6月X日(水)
…じめついた空気の中、一人白陵の制服を着て、お姉ちゃんの眠る病院へと向かう。
いつもの病室、変わる事の無いその部屋の空気…ただ、変わるのはこの手に持った花が花瓶に移るだけ…
「お姉ちゃん、今日も綺麗なお花、買って置いたからね?」
「ちゃんと見てくれなきゃやだよ?折角買って来てるんだから…」
眠ったままのお姉ちゃんの顔に向かって話しかける。反応は、無い…いつもの事…
そう、心に言い聞かせる…
もうすぐ、一年の時が流れようとしている…そしてこんなお姉ちゃんをずっと見続けている人がもう一人…
「お兄ちゃん…今日も来るのかな…?」
辛そうなお兄ちゃんの顔を見るのは、心が痛む…泣きたくなるような痛み…
「お姉ちゃん、お兄ちゃんの為にも早く起きてあげてよ…」
そっと囁くように声をかけて、手を握る。生きてるその証拠に手の温もりが伝わってくる…
呼吸も小さくて、よく聞き取れない…でも、ちゃんと生きてるんだ…
「ねえ、お姉ちゃん、聞いてる〜?もう…」
いつもの台詞…もう何度言った事だろう…いつか、閉じられた瞼が開く…
そう信じて…曇った空を見せる窓の外に視線を投げる…
こんな事にならなければ…誰もこんな思いをする事もなかったのに…
誰が悪い訳でもない…ただ、ちょっとタイミングが悪かった…ただそれだけ…たったそれだけの事なのに…
コンコンとノックをする音、反射的にドアの方を見て、返事をする。
【茜】「はい、どうぞ…」
ドアから覗くその顔は、今にも倒れて、壊れてしまうんじゃないかと思えるような…そんな顔…
お姉ちゃんの方が、よっぽど健康的に見える…椅子から立ち上がって、入ってきたその人に声をかける。
【茜】「おにぃ〜ちゃんっ!えへへっ、今日も来てくれたんだねっ!お姉ちゃんも…」
言いかけて口を閉じる。―――待ってたよ。 なんて今のお兄ちゃんには辛すぎる言葉…
【茜】「…まま。そんな所に立ってないで〜はい、座って座ってっ!」
【孝之】「茜ちゃん…」
お兄ちゃんに喋らせる間を与えず、出来る限り元気に振舞う。それが、今の私に出来る事…
そんな事しか、出来ないから…
―行数制限によりここまで。茜サイドで書いてみました。ちなみに
>>464さんではありませんので申し訳無いです…