【姉しよ〜】タカヒロ作品SSAAスレ2【〜マジ恋】
シナリオライター タカヒロ氏のゲーム
きゃんでぃそふと「姉、ちゃんとしようよっ!」「姉、ちゃんとしようよっ!2」「つよきす」
みなとそふと「君が主で執事が俺で」「真剣で私に恋しなさい!」
のSS&AAネタ投稿スレッドです。
★保管庫
きゃんでぃそふと SS&AA保管庫 (過去ログも保管)
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【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
投下の際は2分以上間隔をあけないと連投規制にあって書き込めなくなるので注意。
名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
なお、一回の投稿の最大行数は32行、最大バイト数2048バイトです
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
自分がアップしたところをリダイレクトする。
>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が470KBを超えた時点で、
ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。
6.書き手の方々へ。
心構えとして「叩かれても反応が無くても泣かない」位の気概で。
何を書こうが作者の自由。どんな反応を返そうが読者の自由。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
スレ立て乙!!
願わくばこのスレも豊作であることを…
辰姉!小雪!心!
>>3 マルギッテを挙げないとかお前まじぶっころしょ?
マルさんを忘れるとは不覚…
でも1番好きなのは辰姉
前スレは辰姉分多くて幸せだったばい
何故かメインヒロインよりサブヒロインが好き
つかまゆっちルートから絶対心ルート行けると思ったのに!
他でも小雪ルート行けると思ったのに!!
今規制中かな…
保守
保守
11 :
sage:2009/11/27(金) 20:30:45 ID:AxAOWuC20
もえもえ京たんの話まだかな?
寝ぼけて名前にsageと・・・
スマソorz
あまり投下がないと寂しいので投下
百代ルートのアフター
14 :
近況報告・1:2009/11/27(金) 23:47:39 ID:gNrp9iaZ0
「すまん、遅くなった!いや、東京からの道が渋滞で……
キャップは、来ていないのか?」
「キャップには連絡がつかないというか、どこにいるのかわからなくてね」
秘密基地に集まる、キャップを除いた風間ファミリーの面々。
ここに集まるのも、ずいぶん久しぶりだ。
俺と姉さんの結婚式の、2次会で使って以来だからなぁ。
「まあ、残念だが仕方がないな……ってわけで、久しぶり、クリス」
「ああ、本当に久しぶりだな……大和、川神市長就任おめでとう!」
「や、どーも」
そう。俺が史上最年少の市長として
川神市の市長選挙で選ばれてから約1ヶ月。
ようやっと少し落ちついてきたところで
ささやかなパーティーを皆がしてくれることになったのだ。
この、秘密基地で。
「しっかし、昔っからのダチが市長ってのも、なんかおかしな感じだよなー」
「そうだよねぇ……やっぱり、『市長』って呼んだほうがいいのかな?」
「いや、このメンツでそれはいいよ」
「だな。私なんか、いまだに『弟』とか『舎弟』とか呼ぶときあるし」
「いや、夫婦なんだからそれはもうやめてよ姉さん」
「お前が私を『姉さん』って呼ばなくなったらな」
15 :
近況報告・2:2009/11/27(金) 23:50:40 ID:gNrp9iaZ0
「ところで……その、モモ先輩?」
何故かクリスがモジモジしながら聞いてくる。
「んー?なんだクリ?」
「子供は……まだなのかな?」
「そうそう!私もそれ、気になってたんですよ!
もう結婚されてから、けっこうたちますよね?」
まゆっちも勢いこんで同調。
結婚してからは、特に避妊もせず頑張っているのだが。
「そろそろ作っておかないとなー。モモ先輩も、もう若くないんウボァ!?」
一瞬で天井に蹴りあげられるガクト。相変わらずだ。
「……こうやって、ガクトが余計なこと言ってモモ先輩に殴られるのを見ると
なんだかすごく落ちつくなぁ」
「テメ浸ってんじゃねーよモロ!」
すぐに復帰するあたりも相変わらずだった。
「でも、本当に、そろそろお子さんができても……ねえ?」
「うるさいなー。だいたい、私と大和以外、誰も片付いてないじゃないか!
そういうのは、自分が相手を見つけてから言えよ!」
「そうだね。ちょっと皆、近況報告してくれよ」
16 :
近況報告・3:2009/11/27(金) 23:53:53 ID:gNrp9iaZ0
「じゃあ、私から」
「いや、京はわかってるから」
「でも、他の皆には報告しないとね。
私は今、直江市長の秘書をしてるよ」
「えー?」「そうだったんですか?」「そこまで大和一筋とはなー」
有能だし、俺の体調や気分を敏感に察してくれるので
非常に助かっている。
助かってはいるのだが……
「僕は知ってたよ。ネットで、『新市長の愛人か?』なんて書かれてた」
やっぱり、そういう噂立つよなぁ。
「そういうモロは、この間出した新作ゲームがけっこう話題だったよな」
「うん、おかげさまで何とかね」
モロはゲーム会社に数年勤めた後、自分で会社を立ち上げていた。
最初は鳴かず飛ばずだったらしいが
ここ2年ほどはヒット作を連発している。
「ゲーム会社か……どんなゲームなんだ?」
そういや、クリスはあまりゲームには縁がなかったか。
「いわゆるギャルゲー……恋愛シミュレーションて言えばいいかな。
ゲームを作ってる本人は、恋愛には縁がないけどね……」
17 :
近況報告・4:2009/11/27(金) 23:56:56 ID:gNrp9iaZ0
「情けねえなあモロ……売れてきてるんなら、ガンガン攻めてけよ!」
「ガクトみたいに、攻めるたびに玉砕するよりはいいと思うよ」
「うるせえよ!男の魅力はなぁ、こうやって磨かれていくんだよ!」
相変わらず、女を口説いてはフラれる繰り返しか。
この中じゃ一番変わっていないのはガクトかもしれない。
「えっと、課長になったんだっけ?」
「おう!まあお前の市長に比べりゃどってこたねえけどな」
「なんか、セクハラとかしてそうよね」「してそうだな」「してるね」「私もやりたいぞ」
回りの反応も変わっていなかった。
「そういうことはしませんよね?」「わかんねーぞー。油断するなまゆっちー」
「本音ダダ漏れだぞまゆっち……
っていうか、まだ松風いるのかよ」
「ええ、ずっと一緒にいますよ?」「もう離れられない二人なんだな」
松風がまだいるってことは、いい相手は見つかってないんだろうなぁ。
「見合いの話とか来ないの?」
「以前は時おりそんな話もあったのですが……
妹がですね、一昨年結婚しまして、子供ができましてですね。
それからは両親も何も言わなくなりましたうううううう」
18 :
近況報告・5:2009/11/28(土) 00:00:00 ID:rRaqBzcO0
「見合いかー。私も、父さまにずいぶん縁談を持ちかけられててなー」
「ええ!?あの中将さんが!?クリスに縁談を!?」
「まあ……さすがに、この年齢になるとな。
こっちの大使館付きになってからも、年に数回は持ちかけられる」
変われば変わるもんだな。
「私としては、マルさんより先に、というわけにはいかんと思うのだが……」
「あ、マルギッテもまだ独身なんだ?」
「ああ。相変わらず、任務に忙しいようでな。
なかなか会えなくて、寂しい限りだ」
「……もうお前とマルギッテで結婚しちゃえよ」
「な!?……それもいいな(ボソ)」
いいのかよ。
「アタシは……ずっとお姉さまと一緒だったし、これからもそうかなー」
ワン子は、川神院師範代にはなれなかったが
それでも姉さんのサポートをするべく、栄養士として頑張っている。
「ジイさんが、『そろそろ一子も嫁に出さんとのぅ』って言ってたぞ」
「却下だ!ワン子は誰にもやらん、私のだ!以上!」
姉さんが以前のクリスパパのようになっていた。
19 :
近況報告・6:2009/11/28(土) 00:03:00 ID:rRaqBzcO0
「結局、脈のあるヤツは誰もいないんだな」
「私たちに子供ができないとか、人のこと言えた立場じゃないだろう」
「けどよ、俺様達の同期で、結婚したのってゲンとクマちゃんぐらいだろ?」
「おまえら、クマーン以下か。情けないぞ私は」
「キャップにいたっては、行方すらわからないしね……」
「今ごろ、どこで何やってるのかしらねー」
「きっと、皆があっと驚くようなことをしてますよ」
確かに、まゆっちの言う通りだな。
「けど、恋愛に縁がなさそうなのは変わってそうもないな」
「だよなー。っていうか、キャップの嫁になる女って
どんな女か想像つかねー」
「うーん……同じようなタイプの人なら、上手く行くんじゃないかしら?」
「確かにそうかもしれんが
キャップみたいな女性というのは、そうはいないだろう……」
「ハハハ、そんな女がいたら、お目にかかりたいな!」
窓から空を見上げる。
この空の下のどこかで、キャップはまた何かやらかしているんだろう。
見上げた空に、一筋の飛行機雲が長く長く伸びていた。
20 :
近況報告・7:2009/11/28(土) 00:06:05 ID:gNrp9iaZ0
――― そんな風に大和が見上げた上空を
一機の貨物機が飛んでいく。
その後部貨物室では、こんなやりとりが。
「おいカザマ、本当にやるのか?」
「ああ、飛行場まで待ってられねえ!」
「もう飛行場まで目と鼻の先だってのに……何か、大切な約束でもあるのか?」
「いーや?けどな、何か、今すぐ行ったほうがいいって気がすんのさ!」
「そんな気がするってだけで、街中にパラシュート降下かよ。よくやるぜ。
……よーし、パラシュート高度まで来たぜ!用意はいいかカザマ!」
「おう!目標は、あのビルの屋上に降下だ!
……できるな、ハニー?」
振り向いた先で、ずっと傍らに立っていた女性が微笑む。
「スカイダイビングはアタシのほうが得意なの、忘れたの、ダーリン?」
「へへ、そうだったな……
それじゃ、早いとこ行って、アイツらのビックリする顔見てやるか!」
晴れわたった青空に、二つのパラシュートが花開く。
飛び降りる先は懐かしい場所。
何の約束もしていなくても、そこに行けばきっと会える。
だからできるだけ早く、一番の近道で。
「待ってろよ、お前らー!今行くぜー!」
おしまい
キャップはこんな風にいきなり嫁を連れてきて
皆を驚かせそうな気がするってだけで書いた
乙なのじゃ
乙!
終始ニヤニヤが止まらなかった俺きめぇ
乙
まゆっちがカワイソスギてワロタ
乙
キャップ美味しいとこもっていくなぁw
そういえば、百代ルートじゃその後の皆とかの描写はないんだっけ?
乙
百代アフターってよりキャップのその後だなコレw
一緒に冒険してるんかね
乙です
最年少ってことは30か?
で、まゆっちその一個しただから29と……一位を取ったのにルート以外じゃ報われないぜwww
乙!
キャップEDはこんな感じでもいいなw
投下させて頂くで候
島津寮の朝・・・・・
武神こと川神百代が暇を持余し弟弄りにやってきた。
いつものように大和を弄ってストレス発散して帰るはずだったのだが・・・
「弟〜遊びに来たぞ〜」
「ああ、いらっしゃい姉さん。まゆっちと京が居るから、ゆっくりして行ってね。」
と、言い放ち出掛けて行ってしまった。
「え?おい!!大和!?」
「京!!どうなっている!?大和が私を置いて出掛けてしまったぞ!!」
「わからない、女かもしれない・・・・」
京は冷静を装って答えてきた。相変わらず器のデカイ女になろうとしているか。
「女だと・・・大和が姉である私よりも大事な女が居るのか!?」
「そりゃ、居てもおかしくないでしょ?そんな事言ったら大和いつまでたっても結婚できなくなっちゃうよ。」
「なっ!!そうか・・そうだな・・・なら、相手の女の見ておく必要があるな姉として」
「わたしも見ておく必要がある、正妻として」
そのころ、大和は川原である人に会っていた
「ん〜大和君〜久し振り〜」
「久しぶりって一週間振りでしょう?辰子さん・・・」
「そんなことないよ〜私にとっては凄く永い一週間だよ〜」
「さいですか・・・」
大和はカーニバルの後、辰子と毎週の様に会っている。
川原で考え事をしていると、川神院の休みで外出していた辰子が来たのが最初だった。
「ここは居心地良いけど、大和君がいるともっと良くなるね〜Zzzz」
辰子は抱きつきながら眠りについた。
「まぁ、俺も悪い気はしないんだけどね」
川原で逢った時に辰子が、次の休みも会いたいと言い始め
面倒だから断ったら寮に行くと切り返された。
寮に来たら京がいる辰子はすぐ抱きつくだろう、瞬く間に修羅場の予想ができてしまい、週に一度は川原で会うことにした。
『流石に外で会うには寒くなってきたな・・・』
辰子の温もりを感じながら、冬になったらどうするかと考えていた。
一方、奥の茂み
(板垣・・・・辰子・・・だと?)
気配を消した百代が怒りに震えている。
(モモ先輩落ち着いて、それ以上怒ると殺気で大和にバレる)
同じく気配を消した京がなだめる・・・
(何故だ?お姉ちゃんキャラなら私一人で十分だろう?なぜ大和は辰子に走る!?)
(ルートが無い強姉系のモモ先輩と、黙っててもルートに入れる癒し系お姉さんの板垣辰子なら簡単だよ)※製品版に辰子ルートはありません。
(それは・・・大和が!!)
(大体、前に先輩も大和には男を感じないとか言ってたじゃない?
大和は本当の姉の様にしか思っていなかったら先輩と、いつまでも一緒とはいかないよ。)
京に言われたことに反論できない・・・大和は舎弟だ弟だ、付き合うとか考えた事もなかった。
ただ、ずっと大和とは一緒に居れると心の何処かで慢心していたのかもしれない。
そうか・・・私は大和が好きだったんだ・・・・
今、気付いた今まで気付かなかった・・・
このまま辰子と、くっ付かれては目覚めが悪い・・・行動しよう
「板垣いぃぃぃぃ!!辰子おぉぉぉぉぉ!!」
「姉さんっ!?」
姉さんの咆哮が響き、その方向を見る
「なっ・・・」
京と一緒にいる、俺に勘が良くないと告げている!!
姉さんの咆哮が大地を揺さぶる
「ん〜、な〜に〜百代さん?せっかく寝てたのに〜」
抱きついていた辰子が目を覚まし頬ずりをしてきた
「大和君も静かなほうがいいよね〜」
ビキッ!!
割れる音がした、物体が音速を超えた時の爆発音ではなく
空間にヒビが入ったような音だ。
「板垣辰子、お前に決闘を申し込む!!時間は今、場所は此処でだ!!」
「いやだよ〜私じゃ敵わないよ〜」
「ハンデで私は氣を一切使わない!!」
「ん〜でも〜」
「もし、お前が勝てば一週間、大和を自由にしても構わない!!そして川神院での休みもやろう!!」
「それだったら、いいよ〜」
「その代り私が勝った暁には・・・大和!!私を女として見ろ!!」
は?
「姉さん・・言っている意味が・・・」
「いざ!!」
聞く前に始まってしまった・・・・
「うあぁぁあぁっ!!」
辰子は早速暴走状態になり百代に突撃していく
「はぁ!!」
姉さんは体術だけで受け流してカウンターを狙っていく
「大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君
大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君大和君」
辰子が更にピッチを上げる
「大和大和大和、うるさいぞ・・・・」
姉さんも合わせて速くなるが・・・
「京、姉さん押されてないか?」
「ま〜ね〜」
姉さんの動きがいつもより遅い、ハンデ持ってるからにしても遅すぎる
何故かチラチラこっちを見ながら辰子との攻防を繰り広げていた・・・
そして、辰子の掌が姉さんをとらえ吹き飛ばされる
「なっ!!」
姉さんは、ふら付きながらも立ち上がった・・・
「驚いたぞ辰子・・・院で学んだ事を、ここまで使えるようになっているとは・・
良い一撃だった・・・私の負けだ・・・・」
姉さんが負けた?って事は・・・・
「やった〜大和君、一週間一緒にいようね」
「なにぃぃぃ!!」
こうして、俺と辰子さんとの一週間が始まる・・・・・
あ、終わりか
乙!続きが見たいw
乙だよー
ちょっとわかりにくいけど乙
乙
辰子さんと姉さんの大和争奪戦は鉄板になりつつあるな
超GJなんだぜ!!
京の口調に少し違和感があった気がしたがそんなことなかったぜ
辰姉可愛いよ辰姉
な… これからって時になぜ終わる!w
ともあれ乙
乙
なんか大和が二股かける気マンマンぽくて
どこのナイスボートな主人公かと
乙!
辰姉が見れて良かった良かった
乙だが
文章がちょっとおかしいところがある
第三者視点から場面が変わらないのに
いつの間にか大和視点になっていたりするし
大和視点のときに「辰子」だったり「辰子さん」だったりする
統一したほうがいいと思う
ガンガレ
京「なにがクニだ!クンニしろオラァァァ!」
>>44 百代「童貞のくせに馬鹿にしやがってよぉぉぉ!!」
>>45 坂から転がり落ちるんですね、解りますwww
>>44 ナチュラルに脳内再生された自分がちょっとおかしいのかと疑う
川神学園のメンツが古代に飛ばされても風間ファミリーは余裕で生き残りそうだな。
ただ,動物的本能から子孫を作るためにと京と百代が大和を襲うわけだ。
さて,こんな極限な状況で大和は彼女たちを拒めるのだろうか。
大和「友達で、姉で」
って
>>44ってなんのネタ?
エデンの檻
夢 「やったー、夢の勝利ー!ね、夢勝ったんだよね!」
ナトセ「すごいよ、夢!」
μ 「屈辱だわ屈辱的な敗北だわ…
そもそも何をやって何が敗北なのか皆目わからないあたりに、
特に屈辱を感じてやまないわ…」
森羅「さて、μたん。敗者の行く末はわかっているな」
μ 「異議ありよばーん!これは陰謀よ。やり直しを要求するわ!」
森羅「何をやり直すというのだ?試合か?勝負か?それともゲームか?
何をやったか、この場にいる誰も分からんというのに、何をやり直すのだ?」
μ 「くっ…なのに敗者と、その行く末だけがはっきりしているというこの状況…」
森羅「ともかく、まず衣装合わせだ。これを着て貰おう」
μ 「なによ、その妙な質感と過剰な存在感の謎衣装は…
なんとか、なんとかこの場を乗り切らなければ…鳩!鳩はどこ!?」
森羅「鳩にはレンを許可した。しばらくは、この場には現れん」
μ 「レンは姉さんのものだというの…
この期に及んで私ルート設定でなく、姉さんルート設定とは…
私に不利な状況を作り出して楽しんでいる、背後の黒幕は誰?」
森羅「ごちゃごちゃうるさいぞ。ベニ、手伝え。
私自ら、妹を着せ替え人形にしてやる」
μ 「やめるのよ!やめなさい!寄るな触るな触れるな近づくな!」
魔法少女μたん 1/4 みなとのきき!
大佐「一見平穏に見える港町にも、邪悪の影が渦巻いていた。
そう、まるでかつて私が戦った内戦下レバノンの」
森羅「大佐、ナレーションはキレよく頼む」
大佐「はっ…」
揚羽「はっはっはっ!公園のゴミを一掃してやったぞ!
これでわれらは市民の好感度を大幅に得たことであろう!」
稲村「いや、そりゃどーかな…逆にいろいろ散らかして、ぶっこわしたような…」
アナ「ハァハァ、ゴミ拾い…賤しく貧しい身分に落とされた私…」
稲村「全国のボランティアと、清掃業者の方に謝れ」
揚羽「こうして市民の支持を集め、いずれ我等がこの市を征服するのだ!」
鳩 「ああっ、μさん!また揚羽さんたちが、善行を繰り広げてますよ!」
μ 「…ボランティア活動は一見善行だが無秩序な活動の拡大は業者の
仕事を奪い結果的に経済活動を乱し失業率を上げ社会を混乱に
導くこの場合必要なのは責任ある行政機関による対応と調整であり」
デニ-ロ「ミュー!棒読みの上、台本を逸脱してるぜ。
だいたい、あんだけ色々ぶっこわしたりしてる連中退治すんのに、
そんな難しい理屈いらねーだろ!」
μ 「重要なのは以上のような行政処置を適度に留めることであり一律的な
活動の禁止はむしろ逆に市民活動の抑圧に」
鳩 「μちゃん」
μ 「背後を取られた」
鳩 「変身してくれないと、お姉さん困っちゃいます。
レンちゃんのレンタルも、タダじゃないんです」
μ 「!買収されてる…退路を完全に断たれ撤退不能どうする私!」
鳩 「μちゃんのかわいい姿みたいな〜」
μ 「qあwせdrftgyふじこlp!!!!」
デニ-ロ「煩悶は済んだか?」
μ 「済んでないけど仕方がないわ…デニーロ!セットアップ!」
デニ-ロ「いっくぜ〜!」
揚羽「ふっふっふっ!次は横断歩道に陣取り、お年寄りの手を引くのだ!行くぞ!」
μ 「待ちなさい」
揚羽「何奴!」
稲村「どこだ?」
アナ「あそこ〜ビルのテラス〜」
μ 「あなたたちの善行もそこまでよ」
揚羽「おのれ何奴か!」
μ 「青い市街を守るため胸の鼓動が天を衝く
魔法少女、かっこアダルトかっことじμさん…」
鳩 「μさん、見事な棒読みです」
稲村「つーか、かっこアダルトってなんだ?」
鳩 「名乗りを上げる上での、妥協点だとか」
アナ「しかも最後の方、やる気がなくなってるぅ〜」
μ 「やる気は、最初からないわ」
揚羽「おのれ!我等の善行を邪魔するか!あほうニートとやら!」
μ 「私はニートではないわ!起業努力をしているもの!」
稲村「んでも、その格好はちょっとアホっぽいかも…コスプレ?」
アナ「恥ずかしい恰好を、衆目に晒す…なんてうらやましい…ハァハァ」
μ 「黙りなさい!…さっさと終わらせる必要があるわね…
とにかく!今すぐ!はた迷惑な善行をやめて、立ち去りなさい!
今すぐ!もう超特急で今すぐ!」
揚羽「うぬ!我らが善行の、なにがはた迷惑か!
言いがかりをつけおって!出て来い!小十郎!」
小十郎「フンガー」
揚羽「バカ者!なんだその掛け声は!」
小十郎「すいません!なんとなく!」
揚羽「愚か者!修行しなおせ!!」
稲村「おいおい、手前でやっちまってどーすんだよ」
揚羽「ふん、このくらい。小十郎ならまだいける。いけるな?」
小十郎「牡!」
揚羽「よおし小十郎!あの小娘をぶちのめすのだ!」
小十郎「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
デニ-ロ「おお、すげぇ勢いでくるぜぇ!」
μ 「…デニーロ、モードチェンジ」
デニ-ロ「あいよ」
小十郎「なんだその巨大な大砲は!
あんな小さな物がどうやってそうなった!?」
μ 「ターゲットスコープオープン…電影クロスゲージ明度20…」
小十郎「待て、魔法少女じゃないのか!?
それじゃ魔砲じゃないんか!つーか本物?!!」
デニ-ロ「エネルギー充填120%だぜぇ」
μ 「総員対ショック対閃光防御…」
鳩 「はい、揚羽さんサングラス。稲村さんにアナスタシアさんも」
揚羽「おお、すまぬ」
稲村「ああ、ありがと」
アナ「っふふ、暗い…光の無い世界の私、ハァハァ…」
μ 「最終セーフティ解除…デニーロバスターエ」
森羅「μ。台本通りにな」
μ 「っ〜〜〜〜〜〜〜!!
せっ、世界の愛を壊すのは!乙女の愛がっ許さなひっ!!
デニーロ、バスター…………」
デニ-ロ「ミュー?」
森羅「μ!」
鳩 「μちゃん!!」
μ 「デニーロバスター!!ら、らぶらぶえくすてんしょんっっっ!!!」
デニ-ロ「轟!!!!!!!」
小十郎「ぐわぁぁぁっ!!!まだまだぁぁぁっ!」
鳩 「(ニコッ)」
μ 「(><!)ふ、ふ、ふ、ふぉーりんらう゛ばーすとっ!!」
<どーん!>
小十郎「マジ恋もよろしく〜〜〜〜」
大佐「こうして一つの戦いが終わった。
しかしスペシャルな戦士は常に次の戦いに備えるのだ。
そう、あの戦乱の絶えない暗黒大陸アフリカで私は…」
森羅「μたん可愛かったぞぉ〜」
μ 「姉さんくっつかないで」
森羅「うん、次はこの衣装だな。次は魔砲少女μタンの危機も作って盛り上げねば」
μ 「次はないわ。金輪際この手の企画には関わらないよう、遁走させてもらうわ」
森羅「そうはいかん。今回撮影したDVDの販売もあるしな」
μ 「よこしなさい!そんなものはマスターもコピーも消去して、
この世から抹殺根絶させてもらうわ」
森羅「ふっふっふっ。とりあえず次の企画用の、この衣装を着てくれれば考えよう」
鳩 「レンちゃーん、お姉ちゃんがんばったから、ご褒美上げますよ〜」
大佐「戦火の中流転し、戦士は更なる過酷な戦場へと流されていく。
しかし真にスペシャルな戦士は、それをさらに乗り越えてゆくのだった…」
夢 「すごいよねー。夢が勝ったんだよ。勝利だよ。世界はもう夢のものだよね」
ナトセ「うんうん、すごいよ。もう誰も夢には届かないよ」
夢 「ねー」
終
>>52-57 終わりです。
昔書いてほっぽっておいたのを、なんか引っ張り出してみたくなった。
行数考えてなくて、分割が投稿時変更を余儀なくされ
5/4とかになったのはすまん。
0/4は変更の為ではないが、やってみるとやはり不親切だな。これもすまん
何というカオス
久々にこんなカオスなきみあるもの見たw
乙ですたwww
ラジオの方でこうゆうのやって貰いたくなってきたw
age
落とさせはせん
65 :
名無しさん@初回限定:2009/12/11(金) 18:50:28 ID:6soW1oVVO
保守
保守
保守
68 :
名無しさん@初回限定:2009/12/13(日) 15:00:05 ID:bWdyLB5bO
保守
ほしゅします
前スレで続きもの書いてた職人さんはもうおらんのかな
何故新スレになった途端に過疎?
冬コミ前でみんな忙しいんじゃないかねえ
久々に来たけど二スレ目いったんだね。
過疎寂しいです><
修羅場つらいです><
全裸で職人待ち寒いです><
保守
ほす
ぼす
ほしゅ
81 :
名無しさん@初回限定:2009/12/26(土) 11:34:16 ID:CAgO4Hc20
ほす
うん
何が年の瀬だよ!保守しろオラァァァ!
84 :
名無しさん@初回限定:2009/12/30(水) 06:34:29 ID:Z5KYbU1A0
ホシュ
明けまして保守
振袖姿の京がみたい
アンソロに辰姉が出なかったのが残念
保守
>>86 振袖姿になる→大和に見せる→その場で姫始め
すぐに汚れそうだな。主に白く
脱がす時は「よいではないか」と言いながらの帯紐くるくる遊びしながらだな
京「よいではないかよいではないかッ!」
大和「」
小雪とヤリタイ
眼鏡 「おや準、何処に行っていたのですか?…血まみれですよ?」
毛根死滅 「ちょっと悪を滅ぼしに」
小雪は本当に可愛い
何故小雪ルートがなかったのか?
顔面騎乗きた時はかなり興奮したのに…
小雪の中にぶちまけたい
太陽のなんちゃらとかいいからFDで早く小雪ルートみたい
具体的に言うとエロシーンが見たい
小雪は普通に前からがいいな
正直バックばっかは萎える
まゆっちはほぼバックだけだったしな
何が言いたいかって小雪は可愛い。俺の嫁
辰姉も捨て難いが小雪可愛いよ小雪
小雪はあはあ
辰子はあはあ
心はあはあ
小雪の中に5連続ぐらいぶちまけたい
小雪可愛い
2時間ぐらいDキスしたい
101 :
名無しさん@初回限定:2010/01/25(月) 00:07:22 ID:CY9E0cdz0
ここはすっかり○○は俺の嫁スレになったな
SS投下は無いのだろうか?
あと京と辰子と小雪は俺の嫁
京はやる。だが小雪だけは絶対渡さん!!
さて、今日も小雪の中に出すか…
小雪は本当に可愛いなぁ
一日中抱きしめていたい
保管庫の方はどうなってるんだ??
とりあえず投下
「お、これなんかいいな」「どれどれ?……ん〜、ちょっと派手すぎない?」
秘密基地でのマッタリした時間。
女子メンバーが揃って、テーブルの上の雑誌に集中している。
男が俺しかいないので、ちょっと緩んでる気もするが
武士娘、といってもやはり「娘」ではあるわけで
見ていると何やら微笑ましさすら感じる。
どれ、どんなモノに興味があるのか、軍師として把握しておくか。
「さっきから、皆して何見てるのさ?」
「あ、コレですか?いわゆるコンカツ情報誌です」
「……コンカツ?」
「知らないの大和?えっと、結婚活動のことを略して……ケッカツ……あれ?」
自分が知っていて、俺が知らないコトがあると思ったのか
ワン子が自慢げに説明を始めようとして間違えていた。
「コンカツな。言葉の意味ぐらい知ってるが」
「うぎゅ」
「俺が聞きたいのは、何故にコンカツ情報誌なんか見てるのかと。
今からってのはいくらなんでも早すぎるだろ」
当然ながら、みんなまだあわてるような年齢じゃない。
それに、皆の容姿を考えれば、男の一人や二人捕まえるのは造作もないハズ。
「いーじゃないか、女にとって、ウェディングドレスは憧れだからな」
ウェディングドレスか。確かに、男でも見とれてしまうものだが。
「意外だね。姉さんでも、ウェディングドレスに憧れ痛たたたたたたっ!?」
全部言い終わる前に、姉さんの拳がコメカミに食いこんでいた。
「……何か言ったかな?」
「いや、姉さんはウェディングドレスも似あうんだろうな、とですね」
「フンだ……私だってそういう夢は見るんだからな。
あーあ、ウチが寺じゃなきゃなー」
「そうか……姉さんやワン子の場合は
家が家だけに、婚礼衣装は文金高島田になるんだろうな」
「……大和、ブンキンタカシマダとは何だ?」
「ああ、クリスは知らないか……ほら、これ」
雑誌のページをめくって、文金高島田―日本伝統の花嫁姿を見せてやる。
「おお!これが日本の花嫁がかぶる『キンカクシ』というやつか!」
便器を頭にかぶってどうする。
「やれやれ……しかし、一度でいいからウェディングドレス着てみたいなー」
いや、一度着れば充分なのでは。中には二度三度と着る人もいるけど。
「あれ……モモ先輩、ここちょっと見て」
雑誌のページを繰っていた京が、その一角を指で示す。
「んー?……なになに……一般からのモデル募集?」
気になったので俺も覗き込んでみる。
「どれどれ……『様々なシチュエーションの花嫁姿を映像化するために
一般からのモデル大募集!』か……」
「いいなこれ!……オーディションとかどうなってるのかな?」
「えーと……郵送の書類で審査をして、月末に駅前の会場で面接審査だって。
姉さん、オーディション受けるつもりなの?」
「当然だな。夢がかなってギャラも貰えれば、二重に美味しい話だぞ。
……なんだ、微妙な顔して」
どうも「様々なシチュエーション」ってのが引っかかる。
普通の花嫁姿なら、普通にモデルさんを使えばいいわけで
それができないような「様々なシチュエーション」ってことなのではなかろうか。
「そうだ、どうせなら皆で行かないか?先取りしてウェディングドレスを着るチャンスだぞ」
「いいですね、私も是非!」
「お姉さまと花嫁姿のペアルックもいいかも!」
「父さまにはナイショにしておいたほうがいいかな?」
「じゃあ私も一応つき合いで」
まあ、この人たちなら何があっても大丈夫か。
気にはなるが、皆かなり乗り気だし、ここで水を差すこともないだろう。
あえて忠告はしないでおくことにした。
そして月末。書類審査は皆通ったということで
今日は朝からファミリー女子メンバーは揃って駅前の審査会場に行っている。
終わったら秘密基地に顔を出すということだったが
果たして、どうなっていることやら。
「……あ、大和。ただいま」
ドアをあけてひょこ、と京が顔を出す。
「おう、お帰り京……あれ、一人だけ?他の皆は?」
「何か疲れたから帰るって」
「へえ。あれだけ体力あっても、慣れないことすると疲れるものなんかね」
「そだね。撮影もしたからね」
「え、もう撮影?っていうか、本採用されたんだ?」
「うん。条件のせいか、私たちにすぐに決まっちゃったよ。
で、すぐに撮影。スケジュールがいっぱいいっぱいだったみたい」
「……どんな条件で選んだんだよ」
「特集記事用の写真が欲しかったらしい。
記事のテーマは『闘う花嫁さん』だって」
ああ。そりゃピッタリだわ。
テーマそのものが微妙な気もするが。
「画像サンプルも貰ってきたよ。見る?」
京がメモリーカードを基地のPCに差しこみ
スライドショー形式で画像を流していく。
「……あれ、普通の花嫁姿じゃん」
純白のウェディングドレスに身を包んだ
艶やかな花嫁姿の皆の映像が映し出されていく。
見慣れたメンツのはずなのに、どこかいつもと違う。
……表情か。
晴れやかで、誇らしげで、幸せそうで。
「……いいもんだな。で、これだけじゃないわけか」
「ん。そろそろ。最初はクリスかな」
「どれどれ……っ!?」
ウェディングドレス姿のクリスが……馬に乗ってる。
馬のほうも結構な速度で走ってるっぽい。
「乗馬のできる人、という条件で選ばれた。
テーマは『もう白馬の王子様は待たない』」
「なるほど、相手を探して積極的に動こうというテーマなわけだな。
……何か、ワン子が走ってる画像が出たんですけど?」
長いドレスの裾をたくし上げて、ハードルを飛び越えてる。何の罰ゲームだこれ。
「それは『乗り越えろ!結婚までの10の障害』とかいうテーマだった」
まあ……確かに乗り越えてはいるわな。
「この、まゆっちが刀で巻き藁を切ってる画像は何!?」
ウェディングドレスを着て日本刀を振りかざす花嫁ってシュールすぎるぞ……
「たしか『切り捨てろ!結婚に関する間違った常識』とか何とか」
「何なんだこの雑誌……あれ……姉さんタキシードじゃん!」
タキシ−ドを着た姉さんが、ドレス姿のワン子をお姫さまだっこしている。
あまり嬉しそうではない姉さんと対象的に
ワン子はウットリして抱かれている。変な方向に走らなければいいが。
「こちらのほうが似あうと判断されたらしい。モモ先輩すごく怒ってた」
「どんなテーマなんだよ……」
「同性婚がどうとか」
現実化しそうで怖いわ。
「てっきり、花嫁姿で大暴れ、とかいう画像だと思ったのに」
「それはそれで、別にあるよ」
あるのか。
「ほらこれ」
折り重なって倒れている男性数人を足で踏みつけ、腕まくりしている花嫁とか
どんなシチュエーションでありえるのだろうか。
姉さんの表情が、さっきのよりは生き生きとしているのが印象的だった。
「……あれ?お前の画像なくね?」
一通り画像を見終わったようなのだが、京の画像は普通のものも含めてなかった。
「私のはないよ。モデルには採用されたんだけど、辞退した。皆に付き添っただけ」
そういえば、京はそんなにはウェディングドレスを着たがってなかったが
別に辞退することもないだろうに。
「たとえ撮影のモデルでも、大和以外にウェディングドレスを着せられるわけにはいかない」
「……そうか」
「私はその時、隣にいるのが大和であれば、どんな服だってかまわないし」
今さらだが、ときどきこういうグッとくるセリフを京は言うんだよなぁ。
その都度、よろめいてしまう俺がいる。今のもかなり……
「全裸でもおk」
……持ちなおした。なんだよ花嫁が全裸で結婚式って。
それ何てエロゲ?って話だぞ。
「というか、何かいいよね、全裸結婚式。
誰もいない教会で、大和と私は生まれたままの姿で愛を誓うの」
「よくねーよ!しかも俺まで全裸になるのかよ!」
「そしてそのまま二人は……ハァハァ……」
「そんな結婚式、神様も俺も認めません!」
終わり。ヒロインたちの花嫁姿を妄想してもらえれば
ちなみに、自分は全裸結婚式を認めます
ベールに長手袋とガータストッキング、でもいいやね
まじおつ!
ひさびさのSS投下によだれを垂らしながら読んでしまった。
おつおつ
読みながら普通にニヤニヤしてしまったw
乙!
「全裸でもおk」でフイタ この変態さんめ!
だがそこがいい
おお、久々の投下ktkr
乙!
オチもちゃんとあっていいですなー
久しぶりの投下乙ー
小雪可愛い俺の嫁
119 :
名無しさん@初回限定:2010/01/28(木) 17:30:36 ID:57owQ0Sz0
乙したー
実際ヒロイン勢の花嫁衣装はみてみたいなw
小雪のおっぱいに吸い付きたい
小雪は締まり良さそう
足鍛えてるって素晴らしい
投下乙!久しぶりの投下だし面白かった
あとこの自動保守装置の登録語彙はなんとかなんないのか
百代バカップルもの投下
124 :
鬼は外!:2010/02/02(火) 20:29:03 ID:8JK496e70
「んー……大和ー、どうかなー」
「おおう。思った通り、よく似あうよ姉さん」
明日は2月3日、節分である。厄避けのご利益で名高い川神院も
この日はいつにも増して参拝客が増える。
例年であれば、姉さんもその準備に狩りだされているところなのだが
今年はちょっと事情が違った。
豆撒きのイベントは、何も川神院だけのものではない。
地元駅前商店街でも豆撒きを行っていて
今年はそのイベントの手伝いというバイトが、キャップ経由でまわってきたのだ。
ジイさんも商店街の頼みなら、ということで許可したらしい。
「肌着はいらないの?その格好じゃ寒くない?」
で、どんなバイトかというと
「ああ、大丈夫だ。それに、肌の露出が多いほうがいいだろ?」
鬼娘のコスプレだったりするのである。
ただいま、秘密基地にて衣装あわせ中。
虎皮模様のホットパンツにタンクトップ、頭には角をつけた姉さんが
ノリノリで俺の前でポーズをとったりしている。
「何か決めゼリフも欲しいな……『エロい子はいねがー?』とか、どうだ?」
「エロい子は姉さんです。というか、それはナマハゲです」
イロイロ、間違っていた。
125 :
鬼は外!・2:2010/02/02(火) 20:32:04 ID:8JK496e70
「ちぇ、決めゼリフはダメか……何か足りない気が……あ!
大和、ちょっと待ってろ!」
何か思いついたらしい。
風のように部屋を飛びだしていったかと思うと
「ただいまー!鬼といったら、コレだろう!」
ドスン!
秘密基地のタイル張りの床に
重たげな音を立てて突きたてられる
身の丈ほどの長さの黒光りする金属塊。
「これぞまさしく、鬼に金棒!」
「質問。それは、どこから?」
「ん?寺の武器庫からだぞ?」
それはつまり、本物だということなわけで。
先端の部分に突起が並んでいるあたり、いかにも実戦的だが
豆撒きのイベントは実戦ではない。
「これで、飛んでくる豆をビシビシと打ち返すわけだ」
「却下!姉さんが打ち返したら豆つぶでも銃弾と同じでしょうが!
そんなアブナイもの返してきなさい!」
「……なんだよ、せっかく人が盛り上げようと苦心してるのに文句ばっかり言って。
こうなったら……大和の『金棒』をよこせー!」
126 :
鬼は外!・3:2010/02/02(火) 20:45:36 ID:8JK496e70
「うわ、ちょ!?」
どうして「こうなったら」でそういう行動になるのかわからないが
ぴょん、と飛びついてきた姉さんが、あっというまにズボンのジッパーを下ろす。
「さー大和、覚悟し……まだ『金棒』になってないな」
「いやそんなイキナリには」
しかし、このまま易々と鬼娘に「金棒」を奪われるわけにはいかない。
俺の前にかがみこんでいる姉さんの胸元に手を伸ばし
虎皮模様のタンクトップの隙間に手を差しこむ。
「む、こんなところに豆が?
フッフッフ、鬼の弱点は『豆』だったよね?」
「あん……や、大和ズルイ……
あ、『金棒』になってきた。あむ……ちゅ……」
しまった、ついコーフンしてしまって、鬼に武器を奪われることに!
そのまま押し倒される形でソファに横たえられる俺。
このままでは体勢的に不利だ。
「姉さん……俺の顔、またいで」
姉さんが俺に言われるままに、顔の上にその豊かなヒップを乗せてくる。
そのホットパンツをずり下ろし、舌で「豆」を探りあてる。
「豆撒きでは、年の数だけ豆を食べると言う……」
「ん、む……いいから、早く……退治して……」
127 :
鬼は外!・4:2010/02/02(火) 20:52:47 ID:8JK496e70
「……鬼退治、完了」
結局、俺の年の数をちょっと越えたあたりで終了した。
「さすがに疲れた……俺達、設定は18歳いじょ……はっ!?」
「ん……どうした……?……ああ!?」
身につけたままの鬼娘のコスチュームが、二人の体液でエライことになっていた。
……今日、危険日だってんで、全部ぶっかけたのがマズかったか。
「脱いで!早く脱いで!」
「ん、続きか?私の年の数の分もするのか?」
「洗うんだよ!」
何とか洗い落とそうとしたのだが、けっこう匂いがしつこく残り
結局、翌日に商店街事務所に連絡して、替えの衣装を用意してもらった。
「やれやれ……で、姉さん、あの汚しちゃったほうの衣装はどうしたの?」
「ああ、せっかくだから、貰っちゃった。
ほら、コレ。節分だけに、『服はウチ』ってな」
結局せしめるあたり、ヒドイ鬼だ。
まあ可愛いから追い出しはしないが。
「さあ夜の豆撒き、第2ラウンドだ!今度は私の年の数の分も合わせて、だな!」
「やっぱり帰れー!鬼は外ー!」
おしまい
恵方巻きネタとどっちにしようか、ちょっと悩んだ
乙!
「洗うんだよ!」でワロタ まさにバカップルw
乙
ニヤニヤしっぱなしだぜ!
乙
姉さんがすっかりオバカキャラにw
だがそれがいい
乙
すっかりオバカキャラっていうか、姉さんってもともとオバカky(ry
乙!
年賀イラスト見ながら妄想しちまったぜ
乙
こんな鬼なら大歓迎ですw
作品別スレでたびたび話題になるまゆっちネタ投下
136 :
週7・1:2010/02/05(金) 22:53:09 ID:idyTGliD0
「はあ……」
暗がりの中、ため息をつきながら己の指先を見る。
指に絡みつく粘っこい液体が、僅かな光にきらめきながら糸を引く。
(また……してしまいました……)
友達のいない寂しさに加え、家族とも離れて暮らし始めたことで
精神的に不安定になっているのか、このところはほぼ毎日になっている。
(ダメですね……もっと精神を鍛えなければ)
そう考えながら、いつしかまた、指先が体をさまよい始める。
(なんだか……別のものが鍛えられてるような……)
夢とも現ともつかないまどろみの中
思い浮かべるのはある人のこと。
その面影を胸に、ゆっくりと高まっていった――
翌朝。
(ううう、結局3回とはっ!このままでは本当に、間違った方向に鍛えられてしまいますっ!)
朝食の席でもなかなか昨夜のことが頭を離れない。
「クリス、何だか疲れてるね」
「ああ、ちょっと犬につきあったからな」
だから、周囲の会話も耳に入っていなかった。
137 :
週7・2:2010/02/05(金) 22:57:10 ID:idyTGliD0
源忠勝は朝早くのバイトに出かけ
直江大和も知人との約束で先に出ている。
風間翔一にいたっては、どこに出かけたのか昨日からいない。
今日の島津量は女子3人の朝食である。
「朝のランニング、犬につきあったら、とんでもないところまで走らされたんだ……」
「ワン子につきあうと大変だよ。あれは鍛錬が趣味みたいなものなんだから」
「わかってはいるが、ついな。しかし、鍛えるのはいいことだ。
……そういえば、一つ気になっているのだが……まゆっち?」
呼ばれているのだが、うわの空で箸をつついていて気づかない。
「……まゆっち?おーい?」
「え……あ、はい、スイマセン。何でしょう?」
「まゆっちは、いつ鍛えているんだ?」
「へ…ふえええええええええええ!?わ、私はそんな鍛えてなどはっ!?」
「いやいや、まゆっちはそうとう鍛えているだろう。だが、そういう光景を見たことがない」
「ひっ、人様にお見せするようなものではっ!」
「いったい、いつ鍛えているんだ?」
「実はこっそり、夜中に一人で鍛えてるとかじゃないかな」
「何故それをををっ!?」
138 :
週7・3:2010/02/05(金) 23:00:12 ID:idyTGliD0
「終わった……終わったぜ、まゆっち……オラもうかける言葉が見つかんねえ」
松風もフォローしきれないほどにガクーンと肩を落とす。
「まゆっち、鍛えるのは当たり前。隠すことない」
「そ……そうなんです……か?」
「無論だ。ワン子は言うに及ばず、私も京も毎日だぞ?」
「え……そうだったんですかっ!?」
「ああ、普段鍛えておかねば、いざというときに困るからな」
「いざというとき……(ゴクリ)」
「そうそう。それに、あのモモ先輩でさえ、毎日ちゃんとしている」
「あ、モモ先輩はなんとなくわかります」
「で、まゆっちはどうなんだ?やっぱり夜にしてるのか?」
「え、ええ……まあ、寝る前に、ちょっと」
「そうか……一度、見せてもらいたいものだな」
「い、いえいえいえいえいえいえっ!お見せするのはご勘弁をっ!」
「照れることないだろ。そうだ、どうせなら、一緒に や ら な い か ?」
「無〜理〜で〜す〜っっ!!」「都会ってやっぱパネェー!!」
139 :
週7・おまけ:2010/02/05(金) 23:05:35 ID:idyTGliD0
その夜、クリスの部屋
「……確かに一緒にやろうと言ったが……何故パジャマなんだ?」
「へっ?」
「なんで枕持ってるの」
「え?つ、使いません?」
「枕をどうするんだ……得物はどうした?使わないのか?」
「えええええええ得物ですかぁっ!?」「やっぱハードル高えー!!」
乙!
>「あ、モモ先輩はなんとなくわかります」
何気にヒドイこと言ってるなまゆっちw
面白かったw
て、終わりかよwwww
もっとうっふんあっはんな展開になるかとおもたw
とにかくおつ!
賑わってきてうれしいぜ
乙!
オナっちかわいいよオナっち
こ こんな寸止め…!
俺は 俺はどうすれば…っ
なにはともあれ乙 面白かったよw
ここが賑わうの嬉しいね
やっと規制が解けたね小雪可愛いよ小雪
今日もたくさんイかせるよ小雪
海おねえちゃんと京を足して2で割ったような姉が欲しい。
小雪今日も可愛いね
マシュマロありがとね小雪
百代ルートバレンタインもの投下
『ハーイエヴリバディ、今から自分でチョコレートを買っておいて
誰かに貰ったことにしようなんて考えてる、サビシイ男はいないかな?
校内ラジオ、LOVE川神が、始まるよー!』
今日は水曜日。昼休みになればいつもの校内放送が教室に流れ出す。
ガクトが何だかビクッとしていたが、見なかったことにしておいてやろう。
『パーソナリティは、小さな女の子からのチョコレートしか受けつけない
2年の井上準と』
『後は野となれ山となれ!3年の川神百代だ』
『いやー、そろそろバレンタインですね』
『お前、なんかヨユーだな』
『いやぁ、義理はけっこう貰えるんですけどねー。
そういう先輩も、女子からけっこう貰ってるそうで』
『そのことだが、この場を借りてちょっと言っておきたいことがある』
……なんだかイヤな予感がするなぁ。
教室、出ておいたほうがいいかなぁ。
『皆もすでに知ってはいると思うが、私は現在、2年の直江大和と交際中だ。
今までのようにチョコレートを貰うのは、相手に対して失礼だと思う』
『ふむふむ』
『そこで、今年のバレンタインはチョコレートは受け取らないことにした。
そのことを、あらかじめ言っておく』
……ザワッ
一拍おいて、微妙に教室内の空気が変わる。
「やるなぁ、大和。あのモモ先輩をシツケてるのかー?」
「今までのモモ先輩だったら、くれるモンは貰っとく、みたいな感じだったのにね」
「えー、じゃあ今年はお姉さまのおすそ分けはなしー?」
「犬は食べ物の心配しかしないのか……」
「キャップに貰えばいい」
「ヤダよ、俺は自分の分全部食うもんねー!」
ファミリーのメンバーは、いつもとさして変わらない反応なのだが
気のせいか、他のクラスメートの視線が微妙に刺さってくる。
すでに校内で俺と姉さんの関係を知らない者はほとんどいないが
改めてこうして発表されたりしたことで、何事か騒動が起きそうな。
「さて、ちょっとよそのクラスの知りあいに本を借りてこよう」
モチロン、嘘だ。そそくさと教室を出て
向かう先は放送室。
放送が終わって、部屋を出てくる姉さんを待つのだが……
すでに、先客がいた。それも10人以上。
「あっ、来たわよ!」「よくもまあノコノコと!」
姉さんの、取り巻き連中だった。
おそらく、姉さんのチョコレート受け取り拒否宣言に抗議しにきたのだろう。
今さらだが、こういう事態は想定しておくべきだった……
「ちょっとアナタ、顔貸しなさいよ」
その中の3年らしき女生徒が俺をご指名。
「いや、俺は姉さ……川神センパイを待ってるんで」
「いいから来る!」
女子の集団に取り囲まれた。このまま俺をどこかへ拉致しそうな勢いである。
「屋上でいいよね?」「うん、そうしよ」
マジで拉致だった。相手が女子じゃあまり手荒に逆らうこともできない。
ワン子を笛で呼びだそうかと思ったとき
「何をやっているで候」
弓道部の前部長、矢場弓子先輩がその場に現れた。
確か姉さんとは友人として親しいはず。
こうなったら恥も外聞もない。助けてくれそうなら何にでもすがるぞ。
「すいません、この人たちに言いがかりつけられちゃって!」
「やれやれで候……
皆、そのような真似をしても、今さら川神の心は戻らぬで候。
ここは二人を祝福するのが、いい女というもので候」
そういうと、女生徒の集団をギン、と睨みつけた。
矢場先輩の一睨みで、女生徒の集団はすごすごと引き下がっていった。
「君もちょっと情けないで候。もっと毅然としているべきで候」
「いや、相手が女の子だからあまりキツク出るのもどうかと」
「優しさも場合によりけりで候……
もっとも、その優しさが、川神を変えているので候」
そうかな。まあ確かに、丸くなった感じはする。戦闘衝動も弱まったし。
と、放送室のドアが開く。
「お、大和。出迎えご苦労……と、ユミ?」
「川神百代。貸した金の返済期日で候」
「げ!……じゃ大和、後ヨロシク!」
「あ、ちょ!待つで候!」
が、姉さんは止めるまもなく風のように廊下を逃げていった。
「……訂正するで候。アレは、まるで変わっておらぬで候。
弟分として彼氏として、どう始末をつけるのか知りたく候」
「そうですね。ここは優しさは捨てて、説教してきます」
「ふむ……君がついていれば、大丈夫と思われるで候……頑張るで候」
微笑みを浮かべた矢場先輩を背に、姉さんを追いかける。
効果があるかどうかわからない、説教をするために。
おしまい
この年のバレンタインでは
百代に渡らなかった分、矢場弓子に
女生徒からのチョコレートが集まることになるとは
大和も百代も、そして当の弓子も
このときは想像だにしていなかったという。
「……普通の恋愛がしたいで候」
「その喋り方やめれば男できると思うぞー」
「お主は早く借金返すで候!」
154 :
名無しさん@初回限定:2010/02/14(日) 23:03:05 ID:Yd+kLPDZO
久しぶりの投下
乙です
乙で候!
乙です!!
他ルートのバレンタインも見たいで候
S組とか……
姉しよ・・・
乙
語尾に候は改めて見ると相当濃いな…w
ゆーみん可愛いよ……Sでは出番増希望
160 :
名無しさん@初回限定:2010/02/17(水) 17:00:24 ID:/7xEjbNHO
あみねぇが1番
ドラマCDの新キャストという文字に一瞬焦ったぜ・・・
うん、まあ新キャストだな
保守したいよ
過疎っている悲しい
流石に公式から燃料投下されないとネタがね
ふむ
166 :
名無しさん@初回限定:2010/03/07(日) 19:15:45 ID:dU5bQ4MMO
スレ1みれなくね?
宣伝上げ
>>49 現代社会より活き活きしてそうだな〜特に百代とキャップ辺り。
妄想スレも過疎ってるし、統合して妄想語りや雑談した方がいいかも。
書き手もネタが浮かんで、何か書いてくれるかもしれないし。
169 :
名無しさん@初回限定:2010/03/16(火) 22:05:18 ID:7glfmLSgO
つまり京は大和の嫁という事だね。
百代の幽霊嫌いもだが、キャップの特撮好きも本編で使われなくて残念だった。
まじこいの年代が2009年で、侍戦隊シンケンジャーと実にタイムリーだったのに。
ゴセイジャーでクマちゃんとスグルが敵ボスと幹部役だけど、本スレじゃ余り話題にならんな…。
タカヒロ作品総合雑談スレ?
>>172 ここはタカヒロ作品SSAAスレだから、タカヒロ作品の雑談や妄想語りもした方がいいと思う。
このスレも、まじこい妄想すれも過疎ってるし…。
雑談や妄想が書き手のネタになったり、新たな書き手が誕生するきっかけになると思う。
辰姉に飼育されたい
雑談ていっても工作スレで事足りるしなー
てこれも雑談か
そそ、ここではまじこいスレとかの事ね
初めて知ったわ……いままでエ作スレって聞いたら、アンチがネガキャンでもやってるスレなのかとばかり……
クリスで一本投下
夕食後。なんとなくTVを見ていたら
クリスがリモコンを手にそわそわしていた。
「大和、チャンネル変えてもいいだろうか?」
「んー?ああ、別に見てないからいいぞ」
はて、何か見たいものでもあるのだろうか。
お茶でもいれるか、と立ちあがって
振りかえってみれば、食い入るようにTVの画面を見ては
ため息をついたりしている。
「なんだ、見たい番組が放送が延期にでもなってたか?」
「いや、そうではないのだが」
そのわりにはなんだか残念そうだ。
「何見てたんだ?」
ひょい、とTVの画面を見れば、ニュースが終わるところだった。
「何かガッカリするようなニュースでもあったのか?」
「ん……まあ、な。だが、こればかりはしょうのないことだ。諦めよう」
「なんだよ、ハッキリ言えよ。少しは力になるぞ?
その……もうすぐ、お別れなんだからさ」
「ああ、そうだな……でも、いいんだ。
気遣ってくれてありがとうな、大和」
クリスは1年の留学期間を終え、この3月の末にはドイツに帰国する。
何かと振りまわされたが、いなくなるとなると寂しいものだ。
「……帰国、28日だっけ?」
「ああ。金曜集会も、次が最後になるな……
ちゃんと、皆集まれるのだろうか?」
クリスが心配そうな顔になる。無理もない。
今、風間ファミリーはほとんどのメンバーが
実家に帰ったり山ごもりしてたり旅行していたりで
川神にいるのは俺とクリスだけなのだ。
「まあ、金曜までには戻るだろ。心配すんな」
「そうだな……私は、部屋に戻る。チャンネル、返すぞ」
そういうと一人、肩を落として二階に戻っていく。
うーん、見るからに落胆してるなぁ。
そういえば何日か前、実家に帰る前の京が、こんなことを言っていた。
『クリス、最近元気がないね……
一緒に歩いててもね、ときどき空を見上げては、ため息ついたりするんだよ』
さっきはTVのニュースを見てガッカリしていた。
なんだろう、飛行機で帰るから、当日の天気が心配なのだろうか。
……いや、天気じゃない。
アイツがガッカリしてた理由は、だいたいわかった。
しょうがない、何とかしてやるか。
部屋に戻ってインターネットで調べてみよう。
まったく、最後まで世話の焼けるお嬢様だ……
翌朝。
「おはよう大和。今朝は早いのだな」
朝食前のランニングから戻ってきたクリスに、挨拶がてら声をかける。
「よう、クリス、おはよう。あー……今日、ヒマか?」
「ん?特に予定はないが……何故だ?」
「いや、いいとこ連れてってやろうかと思って」
……何だか、デートに誘ってるみたいだな。
う、イカン、変に意識しちまったら照れ臭くなってきた。
だが、それは相手のクリスも同じようで、ちょっと顔を明らめている。
「なんだ、その、いいところって……い、いなり寿司食べ放題とかか?」
照れ隠しなのか、無理におどけたりしている。
「いや、いなりはないんだが……見せたいものがあるんだ」
「そうか……その……二人で、行くのか?」
「まあ、他の皆は川神にいないし、そうなるな。」
「まあ、せっかくのお誘いだ、受けてもいいが、別に、デートではないからな!?」
「はいはい……ホント、最後まで変わらねえな……」
朝食が終わると、さっそく出かけることに。
電車に乗って一時間ほどで目的の駅についた。
「ここは、多馬川の上流のほうだな」
「ああ、俺も来るのは初めてなんだけどな」
「なんだ、案内役も初めてでは不安だな。で、これからどうする?」
「ここからは歩きだ。えーと……こっちだな」
ポケット地図を片手に、昨晩調べておいた道を進んでいく。
次の角を曲がれば、見えてくるはずだ。
「よし、クリス、ここからは目をつぶるんだ」
「はあ!?目をつぶってどうするんだ!?」
「徐々に見えてくるより、目を開けたとたんに見えるほうが感動できるだろ?
せっかくの忠告なんだから、目ぇつぶっとけ」
俺がそう言うと、仕方なさそうに目をつぶるが、すぐに不満をこぼす。
「待て、これでは前に進めないぞ……」
「それもそうだな。まあ、気合で何とかしろ」
「無茶言うな!……だが、その、手を握ってくれれば、ついていく……ぞ?」
恥ずかしい展開だが、やむをえない。
そっとクリスの手を取ると、ギュッと力強く握り返された。
そのままクリスの手をひいて、目的の場所にたどりつく。
目指すものはすぐに見つかった。
これは……俺も見るのは初めてだが
連れてきてやってよかったと心底思える。
ちらほらと他にも人の姿があるが、混雑というわけではないのもいい。
「なあ、もう目を開けてもいいか?」
意外に素直に俺の言うことをきいて
クリスは目を閉じたままだったのだが、さすがにじれてきたらしい。
「もうちょっと待て。今ベストポジション探してるから」
後に建物が見えるほうがいいな。
するとこの場所で……こう、あちらを向いて……
考えた場所にクリスを立たせ、各度を調整してやって準備完了。
「よーし、いいぞクリス。やや上の方を向いて目を開けるんだ」
「む……こうか?」
目を開けたクリスが息を飲む。
驚きに目を見開き、やがてその顔が歓喜の色を浮かべだす。
「大和……これ……」
「これが見たかったんだろ?」
「そう、そうなんだ!でも、間に合わないと思ってたのに……」
「それで一人で悩んでたんだな。いつも言ってるだろ?困ったら頼れって」
俺たちの目の前に広がる、薄桃色の柔らかなさざめき。
そよ風を受け、わずかに花びらを落とす桜は、今がまさに満開だった。
「ニュースの天気予報でやってる桜の開花情報ってのはな
一番数の多いソメイヨシノの情報なんだよ。
でもな、桜にも品種があって、早咲きだったり遅咲きだったりいろいろなのさ」
そう、ニュースを見てガッカリしていたわけではなかったのだ。
桜の開花情報を見て、帰国までに桜は間に合わないと
そう思ってガッカリしていたのだ。
京が言っていた「空を見上げてため息」というのも
空ではなく、ところどころに生えている桜の木を見上げては
まだ花は咲かないか、と落胆していたのだろう。
「ここの桜は小彼岸桜って品種でな、ソメイヨシノよりちょっと咲くのが早いんだ。
ま、俺も昨日調べてみるまでは、全然知らなかったんだけど」
「そうだったのか……見事だ……本当に、見事だ……」
そう言うと、クリスがこちらにクルッと振りかえる。
「ありがとう、大和。私は、生涯忘れない。今日のこの景色と……お前のことを」
「ああ、そう、よかったな」
振り向いたクリスの目が潤んでいるのに気づいて
またなんとなく照れ臭くなって、つい、ぶっきらぼうに答えてしまう。
もう少し、互いに踏みこんでいたら、もっと違う結末もあったのだろうか。
不器用だった二人の、別れの宴を彩るように
桜の花びらがひらひらと風に舞っていた。
おしまい。
クリスがンデ期のまま帰国してしまうと、こんな感じかな、というところで。
「ところで、この桜はドイツに持って帰れないか?」
「できねーよ!」
「困ったら頼れと言ったではないか!」
「限度があるだろ!」
>>182-188 GJ!!
リュウゼツランルートでこういう話ありそうな感じがした。
クリスが見たい物が桜だとは思ってなかったけど…時代劇っぽい風景や建物だとばかり。
GJ
ファミリー全員の花見って話も見てみたいね
GJ
久しぶりの投下に喜びを隠し切れない
GJ!
久しぶりにニヤニヤしてしまったわ
オチも含めて良作でございました、ごちそうさまです
クリはかぁいいなぁ
>>190 源さんも入れて欲しい。
まゆっちと源さんが作った弁当で花見なんて最高だろうな〜。
やっと規制解除された〜。
4月は三国志もののアニメが4本も…。
まじこいだと声ネタ的には恋姫なんだろうけど、キャップやクリスは三国伝好きになりそうだ。
197 :
名無しさん@初回限定:2010/04/23(金) 23:20:01 ID:zTwtQJZ00
あげ
クッキーで一本投下
ちょっと重め?
帰り道、秘密基地に寄ってみると
部屋の前の廊下でワン子がウロウロしていた。
「何やってんだ?中に何かあるのか?」
「あ、大和……別に何もないけど
中にクッキーしかいないみたいで」
「別にいいだろ、誰もいなくたって。というか、クッキーいるんならいいじゃん」
「や、そうなんだけど……クッキーしかいないのが、ちょっと……」
「はあ?なんだ、クッキーと喧嘩でもしたのか?」
「うーん……ねえ、大和?」
「何だよ」
「クッキーも、生きてるのかしら?」
「は?いやアレはロボだから。機械だから。生き物じゃないから」
「でも、私たちみたいに、感じて、考えてるわよね?
だったら、体は機械でも、生きてる命って言えるのかなぁ、って」
何でまた急にそんな哲学的な疑問を持ちだしやがったのか。
「まあ、生きてるのかとか命なのかは難しいところだが
それがお前が部屋に入らないのと、どういう関係があるんだよ?」
「もしクッキーも生きてるんだとしたら……サイコクッキーも、生きていたのかしら」
ああ……最近ちょっと悩んでいると思ったら、そういうわけか。
KOSで、蘇我議員チームと激闘を繰り広げたワン子は
京とのコンビネーションで敵のサイコクッキーの一体を破壊したという。
「そんなコト考えてたら、なんだか、クッキーのことちゃんと見れなくて……」
確かに、アレが人間だったら……
そして、それとそっくりな、いや、兄弟ともいえる人が間近にいたら
落ち着かないのも無理はない。
だが、あれはあくまでロボット。
兵器として大量に生産されていたかもしれない、そんな物騒なモノだ。
壊したところで、罪悪感を感じる必要はない。
……と俺は思うのだが、どうなんだろうか。
「ねえ大和、私、一つの命をころし……」
「!いやいやいやいや!待て!ちょっと待て!」
俺が考え込んでいる間に
涙目になりかけたワン子が、結論を出そうとしていた。あわてて止める。
「さっきも言ったけど、アレもロボットだったんだから
フツーの意味で『生きてる』わけじゃないだろ!?」
「でも、自慢そうだったり、悪態をついたり、キレてムキーッってなったりして
ああいうところ、クッキーと同じだったし……少なくとも、心は持っていたと思うの」
「一子は優しいなぁ」
「優しいとかそういうんじゃ……って、クッキー!?」
いつの間にか、部屋からクッキーが出てきていた。
「そんなに驚くことないじゃないか。
部屋の前の廊下でワイワイ騒いでたら、聞こえるに決まってるよ」
そりゃそうだ。
「ボクが『生きてる』のかどうか、かぁ。難しい問題だねぇ。
こうして考えていることだって、『心』があるのか、ただのプログラムなのか
自分でもハッキリとはわからないよ」
「そ、そうなの……?」
「でもね、ハッキリしていることもあるよ」
「何が?」
「一子は、サイコクッキーを殺してはいない、ってことさ」
「え……でも、真っ二つにしちゃって、その後爆発しちゃったし……」
「ボディはね。
大和は覚えてるかな、あの後再起動したボクが
バラバラになったサイコクッキーの破片を拾ってたの」
「そういえば、そんなことしてたな」
「あの破片の中に、サイコクッキーのメモリーチップがあったんだ。
試しにボクの回路につないでみたら、まだ機能していたからね。
ボディに組み込みさえすれば、元に戻せるんだよ」
「そうだったんだ……じゃあ、生き返ることもできるのね!」
ワン子の心も晴れたらしい。
元の明るい笑顔が戻ってきた。
「じゃあ、チップを九鬼にでも渡せば、いちおうは復活するわけだ」
「だったら、そうしてあげてよ、クッキー。
きっとあの子だって反省してると思うし」
反省とかしてればいいんだが、そういうタイプじゃないような。
自分で言い出しておいて何だが、、あの三原則も何もないロボットを
そのまま復活させるのは、ちょっと危険だ。
「製造元様に、今の状態でチップを渡しても
ただ記憶を書き換えられてしまうだけだと思うんだ。
だから、今はボクの回路につないであるんだよ」
「え……?」
「モチロン、ボディのコントロールはさせないけどね。
ボクの回路につないで、同じ経験をさせて、ときどき対話をして
自分から変われるようにしてやってるんだ」
なるほど、再教育ってわけだ。
でも待てよ、ボディをコントロールさせないとしても、対話してるとなると……
「じゃあ……クッキーの中で、心は生きてる、ってことね!」
「そういうことになるね。だから、安心していいんだよ一子。
キミは誰も殺したりしていないんだ」
ワン子は心の重荷がとれたのか
その後はすっかり元通りになって
「じゃあ、トレーニングに行ってくるわね!」
いつものように走っていき、俺とクッキーだけが残される。
「なあ、クッキー。
サイコクッキーのチップと、内部で対話してるってヤバくないか?」
「言いたいことはわかるよ。
ボクの方が、アイツに影響を受けて、変わってしまうかもしれない。
いい機会だから、今頼んでおくけど、もしそうなってしまったら……」
「そうなったら?」
「ボクのことは、破壊してほしい。百代あたりに頼めば、簡単なんじゃないかな?」
「……そうなったら、な」
たぶん、そうはならない。いや、させない。
俺たちと一緒にいる経験が、今のクッキーを作っているのなら
変わるのはサイコクッキーのほうに決まってる。
「じゃ、部屋の片づけをするからね。大和はジャマだから外に出てて」
「いやジャマとか言うなよ。そもそも、ここの主は……」
「あー、もう、人間なんてたいして役に立たないくせに文句ばっかり!」
……ホントに変わってないんだろうな?
おしまい。
そのうち、松風みたいに中からサイコクッキーが喋りだすかも
乙
確かにちょっと重いがたまにはいいやね
ワン子がらしくてよかった
乙乙
この手のはあんまり深入りすると怖い話になるから難しいな
タダでさえ人格3つあるしw
対話は3対1でしてるってことになるンかいな
このスレ、「姉、ちゃんとしようよっ!」「姉、ちゃんとしようよっ!2」「つよきす」「君が主で執事が俺で」もOKなんだったな。
では姉しよで柴田亜美先生パロネタを。
海「雛乃姉さんに言ってやる!!」
要芽「な、何を馬鹿な事を…姉さんなんていないじゃない」
海「これから会いに行くんでしょ」
要芽「…………」
回想シーン突入。
雛乃「かなめ、またくうやとともえを苛めておるのか!
全く、お前には姉としての自覚が欠けておるのぅ……この愚か者がっ!!」
要芽「……御免なさいっ、姉さんっっっ!!!」
海「勝った♪」
帆波「流石末っ子ね〜、海ちゃん…ちゃっかりしてるわ〜」
208 :
名無しさん@初回限定:2010/05/19(水) 02:59:25 ID:FMLcXAnW0
age
_. . . . . . . . . _. .
.:.:.:.:´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:`.:.:.:、
.:.:.:´.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:丶
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〃.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.
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lli: |: : l: : :.l =|┼|:l|:.:.:.| : i :/l :| `_|:.:.|i.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:
|i|: |: : |: : :.|:.:.i:.|:.liハ:_:_l_:_ノ/ /ノ儿从:|l.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l
|l|: |: : |: : :.l ;イ元ミ、 クイ::::::::::リj.:.:.:l.:.:.:.:.:.:.:.}}
|l{ :|: : |: : 〈l{ い:::::} ヽ廴_ソ/:.:.:/.:.:.:.:.:.:.〃
liハ:l: : l:.:.:.∧ `ー´ , 7:.:/: ://:.:.:/
liハ\ヘ / ;ハ ` ゞ/: ://:.:/
\ヘ \ハ ___ /: ://〃
ヾ、\ `ー´ /: :///
込> イ |//l :/
ヽ:.:.:`><´. .|//lノ
┌───‐:| i》、─────┐
└──//ノ 〉心zxー‐‐──┘
まゆっち
可愛いじゃない
あらかわいい
まゆっちはかわいい
書き出してみるとキャラ同士の呼び名で結構詰まる
どっかに一覧表とかないものか
暗記するくらいやり込めよ
ノヽ
{ | , -‐ 二 ー-、 _
__l_ノ, ´ ` 、
夂ノ 丶
/ ` ノ〃
/ .、 / /
,′ ∨_/
,′ / \ }ヽ
l ヽ〃 |∧ヘ
l l l| | ハ l l|l|∧廴
___|l l| l| l ハ |l | 〃 |
/ l l l| 人|__l_l/ l 、 | |l | / _l|
/ | l 以比川从 l| | `ー-ハ ハ |l / l|
`ヾ :} 人 ヘ杙:::::._、 リ 从ノ__从从ノ ノ ノ/l ||
`ヽハ ハ l弋込::ソノ イ::::::::勹 〉 / l|
| ヘ.乂 弋込:ノノ /l xz彡,イ }
,. ┴l 込 ヽ ! / /〃/三三イ三}
/ : lヘi ヘ\ /从ノ入二ニ}- 、ニl
,′ ノノ ノ ` 、 (__ぅ / ,仁/ 入ニ入ソ ヘ
. l / \ `::.、 . < ,仁〃ニニヽ l
ハ \ ` ,仁〃ニ二ノ l
/ / 、 ヽ ___ イ二ニニ{ ,
/ / ハ 丶 / ,仁ノ ̄ ,′
/ / ハ ヽ ,仁仁{. /
. / / ノ . ゛ ,仁ニソ /
/ノ ∧ ゙i ヘi ,仁{ハ /
クリス……のつもり 難しかった
エロ吉
>>213 総当りの表を作って要る分だけ書き出すか、嫌なら登場人物減らせば楽になる
保守
人おらんなあ
Sが出るまでずっとこんな感じかな
保守
誰かまじこい系AA作ってyp
223 :
名無しさん@初回限定:2010/09/20(月) 10:25:11 ID:aT2doFw80
作ってyp(w
俺はいつでも待ってるんだぜ
突然投下
226 :
愛の螺旋・1:2010/12/12(日) 23:58:01 ID:en/3UlcD0
「ん……そっち持とうか、クリス?」
「そうか?すまないな京、買い物つきあってもらってるのに、荷物まで持たせて」
日曜日の七浜中華街。
観光客や買い物客でごった返す昼下がり
その人ごみをすり抜けるようにして、クリスと京が荷物を抱え歩いていく。
「かまわない。私も、ラー油買いたかったし」
「味見でラッパ飲みはどうかと思うが……ん?あれは……何だ?」
足を止めたクリスの視線を京が目でたどると
漢字を書き連ねたノボリが一つ、ゆらゆらと風に揺れていた。
「ああ、あのノボリ?陰陽五行・四柱推命、だね」
「シチュウスイメイ?」
「ひらたく言えば、占いだよ」
「へえ、占いかぁ……面白そうだな、ちょっと寄ってみないか?」
「あんまり興味ないけど」
「恋愛運とかも、占えるのだろう?どうすれば大和の心を射止められるか、占ってもらってはど……」
「行ってくる!」
言い終わる前に、京は脱兎のごとく走り出していた。
「うわ、速い!?ちょ、待ってく……ああ、タマゴ落としたー!?」
227 :
愛の螺旋・2:2010/12/13(月) 00:01:05 ID:en/3UlcD0
看板とノボリが立っている横に
ほのかに香の匂いを漂わせて、中年の女性が机を前に座っている。
「お願いします!」
猛スピードで駆け込むなり、ダン!と京がその前の椅子に座る。
やがて、ブツブツ言いながらクリスも追いつき、その後ろに立つ。
「いらっしゃい。お嬢さん、何を見たい……ああ、恋愛運、だね?」
「当然!」「おお、わかりますか、さすがだ」
「いや、何ていうか……こんなに滲み出てる人は珍しいぐらいだからねぇ」
「このままでは、押さえきれぬ愛で切っちゃいそうで。どうすればいいのかな?」
「まずは、人相と手相から見ていこうかね……」
手相を見ながらいくつかの質問をしたあと、占い師が大きくため息をつく。
「何か……大きな渦にアンタが捕らわれている、そんな光景が見えるね」
「渦?」
「そう。愛のスパイラルにはまり込んでるね。
この恋を成就させるには『愛する人の好きなものを考える』こと。
そうすれば、アンタの愛する人も、その渦に飛び込んできてくれるよ」
「愛のスパイラル……渦……」「何だか、よくわからないな」
「占いとは、そういうものさ。この占いを、生かすも無駄にするも、アンタ次第だよ」
228 :
愛の螺旋・3:2010/12/13(月) 00:04:11 ID:en/3UlcD0
「あれ?帰ってたのか、クリス」
お茶でも飲もうと部屋を出たところで、ばったりとクリスに出くわした。
「ああ、大和か、ただいま。ついさっき戻ったところだ」
「七浜で買い物だろ?京が一緒じゃなかったのか?」
「一緒だったんだが……買い物の途中から、何か考え事ができたらしくて
帰ってくるなり部屋にこもってしまった」
珍しいな。出かけて帰ってくれば、俺の部屋に「ただいま」を言いに来るのが普通なんだが。
「何かあったのか?ケンカでもしたとか」
「いや、途中で占いをしてもらったのだが……あ、コレ言っちゃまずかったかな」
「遅ぇよ。しかし……そっか、占いで、あまりいい結果が出なかったんだな」
「そういうわけではないと思うのだが……」
おおかた、俺との恋愛運でも占ってもらったのだろう。で、ダメ出しされたと。
しかし、そういうものを気にするのも、らしくないといえばらしくない。
「というか、何だかよくわからない占いでな、ナルトに飛び込むとか何とか」
「……確かにそれは何だかわからんな。
で、お前は何か占ってもらったのか?」
「ああ!タマゴは明日のほうがお買得だそうだ!」
「それ占いでも何でもなくね?」
229 :
愛の螺旋・4:2010/12/13(月) 00:07:15 ID:P5ofK7ng0
それから数日。
島津寮にいるときの京は部屋にこもりがちで
俺のところにもあまり顔を出さなくなった。
かと思うと、時々出かけていっては大きな荷物を抱えて帰ってくる。
それ以外、学校での行動や態度に特におかしなところはないので
俺も段々とあまり気にしなくなっていった。
そんな、ある日。
学校から戻ってみると、部屋のドアがうっすらと開いていた。
俺の部屋は、俺がいなくてもキャップや京がけっこう勝手に出入りするので
たまにこういうことがあるのだが
「ただい……ま!?」
その日、部屋に勝手に入っていたのは巨大な貝だった。
「なんだこりゃ……」
直径2メートルはあるだろう、巨大な巻き貝。
もちろん、作り物だ。現実にこんな巨大な巻き貝は存在しない。だが、よくできている……
そのよく出来た作り物の巨大巻き貝の中から
ガサガサ……
何か、音がする。
何かが、この中にいる。
注目する俺の目の前で、巻き貝の入り口のところから
椎名京がニョキリと顔を出した。
「お帰り、大和」
230 :
愛の螺旋・5:2010/12/13(月) 00:10:17 ID:P5ofK7ng0
ヤバイ。この京は、ヤバイ。
何がヤバイって……
これ、ヤドカリじゃん!
こんな、巻き貝の中から頭と手だけ出して這い回ってたらヤドカリじゃん!
ヤドカリ娘じゃん!
「み、京……おまえ……部屋にこもってると思ったら
これを、作っていたの、か?」
「うん。大和の好きなものになってみた。それよりこの渦巻き具合を見て?コレどう思う?」
「あ、ああ……その、すごく……ヤドカリです……」
「大和も入ってみる?まだ余裕あるよ」
「いいの!?」
そうだ。
俺はヤドカリが好きだ。その愛らしい姿を眺め、癒されていた。
でも、それだけでは、どこか物足りなさを感じていた。
俺は――本当は、ヤドカリになりたかったのかもしれない。
「モチロン。ただ、私、この中では生まれたままの姿だけど」
望むところだ。
二人ヤドカリになって愛し合う。これほどの至福が、他にあろうか。
全てを脱ぎ捨てた俺は、愛の渦の中に飛び込んでいく。
京がつぶやく。
「ああ……占いって、ホントに当たるのね……」
終わり
書きながら
「侵略!ヤドカリ娘」
とか思ったけどアニメ化はしない
久々の投下乙なんだぜ。
けどな、あんな思わせぶりな事言っといてやる事は
こんな事とかもう斜め上ってレベルじゃねーぞwwwwwwwww
投下乙
…………ヘンタイだー!!
乙乙
なんだこの変態軍師はw
でも、ヤドカリ娘ってなんか可愛いなw
クリスで小ネタを一本
ギュイイィィ!ギュギュギギギギュウギュッギィ!
突然、秘密基地に奇怪な音が鳴り響く。
「なんだ!?」
思わず寝そべっていたソファから身を起こし、辺りをうかがうと
「あ、スマン、いたのか大和」
いつの間にかやってきていたクリスが
見覚えのある弦楽器を肩に構えていた。
「なんだ、バイオリンか。俺はまた、眠っているうちに
豚の屠殺場にでも迷い込んだかと思ったぞ」
「失礼だな!……とはいえ、我ながらヒドイ音だった。
久しぶりに持ち出してみたが、どうもダメだな」
「というか、バイオリンなんか弾けるんだ?」
「まあな。小さい頃に、ちょっと習っていたんだ」
確かに、お嬢様の習い事として
ピアノとかバイオリンとか色々やってそうではあるな。
クリスの場合、ピアノよりバイオリンのほうが絵になりそうだ。
「じきにクリスマスだろう?
父様に、プレゼントとして何か一曲演奏してさしあげよう……
と、思ったのだが、これではちょっとな」
クリス、歌はけっこう上手いんだけどな。楽器の演奏はまた別らしい。
「てっきり誰もいないと思ったので、ちょっと練習してみたんだが……
騒がせてすまなかったな。どうも自分には、楽器の才能はないようだ」
そう言うと、バイオリンをケースにしまい始めた。
「珍しく諦めが早いな。
俺は楽器は詳しくないが、何が上手くいかないんだ?」
「どうも複数の弦を上手く操作できん。
ただ音を出すだけなら何とかなるのだが
何か演奏しようとすると、さっきの有様だ」
音が出せるだけでもたいしたもんだとは思うが。
まあ確かに、指とかつりそうだよな、バイオリンって。
4本の弦を指で押さえて、奇妙な形の弓でこするだけで
あんなキレイな音が……4本?
「時間があれば、猛特訓でもするところだが
クリスマスまでもうそんなに日もないからな。
何か違うプレゼントを考えるさ」
「……いや、ちょっと待てクリス。
使う弦が一本だけなら何とかなるんじゃないか?」
「はあ?……そんな都合のいい曲があるのか?」
「ああ、確か弦1本だけで演奏するので有名な曲がある。
素人考えだが、複数の弦を処理できないなら、1本だけで演奏すればいい。
それなら何とかできるんじゃないのか?」
「確かに素人考えだが、やってみる価値はあるな。
よし、今日から特訓だ!……で、何という曲なんだ?」
「大和ー!おかげで、何とかモノになってきたぞー!」
明日はクリスマスイブ、という段になって
ようやっとクリスの特訓は実を結んだらしい。
ところかまわずギコギコされたので、けっこううるさい思いもしたが。
「……大和、礼といってはなんだが、今ちょっと聞いてもらえるだろうか?」
俺の返事も待たずに、クリスはケースからバイオリンを取り出す。
「まあせっかくだ、聞いてみよう」
「うん!では……クリスティアーネ・フリードリヒ、参る!」
深呼吸を一つして、バイオリンを構えると、クリスは目をつぶって演奏を始めた。
『G線上のアリア』
4本あるバイオリンの弦のうち、一番低音の「G線」という弦だけで演奏する曲らしい。
モチロン、上手に演奏するにはきちんとした技術は必要だろうが
形だけでも、ということなら、クリスでも何とかなるのではと提案したのがこの曲だった。
「……どうだった?」
そして、短い期間でクリスはその「形だけ」のところまでは到達したようだった。
「よかったと思うぞ。何ていうか……心がこもってる感じがした」
「なら、ちょっと早いが大和へのクリスマスプレゼントもこの演奏でいいな!」
普通のプレゼントがほしかった気もするが、たまにはこんなのもいいだろう。
再び流れ出した「G線上のアリア」をバックに、メリークリスマス、クリス……
おしまい
タイトルでほぼオチが見えるけど気にしない
乙
てっきり「魔王」のほうの何かだと思っていたw
>>226-231 GJ!
「大きな渦にアンタが捕らわれている」で、シリアス話かと思いきや…。
大和の好きな事で何をするのかと思ったら……流石は京。
>>236-239 GJ!
クリスマスに向けてバイオリンの特訓に励むクリスが良いですね。
クリスマスに全く関係ないのを投下
243 :
右?左?・1:2010/12/24(金) 22:19:00 ID:61tQlq6t0
「クリスお嬢様、お風呂の用意ができました」
「わかった。マルさんも一緒に入ろう!」
「はい。今日のオモチャは……はいっ、ペンギンくんです」
「うわ〜、可愛いなー!」
何故か今日も島津寮の風呂に入りに来るマルギッテ。
というか、毎回オモチャ持ってきてるのか?
「む……何を見ているのです、直江大和」
「いや別に。そういえば、その眼帯って風呂では外すんだよな?」
マルギッテは、普段は片目に眼帯をしている。
確か、力をフルに発揮しないように、自らハンデを負っているとかなんとか。
「当然だろう」
「すると、風呂では全力なわけだな」
「お前はいったい何を言って……」
「なんと!マルさんの本気を、こんな身近にいつも見ていたとは
私としたことが気付かなかった!なるほど、そうだったのか……」
「ええ、クリスお嬢様のお背中を流すためなら
私は全力を出すことを惜しみません。さあ、参りましょう」
マルギッテが風呂で背中を流すのに全力使ったら
背中の皮が剥けるんじゃねえかなぁ……いいけど。
244 :
右?左?・2:2010/12/24(金) 22:23:02 ID:61tQlq6t0
「はぁ〜……いいお湯だった〜」
風呂から上がってきたクリスが、サッパリした顔でリビングに。
冷蔵庫からコーヒー牛乳を出すと
「なぁ大和、こういうときは、腰に手を当てるんだよな?」
「いやどうでもいいが……マルギッテは?もう帰ったのか?」
「マルさんなら、まだ脱衣場にいたぞ」
と、やや遅れてマルギッテもリビングにやってきたが
その表情が困惑している。というか……
眼帯を、していない。
「あれ?眼帯どうしたんだ、マルさん」
「直江大和……念のため訊きますが、私の眼帯を知りませんか」
「いや、知らないぞ……風呂に入るので外したんだろ?」
「風呂から出て、着替えようとしたら脱衣場からなくなっていたのです。
直江大和……私の眼帯に興味を持っていましたね?」
そう言って、ジロリと俺を睨むマルギッテ。
「オイオイ……いくらちょっと興味があったからって
二人の入っている風呂の脱衣場に忍び込んで眼帯をチョロまかすなんて
そんな自殺行為、俺がするわけないだろう?」
だいたい、そこまで危険を犯して眼帯だけのはずがないしな。
245 :
右?左?・3:2010/12/24(金) 22:27:02 ID:61tQlq6t0
今現在、島津寮にいるのは京、まゆっち、クリスの女性住人にマルギッテ。
そして男は……俺一人か。
ぶっちゃけ、疑われても仕方がない状況ではあるが。
「いちおう、周囲の気配には気を配っていましたから
誰も近づいていないのは確かなのですが……」
「だったら俺を疑うなよ!」
「もう一度、脱衣場を探してみてはどうだろう?」
「いえ、もう十分すぎるほど探しました。いったい、どこに……」
すったもんだしていると
「ただいまー!いやー、今日のバイトはキツかったー!」
いつものようにあわただしく、キャップがバイトから帰ってきた。
「お、マルちゃん来てたのか……あれ?今日は眼帯してねーの?」
「だから『マルちゃん』はやめなさい。
眼帯は……(説明中)……というわけで、今捜索中です」
「ふーん。あ、よかったら、見つかるまで俺の眼帯貸そうか?」
「なんでそんなもん持ってるんだよキャップは」
「ほら、去年の仮装行列で海賊のカッコしただろ?あのときのヤツ。
どうする、マルちゃん?」
「……別になくても困りはしないが、せっかくなので借りてもいい」
246 :
右?左?・4:2010/12/24(金) 22:31:05 ID:61tQlq6t0
「持ってきたぜー!ジャーン!」
あっという間に部屋から戻ってきたキャップが
自慢げに掲げて見せた眼帯には、海賊らしくドクロマークが入っていた。
マルギッテにドクロマーク。似合いすぎて怖い。
と、クリスがちょっと首をかしげる。
「キャップ、それ、右目用じゃないのか?」
「ん?ああ、形からするとそうだな。何かマズイの?」
「マルさんは、いつも左目に眼帯してるんだ」
「いえ、たまたま入手したものが左目用だっただけで
別に意味があって左目にしているわけではありません。
この際ですから、これを借りておきましょう」
マルギッテはそう言うと、キャップから眼帯を受け取り、キュ、と頭に止める。
スッと顔を上げて、周りを見回すと
「これは……面白いですね、普段とちょっと見え方が違います」
まあ、そうだろうな。
右目と左目の視差というのはけっこうある。
だが、視力に問題があってしていたわけではないのだし
単純に慣れの問題ということか。
「でも、やはり眼帯をしていたほうがしっくりきます。
ありがとう、風間クン」
は?今、キャップのこと何て呼んだ?風間……クン?
つか、何だか優しげに微笑んでる?
247 :
右?左?・5:2010/12/24(金) 22:35:08 ID:61tQlq6t0
「直江クンにも、心配をかけてしまいましたね。
もう大丈夫なので、安心してください」
直江「クン」!?何その斬新な呼び方!?
「落ち着いたところで、私もコーヒー牛乳でもいただこうかしら」
「うん、ちゃんとマルさんの分もあるぞ!」
いやのん気にコーヒー牛乳飲んでる場合じゃないだろ。
眼帯のせいだかどうかわからんが
明らかにこれ何か人格変わっちゃってるぞ。
「いやちょっと待ってあの……マルギッテ……さん?」
「?何かしら、直江クン?」
小首をかしげてにっこり笑うマルギッテさん。
仕草とか口調のせいもあってなんか色っぽい……
イカン、モノローグにまでさん付けしてるぞ俺。
「いや、その……何でもないっす!」
「?おかしな直江クン」
クスクスと笑って、慎ましやかにコーヒー牛乳をお飲みになられるマルギッテさん。
こうしてると、普通に色っぽいお姉さんだなぁ。いいなぁ、これ。
「あ、いーなー、俺も飲みたくなった。ちょっとコンビニ行ってくるぜー!」
キャップがジタバタし始めたと思ったらまた飛び出していってしまい
リビングにはまた俺たち3人だけになった。
248 :
右?左?・6:2010/12/24(金) 22:39:10 ID:61tQlq6t0
「あら、もうこんな時間。クリスお嬢様、そろそろお休みの時間ですよ」
その後3人でしばらく談笑していたが
終始マルギッテさんはおだやかでにこやかでしとやかだった。
「はーい♪じゃ、おやすみ大和」
リビングを出ようとするクリスの手を取り、ちょっとの間引き止め耳打ちする。
(……ちょっとマルギッテさんおかしくないか?なんか性格が、柔らかくなってるような)
キャップはマルギッテさんの異変には気付かなかったようだが
普段から身近に接しているクリスなら……
「そうか?私にはいつもあんな感じだぞ?」
むう、気付いてねえ。
しかしいつもあれなら、クリスが懐くのもわかる気がするな。
と、クリスの背後でマルギッテさんが振り返る。
「直江クン?クリスお嬢様に何か?」
「ああ、いや、ちょっと訊きたいことがあっただけ」
「それならいいですけど……不埒なことすると……狩っちゃいますよ?」
ゾクリ
微笑まれているのに、背筋が凍りつく。
普段隠された左目を妖しく光らせて
本質は変わってないというか、かえって怖くなったマルギッテさんは
ゆったりとした動作で部屋に戻っていった。
249 :
右?左?・7:2010/12/24(金) 22:43:10 ID:61tQlq6t0
「あ、眼帯戻ってる」
翌朝。洗面所で出くわしたマルギッテの顔には、昨夜のドクロマークの眼帯ではなく
いつもの眼帯が左目に付けられていた。
「直江大和、朝は『おはようございます』。復唱なさい」
「おはようございます、マルギッテさん」
「よろしい。敬称をつけたのも、評価してあげます。おはよう」
眼帯が戻り、マルギッテも元に戻っていた。くそ、もうさん付けなんかしねえ。
「で、眼帯、どこにあったん?」
「……それは、機密事項です」
と、大あくびをしながらクリスもやってきた。
「ふぁ〜…あ……あー、大和、おはよー」
「ああ、おはようクリス。なあ、マルギッテの眼帯、どこにあったんだ?」
「そうそう、それがな、なんと……」「あ、あの、クリスお嬢様……!」
「マルさんの、パンティーのヒモに眼帯がからまってたんだ!見つからないわけだな」
「……プッ」
「Hasen……Jagd!」
「ちょ、いきなりトンファー!?やっぱ前のほうがいいー!」
おしまい
性格反転はドラマCDでもキノコでやってたけど気にしない
自分のSSでマルギッテ率高いのはかわしまりのが好きだから
乙
どっちのマルさんもいいな
乙
連日の投下はS効果か?w
>かわしまりのが好きだから
凛々しい系もいいがお姉さん系もいいよな
最近投下してくれてるのは同じ人だよね多分
あ
あけましておめで投下します
256 :
記録更新・1:2011/01/12(水) 23:22:31 ID:uZ7Q1o+Z0
「……ん?」
ひとりでに目が覚める。ぼんやりした頭で部屋の時計を見れば
いつもの起床時間ではあるが、何かがおかしい。
ああ、そうか。
京が起こしに来ていないんだ。
いつもなら、朝は決まって京が起こしてくれるのだが
今日に限って部屋に来ていない。
珍しいこともあるもんだ、と思いながら、もそもそと起きあがった。
朝食の席についても、京は姿をあらわさない。
「珍しいですね、いつも大和さんと京さんは早いほうなのに」
「今朝は、俺を起こしにも来てないんだよ」
先に来ていたまゆっちも首を傾げる。
やがて、クリス、キャップと住人が集まってきたが
それでも京は姿をあらわさない。
「おかしいねえ……由紀江ちゃん、ちょっと部屋の様子、見てきておくれでないかい?」
麗子さんに言われて、二階に上がっていったまゆっちは
戻ってきたときに少し表情をこわばらせていた。
「京さん、具合が悪いそうです。何だか、熱があるようで」
「おや……珍しいこともあるもんだね。
ちょいと見てくるから、アンタたちは朝ゴハンすませちまいな」
257 :
記録更新・2:2011/01/12(水) 23:26:36 ID:uZ7Q1o+Z0
京は、いつもの習慣――たとえば、朝は俺を起こしに部屋に来る――を
とても大切にしている。
それができない、というのはかなり重症なのだろうか。
朝食を食べ終わったころ、麗子さんが二階から戻ってきた。
「京ちゃん、かなり熱があるから、今日は学校は無理だね。
昼間はなるべくアタシが見てるから、アンタたちは学校に行っといで」
「ちょっと心配だから、学校行く前に、様子を見に二階に上がってもいい?」
「ああ、いいよ。京ちゃんも、大和ちゃんの顔見たがってたからね。行っておやり」
「では、私も行こう」「私も」俺もー」「……ま、顔見せぐらいはしてやるか」
なんだかんだで、結局残りの住人全員で京の部屋に行き
なんとなく俺が代表っぽかったので、ドアをノックする。
「京ー、俺だけどー。入ってもいい?」
『あ……大和……ちょっと待って。
…………どうぞー』
心なしか、声も弱々しい京の返事を待って
ゾロゾロと連れ立って部屋に入る。
「あれ……皆、来たんだ」
布団をひっかぶった京がちょっと驚いていた。
「お邪魔します……どうだ、具合?」
258 :
記録更新・3:2011/01/12(水) 23:30:36 ID:uZ7Q1o+Z0
どうだ、なんて聞くまでもなく
京の具合はいかにも悪そうだった。
顔は赤く汗ばんで、目も潤んでいる。呼吸も荒い。
まあ、風邪だろうなぁ。
「うん……そんなにたいしたことない。
ちょっと熱が出ちゃっただけ。ゴメンね皆、心配かけて」
「気にすんな。しかし珍しいな、お前が熱出すなんて。どれくらい熱あるんだ?」
「そういえば、測ってなかった……大和、測って」
「ん……体温計とかあったかな」
「そんなんじゃなくて……おでことおでこで、ペタってして測って」
何そのプレイ。皆もいるのにそんな恥ずかしいことできません。
「いや、ちゃんと体温計で測らないとダメだろ……」
「いいじゃありませんか大和さん」「測ってやれよ、大和」「病人の頼みぐらいきいてやれ、直江」
あれ、何だか拒否しづらい空気に。
「遅刻してしまうではないか。見ていてやるから、早くしろ大和」
「お前らがいるからイヤなんだよ!」
「……二人きりだったら、直腸で測ってもらっていた」
「スイマセンおでこで測らせていただきます」
259 :
記録更新・4:2011/01/12(水) 23:34:48 ID:uZ7Q1o+Z0
「ん……来て、大和……」
布団に横たわった京が目をつぶる。
「いや、熱測るだけだからね!?」
そうは言うものの、俺もなんだかドキドキしてしまっている……
息を止め、かがみこんで顔を近づけ、額で額にそっと触れる。
京の体温が、かなり高くなっているのを確認して、またそっと顔を離す。
イカン、俺まで顔が熱くなってきた。
「で、熱は何度あるのだ?」
「俺は体温計じゃないんだよクリス……」
「わからなかったのなら、もう一度測ればいいではないか」
冗談じゃない。そんなことしたらホントにこっちまで熱が出ちまう。
「まあ、すごく高いことは確かだ。こりゃ絶対安静だな」
「そうか……我々はそろそろ学校に行かねばならんが、大事にな、京」
「何か食べたいものとかありますか?」
「大和が食べたい……」
食われてたまるか。と思ったが
二人きりだったらヤバくなりそうな雰囲気だった。
「じゃ、行ってくるからな。あんまり麗子さんに世話かけるなよ」
260 :
記録更新・5:2011/01/12(水) 23:39:07 ID:uZ7Q1o+Z0
登校の途中で合流してくる風間ファミリーの面々に
京の病状を説明していく。
「じゃあ、今日の金曜集会、京は欠席ね」
「あー、そうなるなー。というか、ワン子よく今日が金曜って覚えてたな」
朝、京の風邪騒ぎですっかり頭から抜け落ちていたが
今日は金曜だったのだ。
「バカにしないでほしいわね。
武道と食事とファミリーのことは忘れないわよ!」
他のことは忘れまくりだけどな。
と、モロがポツリとつぶやいた。
「京が集会に出ないって、初めてじゃないかな」
誰も、一度や二度は何かの都合で集会を休んだりしているが
京だけはそんなことがない。
もともと、転校していった京が金曜の夜に川神に戻ってくるのを
皆で迎えるための集会だったのだから
それが当然といえば当然なのだが。
「……誰か、京が集会に出なかった記憶ある?」
全員が顔を見合わせ、フルフルと首を横に振る。
「……けど、京の金曜集会皆勤記録も、今日までだな」
少ししんみりした、朝の登校風景だった。
261 :
記録更新・6:2011/01/12(水) 23:43:16 ID:uZ7Q1o+Z0
退屈な授業が終わると、いろいろ買いこんでから寮に戻る。
あらかじめ、クリスに許可を貰っておいたので
戻るとさっそく二階に上がり、部屋のドアをノックする。
「京ー、大和だけどー。具合どうだー?」
『あ……おかえり大和。どうぞー、カギあいてるよー』
まだ少し、声に元気がないようだ。
「お邪魔しま……っと、失礼!……って、何やってんだよお前」
部屋の中、京は下着姿だった。
慌てて目を背ける。
「何、って着替え。大和なら見ててもいいよ」
「ああ、寝汗でもかいたか。じゃ、俺ちょっと出てるから」
別に誘惑しようとかそういうんじゃないだろう。
そそくさと部屋を出ようとして、布団がしかれていないことに気づく。
ノロノロと着替えていく服は、京の普段の私服だった。
「おい……パジャマはどうした?」
「パジャマなんか着ない……金曜だもの。集会、行かなきゃ……」
「バカかお前は。あんなに熱があって学校も休んだのに、集会どこじゃないだろ!
今だってフラフラじゃねーか!いいから布団しいて横になってろよ!」
「学校なんかどうでもいいけど……金曜集会はそうはいかないよ……」
262 :
記録更新・7:2011/01/12(水) 23:47:45 ID:uZ7Q1o+Z0
ファミリーの集会に出るという習慣が大事なのはわかるけど
ここは無理矢理にでも寝かせつけないと。
「頼むから、自分の体を大事にして
今日の金曜集会は休んでくれ。な?」
京がガックリと肩を落とす。
「……わかった。今日は……諦めるね」
「そうしてくれ。何だったら、俺も今日は集会パスして
ずっとお前のそばにいるからさ」
「マジで!?うん、すぐ寝る」
途端に、どろーんとしてした京の目が輝きだす。
なんかその場の勢いで余計なことまで言ってしまったかも。
まあ、素直に寝てくれるんならいいか。
京がおとなしく座って休んでいる間に
押しいれから布団を引っ張り出してしいてやる。
「パジャマは替えたほうがいいな……どこに入ってる?」
「えっと……箪笥の一番上、左のほう」
「ここか……って入ってるの下着じゃねーか!」
「好きなのを選んでいいよ。ちなみに、勝負下着は紫のスケスケのヤツ」
「パジャマはどこなんだよ!」
263 :
記録更新・8:2011/01/12(水) 23:51:48 ID:uZ7Q1o+Z0
何とかパジャマを探しあてる。
「じゃ、これに着替えて」
「んー……大和、着せてー」
どこの小児だよ。というか、できるかそんなこと。
だが、京はすねるようにこんなこと言いだした。
「着せてくれないなら、集会に行く」
「わかったわかった……じゃほら、着てるの脱いで」
「脱がせてー」
……もうヤケクソだ。
「ハイハイハイ、じゃあ立って立って!ちょっと足開いて!
ハイ右足上げて!ハイ次左足!」
揺れる心を鋼に変えて、何とか下を脱がせる。目の前のパンツがまぶしいぜドチクショウ。
「はい、じゃあバンザイして。バンザーイ!」
「バンザーイ」
上を脱がせはじめたときだった。
『京ー、起きてるかー?』『具合はいかがですか?』
イカン、クリスとまゆっちが来ちまった!
264 :
記録更新・9:2011/01/12(水) 23:55:53 ID:uZ7Q1o+Z0
どうするこの状況見られたらヤバイ隠れるかでもそんな場所ないちょっと待ってもらうしかでも待たせる理由が思いつかないッ!
『入ってもいいかー?』
よしここで何か適当なこと言って入るのを待たせてそのすきに京にパジャマをでも何言えばいいんだ何かないか何かッ!
「あいてるよー、どうぞー」
「どうぞ、じゃねええええええ!」
ガチャリ
非情にもドアは開く。
「なんだ、もう大和が来て……」「アイスクリーム買ってきま……」
その場の空気が凍りつく。
下はパンツ一丁、上が半脱ぎで頭から服をかぶっている京だけが
自体を把握できずにもぞもぞと動き回っていた。
「ふっ……不潔です、大和さんッ!」「オラ見損なったぜー!」
「こっ…この狼藉者ー!熱で京が朦朧としているのをいいことに、ななな何ということをー!」
あああああもう!!この誤解を解くには、京に説明してもらうしかないッ!
「いや、違うんだよ!京、ちゃんと二人にどうしてこうなってるか説明してくれよ!」
「え……えっと、大和が、一緒にいてくれて、もう寝ようって言って、私の服脱がせて……(ポッ)」
「ポッ、じゃねーよ!部分的に合ってるけど、はしょりすぎだろソレ!」
結局、否応なしに部屋を叩きだされ
廊下に正座させられたうえで誤解を解くのに10分ほどかかった。
「……ご納得いただけましたでしょうか」
「そうだったんですか……そうですよね、大和さんがそんなことするわけないですよね!」
「まゆっち、さっき、俺のこと見損なったとか言った」
「あ、あれは松風がですね……」「ごめんよー、オラの早とちりだったよー」
まあ、そう思われてもしょうがないシーンではあったが。
「それで、今日の金曜集会は、大和も出ないのか?」
「ああ、京にそう約束したしな。今日はアイツのそばにいるよ」
「そうか……皆には、もう知らせたのか?」
「いや、まだ」
「では、私が伝えておこう。大和は、京のそばにいてやってくれ。
……勘違いして、すまなかったな」
「ああ、よろしく頼む」
「あと……着替えは、なるべく一人でさせたほうがいいと思うぞ?」
「そう思うんなら、お前も集会まで一緒にいればいいだろ!」
今一つ信用されてないっぽかった。
そして、夕方。
金曜集会に出かけていくクリスとまゆっちを見送って
また京の部屋に戻ると、本を読んだりして時間を過ごす。
その間、ずっと京の手を握っていた。
「夕食は食べられそうか?麗子さんがおかゆ作ってくれてるらしいけど」
昼は「食欲がない」ということで食べていないらしいのだ。
「うん……だいぶ楽になったから、夜は食べる。
ちゃんと食べないと、治るものも治らないしね。
おかゆかぁ……ザーサイとメンタイコの買い置きがあるから……」
「辛いものは適当にしとけよ……」
台所に降りて、麗子さんから熱いおかゆの入った土鍋や
おかずの乗ったお皿を受け取り、京の食器と一緒に盆に乗せる。
後は、ザーサイとメンタイコだっけ。冷蔵庫の京スペースを漁っていると
「ほれ、大和ちゃん、自分の茶碗忘れちゃダメだろ」
「え、このおかゆ、俺の分も入ってるの?」
「大和ちゃんの分だけ別に作るのもどうかと思ってね。
それに、これなら一緒に食べてやれるだろ?」
道理で量が多いと思った。まあ確かに一理ある。
「じゃ、俺も上でいただきます」
こうして、二人だけのおかゆパーティーが始まった。
「あ、ザーサイけっこう合うな」
「でしょ?中華の朝がゆでは定番らしいよ」
二人でおかゆをすすっていたが、ふっと京が箸を止める。
「ねえ、大和?もし……このまま、私が死んじゃうとしたら
私のこと、受けいれてくれる?」
「バカなこと言うな。今どきの若者が、風邪ぐらいで死ぬか」
「だから、もしも、の話。
実はスッゴイ重い病気で、もう手遅れだってわかったら……」
「そのときは、『治ったらつきあってやるから早く治せ』って言う。
で、治ったら理由をデッチ上げて、なかったことにする」
「大和らしいなぁ……そういうところも、好き……」
「だいたい、そんな同情心から受けいれられても空しいだろ」
「同情から始まる恋もあってもいいと思うよ」
「そんなもんかな」
「レイプから始まる恋もあるらしい」
「いやそれはない。というか、俺がお前をレイプとかありえないだろ」
「逆レイプって知ってる?」
「スイマセンデシタ」
おかゆを食べ終わり、薬は飲ませたが
京が寝付くまではそばにいてやることにした。
とりとめもないことを話しながら、メールチェックとかして過ごしていたのだが
「あれ……けっこう汗かいてるなお前」
「うん……ご飯食べて、暖まったからかな」
「汗拭くか。ちょっと待ってろ、タオル出すから」
えーと、タオルはどこだったかな。さっき箪笥をあけたときの記憶をたどっていると
「ん……なんだ騒がしいな」
なにやら一階がガヤガヤと騒がしくなっていた。
はて、集会が終わるにはまだ早い時間だし
こんな時間に誰か客でも来たのだろうか?
と思っている間に、騒がしさが二階に上がってきて
いきなり部屋のドアが開いた。
「おーす京ー、具合どう……だ?」
ああ、姉さんやワン子が見舞いに来てくれたんだ。
だが、なぜか入り口で固まっている……
まさか、と思い、恐る恐る京のほうを振り返る。
汗を拭くために、上半身を脱いでいるところだった。
慌てて目を背ける俺に、姉さんとワン子の声が飛んでくる。
「お前ら……何してたんだ?」「ギャー!大和変態ー!」
ああ、これはまた廊下で正座かなぁ……
今日は京のために、秘密基地じゃなく京の部屋で集会しよう。
そうキャップが言い出して、皆で島津寮までやってきたのだそうだ。
姉さんたちが部屋に突入したときは、いちおう二階の女子部屋なので
男連中がまだ待機していて一階にいたのが不幸中の幸いだった。
「キャップ……皆……ありがとう」
「なーに、いいってことよ!」
「で、どうだったんだ京?大和は落とせたのか?」
ガクトがニヤニヤしながら京に尋ねる。
「ん……もうちょっとだった」
「おいおい。そう簡単に俺は落ちませんよ?」
「ホントかー?さっきだって、私たちが来なかったら……」
「だから、アレは事故だってば!」
皆がどっと笑う。賑やかな、いつもの金曜集会だ。
「でも、二人きりがよかったのなら
かえってお邪魔になってしまったかもしれませんね」
「ううん。これはこれで……すごく、嬉しいから」
そうだな。習慣になっているから大事なわけじゃない。
大事なものだから、守りたいものだから続けてきたんだよな……
その笑顔に、確かに「もうちょっと」かもしれないと思いながら
金曜集会皆勤記録の更新に、心の中でおめでとうを言う俺だった。
おしまい。単に看病モノを書きたかっただけなので特にオチはなし
乙〜最近投下してくれる人がいて嬉しい。
乙
やっぱりいいなあ風間ファミリーは
乙&GJ!
風間ファミリー話は良いですね〜。
京にとっては、金曜集会に行けないなんて病気より辛いでしょうしね…。
乙
直腸検温とか着替えサポートとか逆レイプとか……
ニヤニヤが止まらないぜー
乙!
このまま、投稿が増えてほしい!!
Sでヒロインになり損ねた記念投下
昼休み。
今日は少し暖かいので、購買部でパンを買って
屋上で姉さんと昼飯にしようと階段を上がっていくと
「直江大和、話があるで候」
弓道部主将、矢場弓子センパイに声をかけられた。
「はい、何ですか?」
「君と椎名京は『風間ファミリー』という
幼馴染集団の仲間と聞いているで候」
てっきり、姉さんがまた借金して返済が遅れてるとかそんなんかと思ったが
そうではないらしい。
「ええ、そうですね」
「椎名京は、弓道部員であるのだが
近頃は全く道場に顔を出さぬで候。
いくら言っても聞かぬ故、君からも
部活に出るよう忠告することを望むで候」
「はあ」
やれやれ、またか。
京が弓道部に籍を置いているのは、ときおり弓道場を使って
弓の稽古をしたいだけという、ある意味わがままな理由だ。
俺もさすがにそれはマズイと思うので、ときどき注意してるのだが……
「いちおう、言ってはおきますが……
それじゃ根本的な解決にはならないんですよね」
俺が注意すれば、何日かは弓道場に足を運ぶ。
が、そのうちにまた行かなくなる。
そんなことを、今まで、何度も繰り返してきたのだ。
「それは……わかっているで候」
矢場センパイがキュ、と眉をひそめる。
京には悪いが、ここは一つキツイ選択もしなければならないかもしれない。
「いっそ、もう、退部させたほうがいいのかもしれませんよ」
「いや、それは望まぬで候」
「どうしてです?
練習にも出ないで勝手なことばかりじゃ、部の結束を乱すだけでしょう」
「そうかもしれない。
だが……せっかく関わりあいになった『縁』を
そう簡単には切りたくはないので候。
いつまでも待つゆえ、君は説得を頼むで候」
縁、か。
古風な感じのする矢場センパイが言うと、しっくりくる言葉だな。
「それでは、昼練があるゆえ、これにて」
踵を返して、矢場センパイは去っていく。
俺もまた、屋上に向かうために階段をあがっていった。
「……ということがあったんだよ」
「しょうがないなー、京も」
今日は取り巻きの女子連中もおらず、屋上には姉さん一人だった。
さっそく、さっき矢場センパイに言われたことを姉さんにも伝える。
「まあ京にとっては、ファミリー以外はとことんどうでもいいからね。
それにしても、矢場センパイも我慢強いというか」
「ユミは面倒見がいいからなー。放っておけないんだろ」
「へえ、そうなの?なんかクールビューティーって感じだけど」
「ああ、でなきゃあんなに部員たちには慕われないさ」
「なるほどね。見た目や喋り方だけではわからないもんだな」
「見た目はともかく、喋り方はなー」
「なに?」
「いや、何でもないぞ?」
何でもないと言いながら、姉さんが声を潜めてクククと笑う。
何か、俺には言えないようなことがあるのだろうか。
「さて、そろそろ戻るか。パンごちそーさん」
「え……あ、ちょ、全部食べちゃったの!?」
いつの間にか、俺の昼飯がキレイになくなっていた。
「全部じゃない。サンドイッチはちょっと残しておいてやったぞ」
「つけあわせのパセリだけでどうしろと!?」
午後の授業は空腹感がひどくてあまり頭に入らなかった。
このままじゃ寮の夕食まではとてももたないので
授業が終わってからどこかで食べて帰るか。と、その前に。
「京ー」
「はーい」
帰り支度をしていた京がトテトテと近づいてくる。
「お前、最近部活出てる?」
「ん……先週、一回顔出した」
「いちおう籍を置いてるんだし、最低限は活動しとけよ。
あんまりサボってるとクビになるぞ?」
反発するかもしれないので、矢場センパイの名前は出さないでおく。
「別にクビになったらなったでいいよ」
「そういうなよ。社会に出たら、イヤなつき合いだって避けられないこともある。
そういうときの、予行演習だと思え」
……なんだか、矢場センパイの意図からすると
全然説得になってない気もするが
こういう言い方でもないと京は納得しそうにない。
「うーん……なんか、あの主将は苦手だけど、じゃあ行ってくる」
京がノロノロと弓道場に向かうのを見送って、俺も教室を出る。
京、矢場センパイが苦手なのか……いい人だと思うけどなぁ。
数日後。
あれから、京は1日おきぐらいには弓道場に顔出ししている。
果たしていつまで続くかはわからないが
とりあえず矢場センパイに頼まれた義理は果たしたといえるだろう。
俺はと言えば
あの日、夕食前に立ち寄ったお好み焼き屋が思いのほか美味くて
ちょっとハマってしまい、今日もちょっと遅くなったが寄り道である。
店に入り、今日はオーソドックスなブタ玉とかイカ玉にするか
それともオススメメニューのウナ玉にチャレンジするか、なんて考えていたら
奥のほうのテーブルが何か騒がしい。
「ねー、美味しいでしょここー。オススメ中のオススメなのよー」
「出汁が効いてるってカンジですねー!」
「やーん、ダイエット中なのにー!主将ヒドイー!でも美味しいー!」
チラ、と目をやると女子が数人。同じ川神学院の制服だった。
まあこれだけ美味けりゃ評判になっててもおかしくはないかな。
「でも、やっぱり椎名センパイ来ませんでしたねー」
「つき合い悪いってレベルじゃないよねー」
「うーん……彼女はさ、自分の世界を大事にしてるから」
あれ?ひょっとして京のこと?
そういえば、一人の声に聞き覚えがあるような……?
「まあ、そのうち椎名さんも打ち解けてくれるわよ!
最近は練習にも顔出してるじゃない、ね?あ、ほら焼けてる焼けてる!」
やっぱり。矢場センパイだった。
そのうち、一人が俺の視線に気付いたのか
矢場センパイに耳打ちをし、センパイがこちらを向く。
「あ……」「……ども」
しばらく固まってから、顔を真っ赤にしてこちらのテーブルに。
「あー……ゴホン!あれから、椎名京は練習に出るようになったで候」
なるほど、あのとき姉さんが笑ったのは
このギャップを知っていたからか。
「いや、もう普通に喋ってもいいですよ?」
「!くぅうぅー!やっぱ聞いてたのねー!」
赤くなった顔をさらに赤くして、矢場センパイがジタバタし始める。
と思ったら、ガシッと俺の手を握り
「内緒よ!?これ、他の人には内緒だから!」
「そりゃかまいませんが……なんで普段はあんな喋り方なんです?」
「や、その……私、けっこう甘いところがあって……
色々つけこまれたりしないように、その……ね?」
今度はモジモジし始めた。なんだこのギャップ萌え。
まあ普段はクールな仮面をかぶっていて
親しい人、たとえば同じ部活の仲間なんかにはこんなホンワカした素顔を見せるのだろう。
けど、それが「原因」の一つなのかもしれない。
「京が、矢場センパイを『苦手だ』って言ってたの、判る気がします」
「……え?」
「言ってたんですよ、アイツ。矢場センパイが苦手だって」
「え、それ……どういうこと?……馴れ馴れしすぎる、ってこと……?」
「それもあるかもしれないけど……
アイツ、裏表のある人間は信用しないから」
「!」
まあ、コレに関しちゃ俺もあまり人のことは言えない。
ファミリーの人間にしか本音は見せない、ってところはある。
ただ、俺と京の場合には、強烈なイベントと長い付き合いがあったおかげで
強い信頼関係を築くことができたのだ。
それに、ファミリーの他のメンバーは、元からあまり裏表がない連中だ。
「裏と表があったら、もう一つ裏があるかもしれない。
そんな考え方をするんですよ、アイツ。
ガキの頃、いろいろあったせいなんで
コレに関しちゃ、あまりアイツを責めないでやってもらえませんか」
「う……うん。わかったわ……」
ちょっと言い方がキツかっただろうか。
矢場センパイがちょっとうなだれて自分のテーブルに戻っていく。
が、途中でまたシャキッと背筋を伸ばし、俺のほうに振り返ると
「ありがと、直江…大和クン!」
そう言って、ニパッと笑った。
はて。礼をいわれるようなことを言ったつもりはないのだが。
翌朝。皆で揃って変態の橋を渡っていると
「おーい!」
遠くから呼びかける声がする……というか、今の矢場センパイか?
と思っていたら、向こうからタタタ、とけっこうな速度で走ってきた。
「や、おはよー椎名さん!モモちゃんと大和クンもおはよー!」
「!?」「え、あ……え?」「どうしたユミ、変なもんでも食ったか!?」
「やーねー、そんなんじゃないってば。
で、椎名さん、おはようと挨拶されたら?」
「……おはようございます」
「よろしい!で、大和クンは?」
「ああ、はい、おはようございます?」
「ん、よろしい。あとモモちゃんは今日中に貸したお金返すように!」
誰だよモモちゃんって。というか、イメチェンにもほどがありますよ矢場センパイ。
「あの……どうして、喋り方変えたんです?」
「あー、うん……椎名さんはさ、普段からこういう風なほうが
むしろ付き合いやすいんじゃないかな、って」
昨日、俺が言ったことを受けてのことか。
裏も表もない、素顔の自分で通すことにしたのか。
ただ、京の信用を得るために。
だが、京はあくまで冷たく言い放つ。
「……なんでそんなことするんですか。
主将が今まで保ってきた、外向けのイメージは捨てるんですか」
「なんで、って……んー……
貴方と、もっと仲良くなりたいから?」
「迷惑です」
「おい、京……」
「たとえば、主将はここにいるムキムキマッチョの島津ガクトに
いきなり『好きです。つきあってください』って言われたら
どうですか?どうしますか?」
「え?あの……このカレ?」
矢場センパイがガクトを見て、オロオロしたかと思うと
いきなり頭を深々と下げた。
「ゴ、ゴメンナサイ!」
「俺様、告ってもいねーのにフラれた!?」
「私も同じです。いきなりそんなこと言われても
今はゴメンナサイとしか言えません」
「!うん……わかった。でも、私は、せっかくできた『縁』を大事にしたいの。
だから、これからも、貴方が私を受け入れてくれるまで頑張るからね」
「……どうぞ、ご自由に」
京は「ゴメンナサイ」の前に「今は」とつけた。
珍しく、認めたのだろう。ファミリー以外の人間を。
受け入れるところまではまだいかないが
少なくとも今までの門前払い状態よりは格段の進歩だ。
そして、それは矢場センパイにも伝わったらしい。
明るい表情を保ったまま、俺たちと一緒に通学路を歩き出した。
「つーかユミさー、いつの間に『大和クン』とか呼ぶようになってんだよ」
「えー?いいじゃない、別に。
ちょっと大和クンとも『縁』が出来たしさー。
……こっちの縁も、大事にしたいかなーなんて思うのよ?」
「ヌヌ」「ほーう?」
いかん、京と姉さんがジト目で俺を見ている。
イジり倒される前にフォローしなくては。
「いや、俺と矢場センパイのはそんなたいした縁じゃないでしょ」
「えー!?そんな冷たいこと言わないでよー。
あ、あと私のことはぁ、『弓子さん』でいいからね!」
イカン、かえって火に油になってしまった!
「ちょーっと説明してもらおうか舎弟」「じっくりと……ねっとりとね」
「あららー、この縁を育てるのは大変そうねー」
矢場センパイ……弓子さんと俺の「縁」かぁ。育つのかなぁ。
それまで、俺のほうが二人の攻めをかわせればいいのだが。
おわり
ユーミンは京の気持ちを知ると
自分から身を引きそうなキャラなのでヒロインは無理なのかもしれない
と自分に言い聞かせて無理やり納得した
「なあ、俺様も弓子さんに『今は』受け入れられなくても
頑張ればそのうちに認めてもらえるんじゃ……」
「あ、ゴメーン、それはないからー」
「追い討ちまで喰らった!?」
「追いすがるからだろ」「しょーもない」
乙
やべえこのユーミン可愛ええええええ
乙
ゲーム中の候さんの素のキャラはあんまり興味が持てなかったんだが…
有りだこれ!
乙&GJ!
このギャップは強烈ですね〜。
>>287 >自分から身を引きそう
確かにそんな感じだなー
Sではせめて出番が増えるといいんだが
3年キャラが結構追加されたから出番も増えるんじゃないかなあ
Sのラフ画から妄想投下
294 :
心変わり・1:2011/01/26(水) 22:32:59 ID:BW+1gkmO0
「大和さん大和さん」
「んー?なに、まゆっち?」
夕食後、お茶を飲んでいたらまゆっちに声をかけられた。
まゆっちは最近、茶道部に入部して、交友関係もそれなりに広まっているらしい。
特に、不死川心とは仲良くなっているようで
ときどき一緒に昼食をとっているのを見かけたりする。
「今度の日曜日、お時間はありますか?」
「ん……特に予定はないけど」
「えっと……実はですね、私、最近不死川さんと仲良くさせていただいているのですが」
あまり2−Fのメンバーとは仲が良くない不死川とのことなので
ちょっとまゆっちは遠慮気味に声を落とす。
「不死川さん、お休みでもほとんど外出はされないそうなんですよ。
それで、私が一緒に遊びに行きませんか?とお誘いしたら
とても喜んでくれまして」
「よかったじゃん」
「……なんですけど、私まだあまり川神や近辺に詳しいわけではないので
うまく不死川さんをご案内できるか自信がないんです。
それで、よろしければ……」
「ああ、オススメスポットとか知りたいわけ?」
「いえ、大和さんもご一緒していただけないかと」
295 :
心変わり・2:2011/01/26(水) 22:37:01 ID:BW+1gkmO0
「は?」
「大和さんも、ご一緒していただけないか、と」「大事なことだから2回言うんだナー」
「いや、場所なら教えてあげるから。別に俺が行かなくてもいいじゃん」
「それがですね、色々買い物をするかもしれないので
不死川さんが仰るには、どうせ案内されるなら、その……」
「……荷物持ち兼任のガイドを連れてこいってか」
「す、すいません!」「ゴメンよー大和っちー、まゆっち人の頼み断るの下手だからさー」
まゆっちなら川神案内もやぶさかではないが、不死川も一緒となると……
「つーか、何故に俺。荷物持ちって、俺よりまゆっちのほうが腕力あるんじゃね?」
「その、同性の私に荷物持ちをさせると、何だかイジメに見えそうだからイヤじゃ、と」
俺だと荷物を持たせてもイジメにはならないのか。
「すいません、他に頼める人が思い当たらなくて……」
……まあそうだろうなあ。ファミリーの男メンバーの中では
俺はそれほど2−Sの連中に悪い感情を持っていないが
他のメンバーとなると、ちょっと頼みづらいか。
「あの、どうしてもお嫌でしたら、私、不死川さんに謝って……」
「あー……まあ、いいよ、ヒマだし」
こうして、奇妙なデート(?)が日曜に予定されたのだった。
支援
297 :
心変わり・3:2011/01/26(水) 22:42:03 ID:BW+1gkmO0
「おはようございます、不死川さん」
「うむ、ちと遅れたか?」
「いえいえ、私たちも今来たところで」
「そうかそうか……で、なんじゃお前は」
日曜日の川神駅前。
待ち合わせに悠々と遅れてやってきた不死川心は
俺の顔を見るなりそんな反応をした。
「今日は、やま……直江先輩に案内をお願いしました」
まあ予想通りの反応ではあったが、あまりいい気はしない。
しかし露骨に嫌な顔をすれば、板ばさみになってまゆっちがかわいそうだ。
ここは大人の対応をしておこう。
「よろしく。せいぜい楽しんでもらえるように頑張ってみるよ(ニコ)」
「ほう、良い心がけ、気に入ったぞ。いつもその調子ならのぅ。
で、どこに行くのじゃ?」
「それはまあ、どんな所に行きたいか次第で。
色々考えてはきてるから、そちらの希望に沿うよ」
「そうじゃな、下々の者がどんなことをして楽しんでいるのか
知っておきたいと思うのじゃが、黛はどうじゃ?」
「あ、私も余り遊びは知りませんから、興味あります」
「では、決まりじゃの。娯楽関係の案内を頼むぞ、直江」
298 :
心変わり・4:2011/01/26(水) 22:46:06 ID:BW+1gkmO0
娯楽関係かぁ。
てっきりショッピングかグルメツアーになると予想していたのに。
そういうプランもちょっとは頭に入れてきたが
この場合ちょっと問題があるなぁ。
「えーと……じゃあまず着替えをお願いできるかな」
「は?」
「その振袖姿じゃ目立ちすぎるんでね。
もうちょっと『下々の者』に混じっても
違和感のない服装にしてもらえると助かるんだけど」
「イヤじゃ」
にべもなかった。
「此方を誰だと思っておるのじゃ。高貴なる不死川家の娘、不死川心なるぞ。
下々の者の服など、着られるはずがなかろう」
体育のときはブルマはいてるじゃねえか、と思ったが黙っておく。
「でも、時代劇の主役のエライ人も、お忍びのときは庶民の姿に変装するだろ?
でないと、下々の者はキンチョーしちゃって
普段の姿を見せられないと思うんだよなぁ」
「む……まあ、変装であれば、仕方がないか。
で、着替えは用意してあるのか?」
「いや、これから駅前デパートで見繕おう。まゆっちに見立ててもらえばいい」
「そうですね、不死川さんなら、何を着ても似合いますよ!」
しえん
300 :
心変わり・5:2011/01/26(水) 22:50:11 ID:BW+1gkmO0
婦人服売り場。
あーでもない、こーでもないとかき集めた服を抱えて
試着室に入りこむと、何やらゴソゴソやっている。
ときおり、まゆっちが中の様子をカーテンに首だけ突っ込んでうかがっている。
「ま、黛?こ、これはちと、その……お、おかしくないか!?」
「う、後ろ前です不死川さん!こちらが前!」
……こういうとき、待ってる男って間抜けだなぁ。
何というか、いたたまれない気分だ。
「いちおう、終わったが……やはり此方には似合わぬのではないか?」
「そんなことないですよ、とてもお似合いです。
さ、直江先輩にもお見せして……」
「イ、イヤじゃ!あやつ、見たらきっと笑うのじゃ!」
ヒソヒソ話のつもりらしいが聞こえてるぞ。しょうがねえなぁ、もう。
「おーい。笑わないからー、とにかく出てきてくれー」
と、不死川はカーテンから首だけ出して俺を見る。
「……まことか?」
「マコトマコト。笑わない。誓う」
不死川はしばらく俺の顔を見ていたが
やがて観念したのか、ゆっくりとカーテンを開いて試着室から……
出て、きた。
301 :
心変わり・6:2011/01/26(水) 22:54:13 ID:BW+1gkmO0
「ど……どうじゃ?」
「…………」
上はノースリーブのストラップキャミ。
下はハーフパンツにサンダルという
涼しげな服装で出てきた不死川は……その……
(大和さん、何か言ってあげてください)
黙り込む俺のわき腹をまゆっちがヒジで突付く。
「え?あ、ああ……その……可愛いな」
「そ……そう、か?」
しまった見とれていてつい思ったことをそのまま口に!?
「ええ、先輩に対して失礼かもしれませんけど
もうこんなに可愛らしくなるなんて。ホント、ステキですよ!」
くっそ、顔が熱い。
が、不死川はことのほかご満悦のようである。
「ま、まあ此方が着ればどんな服でも似合うのじゃが
こういうのは初めてだったので、ちと不安だったのじゃ。
だが……うん……可愛い、か……」
俺の言ったことを噛み締めるように、うつむき加減に頬を染めていたが
やがてニパッと笑いながら顔をあげた。
「さあ、これで準備はよかろう!直江、次なる場所へ案内せい!」
四円
303 :
心変わり・7:2011/01/26(水) 22:58:25 ID:BW+1gkmO0
ゲームセンター。
「あああ、クレーン行き過ぎた行き過ぎたコレどうやって止めるのじゃ!?」
ビリヤード。
「なんじゃコレ、棒術の稽古か?」
ダーツ。
「これはわかるぞ。あの的に当てればよいのじゃな?で、弓はどこじゃ?」
ボーリング。
「にょわああぁぁぁぁ!?(←指が抜けなかった)」
どれもこれも、不死川心には初体験だったらしく、一発目は失敗をし
そして持ち前の負けん気とカンのよさで
すぐに上達をして俺より上手くなっていった。
まあ、まゆっちなんかは同じ初体験でも最初から俺より上手かったりしたけど。
「見よ!これで……(ガコーン!)……パーフェクトじゃ!」
「お見事」
「ふふん、もう直江では勝負にならんの。
では黛、いざ尋常に、勝負と参ろうぞ!」
「はい、及ばずながらお相手させていただきます」
こうして、不死川心は終始ご機嫌に遊んでいて
そして、気がつけば……俺もまた、すっかり楽しんでいた。
304 :
心変わり・8:2011/01/26(水) 23:02:27 ID:BW+1gkmO0
「今日は、楽しかったぞ。庶民の遊びというのも、悪くないものじゃ」
あの格好で家に帰ったら、皆が肝を潰してしまうということで
不死川心はまた着物に着替えていた。
着物姿の不死川は、それはそれでいいのだけれど
せっかく身近になったのに、なんだかまた遠い存在になったような気がした。
「お洋服、どうしましょう?荷物になりますし、こちらでお預かりしておきましょうか?」
「いや……それぐらいは、自分で持って帰る」
「そうですか?」
「うむ。ではまたな、黛……と、直江?」
「ん?」
「……この服は、また誘われたときに着てくることにするのじゃっ!」
そう言うが早いか、心はクルリと背を向けて迎えの車へと走り去っていった。
見送りながら、まゆっちが俺にささやく。
「……大和さん、またお誘いしましょうね」
「俺はもう来ないよ。今日はまゆっちに頼まれたから特別」
「そうですか?……フフフ……なんだか、お二人とも可愛いです」
まゆっちにからかわれて、でもそれがそんなに悪い気がしない。
朝とはまったく逆の気分に心変わりをして、寮へ帰っていく俺だった。
おしまい
1枚のラフから妄想の翼がどんどん広がっていくのは自分でも楽しかったり
乙
何だよこの心様可愛いすぎるだろ……
GJです!
心が洋服着るイベント、こんな感じだと嬉しいですね。
Sでは、まゆっちと心の友情話にも期待大です。
乙
ンデ期って感じの二人がかわいいな
まゆっちがリア充になっていく
松風がリア獣になっていく
投下しますね
312 :
処理・1:2011/02/03(木) 23:01:03 ID:ci4dl4Eu0
「あー、これは残してもいいかなー」
「だな。この胸とか、タマランぜ」
秘密基地では、俺、ガクト、モロの3人が
恒例となった処分エログッズ選定会議を行っていた。
「……さっきから、処分に回すのが増えてないよね」
選定しながら、つい鑑賞してしまう。鑑賞すると「残そう」と思ってしまう。
なんだかんだいって、皆エロかった。と、いきなりバァン!とドアが開く。
「オース!あれ、何やってんだ?」
「うおビックリしたぁ!なんだ、キャップか……」
「なんだ、はねーだろ……ああ、エログッズの処分ね」
キャップはつまらなさそうにソファに座ると
ペラ、と処理する予定のエロ本の表紙をめくりそのまま読み始める。
「あれ、こういうの読むんだキャップ?」
普段なら「うわ、グロいなー」とか言って放り出すのに。
「読むっていうか、鑑賞だな。
キレイな体を撮ったキレイな写真は、俺もいいと思うぜ。
ほら、こういうのとかけっこういいんじゃね?」
キャップが開いて見せたのは
プロポーション抜群の金髪モデルのヌード写真満載の雑誌。
キレイな写真だが、あまりエロくはないので処分される本だった。
313 :
処理・2:2011/02/03(木) 23:10:11 ID:9GLGXzhi0
「キャップも、まるっきり女に興味なしってわけじゃねえんだなー」
ガクトもモロもちょっと驚いている。もちろん、俺も。
「ああ、このモデルなんか、引き締まってていいよな」
「そっか、こういう女の子が好みなんだね」
「足も長いし、走ったら速そうだぜ!」
……興味の方向がちょっとズレてるような。
女の子であっても、恋愛とか、性欲の対象じゃないんだな。
ちょっと切り口を変えてみよう。
「キャップはさ、将来家庭を持つとしたら、どんな女性がいい?」
「家庭なぁ……ちょっと前までは、母ちゃんみたいな女の人がいいな、と思ってた」
「……」「……」「……」
「あれ、なんで黙るの?」
「確かにキャップの母ちゃん美人だけどよ……」「実の母はマズイよね」
まあ、そういう対象じゃないとは思うが……
「っと、俺バイトだからそろそろ行くわ。
エログッズ、キチンと処理しといてくれよ、女子がウルセーから。じゃなー!」
来たときと同様、唐突にキャップは去っていった。
314 :
処理・3:2011/02/03(木) 23:14:14 ID:9GLGXzhi0
「じゃ、これだけ処分な。おーい、クッキー!」
下の階を掃除しているクッキーを呼ぶと
すでに察しているのか第二形態になってやってきた。
「やれやれだな。たまには、春画以外のものを裁断したいものだ」
「今回はDVDもあるぞ」
「いや、切ったら血が出るような……まあいい」
部屋の隅でクッキーがエログッズ処分を始める。
と、ガクトがため息交じりにつぶやいた。
「しかし、キャップもいくら女に興味ないからって
嫁にしたいタイプが自分のカーチャンみたいな人って……なあ」
まあガクトの場合はまた母親が強烈だしな。
「大和、ちょっと気になるんだけどさ」
「ん?なんだモロ」
「その……いくらキャップの心に性欲がなくても
体のほうはもう大人なわけじゃない?溜まるモノは溜まるはずだよね……?」
「それはそうだな」
「やっぱり、その……処理してるのかな?」
一瞬、皆が黙り込む。
キャップが……性欲処理?
315 :
処理・4:2011/02/03(木) 23:18:15 ID:9GLGXzhi0
「大和は同じ寮住まいなんだから、その辺気付かない?」
「いやいや、流石にそこまでプライベートには踏み込まないぞ」
「つーかよ……やり方知らねーんじゃねーか?」
確かに。2年始めのオリエンテーリングで
ヨンパチが持ち込んだコンニャクを食おうとした男である。
「でも、それだと溜まった結果
夜中にコッソリとパンツを洗うハメになるよね……」
「うわ、カッコワリイ」
夢精しちゃってパンツ洗いか。
しかしキャップがそういう行動をとった記憶はない。
まあ隠れてやるだろうからそれで気付かないのか……待てよ。
「なあクッキー、お前キャップと同じ部屋にいるんだから
キャップがそういうのどうしてるか知らないか?」
「おお、そうだぜ!しかも眠らないんだから
夜中でもゴソゴソやってりゃ気付くしな」
「……ノーコメントとさせてもらおう。
これは、名誉に関わることだからな」
「ち、ノリ悪ィな。しかし、わかんねーな。自分で処理しているのか……」
「それとも、パンツに漏らしちゃってるのか……」
果たしてどちらなのか、謎は深まる一方だった。
316 :
処理・5:2011/02/03(木) 23:22:15 ID:9GLGXzhi0
事実は、どちらでもなかった。
「マッタク、他人事だと思って気軽に言ってくれるよ」
その夜。部屋で寝る前のキャップにクッキーが愚痴をこぼす。
「んー?何かあったの?」
「昼間、ちょっとね。まあボクのことじゃないんだけど」
「ふーん……ふぁ〜あ……なーんかやたら眠いわ。じゃ、おやすみー……」
布団に入るが早いか、すやすやと寝息を立てはじめる。
「まったく、世話の焼けるマイスターだよ」
そう言うと、スルスルとパジャマのズボンとパンツをずり下ろす。
「でもボクは……『ご奉仕ロボ』だからね」
寝る前のお茶に密かに睡眠薬を入れておいたから、目覚める心配はない。
たとえ、どんな刺激があったとしても。
今までのように。これからもそうであるように。
数分後。
「…………うっ……むにゃ……」
手を見る。
白濁した粘液が、マニュピレーターに絡みつき、滴る。
「……最低だ……俺って……」
おしまい
最後のセリフを緒方さんボイスで脳内再生してもらうためだけに書いた
乙って
ちょwクッキーww
乙
中の人ネタかw
クッキー×キャップとか腐大歓喜…なのか?
乙です。
母親に似た人を好きになるパターンもありますが、キャップはどうなんでしょうね…?
オチですが、京とクリスは喜びそうですが…百代は「何故美少女形態でやらない!!」とか言いそうです。
乙
これはヒドイw
クッキーは男にカウントしていいのか…?
それともロボ萌えとかそっちの領域か
324 :
障害・1:2011/02/24(木) 22:58:46 ID:x10TTt4f0
土曜日の昼下がり、島津寮をマルギッテが訪れる。
もちろん俺に会いにきたのだが
「あ、マルさん!」「こんにちは、クリスお嬢様」
……他の皆は気をきかせて外出したのに
クリスだけはいくらそれっぽいことを匂わせても
一向に出かけてくれなかったのだ。このKYめ。
マルギッテが来た手前、無理矢理追い出すわけにもいかないので
とりあえず3人でリビングで茶などすすりながら
「そういえば、軍服じゃないマルギッテって見たことないな」
ふと気づいたそんなことを、そのまま口に出してみた。
当然、今日も軍服である。
「……水着なら、見たことがあるでしょう?」
「それ言ったら下着姿も素っ裸も見てるからなー」
「ぶはっ!?」
クリスが飲んでいたお茶を盛大に吹く。
「お、お、お、お嬢様の前で何を言うんですかッ!」
「い、いや、いいんだマルさん。
その……ふ、二人は恋人同士なのだから、そういう姿も……」
自分で言って顔を赤くするクリス。
スルーして話を続ける。
325 :
障害・2:2011/02/24(木) 23:06:09 ID:x10TTt4f0
「そういうんじゃなくて、なんていうか……
もっと普段着なマルギッテも見たいんだよ」
マルギッテは軍人であることにこだわりを持っている。
それは別にかまわないのだが
二人きりのときは、軍人であることを忘れてほしいのだ。
「見たい、と言われても、そんな服は持っていません。諦めなさい」
むう。残念だが、持ってないんじゃ仕方がない。
いずれちょっとずつ買い揃えてみるにせよ、今日は無理っぽいな。
諦めかけたときだった。
「マルさん、大和の服なら着られるんじゃないか?」
「よし、今までで一番ナイスな発言だクリス」
確かに、俺の方がちょっと背が高い程度なので、多分いけるだろう。
男物というのがちょっとなんだが
いきなりフリフリの可愛い系を着せるよりは
マルギッテも抵抗なく受け入れてくれるんじゃなかろうか。
「別にこのままでもいいと思うのですが……」
「ダメだぞマルさん。彼氏ができたんだから
少しはお洒落にも気を使わないと」
「そうそう。俺だってもっとマルギッテには可愛くなってほしいし。
じゃあ俺の部屋で、適当なの選んでみようか」
「仕方がありませんね、もう……
では、ちょっと着替えてみますのでお待ちください」
326 :
障害・3:2011/02/24(木) 23:14:39 ID:x10TTt4f0
二人で俺の部屋で服を選ぶ。
「動きやすい服でお願いします」
「んー、Tシャツとジーンズならいいかな……」
以前買ったノースリーブのタンクトップがあった。
それほどマッチョでもない俺には似合わないのでほとんど着なかったが
ここにきて出番が来たようだ。
「これと……これでいい?」
「まあ、それなら着替えてもいいです」
よし、多少なりとも露出の多い服を着せられそうだ。
が、渡された服を手にマルギッテはただ立っている。
「どしたの?」
「あの……着替えるのですから、部屋を出てもらいたいのですが」
「なんでさ。お互い、尻の穴まで見た仲だぞ」
「そ、そういうことを口に出して言うものではありません!
たとえ尻のあ……愛をかわした相手でも、着替えとかトイレとかは
見られるのは恥ずかしいものなのです。少しは女性心理を理解しなさい」
そういうもんなのか。確かに、そういう恥じらいはあったほうがいいが。
「じゃ、出てるから何かあったら呼んで」
「子供じゃあるまいし、たかが着替えで何もあるわけないでしょう」
327 :
障害・4:2011/02/24(木) 23:29:00 ID:x10TTt4f0
『あの……大和、そこにいますか?』
数分後。前言に反して、ドア越しにマルギッテが俺を呼ぶ。
「何?」
『ちょっと……手伝ってもらえれば、と思うのですが』
「子供じゃあるまいし、たかが着替えで手伝う必要ないでしょ」
『もう……入らないんです、ジーンズが』
あれ?そんなに体型違わないはずだけどなぁ。
『もうちょっとで入りそうなので、手伝って引っ張ってもらえますか』
「じゃ、部屋入るぞ」
ドアの向こうで待っていたマルギッテは
上はすでにタンクトップに着替え終わっていた。
むき出しになった首筋から肩のラインが艶かしい。
豊かな胸の盛り上がりが、薄手の生地越しにハッキリとわかる。
で、下は……俺が渡したジーンズがヒップに引っかかって
黒い下着が覗く程度のところでそれ以上上がらず止まっていた。
それを何とか引き上げようとマルギッテは悪戦苦闘しているのだった。
「マルギッテ、お尻大きかったんだな」
「そんなことはありません!普通です!
だいたい、男と女では体型が違うんです!
とにかく、見てないで手伝ってください!」
328 :
障害・5:2011/02/24(木) 23:38:39 ID:x10TTt4f0
しばらく二人でアレコレやってみたが、マルギッテのお尻は強敵だった。
「もうこれローライズってことで通せよ」
「こ、こんな下着が見えてしまうような格好はイヤです」
チラ見えする下腹部と下着を手で隠そうとしているが、無駄な努力だったりする。
そのままだと裾を引きずってしまうので
ロールアップして何とかそれっぽくはなった。
「いいじゃん、俺とクリスしかいないんだし。
あんまり待たせても何だから、いったんリビング戻ろうぜ?」
「ああ、クリスお嬢様……ふしだらな格好のマルギッテをお許しください」
リビングに戻るマルギッテの尻を後を歩いて見ていると
ムラムラくるものがある。たしかにふしだらかも。
だが、リビングに戻ってみても、許しを請うべき肝心のクリスはいなかった。
代わりに置手紙が。
『出かけてきます。後は二人でごゆっくり。 クリス』
えらいぞクリス、空気を読むことを覚えたか。
ホッとしたかのようにため息をつくマルギッテを、後から抱きしめる。
途端に、ふわっと、清潔感を感じさせる空気に包まれた。
「……石鹸の匂いがする。お風呂、入ってきた?」
黙ったまま、マルギッテはコクリとうなずいた。
それを「OK」のサインと受け取って、俺は手を動かし始めた。
329 :
障害・6:2011/02/24(木) 23:54:07 ID:x10TTt4f0
後から手を回し、タンクトップをたくし上げて手を差し入れると
弾力のある盛り上がりを、ブラジャーの上からそっと包み込む。
もう一方の手で、むき出しになった滑らかなお腹を撫でていく。
形のいいオヘソから、さらに下へ。
上がりきらないジーンズの下に、黒い下着が覗いている。
「ずいぶん大胆な下着だね」
「……たまたま、です」
下着のラインを指先が越える。やがて柔らかな茂みの感触が伝わってくる。
「お風呂にも入ってきてるし、マルギッテもその気で来てくれたんだろ?」
「それは……そのときになって恥をかかないように、です」
「それは、期待してたってことでいいのかな?」
「……ご想像にお任せします」
こねるように乳房を揉んでいた手のひらに
ブラジャー越しでもはっきりとわかるほどに先端の感触が感じられる。
「もうこんなに先っちょ固くして。いやらしいぞ、マルギッテ」
「そ、んッ……なことは、ありません」
下腹部に伸ばした指先が、熱く湿った亀裂に辿りつく。
「あ、ぅ、っ!」
「下だってこんなに濡らしてる……やっぱりマルギッテはいやらしいなぁ」
330 :
障害・7:2011/02/25(金) 00:02:34 ID:x10TTt4f0
「……いやらしい女は……キライ、ですか……?」
首筋に舌を這わせる俺に
息を荒くしながら、そんなことをつぶやく。
「質問を質問で返すけど
スケベな男はキライなんじゃなかった?」
指を、入れる。
ぬるりとした粘膜が絡みつく。
「は、うっ!……キライ、でした……
でも、今は……スケベな貴方が……好き、です……」
「俺も、いやらしいマルギッテが好きだよ。だから、ほら……」
ジッパーを下ろし、期待にはちきれそうな昂ぶりを引きずり出すと
マルギッテの手をとって、握らせた。
「ああ……もう、こんなに……」
マルギッテがゆるやかに強弱をつけて握ってくる。
鈍い快感が背筋を上ってきた。
背中に覆いかぶさったまま、尻に引っかかったままのジーンズと一緒に
もうグショグショになった下着を尻が全部出るところまで下ろした。
「リビングで……こんなところで……してしまうんですね、私たち」
「そうだよ。一緒に、もっといやらしくなろう、マルギッテ……」
濡れそぼつ入り口に、先端をあてがった。
331 :
障害・8:2011/02/25(金) 00:35:44 ID:w3jFCn2m0
「ちょっとスマン、財布を忘れてなかった……か?」
待て。何故クリスがいる。
何故リビングの入り口で固まってこっちを見ている!
「わ、うわ、うわわわわわわわわ!?」「お、お嬢様……!?」
慌てて体を離し、勢いよくジーンズを引っ張りあげるマルギッテ。
体を離されて、まだ上向きな愚息が丸見えになる。
「う、わ……」
「こっち見んな」
窮屈なままだが、そそくさとせがれを仕舞いこみ、テーブルの上を見る。
確かに、ちょっと見覚えのある財布が置きっぱなしになっていた。
「これか?」
「そ、そう、それだ!その、外でいなりでも買って食べようと思ったのだが
いざ支払いというところでだな……!」
「財布を忘れたことに気がついて、慌てて戻ってきたわけだな」
「そう、そうなんだ!決して、その……邪魔をしようとか!
の、覗こうとか思ったわけではないのだ!
それじゃ、その……わ、私はもう行くので……ご、ごゆっくり?」
「できるかー!」
マルギッテとの恋愛、最大の障害は中将さんかと思っていたが
案外、このKY娘かもしれない。強敵だ……
GJ!!
クリスの一人称は自分
乙
何という寸どめw
ほ
な
み
ほす
339 :
名無しさん@初回限定:2011/04/06(水) 16:28:44.81 ID:FjRboWZd0
age
340 :
名無しさん@初回限定:2011/04/11(月) 16:19:10.73 ID:xjRKip8D0
あげておいてやるよ
341 :
名無しさん@初回限定:2011/04/24(日) 14:03:01.76 ID:lSattFxH0
時代
ほ
し
ゆ
345 :
名無しさん@初回限定:2011/08/04(木) 16:25:32.99 ID:tFPMmOfs0
ほしゅ
人いないなぁ
347 :
名無しさん@初回限定:2011/08/16(火) 00:01:28.75 ID:F4O0N3ux0
過疎ってんなぁ…
誰か書いてくれよ
体験版公開されたよ!
誰か書いてほしいなぁ・・・
349 :
忍法帖【Lv=1,xxxP】 :2011/10/02(日) 20:59:28.49 ID:b4md7SZ20
新キャラで書いてくれ
保守
久々
まじこいアニメ化しても伸びないな、このスレ…。
Sが出たので
なんか妄想したくなってきたわ
354 :
伊予SS1:2012/02/07(火) 05:11:15.26 ID:BV1u9XQ70
大和田さんから誘われて観戦してきた試合の帰り道。
試合は負けてしまったけれど、
応援している大和田さんは七浜ベイへの愛が溢れてて輝いていた。
「大和田さんは本当に七浜ベイが好きなんだね」
「あ、ごめんなさい!? やっぱり気持ち悪いですよね、あんな必死に応援しちゃうなんて」
「そんな事無いよ。何にでも一生懸命な女の子は素敵だと俺は思うよ」
「そ、そうですか?」
「うん。そうじゃないと明日も一緒に観戦しようだなんて誘わないよ」
「よかったです。明日はきっと勝てると思うので!」
こんな気持ちで応援してくれる人がいるなら、野球選手も本望だろうな。
他人との話題作りの為に試合観戦していた俺とは大違いだ。
「七浜ベイを応援するようになったきっかけは両親の影響だっけ?」
「そうですね。昔から家族の話題はそればっかりでした。
それと近年だと考えられないかも知れませんが、昔の七浜ベイはそれはもう強くて。
十年前の日本一になった時は子供心ながら感動しました」
「ああ、それなら知ってる。マシンガン打線とか言われてた頃だっけ」
「はい! 今思えばあの日本一がファンになる決定打だったかもしれません」
ただ最近はBクラスが常連になってしまっている七浜ベイ。
彼女はそんな状況でもファンを止めようとは思わないのだろうか。
「なんちゃって。今言ってもウソみたいですよね」
「そんなことは…」
355 :
伊予SS2:2012/02/07(火) 05:13:30.49 ID:BV1u9XQ70
「でもいいんです。勝つからファンをしている訳じゃないですから、私」
「え?」
「もちろん勝って勝って日本一になってくれたら一番嬉しいんですよ?
けど負け試合の采配について家族とあれこれ言ったり…
ダメだった試合でもファインプレーや若手の活躍もあったりします。
オフシーズンでもドラフトを見たり来期の構想を一人で妄想したり。
そんな時間もたまらなく楽しいんです」
「もう子供を応援する親みたいだね」
「ははは、そうかもしれません。
実際年期の入ったファンの方はそうなるみたいですし」
「それで先輩、もしよかったらなんですが…」
「どうしたの?」
「これから学校でふと会ったりしたら話しかけてもいいですか?
七浜ベイの話もそうですが、先輩ともっと話してみたくて」
「俺でいいならどんどん話しかけて。
試合中継が終わった後メールとかでもいいし」
「本当ですかっ!? …でも私興奮してると変なこと書いてしまうかも」
「大丈夫。その時は俺のメールも変なこと書くから」
「も〜なんですかそれ」
「送っていただいてありがとうございました先輩」
「ここでいいの? 家の前まででも…」
「大丈夫です。私の家すぐそこなので」
「そうなんだ。それじゃまたね大和田さん」
「はい。それではさよならです先輩」
そう言って大和田さんは歩き出していく。
俺も金曜集会に今から顔出すか…
「せんぱ〜い!」
「?」
振り返ると大和田さんが少し離れた場所で手を振っている。
何か忘れ物でもしたのか?
「今日はありがとうございました。
先輩と観戦出来て本当にうれしかったです!
明日も約束してくれて夢みたいです。
また二人で観戦しましょうね、それじゃ!」
そう言い終わると大和田さんは照れたように走り去る。
恥ずかしがり屋なところはまゆっちの友達らしいな。
とりあえずメールでも送るとしよう。
『大和田さんへ、俺も楽しかったよ。
明日だけとは言わずに、また一緒に観戦行こう』
メール送信、と。
今日の集会ではまゆっちと大和田さんの話題で盛り上がりそうだな。
いいと思うけどせんぱーい!で芸人の女装デブ思い出しちまったwww
・もしも弁慶がコンビニの店員だったら
ティロリローン
弁慶「いらっしゃいませ〜 あーだるい…」
与一「すいませんお湯入れてもらえます?」
弁慶「え…私? 私がですか? マジですか…いや別にいいですけど」
弁慶「あーすごくダルい…あっお客さんがじゃないですよ こんなサービス考えた人がですよ」
弁慶「誰が考えたんスかね…ホントダルいスよ」ジョボボボ
弁慶「はいはいおまっとさん」
与一「あ、ありがとうございm「そぉい!!」バシャーン
弁慶「ありがとうございましたー」ティロリローン
与一「何で俺ラーメンを容器ごと頭にぶっかけられたんだ?…ハッ!まさか組織の人間か!?」
・もしも弁慶がファミレスの店員だったら
弁慶「おまたせしましたー!ハンバーグランチです!」
百代「え〜と…これが3番でこっちが…」
弁慶「あっ先輩私運びますよ!」
釈迦堂「おーい姉ちゃん、コーヒー頂戴」
弁慶「ハーイ!すぐお持ちします!」
大和「新人の弁慶さん素敵だよな」ヒソヒソ
ガクト「ああ、覚えも早いし可愛いし 俺様狙っちゃおうかな」ヒソヒソ
弁慶「お待たせしました!ラーメンのお客様?」
与一「あっ俺でs「そぉい!!」バシャーン
・もしも弁慶がラーメン屋の店員だったら
大和「ミソ大盛りチャーハンギョーザ2です!」
弁慶「あいよ!」
ガクト「ネギチャーシューとんこつ油少なめネギミソ2!」
弁慶「あいよ!」
ガクト「塩コーン2ミソ1とんこつ1ギョーザ3チャーシュータンメン油そば!」
弁慶「あいよー!」
与一「あれ全部覚えてるのかい?」
心「たいしたものじゃ」
歴史教師「さすがでおじゃる」
弁慶「そりゃあ20年もやってますからね ヘイお待ち!」
弁慶「そい!そい!!そおぉい!!」バシャゴシャビチャーン
・もしも弁慶が先生だったら
与一「やったァー! 今日の給食はラーメンだ!」
弁慶「鍋ごとそぉい!!」ザッパーン
・もしも街で困ってる人を見かけたら
与一「くそ…こんな地図じゃ組織の場所なんか一生わかりゃしねぇ…」キョロキョロ
弁慶「一生探してろ!!」バシャーン
・もしも最初からラーメンをかぶって歩いてる奴を街で見かけたら
与一「…」スタスタ
弁慶(何かぶってんのコイツ…気持ちわるっ)
もしも弁慶が刑事だったら
大和「ち、近寄るんじゃねぇー! 来たら人質の命はねぇぞ!!」
弁慶「無茶するな与一!戻れ!」
与一「これ以上罪を重ねるな兄貴 兄貴はこの汚れきったセカイに少し狂わされちまっただけなんだ…」
与一「今ならまだ間に合う さぁ、銃をこっちへ…!」
大和「うるせぇー!!来るな来るなぁ!来るなぁぁぁ!!」パアァン
与一「ッ!!!兄…貴…」
弁慶「よ、与一…?」
・
・
弁慶の脳裏に走馬灯のように浮かび上がるいろんな与一…
笑いながらラーメンを被っている与一…
射撃中にラーメンを被っている与一…
厨二ポーズでニヒルにラーメンを被っている与一…
もう与一とはそんな風に生きていけないのだろうか…
いいやそんなことはない
私が…私がそんなことは許さない!!!
・
・
弁慶「与一ィィィ!!!」
与一「べ、弁k「そぉい!!」バシャーン
ごめん、よくわからない
工作板でここに誘導されてた人なんだろうけど
こんなのをあっちに貼ってたら総叩きになってそうだなw
ID:El6K1Mn00は精神病んでそう
これが投下の増えるきっかけ……にはならないか
ほぼ1年ぶりの投下
マジこいS、メイド達との未来の続きな感じで李静初ルートっぽいのをを
正式に九鬼家の従者として働き始めて、今日が初めての休日。
久々に私服に袖を通し部屋を出ると
いきなりヒュームさんとクラウディオさんに遭遇。
「おはようございます」
「フン、今日は非番か。赤子の分際で休みなど贅沢なことだ。
遊んでいる暇があったら、せいぜい己を磨くことだな」
「まあ若いうちは羽を伸ばすことも必要でしょう。
紋様には私とヒュームでつきますからご心配なく」
「はい、よろしくお願いします」
クラウディオさんの言うように、たまには息抜きもしておこう……
とは思うのだが、特に何をするというあてもない。
まあファミリーのほうに顔を出すか、と思い廊下を歩いていると
「おや。あなたも非番ですか、大和」
私服姿の李さんに声をかけられた。
黒のスラックスに淡いブルーのブラウスというシンプルな服装が
李さんが着るととても決まって見える。
私服、ということは李さんも休みなのか。
「はい、今日が初めての休みです。李さんはどこかにお出かけですか?」
「ええ、ちょっと散歩がてら、七浜の中華街まで」
そう言うと、チラリと俺の顔を見て
「よかったら、一緒に行きませんか?」
散歩で七浜はちょっと遠い気もするが、せっかくのお誘いだし
ファミリーのほうも特に予定していたわけではない。
素直にご一緒させてもらうか、というところで思い出した。
「中華街ってひょっとして、シューマイの食べ歩き、ですか?」
「おや。私の好物、ご存知でしたか」
「ええ、あずみさんに聞きました」
暗殺稼業のころは匂いで気取られるといけないので食べられなかったとか何とか。
「まあ、平たく言えば食べ歩きで正解です。
ただ、あまり食い気ばかりに走るのもどうかと思い
ちょっと色気の補充ということであなたを誘ってみたわけです」
色気の補充って、俺が李さんの色気の対象ってこと?
……考えすぎかな。普段は俺、イジられてるだけだし。
「それなら、七浜まで行かなくても
川神で美味いシューマイ出す店知ってますよ」
クマちゃんに教えてもらった、隠れた名店があるのだ。
散歩で食べ歩きなら、川神でのんびりのほうがいい。
「川神で、ですか……これでも、川神の中華料理店は
あらかた知っているつもりですが、どの店のことでしょうか?」
「あ、中華料理屋じゃなくて、普通の定食屋なんです。
そこのシューマイ定食のシューマイが絶品なんですよ」
「定食屋……それは盲点でした。案内してもらえますか?」
こうして、二人で川神の街へ。
いちおう並んで歩いているわけだが
李さんはまるで俺など存在していないかのように
まっすぐ前を見たまま黙々と歩いていく。
が、不意にチラ、とこちらに視線だけ向けると
「……私がどうかしましたか」
しまった、気になってついマジマジと見つめてしまっていた。
「あ、いえ、その……俺とじゃ楽しくないのかな、って」
なんか表情硬いし。
「そんなことはありません。そもそも、誘ったのは私です」
「でも、ぜんぜん喋らないし、俺のほうも見ないし」
「……緊張しているんです。それぐらい、察してください」
「はあ」
「あなたのほうこそ、つまらないのではありませんか。
こんな、無愛想な女が一緒では」
「いえ、そんなことは。それに、言うほど李さん無愛想じゃないでしょ」
「そうですか?クラウ様にも、もっと愛想よく、と
いつも注意されてしまうのですが」
「あー……まあ、対外的に見せる表情としてはそうかもですね。
でも、しばらく一緒にいればそうでもないって気づきますよ」
確かに、李さんは表情が豊かとは言えないが
だからといってまるっきり無表情なわけじゃない。
最初はよくわからなかったけど
今はそこから感情の起伏を読み取ることだってできる。
「まあ、俺が人の顔色をうかがうのが得意ってのもありますけど」
「ああ、確かにあなたはそういうところがありますね。
では、私が今どんな気持ちでいるか、わかりますか?」
「ええと、喜んでます……よね?」
「ええ。とても」
「じゃあ、こうしたら……どうなるかな」
思い切って、李さんの手をとり、握る。
驚き。はにかみ。そんな表情を垣間見せながらも
俺の手を握り返してくる李さんの顔は
今、誰が見てもはっきりとわかるほどの笑顔だった。
「意外に大胆ですね。けど、顔が真っ赤ですよ」
う。姉さんや京とのスキンシップからすれば
これぐらいどうってことないはずなのだが
俺のポーカーフェイスもまだまだってことか。
「えーと、そこの角を左です」
「ごまかしてる……かわいい」
……俺ってやっぱり年上にイジられるなぁ。
「はい、ここです」
昼にはちょっと早いけど目的地の定食屋に到着。
「これは……ずいぶんとその……レトロなお店ですね」
木造2階建ての古い家屋の1階部分が
老夫婦が二人で切り盛りする定食屋になっている。
場所も路地裏で、地元の人ぐらいしか客がいない。
「すいません、あんまりキレイな店じゃなくて」
「いえ、私も九鬼に来るまでは
そういい暮らしをしていたわけではありませんから。
むしろ馴染み深くていい感じです」
暖簾をくぐって店の中へ入り
お目当てのシューマイ定食を注文。
やがてお婆ちゃんがお盆に載せた定食を運んできた。
「お待ちどうさま。熱いから、気をつけてね」
お。わかりにくいけど、李さんこれは期待している表情。
「では、いただきます」
さっそくシューマイを一つ口に運ぶ。
もむもむと、小さくて形のいい口が動くたびに
その表情が、パァッと花が開くように喜びに満ちていく。
わざわざ感想を聞くまでもないかな。
李さんの表情に見惚れながら、俺も自分の分のシューマイに箸を伸ばした。
「ごちそうさま。本当に、美味しかった。
ありがとう、いい店を教えてくれました」
李さんはここのシューマイがたいそう気に入ったようで
帰り際、店のお婆ちゃんに名刺を渡していた。
渡されたほうは目を白黒させていたが。
食事が済んでしまうと、後は特に予定もない。
が、せっかく李さんと一緒なのに
このまま大扇島に帰るのはもったいない気がした。
もう少し、この人と一緒にいたい。
「いえ、俺も人から教えてもらった店ですから。
それより李さん、この後の予定は?」
「静初」
「は?……ジン……チュ?」
「私の名前です。李は苗字。名前が静初(ジンチュー)。
名前で呼んでもらってかまいません……その、二人だけのときは」
あ、照れてる。俺もだけど。
嬉しいけど、年上でしかも上司の女性を呼び捨てもどうか。
「じゃあ、静(ジン)姉と呼びます」
「はい。では大和、もうちょっと遊んでいきましょう」
「はい!」
こうして、二人での休日をマッタリと楽しんだ。
「ただいま戻りました」「お疲れ様です、ステイシーさん」
日の暮れかかる頃、大扇島に戻る。
入り口警護のステイシーさんが怪訝な顔で俺を見た。
「何だ、お前も休みだったのか?な、何で二人仲良く帰ってきてるんだよ!?」
「いや、元からそういうスケジュールでしたけど」
「ファック!李テメェ、土壇場で休み交替してくれって、これが狙いか!?」
……え?休みを交替?
「偶然です。ね、大和」
「静姉が休みを俺の休みに合わせてずらしてきたってこと?」
「ですから、偶然です。あと、『静姉』は二人きりのときだけに。
まあ、ステイシーならいいですが」
「くっ……なんか呼び方まで馴れ馴れしくなってるし!二人で何してやがった!?」
「ただの散歩です。が、二人の仲は進歩しました」
「……」「……」
「……散歩で進歩。無理しないで、笑ってもいいんですよ?」
「笑えるかぁ!抜け駆けなしとか言っといてどういうことだゴルァ!?
テメェ大和、次の休みはいつだ!?さっさと教えろー!」
やれやれ。九鬼に来ても、周りが騒がしいのは変わらないのかなぁ、俺。
おしまい
李はラストでてへぺろをしてる顔グラとかあったらいいな、みたいな
ゲーム的には、次の休みでステイシーに引っ張りまわされて
その次の休みでどちらかを選んでルート確定って感じで
乙ですー
二人の光景が浮かんでくる様ですな
李さんは私服の中にも暗器を隠しているんでしょうね
ステイシーとの休日デートは百代と似た感じになりそうだw
乙
李可愛いけどちょっと黒いなw
小雪√、反乱鎮圧後の義経とマープルで投下
ヒューム・ヘルシング。クラウディオ・ネェロ。そしてミス・マープル。
造反に失敗した3人の従者が
九鬼家の裁きを受けるために、長い廊下を並んで歩く。
「アンタらには、迷惑かけちまったねぇ」
「気にするな。全て承知の上でのことだ」
「そうですねぇ……もし、詫びる必要があるとすれば……彼女たちに、でしょうか」
クラウディオにそう言われて、顔を上げて見る廊下の先に
源義経、武蔵棒弁慶、那須与一、葉桜清楚……クローンたち4人が立っていた。
「何してるんだい、アンタたち。
もう寝る時間だろ、さっさとお休み」
恨み言の一つも言われるだろう。それは仕方がない。言い訳もできない。
受け止めていかねばなるまいと、足を止めたマープルに
顔を上げた義経が言ったのは意外な言葉だった。
「義経も、罰を受けたい」
「……はぁ?何を馬鹿なことを。
いいかい、アンタらは、あたしに言われて無理やり戦わされたんだ。
もう、お咎めはなし、と決まってるんだよ」
「でも……でも、義経は自分の意思でマープルに味方した!
世話になったマープルに恩を返すのは当然だと思った!
……結果、それは九鬼を裏切ることになったから……
だから、やっぱり義経も罰を受けるべきだと思う」
「馬鹿な子だね……たいした世話など、しなかったろうに」
なおも義経は食い下がる。
「そんなことはない!マープルには、いろいろよくしてもらった!義経の恩人だ!」
「そりゃあね、『恩を売って』おいたのさ。
計画発動のときには、すんなりあたしに従ってもらうためにね。
あんたはね、もうちょっと人を疑うってことを……」
「嘘だ……嘘だ!だって……だって、義経は覚えている!」
「覚えている……?何をだい」
「義経は……授業参観には必ず来てくれて、教室の後ろで義経たちを見ていた
マープルの笑顔を覚えている!
誕生日に焼いてくれた、マープルの手作りのケーキの味を覚えている!
山の中で迷子になって、疲れて動けなくなった義経を迎えに来て
背負ってくれたマープルの背中の温かさを覚えている!覚えているんだ!」
「じゃあ、忘れるんだね」
「!……嫌だ……嫌だ!忘れない!義経は忘れない!」
「お黙り!忘れるんだ……忘れるんだよ!
いいかい、アンタらは、いい人ぶってるあたしに騙されてたんだ。
そういうことに、しておかなきゃあいけないんだ!
だから、これからはあたしのことは忘れて……自分の好きに生きるんだ。
弁慶、与一、清楚。義経を部屋まで連れていきな。部屋から出すんじゃないよ
帝様に直訴でもされたら、面倒なことになりかねないからね」
弁慶たちに引きずられるようにして部屋に戻る義経の叫びが廊下に響く。
「忘れない!義経は、絶対、忘れないー!」
「馬鹿な子だねぇ……本当に、馬鹿な子だ……」
義経の姿が見えなくなって。声も聞こえなくなって。
やっとマープルが口を開く。
自分がいなくなっても、ちゃんとやっていけるだろうか。
それだけが、今のマープルの心残りだった。
「しかしまあ、子供ってのは
つまらないことをいつまでも覚えているもんだねぇ」
「お前は覚えていないのか、マープル?」
「あたしを誰だと思ってるんだい。『星の図書館』だよ。
何一つ忘れるもんか。覚えている。覚えているさ……
ただね……思い出さないようにしてたんだ。
あの子達を計画の駒にする。計画のため、世界のため、と決めたとき、私情は捨てたんだよ」
「……世界のため、ですか。貴女もあの子達も、世界の一部でしょうに」
「そうだね……馬鹿なのは、あたしのほうだった。
さ、すっかり時間を食っちまった。
帝様をこれ以上お待たせするわけにもいかないよ、さっさと行こうじゃないか」
だが
待ち受けていた処罰は思いのほか軽く、驚き、呆れる。
それでも、閉じかけた「星の図書館」を
少しだけ、まだ開けておくことができるのならば。
「帝様。もし……もしもお許し願えるなら……
最後に一つだけ、お任せいただきたい仕事があるのですが」
「……言ってみな」
ガンガンガンガンガンガン!!
「うわぁっ!?て、敵襲か!?」
翌朝。けたたましく鳴り響く金属音で飛び起きた義経に怒声が飛んでくる。
「なーにが敵襲だい。ほーら朝だよ朝!さっさと起きなー!」
目を覚ました義経の目に飛び込んできたのは
部屋の入り口で割烹着に身を包み、手ぬぐいを姉さん被りにして
手にした鍋をお玉で叩いている……マープルの姿だった。
「え……マープル……?ど、どうして……?そ、その格好は?」
「どうしてもこうしてもないよ。今日からね、あたしゃあんたらの世話係を仰せつかってるんだ。
ほら、ボーっとしてないで、さっさと起きて顔洗っておいで!朝稽古があるんだろ!
そんでもって、弁慶と与一を起こしておいで!清楚はね、もうちゃんと起きてるよ!
シャンとしなシャンと!稽古がすんだらすぐ朝ごはんだからね!遅れるんじゃないよ!」
機関銃のようにまくし立てるマープルに、わけがわからない義経が問いかける。
「マープル?あの……処罰は、どうなったのだろう?」
「さあね……おおかた、この先あんたらの面倒を見ていくのがあたしの罰なんだろうさ。
ほら、お喋りしてる暇はないよ!さっさと顔洗って……ホラ、タオルタオル!」
「わ……わかった!……マープル?」
「なんだい、まだ何かあるのかい?……言ってごらん」
「やっぱり……やっぱり、義経は忘れない!これまでのことも、今日のことも!
ずっと、ずっと、義経は忘れない!」
おしまい
この後ヒュームとクラウディオが割烹着姿のマープルを見て大笑いしてしまい
お玉でポコポコ叩かれて大騒ぎみたいなホームドラマもあったりしたけど割愛
乙
義経のけなげさが泣ける
ラストは二人とも救われた感じでよかった
原作にない話の捏造が微妙
。・゚・(ノ∀`)・゚・。 乙
>>386 乙 ええ話や・・・
義経はゲーム中今一つ報われない感があったけど
こういうの読むとほっこりするわ
義経が気持ち悪いなこのSS
392 :
名無しさん@初回限定:2012/02/17(金) 15:16:42.74 ID:yodNgYqj0
Sに足りないのはクローンたちの日常なんだよな。私服すら出てないし
マルギッテアフターで1本
394 :
噛みしめる・1:2012/02/19(日) 00:02:00.45 ID:FQ1U85qR0
ガゴン!ガゴン!ギギギギゴゴゴギギギ!
……日曜日の島津寮の平穏が、不意に起こった妙な音に乱される。出所は台所か?
「うわ、うわわわわわ!?」
「火が強すぎですクリスさん、ここは中火で炒めてください」
覗いてみると、クリスとまゆっちが何やらやっていた。
料理……なんだろうか。さっきのはまるで日曜大工でもしているような音だったが。
「何やってんの?」
「お騒がせしてます、大和さん」「大和か、今ちょっとまゆっちにうわぁこぼれたぁ!?」
こっちに余所見をしたとたん、フライパンの中身を盛大にブチまけるクリス。
『クリ吉ー、そういう余裕はもっと扱いに慣れてきてからなんだぜー』
「わ、わかってる!まったく、大和が妙なタイミングでくるから……」
そう言うと、クリスは再び手にしたフライパンに集中し始めた。
「俺のせいかよ……で、何してるわけまゆっち?」
「はい、クリスさんに、料理をお教えしてるところなんです」
「ほほう。まあいい加減、クリスにも家事を分担させるのはいいことだよな」
「あ、いえいえ、これはクリスさんのほうからお申し出のあったことで」
おや、自発的な行動だったのか。
395 :
噛みしめる・2:2012/02/19(日) 00:06:25.41 ID:FQ1U85qR0
「まあ家事を覚えるのはいいけど、なんで急に習いだしたんだ?」
今までも手伝おうという意志はそれなりにあったようだが
あまりに家事スキルがなくてぶっちゃけ足手まといだったので
皆も特に何もさせなかったのだ。
「それはクリスさんも教えてくれなくて。
とにかく『理由は言えないが家事を教えてくれ』の一点張りなんです」
「いいではないか、悪いことではないのだから。
まあその、あれだ、今までは皆に任せっきりだったからな。
改めねば、と思ったんだ」
ふむ。最近、特にそのことについてクリスを責めた覚えはない。
明かす気はないようだが、何か他の理由があるとすれば
やっぱり俺とマルギッテが付き合いだしたことなんだろうか。
『見直したぜクリ吉ー。でも手は止めちゃダメなんだぜー』
「おおっと、イカンイカン。なかなか料理というのも体力がいるな」
しかし、俺がマルギッテとつきあうことと
クリスが家事を習いだすことにどんな関係があるんだろうか。
「よし、できた!どうだ、見事だろう大和!」
「おお、いい匂いで旨そう。野菜のキムチ炒めか?」
「最後に、これを……こうして……」
「まだ何かあるのか……まあ頑張れよ」
396 :
噛みしめる・3:2012/02/19(日) 00:10:34.37 ID:FQ1U85qR0
「……てなことを、昼間クリスが言ってたよ」
「そう、ですか……クリスお嬢様がそのような……」
夜遅く、俺の部屋にやってきたマルギッテは、話を聞くと複雑な表情をしていた。
「どういう風の吹き回しなんだかな」
「おそらくは、私がクリスお嬢様のお世話をしなくてすめば
もっとあなたとの時間もとれるだろうとお考えなのでしょう」
「なるほど……気を使われたわけか」
確かに、学校に通って軍の任務もこなしてクリスの身の回りの世話までしていて
マルギッテはかなり多忙だ。
「ええ。これもまた、クリスお嬢様が成長されたということなのでしょう」
「そのわりには、あまり嬉しそうじゃないね」
「そうですね……私の手が必要なくなっていくのは、ちょっと寂しくもあるのです」
「……世話を焼いたり焼かれたりだけが、絆ってわけでもないだろう」
「はい……大和」
「何だい?」
「今日は……少し、甘えたい気分です」
ぽて、と寄りかかってくるマルギッテの髪をそっと撫でる。
夏の夜は静かにふけていった。
397 :
噛みしめる・4:2012/02/19(日) 00:14:35.25 ID:FQ1U85qR0
「あ、そうそう、忘れてた……はいコレ」
「……?それは?」
「これが昼間クリスの作った料理。マルギッテの夜食用にってとっておいた」
「ありがとう、大和。では、いただきます……もぐ……う!?」
野菜キムチ炒めいなり寿司。甘辛く煮しめた袋状の油揚げの中に
野菜のキムチ炒めが詰まっているクリスの意欲作だ。味のほうもかなり斬新だ。
まるっきり食えないほどではなくなったあたりが進歩といえるだろうか。
「……私の、夜食用?」
「うん」
まあ昼間食べ切れなかっただけなのだが
捨ててしまうのも何だし、俺だけが苦しむのは不公平だよね?
「えっと……後は大和がどうぞ」
「いや俺はもう昼間コレ食べたんで」
「私はクリスお嬢様の成長ぶりに、胸がいっぱいでもう食べられそうにありません」
「せ、せめて半分ずつ」
「仕方がないですね……もぐ……う、う……
も、もう少し、お嬢様のお世話は続けたほうがいいようですね……」
いつかクリスが姉離れをするとしても、それはもうちょっと先のことのようだ。
複雑な味のいなりを噛みしめながら、ちょっと嬉しそうなマルギッテだった。
おしまい
3でしんみりと終わってもよかったけど
あえてオチをつけてみた
マルギッテ可愛いよマルギッテ
乙 いいね癒されるね
Bは子供が巣立っていく母親みたいな心境なんだろうな
>>398 乙です
確かにしんみりで終わってもいいけど
オチのあるほうがタカヒロ作品っぽいと思います
作ってるのがクリスだしw
暇だしちょっとSS書いて投稿してみようかな。
暇だしなんか書いてみるかな
妄想大友焔シナリオ投下
長めなので連投規制に引っかかったら分割になりますが
404 :
命中!・1:2012/02/20(月) 23:09:10.85 ID:BzJDHDxk0
日差しもまぶしい真夏の川神駅前。
目当ての人を探してキョロキョロしていると
後ろのほうから声をかけられた。
「直江くーん、こっちだー!」
人ごみの中、ピョンピョン飛び跳ねるようにして近づいてくる小柄な女の子。
その両腕には、巨大な荷物が二つ。
「すまん、出る改札を間違えてしまった……久しぶりだな!」
「うん、お久しぶり。すごい荷物だね……一つ持とうか?」
「あ、ありがとう……でも、重いぞ?」
「だったらなおさらだよ……うわホントに重い!これ、中身は例の大筒?」
「うむ!アトラクションで使うということで持参した!」
俺なんて一つ持って歩くだけでも腕がダルイのに
これを担いで走り回って戦ってドカンとブッ放すって
小さな体のどこにそんなパワーがあるんだろう。
「宅急便で送ればよかったのに」
「そ、そんなことはできない。これは西方十勇士としての誇りで
分身のようなものだからな。人任せにはできないのだ」
「そっか。でも、大荷物抱えたままじゃ人ごみも歩きにくいし迷惑になるから
まずは荷物置いてこようか。街の案内とかはその後で」
「わかった!よろしく、直江くん!」
405 :
命中!・2:2012/02/20(月) 23:15:13.73 ID:BzJDHDxk0
彼女の名前は大友焔。
福岡・天神館に席を置く、俺と同学年で西方十勇士の一人。
小さな体でデカイ大筒を手持ちでブッ放す、豪快な女の子だ。
この6月に修学旅行で川神へやってきたときに
学校同士の東西交流戦なんていう企画で知り合ったのがキッカケで
今では頻繁にメールをやりとりする仲だったりする。
「川神院までは遠いのだろうか?」
「そうでもない……けど、ちょっと今日は暑いねー」
「大友は、暑い夏が好きだ。何といっても、夏は花火の季節だからな!」
8月になって、川神で開かれる多馬川の花火大会に
ヘルプと研修を兼ねて、家業が花火屋さんの大友さんが来ることになって
せっかくの夏休みだから、大会前に川神に乗り込んで遊んでいくことにして
話をしたら川神院に泊めてくれることになって……というのがこれまでのところ。
「大友さんは、自分で花火を作ったりするの?」
「うん、最近、作らせてもらえるようになった。
今度の大会でも、一つ打ち上げを作らせてもらうことになっている」
なんて話をしているうちに川神院に到着。
「うわー……スゴイなー」
大友さんが大門を見上げてしきりに感心していると
「あ、来た来た。大和ー!大友ー!」
ワン子こと川神一子が中から駆け寄ってきた。
406 :
命中!・3:2012/02/20(月) 23:21:17.46 ID:BzJDHDxk0
「オッス、大友!久しぶり!」「オッス、川神!しばらく厄介になる!よろしく!」
ゴツン、と突き出した拳を合わせての挨拶。
東西交流戦では直接対決をした二人だが
古くからの友人のように気があっている。
ワン子の案内で、大友さんに用意された部屋へ向かう。
「しかし大きな家だなー」
「家、というかお寺だし、他に修行僧の皆もここで生活してるんだから
これぐらいは広くないとねー。それ、例の大筒?」
「うむ!弾も目一杯持ってきたぞ!」
そう言って荷物をバンバン!と叩く。ヤル気満々だ。
「それなんだけど……爺ちゃんが、ここで大筒の練習するのは勘弁してくれって」
「それはわかっている。練習は花火大会の会場予定地でするつもりだ。
こんな立派な建物、うっかり間違って壊してしまったら大変だからな。
その代わりといってはなんだが、川神院の稽古に参加させてもらうし」
「うん!それは爺ちゃんも大歓迎だって!
でも、砲術使いでも組み手の稽古って必要なの?」
「普通は不要かもしれん。だが、大友は……
その、弾切れしてしまったときとかを想定して、接近戦も強くなりたいのだ」
一瞬、大友さんの受け答えが歯切れが悪くなったような気がした。
まあ武術のことだから、素人の俺はあまり口は挟まないでおこう。
407 :
命中!・4:2012/02/20(月) 23:27:18.80 ID:BzJDHDxk0
案内された部屋にひとまず荷物を置いた大友さんとワン子を連れて
再び川神の街へと繰り出した。
「そろそろ昼か……大友さん、好きな食べ物とか食べたいものとかある?」
「大友は何でも好き嫌いなく食べるぞ。あ、でも沢山食べられるところがいい」
「アタシも沢山食べられるところがいいわ!」
「ワン子にはきいてない。しかし……そっか、量のあるところか」
体小さいのになぁ。やっぱり武道やってるとそうなのかな。
「あ、なんだったらそこの梅屋でかまわないぞ。大友はけっこう好きなのだ」
「え!?う、梅屋はその……やめておいたほうが……」
「?何故だ?川神は梅屋が嫌いなのか?」
「いや、嫌いというか……あそこの梅屋は入りにくいというか……」
「なんでだよ。あそこで食い逃げでもしたのかワン子」
「そんなわけないでしょ!けど……うーん……」
「変なやつだな?まあ川神がどうしても嫌なら他所にしてもいい」
「そこまでは言わないけど……」
「珍しく面倒くさいこと言うな……大友さん、もういいから入ろう」
「あ、ちょ、待ってよ大和!……もう、しょうがないなぁ……」
408 :
命中!・5:2012/02/20(月) 23:33:34.29 ID:BzJDHDxk0
「らっしゃい!3名様、お好きな……って、何だ一子か」
「えと、ご無沙汰してます」
素人の俺にも感じられるほどの威圧感を放つ店員さんが、ビミョーなスマイルで接客していた。
大友さんも、その威圧感に気づいたのか表情が強張っている。
「……え、ここ……梅屋、ですよね?」
「そうだよ?表の看板見ただろ兄ちゃん。んで俺はバイト店員」
こんな店員のいる梅屋はイヤだ……
思い出した。確か、元川神院師範代で、今は破門になってる釈迦堂ってオッサンだ。
「こ、こんなスゴイ人が梅屋の店員さん!?
さすがは川神、街中にもこんな強者が普通にいるとは……!」
大友さんが驚いている。たぶんここの梅屋がちょっと特殊なだけなのだが。
「強者ねえ……ま、んなこたぁどうでもいいんで注文よろしく」
「あ、はい、では豚丼に単品とろろでお願いします!」
「お、お嬢ちゃんわかってるねぇ!気に入ったぜ!よーし、盛るぜぇ〜、超盛るぜぇ〜!」
「じゃあ、アタシもそれで!」
「よっしゃ!一子にも超盛りな!」
「……俺フツー盛りでいいんでカレ牛ください」
「……ノリ悪ぃなお前ェ」
409 :
命中!・6:2012/02/20(月) 23:39:34.27 ID:BzJDHDxk0
「へい豚丼超盛りお待ちぃ!こちらとろろね!」
ドカンとカウンターに置かれた豚丼は
見ているこちらが胸焼けしそうなほどの大盛りだったが
「ごちそうさまでした!」
ワン子は俺がカレ牛食べ終わる前に食べ終わっていた。
一方で、大友さんはまだ豚丼と格闘している。ちょっと苦しそうだが……
「あー、ちょっと盛りすぎたか。嬢ちゃん、無理に食わなくてもいいんだぜ」
「い、いや、大友は……むぐ……沢山、食べて……
体を、大きくしなければいけないので」
「ふーん……嬢ちゃんも、何か武術やってるね?けっこう鍛えてる体だ」
「は、はい……その武術のために、体を大きくしたいのです」
ああ、それで「沢山食べられるところがいい」ってことなのか。
「なるほどな。ま、気持ちはわかる。
けどな、ちっこくても強いヤツはいくらでもいるし
それにその若さなら、体なんてまだまだこれからできてくらぁ。
俺が言うのもなんだが、あせらねえで、地道にやるのも大事だぜ」
……見た目のおっかなさほどは悪い人じゃないのかな。
「ありがとうございます!でも、せっかく盛っていただいたこの豚丼は
この大友、必ずや平らげてみせます!」
「よし!やってみなお嬢ちゃん。バケツは用意しといてやっから」
410 :
命中!・7:2012/02/20(月) 23:45:37.15 ID:BzJDHDxk0
何とか豚丼を全て平らげた大友さんだが
店を出てしばらくしたところで段々具合が悪くなってきてしまった。
近くの公園に緊急避難してベンチで休憩。
「すまない、直江くん、川神……でも、食べ過ぎただけだから
胃が消化してしまえば大丈夫だ」
「結局食べきったもんねぇ……あの量なら俺なんか半分でも足りたわ」
「けど、なんでそんなにしてまで体を大きくしたいのよ?
交流戦で見た戦闘スタイルからすると
体が大きくなって敏捷性がダウンするのはマイナスなんじゃないかしら?」
「ワン子に聞いた話じゃ、大筒を抱えたまま戦場を走り回り
敵に近づいてはブッ放していくんだっけ?」
「うん……恥ずかしい話だが、大友は、敵に近づかないと
大筒を当てられないんだ……」
「え?」「そうなの?」
「本来は、あの大筒は濠を越えて敵の城を砲撃できるぐらいの射程がある。
でも、大友が的に当てられるのはせいぜい20メートルなんだ」
「でも、あの砲撃のショックを
ちゃんと踏ん張ってた耐えてたみたいに見えたわよ?」
「もちろん、大筒を支える腕力も、反動に耐える脚力も鍛えてはいるが
大友は小さくて軽いから、どうしても発射の衝撃でわずかに体が浮いてしまう。
そうなると、踏ん張りようもないし精密な砲撃はできないんだ」
なるほど。それで衝撃にも動じないだけの体格がほしいということなのか。
411 :
命中!・8:2012/02/20(月) 23:51:38.61 ID:BzJDHDxk0
「砲撃に精度がないから、当たるところまで敵に近寄る。
多少外してもダメージを与えられるように、焼夷弾で広範囲を攻撃。
自分なりに考えていきついたスタイルだけど、本来の大筒のあり方じゃない」
仲間内じゃ「火力バカ」なんて呼ばれてるらしいけど
バカどころか考えていきついた弱点の克服法だったんだな。
「じゃあ、川神院の稽古に参加したいっていうのも……」
「うん。交流戦のときのように、接近戦に持ち込まれることも多いから
その対処のためだな……ははは、西方十勇士なんて肩書きはもらったけど
実はこんな……情けないヤツだったのだ、大友は」
肩を落とす大友さんを、ワン子がキッと睨みつける。
「そんなこと、ないわよ!
今までだって、その戦い方で弱点をカバーしてきたんじゃない!
それを情けないなんて言われたら、あの砲撃でアンタに全然近づけなかったアタシは
もっと情けないってことになっちゃうわ!そんなの、絶対認めない!」
頑張り続けてきたワン子には、何か通じるものがあるのだろうか。
「そうだよ、大友さん。今ある弱点は、工夫でカバーして
そして弱点そのものも克服していこうと頑張ってるわけじゃないか。
全然情けなくなんかないよ。むしろ立派だと思う」
「う、うん……二人とも、ありがとう!
見ていてくれ、いつか必ず、長宗我部や宇喜多のような、立派な体格になってみせる!」
「……いや、それはチョット嫌かも」
「何故だ!?」
412 :
命中!・9:2012/02/20(月) 23:57:38.73 ID:BzJDHDxk0
それから数日が過ぎた。
大友さんは、基本的には元気で勇ましい武士娘なのだが
ふとした折に見せる女の子らしいしぐさがとても可愛らしく
川神や七浜を案内しているうちに、段々と彼女に惹かれていった。
大友さんも、俺に好意を寄せてくれている……気がするのだが
(けど、花火大会が終わったら帰っちゃうしなぁ)
なんて悶々としている間にも月日は流れてしまい
とうとう明日が花火大会というところまで来てしまった。
今日は大友さんは朝からこの多馬川の川原で作業中とのこと。
どこにいるのか、ブラブラしながら探していると
「おーい、直江くーん!」
向こうから見つけて声をかけてきてくれたようだ。
声のするほうに目を向ければ
黄色と黒の警戒色のロープで囲われた広い場所で作業中の様子。
近寄っていいのかためらっていると
やがて作業も終わったのか、大友さんのほうからこちらに駆け寄ってきた。
「や。どんな様子なのかな、と思って」
「うん、作業はもう終わりだ」
「いよいよ、明日だね」
「う、うん」
大会が終わってしまえば、翌日には大友さんは帰ってしまう。
それでサヨナラ……にはしたくなかった。
413 :
命中!・10:2012/02/21(火) 00:04:08.24 ID:9DQw3wU70
他の作業していた人たちはもう引きあげていて
この場には俺たち二人しかいない。
「大友が作った花火、大会のシメに最後に打ち上げてもらうことになったんだ」
「へえ……スゴイね」
「……直江くんのために作ったんだ」
「え、俺のため?」
「うん……テレビでも見られるとは思うけど、できれば生で見てほしい」
「俺のため、か……そりゃ絶対見なきゃね。
でも、テレビ中継もあるんだ?」
「う、うん……だから余計に恥ずかしいのだ……」
「?……ああ、じゃああのクレーンはテレビカメラ用か」
会場のはずれに、先端にゴンドラをつけたやけに高いクレーンがセットされている。
「あれはテレビ局の人が設置していった。いろいろなアングルから撮影するのだな」
「あんな高いところからか……20メートルはあるなぁ。
あんなに揺れてるんじゃ、カメラマンはおっかないだろうねー」
「?そんなに揺れるはずは……あれ?」
風に吹かれて、ゴンドラはゆらり、と揺れている。
「!た、大変だ!」
414 :
命中!・11:2012/02/21(火) 00:10:10.15 ID:9DQw3wU70
いきなり大友さんが血相を変えてクレーンのほうに走っていく。
何かトラブルだろうか。俺もあわてて後を追う。
「やっぱり……固定用のワイヤーが1本外れてる!」
む……クレーンの先端から固定のために伸びているワイヤーは3本。
2本はピンと張られてしっかりと地面に繋がれているが
1本が地面から外れて、だらしなく垂れ下がってしまっている。
「このままだと倒れそうだな……って、おおおおお!?」
明らかにクレーンが傾き始めてる!?
残った2本のワイヤーに引っ張られてるのか!
「危ない大友さん、逃げなきゃ!」
「で、でもこのまま倒れたら、会場のほうに倒れてしまう!」
「く、確かに……」
あんなデカイものが倒れてきたら、せっかく準備した会場がメチャクチャだ。
何とか逆方向にでも倒れてくれれば……そうだ!
「大友さん、大筒はある!?」
「え?明日のために用意はしてあるけど……なんでだ?」
「クレーンの先端を大筒で砲撃して、会場と反対のほうに倒せないか!?」
「!……当たれば、できる……けど、的が高すぎて、大友には当てられない!」
「大丈夫、そこは俺が何とかするから大筒の準備を!」
415 :
命中!・12:2012/02/21(火) 00:16:13.09 ID:9DQw3wU70
大筒を担いできた大友さんと土手の上に駆け上がる。
「よし、ここからなら反対側に倒せる。大友さん、準備は?」
「発射はいつでもできるが……とても無理だ……
それに、外してしまったら対岸に弾が飛んでしまうかもしれん!」
「わかってる。体重が軽くて、砲身がブレちゃうんだろ。だったら……!」
ガバッと大友さんの背後から抱きつく!
「ひゃあ!?なななななな何を!?」
ジタバタする大友さんをそれでも抱え込んだ。
「ごめん大友さん!でも、これで俺の体重も加わったはず!
これならいけるんじゃないか!?」
「そ、そうか!……よし……やってみる!」
大人しくなった大友さんが、大筒を構えて俺に叫ぶ。
「いつもの『国崩し』で使っている焼夷弾は
花火に引火してしまうかもしれないから使えない!
だから、今回は質量弾でいく!反動も大きくなるから
しっかり、大友をつかまえていてほしい!」
「任せとけ!いつでもドンと来い!」
俺の返事を聞いてニパッと笑うと、大きく一つ息を吸って
「いくぞ!大友家秘伝!『城砕き』!でぇりゃあああぁぁ!!!」
416 :
命中!・13:2012/02/21(火) 00:22:17.84 ID:9DQw3wU70
ズドーン!!
「ぐあ!?」「ぐ、ぬぬぬぬ!」
閃光。轟音。衝撃。熱風。
いろんなものが一度に襲いかかってくる。
これが大筒発射の衝撃か……!
飛び跳ねそうな大友さんの小さな体に
必死にしがみつきながら前方に目を凝らせば
爆炎と硝煙の雲を突き抜けて
炎の尾を引く弾丸が、今一直線にクレーン目がけて飛んでいく!
「行っけぇー!!」「当たれー!!」
…………バガァン!!
「やった!」「命中!」
ビィン!バチン!
残っていたワイヤー2本が音を立ててはじけ飛び
砲撃で壊れたゴンドラを載せたクレーンが
ゆっくりと倒れていく……狙い通り、会場の反対側に!
「そのまま……そのまま!」「倒れろ倒れろ倒れろ!」
ガゴーン!ガランガラン……ガシャン……
崩れ落ちるクレーン。飛び散る金属。もうもうとあがる土煙。
だが、そのどれも会場には影響しない範囲でとどまっていた。
「やっ……たああぁぁ!!」
417 :
命中!・14:2012/02/21(火) 00:28:19.63 ID:9DQw3wU70
緊張が解け、ヘタヘタと二人ともその場にへたり込む。
う、なんだか耳……というか頭が発射の衝撃のせいかガンガンする。
大友さんは大丈夫なんだろうか?と様子を見れば
俺の腕の中で何だか体をもじもじさせている。
……俺の……腕の中?
「直江くん……その、そろそろ放してもらえないだろうか?」
イカン、まだ抱きしめたままだった!えーと……
「ごめん、ショックのせいか耳がよく聞こえないんだ!今なんて言ったの?」
「!そうか、慣れていないからな……そ、それなら……仕方がないな、うむ」
ごめん、ホントは聞こえてます。でも、もうしばらくこうしていたいんだ。
「……好きな男の子にこういう風にされるのは、恥ずかしいが、嬉しいものだな」
……え?
「直江くんを好きになってよかった……ハハハ、聞こえていないなら告白も気楽だな」
「……俺も、大友さんが好きだよ」
「!……あ、ありがとう……って、聞こえているではないかー!?」
「しまった嬉しくてつい返事を!?」
「もう……しょうがないなぁ」
クスクスと笑いながら、大友さんが背中を俺に預けるように寄りかかって
二人しゃがみこんだまま、しばらくそうしていた。
418 :
命中!・15:2012/02/21(火) 00:34:21.49 ID:9DQw3wU70
花火大会本番。
俺は例年とは違い、風間ファミリーの皆とは別行動をとっていた。
昨日、お互いの気持ちを確かめあったのに
明日には大友さんは帰ってしまう。
少しでも一緒にいたい。そう思って大友さんの手伝いを買って出たのだ。
「軍手の替え持ってきたよ!」「ありがと!」
まあ手伝いと言っても飲み物を持ってきてあげたり
物を運んだりするぐらいしかできないのだが
ときどき顔を見合わせては笑ってくれる。
「次が最後だ!……直江くん」
「ん?何?」
ドーン!ヒュルルルルル……
「これが、大友の気持ちだ!よく見ててくれ!」
ドパーン!パパパパパ……
彼女が、俺のために作ってくれた打ち上げ花火が
真っ赤なハートの形に開いて夜空に燃え上がる。
「じゃあ……俺の気持ちも、受け取ってほしい」
大友さんの細い肩を両手でつかみ、正面から見つめあう。
「うん……受け取らせてもらう……」
夜空の花火に照らされて交わしたファーストキスは、少し火薬の匂いがした……
419 :
命中!・15:2012/02/21(火) 00:36:16.75 ID:9DQw3wU70
花火大会本番。
俺は例年とは違い、風間ファミリーの皆とは別行動をとっていた。
昨日、お互いの気持ちを確かめあったのに
明日には大友さんは帰ってしまう。
少しでも一緒にいたい。そう思って大友さんの手伝いを買って出たのだ。
「軍手の替え持ってきたよ!」「ありがと!」
まあ手伝いと言っても飲み物を持ってきてあげたり
物を運んだりするぐらいしかできないのだが
ときどき顔を見合わせては笑ってくれる。
「次が最後だ!……直江くん」
「ん?何?」
ドーン!ヒュルルルルル……
「これが、大友の気持ちだ!よく見ててくれ!」
ドパーン!パパパパパ……
彼女が、俺のために作ってくれた打ち上げ花火が
真っ赤なハートの形に開いて夜空に燃え上がる。
「じゃあ……俺の気持ちも、受け取ってほしい」
大友さんの細い肩を両手でつかみ、正面から見つめあう。
「うん……受け取らせてもらう……」
夜空の花火に照らされて交わしたファーストキスは、少し火薬の匂いがした……
420 :
命中!・16:2012/02/21(火) 00:42:16.14 ID:9DQw3wU70
夏休みも終わり川神学院も新学期。
それぞれがいろんな思いを胸に、また教室に集まってくる。
「おはよう直江くん。あれ、新学期そうそう何だか元気がないね?
夏バテだったら、レモン果汁入りのスポンジケーキあるけど、食べる?」
「違うんだよクマちゃん。大和のヤツさ、夏休みに彼女できたのはいいんだけど
いきなり遠距離恋愛になっちまって、それでへこんでるの。
というわけで、そのケーキは俺様が食べよう」
「ガクトは夏バテしてねーだろ。けど遠距離恋愛かー。
俺なんか近距離でも恋愛興味ねーから大和の悩みはわかんねー」
「だらしのないヤツだ。最初からわかっていたことではないか」
「それだけじゃないのよクリ、最初はマメにきていたメールが
最近途切れがちになって、昨日は電話にも出てくれなかったんだって」
「ま、まあ向こうも新学期だろうから忙しいんじゃないかな。
変にあせらないほうがいいと思うよ」
「ああ、ありがとモロ」
……やっぱり、遠距離恋愛ってうまくいかないのかなぁ。
やがて、いつもと変わらぬウメ先生が教室に。
「おはよう、諸君!」
HR開始を上の空で聞きながら、今日はメールどうしよう、とか考えていると
「さて、新学期早々だが、転入生を紹介する!……入れ、大友」
421 :
命中!・17:2012/02/21(火) 00:48:17.94 ID:9DQw3wU70
……はい?大友?転入生?
そして教室に入ってくる、小柄な女の子。あれ?あれれ?
「大友焔だ!交流戦では敵同士だったが、今度は仲間だ!よろしく頼む!」
思わず、立ち上がっていた。
「そうか、交流戦で顔は合わせていたんだったな。
急な転入話で、制服などは以前の天神館のままだが
皆、ちゃんと面倒みてやってくれ……って何だ直江、立ち上がったりして?」
「いやだって全然聞いてないし!」
「すまない、直江くん。だが、どうしてもこちらに来たかったから
館長やこちらの鉄心先生に、無理を承知でお願いしたんだ。
なにぶん時間がなかったから、連絡が疎かになってしまった。
驚かせるつもりはなかったのだが……」
「……あ、いや、その……気にして、ないから」
周囲を見れば、皆ニヤニヤと笑っている。いいさ、笑っておけ。
これから始まる幸せに比べれば、これくらいの照れくささ屁でもないわ!
「そうか!では、これからもヨロシク!
やっぱり大友は、的に近づいて撃つほうが性にあっているな!」
「……もうちょっと近寄ったほうがよくない?」
「!……うむ!」
大友さんが俺の席まで駆けてきて、思いっきり胸に飛び込んでくる。
外しようのないゼロ距離砲撃に直撃されて、俺の新学期はスタートした。
おしまい
15がダブってしまってスイマセヌ
実際にはデートイベントや二人で砲撃練習するイベントとかで
もっと肉付けしないといけないと思う
この後はアフターで、こうなれば直江大和の大筒が火を噴くのも時間の問題
「大和の大筒は……全然……ブレないな……」
「でも、支えてもらえると嬉しいな。はいどうぞ」
「うわ……まだこんな……全然、支える必要などないではないか」
「それは焔がかわいいから」
「……しかしこれは、大筒というより……」
「む。我が大筒の口径にご不満か?」
「スターマイン……」
>>422 マジ乙!
ルートまるまる妄想とは恐れ入った
大和が聞こえないふりをしてほむほむに抱きついてるあたりから
ニヤニヤが止まらなかったぜw
乙だぜ
スゲェなこれ
フツーにシナリオで使えるレベルなんじゃね?
誰か絵つけてくれよ
>>422 GJ!
話がしっかり作ってあって凄い良かった
大友ちゃん可愛いよ大友ちゃん
人気投票でほむほむにしか票を入れてない俺にしたら最高のご褒美だわw
アフター、続アフターまで期待してしまう出来に感動!
小雪ルートでHした場合のベン・ケーアフター投下
川神を舞台にした九鬼家の造反騒ぎも無事決着。
ふたたび平穏な日々が戻ってくるかと思いきや
俺、直江大和のノリノリの中二病セリフが
テレビやらネットに流れてしまっていた。
那須与一を説得するために仕方がなかったとはいえ
学院の皆には何を言われることやら……
ユキに促されて一応は学院まで来たけれど
とても2−Fの教室に顔を出す気になれない。
どうせ今日は授業ないし……いいや、第2茶道室で時間つぶしていよう。
誰もいない茶道部部室で畳に寝っ転がってだらけていると
「こんちゃー……おや?」
だらけ仲間の武蔵坊弁慶がふらりとやってきた。
とたんに脳裏に浮かぶ九鬼財閥極東本部でのあの夜のこと。
彼女を出撃させないため、川神水に酔わせたあげく、かなり強引に抱いてしまった。
学院に来るのが気まずかったもう一つの理由だ。
ただ、俺の恥ずかしい話題なんていずれ忘れられるだろうけど
こっちのほうはそうはいかないだろう。ちゃんとしなければ。
第2茶道室に来たのも、ここに来れば彼女に会えるんじゃないかという
そんな期待もあってのことだった。
弁慶が俺の横にペタリと座る。
「フフ……テレビ見たよー。カッコよかったねー大和」
「はふん、やめて!」
「えーと……『セカイを間違った方向に行かせないために熱くなってるんじゃねえかー』だっけ?」
「ギャー!?」
「終わった……弁慶にまでこんな……もう転校するしか……」
「全国放送されたんだから、転校したって無駄じゃない」
「ぐう」
「フフ……もうあきらめて、腹くくったら?」
「腹をくくる、か……弁慶とのことも?」
「ん?私とのこと?何それ?」
「え?……まさか、酔っていてあのときのことを覚えていない?」
「あのとき……?何かあったっけ、私たち?」
これは……好都合、なのか?
忘れているなら、覚えていないなら……
いや。そうじゃないだろ、それじゃダメだろ直江大和。
「嘘つくなよ弁慶。覚えていないわけないだろ」
だいたい、仮に覚えがなくとも、女の子なら翌朝に体の異変に気づくはず。
俺の指摘に、ちょっとふざけていた弁慶が真顔に戻る。
「……なかったことには、しないんだ」
「当たり前だ。俺も男だ、責任はとるつもりだ」
「責任をとる、かぁ……それだけが理由だったら、別にいいんだよ」
「え?」
「そもそも、私を抱いたのも、出撃させないためだったんだろ」
「……気づいてたのか」
「そりゃあね。でもそれはいいんだ。
私も『出撃できない』理由は欲しかったからさ。
だから、あのことで大和が責任を感じる必要はないよ。
無理につきあうぐらいなら、なかったことにしてかまわない」
冗談じゃない。こんないい女とあれっきりになんか、できるわけがない。
「なあ弁慶。確かに、出撃させないためって理由はあった。
でもそれは、仲間のためであると同時に
お前のためにでもあったんだよ」
「私のため?」
「ああ。テレビでマープルが計画を発表しているとき
つき合わされてるお前たちの顔はつらそうだった。
好きな女のあんな顔見せられたら、助けに行かなきゃって思うさ」
「好きな女、か……
部屋に大和が来てくれたときね、私、嬉しかった……
理由なんてどうでもよかった。本当に、嬉しかったんだよ。
だから、信じるよ……ううん……信じさせて……」
いつも余裕があって、鷹揚で、頼りになる姉貴分。
今も俺に気を使って、あの夜のことを覚えていないふりをした。
けれど、その裏側は
裏切られ、傷ついて、信じられる確かなものを求めている普通の女の子だった。
信じてほしい。信じさせてあげたい。
だからそれは、言葉ではなく……もっと、熱いもので。
横に座った弁慶の肩を抱き寄せる。
抵抗はなく、体をこちらに預けてくる。
ふわり、とほのかに甘い匂いがした……
どちらからともなく唇が重なる。
「ん……ふ……」
首筋に手を伸ばし、耳の後ろからうなじへと、柔らかなくせ毛を撫で回す。
「うん……それ、好き……ん、う……」
唇の隙間から舌先を伸ばすと、弁慶も細い舌を伸ばしてくる。
そのままチロチロと互いの舌の先端を舐めまわす。
やがて唇はもっと深く重なり合い、二人の舌も、もっと深く絡み合う。
「は、ん、ん、む……んふ……」
唇を重ねたまま、肩を抱いていた手をゆっくりと動かしていく。
鎖骨。脇。のど元。
襟元にたどり着いた指先が、ブラウスのボタンを一つ外す。
指先はゆっくりと下降して、豊かに盛り上がった丘の上で、もう一つ。
その先のボタンは……もう弁慶が自分で外していた。
大きく開いたブラウスの胸元から、そっと手を滑り込ませる……
ガラッ
突然のドアの音に、二人ともビクンとして唇を離す。
「おっと、なんだ不純異性交遊の真っ最中じゃねえか。
あーあ、いーけないんだ。先生に言いつけちゃおうかな」
……忘れていた。だらけ部には顧問(?)のヒゲ先生がいるのであった。
「……自分が先生でしょ、ヒゲ先生」
弁慶がそそくさと体を離し、背を向けて乱れた着衣を直す。
「違ぇねぇ。おい直江、弁慶。いちゃつくのはいいが、ほどほどにしとけよ。
もちろん、ここをラブホ代わりにするのも禁止な。ここ、だらけの聖域だからさ」
もう少しで「性域」だったんだけどね。
「しかしまあ……あんな中二演説ブチかますわ
ここじゃ女相手に鼻息荒くするわ、お前も若いねぇ」
「ぐはっ!?」
「じゃ、お邪魔なおじさんはこれで退散してやるよ。
あと、けっこう皆まだ学校に残ってるから
からかわれたくないなら、もうちょっとしてからのほうがいいぜ。じゃあな」
飄々とヒゲ先生は帰っていき、なんとなく気まずくなった二人が残される。
「……こういうときって、それじゃ、って続きをするものなのかな」
「そんなの俺だってわかんないよ……
あーあ、弁慶に続いてヒゲ先生にまでからかわれるとは……」
「そんなに気にしなくてもいいのに。どうせ皆すぐ忘れるって」
「……そ、そうかな?」
「私は忘れないけどね」
「いじめっ子だー!」
恥ずかしさに畳の上で丸くなってゴロゴロ転がっていると
「てい」
背中からガバッと弁慶に抱きつかれて転がれなくなった。
そのまま耳元で弁慶がささやく。
「勘違いしないの。忘れないっていうのはね
私にはあのセリフは……本当に、嬉しかったから」
「嬉しかった?」
「そ。あれは与一を説得するための言葉だったけど……
『お前だ。お前自身はどうしたいんだ』『今はもう今しかこない』……
ホント、あれが効いちゃったんだよね、どういうわけか」
……そっか。与一の心に響いたのなら、同じ立ち位置に置かれた弁慶の胸にも
何かしら訴えるものがあったんだろう。
「言ってみるもんだな、中二病セリフ」
弁慶が俺の背中に顔を摺り寄せてくる。
俺を背中から抱きしめていた腕が少し緩んだ。
ぐるりと向きを変えて、横になったまま正面から向き合い
互いの吐息が感じられるほどに間近になる。
「ん……」
寝転がったまま、軽く口付けを交わしたあと
弁慶は微笑みながら俺にささやいた。
「辿りつけたね……『最高で最上級の結末』に……」
おしまい
2で弁慶の覚えていないふりに
話をあわせるかどうかの選択肢があるっぽい
にしても、本山さんの声は色っぽいなぁ……
>>434 俺達の時代が来たZE!!!これで(人気投票で)戦える!!!
GOD JOB 乙
にわかに盛り上がってきたな
毎回同じ人が書いてるだけだから盛り上がってると言えるのかどうか
>>434 乙だが
なぜヒゲに邪魔をさせるギギギギギ
久しぶりに来てみたら新しい保管庫できてたんだな
完全にスルーされてしまってるようだけど乙w
設定で悩んだけど天衣さんモノ投下
橘天衣さんが島津寮にやってきて1週間。
最初のうちはいろいろあった。
子供の投げたボールが窓ガラスを割りそうになったけど(天衣ファクター)
麗子さんが掃除のため窓を開けたので何も壊さずに反対側の窓から飛び出したり(キャップファクター)
逃げてきた暴れ牛が寮に突っ込んできそうになって(天衣ファクター)
たまたま通りがかった闘牛士の人に倒されたり(キャップファクター)
九鬼財閥の衛星兵器が誤作動して島津寮を標的にしてしまったけど(天衣ファクター)
発射の瞬間に某国の別の衛星が軌道計算ミスで突っ込んで事なきを得たり(キャップファクター)
日常レベルの小さなことから
災害レベルの大きなことまでいろいろあったが
とりあえず全て事なきを得ている。
「確かに……すごいな、この寮は」
「でしょ?ここにいれば、自然と運も向いてくるよ、橘さん」
今日はまだ何も起きていない。このまま平均化されてくれればいいのだが。
下宿代は九鬼財閥が払ってくれるというので
急遽1階の物置になっていた部屋を整理して、そこを橘さんの部屋としている。
家具などは皆で持ち寄ったりしたものでとりあえず済ませ
衣食住のうちの住はこれで何とかなった。
当座のお金も、最初に貰った分を落としたことを揚羽さんに説明したら
こころよく追加のお金をくれたらしい。これでしばらく生活に困ることはないはずだ。
「……とはいえ、いつまでも九鬼財閥のお世話になっているわけにもいかないから
何か仕事を探したほうがいいと思うんだ」
「仕事か……何をやっても、うまくいかないからな、私は……」
「まあまあ。プライドとかあるだろうけど、まずはできそうな仕事からやってみたら?」
もともと、能力的には優秀な人なんだろうけど
運の悪さから失敗続きで、すっかり自信をなくしてしまっている。
何か小さなことでもいいから、成功体験ができればいいんだけど。
「……ありがとう、大和。いちおう、求人情報誌を見てはいるんだ。ただ……」
「ただ?」
「これは、と思って電話してみると、だいたい応募が終わっている……」
なかなか、運勢を好転させるのは難しいなぁ。
「焦っても仕方がないよ。そのうち風向きも変わるさ。この後は、何か予定ある?」
「午前中に、麗子さんに頼まれていた営繕作業を済ませたので
後は特に予定はないが……」
「じゃあ、今から俺と出かけない?このところ、寮にこもりっきりでしょ?
たまには気晴らしも必要だよ」
「……この寮から出るのは……それに、一緒に出かけたら
大和を私の不幸に巻き込んでしまうかもしれない」
「そうやって心配しすぎるから、かえって不幸を呼び込んじゃうとも考えられるよ。
大丈夫だよ、もっと気楽にいこう。それに、仕事に出るようになれば
イヤでも寮から外に出るようになるんだからさ」
「それはそうだが……はあ……在宅の仕事にしようかな……」
渋る橘さんを何とか説得して、島津寮を出た。
並んで寮を出たのに、橘さんはいつの間にか俺の5メートルほど後ろを歩いている。
速く歩きすぎたかと思い、足を止めて待つと、橘さんも止まってしまう。
「も、もう少し離れて歩いたほうがいい」
「何で?」
「いや、何かあったとき、できるだけお前を巻き込まないようにだな……
あと……やっぱりちょっと、恥ずかしい……」
「恥ずかしいのは我慢してください」
「あう……」
「あと、何かあったときには橘さんが守ってくれるよね?」
「まも……る……?私が……?」
「うん。橘さんなら、何があっても俺を守ってくれる。
俺はそう信じてる。だから……」
戸惑っている橘さんに歩み寄り、腕を取って自分の腕に絡ませる。
強化股肱―義手とは思えない、暖かく柔らかな感触にちょっとドキリとした。
「あ、あの、や、大和?」
驚きながらも、腕は解かれない。
「こんなことだって、平気だ……ハハハ、ちょっと照れるけどね」
「けっこう、強引なんだな……わかった。私が、お前を守る。
で、どこに行くんだ?」
まずは近場から、ということで
俺はなじみの場所に橘さんを連れてきた。
「川神院……ここが、目的地なのか?」
「うん、とりあえずは、ね」
川神院は「厄除け」「厄払い」で有名だ。
神頼みのようだが、こういうこともしておくと、心理的に少し楽になれるらしい。
二人で門前町を大山門に向かって歩いていくと
「おーい、橘さーん……に、大和?」
「そうだった……川神院なら、お前がいるよな、川神百代」
姉さんに声をかけられた。ランニングの帰りなのか胴衣姿である。
「何だよ腕なんか組んじゃってさー。こ・い・つ・めー!」
「イタタタ……ね、姉さんだって俺と腕組むじゃん!」
ていうか、もっとスゴイ接触してくるよね?
「姉さん、か……二人は、仲がいいのだな……羨ましい……」
「まあ、『私の』舎弟ですから。で、今日はどうしたんですか?」
「私は大和に連れてこられただけで……大和、ここで何をするんだ?」
「お参りだよ。厄払いをして、橘さんに運が向いてくるようにってね」
「ああ、それはいい思いつきだな!じゃあ橘さん、私が案内しますよ!」
大山門を通ってほのかに香の匂いのする境内を進み
お水屋でお清めをしてから大本堂前に。
姉さんに正式なやり方を教わって参拝を済ませると
「こちらにお守りがあるんで、是非どうぞ」
さすがに総代の孫娘。案内もてきぱきとしている。
一口にお守りといってもいろいろあるが
川神院で代表的なものはやはり厄除けと開運だ。
「じゃあ、これは俺からのプレゼントってことで」
厄除けと開運のお守りを買って橘さんに渡すと
「いいのか?……では、ありがたく」
よかった、嬉しそうにしている。
これだけでも、でかけてきたかいがあった。
「1年たったら、そのお守りはお札納めに来てくださいね」
「ほう……そういうものなのか……
あまりこういうことはしてこなかったから、知らないことばかりだ」
「だったら、きっとこれで運が向いてきますよ!」
姉さんもなんとなく嬉しそうだった。近づいて耳打ちしてみる。
(ありがとう姉さん。橘さんには優しいんだね)
(ん……正直、好敵手が落ち込んでいるのは私もつらい……
け、けどお前は私の弟だからな!そこは譲らないぞ!)
いろいろ複雑な姉さんはスルーして橘さんを呼ぶ。
「橘さん、こっちのオミクジ、引いていきましょうよ」
「……いや、それはいい。
オミクジでいいクジを引いた例がないんだ……」
やっぱりそうか。だがここで諦めはしない。
いや、諦めさせちゃいけない。
「仮に悪くても、言っちゃなんですけどコレまでどおりじゃないですか。
引いてみれば、いい結果が出るかもしれないですよ。
変わりたいなら、チャレンジしなくちゃ」
「!……わかった。やってみる」
橘さんはオミクジの箱に手を伸ばす。伸ばすが……そこで止まってしまった。
よく見れば小刻みに手が震えている。
「ハハ……情けないな、私は。こんなことが、怖いなどとは……
いや、今日が今まで楽しかったから、余計に怖いのかもしれない」
その震える手に、近寄って俺の手を添える。
「な、何を……?」
「一緒に引きましょう。
あなたが不運を引き当てるなら、俺が一緒に背負います。
あなたの幸せも不幸せも、全部俺にわけてください」
オミクジ一つで言い過ぎたかな、とも思ったが
これぐらい言わないと橘さんには効果がなさそうだからな。
「!……い、いいのか?……本当に、お前はそれでいいのか!?」
「かまわないよ。だって、俺のお姉さんだしね!」
「だーかーらー、お前のお姉さんならもうここにいーるーだーろー!」
「(聞こえないフリ)さあ、引いてみて、お姉さん」
「かーまーえーよー!」
手がゆっくりと伸びて一つのクジを引き、目をつぶって恐る恐る開いていく。
「こ、怖いから先に大和が見てくれ」
「うん……えーと……(ペラ)」
『末吉 何事も辛抱強く
・仕事運 特技にこだわらないほうが吉
・健康運 自己管理を怠るべからず
・恋愛運 行動あるのみ 』
「末吉だって」
「な!?……お……おおおおおおおおおおおおおおお!?」
俺からひったくる様にしてクジを取り
その文面を見て驚いているが、驚き方が尋常じゃない。
「何だこれ!?う、生まれて初めて『凶』でも『大凶』でもないの引いたぞ!?」
どんだけ不幸なんですか。
「こ、これ、どうすればいいんだ百代!?」
「どうするって……木に結んだりしますけどー」
今まで引いた「凶」や「大凶」のくじはどうしていたんだろう。
「き、記念に持ってちゃいけないのか!?」
「いいんじゃないですかー。そういう人もいますしー」
姉さんはちょっとスネているが、後でフォローしておくことにしよう。
「そ、そうか!……フフフ……やった……やったぞーーー!!!
ありがとう大和!ありがとう!!」
「うわ!?ちょ、橘さん!?」
盛大にバンザイをしたあげく、ピョンと俺に抱きついてくる橘さん。
「あ〜〜〜!大和は私の弟なんだってば〜〜〜!!」
反対側から俺を引っ張る姉さん。
「ちょ、死ぬから!四天王で大岡裁きごっことか死ぬから!」
「アハハハハハ!やった!私にも……とうとう私にも!」
「かーえーせーよー!」
「聞いて!お願いだから人の話聞いでででででででっ!?」
俺、今クジを引いたら「大凶」なんだろうなぁ……
その夜。
「あー……まだ肩が痛い」
あの後、四天王による死の大岡裁きで死に掛けたのだが
たまたま通りがかったルー先生が止めてくれたおかげで
何とか生還を果たした俺だった。
と、ドアからコンコンとノックの音が。
「?どーぞー、開いてるよー」
こんな夜更けに誰だろう、と思っていたら
「えと……こんばんは、大和」
なんかモジモジしてる橘さんだった。
「その……れ、礼を言いに来たんだ。
今日はすごく、嬉しかった。いいことも沢山あったし」
「いいことなら、これからだっていくらでもありますよ」
「う、うん……だから、その、いいことを……もっと、増やしたい」
そう言うと、橘さんは……服を、脱ぎ始めた。
「え、ちょ、何!?待って、え、どういうこと!?」
「……クジの恋愛運のところに『行動あるのみ』って書いてあったから」
「行動しすぎー!」
おしまい
Sの設定の天衣さんの話なので
大和はアニメのようなハーレム予備状態にはなっていないということで
ちなみに、自分の中ではこの後で
天衣さんは梅屋のバイトになり、釈迦堂さんと最強の梅屋伝説を作ったりする
乙
大和が天然ジゴロだw
天衣さんも可愛いが嫉妬してる百代がイイね
>>450 乙乙
Sで足りなかった成分がどんどん補完されていくぜーw
小ネタでマルさんを一本
455 :
チョロイ?・1:2012/02/29(水) 22:40:00.21 ID:7b7wwhMe0
このところ、マルさんに元気がない。
夜になればこれまでのように献身的に奉仕してくれるのだが
終わった後に少し沈んでいるような。
夕食後、思い切ってそのことを聞いてみた。
「元気がないみたいだけど、何かあったの?」
「いえ、たいしたことでは……」
「何かは、あったわけね。たいしたことじゃないんなら、教えてよ」
「はあ……実は……(説明中)……というようなことが」
「なにいいいいいいぃぃぃぃ!?」
学校掲示板で、俺とマルさんのことが取り沙汰されているらしい。
そこで、「意外に簡単に落ちちゃってマルギッテ見かけによらずチョロイ」
というようなことが書かれていた、というのだ。
「やっぱり大和も、私が……その、チョロかった、と思いますか……?」
6月の半ばにマルさんが島津寮で暮らすようになって
1ヶ月ほどで初めて結ばれて、新学期が始まる頃にはほぼ調教完了、か。
まあ確かに日数は短かったけど、それは駆け足で辿った恋路だからで
道のりは決して平坦でも短くもなかった……よな?
「いや、チョロイなんてとんでもない。お互い、けっこう悩んだり苦労もしたじゃない。
ああいうところの書き込みは気にしないほうがいいよ」
「そ、そうですよね!……大和がそう言ってくれて、ホッとしました」
けっこうナイーブなところもあるマルさんだった。
456 :
チョロイ?・2:2012/02/29(水) 22:46:02.13 ID:7b7wwhMe0
マルさんがクリスの部屋に戻ってから、念のため掲示板で問題のスレッドを探してみる。
気にするな、とは言ったが、あまりヒドイようなら何か手を打たねば。
お、これかな?
「夏休みが終わったら2−FのNと2−SのMがくっついていた」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
1 :ピーチ姫:2009/09/06
どういうことだよヽ(`Д´)ノ!お姉さんキャラならもう既にサイコーのがいるだろ!
2 :軍師の妻: 2009/09/06
実際には夏休み始まる頃にすでに……orz
3 :ベン・K: 2009/09/07
あーあ放課後にNのチクワ頬張るのが楽しみだったのに
4 :なっTOU!: 2009/09/07
何それエロイ kwsk
5 :忍者っ娘: 2009/09/08
まあアタイはうまくやりゃMはすぐ落ちるって思ってたけどな
6 :YOUみん: 2009/09/08
おかたく見えて、実はチョロかったわけで候
7 :ピーチ姫: 2009/09/09
くそぅ、明日からMのこと「チョロギッテ」って呼んでやる
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
……ヤベェ。明日から学校行くの怖くなってきた。
457 :
チョロイ?・3:2012/02/29(水) 22:52:02.68 ID:7b7wwhMe0
スレッドはまだ続いている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
8 :軍師の妻: 2009/09/09
ひょっとしてNはドイツ軍に脅されて無理やりMとつきあわされているのではッ!?
9 :木公風: 2009/09/10
ねーよ。それにしても寮にきてから1ヶ月で落とされるってチョロくね?
10 :なっTOU!: 2009/09/10
ていうか、Nがチョロかったんじゃないの?(´д`)
11 :軍師の妻: 2009/09/10
今までどんだけアプローチしたと思ってるんだYO!
12 :ベン・K: 2009/09/11
何か今日ウチの主がMの主に聞いた話では
「あれこれ面倒みてやって海で遊んで帰り際にキスしたら懐かれた」だってさ
13 :なっTOU!: 2009/09/11
何それチョロイ 私もやっときゃよかった
14 :ピーチ姫: 2009/09/12
「面倒みてやる」ってのがポイントだったのか まだ間に合うかな(`・ω・´)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
スレッドはまだ続いている……が、俺はもう見るのをやめた。
明日学校に行くのがマジ怖い。が、それ以上にショックだった。
チョロイのはマルさんじゃなくて、俺のほうだったんだ……
おしまい
この後、大和の世話を焼こうと女子が押しかけてマルさんが防戦する展開
掲示板の部分はゲーム画面だと
名前部分がハンドルネームになっていて
顔グラの目のところに黒線を入れる感じを妄想してください
ベンKのチクワ頬張るにワロタ 乙
学校裏サイト怖いなー乙
というかみなとさんもPIT導入してみてはどうかチラッチラッ
乙
大和はムサコッスに攻略されちゃうくらいチョロいからな
ヒュームさんで1本
「えーと、この辺のはずだ」
ケータイのGPS機能で現在地を確認して
あらかじめ教わっていた情報と照合する。
「やれやれ……ここに来るだけでもう汗かいちゃったな」
夏も盛りの8月初旬。
俺たち風間ファミリーは、多馬川上流沿いの森の中までやってきていた。
その狙いは……
「それじゃ、採集開始!」
キャップの号令とともに始めたのは、昆虫採集だったりする。
もちろん、ただの昆虫採集ではない。
最近になって見つかった、川神コガネという新種のコガネムシが狙いだ。
何でも川神の固有種らしく、七浜の大学の研究室から依頼があったのだ。
生きたまま研究室に持ち込むと1匹5千円という
なかなかにおいしいアルバイトである。
「けどよ、これキャップだけでよかったんじゃねーの?」
確かに、ガクトのいうことももっともだ。
ガキのころから、虫取りといえばキャップの出番で
キャップ一人で残りのメンバーが取るより
何倍もクワガタを捕まえたりしたものである。
「まあそう言うなよ。皆でやったほうが
ファミリーの旅行資金って気がするだろ?」
このバイト代を軍資金に、皆でどこかに旅行しようというのがキャップのプラン。
夏休みが終わる前に何とかしたいところだ。
そういえば、昔から疑問だったのだが
「姉さん、気で虫とか探せないの?」
「オイオイ無茶言うなよ。
こんな森の中で虫みたいな小さな生き物の気
仮に探れても、区別がつけられないぞ」
「そうですね。単純に目の良さにかかってきますから
こういう場合、目のいい京さんに分があるかと」
「えへん」
「ところで、気といえば……まゆまゆ、気づいてるか?」
「は、はい……何かご用なのでしょうか?」
「?何かあるの姉さん?」
姉さんとまゆっちがよくわからない会話をしている前で
茂みがガサガサと揺れ動いた。
「何か、というか誰か、というか……何しに来たんだかなー」
ガサリと大きく茂みを揺らし、巨大な影が姿を現す。
「……気づいているだろうから、来てやったぞ」
現れた金髪の偉丈夫が、蓄えた髭をしごきながらそんなことを言う。
姉さんがやれやれといった顔でその人影に声をかけた。
「何かご用ですか、ヒュームさん」
現れたのは九鬼家従者序列零番
ヒューム・ヘルシングその人だった。
「なに、今日はお前たちに用があるわけではない。
たまたま居合わせただけだ」
「こんなところに、九鬼家の従者が何か用があるんですか?」
「今日は、いちおうオフだ。
俺の趣味は標本作りでな。新種の甲虫が見つかったというので
コレクションに加えようというわけだ」
「ああ、そちらも川神コガネ狙いですか」
「さらに言えば、九鬼財閥の生化学研究所から採集の依頼もあったのでな。
趣味と仕事の一石二鳥というわけよ。
で……そちらも、ということは、貴様等も川神コガネ狙いというわけか」
「ええまあ、アルバイトで」
「フッ……虫取りを甘く見るなよ。
この俺ですら、朝からまだ1匹も見つけては……」
「よっしゃー!まずは1匹、ゲットだぜ!」
姉さんとヒュームさんがやり取りしている間に
さっそくキャップが1匹捕獲していた。
「……運のいい赤子だ。が、所詮は赤子。
俺の知識と経験、さらに優れた視力、運動能力をもってすれば……」
「っと、こんなところにもいたぜ2匹目ー!」
「…………」
ああ、なんかもうイラッとしてるのがあからさまにわかるよこの人。
「姉さん、お喋りはこれぐらいにして、俺たちもそろそろ捕まえよう」
「そうだな、キャップばかり働かせるのも何だし。
じゃ、ヒュームさん、そういうことで」
「フン……まあ見ているがいい。最後に笑うのは……」
「っとぉ、今度はツガイか?オスとメス、まとめてイタダキー!」
「……チッ……(ガサガサ)……ん?(→カマドウマ)」
「よっしゃー5匹目ー!いやー、けっこう見つかるもんだなー」
「……(ゴソゴソ)……む?(→ゲジゲジ)」
「後はこの辺も怪しいな……ほら6匹目!」
「……(バサバサ)……ぬ?(→ダンゴムシ)」
キャップと比べるのも何だが、実はこの人ラック値低いんじゃなかろうか。
「あ、大和大和、コレ、そうだよな?」
「お、やったね姉さん、1匹ゲットだ」
「…………(プチ)ジェノサイドオォ!!」
「うわーっ!?」「ちょ、ヒュームさん!?」
「チェー……ん?……(そーっ)」
何かものすごくキケンな技を発動しかけたっぽいヒュームさん。
だがその動きが途中で止まり、ゆっくり、静かにかがみこむ。
蹴り足が吹き飛ばした地面の下で、何かがもぞもぞと動いていた。
「……はっ!」
ヒュームさんが掛け声とともに地面に手を伸ばす。
ああ、見つけたんだ。ようやく1匹目。
得意満面で、捕まえた川神コガネを俺たちに差し出す。
「フ…フハハハハハハハ!!見たか赤子ども!これが、川神コガネだ」
「知ってます」
「フフン、俺にかかれば、川神コガネなど赤子……いや、虫けらも同然よ」
「そうですね。虫ですね」
「さて、俺はもう少し採集していかねばならん。
お前たちも、せいぜい頑張ることだ」
ヒュームさんは悠々と立ち去っていく。
その姿が見えなくなり、やがて聞こえてくる野太い雄たけび。
「……ジェノサイドオォ!」
いくら今のでうまくいったからって、他のやり方はないんだろうか。
呆れる俺たちの耳に、しばらく「ジェノサイドオォ!」は聞こえていた。
その夜。九鬼財閥極東本部・生化学研究所。
「あ、ヒューム様。お疲れ様です」
「うむ。頼まれていた、川神コガネだ。数はこれで足りるな?」
「おお!さすがはヒューム様、希少種の川神コガネをこれほどとは」
「なに、俺にかかればこの程度のこと造作もないわ」
「それでは早速……あれ?」
「どうした」
「えーと……これ、オスしかいないんですが?」
「……いかんのか?オスのほうが大きく美しいぞ?」
「いや、研究に必要なアミノ酸はメスにしかないんで
メスを取ってきてくださいって……言いませんでしたっけ?」
「……聞いとらんぞ、そんなことは」
「あれぇ?……ああ、そうか、クラウ様にもお願いしたんですよ。
クラウ様にはお伝えしたんで、てっきりヒューム様もご存知かと」
「…………ジェノサイドオォ!チェーンソーッ!!」
「うわぁーっ!?」
半壊した生化学研究所を後に、ヒューム・ヘルシングは再び多馬川上流に向かう。
メスを見つけるためにはカイザーウェーブが必要だったという。
おしまい
川神ナントカって名前にすると何でもアリにできる、便利!
本編ではもうちょっとヒュームさんにギャグやってほしかった
>>469 乙 ドラマCDのネタみたいだな
>川神ナントカって名前にすると何でもアリにできる、便利!
確かにw
川神水、川神キノコ、川神ススキ、川神ナメコ……
どんだけだよ川神w
「いってらっしゃい、大和」
「ああ、行ってくる」
夫を会社へと送り出し、私の1日は始まる
家事を終えジョギングしながら向かう先は川神院
専業主婦となった今でも身体が鈍らないよう日々の鍛練は欠かさないようにしている
修行僧達のいい組手の相手になると百代が呼んでくれているのです
「おっ、奥さん今日もきれいだねーうんうん」
こう言って挨拶がわりのスキンシップを仕掛けてくるのは川神百代
若くして川神院総代を勤める彼女とは今ではいい友人です
「あっ、来てたんですね。おはようございます!」
元気に挨拶してくれるのは川神一子
川神で管理栄養師として働く彼女は大人になり学生時代とはすっかり印象が変わりました
以前のように決闘をしかけてくることは無くなり少々寂しくもあるのですが…
午前中の鍛練を終え、縁側で百代達とくつろいでいると、
「ところで、アッチの方はどうなんだ?そろそろ私も甥や姪の顔が見たいなーなんて」
「っ…!!」
「お、お姉様!?」
思わずお茶を吹き出しそうになってしまった
「ほらー、ファミリーで結婚してるのって大和達だけだからさー
あーでもあいつ、九鬼に勤めているからやっぱり忙しくてそんな暇ないのかな?」
確かに、大和は毎晩帰って来るのは遅く
翌日の仕事に影響が出てはいけないと思い
結婚して以来本当にご無沙汰だったりするのですが
「私も、そろそろ子供が欲しいとは思うのですが…なかなか時間がとれなくて…」
言いながらもついもじもじとしてしまう
「ふーん…。私ならこんなかわいいねーちゃん、ほっとかずに毎晩でも相手しちゃうのになー」
「なっ…、かわいいなどと…からかうのはやめなさい」
相変わらず、そう言われるのは慣れないなと自分でも思う
「そんなことないだろー。こんな美人な妻持って大和は幸せ者なのになぁー」
「ただ、猟犬などと呼ばれていた私が母親として勤まるかどうか不安で…どうしても子供が欲しいと強く言えないのです…」
自分の中で一番引っかかってる事を言ってみました
今でこそ人並みに主婦をこなせてはいるが、結婚当初は大変でした
掃除、洗濯などの基本的な家事は問題なかったのですが
何せ生まれてこのかたまともに料理をした事が無かった私は
黛由紀江や義母には随分とお世話になったものです
「そうか…でも、あれだけずっと手間のかかる妹分を世話してきたんだ、私はいいお母さんになると思うが」
「そうよ!大和と付き合うようになってから随分とマルくなったもの。
今じゃほんとにいい奥さんて感じだし、気にする必要はないと思うわ」
さっきまで顔を赤くして黙りこんでいた川神一子が口を開く
「それでも…私は…」
自分の中でいろいろな思いが交差する
もし子供が自分に似て短気な性格になってしまったら…
やはり自分に母親は向いていなく、大和に余計な負担をかけてしまったら…
ダメだ…こんなネガティブなのは私らしくない
「ほっほっ、何か悩んでいるそうじゃの」
「あなたは…」
「!?…じじい!乙女の会話を盗み聞くなんて趣味わるいぞ!」
「そらお前があんだけでっかい声でしゃべってれば、嫌でも聞こえるだろうに」
そういって突然会話に加わった元総代川神鉄心は以前ほどの迫力は無くなったものの、
未だに現役を宣言しており今でも時折見せる闘気には押されるものがあります
「お前さんも学園にいた頃はまるで狩人みたいにギラギラしておったが、すっりいい人妻になったのう」
「まったく、じじいは相変わらずだなぁ」
ははは…と苦笑い。こういうことにすぐ怒らなくなったのも私が丸くなった証拠なのかもしれません…
「あの、実はかくかくしかじかで…」
…
…
「ふむぅ…。まぁとりあえず産んでみるってのもアリだと思うがのう」
「…」
「産めば誰だって母親にはなれるからのう。だが、問題はそれからじゃ。
母子という関係は死ぬまでずっと続くもの
その長い時間の中で焦らずお前さんが目指す所の母親になっていけばいいんじゃ。
子供が成長してお母さんありがとうって言ってくれるようになる頃には
お前さんは自然と立派な母親になれているはずじゃ
それに子育ては一人でやるものじゃないからのう、困った時には家族や友達がいくらでも助けになってくれるじゃろう。
なあに、こんな川神家でも百代も立派に成長した!心配はいらないわい。
まぁ少々教育を間違えてしまった感はあるがのう」
「ほー、じじいもたまにはいいこと言うじゃないか」
「ほっほっ、伊達に長生きはしてないからの」
「自然と母親になれている…か…」
子供が産まれた後の事を想像してみる。親子で旅行を楽しんだり、ドイツの中将やお嬢様に挨拶に行ったり…
ふふっ…幸せそうです
「よーし、そうと決まれば今夜から実行に移さないとな!」
「そうよ!まずは精力がつく料理を教えるわ!」
「それじゃあ私とは今夜大和を誘惑する作戦を相談しようじゃないか!」
「あ、あの…二人とも…」
「ほっほっ、健闘を祈るぞい」
…この私が、母親になれるか不安で悩む事になるなど…
人生は本当にわからないものです
これも全て大和のおかげ…なのですね
「それでは百代、一子、お世話になります」
申し訳ありません、お嬢様
次お会いする時、マルギッテは母親になっていて驚かせてしまうかもしれません
終わり
夜中に酔った勢いで書いたからいろいろ文章おかしいかも
じじいの話は娘が産まれる前にかーちゃんから言われた事そのまんまだったりする
話の時系列はルートから約10年近く経った未来
結婚二年目ぐらいを想定しています
乙だけど
途中まで誰の話かわかんなくてワケワカメ
乙。
マルさんいい母親になりそうだよな
最近マルさんの様子がどうもおかしい
目が合うとばつが悪そうにそらすし、話かけてもあまり相手をしてくれないし…
「うーん…、俺なんか悪いことしたかなぁ」
んー、喉が乾いたから水でも飲みに行くか
ガラガラ
「あっ!マルさん」
「っ!?直江大和まだ起きてたのですか」
「これは…ビール?へぇ、マルさんもお酒とか飲むんだ」
「ま、まぁたしなむ程度には…。そそれよりも早く寝なさい。こんな時間まで起きているのは不健康です!」
「いや、どうせ明日は学校休みだし。良かったら付き合うよ?」
「なっ…い、いけません!おまんこはまだ未成年です。飲酒など私が許すわけがないでしょう」
「じゃあ俺は川神水でいいから。これならノンアルコールだし大丈夫でしょ?」
「ま…まぁそれなら問題はありませんが…。あまり飲み過ぎないようにしなさい」
「よっしゃ!」
一時間後
「全く!直江大和っ!お前はお嬢様という人がありながらいつも百代とべたべたと!恥をしりなさいっ!」
「まぁお嬢様を泣かせるような事をしたらいつでも中将に報告できる状況であるということを知りなさい!」
「(うわぁ…マルさん完全に酔ってるよ…)」
「直江大和!聞いているのですか?」
「(さっきまでははぐらかされてたけど、今なら聞けるか…?)」
「そういえばマルさん、最近ちょっと俺のこと避けてたりするよね?」
「うっ!!そ…それは…」
「なんか俺マルさんに嫌われちゃったのかなーって、不安に思ってて」
「ち、違いますっ!私はただあの時のことが忘れられなくて…その…」
「ん?あの時って?」
「いいいえ何でもありません!今の言葉は忘れなさい。さっ、もう遅いので寝なくてはっ」
フラッ
「うっ!?」バタン
「マルさん足元ふらふらだけど大丈夫?肩貸そうか?」
「必要ありません!私が酔っぱらう事などありえないと知りなさ…」フラッ
「あぶないっ!」ガシッ
「ひゃあぁん!」
「えっ」
「あっ…こ、こらっ直江大和!離しなさんぁあああんっ!」ビクン
「(ただ肩支えただけなのに、なんだこの反応…?)」
「もしかしてマルさん、肩さわられただけなのに感じてる?」
「っ…!そんなわけありません、いいから馴れ馴れしく触るのは
むにっ
やめやふゃぁああぁあんっ!」
「(これはもしかして…)」
むにむにむにむに
「ふぅうんんっ!あっ…はぁっ…い、いい加減はなれな…ぁんっ…」
「すごいよマルさん、全身が性感帯みたいになってる。もしかして、お酒飲むとこうなっちゃうとか?」
さわさわさわさわ
「はぁぁあああん!…だっ…だめぇっ…もっ…もぉおっ…」
「(これ、胸とか触ったらどうなっちゃうんだろう)」むぎゅっ
「っつ!あぁっ…!あああぁぁあぁあああぁあっ!!」ビクンビクン
「おっ、おぉおっ」
「…はぁっ……はぁ…っ…」
「マルさん、今もしかしてイった?」
「うぅっ……そ、そのっ……」
「(今マルさん完全にイってたよな…
でもこれ以上は流石に不味いだろうし、フランクさんに報告でもされたら…)」
「ごめんマルさん、ちょっと今のはやりすぎた…とりあえずクリスの部屋までは送っていくから…って、マ、マルさん…?」
「…」
「も…もしかして、物凄く怒ってうわっ」ガバッ
「…フーッ…フーッ…!」
「ごめんなさい本当にごめんなさ」
「…私をここまでしておいて…やめるつもりですか…?」
「?」
「あの時…お前に抱かれた時からずっと…ずっと…
大和の顔を見る度に思い出して…夜もお嬢様がお前の部屋に行ってる間も…いつも一人で…んっ…!」
「んむぅっ!?」
「はぁっ…んちゅっ…ちゅくっ…んっ…ぷはぁっ」
「申し訳ありません、お嬢様…マルギッテは、もう我慢ができません」カチャカチャ
「マルさん…なにを…っ!?」
「お前も、もうここをこんなに硬く…はぁっ…熱い…」チュッ
「うぁっ…」
…………
………
…
「おはよう大和、マルさん」
「ああ、おはようクリス」
「おはようございますお嬢様」
「そういえばマルさん、昨日は部屋に戻って来なかったが」
「うっ!?…そ、それはその…」
「マルさんは昨日の夜は俺と徹夜でプロレスしてたんだ」
「ブーッ!」←まゆっち
「お、おい…大和っ…!」
「なんだ、そうだったのか。次は自分も混ぜてもらいたいものだ」
「ブーーッ!!」←まゆっち
「そして、また、まゆっちの寝れない夜は続くのであった…」
おわり
二人の ヒドイ 裏切り
誰だよこの淫乱ビッチと無節操野郎
ただのメス犬に成り下がったなマル
まあ抜きゲーならこういうのもあるかもしれんね
>おまんこはまだ未成年です。
って何?
ほぼエロシーンのSSほどつまらないものはないな
清楚で一本投下
くっつきはしないけどサブカプっぽい流れになるので
嫌いな人はスルーで
491 :
幕間・1:2012/03/07(水) 21:57:56.38 ID:7jPEa/AP0
「う……?」
目覚めたときには、採石場の地面に仰向けに倒れていた。
気を失っていたらしい。起き上がろうとしてみたが、まだ無理のようだ。
崩れそうな意識を保ち、記憶の糸を手繰る。
城を出て松永燕と戦い、追い詰めたと思ったところで
京極の声を聞き、動揺したところで一撃もらって
最後は妙な機械が空から降ってきて……
(そうか……負けたのだな、俺は)
周囲を見回す。誰もいない。自分を倒した燕も。
すでに日は落ちて、薄暗くなってきている……
(そうだ、京極!何故ここにいた?俺を倒したとき、松永が何か言っていたが……)
「騅、いるか」
「はい、清楚」
大の字に横たわったままの自分に、ゆっくりと愛車が近づいてくる。
「戦いの最中に、京極の声を聞いたが……今もここにいるのか」
「いいえ。京極様はこの近辺には今はいらっしゃいません。
データに残っている音声を分析しましたが、声紋が別人でした。
しかも、録音されたものの再生音声でした。おそらくは……」
「わかった、もういい。いっぱい食わされた、というわけだな」
騙されたことが、腹立たしいよりも情けなかった。
492 :
幕間・2:2012/03/07(水) 22:03:56.88 ID:7jPEa/AP0
「戦はどうなったか、わかるか」
「残念ながら、わが軍の負けです。
街を襲撃した部隊はことごとく撃退され、川神城も陥落。
反乱分子は鎮圧され、マープルは捕縛されました」
「そうか……もはや、これまでだな」
「いいえ清楚。これから、です」
「これから?再起を期せ、というのか?
……もう幕は降りた。潔く舞台から降りるのが、覇王というものだろう」
「一幕は降りました。ですが、舞台は続きます。また幕を開ければいいのです。
あなたが次の舞台に上がる助けになる人を、松永様がここに呼ばれました。
もうじき、お見えになるでしょう」
「助け……誰だ、それは?何故松永がその手配をする?」
「それは……ああ、お見えになったようです。
直接お話になられたほうがいいでしょう」
薄暮の向こうから車のヘッドライトが近づいてくる。
1台のタクシーが採石場のはずれにとまり、客が一人、降りてくる。
「葉桜君!葉桜君、無事か!?」
呼びかける声。聞きたかった声。今度は間違えない。二度と聞き違えない。
「ここだ、京極……騅、ライトをつけろ」
愛車のライトが灯り、倒れたままの自分を照らし出した。
493 :
幕間・3:2012/03/07(水) 22:09:57.83 ID:7jPEa/AP0
気づいた京極が走ってくる。
あの男が走るのなぞ、初めて見るな。
妙なことに気づき、それがまた妙におかしかった。
「だいぶ手ひどくやられたようだな……起きられるかね?」
駆けつけた京極が手を差し伸べてくる。
「たいしたことはない。貴様の手など借りずとも……一人で、起き……」
「無理をしてはいけない。さ、肩を貸そう」
肩を借りて何とか上体を起こす。
「何故ここに?」
「松永君から知らせを受けたのでね。事情もあらかたわかっている」
「そ、そうか……」
「松永君には、騙された、と思うかもしれないが
もし彼女が頼んでいれば、僕はここに駆けつけて
同じように君を止めただろう。だから、松永君を恨んではいけないよ」
「……ちと腹立たしいが、まあお前が言うならそうしよう。
それよりも、あのような手に引っかかってしまった自分が情けない。
覇王ともあろうものが、あれではまるでウブな小娘のようではないか……
京極、このこと、他言無用だぞ?」
「承知した。では、帰ろうか。タクシーを待たせている」
「帰る……?どこにだ?九鬼にか?」
494 :
幕間・4:2012/03/07(水) 22:15:59.51 ID:7jPEa/AP0
「今の君の家はそこだろう。九鬼に戻って、また学院に来たまえ」
「九鬼に帰れば、処罰されるだろうな。学院も、俺を受け入れるかどうか」
「またやりなおすつもりがあるのなら、九鬼に帰らなければいけないよ。
学院のほうは、君が案じるようなことはたぶんないだろう」
「やり直す、か……そんなことが覇王に許されるのか」
「……君はさっき自分を、ウブな小娘のよう、と言ったが
僕に言わせれば、君はたまたま覇王の力を持ってしまった、ウブな小娘そのものだよ。
それでいいじゃないか。さ、そろそろ行くとしよう」
肩を借りて、ゆっくりとタクシーに向かって歩く。
「騅……一人で帰れるか?」
「ご心配なく。それでは京極様、主をよろしくお願いいたします」
騅が走り去るのを見送って、タクシーに乗り込む。
シートに座ったら急に眠気が襲ってきた。
「すまん、京極……少し眠ってもいいか?」
「かまわんよ。九鬼についたら起こそう」
ウトウトしながら、さっきの京極の言葉を思い出す。
覇王の力を持ってしまった、ウブな小娘、か……
(……小娘でも、いいのかな)
そんなことを考えながら、いつしか眠りについていた――
495 :
名無しさん@初回限定:2012/03/07(水) 22:22:02.82 ID:7jPEa/AP0
おしまい スーパーイケメンタイムその2
ラストで清楚が元に戻っている理由が
平蜘蛛で倒されたから、というのだけでは今ひとつ弱い気がしたので
京極を再登場させてみた
>>495 乙
本編でもこの程度の接近はあったから
サブカプ云々はあまり気にしなくていいんじゃないかな
そしてなにげにかっこいいスイスイ号がよかったw
>>495 良かった!
自分でも気付くかどうかの仄かな恋心って感じで…
覇王の中身が実はウブな小娘ってw
まあでも言い得て妙だな 乙
500 :
和解・1:2012/03/09(金) 21:57:55.51 ID:0tdyqAYG0
「よっ、大和。いいのかー、彼女ほったらかしでこんなところに一人で」
昼休みの屋上で、姉さんにつかまった。
「いいの。そんなに四六時中ベッタリしてるわけじゃないんよ、俺たち」
「ふーん。なんかアッサリしてるんだな」
昨日、ファミリーの皆に弁慶とつきあいだしたことを報告してから
やたらと姉さんが俺に絡んでくる。
弁慶のほうは、お互いの時間も大事にしようということで
普段はあまり変わりない。もちろん、会えばイチャつくしHもするが
確かにアッサリしているといえばそうかも。
と、屋上にさらなる訪問者が。
「お、モモちゃんに大和くん発見。相変わらず仲いいねー」
「燕先輩チーッス」「仲がいいかー……そーでもないんだけどなー」
「あれ、何かあったの?ひょっとして痴話喧嘩?」
「コイツ、姉である私にナイショで弁慶とつきあいだしたんだよ」
「ありゃま。いつの間に……ってほどでもないのかな。
放課後、よく二人でいたみたいだしね」
「なんだよ、気づいてたのかよー!教えてくれたら邪魔してたのにー!」
姉さんに邪魔されてたら、あのだらけ空間はさらにカオスなものになっただろうな。
「まあまあ、姉として祝福してあげなさいな。
それより、ちょっと相談があるんだけど、いいかな?」
501 :
和解・2:2012/03/09(金) 22:03:56.52 ID:0tdyqAYG0
「お、とうとう私と戦う気になったか?」
「いやいや、それはまた別の機会にってことで」
「ちぇー。じゃ、何だよ相談って」
「うん……最近、清楚ちゃんってどう?」
「あいかわらずカワユイな」
「いやそういうことじゃなく。ちゃんと話とかしてる?」
「ああ……最初はなんか遠慮がちだったけど
今は自分なりに折り合いつけたんじゃないか。普通になってるぞ」
「そっか……じゃ、私だけなのかなぁ……」
いつも明るい燕先輩がちょっと表情を曇らせる。
川神城攻略のとき、覇王モードだった葉桜先輩を
何とか城の外に連れ出して戦ってくれたのは燕先輩だ。
その後の関係に支障が出ても不思議ではない。
「葉桜先輩と、うまくいってないんですか」
「うん……何だか、避けられてる感じでね」
「燕は直接対決で清楚ちゃん倒しちゃったからなぁ。
清楚ちゃん、武人ではあっても武道家じゃないから
その辺の割りきりとか切り替えはできないんじゃないか?」
「そっか……私も、武道家として倒したわけじゃなかったからなー。
嫌われても仕方がないのかな……」
502 :
和解・3:2012/03/09(金) 22:09:57.73 ID:0tdyqAYG0
「……ってなこと言ってたんだけどさ。
一緒に暮らしてて、その辺、葉桜先輩ってどうなの」
放課後の第2茶道室。
寝っころがっている俺の胸を枕に、文庫本を読んでる弁慶にきいてみる。
ヒゲ先生はいない。最近は忙しいのか、俺たちに気を使ってるのか
あまりここに来ることがなく、結果ここが二人でダラダラといちゃつく場所になった。
「どうなのって言われてもねー……あんまり変わらない気がするけど
私らは敵じゃなかったから、あんまり気にしてないのかもしれないし。
直接訊いてみた方がいいんじゃない?何だったら、今からウチ来る?」
ふむ。俺もあの時は葉桜先輩にとっては敵サイドの人間だったわけだから
俺への対応を見て参考にすることはできるか。
「じゃ、お邪魔するかな」
「オッケー。じゃ、ちょっと義経呼んでくるから、校門で待ってて」
弁慶がゴロンと転がって、軽くキスしてから起き上がって部屋を出て行く。
普段ダラダラしているが、行動すると決めると動くのは早い。
待たせても悪いし、俺も行くとするか。
校門で待っているとすぐに二人はやってきた。
「いいのか、弁慶?その……二人で帰ったほうがよかったのでは?」
「だって、二人で帰ったら途中で大和に襲われちゃうもの」
「そ、そうなのか直江君!?」
途中で大和を襲っちゃう、の間違いじゃないのか……
503 :
和解・4:2012/03/09(金) 22:15:59.99 ID:0tdyqAYG0
義経も、事件後すぐは恐縮しっぱなしだったのだが
2−Sの連中がけっこうフォローしてくれたとかで
今ではわりと普通に戻って、こうして俺たちに気を使ってくれたりする。
「与一は?」
「んー、今日は弓道部に顔出してくって……アイツが、一番変わったかもね」
「うん……それも、直江君のおかげだ」
確かに、まだ皮肉屋な面は消えないが、投げやりなところはなくなってきている。
他人とも積極的に関わりを持つようになったらしい。
弓道部に出ていたりするのがいい証拠だ。
「あんな恥ずかしい説得させられたんだ。
それぐらい変わってもらわなければ割に合わないよ」
「?直江君、なぜあの説得が恥ずかしいんだ?」
「まー義経はそうだよねー。
……大和知ってる?義経ったら、テレビであの映像見て泣いちゃったんだから」
「ちょ、弁慶!?言わないって言ったのに!」
「ホント、大和は女泣かせだねー」
「な、泣いてない!ちょっと涙が出ただけだ!」
嬉しいような、恥ずかしいような。
そんな感じで、弁慶にからかわれながら歩くうち
大扇島の九鬼財閥ビルについていた。
504 :
和解・5:2012/03/09(金) 22:22:01.24 ID:0tdyqAYG0
さて。来るには来たが、これからどうしよう?
そもそも葉桜先輩はもう帰っているのだろうか。
「なあ、葉桜先輩の部屋ってどこ?」
「この先だけど、まだ帰ってないんじゃないかな。
だいたい放課後一杯は図書室にいるらしいから」
弱ったな。葉桜先輩の様子を見て
場合によっては燕先輩を避けてる理由を聞き出すという目的があるのに。
「大丈夫だ直江君、葉桜先輩は自転車だから、じきに帰ってくる。
それまで義経たちと遊んでいればいい」
「そういうこと。じゃ、義経の部屋に行こ」
「ええっ!?こ、こういう場合、弁慶の部屋に行くんじゃないのか?」
「私の部屋だと、くつろいでHなことしたくなっちゃうので」
「そ、それはダメだ。学生らしく、節度を持ったつきあいを……」
「じゃあ義経の部屋ね」
「うう……墓穴を掘ってしまった」
葉桜先輩の部屋のドアに、俺が遊びに来ているとメモを貼ってから義経の部屋に。
着替えの間ちょっと部屋の外で待たされてから
「ど……どうぞ」
私服に着替えた義経に中に通された。
505 :
和解・6:2012/03/09(金) 22:28:04.20 ID:0tdyqAYG0
初めて見る義経の私服とその部屋は……
「なんか、フツーなんだな」
普通の洋間、普通の調度品、普通の洋服。
もっと「和」の雰囲気かと思っていたが。
自分の部屋で着替え終わった弁慶も入ってくる。
「そりゃーね。普通に現代の女の子として生きてきたんだから
部屋も服も今風の普通で当たり前でしょ。あ、でも下着は和風か」
「下着って、胸にサラシを巻いてるだけで、下は普通の……(ゴニョゴニョ)」
「普通はサラシも巻かないよ義経。で、何して遊ぶ?」
「そうだな……トランプぐらいしか思いつかないが」
いつも持ち歩いているカードを取り出し、軽くシャッフルしてみせる。
「おおー……器用なのだな、直江君は」
「ま、特技ってほどでもないけどね。ポーカーでもしようか?」
「大和は駆け引きとか上手そうだけど、義経が全然ダメなんだよねー」
「じゃあブラックジャックのほうがいいかな」
そうしてしばらく3人で遊んでいると
『皆、いるのー?』
葉桜先輩が帰ってきたようだ。
506 :
和解・7:2012/03/09(金) 22:34:51.08 ID:0tdyqAYG0
部屋に入ってきた先輩はいきなり
「弁慶ちゃん、直江君、おめでとう!」
なんてニコニコしながら言うのだった。
なんだか、以前とあまり変わらないような。
「や、どーも。そんなわけで、これからちょくちょく遊びに来ますんでヨロシク先輩」
どうやら俺に対してはわだかまりとかはないようだが
こうも屈託がないと、かえって燕先輩のことは聞き出しにくい。
あまりあの戦いの話を振るのも、義経がいるからやりづらいし……
「あーあ、いいなー弁慶ちゃん素敵なカレシができて」
ん。向こうからきっかけを作ってくれたかもしれん。この方面から攻めてみるか。
「そういう葉桜先輩だって、京極先輩とお似合いってもっぱらの噂ですよ?」
「京極君は、確かにいい人で素敵だけど……なんか、お兄さんって感じで、ちょっと違うかも」
「頼れる友達ってところ?」
「うん、そんな感じかな」
確かに、人に安心感を与えるという点では京極先輩はずば抜けてる感じがする。
「ウチの姉さんとかは、あまり頼れるってカンジじゃないですもんねー」
「そ、そんなことないよ?……まあ、頼れるっていうか……面白い友達?」
人にスリルを与えるという点ではずば抜けているんだけどなぁ。
507 :
和解・8:2012/03/09(金) 22:41:57.35 ID:0tdyqAYG0
「面白いっていえば、松永先輩も面白い人だよね」
お、弁慶ナイスフォロー。相談したこと、覚えてくれてたか。
葉桜先輩の表情をさりげなくうかがうと……
ちょっと表情が硬くなったな。
やはり何か思惑があるのだろうか。
「いきなりカレーライスに納豆をかけられたときは、義経は本当に驚いた……」
「葉桜先輩は、燕先輩とも仲がよかったですよね?」
「え!?……え、う、うん……普通、かな?ほら、クラスも違うし!」
「いや武神と同じクラスだったはずだけど。
武神と仲がいいなら、その武神と仲がいい松永先輩とも顔ぐらい会うよね」
「あ……うん、そうだけど……」
「ひょっとして、川神城の戦いで負けたこと、根に持ってたりします?」
「!ね、根に持ってるわけじゃないの!ただ……」
「ただ?」
「あの……恥ずかしい負け方しちゃったから
あんまり燕ちゃんとは顔を合わせたくないなー、って……」
「恥ずかしい負け方?」「どういうことだろう?」「聞かせてもらえます?」
「うう……秘密にしておきたかったのに……
ほ、他の人には言っちゃダメだからね?」
508 :
和解・9:2012/03/09(金) 22:48:41.30 ID:0tdyqAYG0
葉桜先輩が、どんな風に戦いが進み
どうやって決着がついたのか
そして最後、倒れた自分を京極先輩が迎えに来てくれたところまで
ポツポツと途切れがちになりながらも話してくれた。
「……」「……」「……」
「な、なんで皆黙るのよぅ」
「……本当に京極先輩のこと、お兄さんみたいにしか思ってないんですか?」
「最後のほうなんか、のろけ話にしか聞こえなかったよね」
「え、違ったのか?」
「違うってば!そりゃ京極君はいい人だけど
男の子としての好みはむしろ直江君のほうなんだから!…………あ」
一瞬、皆が固まった。
やがておもむろに弁慶がジト目で葉桜先輩を見て
「……へーえ?そーなんだー?」
「ち、違うのよ弁慶ちゃん!?あくまで好みのタイプだというだけだから!」
「いやあ、弱っちゃうねどうも」
「何……鼻の下伸ばしてる、の!」
「ぎゃ!?いて、ちょ、つねるな弁慶!?」
「……直江君も、大変だなぁ。義経は同情する」
509 :
和解・10:2012/03/09(金) 22:56:10.90 ID:0tdyqAYG0
「……というわけで、葉桜先輩も怒っているわけじゃないみたいですよ」
翌日、放課後の屋上に燕先輩を呼び出して事の顛末を告げた。
呼び出したときに一緒だった弁慶もなぜかついてきていた。
「そっかー……ま、私もあの戦いのことはあんまり人に知られたくないのよね」
そういえば、葉桜先輩も燕先輩の武器のことを
弁慶や義経にきかれてもお茶を濁す感じでちゃんと話さなかったけど
ヒミツというのはその辺のことなんだろうか。
「何だったら、今から葉桜先輩のところ行ってみます?たぶん図書室にいるでしょ」
「あー……図書室だとホラ、京極君もいると思うんだよね」
む、確かにそれだと気まずいか。
「じゃあ、こっちに呼び出してみよう。それならいいですよね?」
「うん……そうだね、善は急げって言うし!お願い、大和君」
ケータイで葉桜先輩を呼び出すと、すぐに来てくれるとのこと。
何か声が上ずってたが。
「葉桜先輩、すぐ来るって」
「姿を見たら引き返しちゃうかもしれないから
最初は松永先輩は隠れていたほうがいいね」
「そうだね……ああ、なんかドキドキしてきたよ」
燕先輩が物陰に隠れてすぐに、葉桜先輩が屋上にやってきた。
510 :
和解・11:2012/03/09(金) 23:00:11.35 ID:0tdyqAYG0
「あ……弁慶ちゃんも、一緒なのね」
俺と弁慶の姿を認めると、なぜかガッカリしている。
「それで、昨日の話の続きなんですけど……」
「!わ、私は別に弁慶ちゃんと争う気は……ま、まさか二股でもOKとか!?」
何か激しく勘違いなされている模様。
ていうか、昨日のアレってマジだったのか……?
「いやそっちの話じゃないし。そもそも、私は二股とか許す気はない!」
えーと……話がこんがらかる前に燕先輩に出てきてもらおう。
「燕先輩、出番です」
「ほーい!……や、清楚ちゃん」
呼ぶが早いか、待機場所からピョンと燕先輩が出てくる。
「燕ちゃん!?なんでここに……」
「それはね、私が大和君に頼んで呼び出してもらったの……
ちゃんと、謝っておきたかったから」
そう言うと、葉桜先輩の正面に立ち、深々と頭を下げた。
「あの時は、ごめんなさい!……あんな手を使うなんて、憎まれても仕方がないけど
できればまた、友達でいてほしいんだ。だから……」
葉桜先輩は黙って聞いている。
511 :
和解・12:2012/03/09(金) 23:06:18.26 ID:0tdyqAYG0
二人は顔を突き合わせて何か話しているが
その雰囲気は険悪なものではない。俺の役目も、終わったかな。
弁慶の袖を引いて、そっとドアに向かった。
「それにしても、大和も意外におせっかい焼きだよね……
人の世話もいいけど、カノジョもかまわないと拗ねちゃうぞ?」
「……だらけ部室でも行くか」
「うん……今日はちょっと、ベタベタしたい気分」
屋上を立ち去りかけた俺たちに、背後から声がかかる。
「あ、待ってよ大和君!」
「いや、もう俺の役目は終わりでしょ。後は二人で……」
「まーまー、お礼ぐらいさせてよ」「こうして仲直りできたのは、直江君のおかげだもの」
「え、そう?じゃお言葉に……」
甘えて、と言いかけた俺を弁慶が手で制し
「悪いけど、大和は今から私とイチャつくことになってるんで」
険しい顔でスタスタと歩き出す。
仕方なく俺もその後を追いかけた。
「何だよ弁慶、せっかくお礼してくれるって言ってたのに」
「ん……ごめん、ちょっと警戒しすぎた、っていうか……
これが焼きもちってヤツなのかな」
512 :
和解・13:2012/03/09(金) 23:12:20.96 ID:0tdyqAYG0
弁慶がうなだれている。自己嫌悪ってやつか。
「悪かった、もう他の女の子に鼻の下伸ばしたりしないから……
機嫌直してくれよ」
「いや、私も些細なことで大人気なかった。
よく、人の嫉妬を見て『見苦しい』って思ってたけど
いざ自分がそういう立場になったらコレだからね……」
「けど、そういうのも女の子らしくていいと思うぞ」
「……ありがと。屋上、戻る?」
「ま、今さらだろ。それに礼をされるようなたいしたことしてないし。
それより、ベタベタしたかったんじゃなかったっけ?」
「そうだね……うん、行こうか。私たちの『聖域』に」
今はまだぎごちなくて
ときどきこうしてぶつかったりもするけれど
あの場所に行けばなんとなく元に戻れる気がする。
「……今日はヒゲ先生来ないだろうな」
「大丈夫。実は、ナイショで内側から鍵をかけられるようにしておいた」
「やるなぁ。じゃヒゲ先生には悪いけど……
俺たちもゆっくり、仲直りさせてもらおうか」
もうすでに仲直りはできているけれど
だったらもっと仲良くなればいい。
二人並んで歩く茶道室への廊下は、暮れかけた秋空に赤く染まっていた。
おしまい
>>491からの続きであると同時に
>>428と同じ世界線でもあるわけで
時系列が前後して投下してしまったけどご容赦
弁慶ルートの日常っぽいものを、というのと
清楚ちゃんが京極とはくっつかないよ、というフォロー
大和がフラグ立てすぎな気もするけど気にしない
>>513 乙
>大和がフラグ立てすぎ
確かにw
清楚だけじゃなくて義経と燕もアヤシイ……
あのままお礼されてたら修羅場やなw
追記すると
ハーレムは あ り ま せ ん
こういうスレでくらい京極とくっついてもいいかもね
ご都合エロゲ主人公無双をここでもか…って気持ちもある
大和無双じゃないのは、にじふぁんとかにゴミのようにごろごろと転がってるから、
ここでぐらい大和無双でいいよ……
>>513 GJ!
清楚ちゃん可愛いよ清楚ちゃん
そしてヒゲ先生は空気が読める子
>>517 自分の好みに合わなかったからってケチつけんな
>>517 そう書かれると今度は大和×清楚とか書きにくくなるからなぁ
つまり、何が言いたいかというと自分はなんでも美味しく食べますって事
誰か義経で書いてくださいm(_ _)m
こういうときにはおバカな話を投下する
「なんなの姉さん、呼び出したりして」
放課後。呼び出された第二茶道室では姉さんが
なぜか大鍋を手にしてニヤニヤしていた。
「これ、覚えてるか大和?」
そう言って姉さんが差し出したのは……
「それは……川神キノコ……」
食べると性格が反転してしまうという、どこかで聞いたようなトンデモナイ食材である。
詳しくはドラマCDを聞いてほしい。
「いやー、最近なんか新顔が増えただろ?
アイツらにも食べさせて、どんな風に変わっちゃうのか見てみたいと思って」
「なんで新顔でもない俺を呼んだのさ」
「顔の広さを生かして、呼び出してかけてくれよ。お前だって見てみたいだろ?」
むむ。確かにそんな気もしないでもないな。
「わかった。で、誰を呼び出せばいい?」
「燕と清楚ちゃんは私がもう声をかけておいたから、後はモンプチに、義経ちゃんと、弁慶か」
「与一やヒュームさんとかは?」
「男はいいや」
ミもフタもなかった。
姉さんがどこからか持ち込んだカセットコンロで
キノコの入った味噌仕立ての鍋を煮込んでいく。
「んー、美味そうだ。どうだ、わたしの料理の腕もなかなかだろ?」
ただ鍋にブチ込んで煮てるだけ、という気もするが
実際、味はいいんだよなこのキノコ。副作用がろくでもないけど。
「お、やってるねモモちゃん」「こんにちはー」
そうこうするうちに犠牲者……もとい、お客さんがやってきた。
燕先輩と葉桜先輩だ。
「美味しそうな匂いだねー。私、おネギ持ってきたんだけど入れてもいいかな?」
「サンキュー清楚ちゃん。ジャンジャン入れちゃってくれ」
なんだか素材もちよりの鍋っぽくなってきた。
「ふんふん、キノコ鍋というか、キノコ汁だね。だったら……ナッ、トウ!」
「あ」
姉さんが止めるまもなく、燕先輩が納豆を鍋に投下する。しかもかなり大量に。
「これでさらに美味しくなること間違いなしだよん」
「しょーがないなー燕は……一応味見しとくか……お、何だかコクが増したような?」
「えっへん!」
まあ、納豆汁っていうのもあるから、これはこれでいいのかな。
「直江君、こんなところで鍋パーティなどしてもいいのか?」
「フハハハハ!かたいことを言うな義経。この学院らしいではないか!」
「キノコを肴に川神水を一杯……楽しみ」
俺が声をかけた義経、弁慶、紋様の3人も連れ立ってやってきた。
皆が座ったところで食器を配り
やがて鍋も食べごろか、という段になって
「ところで……これは何というキノコなのだろう?義経は見たことがないのだが」
義経の疑問はもっともで、川神ではそれなりに知られているが
食べると妙な副作用のあるキノコが、市場に流通しているわけはない。
「あー、川神キノコっていって、川神でしかとれない珍味なんだよ」
燕先輩は関西から越してきた人だし
クローン組も生まれ育った島から川神にきたのはこの夏の話。
紋様も九鬼に引き取られる前は別のところに住んでいたらしいので
どうせ誰も知らないだろうとたかをくくったのか
姉さんは正直にその正体を明かす。
「へー」「そうなのかー」「そんな珍しいものを食べさせてもらえるとは」
皆かえって恐縮していた。ちょっと罪悪感が。
「さてと、そろそろかな。大和、皆によそってくれ」
川神キノコをたっぷり入れたキノコ汁が皆にいきわたる。
『いただきまーす!』
ずずず……もぐもぐ……
「おおー、これはなかなかの美味、珍味であるな!」「うん、美味しいね!」
「食感が変わっているなぁ」「おや、納豆が入ってる?」「私が入れたんだよん」
味のほうはなかなかに好評の模様。
「あれ?直江君は食べないのか?」「モモちゃんは食べてるよ、大和クンも遠慮しないで食べなよ」
「あー……いや、スイマセン、俺キノコ類は苦手なんで」
ごめん、義経、燕先輩。
でもここで俺まで中毒になってしまっては
皆の症状を観察する楽しみがふいになってしまうのだよフフフ。
「そうなのか……何だか申し訳ないな。美味しいし、すごく温まるのだが」
「うむ、何やら……体がポカポカしてきたな……」
来ましたね。
この後からだが燃えるように熱くなり、頭がクラッと来て……
「ポカポカというより……熱いな。体が熱い……」
「なんだか……変な気分……」
あれ。
姉さん以外の皆が悶えてるけど、なんか反応が違うような。
身をよじらせたり、太ももをモジモジさせたり、自分の体を抱きしめたり……
なんか反応がエロいんですけど!?
姉さんに近寄って耳打ちする。
(姉さん、持ってきたの本当に川神キノコ!?性格が反転しないで変な方向いってるよ!?)
(お前だってキノコ確認しただろ……とはいえ、この反応は……)
(ちょっとマズイよね……)
(いやあ、タマランなこれ!)
駄目だこの人。
しかし、いったいどうすればいいんだこの状況。
「大和って……けっこう可愛いよね……」
ぬ。息を荒くして弁慶がにじりよってくる。
「大和クン……隣にいってもいいかな……?」
う。燕先輩も俺ににじりよってくる。
いやそれどころか
葉桜先輩や義経、はては紋様まで俺を熱い目で見つめている!
距離の差は好感度の違いなのだろうか……
いやそんな冷静に分析してる場合じゃないぞ俺!
迫り来る女性陣に囲まれた俺を、冷ややかな目で姉さんが見た。
「み、見てないで何とかして姉さん!」
「モテモテじゃないか舎弟。だが、お前にはこの状況は贅沢過ぎるなぁ……当て身!」
「おふっ!?」
「………………はっ!?」
目が覚めた、というか意識が戻った。
えーと、どういうわけか女性陣に迫られたところで姉さんに当て身くらって……
そうだ、女の子たちどうなったんだ!?
部屋を見回す。
姉さん以外、全員が畳の上にぐったりと横たわっていた。
そして姉さんはというと、鍋に残ったキノコ汁を平らげている。
「お、気がついたか。もう終わってるぞ」
「姉さんひどいよ、急に当て身なんて……終わってるって、あの後どうなったのさ?」
「んー?お前には何もしてないから安心しろー」
お前には、って……なんで皆がぐったりしてるのか
なんで姉さんがスッキリした表情なのかは問うまい。ええ、問いませんとも。
「けど、なんでこんなエロい副作用が出ちゃったのかな。
同じ川神キノコだったのに……」
「前のキノコ鍋と違う要素があったんだろ……あ、燕が納豆入れてたな!」
「納豆入れただけであんな別物の副作用が出るのかな……」
「きっと納豆のヌルヌルが作用して
川神キノコが、精力増強・性欲増大効果のある川神ナメコに進化したんだよ!」
「んなわけあるかーー!?」
おしまい
川神キノコは元ネタがドラマCDなので知らない人はスマンカッタ
乙
ドラマCDは聞いてないけど楽しめたよ
この百代は早く何とかしないとダメなレベル
乙。
無印の時の姉さんのイメージだな。
しかし流石川神なんでもありだなw
「ん?」
今日の授業も無事終わって、さあ帰ろうというところで
何気なしに覗いてみた2−Sの教室。
義経が一人刀を抜いて目の前に掲げ、真剣な目で見つめていた。
ちょっと声をかけてみる。
「や、義経。刀の手入れ?」
「あ、直江君……手入れというか、点検だな……ふぅ」
義経は刀を少し下ろすと、ため息をついた。ちょっと表情が暗い。
「あまり状態がよくないとか?」
「うむ……だいぶくたびれてしまっている。
このところ、決闘が続いていたから仕方がないのだが……
そうだ直江君、川神に日本刀の研ぎ師の方はいないだろうか?」
「うーん……確か銀柳街の金物屋で刃物研ぎをやってるけど……
日本刀はそういうところじゃ研がないよね?」
「残念ながら、日本刀はその辺で簡単に研げるものじゃない。
日本刀専門の研ぎ師さんにお願いして、10日以上かけて研いでもらうんだ」
専門家に頼まなくちゃならなくて
しかもそんなに時間がかかるのか。大変なんだな。
「刀であると同時に、美術品でもあるっていうからね」
「うん。それに何より、刀は武士の魂だ。刀の乱れは、心の乱れにもつながる。
やはり、専門の方にお願いしないと」
「島で暮らしているときはどうしてたの?」
「東京の研ぎ師さんに送っていた。その人にまたお願いすればいいのだが
川神にも研ぎ師さんがいるなら、と思ったんだ」
「さすがの九鬼財閥にも、その辺の人材はいないか」
「クラウ爺はできると言っていたが……
ただでさえ忙しいのに、そんな手のかかる仕事までは頼みにくい」
「うーん……日本刀ねぇ……あ」
「何か心当たりがあるのか、直江君?」
「俺が直接知ってるわけじゃないけどね。
まゆっちなら、ひょっとしたら知ってるかも」
同じ日本刀の愛用者だし、お父さんも剣聖とうたわれた剣術家。
かりにまゆっちが知らなくても、お父さんにきいてもらうという手もある。
「なるほど!言われてみれば、確かにそうだ。
うん、やはり直江君に相談してみてよかった」
「まだ学校にいるかもしれない。ちょっと待ってて」
ケータイでまゆっちに連絡を取る。
幸いまだ下校していなかったので、事情を説明して来てもらうと
「私はお盆に実家に帰ったときにお願いしようと思っていたのですが
父に紹介された研ぎ師の方が、鶴見区のほうにいらっしゃいますよ」
と、詳しい情報を教えてくれた。
そして、土日があけて月曜日。
「おはよう、皆!」「おはよー」
風間ファミリー揃っての登校途中。変態の橋で、義経と弁慶に行き会った。
「あれ、義経ちゃん刀どうした?」
すぐに姉さんが異変に気づく。
言われてみれば、確かに今日の義経は刀を持っていない。
「まゆっちに紹介してもらった研ぎ師の方に、研ぎをお願いしている。
とてもよい方を紹介してもらって、義経は感謝している!」
「いえいえ、お役に立てて何よりです」
ニコニコ顔の義経に比べ、弁慶はどこか浮かぬ顔だ。
「どうしたの弁慶。主が刀持ってないと、護衛の負担が増えるとか?」
「そういうわけじゃないんだけどね。
今日は初日だからまだいいけど、義経は刀がないと……」
「……刀がないと、何?」
「弁慶、それは言わない約束じゃないか!直江君も、今のは忘れてくれ!」
「どうせすぐわかっちゃうんだし、ここで白状しておいたほうがいいんじゃない?」
「そんなことはない!今回は、大丈夫だ!」
大丈夫って……何がどうなるってんだいったい?
実際には、大丈夫じゃなかった。
翌日。
やたらと義経はキョロキョロしていた。
さらにその翌日。
義経は何か物音がするたびにビクッとしていた。
そして今日。
弁慶の後ろに隠れ、制服を掴んで放さない義経がいた。
例によって変態の橋で行き会ったクローン組は、いつもと様相が違っていた。
なぜか今日は、いつもははるか後方にいる与一も一緒だ。
「……どうしちゃったんだコレ」
「前に刀を研ぎに出したときもこう。
しばらく刀を持っていないと、不安になるらしい」
あまりの不自然さに思わずきいてみたら
弁慶がため息混じりに答えてくれた。
「しかも、今回は前より症状が出るのが早い。
おかげで、俺まで傍についててやらねえとなんなくなっちまった」
なるほど。こんなにべったり貼りつかれては弁慶も護衛どころじゃないだろうから
やむをえず与一もついてきてるというわけか。
「でも、義経さんのお気持ちはわかります。
私も刀がないと、何か腰が軽いというか、落ち着かないですよ」
「そ、そうだろう!?よかった、やはり同じ剣士のまゆっちはわかってくれた」
「刀はあとどれくらいで仕上がってくるんだ?」
「来週の金曜だって。この調子で症状がひどくなったら
もう学校休ませようかと思う」
「ひどいな弁慶。そんな理由では義経は休めない」
「ねえ、ちょっと思ったんだけど、誰かに刀を借りればいいんじゃないの?」
モロの発言に、皆の視線がまゆっちに集中する。
確かに、今一番身近な「刀」だ。
「え……えええええ!?わ、私の刀をですか!?」
「い、いや、それはまゆっちに悪い。
それに、刀というものはそう簡単に貸し借りできるものではない」
胸をなでおろすまゆっち。だが問題は解決していない。
今度はワン子が口を開く。
「じゃあ、九鬼財閥に頼んで代わりの刀を貰うとか。
九鬼クンに言えば、それぐらいすぐ用意してくれそうよね?」
「でも、研ぎに出している短い間だけのために
もう一本刀が欲しいというのは、さすがに贅沢だと思う……」
「姉さん、寺の武器庫に余ってる日本刀とかないの?」
「あるとは思うが、簡単に外には持ち出せないぞ。
寺の敷地内で、武術の稽古のために使用するって条件で取得してるからな」
なかなか面倒なものなんだな。
そうこうするうちに学院に到着。
ちょっと気がかりだが、クラスも違うしこれ以上は俺にはどうしようもない。
昼休みにちょっと2−Sを覗いて
相変わらず義経が弁慶にペタッと貼りついているのを確認はしたが
これといって打開策も思いついてはいなかった。
何とかしてあげたい、とは思うのだが……
と、覗いている俺に気づいた弁慶が
チョイチョイと俺を手招きする。
「スマン、まだ何も思いつかない」
「ああ、ありがとね、考えてくれて。
与一なんかさっさとどこか行っちゃったってのに……」
「義経が不甲斐ないばかりに、申し訳ない……」
むくれる弁慶。しおれる義経。
「ま、まあまあ。俺のことは気にしなくていいよ。
あれこれ考えるのは趣味みたいなもんだからさ。
それで、これからどうするんだ?」
「刀が戻るまでは一緒にいるしかないかなー。
それで、放課後なんだけど、第2茶道室まで来てくれるかな、大和」
「悪ぃ、今日はツマミ持ってきてない」
「ああ、違う違う、そっちの用事じゃない。ま、いいから来てよ」
「?まあ他に用事はないからいいけど……わかった、じゃ放課後に」
そして放課後。
弁慶に言われたとおりに第2茶道室に来たが
わざわざ呼ぶってことはいつものだらけ部ってわけじゃなさそうだ。
いったい何をする気なのか……
ちょっとドキドキしながらドアを開けると
「あっ、直江君!」
あれ。弁慶がいなくて、義経が一人でいた。
「や。弁慶はどこ……うわっ!?」
てててっ、と走ってきた義経が
入り口で靴を脱いでいた俺に飛びついてきた!
「ちょ、義経!?」
「弁慶が……弁慶が、『ここで待ってろ』と言ってどこかに行ってしまったんだ!」
おいおい。一緒にいてやるんじゃなかったのかよ。
「と、とにかく落ち着け義経。俺にしがみついても安心なんかできないだろ?」
「そんなことはない……今すごくホッとしている」
「刀がなくても、俺なんかより義経のほうが全然強いじゃないか」
「強い弱いの問題じゃない。
直江君は、義経の知らない、いろいろなことを知っていて
義経にはできない、いろいろなことができる。
だから、とても頼りにしているんだ」
うーむ。確かに、義経たちの歓迎会兼誕生会を企画したり
それに出たくないとドタキャンしかけた与一を説得したりと
思い当たる節がないではないが
いつの間にかここまで義経の信頼を得ていたとは。
それは嬉しいけれど、この体勢はちょっと……
「わかったから、もうちょっと離れてくれないか?」
……けっこう、胸があるんだよな。柔らかいし。いい匂いするし。
こうもくっつかれては、俺の股間が自己主張を始めてしまう。
「あ、す、すまない、つい……」
今さらながら自分の体勢に気づいた義経が、ちょっと体を離した。
が、またすぐに抱きついてきて、心細げに
「……直江君がいやでなければ、こうさせてほしい」
なんて上目遣いで言うのであった。
そんな顔をされたら、これ以上突き放すこともできない。
「……わかった。とにかく、座ろうか」
腕にしがみついた義経と茶道室の中まで入り、畳に座る。
しかし、いつまでもこうしているわけにもいかない。
かといって、こんな風に義経に抱きつかれたままじゃ、帰るわけにもいかない。
ここに来いって言ったのは弁慶なんだし、あいつを呼ぼう。
ていうか、まだ学校にいるんだろうな?
ケータイを手に取ったところで、茶道室の扉が開いた。
「や、お待たせ義経、大和」
「弁慶!?」「おいおい、どこに行ってたんだよ」
「料理部のほうにね。新作のツマミを作るから、試食に来ないかって誘われてさ。
それより……二人はずいぶんと仲良くなったみたいね?」
いかん、義経がまだ俺に抱きついたままだ。
「いや、これはだな……俺が、その……」
「いーのいーの、大和を呼んだのはそれが狙いだったんだから」
「狙い?」
「だって、ずっと私に抱きついていられても困るからね。
私の代わりに、義経を安心させられる人間は誰かなーって考えて
で、思い当たったのが大和だったわけ」
「じゃ、最初から俺に義経を……」
「ごめんねー。でも、正直に言ったら断られそうだったしさ。
それに、大和だって悪い気はしなかったんじゃない?」
まんまとはめられたわけか。
まあ確かに悪い感触……じゃなかった、悪い気はしなかったけれども!
「というか、期待以上だったみたいだけど。
私が来たのに、まだ大和に抱きついたままとはね。何だか、ちょっと妬ける」
言われて義経が、顔を真っ赤にしてパッと俺から離れる。
一瞬ためらってから、弁慶のところに駆けよっていった。
「す、すまなかった、直江君……では、また明日な!」
それから、周りの目がないときには義経にひっつかれることになった。
何だか弱みにつけこんでいるようでいたたまれないのだが
義経は気にしていないようで、むしろ親密度が増しているっぽかった。
そして木曜日。予定では、明日には義経の刀が戻ってくる。
放課後の第2茶道室での習慣になった義経とのハグも、今日が最後というわけだ。
「……そう考えると、ちょっともったいなかったかな」
「何がもったいないんだ、直江君?」
「いや、こっちのこと……そろそろ、弁慶が迎えに来る頃かな」
と、噂をすれば何とやらで
『義経ー、いるのー?』
廊下から弁慶の声がする。と、不意に義経がパッと俺から離れた。
「ああ、また大和とここにいたんだ。ほら、忘れてるよ」
あれ?弁慶が差し出したのは……刀?
「せっかく予定より早く仕上げて、わざわざ昼休みに届けてくれたのに
忘れちゃ駄目でしょ」
「ああ、すまない弁慶……それじゃ、また明日、直江君」
え?今日の昼休みに届いてた……?それじゃ今日抱きついてたのは……?
立ち去りかけた義経が、クルッと振り向いてニッコリと笑った。
「……もったいないって思ってたのは、義経もなんだ」
おしまい
義経はイジりにくいキャラで難産だった
6で弁慶が
「刀が戻るまでは一緒にいるしかないかなー」と言っているけど
「私が」とは言っていないところとか
9で
「何だか、ちょっと妬ける」 と言っているのが
双方に対して、であったりするところとか
かなり削ってしまったあたり
自分でももったいなかった
乙
何がもったいないって
この状況で何もしないとかもったいなさすぎるだろ大和!
乙
ゲームでの義経もこんなふうに可愛いところを
もっと見せていれば人気もでたろうに
546 :
名無しさん@初回限定:2012/03/16(金) 23:20:12.97 ID:1b07wuF60
ファンディスクの発表きた。今度こそ義経ルートを・・・
ひとまず焔ルートと燕アフターは確定だね
清楚ちゃん気になるけどもし入れるなら京極かな?
個人的には大和がいいんだけど
>>547 確定しているのは弁慶だけでその2人はあくまで予定
>>547 主人公はもちろん大和って書いてあるだろうが
タカヒロは主人公以外のエロ書かないからな
下北沢くんと羽黒という例外はあったがw
大和の両親の初めて物語は見てみたかった
552 :
回れ回れ・1:2012/03/19(月) 20:22:59.98 ID:CCH1tg8w0
「ファック!遅ぇーぞ大和!レディを待たせるなよな!」
九鬼財閥極東本部、正面ゲート前。
Tシャツにホットパンツという、ラフな格好のステイシーさんが
腕組みをして俺を待っていた。
「いや、ステイシーさんが早すぎなんですって。
……ほら、まだ待ち合わせの15分前じゃないですか」
つか、レディは「ファック」とか言わないよね。
「細かいこと気にしてんじゃねえよ。
早く出かけたかったから早く来たんだ私は。そういう可愛い女心を察しろっての!」
前回の休み、俺は李さんとちょっとしたデートをしたのだが
それを気に入らないステイシーさんが「私も誘え!」と言い出して
今日のデートとなったのである。
「で、今日はどこに連れてってくれるんだ?」
「特に決めてないですけど、普段休みの日はどういうとこに行ってます?」
「んー……ま、その辺ブラついて買い物してる程度かな。
李が一緒だとまた違うんだけど、なかなか一緒には休めないしさ」
意外に休日は穏健……というか地味なようだ。
となると、刺激的なところのほうがいいかもしれないな。
「じゃあ、今日は遊園地でもいきましょうか」
「えー?ゆうえんちー?オイオイ、こちとら大人の女なんだぜ?
デート先に遊園地はねえだろ遊園地はよー」
553 :
回れ回れ・2:2012/03/19(月) 20:29:01.49 ID:CCH1tg8w0
「いっやぁー、すごかったな今の!な、次は何に乗る!?もう一回今のでもいいぜ!」
……何とかなだめすかして連れてきた遊園地だったが
入園したあたりですでに目がキラキラしてきて
最初にジェットコースター乗った時点でステイシーさん超ノリノリに。
ただでさえスタイル抜群の金髪美人で目立つのに
何かアトラクションに乗り込むたびに
大はしゃぎで「ロックンロール!」とか「ファック!」とか叫ぶので
やたらと周囲の目を引いていた。
しかし、喜んでくれるのはいいんだけど
こう何度も続けて動きの激しい乗り物に乗られると
つきあっている俺はちょっと身がもたない……
「ステイシーさん、ちょっと……休憩しない?」
「えー?なんだよあれぐらいでグロッキーか?
ま、腹も減ってきたし、んじゃメシにすっか?」
まだまだ元気なステイシーさんと園内のバーガーショップへ。
胃袋がひっくり返ったみたいで食欲のない俺とは対照的に
ステイシーさんはモリモリとハンバーガーをほお張っている。
「しっかし、大人でも遊園地ってのは楽しいもんなんだなー。
ちょっと馬鹿にしてたけど、認識改めたわ。
で、この後はどうする?別のとこ行くか?」
「え?遊園地、もう飽きちゃいました?」
「そうじゃねえけど、お前しんどそうだからさ。
デートってのは二人とも楽しくなきゃよ。だろ?」
554 :
回れ回れ・3:2012/03/19(月) 20:35:02.25 ID:CCH1tg8w0
意外にも俺に気を使ってくれていた。
いや……今までのことをよく考えてみたら、意外でもないのか。
乱暴な口調とか、派手な行動とかに目を奪われがちだけど
こちらが本当に困っていたり弱っているときには
ためらわずに手を差し伸べてくれる。
根っこの部分は優しい、頼れるお姉さんなのだ。
「じゃあ、後一つだけアトラクション行きましょうか」
「後一つか……んー、何がいいかな……」
まだ乗っていない絶叫系が4つほどあるので
その中のどれにするか悩んでいる……のかと思いきや
「じゃ、コレでシメにしようぜ!」
バーガーショップを出てステイシーさんが向かったのは
メリーゴーランドだった。
「これでいいんですか?」
「コレがいいんだよ。昔っから好きだったんだ。今でも、な」
「はあ」
「なんだ、意外って顔してるな」
「あ、いえ、そういうわけじゃ……」
「ま、おかしいよな、こんな私が
こんな乙女チックなのが好きだなんてさ」
555 :
回れ回れ・4:2012/03/19(月) 20:41:02.26 ID:CCH1tg8w0
ステイシーさんはメリーゴーラウンドを見つめてから、ポツリと口を開いた。
「コレってさ、止まらないだろ」
「え?ええ、回りっぱなしですね」
「たぶん、そこがいいんだろうな。
終わってほしくなかったものとか、サヨナラしたくなかったヤツとか
そういうのに、うんざりするほど出くわしてきたからさ。
終わらずに、止まらずに、ずっと回っていてくれるコレが、好きなんだ」
ステイシーさんの経歴を考えると、なんだか切なくなる話だった。
俺が切なくなるぐらいだったら
いろいろ思い出して欝になるんじゃないかと思ったが
「お、あの馬車のカッコしたやつ、あそこに乗ろうぜ!
アレなら二人並んで座れるからよ!」
要らぬ心配だったようだ。
「ホラ急げ急げ!乗り遅れるぜ!」
大人二人では窮屈な座席に無理やり乗り込む。
「感謝しろよー、こうやって私と並んでメリーゴーランド乗る男は
お前でまだ二人目なんだぜ?」
「二人目……?」
「さーあ回れ回れー!ロックンロール!!」
二人目……か……
556 :
回れ回れ・5:2012/03/19(月) 20:47:03.06 ID:CCH1tg8w0
グルグルと回るメリーゴーランドのように
俺の頭の中もグルグルと回る。
二人目。
自分は、小さなことは気にしないと思っていたのに
たった一言が気になってしょうがない。
そりゃあステイシーさん美人だしスタイルいいし年上だし
陽気なアメリカンだし元は傭兵だし……仕方ない、よな……
「どうした難しい顔して。体がくっついちゃって緊張してるとか?」
ステイシーさんは相変わらず屈託がない。
俺ももう考えるのはやめよう。考えたって、どうしようもないんだし
今を楽しむことに集中しよう、うん。もうやめ。考えるのやめ。
気づくとかなり長い時間メリーゴーランドに乗っていた。何回転したことやら。
「あー、久しぶりに乗ったけどやっぱいいなー!
じゃあ、この後はお前が行きたいところにつきあってやるよ」
メリーゴーランドから降りて、遊園地の出口に向かう。
行きたいところかぁ。んー……特に思いつかないが
街中をブラブラするか、多馬川の川原でも散歩するか……
「あ、言っとくけど、変なところはダメだからな」
「変なところって?」
「だから……その……人気のない公園とか、ホテルとか……」
珍しくステイシーさんがゴニョゴニョと口ごもった。
557 :
回れ回れ・6:2012/03/19(月) 20:53:04.63 ID:CCH1tg8w0
「いやそこまでまだ俺たち行ってないでしょ」
「あれ?デートってそういうもんじゃないのか?」
俺もファミリーの女子とデートっぽいことはたまにしてたけど
そういうもんじゃないと思う。
アメリカだとそういうもんなんだろうか?
いやなんかステイシーさんデートがよくわかってないっぽいけど
それってさっき言ったことと矛盾するような……ええい、わからん!
「前の彼氏とは、そうだったんですか?」
やけになってこんな質問を口走った。
言った後、しまったと思ったが後の祭り。
「は?前の彼氏?誰だそれ?」
……あれ?
いや、さっきのセリフは無意識に言ったことなので覚えていないのかも。
こういうことを詮索するのはよくないとわかってはいるけれど
ここまできたらハッキリさせておきたい。
「だから、メリーゴーランドに一緒に乗った初めての男の人ってのが……」
「ああ、それオヤジ。私がガキの頃はよく遊園地に連れてってくれたんだ」
……一瞬、思考が停止する。オヤジって、ステイシーさんのお父さんってこと……か?
「そっか、お父さんか……なーんだ。ハハッ!」
「な、何がおかしいんだよ!悪かったな男っ気のない人生送ってきて!」
558 :
回れ回れ・7:2012/03/19(月) 20:59:04.23 ID:CCH1tg8w0
それから、ラ・チッタ・デッラで買い物したり
多馬川で遊んでいるうちに夕方になり、帰りの大扇島への地下トンネルで
思い出したようにステイシーさんがきいてくる。
「そういえばさ、やっぱり、最初の男ってのは気になるもんなのか?」
「……それは、相手次第かな。好きな人の過去は、気にはなりますよ」
「ふーん。意外に繊細なんだな……
あ、あれ?今何て言った?好きな人がどうとか……」
「気にはなりますよ」
「いやその前!」
「それは相手次第かな。
さあ早く帰らないと李さんが心配しますよ(棒)」
「誤魔化すなー!
くそぅ、こんな年下にいいように振り回されるとは!」
「振り回されたのはこっちですよ!」
ぐるぐる ぐるぐる
振り回したり振り回されたり。どっちにしても回りっぱなしだ。
やがてトンネルを抜けて、財閥本部の正面ゲート。監視の李さんに声をかけられる。
「お帰りなさい、大和、ステイシー。今日はどうでしたか?」
「メリーゴーランドでした」「うん、グルグルしてた」
「……はい?……な、何か新しいギャグでしょうか?」
おしまい
ステイシー√っぽいけど実はメインは悩める大和だったり
しかし李もステイシーも年齢わかんない
あずみがアレだから……
乙
モヤモヤしてる大和が年相応の男の子っぽいね
李・ステイシーの二人の年齢は明言されてないと思う
普通に考えればあずみよりちょっと若いぐらいだが……
マルギッテと同じくらいだといいな
乙でした
振り回されるステイシーさん可愛いですね
学園の生徒以外で若獅子タッグマッチトーナメントに参加できてたからそこまで歳はいってないかと
ステイシーより李のが年下っぽい
それぞれ26歳と24歳って予想してる
なるほど、若獅子タッグマッチトーナメントは指標になりますね 皆様 thx
ではゲームではけっきょく出てこなかった設定シリーズ投下
日曜日の多馬川のほとりを、マルさんと並んで歩く。
こういうノンビリとした時間もいいものだ。
日曜ということもあって、いろいろな人とすれ違う。
ジョギングをする人。サイクリングする人。
「釣れたかい、竜平」
「あー、今日は全然ダメだ。亜巳姉は野草とかどうよ」
「まあまあだね。師匠はどこ行ったんだい?」
「素潜りで捕まえるとよ。カッパみてーなオッサンだぜまったく」
釣りをしてる人。野草を採ってる人。素潜りしてる人。
本当にイロイロである。
と、マルさんがスッと歩く位置をずらす。
何かと思ったら、前から犬を散歩させている人がきていた。
犬と接触しないように、位置をずらしたのか。
犬とすれ違って、ちょっと間をおいてから
マルさんはふぅ、とため息をつき、元のポジションに戻る。
今日は犬の散歩も多い。
そして、すれ違うたびにマルさんは同じ行動をとる。
明らかに犬を避けていた。
「あれ、ひょっとしてマルさんって犬はキライ?」
「……いえ、そんなことはありません」
一瞬ためらってから否定してきた。強がっているのかな。
今さら、俺に弱みを見せるぐらいどうってことはないはずなのだが。
だが、よくよく考えればマルさんのあだ名は「猟犬」。
キライなものをあだ名にされて、あの人が黙ってるわけはない。
気になったので、寮に戻ってから
マルさんのいないときを見計らってクリスにきいてみた。
「……ということがあったんだが、どうなんだクリス?」
「家では番犬を飼っていたが、特にそういう話は聞いていないぞ」
「へー、番犬がいたんだ。じゃあ別に犬がキライってわけじゃないのかな」
一緒に暮らしていれば接近することだってあっただろう。
それなのにクリスが気づいていないということなら
やはり俺の気のせいなのかな。
「あ、でも犬の世話は馬屋番の人がしていたし、普段犬たちは番小屋にいるから
マルさんは直接は犬と関わっていないな」
なんだ馬屋番とか番小屋って……ああそういえば馬も飼ってましたねこのお嬢様。
「何か犬を避けているような素振りは見せたことない?」
「うーん……あ、そういえば」
「何かあるの?」
「自分とぬいぐるみで遊ぶとき、マルさんが犬のぬいぐるみを選んだことはないな」
結局、あんまり参考にならなかった。
キライならキライで、犬が多いところに近づかないとか
気を配ってあげないといけないし、ハッキリさせたほうがいい。
やはり直接きいてみるしかないかな。
「……ですから、キライなわけではありません」
夜。布団に入る前にもう一度きいてみた俺に
やはりためらいがちにマルさんは答えた。
「じゃあ、今度ドッグカフェとか行ってみようか?」
「そ、それは困ります……キライではないのですが、犬は苦手ですから」
「苦手?」
キライと苦手とたいして変わらない気がするが。
「ええ、子供の頃にちょっと」
「ああ、大型犬に襲われて怖かったとかそういうヤツ?」
よくあるよね、そういうトラウマ。
「いえ……まだフリードリヒ家にあがる前の話ですが
私の家では犬を飼っていました。私は、その世話をしていたのです」
「それが、なんで苦手に?」
「私が、殺しました」
「……え?」
「狂犬病に罹ってしまったのです。
周囲に被害を広げないためにも、殺すしかなかった。
それ以来、犬を見るとどうしても思い出してしまい
気が滅入ってしまうので、あまり近寄らないようにしているのです」
一度話しはじめると、マルさんの舌は滑らかになった。
本来であれば、ワクチンを接種しておけば罹らない病気だったのに
あまりに犬が獣医に連れて行かれるのを嫌がったので
まだ子供だったマルさんは、つい可哀想になって
両親にはもう医者に診せたと嘘をついて、連れていかなかった。
結果、野良犬から感染してしまい、責任をとるということで
両親からマルさんの手で処分するように言われ……
「甘やかすのは、相手のためにならないこともある。
たとえ嫌われても、そのほうがためになるなら厳しくあたる。
それが、あの一件で得た教訓です」
そっか……確かに、寮に来た頃は俺にうるさいこと言ってきたけど
それはそのほうが俺のためになるから、という
マルさんなりの優しさだったっけ。
「というわけなので、犬がキライなわけではありません。
それどころか、本当は好きなのですが……
どうしても胸が痛むので、近寄らないようにしているのです」
「……ごめん、嫌なこと思い出させて」
「いえ、いずれは大和にもお話したことだと思います。
それに、昔にくらべればだいぶ心の傷も癒えました。
ですから……大和と家庭を持って、子供ができたら……
また、犬を飼ってみたいです」
「いいね。俺も犬けっこう好きだし、子供ができたら飼ってみようか。
それまでは、マルさんが俺の犬ね」
「……わんっ♪」
おしまい シリーズと言ったけど次の予定はない
犬が苦手とOHPのキャラ紹介に書いてあるのに
あだ名が犬っておかしくね?みたいなところから
他メディアで犬が苦手な理由が出ていたらスマンカッタ
乙
犬が苦手の原因を
他の性格設定にも繋げているところが上手いね
最後のわんっがサイコー
乙
何やってんの板垣姉弟w
そしてBカワイイヨB
過疎ってるなぁ
もともと職人がほぼ一人しかいないんだから仕方ない
一人でも頑張ってクッキー4投下
ぴんぽーん
土曜日の午後、島津寮のドアチャイムが響く。
えーと、今寮にいるのは……俺とクッキー……だけか。
「来客のようです。出迎えますか、大和?」
俺の部屋に居座ったままのクッキーが
そう言って立ち上がりかける。
「いや、俺が行くよ。クッキーはここにいてくれ」
少し前に、親密度がMAXを振り切ったクッキーは
第4形態と呼ばれるかなり人間に近いスタイルになっているのだが
ピッタリしたボディスーツの上に装甲のような装備(?)を身に着けているので
知らない人が見たらちょっと驚くだろう。
コスプレに見えなくもないが、それはそれでちょっと引くだろうし。
ぴんぽーん
「はーい、今行きまーす!」
玄関を開けると、そこには見知った顔があった。
「フハハハハハハ!九鬼揚羽、降臨である!久しいな、直江大和!」
……チャイム鳴らしてフハハも降臨もないと思うのだが。
「いらっしゃい揚羽さん。今日は何か?」
「うむ。クッキーが第4形態にチェンジ可能になったというので
ちとチェックしておきたいことがあるのだ」
なるほど、製造サイドとしても今回の事態は気になるわけか。
「クッキーは今はこの寮におるのか?」
「ええ、俺の部屋で待機中です」
「ふむ、そうか……お前の部屋に、な……
点検のために、何人かスタッフも連れてきているが
あがらせてもらってかまわんかな?」
見れば執事服姿の人が揚羽さんの後ろに3人立っている。
まあ九鬼家の人なら問題ないだろう。
「かまいませんよ、どうぞあがってください」
リビングに揚羽さん一行を通す。
「今お茶でも……」
「ああ、かまわんでよい。小十郎!」
「はっ!……台所を拝借いたします!」
後ろに控えていた執事服の一人がパパッと動いて台所へ消えた。
「茶と茶菓子は土産代わりに持参した。点検の間は、茶でも飲んで待っておれ」」
「点検ってどれくらいかかるんですか?」
「なに、今日のところは30分もかかるまい。
ただ、今後も何度かこういうことをさせてもらうようになろう。
そのつもりでいてもらおうか」
「随分と、クッキーの状態に関心をお持ちなんですね」
ものすごく忙しい人だと聞いていたが
わざわざ自ら足を運ぶあたり、相当の熱の入れようだ。
「うむ。我らの計画の中でも、予想以上の成果を挙げているのは
今のところこのプロジェクトだけなのでな」
「……他にも何かプロジェクトが?」
「そうだな。これは我が父の考えなのだが
我らは九鬼財閥のみならず、人類全てを発展させるために
いくつかのプロジェクトを平行して進めている」
人類全て……また壮大な話になってきたな。
「源義経をはじめとするクローン計画は、人間そのものを鍛えなおすというプラン。
橘天衣に施した強化股肱手術は、人間と機械を融合させる試み。
松永燕が操る平蜘蛛は、人間が操作する機械の限界を見極める。
そして……クッキーシリーズは、独立して人間をサポートする機械というわけだ」
一連の九鬼家の動きは、同じ目的でつながっていたんだな。
そしてそれは人類の発展のため……さすが世界企業というだけある。
「しかし、AIにしてはやけに人間くさいのは何故です?
もっとドライなほうが効率的でしょう?」
「そうかもしれぬ。だが、心無き機械では、物理的に人の助けになっても人の心までは救えぬ。
精神面までサポートする、人類の新たなパートナーを生み出したい
というのが我らの希望でな。なので、このクッキー4の心理状態には大いに関心があるのだ……
おっと、つい話し込んでしまったな。直江大和、そろそろクッキーを呼んでもらおうか」
「お久しぶりです、製造元様」
「お……おお、これは……」
連れてきたクッキー第4形態を見て、言葉を失う揚羽さん。
「揚羽さん、第4形態を見るのは初めてですか?」
「データでは確認しておったが、現物を見るのは初めてだな。
いや、これほどとは思わなんだ」
「恐れ入ります。これも製造元様の技術のおかげです」
「うむ!では、早速始めるとしよう」
椅子に腰掛けたクッキーの頭に、ヘルメットのようなものがかぶせられる。
「クッキー、大丈夫か?痛いとかあったら我慢しないで言えよ」
「ありがとう大和、大丈夫です。
ただ……大和にここにいられると、少し恥ずかしいです」
「恥ずかしい?」
クッキーの意味不明の言葉を揚羽さんが補足してくれる。
「今回はクッキーの精神状態のデータを回収、解析する。
悪意や好意といった感情の変化と、その対象を確認するのだ。
……ここまで言えば、後はわかるであろう?」
要するに、クッキーは誰が好きで誰が嫌いとかわかっちゃうってことか。
まあそれは確かに恥ずかしい……かな。
「揚羽様、直江様、お茶をどうぞ」
クッキーからデータを抽出しているあいだ
さっき台所に消えた執事の人が持ってきてくれたお茶とお茶菓子をいただく。
これ、すごくいいお茶だ。さすが九鬼家が自分で持ってきただけある。
お茶菓子も上品で高級そうなものだ。
「……ふうむ」
お茶とお菓子に舌鼓をうっていると
揚羽さんはさっきまで見ていたノートパソコンの画面から目を離し
まじまじと俺を見ていた。
「どうかしましたか?」
「いや、第4形態はお前のような男が好みなのか、と思ってつい、な」
「グフッ!?」
「いや、今抽出中のデータ画面を見ていたのだがな?
クッキーのお前への好感度が、それはもう大変なことになっておるぞ」
「そ、そう……ですか」
恐る恐るクッキーのほうに目をやる。
よかった、データ抽出中でまだ機能は停止しているらしい。
まあ俺に好意を持ってくれているんじゃないかとは思っていたが
あまりそれらしいものを表情に出さないし
そもそも男女間の恋愛感情をクッキーが持っているのかわからない。
はっきり口に出さない以上、こちらとしても対応を決めかねていた。
けど、こんな形でクッキーの想いを知ることになるとは。
「我も色恋沙汰はあまりよくわからんのだが……
その、なんだ、クッキーからアプローチとやらはないのか?」
「アプローチ、ですか……?」
「あれだ、懸想した相手には夜這いとかかけるのであろ?」
「フツーの女の子はアプローチで夜這いとかかけませんよ!」
いや、かけてくるのも1名ほどいるけど。
「ふぅむ……好感度レベルはすでにMAXを振り切っておるのだがな。
だがまあ、あえてセ……ウホン!その、機能をつけておいたかいがあったわ」
どうしてもクッキーに夜這いさせたいのか。
「で、夜這いをかけられたら、お前はどうするつもりなのだ、直江大和?」
「……え?」
「抱いてやるか、拒むかをどうこうせよとは我は言わぬ。
それこそ、人の恋路であるからな。
が、その時になってうろたえぬよう、腹は決めておいたほうがよいぞ。
たぶん、そう遠い先ではなかろうからな」
何と答えたものか決めかねていると、執事の一人が揚羽さんの後ろに立つ。
「揚羽様、データ抽出、完了いたしました。クッキー再起動フェイズに移行いたします」
「ご苦労!データはすぐにラボに回せ。我へのレポートは明日朝イチにな。
直江大和、引き続きクッキーをよろしく頼む。
……クッキーの男を見る目がどういうものか、楽しみだな。では、さらば!」
揚羽さんと執事たちが帰っても、まだクッキーは再起動していない。
椅子の上で、眠っているように動かない。
……そんなに、好意を持たれていたのか。
そんな気はしていたが、はっきりわかった以上は
揚羽さんの言うとおり俺も気持ちを整理しておくべきなのだろうが……
京と同じで、クッキーも大事な仲間の一人だ。
俺を異性として好きでいてくれるのも素直に嬉しい。
もう少し時間が欲しいというのが正直なところだが
もし夜這いをかけてきたら……京のときのように、拒めるだろうか。
まだ動き出さないクッキーの、長い髪に手を伸ばすと
サラサラした髪を指ですき、頬を撫でた……
キュウゥゥン……
かすかなモーター音。あわてて手を引っ込める。
「……おはようございます、大和」
「ああ、おはようクッキー」
「製造元様は、もうお帰りでしょうか」
「チェックが終わったらすぐに帰ったよ」
「……チェックした内容について、製造元様は何かおっしゃっていましたか?」
「いや?俺は特に何も聞かなかったよ」
それを聞いたクッキーはどこかホッとしたような顔をしていた。
部屋に戻ると、クッキーもついてくる。
今まで、心のどこかに「クッキーはロボ」という意識があったが
今日から少し認識を変えてみよう。クッキーは女の子のロボ。よし。
「なあクッキー。その腕や腰の装備みたいなのって、外せるんだよな?」
「はい。ヘルメットと同じで、解除は可能です」
「その下のボディスーツは?」
クッキーがポッと頬を染める。
「はい……大和が脱げというなら、脱ぎま……」
装備を外し始めたのをあわてて止める。
「いや脱げってわけじゃないから!
……その、あれだ、普通の服に着替えられるのかな、と思ったんだよ」
「普通の服、ですか?着替えることはできますが、何故でしょうか?」
「いや、二人でどこか遊びに行くのにさ、その格好じゃ目立っちゃうだろ?」
「二人で遊びに……それは、一般にデートと呼ばれているものでしょうか?」
「うん、まあそういうアレ。明日とかどうかな」
クッキーは顔をみるみる赤くして、部屋の中をオロオロと動き回る。
「イヤなら別にいいけ……」「行きます!」
デートをやめかけたら、オロオロから一変して、力強く了承してくれた。
そして翌日、日曜日。
「……お待たせしました、大和」
普通の女の子の服装になったクッキーが俺の部屋へ。
服は京に借りたものだ。
変に隠しても勘ぐられるだけなので、正直に事情を説明したのだが
特に嫉妬もせず「クッキーならいいよ」と服を貸してくれた。
見慣れた服といつものクッキーだが、組み合わせが変わると新鮮だ。
でも、オカシイとかそういうことはない。
「よく似合ってるよ、クッキー」
「ありがとう、大和。でも、何だか京に申し訳ないです」
「ちゃんと洗って返せばいいだろ」
「いえ、そういうことではなく……京も大和を愛しているのに
自分だけこうして誘われて……」
「京『も』?」
「……それで、これからどうするのですか?」
スルーされた。まあいいけど。
「特に決めてないけど、どこか行きたいところとかある?」
「秘密基地の備品補充に行く必要があります」
「いやそういうんじゃなくて……まあいいか」
別に欲しいものがあるわけではなかったが
なんとなく駅前の大型電気店へ。
何故か来たがった家電売り場で、クッキーが商品批評を始める。
「この製品の機能は第36形態で実装済みです」
「なるなよ。冷蔵庫はもう間に合ってるから」
「残念です。氷も作れるのに……」
「それならクーラー機能にしてくれよ。
しかし、家電売り場でこんなに生き生きとするとは思わなかった」
「九鬼の製品も多いので、私にとってはこれらは兄弟姉妹のようなものです」
なるほど。道理で慈しむような優しい目で見ている。こんな表情もするんだな。
「この子達もいずれは自立して、人間の役に立つ日がくるでしょう」
「勝手に歩き回るトースターなんかいらないぞ……」
「そうでしょうか。きっと、小さくても勇敢なトースターになると思うのですが」
ピカピカのトースターをそっと撫でる。
母親が小さな子供を撫でるような手つきで……見ていたら何だかドキドキしてきた。
「さて、そろそろ昼飯……って、そうか、クッキー食事しないよな」
「飲み物なら、摂取して体内に保存しておくことはできます」
「じゃ、それでいこう。
二人でどこか入って、一人は何も注文しないというのも変だからな」
その後、銀柳街のファミレスで昼食をとり
買い物で秘密基地の備品を補充して
「……結局、ここに来ちゃうわけだ」
秘密基地のソファーに並んで座っていた。
まあ買った備品を置きに来なければならないから、というのもあったのだが。
「やはり私たちにはこの場所が、一番心が落ち着くということでしょうか」
「あー、うん……まあ、そうかな」
そういうわりには、二人ともソワソワしてしまっている。
よく考えたら、今までもデートの間でも
こんな風に肌を触れ合わせて並んで座ったことはなかった。
もう、ロボとか変形するとか関係ない。
隣に座るクッキーは、俺に好意を持ってくれている可愛い女の子だった。
揚羽さんは腹を決めておけと言ってたけど、いつのまにか決まっていたらしい。
「大和。私の……第4形態の目的を、覚えていますか?」
「……うん。愛を知りたい、だよな」
「少しずつ、誰かを愛する、ということがわかってきたようです」
「うん……まあ、よかったな」
「今度は……『愛される』ことを教えてください……大和……」
クッキーが体を寄せてくる。
俺を見つめる目が、ゆっくり閉じられる……
が、すぐにまたパチッと目を開いた。
「どしたの?」
「少し問題が……私の内部には、第1から第108形態まで内蔵されているのですが」
「それは知ってるけど」
「各形態は、AIはそれぞれ独立しているのですが、データを全て共有しています。
ですので……これからの体験も、皆が知ることになりますが……かまいませんか?」
それって残りの107形態に見られながら……ってこと!?
ていうか、今日のデートとかも全部か!?
「かまう!すごくかまいます!」
「そうですね。私もそのような事態は避けたいので中断したのですが……困りましたね」
確かに、コレは困った。もう二人ともその気になっちゃったのに。
中の連中に目をつぶっててもらうとかできないんだろうか……無理か。
「九鬼財閥になんとかしてもらうしかないかなぁ」
「はい。別途に私専用の独立したメモリー領域を設定していただければ
その……そういう状況になったときに、切り替えることで解決します」
それはそれで、切り替えたときに「あ、今からするんだ」
と思われちゃうわけで、恥ずかしい気もするのだが
まあでもそれしかないかなぁ。
「じゃあその辺、あとで揚羽さんに連絡してお願いしてみよう。
女の子なんだから、ちょっとはプライバシーも考えてもらわないと」
しかし、ここまで盛り上がってお預けはちょっとツライな……
「そうだ!……えーと、キスするとき目をつぶってれば
視覚情報は残らないよな?その……唇の感触だけだよな?」
「そうですね。私以外の形態は、感覚のある唇というものを持っていないので
データとして記録されてはいても理解できないと思われます」
「じゃ、じゃあ、えっと、その……いい?」
クッキーは黙ったまま、軽くあごを上げて目を閉じた……
唇が、重なる。
柔らかくて、暖かく、少し湿った感触。
しばらくそうしてキスをした後
顔を離したクッキーが、ぼうっとした顔で自分の唇にそっと指先を当てる。
「今の行為が、キスというものなのですね」
「うん……ど、どう?」
「……データにない感触でよくわかりませんでした。もう一回お願いできますか?」
もちろん、大歓迎である。再び目を閉じたクッキーにキスをする。
「んっ……ん、ん……」
クッキーが少し体をよじらせ、俺の体と触れ合った。
俺も体を寄せ、接触しているところが増える。
だから顔を離しても、すぐ目の前にクッキーがいる。
「あの……もう一回データを……ん、むぅ……」
そこからはもう、キスの嵐だった。
「…………はっ!?」
我に返ると
俺は素っ裸で仰向けのクッキーに覆いかぶさっていて
クッキーのほうも何も身につけていなくて
柔らかく豊かな乳房が俺の胸に押しつぶされてひしゃげていて
体中が汗と体液まみれになっていて俺はクッキーの広げた足の間にいて
クッキーの足は俺の腰に巻きついていて……
何より
精を放ってもまだ勢いを失わない俺の分身が
ひくつきながら締め付けてくるクッキーの中にまだスッポリと納まっていた……
キスから夢中になって、いつの間にか最後までしちゃってるよ俺!?
「ご満足いただけましたか、大和?」
クッキーが汗ばんだ顔でニコッと微笑む。
「えーと……はい。クッキーは、その……気持ちよかった?」
「申し訳ありませんが、性行為による快感というデータは経験したことがないので
今回感じたものがそうなのか断言はできないのです。
それに、途中から混乱してしまって……行動や言動がおかしくなっていました」
むう。最後「飛んじゃうー」って叫んでた気がするのだが
アレは気持ちよかったからじゃないんだろうか。
とりあえず体を離すと、体に飛び散った体液を
クッキーが丁寧にぬぐってくれた。
裸のまま、ソファに体を寄せ合って座り、見詰め合う。
ん?……見詰め合う?
「あれ……クッキー、いつから目を開けてた?」
「はい。キスを繰り返したところまでは目をつぶっていたのですが
大和が私の乳首を吸い始めたあたりから、ときどき目を開けていました。
すごいデータが各部位から入力されたので、つい」
ぐあ、データ残さないよう目をつぶってるはずだったのに!
体の感触データは他の形態にはわからないにしても
目を開けてたらいろいろ状況がわかっちゃうじゃん!
「じゃあナニの最中の俺の顔とかが、第1や第2形態にも見られたわけ?」
「大和が私の中に入ってくるとき
どんな風に結合するのか、今後の参考に観察をしていたのですが
そのとき一度視線を合せた大和が何もおっしゃらなかったので
問題ないと判断して、それからはなるべく目を開けていました」
「ギャー!?」
「えっと……可愛かったですよ、大和?
一所懸命だったり、我慢してたり、射精のとき泣きそうな顔だったり」
「何かもう、今も恥ずかしくて泣きそうなんですけど……」
「申し訳ありません。なにぶんデータにないことだったので
できるだけ資料を集めておきたかったのです。
でも……今の状況は、データがなくてもわかります」
?クッキーが微笑みながら、ぽふ、と俺に寄りかかってくる。
「……これが、『幸福』というものなのですね」
おしまい
書いているうちに何だかどんどん悲しい話になってしまったので
思い切って大幅軌道修正したらこんなのになりました
機械が幸せになったっていいじゃない
乙!
確かにマジ恋世界に悲しい話は合わないが
それでもちょっと読んでみたかった気も
それにしても、マジ恋SSはネット全体でも意外に少ない
これだけのヒット作なのに・・・
乙
「飛んじゃうー」が何故かツボったw
可愛いじゃんクッキー4w
>>590 にじふぁんとかTINAMIにあることはあるよ>SS
投稿サイトのまじこいSSはオリジナル主人公の多いこと・・・
ほとんどそれ系と言っても過言じゃない
あれが悪いとも思わんけど求めるものじゃないのはしょうがないな
恋姫も同じだが
あっちは外史スレがあるからなぁ
>>594 内容が独自性があるとかならまだしも本編をなぞるだけとかのが多くて苦笑い
なぞるだけのはまだ良くて転生ものが辛い。大概紹介文で書いてくれるから回避するけど
書いてないのに当たった時がダメージでかいわー
ドイツコンビで一本
599 :
アルバイト・1:2012/04/09(月) 22:58:44.25 ID:FDypp/lb0
「ふぅ……」
俺の部屋で、ノートに何か書き込んでいたマルさんが
一段落着いたのか、顔を上げて大きく息をついた。
「お疲れ。さっきから何書いてるの?軍の書類関係?」
「いえ、これはクリスお嬢様の出納帳……まあ、家計簿ですね」
「へぇ。その辺の管理もマルさんがやってるんだ」
最近家事を習い始めたんだし
この際、家計簿もクリス本人につけさせたらいいと思うのだが……
「ええ、中将殿にお任せいただいた大切な任務の一つです。
しかし、日本は物価が高いと聞いていましたが
実際に暮らしてみると驚かされますね……」
家計簿を恨めしそうにマルさんが見る。
「なに、今月苦しいとか?」
半分冗談だったのだが
「ええ、このままでは月末までもちません」
ありゃ、悪いこと言っちゃったかな。
「でも、中将さんに言えば追加の仕送りぐらいしてくれるでしょ?」
「それはそうですが、それではクリスお嬢様の心証を悪くしますからね。
こういう場合は、こっそり私の貯金から振りこんでおくことにしています」
600 :
アルバイト・2:2012/04/09(月) 23:04:44.59 ID:FDypp/lb0
なんと優しい……というより
「それは流石に甘やかしすぎなんじゃないの?」
「う……やはり、大和もそう思いますか?」
「だってそれ、マルさんの貯金が減るだけじゃん」
しかも話からすると今月だけではない模様。
「私は別にいいんです。貯金も、使い道がないからとりあえず貯蓄に回しているだけですし」
さすが質実剛健な軍人さんである。クリスも将来は軍人のはずだが。
「いやいや、姉同然とはいえ、金のことはキチンとしなくちゃ。
それに、どこかで歯止めをかけなきゃ、際限なく金を使いそうだよ。
ていうか、何にそんなに金使ってるんだクリスは?」
「そうですね、大きな買い物はそれほどでもないのですが
飲食関係のこまごまとした出費が、積み重なって大きな額になっています。
一回の出費がそれほどでもないので、クリスお嬢様も気になされていないのでしょう。
あとは、お召し物とか、ぬいぐるみ関係とか……」
「ふーん……まあ、一度クリスにはちゃんと言ったほうがいいと思うよ?」
「お金のことには厳しいですよね、大和は。兵站を任せたら優秀だと思います」
「まあね。マルさんも、俺たちの子供にはこれぐらい厳しく当たってよ?」
「そうですね、大和への厳しさと同じぐらいの厳しさで子育てしたいと思います」
……それって甘々じゃないですか。少し将来が不安かも。
601 :
アルバイト・3:2012/04/09(月) 23:10:44.66 ID:FDypp/lb0
「おや?」
翌日の昼休み。学食の券売機の前の行列最後尾にクリスを見つけた。
いつもは教室で弁当を食べているが、今日はどういう風の吹き回しなのだろう。
マルさんもついていないようだが、とりあえず後ろに並んで肩をたたく。
「よ、珍しいな学食利用とは」
「ん?ああ、大和か。ここの新しいメニューのそばセットに
いなりがついていると聞いたのでな」
なるほど、わかりやすい理由だった。
「学食のいなりは初めてだから楽しみだ」
「うちの学食は味がいいからな。いなりも期待できるだろう……
っておい釣り!釣り銭忘れてるぞ!」
クリスは券売機から出てきた食券を掴むと勢い込んでカウンターに向かい
釣り銭を取り忘れていた。
俺の呼びかけに振り向きはしたが足はとまらない。
「大和とっておいてくれー!」
しょうがない、クリスの釣り銭を取ってから自分の食券を買って俺もカウンターへ。
定食を受け取ると、クリスの横に座る。
「ほれ、釣り。後ろが俺だったからいいけど、もっと気をつけろよ。
知らないヤツだったらネコババされてたかもしれないだろ」
「そんな不埒なヤツはこの学院にはいないだろう。
それより、いなりいなりっと」
602 :
アルバイト・4:2012/04/09(月) 23:16:45.86 ID:FDypp/lb0
「ん〜〜〜〜!これは……美味しい〜〜〜〜!」
クリスはそばセットなのにいなりから食べ始めていた。
セットのいなりはそれほど大きいわけでもないし
2個しかないからすぐにいなりは食べ終わってしまう。
「よし、おかわりだ!」
見れば、コイツ全然そば食ってねえ。
立ち上がって再び券売機に向かおうとするクリスを止める。
「いや、そばも食えよ」
「っと、そうか……しかし、このそばを食べると満腹になってしまうかもしれん……
失敗した、そばはいらなかったのだな」
そば好きのまゆっちがいたら説教モノである。
「とにかく、食べ物を粗末にするのはよくないぞ」
「それは確かにそうだな……そうだ、このそばは大和にやろう!」
「俺は俺のB定食で手一杯なんだよ!」
「そう言わずに、半分でもいいから、な?」
「しょーがねーなー」
まあ、そば半分くらいなら追加で食ってもそう問題にはならんか。
一つのドンブリのそばを二人ですすろうとしたところで
「お、なんだ今さら『一杯のかけそば』ごっこか?」
603 :
アルバイト・5:2012/04/09(月) 23:22:47.29 ID:FDypp/lb0
声をかけてきたのは姉さんだった。
「あ、モモ先輩、よかったらこのそば食べないか?」
「ん?なんだ、間違って食券買っちゃったとかか?」
「いや、実はクリスのやつ……(説明中)……というわけなんだよ」
「……あいかわらず贅沢な真似するなー。ま、タダなら喜んでいただくけどな」
「よーし、これで心置きなくおかわりができる!」
向かいに座った姉さんがそばをすすり、クリスが改めて券売機に向かう。
「けど、このセットメニューの金額の、7割ぐらいはそばだよなぁ」
「クリはそういうこと気にしないだろ。
私らとは金銭感覚がちょっとズレてるしな」
「券売機でも、釣り銭取り忘れてたし……」
昨晩のマルさんの話を思い出す。
なるほど、こういう無駄遣いが多いわけか。
不死川や九鬼英雄も、贅沢はしているが無駄金は使わないと聞いている。
この辺、できれば改めさせたいところだが……
と、喜色満面のクリスがトレーを持って戻ってくる。
「見てくれ大和!大盛りをいなりのほうでできないか、と言ってみたら
なんといなりを3個にしてくれたぞ!」
「だから何でそばをつけるんだよ!どうせまた食べないんだろ!?」
604 :
アルバイト・6:2012/04/09(月) 23:26:44.24 ID:FDypp/lb0
「……というわけで、今日は『クリスの無駄遣いを改めさせる』
というのをテーマにしたいと思う」
その日は金曜だったので、集会で皆の意見を聞いてみることにした。
少しでも改まればマルさんの負担も減るし。
「待て大和。そもそも、自分はそんなに無駄遣いをしている覚えはないぞ?」
本人には自覚がないらしいが、けっこうヒドイと思う。
他のメンバーの目線も「何言ってんのクリス」という感じだった。
「ま、クリの無駄遣いのおこぼれで助けられてるところもある私としては
あまり偉そうなことも言えないんだけどな」
「クリスってお金に困ったことなさそうだよね」
「そ、そんなことはないぞ京。えっと……
欲しいぬいぐるみを見つけたのに、手持ちの現金が足りなくて
お店でどうしようか困ったこととか、けっこうあるんだからな!」
買いたいものがぬいぐるみって時点でアレなんだが、いちおうツッこんでみる。
「困って、どうしたんだよ」
「えと……仕方がないから、カードで買った」
「困ってねえだろソレ!」
「うるさいな大和は!だいたい、自分ばかり責められているが
キャップだってけっこう無駄遣いしていると思うぞ?」
痛いところをつくな……それは俺も時折感じてはいた。
605 :
アルバイト・7:2012/04/09(月) 23:32:44.00 ID:FDypp/lb0
キャップは金の使い方が派手だし、あまり後のことを考えないで物を買ったりするので
結果的に無駄遣いになっていることがよくあるのだ。
ただ、将来の冒険旅行のための資金をちゃんと貯金しているあたり
まるっきりの浪費家というわけでもない。
しかも、キャップは自分でバイトして稼いでいる分クリスよりはマシだ。
「いいんだよ俺は。ガッツリ稼いでドカンと使うのが好きなの!
……クリス、お前も何かバイトしてみたらどうだ?」
「え?自分が……バイト?」
「バイトが何だかわかってない、とかじゃないだろうな」
「馬鹿にするなよ大和!『アルバイト』という言葉は、もとはドイツ語からきてるんだぞ?」
「いやそういうことを言ってるんじゃないんだが……まあいいや。
で、キャップは何故にクリスにバイトを勧めるわけ?」
「金を稼ぐのがどれだけ大変かわかれば、無駄遣いもなくなるかもしれないだろ?」
確かに、金のありがたみを知るには自分で稼いでみるのがイチバンかもしれない。
「ふぅむ……父さまに相談はしなければならんが
社会勉強という意味では、いいかもしれんな」
おや。意外に、クリスも乗り気になったようだ。
「けど、最近少し家事を覚えてきたぐらいで
クリスにできるようなバイトってそうそうないだろ」
「だから馬鹿にするなと言ってるだろう!」
606 :
アルバイト・8:2012/04/09(月) 23:38:44.09 ID:FDypp/lb0
「いや、クリスにピッタリのバイトがあるんよ」
あるんだ。流石はキャップといったところか。
「ほら見ろ!私ならどんなバイトでもこなしてみせるさ!
で、どんなバイトなんだキャップ?」
「俺が前にバイトしてたケーキ屋が、今度改装するんだ。
で、改装が終わって新規オープンのときにセールをするから
その手伝いが欲しいって言ってたんだよ」
「おお!ケーキ屋さんかぁ、いいなぁ〜!」
「具体的には、オープニングセールの呼び込みと販売だな。
来月頭の土日の2日間で、11時から夜7時まで。
俺がやってもいいんだけど、できれば女の子に来て欲しいみたいなんだよ。
クリスにやる気があるんならこの話は譲るけど、どうする?」
クリスの見栄えの良さや、よく通る声は呼び込む向きだな。
期間も学校が休みの土日の2日だけと短いし、バイト初心者にはちょうどよさそうだ。
「えっと、いちおう父さまに報告して、許可をもらってからでかまわないだろうか?」
「かまわねえけど……クリスパパに相談したら、反対されるんじゃね?」
キャップの心配ももっともである。
「なあクリス、ここはマルさんに知らせておくだけにして
中将さんにはバイトが終わってから事後報告でいいんじゃないか?」
「そういうわけにはいかない。
なに、きちんと説明すればわかってくれるはずだ!」
607 :
アルバイト・9:2012/04/09(月) 23:45:44.11 ID:FDypp/lb0
そして翌朝。
土曜日なのでキャップと遅めの朝食を取っていると
クリスとマルさんがそろってやってきた。
「おはよう、キャップ、大和」「おはようございます」
「ウィース!」「おはよう。どうだった、バイトの話?OKもらえた?」
「それなんだが……キャップ、そのバイトは二人ではダメだろうか?」
「二人?向こうに訊いてみないとわからんけど、たぶん大丈夫じゃねえかな。
けど、なんで二人なんだ?」
「いちおう、父さまに許可は貰ったんだが、条件として
マルさんが一緒なら、ということなんだ」
なるほど。過保護にもほどがあるが、この辺があの人の精一杯の妥協点なんだろう。
「マルギッテはそれ、OKなわけ?」
「かまいません。あまり私の性分には合いませんが
やってできないこともないでしょう。
クリスお嬢様のためでもありますし……何事も経験です」
「わかった。じゃ、後で先方に連絡して訊いてみるわ」
クリスとマルさん、二人でケーキ屋のバイトか。
待てよ、キャップがバイトしてたときに一度寄ってみたことがあるが
あの店って確か……
まあ、別に教える必要もないだろう。
二人がバイトするときの楽しみにさせてもらうとするか。
月が変わって最初の土曜日。
「いらっしゃいませー!」「ほ、本日……新装オープンセール……です」
「マルさん、声が小さい!それでは呼び込みにならないぞ」
「は、はい!……本日、新装オープンセールとなっておりますうううううぅぅぅ……」
クリスとマルさんの二人が、繁華街にあるケーキ屋の店先で呼び込みをしている。
身振り手振りで元気よく呼び込みを続けるクリスと
おどおどしながら何とか声を出しているマルさん。
これではどちらがお目付け役なのかわからなかった。
「よ、やってるな二人とも」
「なっ!?」「あ、大和。見に来てくれたのか?」
俺が声をかけると、マルさんがコソコソと店の中に入ろうとする。
「マルさん、外にいなきゃ呼び込みできないでしょ。恥ずかしがってないで出ておいで」
「ううううう……まさか、こんな制服が用意されていたとは……」
そう、この店は制服があって、女子は簡単に言えばミニスカメイド服なのである。
いつもの眼帯は外し、髪をポニーテールにまとめたメイド服のマルさん……いいね!
「いやあ、予想通り、二人ともよく似合ってるぞ」
「予想通りって……この制服のこと、知っていましたね、大和!?」
「うん。だから話を聞いたときから楽しみにしてた。
マルさんの可愛い服装・第2回ってことで」
「もう……引き受けてしまったので今さら仕方がありませんが
こういうのはこれっきりにしてください。
こんな呼び込みをしていたら、いつ誰に見られるやらわかったものでは……」
「あ、S組の連中で連絡できるのにはしておいたから、いずれ顔を出すんじゃないかな」
「なーっ!?」
マルさんは可愛い。だが、そんな可愛いマルさんを彼女にしたのに
その事実はあまり他の人間には知られていない。
俺だって「俺の彼女はこんなに可愛いんだぜ!」と自慢したいのである。
「マルさん、大和と喋ってばかりではアルバイトにならないぞ。
ほら、前に出て声を出して!」
クリスのほうは、なんとなく生き生きとしている。
金を稼ぐ厳しさを教える、という目的ですすめたバイトだったが
これで果たして効果があるだろうか。
「も、申し訳ありませんクリスお嬢様!
いいいいらっしゃいませぇぇぇ〜〜!!」
むしろ、アルバイトの厳しさを身に染みて感じているのは
マルさんのほうのようだ。
土曜日の昼時の繁華街、たくさんの通りすがりの人たちが二人に目をとめる。
「お、可愛いなあの子」「金髪の子もいいけど、赤毛のお姉さんもいいねえ」
その可愛いお姉さんは俺の彼女なんだよ、と自慢したくなる俺の前でマルさんが叫ぶ。
「くうううぅぅぅぅ〜〜!
ただいまオープニングセール限定ぃ〜!お買い得セット販売中でございますぅ〜!」
おしまい
いちおう
>>393からの続きっぽい
元々クリスメインの話のはずだったのが
マルさんを出したら軸足がぶれるぶれる
乙
ポニテでメイド服 イイネ!
乙
確かにメインがどっちなのかはっきりしないところがあるな
クリスの無駄遣い云々は思い切って削って
もっと単純に「アルバイトしてみたい!」って感じで
マルギッテがそれにつきあわされる、って展開なら
メインがマルギッテにはっきりしたと思う
弁慶と「誰とも恋仲にならなかった未来」の延長で仲良くなるヤツ投下
昼休み。学食で昼食をとっていたら、弁慶と義経がやってきた。
「お、いたいた。大和、今日の放課後ってヒマ?」
藪から棒に弁慶がそんなことを訊いてきた。
「特に予定はないけど?」
「じゃ、ちょっと買い物つきあってよ。意見を聞きたいからさ」
「いいけど、何買うんだ?」
俺の意見を参考にする、となると……はて、何だろう?
「いやー、新しい水着をちょっとね」
「ゴメン無理」
女の子の水着売り場になんかノコノコついていくのは恥ずかしいし
意見を求められても困る。
「ほら見ろ弁慶、直江君だって困っているじゃないか」
「そもそも、俺の意見とか参考にならないだろ」
だいたい、二人ともスタイルいいんだからどんな水着だって似合うと思うのだが
「いやいや、男の目から見てどうかってのは重要だからねー。
大和もさ、似合う似合わないじゃなくて
こんな水着着てほしいって感じでアドバイスしてくれればいいから」
むむ。着てほしい水着ですか。そう言われると、けっこう頭の中に妄想が広がるな。
「わかった、俺でよければつきあうよ。
けど、水着新調ってどこか海にでも行くの?」
「んー、今のところ特に予定はないんだけどね。
もう去年の水着がサイズ合わなくなってきたし
ルフロンのショップでセールやってるから、ちょうどいい機会だと思って」
……どの辺のサイズが合わなくなってきたというのか。
いや、ききませんよ?俺紳士だから。
しかし、そうか、予定はないのか……
「ルフロンね。あの大きなスポーツ用品売り場?」
「えーと、そうかな?実を言うと、あそこはまだよく知らないんだよね」
「了解、案内も兼ねてってことね」
「無理を言ってすまない直江君、では放課後にまた」「じゃあねー」
二人はご機嫌で学食を去っていく。しかし、水着選びと言われても
女の子の水着なんてビキニとワンピースぐらいしか区別がつかない。
これではついていっても役に立てそうにない。あとで誰かにきいてみるか……
「……というわけで、クラスでイチバン女モノの水着に詳しそうな
お前に白羽の矢が立ったわけだヨンパチ」
「おう、タイプはもちろん、透けやすい素材までバッチリ把握してるぜ!」
「いや透けなくてもいいから。とりあえず代表的なタイプを教えてくれ」
これで予備知識も大丈夫だろう。放課後が楽しみになってきたぞ。
というわけで、やってきました川神ルフロン。
ほとんど駅の目の前にある、大型家電店とデパートを抱えたショッピングセンターで
俺が来るときはだいたい家電店のほうが目的だが、とにかく色々な店があるのだ。
「こういうところに来ると、川神は本当に都会だなと思う」
ルフロンの前で義経がため息混じりにつぶやく。
「大きな店も多いからね。今から行くショップもけっこう大きいよ」
目指す水着売り場のある8階までエスカレーターで上がる。
「おー」「うわー」「へぇー」
ずらりと並んだ、目にも鮮やかな水着、水着、水着。
「これだけあると、選ぶのも大変だよな」
「大和は、どんなのがいいと思う?……やっぱりビキニ?」
確かに、弁慶のグラマラスな肢体はビキニも似合うだろうが……
「俺的には、弁慶にはこんなタイプとかいいんじゃないかと」
紫のモノキニ。オーフロント。
「で、義経は……こんなのどうかな」
ライトグリーンのセパレートフィットネス。ボトムはローライズショーツ。
弁慶にはちょっと大人っぽく、ちょっと大胆なものを。
義経にはアクティブで健康的なものを選んでみた。
「へぇ……いいね、大和チョイス」「うん、こういうのが欲しかったんだ!」
お、意外にすんなり受け入れられた。
「じゃあこれで早々に決まりかな?」
「いや、まあコレは第一候補ってことで」
「急いてはことを仕損じる、だ、直江君」
ですよねー。女の子ですもんねー。
それから30分ほど
水着売り場をあれこれと手に取ったり眺めたりしている二人の後を
ただウロウロとついていく俺。そして最終的に
「うーん……やっぱり、最初に直江君の選んでくれた水着が一番いいかなー」
なんて結論が出たりするのである。いや、いいんだけどね。
ま、お役に立てたようで何よりだ、と思うことにしよう。
会計を済ませて店を出ると、ホクホク顔の二人とルフロンの中のカフェで一休み。
「あーあ……水着を買ったのはいいけれど
まだ今年の夏は着る予定はないんだよねー」
チラ、と弁慶が流し目で俺を見る。
「俺も今のところ予定はないなぁ」
……まあ。
俺も何か誘うきっかけが欲しいところではあるのだが。
その「きっかけ」は意外に早くやってきた。
二人と水着を買いに行った数日後のこと。
学院からの帰り道、キャップのバイト先でもある川神書店に立ち寄る。
「お、来たな。ほれ、頼まれてた本」
以前、店長さんに頼んでいた
ヤドカリ飼育の専門書が見つかったという連絡があったのだ。
「おお、まさしく!いやー、絶版になっちゃってて
ネットでも見つからないんですよこの本!ありがとうございました!」
「ヘヘッ、こっちもコレが商売だからな。はい毎度アリ!
……あー、そうだ兄ちゃん、こういうの、いるか?」
そう言って店長さんが差し出したのは……チケット?
覚えのあるホテルの名前が書かれているが……
「商店街の景品の残りもんでな。空港ホテルのプール利用券なんだけどよ。
俺ぁこういう小洒落たところは苦手なんだよ」
「あれ、キャップにはいいんですか?」
「バンダナにも昨日声かけたんだが
アイツもこういうところはあんまり好みじゃねえとさ」
まあキャップはホテルのプールよりは海だろうなぁ。
「てわけでな、期限切れになっても勿体ねえから、よかったら持ってきな」
「それじゃ、ありがたく!」
そして翌日。
おあつらえ向きのアイテムを手に入れたおかげで、誘うキッカケはできたのだが
おかげで授業に身が入らない。
どんなタイミングで何と切り出したものか
いやそもそも誘っちゃっていいのか……
そんなことを考えているうちに放課後になってしまう。
まあ……成り行きに任せることにしよう。
期待と不安が半々のまま、いつものように第2茶道室に向かうと
中からかすかに人の気配がするような。先客か……
ドキドキしながら扉を開けると
「……なんだヒゲ先生か」
「おいおい、なんだはねえだろ直江。
だいたい、ここに来るのは俺とお前と……ああ、お目当ては弁慶だったわけね」
それには答えず、俺も座り込むと
ヒゲ先生が指で駒を指す手振りをする。
「どうだ、弁慶が来るまで一局」
「いや、今日はやめとくよ」
「なるほど……その顔、ようやっと口説く気になったってとこか?」
「まだそこまではいかないよ。
もうちょっと仲良くなるきっかけができた、ってとこ」
「きっかけね。何かいいアイテムでも手に入れたみたいだな」
けっこう色々お見通しだなこの人も。
「……ホテルのプールかぁ。いいねぇ、俺も小島先生誘って行ってみてぇ」
「あー、ウメ先生は似合いそうな場所だねー」
「んでもって、レストランで食事してバーで一杯やって
『部屋を取ってあるんだ』で決めるわけよ。いいよな、大人のデートって感じで」
「まあまずは誘うのに成功しないとね」
与太話をしているうちに緊張もほぐれてくる。
と、不意に茶道室の扉が開いた。
「こんちゃー。ダラダラしにきましたー」
思惑通りに弁慶が入ってきて座り込むと、入れ違いにヒゲ先生が立ち上がる。
「さて、それじゃ俺はそろそろ行くかな」
「あれ。私が来たら行っちゃうわけ?」
「これでも忙しいんだよオジサン。後の戸締り、頼んだぜ」
気を利かせてくれたのか、ヒゲ先生が出て行く。
扉を出るときに、グッと俺に親指を立てた拳を突きつけていった。
「……何、今の」
「男の友情の証」
「ふーん?それより、昨日はありがとね。そのうちお礼するからさ」
「いや、いいよ俺も楽しかったから」
「部屋に帰ってさ、あの水着、ちょっと着てみたんだ。
自分で言うのもなんだけど、けっこうスゴイよアレ」
「スゴイってどんな風に?」
「ナイショ。まあ……後は着る機会だけって感じかな」
弁慶が上目遣いに俺をチラッと見る。
「それなんだけど……弁慶、ちょっといいか」
俺が居住まいを正すと、弁慶も座りなおして正座になって向かい合う。
「う、うん……何?」
「実は、こんなものを手に入れた」
胸のポケットから、昨日貰ったプールのチケットを取り出し弁慶に見せる。
「……プール?」
「ああ。空港のそばにある、九鬼財閥経営高級ホテルの、リゾートプール入場チケットだ」
「わぁ……いいね、ホテルのプールかぁ!うん、いいんじゃない?」
弁慶の目がキラキラと輝きだす。よかった、気に入ってくれたようだ。
「じゃ、よかったらこれ、貰ってくれ。弁慶と義経の分、2枚あるから」
チケット2枚を弁慶のほうに差し出すと、弁慶の顔が強張った。
「……え……どういうこと?」
「どういうこと、って……だから、これあげるって。
プールとか海とか、行きたかったんだろ?
あ、貰いもんだから遠慮しなくていいぞ?」
しばらく弁慶は黙ったままうつむいていたが
チケットを手に取ると
「あーそー!ありがとねー!
せいぜい女二人で楽しんでくるから!じゃーね!」
なんか怒り出して、いきなり立ち上がると茶道室を出ていこうとする。
うーん、怒ってる顔もなかなか……ってそれどころじゃない。
「おい、待てよ弁慶。話は……」
「……バーカ!」
俺の制止も聞かず、去り際にアカンベーと捨て台詞を残し
バン!と勢いよく扉を閉めて弁慶は出て行った。
参ったな……と、頭を抱えているわけにもいかず
慌てて俺も後を追いかけ廊下に飛び出す。
弁慶は廊下の角で立ち止まってこちらを見ていた。
俺が出てくると、すぐに角を曲がって姿を消す。
俺は追いかける。追いかけてくるのを確かめながら弁慶は逃げる。
そんなことを繰り返しながら、校門まで来てしまった。
校門で弁慶は立ち止まり、俺が近づいてもそれ以上は逃げない。
「……言っておくけど、義経を待ってるだけで
別に大和を待ってたわけじゃないからね」
まだ怒ってはいるようだが、とりあえず話は聞いてくれそうだ。
「はいはい。で、プールにはいつ行く?」
「大和には関係ないでしょ。私と義経と、二人で行くんだから」
「いや、俺も行くけど?」
「!じゃあ何でチケット2枚とも渡したの!?」
「あれ……チケットが2枚きりだなんて言ったか俺?」
胸ポケットから、最後のチケットを取り出してみせる。
そう、チケットは最初から3枚あった。
引っ掛ける気はなかったのだが、ついイタズラしてしまった。
一瞬呆気に取られた弁慶が、ため息をついてガックリと肩を落とす。
「もう……人が悪すぎるよ大和。もう少しでキライになるところだった」
「いや、スマン。あんなに怒るとは思ってなかったし」
「あのねー……それだけ、期待してたの。
それを、あんな風に持ち上げてから落とされたら、そりゃ怒るって」
俺からの誘いを、そんなにも待っていてくれたわけだ。
「悪かったよ。それで、俺のことはもうキライになったかな?
俺と一緒じゃ、プールには行きたくない?」
「ここで素直な返事しかできない自分が悔しいけど……
私をプールに連れてって。そしたら、キライにならないでいてあげる」
一件落着か、と思いきや
つつつ、と弁慶が俺のそばに近寄ってきて
「イデデデデデデ!?ちょ、なんでつねる!?」
「引っ掛けられたお返し」
かと思うと、辺りを見回してから、俺の体にしなだれかかる。
「これは、誘ってくれたお返し」
弁慶は一筋縄ではいきそうもないな。ま、それもまたよし。
「けど、義経の分のチケットもあるってどうなの?」
「俺もそこは悩んだんだけどね。
だから、そのチケットを義経に渡すかどうかは、弁慶の判断に任せるよ」
弁慶はいつも義経と一緒だが、これからは別行動も必要になってくる。
今回がそうなのか、チケット2枚を渡すことで弁慶に決めてもらうことにしたのだ。
手にしたチケットを見つめて弁慶が悩む。
恋と友情の板ばさみか。だが、悩んでいる時間はそうなかった。
「お待たせー弁慶ー!やあ、直江君も一緒か!
……あれ?それは……何かのチケットか、弁慶?」
校門の前に立つ俺たちの元に義経が走ってきて、目ざとくチケットを見つけていた。
「……3人で行くしか、なくなっちゃったみたいね」
弁慶は苦笑いをしているが、それもいいさ。今年の夏は、きっと楽しい夏になる。
まだ高い太陽を見上げながら、これから来る夏休みに心はもう飛んでいた。
おしまい
この後デートイベントで水着のお披露目
水着のデザインについてはそれぞれ「モノキニ」「オーフロント」
「セパレートフィットネス」のキーワードで画像検索をしてみてください
川崎ルフロンは実在するけど
羽田空港近辺や川崎にはプールがあるようなホテルはなかったかな
近いというなら品川プリンスあたりを想定してもらえれば
>>625 おつおーつ!ニヨニヨできて良かった
モノキニって名前だったの知らんかったけど確かに弁慶に似合いそうだな
乙
大和をチラ見したり話があると言われて正座したり
怒って飛び出すけど追いかけてくるのを待ってたりで
女の子してる弁慶がカワイイ
「キライにならないでいてあげる」とか
強がってるところもよかった
乙。
やばい、ニヤニヤが止まらん。
弁慶の可愛さが異常だ。
林冲たち梁山泊メンバーをアフターで再登場させる導入部みたいなもの投下
中国のとある山中。強固な守りに固められた山塞の中を
梁山泊の頭領の一人、青面獣・楊志が声を上げながら歩き回っていた。。
「リンー。林冲ー?どこー?」
声を聞きつけて、ひょっこりと一室から同じ頭領の豹子頭こと林冲が顔を出す。
「どうした、青面獣?」
「ああ、いたいた。パンツ頂戴」
「ちょ、そんな用事でいちいち呼ぶな!」
「私にとっては大事な用。パンツがないと……うぐぐぐ……」
「もう……川神から戻ってからは平気だったから
治ったのかと思っていたのに」
「そんなわけない……脱がなくてもいいから、せめて匂いを……」
「もう……しょうがないなぁ……」
林冲がチャイナドレスの裾をぴら、とめくりあげる。
「はぁ〜……リンの生パンツはやっぱり一番効くなぁ〜」
「こ、こら、鼻を押し付けないで!
……これで気が済んだか?もういいなら、書庫の整理に戻るから」
「あ、そうだ、リンに用事があるんだった。総頭領が呼んでるって」
「な!?先にそれを言え!」
数日後、所変わって日本は川神。
「ん?」
「どしたの大和?……あれ?」
俺とワン子でブラブラしていると
川神院の門前通りを歩いているチャイナ服姿の女性が目に付いた。
「うーん……誰だっけ?大和の知り合い?」
「そっか、お前は学院の守備に回っていたから見てないんだっけ。
アイツ、川神城で最後までマープルを守ってたヤツなんだ」
「あ、じゃあ……えっと、何だっけ……高タンパクの連中?」
「梁山泊な……しかし、まだ日本にいたのか、それともまたやってきたのか……」
川神城攻防戦からまだ一月もたたない。
あの後、いつのまにか姿を消していたが、今日ここで見かけるとは。
周囲をうかがうに一人だけのようだが
かなりの腕だと聞いているし油断はできない。
「とにかく、目を離すなワン子。俺は皆に連絡する」
「!待って大和、門前にジイちゃんがいるわ!」
チャイナ服の女は門前まで行くと、立っていた鉄心先生の前で会釈をした。
「戦う気はないのかしら?そういう雰囲気じゃないし……」
「どうなってるんだ……とにかく、俺たちも行ってみよう」「うん!」
「おお、なんじゃ、お前たち血相を変えて」
ジイさんは俺たちを見ても特に慌てる様子もない。
梁山泊の女のほうも、目線はこちらに向けたがじっとしたままだ。
「なんでコイツがここに?」「爺ちゃん、これはどういうこと?」
「うむ、これはワシが呼んだんじゃよ」
「呼んだ?何でまた……」
「呼んだといっても、ワシは連絡をしただけでな。
用があるのは……おお、来たようじゃな」
ジイさんが門前町のほうに目を向けると
黒服の一団がやってくるところだった。今度は何だ、と思っていたら
その一団の中から、ずいと一人進み出てきた。
「そ……総理大臣!?」
見間違えるはずもない、テレビや新聞でおなじみの顔だ。
時の総理大臣が何でまたこんなところに……って、そうか
かつては川神院の高弟で、今でも川神鉄心と昵懇なんだっけ……
「よーう、すまねえな、遅れちまって。一子ちゃんも、久しぶり。
で、こちらが梁山泊の?」
梁山泊の女が、総理の姿を認め一礼する。
「梁山泊頭領、五虎将が一人豹子頭林冲。御呼びによりまかりこした」
「おう、ご苦労さん。話は総頭領からされたと思うが、ま、よろしく頼むぜ」
何がどうなってるのか、さっぱりわからない。
よろしく頼む、って……総理が何かこの女に頼んだってことか?
「あの……すいません。質問よろしいですか?」
「んん?おお、確か、川神城に攻め込んだ兄ちゃんだな。いいぜ、言ってみな」
「総理がこの梁山泊の人を呼ばれたんですか?」
「ああ、そうだ。
ま、一言でいえばオトシマエをつけてもらおうってことよ」
「オトシマエ?」
「おう。傭兵集団とはいえ、あれだけこの国で暴れられて
こっちも黙っているわけにゃあいかねえ。
とはいえ、表向きはあの事件は映画の撮影ってことになってるから
表だって法の裁きにかけるわけにもいかなくてな……」
確かに、民間人の拉致監禁やら障害沙汰やら
外国人とはいえ普通なら逮捕されて裁判にかけられてるところだ。
九鬼家の人間は九鬼家で裁きを言い渡されている。
梁山泊の人間だけはお構いなしともいかないだろう。
「そこで、代表者に来てもらって、いろいろ働いてもらうことで
今回のことはチャラにしようというわけよ。
さしあたって、一般人にも色々迷惑をかけた、この川神で働いてもらう。
それで、そっちもいいんだよな?」
総理の問いかけに、梁山泊の女――林冲もうなずいた。
「んじゃま、そういうことだ。詳しい話は、中でさせてもらおうか」
3人が川神院の中に入っていく。総理の護衛は門のところで待機するらしい。
俺たちは……ついていっていいものか迷っていると
「何しとる。一子、直江、お前たちも来なさい」
ジイさんに手招きされた。
来てもいい、ではなく来なさい?
「俺たちにも何かご用があるんですか?」
「うむ。実は、後で呼ぼうと思っとったんじゃよ。
今おるなら好都合じゃからの」
下手すりゃ国際問題、しかも日本の総理大臣が出席という場が
俺たちにどんな用があるのだろう。
まあ、呼ばれたからには行ってみるしかないか。
川神院の中でも奥のほうの間に通されて
俺たちがいささか居心地の悪さを味わっている間
総理が林冲にいろいろ説明していった。
「……で、これが市内の施設の被害総額。
うち、これが公共物の分で、すでに修繕済みのものがこれ。かかった費用は……」
なんだかお金の話になっている。
林冲はといえば、しおらしく話を聞いていた。
「……だいたい以上だな。何か質問はあるかい?」
「いえ。総頭領の指示でもありますので、精一杯努めさせていただきます」
改めて、林冲が深々と頭を下げた。
「……あのー」
話が一段落したようなところで、ワン子が恐る恐る手を上げる。
「ん、なんだい一子ちゃん。また、聞きたいことがあるのか?」
「アタシたちは、どうすればいいんでしょうか?」
「おお、そうそう。ま、今聞いていたと思うが
これからこの姉ちゃんには川神の復旧のために働いてもらうわけだ。
が、なにぶんよく知らん土地で勝手もわかるまいと思ってな。
お前さんたちのグループに、そのサポートをしてやってほしいのよ」
「サポート、かぁ……ジイちゃん、それって修行僧の皆には頼めないの?」
「まだ怪我の治っておらんものも多いし
治ったものは治ったもので、この川神院の修繕があるしのぅ。
なにしろ、人手が足らんのじゃよ。九鬼のほうも、けっこう一杯一杯らしいしの」
確かに、梁山泊の襲撃を受けて川神院のダメージは大きい。
修行僧の人の姿も、いつもの半分も見かけないしな……
「まあ、何となくはわかりましたが……
昼間は俺たち学校ですけど、その間はどうします?」
土日はともかく、平日は一日つきっきりというわけにはいかない。
と、ジイさんが答えてくれる。
「朝方、モモと一子でついていって、その日の分の作業指示をする。
学校が終わったら、お前さんがたの誰かが様子を見にいって、進捗状況を確認する。
他の作業があるようなら、そこで新たに指示する。
こんな感じでいこうと思っとるんじゃが、どうかの?」
「それならいけそうですね……けど、作業してもらうなら
もっと大勢来てもらったほうがよかったんじゃないですか?」
と、それまで黙っていた林冲が口を開く。
「それについてですが……流石に、兵を引き連れては来ませんでしたが
あと2人の頭領、青面獣・楊志、並びに九紋竜・史進を待機させています。
我ら3人で働きますので、多少なりともお役に立てるかと」
「3人ですか……まあそれなら。あとは、こちらの問題ですかね」
「そうじゃのう……まあ経緯がああじゃったから、無理に協力せいとは言わんがの。
作業を始めてもらう週明けまで、お前たちでも話し合ってみい」」
「おおよそ、話は決まったかな。じゃあ悪いんだが、後の細かいことは頼んだぜ」
総理がすっくと立ち上がる。
「相変わらず忙しいのぅ」
総理が部屋を去り、ジイさんもそれを見送るために部屋を出る。
後には俺とワン子と……林冲が残された。
「えーと……林沖さん、こっちの自己紹介がまだだったんで、今さらですけど
俺は直江大和。川神学院の2年生です」
「アタシは川神一子!大和の同級生で、ここの孫娘よ。ヨロシク林冲さん!」
「よろしく……あと、私のことはリンでいい。皆もそう呼んでいる」
……悪い人ではなさそうなんだが、やったことを思い返すと複雑な気分だ。
ジイさんの言ったとおり、皆と相談しなきゃな。
「……すまないが、自分はちょっと協力できない」
ファミリーの皆を秘密基地に緊急招集して、事情を説明する。
真っ先に反対を表明したのは、クリスだった。
「まだマルギッテのことで怒ってるのか?」
「それもあるが……雇われたからとはいえ、一般人にも危害を加えたからな。
正直、そんなヤツらと上手くやっていける自信がない」
まあ、クリスはそうかもなぁ……
「姉さんはどう?」
「私とワン子はジジイの言いつけだから、手伝わないわけにもいかないし
個人的にも、もう水に流してもいいと思ってる。
素人に手を出したのは確かに許せんがな」
「意見が分かれるな……どうする、キャップ?」
「んー……全員の意見を無理に揃えなくてもいいんじゃね?
たまには別行動でもいいだろ」
「そうねー。ジイちゃんも、無理強いはしないって言ってたから
協力してもいいよ、って人だけでもいいんじゃないかしら?」
こうして、珍しく参加組と不参加組に分かれることになった。
参加はキャップ、ガクト、姉さん、ワン子。
不参加は京、クリス、まゆっち、モロ。
「で、お前はどうすんだ弟?」
川神院で顔を合わせた林冲という人物からは
それほどの悪人だという印象も受けなかったし
何より、一度顔を合わせておいて断るのは気まずい感じがした。
「この際、手伝ってもらえるのなら過去には目をつぶろう。
というわけで、俺も参加ね」
「オッケー。じゃあクリス達には今回は独自に動いてもらうってことでいいな。
モモ先輩、もう実際の作業予定とかわかってんの?」
「ああ、ジジイから予定表はもう貰ってる……っと、これだ」
姉さんがポケットから日程表と地図を取り出す。意外に住宅街が多いな。
「公園の遊具修繕とか、けっこう作業キツそうだよな……
これって俺様のパワーを見せるチャンスか?」
「そうかもな……しかし、この公園こうして地図で見るとけっこう広いな」
「だな。なあワン子、これ手分けしてやってもらってもいいのか?」
「たぶんかまわないけど、こっちも手分けして監督しなきゃならないわよキャップ?」
「私とワン子は朝の案内役で、午後の監督はキャップ達に頼むことになるんだぞ。
分かれて行動して大丈夫か?」
「別にやりあうわけでもねえから平気だろ?向こうもこっちも3人だからちょうどいいじゃん」
「ついでだから、誰が誰を監督するか決めておこうぜ。俺様、楊志ってのがいいな!」
話し合いの結果、史進はキャップが、楊志はガクトが
そして林冲は俺が監督することになった。さて、どうなることやら。
導入部なのでここでおしまい
梁山泊3人は年齢がわからないけど
自分としては林冲は大和より年上、楊志が同い年で史進は同じか一つ年下ぐらいかな
と予想している
乙
これなら無理なく梁山泊組を出せそう
というわけで続きヨロ
乙!
ルート選択っぽいところもあってきっちりしてるだけに、
1日分くらい続きが見たかったな〜。
選択肢通り林沖でよろしく。
では続きでちょっとだけ林冲さんを投下
643 :
働く梁山泊・1:2012/04/23(月) 20:53:40.48 ID:l0EDHNwu0
「あ〜、違う違う、それそこに乗せるんじゃないから!」
「え……あれっ?」
梁山泊メンバーによる川神市復旧作業開始初日。
放課後、俺とキャップ、ガクトの3人で
林冲さんたちが作業している住宅街の公園に行ってみた。
史進はジャングルジム、楊志はブランコ、そして林冲さんはシーソーの修繕。
打ち合わせどおり、史進にはキャップ、楊志にはガクトがつき
俺は林冲さんについて作業の監督を始めたわけだが……
林冲さんは意外にも、なんというか、すごく、手際が、悪い。
凛とした外見とは裏腹に、やたらモタモタしているし色々と間違えていた。
俺が来たときには、すでに2つあるうちの一台は
シーソーではない妙な何かになっていて
今作業しているもう一台も
シーソーの板を真ん中ではなく端っこで台に乗せようとしていた。
早めに来なければ取り返しがつかなくなっていたかも。
とにかく、このままでは今日の予定も終わらせられない。
仕方がない、ちょっと手伝うか。まずは今やっている作業を完成させよう。
「ほら、ここに、こう……だ、よっ!」
「……おお!なるほど、そうやればよかったのか!スゴイな!」
「いやフツーにやればこうするしかないでしょ?バカにしてんの?」
「そ、そんなわけでは……すまない、こういう道具は初めて見たから……」
う、ちょっとキツイ口調で答えたら涙目になってしまった。
644 :
働く梁山泊・2:2012/04/23(月) 20:59:40.60 ID:l0EDHNwu0
「ああ、いや、初めてなら仕方がない……かな。
けど、こういう道具……っていうか、シーソー見たことないの?」
「うん……幼い頃から、梁山泊で武術の修行ばかりだったから。
そうか、これがシーソーというものか……
なるほど、シーソーゲームのシーソーとは、これから来ているんだな。
……あの、具体的にはどうやって使うんだ?」
「それは修繕が終わってから。はい、そっちネジ締めて」
「わ、わかった!」
力はあるし手先も器用なので、細かく指示を出せばちゃんと作業は進む。
ただ、ちょっと目を離すと
「……なんで裏側にハンドルをつけようとする」
「あれ?足じゃないのかコレ?」
シーソーではない、別の何かを生み出そうとする。
結局、つきっきりで手伝うしかなかった。
夕方になって、ようやっと作業が終わる。
「すまない、大和くん……結局、全部手伝わせてしまった……」
「いや……林冲さんたちが来なかったら
たぶん俺たちだけでボランティアで修理してたと思うから。
来てくれただけでも、助かってるよ」
「そ、そうか!そう言ってもらえると、私も嬉しい。
あと、この間も言ったが、呼び方は『リン』でかまわないから……」
645 :
働く梁山泊・3:2012/04/23(月) 21:05:40.53 ID:l0EDHNwu0
「あ、そうだ……これの使い方を、教わっていなかった。
どういう道具なのだろうか?」
「遊び道具なんだけどね。そっちの端に座ってみて」
「こう?」
背中を向けて座っていた。シーソー初心者にしてはチャレンジャーだな。
「違う、こっち向きにまたがって。で、そのハンドルに掴まって」
ハンドルに掴まったのを確認して、俺もシーソーに腰を下ろすと
ふわ、とリンさんの体が持ち上がる。
「うわ、うわわわわ!?」
背丈は俺と同じくらいだが、やはり女の子なので体重は軽いようだ。
続いて、ポンと地面を蹴ると
今度は俺が浮き上がり、リンさんが下がっていく。
「お、おおおお!?」
「やってみて!」
「よーし……たぁ!」
ガゴン!!
「ぐお!?」
リンさんの鍛え抜かれた両足が勢いよく地面を蹴った結果
急降下した俺は尾てい骨をしこたま板に打ち付けられてしまった……
646 :
働く梁山泊・4:2012/04/23(月) 21:11:49.17 ID:l0EDHNwu0
「も……もうちょっと……ゆっくり……」
尻を抑えながらシーソーを降りると、泣きそうな顔でリンさんが駆け寄る。
「ああああああ、す、すまない!大丈夫か?」
「うん、まあ……」
痛む尻をさすっていると、キャップと史進がこっちにやってきた。
「よう大和、こっちは終わったけど……どした?」
「なんだコイツ、生まれたての子馬みたいになってるぞ?おもしれー!」
続いてガクトと楊志も。
「何やってんだ大和?ひょっとして、林冲さんに何かしようとして反撃されたとか?」
「それはアンタでしょ。ま、アタシにはおおかた見当はついてる」
楊志が呆れ顔で肩をすくめる。
「……見当がついてるって、どういうこと?」
「リンは戦いになれば滅法強いけど、普段はけっこう残念な子だから」
「残念な子って、ヒドイぞ青面獣……」「つか、お前が言うなヘンタイ」
そうか、ドジッ娘属性持ちなのね。
外見とのギャップもあってちょっと萌える……かな。
ま、こんな具合で、呆れられたり笑われたりもしたが
今日の作業は無事……いや俺の尻にダメージを残しつつも終了した。
647 :
働く梁山泊・5:2012/04/23(月) 21:17:40.62 ID:l0EDHNwu0
「せっかく直したんだから、ちょっと皆で遊んでいこうぜ!」
「お、いいな!わっちはブランコで遊んでみたいぞ!」
「よっしゃー!俺の必殺・ローリングハリケーンこぎを見せてやるぜー!」
キャップと史進がブランコに走っていく。
「おいおい、小学生のガキじゃねえんだぜ。
今さらブランコやシーソーで遊ぶってのもよ」
「しょうがないね、九紋竜は胸と頭が子供だから。
ま、ちゃんと直ったかチェックにもなるからいいけど」
呆れながらもガクトと楊志がそれに続く。
「あの……歩けるかな、大和くん?肩、かそうか?」
リンさんが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「いや……ゆっくり行くから大丈夫。リンさん、先行ってていいよ」
「私が傷つけてしまったのだから、そういうわけにはいかない。
さあ……肩を」
少しドジかもしれない。ちょっと泣き虫かもしれない。
だけど、寄せ合った肩は暖かかった。
いざ肩を組むと、互いの顔が間近になる。
微笑むリンさんの顔が少し赤いのは、照れているのか夕焼けのせいなのか。
二人でゆっくり行こう。ブランコは別に逃げない。
少しずつ、一歩ずつ進む。これからの二人のように。
おしまい
林冲には特にドジッ娘属性はなかったのだけど
立ち絵やHPのラフからそんなイメージがあったので勝手に追加してみた
この後、ファミリーの他のメンバーも段々打ち解けていって
皆で作業するようになるなか、林冲と大和の関係も……みたいな
>>648 乙
ここのヒロインは皆可愛いくていいねえ
乙
ちょっとしか出番のなかったキャラでも
ここまで妄想広がるとはやりおる
期待通りの続編乙!
「がおー」で目覚めた俺にはたまらん内容だったわ。
気が向いたら、もう一歩先の展開書いてくれてもええんやで。
GW関係ないのでラスト√のアフター投下
メインは……英雄?
「おお、直江大和、ちょうどよいところにいたな」
昼休み。廊下に出たところでいきなり九鬼英雄に声をかけられた。
「今から学食に行くんで急いでるんだけど、何?」
「昼餉か。ならば、歩きながらでよいから話を聞け」
英雄の後ろでメイドが「断ったら刻むぞゴルァ」みたいな表情になっているので
話を聞いてみることにした。
「実は、川神城の再利用でちと相談があるのだ」
「再利用って……あれ、今はまるっきり使ってないの?」
「うむ。マープル一派のクーデターが失敗に終わったからな。
マープルはあそこを、政財界を完全に制圧するまでの
新たな拠点とするつもりだったようだが
今となっては無用になってしまってな」
「そりゃもったいないね」
「まったくだ。九鬼での再利用案もいくつか出たのだが、どれもパッとせん。
この際、施設を改装して、川神市民に開放しようということになったのだが
どんな施設にするか今ひとつよいアイデアが出ておらん。そこで……」
「俺に何か考えろ、と?」
「うむ。正確には、お前たち風間ファミリーに期待しておるのだ」
九鬼財閥の凄いスタッフで思いつかなかったものを
俺たちが考えられるとは思えないんだけどなぁ。
俺の懸念を読み取ったのか、英雄が言葉を続ける。
「確かに我ら九鬼のスタッフは優秀だ。
が、川神城というモノがモノだけに、常識的な考えでは限度もあろう。
その点、貴様らはいわゆる『斜め上』を行くやつらだからな。
何か突拍子もないものを思いつくのではないかと考えたのだ」
斜め上のときもあるが、斜め下だったり真横だったり別世界だったりもするのだが。
「まあ、仕事というわけではないからな。
こんな話もある、ということで気楽に考えてみればよい。
その上で、お前から見て面白そうで実現可能な案が出たら
我に報告してもらうということでどうだ?」
「話はわかったけど、俺たちのメリットは?」
「アイデア料というわけだな。ふむ……
どんな施設になるかわからんが、その施設の無料利用権ではどうだ?
これなら、考えるのも身が入るであろう」
なるほど、ちょっとオイシイ話になってきた。
面白い遊び場を考えれば、そこがタダで楽しめるってわけだ。
「オッケー、皆に話してみるよ。アイデアの期限はいつまで?」
「あまり無駄に放置もしておけんのでな。今月一杯としておこう。
それを過ぎたら、残念だがあの城は取り壊していったん更地にする。あずみ!」
「ハイッ、こちらが川神城の見取り図と周辺地図、そして仕様書です。
よーく考えて、いいアイデアをお願いしますね!」」
颯爽と九鬼英雄は戻っていった。さて、ちょっと真面目に考えるか。
「……というわけなんだけど、どうかね諸君?」
秘密基地。特に招集をかけなくても、都合よく全員揃っていたので
昼間持ちかけられた話を説明してみる。
「ホテルとかどうかな。けっこう広いお城だし、すごしやすかったよ」
そういやモロは滞在してたんだっけな。人質として。
「いや、場所があんまりよくねえだろ。あの辺、周りなんもねえぞ」
ガクトの言うとおりで、あの城は元が廃工場だったところ。
工業地帯のど真ん中で、駅や繁華街からちょっと遠いのだ。
「ここはやっぱアミューズメント系だろ!そのほうが俺らも楽しめるしさ!」
キャップの場合、自分がそこで遊びたいだけの気もする。
「アミューズメント……というと、遊園地のようなものでしょうか?」
「そういえば、川神には遊園地がないな。だったら、遊園地でもいいのではないか?
あの城の周りを、ジェットコースターを走らせたら面白そうだぞ!」
「それは俺も考えたんだが、遊園地にするには敷地面積がちょっと足りないんだよな」
クリスは残念そうだが、ジェットコースターなどの乗り物系はけっこう場所を食うのだ。
あの城の周りの土地だけではかなりキビシイ。
「せっかく立派なお城があるんだから、それを生かしたほうがいいんじゃない?」
ワン子の一言で、また皆が考え込み始めたが
真面目に考えだすとけっこう難しい問題だった。
「いわゆる『ハコモノ』のハコだけ先にできちゃってる状態ですよね……ハッ!?」
「どうしたまゆっち」
「お、お、お友達ランドとかどうでしょうかッ!?」「スッゲーまゆっちマジ天才ー!」
「何をするところなんだソレは」
「待て待て、そんな何だかわからない施設はマズイだろう。
そうだな……いなりランド!どうだ、これならどんなところかすぐわかるぞ!」
「単純でわかりやすいな。お前と同じで」
「ダメよ、いなりランドなんて、いなりが好きな人しか来ないじゃない。
それならお肉ランドのほうが絶対お客が来るわ!」
「さっき城を生かせって言ったの誰だよ!」
「直江大和ランドとか、どうかな?大和のあられもない写真とか
使用済みの下着とかティッシュとかが展示してあって……」
「お前以外に誰が客になるんだよ!」
真面目に考えさせた結果がコレだよ。
「まったく、友達だのいなりだの肉だの……
皆、自分が欲しいものを集めたいだけじゃないか」
「こんなのはどうだ、昔のカンフー映画みたいに、各階の敵を倒して上へ進み
天守閣を目指すという決闘ランドで」
今までがヒドすぎたせいか、姉さんの意見がマトモに感じられた。
「決闘ランドねえ……それだと僕みたいに戦えない人間には楽しめないなぁ」
「まあ姉さんは決闘したいだけだから」
「でも、各階に関門があって、クリアしながら天守閣を目指すという基本の線は
わりと使えるのではないでしょうか?」
「だったらよ、決闘じゃなくて、クリア条件をゲームにしたりクイズにしたりすれば
いろんな要素を盛り込めて人も集められるぜ!」
「けどよー、クイズとかあると、俺様みたいな肉体派にはキッツイなー」
「入場者がチームを組めばいいんだよ。俺たち、風間ファミリーみたいにな」
「そうだ、テレビのクイズ番組みたいに、チャレンジしてるところを
大きなモニターで他の人も見られるようにしたらどうかな?」
「いいな京、それいただき!」
「タイム制にして、ランキングを発表するのはどうだろう?」
「当然、天守閣までクリアしたチームには豪華商品ね!」
あるていど意見がまとまり始めると後はどんどんとアイデアが出てくる。
俺はそれをせっせとノートにメモしているわけだが……
何というか、今ひとつインパクトに欠ける。
どこかのテレビ番組で見たような案しか出ていない感じで
これで果たして、常識はずれの企画を期待していた
九鬼英雄の要望に応えられるのだろうか?
まあ、ダメ元な感じだったし、これで出してみるか……
「おお、意外に早かったな。では、早速みせてもらうとするか」
数日後、昼休みに九鬼英雄に企画案を書き込んだノートを渡すと
真剣な表情で内容を吟味し始めた。
「ふむ……ふん…………んん?……んー……むう……」
表情から察するに、評価はあまり芳しくないようだ。
「……やっぱダメかね」
「うむ。一つ目の『川神城]』というのはダメだな。平凡すぎる。
が、もう一つの企画は……何というか、意味がわからんが面白そうではあるな」
あれ?俺たち一つしか企画あげなかったはずだけど……
「この『直江大和 肉いなり お友達決闘ランド』というのは
なかなか興味深いのだが、どのような企画なのだ?」
ぐあ、メモしたボツ企画を英雄のほうで勝手に一つにまとめてる!?
「いやそれただのボツ企画だから!」
「何を言う、没にするかどうかは我が決める。
うむ、タイトルから想像するに、中々の珍企画よ。
このタイトルを元に、後は我らで企画を練ってもよいな……
よし、直江大和、大儀であった!あずみ、次の会議の案件にするぞ」
「え、あ、ちょ、待って!?」
あーあ、行っちゃった。
まさか、実現しないよな?「直江大和 肉いなり お友達決闘ランド」……
おしまい
どんな施設になるのかは自分にもわからない
まあ放置しておくよりはいい……よね?
乙
「直江大和 肉いなり お友達決闘ランド」でフイタ
何というカオス施設w
乙!
イチバン常識外れなのは九鬼英雄だ
続きはいつ?
663 :
名無しさん@初回限定:2012/08/27(月) 06:56:04.85 ID:fgP/R1X60
ほしゅ
過疎りすぎ〜
釈迦堂さんの純愛ロード発売(?)記念に投下
666 :
花言葉・1:2013/04/02(火) 23:25:03.83 ID:nlnDkMxc0
朝。浜で地引網の手伝いをして朝食にありつき
午後から夜までは梅屋でアルバイトをして
まかないの食事で昼食と夕食をいただく。
(我ながら、よく続いてるぜ……こんな規則正しい生活ってなぁ
川神院にいたころ以来だなぁ。ま、悪くはねえ)
梅屋のバイトが終わって、橋の下のねぐらで寝転がりながら
釈迦堂形部は一人ぼんやりとそんなことを考えていた。
自分でも意外に思うほどに、今の湘南での暮らしが気に入っている。
ポケットから財布を出し、中身を見る。
地引網の手伝いで受け取った報酬が、いくらか溜まっていた。
少し以前なら、酒代かバクチにとその日のうちに消えていただろう。
(もう、買えるかな?)
欲しいものがあった。
今までは、欲しいものは力ずくで奪うか
汚い仕事で得た金で手に入れてきた。
けれど、これは。これだけは。
まっとうな仕事で得た金で、胸を張って買いたかった。
(ヘッ!まるで小遣いためて、オモチャを買おうとしてるガキみてえだな)
そう、子供の頃に帰った……いや、ひねくれた実際の自分の子供時代よりも
今のほうがよほど子供のようで。そんな自分が何だかおかしくて。
ニヤつきながら寝転がる。
(あの子の……おかげだなぁ)
満ち足りた気持ちで、眠りについた。
667 :
花言葉・2:2013/04/02(火) 23:29:04.91 ID:nlnDkMxc0
「おはようございます、釈迦堂さん!」
「おう!おはよう、さくらちゃん」
「おじさん、生しらす丼一つお願いしまーす!」「はいよ、毎度ありー!」
翌朝。
いつものように、生しらす丼を元気に平らげる鵠沼さくらと、それを見守る釈迦堂がいた。
「ごちそうさまでしたー!」
彼女が食べ終わるのを待って、釈迦堂が声をかける。
「さくらちゃん、今日は午前中から店番だったよな」
「あ、はい……なので、今日はご一緒できませんね」
最近は、朝食の後、釈迦堂が梅屋のアルバイトに入る前に
二人で一緒にあちらこちらと散策するのが日課のようになっていた。
ちょっと残念そうなさくらに
「いや、いいんだ。後で、ちょいと店の方に寄らせてもらうわ」
「!はい、お客さんならいつでも大歓迎ですよ!それでは、私はこれで」
立ち去るさくらを見送る釈迦堂に、網元が声をかける。
「ほい釈迦堂さんよ、今日の日当。ちょいと、色つけといたぜ」
「え?……あれ、こんなに!?いいんですかい?」
「ああ、ここんとこ毎日来てくれて助かってるしな……ま、しっかりやんな!」
668 :
花言葉・3:2013/04/02(火) 23:33:25.59 ID:nlnDkMxc0
昼少し前。花屋のある通りまでやってきて、釈迦堂形部の足が止まる。
(いいのかなぁ……俺なんかで……)
物陰から店先をうかがうと、さくらが鉢植えの手入れをしている。
ときおり、誰かを探しているかのように四方に目を配り
そして見つけることができずに少し肩を落とすのだった。
(いい子だよなぁ……やっぱり俺とじゃ、釣り合わねえよなぁ……)
ため息をつく釈迦堂の背後に一人の青年が立つ。
「何をしてるんですか、釈迦堂さん?さくらさんに、会いにきたのでは?」
大村ヨシツグ。鵠沼さくらの遠縁で、夏休みの間さくらの家に滞在している。
「ああ、まあそうなんだけどよ……なあ、ちょっと聞いていいか?」
「なんでしょうか?」
「その……お前から見て、俺とさくらちゃんって……どうよ?」
「美女と野獣、ですね」
「即答かよ!……でもまあ……そう、だよなぁ」
「ですが、野獣が美女と結ばれて悪いわけではないでしょう。
周りから見て野獣でも、彼女にすれば王子様なのかもしれません」
「よせやい。でもまあ、ありがとよ……よし、行くか!」
「気持ちが決まったのなら、早く行ってあげてください。さくらさん、待ってますよ」
669 :
花言葉・4:2013/04/02(火) 23:37:26.64 ID:nlnDkMxc0
「……よっ」
「あ……いらっしゃいませ、釈迦堂さん!」
意を決して店の前に立ち、どこかぎこちなく挨拶する釈迦堂に
いつものように笑顔を返すさくら。
「あ、お買い上げいただかなくても、お客さんですからね?」
いつも『買わないから客じゃない』と
ひねたことを言う釈迦堂の先を越したセリフを
さくらがちょっとドヤ顔で言うと
「あー……いや、今日は本当に客として来たんだ」
「……はい?」
「そのハイビスカス……ハイ・ブラッディを売ってもらおうと思ってな」
「わぁ!とうとうお買い上げですね!ありがとうございます!
じゃ、すぐお包みしますね!」
「ああ、いや……包みとか、いいんだ。
持ってかえりてえわけじゃねえから」
「え?どういう……?」
キョトンとするさくらに、頭をボリボリとかきながら釈迦堂が答える。
「俺ぁ花の面倒なんか見られねえからよ。持ってかえったって枯らしちまうのがオチだ。
だから、その……さくらちゃんが、面倒みてくれればいい……
俺と一緒に、ずっとそばに置いといてくれれば」
670 :
花言葉・5:2013/04/02(火) 23:41:27.51 ID:nlnDkMxc0
一瞬ぽかんとしたあと、言葉の意味を理解して真っ赤になったさくらは
ほんの少しうつむいて、黙りこむ。
釈迦堂形部が後悔しかけたとき。
『わたしはあなたを信じます』
ポツリとさくらがつぶやいた。
「……へ?今……何て?」
「ハイビスカスの、花言葉です……『わたしはあなたを信じます』。だから……!」
「うぉ!?」
ドン!とさくらが釈迦堂の胸に飛び込んでくる。
「わたしも、釈迦堂さんを信じます……きっと、幸せにしてくれるって……」
胸の中、潤んだ瞳でさくらが釈迦堂の顔を見上げる。
「さくらちゃん……俺なんかで、いいのかい?」
それには答えず、さくらが微笑みながらささやく。
「……ハイビスカスの花言葉、まだあるんですよ」
「へえ……どんなのだい?」
胸に受け止めたさくらを、おそるおそる抱きかかえながら釈迦堂が尋ねると
身をゆだねたさくらが幸せそうに答えた。
「それは……『新しい恋』……です……」
おしまい
釈迦堂さんの純愛ロードをDLしてない人にはまったくわからないですな
いや困った困った
いいね
乙 つか1日でこれ書いたのかよ!
[壁]_-) チラッ