おいしい。きれい。ありがとう。
おはよう。こんにちは。おやすみなさい。
そして、さようなら。みんなみんな。彼が教えた。
………。
―――なんだそれは。そんなもの―――反則じゃないか。
運命の出会いだなんて、ふざけている。なのに、絵空事が現実としてそこにはあった。
……どうしたって。
私が私に出来る最大限の努力をしたって届かない。才覚ではどう足掻いても埋められない。
それを、思い知らされた。
……ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな、ふざけるなふざけるな―――!
私は、今私が持つ全てを自分の力で勝ち取ったんだ。努力で。才覚で。他者を蹴落として。
他の全てを犠牲にして。そうして血反吐を吐きながら、私はこの頂きに立った。
そう。ゼロどころか、マイナス。マイナスの出発点からこの高みに立ったこの私が。どう
して負けなければならない?
そうやって私は。眠り姫に嫉妬して……姫を守ろうとする王子さえも憎悪した。
けれど、足りないものがあるなら補えば良いだけの話なのだ。そう気付いた時、私は笑った。
余りにも簡単な話だったから。
私になくてあの子にあるもの。それを新しく作ってやれば良いだけの話なのだ。
出会いを無かった事にして、運命的な出会いを最初からやり直す。知り合ってからの年月が
絆というものならば、それさえ作ってみせる。
有象無象には不可能でも、私には出来る。他の誰でもない私だからこそ。
私はそれを行えるだけの知識を持ち、それを実行に移す事が可能な環境がある。周囲に働き
かけ、目指す目標に誘導する事が出来る。本心を隠しながら、周囲の人間を説得するだけのもっ
ともらしい理由を考え付く事が出来る。周囲の人間を納得させるだけの結果を弾き出してみせる。
彼との出会い。遍歴。
そこさえクリアしてしまえばいい。私にあってあの子に無いものを、あの子が持つ事など不
可能なのだし。
負ける理由など見つかりはしない。
だから。
私とあの子の戦いは、何があっても絶対に負けるはずなど無い戦いであり。
最初から……絶対に勝ち目のない戦いだった……と、言える。
私は……一緒に星を見たいと、そう望む私になろうとしたのだから。