
やめて!ちーちゃんのライフはもうゼロよ!

222名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 12:17:16.42 ID:IeyCnz8B0
Nice!
223名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 13:20:42.76 ID:3CMfSJZA0
・・・これは。
披露宴編に期待できるっ!
224名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 15:40:40.68 ID:igV4XcD80
面白そうな話と聞いて紫苑様とまりやさんと香織理さんとケイリがアップを始めたようです
225名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 21:15:08.25 ID:Cth/5OPk0
いつの間に・・・

226名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 22:19:18.30 ID:Uc1Mt0QP0
朝は、時間ぎりぎり行数ぎりぎりで、きついのなんの。 続きー。
-----------------------------------------------------------------------

多少時刻を巻き戻し、七々原家門前では。

「ねぇ、千早‥。」
「なんです?薫子さん。」

「なんで瑞穂さんが、千早と一緒だったの?
 というか、千早と瑞穂さんって知り合いなの!?」
「あー。そうですねぇ。
 とりあえず1つ目については僕もよくわかりません。
 最初は順一さんと約束していたはずなんですが‥。」

そういって首をかしげる千早に。

「あぁ。まだ話してなかったか。
 順一は夕方に事故って、今は入院してる。」
「えっ!」「入院って大丈夫なの!?」
「まぁ、たいしたことはないから数日で退院できるはずだが。」

そんな答えに薫子はほっと胸をなで下ろす。

「しかし、なぜ瑞穂さんが?」
「そりゃ、ここまでお膳立てしておいて、
 順一が寝込んだから延期しますって訳にもいかんだろ。
 しかも、まったく見知らぬ相手だと信用もされんからな。
 しかたがないから、無理矢理頼みこんだんだよ。」
「じゃあ、親父から瑞穂さんに頼んだの!?」
「まぁ、そんなもんだ。かなり苦労したがな。」

苦笑する玄蔵。
227名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 22:33:46.58 ID:Uc1Mt0QP0

「じゃ、じゃあ。千早と瑞穂さんが知り合いってのは?」
「そうですねぇ。
 妃宮千早と宮小路瑞穂は今日が初対面です。」
「だよねぇ‥。」
「ちなみに、御門千早と鏑木瑞穂は古くからの知り合いですよ。」
「‥‥はぃ?」

違いがよくわからない薫子。

「ちょ、ちょっと待って。よくわからないから!
 というか、鏑木って‥なに? 親父もなんかそんなこといってたけど。」

「えーと。どう説明すればいいでしょうか。
 僕が妃宮千早であるように、瑞穂さんは宮小路瑞穂であって。」
「それって‥、二人ともなんでもできるエルダーってこと?」
「ちがいますって。(苦笑)
 妃宮千早が御門千早であるように、宮小路瑞穂は鏑木瑞穂ってことです。」
「‥‥えぇと?」

「はぁ。まだ伝わりませんか。
 3年前の瑞穂さんは、僕と同じ境遇だったってことですよ。」
「‥‥。
  え?
   えぇぇ!?」

***
228名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 22:36:14.20 ID:IeyCnz8B0
sien
229名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 22:40:51.87 ID:Uc1Mt0QP0

綺麗に凍りついた薫子を差し置いて会話は続く。

「鏑木瑞穂。
 鏑木コーポレーション総帥、鏑木慶行の嫡男。
 まぁ、順調にいけばそのまま後を継ぐんだろうな。
 線が細いという噂を聞いていたが、いやいやどうして。
 さすがというか、なんというか。」

「そうですねぇ。
 瑞穂さんの優秀さは幼い頃から比較されてきたので承知してる積もりですが。
 個人的にはもうすこし弱々しく覇気がない印象だったんですけど、
 なんか最近は包容力があり行動的だという人物評を耳にしてますし」

「まぁ、男子なんてものは、環境があえばどんどん育つってことだ。」
「えーと‥‥、それ、瑞穂さん本人にいうと凹むと思いますよ。」
「なんでだ?」
「いや、そこはかとなく僕自身にもダメージが来てますから‥‥。」
「く、くくくっ。そうか。『環境』か。そりゃそうか。」
「orz」

夜闇に響く玄蔵の高らかな笑い声。

230新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/14(水) 22:41:57.16 ID:iaZ+cFWi0
支援
PC、復旧させました。
231名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 22:49:07.76 ID:Uc1Mt0QP0

「なに凹んでるんだ。自分が成長したって自覚があるならいいじゃねぇか。
 それに、うちの馬鹿娘と付き合えたのも、その『環境』のせいだろ。」
「あぁ、そうですね。その通りです。」

「それならもっと胸張ってしゃんとしやがれ。
 しかし、こういう場合、どうするんだろうな。」
「‥‥なんの話ですか?」
「いや。あれだ。結婚式とかで馴れ初めとかあるだろ。
 おまえと薫子はどう説明するのかと‥‥。」
「あぁ、そうですねぇ。」
「まぁ、それこそ。鏑木の前例に期待すればいいか。」
「そういえば瑞穂さんはまだ婚約止まりでしたっけ。」

鏑木本家で繰り広げられている悪巧みを彼はまだ知らない。

***
232名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 22:55:17.74 ID:Uc1Mt0QP0

「まぁ、あれだ。
 こんな馬鹿娘ではあるが、それなりには育ててきたつもりだ。
 この一年、いろいろ世話になってきたようだが、これからも‥‥よろしく頼む。」
「七々原さん‥。」

そういって頭を下げた玄蔵に一瞬固まった千早であったが。

「こちらこそ。
 まだまだいたらぬ身ではありますが。
 薫子さんのことは大事にいたします。
 これからもどうぞよろしくお願いします。」

深く深く頭を下げる。

233名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 22:55:38.04 ID:IeyCnz8B0
sien
234名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 23:06:39.07 ID:Uc1Mt0QP0

そんな姿に玄蔵は笑みを浮かべつつ。

「しかし。多少はおとなしくなるかと期待半分諦め半分で送り込んだお嬢様学校だが、
 まさかこんな極上な相手を捕まえてくるとはな。馬鹿娘にしてはなかなかやるもんだ。
 こりゃ、小遣いでも奮発してやらんとなぁ。(くっくっく)」
「は、はい?」

「ほら。いつまで固まってるんだ、この馬鹿娘は!」
「え、えぇ!?」
「ほらほら。せっかくの迎えが来てるんだ。
 さっさと寮に帰れ、帰れ! ほれ、タクシー代だ!」
「うわっ!」

そういって分厚い財布を薫子に放り投げ。

「千早、落ち着いたら薫子抜きで一回顔見せにこい。
 順一も交えて、ちょいと酒でも飲もうや。」
「は、はい!」
「おぅ。じゃあな!」

そういって片手を振りつつ家に戻っていく玄蔵の後ろ姿に。
千早はもう一度、深く頭を下げたのだった。

---------------------------------------------------------------------
ちょっぴり小綺麗にまとめてみたりして。
とりあえずはこんなところです。親父たちも書いててそれなりに楽しかった。
235名無しさん@初回限定:2011/09/14(水) 23:26:58.48 ID:IeyCnz8B0
お疲れ様でした。

>>196
で合計3場面みたいな予告で、2場面目が終わった時点で3場面目は、その後の七原家というのは多くの人が予想できたでしょうが、みんながより見たかったのは修羅場in披露宴だったであろう事が唯一の残念な所です。
もし書けるのなら、修羅場in披露宴が読んでみたいです。
236名無しさん@初回限定:2011/09/15(木) 18:48:45.33 ID:j072RBvw0
>修羅場in披露宴が読んでみたい

大丈夫
たぶん、今度の三連休にUPしてくれるよ
237名無しさん@初回限定:2011/09/16(金) 09:25:57.73 ID:2bwAuQJ60
乙っしたー

なれそめはナンパされて困ってた新婦を新郎が助けたってことでいいんじゃないかな
238名無しさん@初回限定:2011/09/16(金) 12:31:16.83 ID:2enBUziT0
えっ?ナンパ(男)されて困ってた新郎を新婦が助けた?
239名無しさん@初回限定:2011/09/16(金) 13:32:04.16 ID:GfJCX6yI0
間違いじゃない所が何ともw
240名無しさん@初回限定:2011/09/16(金) 16:08:01.41 ID:5tyeNkez0
馴れ初めからいじられネタだよこの夫婦・・・
241名無しさん@初回限定:2011/09/20(火) 21:47:41.80 ID:815LYzNu0
       ☆ チン 

 ☆ チン  〃 ∧_∧
  ヽ ___\(\・∀・) 披露宴編まだ〜〜??
      \_/⊂ ⊂_)
242名無しさん@初回限定:2011/09/21(水) 17:12:44.05 ID:P4HCTI1e0
続編を望む声は最大級の評価だよね。

それに比べ、醜い言い訳をして結局放置。それに誰も触れないってのは憐れだな。
243名無しさん@初回限定:2011/09/21(水) 18:38:25.76 ID:DW7evdKU0
人の災難をあげつらうなど、それが淑女の言動ですかっ
恥を…恥を知りなさいっ!
244新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/21(水) 20:41:06.57 ID:tqem6g5/0
>>242
続編の投稿が完結しだいうpしようと考えておりますが、
それを待たずうpしても良いのでしょうか?

酷い言い訳と言うのなら、バラしたノートPCの写真をうpしましょうか?
245 忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/09/21(水) 21:02:36.99 ID:tqem6g5/0
確認
246名無しさん@初回限定:2011/09/21(水) 22:20:38.07 ID:sRfRG5ug0
>>244
その場しのぎの覚悟じゃ先が知れてる
真剣勝負でかかって来いよ
247名無しさん@初回限定:2011/09/21(水) 22:46:39.39 ID:P4HCTI1e0
>>244

あんたが、何処に投稿してるか知らんが、なに戯けた事言ってんだこの馬鹿。
…と最初は思ったが、もしかして234氏の続編の投稿とかキチガイな事思ってるんじゃないだろうな?
もしそうならアンタ国語力皆無の真性の馬鹿だよ。
何処をどう読んだら234氏が続編を書く事を決めた事になってるのか是非教えて欲しい。
248新参者 ◆YxHxmvro0I :2011/09/21(水) 23:13:36.29 ID:tqem6g5/0
>>246
その場しのぎでは分解などと云う行動に出ず、即メーカー修理に出してる
SS投稿も同じ、全力で行きます。

>>247
すいません、ケータイでログを見ていた為、
披露宴編があるものと勘違いしてました。
249名無しさん@初回限定:2011/09/21(水) 23:20:12.31 ID:P4HCTI1e0
>すいません、ケータイでログを見ていた為、
>披露宴編があるものと勘違いしてました。

こーいうのが、酷い言い訳
250 忍法帖【Lv=17,xxxPT】 :2011/09/21(水) 23:34:21.21 ID:N7Ocx8ko0
>>249
貴方、しつこいですよ
251名無しさん@初回限定:2011/09/22(木) 00:05:30.13 ID:Gm47oFGr0
たかが数レスの短い文章。それをケータイの責任にして、言い訳。
252名無しさん@初回限定:2011/09/22(木) 01:23:51.40 ID:/FjGldur0
いつでもいい
それぐらいの寛大さは淑女のたしなみですよね
253名無しさん@初回限定:2011/09/22(木) 04:51:39.88 ID:ep0t1pzc0
ID:P4HCTI1e0とID:Gm47oFGr0
は荒らし相手をするな
254名無しさん@初回限定:2011/09/22(木) 22:37:24.27 ID:l5MWIqcN0
そうそう

男は仕事で勝負ですよ、お姉様
255名無しさん@初回限定:2011/09/25(日) 15:34:19.98 ID:evkU9RdX0
       _ 
      '´, `´`ヽ
     i !リ_ji」リi|
     |i(| ゚ ヮ゚ノl|  
 _, ‐'´  \  / `ー、_
/ ' ̄`Y´ ̄`Y´ ̄`レ⌒ヽ
{ 、  ノ、    |  _,,ム,_ ノl
'い ヾ`ー〜'´ ̄__っ八 ノ
\ヽ、   ー / ー  〉
  \`ヽ-‐'´ ̄`冖ー-/
256名無しさん@初回限定:2011/09/25(日) 16:21:05.33 ID:lPIO5l2V0
>>255
本スレでも言ったけど、そういう方向に走るんじゃねぇ
257名無しさん@初回限定:2011/09/26(月) 19:00:47.09 ID:NnwXJA1R0
      r―v‐ァ、
     〃\人/ヽ
    l{ il。从Vi}" /~つ
    从(l| 々゚ノl|| l l
    ノ,'と)条iつ / /
 (~ヽ_ノ l-、ヽ ヽ"二ヽ
  丶_ノノ ノヽヽ、丶 丶ヽ
     / /'  ) )`J  し'
     し'  (_/
258名無しさん@初回限定:2011/09/26(月) 19:16:11.02 ID:PnRTgyrH0
明後日は雅楽乃の誕生日らしいですぜー。
なに一つネタが浮かばないんだぜー。

困った。
259名無しさん@初回限定:2011/09/27(火) 13:07:55.03 ID:ZZXvKZst0
俺なんか明日は朝から病院で検査だぜ
260 忍法帖【Lv=38,xxxPT】 :2011/10/05(水) 00:01:39.06 ID:JNBWRxdl0
一応保守しておくか
261 忍法帖【Lv=18,xxxPT】 :2011/10/07(金) 00:17:37.56 ID:H/84Xe6R0
262 忍法帖【Lv=16,xxxPT】 :2011/10/07(金) 07:15:37.92 ID:lLjLjgJI0
ホシュ
263 忍法帖【Lv=9,xxxP】 :2011/10/07(金) 10:41:17.99 ID:3HQmOiFF0
ほしゅーほしゅー
264名無しさん@初回限定:2011/10/07(金) 18:20:40.53 ID:1WM39gkD0
瑞穂「オレのココロがわかったならば、この手握って笑ってみせろ」

千早「アニキ!」

瑞穂「バカヤロウ!」
265 忍法帖【Lv=17,xxxPT】 :2011/10/08(土) 21:03:16.91 ID:TuNBqneI0
hoshu
266名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 08:13:25.23 ID:1nPRBZwZ0
ちょっとした小ネタでも、軽く一本いってみましょうか。
朝は規制くらうから、間があいたらまぁそういうことで‥。 春の一幕です。8本くらい?
-----------------------------------------------------------------------

『勧誘』

季節は春。賑わいをみせる桜並木。
他の部活に負けぬよう、必死に道行く生徒に声をかけながらも。
淡雪は内心愚痴をこぼす。

(まぁ、元々先輩たちの人数は少なかったし、
 実力&カリスマ的にうたちゃんがいるとなると、上級生として居づらいのはわかるけど。
 本当に3年生のお姉さま方が一人もいなくなっちゃうなんて‥‥。)

残された2年生も、雅楽乃に憧れ信奉する面々が大半を占める現状、
実力や経験はさておき、もう少しやる気のある新入生を確保したい。
というか、さすがに新入生をある程度の人数は確保しないと部活動としていろいろまずい。

(なのに、なんでこの場にうたちゃんはいないのかー。はぁ‥。)

相変わらずのマイペースっぷりに頭を抱えたくも、
まぁ、雅楽乃を支えること自体、やぶさかではないのも一つの事実。
ここで頑張らねばいつ頑張るのか!と自分自身に発破をかけて、
気分一新、新たな勧誘の声をあげ‥‥、あら?

気付いた淡雪の視線の先には。
雅楽乃の作品をじっと見つめる千早と、所在なげな薫子&優雨の姿があった。

***
267名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 08:24:44.62 ID:7ERFgl8i0
機体
268名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 09:19:24.22 ID:utLWLbMy0
wktk
269名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 10:04:11.53 ID:1nPRBZwZ0

ちっちゃい娘は新入生かしら?

後ろの方は確かお姉さまよね‥。
えーと‥騎士の君でよかったかな。
茉莉ちゃんがファンだとかいって騒いでたようなー。

で、うたちゃんのお華に興味を持っているのは‥、どう見ても外国の人よね?
ケイリ以外の留学生って聞いたことないから‥新入生かな?
背も高いし、やっぱり外人さんってスタイルいいのねぇ。
ふむふむ、うたちゃんの作品に見入っている?
‥‥なるほどなるほど。生け花に興味津々というわけ。

ふふーん。
これは良い機会ってやつよね。OK、OK。れっつ国際交流!
じゃぱにーずあーとおぶふらわーあれんじめんとについて
是非とも、一緒にこれから学んでいこうじゃないですかー。

って、銀髪ってどこの国の人だろ‥。英語でいいのかな。
正直あんまり英会話には自信ないんだけど‥。

すーはーすーはー。深呼吸を2回。
とりあえず、にっこり笑顔を忘れずに、と。

「Excuse me.
 Are you interested in flower arrangement?」

***
270名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 10:10:47.45 ID:1nPRBZwZ0

(ふーむ)

艶やかな色彩あふれる花たち。
基本の型からは少し離れつつも全体で絶妙なバランスを保っている。
そのうえで、枠に囚われたくない、そんな想いを訴えかけてくるような、
そんな作品に少し魅入っていた千早は、突然かけられた声に振り向き。

え‥、外国の方ですか?

まさに金髪碧眼。
なんとも可愛らしい笑顔を振りまきながら、
視線はまっすぐに千早のことを見つめていて。

あぁ、なるほど。
留学生が日本文化に興味をもって華道部に所属しているわけですか。
これも一つの国際交流の形ということかな。
それならば‥。

「Ah.. I have a little experience in IKEBANA.
 This artwork is excellent. Is this your work ?」

にっこり笑顔で返す千早であった。

***
271名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 10:17:29.53 ID:1nPRBZwZ0

<例のごとく、作者の都合により副音声でお送りいたします>

(おぉ、経験者!!これは是非とも入部してもらわないと!)
『あら。ご経験がおありなのですか。素晴らしいです。
 どのくらいご経験があるのでしょうか?
 やはり日本文化に興味を持たれて?』

(えぇと‥。どうするかな。
 留学生の方に「親にやらされていた」とか生々しい答えはよろしくないだろうし‥)
『うーん。そうですねぇ。
 私の母親が生け花に興味を持っていて、
 それで一緒に‥‥という感じでしょうか。』

(ほほー。ということは、初心者に少し毛が生えたくらいかな?
 でもでも、熱心に見つめていたから、興味なくはなさそうよねー。)
『なるほどなるほどー。もし多少なりともご興味があるのでしたら、
 是非私たちと一緒に活動してみませんか?』

(この期待に満ちた瞳は、異国の地で同好の士を見つけたって感じかな。
 うーん。そうなると、むげに断るのも可哀想な気も‥。)
『えぇと‥‥、そうですねぇ‥。』

(うわ。引かれてる? ちょっと焦りすぎたかも!?)
『あぁ、すいません。
 そういえば、いただいたご質問にお答えしていませんでしたね。
 この作品は私ではなく、部長の作品になります。いかがでしたか?』

272名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 10:25:55.60 ID:1nPRBZwZ0

(ふぅ。あえて話題を変えてくれた‥のかな。)
『そうですね。とても素晴らしいと思います。
 特にカトレアを後ろで引き立てる、変葉木の葉色がとてもよく出ていて素敵です。』

(えぇと‥‥クロトンってなにさ?
 カトレアのビハインド‥‥、変葉木かな‥?
 お花用語の英語名なんてさすがに知らないってー。><)
『そうですよね。私から見ても本当に素敵だと思います。(にっこり)』

(ふふっ、とてもいい笑顔。よっぽど華道が好きなのかな。
 でも、そうなると‥)
『そういえば、あなたの作品はないのですか?』

(おぉ? ちょっと乗り気かも?? ということなら‥)
『あぁ、すいません。
 今回は、自分で納得のいくものが用意できなかったもので‥‥。』

(うわ、落ち込ませちゃった?)
『あら、それは残念ですね。
 あなたの作品も是非見てみたかったのに。』

(ふっふっふっ、そうこなくっちゃ‥。)
『それでしたら、次の部活動に是非ご参加くださいな。(にっこり)
 拙くてお見苦しいと思いますが、私の作品もお見せできるとおもいますから。
 とりあえずは体験入部という形でも構いませんし。』

273名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 10:32:05.08 ID:1nPRBZwZ0

(うわっ、悪手だったか!)
『そ、そうですね‥‥。えぇ、機会があれば‥‥。』

(くっくっく。逃がしはしませんよ〜)
『そうですね。活動は週に2回ほど放課後に修身室で行っています。
 お迎えに伺いますので、よろしければクラスを教えていただけますか?(にっこり)』

***

「うわー。千早さん、英語で会話してるよ‥‥。」
「ちはや、すごい‥」

突然始まった千早と淡雪の英会話に呆然とする薫子と優雨。
当然、口を挟むなぞ思いつきもせず、数歩離れて傍観するのみ。


そんな二人に声をかけてくるのは。

「やぁ、薫子。こんなところでなにを?」
「あ、ケイリ。まだ帰ってなかったんだ。」
「一応これでも水泳部だからね。勧誘の手伝いを‥って、おや? 千早に、ユキ?」
「あー。さっきからなんか英語で話し始めちゃって‥って、ケイリ、あの娘知ってるの?」
「うん。ユキとは今年、同じクラスになったからね。‥‥ふふっ。」
「ちょっと‥‥ケイリ!?」

楽しげな笑みを浮かべ、ケイリは千早と淡雪に歩み寄り。

『どうしたの?二人とも』
『あら。ケイリさん。さきほどはどうも。』
「ケイリ!?」
274名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 10:40:04.95 ID:1nPRBZwZ0

『もう。千早。敬称は不要だっていわなかったっけ?』
『あぁ、そうでした。すいません。
 ところでお二人はお知り合いなのですか?』
『うん。今年はユキとは同じクラスになったからね。』

(へー。ケイリもこの人とすでに話したことあるんだ。
 まぁ、どっちも目を引きやすいし、やっぱりそういうものかしらねー。)
(なるほど。留学生同士、やはり交流が深いものなんだろうな。)

『それで? あぁ、なるほど。華道部の勧誘ですか。
 いいんじゃないですか? 千早』

クラスメイトの援護射撃に力づけられ。

『そうそう、そうですよ。日本文化の理解に是非ご一緒に!』
『そういわれましても‥。
 あぁ、それならば、私よりもケイリのほうがよろしいのでは?』
『私? うーん。まったく興味がないというわけでもないけど、今のところは優先度は低いかな。
 あぁ、千早が参加するというのなら面白そうですね。少し考えてみてもいいですよ。』

今日あったばかりだというのに、嗅覚だけはどこまでも鋭く。

『あら。ケイリったら。
 前に声かけたときはけんもほろろだったのに‥。
 でも、そうですね。ケイリも一緒するといっていますし、いかがですか?(にっこり)』
『えぇと‥‥。(たじたじ)』

『とりあえず、次の活動は明後日の放課後です。ご都合がよろしければ是非。
 時間になったらお迎えに伺いますので、クラスとお名前を教えていただけますか?』
『薫子と同じクラスでしたっけ? それなら3-Cでよかったよね。』
『ちょっと! ケイリ!?』
275名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 10:43:11.20 ID:HjMDlK0i0
wktk
276名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 10:49:20.75 ID:1nPRBZwZ0

横からさらりと個人情報を漏らされて、慌てる千早。

「3年C組っと‥‥って、えっ!? 3年生なんですか?」
「えぇ、今年転入してきたのですが。って、日本語!?」
「そういえば、なんで二人はわざわざ英語で会話してたんだい?」

「え? いや、だって、外国の方っぽかったし‥、え? え?」
「えぇと、英語で話しかけられたものですから‥‥」

戸惑う二人の視線が、静かに交差して。

「「もしかして‥‥日本の方ですか?」」

***

「あぁ、もう。雪ちゃん!
 そこでもう一押ししてくだされば、お姉さまに入部していただけましたのに!」
「いやいやいや、そういわれても‥。
 あまりの展開にそれどころじゃなかったというか‥。
 というか、うたちゃんが勧誘のときにちゃんといてくれさえすれば‥。」
「それとこれとは話が違います!!
 大金星をみすみす逃した雪ちゃんには、罰として水ようかんはあげませんっ!」
「えぇぇ! う、うたちゃん! そんなぁ!」

雑談からでた春の思い出話で、なぜこんな目に遭っているのか。
淡雪の嘆きが響き渡る初夏の修身室であった。

-----------------------------------------------------------------------
心構えさえする余裕があれば、淡雪もこのくらいきっと喋れるかなーと思ってみたり。
277名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 11:12:47.45 ID:SGwUgEJL0
乙です

本編第1話の一幕が脳裏に思い起こされました

そしてうたちゃんは雪ちゃんにエサをあげてくださいw
278名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 22:17:33.01 ID:KK4Apz6m0
クッソワロタw
あの二人微妙に天然だから一度掛け違うと誰かが止めなきゃ延々と英語で話してもおかしくないなw

そしてうたちゃんは雪ちゃんに水ようかんあげてw
279名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 22:54:58.92 ID:WEPWsr3C0
雪ちゃんが餌付けされとるw

本スレの雪ちゃんAAばかり見てると元々のこういう関係が
脳内でがらがら崩壊するからなあ。
スレ停滞するよりマシだろうけど…うーん。
280名無しさん@初回限定:2011/10/10(月) 23:20:14.73 ID:x135oeBs0
>>279
ストッパー雪ちゃんと、肉うたちゃんか・・・前者はともかく、後者はいただけないよな・・・。
281名無しさん@初回限定:2011/10/11(火) 15:13:30.13 ID:1LQyTaJy0
>>280
8頭身→連行、ぐらいなら本編のクリスマスでも「うたちゃんが暴走しないか見張らないと」みたいなこと言ってたしうたちゃんも割と暴走してるしで判らんでもないけど、
マッチョの首をうたちゃんにすげ替えたのはどうみても悪ノリしすぎだよな

と言うか、今の、では無く最悪期のはぴねすスレを知ってると、カオス化を進めようとする奴ってのがそのキャラか作品そのもののアンチにしか思えなくなってくる
282名無しさん@初回限定:2011/10/11(火) 20:02:29.56 ID:RRY0G/fA0
見てないからわからんけど、
ここにその話題を持ち込むのもどうかと。

まー、そのかわりになんか書けってのも難しいんだがねー。
283名無しさん@初回限定:2011/10/12(水) 09:11:12.06 ID:20zMh64t0
>>281
俺もかつてのパトベスレでそれ思った
今やまともなレスがないどころか過疎りまくってるんだぜ
たまにやるくらいならまだしも恒常化すると元の世界観そのものが崩れる
284名無しさん@初回限定:2011/10/12(水) 15:27:19.67 ID:q8yR1Fxg0
スレ違いの話題はそこまでだ!
285名無しさん@初回限定:2011/10/12(水) 23:29:49.33 ID:Tlwvn+h10
久しぶりにおとボク2やってみたら、面白かった
気が向いたらSS頑張ってみようと思う
286名無しさん@初回限定:2011/10/13(木) 07:34:35.03 ID:qbiPxtT10
285先生の新作に期待
287名無しさん@初回限定:2011/10/13(木) 20:28:59.39 ID:2B9eHKCq0
もう、スレ住人みんなでやり直しちゃうしか。
288名無しさん@初回限定:2011/10/13(木) 23:06:54.42 ID:eh647TSt0
我々はエルダーにこだわりすぎて大切な物を見失っている
289名無しさん@初回限定:2011/10/18(火) 06:37:37.55 ID:+ah72csh0
最近、なんか書こうとすると眠くなる。
睡眠導入に持ってこいだ‥。
290名無しさん@初回限定:2011/10/18(火) 13:31:14.55 ID:cZoLoL1V0
1. 初恋ばれんたいん スペシャル
2. エーベルージュ
3. センチメンタルグラフティ2
4. ONE 〜輝く季節へ〜 茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司のSS
茜 小説版、ドラマCDに登場する茜と詩子の幼馴染 城島司を主人公にして、
中学生時代の里村茜、柚木詩子、南条先生を攻略する OR 城島司ルート、城島司 帰還END(茜以外の
他のヒロインEND後なら大丈夫なのに。)
5. Canvas 百合奈・瑠璃子先輩のSS
6. ファーランド サーガ1、ファーランド サーガ2
ファーランド シリーズ 歴代最高名作 RPG
7. MinDeaD BlooD 〜支配者の為の狂死曲〜
8. Phantom of Inferno
END.11 終わりなき悪夢(帰国end)後 玲二×美緒
9. 銀色-完全版-、朱
『銀色』『朱』に連なる 現代を 背景で 輪廻転生した久世がが通ってる学園に
ラッテが転校生,石切が先生である 石切×久世

SS予定は無いのでしょうか?
291名無しさん@初回限定:2011/10/18(火) 19:55:29.92 ID:+ah72csh0
「初音会長、こんな投書が目安箱にきてたんだが‥。」
「ありがとう、也哉ちゃん。 どれどれ、 って、・・・え?」
「初音? どうしたの?」

渡された紙を見て、微妙な反応をした初音の表情に気づき、
会長席に歩み寄る沙世子。

「ねぇ、沙世ちゃん。これどうしよ・・?」
「‥‥ なによこれ?」
「小説とかドラマCDとか書いてあるから、なんかそういうのだとは思うんだけど。」
「そもそも、SSってなんの略かしら? 也哉子、わかる?」
「えっt」
「はいは〜い。文脈から、きっとたぶん、ショートストーリーだとおもいまーす。」
「って、つっちー、私の回答取るな!(せっかく、沙世子お姉様に質問されたのに・・)」
「おぉ。さくらちゃん、博識〜」

そんなたわいもない会話が交わされたところで、問題解決には近づかない。

「これって小説とかのタイトルなのかなぁ?」
「正直どれも知らないのよね‥。 二人とも、なにか知ってるのある?」
「うーん。正直、わかりませんなぁ。」「私も知らないのばかりだ。」

「というか、こんなの生徒会に求められても困るって! そんな予定ないわよ!!」
「まぁまぁ、沙世ちゃん。なにか深い意図とかあるのかもしれないし‥」
「とりあえず、詳しそうな人にでも聞いてみましょうか?」
「さくらちゃん、当てはあるの?」
「ん〜。文芸部の宮藤さんに聞いてみようかなぁと。」
「陽向ちゃん? それなら帰ったら聞いてみるけど?」
「あ〜、宮藤さんも寮生でしたっけ? じゃあ会長にお願いしちゃっていいですか?」
「うん。もちろん。(にっこり)」

こうして、すべての謎は陽向に丸投げされるのであった。   〜Fin〜
292名無しさん@初回限定:2011/10/18(火) 21:31:37.65 ID:lIy6dKX20
SSってショートストーリーの略だったのか…
ShouSetsuの略だと思ってたわw
293名無しさん@初回限定:2011/10/18(火) 22:51:55.80 ID:D4uXf7lE0
>>292
スクリーンショットの場合もあるのですよー
294名無しさん@初回限定:2011/10/18(火) 22:55:03.86 ID:lIy6dKX20
>>293
それは知ってる
他にも阻止とか色々有るな
295名無しさん@初回限定:2011/10/18(火) 23:52:35.04 ID:2DOJJ7Id0
Samurai Spiritsとか
296名無しさん@初回限定:2011/10/19(水) 00:55:16.67 ID:uztOnKGG0
セガサタ……サイド・セカンドストーリーと呼ばれて二次創作を意味する場合もあるとかないとか
297名無しさん@初回限定:2011/10/19(水) 02:55:59.04 ID:EkoaoesA0
【2次】ギャルゲーSS総合スレへようこそ【創作】
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/gal/1298707927/101-200
298名無しさん@初回限定:2011/10/21(金) 03:10:53.30 ID:E+mIJhAB0
ショートショート(short short story)の略じゃないのか・・・
299名無しさん@初回限定:2011/10/21(金) 17:05:05.29 ID:U+Kwgoce0
何でこんなに話が広がったのか分からないけど、全部正解よね

SS/ ショートストーリー/ 同人用語の基礎知識
http://www.paradisearmy.com/doujin/pasok_ss.htm
300名無しさん@初回限定:2011/10/21(金) 17:23:40.33 ID:tgb14jFU0
D...Deadly!
C...Carnage!
B...Brutal!
A...Atomic!
S...Smokin'!
SS ...Smokin'Style!!
SSS ...Smokin'SickStyle!!!
301名無しさん@初回限定:2011/10/31(月) 22:56:06.30 ID:DBDfLvQe0
うーん。
ひさしぶりにネタ帳ひっくり返してみたけど、何を書きたかったのか
さっぱりわからんメモ書きがちらほら。

せめて主人公くらい書いておけ、と‥。
302名無しさん@初回限定:2011/10/31(月) 23:37:03.37 ID:KWdTnuax0
薫子「千早ー!お菓子をくれなきゃいたずらするぞー!」→千早「私は薫子さんに陵辱の限りを尽くされてしまうのですね・・・よよよ・・・」
→薫子「うぇぇ!?な、何もそこまで言ってな・…・」→千早「冗談です。先にいたずらさせて頂きました」→薫子「それじゃアタシがお菓子を用意してないみたいじゃない!?」
→千早「してたんですか?」→薫子→「してません・・・」


という電波は受け取ったがSS形式には纏まらなかった

ちなみにオチが
うたちゃん「お菓子はありませんのでいたずらして下さい千早お姉さま!!」
だった
303名無しさん@初回限定:2011/11/02(水) 07:19:15.25 ID:hq9Jc9TX0
「というわけで、薫子さんに脅迫されてしまったので
 今日、いろいろ用意することになったのです。
 せっかくですから、雅楽乃たちもお誘いしようかと。」

「喜んで参加させていただきます!」
「私もいいんですか?」
「えぇ、かまいませんよ?」
「やった! 2年生の間で評判高い、お姉様の手作りスイーツ!」
「ふふっ。」

「Trick or Treatですか‥。
 じゃあ、お菓子を我慢すればいたずらし放題と考えていいのかな?」
「えーと‥勘弁してください。ケイリ。」
「ふふっ。冗談ですよ。千早のスイーツを我慢できるほど私も忍耐強くはありませんから」

とか、2年生トリオでもいいかなと思った。
304名無しさん@初回限定:2011/11/02(水) 18:44:13.95 ID:aosp45C+0
トリオ・・・2年生の誰が足りないんだ
305名無しさん@初回限定:2011/11/02(水) 20:17:11.49 ID:3KSYaAmq0
うたちゃん、雪ちゃん、プロ
ちゃんと3人いるじゃないですか
306名無しさん@初回限定:2011/11/03(木) 01:21:08.70 ID:zrm7V82h0
史ちゃんのことも、時々でいいから 思い出してあげてください
307 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 :2011/11/08(火) 22:57:53.87 ID:WK1gcCrX0
たまには投下無いかな…
308名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 21:20:35.47 ID:uyYZ+UGP0
たまには投下しちゃおうかな‥。
エトワール1話目直後くらいの一幕です。6本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『事端』

放課後。
先週までとは違う、朝からの桃色めいたクラスの空気に、
そこはかとなく消耗した薫子がぐったりと机に伏せていると。

「あ、あのっ‥。薫子さんっ!」
「へ? あっ。な、なんでしょう? 京花さん。」

頬を染めながら、やる気十分の京花が話しかけてきた。

「も、もしよろしければ、先日のお礼をさせていただきたいのですがっ。」
「えぇと‥。うーん。
 たいしたことしたわけでもないし、別に気にしなくても良いと思うけど。」
「それでは私の気が済みませんから。」

あまり大層なことをされると、こっちが心苦しい、
できれば静かにそっとしておいてほしいのだけれど、
などと思う薫子だったが。

(そういえば、借りを返させないのも相手に悪いとか、昔、親父がいってたような‥)


それはそれで納得できる、と思い直し。

「そうね。恩とかは礼とかは、私としてはどうでもいいんだけど。
 わざわざ声をかけてくれた京花さんの気持ちに応えないのも失礼よね。」

そういってにっこり笑うと、周囲から上がる黄色い歓声。
309名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 21:25:31.91 ID:kQMiQTzb0
支援
310名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 21:40:23.60 ID:uyYZ+UGP0

「え?」
「ふふっ。私だけではなくクラスの皆さんも、
 この機会に薫子さんと親しくなりたがっている、ということですわ。」
「‥本気ですか‥‥。」
「えぇ。(にっこり)」

なんてこったい‥。と一瞬宙を仰いでみたりもしたが
まぁクラスのみんなと仲良くする、ということであれば拒む余地もない。

「はぁ‥。わかったわ。で、お礼って?」
「ご都合がよろしければ、これから駅前で甘味でもご馳走させていただけません?」
「おっ。ケーキとか?」
「えぇ。」
「行く〜♪」
「よかったですわ。ではまもなく出発しますので。」
「うん。支度しとく。」


ケーキ、ケーキ〜♪と口ずさみながら帰る準備をする薫子。
その視界に、支度を終えて帰路につこうという茉清の姿がみえた。

「茉清さんっ。」
「ふふっ。おめでとう、薫子さん。
 無事にクラスに馴染めたようじゃない。」
「私の思ってる馴染みかたとはちょっとずれてるかもねー。」
「まぁ、それは否定しきれないな。」
311名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 21:41:22.73 ID:SDf7MGUh0
wktk
312名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 22:04:20.40 ID:uyYZ+UGP0

すでに状況を理解しているのか、そんな応答が苦笑とともに返され。

「それでさ。茉清さんも一緒にこない?」
「‥‥私も?」
「うん。 まぁ茉清さんにとって不可抗力だったとは思うけど、
 それでも、今回の騒動に関して、茉清さんは私に貸しがあると思うのよねー。」
「まぁ、否定はできない‥‥か。」
「そうそう。罪滅ぼしってわけでもないけど、今日くらいはつきあってよ。」

そういう薫子の満面の笑みを見せられると。
苦笑しながらも茉清はうなずくしかなかった。


「京花さーん! 茉清さんも行くってー。」
「本当ですかっ!?」

二人の会話を見守っていた周囲から、
予想外の大物獲得の一報に、黄色い歓声が沸き立つ。

「えぇと‥前言撤回していいかな‥。」
「だーめ。絶対逃がさないからね。観念しなさいな。」

一蓮托生とばかりに茉清の腕を取り、
薫子はクラスメイトの輪の中に飛び込んでいった。

***
313名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 22:07:08.61 ID:kQMiQTzb0
支援
314名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 22:13:58.17 ID:uyYZ+UGP0

明くる朝。

「おはようございまーす。」
「おはようございます! 薫子さん!」
「薫子さん、おはようございますっ!」

昨日の賑やかなお茶会の効果か、
登校した薫子に、あちこちから挨拶が返される。

(おぉ。先週までの反応が嘘のようだ。)
などと内心呟きながらも、挨拶を交わしながら茉清の席へ。

「茉清さん、おはよ。」
「‥‥おはよう。薫子さん。」

若干恨めしげな視線を繰り出され。

「そんな目で見ないでよー。
 茉清さんの人気そのものは私にはどうしようもないんだから。」
「とはいえ、昨日のアレは薫子さんに原因を求めてもいいと思うんだが。」
「あはは‥‥。」

誰かが事前に連絡したのか、貸切となっていた小洒落た喫茶店で。
中央の席に座らされ、好奇の視線に晒されることに我慢ならなくなった薫子が
無理矢理に周囲の席を強襲し、クラスメイトとの親交を深めている間。
残された茉清は、京花を筆頭とする信奉者たちに囲まれ続ける羽目になっていた。
315名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 22:29:11.67 ID:uyYZ+UGP0

「まさか、誘った薫子さんが私を置き去りにするとはね。」
「それは謝るからー。でも、茉清さんだってそれなりに楽しそうだったじゃない。」
「たまたま。そんな気分の時もある。」
「ならよかったじゃない。 ね?」


そんな会話をしてから自席に着いた薫子の元に。

「おはようございます。薫子さん。」
「おはよう、京花さん。」

にっこりと輝く笑顔で挨拶する京花。

「昨日は本当に楽しい時間を過ごさせていただいてありがとうございました。」
「いえいえ、こちらこそ。なんかすごくご馳走になっちゃったし。」
「あれは窮地を助けて戴いたお礼ですから。
 でも、よろしければまたそのうちに、一緒にお茶をお願いしたいなと。」
「えっ? う、うん。それはいいけど‥。」
「本当ですか!? よかったー。」

嬉しそうに微笑む京花。

「でも、時々にしてよね。いろいろお財布事情が苦しくて。」
「‥よろしければご馳走しますけれど?」

きょとん?と首をかしげる。
316名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 22:45:46.23 ID:uyYZ+UGP0

「いやー。さすがにクラスメイトに理由もなくご馳走になるわけには‥。」
「そうですか? こちらからお誘いしていますし、お気になさらなくても。」
「いやいやいや。」
「あぁ、それなら。茉清様をお誘いしていただくお礼とかはいかがですか?」
「‥‥それって、これからも茉清さんに声をかけろって?」
「えぇ。」

期待に輝く京花の視線を受けて
薫子はちらりと、茉清のほうに目を向ける。

あぁ‥、なんかそこまで不機嫌そうではないけど、目に見えないバリアがあるような‥。

「ごめん、無理。」
「えぇーー!?」
「昨日いろいろ話もしてたようだし、仲良くなったでしょ。
 せっかくなんだから京花さんから声をかけようよ」
「それこそ無理というものですわ!」
「頑張れ。京花さんなら平気だってー。」
「いえいえ。滅相もございませんから!」

きゃいきゃいと騒ぐ二人のもとに。
仲良くなったクラスメイトが朝の挨拶に訪れる。
ようやくクラスの一員になれた薫子の、長い長い学院生活はここから始まるのであった。

-----------------------------------------------------------------------
なんとなく京花さんを書いてみたかったのです。
317名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 23:21:55.75 ID:SDf7MGUh0
次回作マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
318名無しさん@初回限定:2011/11/13(日) 23:28:03.48 ID:/Yc5brXy0
>>316
GJ
ちょっとSAN値削れてたから癒されたよ
319名無しさん@初回限定:2011/11/14(月) 01:36:00.77 ID:wOKo1U/K0
>「ごめん、無理。」
この時点で既にへたれていたのか…

乙でありまする
320 忍法帖【Lv=23,xxxPT】 :2011/11/28(月) 15:27:12.24 ID:WGM+Mphn0
保守
321忍法帖導入議論中@自治スレ:2011/12/05(月) 05:37:53.20 ID:u1uP1LXN0
てす
322名無しさん@初回限定:2011/12/14(水) 18:58:49.81 ID:LUjppC320
ほしゅ
323名無しさん@初回限定:2011/12/24(土) 00:39:36.58 ID:yA9TpAu60
・・イブか
324名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 10:41:16.71 ID:0tH7HRyJ0
踊らせる相手に困ったので、無理を言って連れ出してみました。 6本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『輪舞曲』

熱気さめやらぬ降誕祭。
下級生らの誘いがようやく途切れ、一息ついた千早の元に。

「千早さん、お疲れ様です。はい、どうぞ」
「あ、聖さん。ありがとうございます。」

そっとドリンクを差し出す聖と、
静かな笑みを浮かべながら話しかける茉清の姿があった。

「ふふっ。さすがに千早さんは大人気だね。」
「人気があるかどうかはわかりませんが、
 慕っていただけるのはありがたいことです。」
「いえいえ。千早さんは本当に人気者ですよー。」
「そうでしょうか? でも、それをいうならば茉清さんもではないのですか?」

王子様と慕われまくり、薫子や聖本人にも間接的とはいえ
実害を与えている茉清の人気と比較したら、自分自身はそこまでものだろうか。
そんな想いを込めて二人を見つめると。

「それはもう。茉清さんも大人気です!」
「き、聖さん‥。」
「ふふっ。でも、聖さんはそんな人気者の茉清さんを独り占めしているんですよね?」
「えぇっ! そ、そんなことはありませんよー」
「そうなのですか?」
「えぇ。茉清さんも下級生さんたちからお誘いの嵐ですし。」
「あら。聖さんをほったらかしで下級生のお相手を?」
「わ、私は断ろうとしたんだが、聖さんがダメだって‥。」
「当然ですよ。皆さん、勇気を出して茉清さんにお願いしているんですから。」
325名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 11:03:04.54 ID:0tH7HRyJ0

そういってにっこり笑う聖の姿に。
千早と茉清は一瞬視線を交わし、小さく苦笑を浮かべるしかなくて。

***

「あ、そうでした! お疲れのところ申し訳ないのですが、
 千早さんに一つお願いがあったりするのです。」
「なんでしょうか?」
「えぇと‥。茉清さんと1曲踊っていただけないかなって。」
「え?」「えぇと‥?」

急な聖の言葉に驚く茉清と千早。
というか、茉清にも事前説明なしですか。

「さきほど、茉清さんが下級生の方と踊っているときに、
 それを観ていた方がおっしゃっていたんですよ。
 千早さんと茉清さんが踊られたら素敵だろうな、って。」
「はぁ‥」
「それを聞いて、私もそれを凄く観たくなってしまいまして‥。
 ‥ダメでしょうか?」

上目遣いでおそるおそるお願いする聖の姿に、否といえるわけもなく。

「茉清さんはいかがですか?」
「聖さんのたっての願いとあらば、拒絶する気にはならないな‥。」
「ふふっ。それでは恐縮ですが、1曲お相手いただけますか?」
「えぇ、こちらこそ。」

そのやりとをみて輝く聖の微笑みを前払いされた報酬にして、
二人は手を取り合い、戦場へと赴くのであった。
326名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 11:05:39.01 ID:Al8GwGua0
しえん
327名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 11:36:06.64 ID:0tH7HRyJ0
あー。申し訳ないですが
ちょいとお出かけしてきます。また夕方にでも。
328名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 11:51:21.63 ID:rgV2xDrh0
しおんさま
329名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 17:24:10.84 ID:0tH7HRyJ0

***

雪の降りしきる帰り道。

「ふふっ。予想通り大盛況になりました。」
「‥‥まさか、あんな騒ぎになるとは思わなかった‥。」

楽しげに語る聖と、吐き出した途端に白む、茉清の大きな溜め息。

「茉清さんと千早さんですから、あのくらいは当然ですよ。」
「いや‥あれは全部、千早さんの人気のせいでしょう。」
「はぁ‥。どうしてこう千早さんも茉清さんも、
 自分が周囲から注目されているということを自覚してもらえないのでしょうか。」
「そう言われても‥。」

戸惑う表情の茉清に、聖は軽く微笑んで。

「そもそも、茉清さんは千早さんや薫子さん、初音会長と並んで
 エルダー候補に名を連ねたりしていたわけですよ?」
「あー。ちょうどその件については、さっき千早さんと話したんだ。」
「あ、そうなんですか?」
「うん。本当にいまさらなんだけど‥。」

330名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 17:44:44.91 ID:0tH7HRyJ0
***

二人が講堂の中央に歩み寄った途端に、めざとく見つけた学院生が黄色い声を上げ。
その声に、一斉に反応する降誕祭参加者が向ける視線はかなりのもので。
その重圧に一瞬足を止めかけた茉清を尻目に、堂々とした態度の千早。

「なんというか‥さすがだね。」
「この半年ほど、鍛えられましたから‥。」

向かい合い、楽曲の開始を待つ間にそんなやりとりを交わす。

「そうか。あれからもう半年も経つんだね。」
「えぇ。月日の過ぎるのは本当に早いものです。」

ようやく流れ出した輪舞曲にあわせてステップを踏む二人。
学院生は二人の邪魔をしないためか、この光景を目に焼き付けるためか、
誰も踊らずにその舞踏を観覧するのみ。

「そう。千早さんにはお礼をいわないといけなかったんだ。」
「お礼ですか?」
「うん。エルダー選挙の時、なんの説明もなしに、
 私の分の投票を押しつけてしまったことに。」
「あぁ‥‥。」
「本当、あれは私の我が儘でしかなくて。
 なのに何も言わず、そのまま受け止めてくれた千早さんの優しさに。
 本当に感謝しているんだ。ありがとう。」
「いえいえ。こちらこそ日頃から茉清さんにはいろいろ助けていただいていますから。」
「ふふっ。本当に千早さんは優しいね。」
331名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 17:59:45.70 ID:0tH7HRyJ0

ゆったりとしたメロディにあわせてステップを踏みながら
微笑む茉清の表情こそ、いつになく柔らかく。

(普段はこの笑顔は聖さんにしか見せていないのかな‥)
などと余計なことを思いついた千早は、くすりと笑みをこぼす。

「???」
「いえ。そこで謝罪ではなく感謝を述べてくれる茉清さんはさすがですね、と。」
「えっ? あぁ‥。そうか‥。 そうだな‥。なぜだろう‥。」
「ふふっ。きっと聖さんに影響されたんですよ。」
「えっ!?」

悩み始めた茉清に対し、深く考えもせずになんとなく答えを投げつつ
(あぁ、確かにそれが原因なのかもしれないな)と内心つぶやきながら。

「本当に、茉清さんは聖さんが大好きなのですね。」
「ちょっ! ち、千早さん‥。」

耳まで赤く染める茉清の恥じらいに新鮮味を感じつつ、
くすくすと笑いながら、千早は茉清をリードしていくのであった。

***

「本当に大盛況でしたよね。」

舞踏が終わったあとの静けさと、その直後の割れんばかりの大歓声。
鳴り止まない拍手を思い出して聖が呟く。

「そうだね‥。」
「お二方、中央からなかなか戻ってこれませんでしたし。
 戻られてからも熱気が凄すぎて、なかなか次の曲が始まらなかったくらいですから。」
332名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 18:30:52.67 ID:0tH7HRyJ0

その情景を振り返っているのか、なんとも嬉しそうな聖に、
どう反応すればよいのか困りまくる茉清。

「あと、途中で男性役と女性役を交換したときなんか
 皆さんのどよめき、すごかったんですよー!」
「あ、あれは千早さんが‥。」

最初は千早が男性ステップを踏んでいたのだが、
途中、悪戯げな微笑みとともに役割交換を提案されて。

「そのあとは、まさに王子様とお姫様の華麗なるダンスという感じで。とても素敵でした!」
「‥うん。‥まぁ、聖さんに楽しんでもらえたのならよかったかな。」
「そんな茉清さんとラストダンスを踊っていただけたんですから。
 今宵は本当に素敵なクリスマスです。」

満面の笑みを浮かべて見上げてくる聖に。

「うん。そうだね。
 本当に素敵な夜だ‥‥。」

茉清も柔らかな笑みを返す。

頬を火照らせ、寒風のなか並んで歩く二人の距離はちょっぴり縮まって。
降りしきる雪景色に静かに消えていくのでした。

-----------------------------------------------------------------------
さすがに茉清ルートには突入するのは無理でした。
333名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 22:04:44.70 ID:M0uAtPdx0
乙乙

というかちーちゃんそこで入れ替わりますかw
やはりこれは生まれてくる性別を間違えているのでは…
334名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 22:10:19.16 ID:UOC7PsIe0
白銀の姫君だから仕方がない

もっともその『姫君』が手早なのは
やはりちーちゃんもこの学園で立派な淑女として鍛え上げられたからなのか
335名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 22:10:59.08 ID:lnO+/Bxa0


後日薫子さんに「せっかく男役やれてたのに何で入れ替わったの?」と突っ込まれ、「その方が面白いかと思いまして」とか答えて
「つまり・・・・・・自分でも女側の方が似合うって思ったってこと?」とか返されて壮絶にorzする姿が見えるのですがこれは俺の脳がバグってるのですか?
336名無しさん@初回限定:2011/12/25(日) 22:19:09.91 ID:dJQTqE170
>>332
GJ。
茉清ルートは聖さんも一緒に落とす3Pモードじゃないと突入できないんだよね。
他にも薫子史ルート、ケイリ塞ルート、雅楽乃淡雪ルート、香織理陽向ルート、初音優雨ルートが
3Pモードにあるけどフラグ立てんの超むずい(何故か変換出来ない)よね。
337名無しさん@初回限定:2011/12/29(木) 09:11:22.51 ID:NJyW5qco0
>>332
小津
338名無しさん@初回限定:2011/12/29(木) 19:22:49.80 ID:4vzwPKh60
>>335 大丈夫君の脳は正常だ なぜなら私も同じ思いを抱いているから
339名無しさん@初回限定:2011/12/30(金) 13:21:29.74 ID:AvvRFJ9l0
蛇足? 余談? おまけ?
-----------------------------------------------------------------------

「あ、そういえば!」
「ん? どうかした?」
「うちのクラスには、王子様とお姫様のほかに騎士様もいましたねー。」
「あぁ‥、薫子さんか。 うん。それで?」

何を思いついたのか、くすくすと笑みをこぼす聖。

「いえ。たいしたことではないんですけど。
 お姫様を奪い合う、王子様と騎士様なんてお話にありそうだなって。」
「‥‥へ?」

いったい何を言い出すのかとまじまじと見つめたのに
そんな視線に気付かず妄想を漏らす聖さん。

「純情可憐な千早さんの寵愛を得るために、
 茉清さんと薫子さんが一生懸命アピールしちゃったりするんですよー。」
「いや。なにかいろいろおかしいから。
 というか、千早さんはそんなに純情じゃないような‥。」

「えー。そんなことないですよぉ。
 ちょっぴり意地悪だけど心根は優しいお姫様に、
 ちょっぴり無愛想だけど同じく心根は優しい王子様。
 ちょっぴり粗忽者だけど、いつでもまっすぐな騎士様。
 登場人物としては十分じゃないですか。」
「‥‥むぅ。」

褒められているのかどうかもよくわからない。
というか、なにげにいってることもひどいような。
というか「純情」についてはちっともフォローしきれていない気もする。
340名無しさん@初回限定:2011/12/30(金) 13:38:11.57 ID:AvvRFJ9l0

「とりあえず、仮にその配役だったとして。聖さん自身はどういった役柄になるの?」
「えぇっ? 私ですか?」

うーんうーんと唸り出す聖は、
すこし経ってから頬を染めながらも変なことを言い出した。

「たとえば‥、そんな王子様に懸想するメイドさんなんてどうでしょうか?」
「は‥?」
「おさんどんならそれなりに自信ありますし!
 それに、私はそんな主役級の皆様とは張り合えませんから。」

間の抜けた表情を返す茉清に、
気弱なことを、不思議と満面の笑みで言い放つ聖。

そんな言動に絶句してしばし。
なにかを納得したかのように軽く頷き、苦笑しながら茉清は答える。

「なら、王子はそんなメイドさんにほだされてみようかな。」
「‥はい?」
「あのお姫様はなかなか手綱を握らせてくれそうにないし、一筋縄ではいかなそうだ。
 そんなお方のお相手は騎士殿にすべておまかせして、
 王子は自室でメイドさんに世話してもらうがのんびりできそうだ。」

悪戯めいた表情でそんな言葉を漏らす茉清に。

「わかりました! 精一杯ご奉仕しちゃいますよ!
 まずはお手製ケーキをご賞味いただくところからですね!」
「ふふっ、それは楽しみだな。」

などと、冷静になった日には身もだえ必至な会話を交わす二人でしたとさ。
341名無しさん@初回限定:2011/12/30(金) 14:15:41.43 ID:AvvRFJ9l0
***

「くしゅん!」
「千早、だいじょぶ?」
「えぇ、平気です。たぶんこの寒さによる反応かと‥。」

ようやく参加生徒の見送りを終え。
片付けは生徒会&有志一同にお任せして、帰路につく千早と薫子。

「って、あたしもなんか急に寒気が‥。(ぶるぶる)」
「薫子さんのほうこそ大丈夫ですか?
 まぁこの寒さですし、さっさと戻って今夜はゆっくり休みましょう。」
「そうねぇ。ほんと疲れたし‥。」
「ふふっ。お疲れ様です。」
「千早もね。」

それなりの疲労感とやりとげた達成感を胸に。
肩を並べてゆっくりと‥‥歩くと寒いので、できるかぎり足早に。

「薫子さん。そんなに急ぐと危ないですよ?」
「平気、平気ー。って、きゃあっ!」
「うわっと‥いってるそばからですか‥。(はぁ)」

石畳にうっすら降り積もった雪に足を滑らせる薫子を慌てて支えたり。

「千早ー。ごめん‥。」
「薫子さんに怪我がないようなら構いませんから。さぁ、帰りましょう。」
「うんっ!」

支えてくれた拍子に繋いだ千早の手は冷たくて。
なんとなく、その手をちょっぴり強く握りたくなった薫子さん。
342名無しさん@初回限定:2011/12/30(金) 14:24:06.23 ID:htv9Xo8s0
支援
343名無しさん@初回限定:2011/12/30(金) 14:36:40.24 ID:AvvRFJ9l0

「そういや、さっきなんで茉清さんと入れ替わったの?」
「あぁ‥。そのほうが参加していただいた皆様に楽しんでいただけるかと思いまして。」
「ふーん‥。 実は、女性パートを踊ってみたかったとか?(にやにや)」

からかい半分の薫子に。

「そんなことありませんから‥。(はぁ)
 では逆に聞きますけれど、もし薫子さんが茉清さんと踊るとしたら
 薫子さんとしては男性女性のどちらのパートが希望ですか?」
「へっ!? あたし?」

(エルダーとしてなら男性役。)
 (でも茉清さんが男役というのも確かに‥。)
  (となると、あたしが女性役? 茉清さん相手に?)
   (うわー。なにげに恥ずかしいような‥。)
    (けど、茉清さんなら身長も同じくらいだし‥)

そんな激論が脳内で繰り広げられ、なぜか頬を染めちゃったりもした薫子は、
悪戯気に千早が表情を覗き込んでいるのにようやく気付く。

「あら? どうかいたしました? 薫子さん?(にやにや)」
「ち、千早っ!!」

そのまま憤慨するも、そりゃもう華麗にいなされたりもして。
お姫様の一筋縄ではいかなさをたっぷり堪能する羽目になっていたのでした。

-----------------------------------------------------------------------
>>335 うちのちーちゃんはそんな隙を見せてくれませんでした。
344名無しさん@初回限定:2011/12/30(金) 16:04:37.74 ID:svdAugjd0

ニヤニヤさせてもらいましたw

確かに薫子にそれを求めるのは無理な気も
香織理さんならきっとやってくれる筈w
345名無しさん@初回限定:2011/12/31(土) 06:02:36.98 ID:jNElL9wf0
>>343
乙です。
年末にほっこりさせてもらいました。
あけおめver期待してます。
346名無しさん@初回限定:2012/01/03(火) 21:30:04.52 ID:duTrvV0J0
人いないー?
347名無しさん@初回限定:2012/01/03(火) 21:31:36.83 ID:cBtNgz5C0
支援ならするが
348名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 21:25:06.98 ID:nRGlys1K0
誰も覚えていなさそな、1年ぶりの華道部ルートの続きに挑戦してみたりして。
第20話176〜か、pixivの[07-1]あたりをご参照ください。年末の風景で7+5本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『年の瀬』

冬休み初日。
いつもと変わらぬ目覚めを迎えた千早は、
午前中からぺらぺらと参考書のページをめくりながらも
のんびりとした時間を過ごしていた。

あまりやる気も起きないな‥、などと思考を燻らせていると
そんな静寂をかき乱すかのように鳴り出す携帯の音。

「誰だろう‥。」

アドレス帳に登録されていない、見知らぬ携帯番号がディスプレイに表示され。
一瞬いたずら電話を警戒するものの、まぁ出てみぬことにはそれも判断できない。

「もしもし‥?」
「あ、お姉さまですか? お休みのところ申し訳ありません。雅楽乃です。」
「あぁ、雅楽乃でしたか。おはようございます。」
「はいっ! おはようございます!」

電話口から流れてくる弾むようなその声は、
大好きな主人を前に尻尾を振りまくるワンコの姿を千早に思い起こさせて。
おもわず、くすりと小さな笑みをこぼしてしまい。
349名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 21:35:46.92 ID:nRGlys1K0
「お姉さま?」
「あぁ、すいません。 えーと、昨夜の続きですね?」
「はい! 昨日の今日ですし、急かすようで申し訳ないのですが、
 正直、いろいろ考えていたら待ちきれなくなってしまいまして。///」
「あらあら。雅楽乃ったら。
 そんなことだと大晦日の夜は眠れなくなってしまいそうね。」
「はいっ! それでですね‥。
 もしお姉さまのご都合がよろしければ二年参りはいかがでしょうか?」

なるほど、そうきたか。

「えぇと、大晦日の夜に合流してそのまま年越し初詣、でよかったかしら?」
「はい。せっかくのお姉さまとの初詣ですから、
 今年分の感謝と来年の祈願をたっぷりお参りしたいと思いまして。」
「ふふっ。雅楽乃はずいぶんとよくばりですね。」
「もちろんです!」

どうやら電話越しの雅楽乃はいつにもまして純真まっしぐらな模様。
照れや躊躇いがどこにも感じられない応対である。

(今年のお正月は徹夜明けからですか‥。
 まぁ、元日はたいした予定もありませんし、帰ってから眠れば十分かな。)

「そうですね。特に問題はありません。
 集合は何時頃、どこにしましょうか。」
「本当ですか!? ありがとうございます!
 えぇと、混雑するかもしれませんので少し早めに合流できればと‥。」

その後は、合流時間や集合場所、参拝先のやりとりなどをして。

「えぇ、雪ちゃんにはもちろん私からお伝えします。
 それでは、大晦日の22時に。はい。それでは失礼いたします。」
350名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 21:44:40.86 ID:nRGlys1K0
***

電話が切れたあと。
とりあえず、史には説明しておかないとな‥と史の部屋を訪ねてみる。

コンコン。

「はい?」
「私です。はいっていいかしら?」
「はい。どうぞ。」

静かにドアを開けると、御門家年始の手伝いをするために
一足先に実家に戻るため、せっせと荷造りをする史の姿。

「準備はどう?」
「はい。問題ありません。」
「というか、たかが正月休みになにをそんなに荷造りを?」
「千早様の化粧用品一式と下着の替えになります。」
「はぁっ!?」

へんなことを言いだした。

「数日とはいえ、日々の手入れを怠っては肌へのダメージが残ります。
 そもそも年末年始であれば、暴飲暴食とまではいかないとはいえ、
 普段よりも食生活が荒れがちになる可能性もございますし、
 睡眠時間の不足や空気の乾燥より普段よりも悪環境であることも考慮すると
 肌に馴染んだ基礎化粧品によるメンテナンスを欠かすことになっては―――。」
「史っ、わかりましたからっ!」
351名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 21:45:40.10 ID:gQMyVl+b0
支援
352名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 21:56:51.85 ID:nRGlys1K0

暴走しかかる史をなんとかなだめつつ。

「失礼いたしました。そういえばなんのご用でしょうか?」
「あぁ‥。そうでした。
 大晦日から元旦にかけて、雅楽乃たちと初詣にいくことになりました。」
「大晦日からというと、二年参りでしょうか?」
「えぇ。22時過ぎにでかけて、戻るのは2,3時くらいかしら?
 そんなに遅くはならないと思いますけど。」
「了解いたしました。」

「とりあえずはそれだけです。」
「はい。では私はそろそろ戻らせていただきます。」
「うん。母さんにはよろしくね。私は明後日に戻りますから。」
「はい。」

玄関まで史を見送って。

(さて。それではもうひと頑張りしますか。)

大きく伸びをし気合いをいれて。
千早は自室へと戻るのでした。

***
353名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 22:08:24.27 ID:nRGlys1K0

その頃、雅楽乃から淡雪へも連絡が。

「では、大晦日に。」
「うん。わかった。わざわざありがとう。うたちゃん。」
「ふふっ。雪ちゃんも精一杯おめかししてきてくださいね。それでは。」
「えぇっ!ちょっと待って って、あう‥、切れてるし‥。」

雅楽乃の思わぬ科白に動揺してみるも。
まぁ、確かに昨夜の話を踏まえれば千早へのアピールは必要だろう。

(おめかし‥。やっぱり振り袖かしら‥。
 うたちゃんは普通に着てくるんだろうなぁ。
 もしかしたらお姉さまも? うわー。すごい綺麗なんだろうなぁ‥。)

華道を嗜む都合上、和服自体は着慣れてはいるが
雅楽乃とは違って普段は洋服一辺倒の淡雪。

(和服着てると集まる周囲の視線がなんか嫌なのよねぇ‥。)

お華の現場ならさておき、一般大衆が群がるところで和服姿になると
周囲からの「おぉ、外人さんの着物!」「あらあら、かわいいわねぇ」的な
押しつけがましい勝手な納得感がちょっぴり感じ取られてしまうわけで。

(でも‥。うん。やっぱり振り袖よね!)

昨夜の帰り道。
雅楽乃に。いや自分自身に宣言してしまった以上、
つまらぬ弱気は掃き捨てて、精一杯前向きに進むしかないでしょう!
と気合いを入れて。

***
354名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 22:15:25.85 ID:nRGlys1K0

「お母様。少々よろしいでしょうか。」
「なんです? 淡雪さん。」
「大晦日の夜に、学院の先輩方と初詣にいきたいのですが‥」
「‥‥先輩というと、妃宮さんですか?」
「は、はい! って、なぜお姉さまだと?」
「ふふっ。淡雪さん、最近学校のことを話すときは
 いつも妃宮さんのことばかりじゃないですか。」

「えぇっ、そ、そうでしたっけ‥? orz」
「まぁ、3年生ともなれば受験祈願とかもあるでしょうし、
 日頃お世話になっているのであれば、いいのではないかしら?」
「お母様、ありがとうございます!」

ダメだしされるのではと恐れていた分、喜びも大きくて。

「それで‥、やはり和服は苦手なままですか?」
「いえ。せっかくですので振り袖にしようかと。」

娘が和服を忌避する気持ちを十分に理解していた淡雪母は
淡雪のその回答に小さく目を見張り。

「そう‥。いい先輩を持ったようね。」
「え‥? は、はい!」

母からのその一言がとても嬉しく感じられる。
355名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 22:24:58.09 ID:nRGlys1K0

「となると‥、初生け用の振り袖をおろすべきかしら?」
「えぇぇ! よろしいんですか?」
「妃宮さんにお見せするために振り袖を着ようと思ったんですよね?
 であれば、今できる最高の姿をお披露目すべきではないかしら?」
「お母様‥‥。 はい!」

新たな一歩を踏み出そうとしているその想いを
理解し、受け止め、支えてくれる。
そんな家族からの言葉に満面の笑みを浮かべる淡雪に、
母も暖かな笑みを返し。

そんな感じの冷泉家の年末です。

-----------------------------------------------------------------------
とりあーえず、盛り上がりもなんもありませーん。
356名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 22:29:44.12 ID:KQNoDv6F0
続きマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
357名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 22:29:58.62 ID:KQNoDv6F0
おっと、大事な事言い忘れた
358名無しさん@初回限定:2012/01/04(水) 22:39:28.52 ID:gQMyVl+b0
乙〜
続き待ってます
359名無しさん@初回限定:2012/01/05(木) 13:00:26.86 ID:feSjZXYf0
>>355
360名無しさん@初回限定:2012/01/05(木) 20:30:15.65 ID:bfY6Ltrx0
嵩夜「アニメ化の企画はどうなったんだ!」

スターチャイルド「なくなりましたよ」

嵩夜「はあ!?」
361名無しさん@初回限定:2012/01/05(木) 20:44:31.60 ID:bfY6Ltrx0
嵩夜「ちょ、ちょっと約束が違うじゃないですか!
あなた方はこの”おとぼく2”はアニメ化の契約をあっての
プロジェクトだったじゃありませんか!!」

スタチャ「とはいってもねぇ、売り上げがこんなじゃとてもTV放映なんてローカルでも無理だよ。
爆死が目に見えているからね。
こちらもそういったものに金かけるほど我々は裕福じゃないんだよ。」
362名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 21:48:34.54 ID:0KWEaDJS0
昨日は体調悪くてさっさと寝込んでました。もーしわけない。ってなことで続きー。
-----------------------------------------------------------------------
冬休み三日目。
初音、陽向、優雨、史がすでに帰宅した寮では。

「本当にごめんなさいね。」
「いえいえ。好きでやっていることですから。」

実家に戻る当日だというのに千早は何をしているのかというと。

正月を寮で過ごす香織理と薫子のために、
いくらか日持ちする料理をせっせと作っていたりする。

「別にいいのに〜。」
「私はカレー三昧なんて嫌よ。」
「えー。」
「あら、そう? まぁ薫子はカレーを食べてて構わないわよ?
 それなら、私だけで千早の料理に舌鼓をうたせてもらうから。」
「あぁっ! う、うそうそ。ごめんなさいー!」

そんな二人のやりとりに笑みをこぼしつつ。

「といいましても、そこまで日持ちもしませんし、
 年内に食べきっていただくくらいでお願いしますね。」
「はーい。まぁ、正月は奏お姉さまがおせちを持ってきてくれるっていってたし
 そっから先はカレーでもいいしー。」
「まったく、なんでそんなにカレーにこだわるのかしら‥。」
「いいじゃない。我が家の正月は伝統的にカレーなんですぅ。」
363名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 21:51:22.24 ID:xZIoZc4s0
wktk
364名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 22:02:43.52 ID:0KWEaDJS0

「まぁ、そのあたりはお二人にお任せしますので。
 では、すいませんが、冷めてから冷蔵庫にしまってくださいね。」
「うわ、美味しそう〜。」
「薫子。つまみ食いしたら食べる権利剥奪するから、そのつもりでね。」
「えぇぇぇっ!」

二人の会話にくすくすと笑いながら、千早は用意していた荷物をもって玄関へ。

「千早、ありがとねー。」
「いえいえ。では香織理さん。薫子さんをよろしくお願いしますね。」
「まぁ、手料理のこともあるし、その大役引き受けさせてもらうわ。」
「ちょっとー。なんでそうなるのー。」
「それは‥‥。」
「だって‥‥。」
「ねぇ。」×2

顔を見合わせ、頷く千早と香織理。

「二人とも、ひどっ‥!!」
「だって、薫子ったら。受験生のくせに緊張感がないんですもの。」
「そ、そんなことないからっ!」

憤慨する薫子をものともせず。

「あぁ、香織理さん。こんなのはいかがでしょう。
 午後の学習の進捗状況をもとに夕食のおかずの量を、
 夕食以降の進捗状況をもとに翌日昼食のおかずの量をコントロールするとか。」
「ちょっ!! 千早〜!!」
「あぁ。なるほど。それはわかりやすいわね。
 はぁ‥‥。薫子の分のおかずも食べるとなると、正月太りが怖いわね‥。」
「ちょっ! なんでできないこと前提なのよっ!」
365名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 22:11:25.33 ID:0KWEaDJS0

抗議の声を上げるも、この二人を相手に薫子が勝てるわけもなく。

「では、薫子さん、香織理さん。よいお年をお迎えください。」
「えぇ。千早も一年間お疲れ様。また来年ね。」
「うぅぅ‥。なんか扱いがひどい‥。」
「ほら。薫子もしゃっきっとしなさい!」
「‥うん。千早。また来年ね。」
「えぇ。薫子さん。 それでは‥。」

***

そういって静かに出かけていく千早を二人で見送った後。

「さーて‥。薫子。」
「な、なに!?」
「とりあえず‥、お茶にしましょうか。」
「へ?」

こぽこぽこぽと音を立てて注がれた紅茶の香りが漂う食堂で。

「さっきの話だけども、正直、薫子の自己申告にまかせるから。」
「へ‥? それでいいの?」
「別に薫子がさぼろうと、浪人しようと、推薦をもらえなかろうと
 それはそれで薫子の人生の選択だから。私は構わないわよ。」
「うぐっ‥‥。そ、そう言われると。」

厳しく管理されるのも嫌だが、放任されるのも寂しい気がしてしまうわけで。
366名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 22:16:40.88 ID:c/7AKKwO0
ニヤニヤ
367名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 22:22:15.84 ID:rp7RL9qT0
支援
368名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 22:41:26.08 ID:0KWEaDJS0

「なによ。千早じゃないんだから私はそこまで甘やかしはしないわよ。
 一応、自己申告は聞いてあげるから。自分自身で判断して行動しなさい。」
「うぅ‥。わかった‥‥。」

そんな、しょんぼり気味の薫子を眺めて。

「ほんと‥。千早は甘やかしすぎよねぇ。」
「そ、そうかな‥。」
「薫子。自分でもわかってるでしょ。
 千早には今年、本当にいろいろ支えてもらっていたって。」
「うん‥。そうだよね。」
「忘れっぽいけれど、一度認識すれば薫子はちゃんと判断できるのだから。
 この1年の恩を返すべく、冬休みの生活は自分なりに考えなさいな。」
「‥‥うん。わかった。」

ちょっとだけやる気になった薫子の表情をみながら。

(まぁ私にできるのはこのくらいよね。)

と内心呟きつつ、香織理は紅茶をゆっくり味わっていた。

***

369名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 22:56:08.81 ID:0KWEaDJS0
その少し後。

「ただいま戻りました。」
「千早様、お帰りなさいませ。」
「ただいま、史。」

出迎えた史と挨拶を交わし、自室に戻ろうとする千早であったが。
物言わぬ史の視線を感じた気がして、静かに振り返る。

「史‥、どうかした?」
「千早様。申し訳ありません。」
「‥‥なにかあったの?」
「奥様に、雅楽乃さんたちとの初詣に関してご報告したところ‥」
「したところ‥?」
「とても前向きになってしまわれまして。」
「はぁ!?」

唖然としたのもつかの間。自室にいけばわかると史に促され、
慌てて駆けつけたひさしぶりの自室には見事な振り袖が用意されていた。

「あら、千早ちゃん。戻ってたのね。」
「母さん! これはいったい。」
「いいでしょう、これ。
 雅楽乃ちゃんや淡雪ちゃんと初詣にいくと聞いたから
 馴染みだった呉服屋さんに慌てて連絡しちゃったわよ。」
「か、母さん‥‥。orz」

必至に反論をするも、思いついてしまった妙子さんに敵うわけもないまま
御門家の年の瀬はせわしく過ぎていくのでした。

-----------------------------------------------------------------------
ようやく初詣だー!! まだちっとも手をつけてないので気長にお待ちください。
370名無しさん@初回限定:2012/01/06(金) 23:45:50.34 ID:xZIoZc4s0

おとボク分補充できたしこれでまた半月は頑張れるぜ…
371名無しさん@初回限定:2012/01/07(土) 04:22:56.76 ID:D1dIV/WJ0
>>369
乙〜♪
372名無しさん@初回限定:2012/01/07(土) 06:36:29.97 ID:UJUU/0tw0
>>369
(・ω・`)乙  これは乙じゃなくてポニーテールなんだからね!
373名無しさん@初回限定:2012/01/07(土) 11:58:54.10 ID:qk3ObdiS0
つか馴染みの呉服屋Sugeee...
採寸とかどうしたんだ。洋服とはいろいろ違う気がするんだが。
374名無しさん@初回限定:2012/01/07(土) 15:53:15.02 ID:whgz3TY+0
史が全部知ってるだろ多分
375名無しさん@初回限定:2012/01/07(土) 22:50:47.58 ID:/JFYFjAl0
まさか一緒にお風呂入った時に目測したとか……
千早ちゃんが寝ているときにこっそり忍び込んで計測したとか……

史ちゃんならどっちも可能だと思う
376名無しさん@初回限定:2012/01/08(日) 02:22:28.70 ID:/XaJH0mT0
>>375
侍女アイの透視力で体の隅々まで管理されてる、千早ちゃん
377名無しさん@初回限定:2012/01/08(日) 23:47:27.43 ID:TBD0l/+U0
エルダースティックの長さはどのくらいあるんだろう・・・
378名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:08:26.43 ID:HkAoGWOh0
暦の上では寒の入から数日、寒い日が続いて居ますが皆様如何お過ごしでしょうか
こんな寒い季節にはこたつが恋しいと云う物

今回はそんなネタです
379名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:09:01.96 ID:HkAoGWOh0
 それは、時折小雪が舞い降りる時もある、1月も中旬のある日の事。

 寮に帰ってくると、珍しくまだ誰も戻って来ていなかった。
「…まあ、たまにはこう云う日もあるよね」
 そのうち誰か帰って来るだろうと想いつつ取り敢えずお茶を、と厨房に入って行く。
 少し寒かったから少し熱めのお茶を入れよう、そんな事を考えながらお湯を沸かしていたら。
「ただいまー! あー、寒かったー…ってあれ? まだ誰も帰って来て無いのかな」
 食堂の扉が開く音と共に、薫子さんの声が聞こえて来た。
「お帰りなさい、薫子さん。今お茶の支度をしていますから、少し待っていて頂けますか?」
「あ、ただいま千早ー。うん、じゃあ宜しくね」
 そう答えが返って来て、食堂の椅子が引かれる音。
 さて、今日はどの茶葉をチョイスしようかな、そんな事を考えながら僕はお茶の準備を進めた。
380名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:10:41.52 ID:HkAoGWOh0
「ふー。…なんかさあ、ここ数日すごく冷え込んで来たと思わない?」
 お茶を出して、一息付けた薫子さんがそんな事を話してきた。
「そうですね。暦の上では間もなく大寒ですから、今の時期が一番寒い季節と云う事に
なりますね」
「そっか、そんな季節なんだよねそう云えば。うーん…そうなると、やっぱりアレが恋しく
なるよねぇ」
「アレ? アレとは何ですか?」
「へ? ああ、こたつよ、こたつ」
「………なるほど」
 云われてみて納得した。
 確かに学院も寮も何もかもイギリス風では、こたつなんてさすがに修身室にも置いてはいない。
「確かにこの季節は、こたつがあるとずっと入っていたくなりますね」
「あれ? 千早もそうなの?」
「ええ。子供の頃こたつに入ったまま寝てしまい、風邪を引いた事がある位には」
「あははは、千早もそれやったんだ。あたしもやってねー、良く親父に怒られてたよ」
「そうでしたか」
 どうやらこの手の経験は薫子さんにも有るらしい。
「ただ今戻りました。…こたつがどうかなされたのですか?」
 と、丁度そこに史が帰って来た。
「ああ、史、お帰りなさい。こたつの話はね…」

「なるほど、そう云えばその様な事もありましたね」
「まあそんな訳で、こたつが恋しいよねぇって話をしてたのよ」
 薫子さんはそう云ってうんうんと頷いている。
 一方の史は、それを聞いて少しの間何やら考え込んでいたが、
「…それでしたら、こたつを準備いたしましょうか」
 と、そんな事を云い出した。
「準備するって、史、どうするの?」
「確かお屋敷の物置の方に、使われていないこたつが1台置いてあったと記憶して
おりますので、それを寮に運んで頂くよう手配しようかと」
「へ? いや、ちょっと史、そこまでしなくても…」
381名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:12:28.70 ID:HkAoGWOh0
「へえー、それってどのくらいの大きさか解る?」
 止めようとしたら薫子さんが食いついてしまった。
「一般的なサイズのこたつだったと記憶しております」
「へえー、いいなぁ。………ね、千早?」
「…何ですか?」
「その、さ。もし良かったら、そのこたつ、貸してくれないかな?」
「………云うと思いましたよ………」
 思わずため息が出てしまう。
「別に貸し出すのは吝かではありませんが、こたつに入ったまま寝たりしないで下さいよ?」
「なっ!? そ、そんな、もう子供じゃ無いんだし!」
「………私が心配してるのは、間もなく受検もあるこの時期にこたつで寝入ってしまい、
薫子さんが風邪をひかないかと云うのを心配して居るのです」
「あ………そっか、そうだよね」
 それを聞いて、薫子さんは理解してくれたようだ。
「この季節ですから、こたつを使いたいと云うのも勿論解ります。ですが、健康状態に
だけは十分注意をして下さいね」
「うん………解った、気をつけるよ」
 僕がそう云うと、薫子さんは素直に頷いてくれた。


 それから数日後、寮の方に僕の家からこたつが届けられ、早速薫子さんの部屋に
設置された。
 早速使い始めた薫子さん曰く『勉強机がすっかりこたつになってしまった』との事。

 そんな事があった更に数日後の夜。
 勉強を教えて欲しいと頼まれたので、僕は時間になった頃合いに薫子さんの部屋を訪れた。
「こんばんは、薫子さん」
「あ、千早、いらっしゃい。さ、入って入ってー」
「お邪魔します………って、薫子さん、そのみかんはどうしたのですか?」
 招かれて部屋に入ると、こたつで勉強をして居る薫子さんが居たのだが、そのこたつの
上には山盛りのみかんが置いて有った。
382名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:14:24.51 ID:HkAoGWOh0
「あ、これ? やっぱりこたつと言えばみかんでしょ」
「ま、まあそれには同意しますが………」
「何となく欲しくなっちゃって、コンビニで買って来ちゃった。これとっても甘くて
美味しいよ、千早も食べる?」
「はあ………じゃあ頂きます」
 薫子さんの向かいに座って、取り敢えず進められたみかんを食べる。
 あ、確かに甘くて美味しい。
「で、食べてる所で悪いんだけど、早速ここを教えて欲しいのよ」
「はい。えっと………ああ、これはですね………」
「………ふむふむ、なるほど………」


 暫くの間、何も喋らずに黙々と例題を解いて行く。
「………っと、よし、出来たっ………って、あれ?」
 ふと顔を上げると、千早はこたつの上に広げた本を読んで居る姿勢で静かに
寝息を立てて居た。
「まったくもう…人にこたつで寝ると風邪引くって云って置いて、そのくせ自分が寝てたらしょうが無いじゃない」
 そう呟いて、手を伸ばして起こそうとして。
 ふと、その手が止まった。
(………千早って、こたつの中に入れて居る足は、どうしてるのかな………?)
 子供の頃は良く足を延ばして座って居て、一緒に入って居た人の足と絡み合ったりもしたものだ。
 流石に今はやって居ないけど。
 …じゃあ、千早は?
 流石に男の子らしく、あぐらでもかいて居るのだろうか。
 そんな事を考え出したら、確かめたくなってしまった。
「ちょ、ちょっとだけなら………いいよ、ね?」
 誰に言い訳するでも無いのだが、そんな事を呟くと、あたしはゆっくりと折って居た
膝を伸ばしてこたつの中に伸ばして行った。
(そーっと、そーっと………)
 そろそろと足を延ばして行くと、やがて足先に、ふにっと、柔らかい感触。
383名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:15:54.86 ID:HkAoGWOh0
 と同時に、千早が小さく、
「んっ」
 と声をあげたので、思わずびくっとしてしまい、足が止まった。
 と云うより、あたし自身が千早の方を見たまま固まってしまった。
 そのままの体勢で様子を伺って居たが、それで千早が起きた風では無かったみたい。
「………はぁ………」
 思わず安堵の溜め息が出てしまう。
 ………でもそうしたら、今足先が触ったこの感触は何だったんだろう?
 そっとこたつ布団を捲って中を覗いて見ると、あたしの足は千早の豪華なネグリジェの
裾を持ち上げ、太股のど真ん中に触れて居た。
 かーっと、顔が赤くなるのが解る。
(って、何であたしの顔が赤くなるのよっ!?)
 慌ててこたつ布団を捲った手を離して、元どおりに直す。
(………でも、千早の足やっぱり綺麗だったなあ………)
 春の身体測定の頃に見たっきり、今まで気にして見た事は無かったけれど。
 こたつの赤外線燈に照らされて居た、千早のすらっとした足、そして太股。
 そっちの気は無い筈なんだけど、思わず生唾を飲み込んでしまう。

「………はぁ。全く、何をして居るんですか、薫子さんは」
「ひぁっ!?」
 と、突然寝ていると思っていた千早がそんな事を云って顔を上げた。
「ち、ちちちはやっ………お、起きてたの………?」
「正確には『途中で起きた』と云った所ですが」
 そう云って千早は、またはぁっと溜め息を吐いた。
「ど、どこ!? どこの時点でっ!?」
「『ちょっとだけならいいよね』の辺りでしょうか」
 そう云って、千早はにっこりと笑う。
 ああ、あれは悪魔だ、悪魔の笑顔だわ。
「さてと。そんな悪戯をする薫子さんには、ちょっとお仕置きが必要ですね」
「え………お、おし、おき………って?」
 そう云って居る間にも、千早は立ち上がると部屋の鍵を掛けてしまった。
384名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:17:23.39 ID:HkAoGWOh0
「罰として、薫子さんにも同じ辱めを味わって頂きます」
「え、えええっ!? そ、そんな、ご、ごめんなさい、ごめんなさい! 赦して下さい!」
 必死に謝って見るものの、あたしはあっさりと千早にお姫さまだっこの要領で抱き上げ
られてしまった。
「ダメです、赦しません☆」
 そして、またしてもにっこりと。
 ああ、これはもうどう足掻いても逃げられないらしい。
 爼板の上の鯉って今のあたしの状態なのね、と、何故か落ち着いて考えてしまう。
「と云う事で、大人しく罰を受けて下さい。ね?」
「うう、もう良いわよ。…出来れば優しくオネガイシマス」
 そう云って、あたしは千早の首に手を回した。


 この後の『お仕置き』の内容については、ご想像にお任せ、と云う事で。
385名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:17:25.64 ID:zr1/m1BJ0
支援
386名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:18:33.36 ID:HkAoGWOh0
て事でアホなネタでお目汚しすいませんでした(;´Д`)
久しぶりに書いたネタがこんなんだって、色々どうなんだろうw
387名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 19:22:50.37 ID:zr1/m1BJ0
と思ったら終わりかw
薫子が羨ましい…

>>386
そんな事気にせずに続きを書くのに戻るんだw
388名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 22:08:25.38 ID:HeiNj8hi0
ニヤニヤしたw乙

俺の脳内で5秒で展開されたその後の流れ

こたつの中でちーちゃんが性的にお仕置き
→二人ともそのままこたつでおねむ
→翌朝侍女に発見されてジト目
→ついでに二人とも風邪引く
389名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 22:15:03.58 ID:8u8xCKRJ0
SS作者はスレの神である(I・スターリン)

いいぞもっとやれ
390名無しさん@初回限定:2012/01/12(木) 22:32:42.59 ID:zfefpsDs0
なんかスレ賑わってる!

らぶらぶネタ書けるのうらやまし−。
391名無しさん@初回限定:2012/01/13(金) 01:29:12.05 ID:u8eeNL+P0
>>386
乙です。

>>390
俺もラブラブ路線を狙って書いたことがあるんだが
自分で読み返したら失笑しか出てこなかったので
ボツにした経験がある・・・。
392名無しさん@初回限定:2012/01/13(金) 20:16:48.75 ID:o02PCpxF0
>>391
まぁまぁ、そういわんとちょろっと見せてみようや。
悪いようにはしないから。
393名無しさん@初回限定:2012/01/13(金) 20:27:23.23 ID:OgBr5qTb0
気軽に書きこめばいいんだよw
ここでの感想参考にして次書けば良いんだしさ


発売時から思い浮かんでる千早ちゃんと瑞穂ちゃんの邂逅ネタが未だに上手く纏まらない、
というか頭の中に有るままだ…
そいや書いて思ったが、地の文上手く書くのって凄い難しいな
思い描いてるのを忠実に言葉にするのって思った以上に大変だ
394名無しさん@初回限定:2012/01/14(土) 06:48:59.33 ID:5X2xx3Yu0
兼好法師は物事上達のコツを「下手なうちからどんどん人前で
やって見せること」と徒然草の中で語っているらしい。
100分de名著で言ってたから間違いない。
395名無しさん@初回限定:2012/01/14(土) 11:12:11.20 ID:1jKxjeQx0
>>391
なんでもいいから早く投下しろよ
396名無しさん@初回限定:2012/01/20(金) 00:02:08.11 ID:Pifdbnyh0
上から目線で言うな
397東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/23(月) 00:54:18.41 ID:Jz/8Lf+r0
書きあがることは書きあがったけど、脇役のセリフから
果たしてここに掲載していいものだろうか……?
398名無しさん@初回限定:2012/01/23(月) 01:14:45.28 ID:0O8JTBb40
マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
399東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 01:19:31.83 ID:xRlLDjrb0
特に反対意見もないようですので書かせていただきます。
8レス分あります。
見る人によっては結構うつ展開ですので気をつけてください。
400東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 01:25:37.04 ID:xRlLDjrb0
「ふう……荷物もこれだけ多いとさすがに楽じゃないね」
「千早さま……ですから史がお持ちすると……」
 とある休日、僕は親しい仲間達みんなと買い物に来ていた。
 僕は男だから自分から荷物持ちをしなきゃって思ったけど、史や雅楽乃をはじめ一部の人はエルダーである僕に
そんなことはさせられないと言ってきたが、僕はどうしても自分が持ちたいのだと言って半ば強引にみんなの荷物を持つと
さすがにみんな折れてくれたみたいだ。ただ、薫子さんや香織理さんはクスクス笑ってたけど。
 そしてみんなデパートへ入っていき、僕と史だけその前で待っていた。その時……。
「よお、誰かと思えば御門じゃねえか」
 どこかで聞き覚えのある声が聞こえてきた。背筋に何か悪寒が……。
「………!!」
 そこにいたのは、前の学校で僕を散々いじめてきたやつらだった。
「千早さま……」
 史も僕の表情を見てそれを察したのだろう。

〜過去のあやまち〜
401東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 01:32:02.90 ID:xRlLDjrb0
「へえ、お前が女装して女子校に転校したって小耳に挟んだときはデマかと思ったけど、マジだったとはな」
「根暗でイヤミなだけじゃなくて、女装趣味のぞき趣味のド変態野郎だったとはな。こりゃいいぜ」
「千早はそのような方ではございません。何事も決めつけることはよくないと思います」
 僕をあざ笑う様子を見かねて、史が助け舟を出してくれる。だけど……。
「何言ってんだこいつは。現に変装して女子校に潜入してんじゃねえか」
「しっかしここまでキモイ奴だったとはな。こりゃあいい土産話になるぜ」
 こいつらは全く聞く気もない。っていうか……。
「まさか、学校で全部言う気か!」
「ああ? バカかおめえ。こんなとっておきのネタ言わない奴がいるかよ」
 くっ……今までみんな協力してくれてたのに、まさかこんな形で終わりを迎えるなんて……。
「千早!」
「千早お姉さま!」
「千早ちゃん!」
 と、そこへみんなが帰ってきた。僕たちの様子を見ると、途端に急いで駆けつけてきてくれた。
「おいおい、やべえよこれ」
「レベル高けえ……さすがお嬢さま学校……」
402東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 01:36:59.08 ID:xRlLDjrb0
「千早、どうしたの?」
「大丈夫ですか、千早お姉さま?」
「千早ちゃん、何ともないですか?」
 みんなは男達を無視して心配そうに僕に問いかけてくれてる。
「おいおい、そんな奴ほっといて俺らとどっか行こうぜ」
「そうそう。御門なんかより俺らと遊んだ方がぜってー楽しいって」
 奴らはみんなを僕から引き離そうと背中を掴んで自分達の方に向かせようとした。
「はあ……千早お姉さまより自分達と遊んだ方が絶対楽しいって、それ、中身のない人のセリフじゃない」
 雪ちゃん……。
「自分の考えが必ずしも正しいという気はありませんが、私も雪ちゃんと同意見です。だいいち聖應での千早お姉さまを知らずに、
まして初対面の人間を相手に、何を根拠にそのような事が断定できるのですか?」
「何でも簡単に決めつけるのは、頭の悪い証拠よ」
 呆れて言う雪ちゃんに続き、雅楽乃と香織理さんも男達を厳しい目で見据えて言う。
香織理さんはともかく、雅楽乃と雪ちゃんは僕が男だと知らなかったはずなのに……。
「なるほど、全員調教済みってわけか。さすがド変態の色キチ野郎だけあって、手が早くていらっしゃる」
403東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 01:44:08.52 ID:xRlLDjrb0
「そんなわけないでしょ!? 千早がそんなことする訳ないじゃない!」
「もし千早がそんな目的で来たんだったら、とっくに私達が追い出してるわよ」
 ……まあ、そりゃそうだろう。薫子さんはまっすぐで正義感の強い人だし、香織理さんだってとても仲間思いなんだから。
「まあまあ、いいから俺らと遊ぼうぜ?」
「おまえらどうせ男って御門しか知らねえんだろ?」
「御門みたいな奴しか知らねえ? うわ、かわいそ」
「だろ? だから誘ってやってんの。親切だよな俺ら」
 相変わらず前と同じようなセリフ。他人を見下すことでしか自己主張できないんだろうか、こいつらは……。
「ちょっと、さっきから聞いてれば言いたい放題」
「あなたたちの知ってる千早がどんな人なのかは知らないけど、私たちにとって千早は大切な運命の星だ」
「千早さまは私にとってもかけがえのない唯一無二の心を許せるお方です。私の前でこれ以上悪く言うことは許しません」
 その後も言い合いが続いたが、お互い平行線だ。思い通りにならないのが気に入らないのか、次第に男達の顔が紅潮していく。
404東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 01:49:15.49 ID:xRlLDjrb0
「なんだよなんだよ、人が優しくしてりゃつけあがりやがって!」
「別に優しくしてくれなんて頼んでないわよ」
「私たちに構わないでほしいと言ってるんです。つけあがった覚えはありませんわ」
 言い争いは見ている限り、聖應のみんなの方が1枚も2枚も上手だ。というか、
こいつらは、どちらかといえば直情的な薫子さんよりも下に思える。
「じゃあこうしようぜ。そっちが御門抜きで俺たちと対戦してそっちが勝てば御門のことは黙っといてやるよ」
 言い争いでは勝ち目はないとみたのか、力勝負に出たか。まあ答えは予想ついてるけど、一応聞いておこう。
「ではそちらが勝ったら?」
「その女たち全員に俺らの言いなりになってもらうさ」
「なっ……!」
 僕1人ならまだいいけど、何の関係もない薫子さんたちまで巻き添えにしようなんて……。
「そ、そんなこと……!」
 僕が言い終わるより早く、誰かが僕の肩をつかんだ。
「薫子さん……」
「千早、いいじゃない。受けて立とうよ」
 僕が他のみんなを見ると、全員薫子さんと同じ目をしてる。
405東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 01:53:40.96 ID:xRlLDjrb0
「私も構わないわ」
「私もです」
「私もよ」
 薫子さんに続いて、みんな勝負を受けると言った。
「決まりだな」
 相手は対戦の日時と場所を伝えてきた。
「次の日曜日楽しみにしてるぜ。その時おまえら全員俺たちの女になるんだからな」
「そんなこと試合をしてみなければわからないじゃない!」
「言っとくけど俺たちは地区大会の決勝までいったんだぜ? 女ごときが俺たちに敵うわけねえんだよ」
 そう言うと奴らは高笑いをして去っていった。

「な、なんなのよあいつら!」
「……千早が女装の苦労を考えても聖應の方がずっとましだって言ってた理由がやっとわかったわ」
「あいつら見てると、千早お姉さまがすっごく可愛らしく見えます!」
 みんな去っていった男達に怒りを隠せないようだ。これが僕たちの絆の証だと思うと、なんとも嬉しい。
「みんな、絶対に勝つわよ!」
「ええ!」
 そしてみんなは、来週の日曜日に選んだ対戦の種目のメンバー選びのためと、その練習のために行動を開始した。
406東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 01:59:30.29 ID:xRlLDjrb0
「いやあ、今日は痛快だったねー!!」
「そうですね」
 対戦は、僕たちの圧勝に終わった。
「薫子さん大活躍だったからね」
「茉清さんに言われたくないな。あたしの後にあれだけホームラン打っといて」
「ええ、茉清さん、とっても素敵でした」

 そう。今回相手が指定してきた競技は野球だった。
 1回表、ノーアウト満塁。打順は4番の薫子さんの時……。
「騎士の君!」
「薫子さん!」
「ここらで牛耳ってやれー!」
 聖應と相手校の声援が鳴り響く中……。
「へへへ……おらー!」
「なっ……!」
 相手のピッチャー、4番打者の薫子さんにビーンボールを……!
「危ない!」
「きゃあっ! 騎士の君!」
 恐らくは脅しのつもりだろうが、ビーンボールを投げるなんて……しかも、女の子相手に……!
 けど、薫子さんはよける気配もない。このままじゃ……! と、その時……。
 カキーン!
「え……?」
 なんとそのビーンボールを、薫子さんはものともせずバックスクリーンに叩き込んだ。
「騎士の君ー!!」
「薫子さーん!!」
407名無しさん@初回限定:2012/01/24(火) 02:04:14.07 ID:Qb4CITJ60
一回表ノーアウト満塁って最初っからボコボコに打たれてるじゃないですかー支援

BAD落ちはなさそうで安心した
408東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 02:04:49.14 ID:xRlLDjrb0
 その後は茉清さん、雪ちゃん、こよりさんと4者連続ホームラン。呆然とするピッチャーにみんなで容赦なくヒット、
時に2塁打、3塁打を飛ばし、薫子さんのホームランへとつなげていく。

「相手はみんな薫子さんの投げる球に翻弄されてましたからね」
 そして守備では……。
「ストライクバッターアウーッ!」
「ストライクバッターアウーッ!」
 1番、2番、3番と薫子さんの投げるストレートど真ん中の直球に三球三振だった。そして2回裏、4番の打順……。
「そろそろ本気出してホームラン打ってやれ!」
「男をなめると痛い目に遭うって思い知らせろ!」
「薫子さーん!」
「騎士の君! ここもきっちり抑えてください!」
 薫子さんの投げる1球。相手の4番は当てた。
「ぐわ!」
 けどピッチャーゴロ。薫子さんはそれを拾ってファーストの茉清さんへ投げる。
「アウトーッ!」
 見ると、4番は手首をひねってバットを落としていた。その後もほとんど3球三振、
たまに当たってもキャッチャーフライや内野ゴロばかりだった。
409名無しさん@初回限定:2012/01/24(火) 02:09:27.64 ID:Qb4CITJ60
支援
410東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 02:10:04.58 ID:xRlLDjrb0
「48対0の5回コールド。終盤なんか壊れたピッチャーさんがホームランを捕れとか言って
仲間割れしてたのは傑作でしたね」
「女だってだけであたしたちを甘く見るような人たちに負けるわけないって」
 たしかに、運動能力が前の学校でトップクラスだった僕でも薫子さんには全力でやらないと勝てないんだ。
絶対に勝つという使命感を持った薫子さんに、初めから女だからとなめてかかってこの結果は当然だろう。

 ……ところでみんな野球の試合の勇姿を語り合うのは気持ちはわかるけど、大事なことを忘れてないかな?
「……あの、僕が男だということに関しては、何も言うことはないんですか?」
 そう。野球のメンバーを集めた時、僕の性別のことが買い物の時いなかったメンバーにも露呈してしまったのだった。
「『誰かに嘘だって言ってほしい……』」
「へ……?」
 茉清さん、突然何を……。
「聖應に来た時に千早さんが言ったセリフ。そう思ってた理由がやっとわかったよ」
「無理やり女装して女子校へ転校させられるなんて、薫子さんも真っ青ですよね」
 そ、それだけ……? ちょっと能天気すぎやしませんか?
411名無しさん@初回限定:2012/01/24(火) 02:15:28.74 ID:Qb4CITJ60
支援
412東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 02:16:48.48 ID:xRlLDjrb0
「あの……ずっと騙していたことと、女子高に男がいることに関しては、何か?」
「そんなの今さらじゃない。男でも女でも、千早さんは千早さんだし」
「千早お姉さまには、そんなこと関係ないほどいっぱいいろんなことをしてくださいましたから」
「性別は偽りでも、千早さんの聖應魂は本物だと思いますから」
「だって、千早」
「薫子さん……」
 薫子さんがそんなのもう気にしなくていい、という具合に肩を叩いて笑った。
「じゃあ、改めて僕のこと、よろしくお願いします」
「「ええ、こちらこそ」」
 僕が礼をすると、みんながそう返してくれる。これが仲間というものか……。
 偽りのない素顔の自分で接することを受け入れてくれたことで、僕は久しぶりに晴れやかな気持ちになったのだった。

Fin
413名無しさん@初回限定:2012/01/24(火) 02:19:22.88 ID:Qb4CITJ60

48対0とかバスケじゃねーんだからって思ったが、高校野球の公式戦で100点オーバーが正式な記録にあるのを思い出した
414東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/01/24(火) 02:22:52.16 ID:xRlLDjrb0
以上です。ID:Qb4CITJ60さん、支援ありがとうございます。

>一回表ノーアウト満塁って最初っからボコボコに打たれてるじゃないですかー
だから、最初に結構打つ展開だと言ったじゃないですかー。打ってるのは聖應だけですけど。

では、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。
415名無しさん@初回限定:2012/01/24(火) 03:55:22.00 ID:6aohmR9W0
乙、外野の千早様からレーザービームが飛んできたり
打った瞬間にグワァラゴワグワァギャギーンとか文字が出そうな聖應ナインですね
416名無しさん@初回限定:2012/01/24(火) 06:36:56.09 ID:dM/nOjBti
>>414
だれうまw
417名無しさん@初回限定:2012/01/24(火) 20:05:49.17 ID:YwUf3T8p0
>>413
でも、その後、不屈は一人で逆転するんだぜ

>>414
418名無しさん@初回限定:2012/01/27(金) 05:55:40.12 ID:lY7FZfNC0
なんか、サスペンス調なのって出来ないだろうか
419名無しさん@初回限定:2012/01/27(金) 07:31:15.87 ID:+sOsA31C0
寮に忍び込もうとして、初見だとあっさり殺されるみたいな?
420名無しさん@初回限定:2012/01/28(土) 08:11:30.00 ID:/V4/+7YM0
家元試験って、時期的に1月と2月のどっちかなー。
バレンタインの前か後かがちょっと気になる。
421名無しさん@初回限定:2012/01/28(土) 11:32:26.93 ID:jHPUX/OK0
後じゃなイカ?
422名無しさん@初回限定:2012/02/04(土) 19:33:12.15 ID:4iMe/8NX0
きっと作者神はこぞってバレンタインssを作成中と期待。
423名無しさん@初回限定:2012/02/05(日) 00:52:37.73 ID:6KQLeNe60
ヴァン・アレン帯のSS?
424東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 14:43:59.36 ID:VyMigA8p0
また電波を受信しましたので投稿させていただきます。
今度は11レス分あります。
よろしくお願いします。
425東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 14:48:55.97 ID:VyMigA8p0
 私立聖應女学院。世間から隔離された聖なる乙女の園。そこで繰り広げられる優雅で上品な挨拶、交流、
その独特の雰囲気が生み出す暖かく柔らかい風景……そんないつもと変わらぬ日常……。
「お姉さま、おはようございます!」
「はい、おはようございます」
「あの、お姉さまはどういったものを好まれるのですか?」
 ……のはずだった。
「……えっと、どういったもの、とは?」
「純愛系とか、無理やり系とか、百合ものとか、殿方どうしとか」
「は……?」
 話が見えてこない。一体何を言ってるんだろう。この娘は?
「ですから、その、エッチなDVDのことです。お姉さまがいくつかご購入された、とお聞きしまして……」
「は……はああああああ!?」

〜エッチなお姉さまはお好き?〜

 一体どこからそんな噂が……少なくとも、僕はそんなものを買った覚えはないし、
誤解されるような行動を起こしたこともない。
 その娘の発言を否定した僕は下駄箱で上履きに履き替えようとする……が……。
「わあっ!」
 またいつものラブレターの嵐……と思っていると……。
426東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 14:52:03.02 ID:VyMigA8p0
「あああ……やっぱり……」
 屋上で中を見てみると、エッチなDVDのことについて、自分も好きだとか、おすすめの俳優さんとか
趣味別にお勧めのDVDとかを書いてある手紙とかもあった。
「誰がエッチビデオマニアですか……」
「千早、エッチビデオマニアだったの?」
 僕が心底ぐったりしながらつぶやくと、背後から声が……。
「薫子さん……違いますよ。周りが誤解しているだけです」
「どうだか……千早もやっぱり……なんだしね」
 薫子さん、ニヤニヤしながら言うのはやめてください。
「だから違いますって。そもそもその手の品物は18歳以上でないと入手できないでしょう?」
「でも、みんな隠れて見てるみたいだけどね」
「……そのようですね」
 ……こんなにエッチなことに興味のある女の子がいたなんて……怖い。
「まあ、誤解ってことにしといて……こうなった心当たりは?」
「……まったく」
 というか、エッチなビデオとかDVDとかを手に入れたと間違えられるような行動もとっていない……はずだけど。
427東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 14:55:31.64 ID:VyMigA8p0
「噂そのものはそのうち収まるだろうけど、生徒会も動くかもしれないし、となると、ちょっとまずいんじゃないの?
それでバレるかもしれないし」
「……ですね」
 ……どうしようか?

「お姉さま」
「沙世子さん……」
 選択授業終了後。言ってるそばから、これだ。
「お聞きしたいことが……」
「いかがわしいビデオの件でしたら、ただの噂です。そのような事実はありませんわ」
「でしたら、どうして私の用件がそのことだと分かったのですか?」
 沙世子さんはさらに目を険しくして僕を問いつめてくる。
あなた、この学院の情報伝達スピードとエルダーの威光を知らないんですか?
「私の所にそのいかがわしいビデオの話を聞いた生徒が多数接してきましたから。それぐらいは想像つきます」
「……なるほど。けど、あなたと親しい生徒からあなたがその手のものを買ったという証言もあるのよ」
「ええええええっ!?」
 だ、誰だよ! そんなウソついたのは?
428東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 14:58:23.97 ID:VyMigA8p0
「そ、そのようなこと、いったい誰が!?」
「情報提供者は明かせないわ。まあこちらも確かな証拠はないから今日のところはこれで引き下がりますけど、
あの手のものは例え18歳以上でも高校生は入手できないはず。これは校則以前に法律違反ですから。
エルダーの立場をくれぐれもお忘れなく」
 そう言うと沙世子さんは去っていった。けど、誰なんだ、その生徒って? 何のためにそんなことを?

「ひどいですわ、お姉さま」
「雅楽乃……」
 放課後、華道部に顔を見せた僕は、早速雅楽乃から抗議を受けていた。頬を膨らませるということは、
やっぱり噂がらみだろうか?
「エッチなビデオで性欲を処理するぐらいなら、私が処理してさしあげますのに……」
「う、うたちゃん! なんてこと言うのよ!」
「雪ちゃんの言うとおりよ! あの噂はまったくの誤解だから」
 まだ僕と雪ちゃんしか来ていないからいいけど、他の人たちが聞いたら大変なことになるぞ。
「そうなんですか? でも史さんの話では、確かに千早お姉さまがエッチなビデオをご購入されたとか……」
「史が!?」
 どういうことだ、それって!?
429東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 15:01:18.27 ID:VyMigA8p0
 史が僕の首を絞めるような真似をするとは考えにくい。ましてやそんなデタラメを言うなんて……
どうなってるんだ、いったい!?
 考えたくないけど、まさか、沙世子さんに言った親しい人というのも……!?
「ところで雅楽乃……」
「はい?」
 僕が顔を引きつらせながら呼ぶと、雅楽乃は首をかしげる。
「自分が私の性欲を処理するなんて、2人っきりの時ならともかく、他のみんなが来るようなところでは、
冗談でも言っちゃダメよ」
「冗談ではありません。100%本気です」
「「余計悪いっ!!」」
 悩ましげな表情で言う雅楽乃に、僕と雪ちゃんのツッコミがハモった。

「ふう……どうなってんだろ?」
 華道部での活動を終えた僕はため息をつきながら事件の真相について考えていた。
「やあ、これは奇遇だね」
「ケイリ……」
 廊下の向こうからケイリが……そうだ、ケイリなら何かわかるかも!
「どうも悩んでいるようだね。あるはずのない星の巡りが見えて頭の中の星がカオスに迷走している……というところかな?」
「ま、まあそんなところです」
 ケイリの言うことだから、だいたいあっている……はず。
430東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 15:04:11.34 ID:VyMigA8p0
「真相はわかりますか、ケイリ?」
「そうだね……地球を周る月は1つだけど、月は1つじゃない。全ては星の入れ替わりから始まったことだよ」
 月は1つじゃない? 確かにあの手のDVDは種類がいっぱいあるけど、それがどう関係するんだ?
「まあ、このことは時が解決してくれるよ。分からないことで悩むより、時のある場所に向かうのがいいんじゃないかな?」
「はあ……」
 要するに、考えるより行動しろってことか。確かにいくら考えても答えは出そうにない。史に聞いてみるか。

「史」
「なんでしょうか、千早さま」
 僕は櫻館に帰ってくると、僕の部屋に来た史に早速聞くことにした。
「雅楽乃に僕がエッチなビデオを購入したって言ったらしいけど……」
「どなたがですか?」
「だから、史が」
「史はそのようなことは申し上げておりません」
 え? 雅楽乃に言ってない? どうなってるんだ、これは? 史も雅楽乃も嘘をついてるようには見えないし……。
431東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 15:07:35.50 ID:VyMigA8p0
「千早さまはどなたからその話を?」
「どなたって、雅楽乃本人から」
「御前が千早さまにそのような嘘をつくとは思えませんが……」
「だろ? この事件は僕も訳がわからなくて困ってるんだよ。史や雅楽乃が嘘をついているとは思わないけど、
だからこそ混乱しているんだ」
「なるほど……でしたら、明日にでも御前ともう一度話をしてみましょう」
「お願いするよ……僕も一緒に行っていいかな?」
 そうすれば何か気づくかもしれないし……けど、今日こんな調子で寝られるかな?

「千早ちゃん」
「なんですか、初音さん?」
 夕食も終わった後、部屋に帰ろうとした僕は初音さんに呼び止められた。
「今日、沙世ちゃんから……その……噂について問いただされませんでしたか?」
「問いただされました……」
「やっぱり……沙世ちゃん、ちょっとお堅いところあるから……」
「うわさって、ちはやがビデオをどうとかって?」
 優雨のところにまで……。
「ええ、そうよ」
432東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 15:10:49.47 ID:VyMigA8p0
「ちはやがイカがワシのビデオをかうと、どんなもんだいがあるの? イカがワシのビデオって、どんなビデオなの?」
 と、とんでもない質問を……とてもそのまま答えるわけにはいかない。
「よ、要するにね、私たちはまだ買ってはいけないビデオを買ったんじゃないかって思われてるってことよ」
「ふーん……どうしてかってはいけないの?」
「そ、それは……」
 結局、優雨は延々と質問を繰り返し、僕と初音さんで内容をなんとかごまかすのに十数分かかった。
「私は千早ちゃんのことを信じてるけど、でも沙世ちゃんに徹底して調べられると、まずいことになるかもしれませんね」
「そうですね……なるべく早く真相究明します」
 初音さんは知らないだろうけど、僕が男だってバレる可能性もあるんだから。
「お願いしますね、千早ちゃん」

「そう。やっぱりデマだったの」
 香織理さんの部屋の模様替えを手伝いという口実で呼ばれた際、やはり噂の件で問いただされた。
「それはそうよね。千早ってそういうことにほとんど免疫ないし、
バレるリスクを増やすようなことをするなんて考えにくいしね」
433東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 15:13:35.71 ID:VyMigA8p0
「えーっ!? 千早お姉さま、買ったっておっしゃってたじゃないですか!」
「陽向ちゃん……」
 そこへ、陽向ちゃんが入ってきて抗議する。しつこいけどそんなこと言った覚えはないぞ。
「いえ、言ってませんから」
「だって、一昨日の夜史お姉さまと話してたじゃないですか! エッチなビデオが使えなくなったから
新しいのを買ってくるって、そして昨日買ってきたって報告してたじゃないですか!」
「だから、そんな会話はして……」
 待てよ? 一昨日? 史と? 使えないから新しいのを買ってくる? あっ!

「千早さま、実家のAV機器が寿命が近くなってきたようです」
「そう。じゃあ史は明日薫子さんと約束がありますから、私が買ってきましょう」
「申し訳ございません。史が買わなければならないのに……」

 AV……エーブイ……えーぶい……そうか、そういうことか!
434東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 15:21:08.97 ID:VyMigA8p0
「陽向ちゃん、私たちの言ったAVってオーディオビジュアルのことなの。アダルトビデオのことじゃないのよ」
「えーっ!?」
 ……ということは、恐らく史と雅楽乃の会話も……。

「史さん、千早お姉さまがAVをお買いになったというのは本当ですか?」
「ええ、確かにAV機器をお買いになられました」

 こんな感じで、AVという単語でまったく別のことを思い浮かべながら、たまたま会話が噛み合ってしまっただけなんだろう。
「そ、そんなあ……せっかく面白いネタを仕入れてきたと思ったのに……AV違いなんて……」
 陽向ちゃんが漫画のように涙を流しながらがっくりと床に膝を落とした。
「陽向……そんなに悲しいなら、ここで私がネタになることをしてあげましょうか?」
 香織理さん、顔が思いっきり意地悪モードなんですけど……。
「い、いえ、遠慮しときます……いやあ、日本語って難しいですねえ……」
 そう言って逃げようとする陽向ちゃんを、香織理さんの手が掴んだ。
「ごまかさないの。それに遠慮もしなくていいのよ」
「いやー!!」
 その日、櫻館に陽向ちゃんの悲鳴が響き渡った。
435東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 15:24:53.19 ID:VyMigA8p0
「まったく、あの娘は作家志望なのに、それぐらいの可能性もわからないのかしら……」
「まあまあ香織理さん、こういうのも作家になるために必要な経験で、それを積んだと思えばいいじゃないですか。
人生何事も経験ですよ」
「そうね。じゃあ千早もこっちのAVの経験をしてみる?」
 香織理さんが悪戯っぽい目で僕を見る。
「い、いえ、今日はもう遅いですから……」
「遅いからいいんじゃない。人生何事も経験なんでしょ?」
 香織理さんが悪戯っぽい目のまま僕に迫ってきた。
「わーっ!!」

Fin
436東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/05(日) 15:29:05.95 ID:VyMigA8p0
以上です。
陽向ちゃんと千早くんが香織理さんに何をされたのかは皆様のご想像にお任せします。

それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。
437名無しさん@初回限定:2012/02/05(日) 15:58:47.68 ID:aXeJasVR0
千早ちゃんは羨ましいなあ香織理さんに襲ってもらえて(

千早ちゃんや瑞穂ちゃんがうっかり「エロマンガ島」とか言ったら
マジ幾重にも尾鰭付いて広まりそうだよな……
438名無しさん@初回限定:2012/02/05(日) 17:38:56.43 ID:X34qhet80
聖應では地理でオマーンのことも教えられないじゃないですかー、やだー(棒

ダメだこの毒電波発信塔二人、早く何とかしないと…
439名無しさん@初回限定:2012/02/07(火) 21:26:15.06 ID:Sqh/47xP0
>>438
>ダメだこの毒電波発信塔二人

ちょっと待って、二人って誰と誰のこと?!
440名無しさん@初回限定:2012/02/08(水) 00:06:50.00 ID:j2I5M1Z50
陽の字と邪の字じゃないか?
441名無しさん@初回限定:2012/02/08(水) 22:39:17.11 ID:mh6BiKWA0
電器屋でAVコーナー行ってくる
って行ったら親にボロカス言われたの思い出した

なんだよスピーカー欲しかっただけじゃねーか…
442名無しさん@初回限定:2012/02/08(水) 23:21:31.21 ID:j2I5M1Z50
とゆか普通の電気屋に"そういう"コーナーってないよなあ
443スレ一覧飛び対策。:2012/02/11(土) 17:51:15.38 ID:TX/h0s7e0
BOSEのスピーカーのショールームにしょっぴかれて
「これで音楽を聴くと坊主になるのよ?」

……こりゃまた失礼しました。
444東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 13:47:47.34 ID:T6UMFSOf0
こんにちは。東の扉です。
1の由佳里ちゃん聖誕祭記念SSを投下させていただきます。
設定は由佳里エンド後の瑞穂くんの会社です。
17レス分あります。よろしくお願いします。
445東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 13:50:50.12 ID:T6UMFSOf0
 翔耀大学を卒業し、由佳里と結婚した瑞穂は、いつものように由佳里の部屋を訪れていた。
「やっぱり1日の中でこの時間が一番落ち着くよ」
「もう、あなたったら」
 由佳里と瑞穂は愛しそうに見つめあう。やがて由佳里は瑞穂を後ろから抱きしめる。
「社長、いらっしゃいますか?」
 と、そこへ部屋をノックする音が聞こえた。現実に戻った由佳里は瑞穂を離して、瑞穂はドアを開ける。
「あらあら、奥様とお楽しみの最中でしたか?」
「申し訳ありません。どうしても社長のお耳に入れておきたい事がありましたので」
「紫苑さん、貴子さん、それはいいですけど、こんなところでまで“社長”はやめてくれませんか?」
 現在瑞穂は、鏑木グループの会社の1つの社長になっている。そして貴子はその会社の社長室長、
紫苑は副社長になっているので、2人は時々プライベートでも瑞穂をこう呼んでからかって楽しんでいるのだ。

〜悪妻は百年の不作〜
446東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 13:53:44.45 ID:T6UMFSOf0
「それで、話というのは?」
「それが、実は由佳里さんに良くない噂が流れているんです」
「私に……ですか?」
 貴子が真剣な表情で話し始めると、瑞穂と由佳里も真顔になる。
「確かに由佳里は時々会社の方にも顔を出してるし、旅行とかの社内行事にも参加してますけど、
そんな噂が流れるほどではないと思いますけど……」
「どんな噂ですか?」
「それが、由佳里ちゃんが瑞穂さんを篭絡して、あるいは尻に敷いて1人だけ贅沢三昧の暮らしをしている、といった噂ですわ」
「由佳里さんが奥さんでは鏑木家の財産を潰してしまう、あるいは由佳里さんにつぎ込むぐらいなら自分達の給料を上げろ、
という話も出てきているみたいですわ」
「はあああああ!?」
 瑞穂と由佳里は、完全な間抜け顔でお互いを見つめあった。
「ちょ、ちょっと、なんでそうなるんですか? 私、そんなことしてませんよ?」
「私たちもそう思います。ですが、そういう噂が流れているのは事実ですわ」
「まあ、そういうわけで、瑞穂さんと由佳里さんも気をつけたほうがよろしいと思いまして」
「紫苑さん、貴子さん、ありがとうございます」
 紫苑と貴子は、その後瑞穂たちとしばらく雑談をして部屋を後にした。
447東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 13:57:18.63 ID:T6UMFSOf0
「……なんで由佳里が僕を色仕掛けで誑かしたり、おさえつけたりして1人だけ贅沢三昧の暮らしをしている、
なんて話になるかな?」
「私、贅沢なんてしてるつもりない、ていうかそんなの性に合わないのに……」
 実際由佳里は上流階級との交わりの時は豪華な衣装を着て高級料理を口にしたりもしてはいるが、
それはそうせざるを得ない時がほとんどで、普段は瑞穂に合わせて質素な生活をしている。
一般階級出身の由佳里には、高級品に囲まれた贅沢三昧の暮らしなんて、緊張と後ろめたさを感じるだけだ。
「ひょっとして、私が瑞穂さんの奥さんになってること自体贅沢……って意味なんでしょうか?」
「うーん……でも、それだと鏑木家の財産を食いつぶしてしまうってことにはならないと思うし……
由佳里のことを妬んだデマなんじゃないかな?」
「だといいんですけど……」
 その後、瑞穂と由佳里で噂の原因について話し合ったものの、身に覚えのないことに結論など出るはずもなく、
そのまま就寝についた。
448名無しさん@初回限定:2012/02/18(土) 14:01:58.25 ID:KZwXPmo40
支援
449東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 14:04:12.38 ID:T6UMFSOf0
「ねえ、どうして奥様が贅沢三昧の暮らしをしてるってことになるの?」
「あなたが言い出したんでしょ? どういう根拠があるのかって……」
 一方その頃、瑞穂が社長を勤める会社の社員の何人かが、居酒屋に飲みに行っていた。ちょうどその時、
話が由佳里に関する黒い噂の話になり、言い出した女性社員にその根拠を尋ねた。
「だってさ、私たちと一緒に旅行とか行く時とか、取材に出てる時とか、社長はおんなじ高級服ばかり着てらっしゃるのに、
奥様は毎回違う高級服を着てらっしゃるのよ?」
「そういえばそうね」
「確かに社長は同じ服ばかりなのに、奥様が同じ高級服を着てるとこって、見た記憶ないわ」
「でしょ? それって社長は必要な1着しか持ってないのに、奥様は高級服を何着も買ってるってことじゃない。
尻に敷いてるにしろ、色仕掛けでねだってるにしろ、奥様はご自分がやりたい放題やってらっしゃる証拠じゃない!」
 無論、これは彼女の誤解である。由佳里はまりやの帰国時に、高級服をはじめ色々な服を何着も譲ってもらっているから、
何着もの高級服を着れるというだけの話である。
450東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 14:07:16.22 ID:T6UMFSOf0
 しかし、そのことを知らないものが、そんな想像をすることができるだろうか? 実際にこのような噂が流れることは、
無理からぬことである。

「瑞穂さん、私、どうすればいいんでしょうか?」
「どうするって……紫苑さんと貴子さんの言うとおりなら放っておくと大変なことになりかねないな。
とにかく由佳里がそんなことしてないってみんなにわかってもらわないと」
 瑞穂は懸命に考える。下手な説明なんかじゃ逆効果だ。行動をもってわかってもらい、悪い噂を消さないと。
「とりあえず、噂が収まるまで、必要最低限のものを除いて、趣味のものを買わないでおきます」
「……まあ、下手したら離婚せざるをえない、なんてことになるかもしれないしね」
「そんな……嫌ですよ、瑞穂さんと離婚なんて……」
「僕だって由佳里と離れたくなんかないよ。でも、最悪の場合は……」
 自分達の責任以外の理由で愛する人と離れなければならないなんて、理不尽な目に遭うのは誰だって嫌だ。
「とりあえず、それで様子を見てみようか?」
「はい」
 その日から由佳里は、本当に必要なもの以外を我慢するようになった。そしてなるべく低価格のものを選んでいた。
451東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 14:10:33.69 ID:T6UMFSOf0
「鏑木社長、奥様、ただいまお戻りいたしました!」
 突然由佳里の部屋をノックする音が聞こえてきた。留学を終えて帰国したまりやだ。
「まりや? 開いてるよ。どうぞ」
「失礼いたします」
 そう言って部屋を開けて入ってくる。
「お久しぶりです。鏑木社長、奥様」
「……まりや、身内しかいない時ぐらいいつも通りに話して。お願いだから」
「……お姉さま、頭でも打ったのかと思えて心配になってきます」
「なんだとゆかりん、そういうこと言うのはこの口かこの口かこの口かーっ!!」
 途端にまりやは以前のように戻って由佳里の口の中を左右に引っ張ってくる。
「ふぃーっ、あはひわひゅふぁいんやはいわへん!」
 ……よかった、いつものまりやだ。

「ふふっ、やっぱりまりやはこうでなくっちゃね、由佳里」
「そうですね」
 約3分後、まりやにいじり倒された由佳里を介抱しながら聞くと、由佳里もそれに少し疲れを見せながらも
笑顔で賛同してくれた。
 やっぱり、少しトラブルメーカーで困ったところはあっても、僕たちはそのまりやが好きなんだ。
452東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 14:13:43.51 ID:T6UMFSOf0
「じゃあ改めまして、ただいま、瑞穂ちゃん、由佳里」
「お帰り、まりや」
「まりやお姉さま、お帰りなさい」
「はいこれ、お土産」
 まりやはそう言って僕たちに自分がデザインした服を渡した。
「まりや、由佳里はこれでいいけど、なんで僕まで女性服なの?」
「愚問ね。瑞穂ちゃんには男性服より女性服の方が遥かに似合うからに決まってるじゃない♪」
 ガーン!!
「男性服より女性服の方が……似合う……」
 もうこの年齢になってるって言うのに……。
「お、やっぱ瑞穂ちゃんはこうでなくっちゃね、由佳里」
「そうですね。瑞穂さんには悪いですけど」
 まりやには、早速僕の会社の鏑木レディース・チーフデザイナーになってもらい、
ゆくゆくはMIKADOブランドとして売り出していくつもりだ。
「まりやお姉さま、お帰りになられましたのですか?」
 どうやら奏ちゃんも話を聞いたみたいで、僕たちのいる部屋に入ってきた。
「お、奏ちゃん、ただいま」
「お帰りなさい、まりやお姉さま」
「はいこれ、奏ちゃんへのお土産。あとまだいっぱいダンボールに入ってるから」
「ありがとうございます」
453名無しさん@初回限定:2012/02/18(土) 14:15:27.75 ID:1Em6CWss0
支援
454東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 14:16:25.10 ID:T6UMFSOf0
 ちなみに奏ちゃんは、僕の家で暮らしながら、圭さんが座長を勤める劇団「メロディア」で花形女優として活躍している。
余談だけど、鷲尾緑さんや水沢玲香さんもそこのメンバーだ。

「由佳里が瑞穂ちゃんを尻に敷いたり色仕掛けで贅沢三昧い?」
「そんな噂が会社で?」
 しばらくの雑談の後、瑞穂から噂を聞いて大笑いのまりやと唖然とする奏。
「ありえなーい! 一体どうやったら由佳里が瑞穂ちゃんを尻に敷けるのよ?」
 まりやが由佳里と電話していた時、瑞穂にも結構からかわれていることを聞いたり、「たまには思いっきり贅沢したら?」
と言ったら「そんなの耐えられない」と返された事があるから、滑稽に思えて仕方ないだろう。
「色仕掛けの方だけはわからないじゃないけど、瑞穂ちゃんにおあずけ食らわせるほど器用じゃないでしょ、由佳里は」
「まりやお姉さま!」
「まあまあ2人とも、それで、どうしたらいいと思う?」
「そうですね……」
 広まってしまっている以上噂の出所を探すのは難しいだろうから、行動でその噂を否定するのが一番だろう、
というのがまりやたちの意見だった。
455東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 14:19:29.95 ID:T6UMFSOf0
「紫苑さん、貴子さん、噂はどうですか?」
 数日後、瑞穂はもう噂も収まる頃だと思い、2人に聞いてみることにした。
「……駄目です。全く消えていません」
「由佳里も必要最低限のものしか買わなくなって数日経つから、もう噂も収まるころだと思ったんですが……」
「いったいなぜ由佳里ちゃんが瑞穂さんを篭絡してやりたい放題、などという噂になるのでしょうか?」
「さあ……?」
 紫苑も貴子も奏も、由佳里がまりやから色々な衣装を絶えずもらっていることは知っている。知っているが、
由佳里は衣類はもらっているので全くお金をかけていない、というのが常識となっているので、そこには考えが及ばなかった。
 見えているが見えていない。こんなに明確な原因が。
「今のところ必要最低限のものしか買っていないから、削るとしたら食費……かな?」
「もうそれぐらいしかありませんね」
 と言っても、食事は楓か由佳里が作ってるし、高級食材を使っているわけでもない。
残る選択肢は、常に一汁一菜の食事にする……ぐらいしか思いつかなかった。
456東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 14:22:58.30 ID:T6UMFSOf0
「ハンバーグも食べられないってこと……ですか?」
「噂が消えるまでの我慢だから。それに、一汁一菜の食事って、美容と健康にもいいって話だよ」
 由佳里も瑞穂が自分のためを思って言っているのは分かるし、美容と健康にいいのも知っている。
瑞穂と一緒にいるためにも必要だから、由佳里はそれに従う決心をした。
「ごめんね、由佳里。こんなことに巻き込んじゃって」
「いいえ、瑞穂さんのせいじゃないですし、私のためってのもわかりますから。それに、
たまにはハンバーグ抜いてみるのもいいかもしれませんし……」

 3日後……。
「ハンバーグぅ……」
 会社には、すっかり気力をなくし、肩を落として目から涙の滝を滴らせ続ける由佳里の姿があった。
「由佳里……」
「これは重症ですわね」
「一刻も早く噂を消さないといけませんわね」
 と、ちょうどその時……。
 バン!
「な、何!?」
 社長室の扉が開かれ、暴徒と化した社員達が押し寄せてきた。彼らは由佳里に贅沢に溺れるのもいい加減にしろだの、
給料あげろだの離婚しろだの大声で叫んでくる。
「おやめなさい!」
 そこへ、とうとう我慢できなくなった瑞穂が叫んだ。
457名無しさん@初回限定:2012/02/18(土) 14:23:16.06 ID:KZwXPmo40
紫苑
458東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 14:28:23.96 ID:T6UMFSOf0
「由佳里は、私を色仕掛けで篭絡しても、尻に敷いてもいないし、まして贅沢に溺れてなどいません!
最近は生活費も切り詰めているっていうのに、なぜそんなことが言えるのですか!」
「だ、だって、社長は高級服を1つしか持っていらっしゃらないらしいのに、奥様は何着も高級服をお持ちじゃないですか!
 色仕掛けでも尻に敷いてもいないなら、なぜそんなことが起きるっていうんですか!」
「そうです! 説明できるものならしてみてください!」
 それを聞いて、瑞穂以下由佳里、紫苑、貴子、まりやの5人は唖然とした。
そして数秒後、社長室に5人分の笑い声がこだました。
「それは誤解だって。あたしの家は両親があたしを甘やかしっぱなしで衣服を買いすぎなの。
だから高校時代の後輩の由佳里にその時からずっと由佳里に似合う服を何着か譲ってるのよ。
そうしないと家に置いとく余裕が全然ないからね」
「え……?」
「そういうことなの。だから、由佳里は衣服の購入には1円も使っていないの」
「なるほど、由佳里ちゃんの衣服が噂のおおもとでしたか」
「それは盲点でしたわね」
 瑞穂が説明すると、紫苑と貴子もため息をついた。
459名無しさん@初回限定:2012/02/18(土) 14:37:55.48 ID:1Jpii4oX0
支援
460東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 15:32:25.18 ID:341GV0+a0
「奥様、申し訳ありませんでした!」
 誤解が解けた後、押しかけてきた社員達は平身低頭に謝罪する。
「わかったから頭上げて。そうよね。そうと知らなければそんな風に考えるのも仕方ないわよね」
 由佳里はしどろもどろで冷や汗混じりに弁護する。
「由佳里……」
「でもよかった。本当に私が瑞穂さんの重荷になってたわけじゃなくて……」
 そしてほっと安堵のため息をついた。
「あ! そうだまりやお姉さま、どうせなら会社のみんなにも衣服を持ってってもらいませんか?」
「なるほど、それいいわね!」
「まりやさんも邪魔な衣類を今までより遥かに多く処分できますし、皆さんの衣装代も浮く。一石二鳥ですわね」
「じゃあ早速、善は急げよ!」
 まりやはそう言うや実家に余分な衣装を取りに帰った。

「はいはーい! 大安売りよー!」
 3日後、まりやは実家から持ってきた衣装を、現在の価格の4分の1の値段で売っている。
「てゆーかまりや、お金取るの?」
「いいじゃないの。75%オフの大サービスなんだし。1人が限度を超えて持って帰っても問題でしょ?」
461東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 15:35:52.28 ID:341GV0+a0
 確かにタダにしては独り占めしようとする人が出てきてもおかしくない。
そうなると、手に入れられなかった人の不満も出てくることだろう。
「そうですね。言われてみれば確かに良心的価格ですし、必要なことかも」
「でしょ? あたしだって単に欲でお金取ってるわけじゃないのよ」
 そしてこのバーゲンセールの結果、ある程度売れることは売れた。しかし……。
「まだ半分近く残ってますわね……」
「皆さん、これ程いっぱい衣類を着ることもないでしょうからね」
 そう。大好評で、みんなある程度いつもよりは大量に購入したのだが、それでもまりやが持ってきた大量の衣類の中の
半分程度でしかなかった。
「まりや、この余った衣類はどうするの?」
「それについてはご心配なく。ちゃんと対策考えてあるから」
 心配そうに言う瑞穂に、まりやは自信満々の笑みを浮かべて言った。
 そういえば、中には全く買わなかった人もいるみたいだけど……瑞穂は不思議そうにその人たちを見る。
462東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 15:39:37.01 ID:341GV0+a0
「えー、皆様、本日は御門まりやの余り物処分セールにお越しいただき、ありがとうございます! お礼といたしまして、
ただいまより、社長鏑木瑞穂による、ファッションショーを開催いたします!」
「えーモガモガ……」
 瑞穂が悲鳴をあげそうになると、まりやが途端に口を押さえて瑞穂を控え室の方に連れて行く。
「どういうことだよまりや! 聞いてないよそんなの!」
「言ってないもん」
「あのねえ……僕がそういうこと嫌がってるのはまりやも……」
「でもね瑞穂ちゃん、ここで嫌だからってやめたらどうなると思う?」
「くっ……」
 みんなをがっかりさせることになるだろうし、社長である自分の信用にも関わるはずだ。
「それに、嫌がっている女装を会社や社員の皆さんのために進んでやるとなれば、瑞穂さんも会社の内外から
相当な人望を得られるはずですわよ?」
「確かに今の時代、そういう行動一つが会社の命取りになるということも十分ありえますから、
瑞穂さんのお気持ちもわかりますが、まりやさんに従った方が賢明かと……」
 まりやに続き、紫苑と貴子もまりやに同調の意見を示した。
463東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 15:42:59.81 ID:341GV0+a0
「私も瑞穂さんのファッションショー、是非見たいです……」
 ちょっと弱気な由佳里の主張。
「ほら、由佳里もこう言ってるじゃない。今まで倹約で我慢してきたんだから、由佳里へのご褒美ってことで……」
「わかりましたよ」
 瑞穂はしょうがないな、という感じで苦笑して承諾した。なんだかんだ言っても、由佳里には弱いようだ。
 そして瑞穂のファッションショーは当然のごとく大盛況で終わった。
「ううう……」
 いつもの如く瑞穂が落ち込んでいると、さらにまりやから驚くべき宣言が……。
「では、これより鏑木瑞穂が着た衣服と下着のオークションを行います! まずはこちらの衣服を」
「△§*↑@◆♯〆☆‡!!」
 瑞穂は大きく口を開けて固まった。そして十数秒後……。
「ま、まりや、なんてことを……!」
(これが今回のセールの肝なの。うちの衣服を処分するのに一番効果的な方法なんだから)
 抗議しようとした瑞穂に、まりやが耳打ち。しかし瑞穂も負けていない。
(だからって、なんで毎回僕だけ……)
(瑞穂さんだけではありませんわよ?)
「え……?」
464東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 15:45:52.92 ID:341GV0+a0
「まりやさんの従兄弟の千早さんもご協力いただいたそうですわ。はい、これが証拠です」
 貴子はそう言って領収書を瑞穂に見せる。確かに千早の着た衣服や下着の領収書控えには「七々原薫子」「哘雅楽乃」
「宮藤陽向」といった名前が書かれていた。
「千早さんは瑞穂さんと同じ気持ちでしたでしょうに、嫌な顔一つなさらずに皆さんのために引き受けてくださいました。
周りの方々のために」
 そして紫苑の泣き落とし。ここまで見せられては、さすがに瑞穂も嫌とは言えなかった。
 瑞穂の着た衣服や下着はどれもこれも高値で落札し、後には大金の山だけが残った。
「はい、これは紫苑さまの分です」
「ありがとうございます、まりやさん」
「これは貴子の分ね」
「まったくもう、あなたという人は」
 そう言いながら、紫苑も貴子もあらかじめリクエストした瑞穂の衣服と下着を笑顔で受け取っている。
「ううう……僕の男としての尊厳は一体……」
「瑞穂ちゃん、そんなに落ち込んでるなら、後で由佳里に慰めてもらえばいいよ。じゃ、あたしたちは片付けがあるから」
465東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 15:48:48.52 ID:341GV0+a0
 そう言ってまりやたちはフラフラの瑞穂を由佳里に任せ、取り分の計算と後片付けにかかっていた。

「あの衣服や下着がなんであんな高値で売れるんだ……僕が着た後なのに」
「あなた、着た後だから高値で売れるんですよ。私だって高値出してでも欲しいくらいですから」
 その日の夜、瑞穂は由佳里と今日のことを話していた。
「わからない……」
「ですから、大好きな人の服とかを着ると、その人に抱かれてるような感覚になるんです」
「えっ……?」
「あ、わああっ!!」
 そこまで言って、由佳里は自分が瑞穂に抱かれたいといってることに気づき、耳まで真っ赤になる。
「あ、ああああの、まりやお姉さまにも言われてますし、慰めて差し上げますね!」
「ふふっ、じゃあお願いしようかな……」
 この日瑞穂は、由佳里に朝まで慰めてもらい、由佳里も苦痛から完全に解放されたのだった。
「僕はどうなんだよー!!」

Fin
466東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/18(土) 15:55:14.49 ID:341GV0+a0
以上です。皆様支援ありがとうございます。
途中バイさるに巻き込まれてしまい投稿にここまでかかってしまいました。すみません。

しかし、これで私が連続3回投稿ですか……。
そろそろ他の方のSSも見てみたいと思う今日この頃です。
最後に、由佳里ちゃん、お誕生日おめでとうございます!

それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。
467名無しさん@初回限定:2012/02/18(土) 16:09:39.76 ID:cxamtEwN0
乙したー

SSかー。
「くっ! もうそうりょくが たりない!!
468名無しさん@初回限定:2012/02/18(土) 16:46:08.52 ID:KZwXPmo40
乙でしたー
469名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 02:04:19.05 ID:q6vfuXck0
東の扉氏ひさしぶり

そして乙
470 忍法帖【Lv=2,xxxP】 :2012/02/19(日) 10:50:34.15 ID:1XynHTsC0

早く書きたいけど・・・
471名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 14:54:31.40 ID:ShIgAdfx0
それじゃ、ちょっぴり書いてみちゃおうかなー。
無駄に長くなってしまったバレンタインネタでも。7本+8本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『御下賜』

それはバレンタインから数日後のこと。

期末テストも終了し、大半はすでに内部進学が確定しているうえ
数少ない外部受験組は入試戦線の真っ最中であるため、
3年生の授業自体はほぼ消化試合の体を為している。

そんなわけで、すっかり弛緩した感のある雰囲気のなか、
事前に自習申請を提出済みの千早は、間近に迫った本命の入試対策のために、
朝から一人で図書室に籠もりきりなのであった。

「ふぅ‥。もう昼休みですか‥。」

午前中、図書室で一人過去問制覇にいそしんでいた千早は
試験時間にあわせ設定していたアラームの小さな音を聞き、手を止めた。

すでに4限は終了し、昼休みに突入している時間帯ではあるが、
ここしばらくの間、占拠している図書室の一角には学院生は滅多に近づいてこないため
あたりはまだまだ静寂に包まれている。

「答え合わせは‥昼食の後にしましょうか。」

首を大きくぐるりと回して、こわばった肩の筋肉をほぐし。
腹ごしらえでもしますかと、千早は小さなポーチを手に取り図書室を後にした。

***
472名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 15:00:32.62 ID:ShIgAdfx0

クラスの皆はすでに昼食を終えていそうな時間帯であったため
一人で食事を取るしかないか‥と溜め息を一つ。ゆっくりと食堂に向かっている途中
ちょうど通りがかったのか、香織理が楽しげに声をかけてきた。

「あら、千早。午前の部は終わり?」
「えぇ。ちょうど一区切りついたもので。」
「ふぅん。なら私も付き合ってしまおうかしら。」
「香織理さんがよろしいのでしたら是非に。」

気分転換に付き合ってくれるならと大歓迎。
連れだって食堂へと向かうことにする。

「勉強のほうはどうなの?」
「まぁ、ぼちぼちといったところでしょうか‥」
「千早のぼちぼちは、薫子だとどのくらいになるのかしらね。」
「さぁ? それは薫子さんに直接ご確認をお願いします。」

さりげなくひどい会話を交わしつつ食堂に到着し
千早はランチを、香織理は紅茶を注文して。

「今日は混んでいますね。」
「そうねぇ。この寒さだと外で食べる気にもならないでしょうし。」

中央付近のテーブルに空いている席を見つけた二人は、
雑談に興じていた下級生たちに相席をお願いし、席に着く。
当然ながら下級生達は大喜び。頬を染め、小さな声でこの幸運を共有しあう。
473名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 15:06:25.59 ID:ShIgAdfx0

「ふふっ。さすがエルダー様の威光というやつかしら?」
「まぁ、喜んでもらえているようですし、よいのではないでしょうか。
 こんな私でよければいくらでも相席いたしますし。」
「あらあら。そんな大安売りしていいのかしら?」
「えぇ。私なぞを買っていただける粋狂な人がいるのでしたら。」
「エルダーオークションか。なかなか高値がつきそうね。」
「‥‥やっぱり、その話はなかったことでお願いします。」
「あら、残念。」

などと謎な会話を交わしつつ、千早は血糖値の補給に邁進する。
そんな千早に柔らかな視線を向けつつ、紅茶を味わう香織理であったが。

「あ、香織理さん。
 お茶請けではないですけど、これいかがですか?」

そんな香織理を見て、千早がポーチから取り出したのは。
タッパーにはいったチョコレートであった。

「これって‥‥。」
「えぇ‥。」

なにせ最終的には学院生の8割相当、600箱を超えるチョコレートが机の上に積み上がり。
クラス全体で消費に協力したはいえ、それぞれの一部はしっかり千早に分配されているわけで。
474名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 15:12:08.71 ID:ShIgAdfx0

「そういえば。一昨日の夜に寮で食べたのは生チョコだったわね。」
「えぇ、あれは日持ちしませんから。」
 まぁ、これらも勉強の合間につまむ、という意味では悪くはないんですけどね。」
「とはいえ、全体量を考えると頭が痛い‥って感じかしら?」
「よくおわかりで‥。」

しょうがないので一部を持ち歩いて、少しずつ消費しているのである。

「じゃあ、せっかくだからご相伴にあずかってしまおうかしら。」
「えぇ、是非にでもご協力をお願いします。」

そういって香織理は1つを選び、ぱくりとほおばり。
ゆっくり味わってから一言。

「さすがに美味しいわねぇ。」
「えぇ。本当に。」

なんだかんだいっても最高級のチョコばかり。
年頃の乙女にとってこれほど幸せなものはない。

「でも、毎食、毎日続くとなると。
 お肌や体重のことも考えて遠慮したくなるわね‥。」
「それは言わないでくださいな‥」

そう。
それが少量であるならば。

***
475名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 15:18:01.23 ID:ShIgAdfx0

そんな会話を続けながらも、千早もようやく昼食を終えて。
食後のお茶をゆっくり堪能している。

「では、エルダー様の負担を減らすべく、もう1個いただこうかしら。」
「どうぞどうぞ。」

そういって香織理に勧めつつ、千早も1つ手に取り包装を解く。
ぱくりと口にし、口中に広がる上品な甘さに
確かに美味しいことは否定できないんですけどねぇ‥などと小さく呟く千早。

「ねぇ。千早。」
「はい?」
「どうせなら、配ってしまったら?」
「え?」

小声で話しかけてきた香織理の視線は、相席している下級生達を指している。
476名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 15:23:43.15 ID:ShIgAdfx0

「いや、さすがに。皆様からの気持ちとして戴いたものをお配りするとなると‥‥」
「でも全部で600個として、1日10個消費しても2ヶ月かかるのよ。私たち卒業しちゃうじゃない。」
「う‥。」
「多少は協力しなくもないけど、毎日とかは遠慮させてもらうわよ?
 薫子のとあわせて1200個以上。寮生7人でわっても‥‥正気の沙汰じゃないわね。」
「ですよねぇ。」
「それに、バレンタインのチョコなのだから、
 ホワイトデーまでには消費してあげるのが優しさじゃないかしら。」
「そうなんですよ‥。それも考えなかったわけではないのですが
 1日20個とか、思わず思考停止したくなりまして。」
「だからこそ、よ。」

そういって笑う香織理を前に、それでも逡巡してしまう千早。

「本当に真面目なんだから‥。お礼のメッセージも書いたんでしょ?」
「えぇ。簡単ではありますが、昨日ようやく書き終えました。」
「そもそも 気持ち というけれど。憧れだけじゃなく、非日常イベントの一環や、
 周囲の流れに乗っただけのもあるだろうし、そこまで気にしなくてもいいんじゃない?」
「うーん。そういうものでしょうか‥。」
「まぁ、千早が1ヶ月後までに消費できる自信があるなら止めないけど。」

答えはどうせ出ているんだから、とでも言いたげな香織理の笑みの前に、
千早も諦め半分、ようやく覚悟を決める。

「そうですね‥。香織理さん、ありがとうございます。」
「じゃあ、報酬ついでにもう1個だけもらおうかしら?」

***
477名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 15:30:25.01 ID:ShIgAdfx0

そんなわけで。
頬を染め、きゃいきゃいと笑顔で雑談を交わしている下級生らに
とっておきの笑顔を添えて、優しく声をかける。

「お話中、ごめんなさい。少しよいでしょうか?」
「えっ? は、はい!」
「もし迷惑でなければ、少し助けてもらえないかしら?」
「は‥?」

かくかくしかじかと事情を説明したうえで。
大喜びの学院生たちに、一人ずつチョコを手渡していく。

「頂き物のお裾分けで申し訳ないけれど、
 よろしければ、一緒に美味しく味わってくださいな。」

にっこり微笑みつつ。
そういって千早ももう1つを口に運ぶとなれば、
一同もその場でありがたく食べるしかなく。

「ふふっ。さすがね。」
「まぁ、下手に持ち帰られてしまうことは避けたいですしね‥。」

それでなくても大騒ぎになることが目に見えているうえ
プレミアだの家宝だの、後生大事に保存されてしまっては
せっかくの美味しいチョコレートも浮かばれない。

そのあとはなし崩し的に下級生との会話に巻き込まれる形で
予鈴が鳴るまで、楽しい時が流れていくのでした。

----------------------------------------------------------------------
とりゃえず、ここまでー。
478名無しさん@初回限定:2012/02/19(日) 16:06:57.38 ID:JHmgjc/j0
続きマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
479名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 06:47:00.22 ID:1z0q5z7d0
目標5本で朝からぺたーり。途中で止まったら規制くらったご認識ください。
----------------------------------------------------------------------

翌日。

いつものように図書館籠もりをしていた千早であったが。
小さなアラームにペンを置いた瞬間。

「はい、お疲れ様。」
「え? あ、香織理さん?」
「どれどれ。 って、さすが千早よね‥。私にはさっぱりわからないわよ、こんな問題。」

香織理にルーズリーフを奪われた。

「で、どうしたんですか?」
「ふふっ。エルダー様が寂しく一人で昼食を取るなんて見過ごせないってところかしら。」
「あぁ‥‥。わざわざありがとうございます。」

昨日のこともあり、わざわざ迎えに来てくれたのだろう。
そんな香織理の心遣いに礼をいう千早。

「今日も食堂よね?」
「えぇ。香織理さんがよろしければ。」
「昨日よりもちょっと時間が早いけど‥‥まぁそれも一興かしら?」
「はい?」

楽しげな笑みを浮かべる香織理に、要領を得ない千早であったが。
いざ食堂にいかん、と誘われれば黙ってついていくだけで。

そして。
食堂に千早が足を踏み入れた途端。
空気がざわり、と揺れた気がした。
480名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 06:52:45.38 ID:1z0q5z7d0

「えっ?」
「それで千早は今日はなににするの?」
「え?、あぁ‥、そうですねぇ‥。」

一瞬の違和感は、香織理に話しかけられたことで霧散してしまい
千早の意識はランチメニューに向けられる。

「さて。座席は‥‥と。」

できあがった料理を受け取り、空いている席はないかと見回す千早。
いつもよりざわついているような‥、いや、緊張して静かなような‥
なぜか緊迫した雰囲気に内心首をひねりつつも。

普段より混んでいる食堂は、それでもテーブルごとにぽつんぽつんと空席がある。
いろいろ気遣いしてしまう身としては、できればゆとりを持って座りたかったりするわけで。
奥の壁際の大テーブルに4席ほどの空席を見つけた千早は、香織理に話しかける。

「今日は混んでいる割には空席がありますね。
 あの奥のところはどうでしょう?」
「いいんじゃない?」

くすりと面白げに微笑んだ香織理の同意を得て、
二人はゆっくりとテーブルを目指す。

 ざわ‥
      ざわ‥

数人が立ち話をしている通路、下膳のために厨房に向かう人がいる通路、
それらを避けるため、通るルートが右往左往してしまったのだが
その都度、なぜかざわめきが大きくなっている気がする。
481名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 06:58:15.01 ID:1z0q5z7d0

「香織理さん‥、少し変ではありませんか?」
「そう? 視線を集めるのはもう慣れたっていってたじゃない?」
「いや、それとは違うんですけど‥」

いつもよりも視線が集中しているような、
いつもよりも視線が熱いような、期待が籠められているような、
そんな違和感に首をひねりつつ。

ようやく辿り着いたテーブルで。
喜びを隠しきれない学院生たちに会釈し、席に着き。

「さて。いただきましょうか。」
「えぇ、そうですね。」

食前の祈りを捧げたうえで、静かに箸を取る。
482名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 07:03:57.22 ID:1z0q5z7d0

取り留めもない会話を交わしながら、箸を進め。
そろそろ食べ終わりかけた頃。

「あの、お姉さま。よろしければ食後のお茶を取って参りましょうか?」
「はい?」

同席していた娘に突然話しかけられた。

「いえ、自分で取りにいきますから‥。」
「せっかくお姉さまと相席になれたのですから、
 お気になさらずにお申し付けください!」
「あらそう? じゃあ、私はカモミールをお願いしていいかしら。」
「はい! わかりました。香織理お姉さま。」
「香織理さん‥‥。」

遠慮もせずに要望を伝える香織理を軽く睨むも。

「相手の期待に応えてあげるのもエルダーの仕事よ?」

などと嘯かれては降参するしかなく。

「では、私はダージリンを。」
「はい! 了解です!」

その嬉しそうな笑顔をみると、まぁそれも一つの在り方か、と千早も納得する。
483名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 07:11:06.68 ID:1z0q5z7d0

ちょうど食べ終わる頃合いに、お待たせしました!と明るい声でお茶が届き。
嬉しそうなその笑顔に、千早も優しく丁寧に礼を返す。

「それでは、お礼といってはなんですが。
 皆さんもよければいかがですか?」

ポーチから取り出されたタッパーをみて小さく歓声が上がる。
なぜか周囲の席からも、ざわりとどよめきが起きたような気もする。

「私も1個もらうわね。」
「えぇ、どうぞ。さぁ、皆さんも遠慮せずに。」
「は、はい‥!」「やった!」」「ど、どれにしようかな‥。」

真摯に選ぶ表情をみて、女の子達の甘いもの好きを微笑ましく見守る千早。

「わ、私はその2番目の奴をよいですか?」
「これ? はい、どうぞ。」
「ありがとうございます!!」
「私はその奥のを‥」
「これかしら?」
「はい!」

小さく喜ぶその笑顔に、つられて笑みをこぼしつつ。
自らも1つを選んで、ゆっくりと包装を解く。

「ふふ。 お味はどうかしら?」
「はい! とても美味しいです!」
「それはよかったわ。」

香る紅茶に甘いチョコ、ゆったりとした昼休みのひとときでした。
484名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 07:43:10.36 ID:DU1Bz7E90
>奴
チョコを前にして猫の皮がはがれたのがいるw
まあチョコだから仕方ないよね(?)

乙〜
485名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 20:58:38.12 ID:1z0q5z7d0
朝は最後に横線ひきたかったのに、規制くらって時間切れでした。あと3つ。
----------------------------------------------------------------------

さらにその翌日。
迎えに来た香織理とともに、食堂に到着した千早の前には。

昨日よりさらに混雑しているしている割に、綺麗に4席ずつ空席のあるテーブルたち。
それらの席に座ればいいのに、各テーブル脇に立ちながら会話を交わす学院生たち。

「これって、もしや‥‥。」
「あら? 千早のくせに気付かなかったの?」
「そうですよね‥。エルダーの行動ですものね‥。orz」

受験勉強に気を取られて、学院の文化に意識が向かなかったのは痛恨の極み。

「まぁ、学院生にしてみれば予想もしていなかった緊急イベントって感じかしら?」
 さぁさぁ。エルダーたるもの、皆を楽しませるためにしゃっきりしなさいな。」
「‥‥はぁ。」

「今日の千早は、いったいどのテーブルを選ぶのかしらねー?」
「楽しげにいわないでくださいな‥。
 そうですねぇ‥。あぁ、午前中の過去問の解答から、9 と D とかはどうでしょう。」
「どっちが基準かわからないけど、9列目と4列目ってこと?」
「えぇ。入り口を基準にすると‥あそこですね。」
「ふーん。まぁいいんじゃない? 周囲も含めて12人ってところかしら?」
「立席な人々も含めるとそうですね。
 明日以降は、もう少し多めに持ってきたほうがいいかもしれませんねぇ。」
「うーん。人の移動とかあると面倒じゃない?」
「そのあたりは、移動前にこちらで決めておきさえすれば。」
「なるほど、ね。」

それでは今日も参りますか、と千早達はランチメニューに向かい合うのであった。
486名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 21:04:48.47 ID:1z0q5z7d0
***

「で。つっちー。どうするんだ?」
「むぅー。代替わりしたばかりだというのにー。
 今の時期は平和なはずじゃなかったのか!」

放課後の生徒会室。沙世子と初音は今日は来ておらず。
追加メンバも揃いきっていない今のタイミングに降って湧いたこの問題。

 ・昼食後にゆっくりお茶を飲んでいたら上級生に退去させられた
 ・部活の後輩に場所取りをさせてる人がいるらしい
 ・普段こない人々まで昼休みに食堂に居座って、食べる席がない
 ・空いている席に座ろうとしたら、そこはダメと怒られた
 ・お姉さまのテーブルを選ぶ基準がわからない。どうすればいいのか  etc.

投書&苦情が山ほど積み上がっていたりする。

「最後のはさておき‥どうしたもんかね、こりゃ」」
「やはり、お姉さまにチョコの配布をやめてもらうのが早いのではないか?」
「それ、生徒会が指示したことがばれたら、こっちが非難囂々なのだよー。」
「あう‥。そうか、そうだな‥。」

そもそも受験間近のお姉さまに、あまり心労をかけるわけにはいかないし、
卒業までの限られた時間に突如発生した、貴重な交流そのものを
無下に否定するわけにもいかないわけで。
487名無しさん@初回限定:2012/02/20(月) 21:34:29.37 ID:1z0q5z7d0

初音ルートでこっそり確認してもらったが、
あくまで お裾分け という立ち位置は崩せないとのことで
大々的に周囲に配布する等、公平性を出すことも難しい。

「騒ぎは収める。チョコ配布は継続する。
 両方やらなくっちゃあならないってのが、生徒会のつらいところなのよー。
 新任会長には、まだそこまでの覚悟はできてないのにー。」
「まったくだな‥。」

相反するこの難問。
できれば、新生徒会が華麗に解決したかったりするのだが‥。

「こうなったら、この問題専担としてややぴょんを任命するしか!」
「ちょっ! それはひどすぎるぞ!!」
「いやいや、ややぴょんは才媛だからなんとかなるって!
 ってまぁ、そういう訳にもいかんよねー。」
「ふぅ。さすがにびっくりしたぞ‥。」

まだまだ経験不足なこの身にとって、あまりに難問すぎやしないか、と。
煩悶するさくらの声が生徒会室に響き渡るのでした。

----------------------------------------------------------------------
488名無しさん@初回限定:2012/02/21(火) 02:49:51.56 ID:ROJt6FpK0
しかと読ませてもらった

乙!!
489名無しさん@初回限定:2012/02/21(火) 06:51:56.03 ID:/TZLQv3n0
解決編まだー?(AAry
490名無しさん@初回限定:2012/02/21(火) 12:31:49.85 ID:adbJ9P18O
続き有るんだよね?
楽しみに待ってる
491名無しさん@初回限定:2012/02/21(火) 20:30:20.57 ID:yfs8UlVa0
このスレだけでもすでに宿題山積みなのにー。
492名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:23:53.54 ID:F4YBBJ5h0
由佳里さんの誕生日に間に合わせる予定だったけど
雪が5cmも積もる大寒波で体調を崩し、遅れてしまいました
長編なので3〜4日かけてUPしようと思います
今日は6〜8レス分ぐらいで
493名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:25:26.18 ID:F4YBBJ5h0
「えっ!まだ彼氏作っていないの!」
「大きな声で云わないでくださいお姉さま。周りの人がこっちを見ています」

駅前のファストフード店で先輩後輩のコンビかと思われる若い女性二人組が
お喋りをしながら遅い朝食をとっている。
そして恋愛の話で盛り上がり、後輩の方が先輩にからかわれているようである。

「でも私と一緒で美少女なんだから周りの男性が放って置かないでしょ」
「今さりげなく自分のことを美少女と云っていたような……それはともかく
確かにお姉さまが云うとおり男性から告白されたことは何回かあるんです。
でもどうしても『あの人』と比較してしまって……結局今までの告白してきた
男性は全てお断りしているのです」
「そうなんだぁ……でも比較してしまうあの人とはもしやみず……」
「いやいや……さっき私が云ったことは忘れてください」

先輩が『あの人』の名前を云おうとした時にそれを遮るように後輩が口を挟む。
すると先輩は後輩の様子を見て微笑を浮かべながら
494名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:27:50.93 ID:F4YBBJ5h0
「その赤い顔を見る限り、私の推理は合っているようね。あなた体育会系なのに
ああいう乙女チックな美少年が好みなんだぁ」
「もぅあんまりからかわないでくださいお姉さま……それに私は別に乙女チックな
美少年が好みというわけではありません。『あの人』は優しいし全てを受け止めて
くれるから……」
「ふふっ……ようやく白状したわね。『あの人』に淡い恋心を抱いていたことを」
「だからそんなことでは……」
「でも『あの人』は私の同級生のものになっちゃったからね……あっそうだ!」
「いきなりどうしたのですか!」
「あなたの彼氏候補を一人思い浮かんだわ。『あの人』と一緒で乙女チックな
美少年よ。今すぐ呼び出すからちょっと待ってて」
「お姉さま!別に私は彼氏が今すぐ欲しいわけでは……」

しかし先輩は後輩の制止の声を聞かず、携帯電話を片手に持って席を
立ったのであった。

495名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:31:16.03 ID:a5/mHjEi0
支援
496名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:32:00.40 ID:F4YBBJ5h0
休日の今日は史を除く、寮生全員で駅前の繁華街に買い物に行く約束に
なっている。
ちなみに史は昨晩、僕のお母さんから電話が掛かってきて家のパソコンが
不調なのよと云われ修理に向かった。
史には実家には僕が行くから史は買い物を楽しんできたらと説得したのだが、
パソコンに関しては自分の方が詳しいし、それに優雨や陽向ちゃんは僕と
買い物をするのを楽しみにしているはずなどと云われて、結局史は寮生との
約束をキャンセルしてしまった。
朝食をとって部屋に戻り、準備をしていると扉の向こうからノックする音と同時
に初音さんの声が聞こえた。

「千早ちゃん、まりやお姉さまからお電話が入っていますよ」
「えっ!まりやお従姉さま!」

扉を開けて急いで電話口に向かい、受話器を取ると久々に聞くまりやお従姉さん
の声である。
497名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:35:23.36 ID:F4YBBJ5h0
「もしもし千早くん久しぶり」
「いえこちらこそお久しぶりです。ところでどうされたのですか?留学されている
とお聞きしていたのですが」
「今、久しぶりに日本に帰ってきているのよ。ところで千早くん、彼女は今いるの
かな?」
「彼女って、恋愛相手のことですか?それならば特にはいませんが……」
「じゃいいー人を紹介してあげるから今すぐ駅前のファストフード店に来なさい」
「でも今から約束があるのですが……」
「約束ってなによ」
「寮生の皆さんと買い物に行く約束があるんです」
「それならあなた一人いないでもどうにかなるでしょ。それに本来、男である
あなたが買い物に行ったところで買うものなんてほとんどないでしょ」

確かにまりやお従姉さんの云うとおりで本来、男である僕が付き合いで洋服や
化粧品、アクセサリーなんかを買っても卒業後には全て用済みになってしまう。

「しかし……」
「しかしもヘチマもない!今すぐ来ると云ったら来る!もし来なかったらさっき
電話を取り次いでくれた初音にあなたの正体をばらすわよ!それからここに来る
時は男性の格好をしてくること!」

そうやってまりやお従姉さんはまくしたてるように云うとぶちっと電話を
切ったのであった。
498名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:36:29.71 ID:a5/mHjEi0
支援
499名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:38:57.52 ID:F4YBBJ5h0
「しょうがないな……」

プーと音が鳴る受話器を片手に僕は深い溜息をつくのであった。
とりあえずお茶を飲んで一息つこうと思い食堂に向かうと初音さんがいたので

「すいません。急用が出来ましたので今日の買い物はキャンセルさせてください」

そう云って初音さんに約束を守れないことを詫びる。

「ふふっ、まりやお姉さまに呼ばれたようですね。ところでまりやお姉さまとは
どういうご関係なのですか?」
「実は親戚なのですよ。皆さんとお約束があると断ったのですがどうしても
云われまして……」
「そうだったのですか。まりやお姉さまは私と入れ違いで卒業されたからそんなに
深い関係ではないのですが面倒見が良いお姉さまですよね。ただ少々強引なところ
があるようですけど……」
「ははっ……それでは急ぎますので他の皆さんには初音さんから事情を説明して
頂きますか」
「はい、承知しました」

初音さんに要件を伝え、お茶を一杯飲んだ後に着替えるためにまずは部屋に戻った。
500名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:39:11.93 ID:a5/mHjEi0
支援ついでに微妙に呼称が気になった
ちーちゃんは「母さん」「まりや従姉さん(ねえさん)」と呼んでいた(それぞれ”お”は不要だった)はず
あとまりやはちーちゃんは呼び捨てかちゃん付けの方がらしくないか
501名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:45:51.67 ID:F4YBBJ5h0
寮の部屋で男性っぽく見える服装をどうにか探し出し駅前に向かう。
そういえば体操服以外でスボンを穿くのは久しぶりのような気がする。
厳密にいえばこのズボンも実は女性用だったりするのだが僕の中で女性は
スカートという固定観念があるし、下手にスボンを穿いて正体がばれるのを
恐れていたことがあってこのスボンは今まで穿いたことがなかったのだ。
そして駅前のファストフード店に入ると今か今かと待ちわびた様子のまりや
お従姉さんとお連れの人の顔が見えた。

「ちょっと千早くん遅いじゃないのよ」
「すいません。ちょっと服装選びに時間が掛かりまして……」
「男のくせに服装選びに時間を掛けるんじゃないわよ」
「ははっ……」

男性の格好で来いと云ったのはまりやお姉さんじゃありませんか。
だいたい聖應の寮には男性用の服なんか用意していません。
その辺の事情はまりやお従姉さんはわかっていると思ったのだが……
502名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:50:57.12 ID:a5/mHjEi0
支援
503名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:50:59.10 ID:F4YBBJ5h0
「ふふっ、ところで由佳里、なかなか乙女チックな美少年でしょう。
紹介するわね。私の従弟の御門千早くんよ!そして私の向かいに座っている
のが私の高校時代の後輩である上岡由佳里ちゃん!」

そうやってまりやお従姉さんが互いを紹介すると由佳里さんと呼ばれていた
女性は立ち上がり、軽く会釈をしながら話しかける。

「初めまして、上岡由佳里です。まりやお姉さまの二つ下の後輩でして
今は○○大学に通っています」
「こちらこそ初めまして御門千早です」

僕も軽く会釈で返すと由佳里さんは僕の顔をまじまじ眺める。

「そんなにじろじろ見つめられると恥ずかしいのですが……」
「あら、由佳里もしかして一目惚れしちゃった」
「いえいえ(汗)……綺麗な銀髪と白い肌だったから見とれちゃっただけ
です。それに本当に男の子なのかなと思って」
「実は祖母が北欧の方でその遺伝を引き継いだみたいなのです。それから
たまに女の子と間違えられますがこれでもれっきとした男の子です」
504名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:52:31.67 ID:a5/mHjEi0
紫苑様
505名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 23:04:16.62 ID:F4YBBJ5h0
とりあえず今日はここまでです
呼称に関してはご指摘とおりのような気がします
最近本編をやっていなかったもので……エトワールは読み直ししたんですけどね
しかし今回はかなりの部分を書き上げているので呼称はこれで通させていただきます
ご支援の方、ありがとうございました
それではまた明日!
506名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 23:17:10.31 ID:a5/mHjEi0
>>505

指摘しておいて言うのも何だけど、あんま気にせず書き上げてくれ
続き楽しみにしてる
507名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 00:16:38.47 ID:wAbw4Yu80
「母さん」はともかく「まりや従姉さん」って出てくるのほとんど無いしな
まりやの呼び方とかは感覚的なもんだしな
508東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/24(金) 04:18:15.56 ID:F3x3x64z0
私も続きを楽しみにしています。
この3人での会話は今まで見なかったので、どうなるのか興味津々です。

ところで、瑞穂くんは紫苑さまと貴子さんのどちらと結ばれた設定ですか?
2は貴子ルート後の気配が濃厚ですが、他のルート後で書いてはいけないということはないですので。
509名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 21:51:41.70 ID:/usAgjrc0
それでは昨日の続きをUPしていきます
今日も6〜8レス分ぐらいを予定しています。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本当はたまにどころか聖應に一年近く通っても若干名を除いて正体が
ばれていないどころかエルダーにまで選出されてしまっている状態
なのであるがとりあえずそう答えておく。

「へぇ〜そうなんだぁ。まりやお姉さまの家系って本当に美少年ぞろい
なんですね」
「そうでしょう。もちろん私みたいな美少女もいるけどね」
「えっ、いったいなんの話で?」
「いやいや千早くんは気にしないでいいのよ」

そういえば一年ぐらい前に似たような台詞を聞いたような気がするが
気のせいだろうか?

「ところでこの由佳里って娘は乙女チックな美少年がタイプなのよ!
それでまだ彼氏がいないと私に泣きついて来たから適任であるあなた
を呼んだわけ」
「ははっ……そうなのですか。それは光栄です……」

出発する前に初音さんが云っていたし僕も前からわかっていたが、
まりやお従姉さんは面倒見が良いけど強引な人だ。
多分こうすればこの人のためになると思い込んだら後先や人の
迷惑を考えずに突っ走ってしまうタイプなんだろうな。
510名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 21:52:48.91 ID:/usAgjrc0
「別に私は彼氏が欲しいとお姉さまにせがんだりはしていません。
それに乙女チックな美少年がタイプだなんて一言も云っていません」
「でもさっき千早くんのことをずっと見つめていたところを見ると
まんざらでもなさそうだったけど」
「だからさっきも云ったとおり綺麗な銀髪と白い肌に見とれてしま
っただけです」
「だからそういうのを一目惚れって云うんじゃないかな」

この二人のやりとりを見ていると何だか寮での香織理さんと陽向ちゃん
を見ているような気がする。
なんだかんだいってこの二人は仲が良さそうである。
そんなことを考えているとまりやお従姉さんが僕に問いかけてきた。

「ところで千早くんは由佳里のことはどう思う」
「どう思うって云われましても……そうですね元気で活発で綺麗な
小麦色の肌が印象的な健康美人という感じでしょうか……あっ由佳里
さん、気を悪くされたのでしたらごめんなさい。あくまでも第一印象
ですから」
「気にしなくても大丈夫よ。そもそもこの小麦色の肌のおかげで高校
時代は『琥珀の君』なんて呼ばれていたのだからそのくらいは慣れて
いるから」
「『琥珀の君』ですか……」
511名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 21:54:11.37 ID:/usAgjrc0
由佳里さんの云っている意味は何となくはわかってはいるが、ここは
わざとわからない振りをして僕は答える。

「ごめんごめん。いきなりそんなことを云ってもわからないわよね。
私が所属していた聖應女学院では学院内の有名人にいつのまにか
二つ名が付けられるの。一種のあだ名みたいなものね。それで私は
灼けた肌の色で『琥珀の君』と呼ばれるようになったの」
「やはりお嬢様学校というのはなかなか特殊なのですね」

そうやって僕はわざと驚いた振りをして答える。

「そうなのよね。私は高校の時に外部編入してきたから最初の方は
馴染むのが大変だったわ」
「その気持ち良くわかります。僕も今年度編入したから最初の頃
は本当に大変でした」
「編入って?今どこに通っているの?」
「それはせい……じゃなかった○○高校です」
「それって全国トップレベルの進学校じゃない。それはそれで
大変そうだね」
512名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 22:06:30.44 ID:/usAgjrc0
初対面にも関わらず、フレンドリーに接してくれる由佳里さん
にのせられて危うく口を滑らせるところだった。
そんな僕たちの会話の様子を見ていたまりやお従姉さんは不敵な
笑みを浮かべると突然立ち上がり

「会話が弾んでいるところを見るとファーストコンタクトは上々の
ようね。それじゃ私は次の約束があることだし邪魔者は去ることに
するわ。ここからは若い者同志で楽しんできなさい」

そう云ってまりやお従姉さんはバックを肩に掛けると去り際に

「今からあなたの初恋の相手に逢いに行くけど何か伝えることある」
「まりやお姉さま!!千早くんがいるのにあまり変なことは云わな
いでください」
「そうだったね。新しい彼氏候補の千早くんに焼き餅を焼かれると
困るものね」
「もう……まりやお姉さまったら!!」

513名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 22:08:31.61 ID:piJ9r4/b0
支援
514名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 22:09:45.21 ID:/usAgjrc0
慌ただしくファストフード店を出ていくまりやお従姉さんを見ながら
由佳里さんは大きく溜息をついた。

「二人っきりになってしまいましたね」
「そうだね……」
「そういえば、さっきまりやお従姉さんが初恋の人がどうとかと云って
いましたが……」
「千早くんも知っていると思うけどまりやお姉さまは人をからかうのが
好きなんだからこのことに関してはあまり気にしないでもらえる」

由佳里さんはそう云うとさっと席を立ち

「さぁあまり細かいことは考えずに折角、まりやお姉さまにセッティングして
もらったんだからとりあえず二人で街へデートに出かけようか!」
「えっ!由佳里さん!ちょ、ちょっと」

そう云って由佳里さんは僕の手を強引に引っ張って二人で街へと繰り出す
ことになった。
515名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 22:13:32.11 ID:/usAgjrc0
休日ということもあり、駅前の繁華街のメインストリートは家族連れや
若い人たちが大勢歩いている。
僕はさっきのファストフード店での由佳里さんとの会話で少し気になって
いた部分があったのでそれとなく訊ねてみた。

「そういえば二つ名と云うのでしたでしょうか……学院内の有名人に
付けられるとお聞きしたのですが、由佳里さんはやはり学院では
人気者だったのでしょうか?」
「人気者だったかどうかはわからないけど、こう見えて私は生徒会長を
務めていたのよ。とはいっても陸上部の部長も務めていたから実際の
業務は他の役員に任せっきりで私はお飾りに近かったけどね」
「そうだったんですか。ということは初音さんの前の生徒会長ということ
ですね」
「初音!?へえ〜千早くんは初音のことを知っているの?」
「うっ……それは……」
516名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 22:19:27.04 ID:/usAgjrc0
会話を弾ませようとしてうっかり余計なことまで話してしまった。
しかしここはどうやって誤魔化すべきか……

「実は……前にまりやお従姉さんに無理矢理連れられて聖應女学院
の寮にお邪魔したことがありまして……」
「そうなんだ。まりやお姉さまらしいわね。でも男の子なのによく
入れもらえたね。確か私が一年生の時に誘拐未遂事件があって以来、
警備が厳重になってそれからは学院関係者以外、特に男性はちゃん
とした用件がないと入れてもらえないはずなんだよね……もしかして
女装して入ったとか……」
「まっ、まさか女装とかいう小賢しい真似はしていません。そこは
まりやお従姉さんがどうにかしたみたいです」
「へぇ〜そうなの……まぁ別に無理に女装しなくても今の格好でも
充分に女の子に見えるから警備員が疑わなかったかもね」

なんとか納得してもらったようだが、その代わりに傷つく言葉を由佳里
さんに頂いてしまった。

「あれっ、千早くん落ち込んじゃった?」
「いえ別に気になさらずに……」
517名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 22:24:20.55 ID:/usAgjrc0
本日はここまでです。

>>508
このSSに瑞穂ちゃん、紫苑さん、貴子さんを登場させる予定はありませんが
(もし登場を楽しみにしていた人がいたらごめんなさい)
由佳里さんの発言に貴子さん√のエピソードを入れてしまったのでその√後ということになっちゃいますね。

それではまた明日
518名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 22:47:46.89 ID:MwGy0o9x0
GJ!!!

……これなんて焦らしプレイ?(一読者としての感想ですw)
519名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 00:02:40.91 ID:wAbw4Yu80
明日になったな
続きマダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
520kyouko:2012/02/25(土) 22:46:26.27 ID:ChNpE8AA0

>私が一年生の時に誘拐未遂事件があって

貴子または奏ルートで発生。

>『あの人』は私の同級生のものになっちゃった

貴子または紫苑ルート。

 よって貴子ルートということになりますね。


 ところで、まりやは千早が聖應女学院に編入したことを、どんなルートで知ったのかな?

 このへんの情報の広がりは考えてみるとおもしろい。
521名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:13:25.50 ID:1GPwqFH90
それでは昨日の続きをUPしていきたいと思います。
本日も6〜8レスぐらいで

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そんな取り留めのない会話を続けながら街を散策していると由佳里さんが
街に出てきたのだから化粧品を見てみたいと云ってきたので繁華街の
メインストリートの一角にあるドラッグストアに向かうことにした。
通常、化粧品といえば百貨店だけどお嬢様学校卒だが実は庶民派だという
由佳里さんによれば化粧品はドラッグストアで買った方が断然お得だとの
ことだ。

「私は色黒だからなかなか合うファンデーションがなくって……」
「それでしたらこういうのはどうですか、この前雑誌にも紹介されていま
したよ。それにこのチークとシャドウを組み合わせてみるというのは
面白いかと思います」
「千早くんって、化粧品のことに詳しいんだね……」
「いやいや母さんによく化粧品の買い物に付き合わされていたんで……」
522名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:16:06.09 ID:1GPwqFH90
母さんに買い物に付き合わされていたのは本当だけどそれだけで化粧品
の知識が身に入るわけがなく、実際は聖應に編入する前に母さんにきっちり
と講座を受けていたのであった。
それに聖應で女の子との会話に付いていけるように僕は定期的にファッション
雑誌を購入して、すみずみまで読んでいる。
そんな僕のアドバイスもあってか由佳里さんは気にいった化粧品が見つかった
ようでレジの清算から戻ってくると

「ありがとう。千早くんのおかげで今日は良い買い物が出来たわ」
「いえいえお役にたてて光栄です」
「それじゃ次、行きましょう!」
「由佳里さん!そんなに引っ張らなくともちゃんと付いていきますから……」

そう云って、由佳里さんは僕の手を引っ張って店内を出ると

「あれっ!?由佳里お姉さま!……お久しぶりです!」
「もしかして後ろで手を繋いでいるのは千早ちゃん……」
「あらっ!千早、今日は珍しい格好をしているわね」
「ちはや……女の人と手を繋いで何をしているの……」
523名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:17:16.92 ID:B2WoCv6c0
支援
524名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:21:31.14 ID:1GPwqFH90
お店の外でばったりと出くわしたのは街へ買い物に繰り出していた
聖應女学院寮生御一行様である。
もともと僕もこれに参加する予定だったのだからよく考えたらこんなところ
で遭遇してもおかしくはないのである。

「陽向ちゃんがトイレに行ったからここでみんなで待っていたのですが
ドラッグストアから突然、由佳里お姉さまと千早ちゃんが出てきて
びっくりしました」
「でも初音さんから千早はまりやお姉さまに呼ばれたと聞いていたけど
なんで由佳里お姉さまと一緒にいるの?」
「確かに千早くんはまりやお姉さまに呼ばれんだけどね。途中でまりや
お姉さまは帰ってしまったんだ……っていうか千早くんは初音たちと
約束かなにかしていたの?」
「はい、千早ちゃんは私たちと一緒に買い物に行く予定だったのですが、
今朝になってまりやお姉さまに呼ばれたからとキャンセルしたのです」
「へぇ〜千早くんって初音たちとそんなに仲がいいんだぁ……」
「はい。相談にもよくのってくれて頼りにしています」
525名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:23:17.26 ID:1GPwqFH90
初音さんたちは由佳里さんと久しぶりに逢ったようで楽しそうに会話をしている。
しかしこの状況はかなりやばい。
双方が僕の身の上の核心についてまだ触れていないから今はどうにかなっている
もののこのまま会話が続くと僕の正体がばれてしまうのは時間の問題だ。
しかし男性モードと女性モードの時とで声色を変えている僕は会話に参加する
ことすら出来ない。
男性モードの声を出すと初音さんたちに疑われるし、女性モードの声を
出すと由佳里さんに疑われる。
今はただ黙ってみんなの会話を聞いているのみである。

「それで由佳里お姉さまと千早は二人で何をなさっていたのですか」
「デートよ!まりやお姉さまが二人で楽しんでこいと云うから!」
「デッ!デート!!」

由佳里さんの爆弾発言を聞いた薫子さんが突然素っ頓狂な声をあげる。

「しかし千早はさっきからずっと黙っているし、びくびくした様子だけ
れどもどうかしたのかしら?」

香織理さんは僕の置かれている状況に勘付いたようで不敵な笑みを浮かべて
話しかける。
526名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:27:17.71 ID:1GPwqFH90
会話が出来ない僕に残された選択肢はただひとつ、察しの良い香織理さんに
対して目力でSOSサインを送るのみだ。

「お姉さま方、お待たせしました!」

僕が香織理さんに対してSOSサインを送っていると遠くから元気な陽向
ちゃんの声が聞こえる。
どうやらトイレから戻ってきたようだ。
そしてみんなの輪の中に入ると僕の存在に気付いたようで

「あれっ!千早おね……☆△$#&□♪……」
「ただでさえあなたが立てた今日の買い物スケジュールは過密なのにあなた
が突然おなかが痛いと云いだしてトイレに行ったから時間が押しているのよ」

香織理さんは僕の名前を呼ぼうとした陽向ちゃんの口を塞ぎ、そして注意をする。
今度は由佳里さんに対して軽く会釈をしながら

「それでは申し訳ありませんが由佳里お姉さま、私たちは急いでおりますのでこれで
失礼させていただきます。また今度ゆっくりと」
「わっわっ!香織理お姉さま!無理に手を引っ張らないでください!」

そうやって香織理さんは陽向ちゃんの手を引っ張って去っていく。
どうやら僕のSOSサインは通じたようだ。
527名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:29:55.87 ID:Rk424iBN0
支援
528名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:31:29.28 ID:1GPwqFH90
「あっ、香織理さん待って。それじゃ由佳里お姉さま失礼します」
「それでは由佳里お姉さま失礼します。たまには寮に遊びに来てくださいね」
「うん。気が向いたら今度伺わせてもらうよ。みんな元気でね」

そんな香織理さんの後を追うように初音さんたちも去っていた。
しかし去り際に僕に向けられた薫子さんと初音さんの視線が厳しいような
感じがしたのは気のせいだったと思いたい。
とにもかくにも危機を脱したことでほっと胸を撫で下ろしていると

「千早くんが初音たちとそんなに親密だったとは驚きだね……しかし
さっきはずっと黙っていたし様子もへんだったけど、どうしたの」

由佳里さんは少し心配そうな顔をして話しかける。
529名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:33:10.78 ID:1GPwqFH90
「約束をキャンセルしたのに街中で突然出会ってしまったのでびっくり
しちゃって気が動転していました……」
「ふふっ……そうだよね。本来はあの娘たちとデートだったのに私なんか
とデートしているのを目撃されたらそうなっちゃうよね」
「ははっ……別にデートの約束というわけではなくただの買い物だったの
ですが……」
「そうなの?私がデートと云った瞬間に初音や薫子は怒っていたように
見えたけど?」
「ははっ……それは多分、気のせいでしょう。それにだいたい僕はそんなに
もてる男ではありませんから」
「へぇ〜そうなのかなぁ……」
「しかしさっきの千早くんのびくびくした様子は見ていて面白かったわ。
まるで二股がばれて修羅場となった感じだわね」
「いや、だから……そんなのではありませんから」
「千早くん!もうそんなに拗ねないの。それじゃそろそろお昼だし、ご飯
にしようか!」

そういうことで由佳里さんがよく行っているというラーメン店に向かうこと
になった。
530名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 23:39:32.79 ID:1GPwqFH90
ということで本日はここまでです。
ご支援のほう、ありがとうございました。

>>520
まりやの情報源に関しましてはこのSSでは触れる予定はありませんが、
千早の編入にあたって妙子さんから相談を受けたと考えるのが妥当かなと……

話のだいたいの流れは前からまとまってはいたけど書いていて色々と肉付けを行っていくうちに
かなり長くなってしまいました。
明日までに全部UP出来ればよいんですが……
それではまた
531名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 00:17:53.59 ID:pWra9Vek0
乙乙
いつか香織里さんにこのネタでいじられる未来が見えたw
532名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 02:17:41.34 ID:ocP88UHN0
乙〜♪

なんか、新鮮だった。
完結編に期待。
533東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/26(日) 07:39:25.31 ID:Bx9cC6gg0
今回も面白く読ませていただきました。
このお話は貴子ルート後でいいと思いますが、貴子、奏ルートでしか描かれていないからと言って、
他のルートで“起こっていない”とは限らないですよね。
紫苑ルートでも貴子さん誘拐未遂事件は起こったがそこで男バレせずにすんだ、という可能性は十分ありますし。

あと、薫子が由佳里を呼ぶときは「由佳里さん」、薫子や香織理が初音を呼ぶときは「初音」だったと思います。
口うるさくなってしまいましたが、私も完結編を楽しみにしております。
534名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 10:29:25.16 ID:kCQQ4rbt0
よく行くラーメン屋か
そうすると…しゅらば!しゅらば!
535名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:33:06.74 ID:oX9CtMYB0
それでは昨日の続きをUPします。
6レスぐらいの予定です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そしてラーメン店の前に到着すると

「あっ、知っていますこのラーメン店」

そこは初音さんに連れられて何回か一緒に行ったことがあるラーメン店だった。

「千早くんも知っているんだ。このラーメン店」
「とても美味しいので学院でも評判なんですよ」
「学院って……千早くんが通っているのは○○高校じゃなかったかしら?」
「いやいや……初音さんからそう聞いたもので……」
「なんだぁ、初音とのデートに使ったんだこのラーメン店」
「いぇ、別にデートとかではありませんから」

またもやボロを出してしまった。
学院ではいつも慎重に会話をしている僕だけど今日は調子が悪いのかそれとも
由佳里さんとのデートで緊張してしまっているのかつい余計なことまで喋って
しまう。

「ここはね私の二つ上の生徒会長お気に入りのラーメン店でね、それ以来
聖應女学院生徒会ご用達のラーメン店なの。初音もまだ行っているという
ことは今も生徒会ご用達のラーメン店なのね」

由佳里さんはそう云うとラーメン店の中に入る。
536名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:34:43.58 ID:oX9CtMYB0
ちょうどお昼時でラーメン店には大勢のお客さんがいたが、幸いにも入口
近くのテーブル席が空いていたのでそこに座ることにする。
寒い冬の日といえどもラーメン店の中は暖房がよく効いていて少し暑い
くらいである。
僕は座る前に着ていたコートを脱ごうと思い、ボタンに手を掛けたがそこで
重大なことに気が付いた。
まりやお従姉さんに呼ばれて急いで街へ出てきたからシリコンの胸パット
を付けたままだったのである。
ここまではずっと分厚いコートを着ていて体型が目立たなかったから大丈夫
だったようだが、このコートを脱いでしまうと胸パットのことがばれてしまい、
由佳里さんから変態者認定を受けてしまう。
僕は仕方なくコートのボタンから手を放す。
そして席に座っておもむろに店内を見回すとなんと奥の方のカウンター席に
沙世子さんの姿を発見した。
そういえばさっき由佳里さんが生徒会ご用達のラーメン店と云っていたから
沙世子さんがここにいたって不思議ではないのである。
幸いにも向こうはまだ僕の存在に気づいていないようである。
僕はなるべく気づかれないようにするためとなりの席に置いていたバックから
帽子を取り出すと深く頭にかぶった。

537名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:35:23.21 ID:kCQQ4rbt0
wktk
538名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:36:27.56 ID:oX9CtMYB0
「あれっ!どうしたの千早くん!いきなり帽子なんかかぶっちゃたりして。
おまけに店内は暑いのにコートは着たままだし」
「いや何となく帽子をかぶりたい気分になりまして……それに僕は寒がり
ですからこれでも少し寒いくらいですよ」

そんなことを云いつつも服の中はうっすらと汗をかき始めている。
そういえば由佳里さんが前の生徒会長だったということは当然沙世子さんの
ことは知っているはずである。
由佳里さんは入口の方を向いて座っているから沙世子さんのことは気づいて
いない。
ここは由佳里さんが振り向くことがないようにしなければならない。
しかし僕たちより先にラーメン店に来ていた沙世子さんは食事が終わった
ようで席を立ち、会計を済ませると入口へ歩き始めた。

「あれ!会長じゃないですか!お久しぶりです」
「あらっ!沙世子じゃない。同じ店にいたのに全然気づかなかったわ。
ちなみに私はもう会長じゃないからその呼び方はやめてよね」
「しかしその呼び方に慣れてしまっているもので……」

沙世子さんは由佳里さんの存在に気づき、話しかけてきた。
僕は何とか存在を気づかれないように頭を下げてうつむいた
ままで二人の会話を聞いていたのだが……
539名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:37:58.38 ID:8fpdnPo40
支援
540名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:41:51.29 ID:oX9CtMYB0
「あれっ!もしかして向かいに座っているのは妃宮さん?」

やはり気づかれてしまった。
しかしここはどうやって乗り切れば良いのだろうか。

「ねぇ〜妃宮さんでしょ!うつむいていないで返事してちょうだい!」
「僕は妃宮ではありません。人違いじゃないですか……」

僕は勇気を振り絞って、男性モードの声で答えた。

「そう云われると声が妃宮さんじゃないわよね……」

そう云いながら沙世子さんは携帯で時間を確認していると

「あらっいけない!模擬試験に間に合わなくなるわ!それでは
会長、失礼いたします」

そう云って沙世子さんは足早に去って行ってしまった。
何とかここも切り抜けられたようだ。

「妃宮さんって誰だろうね。私が聖應にいた時はそんな娘はいなかった
ような気がするけど……」
「ははっ……先ほどの方のお友達じゃないでしょうか……」
「でも千早くんに似ているということはその娘は相当な美少女だよね」
「ははっ……」
541名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:44:50.30 ID:oX9CtMYB0
食事を終えてとりあえず休憩しようということになり、公園の方へ
向かって歩いていると突然、背中に柔らかい感触が走る。
その直後に僕の両脇の下から細い女性の両腕が伸びてきて、僕の肩に
手をかけてきた。
どうやらいきなり後ろから抱きしめられたようだ。
何かと思って振り返ってみるとそこには雅楽乃の姿があった。

「買い物帰りに反対側の歩道からお姿をお見かけしましたので驚かせよう
かと思ってそっと後ろから近付いてきました。ところで今、何をされている
のですか?」

雅楽乃はいかにも嬉しそうな声で僕に話しかけてくる。
一方の隣にいる由佳里さんは僕に甘えている雅楽乃を見てあ然とした表情だ。

「千早くんって本当にモテるのね……」

そうすると雅楽乃は由佳里さんの存在に気付いたようで

「隣にいらっしゃるのはもしかして由佳里会長ですか……お久しぶりです」
「ん〜っと、確かあなたは……華道部にいた雅楽乃だったっけ」
「はい、そうです。ところで今日はお二人でお出かけだったのですか?」

やばい、これは絶体絶命のピンチだ。
雅楽乃が僕のことを『千早お姉さま』と呼んだ段階でTHE ENDである。
すると背後から
542名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:46:36.12 ID:oX9CtMYB0
「千早さま。こんなところで何をされているのですか?」

振り返ると家電量販店の袋を抱えた史の姿があった。
おそらく壊れた実家のパソコンの修理のために部品か何かを買いに行って
いたのだろう。

「由佳里お姉さまお久しぶりです。お姉さまが三年生の時に一年生だった
渡會史です。それからご機嫌よう御前……」

史が由佳里さんたちの存在に気付いたようで挨拶をしている。
その間に僕はこの窮地を脱する一つの方法を思いついた。

「あっ!そういえば今から史と一緒に家のパソコンを修理しなくて
はならなかったわ。急いでタクシーで帰らなくては。あっ!そうだわ。
雅楽乃の家は確か途中にあったはずだから送っていくわね。それでは
由佳里さん突然ですが失礼します」

僕は男性とも女性とも受け取れるような中性的な声を出すと由佳里さん
に対して軽く会釈した後、ちょうど近くに停車したあったタクシーに
史と雅楽乃を連れて乗り込んだ。
かなり強引だったけど窮地を脱することが出来たようだ。
543名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:51:47.59 ID:8fpdnPo40
紫苑
544名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 22:53:40.44 ID:oX9CtMYB0
とりあえず今日はここまでです。
明日は完結編までUP出来る予定です。

>>533
薫子さん由佳里さんを呼ぶときは「由佳里さん」と「由佳里お姉さま」
の2パターンあったような気がします。
確か、エトワールの最終章では「由佳里お姉さまになっていたと思います。
なお薫子さんの初音さんの呼び方は私のミスでございます。

>>534
当初は沙世子さんを登場させる予定ではなかったのですが、ラーメン店での
修羅場を期待する声があったので急遽シナリオを変更して登場させてしまいました。

それではまた明日!
545名無しさん@初回限定:2012/02/26(日) 23:33:26.08 ID:kCQQ4rbt0
>>544
そう言われると元のも読みたくなる俺は贅沢なのだろうか
546kyouko:2012/02/27(月) 00:17:56.27 ID:wMy+92830
後、未登場なのは、ケイリと淡雪ぐらいかな・・・
いやそれより千早はこの後みんなにどう言い訳するのかが愉しみ。
547名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 00:23:08.79 ID:bYg/Fl+G0
こうまで揃い踏みとなるとまりやネットワーク経由の動員がかかった可能性まで深読みしてしまうなw
逃げ道はほとんど無いけどどうすんだちーちゃん。いや、この窮地も華麗にくぐり抜けちゃうかも知れないけど。
548名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 00:40:46.96 ID:JJBDuuqr0
敵と見なした相手をガチで追い詰める腹黒さはちーちゃん最強、時点で香織理さんだろうけど、
弄れば面白い相手を弄り倒す、あるいはそのターゲットにされた時にそれを跳ね返す腹黒さではちーちゃんはまりやに勝てないと思うw
549名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 18:38:05.65 ID:GNqr91jZ0
>>544
でも、2人のエルダー6話(PC版)では「由佳里さん」と呼んでますから、プライベートと学院内で使い分けているのではないでしょうか?

>>545
私も2パターン読みたい贅沢者です。
550名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 22:04:43.58 ID:Fj8fZZ7m0
それでは遂に完結編をUPします。
6レスぐらいの予定です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

タクシーに行き先を告げ、出発すると雅楽乃が僕に話しかけてくる。

「千早お姉さまは由佳里会長とはお知り合いだったのですか?」
「それは私の親戚が聖應のOBでその方に呼ばれたので待ち合わせ
場所に行ってみるとその方とその後輩である由佳里さんが待ってい
たの。それからしばらくして親戚の方が用事があると云われて
帰ってしまわれたので由佳里さんと二人で街に出かけたの」
「それで由佳里会長とは街で何をなさっていたのですか?」
「それは……」

雅楽乃は僕に対して根掘り葉掘り聞いてくる。
流石にデートをしていましたとは云えないから当たり障りのないように
僕は答える。
そうこうしているうちにタクシーは雅楽乃の家の前に到着したので
雅楽乃を降ろし、さっきまで助手席に座っていた史が僕の隣へと
移動する。
そして実家に向けてタクシーが出発すると史が僕の顔をじろりと
睨みながら話しかけてきた。

551名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 22:06:18.79 ID:Fj8fZZ7m0
「千早さまが昨晩、史の代わりに実家に行こうと云いだしたのは
由佳里お姉さまとデートをするためだったのですね」
「違うよ史!由佳里さんとは今日が初対面だったし、まりやお従姉さんに
呼ばれたのだって今朝なんだよ。後はさっき雅楽乃に話したとおりさ」
「それで由佳里お姉さまとのデートは楽しかったのですか?」

史はまるで嫉妬したかのようにきつい声で僕に問いかけてくる。
しかし雅楽乃への説明では当たり障りのないように話したつもりのに
それを助手席で聞いていた史はデートだと勘付いたようだ。
やはり長年、僕の侍女をやっている勘がなせる技なのだろうか。

「そもそもまりやお姉さまに云われて無理矢理、由佳里さんとデート
したんだよ。それに由佳里さんとは男性として会っていますから街中で
初音さんたちや沙世子さん、そして雅楽乃に遭遇して誤魔化すのが大変
だったよ」
「やはりそうでしたか……そもそもまりやさまは千早さまが知って
おられるとおり後先を考えない方です。いくらご命令だからといって
それを素直に受け止めるのは聡明な千早さまらしくありません」
「しかしまりやお従姉さんが強引に話を進めてしまって……」
「でもあの繁華街は聖應の生徒が結構います。聖應の前生徒会長と千早
さまが一緒に仲良く歩いているのを目撃されただけで噂のネタになって
しまいます。もう少ししたら卒業なのですから軽率な行動は慎むべきです」

そんな感じで史の説教は実家に到着するまで延々と続き、結局僕は後で
ビスケットサンドアイスを買ってきて、史のご機嫌取りをするはめに
なってしまったのだ。
パソコンの修理が終わり、寮に戻った後、香織理さんと薫子さんの強制尋問
が待っていたのは云うまでもなかった。
散々な一日であった。
552名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 22:08:09.46 ID:Fj8fZZ7m0
それから一週間が経った休日。
朝食が終わり、寮生全員で後片付けをしていると玄関のチャイムが鳴ったので
初音さんが玄関に向かう。
それからしばらくして初音さんの声が玄関の方から聞こえる。

「いらっしゃいませ由佳里お姉さま。今日は連絡もなくいきなり訪問されて
どうなさったのですか?」
「先週、初音たちに逢ったから、寮に久しぶりに来てみたくなって」

どうやらアポなしで由佳里さんが寮を訪ねてきたようだ。
やばい!今度こそ僕の正体がばれてしまう。
あたふたしている僕の様子を見て、香織理さんは黒い笑みを浮かべ、薫子さん
はご愁傷さまといった感じで僕を見つめていた。
そして初音さんが由佳里さんを寮の食堂に通すと
553名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 22:16:16.89 ID:Fj8fZZ7m0
「一応、この前会っていますけど改めて新しい寮生をお姉さまに紹介
いたしますね。まずこの銀髪の美人さんが昨年の春に編入してきて
妃宮千早ちゃんです」
「妃宮千早です。先週はどうもありがとうございました」
「いえこちらこそ。私も楽しかったわ」

由佳里さんは僕の顔を見ても驚きもせず、ごく普通に接してくれている。
とはいうものの流石に居心地が悪いので受験勉強がありますからと云って
退席して、自分の部屋に戻ったのであった。
そして参考書を開けて勉強をしていると部屋のドアをノックする音が
聞こえる。
ドアを開けると由佳里さんがいいかしらと云って僕の部屋に入ってきた。

「本当に受験勉強をしていたんだね。もしかしたら実家に逃げる準備
でもしているかと思って、心配になって訪ねてみたんだけれども……」
「逃げたところで何の解決にもなりませんからね。しかし由佳里さんは
僕の正体を知ったのになぜみんなに黙ってくれているのですか?
しかも驚いた感じもありませんし……」
「実はね、千早くんの正体は最初からわかっていたのよ。昨年の春に
初音から『銀髪でまるでお姫さまのような凄い美人さんが入寮してきました。
名前は千早ちゃんと云います』という内容のメールを受け取っていたからね。
まりやお姉さまがあなたを紹介した時にすぐに初音が云っていた人物だと
気づいたよ。それにあの時、着ていたコートとスボンは女物だったしね」
「ははっ……そうだったのですか……もしかして最初に僕のことをジロジロ
と見つめていたのはその確認だったとかですか?」
「まぁそれもあるけど、本当にお姫さまのような凄い美人さんだったから
見とれていたのも事実だね、白銀の姫君!」
「その二つ名を知っているんですか!」
「初音があなたのことを気に入っているみたいであなたのことに関する
内容のメールが結構来ているんだよね」
「ははっ……そうなんですか……」
554名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 22:18:54.65 ID:Fj8fZZ7m0
由佳里さんのカミングアウトを聞いて、一気に脱力してしまった。
そんな僕の様子を見て由佳里さんはくすくすと笑っている。

「しかし正体がわかっているのであれば最初から教えてくだされば
よろしかったのに!あの日は本当に生きた心地がしませんでしたよ」
「私はあのまりやお姉さまの妹なのよ!要するに私も人をからかうのが
好きということ。あの日のあたふたしている千早くんを見ていて本当に
楽しかったわ」
「それはあんまりじゃないですか……」

由佳里さんの発言を聞いて不貞腐れていると由佳里さんは席を立って

「それじゃ、今日の目的が終わったからそろそろ帰ることにするわ。
それじゃ千早くん、元気でね」
「折角、久しぶりに寮に来たことですしもう少し皆さんとごゆっくり
されたらどうですか」
「私は卒業後も後輩に対して先輩面するのは好きじゃないのよね。
だから今まで寮には訪ねてこなかったの。今日は千早くんのことに
関する最終確認に来ただけだから」

由佳里さんはそう云ってドアノブに手を掛けると

「千早くんも『あの人』と一緒で罪作りな人よね……」
「えっ、何かおっしゃいましたか?」
「いえいえ、こっちの話……」

由佳里さんはそう云うと笑顔で僕の部屋を後にしたのだった。


Fin
555名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 22:26:22.43 ID:Fj8fZZ7m0
ということでこのお話は終わりです。
その後、どの√に突入するかはみなさんご想像にお任せします。
5日間に渡り、駄文をご精読していただきありがとうございます。

>>545
シナリオ修正というよりは追加に近いんですよね。
当初は由佳里さんの馴染みのラーメン店という回想とコードが脱げないという
ハプニングだけで終わらせる予定でしたから……

>>549
エトワールを読み直しただけでこのお話を書いてしまったものですみません。

それでは
556名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 22:45:39.21 ID:1+TIQbMI0
ルート絞って続きを書いてくれてもいいのよ?(チラッチラッ

とりあえず乙であります
面白かったからもう1回読み直してくる!
557名無しさん@初回限定:2012/02/27(月) 23:53:06.81 ID:RaErnFLY0
>>550
基本的に聖應ってOGって言い方じゃね
別にどーでも良いレベルの話なんだが

何はともあれ乙
次回作マダァ?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
558名無しさん@初回限定:2012/02/28(火) 01:36:29.39 ID:SH+xIu/x0
>>555
乙です
うまいまとめ方しましたな
559東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/02/28(火) 04:31:52.62 ID:DcCzpJiT0
GJでした!
考えてみれば、もしこのまま由佳里ルートに突入すればばんくーばーさんの「瑞穂と薫子」シリーズの逆パターンになりますね。
1の主人公と2のメインヒロインのカップリングに対して2の主人公と1のヒロインのカップリング。
千早くん×由佳里ちゃんだと、いつもお料理の話で盛り上がりそうですね。
560 忍法帖【Lv=5,xxxP】 :2012/02/28(火) 20:07:58.30 ID:XZ0A8jak0
>555
乙でした。
続きが読みたくなる終わり方で、色々と想像が膨らみました
561名無しさん@初回限定:2012/02/28(火) 21:52:10.94 ID:icUmwBzh0
千早くんと由佳里さんのとらぶるデートのSSを掲載したものです。
内容を少し変更したものをpixivに掲載しました。
変更といってもほんの少しなんですけどね(^^;)

掲載作業が終わり、窓を開けると外はうっすらと雪が積もっていました。
このSSは個人的には雪が始まり、雪で終わったものですね。
今度は雪に纏わるSSでも書いてみようかな……

それではいつになるかわかりませんが、次回作をお楽しみに!
562名無しさん@初回限定:2012/02/29(水) 04:04:24.67 ID:ojkV2UzK0
|
|ω・`) 次はちーちゃんの雪見オナニーネタか・・・
|⊂ノ
|ωJ  
563名無しさん@初回限定:2012/02/29(水) 10:36:46.64 ID:1DT4N6ph0
朝起きたらベランダに雪ちゃんが積もってるんですね
564名無しさん@初回限定:2012/02/29(水) 11:15:44.51 ID:iCNdnE0Y0
>>563
|
|`ヽ
|ji」リi|  ユキチャンガ ベランダニデテルスキニ オネエサマオモチカエリ…
|ヮ゚ノl|
565名無しさん@初回限定:2012/02/29(水) 14:37:21.94 ID:3Ntt1fiU0
>>564
                     _
            _    ./ミ'´, ^^ヾヽ
          '´, `´`ヽ  |!l{ミ(リ从リ)〉i 
          i !リ_ji」リi|  リハリ#゚ ヮ゚ノリハ
           |i(|TヮTノl|/'((( 〉 (つ'ノリ))
          |li{〓〓}i」   ヾ </i_j   ,ソ
. (;;⌒);;⌒))=-ノリと//i_j〉      し'
566名無しさん@初回限定:2012/03/03(土) 19:13:05.34 ID:6fzgmw2h0
ザ・シロップのせつないあなたを聞いていたら妄想が膨らんだが、
まとめきれずにそのまましぼんだ・・・。
567 忍法帖【Lv=6,xxxP】 :2012/03/03(土) 21:21:08.95 ID:elSZ/to70
色々とネタはあるけど、もう少し掛かりそう。。。
568名無しさん@初回限定:2012/03/03(土) 22:16:41.36 ID:RrYAJGBr0
千早ちゃんの誕生日が近いからそれに相応しいSSをと思い、ネタは数本思いついたのだけど……
プロットがまとめきれない
誕生日までに出来るかどうかがわからない
569 忍法帖【Lv=8,xxxP】 :2012/03/06(火) 11:47:25.91 ID:DS2XAS9Z0
テスト
570 忍法帖【Lv=10,xxxPT】 :2012/03/10(土) 08:09:37.85 ID:RtguR5Fr0
千早ちゃんの誕生日まであと2日
571名無しさん@初回限定:2012/03/10(土) 11:09:46.63 ID:rWbjyjc40
>>568
誕生日ネタを数本ってすごいな‥。
572名無しさん@初回限定:2012/03/10(土) 11:50:36.44 ID:/9gqQi9V0
おまえら、明日は何の日か知ってるのかよ
573名無しさん@初回限定:2012/03/10(土) 21:56:17.46 ID:8LC9FMSN0
そういえば昨年の3月12日は家に帰れなくて途方に暮れていたね
プロットがまとまりつつあるのだが、明日のテレビ欄なんか地震関連ばかりで
この板にSSをUPする雰囲気じゃないよね
574名無しさん@初回限定:2012/03/10(土) 23:15:38.27 ID:rWbjyjc40
そういうことは自分一人の心の中にそっと秘めていればいいのです。
575名無しさん@初回限定:2012/03/13(火) 21:41:00.46 ID:wqrbOqLv0
SS職人、やる気だせ!!
ちなみに、薫子さんのやる気スイッチは右乳首にあるそうです。
http://shindanmaker.com/2590
576東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/18(日) 09:20:23.49 ID:dp9HtTeq0
こんにちは。東の扉です。小ネタを投下させていただきます。
よろしくお願いします。
577東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/18(日) 09:37:10.91 ID:dp9HtTeq0
〜寮生たちの母親〜

「あははははは……!」
 とある日の櫻館の夜、本を読んでいた陽向の笑い声が響き渡った。
「どうしたのよ陽向。そんな大きな笑い声出して」
「だって『よくも僕をぶったなー! ママにだってぶたれたことないのにー!』って、情けないというか
いかにもダメダメお坊ちゃまって感じで……」
「まあ確かにそのセリフは甘やかされて育ったマザコンですと宣言しているようなものですからね」
 くすりと笑う千早。
「そっか……私もお母さんにぶたれたことないから、優雨ちゃんのことをわかってあげられない
ダメダメお姉さまだったんだね……」
「いや……初音がお母さんにぶたれなかったのは、単に初音がぶたれるようなことをしなかったってだけの話でしょ?」
 落ち込む初音に、香織理が冷や汗混じりに答える。
「そうだよ! 初音がダメダメなら、あたしなんてどうなるのさ!」
 香織理に同調する薫子が、ふと気づいたように表情を変えた。
578東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/18(日) 09:40:24.05 ID:dp9HtTeq0
「……そういえば、あたしも母さんにぶたれたことないな」
「薫子……だからそんなにダメな娘だったのね……」
「いえ、薫子さんの場合それ以前の問題ですから……」
 感嘆の表情で言う香織理に、千早は弱腰につっこむ。
「あー! ひどいよ千早! あたしだってそんなやりたい放題やるようなわがまま女ってわけじゃ……」
「……いえ、それ以前なのは『ダメな娘』じゃなくて、『ぶたれるぶたれない』の方ですから」
 そして、再び千早の弱腰のつっこみ。
「あ、あはは、なんだそっちか……確かにそれ以前の問題だよね……」
 薫子が物心つく前に亡くなったのだから、ぶたれるも何もない。
(そういえば、瑞穂さんも薫子さんと同じ理由で母さんにぶたれたことなかったよね)
 そう思い、ちょっぴり優越感に浸る千早だった。

Fin
579東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/18(日) 10:18:54.63 ID:dp9HtTeq0
以上です。お目汚し失礼いたしました。

「SSを書きたいけど、まとめきれない」とのご意見が多数ありますが、
まとめきれないなら、最初はこのような小ネタでもいいかと思います。
小ネタを何個か投下して、慣れてきたら本格的なものに挑戦してみてはいかがでしょうか?

それでは、本日はこれで失礼いたします。
580名無しさん@初回限定:2012/03/18(日) 11:24:16.35 ID:4erJZ8gA0
>>579
お疲れ様です。
最近、SSの投稿自体減ってきてますから、小ネタでも歓迎!
581kyouko:2012/03/18(日) 13:45:46.58 ID:MMKFHIka0
>>579
これは薫子が母がいないことを香織理にたまた告げていなかったということでしょうか?
千早には直ぐ言ってますよね。

ちょっと違和感を感じたので。

582名無しさん@初回限定:2012/03/18(日) 18:37:07.99 ID:86XVB+0Q0
違和感を感じた・・・
583名無しさん@初回限定:2012/03/18(日) 19:53:49.24 ID:rw60hurQ0
母親を大事にして、家族のことで苦労しているちーちゃんが、
いくら相手が嫌いだからって「早くに死に別れたせいで母親との思い出がない相手に優越感」なんて感じるわけ無いだろうと
584名無しさん@初回限定:2012/03/18(日) 20:08:57.78 ID:niUOVGYL0
とりあえず、野暮な突っ込みは控えましょうや。
SS書きは褒めて伸ばさないと、スレ過疎るばっかりですよ?
585名無しさん@初回限定:2012/03/18(日) 20:48:34.40 ID:1xGaOxPUi
>>584上から目線すぎだろ。
586sage kyouko:2012/03/18(日) 22:48:22.47 ID:EjJdaTHM0
>>583
香織理が薫子の母がいないことを知っていれば
こんな風に言わないだろうと思ったので。

>>579
野暮な突っ込みすみません。
587 忍法帖【Lv=11,xxxPT】 :2012/03/18(日) 22:50:54.75 ID:MOY4816X0
ここまで来るのに長かった・・・
588名無しさん@初回限定:2012/03/20(火) 00:27:56.01 ID:YWSn0Goz0
>>579
589名無しさん@初回限定:2012/03/23(金) 21:27:31.96 ID:M9C6RsUq0
今月末、アニメ化の詳細情報が発表される模様。
本当に長かった。。。
590名無しさん@初回限定:2012/03/24(土) 10:16:47.84 ID:NsCi8MA/0
今度はどの声優の踏み台にするの?
591名無しさん@初回限定:2012/03/24(土) 10:27:37.97 ID:V3sJHrMS0
ネタを思いつく→書き始める→新しいのを思いつく→そっちが気になる→書き始める→(ry
というわけで、全然最後まで到達できーん。

こまった。
592東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 20:53:49.31 ID:sbiQb1j/0
こんばんは。東の扉です。先日はご指摘ありがとうございました。
>>591
わかります。私もそういう現象に何度かなりました。
さて、今回は11レス分投稿させていただく予定ですが、私のオリジナルではありません。
◆471.Pt54hUさんのエルダーマスクシリーズの勝手に続編
〜勝手にエルダーマスク4 そして伝○へ……〜です。
ちなみに、1〜3の場所は
1=http://takayan.otbk.root-node.net/type90_otome/ss/sonota005.htm
2=http://takayan.otbk.root-node.net/type90_otome/ss/sonota043.htm
3=http://takayan.otbk.root-node.net/ss/bbs_view.cgi?thread=000004&from=31&to=34
です。
それでは、よろしくお願いします。
593東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 20:59:51.50 ID:sbiQb1j/0
「……思ったよりも時間過ぎちゃったな」
 桜並木に差し掛かった頃、そうこぼしながら見た時計の短針は既に文字盤の「W」の上を通り過ぎていた。
 今日は三学期の始業式。普通の生徒ならもっと早く帰ることが出来たはずなのだが、初音は生徒会長。
年明け初日で時間が十分にとれると言う事もあり、三学期の行事についての会議の後、
新年会を兼ねたお茶会を開いていたのでこんな時間になってしまったのだ。
 他の役員達は会室の掃除をすると言ってまだ残っている。初音も手伝いを申し出たのだが、
初音には内緒の話もしたいから追い出されてしまった。
「夕食まで、どう過ごそっかな……」
 初音はぼやく。と言うのも、夕食まで残された時間が、何かをするには長いとも短いとも取れない、
微妙な長さだったからだ。とりあえず、優雨と一緒に過ごすのは確定してるけど。
 でも、後輩たちを手伝って楽をさせてやるのも、有意義な時間の使い方だと初音は思っている。
 しかし、その一方、後輩たちは後輩たちで、初音に楽をしてもらいたいと言う気持ちを持っていて、
初音もその事は十分に理解しているので、強引に手伝う事も出来なかった。
594東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 21:03:23.83 ID:sbiQb1j/0
 ともかく、中途半端な時間を持て余し気味の初音は、夕食までの半端な時間、優雨とどう過ごそうか考えながら歩いていた。
「そういえば、見たいと思っていた番組ももう終わる頃だよね……」
 思いっきり他人事のようにそんな事を考えていた初音は、いつもなら気付くはずの異常に気付く事が出来なかった。
そして顔を上げた初音の前にはここにいるはずのない、サングラスで顔を隠した黒服の男らしき人物が立っていたのである。
 突然の事に呆然としていた初音を、別の仲間が背後から羽交い絞めにした上、ハンカチの様なもので口を押さえてきた。
 ──誘拐。
 初音の脳裏に朝礼で言い渡された言葉が蘇ってくる。だが、羽交い絞めにされ、言葉も封じられた初音には
もうどうすることも出来なかった。
(薫子ちゃん、助けて……)
 そう思いもするが、無い物ねだりをしていても状況が打破出来るわけではない。今の初音には、
この状況に流される以外に出来る事はないのだ。無理に抵抗すれば状況は悪くなってしまうところだったが、
初音はそれが分かる程度には冷静さを残していたので、ここはおとなしく誘拐犯たちに従っていた。
595東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 21:07:46.44 ID:sbiQb1j/0
 ──その時。

「あなたたち、ちょっとお待ちなさい!」
「何をしてるのよ!」

 辺りに凛とした2人の声が響き渡った。と同時に、誘拐犯たちはキョロキョロと周りを見回す。
しかし、声の主は見つけられない。
「ど、どこに隠れてる!」
 声の主を見つけられない誘拐犯たちの一人が、ボイスチェンジャーでも使っているかのような奇妙な声で叫んだその時。
 桜の木の上から青いレスラーマスクをかぶった女性と、ピンクのレスラーマスクをかぶった女性が降りてきた。
と同時に手に持った竹刀で、初音を拘束している人物めがけて竹刀を叩き込んだ。
 無防備ところを腕と背中に強烈な運動エネルギーを受けた誘拐犯は悶絶した。

「初音さんをお放しなさい!」
「初音を放しなさいよ!」
「もう放してるみたいですよ……」
 と、半ば呆れたような声を出す初音。意外と冷静だ。
596東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 21:11:30.15 ID:sbiQb1j/0
「き、貴様!」
 同じくボイスチェンジャーでも使っているかのような奇妙な声で2人ににじり寄る誘拐犯。
 いくら衝撃的な登場をしたとはいえ、誘拐犯たちの目に入っているのは制服にブルーとピンクのレスラーマスク、
そして額に『姉』の文字。相手はそんな珍妙な格好をした2人なのである。
 しかし、普通なら笑ってしまいそうな格好にもかかわらず、誘拐犯たちからは油断が感じられない。
それどころか、誘拐犯たちは20人近くいるのに、明らかに顔色が悪くなり、心なしか腰が引けていた。
 そう思っていると、2人のエルダーマスクは竹刀を振りかざして誘拐犯を2人倒していた。

「な……何者だ、貴様……」
 残った誘拐犯の1人が、驚愕に目を見開きながら呟いた。
「エルダーマスクブルーよ!」
「エルダーマスクピンクです!」
「……は?」
 誘拐犯は間の抜けた声を上げる。
「だから、エルダーマスクブルーよ」
「エルダーマスクピンク。私たちの名前です。あなた方からお聞きになったのですよ?」
597名無しさん@初回限定:2012/03/24(土) 21:14:56.30 ID:jbSgRHwp0
支援
598東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 21:15:34.46 ID:sbiQb1j/0
 そんなやり取りを初音はぼんやりと眺めていた。私は確か誘拐されようとしていたはず。それが何故こんな事に──。
視界にあるのは倒れた男が3人と、まだ立っている男が十数人。そしてそれに対峙する謎のマスクマン。
 彼女たちはエルダーマスクと名乗った。……エルダー……お姉さま? そんなばかげた考えが脳裏をよぎる。
しかし、初音が聞いた声は確かに聞き覚えのある、彼女のかけがえのない親友たちの声に間違いない。
「……か、薫子ちゃん……? 千早ちゃん? そんな格好で何やってるの?」
「………」
 返事はない。もしやと思い、初音は言い直した。
「エルダーマスクブルー?」
「何?」
「エルダーマスクピンク?」
「はい、なんでしょう?」
「……薫子ちゃん?」
「………」
「……千早ちゃん?」
「………」
 薫子、千早と呼ぶと返事をしてもらえないようだ。初音から見ればその姉マスク以外、服装も体付きも声も喋り方も
ブルーの黒髪もピンクの銀色の髪も、すべて七々原薫子と妃宮千早のものとわかっていたのだが。
599東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 21:20:14.15 ID:sbiQb1j/0
「マスクドな……」
「違うよっ!」
「マスクドき……」
「違いますっ!」
「わあ、お2人とも息ピッタリですねー」
「このタイミングで否定しろって、かなお……先代エルダーマスクに聞いてたから」
「私はこのエルダーマスクブルーに教わりました」
「かなおって何ですか?」
「なんでもないよ!」
「まぁ、そう言うことにしとくね……」

 気がつけば、いつの間にか校内から某有名時代劇の最後の戦闘シーンの音楽が流れている。
 それはさておき、誘拐犯たちがスーツの中から黒い警棒を持ち出してきた。
 得物を持ち出した誘拐犯たちは、両手で眼の中央で見るように得物を構えた。そして1人ずつエルダーマスクたちに
襲い掛かってきた。
 しかし、エルダーマスクたちは誘拐犯たちの警棒をいともたやすく流し、竹刀を誘拐犯たちの胸や胴に命中させていく。
 エルダーマスクたちの攻撃を受けた誘拐犯たちは、次々に気絶していった。
600東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 21:24:28.01 ID:sbiQb1j/0
 その時。
「千早ちゃん、危ない!」
 初音の叫び声が上がった。エルダーマスクピンクがその声に反応して振り向くと、
後ろから最後の一人がナイフで斬りかかって来ていた。
 しかし、エルダーマスクピンクはまるでそれを見透かしていたかのように、竹刀を捨てて真剣白刃取りでナイフを掴んだ。
 最後の1人とエルダーマスクピンクとのナイフの取り合いが始まった。
 その隙を見て、エルダーマスクブルーは初音に声をかける。
「初音、警備員を呼んできて!」
「分かりました、少し待っててください!」
 相手が残り1人になったので、こうやって対峙してしまえば初音は自由に動けるようになる。
その隙に警備員を呼んできてもらおうというのだ。
 最後の1人は警備員を呼びに言った初音を見逃した。恐らく、もしここで初音に気を取られていれば、
その隙を突かれてエルダーマスクたちにやられてしまう事が分かっていたからだろう。
 エルダーマスクピンクに対峙する最後の1人は必死だ。いとも簡単に20人近く仲間を倒されているのだから当然だ。
601名無しさん@初回限定:2012/03/24(土) 21:30:35.37 ID:AjtsOL5T0
支援
602名無しさん@初回限定:2012/03/24(土) 21:31:20.24 ID:jbSgRHwp0
支援
603東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 21:40:29.98 ID:sbiQb1j/0
 しかし、最後の1人もこれまでの誘拐犯たちとは違うオーラを放っていた。
エルダーマスクピンクにナイフを奪われはしたが、もう1本ナイフを懐から出して千早に襲い掛かってくる。
 できる……。エルダーマスクピンクはお互いナイフを持って対峙して、改めてそう直感した。
今までの相手とはわけが違うと。
 最後の1人がナイフを持ってエルダーマスクピンクに襲い掛かる。エルダーマスクピンクはほぼ防戦一方で、
最後の1人は間髪入れず攻撃を続けていた。もっとも、エルダーマスクピンクの方も、全ての攻撃を
ナイフで受け止めているのでダメージは無い。
 結局は膠着状態に陥り、最後の1人とエルダーマスクピンクの根くらべになったと思われた、その時。

「そこの男っ……!」
 正門の方から初音の知らせを受けた警備員が三人駆けつけてきた。
 エルダーマスクピンクは一瞬、そちらの方に意識を向ける。最後の1人はその一瞬の隙を突いて、
両腕のナイフで同時にエルダーマスクピンクに斬り付けた。
604東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 21:44:25.21 ID:sbiQb1j/0
 しかし、肉を切る感触が相手に伝わる事はなかった。それを予想していたエルダーマスクピンクは相手の攻撃を受け流し、
体制を崩した隙を突いて逆に拾った竹刀を最後の1人に叩き込んだ。そして、最後の1人悶絶した。
 
「千早ちゃん、薫子ちゃん、怪我はないですか!?」
「…………」
 悶絶した誘拐犯を放置して戻ってきたエルダーマスクたちに言葉をかける初音。だが返事は無い。
「千早ちゃん……? 薫子ちゃん……?」
「…………」
 まさか怪我でもしているのではないかと心配になる初音。しかしその時、ある事にふと気が付いた。
「エルダーマスクピンク?」
「はい、なんでしょう?」
「エルダーマスクブルー?」
「何?」
「マスクド……」
「「だから違います(違うよ)!!」」
「やっぱり息ピッタリですね、2人とも」
「今度はこのタイミングで否定しろって、か……先代エルダーマスクに言われたから」
「私は3学期に入ってからブルーから猛特訓を受けましたから」
「そ、そうなんだ(汗)……」
605名無しさん@初回限定:2012/03/24(土) 22:09:18.40 ID:AjtsOL5T0
支援
606東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 22:49:34.61 ID:sbiQb1j/0
 結局、エルダーマスクたちは恥ずかしくて正体を明かすわけにはいかなかったようで、
警備員が集まってくる前に逃げてしまった。
 初音は駆けつけてきた警備員たちに事情を説明すると、そのまま警察の事情聴取に赴いたようだ。
 この一連の戦いを物陰から目撃していた生徒がいたらしく、翌日には学院はエルダーマスクたちの噂でもちきりになった。
 それから、エルダーマスクたちは実はエルダーシスターの妃宮千早と七々原薫子ではないかとの噂が
まことしやかに飛び交っているが、当の2人は頑なに否定している。

 私の名前はエルダーマスクブルー。私の名前はエルダーマスクピンク。謎の地下組織『姉の穴』
……何だかとっても卑猥ですね(だね)。……とにかく、そこに選ばれたエルダーです(よ)。
今日もまた学院の平和を守る為、パトロールにいそしんでいます(るよ)。
さあ悪党の皆さん、どこからでもかかって来なさい。いつ何時、誰の挑戦でも受けてさしあげます(あげるよ)!
607東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 22:53:53.87 ID:sbiQb1j/0
おまけ

「ただいまー!」
 初音が薫子と千早の2人と一緒に帰ってきた。
「お帰りなさいませ」
「お帰り」
「お帰りなさーい!」
「あら、香織理さんに陽向ちゃん、どうしたんですか、そのケガは?」
 千早がたずねると、2人は苦笑した。
「あはははは、ちょっと階段から落っこっちゃいまして……」
「私も巻き込まれて……ホントいい迷惑だわ」
 香織理と陽向はそう言うが、どうも階段から落ちたようなケガには見えない。
「香織理ちゃん……? 陽向ちゃん……?」
 初音たちは香織理が話題をそらすまでの一瞬、不審の目で見ているのだった。

おまけのおまけ

「副部長、なんで私たちがこんなことしなきゃいけないんですか?」
 演劇部員全員がかつらとサングラスと黒服を脱ぎ捨て、演劇の小道具の警棒やナイフを置いて
玲香に不平不満を漏らしていた。
「そうですよ! しかも香織理お姉さまや陽向さん、フェンシング部の桂花さんにまでこんなことさせて……」
「仕方ないでしょ。前部長から言い渡された伝統なんだから」
 玲香はあっけらかんと言い放った。

Fin
608東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/03/24(土) 23:01:28.63 ID:sbiQb1j/0
以上です。ご支援ありがとうございました。
ちなみに設定ですが、エルダーマスクは誘拐犯たちの正体を知ってて、
時代劇のちゃんばらシーンよろしく、お約束どおりのバトル展開をしている、という設定です。
あと、なんでこんなことをしているか、というと、エルダーマスクの存在を後々まで受け告ぐため、事件が起きなければ……
こうなるわけです。

それでは、本日はこれで。お目汚し失礼いたしました。
609名無しさん@初回限定:2012/03/25(日) 00:47:15.82 ID:qzlxx3hU0
地下組織w
命名センスどこ行ったww

ともあれ乙
610名無しさん@初回限定:2012/03/26(月) 22:09:33.87 ID:IMeF6RsD0
東の扉氏乙〜ノシ
611名無しさん@初回限定:2012/03/28(水) 16:51:46.26 ID:yCatkX4C0
>608
乙でした〜
612名無しさん@初回限定:2012/03/29(木) 06:54:23.86 ID:jKKfirDv0
しばらくチェックしてないとSSが上がるから油断ならない

>>608
613 忍法帖【Lv=17,xxxPT】 :2012/03/29(木) 20:32:37.91 ID:k5Pmn7oB0
確認
614名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:05:05.43 ID:1IJwSZAg0
>>324あたりを書いてたときに、なんとかならんかなと思いついて
そのまま放置していたネタを無理矢理育ててみたりして。9本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『出会い』

それは春休み明けの、最高学年としての1年間が始まる日のこと。
一度乗ってしまったエスカレータのように、何をするわけでもなく、何ができるわけでもなく、
漠然と過ぎてゆく日々を傍観する私には、それは特筆するような1日ではないはずだった。
そう。彼女と出会う、その瞬間までは。

***
615名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:10:43.78 ID:1IJwSZAg0

といっても。
教室のドアが開き、彼女が私の目の前に姿を現す。
その瞬間自体の記録は、私自身の中に何一つ残されていない。

クラス替えの騒々しい空気に正直辟易していた私には
話しかけたい相手も見当たらず、話しかけるような気力も持たず、
ただぼうっと佇んでいただけだったから。

そして、突如急に静かになった教室の空気にも、
(ようやく静かになったか‥)などと少しずれたことを考えていた。

「ご、ご機嫌よう‥、みんな、どうかしたの?」

静かな空間に響き渡る声は、聞き覚えがあるもので。
おや?と思い扉に目を向けたことで、私は彼女を見ることになった。

戸惑いを浮かべた紫色の瞳。
肩を流れ落ちる柔らかそうな銀の髪。
微笑みとともに零れる声の響き。

いや。そんな表面上のことではなく。
私を捕えてしまったのは、彼女の瞳の奥に垣間見えたもの。
私が囚われてしまったのは。この学院生には‥
いや、私が生まれてこの方、出会った人々からは感じ取ったことのない
なにかを秘め隠した彼女の眼差しであった。

***
616名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:16:14.82 ID:1IJwSZAg0

正直、自分でも驚くほどに彼女に興味を持ってしまった私は、
まずは漏れ聞こえる会話から情報収集を始めることにした。

 今年からの転校生。
  薫子さんとおなじく寮から通う立場。
   北欧の血を引くクォーター。
    母君もこの学院の卒業生。etc...

彼女を囲む級友の問いかけに丁寧に答えるその声から、
私の脳内の真っ白なノートに、彼女の情報がどんどん書き加えられていく。

こんなことを知ってどうするのか、という声が、脳裏に警告として響き渡るが
やりたいことをしているだけ‥、という別の反論にかき消され。
まぁ、自分自身でも、自分らしくないことくらいは当然認識していているが。
微かな自嘲を漂わせつつも、その情報収集をなぜか止めるわけにもいかなかった。

***
617名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:17:00.25 ID:ka7RlzhK0
618名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:22:04.86 ID:1IJwSZAg0

始業式、ホームルーム、委員決め。
まぁ毎年繰り返していることだし、私にとってはどうでもいい。
そこに居さえすれば十分であり、あとは周囲の流れに身を任せるだけ。
その間、私はずっと1つの想いを抱えこんでいた。
そう。これから私はどうすればいいのか、と。

 話しかけたい。
 彼女のことが知りたい。
 彼女と同じ時間を過ごしたい。

その想いは薄れる気配は欠片もなく。いや。
時が過ぎるにつれ、欲求は高まるばかりであった。

それを実現させるには‥と、たいして賢くもないこの頭がひねり出した解答といえば。
幸運なことに、1年の時以来の知人である薫子さんと彼女は親しくしているようで、
その線からアプローチするのが、もっとも自然かつ私にとっても負担の少ない案だと思えた。

だがしかし。
そのような思考の渦からようやく浮かび上がり
ゆっくりとクラスを見回した私は、迂闊にもターゲットをロストしていることに気付いた。
慌てた視線で机をチェックすると、二人の鞄はまだ机に置いてあり。
学院の案内でもしているのだろうかと、自分なりの推論に納得する。

入れ違いになる懸念はあったが、このまま帰りを待ち続けるのも芸がないと考え、
あまり遠出しない範囲で多少時間を潰すことにし、私はクラスを後にした。

***
619名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:27:49.02 ID:1IJwSZAg0

何を聞こう。
なにを話そう。

取り留めもない考えを脳裏で揺らせながらしばらく時間を潰し、
そろそろ頃合いかと、クラスに戻ろうとしたとき。
ちょうど、何人かの級友が扉から出てきて、
私の姿を見ると頬を染め、廊下の隅に寄ってから会釈をしてくる。

こちらも軽く頭を下げ、通り過ぎたとき。
彼女らの声が小さく聞こえてきた。

「本当、妃宮さんもそうですけれど。
 騎士の君、茉清様。素敵な方々と一緒のクラスに慣れてよかったですわね。」
「えぇ、本当に。。」

そこで妃宮さんの名前が挙がるということは、
もしかしたらクラスに戻っているのかもしれない。
そんなことを考えつつ、静かに教室に踏みいれたその瞬間。


 「誰かに、嘘だっていってほしい‥。」


そんな声が私の耳朶に触れた。

***
620名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:33:39.05 ID:1IJwSZAg0

「嘘よ」
「!?」

その声に、つい反射的な応えを返してしまいながらも
あぁ、前にも同じようなことがあったような‥、などと別のことを考えていた私は。
振り向き視線をあげた彼女と、今日はじめて視線を交わし合うことになった。
驚きに丸く見開いたその紫の瞳はやはりとても印象的で。
今日一日の印象とはほど遠い、どこか幼く隙だらけの表情に思わず笑みをこぼしてしまう。

「ふふっ‥。

 懐かしい。
 ずっと以前に、こんなやりとりをした覚えがある。」

脳内でいろいろシミュレートしていた会話のとっかかり。
それらがすべてご破算になってしまったため、
時間稼ぎというわけではないが、さきほどの思いつきをそのまま吐露してみる。

「えっ‥?」
「‥‥やっぱり別世界に見えるんだろうね。この学院の中は。」
「‥えぇ、それは間違いのないところです。」
621名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:40:02.94 ID:1IJwSZAg0

2年前の経験から。
彼女の最初の発言を、私は正しく受け止めることができていたらしい。
あぁ、薫子さん。2年前のあなたに深い感謝を。

「私は真行寺茉清。よろしく。」
「あ、私は‥。」
「妃宮千早さんだね。大変な人気だったからさすがに覚えた。」

そういうと彼女は困ったような笑顔を見せる。

その笑みに見惚れてしまいそうになりつつも、
内心と裏腹にポーカーフェイスを貫き通せる自分の性格が今日ばかりはなんとも心強い。

「はい、よろしくお願いいたします。」

そう言葉を返してくれる彼女にそっと右手を差し出すと。
軽やかな笑みを浮かべ、優しく握り返してくれた。
その手は少し冷たくて。それは彼女の雰囲気にとても馴染む気がした。

***
622名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:45:40.14 ID:1IJwSZAg0

その後は。
少し昔話を口にしたタイミングで薫子さんが登場し。
それからも少し会話を交わすことができた。

そろそろ帰ろうという話になったため。

「妃宮さん。
 今日は話せて楽しかった。これからもよろしく。」
「えぇ‥こちらこそよろしくお願いします。」
「へぇー。茉清さんが珍しい‥。」

彼女の前で変なことをいうのはやめてほしい。

「そうなのですか?」
「いやー、そうでもないかな? んー。どうだろう?
 なにせ茉清さんは入学早々にあたしと友達になるような、なんとも独特な人だから。」
「それはなんとも失礼ね。
 私にとっても、あなた自身にとっても。」
「いやまぁ、ほら。あたしだし。」

そういって笑う薫子さんを呆れたように見ていると、ちょうど彼女と視線が合い。
そして同じタイミングでくすりと微笑むことができた。少し嬉しい。
よし。先ほどの発言はいまのでチャラにしてあげよう。
623名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 22:51:06.63 ID:1IJwSZAg0

昇降口。
並木道。
取り留めもない会話をやりとりしながら
夕焼けの暖かな橙色の中を肩を並べて歩き。

寮への道へと分かれるあたりで、2人に別れを告げる。

「じゃあ、私はこれで。」
「うん。茉清さん、また明日ねー。」
「茉清さん。今日はいろいろありがとうございました。」
「こちらこそ。いろいろ話ができてよかった。 それじゃ。」

気軽に手を振る薫子さんと、
微笑み、軽く会釈をする彼女。

きっと彼女はしばらくの間、見送ってくれるのだろう。
と勝手に思い込むことにして、私は振り返りもせずに校門へ歩いていった。
明日からの学院生活は、今までにないほど楽しくなるであろうという確信を心に秘めて。

-----------------------------------------------------------------------
続きません!
624名無しさん@初回限定:2012/03/31(土) 23:18:03.38 ID:Cr1X0sWR0
>続きません!

??「え〜(駄々っ子
???「薫子、駄々っ子というのは『駄目な子』を重ねた表現じゃないわよ?

とまれ乙。茉清さん視点は新しいかも知れない。
625名無しさん@初回限定:2012/04/01(日) 17:24:49.75 ID:X155FV6z0
乙でした。面白かったです。
626名無しさん@初回限定:2012/04/03(火) 07:13:34.36 ID:I/9Zw+s/0
続かないのか!!
乙!!
627名無しさん@初回限定:2012/04/08(日) 08:04:00.94 ID:rurNTBjLi
保守
628名無しさん@初回限定:2012/04/11(水) 11:36:17.56 ID:GFsqMqdPi
ほしゅ
629東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 15:56:26.25 ID:5rJK0xwJ0
こんにちは。東の扉です。
以前投稿させていただいた「シンデレラへのステップ」のパート3の部分につながる話を見つけました。
ちなみに、本編の場所はこちらです。「2人のエルダー」が出る以前に書いたものですので、そのつもりでお読みください。

プロローグ http://takayan.otbk.root-node.net/tlog/eroparo_15.html#a327
1 http://takayan.otbk.root-node.net/tlog/eroparo_16.html#a16
2 http://takayan.otbk.root-node.net/tlog/eroparo_16.html#a285
3 http://takayan.otbk.root-node.net/tlog/eroparo_17.html#a29
4 http://takayan.otbk.root-node.net/tlog/eroparo_17.html#a99
エピローグ http://takayan.otbk.root-node.net/tlog/eroparo_17.html#a119
番外編 http://takayan.otbk.root-node.net/tlog/eroparo_16.html#a141

12レス分を予定しております。それでは、よろしくお願いします。
630東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:00:32.79 ID:5rJK0xwJ0
 翔耀大学、由佳里の陰口を叩く女生徒たちが目撃されてから約1ヶ月後……。
「今のところ何も起こってないみたいだけど、由佳里、大丈夫かな?」
 瑞穂は、大丈夫なように振る舞っていたが、内心では由佳里のことを心配していた。奏に由佳里のことを聞いた日から。

「ほら、あれよ、上岡由佳里って」
「ああ、鏑木くんの恋人の……?」
「淑女ぶってるけど、中身は蓮っ葉なだけの小娘じゃない! 鏑木くんも、あんなののどこがいいのかしら?」
「騙されてるだけじゃないの? ま、そのうちボロ出してふられるわよ」

「うーん……」
 瑞穂は奏から聞いた、由佳里に対しての陰口の内容を思い返した。
「奏ちゃんの手前大丈夫だとは言ったけど、僕もやっぱりあの時のことを思い出してしまうな……」
「奏ちゃんの時……ですわね」
「……耳が痛いですわ。おおもとの原因は私ですものね」
 紫苑の言葉を聞いて、貴子はうつむいた。
「あれは貴子さんのせいじゃありませんよ。貴子さんはあの時正しいと思ったからしただけで、
いじめに関わってはいないですから。それに奏ちゃんにも後で謝ってくれたでしょ?」
631東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:04:16.12 ID:5rJK0xwJ0
「瑞穂さんの言うとおりですわ。奏ちゃんも含めて、誰もあなたを責めてはいませんから」
 紫苑たちの言葉に、貴子も安堵。そして話は、今の由佳里の話に戻った。
 瑞穂もただ聞いたから心配しているわけじゃなかった。奏の時のこともあるし、由佳里が顔が濡れていたり、
身体のどこかを押さえていたりと、嫌がらせを受けているらしい気配はあった。
「由佳里は自分で解決できるって言ってたけど、僕もそろそろ動き出した方がいいかな……」
「そうですわね。奏さんの二の舞にさせるわけにはいきませんわ」
「私たちも早いうちに手を打っておきましょう。この手のことは引っ張れば引っ張るほどエスカレートしていきますから」
「大変や!」
「桃子さん! どうしたんですか?」
 そこへ、桃子が血相を変えて瑞穂たちのところへ来た。
「瑞穂っち、しーちゃんと貴ちゃんも! 大変なんや、はよ来て!」
「どうしたのですか?」
「ゆかにゃんが大勢の女生徒に人気のないところに連れてかれたんや! 今隼人が見張ってくれてるけど……」
「ほ、本当なの!?」
「うん。前にゆかにゃんの陰口叩いとったやつらや。間違いあらへん」
 瑞穂は慌てて桃子についていく。
632東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:08:19.48 ID:5rJK0xwJ0
「貴子さん、私たちも行きましょう」
「ええ……」
 紫苑と貴子も後に続いた。

「隼人!」
「桃子! 間に合ったか! 由佳里さんはまだ無事だ!」
「よかった! この奥やで!」
「桃子さん、黒澤先輩、ありがとう!」
 瑞穂たちは急いで奥まで進んだ。

「せこい嫌がらせを毎日毎日、いい加減にしてください!」
「いい加減にするのはあんたの方よ! あんたみたいなのがみんなの鏑木くんを独り占めなんて、許されると思ってるの!?」
「優雅で上品な淑女のフリして鏑木くんをたぶらかして! 騙されてる鏑木くんの身にもなってみなさいよ!」
 由佳里は数人の女生徒に囲まれ、言葉責めにあいながらも、必死で反論していた。
「ち、違います! 瑞穂さんは……」
「何よ、勝手に勘違いしてるだけなんです、とでも言うつもり? 冗談じゃないわよ!」
「もとから鏑木くんと釣り合わないクセに、大学だけじゃ飽き足らず、家にまでぬけぬけと入りこんで
ご家族にも取り入るなんて、身勝手もここまで来ると呆れ返るわ!」
「だ、だから、私も釣り合う女の子になれるよう努力して……」
「何が努力よ! だいたい、知らないとでも思ってるの? あんたが学校のトイレで何やってるのか」
633東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:12:20.77 ID:5rJK0xwJ0
「………!!」
 由佳里の顔が一気に蒼ざめた。
「どうせほかの男に迫られても喜んで身体開くんでしょ? まあ、もしあんたみたいなのに迫る男がいたら、趣味疑うけど?」
 由佳里が何も言えなくなったのをきっかけに、女達の言葉はどんどんエスカレートしていく。
 それが限界に達した頃、リーダーらしき女が由佳里の前に出た。
「……とにかく、これは翔耀の女子全員の意見よ! 鏑木くんもすぐあんたの正体に気づいて別れると思ってたから
今まで慈悲深く傍観してたけど、そこまで性根が腐ってるなら仕方ないわね。やってちょうだい」
 そして、後ろから巨漢が現れ、由佳里をつまみあげると、今までいた場所のすぐ近くにある、
裏手のどぶ川の上まで連れて行った。
「わああっ! な、何するんですか!」
「何って、正義の鉄槌に決まってるじゃない。ここで頭を冷やせば、少しは身の程ってものがわかるでしょ?」
 由佳里は必死に抵抗するが、男はびくともしない。
「ねえ、早くやっちゃってよ!」
 周りの声が大きくなり、男がポイ、と由佳里をどぶ川に放り投げた。
「わあっ!!」
634東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:16:22.13 ID:5rJK0xwJ0
 ドカッ!
 と、その瞬間、男が倒れ、由佳里の身体が2つの腕によって支えられた。
「み、瑞穂さん!」
 由佳里が驚いたように瑞穂を見た。
「か、鏑木くん、どうして!?」
 周りの女生徒達も驚いている。
「どうしてもこうしてもないよ! 僕の大切な人に、なんてことするんだ!」
 瑞穂は由佳里を抱きかかえたまま、吊りあがった目で周りの女生徒達を見て叫ぶ。
「そ、それは……」
「僕がつきあう相手は僕が決める。他の人の価値観で、勝手に決めつけられる言われはないよ!」
「か、鏑木くんはそのメスネコに騙されてるのよ!」
「そうよ! 鏑木くんが思ってるような上品な淑女なんかじゃないわ! 化けの皮をはがせば、蓮っ葉で淫乱なだけの……」
「由佳里の上品な淑女さが良くてつきあってるなんて、僕は一言も言ってないよ?」
「えっ……!?」
 瑞穂が最後まで言わせずにそう強く断言すると、それまで散々言ってきた女生徒は驚きの表情で固まった。
「由佳里が淑女になる特訓を始めたのは、僕たちが知り合って半年以上たって、付き合い始めてから、
僕に恥をかかせないようにだし、僕と話すときは、君たちの言う“蓮っ葉な小娘”バージョンだよ」
「う……く……」
635東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:28:08.19 ID:5rJK0xwJ0
「君たちは、そんなことでしか人を判断しようとは思わないの!? こんなやり方でしか解決しようとは思わないの!?」
「うう……」
「幼い頃から訓練された人間じゃなく、何も持たない娘がその域まで近づくために、どれだけ時間と汗を費やしているか、
少しでも考えた事があるの!?」
「あ……う……」
「陰口を叩くぐらい大目に見るけど、こんなひどいことをして、それで正義をふりかざすなんて、
性根が曲がっているのは君たちの方でしょう!」
「わ、私たちは鏑木くんのためを思ってやっているのに、どうしてわかってくれないんですか!」
「……それはあなた達が妄想と現実を一緒にしているからですわ」
 女生徒の1人が半泣きで言うと、瑞穂の後ろから答えが返ってきた。
「紫苑さん! 貴子さん!」
 瑞穂についてきた紫苑と貴子も、みんなの前に出る。
「本人の意見を交えない場の会議というのは、往々にして心を鏡で覗くようなものになりがちです」
 まず紫苑が静かに口を開く。
「それは気がつけば、自分はどのような答えを欲しているか、ということで決まってしまい、他の方から見れば
話にもならないような説でも、信じて疑わなくなりますわ。あなた方は、それを事実と決めつけてしまったのです」
636東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:38:49.60 ID:5rJK0xwJ0
「好きな方のために何かする、というのはいいことだと思いますわよ? しかしそれは、瑞穂さんが幸せになるように
陰でそっと支えることであって、その交際相手を一方的な暴力や誹謗中傷で傷つけて
恋人の座から蹴落とすことではありませんわ」
「愛する人が傷つけられるのを見て、怒らない人間がいらっしゃると思いまして?」
「そ、それは……」
「僕のためと言うなら、なおのこと僕と由佳里の話を聞いた上で、まずは話し合って解決しようとするべきでしょ!? 違う!?」
「ご、ごめんなさい……私たちが間違ってました……」
「私たちの早合点でした、すみません……」
 瑞穂が問いつめると、女生徒達はリーダーから順に瑞穂に頭を下げる。
「わかってくれればいいよ。」
 それを見た瑞穂は、一転して穏やかな口調で優しく諭す。
「由佳里の事がうらやましいならああした方が気が楽かもしれないけど、いずれ必ず相手にもわかってしまうし、
最悪訴えられたり報復されるかもしれないんだよ?」
「は、はい……」
「僕は芸能人じゃないんだから、勝手に一線を引いていないで、その輪の中に入ってくればいいよ。
友達としてなら、ちゃんと歓迎するから」
「はい、ありがとうございます」
「それでは、私たちはこれで……」
 女生徒たちは瑞穂たちの前から退散していった。
637東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:42:43.23 ID:5rJK0xwJ0
「み、瑞穂さん……」
「由佳里、大丈夫だった?」
「は、はい、ありがとうございます」
「ふふっ、礼には及ばないよ。ごめんね。今まで何もできなくて」
「いえ、私も自分1人で解決したいと思ってましたから……自分の力で、瑞穂さんとの仲を認めてほしかったですから……」
「由佳里……」
「瑞穂さん……」
 瑞穂と由佳里は、お互いを愛しそうに見つめあう。

「えらいあつうおますなあ、瑞穂っちもゆかにゃんも」
「……どうでもいいけど、そういうことは2人っきりの時にやってくれないかな?」
「……も、桃子さん! 黒澤先輩!」
 瑞穂と由佳里は顔を真っ赤にする。そして、瑞穂は慌てて由佳里を降ろした。
「私たちのことも忘れないでくださいね?」
「私たちが好いた方がどなたなのか……ということもですわよ?」
「紫苑さん……貴子さん……」
 2人はますます小さくなる。
「お気持ちはわかりますが、仮にもご自分に惚れた女の前であてつけるのは、感心いたしませんわ」
「私、はらわたが煮えくり返りましてよ? この上は、先ほどまでとは比べ物にならない程過酷なことを、
由佳里さんに味わっていただこうかしら?」
 貴子がそう言うと、紫苑は由佳里を睨んでそう告げる。
「し、紫苑さん!?」
「ま、まさか本気ですか!?」
「言うまでもなく……」
 瑞穂と由佳里の顔が蒼ざめた。
638東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 16:47:00.32 ID:5rJK0xwJ0
「冗談に決まっていますわ」
「だああああっ!!」
 紫苑が怖い顔から一転して笑顔で言うと、その場にいた全員がずっこけた。
「し、紫苑さーん……」
「だって、そのようなことをすれば瑞穂さんに嫌われてしまうのは火を見るより明らかですもの。
それをわかっていて実行するほど愚かではありませんわ」
「だ、だとしても、そういうことは、冗談だとわかるような表情と口調でお願いしますよ」
「あら、それでは瑞穂さんたちのうろたえる顔が拝見できなくて困ります」
 紫苑は悪びれる様子もなく答える。
「まあ、私や貴子さんが今でも瑞穂さんのことを好いているのはお2人ともご承知なのですから、
この程度のいたずらは許容していただいてもよろしいのではなくて? 慈悲と寛容の精神で」
 そして、瑞穂と由佳里にウインク。
「あはははは……」
 そんな紫苑に、瑞穂と由佳里は力なく笑うのだった。

「そうですか、由佳里ちゃんへの嫌がらせは、無事に解決しましたか」
 そして夜の鏑木邸、瑞穂は奏に今日のことを話していた。
「私も経験がありますから、由佳里ちゃんがそういう目にあっていたことは気づいていました。ですから、安心しました」
「ごめん……奏ちゃんにも迷惑かけてたんだね」
639名無しさん@初回限定:2012/04/11(水) 17:29:31.39 ID:5TzgQVop0
支援
640東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 17:50:30.38 ID:5rJK0xwJ0
 同じ目に遭った人には隠しとおせないか、と由佳里は苦笑い。
「でも、そういうことをする人たちって、普段どういう人たちでしょうか? とんでもなくわがままな人たちとか?」
「そう思う?」
 奏の疑問に、瑞穂は優しく答えた。
「えっ?」
「みんなに調べてもらったけど、どの女の子も普通にどこにでもいるような女の子だったよ」
「そ、そうなのですか? でも、どうしてそんな方達が、ひどい嫌がらせを?」
「紫苑さんが言ってたけど、人は自分に都合のいいことを真実だと思いたがるものだって」
 瑞穂は由佳里に対しての中傷と、紫苑の言葉を照らし合わせてみる。
「だから、仲間内で話すとみんな同じ意見だから、他の人から見れば何だそれはというようなバカな説でも
信じて疑わなくなった。そして由佳里が絶対的な悪者で自分達はそれを倒す正義のヒーロー、という図式が
固まってしまっていた。そういうことだと思うよ?」
「なるほど……では3年前のことも、普通の人たちがそういう考えに至ったんですね」
「多分ね。そういえば前に由佳里に言ったよね。人の言葉を鵜呑みにしないで自分で考えてみる事が必要だって」
「あ、はい、確かに聞きました……」
641東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 17:54:21.89 ID:5rJK0xwJ0
「それをしなかったら、ああいうふうになる可能性がある、ってこと。あの娘たちだって、もっと自分で考えたり、
僕に確かめに来たら、あんなことはしなかったと思うよ?」
「そ、そうですね……そう考えると怖いですね、人の意見を鵜呑みにするって……」

 その夜、瑞穂の部屋。
「でもよかったよ。由佳里に笑顔が戻って」
「瑞穂さん……」
 パジャマとネグリジェに着替えた瑞穂と由佳里が、ベッドの上で話し合っていた。
「僕も今日のこと、自分で話してみて思ったよ。1人に縛られないで、もっと色んなところを見てみるべきだって」
「あーっ!? 瑞穂さん、ひどいですよ!」
「何が?」
「だって、やっといじめから解放されたと思ったら、早速浮気宣言するんですから」
「浮気宣言……?」
「『1人に縛られないで、色んなとこを見る』って」
「あはははは、ごめんごめん、それはもっと普通の意見のこと。恋愛は別だって。恋愛は由佳里1人に縛られたいですから」
 おかしそうに笑う瑞穂を見て、由佳里はいっそう頬を膨らませた。
642東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 17:59:11.89 ID:5rJK0xwJ0
「もう、瑞穂さん、そういう発言には気をつけてくださいね? 今が幸せでいっぱいだから、
ちょっとしたことでも不安になるんですから」
「はい。なるべく気をつけます。でも怒った顔も可愛いよ、由佳里」
「えっ……?」
 瑞穂の不意打ちに、少し固まる由佳里。
「それって、褒めてるんですか?」
「褒めてる褒めてる。怒った顔が可愛く見える人って、そうはいないもの」
「………」
 頬を赤く染める由佳里に、瑞穂がくすりと笑って言う。
「だから、その可愛い怒った顔を見るために、時々浮気宣言とかしちゃおっかな?」
「な、なんでそうなるんですかあ!?」
「もちろん本当に浮気はしないよ。可愛いとこが見たいから宣言するだけ」
「ふぇーん……瑞穂さんの意地悪……そんなことされたら、ホントに冗談なのかと思ってしまいますよ」
「じゃあそう思われないように、たっぷり愛してあげる♪」
「もう♪ 瑞穂さんの意地悪う♪」
 さっきとは同じようなセリフを対照的に言う由佳里。
「おいで」
「はい」
 こうして、幸せな夜は更けていくのだった。

Fin
643東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/04/11(水) 18:10:46.07 ID:5rJK0xwJ0
以上です。ID:5TzgQVop0さん、ご支援ありがとうございました。
今さら出しても忘れられているんじゃないかな、という不安も感じますが、最近スレが結構寂しいので。
今月薫子さんの誕生日が、来月は初音さんの誕生日がありますね。
聖誕祭記念SSが投稿されることを願っています。(私も書いている最中ですが、書き上がるかはわかりません)
それでは、本日はこれで。お目汚し失礼いたしました。
644名無しさん@初回限定:2012/04/11(水) 18:13:27.57 ID:XvgoKvuM0
乙ですわ東の扉の君
645名無しさん@初回限定:2012/04/11(水) 22:37:57.85 ID:wWwVRYj80
>>643
乙でした
646名無しさん@初回限定:2012/04/12(木) 20:09:00.22 ID:2r7oaIxO0
>>643
乙!
647名無しさん@初回限定:2012/04/13(金) 01:42:48.87 ID:f0jSRBCI0
>>643
また、俺が目を離したすきにSS上げやがってくださって乙!!
648名無しさん@初回限定:2012/04/18(水) 19:51:00.39 ID:72fyjN9I0
積んでた別ゲー消化したら、
そっちのSSが書きたくてしょうがないので
otbkネタがちっとも進みません。てへり。
649名無しさん@初回限定:2012/04/19(木) 21:36:10.31 ID:9SV1rZNc0
気づけば薫子さんの誕生日になっていたという…
650名無しさん@初回限定:2012/04/19(木) 22:53:08.45 ID:OiBrLXx/0
交際してから6〜7年目の薫子さんの誕生日にちーちゃんがプロポーズとか
薫子さんルート時に卒業間近の寮で初音さんが「これで女の子の千早ちゃんも見納めなんですね」と爆弾発言投下とか
ネタだけはあるんだ…………ネタだけで全くまとまらないのだが
651名無しさん@初回限定:2012/04/26(木) 22:20:18.49 ID:GRLMAdOwi
保守
652 忍法帖【Lv=32,xxxPT】 :2012/04/29(日) 11:22:13.43 ID:qu9z5Qtz0
確認
653名無しさん@初回限定:2012/04/29(日) 18:05:08.48 ID:M+GvvZzu0
雪ちゃんルートで卒業後にうたちゃんに男バレした時に
千早きゅんがうたちゃんに1人エッチを教えた事が雪ちゃんにばれて
そのせいで雪ちゃんから罵られうたちゃんには責任取れと迫られる
妄想をしてたらゴールデンウィーク最初の土日終わってた保守
654名無しさん@初回限定:2012/04/30(月) 10:35:30.68 ID:6xf0zwRf0
「えぇっ! お姉様って男性だったんですか?」
「でもあのとき、女性の慰めかたについて教わったのですが‥」

むむむ。このあとどうやっても、
そのあとで淡雪に千早がいぢられるルートにしかたどり着けないんだが‥。

「ねぇ、 聞いたわよ? うたちゃんにへんなこと教えたんですって?」
「ふーん。 そんなことして、うたちゃんの心を虜にしたんだ‥。」
「で、そのとき、千早お姉様はうたちゃんに教えていてどうだったの?」
655名無しさん@初回限定:2012/04/30(月) 21:42:44.46 ID:lzFDLKbK0
>>654
その後
「うたちゃんにだけ教えるなんてずるい!私にもちゃんと教えてよ」
「……」

さらに1か月後
「千早“お姉さま” 、久しぶりに勝負を申し込みますわ。手加減なしでお願いします」
「……」
656名無しさん@初回限定:2012/05/01(火) 01:57:38.98 ID:Lw21z51t0
続きを
657名無しさん@初回限定:2012/05/01(火) 07:37:43.45 ID:wcWcKCNk0
>>655
「わかりました。では、雅楽乃に立ち会いをお願いしましょうか。」
「いやいや。うたちゃんには判定を。」
「あら、雪ちゃん。なかなの自信ね。」(くすくす)
「えぇ。お姉様には負ける気はありませんわ。」(にやり)
658名無しさん@初回限定:2012/05/01(火) 22:53:16.34 ID:wdDbBLlV0
一体ナニの勝負なんだ?w

659東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 04:12:38.34 ID:4EKpVX130
こんにちは。東の扉です。
初音ちゃん聖誕祭記念SSを投下させていただきます。
舞台は初音END直後の5月で、
〜シュラインズ&シスターズ〜です。
10レス分を予定しております。それでは、よろしくお願いします。
660東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 04:18:19.56 ID:4EKpVX130
「千早ちゃん、次は何に乗りますか?」
「そうですね、マーメイドの潜水艦なんかどうでしょうか?」
 僕たちが聖應を卒業してすぐの5月4日、初音さんの誕生祝いにと僕たちはキャラメルランドにデートに来ていた。
「マーメイドの潜水艦……ですか」
「もしかして、いやなんですか?」
 初音さんが少し間をおいて答えたので、僕はとっさにそう聞いた。もしそうなら違うのにしよう。
「いえ、昔両親と一緒に、似たような乗り物に乗った事がありましたので」
 そうなんだ。初音さんにも過去はあるのは当然のことで、僕はまだそれを知らないんだ。
そう思うと知りたくなってくる。初音さんの過去の話も色々と。
「あら、初音?」
 そう思っていると、突然後ろから初音さんを呼ぶ声が。振り向いてみると、声の主は活発そうなショートカットの
女性だった。年齢は僕たちと同じか少し上だろうか?
「由佳里お姉さま!」
「久しぶりね。元気だった?」
「ええ、お姉さまもお元気そうで何よりです」
 そういう会話をしているけど、血がつながっているようには見えない。てことは、この女性も聖應のOGだろうか?
「あら、そっちの人は……もしかしてお邪魔だった?」
 僕が由佳里と呼ばれた人を見ていると、向こうも僕の存在に気づいたようで、少し気まずそうに聞いてくる。
「えっと……ご紹介しますね。私の恋人の千早です。千早ちゃん、この人は私の“姉”の上岡由佳里お姉さま」
 初音さんがそう言うと、改めて僕たちは自己紹介した。
661東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 04:24:06.09 ID:4EKpVX130
「由佳里お姉さまはこんなところで何を?」
「うん、うちの人と一緒に来てるんだけどね、ちょっと家からの電話につかまっちゃって。それで私が順番を取ってるの」
 ふうん、初音さんのお姉さまって、もう結婚してるのか。元からかもしれないけど、これだけ明るいって事は、
恐らく彼女の旦那さまも相当素敵な人なんだろう。

「あの、じゃあ私たちはこれで。旦那さまによろしくお伝えください!」
「うん、初音たちも楽しんでね!」
 僕たちは由佳里さんと別れ、2人のデートに戻った。
「驚きましたね。こんなところで初音さんのお姉さまに出会うなんて……」
「そうですね。私もびっくりしました」
 でも初音さん、あれだけでよかったのかな? 久しぶりにお姉さまとの再会したんだから、積もる話もあっただろうに……。
「初音さん、よろしいんですか?」
「何がですか?」
「由佳里さんです。積もる話もあるんじゃないかと思いまして」
 僕が心配そうに言うと、初音さんはにっこりと笑う。
「大丈夫ですよ。確かに積もる話はありますけど、またいつでも会えますから。
それに由佳里お姉さまもご結婚なさったばかりですから、お邪魔しちゃ悪いですし」
 そっか。僕は初音さんの視点だけで考えてたけど、言われてみれば確かに初音さんの言うことにも一理あるよね。
「それに私も、今日は千早ちゃんと一緒にデートを楽しみたいですからね♪」
 ……まったく、初音さんにはかなわない。温かい笑顔でそう言われて抗える人なんかまずいないだろうな。
662東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 04:30:24.58 ID:4EKpVX130
「あれ?」
 マーメイドの潜水艦を乗り終えた後、初音さんがトイレに行っている間、僕は見知った顔を見た気がした。
「瑞穂さん!」
 僕がその名を呼ぶと向こうも気づいたらしく、こちらを振り返った。
「あれ? 君はまりやの従姉弟で……確か千早くん」
「ええ、そうです」
 しかし、以前はもっとビクビクおどおどした感じだったけど、人間変わるもんだな。
今はずいぶんと優しげでさわやかな印象だ。
「久しぶりなのに悪いけど、僕は人を待たせてるから、これで」
「ええ。いずれまた……」
 僕たちはそう言って瑞穂さんと別れた。しかし今日は偶然が多いな。

 初音さんが帰ってきて以降僕たちは時に乗り物に乗り、時にイベントを観賞し、昼食も食べ終えた。
「美味しかったですね。ここのお店は」
「そうですね。でも私は千早ちゃんのお弁当の方が好きですけどね」
「えっ……?」
 初音さんがそんなことを言ってくるので、一瞬ドキッとさせられた。
「寮母さんがお休みの時とかに、何度か千早ちゃんの手料理を食べましたけど、
由佳里お姉さまに勝るとも劣らない腕前ですし、薫子ちゃんや優雨ちゃんが絶賛するのもうなずけます」
 ってことは、あの由佳里さんも僕と同等以上の腕前ってことか。一度腕前を披露して欲しいな。
「何より、愛する人の手料理ほど、美味しいものはない……」
 それは愛の欲目ゆえの錯覚だな、と微笑みながら思っていると……。
「もとい、愛する人の料理を食べている時ほど、幸せなお食事はありませんからね」
 初音さんはそれに気づいたのか、言い直してきた。
663東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 04:36:10.26 ID:4EKpVX130
「やっぱり初音ちゃんもそう思うんだ……」
 後ろからそう言う声が聞こえてきて、僕は驚いて振り向いた。
「瑞穂さん!」
「瑞穂さま!」
 あれ? 初音さんも瑞穂さんを知っているのか? 一瞬そう思ったけど、そういえば瑞穂さんも
女装して聖應に通っていたらしいから、2人が知り合いでも別に不思議じゃないか……。
「ってことは、瑞穂さんも、愛する人の手料理を……?」
「あれ? 千早くん……うん。料理の腕も相当なものだけど、何より心がこもっていて温かいし、
言い方はちょっとくさいけど、食べるたびに体の中に愛が染み込んでいくような感じで……」
 ふうん……そういうものなのかな? そんな心情的な分析はよくわからないけど……。
「瑞穂さん、どうしたんですか?」
「ああ由佳里、ちょっと初音ちゃんが来てたから」
 え?
「瑞穂さま、由佳里お姉さまは結構やきもちやきですから、ほかの女性の名前をあげると怒っちゃうと思いますよ?」
「ごめん……でも初音ちゃんだし、さすがにそれだけで離婚みたいな大騒動にはならないでしょ?」
「瑞穂さんのお嫁さんが……初音さんのお姉さま……?」
 びっくりした。まさかこんなところで繋がっていたなんて……。
「そうですよ、あれ? 言ってなかったですか?」
「聞いてませんよ! 瑞穂さんが結婚したらしいことは知ってましたけど……」
「それにしても、千早くんが由佳里の妹の初音ちゃんと恋人になってるなんてね……」
 なんというか、世間は狭いな……。
664東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 04:52:39.13 ID:4EKpVX130
「私も初音の恋人が千早くんだって知った時はびっくりしたわよ」
 そういえば由佳里さんはまりや従姉さんの“妹”だって話だし、切っても切れない縁みたいなものを
感じざるを得ないだろう。
「これって、一体どれくらいの確率で起こる偶然なんでしょうね?」
 多分、天文学的な数値になるだろうな……聖應の生徒だけでも約750人いるし、恋人が出来るのが
聖應の中でとは限らないし、何より僕も瑞穂さんも聖應に通うこと自体普通ならありえないしね。

「そうだ! 今日はダブルデートにしない?」
「えっ……?」
 しばらく4人で話していると、突如瑞穂さんがそう言い出してきた。
「もちろん嫌なら無理にとは言わないけど」
 ……僕としては初音さんと2人っきりの時間を楽しみたい気持ちもあるけど、1度由佳里さんと料理の話をしてみたいし、
もしかしたら瑞穂さんとのわだかまりも少しは消えるかもしれないし……。
「僕はかまいませんけど、初音さんと由佳里さんはどうですか?」
「そうですね……由佳里お姉さまとお話しながらデートを楽しむのもたまにはいいですからね」
「私も久しぶりに初音と一緒にいたいし、千早くんとも料理の話をしたいから」
 2人ともちょっと考えてから賛同してくれた。
「じゃあ決まりだね。次はどこに行こうか?」
 それから、僕たちはしばらく4人で一緒にアトラクションなどを楽しみながら、昔の話、今の話、料理の話、
そしてお互いの恋話に花を咲かせた。
665東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 04:58:51.98 ID:4EKpVX130
「……なるほど、そんなやり方もあるんですね。僕も今度試してみましょう」
「私も千早くんにはビックリさせられたわ。千早くんと一緒なら、今まで見たことない料理を作れるかも」
「そうですね。それは楽しみです」
「……これは、由佳里の料理にもますます幅が広がりそうだね。食事の時間がますます楽しみになりそう」
「そうですね。私も千早ちゃんのお料理と由佳里お姉さまのお料理をあわせると、
どれだけ美味しくなるのか想像できませんから」
 僕と由佳里さんが料理の話で盛り上がっている間、初音さんと瑞穂さんはそれを聞きながら愛する人の手料理への期待に
胸を膨らませているみたいだ。
 ダブルデートについて少し心配していたけど、どうやらいい方向で進んだみたいだ。

「それで、瑞穂さんと由佳里さんは、お互いどんなところに惹かれたんですか?」
 ダブルデートを楽しんでいる最中、僕は思い切って気になることを聞いてみた。
「……そうね。私、義理の姉にすすめられて聖應に来たんだけど、瑞穂さんって、なんかお義姉さんに似てるんだ」
「へえ……」
 僕は瑞穂さんを見ると、瑞穂さんは冷や汗混じりに乾いた笑いを浮かべていた。
やっぱり瑞穂さんも女の子扱いされるのは屈辱的みたいだな。
「最初は単なる憧れだけだったけど、何でもわかってくれる包容力とか、正しい方向に導いてくれる指導力とか、
あとそれでいて触ったら割れてしまいそうな繊細さ……とかにかな?」
 繊細さのところで由佳里さんは何かを思い出したように言うけど、やっぱり瑞穂さんがそういう弱さを見せたんだろうか?
666東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 05:17:37.88 ID:4EKpVX130
「瑞穂さんはどうですか?」
「そうだね……自分の意志で努力しようとするところ……かな?」
 自分の意思で努力しようとする……?
「僕は生まれた時から親とか周りの人間の言いなりになってきただけだったから。みんなは僕を何でも完璧にこなせるって
言うけど、そこに僕自身の意志は全然なかったんだ」
 ……僕は瑞穂さんと比べられるのが嫌で嫌でしょうがなかったけど、瑞穂さんも彼なりに苦労してたんだな。
「だから、由佳里のことは素直にすごいって思うし、由佳里と一緒なら、僕も自分の意志で頑張れる、そう思えるんだ」
「わかります。私も由佳里お姉さまがいらっしゃらなかったら、きっと臆病で弱虫なままでしたから」
「そういう千早くんと初音ちゃんはどうして? そういえば千早くんはどうして聖應に……?」
 瑞穂さんは僕が聖應に通っていることは知ってたみたいだけど、事情は知らないみたいだ。
僕は前の学校であったことから説明した。
「あはは……女装させたがるのは、御門家の血統なのかもね……」
 瑞穂さん、それ全然笑えないんですけど……。
「世の中に絶望して何事も覚めた目でしか見ることの出来なかった僕に、初音さんは温かい心と前向きな気持ちを
注いでくれました。初音さんがいてくれるから、僕も忘れていた人間としての温もりを取り戻せたのです」
「千早ちゃんは、私と優雨ちゃんの絆を確かなものにしてくれましたし、裸で人と向き合う勇気をもらいました。
もし千早ちゃんがいなかったら、きっと優雨ちゃんともすれ違ったままでしたし、今でも両親の言いなりに
なってばかりだったと思います」
 初音さん……。
667東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 05:36:56.05 ID:4EKpVX130

「実は僕、以前から瑞穂さんのこと、大嫌いだったんですよ」
「え? ど、どうして?」
 僕が思い切って言うと、瑞穂さんも由佳里さんも目を大きくして驚いた。
「ぼ、僕、何か千早くんを怒らせるようなことしたかな?」
「いいえ。ですが、僕は幼い頃からいつも瑞穂さんと比べられてましたから」
 僕がどれだけ努力しても「瑞穂くんはもっとすごい」「瑞穂くんみたいにできないの?」とか言われ続けてきたからな。
「……な、なるほど。それは災難だったね」
「どんなに努力しても認められないって、すごく辛いことだからね」
 由佳里さんは瑞穂さんと結婚するために必死で花嫁修業をしたらしい。それが報われなかったら……
そう考えているんだろう。
「人のいいところって、目に見えるものだけじゃないのに……千早くんに出来て僕に出来ない事だって、
いっぱいあるはずなのにね……」
「僕も頭の中では理不尽な逆恨みだとわかってたんですけどね。それで肝心の瑞穂さんが負けても納得できる
偉大さを持っていれば納得したかもしれませんけど、まりや従姉さんの影に隠れておどおどしてばかりだし……」
 まあ今の瑞穂さんは、エルダーとしてのカリスマ性と溢れんばかりの優しさと人懐っこさを持っていて、
この人になら、と納得できるんだけどね。
「でも、おどおどした瑞穂さんって、なんか想像できませんよ……」
 由佳里さんがそういうってことは、瑞穂さんも聖應に入った時から女性らしく演じることを考えているうちに
おどおどした性格じゃなくなっていたのかもね。
668東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 05:54:23.49 ID:4EKpVX130
「ところで、初音はいつ千早くんが男の子だって気づいたの?」
「そうですね……違和感を感じたのは5月で、はっきりと確信したのは7月でしたね」
 初音さんは、その時のことをエピソードを交えて2人に話して聞かせた。
「そういう由佳里さんは、いつ瑞穂さんが男だと?」
「私は1月の最後にちょっと事故で瑞穂さんの身体に触れてしまって……それまでは全然気づかなかったな……
ってことは、千早くんの方が男らしい……のかな?」
 由佳里さんがくすっと笑みを浮かべながら言う。
 そうか、男らしさでは僕のほうが上なのか! やっと僕が瑞穂さんに勝てる部分が見つかった!
「というか、瑞穂さんの方が女らしい……というべきかな?」
「お……女……らしい……」
 あ、瑞穂さんが落ち込んでしまった……さすがに他人事とは思えないな……。
「でも、それは運や演技力、洞察力その他色々な要素が入ってきますから、一概に決められないと思いますけど……
というか、どんぐりの背比べのような気が……」
「まあ、確かにどっちもすごく女っぽいからね」
 ガーン!!
「す、すごく女っぽい……」
「あ、千早くんも落ち込んじゃった……」
「千早ちゃん、しっかりしてください!」
 いや、僕たちに傷をつけてるのはあなたたちなんですけど……。
669東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 06:04:44.57 ID:4EKpVX130
「じゃあ、僕たちはこれで」
「初音、千早くん、またね」
 夕方になってダブルデートも終わり、僕たちは瑞穂さんたちと別れることになった。
「よろしければ、またダブルデートしませんか?」
「ええ、喜んで」
 僕の提案を瑞穂さんと由佳里さんは、嬉しそうに受け入れ、一礼して帰っていった。
「……楽しかったですね」
「はい! ……あの、千早ちゃん」
「なんでしょう?」
「瑞穂さまのこと、嫌いだったと言ってましたが、今はどうですか?」
「そうですね……今は好きになれそうですよ」
 これは本心だ。以前の瑞穂さんは気弱なイメージしかなかったけど、今は別人のように母性愛改め
優しさと包容力に満ち溢れてるからね。
「千早ちゃん……なんか瑞穂さまへの攻撃精神がちらりと見えた気がしたんですけど……」
「気のせいでしょう」
 ……というか、思わず出そうになった言葉の意味を考えたら悲しくなりそうだからやめよう。
「今日の誕生パーティー、早速試してみたいメニューがあるんですけど、それでいいですか?」
 由佳里さんに聞いたメニューを、僕なりにアレンジして作りたいのがいくつか見つかったから。
もちろん試食はしてみるけど。
「ええ。楽しみに待っています」
 にっこりと笑う初音さんを見て、今日瑞穂さんたちと会えて本当によかった、僕は心からそう思えた。

Fin
670東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/04(金) 06:17:09.32 ID:4EKpVX130
以上です。なんか初音ちゃん、思ったより目立ちませんでした。
瑞穂くんと千早くんが対面するSSって他にあったかな? と思いながら書いていました。
このSS後、みんな交えて幸せな誕生パーティーが開かれていることでしょう。

最後になりましたが、初音ちゃん、お誕生日おめでとうございます!
それでは、本日はこれで。お目汚し失礼いたしました。
671 忍法帖【Lv=34,xxxPT】 :2012/05/04(金) 07:11:11.67 ID:SKm1k35t0
>>670
乙でした!
672名無しさん@初回限定:2012/05/05(土) 17:44:53.47 ID:aRW7whJ50
東の扉氏乙〜♪
673(1/15):2012/05/06(日) 01:07:37.59 ID:SkNQp03R0
初登校です。場所を使わせて頂きます。
-------------------------------------------------------------------------------
五月の温かな日差しの差し込む御門家のサロンで、千早はゆっくりとした時を過ごしていた。
入学以来、彼女……いや彼にとっては気の休まる暇のない日々であったため、
やっと一息つけた、といったところらしい。
「史、連休も今日で終わるのだし、今日くらいはゆっくりと休んでもらっていいのよ?」
「はい、ですが史はこうして千早様にお仕えする方がむしろ落ち着くので、
お気遣いは不要にございます」
「ふふふ、千早ちゃんもすっかり女の子の言葉遣いが板についてきたわねー」

いや、訂正しよう、彼にとっては実家もまた落ち着く場所ではなかったらしい。
なぜなら母妙子の「千早ちゃん、家でのお休み中も女の子として過ごしなさい。
女の子としての振る舞いをしっかりと身に着けないと、この先ぼろが出ないとも限らないわ」
という発言の元、こうして学園から離れ寛いでいるこの今も女装をして
言葉遣いも女性のままで過ごしているのだ。

「はぅぅ、これも母さんが仕込んだんじゃないですか……」
「ほら、そんなことでしょげてじゃ駄目よ、千早ちゃん。 女の子は笑顔を絶やさずにね」
「だから僕は男ですってば……」
そんな会話を交わしつつ、相変わらず能天気な様子の妙子と、落ち込む千早であった。
674(2/15):2012/05/06(日) 01:08:39.73 ID:SkNQp03R0
「そういえば千早ちゃん」
「なんでしょうか?母さん」
「入学の時に持たせてあげたお洋服だけでは足りないでしょう?
自分でお洋服を買い足したりしているのかしら?」
「えぇと、寮では制服で過ごすことが多いですから。服も用意して頂いた分で
十分に足りていますわ。」
実際、千早の住む学生寮では普段制服で、私服を着る機会はあまりない。
当然あまり多くの私服は必要ではなく、千早は良く着る私服はほぼ固定されつつあったのだが……。
「まぁ!だめよ、そんなことじゃ」
「え?」
不意に大きな声を出した妙子を見て、千早は目を丸くした。
「女の子として生活しているのに、おしゃれに気を使わないでどうするの!」
「あ……あの、母さん?」
大きな声に気圧される千早に、妙子は更に続けた。
「のんびりしている場合じゃないわ、千早ちゃんあなたこれからお買い物へいってらっしゃい。
当然、女の子らしいおしゃれで可愛いらしい服を買ってくるのよ」
「ちゃんと、おしゃれさんになってくるのよ」
「あー、でもノーヒントじゃ可哀想だし、はいこれ母さんお勧めのお店のメモ。
千早ちゃんに似合うようなのが揃ってるから、是非ここへ行ってらっしゃい」
妙子は早口でまくし立てると、千早を追い出すように送り出したのだった。

「どうしてこんなことに〜」
憩いの時から一転、屋敷の外で途方にくれる千早の顔には、
真上からの日差しによって濃い影が差していた。

『ある休みの光景』
675(3/15):2012/05/06(日) 01:09:36.43 ID:SkNQp03R0
「まったく、母さんはいつだって唐突に変な事を言い出すんだから……」
そんなわけで千早は不貞腐れつつも妙子に指示された店を目指して繁華街を歩いていた。
休日の午後とあって普段以上の人出の中であるが、
その”銀色の髪の美少女”は大変に目立っていた。

(失敗した……無理を言ってでも史に一緒に来てもらえばよかった。)
人間不信のきらいがある千早にとって、この状況はかなりの苦痛である。
そして、更に千早が恐れている状況があった。

「ねぇ君、すごく素敵な髪だね。ちょっと僕とお話しない?」
突如、軽薄そうな男が、前に立ちふさがるや、千早に話しかけ始めた。
(ぐっ、やっぱりきたか……だから男は嫌いなんだよ!)
ナンパである。千早は心の中で毒づいたが、そんな心中とはお構いなしに
男はなにやらペラペラと話し続ける。千早はいつものごとく無視を続けるが、
男の口上は止まる気配もない。
「……それでね、実は映像関係の仕事で、モデルのスカウトをやっていてね……」
と、そこで気づいた。目の前にいる男はただのナンパ男ではない。何かたちの悪い勧誘の類だ。
「そんなに時間とらせないからっ、ね!」
言いつつ、男が千早の手を取った。
(うわぁ!触るなぁっ)
千早は手を捕まれた事に強い嫌悪感を感じる。
背中を虫が這うような嫌な感触を覚え、体が硬直する。
676(4/15):2012/05/06(日) 01:15:12.55 ID:SkNQp03R0
「遅れてごめんなさいね、カナちゃん」
突如、凛とした女性の声がした。千早は声の方へと顔を向けた。
そこには、黒髪で長身の美人が、にこやかな顔をして立っていた。
「さぁ、行きましょうか」
そう言って、千早にむかってウィンクしたその女性は、
男に掴まれていた方の逆の手を取り歩き始めた。
突然の美女の登場に呆気にとられたのは千早だけではなかったらしい。
千早が振り払うと、男に掴まれていた手は簡単に抜けた。
掴んだ手を振り払われたことに気づいた男は更に何か言おうとしていたが、
千早と女性は足早にその場を立ち去った。

「もう大丈夫のようですね」
「そのようですね。助かりました。ありがとうございます」
男が追ってきていないことを確認し、千早はやっと落ち着きを取り戻した。
そうして、もう一度助けてくれた恩人の方へと目を向ける。
すらりとした長身は千早よりも高く、腰まで伸びた艶のある黒髪、
落ち着いた物腰には高貴なという形容が相応しい美人であった。

思わず見とれそうになるのを抑え、御礼を言おうとした千早だったが、
「あら?ちょっと失礼いたしますわね」
そう言って、女性は鞄から携帯電話を取り出した。
どうやら着信があったらしい。なにやら電話の相手と話しはじめてしまった。
(さすがに、このまま行ってしまうのも失礼だよね……)
お礼を済ませて別れるべきかと思い、相手が話し終わるのを眺めながら待っていた。
「――もう、この埋め合わせは今度きちんとしてもらいますからね。」
と、そこで電話が終わったらしい。改めて御礼を言ってから去ろうと思っていた千早が
話しかけようとした矢先、女性が先に千早へと話し掛けた。
「ねぇ、もしかしてあなた聖應の生徒さんではないかしら?」
677名無しさん@初回限定:2012/05/06(日) 01:18:11.41 ID:SJujddik0
支援
678(5/15):2012/05/06(日) 01:20:19.14 ID:SkNQp03R0
「え?どうしてそれを?」
突然通っている学院を言い当てられ驚く千早に、女性は更に言葉をついだ。
「ただの勘ですわ。この辺りには良く聖應の方が来られますし……」
「私も聖應の卒業生ですから、なんとなく聖應生の雰囲気が分かりますの」
「雰囲気、ですか。ですが私はほんの一月程前に転入したばかりなのですが、
もう聖應の雰囲気が漂っているものなのでしょうか?」
と、千早はそんな疑問を口にしたところで、言うべき事があることを思い出した。
「っと、そんなことよりも、助けていただいてありがとうございました。
妃ノ宮千早と申します。仰るとおり聖應の3年生です。」
「あら、そんなに畏まらないでくださいな。こんな所で後輩に会えてうれしいわ」
「私は十条紫苑と申します。よろしくね千早さん」
やわらかな日差しを受けて微笑む紫苑を、千早はただぼんやりと眺めていた。
679(6/15):2012/05/06(日) 01:21:46.39 ID:SkNQp03R0
「うふふふ、千早さんその服可愛くてとっても良く似合っていますわ。」
「あ、あの流石にこの服はおかしくないでしょうか……」
千早が着ているのは白色のワンピースをベースとしたロリータ服だ。
袖やスカートにふんだんにフリルが加飾されており、着る人を可愛らしく飾り立てる。
おまけになぜかスカートのカットラインが前側へ行くほど短くなっており、
千早の足は膝の上の方まで晒け出されてしまっている。
(うぅぅ、こんなの恥ずかしすぎる)
千早はとスカートの裾をつかみ、前かがみになるようにしてふとももを隠そうとする。
そんな状態で紫苑の方を向こうとするので、自然目線が上目遣いとなっている。
「おかしくなんてありませんわ。この格好をすれば学園でも注目の的ですわ」
千早が羞恥に耐えている一方で、紫苑は満面の笑みをたたえている。
(ど……どうしてこんなことに〜)

話は少し前にさかのぼる。
千早は紫苑に何かお礼をしたいと申し出たのだったが、それに対する紫苑の答えは、
「実は待ち合わせをしていたのですが、先ほどどうしても来られないと連絡があって。
つまり私はドタキャンされてしまったという訳なのです。
だから、代わりといっては何だけど、今日これから私に付き合っていただけないかしら?」
という物だった。そうして今は2人でショッピングへとやってきたという訳なのだった。
千早は妙子に貰ったメモの店を紫苑に尋ねると、
「あら、そのお店を選ばれるとは、さすがお母様は分かっていらっしゃいますわね」
というなぞの言葉が返ってきて、得心が行かなかった千早であるが、
目的地へ到着し言葉の意味を理解するとともに逃げ出したい気持ちで一杯になった。
その店の服はどれもひらひらのフリルが沢山ついたゴシックでロリータな
服を主に扱う店だったのだ。
680名無しさん@初回限定:2012/05/06(日) 01:23:33.76 ID:SJujddik0
支援
681(7/15):2012/05/06(日) 01:26:53.91 ID:SkNQp03R0
「あ、あの。違うお店にいたしませんか?」
という千早の言葉も
「あら、せっかく来たのだし、私も見てみたいので入ってみませんか」
という紫苑の発言に打ち消され、千早はそのフリルやリボンの溢れる
店内へと吸い込まれていったのだった。


「というか、紫苑さんも見ると仰ったのに、
先ほどから私ばかりが試着をしているのはなぜでしょう……?」
「あら、見ていますわよ。千早さんの試着する姿を」
(「見てみたい」ってそういう意味?!)
ショックを受ける千早であったが時既に遅し。
蜘蛛の巣にかかった蝶のごとく、もはや逃げるわけにも行かず、
紫苑による試着タイムはその後も延々と続いた。
682名無しさん@初回限定:2012/05/06(日) 01:43:01.46 ID:yzyUPEBe0
つ @@@@
683(8/15):2012/05/06(日) 07:58:32.44 ID:Ro5lGNQq0
数時間後、喫茶店にて休憩する千早と紫苑の姿があった。
千早の服は白のブラウスに黒色のコルセット調のスカートに変わっている。
ランプの光で照らされたアンティーク調の店内の雰囲気と妙にマッチしたその服は、
長時間に及んだ試着の末選んだ一品だった。
(あのまま続けていたら、次はどんな服を着せられたか分かったものじゃなかったからなぁ。
まぁ、あのフリフリのトンデモ服ばかりの店の中では、まだ落ち着いた方……かな?)
と、千早は疲労した頭の中でぼやいた。
「うふふ、その服もとっても可愛らしくていいですわ。千早さんは黒も良く似合いますわね」
と、対面の紫苑が千早を眺めつつ言った。
「あ、ありがとうございます……」
と、お礼を言いつつ俯く千早。

そこへウェィターが2人の元へ紅茶とケーキを運んできた。
「まぁ、美味しそう」
にっこりと笑う紫苑。
「紫苑さんはよくこのお店にいらっしゃるんですか?」
「えぇ、甘いもの大好きなの。そういう千早さんはどうなのかしら?」
「そうですね。私も好きですよ、ケーキ。それに趣味で自分で作ったりする
こともあるので、こういうお店のお菓子はとても参考になります。」
「まぁ、素敵。千早さんお菓子作りもなさるのね。すごいわ」
「いえ、そんなに大したことでは・・・」
と、そこで何か名案でも思いついたかのように手を合わせて紫苑が言った。
684(9/15):2012/05/06(日) 07:59:17.86 ID:Ro5lGNQq0
「そうですわ、千早さん一口ずつ交換しません?その方がいろんな味が楽しめますわ」
「え……えぇ……、いいですよ、じゃぁ紫苑さんどうぞめしあがっ……」
「はい、あーん」
千早が自分のケーキを紫苑に差し出そうとしたとき,
紫苑は自分のケーキをフォークにとり,千早の方に差し出してきていた。
(え、えーとこれはつまり、これを食べないとだめってことかな……)
「あーーーん」
紫苑は微笑みつつ、フォークに取ったケーキを差し出している。
表情は笑っているのに、何故か有無を言わさぬような重圧を感じる。
「あ、あーん」
そのプレッシャーに勝てず、千早は口を開けて、紫苑の差し出すケーキが
差し入れられるのを待った。
「じゃぁ次は千早さんのをおねがいしますね」
(な、なんで僕は女装して、しかも年上の女性と
ケーキの食べさせ合いなんてしてるんだ……)
にわかに発生した異常な事態に、困惑する千早であったが、
千早も自分のケーキをフォークに取り紫苑に差し出した。
「確かに美味しいですわねぇ。千早さんに食べさせてもらったからか、また格別の美味しさですわ」
対極的に紫苑は満足げな顔であった。
685(10/15):2012/05/06(日) 08:00:09.22 ID:Ro5lGNQq0
「そういえば、千早さんはこの4月から聖應に入学されたとおっしゃいましたね。」
「はい、確かにその通りです」
「もう学園生活には馴染みまして?」
「いえ、あの学園の変わった慣習には正直面食らって、戸惑いまして……」
「あらあら。でも、そうでしょうねぇ、特に外部から転入されたのでは」
クスクスと笑っていた紫苑だったが、少し千早の顔を窺うように見つつ口を開いた。
「でもやっぱり学園での生活に悩みを抱えていらっしゃるようですね?」
「え、どうしてそんな事が……?」
分かるんですか?と問おうとする千早だったが、構わず紫苑は言葉を続ける。
「そうねぇ、千早さんの悩みは、本当の自分を偽って学園で生活している……
といったところかしら?」
その言葉に千早は狼狽する。隠している事がばれているのかと思い、
嫌な汗が背中に流れるのを感じる。そんな千早の様子には気づく様子もなく、
紫苑は言葉をつづける
「でも、気にすることはありませんわ。私のお友達にも普段はとても活発で、
賑やかなのが大好きな方が居られましたけれど、学園ではきちんと
おしとやかなお嬢様として振舞っていましたわ。あの学園にいる方は
みんな、多少なりともそういうところがあるのではないかしら。」
紫苑の言葉に、思い過ごしかと安堵する千早だったが、
その内容は正に今の千早の悩みを的確に表していた。
686(11/15):2012/05/06(日) 08:31:57.84 ID:Ro5lGNQq0
「確かにそうかもしれません。でも、下級生の方には、
そんな演技をしている私のことを慕ってくださる方もいらして、
やはり学園や寮の皆さんを騙しているという罪悪感を感じてしまうのです。」
「本当の私はもっと冷めていて、嫌な人間なのに……」
「自分をそんな風に言ってはいけませんよ。」
「人は状況や環境に合わせて多少の演技をするのが普通ですわ。
でも、その人の本質はどんな時でも絶対に変わらない。
妃ノ宮千早という人物は、どんな演技をしているときでも妃ノ宮千早ですわ。」
そう語る紫苑の表情は凛としており、傾聴する千早はいつしか紫苑に圧倒されていた。

「本当に本質が冷血感で気遣いの無い人間ならば、そんな人を慕う人なんていませんわ。」
「本当のあなたは思い遣りがあって優しいひとです。私には分かります。」
「だから、学園での千早さんがたとえ演技をしている千早さんであっても、
別に罪悪感を感じる必要はありませんわ」
そういってにっこりと笑うと、「ね?」と紫苑はウィンクして見せた。
「紫苑さん……」
「ありがとうございます。なんだか、胸の中でもやもやしていた事が少し晴れた気がします」
「そうですか。それなら良かったですわ」
「私、今日は紫苑さんにお礼を言わなくてはならない事がいっぱいですね」
「あら?そうだったかしら?」
「えぇ、今こうして悩みも聞いてくださいましたし。それに……はじめに助けて下さいましたから」
「あぁ、そういえばナンパの人がいましたわね。それじゃぁ、どういたしまして。かしら?」
そう言った紫苑と千早は、2人でクスクスと笑いあった。
687(12/15):2012/05/06(日) 08:33:19.73 ID:Ro5lGNQq0
日もほとんど落ちかけた頃、2人は揃って学園の門から続く並木の中を歩いていた。
「あの、なにも学園のそばまで送ってもらう事もなかったのですが。」
「いいえ、千早さんとお話して久しぶりに学園の様子が見たいと思ったので、
付いてきた私の勝手ですから、千早さんはお気になさらず」
そう言って紫苑は、学園内の様子を懐かしむように眺めている。
休日であるため2人の他に人影は無く、閑散とした中庭には夕陽が差し込み、
全体をオレンジ色へ染めている。
「この並木は変わらないですねぇ」
在校時を思い出しているのだろう紫苑の事を、千早は静かに眺めていた。

学生寮の前まで来たところで、紫苑は振り返った。
「それでは、私はここで失礼するわね。千早さん、ごきげんよう」
「はい、ごきげんよう、紫苑さん。それから今日はありがとうございました」
別れ際、お礼を言って寮のある学園内に入ろうとした千早に、紫苑は背後から囁いた。
「そうだ、最後に先輩として千早さんに一言」
「え?な、なんでしょうか……?」
背後から囁かれるという状態に、にわかに緊張する千早。
「あなたならきっとこの学園で素敵な一年を過ごせますわ」
次の瞬間、千早の背中は凍りついた。
「男の方ですと何かと大変でしょうけど、がんばってくださいね」
「え、な……」
「千早さんなら、きっと素敵なエルダーになれるわ。がんばってね」
さらに何か囁いたようだったが、もはや千早の耳には全く届かなかった。
688(13/15):2012/05/06(日) 08:34:13.03 ID:Ro5lGNQq0
「あ、千早ー。今帰ったんだ?って、あれーっ?紫苑さん!?」
たまたま通りすがったのだろう薫子が、千早に気づき声をかけてきた。
「あら、薫子ちゃんお久しぶりね。ごきげんよう」
「ご、ごきげんよう……。っていうか何で紫苑さんが千早と一緒に?」
「私、千早さんとお友達になりましたの。素敵な転入生がいらして、
今年の寮は楽しそうでうらやましいわ」
「は、はあ」
「それでは、失礼しますわ。また機会があれば奏ちゃんと一緒に伺いますわね」
「は、はい。ごきげんよう」
悠然と立ち去る紫苑を見送ったあと、薫子はその切れ長の目を千早の方へと向けた。
「ちょっと、千早。なんであんたと紫苑さんが一緒にいるのよ、
しかも随分と親しげだったじゃない。」
問い詰めるように話しかけた薫子だったが、それに対する千早の反応が無い。
千早は何かにとり憑かれたように虚空を見つめ、何事か呟いていた。
「って千早?おーい!千早〜?」
「な……なんで?いつから気づかれていた……?
こんなに簡単にばれるようで、これからやっていけるのか……(ぶつぶつ)」
「な、何で固まっちゃってんの」
「え……あ、薫子さん……」
「もう、しっかりしなさいよね。ほら、寮に帰るわよ」
千早は薫子に引きずられるようにして寮に入っていった。
689(14/15):2012/05/06(日) 09:11:23.71 ID:Ro5lGNQq0
その日の晩、紫苑は恋人である瑞穂と住む部屋で、瑞穂からの謝罪を受けていた。
「紫苑、今日は約束をキャンセルしてしまってごめんね。ゼミの教授に捕まってしまって」
本当に申し訳なさそうなに謝る瑞穂に、紫苑はわざとらしく頬を膨らませながら答える。
「まぁ、瑞穂さんがいらっしゃらないばっかりに、街で男の人に絡まれたりと散々でしたのに」
「あぁあ、本当にごめんなさーい」
「うふふ冗談ですわ、瑞穂さん。その代わりとっても素敵な人とお友達になりましたのよ」
「え?」
「あんまりぞんざいに扱われますと、そのうち若い燕に乗り換えるかもしれませんことよ〜」
「えぇぇ?紫苑?紫苑さ〜ん??」
オホホと言わんばかりに瑞穂をからかう紫苑と、そんな紫苑を見てますます混乱する瑞穂であった。
690(15/15):2012/05/06(日) 09:12:18.46 ID:Ro5lGNQq0
一方そのころ、聖應の寮内では……

「あら?千早ちゃん今日は随分と可愛らしい格好をしていますね。
とっても良くお似合いですよ」
「千早……かわいい……」
「お一人で買い物を達成なされたのですね。流石です千早様」
「で、なんで千早はさっきから呆然自失状態なわけ?」
未だにショックから立ち直らない千早は、寮のリビングにて突っ立っていた。
もちろん格好は今日買ったゴスロリ系の服のままである。
「さぁ、なにかショックな事に遭遇されたのかもしれません、
そのうちに復活なさると思います」
「そうでした、史は奥様にご報告するための写真を撮らなくては」
「あ、史お姉さま写真を撮るんでしたら私にお任せくださいっ」
「こぅ、ローアングルから……いいですねぇ、
リボンの装飾付きニーハイという所がまた分かっていらっしゃる。
スカートとの間の絶対領域がそそりますねぇ」
「日向、あなたのそのおっさんみたいな言動なんとかならないの?」
「てへ、これだけは自然の摂理という奴です。お姉さま」
「うーん、こんなに女の子っぽい服を着こなせるなんて、
やっぱ千早すごいなぁ。それにしても、あの紫苑さんと一体何があったのやら……。
ま、私が気にすることじゃないか」
こうして、その日の桜館では、キュートな姿の千早を囲み賑やかに過ぎていった。
自失状態の約一名を除いて……。

-------------------------------------------------------------
                                            終
691名無しさん@初回限定:2012/05/06(日) 09:39:07.33 ID:Ro5lGNQq0
終わりです。読んでくださった方、途中で支援くださった方ありがとうございました。
692名無しさん@初回限定:2012/05/06(日) 09:43:24.52 ID:We1stCAf0
乙〜
693名無しさん@初回限定:2012/05/06(日) 10:30:15.51 ID:eQVamBRQ0
乙乙

知らなかったのか? 紫苑さまからは逃げられない・・・!
694東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/05/06(日) 11:53:44.39 ID:KhogR47b0
面白かったです。
紫苑ルート後で瑞穂くんと千早くんを振り回す紫苑さま、やはりすごいですね。
この後紫苑が2人とどう関わってくるのか、妄想が楽しみです。

こんなツッコミは野暮ですが、「日向」ではなく「陽向」ですよ。
695名無しさん@初回限定:2012/05/06(日) 21:54:19.29 ID:Ro5lGNQq0
楽しんでくれた人が居て良かったです。初SSでしたが、文を起こしていくのが面白かったので、また何か書いたら上げたいと思います。
もともとは、ちーちゃんに「お姉さま」って言わせたりしようかと思ってましたが、そこは書けず。
続きは今のところノーアイディアですが、時折降臨してはちーちゃんを弄っていく紫苑様も良いかな、と

そして誤字は大分チェックしたつもりでしたが、抜けるものですね
まぁ、1レス目で投稿を登校と書いたりしてる辺りに、だめっぷりが・・・
696名無しさん@初回限定:2012/05/07(月) 09:24:34.59 ID:frWUy0IM0
>>691
乙!
連休があるとSS投下が増えてうれしい
697名無しさん@初回限定:2012/05/07(月) 20:37:10.19 ID:qxz0NM9b0
まぁ、連休があるからといってSSが仕上がるというわけでもないんだがなー。

おかしいなぁ。
698名無しさん@初回限定:2012/05/08(火) 00:41:11.68 ID:5iMCJ2YY0
某アニメ見てて思いついたネタ。本スレに投下しようかと思ったけど、微妙に長いのでこっちで。


「千早様、久しく処理なさっていないのではありませんか?史がお手伝い致します」
「い、いや、いくらなんでもそんな事まで手伝ってもらわなくていいよ、史」
「いいえ、千早さまの学園生活をサポートするのが史の役目。
であるなら、千早様の処理をお手伝いするのも史の役目」
「さぁ、服を脱いでください千早様、史が抜いて差し上げます」
「あ、あのね、本当に自分でできるから……」
ジリジリと迫る史を前に千早は後ずさりした。


「さぁ、この史特製のムダ毛処理器『ハイパーソイエ君G』で、
どんな毛であろうと抜いてすべすべ素肌に」
ヴィィィィィ、ブチブチチチチ
「アイタタタ、痛いってば史ーっ」
「ご辛抱を、痛みは一瞬です」
もちろんそんな訳はない。
「イッタアーーーー!」
その日櫻館では、千早の苦悶の叫びが木霊したのだった。
699名無しさん@初回限定:2012/05/08(火) 00:43:14.23 ID:5iMCJ2YY0
「史お姉さまと千早お姉さまのスキンシップも、時折激しいものがありますねぇ」
「ま、女の子としては避けられない悩みではあるのだし、千早も例外ではないということかしら
それにしても、史ちゃんの献身ぶりには頭が下がるわね」
「そういえば陽向、あなたも水泳部なのだし、その辺りの身だしなみに気をつけているのでしょうね?」
「えぇぇ!?そんなお姉さま、私はまだそこまで気をつけなくても大丈夫ですよぅっ」
「あら、だめよそんなことじゃ。仕方ないわねぇ、
姉として女の身だしなみをあなたに指導してあげるわ」
「あ、あのー。私そういえば用事を思いつきました」
「何を言っているのこの子ったら、ほら、いらっしゃい」
「わっわ〜!だ、誰か香織理お姉さまを止めてくださ〜い!!」

「大変!薫子ちゃん、陽向ちゃんが香織理ちゃんに連れられていっちゃった」
「あーうん、まぁ、とって食われたりはしないだろうし、いいんじゃないかな……」
「でもぉ、もしかして……」
(あ、あぁぁそんな所までぇ……)
(ほら、じっとしてなさい陽向、じっとしていないと大事なところに傷がついちゃうかもしれないわよ)
(あぁぁ、香織理お姉さま〜!!)
「な、なんて事になってるかもしれませんよっ」
「は、初音?」
「いやぁ〜ん、陽向ちゃんが大人の階段登っちゃうぅ〜」

「どうしよう薫子……お姉さまがおかしくなっちゃった……」
「きっとその内戻ってくるんじゃないかなぁ……多分……」
700名無しさん@初回限定:2012/05/08(火) 02:21:26.68 ID:4sLdseKg0
ゲリラ投下乙

ダメだこの淑女連中・・・早くなんとか・・・いやもっとやれ
701名無しさん@初回限定:2012/05/09(水) 00:35:51.55 ID:DA2x4Xjw0
別の日、華道部
「そんなことがあったりして、大変な目に遭ったわ」
「まぁ、史さんったら、お姉さまの毛を無理やり抜くだなんて……」
「この微妙なネタまだ引っ張るんだ……」
「何を言っているんですか?雪ちゃん」
「ううん、何でもないわよ、うたちゃん。まぁこれもガールズトークと言えなくも無いか……」
「剃毛プレイならぬ抜毛プレイだなんて、なんてマニアックな……羨ましい」
「貴女は本当に何を言っているの……雅楽乃」

「そうですわっ、そういう事でしたら私とってもお勧めの方法がありますので
お姉さまもお試しになりませんか?」
「あら、どんな方法かしら?」
「それはお楽しみです。明日準備してきますから、明日もここへいらしてください」
「分かったわ、雅楽乃。明日ね」
702名無しさん@初回限定:2012/05/09(水) 00:37:16.55 ID:DA2x4Xjw0
そんな訳でさらに翌日
「これですわ。千早お姉さま」
「えーと、それは何?雅楽乃」
「これは豆乳ローションですわ。これを塗ると、その部位の毛がだんだん薄くなっていくので、
抜いたり剃ったりしてお肌を傷めないのでお勧めなのですっ」
「なるほど、こんな物があったのね。……ところで雅楽乃?
その後ろにあるプールで使うボートのようなものは何かしら?」
「これはエアマットですわ。お姉さま」(にっこり)
「なんでそんなものが?って、なんで貴女が服を脱ぐの?!そしてなんで水着なの?!」
「それはもちろん……こうして私の体でお姉さまにローションを塗って差し上げるためですわ〜!」
「ちょっ、ちょっと雅楽乃?!ストップ、ストーップ!!」
「さぁお姉さま、全身隈なく、たっぷりと塗ってさしあげますっ」
「うわぁ〜〜〜!!」

「こらぁ〜!!なにやってんのよ、うたちゃんったら!」
「雪ちゃん?!私はただ、普通にお姉さまに豆乳ローションを塗ってさしあげようと」
「どう見ても、普通のシチュエーションじゃないでしょうが!」
「ほらもう、こっちへ来なさい!まったく、学校で何を考えてるのよ」
「あぁん、もうっ。これからいいところだったのに、どうして雪ちゃんはそんな意地悪するんですかー」

「た……助かったぁ〜」(へなへな)
703名無しさん@初回限定:2012/05/09(水) 00:40:05.64 ID:DA2x4Xjw0
そんなわけで終わりです。
ムダ毛を処理する、という生々しいネタでしたので、
気分を害した人が居たら、大変申し訳ありませんでした。
704名無しさん@初回限定:2012/05/09(水) 09:05:09.49 ID:tyMk81/w0
乙・・・
705名無しさん@初回限定:2012/05/09(水) 09:49:56.08 ID:tX0hkYze0

うたちゃんはぶれないな
706名無しさん@初回限定:2012/05/09(水) 20:58:34.26 ID:jHZnU0+zi
乙!
707名無しさん@初回限定:2012/05/12(土) 00:23:12.48 ID:It9I4Y7r0
乙です
ですが、陽向ちゃんはツルツルかもしれませんよ?
708名無しさん@初回限定:2012/05/20(日) 07:17:47.31 ID:Ijk2ZD0v0
保守
709名無しさん@初回限定:2012/05/25(金) 23:52:24.82 ID:anDE95aZ0
|
|`ヽ   ダレモイナイ…
|ji」リi|   オネエサマヲ オシタオスナラ イマノウチ…
|ヮ゚ノl|
710名無しさん@初回限定:2012/05/26(土) 00:31:19.24 ID:i7KjTLtB0
>>709
                             _
                             /ミ'´, ^^ ヾヽ
                             |!l{ミ(リ从リ)〉i   ∧彡
                             リハ(#゚ ヮ゚ノリハ 彡 ・ \
                              /丑/つヽ,)彡  人.ヽ.)
                              //丑/(三"'''--/'''" ̄
                            =≡=( (**)─┘   ヽ
                    ,'´`´`ヽ,   /    /  ⊇       )
                    i!リ[j iリ li|/     / ノ ノ ̄丶  ソ \
   (´⌒(´(´⌒;;;         i|(l゚Д゚ノ!|    /// /    \ ヽ\ .\
(⌒(´⌒;(´⌒(´⌒;;≡≡≡⊆⊂´ ̄ ⊂ソ|    《_/ 《_/      ヽ/ラ丶/ラ
711名無しさん@初回限定:2012/06/02(土) 20:10:40.19 ID:QCE1MTVp0
ホシュ
712名無しさん@初回限定:2012/06/11(月) 22:20:40.25 ID:V0l87YXw0
保守
713名無しさん@初回限定:2012/06/14(木) 13:01:01.66 ID:N2p9NG9yi
ほしゅ
714名無しさん@初回限定:2012/06/18(月) 15:48:34.28 ID:biqaCbn1i
保守
715名無しさん@初回限定:2012/06/19(火) 06:42:11.41 ID:7J2bX5r70
最近は別ゲームにどっぷり時間を割かれてる感じですが、
このまま寂れていくのもあれなので、死蔵してたネタをpixivに貼ってみました。
[20-1]で検索できるかな。

落ちが気に入らなくて寝かせまくったけど、どうにも育たなかったんだな‥。
716東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/06/20(水) 04:26:10.72 ID:ZK3ciU+r0
>>715
お疲れ様です。読ませていただきました。
千早くんの色んな髪型、それをみんなに見せたときの反応、是非見てみたいです。

私もSSを書いている途中ですが、時間がなくてなかなか書き上げられない状態です。
じっくり書き上げる時間がほしい……。
717名無しさん@初回限定:2012/07/02(月) 09:41:01.11 ID:Iqmy16az0
ホシュ
718名無しさん@初回限定:2012/07/13(金) 21:22:26.38 ID:XCXvkEKS0
保守
719名無しさん@初回限定:2012/07/14(土) 21:35:41.09 ID:B0y82xF40
てす
720名無しさん@初回限定:2012/07/22(日) 00:34:58.13 ID:sH6h63Pa0
ホシュ
721名無しさん@初回限定:2012/07/30(月) 12:09:20.68 ID:tH5hapnO0
            / )
            ./ / 
           / /_       
           / /`´`ヽ     
         ./ /.リ_ji」リi|    , -つ
         / /(|l゚ ヮ゚ノl| ./__ノ   イマノウチニ オネエサマトイッショニ
        /    \il|/ /      レイノプールデ アソンデキマスワ
        .|    へ/ /
        |    レ'  /、二つ
        |     /   ||
       /   /    '´/ `´ ヾ
       /  /     ! ((リ从リ))
      /  /      ノリ(|;´-`ノl|、 
     / ノ       '《(({〓〓})》
   _/ /         `` /` ´|' '
  ノ /           `iテテ'
⊂ -
722名無しさん@初回限定:2012/07/30(月) 12:32:12.79 ID:+3z0laiN0
>>721
                     _
            _    ./ミ'´, ^^ヾヽ
          '´, `´`ヽ  |!l{ミ(リ从リ)〉i 
          i !リ_ji」リi|  リハリ#゚ ヮ゚ノリハ うたちゃんあなた疲れてるのよ
           |i(|TヮTノl|/'((( 〉 (つ'ノリ))
          |li{〓〓}i」   ヾ </i_j   ,ソ
. (;;⌒);;⌒))=-ノリと//i_j〉      し'
723名無しさん@初回限定:2012/08/03(金) 09:41:45.21 ID:BgggbvTr0
ドラマCD乙女はお姉さまに恋してる〜2人のエルダー〜 発売中止のお詫び
ttp://blog.animate.tv/FW_news/index.php?itemid=10476
724名無しさん@初回限定:2012/08/12(日) 17:52:18.60 ID:AAw8SX4l0
保守
725名無しさん@初回限定:2012/08/21(火) 21:40:59.50 ID:lPiwKnZl0
ホシュ
726名無しさん@初回限定:2012/08/31(金) 09:11:22.78 ID:GkHMJVOX0
保守
727東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 19:44:16.67 ID:sz0Sq+dx0
東の扉です。
新しくSSが完成しました。今回は千早くんにおまけゲームをプレイさせてみました。
10レス分ありますので、よろしくお願いします。
728東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 19:49:51.90 ID:sz0Sq+dx0
「ん? なんか食堂の方が騒がしいな」
 僕、御門千早がいつものように部屋で勉強してたら、ふと下の方からみんなの声が聞こえてきた。
「どれ……休憩にはちょうどいい時間だし、様子を見に行ってみるか……」
 僕は部屋を出て階段を下りていった。

〜甘い家の混乱〜

「あーっ! もう! またやられた! もうヤダ!」
「薫子、何てダメなプレーヤー……」
「かおるこ、大丈夫?」
「ゲームの中のあたしは全然大丈夫みたいだけど、リアルのあたしはちっとも大丈夫じゃない!」
 降りてみると、薫子さんが何かテレビゲームをしていて、寮のみんながそれに注目していた……
いったい何のゲームなんだろう?
「みなさん、何をしているのですか?」
「あ、千早ちゃん!」
「千早……いつからそこに?」
「たった今です。にぎやかな声がするから降りてきたら……」
「あのね、かおるこがげーむしてるの」
 それは見ればわかる。けど何のゲームなんだろう?
「スウィートパニックと申しまして、千早さまがプレーヤーとなって、
史たちが登場人物となる舞台をクリアしていく話です」
 史は、僕にそのゲームの内容を話してくれた。
729東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 19:54:34.65 ID:sz0Sq+dx0
「なるほど、タイトルといい、どこかで聞いたような話ですね」
「……まあ、それは置いといて、やってみるとなかなか面白いのよ」
 話を聞いてみると、みんな物語の中盤あたりまでは見たらしい。
「それで、薫子さんに香織理さん、自分で自分を倒す気分ってどうですか?」
「千早あ、違うのよ! 自分が自分に倒されちゃうのよ! ったく、何が悲しくて自分に
クリアの邪魔されなきゃいけないのさ!」
「か、薫子さん……」
 何もそんな涙目にならなくても……。

「あの、私にもやらせていただけないでしょうか?」
「どうぞ」
 僕がお願いすると、薫子さんはリセットしてかわってくれた。
「よろしいんですか?」
「どうせあたしは万年クリア不能の女吉田しょういんですよーだ……」
 何もすねなくても……というか、なぜそこで江戸末期の人物が……。

「何か面白いことをやっているみたいだね」
「ケイリ!」
 突然後ろで声がしたので振り向くと、櫻館に遊びに来たケイリが立っていた。
「千早お姉さまが主人公のゲームですか。面白そうですね」
「なんで私まで……」
 そして、雅楽乃と雪ちゃんも入ってきた。
「みんなどうして……」
「今日ここに来るといいものが見られると占いに出ていたからね」
「私は千早お姉さま分を補いに参りました」
「私はそんなうたちゃんが心配で付き添いです……」
730東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 19:59:15.66 ID:sz0Sq+dx0
 薫子さんに代わってもらった僕は最初のプロローグから始めることにした。
なんか最初からツッコミどころ満載なんだけど……というか、おとボク2のキャラがおとボク2で
遊んでいることからしてすでにそうか……。
「ここから開始ですか。せっかくですから全ての場所に行ってみましょう」
 僕はクリアすることよりも全てのイベントを見ることを優先してゲームをすることにした。
 しばらくやっていると、どうも瞬殺の番号を踏んでしまったみたいだ。
「あらあら、殺られてしまいましたね」
「千早、軽いわね」
「自分が殺されたのに、千早ちゃん他人事みたいですね」
「うわ、初音お姉さまがそれを言いますか!」
 僕が苦笑して言うと、香織理さんは冷や汗混じりに、初音さんは呆れ顔で、陽向ちゃんは初音さんに呆れ顔で言う。
「まあ、あくまでゲームの中の私ですから」
 最初からやり直してからしばらく、僕は全ての番号を調べるつもりで以前とは違う選択肢も選んでいった。

「しかし、瞬殺選択肢がここまで存在していたとは……」
 薫子さんがなかなかクリアできないと叫んでいたのもわかる。こんなに多くては嫌にもなるだろう。
しかも、ほとんどノーヒントなんだ。
「あっ! 千早お姉さまが香織理お姉さまに殺されちゃいました!」
 そう。僕は(ゲームの中の)香織理さんと戦って負けてしまったのだ。
「私の大切な千早お姉さまを殺すなんて、いくら香織理お姉さまでも……」
「う、うたちゃん! あれはあくまでゲームの中の話ですから」
 香織理さんに食って掛かろうとする雅楽乃を、全力で雪ちゃんが後ろから羽交い絞めにして抑える。
「やっぱり香織理お姉さまは筋金入りのどエあいたたたた!!」
「あのね陽向、あれはあくまでゲームのキャラなのよ。私がエスかどうかなんて何の関係もないじゃないの」
 こっちはからかう陽向ちゃんに香織理さんが頭ぐりぐり攻撃を加えてるし。
「確かに面白いものが見れそうだね」
 ケイリ、勘弁してください。
731東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 20:04:25.93 ID:sz0Sq+dx0
「そういえば、さっきは香織理ちゃん、ライトで逃げてましたよね。演劇部の玲香ちゃんもそうでしたけど……」
「かおり……あさがよわいの?」
「優雨……朝が弱いのは私じゃなくて薫子でしょ?」
「でも、香織理ちゃんが夜の一族なのはなんとなくわかるけど、なぜ玲香ちゃんまで……」
 初音さん、そこはツッコまないでくれるとありがたいんですけど……。
「ああそれはですねえ、世の中の一般的な需要と供給の問題がですねえ……」
 陽向ちゃんは適当なことを言ってお茶を濁そうとしている。

「なぜ薫子さんは本物の剣を持っていると逃げるんでしょうか?」
「薫子はこう見えて実は結構ヘタレだからね……」
「ちょっと香織理さん! それはゲームの中のあたしだって!」
「じゃあ薫子は相手が本物の剣を持っていても逃げないって言うの?」
「相手が千早ならわかんないけど、持ってるだけで逃げたりしないって……」
 まあ本物の薫子さんは、刃物ぐらいで逃げたりするように見えないよね。

「けどさ、24番って鍵があると即死回避できたんだ……でも、なんで鍵かなあ?」
「さあ? 鍵に一夜一夜に人見頃とでも書いてあるんじゃないでしょうか?」
 それなら24で呪いが解けるはずだしね。
「それってどこの魔女の呪いなのよ……」
 香織理さん、どこの魔女かわかってるんじゃないですか?
「確か√2のその後は237……と続きませんでしたか?」
「うたちゃん……そんなことほとんどの人は知らないから」
 けど、道理であの番号も瞬殺の番号になっているわけで……。
「しかしねえ、とんだ番号がいけなかったなんて、メタフィクション過ぎやしませんかねえ……」
 陽向ちゃん、こんなゲームにリアリティもないと思うけど……。
732東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 20:09:44.67 ID:sz0Sq+dx0
「それは日本人の考え方だよ。西洋に行くとなんでもない数字だし、西洋では違う数字が不吉になるしね」
 あ、あの数字は確か……。
「ケイリ、その番号も瞬殺の番号でしたよ」
「千早、よく覚えてるね」
「メモを取っていますから」
「さすが、千早ちゃんは几帳面ですよねえ……」
 いや、こうでもしないとずっと同じ瞬殺シーンにひっかかるでしょう?
「けど、やっぱりあたしとしちゃ14をゲームオーバーにしてほしかったな」
「薫子さん、そこは確かどっちを選択しても……でしたよ。私としては、一夜一夜に人見頃の鍵で
24を回避できるのなら、39をゲームオーバーにしてほしかったですけど……」
「な、なんで39!?」
 見殺さナインだからね。
「そういう一部の人にしかわからないネタはやめた方がいいと思うよ……」
「あたしは39は初音が登場する番号にしてほしかったな」
「な、なんで私ですか? 39? 私が39? 初音が……」
「わあわあわあ! 自主規制自主規制!!」
 そんなこんなで、ゲームを進めていくうちも周りはにぎやかさが絶えなかった。

「ただでさえ瞬殺シーンが多いのに、バトルがこれだけあるとさじを投げたくなる気持ちもわかりますね」
「ええ。でも、戦いで必ず勝てる方法は見つけました」
「必ず……って、そんなのあるの!?」
 それを聞いて薫子さんと陽向ちゃんは驚く。
「ええ。ある法則があるんです。それとゲームシステムの性質からも必ず勝つ事ができる仕組みになっています。
薫子さんにも教えてあげましょうか?」
「うう……確かに早くクリアしたい……だが断るっ!」
 まあ薫子さんは勝負に関してはいつも真剣だからね。多分そう言うと思ってたけど。
733東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 20:14:55.91 ID:sz0Sq+dx0
 そして、僕はいよいよ物語の終盤、聖應女学院に入っていった。
「しかし、何ゆえ個人住宅の奥に女学院が……」
 薫子さんの疑問ももっともだ。これはCGの都合……としか言いようがないだろうな。
「史が使用人の亡霊として登場しましたか」
「だんな様の持ち物があれば通してくれて、無いと戦闘になるんですね」
「戦闘はともかく、そこは原作と似ていますね」
「本当に史はこっちの世界でも忠実なんですから……」
 僕が苦笑いをしながらプレイしていると、ついに最後のキーアイテム“日記”を手に入れた。
「いよいよラスボス、○宮夫人との戦いですね!」
「陽向ちゃん、規制する位置がそこだと問題があると思うんだけど……」
「どうしてもんだいがあるの?」
「いやいや、わざとそこを隠してますから……」
 そして最終決戦の一歩手前。あと登場していないのは……。
「やはりケイリですか」
「心の力って……これまたお約束なセリフを……」
 でもケイリが言うと違和感ないな……。
「星の王女ケイリ・グランセリウス、千早ちゃんに祝福する、ですね」
「いやいや、ここではケイリ・マウンテンビレッジでしょ」
 陽向ちゃん、自分の都合で勝手に人の名前を変えないの!
「皆さん、日本語に訳してはアナレタが降り注ぐから気をつけて」
「ケイリ……誰と話してるんですか?」
734東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 20:19:46.75 ID:sz0Sq+dx0
 さあ、いよいよ最終決戦だ!
「千早、お母さんと戦う気分はどう?」
「千早ちゃん、少し気がひけるんじゃないんですか?」
 見た目僕の母さんだから、みんな僕が気がひけないか心配しているようだ。
「あくまでゲームのキャラです。それに相手を打ち負かすためでなく、救うために戦うんですから」
 あんな少女趣味丸出しの部屋とネグリジェを与えられた許しがたい雪辱、ここで晴らさせてもらうとしますか。
「さすが千早お姉さま、お優しくて素敵です♪」
「黒い! 千早お姉さまからどす黒いオーラが滲み出てるよ!」
 雅楽乃と雪ちゃんは、正反対の意見を持ったみたいだ。結構面白いけど、戦いに集中するか。
「あれ? もう1回あるの?」
「そうみたいですね」
 母さんもとい○宮夫人が怒りの表情に変わった。
「RPGでいうラスボスが正体を現した! ですね」
「いえ、原作のRPG版での周囲に怨霊が取り憑いている、でしょう」
 そして、2回の戦闘に勝利し、日記を夫人に渡した。
「あとは感動のエンディングですね」
「土偶も写真も棺もなくてもクリアできましたね」
 一部の人以外にはわけわからないって、それ……。
735東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 20:25:54.25 ID:sz0Sq+dx0
「なかなか面白かったですね」
「でもさ、CGの1枚ぐらいあってもいいじゃない。あんだけ苦労してクリア特典なんにもなしってのがさ……」
 薫子さんの気持ちもわかる。あれだけバトルと瞬殺トラップ、他にも雁字搦めのルールがあって特典なしでは、
誰だってガックリくるだろう。
「でも、どうして香織理お姉さまたちが敵として登場するんですか?」
 陽向ちゃんの疑問ももっともだ。最初に登場する2人や春美さんは最初悪役やそれっぽい感じで登場したキャラだから
納得できるけど……。
「それに関しては、私はすでにその共通点を見つけてあるんだけど」
 香織理さん? 共通点って……あ! 言われてみれば敵として登場する4人は僕のことを……。
「香織理お姉さま! なんなんですかその共通点って! 教えてくださいよー!」
「陽向、作家志望ならそれぐらい自分で考えてみなさいよ。それができなきゃ、とても作家になんてなれないわよ」
「うーっ……」
 陽向ちゃんは必死に考えている。けど香織理さんも意地悪だな。その共通点って、
陽向ちゃんにはいくら考えても絶対にわからないものなのに……。
「でも、それだったら私だってその共通点に入ってますよ?」
「初音さん……」
 でも、それはPC版でははっきりとはわからないし、第一……。
「いや、初音が悪役やってるとこって想像できないんだけど……」
 そう。僕も、いや、ここにいる誰も無理だろう。かちかち山でも全然悪役できてなかったし。
736東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 20:30:24.14 ID:sz0Sq+dx0
「では雪ちゃん、クリア特典として、私達がやりましょうか」
「やるって、まさかアレを!?」
 アレ?
「ええ。確か生徒会長と優雨さん、そしてケイリさんはご覧になるのは初めてですよね」
「それって、他の皆さんはご覧になったってことですか?」
「う、うん……初音と優雨が寝てる間にね……」
 薫子さんが気まずそうに言う。他のみんなも気まずそうだ。初音さんと優雨はというと予想通りふくれっ面だ。
「まあまあ、今ここで拝見できるのですから……」
 僕がなだめると、2人とも一応機嫌を直してくれたみたいだ。それを見て、ノリノリの雅楽乃と引き気味の雪ちゃんが
特典を披露にかかる。
「それでは参ります! うたちゃん……」
「雪ちゃん……」
「「天気予報!」」
「私の名前は雅楽乃♪」
「私の名前は淡雪♪」
「「2人合わせて華道部だ♪ キミとボクとで活け花だ♪」」
「激しい愛から」
「ねじれた愛まで」
「「動かす千早だや・ま・に・な・る〜♪」」
 雅楽乃と雪ちゃんがパフォーマンスを加えながら某天気予報の替え歌を見事に歌いきった。
「ね、ねえうたちゃん、やっぱこれすごく恥ずかしいんだけど……」
「そうですか? 私はすごくいいと思いますが……」
「っていうか、私千早お姉さまのこと愛してないから!」
「あら、私からは雪ちゃんがとても巧みに千早お姉さまに求愛してじゃれあっているように見えますが」
 この後、数分に渡って雅楽乃と雪ちゃんのかみ合わない話が続いた。
737東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 20:36:10.33 ID:sz0Sq+dx0
「初クリアを記念して、私が皆さんに料理を振る舞いましょう」
「史もお手伝いいたします」
 僕たちはさっそく料理にとりかかった。
「薫子、また千早に餌付けされるわね」
「ちょっと香織理さん! 人をペットみたいに言わないでよ!」
「まあ、薫子お姉さまが千早お姉さまのペットになっておられるなんて、羨ましい限りです!」
「うたちゃん、そこ羨ましがるとこじゃないから!」
「ふふふ、これは新しい戦いが始まりそうだね」
 ケイリの冗談も僕にはあまりシャレになってない。
「これは修羅場になりそうですね」
 史の言うとおりだと思いながら、僕は完成した料理をみんなの待つ食堂に運んだ。

Fin
738東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/02(日) 20:41:27.66 ID:sz0Sq+dx0
以上です。お目汚し失礼いたしました。
739名無しさん@初回限定:2012/09/04(火) 08:26:24.38 ID:lT7H0xVf0
乙でした
あれは元ネタからカオスだからなあ…

いや、そう回顧できる時点で若くないと自白してるんですがw
初音さんはメタを話に絡めないでww
740名無しさん@初回限定:2012/09/04(火) 20:26:25.21 ID:YhLZ1RsC0
乙です〜

まぁ、オマケシナリオってあんなもんでしょw
741名無しさん@初回限定:2012/09/14(金) 22:53:27.53 ID:Evp/xAlt0
ホシュ
742名無しさん@初回限定:2012/09/25(火) 09:25:25.41 ID:B6kYncUi0
保守
743東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/28(金) 18:42:10.88 ID:GLJ1enip0
こんばんは。東の扉です。
以前受信した電波から、うたちゃん生誕祭記念SSを投下させて頂きます。
舞台設定は雅楽乃ルートエピローグ同様の舞台です。
14レスぶんありますので、どうかよろしくお願いします。
744東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/09/28(金) 19:09:54.48 ID:GLJ1enip0
家のPCが現在規制中なので店のPCから投下しようと思ったのですが、
本文が長いとか(どんどん狭まってきて)連投だとか何度も言われ続けて挫折しました。
規制解除までお待ちください。本当に申し訳ありません。
745名無しさん@初回限定:2012/09/29(土) 18:10:18.51 ID:GovaRDKG0
がんばれ〜
746東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/10/11(木) 18:15:13.45 ID:Yr+GHyUh0
お待たせしました!
>>743のSSを投下させて頂きます。
1レスを以前の予定の半分にさせて頂きますので、
前後編に分けさせて頂きます。
それでは、よろしくお願いします。
747東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/10/11(木) 18:34:01.52 ID:Yr+GHyUh0
何度も申し訳ありません。
店のPCは半分まで削ってもダメでした。
このままではまともに投稿できないと判断しましたので
やはり規制解除まで待って家から投下させていただこうと思います。
748名無しさん@初回限定:2012/10/11(木) 21:40:05.53 ID:Fe+Scuex0
あらら・・・
749名無しさん@初回限定:2012/10/25(木) 15:55:05.72 ID:ezFdDH3P0
ホシュ
750東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/10/25(木) 18:52:30.12 ID:geE8WhdL0
こんばんは。東の扉です。
家のPCがいつまでたっても規制解除されないので、>>743のSSを別のところに掲載させていただきました。
http://takayan.otbk.root-node.net/ss/bbs_view.cgi?thread=000022&from=16&to=17
↑こちらから入れます。
ご感想などありましたらこちらへお願いします。
751東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2012/10/27(土) 18:34:15.32 ID:7iMalnbc0
ご存じない方のために説明しておきます。
>>750のリンクはエロサイト宣伝につながるようで、そのサイトの下部にある同じHPのリンクをクリックすると
SSのページにいけるようです。
私も試してみて驚きました。
それでは、今回はこれで失礼いたします。
752名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 10:30:52.98 ID:eyJOVFUV0
ひさしぶりに書く気になったというのに、規制に阻まれて幾星霜。
ようやく解除されたので、のんびりだらだらいってみます。11本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『叱責』

「千早ちゃんって、すごくお料理上手なんですね。」
「手は早いかもしれませんけれど、まだ美味しいとは決まっていませんよ?
 なにしろ食べてもらってもいないんですからね。」

そう謙遜する千早だったが、手際の良さは尋常ではない。

そんな驚きにしばし固まっていた一同だったが
なにはともあれ、冷める前にいただきましょう、と
千早に促されて食卓に着くことにする。

「いただきます。」
「いただきまーす。」


その後。
和気藹々とした空気の中で、箸を進めていた薫子が。
いかにも興味津々といった面持ちで優雨に話しかける。

「ねぇ‥。優雨ちゃん。
 その、よかったらそれ、一口もらってもいいかな?」

急に話しかけられた優雨はびっくりするも、
千早に伺いを立て、好きにしていいと承諾を得る。
753名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 10:46:20.86 ID:eyJOVFUV0
ちはやが私のために作ってくれたこの料理。
その美味しさを他の人にもわかってもらう。それはきっと素敵なことだ、
と考えた優雨は「‥はい」とスプーンを薫子に差し出した。

「ありがとー、じゃあちょっといただいちゃうね。」

そういってスプーンでグラタンを掬い取り、一口でぱくりと。

「はむ‥。美味しっ!! なにこれ!」
思わず感嘆の声を上げてしまう。

グラタンと言うよりお菓子に近いこの美味しさ。
カボチャの甘みとミートソースのうまみが絶妙に混ざり合い、
焦げたパン粉が香ばしく、なんともいえないこの味わい。

「ごめん。優雨ちゃん。もう一口だけっ」
「‥え?」
「うわー。ほんと美味しい〜。千早さん凄い。」
「あ、ありがとうございます‥」
754名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 11:07:47.84 ID:eyJOVFUV0
「そうなんですか?
 私も一口もらってもいいでしょうか。
 うわー。本当に美味しいですねー。」
「‥ぅ」

「へぇ〜、そんなに? 優雨ちゃん。ちょっと私ももらうわね。
 あら。本当、これはすごいわね。」
「‥‥ぁ」

「私にも是非味見を‥。
 これは。さすが千早様です。」
「‥‥。」

「でしょでしょー。いやー本当にこれは美味しいよー。
 ごめん。もう一口だけっ!」
「‥‥ぅぐっ。」

みるみるうちに貪り尽くされていくカボチャグラタン。

「皆さんっ!! 優雨の食べる分がなくなってしまうでしょう!」
「へ?」「あっ!」「あら‥」「これは‥」

気付いたときには半分以上食べられてしまったグラタン皿と、
悲しそうにそれを見つめる涙目の優雨の姿。
755名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 11:36:01.80 ID:eyJOVFUV0
「ご、ごめんなさいっ!」
「あわわ。ゆ、優雨ちゃん、ごめんね! な、泣かないで!」
「うわー。私としたことが‥‥。ごめんなさいね、優雨ちゃん」
「優雨さん、申し訳ありません。」

すんすんと鼻をすする優雨を慌てて宥める一同と。
まったくもう‥と大きくため息をつく千早。

涙目の優雨の隣に膝立ちとなって視線を合わせ。

「優雨。皆さんが調子に乗ってしまってごめんなさいね。」
「‥ちはや。」
「でも、優雨も、嫌なら声を上げてもいいと思うわ。
 『それ以上食べちゃだめ!』って」
「‥ん〜。」

悩ましげな表情を見せる優雨。

「ふふっ。まぁそのうちね。
 ところで。優雨はミカンと桃、どっちが好き?」
「え?」

何を聞かれているのか問いたげな優雨の視線に柔らかく微笑み。

「薫子さんにグラタンを食べられてしまいましたから
 代わりに優雨にはデザートを作ってあげようと思うの。ミカンと桃の缶詰があったので。」
「‥モモがいい。」
「えぇ、わかったわ。楽しみに待っててね。」
「うん。」

微かな笑顔を見せてくれた優雨に頷いて、千早は厨房へ向かうのだった。
756名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 15:09:10.17 ID:eyJOVFUV0
***

その後。なんとか優雨を寝かしつけたあと。

「さて‥‥。皆さん。」
「うっ。」「ごめんなさいー。」「反省してるわ。」「申し訳ありません。」

食堂に集まった一同に冷たい視線で向ける千早。
率先して千早の前に正座をした史につられて、
残りも冷たい床の上についつい正座してしまう。

千早が声を発しないまま、しばしの時が過ぎ。
沈黙の重みが一同にのしかかる。

おそるおそる目蓋を開き、千早と視線があうと、ひゃっと呟きながら固く目を閉じる薫子。
怒られ慣れていないのか、ひどく怯えた風に視線を漂わせる初音。
どんな責めも受ける覚悟を決めたのか、平然と千早の視線を受け止める香織理。
ただ静かに罰を待つかのように、目を閉じて静かに座る史。

叱責の声があるわけでもなく
ただただ千早の冷たい視線が織りなす緊張に満たされた食堂。
叱られる側にとって、この数分はとてつもなく長く感じられた。

「ふぅ‥‥。
 皆さん反省しているようなので、私からは特になにも申し上げることはありません。
 そもそも、先ほどの行為を許すかどうかを決めるのは優雨ですから。」

千早の言葉で若干ゆるむ食堂の雰囲気。
757名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 15:40:42.69 ID:eyJOVFUV0
「ただし。
 優雨に対しての真摯なる謝罪と、各自なりの優雨への償いを私からは期待させていただきます。
 皆様。よろしいでしょうか?」

千早の冷徹なる視線が一同を打ちのめし。

「はいっ!」×4
「わかっていただけたようで安心しました。
 それでは‥、皆さん。ここまでにいたしましょうか。」

はぁ‥という千早の溜め息とともに。
ようやく食堂の空気が弛緩した。



「千早様。」

残りの3人が痺れた足に苦しみながら、
なんとか席に戻ろうとする中で、変わらぬ姿勢のまま史が声を上げる。

なんだなんだと3人が見守るなか、
千早と史はしばしの間見つめ合い。
そして、降参したかのように、ため息を漏らす千早。

「ふぅ‥。相変わらず頑固なのだから‥。わかりました。
 それでは私の部屋で。先にいっていますね。」
「はい。」

そういって席を立つ主従。
758名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 16:20:10.84 ID:eyJOVFUV0
「史ちゃん‥。いったいなにを?」
「先ほどの件につきまして、千早様より叱責をいただきます。」
「えっ?」
「さっき千早さん、これで終わりって。」

驚きの声を上げる周囲に。

「優雨さんへの私個人の謝罪および償いは当然として。
 従者の迂闊な振る舞いに罰を与えることは、主の義務のひとつでございますから。」

そう告げて、静かに一礼。
すでに自室へと向かった千早の後を追う史。

残された3人は。

 やばい、あれは本当にやばい
  千早さんは絶対に怒らせちゃダメよ
   怒る美人は本当に怖いって本当よね
    優雨ちゃんに許してもらうにしても、千早には個別に謝らないと
 史ちゃんもなんというか、どうなのよ、あれ
  あれが筋金入りのいいとこのお嬢様なのね
   というか主と従者ってどんな世界の話なのよ
 初音だってお嬢様なんじゃないのー
  私なんて全然普通ですからぁ

などと、深く深く反省(?)するのであった。

***
759名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 16:45:24.38 ID:eyJOVFUV0
そのあと。
想定外の時間に入寮してきた陽向を出迎え、
お茶を振る舞いながら簡単な自己紹介等をしていた初音達であったが、
「ほかにどんな人がいるのか」という陽向の質問が出た途端、
なんともいえぬ微妙な表情になる3人。

「あのぉ、なにかあったのでしょうか‥?」
「い、いえ。別に何もありませんよ?。」
「でもさー。あの場にいなかった陽向ちゃんにもちゃんと伝えておくべきじゃない?」
「そうねぇ。私も薫子の意見に賛成よ。
 うっかり逆鱗に触れてしまったら、どうなるかわからないもの。」

そんなこんな、急に険しい表情で議論し始めた上級生たちを前に、
さすがの陽向も緊張がこみ上げてくる。

「陽向ちゃん。
 今から説明することはとても大事なことなので‥。」
「は、はいっ!」

こうして、優雨と陽向の入寮1日目の夜は更けていった。

***
760名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 17:04:38.95 ID:eyJOVFUV0
翌朝。
紅茶の香りが漂う食堂に、柔らかな挨拶が響きわたる。

「おはようございます。」
「あ、千早ちゃん。おはようございます。」

多少びくびく怯え気味の初音であったが、
いつもの千早の笑顔であることに少し安心し、
見えないところで胸をほっとなで下ろす。

そんな初音の内心なぞ知るよしもない千早は、
昨夜よりも1席多い朝食の準備がされているテーブルをみて。

「あら? 誰かお見えになるのですか?」
「あぁ。昨日、宮藤さんという1年生が遅くにいらしたんですよ。」
「なるほど。そうでしたか。昨日は挨拶できなくて申し訳ありませんでした。」
「いえいえ。入寮式は今日ですし〜。」

そんなこんなで和やかな会話を交わしていると。
残りのメンバーも徐々に顔を出し始める。

「おはようございますっ!」
「あぁ、陽向ちゃん。おはようございます。よく眠れました?」
「えぇ。緊張して眠れないかと思っていたのですが、いつのまにか朝でした。(てへ)」
「ふふっ。それはよかったですね。」

元気な挨拶を初音と交わす陽向に、
にっこり笑顔で千早が話しかける。
761名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 17:34:41.56 ID:eyJOVFUV0
「あなたが宮藤さんね?
 私、3年の妃宮千早と申します。よろしくね。」
「は、はいっ!!
 昨日からお世話になっています。宮藤陽向と申しますっ!」

昨日、散々脅かされているわけで、緊張しまくりな陽向。
しゃっきり背筋を伸ばし、下げる頭は最敬礼。

「ふふっ。緊張しているのかしら?」
「い、いえ。滅相もありません!」
「き、きっと、千早ちゃんの美人さんっぷりに緊張しちゃってるんですよー」

カチカチにこわばったその応対に慌てて初音がフォローに入っても、
『普段は優しいけど怒らせたらまぢやばい』と昨夜散々刷り込まれた陽向には
千早の笑顔一つ一つが地雷に感じられるのは致し方ないことで。

***
762名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 18:49:22.81 ID:eyJOVFUV0
数日後。

「なんか、宮藤さんに避けられているような気がするんですが‥。(はぁ)」
「あはははははは‥。」
「ち、千早ちゃんは美人さんですから! ちょっと近寄りがたいとか!」
「そうねぇ。薫子が蕩けちゃうくらいだし。」
「だからー。もうそれはいいから‥。」
「そ、そのうちきっと陽向ちゃんも慣れてくれると思いますよ!」
「そうだといいんですけどねぇ。(はぁ)」

(いえない。私たちが脅かしすぎたせいだなんて、絶対いえない。)
(これがばれたらまた思い切り怒られるわよ。)
(はぅぅぅぅ‥)

どうしたもんかと思い悩む最高学年生の溜め息が、食堂に響きわたるのでした。

-----------------------------------------------------------------------
763名無しさん@初回限定:2012/11/11(日) 21:52:53.61 ID:43y5YqBQ0
乙乙

…ダメだこのお姉さま方…誰もどうにもできない…
764名無しさん@初回限定:2012/11/16(金) 02:29:35.14 ID:CFIJuqT70
756読むまでてっきり2人目に食べたの陽向だと思ってたわw

しかし実際は寮に1人きりの1年生を弄る上級生のお姉さま方という構図になっていて、
聖應の女子寮にも縦社会構造が形成されているんだなぁと感じさせられた…
765名無しさん@初回限定:2012/12/01(土) 00:40:46.17 ID:Sdul2d4n0
保守
766名無しさん@初回限定:2012/12/17(月) 07:38:16.19 ID:cXYEH6r60
そろそろ降誕祭の時期か。
今年は誰と踊らせるかなぁ。
767名無しさん@初回限定:2012/12/26(水) 22:35:19.37 ID:DGGvbUOG0
|
|`ヽ    ダレモイナイ… イマノウチニ
|ji」リi|   オネエサマノ ウシロノハジメテ イタダキマス
|ヮ゚ノl|
768名無しさん@初回限定:2012/12/26(水) 23:58:37.25 ID:jo97zGCP0
>>767
雪ちゃん「うたちゃん、あと二時間そのポーズのままでいてね」
769名無しさん@初回限定:2013/01/14(月) 23:04:47.50 ID:2AlPDRwe0
久しぶりにおとボク2やってみたら面白かった
妄想膨らむけど、需要あるのか?
770名無しさん@初回限定:2013/01/14(月) 23:06:39.47 ID:oD+75dwP0
はよ
771名無しさん@初回限定:2013/01/14(月) 23:34:49.77 ID:2AlPDRwe0
>>770
ちょ、お前はえぇよw
今から構想練る段階だから

モチベーションが下がらない内に頑張ってみるよ
772名無しさん@初回限定:2013/01/14(月) 23:56:23.27 ID:bckoJQTD0
久々の投下楽しみにしとくぞ〜
773名無しさん@初回限定:2013/01/20(日) 03:30:04.69 ID:qCNWHPgm0
…と馬鹿が騙されました。
774名無しさん@初回限定:2013/01/20(日) 14:43:37.21 ID:hIZ5rCH30
他の人でも良いから新作はよ
775名無しさん@初回限定:2013/01/27(日) 23:25:16.66 ID:OooEyzv10
1月中はムリっぽい……
ボチボチ作ってるけど、まぁその内完成するだろう
776名無しさん@初回限定:2013/01/27(日) 23:46:42.07 ID:8gx5D42n0
1年でも2年でも待ってるからはよ
777名無しさん@初回限定:2013/01/27(日) 23:48:17.44 ID:dGfRy9Y70
その文章矛盾してないか?w
778名無しさん@初回限定:2013/02/01(金) 15:13:00.38 ID:+iIHZ09A0
千早きゅん卒業後に雪ちゃんが余りにも頻繁にお泊りするせいで
ふみ大魔神が降臨してクラス内で雪ちゃんの事を「若奥様」とか呼んじゃって
うたちゃんに問い詰めらて修羅場ってる妄想をしてたら1月が終わってた
779名無しさん@初回限定:2013/02/01(金) 22:13:15.13 ID:Iz+YkaBZ0
はよ
780名無しさん@初回限定:2013/02/03(日) 10:09:03.85 ID:3PKNHxpC0
続く予定は本当になかったんだよっ! う、嘘じゃないってっ!
>>614の続きでもだらだら書いてみます。11本くらい。2,3回にわけるかも?
----------------------------------------------------------------------
『絆』

帰り道の予感通りに。
翌日から、学院生活は楽しいものとなった。

一回目の体育授業での活躍。
健康診断のときのなんとも目を惹く姿。
中間考査で見せたイメージ通りの優秀さ。
雑談時の反応から伺えるその知性とセンス。
ナチュラルに薫子さんをからかう悪戯げな視線。
時折垣間見せる幼げで可愛らしい、あっけに取られた表情。

そして。
私を虜にしてやまない、紫色のその瞳。
憂い?秘密?戸惑い?覚悟?

私にはまだ理解できない、
いや、答えを教えてもらったとして理解できるかすら自信のない
彼女の瞳の奥に揺れ動くなにか。

私はそれを見るために、日々、ここに通い
彼女を見つめているのかもしれない。

そんな日常の中、その事件が発生した。

***
781名無しさん@初回限定:2013/02/03(日) 10:24:14.91 ID:3PKNHxpC0
「痛っ!」

クラスメイトと朝の挨拶を交わしていると、
自席につこうとしていた千早さんが急に声を上げた。

「千早、どうかした?」
「いえ。ちょっと‥。」
「あ‥。」

駆け寄る薫子さんの先には、血の滲む指先を押さえる千早さんがいた。

「それ、どうしたのよ!?」
「机の中で‥‥、えぇ。なにかに引っかけてしまったようです。」

思わず事象に慌て、声を荒げる薫子さんに対し、
当事者だというのにやけに冷静な千早さんはゆっくりあたりを見渡し、
床から小さななにかを拾い上げる。

「画鋲‥? なんでそんなものが机の中に」

思わず、疑問が私の唇から零れだすも。
それに答えることなく、千早さんは静かに周囲を見渡していた。

一瞬、千早さんの表情が険しくなった気がして
つられるかのようにその視線の先を追ってみると、
ちらちらとこちらを見据える学院生の姿が廊下に見える。

「千早さん‥?」
「いえ、なんでもありません。」

小さく首を振る千早さんから再び廊下に視線を向けるも、人影はすでに消えていた。
782名無しさん@初回限定:2013/02/03(日) 10:43:46.79 ID:3PKNHxpC0
***

「随分、血が出ちゃってるね‥。」
「まぁ、これくらいなら舐めておけば治りますから。」

そういう千早さんの笑みになにか痛々しげなものを感じた瞬間、
なぜか私は千早さんの二の腕をとっていた。

「保健室に行きましょう。」
「い、いえ。大丈夫ですから‥。」
「刺し傷は消毒しておいたほうがいい。」
「え、えぇ‥。そうかもしれません。」

白魚のような指先に滲む血の赤さがやたらに目に刺さる。
その赤さこそが私から平常を奪い去っているのかもしれない。

そうして。多少強引だったかもしれないが、
私は千早さんを連れ出し、保健室へと脚を急がせた。
783名無しさん@初回限定:2013/02/03(日) 11:03:02.97 ID:3PKNHxpC0
「っ!」
「ご、ごめん! 滲みちゃった?」
「いえ。たいしたことはありませんから。」

慣れない手つきで千早さんの指を消毒し、
絆創膏をそっと貼り付ける。

「茉清さん、お手数をおかけしました。」
「いえ。私はなにもしていないから。」
「ふふっ。率先して保健室に連れてきていただいていますよ?」
「いや‥、そ、それは‥。」

上目遣いに私を見つめる千早さんの微笑みに、
なぜか頬が熱くなり、声がうわずってしまう。

「ありがとうございます。」
「ど、どういたしまして‥‥。」

あぁ、もぅ。
本当に私らしくない。
そんな千早さんの言葉が、なぜかこんなにも嬉しいだなんて。

***
784名無しさん@初回限定:2013/02/03(日) 11:11:58.11 ID:3PKNHxpC0
後片付けをすると告げて千早さんの前を逃げだし、なんとか心を落ち着けて。
先ほどから疑問に思っている点を言葉に乗せる。

「で。千早さんはあの娘らに心当たりはあるのかな?」
「‥‥いえ。私としては特には。
 あまり恨みを買うような行動はしていないつもりです。
 とはいえ、多少、悪目立ちしてしまう自覚はありますけれどね。」

「ふむ、となると‥?」
「そういった意味ではひとつだけ。
 薫子さんの入学早々の話は伺っています。」
「あぁ‥‥なるほど、そういうこと、か。」
「えぇ。たぶん。」

この話のテンポの良さがなんとも快い。
785名無しさん@初回限定:2013/02/03(日) 11:23:40.47 ID:3PKNHxpC0
「それで?」
「とりあえず、仕掛けてみようかと。」
「準備に人手はいる?」
「いえ、当てはありますから。」
「そう‥。できれば私も立ち会いたいかな。」
「そうですね。準備次第ですけど、明日すこし早めに登校してもらえれば。」
「わかった。詳細はまた別途。」
「えぇ。そうですね。」

交わす視線はどこまでも静かに。

「それじゃ、そろそろ戻ろうか。」
「そうですね。教室に戻る前に史に相談しておきたいところですし。」
「2年生の妹さんだっけ? 少し遠回りになるし、急ごう。」

うなずきあって、一緒に立ち上がる。


あとから聞いた話では
無人となっていた保健室まで薫子さんがわざわざ迎えにきてくれていたらしい。
文句を言われてしまったけれど、こんな流れだったのだから許してほしい。

----------------------------------------------------------------------
一旦、ここまでー。
786名無しさん@初回限定:2013/02/03(日) 11:27:02.19 ID:tcEjz+Le0
支援
787名無しさん@初回限定:2013/02/03(日) 23:22:40.14 ID:ZH6WoQA30
流れに沿わない用件で申し訳ありませんが、
pixivにて桜館の屋根裏というユーザー(id5284063)がここのSSを掲載しているのを発見しました。
ファミリー、秘密の『男子会』、貴女のお誕生日です、瑞穂ちゃんの災難などの作品を、
題名あるいは内容を微妙に変えて載せています。
盗作や無断転載と証明できれば良いのですが……せめて作者様への確認をと考え報告致します。

慈悲と寛容を旨としていても、限度はあるのですよ。
788名無しさん@初回限定:2013/02/04(月) 06:42:00.34 ID:MoulOBQ50
----------------------------------------------------------------------
翌日。寮の前で千早さんらと待ち合わせをして、
手はずについての意識あわせをしながら、静かに待機する。

「で。なんで薫子さんが?」
「あの後、薫子さんに詰問されてしまいまして。」
「あたしは、こういう卑怯な話は許せないの!」
「なるほどね。さすが騎士様だ。」
「もう! それ、嫌いっていってるでしょー」
「ふふっ」

などと薫子さんを軽くからかいつつ。

「本当に今朝もなにかするのかなぁ?」
「昨日の帰り際には特になにも仕掛けてありませんでしたし、
 あるとすれば、やはり登校前の時間帯かと」
「諦めた、という線は?」
「保健室まで連れていっていただきましたから」
「あぁ、火に油を?」
「えぇ、その可能性も」
「失敗した‥?」
「いえいえ。根本から解決する良い機会かと」

そんな千早さんとの軽快な会話を楽しんでいると。

「むー。なんか二人の話、よくわかんない!」
「そうですか?」
「なんでそんなに以心伝心なのよ!」
「薫子さん、もう少し声を小さく‥」
「あっ、ごめん。」

話を遮られてしまったが、以心伝心といわれて少し嬉しい私がいた。
789名無しさん@初回限定:2013/02/04(月) 06:53:06.98 ID:MoulOBQ50
***

そんなこんなで待つことしばし。
あたりを気にしながら教室に忍び込む人影が二人。

「千早さん、やっぱり私が。」
「いえ。茉清さんがあまり前面に出てしまいますと、
 ファンクラブが暴走する可能性もありますから。」
「あぁ、なるほど。そこまで想定するのか。」
「え? なに? なに?」
「薫子さんへの説明は‥、どうやら後にした方がよさそうですね。動きました。」

映像の中では、性懲りもなく仕掛けを施す下級生の姿。

「すいませんが、しばらくは茉清さんは待機してください。」
「うん。わかった。」
「千早! 行くよ!」
「ちょっ! 待ってください!ってあぁぁ‥。」
「千早さん。頑張って手綱を握ってね‥。」
「はい‥。頑張ります。」

***
790名無しさん@初回限定:2013/02/04(月) 07:02:33.29 ID:MoulOBQ50
そのあとは。
性急に問い詰めた薫子さんが返り討ちになったけれども、
千早さんの叱責と懐柔により、なんとか無事にけりがついた様子で。
これなら大丈夫かな‥と、私も少し参加させてもらうことにする。

せっかく千早さんがうまくまとめてくれたのだし、
この雰囲気を崩さないよう、落としどころだけ少し考えてから。

コンコン。

開いている教室の扉を軽くノックして、皆の注意を引きつける。

「ま、茉清様!!」
「茉清さん。待ちきれませんでしたか?」
「うん。そろそろいいかな、と思ってね。」

千早さんと笑みを交わしながら、
呆然と佇む後輩たちの前に歩みを進める。

個人的にはこの二人からの憧れには欠片ほどの興味もないけれど、
千早さんの作ってくれたこのストーリーを台無しにするわけにはいかないので
少しだけ、この場にあいそうな「茉清」を演じてみる。

「ふふっ。そんなに緊張しなくていい。別にあなたたちを怒ったりしない。」

千早さんのような素敵な笑みは浮かべられていないのだろうなぁ‥
と内心自嘲しつつ、精一杯優しげな笑みを浮かべ、右側の後輩の頬にそっと手を添える。
791名無しさん@初回限定:2013/02/04(月) 07:13:07.16 ID:MoulOBQ50
驚きに目を見張る後輩に。
少し膝を曲げて、目線をあわせながら。

「あなたたちのしたことは、先ほど当事者である千早さんから許された。
 であれば、私からこれ以上、今回の件についていうことはない。

 ただ。あなたたちにもわかって欲しい。
 千早さんは、こんな私にもったいないほどの素敵な人だということを。

 そして許してほしい。
 あなたたちの憧れている茉清とは異なってしまうかもしれないけれど、
 私は千早さんと交友を深めたいし、それをあなたたちにも認めてもらいたい。」

本当、こんなのガラじゃない。
そんな想いに頬がいささか熱くなっている気もするが、
口に出したその言葉は、正真正銘本当の気持ち。

その心が通じたのか。
いや。単純に、今回の千早さんの行為が素晴らしかっただけだろうが。
後輩たちは頬を染め、感動した目で私を見つめ。

「はいっ!」

と、大きく返事をくれた。

***
792名無しさん@初回限定:2013/02/04(月) 07:19:35.93 ID:MoulOBQ50
「ふぅ。これで一件落着でしょうか。」
「千早さん。今回は本当にいろいろ申し訳なかった。」
「いえ。茉清さんが謝ることではないですから‥。」

そうはいかない。
原因はどう考えても私にあるのだから。。。

そう言いつのろうとしたものの。
苦笑気味の千早さんを見て、思いとどまる。

そうだ。
こういう場合は。

「なら、言い直そう。
 千早さん。今回は本当にいろいろありがとう。」

私のその言葉に。
一瞬、紫色の瞳を大きく見開き。
そして、ふんわりと柔らかに微笑んでくれた。

この笑顔を見ることができたのだから。
私の選択はきっと間違っていなかったのだろう。

こんな日々が続けばいいな。
クラスメイトが登校してくるまでのわずかな間、
私はそんな感慨とともに、早朝の教室での軽やかな雑談を堪能した。

-----------------------------------------------------------------------
受付嬢の出番なんてなかったんや!
その後のファンクラブは大騒ぎだけど、茉清さんには情報はいってこないので平穏な感じ?
793名無しさん@初回限定:2013/02/04(月) 09:01:12.49 ID:ZP3XAGG40
>>792


ちっちゃい受付嬢ハブられてカワイソスw
794名無しさん@初回限定:2013/02/11(月) 15:08:22.41 ID:lJgS0hSS0
経過報告しときます

まだ、途中なんだ。
書いている内に自分の文才の無さに打ちのめされています。
このままじゃ、やる気が下がっていくだけだから、ちまちま投稿することにします。

かなりの独自設定だから、その辺りは寛大な精神で対応してください。
795名無しさん@初回限定:2013/02/11(月) 23:47:31.22 ID:lJgS0hSS0
それでは投稿します。

原作と比べると時間軸がおかしいことになりますが、2学期の後半ぐらいです。
家元試験が冬休み前にあると思っておいてください。

雅楽乃if√となります。
796名無しさん@初回限定:2013/02/11(月) 23:52:26.57 ID:2bIE1D830
支援
797名無しさん@初回限定:2013/02/12(火) 00:03:58.30 ID:lJgS0hSS0
支援ありがとうございます。


〜〜〜〜〜〜【鳥籠の代償】〜〜〜〜〜〜〜〜
「今、何と言った?」
「雅楽乃、貴女は自分が云っている意味がわかっているのですか?」

居間で父を正面に、その脇に母を迎えて雅楽乃が正座していた。

「はい、私は家元試験を辞退させて頂きますと―――」
「私は意味が分かっているのかと聞いているのです。」

雅楽乃の返事を母が途中で遮った。
小さい頃は華道の指導時によく怒られたが、母の苛立つ声を聞いたのは久しぶりだ。

「――はい、存じております」

哘の家に生まれた以上、家元を目指す運命にある――。
事実、雅楽乃も生まれてから今まで1日も休むことなく、華道を続けていたのは全て家元を目指すためにあった。

「――もういい、今日はもう顔も見たくない」
「旦那様!」

滅多な事では怒らない父も、さすがに興奮したのか、話を終えずに部屋を出て行ってしまった。
母も話にならないと思い、立上った。

「雅楽乃、この事については後日あらためて伺います。それまでに頭を冷やしておきなさい」

そう言葉を残して、母も部屋を出た。
雅楽乃は独り部屋に残り、父と母が出て行った襖を見つめながら、恭しく頭を下げた。
798名無しさん@初回限定:2013/02/12(火) 00:13:46.24 ID:2ivI3VJk0
/****************** 放課後 修身室 *******************/

「え?うたちゃん、家元試験を辞退するの?」
「まだ論争の途中ですから確定しておりませんが、そのつもりです」

華道部の活動が終わった後、雅楽乃から大事な話があると言われて、修身室に残った千早と淡雪は、家元試験に関しての雅楽乃の想いを聞かされることになった。

「でも、うたちゃん。この前は『哘の家に産まれたからには、試験は受けなければならない』って……」

少し以前に、家元とはいかなる存在なのか、その事実を諭されたばかりの淡雪にとっては、予想外の展開だった。

「はい…それは事実です。ですが、元々家元になるつもりがないのですから、私には試験を受ける資格はないのです。仮に試験に合格したとしても、家元を辞退するつもりです」

少し興奮している淡雪とは違い、当の本人である雅楽乃は、落ち着いた様子で答えた。

「ふぇー。あの優等生のうたちゃんが、そんな事を云うなんて……。お姉さま、一体うたちゃんに何をしたんですか?」
「あら、雪ちゃん。私だけが何かをしたと云うのは、間違っているのじゃないかしら?」
「へ?」
「そうですよ、雪ちゃん。私がこんな想いになったのはお姉さまと、雪ちゃんのおかげなんですから」
「うーん…私は家元になるために頑張ってきてたんだから……なんか、話が逆なように感じるんだけど……」

淡雪は雅楽乃の返答に、どこか納得いかないようだ。
今まで大和撫子を絵に描いた様な親友の変貌ぶりに、気持ちが着いていけてないだけなのかもしれない。
799名無しさん@初回限定:2013/02/12(火) 00:54:05.60 ID:MsREG2BG0
wktk
800名無しさん@初回限定:2013/02/12(火) 01:00:10.93 ID:2ivI3VJk0
「それで、雅楽乃。試験を辞退して、これからどうするつもりかしら?」
「私は花が大好きですから、花と共に生きていくのに違いはありません。流派からは離れる形になりますが、何も花と生きるのに必ずしも流派が必要なわけではありませんので……」
「うーん……ますます分かりません」

花と生きていくために流派を離れる心情に、やはり淡雪は納得いかないようだ。
千早としては、何かに縛られたくない――という雅楽乃の気持ちが十分に理解できるので、家元試験辞退の件も、『あぁ、やっぱり……』と受け止めることができた。

「雪ちゃんの方はどうするのかしら?」
「私ですか?……うたちゃんが試験を辞退するなんて思ってもいませんでしたから……正直、困惑しています。ですが………」

突然ライバルが、しかも最有力候補であった雅楽乃が、とつぜんに試験を辞退するといったのだから、困惑するのも当然だろう。
でも、言葉の途中で少しかぶりを振り、淡雪はしっかりした顔立ちで千早に答えた。

「ですが、うたちゃんが辞退する/しないに関わらず、私は家元を目指していましたので……試験は受けるつもりです」
「そう、それが良いと思うわ」


淡雪自身は気づいていないが、淡雪が初めて雅楽乃と違う目標を目指していると言葉にした瞬間だった。
その答えを聞いて、不安は残るものの、『雪ちゃんについてはしばらくは問題ないかな――』と千早は思った。
801名無しさん@初回限定:2013/02/12(火) 01:03:51.99 ID:2ivI3VJk0
「あ!そうだ私…今日中に返さなくちゃいけない本があるんだった」

急に用事を思い出した淡雪が、大きな声で言った。
時計の針は5時半を示しており、図書室閉室まであと30分程だった。

「もうじき図書室も閉まる頃ですから、急いだ方がいいわね」
「え?もう、そんな時間ですか!?……うわっ、ホントだ」

淡雪は時計を見るなり立ち上がり、オロオロしている。
後片付けをして間に合うかどうか、慌てているせいで行動が変になっているのだろう。

「後片付けは私がしておきますから。雪ちゃんは図書室に行ってきて下さい」
「ごめん、うたちゃん。急いで戻ってくるから」

そう言うと、淡雪は鞄を持って足早に修身室を後にした。

「ふふ…相変わらず、雪ちゃんはそそっかしいわね」
「はい…。ですが、そこが雪ちゃんの良い所であり、私にとってはとても憧れる所でもあります」
「そうね…。さ、私たちも片付けをしましょうか」

淡雪が出て行ったので、千早と雅楽乃は修身室の後片付けをするため立上った。
802名無しさん@初回限定:2013/02/12(火) 01:17:14.87 ID:2ivI3VJk0
二人で後片付けをしている間、頃合いだと思い、千早は気になっている事を、思い切って聞いてみることにした。

「ねぇ、雅楽乃……。先ほどは雪ちゃんが居る手前、聞きませんでしたが。貴女の方はどうなのかしら?先程言った『論争中』というのは…貴女自身に対する『処分』について…ではないのかしら?」
「…………………さすが千早お姉さまですね。ご慧眼、恐れ入ります」
「やはり、そうですか」

格式や伝統を重んじる家ではよくある事だ。
『家の“名”に恥じないように心がけない――』
千早自身も、その辺りの煩わしさはよく知ることだった。


「ご両親は何と?」
「哘の者が、家元試験を辞退するなど在ってはならない……と」

答える雅楽乃の声と顔には、先程まで淡雪に話していた時よりも暗く細かった。

「それは、つまり…家を出ることになるかもしれない……ということね?」
「……まだ、はっきりしたことは決まっておりません。ですが、その可能性もある…というのが現状です」
「そう………」

修身室に重い雰囲気がただよった。
803名無しさん@初回限定:2013/02/12(火) 01:25:58.05 ID:2ivI3VJk0
千早が、どう話を切り出そうか考えていたところ、廊下を走ってくる音が聞こえた。
聖應では廊下を走る人は滅多にいない。
千早が知る限り、『廊下を走る』という単語で思い当たるのは二人だけだ。
一人は薫子だが、薫子はよほどのことが無い限り修身室に来るハズがない……。
つまり、この足音は………。

「どうやら、雪ちゃんが戻って来たようですね…。千早お姉さま…お願いです――。」
「わかっています。この話は、まだ雪ちゃんには内緒にしておきます」
「ありがとうございます。千早お姉さま」

淡雪は千早や雅楽乃に比べると、感情の起伏が激しい。
雅楽乃が家を出る、と言う情報を耳にすると、きっと気分が暗くなるだろう。
そして、その想いは必ず『花』に表れてしまう。
せめて淡雪には持っている力を全て試験で発揮して欲しい。
――願わくば、家元試験が終わっても二人が笑顔であって欲しいのだけれども――。
そう思う千早であった。





今日はココまでにしときます。
支援して下さった方々、ありがとうございます。
804名無しさん@初回限定:2013/02/12(火) 23:49:48.52 ID:Bup8VRYZ0
wktk
805名無しさん@初回限定:2013/02/13(水) 00:18:53.93 ID:i3EO6/zG0
なんとかキリのイイ所まで書き上げました……
まだ全部はできていないんですが、今日も頑張って投稿します。


/*****************  夜   聖應女学院_寮 *******************/

――とは言ったものの……どうしたものか。

雅楽乃の試験辞退宣言から1週間が過ぎた。
千早は約束通り、淡雪や他の誰にも雅楽乃の家庭事情を話さないまま、様子を窺うことにしていた。
幸いなことに、史が雅楽乃と同じクラスなので、時折、雅楽乃の様子を見るよう頼んでおいたのだが、やはり、以前に比べて独りで居ることが多くなったようだ。

-―このまま何もしなかったら、雅楽乃はますます独りになっていくんじゃないだろうか……。そう、かつての自分のように――――。

そうならないように、何とか対策を考えている千早なのだが、いい考えが思いつかず頭を抱えながら廊下を歩いていた。

「随分と深刻そうな顔をしてるじゃない?千早」
「香緒理さん」

声を掛けられたので振り返ると、大胆なパジャマ姿の香緒理がそこにいた。
806名無しさん@初回限定:2013/02/13(水) 00:26:58.34 ID:i3EO6/zG0
「どうかしたのかしら。そんな顔をしていると、優雨ちゃんが心配するわよ?」
「えぇ……少し困ったことがありまして」
「あら、そうなの……。まぁ、立ち話もなんだし、私の部屋にいらっしゃいな」

促されるまま、香緒理の部屋にお邪魔することにした。
部屋の中は相変わらず香水の材料や試作などが、所狭しと並べられていた。
香水のせいだろうか、漂うバルサミック系の植物の匂いが、不思議と千早の心を落ち着かせた。

「それで、学園を代表する麗しのエルダー様を困らせているのは何なのかしら?」
「エルダーと言っても、皆さんと同じ人間ですからね。悩みや困ることだってあります」
「ふふ…それだけ冗談を返せるようなら、大丈夫そうね。それで、悩みっていうのは?」

迂闊に他人に話していいものだろうか。
千早は抱えている悩みについて、頭の中で整理してみたが、このままの一人で考えていても埒が明かないので、意を決して相談してみることにした。

「……香緒理さんだからこそ、相談させて頂きます。ですが、他言無用でお願いします」
「悩みが解決できるかどうかは分からないけど、他言無用の件に関しては安心して。私、口は堅い方だと自負しているから」

軽口を云う香緒理だが、今回の様な込み入った事情などについては決して口外しないだろうと、千早は有りもしないが確信があった。

「実はですね――――――」



807名無しさん@初回限定:2013/02/13(水) 00:39:37.44 ID:i3EO6/zG0
「そう、あの雅楽乃さんが」
「ええ、本人は大丈夫だと言っているのですが………」

恐らく、本当に雅楽乃は大丈夫だと思っているのだろう。
花以外では、元々家族の絆が薄かったモノだから、その絆が更に薄くなった……その程度にしか感じていないのかもしれない。
だけど僕は知っている。
周囲に人が居ても、独りであることの辛さ――。
今は平気でも、半年や一年後には昔の僕の様に、他人に心を閉ざしてしまうんじゃないか……。

「家族というのは不思議ね…。子供のためと思ってしたことが、いつの間にか自分の欲望に代わってしまう。雅楽乃さんのご両親にしたって、初めは純粋に雅楽乃さんを家元にさせてあげたいと願って厳しく当たっていたのでしょうね。」

「不平、不満を口に出さない子ですから……。いえ、不満と思ったことが無い――のかもしれません」

生まれてから苦難しか与えられなかったとした人は、苦難が苦難でなくなってしまう…。
雅楽乃はまさにその典型だろう。
808 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:5) :2013/02/13(水) 03:56:12.01 ID:fkguoONs0
支援
809名無しさん@初回限定:2013/02/13(水) 09:36:24.97 ID:gdAJvx/n0
紫苑
810名無しさん@初回限定:2013/02/13(水) 11:10:08.51 ID:iJJFWmBl0
si
811名無しさん@初回限定:2013/02/13(水) 12:20:16.49 ID:pi/dn7hZ0
s
812名無しさん@初回限定:2013/02/13(水) 22:28:54.71 ID:i3EO6/zG0
ただいま帰ってきたので、続きを投稿いたします。



「真面目な子は大変ね―――。私だったら、そんな家族と一緒に過ごしたいとは思わないけどね。まぁ、現実的な問題を棚上げしているだけ、と云われたら耳に痛いけどね」

そう、自分からハッキリしたことは口にしないけれども、香緒理さん自身もご家族の人と上手くいっていない様子だ。
厳密に言えば薫子も家族と一緒に居るのを嫌う人なので、そういった意味では多かれ少なかれ、皆家族との関係に悩みや問題をかかえているのだな…とぼんやりと千早は思った。

………
……………
………………ん?

「そうか、その手がありましたね……」

深い霧が晴れたように、千早の頭に一つの考えが思い浮かんだ。

「その顔………何か閃いたようね」
「ええ、問題を解決する……というわけではありませんので、諸手を上げて喜べませんが。香緒理さんのおかげです」
「ふふ…私は何もしてないけれどね」
「いいえ、随分と助かりました。ありがとうございます」

香緒理にお礼の言葉を云うと、千早はそそくさと自分の部屋に戻ることにした。

史は怒るかもしれないな……。

そう心の中で苦笑しながらも、千早の頭は閃いた解決策を実行するために、実現させるための方法や問題点などを考えることで夢中になっていた。
813名無しさん@初回限定:2013/02/13(水) 23:36:42.83 ID:i3EO6/zG0
続きは現在、制作中です
土曜日の夜頃に投稿する予定です

支援していただいて、大変ありがとうございます。
814名無しさん@初回限定:2013/02/14(木) 00:54:34.48 ID:zP+3EYeF0
支援
815名無しさん@初回限定:2013/02/14(木) 20:37:23.22 ID:Mbt3u+dl0
乙!期待して続きを待ちます!
816名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 00:58:48.79 ID:rKNkquCO0
最近リアルが忙しくて、なかなか続きができてません
セリフ多めにして、手抜きになっている部分がありますが、大目に見て下さい
では続き投稿します
817名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 01:05:16.30 ID:rKNkquCO0
/*****************  さらに1週間後 昼休み 聖應女学院2−A *******************/

香緒理に相談してから1週間がすぎた。
家元試験も終わったので、雅楽乃と話をするために千早は2−Aのクラスを訪ねることにした。

「3年の妃宮千早です。哘 雅楽乃さんにお取次ぎ願えるかしら?」
「あ、は、はい!………御前!千早お姉さまがお呼びでいらっしゃいます」

エルダーの千早が訪れるとは夢にも思わなかったのか、受付の娘は興奮を隠しきれず、大きな声で雅楽乃に取り次いでくれた。
教室からは
「千早お姉さまよっ!千早お姉さまがいらっしゃったわ!」「あぁ、どうしましょう。私、髪型変じゃないかしら!?」「御前とお姉さまの密談…………萌えるっ!」
など黄色い歓声が沸きあがっているので、千早は居た堪れなくなり、ひとまず廊下で待つことにした。

「千早お姉さま!」

教室の扉が開くなり、雅楽乃は千早の胸に飛び込んできた。

「ちょ、ちょっと…雅楽乃……」
「ふふっ、申し訳ありません。ですが、初めて千早お姉さまが私の教室に来て下さったものですから……つい、嬉しくて」
「そう…そうだったわね。貴女と出会ってから半年は経ちますけど……まだまだ初めてのことは残っているものなのね……」
「それで、千早お姉さま。私に……何かご用でしょうか?」
「ええ、大事な話があるものですから……今日の放課後、時間はあるかしら?」
「はい。今日は華道部も休みですし…家の用事も特に仰せつかっておりません」
「そう、良かったわ。それでは…どこか落ち着いて話せる場所………そうね、修身室は使えるかしら?」
「はい、勿論問題ありません」
「それでは、放課後に修身室までお願いね。」
「解りました。修身室の準備は私がしておきます」
「有難う、雅楽乃-――。あ、あと雪ちゃんにも声を掛けておいてくれるかしら?」
「雪ちゃんに……ですか?解りました」
818名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 01:17:24.79 ID:a8ca/7w20
wktk
819名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 01:22:41.06 ID:rKNkquCO0
/*****************  放課後 修身室 *******************/

「それで…お姉さま。大切な話と言うのは……」
「そうですね……。私の話をする前に、まずは雪ちゃん――――家元試験、お疲れ様でした」
「あ、いえ……結局、家元にはなれませんでしたから……。まぁ、何だかなぁって感じですけれども」
「結果については残念でしたけれども……。雪ちゃんは納得がいきませんでしたか?」
「自分では全力を出せた…つもりです。少なくとも、今回家元に選ばれた方の作品と比べて、見るからに劣っている…といった所は無かったかな、と思っています」
「私は…それで良かったのだと思います。私も後で雪ちゃんの作品を拝見させていただきましたが、とても素晴らしい出来栄えだったと思います」

雅楽乃によると、今回家元試験を合格した人の作品は、淡雪のモノよりも“より流派に沿った作品だったから”――ということらしい。
家元になってしまえば、淡雪の個性が殺されてしまうから、この結果でよかった。と雅楽乃は言う。
試合に負けて勝負に勝った。と云ったところか。

「そう、それはよかったわ」

華道を止めるにしても続けるにしても、以前の様にただ雅楽乃の後を追う事はないだろう。
本当に良かったと千早は思った。

「雪ちゃんのことは、もう大丈夫ね。雅楽乃-―――あなたの方はどうなのかしら。雪ちゃんには……ご実家の事……ちゃんと話したのですか?」
「え?何の話です?うたちゃんの家がどうかしたんですか??」

本当に初耳のなのだろう。淡雪は目を丸くしている。

「――いいえ、まだ話しておりません」
「だから、一体何の話です?」
「……私が話しても構わないわね?」
「…………はい」

やや長い沈黙の後、全て千早に委ねる事を、雅楽乃は了承してくれた。
820名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 01:28:31.83 ID:rKNkquCO0
「ん〜もうっ!ですから、何の話なんですか?二人して」
「雪ちゃん…落ち着いて聞いてほしいのだけれども……実は――」




千早は淡雪に、家元試験を辞退して以降の雅楽乃の事情を説明した。

「そんな……そんなの、おかしいよ!うたちゃん!!うたちゃんは何も悪くないじゃない!!」
「いいえ、何もおかしくはありません」

激高する淡雪に対して、雅楽乃は冷静に言い放った。

「私が不義理を働いたのは事実なのですから、このような扱いを受けるのも当然のことです」
「だからって、いくらなんでも……!!」
「雪ちゃん」
「千早お姉さまも、そう思うでしょ!?」
「雪ちゃん、落ち着いて」
「…………っ」

このままだと怒って飛び出しかねなかったので、千早はワザと厳しい口調で淡雪を制した。

「雪ちゃん、貴女に黙っていたのは謝るわ。でもね、雅楽乃だって雪ちゃんに心配をかけさせないために黙っていたの……そこは、解ってあげて?」
「………それは…解りますけど………だけど!」
「雪ちゃん、私の話は終わってないの。もう少し待ってちょうだい」
「…………はい、解りました」

淡雪は納得いかない様子だが、ひとまず落ち着いてくれた。
千早は改めて雅楽乃に向き直り、話を続けた。
821名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 01:29:56.58 ID:a8ca/7w20
支援〜
822名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 01:32:38.48 ID:rKNkquCO0
「雅楽乃……。貴女の処分について、家を出ることになるかもしれない、ということまでしか話を聞いていませんでしたが、その後はどうなったのかしら?」
「母の取り計らいで、聖應を卒業するまでは家族として認めて頂けることになりました。ですが、卒業後は『哘』の門を潜ることは許さない…と」
「そんなっ!」

信じられない驚きと悲しい表情をする淡雪だが、逆に千早は少し安心した。
卒業までは『哘』の家が面倒を見るということなので、即停学――もしくは退学になる最悪の事態は避けられたのだから……

「そうですか………もっと最悪な事態も想定していましたので、一先ず安心しました………。でも貴女は本当にコレでよかったの?」
「…はい。もとより、このようになることは覚悟の上でした」
「………そう」

静かにたたずんでいるが、雅楽乃の決意は固い。
恐らく、退学になるようなことになっていたとしても、自分が選んだ道と言い張り、受け止めるだろう。
そんな悲しい雅楽乃の心情が理解できる千早だった。
―――そんなところまで似なくてもイイのに……不器用な子ね、貴女も………。

「お話というのは…その事でしょうか?」
「いいえ、ここからが本題です」

即退学の危機が無くなったので、千早は心の中で身を引き締めなおした。

「単刀直入に言います――」






「雅楽乃-――――、私の『妹』になる気はありませんか?」
823名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 02:00:15.79 ID:rKNkquCO0
「お姉さま……それって、どういう………」

最初に口を開いたのは、雅楽乃の隣で座っている淡雪だった。
雅楽乃は目を見開いて、千早の顔を窺っている。
聡明な子だから、もう千早の言いたいことが分かっているのかもしれない。

「そうね。少し抽象的な表現でしたから、もっと具体的に言うわね…。雅楽乃、寮に入る気はありませんか?」
「え?寮って……」
「………よろしいの…ですか?……お姉さま」
「ええ、部屋に余裕もありますし、寮監や学院長代理に確認はしてあります。過去の事例として香緒理さんも、2年の今頃に寮に入ってきていますから、問題ありません。――あとは、雅楽乃。貴女次第です」
「本当に…っ……よろしいのですか?……お姉さま」

驚きと喜びと困惑…様々な感情が入り混じった表情を見せている二人だが、千早は殊更冷静に言葉を続けた。
……これは、決して諸手を挙げて喜べる解決方法では無いと思っているから。

「――雅楽乃、私は貴女に残酷な選択をさせようとしています……。おそらく、寮に入ってしまえば今以上にご家族との絆は薄れるでしょう………。寮に入るということは、その時点で『家を出る』ということと同じ意味を成します……………。それでも、イイのですね?」
「…………はい。私が選んだ道ですから。迷いはありません」

いつのまにか、雅楽乃の眼は涙で濡れていた。

――――強い娘だ。僕なんかよりもずっと……。

泣きながらも自分の想いを通す雅楽乃の姿を見て、千早も心を決めた。
824名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 02:20:36.55 ID:rKNkquCO0
「……わかりました。もう何も言いません……。あなたの返事を聞かせてくれるかしら?」

背筋を整え、千早の眼を見据えながら雅楽乃は答えた。

「………………私、哘 雅楽乃は、学生寮に入寮することを希望致します」

「よかったね……っ、うたちゃん」
隣に座っていた雪ちゃんも、同じようにぽろぽろと涙を零していた。
「はい…はい……、ありがとうございます。雪ちゃん、千早お姉さま」
思わず二人は抱き合った。
二人は抱き合いながら、泣きながら、楽しそうに笑っていた……。

これで本当に良かったのか?――その答えは未だ出せないけれども、抱き合う二人を見ていると、不思議と大丈夫だろうという気がしてくる千早だった。



/*****************  冬休み初日 聖應女学院学生寮 リビング *******************/

千早の思いのほか話は順調に進み、冬休みから雅楽乃が学生寮に入ることとなった。

「というワケでですね。本日より寮に入ることになりました。2年の雅楽乃ちゃんです」

長期休みなので、本来なら家に帰ったりする人もいるのだけど、初音が無理を言って、初日だけは皆が寮に居ることとなった。
現在、寮では全員集まって寮監から寮の規則など“挨拶”を聞いているところだ。
雅楽乃以外は皆知っていることだが、確認の意味を込めて、皆集まっている。

「それじゃ、もう皆知っているとは思いますが、軽くでいいので自己紹介をお願いね」
「2年の哘 雅楽乃です。本日より寮で暮らすことになりました。皆様、よろしくお願いします」

初音に促され、雅楽乃に向けて自己紹介をすることとなった。(全員の自己紹介は、省かせてもらいます。)
825名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 02:28:58.59 ID:rKNkquCO0
「それでは、皆の自己紹介も終わった事なので、早速だけれど雅楽乃ちゃんの『姉』を決めようと思うんだけれども…………」

語尾に行くほど声が弱くなっていく……。初音には何か、思う事もあるのだろう……
まぁ、どういった内容なのかは、千早も容易に想像がついた。

「あのね………個人的な意見なんだけれども……雅楽乃ちゃん『姉』は、もう千早ちゃんでいいんじゃないかなぁ………。他の皆は一応、『妹』がいることだし……」
「そうよね……。この中で一番仲がよさそうだもの」

香緒理も初音に同意した。

「ア、アタシは駄目だよ。何も教える事なんてできないし」
「薫子………なんて、ダメな子……」
「だ、だって仕方ないじゃない。今だって史ちゃんに教えてる事なんて一つもないのに、この上、雅楽乃さんに何か教えろって言われても、絶対にムリだもん!」
「まぁまぁ、薫子さん……。雅楽乃は、私が『姉』でいいのかしら?」
「はい」

年に見合った可愛い笑顔をする雅楽乃を見て、千早も仕方ないなと覚悟を決めた。
香緒理や初音さんが隣でニヤニヤ・ニコニコしているが、この際あえて無視させてもらおう。

「史も、それでいいわね?」
「……………………千早様が仰るのでしたら、史に異存はございません」

すっっっっごく不満そうではあるが、史もしぶしぶ了承した。

「それでは、改めて宜しくね。雅楽乃」
「はい!よろしくお願い致します。千早お姉さま」



これで、一先ず終わりと致します。
長々とお付き合いくださって、有難うございました
まだ続きがあるのですが、皆さんのご希望と私のモチベーションが持てば、作成しようかなと思っています
826名無しさん@初回限定:2013/02/17(日) 17:11:21.85 ID:yANx5cpu0
乙です。支援
827名無しさん@初回限定:2013/02/18(月) 00:17:38.03 ID:PSa8dHpj0
おー、いつの間にか2作品も投稿が。
作者さん乙です。
828名無しさん@初回限定:2013/02/19(火) 02:04:20.59 ID:azNFqt620
3つほどネタが浮かんだが、書けん
どうやったら、そこまでかけるようになるのかを知りたい……です
829名無しさん@初回限定:2013/02/19(火) 06:48:27.30 ID:wHPSBQeO0
とりあえず、ちょっとずつ書き進めていけば
そのうち完成に近づいてくるよ。
830名無しさん@初回限定:2013/02/19(火) 08:19:24.61 ID:azNFqt620
なるほど。まず一つを完成させることを目標に頑張ってみます
831名無しさん@初回限定:2013/02/19(火) 23:06:12.46 ID:GtYQuLSM0
セリフだけ先に作って、あとで肉付けしていくと
なんとか形になりますよ
832名無しさん@初回限定:2013/02/19(火) 23:33:10.85 ID:azNFqt620
なるほど
833名無しさん@初回限定:2013/02/20(水) 00:13:42.48 ID:mRWTPCZ70
            / )
            ./ / 
           / /_       
           / /`´`ヽ     
         ./ /.リ_ji」リi|    , -つ
         / /(|l゚ ヮ゚ノl| ./__ノ   私とお姉さまの肉欲に爛れた性活を
        /    \il|/ /       赤裸々に書き連ねればすぐにでも
        .|    へ/ /         出版できるレベルの作品になりますわ!
        |    レ'  /、二つ
        |     /   ||
       /   /    '´/ `´ ヾ
       /  /     ! ((リ从リ))
      /  /      ノリ(|;´-`ノl|、 
     / ノ       '《(({〓〓})》
   _/ /         `` /` ´|' '
  ノ /           `iテテ'
⊂ -
834名無しさん@初回限定:2013/02/20(水) 01:35:07.55 ID:ButosAd90
>>833
                     _
            _    ./ミ'´, ^^ヾヽ
          '´, `´`ヽ  |!l{ミ(リ从リ)〉i  うたちゃんいい加減にしましょうね
          i !リ_ji」リi|  リハリ#゚ ヮ゚ノリハ
           |i(|TヮTノl|/'((( 〉 (つ'ノリ))
          |li{〓〓}i」   ヾ </i_j   ,ソ
. (;;⌒);;⌒))=-ノリと//i_j〉      し'

と言っても>>825の続きには期待してるし、そこにエロ要素有っても別に問題ないがw
で、続きマダー?(・∀・)っ/凵⌒☆チンチン
835名無しさん@初回限定:2013/02/20(水) 08:45:11.07 ID:EzfIwvrs0
むしろ>>833のうたちゃんは陽向に引っ立てられるべきだったようなw

で、続きマダー?(・∀・)っ/凵⌒☆チンチン
836名無しさん@初回限定:2013/02/20(水) 23:20:59.81 ID:9iY5RpIJ0
>>834>>835
応援ありがとうございます。
正直、反響があるとは思ってなかったから、書き溜めてないんだ
もっと応援があればモチベーションも上がるだろう
837名無しさん@初回限定:2013/02/21(木) 00:02:00.05 ID:IGfjCMaG0
肉欲に爛れた赤裸々な話ならまかせろー!!(大嘘)
どうしたもんかと放置していた小ネタでも放出してみます。2+2本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『秘め事』

はぁはぁと、小さく吐息を漏らすその唇は間を置くことなくすぐに塞がれ。
熱く濡れた舌の絡み合うくぐもった水音が修身室に小さく響く。

「はぁ‥はぁ‥、お姉‥さまぁ‥。」
「ふふふっ。雪ちゃんはどうしてこんなに可愛いのかしらね。」

潤んだ瞳で千早を見上げる淡雪は頬を赤く染め、
すでに脱力しかけているのか、もたれかかるように千早にすがりつき。

「そんな熱い視線を向けられてしまいますと、私も我慢できなくなってしまいますよ。」
「あっ」

意地悪な笑みを浮かべたあと。
千早は、桃色に濡れた淡雪の唇をゆっくりついばみ、
唇が触れる度に小さく震える淡雪の身体の柔らかさを堪能する。

「ふはぁ‥」
「あらあら。雪ちゃんはもう限界かしら?」
「い‥‥いぇ‥、ま、まだ平気です‥」
「そう? それではもっと雪ちゃんを味わわせてもらいましょうか。」
「んぁっ!?」

そういって小さく舌なめずりをした千早の唇は妖艶な笑みを形作り。
再び、淡雪の口腔を蹂躙すべく、小さな水音を奏で始める。

***
838名無しさん@初回限定:2013/02/21(木) 00:08:09.60 ID:sMXFrobK0
意識を飛ばした淡雪をゆっくり畳に寝かせ、乱れた衣服を直してやり。
汗に濡れた額にかかる金髪をそっと整える千早の視線はどこまでも優しかった。

「ふふっ、本当に雪ちゃんは可愛いですねぇ。」
「んもぅ。雪ちゃんばっかりずるいです!」

そんな声とともに千早は背後から抱きしめられて。

「う、雅楽乃っ!?」

慌てて振り向いた瞬間に、
情欲を瞳に湛えた雅楽乃に無防備な唇を奪われる。

「んむっ!?」
「んふぅ‥。お姉さまぁ‥」

雅楽乃の情熱的な口づけに、先ほどまでの積極的な姿はどこへやら。
受け身になってしまいそうな千早はなんとか押しとどめようと

「待って‥、う、雅楽乃っ! って、ちょっ、そ、そこは!?」
「あら、お姉さま。ふふっ。すっかり準備万端ですね。」
「う、雅楽乃っ! ///」
「ふふっ。私におまかせくださいな。」

後輩の手練手管に見事なまでに押し切られていた。

「ちょっ‥と、う、雅楽乃、待って‥」
「あら。そんなに物欲しそうな目で見つめられてしまいますと、
839名無しさん@初回限定:2013/02/21(木) 00:16:22.14 ID:AiDMDupu0
雪ちゃん√かと思ったら、御前登場とはw
840 忍法帖【Lv=4,xxxP】(1+0:5) :2013/02/21(木) 10:11:06.62 ID:ClsnNTbF0
すごいですよね。こんな話、自分には書けません。
へたれなのか、ネタとして思いついても、まったく書けなくなるんですよね
841名無しさん@初回限定:2013/02/21(木) 22:39:11.14 ID:sMXFrobK0
-----------------------------------------------------------------------

「うわあ‥‥。///」
「は、破廉恥よっ! ///」

頬を染める初音の姿と、生徒会室に響き渡る沙世子の叫び。
予想通りの反応に苦笑いするしかないさくらであったが。

「ね、ねぇ。さくらちゃん。」
「は、はい?」
「‥‥続き‥ないんですか? ///」
「はい?」

食いついてきた初音に若干引き気味だったりする。

「購買のコピー機の忘れ物ですからねぇ。続きは無理ですよー。」
「えー。」
「は、初音っ!」
「だって、気になるじゃないですかー。///」

頬を染めながらも興味津々にA4用紙を読み直そうとする初音。

「だ、ダメよ! こんなふしだらなものは初音にはダメ!」
「えー。沙世ちゃん、意地悪ー」
「ダメったらダメなの!」

生徒会首脳たちはきゃいきゃい騒ぎながら、1枚の紙を奪い合っている。
842名無しさん@初回限定:2013/02/21(木) 22:44:29.47 ID:sMXFrobK0
「しかし、こんなものを誰が書いたのだ?」
「ぬっふっふ。ややぴょんも興味津々かー。お年頃じゃのう。」
「ち、ちがっ。違うぞ! 私はただ出所が気になっただけだ!」
「いいからいいから。照れなさんな。そうかー。ややぴょんもそんな年頃かー」
「ち、違うからな! というかその笑い方、やめろ! ついでにぴょんもやめろ!」

手下も手下で騒がしい。


そんなこんなでしばらく時が過ぎ。

「しかし、誰がこんなものを‥。」
「まぁ、学院生なことは間違いないでしょうねぇ。」
「わざわざコピーを取るということは、知り合いに配布とかしているんだろうか。」
「えぇ! 配布!?」
「初音、そこに反応しないの!」
「えー。でもでもー。」

残念そうな生徒会長を叱責する副会長。
必死に宥める会計に、面白げにそれらを見守る書記。

そんな感じで生徒会室が賑わっている頃。

一人のとある文芸部員は原稿用紙の紛失に気づき、
顔を青ざめ、冷や汗をかきまくっていた。

-----------------------------------------------------------------------
843名無しさん@初回限定:2013/02/22(金) 00:06:25.71 ID:CNxF6GEQ0
投稿乙です
844名無しさん@初回限定:2013/02/22(金) 08:17:20.07 ID:ekIBjFj70
そう持ってくるかw
陽向ェ…

投下乙です
845名無しさん@初回限定:2013/02/22(金) 21:44:47.57 ID:To2hJEgw0
乙〜
忘れ物の続きも読みたいw
846 忍法帖【Lv=5,xxxP】(1+0:5) :2013/02/23(土) 00:10:25.25 ID:HOK3spoV0
乙〜
847名無しさん@初回限定:2013/02/23(土) 07:08:00.43 ID:4B0IP+us0
>>840
手持ちのネタ帳数えてみたら玉石混淆40個くらいあった。
そのなかで、時々完成したのをぽつぽつ投稿するくらいだし
書けないときは書けない、でいいんじゃないかな?
848 忍法帖【Lv=5,xxxP】(1+0:5) :2013/02/23(土) 12:30:23.67 ID:HOK3spoV0
なるほど
849名無しさん@初回限定:2013/02/23(土) 17:53:32.43 ID:OvYcGgT30
>>841
>「‥‥続き‥ないんですか? ///」
>「はい?」

「はい?」が杉下右京の声で脳内再生されてしまった orz
850名無しさん@初回限定:2013/03/03(日) 22:34:52.51 ID:d2egu4T40
パタッと止まったな
851名無しさん@初回限定:2013/03/04(月) 07:20:03.11 ID:kihqKvmZ0
だって、なかなか完成しないんですもの。
852名無しさん@初回限定:2013/03/04(月) 22:00:03.55 ID:hohOmcvs0
>>851
頑張れ
853849:2013/03/06(水) 09:44:26.85 ID:onBbaloD0
千歳ルートを書こうと思っても途中で手が止まってしまう。

エロゲとかギャルゲとかほとんどやらないし、小中高ボッチだったからかなぁ
人と人に関わり合いがうまく書けない
854853:2013/03/08(金) 22:38:42.37 ID:OYWtf0860
コテが違った848だった
855名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 07:29:16.59 ID:wnJ51B/N0
鼻がむずむずする今日この頃ですが
ちーちゃん誕生日ネタでも貼ってみます。 3+3+4本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『再臨』

ちゅんちゅん。
日の出時刻も徐々に早まってきてはいるものの
まだまだ薄暗い、そんな3月の早朝。

まだ目覚ましの響きが鳴り響くにも早い
史の部屋の静謐な空気をそっと揺らしたのは、扉が開く微かな軋みであった。

「ふふふっ」

楽しげな笑みを思わずこぼしつつ。
その人影は寝息を立てる寝台の史に近づいていき。

「史〜。起きて〜♪」
「Zzz...」
「むぅー。」

ふてくされたのか、ぷにぷにと柔らかな頬を突ついていると
さすがに目覚めるよくできた侍女。

「‥‥ふぇ?」
「史、おはよっ!」
「は、はい、おはようござ‥!? ち、千早様?」
「残念でした〜。 千歳だよー」
「えっ‥。 ええぇっ‥!?」

史の目の前にあったのは、天真爛漫な笑顔を湛えた千歳であった。
856名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 07:36:12.35 ID:wnJ51B/N0
***

「気付いたらまた来れちゃった(てへぺろ)」という千歳の言葉に
思わず脱力したくなる史であったが。
「ちーちゃんの誕生日、私も祝ってあげたかったんだ。」
などと言われてしまうと、思わず涙ぐみそうにもなってしまい。

「史。あいかわらず泣き虫だねぇ。」
「ち、千歳様‥‥。」
いーこ、いーこと頭を撫でられてしまう史17歳。


主の前で寝間着姿のままなわけにはいかないと、
せっせと身支度を調えている史に、嬉しげな声がかけられた。

「そういえば、史」
「は、はい。なんでしょうか。千歳様。」
「おめでと!」
「はぃ‥?」
「ふふふっ。お姉ちゃんは知ってるのだ。ちーちゃんとお付き合いしてるんだよね?」
「あ、ありがとうございます‥。 ///」

しばらくは同衾していたりもしたのだが、風紀がどうこうと香織理にからかわれ
以前同様、別の部屋で暮らしている二人だったりする。
857名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 07:43:43.09 ID:wnJ51B/N0
「あのちっちゃな史が、ちーちゃんのお嫁さんになるなんてねぇ。(しみじみ)」
「ち、千歳様っ! まだそこまでは‥。///」
「だって、まさ路お婆さまに挨拶にいってたじゃない。」
「それもご存じなのですか!?」
「うん。 天国から見守ってるっていったでしょ!」
「は、はぁ‥。」

どんなもんだい!と自信たっぷりな千歳の表情。

「お風呂にちーちゃんとはいってるのも知ってるよー。」
「えっ!! ///」
「あれって赤ちゃんつくってるんだよね?」
「ちちち、千歳様‥‥。///」

どこまで注視しているのか、恐るべし姉の愛。

「ちーちゃんと史の赤ちゃんかー。可愛いんだろうなぁ。
 で、いつ赤ちゃんってできるの?
 あれ、赤ちゃんってコウノトリだっけ? 春キャベツだっけ?」

うーむ‥と腕を組み首をかしげるその姿。
彼女の性知識のゆがみを指摘&矯正できる人材はここにはいなかった‥。

-----------------------------------------------------------------------
朝はここまでー。 そいや書き忘れたけど史√です。
858名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 16:25:53.47 ID:PdOqDBD30
支援
859名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 20:45:40.04 ID:+IgPvxEy0
支援
860名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 23:07:41.83 ID:wnJ51B/N0
-----------------------------------------------------------------------

思いも寄らぬ早朝はそんな感じで過ぎ去って。
このまま部屋にいてもしかたがないと、食堂に向かった二人。

「史のいれてくれるお茶は美味しいねぇ〜。」

絶賛してくれる千歳の言葉に、史の頬も綻んでしまう。

「あ、おはようございますー。
 お休みなのに相変わらず早いですね。二人とも。」
「おはようございます。初音お姉さま。」
「初音ちゃん、おはよう!」
「え?」
「は、初音お姉さま! お茶はいかがいたしますか?」
「あ、そうですねぇ。お願いしちゃっていいかしら?」
「お任せください!」

千早からの聞き慣れぬ呼称に戸惑う初音に、慌ててフォローにはいる侍女。

「あ、そうだ。優雨ちゃんも起こしてあげようかな。」
「ちと‥千早様!?」「千早ちゃん!?」
「ちょっといってくるねー?」

その後は。
なかなか戻ってこない千歳を心配した史が様子を見に行くと
なぜか優雨のベッドで二人仲良く、すやすやと二度寝に突入している姿があったり。
いつもより懐いているのか腰にしがみつく優雨の姿や、
なんとも嬉しそうに優雨の髪を撫でる千歳の姿があったり。
861名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 23:15:02.09 ID:wnJ51B/N0
いつもと違う千早の振る舞いに戸惑いつつも、
「千早ちゃんに優雨ちゃん取られたー」と
思わず嘆く初音の姿があったりするわけで。

そのあとも、陽向や香織理のいぶかしげな視線を一切気にすることもなく
威勢よく優雨と一緒に薫子を叩き起こしにいったり、
その数分後に「ひゃあぁぁぁぁ〜!」などと薫子の奇声が寮内に響き渡ったりして。

「お、おはようございます‥。」
「薫子、なにがあったの?」
「いや、なんでもありません‥。」

朝から妙に疲労困憊している風な薫子も必死にフォローに動くなか。
にこにこと楽しそうな笑みを浮かべ自由きままに活動する千歳の後ろ姿に、
今日一日の苦労を想像し、頭を抱える史であった。

***
862名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 23:24:35.31 ID:Me383UDZ0
支援
863名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 23:24:48.25 ID:wnJ51B/N0
そんなこんなで。
初音、香織理、陽向の不審げな視線に晒されながらも。

 午前中は優雨の部屋に籠もりっきりで
 いろいろ自由闊達な意見交換でもしていたのか、
 昼食な時間には、満足げな笑顔を振りまく千歳と優雨があり。

 午後は薫子と一緒に散歩にでかけていたようで
 戻った頃には体力的にへとへとになりながらも嬉しげな千歳と
 精神的にへとへとになったような薫子の姿が玄関で目撃され。

 夕食時、寮生一同が誕生日を祝ってくれることに感激し
 思わずうれし涙を流している姿をに驚いている一同。
 渡すプレゼントに「ありがとう!」と返す千歳の笑顔に、
 なぜかみんな揃って頬を染めたりもして。

久しぶりの下界(?)を満喫&堪能しているご様子の千歳に
否が応でも翻弄されまくる寮生たちではあったけれど
3/12の宴は楽しげな声とともに過ぎていくのでした。

-----------------------------------------------------------------------
864名無しさん@初回限定:2013/03/12(火) 23:26:35.93 ID:PdOqDBD30
支援
865名無しさん@初回限定:2013/03/13(水) 07:27:44.95 ID:jGqKW3PQ0
-----------------------------------------------------------------------

ちゅんちゅん。
そろそろ日の出も過ぎた頃合いか、
ようやく空も薄明に染まりゆく、そんな3月の早朝。

「うぅ‥。」

静かな室内にうめき声が一つ。

(風邪でも引いたかな‥。すごく身体が重い‥。)

初夏にも何度か経験済みだったりするが
季節柄もあり、さすがにそうそう原因に思い当たるわけもなく。

(今日は誕生日か‥。史とゆっくり過ごそうかと思ってたんだけど
 下手をすると看病される一日に‥。うぅ、それはさすがに避けたいような‥)

相思相愛となった主従な二人。
記念日ちっくなイベントは大事にしたかったりする。
などと、だるい身体で取り留めもないことを考えていると。

こんこん。
ノックの音がした。

「はい‥」
「千早様、起きていらっしゃいますか?」
「あぁ、史。おはよう。今日は早いね?」
「おはようございます。千早様。体調の方はいかがでしょうか?」

(さすが史‥。季節の変わり目とかで僕の体調の悪さに気付いていたのかな‥?)
866名無しさん@初回限定:2013/03/13(水) 07:34:43.97 ID:jGqKW3PQ0
「うん、今朝はなんかだるくて。風邪でも引いたかも。」
「さようですか。」
「‥‥え?」

つきあい始めの初々しい時期。
そんな淡泊な応対に、それだけ?と嘆きたくなるのはしょうがない。
なのに、史は淡々と身支度を調える準備を進めていたりする。

「あの‥、史?」
「そういえば、千早様。」
「え? あ、うん。 なに?」
「今日は3/13になります。」
「‥‥へ?」

なにを言われているのかわからない。
そんな千早に、淡々と説明を始める史。

「ま、まさか‥」
「そうおっしゃるだろうとは思っていましたが、
 千歳様からの伝言をお預かりしています。」
「伝言‥?」
「はい。」

手渡されたのは千早の携帯。
もしや‥と想い、動画一覧を確認すると昨日の日付のムービーが。

『これで、映ってるの?
 へえぇ。ちっちゃいのにすごいんだねー。

 えーと。千歳でーす。
 なぜかは知らないけれど、またきちゃいました。
867名無しさん@初回限定:2013/03/13(水) 07:40:15.34 ID:jGqKW3PQ0
 本当はちーちゃんのお誕生日を祝ってあげたかったんだけど、
 今日一日、みんなにお祝いしてもらっちゃいました。
 ほんとはちーちゃんが祝ってもらうはずなのに、
 とっちゃったようでごめんなさい。

 でも。みんなに祝ってもらって。
 誕生日おめでとうといってもらって。すごい嬉しかった!
 プレゼントもいっぱいもらっちゃった。
 机の上に置いてあるから、あとで見といてね!

 優雨ちゃんともいろいろお話できたし。
 薫子ちゃんには外を案内してもらっちゃったし。
 ちーちゃんの一日をとっちゃってごめんなさいって、さっき言ったけど
 ちーちゃんにもらったこの一日は本当に楽しかったです。ありがとう!

 あとは‥、そうだ。史のこと。おめでとう!
 史は泣き虫だから、ちーちゃんがちゃんと守ってあげないとダメなんだからね!
 でもまぁ、ちーちゃんと史となら平気だよねー。赤ちゃんも楽しみにしてるから!
 赤ちゃん産まれたらまた見にきたいなー。またこれるかなぁ?

 うーん。
 話したいことはいっぱいあるけど。
 そろそろ眠くなってきたし、このくらいかなぁ。

 んじゃ、最後に。
 ちーちゃん、誕生日おめでとう! 史のことよろしくね!
 もちろん、史もちーちゃんのことよろしくね!
 私は二人のことをずーっと見守っているから!』
868名無しさん@初回限定:2013/03/13(水) 08:27:48.26 ID:jGqKW3PQ0
そういって小さな液晶の中で
満面の笑みを浮かべる千歳の笑顔をみて。

「ありがとうございます。
 そして、誕生日おめでとうございます。千歳さん。」

涙が溢れて止まらない千早は、微笑みを返しながら静かに呟いた。

***

「で‥‥。赤ちゃんってなんのこと‥?」
「なんでも天国からすべて見てるそうです‥。」
「えぇぇぇぇっ!?」

衝撃的なその一言を聞いてしまった千早は、
いろいろ自制せねば?と一瞬考えたものの。
将来ずっと節制するなんてありえない、と気づき。

「まぁ‥‥。そういうことであれば。
 史と仲良くしている姿を見てもらうしかないかな。」

そういって史の頬に軽くキスをして。
突然のことに頬を染め、こわばる史の肩をそっと抱きながら
天井めがけて微笑み小さく手を振ることにした。

-----------------------------------------------------------------------
とりゃえず、こんな感じでー。
869名無しさん@初回限定:2013/03/13(水) 09:24:17.85 ID:6FAdoh1i0
870名無しさん@初回限定:2013/03/13(水) 22:29:06.15 ID:6/dpsEnn0
871!ninjya:2013/03/26(火) 22:52:30.95 ID:TtZ7pcry0
ほしゅ
872名無しさん@初回限定:2013/03/27(水) 23:47:38.79 ID:7itysDQH0
SSよみたいなー
873名無しさん@初回限定:2013/03/28(木) 00:15:47.87 ID:rMqrOz3g0
過疎っていると誰もいないのかなーと思うので
読みたい人がいてくれるほうが、多少なりとも書く気がおきるものですが。
問題は書く気があってもなかなか書き上がらないことなのだ。。。
874名無しさん@初回限定:2013/03/28(木) 01:36:39.19 ID:NsarQPEe0
待ってるから早く投下をw
875名無しさん@初回限定:2013/03/29(金) 22:44:30.80 ID:9w9YFjBd0
>>873
同じく
825で続きあるとか吹いてしまったけど、モチベーション上がらず……
876 忍法帖【Lv=11,xxxPT】(1+0:5) :2013/03/31(日) 00:15:56.39 ID:BlobBEPm0
とりあえず、ほぼ毎日確認してる
877名無しさん@初回限定:2013/04/01(月) 23:20:37.68 ID:UfRaIS810
で、今年のエイプリルフールネタはいつ投稿されるん?
878名無しさん@初回限定:2013/04/03(水) 07:40:33.78 ID:0NrPr0/m0
いやっほぅ。1本書き上がった気がする。近いうちに貼っちゃいますぜ。
879名無しさん@初回限定:2013/04/03(水) 10:33:38.90 ID:49GvrmVy0
>>878
全裸待機で期待しています
880名無しさん@初回限定:2013/04/03(水) 23:43:33.90 ID:JU15CByd0
いい加減風邪引きそうなんだが…
881名無しさん@初回限定:2013/04/04(木) 06:44:46.54 ID:3NaFPzly0
昨夜は帰りが遅かったんだ‥。すまぬ。
朝は規制あるので、4+4本くらいに分割するかもしれません。
-----------------------------------------------------------------------
『冬の味覚』

うららかな初冬のお昼時。
のんびりと食後のお茶を堪能している寮生一同の耳に
ピンポ〜ンと軽やかなチャイムが聞こえてきた。

「はいは〜い。」

相変わらず率先して対応する初音。
玄関に向かって数分後。

「薫子ちゃーん。ご実家からお荷物届いてますよー。」
「はぇ? あたし!?」

薫子を呼ぶ声がした。

***
882名無しさん@初回限定:2013/04/04(木) 06:59:09.92 ID:3NaFPzly0
そのまま食堂に持ってきてくれればいいものを‥などと思いながらも
玄関に赴いた薫子が目にしたモノは、大きな発泡スチロール箱。

「なによこれ‥」

確かに送り先は実家からだが、あいにく品名には何も書いていない。

「薫子お姉様。これを。」
「あ、史ちゃん、ありがと。っていうかみんないつの間に‥。」

差し出されたカッターを素直に受け取った薫子は、
寮生一同が興味深げにのぞき込んでいるのにようやく気づく。

「この時期にクール宅配便となると‥カニかしら?」
「牡蠣とかかもしれませんねー。」
「いやいや。ここはあえてアンコウ丸ごと1匹とか!」
「えぇと、さすがに素人にはアンコウはそうそう捌けませんから‥。」

そんな周囲を気にせずに、史と二人で黙々と開封にいそしむ薫子が、
ぱかりと開けた箱には、ぎっしり詰まったおがくずが。

「これは‥?」
「カニでしょうかね‥。」

率先しておがくずに手を突っ込み、掻き分け掻き分け。
よいしょと持ち上げた千早の手には、なんとも立派なタラバガニ。

「「おぉ〜。」」
883名無しさん@初回限定:2013/04/04(木) 07:16:53.49 ID:3NaFPzly0
上がる感嘆の声。
数分後、蓋の上には立派なタラバが3杯鎮座ましまし。
せっせとおがくずを片付けに動く史と、おそるおそるカニを突つく優雨。

「さて。どうしましょうか、薫子さん。」
「えぇっ。あたしにそんなこと聞かれても‥」
「そういわれても、薫子さん宛の品物ですし。」
「千早にまかせるっ! 美味しく料理してくれればいいから!」

丸投げも甚だしい薫子の発言に苦笑する千早。

「で、どうするの?」
「そうですねぇ。1杯は焼いて、2杯は茹でてみるのはどうでしょうか。
 何本かは寮母さんにお渡ししてもいいかと思いますし。」
「おぉー。豪勢ですねぇ。」
「とりあえず‥塩加減とかもわかりませんのでちょっと調べてからになりますけど。」
「あら、千早でもわからないの?」
「さすがに私もタラバガニを捌いたことはありませんから‥。」
「香織理お姉様。タラバガニは普通は茹でてあと、冷凍された形で流通されていたはずです。」
「ふぅん。それは知らなかったわね。」
「確か、タラバのカニ味噌は食さなかったかと思いますし、可食部は脚がメインになっていたかと。」
「そうなんだ‥。こんなにおおきいのに‥。」
「なにはともあれ、夕食はカニですね! カニ!」
「いやぁ。カニなんて久々〜♪」

そんな感じに盛り上がるのを尻目に、その横ではなにか密談が。

「ねぇ、史ちゃん。ちょっと相談があるんだけど。」
「はい? なんでしょうか。香織理お姉さま。」

***
884名無しさん@初回限定:2013/04/04(木) 08:10:39.95 ID:3NaFPzly0
そのあとは。
ネットで軽く調べ物をすませた千早と史が下ごしらえ、捌き、調理等を淡々とこなし。
日も暮れかけるころに、茹でタラバ16本、焼きタラバ8本が完成した。

「一応ポン酢も用意してありますが、ここは塩でもいいかもしれません。」
「実家にいたころはマヨネーズもありだったかなー。」
「えぇぇ! 薫子お姉さま! それはタラバに対して侮辱ですよ!」
「えー。結構いけるんだってー。」「マジですか!?」「ほんとほんと。」

食卓には寮母さんの分を取り分けた茹で12本、焼き6本。
あとはサラダを用意して。

「カ ニ だ!」
「蟹〜♪ 蟹〜♪」

浮かれる薫子と陽向をなんとか落ち着かせて、食前のお祈りを。

こうして、蟹との格闘が始まった。

-----------------------------------------------------------------------
2,3ヶ月前に書き上げたかった季節感台無しな日常編。
続きは今夜か明日にでも?
885名無しさん@初回限定:2013/04/04(木) 21:52:52.62 ID:ISR00kzP0
支援
886名無しさん@初回限定:2013/04/05(金) 00:04:18.96 ID:sz4cqHeR0
支援
887名無しさん@初回限定:2013/04/05(金) 06:39:36.01 ID:Q+GMzYnh0
「はい。優雨。最初はポン酢がいいかしらね?」
「ちはや。ありがとう。」

かいがいしく優雨の世話をする千早。
まぁ、優雨の手では、殻にハサミをいれることも
うまく身を取り出すのも難しかろう。

「どうかしら?」
「うん‥。おいしい‥‥。」(にっこり)
「そう? それはよかったわ。」(にっこり)

テーブルの一角では、こんな空気がほんわかと漂っている。


「香織理お姉さま。どうぞ。」
「史ちゃん、ありがとう。」

なぜか香織理のために身をほぐす史。
それをさも当然かのように受ける香織理。

「えー。なんで香織理さんばっかりー。」
「なによ、薫子。不満でもあるの?
 でも諦めてちょうだいね。今夕は史ちゃんは私専属だから。」
「なにそれ‥?」
「千早様にも了承は得ていますし、さきほど専属契約を結んでおりますので。」
「そうなの。ちゃんと秘蔵のハーブティセットを報酬として前払いしているし。
 第三者に文句は言わせないわよ。」
「ずーるーいー」
「はいはい。薫子はおとなしく、自分の分を食べていなさいって。」

こちらは無駄に騒がしい。
888名無しさん@初回限定:2013/04/05(金) 06:49:41.66 ID:Q+GMzYnh0
「というかですね‥。
 蟹を食べているのに会話があるのはどうかと‥。」
「陽向ちゃん。それがどうかした?」
「いえー。なんというか。
 蟹はもっとストイックに、真摯に臨むべきではないかとか。」
「えー。みんなで食べた方が美味しいって」
「いえ、まぁ、それを否定する気も持論を押しつける気もないんですけれどもね。
 なんというか、文化の違いをひしひしと感じてしまうといいましょうか。」
「ふぅん。陽向は蟹については一家言でもあるのかしら?」
「そ、そういう訳でもないんですけれども。
 我が家では蟹とはそういう代物だったんですよぉ。」

なぜか一人語りが始まったりもして。

***
889名無しさん@初回限定:2013/04/05(金) 07:01:50.15 ID:Q+GMzYnh0
「で、なにしてるの? 初音」
「え? い、いえ、なんでもないですよ?」
「というか、さっきから何もしてないわよね。」
「あー。さては初音。カニが怖いとか‥?」
「うぅぅ。だってだって。なんかトゲとか毛が生えててますし‥」

そういって。
おそるおそる皿の上のカニ脚をつんつんと突つく初音。

「まぁ、うぶでねんねな初音にはちょっと厳しいのかもしれないけど。
 手を動かさないと、いつになってもカニを食べれないわよ?」
「香織理さんは手を動かしてないじゃない。」
「だから専属契約といってるでしょう。」(ふふり)

「薫子ちゃ〜ん。 ><」
「えぇぇ!? あたし!? ちょっと、千早!」

泣き付かれた初音の対処に困った薫子は、頼りになる相棒に

「どう? 優雨」
「うん。お塩で食べてもおいしい。」
「そう。よかったわね。」
「千早も食べる?」
「あら、ありがとう。でも優雨も食べないと。」
「だいじょぶ。 はい。ちはや。」
「ありがとう。優雨。うん。美味しいわね。」(にっこり)
「うん。」(にっこり)

ほんわか空間に阻まれる。
890名無しさん@初回限定:2013/04/05(金) 07:24:07.79 ID:Q+GMzYnh0
「うぅぅぅ。薫子ちゃ〜〜ん。 ><」
「わかった、わかったわよ! あたしがやればいいんでしょ!」

涙目の親友。母娘の絆。短期専属主従。寡黙なソロ戦闘。
頼りにならない寮生一同の姿を見回して。

(なんであたしが‥‥)

なんだか一人だけ貧乏くじを引いている気がする薫子だった。

-----------------------------------------------------------------------
891名無しさん@初回限定:2013/04/06(土) 09:54:59.38 ID:KXjOPKP+0
遅ればせながら乙。
初音だと確かに触れんかもね、最近剥き身の方しか売れないし。
いつもpixivにもあげてくれてありがとう。
892名無しさん@初回限定:2013/04/08(月) 07:07:35.57 ID:98EJBdNP0
pixivのほうもみてくれているとは感謝。
あそこは物置なんだけど、過去のを振り返りやすくて便利。
たまに続き書きたくなったりもするし。
893名無しさん@初回限定:2013/04/13(土) 16:49:43.61 ID:bvOej5NV0
皆様乙です。
去年の9月からずっと規制されていて、最悪1年規制とかで
SS執筆する気もなくなる状態ですが、少しずつ仕上げてます。
皆様も頑張ってください。
894 忍法帖【Lv=12,xxxPT】(1+0:5) :2013/04/21(日) 14:12:41.28 ID:V9gareCW0
ようやく規制解除だ−!
SS少し書いてみたけど、それ以降進んでいない・・・・・
895名無しさん@初回限定:2013/05/01(水) 06:21:58.80 ID:vrsmOejh0
規制解除されたー?
なんかちょっと嬉しいので、景気づけに短編でも。
-----------------------------------------------------------------------
『早起き』

画鋲事件の解決直後。

「ねえ千早、聖さんに謝らせなくてよかったの?」
「確かにそれも考えましたけれど、事故だと思っている聖さんに
 わざわざ嫌がらせがあったことを知らせることも」
「あ、そうか‥」

それには気付かなかった‥と苦い表情を見せる薫子さん。

「それに。」

くすりと笑いを添えて。

「あんなに初々しい聖さんと茉清さんはなかなか見られません。
 そこに水を差すのは、もったいないと思いませんか?」
「悪役か、あんたは‥」
「あら。薫子さんにはご理解いただけないのですか。残念です。」

そんな会話をとりとめもなく交わしていたときに
教室の扉がカラリと軽い音を立てて開いた。

「おはようございます。
 なにか楽しいことでもありました?

 というか、なんで薫子さんがこんな時間に!?」

驚愕の表情なこより。
896名無しさん@初回限定:2013/05/01(水) 06:37:44.76 ID:vrsmOejh0
「それってひどくないっ!?」
「だってだって、まだこんな時間ですよ?
 あぁもう。 天気予報信じて傘持ってこなかったじゃないですか。」
「ちょっと!! こよりさん!!」

「ふふっ。
 こよりさんもそのあたりで勘弁してあげてくださいな。
 薫子さんもたまにはそういう日もあるんですよ。きっと。」
「いやいや。千早さん。奇跡は起きないから奇跡って言うんですよ?」
「なんであたしが早起きしてるだけで、そんな大事になってるのよー!!」

そこまでいうっ!?と憤慨する薫子。

「もー。みんなしてあたしをからかうんだからー」
「さすが薫子さん。みんなの人気者ですね。」
「そんな人気、いらなーい!」

こよりも荷物を一旦自席において、再び雑談に参加して。
きゃいきゃいと会話を交わしていると、クラスメイトが続々と登校してくる。

「おはようございます。って、えっ、薫子さんがなぜ?」
「おはようございますー。あれ、薫子さんがいらっしゃいます‥。
 もしや時計が狂って‥‥いないようですねぇ?」
「ごきげんよう。あら? 騎士の君‥?」

「だーかーらー。なんでそんなに驚かれないといけないのよ!」
「日頃の行い?」
「ひどっ!」
「薫子さん。自分の胸に手を当てて、よくよく思い返してみましょうよ。」
「そ、そんなにいつもぎりぎりじゃないよっ!」
「えぇ。寮生一同が苦労して、毎朝薫子さんを起こしていますから。」
897名無しさん@初回限定:2013/05/01(水) 07:04:58.86 ID:vrsmOejh0
「千早さん、平気ですか? 時々は私も寮にお邪魔して、
 薫子さんを起こすのを手伝ったほうがよいですか?」
「それなら、私も付き合おうかな」
「いえいえ。聖さんや茉清さんの手をそこまで煩わせるわけにはいきませんから。」
「じゃあ、当番制というのはどうでしょう。」

こよりさんが迂闊な発言をしたせいで。

「騎士の君の寝顔を拝見できるんですって!?」
「これは参加しないわけにはいきませんね。」
「とりあえず、明日は聖さんと茉清さんでしょうか?
 なら私は明後日、早起き頑張ります!」
「明後日、私もご一緒させてください!」
「それなら私は来週月曜日で!」

わいわいきゃーきゃー盛り上がるクラスメイト。

「ちょっと!! なんでそんなに乗り気なのよ!?
 というか、いろいろおかしいから!」
「さすが薫子さん。皆さんから愛されていますねぇ。」
「違うから! いろいろ間違ってるから!」

そんな騒動は朝のHRが始まるまで続き。クラス一同にいぢられまくった結果、
見事に拗ねてしまった薫子のご機嫌を復活させるのには放課後までかかったという。

***
898名無しさん@初回限定:2013/05/01(水) 07:26:27.09 ID:OJjpnR4E0
GJ!
899名無しさん@初回限定:2013/05/01(水) 07:29:02.66 ID:vrsmOejh0
翌日。

(へぇ。これが薫子さんの部屋か)
(思ったより片付いていますねぇ)
(あぁ、それは史が時々整理していますから)
(妹というのは、そこまでするものなんですか?)
(いえ、どちらかといえば史の趣味といってもいいでしょうか)

(あ、目覚ましが1つ鳴りましたよ)
(うーん。ぴくりとも反応がないな‥)
(ふふっ。薫子ちゃんはいつもこんな感じですよ)
(あ、初音会長、おはようございます)
(おはようございます)

(あなたたち、この騒音の中でよく暢気に挨拶なんかしてるわね‥)
(あら、香織理さんも様子見ですか?)
(こんな面白そうなイベント、見逃すわけにはいかないじゃない)
(あ、2個目の目覚ましが)

(さすがにこれだけの目覚ましが鳴るとすごい音だな)
(というか、薫子さん、本当に起きませんね‥)
(それでは、そろそろ聖さんと茉清さんにお願いしてもよいですか?)
(はい! おまかせください!)
(それでは、私たちは外にでていましょうか)
(そうね。あとはお二方におまかせしましょう)
(では、後ほど食堂で)
(はい!)

数分後、史のいれた紅茶を味わっていた一同の耳に
なにをされたのやら、薫子の叫び声が響き渡ってきたという。

-----------------------------------------------------------------------
900名無しさん@初回限定:2013/05/01(水) 19:04:33.78 ID:B2QzXa8B0
支援
901名無しさん@初回限定:2013/05/01(水) 21:22:20.63 ID:MyO1kSBE0
乙!
うん、面白かったwww

作中でも、目覚ましの音で殺気が(ry
とか香織理さんが言ってたくらいだし、光景が目に浮かぶwww
902 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:5) :2013/05/08(水) 09:28:26.96 ID:pRxF6Uzv0
乙でした。
規制に悩まされて1年以上・・・
後でテストを兼ねて短いSSでも投下してみようかな。。。
903新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/14(火) 20:46:36.32 ID:Tcz9Vyie0
これよりテストを兼ねて投稿してみます。
かなり短めの物ですが、無事投稿できれば以前投稿しっぱなしのものを完結させます。

---------------------------------------------------------------------------------------
「(思ったよりも時間が余っちゃったな・・・)」
「とりあえず、あそこで休憩を兼ねてお茶しようかな・・・」
腕時計を見ながら薫子はふと目に留まった喫茶店に足へ運ぶ。
メニューが書かれた看板を眺め、ふと店内へ目を向けると見覚えのある姿が。
「(あれ、千早?)」
銀の流れるような髪、まるで天使の様な美しい容姿を持つ彼女、
だが、その正体は「男」なのだが、どうみてもそうは見えない。
誰かと談笑中のようで時より見せる顔はとても・・・可愛い。
「(誰と話してるのかな・・・)」
相手が気になる薫子は話し相手を見ようとすると別な窓から中の様子を窺う。
「えっ、何で順一さん??」
思わず声が出てしまい、急ぎ周囲を見るが誰も居なかった。
龍造寺順一、あの千早を一瞬で「男」と見破った、薫子のボーディーガード。
学院では流石の彼も警護することが出来ない訳で。
そこで、千早の秘密にする代わりに順一に代わって薫子を護る。
そのような約束を交わされた晩の事を薫子は思い出していた。
904新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/14(火) 21:00:57.85 ID:Tcz9Vyie0
「(定期的に順一さんに報告しているって云っていたけど、何を話しているんだろう・・・)」
気になる薫子は店に入り、談笑中の二人から見えない位置の席に座り、聞き耳を立てる。
「ほぅ、あのお嬢がねぇ〜」
「ええ、最初は見ていられなかったのですが、段々と手つきが良くなってきましたよ。」
「しかし、全く想像できねぇな〜」
「(一体何の話だろう??)」
「まぁ、最後は砂糖と塩を間違えてとても・・・凄い味になったというオチですけどね。」
「ははは、全くお嬢らしい話だ。」
「(ちょっと、失敗話までしなくていいじゃないさー!!)」
「でも、暫くすると上達しますよ、薫子さんは。」
「ほう、千早が云うんだから、それは確かの様だな。」
「(ち、千早・・・)」
ポッと顔を赤くした薫子は咄嗟にテーブルに置いてあるメニューで顔を隠した。
「しかし、あれだな。お前さんは結構料理をするのか?」
「えぇ、趣味の一つですからそれなりには。」
「以前、お嬢が美味いって云っていたから、気になってはいたんだが・・・一度食ってみたい」
905新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/14(火) 21:25:30.08 ID:Tcz9Vyie0
「まぁ、機会があれば作らないことは無いですけど・・・って何赤くなってるいるのですか!!」
「いや、お前さんのエプロン姿をだな・・・想像していた。」
「本当にそれだけですか?」
「・・・・・・いや」
「何を想像したのですか??」
「(うわ、何このシチューエーション??)」
「これはその、何だ。い、云えねぇ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「(う〜、ここからじゃ二人の表情が判らない・・・)」
「え〜と、その・・・、千早」
「何ですか?」
「お前さん、好きな人は居るのか??」
「ゴホッ、一体何故そんなことを今聞くんですか!!」
「いや、何だ、ちょっと気になっただけだ。もしかしてお嬢に惚れたか?」
「いえ、薫子さんは友人として好きですよ。ただそれだけのことです。」
906新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/14(火) 21:42:35.94 ID:Tcz9Vyie0
「そうか、なら良かった。」
「どう意味です?」
「実はな、千早、お前が好きだ。」
「えっ、ちょっと何を云っているんですか!!」
「(えー!!!)」
「いや、実はお前に押し倒された時から・・・」
「押し倒してないでしょ!!、あれは正当防衛ですから!!」
「要はその時から惚れたと云う訳だ。」
「あの・・・私は・・・その・・・あれですよ・・・」
「いや、男だろうと関係ない!!」
「ちょ、ちょっと声が大きいですって、いや、そういう事じゃなくて・・・」
「(!!!)」
「もうこの想いは押えられねぇ、千早、俺と共に人生を歩もう」
順一は千早の手をとり、突如告白を始める。
「じゅ、順一さん・・・」
何故か彼を見つめる千早、その顔は赤くなっている。
907新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/14(火) 21:55:07.53 ID:Tcz9Vyie0
「ちょっと、二人とも!!一体何の話をしてるのさ。」
ひそかに近づきつつあった薫子はこれ以上は見ていられないと思い、
二人の間に割って入ろうとしたが、床に落ちていた紙ナプキンらしきものに足を取られ・・・
ガターンっと豪快に背中から床に衝突、周りの景色が歪み、訳の判らない朦朧とした意識の中、
千早の声が聞こえてくる。
「・・・さん、薫子さん、大丈夫ですか??薫子さん!」

何故か重たい目蓋を開くと・・・そこは見慣れた寮の・・・自分の部屋だった。
そして、心配そうな顔をして覗き込む千早の姿を認識すると、
「ぎゃぁあああああああああーーー!! 」
自分でも何故か判らないが大声が出てしまい、そして先ほどの記憶が蘇る。
「えっと、その大丈夫ですか、薫子さん。かなり魘されていましたが・・・」
「ち、ちはやのフケツーー!!!」
バシンッと千早の顔に薫子の平手がヒット。
「いたっ!、えっと、一体何の話ですか??」
「何の話って、順一さんと・・・その・・・手を取り合って・・・ってあれ??」
908名無しさん@初回限定:2013/05/15(水) 05:34:57.18 ID:PLKoYJCi0
支援
909名無しさん@初回限定:2013/05/20(月) 02:01:05.82 ID:thpaKKTL0
こんな所で中断したままって…続きwktk
910新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/25(土) 23:07:18.54 ID:wNXg6zgz0
「ちょっと一体何の騒ぎ?史ちゃんが・・・って、お邪魔だったかしら?」
「香織理さん、ちょうど良いところに。まだ薫子さんの目が覚めていないようで。。。」
「薫子ちゃん、朝ですよ〜」
「朝・・・って、じゃあ今までのは夢だったの??」
「薫子。。。あなたって子は。。。」
「薫子お姉さま、お目覚めになられましたでしょうか?」
呆れる香織理の後ろに史が、心配そうに薫子の様子を伺う。
「おっかしいなぁ、目覚時計が鳴って、起きて、買い物に行った記憶があるんだけど。」
「確かに薫子お姉さまは、目覚まし時計を破かぃ・・・いえ、お止めになられたのですが・・・」
「(破壊!?)」
気になる言葉を聞いた千早は枕元に目を向けるとそこには目覚まし時計・・・の残骸があった。
「止めた後は??」
「そのまま深い眠りへ、何度もお呼びしたのですが、史の力不足でした。」
「それにしても、薫子ちゃんがここまで起きないのも珍しいですね。夜更かしでもしていたのですか?」
「あー、そう云えば陽向ちゃんから借りていた小説を読んでいたら・・・気づいたら夜中になっててさ。」
「なるほど、そう云えばあの子が昨日に何冊か薫子に貸していたわね。」
911新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/25(土) 23:19:19.29 ID:wNXg6zgz0
「最初はよく解らなかったけどさ、何か続きが気になって、気づけば・・・と云う感じなんだよね。」
「それはどのような内容なのですか?」
「陽向ちゃんの話によると、推理小説で・・・第何次だっけ、世界大戦後のヨーロッパが舞台で」
「あ、私も読んだ事があります。ただ、夜に読むことが多くて、中々ページが進まなくて、まだ1冊も読んでないんですよね。。。」
「初音は夜に弱いから、朝読んだら?て云った事があったわね。」
「えぇ、出来れば早い時間に読みたいですけど、朝や昼間は生徒会のお仕事を片付けることが多いので、中々読む時間が・・・」
「でもさ、ヨーロッパの文字も出て来なかったんだよね、この小説。」
「えっ?その本のタイトルは何なのですか?」
「えーと、カバーがしてあったから見て無かったわ。」
「ああ、薫子お姉さま、お貸しした本、読んでしまわれましたか??」
慌てた陽向が薫子の部屋に飛び込んできた。
「うん、半分までは進んだかな。よく解らないんだけど、これって男の友情もの??」
「すみません、薫子お姉さま。間違えてしまってBL本をお渡ししてしまって、此方が本来お渡しする本です!」
「びーる本??」
「いえ、気にしないで下さい!では、これにて失礼します!っていたたたた、痛いです!香織理お姉さま!!」
「陽向、貴方は一体何の本を薫子に貸したのかしら??」
912新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/26(日) 00:13:57.52 ID:njqjpHVQ0
「いえ、決して怪しいものではなく、その世界の取材を兼ねて入手した本と云いますか。。。」
「ちょっと見せなさい!」
香織理が強引に陽向の手からカバーの掛かった本を取り、カバーを剥がすと・・・
「何、これ・・・」
「えっと、男の方同士が・・・その・・・抱き合っていますね。」
「??」
呆れる香織理、顔が赤くなる初音、??が浮かぶ薫子、反応は様々である。
「あー、それで順一さんと千早が・・・な訳か。」
と一人で納得する薫子。
「だから、一体何の話なのですか?」
「順一さんって、薫子お姉さまの彼氏さんですか?」
「ち、違うわよ!順一さんはその。。。兄貴みたいなものかな。」
「それで、その順一さん千早お姉さまの組み合わせがその本と何か関係あるのですか?」
「えっ、それはその・・・」
「なるほどね。」
「そう云うことなのですね。」
913新参者 ◆YxHxmvro0I :2013/05/26(日) 00:27:53.20 ID:njqjpHVQ0
何と説明してよいか困惑する薫子、納得する香織理と初音。
「えっ??」
ただ一人だけ何が起きているのか理解できない千早。
「千早様、これは・・・・・・と推察されます。」
史が千早に小声で簡単な解説を耳打ちする。
「薫子さん、後でお話があります。」
「ち、千早、怖い・・・」
千早に笑っていない笑顔で云われると、より一層恐怖を感じる薫子であった。

---------------------------------------------------------------------------------------

放置期間が長くなってしまい、申し訳御座いません。
連投規制で怒られてから、支援待ちでしたが、支援後、投稿しようとしたら、何故かエラー。
Cookieを削除したら、今度は忍法帖が・・・

バックアップデータからCookieの移植を試みましたが、失敗。
結果、現在の環境をバックアップし、以前の環境を復元し、本日投稿することが出来ました。
ちょっとPSPネタを混ぜてみましたが、面白くなかったらスミマセン。
お目汚し、失礼致しました。

PS:もう今のPCは限界なので、Haswellが発売したら自作PCを作るんだ。。。
914名無しさん@初回限定:2013/05/26(日) 22:21:58.81 ID:r28Wf3wE0
乙です!
915名無しさん@初回限定:2013/06/17(月) 07:38:38.74 ID:36I2zK/p0
>>納得する香織理と初音
初音隠す気ないだろw
916名無しさん@初回限定:2013/06/27(木) 19:51:02.83 ID:LiM/DkWG0
おつおつ、楽しめたぜ!

バカテス読んでて電波受信したんだけど、後輩達に会いに行った帰りの大学生瑞穂ちゃん(女装)が空腹で倒れている男子学生を見つけて
家に連れて介抱してあげると学生は成績が低いらしく、コレも何かの縁、よければ家庭教師をしてやったらどうだと言う瑞穂パパン
学生からもよろしければ是非と言われ引き受けるも女装したままだったので毎回女装しつつ家庭教師をするはめになった瑞穂ちゃん
そして女子大生家庭教師として活躍する瑞穂ちゃんって内容
917 忍法帖【Lv=2,xxxP】(1+0:5) :2013/07/20(土) NY:AN:NY.AN ID:Eug8Xe5Q0
保守
918名無しさん@初回限定:2013/08/05(月) NY:AN:NY.AN ID:b+zzkvYb0
ほしゅ
919 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:5) :2013/08/20(火) NY:AN:NY.AN ID:MkjYQxFH0
保守
920 忍法帖【Lv=13,xxxPT】(1+0:5) :2013/08/27(火) NY:AN:NY.AN ID:QQU/HdtY0
保守
921 忍法帖【Lv=40,xxxPT】(1+0:5) :2013/08/31(土) NY:AN:NY.AN ID:d3t5dotZ0
捕手
922 忍法帖【Lv=24,xxxPT】(1+0:5) :2013/09/08(日) 12:20:55.19 ID:pZkeepXY0
保守
923名無しさん@初回限定:2013/09/17(火) 17:31:33.67 ID:FwYo1RPR0
保守
924 忍法帖【Lv=26,xxxPT】(1+0:5) :2013/09/25(水) 23:23:50.88 ID:IJMWoSx+0
保守
925東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/06(日) 18:13:28.89 ID:mzhe0+Tn0
お久しぶりです。東の扉です。
規制解除されたのと、今執筆しているSSがひとくぎりついたので投稿させていただきます。
14レス分あります。よろしくお願いします。
926東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/06(日) 18:31:26.10 ID:mzhe0+Tn0
と思ったら忍法帳の制限に引っかかってしまいました。
少し勉強してきますので、もうしばらくお待ちください。
927名無しさん@初回限定:2013/10/08(火) 00:53:16.55 ID:fshN/wIg0
お帰りをお待ちしていますわ、東の扉お姉さま
928名無しさん@初回限定:2013/10/08(火) 01:29:37.20 ID:rzboap2M0
zipにしてうpしてもよろしいのよ
929東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/19(土) 14:35:12.28 ID:HmWYB0pE0
お待たせしました。投下させていただきます。破門された時はまたしばらくお待ちください。

〜Eカード〜

 とある日曜日、櫻館……。
「ねえ、あたしたちヒマだよね?」
「まあ、ヒマと言えばヒマですけど……」
 朝食が終わった後、薫子さんが声をかけてきた。
 今日は日曜日ながら、全員特に予定はなく、暇を持て余しているところだった。買い物は土曜のうちにやってあったし、
特別な来客の予定もなかった。

「せっかくですから、寮の掃除でもしますか?」
「えーっ!? 予定がなくて暇を持て余してる時に、何が悲しくて掃除なんかしなきゃいけないのさ!」
「そうですよ! 千早お姉さま、日曜日をなめるのもほどほどにしてくださいよ!」
 僕がそう提案すると、案の定というか、薫子さんと陽向ちゃんが怒りというか、不満全開にして猛反対してきた。
やることないなら掃除でもした方が後が楽でいいと思うんだけど……。
「陽向、日曜日をなめるって何よ? それにここでやっておけば、確かに今はつらいかもしれないけど、後々楽になっていいわよ?」
「嫌ですねえ香織理お姉さま、今がよければすべてよし、ですよ!」
「同じく!」
 な、なんてダメ発言だ……。
「まあまあ香織理ちゃん、遊びたい2人の気持ちもわかりますし……でも2人とも、できる時にやっておかないと
後が苦しくなるだけですよ?」
「うぐっ……初音お姉さま、私たちの味方だと思ったのに……」
「初音、油断させておいてしっかり攻撃してくるとは……」
 何の味方で何に対しての攻撃ですか……。
930東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/19(土) 14:43:34.57 ID:HmWYB0pE0
「それでは、皆さんで寮の掃除をした後で、ゲームをするというのはいかがでしょうか?」
 薫子さんと陽向ちゃんはどうも渋りそうだから、僕はそう提案してみた。
「あ! それならいいかも!」
「千早さま、それは良い提案かと存じます」
「なるほど。それなら薫子や陽向でもやる気出るでしょ」
「じゃあ決まりね。頑張ろうね、優雨ちゃん」
「うん。おそうじがんばる」
 みんな僕の意見に賛成し、さっそく掃除を開始することになった。まあ、掃除の様子については都合により省略するが。

「や、やっと終わった……」
「み、水……」
 寮全体の掃除が終わると、やはり薫子さんと陽向ちゃんはぐたーっと床につっぷして寝そべってしまった。
「まあまあ2人とも、これを用意しましたから、どうぞ」
 僕はそう言って史と一緒に用意した飲み物を人数分グラスに入れて、食堂のテーブルに運んだ。
すると、みんな嬉々としてテーブルに座り、僕たちが用意した飲み物を口にする。
 みんな、ホント体力をよく使ったんだな……。
931東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/19(土) 14:51:53.04 ID:HmWYB0pE0
「で、千早、どんなゲームするの?」
「いえ、特に決めていませんが……」
「えーっ!? せっかく一生懸命掃除したのにーっ!!」
 陽向ちゃんがそう抗議してくる。でも、まだ決めてないだけで、やらないとは言ってないんだけど……。
「落ち着きなさいよ陽向。千早はやらないとは言ってないでしょ?」
「ええ。もちろんゲームはやりますが……」
 いきなりだから、当然ゲームの用意はしていない。
「もしよかったら、私が由佳里お姉さまから預かったゲームをしてみない?」
 香織理さんがそう提案してくる。由佳里って確か初音さんのお姉さまだった……。
「とりあえずどんなゲームか教えていただけませんか?」
 僕は由佳里さんのことをよく知らないし、どんなゲームかもわからないのでは返事のしようがないから、とりあえずそう答えた。
 香織理さんが承知すると、ゲームを取りに部屋へ戻った。

「これよ」
 香織理さんは1つの小さな箱を持ってきた。
「カードゲーム、ですか?」
「そう。由佳里お姉さまが言うには彼女のお姉さまが作ったオリジナルゲームらしいけど、実は私たちもやったことないのよ」
 初音さんから聞いた話だと、確か由佳里さんのお姉さまって、確かまりや従姉さんだよな。あの人が作ったゲームって、
ろくでもないものじゃなければいいんだけど……ちょっと不安になってきた。
932東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/19(土) 15:01:01.99 ID:HmWYB0pE0
「大丈夫ですか、そのゲーム?」
「大丈夫でしょ。どんなゲームもやり方次第よ。ルールは由佳里お姉さまから聞いて知ってるから安心して」
 まあこのメンバーなら、そう大変なことにはならないだろう。仮にやばいルールがあったとしても、
そこは改定すればいいだけの話だから。
 香織理さんがカードを取り出す。そのカードには7人の人間が聖應の制服姿(夏服と冬服1枚ずつ)、
私服姿、体操服、パジャマ、ウェディングドレス姿とそれぞれ7×6の42枚のカードが出てきた。
「2人は瑞穂さんとまりや従姉さんみたいですけど……」
 あとの5人は誰かわからない。
「これ、奏お姉さまと由佳里お姉さまですね」
「あとは、紫苑さんと貴子さんだね。お正月に会ったことあるよ!」
 初音さんと薫子さんがそう説明してくれる。確か紫苑さんは瑞穂さんの前のエルダーだった人で、
貴子さんは瑞穂さんの時の生徒会長で、今瑞穂さんの奥さんだって話の……。
「あとの1人は確か一子さん……だったかしら?」
「一子さん……?」
 香織理さんに聞くと、なんでも瑞穂さんのお母さんの妹だとかで、幽霊になってから瑞穂さんやまりや従姉さん、
そして奏さんや由佳里さんとも仲良くしていたらしい、とのこと。
 姉さんが幽霊になって現れたことといい、この寮はひょっとして何かの鬼門なのかな?
933東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/19(土) 15:43:15.42 ID:HmWYB0pE0
すみません。引っかかって最初からやり直しになりました。また1週間ちょっとお待ちください。
934名無しさん@初回限定:2013/10/19(土) 23:52:34.73 ID:5t4N5F/X0
乙です! お姉さま。時間軸が良く分かりませんがちーちゃんの親戚関係のことは皆さんご存知のようですね。
935東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/20(日) 10:41:36.87 ID:T4LMm2vy0
一応残りもしばらくしてからこちらに投稿を続けさせていただきますが、
こちらにも投稿しましたので、続きが気になる方はこちらをご覧ください。

http://takayan.otbk.root-node.net/ss/bbs_view.cgi?thread=000020&from=23&to=23
936名無しさん@初回限定:2013/10/20(日) 15:20:21.02 ID:xk8Ylb3A0
乙、面白かったです。ただ、

>「カードの強弱はどういう順番ですか?」
>「まず由佳里お姉さま。その次に強いのが奏お姉さま。そして
この書き方だと強い方からバーグ>奏>…となっているように読めると思います。
937東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/20(日) 15:39:24.27 ID:T4LMm2vy0
>>936
感想、アドバイスありがとうございます。早速修正しておきました。
938名無しさん@初回限定:2013/10/20(日) 15:44:07.80 ID:xk8Ylb3A0
早っ! しかしホワイトボードの強弱の順が不等号が逆だと思います。
939名無しさん@初回限定:2013/10/20(日) 15:45:11.15 ID:xk8Ylb3A0
ってもう直ってますね。
940名無しさん@初回限定:2013/10/22(火) 22:15:38.80 ID:kvNMCVSC0
乙です。個人的にストーリーが独創的に感じた。
面白かったです。
941東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 19:11:12.19 ID:Z6zwe6CR0
お待たせしました。投稿を再開させていただきます。

「話を戻すわね。これが由佳里お姉さまから預かったカードゲーム、“Eカード”よ」
「Eカード?」
「そう。EはエルダーのE。これを最初に5枚持って、1枚ずつカードを出していって、勝敗を決めるのよ」
 なるほど。カード1枚1枚に強弱があって、出すタイミングを選んでいくわけか。自分にどのカードが配られるか、
相手がどんなカードを出してくるかを読み取ることが重要になりそうだな。
「カードの強弱はどういう順番ですか?」
「まず由佳里お姉さま。それより1つ強いのが奏お姉さま。そして一子さん。瑞穂さま、まりやさま、貴子さま、紫苑さまの順だって。
言っても途中で忘れると思うから書いておくわね」
 香織理さんはそう言ってホワイトボードに強弱の順を由佳里<奏<一子<瑞穂<まりや<貴子<紫苑と敬称略で書く。
「つまり由佳里さんが最弱で、紫苑さんが最強というわけですね」
「な、なんで由佳里お姉さまが最弱なんですか……」
 初音さんが珍しく不満そうに香織理さんを睨む。初音さんも自分のお姉さまがそんな立場に立たされるのが我慢ならないんだろう。
「確かに由佳里お姉さまは優れた生徒会長だったけどね。これを作ったのはあくまで由佳里お姉さまが1年の時の話だから……」
 香織理さんも苦笑しながら説明する。
942東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 19:19:36.21 ID:Z6zwe6CR0
「由佳里お姉さまより奏お姉さまが強いのはこの時点では奏お姉さまに演劇部員として人気が出てきた頃で、
由佳里お姉さまが有名になったのは2年になってからだし……」
 つまり由佳里さんはその時ただの一般生徒にすぎなかったわけか。
「一子さんは寮のみんなのムードメーカーで良き相談相手だったらしいから、奏お姉さまと由佳里お姉さまよりは上なんでしょうね」
 香織理さんの話では、一子さんは薫子さんたちが入学する前に成仏したらしいから、
結局本当のところは伝聞でしかわからないのだろう。
「瑞穂さまが当時の3年の中では一番格下なのは、(3年の)みんなにいじられていたからだって聞いたわ。
まりやさまにも頭が上がらなかったみたいだし……」
 僕の知ってる瑞穂さんは気弱でいつもおどおどしてばかりだったからな。みんなに慕われるようになっても、
必然そういう役回りになってしまったわけか。
「まりやさまより貴子さまが上なのは、2人が犬猿の仲で、貴子さまはまりやさまをやりこめられる数少ない人物……
というのは建前で、実際はリバーシの強弱の順番が参考になっている……という説もあるんだけどね」
 リバーシの強弱? いったい何の話?
943東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 19:28:10.84 ID:Z6zwe6CR0
「紫苑さまがすべての方の頂点に立つのは、瑞穂さまを始め、ほとんどの方を手玉に取るだけの話術、
有無を言わさず従わせるだけの威厳、貴子さまをはじめほぼ全ての当時の聖應の生徒の尊敬を集めていたから……だそうよ」
 そんな人がいたのか……聖應にも色んなエルダーがいるんだな……そりゃそうだろうけど、改めてそう思う。
「でも、由佳里お姉さまが最弱なんて、なんか不愉快です……」
「初音は由佳里さんに憧れてたからね……」
 半泣きになりながらふくれる初音さんに、薫子さんがしみじみと言う。
「まあでも、由佳里お姉さまにも勝てるカードがあるのよ」
 香織理さんの言葉を聞いて、僕はどのカードかすぐにピンときた。
「紫苑さん……ですね?」
「ご名答。さすが千早ね」
 やっぱり。最弱は最強を破る。よくあるゲームの鉄則の1つだからね。
「つまりその由佳里さんは、軍人将棋で言うスパイみたいなもの?」
「ま、そんなところね」
「そういえば何も持たない最弱カードで最強カードがウボァーされますからね。いやー、名は体を現すって本当ですね」
「……陽向、どこの皇帝よ、それ」
 確かに5枚中1枚しかない奴隷にやられちゃ叫びたくもなるだろうし、それも皇帝の悲鳴としては有名だけど……。
「うぼぁーって、なに?」
 優雨にまで言われるなんて、皇帝っていったい……。
944東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 19:36:22.27 ID:Z6zwe6CR0
「それもいいですが、衣装の強弱はどうなんですか?」
「ああ、それはなし。だから、例えば奏お姉さまのカード同士がぶつかった場合は、制服でも私服でもその他どんな衣装でも引き分け」
 そうか。まあその辺はオリジナルルールで変更してもいいけど、今回はそんな必要はないだろう。
「そういえば、由佳里さんは自分のカードが最弱だからやりたがらなかったのですか?」
「ううん、由佳里お姉さまは自分が登場してること自体が恥ずかしくて気に入らなかったみたい」
 僕も自分が登場するゲームをやりたいかと言われたら首を横に振らざるを得ないし、その気持ちはわかる。
自己顕示欲が強いわけじゃないからね。
「まあ前置きはこのぐらいにして、みんな、ルールはわかった?」
 香織理さんが聞くと、みんなが肯定の返事をした。
「じゃあ始めましょうか」
「ええ。対戦回数は1人が全員と当たるように1回ずつ……でいいですか?」
「そうね。あ、一つ言い忘れてたけど」
 なんだ、まだ何かあるのか?
945東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 19:44:23.84 ID:Z6zwe6CR0
「5枚カードをもらった時点で、自分の持ってるカードが“姉カード”と“妹カード”の枚数を相手に教えること」
「姉カードと妹カード……?」
 なんだそれは……?
「なんですかそれはお姉さま! 姉カードと妹カードを教えろって言われても、さっぱりわかりませんよ!」
「わたしも……わからない……」
 陽向ちゃんが騒ぎ立てると、優雨も続く。香織理さんはため息をついた。
「あのね陽向。あなた作家志望なら、少しは自分で考えてみなさいよ」
「つまり、当時3年だった瑞穂さま、まりやさま、貴子さま、紫苑さまのカードが“姉カード”で、
1年だった奏お姉さま、由佳里お姉さま、瑞穂さまのお母さまの妹だった一子さんが“妹カード”なんですね!」
 初音さんが得心した、という明るい表情で言う。確かにそれで合ってるかな?
「そういうこと。だからたとえばこんなカードだったら……」
 香織理さんはカードを5枚選んでみんなに見せた。奏さんが2枚、瑞穂さん、貴子さん、紫苑さんが1枚ずつだ。
「姉カード3枚、妹カード2枚って宣言すればいいわけ」
 相手の手が全く闇の中、ってわけじゃなくて、ぼんやりと見えている状態で対戦するわけか。
なかなかに複雑で悩みどころだな、これは……。
946東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 19:52:38.61 ID:Z6zwe6CR0
 まずは、僕と薫子さんが対戦することになった。
「よーし! 行くわよ、千早!」
「ええ。受けて立ちますよ」
 僕に配られたカードは由佳里カード2枚、一子カード、まりやカード、貴子カードが1枚ずつだ。
カードの優劣で言うと中の下ってところか……。
「私は姉カード2枚と妹カード3枚です。薫子さんは?」
「あたしは姉カード4枚と妹カード1枚だよ!」
 現時点では薫子さんが圧倒的有利みたいだな。さて、勝てるかどうか……。
「よーし、あたしはこれ!」
 薫子さんは自信たっぷりの表情で伏せたカードを豪快に出してきた。
「さすが薫子さん、即断即決ですね」
「だってさ、こんなの相手が何出してくるかなんていくら考えてもわかんないじゃん。
だったら直感で出していった方がさっぱりしていいと思って」
 ……まあ薫子さんの言うことも一理ある。僕はどうしても考えてしまうから、こういうところは正直憧れるんだよね。
「では、私はこれで」
 僕もそう言って選んだカードを出した。
「あたしはこれ! 千早は?」
 僕がカードを出すと、薫子さんは得意げにカードをめくる。紫苑さんのカードだ。
「申し訳ありません。私のカードは、由佳里さんです」
「なあああ!?」
 僕が苦笑しながらカードをめくると、薫子さんが驚愕の顔に変わった。
「なんでそこで由佳里さんを出してくるのよ!」
「随分自信満々でしたから、ひょっとしたら紫苑さんかと思いましたから」
 こういう時いつも上から目線で見下ろすような自分の悪癖が役に立つものだから、僕としては苦笑いをせざるを得ない。
947東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 20:00:30.26 ID:Z6zwe6CR0
「これだけ有利なカードで千早に負けるなんて……」
 薫子さんが食堂の机にぐだーっと突っ伏しながら落ち込んでいた。
 あれ以降の対戦は、奏さんVS一子さん、貴子さんVSまりや従姉さん、紫苑さんVS由佳里さん、瑞穂さんVS貴子さん。
結局薫子さんが勝ったのは5回のうち1回だけだった。
「だって薫子、考えてることすぐ顔に出るんだもん」
 香織理さんの言うとおり、薫子さんは気分によって表情がコロコロ変わって読みやすいから、作戦とかも看破しやすいんだよね。
そういう素直なところも薫子さんの魅力ではあるんだけど。
「でも千早、なんで2回紫苑さんを出す時に限って由佳里さんを出してくるの!?」
「そう言われましても……」
「それって偶然なるの、どのくらいの確率よ!」
「10%です」
 最初の2/5と次の1/4をかけると答えは出てくる。
「ぶーっ! そんなことあっさり答える千早は嫌い」
 薫子さんはふくれ顔になって言う。そう言われても……どうしろって言うんだよ。
「お子ちゃまか、薫子は」

 僕と薫子さんの対戦が終了し、得点を対戦表に書き終えると、次は陽向ちゃんと香織理さんの対戦する番になった。
「いよいよ私と香織理お姉さまとの戦争ですね!」
 陽向ちゃん、たかがゲームで戦争って、ちょっとオーバー過ぎじゃ……香織理さんも呆れてるし……。
「私は姉カード3枚と妹カード2枚です! 香織理お姉さまはどうですか?」
「私も姉カード3枚と妹カード2枚ね」
 大まかなところでは香織理さんと陽向ちゃんは一緒か。でも、厳密にはどちらの方が強いのか
宣言だけではわからないから、試合の行方はどうとは言えないけど。
948東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 20:09:09.89 ID:Z6zwe6CR0
「貴子さまです!」
「残念。私は紫苑さまよ」
「えーっ! 自信あったのに!」
 得意げにカードをめくって貴子さんを出す陽向ちゃんに、香織理さんは涼しい顔で紫苑さんのカードをめくった。
「今度は由佳里さまです!」
「おあいにくさま。奏お姉さまよ」
「うーっ! 次は一子さんです!」
「こっちは瑞穂さまよ」
 陽向ちゃんのカードは、次々と香織理さんに1つ上のカードで負かされていた。
「もーっ!! なんでよりによって1つ上のカードで倒すんですかー!!」
「それがゲームで一番いい勝ち方だからよ」
「ですから、そんなのやろうったって簡単にできることじゃないでしょう! なのにお姉さまはどうして……!」
「陽向、どれだけ私の妹をやってるのよ。人の表情を見ればだいたいのことがわかる私には割と簡単よ」
「だとしても、少しは妹にもいたわりというか、接待しようという心も持ってくださいよ! 
あんまりいじめ続けると自殺してしまいますですよさいですよなのですよーっ!!」
「あのね陽向、たかがゲームに負けたくらいで自殺する人がどこにいるのよ……仮にいるとしても、
そんな繊細な人ならもうとっくに自殺してるでしょうが……」
 香織理さんはツッコミにも疲れてしまったような表情で言う。まあいつものことなので、安心して見てられるんだけどね。
949東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 20:16:32.51 ID:Z6zwe6CR0
 次は初音さんと優雨の対戦だった。
「私は奏お姉さまのカードよ。優雨ちゃんは?」
「……まりや」
「やったね優雨ちゃん!」
 優雨がカードをめくって勝ちがわかると、初音さんは嬉しそうに優雨に祝福の言葉をかける。まあ初音さんらしい反応だ。
「次は紫苑さまだけど、優雨ちゃん、どう?」
 初音さんが心配そうだ。初音さんとしては優雨に勝ってほしいんだろうけど、5枚のカードをすべて出す性質上、
強い貴子さんや紫苑さんのカードも、持っている以上いつかは出さざるを得ない。
「……ゆかり」
「わあ、すごい優雨ちゃん!」
 初音さんがさっきよりも1オクターブ高い、嬉しそうな顔で言う。
「初音さんは優雨が勝ったことが嬉しいんですか? それとも自分の“お姉さま”が勝ったことですか?」
「両方です!」
 そう答える初音さんは満面の笑みだ。
「はつね、まけてばかりだけどだいじょうぶ?」
 優雨は初音さんには面白くないんじゃないか、と心配そうに初音さんの顔を覗き込みながら聞いてくる。
「優雨、初音さんは優雨が楽しんでくれればそれで自分も楽しいんだと思いますよ」
 僕はそうフォローする。間違ってはいないだろう。初音さんは割と自分のことには無頓着だからね。
950東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 20:24:24.48 ID:Z6zwe6CR0
「陽向、あれぐらいやってほしい?」
「いえあの、初音お姉さまは接待色があからさまというかなんというか、エスが服を着て歩いてるような
香織理お姉さまがやってもリアリティがあいたたた!!」
「じゃああなたはエムが服を着て歩いてるような人なのかしらね」
 香織理さんが陽向ちゃんの頭をぐりぐりしながら言う。
 ……香織理さんのやり方も初音さんのやり方も極端なような。足して2で割ればちょうどよくなると思うんだけど。

「次は貴子さんよ!」
「申し訳ありません。史のカードは紫苑さまです」
「なあっ!?」
 次は薫子さんと史の対戦。薫子さんはここでも史に2連敗だった。
「ちょっと、意地悪な千早ならともかく、なんで史ちゃんにまで……」
 連敗して面白くないのはわかりますけど、薫子さん、一言多くないですか?
「史は職業柄人の表情から考えを読むのが得意ですからね。普段からそのような癖がついているのです」
 だから、こういう心理戦のゲームでは意外と強いわけだ。
「でもさ、史ちゃんも人の世話をする仕事のプロならさ、人をいい思いにさせることもできるんじゃないの!?」
951東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 20:32:10.24 ID:Z6zwe6CR0
「申し訳ありません。確かに薫子お姉さまを勝たせて差し上げることもできますが、そうやって接待してしまうと
逆に薫子お姉さまの機嫌を損ねることになると思いましたので」
 目に涙を浮かべながらわめく薫子さんに、史は冷静な態度を崩さないまま答える。
「うーっ……それはそうだけどさー……」
 とうとう薫子さんは涙を目と同じ幅まで拡張して机に突っ伏してしまった。まあ接待でもいいから
勝ちの気分を味わいたいって気持ちも、真剣勝負で勝ちたいって気持ちはわかるんだけどね。どうしたらいいものやら……。

「うーっ……面白くなーい……」
「不愉快ですっ! なんで負けっぱなしで楽しめるんですか!」
 21戦全てが終わり、対戦中ほとんど負けていた薫子さんと陽向ちゃんがあからさまに不満を口にした。
 ちなみに1位は僕で、香織理さんが僕と僅差で2位だった。
「とは言いましても……」
 対戦ゲームである以上、誰かが負けるのは避けられないんだけど……しょうがない。機嫌直しにデザートでも作るか。
「薫子お姉さま、陽向さま、ご安心ください」
 そう思って立ち上がった矢先、史がそう言ってきた。
「史がお2人のご機嫌を直す余興をご用意いたしました」
 史はそう言って自分のカバンの中から何かを取り出してきた。

To be continued……
952東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/27(日) 20:52:49.18 ID:Z6zwe6CR0
こちらも一応投稿終了しました。あと7KBですね。
続編はただいま執筆中です。
E(エルダー)カード、よろしければ皆さんでプレーしてみてください。
それでは、今回はこれで。お目汚し失礼いたしました。
953 忍法帖【Lv=29,xxxPT】(1+0:5) :2013/10/31(木) 00:41:14.85 ID:86YyZQ8P0
>>952
乙でした。
面白かったので、やってみようと思っても、
未だにルールが把握できていないような・・・
954東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/31(木) 04:13:52.41 ID:vNPq6gnr0
>>953
これでよろしいでしょうか?

まず瑞穂、紫苑、貴子、まりや、一子、奏、由佳里のカードを1キャラにつき7枚ずつ用意します。
それを繰って対戦する2人に5枚ずつ配ります。
5枚ずつカードが配られたら、まず自分の持っているカードのうち、姉カード(紫苑、貴子、まりや、瑞穂)が何枚で、
妹カード(一子、奏、由佳里)が何枚かを対戦相手に教えます。
それから1枚カードを出し、お互い出し終えたら、出したカードをめくって勝敗を決めます。これを5回カードを出し切るまで
繰り返し、1勝ごとに1点として勝敗を決めます。
カードの強弱の順は、(弱←由佳里、奏、一子、瑞穂、まりや、貴子、紫苑→強)で、単純にカードの強い方が勝ちです。
ただし、紫苑と由佳里がぶつかった時は、由佳里の勝ちです。
955東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/10/31(木) 21:45:56.90 ID:vNPq6gnr0
まだわからないことがあったら、なんなりとお聞きください。
956!ninja:2013/11/04(月) 21:53:31.22 ID:WTD6h3lz0
>>955
ありがとうございました。
試に作ってみましたが、対戦できる人が限られるのが・・・ですw
957!ninja:2013/11/04(月) 21:54:59.33 ID:WTD6h3lz0
あれ?
958!ninja:2013/11/06(水) 00:09:05.02 ID:M5VDy0OO0
テスト
959!ninja:2013/11/06(水) 00:12:47.46 ID:tuUdxlbn0
ん?
960名無しさん@初回限定:2013/11/08(金) 22:02:47.89 ID:HU8FdreV0
ちょこちょことネタを貯めてきて、ようやっとプロットが完成しそう。
でも、もう需要ないかな?
961名無しさん@初回限定:2013/11/08(金) 23:06:06.16 ID:ZLP1eTh70
そんなことはありませんわ、お姉さま
962東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/11/09(土) 20:34:53.09 ID:tH0wy2mg0
新スレッド作成しました。こちらです。

http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1383996775/
963!ninja:2013/11/09(土) 23:02:23.42 ID:mla1TP/y0
>>962
乙ですわ、お姉さま。
964名無しさん@初回限定:2013/11/10(日) 19:23:45.52 ID:7PacI73h0
           / )
            ./ / 
           / /_       
           / /`´`ヽ     
         ./ /.リ_ji」リi|    , -つ
         / /(|l゚ ヮ゚ノl| ./__ノ   残りの4KBは
        /    \il|/ /       私と千早お姉さまの淫らな愛で
        .|    へ/ /         埋めさせていただきますわ!
        |    レ'  /、二つ
        |     /   ||
       /   /    '´/ `´ ヾ
       /  /     ! ((リ从リ))
      /  /      ノリ(|;´-`ノl|、 
     / ノ       '《(({〓〓})》
   _/ /         `` /` ´|' '
  ノ /           `iテテ'
⊂ -
965名無しさん@初回限定:2013/11/10(日) 20:14:09.81 ID:j7xXG6HB0
>>964
            _    ./ミ'´, ^^ヾヽ
          '´, `´`ヽ  |!l{ミ(リ从リ)〉i
          i !リ_ji」リi|  リハリ#゚ ヮ゚ノリハ
           |i(|TヮTノl|/'((( 〉 (つ'ノリ))
          |li{〓〓}i」   ヾ </i_j   ,ソ
. (;;⌒);;⌒))=-ノリと//i_j〉      し
966名無しさん@初回限定:2013/11/11(月) 09:39:04.04 ID:1H48h2rs0
>>965
雪ちゃんのセリフはなしですか?
967名無しさん@初回限定:2013/11/11(月) 21:47:54.98 ID:Yxc3xxil0
テスト
968名無しさん@初回限定:2013/11/12(火) 05:17:45.20 ID:AJSSUlOm0
                   , r ====、
            ,  -―−-<、 _      ヽ
          /  , _,.. --ヽ、ヽ、ヽ`ヾ 、
        / /  /´   __,,,,.. _ヽ ヽヽ、 `ヾ 、
       / l  レ ' ´      ヽ 、 ヽヽ   ヾ 、
      /   l  l l l l  l   | l l l l l ヾ 、  ヾ
      l   l   | l | ト、l   lLリ」_ l l | l ヾ 、 リ
      ! / l   l l,x`リ ´ll ノlk''''' ミl  l | ト、 ヽ、
     ノ /  l   lメ,r'´ ヘ`リ|/lパ _。l'! | トl |`ヾ`
    ´/ / /lヽ  ヾ、 ゚};    , ー'イ l|l l、l ト``                埋めですっ!
    ノン/,イイヾヽ  ヾ'゙´  ,-┐ ,イ/l l l`リ
      ´ ´ ソリヽ\ ヾ、  ヽ '/リ/ノ リ       _  __
          _\l`ー-``, チ  ノ         /ィ/,r'ミ{、
       , '´.:..ヽヾ `ヽ 、_ レ'`ーn<''ヽ、      //´チ´ァ〉
     /.:..:..:..:..:..:.ヽヾ,r''´ {+`l´ ヽll ト.:..:..ヽ   l   , '´ /
    /.:..:..:..:..:..:..:..:..:..l lY/ ゝイ`  Vl |.:..:..:..:..l  、l   ; /
  l.:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:l'´`l ノ | |ヽ  l`ヽ.:..:..:..:..:Y `"''´-,
  !.:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:.l  レ'/ l blヽ ゝl ヽ.:..:..:/     |
  ト.:..:..:..:..:..:..:..:..:../ l  レ、ク-、| レ'` ー l:..:..:..:.`ァ- __l
  ケ、`:..: 、:..l:..:..,イ:..:.ヽ、   ||L 」||_   ノ:..:..,.:,../..:..:..:..|
  〉、:..:-:..:、_y−' l.:..:..:..:.`""´:..:..:..:..:`"|:..:..l:./:..l:..:..:..:..:|
 /:..:..:..:../      l:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:..:.l  ̄ヽ、l:..:..:..:..:l
969名無しさん@初回限定:2013/11/12(火) 21:41:30.70 ID:nLStWOj20
まだ応援、待ってくれる人がいるみたいなので
頑張ってみます。

東の扉様のように、オリジナリティないので
原作パクってる抱けと感じられるかもしれんが
許してくれ

それと、ぶっちゃけ前に投稿した雅楽乃ifの続きなんだ
前の作品が不快なら止めとく
970東の扉 ◆FVKSJZ0PUs :2013/11/12(火) 22:06:05.89 ID:AJSSUlOm0
>>969

私も期待しております。頑張ってください。
ちなみに私の“E(エルダー)カード”も、ある作品のゲームをパクってますよ(笑)
ですので、気にせず投稿してください。お待ちしております。
971!ninja:2013/11/12(火) 23:18:20.46 ID:/mMwNkcz0
テスト
これがダメなら一か八かで投稿してみます。
972名無しさん@初回限定
         / / / /  i     ヽヽ ヽ. \
        /  i i ./ / .ハ   i i i .i ヽ`、 ゙ 、
.        l / i  iイハi i i i iリi i  i i ヽヽ i
        l/ i  i斗ェ士Iト;/ //__iリ  i i ハ ',
        l バ|  〈.{゚:::::i}゙ レノ/,ィメミト  i  i i.l.l i
       l i ハ  i.辷ソ  " .{:::ソ〉i / .レ .| i
       l i  ハ  ヽ:::::  _ ' :::゙"/ / レノノi.l
      l i  i ト ヽ \  _ , イ イ ハノノ
.      l i  i  i  「`゙''ー゙r"T// i/ i i
      l__i_, 斗‐へ ___ ィL/`ー- i_i iヽ
     /  } }  <´  ∧+.ト、`ヽ  } }  ヽi ヽ
   /     } }  _〉 :: :∧゙ヽ 〈  } i   ヽ ヽ
  /       V´ | , イ ハヽ、 ハ`' く     '、ヽ
. /       /  ノイ/ .H ヽ ヽ,〉  ヽ    ヽ \
〈        i   ムr-i^'|ウレ イへi  i     .〉  \
. \      ト、:::::::::::::::::::i「o]i|::::::::::::::...ノ     .人   ヽ   梅よ
  / に_ >'i. `' -----┴┴-----イ  < イ ヽ \
  /< ̄7" i ハ             |ハ こ イ i\\ \
. /    V  i iハ            ,iハ   .i i ヽヽ  ヽ
/ ⌒ヽ〈  i i i .ト、          ii  { ー イ  iヽ ヽヽ  ヽ
|     V i i 〉ヽ、         | i  i   .i  iヽ ヽ ヽ 
.\    「>、i/ \ ー  ―  イハ i i    }  i ヽ ヽヽ
/ /へ  レ'   〉、_,, --、_ー    /  i i .i    i  i ヽ ヽヽ
.//  i |゙Y   /    ̄、`゙;、       i i i   i  i  ヽ ヽ
./  i i ト、_ ∧_  、ヽ ヽ |        i i i   }  i  ヽ ヽ
i   i i i | レ゙  `''ァヽ.〉ノ'゙   i     i i _i__,,斗ヘ  i