ここではお初です。特に名前はありません。
さて、今回ここに『CloverPoint』というゲームの一周年記念SSを、短いですが貼らせて頂きます。
あまりに時間がなく、なんとエロシーンが存在しないというものに……スレ汚しになってしまったらすいません。
それでは↓
「じゃあ、月姉……」
「わかってるわよ。祐真と夜々ちゃんのことは、みんなに内緒」
「……色々とありがとうございます、柏木先輩」
祐真、夜々、そして月音が、寮のリビングで顔を寄せ合っていた。
当然話に挙がっているのは、祐真と夜々の関係――実の兄妹だった――である。
幼い頃から祐真と共にいた月音だからか、二人の関係を見抜いた彼女も、他の人間には一切口外しないと約束してくれた。
「いいっていいって。それと夜々ちゃん、月音でいいわよ」
「……月音、先輩」
にっこりと満面の笑みを浮かべながら、月音は満足そうに二人を眺めた。
「いやぁ、でも夜々ちゃんが無事でホントによかった。一時はどうなることかと思ったもの……ところで」
どうしてもわからない、といった表情で月音は祐真に顔を向ける。
「祐真、あのとき電話で……クローバーガーデン、とか言ってたけど、あれって……」
「ごめん、月姉。月姉にも、それだけは詳しく話すわけにはいかないんだ」
「……そ」
特に深く追求するでもなく、ガタッと月音はイスから立ち上がった。
にやりと少し意地悪に笑って、くるりときびすを返す。
「さぁてと、おじゃま虫はそろそろ退散といきましょうかねぇ」
そう言う月音の背中は、祐真にも夜々にも、とても大きく見えた。
それからしばらくは、特に何事もなく、祐真も平穏に日々を過ごしていった。
夜々と自分が本当の兄妹だとわかった今も、以前と同じように振る舞ったし、二人きりの時は深く愛し合ったりもした。
桜井には相変わらずお兄ちゃんプレイなどとからかわれたし、恋路橋からもやっぱり、けしからんの乱射攻撃を食らった。
真星に関しては、しばらく祐真への態度がぎくしゃくしていたような気もするが、その理由を祐真が知ることは永久にないだろう。
そんなある晴れた休日の朝。
ふぁあ、とあくびをしながら、今し方起きた祐真が廊下を歩きながら洗面へと向かった。
その途中、二階の女子エリアへと続く階段の上から、不意に声がかけられた。
「あ、お兄ちゃん。おはよう」
「おぉ夜々か。おはよ」
寝ぼけ眼を擦りながら、よたよたと階段を下りてくる夜々。
それを見ながら階下で待っている祐真であったが、
「――――っ!」
「やっ!?」
突然足を滑らせた夜々を見て、顔面蒼白になる。
とっさに腕を構え、前のめりに倒れ込んできた夜々を必死の形相で受け止めた。
「ぐっ!」
軽い夜々とはいえ、結構な距離を落下してきた人間を受け止め、体中にかなりの衝撃が走った。
瞬間、祐真は強烈な閃光と共に、視界が一瞬暗転した気がした。
そのまま二人は組んずほぐれつ、冷たい床板に強く打ち付けられ。
だが、不幸中の幸いと言うべきか。
なんとか大けがは免れたようで、二人して痛そうに顔を上げる。
「たた……ごめんなさい、お兄ちゃ――――」「大丈――――」
二人が同時に黙った。
「……?」
「…………」
お互いすぐ近くにある相手の顔をのぞき込み、さらにしばしの沈黙。
「……えっと……」
「……な、なんだ……これ……?」
祐真の目の前に、『祐真の顔』があった。
「はは……冗談だろ…………」
「えっ、えぇぇっ!?」
夜々の目の前に、『夜々の顔』があった。
二人は、絶句した。
頑張れ
「……ともかく」
「…………」
「ともかく、こんなことが起こったなんて、なんとなくだけど……誰かに知られたらまずい気がする」
祐真の部屋に一時退避し、『夜々の体を持つ祐真』が、落ち着かない様子で『祐真の体を持つ夜々』に言った。
「ですね……」
『祐真の体を持つ夜々』は、未だに信じられないという表情で、だがしかし頷く。
若干脳容量不足気味の祐真にも、今どんな事態に陥ったのかを既に理解した。
自分と夜々の意志が、もしくは体が――どっちでも同じだが――とにかく入れ替わったのだった。
幸い、あの事故の様子を誰かに目撃されたような気配はなく、この事実を知っているのは今のところ二人だけである。
普段よりも低い視線、か細い体に若干の驚きを覚えつつも、祐真は自分の顔を眺めるという奇妙な感覚を拭うように言った。
「みんなにはバレないよう、口調とかに気をつけて接しよう」
「わかりました。……でも、どうすれば戻るんでしょう」
うーむ、と考え込む自分の表情を眺めつつ、夜々はクスリと微笑んだ。祐真の顔で。
「ん?」
「でもなんだか、ちょっと面白いです。それに、お兄ちゃんの体……」
「……」
「すごくがっしりしてて、たくましい」
「……夜々……」
愛しの妹にほめられて、本来ならば照れるか喜ぶかすべき場面であった。だが。
「……気味が悪い、やめてくれ」
「……はい、すみません…………」
自分の顔が、恍惚の表情で自分の体を抱きしめるという恐ろしげな光景に、祐真はげんなりとしながらたしなめた。
実のところ祐真も、夜々の体から突き出る胸やらなんやらに多少の興味を引かれていたが、今はそれどころではないと判断し、
「シロツメさんに会いに行こう。こういう不可解な現象はあの人に聞くのが良さそうだ」
再び、クローバーガーデンへと向かうことを提案した。
だが、なぜか夜々の腹が急に音を立てて鳴ったのを聞いて、
「……朝飯食ってからね」
と、気まずそうに言うほかなかった。
いそいそと祐真の部屋から二人して出てくる。
はたから見て特に問題があるわけでもないが、それでもなんとなく人に会いたくない気分だった。
だが、そんなかすかな祈りもどうやら通じなかったようだ。
「やぁ祐真、夜々ちゃん。おはよう」
「っ……お、おはようございます、桜井先輩」
「おはよう、ございます」
さわやかな笑顔の桜井と廊下で出会い、二人の顔に緊張が走る。
微妙に張りつめたその空気を感じ取ったのか、桜井は怪訝そうに二人に言った。
「……どうかしたのかい、二人とも?」
「いっ、いえ」
「別に、なんにも……」
「……?」
どうにも怪しげな雰囲気を醸し出す二人を気にかけながらも、しかし桜井はふと思い出したように夜々……つまり祐真の体の近くに寄った。
そして、突然耳に顔を近づけ、こんなことを小声で言い放った。
「そうそう、祐真。新しい洋モノのDVDが手に入ったんだ。
今回は(ピー)がものすごくて、滅多に映像じゃ見られないような(ピー)やら(ピー)が満載で……」
「――っ!」
桜井なりの、夜々への配慮だったのだろう。
隣にいる少女へと聞こえないよう、祐真だけに耳打ちしたつもりだったらしいが、
「へ、へ……」
夜々の、つまり祐真の顔は一瞬で真っ青となり、後ずさり、そして。
「変態ーーー!!」
すごいスピードで走り去っていった。
そんな夜々の様子を見た祐真は、自分の体が今夜々のものであるということも忘れ、
これは3〜4レスごとに支援すればいいのか?
129 :
名無しさん@初回限定:2008/12/21(日) 23:44:41 ID:vfH4omeHO
WKTK
間にレスするとまとめが大変な気もするが良いのかな?
転校生パターンで来るとは
いいぞ、がんばれ
「ちょっ、桜井先輩! いったい何を吹き込んだんですか!!」
思わず地を出して、桜井にきつく詰め寄っていた。
「へっ? いや、その……」
普段大人しい少女にものすごい気迫で迫られ、珍しくたじろぐ桜井。
「や、やぁ、まさか逃げ出すほどとは……確かに祐真にはちょっと刺激が強すぎた……?
いやでも、あそこまでドン引きされてしまうとは、いやはや」
「……っ」
そこで祐真も、自分がどういう状況に置かれているか思い出し、はっと桜井から離れた。
普段の夜々ならどんな態度を取るだろうか、というのを考え、慎重に言葉を紡いでいく。
「い、いえ……ちょっと、お……お兄ちゃん、今朝から調子悪いみたいで……」
「祐真が?」
「えっ、えぇ。わ、私、朝ご飯食べてきますね!」
これ以上何か聞かれる前にと、桜井の返事も待たずに祐真は食堂へ向けて駆けだした。
「どうしたんだい、天川くん? さっきから、なんかぎこちないけど」
グルグルメガネの奥にある目を光らせ、恋路橋が夜々の顔をのぞき込んで尋ねた。
「ほんと。夜々ちゃんもちょっと変よ? なんだかもじもじして」
「何かあったの、二人とも?」
続いて、月音と真星も指摘する。
びくりと二人一緒に肩を揺らし、持っている箸を慌てて動かした。
「い、いえ別に……」
「なんでもないです、はい!」
無駄に威勢良くこたえ、せっせとテーブルに並ぶご飯を、勢いよく普段よりも小さな口に運ぶ祐真。
だが、突如それをめざとく夜々が糾弾した。
「あ、おにい――――夜々、あんまり食べ過ぎないでくだ……くれよ。太るから」
「はいは……じゃない、わかりましたお兄ちゃん」
こんな時でも食べ過ぎを気にするのか、と祐真は若干呆れ気味に思った。
幸い、この体だといつものような食欲は湧かない。
夜々の体に気を遣い、野菜などを中心におかずをつまんでいく。
「天川くんじゃあるまいし、わざわざ言わなくても小鳥遊さんは食べ過ぎたりしないよ」
「そうよね。おかしな祐真」
「だから、みんなの前では祐真じゃなくて天川く――――っ!」
134 :
名無しさん@初回限定:2008/12/22(月) 00:08:53 ID:RSDey6NMO
紫炎
気づくのが遅かった。
思わずいつもの癖で、月音に呼び名の訂正を求めてしまう。
もちろん、それは周りからは夜々の口から発せられたものに見えるのであり。
「夜々、ちゃん……?」
「う、あぅ……」
怪訝そうな目つきで祐真in夜々を見やる三人。
窮地に追いやられた祐真は、必死に頭を回転させ、そしてガタッと立ち上がった。
ずんずんと歩いていき、目指すは自分の体。
「お……や、夜々……」
「や、夜々の……お、お兄ちゃんをみんなの前で気安く呼び捨てにしないでください、月音先輩!」
がしっと、夜々に……つまり自分の体に抱きついて、月音をにらんでみせる祐真。
ただいま演技力MAX。あの演劇で鍛えられた力がこんなところで役立つとは。
自分の体にしがみつくという、なんとも気味が悪い動作を必死に我慢しながら、なんとかごまかせるようひたすら祈る。
「そ、そうよね……ごめん、ラブラブなんだよね、ゆ……天川くんと夜々ちゃんは」
「うらやま……じゃない、けしからん! 実にけしからん!」
「……うぅ〜…………」
多少青ざめてきた真星には気づかず、そのまま祐真は、
「さぁお兄ちゃん。今日は一緒に出かけるんですよね!」
「えっ、でもまだ……」
「それではみなさん、失礼します!」
少し強引に戦線離脱した。
祐真の体を持つ……つまり、すぐ空腹におそわれる体を持つ夜々を引っ張って。
「ふぅ、どうなるかと思った……」
「焦りましたね。もふもふ」
人気のない山道を並んで歩きながら、二人は安堵の息をついた。
途中、ろくに朝食を食べれなかった夜々のために(祐真の体だから)お店でパンを買って、それをほおばりながら夜々は感慨深く言う。
「でも……また来ちゃいましたね、クローバーガーデン」
「あぁ……」
祐真にも夜々にも、徐々にガーデンに近づいていくのが感覚的にわかった。
懐かしいような、そんな不思議な感じが少しずつ大きくなって。
「――――」
「あっ」
そして、唐突に、何の前触れもなく景色が変わった。
真っ青な空に、点々と緑に息吹く数え切れないほどのクローバー。
美しいツタや白いシロツメ草が風で踊っているかのように、穏やかに、暖かく二人の来園を歓迎していた。
「ようこそ、祐真さん。夜々さん」
「シロツメさん」
「……ど、どうも」
137 :
名無しさん@初回限定:2008/12/22(月) 00:16:35 ID:RSDey6NMO
がんばれ
そして、どこからともなく現れた女性が、二人ににっこりと笑顔を向けてくれる。
現世離れした不思議な衣装と、どこかほんわかとした優しい表情を浮かべる、この庭の管理者・シロツメだ。
「お久しぶりですね。今日はどうかなさいましたか?」
「それが……」
祐真が、つまりシロツメから見ると夜々が、今朝方起きた事故のことを詳しく話した。
シロツメは別段驚いた様子もなく、祐真の話を相づちを挟みながら聞いていった。
「つまり」
一通り話し終えると、シロツメが二人の顔を交互に見やって言った。
「あなたが祐真さんで、あなたが夜々さんなんですね?」
「えぇ。シロツメさんなら、この変な事態の原因が何かわかるかと思って……」
特に深刻そうな顔もせず、少しだけ考えた後、シロツメはぽつりと言った。
「祐真さんが使ったクローバーは、かつてない使用法で消滅しましたよね」
「えぇ」
そう、祐真も昨日のことのように覚えている。
あの日ガーデンで、夜々と共に、三つ葉半のちょっと変な形のクローバーに願った願い。
――――夜々が悲しまないよう、互いに決して忘れないようにする――――
今まで抽象的に「夜々が悲しまないようにする」とだけ願っていたクローバーに、具体的な『手段』を吹き込んだ瞬間。
今度こそ本当に、クローバーの四つ目の葉が光となり、二人に特別な力を授けた。
「もう、私たちは絶対に忘れない……お兄ちゃんとの思い出は、全部忘れない」
夜々も、思い出すように目を閉じて想いをはせた。
でも、と、祐真はシロツメに改めて尋ねた。
「それと、この事件に何か関係が?」
「私もあのような事例で願いが叶った場面に遭遇するのは、初めてです。
ですから、たとえば副作用的な効果……強い衝撃が二人同時に与えられたときなどに、不思議な現象を起こしてしまったと考えるのが妥当でしょう」
「なるほど……」
たしかに、今回のクローバーの一件は、シロツメにとっても初めてのことであった。
シロツメにも、まだよくわからない事象や現象が起きない、とも言えない。
「でも……これって、元に戻るんでしょうか」
不安そうに夜々が言う。
だが、シロツメはその点に関しては大丈夫だ、と言った。
「元々、クローバーは物理的現象に大きく反する力はほとんどありません。
こういった、体が入れ替わるなんて不可解な現象も、そう長くは続かないと思いますよ」
時間が経てばじきに元に戻るだろう、とシロツメは言った。
「じゃあ戻るか、夜々」
「うん、お兄ちゃん」
こうして、シロツメの話を聞いて安心した二人は、彼女に向けて礼を言った。
「ありがとうございました、シロツメさん」
頭を下げる祐真を見て、シロツメはちょっと曇った表情で、おずおずと切り出した。
「あの……祐真さん、夜々さん」
「?」
「はい?」
一つ呼吸を置いて、二人の顔を交互に見て……シロツメは短く聞いた。
「お二人は、今……幸せですか?」
祐真と夜々は、シロツメを見た。
また一つ間をおいて、彼女は言った。うつむき気味だった。
「私は長い間、このクローバーガーデンで、願いを持つたくさんの人々達と接してきました。
でも……あんなに……人をクローバーで苦しめてしまったのは、初めてで……」
シロツメの表情は、今にも泣き出しそうであった。
「私、あのときはどうしたらいいかわからなくて……もし、私のせいで祐真さんや夜々が深い傷を負ってしまったら……
これからも、きっとお二人は苦労しながら生きていくのに、私は何の力にも――」
「幸せですよ」
祐真の声に、シロツメが顔を上げる。
ゆっくりと、もう一度同じことを言う。すべて、思っているそのままのこと。
「幸せです、俺は。夜々との思い出を全部この胸にしまって、楽しいことも苦しいことも一緒に生きていくって決められて」
「私も、幸せ、です。忘れちゃいそうなときはすっごく怖かったけど……けど、今は幸せです。お兄ちゃんと一緒で、幸せ」
祐真も夜々も、穏やかな微笑みをシロツメに向けた。
そう、幸せ。
みんな、幸せだった。
今も、これからも、ずっと。
これからどんな険しい道が待っていようと、二人はいつも一緒。
思い出を永久にその心へと刻み込み、それを支えとして一緒に生きていける。
だから、幸せなんだ。
「…………」
「ありがとうございました、シロツメさん」
「また、来ても良いですか?」
「……えぇ、いつでもお持ちしています」
祐真は、二度目のシロツメの涙を見た。
やっぱり、今度も笑っていた。
142 :
名無しさん@初回限定:2008/12/22(月) 00:28:01 ID:RSDey6NMO
よるよる
日はすっかり暮れ、二人は寮へと戻ってきていた。
今朝、夜々が足を滑らせた階段。その下で、祐真と夜々はどちらからともなく抱き合った。
「……」
「…………」
どうしてそうすることがわかったのか、わからない。
だが、そうするのが当然のように、二人で同時に、おでことおでこをコツンとぶつけ合った。
一閃。
「夜々」
「お兄ちゃん」
祐真の目の前には、愛する妹の笑顔が。
夜々の目の前には、愛する兄の笑顔が。
それぞれ、お互いに微笑みかけていた。
「やっぱ、夜々の顔が見えてると安心する」
「ふふ、夜々も、やっぱり目の前にお兄ちゃんがいた方がいいな」
そして、再び二人は深く抱き合い――――
「おやおや、相変わらずお熱いね」
「くくっ……けしからん、空前絶後けしからんっ!!!」
「あらあらぁ、見せつけてくれるじゃない」
「うぅ〜……」
「この絵は……売れますよ!(パシャパシャ」
「いいな、いいな〜。先生だって、地元に行けば男の一人や二人(略」
「おわぁ、み、みんないつの間に!」
「UMA、今度お兄ちゃんプレイについてひたすら語り合おうじゃないか」
「お断りします! 日向、撮ってんじゃねえっ! 行くぞ、夜々!!」
「うん、お兄ちゃん♪」
祐真と夜々――――兄妹は、手を取って駆けだした。
これからの未来を、ずっと共に生き続けていくために――――――――
145 :
名無しさん@初回限定:2008/12/22(月) 00:39:10 ID:RSDey6NMO
終わり?