【きゃんでぃ】タカヒロ・白猫SSAAスレ1【みなと】

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911名無しさん@初回限定:2008/01/16(水) 01:28:41 ID:FketF1+i0
んじゃつよきす2どうすんのー?
このままじゃここに投下できないよー
912名無しさん@初回限定:2008/01/16(水) 01:30:30 ID:KuCBcgnn0
ホレ
まだあるのか知らんけど
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1181212814/
913名無しさん@初回限定:2008/01/17(木) 01:43:38 ID:RLnqCUgP0
>>911遠慮なく投下していいよ
投下するべき作品があるなら、作家は投下するもんだよ
投下すべき作品もない人が無駄にゴネるのは勘弁な
914名無しさん@初回限定:2008/01/19(土) 20:49:51 ID:PgQVYa310
8どおりでいいんじゃね
保管庫の中の人の発言で総意じゃないけど
誰も反対しないだろ、多分
スレタイ変更は必要そうだな
2学期発売で活気づけばいいな
915名無しさん@初回限定:2008/01/22(火) 05:20:21 ID:+o4CoeraO
まあ小説やCool×Sweetのオリジナルキャラを追加しても
別に構わんといえば構わんのだけど
それにかこつけて作品自体を中傷するのは勘弁願いたいところだ
Cool×Sweetや二学期を叩きたい気持ちも分からんでもないが
あまり気分のいいもんでもないしね

姉しよからファンやってきた俺の願いでもある
916雄三毛猫改め三毛猫三等兵:2008/01/23(水) 21:17:14 ID:RbWioUQl0
もはや誰も覚えてないだろうけど、わざわざコテを原画家にちなんだものに変えて投下します
917開催!竜鳴マーケット!(1/25):2008/01/23(水) 21:22:32 ID:RbWioUQl0
疎遠になっていた従姉が家にやってきて生徒会執行部に入り
社会性に問題のある後輩の面倒をみつつ、竜鳴祭をきっかけに旧友との関係も修復。
慌しい一学期が過ぎ、いつぞやの賭けに勝者のないまま夏も過ぎた。
二学期の主だった行事も終わり、冬の足音が聞こえ始めた木の葉舞う頃のこと―――


『フリーマーケット?』
放課後、竜宮に集められた俺達は姫の意外な言葉に異口同音にオウム返しをした。
「オーウ小僧ども、我輩の専売特許を奪うとはいい度胸だ」
「(無視)姫、この竜鳴館でフリーマーケットを開催するの?」
「そ。来週末にグラウンドを一般解放してね。出店希望は学内・外を問わず募集するわ。
 といっても竜鳴館主催なんだから、学内からある程度の数は集めるつもりだけど」
「ピイー! 我輩をシカトするなんて! ちくしょう…チクショオオオオッ!!」
土永さんは泣きながら外へ羽ばたいていった…。
「けど、なんだってまたフリーマーケットなんてやることになったんだ、姫?」
あ、姫がちょっと呆れ顔になった。
「館長の意向でねー。よっぴー、説明よろ」
最近すっかり説明キャラが定着した佐藤さんが、しずしずと前に出てくる。
「えっとね、この前の休日にフリーマーケットが催されるはずだった会場に
 近所の不良が忍び込んでボヤを起こして、会場を台無しにしちゃったそうなの」
「なんだ? タバコの不始末か?」
「ううん、季節外れの花火だって」
「花火か。私は特大の打ち上げ花火が好きだな。…前にも言ったかな?」
「でも花火でのボヤ程度で会場がダメになるものなの?」
「乙女センパイの大好きな打ち上げ花火を
 わざわざ室内でやってスプリンクラーを撃ち抜いたらね」
918名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 21:28:31 ID:gvPGBjdR0
>>917
竜鳴祭じゃなくて体育武闘祭じゃないか?
919開催!竜鳴マーケット!(2/25):2008/01/23(水) 21:28:31 ID:RbWioUQl0
それはそれは…
「なんて非常識なヤツら。カニといい勝負だ」
「んだとココナッツ。ひんこーほーせーな淑女のボクの、どこが常識ないって言うんだ!?」
「ロケット花火を平気で人に向けるところじゃないk…へぐはっ!」
「フカヒレは黙ってな」
品行方正な淑女の回し蹴りを股間にもらい、フカヒレは昏倒。
「見てるだけでこっちも痛くなるな」
「へっ、ココナッツ。そういうてめーはひとりで
 ヘビ花火を見てニヤニヤしてる姿がお似合いだぜ」
「だまれ甲殻類。お前こそネズミ花火に追い回されてろ」
がるるる、とカニが威嚇するも、リーチの差から椰子につかまって頬を引っ張られる。
「泣いて謝ったら解放してあげますよ」
「ふぐぐぐ…ふぁれがふぇえーなんかに…!」
「ヘビとネズミでは勝負になりませんわね〜」
もはやおなじみの光景となってしまったので、みんな慣れたものだ。
何事もなかったかのように佐藤さんが説明を再開する。
「それで、主催者側に館長の知人がいて、泣きついてきたんだって。
 たまたま運動部がみんな練習試合とかで出払っていて、
 グラウンドが空いていたから受け入れたそうだけど」
「そういや先週はウチ(陸上部)も外で練習やってたな」
「なるほど、グラウンドに細かいゴミが散乱していたのはそのためだったのだな」
鉄の風紀委員長様は校内美化にも努めておられるようです。
「そのときの盛況ぶりに館長はフリーマーケットに関心を寄せられて、曰く
 『商いを通じて切磋琢磨することで経済感覚を磨き、さらに物を大切に扱う心を学ぶのに最適』
 なんだって」
「ま、要するに見てたら楽しそうだったからやりたくなっちゃったってことでしょ」
「ミもフタもないですね」
「それで自分がどこかの会場に出店するんじゃなくて
 竜鳴館で主催しようってあたり、豪快というか横暴というか…」
920開催!竜鳴マーケット!(3/25):2008/01/23(水) 21:34:00 ID:RbWioUQl0
「まあ経緯は大体把握した。しかし姫、来週末といったか。
 準備に時間がないが、間に合うのか?」
「そうねー、学外の出店希望者の募集はかなりつらいでしょうけど、
 せめて学内のほうの準備は磐石にしなくちゃね。
 とりあえず明日全校に告知して、部活単位の団体は強制参加にしようかしら」
「強制参加って。不満が挙がるんじゃねーか?」
「大丈夫よ。館長に申請してご褒美を用意してもらうから。
 そうね、売り上げ1位の団体所属者全員にドラゴンチケット1枚!とかどうかしら」
「うおおーー! そいつはすげぇ大盤振る舞いだ!」
股間を押さえて悶絶していたフカヒレが一瞬で復活した。
その名を聞いただけで人を死地から甦らせる。これぞドラゴンチケットの魅力のなせる業か。
とはいえ、みんながみんなドラゴンチケットで納得するとは限らないかもしれないな。
「団体参加させるなら部での出店の売り上げは、正式な部費として認可するのはどうかな」
「そうね。物は余ってるけど部費は欠乏しているってクラブも多いから
 それもいいエサになるかも。ナイスアイデアよ、対馬クン」
ご褒美とばかりに天使の微笑みとウィンクが飛んできた。
ああ、顔がだんだん熱くなってくるのがわかる。
同時に姫の微笑みが天使から悪魔に変わっていくのも…。
ゲシゲシ
椰子につかまったままの体勢でカニが背中を蹴ってきた。
…喧嘩してるんじゃなかったのか?
器用なやつだ。体重のってないから痛くないけど。
「会場の設営はほとんど当日の朝に出店者が各自で行うことになるから、私たちのやることは出店者の管
 理とスペースの区分けくらいだね。お天気がよかったらグラウンドで、雨が降ってたら体育館でいいの
 かな?当日の連絡には学校の放送設備を使えばいいし…事前の準備は学校の美化が中心になるのかな。
 学外からも出店希望者を募って当日も一般解放するから、体育武闘祭のように地域に開かれたイベント
 ということになるよね。それなら同じとはいかないまでも、来てくださったお客さんに『もてなし』を
 したほうがいいと思うんだけど、エリー」
と、これは佐藤さん。
おかげでカニの攻撃が止まった。 助け舟&長い説明台詞をありがとう。
921名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 21:35:58 ID:eRg5tah80
支援
922開催!竜鳴マーケット!(4/25):2008/01/23(水) 21:39:29 ID:RbWioUQl0
「そうねー。会場入口の応対はやっぱり演劇部かしらね。
 案内図が必要になるでしょうから、その配布をやってもらいましょ。
 あとは料理部にー…」
ふと全員の視線が椰子に集中する。
「な、なんですか」
涙目になってるカニの頬をまだ引っ張ってた椰子が、思わずその手を離す。
「いひゃひゃひゃ、ひくしょう、単子葉類め」
「なんだ、泣いてるのかカニ」
「な、泣いてない、泣いてないもんね!」
「なごみーん、料理部にまた振る舞い物をお願いするから、なごみんはそのヘルプね」
「なっ! …、…、…、……ふぅ、わかりました」
不満そうだったが、逆らっても無駄だということを学んでいたので、
たっぷり間を取ってから椰子は渋々承諾した。 なんだかんだで、やっぱり料理好きだしな、コイツ。
途中、葛藤してるときの百面相が面白かったのは黙っておこう。
「当日の見回りと警備は風紀委員会と拳法部の後輩にやらせよう。
 不逞の輩が現れた場合の対処には慣れているからな」
「さっすが、頼りになるわねー乙女センパイ。それじゃあそっち方面は一任するわ」
「うむ、任せろ」
「よっぴーは出店者管理の事務処理をお願い。カニっちは広報担当ね」
「おーよ。ガンガン客呼んで満員にしてやんよ」
「出店者を募るのも忘れずにね。なごみんはさっき言ったとおり料理部のヘルプ。
 男子は前日の下準備に力仕事で活躍してもらうわね。
 各部・委員会や館長との折衝は私の仕事で……あ、そうだ」
姫がこちらを見て、またニヤ〜っと邪悪な笑みを浮かべる。
嫌な予感。
923名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 21:42:02 ID:eRg5tah80
(1/25)って25もあるんかいw
長編期待紫煙
924開催!竜鳴マーケット!前編(5/25):2008/01/23(水) 21:44:57 ID:RbWioUQl0
「対馬ク〜ン。会場案内の件について演劇部へ連絡、お願いね」
的中かよ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ姫。なぜまた俺が…」
「そりゃあ当日に特別な負担をしてもらうんだもの、こっちとしても誠実な態度を見せないとね〜。
 料理部にはなごみんのヘルプを出すし、拳法部は乙女センパイが率先して引き受けてくれるし。
 もう一人の副会長は、何もしてくれないのかしらね〜」
「ぐっ」
「へへっ、レオのやつ、まだ近衛が苦手だから嫌がってるんだな。情けないヤツ」
ほぼ戦力外のフカヒレに言われたくない。
「むっ? レオ、近衛とは仲直りしたのではなかったのか」
「い、一応仲直りはしたけど…」
苦手なものは苦手だ。
体育武闘祭のときに演劇部のヘルプに入って以来、前ほどの険悪さはなくなったけど
やたらと張り合って噛み付いてくるからな。
「対馬君、良かったら私のほうからナオちゃんに伝えておくけど」
「…いや、たしかに姫の言うとおり、俺だけなにもしないわけにもいかないし。
 体育武闘祭のときもそうだったから俺が行くよ。ありがとう佐藤さん」
「そう…」
なんだか複雑そうな表情で引き下がる佐藤さん。なんだろう? 近衛に用でもあったのかな。
925開催!竜鳴マーケット!前編(6/25):2008/01/23(水) 21:51:02 ID:RbWioUQl0
話が大体まとまったところでカニが口を開く。
「なーなー姫ー。売り上げ優勝したらドラゴンチケットを賞品につけるんだろ。
 それならボクも参加したいんだけど」
「モチ私達も竜鳴館生徒会執行部として出店するわよ。
 館長にドラゴンチケットの発行を要請するのはそのためなんだから」
「優勝すること前提で考えてますね、お姫さまは」
「まあ確かに姫の家は金持ちだからなー。高価なものいっぱいありそうだぜ」
「フリーマーケットにあんまり高いもの持ってきても売れないと思うが」
「執行部で出店するんだから、私にだけ頼るのはダメよ。
 各自、10点以上の商品を用意すること」
「フカヒレー、ギャルゲーばっかもってくるんじゃねーぞ」
「バッ…! おま、お、俺をなんだとおもってやがる!」
動揺してる。そのつもりだったな、お前。
「フカヒレさん、くれぐれも年齢制限のあるものはやめてくださいね」
「大丈夫です祈先生。ちゃんと昔懐かしいレトロゲーを選んできます!」
あんまり変わらねーよ、それ。
「私が昔懐かしい…!?」
そして妙なところに過敏に反応する人がひとり。
「うちには人様に売り出せるような上等なモンなんてなさそうだけどな」
「私も下宿してるから…。どうしよう」
「ふむ。私もこちらに持ってきている私物は限られるな。実家に連絡してみよう」
みんないろいろ考えているようだ。
それぞれ何を持ってくるか、ちょっと楽しみだな。
「それじゃそういうことで。日程は限られているから、ちゃっちゃと動きましょ。
 ばっちり準備して大儲けして、終ったら売上げで打ち上げして盛り上がりましょう」
『おー!』
926開催!竜鳴マーケット!前編(7/25):2008/01/23(水) 21:56:48 ID:RbWioUQl0
『フリーマーケット?』
演劇部の部室について説明を始めた俺に、演劇部の面々は異口同音にオウム返しをした。
土永さんが外から窓ガラスをつついていたが無視することにする。
…デジャヴを感じたが、気のせいだろう。
フリーマーケットをやることになった経緯の説明を終えて、質問に答える。
「事情は大体飲み込めたわ。そういうことなら会場の案内をするのもやぶさかじゃない。
 でも準備も練習もしなくちゃいけないし、本番は結構忙しくなる!
 そのへんのこと、ちゃんと分かってるの!? 対馬!!」
俺が来るまで発声練習していたせいかボリュームがでかい。
オマケに近衛の声だ。キンキンと耳に響く。
「体育武闘祭で手伝ったんだから、少しは把握してるつもりだぜ。
 だからこうして俺が先に伝えに来たんだし」
「とても分かってるようには見えないわね。
 …………アンタが来たってことは、また手伝ってもらえるのかしら?」
「それで快く引き受けてくれるんならな」
「う…。ま、まあ、どうしてもっていうなら、引き受けてあげないこともないんだけど。
 一応男手だし、文句言いながらもしっかり仕事はしてくれるから頼りになるし…」
近衛が急にモジモジしだして、うって変わって声が小さくなったので
最後のほうがよく聞き取れなかった。
「なんだって?」
「な…なんでもないわよ!」
真っ赤になって怒鳴られた。なんなんだ一体。
927名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 22:01:02 ID:fJpBuTwm0
支援
928開催!竜鳴マーケット!前編(8/25):2008/01/23(水) 22:01:54 ID:RbWioUQl0
「部長! たしかに対馬先輩がヘルプに入ってくれれば楽になるけど
 それだけじゃ割に合わないと思います!」
「僕のパソコンも同じ結果を示しているね。対馬君のヘルプはあくまで僕たちの被る負担を
 軽減するものであって、交換条件としては不適切と出ているよ」
「演劇部の利益になるような条件を出して欲しい!みたいな」
やいのやいのと反対意見が飛んでくる。
「はいはい、ストーップ! みんなの意見はよくわかったわ。
 ということで対馬。 そうね…例えば、今回の報酬として特別予算が下りる、とかダメかしら」
「は? 特別予算? 貸衣装とかの必要経費じゃなくて部費として、ってことか?
 それはさすがに無理だと思うけど」
「うーん、やっぱりそうよね…。 ごめん、言ってみただけ。
 来年のためにもいろいろと物入りだから、予算が増えると助かったんだけどな…」
「そういうことなら、フリーマーケットの売上げは各部の予算として認められるって話があるぞ」
俺が出した案だけど。
「えっ、そうなの? それを先に言いなさいよ。
 …でもそういうことなら、ますます出店するほうに力を入れたいところなんだけど」
「それと、売上げ額を競って、優勝した団体には賞品を出そうって」
「賞品?」
「まだ未確定だけどな。館長にドラゴンチケットを発行してもらおうって姫が」
『!』
一瞬にして演劇部の面々の目の色が変わった。
「そう…それは…是非とも優勝したいわね…」
「欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れろって、エリートのパパも言ってたし」
「僕のパソコンではこの機会を逃すと、今後手に入れられる確率は2%にも満たないと出ているよ」
「ドラゴンチケットは絶対欲しい!みたいな!」
演劇部にはドラゴンチケットという餌は有効なようだ。
「それじゃあ、売上げ競争に有利になるよう、便宜を図るっていうのはどうだろう?
 出店スペースを広くとれるようにするとか」
「それっていいの? フリーマーケットって、出店スペースは均等に区切られるものでしょ。
 競争するのに特別有利な条件がついたら不公平じゃない」
相変わらず変なところで真面目なやつ…。
929開催!竜鳴マーケット!前編(9/25):2008/01/23(水) 22:07:00 ID:RbWioUQl0
「僕のパソコンでシミュレートした結果によると、均等な広さに区切ったといっても
 出店の場所によって有利不利はあると出ているよ」
「入口付近はお客さんの目に留まりやすいとか、隅っこは目立たないとか、みたいな?」
「エリートのパパも、完璧な平等はありえないって言ってました」
「なるほど。それなら、その有利となりそうな場所を優先的に選べる権利ってのでどうだ。
 これなら不公平ってほど特別扱いすることにはならないだろ」
「そうね、それでいいわ。みんなもいいわよね?」
ぱらぱらと賛成意見があがる。
「うん、それじゃこれで決定ね。私たちはフリーマーケットで出店するほかに
 体育武闘祭のときと同じように入口で会場の案内をする。
 この仕事の見返りとして出店するスペースを優先的に選ばせてもらう。これでいい?」
「えーと、結局、俺は手伝ったほうがいいのかな?」
「対馬は演劇部の一員という扱いでいいの?」
「いや、一応執行部でも出店するから、そっちでもやらなきゃいけないことがあると思う」
「執行部で出店するってことは…姫も品物を出すのね?」
うなずく。
「そう…。それなら…対馬! アンタは敵ね! 敵の力は借りないわ!
 私達は自らの力で優勝してみせる…そしてこの手で栄光(ドラゴンチケット)を掴み取るのよ!」
対抗心にも火がついたらしい。
なにはともかく、引き受けてくれることになったのでよしとする。
「それじゃ俺はこのへんで。会場案内の件はよろしくお願いします」
そそくさと演劇部室を退散することにした。
あの一致団結した空気の中にいるのが、部外者にはちと厳しいのは経験済みだ。
とりあえず報告に戻ろうと廊下に出たら、気合の入った声が聞こえてきた。
「結構ハードだけど、私たちなら必ず乗り切れるわ!
 みんなー、今から準備して絶対優勝するわよー!」
『おー!』
…あれ、またデジャヴ?
930開催!竜鳴マーケット!前編(10/25):2008/01/23(水) 22:12:07 ID:RbWioUQl0
さて、そんなこんなで、準備に追われる慌しい一週間が過ぎた。
突然の話に戸惑っている部には、姫が巧妙にエサをちらつかせたり館長が喝を入れたりした。
何日も練習スペースを奪われる運動部の一部にはフリーマーケットの開催に反対して
竜宮に怒鳴り込んでくる剛の者もいたが乙女さんがこれを撃退した。
過大な負担をお願いする料理部と演劇部には、優先的に出店スペースを選ぶ権利が与えられた。
(拳法部は乙女さんの『気合が足りん』の一言で一蹴された)
カニが中心となって学外から出店者を募ったり、お客さんが集まるように宣伝もした。
当日の案内のためのパンフレットも作成した。
本番が目前に迫り、放課後には校内美化作業が行われるようになった。
もちろん俺も肉体奉仕…もとい肉体労働に駆り出され、ここ数日は疲労困憊である。
乙女さんがマッサージしてくれるおかげでなんとか頑張っているが
実はまだひとつ、重要な仕事が残っていた。


「長い説明をよく言ったな。 偉いぞ、レオ」
乙女さんが俺の上で体を揺らしながら言った。(決してイヤラシイ意味ではない)
「地の文を読まないでください。 …って、痛い!そこ痛い!」
「私の、マッサージにも、感謝、している、ようだし、な!」
そりゃあ、ただの世話好きだろうとか、おせっかい焼きだとかは口が裂けても言えない。
実際助かってるし。
「何か言ったか?」
「イイエ、ナニモ」
「ふむ、気のせいか。 ところでレオ、出品するものは準備できたのか?」
そうなのだ。
『それぞれが出品する商品の発表は、当日のお楽しみにしておきましょう』
なんて姫が言うものだから、何にするか決めるのを先延ばしにしていたら
いつの間にかもう日数がなくなってしまっていたのだ。
「相変わらずいい加減で行動の遅いやつだな、おまえは。
 そんなだから、…その、…恋人のひとりもできんのだ」
大きなお世話です。
顔を赤くしてまで無理して、そんな年長者っぽい台詞を言わないでください。
931名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 22:17:21 ID:ou26zh5e0
C
932開催!竜鳴マーケット!前編(11/24):2008/01/23(水) 22:17:24 ID:RbWioUQl0
「ちなみに乙女さんは何を出品するのか、参考までに聞かせてもらっていい?」
「姫は当日まで秘密にするようにと言っていたが…まぁ仕方ない。
 実家から、もうあまり使わなくなった茶器や花器を送ってもらった。もちろん安物だがな」
「凶器に使うのかな? 人の頭を殴るとガシャンと割れるやつ」
「茶を嗜み、花を生けるに決まっているだろう!!!」
「ぐああっ、絞まる、絞まってる、絞ま、し…」
…あー、惑星が見えるー。さよならジュピター。
昇天しそうになったところでふっと力が抜けた。
「うっ…、ゲホゲホ、ゴホッ。ぜはー、ぜはー、ふぅ。今日もまた死にかけたぜ…」
日に日に回復が早くなっているのはきっと気のせいじゃない。
「まったく。失礼なことを言うお前が悪い。
 何度でも言うが、私は乙女なのだぞ。茶道も花道も、教養として学んでいる」
「ソレハ存ジマセンデシタ。 でも、乙女さんの点てたお茶って飲んでみたいかも」
乙女さんの目がキラリと光る。
あれ、もしかして踏んじゃった?
「……本当に、飲んでみたいのか?」
乙女さんはおにぎりしか作れません。推して知るべし。
「…………えーっと」
「失礼だな、お前は!」
「まだ何も言っ……ぎゃあああああっ!!!」
933開催!竜鳴マーケット!前編(12/24):2008/01/23(水) 22:22:33 ID:RbWioUQl0
そしていよいよフリーマーケット開催当日。
「で、結局坊主が持ってきたのはこれか」
古着。古着。古着…。
フリーマーケットといえば、やっぱりこれだろう。
タンスの奥からひっぱり出してきたので、子供の頃の物も混じってる。
決して他に思いつかなかったわけではないぞ?
「つまんないやつだな。もっと個性的なもの持ってこなきゃアピールにならないぜ。
 ボトルシップ関係のものとかなかったのかよ」
「俺に魂を切り売りしろとッ!?」
「…悪かった。ま、数は結構持ってきたみたいだから、売上げには堅実に貢献しそうだな」
「そういうスバルは何を持ってきたんだ?」
「オレはまあ、アクセサリーの類を少々な」
スバルの持っている袋の中を見ると、たしかに煌びやかな貴金属類が…
「っておい! かなり高そうなものも混じってるけど、これってまさか」
「優しいオネーサマ方からの贈り物。こんなのプレゼントされても使えないってな。
 これなんか皮肉だぜ、このチェーン。オレを繋ぎ止めておきたいって気持ちの顕れかね。怖ぇー」
「笑うに笑えねぇよ…。それよりこんな高価なもの売るつもりか?」
「原価ン万円の新古品が数千円で売ってりゃ、買うやつもいるんじゃねえか?」
「一応学校開催のフリーマーケットで、いかがわしい由来の品を並べるのは少し怖いぞ」
「売上げによっちゃ、そのいかがわしいバイトの数も減らせるかもな」
「……」
「オウ、オメーら、なに男同士でコソコソとやってんだ。 気持ちワリーな」
「おっすカニ。聞いてくれよ、オレの持ってきたものにレオがケチつけるんだぜ。
 自分は古着なんて持ってきたくせにな」
カニが入ってきたせいでスバルに誤魔化されてしまった。
スバルのバイトのことも、なんとかしてやりたいな…。
「うっわベタ! そしてダサ! おめー、もっとマシなもん持って来いよな」
「ほぅ…、ならお前はよほどいいものを持ってきたんだろうな、カニ?」
「あたぼーよ! 目ン玉くり抜いてよーく見やがれ!」
「くり抜いたら何も見れなくなるぜ」
「そして…お前のほうこそキャラ的にベタじゃねーか! なんだこのグッズは!」
934開催!竜鳴マーケット!前編(13/24):2008/01/23(水) 22:27:44 ID:RbWioUQl0
「デッドの布教活動に決まってんじゃん。これなんか超レアなんだぜー。
 でもボクのオススメはこっちのサイン入りTシャツだけどね」
「お前…これらをいくらで売るつもりだ」
「んーと、十万円くらい?」
「売れるか馬鹿!」
「んだとゴルァ! 馬鹿って言うほうがバカなんだかんね!」
「レアものだかプレミアものだか知らないが、原価より高くつくものを持ってくるかね…」
「その点、俺なんかはちゃんと心得て品物をチョイスしてきたけどね」
「あれ、来てたのかフカヒレ」
「気付いてくれよ〜。友達じゃんかよ〜」
「誰が?」
「おい! 毎回のことだけどこのやりとりは酷くね!?」
「んなことはどーでもいいよ。フカヒレ、おめーもボクのデッドグッズに
 ケチつけるからには、それ相応のものを持ってきたんだろうな」
「ふっふっふ…。当然だとも。このシャーク様の慧眼にかかれば
 この場に相応しい品々を選び抜くなど容易いこと。カツモクして見よ!」
そういってフカヒレは持参した袋からいろいろと取り出す。その品々は…
「うわ、コイツほんとに昔懐かしのレトロゲー持ってきやがったよ」
「しかも微妙にボロいのや、つまらないのばかりだな。
 これなんかラベルが半分はがれてるぜ」
「このRPG、内臓電源が切れてセーブ機能果たさなくなったやつじゃなかったっけ」
「げっ、ここにこびり付いてる茶色いの、ハナクソじゃねー?
 触っちまったよボク! 汚ねー!」
「だからってオレの服の裾で拭くな、カニコロッケ」
「総括するに…中古屋に引き取ってもらえないようなゲームを
 ありったけ持ってきたということでFAかな」
「な…なぜわかったあああぁぁぁっ」
図星かよ。
カニといいフカヒレといい、見事に売れ線をハズしたものばかり持ってきやがって…。
935名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 22:29:20 ID:ou26zh5e0
 
936開催!竜鳴マーケット!前編(14/24):2008/01/23(水) 22:32:53 ID:RbWioUQl0
「ウキミソチー、対馬ファミリー諸君〜」
「ミミガー」
「おはよう、対馬君、みんな」
「どうも」
姫と佐藤さん、それから少し送れて椰子もやってきた。
「これで全員…っと、乙女センパイがいないわね。対馬クン?」
「拳法部のほうに顔出すってさ。これ、乙女さんの出品する分ね」
「なんだこれ。皿? 凶器攻撃か?」
「それを言ったら締め落とされそうになった」
「こっちはお茶を点てる道具だね。こっちは…」
「花器じゃないですか? 花を生ける器です」
「へぇ〜。なかなかいいモノなんじゃない、これ?」
乙女さんは安物って言ってました。
「姫、骨董には手を出さないでね」
「? よくわかんないケド…乙女センパイの分はいいとして
 対馬ファミリーはなにを持ってきたのかな? どれどれ」
姫と佐藤さんが俺達のもってきたものを順に検分する。
「なーんかパッとしないものばかりねー」
「そ、そんなことないよぅ。ほら、これなんかきちんと綺麗にしてあって
 フリーマーケットではこういうのがよく売れるんだよ?」
俺の持ってきた古着を手にとってフォローしてくれる佐藤さん。ううっ、ありがとう。
「じゃー次。なごみんは何をもってきたのかな〜?
 恥ずかしがらずに見せてごら〜ん」
「変態親父みたいな言い方だな…」
「センパイと被ってますけど。私も子供の頃とかの古着です。
 あとは親戚から挨拶でもらったお皿とかカップとか不用品の類」
「うわっフツー。花屋の娘のくせにフツーかよ」
「うるさいな。家はカンケイないだろ」
937開催!竜鳴マーケット!前編(15/24):2008/01/23(水) 22:38:29 ID:RbWioUQl0
「まあまあ。さっき佐藤さんが言ってくれたみたいに、
 綺麗にしてあればこういう品物のほうが売れるんだから。
 えっと…、それじゃ、佐藤さんは何を持ってきたか聞いていい?」
「えっ、あ、うん。もちろんだよ。
 あ、あのね? 私も対馬君と一緒で、古着とかにしようと思ったんだけど、
 下宿してるから手元になくてね? だから、こういうのにしてみたんだけど…」
佐藤さんが鞄から取り出したのは、布製のカゴ…いや、小物入れに、可愛らしい動物の人形、
なべつかm…キッチンミトンに、えーと、パッチワークを施したタペストリー? etc...
とにかく、手の込んだ手芸作品群だった。
「すごいな。コレ全部、佐藤さんの手作り?」
「うん。久しぶりに作ったものもあるから、ちょっと失敗しちゃったけどね。えへへ…」
佐藤さんの指先には小さな絆創膏が貼られていた。
「家庭的でありながらも、些細な失敗を恥ずかしげに笑うことで愛嬌もアピール!
 素晴らしい! 実に素晴らしい! お嫁さんにしたい!」
「あははは…ごめんなさい」
「ぐほっ」
「オメーも懲りねーな。ま、安らかに眠れや」
「フカヒレ先輩もだけど、佐藤先輩もよくめげない」
「え? 何か言ったか、椰子?」
「いえ、別に」
「そうか。いやーそれにしても、ホントよくできてる。
 材料を集めるだけでも大変だったんじゃない? なんだか売っちゃうのが勿体ないな」
「そ、そうかな? そんなに褒められるなんて…。
 えっと、材料は専門のお店があるからそんなに苦労しなかったよ。
 ………その、気に入ってもらえたなら、よかったら対馬君に…」
「姫は何を持ってきたんだ?」
「はうぅぅ…」
「罪作りな坊主だぜ」
938名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 22:43:32 ID:ksHBQMMH0
つC
939開催!竜鳴マーケット!前編(16/24):2008/01/23(水) 22:43:35 ID:RbWioUQl0
「それじゃあ最後に真打ち登場といこうかしら」
「おおっ」
「ぃよっ!待ってましたっ!」
「姫が何を持ってくるか、実はかなり気になってたんだ」
いっせいに囃し立てる幼馴染たち。だが、一抹の不安がよぎる。
「ちょっと待った。
 カニがデッドグッズ、フカヒレがレトロゲー(ギャルゲー禁止のため)
 というベタなパターンできたということは…」
「対馬クン。そこに同列で並べられるのはすごい不本意なんだケド」
「ハッ! ま、まさか。アレか? アレが出てくるのか?」
体育武闘祭で館長が用意した景品をみんな思い浮かべる。
「物品に対する姫の美的センスは特殊だからな…」
「あの類いが10個も20個も陳列されてるのは見たくないぞ」
「なぁ、もう『骨董に手を出すな』は使っちゃったぞ。
 なんてつっこめばいいんだ?」
「それよりも売上げに影響するかどうかが問題じゃないですか?」
「たしかに。姫の持ってくるものをアテにしていたのに
 もし一品も売れないなんてことになったら…」
「お前らが明らかに売れ残りそうなものばかり持ってくるから…」
「ああっ! なぜ今まで誰も気付かなかったんだ!
 もっと早く気付いていれば、先に姫に注意をしておくことだって…!」
…ん?なにか悪寒がするような…
そう、まるで噴火直前の火山のような気配が…
「い・い・加・減・に、しなさーーーい!!!」
『うわっ!』
「まったく。失礼しちゃうわねー。
 一体何を持ってくると思ったのかしら」
「多分、あの謎のトーテムポール?だと思ったんじゃないかな」
「ああ、アレ? バカねー。
 この私が気に入っているものを手放すはずがないじゃない」
『・・・・・・』
ここで空気の読めない奴はこの竜鳴館で生き残れないな、うん。
940開催!竜鳴マーケット!前編(17/24):2008/01/23(水) 22:48:21 ID:RbWioUQl0
「大丈夫だよ、みんな。エリーが変なものを持ってこないように
 私がちゃんと見張っておいたから」
「おおっ! ぐっじょぶだぜよっぴー」
「さすがだ、佐藤さん」
「やっぱりよっぴーは頼りになるなぁ」
「そこはかとなくムカつくわね。みんな私を何だと思ってるのかしら。
 これは一度しっかりと話し合う必要がありそうね」
「まぁまぁエリー。持ってきたものを見せれば、みんなも納得すると思うから」
「それもそうね。――それじゃあ、ごらんあそばせ♪」
お嬢様っぽく優雅に、姫が用意した商品を取り出した。
品物が効果音とともに黄金の輝きを放ち、直視できない。
「うおっ、まぶしっ」
「薔薇以外にも異次元の技があったのか」
「お嬢のたしなみよ」
光がおさまってきたので、改めてその品物を見る。それは…
「…ぬこ?」
「猫だな」
「キャットですね」
姫の前には大小さまざまなネコちゃんグッズが整然と並べられていた。
「こいつは予想外だったぜ。
 姫のことだからチョー高いブランド品とかで攻めてくるかと思ってたのに」
「私はブランド品なんて興味ないわよ。物の価値はブランドじゃなくて本質で決まるもの。
 その本質を見極める目をもたなくっちゃね」
『・・・・・・』
ここで空気の(ry
「……猫好きなのは知ってましたけど、こういうグッズまで集めてたとは意外ですね」
「よっぴーと一緒に買い物に行ったときとかにね、見かけるとついつい買っちゃうのよね。
 無駄遣いはよくないってよっぴーにもよく怒られるケド」
「くっ…! 金持ちめ」
「さすがに数が増えすぎちゃったから、飽きちゃったものから順にリストラすることにしたの」
「嫌な表現だな」
941開催!竜鳴マーケット!前編(18/24):2008/01/23(水) 22:52:27 ID:RbWioUQl0
「うーん…」
「どうしたカニ?」
「やー、さんざん引っ張って、派手な演出までして出てきたものが猫グッズってのは
 姫にしては地味だったなーって思ってよ。まぁよっぴー監修ならこんなものかなー」
「ああ、あとこれもあるわよ」
………………一瞬、時が止まった。
なにげなく姫が取り出したソレは、なんというか、異様だった。
「な、なんじゃこりゃあああ!」(松田優作のポーズで)
「どっ、どこにしまってたんだ、それ!?」
それはそんな疑問が出るくらい、デカかった。
「あら、これだけ大きければ目立つから、いい客引きになるじゃない」
「たしかに目立つが…そもそもこれは一体なんだ?」
そしてそんな疑問も出るくらい……正体不明だった。
「ブサイクな猫…いや、イタチか?」
それは謎の珍獣の巨大なぬいぐるみだった。
「どこで手に入れたんですか、こんなもの」
「鎌倉のほうにいったときに、土産物屋でみかけて、ついね」
「ついでこんなもの買うか?」
「最初見たときは可愛いかなって思ったんだけどね〜。
 よく見たら猫じゃないし、飽きちゃったから」
「いや、よく見なくても猫じゃないでしょ」
「エリー…それは持ってきちゃダメって言ったのに…」
佐藤さんの監修はあまり意味がなかったようだ。
942開催!竜鳴マーケット!前編(19/24):2008/01/23(水) 22:56:33 ID:RbWioUQl0
「なんだろう…見ているとそこはかとなくムカついてくるというか
 蹴倒したくなってくる…」
「あ、それ強い衝撃を与えると電撃で反撃してくるわよ」
「なにその無駄な高性能」
「まあ物騒な世の中だから?」
疑問系ですか。
「このぬいぐるみのほうがよっぽど物騒だと思いますが」
「よぉしフカヒレ! そのぬいぐるみにドロップキックしてみようか」
「なんでだよ! おま、俺を殺す気か!?」
「フカヒレが感電すればガイコツが生で見れるかなーと」
「漫画じゃないんだから見れるわけないだろうが単細胞」
「ンにをコラァ。じゃあてめぇを感電させてその髪ボサ頭を
 ド○フのコントみてーにしてやんよ」
「そこで、じゃあとなる文脈が理解できない」
「へっ、しょせんココナッツの頭の中身はミルクだもんな」
「自分はカニミソだろうが」
あーあ、またはじまった…と思ったら、そこに土永さんが文字通り飛んできた。
「おうおうおう。ピーチクうるさいぞヒヨコども。
 なにを争っているのか知らんが、些細なことで喧嘩するものじゃない。
 いいか、世の中平和的に話し合いによる解決をだな……ぬぅおおおおっ!」
喧嘩の仲裁を始めた…と思ったら、姫の持ってきた巨大ぬいぐるみを見て様子が一変した。
「こいつは…DANGERだぜ…。まさか我が輩からマスコットキャラの座を奪うべく
 刺客が送り込まれてこようとは。……だが! 我輩は断固戦うぞ!」
え? 平和的解決は?
「食らえ! 死ぬか! 消えるか! 土下座してでも生き延びるのかあああ!! スココココ!!!」
『あっ』
と言う間もなく、土永さんは巨大ぬいぐるみを突付き始めてしまった。
すると即座にバチバチッという激しい音がして土永さんは電撃に襲われた。
「ぬぉおおお、シ〜ビ〜れ〜りゅ〜」
羽の先端を黒焦げにして煙を立ち上らせながら、土永さんは地面に落ちた。
943開催!竜鳴マーケット!前編(20/24):2008/01/23(水) 23:00:36 ID:RbWioUQl0
「ちっ、ガイコツは見れなかったか」
「あらあら、焼き鳥の香ばしい匂いがしますわ〜」
と、そこへ飼い主がおっとりした足取りで現れた。
「まぁまぁ土永さん。どうしたのですか、その変わり果てたお姿は」
「おお〜祈よ〜。 我が輩はもうだめだ〜。
 我が輩が死んだら、立派な墓を立ててくれ〜」
「今夜のおかずは鶏肉ですわね〜」
「ピィー! 食葬はいやだ〜!」
土永さんは飛び去っていった…。
「何しに来たんだ」
「さぁ…」
「みなさん、そろそろお店の準備のほうを済ませないと間に合いませんわよ」
「もうそんな時間か。 それじゃ準備するとしますか」
「というか、祈先生が遅刻もせずに来ているなんて珍しいですね」
「フリーマーケットは開店前に来てめぼしいものをチェックするのが賢い買い物のしかたですわよ」
「へ〜。 ひょっとして祈ちゃん、フリーマーケットの達人か?」
「ほほほ。 縁日とフリーマーケットならおまかせですわ〜」
この人、ノリで買い物してはすぐに金欠になってるんじゃなかったっけ?
944開催!竜鳴マーケット!前編(21/24):2008/01/23(水) 23:03:45 ID:RbWioUQl0
「遅くなってすまない」
商品をほぼ並べ終わったころ、乙女さんがやってきた。
「ここが執行部の店か。 …妙なものもあるが、なかなか良い感じじゃないか」
そうなのだ。
バラエティに富んだ品揃えになったのと、カニや佐藤さんのセンスのよさ、
小売店の娘である椰子による陳列の工夫よって、思いのほか見栄えのいい店ができた。
…巨大なぬいぐるみをのぞいて。
「鉄先輩、おはようございます。
 拳法部と風紀委員会のほうはどうでしたか」
「うむ、問題ない。
 拳法部は無骨者の男ばかりだからな、こんなにいい店はできなかったが」
拳法部の連中が商品を持ち寄った店か。さぞかし汗臭い店になってるだろうな。
「場所もいい。これなら売上げも期待できそうだな」
執行部の店は当然のように姫の権限で、正門から入って正面中央の目に付きやすい場所になった。
そこにこの巨大珍獣だ、すごい存在感だろう。
たしかにこれなら真面目に優勝狙えるかもしれない。
…ふと、優勝目指して一致団結してた演劇部を思い出した。
時間を見つけて、演劇部に限らず他の団体の店も見て回ることにしよう。
「さて、そろそろ開催の時間だな。
 館長に開催の宣言と挨拶をしていただかねばなるまい。姫?」
「そうね。それじゃ私とよっぴーは行ってくるから、あとはヨロシクね」
「あたしもいい加減、料理部のほうに行かないといけないんで。それじゃ」
姫と佐藤さんは運営本部、椰子は料理部へと向かった。
「では私も見回りに戻るとしよう。おまえ達、あとは任せたぞ」
で、残されたのは俺達、幼馴染4人だった。
「あれ? 祈ちゃんは?」
いつの間にかいなくなっていた。得体の知れない人だ…。
ともかく、まずは俺たちで店番をすることになった。頑張ろう。
945開催!竜鳴マーケット!前編(22/24):2008/01/23(水) 23:06:56 ID:RbWioUQl0
「これより 第1回 竜鳴館フリーマーケットを 開催する!!」

壇上で館長が高らかに開催を宣言した。
「……第1回ってことは、ヘーゾー、第2回以降もやるつもりなのか?」
「だろうな」
「気まぐれで恒例行事増やしちゃったよ…」


朝早くからも、お客さんの入りは上々だ。
祈先生の言っていたように、早いうちに掘り出し物を入手しようという
フリーマーケットの鉄人らしき主婦の方々が多い。
「ああん? これが2,000円だって? もっとまけな。
 200…いや100円だね。ほらよ、100円」
「か、勘弁してくれ〜!」
…松笠の呂布によって続々と出店者たちの悲鳴が上がっている。
95%OFFってどんな値切り方だよ…。あの人がこっちにこないことを祈ろう。
「ちょっと、お兄さん」
おっと、よそ見をしてたらこっちもお客さんだ。
「はい、なんでしょう」
「これ、この服。ここにシミがあるんだけど。これでこの値段は高いんじゃないの」
うわ、こっちも値切り交渉だ。マダムほど無茶なものじゃないとはいえ…。
たしかにシミらしきものはあるが、まったく目立たない場所な上、
よほど注意深く見なければ気付かないほど薄いやつだ。
「えーっとですね、これはもともと結構いい物でして、生地も傷んでないですしね…」
「そんなことは見ればわかるわよ。それより、こんなシミがあっちゃ売り物にならないでしょ。
 安くしてくれるなら私が引き取ってあげるって言ってるの」
「いや、その、えっと…」
やばい、このオバチャン手強い。どうしよう。
「お姉さん、そのくらいで勘弁してやってよ。コイツこういうのに弱いから。
 そうだな…こっちにあるやつから3着合わせて買ってくれるならサービスするよ」
「あ、あらそう? それじゃそれで手を打とうかしら」
946開催!竜鳴マーケット!前編(23/24):2008/01/23(水) 23:10:05 ID:RbWioUQl0
スバルが横から、さわやかな笑顔でオバチャンをあしらってくれた。
オバチャンの声色も変わっていたし、恐ろしいやつだ…。
「マダムキラーめ」
「そりゃあ褒め言葉か? レオの焦った顔も可愛かったから
 もう少しほっといても良かったんだがな」
「可愛いとかやめれ。そして助けるときはもっと早く頼む」
「やれやれ、我侭なやつだ」
「まったく相変わらずヘタレだなーレオは。ま、らしくていいと思うけどね」
「う、うるさい。お前こそ、ちゃんと仕事してるんだろうな」
「ンマー、誰にそんな口きいてやがりますか。
 接客についてはボクのほうがキャリアはずっと上だっての。 あ、いらっしゃいませ〜」
カニはちょっと離れたところから覗いてたお客さんを上手いこと捕まえていた。
くそぅ、なんとか俺も活躍して見返してやらなければなるまい。

「たっだいま〜」
姫と佐藤さんが帰ってきた。
「おかえり。生徒会長の挨拶、今日もバッチリ決まってたね」
「当然。でも喉渇いちゃった。よっぴー、お茶淹れて〜」
いや、ここ竜宮じゃなくて屋外ですから。
「はいはい。ちょっと待っててね」
そういっておもむろに水筒を取り出す佐藤さん。って、準備万端だよ。
「最近ますます『社長の我侭を先読みする優秀な秘書の図』が板についてきたな、よっぴー」
「よっぴーいわないでよぅ。…はい、エリー」
「ん、アリガト」
「対馬君たちも飲む? 店番してて疲れたでしょ」
「よっぴーは優しいなぁ。過酷な生存競争の最中に、一息の安らぎ」
「テメーはなにもしてねーだろうが」
「むしろ子供(♀)連れの客に興奮して、気味悪がられ逃してたような」
「おめーら余計なこと言うんじゃねーよ!」
「あ、あははは…」
「ちょっと、フカヒレ君が使えないのは分かってたけど、そんなので売上げ大丈夫なの?」
「まぁ一応、出足好調なんではないかと」
947開催!竜鳴マーケット!前編(24/24):2008/01/23(水) 23:13:11 ID:RbWioUQl0
「売上げは……ハァ、たしかに悪くはないけど、イマイチね。
 仮にも世界征服を目指す者の店がこんなものじゃ、到底満足できないわ。
 ということで、しばらく売子代わるから対馬ファミリーは遊んできていいわよ」
「は? いや、まだ休憩時間には早いと思うけど…」
「いいんじゃねーの。せっかく替わってくれるって言うんだし」
「んじゃーボク、マナたちのところに顔出してくっから。
 よっぴー、あとはまかせたぜ」
スバルとカニはさっさと行ってしまった。主戦力のやつらがさっさと行くなよ…。
「2人だけで大丈夫なの? なんなら俺も残るぜ」
そしていらん奴が露骨に点数稼ぎ。まぁこの場合は…
「フカヒレ君はいるとかえって邪魔だから、さっさと消えてほしいかなー」
「誰か俺を必要としてくれ〜〜〜」
…こうなるよな、やっぱり。
「あ、そうだ。それじゃあ他の有力店の偵察にいってきて」
他店の営業妨害にまわす気か。
「よっしゃー! 姫から授かった任務、見事に果たしてみせるぜ!」
意気揚々とフカヒレも駆け去っていった。
うーん、これで俺だけ残るのも変だよなぁ、やっぱり。
「じゃあ俺も、お言葉に甘えて一回りしてくることにするよ。よろしくね」


さて、それじゃあまずどこから行こうか

 弟としては姉が心配だ、なんとか探し出そう
 保護者としては騒々しい幼馴染を見張らねば
 やはり女の子2人だけでは気懸かりだ、店に戻ろう
 面倒見のよい先輩として料理部の様子を見に行くか
 ふらりといなくなった先生はどこに行ったんだろう
 生徒会副会長の責務を果たすため演劇部を激励しよう

……いや、今更分岐されてもヒロインルートとかないですよ?
948三毛猫三等兵:2008/01/23(水) 23:21:53 ID:RbWioUQl0
前編は以上です。しょっぱなから間違いだらけ…。
後編には他のメンバーも登場します。すでに前編以上の長さ。
にぎやか系が好みで、わかってて好き放題に書いてるので
「長すぎ」「こんなのSSじゃねー」「短くまとめろ」ってのはナシで。
まだクライマックスができあがっていないので、投下時期は未定です。
949名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 23:23:03 ID:R5ox+Ied0
乙。
率直に言うと、ただ単に楽しげなネタが延々と並んでいるだけで
ストーリー全体の起伏に乏しい。
前編ということだが、ここまで長い以上
途中に盛り上がる展開や後編に引っ張る部分が欲しい。
950三毛猫三等兵:2008/01/23(水) 23:23:40 ID:RbWioUQl0
うっかり。

皆様、支援ありがとうございました。
951名無しさん@初回限定:2008/01/23(水) 23:44:05 ID:ou26zh5e0
>>948乙。久しぶりだね。
後半楽しみにしてます。

投下直後にこんな話するのも気が引けるけど現在491KBで完走間近。
俺は>>914にほぼ同意なのだがどうよ?
952名無しさん@初回限定:2008/01/24(木) 08:17:25 ID:B8/vshI/O

後半マッテマス
953名無しさん@初回限定:2008/01/24(木) 13:30:41 ID:IASDEFqC0
>>948
>にぎやか系が好みで、わかってて好き放題に書いてるので
>「長すぎ」「こんなのSSじゃねー」「短くまとめろ」ってのはナシで。

批判を受け入れるつもりがないなら評価も出来ない
自分のサイトででもどうぞ
954名無しさん@初回限定:2008/01/24(木) 19:41:21 ID:lWbMYwe10
955名無しさん@初回限定:2008/01/24(木) 23:34:41 ID:PxeKZs7k0
>>957
ただの照れ隠しだろ?
あまり大げさに捕らえず、Cool&Sweetでいこうぜ!
956名無しさん@初回限定:2008/01/25(金) 00:27:05 ID:nv++Rm6N0
>>953
どうせ普通Jしか言えないくせに
957名無しさん@初回限定:2008/01/25(金) 22:14:31 ID:Yw/tI38t0
>>955
普通J!
958名無しさん@初回限定:2008/01/26(土) 22:00:43 ID:oVSrI86f0
>>948 gj ネタが分かりやすくて、面白かったよ。
他人の感想を見てると最近ほんとにつよきす、姉しよ、君あるを
素直に楽しもうとする人が減った気がする。哀しい。
分量的にはよく24でおさまったって感じがする。
無駄遣いとは思わずに余裕をもって、行間とか空けてくれると見やすいな。
959名無しさん@初回限定:2008/01/28(月) 03:41:54 ID:utYGGmkZ0
長いな。また時間あるときに読ませてもらおうj
960名無しさん@初回限定
あれ、こっちが本物か?
久々来たら迷子になったよ…