むしろ、花右京メイド隊チックなものを
電波を受信しましたので書かせていただきます。
内容は、PSP版で残念ながらサブキャラに降格となった香織理さんとうたちゃんメインです。
9レス分ありますので、よろしくお願いします。
うたちゃんさんに期待
「………」
「雪ちゃん、何読んでるの?」
部活帰り、僕が雅楽乃と雪ちゃんと一緒に喫茶店に立ち寄った時のこと。注文が来るまでの間、
雪ちゃんが読んでいた本が気になって聞いてみることにした。
「ああ、これですか? なんか主人公のフリーターがミッション系の女子高にバイトを申し込んだら、
いきなり神父の代理をさせられてしまうことになったって話です。神父に成りすますために
シスターから付け焼き刃で特訓されて……」
「まあ、それはなかなか面白そうなお話ですね」
「あはははは……」
雅楽乃は興味津々といった顔だけど、僕はさすがに他人事とは思えなくて乾いた笑いしか浮かばないよ。
〜金と銀のパンドラボックス〜
それから数日後の放課後、華道部が休みの日、僕は雅楽乃と雪ちゃんと一緒に
食堂でデザートを食べながら雑談をしていた。食堂には、ほとんど人はいない。
「それで雪ちゃん、例の本はどこまで読めたのかしら?」
「えっと……神父さんが生徒会長に無理やり迫られるシーン……ですね」
「無理やり……ですか……」
「ええ。この生徒会長さん、ストレスをそうやって晴らす設定なんです」
……まあ政治家とかそういう人間にそういう一面があるって話はよく聞くけど
女性のそういう人が男と関係して晴らすってのは珍しいな。
そういえば、初音さんからはそういった様子は見られない。きっと根っからの世話好きな人格者なんだろうな。
「けど、その後でこの生徒会長、主人公に口外しない様念押しするんですけど、あまり意味ないと思うんですよね」
「雪ちゃんはどうしてそう思うの?」
どういうことだろう? 意味がない、とだけ言われても、理由が分からないと返しようがない。
その言葉だけでは、どういう意味にも解釈できるし。
「誰も信じないんじゃないか、ってことです」
ああ、そういうことか。確かにそれはそうだろうな。
「たとえば、ですけど、もし私がうたちゃんが修身室であられもない格好で
1人で自分の身体をまさぐっていたって言ったら、信じる人がいると思いますか?」
な……!!
ゆ、雪ちゃん、なんてことを……!!
そりゃ雪ちゃんはあのことを知らないんだろうけど、そんなことありえないと思い込んでるんだろうけど……。
僕は雅楽乃の顔をチラッと見る。と、案の定、耳まで真っ赤になっていた。
「あ、あれ? どうしちゃったんですか、2人とも……?」
少し唖然としてた雪ちゃんだけど、何かに気づいたみたいな表情になる。やばい!!
「ま、まさかうたちゃもがもがもが……」
僕はとっさに雪ちゃんの口を塞いだ。
(雪ちゃん、この話題についてはこれ以上触れないほうがいいわ)
(そ、そうみたいですね……)
雪ちゃんが落ち着いたのを確認してからそう耳打ちすると、雪ちゃんも納得してくれたようだ。
よかった。一時はどうなるかと思ったよ……。
「あ、それでねうたちゃん、他の生徒の悩み相談の話なんだけど……」
雪ちゃんが話題をそらしてくれたことで、雅楽乃も普段の調子を取り戻してくれたみたい。
それからしばらく雪ちゃんの読んでる本の話で盛り上がった。ま、これにて一件落着、かな?
と、そう思ってたんだけど……。
支援
「みんな、頑張ってるわね」
翌日の放課後、僕は1人になりたくて屋上に顔を出していた。
「お姉さま」
「あら、雅楽乃? どうしたのかしら」
「いえ、お姉さまのお姿を見かけたので、どちらに行かれるのかと思って……」
「つけてきた……というわけね」
「はい……あの、ご迷惑でした?」
雅楽乃は少し申し訳なさそうに聞いてくる。相変わらず僕に妄信的みたいだけど、その辺のことを考えられるあたり、
やっぱりすごいと思う。
「そんなことはないわ。単に心を静めるために来ただけですから」
「では私がいらしてもよろしいですか?」
「ええ」
「あら、やっぱりここだったわね」
「香織理さん……」
なんか今日に限って意外な来客が多いな……。
「それにしても、御前がどうして千早教信者第2号になったのか、わかった気がするわ」
「……人をインチキ宗教の教祖みたいに言わないでください」
まあ、ある意味あながち間違いではないんだけど、僕だって好きでそんな風になったわけじゃ……
第1号の薫子さんの時に言われたときも思ったけどね。
「まさか千早が、御前が1人でしているところを目撃してたなんてね」
なっ! ど、どうしてバレたんだ!?
いや、落ち着け、まだ大丈夫だ。こっちは決定的証拠があるわけじゃない。
「な、何を言ってるんですか、香織理さん、何を根拠に……」
「昨日あなたたちが金髪の娘と食堂で話してたでしょ? それでその娘が御前がしてたって話したら信じるか?
って話題になって……」
あの時いたのか……それで雅楽乃の顔が真っ赤になったのを見て……。
「か、香織理さん、雅楽乃だってしていなくてもそんな話題を持ち出されたら、普通に赤くもなるでしょう?」
「違うわよ。問題なのは御前じゃなくて、千早、あなたの反応よ」
「えっ……?」
僕が慌てて言いつくろうと、香織理さんはおかしそうに返してくる。
「あの時千早は驚いてるってだけじゃなくて、何かに怯えてすくんでいるような反応でもあったわ。
つまり、それを知っててバレることをじゃないか、ってこと」
そ、そっちだったのか……。まずいな、もう確信してるみたいだし……。
「か、香織理さん、このことは……」
「言われなくても口外しないわよ。私もそこまで鬼じゃないんだから。まあ、どんな状況だったのか気にはなるけどね」
「わかりました。お話いたします」
「う、雅楽乃……」
な、何言い出すんだ、いったい。
「大丈夫です。千早お姉さまのお友達ですもの。申し上げて害になるようなことはなさらないでしょう」
まあ、香織理さんもそんなことはしないだろうけど、あまり話したことのない人に
ペラペラしゃべるような話じゃないでしょう?
「……というわけで、お姉さまはやり方を教えてくださっただけでなく、このことは秘密にしてくださると
約束してくださったのです! あれがお姉さまでなかったら、今頃私はどうなっていたか……」
雅楽乃が話し終えると、香織理さんは顔を引きつらせながら全身を小刻みに震えさせていた。
ああ、あれは間違いなく必死で笑いをこらえている状態だ。
まあ、僕の正体を知っている香織理さんとしては、女が男にオナニーの仕方の教えを請うなんて
滑稽ではあるんだろうけど……。
「香織理さん、我慢しておいでのようですね。私たちはここでお待ちしてますから、
どうぞお花を摘みに行ってらっしゃいな」
そう言って香織理さんにウインク。トイレででもこらえている笑いを吐き出して来い、ってこと。
香織理さんは察してくれたのか、こくんと頷いて立ち去っていった。
しばらくして戻ってきた香織理さんの顔には、まだ笑い足りないような痕跡が残ってた。
「ごめんね2人とも。気を遣わせちゃって。面白い話だったからついつい忘れちゃって」
「いえ、大丈夫ですよ」
「それでね雅楽乃さん、そういう相談なら、私も相手になってあげるわよ。千早よりはその手の知識は豊富だと思うし」
香織理さんはできれば名前で呼んでほしいと言う雅楽乃の要望にこたえてそう言う。
それにしても、僕よりは豊富“だと思う”って……男で女性に免疫のほとんどない僕より少なかったら問題だって。
「ありがとうございます。その時はよろしくお願いしますね」
最後には香織理さんと雅楽乃は和気あいあいと話していた。それはよかったんだけど、何かいやな予感が……。
支援
「ねえ、千早」
「なんですか?」
その日の放課後、僕はいつものように部屋の模様替えの手伝いを頼まれて香織理さんの部屋に来ていた。
「千早はどうして雅楽乃さんが自慰してる部屋に入っていったの?」
「ぶっ……!」
か、香織理さん、作業している時にそんなこと聞かないでください!
危うく持ってるものを落としそうになったじゃないですか!
「どう……って」
そんなもの記憶から完全に抜け落ちてしまってるから、すぐには思い出せないよ。
「確か歩いてたらうめき声みたいな声が聞こえたから、病気の人でもいるのかと思って……」
「なるほど……でももっとつやっぽい声とかは聞こえなかったの?」
「聞こえましたけど、ドアを少し開けたら鍵がかかってなかったから、もし香織理さんが玲香さんと一緒にいた時のように
なってたらかかってるはずだから病気の方に違いないと思って見たら……」
「ハズレだったと……」
「ええ……でもドアを閉めるにしても動揺のあまり音を立ててしまいそうですし、こちらに人が
何人か来そうになっていたので仕方なく……」
これで合ってるよね、確か……。
「ねえ、千早。何も知らないフリして『誰かいませんか?』ってドアを叩けばよかったんじゃないの?」
「あああああっ……!!」
ガーン!!
な、なんでそんなこと見落としてるんだ……僕は……。
「あ、あのね香織理さん……僕は本当にそれしか考えつかなくて……」
「わかってるわよ。人っていうのは迷ったりパニックになったりすると、時に訳のわからない判断をするものだし、
それをネタに雅楽乃さんに何かしようなんて、そんな度胸千早にあるわけないしね」
ぐっ……まあ、それはそうかもしれないけど……。
「そう言われると、それはそれで傷つくんですけど……」
「あら、じゃあ女の子に手当り次第に手を出す変態扱いした方がよかったかしら?」
「……全っ力で辞退いたします!」
終始おかしそうな表情を崩さない香織理さんに、僕からの感情を込めた精一杯の反撃だった。
「それにしても、香織理さんが雅楽乃のしてたことにそんなに興味を示すなんて……」
「あら、意外だった?」
そういえば、性関連のことで相談に乗るって言ってたな。
「念のために言っときますけど、雅楽乃の相談に乗ると言っても、変なことはしないでくださいよ?」
「変なことってどんなこと?」
「あ、あのね……変なことは変なことですよ!」
「それじゃわからないわよ」
く……香織理さん、絶対わかって聞いてますね。相変わらず意地が悪い。
「まあ、心配はいらないわよ。もうプレイガールはやめたし、やめてなくても気持ちが私に向いてない人に
手は出さない主義だしね」
まあ、ある程度遊んだらやめてくれるからどうしよう、とは今さら思わないけど。
「それと、私の興味はむしろ雅楽乃さんにオナニーのやり方教えてって言われた千早の心境の方にあるんだけど」
「………!!」
そ、それを聞きますか、香織理さん!
支援
「『どうしようどうしよう』とか『ひーっ、勘弁してーっ』とか思って、最後は頭の中大パニックになって
動悸を必死に抑えながら目の中でチカチカする星を数えていた……ってとこかしら?」
「……あまりにも的を得た推測、本当に感心しますよ」
「ふふふ……その様子が目に浮かぶみたいで、おかしいったら……」
僕の怒気をはらんだ返事にも、香織理さんは無反応だ。
「まあ、よくあそこで押し倒したりしなかったと、自分で自分を褒めてあげたいですよ」
有○裕子さんじゃないけど、本気でそう思うよ。
「雅楽乃さんからすると、案外そっちの方がよかったりして」
あのね……。
「……でも僕のことを100%信頼して救いを求めてるみたいでしたから、そんなこと出来ませんよ」
「じゃあ私も千早を褒めてあげるわ。普通の男の子なら10人が10人とっくに押し倒してるところを、
自分の中の“女の子”を最大限に引き出してよく我慢したわね。さすが聖應のエルダーの名に恥じない立派な精神だわ」
「がはっ……!!」
ガーン!!
「あ……あはは……あははははははは……」
そ、それって要するに僕の心が完全に女の子のそれになってしまってるってことじゃないか……!
「あら、逆効果だったかしら?」
「普通の男なら押し倒して……お姉さまに恥じない精神……」
「……ねえ香織理さん、千早、いったいどうしちゃったの?」
夕食が始まっても、千早は壊れたままぶつぶつつぶやいていた。薫子は首をかしげながら聞いてみる。
「まあ、ちょっと調子に乗って遊びすぎちゃったかな、と」
「香織理お姉さま……個人的な趣味に口を挟むべきではないと存じますが、
もう少し千早さまのこともお考えになってくださいませ」
そう言う史も時折千早を傷つけるようなことを口にするのだが……。
「悪かったわよ。ここまで傷つくとは予想外だったもの。でも千早もいつもみたいにちょっとしたら立ち直ると思うし、
これからはもう少し考えて話すことにするから……」
「くれぐれもお願いいたします」
「ちはや、なんで壊れてるの?」
「さあ? でも香織理ちゃんがしばらくすれば治るって言ってたから、大丈夫かな?
それでも治らなかったら私たちもなんとかしましょう?」
「はつね……うん!」
正体を知らない初音と優雨は疑問を持ちながらも香織理を信じるしかなかった。
「おおっ! 千早お姉さまをここまで叩きのめすとは、さすがエスマシーン、エスの権化の香織理お姉さまあいたたたた!!」
ぐりぐりぐり。
「あのね陽向、優雨ちゃんの前でそういうことを口にするのはおやめなさい」
「えすって、何?」
「あ、それはですね、アルファベットのRとTの間ですよ……」
「ん……」
優雨は納得いかないという表情。
「優雨ちゃんは知らなくていいことよ。私たちの間での暗号みたいなものだから」
「かおり……わかった」
要するに聞いてはいけないことだと思い、引き下がる優雨。そんな会話を続ける傍らで……。
「ううっ……」
1人落ち込んでいる白銀の姫君を、寮のみんなが温かな目で見守っていた。
Fin
以上です。
>>433さん、何度もご支援ありがとうございます。
おかげさまで久しぶりに連投規制に引っかからずに書けました。
>>430さん、この話はうたちゃんは少し弱いでしょうか?
そう感じたなら申し訳ありません。現在ちーちゃん×うたちゃんの話も構想中です。
おっとその前に、由佳里ちゃんの聖誕祭があるか……どうしよう……。
まあ、何はともあれ、お目汚し失礼いたしました。
乙なのですが
>>441 的を得た、は誤用だったやに思います。
「的を射た」「当を得た」いずれかではないかと。
関係ないけど「食指が動く」と「触手を伸ばす」を混同することがある
的を得た<<「当を得る/的を射る」の誤用>>
ってATOKさんに言われるな
物書きならATOKさんマジオススメ
触手は伸ばすなよエロイ事になるから
需要を読まずに以下略
「ね、ね、千早! 4月28日にPSP版だって!」
ある日の事。
楽屋で渡されて居た台本に目を通して居た所、薫子さんが何やら雑誌を抱えて
やって来た。
「PSP版、ですか?」
「そう、これ!」
そう云って渡されたゲーム雑誌のページには、
『乙女はお姉さまに恋してる 二人のエルダー Portable 4月28日発売予定!』
と大きく書かれて居た。
「なるほど…今日からの収録と云うのは、コレの為なのですね」
そう。
僕達、通称『おとボク2チーム』は、去年の収録からおよそ一年を経て再び
集められたのだった。
「うん、そうみたい。しかも今回は、ちょーっと配役変わるらしいよ」
「…配役が変わる?」
それは初耳だった。
とは云え僕は先程楽屋に着いたばかりなので、まだ去年との違いとかを
把握はして無かったのだが。
「…ふう、こんにちはっと。あら、薫子に千早、久しぶりね?」
と、そこに香織理さんがやって来た。
「ああ、こんにちは香織理さん、お久しぶりですね」
「あ、香織理さん久しぶりー」
「今回の収録はPSP用ですって? また長丁場になりそうね」
「ええ。今回も宜しくお願いします」
「ヨロシクね」
「ええ、こちらこそ。…ふふっ、また楽しくなりそうね」
その後他のメンバーも集まって来て、ほぼ一年ぶりに全メンバーが集まった。
すぐに台本の内容説明に入ったのだけれど…。
「わ、私と香織理お姉さまが、サブヒロイン………ですかっ!?」
配役説明に入った所で、雅楽乃が声をあげた。
「いやー、すいません雅楽乃お姉さまに香織理お姉さま…いかんせん、今回は
全年齢対象と云う事で、前回の話からつじつまを合せる事が出来無かったのですよ」
シナリオ兼監督の陽向ちゃんがそう云いながら雅楽乃に手を合わせて居る。
「陽向…貴女もしかして、胸の大きさで変更役を選んだりして無いわよね?」
「いいっ!? そ、そんな事ありませんよ香織理お姉さま! ただの偶然ですよ、偶然!」
「ふーん………ま、楽が出来るなら私はそれでもいいけどね」
あくまで余裕の表情の香織理さん。
一方の雅楽乃は見るのも哀れな位に凹んで居た。
「ああ、今回も千早お姉さまとの蜜月があると思っていましたのに…」
「う、うたちゃん、しっかり…」
傍らで雪ちゃんが雅楽乃を慰めて居る。
「千早お姉さま…雅楽乃は、例えサブヒロインに降格されても、お慕い申し上げて
居るのですよ…」
「あ、ありがとう雅楽乃。それと『お姉さま』は出来れば作中だけにして欲しいかな…」
時々作品と現実がごっちゃになる事が多いからなぁ、このチームは。
「…でもさ陽向ちゃん、今まで移植でヒロインが増える事はあっても、減る事って
無かったと思うんだけど?」
薫子さんがもっともな疑問を口にする。
「そうだね。そこはどうするの?」
「お任せ下さい! 勿論そこもちゃんと考えてありますとも!」
そう云うと陽向ちゃんは、すぐ隣に座って居た初音さん姉妹を指差して。
「PSP用に、初音お姉さまと優雨ちゃんがメインヒロインとなるシナリオを追加させて
頂きました!」
おおー、っと、皆から声が上がる。
「え? わ、私ですか!?」
「…私?」
少し驚いたような顔の初音さんと優雨。
「な、何だか恥ずかしいですけれど…これで私と優雨ちゃんにも、千早ちゃんを
ゲット出来るチャンスが巡って来たのですね!」
がくっ。
その言葉に、思わず僕は机に突っ伏してしまった。
「…いえあの、初音さん…げ、ゲットって…」
僕はポ○モンか何かですか。
「………ちはやを、げっとだぜー」
「ゆ、優雨…だからそのしゃべり方は作中だけに…」
「…残念。でも、千早は優雨の天使さまだから、ちょっと嬉しい、かも」
「そうですねー。せっかくテーマ音楽まであるのに、私も優雨ちゃんも前回は
おみそでしたからねー」
そう云いながら手を取り合って喜ぶ初音さんと優雨。
「な、何だか凄く複雑なんですけど………」
僕としてはこれは喜んでいい、のだろうか?
「ま、私は責任を取って今回も端役に専念させて頂きますよ」
陽向ちゃんはそう云って、あははと頭をかいて居た。
「でもそうですか、今回は初音と優雨がライバルになるのですか。また競争が
激しくなりそうですよ、薫子?」
「ちょ、ちょっとケイリ、変な事云わないでよ」
「そうですね。それでなくても千早さまは前回の撮影の時に初音お姉さまと
優雨さんとのシナリオが無い事を残念がっていらっしゃいましたし」
「いや、あのね史………」
「…ふーん…それはどう云う事かなー、千早?」
「あ、いや、そのですね薫子さ………」
振り返ると、にこやかに微笑みを浮かべながら台本を丸めて大上段に構えた
薫子さんが居た。
「全く…どうしていつもこうぐだぐだになるのかしらね、おとボク2チームは?」
薫子が千早を台本でばしばし叩く様を眺めながら、香織理がふうっと溜め息を吐いた。
「…まあ、それがうちのチームの良い所じゃないのかしら?」
隣に並んで来た沙世子が、苦笑いを浮かべつつ同じ様に眺めて居る。
「…そうなのかもね」
同じ様に苦笑いしつつ、香織理はそんな沙世子の言葉に同意した。
「それはそうと…貴女は今回の配役、納得してるの?」
そんな二人の方に視線を向けたまま、沙世子は香織理に尋ねて来た。
「納得?」
「ええ。前回の収録の後、貴女こっそり私に云ってたじゃない。
『うっかり本気になりそうだった』って」
そう云いながら、ちらりと香織理の方を見る沙世子。
「…まあ、それ位の感情を込めないと、良い役は出来無いからね。今回は全年齢って
事を考えると、前の話は確かに焼き直しずらかったのじゃないかしら。………それに」
「…それに?」
「それに、『妹』の采配ですからね。それが適役なんだろうって、私は信じるわ」
「………なるほど、ね」
香織理のそんな言葉に納得したのか、沙世子はふっと微笑んだ。
「それにしても…そうなると、今回は沙世子との喧嘩シーンも無いのかしらね?」
「な、ちょ、け、喧嘩って何よ!? あ、あれはシナリオ上での役であって…」
「あら、その割りには随分ノリノリでやってたじゃないの、副会長さん?」
「………うー………」
香織理のそんな言葉に、ぷーっと膨れる沙世子。
「ふふっ、冗談よ、冗談。機嫌直しなさいな」
「知らないわよ、もう」
ぷいっと、そっぽを向く沙世子。
「はいはい、私が悪かったわ。駅前のケーキ屋さんのモンブランで赦してくれるかしら?」
「またそうやってすぐ物で懐柔しようとするし………苺のショートケーキも追加で
手を打ってあげる」
そう云った沙世子は、少し顔を赤らめて居た。
「それはそうと、アレ、そろそろ止めないとじゃない?」
「え? ………あら」
そう云って沙世子が指差した方を香織理が見ると、薫子の振り下ろした台本を
白刃取りの要領で止めて居る千早の姿があった。
「まったくもう…役の上での話だって何度も云っているじゃありませんか」
打ち合わせが終わって、僕と薫子さんに割当られた楽屋に引き上げて来た時に、
先程の話が出て来たので、溜め息混じりに僕はそう云った。
「あははは! ゴメンゴメン」
そう云いながら薫子さんは手を合わせて居る。
「…でもそうですね。何かイベントが追加されて居たりするみたいですし、今回の
収録も大変になりそうですね」
相変わらず分厚い台本をぺらぺらとめくりながら、ふとそんな言葉が口をついた。
前回の収録も、まあ色々な意味で大変だったのだけれど。
「そうだねー。…まあ、その…今回も宜しくね、千早」
そう云いながら薫子さんが出して来た手を。
「ええ、宜しくお願いします」
僕はしっかりと握った。
「…あ、そうだ」
と、薫子さんは何かを思い出したように、壁際に置いて有ったバッグから何かを
取り出すと。
「…はい、これ千早に」
「…これは…」
「ちょっと早いけど、バレンタインのチョコ。一応、手作りなんだけど………」
少し顔を赤らめて、包みを僕の方に差し出す薫子さん。
「…ありがとうございます。これは、ホワイトデーのお返しは頑張らないといけませんね」
そんな事を云いながら包みを受け取ると。
「…うん、それも期待したいけど………今も、少し期待してもいいかな?」
薫子さんがそんな事を云いながら隣に座って来た。
「………全く、作中もそうですけれど…かないませんね、薫子さんには」
「えへへ………」
そう云って近寄って来たお姫様に、僕はそっと口づけをしたのだった。
まいど、5時起きとか云う何かです
と云う事で、実はドラマだった的な見立てでちらりと書いて見ました
最後の薫子のバレンタインな話はやや蛇足だったかなとちっと反省
>>447乙。
それにつけても空気嫁ね(ry
おつかれさんです
みんなあれこれ考えてくるなぁ
PSP版で各キャラのバレンタインイベントが追加される
可能性があるのですが、やはりバレンタインが近いので
それに基づいたSSを作ってみました。
淡雪√で9レスぐらいを予定しています。
「わぁー、また失敗した」
バレンタインデー前の休日、淡雪は自宅で手作りチョコの
制作に励んでいた。
そう・・・数週間前に愛を誓ったあの人のために・・・。
しかし淡雪は今まで手作りチョコの経験が皆無のうえに
料理スペックが0に等しかったために失敗作続きとなり、
あらかじめ用意していた材料を全て使い果たしてしまったのだ。
「こうなるんだったら恥を忍んで料理が得意な友達に指導
してもらえば良かった・・・」
とは云ってもバレンタインデーは三日後、今から指導して
もらっていては間に合わない。
淡雪は色々と思考をした挙句、結局は市販の出来合いのチョコ
を買いに街へ出かけることになったのだった。
淡雪が購入したのはごく一般的なバレンタイン用のチョコ。
史の話によると千早がたまに作る洋菓子はプロ顔負けらしいと
のことだったので生半可のものを渡すよりかはそちらの方が潔い
ように思えたし、高価なものを渡すのは自分のキャラに合って
いないようにも思えたからだ。
淡雪はチョコを購入した洋菓子店を出ると隣のCDショップに
目が映った。
まだ少し時間に余裕があったのでちょっとCDショップを覘いて
いくことにした。
淡雪が店内をぐるりと回ってみるとあるCDに興味を惹いた。
まるで自分と千早のことを指すかのような曲の題名・・・。
そう考えると淡雪はそのCDを手に取り、レジの方に向かった。
淡雪がレジで会計を済ませようとすると後ろから。
「あら雪ちゃん、休日にこんなところでお会いするなんて」
淡雪が後ろを振り返ると雅楽乃の姿があった。
「音楽はお花に良いインスピレーションを与えてくれますから
たまにあの店でCDを購入しているのです」
CDショップを出た後に駅へ続いている商店街を歩いていると
雅楽乃がそう話しかけてきた。
「ところで雪ちゃんはあまり音楽に興味を持っていなかったと
存じていますが、今日はどのようなCDを購入したのですか」
「うたちゃんに買ったCDを見られるのはちょっと恥ずかしい
ような気もするけど・・・」
淡雪はそう云うと顔を少し赤らめながら購入したCDを雅楽乃に
渡した。
「これはもしかして雪ちゃんは千早お姉さまとご自身を指すような
気がして購入されたのですか」
「さすがにうたちゃんは鋭いな・・・」
「たしかこの曲は作曲者自身、深い意味があって題名を付けたわけ
ではないと存じておりますが、題名が示すとおり魅惑的な旋律が
次々と出てくるとても素晴らしい曲です」
「へぇー、うたちゃんはこの曲を聴いたことがあるんだ」
「たまに千早お姉さまを想いながらこの曲を・・・こほん、ところで
雪ちゃんがこの曲を購入するなんて秋頃はお姉さまに対してあんなに
ツンツンしていたのに今やデレ期に突入ですね」
「うたちゃんたら、もぉーからかわないでよ」
その夜、淡雪はバレンタインデー当日のことを思索していた。
千早はエルダーだから昨年の奏お姉さま同様に数多くの生徒から
チョコはもらうであろう。
しかし彼女達はあくまで女性としての千早にチョコに贈るので
あって、男性としての千早に贈るのではない。
しかも自分と千早は恋人関係である。
一応、チョコは購入したもののごく一般的なもの。
千早との恋を再確認する意味でもどこかで差別化を図りたい。
そこで何かしらのサプライズイベントをさっきから考えているの
だが、淡雪にはなかなかこれといった案が出てこなかった。
一瞬、自分自身をリボンに包んで・・・とも考えたがあまりにも
ベタだし、それについ先日の家元試験の後に自分自身をプレゼント
したばかりである。
考えに行き詰ったので気分転換で淡雪は昼間購入したCDを
聴いてみることにした。
CDプレーヤーの再生ボタンを押すと雅楽乃の云うとおり
魅惑的な旋律が次々と出てくる。
「そういえばうたちゃんはこの曲をたまに聴いているって
云っていたよね」
そう思いながら聴いていると、
「あっそうだ、これならどうだろう」
淡雪の頭の中に突然、閃きが浮かんできた。
そして曲の再生が終了すると淡雪は携帯電話を手に取り、
おもむろに電話を掛けた。
しーえんっと
バレンタインデー当日の放課後、千早は三日前に淡雪に
電話で指定された待ち合わせ場所に向かった。
「すいません雪ちゃん、お待たせしてしまいました」
恋人同士とはいえ校内なので千早はソプラノボイスの
お嬢様口調で淡雪に話しかける。
「ところで雪ちゃん、いつもだったら修身室あたりを
待ち合わせ場所にするはずなのだけど、今日に限って
なぜ第二音楽室なのかしら?」
「今日は特別の日だから二人きりになってチョコをお渡し
したいと思いまして、だから修身室では茶道部の子がいる
可能性もありますし・・・それに前に千早ファンクラブの
子からお姉さまはたまに屋上や第二音楽室に一人きりで
居ることがあると聞いていましたから」
「それよりもお姉さま、これは私からのチョコです。
本当は手作りしようと思って頑張ってみたのだけれども
失敗してしまって・・・ごく普通の市販のものになって
しまいました。お姉さまの期待に答えらなくて申し訳
ありません」
「ありがとう雪ちゃん・・・私にとっては雪ちゃんからもらう
こと自体に意味があるのであって、チョコの豪華さや味とかには
なにも気になんかはしていませんよ」
「ありがとうお姉さま・・・そこで普通のチョコだけでは恋人
として、申し訳ないと思いまして、もうひとつプレゼント・・・
いやもしかしたら私からのお願いに近いのかな」
「雪ちゃん、それは一体なんでしょう」
支援
「それは・・・降誕祭のダンスパーティでお姉さまとちゃんと
踊れなかったら、ここでもう一度、一緒に踊って欲しいのです」
「そういうことでしたら喜んで」
「そのために特別な曲を用意しましたので・・・」
淡雪はそう云うと第二音楽室備え付けのコンポにCDを入れて
再生ボタンを押した。
程なくして曲が流れ始め、二人は向かい合いダンスを始める。
そして淡雪が千早の耳元で囁くように
「ところで千早、この曲の題名知っている」
「レハール作曲のワルツ『金と銀』ですね。数多ある円舞曲の中
でも至高とされている名曲です」
「千早ったら何でも知っているのね・・・ズルイ」
そのまま二人は金と銀を散りばめたような魅惑の旋律にのって、
優雅に踊り続けたであった。
Fin
以上です。
ワルツ「金と銀」はおとぼく2発売前より私の愛聴曲でしたので
いつかはSSに活用しようかと思っておりました。
ところで本編はなぜJ・シュトラウスU世のマイナーなワルツ
なんでしょうね?
○
>>467 乙 もうお前に用はない
く|)へ
〉 ヽ○ノ
 ̄ ̄7 ヘ/
/ ノ
|
/
|
/
>ところで本編はなぜJ・シュトラウスU世のマイナーなワルツ
あれって原曲あったんだ
>>467 お疲れさまです。
宝のワルツってマイナーですかね?
美しく青きドナウや皇帝円舞曲に比べれば知名度は落ちますが……。
選曲にあまり深い意味はないのだろうと勝手に思っていますが、
どうなんでしょうね。
>>467 乙です。
しかし、結構音楽関連に知識がある人がいてびっくり。
俺にはこんなSS書けないわ・・・。
乙じゃのう
俺も何か書こうかのう
いま471がいいことを言った。
おとボク2をプレイしてみて奏√の場合の
やるきばこーやるきばこ2−エトワールの再構成と
おとボク2でのシナリオを再構成してまとめてSS化したものを
読んで見たい衝動に悩んでおります。
奏ちゃんEndと史ちゃんEndがとてもツボに・・・
ロリコンっていわれても仕方が無いとおもうがそこがイイ!
__[警]
( ) ('ω`)←
>>473 ( )Vノ )
| | | |
475 :
473:2011/02/12(土) 20:17:01 ID:hHczqvSH0
>>474 __[警] 473
( ) ('ω`)oO<まことに申し訳ありませんはしゃぎ過ぎました。
( )Vノ )
| | | |
476 :
473:2011/02/12(土) 20:36:25 ID:hHczqvSH0
でも考えたら奏ちゃんも黒澤 隼人みたいな奴に結局いつかは・・・
それを考えると瑞穂ちゃんと一緒になってほしいと思うのだよ
銀色の髪のオペラ座の怪人に連れ去られたり
セイレーンの君や鏑木の奥様にお持ち帰りされたり
騎士の君と一緒に王国作ったり
してもいいのよ!
>>473 自分で書けばいいじゃなーい。
他人が書くのを待つんじゃない。
自分で作るんだ。
>>476 俺の脳内では奏ちゃんはルート外だと劇団やりながら鏑木家でメイドしてることになってる
480 :
473:2011/02/12(土) 23:23:11 ID:hHczqvSH0
>>478 実はそれらしい事を言われると思って中身の設定とか色々練り上げてます
>>479 奏ちゃんの演劇部に入部したきっかけとか聞いてると
奏ルートでは劇団に所属してないほうがいいような気がしてきてます。
今構想でその辺の脳内でのつぶしをしながらSS書くためのメモを取りためている最中です
鏑木家宮廷劇団にしてしまえ
もはや鏑木、御門などのラインがハプスブルグみたいにw
最近規制で書き込めなかったのが、ぎりぎり間に合ってよかった。
のんびり行きます。8本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『ちょこれぃと』
親愛なる友人に。
尊敬すべき上級生に。
そして、あこがれのお姉様に。
デパートの、専門店の、菓子店のチョコレート売り場が賑わう頃。
櫻寮でも、ささやかな騒動が‥。
***
「んーと。やっぱり千早にチョコあげなきゃダメかなぁ‥って」
「あら。薫子はあげたくないの?
日頃、あそこまでお世話になっているってのに。」
夕食時、薫子の表情に面白そうな匂いを嗅ぎつけた香織理は
薫子の自室を強襲し、その悩みを聞き出すことに成功していた。
「そ、そんなことないって‥。うん。
本当に千早にはお世話になってるし。」
「そうよねぇ‥。
試験前。宿題。手作り弁当。夜食。デザート。
エルダーとしての役割もかなり千早に助けて貰ってたようだし、
そういえば淑女としての立ち振る舞いとかも教わってたわよね?
こう整理してみると、千早もなんというか‥ 物好きよねぇ‥(しみじみ)」
「ぁぅー」
自分の至らなさを列挙された気分。
そりゃー薫子も凹みます。
「女学院のお祭り騒ぎ。
日頃の感謝の気持ちなんだから、なにも躊躇うことはないじゃないの。
‥‥ あぁ、そういうことね‥。
ふふっ。薫子もようやく意識したってことか」
「ちょっ!ちがうって!」
「なるほどねぇ。 そうよねぇ。そうよねぇ。
男性へチョコを渡すだなんてねぇ。
そりゃー薫子お嬢様も、照れちゃうわよねぇ。
あ。薫子、もしかして男性へのチョコって初めて?」
「あぅー ///」
ここまであからさまに指摘されると、薫子は頬を染めまくるしかなく。
「ちなみに、私は当然あげるわよ? 初音も嬉しそうに準備してたし、
陽向と優雨ちゃんも先週デパートにいってたはずよ?」
「そ、そうなの‥?」
「ここでまさか薫子だけがあげないだなんて、千早、きっと凹むわよねぇ」
「だ、だよねぇ‥。」
(自分が渡すには正直恥ずかしい。
というか、自分にはそんなキャラは向いていない。
でも、なんというか、千早には本当にこの1年お世話になっているし、
感謝の気持ちというか、親愛の表現というか。
うん。そうよ。感謝の気持ちなら当然よね。うん!)
と、背中を押されたこともあり、
少し前向きに取り組もうと心を決めた薫子を。
香織理は面白そうに生暖かく見守っていた。
***
まぁ、そんなこんなで当日の朝。
「おはようございます。初音さん。」
「あ、おはようございます。千早ちゃん。史ちゃん。いまお茶いれますね〜」
「お手伝いいたします。」「史ちゃん、ありがと」「ふふっ」
あいかわらずの和み空気が漂う食堂にて。
「おはよう。ちはや。はつね。ふみ。」
「皆さん、おはようございます!」
「おはよう。二人とも今日も元気そうね。」
「えぇ、それはもぅ! 今日は入学前から楽しみにしていた日の1つですから。」
「ふぅん?(なにかあったっけ?)」
「おはよう。あら、今日はみんな早いわね。 あとは薫子だけかしら?」
「そうですね。まだ眠っていらっしゃるようです。そろそろ起こしに参ろうかと‥」
薫子を除く寮生が集まってきた。
「初音。やるなら朝のほうがいいと思うんだけど‥」
「そうよねぇ‥。きっと登校後は千早ちゃんも薫子ちゃんも、例年通り、大変になると思うし」
「よし。陽向、優雨。アレ持ってらっしゃい。」
「はいっ!」
「うん。」
ぱたぱたと自室に向かう陽向と優雨。
史もそのうち戻ってきたりする。
そんなこんなで数分後。
いまいち理解していない千早を前に、初音が口火を切った。
「千早ちゃん。本当にいつもありがとうございます。」
「えっ? あ、ありがとうございます‥」
「これは私から。ほんと千早がきてから日々が楽しくてしかたないわ。」
「はぁ‥。」
「ちはや。いつもありがと。」
「優雨。えぇ、どうもありがとう。(にっこり)」
「千早お姉様。これは私からの気持ちですっ!」
「ありがとう、陽向ちゃん」
「千早様。これは私からになります。」
「史も‥。えぇ、ありがとう。」
5人から、感謝の言葉とともに渡されるラッピングされたチョコレート。
千早とてさすがに、その意味くらいは理解している。
「そういえば今日はバレンタインですか‥。
すいません。私は何も用意していなくて」
「いえいえ。千早ちゃんには本当にお世話になっていますから。(にっこり)」
「学院でも、やっぱりこういうイベントは皆さん気にされるんですか?」
「千早様。そのような認識では、今日という一日を乗り切るのは難しいかと。。」
「‥‥へ?」
「そうよねぇ。今年は2人いるし、例年以上かしらねぇ‥」
「‥な、なにがでしょうか?」
「ふふふっ。まぁ、もうすぐわかるから。
楽しみにしてなさいって。ね、千早・お・姉・さ・ま。」
***
などと、のんびり会話をしている最中に、
もう一人のエルダーがようやく起き出してきた。
「ふゎ〜。みんなおはよー。」
「かおるこ。おっきなあくび。」
「ふふっ。薫子ちゃんったら。」
「冬の朝はどうにもつらくてー。布団が離してくれないのよー」
「薫子。あなたがなかなかこないから、もうみんな済ませちゃったわよ?」
「ん? なにを? ‥‥って‥もしや?」
「えぇ、あとは薫子だけよ。ほら、さっさと取ってくる!」
「う、うん!」
慌てて部屋に戻る薫子を見送る千早。
「これは、薫子さんからもチョコを戴けてしまうんでしょうか?」
「うん。私たちとは別だったけど、薫子ちゃんも買いにいってたようだし」
「なるほど。それでは‥、ホワイトデーのお返しは、気合いを入れさせて戴きましょうか。」
「あら。千早の本気スイーツとなると、かなり期待できそうね。」
「おぉー。それは楽しみですねぇ」「うん。たのしみ。」
「なんか、私たちのほうが得をしちゃうかもですね」
「いいじゃないですか。私も初音さんを始め、皆さんにはお世話になっていますから。
それに、ホワイトデーというものは3倍返しするものらしいですし。」
「ふふっ。それじゃあ、千早ちゃんの本気を楽しみにしてますから。」
「えぇ。後悔はさせませんから。」
***
支援
甘い会話が続く中。
可愛げなラッピングを片手に、ようやく薫子が食堂に戻ってきた。
今までの会話の流れから。
それを出迎えるかのように席を立ち、千早は薫子に正対する。
「‥。(うっ)」
「‥‥。(にっこり)」
そのままの勢いで渡してしまえばいいものを。
千早の視線に一瞬たじろいだがために、タイミングを逃す薫子。
「‥‥‥。(うぅ〜 ///)」
「‥‥。 (?)」
寮生一同も興味深げに見つめるものだから、薫子の緊張は増すばかり。
「ち、千早っ!」
「はい。薫子さん。(にっこり)」
なんとか糸口をつかもうかと、決死の覚悟で声を出すも、
千早の無垢な笑みにあえなく阻まれ、思考はどんどん真っ白に。
(薫子ちゃん、頑張れー)
(なんで薫子お姉さまはあんなに緊張しているんでしょうか?)
(薫子ったら、他人にチョコあげるの初めてなんですって(にやにや))
(おぉー。薫子お姉さまの初バレンタインですかー)
(かおるこ、がんばれ)
微かに響く外野の声が、ぐるぐる渦巻く思考をさらに加速する。
頬ばかりかすでに耳まで真赤に染まり。口内は渇き、飲み込むつばも湧いてこない。
そんな状況に、背中を押すのか追い打ちをかけるのか。香織理が手近にあった裏紙に
さらさらとマーカーで文字を記し、薫子に見えるよう捧げ持つ。
『ちはや。あなたがずっと好きでした(はぁと)』
それをみて、大喜びな初音と陽向。
声を出すまいと必死に堪えながら、その身をぷるぷると震わせる。
当の薫子本人は、そんなからかいに突っ込む余裕もなく、
脳みそ真っ白。思考硬直。身動きもとれずに、ただひたすら立ち尽くすのみ。
外野の騒動に気づいた千早は、なにやってるんですかとため息一つ。
薫子に向き直り、チョコと一緒にそっとその手を握り抱く。
「ありがとうございます。薫子さん。(にっこり)」
「う、うん‥‥。///」
なぜか涙腺の緩んでしまう薫子に。
微笑みを浮かべながら、優しくその髪を撫でる千早でした。
***
「もう! 香織理さんったら! 冗談も時と場合によるんだってば!」
「薫子、ごめんごめん。ほんと。もうしないからー」
「知らないっ!(ぷいっ)」」
しばらくして再起動した薫子は、当然憤慨するばかり。
必死に謝る香織理に背を向け、なかなかご機嫌は直りそうにもない。
だがしかし、香織理はそんな薫子を後ろからそっと抱きしめ
耳元に小声で話しかける。
(で、どうだったのよ。千早にチョコあげた感想は‥?)
(えっ! ‥‥・知らないってば!)
(まったくもう‥。 どうしてこんな強情に育っちゃったのかしら)
(ふん。どうせ私は意地っ張りの泣き虫ですよーだ‥)
(はいはい。でもまぁ、今日のこの事はきっと将来どこかで振り返る思い出になるから。
未来の薫子への贈り物ってことで勘弁してもらえないかしら。)
そんな風には考えたことのなかった薫子は、指摘されて少し考え込む。
この輝かしい1年間。隣にいてくれた大切な友人。
うまく整理できてはいないけど、好意だって抱いている。 たぶん‥。
その複雑怪奇な想いの丈を告げるチャンスと考えれば‥。うん、確かに‥。
(そう‥かもね‥。うん。 きっと‥そうだよね‥。)
薫子の機嫌が回復したのを確認し。
香織理はは高らかに宣言する。
「さて。それじゃあ。そろそろ登校しましょうか。
薫子。すっかり満足しているようだけど‥ 今日はまだまだ長いわよ。」
「へ‥‥。 あっ! 忘れてたー!!」
薫子と。なにも理解せず、ニコニコと眺めているもう一人のエルダーの
甘く切ない、激動の一日はこれから始まるのであった。
-----------------------------------------------------------------------
途中、規制くらっちゃいました。支援thxでした。
乙
くそ・・・・・・2828がとまらなかったわ。
相変わらず香織理さんはいいポジションだw
492 :
473:2011/02/13(日) 10:14:23 ID:FGA3jPIc0
乙です
ちーちゃんの本気・・・ごごり
乙です
スゲェおもしろかった。
おいちゃんとホワイトデーのSSは用意してあるんだろうな?
準備してないとか言ったらぶっとばすぞ
乙
やりとりが目に浮かぶようでしたw
. ∧,,∧. ∧,,∧
(´・ω・) (・ω・`) いいバレンタインSSだったねー
∧,,∧(つ つ (つ と) ._∧∧
( ´・ω) ̄旦 ̄ ̄ ̄旦 ̄\(ω・`*)
/ つ 旦 ∧∧ ∧∧と ヽ プスゥ
. (_ ゝ※\____( ´・)_(・` )_\_ノ=3
_。_ \\ ※ノ( )※( )※ヽ、旦
c(_ア \`ー.ノO-OヽノO-Oヽー-ヽ
(;;゚;;)  ̄旦  ̄  ̄旦 ̄
(;;゚;;)(;;゚;;)
乙
もう目に浮かぶようでにやにやした
498 :
473:2011/02/14(月) 15:52:01 ID:tmR9mZsH0
げふげふ・・・設定を練ってるうちに
奏ルートでの大学入学で瑞穂と桃子さんの立ち居地が・・・汗
奏ルートで紫苑の縁談を破局させる場合のエピソードが浮かばないorz
>>498 縁談が本格的に進み始めたから阻止したいと瑞穂ちゃんに相談、そのままの勢いで貴子さん家出&一人暮らし、でよくね?
紫苑様を縁談成立前に奏ちゃんを既成事実だので成立させてしまう鬼畜な裏技は…本末転倒過ぎるか
厳島のあんちゃん以外と良識ありそうだしエトワ見る限り奏ちゃん根がしっかりしてるから合いそうな気もするんだけど
>>500 奏ちゃんみたいなタイプに癒された結果厳島の改革に成功した、というのはあってもいいと思うが、それに奏ちゃん本人を使うのは許さないよ
というかあの人の醜聞も「どうせ親父には逆らえないし、自分も腐ってるんだから、自分には頭の悪い尻軽女か金目当ての毒婦の方があってる」って考えてるのが原因だから、
紫苑様とか奏ちゃんみたいなタイプは「巻き込みたくない」って気持ちと「自分が惨めに見える」って気持ちで避けようとする気がする
そういうタイプに救われてもいい人だとは思うけど
でも本人を持ち出すのはノーサンキュー
あんまり突き詰めてそっちの方面考えると聖應周辺から離れそうだしなぁ…
いっそ親父暗殺とか
やるき2ざっとやった限りだと破談で納得する辺りそこまで紫苑様じゃないとって話じゃなさそうだし
よりいっそう家の命綱になるような女性との政略結婚に向かざるを得ないとか
実行犯は塞さんの組織とかかw
>>501 どっちかと云えば、放蕩息子は演技が入っている気がする
金目当てとか後腐れのない相手を選んで、真剣な相手には関わらないようにしていると思うけど
やるきばこ2の貴子ルートを見る限り、親には面従腹背だし、馬鹿息子の仮面の裏で爪を砥いで反転攻勢に出る機会を待っているんじゃないかと
おまいら。
ここで議論するんじゃなくて、
その妄想をSSに昇華させるんだ!
じゃあ、473が話まとめるからちょっと待ってくれ↓
473に期待
すごいどうでもいいようなことを思いついたり
オチまで持っていけなかったりで妄想止まりになっててまだ一つも書けてないんだ。
文章書くのは難しい。
書き方が書いてあるサイトでも見て基礎を学んだほうがよさそうか・・・。
そのネタを自分で育てるのを諦める覚悟があるなら、
書ききれなかったネタをメモ程度に羅列すれば、
どこぞの物好きがSSにしてくれるかもよ?
(手ごろなネタメモ例探したけど、書き終わったの全部消しちゃってた)
ストーリー骨格があれば、
会話文まぶして、地の文で状況説明すれば
それなりにできあがるんじゃないか、とか思ってるけど。
あとは、落ちまでたどり着ける素敵なストーリーまで育てばいいけど、
雰囲気十分な情景描写ストーリーでも、まずは書いてみるとか。
>>507 ありがとうございます。
まずは会話文作ってそれに地文で情景等を説明しつつ
肉付けの方向で挑戦してみたいと思います。
がんばれよ
510 :
473:2011/02/18(金) 00:38:01 ID:7WbMHFCe0
話を書いていて煮詰まっていたら
変な電波を受信してそれを書いてみたら変なのができた・・・
投稿してみていいかしら・・・
テンプレ見て問題なければ是非
512 :
473:2011/02/18(金) 00:59:19 ID:7WbMHFCe0
※おと僕のキャラクターを使ってはおりますが、
本編等には確実にあり得ない話だと思います。
あとキャラの性格等が結構崩れているかと思います。
それでもよろしければどうぞ見てやってください。
彼等の憂鬱
千早「暑いですね・・・それにこの人だかりはなんなんでしょう・・・」
史「たぶん陽向さんの言っていた祭りとやらに参加する方々だと思うのですが・・・」
夏休み後半に差し掛かる頃、
聖應の女子寮にて陽向ちゃんに相談を受けた。
陽向「あのー、千早お姉さま」
千早「なに?陽向ちゃん」
陽向「15日はお暇ですか?」
千早「そうですね・・・お盆に近いですが特に遠出する必要もありませんので、
暇だと思います。」
陽向「それじゃ付き合っていただきたい所があるのですが・・・」
という感じで相談を受け、それを受けて今ここにいる・・・
支援
514 :
473:2011/02/18(金) 01:12:04 ID:7WbMHFCe0
陽向「千早お姉さま、史お姉さま!こっちです!」
陽向は千早と史を連れて会場へと向かった。
千早「えっと・・・陽向ちゃん、これは?」
会場には机が並べられていた。
陽向「えっとですねーコレはアレです自主創作活動といいますかー」
陽向は自分のスペースまで来ると薄い本のような物を並べ始めた。
その表紙には・・・
千早「っ!?陽向ちゃんコレは・・・」
陽向「千早お姉さまも見て見ますか?」
陽向は千早に表紙がどう見ても自分に似せてるような絵の描かれている本を手に取り
千早に渡した。千早は本を開き内容を少し目で追ってみた・・・・
千早「簡便して・・・」
史「・・・まさかこのようなモノを陽向さんが書いていたなんて」
横から覗き込むような形で内容を読んだ史が小声で耳打ちしてきた。
支援
516 :
473:2011/02/18(金) 01:15:29 ID:7WbMHFCe0
千早「史・・・これはどうしたらいいのでしょうか・・・」
千早も小声で史に聞いた
史「千早様・・・陽向さんは前からそのような傾向が見て取れました。
ですがまさか千早様がそのことを知らずにここまで来ているとは思いもよりませんでした。」
史「ですが・・・っ・・?!千早様この本のもう一人の方は!?」
千早は史が読んでいる部分を確認しようと本を読み進めた・・・
千早「う・・うそでしょ・・・」
本に書かれている主人公とヒロインらしき人物について
身に覚えがあるような気がした・・・
千早「まさか・・・あの人がモデルじゃないですよね・・・」
けれど、考えてみれば陽向ちゃんが瑞穂さんを知っているとは思えない・・・
だが、この本に書かれている主人公の台詞回しが
どうも小さい頃にあった時の印象に残っている瑞穂さんっぽい
そんなことを考えていると
517 :
473:2011/02/18(金) 01:17:45 ID:7WbMHFCe0
女性「こんにちわ、陽向さんはいらっしゃいますか?」
声を掛けられた方をみるとそこには、
活発そうな女性と・・・
もう一人・・・
千早「あれ?・・・瑞穂さん?」
瑞穂「えっ?」
瑞穂は自分の名前を呼ばれて戸惑った。
目の前に居る銀の髪の女の子には確かに見覚えがある気がする・・・
瑞穂「えっと、どなたでしたっけ?」
千早は瑞穂に近寄り耳元で
「僕は御門家の千早です。わけあって今、女性として暮らしているので僕のことは
女性として扱ってもらえると助かります。」
瑞穂「ああ・・まりやの・・・・」
千早「それはいいです、それにしても瑞穂さんはどうしてこんなところに?」
支援
519 :
473:2011/02/18(金) 01:19:42 ID:7WbMHFCe0
千早「それはいいです、それにしても
瑞穂さんはどうしてこんなところに?」
瑞穂「実はねこの娘の付き添いなんだけれど」
瑞穂さんは隣でこちらをじっと見ている女性に目を向けた。
女性「はじめまして私、上岡由佳里っていいます」
瑞穂「由佳里ちゃん、実はねこの子まりやの従姉妹なんですよ」
由佳里「えっ!?」
由佳里さんはものすごく驚いた顔で固まった。
まりや姉さん・・・いったいなにしたんだろ。
瑞穂「そういえば由佳里ちゃんの言ってた陽向ちゃんってお隣の娘?」
千早「ええ、そうです」
陽向「はじめまして!宮藤陽向といいます。えっと、
あなたが瑞穂さんですか?由佳里さんから話は聞いてます。」
520 :
473:2011/02/18(金) 01:22:23 ID:7WbMHFCe0
瑞穂「どんな話をきいたのかちょっと不安ですけど・・・」
史「・・・あの、お忘れのようですけど私も自己紹介したほうがよろしいでしょうか?」
いままで事の成り行きを見ていた史が話を切り出した。
瑞穂「えっと、たしか御門家の侍女の史ちゃんだっけ?」
史「はい、詳しくは千早様付きの侍女でございます。」
由佳里「陽向さん!」
陽向「由佳里さん!」
いつのまにか復活した由佳里さんと陽向ちゃんが話し始めた・・・
そして時折、こちらをみてニヤニヤしながら話している・・・
千早「瑞穂さん・・・なぜか私、嫌な予感がしてきました。」
瑞穂「千早ちゃん・・・私もなんか嫌な予感が・・・」
史「お二方とも、たぶんアレです」
史が視線が一部に集中している。
千早と瑞穂はそこを見て凍りつく・・・
そこにあったのは・・・
521 :
473:2011/02/18(金) 01:27:17 ID:7WbMHFCe0
『ちゃ・・・チャイナ服!?』
あんな恥ずかしい格好できるか!
瑞穂・千早の二人は逃げようとしたが、
”由佳里・陽向に回り込まれた”
そしてなぜか史も陽向達に加勢しようとしている・・・
二人の思考は止まりいつの間にか更衣室へ連れて行かれていた。
さらに、いつの間にか史に着替えさせられていた。
その後会場では、ダブルチャイナ服でにぎわうサークルがあったという・・・
そして千早と瑞穂は陽向と由佳里に頼まれてもこのイベントには
付き合わないと心に決めた・・・
End
乙
というかちーちゃん世間と隔絶しすぎだw
引きこもるとこうなるのか…(違
乙
史、何気に理解ありすぎだろうw
乙
イベントの更衣室…
自然に女性更衣室だった事についてダブルorzの瞬間があったであろう事を
乙
帰った後陽向は無事だったんだろうか気になるw
>>522 一般人ならこんなものじゃね?
実は猫の娘
ネコ耳チャイナかー!
473乙
こういう一風変わったのもいいね
>>525 ×一般人
○逸般人
>>527 >逸般人
腐女子とか貴腐人は聞いた事あるけど
逸般人って何?
文字通り一般から逸れた人じゃないのw
まりやにはじめから気がある瑞穂が
体育の時間で戸惑っているときのエピソードで
本気で押し倒して最後までやってしまうと
まりやEnd確定な気がするけど
どうなんだろう・・・
考えただけでまだなにも書いてないけど
どなたかすでに書かれた方いるでしょうか?
いらっしゃるのでしたら読んでみたいので紹介してください。
今奏End後の2年後の卒業前に、瑞穂の卒業式後の奏を家に連れて行く話を
書いておりますが、途中で楓と奏と瑞穂の会話分を考えるのに四苦八苦で
話が進んでおりません・・・orz
とりあえず奏の卒業式に迎えに来た瑞穂の発言で
「2年ぶりに女装なんかさせられるのは気恥ずかしいとしか云えない」
という部分があるのが気になって・・・
そのモノ言いだと聖應にはまったく足を運んでないことになるじゃないか・・・
しかも卒業式に「紫苑さんと遊びにいくから」とか言ってるのに・・・
なんぞこれ!!気にしないで何度か足を運んでるほうが書きやすくはなるけど
それをしちゃうとなんか自分の中で納得できないして書けないorz
それにしても・・・
御門家ってお尻を使うとなにか誓約のような家訓でもあるのか・・・汗
史のときは御門ではないけどそこに連なるといっていい感じの家柄だし・・・
まりやなんて瑞穂に売約とかいって後ろでしてるし・・・
うーん・・・・変なところで感じた疑問だとは思うけどなんだろ
ドキドキするモヤっと間があるな・・・
たしかめてみれば?
ノノハヽ
从*‘ー‘从
(⊃⌒*⌒⊂)
/__ノφヽ__)
なぁ、雪ちゃんって初音の事なんて呼んでた?
本編を何回やっても、そんなシーンが無いんだ……
>>533 初音お姉さまって言ってそうな気がする
一応初音からは淡雪ちゃんって言ってるのだけは出ていますね
でも肝心の雪ちゃんから初音会長、初音お姉さま、初音さんのどれなのかは・・・
家出シーンの食堂で夕食のシーンはカットされてるし・・・・
夏祭りで一緒にいってそうだけどPC版にはそのイベントがな・・い
orz
もしやPSP待ちか(汗
引き続き探してみます・・・でも全部の√と共通部で雪・初音の絡みをみた記憶が無い・・・
補足:ウタちゃんは初音を生徒会長と呼んでいるシーンがありました。
記憶にある限りだと、絡みがなかったんじゃないかな?
誰かが作成してくれた呼称表にもその2人の関係は載ってないのよね
初音→雪ちゃんは淡雪ちゃんって呼んでるけど
逆は確か呼んでなかったよな
雪ちゃんは普通に生徒会長とか呼びそうな印象
>>535 初音会長とも言ってたよな
状況によって使い分ける感じかね
純粋に初音個人に用があれば初音お姉さま、生徒会長としての立場を付随した初音に用があれば初音会長、
単純に役職そのものに要がある場合は生徒会長、とか
ちょっと飛ばし気味に雪ちゃん√の9話・最終話見てみたけど、
意図的と思えるほど遭遇シーンがなかった
お泊り2回目の朝とか「じゃ、初音に伝えとくね」って寝坊介な薫子さんが言ってる程
まあ、"初音会長"あたりかなとは思う
寮にいるときの夕食シーンとか意図的に消してるとしか思えないけど
面倒で飛ばしたか・・・
なんか、思いついたネタがどんどん長くなって、終わらない。
困った。あんまり長くなると、貼るの面倒なのに。。
亀仙人メソッド(もう少しだけ(略))を使ってもいいんじゃよ?
>>541 こっちはネタ思いついても本当に小ネタで2、3レス程度にしかならないのが殆どだわ
そんなのでも需要ある、というかここ貼って良いのかな?
長編期待してるよ
そんな543の期待を真っ向からぐりぐり踏みにじって。気分転換に。
前から放置してた短編がそれっぽく仕上がったので貼るですよー。6本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『舞姫』
降誕祭の夜。
ダンスパーティが始まってしばらくして。
ようやく誘いの波も一段落。
ほっと一息、休息を取る千早のもとにケイリがやってきた。
「大分お疲れの様子だね、千早」
「あぁ‥、ケイリ。 そうですねぇ。さすがにすこし堪えているところです。」
「無理もない。千早は大人気だったからね。(くすくす)」
「ケイリこそ、引く手あまただったじゃないですか。見ていましたよ。(にこり)」
そんな軽いやりとりを交わした後。
「そんなお疲れなところ、申し訳ないけれど‥」
ケイリは頬を染めながらおずおずと‥誘いの言葉とともに手を差し出した。
千早は微笑み、その手を取り。
ケイリを伴い、ゆっくりとダンスホールの中央へ。
「あ、ご覧になって! 千早お姉さまとケイリさんですわ!」
「本当! お二人が踊られるのね、素敵!」
黄色い声が周囲から上がるなか。
流れるメロディにあわせて、ゆっくりとステップを踏み始める。
「さすがにこれだけの視線を浴びると緊張してしまいますね」
「そうかな? その割には優雅なステップだけど」
「いえいえ。ケイリには及びません」
そんな会話を交わしながら。
軽やかにステップを踏み、優雅に舞い踊る二人。
ホールでともに踊り、はたまた周囲からそれを見守る学院生は、
その華麗なるダンスに見とれ、甘いため息をついていた。
「ところで、千早。見事なステップだけれども‥?」
「えぇ、まぁ。以前もお話しているように、実家では外交官を目指すよう
いろいろ教え込まれていまして。そのなかに社交ダンスもありましたから」
「へぇ‥。さすが千早、とでもいえばいいんだろうか」
「そういうケイリだって、巧みではないですか」
「ふふっ。まぁ淑女の嗜みというやつだよ」
軽口を交わす間も続くダンスは学院生を魅了していく。
「じゃあ、千早。世界舞踏コンクールとかはチェックしている?」
「そうですねぇ。一応近年のものくらいは見ておいたほうがよいと、講師からDVDを借りた際、
遊び半分で、軽くステップを練習したことくらいはありますが‥」
「ふーん。 じゃあ、今流れているこの曲が使われたのはいつ?」
「えぇと‥? たしか‥2009年の優勝ペアのオナーダンスですか‥?」
「ご名答。さすが千早だ。」
「あぁ、合っていましたか。ほんとうに自信なかったんですけど‥」
「ということで‥。2009年 優勝ペアだ‥。 千早、いくよ!」
そうにっこり微笑んだケイリが。
急にそのステップを変えた。
***
「ちょっ! ケ、ケイリ!?」
「ふふっ。ほら千早。思い出して‥ 1,2,3. 2,2,3. 」
「きゅ、急には無理ですって!」
「そうそう、そこでシャッセ。そしてスゥープ」
「えぇと‥、次はリバースしてから‥」
ケイリの無茶振りに驚愕する暇もなく、
数回しか覚えのないステップを必死に思い出しながら、
千早はケイリのリードになんとかついていく。
「ふふっ。さすが千早だね。そろそろ問題ないかな」
「ま、まだですって‥」
「千早。もっと視線をあげて。もっと私だけを見つめてほしいな」
「といわれましても、正直そんな余裕は‥」
そんな千早の戸惑いも、その巧みなステップには一切垣間見えず。
二人の華麗かつ優雅な踊りは、周囲を圧倒するばかり。
周囲からホールを眺めていた学院生達は、
急に踊りが変わった千早とケイリに気づき、
そして、その見事なステップに喝采の声を上げる。
「きゃー!!」「なんて華麗なステップなのでしょう!」
「本当。さすが千早お姉様ですわ‥(うっとり)」
「ケイリさんも、素晴らしいですわー」
ダンス中のペアも、騒然とする周囲の雰囲気を感じ取り、
そして、ホール中央を舞う一組の踊りに気づき始める。
一組、一組と徐々にそのステップを止め、
二人のステップの邪魔にならぬよう、中央スペースを空けはじめ。
気づけば、千早とケイリだけが、その空間を占有していた。
短くても歓迎だよw
踊りに圧倒されたのか、上がっていた歓声も徐々に静まり、
滑らかに流れるは管弦の調べ。ホールに低く響くは二人の足音のみ。
そうして。
曲の終了とともに、数分間の魅惑の刻が終わりを告げ。
拍手と大歓声が、体育館に溢れかえった。
「はぁ‥はぁ‥」
「ハァ‥ハァ‥‥」
ハイペースの舞踏を終え、息も絶え絶えな二人は
終曲の後もしばし、声を上げることもできず。
久しぶりのステップを最後まで踊れた満足感に浸っていた千早は、
忘我の表情から、徐々に歓喜に包まれゆくケイリの表情に気づかずに‥。
「千早っ!!」
「うわっ、ケイリ!」
急に抱きつかれた千早の驚愕なぞ気にもとめず、
ダンスの余韻か、はたまた精神的高揚か、ケイリは淡く染めた頬を千早の頬に押しつける。
「凄い!凄いよ、千早!」
「ケイリ!?、ちょっと‥!?」
「How Fantastic !! Chihaya !!」
「け、ケイリ‥、お、落ち着いて‥Please!!」
『なんで千早はこんなに私の期待に応えてくれるの!?
千早! あなたに出会えたことこそ奇跡だよ! 』
『ちょっ! お、お願いですから! ケイリ、落ち着いてー!』
そんな二人を、鳴り止むことのない拍手が包んでいた。
支援
***
しばらく後。
ようやく落ち着きをみせたケイリに。
やれやれといわんばかり、溜息を一つ。
「まったくもぅ‥。本当ケイリには驚かされっぱなしですよ。」
「えぇと‥、さっきのはさすがに反省するよ‥」
「ふふっ。では、ケイリ。そろそろ皆にもご挨拶をするべきでは?」
「えっ?」
そう言われ、ようやく鳴り響く拍手に気づいたのか
一瞬、戸惑いの表情を浮かべるケイリ。
「さぁ、ケイリ」
千早はその手を取り、柔らかに微笑んで。
「あぁ‥‥。うん!」
にこやかな笑みを浮かべたケイリとともに。
今宵の主役となった二人の舞姫は、感嘆を惜しまぬ観客に深く深く礼を捧げるのであった。
-----------------------------------------------------------------------
ケイリをデレさせてみたいなーと思ったら、こんな感じになりました。
なんという幸せ空間
支援!
女生徒「千早お姉さまもケイリさんも素敵すぎです」
553 :
533:2011/02/22(火) 23:24:21.05 ID:gle2BYiX0
乙でございます。
自分も雪ちゃんの呼び方、適当にしてSS書いてみます。
文法が辺だったり、話がまとまってないとかあるけど
その辺は勘弁してくれな?
乙
何でもこなしてしまう千早お姉さま流石だw
ヒロイン全員と踊った場合、誰の時が一番歓声が大きいのか気になった
>>554 話題性とかも含めると薫子さんが一番で、次にうたちゃんじゃねーかな
特に薫子さんはエルダー補正、ぴったりの身長にぴったりの長い髪(しかも白黒のコントラストが一番映える)、
演劇とかによるコンビ補正とえらい補正を受ける立場だし
そういう意味で一番不利なのは史だと思う
でも作品中一番優雅に踊れそうなのケイリな気がするのは
私だけでしょうか・・・
>>556 それは間違いないな
優雅なだけならうたちゃんも香織理さんもこなせるが、
>>550のように激しさも合わせるのはケイリ以外難しそうなイメージがある
薫子さんも特訓すればいけるんだろうが、そこに至るには長くかかりそう
ホワイトデーに向けて精液入りマシュマロが出てくるようなSSを
書こうかと思ったが俺にはムリだった。
誰かおねがい。
SSが完成しましたので、投稿させていただきます。
本当は18日に間に合わせようと思っていたのですが、随分遅れてしまいました。
15レス分使わせていただきます。よろしくお願いします。
ある日曜日の櫻館。僕が受験勉強にいそしんでいた時のこと。
コンコン。
「はーい、今開けます!」
あれ? 一体誰だろう? こんな時間に。陽向ちゃんが出てくれたけど。
「どちら様ですか?」
「ああ、私の顔を知らないってことは新入生ね……って、わ! 一子さん!」
話を聞いてる限り、ここのOGらしいけど……陽向ちゃんを誰かと間違えてるみたい。
「えっ!? えっ!?」
「あれ? よく見ると違う……あーびっくりした。一瞬一子さんかと……」
「え? 何々? 誰か来たの?」
薫子さんと初音さんが騒ぎを聞いて玄関に駆けつける。
「陽向ちゃん、一体誰が……って、由佳里さん!」
「由佳里お姉さま! どうして……」
由佳里? ああ、たしか初音さんの“お姉さま”で先代の生徒会長だったって人か。
「うん、ちょうど用事で近くまで来たから、ついでに寄ってこうと思って。初音の顔もしばらく見てなかったしね」
その後、降りてきた香織理さんと一緒に、4人で昔話や最近の話に花を咲かせる。まあここは僕たちが入るべき場所じゃないだろう。
〜過去と未来が出会う時〜
「千早ちゃんと優雨ちゃんと陽向ちゃんは初めてだったわね。この人は私の“お姉さま”で前任の生徒会長だった
上岡由佳里お姉さま」
「はじめまして。薫子さんと一緒に今年のエルダーに選ばれた妃宮千早です」
「千早……そう。あなたが……」
「え……?」
どういうことだ? この人、僕を知ってるのか?
「話をまりやお姉さまから聞いたことあるの。よろしくね」
ああ、そういえばまりや従姉さんも自宅を出て寮から通うことにしたって話を聞いたことあったっけ。
ってことは、この人がまりや従姉さんの……。
「よろしくお願いします」
「初音お姉さまの妹の……柏木優雨……です……」
「そっか……初音の……でもあなた元気ないみたいだけど、大丈夫?」
「大丈夫……」
その後、初音さんが優雨のことについて由佳里さんに説明した。最初はちょっとびっくりしてたみたいだけど、
最終的には打ち解けた。この人も伊達に生徒会長を勤めてきたわけじゃないみたいだ。
支援
「それにしても私が幽霊にそっくり、ですか……すごいことになってるんですね、私」
話を聞いてみると、陽向ちゃんは、由佳里さんの言う幽霊と顔も性格も似ているらしい。
なんでも瑞穂さんのお母さんの“妹”だったとか。
あ、瑞穂さんがプールに入れた理由って、ひょっとして……。
「しかし、陽向そっくりの幽霊って、由佳里お姉さまもすごい大変だったでしょうね」
「あーっ、お姉さま、何ですかその私をやっかい者みたいな発言は」
「そうやって騒ぎ立てるから、やっかい者扱いなんでしょうが」
香織理さんと陽向ちゃんは相も変わらず掛け合い漫才を繰り広げている。どこへ行ってもこうなんだろうな、多分。
「一子さんは幽霊っぽくなかったから、私も奏ちゃんもすぐ幽霊だってこと忘れちゃってたな。
本人も自覚ほとんどなかったみたいだし」
……まあ僕たちは千歳さんを間近で見ているから、幽霊=怖い存在という先入観はないんだけど、
幽霊を見たことない人が聞いたら圧倒されると思う。
「“単純お馬鹿な脳天気幽霊”って自称するだけあってかなりのんき者でピエロだったな、今思えば」
由佳里さんは口ではそう言うけど、すごく懐かしそうな表情でその時を愛おしむような口調。
その人のことが大好きだったんだろう。
「幽霊なら、私も見た事があります。こちらもその一子さん同様害のない幽霊ですけど。私の双子の姉で……」
僕は由佳里さんに千歳さんのことを話す。由佳里さんは最初ちょっと震えてたところを見ると
怖がりなのかもしれないけど、真剣に耳を傾けてくれた。
「……そんなわけで、千歳さんにオムライスを作ってあげたらすごく喜んでくれて……今でもオムライスは感慨深い料理です」
「ふうん……あなたも料理できるんだ。ちょっと意外」
僕“も”? 僕もってことは……。
「じゃあ、由佳里さ……由佳里お姉さ……まも?」
そういえば聖應では先輩のことを“お姉さま”と呼ばなきゃいけないんだったっけ。僕は慌てて言いなおした。
けど、やっぱり心のどこかにそう呼ぶことに抵抗が……。
「史は召し上がったことはありませんが、由佳里お姉さまの作るお料理は天下一品だとの評判を耳にいたした事がございます」
そうなんだ。由佳里さんはどれだけ料理ができるのかな? 同じ料理が趣味の僕としては、非常に気になる。
「そういえば千早お姉さまが入ってからケーキ買ってくる回数が減ったとおっしゃってましたね?
でも去年までは由佳里お姉さまもいらっしゃったわけですよね?」
言われてみれば……話を聞いていれば、由佳里さんも料理が好きみたいだし……。
「あ! もしかして由佳里お姉さまって、そうとう面倒くさがりとかあいたたたた!!」
「ちょっと陽向、憶測だけで失礼なことを決めつけるのはおやめなさい!」
香織理さんが陽向ちゃんの頭をぐりぐりさせながらつっこむ。
「由佳里お姉さまは先代の生徒会長だって言ったでしょ? 初音を見て私たちが由佳里お姉さまの料理をいただく機会が
少なかった理由を考えてみなさい」
あ、そっか。確かに由佳里さんが初音さん同様相当遅くに帰ってきてたとしたら、
みんなに料理を作る機会も少なくなってくるよね。それにみんなも……。
「まあ生徒会の仕事を遅くまでやってた由佳里さんに料理作れなんてとても言えなかったし、
初音はともかく、あたしたちが3年になってから由佳里さんの手料理を食べたことってあんまりないんだよね」
薫子さんは僕と由佳里さんの料理、どっちの方が美味しいと思ってるんだろう? でも、そんな状態じゃ、
由佳里さんの料理の味を覚えてるかわからないし……そうだ!
「あの、由佳里お、お姉さま!」
「何?」
僕が意を決して言うと、由佳里さんは優しい声で聞いてくれた。
「私と、勝負していただけませんか?」
「勝負って……料理の?」
「ええ、そうです。私と由佳里お姉さまで何品か料理を作って、それを皆さんに食べ比べていただくのです」
「念のために聞くけど……勝ったり負けたりしたらどっちがどう……ってことは?」
「ありません。ただ私は、由佳里お姉さまの料理の腕が知りたいだけですから」
由佳里さんが顔を少し引きつらせて聞いてきたので、笑顔で答える。でも、そんな心配をするってことは、
この人もまりや従姉さんに色々やられたのかな? あの人ならやりかねないけど……。
「もっとも、つけたいとおっしゃるのでしたら、反対はしませんが……」
「ううん、つけなくていい」
由佳里さんは慌てて首を横に振る。
「いいわ。受けてあげる。私もあなたの料理の腕に興味があるしね。あ、それと」
「それと?」
「プライベートでは私のことは無理して“お姉さま”って呼ばなくていいから。
千早の呼びやすいように呼んでくれていいよ。現に薫子だってそう呼んでないでしょ?」
「はあ……確かに」
「おっ! なんだか面白い展開になってきましたね! もしかして私たちもご相伴に預かれるとか?」
「ちはやとはつねのお姉さま……どっちがいいか興味ある」
「あたしもそれは今まで考えてみなかったな……面白くなりそう」
「ええ。皆さんにも審判をしていただきますから」
すると寮のみんなから、おおーと喚声の声が。僕たちは、具体的な日時や場所、
作るものなどのスケジュールを決めていった。
そして、料理対決の当日……。
「お久しぶりね、千早さん」
「み、瑞穂さん!?」
僕と由佳里さんの対決は、日曜日に食堂で行われることになり、今はそこにみんな集合している。
公平を期すために、今の聖應のメンバーの薫子さん、初音さん、雅楽乃、雪ちゃん、香織理さん、陽向ちゃん、優雨、
ケイリの他に、瑞穂さんの時代のメンバーである彼と妻の貴子さん、紫苑さん、奏さん、そして響姫さんにも
集まってもらった。まあ、まりや従姉さんはアメリカに留学中だから来れないのは仕方ないけど。
それにしても、瑞穂さんの姿を見て、一瞬別人かと思った。
「え、ええ……お、お久しぶりです……」
かつてのおどおどしてまりや従姉さんの陰に隠れていた頃の面影は微塵もない。そこにいたのは
優しさと慈愛に満ちた眼差しで僕たちを見つめるかつてのエルダー、宮小路瑞穂その人だった。
今のメンバーと瑞穂さんの時のメンバーで挨拶を交わすと、すぐに料理対決にかかる。作る料理は、
課題料理のハンバーグとオムライス。それと自由料理を2品。最後のスイーツを一品。
まあ課題料理の方は僕と由佳里さんの得意料理を1つずつ、という事前の話し合いでそうなったんだけど。
僕が作ったのは大根おろしとネギの乗った和風ハンバーグ。和牛のミンチにパン粉の代わりに麩を使っている。
醤油ベースのソースも手作りで、無臭ニンニクを隠し味に入れた。
「さて、由佳里さんはどんなハンバーグを作るのかな?」
得意料理で、ここでもいつもハンバーグランチを食べてたほどの大好物だって聞いたからな。
初音さんのサンドイッチみたいなものか。
これは、史さん
汚名挽回しないとダメだね
名誉返上するのかw
570 :
名無しさん@初回限定:2011/02/25(金) 22:18:26 ID:s98G5dXb0
それなんてジェリドwwww
雅楽乃ifルートみたいなの書いてたんだけど
登場人物多すぎて、収拾がつかなくなった orz
SS書く人ってマジ偉大だわ
「お待たせしました!」
僕と由佳里さんの手で、赤いお皿と青いお皿に乗ったハンバーグが運ばれる。
由佳里さんの作ったのはハンバーグシチューだ。匂いから赤ワイン系の味付けをしている事が分かる。一度試食してみたいな。
「……なんか小さくない?」
「あのね薫子さん、このあとまだ3品の料理が2人分あるんですよ? 普通に作ってたら、
食べきれない方もいらっしゃるでしょう」
「あ、なるほど」
「では試食に入りましょうか。主よ、今から我々がこの糧をいただくことに感謝させたまえ。アーメン」
「アーメン」
そう言うと全員で試食に入る。
「これは美味しい!」
「レストランで召し上がる和風ハンバーグと全く違いますわね」
僕の赤い皿に乗った和風ハンバーグはまずまず好評のようだな。由佳里さんのハンバーグシチューはどうだろう?
「さて、こちらの味は……」
一口食べると、ほとんどの人が目を見開いた。そして無言のまま、ハンバーグシチューを矢継ぎ早に食べ始める。
これは、もう勝負はついたな。結果は聞かなくても分かる。
「それでは、赤いお皿の料理の方が美味しいと思う方は赤い旗を、
青いお皿の料理が美味しいと思う方は青い旗を揚げてください!」
司会担当の陽向ちゃんが声を上げる。
どちらがどちらの料理なのかは僕と由佳里さんしか知らない。僕の料理だから、由佳里さんの料理だからという理由で
選ばれても困るしね。
結果、審査員13人中、僕の赤い旗を揚げたのはわずか3人。由佳里さんの圧倒的勝利に終わった。
「やったあ!」
「おめでとうございます、由佳里さん。さすがですね」
「うん。ハンバーグは私の大好きな料理だし、これだけは負けるわけにはいかなかったんだ!」
まあこの結果はみんなの反応を見た時から分かっていたから、そんなにショックもないんだけどね。
由佳里さんの得意料理で大好物だし、これは仕方ないだろう。
「では続いて、課題料理その2、オムライスの試食に移りたいと思います! お2人とも、準備お願いします!」
僕と由佳里さんは再び厨房に戻っていく。そして僕の作ったのはケチャップを使ったチキンライスの
ごく普通のオムライス。卵は少し柔らかめにして、いたずら心で少しケチャップで絵も描いてみた。
一見地味かもしれないけど、できれば千歳さんにもう1度食べてほしい、そう思って妥協せずに全力で作ったから、
味は普通のよりずっといいはずだ。
「どちらからいただきましょうか?」
「そうですね。私は赤いお皿の方に興味がありますわね」
「私もそちらからいただいてみましょう」
今度はさっきの逆で、僕の料理が青い皿、由佳里さんの料理が赤い皿に乗っている。
もちろんみんなにはずっと同じ色の皿に乗せるわけではないことは説明済みだ。
みんなは由佳里さんの作った鮭とキノコのクリームオムライスの方に注目してるみたいだ。
だけど、この料理は僕の千歳さんへの気持ちがつまってるんだ! なんとしても勝ちたい!
「これは……なんか懐かしい味わいですね」
「ええ……さっきのオムライスのような派手なおいしさはないですけど、召し上がっていて安心するというか、
安らぎを感じますわ」
僕の料理と由佳里さんの料理は全く違う方向で高評価だ。果たしてみんなはどっちを選ぶだろう?
「それでは、赤いお皿の料理の方が美味しいと思う方は赤い旗を、
青いお皿の料理が美味しいと思う方は青い旗を揚げてください!」
陽向ちゃんの声で、陽向ちゃんを含めた全員が準備する。
「いっせーのーで、はい!」
「………!!」
揚がった旗は、僕の青い旗が11枚。由佳里さんの赤い旗が2枚。
「勝ったの? 私は……」
まさかこんな大差になるとは思わなかった。どうして?
「ねえ千早、あなたこのオムライス、ひょっとして千歳さんのために作ったの?」
ふと由佳里さんが聞いてくる。
「ど、どうして……?」
「私はここにいるみんなのために作ったけど、あなたの料理って、みんなの感想を聞いてる限り、
私より強い想いがこもってるみたいだから、ひょっとしたら……って」
鋭いな。料理を作ってると、そういうこともわかるようになってくるのか。
「ええ……そのとおりです」
「これは青いお皿のオムライスの方がいいですね!」
「うん! 決して派手じゃなく高級感もないけど、なんていうか、お母さんから娘へ受け継がれるような
温かさが満ちていて、食べていて安心するんだよね」
「お、お母さんから娘へ……」
まあ言いたいことは分かるけど、そう言われるとさすがに顔が引きつってくる。そんな僕の顔を見て、
雅楽乃と雪ちゃん、初音さんと優雨ちゃん、奏さんと響姫さん、陽向ちゃんは「?」と首をかしげ、
香織理さんとケイリ、紫苑さんはくすくす笑い。薫子さんと由佳里さん、瑞穂さん夫妻は苦笑。
次は自由料理2品だ。これは今までと違って何を作ってもOK。だけどそれは逆に何を作るか悩むところでもある。
「こんなところ……かな?」
僕が作ったのはトマトとモッツァレラチーズのサラダ。前の2つは味が濃い料理だったからな。
舌休めにこんなものがちょうどいいだろう。ドレッシングは……まあこれは人それぞれの好みがあるだろうけど、
今回はこっちが選ばなければいけないからな……青じそのドレッシングに、ちょっと調味料を加えて……。
「これは……ちょうど味わいたいと思っていたものを作ってくださるとは……」
「お2人とも、さすがはお料理好きなだけのことはありますわね」
由佳里さんの作ったのは、トマトとキュウリのサンドイッチ。これもちょうどいい舌休めになるだろう。
考えることは一緒なんだな。まるで思考の双子みたいに。
それにしても、初音さんはサンドイッチが好きだと聞いたことあるけど、由佳里さんはそれを知ってるのかな?
初音さんのことを考えてサンドイッチを作っている由佳里さんを頭に思い浮かべて、僕はちょっと微笑ましい気分になった。
「やっぱり千早も同じこと考えてたみたいね」
「ええ……このメニューでしたら、この手の料理が一番ですから」
由佳里さんが嬉しそうな表情で聞いてきた。やっぱりわかる人がいるとそんな気持ちになるな。
「ところで由佳里さん、初音さんのことを考えてサンドイッチを選んだんですか?」
「え……どうして!?」
由佳里さんは驚いた表情を見せる。図星か……。
「私も小耳に挟みましたから……初音さんも妹思いの姉を持って、幸せ者ですね」
「そ、そんなことないって! 私もお姉さまとしては至らないとこが山ほどあったんだから!」
僕がくすりと笑って言うと、由佳里さんは顔を赤くして慌てる。この人もからかいがいがあるな。
もっとも今の寮では、主に初音さんじゃなくて薫子さんが担当してるけど。
さて、残るは4品目のメイン料理とスイーツだ。優雨は確か魚が嫌いなはずだから、魚料理は入れられないかな、
とも思ったんだけど、優雨が嫌いな料理が嫌いな理由が分かれば……入れられなくもないかな……?
由佳里さんはどんな料理とスイーツを作ってくるんだろうか? 少し楽しみではあるな。
まあ、わかりもしない相手の料理のことを考えていても仕方ない。僕は僕の出来る最善を尽くすまでだ。
勝ち負けにこだわらないと言っても、僕は負ける気はしませんよ、由佳里さん。
「これは……最後はお2人とも揚げ物ですか……」
「ちはや……」
優雨が涙目で僕を見てくる。「おさかな」って、優雨の嫌いな理由を聞いてみると、単に魚だけじゃなく、
魚介類全般に当てはまるから、この反応は予想できたけどね。
「大丈夫よ、優雨。これは優雨にも食べられるようにしてあるから。だまされたと思って一口だけでも食べてみて」
気に入らなければ残していいから、と言うと、優雨は笑顔でこくんとうなずいた。
「わかった。ちはやを信じる」
「由佳里お姉さま……私、今ダイエットをしてると言ったじゃないですか」
一方、初音さんは由佳里さんに同じく涙目で抗議している。まあ、揚げ物はダイエットの天敵だからね。
この反応は無理もないけど。
「初音、あなたお姉さまのお料理が気に入らないのね……いいのよ、まずいならまずいって言ってくれても」
「そ、そんなことは言ってませんよ! ただ、揚げ物だけは勘弁してほしいと……」
由佳里さんも料理には誇りを持っているみたいだから、そんないじめるためにこんなことするとは思えないけど。
まあ、由佳里さんの4品目である何かのカツが僕と同じ作り方をしているなら、初音さんの杞憂で終わるはずだけど、
単なる見落としなのか、それとも意地悪で言わないだけなのか……。
「ちょ……これ、すごくおいしい!」
「油くどさがありませんわね……とても揚げ物とは思えませんわ」
僕たちの料理を食べているみんなからそんな声が。やっぱり由佳里さんも僕と同じやり方をしてたのか。
「そりゃそうよ。だって、それ揚げてないもん」
「え……?」
「パン粉をつけた後は、フライパンに油を引いて焼いたの。これなら衣に油が染み込むのは最小限ですむし、
カロリーもずっと少なくてすむわよ」
「由佳里お姉さま……それならそうと早くおっしゃってくださいよ」
「だって、初音の反応見るの楽しいんだもん。まあそういうわけだから、安心して食べていいわよ」
やっぱり意地悪だったのか。由佳里さんも、まりや従姉さんの影響、悪い方もちょっと受けてるな。
さて、由佳里さんのチーズチキンカツと僕のエビフライ、どちらもファミレスにも普通にあるメニューだけど、
それよりずっと美味しいと評判だった。
スイーツも由佳里さんのシフォンケーキと僕のプディングタルト、そして紅茶の組み合わせがピッタリで
創造祭のティールームの再現だと評価してくれた。
「では、判定に入ります。赤いお皿の料理がよかったと思う方は赤い旗を、
青いお皿の料理がよかったと思う方は青い旗を揚げてください! せーの!」
陽向ちゃんの掛け声で、全員が旗を揚げる。揚げるんだけど……。
「ええーっ!?」
「こ、これ、どういうこと!?」
僕と由佳里さんは、その光景を見てビックリ。みんなが、赤い旗と青い旗、両方とも揚げていたんだ。
「だって、どっちもすごく美味しくて、どっちかになんて決められないもん」
「最強の矛で最強の盾を突いたらどうなるか、と言われた武器商人の気持ちがよくわかりましたわ」
なるほど、僕と由佳里さんの料理が最強の盾と最強の矛、か。どちらがどちらなのかは知らないけど、
みんなにとって僕たちの料理は最高の評価を得た……ってことだな。
「結局、引き分けでしたね」
「そうみたいね」
僕と由佳里さんは、お互いの料理を試食することにした。相手はどんな料理を作ったのか、それを知りたかったからだ。
「これ……ぼ……私でもこんな味の料理は思い浮かびませんでした……いったいどうやって」
危うく“僕”と言いそうになってしまった。由佳里さんの料理はそれくらいおいしい。
なるほど、“殿方であればお嫁さんにしたい方コンテスト”2年連続No.1なのもうなずける。
「千早の料理すごいよ! なんか想像してたよりずっとおいしい!」
由佳里さんも僕の料理にびっくりしてるみたい。僕は由佳里さんのほうが上だと思うけど……。
「ちょっと初音、ほかのみんなもだけど、もうちょっと味を見る目を養いなさいよ! 私が審査員だったら
間違いなく千早の大勝利にしてたわよ!」
「そんなことはありません! 由佳里さんのお料理の方がずっと美味しかったです!」
「ううん、千早のお料理の方が上手よ!」
「由佳里さんの方です!」
「千早の方!」
僕と由佳里さんはしばらくお互い一歩も譲らなかった。
「……なんか、妙な言い争いになってますね」
「由佳里ちゃんも千早さんもお互い相手のを認め合っているからね。確かに妙よね」
「まあ、そんなお2人だからこそ、この腕前なのでしょうね」
外野は外野で納得されているみたいだけど……。
「では、お相子ということで」
「うん、それが一番かもね」
結局、話はそれで落ち着いた。まあそうするしかないだろう。
「よろしければ、また由佳里さんのレシピも教えてくださいね」
「喜んで。千早のもね」
「ええ。もちろんです」
由佳里さんがいると、また料理のレパートリーが一段と増えそうだ。今からすっごく楽しみだな。
「ねえ、ところで千早、あなた瑞穂お姉さまのこと嫌いなの?」
え? な、なんでそんなこと……。
「ええ……まあ……」
「そんな……どうして?」
「瑞穂さんが悪いわけではありませんよ……まあ言うならただの逆恨みですから」
僕が由佳里さんに事情を説明すると、由佳里さんは瑞穂さんに何かを話しに行ったみたい。
まあ、僕のことなんだろうけど、一体どうなるんだろう……?
「千早さん」
「瑞穂さん……何か?」
しばらくして話し終えると、瑞穂さんが僕のほうへ来た。なんだろう?
「私と、勝負をしてもらえないかしら?」
「勝負? 何のでしょう?」
僕が瑞穂さんに負けっぱなしだったのは由佳里さんから聞いてるはずだけど。
「お料理のよ」
「ええーっ!?」
確か鏑木家では男は厨房に入っちゃいけなかったんじゃなかった? 聖應でちょっとかじったにしても
高が知れてるし……そんな瑞穂さんが料理勝負だなんて……何考えてるんだ?
Fin
以上です。
支援&ご指摘くださった方、ありがとうございます。
本当は昨日全部投下してしまうつもりだったのですが、
バイさるに巻き込まれたのと仕事の関係で、今までかかってしまいました。
由佳里ちゃんと千早くんってどちらが料理上手なのかな? と思ったらこうなりました。
私は今のところ2人のエルダーは貴子ルート後で書いていますが、どのルートの後でもありえる話だと考えています。
実際どのルートの後も、エトワールの時期も似た展開になると思いますし。
では、本日はこれで。お目汚し失礼いたしました。
東の扉氏乙 (´・ω・`)ノシ
俺もWエルダーは貴子ルートが一番しっくりくるような気がします。
しかし、音楽とか料理とかみなさん色んなネタひっぱってくるすなぁ。
>>571 俺も一緒。
一度SSに挑戦したんだけど、気がつくと収拾がつかなくなっちゃうだよね…。
>>581乙
>>571、582
慣れないうちは無理にでもキャラを絞って少数精鋭でいった方が書きやすい
好きなキャラじゃなくても動かしやすいキャラを優先して使うとか
おとボク2ならたくさんキャラを出さなくても千早と薫子だけの密室劇でもそこそこ賑やかで萌える話が書けると思う
本当に書きたいものはある程度慣れてからのほうが自分でも納得いくものが書けるしね
小説の書き方でもよくあるが、長編短編問わず、基本的に同時に動かせるキャラクターは5人ってよく言うよね
それ考えると銀英伝書いてた頃の田中芳樹は天才だったと思うよね
で、いつになったら創竜伝は(ry
由佳里と千早が料理で絡むとなったら。きっとこうなると信じてる。
---
「かくかくしかじかで、千早ちゃん、料理すごいんですよー。
そうだ!是非由佳里お姉様と勝b」
「えぇっ!」
「初音がそこまでいうなら、そうね。あなたの料理を食べさせて。千早さん。
あなたの腕、私が判断してあげるから。」
「それで、チーズハンバーグと和風ハンバーグ、最後は煮込みハンバーグなの?」
「思いっきり由佳里お姉様の趣味がでてますね‥」
「ちっちっち。香織理。わかってないわね。この課題の意味を。
まぁ、千早さんは理解しているようだけど。(ふふり)」
「おぉ。味わい深いのにこってりしすぎていない、
なんてバランスの取れたチーズハンバーグ!」
「これは、さっきとは具材が違います? ハンバーグがふわふわしていて
おろしドレッシングと絶妙に合いますね!」
「煮込んでいるのに柔らかい。さらに肉汁がたっぷり!なにこれおいしー!」
「さすが千早さん。課題の意味を理解しているのはわかっていたけど
それぞれを見事にクリアしてきたわね。
私もようやく、これを引き継ぐ相手を見つけることができたわ!」
「なんですかこれ。腕章?」
っ 『櫻寮ハンバーグマスター』
「まりやお姉様が、せっかく作ったんだから捨てることは禁ずるって‥‥(涙)」
「あぁ、由佳里さんも苦労なさったんですねぇ‥(涙)」
---
もうすぐ卒業シーズンですが、その前に予餞会を開催する
学校も一部あるかと思います。
今回はその予餞会をSSにしてみました。
今日は前編だけを公開、9〜10レスを予定しています。
まだまだ寒さ続く2月上旬のある日、寮での夕食が終わった後に
初音が申し訳なさそうな顔をして千早に語りかけた。
「あの……千早ちゃん。この学院では2月末に一・二年生の皆さんが
主体となって卒業する三年生に感謝の意を込めて予餞会が催されるの
ですが……それでメインイベントは二年生有志が主催する劇ということ
になっているのです。そこで今日、生徒会と二年生有志で劇に関する
打ち合わせを行ったのですが、二年生側から是非、千早ちゃんも出演
して欲しいとの要望があったのです」
「えっ、また私が劇に出演するのですか……でもそうであればもう一人
のエルダーである薫子さんにも出演要請があるはずなのでは」
千早は少し驚いた表情で初音に質問をする。
支援
「それは、千早ちゃんは二年生の皆さんには絶大な人気がありますし、
特に主演予定の雅楽乃ちゃんやケイリちゃんが熱烈に千早ちゃんに出演
を希望されるものでしたから……」
「雅楽乃やケイリの希望なのですか……」
すると横で話を聞いていた薫子たちが嫌味な表情で
「やっぱり千早は二年生にはファンクラブがあるだけにモテモテだね」
「やはり千早さまは先天的な女殺しのようですね」
「そうね、名前も千早ではなく手早に変えたらどうかしらね」
「ちょ、皆さん束になってからかったりするのはやめてください」
千早が涙目になって反論をしていると優雨が千早の袖を引っぱり
「窓の外は舞台だって……」
「優雨……」
「千早の舞台がまた見たい……」
優雨の希望もあり、結局は出演要請を受けた千早ではあったが、
「ところで初音さん、演目とかは決まっているのですか……」
「近々、文芸部の方でコンペを行うそうなので決定しましたら
千早ちゃんの方に台本をお渡しします」
すると陽向が目を輝かせながら
「そういえば千早お姉さまは学院祭の前に男性役がご希望と
おっしゃっていましたよねぇ」
「えぇ、確かにそう云いましたが……」
「不肖陽向、只今千早お姉さまの希望が叶えられるものを執筆中
でございます。必ずやコンペで当選してみせますから、楽しみに
待っておいてください」
「えぇ、楽しみにしておくわ」
しかし千早は陽向の不敵な笑みに嫌な予感を感じざるを得ないのであった。
支援
それから一週間後の放課後、学校から寮に戻っていた千早は食堂で香織理
と談笑をしていると初音が紙袋を持って食堂に入ってきた。
「千早ちゃん、予餞会の劇の演目が決定しましたので
台本をお持ちしました」
初音は袋から台本を取り出し、千早に手渡すがその表紙に書いてある
題名を見た千早は思考が一瞬停止した。
『ばらの騎士』
―ドイツオペラには女性が男性役を演じる所謂ズボン役というものが多いが
この作品はそのズボン役が出てくるオペラの中でも代表的なもの。しかし
問題はズボン役そのものにあるのでなくズボン役が女装少年を演じることに
あるのである―
「あらっ千早、表紙を見るなり冴えない表情をしているけど」
「いぇっ、何でもありません香織理さん」
千早は何とか取り繕って表紙を捲り、配役を見ると再度思考が停止した。
オクタヴィアン・・・・・・妃宮千早
(うっ、何で選りに選って僕が女装をする少年役を演じなければ
ならないのだ……)
「千早ちゃん、さっきから台本を見るなり浮かない顔をしています
けどお気に召さなかったですか?」
「いぇっ、そんなことはないのですが、初音さんはこの作品に関して
はどのような感想をお持ちで」
「先ほど生徒会室で一通り目を通したのですが、結ばれる男性によって
運命が変わってしまう女性の儚さをよく描写していますし、芸術の都
『ウィーン』らしい瀟洒な雰囲気をうまく引き出していて良い作品だと
思います。そしてなにより……」
「なにより?」
「オクタヴィアンが一目惚れしたゾフィーの政略結婚を破棄させるため
に女装して活躍するところなんかは読んでいて最高でしたね」
「私も良い作品だとは思うのですが、学院で女装少年ものはどうかと……」
「女装と云ってもこの作品の場合、変態的嗜好のものではありませんから
特に問題はないと思いますし、作品の雰囲気自体がこの学院にぴったりだ
なんて思うのですが」
支援
すると横で千早と初音のやりとりを眺めていた香織理が小悪魔的な
笑みをたたえて
「女装少年ものとはなかなか興味深い作品だわね……ところで千早は
どういった役を演じるのかしら?」
「さっき初音さんが云っていた女装をする少年『オクタヴィアン』
ですよ」
千早は少しふて腐れた表情で香織理の質問に答える。
その答えを聞いた香織理は笑いを堪え切れないような感じで
「ふふふ……お嬢さまキャラの千早が女装少年を演じるとはね
とても面白いわね。でも学院祭の吸血姫『カーミラ』も好演だったし
器用な千早なら今回もうまくこなせるのではないかしら」
「香織理さん……からかうのはやめてください」
すでに千早は涙目状態である。
そこへいつもの元気な声が聞こえてくる。
「お姉さま方、ただいま戻りました。あれ……千早お姉さま、
予餞会の劇の台本をすでにいただいたのですか。実は今回の
劇もコンペで私の作品が採用されました。努力の甲斐があった
いうものです。これで千早お姉さまも念願の男性役を演じることが
出来ますね」
「でも陽向ちゃん……男性役とは云っても女装少年の役はあんまり
だと思うのですが……」
「いいえ、この『オクタヴィアン』こそが千早お姉さまにぴったり
の役なのです」
「私にぴったりの役なのですか……」
陽向が突然強い口調で断言するので千早はびっくりする。
しかし陽向は千早にぴったりの役だと云うがまさか陽向は千早が
まさにその女装少年だということを知るはずないのにと考えていると
「オクタヴィアンはばらの騎士として登場する時に銀のばらを手に持ち、
銀の正装を身にまとっているのですよ。これはまさに白銀の姫君こそが
演じる役ではありませんか」
「陽向ちゃん、そうやって褒めていただけるのはうれしいのですが
女装少年だと流石に演じるのが難しいと思うわ。この私で大丈夫なので
しょうか……」
「千早お姉さま大丈夫ですよ。学院祭の吸血姫『カーミラ』も演劇部顔負け
の好演でしたから……それに是非とも千早お姉さまの『オクタヴィアン』
が見てみたいのです。白銀の姫君が銀のばらに銀の正装……想像するだけで
萌えですから」
「もえ……ですか?」
「すっすいません……範囲外のようでした」
支援
その日の夕食後、オクタヴィアンを演じることで憂鬱な気分になった千早は
一人、部屋でため息をついていた。
そこへ史がお茶を持ってきて
「千早さま、まだ拗ねていらっしゃるのですか……陽向さんは
別に悪気があってあの作品を執筆したわけではありませんから
お許しになられてください」
「そんなことぐらいはわかっているよ、史。ただ今回は女装を
してこの学院に通っている僕が女性として男性役を演じ、しかも
その男性役が女装をする……云っている自分でも訳がわからなく
なりそうな状況に気がめいっているだけさ」
「しかし千早さま、史は千早さまがこの役を演じるのはそんなに
悪いことではないかと思っているのですが……」
「なんでだい、史」
「千早さまはこの学院に来られてからは毎日、鏡の前で女性の
仕草や表情などを研究して、練習をなさっておられました。
今回の劇は一年間こうやって聖應女学院が通い続けた千早さまの
努力の成果の総決算のような気がするのです」
「なんか……理論がすごく飛躍しているように思うのだけど」
「それに千早さまは一年間、女性を演じてこられたのですから
女装少年を演じることぐらいは容易いはずかと……」
「あのね、史…………」
orz
結局、千早は史にとどめをさされてその日は復帰出来なかったの
であった。
後編に続く
皆様、支援ありがとうございました。
オペラ自体を今まで見たことがありませんでしたが、
わざわざ「ばらの騎士」のDVDを購入して観賞のうえSSを
書いてみました。
後編は劇の練習と本番について描きます。
次の日曜にUPしようかと思います。
乙
続き楽しみにしています
乙です。
『ばらの騎士』ですか、どうなるか楽しみです。
元帥夫人とゾフィーの配役が気になりますねぇ。
リボンの騎士なら知ってるんだけどなぁ
ワルツくらいしか聴いたことありませんけど、粗筋は
読んだことがあるので、配役を楽しみにしつつ続きを
待たせて頂きます。
>>544の続きが書き上がってみた。
誰得の展開で、立つ鳥跡を濁しまくってみたりして。14本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『聖夜』
観客への礼を終え、一層の拍手を貰ったあと。
一旦休憩に戻ろうかと千早、ケイリがホールを立ち去ろうとしたそのとき。
初音の声がホールに響き渡った。
『突然ですが、今の演目につきまして、
社交ダンス部 佐々木部長に解説をお願いしました。』
『僭越ながら、私、佐々木が簡単ですが補足をさせていただきます。
ただいま、妃宮・グランセリウスペアが踊ったダンスは、
2009年、世界舞踏コンクールで優勝した、
イギリスのエドワード・クリステペアのオナーダンスです。
巧みなステップとテンポのいい振り付けからなるその踊りの素晴らしさについては
皆さんもまさに実感できているかと思います。さらに‥(以下略)』
(ほぉ〜)(おぉ〜)(ぱちぱちぱち)
再び拍手がわき起こり。
千早とケイリは致し方なく足を止め、また周囲への礼を繰り返す。
そんなこんなで数十秒ほど解説が続く中、さくらが壇上横にある放送室から現れた。
『佐々木部長、解説ありがとうございました。
では、引き続きダンスパーティを再開したいと思いますが‥』
そういって、初音はさくらにマイクを受け渡す。
『皆さん、おまたせいたしました。
社交ダンス部および放送部の協力の下、ようやく準備が整いましたっ!
次の楽曲は、当初プログラムから変更しまして‥。』
そういって、さくらはにやりとほくそ笑む。
『2010年、世界舞踏コンクールの優勝ペアによるオナーダンスの曲、
NOCTURNE 〜夜想曲〜 No.21になります!』
「へ‥?」
(おぉ〜)(きゃ〜)
期待に輝く周囲の眼差しと沸き立つ新たな拍手。
「さくら。なかなかやるね‥。」
「え? えーと‥?」
「ほら、千早。次は2010年だそうだよ?」
「い、いや‥ちょっと‥。そろそろ本気で体力が‥‥。」
渋る千早なんぞ、気にする風もなく。
ホール四方のスピーカーから、軽やかなピアノの音色が響き出す。
「ほらっ。みんな待ってるよ。いくよ、千早っ!!」
「む、無理ですってばっ‥‥ちょっ! ケイリっ!」
ずるずると舞台中央に引きずられていく哀れな舞姫と、
心の底からの笑みを浮かべるもう一人の舞姫に、眩しいスポットが当てられる。
淑女達の熱狂は治まる気配も見せず、
今宵の舞踏会、ラストダンスはまだまだ先のようである。
***
『では。千早お姉さまとケイリさんへの、盛大なる拍手をお願いいたします〜』
(ぱちぱちぱち)(きゃーきゃー)(お疲れ様でした〜)(素晴らしかったです〜)
観衆を魅せまくった二人の舞姫を称えるべく、
初音の計らいにより、ケイリと千早は先に撤収することになり。
鳴り止まぬ拍手の中、講堂を後にした。
「あら、雪ですか‥。」
「通りで寒いわけだね‥。」
白い吐息がしんしんと降る雪に紛れて消えていく。
「あぁ、千早。どうやら迎えの車がこの雪で遅れているようなんだ。
よければ少し、千早の部屋で時間を潰させてもらえるかな?」
「えぇ、構いませんよ。」
「ふふっ。ありがとう。」
ダンスパーティ中に降り出した雪は、うっすらと路面に積もりはじめており、
雪に慣れていない都市交通に混乱を巻き起こすには十分であった。
「紅茶くらいしかおもてなしできませんけれど‥」
「別に構わないよ。無理に頼んだのは私の方だし。
それに‥‥聖夜に千早の部屋に二人きりだなんて、もてなしとしては十分だ。」
ケイリはそういって秋波を送る。
「はぁ。ケイリったらそうすぐ人をからかうんですから。
申し訳ありませんが、疲れて頭が回っていないので、
ケイリの軽口に今はうまく応えられませんから。」
「おや。軽口とは心外だね。本心からの言葉なんだけれど。(くすくす)」
「言ってるそばからそれですから。まったくケイリったら。(やれやれ)」
「いや、でも、本当に。
さっきは千早に無理をさせてしまう結果になったけれど。
千早の素晴らしさは痛感させてもらったよ。」
「そう言ってもらえるとありがたいですが、
どう考えてもケイリのほうがすごかったじゃないですか。」
「いやいや。
重要なのは私の期待に過不足なく応えられる、
いや、私の期待を超えた結果を出してくれる、千早の凄さってこと。
ふふっ。私はもう千早を手放す気はないからね。」
そう不敵に微笑むケイリの視線は、
色目というよりは。そう、獲物を狙う猛禽類の眼差しで。
「はいはい。ケイリの期待には応えられるよう今後も頑張りますから。」
疲労のせいか感度の鈍い千早は、そんな視線には気づかず華麗にスルー。
「やれやれ。今日はどうやら日が悪いようだ。
これは‥自業自得という奴かな。」
そんな反応にため息をひとつ。
ケイリは面白げに微笑みを浮かべるのであった。
***
支援
「では、ケイリ、どうぞ。」
「お邪魔します。」
まだほかの寮生は戻っていない、静かな寮に二人の声が響く。
「ちょっと寒いですね。今、暖房いれますから。」
「いや。外に比べれば天国のようだよ。」
そんな二人を出迎えるように。
「おかえりなさい。ちーちゃん。ケイリちゃん。
疲れてるようだけど、すごく楽しそうだね。」
不思議な声が聞こえてきた。
「え? 千歳さん!?」
「おや。千歳じゃない。ひさしぶり。」
「ケイリちゃん、ひさしぶりー。」
「今日はダンスパーティで千早とのダンスを堪能させてもらったからね。
これで楽しくないだなんて、バチが当たるってものだよ」
「おぉー。ダンスパーティ! 楽しかった?」
「それはもう。」
普通に会話が続く二人に、
再起動した千早が慌てて割り込む。
「ち、千歳さん!」
「どうしたの、ちーちゃん? そんなに驚いて。
幽霊さんでも見たみたいだよ?」
「ほ、本当に千歳さん?」
「うん、そうだよ、千歳だよ。(にっこり)」
そういって千歳はにこにこ笑う。
「だって‥、昨夜で‥あのとき‥」
「うん。ちょっと‥ちーちゃんにお礼がいいたかったんだ。」
「お礼‥?」
「うん。本当にありがと。ちーちゃんにそれを伝えたくて。
私のためにちーちゃんはたくさん頑張ってくれて。
ちーちゃんのおかげで、お母さんは私のことを思い出してくれて。
全部ぜんぶ、ちーちゃんのおかげ。本当にありがとう。」
「千歳さん‥」
そんな千歳の言葉に。
千早は涙ながらに言葉を返す。
「いろいろ迷惑をかけた駄目なお姉ちゃんだったけど。
ちーちゃんがいてくれて、本当に嬉しかった。ありがとう。」
「そんな‥。私の方こそ、いろいろ千歳さんには守ってもらって。助けてもらって。
ごめんなさい。そして、ありがとう‥」
「ふふっ。二人で謝って、お礼をいいあって。なんか変だよね」
「うん‥‥。そうですね。」
そういって微笑む二人。
***
そんな二人を静かに見つめていたケイリにも千歳は声をかける。
「ケイリちゃんもありがとう!
いろいろおしゃべりできて楽しかったよ。」
「千歳。こちらこそ。あなたと知り合えて本当によかった。」
「うん。ちーちゃんのこと、今後ともよろしくね!」
「あぁ、それはまかせて。さっき心を決めたところだから」
「お?おぉ? なんか面白そう! 詳しく話を聞きたいところ〜。
でも、うん。そろそろかな‥」
そういって、ふんわりと千歳は笑う。
「千歳さん‥? 行ってしまうんですか‥?」
「うん。でも寂しがらないでね。私はちーちゃんのことをずっとみているから。」
「‥はい。」
「だから、笑っていてね。幸せにね。ちーちゃん。」
「わかりました‥。姉さん。」
「うん、約束だよ」
涙を流しながら。精一杯微笑みを浮かべる千早と。
満足の笑みを浮かべる千歳。
「ねぇ、千歳」
「ん? なに? ケイリちゃん」
「事情はいまいち飲み込めていないけど、千歳はもう満足したのかな?」
「うん。ちーちゃんのおかげでお母さんにも思い出してもらえたし。
私のことを大好きといってもらえたんだ。私はもう満足だよ。」
「そう。それはよかった。」
「ちーちゃんにもお礼が言えたし。ケイリちゃんとも会えた。うん。私は満足。」
***
そういって笑みを浮かべる千歳の前に、
目線を会わせるように片膝をついてケイリは話しかける。
「千歳。今のあなたにこれを聞くのは野暮かもしれないけれど‥。
もしかしたら、あなた決意を揺らがせ、惑わすことになるかもしれないけれど。
もし、もうすこし時間があるとしたら‥‥千歳はどうしたい?」
「え?」
思いも寄らぬケイリの言葉に驚く千歳。
「本当に千歳が満足しているというのなら、そこは私が口を挟む余地はないけれど。
でも、千歳に思い残しがあるのなら。もしかすると私は手伝えるかもしれない。
千歳の本当の気持ちはどう?」
そう問いかけるケイリの眼差しは深く静かで。
ゆっくりと、その言葉の意味を理解した千歳は。
先ほどの笑顔が嘘のように、泣きそうな、不安げな面持ちとなり。
「‥‥本当に、できるの‥?」
「えぇ。あなたがそれを望むなら。
そして‥、そう。千早がそれを望むなら、きっと。」
そういってケイリは柔らかに笑う。
そのケイリの言葉を噛みしめ。数刻が過ぎた頃。
千歳は涙を流しながら、本心を吐露しはじめる。
「ケイリちゃん‥。
私‥、もっと千早ちゃんと一緒に居たいよ。
みんなと一緒に過ごしたいよ‥。」
支援
「千歳さん‥」
そんな千歳の言葉に悲痛の表情を浮かべる千早。
「うん、そうだよね。千歳。それでいいと思う。」
そんな千歳の言葉を、暖かな微笑みで受け入れるケイリ。
それでは、と呟きながら。
ケイリはポーチの中から天鵞絨の小さな袋を取り出す。
「はい、千早。」
「えぇと‥これは?」
渡された袋にはいっていたのは大粒の薄青い宝石。
「アクアマリン。3月の誕生石。石言葉は勇気と聡明。
そして3/12。千早、千歳。あなたたちの誕生日石。
まぁ誕生日石のほうは本来は原石なんだけれどね。」
「アクアマリン‥」
「綺麗‥」
「宝石には不思議な力がある。
私自身もそこまで取り扱えるわけではないけれど。
千歳。千早。あなたたちの真摯な願いがあれば、きっとそれは叶う。
さぁ、両手に持って強く願うんだ。千早。千歳。」
「は、はい。」
手のひらの上に転がる淡青石を。
千早は両手で強く握りしめ、そして願いを込める。
千歳も、千早の手を包み、強く祈りを捧げる。
***
そして数瞬の時が流れ。
ふと千早が気づいたときには、千歳の姿は消えていた。
「あ、あれ? 千歳さん? ‥ケイリ!?」
「ふふっ。千早。心配しないで。
ちょっとそれを貸して。」
「え? は、はい。」
手渡された宝石を目の高さに捧げ持ち。
ケイリは小さく話しかける。
「千歳。具合はどうだい? 今までとは勝手が違うかもしれないけれど。」
その瞬間。
宝石の隣に、小さな千歳の姿が現れた。
ケイリの掌の上で、きょろきょろと微妙に等身が縮んだ自らの姿を確認している。
「お!? なんか前より楽だよー」
「ふふっ。うまくいったようだね。
小さいから消耗も小さいだろうし、
宝石に固着させていれば前よりも安定するはずだ。」
「やっほー。ちーちゃん。
お姉ちゃん、なんかちっちゃくなっちゃったよー」
楽しげに両手を振る千歳に。
「はぁ‥‥」
驚嘆のあまり、相づちしか打てない千早。
支援
「むぅー。ちーちゃんが喜んでくれてないっ!」
「それはひどいな。千早。」
「ひどいよねー。ケイリちゃんももっといってやって!」
「そうだね。これはひどい。なにか罰が必要かもしれないね。」
「そうだ!そうだ! お姉ちゃんとの再会に感動しないちーちゃんにペナルティだ!」
「ちょ、ちょっと待ってください‥」
戸惑う千早に、ケイリはそっと宝石を手渡す。
宝石と一緒に千早の手の上に飛び乗った千歳を、
もう片方の手でつんつんと突つきながら。
「千歳さん‥。平気なんですか?」
「うん! 前より全然楽だよー。」
髪や頬を撫でる千早の指に、くすぐったそうに言葉を返す。
そんな二人をケイリは楽しそうに見守っていた。
***
「ケイリちゃん、本当にありがとう!」
「ケイリ、私からも。本当にありがとうございます。」
落ち着いてから。
二人は心からの感謝をケイリに示す。
「私はきっかけを与えただけ。二人の願いの強さが生んだ結果だと思うけど。
そうだね。二人の気持ちはありがたく受け取っておくよ。」
「うん。もらっといて!」
「千歳さん、その返しは変ですよ‥」
「えー。そんなことないよー」
小姑のような千早の指摘も、今の千歳にはかけがえのないもの。
満面の笑みを浮かべて、その会話を楽しんでいる。
「で、千歳。さっきのペナルティの件だけど。」
「ちょっ! ケイリ!」
「そうだ!忘れてた! うーん、どうしようかー」
「ふふっ、千歳の心のままに。」
腕を組んでうーむと悩んでしばし。
「そうだ! じゃあ、ちーちゃんは1日ケイリちゃんとデートするの!
もちろん、ちーちゃんのおごりでね!」
「ちょっ! 千歳さん!」
「おぉ。それは素敵だね。」
「ふふっ。ケイリちゃんへのお礼も籠めて、ってことで。」
悪戯っぽく笑う千歳。
「そういうことであれば、ありがたく。
千早のエスコートを期待させてもらうかな。」
「はぁ‥。わかりました。
ケイリには本当にお世話になりましたし。
えぇ、精一杯おもてなしさせていただきます。」
「そうだ。その宝石に台座をつけて首から提げられるようにしよう。
行きつけのジュエリーショップがあるから、そこに依頼すればすぐだ。」
「行きつけの宝石店! ケイリちゃん、すごーい!」
「加工中はちょっと静かにしててもらう必要があるけどね」
「そのくらいは我慢しまーす」
宝石店と聞いて、若干おののく千早さん。
「ケイリ‥。それっておいくらくらいするものです?」
「ん? あぁ、そこはさすがに私で払いますから。
私から千歳へのプレゼントです。」
「でも、そもそもこのアクアマリンも高価そうですし‥。」
「んー。それほどでもないんだけれど。
それなら、アクアマリンは千早へのプレゼント。
ネックレスへの加工費は千歳へのプレゼント、ということでどう?」
「ケイリちゃん、ありがとうー」
遠慮を知らない千歳さん。
「ケイリ、本当にいいの?」
「えぇ、もちろんです。
私自身としても、千歳と今後もお付き合いできるのは嬉しいことですし。
それに。さっきもいったけれど。私は千早を手放す気はないからね。
先行投資と思えば、安いものですよ。(にっこり)」
鋭い目つきのケイリさん。
「お。そういえば‥。ケイリちゃん、
ダンスパーティのこととか、その辺あとで教えてねー」
「えぇ、千歳。今度ゆっくりお話しましょう。
そうですね。いずれそのうち、我が家に招待いたしましょうか。
夜を徹してゆっくり語り合いましょう。千歳。」
「わーい。 じゃあねぇ、私はちーちゃんのちっちゃいころの話とか。」
「それは興味深い。 楽しみにしているよ。」
「ち、千歳さんっ!!」
そんなこんなで。千歳とケイリに翻弄される千早の激動の日々は、
この奇蹟の一夜から始まるのであった。
-----------------------------------------------------------------------
いやぁ、ご都合主義って本当に素晴らしいですねぇ。(しみじみ)
乙した〜
…千歳さんが小姑化する未来が見えるような見えないような…
//水野晴郎さんェ・・・
乙〜
成仏シーンも好きだけど、そのまま守護霊化?も良いな
後ちょっと気になったが、数刻って数時間の事では?
乙
でも、正直せつない話はちょっと・・・
前回の予餞会の話の続きです。
長くなりそうなので土日で分けてUPします。
今日のところは8レスぐらいを予定。
その翌日、千早は夕食後に部屋に戻ると台詞を覚えるために台本を
手にした。
昨日は自分の配役を見ただけでショック状態となり、他の配役を全く
見ていなかったのでそこをまずチェックする。
元師夫人マルシャリン・・・ケイリ・グランセリウス
オックス男爵・・・・・・・冷泉淡雪
オクタヴィアン・・・・・・妃宮千早
ゾフィー・・・・・・・・・哘雅楽乃
マリアンネ・・・・・・・・渡會史
アンニーナ・・・・・・・・土屋さくら
昼間、聞いた話では配役は演出を担当する演劇部副部長の玲香さんと
脚本担当の陽向ちゃんが主体となり、生徒会と雅楽乃、ケイリの意見
を取り入れて決めたらしい。
自分が『オクタヴィアン』演じることに関しては若干の異論はあるが
千早にはこれは絶妙の配役のように思えた。
まず主人公の『元師夫人』だが、気品さと深い表現力が求められる。
利発的な雅楽乃でも問題はないと思われるが、キャラ的には優雅さ
が感じられるケイリの方が相応しいように思う。
また敵役の『オックス男爵』だが野卑で下品で好色でさらにケチと
最低のキャラではあるがそれと同時にどこか憎めないところがある
愛すべき悪役でなければならない。
これは本人には悪いかもしれないが自分に対して事あるごとに
突っかかってきたりしながらもそれが逆に微笑ましく思えたりする
雪ちゃんに相応しい配役だと思った。
支援
続いて台詞の確認作業に入るが、読んでいくと陽向ちゃんの文学
に関する能力は流石だなと思わされた。
まずドイツ文学特有の抽象的でまわりくどい表現は全て現代風の
柔らかい表現に書き換えられている。
また原作のオペラは上演に三時間はかかる大作だが、大筋に関係
ないところは全てカットされ、手頃な長さにされている。
最後に女学院の生徒が演じることを考慮して男性役は極力カット
もしくは女性に置き換えられている。
もちろん『オクタヴィアン』と『オックス男爵』は男性でないと
劇が成り立たないのでそのままだが、例えばソフィーの父親の
『フォン・ファニナル』は仕事で不在ということにして、その役割
を史が演じるゾフィーの侍女『マリアンネ』が兼ねている。
千早は台本を読んでいくうちにその内容に惹かれ、女装少年を演じる
ことに関しては若干不服ではあるものの今回の劇に参加するのが
楽しみになってきたのであった。
台本を渡されて数日後、劇の練習初日である。
生徒会長の初音それから演出担当の玲香、脚本担当の陽向のそれぞれの
挨拶が終わると早速、練習開始である。
まずは『オクタヴィアン』と『元師夫人』が一緒になって朝を迎える
冒頭のシーンからということで保健室から借りてきたというベッドが
練習会場である家政科室へ運び込まれる。
「練習だというのに随分本格的なのですね」
その様子を見ていた千早がそう呟くと
「今回は千早と一緒に劇が出来るからと云って皆、気合いが
はいっているからね。もちろん私も千早と一緒に劇が出来るなんて
夢のようだよ」
「ケイリ、いつの間に横に……」
ケイリはいつもに増して鋭い目つきで千早に話しかける。
ベッドのセッティングが終わり、千早とケイリはベッドの上で
スタンバイをする。
そして陽向が用意してあったラジカセのスイッチを押す。
玲香の発案で原作はオペラなのだから少しはそれらしくしようと
いうことで歌こそは歌わないが、要所々々でオペラや組曲の音源を
使ってBGMを流そうということである。
音楽が流れ出すとケイリが千早の耳元で囁く。
「この序奏は元師夫人とオクタヴィアンの昨夜の情事を暗示して
いるんだ。冒頭の勇壮なホルンが若く情熱的なオクタヴィアンの
テーマ。その後に続く甘美なヴァイオリンが今まさに女盛りを向かえ
ようとしているマルシャリンのテーマだよ」
ケイリの云う通り、オクタヴィアンとマルシャリンのテーマが絡み合い
ながら曲は進んでいく。
そして激しい感情を示すかのようにホルンが吹きあがる。
するとさらにケイリは耳元で囁く。
「そして元師夫人とオクタヴィアンは結ばれたんだ。私と千早もこうして
結ばれたいね」
(ケイリ……今なんと……)
ケイリの衝撃的な告白に流石に千早は聞こえないふりをした。
その後、曲は気だるい雰囲気となり、朝を告げる小鳥の鳴き声
を模したフルートか鳴り響くと本編の開始である。
枕元から起き上がった千早演じるオクタヴィアンが
支援
支援
「昨夜のあなたと今のあなたが同じ人だとわかる人は誰もいない」
まだベッドに身を預けたままのケイリ演じる元師夫人は
「それが不服なの?カンカン。皆に昨夜の私を知って欲しくて?」
さらに情熱的にオクタヴィアンは云う。
「違うよ。僕は幸せに酔っているんだ。昨夜のあなたを知っているのを
僕だけだということに。あなたを思って身を焦がしそうになるくらい僕
はあなたに溺れている。でも僕が人目をはばからなくなったら僕たち二人は
どうなるの?」
「あなたは私の大切な人。愛しているわ。」
そして二人は抱擁し、キスをするが、ケイリは千早の不意をついて股間
に手を伸ばそうとするが千早は何とかそれを避けた。
(うっ……何をするんだケイリ……)
冒頭のシーンの練習が終わり、一旦休憩となるが玲香が千早に話しかける。
「お姉さまの男性の演技凄くお上手でした」
(ギクッ)
「立ち振る舞い方も男性そのものでしたし、心の底から女性……元師夫人
を愛している感じが出ていました。実はケイリさんが『オクタヴィアン』は
是非、千早お姉さまにと強く推薦したのですが、私から見たお姉さまは清楚な
淑女という最後まで反対したんです。でも今となってみれば千早お姉さまが
『オクタヴィアン』で大正解でしたわ」
「えぇ……演技を褒めてくださってありがとうございます」
(ケイリが僕がこの役をやることを推薦したのか……)
そういえばさっきの冒頭シーンの練習もそうだったが、このところ
ケイリからは色々とモーションを掛けられることが多い。
この前、ケイリが寮に泊まりに来た時は自分と一緒に風呂に入ろう
云いだしたこともあった。
最終的には史が機転を利かせてくれて助かったのではあったが……。
もしかすると洞察力の鋭いケイリのことだから、僕が男だということ
はもうばれてしまっているのかもしれない。
でも千早としては不思議とそれが嫌だという感情は湧いてこなかった。
もしかするとさっき玲香が云った言葉『心の底から女性……元師夫人
を愛している感じが出ていました』のとおり心の深層では彼女を
愛しているのかもしれないと感じたのであった。
続きはまた明日!
乙
楽しみにしてます
ところで二、三レスで終わるような短い小ネタでも良いのかな?
なんてとこで切るかな!
>>636 私は一向に(ry
以前1レス投稿した事ある俺が面白ければOKだと言ってやる
職人たち、書くペース早ぇ
かれこれ1カ月頑張ってるけど全然まとまらねぇ
ちゃんと、フローチャートを書いてから始めろとあれほど・・・
641 :
625:2011/03/06(日) 21:30:44.76 ID:wOldn/kcI
続きをUPしようと思いましたが、
PCが逝ってしまいました。
急遽、PCを買ってきてセットアップ中です。
また後日アップします。
首を長くしてお待ちしております。
>>638 なんかハードル上げられた気がするがw
大分前に思い浮かんだ順一の男の娘判定の原因を考えてみた
三レスだから支援無くても大丈夫かな?
数年前の事…
薫子と喧嘩して家を出て当てもなく彷徨っている順一
「はぁ…ったくお嬢あんな調子じゃ嫁の貰い手なんていやしないだろうな。
髪が長いから見た目は女に見えるが…中身どうにかならないもんかね…」
そう呟きながら歩いていると目の前に長髪の麗しい人物が
「おっ、こりゃお嬢と違っていかにもお嬢様らしい娘だな。
ちょっと声かけてみるか」
「なぁそこのお嬢さん!」
「…」
「おいおい、無視すんなよお嬢さん」
「…」
「なぁ、あんた聞こえんてんだろう?返事くらいしたって良いじゃないか?」
「えっ、僕の事ですか?お嬢さん言ってたからてっきり誰か別の人の事だと…」
「ボクっ娘か良いな…ってそうじゃなくて、あんた意外にお嬢さんが何処に要るんだよ?」
「えと…僕男なんですけど…」
「はぁ?馬鹿言うなよ。そんな格好して男なんて言って信じられると思うか?」
「そう言われても…じゃあどうしたら信じてもらえますか?」
「そうだな…俺をボコボコに出来たら男と信じてやるぞ。
とは言えこう見えてもボディーガードをやってるし、並大抵の相手なら何ともないがな。
あんたみたいなか弱そうな少女にゃ無理な話だろうけどよ」
「だから男だって言ってるのに…分かりましたよ、そんな簡単な事でいいですね。
たまには身体動かしておきたいし、相手しますよ」
「へっ言うじゃねえか。そりゃ楽しみだな。
じゃあそこの公園にでも行こうぜ」
「さて、準備はいいかい?何時でもかかってきな」
「では遠慮無く…はっ、とりゃ」
(なっ!?速い!?)
「ぐはっ」
「ああっ、とう」
「うぐ、ごほっ」
(まさか、こんな事になるとは…信じられない…)
見た目からは想像も出来ない攻撃に為す術無く、まさかの展開に茫然自失する順一。
「ぐっ…くそ、この!」
「ふっ、何ですか?その攻撃は?」
「畜生!うおぉー!」
「はぁ、そんなで当てられるとでも思ってるんですか?」
圧倒された相手への苦し紛れの反撃等当たる筈もなく、渾身の力を込めた一撃もあっさりかわされ…
結局一矢報いる事も出来ず、完膚なきまでに叩きのめされていた。
「うぅ…そんな馬鹿な…」
「自分から言っておいて、情けないですね…これで信じえてもらえましたか?」
「あぁ、まさかこんな目にあうなんて…信じたくないが…
少なくとも普通の女性にこんな事は出来やしねぇ…」
「しかしその程度の腕で誇ってるとは情けないですね。
そんなでボディーガードとは、守られてる方も可哀想ですよ。」
「ぐっ、言い返せねぇ…」
「第一プロのボディーガードなら見た目に惑わされる事なく、骨格や筋肉で性別見抜く程度の事は出来ないと」
「何だと…?そんな事が可能なのか?」
「そりゃそれなりの訓練は必要ですけど」
「そうか…よし、今日から心入れ替えて修練に励む事にするぜ!
俺は龍造寺順一、また機会が有ったら手合わせ頼むぜ!
その時までにしっかり鍛えておくからな!」
「分かりました。楽しみにしておきます。」
「ありがとうな…少年」
「あぁ、鏑木瑞穂です」
(鏑木…まさかあの鏑木グループの?いや、そんな御曹司があんな格好で一人で街歩いてるわけないか)
「瑞穂か…ありがとよ、またな」
そこにはがっちりと握手し、男同士の熱い絆が生まれていた。
そして月日は流れ…
「……あン?あんた、なんか妙だな…まさか」
「あんた……まさか男か」
(まさかこうやって本当に女装した敵からお嬢を守る日が来るとはな…ありがとうな瑞穂)
fin
やべ・・・瑞穂ちゃんにナンパ仕掛けたようにしか見えん・・・
順一の評価が俺の中でさらに差が
本編でちーちゃんとデートしたし、順一さんこの位の扱いは我慢してもらうと言う事で
しかし途中で4連続駄目?だと出たが、どうなってるんだろ?
0分跨いだ訳でもないし
でも順一の評価は下がったけど
話自体は面白い!!
もっとやってできれば順一以外で・・・
>>650の最後の部分の
書き方がおかしかった・・・
できれば他の話も読みたいと思いました
応援してます。
>>650-651 面白いネタ思いついたら書きたいと思ってますが、中々…
書いてみると地の文が思った以上に難しい
そろそろホワイトデーネタを仕込まにゃならんけど、
その前に淡雪バレンタインネタを書いておきたいところだが、
それなら初詣からじっくり書きたくもあり、どうやっても無理。。。
そこで、お手軽なエイプリルフールネタですよ
みつどもえでもやってたし
〜〜〜
千早「私の・・・淡雪・・・何・・・もイケますよ」
薫子「ヘェ〜今度私にも・・・させてよ!その・・・淡雪を」
陽向「私も・・・けど・・・淡雪を・・・オカズに何杯でもイケますよ」
香織理「ちょっと陽向・・・せっかくの・・・でしょ
もっと・・・じゃなきゃ」
優雨「その・・・の淡雪って・・・私でも・・・れるかな?」
千早「えぇ優雨でもいっぱい・・・れると思うわ」
初音「実は〜さっきデパートで買っちゃいました〜
「蟹の淡雪」 」
雅楽乃「まぁ、それが噂の蟹の淡雪ですか」
ケイリ「確かに美味しそうだね
・・・どうしたんだい淡雪?顔が赤いよ?」
淡雪「ナ、ナンデモナイ・・・///」
ケイリ「ふふっ・・・この淡雪も美味しそうだね・・・」
淡雪「」ゾクッ
終わり
蟹かぁ〜
調理したのはちーちゃんですか?
千早が蟹を剥くところを眺めて再び変な気分になる雪ちゃんであった
>>657 千歳「そして、その視線に気が付いて赤くなる、ちーちゃんであった━━━━━━━━━━。」
淡雪Part2
〜〜〜
千早「淡雪の・・・方は・・・熱を・・・です」
優雨「うわぁ・・・白くてトロトロ〜・・・」
初音「これって・・・チンじゃ・・・出来ないのかな?」
千早「・・・チンだと淡雪・・・なくて・・・になっちゃいますから・・・」
薫子「え?・・・チンだと・・・になっちゃうんだ」
香織理「ふふふ・・・まだ食べちゃ駄目よ?薫子?」
薫子「そ、そんなに食い意地張って無いもん!」
雅楽乃「それにしても完全が楽しみですわ
お姉様の作られる『淡雪羹』」
淡雪「・・・///」モジモジ
ケイリ「ふふ・・・この淡雪も、もう少しで食べ頃だね」
淡雪「」ゾクッ
薫子「え?ケイリったら気が早過ぎだよ〜」
終わり
やってもーた・・・
完全→完成に訂正で
地震で大変な時に投稿するっていうのも心苦しいんだが
SSがもうじき出来上がりそうなんだ。
思ったより長いし、まだ途中なんだけど
完成してから一気に投稿した方がいいのかな?
もーちょっとだけ続くんじゃ、でも文句を言う人はないと思う。長めならなおさら。
あ、「なんでこんなとこで切るんだよ」って抗議は覚悟すべきか。
書く側からすると。
まぁ、悪いこと言わないから、最後まで書き上げるべし。
途中でモチベーション下がるとアレだぞ‥。
>>661 こういうときだからこそ投稿してくれると俺はありがたい。
>>661 完成してからのほうがありがたいが、投下自体はありがたい
こんな自体だからこそ希望が欲しい
枯れ木も山の賑わい、ということで一つ。
-------------------
ぼおっと眺めていると、目の前の男の顔が紅潮して……徐々に異常な熱が入って来ていることが解る。
こちらが殊更ノー・リアクションなのが腹立たしいのだろう。誰も話し掛けて欲しいなんて、頼んでやしないって云うのに。
「………っ!」
男の口が大きく、尖って見えると、不満らしきものを喚き散らして…腕をつかんでくる。
---ウザったい。
「おやめなさい」
そんな時だった……不意に、横合いから高らかな声が響く。自分の腕をつかんだ男の腕を、更につかむ……細く、細い指。
「恥を知りなさい。その子、嫌がってるではありませんか」
きゅっと、彼女が男をつかむ腕に力をこめたらしい…男が顔を僅かに顰めると、腕がこちらから離れた。
今度は目の前で、男と彼女が云い合いを始める…
芯の強そうな女の子に如何にも軽薄そうなその男は直ぐに匙を投げだして、這々の体で退散していく。
「まったく…もぅ」
その様子は爽快だった…上手く云えないけれど、久しぶりに胸のもやもやを総て掃き散らして貰ったような気分を味わっていた。
「……大丈夫?それとも、余計なお世話だったかしら」
「いえ、助かりました」
「助かりましたが…何やってるんですか、瑞穂さん」
そう返された時の彼女(彼)の表情を、僕は生涯忘れることはないだろう。
後日談。
「なんで半周も差がついているのをぶっちぎるとかアホ目立ちしてるんですかアンタわあああ!」
「千早クンこそパン食い競争でむやみやたらにかっこつけないでえええ!」
「エルダーのお姉さま達は喧嘩なさっても絵になりますわ…」
「お姉さま…私をなじって下さればいいのに…」
「さきほどのうぐいすパン、さてお値段は--」
「ま・り・や・さんッ!」
続かない。
668 :
625:2011/03/13(日) 22:35:36.61 ID:DqUKul6M0
まずは震災で被害に遭われた方々へお悔みを申し上げます。
私の方もその日たまたま東京に出張に来てまして色々大変でした。
それでは予餞会SSの残りを最後までUPしていきたいと思います。
だいたい14レスぐらいを予定しています。
669 :
625:2011/03/13(日) 22:37:39.40 ID:DqUKul6M0
それから数日後、舞台衣装の用意が出来たということで今日からは
舞台衣装に着替えての練習である。
今日の練習は第二幕なので千早はばらの騎士の正装に着替え、自分の
出番を家政科室の入口で待っていた。
史演じるマリアンネが
「馬車の扉が開いてお姿が……ばらの騎士は銀色の服で全身を包み、
まるで天使のようです」
それを聞いた雅楽乃演じるゾフィーは少し落ち着かない様子で
「ああ、神様。こんなに気持ちがはずんでもよろしいのでしょうか?
何もかも素敵なんですもの」
すると壮麗なファンファーレが鳴り響き、ばらの騎士の登場である。
千早が家政科室の扉を開けると
「キャー!!」
「いつものフェミニンな感じのお姉さまも素敵ですが、銀の正装に身を
包んだ凛としたお姿も素敵ですわ」
千早演じるばらの騎士の登場で家政科室は見学に来ていた生徒から
歓声の声があがる。
「そう私が求めていたのはこれなのよ」
学院祭の件以降、すっかり意気投合してしまったさくらと陽向は互いに
手を取り合いながら固唾を飲んで見守っている。
ゾフィーのテーマと呼ばれるオーボエの可憐なメロディーをバックに
オクタヴィアンはばらの騎士の口上を告げる。
「私の親族レルフェナウ家の名のもとに愛情の証であるこのバラを
花嫁にお届けできるのは私の名誉です」
「ありがたくお受けいたします。このご親切は一生忘れません」
フルート・ハープ・チェレスタが奏する幻想的な音色の中、銀のバラが
オクタヴィアンからゾフィーに手渡される。
銀のバラを受け取ったゾフィーは鼻を近づけ、匂いを嗅ぐと
「まるで新鮮なバラのように強い香りがしますのね」
「ペルシャ産のバラの油を一滴垂らしてありますから」
するとゾフィーは感極まって
「この世ではなくて天使のような千早さまですわ……」
その台詞を聞いた陽向は突然
>>667 途中でオチ予想付いたがそれでも笑ったよw&支援
>>667 クソワロタwww
あの二人の対面をいつか見たいもんだ
「カット、カット、カット!!さっきの台詞は『この世ではなくて天使
のような千早さまですわ』ではなく『この世ではなくて天上に咲いた
バラのようですわ』が正解ですよ」
「すいません。千早お姉さまのお顔を見ているとつい……」
雅楽乃は赤面して謝る。
すると練習を見ていた出番待ちの淡雪が呟く。
「もう、御前は千早お姉さまが絡むとすぐダメダメモードに
なるんだから……」
淡雪の云うとおり、雅楽乃は自分の前では他の生徒の前で見せる
凛とした御前ではなく等身大の女生徒として接してきた。
さらに三学期が開けてすぐ、雅楽乃と淡雪の間のいざこざを
自分が二人の仲を取り持って解決してからは雅楽乃は今まで以上に
自分に甘えてくるようになった。
『お姉さまをお慕い申しております』と告白めいたことも云われたが
曖昧な返事をして今に至っているのだ。
雅楽乃の気持ちにはっきりと答えてあげたいと思う千早ではあったが、
性別を偽ってこの学院に存在している以上は何もすることが出来ない
状態となっていた。
翌日は第三幕、オクタヴィアンがマリアンデルという名の女性に変装し、
オックス男爵と密会するシーンの練習である。
優雅なワルツが流れる中、千早が演じるマリアンデルは
「美しい調べですわ」
すると淡雪演じるオックス男爵は運ばれてきた料理を皿に盛りながら
「わしの好きな歌じゃよ」
マリアンデルはワルツに合わせて小躍りをして
「泣けてくるわ」
「どうして?」
「あんまりにも素敵だから……」
「泣くのは雰囲気には合わんよ。陽気にやろう」
小躍りしていたマリアンデルがオックス男爵の隣に座るとオックス男爵は
マリアンデルの手をとり
支援
「わかるかい?ほらここがときめいているだろう。」
そう云ってオックス男爵は手にとったマリアンデルの手を自分の胸に当てる。
(雪ちゃんの胸が……)
淡雪は今は男装しているとはいえ女性である。
その逆で女装している千早は演技とはいえ思いがけず、女性の胸を触って
しまったことで戸惑ってしまい、自分でもわかるくらいに赤面してしまう。
さらにオックス男爵は
「遠慮せずにわしに甘えてごらん」
そう云いながら体を摺り寄せてマリアンデルの頬にキスをした。
これで千早は完全にのぼせてしまい演技どころではなくなってしまう。
その状態を察したのか玲香が
「カット、カット、カット!千早お姉さまその程度のことで恥ずかしがって
いては演技になりませんわ!」
「すっすいません」
その日の練習が終わった後、淡雪が千早に
「千早お姉さま。女の子どうしなのに私の胸を触った時はすごくあわてて
いましたがどうかされたのですか」
「やはり女の子どうしとは云っても他人の胸を触ったりするのは恥ずかしい
ものなのですよ」
さすがに自分は男ですとは云えないので千早は適当に誤魔化す。
「千早お姉さまって変なところで純情なんですね……ところで今日はお姉さま
と劇の練習が出来てうれしかったです。お姉さまといると安心するというか、
心が暖まるというか……だから敵役のオックス男爵でもこんなに楽しく劇が
出来ると思うんです」
「そうそれは良かったわ……私も雪ちゃんと劇の練習が出来てうれしかったわ
……それでは明日の練習も楽しみにしているわ」
「はいお姉さま。私も楽しみにしています。それでは御機嫌よう」
「ええ御機嫌よう」
淡雪は今でこそこうやって笑顔で千早に接するようになったが、ついこの間
までは何かと勝負を挑んだり突っかかったりしていた。
態度が急変したのは先日、淡雪が親子喧嘩をして家を飛び出し、千早を頼って
寮に泊まりに来たときである。
結局その時の話の流れで淡雪と同じ部屋に寝ることになり、千早はその日一睡も
出来なかったのであるが……。
でもその時から千早には淡雪から自分に対する恋心を感じるようになっていた。
しかし性別を偽ってこの学院にいる千早にとっては複雑な心境でもあった。
駄作ですまん&支援
それから一週間後、予餞会の前日の夜、千早が台詞の最終確認のために部屋で
一人、台本を読んでいると史がお茶を持ってきてくれた。
「千早さま。もうすぐご卒業ですね」
「そうだね史。この一年間、相当な苦労を掛けさせたね。改めて礼を云うよ」
「いぇ史は千早さまの侍女ですからこれくらいの苦労は何とも思っておりません。
それよりも史は千早さまと一緒に学院生活を送れることが出来てとても楽しい
一年間となりました。逆に史が千早さまに感謝したいぐらいの思いです」
史はそう云うと顔が少し赤面しているかのように思えた。
千早は史が淹れてくれたお茶が入ったティーカップに手を伸ばすと不意に
史と手が触れた。
「はっ!」
恥ずかしそうな顔をして手を引っ込める史。
そういえばこのところの史は少し様子がおかしい。
学院転入当初は女性に免疫をつけるためと云って一緒にお風呂に入ったぐらい
なのにここ最近は目線が合ったり、体が触れたりすると史は妙な反応をする。
嫌われている訳ではなさそうだが、史もようやく思春期に入って異性を気に
しだしたのかそれとも自分に対して恋心を……。
予餞会当日。
学生が集められた体育館で音楽演奏やダンスなど色んな催し物があった後、
最後はメインイベントである二年生有志による劇『ばらの騎士』である。
劇は時折、雅楽乃や淡雪が台詞を間違えたりしたもののそのたびに千早が
フォローを入れて滞りなく進んでいった。
そしていよいよこの劇最大の山場であるシーンである。
−オックス男爵とゾフィーの婚約解消のためにオクタヴィアンが仕組んだ
寸劇は混乱を招いたが、突如現れた元師夫人の一喝により終息した。
しかしオクタヴィアンに一目惚れしていたゾフィーはオクタヴィアンと
元師夫人の関係を知り、複雑な心境となっている。
一方、既に女装を解いたオクタヴィアンは元師夫人とゾフィーに挟まれ
身の振り方がわからず戸惑っている−
悲嘆にくれたゾフィーが
「これで芝居は終わったのだわ。あの方は奥方の側に立っていて私を
見てもくださらない」
一方、困惑しているオクタヴィアンは元師夫人に歩み寄り
「打ち合わせと違うではありませんか」
「さぁ、早くあの方のところへ行ってやって。心のおもむくままに行動
なさい」
「僕はどうすれば……」
「早く、あの方に求愛なさい」
「僕はずっとあなたのことを……」
「もういいの……」
「僕はあなたの気持ちがわからない」
「あなたとあの方はお似合いだわ。さぁ、早く!」
「そうまでおっしゃるのなら……」
オクタヴィアンは元師夫人にただされてゾフィーの方へ向かおうとするが
その時、
「いやだ、あなたを離したくない」
そう云ってオクタヴィアンの手を強く握りしめる。
(ケイリ……それは台本にないことでは……)
ケイリの予想外の行動に戸惑った千早は突如、ケイリに顔を近づけ、
「あなたのことは愛しています。そしてこれからも……しかしあなたよりも
もっと大事な方が現れたのです。そして先ほどのあなたのお言葉どおり心の
おもむくままにその大事な方のもとへ参りたいのです」
そう云って元師夫人の唇にキスをして、ゾフィーの方へ向かったのであった。
682 :
名無しさん@初回限定:2011/03/13(日) 23:05:56.02 ID:DqUKul6M0
劇が終了し、着替えが終わった頃、ケイリが千早に語りかけてきた。
「今日のオクタヴィアンは本当の千早を見れたような気がして、とても
楽しかったよ」
「ケイリ、それはどういう意味です」
「う〜ん、何といったら良いかな……千早は初めに会ったときからとても
重大な秘密を隠しているような気がしていたんだ。そして皆にはある一線を
超えて関わりを持とうとしない近寄りがたい雰囲気を持っている。そう薫子
と香織理、そして史以外にはね」
「ケイリ……」
「それから千早の秘密を知っている史はもちろんだし、雅楽乃や雪は同性に
対する憧れというよりは恋心に近い形で千早と接している。そしてもちろん
私も……だからもしかすると千早は男の子の矜持として女の子を護り、優しく
受け止めるように接しているから彼女たちは恋心を抱いてしまうのでないかと
推測したわけ」
ケイリの突然の告白に千早は戸惑ったが、しばらくして堪忍した様子で
「ケイリ……降参です。ところであの劇はもしかしてケイリが……」
「そう、千早のことで最終確認がしたくて私が陽向にこの作品を奨めたんだ。
あの子はこういうのは好きそうだし、彼女の才能であればきっかけさえ与えれば
コンペは通れると確信はしていたからね」
「やはりそうでしたか……」
「しかし今日の演技は失敗してしまったね。劇の中とはいえ千早を離したくない
一心であんなことをしてしまった」
「ケイリ……」
「でもそれで千早からキスをもらったから失敗して良かったのかもしれないね」
「あれは咄嗟のアドリブでして……」
支援
キスのことをケイリに云われ、少し赤面してしまう千早であった。
千早とケイリがそんなやりとりをしていると雅楽乃、淡雪そして史が千早の方
へ近づいてくる。
「千早お姉さま、お疲れ様でした」
「雅楽乃、雪ちゃん、史、お疲れ様」
お互いにねぎらいの挨拶を掛けると淡雪は疑いの眼差しで
「ところで千早お姉さまはケイリとなにをこそこそ話していたのですか」
「いぇ、今日のお互いの演技の感想を二人で話していただけですわ……」
「とてもそんな風には見えませんでしたが……」
千早が作り笑顔で誤魔化していると突然ケイリが
「オクタヴィアンは元師夫人の計らいもあってゾフィーを選んだけど
千早も卒業後のパートナーをそろそろ選んだほうが良いんじゃないかな」
「ケイリ……それはどういう意味で」
「千早お姉さま……雅楽乃は愛人でも構いませんから」
「御前はああ云っていますが、私を選んだら浮気は許しませんから」
「千早お姉さまが誰を選ばれても史は一生お使いいたしますから……」
三人の告白にも近い返事を聞いたケイリは
「どうやら私の予想どおりこの三人が私のライバルのようだね。そうだ、
ここはこの五人で今日は一緒に寮のお風呂に入って千早に決めてもらうの
はどうだい」
「千早お姉さまの裸……ごくり。そうですねそれは名案かもしれません」
「そうでしたら史は負けません。千早お姉さまのお体をきちんとお流しできる
のは史をおいて他はありません」
史の挑戦状にも近い言葉を聞いた千早は慌てて史の耳元で囁く
「史、僕が皆と一緒にお風呂に入ったら大変なことになるでしょう」
「お三方とも千早さまへの好感度がMAXのようですから今更男とばれた
ところでどうということはないかと存じます。もしそのことで千早お姉さま
を嫌悪することがあればライバルが減るだけですから史にとっては好都合
かと……」
「あのねぇ、史……」
学院生活最後にして最大のピンチに千早は頭を抱えながら劇で共演した
四人と一緒に寮に戻るのであった。
Fin
それからどうなったか、千早が誰を選ぶかは皆様のご想像にお任せということで
以上です。
皆様ご支援ありがとうございました。
ややケイリ寄りの二年生カルテットハーレムENDになってしまいました。
ところで男の娘文学の古典といえば個人的には
「南総里見八犬伝」
「フィガロの結婚」
「ばらの騎士」
の三つだと思うのですが、他になにか有名な作品はあるでしょうか?
それでは改めて震災に遭われた方へお悔みを申し上げます。
傾城水滸伝は性別反転させただけだしなあ
乙
一人除いてハーレムで問題ない気がw
最終的に凹んでるちーちゃんが浮かんで感動した
乙なんだけど、元帥(げんすい)が元師(げんし)になってるのを見るともやもやするんだぜ
あんた、「シュミレーション」とか「的を得る」とか「喧々諤々」いう表記を見ると
イライラするタイプだね?
ただの軍事クラスタなんで後ろ二つは何ともないでござる
…スレチ申し訳なく。
#\ピコーン/
#これをネタにして何かSS書けばいいのか?
##(ネタになる間違いをしそうな人がいるかどうかという問題はあるが)
693 :
661:2011/03/14(月) 22:11:00.18 ID:9stTqsi60
何とか出来上がりましたので投下します。
萌え要素とかwktk要素とかない、いつも通りのほのぼの話です。
基本的に本編に沿うような形で、御前ifルートと思ってください。
それと、誤字・脱字・表現の変なところは目を瞑ってください。
雅楽乃ifルート
【選択肢】
初志貫徹して屋上に
→やっぱり引き返そうかな
「…………」
……眩暈がする。駄目だな、やっぱり思っていたよりも体が重い。
見栄を張るにしても、それはある程度自分の体が云う事を聞いてこそだろう。
「ぅわ……っ……!?」
踵を返して階下へ降りようとした瞬間、僕は眩暈につられて足を踏む外した!
・
・
(省略:ゲームと同じ展開です)
・
・
「…私は雅楽乃を甘えさせるためにお姉さまになったのよね?そう思ったら、何だか可笑しいわ……失望させてしまったかしらね」
「ふふっ……そんなことはございません。寧ろ、お姉さまをとても近くに感じられて、雅楽乃はとても幸せを感じている所なのです」
そ、そんな幸せそうな顔をされてもな……。
支援
「それで、私は何時までこのままで居ればいいのかしら?」
そろそろ放してくれないかなあ……。
「……お姉さまさえ宜しければ、私は何時まででもこのままで居たいですね」
いやいやいや、流石にいつまでもこのままで居るわけにはいかないでしょう…雅楽乃。
「そうね……でも、この場所にずっといるのは、少し寒いかしらね……」
いくら雅楽乃に抱きしめられているとはいえ、人通りの少ない階段で横になっているものだから、足元はかなり冷えてしまっている……
「申し訳ないのだけれど…保健室まで連れて行ってもらえるかしら?雅楽乃」
このままじゃ、とてもじゃないけど一人で寮に帰る事なんてできそうにもないし、
ちょっと保健室で休ませてもらおう…。
「少々名残惜しい気も致しますが、承知致しました」
雅楽乃の介抱から逃れた僕は、壁に手を付きながら何とか立上った…。
「……ふぅ」
立上るだけでこんなに疲れるなんて……思っていたよりも重症なのかもしれないな。
支援
「本当に大丈夫ですか?お姉さま…。保健室よりも修身室の方が近いですし、よろしければ修身室でお休みになられては?」
「大丈夫よ…、雅楽乃。申し出は有難いのだけれど、頭を打った部分も少し痛みますし…やはり、保健室で先生に診てもらうわ。」
「そうですか……。そうですね、その方が宜しいかもしれません」
あまり雅楽乃に迷惑をかけるわけにはいかないしね。
「さ、お姉さま…お肩をお貸しします。」
「え?……や、あの…雅楽乃……そこまでしてもらわなくても大丈夫ですから」
「私がお貸ししたいのです…。お姉さま?」
真っ直ぐな瞳の雅楽乃を見てると、逆に断る方が心苦しくなってきた……。
「…はぁ、わかりました。それでは…お言葉に甘えさせてもらうわね」
「はい」
そんな満面の笑みを向けられると、こっちが恥ずかしいんですけど……(焦)
僕は極力、雅楽乃の方を意識しないようにしながら、保健室へ向かう事にした。
支援
/*************** 保健室 **********************/
「失礼します」
「はい、どなたかしら?……あら?」
ドアを開けると、いつもの保健の先生ではなく、姿子さんが出迎えてくれた。
そう言えば、保健委員会の委員長だったっけ……それにしても、園芸部は今日、部活なのでは?
「千早さん、それに雅楽乃さんまで……一体どうかしたのかしら?」
「姿子さんこそ…今日は、園芸部の部活があったはずでは?」
「ああ、今日はちょっと暑いからね。早めに終わらせたのよ…。で、保健の先生も会議でいないから、私が代わりに…」
なるほど、そう云う事か……
「で、二人ともどうしたのかしら?」
「すみません、どうも熱があるようなので…少し休ませて頂いてもかまわないでしょうか?」
「熱?どれどれ………あ、本当ね…少し熱いわ。」
し、姿子さん!!!額と額って…!!顔!!顔近いですからっ!!!
「ちょっと、どんどん熱くなってくるじゃない…。とにかく、ベッドが空いているから、横になって……」
いや、それは別な意味で体温が上がったせいなんですけど……
でも、否定する元気もないので、僕は姿子さんに言われるがまま、保健室のベッドを使わせてもらうことにした。
「とりあえず、体温を測らせてもらえる?」
「わかりました。」
はむっ(体温計を咥える千早)
「ふふっ」
「どうかしたのかしら?雅楽乃…」
「ふふっ…いえ、不謹慎であることは承知しているのですが…、体温計を咥えていらっしゃるお姉さまの姿が、とても可愛らしくて……」
可愛らしいって……なんか、もぅ……男のプライドがズタズダだよ…(泣)
「もぅ、雅楽乃ったら……、こう見えても私は病人なのですからね?」
「ふふっ…はい、申し訳ありません。」
「こら二人とも…仲良くするのは構わないけれど、もう少し我慢してもらえるかしら?」
「申し訳ありません。姿子さん」
「申し訳ありません」
・
・
・
ピピピピピッ(体温計が測り終わった音)
体温を測り終えたので、体温計を姿子さんへ手渡した。
「37度2分……『微熱』ってところね」
「思っていたよりも、熱はありませんでしたね」
日頃から体温が高いワケではないのだけれど、思っていたよりも熱が高くなくて良かった…。
「ですがお姉さま。……お姉さまは先程、階段でお倒れになったのですよ?
例えあまり熱がなくても、今はきちんと休養を取っていただかないと……」
支援
支援
「倒れたって…もぅ、雅楽乃は大袈裟に言い過ぎよ……ただ、ちょっと眩暈がしから、足を踏み外してしまっただけですから」
「ですが……」
雅楽乃は僕の事となると、周りのものに目が行かないときもあるからな……
雅楽乃に限っては大丈夫だと思うけど、万が一にも騒ぎが大きくなったら困るから、ちょっと窘めておかないと…。
「はいはい、二人とも落ち着いて……千早さんも、倒れたなんて重要な事、ちゃんと言ってもらわないと……熱があるなんかよりも、よっぽど深刻よ?」
「申し訳ありません…」
「ふぅ(溜息)、まぁいいわ……それで、どこか強く打った…とか、痛む所とかは?」
「そうですね……。この辺りが少し痛む……でしょうか」
「左手側ね……ちょっと触っていいかしら?」
「はい…どうぞ」
「それじゃ…………………痛みがあるのはこの辺り?」
「えぇ……ぃっ………丁度その辺りでしょうか」
「ちょっと診させてもらうわね……」
僕の返事を聞く前に、姿子さんは打撲した部分を確認してきた。
「う〜ん、特に何ともなさそうね……腫れ上がってもいないし………」
うぅ…同世代の女の子に頭を覗きこまれるのって…思っていたよりも恥ずかしいな……。
まぁ、かといって、男に見られるよりは断然マシなんだけど……。
「…ん?……」
「どうか致しましたか?姿子さん」
「え?あぁ、いや……何でもないわ。うん、頭を打ったところは大丈夫そうね」
何だろう?姿子さんにしては珍しく歯切れが悪い返事だけど……
「(ほっ)……」
姿子さんの診たてを終えて、雅楽乃はようやく安心したようだ
「まぁ、風邪……というよりも、疲れが溜まっていたんでしょうね。転校して慣れない環境の中で、エルダーなんて大役を引き受けているんだから、当然と言えば当然かもしれないけど」
「自分ではそこまで無理はしていないつもりだったのですけれど…」
「本人がそう思っているだけで、身体の方は悲鳴を上げてたのよ……はい、冷えピタシート」
「ひゃっ!冷たい」
「さ、ちゃんと横になって…雅楽乃さんが言った通り、今はちゃんと休養することね」
「はい、ありがとうございます。」
僕はベッドに横になって、布団を首元までかぶった…。冷えたリネンの掛布団が、火照った体に心地よかった。
ふと、顔を横に向けると、まだ心配そうな顔をして座っている雅楽乃の姿が目に映った。
そんな雅楽乃を見て、僕は自然と、自分の手を雅楽乃の手に重ねていた。
「雅楽乃、そんなに心配しなくても、私は大丈夫ですから……」
「ですが、お姉さま…お姉さまにエルダーご推挙したのは私です。そのせいで、お姉さまがご無理をなさっているのかと思うと……」
そうか…。雅楽乃は僕が無理をしている原因が自分なのじゃないか…と、不安なワケなんだ…
「私がエルダーになったのは、何も貴女だけのせいでは無いわ……それにね、雅楽乃」
ギュッ(雅楽乃の手を軽く握る)
「それに、貴女の様な妹ができた……それだけでも、私はこの学院に転校してきて良かったと……そう、思っているのですから」
「お姉さま…」
「ふふっ、本当に…貴女は可愛い子ね」
布団に入ってまだそれ程経ってないんだけど…徐々に睡魔が襲ってきて、意識が朦朧としはじめた…
「少し、眠たく…なってきたわ……」
「はい、ごゆっくりお休みください。お姉さま」
「おやすみ……雅楽…乃……
しえん
紫苑さま
/****************** another 目線 **************************/
「千早さん…眠った?」
「はい」
「そう…こんなに早く眠るなんて、よっぽど疲れてたのね」
「そうかもしれません…。お姉さまは、他人に弱みを見せる様な人ではありませんから…。」
「そうね。そういう所、雅楽乃さんそっくりね」
「姿子さん………」
「ま、今はそんな事は置いておいて。とりあえず、ゆっくりと寝かせておきましょ」
「……はい」
・
・
・
・
(それにしても、さっき千早さんの怪我を診てた時、一瞬だけ男性のような匂いがした気がするんだけど……
って、そんなまさかね…………アタシも疲れてるのかな?)
/********************* another 目線 終わり ***********************************/
支援
連コメ規制されたので、また後日・・・
支援して下さってる皆さん。
本当にありがとうございます。
震災で疲弊している日本ですが
少しでも明るくなってくれたら幸いです。
最近二次創作界隈じゃインフィニットストラトスが流行っているようなので。
まりや「ねえ瑞穂ちゃん、最近日本じゃインフィニットストラトスっていうのが流行ってるらしいじゃない。」
瑞穂「いやアニメ化されただけだからね? それにぼくライトノベルは良く分かんないし。」
まりや「そだっけ? それにしても女の子にしか使えない戦闘用パワードスーツ・インフィニットストラトスか……
瑞穂ちゃんや千早くんなら動かせるんじゃないの?」
瑞穂「いやその設定なら動かせるわけないって……ぼく達男だよ?」
まりや「そんな事無いって。ISの方が女の子と誤認したらいけるって。」
瑞穂「……流石に機械にまで性別を間違われたくないんだけど……」
?????「じゃあ試してみちゃいましょーかぁ!?」
瑞穂「ふぇっ!? だ、誰!?」
まりや「あれ、瑞穂ちゃんそっちに誰かいるの!?」
ガシャンガシャンガシャン
瑞穂「な、何これ、パワードスーツ!? 違う、コレの情報が頭の中に勝手に……って、インフィニットストラトス!?
なんか勝手に装着されてっちゃう!!」
?????「なんだぁ、動かせるじゃない。こんな可愛い男の子が居るだなんて束さんびっくりだよぉ。」
瑞穂「え、え? ええっ!?」
まりや「え? 何? 瑞穂ちゃん今インフィニットストラトスつけてるの!?
くぅぅぅっ、生で見たい!! 生で見たいのに電話越し!! 惜しいいいいいいいいっ!!」
こんな感じのおとボク×ISのクロス、1本くらいあっても良さそうなのに見つからない……
ISとおとぼくの融和性は高いと思うんだ
まて、おとボクキャラ連中から選出するとなると、ISに乗せて戦場に放り込めるキャラがかなり限られるんでないか?
少なくとも病弱設定の紫苑さまやミニマムな体躯で体力がそんなに無い奏ちゃんとかは無理だし。
IS学園の倍率は尋常じゃないんだから、彼女等は普通にはねられますがな。
安定なのは主人公2人とまりや、薫子くらいのもの。
貴子さんや香織理さんもいけそうだが、それ以外がちと辛いような……
>>714 ISは見ても読んでもないけど
> 病弱設定の紫苑さま
過去のエース、事故で負傷。その事故で後遺症が…とか
> ミニマムな体躯で体力がそんなに無い奏ちゃん
寮管やオペ子枠があるかも
716 :
661:2011/03/15(火) 21:47:31.27 ID:v7UiPS3p0
「んっ………ここ…は……」
目が覚めると、見慣れない天井が目に映った。
「お目覚めになられましたか?お姉さま」
「雅楽乃……」
あぁ、そうか…熱があるから保健室で休ませてもらったんだっけ。
まだ意識がハッキリしていない中、僕は今までの経緯を徐々に思い出してきた…。
「今…何時かしら……」
「5時半を回ったあたり…でしょうか」
5時半…ってことは、あれから2時間近くも僕は眠り続けていたってことか。
「もしかして…私が寝ている間、ずっと傍にいてくれていたのですか?雅楽乃」
「いえ…その……一度は華道部の方に出向いたのですが、お姉さまが風邪で臥せってらっしゃると思うと、つい気になってしまいまして……それ以来ずっと、お姉さまの寝顔を拝見しておりました。」
「そ、そう……(汗)」
そ、そこまで心配しなくても良いんじゃないかな?雅楽乃……。
「ところで、姿子さんは?」
「つい10分ほど前までは一緒にいらっしゃったのですが、少し用事があると言って出て行かれました」
「そうですか……んっ」
僕は眠気を覚ます事も兼ねて、上半身を起こした。
717 :
661:2011/03/15(火) 21:50:01.58 ID:v7UiPS3p0
「お姉さま、あまり無理をなさっては……」
「大丈夫よ、雅楽乃。ゆっくり寝たおかげで、随分と楽になりましたから」
楽になったのは本当だ。まだ若干、身体にダルさは感じられるけど、寮に帰るには問題ないくらい回復したと思う。
兎にも角にも、まずは熱を測ってみないと……
「申し訳ないのだけど、体温計を取って来てもらえるかしら?」
「あ、はい」
僕がそう云うと、雅楽乃は棚へ向かい体温計を取って来てくれた。
「はい、どうぞ…お姉さま」
「有難う、雅楽乃」
「……」
「……」
「……あの……ですね……雅楽乃?」
「はい、何でしょうか?お姉さま」
「先程から、どうして私の顔ばかり見ているのかしら?」
「お姉さまが体温計を咥えておられる御姿なんて、滅多に見られるものではありませんから。この機に、しかと目に焼き付けておこうと思いまして。」
「あの…そんなに見つめられると、恥ずかしいのですけれども」
「ご安心ください。今ココには私しか居てませんから」
いや、そう云う事じゃなくてですね……雅楽乃さん。
「………」
「………(目が輝いている)」
駄目だ……orz
僕は意を決して(諦めて)、体温計を測ることにした……
・
・
紫苑様、じゃなかった支援
支援
720 :
661:2011/03/15(火) 21:56:25.46 ID:v7UiPS3p0
ガラッ(保健室のドアが開く)
「御免なさい雅楽乃さん、思ったよりも時間が掛かっちゃって……」
姿子さんが何やら袋を提げて戻ってきた。
「あら、千早さん、もう起きてたの?」
「ええ、つい先ほど」
「体調の方はどう?熱は?」
「おかげ様で随分と楽になりました。熱も下がったようですし」
僕は測り終えた体温計を姿子さんに渡した。
「……本当ね。何はともあれ、良かったわ」
「有難うございます。姿子さん…それに雅楽乃も…」
「私はお姉さまの寝顔を拝見することができましたので、これはこれで役得だったと思っております」
「私は保健委員だからね。言ってみれば仕事よ、仕事」
こうは言ってくれているけれど、二人には本当にお世話になったし……いつかお返しをしないといけないな……。
「それにしても姿子さん、どちらに行ってきたのですか?」
「ああ、コレよコレ…ちょっと待っててね」
そう云うなり、姿子さんは持っていた袋からスポーツドリンクを取り出し、らくのみに淹れてくれた。
「はい、千早さん」
「有難うございます。では、頂きます」
あぁ…美味しい……。
そう言えば、寝てる間も人間って汗をかくんだっけ……?流石、姿子さん…準備が良い。
支援
722 :
661:2011/03/15(火) 22:04:08.13 ID:v7UiPS3p0
ガラッ(保健室のドアが開く)
「失礼します」
あれ?この声は……ひょっとして……
「姿子さん、千早が倒れたって本当?」
「薫子さん…?」
「ああ、千早…もう起きてて大丈夫なんだ?」
「ええ…随分と長い間、寝かせてもらいましたから…。それにしても、どうして薫子さんがコチラに……?」
「姿子さんから連絡があってね。これでも急いで来たんだよ?」
姿子さんが?
僕は目を丸くして姿子さんの方を振り返った。
「寮生で知っている人といえば、優雨と薫子さんぐらいしか思い浮かばなくてね」
「あ、いえ…薫子さんと姿子さんが親しい間柄とは思ってもいませんでしたから……少々、意外でした」
確かに、僕が転校して間もない時に、優雨と一緒に花壇を見に行ったけど……。
薫子さんには申し訳ないけど、薫子さんが頻繁に花とかに興味があって、園芸部に顔を出すとは思えないし………2年の時のクラスメイトとかなんだろうか?
「いや、まぁ…親しいとは、ちょっと違うんだけど……」
「薫子さんはね、この学園では珍しい保健室の常連さんなのよ」
「そうなのですか?それこそ想像できないのですけれども……」
支援
支援
725 :
661:2011/03/15(火) 22:10:30.49 ID:v7UiPS3p0
スポーツ抜群で、健康そうな薫子さんが保健室にお世話になるなんて……。
初音さんなら、何となく納得はいくんだけど、薫子さんがそんなに頻繁に体調を崩すなんて、到底思えないんですけど……
「あ、まぁ…うぅ〜ん……確かに姿子さんには結構お世話になってたんだ……たぶん、千早が思っている様なのとは別な意味で……」
「あぁ、成程」
薫子さんが罰の悪そうな顔してる姿を見て、僕は直ぐにある事を思いついて納得した。
つまり、薫子さんが保健室にお世話になる原因っていうのは……
「まったく…。ウチの学院生で、体育の時の擦り傷や突き指で年に数回も保健室に来る人なんて、薫子さんぐらいよ?」
やっぱり…
「ふふふっ」
「あーっ、千早、今ちょっとバカにしたー」
「いいえ、そうではありません。ただ、自分が怪我することも顧みずに行動するところが、薫子さんらしいですね…と、そう思ったものですから」
「ふーんっだ」
あまり深追いすると薫子さんが拗ねてしまうから、この辺でやめておこう。
726 :
661:2011/03/15(火) 22:15:22.82 ID:v7UiPS3p0
「千早お姉さま、そろそろお帰りになって、寮でお休みになられた方が宜しいのでは…?」
「そうね…もうすぐ、辺りも暗くなってきますし」
体調が良くなったので、つい世間話に花が咲いてしまったけど…窓の外を見ると、夕日も沈みかけようとしている処だった……。
「それに、私が帰らないと…雅楽乃が何時までもココに居座ることになりますものね」
「あら、千早お姉さまが望まれるのでしたら、私は一向に構いませんよ?」
………冗談…だよね…?雅楽乃………
ときどき雅楽乃の云う事は、冗談なのか本気なのか分からない所があるから怖いんだよな…。
「はいはい、冗談もそこまでにして……千早さんは熱が下がりきってないんだから、今日は早く帰って、ゆっくりしないと…。雅楽乃さんも、あんまり遅くなるとご家族の方が心配なさるでしょうに……」
「ふふっ…申し訳ありません」
「さ、千早…帰ろっか」
「そうですね……雅楽乃も、途中まで一緒に帰りましょう」
「はい、お姉さま」
「お世話になりました、姿子さん」
保健室を出る前に、僕は姿子さんにお礼を云った。
「さっきも言ったけれど、エルダーだからって、あまり無理をしちゃダメよ?……まぁ、千早さんをエルダーにした私達が言えた義理じゃないんだけれど」
「それじゃ、姿子さんってエルダー選挙の時、千早に投票したんだ?」
何気ない姿子さんの一言に、薫子さんが喰い付いた…。
薫子さん…何もそんな事、聞かなくても……
支援支援
支援
しえんしえん
ガラッ
即効でアグネスが思い浮かんだ
730 :
661:2011/03/15(火) 22:24:30.61 ID:v7UiPS3p0
「いや、私は千早さんに投票してないんだけどね…一般生徒の代表として千早さんを労わっただけで……」
「姿子さんは千早お姉さまに投票されなかったのですか?少々意外でした」
あれ…?雅楽乃まで喰い付いちゃった……
「そうですね。姿子さんは一体誰を選んだのか…私も少し気になりますね。」
「千早さんまで…」
二人が云うものだから、僕もなんだか気になってきたので、この際だから便乗して聞いてみることにした。
「ま、別段隠すようなことでもないから言うけれど…私が選んだのは……」
仕方がないなぁ…と、少し呆れた様な顔をしながら、姿子さんはある人の方へ顔を向けた。
「薫子さんよ」
「へ?あ、あたし?…え、えぇっ!?な、なんで!!?」
「何でって言われても……まぁ確かに、千早さんは頭も良いし、運動神経も良いし、
すごい人だな…とは思ってるけど。私自身は、あまり千早さんの事よく知らないしね。
勿論、ウチの部にも、ちょくちょく顔を出してくれてるから、悪い人じゃないってことは
知っているつもりよ?でも、いざ選ぶとなると、千早さんよりも顔馴染のある薫子さんに
エルダーなって欲しいって…そう思っただけよ」
やっぱり…選んだ人が僕じゃなくて、尚且つ初音さんよりも薫子さんとの方が親しいということであれば。何となくそうじゃないかなぁって気はしたんだよね。
731 :
661:2011/03/15(火) 22:29:38.21 ID:v7UiPS3p0
「この回答で満足かしら?薫子さん」
「う、うん…まぁ、選んでもらった事自体は光栄なことだから…あ、ありがとう」
「千早さんも、納得いった?」
「はい、…やはり、姿子さんは私が思っていた通りの人でした」
優雨が入部する時も思ったけど。姿子さんって周囲の噂に流されず、自分の意見をちゃんと持っていて、規律にしばられない人だよな………
雅楽乃やケイリが親しくするわけだ…。
「??…まぁ、いいわ。それよりも、千早さんは今直ぐにやらないといけないことがあるでしょ?」
「わかってます。早く帰って、寝ること……ですね?」
「ええ、そうよ」
「ふふっ…それでは、今日は本当に、有難うございました。姿子さん」
「お大事にね、千早さん…。薫子さん、後はよろしくお願いするわね」
「うん、任せといて」
「お邪魔致しました。姿子さん……ごきげんよう」
「ごきげんよう、雅楽乃さん」
別れの挨拶をして、僕たちは保健室を後にした。
〜 La Fin 〜
以上で終わりです。
個人的に姿子さんがツボだったのでサブキャラまで昇格させてみました。
雅楽乃ifルート(姿子ルート)でした。
二人だけ誕生日会の時も思ったけど、薫子さんの扱いやすさは異常。
乙
まさか・・・・ の先までやってくれるはず・・・。
乙
薫子が保健室よく利用するのは仮病で授業サボる為かと思ったw
>>725,734
「あら薫子さん。今度は誰を(ケンカで)怪我させたの?」
という意味で保健室の常連なのかと
>>732 だいぶ疲れて仕事から帰ってきたら、早速楽しませていただきました。
GJです。
>>732 乙です
薫子が扱いやすいっていいなぁ。
なかなか思うように動いてくれなくて困る。
>>733 支援有難うございます。
要望とモチベーションがあれば姿子ルート続編も書いてみようと思っています。
>>738 さぁばれてしまうまで書く作業に戻るんだ。
連休中につづきが読めるかと思っていたのに・・・
紫苑様の誕生日を笑って迎える自信が無い・・・
6月20日まであと3ヶ月だろ
がんばれ
紫苑さまの誕生日は今日ですよ
さあ?
カシラカシラ ドウナノカシラー?
\_● ∠_●_
/\| \ し
▲ ▼
|| |
__|_|________|___
\\ \
\\ \
懐かしいネタですね
本当は紫苑さんの誕生日に間に合わせたかったのですが、
仕事が忙しくてやっとさっき完成しました。
8レスぐらいを予定しています。
suiton
1
「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉どおり学院には秋らしい涼しい風が通り
抜けるようになったある日の放課後、千早は華道部に顔を出していた。
部員と一緒に生け花に使う花や花器の用意をしていると扉の方から声が
聞こえてきた。
「突然で申し訳ございませんが、お邪魔してよろしいでしょうか?」
その声に反応して雅楽乃が扉を開けると一人の女性が立っていた。
「あっ……紫苑お姉さま、お久しぶりで」
「ちょっと所用で学院の近くまで来たものですから寄らせていただきました」
「そうであればご連絡をいただければお茶などを用意しておきましたのに……」
「本当にちょっと寄っただけですから気遣いなどはご無用ですよ」
雅楽乃が訪ねてきた女性を修身室に通すと部員たちに彼女の紹介を行う。
「本日、訪ねてきて下さったのは十条紫苑お姉さまと云いまして、この学院を
卒業された方です」
雅楽乃に紫苑と紹介された女性は薫子同様に長身で腰まで届く美しい黒髪では
あったが、凛々しい印象の薫子とは違い穏やかで優美な印象であった。
「ここにお邪魔するのは一年ぶりですので初めての方もいらっしゃるとは
思いますが、本日はよろしくお願いします」
紫苑は簡単に自己紹介を行うとある部員が質問をしてきた。
「紫苑お姉さまは在校の頃は華道部の部長をされておられたのですか」
「いぇ、当時は体が弱かったのでどの部に所属しておりませんでした。ただ時折、
華道部にお邪魔して部員の方と一緒に生け花を楽しんでおりました」
「それでは千早お姉さまと同じ立場だったのですね」
「あらっ、今年も私の同じ立場の方がおられるのですね」
自分のことが話題になったので千早は紫苑に対して自己紹介を行う。
「今、話題にあがりました妃宮千早です。私の場合は今年編入したことも
あって、部に所属はなく員数外という形で時折、華道部にお邪魔させて
もらっております」
簡単に自己紹介を行うと紫苑は千早の顔をまじまじと眺める。
「あの……私の顔になにかついているのでしょうか……」
「いぇ、綺麗な銀の髪でしたからつい見とれてしまったのです。変な気分
にさせてしまって申し訳ありません」
「髪のことですね。実は祖母が北欧出身で遺伝なのです」
二人がそうやりとりしていると雅楽乃が顔を少し赤らめながら
「千早お姉さまは私がたまに見とれてしまうくらいの完璧な美貌で編入当初から
ファンクラブが出来るほどの人気でして本年度のエルダーに選出されておられる
のです。また千早お姉さまの活ける花はとても魅力的で部員たちへの指導も
手伝ってくださっているのです」
「千早さんもエルダーだったのですね」
千早がエルダーと知ると紫苑はどこか意味ありげな雰囲気で答える。
その雰囲気を察した千早は
「『も』というのはなにか意味でも?」
「いぇ……私も実は四年前にエルダーに選出されたのですが……
ただその直後に長期入院をしてしまったのでその任は全うできませんでしたが」
そうすると雅楽乃はひらめいたような感じで
「それでは現エルダーと元エルダーで一緒に花を活けてみてはいかがでしょうか。
私は紫苑お姉さまの活けた花をご覧になったことがないので興味があるのです」
そう雅楽乃で提案すると部員たちからは両エルダーの活けた花が見られることで
黄色い声が巻き起こる。
そして雅楽乃の提案どおり千早と紫苑は花を活け始めるのであった。
数十分後、二人の活けた花は、千早が彼岸花を中心にすすきを添えたもの。
一方、紫苑の方は秋桜を中心にリンドウを添えたものである。
二人とも使用した素材は違うが、シンプルな構成でそれが秋の清々しい高原
を思い描けるような作品に仕上がっている。
あえて云うなら紫苑の方が線が細くて優雅であることであろう。
「お二方とも雰囲気が似ていらっしゃるのでまさかとは思いましたが、作品
までもが似たようなものになるとは驚きました」
雅楽乃は驚嘆に近いような声をあげるのであった。
支援
華道部の活動が終わった後、部員と一緒に帰宅していると紫苑は校門と寮の
分かれ道で
「それでは皆さんご機嫌よう」
と云って千早の後をついていく。
「紫苑お姉さま、校門はあちらの方ですが」
「実は寮生の薫子さんとは知り合いですので少し挨拶をと思いまして……
もしかして千早さんも寮生ですか」
「はい、そうですが、紫苑お姉さまは薫子さんとは年代的に学院に一緒に在籍
したことはないと思うのですが、どういった関係で」
「実は私が可愛がっていた後輩の寮での妹が薫子さんでして、その後輩が私の
卒業後に薫子さんのことで騒動に巻き込まれたのでご友人とともに学院にお邪魔
して、解決に向かいましたの。それから薫子さんとは仲良くさせていただいて
おりますわ」
「そういうことがあったんですね」
「そういえば、さっき雅楽乃さんからお聞きしましたが、薫子さんもエルダー
に選出されて、本年度はタブルエルダーだそうですね」
「はい、そのとおりです」
「三年前と似たような状況なのですね」
「えっ、四年前もダブルエルダーだったのですか?」
「いぇ、そうではなくて先ほど修身室で申し上げましたが、私がエルダーに選出
された後に長期入院したのでその結果、留年をしたのです。そして次年度に
選出されたエルダーが消極的な方でしたので当面はその方の活動を影から
支えておりましたので」
「そういうことだったのですね」
紫苑から受けた説明に受け答えする千早であったが、よくよく考えると三年前の
エルダーといえば自分の親戚であり、そしてよく似た境遇であった方である。
そう考えると複雑な気持ちになる千早であった。
寮に到着し、玄関の扉を開けると千早は寮生に向かって
「薫子さん、初音さん、本日は大事なお客様をお連れしました」
その声を聞いた薫子たちが寮の玄関までやってくると
「紫苑さん、お久しぶりです」
「紫苑お姉さま、奏お姉さまたちの卒業式以来ですね」
「薫子ちゃん、初音ちゃんもお元気でなによりです」
久しぶりの再会に喜び合う紫苑たちである。
「ところで紫苑さんは千早とは知り合いだったのですか?」
「先に華道部の方にお邪魔していたのでそこで千早さんと出会いましたの。
千早さんの活けた花は素晴らしくてびっくりしましたわ」
「千早ちゃんは生け花だけでなくて料理もとってもお上手なのです」
「千早は文武両道で何でも出来る完璧超人ですからね」
「ふふっ、三年前のエルダーとそっくりですわね」
「ははっ……ありがとうございます」
紫苑の突然の発言に笑って誤魔化すしかない千早であった。
寮母さんの粋な計らいで紫苑も夕食を寮生とともに行い、その後は雑談に
花を咲かせる。
紫苑様
支援
「そういえば紫苑さんと千早って雰囲気が似ているわよね」
「どういうところがですか?」
「茶目っ気があるところとか、ちょっぴり意地悪なところとか」
「優雅で落ち着きもあってナイーブなところなんかもですよね」
「そうなのですか……私は自分の事はそうは思っていませんでしたが」
「そういえば華道部で活けた花は私のものと特徴が似ていましたわね。
皆からそう云われると千早さんはどこか親近感がありますし、妹のような
存在のように思えてきますわ」
「ははっ……ありがとうございます」
紫苑の云うとおり千早の方も紫苑に対してどこか親近感はあるのだが、
それ以上に本心が見えにくいせいかなぜか苦手なタイプであり、
さっきから苦笑するばかりである。
それからしばらくたって。
「そろそろ帰る時間ですけど、その前に千早さんの部屋が見てみたいわ」
「部屋を見る程度でしたら別に構いませんが」
そう云って千早は紫苑を自分の部屋に案内する。
そして部屋に入るなり紫苑は
「千早さん。ズボンのチャックが開いておりますわ」
「すっすいません」
そう云われ反射神経的に下を向き、チャックを閉める仕草をしようとする
千早であったが
「やはり男の方でしたのね」
「うっ……すいません……」
しばらくの沈黙の後、紫苑が
「でも安心してください。あなたのことは事前に瑞穂さんとまりあさんから
お聞きしておりますから」
「そうだったのですか……それでさっきから際どい言動が多かったのですね」
「ふふっ、でも瑞穂さんと同じ手に引っかかってしまうなんて可笑しいですわ」
「瑞穂さんが男っていうことを知っていたのですね」
「はい、でも薫子ちゃんたちにはだまっておいてくださいね。あの娘たちは
まだ正体を知らないようですから」
「はい、わかっております」
それからしばらく瑞穂の話題で盛り上がったところで
「千早さん、帰る前にひとつお願いがあるのですが……」
「はい、それは何でしょうか?」
「えっと、その胸パットを触らせてもらってもよろしいでしょうか?」
「少し恥ずかしいですが……構いませんよ」
そう云って千早は上着を脱ぎ、ブラジャーを外す。
それを見た紫苑は
「瑞穂さんの時よりも精巧に出来ているのですね」
そういって千早の胸に張り付けられた胸パットに手を伸ばす。
むにゅ!むにゅ!
「最高の感触ですわ!」
そう云って満足そうな顔をした紫苑は帰路についたのであった。
―それからしばらく経って
「紫苑さん、また千早を訪ねに寮に来ているみたい」
「千早ちゃんの事を本当に気に入ったみたいですわね」
「薫子、用心しないと千早を紫苑さんに取られるわよ」
「香織理さん……別に千早の事はそんな風に思っていませんから」
「でも薫子、顔が赤くなっているわよ」
でも紫苑が気に入ったのは千早そのものというよりは胸パットだったようで
むにゅ!むにゅ!
「もう!最高!」
今日も千早の部屋から怪しげな声が聞こえるのであった。
Fin
以上です。
皆さんご支援ありがとうございます。
なお生け花に関しては知識が全くないのでその辺の描写は適当ですのであしからず……
こんな時間に公開してくれるから寝れへんようなったがな
F1最後まで観てから寝るわホンマ
さすが紫苑さん・・・やっぱり精巧な胸パットに
瑞穂さんがなかなか付けてくれなくてとか考えてそうな妄想が・・・・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
____
流石紫苑様しっかり胸パットに手を出すとは……
しかしだ
×まりあ
〇まりや
OK?
でも、山田まりあっているし・・・
それでは千歳さんのアナザーストーリーが出来上がったので
UPしていきます。
予定としては10レスぐらいで
「あっ、お嬢……久しぶりだな」
夜の九時過ぎ、薫子は順一に呼び出されて、学院に隣接する公園で
待ち合わせをしていた。
「……ということで俺からは以上だ。まぁお節介かもしれんが、夏休み中
に一回ぐらいは親爺の所に顔を見せてあげてよろしいのでは……」
「夏休みに何をしようが、私の勝手じゃない。今は放って置いて……」
薫子の不機嫌そうな返事にお互いに沈黙してしまうが、不意に薫子たちの
後ろの茂みから音がする。
「誰か、そこにいるのか?」
「ひゃっ!」
びっくりしたような声を出して茂みから登場したのは銀髪の少女である。
コンビニからの帰り道の途中だったようで手にはビニール袋が携えて
あったがびっくりした時の拍子で地面に落下してしまっている。
「あっ、千早じゃないか。しかしいつもと雰囲気が違うような気がするが、
よく見ると喉仏がないし、筋肉の付き方が違うような……」
「あははっ……実は今日は学校でプールの授業があったから千早は双子の
お姉さんと入れ替わっているんだよ」
「なんだ、そうだったのか。まぁ確かにいくら千早が美人でも女物の
水着を着てプールの授業を受けるわけにはいかないからな」
プールは話を聞いた順一は少し微笑を浮かべる。
そして薫子は初対面の二人の紹介を始めた。
「こちらがさっき話した、千早の双子のお姉さんで御門千歳さん。そして
こちらが私の義理の兄である竜造寺順一さん」
「もしかして……でもそんなはずじゃ……」
「えっ!順一さん!」
薫子から名前を紹介してもらった瞬間、二人は驚いた表情を見せる。
その異変を察した薫子が、
「どっ、どうしたの二人とも紹介するなり、お互いに顔色を変えて?」
「はははっ、別に薫子ちゃん、気にしなくても大丈夫だよ……」
「いゃっ、お嬢、何でもないから……それじゃ俺はこれで……」
そう云って順一はそわそわした感じで薫子たちのもとを去って行った。
寮に戻る途中、千歳は薫子に話しかける。
「えっと……順一さんって、薫子ちゃんのボーイフレンドなの?」
「ぶっ!」
千歳の突然の質問に薫子は思わず吹き出してしまう。
「いやいや、そんなんじゃなくって……さっきの紹介のとおり、私の義理の
兄だから」
「でも苗字が違うけど?」
「そのまぁ、養子縁組をしたわけではないのだけど、今から八年ぐらいに前
に順一さんは家族を失って、私の家に引き取られたの。それからは兄同然の
ような付き合いをしているわけ」
「へぇ〜そうなんだ……でも良かった。安心したわ」
薫子の返事を聞いた千歳は顔を赤らめてもじもじとしている。
「ちょ、ちょっと千歳さん、さっきから様子が変だけど……」
「その薫子ちゃん……大変云いにくいことなのだけど……」
「もうどうしたの私と千歳の仲じゃない。遠慮なくどうぞ」
「その……順一さんと……デートがしてみたい……」
「あははっ、一目惚れしちゃったんだね」
「そんなに笑わないで」
「ごめんごめん、そうだったらこの薫子さんに任せておきなさい。
今度の日曜日にデートのセッティングをしておくから」
「あっ、ありがとう薫子ちゃん」
「でっ、千歳さん。デートコースの希望とかは……」
そう云って二人は楽しく会話をしながら寮に入っていくのであった。
昨日は千歳の願いをその場の勢いで引き受けたしまった薫子ではあったが、
問題はデートの相手となる順一と体を貸す千早をどう説得するかであった。
しかし、おそらくは恋もしないで亡くなってしまい、幽霊になってしまった
千歳の境遇を考えると何としてでもその願いは叶えてあげないといけない。
放課後、薫子は寮に戻ると携帯電話を手に取り、順一に電話をする。
「あっ、順一さん。薫子だけど」
「お嬢から電話とは珍しいな……もしかしてお願いことでもあるのか?」
「流石、順一さん。お察しのようで……実は昨日会った千歳さんのことだけど」
「千歳さんがどうしたんだ?」
「その……今度の日曜にデートしてやって欲しいんだ」
「デ、デートかぁ……まぁいいだろう」
「えっ、いいの!」
「ああ、そうだ。男に二言はない」
薫子は順一があっさりとOKしてくれたのでびっくりする。
「それじゃ、待ち合わせ場所と時間は後で連絡するから」
順一の了解を得たので次は千早である。
薫子は千早の部屋に向かう。
「あの〜、薫子だけど千早、入っていい」
「あっ、薫子さん、開いていますからどうぞ」
薫子が千早の部屋に入るとそこには落ち込んでいる白い人の姿があった。
「あははっ、千早、大丈夫……」
学院で昨日の千歳の破天荒な言動の伝聞を聞かされ、千早はまだショックから
立ち直っていないようであった。
「おかげでプールの授業に出られたのですから、これぐらいはどうってことは
ないですよ……多分」
千早は強がりを云っているが明らかにまだ落ち込んでいる。
そんな千早を見て、要件を云いだすのをちょっと躊躇った薫子であったが、
順一の了解を得た以上はここで引き下がるわけにはいかない。
「あの、千早……今度の日曜日なんだけど千歳さんに体を貸してくれないかな」
「えっ、どうしたんです。突然に」
「昨日、千歳さんとお話ししていたらお友達と遊びに行ったことがほとんど
ないそうだったから私と史ちゃんとで一緒に遊園地にでも行こうかと思って」
憑依中、千早は意識が無いとはいえ男同志のデートである。
本当のことをいったら断られる可能性が高いので薫子はさりげなく嘘をつく。
「そうですね……千歳さんはほとんど病院の中で過ごしていて遊びにいくのは
おろか、外出もままならなかったですからね……千歳さん、聞こえていますか!
今度の日曜日は薫子さんたちと思う存分、楽しんでくださいね」
「ち、千早ありがとう……」
見えない千歳に呼びかける千早の姿を見ていると嘘をついたことについて良心
の呵責を感じる薫子であった。
そして日曜日。
「それじゃ、薫子ちゃん云ってくるね」
「うん、千歳さんがんばってね」
寮を出発する千歳を見送ってから数分後。
「それじゃ、史ちゃん行くわよ」
「はい、薫子お姉さま」
心配だということで薫子は事情を話した史とともにばれないように変装を
して、千歳の後をつけていく。
「順一さんお待たせしてごめんなさい」
「いや、俺も今来たばかりだから」
とある遊園地の入口で二人は待ち合わせである。
「それじゃ、千歳さん行こうか」
「はい」
順一が手を伸ばすと千歳はその手をつなぎ遊園地へと入っていく。
そしてメリーゴーランドやジェットコースターと遊園地定番のアトラクション
に次々と乗り込む。
そのたびにはしゃぐ千歳を遠くから見ていた薫子たちは
「千歳さん楽しそうだね」
「そのようですね。薫子お姉さま」
そして二人は観覧車へと乗り込む。
ゴンドラがある程度の高さに達した時に順一は、
「千歳さんは体は大人になったけど雰囲気や性格はあの時と全く変わって
いないようだね」
「えっ、順一さん……もしかして千歳のことを覚えていてくれたのですか?」
「もちろん千歳さんのことは一回も忘れたことはないさ……この前、再会
した時はもしやと思ったけど……今日こうやってデートしてあの時と変わら
ない笑顔を見て、あの時の千歳さんに間違いないと確信したんだ」
「順一さん……千歳のことを覚えていてくれてありがとう」
千歳はそう云うと順一の胸に飛び込んでくる。
「わぁ、千歳さん。こんなところで……向こうのゴンドラから丸見えだよ」
「千歳ははずかしくない。もう少しこのままでいさせて」
観覧車から降りてきた二人は前よりも密着した状態……千歳が順一の脇に
寄り添うように歩いていく。
そんな二人を見た薫子たちは、
「ねっ史ちゃん見て、順一さんと千歳さんがべったりくっついて歩いているよ」
「あっ本当ですね。しかし観覧車の中で何があったのでしょうか」
二人は遊園地の中のフードコートで昼食をとった後、芝生広場にあるベンチに
腰かける。
「八年前に云うのを忘れていたけどあの時は本当にありがとう。今こうやって
俺がこうしているのも千歳さんのおかげだから」
「それだったら千歳の方こそありがとう……順一さんから色んな物をもらった
ような気がしますから」
千歳はこう云うと今度は悲しげな表情をして語りかける
「でも順一さん、ごめんなさい。あの時の約束は守れそうにないの。多分
こうやって順一さんに会えるのは今日が最後だと思う……ちーちゃんには
これ以上、迷惑を掛けられないし……」
「えっ、ちーちゃん……それは今の恋人のことか?」
「今も昔も千歳が愛しているのは順一さんだけ」
「じゃ……ちーちゃんと云うのは……」
順一は追及を続けようとするが千歳のあまりにも悲しそうな表情を見ると
黙り込んでしまった。
「最後に千歳のわがままを聞いてくれるかな」
「なんだい千歳さん?」
「kissをして欲しいの!」
そう云って千歳は目を閉じると順一は顔を近づける。
そして二人の唇が合わさった瞬間、突然千歳の体ががたがたと激しく震えだす。
「わぁ、千歳さんいったいどうしたんだ」
千歳の異変を察知した薫子たちは
「千歳さんに何か異常があったようだ。史ちゃん行こう」
「はい。薫子お姉さま」
薫子が二人のもとに辿り着いた時は千歳は昏睡状態で順一がベンチ
の上で寝かせつけていた。
「順一さん、千歳さんは大丈夫」
「わぁ、お嬢、何でこんなところにいるんだ」
順一と薫子がやりとりをしている間に史はベンチの上に寝ている千歳の
様子を調べている。
「どうやら、千早さまの体から千歳さまが追い出されたようです」
「へぇ!」
「いったいこれはどういうことだ?」
薫子は順一に千歳が八年前に他界して幽霊になったこと。
そして千早に憑依してプールの授業に出たことや順一とデートしたことを
説明した。
「それじゃ、八年前に俺が病院から聞いたことは本当だったんだ……」
「えっ!順一さん、それはどういうこと?」
順一は深くため息をつくと遠くを眺めながら過去を思い出すように語りかけた。
「それは俺が七々原家にお世話になる前……俺の親が一家無理心中をして、唯一
俺だけがどうにか一命をとりとめたんだ。とはいっても瀕死の状態だったから
病院に担ぎ込またんだ。そしてある程度回復して病院の中を歩きまわれるよう
になった頃に俺と千歳さんは知り合ったんだ。千歳さんはこんな俺を気に入って
くれたようで暇さえあれば俺のところに会いに来てくれていたのさ。一方、俺
の方も全て失って自暴自棄になっていたのだけれど千歳さんの天真爛漫な性格、
そして俺よりもひどい病気のはずなのに決して諦めようとしない強い心に触れて
生きる勇気というものを教えてくれたような気がするんだ。そして俺が退院する
頃にはすっかり恋人同士のようになっちまって、千歳さんが退院する俺に向かって
こう云ったんだ。『私、絶対に順一さんのお嫁さんになるから』それから数か月
たって俺は千歳さんのお見舞いに行ったんだが俺が退院した直後に容態が悪化
して亡くなられましたと云われたのさ」
そんな順一の言葉に何とも云えない空気が流れる。
「でも千歳さんもおそらく初恋の人とデートが出来てうれかっただろうな」
「そうですね。あんなにうれしそうな千歳さまを史は初めて見ました」
「ところで順一さん。八年前といったら順一さんは高校生だったよね」
「ああそうだが」
「うっ……ロリコン!」
「おいおい、それはないだろう……でも千早を初めて見たときに容姿が
似ていたからもしやと思ったが、まさか千歳さんの弟だったとは……」
それから数十分ぐらいして千早がようやく目を覚ます。
「千早、大丈夫!」
「えっ、ここはどこだ……ああそういえば今日は千歳さんは薫子さんたちと
一緒に遊園地に行くとか……」
「はい、それで何らかの原因で千早さまの体から千歳さまが追い出された
ようです」
「そうだったんですか……」
「お屋敷に電話をして遊園地の入口にお車を回しておりますが、そこまでは
千早さまは歩けそうですか」
「まだ頭が痛いけど……そこまでなら何とか歩けそうな気がする」
そう云って千早は体を起こすと少しよろめく。
「おっ千早、無理をするなよ」
「あれっ、順一さん何でこんなところに」
「いやっ、お嬢に千歳さんが倒れたと聞いてかけつけたのさ」
そう云って、順一はまだ顔色が悪い千早の肩を持ち、遊園地の入口まで
エスコートしたのであった。
「それじゃ、俺は電車で帰るから……」
「ありがとうございます。順一さん」
千早がそう云うと順一は顔を赤らめながら
「いや、別にたいしたことはしていないから……またなにか困ったことが
あったら連絡をしてくれ……俺は千早の親友だからな……」
順一はそう云うと照れた顔をして駅の方へ歩いて行った。
それから寮に到着した薫子たちは千早を部屋に担ぎ込んだ。
「ところで薫子さん。順一さんの様子が変だったのですが、何かあったの
でしょうか?」
「いや、それは千早の精神衛生上聞かない方が良いと思うけど……」
「そうですね。本当のことを聞いたら千早さまは後悔されると思います」
それでも千早は執拗に聞いてくるので薫子はこれまでの経緯を千早に
語ったのであった。
「それじゃ……意識がなかったとはいえ僕の初デート、おまけにファースト
キスが順一さんだっていうこと……」
「だから、聞かない方が良かったって忠告したのに……」
「しかし順一さまの別れ際の様子を見るかぎりでは千早さまにまで好意を
抱いてしまったようにお見受けしますが……」
「あははっ……確か千早は前に男性にナンパされていたしね。それは有りうる
かもしれないね……」
「そんなぁ…………」
orz
「もう嫌だぁ……こんな生活!」
結局、千早はそれがしばらく深いトラウマとなって残ったのであった。
Fin
乙
ナイス順一
投稿お疲れ様です
順一めーゆすさない
というのは置いといて
似てると感じていたにしてはちーちゃんに殴り掛かろうとしたのに
この手の平返したような会話ないわ〜
俺だけかもしれないけど
薫子×順一なら
違和感ないかもと思ってる
むしろ千早が他のヒロインルートの場合
順一が薫子を持って行くと思ってます。
千歳ちゃんは瑞穂ちゃんやまりやの事はどう思ってたんだろうと最近思う
>>781乙
>>784 個別ルートでも「何らかの折り合いをつけられるようになった」程度で、
基本的にあの仕事を嫌ってるのは親父も順一も薫子さん自身も知ってることだし、
薫子さんが卒業、就職したら家を出て実家との接点薄くなる未来のほうがずっと可能性高いだろ
家族としては嫌ってないからこそ、お互いのためにそうすると思うぞ
ノ ゚.ノヽ , /} ...
,,イ`" 、-' `;_' ' ..::::::::::::::...
,-、 _.._ ( (,(~ヽ'~ ..:::::::::::::::::::::::
)'~ レー' 〉 ヽ i`'} .:::::::::::::::::::::::
~つ '-ー、 i | i' ...:::::::::::::::::::::::
/ < / 。/ ! ......::::::::::::::::::::::::: これは
>>781乙じゃなくて
/ ~^´ /},-'' ,●::::::::::::::::::::::::::::::::::::
i、 ,i' _,,...,-‐-、/ i :::::::: .:::::::::::::
..ゝ <,,-==、 ,,-,/ .::::::::::: 大気中に拡散した放射性物質なんだからねっ!
) {~''~>`v-''`ー゙`'~ ..::::::::: ........::.
{ レ_ノ ..::::::::. ......:::::::::
ノ '' ..::::::: ...::.:...:::::::::
.::::::::: ...:......:::::::::::: .
.:::::::::::. ..... .. ..:::::::::::::::::::::::: :::.
::::::::::::::::.::::::....:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.. :: ::..
.:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::: ::: ::.
::::::::::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::: :::::
.:: ::. :::
>>786 仕事手伝ってるだけで
就職してるのか不明だけど
順一は基本的に再就職可能だと思うよ
親父は既に社長だから無理でも
順一はやめて違う仕事に着こうが、
薫子の父親と違ってそこまで社員に対しての責任なんて無いわけだし
女学校を卒業した薫子が
親父と距離置いたとしても女しかは入れない所にいなければ
順一は身辺警護に出るだろうから
結局近場でいつでも合える場所に控えるんじゃないかなと思う
千早が他のヒロインを選ぶと付き合い的に
薫子と順一が浮上してくるのは普通だとおもう
薫子が外の大学受からなかったのは
外に行くと順一が見張るからもあるんじゃないかと思った
実力的な学力が足りなかった面もあるだろうけど
わざわざ三日前からほじくり返すような話かよ
まりあら観てたらムラムラしてきた・・・
冬休みに千早にとって危険な人物が御門家に訪問。
千早の運命はいかに?
6レスぐらいの予定で
冬休みに入り、千早が学院の寮から自宅に帰省して数日たったある日、
一人の女性が訪問して妙子と相談事をしていた。
「そういうわけで千早ちゃんに御門家代表としてがんばって欲しいのです」
「そうだわね。千早ちゃんは美人さんだから出てくるだけで大盛り上がり
でしょうし、それにあの子は器用で何でも出来る子だから大丈夫だと
思うわ」
「妙子叔母さま、承諾していただきありがとうございます。後はこの私
にお任せください。御門家代表として決して恥じないものにしてさしあげ
ますから……」
女性は妙子の承諾を得ると小悪魔的な笑みを浮かべて感謝の言葉を述べる。
しかし人の良い妙子はそれに気づいていないようである。
「それでは早速、演目の相談の方を千早ちゃんとして参りますわ」
「あっ、それなら史に呼んできてもらうわ」
妙子はそう云うとちょうどコーヒーを下げるためにリビングに入ってきた
史に千早を呼ぶようにことづける。
そして呼ばれた千早がリビングに入ると
「げっ、まりやお従姉さん!」
「『げっ』とはなによ、『げっ』とは!」
「いやっ、その……かなり久しぶりにお会いしたのでびっくりしただけです」
千早にとって強気でお調子者、そして悪戯好きであるまりやは苦手な存在である。
幸い今まではあまり接点がなかったこともあってこれといった被害は受けた
ことがなかったが、今は女装して聖應女学院に通う身である。
そのことはおそらくまりやの耳に入っているだろうし、そのことでどんな仕打ち
を受けるかと思うと千早は背中に冷たいものが流れ出てくるのであった。
「今度のお正月に千早ちゃんには人肌脱いでもらいたいの!」
「えっ?」
「まぁ、詳しい話は史ちゃんの部屋で」
まりやはそう云うとなかば強引に千早を史の部屋に連れて行ったのである。
史は自分の部屋にまりやと千早を招き入れるとまずパソコンの電源を
入れ、二人のお茶を用意する。
その史が淹れた紅茶を一口飲んだところでまりやがきりだす。
「実はね、今度のお正月に久しぶりに鏑木家のお屋敷で親戚一同が
大集結して新年会をやることになったの。そしてメインイベントとして
一族対抗かくし芸大会をすることになったわけ。そこで千早ちゃんには御門家
代表としてがんばって欲しいわけ」
「えっ、どうして僕が?」
「それはね、鏑木家代表があの瑞穂ちゃんなのよ。そうなると目には目よ、
歯には歯よ!だわ」
「えっ、僕が瑞穂さんと戦うのですかっ!そんなの無理ですよ。だって僕は
小さいの頃から瑞穂さんの方が出来るなどと親戚連中から比較されて蔑まされ
てきた身なのですから」
瑞穂の名が出ると千早は動揺の色を隠せないでいたが、まりやはなおも強気に
主張を続ける。
「小さい頃の三つ違いはかなり大きいのだから気にする必要はないのじゃないか
な。それに噂に聞いたところによると千早ちゃんも『エルダー』に選出された
そうじゃない。もっと自分に自信を持とうよ!」
「でも話に聞いたところによると瑞穂さんは80%以上の得票率を得て一発で
『エルダー』に選出されたのに対して、僕は票の譲渡が行われたうえに二人
がかりで『エルダー』を務めていますらね、格が違いますよ」
千早の弱気な発言にまりやはしびれをきらしたのかソファーから立ち上がり
手にこぶしを握り締めるときっぱりと云う。
「千早ちゃん、そんなに弱気でどうするの!今度の戦いはね、千早ちゃんだけ
ではなく、私のプライドも掛かっているのよ。楓さんに聞いたところによると
瑞穂ちゃんのプロデュースはあの貴子なのよ。今度という今度は絶対に負けられ
ないのだから!」
まりやはそう云うと握りしめていた手を千早に向けるのであった。
「とっ、ところで……貴子さんって誰の事ですか……」
「えっ、千早ちゃんは貴子の事を知らないの……」
「すっ、すいません。ほとんど親戚づきあいをしていないもので……」
まりやは千早に貴子は瑞穂の婚約者であることとそれまでの経緯を説明する。
「ということで貴子と私は因縁の仲なのよ。絶対に負けられないのだから……」
「でもなんでそんなことに僕まで巻き込まれなくちゃならないのですか……」
「千早ちゃんだって瑞穂さんに対する劣等感を克服する良い機会じゃない」
「でも……」
しかし結局、千早はまりやの強引な説得にしぶしぶ承諾したのであった。
「史ちゃんには事前に連絡をしておいて、かくし芸のネタを考えてもらって
いるの。それじゃ史ちゃんよろしくね」
「はい、かしこまりました。まりやさま」
史はそう云うとパソコンを操作し『かくし芸』と書かれたファイルを開ける。
「こんなのはいかがでしょうか。これは千早さまが生まれるちょっと前に
大ヒットしたテレビアニメです」
そう云って史がファイルをクリックするとモニターにはアニメの動画が
流れ出す。
それはどうやら野球を題材にした青春恋愛もののようである。
「千早さまにやっていただきたいのはここからのシーンです」
モニターを見るとこのアニメのヒロインらしき人がレオタード姿で新体操の
リボンの演技をやっている。
「千早さまはお美しいですし、新体操の演技の一つぐらいは覚えるのは
容易いかと」
「でも史、新体操の演技はともかく僕にどうやってレオタードを穿けと
いうのだい?」
「えっ、千早さまならレオタード姿がお似合いと思ったのですが……」
「そんなの無理に決まっているでしょう……それにこのアニメのパロディー
を最近になって女性芸人がやっていたような気がするんだけど、確か『浅○
南38歳』とか云って……」
「えっ、このネタを先に思いついた方がいらっしゃったのですか……」
「史は自分が生まれる前のアニメのことは知っているくせに最近のテレビの
ことは知らないんだね」
「私も千早ちゃんのレオタード姿がみたかったな……」
紫苑さま
まりやは残念そうな声をあげるが千早が大反対するので史は次のネタ候補
というファイルをクリックする。
「これは確か妙子さまが青春時代の頃に社会反響を呼んだTVCMです」
史がそう云うと動画とともにノリの良い音楽が流れる。
〜♪いまのキミはピカピカに光って……♪〜
そのフレーズにのせて清純そうな女性が木陰ではにかみながらTシャツと
Gパンを脱ぎ、ビキニ姿になるというものである。
「だから……史、レオタードが無理なのにビキニなんかもっと無理に決まって
いるだろう……」
「そうですか、千早さまの美貌なら大受けかと思ったのですが……」
「ははっ……そういえば千早ちゃんは学院のプールの時間とかどうしていた
のかな?」
「えっ!!それはまぁ……どうにかして出席しましたけど」
「それだったらビキニだって穿けるはずじゃない」
「いやっ、それはその……あの時はどうにかなったのですが……今度同じ
事をやれといわれて出来ない手段なもので……」
まりやの追及にその時は千歳に憑依されて女体化していましたとは云えないので
どうにか誤魔化す千早である。
結局、このネタも千早が猛烈に反対するので史がしょうがないといった感じで
次のファイルをクリックする。
「これは妙子さまが子供の頃に大ヒットしたお笑い番組です。なにせこの番組
を見ていなかったら学校で仲間外れされるというほどの番組だったと史は
聞いております」
史がそう云うとモニターには今も現役で活躍しているコメディアンの若い
頃の姿があった。
「今度は一丁目いってみようか」
コメディアンはそう云って、着ていたはっぴを脱ぐとそこにはバレエ
「白鳥の湖」のコスチュームをパロディー化したものを身にまとっていた。
「いっちょめ、いっちょめ、ワーオ!いっちょめ、いっちょめ、ワーオ!」
コメディアンは股間に括り付けた白鳥を揺らしながら奇怪な声で独特な
フレーズを叫んでいる。
「千早さま、これなら股間を白鳥の小道具で隠せますので問題ないかと」
「あのね、史。さっきからなんで僕に変な衣装を着させようとしている
かい……」
「千早さまは自分の長所に気づいておりません。千早さまのその容姿だから
こそこのような芸をされると大受けするのではないかと史は思うのです」
「だいたいこんな変なことをしなくとも普通に料理だとかピアノ演奏を
すれば良いじゃないか」
千早が史の提案に不機嫌そうに対応しているとそこへまりやが割って入る。
「駄目よ!そんな普通のことをしたってインパクトがないわ。だって相手は
あの瑞穂ちゃんなのよ。これぐらいのことをしないと勝てないって千早ちゃん
だって知っているでしょう」
「だからといってこんな変な芸をするのはどうかと思うのですが……第一、
下品ですし」
「下品なのが嫌なのならさっきの宮崎○子のCMでも良いわよ」
「それはもっと……」
「だったら今の白鳥の湖の芸でいくわよ」
「えっ!どうしてもそれをやらないといけないのですか……」
「当たり前じゃない。さぁ男だったらぐじゅぐじゃしないでやる!」
「そういう時だけ男扱いですか……」
そのあと、年末までまりやと史の監視のもとに千早は白鳥の湖の芸の練習
に励むのであった。
「千早ちゃん、腰の振り方が甘い!」
「千早さま、恥ずかしがらずに堂々と!」
「はっ、はい…………とほほ…………orz」
Fin
>>792 乙です。
新年会編お待ちしております。
以上です。
支援ありがとうございました。
浅倉南は最近、いとうあさこがパロディーでやっていたので皆さん
ご存じとは思いますが、宮崎美子のCMと志村けんの白鳥の湖を知らない
方は検索して調べてみてください。
>>799 乙かリー です。
千早の芸も楽しみだけど
瑞穂ちゃんが気になる(;´Д`)相手が貴子+紫苑様な気がするお
志村けんの白鳥の湖を知らない奴などこのスレにはいない
小さい頃に志村けんを見た影響で普通の白鳥の湖で笑ってしまうから困る
股間から白鳥の首が生えてないと物足りないよな
|ω`)ダレモイナイ…
|ω`)SS投稿するなら今のうち…
それは、並木に緑色が目立ち始めてきた、四月も中旬のある日の事。
「そう云えば…」
ふと暦を見上げた僕は、ある事に気が付いた。
「ん、何? どうかしたの?」
「ええ、間もなく薫子さんのお誕生日じゃないですか。何かお祝いを準備しないと
いけないな、と思いまして」
「へっ?」
紅茶の入ったティーカップを口元に運ぼうとして居た薫子さんは、そう云って一瞬
そのままの格好で固まって居た。
「…いやいやいや! べ、別に、お祝いとかいいよ」
「そうは云いましても…折角恋人同士になって初めての薫子さんの誕生日なのに、
何も無しじゃ淋しくありませんか?」
と云うか、いくら何でも甲斐性無しの誹りを受けかねない。
主に香織理さん辺りに。
「いや、だって、そう云われても、その…」
カップを置いた薫子さんは、両手の人差し指を突き合わせながら何やらもじもじして居る。
「その、何です?」
「その、えっと…あたし的には既に毎日がお祝いっポイって云うか、現在の状況が幸せ
過ぎて、改めて祝って貰う理由が無いと云うか…」
そう云うと、薫子さんは顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「…薫子さん…」
ああもう、可愛いなあ。
薫子さんがそう云うのには訳がある。
大学が始まる少し前、所謂春休みのある日。
聖鷹を卒業後、薫子さんと二人で何処かにアパートを借りて同棲をしようと決めて
居たので、その話をしようと思い母さんに相談して見た所。
「あら! だったら、態々アパートなんか借りなくても、うちで一緒に暮らせば良いじゃない」
「え? で、ですが…」
「どうせお部屋は余って居るんだもの、家族の一人や二人増えても何ともないわよ。
それに、薫子ちゃんなんでしょう? だったら大歓迎よ」
「は、はぁ…」
「そうねぇ…私、贅沢は云わないから、孫は男の子と女の子一人づつが良いなぁ」
「ちょ、か、母さん! いくら何でも気が早すぎます!」
…とまあそんなやり取りがあって、薫子さんのお父さんがOKしていた事もあり、
4月から僕達は僕の実家で一緒に暮らし始めたのだ。
「だ、だから、ね? 改めてお祝いとか、別にいいから。…じゃ、あたしは部屋に戻って
勉強でもするよ。お茶御馳走様っ」
そう云うと、薫子さんは勢いよくソファから立ち上がって、そのまま僕の部屋から
出て行ってしまった。
「…やれやれ」
そうは云われてもなあ。
このまま何もしなかったら、本気で甲斐性無しと云われかねない。
…とは云え、本人が断って居るのに無理強いするのも、それはそれでどうなんだろう
と云う気がするのも確かで。
「さて、どうしようかな…」
少し落ち着いて考えてみよう。
そう思って窓から外を眺めた時だった。
「………あ」
それは、庭に植えてある櫻の樹の中の一本だった。
他の櫻が軒並み葉櫻に姿を変えている中、その櫻の樹だけはまだ咲き始めた
ばかり、と云う状態だった。
恐らく、あと数日すれば満開になるだろう。
「へぇ…こんな時期に咲く樹もあるんだ」
聖鷹の櫻並木もそれはそれは見事だったけれど、こう云う風にひっそりと遅咲きで
咲く櫻を見るのも風情がある。
「………そうだ」
そこまで考えて、僕の脳裏にあるアイデアが浮かんだ。
そして、数日後の夕刻。
「え? 今日のお茶は外で? …どうして?」
聖鷹に居た頃から続いて居る夜のお茶の時間。
僕はそう云って薫子さんを外に誘った。
「そろそろ暖かくなって来ましたから、たまには良いかなと思いまして。それに、
ちょっとお見せしたい物もあるのです」
「見せたいもの…って、何?」
「それは、来て頂いてのお楽しみ、と云う事で」
種明かしをしない僕の言葉に薫子さんは首を傾げて居たが、それでも僕の後を
着いて来てくれた。
「はい、こちらです」
「え? …うわぁ…!」
先日見かけた遅咲きの櫻の樹を、下からスタンドライトでライトアップをして置いた。
丁度満開になった櫻が、そのライトの光で夜の闇に映えて居る。
「………綺麗、だね」
「ええ。この樹だけ遅咲きで咲いていましたので、折角なら花見をしながらお茶をと思いまして」
「うん、凄く素敵だね。…と云うか、これってもしかしなくてもかなり贅沢?」
「ええ。折角ですからささやかな贅沢をしましょう。こちらへどうぞ」
「うんうん、賛成ー」
そう云って、あらかじめ準備して置いたイスに薫子さんは座った。
「今日はお茶請けも用意しましたよ」
そう云って、あらかじめ作って置いたお菓子をお茶と一緒に薫子さんの前に並べた。
「これは?」
「ミルフィーユですね。櫻のエッセンスを少々加えてあります」
「あはっ、櫻尽くしだね。じゃ、いただきます」
「ええ、どうぞ」
さくっと、軽い音を立てて崩されたミルフィーユの欠けらが、薫子さんの口に運ばれる。
「…うん、美味しいよ」
「ありがとうございます」
良かった、喜んで貰えたみたいだ。
…と、思っていたら。
「でもさー、良いって云ったのに、結局あたしの誕生日のお祝いをされちゃったのね」
薫子さんが微笑みながらそう云って来た。
どうやらお見通しだったらしい。
「すいません。でも、どうしてもお祝いをしたかったのです」
「ううん、いいよ。こんなささやかな贅沢なら、大歓迎」
そう云いながら、薫子さんはもう一度櫻の樹を見上げた。
「………昔さ」
「え?」
「あたしが二年生になった時の事なんだけどさ、温水プールの改修工事をやって
居る所で、一本だけ遅咲きになった櫻の樹があったんだ」
そんな、『昔』を懐かしむような目で櫻を見あげて。
「たまたま、それをケイリが見つけて、その時の寮の皆で見に行った事があったのよ。
…あの時も、丁度こんな感じでライトアップされて、綺麗だったなあ」
「…そうでしたか」
どうやら薫子さんには、夜櫻にちょっとした想い入れがある物だったらしい。
そう云う意味では、今日のこのセッティングは正解だった様だ。
「…ありがとうね、千早」
そんな事を考えて居たら、薫子さんがそうお礼を云って来た。
「どういたしまして。…それに、お礼には未だ早いですよ」
「早い? どうして?」
「僕はまだ、薫子さんに大事な言葉を云って居ませんから」
「大事な言葉?」
きょとんとした顔の薫子さんを見つめて、一息間を置いて、一言。
「お誕生日おめでとうございます、薫子さん」
「………うんっ!」
薫子さんは嬉しそうに微笑むと、大きく頷いてくれた。
そんな、二人の間を。
櫻の花弁が一枚、静かに舞い降りていた――。
毎度、5時起きとか言う何かです
4日ほど早いですが薫子の誕生日SSです
ちなみに桜はこっちじゃ未だつぼみの状態なので、SS書く時の違和感の凄まじい事w
乙、マジGJ
幸せそうな家族で何よりだ
乙です。
さすがにその時間帯は監視してる時間じゃなかった。
乙です。
話がスッキリしていて、読みやすかったです。
次回作もお願いします。
たしかに低脂肪乳な感じでくどくなくてよかった。
でも、エロが足りないね。
お疲れさまでした。
正統派な感じでよかったです。
長編がなんともまとまらないので、ひさびさに短編でも書いてみた。
なんとなく史に焦点を当ててみたら、こんな感じになりました。10本くらい?
-----------------------------------------------------------------------
『懲罰』
澄んだ空気がすがすがしい初夏の朝。
寮の食堂にはいつものように、薫子を除いた面々が顔を揃え‥。
「あれ?史ちゃんはまだですか?」
「そういえば今朝はまだ見ていないわね。」
「体調でも悪いのかしら。うーん‥‥、ちょっと様子を見てきますね。」
「あ、はい。千早ちゃん、お願いします。」
「そういえば薫子もそろそろ起こしに行った方がいいわねぇ‥。陽向、まかせたわよ。」
「えっ!!」
そんなこんなで千早が向かった先は史の部屋。
「史‥? 大丈夫?」
ノックをしても反応がないので静かにドアを開け。
おそるおそる覗き込むのは暗い室内。
カーテン越しのわずかな光で、ベットのうえにその姿を見つけ、
近寄ってみると、すーすーと静かな寝息をたてている。
「熱は‥ないようね‥。」
そっと額に手を伸ばしても、発熱等は感じられず。
ただの朝寝坊かしら?と少し珍しいものを見た嬉しさを覚えつつ、
千早はゆっくりと揺り起こした。
「史。もう朝ですよ。」
「‥‥、あ‥。ちはや様‥? おはようございます‥。」
「ふふっ。起きたようね。今日はどうしたの?」
「‥どうしたといわれ‥‥、 えっ?」
覚醒とともに。
柔らかな寝ぼけ眼が驚愕に引きつり。
「ち、千早様! 今の時間は‥。」
「えーと。7:10過ぎってとこかしら。 珍しいわね。史が寝坊するだなんて。」
「(がーん)」
数秒間、硬直したあとに。
「も、申し訳ありませんっ!!」
史の謝罪が寮内に響き渡った。
***
慌てて身支度を調えて。
食堂でも平謝りに謝りまくる史の姿に。
「ふふっ。史ちゃんの朝寝坊は珍しいですね。」
「まったくもって面目ございません‥。」
「まぁ、薫子時間であればまだまだ平常通りってところかしら?」
「か、香織理さん、そこで私を引き合いに出さなくても‥。」
「だって、薫子。 我が可愛い妹がなぜか朝から慰労困憊しているですもの、
その張本人には多少の改善を期待したくなるのもしょうがないじゃない?」
「あー‥‥、陽向ちゃん、ごめんね‥‥」
「い、いえ‥、構いませんが、できれば次回からはもう少し起床にご協力いただければと‥」
いったい薫子の部屋でなにがあったというのやら。
「それを考えると、史ちゃんは毎日凄いわねぇ。」
「史ちゃん、毎日毎日ごめんねぇ。」
「い、いえっ! それより本日は陽向さんにもお手数をおかけしてしまい、申し訳ありません!」
「いえいえ。どちらかといえば史お姉さまの偉大さを痛感させてもらいましたから。」
「そうそう。史ちゃんは悪くないから。どう考えても悪いのは‥‥。」
「うぐっ‥。(>_<)」
そんなこんなで多少遅れたものの、平和な朝食が始まり‥。
いや、なんとも澱んだ空気を漂わせているのが一人。
「史‥。あまり気にしないでいいですから。別に私もぜんぜん怒っていませんし。
あまり落ち込んでいると、皆さんが心配してしまいますよ?」
「で、ですが。起床時間に間に合わずに皆様をお待たせしてしまいましたし
そもそも主人に朝起こされるなど、従者としてあるまじき醜態です‥。」
「でもでも、薫子ちゃんはよく7時に間に合わなかったりしてますし、
それに昨年までは、薫子ちゃんは奏お姉さまに起こされてましたから。」
「はぅっ!!(>_<)」
「そうはいいましても、お仕えすべき千早様の手を煩わせてしまいましたし、
あぁ、大婆さまへなんと申し開きすればよいでしょうか‥‥。」
「えーっと‥‥。」
どこまでも頑なに反省しまくる史の姿に、一同は困惑するばかり。
(これは‥なかなか手強いわね‥)
(千早ちゃんのいう史ちゃんの頑固さって、こういうことだったんですねぇ)
(まぁ、史ちゃんは千早のお世話が生き甲斐みたいなもんだしねぇ)
(でも、なんとかしないと、そろそろ時間的にも余裕がなくなりますよ?)
(あぁ、ほんとっ! 千早ちゃん、なんとかしてー)
(な、なんとかといわれましても‥‥、あ、そうか!)
何かをひらめいたのか、千早が立ち上がり。
落ち込む史に話しかける。
***
「史。」
「はっ、はいっ、千早様!」
「あなたは今朝、手痛いミスを犯した。それに間違いはないわね?」
「は、はい。誠に申し訳ありません。」
「そしてあなたはそれを悔やんでいる。
だけど、その悔やむこと自体が、本来の職責遂行を阻んでいる。
それは自覚していて?」
「あぁっ! も、申し訳ありません。」
(うわぁ、千早、そこで追い打ちかけちゃうのー?)
(ちがうわよ。薫子、もう少しみてなさいな)
「というわけで。史。
あなたの今朝のミスについては私から正式に罰を与えます。
以後、このようなことがないよう気をつけるように。」
「えっ、は、はい! 千早様、ありがとうございます!」
(おぉ〜)
(これは、信賞必罰ということでしょうか。)
(そうそう。何事もメリハリが大事なのよ。特に史ちゃんみたいな頑固ものには。)
(しかし‥いまの千早お姉さまは、理想的な女主人って感じでしたねぇ‥。
まさか学園生活でこのようなものを目の当たりにできるとは〜 (ほわぁ))
(ちはや、かっこいい‥)
***
「で。罰ですけど‥‥。少々待ちなさい。」
「はい。」
(薫子さん、なにかあります?)
(えぇっ!? 急に振らないでよっ)
(さすがに手頃なのが思いつかなくて‥)
(罰ねぇ‥。定番と言えば、廊下雑巾がけとかトイレ掃除だけど。。)
(史だとそういうのは喜んでやってしまうので、あまり罰にならないんですよ‥。)
(あぁ、確かにそうかもですね‥。)
(まぁ、罰というのも建前でしかないんですけど、
それっぽいものにしないと史も納得しないと思いますし‥)
(世間一般で考えると、役務を課すか、自由を制限するかでしょうか‥)
うーんうーんと頭をひねり。
「よし。こうしましょう。史。」
「はい、千早様。」
「今日から10日間、ビスケットサンドアイスを禁止します。」
「Σ!!」
(えっと、それって罰になるんでしょうか?)
(そうですねぇ。まだそこまで暑い季節でもないですし。)
(いや、なかなか堪えてるっぽいわよ)
(ほんとだ‥)
「はい‥‥。了解いたしました‥。」
「あら不服かしら? 史?」
「いえ、ありがとうございます。千早様。」
「では、そのように。
さて、皆さん。はやく朝食を取らないと遅刻してしまいますよ?」
「あぁ、もうこんな時間っ!!」
こうして、慌ただしい朝が再開し。賑やかになった食卓に。
史の呟きは誰の耳にも届かずに溶けていった。
『千早様、やはり強くお怒りになっていたのですね‥‥。』
***
その日から数日が経過し。
最初は特に異変もなかったのだが。
5,6日を過ぎたあたりから。
「ねぇ、千早。気づいてる?」
「えぇ‥。さすがに不自然ですからね。」
史はいつも通りに寮内の様々な作業を手伝い。
はたまた、千早の身の回りの世話をしていたのだが‥。
「なんか、ちょっと可愛いわよね。」
「うん、ふみ、かわいい。」
「ですねー。なんていうんでしょうか。ご主人様に褒めてほしいワンコみたいな?」
「あー、ほんと、そんなです。陽向ちゃん、たとえるのうまいですねぇ」
「いやぁ。それほどでもー」
いつもと違って。
千早の視線を意識しているような、そして千早にアピールするような、
そんなそこはかとない媚びが、史の挙動のそこかしこに感じられて。
「いつもはあまりない、史ちゃんの笑顔とかも新鮮でいいですよねー」
「あぁ、ほんとほんと。この前、あまりの不意打ちにどきっとしちゃったわよー」
媚びの一旦なのか、無意識に発露しているようではあるが、
要所要所でこぼれる笑顔は、普段がお堅いゆえに寮生の心をぐっと掴み。
「ねぇ、千早ちゃん。そろそろ許してあげてもいいんじゃないですか〜?」
「いや、別に私もやりたくて罰を決めたわけではないんですが‥。」
「ここは寛容の心をもって、怒りを収めるのが主人の度量ってやつでしょう?」
「だから、元から怒っていませんって‥。 香織理さん、わかってていってますよね?」
「もちろん(にやにや)」
見事にその効果を発揮していた。
***
8日目の夜。
夕食後のくつろぎの時間にて。
せっせと夕食の後片付けを手伝っていた史が食堂に戻ってきたのをみて。
「しかたないですねぇ」とため息をつきつつ、千早が動く。
「史? ちょっといいかしら?」
「はい、千早様。なんでございましょうか。」
てとてとと近寄る史の表情には、
ここ数日の間に定着しかけている柔らかな笑みがあった。
「えーと。8日前になるのかしら?
あの日の朝のことは覚えている?」
「はい、もちろんです。」
「あの日以来、史が頑張っているのは私だけでなく。
寮の皆さんもとても理解いただいているようなの。」
「そうですよー」「うん、史ちゃんすごい頑張ってる!」
「はい、ありがとうございます。」
しばしの沈黙のあと。
背筋を伸ばし表情を改め、千早は静かにそれを告げる。
「その、あなたの働きを評じて。
いまこの場をもって、アイス断ちの禁を解くことにします。」
「えっ!?」
それを告げられた史の表情には、一瞬の歓喜が垣間見えつつも、
あくまでも冷静たろうとする従者魂が、それを必死に押しとどめていた。
「千早様。そういうわけにはいきません。まだあと2日残っております。」
「史。 あなたのミスを適切に罰したのは主人であるこの私。
そして、あなたの働きを評価し、恩賞を与えようとしているのもこの私。
その私の裁定に不服があるということかしら?」
「いっ、いえ、滅相もございません!」
深く深く下げられた史のその頭を優しく撫でる千早に。
「よく頑張ったわね‥‥。史。」
「あ、ありがとうございます‥。」
史は静かに頬を濡らしていた。
***
そんなこんなで。
「で、史ちゃん。待望のアイスは解禁しないの?」
「いえ、千早様からあのようなお言葉をいただいてはおりますが、
せめて本日いっぱいまでは、戒めたいと考えております。」
「あぁ、そうなんだ‥。」
相変わらずの堅さをみせる史と薫子の会話を眺めながら。
「ほら、これですから‥(はぁ)」
「ふふっ。ご主人様というのも大変なのですね。」
「でもでも、なんというかこの主人と従者、姉と妹の信頼関係といったものを
まざまざと拝見させていただいたようで、本当に勉強になりましたっ!」
「ほほぅ。では愛する我が妹よ。 私たちはどのような信頼関係を築けばよいのかしら?」
「え!? い、いやー。そこはそれ、なんといいましょうか‥。」
「ふふっ。香織理ちゃん、そう陽向ちゃんを苛めないの。」
ようやく日常の空気が戻ってきた櫻寮の夜は、静かに更けていった。
「でも、あの史ちゃんの笑顔はほんと可愛かったですよねぇ」
「そうですねぇ‥。というか、あれを見てしまうと、
今までは不満でも持たれていたのかと、若干凹んでしまうんですが‥」
「あぁ、なんとなく気持ちはわかるわね‥」
「こんなご主人様にはもったいなくて微笑んでいられるか!ってことですか?」
「はぅっ‥‥。orz」
***
一夜明けて。澄んだ空気がすがすがしい朝。
寮の食堂にはいつものように、薫子を除いた面々が顔を揃え‥。
「あれ?史ちゃんはまだですか?」
「そういえば今朝はまだ見ていないわね。」
そう言い交わす一同の脳裏を横切る1つの可能性。
「‥‥もしや?」
「いやいや‥。え? 本当に?」
「アイスが楽しみでなかなか眠れなかったとか‥?」
「あぁ‥‥。ありそうですねぇ‥。」
想像できる10分後の光景に溜め息を一つ。
「ここは私が起こしに行くのは避けた方がよいでしょうか。」
「そうですねぇ。では私がいきましょうか。」
「いや、初音お姉さまよりも、私ら下っ端のほうがよいかと。」
「うん。いってくる。」「優雨ちゃん、行きましょう!」
そういって、とたとたと2階へ赴く1年生。
「また、史ちゃんの可愛い笑顔がみれちゃったりするんですかねー。(ふふっ)」
「そう考えれば、少し楽しみだったりするわよね。 あら、千早どうしたの?」
「いえ、2回目ともなると、同じ罰だと史が納得しないような気がしまして‥」
「あぁ‥。たしかに。そうねぇ」「昨日の今日ですものねぇ‥。」
史が起き出して陳謝し出すまでの数分間。
上級生達は新たな悩みに頭をひねっていた。
-----------------------------------------------------------------------
ちなみに、みんな史のことで慌てていたので、
薫子はしばらくは安らかに心地よい眠りを堪能しているのです。きっとたぶん。
史かわいいよ史
ちょっと遅れましたが、薫子さん誕生日記念SSです。
薫子さん視点で描いております。
9〜10レスぐらいの予定で
「はぁ〜〜〜〜」
夕闇が迫る寮のテラスで私は独り深い溜息をつく。
今日の卒業式の後で多くの友人や後輩たちにお別れの挨拶をして、
いっぱい涙を流したあの桜並木を眺めながら……。
しかし私がこうして深い溜息をつきながら思い悩んでいるのは今日、
桜並木の下で交わされた多くの別れが原因なのではない。
そう……それはもう一人のエルダーのこと……。
―最初に出会った時は才色兼備で完璧なお嬢さまだと思った。
それなのに謙虚で優しさを忘れない姿を見て、理想の女性像を見出し、
憧れの存在のようになっていた。
しかし些細な出来事がきっかけで実は男であることを知った時は
かなり複雑な感情を抱いてしまった。
でも何かの間違いからか私と彼がエルダーに選出されて、共に助け合って
行動していくうちにだんだんと彼に心が惹かれていった。
最初はそれが『友情』なのか『恋』なのかは解らずにいたのだけどその気持ち
が何だったかというのに気づき始めて……そんな私の心情を察した香織理さんは
何度も告白するように奨めてくれたけどなかなか私の方が踏ん切りがつかずに
ついに卒業式も終わってしまったのである―
「薫子さん!」
「ひゃぁっー!」
振り返るとそこには私の悩みの原因の人……千早が立っていた。
「どうしたのですか?そんなにびっくりなされて」
「そりゃ〜突然後ろから声をかけられたら誰だってびっくりするって」
「そうですか?さっきからずっと声をおかけしていたのてすが、考え事をされて
いるようでなかなか気が付いてくれなかったので大声で名前をお呼びしたのですが、
びっくりされたのであれば申し訳ありません」
そう云うと千早は私の横に立ち、桜並木を眺める。
沈もうとしている夕日が千早の白い肌を真っ赤に染め上げている。
そしてテラスには風が運んできてくれたのか桜の花弁が舞い降りてきて、千早の
肩にも桜の花弁がついて美しく彩っている。
そんな耽美的な光景を見て、私は気が付くと千早をずっと見つめていた。
すると千早が突然、私の方に顔を向けて
○○○○
「どうしたのですか、薫子さん?」
「えっ、いや!そのっ……」
「ふふっ、入寮当初もそういったことがありましたね」
そういえば入寮当初に千早が優雨ちゃんのために料理を作った際にあまりにも
謙遜する千早を見て、理想の女性像を見出した私は気が付くと穴が開きそうな
勢いで千早を凝視していたことがあった。
そのことを思い出すと私は顔が急激に赤くなってくるのである。
そんな私の顔を見た千早は思いたったように語り始めた。
「色々と悩んでいましたが、今の薫子さんの顔を見てようやく決心しました」
「えっ?」
驚く私の顔を見て千早はさらに語りかける。
「僕はエルダー……憧れの対象として皆さんの夢を壊さずにどうにか務めを全う
することが出来ました。そして今度は僕が夢を叶える番です」
「夢……?」
「でも夢を叶えるために僕は何年間か留学をしなければならないのです。そして
もうすぐ日本を旅立つ前に僕の思いを告げなければならない方がいるのです」
「えっ!」
千早はそう云うと真っ直ぐと私の顔を見つめ、私の手をとって告白をする。
「薫子さん、こんな僕のことを待っていてくれますか?」
「えっ!……そっ、その……こんな私でも千早は良いの?」
「そんな薫子さんだからこそです」
「千早!……ずっと待っているから早く戻ってきてね!」
私はそう云うといつの間にか目から頬を伝って熱いものが流れていた。
そんな様子を見た千早はハンカチを差し出して
「薫子さんありがとうございます。どうかこれで涙を拭いてください」
そして差し出されたハンカチで私が涙を拭き終わると千早はまるで何事も
無かったかのように
「薫子さん、もうすぐ夕食の時間ですよ。初音さんたちが待っていらっしゃい
ますから早く食堂を向かいましょう」
そう云って千早はテラスを後にしたのだった。
その夜、私は千早の告白が頭に残ってなかなか寝付けなかった。
結局、朝日が昇る直前に眠ってしまい、眼が覚めたのはお昼頃だった。
私を起こしに来た香織理さんが少し呆れた様子で見つめる。
「薫子は卒業するともういきなり大寝坊なのね」
「面目ない……」
「そういえば千早が留学するから薫子にお別れの挨拶をすると云ってずっと
待っていたのだけどあなたがなかなか起きてこないからついさっき退寮して
しまったわよ」
「えっ!?」
「ちゃんと手紙は預かっておいたから」
そう云って香織理さんは封筒に入った手紙を私に差し出してくれる。
すぐに封筒を破るとそこには短くこう書いてあった。
『必ず夢を叶えて迎えに来ます』
あれから五年が経った。
千早からは一向に連絡すらないが、私は今も千早の事を信じて待っている。
もちろんたまには不安になることはある。
そんな私を見て初音や香織理さんはたまに優しく声をかけてくれたりする。
そして私の誕生日を数日後に控えたある日のこと携帯に香織理さんから電話
が掛かってきた。
「薫子、そろそろあなたの誕生日だわよね」
「うん、そうだけど」
「それじゃ、ささやかな誕生日祝いということでお食事会でもと思って」
「それはうれしいけど、今まで誕生日プレゼントすらくれたことがなかった
のにどういう風の吹き回しよ!」
「薫子を祝いたい一心でこうやって電話をしてきたのに逆に文句を云われる
だなんて……シクッシクッ……」
「ちょっ香織理さん、電話の時まで嘘泣きするのはやめてよ!」
「ふふっ、実はね専門学校の友人に最近、評判のフランス料理店を教えて
もらったの。薫子はここのところ落ち込んでいるようだったから励まそう
と思ってね」
「別に落ち込んでなんかいませんよ〜だ!」
「相変わらず素直じゃないのね、薫子は。もう既に予約を入れてあるから
当日は必ず参加するのよ。それから初音も誘っているから」
「人の予定も聞かずに強引なんだから香織理さんは……」
支援
そして誕生日当日の夕方、待ち合わせ場所で香織理さんと初音に会う。
「えっ、香織理さんは専門学校を卒業したらフランスに留学するの!」
「うん、専門学校の先生にもっと調香を極めるのであればフランスで勉強
をした方が良いと奨めてくれて……」
「そういえばフランスと云ったら千早ちゃんも留学先はフランスだって
云ってましたわよね」
千早の名前が出て表情が曇った私を見て初音が心配そうに声をかける。
「こめんね薫子ちゃん。まだ千早ちゃんのことを待っていたのよね」
「いやっ、別にそんなに気を遣わなくて大丈夫だよ」
そんなやりとりをしていると例のフランス料理店に到着した。
店の内装を見る限り、オープンしたのは最近のようだが、テーブルが
全部埋まっているところを見ると評判なのは間違いないらしい。
「今日は薫子のために奮発してフルコースにしたから遠慮なく食べてね」
「テーブルマナーなんて知らないから、フランス料理って凄く緊張する
んですけど」
「ここはそんなに堅苦しい店じゃないらしいから気楽にして大丈夫よ、
薫子」
テーブルに置いてあったナプキンを膝の上に置くとウェイターが食前酒と
共に本日のアミューズですと云ってプチトマトをキュラメルコーティング
された料理を持ってきてくれた。
初音に聞くと『アミューズ』とは日本料理で云うお通しのことらしい。
「うん!美味しい!」
プチトマトの酸味とキャラメルの甘味が絶妙なバランスである。
そして食前酒であるシャンパンとの相性もばっちしである。
こんなに美味しい料理は久しぶりに食うような気がする。
そんなアミューズの余韻を楽しんでいるとウェイターが
「本日のオードブルは南瓜のミートソースグラタンです」
と云ってテーブルに置いていく。
確かこの料理は千早が作った料理で私が初めて口にしたもの。
と云っても優雨ちゃんのために作ってあげたから私が口にしたのはほん
の一口なんだけど……。
「どうしたの薫子はそんなにグラタンを見つめて……」
「いやっ、何でもない……」
私はそう云ってスプーンでグラタンを取って口へと運ぶ。
「はむ……ん、美味しい!」
南瓜の甘味とミートソースの旨味の絶妙なバランス。
そしてとても滑らかな舌触り、良いアクセントとなっている焦げたパン粉
の香り。
あの時と全く同じ味である。
これはもしや……いや間違いない。
きっとこの料理を作ったのはあの人だ。
そう確信した私はスープを運んできたウェイターに
「お願い、この料理を作ったシェフを呼んできてもらえないかしら」
数分後に彼は現れた。
「この料理店の料理長を務めさせていただいております御門千早です」
そう云って帽子を取って挨拶をするとあの時と変わらぬ軽くウェーブが
かかった美しい白銀の長い髪が現れた。
「千早ちゃん……フランス料理のコックさんになっていたのですね。
でもこんなところで会えるなんて……」
私以上に初音が驚いている。
「千早、せっかく薫子と初音を驚かせようと思って、この料理店に誘って
きたのにいきなりオードブルであんな料理を出されたらばれてしまうじゃない」
「すいません香織理さん。あの料理は思い出の料理だったから是非、今日の
コースで出して見たかったのです。しかしグラタンはフランス料理の位置づけ
ではメインディシュではなくオードブルとなるので……」
そうやって香織理さんに弁明している千早の姿を見ると私はだんだんと涙が
溢れ出してきて
「ちはやっ……!」
気が付くと私は席を立ち、千早に胸に飛び込んでいたのであった。
「薫子さん……こんなところでこまります。他のお客さんが見ていますよ」
「だって、だって、だって……千早は連絡の一つも寄越さないんだもの。
どんなに私が不安だったのかわからないでしょう……」
「僕だって何度、薫子さんに会いたいと思ったことか……でも夢が叶うまでは
絶対に会わないとそう決めたから……フランスで修業をしてきて、こんな立派
な店を任せられるようになったんだ」
「ぐすっ……うん千早、夢が叶って良かったね」
「それでこれなら薫子さんに会えると思って、一週間前に香織理さんに連絡を
してお膳立てをしてもらったんだ」
千早がそう云って私に涙を拭くハンカチを差し出すと店内からは他のお客さん
から拍手が巻き起こり、香織理さんと初音はもらい泣きをしていた。
「今晩はせっかくのお食事の場で私の個人的事情を挟んでしまい、誠に申し訳
ございません」
千早はそう云って他のテーブルのお客さんのところへ陳謝に回っている。
そして最後に私のテーブルへやってきて
「まだメインデッシュとデザートが残っています。今日の料理はかなり気合が
入っておりますから楽しみにしてください」
そう言い残し、厨房へ去って行った。
「ねぇ、薫子。最高の誕生日プレゼントだったでしょ」
「うん。ありがとう香織理さん」
私はそう云って皿にまだ残っている南瓜のミートソースグラタンを口へと
運んだ。
でもそのミートソースグラタンは涙が混じったのか少ししょっぱくなっていた。
Fin
乙でした〜
…周りのお客は「個人的事情」を理解できたんだろうか。いやそこは本筋じゃないんだけど。
乙です。
五年で料理長とかとんでもない実力者だなやっぱり。
ホールの人達の間じゃ学院ばりの噂話だったろうなぁ
「奴は何者だ!?日本人だと!?あの髪色で、アレだけ繊細な味付けができる人間がジャップだというのか!?何の冗談だ!?」とか言う奴居そうだな
美味しんぼ100遍読んで出直してこいって感じだよな
せっかく、コンシューマ版が発売されたんだから
おめでたいスラップスティック調のをひとつお願い!
サントラ聞いてたら17の嵐を呼べって聞いたことないきがしてきた。
あときさきら星花
本編ででてきたっけ・・・。
|ω`)<PSP版攻略でみんな忙しそうだから、この隙にっ
期待
紫苑様
ゴメン、どう頑張っても「本文が長すぎます」って書き込み蹴られる…
こっちでの公開はちと諦めます、申し訳ない
本スレの人か
差し支えなければ自分のスペースの詳細plz
支援
スレ自体の限度がちかいとか?
専ブラ使ったらレスの限界出るんじゃね?
少なくともJaneは有るが
>>858 変わってなけりゃスレの容量はまだ大丈夫だと思う
書き込んでからみにいったら即効うpされてたわ・・・。
おk,見てくる
ああ、申し訳ない
書かれているとおりpixivです
見てきた
「開けてある」って初音さんw
PSPの個別の初音さんもこんななんだな、早く見たい
忍法帳で長さ規制も入ったらしいからそれかな。
ぴくしぶいってみる
うぉ、ほんとだ。
本文長すぎますで、書き込めない。。。
ニヤニヤする余地もない小ネタですが、
1本、pixivにあげてみたので、よければみてやってください。
868 :
あまのんのん:2011/05/15(日) 23:17:24.98 ID:GFrhU5rt0
「ねえ、千歳さん。千歳さんが生きていたら、本当はここにいるのは千歳さんなんじゃないかな。そう思った」
…それが君の願いだね、契約はなされた…
「けほけほけほ、ちーちゃんごめんね。こんなに身体の弱いお姉ちゃんで」
つづく
869 :
あまのんのん:2011/05/15(日) 23:32:24.73 ID:GFrhU5rt0
ベッドの上には病弱そうな少女がパジャマで寝ていた。ベッドのそばには銀髪の少女…?いや男の格好をしているからかろうじて少年だと言い張れる男の子がいた。そして少年は少女に向かって熱っぽく語っていた。
つづく
またこいつか
871 :
あまのんのん:2011/05/16(月) 00:13:14.25 ID:zNMmemOj0
「何言ってるんだよ千歳さん。僕が千歳さんの代わりに出来ることなら何でもするから」
「あのね…私ね出席日数が足りなくて卒業できなくなるかもしれないんだって…。お勉強はちーちゃんにみてもらったから平気なんだけれど…」
つづく
872 :
あまのんのん:2011/05/16(月) 00:18:05.77 ID:zNMmemOj0
「…」
「でね、お姉ちゃん、良いこと思いついちゃったんだ!」
「?」
「あのね、ちーちゃん、私に変装して聖應女学院に通ってくれない?」
「!? …はいぃ?千歳さん、僕は男で聖應は女子校じゃないですか!」
つづく
873 :
あまのんのん:2011/05/16(月) 00:25:53.33 ID:zNMmemOj0
「大丈夫だよ。ちーちゃんはわたしと双子なんだもん」
「男とばれますってば!」
「大丈夫だよ。ちーちゃんは美人さんだから絶対ばれないよ」
「はあああああ。ありえませんよ〜〜〜〜〜〜」
またあの自称ラノベ作家様か
特徴あるからすぐ判るな
テキストファイルにキリのいいところまで書ききってから投下することすら未だに覚えてないとか
875 :
あまのんのん:2011/05/16(月) 00:37:23.41 ID:zNMmemOj0
>>874 誰もラノベ作家だなんて言ってませんよ(涙)
いいかげんにしてください。
規制で行数制限あるから分割したのに。非道い;_;
で、あなたは自称なんなんですか?
前スレに有った奴
行数制限有れば貼れないかな?w
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
|| ○荒らしは放置が一番キライです。荒らしは常に誰かの反応を待っています。
|| ○ガイドラインを逸脱した作品は、投稿所への誘導をお願いします。
|| 無視して投稿を続行する方であれば、個々人でのNG設定によって対処して下さい。
|| IDや名前でNG設定できる、2ちゃんねる専用ブラウザの使用による閲覧をお勧めします。
|| ○放置された荒らしは煽り文句や自作自演、AA等であなたのレスを誘います。
|| 乗せられないよう、冷静に対応しましょう。 ⌒ヽ_
|| ○荒しに反応してレスした人も荒しと同類です。 '´ , ヽ
|| 荒らしに餌を与えないで下さい。 ((((リ从 i!
|| ○荒しに反応してしまった方への注意も極力控え、まとめてNGにしましょう。 \ |l、ヮ゚ リ | キホンデスヨ!
|| 空気を悪くし投下を阻害する事も荒しの目的の一つです。 ⊂i夭(⊃ !
||____ _ _ _,.'⌒ _ _ _ _ ____ | ̄ ̄ ̄ ̄|
.,'´ `´ ゙ヽ.. '´`´ ヽ ..,'´ ゙ヽ.. . '´ `ヽ. '´ ヽ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
i )〉/i \.i )〉/ j ))i )〉..
.゙从从ノl! レベ从ノl!、jノw从wノl!...ノ ノ ノノノ ...| ノリ ハーイ!
と)ji凵!iノ... と)ji凵!iノ と)ji凵!i..( ( ( ( {_)) .| |/ ナノデスヨ-
く/__j〉.. ... く/__j〉.. .. く/__j〉.. ../ / 〉 .ノ.从.从 ゝ
ヽし' ヽし' ヽし' ヽテテ ′.. `iテテ'
以前そう名乗る荒らしがわいた事があって、
「登校所行け」って言われる内容を、丁度今のお前みたいに、どのぐらいになるのか、どんな属性なのかを言わずに
「今その場で書き殴ってるだろ」っつーペースでダラダラ投下してたんだよ
正直俺もそう疑ったぐらいだ
お前さんが「自分はそいつじゃないが、長さ規制で書けない」って言うなら
テキストファイルにまとめてどこかのろだに挙げるとかを勧める
というかあの出来事からまだ1スレ消費してない件
半年でスレ埋まらないのか
PSP版出たし新作来ないかな
>>874 違うヤツだろ。勝手に混同すんなよ。
>>877 あの自称(ry)な荒らしとは別人だから当てはめてやるなよ。
ただ、あまのんのんさんは、もちょっとまとめてから投稿してくれってのは分かる。
>テキストファイルにまとめてどこかのろだに挙げるとかを勧める
ただでさえ過疎ってるSSスレが、本格的におわコンになるな。
てーか、自治厨が湧いてる&このSSスレの各種制限がきつすぎて非常に投稿しにくい空気になってるぞ。
ちったー落ち着いて行こうぜ。今の所内容は投稿所投げなきゃあかんレベルじゃ無さそうだし。
1スレ目からいるが、いつのまにこのスレは心の狭い人間ばっかりになったんだ?
あと、書き込もうとしてエラー喰らいまくったんだが、投稿できる文字数制限きつすぎるな、ここ。
忍法帳規制が本文長さにも及ぶらしいがその関係か
本文の長さ規制結構酷いぞ。
忍法帳初期状態(1回目投稿)だと、
>>880 の2段落目で切ったにも関わらず「長い」と蹴られた。
で、1段落目で切って投稿したら「連投」と怒られた。
しょうがないので時間を置いてやり直したら、初期状態(1回目投稿)と同じメッセージ(初期化中)出して、待たされた(これはワシの設定が悪いのかもしれんが)
むかついたので制限喰らってない知り合いの所を経由して書き込み中なのだが……。
実質ここにSS書こうとしたら(制限喰らってたら)
>>868-873 で投稿された位の長さに分割しないと書き込めないぞ。
連投制限もあるし(;´Д`)
非常にSS投稿に辛い板になってるなぁ。
そりゃすまんかった
突然始まった
一回がえらい短いのに投稿間隔がえらい長い
なんかQBっぽい表現が見えたせいで鬱展開やりたいとしか思えなかった
ってんで完全にあいつだと思ってた
少し過敏すぎたな・・・
前スレのやつはVIPとかで書いてるやつだろう。あのヤラれ展開はすぐわかる
ここでいいのか相談してもよかったし投稿所かいてリンクはるのが無難だったのか。
ここを投稿しずらい雰囲気にしたらいけないな。
投稿所の過疎っぷりを見ると何とも言えない気持ちになる。
書き込んだ方も再度ルールを確認してくださいよ。
毎日ここを見るのが楽しみなんだ。
それでも半月ROMった方が無難に思う私は心の歪んだ人
>>884 だからと言ってイキナリ喧嘩腰につっかかって良いもんでも無い。
無慈悲と不寛容をモットーにしている学校は良くなくてよw
QBぽいのが出たからといってても必ず鬱になるわけないじゃん。まどか本編も鬱アニメじゃ無かったし。
いきなり何も言わずに短い内容を書きながら?投稿してる方にも問題有る気がするが
まぁまぁ。
それじゃなくても書きづらい状況なんだから、
あまり雰囲気をネガにしないようにしましょうや。
しかし。
「忍法帖巻物」でぐぐると詳細でてくるけど、
SSスレの根幹に関わる状態な予感。
別の場所に掲載して、リンク貼る運用ってのも
なんか違うような気もするしなー。
>>888 書きながら投稿って、お前さんは何を見て寝言言ってるんだ?
140文字制限と連投禁止だと書いてるしな。
よる遅い時間にまで粘着してる方がおかしくないか?
>>890 レベル1だと能書きたれるだけで規制されるんじゃん
なんという自問自答w
忍法帖が育ったなら、内容にもよるがこっちに直に書いて欲しいってのが本音として、
育ってない内は外部に貼って宣伝ってのもやむを得ない措置だと思う
あとは現在の忍法帖のレベルの表示の意味も込めて「名前欄に!ninja入れてテキストファイルの容量と属性の予告」があるとトラブル避けられるんじゃないかね
方向性と分量の目安がほしいってのはアレが現れる前から言われてたはずだし
まぁ忍法帖育ちきってもこの板の1回の書き込み容量は工作の半分(2kb)なんですがね
ちなみにこれで約500バイト
まぁ今まで運営がSSを黙認してくれてたのが、具体的な声明を出さず搦め手で禁止を通達したって事でしょ?
いままで2kbは超えたことがないからそれは問題ないかなぁ。
どっちかといえば32行制限のほうが、よっぽどきつい。
忍法帳育てる手間考えたら、ここに書き置くのが億劫になるんだよね…
かと云って元々おとボクSS書き始めたのはここ見てからだから、ここに書きたいのも
あるんだよな
何とも悩ましい
そうそう。
スレ住人ときゃっきゃうふふしながら投稿したいのです。
まぁ、億劫という言い訳の元に、ちっとも筆が進んでいないのも事実なわけで。
これがいくらぐらいあればいいんだろ?
面倒だこれ
どれどれ、テスト
運営は何時でもレベルをリセットする可能性が有るって言ってるし、せっかく育ててもゼロになったら泣く人いるんだろな
LV30とかになれば最大限その板を利用できたような気がする
うっかりブラウザリセットしてしまうこともあるだろうしな
忍者帳って書き込み間隔だけじゃなく、行数等も関係有るのか
忍法帖だった…
これ無かったらもう少しは賑わってるんだろうか?
あれ、書き込めない?
忍法帳を憎まず、ここまでさせた荒らしを憎もう。
その通りですね
なんか荒れてますのね><
どっちかというと、過疎ってるんだと思う。
なんか投稿すりゃ流れも変わるんだろうけど、
手持ちで完成してるのないし、書き込む時間もないしー。
確かに過疎ってますね
この期に及んでリセットされるし。終わってるな
一応一週間程経ったら殆ど問題なく書き込めるで良いのかな?
続編の望みがほぼなくなったし、過疎の一方かな…
そこをなんとかもりあげていこうぜ!!
モウオワタ…
1日1回、忍法帖リセット
ずっと更新されてないと思ったらスレを取得しなおしたら直った。
なんだったんだろう・・・
え? 1日1回忍法帖リセットされるの?
ちょっと忍法帖リセットラッシュがあったのは間違いないが・・・1日1回だと何のためにやってるのかわからんな
忍法帖がリセットされるとSSの投稿もままならないね。
10位になればほぼ問題なくやれるんだっけ?
またかよ…
mata?
またリセットされたの?
このスレ終わるまでに1本は投稿したいぞー。
そうですね
そもそもこの忍法帳ってなんなんです?
レベル低いとスレ立て出来ないみたいだけど
今日も何回かリセットされてると思う・・・
ぬん
hoshu
●無しだけど、別にリセットされてない
人によるのか?
一部のプロバイダだけリセットとか実験してるのかな?
またか
ああ、15年ぶりだよ・・・
まいにち、まいにちぼくらは 忍法帖焼かれていやになっちゃうよ
Oナインシステムとは、よく言ったものね・・・
(;^ω^)・・・
いったいいつまでリセット祭りは続くんだ?
特定プロバイダの誰かが荒らしてるのかねぇ・・・。
全員リセットされてるわけでも無いから、940さん個人を●持ちが水遁してる可能性もある。
忍法帖IDから水遁されたかどうか調べる方法があったような気がするが覚えてない。
運営による特定グループリセットか、●持ちによる個人リセットかを明らかにするのが先かもな?
その謎を解決するまえに、
なんかSS書くか、ネタ考えよう!
今の時期だと…雨で濡れた千早ちゃんの話とかどうだろ?w
千早お姉さま、こんなにびしょぬれになっちゃって…うふふ…はしたないお姉さまですわ…
>>944 私の脳内では、5人のテロ(エロ?)リストが活躍していく「エルダーW」と、言うのを妄想してしまった!
リセットされてないかな〜?
また若干名リセット報告があるな
さてどうしたものか
ネタ思いつてもいいオチが…そもそも書く時間が…
このスレ落ちるまでに投稿ないかな?
今日こそはリセットがありませんように。
連投できるのどれくらいが限界なんだろう。
間隔とか文字数とか厳しくなったのかな。
うp途中でバッサリやられたら堪ったものじゃないぞ・・・。
リセット実験。
忍法帳はそれぞれのサーバー別個なのかな?
これでレベル3に上がれば・・・
多分大丈夫だと思うんだが
一応確認。
全然時間なくて8割程度から筆が進まずに数ヶ月‥。
忍法帖のせいである意味着実に進行してる今日この頃
スレが埋まる前に終わらせる自信がないので、前半戦だけ貼ってみます。
[pixiv]
http://p.tl/t/338098 >>482から15分後。そして、
>>176から51日後の冬の朝。
あの朝の風景を第三者視点から書いてみたかった感じ。
頭に来たのでプロバイダの中で忍法帖リストにはいってない
Plalaと契約した記念カキコ
正規品の●まで持ってるというのに・・・っ!
なんでレベルが上がらない・・・?
かちゅーしゃが新システムに対応してないのかな・・・?
テスト
間違えた orz
test
もう何が何だか分からない
Plalaと契約はしたが常時接続の評判が良くないので
常時じゃないコース
ウィルコムの端末(WS011SH)からカキコ
2ちゃんブラウザは2++
書き込み時に例の「あなたの忍法帖を作成します」
のメッセージは出ず、そのまま書き込める
名前欄に!ninjaを入れてみるとメッセージが出て2分待たされた
この端末では回線速度や入力に難があるよぅ
やっと経路復旧でござる
>>961 俺も全然レベルが上がらない。
泣きたくなってきた・・・。
1日1回の専ブラリセット
一周年記念かGA版発売で少しは盛り上がらないかな?
てst
プロバイダがソネットだとよくリセットされるとかあるのかな?
プロバイダによってかわるモノなのか、これ
回線はKDDI、プロバイダはソネット。
なんかよくレベル1に落とされる。
書き込めばレベルは上がるから水遁の術ではないみたいです。
前はレベル5から上がらなかったからクッキー破棄したり。
専ブラのカチューシャが忍法帳のシステム改変に間に合ってないんだろうか?
忍法帖導入に対応した専ブラのアップデートがあったかなかったか判断すればいいんじゃないか
専ブラのアップデート1回あったきりかな・・・
今日もレベル1なら泣く。
まさかのリセット
レベルがあがる
そう思っていた時期がうんぬんかんぬん
このまま投下無しでこのスレ終わるんだろうか…?
投下主さんが規制じゃ流石にキツイ・・・。
確かに