「うぅ……」
「……妙に柔らかいこれは……なんだ?」
記憶にあるようなないような、妙な感覚だ。
あ、そうだ……これは前に、妊婦さんの胸を触ったときの感触に似てる。
ていうか、これは胸だな。うん。
…………。
吐き出した吐息が
冷たい空気に消えた。
「消えた」という表現は、正しくないかもしれない。
俺の身体は海底に横たわっていて
俺の吐息は空に向けて
泡になって、昇って行ったのだ
……きっと。
「…………」
……目覚ましが鳴っている。
止める。
…………。
……寝る。
…………。
………………。
……………………。
ドアの開く音……。
月の表面に小さな蛆が無数に湧いて、その蛆が月面に笑顔を形作っている。
表面だけ笑みの形を作った、見下すような蔑むような腐敗した気持ちの悪い笑顔だね。笑顔って言っても、ちっとも朗らかでもなんでもない。ただ不快な笑顔。僕は、そうやって嗤う月を見ながら歩いていたんだ。
十四夜月だか満月だか十六夜月だかわからないけれど、とにかく丸い。こんないやな顔の月をじっと見てると気が狂いそうになる。僕が月を見ているのか、月が僕を見ているのか。見つめあっているのかなあ。だとしたら、気色悪いったらない。
輪郭が不意ににじむ。眩暈がしたんだ。僕は、月から目を離してあたりを見ると、平凡な夜の田んぼが広がっていて、その向こうには林だとか住宅街の窓明かりだとかが見える。
その中央を行くのが僕。汗だくでシャツが重くなっている。こんな暑い時に歩き回るなんて、嫌なもんだ。しかし、嫌なことでもしなくてはならないというのだから、まったく世の中というものは理不尽だと思う。気持ちも疲れている。
大体僕はそんなにひどいことをしているのだろうか。世間の人はみんなこんな感じに耐えながら生きているのだろうか。それとも僕だけ特別に何かに呪われているのだろうか。
しあわせって何だと思う?
冬は雪の季節、
白くかき消された記憶の季節、
あるいは報われぬ恋の季節ーー。
今年もこの永の里に雪が降る。
散り敷かれる雪の中に私は隠れ、
白い景色の中で雪解けを待ちわびる。
やがて誰かの強い願いが、
この雪を全て消し去ってしまうようにと……。
96 :
名無しさん@初回限定:2012/02/23(木) 22:39:51.31 ID:M8+YDK4pO
「茉莉、いつか約束したよね?茉〜莉〜!」
97 :
名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 13:29:10.81 ID:PZoKht93O
98 :
名無しさん@初回限定:2012/02/24(金) 18:15:53.37 ID:kMvnB4vbO
あれから三年が過ぎた
99 :
名無しさん@初回限定:2012/02/25(土) 07:45:44.00 ID:6GlI2ETzO
「ぐぅっ!」
100 :
名無しさん@初回限定:2012/03/01(木) 20:40:20.07 ID:avs/0ooiO
キミへ
101 :
名無しさん@初回限定:2012/03/02(金) 06:56:19.24 ID:92IjFqPBO
風が匂う丘
「よし。今日はここまでだ」
103 :
迅聖 汚和太:2012/03/03(土) 15:22:47.06 ID:Ga9o6Te90
夢・・・・
夢か・・・
女・・・?
少女・・・?
天使・・・?
夢だ 天使の夢だ天使が怪物に犯される夢
そんな・・・夢
風が、吹いた。
(ああ、またこの夢か……)
桜吹雪に迎えられ、新たな一歩を踏み出す四月ーー
俺は、新卒採用の新社会人の一員として、佐治グループの合同入社式に臨んでいた。
俺と同じように真新しいスーツに身を包んだ三百名余りの若い男女が緊張した面持ちで整然と列をなしている。
全員が佐治グループ系列の会社に入社する新人だ。
過酷な雇用情勢の中で厳しい就職戦線を勝ち残り晴れの入社式に臨んだ若人たちの引き締まった顔には七割の自信と三割の不安が同居していた。
―――イジメられると、すごく興奮するよね?
なんて、言えたらすごく楽なのに。
『自由性行為許可証』!
この許可証を所持する男子は、懐妊可能なあらゆる女子とセックスをする権利が保証される!
すなわち、犯りたい女子に向かって許可証を提示し「SEXさせろ!」と命ずるだけですべてOK!
権利は国家によって保証される。
拒む権利も、相手を選ぶ権利も女子にはない!
男のために、すみやかに股を開くのが女の義務なのだ!
…。
……羽根だ。
空から羽根が降っている。
…。
雪のように真っ白で、
潮風に揺れ、
涼風に舞い、
誰かの心を連れ去った――神様の羽根。
「―――」
遠くから、旋律が聞こえる。
目の前の光景が、ぼんやりと霞んで見える。
現実感がない。
「……ってば―――」
眼をつよく閉じて、開く。
まだぼやけている。
不安……というより、諦念に近い気持ちに、心が沈む。
肉体の感覚さえ、信頼に値するのかどうか。
人でいる限り、自信の実在を証明する手段などないのだから。
脳一つあれば。
それぞれに結線された末梢神経群と視聴覚器官さえあれば。
そこに世界認識は生じうる。
今感じている者が現実にあるかどうかなど―――
「忍君ってば!」
「あ、なに?」
少年は我に返る。
大きな雲のカタマリが、ゆっくりと目の前を横切ってゆく。
時折強く吹く風が耳の中で行き場を失ってうるさく響き、その後ろに波の音と車の音が半分ずつ・・・・・。
そこだけが、僕の世界だった。
錆びた手すりに寄りかかって、目の前の海をぼんやりと眺める。
周囲に人影はない。
海鴎の声が、やけに甲高く響く。
遠くから、微かに工場の機械音が聞こえた。
誰かに邪魔をされる心配のいらない、ただ一つの場所。
埋立地の外れにある、その小さな無人駅で乗降するものはさほど多くはなかった。平日の朝夕、背広姿の会社員とOLの大群を除くと、その数はさらに少なくなる。
理由は簡単だった。
改札の外はそのまま工場だった。ホームの奥には、ベンチがいくつか並ぶ小さな公園があり、一般人が立ち入れるのはそこだけだ。
それでも、休日や、電車の多い夕方には物好きが結構現れる。
しかし、一時間に一本しか電車のない平日の昼間に、用事もなく来るものは皆無だった。
知り合いに出会う心配は、まず必要ない。
僕にとっては唯一の……
馬鹿じゃねーの。
……懐かしい夢を見た。
碧い海など見当たらない。
塩の香りすらない、暗褐色の世界。
モノクロの無声映画を見ているような静けさの中で。
彼女はいつも僕に笑いかけてくれた。
なにも言わない。
僕も、声を発することができない。
伝えたい想いがたくさんあったはずなのに。
夢で彼女の笑顔を見るたびに、泣いて目覚めた朝。
いつしか涙は枯れ、僕は彼女との日々を思い出さなくなった。
それが自分の成長だとは認めたくない。
でも、理解したんだ。
どれほど涙を流そうとも、
何度、その名を叫ぼうともーー
彼女は、戻らない。
改札の前は、帰宅を急ぐ人々でごった返していた。
どこか気の抜けたような、緩んだ空気が漂っている。
日のすっかり傾いた時刻。そこには安堵の表情があった。
……でも、私はそんな顔を浮かべる気にはなれない。
一日教鞭を執り、疲れた身体。
しかしこれから、もう一つの“役割”が待っているのだ……
「シンディー先生、バイバイ!」
教え子たちが笑顔で挨拶してきた。
「は、はい……さようなら」
(ふぅ……気づかれなくて良かった……)
安心してため息を漏らす。
「あぅっ……! くっ、ふぅぅっ……!」
―――人生ってものに夢を抱くのは、なかなかに難しい。
幼い日の憧れは現実という名の怪物の前には容易く崩れ、その後に残るのは妥協という名前の空虚な日常。
そして、幾ばくかの忍耐を代償に日々は淡々と紡がれていく。
それでいいと、思っていた。オレにはそのくらいしか出来ないのだから。
オレの忍耐と引き換えに日常が続いてくれるのなら……それだけでいいと思っていた。
それがまさか、あんな事になるなんて。
オレはまったく予想していなかったんだ……
―――醒めない夢を見ているように。
そこにある当たり前の幸福を噛み締めて、みんなが笑っていた。
共に過ごせる最後の夏を、いつまでも忘れないように。
自分の生き方に疑問など持たなかった。
誰にも許されなくても構わなかった。
ずっと一緒に居られればそれで良かった。
取り繕う生き方で精一杯だった。
―――けど、それでは駄目なんだと気づいた。
気づかされて、それまでの自分を見失って……。
“本当”の自分と、初めて向き合う事が出来ると思って……。
―――だから、そう。
大切な一言から、始めようと思ったんだ。
官僚とは、
平時にあれば特権を利して私財を蓄え、自己の職分すら極めずに部下や他人を働かせ、有事となれば身内でかばいあい、責任をうやむやにし、一個の人間としての自分を出さずに雲隠れしてしまうような人々
「は、春彦様、本当に……?」
期待と、しかしそれが裏切られたらという不安とに、男は声を震わせながら尋ねてきた。
俺は、島の命とも言える湖の一点を指し示した。
「ああ、お前たちには見えんだろうが、確かに兆しが現れている」
俺を取り巻いた男たちから、どよめきがおこる。
一層膨らんだ期待と興奮が、熱の揺らぎとなって俺に伝わってくる。
それを背に受けながら、俺は湖面を見つめていた。
静かに澄み切った湖面のなかにただ一点。
血のように赤いシ染みが、湖の底から滲み上がってきていた。
何気ない一言が人を傷つけることがある。
恋してると、それはエスカレートする。
だから僕は……人を好きになるのが恐かった。
そうなってしまったのにはちゃんと原因があるんだ。
そう、それは小学生のころ……。
一人の女の子を、僕は傷つけてしまったんだ。
その魂は、永遠をさまよっている
聲が届かぬ先を行き
息が續かぬ闇を舞う
迷いは無く
そこには揺るがざる誇りと信念が在る
幾百の志を叩き潰し
幾千の同朋を捻じ伏せ
幾万の妖を撫で斬る
鋼鐵の精神は
砕ける事を知らず
熔ける事を知らず
ただ、その時を待っていた
初恋がいつだったか、覚えているだろうか。
オープニングを飛ばしますか?
会社のロゴ(文字って事でw)
車窓から見える風景は、自然が豊かで目に優しい緑が広がっている。
母のような、姉のような存在だった。
ドアを開けると一面の銀世界だった。
街を彩るイルミネーションが雪の純白の上に思い思いの色を乗せている。玄関に飾られた赤いリボンと鈴のついたリースが粉雪にまみれている。
人通りの消えたアスファルトの上にはすでにふかふかの厚みが出来て、歩くとくるぶしの辺りまで埋めてしまう。片栗粉を踏むような足音が静謐のなかで控えめに囁いている。
真っ黒な空から軽やかに落ちてくるそれは到底氷の固まりには見えなかった。風がすっかり死に絶えて、体のすぐ傍でふわり、ふわりと舞い踊っている。まるで羽毛のようだと、僕は思った。
あいつの実家へみなで遊びに行った帰りだった。
ろくに舗装もされていない御室町の堤防は、黄金色の夕焼けに照らされている。
辺り一帯は夏草のむっとする匂いが充満していた。
草木がざわめき、一匹のトノサマバッタが出てきて、高く飛んで消えていった。
皆一緒だった。
隣にいるのが当たり前で、それぞれの存在が一体化してるみたいだった。
皆、同じ布団にくるまっているかのように心地よかった。
その暖かさが永遠に続けばいいのに、と徳之進はずっと思っていた。
校庭のざわめき
渡り廊下の日差し。
歩く君の残像を、
僕だけが追っていた−−
青春純愛の学園モノと思ったら強烈なヤンデレゲー
後2つはあるけど肝心の『恋』がねえぞ詐欺ゲー
ぽかぽか、うららか、実によろしい秋の朝。
冬服に衣替えした途端に小春日和とは、お天道様も意地が悪い。
しかしまあ、あったかいのに文句はなくて、みんなそれぞれいい笑顔。
……朝?
―――…ぼくは、空を見上げていた。
手を伸ばす。
掴めない。何も。
それでも、手を伸ばす。そこに何かがある訳じゃないのに。
何かを掴みたくて。
手にも足にも、まるで何の感触も感じられない。
落ち着かない。怖い。怖い。怖―――…
・ ・ ・ ・
――火曜の夜は、眠らない。
さて……着いたけど。
二年前の春、初めて浪人という言葉を知った時も、桜が咲いていた。
一年前、二浪という言葉をつづけて知った時も、桜が咲いていた。
そして、今年。
「くあぁ〜〜」
大きく伸びをしたその勢いのまま、ごろんと横になる。
空はどこまでも高く蒼い。
眇(びょう)――――――
例えば姉弟がいたとして
もし5年も離れて再会したとしたら、どんな言葉を紡ぐだろう
どんな態度で、顔で、気持ちで相手を迎えるものなんだろう
sれが、自分で言うのもなんだけど――仲のよかった姉弟だったとしたら?
僕は、何を期待したらいい?
好きな人に“好き”だと言えるのは幸せだ。
そんな当たり前の幸せも許されなかった遠い昔。
俺たちは出逢い、
――恋をした。
全ての物語は旅に似ている。