聖なるかな&クリストネタSSその2はどうよ?
クリスト入れると限定される感じが
あとクリトリスと見間違える
聖なるかなSS&ネタスレその2、に一票。
なんで&ネタスレをわざわざスレタイにいれなきゃいけないのかわからん
>>650 SSスレにするとSSオンリーで敷居が上がるという教訓を生かすためだろ。
雑魚スピスレでは、
ネタ振り
↓
ネタ
↓
SS
の流れも多かったからな
長文作品が連立すると途中から入りにくいし、ネタ振りオンリーに納得行かない人は
自前の良質な長文で席巻すればいいわけだし。
ネタを振り合い楽しみ合い、互助の精神で行った方がいいんじゃないかと。
敷居の高いファンスレッドはたいてい滅びの神名が織り込まれちゃうしね。
エロイのはおk?
絶×ナナシきぼんぬ
>>敷居の高いファンスレッドはたいてい滅びの神名が織り込まれちゃうしね
お前上手いこというな。よし、うちに来て、KIAIにネームブレイカーしていいぞ
なんだか2スレ目くらいで消えてしまいそうだな。
なるかなキャラは、定番の展開に弱いからイマイチなんではとか思ってしまう。
とりあえず虐めておけばいい二枚目脇役光陰とか、
スネを蹴らせておけばいいニムとか、
ん、って言わせておけばいいアセリアとか、
滑って転んでえすぺらんかとか、
ドジッ娘ヘリオンとか、
くーるとかお菓子とか。
紋切り型と言えるかも知れんが、キャラを掴む上では大事よね。
わかりやすい説明だな。
なるかなのキャラは多くがDQNか空気だしなぁ。
まともなのもいなくは無いんだが・・・
>>656 そういや無いなそういうの。
コキトナも尊敬厨もイマイチ定着しなかったし。
ネコ耳大統領は性格が最悪だし。
サレスが裏切ったり、のぞみんとかヤンデレだったりそういうのが欲しかった。
敵キャラも、ネタにするにはイマイチ弱いよな
その意味では、流転とか炎帝は優秀でした
予想を覆していい奴っぽかったのにそれが却って好ましくない未来の世界のオールバックのアイツとか、
ナナメにおいしいキャラは盛りだくさんなんだがなぁ。
発売前後で設定が大きくずれ込んでる上に発売前のが分かりやすいゆえの魅力があるので、
SS書きの方々にはつらいところですかね。絵ーばっかり描いてる自分には分かりにくい苦労…
というわけで絵ですよ。
ttp://deaikei.biz/up/up/7463.jpg.html インストまじめに読んでないからたぶん外見と性格が違う。
細かい所わかんないと描く気が萎えるのでクリスターズはこれでおしまいっぽい。
>660
gj
だがPASでちょっと迷った。
>>660 passわかんね
>661
そういうおまいさんが例の場所に入れといてくれたら最高だったのになぁ
すまん。
「 crist 」
最初はclystかと思ったんだが。
そーいや>656にヨフアル入れてやらなかったよヨフアル。
>>664 トンクス。
俺はnarukanaぐらいしかわからなかったわw
てかこれ
>>379のタリア描いた人か。
>>664 ∩
( ⌒) ∩ グッジョブ
/,. ノ ( E)
/ / / /"
/ / _、_ / ノ
/ / ,_ノ` )/ /
( /
ヽ |
これであと1年は闘えそうです
まてまて俺にGJいってどーするw
ちなみに俺的にはミゥさんが好きなんだが。
のぞみんEND終わりました
――久しぶりに帰った故郷には
あの時のおもかげはありませんでした
聖賢者「というか、変わりすぎだ! いったい何があった!」
こういう電波を受信しました
まぁ、雑魚スピは、一応人間型で等身大だからよかったけどさ、
ナルカナのクリストって、小型妖精タイプだからねぇ。
スピたんみたいに、スピンオフして独立作品作られるかというと、その、なんだ……
主人公(人間型男子)と絡ませられないという欠点がw
アセリアと比べると微妙なのは、その辺のせいか?
雑魚スピはいくらでも妄想できたしなぁ……
あと主人公のキャラがあまりたってない事も原因かと
>>669 そこは向こうをでかくするか、こっちが小さくなるかすれば解決するので無問題。
ほとんど一発ネタになるけどw
だから学園生徒に名前+キャラ付けをしろとあれほど(ry
>>670 あとは主人公に共感できない点が多すぎて、感情移入出来ないのも大きいな。
雑魚スピスレでもたまーに出てくる「エロはいいのかいかんのか」という疑問に実践で答えるべく
ちょっと投下してみますね。
ttp://www.imgup.org/iup487969.jpg.html (たいしたものではないですが普通に18禁なので注意してください パスはルプトナのあだ名)
文章のエロと絵の即物的なエロでは微妙に重さも違ってくるとは思いますが、
これに総体的にどれだけ引くか食いつくかで決めてみては如何でしょう。
引いた意見の方が多かったらダッシュで削除してきます(苦笑)
クリストは、やられる時しかしゃべらないのがまずいんだと思います。
主人公に個性がないとかその辺は妄想力で飛び越えられるけど
軸にすべき彼女たちのキャラを垣間見れるのがインフォのあの量だけではキツい。
>>658 カティマがデレヤンだったのは意外だった。
元がエロゲなんだからエロ成分否定するやつはいないと思う
まぁNTRとか陵辱系とか属性につっぱしったのは賛否両論あるからな
だからこそのSS投下前の宣言&NGワードなのだが・・・
まぁこれも賛否両論・・・と
10日振りに(=゚ω゚)ノぃょぅ
先週日曜に風邪引いてそのままぶっ倒れてたぜw おかげでえらく間開いちまったぜw
みなも季節の変わり目には体調管理気をつけるんだぜ
>660
落ちてなくてよかた。見た瞬間躍り上がった。もっとくれ。無理か。
あの服とか何やついてる器具装置類についての設定資料が是非ともほしいところ。ほんとに。
>672
_ ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
⊂彡
_
( ゚∀゚) でも俺おっぱい星人じゃないから食いつかないんだぜ
し J ちなみにエロ禁止だったら俺もうとっくに排除されてるはずなんだぜ
雑魚スピのときは、ある程度住人の間で統一見解が持ててたからなぁ。性格付けや口調、その他の特徴について。
あとはそこに肉付けして行くだけで良かったのが
クリストの場合は一から作っていかなきゃならんから、各自の脳内に出来上がるキャラクター像も当然ばらばらになっちまう。
当然、ネタ組み上げてみても、スレ住人に共感してもらえるか分からんから二の足を踏みがちになりやすいと。そんな感じじゃないかなぁと思うのさ。
でも、だからこそ俺はひたすら独自路線を走り続けるのさ。後に続く誰かが出てくることを願いながら。
つうわけで久々に今日の分、10レス分。やっとこものべー発進だ。
あまり会話もなく、保健室の前に着いた。俺と先輩が前に立ち、ユーフィーと白いのがそれぞれの後ろに続き、少し離れて信助と阿川が、深刻な顔で話し合いながら付いてきていた。
「それじゃ、希美ちゃんの様子を見てくるわ。清浄はこっちに置いておくから、ミゥ、何かあったらお願いね」
「分かってます。すぐにさつきを呼びますから」
清浄を廊下の壁に立てかけ、先輩が保健室に入っていく。中からは物音ひとつしない。仕切りのカーテンに隠れて僅かに、青く輝く球体が浮いているのが見えた。
白いほうが清浄の刃と柄の境目あたりに、よっこいともたれかかるように自重をかける。あれで押さえられているのだろうか。少し不安だが、俺が持つわけにもいかないので口を挟めない。
「あの、ミゥさん? 私が持っておきましょうか?」
ユーフィーが近寄って声をかけた。けれど、白は即座に拒絶の言葉を発する。
「結構です。ユーフィー、でしたか。これはわたしが預かっているもの。勝手に渡すわけにはいきません」
「でも、大変そうですし……」
「大丈夫です。それに――ん。さつきが、わたしに預けていったことの真意を察することはできませんか?」
……その言葉の意味が良く分からない。ユーフィーも、え、というような顔をしている。いつしか信助たちも、2人の会話を注視しているようだった。
少し間をおいて、白が続ける。
「……見ての通り、わたしにはこれはオーバーサイズです。ジルオルの転生や一般人に預けるわけにいかず、中に持って行くのも論外である以上、この場ではあなたに預けるのが最善のはず。
けれど、さつきはその選択肢を選ばなかった。眼中にも無いようにわたしに任せていった――つまり、さつきはあなたを不審に思っている、ということです。神剣という危険物を預けていくのが不安な程度に」
は、っとした。何かあったら、って、もしかしてそういうことか先輩――っと、っと、いけない、感情を高ぶらせるな。冷静に。黒い感情は色々危うい。
678 :
2/10:2007/10/23(火) 20:18:04 ID:37SBB9aW0
……確かに、先輩の不安も分からないではない。俺自身、ユーフィーまでが神剣使いであったという事実に、驚いてないわけじゃない。
でも、あのときユーフィーは信助たちを守っていた。その前も、俺をかばってくれていた。それは、ユーフィーが俺たちに何か邪なものを持って近づいてきたわけじゃない証拠じゃないのかな、先輩。
ユーフィーが少し肩を落として清浄から離れていく。俺は少女の柔らかな頭に手をやって、ぽんぽん、と何度か撫でてやった。
なんとなく気まずい沈黙。これだけ静かなら、車の音や風で木々が騒ぐ音、遠い喧騒とかの生活音の、3つや4つは聞こえてきても良さそうなものなのに、それもない。そのことが、世界全てが停止しているのだということを否応無く知らしめていた。
寄る辺なさげに壁に寄りかっているユーフィーのほうを向く。何か声をかけるべきだろうか、と思いはするのだが言葉が浮かばない。
と。
「そういやユーフィーちゃん、まだお礼言って無かったよな。望の馬鹿から守ってくれた礼、いまのうちにしておくよ。ありがと、おかげでこうして動いてられる」
不意に信助が歩み寄って、しょぼくれ気味のユーフィーに明るく声をかけた。誰が馬鹿だと突っ込みを入れそうになり、思い直す。
「まーそんなしょんぼりしてることないって! 俺たちは君のこと疑ったり怖がったりなんて思ってないし、望だってそうだろ?」
もちろんだ、と即答する。サンキュー信助、おかげで空気が軽くなった。俺も続いて声をかける。
「そうそう。先輩だって、好き好んでユーフィーのこと疑ってるわけじゃないはずだ。今までずっと仲良くやれてたんだ、この騒ぎが落ち着けば、すぐにまた元通りになるさ」
「あら世刻ー? あんたがこの状況作り出した張本人っての忘れてなぁい? 人のこと心配するより先に自分のやらかしたことの始末をつけること考えてよね」
全くだ、と信助が合いの手をいれてひと笑い。俺は返す言葉も無く謝るのみ。触発されたかくすくすと、口元に手を当ててユーフィーも小さく笑いだす。
「びっくりです。信助さんも、美里さんも、どうしてそんなにいつもと変わらないんですか?」
679 :
3/10:2007/10/23(火) 20:20:36 ID:37SBB9aW0
「あー……いや、俺たちだって、不安が無いわけじゃないぜ? こういうわけのわからん状態になってさ、この先どうなるのかって思いはそりゃあるよ。
でも、だからって意味なく周りに当たり散らしたり、塞ぎ込んだりするのは性に合わないんでね。校庭で固まってるやつらには悪いけど、この変な出来事をなるったけ楽しんでやろうと思ってるだけ」
「このアホほどじゃないけど、私も似たようなものかな。せっかく動き回れるんだしね。
動けるだけ動き回って、最後もしどうにもならなくなったときに後悔しないように、できるだけ色んなことを見たりしたりしておきたいの。
この先どうなるか、完全に人任せなのが気に食わないけど、だから余計に、やり残しが無いようにしておきたいかな。って。そんな感じ」
阿川の言葉が色々と耳に痛い。どうにもならなくなんてさせるもんか。絶対この世界を元に戻して、元の暮らしに戻るんだ。と。俺の思いもまた強くなり、ぐ、っと奥底に濁ったモノを抑え付ける力も増す。
まだいける。こいつらと一緒なら、俺はまだまだ大丈夫だ。
「でさー、神剣持ってるんだから、ユーフィーちゃんも神さまなのよね? 何の神様なの? 世刻みたいな物騒なのじゃないよね?」
……やりやがった阿川のやつ。あっかるい口調で一気に空気を変えるど真ん中ストレート、あぅ、と小さく何かつぶやいてユーフィーの顔が下がる。
「今聞くかそれを……」
「何よ、気になるんだから仕方ないじゃない。宙ぶらりんって嫌いなの、私。それに、聞いて何か問題でもあるわけ?」
最後の一言はユーフィーに。あうあうと言葉を濁しまくりながら答えに窮している。これはマズったかな、と当の阿川の顔までだんだん曇っていく中、不意にぽつりとつぶやいた。
「覚えてないんです」
へ? と俺も含めて3人が問い返す。問い返した瞬間、揃ってそのことを思い起こしてやっちまったという表情。日ごろそんな風を見せないからつい忘れがちになるけど、ユーフィーは。
680 :
4/10:2007/10/23(火) 20:22:09 ID:37SBB9aW0
「私、昔のこと何も覚えてないって、皆さん知ってますよね。自分の名前も分からない、生まれたところも何も、昔のことはほとんど何も覚えてないんです。
だから、私が何なのかとか、どうして神剣を持っているのかなんて聞かれても、答えられないんです。ごめんなさい」
言いながら、制服の右ポケットに手をいれ、小さなキーホルダーのようなものを取り出し――それが巨大化して、あのとき持っていた、槍とも杖ともつかない奇妙な形状の神剣の姿となる。
――大きさ可変の神剣とは、また、随分珍しい。
「この子の――悠久の使い方を思い出したのも、ついさっきなんです。望さんがその剣を取り出して、何かをしようとしているのを見て。そのとき、この子が話しかけてきてくれました。自分を使って皆を守れって」
私が言えるのはそれだけです、と締めくくった。おのおの顔を見合わせて、どうしたものかと思案顔。
突然からりと小さな音を立てて、保健室の扉が開いた。
「話は聞かせてもらったわよ」
沙月先輩が、仁王立ちに立ちはだかっていた。
「先輩」
「たまたま偶然記憶を失っていた女の子が神剣使いで、たまたま偶然ジルオルの転生である望くんの両親と出会って、たまたま偶然同じ家に住むようになって、たまたま偶然覚醒の現場に居合わせて使い方を思い出した?
いくらなんでも出来すぎじゃないかしら。そんな説明じゃ私は納得できないわよ。望くん、今の話をどこまで信じる?」
強い口調で問いかけられる。表情は厳しくユーフィーの挙動を見据え、右手にはまだ刃こそ出していないものの、光輝の柄がしっかりと握られている。
一歩前に出る。ユーフィーをかばうように。
「俺は、疑いたくないです。確かに出来すぎてるかもしれないですが、でもそんな偶然があったって良いと思います」
「そう。うん、望くんはそれで良いのかも。疑心や疑念、黒い感情はあなたにはよくないからね。
美里ちゃん、森くん、あなたたちはどう?」
2人はすぐに頷きあう。言葉も無く以心伝心、信助が代表して口を開く。
「俺たちはユーフィーちゃんのおかげでこうしていられるわけですからね。疑ったりしたくないです」
「ミゥはどう思う? 第三者の視点としては」
こんどは白球に。清浄によりかかったままの姿で少女の声が答える。
681 :
5/10:2007/10/23(火) 20:25:50 ID:37SBB9aW0
「さつきに全面的に賛成するしかないですね。いくら記憶障害と主張しても、あくまでもそれは自己申告に過ぎないわけですから。――ええ。何かを思い出せないフリなんて、ありふれた嘘じゃないですか。誰でもやれるしやることです」
何故か発言の途中から、苦いものが混ざったような口ぶりになった。少しの間。先輩が何か言おうとしたのをさえぎって続ける。
「ですから、まずはその子が本当に記憶障害なのかを確認するのが先決でしょう。もし本当なら治療してあげれば良いし、虚偽であれば改めて真実を聞き出せばいい。
この世界の医療技術では治療できない症状でも、ザルツヴァイなら何か打つ手もあるでしょう、さつき?」
「あー……確かにあっても不思議じゃないか」
先輩が言葉を濁す。私の記憶、戻るんでしょうか、と小さくつぶやく声が耳に届いた。
「ていうか、沙月先輩。ユーフィーちゃんを信用できないって言っても、でもこの世界に1人で放っておくわけにもいかないんじゃないですか?」
――思わず怖気が走った。
「あ、のぞみん、寝てなくて大丈夫なの?」
「永峰さん、風邪は大丈夫なのか?」
いつの間にやら先輩のすぐ後ろに希美が歩いてきていた。服装はやはり先ほどのまま、緑基調のドレスっぽいもの。大方あれも、俺のこれと同じく自家製戦闘衣なのだろう。
ぴり、とした緊張が俺の全身に走っている。不意に逃げ出したくなる衝動を抑えて、よ、っと希美に小さく手を振った。大丈夫だって。見た感じ、いつもと変わらないんだし。
「うん、もう体は大丈夫。これでも神さまだからね、ちょっとした風邪くらいどうってことないよ。
先輩、あんまり意地悪してると望ちゃんに怒られちゃいますよ?」
682 :
6/10:2007/10/23(火) 20:27:07 ID:37SBB9aW0
いつもと変わらないその様子にほっとした。ぽえー、ぽえー、と何か気が抜ける鳴き声だかなんだか奇妙な音が、希美の声に唱和する。あん? と先輩以外の全員がその声の元を探す。と。いた。
「ぽえー」
希美の肩の上に、何やら白くて丸くて目口のついた物体が乗っかっている。大きさはバスケットボールくらいか。両横には小さな羽根が少し離れて浮いている。ぽえぽえと、どこか嬉しそうな鳴き声をあげていることから、生き物だと分かった。
――記憶の底を浚う。あれには見覚えがあった。あまり深入りすれば呑み込まれるかもしれない、果てない記憶の海。探すほども無くその正体を思い出す。
「意地悪してるわけじゃないんだけどね……ま、ほっておくわけにもいかないし……」
そうしているうちに、先輩は仕方ないわね、と頭を小さく掻き、光輝の柄をポケットにしまいこんでいた。
「良い? ユーフィー。さっきの話聞いてたと思うけれど、私たちがやってきた世界でなら、あなたの記憶をよみがえらせることができるかもしれない。もし本当に失っているのならの話だけど。
もし嘘をついているなら、ばれるまえに言ったほうが良いわよ。絶対に」
「先輩、そんなきつい言い方しなくても」
「良いんです、望さん。私だって出来過ぎた話だと思ってますから。沙月さんが、悪意で言ってるわけじゃないのは分かってますから、平気です」
ならいいんだけど。2人の様子を交互に見守りながら、またしても訪れた沈黙を我慢する。待つほども無く先輩が、はぁとためいきついて言った。
「さて! ユーフィーの発言も無いみたいだし、この話はこれでおしまいね。希美ちゃん、体調のほうは本当に大丈夫なのよね?」
「はい。それに、私が少しくらい疲れてても、ものべーは平気ですから」
ものべー?
「あ、そうだ紹介しなくちゃね。この子の名前はものべー。私の神剣、清浄の神獣だよ」
挨拶して、と促され、ものべーなる名の神獣が、ぷわりぷわりと浮き上がり、ぽえぽえ鳴きながら俺や信助たちの前をぐるりと一巡り。途中で可愛さに目が眩んだか、阿川が両手でがしと抱きかかえてしまった。
けれど、ものべー? 前はそんな名前だっただろうか。
683 :
7/10:2007/10/23(火) 20:28:58 ID:37SBB9aW0
「うわ、何これぷわぷわしてる変な感触ー! ねー、ものべーってこの学園から取ったのよね?」
「うん。私とこの子が初めて会ったところだしね。なんとなく語呂も良いでしょ?」
ぎゅーと抱かれたものべーが、ぽえぽえぽえと苦しげな鳴き声を発している。じたばた動くも体型が悪すぎてどうにもならないらしい。
「しつもーん。神獣って何すか先輩?」
「あ、まだ説明してなかった? えーとね、神剣の意志そのもの……って解釈で良いのかな。
神剣は、それぞれに固有の意志を持っているの。つまり心を持っているわけね。それが形を成したものが神獣。剣より出でて主の助けになるもの。神剣は、己の心の具現である神獣を、外界に顕現させる力を備えているの。
私の光輝ならケイロンがそうよ。今は剣の中で休んでるけれど。で、清浄の――あの大槍の神獣が、その子ってことね」
「へー。剣の意志、ね。ますますファンタジーだな。おい望、そんじゃお前のその剣にも神獣がいるんだろ? 見せてくれよ」
「あ。そうか。黎明にも神獣がいるんだった……な。忘れてた」
そうだ。今の今まで忘れていた。どんな奴だったか。思い出せない。いや、一緒にいたという記憶自体が存在しない。
腰にある黎明に問いかける。神獣――名前もでてこない。どうやって呼び出すんだったか、黎明と意識を重ねてみる。途端、大きな錠前のイメージが心に流れてきた。
そうだ。思い出した。ジルオルにとってあいつは必要の無い存在だった。だからこうして、表に出てこられないように閉じ込めたんだ。ずっとずっと昔、初代のジルオルの手で。
謝りながら開錠する。鍵を錠前に差し込んで、ぐいとひねるイメージ。神代以来、久方ぶりに黎明の意志が解放される。爽快感が同調している俺の心にまで流れてくる。
「ぷあーっ!」
ぼてん、と何かが頭の上に落ちてきた。
「あん?」「あら」「ほぉ」「わ」
周囲4人それぞれの反応を受けつつ、頭の上に手をやる。もぞもぞと何かが動いている。重くはない。手に当たる感触は布地のもの。
「うわ、っとと、ちょっとまて、触るな、触るなっ! ひ、久しぶりすぎて、動き方が思い出せんっ」
随分とかわいらしい声だと思った。触るなと言われて手を離す。もぞもぞごそごそじたばた、しばらく待って、不意に感触が無くなる。
「お。っとっとと。よし、コツを思い出してきたぞ」
もう良いかな、と顔を上に向ける。
目があった。
「おお、済まぬなノゾム、久しぶりに出てきたせいで変なところに落ちてしまった。吾を解放してくれたこと、心から感謝しているぞ!」
頭の上には青く大きな帽子。零れ落ちかけて慌てて両手で食い止めている。その手にはやけに大きな鈴がひとつずつ、腕輪に通して付いていた。
髪は綺麗な金色。後ろで三つ編みにくくっている。白い上着に、腰周りにはでっかいリボンがついて、まるで花びらのように広がったスカートと合わさって、むやみに可愛らしさを際立たせている。
まぁ、つまりあれだ。
「かわいいーーっ!」
阿川の叫び声が全てを物語っている。体長は多分20cm無い程度。そんな小型サイズの、妖精みたいな女の子が、俺の黎明の神獣のようだった。
「えーと、この子がその剣の。随分イメージと違うというか……いや、それをいうならものべーのほうが……?」
だんだんと飛び方を思い出してきたらしく、すいーと飛んで俺たちの目線の高さに降りてくる。そこで空中停止、ぐるりと周りを見回して、ふんふんと頷きながら指差し確認1人ずつ。
「ふむ、こいつがシンスケとか言う男だな? そっちがアガワか。それでユーフォリア、サツキ、ノゾミか。ふむ。そっちの白いのは何じゃ?」
「おいちょっと待て、なんでおまえ名前と顔が一致してるんだ」
「神剣と使い手は一心同体だぞ? お主の記憶を少しばかり手繰り見ておるだけだ。いちいち一から説明するより楽であろ?」
悪びれもせずに言われた。いや、それはそうかもしれないけれど。
「ふーん、黎明の神獣ってそういえば初めて見るわね」
「ずっと剣の中に封じ込められておったからな。しかし吾は初めてではないぞ? その剣、光輝には見覚えがある。お主セフィリカに縁の者だな? 気配がそっくりだ」
685 :
9/11:2007/10/23(火) 20:31:17 ID:37SBB9aW0
「ん、ええ。私はセフィリカの転生よ。今は、って自己紹介はいらないか」
「うむ。ノゾムの知識との同調が今済んだところだ。ずいぶんとややこしいことになっておるようだな?」
「待て。同調したってどういう意味だ、俺の記憶全部覗き見たってことじゃ」
「そんな面倒なことするわけがなかろう。今の状態と、おぬしの周りの人間、神剣たち、その他一般常識や世界の有様などを確認しただけだ。
なにぶん、お主の前世のせいで、ずーーーーーーーーーっと眠らされておったのだ。知識が足りなくて仕方が無い。そのくらいは許してもらわねば割に合わんではないか」
それを言われると……って、俺のせいじゃな――になるのか。なるよな。くそ。
「ねーねー、あなた名前は? あと写真撮っていい?」
「おお、それがカメラというものか。うむ、どんな風に写るのかぜひ見てみたいな。名前は――」
じと、と俺のほうを向く。なんだよ。
「ジルオルは情の薄い男でな。吾は名前をつけてもらえなかったのだ。ゆえに、吾はいまだに名無しの神獣なのだ」
「世刻ひどい」
「望ちゃん薄情」
「俺のせいなのかっ!? いや、俺のせいなのか……か?」
何か釈然としない。しないけれど、ん、でも俺のせいなんだよな。同じ魂を受け継いでるわけだから。
「ふむ、まぁノゾムは、ジルオルとは随分と性質が違うようだからな。きっと良い名前を付けてくれると信じているぞ?」
「いきなりそんなプレッシャーかけないでくれよ」
なんとなく、ジルオルがこいつを封じた理由が分かった気がした。この性格では彼とはどうやっても合わないだろう。そして、この騒がしさを心地よく思える今の自分に少しほっとする。
うん、ここはひとつ何か良い名前を――
「黎明の神獣だから、レーメってどうだ」
「安直」「単純」「捻り無さ過ぎ」
3人がかりで一刀両断にされた。黙っていたのはユーフィーだけ。でも、ちらりと見てみれば、それはどうかととでも言いたげな顔。へこみかけたそのとき、救いの声がした。
「うむ、吾はそれでかまわないぞ? むしろ気に入った。良い響きではないか。レーメ。レーメか。うむ、吾の名前はレーメだ! 皆よろしく頼むぞ!」
686 :
10/11:2007/10/23(火) 20:32:28 ID:37SBB9aW0
「まぁ、本人が気に入ってるなら良いのかな?」
シャッターを切る音がひとつ。レーメが空中で軽やかに決めポーズをとっている。おかげで脱出できたものべーが、息も絶え絶えに希美の腕の中に。ぽえ。
「うむ、吾は気に入ったぞ? ミサト、ミサト、どんな感じか見せてくれ」
阿川のデジカメの後ろに回り、ほー、と声を上げるレーメ。屈託のない笑顔が少しまぶしい。
「先輩? 神獣って、持ち主の趣味が反映されるなんてことは」
「無いって!」
「無いわよ。残念だけど」
残念ってどういう意味ですか。ついでになんですかそのいやらしげな笑いは。あと信助、その問いの真意を後で問い詰めるから覚悟しとけ。
「ところで皆さん? 歓談も良いですけど、出発しなくていいんですか?」
不意に、普段より声量2倍のミゥの声が廊下に響いた。鼓膜がきぃん、と鳴って少し痛いほど。ぽえっ、とものべーがびくりと身を振るわせる。清浄から振動が伝わりでもしたのか。
「あ――そう、そうね。おしゃべりは移動しながらでもできるもんね」
先輩が取り繕ったように言う。そうですね、と希美、阿川と続いて、ユーフィーも小さく頷いてみせる。
「えーっと、それじゃ希美ちゃん、ものべー、お願い」
お願い、って何をさせる気なんだろう。はいと答えた希美が、窓のほうに移動して、ものべーを外に出す。
と。
「ぽ〜〜〜え〜〜〜〜っ」
ものべーが鳴いた。柔らかい中に力強い鳴き声、甲高く、少しずつ低く、同時に窓の外で、ものべーがどんどんサイズを増していく。
「おうぁ」
信助が変な声を上げた。気持ちは分かる。分かるとも。まさか俺がこれに乗る日がやってこようとはな。え?
「ぼえーーーーーーーーっ」
準備完了、とばかりに最後に、コントラバスのような低い音程で大きく鳴いた。最大化完了。サイズは概ね3階建ての家くらい。大口をぱっくりとあけて、窓に張り付くように浮いている。
「……この口の意味は?」
「えっとね、森くん。ものべーは、体の中に人や物を入れて、いろんな世界を自由に移動できるって特性を持ってるの。だから」
「喰われろってこと、ね。つまり」
「大丈夫だよ、中は快適だから」
率先してまず希美が、窓を乗り越えてひょいと飛び込む。
「消化されたりしないよね……?」
「しないって。さ、2人とも入って。ミゥ、他の子達は?」
「もう2分ほどで。大分遠くまで見て回ったそうですが、特に発見は無かったらしいです」
ミゥの隣にはいつの間にか青いのが浮いていた。先輩が清浄を持ち上げて、2人に入ってと促す。
2人はしばらく躊躇していたが、まず信助が、畜生毒食らわば皿までだ、と叫んで頭から突入。阿川もそれに続いていき、さらに続くは5色の球体。なんのためらいもなく中へと入る。
「ユーフィーは、背届かないか?」
「大丈夫です、っと」
窓枠に手をかけて、ぐっと体を持ち上げて、窓の外へ全身で飛び出すように口の中へ。巧いものである。
「むぅ、吾とノゾムならば、誰かの助けを借りずとも自力で世界を飛びまわれるであろうに」
「ま、そうだけどな。でもこっちのほうが絶対早いし楽だよ。散々追い掛け回されてきたんだ」
思い起こす過去の一幕。世界を壊す暇も無く、ひたすら逃げ続ける俺を、どこまでも追いかけてきたのと同じ存在が、今目の前にいて、それに乗り込もうとしているなんて。
「望くん、どうしたの?」
「いえ。前の記憶を思い出したんです。こいつに追い掛け回された思い出がね、ふと浮かんで、不思議だなと。
俺たちはいつも殺しあっているのに、今回逆に協調して事に当たれている。今回の転生は、いつもと何か違う、そう思いませんか?」
「そうね。神名に覚醒しているのに、己を保てているジルオルなんて私もはじめて。でも気を抜かないでよ。さっき保健室の中で話したけれど、希美ちゃんも確かに、相克の意志を感じている。
今は抑えこめているけれど、この先はどうなるかって、自分でそう言っていたから」
「……大丈夫ですよ。きっと。俺が暴走しなければ。さ、行きましょう先輩。俺は俺の目的を果たすまで、絶対に負けたりしませんから」
2人が立て続けに飛び乗り、それを確認してものべーの口が閉じられる。校庭の中庭に茫洋と浮かんだ巨大な次元くじらが、ぐい、と高度を上げていく。
やがて消え行くその巨体を、見送るものは誰もいない。凍りついた世界を眼下に見ながら、ものべーは世界の壁をすり抜け、虚空に消えた。
投下ご苦労様です。 文章投下は楽しみにしてますが、体調には気をつけないと余計な合併症とか発病したりしますから気をつけてくださいね。
GJ
てっきり容量が少なくなっているから次スレが立つまで待っていたのかと思ってたw
ありきたりですが、健康には気をつけて下さいね。
(=゚ω゚)ノぃょぅ
昨日寝てる間にレーメたんが夢に出た(=゚ω゚)ノょぅ
ミゥねえさまに早く続き書けと迫られた(゚ω゚)ノょぅ
もうだめだとおもった(゚ω゚)ょぅ
合併症がどうこう言うならこれが一番やばい合併症だ(-ω-)ょぅ
>689
寝込んでる間に次スレ行ってるかなと思ってたんだけどねw
結局
スレタイ
聖なるかなSS&ネタスレその2
テンプレ>643
でいいんじゃろか?
今日の分5レス分 落としたらいよいよ残り危なくなるから
決まりなら決まりで次スレ準備したほうが良いとおもー
じゃ、投下開始
"ミゥねぇー、ミゥねぇー、感度どうですかーどうぞー"
"はい、ワゥ、感度良好です。わたしたちの装具はこの現象の影響を受けなかったみたいですね"
"ん……受けてたら身動き取れないと思うよ、ミゥ"
"えっと、神剣の反応の残滓を辿ってみましたが、指示者らしき誰かの姿は見当たらないです。もう逃げ出したんじゃないかと思います"
"でもさポゥねぇ、あのミニオンたちの動き、最初から統制取れてなかったと思うんだけど。指揮官がいればもう少し良い動きできるはずだし、
誰かが早いうちに片付けちゃったとかじゃない?"
"でも誰が? てーかゼゥ、その統制取れてないミニオンの最後1匹、逃がしたの誰の責任だと"
"うるっさい! ワゥこそ土壇場でゼゥの援護しくじったクセに人のこと言えるの!?"
"2人とも喧嘩しない! みんな、わたしはさつきたちの会話中継に入ります。ルゥ、その間は任せますよ"
"ん。私は……えっと……名前……ファイムの転生を見てるからね"
"この世界技術レベル低いなぁ。何この入力装置、原始的ー"
"でも、それゆえの雑然とした美しさはありますよね。こういう街も良いかもです"
"ポゥねぇはこーいう、なんだっけ、のすたるじっく? なの好きだねほんと。ゼゥには良くわかんないけど"
"あ、本屋さん……かしら。ちょっと覗いていっても良いかしら"
"ポゥ、出てこられなくなる。駄目"
"わた、びっくりした。角曲がったら何か生き物が目の前に"
"動いてる?"
"止まってる"
"止まってるのにびっくりするなんてワゥ臆病ー"
"な"
"先に釘刺すよ、ワゥ。言い争い禁止"
692 :
2/3:2007/10/24(水) 21:35:12 ID:HOFrhx2u0
"んー?? 何かへんなのがある"
"変なの?"
"んー、と、なんだこれ。子供――これって男の子で良いのかな? が、全裸でおしっこしてる像。
股間の雄生殖器から水が出かかった状態で固まってる。ボクより体大きいや"
"何それ、変なの"
"一応、映像記憶で保存しておいたから、興味あったら後で言ってよ。送るから"
"へぇ、この世界ってそんなに広いんだね"
"でも広い分マナ薄いじゃない。いまいち飛びにくいし、出力上がらなかったし――即答でせまッ、て、しつれーな奴"
"世界の広い狭いとマナ濃度の濃い薄いはほとんど関係ないって話聞いてないの? 広くても濃い世界はいくつもあったし、その逆も"
"あれ、そうでしたかワゥちゃん?"
"うんポゥねぇ。こないだ発表論文出てたよ。狭くかつ希薄な世界もいくつもあって、そこが特にあいつらに狙われやすいって"
"狭くて薄い分、やっぱり壊しやすいのかな"
"結局見張ってた意味無かったけどねー"
"でも、見張ってないわけにもいかないし。仕方ないですよ"
"それはそうだけ"
────────────────────
"ゼーゥ、やっぱりあのミニオン逃がしたのが引き金になってるじゃないか。責任取れー"
"共同責任っ! あのときちゃんとゼゥの援護できてたらちゃんと始末できてたっ"
"過ぎたこと言っても仕方ない。次ちゃんとやれば良い"
"うう、おねえちゃんは火力不足でごめんなさいです"
693 :
3/3:2007/10/24(水) 21:36:30 ID:HOFrhx2u0
"あ、沙月が来た"
"わたしもその部屋の前に着きました。ルゥ、のぞみの状態はどんな風ですか?"
"ん、落ち着いてるよ。今沙月と話してる。自分のやったこと、良く覚えてないみたい――そう、のぞみだよのぞみ"
"むっせきにーん! これだから神とかって信用できなーい。あのサレスってやつも気に食わないしー!"
"あの人がいなければ、今頃私たちはのたれ死んでるかもしれないんですよゼゥちゃん。あまりそういうこと言うのは"
"でもポゥねぇ、結局ゼゥたちってあいつらにうまく使われてない? なんか使いつぶされそうで、ゼゥは好きじゃない"
"その気持ちも分かるけど……ん、でも仕方ない。他にいくところないし。ん。沙月が出て行こうとしてるよ、ミゥ"
"おねぇちゃんかっこいいもっと言っちゃえー! 記憶喪失なんてきっとまた嘘っぱちだー"
"ゼゥちゃん、あんまり人を疑うのはいけないことだと思いますよ"
"でも前は"
"それを確かめるのが先決、って話だよ。――さっきから静かだけど、ワゥ? 何か?"
"んーん、何かへんないきものがいたの。面白かったからつい眺めちゃってた。ごめん"
"へんないきものといえば。こっちの、清浄の神獣も結構変だよ。ん。みんなの感想が楽しみ"
"ポゥ、ゼゥ、ワゥ、もうかなり離れてませんか? 何も無いようなら、そろそろ戻ってきてください"
"――あ、本当ですね。えーと……現象の効果範囲限界は確認できず、と"
"こっちも。全部固まっちゃったまま"
"この光景、彫刻家の人とか見たら仕事投げちゃうかもしれないね。どれだけリアルに作ってもこの躍動感には勝てないよ。多分。――よし、今から戻るから"
――記録終了。
混信無し。修正部分無し。記録異常等の不具合無し。母船へ帰還次第、記録を保管庫に格納するものとす。
第7調査団長 ミゥ 神獣ものべー内にて記す。
「聞こえる、ベルバルザード? ええ。破壊神の名は伊達じゃないみたいね。こんな現象は始めて見るわ」
光をもたらすものたちの長、エヴォリアは、時間樹の枝と枝の隙間、次元間空間に浮かんでいた。
巨大な木の幹が、相互に複雑に絡み合った枝々の隙間から、屹立する壁のような威容を見せている。それぞれの表面を伝う金色の輝きは、時間樹を循環しているマナのそれだ。
「そうよ。世界ひとつが丸々凍結してしまっている。そのまま壊れるのでもなく、解除されるでもなく、凍結よ。ええ。どうしたらこんなことができるのか、まるで分からないわ」
エヴォリアの周囲には、数名の同胞たちが指示を待つように佇んでいた。それぞれの手に握られ、あるいは体のどこかに装飾してある神剣が、彼らも神の一柱であることを示していた。
その中に混じって、暁天の絶が、意識を失って浮遊していた。身に纏った黒衣はずたずたに裂け、体にも傷が縦横に走っている。
右手に握り締められた神剣には随所にヒビが走り、刃こぼれも多く、もう僅かに衝撃を与えれば、今にもへし折れそうな状態だ。
先の戦闘で清浄によって与えられた連続した打撃と、世界から無理に離脱した際の消耗で、彼らは、蓄積してあったマナを完全に損耗。
このまま放置すれば死を待つのみであろう、無残な姿を晒していた。
「ええ。私は彼らを追っていくわ。そっちは作業を続けて。応援にサリツァを送るから。それじゃ」
互いに見知り、かつ相性のよい神剣同士のみが成し得る、長距離意識接続を行っての会話を終了する。くるりと身を翻し、彼女を見つめる配下たちを睥睨して、言う。
「聞いていた通りよ。彼らの追跡は私1人で行うわ。あなたたちは各世界に散っている皆を呼び集めてきて」
一旦言葉を切り、自信と確信に満ち溢れた、凄みのある笑顔を浮かべる。腰に手を当て、豊かな双丘を惜しげもなく張り、受ける視線を物ともせずに続ける。
「旅団の本拠が割れたそうよ」
歓声が上がった。彼らの宿敵ともいえる集団、滅ぼうとしている故郷を救いたいという彼らの願いを、阻み妨害する怨敵たち。その本拠地に攻め入るときがついにやってきたのだ。
「ありったけのミニオンを動員して攻め込むわよ。準備期間は――やっぱり、共通の時間単位を作っておくべきだったわね」
一様に苦笑する。
ここに集うもので、互いに同じ世界を故郷にもつ者は1人もいない。彼らが生まれた世界、惑星には、それぞれ固有の時間単位が存在していた。ゆえに、単に1日、1週間などと言っても、個々の認識している期間にはずれがある。
「仕方ないわね。以前に見つけた、あの無人世界を集合場所にする。全員揃い次第、始めるわよ」
応、という唱和が虚空に響く。それぞれにどの世界を回るかと相談を始める中、1人の少女がエヴォリアに言った。
「この男はどうするのですか、エヴォリア姉さま。このまま放っておいてもいずれ消滅するでしょうが、ならばこの場で」
「いえ、その男は殺さないわ。サリツァ、さっきの話を聞いていたわね? ベルバルザードが作業を続けている世界に、その男を連れて向かいなさい。あの世界はマナが濃い。療養にはちょうど良いわ。
その神剣使い、なぜかは知らないけれど、破壊神を殺そうとし、旅団の――光輝のお嬢ちゃんと切り結んでいた。きっと私たちが知らない情報を知っているはずよ。殺すのは惜しいわ」
しかし、と男の声がした。そやつは同胞、ジゥエを手にかけたもの。回復させれば我らに敵対する可能性も。
「そうなれば、完治する前に始末するだけ。ベルバルザードなら簡単なことよ」
納得して引き下がる。分かったわね、とエヴォリアが言う。少女は頷き、手の小刀を絶に向け、周囲のマナをより集め、傷ついた男の全身に浴びせた。
たちまち傷口がふさがっていく。神剣の傷も修復され、元々の鋭い輝きを取り戻していく。回復度合いを見極め、終了する。今意識を取り戻してもらっては困るのだ。
「さぁ、いきなさい皆! 次集まるときを楽しみにしているわよ!」
号令は下された。神の名を継ぐ者たちは一斉に散り、枝を伝うように飛翔していく。それを見届けて、エヴォリアも移動を開始した。
行くわよ、雷火。