“とりの巣”と呼ばれる、巨大な天然の鍾乳洞の中。
満身創痍の金とりが決死の覚悟の現れか、長い咆吼を轟かせる。
その咆吼を聞きつけやって来た“こかとりす”ニ体に、思わず舌打ちするランス。
「クソったれ、ここまで追い詰めてくたばってられっかよ!」
叫び納刀し、素早く目的のアイテムを取り出すと こかとりす達に投げつける。
「がはははは うんこだうんこ、うんこ玉だぞー。当たるとくちゃいぞ はよ逃げろー」
アイテムうんこ玉、もとい“肥やし玉”。
モンスターのフンが中に詰まったそのボールは、当てたモンスターを別のエリアへ移動させる効果がある。
「まさに今の状況に打ってつけのアイテムだったって訳だ。
持ってて良かったうんこ玉!がははははっ」
増援の こかとりすがいなくなり、とりの巣にはハンター・ランスと金とりのみ。
しかも、先程の騒動の間に余程消耗しているのか、奴は眠りについていた。
「チャンスだよランス、ボスが寝ている時にダメージを与えれば…」
「最初の一発に限りダメージは三倍になる、だろ?わかってんだよミル」
洞窟内に深く響き渡る奴の寝息をBGMに、弱点の頭部めがけとどめの一撃振り下ろすため。
ハンター・ランスは、その身を大きく後ろへしならせ。そして――――。
「あ、あれ?ポリステの画面が真っ暗に‥」
「おいマリア、どうなってんだこれ。うんともすんとも言わねぇぞ?」
慌てるシィルとランスを見て、開発者であるマリアが慎重に診断したその結果。
「………電池切れです」
只今のランスの機嫌バロメーター〈怒髪天〉。
「ふっっっっっっざけんなあああぁあああぁああああ!!!!!〈がっしゃーん〉」
「きゃああああテストプレイ用に確保しておいた数少ないポリステが粉みじんにぃーーー!!」
「はわわわっランス様びーくーる、びーくーるですよぅ」
広がる喧騒、甚大する被害から離れ会議室の外。
ミル・ヨークスは、己と同じ轍を踏んでしまった彼を想い、ため息を吐いた。
「ポリステのバッテリーが残り少なくなってきたら、音を出して知らせてくれたら良いのに…」
ここで、通りすがりの研究員であるカスミ嬢がミルに向けてカンペを出す。
「‥えっと、今回ランスは一人で頑張ってプレイしてたけど。
他にもポリステと男ハンPを持ってる人がいれば、最大四人同時プレイができます。
大勢でやれば強いモンスターも、楽しく易しく狩れるので、ぜひお友達と一緒にプレイしてみてね♪
…え、何これ。このまま宣伝して終わり?最後投げっ放しだよ、いいの?!ねぇ、ねぇったら‥ねぇ!!」
終わり。
・初めに。今回のSSの元ネタは、モンスターハ●ターポータブル3になります。
“金とり”は、最近だとGALZOOアイランドで厄介な雑魚として出てきましたが。
この作中では本家モンハンに出てくる、とても厄介なモンスターのパロディも兼ねて、出演してもらいました。
ただし、SSにするに当たって実際の攻撃方法や対処法、弱点部位など随所改変してあります。
・番外編で漸くこのSS内で使用しているゲーム機の話ができてほっと一息。
D.P.Sの解説のくだりは、徳間書店インターメディア様より発行されていた、
“アリスソフト 美少女アルバム”より一部引用させていただきました。
・最後に。今回のSSのオチは、あくまでも“男ハンP”の宣伝であり、元ネタのモンハンの購入を勧めるものではありません。
不快に感じられた方がおりましたら、心からお詫び申し上げます。
・拙いSSですが、お読みいただき誠にありがとうございました。
じろじろ…実際にゲーム化されても良さそうですね…♪
ほしゅするのれす
「大人になるって、どういうことなんでしょう?」
JAPAN、織田城。魔想志津香の居室にて。
LP0005年の三月。二十歳になり、いわゆる成人女性の仲間入りとなったシィル・プラインの言である。
同じ部屋、同じ卓を囲み、それぞれ異なる酒を呑んでいた他の三人が、彼女の問いかけにグラスを置いた。
「シィルちゃんどうしたの急に、何か悩み事?」
先陣をきったのは見当かなみ。
口当たり甘めのノンアルコール・カクテルを左へさておき。
まさかあのデカ口バカが何かやらかしたのかと、慎重に言葉をつむぐ。
「あ、いえ、その‥そんな大きな悩みって訳じゃないんですけど。
ただその‥私先日やっと二十歳になって、ランス様や香姫様達に誕生日のお祝いまでしていただいて。
嬉しくて嬉しくて、ふわあって舞い上がっちゃったんですけど、でも‥」
「でも?」
舌に少々辛味が残る冷酒を一口転がし、魔想志津香が相づちをうつ。
「でも、以前JAPANの人達は十五歳で大人になる、大人あつかいをされるって話を聞いて。
今なんとなく、ですけど私は“大人”になれたのか、不安になってしまって」
思いを吐き出し、甘酸っぱい果物の香りを漂わせるカクテルグラスを指でつつくシィル。
「んー…こういうのって、成人になったから大人ってもんじゃないのよねー。
二十歳を迎えた事を節目として、そこから“自分で大人になっていく”って言えば良いのかしら?
…うん、これはアレね。
私達三人“とっくにハタチ迎えてる組”で、大人になったと実感できる瞬間を言っていけば良いのよ!」
「え?」
突然の提案に戸惑うかなみを置いて、アルコール控えめのスクリュードライバー片手に捲し立てるマリア・カスタード。
「確かに、変に抽象的な概念や理屈をあれこれ言い合うよりも。
具体的なあるある話をした方が、解りやすかったりする場合ってあるわよね」
「いや、ちょっ、待っ」
青髪眼鏡の親友の提案に同意する志津香。
すると間もなく、「何をするにも身分証明書を求められる時」やら。
「各種税金の申告手続きに頭を使う時」など、先の戸惑いが尾をひいているのか。
何やら様子がおかしいかなみをよそに、二人がシィルに聴かせるあるあるネタは、半ば愚痴の様相を呈していたが。
それでもシィルは微笑みを絶やす事はせず、時に話し手へ共感し、落ち込んだ表情で二人の話を聴き続けた。
そして三十分後、 マリアから呆然としているかなみへ話が振られる。
「かなみは何かある?二十歳になって大人になったなぁって実感した瞬間」
志津香とシィルが期待の眼差しでかなみを見つめる中、彼女はゆっくりとその重い口を開いた。
「ていうか私、まだ十九歳なんだけど」
「「…え?」」
「ああっ、かなみさんが泣きながら部屋の外へ!
待ってくださいかなみさーーん、かなみさはーーーん!!」
終わり。
・初めに。あの四人の中では、一番年下だった事に驚きのかなみSSでした。
>758様
・レスありがとうございます。
アレを実際にゲーム化したら、出てくる男の子モンスターによっては詰みゲーになってしまうかもしれません。
イカ超人とか、始まってすぐ秒殺されてしまうかも。
・最後に。前作【ゲーセンR3】の誤字&脱字訂正箇所を二つ。
〈11/15〉のランスが一息に振り上げ“た”一振りの大剣。
〈14/15〉の当てたモンスターを別のエリアへ“退散”させる効果がある。
以上です。
・拙いSSですが、お読みいただき誠にありがとうございました。
これはいいSSだった
766 :
685:2011/02/27(日) 20:19:32.84 ID:kpEjMw9W0
何時もじろじろ・・・
レースクイーン アリス
コトブキヤ社製 価格未定 今年夏発売予定 彩色済みレジンモデル
1:8スケール 全高約21cm 中邨拓智 原型師
月刊ホビージャパン 2011・4 P289
月刊モデルグラフィックス 2011・4 P92
理想郷XXXでハルカ二次が連載始まってる
ふたなりのオリキャラ出てきて陵辱中心だから結構人選ぶと思うけど、報告
「たまに立場を変えてみるのはどうだろう?」
LP000X年。ゼス国アイスフレーム本部内、通称〈ランス名誉隊長の部屋〉にて。
わいるど・こかとりす十五年もののロックを手の中で転がし、唐突に切り出したのはガンジー王。
隣で露骨に顔をしかめたランスの肩を叩いて話を続ける。
「そう嫌な顔しないで聞いてくれたまえ。
私だって曲がりなりにも人として、いやさ男として君達の先を生きる者だよ。
前途有望な若者へ薫陶の一つもできないで、何が王かね!」
そのままグラスに残ったバーボンを一息で飲み干すと、
左からランス、パットン、ロッキーを順繰りに眺め、わははははと大笑い。
「なぁロッキーよう…自分で言うのも何だが、俺達もう若いってタマかね?」
ショットグラスより一回りほど小さいウォッカ専用のグラスを傾け、熱い息を吐くパットン。
齢三十を越えた彼の横顔からは、“ニ十代”というある種絶対的な境目に対する、
哀愁とも諦めともつかぬ感情が滲み出ている。
「が、ガンジー様からしたら、おら達みんな若いんだすよ…そういうことにしとくだすよ…」
公式では年齢不詳だが、元ネタの彼の人を考えると少なくともニ十代に当てはまらないであろう男、
ロッキー・バンクが赤ワインをちびちび舐めつつ、これまた虚しげに答えた。
「…で、結局何の立場を変えるってんだよ?」
いい加減焦れたランスが、甘口の酒が入った御猪口を片手に話の続きを急かす。
「うむ、ズバリ言うとだね。想い人との過ごし方のことさ。
人間とは常に刺激を求める生き物だ」
ここでパットン、ロッキー共にランスの顔をまじまじと見て、得心がいったように頷く。
「おいお前ら」
「うむ。君達もいろいろ思い当たることがあるだろうが、
その中でも殊更 男女の関係というものは繊細かつ深い問題だ。
具体的な例を挙げれば、“恋と愛の違い”と言えば解りやすいだろうか―――」
ここでロッキー、卓上のおつまみが切れかかっているのを見て、台所へ。
手伝おうかと声をかけるパットンへ、汗くさくも爽やかな笑顔で大丈夫だすのサムズアップ。
「―――つまりだね、男と女が長年愛し合う上で最大の難敵となる“マンネリズム”!!
その解消法を皆で考えようというのだよ、諸君!!!!」
ババーンと効果音、効果線を背負い、決め顔で台詞を締め括ったガンジー王を待ち受けていたのは。
ロッキーの用意した ほっけと煮物に夢中で、彼の話を全て聞き流していた三人組の姿だった。
「だぁぁぁぁガンジーのバカ野郎!こんな狭い部屋ん中で魔法なんて射つんじゃねぇ!!」
「燃えるだす!酒に引火して部屋が燃えてしまうだすぅうううう!!」
三十分くらい後。
「…それで、マンネリ打破のためにシチュエーションを考える、だったか?」
危ういところでスミノフウォッカを守りぬいたパットンが、己の呼吸と話の筋を整える。
「う、うむ。君達も男なら一度は経験したことがあるのではないかね?
恋人に対して愛する気持ちは変わらねど。退屈だ、刺激が欲しいとつい考えてしまい、罪悪感にさいなまれるその瞬間!!」
「…つうか俺、女は抱いても本命はつくらなかったからなぁ」
「おらなんて、自分の生活だけで精一杯だっただす…」
なんと話題提供者のガンジーを除く、三人の内二人がアウト。
(このまま私の提出した議題は、アルコールの空気に飛散して消えてしまうのだろうか)
ガンジーが悲しみのあまり、五指に炎を点火し始めたその時である。
「…そういや感じたこともない訳じゃないな、マンネリ」
「あぁそうだろう!そうだろうとも流石はランス殿!!ゼスを救った英雄だ!!!」
「うわっ、ちょ、やめろガンジー暑苦し…うぜえ!こいつ酒臭え!うぜえ!!」
両肩をぐわしっと掴み、ランスの鼻先手前に顔を近づけ、どんな?どんな?と問いかける魔法大国の王様。
率直に言って、ランスでなくともこれはキツい。
パットンとロッキーが面倒くさそうに二人を引き剥がし、いろいろあって五分後。
「…ほら、あれだ。俺様は一応アイスの街にあいつと…奴隷と住んでるわけだ。それもかれこれ五年以上な。
そんだけ長いこと顔を突き合わせてりゃ喧嘩もするし、他の女を抱きたくなる日もあらぁな」
「で、実際に抱いてるわけだ。あの嬢ちゃんも何ていうか…」
「なんだパットン、お前俺様が浮気してシィルがカワイソーとでも言うのか?!
言っておくがな、あいつは俺様の奴隷なんだぞ!JAPANの奴らもよってたかって妙な勘違いしてやがったけどな。
あいつが奴隷である以上、俺様が他の女を抱いても浮気じゃねえ!違うか?!」
「あーあーそうだったな、アンタにゃあの嬢ちゃんは“奴隷”だったんだよな。
悪かったよ。ほら皆、話を先に進めようぜ」
ロッキーにまで宥めすかされ、ガンジーが(内心頬は弛みっぱなしであるが)表面上 不干渉を装おっているため。
ランスはケツアゴ召使いを蹴って溜飲を下げると、面倒くさげに議論の場へ戻った。
「立場を変えると言ったか、例えばどんなんだよ」
「うむ。例えばだ、シィルくんはランス殿の二つ年下なのだが。
ここでがらりと変えて二つ…いや、“四つ年上のお姉さん”にしてみたら…どうだろう?」
「「「はあ?!!」」」
「嬢ちゃんを…」
「シィルさんを…」
「シィルのやつを、四つ年上だと思えだぁあ?!」
「あぁそうだ。四つの差は小さいようで大きいぞ。
例えばランス殿が十二歳の小学六年生の時彼女は十六歳、すなわち華の女子高校生だ!
ランス殿が十六歳の高校一年生の時には、シィルくんはなんと二十歳!!
麗しの女子大生となって、弾けるキャンパスライフをご学友とエンジョイしている年頃になる」
と、ここで琥珀色の蒸留酒をあおり喉を潤す王様。
「そんな近いようで遠い歳の差のシィルくんにだ。
ランス“くん”と呼ばれてみたいと思わんかね?」
「ランス、くん…だと…?」
ごくりと、突然多量に沸き上がる唾を慌てて飲み込む。
なんだこの感覚は。
左胸に手を当てると、心臓が煩いくらい ばくばくどくどく自己主張している。
「お、おい、ガンジー…あまり適当なこと言ってんじゃ――」
「まだだランス殿!!「何ぃ?!!」」
「今までのはまだ序ノ口…これに加えて更に私は、シィルくんの“属性”を変えて魅せようじゃないかッッ!!!!」
「属性だとぉ?!?!」
頬に熱がともり、血流はなおギアを上げて加速。脈動轟く胸を押さえてランスは驚愕に打ち震えるのだった。
ちなみにランス達から離れた場所では、キムチ・ドライブお手製のキムチを肴に、残った二人珍しい組み合わせで盛り上がっていた。
「へぇ、エリザベスの嬢ちゃん元気にしてんのか…そいつぁ良かった」
「カーマちゃんとアルフラちゃんが頑張って“お姉さん”してくれてるおかげだす。
二人のおかげで孤児院の子供たちもエリザベスさんにだんだんなついてくれて…。
おら、あの娘たちには足向けて寝らんないだすよ」
「あの嬢ちゃんたち俺らが思ってるよか数段しっかりしてるのかもな。
…ところでロッキーさん、あれからキムチの姐さんとはどんな調子なんだよ」
「え、いや…その、別に何もないだすよっ」
「またまた、今朝だって二人仲良く料理してたじゃねぇか。
よう、そのへんどうなんだい。ようようよう」
「かかか、勘弁してほしいだすぅーー!」
閑話休題。
「シィルくんの現在の属性…年下、奴隷、ドジっ子、溢れんばかりの母性に薄幸のもこもこなどなど。
流石は我が国を救った英雄ランス殿の――「奴隷だ」ふむ、奴隷であるな。多くの属性を併せ持っている。
しかし、これらの属性が先頃私が提唱した、“四歳年上のお姉さん”になることでそれこの通り!」
「な、まさか、ウソだろ…?!」
どこからともなくガンジーが取り出したフリップボードには、ただ一言。
「“年上なのにドジで幸が薄くて、でもいつも優しい隣のお姉さん”って何か増えてんぞ属性!
っつうかこれ思いきり誰かとキャラかぶってねぇかリズナ!!(語尾)」
(もしかしてこれ、ガンジー様が好きな属性をどさくさ紛れにカミングアウトしただけじゃないだすか?)
とうとう堪えきれなくなった二人が思い思いに突っ込むその一方で、渦中の人物デカ口緑は――、
「なんてこった…!!」
奮えていた。主に感動で。
「年上…隣の、お姉さん。なんだかずっと昔に置いてきちまった、大切な何かが蘇るみてぇだ…」
((えぇぇぇええええ))
苦労人二人が心底げんなりする中。
ランスは乱雑に、けれど厳重に記憶の奥の隅へ仕舞いこんだ思い出をサルベージし始めていた。
彼がまだ幼い頃のことである。
両親を魔物に殺され、謎の隻腕騎士に連れられて独立都市、ゴモラタウンへ住むようになり。
物心つく前、そしてその後には決まって彼の周りに“年上の女性”がいた。
もちろんただその場にいた訳ではなく、彼女らはまだ子供だったランスを甘えさせてくれたし、
あまつさえ筆おろしまでしてくれた。
素行の悪さが祟って村長の家を追い出されてからは、“年上”のある女戦士の手によって、
性根から何からとことん鍛えられたものだった。
と、ここで漸くランスは己の中に眠っていた、ある性的劣等感(あるいは性的嗜好と言い換えられよう)に気づく。
「まさか、おれは…」
「気づいたのかねランス殿、年上お姉さんキャラの魅力に!!」
「あぁ、あぁ…おれは今までなんてもったいないことを……」
両の拳を床に叩きつけ、嘆く。
部屋の開いた窓からぽつぽつと雨音が聞こえてくる。それはまるで、彼の心象風景を表しているかのようで。
「嘆くにはまだ早いですぞ、ランス殿。
貴方はまだ多くの時を生きられる。これから取り返していけば良いのだよ」
「ガンジー……ッ、ぃよぉおおっし!やぁってやるぜ!!」
窓の外がたちまちにして晴れ、大空へ虹の橋がかかる。
ランスの飽くなき探求心は留まることを知らず、やがてその心が世界を救う時が来るであろう。以下エンドロール。
「いやいやいやいやなんだよエンドロールって、適当過ぎんだろ持ってき方がよ」
天候演出担当、カオル・クインシー・神楽、ウィチタ・スケート。
「始まった?!本当に始まっちゃったよエンドロール、
ってかやっぱりお前らの仕業かよどうりで不自然に外の景色が変わると思ったよ!!」
「そうだね…パットンくんの場合は、ハンティくんをお兄ちゃん好き好き、
“年下の”ラブリーシスターにしてみるというのはどうだろう?」
「俺に死ねって言ってるのかアンタは!!アイツにそんなくだらないこと言おうもんなら…ああ!窓に!窓に!」
ツッコミ、まわし担当、パットン・ミスナルジ(謎の黒髪カラーによってお仕置きの真っ最中)。
「おらにはまだそういう相手はいないだすけど、ガンジー様はどなたかおられるのだすか?」
料理、ぼやき担当、ロッキー・バンク。
「おや、私かね?」
その一言に刹那、全員の動きがぴたりと止まる。
「私は、…今も昔も妻一筋だからね!」
「だぁ゛ぁぁぁ人に散々恥ずかしい話させといて、何一人だけキレイにまとめようとしとんじゃ!
うらっこんにゃろ!お前らもやっちまえこのアホジジイめ、こんにゃろ!」
今回のいじられ役、ランス・スーパーキング。
「いだだだだだだだ、こらっやめんか君達!やめっ、この、こ…むがぁあああああああ!!」
「ひぃぃぃぃぃ、ガンジー様がキレて乱射した火炎魔法が酒に引火してボーボーだす!ボーボーだすぅううう!!」
「うぉおおお火ぁ事だぁぁぁぁ!起きろみんなぁああああああ!!」
前フリ、逆切れ担当、ラグナロックアーク・スーパー・ガンジー。
「火ぁぁぁ事だぁあああああああ!!!!」
終わり。
【あとがき】
>765様 レスありがとうございます。
女性キャラそれぞれに似合いそうなお酒を考えるのが楽しかったSSでした。
>766様 まとめサイト拝見させていただきました。タグまでつけていただいて、筆者冥利に尽きるところです。
(大変恐縮ですが、>403-404の【髪を切るお話】がまとめのSS一覧に掲載されていないようなので、追加していただけたら幸いです)
これからも何卒よろしくお願いいたします。
>767様 レスありがとうございます。看板娘のアリスさん活躍しているみたいですね。黒アリスの出番はまだまだですかね。
・最後に、今作で晴れて五十作目。まだネタはあるので、時間の許す限り書いていきたいと思います。
・拙いSSですが、お読みいただき誠にありがとうございました。
支援
保守するだす
LP00XX年四月一日。自由都市はカスタム、その都市庁舎 都市長室にて。
部屋の主であるエレノア・ラン都市長は、長い長い溜め息をついていた。
(はぁ………ランスシリーズの新作が発表されて、新ヒロインはもちろん旧作からの続投組も紹介されて。
どちらも嬉しいニュースであることにまず間違いないのだけれど、…だけど――)
「――私の名前、見あたらなかったなぁ…」
そう呟いて寄りかかったデスクチェアの背もたれが、ぎしりと嫌な音をたてて軋む。
最後に自分がイベントCGだけでなく、戦闘ユニットにまで出演できたのは、
十五年ほど前(2011年4月現在)に遡った鬼畜王ランス以来になるだろうか。
(十五年…ッ?!長すぎる、JAPANじゃ人ひとり元服してるほどの時間じゃない…ッ!!)
あぁ、エレノアは呻き窓の外を見やる。
憎らしいまでに澄みわたる青空に見下されてるような、そんな憂鬱スパイラルに陥ったエレノアが、
いよいよ机を枕にふて寝を決めこもうとしたその時である。
「ラン!喜べ、ビッグニュースだ!俺達新作に出られるんだ!!」
「え?!」
親友、ミリ・ヨークスの突然の訪問もさることながら、その発言がエレノアの憂鬱スパイラルを打ち壊した。
「だからぁ、俺達カスタム留守番組が陽の目を見る時が来たんだよ!
わかるかラン、出番が…きたぁぁぁぁぁぁってアレだよ!」
「お姉ちゃんそのネタもう古いよぅ」
ミリが浮かれて目薬をさす仕草をする後ろから、その妹ミル・ヨークスが追いつきつっこむ。
もはやユージ・オダのモノマネ芸人がいた事など、誰が覚えていようか。
「で、でもそんな話 雑誌はもちろん、アリスソフトの公式ホームページにだって…」
「バカ野郎!!〈ばしぃっ〉」
「あうっ」
「そりゃ確かに一般市民向けの情報媒体には載ってなかったかもしれない。
でもこうして俺は新しい情報を手に入れている…それは何故だと思う?」
「え…と、枕――「っせい!」〈ばしばしぃ〉」
「あうあうっ」
言って良い冗談と、悪い冗談があります。
「昨日ミルがトラバサミにかかってもがいていた、かわいそうな野良ハニーを助けたら、
その恩返しにって今朝 家に来た王冠付きの白いハニーが教えてくれたんだよっ♪」
「イイハナシダナー」
「ラン…」
ちょっぴり涙目で赤くなった頬を押さえるエレノアに、目線を合わせるようにしゃがみこむミリ。
「新作、ランスクエストでのお前はスゴいぞ」
「過去のRPG形式のランス作品で猛威をふるった、敵を麻痺させる攻撃…覚えてるか?」
「えっと、確かランス6で新登場したムシ使いのカロリアちゃんと、リーザスのかなみさん。
FR上げて強化すると使い勝手が断然良くなるゼスのカオルさんと、復活軍師ウルザさん。
キャラの濃い調教師タマネギさんに、まさに最強アタッカーのランスさん…だったかしら?」
指折り数えるエレノアに大きく頷くと、ミリは自信をなくして覇気がない親友を見つめ直し、告げる。
これが、落ち込んでいる彼女を救う最良の手段と信じて、言の葉をつむぐ。
「使えるんだ」
「え?」
「お前も使えるんだよ、あの最凶攻撃手段‐バランスブレイカー‐の一つ、麻痺攻撃をな!!」
「ぇぇぇえええええ?!!」
冷えきった身体に熱が蘇る。
錆び付いた心は鏡のように磨きあげられ、生気をなくし虚ろだった瞳は今やかつての、いやそれ以上の輝きを取り戻していた。
「そそそ、そんなそんな、嘘でしょミリ?いくらなんでもそんな…」
「お前の技、見つめた相手を意のままにエロいことさせる能力を、戦闘画面で使える技として取りいれたらそうなったのさ。
まさかドット絵やポリゴンのモンスターにオ●ニーさせる訳にはいかないだろ?そういうことだ」
ここでいつものエレノアであれば、真っ赤な顔で「女の子なんだから下品なことは」と、
小言の一つや二つ飛び出してくるはずなのだが。
「ふわぁぁ……」
▽ エレノア は トリップしている!
「これくらいで驚くのはまだ早いぜ ラン、お前は魔法戦士だったな?」
こくこく と、夢うつつでありながら辛うじて小さく頷き返すエレノアに、いろいろと もよおしてくるものに堪えながら、
ミリは彼女の耳元で囁いた。
「麻痺と打撃…これがあれば、普通に戦ったら手こずるような強敵でさえ勝てる可能性が遥かに上がるんだぜ。
それこそ、魔法使いが手も足もでないハニー達の中でも凶悪な、ブラックハニーにも…な」
「すごいねランちゃん、志津香ちゃんよりつよーい(棒読み)」
「あの、志津香ちゃんより…強い……わたし、が?」
その時、エレノアの脳裏に稲妻がはしる。
( 「あぶない志津香ちゃん!えいっ、“バインド・アイ(仮名)”!」
「あいやー?体が動かないよー」
「てぇぇぇい!〈ずばばんっ〉」
「ハニホー!?〈ぱりーん〉」
「…ふぅ。大丈夫?志津香ちゃん、ケガは――いけない!ここ切れちゃってる」
「や、ちょっとラン、これくらい自分でできるから…」
「ダメよ志津香ちゃん、意地はって無理ばっかしてっ。
強がるのと強くなるのは違うんだから!」
「ラン……」
「…はい、これでもう大丈夫。
ね、志津香ちゃん。あなたから見れば私はまだまだ頼りないかもしれないけどさ。
でも、仲間だから。“重い荷物”は独りで抱え込まないで。私にも支えさせて」
「……ありがとう、ラン…ううん、ランお姉様」 )
「そんな、“お姉様”だなんて…私の方が年上だからって今さら変な遠慮しないで、以前のようにランって呼んで…。
あっ、でもあのいつもツンツンした志津香ちゃんに、お姉様なんて呼ばれたらどうなっちゃうのかしら?私どうなっちゃうのかしら?」
長年の積もり積もった欝屈した想いと、ここ最近の年度末の追い込みによる疲れ。
そして、希望などまるでなかったはずの新作へ出られるとの情報に、エレノアただ今狂喜乱舞。
それはもう、焚き付けたミリが引くぐらいに。
「どうするのお姉ちゃん。ランちゃんまるで気づく様子ないよ?」
「あ、あぁ…おーいラン、今日は何の日かわかるかー?ほら、四月の…何日だー?
ラーン、いい加減戻ってこーい。ラーン」
終わり。
・初めに。
三月十一日に発生した、東北地方太平洋沖地震で被災された方に心からお見舞いとお悔やみを申し上げます。
あれから三週間経った今も、まだまだ予断を許さぬ事態が続いておりますが。
自分がやらなければならないこと、やるべきことを行いつつ、折をみてSSを投下していけたらと考えております。
皆さま、何卒よろしくお願いいたします。
・>779様,780様
支援&保守ありがとうございます。このような大変な時期にとても嬉しい限りです。
・最後に。
ランスクエストにカスタム留守番組が、プレイアブルキャラクターとして登場することを願って、あとがきを終わります。
・拙いSSですが、お読みいただき誠にありがとうございました。
エレノアェ……
ゼス建国より遥か昔。
GI0024年。人類が魔物の奴隷から、条件付きではあるが解放されて間もなくのこと。
のちのゼス建国の祖である人々の間に、とある祭事が流行していた。
魔法を使える者もそうでない者も、両者こぞって鍛えぬいた己の筋肉の限界へ挑戦する、真剣勝負。
立ちはだかるいくつかの困難を、知力、体力、時の運で乗り越え、立ち塞がるライバル達を蹴落とし破り。
そうして見事 優勝した選手には、巨額の富に加え大会主催者の手により、どんな願いも一つだけ叶えられるという。
その祭事、ラグナロックアーク・スーパー・ガンジー王が、王立図書館の隅っこで埃をかぶっていたものを、
何かに導かれるようにして見つけた、古めかしい紙片を紅い紐でまとめたそれに曰く。
その名も、“筋肉格付”。
「ふむふむ……なるほど、これは良い! これこそ今のゼス国民の皆に必要な祭かもしれぬ。
賞金は王家の私財から捻出して、もう一方の“どんな願いも一つだけ――”とやらも、大抵のことなら何とかできよう。
あとは、ふむ……肝心の参加者であるか」
思考の海にたゆたうガンジーの耳に、遠慮がちな衣擦れの音が響いた。
「カオルか……何があった?」
「失礼します。ガンジー様、そろそろアイスフレーム本部へ向かう時間ですので、お迎えにあがりました」
心酔する王の大切な思索の時を遮ってしまったとあって、普段よりも一層 頭‐こうべ‐を垂れる角度が深い。
だが、そんなことまるで気にしないのが我らがガンジー王。
お付きの二人を心から蕩けさせる漢‐おとこ‐くさい微笑みをこぼし、ぽんぽんと彼女の頭を撫でる。
その時である。ガンジーの脳裏に一筋の電流が走り抜けた。
「そうか、そうだ、そうだったのだ! 何故今までアイスフレームの彼らを忘れていたのか?!
……ふふふ、ふははっ、ふあーーーっはっはっはっはっはぁっ!!
カクさんや、スケさんを連れてただちにIF本部へ向かうぞ! ただちにだ!」
「はい! ガンジー様!」
こうして、ガンジー王の馬鹿馬鹿しい思い付きが およそ900年の歳月を経て、現代のゼスへ筋肉の祭典を復活させたのであった。
◇
「ゼス国、約3200万人の国民の皆様、こんにちは。チョチョマン・パブリでございます」
「本日、私はここ首都ラグナロックアークの中心に位置するゼス宮殿の地下九階、
地下総合運動ホールにて開催される、“Maximum Muscle Ranking‐筋肉格付・極(きわみ)‐”
略称“M.M.R”の大舞台で実況アナウンサーとして、
魔法ビジョンをご覧の皆様へ会場内に満ちあふれる、この身を焼かれんばかりの熱気と、脳髄揺さぶる興奮をお届けいたします。
いかがでしょうか皆様、聞こえるでしょうか?」
カメラはその台詞と真逆に相変わらず無表情のチョチョマンからフレームを外し、
円形闘技場‐コロシアム‐のような造りの会場をなめるように撮していく。
観客席にはラグナロックアーク・スーパー・ガンジー王自らが音頭をとり、
旧一級市民、旧二級市民ともに すべからく“絶対公平であるべし”をモットーに抽選をおこなった、
計32,000人の市民達が辛抱堪らずドカドカと両足で地鳴りをうみだしている。
老若男女、貧富を問わず集まった人々の関心はただ一つ。
今宵、幕を開ける“M.M.R‐筋肉格付・極‐”の中で、自分達をどこまでも夢中にさせるような英雄‐ヒーロー‐が現れるか否か。
その一点のみ。
◆
今、国民は疲れていた。
魔物と暴徒に壊され、荒れ果てた自分達の国土を復興させたその先。
これまでの“ゆとり政策”を始めとした悪しき旧体制が崩壊し、
どのような生まれの者でも安定した生活を得られる“可能性”が出てきた。
だがしかし、それは同時にどんなに錆び付いていようが歪んでいようが、先人が血反吐をはいて敷いてきたレールを廃し、
そのほとんどを自らの手で切り開いていかねばならないのだ。
未知なる場所へ踏み出すには勇気がいる。そして、勇気の影には不安が常につきまとう。
国土崩壊後、悲喜こもごもの新たなスタートをきった国民の心が、じわじわと渇いていく音をガンジー王は確かに聴いていた。
一国の王にしては些か破天荒すぎるきらいのある彼だが、自国とその民を想う気持ちは正しく本物である。
であるからして、彼はとある企画をゼスの魔法ビジョン局スタッフ達のもとへ持参し、プレゼンテーションした。
すべては国民の疲れた心に潤いを与えんがために。そして、ゼスの大衆娯楽の発展を願って。
あと、やるからには自分も面白いものが視たい! ということでこの企画、“M.M.R‐筋肉格付・極‐”が始まったのである。
◇
観客席の歓声がいっそう大きくなる。“M.M.R‐筋肉格付・極‐”参加選手の入場である。
「皆様、お待たせいたしました。選手、入場であります」
ごうごう、きゃあきゃあと獣のそれに似た観客の声が、地下総合運動ホールに響き渡る中。
まず二人、東のドラゴンの門をくぐり中央へ進む。
「ゼス国民であれば知らない方はまずいないでしょう、ゼス四将軍よりこのお二人が来てくださりました。
“炎の貴公子”、サイアス・クラウン! そしてその左、“光の魔法団隊長”アレックス・ヴァルス!
ゼス軍きっての美青年二人組が今、堂々と、かつ優雅に、そして優美にアリーナへ入場いたしました」
きゃんきゃんスーツを身につけたプラカード・キャリアに誘導されて、サイアス達は所定の位置へついた。
総合運動ホールのほぼ中央、大型魔法ビジョンとアナウンス席を線で結んだ丁度真ん中だ。
「まさかとは思うけど、こんなお遊びで緊張なんてしてないよな? アレックス」
会場内を煌々と照らすライトに負けじと、焔のような輝きを魅せる己の前髪をさらりと流し、傍らの弟分に尋ねる。
「もちろんです、サイアスさん。それどころか僕は今、感謝しているんです。
こうして再び“彼”と闘えるチャンスをくれた、運命の女神に」
「サイアスさん……全力でいきます。“彼”に対してだけでなく、貴方にも」
まじめで好青年な甘ちゃん坊や――サイアスから見たアレックス・ヴァルスという青年の評価は、率直に言えばそのようなものだった。
つい、先ほどまでは。
(へぇ……何があったか知らないけど、良い目をするようになったんじゃないの。これはもしかすると――)
「アレックス」
プラカード・キャリアの女の子が聞こえないところで、ちょいちょいと手招きするサイアス。
ややあって首をかしげながら近づいてきたアレックスにがしっと肩を組むと、
「さてはお前……オンナを抱いたな?」
「〜〜〜〜〜ッ!?!」
そう囁いて、顔から火が出るほど照れさせるのであった。炎魔法使いだけに。
「続きまして、国営レジスタンス組織アイスフレームより、“鉄壁の斧使い”ロッキー・バーナード。
“舞い刺すシミター使い”バーナード・セラミテの入場です」
きゃんきゃんスーツを装着したガチムチ男子のプラカード・キャリアを先頭に、あからさまにテンションの落ちた二人が行進してくる。
先のサイアス、アレックス組の時に黄色い歓声をあげていたうら若き乙女達は舌打ちして座りこみ、
その代わりに荒くれた男どもが野太い声援をおくる。
「う゛おおおおおおおおロッキーざああああああああ!!!! あんたぁ俺達旧二級市民の希望の星やああああああああ!!!!」
「勝たんかああああああああい!! 勝って男見せんかああああああああい!!(←スゴい筋肉だけど性別的には乙女の応援)」
「あうあう、嬉しいようなそうでないような、複雑な気分だす……」
その時、死んだ魚のような目をしてため息を吐くロッキーの肩に、そっと手をおく者がいた。
「ロッキーさん……」
バーナードである。
「元気を出してくれとは言わない、俺も地味に名前呼ばれなかったのがこたえてるから。でも思い出しほしい!」
ばっと左腕を振り上げ、ある一点を指し示すその先にあるものは。そう、
「あなたがこの大会に出ようと決めたきっかけは何です?」
「あぁ、あぁ……そうだす。おらが、おらがこの大会に出ようと決めたのは―――」
使い古したシーツの半分以上に大きく描かれた、ロッキーの(くどい笑顔の)似顔絵。
それは決してお世辞にも上手だなんて言えないけれど、“暖かさ”が見ているこちらにも伝わってくるような、優しい似顔絵。
そして、その横に力強く書かれた“がんばれロッキーおじちゃん!”の一文。
それらは正しくロッキーの心に熱を点した。
「バーナードさん……おら、間違ってただす」
手作りの横断幕を皆で支え、カーマが、孤児院の子供達が、周囲の大人が驚くほどの声で自分にエールをくれる。
さらにその隣。
子供達の引率役であるキムチ・ドライブが、拳をぎゅうっと握りしめたアルフラを抱きしめ、こちらを見ていてくれる。
「あそこで応援してくれている皆のために。そして、アイスフレーム本部で留守番してくれているサーナキアさん達のために。
おらはこの大会、なんとしてでも勝ち残ってやるだす!」
覇気のこもった宣言を聞き、バーナードはひとつ得心がいったように頷くと、
「俺も負けません。例えその気持ちの先が別の“誰か”に向いていようとも。
彼女は――ウルザさんは俺に、『頑張ってください』と言ってくれた。
ガンジー王との貴重な打ち合わせを中断してまで、あの時会場内の渡り廊下で! 社交辞令だとしても声をかけてくれたんだ。
こんな影の薄い俺なんかに……だから――」
負けられない。
互いに頬を張り、えいやっと気合いを入れ直したロッキー達は、
いつまでも自分についてこない事にイラついたガチムチプラカード男子に殴り倒され、引きずられて行ったのだった。
◆
「それでは、最後のお二人です」
チョチョマンの台詞へかぶせるように、会場の照明のほとんどが突如、暗転。
観客席からアクシデントを危ぶむ ざわめきが、潮騒のように広がりきった矢先。
地下総合運動ホールの大スピーカーが、高音質の鋭いギターサウンドを轟かせた。
スローテンポでありながら、しかし力強く荘厳な曲調のそれは、まるでどこかの国の国歌であるかのよう。
入退場門にそれぞれ使用する東のドラゴンの門と西のタイガーの門からは、もくもくと足下を這うように白煙が広がっていく。
ギターの演奏が止んだ。タイミングを読んだチョチョマンが、自制していた口を開く。
「現ゼス国王、ラグナロックアーク・スーパー・ガンジーご推薦!
いつだって、どの国でさえ、自分は勝者だった。
あぁ誰か、俺に、俺様に、敗北を教えてくれるような男はいないのか。
青き稲妻 拳‐こぶし‐を握り、緑の閃光 剣を振る。彼らが通った道の後、眉目秀麗の男女 全ていなくなる。
それは何故か! 何故かは彼らの腰に訊け! 永久機関の源はいつだって己のリビドーなのだから。
“ヘルマンの薔薇と雛菊”パットン・ミスナルジ! “アイスの町の傾奇者”ランス・スーパーキングの入場です!」
「俺はオトコスキーじゃねええええええええええ!!!!」
「だぁぁぁぁるっせぇぞパットン、今から俺様が御輿に乗って格好よく登場するんだから邪魔すんな、このスットコドッコイ!」
「隊長さんは黙っててくれ! あの無表情きめこんだバカには一度キツく言ってやんなきゃなんねぇんだ!
つうかだいたいこの御輿からしておかしいじゃねぇか!
なんで隊長さんの御輿の担ぎ手が美女で、俺んとこが超兄貴なア●ンやサム●ンなんだよ!
何かもう、いろいろ何なんだよちくしょう!!」
よいやさ、よいやさ、と担ぎ出されて東、ドラゴンの門から異色の二人の登場である。
パットンが言うように片や和洋折衷入り乱れた、美女、美女、美女の手により担ぎ出された男のロマン御輿。
この度の演出のためにわざわざJAPANより資料を取り寄せ、衣装から何から全て一から制作したというから、
相変わらずあさっての方向に手が込んでいる。
「えいやー、そーれ!」
担ぎ手は皆十代後半からニ十代前半まで。色欲絶好、春爛漫、ゼスの花見は今が盛りの真っ最中。
飛び散る汗はやがて、サラシで絞めた張りのある乳房や肉付きのよい太股をつたい、
先ほどからローアングルで撮影を続けるカメラマンの喉と心を潤していく。
「だーーーっはっはっはっ、苦しゅうない! 苦しゅうないぞ皆の衆!
そこで雁首そろえて目ん玉丸くしてる奴らとは、男の器が違うってんだ!
むふふ、この勢いで優勝して、この子ら全員お持ち帰りしちゃうもんねーー! だーーっはっはっはっはっ!!」
ランスのあからさま過ぎる挑発にのるメンバーは生憎というべきかどうか、参加者の中にはいなかった。
アイスフレームのメンバーはもちろん、四将軍の二人に関しては先の大戦で何度か敵対、
共闘していたのだから、ランスのアレな言動には免疫が出来ていたようだ。
もっとも、そんな挑発的な言動を別にして、己の“男”をあげるため。ただ静かに闘志を燃やす男がいた。
(ランスさん……)
アレックス・ヴァルス、その人である。
(ランスさん……僕は今日、この大会で貴方に勝利することで、これまでの情けない自分。流され易い自分から卒業します!
そしてそれこそが! こんな僕を傍で支えてくれる、エロピチャへのケジメになると思う。だから……)
「ランスさん!」
御輿を降りてからも美女の腰を抱き、うはうはしていたランスのもとへ歩み寄ると、凛とした声で呼びかける。
「ぁあん? 俺様がお楽しみの最中に誰だ邪魔すんのはって、お前は……!?」
「誰だっけ?」
“光の魔法団隊長”アレックス、大観衆の前で吉本新●劇の王道リアクション、ズッコケを披露。
「アレックスです、アレックス・ヴァルス! ほら、以前いっしょに魔物からマジノラインを護るために闘った!」
「……おー、そうだったそうだったアレックス、うんアレックスだなおもいだした(棒読み)」
(忘れているな)
(ぜったい忘れてるだす)
(憐れ、アレックス……)
(やべぇよこの色黒筋肉野郎ども、さっきからチラチラ俺の尻見てるよ……)
上からバーナード、ロッキー、サイアス、パットンの順である。
一部を除いた参加者がアレックスに憐れみの視線を向ける中、
気丈にも持ち直した光の小公子は、あらためてランスのもとへ足を進める。
「ぐっ……ランスさん!! 僕はここに宣言します!
今日、この“M.M.R”で僕は貴方を、ランスさんを超える“男”になる!!」
◇
この時、スタッフ控室内の魔法ビジョンで一部始終を見ていた、魔想志津香はのちにこう述懐している。
「いやね、その時マリアと一緒に番組の準備しながら見てたんですけど、思わず二人して同時につっこんじゃいましたよ。
『あんたもう充分良い男だから!!』って。
で、しばらくしてお互いなんとなく微妙な空気になりました。なんだったんでしょうね、あれは……」
◆
「……ふん、何を言うかと思えばフニャチンめ。上等だ、かかってこい!
せいぜい俺様の超絶ハイパーな活躍ぶりに恐れおののき、噛ませ犬と化すがいい!! だーーーっはっはっはっはっ!!」
この時、スタッフ控室内の魔法ビジョンで一部始終を見ていた、魔想志津香は(以下略)。
「だからね、マリアと二人して思わずつっこんでたんですよ。
『あんたはアレックスさんの爪の垢をガロンで飲め!!』ってね。
で、しばらくしてお互い(以下略)」
◇
役者はそろった。
いずれも皆、心、技、体のどの項目においても常人の上をいく、強者ぞろいである。
Cの字型した会場内のど真ん中の実況席、いまだ空白のガンジー王の座席の隣。
アナウンサー、チョチョマン・パブリが頭の上に両腕で大きな円をつくり、サインを送る。
すると、会場を挟んだ向かい側正面、大魔法ビジョンの天辺に見える妙な人影がそれに応えた。
魔法使いサ●ーちゃんのパパのような、特徴的な頭のシルエットは、本人が思っているよりずっと観客から隠せていない。
やがて、珍しく呆れた表情を表にだしたカバッハーンを始めとする大勢の魔法使いが、
地下総合運動ホール上空を魔法で華麗にライトアップし、それに比例するように盛大な音楽が東西南北を埋めつくす。
そして、それら光と音の祭典が最高潮を迎えた時、大量の魔法スポットライトが待機していたガンジー王を射す。
歌舞伎の見得‐みえ‐よろしくガンジーは、己の視界を右から左へ ぐるうり見渡すと、
魔法マイクを握りつぶし、胸を風船のように大きく、大きく膨らませ、解き放った。
「これより!! 第一回! マキシマムマッスルランキングを開催する!!!!
皆のもの! 人類の肉体の限界のその先をとくとご覧あれ!! いくぞぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
威力を調整し、見た目と破裂音をととのえた〈火爆破〉が、ガンジー王の手により会場へ彩りを添える。
こうして、“M.M.R‐筋肉格付・極‐”は始まりを迎えたのであった。
「わっはっはっはっはーーー!!」
ちゅどどどどどどどーん。
「うぎゃぁぁぁぁ! っざけんなアホガンジーめ! 客には落ちなくても俺達のところに火の粉が落ちてきとんじゃああああ!!」
「いやはや、参ったねこりゃ。さすが王様、常識から外れた魔法をお使いなさる……」
「うおっバカ! ア●ンお前どさくさにまぎれて俺の尻をさわんな!
な、ちょ、ぬわぁぁぁオイルが! 肌にぬるぬるのオイルがあああああ!」
【次回、M.M.R‐筋肉格付・極‐ 競技編その一に続く】
・初めに。久しぶりの続きものです。元ネタは懐かしの筋肉番付から。
だいたい今回のような文章量であと三、四話ほど続ける予定ですが、ピンク仮面のように途中で止まらないようにがんばります!
(このままだと以前投下させていただいた、【I.C.F】のリメイクで終わってしまいますし)
・>787様 焼き鳥好きの神風さん素敵ですね。特に瞳が可愛いくて私は好きです。
>788様 エレノアさんは見当さんと並ぶ魅力的なキャラなので、ついイジってしまいます。ごめん都市長。
・最後に。うろ覚えですが、確か一つのスレにつき限界容量は500KBだったと思うのですが。(間違っていたらすみません)
皆さま次スレはどういたしましょうか?
・拙いSSですが、お読みいただき誠にありがとうございました。
久々に図書館にあった魔王が読みたくなって探してみたら図書館が見当たらない。
アーカイブで探してもないってよ・・・orz