1 :
名無しさん@初回限定:
エロゲー全般のSS投稿スレです。あなたの作品をお待ちしています。
エロエロ、ギャグ、シリアス、マターリ萌え話から鬼畜陵辱まで、ジャンルは問いません。
そこの「SS書いたけど内容がエロエロだからなぁ」とお悩みのSS書きの人!
名無しさんなら安心して発表できますよ!!
【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
なお、一回の投稿の最大行数は32行、最大バイト数2048バイトです
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
自分がアップしたところをリダイレクトする。
>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が470KBを超えた時点で、
ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。
保管サイトはこちら
http://yellow.ribbon.to/~savess/ 過去スレ
>>2-4辺り
>1
乙
4 :
温泉の人:2006/11/10(金) 00:00:49 ID:IPkGf4Ge0
>>1乙〜
思えば前スレ終盤からすっかり読む専になってるわ自分w
このスレも盛り上がることを祈念しつつカキコ
6 :
前スレ650-:2006/11/10(金) 01:35:51 ID:leX+KF/q0
>>1乙です
GJって言って下さった方ありがとうございます、もう嬉し涙が(´;ェ;`)
読み直すと脱字があったり読みにくい所があったり…本当に申し訳ありません
あんなのでも読んで頂いて本当にありがとうございました
ミ
>>1様、新スレ乙です。
前スレ
>>650様、投稿乙です。
面白いし心理描写が上手いなあ。
やってること結構黒いのに、いじらしく感じる春姫に乾杯。
しかし……改めて思うけど、自分のSS浮いてますね?
もしかして場違い?
(・з・)キニスルナ!
>>1 乙です
SS作家さん達へ
いつも楽しく読ませてもらってます
ただ、あまりご自分の作品を卑下したり、ご謙遜し過ぎたりしないほうがいいと思います・・
>>1 乙ー このスレも11かあ。
>>7 全然大丈夫でしょ。むしろ、続きを楽しみにしていますぞ。
>>6 前スレにも書きましたが、楽しく読ませてもらいました。超GJです。
続編とか、春姫以外のヒロインVerとかもしよければ…
――――中等部魔法科一年教室……のドアの前。
「うう……」
緊張する。恐ろしく緊張する。
雄真はまるで石化したかの様に、教室前で固まっている。
その額には脂汗が流れていた。
……まあ無理もないだろう。
何せ、高二にもなって中一と一緒に勉強をしなければならないのだ。
その恥ずかしさたるや、察するに余り有る。
が、いつまでもこうしている訳にはいかない。
「小日向君、大丈夫? 顔真っ赤よ?」
担任の先生も心配そうに顔を覗き込む。
若い女性で、どこか少し頼りなさそうな先生だ。
「やっぱり、御薙教授も一緒の方が良かったんじゃあ?」
「ごめんなさい。それだけは勘弁して下さい」
雄真は、先生の申し出を即行で断った。
この年で母親同伴なんて、勘弁して欲しい。
只でさえこの少し前、自分も一緒に行くと言い張る鈴莉をなんとか追い返したばかりなのだ。
(それに、そんな不用意な発言をしたらあの人のことだ、ひょっこり登場しかねない)
――あの人も、本当に読めない人だよなあ。
先程までの鈴莉の様子を思い返し、雄真は内心溜息を吐く。
何故だかしらないが、彼女はやたらハイテンションだった。
その意図を訝しむ程に。
――『雄真くんたら、照れちゃって♪』なんて言うんだものなあ……どこまで本気やら……
どうも、からかわれている様な気がしてならない。
「小日向君? もうそろそろ……」
流石に時間を気にしだした先生が、雄真に催促する。
「分かりました。ええ〜い! たのもう!」
ガラガラ
気合を入れ、扉を開ける。
……それは小日向雄真、運命の第一歩だった。
――――中等部魔法科一年教室。
「たのもう!」
豪く大時代的な声と共に、教室のドアが開いた。
そして入ってきたのは、何と男の人。
……その後を、慌てて先生がついて来る。
(普通、逆だ)
ザワザワ……
訳が分からず生徒達が響めく。
その『男の人』が転校生だなどと、誰も思い至らない。
(そりゃあそうだ)
「はい、皆〜 静かにして下さい〜」
が、流石にいい学校の生徒達だけあって、先生の一言で騒ぎが静まる。
「え〜、皆さんに転科生の紹介をします。
皆、仲良くしてあげて下さいね? クラスで一人だけの男の子だからって、虐めちゃ駄目ですよ?」
! ザワザワ……
再び響めきが起こる。
転科生に驚くというよりも、如何見ても年上の男の子がクラスメートになるということに驚いているのだ。
……そして、驚く者がここにも。
(先生、『クラスで一人の男の子』って!?)
(言葉通り意味ですよ? この学年には今まで――それこそ幼稚舎から――男の子はいませんでした。
だから、小日向くんが始めての男の子です。 最初はいろいろ戸惑うかもしれないけど、頑張ってくださいね?)
(ちょっ! いえ……そういうことでは無くてですね!?)
そこで気付く。
何故、あれほど鈴莉がハイテンションだったかを。
――御薙先生! 謀りましたね!
雄真の脳裏には、高笑いをしている鈴莉の姿が浮かんだ。
きっと自分の不幸を肴に、楽しんでいるに違いない。
……全く、まるで小雪先輩みたいな人である。
(無論濡れ衣だ。親の心、子知らずの典型的な例だろう。
どうやら鈴莉の野望が適うのは、まだまだ先の様だった)
そんな雄真の心情を他所に、先生は淡々と紹介を続ける。
「普通科の高等部から転科して来た、小日向雄真くんです」
「「あ〜!!」」
その瞬間、生徒達の響めきの中でも、とりわけ大きな声が二箇所から上がった。
「え〜、皆さんに転科生の紹介をします」
その声に、彩音はガバッ!と机から顔を上げた。
見ると大きな男の子、いや上級生が壇上にいるではないか!
――あれが転校生?
(転校生ではなく、転科生です)
どうみてもかなり年上の『男の人』を見、首を捻る。
が、それも一瞬。
ふと気になることが頭に擡げる。
……いや、どこかで見たような人なのだ。
――む〜。
悩む、悩むが出てこない。
直ぐそこまで出かかっているのだけれど。
「普通科の高等部から転科して来た、小日向雄真くんです」
――雄真? 小日向雄真?
「あ〜!!」
間違い無い! 絶対間違いない! 『あの』神坂先輩が告白してた人だ!!
これは大ニュースである。それも超々ド級の大ニュースだ。
甲種特待生や男子転校生なんてニュース、目じゃ無い。
――早速発表して、先程の汚名挽回(←間違い。正解は『名誉挽回』、汚名は『返上』するものだ)しなければ!
いやいや上杉彩音、待て待つのだ。
慌てる乞食はなんとやら、ちゃんと裏をとってからでないと。
そう。神坂先輩にそれとなく聞き、反応を確かめるのだ。
発表するのはその後でも……
そうだ。それかいい。
ジャーナリストたる者、真実を報道しなければならない。
嘘や誇張など、もっての他である。
先程までの意気消沈は何のその、彩音は不敵に笑った。
「え〜、皆さんに転科生の紹介をします」
この時点では、明日香は然程驚かなかった。
多分、あの年になって急に魔法使いとして覚醒したのだろう、と当たりを付けていたのだ。
――同じ瑞穂坂の普通科にいた方ではないかしら?
それならばウチに来たのも説明がつく。
やはりいきなり違う学校、それも中等部に行くのは心細過ぎるというものだ。
――お気の毒に。
すでに中等部の履修過程を終え、大学入学目指して頑張っていた時期だろうに、また一からやり直しだ。
幾ら魔法使いが希少な存在とはいえ、あんまりといえばあんまりである。
明日香は心根の優しい少女である。故に、雄真の境遇に対して心から同情していた。
……彼の名を聞くまでは。
「普通科の高等部から転科して来た、小日向雄真くんです」
――雄真? 小日向雄真?
「あ〜!!」
――あれが伊吹姉さまを誑かした男、憎き小日向雄真!
明日香は名門式守家、その分家の出身である。
(式守の姓を許されるだけあり、実家は分家の中でも高位の存在だ)
当然、伊吹とも面識がある。
……というか、非常に親しかった。憧れていた。
例えて言うならば、まるで伊吹が那津音を慕っていた様に。
その敬愛する伊吹を誑かす稀代の極悪人を、どうして許せるだろうか?
先程までの憐憫の情は消えうせ、激しい敵意が渦巻く。
『誑かす』と言えば聞こえが悪いが、まあ早い話が『雄真は式守家から伊吹の婿に見込まれている』のだ。
事件が解決した後、式守家では主だった者が集まり、会議を開いた。
議題は事後処理(主に伊吹への対応)についてだ。
何せ、あれだけの失態をしでかした伊吹である。
如何な次期当主とはいえ、失脚してもおかしくない。本家の出でないなら尚更だ。
が、伊吹程の使い手は式守と言えどもそうはいない。
加えて、鈴莉が事件の存在自体を否定しているので、事件は公にはなっていない。
(まあ式守家は鈴莉に大きな『借り』が出来たが、それはまた別の話)
故に、伊吹への罰は『暫しの謹慎』で済んだ。
……その代わり、新たな問題が持ち上がったが。
雄真の存在とその力に、式守家は瞠目した。
雄真は、幾ら暴走し始めたばかりとはいえ『秘宝』の暴走を鎮め、その上伊吹に魔力まで分け与えているのだ。
その力、如何程か!?
式守家が驚愕するのも無理は無かった。
これ程の力の持ち主は、式守の歴史を見渡しても見当たらない。
『稀代の天才』といわれた式守那津音すら、上回るのではないだろうか?
故に、式守家が雄真を『伊吹の婿に』と考え始めたのも当然と言えた。
この話を聞いて明日香は酷く気分を害したが、それ以上に気分を害したのは、それを問い質した際の伊吹の態度である。
『お姉さまは平気なのですか!? あの様なことを勝手に決められて!』
『いや、まあ、仕方が無かろう? 全ては私の責任だ。寧ろ、軽くて驚いている』
『謹慎についてではありません! 御存知無いのですか!? 姉さまに婿話が持ち上がっているのですよ?」
『何だ、小日向雄真のことか』
満更でも無さそうな伊吹に、明日香の苛立ちはつのる。
『何処の馬の骨とも知らぬ男と!!』
『……雄真は『馬の骨』では無いな。私が認めた唯一の男だ』
咎めるような声。
が、尚も明日香は言い募る。
『姉さま!』
『そっ、それにな? 確かに雄真は口は悪いし多少意地悪ではあるが、悪い奴では無いのだ。
むしろ……』
『…………』
顔を真っ赤にして雄真を弁護する伊吹を見、とうとう明日香は説得を諦めた。
伊吹姉さまは悪い男に騙されている、自分が何とかしなければならない。
――という、実にはた迷惑な強迫観念を残して。
かくして、明日香の『伊吹のための』暴走は始まった。
……本当、伊吹と那津音の関係そっくりである。
「先生、小日向先輩が甲種特待生という話は本当ですか?」
さて、あっちの世界に行っている二人を他所に、教室では葵が一人質問をしていた。
(他のクラスメート達は気後れし、それ所で無い)
「は? 甲種?」
何度目かの葵の質問に、雄真は首を捻った。
甲種とは超エリートにのみ許された称号、自分には縁が無い代物である。
代わりに答えたのは、先生だ。
「本当ですよ。小日向くんは魔法学こそ学んでいませんが、その力はもの凄いのだそうです。
だから理事会と魔法科首脳部は全会一致で、小日向くんに甲種特待生資格を贈ることを決定したのです」
『力』だけで甲種!?
クラスの誰もが唖然とし、言葉も出ない。
『力』だけで甲種を得られるなんて、前例が無い。
ならば一体、如何程の『力』だろうか!?
「とはいえ、魔法に関しては素人も同然です。
皆さん、小日向くんを助けてあげて下さいね?」
「あの……先生? 俺、そんな話聞いて……」
雄真は慌てて説明を求めるが、先生は話を聞いちゃあいなかった。
「……って、もうこんな時間!? じゃあ、そういうことで〜」
雄真の戸惑いもなんのその、先生は慌てて教室を駆け出していく。
そういえば、始まりの礼も終わりの礼もしていない。余程慌てていたのだろうか?
……ついでに、雄真の席すら決めていない。
「……俺の席は?」
雄真は一人、壇上に立ちつくすしかなかった。
SS投下終了。
皆様、有難う御座います。
御蔭で安心して続きを投下できました。
ではまた第3話で。
GJ!!
にしても、担任酷いな。燃料投下するだけして逃亡かよ(w
やっぱ件の少女は伊吹信者だったのか。さすが女難のUMA。運が良いな。
GJGJっ
雄真くん本当は凄いんですよね
明るくて読みやすくていいな、こんな風に書けたらいいのに
ところで前スレを見たら、650のすももverって希望してもらってたのですが
すももverってことは杏璃に惹かれる雄真に早くから気づいていたらしいすももの内面の話なのかな
それとも春姫や杏璃と付き合っている雄真に諦めずにアプローチをしかけるすももの話なのかな
どんなの書けばいいのかな、頑張ってみる
>>24 前スレでその新SS希望した愚者ですが、春姫ルートだとすももの兄への好意や
未練、諦め(?)がそこそこ描かれているのですが、杏璃ルートだとそういうのがなくて、
素直に二人の仲を認めちゃってるんですね。というわけで、杏璃ルート後のすももの
秘めていた兄への切ない気持ちやら、すももルート序盤にあった擬似デートをやって
きっぱり諦めをつけたり、ヤキモチ妬きな杏璃がそれを見て焦ったり…
なんてのを考えてました。
とはいえ、
>>24のアプローチを仕掛けるすももも見たいし、前スレSS後の
杏璃と春姫の争いも見てみたいし…(←そこまで具体的に考えてるのなら自分で創れ、と)
そんなわけで前スレ650氏、応援してますよ。
GJ
GJ。
しかし、女の子ばっかりとは言え、ここまで年下だとある意味気楽なのでは?と思ったり。
女子の方からすると、年上の男の子に教えると言うシチュになる訳で、ナカナカ(何がだ
伊吹が様子見に来たら、えらい事になりそうだなー
きっとアレよね、天然ジゴロUMA君は中等部の女の子にも気付かないうちにフラグ立てちゃうんでしょうね
初級の魔法に成功したら、嬉しくなって思わず教えて貰った女の子の手を握り、
笑顔で御礼を言うUMA→相手が赤くなって、第一フラグ成立(w
>>29 上のSSだとその相手は「明日香」の気がするw
そしてUMAと伊吹、どちらを信じればいいのか、で悩むw
伊吹と明日香の絡みに期待
「……俺の席は?」
担任に放っぽられた形となった雄真は、壇上に一人立ちつくしていた。
皆の視線を一身に集めており、具合が悪いことこの上ない。
――まあ、お互い様なんだけどな。
心の片隅で、ふとそんなことを考える。
いきなり四歳年下のクラスに放り込まれた自分も災難であるが、いきなり四歳も年上――それも男――に乱入されたこの子達(←この時点で異性として認識していない)はもっと災難だろう。
高等部以下の世代において、四歳の差は非常に大きい。この差は埋めるのは一寸やそっとでは……
この考えを裏付けるかの様に、彼に集まる視線は戸惑いのそれが大半である。
皆、彼にどう対応したら良いか、てんで見当がつかないのだろう。
が、何事にも例外というものがある。
戸惑いの視線の中に、先程からやたら熱い視線が三方向から向けられてくる。
一つは、まるで親の敵を見るかの様な視線。
一つは、まるで獲物を見るかの様な視線。
一つは、まるで珍獣を見るかの様な視線。
……何れにせよ、碌な視線じゃあ無かった。
どうやらこのクラスでも、何か厄介ごとが起こりそうな予感がビンビンする。
(悲しいことに、こういう『不幸事に対する勘』に関しては良く当たるのだ)
早くも前途多難を予想し、雄真は深い深い溜息を吐いた。
「小日向先輩? 席が無いのでしたら、しばらくこの席に座られたら如何でしょうか?」
自分を呼ぶ声にふと視線を向けると、先程一人だけ自分に質問してきた少女が、自分の隣の席を推薦していた。
窓際最後部の席で、中々の特等席だ。
何時までもこうしている訳にもいかないので、雄真は有り難く少女の言葉に甘えることにした。
「ありがとう。じゃあ暫く使わせてもらうよ。ええと……」
「御門葵と申します」
自己紹介すると、少女……いや葵は立ち上がり、ぺこりとお辞儀した。
――ちっちゃ!?
立ち上がった葵を見て、思わず声を上げそうになる。
雄真は、葵がせいぜい自分の肩の辺りまでしか背が無いことに驚愕したのだ。
……が、考えてみれば極当たり前のことである。
葵は雄真のクラスメートではあるが、高等部二年では無く中等部一年なのだ。
(だから葵の背が低いという訳ではない。年相応だ)
故に、雄真の174cm(伸びた)に対して145cmしかなく、自然と見下ろす姿勢と見上げる姿勢になる。
――本当、思えば遠くに来ちまったなあ……
心中、乾いた笑いしか出てこなかった。
とはいえ、流石にそれを表に出すほど雄真も子供ではない。
故に、当たり障り無く返す。
「御門ちゃん、ありがとう」
――うん、上手く笑えたかな?
何しろ、最初が肝心である。
こうなったら仕方が無い。腹を括って出来る限り平穏な中等部生活が送れる様、努力していくしかないだろう。
幸い、この少女とは会話が出来そうだ。加えて友好的でもある。
――この子を突破口とし、徐々にクラスに受け入れて貰えるようにしないと……
そんな下心たっぷりに笑い返したのだ。
(良心が痛むが、非常事態ということでお引取りを願った)
「『葵』で結構ですよ? これから私達はクラスメートになることですし」
そんな雄真の下心を知らず、朗らかに返答する葵。
――うん、笑顔が似合う可愛い子じゃあないか。
将来有望である。 ……断じてそっちの気は無いが。
「分かったよ、葵ちゃん。じゃあ俺も『雄真』って呼んで欲しいなあ。
正直、『先輩』は勘弁して欲しい……」
ダブリみたいで何か嫌だ、と苦笑する雄真に、葵もクスクスと笑う。
「わかりました、雄真さん」
男の転科生が珍しいのか、それとも年上の転科生が珍しいのか、或いはその両方か――
兎に角、葵は雄真を珍しそうに見る。
……そう。『まるで珍獣を見るかの様な視線』で。
が、珍獣だろうがなんだろうが、この際構わない。
重要なことは、彼女が一番最初に声をかけてくれたこと、そして途方に暮れていた自分に手を差し伸べてくれたことだ。
それだけで充分である。
どうやら、この子とは上手くいけそうだ――雄真はそう確信した。
「ここが俺の席か。 ……仮だけど」
どれ位の付き合いになるかは分からないが、『今後宜しく』と心中で机に挨拶する。
「元から使われていない席でしたから、ここが雄真さんの本当の席になるかもしれませんね」
「なるといいなあ。ここ、『特等席』だし」
「特等席、ですか? 極普通の席なのですけど?」
葵は首を捻る。
真面目そうな彼女には、その意味が分からないのだろう。
「あ、いや…… まあ、ここなら皆に迷惑かけないで済むからね。ほら、俺は座高が……」
本格的に悩み始めた葵に対し、流石に『本当の理由』は言えず、取りあえず当たり障りの無い言葉で誤魔化す。
「ああ、そういえば雄真さん、背が高いですものね」
納得しました、と葵。
「高いというか、普通なんだけどね……」
高等部二年で174cmは、高いとは言えないだろう。
身長といえば、このクラスの座席は皆、中等部一年用に高さがそろえてある。
具体的には、150センチ以下の生徒用に。
だから葵が推薦した席は雄真には小さかった。
おまけに、元から使われていない席なので多少埃がかぶっている。
が、葵が軽く呪文を唱えると、忽ち雄真に合わせた大きさに変化する。
しかも、まるで新品の様にピカピカだ。
「……凄いなあ」
雄真は、魔法の凄さとそれを使いこなす葵に感心する。
……ぶっちゃけ、自分にも同じ様なことが出来るとは、とても思えない。
「いえ、大したことありませんから」
雄真の賛辞に対し、葵は笑いなら手を振って謙遜した。
無論、『大したことない』筈が無い。
何しろ、『物質変化』と『浄化』の二つの魔法を同時に、しかも短呪文で実行しているのだ。
加えて、仕上がりも上等である。
中等部一年としては、破格の使い手だろう。
(中等部全体を見渡しても、充分上位圏内に入る筈だ)
「いや、凄いよ。 ……しかし、困ったなあ」
「?」
「さっき先生も言ってたけど、俺、魔法に関してはド素人なんだよなあ。
ついていけるか、心配だよ……」
何せ、魔法を一つも使えない『魔法使い』である。
今後のことを考えると不安だらけだ。
「でも、『甲種』なのでしょう?」
「……それが怪しいんだよなあ。正直、何で俺が甲種か見当もつかないよ。
その内、『間違いでした』なんてことになって、剥奪されるかも」
「まあ」
雄真は本気で言ったのだが、葵は冗談ととったらしく、クスリと笑う。
「いや、本当『随分と仲が宜しいですのね?』……へ?」
見ると、やたら気が強そうな少女が一人、自分を睨みつけていた。
……『まるで親の敵を見るかの様な視線』で。
「こうも簡単に葵を誑しこむとは、流石ですね? 小日向先輩……いや、小日向雄真!」
「……ええっと、俺達初対面だよね? 何でそんなに恨まれるのか、分からないのだけれど?」
何が何だか分からないが、豪く敵意剥き出しの少女の出現に、流石の雄真も戸惑う。 ……俺、何かしたっけ?
けど、こういう唯我独尊かつ問答無用なお方には、何故か心当たりが色々あるから不思議だ。
……自分のあまりの女運の悪さに、思わず泣けてくる。
「そうですよ、明日香さん。雄真さんに失礼じゃないですか?」
葵は二人の間に入り込み、少女――明日香――を諭す。
が、葵の乱入は、余計事態を悪化させた。
葵は丁度雄真の盾になる形で乱入し、それが明日香を一層憤慨させたのだ。
「葵を盾にするとは卑怯な!? 葵、その男は危険だから離れなさい!」
「危険、なのですか?」
葵は後ろを振り返ると、不思議そうに雄真に尋ねた。
「……いや、本人に聞かれましても」
葵の天然な行動に、思わず突っ込む雄真。
そのせいで雄真は、葵が一瞬だけ真剣な表情をしたのを見逃した。
……その時の葵は、雄真ではなく、まるで『雄真の中の何か』を見るかの様だった。
「ですよねえ…… 雄真さんはいい人ですよね」
葵は一人納得すると、再び明日香と対峙する。
が、明日香は尚も葵に対して説得を試みる。
「葵、騙されちゃ駄目! その男は、伊吹姉さまを誑かした野獣なのよ!?」
「って、伊吹の関係者かよ!?」
驚愕の新事実に、雄真は『勘弁してくれ』と頭を抱える。
「! 姉さまを呼び捨てにするとは!」
雄真の呼び捨て発言に、甚くお怒りの明日香。
……が、雄真は聞いちゃあいなかった。
「あ〜、も〜、早速嫌な予感的中かよ、こん畜生! ちっとは猶予期間与えろや!?」
さっきまで少しは平和が続きそうな流れだったのに、何だよこの急展開!?
思わず天を呪う雄真。
……この態度が、明日香の怒りの炎に油を注ぐ。
「私をどこまで侮辱すれば……」
ヤバイ、ヤバ過ぎる。
このままじゃあ、直に魔法攻撃が来るだろう。
とはいえ、既に説得は諦めている。
何せあの伊吹の関係者である。
(多分血縁だろう。そういえば何となくどこか似てる)
どんなに説得しようが、勝手に納得して勝手に盛り上がること間違い無し。説得するだけ無駄だ。
「天は我を見放したか……」
雄真は諦観し、運命を受け入れることにした。
が、何とか葵だけは逃がさなければならない。
そう覚悟を決めて。
……しかし、予想していた攻撃は来なかった。
明日香は暫くの間雄真を睨みつけていたが、魔法攻撃することも無く、教室の外に出て行ったのだ。
「?」
思わず首を傾げる雄真。
不覚にも、その時初めて気付いた。
葵が戦闘態勢をとっていたことを。
……俺、こんな小さい子に庇われてたのか!?
思わず情けなくて涙が出てしまう。
なんかもー、落ちる所まで落ちた、と言った感じである。
「助かりましたね?」
葵がにっこりと笑った。
……まるで、大きな犬に虐められていた仔犬を助けたかの様に。
「あ、有難う。御蔭で助かったよ」
「ふふふ、女の子と戦う訳にはいかなくて、困ってらっしゃる様でしたから」
「いや、そーじゃなくて」
戦っても勝ち目ゼロだし。
何と言ったら良いものやら、と雄真が苦笑したその時、先程から事態を見守っていたクラスメートの一人が叫んだ
「ラヴだわ!」
「……は?」
雄真は怪訝そうに聞き返す。
が、彼女は……彼女達は聞いちゃあいなかった。
「転校生を巡って葵と明日香が激突した!?」
「これって葵と転校生が良い雰囲気になってるのを、明日香が嫉妬したんだよね!?」
「うんうん。私達を無視して、二人だけの世界に入っていたものね〜」
「三角関係だ!」
「……修羅場って初めて見たよ」
クラスメート達は、先程の出来事を脳内で捏造し、勝手に盛り上がる。
「ちょっ! 君達! さっきの出来事を、一体全体如何見れば三角関係に!?」
無駄とは思いつつも、雄真は必死に弁解を試みる。
先程の明日香の場合には、無駄と悟った瞬間諦めたのに、だ。
何故かと言えば、『このまま放って置けば、絶対とんでもないことになる』と、雄真の不幸探知機が最大級の警報を発していたからだ。
……それこそ、先の『秘宝事件』の時並に。
故に、無駄とは知りつつも、雄真は必死で彼女達を抑えようと努力する。
が、矢張り無駄だった。
要は、彼女達は自分(雄真)達をだしに『恋愛ごっこ』を楽しんでいるだけなのだ。
だから、真実など如何でも良い。
それっぽい場面があれば充分である。後は脳内フィルターを通して、記憶を捏造するだけの話だ。
そして、その捏造を共有しあう仲間が多ければ多い程、捏造の対象が近くにいればいる程、その捏造は彼女達の中では『真実』に近づいていく。
まあ彼女達の年頃、しかも女子校同様の立場からすれば無理からぬことではある。
が、だからといって笑って受け入れる訳にはいかない。
……だって、もしこのまま放っておいたら、絶対『とんでもないこと』になるに決まっているから。
「……御免ね、葵ちゃん。変な噂に巻き込んじゃって」
努力が徒労に終わった後、雄真は葵に頭を下げた。
彼女には、本当に申し訳ないことをしたと思っているのだ。
一応規制回避レス。
自分(雄真)は噂の格好位置にいるため、遅かれ早かれ、結局はこういう運命になった筈だ。
彼女は、とんだとばっちりである。
(ちなみに、明日香については自業自得だ)
が、葵は雄真が何故謝るのか理解出来なかったらしく、不思議そうに聞き返した。
「はい?」
「えっと、噂……」
「ああ、あれですか」
葵は、クラスメート達がきゃいきゃいはしゃいでる方を見る。
「大丈夫ですよ。『人の噂も七十五日』ですから」
だから大したことはありません、と葵。
「……そんなに待てないなあ」
この年頃でこういう噂は辛いと思うのだが、と首を捻る雄真。
どうやらやっぱり、この子もどこかずれているらしい。多分。
……それとも、深く考えている自分が間違っているのだろうか?
男子と女子は別の生き物、と以前聞いた事がある。これで年の差が有れば、その距離は更に広がるだろう。
オールドタイプ(元男子高等部生)の自分には、所詮ニュータイプ(女子中等部生)を理解出来ないのかも知れない。
まあ、彼女達についていけないことだけは確かである。あの元気さが、正直羨ましい。
……そう考えること自体、若さを失いかけている証拠なのかもしれないが。
何れにせよ、彼女達と上手くやるためには、相当の体力と気力を必要とするであろうことだけは確かの様だった。
こうして雄真の中等部生活は、先行き不安だらけのまま始まった。
だが、これはほんの前触れに過ぎぬことを、彼はまだ知らない。
SS投稿終了。
え〜、「世の中やっぱり甘くない」第2話はその1とその2に分けて投稿しましたが、その1をHP掲載時に加筆修正した時点でボリュームが前話と同じになってしまい、やむを得ずその1だけで第2話とし、その2は第3話と変更しました。
だから、第3話ではなく第4話となりました。御免なさい。
皆様、有難う御座います。
>>23 >にしても、担任酷いな。燃料投下するだけして逃亡かよ(w
この後、放置プレイをかまされたUMAに更なる悲劇が……
>さすが女難のUMA。運が良いな。
彼の女運の悪さは天下一品です。
きっとこのクラスでも遺憾なく発揮されるでしょう。
>>24 >雄真くん本当は凄いんですよね
まあ発揮できなければ意味の無い才能ですけどね(苦笑)。
遥か昔ならばいざ知らず、現代では必ずしも『魔力大きい=大魔法使い』とは言えませんから。そういう世界設定なのですよ。
>>27 >伊吹が様子見に来たら、えらい事になりそうだなー
次回か次々回で、伊吹大暴れです。
>>28 >天然ジゴロUMA君は中等部の女の子にも気付かないうちにフラグ立てちゃうんでしょうね
一応、雄真の好みは『巨乳』『大人の女性』と設定しています。巨乳の女教師なら文句なしです(笑)
>>29 まあ最初は、クラスメートとしての付き合い方をお互い学ぶ必要があるでしょうねえ。
>>30 >明日香
現在は敵意剥き出しですからね。取りあえず何とかしないと平穏な生活が……
>>31 >伊吹と明日香の絡みに期待
三歳の年齢差もなんのその、悲しいことに二人の外見は然程……というか既に……
GJですー
唯一の味方っぽい子にも実はなにげに観察されているようで、イイ環境ですね(w
それに一足飛びに三角関係とは、さすが中学生。誰かの耳に届いたら死ねるな>UMA
平穏に暮らすための努力が「下心」と言うのも、結構心が荒んでいるのカモ。
>何せあの伊吹の関係者である。どんなに説得しようが、
>勝手に納得して勝手に盛り上がること間違い無し。説得するだけ無駄だ。
伊吹への認識が酷い(w
巨乳で大人ってアンタ…鈴莉先生に期待w
GJGJー
頑張って雄真君。学校生活も魔法の勉強もついでに春姫の嫉妬も!
|。・ω・)ところで少し前にリクエストしてもらった杏璃ルート後すももSS、プロットで見て半分まで出来たのですが
|。・ω・)難産で遅くなってるので半分の時点ででも投下したりしてもいいかな だめかな
大好きな人の一番になりたい。女の子はいつだってそれを夢見ている。
本当は彼を独占したい。自分だけの彼で居て欲しい。
私の事だけを考えて、私だけに特別に優しくて、他の女の子には見向きもしない。
自分以外の何も彼には必要じゃないと、そう思える程に愛して欲しい。
でも、それはきっと無理な望みだから。
だからせめて一番に。比べられないくらいに、彼の一番になる。
幼い私はそれを願って、そしてその思いは叶った。
私は大好きな人の一番になった。
比べられない特別 彼の一番の――妹に。
「……うぅ」
落ち込んだ時には軽やかな油の音だって恨めしく思える。誰だってそうに違いない。
そんな言い訳を考えながら手の甲を冷水にさらし、しばらくは火脹れが続くのを覚悟した。
――3分前。自分の気持ちとは裏腹に楽しそうに歌うフライヤーの中身に、ちょっとした意趣返しを目論んだのがいけなかったらしい。
普段より少しだけ力を込めて押し込んだコロッケ。彼は律儀にその意思を伝え、素直な油さんは元気に飛び跳ねた。
無意味に力を込めていた右手は見事に着地点になって――直後、痛みに飛び跳ねたのは自分だった。
以前に火傷したときは兄さんがすぐに氷を用意してくれたのに、今は……
「……これもやっぱり、自業自得って言うんでしょうか……」
最愛の兄から今日も外食をするとの連絡を受けたのは夕食を作り始める前のこと。
なのに、自分の作ったコロッケを格別に好んでくれる兄さんの笑顔を思い出しながら作ったタネは――何故か三人前あって
そして今、私に反旗を翻したこの子からが丁度彼の分になる。
余分に作られた一人分のコロッケ達は食卓に残り、帰宅した兄さんはそれを見て何を思うのだろう。
それがわかっていて自分はこのコロッケをテーブルに載せ、きっと部屋まで謝りに来る彼に不満を言うのだ。
――惨めな抵抗
「ごめんなさい……」
つぶやいた言葉ですら、兄ではなく――これから冷めていくコロッケに向けられていたのだから
きっと私にはもう、一番の妹を名乗る資格すらないのだろう。
「おはよう、すもも。 ……本当にごめんな、昨日」
「もういいです。でも、夕食ぐらいは家族で食べたいですから」
「ああ、わかってる。今日はちゃんと帰るから……ごめん」
本当は謝るのは私の方。でもこれできっと、数日の間は早く帰ってきてくれる。
「じゃあ、先行くな。遅刻するなよ?」
「は〜い。行ってらっしゃい、兄さん」
自己嫌悪と歪んだ喜びを整理する前に、兄さんは家を出てしまった。
週に3日は柊さんの早朝特訓に付き合っている兄さん。私が起こす機会も、一緒の登校も少なくなってしまった。
その上夕方はOasisでバイトを手伝い、彼女の仕事が終わるのを待っているのだから一緒には帰れない。
さらに外食の日には帰り着くのは日付も変わる時間になっていて……週末は勿論デート。
これだけすれ違いが続けば文句を言いたくなるのも当然の事に違いない。
そもそも学生の身で午前様だなんて……お母さんが何も言わないからって許していいものじゃない。
「そうそう、兄さんの為なんですから」
少し無理やりに自分を納得させ、調理の手を進める。
兄さんは頑張ってくれたようだけど、結局残ってしまったコロッケが今日のお弁当のメイン。
朝食のパンを焼き、自分とクラスメイト二人分のお弁当を包みながら
お弁当と朝食も一人分置いたままにしてみようか、なんて考えたけれど、流石にそれは辞めておいた。
なのに
何軒か店をまわって材料を買い集め、気合を入れて作った渾身のシーフードシチュー。
それは昨日のコロッケよりも絶対に満足してもらえるに違いなかった。
なのに
『ごめん、今夜は帰れそうにない』
鍋をかき混ぜながらメールを見た私は、明日は二日分の朝食とお弁当に夕食を並べて帰宅を待とうと決心した。
「う〜ん、雄真くんもちょっとだらしなくなってるとは思うんだけど〜、今が一番楽しい時期だから。
もう少しすれば周りが見えるようになってくるから、すももちゃんも少し我慢しようね」
「それにしたってあんまりです〜! 今朝、今朝ですよ! 今朝約束したんですよ!」
「気持ちはすご〜くわかるんだけど、でも杏璃ちゃんも色々大変みたいだから。あんまり強く言わないで上げよう、ね?」
帰宅して早速シチューに手をつけるお母さんに詰め寄ってはみたけれど、やっぱり強く言ってはくれない。
年頃の女性の部屋に息子が泊まろうというのに、妹がこんなに心配しているのに、深刻に受け止めようとしない母に
そして妹としたささいな約束も守ってくれない兄に、苛立ちがつのる。
なんで、どうして、わかってくれないの。ほん少しだけ、少しだけでも、兄さんとの時間が欲しい。ただそれだけなのに。
どうして、どうして。
「すももちゃんもそろそろ兄離れの時期ってことなのかも〜?」
シチューは本当に美味しい。まさに会心の出来。その美味しさが本当に悔しくて。
「ず〜っとお兄ちゃんっ子だったもんね〜。やっぱり寂しいとは思うんだけど〜」
お昼のコロッケは冷めていたけれど、兄さんを想って揚げたコロッケは味が違う気がして。それがどうしても悔しくて。
「お母さんも寂しいんだよ、大事な息子が取られるのは。本当よ?」
目の前のお母さんは何もわかっていない。それなのに勝手なことばかり言われるのが悔しくてたまらなくて。
「杏璃ちゃんと雄真くんはお似合いだし、応援してあげたいと思わない?」
目の前に、全ての元凶が居るのに
だから
だから
「……お似合いって、何ですか」
「……すももちゃん?」
心の奥に仕舞っていた事を、絶対に言わないつもりだった言葉を
全部、叩き付けていた
「お似合いだって言うなら、私と兄さんはもっとずっとお似合いなんですっ!」
「元は他人なのに兄妹になって、それでもこんなに仲良しなんですよ?」
「悪いところも全部見せ合って、でも全然嫌いになんてならなくて」
「もし兄妹になったりしなければ、絶対に私と兄さんは上手くいっていたんです!」
「お母さんが再婚なんてしなかったら……しなかったら、絶対……っ」
「なんでですか、なんで私と兄さんを兄妹にしちゃったんですかっ!」
「言ったのに、あの日! 好きだって、そう言ったのに!」
「なんで……っ!」
知らぬ間に濡れた視界。目の前の女性の傷ついた表情に、私が今の幸せの全てを否定したことに気づいて
「……っ!」
ダイニングを走り出た私は自分の部屋に逃げ込んで――きっと部屋まで来る母に聞かせない為に、声を殺して、泣いた。
「すもも? 聞こえてるか、すもも?」
私との約束は守ってくれないのに、お母さんに言われたら帰ってくるんですね
「俺のせいでかーさんと喧嘩したって聞いたけど……ごめん、かーさんの説明じゃ要領を得なくて……。
今日のことも含めて、最近わがままばかりしてるのはわかってる。杏璃とも話して、ちゃんとするから。
俺に出来ることなら直すし、謝る。だから……話、出来ないか……?」
柊さんと別れて下さいって言ったら別れてくれるんですか?
出来ませんよね、出来っこないです。
「すもも……聞こえてるんだろう? すもも……」
聞きたくない。聞きたくないんです。
「すもも……返事をしてくれ、頼む……」
私の傍に居てくれるわけじゃないのに、私を一番になんて見てくれないのに
「……聞きたくないですっ! 一人にしてください!」
優しい言葉なんて、かけないで……っ!
「……わかった、話せるようになったらいつでも聞くから。もしも寝てたら叩き起こしてくれていい」
なんで優しくするんですか……
「俺はいつでもお前の味方だからな、一人で抱え込むなよ。頼れないかもしれないけど、お前の兄貴なんだ」
なんでそんなに優しいのに……なんで『兄さん』なんですか……兄さん……
「……俺、どうすればいいんだろう。もし俺が家を出たらお前のところ置いてくれるか、準?」
「それは歓迎だけど……うーん、一晩閉じこもったぐらいなら思春期ならあることだとは思うわ。でも……あのすももちゃんだものね。
原因は雄真の自堕落について音羽さんと意見が合わなかったから……って完璧に雄真のせいよね〜」
「そうなんだよ……。何かよくわかんないけど、かーさんは再婚なんてするんじゃなかったとか言い出してるし。
よっぽど俺が気に入らないのかな……。今まで結構仲良くやってたと思ってたんだけどな、はぁ……」
「……それは……えっと……うん、わかったわ。お昼にでも音羽さんに詳しく聞いてくるから、雄真は余計なことしないようにして。」
すももがかーさんと喧嘩をして部屋に閉じこもった翌朝。
すももの部屋の前で持久戦の用意をしていた俺はかーさんに無理やり学校に行かされた。
少しでも話が出来ればきっとわかってくれる、そう思ったんだけど……。
「悪いけどこの話、杏璃には伏せておいてくれるか? あいつきっと気にするだろうから」
「はいはい、わかってるわ。全部雄真のせいだもの、杏璃ちゃんが落ち込むのは可哀想よね〜」
「……そう、だけど、な、おまえ……」
私怨
俺の作戦はとりあえずなんとかして話をする、のみ。
別アプローチは準に任せておくことにした――結果。
「聞いてきたわよ、雄真。予想通りと言えば予想通りで……まあ、私なら話しくらいは聞けると思う」
「本当か? 何でもいい、わかったんなら教えてくれっ!」
「う〜ん、とりあえずあたしがすももちゃんと話してからね」
あっさりと情報を持って帰ってくるこいつは本当に男の俺とは別の種類の生き物かもしれない。
「雄真、それって、昨日慌てて帰ってった件よね? 何それ、たいしたことなかったって言ってたの、嘘なの?
も〜、ちゃんと全部話しなさい! そういう隠し事が一番嫌いなのよあたしはっ」
怒る杏璃を必死になだめ、しばらく一緒に帰れないと言ってさらに機嫌をそこねたが、なんとかバイトに行ってもらった。
春姫はすももの事だと察しているらしく、どう見ても一緒に行きたそうだったけれど……見なかったことにして。
俺と準は出来る限り急いで、すももが待っている家に帰った。
そう、きっとすももは待っているはずなんだ。そんなに抱え込むようなこと、話したいに決まってる。
準でも俺でもいい、とにかく話してくれ。一人で背負い込まないでくれ、すもも……。
「悪いけど雄真はリビングか……そうね、この際家の外に居て。絶対に何話してるか聞こえない場所。絶対よ」
「……わかった、外に居るよ。ごめんな、すもも。俺じゃ力になれなくて……」
眠ったのは朝になってからで、目が覚めたらもうお昼を過ぎていた。
二日分の朝食とお弁当、それに沢山の夕食を並べて兄さんを待てば、またいつものように戻れる。そう思って、でも体は動かなくて。
私は何も出来なかったのに、すぐ帰ってきてくれた兄さんは準さんも一緒で……でも、こんなに早く帰って、柊さんはいいんですか?
私が原因で二人が喧嘩して、もしも別れたりしたら、そんなの……
「すももちゃん、聞こえる?」
最低な想像をしてしまう前に、準さんの声が私を現実に帰してくれた。
誰とも話したくない。私みたいな間違った子、誰かに話しを聞いてもらう価値もない。そう、思ったけれど。
「……はい……」
準さんなら、私の最低な想いも受け止めてくれるんじゃないか。そう思って……ゆっくりと、ノブを引いた。
「良かったわ。開けてくれるまで恥ずかしい身の上話をするつもりだったから……。
聞きたいなら話すけど、すももちゃん、聞きたい?」
「いえ……いいです」
何を話すつもりだったのか。そんなの決まってる。
「準さんも私と同じなんですよね」
「……すももちゃんも、私と同じなのよね」
わざわざ言い直した準さんがおかしくて――ほんの少しだけ、一日振りに、笑えたと思う。
「音羽さんから、大体話は聞いたわ。急に雄真と接点がなくなっちゃって……破裂、しちゃったのよね。
こんな事言われたら嫌かもしれないけど、凄く気持ちはわかるわ。 本当よ?」
「そんな、全然嫌じゃないです……。でも私、自分でもどうしたのか……。
何ていうか、自分でも理解出来ない気持ちなのに、わかって欲しくて、わかってもらえなくて……」
要領を得ない私の話を、準さんはずっと聞いてくれた。
兄さんになる前から兄さんの事が好きで。
再婚する母さんに今まで通り仲良く出来るか聞かれて、大好きだから大丈夫って、そう答えた。
幼いころからずっと兄さんが好きだったから、それが当たり前で。
その気持ちが恋だと気づいたのは、兄さんが中学生になって初めて学校が別になった時。
兄さんが高校生になってまた学校が別になったけれど、その時は兄さんも家で勉強を見てくれて、一緒に居る時間もあった。
でも同じ高校に入学して、しかも魔法科とクラスが一緒になって……兄さんに美人の知り合いが沢山出来て。
特に再会して凄く綺麗になった姫ちゃんが、兄さんに何かしら好意を持っているのはすぐにわかった。
焦って、でも何も出来なくて……伊吹ちゃんにはそんなもやもやした気持ちも一緒にぶつけていた様な気がする。
だからかもしれない。伊吹ちゃんと本当に仲良くなれたのは、兄さんが柊さんに惹かれていることに気づいた後だったのは。
そして兄さんはすぐに柊さんと仲良くなってしまって、付き合い始めて。びっくりするぐらいに早くて、気持ちの整理なんて出来なかった。
妹としてでいい、少しでも兄さんの傍にいたい。でもそんな願いも叶わなくて。
あの頃に戻れたら、兄妹じゃなかったら……そんな事ばかり考えて、お母さんにあんな事を。
「あんな事言うつもりじゃなかったんです。お母さんが悪いなんて、全然思ってないのに……」
「うん、わかるわ。どこかに吐き出さないと耐えられなくて、一番近い人に向けちゃっただけよ。
……私も同じように、両親に言ったこと、あるのよ。『どうして私を男に産んだの』……って』
驚いて顔を上げた私の目に映る準さんは、いつもの準さんだったけれど。ほんの少しだけ、瞳が濡れていた。
「二人とも泣きながら謝るのよ、ごめんね、ごめんね……って。謝るのは私の方なのに……こんな失敗作の男で」
「そんなっ!準さんは失敗作なんかじゃないです、悪いのは準さんじゃないっ!」
「ありがとう……。でもそう言えるなら、すももちゃんはもう、大丈夫よね?」
――私みたいな間違った子、誰かに話しを聞いてもらう価値も……
「あっ……はい。頑張って、みますっ」
自分で自分を肯定、なんてあっさり割り切ることは出来なかったけれど
私は準さんみたいに真っ直ぐで綺麗じゃない。でも、ほんの少しだけ、自分が認められる気がした。
「すももちゃんはね、雄真と過ごす時間がなくなって、破裂しちゃったけど……
幸いにも! 雄真はしばらくはすももちゃんの事凄く気にするでしょうから。
その間に、すももちゃんなりに雄真への気持ちに折り合いをつけたらどう?」
「忘れるとか、諦めるとかするんですか……?」
忘れたくない。本当は、諦めたくもない。
そんなに必死な表情をしたつもりはなかったんだけれど、準さんはとっても慌てて手を振った。
「違うの、そうじゃなくて……もちろん忘れてもいいの、でもそうじゃなくてもいいの。
私は雄真の事、ずっとずっと好きでいると思うから……耐えられなくなったらスキンシップして我慢してる。
雄真はちょっと迷惑そうだけどね?」
わかってやってるの、秘密ね? なんてウインクする準さんはどうみても理想の女の子。
私なんかよりずっと辛い気持ちを抱えて、それなのにこんなに綺麗。
私もこんな風に。大事な兄さんへの気持ちをしっかり持って、そして兄さんの前で綺麗に笑えたら。
あの日の気持ちも、今の気持ちも、全部抱きしめて笑いたい。
浮かんだ光景は、夕焼けのショーケースと……
「準さん……手伝って欲しいことがあるんです」
「なになに? 何でも言って。今なら何でも手伝っちゃうから」
私の為に本当に嬉しそうに笑ってくれる準さんに、今の私に出来る精一杯の笑顔を返して。
「兄さんが今まで残してきた分のお夕飯、全部食べてもらうんです。
一緒に作るの、手伝ってくださいっ!」
66 :
650の人:2006/11/14(火) 23:54:44 ID:TASSwnrU0
>>53-65 投げないでぇ、石を投げないでぇぇぇぇぇぇ。
私は一体誰の喜ぶSSを書いたんでしょう、暗いし寒いよう。すもも可哀想だよう。杏璃出番ないよう。すももなのに伊吹出てないよう。
ここからの展開も極平凡な感じなので後は皆様のご想像に、ぐらいの気分でお願いします。
ああ、本当にもうなんでこう暗いんだろう。明るい話書けないのかな私。
今回もお付き合いありがとうございました。
>>66 いえいえ、GJですよ。暗い部分もあってこそキャラも引き立つというもの。
平凡な展開にしても、ぶっ飛んだ展開が苦手な自分としてはむしろそっちの方が楽しい。
続きを楽しみにしてます。
グッジョブ!
しかし黒すももですな…何故か空鍋の人を思い出した俺は最早ダメだなw
暗いのも一つの物語を作るには必要な要素ですよ。続きが楽しみです。
俺も春姫SS早く書き上げないとな…。
>66
GJ!
番号がなんかワロタ
あと準も出てキター!!
>68
はぴねすスレでは、黒すもも=しももです。経緯は省略。
投稿乙です。
黒いすもも……いいですねえ。
しかし、前話とリンクしてたら杏璃ヤバイですね。
『次回、黒い方々に囲まれた杏璃の運命は!?』なんて。
71 :
名無しさん@初回限定:2006/11/15(水) 11:37:00 ID:bq/OY1GaO
>>69 しもも≠黒すもも
しももはしももであってしももw
ageスマン
73 :
温泉の人:2006/11/15(水) 20:10:51 ID:DgC9sDFf0
>>66 いやいやGJ!
思えば何気にこの2人って重いもの抱えてるよね・・・<準にすもも
この後すももがどんな攻勢に出るのか・・・楽しみに待ってます。
おいらもそろそろ何か投稿したいなぁ・・・
いろいろとネタは考えてるんだけど、なかなか話としてまとまんないです。
しかも8割方春姫ネタばっか・・・もうダメだ自分w
甘くない方の許可さえいただければ、甘くないお話のパラレルシナリオとして
春姫・杏璃サイドのお話書けたらなぁ・・・って思ってます(つかもう書き始めてるw)
他の方のふんどしで相撲取るような形になっちゃって少し申し訳ないのですが、
そのかわり精一杯甘くない方の物語を尊重しつつ、かつ書きたいものもしっかり書く方向でw
少々長くなりましたがではではノシ
>73
そこで敢えて、砂糖が泣いてワビ入れるくらい甘い話を。
でも思ったんだけどさ、別に杏璃END後である必要ってあるのかな?
別に文句ってわけじゃなくてね?ふっと思っただけなんで他意はないです。
76 :
650の人:2006/11/15(水) 23:47:37 ID:oVg+Fp+/0
|。TωT)GJのお言葉ありがとうございます とっても励まされます
杏璃エンド後の必要って本当にさっぱりないです。何となく杏璃ルート後の春姫話を書いたらすももverのリクエストを頂いたのでっ
一応、再会した時からどことなく雄真を気にしていた幼馴染の春姫なら二人なりに折り合いつけそうで
すもも自身が入学する前から雄真と親しかったらしくて、付き合うまで間があった小雪さんならそれなりに諦めもつくんだろうけど
すももから見ればそんな雰囲気は全然なかったのに突然付き合い始めた杏璃だと整理する時間がなさそうかなーとか想像したりしました。
杏璃ルートでは、すももは実際に交際が始まるかなり前から二人が付き合っていると勘違いしていた台詞があったので……内心は大混乱じゃないかなって。
甘いの甘いの読みたいですっ ……甘いの甘いの書いて見たいです ぅぅぅ
今気付いたんだが
はぴSSスレになってね?w
確かにw
まぁ荒れてるわけでも無いからいいけど気になる人がいるようだったらエロパロにでもはぴねすスレ立てた方がいいかもな
>>77 たまたま今続いているだけでそのうち他の作品が来るでしょ。
このスレが活気付く時は何故か一つの作品のSSが続く事が多いからな。
デモベとかあやかしびとなんかでも起こった現象。
そう考えるとスレ初期の流れは色んな元ネタの作品が投下されて混沌としてたよな
面白かったからいいけど
>>73 >甘くない方の許可さえいただければ、甘くないお話のパラレルシナリオとして
春姫・杏璃サイドのお話書けたらなぁ・・・って思ってます
構いませんよ。むしろ楽しみにお待ちしています。
>そのかわり精一杯甘くない方の物語を尊重しつつ、かつ書きたいものもしっかり書く方向でw
作者様によりそれぞれ解釈の違いがあると思いますので、アレンジして頂いて結構ですよ〜
>甘くない方
今ふと思ったけど、これ自分のことですよね?
違ってたら御免なさい。
――――高等部魔法科二年教室。
「雄真はおるか!」
その言葉と共に勢い良くドアが開き、高等部一年の式守伊吹が顔を出す。
上級生の教室だというのに、遠慮も気後れも全く無い。
「これは伊吹様。一体何用でしょう?」
伊吹の来訪に気付き、信哉と沙耶が慌てて出迎えた。
が、伊吹は辺りをキョロキョロと見渡し、それどころではないご様子だ。
「ああ、信哉か。何、転科してきた雄真の様子を、な?」
そう言いつつも、目はせわしくあちこちに動いている。
「……小日向殿ですか」
途端に、信哉は顔を曇らせる。
「? 信哉、如何した?」
不信に思った伊吹が問うと、信哉は顔を伏せ、耐え難きを耐える、といった風情で話し出した。
「……惜しい人物を無くしました」
「! おいっ! 一体、雄真の身に何が!?」
その徒ならぬ様子に、伊吹は顔を真っ青にして信哉を問い詰める。
「小日向殿は……うおうっ!?」
尚も続けようとする信哉の脳天に、椅子が叩きつけられた。
流石の信哉も効いた様で、蹲って呻いている。
……が、叩きつけた当人は気にも留めず、返って信哉を窘めた。
「兄様、物事は簡潔明瞭にお伝えすべきです。伊吹様が混乱なさっているではありませんか」
「し、しかし…… (高等部二年が)惜しい人物を無くしたことに変わりあるまい?」
蹲ていたのもつかの間、直ぐに復活し、信哉は何も無かったかの様に振舞う。
「その様な、誤解を招くような伝え方は問題です」
「うむ…… 言葉とは奥の深いものよ……」
「……では、別に雄真の身に、何かあった訳では無いのだな?」
伊吹は、怒りに振るえながら信哉に問う。
「はい。至って健康かと」
「そうか……」
伊吹はにっこり笑うと魔法を発動する。
と、途端に信哉に10Gを越える重力が圧し掛かった。
「ぶろっ!?」
「己はそこで反省しておれ! 全く、人騒がせな! ……で、雄真は何処に?」
「雄真様は、高等部二年ではなく中等部一年に転科なされました」
「は!?」
「……何でも、単位が足りないからだそうです」
「な、なんだって〜!?」
想像外の答えに、伊吹は混乱した。
――雄真が中等部一年!? 後輩? ……う、悪くないかもしれない。
そのシチュエーションを想像してみると、結構ドキドキものだ。
……それに良く考えてみれば、宿敵である神坂春姫と柊杏璃も、自分と同条件――別学年――になるということでもある。
そこまで考えると、自然と頬が緩んできた。
なんかもー、盆と正月が一度にやって来た様な目出度さである。
――中一の小娘共なら敵ではないし、良いこと尽くしだな。 ……ん、中一?
はて。何か大事なことを忘れている様な気がする。
「はっ! いかん!」
中等部一年といえば、明日香がいる学年ではないか!?
何故だかしらないが、明日香は異常なほど雄真を敵視している。
その雄真を目の前にして、あの明日香が何もしない筈がない。筈が無いのだ。
――拙い。非常に拙いぞ!
流石の伊吹も真っ青である。
「こうしてはおれん!」
伊吹は中等部一年の教室目指して駆け出した。
――――高等部校舎、廊下。
「そこをどかぬか! 高峰小雪!」
「いいえ。どきませんよ、伊吹さん」
中等部校舎に向かおうと急ぐ伊吹の行く手を、真正面から阻む者がいた。
高等部三年、高峰小雪である。
「雄真の危機だぞ!?」
切羽詰った伊吹の怒鳴り声。
だが小雪には柳に風、である。
「雄真さんなら、大丈夫ですよ。きっと無事です」
……などと宣い、取り付く島も無い。
「憶測で物を言うな! お主は知らぬかもしれぬが、明日香は思い込んだら一直線。猪突猛進で他の意見は耳に入らぬぞ!?」
「まあ。誰かさんみたいですね」
伊吹必死の説得にクスクスと笑う。
「き、貴様!……い、いや、今はそれどころでは無い」
湧き上がる怒りを『雄真のため』と驚異的な自制心で押さえつけた伊吹は、再度説得を試みる。
……これで駄目ならば、力尽くで突破する腹積もりで。
(こうしてる間にも……と思うと、気が気でないのだ)
「高峰小雪! 正真正銘、雄真の危機だぞ!?」
伊吹、誠心誠意の説得。
「……今から10日間、雄真さんは私達と会ってはいけないのです。それが雄真さんのためなのですよ」
と、急に小雪は真面目な顔、真面目な口調で話し出した。
……先程までとはまるで別人の様に。
「雄真のため、だと?」
故に伊吹も気勢を殺がれ、思わず問い返してしまう。
「そうです。貴方も式守の次期当主なら分かるでしょう? ……何故雄真さんが、私達友人から切り離されたのか、を」
小雪はそう言うと、じっと伊吹を見つめる。
「う……」
分かる。何故、雄真が自分達と会ってはいけないのかが。
雄真は、これから現中等部一年の級友達と、大学卒業までの長い時間を過ごすことになる。
いや。その繋がりは大学卒業後も続き、絶える事は無いだろう。
……ならば邪魔をすべきではない。少なくとも、今は。
自分達が介入すれば、必死で溶け込もうとしている雄真の努力に水をさすことになりかねない。
「し、しかし……」
だが、伊吹は明日香の暴走を心配し、尚も躊躇する。
「大丈夫です。何しろ私達の雄真さんですから! ……あの秘宝事件の時だってそうだったでしょう?」
「…………」
確かに、雄真は強い。自分などより遥かに。
「……それとも、伊吹さんは雄真さんを信じられませんか?」
「そっそんなことは!?」
慌てて否定する伊吹。
「ですよね。『愛する雄真さん』のことですものね」
「う、う〜」
伊吹は顔を真っ赤にして頭を抱える。
最早、否定をする余裕も無い様だ。
後もう一押しである。が……
「小雪姉さん! 上手くいったな〜」
「タマちゃん! シッ!」
タマちゃんの余計な一言に、小雪は慌て口止めする。
「おおっ! そうやったなあ! かんにんや〜」
「……?」
そんな会話に不審を抱いた伊吹は、タマちゃんが手(?)にしていた書類に目を付けた。
「見せろ!」
「あ! 駄目や〜!!」
タマちゃんから取り上げた書類。
それは、占い研究会に関するものだった。
現在の占い研究会は、部長の高峰小雪以下、小日向すもも、式守伊吹、小日向雄真(名誉部員)の4人――幽霊部員は数に入らない――しかいない。
が、部は5人以上が原則であり、それ以下の場合は同好会に格下げされる。
占い研究会の場合は、その長い歴史と小雪の占い師としての優秀さのため、今まで見て見ぬ振りをされてきた。
が、そのためには毎年生徒会と学園に提出する申請書類に、主だった教員のサインが必要である。
……これでもうお分かりだろう。
書類の正体は契約書である。
『もし伊吹を10日間雄真に近づけねば、サインを集めてやる』という、実にアレな。
「……これは何だ、高峰小雪?」
震える声で尋ねる伊吹。
気のせいか、契約書を持つ手も震えている。
「……残念、ばれちゃいました。あと少しだったのに」
「ふざけるな! 私を止めようとしたのは私利私欲か!?」
口をバッテンにしてすねる小雪に、伊吹の怒りが爆発した。
雄真のこともあるが、今回は『自分がおちょくられたこと』も含まれるので、先程以上にお怒りである。
「部長として、当然のことです。伊吹さんも部員として協力して下さい」
「できるか!」
「ちぇっ」
「……私をおちょくるのも大概にしろよ? 高峰小雪?」
「雄真さんも名誉部員です。だから占い研究会のために、喜んで犠牲になってくれる筈です」
支援、足りてる?
「貴様は鬼か!?」
「それに雄真さんは、すももさんと伊吹さんという二人の部員をゲットしてきてくれました。
新しいクラスでも、きっと沢山の部員をゲットしてくれるでしょう」
そうなれば、面倒なサインを集めずとも部室を維持できます、と目を輝かせる小雪。
「……言いたいことはそれだけか?」
伊吹の手には、いつの間にかビサイムが握られていた。
……気のせいか、魔方陣もあちこちに展開している。
「あらあら、タマちゃん。もしかして私ピンチですか?」
が、普通ならば絶体絶命のピンチであるにも関わらず、小雪は平然――少なくとも表面上は――としたものだ。
暢気にタマちゃんと会話などしている。
「いかんな〜式守の嬢ちゃん。怒ると美容に差し障るで〜」
「ふ、ふふふ…… そう言えば、貴様との決着は有耶無耶になっていたなあ?」
――もう会話は終わりだ。
ドッゴ〜ン!
甲種特待生二人による、実に傍迷惑な魔法合戦が始まった。
SS投下終了。
今回は前半だけなので短いです。
……でも投稿に30分。
GJ
ところでこのUMAは伊吹と沙耶に手を出してるの?
投下乙です
でも占い研究会って、小雪さんが入学する条件として理事に作らせた部なのよね。
>95
むしろ出してない理由が見つかりません。
98 :
温泉の人:2006/11/17(金) 20:21:56 ID:5sWubv340
相変わらず小雪さんはステキだwwwwwww乙です!
それと
>>82 遅ればせながら、寛大なるお心遣い感謝いたします。
完成までまだかかりそうですが、今しばらくお待ち下さいませ。
皆様、有難う御座います。
>ところでこのUMAは伊吹と沙耶に手を出してるの?
>むしろ出してない理由が見つかりません。
御想像にお任せしますよ〜
>でも占い研究会って、小雪さんが入学する条件として理事に作らせた部なのよね。
やっちまった…… 後で訂正せねば……
(御指摘感謝です)
>相変わらず小雪さんはステキだwwwwwww乙です!
未だ勝敗は不明なるも、既に精神的に優位に立っています。
乙です
しかし校内で攻撃魔法を堂々と・・・校舎と周囲の学生は無事か!?
まあ、この二人なら何かあっても理事長なり鈴莉さんなりがもみ消すだろうけど・・・
101 :
温泉の人:2006/11/20(月) 21:22:48 ID:LIyohTDp0
では予告どおり、「世の中やっぱり甘くない」の続きで書いてみるテスト。
こっからの話はあくまで私、温泉の人が独自に妄想を働かせたものであり、
「世の中・・・」の作品世界を否定する目的のものではないことを先に申し上げておきます。
あくまで「世の中・・・」のパラレルとして捉えていただけたら幸い。
・・・あと「世の中・・・」は3人称視点でしたが、
こっちは適宜作中の様々な登場人物の視点を交えつつ物語を進めていきたいと思います。
理由? そっちのが俺が書き慣れてるからw
(繰り返しますが「世の中・・・」の作品否定が目的ではありません)
ではどぞ↓
「〜〜〜っ」
机に伏せ、何やら不満気にうなり声を上げている杏璃ちゃん。
私が話しかけても、先生に指名を受けても、その反応は一貫して変わることはない。
……ここ数日、杏璃ちゃんはずっとこうだ。
終始思い詰めるように唸っては、はぁっと諦めたかのように溜め息をつくのを繰り返す有様。
「……」
無論、この私……神坂春姫も例外ではなかった。
非情なまでに唐突に告げられた、雄真くんの中等部編入事件。
これからもうずっと、雄真くんといっしょに魔法を勉強することができない……
たったそれだけのことなのに、私の心は暗く、深く……沈みこんで浮上しない。
(でも駄目。これは雄真くん自身のためなの)
(今まで10年以上、魔法から離れていたのよ? そんな状態では、たちまち落ちこぼれるわね)
(もし破ったら、『雄真くんの母』として考えがあるわよ?)
狭い暗室で鐘が鳴り響くかのように、先生の言葉ががんがんと頭の中を駆け巡る。
何を話しても、先生の態度は変わることはなかった。
いや……私たちのような若輩者の意見で簡単に意見を覆すような人間ではないことくらい、
長いこと先生の下直属で魔法を学んできた私にはわかってる。
だけど、だけど……
こんな仕打ちって、ないよ……先生……!!
「……私の授業中に考え事なんて、いい身分ね。ふたりとも」
「「!!?」」
私たちはほぼ同時に顔を上げ……
そして一瞬だけ……目の前にいる人物を、きっと睨みつけていた。
「……そんな目でいくら見つめても、雄真くんは帰って来ないわよ?」
「……」
「本当にあの子のことを考えるなら、それぞれが与えられたフィールドの中で、
精一杯自分の為すべきことをすべきじゃないかしら?
貴方達がそれじゃ、あの子もこっちの世界に帰ってきた甲斐がないじゃない」
「……」
あくまで毅然とした態度を崩さない先生の姿勢に……
私はそのまま、力なく視線を横に反らすしかできなかった。
「まぁ貴方達はまだ若いから、まだまだ納得するには時間がかかるでしょうけど……
いずれわかるわ。あの時のあの子の決断が、決して間違ってはなかったって……」
「……」
「それと、今の態度はペナルティ1ね。ふたりとも放課後、私の研究室まで来なさい」
「……わかりました」
おなかの中をじんわり締めつけるおのが無力感に。
私は力なく、先生の言葉に従うのだった。
「……本当に、このままでいいの? 春姫……」
放課後……御薙先生の教室へ向かう道中、杏璃ちゃんが私に問いかける。
「そりゃまぁ、先生の言いたいことも理解できなくはないけどさ……
いくら何でもあれじゃ、雄真がちょっとかわいそうじゃない……」
「……うん……」
杏璃ちゃんの言葉に、力なく頷く私。
……本当はできることなら、雄真くんを力づくでもこっちに引き戻したい。
それこそ、今すぐ……中等部の校舎の中に忍び込んででも。
だけどそれが、今の雄真くんにとって……邪魔でしかないのだとしたら……
私にできることなんて、きっと何もない……
「……ちょっと、しっかりしてよね春姫……
あんたがそんなんじゃ、こっちも張り合いないじゃない……」
「……うん……ごめんね、杏璃ちゃん」
私はわずかに顔を上げ、作り笑いを浮かべてみる。
「……」
杏璃ちゃんはそんな私を見て、少しだけ考え込んでいたが。
「……決めた。行くわよ、春姫!!」
「え? 行くって、どこへ……」
「決まってるじゃない。雄真を力づくで取り返しに行くのよ!!」
「え!? でも今から、御薙先生との約束が……」
「あんなわからず屋のことなんか無視無視!! さ、早く行くわよ!!」
「え、ちょ、ちょっと待っ……ひゃあっ!?」
杏璃ちゃんに無理矢理パエリアにまたがらされ、私たちは夕暮れの大空に飛び立って行った。
「うぅ……まだ体いたぁい……」
「もぉ、杏璃ちゃんったら……無茶するんだから……」
杏璃ちゃんの部屋に戻り、擦りむいた杏璃ちゃんの膝の手当てをする私。
いくら何でも、空から無理矢理中等部の校舎に突撃するなんて……
校舎には強力な人よけ結界が張られてるんだから、無理に決まってるじゃない……ι
「あーあ……あたし的にはもうちょっとうまく行くと思ったんだけどなー……」
あの結界を前にそんなことが言えるなんて……やっぱり杏璃ちゃんってすごいのかも。
「こうなったら仕方ないわ。春姫、作戦その2で行くわよ!!」
「作戦……その2?」
きょとんと首を傾ける私に、杏璃ちゃんは意気揚々立ち上がり、クローゼットを開いた。
「さぁて、これで準備完了っ☆」
「あ、杏璃ちゃん……やっぱり無理があるよ……これ……ι」
使い古した中等部の制服に身を包み、中等部の校門の前に立つ私たち。
それもすぐに私たちとバレないよう、微妙にヘアスタイルなど変えながら。
(ちなみに私がツインテールとメガネ、杏璃ちゃんがヘアーバレッタとリボンをつけたロングスタイル)
「だぁいじょうぶだって! これだけきっちり変装してたら、誰もあたしたちだってバレないって。
……まぁ唯一バレる危険があるとすれば、あんたのその中学生離れした胸だけど」
「ちょ、ちょっと……無理言わないでよ杏璃ちゃん……ι」
私だって、好きでおっきくなったわけじゃないもん……ι
「とにかく! 事は一刻を争うんだから、さっそく侵入開始よ!!」
「うん……行こ、杏璃ちゃん……」
杏璃ちゃんの言葉に、私も返事を返した。
手段はどうあれ……雄真くんに会いたいのは、私もいっしょだったから。
あくまで平静を装いつつ、私たちは徐々に校舎の玄関へと近づいてゆく。
「……何だね、キミ達は。下校時間はとうに過ぎとるだろうが」
……当然のことながら、私たちの存在に気づいた中等部の先生が声をかけてきた。
幸いなことに、こちらの素性はまだ割れていないみたいだ。
「え、えっと……あの……その……」
「中等部1年の小日向雄真は、今こちらにおりますか?」
突発的な事態に慌てふためく杏璃ちゃんをかばうように、私は冷静かつはっきりと問いかける。
「あぁ、今月頭からうちに来た、御薙教授のご子息のことか……
して……その小日向くんとキミと、一体何の関係があるのかね?」
「申し遅れてすみません。私……普通科1年の小日向すももと言います。
今日は兄の雄真に……ちょっと、忘れ物を届けに来まして……」
勝手に名前を使っちゃったすももちゃんに、少しだけ心の中で謝る私。
「何と……キミがあの小日向くんの妹さんかね。
噂は聞いておるぞ。御薙教授がご子息を預けた先の娘さんだとか」
「はい……兄がいつもお世話になっております」
「そういうことなら話が早い。さ、こちらに来たまえ。もうすぐ補習も終わるところだろう」
どうやら先生は、私の話をうまく信じてくれたようだ。
こちらに手招きなどしつつ、私たちを校舎の奥へと案内してゆく先生。
(……うまく行ったじゃない、春姫……よくそこまで口が回るものね……)
後ろから杏璃ちゃんが、そっと私に耳打ちする。
(えっと……実はちょっとだけ……ホントにそうだったらいいのにって思ってたんだ)
(なぁるほどねぇ……んふふ……何かもうすっかり恋しちゃってるって感じ?)
(ちょ、ちょっと杏璃ちゃん……こんなトコロでからかうのはやめてよぉ……///)
何やらこぼしつつ、先生の後をついて行こうとしたその時。
「あら、雄真くんにこんな大きな妹さんがいたなんて……初耳だわね」
「!!!!」
後ろから聞こえた嫌に聞き覚えのある声に、私たちは思わず振り返った。
「み……御薙……先生……」
「そもそも雄真くんの妹さんは、今高等部1年だったと記憶してるんだけど……
私の記憶違いだったかしら?」
「……」
御薙先生の言葉に何も返せず、ただ冷や水を浴びせかけられたかの如く凍りつく私たち。
「み、御薙教授? まさかこやつらは……ご子息の妹さんではないと……」
「二宮教授……あなたはまず自身の術師としての観察眼を養うべきね。
これだけの魔力を秘めた人間が普通科を名乗り侵入している地点で、何かおかしいと考えないと」
「はっ……し、失礼致しました……」
御薙先生の凛とした忠告に、二宮教授と呼ばれたその人もまた私たちと同じように凍りつく。
「で? 自覚はしているはずよね……
私との約束を無断で断った挙句、本来立ち入りを制限されているはずの中等部への侵入を図る。
それがどれほど重い罪なのかを」
「……」
言葉こそ穏やかだが、体は明らかに殺気を放っていた。
抗えば、例え教え子とて容赦はしない……
先生の火をも凍てつかさんばかりの威圧に、胸の奥底が徐々に凍りついてゆくのがわかる。
「そもそも私は約束したはずだけど? 転校初日から10日間は会ったらだめだって……
これでも私は精一杯、貴方達の心情を汲んであげたつもりなんだけど……」
「ふぅっ……っ……」
杏璃ちゃんががたがたと震えながら、必死に私の肩にすがりつくのがわかる。
人の奥底に眠る原初の恐怖をおびき出す、先生の冷たい殺気。
並の人間ならその場にいるだけで、我を失い狂ってしまわんばかりの気力……
(これが……御薙先生……)
……今まで私は、先生の実力を侮っていたのかも知れない……
彼女は……初めから……私たちが抗うべき存在ではなかったのだ……!!
こんなこと……もっと早くに知れていたら……どんなにかよかったか……
「仕方ないわね……私もこればっかりは、あまり使いたくなかったんだけど……」
御薙先生は目を閉じ、私の前に陣を展開する。
「エル・アムダルト・リ・エルス……」
涼風が、私たちの全身を吹きぬけた。
よく晴れた冬の朝にも似た、すがすがしくも冷たい風……
「ディジーノ・ラ・アグノシス」
「!!!」
世界が、ぴんと光を放つのを感じた。
一瞬の魔力の奔流の後、あたりは水を打ったように静かになった。
「先生……今一体、何を……」
「簡単な認識阻害魔法よ。たった今から雄真くんは、貴方達のことを一切認識できなくなったわ」
「!!??」
私は頭の中が、さっと白くなるのを感じた。
「これから雄真くんは貴方と会っても、貴方のことを同級生の神坂春姫とは認識できない。
そう……たった今会ったばかりの、どこかの赤の他人としか認識しないでしょうね」
「そんな……先生……嘘……」
「貴方達が悪いのよ? 貴方達が私の言うことをちゃんと聞いてくれないから……
我慢してちょうだい。これも雄真くんと、貴方達のためなのだから」
「嘘……だよね……先生……雄真くん……」
口角が、引きつって動かない。
頭がふらふらして、まともに前に進むことすらままならない……
それでも……それでも。
私は一縷の望みをかけて……雄真くんを求め校舎内を徘徊する。
……やがて私は廊下の向こうに、今しがた教室から出たばかりの雄真くんを発見した。
「雄真……くん……っ!!!」
数日ぶりに会えた、愛しいその姿……
顔も、体も、服装も……全てが大好きな雄真くんの姿……
「久しぶり……だね……雄真くん……」
引きつった笑顔のまま、私は何とか平静を保って雄真くんに挨拶する。
「……?」
「覚えて……る? 私だよ……同じクラスの、神坂春姫だよ……?」
精一杯、雄真くんの声が聞きたくて。
時折遠のきそうになる意識を必死につなぎとめつつ、私は雄真くんに問いかける。
……だけど。
「……キミ、誰……?」
「!!!!!」
……世界が崩れるって、きっとこんな感じなんだろう。
あまりに非情な雄真くんの一言に、私はがくっと力なく膝を落とす。
「悪いけど、俺……急いでるから……じゃ」
廊下を駆け抜けてゆく雄真くんの音すらも、どこか遠く聞こえて……
そこからもう、何も見えなかった。
何も……考えたくなかった。
ただ今は……拭いようのない喪失感に……ひたすら、涙を流すほかなかった。
「……ひどすぎる」
隣に立った杏璃ちゃんが、唇を噛みしめながら言葉をこぼす。
「春姫が一体先生に何をしたって言うのよ!!!
春姫は……春姫はただ……大好きな友達に会いに来ただけじゃない!!!
それなのに……こんな仕打ちって……ひどすぎるよ……あんまりだよっ!!!!」
「……『友達』と思ってるのは、果たしてどっちの方かしら」
「!!!!」
先生の冷徹な一言に、思わず言葉を詰まらせる杏璃ちゃん。
「今はそれでもいいかも知れない……
だけど時が経てば……彼女はきっと、雄真くんなしでは生きていけなくなる……
それはきっと……互いのために、悪影響しか及ぼさなくなる」
「だけど……だけど……だからって!!!」
「勘違いしないで……私だって本当は、こんな魔法なんて使いたくない……
だけど……仕方ないのよ。これも全部……雄真くんの……みんなのためだから……」
「っ……!!!!」
杏璃ちゃんは一瞬だけ、御薙先生をぎらりと睨みつけ。
未だ自我の戻らない私を肩に抱え、その場を駆け出して行った。
「あたしたちは……絶対……諦めないから!!!
雄真はいつまでも……あたしたちの……友達なんだから!!!!」
「……」
先生は、止めなかった。
ただ……先程までの冷たい空気とは違う……寂しさと憂いを秘めた空気。
先生のその表情が、何を意味しているのか……私たちには、わからなかった。
「……ふぅ」
本日分の文献調査を終え、コーヒーで一服入れる私。
……正直、私は迷っていた。
本来ならば私は親として、息子たちの作るコミュニティを尊重してやるのが理想なのだろう。
そういう意味では、彼女達の意見もあながち間違ってはいないのかも知れない。
第一彼らの年代にとって、4年という月日がどれほど重いものであるかは……
私が一番、よく理解している。
だけど……
(それじゃきっと……雄真は……迫り来る荒波には決して勝てない)
自身、よく知っていた。
魔法学は、ここ数十年の間でにわかに進化を遂げた全く新しい学問体系である。
魔法についてはまだまだ解明されていない部分も多く、教育体系もまだまだ整っていないのが現状だ。
当然……世間の理解も昔よりはよくなっているとはいえ……まだまだその存在を疎んじる声も多い。
中には魔法使いと言うだけで忌み嫌う人間も少なくはないだろう。
そんな中……今のなあなあな人間関係をだらだらと繰り返せば、
いざという時誰も身を護ってはくれなくなる。
そしていずれは……社会から孤立し、切り離され……今よりもっと辛い人生を歩むことになる。
「……」
私は、そうやって何人もの同僚が社会の軋轢に潰されていく様を、ずっと身近で見守ってきた。
いつまでも、ずっと一緒にいたい……
そんな淡い恋心で切り抜けられるほど、ここは甘い世界じゃないのだ……
(そう……全ては雄真のため……雄真をこの世界で立派に生き延びさせるため……)
半ば自分に言い聞かせつつ、私は明日の分の教育カリキュラムに手を伸ばした。
そこへ。
「あらぁすーちゃん……こんな遅くまでお仕事なのぉ?」
凛と静まった空気とは明らかにちぐはぐな声が、扉から聞こえてきた。
「理事長……って、そう呼ぶのも野暮な話ね。どうしたのかしら? ゆずは」
顔を出したのは、学園の理事長にして世界最高の予言術の使い手……高峰ゆずはだった。
「どーもこーもないわよぉ! すーちゃんここんところずーっと難しい顔してるもん」
「ゆずはは相変わらずよね。今日はもう何杯飲んだのかしら?」
「えっと、ひとーつ……ふたーつ……うふっ、たーくさん♪」
「その分だと、さしずめスコッチ1本まるごとってとこかしら?
あなたその調子だと、いつか本当に破産するわよ」
「だーいじょうぶよぉ! その時はまたすーちゃんにおごってもらうから♪」
ほろ酔い気分で底抜けに明るい、ゆずはの表情。
そんな彼女の笑顔を見るにつけ、少しずつ心の中がほぐれてゆくのがわかる。
「……ところでさぁ、すーちゃん……」
「何かしら? ゆずは」
やがてゆずはが私の隣に座り、話題をふり始めた。
「すーちゃんの息子……ほら、ゆーまくん……だっけ?」
「あぁ、雄真のことね……それがどうかしたのかしら?」
「ひどいよねーすーちゃんも。あんなかわいい子を、千尋の谷に突き落とすようなことして」
「あら、人聞きが悪いわねゆずは。あれはちゃんと雄真のことを思って」
「本当に、そうなのかしら?」
「……」
ゆずはの核心に触れるような一言に、私は一瞬黙りこんでしまう。
「すーちゃんたらいっつもそーなんだから。
いっつも二言目には雄真くんのため、雄真くんのためーって……
まるで何だかそう言ってないと、自分のやってることに自信が持てないみたい」
……見透かされてる。
私が雄真に密かに寄せている、様々な野望の数々……
「そもそも中等部に移ったからって、何もかもうまく行くとは限らないんじゃないかなー?
早くも不穏な影が3つも、雄真くんの周りに忍び寄ってるし」
「……多少の障壁は覚悟の上よ。このくらいの試練、彼にもちゃんと超えてもらわなきゃ」
「すーちゃん、また雄真くんって言ってるー」
「……」
私は肩をすくめ、大げさに溜め息をついてみせた。
「……確かにあなたの言うとおりだわ。
私はあの子を、世界に名を残す偉大な魔術師に育て上げたい……
その為になら、あの子たちに一時的に疎まれようがさしたる問題じゃないわ」
「……ふーん」
未だ納得いかないといった目つきで、私のことを見つめるゆずは。
……相変わらず、妙に引っかかるものの言い方するのね……
彼女が半ば私の考えを的確に見透かしてるだけに、私もあまり大きな声が出せない。
「……そーんな顔しないでったらぁ!! ほら、せっかくの美人が台無し!!」
「生憎と私もいろいろと問題抱えていてね。あなたほど気楽には生きられないの」
「こーんな時間までお仕事してるからよぉ! たまにはぱーっと遊ばなきゃ」
そう言いつつ、彼女が袖の下から取り出したのは。
「……雀卓?」
出てきたのは、ごくありふれた携行用麻雀セットだった。
随分使い古されているのか、牌の角などあちこちすり減っている。
「呆れたわね……学校の研究室で雀卓広げる教師なんて、初めて見たわ」
「別に生徒を巻き込んでるわけじゃないんだからいーでしょ?
ほら、私とすーちゃんの仲じゃない」
こんな歳になっても相変わらず天真爛漫な彼女の態度に、ふと私は心の奥がほぐれてゆくのを感じた。
思えば、昔からそうだったわね。
肩肘張って生きようとする私の横を、いつも音羽とゆずはの2人がうまくかき乱してくれて……
「……わかったわ。しかしお互い立場もあるから、掛け金はなしよ」
「わーい☆ じゃあさっそく……」
私はしばし教諭としての立場を捨て置き、ゆずはとの真剣勝負に臨むのだった。
「……それで、ええん? ロンやな〜♪」
「……時々あなたが本気で何者なのか、わかんなくなるわ……ι」
トゥルルルルル……トゥルルルルル……
あたしの耳の中で規則的な音を響かせる、あたしの携帯。
彼女の携帯に電話をかけてから、もう20回は響く電子音……
(今日は……)
だがあたしはそれでも、辛抱強く待ち続ける。
(今日こそは……出てくれるわよね……春姫……)
祈るような、すがるような気持ちで……ただひたすら、彼女の応答を待つあたし……
30回……40回……50回……
だがそれでも、彼女からの応答はなく……
「……」
ピッ
あたしは力なしに、その携帯を切る他なかった。
(大丈夫なの……? 春姫……)
嫌な予感が、あたしの胸を支配していた。
あれからもう3日だ。
あれからずっと、あたしは彼女……春姫の声を聞いていない……
……そりゃそうだ。
自分の人生を賭すまでに愛した男の子に、きっぱりと自分の存在を否定されたのだ。
それこそ……今までの普通科での生活など一切なかったかのように。
あたしは初恋もまだまだだから、その気持ちを察するには経験が足りないけど……
それでも……それが彼女にとってどれだけ大きな意味を持つのか……
今の春姫を見れば、嫌というくらいわかる。
(……言わないわよね……)
彼女にとって、あたしにとって……一番最悪なケース……
(魔法、やめるなんて……言わないわよね……)
嫌な胸騒ぎを覚えつつ、あたしは学校へ行く準備を整えるのだった。
(……あれ……)
目を開ける。
早朝にしては妙に明るい光が、カーテン越しに降り注いでくる。
(今、何時……)
私はふと、傍らに置いていた目覚まし時計に目を向けた。
――10時15分。
普通ならば、とっくに2時限目が始まっている時間である。
(……また……寝過ごしちゃったんだ……私……)
別段、後悔もない。
ただ……こんな時間まで無為に寝過ごしてしまった自分に……少しだけ、嫌悪感を覚える。
「……」
私はふと、その携帯を開いて中を検めてみる。
『不在着信 10件』
その内訳は、学校からの連絡が数件と……あとは全部、杏璃ちゃんからのだ。
(杏璃ちゃん……)
杏璃ちゃんが私を気遣って、いっぱい連絡をくれていることは明白だった。
だけど……
それに答える気力は、私には残ってなかった。
「……」
体中、いやにだるい。
胃がめくれて……むかむかと焼けつくような痛みをくれる。
肩も……手足も……まるで自分のものじゃないみたいに、言うことを聞いてくれない……
(何だったんだろう……私って……)
いつもいつも、私は頑張ってきた。
思い出のあの男の子に、少しでも近づきたくて……
私の胸に眠るいっぱいの宝物を、いつまでも大切に輝かせておきたくて……
来る日も来る日も休むことなく、あの呪文を唱え続けた……
「……」
こうなるために、私は頑張ってきたのかな……?
私の追いかけてきた夢って……こんなにも簡単に崩れ去っちゃうものだったのかな……?
「……雄真くん……」
取り出したのは、いつか行ったお花見の時の写真。
ちょっと戸惑いながらもカメラに笑顔を向ける雄真くんと、その隣で微笑む自分自身の絵。
それは本当に穏やかで、胸を締めつけるくらいいっぱいの幸せに満ちていて……
「……ゅぅま……くん……っ」
遠ざかってゆく幸せと、失ったもののあまりの大きさに……
私はまた、ぐっと体を縮こませるのだった。
「……で、神坂は今日も欠席……か」
心底心配そうに溜め息をつく先生。
春姫の欠席騒ぎは、思いの外回りに衝撃を与えたみたいだ。
……無理もない。
瑞穂坂始まって以来の才媛と呼ばれた彼女の、突然の無断欠勤だ。
それも……既に3日も連続で。
これまで風邪だろうが体調不良だろうが1日たりとも遅刻せず出席を続けてた春姫が
これだけ長い間無断で休むのは、さすがに学園側にとっても憂慮すべき事態なのだ。
既に職員室では、連日連夜春姫とその両親にしきりに連絡をとり、
現状把握に勤しむ先生たちの姿が見受けられる。
そして、春姫の一番の親友だったあたしも……何度か先生に事情を尋ねられていた。
……無論、答えられるわけなんてない。
彼女が……春姫が……たったひとりの男の子のせいで再起不能なまでに落ち込んでるって……
言いたくなんてないし、認めたくなんてない。
……そう。彼女はこんなことで負けるような弱い女じゃない。
いつかきっと実習の席に現れて、ムカツクくらい立派な魔法を披露してくれる……
そうでしょ? 春姫?
今のあんたを実力で打ち負かしたって、何の得にもならないじゃない……!!
(……早く帰って来てよ……春姫……!!)
春姫の無事を祈るがあまり、その日の授業は全然耳に入らなかった。
春姫の無断欠席の報は、生徒達の間にも波紋を広げていた。
常に自分たちの先をリードしてきた春姫の突然の欠席に、ある者は失望し、ある者は心配に胸を痛め……
またある者は、この隙に瑞穂坂一の座を我がものにせんと胸を躍らせていた。
(……)
あたしも端から見れば、その胸を躍らす一員に映るのだろう。
そりゃそうだ。
実質実力No.1だった彼女がいなくなれば、
それまで2番手に甘んじてたあたしがトップに躍り出るのは至極自明の理だ。
今まで何度も春姫を打ち破ってトップに躍り出んと公言してたあたしにとって、これ以上のチャンスはない。
……だけど……
あたしはそんなことを望んだんじゃない!!!
いつかちゃんと正々堂々勝負して……そして春姫の実力を認めた上で、あたしがトップに立つの。
それまで……あたしがちゃんと春姫を打ち負かすまで……
春姫は絶対、誰にも負けちゃいけないんだから……!!!!
「……しかし意外だよねー……あの神坂さんでも無断欠席とかするんだ」
「まぁ神坂さんも、所詮ひとりの学生だしね……
何だか神坂さんもあたしたちとあんまり変わんないんだって、ちょっと安心したかも」
折りしもあたしの後ろから、同級生の子たちが春姫のことを噂する声が聞こえてくる。
聞き飽きるくらい聞いてきた、自分勝手に捏造された春姫の噂。
今回の話も、どうせろくな話じゃないだろう……
あたしはその話を回避すべく、その場を立ち去ろうとした。
が。
「でもここだけの話……神坂さんの無断欠席って、とある大失恋がきっかけなんだって!」
ピクッ
その言葉に、思わず耳を傾けるあたし。
「えーウソー! あの神坂さんが失恋!? その話すっごく聞きたい!!」
「何でも神坂さんには、子供の時から心に決めてた男の子がいて……
その男の子に巡り会えたのも束の間、その運命の彼には既に好きな人がいたんだって!!」
「それってさー……ひょっとして、こないだひーちゃん達が噂してたあの人のことじゃない?」
「すごいよねー!! あの神坂さんを振れる男の子って、きっとすごいお坊ちゃんだよ」
まるでワイドショーの芸能人でも語るかの如く、好き勝手に噂話にふける彼女たち。
……何も知らないくせに……
春姫の気持ちなんて……これっぽっちもわかってないくせに……
「それにしても、今回ので一番得したのって……やっぱ柊さんじゃない?」
(っ……!!!)
一番聞きたくない言葉が、彼女たちの口から発せられた。
「そーだよねー……ひーちゃんずっと、神坂さんに勝ちたい勝ちたいって言ってたもんねー。
神坂さんが無断欠席になって、今頃飛び跳ねて喜んでたりして!」
違う……
「そーだよねー……柊さん、こんなことでもなきゃなかなかトップに立つなんてできないし」
そんなこと……あたしは……望んでなんか……!!!
「……馬鹿にしないでくれる?」
「!!?」
あたしは思わず、彼女たちにパエリアを突きつけていた。
意外な珍客の登場に、彼女たちも思わず泡を食ったような表情になる。
「ひ、柊さん……聞いてたの? 今の……」
「や、やだぁひーちゃん……今のは冗談に決まってるじゃん……」
……最初は、抑えるつもりだった。
春姫が学校に戻るまで、精一杯大人でいるつもりだった。
だけど……やっぱりダメだった。
春姫のことを……自分自身のことを……ここまで馬鹿にされて黙っていられるほど、私は大人じゃなかった。
「悪いけど……春姫はそこまでプライドのない女じゃないわ。
春姫の永遠のライバルであるあたしが言ってるんだから、間違いないわよ」
「ひ、ひーちゃん……今のはただの噂話じゃん……
神坂さんの本当の欠席の理由なんて、あたしたちじゃわかんないよ」
「だったら憶測でとやかく言わないでくれる?
どうせ春姫の気持ちなんて……あんたたちにはわかんないんだから」
「……柊さん……」「ひーちゃん……」
あたしのあまりに必死な態度に、2人がさっと引いてゆくのがわかる。
……当たり前だ。
彼女の言うとおり、これはただの噂話じゃん……
なのにあたし……何でこんなに必死になってんのよ……
何でこんなに……腹が立って仕方ないのよ……!!
「とにかく……春姫は戻ってくるわ。絶対。
そして帰ってきたら改めて……あたしの実力を証明してやるんだから!!!」
「あ、柊さん……」「ひーちゃん……!!」
2人の制止する声も聞かず、あたしはその場を駆け出して行った。
嘘だよね……春姫……
この程度で魔法諦めちゃうような、弱い女じゃないわよね……!!!
「……オーフェンダムっ!!!!」
高く、あたしの詠唱が響く。
同時に生み出された魔力の弾が、森の地面をえぐって駆け抜ける。
「オーフェンダム……オーフェンダム……オーフェンダムっっ!!!!」
やり切れない気持ちを、何かにぶつけずにはいられずに。
低下する魔力も気にせず、あたしは無我夢中で魔法弾をぶっ放してゆく。
「あぁっ……ぁぁ……はぁ……っ」
やがて一度に出せる魔力の限界を超え、息つくあたし。
森の一部が……見る影もないくらい、無残に破壊しつくされている。
(……春姫……)
あたしはふと、春姫の唱える再生魔法をその光景に重ねていた。
攻撃魔法や戦術の組み立てなど、基礎戦闘能力についても彼女は相応のものを持ってるけど……
一番凄いのは……やっぱり再生魔法だった。
どんなに無残に崩されたものでも、春姫がソプラノを一振りすれば……たちまち元の姿を取り戻しちゃうのだ。
春姫のライバルであるあたしでも……その実力だけは、素直に凄いと思える。
(春姫だったら、きっとこのくらい……簡単に直しちゃうよね)
あたしはその光景に向かって、パエリアを構え……
「オン・エルメサス・ルク・アルサス……」
淡く、青白色に輝く眼前の光景。
「アスターシア・アウク・エル・アムンマルサス……!!」
その光は薄く辺りを覆い、無残にぶち折れた木の幹をふわっと浮き上がらせ……
「!!!」
そのまま、力なくかき消えた。
残ったのは、魔法をかける前と何ら変わらない瓦礫の山……
「……っ……!!!!」
あたしはやるせなくなり、思わず両手で地面を殴りつけていた。
「何で……何でできないのよ……あたし……!!!!」
……自分の無力感が、ひどく悔しかった。
春姫の窮地に何もしてやれない自分が……ひどく腹立たしかった。
このまま……あたしは春姫を失うの……?
そしてあたしは目標を失ったまま、のうのうと瑞穂坂No.1の座に居座ることになるの……!?
(……そして瑞穂坂学園魔法科は、史上屈指の魔力の持ち主だけでなく、才媛二人までも失う訳ね)
脳内に響き渡る先生の言葉。
何が学園側の損失よ……
もう既に嫌って程、損失は被ってるじゃない……!!!!
「……どうすんのよ……これ……」
完膚なきまでに打ち崩された、森の一角……
それがまるで、あたし自身の心をも表してるようで……
切なかった。苦しかった。
自分の力をどこにぶつければいいのか、全然……わからなかった。
と、そこへ。
「……ここにいたか、柊杏璃……!!!」
妙に聞き覚えのある声に、あたしはふと振り返った。
今更だが支援
「式守……伊吹……!?」
「見つけたぞ……柊杏璃……では、さっそく行くぞ!!!」
「え? ちょ、ちょっと待ちなさいよ伊吹!!!」
あの小生意気な伊吹がここまで狼狽してるなんて……一体何があったって言うの?
「てゆーか、いきなりついて来いって言われてもわけわかんないわよ!!!
連れてくならせめて理由くらい言いなさいっての!!!!」
「話は後だ……とにかく、中等部……あそこは危険だ!!!」
「中……等部……?」
伊吹の言葉に、あたしは一瞬戸惑いを隠せなかった。
中等部って……雄真が編入された、あの中等部……?
「まさか……あんたの用事って、雄真のこと?」
「まぁそんなところだ……とにかく行くぞ柊!!!
あの女……明日香の奴を、このまま野放しにしておくわけにはいかぬ!!!」
未だに話は見えてこないけど……
とりあえずわかったことは……今まさに雄真に危機が迫ってるってこと……
「……それなら話は早いわ。どこへ行けばいいの、伊吹!!!」
「中等部の教室だ!!! とにかく、ついて来い柊!!!!」
あたしたちは高まる緊張感を胸に、中等部へと向かうのだった。
127 :
温泉の人:2006/11/20(月) 21:51:34 ID:LIyohTDp0
まず最初に。ごめんなさい皆さんorz
本編がせっかくコメディ路線でやってるのに、何でこんな鬱展開にしてんだ自分;
最近こちらにもすごくレベルの高いはぴねすSS書きが増えて嬉しい限り。
皆さんからのバラエティ溢れるSSの数々、すごく刺激になります!!
私もまだまだ負けてはいられませんねw
てなわけで今回ちょっと鬱ネタに走っちゃったんで、次回はあまあまな話で。
今のところ春姫とUMAとの魔法稽古で、勝った方が負けた方を好きに・・・って話考えてます。
もちろんむふふな展開もあるかも?なので、今しばらくお待ちくださいねノシ
乙ですー
うーむ、これはまた鬱シリアスに方向展開しましたな。読む方は結構戸惑ったり。
春姫がえらい目に。
つか、事情はあるにしろ、鈴莉って外から見たら「子供を捨てた親」と言う立場なので
なんかUMAと周辺の対応がちとやりすぎと言うか、がんじがらめと言うか……下手したら
メチャクチャ身勝手な措置では?
人物認識阻害なんて、音羽さんが聞いたらぷんぷん怒りそうな感じ。
>温泉の人
>>本編がせっかくコメディ路線でやってるのに、何でこんな鬱展開にしてんだ自分;
てか、麻雀のシーンで何気にネタしてるやんwwww
GJ。
・・・暗っ!(w そして、御薙先生酷っ!(ww 伊吹相手だったらどうなっていた事やら。
でも、UMAの今回の動機って人を傷付けない為の制御が第一目的で、
追加で人助けが出来たらいいなあぐらいじゃなかったっけ。
進路まで決めているおかーさま空回りしているような。
投稿乙です。
上手いです。上手すぎますよ温泉の方。
特に不幸展開がいいですねえ。春姫と杏璃の不幸っぷりに背筋がゾクゾクしますよ。
……でもこれ、やけに気になるところで切れてますね。
続きが気になる。
>>100 100様、有難う御座います。
>校舎と周囲の学生は無事か!?
学生は兎も角、校舎は無事ではありません。秘宝事件冒頭以上の大破壊です。
……さて、伊吹と小雪が遭遇する少し前、高等部二年の教室を訪れようとする二つの影があった。
「御免ね、葵ちゃん。わざわざ案内してもらっちゃって」
「いえ、不慣れな方を案内するのは当然のことですから」
雄真と葵である。
実は春姫に会う為に彼女のクラスへ行こうとしたのだが、勝手が分からない為、こうして葵に案内して貰っているのだ。
「雄真さんは、神坂先輩とお知り合いなのですか?」
と、葵。
中等部一年の葵ですらその名を知るほど、春姫は有名人らしい。
「そうだよ。散々お世話になっておきながら、こんなことになっちゃったからね。これから謝りに行くんだ」
雄真は、頭をかきつつ何所かぼやく様な口調で答えた。
とはいえ、一体どんな顔をして会ったら良いものやら見当もつかない。
――取りあえず、謝って謝って謝まりまくるしかないだろうな〜
転科前の夏休み、雄真は春姫にさんざんお世話になった。
……そりゃあもう、頭が上がらないほどに。
夏休みの間、春姫は三日とおかず雄真に会い、魔法科での注意事項やら何やら色々教えてくれたものだ。
が、貴重な夏休みを割いてまでして教えてくれた情報、その大半は高等部ではなく中等部に転科したことにより、無駄となってしまった。
……本当に、春姫には悪いことをしたと思う。
何しろ、結果として春姫に無駄骨を折らせた上、騙したことにもなるのだから。
故に、お詫びの意味も込め、こうして態々やって来たのである。
「こんにちは〜 春……神坂さんいますか?」
教室の生徒達は、見知らぬ者――それも中等部生――の突然の訪問に一瞬不審の目を向けるが、直ぐに男子生徒の一人がやって来て応対してくれた。
「君達は?」
「あ、中等部一年の小日向雄真と御門葵です。
神坂さんに用事があって」
「ああ、君が小日向雄真くんか」
雄真が名乗った途端、最初の事務的な口調が柔らかく友好的なものへと変化する。
「?」
初対面の相手にやけに親しげな態度を示され、雄真は首を傾げた。
それを察し、男子生徒は苦笑しつつ訳を教えてくれる。
「ああ、失礼。君の話は神坂さんと柊さんから良く聞いてるよ。
だから不思議と初対面の気がしなくてね。
……何せ、クラス中に触れ回っていたからねえ」
「はあ……」
雄真も男子生徒同様、苦笑いで応じる。
春姫は兎も角、杏璃はどんな噂を流していたものやら……
「しかし、うちのクラスにこれなくて残念だね。
二人とも、君が来ないと知って大層落ち込んでいたよ?」
「仕方ないですよ。それに、正直中等部でもついていけるかどうか」
雄真は彼の言葉を社交辞令と受け取り、軽く返す。
(実際、葵の魔法を見て早くも先行きを不安視してもいるのだ)
「そんなことないさ! だって君は天才なのだろう?」
「は? 違いますよ!?」
相手の『天才』発言に、雄真は目を白黒させて慌てて否定する。
……本当、魔法科に来てからというもの、今まで縁も縁も無かった称号のオンパレードである。
「しかし、あの二人に認められるとは大したものだよ?
特に柊さんからのライバル認定は優秀さの証、勲章みたいなものさ」
が、男子生徒は大真面目だ。
まあ無理も無い。
春姫は魔法科全体で見ても群を抜く実力者であるし、杏璃とて三位以下をぶっちぎりで引き離して次席の地位を不動のものとしている。
要するに彼女達は、学年では飛びぬけた存在、ということだ。
その二人がああまで褒めるというならば、誰しも『小日向雄真は天才だ』と思うだろう。
雄真は、魔法科における二人の存在の大きさをあらためて実感した。
「買い被りですよ。俺にそんな才能は無いです」
が、それとこれとは話が別である。
後で『期待外れ』なんて陰口叩かれたら敵わない。
雄真は、後で二人を小一時間程問い詰めようと心に決めつつ、あらためて自分の才能を否定した。
「それに、君は御薙教授の息子さんなのだろう?」
「! 何故それを!?」
何故だ? 何故ばれた!?
秘密にしておこと決めていたことをあっさり暴露され、雄真は狼狽する。
「……いや、柊さんがクラス中に吹聴して回っていたよ?」
「杏璃〜!!」
口止め料、とかいって夏休み散々荷物持ちとして連れまわした挙句、ジャンボパフェまで奢らせた癖に!
「今、杏璃は何処に!?」
直ぐに制裁を与えなければならない、と杏璃を探す。
「柊さんなら、君達より前に訪ねて来た中等部の子を、神坂さんと一緒に何処かに『連行』して行ったよ。
確か、君達と同じ一年だと思ったが……」
「……『連行』ですか?」
随分穏やかでない表現に、首を傾げる。
「そう表現したほうが、その時の状況を良く表していると思うね」
額に汗を流しつつ男子生徒は答えた。
「杏璃なら分かるけど、春姫が?」
そんな状態の春姫が想像出来ず、さかんに首を捻る。
「……いや、君が驚くのも無理は無い。
僕達もあんな神坂さんは始めて見た」
「…………」
見てはいけないものを見た、という様な表情で話す男子生徒だが、どうも雄真には今ひとつ信じられない。
故に、話半分で聞く。
そして誰か他に知り合いは……と教室を目だけ動かして見渡した。
が、誰も見知った顔がいない。
「そういえば、信哉と沙耶さんは?」
偶然か? と流石に疑問を抱きつつ、取りあえず聞くだけ聞いてみる。
「あれ? そういえば、さっきまでここにいたのだけれど……
おかしいなあ、特に上条くんの方は、とても動ける様な状態じゃあなかったのだが」
……雄真の接近を感知し、慌てて逃げ出したのだ。
「? 信哉、どうかしたのですか?」
「一年の式守さんに、重力魔法を喰らったのさ。
……しかし、流石甲種特待生だね。
マジックワンドも使わずに、あれ程の短詠唱であんな高度な魔法を発動するなんて」
感に堪えない、といった表情で話す。
彼は、魔法式理論に優れており、そこを見込まれて一芸入試で入学したのだ。
その彼から見ても、伊吹の魔法式は素晴しく美しいものだった。
「はあ……って! 伊吹も来たのですか!?」
「ああ、君に合いに来たらしい。彼女からも注目されているなんて、凄いな。
君が中等部に転科したと聞いて慌てて駆け出していったから、君のクラスに行けば会えるのではないかな?」
「……そうですね」
もし明日香と一緒になったら……と想像し、背中に冷たいものが流れる。
――あの二人、如何考えても『混ぜるな! 危険!』だよなあ。
巻き込まれたら敵わないので、なるべくギリギリに帰ろうと心に決める。
――クイクイ。
「有難う御座いました。では」
――クイクイ。
「ああ、君も大変だろうが、頑張ってくれ」
そう言って、彼は手を差し伸べる。
「貴方も」
雄真と彼は固く握手を交す。
……もし高等部二年に転科していれば、彼とは友情を分かち合えたかもしれないな、と思いながら。
――クイクイ。
「……何かな? 葵ちゃん?」
先程から、何やら盛んに自分の服を引っ張る葵に、雄真は不思議そうに尋ねる。
「ははは、仲が良いなあ」
そんな二人を見て、男子生徒は微笑ましそうに笑った。
「いやあ、クラスメートですから」
「ははは、隠さなくても良いさ! 君は同志なのだろう?」
「……は?」
いきなりの同志認定に首を捻る。
「いやいやいや、言わずとも良いさ。僕にも、普通科に初等部生の恋人がいるからねえ」
「…………」
前言撤回。
……どうやら、彼とは永遠に友情を分かち合えそうに無かった。分かち合えてたまるか。
「あの!」
「!? ……ああ、御免御免。で、なんだい?」
思わぬ葵の大声に、雄真は些か驚きながら尋ねる。
「先程から、とても凄い魔力がこの校舎内で連続して発生しています」
「?」
「誰か凄く強力な魔法使いが、校舎内で戦ってるみたいです」
その性質上、魔法科校舎は強力な結界で覆われている。
進入防止、防音、対魔力……様々な結界が幾重にも張り巡らされているのだ。
故に、大概の魔法使いはこの校舎内では手も足も出ない。
が、その強力な結界をもってしても尚、抑えきれない程の魔力が発生している、と葵は訴える。
「逃げないと危険です!」
明日香の暴走時とは比べ物にならない程、緊張した声。
が、男子生徒は『何を馬鹿な』と言った風情で、端から信じていない様だ。
「気のせいじゃあないかい? 僕には何も感じないし、クラスの皆も何も感じていない様だよ?」
「でもっ!」
「……俺は葵ちゃんを信じるよ」
この子がこんなに必死になるのだから、本当だろう――雄真はそう判断した。
「雄真さん……」
「いやあ、お熱いなあ。しかし仮に彼女が正しいとしても、大丈夫だよ。
この校舎の魔法結界は相当な強度だからね……おや? まさか!?」
どうやら、他にも異様な魔力に気付く者が出始めた様だ。
彼女達が騒ぎ出したことにより、彼も漸く葵の言葉が真実だということに気付く。
(つまり、葵はこのクラスにいる誰よりも早く察知したことになる。
……主席と次席が不在とはいえ、高等部二年の誰よりも、だ)
「こっちに近づいてきます」
「マジですか!?」
何故、こうもピンポイントで不幸が!?
そう己の不幸を呪った瞬間、目の前の壁が崩れ出した。
「! 危ない、葵ちゃん!」
とっさに葵を抱えて跳躍する。
――ドサッ
「あいたた……ん?」
二人分の衝撃に軽く顔を顰めるも、ふと自分の前に人が立っていることに気付き、顔を上げる。
……そこには、険しい顔をした伊吹が立っていた。
「伊吹! もしかして、これはお前がやったのか!?」
「……小日向雄真、貴様何をしている」
――え〜と、小日向雄真→小日向の兄→雄真……って感じで友好度アップしてきたのに、いきなり初期状態に逆戻りですか?
どうやら豪くお怒りの様だ。
が、伊吹が何故ここまで怒っているのか、てんで見当がつかない。
……そこに何所からかひょっこり小雪が現れ、一言。
「流石は雄真さんですね〜 転科初日から、もう女の子一人ゲットですか?」
「? ……げっ!?」
指摘されて、初めて雄真は気付いた。
自分が、まるで葵を押し倒しているような体勢であることに。
「ごっごめん!」
「いえ……」
流石の葵も、顔が真っ赤である。
「……貴様には、節操というものがないのか?」
「伊吹! それはお前の誤解だ! 葵ちゃんとは別に……」
地獄の底から響く様な伊吹の声に、慌てて雄真は弁解する。
「え〜ありますよ〜 だってこの子可愛いですもの。ほらっ!」
「御願い、小雪さん黙って!?」
小雪の余計な一言一言に、雄真は寿命が縮む思いだ。
が、彼の必死の願いも小雪には届かず、更なる爆弾が投下される。
「でも良かったですね〜伊吹さん?」
「へ?」
一瞬、小雪が援護してくれるのか、と思ってしまった。
……所詮儚い期待に過ぎなかったが。
「だって、雄真さんに『そっちの気』があるなら、伊吹さんにも充分チャンスがある、ってことですよ〜」
――ブチッ!
あ、切れた。
その一言が止めとなり、伊吹から溢れんばかりの怒りのオーラが発生する。
そのプレッシャーは、明日香とは比べ物にならない
「貴様等全員……」
「い、伊吹? 話し合おう。暴力からは何も生まれないぞ?」
143 :
支援:2006/11/21(火) 22:26:28 ID:0OeML/hI0
多分無理だろうな〜と思いつつも、何とか説得を試みる。
……だって、死にたく無いから。
(明日香の時は、流石に死にはしないだろうと踏んでいた)
「問答無用!」
その言葉と共に、魔方陣が空中に出現する。
……それを見て、雄真は葵を抱えて逃げ出した。
「小雪さん! 何とかして下さいよ!?」
雄真は、自分の前を飛んでいる小雪に向かって叫んだ。
が、小雪は膠無く答える。
「無理です」
「何で!? 伊吹に対抗できる人なんて、小雪さん位のものですよ!?」
が、雄真の必死の頼みにも関わらず、小雪は首を縦に振らない。
加えて、どことなく拗ねている様にも見える。
「……雄真さんのせいです」
「?」
「雄真さんが伊吹さんに力を与えちゃったから、私一人では対抗するのが難しいのですよ」
「そんなこと知りませんよ!?」
全く身に覚えの無い言葉に、雄真は堪らず悲鳴を上げる。
正直、小雪の冗談に付き合っている様な余力は無いのだ。
「雄真さんは嘘つきです。 ……伊吹さんに、魔力をあげたじゃないですか」
が、小雪は頬を膨らませ、やはり拗ねた様な口調で尚も雄真を責める。
「意地悪しないで下さいよ、小雪さん! 俺、このままじゃあ本気で死にます!」
「……秘宝事件」
「へ……あ!? もしかして!!」
雄真の何かを思い出した様な口調に、小雪は初めて首を縦に振った。
秘宝事件の最終局面において、雄真は魔力回路が焼き付く寸前の伊吹に対し、自分の魔力を大量供給することによりその命を救った。
が、これには伊吹に思わぬ副産物を与えていたのだ。
「その雄真さんの魔力が、伊吹さんの魔力を増幅・補強しているんですよ。
……ほんと、雄真さんは規格外です」
呆れた様に、小雪は解説する。
……いや実際、とんでもないことなのだ。
秘宝事件で雄真が使った魔法は、『一人で大量の魔力供給をしなければならない』こともさることながら、『自分の魔力を相手の魔力と近いものに変換しながら供給しなければならない』というとんでもない神技を要求する。
これだけでも超高難易度魔法だというのに、その上対象者の魔力回路まで強化するとは……
支援
「ああ、だから式守先輩の魔法に、別の方の魔力を感じるのですか」
先程から黙りこくっていた葵が、会話に加わる。
葵は、先程から伊吹の発する魔力と魔法に疑問を感じていたのだ。
伊吹の魔力には、『本人以外の魔力』が混ざり合っていた。
その『本人以外の魔力』は、伊吹の魔力の中にまるで血管の様に張り巡らされ、伊吹の魔力を増幅し、おまけに魔法式の穴まで塞ぎ、補強している。
……こんな現象、今まで見たことも聞いたことも無い。
いや、御伽話でならば似たような話しを聞いたことがあるが、しかしそれは……
「良く分かりましたね? 将来有望ですよ」
葵の言葉を小雪は賞賛する。
伊吹の魔力に雄真の魔力を感じたのは、一流の才能であることの証。
そしてただ漠然と感じるのではなく、雄真の魔力が伊吹の魔力に血管の様に張り巡らされていることがはっきり『見える』のは、超一流の証だ。
「さすがは雄真さんです。目が高いですね?」
「って、何故そこで俺の名が!? ……いやそれより今の話が本当だとすれば、今の伊吹は以前の伊吹では無いと?」
例えて言うならば、伊吹・改かはたまた真・伊吹か……
「今の伊吹さんは、エンジンにターボチャージャーを付けた様なものです。
ザクだと思って攻撃したら、緑色のグフB3だった様なものです。騙されました」
「……エンジンは兎も角、最後はいまいち意味不明なのですが」
て言うか、ザクって何?
「ぶっちゃけてしまえば、『こんな筈じゃあ無かった』ってことですよ」
「……それって、もしかして『ピンチ』ってことですか?」
「正解です」
魔法攻撃に対抗するには、大きく分けて三つの方法がある。
一つは、相手の魔法の綻び――必ずある――を突いて魔法式を破壊、魔法を無力化する。
一つは、相手の魔法を相殺する。
一つは、相手の魔法を防御魔法で防御する。
今までならば、魔力的にはやや劣っていたものの、小雪は技術的・精神的優越から互角以上に伊吹と渡り合えた。
が、現在の伊吹は雄真によって飛躍的にレベルアップしている。
故に、
魔力の綻びを突こうにも、雄真の魔力が伊吹の魔法を補強することにより難易度が増し、
魔法を相殺したり防ごうとしようにも、雄真の魔力が伊吹の魔力を増強することにより魔力差が広がっている。
……早い話が、『お手上げ』状態なのだ。
故に、こうして防御しつつ逃げている。
「だから、全部雄真さんが悪いのです」
「……小雪さん。もしかして、凄く怒ってます?」
さっきから気になっていたことを、恐る恐るぶつけてみる。
「そんなこと無いですよ? 伊吹さんに負けたり、契約がパーになったりしたことなんて、全然全く気にしてません。へっちゃらです。
だから雄真さんは、遠慮なく中等部で女の子を侍らせていてください」
「やっぱり怒ってるじゃないですか! 別に俺は、女の子を侍らせてなんかいないですよ! それに契約って!?」
「知りません。意地悪で嘘つきな雄真さんなんて、伊吹さんにやられちゃえばいいんです」
「死にますって!?」
さり気無くトンデモナイことを仰る小雪さん。
……どうやら伊吹だけでなく、彼女も相当怒っている様だ。
「では雄真さん、さようなら〜 もし生きていたら、また御会いしましょう」
「あっ卑怯者! 全てを俺に押し付けて逃げる気ですか!?」
別れを告げると、小雪はスピードを上げて飛んでいってしまった。
後に残るは、雄真と葵の二人だけ。
……そして、後ろからは雨霰と飛んでくる魔法攻撃と、鬼の形相の伊吹。
「待て〜!!」
とりあえず雄真に残された手段は、逃げて逃げて逃げまくることだけだった。
150 :
温泉の人:2006/11/21(火) 22:36:39 ID:KPBH67Ua0
私怨ノシ
「畜生! 何で俺ばっかりこんな目に!?」
その後、葵をお姫様抱っこで抱き抱えながら、伊吹の魔法攻撃から必死に逃げ回る雄真の姿が高等部中で目撃された。
……まあ多くの人間は、とてもそれ所じゃあなかったが。
SS投下終了。
御支援感謝です。ではまた。
152 :
温泉の人:2006/11/21(火) 22:49:49 ID:KPBH67Ua0
つかもうこれ勝てる奴いねーだろwwwwwwww乙です!
こんな洒落にならん事態においてもなおいじらしい乙女心発揮する先輩(;´Д`)ハァハァ
遅ればせながらレス↓
>>128 >>130 実際「やっぱり甘くない」第1話の冒頭で感じたのがそういう鈴莉の身勝手さでしたね。
口ではもっともなこと言って春姫や杏璃説き伏せてるけど、じゃあ自分は何なのかって。
ただ認識阻害はやりすぎたかなとw まぁ後悔はしてません。
>>129 ちゃんと気づいてくれた人がいたとはwwwwwwww
これだけのためにわざわざまつりさん使って積み込みロンで台詞確認しましたw
>>131(「甘くない」の方)
「甘くない」の方こそ、毎回話への引き込み方がうまくてびっくりですよーw
何か気になる展開で切っちゃいましたが、この話は続き書くつもりはないです。
放置するなり続き補完するなり、そこは読者の皆様にお任せするってことで。
ではではノシ
GJ
>そういえば、信哉と沙耶さんは?
ヤる前は上条さん、ヤった後は沙耶ちゃん、FDで沙耶ちゃん→沙耶
乙〜
パラレルが混じって、シリアスやらコメディやら何が何やら(笑
いやもう、伊吹にUMAの魔力加わってしまったら誰にも止められんでしょ。校舎穴だらけ(w
>その後、葵をお姫様抱っこで抱き抱えながら、伊吹の魔法攻撃から必死に
>逃げ回る雄真の姿が高等部中で目撃された。
ただでさえ有名だったUMAが、自分の知らないところでどんどん有名人に。しかも、ロリ付き(w
にしても、緑色のグフってまた分かり難い例えを(ww
155 :
ポレ:2006/11/21(火) 23:39:33 ID:/cl+sY6q0
流れぶった切ってスマソがパルフェとショコラを一気にクリアした
勢いでSS書いてみた。話やネタがガイシュツだったらスマソ
パルフェの玲愛Trueエンディングの話からです
火曜の夜、翌日はファミーユの定休日。本来ならかりそめの開放感に包まれるはずのこの日、
高村 仁は甚だ憂鬱であった―そう、今宵は悪夢の饗宴が待ち受けているから・・・
電車をおり目的地へと急ぐ二人、高村 仁と花鳥 玲愛はやや憂鬱そうに寄り添い歩いている。
どちらかというと仁のほうがより憂鬱な表情で玲愛のほうはそれほどでもない。
玲愛が何かと話しかけてくるが、仁はうわの空な返事ばかり返してきた。
「・・・仁、ねぇ聞いてる?」
「あ、ああ・・・」
「もうすぐキュリオに着くわね・・・」
「な、なぁ・・やっぱ俺は部外者みたいなもんだし参加しないという方向で・・・」
「 な ん か 言 っ た ??」
有無を言わさぬ玲愛の口調に圧倒される。
「まさか今更関係ないとか言わないわよね・・・まさかあの野獣の群れに私を一人置き去りにして
自分は一人のうのうと惰眠をむさぼるとか、わ・た・しの仁はそんなこと考えないわよね」
「は、はい・・・」
「 よ ろ し い 」と玲愛が小悪魔のような視線を向ける。
結局逆らえそうもない。もはやこの過酷な運命を受け入れるしかないと仁は悟った。
「お帰りなさいませ、旦那様、奥様・・・お待ちしてたんですよ、フフフフ♪」
彼ら二人の処刑場、キュリオ本店。意を決し扉を開いた仁たちを待ち受けていたのは、玲愛とは
一味違ったツインテールが印象的なメイドさんであった。
「こ、こんばんは・・・」
「ご、ご無沙汰してます・・・美里さん」
「やだ〜玲愛ちゃん、そんな他人行儀な〜。あっ、高村さん、遠路はるばるお越しいただき
ありがとうございます。今夜は楽しんでいってくださいね♪」
「は、はぁ・・・」
向こうは楽しめるだろうが、こちらは楽しめそうもないよなぁと仁はまたもや暗澹たる気持ちに
させられた。そもそも送別会なのに楽しめというのも変な話ではあるが・・・
「あーっ、やっときたか〜早く中に入りなよ」
活発できびきびとした動作が印象的な女性が声をかける。彼女は以前見覚えがある。
いつもの彼女には似合わず、今日はにやけ顔がとまらない様子だ。
―それも無理はない。仁は先日この女性の前でとんでもない失態を演じてしまったのだ。
(帰ろっかな・・・)
仁はますます憂鬱になってきたが、ここまできたからには覚悟を決めるしかない。
「あっ、玲愛、高村さん、お疲れ様〜」
今日の最大の要注意人物、川端 瑞菜。ここに来るまでにどうやって彼女を押さえ込むか玲愛と
何度も話し合ったものだ。そして出た結論―いちおう釘は刺しておくが最終的にはあきらめるしかない。
彼女の性格からあることないこといろいろと吹聴しそうだが、今更どうしようもない。
ただ、二人は瑞奈という名の北風から身を守り続けるしかない哀れな旅人でしかないのだ。
それはまるで禅の修業かと思われるような苦行となることは目に見えていた・・・
「あっ、瑞奈お疲れ。・・・ちょ、ちょっと話があるんだけどいい?」
「はいはい、お二人様ごあんな〜い♪さぁとっとと行った行った!」
瑞奈に釘を刺そうとした玲愛であったが、その企みは目の前の女性 ― 大村 翠にあっさりと
阻まれる。
「あっ、ちょ、ちょっと大村さん・・・」
仁は無駄な抵抗を試みる傍らの愛しき女性を見ながらため息をついた。
さあ地獄の饗宴の始まりだ。長い長い夜になりそうだ・・・
「みなさん、たいへん長らくおまたせいたしました!それではこれから花鳥 玲愛ちゃんの送別会を
はじめまーす」
そう、今日は玲愛の送別会。高村 仁とかいうどこぞの馬の骨に無理やり?引き抜かれた玲愛
との別れを惜しむ・・・という大義名分とはうらはらに実態は楽しく熱々のカップルを冷やかす会である。
ただでさえキュリオの老練な先輩方からみるといじりやすいキャラの玲愛に加え、キュリオ本店に
殴りこんで「玲愛をください!」となぜかバラさんに宣言してしまった伝説を持つ高村 仁との
黄金コンビは端からみるにあまりにもおいしすぎた。二人をからかうのが楽しみで仕方がないらしく、
キュリオ本店の精鋭スタッフ達はこの集まりに異様なまでの情熱と期待を傾けているようだった。
最初、仁はなぜ自分まで招待されたのかわからず、当然ながら一応部外者ということで固辞した。
しかし、百戦錬磨のキュリオ本店スタッフが獲物を逃すはずなどない。キュリオ2号店の結城 大介
とかいう店長から「どういう形であれ、うちのファミリーを引き抜くんだからきっちり落とし前つけにこいや!
来ないと認めん!!」
などという有難い手紙を受け取り(なぜか女性が書いたような字だったのが気にかかるが)、これまでの
経緯上出席せざるを得ないような雰囲気になってしまった。
また玲愛からも 「はぁ・・・どうせ散々からかわれるんだろうなぁ・・・。まさか私がこんなことになるだ
なんて誰も思ってもみなかっただろうから・・・あっ、そうだ!私一人よりも二人でからかわれるほうが
対象が分散していいわよね♪せっかくだし一緒に行きましょうよ。それとも、まさか私一人を生贄に
する気?仁はそんな事しないわよね?ちゃんと責任とってくれるよね」
などと脅しをかけられ、身から出た錆とはいえ「行かない」という選択肢を選ぶことはもはや不可能な
状況に陥ってしまったのだった。
さて、そんなこんなで無事始まった玲愛の送別会だが、こうしたことには驚異的なまでの情熱を
傾けるキュリオ本店の精鋭スタッフがよりによりをかけてセッティングしただけあって、本来しめやかな
はずの送別会にしては妙に華やかで、奇妙な会場となっている。正面の垂れ幕には
「高村 仁さん 花鳥 玲愛さん お幸せに」
などとまるで結婚式場みたいな文言が掲げられており、ますます異空間の装いを深めている。
そして当然ながら、宴?の主賓たる二人に対し、強豪店キュリオの猛攻はとどまるところをしらない―
「くーーっ、昔はあんなにツンツンしてた朴念仁の玲愛がまさかこんなことになるとはね・・・
かわいい顔してあ・な・た、やるもんだねと♪このこの〜♪」
いつもは頼れる先輩の大村 翠が激しく絡んでくる。今日は彼女にしては珍しく相当酒のまわりが早い。
採用時から何かと目をかけてきて自分の後継者(いろんな意味で)と見込んできた玲愛の門出(しかも自分よりも早く)
ということで感慨もひとしおなのだろう。
「お、大村さん・・・ペース早いですね・・・」
さっきから玲愛と仁は圧倒されっぱなしだ。
「玲愛さんには先をこされちゃいましたねぇ〜。一番意外な人に先を越されちゃいました」
とおっとり刀で桜井 真子が言う。なんだか彼女と話しているとこちらまでほんわかした気分に
なってくる。
「ほんとだよ・・・あ〜あ、うちも向かいにライバル店でもできないかなぁ。そうすればあたしにもなんか
ロマンスでも起きるかもしれないのになぁ」
と翠がニヤニヤと2人を横目でみながらからかう。
「あーあ、大介さんも高村さんみたいに私のこと奪いに来てくれないかなぁ・・・玲愛ちゃんいいなぁ」
などと真名井 美里もからかってるんだか本気なんだかよくわからないことを言い出し、玲愛はまるで
熟したトマトの様に真っ赤な顔であれこれと抗弁する。一方仁の方といえばハハハ・・・と乾いた笑いを
浮かべるしかできないでいた。
キュリオの女性陣の直接攻撃にたじたじの仁であったが、間接攻撃もまた油断のならないものがあった。
最大の要注意人物、川端瑞奈が仁たちとは少し離れた席で酔った勢いも手伝い、あることないこと
流言飛語を放つからだ。同じく要注意人物である3号店店長、板橋氏が多忙のため来られなかったのは
不幸中の幸いではあったのだが・・・
「それで〜、イブの夜、チャイムの音やら物音やらうるさくて廊下にでてみたらですね」
「わくわく」
「そわそわ」
瑞奈の話に、他の店員よりはかなり幼く見える女性と眼鏡がチャーミングな女性が熱心に聞き入る。
結城 すずと橘 さやかだ。
「玲愛と高村さんが廊下でチューしててですね。私もうホント困りました。しかも玲愛ったら私に気づいても
やめようとしないんです♪まるで見せ付けるかのように」
「はぁ。玲愛ちゃん大胆です・・・お、同い年なのに・・・」
「は、はわわ・・・そ、それからそれから?」
「ちょ、ちょっと瑞奈(///) な、何あることないこと言ってるのよ!す、すずさんも橘さんも鵜呑みにしない!」
「あっ、玲愛・・・ごめん、つい口が滑って・・・でも安心して。私は事実しか言ってないわよ〜」
「うむ、誠に興味深い話だな。川端君続けてくれたまえ」
女性陣の中にグループの総帥、結城 誠介氏もにこやかに交じる。
「ゆ、結城店長!か、勘弁してください・・・ちょ、ちょっと瑞奈〜」
「瑞奈〜、玲愛はあたしが抑えとくから、早く続き続き〜♪」
「ちょ・・大村さん、離して〜〜〜〜」
玲愛の悲鳴が響き、夜は更けていく・・・
玲愛の悲鳴をよそに、新郎こと高村 仁は一応安息の場所を見つけていた。
それは壁際。大介店長、榊原ら男性陣の集まり。そこでは驚くほど穏やかに時が進行している。
最初は例の手紙の文面などからキュリオ2号店の大介店長を怖い人だと思っておっかなびっくり
だった仁であるが、実際話してみると気さくで何でも話せる頼れる兄貴のような人だった。
今は亡き仁の実兄とは全然ちがったタイプではあるが。
「うーん、そんな手紙出した覚えないんだけどな・・・おおかた翠の仕業かな。もしかしてこんな字
じゃなかったか?」
「あっ、そうそうそんな字です!」
「やっぱ翠の字だな。あいつ昔俺の筆跡をまねて俺名義の手紙を偽造したことがあってな。
あいつの字も特徴的だからすぐわかる。まったくあの野郎・・・」
「なんだ、偽物ですか・・・とほほ」
「ははは、それにしてもバラさんから聞いたよ。玲愛ちゃんのためにうちに殴りこみに来たときの話。
いいなぁ、俺そういうの大好きだよ。まるで映画みたいだな」
「う、うう・・・ち、違うんです。ちょっとセリフを間違えただけなんです・・・」
「私の人生でも3番目に驚いた出来事でしたな。よもや店長に間違えられるとは・・・」
バラさんこと榊原氏がぼそりと語る。今日のご馳走は彼が腕によりをかけて作ったものだという。
以前義姉と食べに行ったトリトンホテルのディナーを凌駕するその味に、彼の凄みを感じる。
そして、なぜこんな人が、最近有名になったとはいえ、街の一喫茶店で働いているのか仁には
不思議でならなかった。
「まぁバラさんならここの店長みたいなもんだ。あながち間違いでもない」
「ぼっちゃん、何をおっしゃいますやら・・」
「ははは、それより、高村さん。あんたは確か大学休学中の21歳と聞いたが。」
「ええ、そうですが・・・」
「凄いな・・俺なんかそれぐらいの年のころはせいぜい親父のスネかじってたのが関のヤマ
だったのに、あんたはその年で起業し、自分の店を繁盛させてるんだからな。」
「いえ、そんな・・・皆ファミーユの仲間達のおかげです。俺一人では全然だめでした」
「いえ、そんなに謙遜しなくてもいいと思いますよ。人徳もまた店長の資質の一つですからな。
それよりも、高村さんはまだ大学生だそうですが、ファミーユも軌道に乗った今、これからどうする
おつもりですか。また大学生活に戻るのですかな?」
「・・・俺にはまだ夢がありまして」
玲愛以外には照れくさくてあまり話しにくい夢だが、なぜかこの二人の前では素直に話す
ことができた。玲愛と共に焼け落ちてしまったかってのファミーユを取り戻す夢を。
これからの彼の行き先を。
「そうか、高村さんもいろいろ苦労してるんだな・・・だからそんなにも強いのか。うん、俺は
応援するぜ!なんか困ったことがあったらいつでも俺に相談してくれ。できるだけ協力するぜ。
それと、玲愛ちゃんの事よろしく頼むわ。俺たちのファミリーだからな。
ま、あんたならきっと幸せにしてくれると思うけどな」
「結城さん・・・ありがとうございます」
「う、ううっ、お兄ちゃんと高村さんがなんか熱い会話を交わしてる。なんだか近寄れない・・・
高村さんと話したことないから話してみたかったのにな・・・」
「ううっ、からかいたいのにからかえない・・・く、悔しい・・・」
男たちの真剣な会話にいつもと違った壁を感じるすずと瑞奈であったとさ。
sien
そして、夜も更けていき・・・永遠かと思える宴もいつかは終焉のときを迎えるわけで・・・
なんだかんだいって今日は来てよかったなぁと仁が思っていると、そのときは唐突にやってきた。
「さて、宴もたけなわですが」
司会進行役の美里が、もはや当初の目的から激しく逸脱したこの送別会の終焉を伝える。
微妙どころじゃなく言葉の使いどころを間違えているのも天然ボケの美里らしい。
「そろそろ時間も時間ですので最後に新郎新婦に誓いのキスをしていただいて、お開きに
させていただきたいと思います。それでは高村さん、玲愛ちゃんよろしくお願いしまーす♪」
美里が悪戯っぽく非情なる宣告を行う。場は大いに盛り上がり、「キ・ー・ス!、キ・−・ス!」
などと大合唱が沸き起こり、キュリオの組織力の強固さをみせつける。
「ちょ、ちょっとみんな冗談でしょ・・・ね、ねぇ大村さん目が座ってるんですけど・・・あっ、板垣店長!
なぜここに・・」
「フフ・・・期待しているよ。君達の絆を見せてくれたまえ」
なぜか板垣店長も輪に加わり包囲を強める。仁と玲愛は完全に罠にはめられたことを悟った。
もはやこの場から無傷で逃れることは不可能。
「こ、これがキュリオ本店の真の恐ろしさか・・・」
仁はつぶやく。もはや退路はなく、道は前方にあるのみ・・・
「やっぱ・・来るんじゃなかったかな・・・」
後日、「ねぇねぇ、仁さん玲愛ちゃんの送別会どうだった?キュリオの人とうまくやれた?」と無邪気に
聞いてくる悠飛の言葉に何も答えず、黙々と半熟オムライスを作り続ける仁の姿があったのは
言うまでもない。
〜Fin〜
神降臨レベルでGJ!!!!
だっただけに最後の「悠飛」が惜しまれる……
つか「悠飛」って誰の事を言おうとしたんだ
家庭用のオリキャラかと思ったけどそれも違うみたいだし
仁をさん付けで呼ぶのっていたっけ?
ポレ様、投稿乙です。
思わず本編やりたくなりましたよ。
>>162 温泉の人様、有難う御座います。
>実際「やっぱり甘くない」第1話の冒頭で感じたのがそういう鈴莉の身勝手さでしたね。
この世界の鈴莉さんにとって、雄真は未だ10年以上も昔の子供のままなのですよ。
この鈴莉さんの思考(妄執とも言う)と、雄真の『力』がこのお話の柱です。多分、きっと。
……けど、シリアス路線やると話が暗くなり過ぎるので、コメディにしました。
>>163 163様、有難う御座います。
>ヤる前は上条さん、ヤった後は沙耶ちゃん、FDで沙耶ちゃん→沙耶
情報有難う御座います。呼び方は難しい。
この世界の沙耶は雄真を『小日向様』と呼んでいます。
ちなみに以前は『小日向さん』でした。何故かと言えば……
>>164 164様、有難う御座います。
>いやもう、伊吹にUMAの魔力加わってしまったら誰にも止められんでしょ。校舎穴だらけ(w
伊吹は沸騰し易い上、沸騰すると魔法式が荒くなりますから、そこを他ヒロイン三人がかりで突けばなんとかなる……かな?
>校舎穴だらけ
ニヤリ(意味不明)
>>155 GJ!
大介も仁も熱い男だよなー
>>167 由飛じゃね?
ルート外の時ってこの呼び方じゃなかったっけ?覚えていないが
170 :
ポレ:2006/11/23(木) 22:22:23 ID:jG1TDxKh0
>>166>>167 うはwwwヤバスwwwwと思って調べてみたら由飛の間違えですた_| ̄|○
勢いで書いてすぐ投稿したからその辺爪が甘かったかもしれない
>>168 出来の良さの割にはそれほど売れてない作品なのでぜひともやってみてくださいな
>>169 よく考えたら玲愛trueだと由飛は「仁〜」って呼び捨てになってるんだよな・・・(´・ω・`)ショボーン
それはさておきみなさん愚作にわざわざレスありがd
崩壊寸前の魔法科高等部校舎の前で、御薙鈴莉は呆然としていた。
「これは……夢? ……そうよ、これはきっと悪い夢……目が覚めればきっと……」
「すーちゃん、現実逃避はよくないわよー」
鈴莉に突っ込みを入れたのは『高峰ゆずは』だ。
瑞穂坂学園の理事長にして魔法使いの名門高峰家の当主であり、当代随一の予言術の使い手としても名高い。
……傍目には、とてもそうは見えなかったが。
(ちなみに鈴莉の学園における立場は、学園理事兼大学部魔法科学部長である。
要するに、全魔法科の総元締めであり経営陣の一員でもあるということだ。
ゆずはも同様だが、鈴莉はこの他にも幾つもの肩書きを持つ魔法使い界の重鎮なのだ)
「でも、見事に壊れちゃったわねー。伊吹ちゃん凄〜い」
前回――秘宝事件における損傷――の反省から、高等部校舎は改装時に結界を格段に強化している。
……にも関わらず、このざまである。
しかも損害は前回の比ではない。
「本当にパワーアップしたのねー。小雪ちゃんから聞いたときは半信半疑だったけど、ゆーまくんの魔法は凄いわねー」
ゆずはしきりに感心する。
……が、鈴莉は全く聞いちゃあいなかった。
――そんな……これから10日間、母子水入らずの生活だったのに。
この10日間、雄真は鈴莉の研究室に泊まり、鈴莉の集中講義を受けることになっている。
無論、これはあくまで口実であり、これを機会に雄真との親密度をUPしようという魂胆だ。
――この10日間、雄真くんと少しでも長く過ごすために、一生懸命仕事を片付けたのに。
全てパー、である。
鈴莉は魔法科の最高責任者として、高等部校舎復旧の指揮に当たらねばならないのだ。
「くっ! 雄真くんと一緒に御飯を食べて、雄真くんと一緒にお風呂に入って、雄真くんを抱き枕にして寝るという私の計画が!?」
「それ、後半の二つはどの未来軸でも適わないから、安心していいわよー?」
「『未来は無限の可能性を秘めている』って言ったのは、ゆずはでしょう!?」
「……そーだっけ? でも、年頃の男の子は、母親とそんなことしないと思うわよー?」
「ふっ」
突然、鈴莉は勝ち誇るかの様に笑う。
「ゆずはは知らないかも知れないけどね、雄真くんは本当はとっても寂しがり屋さんなのよ」
そう言うと、得意気に話し出した。
曰く、雄真はとても寂しがり屋のお母さんっ子であり、自分がいなくなると直ぐベソをかいた。
曰く、雄真は鈴莉がいない間、鈴莉の毛布を被って震えていた。
「雄真くんはとっても良い子だから、私がどうしても出かけなければいけない時は、ちゃんと笑って見送ってくれたのよ?
でも、私が帰るまで私の毛布を頭から被って震えているの。でも泣かないのよ? 偉いでしょう!
……で、私が帰ると『お母さ〜ん』って飛びつくのよ♪」
何て可愛いでしょう! と胸を張る鈴莉。
「……それ、他の人には言わない方が良いと思うわよー?」
今の本人が知れば、七転八倒ものだろう。
……が、これで納得がいった。
鈴莉にとって、雄真は未だ毛布を被って泣く幼子なのだ。
彼女の余りに強引な手法は、全てはそのためだろう。
ゆずはは、内心溜息を吐いた。
――妄執……ね。でも、多分言っても聞き入れないでしょう。
現在の鈴莉を否定することは、彼女の10年以上の歳月を否定することでもあるのだ。
友人として、それは出来ない。
自分が出来ることは、彼女の傍にいて助けること位だ。
「へへー」
「……ゆずは、どうしたの?」
突然ニヤニヤと笑い出したゆずはに、鈴莉は幾分引き気味だ。
「わたし、もしかしてとっても格好良いー?」
「はあ?」
持つべきものは友達――全くの打算抜きの――である、ということだ。
「でも、伊吹ちゃんの魔力回路を修復しただけでも凄いのに、魔力強化までしちゃうなんてー
ゆーまくん、一体どんな魔法使ったのー?」
ゆずはは首を捻る。
そんな大魔法、少なくとも現代魔術では聞いたことが無い。
……やはり古代魔術の類だろうか?
が、素人の雄真に、そんな代物を本当に使いこなせるのだろうか?
「私も迂闊だったわ…… 魔力回路を修復しただけと思って、魔力強化までしてたなんて考えてもいなかったわよ……」
「それはしょうがないと思うわよー 魔力回路の修復だけでも神業なのよー?
ましてや魔力回路そのものを『強化する』なんて……」
――不可能よ。
口にこそ出さなかったが、表情が雄弁に物語っていた。
魔力を強化すること自体は、不可能なことではない。
例えば、周りの人間や物質から魔力を借りたり、魔法具による魔力を増幅したりすることにより、魔力を強化することが出来る。
が、これ等は外部から力を借りる一時的な魔力上昇に過ぎず、本人そのものの魔力が上がる訳では無い。
伊吹の場合とは、根本的に異なるのだ。
「冷静に考えてみれば、その可能性についても充分ありえることだったのに…… 本当、迂闊だったわ……」
「すーちゃんが、魔法式を解読しきれなかったなんてねー」
魔法式とは、魔力を魔法に返還する術式のことである。
魔力は不安定かつ無属性のため、魔法式により己が望む現象を引き出せる様に再構成しなければならない。
故に魔法式を理解する能力は、魔法使いにとって必要不可欠なのだ
(魔法式には様々な系統――流派のようなもの――がある)
「魔法式? ……そんなものは必要ないわよ。雄真くんには、ね」
鈴莉は苦笑しつつ、『あの時のこと』を回想した。
伊吹の魔力回路はズタズタだった。
出力以上の魔力を、秘宝によって大量に引き出されたためだ。
そして壊れかけた魔力回路からは、秘宝が鎮まっても尚魔力を垂れ流し続け、傷を広げていく。
……このままでいけば、伊吹は死んでしまうだろう。
「雄真くんの魔力を伊吹さんに分け与えれば、助かるはずよ」
この時点で、鈴莉は伊吹が助かる可能性は五分五分と見ていた。
また、仮に助かったとしても、とても以前のようには魔力を発揮できないだろうとも。
伊吹と同じ魔力を大量に与えれば、確かに魔力の放出は止まり、伊吹は助かるだろう。
が、壊れた魔力回路については、基本的に自然回復を待つしか無い。
が、ここまで破壊された魔力回路が、一体どの程度回復することやら……
――まあいいとこ半分以下ね…… でも、自業自得よ。
「……シアン・セム!」
呪文と共に、雄真が魔力を放出させる。
魔法式こそ唱えているが、そんなものはまやかしだ。
そんなもの、雄真には必要無い。
放出された魔力は、伊吹の体内へと入り込んでいく。
その瞬間、雄真と伊吹の意識が繋がった。
雄真の魔力が、『雄真が望んだ様に』伊吹と同じ魔力に変化したのだ。
大量の魔力が投与されたことにより飽和状態になったため、伊吹の魔力回路からの魔力流失は停止した。
伊吹は助かったのだ。
が、それで終わりではない。
伊吹の魔力回路を満たした雄真の魔力は、『雄真が望んだ様に』伊吹の魔力回路を修復する。
瞬く間に、伊吹の魔力回路は修復されていく。
――そんな! まさか完全修復を!?
鈴莉は、目の前で起きている現象が信じられなかった。
彼女の『眼』は、雄真の魔力が伊吹の魔力回路を恐ろしい勢いで修復しているのが見て取れたのだ。
確かに鈴莉は、雄真ならば魔力回路をある程度直せるだろう――それだって法外だ――と踏んでいた。
が、まさか…… これ程とは……
――結界を張っておいて、正解だったわ。
そう心底ほっとする。
予め張った眼晦ましの結界により、雄真の魔力展開は自分以外には『見えない』。
彼女達には、雄真が魔力を大量放出したこと位しか分からないだろう。
外部の人間には尚更、だ。
……が、鈴莉は見落としていた。
伊吹の魔力回路を修復した雄真の魔力は、未だ雄真から供給され続けている魔力を使い、今度は『雄真が望んだ様に』伊吹の魔力回路を強化し始めたのだ。
(おそらく、雄真が『伊吹は秘宝に負けない位強い』と強く念じたのが原因だろう。雄真の魔力は、雄真の意思を忠実に実行しただけだ)
「雄真くんの魔法は、魔法であって魔法ではないわ。
私達の様に、理論立てられた術式によって発動される魔法とは根本的に違う。
いわば、『意志の力』によって発動されるものよ」
まあ術式でも発動するでしょうけどね、と鈴莉。
「凄いわねー ……でも、そんな大事なこと、わたしに教えちゃってよかったのー?」
そんな重要なこと教えてもらって、友達冥利に尽きるけど〜 とゆずはは首を傾げる。
「……もう、大体は見当つけていたでしょう?」
「小雪ちゃんが、だけどねー?」
「まああの子なら、遅かれ早かれ気付いたでしょうね」
小雪は、魔法科では一番の実力者だ。
……前回、伊吹との戦いで『戦略的転進』を行ったが。
「小雪ちゃん、拗ねてたわよー? 『雄真さんが伊吹さんに力を貸したせいで、負けちゃいました』って〜」
どうやら、雄真がそこまで伊吹のことを大事に思っていたらしいことがショックだったらしい。
故に、現在まんじゅうの自棄食い中である。
乙女心は繊細なのだ。
「でもー 修復・再構成から一ヶ月やそこらで、ここまで出力を発揮できるかしらー?」
ゆずはは崩壊寸前の校舎を横目で見ながら、意味ありげに問う。
「……何を言いたいのかしら? ゆずは?」
「もしかしたらーだけど、ゆーまくんと伊吹ちゃん『雄真くんは清純派よ』……そんなすーちゃん、今時清純派なんて言葉……」
尚も何か言いかけるが、鈴莉の顔を見て沈黙する。
……実に賢明な選択である。
「で、校舎の再建のことだけどー」
ゆずはは、賢明にも話題を元に戻した。
「……分かってるわよ。ちゃんと再建の指揮は執ります」
ふてくされた様に答える鈴莉。
「校舎の再建は、例の10日過ぎからで良いわよー」
「本当!?」
「どうせ一から建て直すのだものー 10日やそこら遅れたって構わないわよー
けど、崩壊した校舎に対する対応はやってねー?」
「有難う、ゆずは! この恩は忘れないわ!」
ゆずはの手を取り、心底感謝する。
「やあねえー わたし達は友達じゃあないのー
……でもどうしてもというなら、うちの小雪ちゃんにゆーまくん頂戴ー」
「雄真くんに、そういう話はまだ早いわ」
高峰雄真って、式守雄真より響きが良いと思わないー? と笑うゆずはに、鈴莉は真っ向から拒否した。
「でもー、ゆーまくんももう17『中一よ』……いじわるー!?」
…………
…………
…………
「はあー、はあー、今日はー、この位で退いてあげるわー」
「な、何度でも、お、同じ、ことよ……」
暫し壮絶な議論――議題は敢えて伏せるが――が続いたが、最終的には両者引き分けで幕を閉じるで合意した。
そして、何事も無かったかの様に本題に入る。
「あと、肝心の再建費用なんだけどー」
「考えたくないわね……」
鈴莉は顔を顰める。
校舎そのものを建て直す上、魔法関連の書物や道具まで買い直さなければならない。
その額たるや……
(とはいえ不幸中の幸いにも、以前の秘宝事件の際に改修したため、書物や道具の大部分は中等部や初等部校舎に移動したままになっており、高等部校舎にあるのは必要最低限に過ぎない)
「うち(高峰家)とー、伊吹ちゃんとこ(式守家)とー」
「まあ、妥当ね」
壊した張本人とその原因なのだから。
「あと、すーちゃん」
「何でよ!?」
「だってー 二人が争った原因は『ゆーまくん』よー
……嫌なら、小日向家に請求するけどー」
「払う、払うわよ!!」
ウン十億も払う羽目になり、鈴莉は半泣きだ。
……とはいえ、心の中に『母親として雄真くんの不始末の責任をとらされている』と喜ぶ自分がいるのが、ちょっぴり悲しい。
「でねー 御門さんちも『払う』ってー」
「はあ? 何故、御門家が?」
雄真くんの話では、葵さんはたまたま傍にいて巻き込まれただけだと……
「一応、『娘の不始末だから』だそうよー?」
……魔法科では、一部の生徒達の間で以下のような噂が流れている。
『雄真を巡って小雪と伊吹が大喧嘩。が、当の雄真は葵とよろしくやっていた。それを見た伊吹が大激怒……』――というものだ。
「馬鹿馬鹿しい。噂を肯定する様なものよ?」
鈴莉は、吐き捨てる様に言う。
「それが目的かもよー?」
「まさか! 彼女はまだ子供よ? 第一、雄真くんと彼女は……」
ありえない、と鈴莉。
「うーん、じゃあ『全くの善意』とか」
「……『全くの善意』で、こんな大金払う物好きがいると思う?」
「まあ、『全く無い』とは言えないのじゃないかなー?
それにすーちゃんと、御門さんちは……」
「何れにせよ駄目よ。お断りしなさい」
「うーん、流石に寄付を断るのはねー 理事長としてはー」
ピシャリと撥ね付ける鈴莉に対し、ゆずは未練がありありだった。
「……その分は私が払うから」
「すーちゃん、お金持ちー」
おお、と拍手するゆずは。
それに対し、鈴莉は渋い顔だ。
(そりゃあそうだ)
「……ゆずはの方が、お金持ちでしょう」
「わたしはねー あんまりお金使わせて貰えないのよー?
死んだおとーさんやおかーさんが、『お前はアレだから』うちの人にお金の管理を任せるってー」
「賢明な判断ね」
「……わたしたち、友達よねー?」
あまりにもあっさりと亡き父母の言葉を肯定され、ゆずははちょっぴり友情に疑問を抱いてしまった。
「事実を言ったまでよ。ゆずはにお金の管理を任せたら、全部酒になっちゃうじゃない」
大学時代のこと、忘れたとは言わせないわよ? と鈴莉。
「ははは…… あー、もう放課後ねー ゆーまくんが帰ってくるわよー?」
「わざとらしい。 ……でもまあ良いわ。乗せられてあげる」
「うんうん、今日は私がやっておくからー 今夜は母子水入らずでー」
「じゃあ、お言葉に甘えるわね?」
翌日、余計ややこしくなった後始末の前に、鈴莉は頭を抱えることになる。
……が、たとえこの未来を予知していたとしても、鈴莉は帰宅を選択した筈だ。
この10日間は、鈴莉にとって宝石の如く貴重な時間なのだから。
SS投下終了
/ ̄ ̄ ̄フ\ _ ノ^)
// ̄フ / \ .//\ ./ /
// ∠/ ___\___ __// \ / (___
// ̄ ̄ ̄フ /_ .//_ //_ / \./ (_(__)
// ̄フ / ̄//////////// | (_(__)
/∠_/./ ./∠///∠///∠// ∧ ∧ /) (_(__)
∠___,,,__/ .∠__/∠__/∠__/ (´ー` ( ( (_(___)
\ \ \/ ̄ ̄ ̄フ\ \ \_ \ _ /⌒ `´ 人___ソ
\ \ \フ / ̄\ \ .//\ //\ / 人 l 彡ノ \
\ _ \//___\/∠_ // < Y ヽ ヽ (. \
//\///_ //_ /// 人├'" ヽ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
// //.////////∠/ ヽ-i ヽ__ ヽ
/∠_//./∠///∠// .\\ `リノ ヽ |\ ヽ
∠____/.∠__/∠__/∠フ\.\\ c;_,;....ノ ヾノヽ__ノ
やっぱり伊吹とやってたのかw
それにしても鈴莉がいい具合に壊れてるな、いっその事FDみたいに親子で犯(ry
185 :
温泉の人:2006/11/24(金) 20:43:50 ID:Z9Af+Xh30
あのEDでそんなすげぇことやってたのかUMAw<伊吹の魔力回路完全修復&強化
しかしまぁ壊れまくってますな鈴莉さん。
これはもしやぱちねすWかーさん丼の再来なるか? なんてw
ともあれ、毎度乙です〜
gj
>>184>>185>>186 皆様、有難う御座います。
もはや『どの辺がはぴねす?』と化したSS書いてる者です。
「なあKUROさんや、雄真の実の父親って不明じゃないよ?」
「へ? 誰?」
「小日向の父さん」
「はあ? 雄真は貰われっ子だろ?」
「ちゃうちゃう。小日向の父さんは鈴莉さんと雄真こさえた後、音羽さんと結婚したの」
「へ? じゃあすももは腹違いの妹?」
「んにゃ、音羽さんの連れ子」
「……そんな設定、本編中にあったっけ?」
「TV」
「知るかアッ!?」
ということで、ますますオリ設定となりましたorz
>やっぱり伊吹とやってたのかw
それについては否定も肯定もしません。皆様の解釈にお任せいたします。
……いえ、そうすれば話が二通りになり、SS書く上で選択肢が広がりますから。
>あのEDでそんなすげぇことやってたのかUMAw<伊吹の魔力回路完全修復&強化
まあ独自解釈であります。
ただ、うちの雄真はへたれ気味なので、肝心の意志力が……
>しかしまぁ壊れまくってますな鈴莉さん。
こうしないとブラックなので(笑)
188 :
名無しさん@初回限定:2006/11/26(日) 18:44:46 ID:3PRzN5Zi0 BE:178308454-2BP(512)
>187 UMAの親子関係設定はほぼそれで公式だったはず……。
>>187 SSGJですよ。原作設定との違いについては、特に気にしないでも良いかと。
自分も二次創作SSにトライしてみたいが、ここまで作り込まれてるのを見て
レベルの違いに愕然。
190 :
温泉の人:2006/11/26(日) 21:30:43 ID:ul1cDgSF0
何気にしももの実父(=音羽の前夫)って詳細一切不明なんだよね。
どんだけ複雑なんだよあの家庭はwwwwwww
>>187 小日向一家の家族構成関連(雄真の父親とか)については、TVじゃなくてVFBが初出。
公式設定のはずだよ。
消息不明というか、名前など詳細不明なのは音羽の前夫(すももの実父)だね。
雄真の父はたしか小日向大義(たいぎ)って名前。
でもまあゲーム本編じゃ一切出てこないし、そんな設定無視してもオッケーだと思うけどw
追記。
大義はゲーム期間中は長期出張中で不在、って設定だったかと。
>>188、191、192
情報提供有難う御座います。
しかし……豪く複雑な家庭だよなあ……
凄いよ、親父さん。
>>189 有難う御座います。
>ここまで作り込まれてる
設定厨とも言えます(笑)
最初に有る程度核となる世界観を造らないと、自分の場合書けないのですよ。
どうでもよい所が気になっちゃって……
>>190 >何気にしももの実父(=音羽の前夫)って詳細一切不明
何か怖い想像してしまった。
本スレでも書いたたけど、UMA父は鈴莉かーさん(最低でも一回はしてる)
と音羽かーさん(まさか手付かずってことはないよね…)との味比べが出来る
今のところ唯一の人
凄いというか、かーさん’Sスキーな漏れにとっては一番はぴねす!な人だと思ってます
>>UMA父
しもも父…確かに謎ですね…
夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』
明け瑠璃の麻衣ED後日談SSです。
一応、主人公視点となっております。初投稿で色々稚拙な部分も
あるかと思われますが、何とぞご容赦を。
8月下旬のある日。
懸案の王立博物館の展示会も無事終わり、片付けや後始末も一段落したので、
今日は左門で久しぶりにみんな揃っての夕食会にしよう、ということになった。
夏いっぱいで月へ戻ってしまうフィーナやミアとの一緒に食事をできる貴重な時間でもある。
俺自身、準備に参加するつもりだったが、なぜか菜月から「7時になるまで来ちゃダメ」と
釘をさされてしまった。
姉さん、フィーナ、ミアは博物館に行っていたので今、家にいるのは俺と麻衣の2人きり。
「ふ〜ん、来ちゃダメって言われてるんだ」
俺の隣に座っている麻衣がちょっと難しそうな顔で考え込んでいた。
「え、お兄ちゃん?何でこっちをじっと見てるの?」
気がつくと、俺は麻衣の顔をじっと見ていた。
「うん、考え込んでる麻衣の顔も悪くないなって、ね」
夏の麻衣とのあの出来事以来、俺はすっかり麻衣に魅了されてしまった。
麻衣の一挙一動全てが可愛らしく見えてしまう。恋は盲目ってやつかな?
「もう…/// 恥ずかしくなるからやめてよ…」
「はは、ますます可愛くなった」
「うう…ほ、ほら話を戻すよ。さっきの話の続きなんだけど…」
あんまりイジめるのも麻衣がかわいそうなのでこの辺で切り上げておくか。
「それって、サプライズパーティーみたいだよね」
「でも、サプライズされるのはパーティーの主賓のはずだろ?
今日は姉さんの慰労会も兼ねてるんだから、主役は姉さんのはずなんだけど…」
「それじゃ、わたしたちが主役ってことなのかな?」
そう言われると何か嫌な予感がした。
夜明け前より瑠璃色なSS『お酒は禁物!?』(2/6)
7時になった。姉さんたちはまだ帰ってこない。どうしよう、と2人で悩んでいると
携帯電話のバイブが振動した。菜月からのメールだった。
「さやかさんたちを含めてみんな来てるよ。準備も完了したから早く来てね」
微妙に解説チックな文章。
「そうなんだ。もうみんな来てるんだ」
メールを見せると麻衣も少しばかり訝った。何かあると思いつつも2人で左門に向かう。
左門はこれまたなぜか真っ暗で中が見えなかった。
「お兄ちゃん、不気味な感じがするよ」
そう言って腕に絡み付いてくる。もう店の前まで来てしまった。引き返すのも後味が悪い。
「早く入ってきて」
またメールが来た。こうなったら行くしかない。
「よ、よし行くぞ」
麻衣を半ば引っ張るようにして中へ入っていくと…
ピカッ
パァ〜ン!
中の照明がついたと思う間もなく、クラッカーの音が鳴り響く。
「2人とも、カップル公認おめでと〜!」
クラッカーを片手に、菜月が声をかけてきた。いや、菜月だけじゃなく
みんなが勢ぞろいして俺たちを迎えてくれていた。しかもカレンさんまで…
「で、これってどういうことですか?」
「決まってるでしょ。あんたたちが公認カップルになったんだから、そのお祝いよ」
菜月が楽しそうに答える。首謀者はコイツだな。
「結婚…おめでとう…お幸せに…」
リースまで来ていた。しかも微妙に勘違いしてるぞ。
「はぅぅぅ…恥ずかしいよぅ…」
すっかり顔を真っ赤にした麻衣が俺の背中で小さくなっている。
「あらぁ、恋人同士になるんだったら、これくらいのことは覚悟しなきゃ。
そんなことも考えないで付き合ってたのかな〜?」
菜月は俺たちをイジめる気満々だ。
こうして、ある意味、悪夢のような夕食が始まった…
30分後…
夕食会のはずが、祝い酒としてビールが出てきて、そこから恐ろしい方向へと進みだした。
食事の最中はまだ大丈夫だったのに、どうやら食後になってアルコールが回ってきたらしい。
「でさぁ、2人ともすごいのよ」
お酒の入った菜月が話を明らかにアブナイ方向へと持っていっていた。
とはいえ、おやっさんと仁さんが後始末に厨房へ戻っていったのを見て切り出すなど
微妙に心配りを忘れていない。
「私の部屋って達哉のと隣みたいなもんでしょ。だからさぁ、聞こえちゃうのよね〜」
「…///」
何のことかすぐに分かった俺と麻衣は二人して真っ赤になる。
「お、お願いだから止めてくれ」
「だ〜め。確か1週間くらい前のことかしらねぇ。達哉の部屋のカーテンが少し開いてたから、
声をかけようとしたら、何と二人が抱き合ってたのよ。それでね、こうやって…」
ま、待てよ。その先って…
菜月がどこからともなく、バナナを取り出すとじっとそれを見つめる。
『お兄ちゃんの…おっきい…』
『麻衣のそういう顔もすごく可愛いよ』
あの時の麻衣と俺の声を忠実に再現している。
「わぁーっ、わぁーっ!」
何とか妨害しようとするも間に合わない。
「全くアツアツよねぇ。困ったものだわ」
姉さんは酔いながらも、そっち系の話題にはあまり触れないでくれている。本当にありがとう。
「それが男女の営みというのね。随分と激しそう」
お酒が入っているせいか、フィーナは対照的に興味津々といった様子だ。
頼む、酔いが覚めるとともに忘れて欲しい。
「??男の人の何を舐めてるんでしょうか?…ってええっそんなのを舐めるんですかぁ?」
ミアはまだそういったことの知識がないらしい。リースも何だか分からないといった表情。助かった。
「ふむふむ、そのようにすると男性に喜んでもらえるのですね」
カレンさんはこの聴衆の中で一番熱心に聴いていた。うわ、メモまでとってるよ。
お酒が入ると人はここまで変わってしまうものなのだろうか。
一方、麻衣はというと…
お酒はほとんど飲んでいないが顔を俯けたまま、動こうとしない。何とかしてあげたいんだけど…
「ほら、麻衣。あなたも飲みなさい。主役がしょぼんとしてるとつまらないぞ〜」
「ちょ、ちょっと待ってよ〜」
麻衣の制止も聞かず、余っていたビールを麻衣のコップに入れる。
「お、おい」
「まぁまぁ、達哉くん。女の子はこうやってお酒に強くなっていくものなのよ〜」
姉さんが俺に絡みついて、俺の動きを阻止した。
「う、うぃ〜〜」
菜月の強気に押され、飲んでしまったたしい。あ、二杯目まで…
「達哉も飲みなさいよ〜」
菜月がこちらにやってきた。強引にビールを注がれ、飲まされる羽目になる。
「飲まないと。もっと話を続けるぞ〜」
飲むしかない。何とか飲み干すと二杯目、そして三杯目まで来た。
「ほらほら、麻衣は二杯飲んだんだから達哉はその倍は飲みなさいよ〜」
もうダメだ。こっちの意識が飛ぶまで飲まされるだろう…と絶望していると。
「こらぁ〜〜菜月ちゃん、何してるの〜」
真っ赤な顔にしかめっ面の麻衣が、こちらに割り込んできた。
「お兄ちゃんに手を出しちゃ、だ〜め〜」
「あ〜、麻衣ったらヤキモチ妬いてる〜。かわいい〜」
全くその通りだ。酔っ払ってしかもヤキモチまで妬いてくれてる麻衣は可愛いぞ。
菜月と麻衣が乱闘(?)を始めたスキを突いて姉さんが隣にやってきた。
「そういえば、達哉くんと飲んだことってなかったわよねぇ〜」
姉さんがこちらに身体を預けてくる。何だかすごく色っぽい。ドキドキしてきた。
「あ〜っ、お姉ちゃんまで〜!お兄ちゃんも嬉しそうな顔しないの!」
姉さんの身体を強引に引き離そうとする。
「もう〜、私たち家族なんだからこのくらいいいじゃな〜い?」
姉さん、性格が豹変してるよ。
「でもこういうのが認められるのは恋人同士だけなんだからぁ〜」
もうどうしようもないな。酔いが覚めるのを待つしかない…
こうして、地球側女性陣がすっかり酔っ払っている様子を、フィーナ、ミア、カレンら
月側女性陣は苦笑しながら見ている。リースは初めてのお酒で寝てしまったみたいだ。
1時間後、男性陣と月側女性陣が協力して、眠り込んでしまった女性陣と会場の後片付けを行い、
ようやくお開きになった。
その後、俺が夜は必ず、部屋の窓とカーテンをきっちり閉めるようになったのはいうまでも無い。
(続く?)
初投稿であります。グダグダな展開の上、ストーリー性も無いに等しいですが、
勢いだけで書いてしまいました。何とかシリーズものにしてきたいところです。
しかし、改めて見返してみると、このスレのSS職人さんたちのレベルの高いこと高いこと。
そして、何て初心者な自分の文章…
203 :
温泉の人:2006/12/01(金) 20:32:50 ID:UCGpg3s+0
>>195乙
>『お兄ちゃんの…おっきい…』
>『麻衣のそういう顔もすごく可愛いよ』
ちょっくら光速で原作確認してくる(と言いつつ原作まだ1周もしてない私)
204 :
195:2006/12/01(金) 21:35:15 ID:lQ+pficq0
>>203 すんません、そんなシーンは原作にはなく、自分の妄想です(ォィ
>>202 八月系SSスレの存在自体は知ってたけど、両スレに投下されるSSはエロエロな
ものばかりだったんで、非エロ路線な自分のSSはここが適所かと思ってました。
…が、しかし。
>>1を見たらこのスレ自体18禁モノOKなんですね。
このスレの雰囲気が好きなんで、後ろ髪引かれるけど明け瑠璃SSスレに行こうと思います。
遥かに仰ぎ、麗しのSS『凰華女学院分校の日常』
「だりゃぁぁぁっ!!」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
静まり返った凰華女学院分校の敷地に、掛け声と悲鳴が一組になって響き渡る。
掛け声は兎も角、悲鳴の方は切羽詰ったかの様な悲痛な声だ。
……が、誰も気に留める者はいない。
用のある者は仕事を続け、用の無い者も、『ああ今日もか』とばかりに無関心を決め込んでいる。
この悲鳴、どうやら凰華女学院分校の『日常の一部』と化しつつある様だった。
「おおっと!? みやび選手のパロ・スペシャルが華麗に決まった!
司選手、堪らず悲鳴を上げています!!」
「あわわ…… 先生、がんばってがんばって」
ここ校庭では現在、風祭みやび vs. 滝沢司の無制限一本勝負が行われていた。
両者の戦いは、時と場所を選ばず行われる正に『なんでもアリ』の勝負である。
……まあ大概は、司がみやびにいらんこと言って襲いかかられる、といったパターンが大半だが。
「ほらほら! 止めて欲しかったら、大人しく『申し訳ありませんでしたみやび様』と言うんだあ!」
「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
みやびがギブアップを要求するが、司はとてもそれどころではない。
先程から、両腕両足の間接が何かミシミシと嫌な音を立てっぱなしだ。おまけに滅茶苦茶痛い。
司は風祭の権力にも財力にも屈しない馬鹿……もとい漢である。
が、所詮は貧弱な坊やであるため、みやび個人の暴力の前に屈する羽目になっていた。
「……きゅう」
暫し司はじたばたと暴れていたが、やがて失神、勝負はみやびの勝利で幕を閉じた。
「見たか! これが風祭の力だっ!」
「お見事で御座いました、御嬢様」
勝ち誇るみやびを、侍女のリーダが称える。
「うむ、これで99戦全勝だな!」
「その通りで御座います、御嬢様」
「勝負の内容は、しっかり記録してあるな?」
「もちろんでございます、御嬢様」
と、リーダは片手に持ったハンディカムをポンと叩いた。
……どうやら、一部始終が撮影されているらしかった。
「よし! 100戦全焼したら、その記念に今までの全試合の記録を編集し、校内で放映しよう! もちろん全員参加だ!」
良い思いつきだ、と言わんばかりにはしゃぐみやび。
その顔は実にさっぱりとしており、司がちょっかいを出す直前のピリピリした様な雰囲気は霧散していた。
(司でストレス発散したのだろう)
リーダは、そんな彼女に微笑みながら一礼する。
「かしこまりました、御嬢様」
「ではいくぞ!」
「はい、御嬢様。それでは皆様失礼します。
司様も、これにこりず御嬢様の御相手を御願いいたしますね」
意気揚々とみやびは去っていった。
……しかし、全試合撮影してたんですか……
「先生! 無事です……きゃああっ! せっ先生!?」
みやびとリーダが去って直ぐ、今度は仁礼栖香がやって来た。
どうやら司とみやびの対潜を聞きつけ、慌ててやって来たらしい。
で、ぐったりしている司に驚いた、という訳だ。
「せっ先生! しっかりして下さい! ……って、何か口から白いものがっ!?」
「あ〜、かなりやられたからね〜」
「何かミシミシっていやな音が、いっぱいいっぱい……」
「なら、止めなさい!」
先程からリーダと共に一部始終を見ていた相沢美綺と上原奏の言葉に、栖香はこめかみをひくひくさせながら叱責する。
「ごめん、それ無理」
「理事長は、私達の言うことなんか聞かない聞かないですよ……」
「貴方達は…… まあいいでしょう、とりあえずは先生を保健室にお連れするのが先決です」
そう言うと、栖香は司の下にもぐりこみ、何とか背負おうと試みる。
が……
「きゃあ」
司の重みを支えきれず、たちまち司に押しつぶされる。
「おおっ!? バックから襲うとは! センセ大胆!!」
良い被写体、とばかりに美綺はその様子を激写する。
「あわわっ! 美綺、やめようよ〜」
「止めてくれるなおっかさん。おいらがやらねば、一体誰がやるんだい!?」
「み〜さ〜き〜ち〜」
一向に聞き入れない美綺に、流石の奏もお怒りの様だった。
「ちぇ〜、わかったよ。 ……折角のネタだったんだけどなあ〜」
美綺はぼやきながらも、奏と共に栖香を助け出し、今度は三人がかりで司を保健室まで運んでいった。
……実はこれが、ここ数ヶ月の彼女達の日課であったのだ。
「いてて……」
「先生、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ…… いつも済まんな、仁礼」
司は、保健室まで連れてきてくれた挙句、手当てまでしてくれる栖香に礼を言った。
(ちなみに、みやびを怒らす遠因になった二人については無視)
「いえ、クラス委員ですから」
「そ〜れ〜だ〜け〜?」
「下衆の勘繰りは止めてください」
「酷っ!?」
支援。
ニヒヒと笑いながら尋ねる美綺を、栖香はばっさりと切り捨てる。
美綺は一瞬ショックを受けるが直ぐに復活、今度は司にちょっかいを出してきた。
「でもセンセ、弱すぎるよ。99戦全敗じゃあ、凰華ジャーナルのネタにならないじゃない」
「そうは言うがな相沢、あれで理事長は中々のグラップラーだぞ? あの技のキレは相当のものだ」
特に関節技とか関節技とか関節技とか……
「そういえば、今度先生が負けたら、私達全員強制で今までの記録を見なきゃいけないんですよねですよね……」
奏はうんざり気味だ。
……まあ、理事長主演の格闘映画を長時間見させられる様なもの、或る意味拷問だから、当然といえば当然の反応だが。
「センセ、男ならもっとしっかりしろ!」
「……先生」
「何だ、仁礼?」
先程から何か考え込んでいた栖香が、真剣な口調で司に語りかけてきた。
「今度の勝負なのですが、心苦しいとは思われますが、どうか本気を出して頂けないでしょうか?」
「……仁礼、すまないが、僕には君が何を言っているのか……」
司は、栖香が何を言っているのか分からず、怪訝そうに答える。
「先生のお考えもごもっともではありますが、今は非常事態です。
このままでは、先生に不名誉な映像が公開されてしまいます」
「え〜と、もしかしてスミスミ、センセが手加減してると思ってる?」
「当然です! 大人の男の方に、私達が敵う筈無いじゃありませんか!」
何を馬鹿なことを、と栖香。
「いやあ〜 でも、センセだしね〜?」
「先生、弱弱だし……」
「お前ら……」
教え子達の駄目駄目な評価に、司はちょっぴり凹み気味だ。
……まあ、彼女達の言葉はかなりの部分で真実を突いているのだが。
正直、みやびは手強い。
あのちんまい体を見て侮ったら、トンデモナイ目に逢うだろう。
何せ、自分よりも遙かに大きく重い司を軽々と投げ飛ばす位なのだ。
……仮にも、柔道有段者である司を、だ。
が、栖香は真剣だった。
彼女は、司が本気を出せば負ける筈が無い、と信じ込んでいるのだ。
本音としては、暫く理事長から遠ざかって間をおき、近づくのは理事長が映画のことを忘れてからにしたい(←チキンである)が……
――こりゃあ、やるしかないな。
そう腹を括る。
何より、可愛い教え子の信頼と期待には、答えない訳にはいかないのだ。
(みやびも一応司の教え子なのだが、そんなことは遙か衛星軌道上まで棚上げした)
「ふっ」
「? どしたの、センセ?」
「仕方が無い。一度だけ、一度だけ本気を出そう」
「先生!」
「……いや、本気って…… 何か、今までも結構いっぱいいっぱいだった様な……」
「えっ? まさか…… でもでも!?」
目を輝かせる栖香と半目で突っ込みを入れる美綺、そして司の様子に『もしかしたら?』とオロオロ気味の奏……三者三様である。
が、司は自信たっぷりに言い放った。
「心配するな。こう見えても、僕は高校時代に柔道の県大会で準優勝したこともあるのだ。
本気を出せば理事長もイチコロさ!」
「凄いです!」
「本当!? こりゃあ、明日の凰華ジャーナルのネタになるぞ〜」
「県大会準優勝って…… 本気って…… 凄いけど、何だか何だかとってもおとなげないよ……」
……やはり三者三様の彼女達。
「あれ? でもセンセ、高校時代は野球部で、県大会準優勝も野球のことじゃあ?」
ふと思いつき、美綺があれ〜と尋ねる。
「掛け持ちしてたんだ」
「……どっちか一つに絞れば、全国大会出場だって出来ただろうに……」
「うるさいぞ相沢」
野球部ではレギュラーで県大会準優勝、柔道部でもレギュラーで県大会準優勝……
こう聞けば、司はスポーツ万能とも取れるだろう。
が……
野球部でレギュラー云々に関して言えば、丁度野球部は9人しかいなく、全員レギュラーだったのだ。
加えて言えば、当時野球部は清原君(キャッチャー)と桑田君(ピッチャー)という野球の天才二人が作ったばかりであり、彼等二人の活躍のお蔭で県大会準優勝まで進んだ、というまるでどこぞの野球漫画の様な展開が真相だった。
ちなみに、清原君と桑田君はその後プロ野球に進み、現在1億円プレイヤー目前だそうだ。
柔道で県大会準優勝云々に関しても、偶々相手が三人ほど怪我や何やらで棄権した、というまるで何かが乗り移ったかの様な悪運によるもので、実際は県大会でベスト16に進めるかどうかも怪しい。
まあそれでも凄いのではあるが……
……本当、額面だけでは物事はわからないものである。
とはいえ、こうして賽は投げられたのだった。
「くくく、まさかお前から挑戦して来るとはな、滝沢司」
負け過ぎで脳に回ったか? とみやび。
「ふふふ、理事長こそ年貢の納め時ですよ?」
わざわざ実家から送ってきてもらった柔道着に身を包んだ司。
今までは背広で戦っていたということから考えて、今回はいつもと違う様だ。
(ちなみにみやびはジャージ)
「家柄の差が絶対的な差であることを教えてやる」
「家柄なんて飾りです。御偉いさんにはそれがわからんのですよ」
「ふ、ふ、ふ」
「く、く、く」
もはや司とみやびは、互いしか見ていなかった。
――泣かしちゃる!
二人の心は、その一点でシンクロしていたのだ。
「さあっ! いよいよ運命の決戦が始まろうとしています!
今回は運命の第100戦!
風祭みやび選手(総合格闘家)が100勝目をあげ、完全勝利を達成するか!?
それとも滝沢司選手(講道館二段)が一矢報いるか!?
ここ武道館は緊張に包まれています!」
司会の美綺もノリノリである。
何せ、凰華ジャーナルの総力を挙げて宣伝したお蔭で、観客も多い。
相乗効果を考えれば、凰華ジャーナルの良い宣伝にもなるだろう。
美綺は内心、笑いが止まらなかった。
「さすが天下の凰華女学院。畳のクッションが効いてるな」
これなら、全力でいけそうである。
「さあ来い! 滝沢司!」
「おうさ!」
試合が始まった。
「くそっ! ちょこまかと!」
司は内心焦りまくりだ。
先程から、みやびのスピードに付いていけないからだ。
……加えて身長差が有り過ぎるため、転がし難くて敵わない。
――払い腰……いや、内股で決める。
司は高校時代の得意技で決めることにし、機会を待つ。
おとなげないと言われようが、栖香の信頼と期待を裏切る訳にはいかないのだ。
――今だ!
それは絶好のタイミングの様に思われた。
が……
視界が反転する。
一拍子置いて、畳みに叩きつけられた音。
「まさか…… 内股すかし!?」
「ふふふ! まんまと罠に嵌ったわね! お前が内股で勝負に出ることなどお見通しよ!」
「な、何だって!?」
確かに小さな相手を投げるには、かなり技が制限される。
が、それにしても――
「お前の得意技が内股だということ位、先刻承知の上だ!」
「!?」
リーダが高校時代の司の記録を、公式・非公式を問わず調べ上げ、得意技等をはじめ、何から何まで調べ上げたのだ。
その報告を受けたみやびは、司が内股で勝負に出るだろうと確信し、司と同様に機会を伺っていたのだ。
……要するに、司はまんまと罠に嵌った、というのが真相だろう。
「卑怯ですよ!?」
「卑怯などという言葉は、負け犬の遠吠えだ〜♪」
抗議する司に、みやびはいかにも嬉しそうに言い放った。
が、次の瞬間には司にかにばさみをかけられ、みやびは顔面から畳みに叩きつけられた。
「負け犬は負け犬らしく……ぷぎゃ!? 何するのよ!? もう勝負は終わったのよ!」
「はあ? 理事長、何を言うんですか? 柔道じゃあ無いんだから、『一本で終わり』な訳無いでしょう?」
果たし状に、柔道ルールで決着をつける、なんて書いてなかったでしょう? と司。
「え…… し、しまったあ!?」
「ふっ、見事にひっかかりましたね?」
嘘である。
本当は、柔道勝負の積りだったのだが、『そっちがその気なら……』と方針を転換したのだ。
……本当、おとなげがない大人である。
「ひ、卑怯者〜!」
「はて? 『卑怯などという言葉は、負け犬の遠吠えだ〜♪』と仰ったのは理事長御本人では?」
ニタニタ笑いながら、司は余裕の表情で返す。
「く〜や〜し〜、司なんかにひっかけられるなんて〜」
「く、く、く、僕の勝ちですね、理事長。大人しく負けを認めて下さい。
ついでに、今までの映像記録も全部破棄して下さいね?」
馬乗りになり、悪人のように笑う司。
……傍から見れば、まるで犯罪者である。
「そっそんなこと出来るか! 末娘とはいえ、我が名は風祭ぞ!?」
「理事長、御立派です。けど、そんなことを言っていられるのも、今の内だけですよ?」
司は手をワキワキさせながら、楽しそうに囁く。
「ま、まさか!? やめろ!」
みやびは司の意図を察し、怯えて後ずさる。
「やめろ〜!!」
「きゃははっ! やめろ! 死ぬ〜!?」
司のくすぐり攻撃にあい、みやびは息も絶え絶えだ。
「降参したら、すぐ止めて差し上げますが?」
「だっ誰が、降参など、するか!」
「今まで99戦、僕がただやられていただけとでもお思いで?
理事長の弱い所は既に把握済みです。このまま笑い死にしたくなければ『先生?』……へ?」
……振り向くと、冷やかな目をした栖香さんが立っていらっしゃいました。
「え〜と、仁礼?」
「理事長と何をしていらっしゃているのですか? 皆の目の前で……不潔です!」
「待て、誤解だ! これは真剣な勝負……」
「それの何所が真剣勝負ですか!?」
確かに、説得力皆無である。
「『殿方のプライドがかかっている』と今まで考えていましたが、違った様ですね。
理事長とお楽しみの所、申し訳ありませんでした。では」
そう言い捨てると、栖香は武道館を後にする。
「仁礼、待て! 勘違いだ! こんな貧弱な体でお楽しみも何も……うぎゃあっ!?」
「ふぁふぇふぁふぃふふゃふふぁ(誰が貧弱だ!?)」
理事長に噛み付かれ、司は堪らず悲鳴を上げた。
「何をするんですか!?」
司も対抗して、みやびの頬を思いっきり引っ張る。
「ふぁふぁふぇ(放せ!)」
「そっちが先です!」
傍からは、みやびが何を言っているか分からないが、司には分かるらしい。
二人は喰いつき&引っ張り攻撃を与えつつ、口撃も行っている。
……もはや、子供のけんかである。
「あ〜」
「最初は、とってもとっても真面目な勝負だったのに……」
「司様も御嬢様も、やんちゃで御座いますから」
流石に肩を落とす美綺と奏。
が、リーダは何所を見ているのか、二人の取っ組み合いを微笑ましそうに見ている。
観客の生徒達は、呆れ果てたのか次々に武道館を出て行ってしまった。
現在残っているのは、司の担当している生徒達(除く栖香)と、リーダ位のものだ。
「あの二人が私達の理事長と担任だと思うと、何か泣きたくなるよね……」
「同感」
智代美の呟きに、誰ともなしに同意の声が湧き上がった。
いや実際、見てて何だか泣けてくるのだ。
支援。精神年齢が近くなっている司ワロス(w
「リーダさんは、このけんかを最後まで見届けるのですか?」
「はい、もちろんです。相沢様は?」
「……明日の凰華ジャーナルに載せなきゃいけないんで」
こりゃあ、一面には載せられないなあ〜、とぼやく。
「わたし、もう帰りたい帰りたいよ〜」
そんな会話の合間にも、両者の死闘は続いていた
「ふぁふぁふぇ〜!(放せ〜!)」
「断る!」
凰華ジャーナル
風祭みやび vs. 滝沢司の無制限一本勝負 第100回戦
57分24秒 両者ダブルノックアウト
添えられた写真には、力尽きて折り重なる様に突っ伏す二人の姿が写っていた。
投下終了。
『甘くない』シリーズではなく、他作品の短編です。
連載も書きたいけど、これ以上連載を抱え込む訳にもいかないのですよねえ。
でも、書きたいなあ……
ついでに言えば、この作品はKUROが初めて自分で買った記念すべきエロゲーでもあります。
衝動買いしてしてしまいましたが、とても面白かったです。
うう、でも黄金三笠山30個分以上のお値段は痛い〜
>>204 投稿乙です。
無理に移動することないと思いますよ?
>>224 GJJJ!!
甘くないの続きかと思ったら何と意外なw
かなっぺ口調の再現が上手いなぁー
−−朝:教室−−
信綱:ペトレーションの脅威も去って世は泰平、事もなし、か。何かつまらんね。
蔵人:いいじゃないか。悪いことじゃないだろ。
信綱:悪いとは言わんさ。だが退屈であることも事実だ。お前は違うのか、蔵人?
蔵人:俺は田舎育ちだからな。ようやくこっちの生活に慣れてきたところだしそうでもない。
圭 :その割には、未だに一人では都心に出れないようですが?
蔵人:い、いいじゃないか。どうせ出掛けるなら一人で行くより誰かと行ったほうが楽しいだろ?
小夜音:おはようございます。皆様。
六花:おっふぁよーごらいまーふ!!
小夜音とりっちゃんが登校してきた。
小夜音はいつも通りドレスを纏い凛とした姿で。りっちゃんは相変わらず何か食べながら。
信綱:はいはい。おはようさんっと。(適当に手をひらひらさせて応じる)
小夜音:信綱さん、だらけきっていますわね。
六花:ほうだほうだ。
蔵人:…りっちゃん…行儀悪いから喋るか食べるかどっちかにしてくれ。っていうか十分君もだらけてるぞ。
六花:えええ!?私のどこがだらけてるっていうんですか!?
圭 :そうですね…。食べながら歩くのは元からだとしても、
圭 :最近部屋は散らかし放題ですし、夜更かししてまで怪しげな本を読みふけっていたり、それから…
六花:わー!わー!わー!私そんな事してませんー!っていうかどこまで知ってるんですかー!?圭さん!?
蔵人:りっちゃん…墓穴掘ってるぞ…。それに圭は階も違うし部屋に入ったことも無いのに何でそんな事知ってるんだ…。
圭 :僕はこれでも魔術師ですからね。色々あるんです(にっこり)。
六花:説明になってないよぅ…。
小夜音:六花さん、私生活には余り口を出したくはありませんが、婦人がそれではいけませんよ?
六花:ぅぅぅ…。
信綱:まぁ、りっちゃんらしいと言えばりっちゃんらしいけどな。
六花:フォローになってないよぅ…。(泣き崩れる六花。教室の隅で何かブツブツ言っている。いじけてしまったようだ)
小夜音:さあ、そろそろ始業ですわ。席に着きましょう。(小夜音、自席へ移動)
信綱:しっかし、小夜音は相変わらず隙が無いな。可愛げが無いって言うか。
蔵人:そんなことないぞ。小夜音だって照れたり慌てふためいたりした時は…はっ!?
圭 :へええ。それは興味深いですね。で、蔵人君は一体どこでそれを?
蔵人:ど、どこだっていいじゃないか。それより御影先生が来たぞ。
御影:席に着けー!出席を取る。
何でもない日常の何でもない一幕。
これがあの狂乱の日の幕開けだとは、このときの俺には全く思いもつかなかった。
−−昼休み:学食−−
小夜音:お茶会…ですの?
圭 :そうです。いつも小夜音さんには美味しいお茶を振舞って頂いてますから、
圭 :今度は僕がドイツ流のもてなしを小夜音さんに受けていただこうと思いまして。
小夜音:圭さんのおもてなしですか…。それは楽しみですね。是非行かせて頂きますわ。
圭 :ありがとうございます。信綱、蔵人、君たちも来てくれるよね?
蔵人:お、俺たちもか?
圭 :そうです。明日はデミウルゴス解体から丁度一ヶ月ですし、
圭 :ちょっとしたパーティも兼ねようかと思いまして。それに…
蔵人:それに?
圭 :来なければあの事とかこの事とかバラしちゃいますよ?(にっこり)
蔵人:あの事とかこの事って何の事だ!?
圭 :おや?言ってしまってもいいんですか。あの事とは…
蔵人:ま、待て圭。全く身に覚えは無いが、お前だけは計り知れん…。
蔵人:分かったよ、俺たちも行く。どうせ暇だしな。
六花:じーっ………。
圭 :ありがとう。では準備もありますし明日の夕食後にお待ちしています。
圭 :伊織先輩には僕から伝えましょう。丁度図書館に行く用もありますから。
六花:じーっ…………。
小夜音:分かりましたわ。中条さんたちと冬芽さんには私が伝言しましょう。
六花:じーっ……………。
圭 :お願いします。……どうしました、りっちゃん?
六花:な!ん!で!私を誘ってくれないのぉーっ!(ドゴーン!)
圭 :…だって六花さんをお誘いすると…
圭:部屋散らかされそうですから。 蔵人&信綱:食べ物全部食べられちゃうからじゃないか?
六花:むっきぃー!私そんなことしないもんっ!……………多分(ぼそっ
圭 :あはは。冗談ですよ。では明日楽しみにしていてください。ほら、りっちゃんも機嫌直して下さい。
−−翌日:寮−−
蔵人:そういえば圭の部屋に入るのは初めてだな。
信綱:そうなのか?まぁまがりなりにもあいつは魔術師だし、お前とは違う意味で風情に欠ける部屋だがな。
蔵人:お前は入ったことがあるのか?
信綱:まぁな。お前らがこっち来る前に何回かはな。
コンコン
圭 :どうぞ。いらっしゃい。
蔵人:お邪魔します。……うわぁ……。
圭 :?どうかしましたか?
蔵人:…いや、見るからに怪しそうな壷とか本とかあるけど…聞いちゃいけないんだろうな…。
小夜音:そんなことありませんわよ?この壷はいい壷です!(やや興奮気味)
信綱:だから言ったろ。風情に欠けるって。ついでに女の子らしくもない。
蔵人:それにしてもあの小夜音の様子は一体…?何か興奮してるようだが…。
信綱:ほっとけよ。スイッチ入っちまったんだろ。ま、壷の良し悪しなんて俺にゃ分からんがな。
圭 :あはは。どうやらそのようですね。でも良い品物であることも確かなんですよ?
圭 :もっとも、ここにあるのは魔術用の物ばかりですから無名の工芸師の手によるものが多く、
圭 :芸術的・史学的な価値はありませんけどね。
蔵人:はぁ……。
圭 :兎に角座っていて下さい。じきに皆さんも来るでしょう。
小夜音:圭さん!この壷は何ですの?この壷もいい壷です!(大興奮)
圭 :はいはい、その壷はですね…(苦笑交じりに小夜音に駆け寄る)
蔵人:……ま、いいけどな……。
六花:おっ邪魔っしまーっす!
冬芽&白衣&黒衣&伊織:お邪魔します…。
−−同日:圭の部屋−−
圭 :それでは皆さん揃ったようですね。
圭 :ほら、小夜音さんも一旦壷の鑑賞は中断して席について下さい。
小夜音:そ、そうですわね。私としたことがつい…。(正気に戻りちょっとバツが悪そうに着席する)
と。
「ブリッ」
一同:………。(沈黙)
一同:……………。(かなり気まずい沈黙)
圭 :……今のおなら……小夜音さん……?
小夜音:ちちちちちち、違いますわよ!?決して私ではありませんっ!(席を立って猛講義の構え)
蔵人:で、でもだな。今のはどう考えても小夜音の方から音が…
小夜音:違うと言っているでしょう!?それに私はレディとしての…
圭 :はいはい。分かりました。今のは「無し」にしましょう。折角のパーティを台無しにしたくありませんからね。
圭 :小夜音さんも皆さんもそれでいいですね?(ざっと見渡す)
圭 :では、小夜音さん、改めて席に座ってください。乾杯の音頭は僭越ながら僕が務めましょう。
小夜音:……色々言いたいことはありますが…分かりましたわ。(納得いかない表情ながら渋々再び着席)
「ブリブリブリッ」
一同:…………………。(とても気まずい沈黙)
一同:………………………。(どうしようもなく気まずい沈黙)
蔵人:小夜…
小夜音:私じゃありませんわよ!?ほ、ほほほ本当です!?
圭 :小夜音さん……。(何とはなしに同情の眼差し)
白衣:……。(赤面している)
黒衣:小夜音でもおならするんだ。そりゃそうよね。おならしない人間なんて居ないし。
黒衣:でも人前でやって欲しくないな。(何とか平静を保ちつつも、どこか冷めた表情)
冬芽:あ、あああああ、あのですね。放屁というのは生理現象の一つですから、
冬芽:そんなに恥ずかしがらなくても、いえ、でも…あわわわ…(錯乱して何を言ってるか分からない)
蔵人:お、落ち着け冬芽!あ、あれ?何か異臭が…。
小夜音:ちちちちち、ち、違うと言ってるでしょう!?な、何ですの、この臭い!?
圭 :小夜音さん……。(物凄く同情の眼差し)
伊織:……小夜音のおならは臭い……。……覚えたわ。
蔵人:さ、小夜音も落ち着けって!伊織先輩も焚きつけるような事言わないで下さい!?
伊織:?(何が?と言いたげな表情。心底分かってないらしい)
蔵人:ああ、もう!信綱、お前も黙ってないで何とかフォローしてくれよ!おい、信綱?
信綱:………くくく………
信綱:どわぁーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!!!!
信綱:いやー、あの小夜音がこんな臭いおならを二連発ねぇ…ひーっひーっ、腹痛ぇー!
小夜音:だ!か!ら!私ではないと何度も言っているでしょう!?
信綱:照れるな照れるな。冬芽も言ってるじゃないか、誰にでもあるただの生理現象だって。……くっくくくっ
小夜音:ちょっ……
信綱:しかし凄い臭いだな。ぷっくくくっ…。レディともあろう御方が。おい、圭、窓開けろ窓!
信綱:あ、いやこの臭いを外に撒き散らしたら不審がって人が集まってきちゃうか?
信綱:「どうしたんですかー?」って。そしたら小夜音、お前が答えるんだ。「私のおならですわ」ってな。
信綱:どわぁーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!!!!!!!!
小夜音:これだけ否定していますのに……!(肩を震わせ俯く。その肩は怒りと恥辱でプルプル震えている)
蔵人:小夜音…。(その肩を蔵人がそっと抱く)
小夜音:蔵人…。
蔵人:いいんだ。小夜音。顔を上げるんだ。そんな小夜音は見たくない。
小夜音:蔵人……!
救われた!蔵人にだけは信じてもらえた! そんな思いで顔を上げた小夜音の視線の先には……!
や た ら 生 暖 か い 視 線 の 蔵 人 が 居 た 。
蔵人:誰にでも失敗の一つや二つはある。だから小夜音、そう落ち込むな……。
「ブチブチブチッ」
小夜音:どうあっても信じてもらえないようですわね…。(何か覚悟を決めた表情。ちょっと笑っている。が、怖い)
信綱:ひーっ、ひーっ。あ?何だって?
小夜音:いいですわ。おならは私がした。それで満足かしら?
信綱:お、ついに罪を認めたか!
冬芽:スサノオ様…その様な言い方は可哀想です…。
小夜音:結構ですわ。おならは私がした。それで結構です。
信綱:自首すれば罪は軽くしないでもない…くくっくくく…。それにしても凄い音と臭いだったな!(まだ悪ふざけモード)
小夜音:そうですわね。……でもご存知かしら?
信綱:あ?何がだよ?
小夜音:どのような罪も、露見しなければ良いのですわよ?(背後から黒いオーラが沸き出ている…ように見える)
信綱:つ…つまり…?(ゴクリ)
小夜音:あ な た 方 を 殺 し て 私 も 死 に ま す ! ! ! !
…それから後の事は覚えていない……。
いや、正確には覚えているのだろうが、記憶を辿ろうとすると言い知れぬ悪寒と共に冷や汗が噴出するのだ。
きっと、思い出さないほうが良いのだろう。
小夜音のためにも、何より自分のためにも。
それにしても、おならくらいであんなに激昂しなくても良いと思うのだが…。
そういう考え方だから、皆に「朴念仁」と揶揄されてしまうのだろうか。
−−狂乱後:圭の部屋−−
圭 :やれやれ。小夜音さんの恥ずかしがる姿と、慌てふためく姿を見る為に企画したのはいいけど…
圭 :ちょっとやりすぎちゃったかな。僕の仕業だって言い出すタイミングも逃しちゃったし。
圭 :このブーブークッションと、悪臭の出る香炉は秘密裏に処分してしまおう。
圭 :さもないと…。(あの日の記憶と共に悪寒が走る)
圭 :……でも楽しい一日でした。(にっこり)
投下終了。
エロゲでSS書くのは初めてで不慣れな点も多く、
他の投稿者の方とスタイルも違うようですが、如何だったでしょうか?
他にもネタはいくつかは思いついてますので、時間と要望がありましたらまた。
…要望なくても勝手に投下しちゃうかもですが。
書き忘れてましたが、「終末少女幻想アリスマチック」より。orz
原作未プレイなのですまんが、台本形式なのは原作のとおりなのかな?
スタイルがSSで一般的な形式無いということは判ってやってるみたいだけど。
下手糞すぎ
皆様、有難う御座います。
>>222 >精神年齢が近くなっている司ワロス(w
分校系へたれ(?)主人公ですから。
実際は分校でもへたれと言う程ではないのですが、まあ本校系を書く時の差別化の意味もありまして。
>>225 >甘くないの続きかと思ったら何と意外なw
いやあ、中々面白かったもので。
三日間ほどやりこんでしまいましたよ。
まだ全クリしてませんが。
HP転載の際に改訂したら思いのほか大改訂(ボリューム倍)となり、雰囲気が大分変わってしまいました…… orz
甘くないの人のHPってドコー?
>>238 改定後の雰囲気がイイ感じです。特にすみすみとかみさきちとか。
司も今のような感じが好きかな。
実際、社会人一年目の司とヒロインたちはそんなに年は離れていないと思うのでー
個人的に分校側を選んで姉妹の問題を解決しつつ、みやびーやとのこと仲良くなるのが理想ルート。
八方美人って良い言葉ですよね!(w
>>240様、有難う御座います。
>改定後の雰囲気がイイ感じです。
始めは純粋なギャグのつもりでした。
けど、改訂作業の際に読み直してみると、かなりの説明不足を痛感せざるをえませんでした。
これじゃあみやびーは手のつけられない只の暴れ者ですし、みさきちと司も何だか……
そんな訳で、急遽心理描写等を大幅加筆したのですよ。
そうしたら、もはや元の作品とは全く別物になってしまいました。
一見、お馬鹿な話ではありますが、一皮剥けば『男と女はどっろどろ♪ ねっちょねちょ♪』の世界ともとれます。すでに泥沼かも。
……自分で書いててなんですが、読んで『怖っ!』と思いましたよ、はい。
>司も今のような感じが好きかな。
>実際、社会人一年目の司とヒロインたちはそんなに年は離れていないと思うのでー
本校系の場合、司はかなりの完璧超人ですからね。考え方も大人だし。
本校系のネタも考えたのですが、みやびの片腕……ていうか黒幕として風祭・志藤・八乙女(←司が勧誘)連合を差配とか、仁礼・三嶋財閥を建て直して滝沢財閥に再編とかアレなネタばかりですよ。
>個人的に分校側を選んで姉妹の問題を解決しつつ、みやびーやとのこと仲良くなるのが理想ルート。
後編にはみやびーの心情も……
>238
GJ。はぴねすも良いけど、これもいいなあ。
昨日全てのキャラを終わらせたばっかりだけど、良いゲームだった…… > 遥かに
このSSって、生徒達の問題は解決した後の話ですよね?
ホームページの方の美綺や栖香の嫉妬がツボ(笑 みやびーの乙女ゴコロにも期待してます(ry
三島財閥の方思い出してしまったじゃないか。
なんか崖から這い上がってくる鏡花を想像してしまった。
――――理事長室。
「果たし状? 司から?」
「はい、御嬢様」
「へえ? 余程、100敗目をきっしたいと見えるなあ?」
みやびは、獲物を前にした仔猫の様な表情で果たし状を開く。
果たし状は和紙に毛筆で認められていた。
その古めかしくも流麗な文字からは、書いた本人の意気込みが伝わってくる。
……尤も、書いたのは司ではなく栖香だったりするのだが。
「……また、あいつらだ」
と、急にみやびは拗ねた様な口調で呟いた。
その手には、果たし状が固く握り締められている。
「御嬢様?」
「これは司の字じゃない! あいつらの仕業だ! そうに決まってる!」
――あいつら、また司を利用しようとしているのか!
みやびは内心で歯軋りする。
そして、思い返すも忌々しい事件が頭を過ぎった。
以前、司が相沢家と仁礼家の問題に首を突っ込んでいる、と聞いた時、みやびは心臓が止まりそうになるほど驚いたものだ。
――あの大馬鹿! 本気で東京湾に沈められたいのか!?
比喩でも何でも無い。文字通りの意味である。
名門権門の家の内部事情に首を突っ込むということは、そういうことなのだ。
何所の家も多かれ少なかれ暗部を抱え込んでいるし、それを表沙汰にしない為ならばどんな手段でも用いるだろう。
仮に宗家にその気が無くとも、分家や取り巻きが実行する筈だ。
……みやびは、そんな実例を多く見聞きしていた。
なのに司は栖香と美綺の問題に深入りし、あろうことか相沢家と仁礼家までも巻き込もうとしていたのだ。
生徒間のみの問題ならば兎も角、それ以上のことは教師の出る幕では無い……いや、出てはいけないのだ。
少なくとも、凰華女学院の教師ならばそれを心得ているし、そうでなければやっていけない。
が、司は違った。
彼は、その信念と持ち前の行動力により、どんどん両家に関わっていく。
それは、みやびから見ればあまりにも危険な行為だった。
そして、みやびが状況を把握した時には、既に事態は抜き差しならぬまでに発展していた。
……最早忠告しても遅過ぎる程に。
「御嬢様、相沢と仁礼の手の者が分校の周囲をうろついております」
「はあ? もしかして娘の警備か? ……全く、過保護な奴等だ。
少しはうちを信頼して欲しいものだな」
あたしはリーダの報告を聞き、呆れた様に呟いた。
……しかし、あの過保護な相沢ならやりかねないが、仁礼までとは意外だった。
「いえ、彼等の狙いは司様だと思われます」
「へ…… どういうことだ……?」
訳が分からなかった。
何故、滝沢司を両家が狙う?
そりゃあ、確かに両家の娘達とは親しい様だが……
「実は……」
リーダから聞いた話は、あたしを驚愕させるのに充分な話だった。
「あの大馬鹿! 本気で東京湾に沈められたいのか!?」
あたしは机を叩き、思わず叫んだ。
それを気にせず、リーダは淡々と報告を続ける。
「今更、司様が両家から手を退かれても遅過ぎます。
ですから、せめて司様には分校から出ない様、忠告された方がよろしいかと」
――分校内では、さすがに彼等も自重するでしょうから。
そんな言葉が、どこかで遠くで聞こえた様な気がした。
が、あたしはそれ所ではなかった。
事態は最悪だった。
このままでは、そう遠くないうちに司は『いなくなる』だろう。
知り過ぎた者が消される――そんな話は、耳が腐るほど良く聞いている。
――司が……いなくなる? ……あたしの前から?
何故か、あたしは激しい喪失感に襲われた。
司という男は、まったくの大馬鹿者だった。
あの風祭、それも宗家の娘であるみやびを全くの打算無しで受け入れ、みやびの我儘にも嫌な顔一つ見せない。
仮に嫌な顔を見せたとしても、それは心からのものではなく、どこか楽しんでいる様にも見えた。
みやびは反発しつつも、そんな状況を徐々に受け入れていった。
悔しいが、それは確かに心地の良いものだったから。暖かかったから。
リーダからだって、こんな心地の良さと暖かみを感じたことは無かったから。
……みやびは、そんな自分の感情が信じられなかった。
もし素直にリーダに聞けば、こう教えてくれただろう。
――それは司様が、御嬢様を本当の御家族の様に接していらっしゃるからですよ。
あくまで使用人としての一線を崩さない、崩せないリーダとは、そこが大きく違うのだ。
が、みやびがそんなことを素直に聞ける筈も無い。
故に、みやびは湧き上がってくる自分の感情を理解できず、困惑することしか出来なかったのだ。
「最早、理事長として、雇用者として御嬢様がすべき義務は御座いません。
司様は、越えてはならない一線を踏み越えられました。
一教師を助けるにしては、『コスト』が……」
「司は一教師なんかじゃないっ! あたしのっ!」
あたしはその言葉に激しく反発し、机を叩いた。
「御嬢様の、何で御座いましょうか?」
「あたしの…… あたしの……」
そこから先の言葉は、幾ら考えても出てこなかった。
司は……あたしの、何?
わからなかった。直ぐそこまで出てきているのに、わからない。
……でも、これだけはわかる。
司がいなくなるのは『嫌だ』。
だからあたしは、こう答えた。
「司はあたしの労働者だ! 相沢にも仁礼にもやらん!」
それを聞くと、今まで信じられない程素っ気無かったリーダが、微笑みながら聞いた。
「では、どうなされますか? 幸い、両家共に本家は動いていないようです。
分家か取り巻きの独断先行ですね」
「ふんっ! なら話は早い!」
あたしはリーダに命じ、外をうろついている連中の黒幕と連絡をとった。
『……これはこれは、まさか風祭の末姫様直々に電話を下さるとは』
『うちの司に何の用だ!』
『ああ、あの男ですか。いやなに、少々調子に乗り過ぎた様ですので、少し……ね』
その言葉にカッとなり、あたしは思わず叫んだ。
『司はあたしの、風祭みやびの個人秘書だ! 司に対する攻撃はあたしへの攻撃……ひいては風祭に対する攻撃と心得よ!』
『! ……まさか! あんな何所の馬の骨ともわからぬ男が!?』
『え〜い、うるさい! あたしが誰を秘書にしようが、そんなのはあたしの勝手だっ!』
『くっ! ですが、それでは風祭が我が家の内情を探っている、ともとれますぞ!』
『それ以上の文句は、お前の所の本家とその娘達に言え! うちの司は巻き込まれただけだっ!』
そう言い捨て、あたしは電話を叩き切った。
電話の男は、明らかに驚愕している様だった。
まあ、無理も無い。あたしだってびっくりだ。
理事長のではなく、あたし個人の秘書――それは、司があたしの側近であることを意味する。
司が……あたしの側近?
そうなれば、ずっと司と一緒にいられる。
たとえ、あたしが『理事長』でなくなっても。『生徒』でなくなっても。
それは、とても良い考えの様に思えた。
「リーダ、そんな訳で、司は今からあたしの個人秘書になったから。手続き御願い」
「はあ……宜しいので御座いますか?」
流石にそこまでは考えていなかったのか、リーダは目をパチクリさせている。
「かまわない」
「このことは司様には?」
「必要ない。司は知る必要の無いこと」
そうだ。自分は当たり前のことをしただけ。
『――』を守るのは当然のこと。
「ですが……」
「いいんだ…… ちょっとでかけてくる」
あたしは司に無性に会いたくなり、外に出た。
……司は栖香と美綺、それに奏の四人で、楽しそうに笑ってお弁当を食べてました。
――こ、こいつ…… 人に散々心配させといて、これかっ!? これなのかっ!!
その暢気そうな顔を見ていると、ふつふつと怒りがこみ上げてくる。
「何を暢気に笑ってるっ!」
「ふごおっ!?」
気がつくと、あたしは司にドロップキックを喰らわせていた。
「な、何すんですか、理事長!?」
「うるさい! 何もかもお前が悪い! そう決めた!」
その言葉と同時に、あたしは司に踊りかかった。
……そうしたら、胸の奥のもやもやがすっと消えてなくなった。
投下終了。
え〜、ここまで書いて流石にアレ過ぎることに気付き、没となりました。
でも、そのまま消去も勿体無いので……
>>224 224様、有難う御座います。
>このSSって、生徒達の問題は解決した後の話ですよね?
そうです。姉妹双方のルートを辿りつつ、みやびーとも……という漢の浪漫的な設定です。
>みやびーの乙女ゴコロにも期待してます(ry
この没版は流石に重過ぎますね〜
>>254 乙。
うわぃ、みやびー様が暗いっ(笑 と思ったら、没案でしたか。
こう言うシリアス駆け引きも実は結構好きですが、やっぱりこの面々だったら明るいのをキボン。
あーでも、嫉妬でドロップキックはイイです。その理不尽さが(w
仁礼家とかは司が動いてもスルーしそうですが、相沢家は父親が暴走すると危険ですな(ww
>254
没SS、乙。
個人的に重くないくらいの痴話喧嘩の方が大好きですが、ちょっと思ったのが、
あそこの子女って頑固で独占欲強い人多いからイザと言う時は恐い状況になりそう。
司が二股なんてした日には、普通に死ねますね。ええ。
GJ。
正規版のヤキモチみやびーを楽しみにしているぜっ!
……ところで、攻略前と後とで印象が180度変わるしのしのの出番はないのかなー……
皆様、有難う御座います。
後編もようやくUPしました。どうか見てやって下さい。
>>255 >やっぱりこの面々だったら明るいのをキボン。
ですね。全く状況説明が無いのもアレですが、暗すぎるのも……
PULLTOPのゲームはほのぼのが売りらしいですし。
>>256 >あそこの子女って頑固で独占欲強い人多い
あ〜、確かに。
一番心が広いのがみやび〜かも……
>司が二股なんてした日には、普通に死ねますね。ええ。
と、言うより只の勘違いで暴走しそうな方々もちらほら……
>>257 >正規版のヤキモチみやびーを楽しみにしているぜっ!
ごめんなさい。焼きもち出てきませんでしたよ。
次回以降に何とか……
>……ところで、攻略前と後とで印象が180度変わるしのしのの出番はないのかなー……
う〜ん、実はまだ未プレイなんですよ(爆)
>>258 かにしのSS楽しく読ませてもらってます。
しのしのをクリアした時、もうしのしのしか考えられなくなること請け合いだぞ。
>>259 有難う御座います。
すっかり嵌ってしまい、次作もかにしのSSですよ……
>しのしのをクリアした時、もうしのしのしか考えられなくなること請け合いだぞ。
現在プレイ中ですが、本当に印象変わるなあ〜
例のSS後編ですが、メールやコメント等で『すみすみの出番少なっ!』との御指摘が幾つかありました。
……いえ、あったのですよ? 本当は。
けど、削除したのですよ。内容的に合わないので。
御要望があれば公開します。
>>260 公開して欲しいです。
あと、個人的には彼女達個々の司に対する心理描写とか大好きなので、
あちらの方で公開されているSSはより良かったです。
それより甘くないの続きマダー?
すみすみのエロ書いてくれませんかぁ?
トワイライトデュアルとか侵蝕とかの?
そろそろ大丈夫かな?
なにが?
規制でも食らってた?
あ〜、やっと規制が解除された。
長かったよホント……
>>261 >公開
一応、HPの方にアドレス載せていますが念のため……
p://www.geocities.jp/wrb429kmf065/harukaniaogi02botu1.htm
p://www.geocities.jp/wrb429kmf065/harukaniaogi02botu2.htm
>あと、個人的には彼女達個々の司に対する心理描写とか大好きなので、
>あちらの方で公開されているSSはより良かったです。
有難う御座います。投稿版に投稿して、その後多少手を加えてHPに掲載する手法が身についちゃったからなあ……
>>262 >それより甘くないの続きマダー?
あー、解除あまりにも遅いので、最新話はHPに直接UPしちゃいました。
だから「その8」は欠番です。
――疲れた、本当に疲れた……
雄真は足取りも重く、鈴莉の研究室へと向かう。
これから10日間の間、雄真は実母である鈴莉と共に暮らすことになっていた。
名目は『魔法学基礎の集中講義』。
魔法学のまの字も知らぬ雄真に対し、魔法学教育の権威である鈴莉が付きっ切りで補習授業を行うことになっているのだ。
――鈴莉先生、今日は補習勘弁してくれるかなあ?
が、流石に今日は勘弁してもらいたかった。
熱い風呂に入り、暖かい布団に包まってゆっくりと眠りたかったのだ。
「鈴莉先生、只今戻りました」
そんなことを考えながら、雄真は研究室のドアを開いた。
――――ドアを開けると、そこは玄関でした。
「へ? ……何で?」
ドアの向こうはいつもの研究室ではなく、どこかの家の玄関だった。
やたら立派な玄関で、その向こうは延々と廊下が続いている。
雄真が一人首を捻っていると、スリッパでパタパタと足音を立てながら、鈴莉が弾んだ声で出迎えた。
「雄真く〜ん、お帰りなさ〜い♪」
「……鈴莉先生?」
胸にエプロン&手にはおたまという『新妻ルック』の鈴莉に、流石の雄真もどこから突っ込んで良いやらわからず、目を白黒させる。
……そんな雄真に、鈴莉は実に意味ありげな質問をした。
「雄真くん、直ぐご飯にする? それともお風呂? それとも……」
選択肢が現れた!
1、ご飯にしようかな
2、お風呂に入りたいです
3、漢なら敢えて『それとも……』をっ!!
「ご飯にします、サー」
雄真は最敬礼で応じた。
勿論、選択は1だ。他にありえない。
2は何となく危険な匂いがするし、3に至っては問題外である。
(まあ、『それとも……』が何か気にならないではなかったが、雄真も敢えて地雷――それも恐らく核地雷級の――を踏む程馬鹿では無い。
好奇心は猫をも殺すのだ)
「あの〜鈴莉先生? その格好は?」
が、それでもこれだけは聞かずにいられなかった。
何を企んでいるかは知らないが、今日の鈴莉先生は幾らなんでもおかし過ぎる。
「う〜ん、似合わないかしら?」
「いえ、凶悪な位似合っています」
というか、若くて美人な新妻そのものです。
――どうして、うちのかーさんズはこんなにも若いのだろうか?
思わず雄真は天を仰ぐ。
音羽かーさんはまるで年下の様――お肌なんかプニプニのツルツル――だし、鈴莉母さんもせいぜい20代半ばの容姿である。
これは世間的に見て明らかにおかしかった、異常だった。
……まあ、それに気付いたのはつい最近なのだが。
そういえば、魔法使いの女の子は皆美人、というのもおかしい。
確率論的に考えて、有り得る筈が無い。
が、魔法使いといえば美人揃い、と昔から相場が決まっていた。
そして不思議なことに、数少ない男の魔法使いは別に美男揃い、という訳でもない。
これについては、以下の様な俗説が存在する。
女性の魔法使いは、無意識の内にその魔力で自らの容姿を自分の理想に近づけていく、と。
だから女性の魔法使いは、皆あの様に若々しく見目麗しいのだ、と。
俗説とは言え中々説得力を持ち、それ故に広く知れ渡っている説である。
が、これを聞いた時、雄真は真っ向から異議を唱えた。
何故なら、雄真はその反例を知っていたからだ。
誰もが御存知の通り、伊吹はちみっちゃい。加えて胸は洗濯板である。
そして、彼女はそのことに対して強いコンプレックスを持っていた。
つまり、『伊吹ほどの魔力の持ち主ですら、自分の背や胸の無さをどうにも出来ないでいる』ということになる。
――魔法で背や胸がどうにかなるのなら、とっくにやっておるわッ!!
以前、雄真は腰の入ったパンチと共にこのお答えを受け取っていた。
……半泣きの表情とその悲痛なまでの叫びを、雄真は生涯忘れないだろう。
だからこの説は却下である。でなければ、伊吹が余りにも哀れ過ぎた。
(第一、この説では音羽かーさんの若さを説明出来ない)
「そう、嬉しいわ。
じゃあ雄真くんの御要望どおり、まずはご飯にしましょう」
鈴莉は雄真の答えに満足そうに頷くと、とりとめも無くそんなことを考えている雄真を促し、家に上げた。
「成る程、空間を捻じ曲げて鈴莉先生のマンションと繋げたんですか……」
「そうよ。雄真くんだって、10日も研究室住まいは嫌でしょう?」
鈴莉は簡単に言うが、大抵のマンションには進入防止用の対魔法防御がされている。
ましてや鈴莉の部屋がある超高級マンションともなれば、相当強力な防御が施されている筈だ。
……まあ、鈴莉の前では屁の突っ張りにもならなかった訳だが。
「でも、悪いですね。こんなことまでしてもらっちゃって」
「何を言っているの。当然よ、当然」
鈴莉はそう言うが、春姫の話では鈴莉は多忙の身の筈だ。
にも関わらず、鈴莉は雄真の為に10日も割き、挙句の果てには身の回りの世話までしてくれている。
――やっぱり、俺のことを気にしているのだろうか?
10年前に自分を小日向家に預けたことを、もしかしたら鈴莉は気にしているのかも知れない。
だから、こうして色々世話を焼いてくれるのだろうか、とも思う。
……ならば、『気にしないでいい』と言ってあげた方が良いのだろうか?
(雄真は、何故自分が小日向家に預けられたのか今ひとつ把握していない)
そんなことを考えながら鈴莉を見ると、鈴莉はじっと雄真を嬉しそうに見つめていた。
その姿が、ふと葵と被る。
「そう言えば、鈴莉先生に聞きたいことがあるのですが」
「なあに?」
真剣な表情の雄真を、鈴莉は眩しそうに見る。
「俺に兄弟姉妹っています? あ、もちろんすももは除外で」
「雄真くんは一人っ子よ? ……もしかして、兄弟が欲しいの?」
「ちっ、違いますよ!」
兄弟姉妹はすもも一人で充分である。
「ん〜?」
「……じゃあ、御門葵って生徒を知ってます?」
「知ってるわよ? 優秀な子だし」
無論、それだけではないが。
「彼女が……葵ちゃんが俺の従妹って、本当ですか?」
「あら? もしかして、御門さん本人から聞いたの?」
「はい。『自分には従兄がいた』と」
「凄いわね、もう御門……葵さんから聞きだせたなんて。
彼女は常に受身だから、自分から言い出すなんて余程のことよ?」
それとも、彼女はもう雄真くんが私の息子だと知っていたのかしら、と鈴莉。
「じゃあ!」
「本当よ。葵さんの父親が私の弟なの。
だから、雄真くんと葵さんは血の繋がった従兄妹同士」
姓が違うのは、婿養子に行ったからだ。
「鈴莉先生に弟さんがいたんですか」
ならば自分の叔父、という訳か。
「不肖の、ね。見た目も中身も私と似てないけど、娘の葵さんを見ると血の繋がりを自覚せずにはいられないわ」
「はあ、色々あるんですね」
「まあ、何れ雄真くんも会うと思うわ。
……そういえば昔、葵さんは雄真くんに懐いていたけど、今もそう?」
「いえ、まあ親しくはして貰っていますが、葵ちゃんは俺が従兄だとまだ知らないもので」
「へえー、じゃあ知らないのに聞き出せたのね。
流石は雄真くん、といった所かしら」
「茶化さないで下さいよ。只、従兄に似ているから、というだけです」
「あの子は、その程度で動じないと思うわよ?」
「そうですか?」
中々、積極的な子だと思うけど……
自分が知る葵像とは余りに異なる評価に、雄真は首を傾げる。
「――で、どうするの?」
自分がその従兄だ、と教えるのか? ということだろう。
「言えませんよ…… 今の俺じゃあ」
雄真は自嘲気味に答えた。
魔法から逃げて、逃げて――結局逃げ切れずに舞い戻ってきた今の自分では、葵の思い出を汚すだけだ。
……第一、自分は未だに彼女のことすら思い出せないでいるのだから。
なのに、何と言って葵に告げる? どんな顔をして葵に告げると言うのだ?
雄真は、それ程厚顔では無かった。
「そう。でも何れ、そう遠くない内にばれるわよ?」
が、それは逃げているだけ、目先の問題を先送りしているだけに過ぎない。
鈴莉は、それをさり気無く指摘する。
「その時は……その時です」
「そう」
それ以上、鈴莉は追求しなかった。
雄真は鈴莉と二人だけの食事を続ける。
たった一人少ないだけなのに、小日向家からは想像もつかない程の静けさだ。
――そう言えばすももとかーさん、今頃どうしてるだろう?
二人とも、自分が10日間泊まるというだけで不満たらたらだった。
何とか宥めすかして来たのだが……
「小日向家がそんなに気になる?」
「へ? いえ、そんなっ!」
図星を突かれ、雄真は慌てて否定する。
「隠しても、顔に出てるわよ?」
「うそっ!?」
必死で顔を弄る雄真を見てくすくす笑う鈴莉に、ようやく雄真はからかわれたことを理解した。
「酷いなあ……」
「ごめんなさい。あんまり必死なものだから、ね?」
「いや、まあ…… あの二人だけ残すと、何しでかすか心配で……」
とくにかーさんとかかーさんとか。
「いいお兄ちゃん、息子ね?」
「そんなのじゃあ無いですよ……うぐっ!!」
と、その時、急に体に熱いものが込み上げ、雄真は思わず蹲る。
それを見て鈴莉はニヤリと笑った。
「……どうやら、効いてきたようね?」
「鈴莉……先生……?」
雄真は呻く様に呟いた。
体が軋み、まるで自分のものでは無い様だ。
目もかすみ、自分の手があんなに小さく、遠く見え……「ほんとにちっちゃっ!?」
込み上げてくる熱さも、体の軋みも直ぐに収まった。
が、それどころでは無い。
何と、自分の体が小さくなっていたのだから。
……年の頃、6歳程だろうか?
「ふふふ…… 凄いわ……『あの頃』の雄真くんそのものよ」
「すっ、鈴莉先生?」
雄真はやっと理解した。
食事に一服盛られていたことを。
それが効いて、幼児化してしまったことを。
……幸いなことに、幼児化は肉体のみであり、精神は元のままだった。
(流石の鈴莉も、そこまでは憚られたのだろう)
が、そんなことは何の慰めにもならない。
何せ、目を血走らせた鈴莉が、直ぐそこにいるのだから。
「さあ雄真くん、ご飯も食べたことだし、お母さんと一緒にお風呂に入りましょうね〜♪」
どうやら先程の選択肢、2は『鈴莉先生とお風呂』、3は『幼児化』だった様だ。
(ついでにどれを選ぼうが、結局最後はこうなるらしい)
鈴莉の様子から考えて、只風呂に入るだけでは済まない――そう判断した雄真は必死で抵抗する。
が、所詮は子供の肉体、簡単に押さえつけられてしまう
……嗚呼、小日向雄真絶体絶命の危機である。
「ほらほら、親子何だから恥ずかしがらないの!」
「神さま――――っ!?」
雄真は必死で天に祈った。
その祈りが通じたのか、はたまた変な電波を受信したのか、雄真の頭に起死回生の策が浮かぶ。
……しかしそれは、雄真にとって余りに過酷な策だった。
が、背に腹は代えられない。
雄真は腹を括り、策を実行に移すことを決めた。
「……お母さん、お母さん」
「へ? ゆ、雄真くん……今、何て……」
「僕、お母さんにお願いがあるの」
「何っ! 何でも叶えてあげるわよっ!!」
上目遣いでおねだり口調の雄真に、鈴莉はすっかりメロメロである。
「僕、ひとりでお風呂に入りたいな。お母さんに僕が一人で出来るところを見せたいよ……」
「く……その手で来るとは……」
鈴莉は歯噛みする。
騙されていることはわかっている……わかっているのだが……
「だめ……?」
「くはっ!」
それが止めだった。
鈴莉は両手を地に付け、血の涙を流しながら頷いた。
「……わかったわ」
「ありがとう! お母さん!」
これが、雄真起死回生の策だった。
ただ、鈴莉の魔手から逃れる為に己の羞恥心すらも捨てるという、正に『肉を切らせて骨を断つ』もので、効果はあるが自分のダメージも大きいのが欠点だ。
が、背に腹は代えられない。
明日のために、今日という日の屈辱に耐えたのである。
(もしあのまま一緒に風呂に入っていたら、きっと雄真は落ちるところまで落ちていただろう)
「……しかし鈴莉先生、本当にどうしたんだろう?」
雄真は、風呂に入りながら一人呟いた。
正直、雄真は鈴莉が何を考えているのか、全くわからなかったのだ。
雄真は、鈴莉が音羽と同じ人種だということに、未だ気がついていなかった。
恐らく、普段の鈴莉の理知的な振る舞いが、音羽のそれとは余りに対照的だからだろう。
……いや、もしかしたら気付かない振りをしているだけなのかもしれない。
小日向雄真16歳、結構傷つき易いお年頃なのだから。
――その頃、夢破れた鈴莉はリベンジを誓っていた。
「明日こそはっ!」
まあそんなこんなで、どうにか今日という日が終わったのである。
ちなみに幼児化は朝になれば解け、日が沈むと再び幼児化するらしい。効果は10日間だ。
実にタチの悪い呪いであった。
SS投下終了。次は「甘くない」の第10話か、それとも「遥かに仰ぎ、麗しの」か?
UMAのアホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、
そこは2を選ぶのが漢として当然の選択だろ。
3のそれとも・・・を18禁だと思ったのはここだけの秘密だぜ
284 :
温泉の人:2006/12/21(木) 20:24:18 ID:VE7+s93R0
鈴莉かーさん怖すぎ・・・((((゚Д゚;)))乙です。
しかし第8話も読んだけど本編を遥かに凌駕するドタバタぶりですなぁw
とりあえず幼児化したUMAをはるひめさんがお持ち帰りして
いろんなとこお世話しちゃう展開キボン
>284
> とりあえず幼児化したUMAをはるひめさんがお持ち帰りして
> いろんなとこお世話しちゃう展開キボン
それを、パラレルとして藻前さんが書くって方法も……
(以前に、おとボクとはぴねす!のクロス物書き始めたが、挫折したウチ……)
286 :
温泉の人:2006/12/21(木) 21:16:37 ID:VE7+s93R0
>それを、パラレルとして藻前さんが書くって方法も……
あ、あたし別に・・・そんな話書きたくなんか・・・
で、でも・・・みんなが読みたいって言うなら・・・あたし・・・///
(結論:男がツンデレ演じると非常にキモイ)
冗談はともかく、最近ちょっと書くためのモチベーションが不足気味だったり。
以前予告してた春姫とのえろSSも、いまいち筆が停滞気味・・・
何つーか、未だ飽きずに春姫エロ書いてハァハァしてる自分を
時折妙に冷静に見ちゃってそこで冷めちゃうって言うか。
こういう業界で長年やってる方々ってマジ尊敬します・・・
「世の中甘くない」ってもう半ばオリ化しちゃってるじゃん……
エロでもなければパロでもない。スルーしろとか言うレベルじゃないと思う。
批判とかじゃなくて趣旨違いの作品は載せないほうがいいと思うんだけど……
自分のホームページで掲載しているならアドレスだけ載せて読みたい人はそっちに行けば
いいんじゃね?
正直スルーの限界だよ……
> エロでもなければパロでもない
ここエロパロ板じゃないし。
>>282 かにしのに一票!
>>283 ……だって、選択のやり直しは不可ですから(笑)
>>284 温泉の人様、有難う御座います。
>しかし第8話も読んだけど本編を遥かに凌駕するドタバタぶりですなぁw
いやあ、そうしないと話が暗くシリアスになり過ぎるので。
オリでシリアス書いてるから、二次ではお馬鹿にいこうかと。
>とりあえず幼児化したUMAをはるひめさんがお持ち帰りして
やりそうで怖い……
>>285 あー、確かにオリ設定多すぎですね、申し訳ない。
実に唐突だが、分校の教師は僅か20人足らずである。
故に、全ての教員は教科の担当は勿論、他にも何らかの役職を複数兼任しなければならない。
その役職は生徒の担任や生活指導、学年主任――態の良い雑用係――に工作員(?)等、実に様々だ。
我等が滝沢司も、当然幾つかの役職を兼任している。
本職である歴史教科全般の担当教諭職の他に、司はクラス担任と理事長連絡係という二つの役職を兼任していた。
……ちなみに『理事長連絡係』とはつい最近出来たばかりの役職であり、読んで字の如く『教員が提出する書類を集めて理事長に届ける係』である。
表向きは『今までバラバラに提出していた書類をまとめて提出しましょう』という趣旨で出来た役職なのだが、
要は『司に理事長への説明役を押し付けよう』ということで、書類提出時に提出者から事情を聞き、それを理事長に伝えて了解を得なければならないという実に損な役回りなのである。
まあ司は基本的に理事長側の人間であるため、あくまで理事長の立場に立って双方の妥協点を探るのだが、
それでも今までより遙かにスムーズに物事が進む為、最近では教員だけでなく分校全職員からの書類も受け付ける様になっていた。
……しかし、これはもう一教員の仕事では無いのではないだろうか?
「では今回の書類の件に関しては、そういった方向で宜しいですね、理事長?」
「ああ、構わない」
司の最終確認を、みやびは実に鷹揚に応じた。
司は週に一度、理事長への書類を提出する。
司はあくまで教員が本職であるため、通常の特に問題の無い書類は事務の方で処理するのだが、理事長がへそを曲げそうな、或いは怒りそうな書類は全て司に回される。
そういった書類をその一週間の間に処理するのだ。
そして週末、こうして最終的な調整と確認を行う、という訳だ。
(ここから後は単なる事務手続きであるため、事務の仕事だ)
「……ところで司? これから夕食なのだが、お前も食べるか?」
仕事が終わった後、みやびはいつもの様に司を食事に誘う。
ここ最近、みやびは何故かこうして、よく司に食事を振舞ってくれる。
言葉だけなら『別に食べようが食べまいがどうでもいい』ともとれる何気無いものだが、その上目使いの表情と口調から考えて、どちらかと言えば『一緒に食べよう』というおねだりの類だろう。
……そんな風におねだりされて、司に断ることが出来るだろうか?
、みやびの願いとついでに自分の欲望――みやびの所で出される食事はとても美味いのだ――を叶えるべく、やはりいつもの様に、司は最敬礼で応じた。
「御相伴に預からせて頂きます」
「うむっ! 素直でよろしい!」
司の態度に、みやびは実に満足そうに頷いた。
「で、今日の夕食は何ですか?」
司は期待満々でリーダに尋ねる。
そんな司に彼女は微笑みながら答えた。
「お寿司ですよ」
「おおっ! そいつは豪勢なっ!」
――そういえば、最後に鮨喰ったの何時だろう?
司はふと考える。
ここ凰華女学院分校の食堂では、実に多彩な高級料理が楽しめるが、何故か洋食中心であり和食は少ない。
ましてや生の刺身など、まず出ないのだ。
……こんなに海岸に近いのに、実に勿体無いことである。
故に司は、和食に飢えていた。
そんな様子を見て、リーダはくすりと笑う。
「では司様、最初は『おまかせ』、その後に『お好み』でよろしいでしょうか?」
「へ? ……もしかして、鮨職人が来てるんですか!?」
「はい。『栄鮨』の御主人が」
「げっ! わざわざ『栄鮨』の当主が握りに来てるのですかっ!?」
――余りにもさらっとリーダさんは言うが、とんでもなく凄い事だぞ、それっ!
『栄鮨』は江戸時代から続く超高級寿司店で、老舗中の老舗、名店中の名店である。
特に当代当主は、その技術の素晴しさから人間国宝に叙された程であり、彼が握る鮨目当てに全国から客が『栄鮨』訪れる程だ。
が、彼の握った鮨を味わえるのはその極一部に過ぎない。正に、選ばれた者のみが味わうことを許される至高の鮨なのだ。
それが向こうから出向くとは……
風祭の力は本当に恐ろしい。
「はい。でも、ヘリと飛行機ですから直ぐですよ?」
「…………」
リーダさん、正直その思考にはついていけません。
この学園のバブリーさにも大分慣れたと思っていた司ではあるが、どうやらまだまだの様だった。
……まあ慣れたら慣れたで、後々大変だろうが。
隣室で握られた鮨を、メイド達が理事長室へと運んで来る。
それを給仕役のリーダさんが受け取り、みやびと司の前に運ぶ。
「御待たせいたしました」
食べるのはみやびと司の二人だけだ。
いつもそうなのだが、リーダは決して司達と……いや、みやびと一緒に食事をとることはしない。
彼女は決して、使用人としての立場を崩さないのだ。
……故に司がいる時以外、みやびはいつも一人で食事をとっていた。
(まあ会食とかでみやびも他人と食事をとる機会はあるが、これは少々意味が違うだろう)
司としては何とかしたいと思うのだが、これがなかなか上手くいかなかった。
彼女にとり、それは神聖な義務であり誇りでもあったのだから。
「御嬢様、どうぞ」
「うむ」
鮨は出来た順に運ばれてくる。
最初に来たのは、みやびの分だった。
が、みやびは箸を取ろうとはしない。
恐らく、司のことを待っていてくれているのだろう。
……しかし、そんなみやびを見ていると、司の心にむくむくと悪戯心が湧き上がる。
「理事長、折角の鮨が乾いてしまいます。勿体無いですよ?」
「あっ!?」
そう言うが早いか、司はみやびの桶から鮨を一つ摘み出し、口の中へと放り込んだ。
その一部始終を、みやびは呆気にとられて見守ることしか出来ない。
やがて、深い溜息と共にお決まりの台詞が吐き出された。
「……お前なあ、もう少し我慢できないのか?
親しき仲にも礼儀あり、と言ってだなあ……」
『親しき仲にも礼儀あり』。
みやびが司に対して説教をする際、良く出る言葉だ。無論、対司専用である。
……しかし、彼女は気付いているだろうか?
その言葉は、自分と司の仲を認めている証拠だ、ということを。
(リーダなど、そんなみやびを嬉しそうに見守っている)
が、我等が司にその様な言葉の機微はわからない。みやびも、である。
故に、それで仲が発展して……などということは起きない。
精々、仲の良い兄妹がじゃれ合うレベルに過ぎないのだ。
「いいじゃあないですか、代わりに僕の分が来たら、お返ししますから」
「そういう問題じゃあないんだ…… 本当に、お前という奴は……」
みやびは諦めたのか、次々と鮨をくすねていく司を黙認する。
別に本気で腹を立てているわけでも呆れている訳でも無いし、注意する気もない。
余程気を許せる相手でも無い限り、司がこんな無作法な真似はしないことを知っているからだ。
そして司がそれを自分に対して行うということは、自分はそれだけ司に心を許されている、ということになる。
……そう考えると、みやびは不思議と悪い気がしなかった。
そんなみやびの感傷を他所に、司は鮨をほおばる。
どうやら、さっきの1個で食欲に火がついたらしい。
「いや、しかし美味いですよこれは!」
こんな鮨、今まで食べたことが無い、と司は感嘆する。
(実際、もしこれが本当の鮨だとしたら、今まで司が食べていたものは鮨以外のナニかだろう)
「そうか〜♪ じゃあ存分に食べろ〜♪」
何故だか知らないが、その言葉を聞いたみやびは益々機嫌が良くなった。
そして気前良く、自分の桶を司の方へ押し出す。
……実の所、みやびは和食があまり好きではないのだ。
まして生の刺身など興味も無い。
何が悲しくて、魚を生のまま食べねばならんのだ!?
食堂に和食が無いのも、まあそんな理由からだ。
自分が好きなものは皆も好き、自分が嫌いなものは皆も嫌い、という実にジャィアニズム的な発想である。
にも関わらず、みやびは夕食に鮨を選んだ。
不思議、と言う他ないだろう。
「……みやびは食べないのか?」
ふと、みやびが全く箸を付けないのに気付き、司が心配そうに尋ねた。
が、自分に向けられるその言葉と表情に内心嬉しく思いつつも、彼女は澄まして答えた。
「馬鹿者。あたしはお前と違うから、次が来るまで待てる」
「……そりゃあご立派なことで」
「当たり前だ」
「じゃあこうしましょう。二人で一つの桶を食べるのです。
それならば、一緒に食べられるじゃあないですか」
「食べる? ……二人で一つの桶を?」
みやびは首を捻った。
彼女からは絶対出てこない発想である。
そもそも風祭の家では、複数の人間で同じ器に箸を入れるなどという真似は決してしない。
まあパーティーの際には大皿から小皿に料理を盛り取るが、これは少々意味合いが異なるだろう。第一、その場合はメイドたちが盛り分ける。
以前司が鍋料理とやらを作って振舞ってくれた際、大鍋に盛られてそれを皆でつつくと知り、大層驚いたものだ。
(風祭では、鍋料理も各人毎に小鍋で作られるのだ)
――しかし、流石に二人で一つの桶を食べるのは如何なものだろう?
丼物を『犬の餌』と揶揄する名門風祭家に生まれたみやびにとり、それはかなり躊躇する行為であった。
彼女の頭の中で、様々な考えがぐるぐると駆け巡る。
やはり鍋の時と同様に、互いに親睦を深める為に行う料理作法なのだろうか?
それとも、親しい人間同士が親愛の意味をこめて行う愛情行為なのだろうか?
……そう考えると、悪くないように思える。
何れにせよ折角の司の申し出、みやびを『親しい人間』と認めてくれた上での誘いである。無下には出来ない。
みやびは恐る恐る、桶の中に箸を入れた。
「うんうん、やはり食事は一緒にとらないとなあ」
「……お前が待っていれば、こんなややこしい真似をしないで済んだんだぞ?」
満足気に頷く司を、みやびがジト目で突っ込む。
が、司は澄ましたものだ。
「いいじゃあないですか、理事長。僕等は他人じゃあ無いんだし」
「へっ!?」
その爆弾発言に、みやびは思わず箸から鮨を落とした。
――他人じゃないって、もしかして、もしかして……司は……
心臓はバクバク、顔も真っ赤にして、みやびは司の次の言葉を待った。
……何故か、目まで瞑っている。
「何たって、僕と理事長は何度も拳で語り合った強敵(とも)ですからねっ!」
「はあっ!?」
思いがけない言葉に、みやびは目をまんまるに見開いた。
「あれっ? 理事長は知りません? 『強敵』と書いて『とも』と読むのですよ?」
「知るかっ!?」
漢と漢の熱い魂の交流ですよ? とのたまう司に、みやびはふるふると震えながら叫ぶ。
「じゃあ理事長に貸してあげますよ『北東の剣』、僕のバイブルなんです」
「いらんわっ!?」
「……何怒ってるんですか、理事長?」
首を捻る司に、みやびは目に涙を一杯浮かべながら飛び掛かる。
「あたしだってわかんないわよっ!? あーもー何だかとってもちくしょうっ!!」
「理不尽なっ!?」
……こうして、いつものケンカという名のスキンシップが始まった。
――――30分後。
「お二人共、お食事を再開してもよろしいでしょうか?」
精魂尽き果てて突っ伏す二人に、リーダの容赦ない言葉がかけられた。
笑顔だが迫力があり、とっても怖い。
……要は、『お残しは許しませんよ?』と言っているのだ。
「も、もちろんですよっ! なあ、みやび!」
「あっ、ああ! 当然だ!」
その言葉に、二人は慌てて席に戻る。
(こういう時のリーダは怖いのだ)
そんな訳で、食事は再開された。
……ちなみにリーダさん、食事中のケンカはスルーですか?
「馬に蹴られたくないですから」
……ご尤も。
食事中、ふとみやびは気になったことを司に尋ねた。
「……お前は、いつもこんな食べ方をしているのか?」
二人で一つの桶をつつくのか、ということだろう。
「まさかあ。当然、相手を見ますよ」
家族や余程親しい友人くらいかなあ、と司。
「そ、そうか! ……じゃあ、相沢や仁礼とも?」
みやびは一瞬喜ぶが、あの二人……特に司と親しい二人組のことが頭に過ぎり、思わず睨みながら尋ねる。
「あ〜、あいつらはちょっと、流石に問題が……」
まあ個人的には構わないが、色々ややこしいことになりそうだ。
栖香の場合、はしたない、と説教されそうだし、
美綺の場合は調子に乗り、『あ〜ん』なんてされかねない。
……折角の食事に、精神的に疲れる行為はやりたくなかった。
「では、あたしが初めてか!」
「まあ、ここではそうなりますかねえ……」
「『ここでは』っ!? お前、分校以外では、他の女とこんなことをやっているのか!?」
みやびは興奮の余り、再び司に掴みかかる。
慌てた司は、必死で否定した。
(もう体力の限界である。これ以上戦えば明日は全身筋肉痛、シップ臭で教え子達からブーイングものだ)
「まっ、まさか! 男の友人とだけですよ! 流石に女性とはっ!?」
「なら、よろしい♪」
いつもなら『じゃあ、あたしは女じゃない、ということかっ!?』と激怒するところだが、今日は幸せ回路が働いているため、そこで矛を収める。
ぶっちゃけ『栖香と美綺にもしていない』という事実が、『自分は特別』と脳内変換されているのだ。
要は気持ちの持ちよう、ということだろう。
……女心とは、実に複雑だ。
そんなこんなで、食事は賑やかながらも比較的平穏――あくまでこの二人の基準――に進んでいく。
司は黙々と鮨を食べ、そんな様子をみやびは御機嫌で眺めている。
一緒に食事をとる様になって知ったのだが、司は中々の健啖家だ。
食べるぺースも中々早い。男と女、という差を考えてもかなり早い方だろう。
……要するに、早喰い大喰らい、の類である。
にもかかわらず、その食べ方は不思議と人に不快感を与えない。
まるで、そういう作法でもあるのか、とでも思える様な綺麗で系統だった食べ方である。
みやびをしてそう思わせるのだから、ひいきを差し引いても中々のものだろう。
と、司の箸が急に止まった。
そして、不思議そうに首を捻る。
「司、どうした?」
みやびは心配になり、尋ねた。
「?」
幾つか食べて、司はふと気付いた。気付いてしまった。
美味い、凄く美味い。
……けど、何か違うような気がする。
そう、何か一味足りないのだ。
もし、分校での食生活の大幅向上により、舌の経験値が大幅向上していなければ、気にもならなかっただろう、
もし、こうして幾つも食べていなければわからなかっただろう、
が、気付いてしまった。
「司、どうした?」
みやびの心配そうな声が聞こえる。
だから、司は思い切って尋ねた。
「理事長、もしかして…… これ、さびぬきですか?」
「うっ、うるさいっ! 別にいいだろう!」
図星をつかれ、みやびはうろたえる。
……実は今まで運ばれた鮨は、全て『さびぬき』だったのだ。
「いやまあ、そうなんですけどね」
まあ美味いからいいか、と考え直す司。
だがみやびにとり、その指摘は中々のダメージだった様だ。
顔を真っ赤にして反論をする。
「おっお前っ! まさか、『さびぬきなんてお子様だなあ』なんて思ってるんじゃあないだろうなっ!?
違うぞ! 断じて違うっ! ああいう刺激物を食べると、繊細な味覚が破壊されるんだ! 脳細胞が破壊されるんだっ!」
だからわざと食べないんだ、と強硬に主張するみやび。
「いや…… だから別に気にしてませんよ……
僕だって、未だに苦手なものありますし……」
「嘘じゃない! その証拠を今から見せてやるっ!
リーダ! わさび特盛で御願いっ!」
聞いちゃいなかった。
「宜しいのですか?」
リーダは眉を顰めて否定的に確認する。
が、にも関わらず、みやびは強硬だった。
「あたしの誇りがかかっているのよっ!?」
みやびは、司に子ども扱いをされるのが我慢出来なかったのだ。
だから、運ばれたわさびを鮨に塗りたくり、それを一気に口に入れた。
「まてみやびっ! それは危険だ!」
危険なブツを口に放り込もうとするを見て、司は慌てて止める。
……が、遅かった。
「――――!? 〜〜〜〜!!!!!!」
辛さのあまり、みやびは理事長室中を転げまわる。
ゴロゴロ
ゴロゴロ
ゴロゴロ
そして途中で柱に頭を思いっきりぶつけ、停止した。
……正に踏んだり蹴ったりである。
「! 御嬢様!」
「みやびっ!?」
司は慌ててみやびを抱き起こす。
「どうですか、司様?」
「大きなたんこぶが……」
目を回すみやびの頭には、実に立派なたんこぶが出来ていた。
「……だから申し上げましたのに」
「しかし…… 負けず嫌いというか何と言うか……」
こうなること位わかるだろうに、と呆れた様に言う司。
「そう仰らないで下さい。良い所を司様にお見せしようと、御嬢様も必死だったのですから」
「良い所、ねえ……」
自爆し、気絶したみやびを見て苦笑する。
本当に、努力が空回りする子なのだ。
「司様…… 実は御嬢様、和食はあまりお好きではないのです」
ですから食堂にも、殆ど和食が御座いませんでしょう、とリーダ。
「へ? じゃあなんで……」
「……そういえば司様、この間談話室のTVでお鮨の特集をじっと眺めて、溜息吐いてらしたそうですね?」
見られていたようだ……
「じゃあ、もしかして……」
「さあ? 流石にそれ以上はお答えしかねます。
ただ、御嬢様が別に好きでも無い物をわざわざ都内から取り寄せた、ということだけは御心にお留め下さいませ」
「…………」
司は黙って目を回すみやびを眺め続ける。
……本当、不器用な子だ。
「ありがとう、みやび」
司は、やさしくみやびの頭を撫でた。
「……先生、理事長とお楽しみでしたか?」
「うおっ!?」
理事長室を失礼した途端に背後から声をかけられ、司は思わず驚きの声を上げる。
「……(ぺこり)」
「……なんだ、小曽川か脅かすなよ」
何時の間にか、傍らにハムスターを思わせる小柄な少女が立っていた。
彼女は気配も無く現れるので、実に心臓に悪い。
「何か勘違いしている様だが……
みや……理事長に御馳走になっだんだよ」
「……理事長をご馳走に?」
「違うっ!」
と、彼女は急に司に近づき、何やら盛んに鼻をクンクンさせる。
……そして、にやりと笑って指摘した。
「……先生、理事長の匂いが上着に染み付いてる」
支援。
「げっ!」
慌てて司は上着の匂いを嗅ぐ。
……確かに、みやびの匂いがした。
どうやら取っ組み合いや抱き抱えたことで、匂いが移ったらしい。
「……(ぺこり)」
が、彼女はそれ以上追求せず、もう一度お辞儀をして去っていく。
「心臓に悪いなあ……」
そんな彼女を、司は呆然と見送った。
「あれ? センセ、何で上着脱いでるの?」
談話室を通りかかると美綺と栖香、そして奏といういつもの三人組がいた。
「いや、ちょっと暑くてな…… 時に、仁礼はどうしたんだ?」
栖香は呆然と立ち尽くしている。
その視線は、自分の右手――何故か『じゃんけんのちょき』を形作っている――に注がれていた。
そしてやたら嬉しそうな美綺に、そんな二人をオロオロと見比べる奏……
まあなんというか、三者三様だ。
「ああ、勝負の世界の厳しさを思い知ったんだよ」
と美綺は何故か拳を握り、『じゃんけんのグー』を形作る。
「?」
今ひとつよくわからないが、どうやら栖香は美綺とじゃんけんをして負けたらしい。
が、如何に負けず嫌いの栖香とはいえ、幾らなんでもそれだけであそこまでの反応は示さないだろう。
……何か賭けていたのだろうか?
「それよりセンセっ! 今度の外出日、一緒にお鮨食べに行こうよっ!」
「急に、どうしたんだ?」
「ん〜、急に食べたくなっちゃってね〜 センセも食べたいでしょ?」
ここじゃあ食べられないからね、と美綺。
「まあ構わんが……」
「やった! 久し振りだよね〜 センセもそうでしょ?」
思わずガッツポーズをとる美綺。
が、司の次の言葉に、思わず唖然としてしまう。
「つい昨日までは、な? けど鮨なら今さっき、理事長からご馳走になったぞ」
「え、みやびーがっ!? ……くっ、職権乱用だよっ!」
折角の『計画』を潰されて、美綺は思わず拳を握り締めた。
美綺(と栖香)もみやびと同様に、司に鮨を食べさせてあげようと考えていたのだ。
で、どちらが行くかを巡り、じゃんけんで決着をつけた、という訳である。
……しかし一歩遅かった。これでは折角の計画も効果半減どころの騒ぎでは無い。
故に美綺は、特権をフルに利用してフライングしたみやびを思わず罵ったのだ。
……が、朴念仁な司にそんな事情を汲み取れるはずも無い。
司は、美綺の反応をただ『自分達だけ鮨を食べてずるい』と考えているのだろう、と実に安直に考え、美綺を諭す。
「お前、そんなに鮨が食べたかったのか?
でもな、あれで理事長と言う仕事は結構大変なんだ。それ位大目に見てやれよ」
「センセって、みやびーに甘いよね」
しかし司の言葉は逆効果だった。
美綺から見て、最近の司はみやびに構ってばっかりいる。
もう少し位、自分達に時間を割いてくれても罰は当たらないだろう。
無論、みやびが飛び抜けて司を独占している、という訳では無い。実際には美綺と栖香の方が多い位だ。
が、彼女達から言わせれば、自分達は司と過ごす時間の大半を複数で過ごしているため、二人きっりになっている時間はみやびと比べ余りに少ない、という不満があった。
……まあそれを言うならばみやびとて大概リーダと一緒なのだが、そんな理由は恋する乙女には通用しないものなのだ。
「そうか? お前等にも結構甘いと思うが……」
司は美綺の言い分に首を捻る。
流石にみやびは、美綺や栖香の様に夜間部屋に押しかける様な真似はしない。
外出日の相手だって美綺か栖香のどちらかだ。
そんな司を、美綺は実に冷やかに見る。
「……センセは最近、随分みやびーと一緒に食事するよね……」
「まあ仕事上、よく会うからな」
けど一緒にとるのは仕事の日だけであり、それ以外は昼夜はこの三人、朝は栖香とが大半だ。
「何か、いつも凄く高いものばかり御馳走されてるよね……」
「まあそうだかもしれんな。しかし、さすが理事長はいいもの食べてるよなあ」
ここの食堂で出される食事も美味いが、みやびの所の食事はその更に上を行っている。
ああいうものが食べられるなら、また是非御相伴に預かりたいものだ、と呟く司を、美綺はジト目で睨みつける。
そして、言った。
「……センセのヒモ」
「ぐぅあっ!」
美綺にとっては、その場限りの思いつきに過ぎない悪口だったかもしれない。
が、その言葉は司にとり、まさに痛恨の一撃だった。
自分でも何となく感じていた漠然とした不安を、一言で言い表されてしまったからだ。
……自覚、あったんですね。
そんな司の様子を見て、美綺は溜息を吐きいた。
「センセ、『タダより高いものは無い』って言葉、知ってる?」
みやびに借りを作り過ぎ、ということだろう。
「むむう……」
思わず考え込んでしまう。
……考えてみれば、僕は近頃随分みやびに御馳走になってるじゃあないか!
気分はすっかり飼い犬である。
――司よっ! お前は、身も心も堕落してしまったのかっ!?
どこからか、そんな声が聞こえた様な気がした。
(*気のせいです)
――飼い慣らされ、野生を、牙を失ってしまったのかっ!?
(*始めから持っていません)
ふと空を見ると、大空に虎頭の男が、マントを翻して浮かんでいた。
司の心の師、タイガー○スク(漫画版)である。
(*絶対気のせいです。第一、今は夜だし、ここは部屋の中です)
「あっ、貴方はっ!?」
――司よっ! 虎だっ! お前は虎になるのだっ!
その言葉が胸を打つ。
「……確かに、堕落してしまっていたかもしれない」
「うんうん、そうだよ! だから、みやびーにもっと毅然とした態度を……」
我が意を得たり、と頷く美綺。
が、司は聞いちゃあいなかった。
(まあそれは美綺も同様なので、お互い様ではあるが)
――何としても、赴任前のワイルドな僕に戻らねばっ!
こうしてすっかりその気になった司は、『野生を取り戻す』為の特訓を開始することとなった。
……実にノリ易い男である。
SS投下終了です。
しかし、何かスレ独占し過ぎてるような気がする。
すこし自重した方が良いだろうか?
まあ読みたい人がいるんならそれで良いんじゃないの?
初期の段階でオリ設定多すぎで俺は読むのやめたし。
2chで気に入らん物にいちいち文句付けてたらきりないでしょ
過疎化するよりは定期的に投下があった方が新規の人とかも書きやすいだろうし
>>316 乙です〜
どちらも読んでいるので、個人的にはどんどん投下して欲しい。
と言うか、ここは過疎る時は思いっきりそうなってしまうので、独占とかは気にしなくてもいいのでは。
しかし、ヒモの自覚があったのか、司(w
その自覚があるのにほいほい誘いに乗ってしまうのはもう末期かも。一番経済力ないからなー
319 :
285:2006/12/22(金) 17:51:18 ID:igi509Ac0
>290 アンカー一つ間違ってますねwwww……
>285 → >287ですねぇ……
「甘くない」さんのSS楽しく呼んでますのでウチ
てか自分、クロス物を書く時は設定キチンとせぇへんかったから、途中で止まっちゃったorz
>>316 独占なぞ気にせずばんばん貼っちゃいなYO!
とかつて今以上の独占状態にしてた俺が一言
321 :
温泉の人:2006/12/22(金) 19:53:40 ID:YhGAPAE+0
はぴねすSSはゲーム本編でもハーレム?ルートがあったから気にならんけど
かにしので意味もなく本校分校まとめてゴー的ハーレム状態は勘弁シテクレ
オリ設定は別に気にしない
でも御薙はどこの恥女だ?ってのが正直な感想
投下するなってわけじゃないので誤解しないでくれ
こーいう意見もあるんだ程度で
でも三次創作はさすがにスレ違いだと思うんだけどな
>316
時々そう言う心配をする書き手さんがいるけど、気にしなくていいでしょ。
ここはたまーに突発的に人が増える以外は、大抵こんな感じ。
はぴねすの方は原作未プレイだからよく分からないけど、麗しのの方は好きだし。
>322
>かにしので意味もなく本校分校まとめてゴー的ハーレム状態は勘弁シテクレ
原作完全準拠とか言ったら、倉庫にあるSSの半分以上否定していると思う。
俺はむしろ本校、分校キャラが絡む話がみたいから全然おkだな。
リーダさんと鏡花を出してくれれば俺が喜びます
>325
俺も喜びます。未プレイですが。
分校組と本校組が絡むのはみさきちルートなんか見ても楽しそうだけど
全員が全員「司(先生)スキスキー」ってゆーのは食傷気味だけどね。
鍵系のSSにそーいうの多かったし。ヒロイン全員が理由もなく主人公好き好き大好きで
主人公は何でもできるし気配りもしっかりしてるけど、なぜか女心にのみ疎いwっていう
U-1だっけ、そんなハーレムもの。
「甘くない」はまさにそのものに見えるけど、はぴねす!の伊吹ルートの終わり方はまさに
ハーレムENDだったからなあwある意味原作完全準拠?
>>323 ハーレムものと、ALLキャラ出演SSは別物じゃない?
既に既出の意見だが分校キャラと本校キャラの絡みは興味深い。
ようするにおもしろければなんでもいいんじゃないかなぁ?
(人それを、『思考停止』と呼ぶ!)
いや、正直かにしのSS職人には是非とも頑張ってもらいたいのだよ。
>>317、322〜328
様々な御意見、御感想有難う御座いました。
何だか御迷惑をおかけしたようで申し訳ありません。
厳しい御意見に関しては、要は自分の修行が足りない、ということでしょう。
(実際、修行が足りないことは自覚していますし……)
これらの御意見は有り難く頂戴させて頂きます。
>>318 318様、有難う御座います。
>ほいほい誘いに乗ってしまう
食器の値段は未だに気になります(だって落としたら割れるから)が、食事に関してはもうすっかり慣れたようです。
>>319 285様、有難う御座います。
>「甘くない」さんのSS楽しく呼んでますのでウチ
有難う御座います。そう言って頂けて何よりですよ。
>>320、321
>独占なぞ気にせずばんばん貼っちゃいなYO!
有難う御座います。気が楽になりましたよ。
このスレの趣旨って「SSを書きたくなったら書き捨てられる場所」でいいんじゃないかなー
って、昔からスレに関わってる爺は思いますですはい。
だからま、難しい事とかつまんない事は抜きにして、書きたい人が書きたいように書ければ
他はどうでもいいんじゃね?
個人的にスレ埋め立て用に鬼哭街設定使った99%オリジナル話とかちまちま書いてたり
するしなー
書き捨てられるとか言うなよ
拾う(三次創作する)人もいるかもしれないしw
333 :
温泉の人:2006/12/24(日) 22:06:58 ID:pZbWcNEB0
はぴねす方程式があまりによすぎてmp3で1日中かけてた俺が来ましたよノシ
聴いてるとはぴねすなイメージがこの上なく膨らむ膨らむw
さて前回予告かけてからもう1ヶ月は経とうとしてるところなんで、
自分に発破かけるためにも出だしだけ先にうpしとこうと思います。
毎度おなじみ、雄真×春姫のラブエロなお話です。
ではでは。
「はぴねす!」より「Active?/Passive?(プロローグ)」
「……そう。そのまま……気を杖(ワンド)に集中させて……」
「……こうか? 春姫……」
ぴんと張り詰めた森の空気。
春姫の指導に従い、先生から借りた練習用の杖にじっと魔力を集中させる俺。
「……うん。それじゃ今度は……集まった光を、ぎゅっと収縮させて……」
「ん……わかった……春姫……」
俺はじっと目を閉じ、イメージを集中させる。
俺の力がまばゆい光の塊となって、俺の杖の先に収束するイメージ……
「エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ……」
杖の先に集まったそれを、俺はじわじわと拡大させ……
「カルティエ・エル……アダファルス」
……詠唱は終わった。
ゆっくりと目を開け、光が澱みなくそこに集まっていることを確認する俺。
「うゎ……」
美しい光だった。
春姫が初めて見たという魔法の光を形容するなら、きっとこんな感じなのだろう。
「……もういいよ、雄真くん。力、抜いても」
「あぁ」
すっと力を抜き、全身に溜まった緊張をときほぐす俺。
それと同時に、杖の先に集まった光も拡散してかき消えてゆく。
「雄真くん!」
やがて春姫が、嬉しそうに俺の元へと駆け寄ってきた。
「すごいよ雄真くん! こんな短期間で、もうこんなに魔力制御できてる」
「そ、そっか……?」
今俺がやってたのは、光の魔法の制御特訓。
魔力で生み出した光の粒子を自在に操るという、魔法使いにとって初歩の初歩とも言える訓練。
ぶっちゃけると……春姫ならきっと寝てても使えるレベルの魔法なのだ。
それができたくらいで、何もこんなに喜ばなくっても……
「うぅん。雄真くんはやっぱりすごいよ!
ここまできっちり制御できるようになるまで、ホントならあと数週間くらいはかかるもん」
「そ、そんなすげぇものなのか? これって」
「あーあ、このまんまじゃいつか雄真くんに追い抜かされちゃうなぁ……
私も、もっと頑張んなきゃ」
春姫といっしょに魔法の特訓を始めてはや数ヶ月。
その間中、春姫はいつもこんなだった。
俺が何か魔法を成功させる度、まるで自分のことのように喜んでくれる春姫。
まるで……初めて魔法に出会った時のように、目をきらきらと輝かせながら。
そしてそんな春姫を見る度、俺は何だかちょっとむず痒い気分になって……
そんな春姫の喜ぶ顔を何度でも見たくて、俺はより一層頑張ろうって気分になるんだ。
「それじゃ、準備はこのくらいにして……そろそろ始めよっか、雄真くん」
「あ、あぁ……春姫」
春姫は俺から少し距離をとると、ソプラノを構え静かに詠唱を始めた。
今の俺には詠唱することすらままならない、高度なフィールド魔法。
(やっぱ……すげぇサマになってるよな……春姫……)
春姫はさっき、いつか俺に追い抜かされちゃうかもって言ってたけど……
こんな複雑な魔法を事もなく操ってしまうところを見せられると、
こっちこそ追いつけるのはいつになるんだろうって思わされてしまう。
「……ふぅ」
春姫が詠唱を終わらせると、辺りは凛と静まり返った空気で満たされた。
まるで清浄な無菌ルームに入ったような、とても静かで清潔な空間。
「これでよし……と。さ、始めよっか。雄真くん」
「あ、あぁ……春姫」
返事をしたものの、どうも気持ちが傾かない。
数日前から特訓メニューに加えられた、春姫との実戦形式の訓練。
しかしこれは、言い換えれば……恋人でもある春姫に向かって魔法を繰り出す特訓なわけで……
いくら何でも春姫相手に本気で魔法を撃つのは……どうにも気が引けるわけで……
……いや。俺は決して春姫の実力を侮っているわけではない。
むしろ今の俺が全力で挑んだところで、春姫にはかすり傷ひとつ負わせることはできないだろう。
だけど……こういうのって何つーか……理屈でどうこうできる問題じゃないんだよな……
「……やっぱり気が進まないかな? 雄真くん」
そんな俺の心情を察してか、春姫がうつむきながらつぶやく。
「まぁ……ね。頭ではわかってるんだけど……
俺がもしヘマして、春姫のことを傷つけてしまったらって……少し恐怖はある」
「私なら大丈夫だから……ほら。早く始めよ? 雄真くん……」
「……あぁ……」
なおも気が進まない俺を前に春姫はしばらく考え込んでいたが、やがて顔を赤らめつつ提案した。
「だったら……もし雄真くんが勝ったら……私のこと、好きにして……いいよ」
「えっ……!?」
小さな声だったが、俺にははっきりと聞き取れた。
もし俺が勝ったら……春姫のことを……好きに……!?
それって……つまり……その……そういうことだよな……
ぽわ〜ん……
思わず俺は、敗北して俺にあんなことやこんなことまでされちゃってる春姫の姿を想像してしまう。
(何かそれって……すげぇ……魅力的かも)
って、ダメだろ俺!!!
いくら何でもそんな不純な動機じゃ、春姫に申し訳なさすぎる……
「ダメだ春姫……いくら何でも、そんな条件は飲めない」
「だったら、もし私が勝ったら……私が雄真くんのこと好きにするってことで……
それじゃ、ダメかな?」
「……」
つまり……俺が勝ったら、俺が春姫のことを好きにできて……
俺が負けたら……逆に春姫が俺のことを好きにできて……
(何かどっちにしても……俺がおいしい目に遭うだけのような気が……)
しかしさすがにここまでくれば、俺にも春姫の気持ちは理解できた。
春姫はきっと、俺に一刻も早く立派な魔法使いになってほしいという思いがあるんだろう。
そうでもなきゃ、御薙先生の頼みとはいえ……こう毎日毎日俺に付き合ってくれるわけがない。
それなのに……ただ傷つけるのが怖いだなんて情けない理由でその想いを無碍にしちゃ、
さすがにカッコ悪くて、春姫に顔向けできないよな。
「わかったよ春姫……その条件、飲むことにする」
「うん! じゃあ、よろしく頼むね……雄真くん」
「あぁ……行くぜ、春姫」
先程までの和やかな空気を捨て去り、凛とした覚悟で互いの杖を構える俺達。
たった今、この瞬間から……俺達は恋人じゃなく、ひとりの戦士となる。
「ソプラノ……」
「はい、春姫……」
春姫の念に呼応し、ソプラノの先端が紅い輝きに包まれる。
(来る……)
その動きに反応して、俺は静かに詠唱を始めた。
「エル・アムスティア・ラル・セイレス……」
春姫の攻撃に備えるべく、少し前に教わったばかりの抵抗(レジスト)魔法を詠唱する。
本来なら春姫の詠唱が終わるより先に機先を制し、流れを引き寄せておくのが筋なのだろう。
だが……彼女の戦法は、恵まれた防御魔法を軸に置いた攻防一体の型……
俺程度の魔力で下手に先んじようとすれば、その攻撃は全て無効化されるばかりか、
かえって彼女に攻撃の隙を与える結果となる。
だが逆に言えば戦法の軸を守りに置いてる分、一撃一撃の威力は大したことはない。
(いやそれでも、本格的に魔法を学び始めたばかりの俺よりは強力な一撃を放てるのだが)
それを抵抗によってうまく受け流すことができれば、流れを一気に引き寄せることができる……
だからこそ俺は下手に先んずることなく、相手の攻撃を受け止める手を選んだのだ。
「あくまで守りに徹するのね……なかなか利口な方法だと思うよ」
「あぁ……悪いが、春姫の実力を甘く見る気は一切ないからな」
「だけど……それだけで、私に勝てるのかな?」
「え……?」
ぽわっ……
「!!?」
刹那、青白い光の柱が何本も俺の周りに発生し……
光の出力が終わると、あたり一面にいくつもの魔法陣が俺を取り囲む形で出現していた。
「これは……」
「言い忘れてたけど、この森にはいくつもの魔力蓄積ポイントが設置されてあるの。
それらは私の一声で、あなたを縛る鎖にも、あなたを傷つける地雷にもなりうる」
「そんな……まさか……」
「……裕著に守りに徹してる余裕なんて、ないんじゃない?」
「くっ……」
……俺はどうやら勘違いしていたみたいだ。
確かに守りに徹していれば、負けることはないが……
こちらから果敢に攻め込まない限り、絶対に勝つこともできない……
もともとこの試合、俺には負けて当然の戦なのだ。
だとしたら……今更当たって砕けることを恐れていても仕方がない。
今はただ、真っ直ぐ勝利へ向け突き進むのみ……!!!
「エル・アフラシア・ラル・セイレス……」
つぶやき、一気に間合いを詰める……!!
「……させないわよ、雄真くん!! エル・アムダルト・リ・エルス……」
こちらに向けられたソプラノの先端が、鮮やかな紅蓮の閃光を放つ。
真っ直ぐ俺に向けられた、明確な攻撃の意思。
刹那、俺は……
にア 危険を顧みず、そのまま飛び込んだ
危険を察知し、横へと回避した
340 :
温泉の人:2006/12/24(日) 22:15:42 ID:pZbWcNEB0
とまぁ、ここから選んだ選択肢に従って互いの勝敗が決まり、
攻め役の異なる2種類のHシーンに分岐するって感じ。
で、現在の進捗はと言うと・・・
前者:オチまで執筆完了、細かいとこいくつか修正終わったら投稿可能
後者:ようやく執筆開始、全体の3〜4割まで執筆完了(構想自体はもう出来上がってる)
てなわけで、とりあえず次回前者から投稿していきたいと思います・・・
後者もできれば年内に公開できるよう頑張りますので、どうかお楽しみにノシ
楽しみです
「退かぬ、媚びぬ、顧みぬ!我が魔に防御の構え無し」の選択はー?
投稿乙です。
自分は1で。男らしく(?)玉砕覚悟の突撃を!
345 :
温泉の人:2006/12/28(木) 22:41:37 ID:SH/0ZrqR0
ようやく明日から冬期休暇( ´Д)=3
てなわけで早速1つ目の選択肢から投稿していこうかと思います。
今回の話は、今まで以上に人を選ぶ部分があるかも・・・;
てなわけで、読み進めていてちょっとでもヤな予感を感じた方は速やかにNG推奨です。
(一応読んでて後味悪くない話には仕上げてるつもりですが)
では早速参りましょう・・・
ピッ
にア 危険を顧みず、そのまま飛び込んだ
「……ディ・ルテ・エル……アダファルス!!!」
ボウッ!!!
俺の目前に、おびただしい炎の帯が迫り来る。
俺は指輪をはめた左手を、ぐっと前に押し出し……
「ディ・ラティル・アムレスト!!!」
ガキィン!!!
即席のバリアで、春姫の攻撃魔法をそのまま押し返す!!!
「え……」
眼前の展開に驚く隙も与えず、俺は一気に春姫の懐へと詰め寄った。
「!!! エル・アムダルト・リ・エルス……」
(!?)
俺はその言葉に一瞬違和感を感じつつも、杖を構えた右手を突き出し、
そのまま一気に呪文を唱えた……!!
「ディア・ダ・オル・アムギア!!!!」
「!!?」
しゅるるるる……
春姫の足元から、鈍色の蔦が幾筋も伸びてくる。
「まさか……こんな短い詠唱時間で……!?」
それらは確実に彼女の全身を取り囲み、動きを拘束させる……!!
「あ……」
勝負は終わった。
俺の拘束魔法に絡め取られ、ぺたんと力なく地面に座り込む春姫。
「まさか……両手別々に魔法を準備してたなんて……」
「あぁ。片手で魔法準備してた時、空いてるもう片方の手が気になってさ……
ひょっとしたらこれ、2つ同時に魔法準備できるんじゃないかなって」
「そんなこと、私思いつきもしなかったな……私の負けだよ、雄真くん」
「へへっ。こう見えても俺、発想力には自信あるからな」
負けたというのに妙に嬉しそうな春姫に、俺もおどけて返してみたが。
やっぱり気になるのは……さっき感じた違和感……
本当にこれで、勝ったと言えるのか……? 俺……
パチパチパチ……
「なかなかいい勝負だったわ、雄真くん」
折りしも後ろから、御薙先生が拍手などしながらこちらに近づいてきた。
「神坂さんの言うとおりね。この短い教育期間で、まさか二元同時詠唱までやってのけるなんて……
さすがは私の息子といったところかしら?」
「ありがとうございます……先生」
先生の賞賛の一言に、俺も素直に頭を下げるが。
「だけど……浮かれているところ悪いけど、これで神坂さんに勝てたとは思わない方がいいわよ」
「え……」
先程とはうって変わった先生の言葉に、俺は思わず呆気に取られる。
「それって、どういう……」
「せ、先生!! あのことは、雄真くんには秘密にしてって」
「神坂さん。わざわざ隠さなくても、遅かれ早かれ彼は知ることになるわ……
それに今目先の勝利に浮かれていては、これ以上の成長なんて見込めないわよ」
「先生……」
先生の言葉に一喝される春姫を見て、俺の違和感は最高潮に達した。
やっぱり春姫は……俺に何か隠している……
「どういうことですか? 先生」
「あなたも漠然と感づいてるはずよ……彼女が何故、あなたの攻撃に即座に反応しなかったのか」
「あ……!!」
そこまで言われて、ようやく俺は気づいた。
「春姫は、あの時……わざわざ初めから詠唱を始めてた……
本来ならそこまでしなくても、ほんの2言で済む詠唱のはずなのに……」
「ご名答。さすがは私の息子ね」
先生は嬉しそうに肩をすくめ、解説を始める。
「魔法はそもそも、術師の内外に存在する魔力を言霊により制御する技術……
詠唱とは、その魔力制御のために言霊を紡ぐ行為を指す。これはもう随分前に習ったわね」
「はい……」
習ったも何も、英語で言えばABCに匹敵するくらい基本的な概念だ。
「そしてこの詠唱の流れは、大きく分けて3段階に分かれる……それは何だかわかる? 神坂さん」
「はい……えっと、始動・命令・制御です」
「そのとおり。魔力を制御するには、まずその魔力を制御できる状態に整えてあげなければならない……
その為に紡がれる言霊が、いわゆる『始動キー』よ。
あなたたちが何気なく紡いでいる『エル・アムダルト・リ・エルス』の文も、この始動キーの一種」
「……」
俺は黙って、先生の言葉に集中している。
「だけど一度始動の完了した魔力は、しばらくの間始動をかける必要はない……
そう。始動キーを外していきなり命令→制御のプロセスに移行することが可能なの。
このプロセスを、俗に『詠唱短縮』と呼ぶわ」
「ということは……つまり……」
「察してのとおり、彼女は始動キーの必要ないタイミングでわざわざ始動キーを入力していた……
あなたの言うとおり、本来ならほんの2言で詠唱が済むところをね」
「そう……だったのか……」
おかしいと思ったんだ。
あの春姫が……にわか仕込みの俺に、こうもあっさり敗北を許すなんて……
「ということは……あの時もし春姫が詠唱短縮を行ってたら……」
「まぁ遅くても、あなたが神坂さんに攻撃を仕掛けた地点で終わってたわね」
「……やっぱり……」
にわかにうつむき考え込む俺に、先生が励ましの言葉をくれる。
「そんなにしょげることはないわ。むしろあなたはすごく健闘した方だと思うけど?
二元同時詠唱なんて、並みの魔法使いでもなかなか使いこなせないというのに」
「……そう言っていただけると、俺も救われますよ」
半ば自嘲気味に笑みをこぼし、俺は先生にお礼を言った。
「ご指導ありがとうございます!! さっそく帰って、今日の復習に取り掛かりますね」
「まぁ、勉強熱心なのね♪ それくらいの真剣さが、他の生徒達にもあるといいんだけど」
「ハハハ……今日は本当にありがとうございました!!」
そのまま嬉しそうに退場してゆく先生。
やがて先生の気配も消えると、辺りに少し気まずい空気が流れる。
「……ごめんね、雄真くん……わざわざ、手加減するようなことして……」
未だ拘束から抜けずにいる春姫が、心底申し訳なさそうに言葉を投げかける。
「……まぁ、ショックじゃないといえば嘘じゃないけど……
変だとは思ってたよ。春姫が俺なんかに、こんなあっさり負けるわけないだろって」
「うん……ホントにごめんね、雄真くん」
「気にすんなって。春姫はきっと、俺に花を持たせてくれるつもりだったんだろ?
その気持ちだけで、俺は十分だって」
「うん……確かに、それもあるけど……」
そこまで言った後、春姫は何か気恥ずかしそうに顔を逸らす。
「……物足りなかったの……雄真くん最近、あんまり積極的じゃないし……
たまにはその……雄真くんに……いろいろ、してほしいなぁって///」
「あ……///」
思い出した。
思えば俺、春姫に勝てば春姫のこと好きに出来るって約束してたんだっけ……
(ぁ……うぁ……)
急に心臓がどきどきしてきた。
脳内にどんどん広がってゆく、果てのない妄想の数々……
まじかよ……
今から俺、春姫に……そんなことまでしちゃっていいのか……?
「……雄真くん?」
「あ……」
視線が、重なり合う。
ただそれだけのことで、俺の心はぴくんと激しく飛び跳ねる。
顔中に血が上ってきて……あまりの熱さに、頭がくらくらしてくる。
「……いいよ……雄真くん……私のこと……好きに、して……」
狂おしく俺を誘う、春姫の甘い一言。
その誘惑に逆らうことは、到底出来そうになかった。
「春姫……」
「雄真くん……んっ」
半ば奪うかのような、強引なキス。
唇を離せば、そこには熱く潤んだ春姫の瞳……
そこから、俺はもう何も考えられなかった。
ただひたすら、欲望に溺れてゆく……
「こう、で……いいかな……雄真くん……」
「あぁ……そんな感じ」
女の子座りの格好で、幹のふもとに腰掛ける春姫。
そのまま春姫の両手を後ろに回し、そこで固定する。
「んじゃ、行くぞ……春姫……」
「うん……」
「エル・アフラシア・ラル・セイレス……」
たった今決め手で使った、俺の拘束魔法……
それをあえて使うことで、春姫の被虐心を何倍にも高める作戦だ。
「ディア・ダ・オル・アムギア」
「!!」
詠唱と共に、先程よりも小さめの蔦蔓が春姫の手首を取り巻いた。
これでしばらく、春姫は身動きはとれない。
張りのある乳房を無防備に曝け出してる春姫の様……
彼女のエロティックな魔法服姿もあいまって、否が応にも興奮が高まってくる。
「それじゃ、改めて……」
「ん! あんっ……」
俺はそっと、春姫の豊満な胸に手をかけた。
そのまま彼女の性感をおびき出すが如く、ゆっくりと揉みしだいてやる。
「あぁっ……雄真くん……それじゃ、いつもと同じ……ぁ、やぁっ」
「同じじゃねーって……こうやって縛られながらやるのも、悪かねーだろ?」
「うぅ……雄真くん、何だか目がきらきらしてる……」
春姫が顔を赤く染めながら、不貞腐れるように頬をふくらませる。
「やっぱり雄真くん……こういうの……好きなんだ……」
「……好きにしていいって言ったのは、春姫の方だろ?」
「うぅ……だけど……だからって……んっ!? ふぁぁ……っ」
俺は春姫の言葉を遮るように、胸を揉む手に力を入れた。
「んぁ……雄真く……それ、強すぎるよ……んん、はぅ……っ」
「いいから黙ってろって……悪いようにはしねーからさ」
「はぁぁ……ぁっ、ふぁ……っ、ぁっ、あぁ……っ」
いつもよりも意識的に、揉む力を強めて。
春姫の被虐心を存分に引き出すべく、俺は胸への愛撫を続ける。
「ぁあっ、はぁ、やぁぁ……ぁん、はぁ、あ、はぁ……」
必死に身をよじらせるも、両腕を縛られているため満足に動くこともできず。
結局春姫は為す術もないまま、俺に胸を揉まれたい放題になっている。
「はぁ……はぁ……春姫……」
「んんっ、ぁぁ……はぁ……あぁ……っ、んぁ……ふぁぁ……」
瞳に涙を溜め、顔を紅潮させながら、胸への愛撫に耐える春姫。
その様は……とてつもなく扇情的で……エロい。
この感じやすい胸を直接触ってやったら、一体どうなっちまうんだろう……
俺は春姫のしどけなく喘ぐ様を一刻も早く見たくて、仕方のない気持ちになる。
「春姫……」
「あ……」
俺は胸を揉む手をしばし止め、春姫の前合わせのボタンに手をかけた。
そのまま次々ボタンが外されてゆくのを、呆然とした表情で眺める春姫。
やがて俺の目の前に、薄いピンク色の下着に包まれた春姫の双丘が顔を見せた。
こないだいっしょにランジェリーショップに行ったときに買った、桃っぽいデザインの下着。
「春姫……それ、つけてくれてたんだな」
「うん……だってこれ……雄真くんがかわいいって言ってくれたから……///」
「……春姫……」
まったく……この愛(う)い奴め。
それだけ気に入ってくれれば、こっちも脱がし甲斐があるってもんさ。
「それじゃ、さっそく……」
「あ……雄真くん……」
俺は静かに春姫のブラホックに手を伸ばし、ブラを外しにかかった。
ぱちん☆
「あ……///」
小気味のいい音と共に、春姫の乳肉がぷるんと外へ押し出される。
うーむ……相変わらず活きのいい奴。
春姫の見事なまでの胸に、毎度の事ながらついつい見惚れてしまう。
(……)
俺は春姫の胸からブラを取り除き、改めて春姫の胸に見入った。
真っ白な山の頂で所在なげに震えている、春姫のピンク色の突起。
まるで親とはぐれた子供のようなその様に、俺は妙な興奮を覚え……
「ゆ……雄真くん……そんなに、見ちゃダメだよ……///」
「すごく綺麗だな……春姫のおっぱい」
「だ……だから……恥ずかしいよ、雄真くん……///」
本来なら今すぐにでも、その恥ずかしいところを隠したい気持ちでいっぱいだろうに。
なまじ後ろ手に縛られてるせいで、隠すどころかむしろあられもなく突き出されて……
やばい。すごくいい、これ。
ちょっと軽く緊縛してやるだけで、こんなにえっちな絵が拝めるなんて。
「それじゃ、さっきの続き……」
「あ……ひゃあっ」
素肌に直接触れる手の感触に、思わず声を漏らしてしまう春姫。
驚くほど感触のいい、春姫の両の乳房。
俺は夢中になりながら、春姫の裸の胸を捏ねくり始めた。
「あっ、あ……ゆぅま……くん……はぁ、ぁぁ……」
時折ぎゅっと押し付けたり、左右で動かす方向を変えてみたりして。
俺は春姫の胸に絶え間ない刺激を与え続ける。
「んんっ、ん、ふぁ……っ、ぁぁ……ぁ……はぁ……っ」
徐々に指の方に、やわらかくもこりこりとした感触が伝わってきた。
乳輪の方までぷっくりふくれ上がった、春姫の敏感な乳首。
指で輪を作り、その乳首の根元のところをきゅっと絞り上げてみると、
乳房のやわらかさとはまた違った心地よい弾力が指に伝わってくる。
「はぁぁ……雄真くん……そこ、絞っちゃ……ん、あぁ……っ」
俺はその弾力をもっと味わいたくなり、指先で春姫の乳首を弄り始めた。
つややかで張りのある乳首を欲望の赴くままに擦り、引っ張り、揉みしだいてゆく。
「あ、あっ、あぁっ……それ、いい……いいよぉ……ひゃ、あっ、あぁっ」
ちょっと力を入れるだけで、ぴくぴくと可愛らしい反応を返してくれる春姫の乳首。
……ふと俺はその乳首に、とんでもなくサディスティックな思いが湧き上るのを感じた。
(……まさか……)
そんなことまでしちゃっていいのか、俺……?
いや……いくら何でもそれは、ちょっと変態っぽくないか……?
いくら何でも……あんなところで、春姫を……
(……)
俺はぼうっと霞む視界で、春姫の表情を眺める。
「んっ、ん……ぁ、はぁ……ん、ぁっ、はぁぁっ……」
先端に伝わる心地よさに、瞳を閉じながら喘ぐ春姫。
……何かもう、抑えきれないかも。俺。
どうせ言いだしっぺは、春姫の方なんだ。
今更春姫に何を言われようが、構うものか……!!
すっ……
俺は春姫の胸をいじる手を止め、そっと手を離した。
「……雄真……くん……?」
胸への快感が止まったことに、思わず目を見開きこっちを眺める春姫。
「やめ……ちゃうの……? もう……」
切なげに、訴えかけるように……春姫が虚ろな視線を向ける。
吐息の度に、春姫の乳房が余韻に浸るかの如くひくひくと揺れ動く。
「……やだよ……雄真くん……もっと……もっと、してほしいのぉ……」
あまりの虚しさに耐え切れなくなった春姫が、涙声で俺に懇願してきた。
さっきまであれだけ胸を見られるのを恥ずかしがってたのも忘れ、
俺の愛撫を求めてもどかしげにぐいっ、ぐいっと乳房を突き出してくる。
「……春姫……」
まったく……どこまでもエッチな奴。
そんなに胸をいじられるのがいいものなのかねぇ……
「……じゃ、お望みどおりいじってやるとするか」
「……雄真……くん……っ」
「あぁ……但し、今度はこっちで……な」
俺はそうつぶやくと、そっと自分のズボンのチャックに手をかけた。
「え……?」
予想外の俺の動きに、春姫が一瞬呆気に取られた表情になる。
俺はそんな春姫の心情も気にかけず、そのままチャックを下ろし……
「雄真……くん……?」
やがて俺は春姫に見せつけるように、期待に張り詰めたおのが逸物を取り出した。
おもむろに取り出された暴君のさまに、春姫は一瞬恐れおののくような表情をするものの、
まるで魅入られたかのようにそこから視線を反らそうとしない。
「なに……する……気なの……?」
俺はそんな春姫の視線に絶え間ない快感を覚えつつ、そっとそれを春姫に近づけ……
356 :
支援:2006/12/28(木) 22:59:31 ID:srRwPB7z0
支援
「こうするんだよ……それっ!!」
「!!? ひゃぁっ……」
俺は膨張する自身の先端を、一気に春姫の乳首に押し当てた。
乳首を襲う予想外の刺激に、春姫が思わず悲鳴を上げる。
「あ、あぁぁあっ……雄真くん……そんな、ところで……あ、ひゃああっ」
俺はそれを春姫の乳首に押し付けたまま、先端をぐるぐると回し始めた。
自身の醜い肉棒の動きに合わせ、春姫の繊細な乳首がくるくると踊る。
固くなった先端が尿道口に入り込んで……すごく、気持ちがいい。
「ぁぅっ……ゃだ……雄真くんの、が……
私の……ちくびに……噛み、ついてるぅ……っ、ゃあぁっ」
先端を伝う淫(みだ)れた熱に、涙を溜め、涎を垂らしながら喘ぐ春姫。
「あぁっ、ぁあ、はぁぁ……ぁっ……気持ち、いいよぉ……ゅうま……くぅ……ん」
亀頭の先端が、じりじりと痺れてくる。
尿道を襲うぐりぐりした刺激に、俺も段々と我慢がきかなくなってくる。
俺は乳首を転がす動きを止め、まるで春姫の乳房に挿れるかのように自身を前後に動かし始めた。
「ん、あっ、あっ、あぁっ……だめ……雄真……くん……」
俺の動きに合わせ、乳肉に埋まり、突き出しを繰り返す春姫の乳首。
春姫の昂りに合わせ、俺の射精欲もぐんぐん募ってゆく……
「やぁ……ぁぁ……ぁぅ、はぁぅう……っ……ぁ、や、はうぅぅっ……!!!」
春姫がにわかに、全身をびくりと仰け反らせた。
俺はその動きを合図に、自身を春姫の乳首から離し……
びゅくっ、びゅくっ……!!
俺は春姫の乳房目がけ、一気に精を放っていた。
「ぁ、ぅぅっ、ゆぅま……くん……っ、ぁ、ぁあっ……」
熱を持った粘液が肌に飛びつく度に、春姫の体がびくびくといやらしく痙攣する。
びゅるっ、ぶちゅ、ぴゅるるる……っ
俺はそのまま春姫の体を自身の精液便所に見立て、最後の一滴まで春姫に浴びせかけるのだった。
「ぁっ……ぁ……はぁぁ……」
全身白濁まみれになりながら、全身をぴくぴく震わせ快楽の余韻に浸る春姫。
あまりに無残なその姿に、俺は一瞬我に返る。
(……やりすぎたかな……俺……)
いくら何でも、身動きできない女の子に好き放題白濁液ぶちまけるなんて……
いくら春姫が言い出したこととはいえ、調子に乗りすぎたかも。
「……大丈夫、か……? 春姫……」
俺はさすがに心配になって、春姫の様子をうかがってみる。
「んっ、ん……雄真……くん……」
春姫がそっと、虚ろな目をこじ開ける。
「悪ぃ……俺……ちょっと、調子に乗りすぎた……」
「雄真くん……」
だが春姫は嫌がるどころか、潤んだ瞳でひたすらこちらに訴えかけてくる。
まだまだ、こんなんじゃ物足りない……
そんな春姫の飽くなき欲望が、虹彩を通してぎらぎらと伝わってくるのがわかる。
「お願い……雄真くん……体、むずむずして……止まらないの……」
「春姫……」
……いらぬ取り越し苦労だったかな。
これだけエロい春姫を前に少しでも戸惑ってしまった自分が、少しだけ腹立たしく思える。
「……じゃ、そろそろ……いくぞ。春姫……」
「うん……お願い、雄真くん……」
「……雄真くん……」
俺は春姫の束縛魔法を解いてやると、木の幹にしがみつかせ、こちらにお尻を向けさせた。
不安げにこちらを振り向く、春姫の湿った視線。
その肉食獣に睨まれたウサギのような仕草に、俺の征服欲もじわじわ膨らんでゆく。
「……相変わらず、えっちな腰つきしてるよな……お前」
「あ……」
俺はスカート越しに、春姫の腰にそっと触れた。
そのまま俺は腰からお尻までのラインを確かめるが如く、掌をすっと滑らせてゆく。
「ん、はぁぁ……それ、えっちだよぉ……雄真くん……」
お尻に伝わる感触を味わうかのように、目を閉じながら甘く吐息する春姫。
……春姫の魅力を、あたかも胸だけのように語る人がいるけど。
長いこと春姫と触れ合ってきた俺から言わせれば、それははっきり違うと断言できる。
驚くほどに均整の取れた、春姫の見事な肢体。
おなかも、腰も、お尻も……全てが女の子らしく、丸くてえっちな稜線を描いているのだ。
「……手、入れるぞ……春姫……」
「んっ……雄真くん……」
俺はその曲線をもっと味わいたくなり、そっと春姫のスカートの中に手を差し入れた。
たくし上がったスカートから覗く、純白のガーターと火照った肌色とのアンバランス。
それを視覚で味わいながら、つやつやとやわらかな布の感触と
ぷりっと弾むようなお尻の弾力とのコントラストを楽しむ。
「……こうやってると何だか、痴漢にでもなったような気分だな」
「そんな……もんなのかな? これ……」
「あぁ……何つーか、ええケツしてるじゃねーか姐ちゃん、って感じ?」
俺はそう言いながら、わざとふざけて指先をいやらしく動かしてみる。
「ふふっ……雄真くん、それもしかして痴漢のつもり?」
俺のちょっとしたおどけに、からからと楽しそうな笑みをこぼす春姫。
「んー……違ったかなぁ? 今のは俺的にはオスカーもびっくりなくらいの好演技だったんだが」
「ふふっ、だって……ホントの痴漢だったらそんなこと言わないよ……あははっ」
ちょうどツボに入っちゃったのか、おかしそうに笑い声を上げる春姫。
「何だよ、そんなに笑うなよな……さすがの俺もちょっと傷つくぞ?」
「うん……ごめんね、雄真くん……あははっ」
ひとしきり笑った後、春姫はふと顔を赤らめつぶやきだした。
「……でも……雄真くんだったら」
「?」
「雄真くんにだったら……痴漢されちゃっても……いいかな」
「……っ」
……ったく……春姫のヤツ……
毎度毎度、俺をそそるようなことばかり言いやがって……
「……んなこと言うなら、もう止めてやんねー」
「え……ゆ、雄真くん……?」
俺は春姫のスカートの奥深くに手を突っ込み、春姫の下着をじらすようにゆっくり下ろしだした。
薄桃色の暗幕からじわじわと覗く、春姫の形のいいお尻。
白桃の如き表面は木漏れ日を反射してやわらかな産毛をふわふわと浮かび上がらせ、
くっきりと浮き立つ割れ目は、まるで何かを必死で護るかのようにきゅっと閉じられている。
「……好きにしていいって約束だったよな……だったら、もう遠慮なんかしねーぞ」
「雄真……くん……んっ、はぅっ……」
俺はそっとその表皮に触れ、やや乱暴にそのお尻を撫で始めた。
掌の上で尻肉が躍る度、春姫が湿っぽい溜め息を上げる。
「ん、んんっ……はぁ……お尻……ん、はぁ……っ」
ゆっくりと、それでいて激しく。
目前に投げ出されたそれの全てを感じたくて、俺は無心に愛撫を続ける。
「んんっ、んっ……やぁ……ゆぅま……くぅ……ん」
お尻に伝わる快感に、だんだんともどかしさが募ってきたのだろう。
俺の手の動きに合わせ、春姫がやるせなさそうにお尻を動かしてくる。
「……相変わらず行儀の悪い尻だな……そんな悪い尻には、こうだ」
そのえっちな動きに止め処ない欲望を感じつつ、俺は両手で春姫の尻肉をがしっと鷲掴みにした。
「え……」
春姫が戸惑いこちらを振り返るのも気にせず、俺は春姫の尻肉をぐにぐに揉み始めた。
そのままじわじわと親指を動かし、春姫の割れ目の方へとスライドさせてゆく。
「あ……」
その指の動きに、春姫も全てを察したのだろう。
「そんな……やだ……雄真くん……」
春姫がこちらを振り返り、目に涙をいっぱい溜めながら懇願してくる。
だが……ここまできて、今更止めるなんて真似が俺にできるわけもない。
俺は春姫の悲痛な訴えを無視し、ぐいっとその親指を外側へと引っ張った。
「〜〜〜っっ!!!」
おもむろにこじ開けられたそこへの感触に、思わず顔をしかめ声にならぬ悲鳴を上げる春姫。
「……」
俺は改めて、春姫のそこに目を向けた。
真っ赤に腫れ上がり欲望の涎を滴らせる割れ目の上に、きゅっとすぼまった秘密の入り口がひとつ。
わずかに暗くくすんだその色に、俺は彼女の恥部を全て暴いてやった悦びでいっぱいになる。
「雄真くん……お願い……見ないで……」
もはや恥ずかしさも限界に達した春姫が、泣きながら俺に嘆願してくる。
そりゃ、そうだろう。
こんなところを他人に見られて、正気でいられる人間がそう何人もいるはずがない。
362 :
支援:2006/12/28(木) 23:11:13 ID:srRwPB7z0
Active?/Passive? (UMA勝利編) をまだまだお楽しみください。
「ここもよくしてやるからな……春姫」
俺はその様にぞくぞくするような征服欲を感じつつ、春姫の割れ目に顔を近づけ深く息を吸った。
つんと刺し込む刺激臭の中にむわっと漂う、春姫の湿った女の子の匂い。
その卑猥な空気をたっぷり胸に吸い込みつつ、俺はそっと春姫のそこに舌を這わせた。
「ひゃっ!? ゆ、雄真くん……?」
お尻に伝う慣れぬ感触に、思わず可愛い悲鳴を上げる春姫。
俺はそのまま、夢中になって春姫のそこを味わい始めた。
穴の周囲を舌でなぞったり、しわの1本1本を舌先で丹念にいじってみたり……
ひくひく動くそこの反応を確かめながら、俺はただひたすらに愛撫を続ける。
「ふぁ……ぁ……はぁぁ……お願い……やめてよぉ……ゅぅま……くぅ……ん」
その倒錯的な快楽を、未だ受け入れられないのだろう。
その場所を愛でる度、春姫は喘ぎながらも悲痛な訴えを繰り返す。
「すぐによくなるって……春姫」
「ひゃあっ!?」
俺は欲望に任せ、尖らせた舌先を春姫の入り口に差し込んでみた。
そのまま舌をくりくり回し、春姫のそこに更なる刺激を加える。
「ひゃあっ、あっ、あぁ……そんな……舌、入れちゃ……」
入り口を舌で弄る度、可愛らしい鳴き声を上げる春姫。
もっともっと、彼女の中を知りたい……
俺は舌での愛撫をやめ、今度は指先で春姫の入り口を愛でてあげた。
「ん、んんっ……気持ち……悪いよぉ……雄真くん……
おしり……んっ、むずむず……して……」
切なそうに哀願する春姫の声を無視し、俺はその指を中へと沈め始めた。
「ひゃ、あ、あっ、あぁあ……指……入って……くるぅ……」
じっくり入り口を湿らせたおかげで、俺の指はいとも簡単に中へと吸い込まれてゆく。
膣内とはまた違った独特な生温かさと強烈な圧迫感に、俺は奇妙な心地よさを感じていた。
「これは……どうだ? 春姫……」
俺はゆっくり指の抽送を繰り返しながら、そっと春姫に尋ねかけてみる。
「そんな、言われても……んっ、わかんないよ……私……」
涙を流し、唇をきゅっと閉じながら、お尻に伝わる快感に耐える春姫。
俺は春姫の感覚を確かめるが如く、今度は奥でゆっくりと指を回し始めた。
「ん、ぁふっ……そんな、しちゃ……ぁっ、んぅぅっ」
抽送の動きとかき回す動きを適度に織り交ぜつつ、
俺はその指をじわじわと、だが確実に奥へと差し込んでゆく。
「んぅぅっ、ぅっ、ふぅ……ん……ぁ、ふぁ、はぁぁっ」
やがて第2関節のあたりまで指を沈めたところで、春姫がぴくりと体をのけぞらせた。
中で指を鉤爪の如くくいくいと動かしてやる度、可愛らしく悶える春姫の肢体。
「だんだん……よくなってきたみたいだな、春姫」
「そんな、よくなって、なんか……ひゃ、あぁ……っ」
俺は春姫の声を遮るべく、指先をぴくっと動かしてみせた。
「こんなにいっぱい、反応してくれてるくせに……まだ、そんなこと言うんだ?」
「それは、雄真くんが、その……するから……あっ!? ひゃああっ」
春姫にもっともっと、この異常な快感を味わってほしくて。
俺は差し込んだ指の側から、もう1本指をねじ込み始めた。
「そんな……やぁ、それ……入らないよ……ひゃ、あ、あぁあっ!?」
初めて俺を受け入れるとは思えないほど、柔軟に俺を飲み込んでゆく春姫のお尻。
きついながらも温かな春姫の直腸の感触に、俺はすっかり酔いしれていた。
「や、あぁ……ぃや、それ、きつ……苦し……ぃいっ……!!!」
肛門を無理矢理拡張させられる感覚に、思わず悲鳴を上げる春姫。
全身はまるで電気を流されたかのようにびくびくと激しく痙攣し、
ぎゅっと固く締め付けられた眉間から、脂汗がたらりと流れ落ちてゆく。
「……かわいいよ……春姫……」
もっともっと、春姫を壊してやりたい……
俺は欲望に取り付かれたまま、その指をゆっくりと、だが乱暴にかき回しだした。
時折2本の指を広げ、彼女の穴をみりみりと押し広げてみたりして……
絶え間ない彼女の悲鳴に心まで浸りながら、俺はただ無心に愛撫を続ける。
「んっ、んんっ、あっ、あ、ひゃぅうっ……や、だ……私……ぁたし……っっ!!!」
春姫がびくびくと、体を激しく揺らしだした。
俺の指の動きに合わせ、春姫の体がまるで水上の魚のごとく激しく暴れまわる。
「だめ……ぁたし……体、遠く……なって……ゃあ、はぁぁっ……!!!」
激しい悲鳴と共に、差し込んだ指がぎゅうっとちぎれんばかりに締め付けられるのがわかった。
その強烈な圧迫に屈することなく、俺は更にぐいぐいと指を押しつける。
「はぁ、ぁ、はぁ……はぁ……」
やがて春姫の息が整うのを待って、俺はそこからずるっと指を引き抜いた。
赤黒く変色した春姫のそこが、ひくひくと物欲しそうに動くのがわかる。
「春姫……もしかして、お尻で……イッてくれた……?」
「ぁあ……あたし……今……おしりで……」
自分の身にたった今起こったことが信じられず、戸惑いを隠せない春姫の表情。
そんな彼女の様子を無視し、俺は再び彼女の腰を掴んだ。
「え? 雄真くん……」
「今度は……こっちも……咥えてくれよ……春姫」
そう言いながら、俺は自身の先端を春姫のお尻にあてがった。
お尻に伝う淫猥な熱に、春姫が軽く体を震わせる。
「そっちで……するの? 雄真くん……」
「あぁ……ダメか? 春姫……」
俺の声に、春姫がおそるおそるこちらを振り向く。
かつて俺に純潔を捧げてくれたときと同じ、不安と恐怖に彩られた表情。
「……大丈夫。無理はしないからさ」
「ん……でも……雄真くん……」
「もし痛かったり苦しかったりしたら、遠慮なく言ってくれよ。
こういうのは、どっちも気持ちよくなんなきゃ意味ないんだからな」
そう言いながら、俺は春姫の緊張をほぐしてやるべく、お尻を優しく撫でてあげる。
「うん……いいよ、雄真くん……」
「春姫……」
「で、でも……優しく、してね……
あんまり激しいと……私、壊れちゃいそうだから……」
「あぁ……わかってるって」
言いながら俺は、自身の先端をじわじわとそこへ埋めだした。
「ん、ん……入って……きてる……雄真くんの……」
指で十分慣らしたとはいえ、春姫のそこはまだきゅっと締まりあがり、
なかなか俺の侵入を許そうとしない。
それでも俺は慎重に狙いを定め、ゆっくりと俺のそこを中へと押し込んでゆく。
「や……ぁふ……お尻……広がって……ぁ……」
やがて亀頭が半分くらい収まったところで、俺の先端が不意にすっと飲み込まれていった。
窮屈だった入り口の感触と違って、中はねっとりと柔らかな感触に包まれている。
「ゃぁ……熱いの……入ってる……よぉ……雄真くん……」
「大丈夫か? 春姫……」
「う……うん……動かさなきゃ……まだ、平気……」
緊張で固くなった春姫のお尻をやわらかく揉みほぐしながら、
俺は春姫が慣れるまで、先端にじんわり伝わる腸内の温もりを楽しむ。
「あったかくて気持ちいい……春姫の中……」
「そ、そうかな……何だか、素直に喜べないけど……ι」
春姫はわずかに複雑な表情を見せるも、この行為自体に不快感を持っている様子はない。
そうして動かさぬよう待っているうちに、春姫の固さが徐々に解けてくるのを感じた。
未だ締め付けはきついけど、まったく動かせないほどではなくなってくる。
「そろそろ……落ち着いてきた? 春姫」
「うん……ごめんね、雄真くん……」
「気にすんなって……俺が無理言ってさせてもらってるんだし」
「雄真くん……」
春姫がおずおずとこちらを振り向き、顔を紅く染めながら口をもごもごさせる。
「どうした? 春姫」
「あの……雄真くん……そろそろ……いいかも」
「ホントか? 別に無理しなくてもいいんだぞ?」
「ううん……無理なんか、してないよ……
それに、私も……雄真くんに……ちゃんと、してほしい……」
「春姫……」
確かに春姫の言うとおり、春姫の体はすっかり落ち着きを取り戻し、
俺の侵入を受け入れる準備が整っているようだ。
これなら……いつもみたくやっても、大丈夫そうだな。
「じゃ……いくな。春姫」
「うん、来て……雄真くん……」
俺は春姫の腰をがっちり掴み、俺のそこをじわじわと春姫の中へ押し込んで行った。
「ひゃ、あぁっ……また、来る……雄真くんの……」
更に深く押し分けられる感覚に、声を上ずらせ喘ぐ春姫。
俺はそのまま、ひとつゆっくりと腰を往復させ……
368 :
支援:2006/12/28(木) 23:17:03 ID:srRwPB7z0
Active?/Passive? (UMA勝利編) をもう少しお楽しみください。
「ひゃ……ぁっ、あぅっ!?」
春姫がふと、全身をぶるっと振るわせた。
「春姫?」
まさか……
俺はその反応をもっと確かめたくなり、更に早く腰を動かしてみる。
「あ、あっ、あぁ……はぁ……あっ! はぁぁっ……」
春姫の口から、絶え間ない喘ぎが漏れるのが聞こえた。
それも……始めて俺の指を受け入れた時とは違う、明らかな快楽の叫び。
(やっぱり……)
春姫が……お尻で……感じてくれてる……!!
狂おしく俺を求める彼女の尻の動きに、これまでない感動が全身を駆け巡るのがわかった。
「春姫……好きだよ……春姫ぃ……っ!!!」
俺の可愛い春姫。
俺にここまでされながら、なお俺のことを健気に慕ってくれる春姫。
誰にも……手放しやしない。
そう……彼女を汚していいのは、この俺だけなんだから……!!
「はぁ……ぁあ……春姫……春姫……」
浮かされたかのように春姫を求め、俺はただ無心に腰を進める。
「雄真く……っあ、はぁぁ……ひゃ、ぁぅ、はっ、あぁああぁ……っ……」
尻穴に伝わる刺激に、春姫もまた狂ったように鳴き声を上げる。
腰をぶつける度、ぱんぱんと小気味よく響く春姫の尻肉。
俺と春姫……ふたりして、快楽を貪る淫乱な獣となってゆく……
「春姫……っぁ……俺、そろそろ……イク……!!!」
「ゆぅま、くん……ぁぁ……来て……ぁたしの、おしりで……イッて……!!!」
俺はその声を機に、俺のものを奥深くにねじ込んだ。
そのまま先端に溜まったものを押し出すべく、ぐいぐいとあそこを押し込んでゆく……
「ひゃ、あぁあっ……雄真く……奥、来て……いっぱい……出して……!!!」
「春姫……あぁ……春姫……!!!」
そして俺はとどめとばかりに、おのが怒張を根元までずぶりと突き刺し……
どくっ、どくっ……!!!
「ぁっ、ひあぁっ、あぅあぁあああああああっっっ!!!!!」
俺たちはほぼ同時に、絶頂を迎えていた。
春姫の尻穴は吸いつかんばかりに俺のものをがっちり咥え込み、
煮えたぎった腸内を、俺の飽くなき欲望がいっぱいに満たしてゆく。
びく、びゅく、びゅくっ……
まだ射精は止まらない。
俺の種が春姫に全て吸い尽くされるまで……びくびくと激しい収縮を繰り返す。
「ぁっ、ぁぅっ、はぁぁぅっ……おしり……熱いの……ぃっぱい……出てる……ぅ」
俺はそのまま灼熱の海で尽き果てるまで、春姫の中を存分に楽しむのだった。
「ん、ぅぅ……ゆぅま……くん……」
やがて俺のものを引き抜くと、春姫の穴から真っ白な泡がこぽこぽ湧き出てきた。
尻穴の痙攣に合わせ、白濁した泡が生まれ、弾けるのを繰り返す。
その様がまるで、彼女の侵してはならぬ禁断の域を確かに侵した証に思えて……
「好きだよ……春姫……誰にも、渡しやしねぇ……」
「雄真……くん……」
そのまま俺は後ろから春姫を抱きしめ、彼女の息が整うまでその温もりをじっくり味わうのだった。
「体……もう大丈夫か? 春姫」
「まだ……ちょっとだけ……ひりひりしてる……」
着衣の乱れを整え、森の一角で静かにたたずむ俺たち。
春姫がふわりと、優しい笑顔を俺にくれる。
「何か……すげぇ無理させちゃったみたいで……ごめんな。春姫……」
「ホントだよ……雄真くん……おかげで私のお尻……雄真くんのでいっぱい……」
苦笑しながらも、どことなく幸せそうな春姫の表情。
そんな春姫の表情に、俺の心がほっと安らいでゆくのがわかる。
「……しかし春姫も変わってるよなぁ……
あんな条件出して、もし負けたら何されるかわからないってのに……
春姫、何か妙に嬉しそうにするんだもんな……」
いやまぁ、たった今いろいろしちゃったばかりの俺が言っても説得力ないけどι
「でも雄真くん、私の嫌がるようなことは絶対しないでしょ?
私、ちゃんとわかってるもん」
「……ι」
ちょっと前まであれだけ好き放題されてた方の台詞ではないと思います。俺。
「……それに……」
そこまで言うと春姫はふと顔を赤らめ、視点を足元へと落としだした。
「それに……何だ? 春姫」
「やっぱり……雄真くんには……いつまでも私より強くあってほしいもん……
……わがままだよね……私……
雄真くんが一度魔法を捨てた理由……ちゃんと理解してるはずなのに……」
「あ……」
その台詞で、俺はようやく思い当たった。
俺との勝負に負けたのに、何故だか妙に嬉しそうにしてた理由。
そして……春姫がいつでも、俺の稽古に精一杯付き合ってくれる理由……
……きっと春姫は、俺にいつまでも思い出の男の子でいてほしいのだ。
春姫に人生を変えるきっかけをくれたその男の子の面影を、俺に見続けていたいのだ……
だからこそ春姫は……俺の成長を、まるで自分のことのように喜んでくれて……
あんなに一生懸命、俺の成長に付き合ってくれて……
(……かなわないよな……春姫には)
春姫がこんなにも俺のことを慕ってくれてるというのに……
いつまでも俺がこんな弱いままじゃ、春姫にカッコつかないよな。
「……よし、決めた」
「雄真くん?」
俺は立ち上がり、春姫に向け宣言する。
「俺……もっともっと強くなるよ。
そしていつか……春姫の隣に並んでも恥ずかしくない、立派な魔法使いになってみせる」
「うん……楽しみにしてるね、雄真くん」
春姫がぽわっと、花のような微笑みを俺にくれる。
「だけど……私ももっと頑張らなくっちゃ。
いつもいつも負け通しじゃ……いつかここ、使い物にならなくなっちゃう」
「そんなに毎回毎回求めたりしないってι」
「どーだか。フフ」
春姫の微笑みに連れられ、俺もまた心からの笑みで返すのだった。
<終わっとけ>
373 :
温泉の人:2006/12/28(木) 23:24:35 ID:SH/0ZrqR0
その後、彼女の夜のレパートリーがまたひとつ増えたのはここだけの秘密ですw
春姫「んんっ・・・雄真くん・・・おしり・・・気持ち・・・いいよぉ・・・!!」
ソプラノ(雄真様・・・これ以上春姫に妙なこと教えないでくださいι)
ところで今までも何気に小出しにしてたけど、実はかなりのおしり大好きっ子です自分;
本編でも数少ない春姫のおしり出てるシーンで懸命に妄想広げたりしてましたが、
今回こうやって形にできて個人的には大満足w
(おしりでHって最近じゃ某心は誰よりも乙女な方でしか見てないから、うまく書けたか不安だけど)
ともあれ、ご支援いただいた方本当に乙でした。
敗北編も現在順調に執筆中ですので、今しばらくお待ちくださいませノシ
>>373 U、UMA君がなにかワイルドになっちゃてる…。
でもGJ!!!
>>373 GJ!
しかし、勝ってコレだと敗北編はどんな目にと気になるなぁw
UMAのアナルが攻(ry
アッー!
ソプラノを使って(ry
379 :
名無しさん@初回限定:2006/12/31(日) 16:54:03 ID:uiP9Acr/0
>>373 敗北編では隠された春姫のドSっぷりが(ry
380 :
支援:2006/12/31(日) 17:45:08 ID:78rsyDOH0
Active?/Passive? (UMA敗北編) 出来上がるまでもうしばらくお待ちください。
何でこんなことまで支援してるのだろうかwwwwww
381 :
温泉の人:2006/12/31(日) 20:42:39 ID:2ZPVGfW10
ご支援いただいているところ申し訳ございませんが、
敗北編、結局年内の投稿はムリっぽいです・・・;
あんまできない約束ってするもんじゃないっすね・・・('A`)ゴメンナサイ
その代わりはるひめさんには俺なりに精一杯本領発揮してもらうつもりですので、
来年もどうかお付き合いよろしくお願いしますノシ
>>376-378 それも考えたんですが、さすがに準にゃん以外の男の喘ぎは書く気になれなかったので・・・;
ご期待に沿えず申し訳ございません。
382 :
支援:2007/01/01(月) 10:21:41 ID:DJWHDamK0
職人様方々の新しいSSが出来るまで、しばらくお待ちください。
UMAの魔力が暴走して何故かワンドが擬人化してしまうSSキボンヌ
でもタマちゃんは疑アザラシ化ね
>383 それ考えると、どうしてもソプラノがとあるとこの会長さんが想像されてしまう件……
orz < 俺じゃ_だわ……
魔人パエリアの攻勢をどうやって防ぐかが問題だ。
ソプラノとイチャイチャしていると春姫がどんどん黒くなっていきます
>>384 むしろ俺は某キャベツのCS版ヒロインの方が(ry
さて本来なら昨年公開の予定でしたが、予定が大幅に遅れてしまいまして申し訳ありません。
皆さんお待ちかね(じゃない?)、Active?/Passive?(UMA敗北編)です。
はるひめさんの可愛らしい傍若無人の数々、とくとご堪能下さいませw
ではでは。
ピッ
にア 危険を察知し、横へと回避した
(来る……!!)
頭に浮かぶのは、放たれる春姫の紅蓮の帯……
このまま、ここにいるのはまずい……
ズザッ……!!!
俺は脳裏に浮かんだイメージどおりに、地面を蹴って回避していた。
このまま春姫の射程外に動けば……まだ勝機はある……!!
俺は飛びずさったその格好のまま、杖を構え詠唱体勢に入る……
だが。
「ディ・アストゥム・アダファルス!!!」
「え……」
気がつけば俺は、紅く輝く無数の蛍たちに囲まれていた。
紅蓮の輝きの向こうに、得意げに杖を構える標的がひとつ。
「これは……」
「いくら攻撃呪文を唱えたからって、直接射撃ばかりくるとは思わないことね」
「くっ……エル・アムスティア・ラル」
「アデムント・アス・ルーエント!!!」
「!!!!」
シュン!! シュンシュン!!!
俺が防壁を張る間を待たず、その光弾たちが一斉に襲いかかって来た!!!
バシッ!!!
「がはっ……」
初弾が命中し体勢を崩す俺に、なおも容赦なく降り注ぐ魔法弾の嵐……
ズン!! ズドンズドンズドン!!!
「のぎゃーーーーーーーっ!!!!」
1発1発はせいぜい女の子に軽く殴られたくらいの衝撃だけど、
それをこれだけ全身に浴びせかけられたら、俺……
「ぁぁ……かはっ……」
「勝負あったみたいね。雄真くん」
やがて猛攻は止み、辺りに元の静けさが訪れていた。
ぼろぼろになり情けなくぶっ倒れる俺の元に、春姫が得意げな笑顔で近づいてくる。
「ひでぇよ春姫……もうちょっと手加減してくれても……」
「ダーメ。勝負の世界は厳しいんだよ」
妙に嬉しそうな顔で、春姫が俺に微笑みかける。
――前々から思ってたけどさ。
春姫って何か、バトルの時だけ人格豹変するよな……ι
「はぁ……やっぱ春姫には勝てねーかぁ……」
「残念でした。フフ」
俺は傷ついた体を起こし、近くの木の幹に体を預けた。
春姫がそっと、側に寄り添ってくる。
「……やっぱ、春姫は強いな」
「そ、そんなこと……ないと、思うけど……」
「謙遜するなよー? 負けた俺が余計みじめじゃん」
「うぅん……私なんてまだまだだよ……
高峰先輩や御薙先生に比べたら、私なんて……」
そこで比較対象にその方々が出てくる地点で、普通じゃないと思います。俺。
「……だけど」
俺は目を閉じながら、しみじみとつぶやいた。
「戦ってる時の春姫……すげぇ、カッコイイ」
「え!? か……カッコイイ……って」
「うん、春姫はやっぱカッコイイよ。
何か本当に歴戦くぐりぬけた戦士って感じで、俺……すげぇ憧れる」
正直な感想だった。
戦いの場に赴く春姫は、すごくキリッとしてて……綺麗だ。
呪文を唱える時の集中してる様も凛としていて美しいし、
相手を見据える時の春姫の視線も、心をぐっと掴まれるみたいですごくグッとくる。
「……私、女の子なのに……カッコイイなんて言われても……」
だがその感想は、春姫にとっては不本意だったらしい。
少しいじけたように口を尖らせ、視線をしょんぼりと下に落とす春姫。
「何だよー? 俺にとっちゃ最高の褒め言葉だぜ?
……まぁ確かに、あんまり女の子に対して言うような台詞じゃないけどさ」
「うぅ……だけど……恋人より強い女の子なんて……ι」
やっぱ、そうか。
カッコイイとか強いとか、女の子にとっちゃあんまりステータスにならないよな……
「大丈夫だって!! 春姫はちゃんとカワイイとこあるじゃん!!
ほら……デートの時とか、一緒にお弁当食べる時とかさ……」
「……本当に?」
「本当本当!! この目が嘘を言ってるみたいに見えるか?」
「……」
春姫はしばらく怪訝な目で俺を見ていたが、やがて満開の桜のようにぱっと微笑んだ。
「フフ。雄真くんにそう言ってもらえると……すごく嬉しいな♥」
「……///」
絶対……わかってやってるよな。
俺はいつだって、春姫のことをすげぇ可愛いって思ってるってこと。
支援。
「ねぇ……雄真くん……」
「? 何だ、春姫」
「もうちょっと側に行っても、いいかな……?」
「あぁ……」
て言うか、別に断る理由もないしな。
俺が頷くと、春姫は嬉しそうにこちらに近寄り……
「フフ……雄真くん♥」
「のぁっ!?」
トサッ……
俺は急に、春姫に押し倒されていた。
俺の全身に、春姫の温かくて心地いい重みがじんわり伝わってくる。
「んむ、ん……雄真くん……」
春姫が目を閉じ、そっと俺の唇を塞ぐ。
じわじわと求めるように入って来る、春姫のかわいらしい舌。
それを受け入れるべく、俺もそっと舌を絡ませる。
「ふむ、ん……ちゅ……んん……雄真、くん……ぇろ、ちゅ……」
時が止まったかのような、濃厚なキス。
心地よいやわらかさを全身に感じつつ、俺は夢中になって春姫の唇を貪る。
「ん……ぷはぁ」
やがて春姫が唇を離し、空気を求め深呼吸した。
「ふふ……キス、しちゃった」
「やったなぁ……春姫」
「ふふ。油断大敵だよ、雄真くん」
春姫はそのまま、すがるように俺に体重を預けてきた。
ふわふわとやわらかな春姫の感触に、俺は眠気にも似た幸福感が全身に広がるのを感じる。
「この体勢……俺、ちょっと好きかも」
「そうなの? 雄真くん……どうして?」
「例えば……春姫のおっぱいが、全力で俺に当たってるところとか」
「……」
あ、あれ? 俺今ちょっと外しちゃった?
今のは俺的にはツッコミ待ちのちょっとしたお茶目のつもりだったんだけど……
(あ、いや……9割9分くらいは本気なんだが)
「……もぉ雄真くんったら、いっつも私の胸のことばっかり……」
「胸のことばっかりったって、おっぱいは大事だぞ?
触るとやわらかいし、見てるとすげぇ癒されるし、それに……」
「……」
自分の胸を見つめながら、何やら複雑な表情をしてみせる春姫。
「……そんなに……私の胸……好きなの?」
「そりゃあ好きに決まってるだろ? 何たって春姫の胸なんだから」
「……」
春姫はまたしても、自分の胸を神妙な面持ちで見つめている。
……やっぱ気になるものなのかな……
自分の胸が、俺にどんな評価を下されているのか……
ちゅっ
そう考えてると、春姫が不意に俺の頬に唇を押しつけてきた。
「は……春姫……?」
見ると春姫は、何やらにやにやといやらしい笑みを浮かべている。
「約束だよ? 雄真くん……私が勝ったら、雄真くんのこと好きにしていいって」
「や、約束……って」
そりゃさっき、確かにそんな約束してました。
約束してました……けど!!
「ちょ、待って……俺今結構ボロボロなんだけどι」
「ホントだね……雄真くん、あちこち擦り傷だらけ」
「いやだから何で笑顔で指摘してんだよ春姫!!!」
仮にも大好きな彼氏が傷だらけになってるんだから、少しは気遣って下さいって!!
「そんな傷だらけじゃ……いっぱい、できないね。
ね、雄真くん……私が……治してあげよっか?」
「え……?」
俺がその意味を把握する前に、春姫が自分の唇に指を当てた。
そのまま静かに、魔法の言葉を唱える……
「エル・アムダルト・リ・エルス……」
「は、春姫……?」
「ディ・アムンマルサス」
コォォ……
つぶやきと共に、春姫の唇に小さな魔法陣が淡く輝くのを見た。
その魔法陣はきらりと夕日に輝くと、そのまま消えてしまう。
「何……するつもりなんだ? 春姫……」
「それは見ててのお楽しみ……だよ。雄真くん♪」
春姫は穏やかに微笑むと、そっと俺の手を取った。
そこにはたった今春姫に刻まれたばかりの生傷が、赤く生々しい痕を残している。
「うわぁ……すごく痛そうだね。雄真くん……」
「いや、別にただの擦り傷だけど」
というかこれ、たった今あなたにつけられた傷なんですが。
「すぐに痛いの治してあげるからね……ちゅ」
春姫はつぶやくと、俺の傷口を慈しむようにそっと口づけた。
ぽゎ……
その瞬間、春姫の唇から温かな光が穏やかに広がるのがわかった。
くすぐったさにも心地よさにも似た、温かな癒しの光。
そして、春姫が唇を離した時……
そこにあったはずの傷は、跡形もなく消え去っていた。
「すげぇ……」
あの時見たのと、同じ光だった。
春姫が小さな女の子に想いを伝える手助けをした、あの時の癒しの輝き。
「ね? 凄いでしょ、これ」
「あ、あぁ……何だか、すげぇ幸せな気分だ」
じゅくじゅく滲みる消毒液の痛さを思えば、まるで天国のような癒しだ。
「ね、雄真くん……このまま、全部治してあげよっか?」
「え、全部……って……えぇっ!?」
俺が反応するよりも先に、春姫がいきなり俺の服に手をかけていた。
そのまま俺の上着を脱がそうとする春姫の手を、俺は慌てて制止する。
「ちょ、ちょっと待った!! まさか、体中全部?」
「好きにしていいって約束だよ? 雄真くん」
「いや、それはそうだけど……」
いくら何でも全身これで癒してもらうなんて、照れ臭いにも程があるって!!
無理矢理服を剥ごうとする春姫に、俺は必死になって抵抗しようとするが。
「ね? 雄真くん……お願い……」
「ゔ……」
そんな顔でかわいく懇願されたら、抗うなんてできるわけないじゃんか……
結局俺は春姫にされるまま、服を着々と脱がされてゆくしかなかった。
「んむ……雄真くん……ちゅ、んちゅっ」
赤く火照る俺の素肌に、取りつかれたかのようにキスを続ける春姫。
春姫につけられた傷が口づけの度にほわほわと塞がってゆき、
生まれたての赤ちゃんのようなつやつやとした輝きを放つ。
「ねぇ……雄真くん……んちゅ、気持ち……んん……いい?」
「う……うぅ……///」
その春姫の艶めかしい癒しに、恥ずかしさのあまり声の出ない俺。
……既に俺は春姫の手によって衣類の殆どを剥がされ、パンツ1枚の状態だった。
そして俺の胸元からお腹、太ももから爪先の辺りまで……
春姫にされるまま、全身余すことなく口づけられてゆくのだ。
(つか、さすがにこれは……)
恥ずかしい……この上なく恥ずかしいぞ!!
「んふ……雄真くん……好き……んん……むちゅ……っ」
本当に幸せそうな顔で、俺の体に口づけてゆく春姫。
既に俺の体についた傷は、春姫の手であらかたなくなってしまっていた。
いや……もう完治を通り越して、前よりも美肌に磨きがかかってるような感じだ。
「……まさかとは思うけどさ……春姫……」
「ん? 何……雄真くん……」
「もしかしてこれがやりたいがために、とどめにあの魔法使ったとかじゃ……ないよな?」
「そ、そんなこと……ないもん……んちゅ///」
春姫は顔を赤く染めながら、誤魔化すように俺のわき腹に口づける。
この反応……やっぱり図星なんですね、春姫。
やがて最後のひとつまで癒し終わったところで、春姫が残念そうに顔を上げた。
「はぁ……もう、全部……治っちゃった……」
「春姫……」
仮にも恋人の傷が全快したんだから、そんなにがっかりしなくてもいいと思います。俺。
「もういいだろ? 春姫……もう……その辺で……」
「うぅ……だけど……もっと……したいもん」
「春姫……」
確かに、ああやって春姫に全身愛でてもらえるのはすごく嬉しいけどさ。
だけど……ここまで一方的にキスされ放題じゃ、何だかもどかしいっつーか……
これだけじゃあ、何だか物足りないって言うか……
そう思っていたところで、春姫がふと俺のパンツに目を向けた。
「ん……ねぇ……雄真くん……」
「な、何だ? 春姫……」
「この中も……見せてもらって、いい?」
「……ι」
ああもうこの人は、俺の最後の砦まで一気に攻め込むつもりのようですよ?
てゆーか……さすがにこんなところまで春姫に攻め込まれたら……
さすがの俺も……もう……我慢できないって言うか……
「ね……いいでしょ? 雄真くん……えいっ」
「え!? ちょ、ちょっと待っ……」
俺の悲鳴も虚しく、春姫は俺のパンツを一気に下ろしてしまった。
ぴょこん!
パンツの中から、俺の男のシンボルが元気よく飛び出す。
「あ……///」
春姫はわずかに驚いた後、嬉しそうにほんにゃりと笑顔を漏らした。
恥ずかしいことに……俺のそこは全身たっぷりと春姫の愛撫を受けたせいで、
今にも爆発してしまいそうなくらい反応してしまっていた。
「こんなに……おっきくしてくれてたんだ……嬉しいな……私」
「は……春姫……///」
まんまと反応してしまってるところを見られ、恥ずかしさも頂点に達する俺。
UMAを支援。
「……ごめんな。俺……何か……節操なくて……」
「うぅん……雄真くんがこんなにいっぱい感じてくれて……私、すごく嬉しい」
春姫は天使のような笑みを浮かべると、そっと俺のそこに唇を近づけた。
「ここも、いっぱい……癒してあげるね……雄真くん……」
そのまま春姫は慈しむように、俺のそこに口づけ……
(!!!?)
な、何だったんだ今のは!?
今、口をつけられた瞬間……目から何か火花が弾けたような……
春姫はそのまま、俺の茎のところを丹念に口づけてゆき……
「ぁ……っく……ぅあ……春姫……」
気を抜けばすぐにでも飛んでいってしまいそうな、強烈な快感。
春姫の口って……こんなに……気持ちよかったっけ?
脳みそを直接かき回されるような快楽に、俺は狂ったかのように喘ぐ。
「んふ……ん……ちゅぷっ……はぁ……熱い……雄真くんの……」
春姫が夢中になって俺のものを慈しむ度に、
その一撃一撃が俺に稲妻のような快感を与えてゆく。
「はぁ……雄真くん……んぁ、はむぅ……」
そして春姫の唇が、俺の頭をぱくりと丸呑みにした瞬間……
「!? あうぅうっ!!?」
気の狂いそうな快楽が、俺の背筋を昇るのがわかった。
「ぁむ……むぅ……むちゅ……雄真、くん……ちゅ、ぷちゅ……」
「あぁぁ……ダメ、だ……春姫……」
春姫が俺の頭をおいしそうに貪る度、俺の何かが春姫に吸い上げられ……
「あはぁぁ……っ!!!!」
確かにあの時、俺は女神を見た。
あまりの強烈な快感に、射精していることにすら気づかなかったほどだ。
「んぐ……むぅ……ゅぅま……くぅ……ん」
口内に放たれた灼熱に、涙を湛えながら堪える春姫。
「っぷ……はぁ」
やがて春姫が俺のものから口を離し、嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ……雄真くん……いっぱい出たね……」
「ぁ……あぁっ……はぁぁ……」
俺の欲望を唾液と共に掌に吐き出し、満足そうに微笑む春姫。
対する俺は、放心のあまり言葉も出ない。
……もしかして、これも魔法の力なのか?
ちょっと今俺、本気で腰抜けそうになったんだが……ι
「……ねぇ、雄真くん……」
春姫は妖しく微笑むと、俺の目の前に胸を突き出し、見せつけるようにボタンを外し始めた。
「あ……春姫……」
春姫の服がしどけなくはだけてゆく様を、俺は呆然とした面持ちで見つめている。
やがて俺の目の前に、ピンクのブラに覆われた春姫の乳房が顔を見せた。
窮屈な下着に阻まれて、春姫の乳房が苦しそうにふるふると揺れる。
「どう? 雄真くん……雄真くんの好きな、おっぱいだよ……」
「……春姫……」
熱に浮かされたかのように微笑む春姫に、俺も頭の芯がぼーっとしてくる。
「ね、中……見たい? 見たいよね……?」
そう言いながらブラのホックに手をかけ、焦らすように指を動かす春姫。
あまりの期待感に、出したばかりの俺のあそこも情けなく反応を始める。
「ねぇ……雄真くん……見たい……?」
「……見たいに……決まってるだろ……? そんなの……」
念を押すかのように問いかける春姫に、俺はわずかに苛立ちを込め答える。
「うん……じゃあ、見せてあげるね……」
春姫は顔をぽっと紅潮させながら、ブラのホックをぱちんと外した。
束縛を解かれた春姫の乳房が、その重さを主張するかのようにゆさりと揺れ動く。
「あ……」
吸い込まれそうなその綺麗な肌に、俺は思わず息を呑む。
春姫の胸なんて……もう何度も見てきてるはずなのに……
こうやってじれったくはだけられると……何だか……すごく神秘的なものに見えて……
「雄真くん……どう? 私の胸……」
「あぁ……綺麗だ……とても、信じられねぇくらい……」
「フフ。雄真くんに褒めてもらえて、私……すごく嬉しい」
自慢の胸を褒めてもらえたことが、本当に嬉しかったのだろう。
春姫がふわっと、満面の笑みを浮かべる。
「ね? 雄真くん……また、ここで……してあげよっか?」
春姫はおのが胸をゆったり揺らしながら、俺に問いかける。
「え……?」
たった今口でしてもらったばかりなのに……いいのか? 俺……
そう思いながらも、俺の目は春姫の美しい胸を前に釘づけになっていた。
このあたたかな胸に、包んでもらえたら……
思わずそんな邪な思いが、俺の脳裏をよぎるのがわかる。
「……いいのか? 春姫」
「うん……今日は何だか、いっぱいしてあげたい気分だから」
「春姫……」
春姫にここまで可愛く求められたら、俺も断れるわけなどない。
「じゃあ……してもらおうかな。春姫……」
「うん。私……頑張るね」
春姫は頷くと、それまで右手に溜めていた俺の欲望を両の掌にまぶした。
「いっぱい……気持ちよくしてあげるね……雄真くん」
そう言いながら、春姫は手に取ったそれを乳房全体にたっぷりと塗りたくってゆく。
(あ、あれ……?)
思わず俺は、その光景に奇妙な既視感を感じていた。
何かこの光景……どっかで見たことあるような……
……いや。見覚えあって当然だし。
春姫にこうやって胸でしてもらうなんて、1度や2度のことじゃないんだから……
やがて春姫の乳房は、俺の欲望と春姫の唾液でぬるぬるになっていた。
濡れた表皮が、そのやわらかさを強調するかのようにてらてらと妖しく光る。
あのぬるぬるの中で愛でてもらえたら……すごく気持ちがよさそうだ。
「……じゃ、行くよ。雄真くん……」
春姫はゆっくりと胸を近づけ、その谷間に俺のものを正面からそっと挟み込んだ。
ねっとりとした感触と、春姫の胸の豊かな重みが伝わって……とても気持ちいい。
「はぁ……雄真くんの、挟んじゃった……」
「何だかねとねとして……気持ちいいな。春姫の胸」
「ふふ……喜んでもらえて、すごく嬉しい」
春姫は軽く微笑むと、俺のものを手に掴み、粘液にまみれたおのが乳房に擦りつけ始めた。
「はぁ……雄真くんの……すごく……あったかい……」
掌で俺の先端を優しく包みながら、俺のそこをおのが乳房全体に摺りつける春姫。
亀頭に絡む粘液の感触と包み込むような春姫の乳肉が、俺のそこに絶え間ない快楽を与えてゆく。
「……」
だが俺は快感に浸るでもなく、その様に妙な違和感を感じ始めていた。
やっぱり……そうだ……
この光景、俺は……見たことある……
「いっぱい……気持ちよくなって……雄真くん……」
やがて春姫が俺のものを挟んで前後にスライドさせだした時、俺の違和感は頂点に達していた。
いつもなら両手で胸を抱え、俺のを胸でふにふに揉みしだいたりするのに。
わざわざこんないつもと違う動きをしだすなんて、やっぱりおかしい……
(……間違いない……)
この光景を、俺は知ってる。
これと全く同じ光景を、俺はハチと一緒に……
「フフ。気持ちいいでしょ? 雄真くん」
得意げに微笑む春姫に、俺は思わず問いかけていた。
「……春姫……この動き、まさか……」
「うん。その『まさか』だよ」
俺がその事実に気づいたのがよほど嬉しかったのか、春姫がにやにやといやらしい笑みを浮かべる。
「雄真くんったら、あんなわかりやすいところに隠すんだもん。すぐわかっちゃうよ」
(やっぱり……)
俺の疑問は、ようやく確信に変わった。
春姫はさっきから、とあるエロビデオの女の子の真似をしてるのだ。
そう……こないだハチと一緒に見た(正確には「付き合わされた」)あのビデオの。
「ふふ……あの女の子と、同じことしてるんだね……私」
春姫がうっとりと、陶酔に満ちた溜め息をこぼす。
「ねぇ……気持ちいい? 雄真くん……」
「は、春姫……」
「本やビデオで見るより……ずっと……気持ちいいよね? 雄真くん……」
「……ι」
口調こそ穏やかだったけど、目は明らかに笑ってなかった。
たとえエロビデオといえど、俺が自分以外の女の子で気持ちよくなってるのが許せない……
春姫の目は、そんな彼女の女心を何よりも雄弁に物語っていた。
「……春姫ぃ……ι」
だって……仕方ないだろ?
男ってのは、愛情と下半身が別の生き物なんだから……
「んっ、ん……雄真……くん……んっ、ふぅ……っ」
春姫はなおも、両の乳房で俺のものを必死に扱き上げる。
その動きは、さすがにプロ仕込みなだけあって……すごく気持ちがいい。
何より春姫が、あのビデオと同じことを俺にしてくれてると思うだけで……
興奮で、頭が熱くなってゆく。
「んんっ、んっ、ふぅぅ……っ、はぁ……んっ、んん……っ」
春姫の谷間でぬちゃぬちゃと響く、俺の欲望に満ちたそれ。
いつの間にか溢れてきた俺の先走りが谷間に垂れ落ち、更にその滑りをよくしてゆく。
その潤滑に煽られ……俺の先端が、じんじんと熱く響きだすのがわかる。
もう一刻も、我慢できない……!!
「はぁ……春姫……そろそろ、イッて……いいか……!!」
「あ……雄真くん……」
春姫が一瞬、焦燥感にも似た表情を見せる。
だがそんな春姫の気持ちに構っている余裕など、俺にはもうない。
「っく……俺、もう……イク……!!!」
高く宣言し、腰をつんと突き上げる俺。
後は俺の欲望に任せ、その想いを一気にぶちまけるだけだ……
だが。
「ディア・ダ・オル……アムギア!!!!」
コォォォ……
「!!?」
射精は、できなかった。
目前の輝きに合わせ、俺のそこがびくりと虚しい叫びを上げる。
「あ、あれ……? 俺……」
俺、今……確かに……イッたはずなのに……
俺のそこは射精寸前のむず痒さを保ったまま、ひくひくと悲しそうに震えている。
「はぁ、はぁ……よかった……間に合った……」
事態を掴めない俺の前で、春姫が何故か安堵の表情を見せる。
「……はる……ひ……?」
「このまま行ってたら……一番気持ちいいところ、見逃すところだったよ……危ない危ない」
「……まさか……」
俺は改めて、自分のそこを眺めた。
びくびくそびえ立つ俺の根元に、鈍く輝く無彩色の蔦蔓がひとつ。
間違いなく……俺がイク寸前に春姫が唱えた、射精妨害のための魔法だ。
「そんな……春姫……何で……」
半ば涙目になりながら、俺は春姫に問いかけた。
「だって、イッたら……雄真くんのここ……ちっちゃくなっちゃうもん。
雄真くんのおっきなの……私も、いっぱい楽しみたいから……」
「春姫……」
「ね? 雄真くん……今度は……私が楽しむ番だよ……?」
そう言うと、春姫はまた俺のものを胸で扱き始めた。
「あ……は……ぁうぅぅっ!?」
頭のひっくり返りそうな衝動に、俺は思わず呻く。
そしてまた俺のそこに、2回目の絶頂が訪れようとするのがわかった。
「っぐぅ……っ、俺、また……イク……!!」
気の狂わんばかりの衝動に、俺はまた全身をびくりと震わせる。
……だけど、やっぱり出ない。
俺のそこはしんと静まり返り、特有の腹を締めつけるような衝撃だけ俺に与えてゆく。
「んっ……雄真くん……」
春姫はそんな俺の反応を確かめると、俺のそこをそっと自分の乳首に絡ませてきた。
「んんっ……これ……あつぅい……んぁ、あぁ……っ」
絶頂寸前のその熱が、よほどお気に召したのだろうか。
春姫はぼうっと火照った顔で、膨張する俺のそこを必死におのが乳首に押しつける。
「ぁん……はぁ、あぁ……ぁっ、はぁ、あぅぅ……っ」
俺のそこを先端に押しつけたまま、ぐりぐりと回す春姫。
だらしなく涎を垂らしながら、胸を伝う淫れた熱を楽しんでいるかのようだ。
「っぐ……ぅぅ……っ」
対する俺は切なさの余り、まともに声をあげられないでいた。
……想像してみてほしい。
射精寸前のあの苦しみが、延々と続くさまを。
言葉に表せないが、これはまさに……地獄だ。
このまま出させてもらえないなら……いっそ、全くいじらないでくれとすら思う。
「んん……あ……雄真くん……」
俺の快感が遠のく度、その快感を呼び戻そうと手で乱暴にいじりだす春姫。
そうして俺が再び絶頂に至りそうになるのを確認して……また乳首で、その熱を味わい始める。
「んんぅっ、はぁ、あぁあっ……ぁつぃ……あついよぉ……ゆうま……くぅ……ん」
……春姫が射精を止めさせたのは、これが理由だったのだ。
春姫はきっと、イク直前でぱんぱんに膨れ上がった俺のここが一番好きなのだろう。
だけど普通にやってたら、その一番好きな状態は射精によってあっと言う間に解除されてしまう。
だったらいっそ射精さえ止めてしまえば、延々とその大好きな状態を保持できると……そんなところだ。
「ぅぅ……ぁっ、うぐ……っ」
延々とこの苦しみを味わわされるこちらとしては、正直たまったものじゃない。
どうでもいいから、早く……イッてくれとすら思う。
「あぁ……雄真くん……ふむ、はむぅ……っ」
更に春姫は欲望に任せ、俺の先端部を唇で覆い隠した。
そのままはち切れんばかりになってる俺のそこを、夢中になって貪り食う。
「んむ、むちゅ、ちゅる……っ、はぁ……むぐ、ふむ……っ」
俺をよくするためじゃなく、ただその部分を味わいたいがためだけにされる身勝手なフェラ。
あまりに理不尽なその快楽に……徐々に苛立ちが募ってくる。
どうせ最初から、イカせてくれるつもりなんてないんだろ……?
だったら、中途半端に気持ちよくさせるの……本気で、やめてほしい……
「んむ、ぷはぁ……ぁぁ……雄真くん……」
やがて春姫は名残惜しそうに俺のを口から放すと、再び俺のそこをおのが乳首に押し当て始めた。
雁首のところをそっとくすぐるように、おのが先端で愛撫する春姫。
「はぁぁ……ん……雄真くん……気持ち、いい……いいよぉ……」
俺の快感を保ちながら自身も気持ちよくなれる術を、ようやく思いついたのだろう。
俺の竿を手で軽く扱きながら、乳首でカリの段差や鈴口……俺の弱いところを的確にくすぐってくる。
「ぁあん……はぁ……ぁぁ……ぁっ、あぁっ……はぁぁっ……」
こうすれば自身の先端も程よい刺激を得られて、一石二鳥というところだ。
(っぐ……ったく……)
こういう事にまでその頭の良さを活かさなくったっていいだろ……? 春姫……
「あぁ、あぁぁっ……はぁぁぁっ……私……イク……イッちゃう……ぁぁ……」
春姫は段々と表情を崩し、体全体をひくひく動かし始めた。
気のせいか、俺のをくすぐる乳首の動きもどんどん激しくなってきている気がする。
「あぁあっ、あぁ……はぁぁ……雄真くん……雄真くぅ……ん……!!」
「うぁっ、ぁぁ……春姫……」
俺はそんな春姫の動きに、胸を裂くような切なさを感じていた。
このまま……イッちゃうのか……? 春姫……
このまま……俺を置いて……一人だけ……
「春姫……あぁ……春姫……」
「んぅぅっ、ぅぅっ……あぁ……はぁぁ……」
「お願いだ……春姫……一緒に……イカせてくれ……」
「ぁぁ……雄真くん……」
切なく哀願する俺の声に、春姫がうっすらと虚ろな目を開く。
呆然とした表情で、俺の声がちゃんと届いているかすら定かではない。
「なぁ……頼むよ……春姫……なぁ……」
「雄真……くん……」
春姫は一瞬だけ俺のことを哀れむような表情をし、一言つぶやいた。
「ディ・マーサロス・フェミス……!!」
シュゥゥゥ……
「あ……」
あれだけ俺を苦しめた根元の蔦蔓が、静かにかき消えてゆく……
と同時に、俺のそこにこれまでにない強烈な射精感が沸き起こるのがわかった。
「あぁ……春姫……!!」
ようやく出すことを許された喜びに、俺は瞳を潤ませながら腰を天高く突き上げる。
「雄真……くん……きて……いっしょに……イッて……!!」
「春姫……っぐっ、ぅああぁ……っ!!!!」
俺は快楽に身を任せ、全身をびくりと後ろへ仰け反らせ……
びくっ、びゅくっ……!!!
呻き声と共に、普通の何倍にも濃縮されたかのような精液が春姫の顔を汚すのがわかった。
これまで感じたことのなかった、強い轟き。
今まで出せそうで出させてもらえなかった抑圧が、この強烈な射精を生み出しているのだろう。
「ひゃあああ……っ、ぁっ、ぁぁ……雄真くん……」
春姫はその熱い粘液の感覚すら、おのが快楽に変換しているようだった。
俺の熱い欲望が体に降りかかる度、体をひくひくさせながら快楽に咽ぶ春姫。
「ぁぁ……雄真くん……」
やがて春姫はぼんやりと目を開け、欲望塗れになった俺のものを感慨深げに眺めていた。
「凄いね……雄真くん……こんなに、いっぱい出るんだ……」
「はぁ……春姫……」
頭の芯が、ぼーっと冷たく霞んでくる。
あまりに強烈過ぎた射精の衝撃で、俺は指1本動かすことすらままならない。
つかもう俺……さすがに……限界かも。
春姫の膣内を味わえないまま終わるのは、ちょっと寂しいけど……
支援。
「ねぇ……雄真くん……」
「? 今度は何だ……春姫……」
春姫はゆっくり身を起こすと、おのが下着をじわじわと下ろし始めた。
そのまま下着を片足に引っ掛けると、露になったおのがそこを覆うように手を添える。
「雄真くんのをいっぱい浴びてたら……ここ、寂しくなってきちゃった。
ね? 雄真くん……ここも……雄真くんのでいっぱいにして……」
「は、春姫……ι」
あれだけたくさん出した後でまだ出せとおっしゃいますか、春姫さん……ι
「ね? お願い……雄真くん……」
「……悪ぃ……春姫……少し……休ませてくれないか……?」
てかもうこれ以上したら……俺のあそこ、真剣にヤバイかも……ι
「……」
そんな俺を前に春姫は少しだけつまらなそうな顔をしたが、すぐに何かを思いついたかのように囁いた。
「ね……見て……雄真くん……」
そのまま瞳を閉じ、秘部に当てる指先にそっと気を集中させる春姫。
春姫の指先が、ほわっと柔らかな光に包まれ始める。
「ディ……アムンマルサス」
「!?」
ぽわぁぁ……
春姫の秘部の前に、見覚えのある魔法陣が展開されるのがわかった。
さっき春姫が自分の唇の前に展開したのと同じ回復魔法のフィールド。
「あ……」
その光景に、俺は思わず見惚れていた。
と同時に、しばらく息を吹き返しそうになかった俺のそこが徐々に反応を始める。
「これならきっと……いっぱいできるよ。雄真くん」
「春姫……」
未だ体の疲れは取れないけど。
春姫がこうまでして求めてくれるんだから、期待に応えなきゃ……
「じゃあ……きてくれるか? 春姫……」
「うん……雄真くん……いっぱい、してね……」
春姫は嬉しそうに微笑むと、俺の上にまたがり、おのが秘裂を俺の先端に近づけてきた。
股間の魔法陣が先端に近づくにつれ、まるで引き合うかの如く屹立を始める俺の逸物。
確かにこれなら、1回くらいなら出してやれるかな……?
「あふ……雄真くん……」
俺の先端がそっと、春姫の秘裂に触れる。
割れ目に伝わる俺の熱に春姫は一瞬ぴくりと体を震わせ躊躇したが、
やがてじわじわと俺のものを中に収めだした。
「あぁぁ……雄真くん……熱いの……入って、きてるぅ……」
「気持ちいいか……? 春姫……」
「うん……私のここ……雄真くんので……いっぱい、広がってる……」
膣内を伝う灼熱に、春姫がうっとりと瞳を潤ませる。
春姫はそのまま欲望に合わせ、膣口で俺のものをきゅうきゅう締めつけ始めた。
「ぅぁっ……春姫の中、すげぇ……締まって……」
「んんっ……雄真くんも……ぁっ、いっぱい……気持ちよくなって……んっ、んんっ」
膣内を襲う快感に耐えながら、期待に咽ぶ俺のものを扱き上げる春姫。
さすがに普段から実習とかで鍛えてるだけあって……かなり上等な締まり具合だ。
何より膣壁の襞が程よく先端に絡みついてきて……すごく気持ちがいい。
「んっ、ふぅぅっ、ぁっ、あっ、はぁぁっ……あぁ……」
徐々に速度を高めつつ、一心不乱に腰を振る春姫。
その動きに合わせ、俺の欲望に塗れた春姫の乳房がゆさゆさと激しく揺れる。
「あぁ……春姫……」
俺は思わず、その光景に釘付けになっていた。
いつ見ても思うけど……やっぱり春姫の胸はすごい。
とくにこうやって下から見上げてると……何だか今にも、その豊かな質量に押し潰されちまいそうで……
むにゅっ
「あ……」
俺は耐え切れずに、春姫の乳房を両手でむんずと掴んでいた。
「やだ……雄真くん……胸、触ってる……」
「だ、だって……こんなの見せられたら……俺……」
こんなやわらかな感触知っちゃったら、もう俺……後には引けないっつーか……
俺は溢れんばかりの欲望をぶつけんとばかりに、春姫の胸を乱暴に捏ね上げ始める。
「あぅっ……雄真く……それ、ダメ……ぁっ、やぁっ……」
更にその胸を揉みしだかんとする俺の手を、春姫はやんわりと取り払う。
「だめ……雄真くん……今日は、私がするの……」
「っ……少しくらいいいじゃんかよ……いつもはあんなにいっぱい触らせてくれるくせに……」
「うぅ……だって、そんなにされたら……私……雄真くんにしてあげられなくなっちゃう……」
何とか抗おうとするものの、春姫のかわいらしくも懸命な抵抗になす術もなく沈黙する俺。
「ね……? 雄真くん……今度いっぱい触らせてあげるから……」
「ぅぅ……約束だぞ……? 春姫……」
「うん……だから、今日は……私にさせて? お願い……」
そう言うと、春姫はまたゆっくりと腰を動かし始めた。
(ぅぁ……また、擦れる……)
陰部に再び襲いかかる、甘い快楽。
触ることを禁じられた乳房の動きもあいまって、俺の中にもどかしい感情が湧き上がってくる。
こんなに気持ちよさそうなのに……触らせてもらえないなんて……
被虐心にもよく似た切ない情欲が、俺の心を冷たくかき乱す。
「んふぅぅっ、んぁ、はぁぁっ……いい? 雄真くん……きもち……んっ、いい……?」
「あぁ……すげ、気持ち……いい……」
「うん……私も……気持ち、よく……なって……あっ、はぁぁっ……!!」
春姫は体を仰け反らせ、中を伝う快感に酔いしれ始めた。
膣壁が熱を帯びてきて……すごく居心地がいい。
この灼熱の海の中で逝けたら……どんなに気持ちがいいんだろう……
俺はその快楽を味わわんと、夢中になって腰を押し上げ始めた。
「やぁっ!? 雄真くん……そんな、動いちゃ……ひゃ!? はぅぅっ」
奥底を急に突き上げられる衝撃に、戸惑いの悲鳴を上げる春姫。
俺はその悲鳴さえ快楽の源にして、更に春姫の秘部に腰を打ちつけだした。
「ひゃ、ぁぅ、ふぁ、あぅっ、あぁっ、はぁぁ……」
森一帯に轟きわたる、春姫の悲鳴。
春姫を抱いた証をそこに残さんと、俺はなおも必死に抽送を繰り返す。
「あぁ……春姫……春姫……!!!」
「雄真、くん……ぁはぁっ……お願い……いっぱい、熱いの……かけて……!!!!」
「え……?」
かけて……って、何……?
このまま……中に出させてもらえるんじゃないのか……?
戸惑う俺を後目に、春姫は更に激しく腰を動かし始めた。
「あぁああっ、ゃっ、あはぁあっ……来て……雄真くん……ぁついの、いっぱい……」
俺の子種を吸い出さんと、激しく蠢く春姫の襞。
その蠕動に合わせ、最後の時がぐんぐん近づいてくるのがわかる。
俺は春姫の中で出さんと、狂ったようにそこを奥深くに突き刺し……
「ぅぁあっ……春姫……俺……イク……!!」
「あ……雄真くん……」
なおも春姫を求め、抽送を繰り返す俺だったが。
にゅぽっ
「あ……」
春姫がおもむろに、その部分を中から引き抜いてしまっていた。
突如として虚しくなったその感触に俺は一瞬戸惑うが、時既に遅し……
びゅくっ……
欲望にはち切れたそこから、俺の情欲の塊が春姫の体目がけて放たれるのがわかった。
「あぁっ……あぁ……雄真くん……」
降りかかるその感触に、春姫は慌てて俺のを掴み、自身の体目がけ俺のをしこしこ扱き始める。
びくっ、びゅく、びゅくっ……
絶え間なく吹き出すそれを、恍惚とした表情で全身に浴び続ける春姫。
「あぁ……雄真くんの……まだこんなにいっぱい出てる……嬉しいな……♥」
感極まったと言わんばかりに、春姫が陶酔のため息をつく。
俺はそのまま最後の一滴を出し尽くすまで、春姫の柔肌を純白に汚してゆくのだった。
「はぁっ……ぁぁ……はぁぁ……」
全身を襲う、激しい倦怠感。
息が乱れて……額を流れる汗が、ぞっとするほど冷たく俺のこめかみを撫でる。
……もともとかなり無理して春姫とやってたからなぁ……
息が整うには、まだまだ時間がかかりそうだ。
「ふふ……私の体……雄真くんのでいっぱい……」
春姫は本当に嬉しそうに、体にかかったそれを手に取っていた。
それを全身くまなくまぶしては、うっとりと恍惚の表情を浮かべる春姫。
……さすがにこれだけ出してやれば、春姫も大満足だろうな。
ホント、よく頑張ったよ……今日の俺……
だが。
「ねぇ……雄真くん……」
「え? は、春姫……?」
眼前の光景に、俺は絶句していた。
春姫が何と、何度もイッてぐったりしている俺の愚息を手でいじくっているのだ。
支援Last。
「何だ……春姫……まさか……」
まだ何か不満でもあるのか? 春姫……
「ねぇ……私の中……すごく寂しいの……
ね? 雄真くん……私の中も……雄真くんのでいっぱいにして……」
「ちょ、春姫……」
い、今自分から外に出させたんでしょうが……春姫……ι
てゆーかもういくらいじったって、微塵も反応なんてできやしないって……
俺は反射的に、抵抗の意を示そうとしたが。
「ディ・アムンマルサス」
「あぅぅっ!?」
目がチカチカするような感覚と共に、俺のそこが無理矢理膨張させられていた。
あんまり無理に起こすものだから、痛いばかりで快感など微塵もない。
「これでまたできるよ……ね? お願い……」
「春姫……」
……何度でも飽きずに、俺のことを求めてくる春姫。
ふと俺はその姿に、昔どこかで読んだ魔女の姿を重ね合わせていた。
その魔女は、人間の甘美な夢が何よりもご馳走で……
その妖艶な肢体で男を惑わしては、その甘い欲望を啜って糧にするという。
そして、夢を喰われた男に待ち受けるのは……死。
(春姫……)
普通の感覚なら、身の毛もよだつような恐ろしい話だけど……
こんなかわいい誘惑にだったら……いっそ、どこまででも喜んで堕ちていきたいよな。
「……よぉし、今日はとことんまで付き合ってやるぜ」
「雄真……くん……あ、はぁっ……」
狂おしく俺を求める、春姫の声。
そして俺はそのままどこまでも、その甘い誘惑に溺れてゆくのだった。
「……あれ?」
気がつけば俺は、どこか得体も知れないところに包まれて横たわっていた。
先程まで俺たちがいた、あの校舎裏の森とは違う……
やわらかく沈み込む体の感覚と全身にかぶさる布地の感触から、そこがベッドの中であることは把握できた。
(俺……確か……あの後……)
俺はあの後、もう一度春姫と結ばれたんだっけ。
そしてしばらく春姫の中を楽しんだ後……そこから、記憶に残っていない。
俺、あの後……一体どうなって……
「あ、起きた? 雄真くん」
やがて俺の耳元に、聞き馴染みのある声が響いてきた。
気がつくと、目の前に……その声の主がいる。
「……春姫……」
「雄真くんったら、出した後急に気絶しちゃうんだもん……私、びっくりしちゃった」
「あ……」
それで事態を把握した。
俺はあの後、春姫ともう一度やって……中で一度果てた後、気を失ってしまったのだ。
さすがに4回も立て続けにやれば……気を失っちゃっても無理ないよな。
「……ごめんな春姫。何かすげぇ心配かけちゃったみたいで……」
「うぅん。あんな考えもなしに魔法使っちゃった私にも、責任はあるから」
「春姫……」
申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる春姫に、俺も頭をかきつつ言った。
「……今度からもう、あんな賭けはなしだな……
あんま片方の好きにさせちゃうと、今回みたいなことになっちゃうから」
「そうだね……うん。ごめんね……雄真くん」
「春姫……」
俺は胸いっぱいに満たす思慕の情から、春姫をそっと胸元に抱き寄せ……
むにっ
「!?」
俺は思わず目を見開いていた。
今……俺の体に当たったのって……む……むね?
い、いや、春姫の胸くらいいつも触れてるけどさ……
でもまさか、このいやに生々しい感触は……もしかして、は……はだ……
「ふふ……雄真くん♥」
気がつくと、春姫もまた嬉しそうに腕を回してきた。
片方の腕で俺の体に手を回し……もう片方の手は、俺の愚息をダイレクトに……
つか俺の方も、いつの間にかすっぽんぽんに剥かれちゃってるし!!
「こ、これは一体……」
事態を把握できない俺に、春姫が顔をにやつかせながら懇願してきた。
「いっぱい休憩したから……もう……大丈夫だよね?
ね……雄真くん……さっきの、続きしよ……」
「はは……春姫……ι」
これから俺は、何度春姫にしてあげれば満足してもらえるんだろう……
俺は乾いた笑いを浮かべつつ、
とりあえず一刻でも早く春姫に勝てるよう頑張らなきゃと決意を新たにするのだった。
<終わり>
419 :
温泉の人:2007/01/04(木) 12:54:14 ID:Z+qvXe2/0
・・・とりあえずこの後もUMAくんが無事生存していることを祈るばかりです・・・;
しかしこれ、考えようによっては
UMAの体にキスしたいがためだけに全身生傷こさえてやってるってことですよね・・・;
春姫・・・恐ろしい子!!(AA略)
皆さんもはるひめさんとお付き合いなさる際は、何卒お気をつけ下さいませw
ともあれ毎度ご支援ありがとうございます。
次回はそろそろ春姫以外で書きたいかな?なんて。
ではまたノシ
>>405 >射精妨害のための魔法だ。
なんだそりゃw
>>405見て「魔法とHのカンケイ」を思い出した俺が通りますよ
UMAが勝つより、負けた方が萌える展開だな。淫乱春姫すばらしい。
作者の人、グッジョブだ!
423 :
温泉の人:2007/01/05(金) 23:10:05 ID:fBprBz8Y0
>>420-421 絶対ツッコまれると思ったorz
えぇ、包茎大好きですよ自分。
普段ははぴねす並みにデレデレなのにHの時だけSっ気まんまんな子猫様とか最高じゃないですか!
・・・あんま他作品からのインスパイアは控えた方が無難ですね;
GJですよー!
UMAがたーくんになってるw
しかし春姫はエロが似合いますなwF91は伊達じゃないw
425 :
名無しさん@初回限定:2007/01/06(土) 09:49:07 ID:fpQo7YmG0
GJ!!
次の作品に期待
かにしのwktk
すみすみのアフターSSwktk
428 :
名無しさん@初回限定:2007/01/07(日) 10:48:19 ID:i/I2Rs8d0
私は23歳で結婚してます。旦那の稼ぐお金では支払いなどがあり、
生活費もギリAでお金なくて、でもチビいるから働きたくないしで、
…血迷ってスタビでカキコしてた37歳にメール。
どっちにしろ\になります。
用事をとりつけて、三日後にあう。
旦那しかしらない自分にいわゆるカルチャーショック…とゆうか
気持よすぎた、、
旦那とのエチーゎいわゆる旦那の一方的な、漏れをつかった性欲処理、でも、彼は流石遊んでるだけあって、巧いとゆぅか…はまりました。
でも口に出してはいえない。
昨日はチビ連れて
投稿乙です。
……どの選択肢にしろ結局春姫の思惑通り、ということですね(笑)。
これじゃあ雄真、浮気する体力も気力も無いだろうなあ。
すみすみのアフターSSwktk
>428が、すみすみのアフターSSかと思って泣いた俺。
すみすみのアフターSSwktk
>430-432 『甘くない』の人のHPを見るといいかも?
かにしのの人気に嫉妬
――と言う訳で、失われた野生を取り戻すべく、司は行動を開始した。
ジャージ姿で大きなリュックを背負い、やる気満々である。
「わう! わうわう!」
突然、ハッハッハッハッと何かが司の足元にじゃれついてきた。
中々愛らしい仔犬だ。
「おおっ! ゴンザレスじゃないか!」
「きゅう〜!」
ゴンザレス(本名ダンテ)は司に遊んで欲しいのか、盛んに尻尾を振る。
「なら、お前も一緒に野生を取り戻しに行くか?」
「ワン!」
ダンテが仲間に加わった!
「あっ、先生〜! 何をやってるんですか〜?」
「わ〜、また何か面白いこと始めたんですね〜?」
「内緒にしますから、混ぜて下さいよ〜」
山に入ろうとした司を生徒達が見つけ、たちまち取り囲まれる。
司がこの分校に来て、早一年近く。
彼の『奇行』はすでに分校中に知れ渡っていた。
……その奇行がとても面白く、楽しいものである、という認識と共に。
それ故、司の『奇行』は一種のレクリエーションと化しているのだ。
「ふっ、少女達よ」
が、司はダンテを抱き上げ、首を振った。
いつもの司ならば、ホイホイと仲間に入れていただろう。
が、今回の司は一味違う。何故ならタイガー司だから。
「残念ながら、今回行うのは漢のみが立ち入ることを許された神聖な儀式だ。
だから僕と……」
「ワン!」
「……ゴンザレスしか、参加することは許されない」
男の中の男、漢しか参加することが許されないのだ、と司。
「あ〜、今回はそういうノリなんですね〜」
「残念だけど、しょうがないね〜」
「次は混ぜてくださいよ〜」
司の言葉を聞くと、残念そうながらも生徒達はあっさりと退いた。
流石御嬢様だけあり、皆実に聞き分けが良い。
(無論、例外は存在する。 ……悲しいかな、全員司の関係者だったりする)
「悪いなあ。次は誘うよ」
「きっとですよ〜」
生徒達は思い思いに去っていった。
それを見送った後、司はダンテの頭をポンと叩く。
「よしっ、行くぞ! ゴンザレス!」
「ワン!」
一人と一匹の特訓が始まった。
――――分校敷地内、某山。
白い〜○ットの〜ジャ〜ングルに〜〜♪
殿子がいつもの様に山中を歩いていると、何やら歌が聞こえてくる。
それ程大きくはなかったが、この静かに山中では実に良く聞こえる。
「?」
不思議に思った殿子は、その音のする方に自然と足をむけた。
……まあ、心当たりは一つしかなかったが。
ゆけ、ゆけ、タイガー(タイガー)、タイガー『ツカサ!』『ワン!』♪
想像通り、そこには司がいた。
彼はボールでダンテと遊んでいる。
(音の正体はラジカセだった)
「司、何してるの?」
司の背後には、テントまで張ってある。
ダンテと遊んでいるのはわかるが、それにしては大掛かり過ぎた。
「ああ殿子か、今特訓をやっているんだ」
「特訓? ダンテの?」
「いや、僕の」
「……司の?」
殿子は首をかしげる。
先程からボールを投げて、それをダンテに取ってこさせているだけだ。
……どう考えてもダンテしか鍛えられていない。
「そうだ。ここは地獄の修行場『虎の穴』、そして僕等はそこに訪れた挑戦者」
「『特訓』『地獄の修行場』『挑戦者』……」
一瞬、『そういう遊びかな』とも考えたが、司の目を見て本気だと気付き、ますます殿子は首をかしげた。
まず司の言う『地獄の修行場』は、キャンプには格好の実に景色の良い場所だった。
『特訓』も、どう見てもダンテと遊んでいる様にしか見えない。
……だから、殿子は正直に言った。
「司、遊んでいる様にしか見えない」
「何を言う! これ、結構な重労働なんだぞ!?」
既に一時間、結構辛い。
「司、体力無さ過ぎ」
「くっ、そんなこと無いぞ! さあっ、ゴンザレス! どこからでもかかってこい!」
見てろとばかりに司は、『ヘイ、カモン』とプロレスばりにダンテを挑発する。
「きゅう?」
……が、言っている意味が分からないのか、ダンテは軽く小首を傾げるだけだ。
「さあ、来い!」
「わう! わうわう!」
司が両手を広げると、ようやく理解(多分)したダンテは司に飛び掛り、じゃれついてきた。
「ははは! いくぞ、ゴンザレス!」
「きゅう〜!」
一人と一匹はじゃれ合う様に縺れ合う。
……司にとってはあくまで特訓であったが、ダンテにとっては完全な遊びでしかなかった。
「はあ……」
そんな一人と一匹のすれ違いを見て、殿子は大きな溜息を一つ吐いた。
…………
…………
…………
「ちょ、ちょっと待ってくれゴンザレス、ストップ、ストップ」
30分後も経つと、体力ゲージが黄信号を発しだしたため、司は慌ててダンテを止めた。
「きゅう〜」
早くも降参の司に、ダンテが不満の鳴き声を漏らす。
ダンテにとってはまだまだこれからなのだ。ここで終わられては堪らない。
「わうわう!」
しっかりしろ、とでも言うように吼える。
「司、本当に体力無い」
殿子も呆れ顔だ。
……もしかしたら、自分よりも体力が無いのではないだろうか?
「仕方が無いだろ? 僕は頭脳労働者なんだから」
「でも、みやびと戦う時はもっと頑張ってるよ?」
「……命がかかってるからな」
遠い目をして司は答える。
と言うか、みやびは自分が満足するまで攻撃を止めないため、嫌でも戦い続けなければならないのだ。
「命を賭けたく無いのなら、みやびを怒らせなければ良いのに」
「そうは言うがな、理事長はニトロ並の瞬間発火装置だ。だから何かあると直ぐに襲い掛かってくるんだよ」
「……それは、司が余計なことを言うからだよ」
「そうかな?」
「そう」
「う〜む、自覚無いなあ……あ、有難う」
会話しながらも殿子の手はテキパキと動き、出来たコーヒーを司に渡す。
「で、司は何の特訓をしていたの?
またみやびと対戦するために特訓?」
「ああ、野生を取り戻すための特訓だよ」
「ダンテを?」
「違う、ダンテはあくまで助手。主役は僕だ」
「野生? 司が?」
赴任してから今までの司を思い出す。
赴任早々迷子になった司。
敷地内を探検中に何度も道に迷い、その度にシクシクと泣いていた司。
溺れる司、流されていく司――
……浮かぶ光景は、どれも野生には程遠かった。
「……本気?」
「もちろん! 僕は何時だって本気さ!」
「はあ……」
殿子は大きな溜息を吐いた。
(司と仲良くなってから出来た癖で、主に司との会話中に起こる)
そうだった。司は何時だって本気だ。
けど、このまま放って置いたら、多分、絶対夢見が悪くなりそうだった。
殿子の脳裏に、シクシクと泣いている司の姿が未来視の如く過ぎさる。
……いや、別に未来視でなくても、今までの経験から充分予測できることだったが。
正直、見てて放っておけない。
だから殿子は迷わず言った。
「じゃあ、私も手伝う」
殿子から見て、司は『世話の焼ける兄』の様な存在だ。
自分のことを理解してくれるが、あまり頼りにはならない、けど誠実な……
――もし自分に兄がいたら、こんな感じだったら良いな。
そう思えるほどの。
偉くなくったって良い、情けなくても別に構わないのだ。
ただ誠実で、他人を解ろうとする人であれば、それだけで殿子には充分だった。
……まあ実際は、兄というより『大きな弟』の様にしか思えなかったが。
だから、殿子にとって司を助けるのは当然の選択だった。
「駄目だ! この修行は女人禁制、漢のみの特訓なんだ!」
が、冒頭で断った生徒達同様、司は殿子に対しても頑として譲ろうとはしない。
どうやら余程、今回の決意は固いらしい。
「男のみ?」
殿子はそれを聞いて首をかしげる。
「男じゃなくて漢、男の中の男のことさ」
「……でも司、ダンテは女の子だよ?」
「な、なんだって!?」
司は驚き、ダンテを見た。
そしてダンテを抱き上げ、まじまじと見る。
「……無い」
「司、下品」
「裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったな! あの女と同じに、僕を裏切ったんだ!」
司はダンテを指差し、弾劾した。
……どうやらこのSS中では、例のトラウマもギャグのネタに出来るほど回復しているらしい。
「きゅう〜?」
ぺろっ。
そんな司をダンテは不思議そうに眺めていたが、何を考えたのか突きつけられた指を一舐め。
……それだけで、司の顔がふにゃっとなる。
「あー、可愛いなあ! お前は魔性の女だ!!」
「きゅうー!」
「……はあ」
司がダンテを抱き抱えてゴロゴロ転がるのを見て、殿子は何度目になるかわからない溜息を吐いた。
……本当に世話の焼ける『兄』だ。兄、と言うよりも弟と言った方が良いかもしれない。
が、放ってはおけなかった。
この『弟のような、世話の焼ける兄』の面倒を見るのは、『妹』として当然のことなのだから。
無論、殿子はこの情けない面だけが司の全て、だとは思ってはいなかった。
人には様々な面がある。きっと司にも、自分には見せない別の面があるのだろう。
……でなければ、みやびや仁礼が、ましてや相沢があそこまで慕う筈が無い。
が、殿子は別にそれを知りたいとは思わなかった。
司は自分の『世話の焼ける兄』、それで充分だ。それ以上は何も望まない。
それだけでも、自分には充分過ぎる程なのだから。
SS投稿終了。
すみすみのアフターSSwktk
>>446 そんだけ読みたいんだよ。
すみすみのアフターSSwktk
殿子かわいいよ殿子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
ああ直ぐにでも襲ってしまいたい。
リーダさん、鏡花、イェンSSwktk
すみすみのアフターSSwktk
すみすみのアフターSSwktk
正直、すみすみのSSならアフターよりもするすみルート改みたいなのを期待したい
なんつーか、全部終わらせたら正直微妙にアレな気分になるルートだし
すみすみは一番最初にクリアして回想の埋まり方とか吹いた訳だが、色々な意味で一番最初で良かった。
攻略順によっては後味悪かったりネタバレしたりと酷い目に会う所だったが、
すみすみ→みさきち→殿子→しのしの→邑那→みやびー
の順でクリアした俺は勝ち組。
司は最近物足りなさを感じていた。
栖香はかわいい、Hのときも淫語を言わせたりとしてそれなりに興奮し燃えるのだが
安いアパートの部屋ではどうしても栖香はとなりに意識がいって以前の様なことにさせにくくなっていた
(まあそこで大声上げさせるのはそれはそれで燃えるのだが・・・)
ある意味行為がマンネリ化しつつあるなと自覚があった。
そこで司はふと思った。そう言えばラブホではやったこと無かったな・・・・・
ここで司はある企みが思いついた、資金は予備校の給料が入ったばかりなのでいけそうだった。
今度の休みの日に合う約束があったのでその日に実行することにした。
そしてネットで情報収集してるとあるラブホのHPを見た『冒険者の宿』
・・・・・コレダ!!・・・司はそのHPをむさぼる様に読み計画を練っていった
計画当日、昼に駅で待ち合わせ食事のあと店を回って栖香はてっきりそのあといつもの様にアパートに向かうものとばかり思っていたが・・
栖香「司さん?アパートにいかないんですか??」
方向は司のアパートの方向ではなく怪しいネオンの看板が多くなってるエリアにさしかかっていた
司「今日は久々に気分をかえてみない?」と笑顔で・・
栖香「それはいいのですけど・・・だいじょうぶなんですか??」と表情が曇る
司「たまにはいいだろ?それにアパートだと栖香も隣に気がいってHに集中できないだろうし・・」
栖香「なっ!!・・・・(赤面)司さん・・・・いじわるです・・・」
そしてく少し顔を赤く染めた栖香とうれしそうな司は目的地の、『冒険者の宿』についた。
時間はまだ夕方ではあったが司は迷わず栖香の手を引き入り口にはいっていった
栖香はこう言う施設があることは最近になってようやく知ったが内心動揺は隠しきれなかった。
フロントで鍵をもらって1室にはいると そこは鏡バリの天井と大きなべッド、曇りガラスの壁があってその向こうはどうやら浴室のようだ・・・
栖香「うわあ・・・・・」
中の様子を見て思わず声を出す栖香そして司は入り口を閉め、栖香の背後から抱きしめいつものようにキスをした・・・
栖香「つ、司さん!しゃ、シャワーを浴びさせて・・・ください・・・」と熱っぽく訴えた
司「じゃあ一緒に入ろうか??」
栖香「は、はい・・・・」消え入るような声で答えた栖香
司は早速服を脱ぎ浴室でお湯を張りその背後では栖香は司に背を向け服を脱ぎつつあった
何度も体を重ねてはいるはこういう恥じらいを忘れない栖香はとてもかわいく、男心をくすぐった
浴槽は広くアパートの風呂とは違い脚が伸ばせるほど広く、洗い場にはエアマット、ボデイソープやいすがあるが広い
浴室それだけでも司のアパートの部屋ほどあった。しばらくしてタオルで前を隠した栖香が入ってきた
栖香「広いですねえ・・・でもなんだか恥ずかしいです・・」
司「とりあえず入らない?」
2人はシャワーを軽く浴びたあと一緒にお風呂に入った司が下でその上に栖香が座るようなかたちになったがそれでもせまいと感じなかった
司「ふ〜たまにはこういうのもいいだろ??」
栖香「そうですね・・・」
といったとたんに司は栖香の首筋にキスと同時に胸と股間をまさぐり始めた・・・
栖香「ちょ・・・つ、司さん!」
司「いいから・・・そのまま・・」
栖香「もう・・・司さんのえっち・・・・」
うなじからは栖香の甘い香りが、胸の先は徐々に固くなり始め股間の手は動き始めると栖香の太股がキュッとはさみ込み動きを阻止する。
司「そんなに緊張しないで・・・」
栖香「ここじゃなくてベッドで・・・それに体を洗わないと・・・・」
司「いいから任せて・・」
司は首筋、耳とキスをし下を這わせ耳たぶをしゃぶり刺激する、そのたびに栖香はピクピクと反応を返す
ときおり胸をもんでる指が乳首をこねくると思わず嬌声が出てしまう
栖香「こ・ここではだめ・・」といったあと栖香は右手で司のナニをぎゅっと握った
司「ってて・・・判った、じゃあ洗いっこしようか?」
栖香「はい・・・(にこっ)」
浴槽から出た後栖香は司の背中を流した
栖香「司さんのせなかって大きいです・・・」
司「そう??」
栖香「はい・・」
そして一通り流し終えたあと司は
司「今度は栖香の番だな」といって背中からスポンジでやさしくなで始めた
支援
栖香「司さん・・・・・・気持ちいいです・・・」
栖香は陶然とした声で答えた。
司は首から肩、背中、腰と洗っていってそして栖香の開発されたお尻に標的が・・・・
栖香「つ、つかささん!!」
栖香は声が裏返っていた
司「やっぱここもきれいにしておかないとね〜♪」
栖香「そこはもう家できれいにしてあります!!」と思わず叫んだあと「あっ・・・・」といったあとポンと音がするほど顔が赤くなつた。
司 「まあまあ」といいながら泡だらけの指はすでに栖香のお尻の穴の周辺を撫で回し、人差し指が進入しようとしていた
栖香「指が入る〜〜」
いつものなれた指での愛撫に声が熱を帯びる、
指を1本入れた後椅子に座らせた状態ではやりにくいのでエアマットにうつぶせにし、腰をあげさえた
しばらくして指が2本増えると泡だけでなく腸液のぬめりも手伝ってにゅちゅにゅちゅと音が浴室に反響する
司「なんだかいつもより音が凄いね」
栖香「そ・そんなこと・・・」と消え入る様に答える栖香
そして司は「もう一本入るかな・・」とつぶやいたあと人差し指と中指薬指を束ねてお尻へと進入を開始した
栖香「やっ・・き・きつい・・・・」といったもののいつもの様に深呼吸を繰り返し徐々に飲み込み始める
最初は第一間接までだったが司が手首をひねる様にこじ開けていくと徐々に深く進入するようになり、最後には根元まで飲み込めるようになっていた
司「すごいね、根元まで入ったよ、それに・・・」
といいつつ人差し指と中指薬指を立て一列にしてこね回し
司「すっかり広がったね」とつぶやいた。
そのとき栖香はすでに息絶え絶えになっていた、軽く何度かいっていたのかもしれない、全身が汗でぬめぬめと光り時折お尻と藻もがピクピクと痙攣し
「はあっはあっ」という荒い呼吸音だけが聞こえていた。
司「もう我慢できない、」といってすでに先走りの露をこぼしていた男根を栖香のお尻にあてがい一気に貫いた。
栖香はその衝撃に目をむき嬌声を上げた、十分になれた行為ではあったが指三本で散々にこねくり回された挙句の荒荒しい挿入に栖香は一気に燃えあがっていった
栖香「つ、つかささん、きつい・・・きついのぉぉ」
司「だけどそれがいいんだろ?この変態!!」
栖香「はい!でもつかささんだから・・・つかささんだからいいの!!」
栖香はいつものように司の漢心を刺激する言葉を叫びつつ頂点へと暴走する。
腰は司に突かれるたびに左右にうねり、快楽をむさぼる
司は司で時には浅く時には深く時には子宮の裏側を刺激する、
栖香は全身が朱に染まり、前からは愛液があふれ司の入ってる肛門もすでにボデイソープの泡はなくなり腸液が「グシュグシュ」と音を立ててあふれてきていた
そして栖香が息を「ヒッ!ヒッ〜!!」と切らせ始めそろそろ司も限界が見えてきた・・・
司 「栖香!そろそろ出るぞ!!」
栖香「お願いです早くいってください!!もう何度も来てるんです・・つらいんです」
とすでに半泣き状態だった。
そして司は最後にこれでもかというほどの突き込みを入れてきた
栖香はすでに目から涙があふれ「ダメェ!!もうだめぇ!!」と叫び
そして司の「いくぞ!たっぷりいくぞ!!」といってたっぷりの白濁液を栖香の腸内へ注ぎ込んだ
栖香はその熱いほとばしりを腸内で感じつつ意識が徐々に薄れていった・・
司は栖香から抜きだしたあと栖香を見た。うつぶせの状態で顔は左に向き目は半分あいてるものの焦点はあっておらず全身は汗まみれ肌は上気していておしりと太股はときおり痙攣し
お尻の穴からは注ぎ込んだ白濁が「こぽっ」とあふれていた。
心配になった司は栖香を抱き起こし軽くほほをぺしぺしとたたいて「栖香!!栖香!!」と呼んだしばらくしてようやく栖香の意識が戻ってきたのか
「つ、かささん??」と声をようやく出した後顔が真っ赤になって生きそして恥ずかしそうに目をそらした。
そのあとは体の汗と白濁液を洗い流してベッドへと移るのだが栖香は半分グロッキー状態だった
しかしこれは司の計画のまだほんの1部でしかなかった。
ベッドでタオル一枚の姿で司のわきに寄り添う栖香は複雑な表情を見せていた
うれしい反面あれほど乱暴にされてしまったのに感じてしまったこととが複雑に心に渦巻いていた
栖香「司さん今日はなんか怖かったです・・・」
司「でも悪くは無かったんじゃないか??」
栖香「・・・・・・」
司「でも夜はまだまだこれからだよ(ニヤリ)」
栖香「え‘っ(ギクッな、なんか悪い予感が・・)」
司「それ♪ 」
司はいきなり栖香の唇を奪い舌を侵入させ栖香の舌に絡ませてきた・・・
栖香も突然で驚きはしたがキスはきらいではなかったのでそのまま受け入れ激しくキスをした
司はタオルを剥ぎ取り胸と股間を愛撫していく、すでに浴室での1戦ですでにからだの準備はできていたので少しの刺激でも反応は早い
すぐさま潤ってきた。
栖香はすでに相当消耗していたが司は何故か元気だったそれはこの「冒険者の宿」というラブホで栖香をとことんまで追い込んでみようという黒い野望があったためだ
そうこの「冒険者の宿」とは恋人達がもう1ランク上の性的な冒険をするための設備、アイテムを取り揃えたラブホだったのだ
栖香はそんな所とはまったく知らず司のキスと愛撫にに翻弄されていた。そして・・・
司は対面座位で栖香を貫いた
栖香「あっ!!ふ、ふかい・・奥まできてる」
と叫んだあと再び司に唇を奪われる
そして司はベッドのスイッチに手を伸ばし・・・
栖香「えっ?うそ!!」
ベッドが振動し、腰が緩やかにバウンドし司のが奥をノックし始めた
司「どう?アパートではとても味わえないでしょ?」
栖香「いや・・奥がコツンコツンてあたる〜」
司は振動を利用しつつ突き上げたりこね回したりして栖香はそれにあわせる様にいやらしく腰を使ってきた
栖香「あっ!あん!これすごいよう・・おかしくなっちゃうおかしくなるう〜」
司「まだまだこれからだよ(ニヤリ)」
「これ難だか判る?」
と司は栖香の目の前にピンク色の棒状のものを見せたそれは長さ20CM以上はあろうかといういうバイブだった
栖香「な・・それをどうするんですか??」
司「こうするの♪」
司はそれを栖香の肛門にあてがうと一気にねじり込んだ
栖香「い・イヤッ怖いいやあ〜」
栖香は慄いた前には司の男根で子宮口をこね回され、薄皮隔てて肛門には長大なバイブが挿入されてしまい
栖香は混乱していた
栖香「うそ・・・私の中に2本も・・・・いやあこすれる・・・こすれてる・・・」
司「そうこれでめでたく2本差しだね・・でもまだまだこれからなんだ♪」
栖香「えっ??」
司 「スイッチ・オン レッツダンス♪」
栖香「い・いやああああああお尻で・・お尻で動いてるぅ」
司は肛門に挿入したバイブを弱振動で動かし始めたそれに伴って栖香はバイブの振動から逃れようと激しく腰を動かすが
司がバイブの根元を固定したことによって力の逃げ場を失っていたまた前を司の男根に埋められてるために逃れようと動かしても逃れきれなかった
栖香は今まであげたことの無いような獣じみたヨがり声を上げつつバイブの振動から逃れる様に腰をめちゃくちゃに振っていた。
栖香「うう。おしり・・・お○んこ いい・・溶けちゃう」
司も肛門の刺激で栖香の前は今までにないほどの締め付けをしていたおまけに肛門側のバイブに振動がさらに司を追い込んでいく
そしてとうとう司に限界が訪れる
司「栖香もう出る!出るぞ!!」
栖香「あん、もう許して!感じすぎて怖いのお〜」
司「出る!」
その直後司は思いきり栖香を抱き寄せ腰をこれでもかというほど膣内に押し込んだ
それは子宮口を直撃してそこから1回戦に勝るとも劣らない量の精液を噴射した
栖香はなかにあふれる精液の感触を感じて一瞬意識を失ったが再び肛門のバイブによって覚醒させられた
司もいったものの栖香の肛門の刺激によって栖香の括約筋の収縮が止まらずそれによって男根の根元がしぼられ、なえることが無かった
そのまま延長戦に突入し大尉を入れ替え後背位で一回、側位で一回いって終わった
最後の側位ではすっかり力が抜けてしまった栖香は反応が鈍くなっていて司がいった後バイブを抜いたときに失禁してしまった。
しばらく休んだもののアレほどの激しいSEXをしたおかげで栖香は足腰が立たなくなってしまっていた。
やむなくおんぶしてアパートまで帰ることになった
栖香「う〜〜〜〜〜司さん酷いです〜〜〜まだ腰が痛いです・・・おしりもジンジンする・・・」
栖香は涙目で腰をさすり司を非難した
司 「いや〜でも気持ち良かったでしょ??」
栖香「 うっ・・・でも・・・」
司 「でもこれで益々栖香と深い仲になれたんだと思うとうれしいな(にこっ)」
栖香「 ・・・司さんずるいです・・そんないいかたされたら怒るに怒れないじゃあないですか〜」
栖香は心の中で思った「こんなになるまでやっちゃったのはじめて・・・次にはどんなことされちゃうんだろう・・・」
そう思うと再びお尻とあそこがうずいてくるのだった、そしてそれをごまかすべくぎゅっと体を司に押しつけ密着させる栖香だった
司は司で背中に栖香の胸のふくらみを感じつつ「次はどうしてやろうか」と次のラブホでの「性的な冒険』におもいをはせるのだった。
おわっとくw
> 司 「スイッチ・オン レッツダンス♪」
アホすぎて吹いたw
『野生を取り戻せっ!』確かに面白いのだが、
梓乃ルートで飼い主である梓乃は思いっきりダンテを『彼』と呼んでいるぞ。
投稿乙です。
447様、有難うございます。
>>463 >ダンテ
ありゃ、そうだってのですか……気付かなかったよ……
「えー、では授業終了前の10分間を使って小テストを行います。
あ、小テストは授業終了後、代表者が集めて僕の机の上に置いておいて下さい。ではっ!!」
言うが早いか、司は教室を後にする。
「あっ、また!?」
「先生、最後までちゃんとやって下さい!」
一部の生徒からブーイングが出るが、気にしない。
放課後捕まらない様、距離を稼がねばならないからだ。
「センセ、授業放棄だっ!」
「お前もなー!」
が、その行く手を美綺が塞ぐ。
わざわざ授業をサボってまでして、司を捕まえようと待ち構えていたのだろう。実にご苦労なことだ。
「罰だ、あとで授業内容をレポートに十枚以上書いて持ってこい! もちろん手書きだぞ!」
「センセ横暴! 誰のせいでサボったと思ってるんだあ!?」
「はて?」
「そこで首捻るなっ!」
美綺は叫びつつも、今回のセンセは一味違う、と思わざるえなかった。
何故だか知らないが、今回の司はマジである。
……いや、何時も手を抜いている、と言う訳では無い。何時だって司は本気の人だ。
が、今回は本気の本気、本気にスーパーチャージャーがかかっているような状態だった。
――う…… ちょっとカッコイイかも。
……他人が聞いたら首を捻りそうな評価ではあるが、美綺には格好良く見えるのだから仕方が無い。
所詮は惚れたものの負け、痘痕も笑窪ということなのだ。
「授業をサボるなんて悪い子だ! 先生は悲しいぞ!」
「ええいっ! この腕章が目に入らぬかあ!」
「げっ! それは『みやび印の腕章』!?」
『みやび印の腕章』とは、理事長公認で授業を欠席することを許された者のみが付けることを許される腕章である。
通常は……というか常識から考えて、公欠とか病欠の際に使われるものなのだが……
「理事長! 職権乱用ですよ!」
しかしどうりで今回、みやびと栖香が大人しく引き下がったわけである。
おそらく油断を誘う為だったのだろう。
「センセが言うな!」
「くっ! 教室に理事長と仁礼、外に相沢という二段構えの作戦か! ……ん?」
ならば、同じく欠席した上原も……
「先生、御願いですから止まって下さいっ!」
「やはり!」
「かなっぺ、ナイスタイミング!」
「うう、なんでなんで私まで……」
半ベソをかきながらも、奏は両手を広げて立ち塞がる。
「なら!」
「え?」
司は奏の直前で急に曲がり、近くの部屋へと飛び込んだ。
「よっし! これでセンセは袋の鼠! かなっぺ、ゴー!」
「絶対絶対、無理! 無理だよ!」
美綺がけしかけるも、奏は断固拒否だ。
……何故ならば、司が逃げ込んだのは『男子トイレ』だからだ。
「もー、しょうがないなあ……って、かなっぺ何を!?」
「駄目、駄目だよみさきち! 女の子として、それだけはっ!」
男子トイレに突入しようとする美綺を、奏が必死で止める。
「いいじゃん、誰も見てないんだからさあ!」
「そういう問題じゃない、問題じゃないよ!」
「上原、さんきゅ!」
そんなことをやってる間に、司が隙を見て逃げ出す。
「あ――っ!!」
「は、は、は、また会おう明智君!」
「センセの薄情者――!」
「最近、お前はご機嫌ね?」
梓乃はダンテの頭を優しく撫でてやる。
最近、ダンテはとてもご機嫌だ。それに心なしか、少し逞しくなった様にも見える。
「大好きな司に、毎日一杯遊んで貰っているからね」
「先生に?」
「うん」
「みやびさん達を放っておいて、先生はそんなことをなさっていたのですか?」
「……ダンテの半分でも、構ってあげれば良いんだけどね」
はあ、と殿子は溜息を吐く。
ダンテのご機嫌ぶりと反比例し、みやび達の機嫌は大幅下落中、連日最安値更新中だ。
みやびなど、何故かここ最近午後はお腹をクーク−鳴らしながら突っ伏している。
が、今回ばかりは司も強硬だった。
授業中は一切の私的な質問を許さないし、授業終了10分前には小テストを渡して逃げてしまう。
……教師としてそれはどうだろう、とも思うが。
「本当、強情なんだから」
「でも、殿子ちゃんは止めないのですよね?」
「私は司の味方だからね」
妹は兄を庇うもの、と殿子は胸を張って答えた。
「まあ」
そんな殿子を見て、梓乃はくすくすと笑う。
始めは殿子の変貌振りに慌てた梓乃ではあるが、殿子が『司と私は兄妹』といった以上、それを尊重するするのが親友というものだろうと考え、彼女はそれを受け入れた。
そして現在、自分も司を受け入れようと努力している。
……たとえ司が『殿子の兄』としておよそ相応しく無い人物であろうが、自分にとっては最も苦手なタイプの人間だろうが、である。
「お〜い」
「あ、司」
そんな二人の傍に、司が駆け寄ってきた。
今日も無事、追っ手を撒いて来たらしい。
「待たせたな、殿子」
「ううん。 ……でも司、平気なの? 授業終わってからまだ数分だよ?」
如何考えても授業終了前に抜け出したとしか思えない神速ぶりに、殿子が心配そうに尋ねる。
「大丈夫だ。テストという名目もあるし、こんなことをするのは放課後前だけだからな」
……ちなみにHRがある時は、アンケートを行うのだ。
そんな社会人としては駄目駄目な答えに、殿子は苦笑するしかなかった。
「司、社会人失格だよ」
「何、大事の前の小事だ」
司は社会人である前に漢だった。
「ところで司? 今日から梓乃も一緒で良い?」
「……そりゃあ別に構わないが、大丈夫か?」
司は殿子の背中でふるふると震える梓乃を見て、心配そうに尋ねる。
「だ、だいじょうぶ……です……」
だ、大丈夫、怖くない。
殿子ちゃんの『弟』なら、私の弟……
梓乃は必死に自分に言い聞かせつつ、やっとの思いで答えた。
それは、今までの彼女から考えれば、信じ難い程の成長振りだった。
(八乙女のじーさんが狂喜したのも無理は無い)
「大丈夫、噛み付かないから」
「そうだぞ、僕は相沢パパとは違うから、噛み付かない」
「……相沢のお父さん、噛むの?」
「ああ、男限定でな。まあ僕は未遂だったが、暁さんは噛まれたらしい」
が、暁は腕を噛まれただけだったが、司の場合、相沢パパは迷わず喉笛を狙ってきた。殺る気満々だった。
幸い、相沢ママと美綺のダブル攻撃の御蔭で事無きを得たが、もう絶対相沢邸には近づかない、と司は固く心に決めている。
……まあそれ以上に怖かったのは、相沢ママの『先生、ウチの娘泣かしたら沈んでもらいますよ?』とのお言葉だったが。
(冗談めかして言ってはいたが、目が笑っていなかったのを司は見過ごさなかった)
「で、今日はどんな特訓をするの?」
「地獄の千本ノックだ」
「せ、千本ノックですかっ!?」
「大丈夫だよ、梓乃。本当は100本位だろうから」
しかも、ボールを取るのはダンテだったりする。
「……え、でもそれって千本ノックじゃ……」
「八乙女、こういうのは雰囲気が大事なんだぞ?」
「そうだよ、梓乃。大事なのは、『特訓した様な気分になる』ってことなんだから」
「そ、そういうものなのですか???」
それって何か違うんじゃ……
梓乃の頭に、?マークが次々と現れる。
正直、この二人の会話について行けなかった。
「……殿子、言う様になったじゃあないか」
「意地悪な兄に、さんざん振り回されたからね」
――ああ、私の殿子ちゃんが……どんどん先生に染まっていく……
なんだかどんどん変な方向に変わっていく殿子を見て、梓乃は内心で滝のような涙を流した。
……幸いにも、自分もその『変な方向』とやらに染まりつつある、という事実に、彼女は未だ気付いてはいなかった。
――――夕方、談話室。
「「「「…………」」」」
みやび、栖香、美綺、奏の四人は、談話室で黙りこくって座っていた。
皆、如何にも機嫌が悪そうであり、その空気の御蔭で他にいるのは通販さん位のものだ。
「先生、何処で何してるんだろうね……」
「まったく、あいつには教師としての自覚が無さ過ぎる!」
「……私、もしかして飽きられて捨てられたのでしょうか?」
みやびと美綺の二人が豪くお怒りになっている一方、栖香の落ち込みようは相当なものだった。
……そんな彼女を、奏が必死で慰めている。
「えっと! そ、そんなこと無いと思うよ! うん、絶対絶対……」
「でも、最近お食事も御一緒させて貰えませんし、話しかけても禄に返事をして下さいません……お部屋にも入れて下さいません……」
「先生にも、きっときっと何か考えがあるんだよ!」
「それに最近、先生は鷹月さんや八乙女さんと御一緒しているようなのです」
「へっ? それ本当!?」
「はい。遠目からではありますが、間違いありませんでした」
「う〜ん。黙ってたけど、実は最近そういう目撃証言が多いんだよねえ」
「何いっ!? 何故それを先に言わない!!」
「いやあ〜、だって確証がとれてないし……」
嘘である。妹の不安を煽るだけなので、黙っていただけだ。
「くっそ〜殿子め〜っ! とっ捕まえて司の居場所を吐かせてやるっ!!」
「り、理事長、穏便に穏便に……」
「呼んだ?」
「と、殿子!?」
突然現れた殿子に、みやびが目を丸くする。
「私に、何か用?」
「つ、司さんを返して下さい!」「ウチの司を返せっ!」「私からもお願いします、お願いします、先生を返してあげて下さい!」
「?」
「あ〜、ええ〜と…… センセは何時も放課後何処に行っているか、知ってるかにゃあ〜?」
三人の、まるで愛人宅におしかけた本妻とその友人の様な台詞に、流石の美綺もバツが悪そうに尋ねる。
「知ってる」
「どこ!?」
「でも、言えない。口止めされてる」
「そ、そんなあ……」
「大丈夫、司も目的を達したら直ぐに帰ってくる。だから、それまでの辛抱」
「目的?」
「司は、『野生を取り戻す』と言っていた」
「……野生?」
「うん、確か……」
何だっけ? 鰐、熊、獅子……確か猛獣だった様な気がする。
「狼、だったかな?」
男が野生に帰る、と言えば狼しかないだろう。うん、そうに違いない。
(悪い兄のせいで、殿子の知識は少し偏っていた)
「え?」
それ、違うんじゃないかな、と梓乃は思ったが、彼女にそんな突っ込みが出来るはずも無い。ただ沈黙を守るのみだ。
「「「「狼!?」」」」
「『野生』に『狼』って、もしかして……あの幻の予告が真実に!?」
「そんな……まさか……」
「いやあ! 暁先生助けて〜〜っ!!」
分校組の面々は大騒ぎだ。
が、本校系のみやび達は蚊帳の外である。
故に、意味不明に盛り上がる分校系の三人を不思議そうに見る。
「……予告編って何だ?」
説明しよう!
予告編とは、体験版で語られた『遙かに仰ぎ、麗しの〜悪夢の絶望の陵辱の学淫』編のことである。
鬼畜教師滝沢司による学院総ハーレム化がその内容であるのだが、当然PULL TOPの作風に合う筈も無く、あえなく没となった幻の作品である。
……まあ、始めから嘘だった、という説もあるが、そんな細かいことは気にしないで欲しい。
「そんな破廉恥なことを許すかーーっ!!」
「う〜ん、流石に学院総ハーレムはねえ…… 女の子としてはやっぱり……
あたしとすみすみの姉妹丼エンドで手を打ってくれないかにゃあ〜」
「姉様! 何を言ってるんですか!?」
「そうだよ〜 みさきち、それ良くない良くないよ〜」
「いいじゃん、姉妹で仲良く平等にセンセを分かち合えば」
「よくありません! それでは先生と結婚できないじゃあないですか!!
この国では、重婚は犯罪なのですよ!?」
「そういう問題なのっ!?」
奏は、ずれまくった栖香の反応に唖然としながらも、『やっぱり二人は姉妹だよ、姉妹だよ』と思わず納得してしまう。
「あ〜そりゃ拙いわ…… あたし一人娘だから婿養子になって貰わないと……」
「私だってそうです! 先生には私と一緒に桜屋敷を継いで貰わないと!」
「正臣くんは、正臣くんは?」
「正臣は桜屋敷の重要性をちっとも理解していません。そんな子に桜屋敷は任せられません」
彼は『売っちゃえば?』とついうっかり口を滑らせ、栖香の逆鱗に触れたのだ。
「こらっ! あたしを忘れるな!!」
「う〜ん、じゃあ交代で結婚する?」
「……誰が最初に結婚するのですか?」
「…………」
「…………」
二人の間に目に見えない火花が散った。
ぶっちゃけ、結婚したらこっちのもの、二人とも離婚する気はさらさらない。
「こらあっ! あたしを無視するなあ!!」
「ふう……」
これでは司が『野生を取り返して、はっきり物を言える様になりたい』と考えるのも無理は無い。
司の苦労を、殿子はちょっぴり理解出来た様な気がした。
――――翌日、教員室。
「おい、司よ。お前最近、理事長達を放置プレイ中だそうじゃないか」
「……暁さん、誤解を招く様な発言は止めてください」
「いやだがな、近頃理事長のご機嫌は非常に悪い。実際、ピリピリしていてとてもじゃないが近寄れない、と苦情が山の様に届いている」
「……何故、それを僕に?」
「それをお前に伝えろ、と言われてるんだよ。司、何とかして理事長の機嫌を直せ。ついでに相沢と仁礼のもな」
「……具体的にはどうすれば?」
「何、黙って三人のサンドバックになればそれで良い」
「鬼ですか、あんたは!」
「それが嫌なら、それぞれの耳元に優しく愛の言葉を囁いてやるって手もあるぞ?
……まあ、こっちは下手したら刺されかねないから、お勧めは出来ないがな」
「お断りします」
「……どうしても駄目か?」
「はい」
「じゃあ、しょうがないよなあ」
暁は軽く肩をすくめると、司を簀巻きにし始める。
「暁さん、何を!?」
「お〜い上原、もう出てきて良いぞ」
その言葉を合図に、隣の机の下から奏が這い出してきた。
そして暁に対し、何度もお辞儀をする。
「暁先生、本当に本当にありがとうございました」
「上原!?」
「すまんなあ、司。俺も自分が可愛いんだ。上原にも泣きつかれたしなあ」
「裏切ったな! 僕の気持ちを裏切ったな! あの女と同じに、裏切ったんだ!」
「……よくわからんが、取りあえず『同じネタを二度使うな』と言っておくよ」
「くっ!」
その言葉は、司にとって大ダメージだった。
途端に無抵抗になり、大人しく簀巻きにされる。
簀巻きになった司の前に、奏が仁王立ちした。
……どうやら司に対し、言いたいことがある様だ。
「そんなことより、先生! わたしとってもとっても大変だったんですよ!!」
「へ?」
「日々機嫌が悪くなる一方のみさきちと栖香さんの二人に囲まれて、わたし、お昼もろくに喉に通りませんでした!」
そう。
時に、借りだされて司を追いかけさせられたり、
時に、二人の無言のオーラに当てられたり、
時に、美綺から愚痴られたり、
時に、栖香に泣き付られたり、
止めは、みやびも加わったトリプルオーラすら喰らって……
とってもとっても大変だったのだ。
「それは気の毒だとは思うが……」
「他人事みたいに言わないで下さい! あの二人をああしたのは先生ですよ!?」
「いやだからな、男しての尊厳を……」
「男なら、責任とれぇぇぇっっ!!」
「……はい」
こうして司は奏の罠に嵌り、簀巻きにされて連行されていった。
そして30分後、司は囲まれていた。
……なんか、皆メッチャ怖いです。
「さて、何か言い訳でもあるか?」
「お前等、何をそんなに怒っているんだ?」
多少怒ってはいるだろうとは思っていたが、想像以上の機嫌の悪さだ。
「センセ、往生際が悪いよ? ネタは上がってるんだから、いい加減白状しなよ」
「白状?」
「そうです。私というものがありながら、学院総ハーレムなど目論むなんて不潔過ぎます!」
「はい〜〜!?」
ハーレムって何ですか!?
「待て、ご、誤解だ! お前等絶対何か勘違いしているぞ!?」
「男はね〜 こういう時は皆そう言うんだよ〜」
「ちょっ、待……うぎゃあ――――っ!!!!」
…………
…………
…………
「お前、そんな下らんことで! 御蔭であたしは、ここ数日お昼抜きだったんぞ〜〜!!」
ポカッ
何がタイガー司だ、とみやびに殴られる。
……あれから一時間後、全てを白状させられた司は、誤解こそ解けたものの、皆から呆れられた目で見られていた。
「……先生は一体何を考えていらっしゃるのですか?」
「また思い付きで行動するんだから……」
「先生は元からワイルドじゃない、ワイルドじゃないよ」
「ううっ、だって何時も理事長に奢って貰って、ヒモとか飼い犬扱いされたから……」
皆の冷たいお言葉に、司は涙ながらに訴える。
と、その言葉を聞いた途端、急にみやびはご機嫌になった。
「あははは。なあんだ、そんなことを気にしてたのか〜」
そして、何気に爆弾発言をぶちかます。
「お前はもうあたしに飼い馴らされたんだから、大人しく飼われろ。
なーに、安心しろ。ちゃんと一生面倒見てやるから」
「先生……」
「センセ……」
「先生はやっぱりヒモだよ、ヒモだよ……」
「ああっ! 何故か立場が更に悪化!?」
「リーダ、あたしの部屋に犬小屋造って」
「かしこまりました、御嬢様」
「お願いリーダさん、そこで突っ込んで!?」
「司様、人生……いえ、犬生は諦めが肝心ですよ?」
「ま、待って下さい! 確かに司さんは犬かもしれません、けどまだ飼い犬じゃあありません!
言わば半野良です! だから私も所有権を主張します!」
「あ、じゃあアタシも」
「私は別にいらないいらないです」
「……仁礼、相沢」
つーか、もー犬決定ですか。
ああ、おれの残りの人生は鎖に繋がれて終わるのか……
「司、大丈夫!?」
そんな中、殿子が駆け込んできた。
司が簀巻きで運ばれていったと知り、慌ててやって来たのだ。
「おお、我が麗しの妹よ! へるぷみー!」
「……司、調子良すぎ」
いつもはもっとぞんざいに呼ぶ癖に、と殿子は苦笑いしつつロープに手をかける。
それを見たみやびが慌てて止めた。
「駄目だぞ! 殿子には所有権を主張する権利は無いぞ!」
「……何のこと?」
「えっと、えっとですね……」
…………
…………
…………
「……それ、違うと思う」
奏の説明を黙って聞いていた殿子が口を開いた。
「飼い馴らされたのは、司じゃない。みやび」
「なっ、なんであたしが!?」
「……だってみやび、司がいないからお昼を『お預け』してたのでしょう?」
「は!」
司が来ると信じ、馬鹿みたいに何日もお昼を抜いていた過去が、みやびの脳裏を過ぎった。
「ち、違う! 違うんだ! ただ、もしかしたら最近司が来ないから、今日こそは来るかと……って!?
ええい、あたしは何を!?」
「理事長、それ自爆、自爆」
状況が自分に不利になことに気付き、みやびは慌ててリーダに縋る。
「リーダ、あたしは司に飼い馴らされてなんかいないよね、ね!?」
「……もちろんでございます。御嬢様」
「今の間は何!? ねえリーダ、ちゃんとあたしを見て答えてよ!!」
微妙に目を逸らすリーダに、みやびは半泣きで詰め寄った。
が、リーダの態度が何よりも答えを雄弁に物語っている。
「嘘だと言ってよ、リーダ――!!」
みやびの悲痛な、あまりに悲痛な叫びが、分校内に木霊した。
……それから暫くの間、野生を取り戻す、と称してみやびが凶暴化したのはまた別の話である。
SS投下終了、ついでに野生編完結。
乙
面白くてかにしのに少し興味が湧いた。
週末にでも買ってくるかなぁ・・・
乙&GJ!
>「嘘だと言ってよ、リーダ――!!」
最後はガンダムネタで締めかよ(w
GJ!
みやびかわいいよみやび
乙。野性化してくれるとwktkしてたのに・・・。
ちなみに梓乃の殿子三人称は「殿ちゃん」、栖香>美綺は「お姉様」な。
あと、女子校には教員用以外に男性トイレは無いです、通常。
>>482 このSSのようなノリをゲーム本編に期待するなら、たぶん凄く期待ハズレに終わると思う。
それならかにしのよりもゆのはなをお薦めする。
>>486 あの学校って、女の先生職員が出てこないなぁ?
メイドさんは出てくるけど…
>>488 あの分校は『強制収容所』又は厄介な娘を押し込む牢獄
ゆえに万が一に教師と出来てしまえば厄介払いが出来るという計算なんだろう
教師の平均年齢が若いというのもその証左なのでは??
鬼いちゃんのSSをかけるようなオタキングSS書きはいないかな?
>>482 482様、有難うございます。
>かにしのに少し興味が湧いた
かにしのは面白いですよ。お勧めです。
>>483 483様、有難うございます。
>>484 >ガンダムネタ
これ、言わせたかったので(笑)
>>485 485様、有難うございます。
>みやびかわいいよみやび
うちの作品では、みやびが一番出張っております。
何せ一番いきが良いので。
>>486 486様、有難うございます。
>野性化してくれるとwktkしてたのに・・・。
仮に野生化しても、直ぐに捕獲&調教されてしまいますので。
>ちなみに梓乃の殿子三人称は「殿ちゃん」、栖香>美綺は「お姉様」な。
毎度毎度御免なさい。
『お前、本当にかにしのやってるのか?』と突っ込まれてしまいそうです。
かにしのスレよりここを紹介されたので挑戦しました結城ちとせ。
第2話終了後の分岐を想定しています。ちなみにえちはないです。ごめんなさい。
>第X話A「抱き枕と美術品」
学内ソフトボールも無事終了した数日後。僕は職員室で悩んでいた。
先日の一件で理事長に4000万円を支払わねばならない、その算段だった。
通常なら想像しただけで眩暈のする金額ではあるが、幸い手元にある彫刻を売れば一括で払えてしまうら
しい。
回りくどい真似をした理事長は意地っ張りだとは思うが、僕としては彼女の見せた度量に素直に感謝すべ
きだろう。
従って、あまり待たせるのは避けたいところだが、生憎売るにしても僕には適切なつてがない。
そもそも6000万をポンと出せるような知人が、大学を出たての新人教師に居るはずもないわけで。
美術担当の暁先生ならお金持ちの好事家を知らぬとも限らないが、理事長と結城も関わった話を相談する
のは少々躊躇われる。
と、すると。
結局、一番手近で詳しいと思われる関係者に聞くしかあるまい。
正直、本末転倒な気もするのだが……
「というわけで」
「はいはーい?」
「はいは一回だ、結城」
「はーい!」
「……続けていいか?」
「どうぞ」
結城ちとせはくすくすと笑っている。やり取りだけで可笑しいらしい。笑い上戸なのだろうか?
授業の後呼び止めて用件を伝え、使われていない教室で彼女と待ち合わせた。
笑いが止んだのを見計らって用件を切り出す。
「先日から僕の手にある彫刻についてのことなんだが」
「はい。『夕暮れと虹』ですね」
「そうそう。あれを買ってくれそうな人に、心当たりはないかと思って」
「私に、ですか」
「うん。結城なら、お父さんの仕事上、そういう人と付き合いが合ってもおかしくないかな、と」
「せんせ、だから私があの時払うって……ごめん、それはナシだったね、先生」
「いや……確かに君に頼むのは正直申し訳ないとは思うんだがな。それはそれで、どうだろう」
「そーですね……、しょーじき私も、あれからちょっと心配だったんですよぉ。大丈夫かなーって」
「大丈夫とは?」
「あれ、結構有名な品ですから。先生が直接鑑定士に持ち込んだりしたら贋作を疑われたりする可能性も
あるかな、って」
「それは僕が犯罪者に見えるということか?」
「あははー、そじゃなくって、ああいう品は本来名の知れたバイヤーしか扱わないし、扱えないってことです
よ。鑑定書と現物だけでは信用されづらい、信頼できる人の紹介があって、始めて手を出せる品ってことで
す」
「成程。僕もあてが無くて悩んでいたところだったんだが」
「リーダさんに頼んで、紹介してもらったらどうですか?あの方は出入り業者の管理も携わってますし」
「うーん。それも考えたんだが」
理事長をなだめてもらっただけでも充分世話になっているしなあ。
結城はそんな僕をじっと見ていたが、急に真面目な顔になって尋ねる。
「せんせ、私のクマさん、ちゃんと見てる?」
彼女の宝物である熊の抱き枕は今、理事長の品の代わりとして廊下に鎮座ましましている。
最初こそ奇異の目で見られたものの、今ではすでに風景の一部と化していた。
廊下だけに汚れてしまうのを僕は危惧していたのだが、そこは結城も飼い主(?)だけあって気をつけてい
るようだ。
「うん?無論見らいでか。ちゃんと毎日掃除もしてるな。偉いぞ」
「えへへへ……とーぜんだよ。私の一番大事な友達なんだから。毎日ダイソンでホコリとってるし」
掃除機でゴミ吸ってるのか……形が崩れたりはしないのだろうか。
「友達、か」
飼い主より結城の自己評価は下らしい。
「そう!ずっと一緒だったのにこーなっちゃったから三日ぐらい全然眠れなかったんだよ!
おかげで眼のしたにクマできちゃって」
「……」
「アレ、面白くなかった?せんせ。コレはね、熊とクマをかけた」
「解ってる、解ってるから解説はいい!傷を広げるな!」
「まあ最近は眠れるけど。えへへ。そか、そーなんだ、ちゃんと見てくれてるんだね……」
いきなり後ろを向いてしまった。照れてるのか?
「当然だ。僕は君の担任教師だからな」
「――担任、教師。……私の」
言葉をかみ含めるように繰り返してから、彼女は振り返ってにこりと笑った。
あれ?
僕はその時、初めて結城の笑顔を見たような気がした。何故だろう?
今まで、日常でも授業でも、いつも級友と笑っている彼女を見ていたはずなのに。
「……そだね。せっかく、リーダさんより私を頼ってくれたんだし、断るのは失礼だよね。そもそも私が原因な
んだし」
「いや、僕としても無理にとは」
「別に無理じゃないよー?お父さん、私にはだだ甘だから頼むのはへーき。でも」
「でも?」
「お父さんには、私がりじちょーのあれ割っちゃったのヒミツにしといてね」
ふむ、結城としては当然の心配だな。
「むむ、生徒との間に秘密を持ってしまった!僕と言う男は教師失格!」
「あれれ、私の先生がいきなり失格教師になっちゃった……さよーならー!、滝沢先生」
「おまえも意外とノリがいいのな……まあ、当然だ。生徒の秘密は守るぞ」
「えへへ。解った。私も秘密は守る人だよ。それじゃ任せて!」
何故か軍隊式の敬礼をして、結城は去っていった。笑顔の残像を、僕に残して。
僕はずっと後になるまで気づかなかった。
彼女がいつも笑っていた理由に。
彼女が残した言葉の、本当の意味に。
「――私も、秘密は守る人だよ」
>第X話B 「沈黙しない友人」
女性の部屋に入るのは気が引ける。それがたとえ担任の生徒であっても。
いや、教師としてはだからこそ、と言い換えるべきかもしれない。
しかし、僕はその日、入った瞬間にそうした遠慮をすべて忘れていた。
「――なんじゃこりゃ?』
学生用の部屋はけして狭くはない。ないはずだ。
よっぽど散らかしている人間でない限り、本来なら、人を迎えるスペースぐらい確保するのは余裕のはずで
ある。
しかし、結城ちとせの部屋は、僕の想像を絶していた。
汚いわけではない。散らかっているわけでもない。だがしかし。だがしかし!
部屋の壁という壁に。棚に。床に。果ては天井にまで。
あらゆる場所に鎮座するもこもこしてふわふわしてやわらかいものたち。
それは文字通り、空間を埋め尽くしていた。
ベッドまで一本の道がある。そこだけ床が見えた。流しまで、ユニットバスまで、以下同文。
「えへへー、ゴメンね?せんせ。今ちゃぶ台だすから」
よいしょよいしょ、と律儀に一人(?)ずつぬいぐるみをよけて、ちとせは壁に立てかけてあったちゃぶ台を
取り出す。
「なあ、結城……お前、普段この部屋でどう過ごしてるんだ?」
「ええ?ふつーですよ?お茶飲んだりお菓子食べたり本読んだり」
「この……ぬいぐるみたちにこぼしたりしないのか?」
「たまにありますよ?そんなときはお風呂に一緒に入るんですよぉ。ですから乾燥機は自前で持ってるんで
す」
言われて見るとユニットバスのそばに小型の乾燥機があった。……その上にもぬいぐるみがいるが。
「先生はアタマが痛いよ……」
某女流SF作家の部屋がかつてこのようであったと読んだ記憶があるが……この部屋はそれ以上かもしれ
ない。
結城……おそろしい子っ……!
天井を見上げると、どうやら何本も渡したロープ……物干し用のものだろうか?にあるものはくくられ、ある
ものは吊るされ、
またあるものは引っ掛けられたこれまたいくつものぬいぐるみが僕を見下ろしていた。
普通の鳥だのももんがだのはまあ理解できるのだが、中にはかなり名状し難いものもあったりして落ち着
かない。その中の一つをつい凝視すると、なんとなくその眼が光ったような……気が。
「眼があっちゃったよ……いや気の迷いだ!僕は何も見ていない!」
「え?ああ、それはばいあくへーといってですね」
「いや説明はいらないから」
「ちなみにベッドの下にいるのはくとぅるふの落とし子たんといって」
「いらんちゅうに!」
どこで売ってるんだそんなの。僕が欲しいぞ。
「蜂蜜入りのリキュール飲みます?」
「まだそのネタで引っ張るのか!?」
相変わらず結城はくすくすと笑っている。
まあそれはともかく。
ちゃぶ台の上にいつのまにか出てきた紅茶をすすりながら、改めて周囲を見回す。
「コレ、自分で全部何買ったとか覚えてるの?」
ちとせは僕の前に座って……と言うか半ば彼等に溺れた状態でにこにこしている。
「勿論です!名前のない子は全部私が名付け親なんですよ〜」
「ほう、例えば?」
「あの怖そうなライオンはリチャード一世」
「ふむふむ、歴史ネタか」
「その隣はチャールズ一世、その横はルイ16世、その隣はコンスタンティヌス11世」
「歴史教師として言わせて貰うが、そのセンスは最低だな!」
全部首にマフラーとかバンダナとか巻いてるし。可哀相だ。
「こっちの棚はもっと面白いですよぉ。この子はベリヤ、この子はハイドリヒ、この子は泰會」
「悪党ばっかりじゃねえか!もっと可哀相だよ!」
……そういえば、あの抱き枕はなんていうんだろう?一番大事と言うんだから、当然名前があるのだろう。
一ヶ月の展示を終え、今は安息の地、彼の居場所であるベッドの上にまします巨大なクマ。
「あの子は、ルドルフ」
「――それにも由来があるのか?」
「わたしが最初にお母様から買ってもらったテディベアの名前なんだ」
ふむ、思い出の品の名前か。ではこの子は二代目と。では初代はどんな人(というかぬいぐるみ)だったの
だろうか。
「ちなみにその子の友達にはラインハルトという子がいて」
「はいはい、で、その子は世界的な歌手になったんだろ?」
あれはいい話だったなあ。
それはそうと。
「――その子は、今は?」
ちとせは首をふる。
「なくしちゃったんだ。だいぶ前に」
あっさり、そう答えた。
「だからあの子は、その代わり。いえ、子どもみたいなものかも」
「でも、だからこそ」
ちとせの声のトーンが、少し低くなった。
「私は……あの子が大事なんだよ」
何かが引っかかる。……代わりの、子ども。
「ボクもちとせのことが大好きさ!」
突然、何処かから声が聞こえた。あれ?今……ジークフリードが喋ったような?
まさかね。でも……声がちとせと全然、違う?
「マイクでも入ってるの?この枕」
「いえ?ただの抱き枕ですよ?」
「腹話術?」
そんな特技があるとは初耳だ。
「違いますよ?彼が喋ってるんです」
「――え?」
――突然。僕の頭の中で警報が鳴った。
これ以上は、聞くべきでは、ない。
教師、滝沢司は。
なのに。聞き返してしまう。
「――どういう、意味?」
彼女は。結城ちとせは。この、僕に。
話し始める。話して、しまう。
「――私が何故、本校から来たか……せんせは知ってる?」
「――ある程度は」
いじめ。無視。孤立。登校拒否。
引継ぎ資料にはそうした理由が記されていた。
しかし。その内容については。
何故、それが起きてしまったのか。
「みんな、おかしいんですよ?」
待て。ちとせは、何を言っている?
「ぬいぐるみが、喋るわけがないって。幻聴だって」
いや。僕は、何を聞いた?何を聞いている?
「私が、おかしいんだ、って――」
彼女は、真っ直ぐに。
「私には、聞こえるのに、さ?」
僕を見て――言った。
「――せんせは、私を、信じてくれる?」
支援
こんな時間までwktkして待ってしまった、でももう限界。
生殺し状態のまま寝ます……。
俺はみやび√やりながら待ち続けるぜ
じゃあ俺は書きかけの「かにしのSS」の続きでも書いて待つとしよう
ここでは公開しないけどな!
えー、半端なとこで終わって申し訳御座いませんでした。
続きはまだ完成してませぬ。皆様が忘れた頃になるかもしれませんが、出来上がったらぼちぼち上げたいと思います。
気に入っていただいた方ありがとうございました。
504 :
sage:2007/01/28(日) 14:13:13 ID:xDzEQVAP0
>「ちなみにその子の友達にはラインハルトという子がいて」
元ネタは川原泉の「笑うミカエル」?
>くとぅるふの落とし子たん
すげぇ欲しいw
>>504はいです。ぬいぐるみの名前はルドルフで統一しました。
ジーク……は銀英ネタも入れようと迷ってたときの名残ですので忘れてくだちい。
皆様レス有難うございます。一話分投下しますのでまたよろしゅうに。
続きです。よろしこ。
>第X話C「親友」
「――せんせは、私を、信じてくれる?」
あの日より数日後。僕は自室で途方にくれていた。
否定肯定いずれでもなく。何を答えることもできずに、彼女を見返してしまった僕に、彼女は何を見たのだろう。
「そうだよね。変なこと言ったよね、私」
「へへ――せんせ、今のはじょーだんだよ。そうだよね。ぬいぐるみがしゃべるわけないよね?何言ってんだろ」
「だから――忘れてね?」
そう言った彼女の表情に、僕は何を感じた?何を見た?
「糞。僕は――大馬鹿だ」
彼女の諦観を。その失望を――いや、乾いた絶望を見たのではなかったか。
それは信じていたものへの裏切られた感情ですらない。
ああ、やっぱり、という、世界に何も期待しない者の溜息ではなかったか。
あれから、授業中に結城にとりたてて変わった点は見られない。
表面上はあくまで円滑で楽しそうで。でも、けして踏み入らない、立ち入らない人間関係。
いや、むしろ、僕と密接に話していたときのほうが、彼女にとっては「変わっていた」期間なのかもしれない。
「だからって――彼女は、それで、いいのか?」
口に出してみる。それは僕自身への問いかけだ。
お前は、彼女を――結城ちとせをこのままにしておいて、いいのか?
「――いいわけがない」
だがしかし。ならばこの僕、滝沢司に何ができるのか?
彼女に何をしてやれるのか?
「――とりあえず、情報がもっと必要だな」
警察犬のような真似は好きじゃない――生徒のプライバシーに関わることなら尚更だ。
だが、そうしなければ、彼女の心の底にたどりつけないなら。
「成程。それでわたしを探していらっしゃったのですか」
三嶋鏡花は先日設置された生徒互助委員会の委員会室にいた。この時間はもう彼女以外は帰っている。
父母の問題により一時は在籍を危ぶまれた彼女であったが、理事長とリーダさんの温情により卒業までこの学院に在籍できることになった。
とはいえそこは理事長、風祭みやびである。ただでは起きない。
まずコレ幸いと彼女を臨時秘書に任命して事務仕事の一部を委任した。おかげで理事長自身も余裕ができたようだ。
同時に理事長個人と生徒たちの意志の疎通をよりスムーズにすべく、
以前からあった寮委員の権限を強化し新たに本校系分校系の生徒相互が意見交換を図る場を設けさせた。その委員長として三嶋を抜擢したのである。
ちなみに副委員長は分校の仁礼が選ばれた。まあ当然の選出だろう。
もともと寮委員でもあった三嶋にとっては願ってもない仕事だったし、みやびの秘書として働く時間は正規の給与も支払われるという事で、
借金に対する精神的な負担も軽減できる上に将来に向けたスキルも鍛えられるということで文句のあるはずもない。
既に卒業後は学院の職員として、正式にみやびの秘書となることが決まっている、とリーダさんがこっそり教えてくれた。
理事長は相変わらず素直ではないので、三嶋本人には絶対言うな!とかん口令が敷かれているらしいのだが
「バレバレだよね!」
と相沢が笑いながら言っていたのでまあその通りなのだろう。
いずれにせよ、生徒たちの理事長に対する評価も上がったようなのでこの件に関してはめでたしめでたし、だった。
さて、その三嶋に、結城ちとせの事を聞かねばならない。
「結城さんの、本校にいたころのお話ですわね」
寮委員のひとりでもある結城とは表面上は一番親しいはずの彼女。転入時期は三嶋のほうが先だが、一年以上は一緒にいたはずだ。
「わたし、向こうでは違うクラスだったので、お顔を知っている程度でした。ですから――何があったのか詳しくはないのですけど」
「彼女には他人の聞こえないものが聞こえるのだとか、あるいは彼女の家のぬいぐるみには、幽霊が取り付いていて喋るのだとか。
彼女はそれを聞いて、人の秘密を知るのだとか、そういった噂は当時からありました。ちょっとした占い師扱いですね」
――秘密を、守る、人。幽霊。ぬいぐるみ。表面は、合っているようではある。しかし。
「直接の原因は?」
「あまり伝聞と憶測で発言したくはないのですが――」
「憶測でもいい。情報が足りないんだ」
三嶋はふう、と嘆息して続けた。
「先生にならば、教えないわけにもいきませんわね。まあ、話自体はこの世界ではよくあることです」
「本校生には卒業後直ぐ婚約されるような箱入り娘も何人かいますが、その中の一人が結城さんの噂を聞いて言ったのだそうです――わたしが将来婚約する人がどんな人か、教えてもらえるか、と」
「?」
「引っ掛けだったそうです。彼女は実のところ既に婚約予定が決まっていました。
名家の御曹司――と言う以外にとりえのない方だったようですけど、彼女としては悪くない人だと思っていたそうなのですよ」
「彼女としては、とんちんかんな答えが返ってくるのを笑うつもりだったのかもしれませんわね――」
「――結果は、違ったんだな」
三嶋は頷く。
「結城さんは放課後、ロッカーからクマの巨大なぬいぐるみを連れてきて彼女の目の前でぬいぐるみに聞いていったそうです。」
……ロッカーにいたのか、ルドルフ。
「まあ、彼女としてはそれだけで驚いたでしょうね。ですが、本当に驚くのはそれからでした。
話していいのですか、と、結城さんは彼女に確認したそうです。聞きたくない話だと思いますよ、と』
「彼女は、それでも聞いたわけか」
「ええ――結果は明らかでした。御曹司の生年月日から趣味嗜好まで全てが彼女の知るそれと一致したそうです。
ですが、話はそれで終わりませんでした。彼女の知らない部分まで、彼女が聞きたくなかったような部分まで――結城さんは、話してしまったのだそうです」
「知らない部分、か」
「はい。彼女はかなり酷く結城さんを罵倒したようです。嘘つき、と。
立ち会っていた人は居なかったので、これは廊下からの盗み聞き程度の確度しかありませんが』
「だが――嘘ではなかったんだな」
「結局、彼女の不安は拭えず、帰ってから親に再調査を依頼しました。結果はお察しの通りです。
婚約は解消、御曹司はその後麻薬の販売及び使用で逮捕されました。当の彼女は――自殺未遂の後、転校したそうです」
「結城さんに対する虐めが始まったのは、それからだったと聞きました」
――ふう、と今度は僕が息をつく。
「今は?ぬいぐるみのことで――三嶋にそういう話をすることはあるか?」
「結城さんが、それに類する話をわたしにしたことはございません。一度も。当然、わたしからもありません」
きっぱりと三嶋は答えた。
「たしかに、わたしも根っこの部分では信用されていないのか、と悲しくなることもございますけど」
口調こそ一抹の寂しさを湛えていたが、そこに結城を恨むようなトーンはない。
「でも、彼女も私の父母のことは聞きませんでしたし、わたしがこうなる前も、こうなってからも変わらず接してくれますし」
親しくても、親しいからこそ、聞くべきでないこともある。
「わたしにとっては、とても大切な友人です。風祭さんや鷹月さん、八乙女さんと同じく――或いは、それ以上に」
「何故?無論みな大切だろうが――結城は、君にとってどう特別なんだ?」
「日頃から接していれば判ります。結城さんは、自分で信じていない嘘をつけるような方ではありませんもの」
「ですから、彼女がそう思っていた以上、当時の結城さんにはそれが真実だったのでしょう。それを私は信じます」
信頼。それは個々の出来事についてではない。結城ちとせという人間に対する信頼だ。
――なんだ、当然のことじゃないか。
「それに――彼女は、こちらに来た最初の日に」
転入してきた初日。彼女は、どれだけ心細かったろうか。また、受け入れられないことへの恐怖や諦めは、なかったのだろうか。
「寮を案内するわたしに、お友達になりましょうと言ってくれたんですのよ。他の誰よりも先に、わたしに」
「あの時、彼女はとても心細かったはずです。その時に最初に頼ってくれたのが私だったのですから」
「わたしは、彼女が信頼してくれた自分を信じます。だから、彼女の気持ちがどう揺れようと、わたしは彼女を信頼しますわ」
「あなたは――わたしを信じてくれたあなたは、正しいと」
自分の下す判断に迷いはなく、恐れることもない。それが三嶋鏡花という少女を支える新たな柱なのだろう。
自分の足で自分を支えなければ、立ち続けることはできないという事を、彼女は級友より早く知った。
そしてだからこそ、同じ環境にある理事長を支えることもできるのだという事も、今の彼女は知っている。
だからこそ、変わらないことで、親友を支えたいのだと。
「三嶋」
「なんでしょう?」
「お前みたいな友人が結城にいるというだけで、僕は嬉しいよ」
「相変わらずお上手ですね、先生?」
三嶋はくすくすと笑った。
「ありがとう。おかげで僕のスタンスが見えた」
「どうなさるおつもりですか?」
「君が信じたように、僕も彼女を信じるよ」
「では、行動開始ですわね。ご武運を、とでもいうべきでしょうか?」
「いいね。クマといえば金太郎、坂田金時かな。まず、ルドルフ君と相撲でもとってみるさ」
「相撲だと行司が必要ですわね。今から理事長にお願いしておきましょうか?」
理事長ならむしろ自分で相撲をとりたがりそうだ。クマと相撲を本当に取れたら驚喜するだろう。
つぶれちゃいそうだけど。
「こないだリーダさんに塩まかれちゃったからなあ」
「では熊のあとはリーダさんですわね」
「それは絶対勝てる気がしないなあ!」
二人で笑いあった。
そうだ。結城。信じてもらえないと諦めるには、まだ早すぎる。
お前には、こんなに素晴らしい友人がいるんだから。
>>今日はここまででつ。読んでいただいた方に感謝感激。8がふたつできちゃったよorz
>>512 いいねー、いいねー、すんごく楽しめました。GJ!
ゲーム中のお気楽結城とのギャップが良い感じです。
次は是非、三嶋のSSを〜♪
>>513 がんばりまつ……今回の書いてて三嶋もやっぱりいいなあ、と思いましたね。
ちとせを上手くオチするにはあと最低二話は必要な感じです。気長にお待ち下さいませ。
GJ!
なんてことだ、ますますサブ女子キャラたちの立ち絵&ルートが欲しくなっちゃったじゃないかっ!
さぁみんなPULL TOP本社の方角に向かってファンディスク制作祈願の電波を発信しようぜ。
いあいあ…
恋姫†無双の2週目で関羽(愛紗)を無視しまくりごめんなさい。
そんなわけで偽END風味SS書いてみた。
条件1・愛紗を1回も選択しない
2・他キャラ全員最低1回選択しておく
3・最後の拠点、最後の選択で愛紗を選ぶ
擁いてはいけなかったのだ。
常に自分を律し続ける。
それが武人として、そして人としての高みに上がるための方法だと信じていた。
だから、このような想いは擁いてはいけなかったのだ。
その瞬間から、私は醜い獣となってしまったのだから。
「全く………ご主人様は一体何処に居られるのだ?」
今日何回目かの呟きは誰もいない廊下の奥へと吸い込まれていった。
昼過ぎに虫の知らせを感じたので部屋へと様子を見に行ってみれば案の定そこはもぬけのから。
ついでに鈴々も調練に来なかったので2人して市にでも行っているのだろう。
「あのお方ももう少し、ご自分の立場というものを御自覚していただきたいものだ………」
鈴々はまだ良い。
あれは強い。そこらの奴らでは触れることも叶わぬだろう。
だが、ご主人様は違う………
天の世界ではいざ知らず、刃に毒でも塗ってあれば一掠りで死に至る。
いくら鈴々が強いといっても絶対などということは無い。
ご主人様が死んでしまう………………ッ!
「おいっ!星は何処だ!?私はご主人様を向かえに行く!調練は任せたぞ!」
「んっんっんぐ。美味いのだー!美味しすぎて鈴々のほっぺたが落ちないかどうか心配なのだー!」
「こっちの財布の中身も心配してくれよ………」
見つけた!
まったく、私の気苦労も知らずに買い食いなど、毒が入っていたら………はさすがに無いか。
いやいや、ご主人様が買い食いが好きだとばれたら行商に化けた白装束共がやってきて毒を………!
くっ、やはりここは私がご主人様の食事を用意するしか無いのか?うん、無いな。
「あれ?愛紗が居るのだ」
「え?マジ?うお!本当にいた!」
「うお!とは失敬な。こんな所にいて申し訳ありません」
「愛紗………怒ってる?」
「怒ってません。ただ護衛も連れずに歩き回る主の悪癖をどうすれば良いのか悩んでいるのです」
「それが怒っていると………」
「何か?」
「いえ、何も」
本当にこの人は………
…………………………………私の気も知らずに
「いや、勝手に市に行ったのは本当に悪かったと思っているよ」
私のすぐ後ろには罰の悪そうなご主人様と鈴々の姿。
鈴々は何も言わず、逆にご主人様は積極的に謝罪の言葉を吐いている。
だがしかし、やはりご主人様は私の気持ちを分かってくれていない………
「ご主人様?私は何も市に行くのが悪いと言っているのではありません」
「え?じゃあ、何で愛紗怒っている………いえ、何でもありません」
「私はただ、護衛を連れずに出かけたことを怒っているのです。せめて2人、万全を期するならば最低5人は欲しい」
「いや、それじゃ堅苦しくて楽しめないと言いますか、その」
「それが無理なら………せめて鈴々だけでなく、私も連れて行ってください」
「いやー、愛紗は仕事が忙しそうだったからさ。こっちの我が儘に付き合ってもらうのも悪いと思ってさ」
「あー、それって鈴々が暇そうだったってことー?」
「いや、その、ノーコメントで」
分かってくれていない。
仕事なんか後でどうとでもなるというのに。
鈴々とも朱里とも翠とも星とも紫苑とも、さらには敵国だった捕虜とも出かけているというのに………
そんなはずは無い。主を疑うな。疑心を持つな。
私が避けられているなど。
日は夜の闇に包まれ、月が輝く空の下で私は溜息をついていた。
そういえば主が言っていたな。溜息をつくと幸せが逃げると。
なるほど、最近の私は溜息ばっかりついている気がする。
そんな時でも、考えるのは主に関する事ばかり………
「思えば、遠くまで来たものだな………」
始めはたった3人だけだった。
すぐに朱里が加わり4人になった。
それからしばらくは、その4人で頑張ってきたのだったな。
そして次々に仲間が蜀にやってきた。
それも女ばかりが。
そして………そして、主は次々に関係を持った…………………
「何故、私は」
最近、何かが分からなくなっている。
「何故、私は」
思い出せない。思いつかない。
「何故、私は」
主しか想えない。
「人々のために闘うと決めたのだ」
分からない。
会いたいと思った。
気がつけば主の部屋の前にいた。
やれやれ、無意識にここまで来てしまうとは鈴々を笑えんではないか。
………主はまだ起きているのか?
「………ぃ……………ぇ」
………声?
主の部屋の中から?
「お兄ちゃん!あっ!そこっ、らめなのだ!」
「ご主人様、の、あつ、や!」
「2人とも、すごく、気持ちいいよ。最高だ!」
………ああ、『今夜も』。
『昨夜も』、『その前も』。
主は誰かと交わっていた。
蜀の皆と、魏の者と、呉の者と、董卓の者と。
ずっと一緒にいたのに。
最初から一緒にいたのに。
これからも一緒にいたいのに。
………部屋に帰ろう。
そして自分を慰めるのだ。
『今夜も』。
「ご主人様。起きてください、ご主人様」
「ん、んー。………ぅ、ん?あ、愛紗!?」
「おはようございます、ご主人様」
どうしても話がしたかった。
聞きたかった。
でも、やめておけばよかった。
そうすれば、そのままでいられたのに。
「あの、ご主人様。少し、聞きたい事がありまして」
「ん?何?」
懐に忍び込ませた小刀。
「え?愛紗のこと?んー、そうだな」
それは研ぎ澄まされた牙。
「世話になってばかりだね。誇りに思うぐらいだ」
それは想いを伝える文。
「ああ、そうさ。愛紗は頼りになる『部下』だよ。最も、おれ自身は『仲間』って思ってるけどさ」
それはまるで今の私。
「ご主人様、少し聞いてくれますか?」
「ああ、良いよ」
「私は、常に立派に生きようと思っていました」
「うん。愛紗は立派だよ。俺なんか全然駄目なのに」
「私は、武人として、人として誇れる生き方を送ろうと思っていました」
「う、うん。………それで?」
「でも、それで私が『部下』でしか、『仲間』でしかいられないのなら」
牙を。
衝きたてた。
「獣で構わない」
「………愛、しゃ………………?」
「もう、それでいいのです。我が主」
膝が折れ、体重が私にかかってくる。
心地よい。久しく触れていなかった重みだ。
この重みは、もう私だけの物。
「お傍にいます。私がお傍にいます。
いつまでもお傍にいます。他の誰でなく、私がお傍にいます。」
そして私は、自らの牙を、心の臓に、衝きたてた。
実際のゲーム内では愛紗はめっちゃ忠犬です。
こんな怖い子ではありません。
愛紗BAD END「ヤンデレ愛紗」
これで終わります。
うむ!GJだ!
でも「なんかこれに似たキャラを知ってるなぁ」と思ったらアニメ版シャッフルの楓に似てるんだな
こう、一歩間違えばこれと似たEDになってもおかしくないと思う
それはともかくGJだぜ!
再開ですー。やや長いですがよろしく。
>第X話D「みんなのへや」
クリスマスも近づいたある日の夜。
僕は作戦を決行した。
扉の前で、左右を確認。人影はない。オールグリーン。
覚悟を決めて、ノックする。
「はいはーい」
いつもの彼女の声がする。
「滝沢だ。話があるんだが」
「……え?せんせ?ちょちょっと待って待って!」
慌てふためく結城。当然だ。不意打ちを狙ったのだから。
扉が細く開けられ、結城の顔が覗く。もう寝間着に着替えていたらしい。上にドテラを羽織っている当たり、以外と庶民的だ。
「どしたのせんせ?こんな時間に」
「良かったら、入れてくれないか?大事な話なんだ」
「……わたしはいいですけど、せんせ、ちょっとモンダイじゃない?坂水先生とかに見つかったらヤバイよ?」
「そう思ったらここをもう少し開けてくれ」
「――どうぞ」
眼をぱちくりさせた後、彼女は諦めて僕を部屋に入れた。
「緑茶しかないですけどいいですか?珍しいよね。せんせが私の部屋に来るなんて」
彼女は前回と同じくちゃぶ台を掘り出してその前に僕を導くと、湯のみを二つおいた。
「ありがとう。そうだな、あの時以来だ」
――結城は無言だ。笑っているとも、忌避しているともつかない、微妙な表情。
さて、戦闘開始だ。……僕は、踏み込む。
「結城、卒院後の進路は決まっているか?」
「え?わたし?うーん、お父さんの仕事手伝おうかなって……漠然とですけど。それが?」
「結城。真面目な話だが」
「はい?」
「僕 と 結 婚 し て く れ」
「…………はい?」
文字通り、目が点。
「ええええええええええええええええええ!!」
絶叫は部屋の防音限界を試すかのごとき音量で響いた。
「マジですかマジですかせんせ……あたま大丈夫?何言ってるかわかってる?」
「僕は本気だ。卒院したらすぐ結婚しよう。本当なら今すぐ結婚したいぐらいだ」
「ええええ……あ……」
両手を挙げて固まっていた結城は、ややあって手を降ろし、溜息をついた。
「――あのね、せんせ?」
上目遣いに、僕を見やる。
何か、可哀相な人と思われてるっぽい……
まあそうだよなあ。
いきなり教師に求婚されたらそりゃ引くよなあ。
しかし、これは策略の一環なのだ。
「一時の気の迷いで、人生最大の決定を簡単に決めちゃってはいけないとわたしは思うんだ」
「迷いではない」
そう。迷いはない。彼女のためにできることを考えたとき。
今、こうする必要があった。
「でもでも、わたしもまだ未成年だし、せんせは学院の教師だしその」
「だから、君の保護者とも話させて欲しい」
「せんせ私の話聞いてるのかな!大体……その……突然すぎるし」
結城は茶に口をつけた後やや荒くちゃぶ台に置いた。だいぶ呆れた口調だが……ハナから嫌というわけでもないらしい。
嬉しいような申し訳ないような。
「保護者といっても……お父さんは忙しいし、お母さんはずっと海外だし」
それでも話についてきてはくれる所が彼女のいいところだな。
しかしながら、僕はここで彼女に爆弾を投下しなくてはいけない。
そう――彼女の秘密を砕く爆弾を。
「違う。君にはもう一人いるだろう。ずっと君を見守ってきた、保護者が」
「――せんせ?」
「――ルドルフと、話させてほしい」
……その瞬間、結城ちとせの眼は、僕の眼を正面から捉えた。
同時に僕も、彼女の眼を――そしてその内に隠された綻びを捕捉した。
「――何、いってるの?せんせ。私言ったじゃない?ぬいぐるみが話すわけないじゃない、って」
結城の声は、わずかに震えていた。
僕や三嶋でなければ、分からない程度に……しかし確実に。
「その前に、君は僕に言ったはずだ。『私を、信じてくれるよね』と。あのとき、告げられなかった返事を今しよう」
「僕は、君を信じる。だから、きみの知るルドルフと、話をさせてくれ」
結城は、一瞬きつい眼で僕を睨むと、がたんと席を立った。
無言でベッドから、ルドルフを抱き上げる。
そして口を引き結んだまま、ルドルフ君をちゃぶ台の自分のいたところに連れてきて鎮座させると、
自分はそのままベッドに入ってしまった。
「……私はふて寝してるから、彼とは勝手に話してください」
毛布を頭からかぶって、ごろりと壁のほうを向いてしまう。
自分でふて寝っていうなよ。
しかし。ここからが本当の勝負だ。
向き直り……僕が何か言おうとしたとき、それは始まった。
「――正式に挨拶するのは初めてだな。ルドルフ・シュミットだ。お見知りおきを」
既に相手は土俵に上っていた。
タイミング的にも何もかも完璧に、目の前のぬいぐるみが喋っているようにしか聞こえなかった。
声質に、結城ちとせを思わせるものは何処にもない。完全な成人男子の声だ。
僕はベッドのちとせを見る。
彼女はこちらに顔を向けない。すでに眠ってしまったのかどうかもわからない。
分からないがしかし、なんというか……彼女が喋っている、という気配は一切なかった。しかし……それでも。
「ボイスチェンジャーや録音ではないよ。私が話すときは、あくまでちとせの声帯を借りている」
……やはり、そうなのか。
「ただし、彼女はそれを認識していない。故に、外見からは彼女は一切喋っているように見えないはずだ」
「……どういうことだい?」
「私が彼女の声などを借りているとき、彼女の認識においては時間は停止している。
知覚はブランクなく次の時間に引き継がれる」
「時間が停止しているが故に、彼女の心が『わたしが肉体に与える信号』に反応することはない。
彼女の行動があくまで自然なのはそのせいだ」
「――君は、何処に居るんだ?千歳の中なのか」
「そうともいえるし、そうでないともいえる。滝沢司先生、貴方は数論には詳しいか?」
「歴史がらみの事件なら多少は」
数学の発展史は人類の進歩に密接に結びついているから、ある程度の知識は僕も持っているが。
「『ヒルベルトのホテル』という概念を知っているかね?」
「――確か、無限に部屋の存在するホテルを考えたとき、どのように客を泊めたらいいか、
みたいな命題を扱ったものだったと記憶してるけどな」
「大枠で結構。命題にあまり意味はない。しごく大雑把に表現するなら、ちとせも私もそのホテルの一部屋の住人だということだ。
ただし、住人同士が顔を合わせる事はけしてない。なぜなら、個々の住まう部屋はそれぞれ無限に離れているからだ。
故に、ちとせはホテルのオーナーでもありながら、わたしが同じホテルの住人であることには気づかない
……精神科医に言わせれば、『気づこうとしない』というところだろうがね」
「個々といったな。君以外にも……いるのか?」
「先日ちとせと貴方の前で無粋な叫びをあげたのは私の名を騙った別のぬいぐるみだ。
おしゃべりの愉快犯、わたしとは相性のよくないウッドペッカーのシェイマス。
今はオーナーの怒りを買って奥に押し込められているがね」
「……道理で、口調が違うと思ったよ。だが、愉快犯というのは?」
「ガス抜きのために自分の尻に火をつける馬鹿な奴と言ってもいい。我らがオーナーは、たまに露悪的になるのだよ。
貴方に秘密を語ってしまった時、彼女の中にはいくつかの感情が渦巻いていた。
ぶっちゃけてしまいたい気持ち、隠しておきたい気持ち。認めて欲しい気持ち。否定して欲しい気持ち。
彼女自身が口に出すことなく、あるいは気づくことすらない感情を、私やシェイマスのような存在は代弁してしまう。自動的にね」
「彼女はあの時、君の言葉だと認識していたようだが」
「彼女自身も、シェイマスが出てきてしまったことにあの時は混乱していた。
なぜ今しゃべる!空気読め!と後でシェイマスが罵られていたのは……おっと、これを言ってしまったのは彼女には秘密だよ」
「今も、実は聞こえているんじゃないのか?彼女は……」
「さて、それは私の口からは言えないね。あとで彼女に聞くといい。私に聞きたいのは、別のことだろう?」
「ああ……結城の、過去のことだ。君が知る、全ての原因を」
わずかな沈黙の後。ルドルフは語り始めた。
「結城家の家族仲は、けして悪くはなかった。一人娘を父は溺愛していたし、キャリアウーマンの母も同様だ。多忙ゆえ夫婦が全員そろって過ごす時間はけして多くはなかったが、幼いちとせも、それを受け入れるだけの強さは持っていた」
「だが、だからと言って、たまに帰ってきた母親と過ごす時間が嬉しくないはずはない」
「そして、母が仕事に急いで出るからと焦っていたときでも、それを見送ることに躊躇いもあろうはずがない」
そうだろう?とルドルフは同意を求める。
「――それゆえに、周りが見えなくなることも。焦って、玄関から飛び出すことも、責められることではない。そうだろう?」
再び、同意。しかし、とルドルフは続けた。
「しかし、そう……発進させようとした車の前に、ぬいぐるみを抱えた娘がいきなり飛び出してきたら、
母親がパニックになるのも無理はない。これも、責められはしない。――そうだろう?」
「――それは」
「――母は、ブレーキを踏んだつもりだったそうだ。新品の履きなれない靴だったのも災いしたらしい。アクセルを踏んでしまって……さらにパニックに陥った」
「ぬいぐるみが飛び散るのを見て、ようやく我に返ったそうだ――その時に『死んだ』のが、初代ルドルフというわけだよ」
「それで?彼女は……ちとせは?」
「幸い、彼女にたいした怪我はなかった。頭をやや強く打っていたがね。ゆえに彼女は思ってしまった」
「ルドルフが、身代わりになってくれた、守ってくれた、とね――我が前任者ながら大したものだと思うよ」
皮肉に聞こえた。
「新たに母が買い与えたのがこの私……私としてはルドルフ2世というところだな。ちとせの中ではどうもあまり区別がないようだが」
しかし、ちとせの傷は直ったが、それを境に父と母の間に入った亀裂は直らなかった。
事故当時、父はかなり酷く母に当たったらしい。娘に対する溺愛の裏返しではあったのだろうが、
おかげでただでさえ罪悪感に苛まれていた母親はすっかり参ってしまったのだそうだ。
ノイローゼで入院してしまい、離婚寸前までいったらしいが最終的には別居という事に落ち着いた。
「海外を飛び回る美術商という仕事上、いずれにしても彼等は離れて暮らすことが多かった。
表面上は今までと変わりない、仲睦まじい夫婦のままだが――ここ数年、家族が一堂に会したことはない」
さて、とルドルフは続ける。あくまで淡々と、自らの主人を、そして保護者として見守ってきた対象を。
「ちとせは思ってしまった……自分の不注意が、家族を壊してしまった、とね」
さて、そこで――ナニがあったか、私が語るのは難しい。気がついたら、最初に私が、そしてぬいぐるみが増えるごとに別の存在が――例えばシェイマスのような、が生まれていた」
「精密検査では、脳には一切異常が無かった。ちとせが密かに自分で検査を受けた結果だ。しかし」
「恐らく、事故の際脳に衝撃を受けたことで、何らかのスイッチが入ったのだろうと、我々は考えている」
「千歳自身は、どう感じているんだ?その――君たちが次々に現れたことについて」
「――解っては、居るのだと思う。「ぬいぐるみ」は喋らない、ということはね」
「しかし、彼女は、それを自分の狂気と捕らえるのではなく――ありのままを受容することを選んだ」
「仕方ないともいえる。よくある多重人格と違い、彼女は我々の思考を一切把握していない。無意識のうちに、彼女の意志が我々に影響を与えているのは間違いないが、彼女自身はそれを知らないし制御もできない」
「――君たちは、本当の意味で、そこに住んでいるんだな」
「少なくとも私は、そう考えている。一つの人格の重なり合った別形態ではなく、独立した意思として私は結城ちとせのヒルベルト・ホテルに住んでいるのだよ」
「その――虐めの原因になったという占いについてだが」
「簡単なことさ。意思の中に詮索好きが多かったというだけの話だ。本校時代なら、ネットでも探偵でも使えば情報収集など難しくはない。ちとせが知らない間に、ホテルの住人の一人が、予めクラスメイトの情報集めをしていたということだよ」
「――しかし」
確かに、御曹司のスキャンダルは、興信所が再調査すればばれる程度のことだったわけで。
「私が考えるに――占いをちとせがはじめた時点で、そうした防御的な行動が既に始まっていたのではないかと思う」
「ホテルの住人が、ちとせが占いで失敗するのを避けようと――自発的に情報収集した、と?」
「それが結果的に裏目に出たのだから皮肉としか言いようがないがね。
最も、こちらに来てからはちとせは占いに手を出していない。まあ、ネット環境もないこの寮では、
我らが住人もサポート出来ないだろうから結果的には幸いというところだね」
そう結んで最後に、ルドルフ2世は結論を僕に告げた。
「まあ、そういうわけで、ちとせの認識に関する限り、彼女は嘘はついていないのさ。医者はまた違った事を言うだろうがね」
「それで僕にとっては充分だ」
そう。彼女が先に進むためには。
ルドルフがこれを僕に語ったということ自体が、彼女の無意識を、僕に示してくれているのだから。
「さて、私が質問する番だ」
「保護者として問おう――君は、結城ちとせのどこに惹かれたというのかね?教え子に懸想するとは教師失格だとは思わないかね」
「ふむ、教師失格といわれれば甘んじて受けよう。……だが、そうだな。
簡単に言えば――彼女が自分を信じていないように見えたから、かな」
「ふむ?」
「僕は彼女を信じたかった。彼女に自分を嘘つきなんて卑下してもらいたくはなかった。
信じて欲しいことがあるなら、それを受け止めてやりたかった」
「彼女が君にそれを望んでいると思うのかね?」
「僕じゃなくても出来るかもしれない。誰かがいつか彼女の心を開いてくれるのかもしれない。でも、僕は今ここにいて」
彼女のために、何か出来ないかと考えている。
「ならば、する事はひとつだろう?教師であっても、ただの男でも、だ」
――ぬいぐるみであるルドルフのの顔が、わずかに笑ったように見えたのは錯覚だろうか?
「――私が言うのもなんだが、難しい子ではある。君に好感を持っているのはまあ疑いないとしてもね。
これを私が言うのも奇妙ではあるが、だとしてもすぐ結婚というのは現実的ではないと思わないかね?」
「それは大丈夫だ」
「――なぜ?」
「ぶっちゃけると、ちとせと今結婚させてくれ、というのは嘘だ」
「なん?」
「君を引っ張りださなきゃいけなかったので、一番インパクトのある台詞を選んだ。ちとせ本人が呆れるくらいのね」
「……成程。は、はは……これはおかしい!あの時以来、こんなのは初めてだ……はははっ!」
――ぬいぐるみが、笑っている。(ように見える……僕もだいぶやられているらしい)
「ならば、私は一旦去ろう。オーナーが、大層君に言いたいことがあるようだからな!先に聞きたいかね?」
「君に聞くのはフェアじゃない。ちとせの口から、直接聞くさ」
「良かろう。せいぜい罵倒されることだ!――滝沢司」
幻聴か。
――君は最高に楽しい男だよ。
と、最後にルドルフが言ったような気がした。
三嶋よ。
どうやら、難敵との相撲に勝てたようだ。相手は自ら土俵を降りた。
後は、お姫様だけだ。さて――
「嘘なのかよ!」
同時にちとせが飛び起きた。
>第X話E「ふたりの部屋」
「ふふふ……いい度胸だよね先生!乙女を弄んでさ」
びし、と司に指をつきつける。その眼は怒りか悲しみか羞恥か、いずれとも知れぬ感情に彩られていた。
「弄んでなんかないぞ」
僕が反論すると指差していた手があっさりと力なく下がった。溜息をついて彼女は続ける。
「ふう……分かったでしょせんせ?私、嘘つきなんだよ?」
「なぜそう言い切る?」
吐き捨てるように、結城は答えた。
「自分に、嘘をついてる。どうせそう思ってるでしょ。病気なのを、ごまかしてるだけだって」
最初のきっかけはルドルフが言ったとおり。事故の後の、父母の喧嘩。それが引金になったのだという。
――お母さんとお父さんが私のせいで、喧嘩してる。
悪かったのは、私なのに。
不注意だった私が、悪いのに。
自分で、私の家族を壊してしまったのに。
「私は、ルドルフに言ったの。誰か、私の懺悔を、後悔を、聞いてください、って。
私の泣き言を、憎しみを――嬉しいことを、聞いてください、って」
――そしたらみんなが現れてくれた。聞いてくれた。そういうこと」
「でも――それは嘘だよね?お医者さんはたぶん言うよ。わたしは多重人格です、って」
「説明できる心のヤマイ、だって」
そこにいるのは……泣いているお姫様。
だが――幸いにも僕は、彼女を泣き止ませる言葉を知っている。
だから躊躇わず踏み込もう。最後の一歩を。
「結城。君はこういったね。『私は嘘つきです』先生から質問だ。これは正しいか、それとも嘘か?」
「せんせ……?」
「これは嘘つきのパラドックスといってね。答えは……そんなことは、証明できやしない、だ」
「どうして?」
「だってそうだろう?正しいなら、君は嘘をついている。故に嘘つきというのは嘘だということになる。
嘘なら、『私』は嘘つきではないことになる。だけど最初に嘘としたのなら、『私』は嘘をついたのでなければならないはずだ。
つまり、結果として、私は嘘つきです、と言う人が嘘つきか正しいかなんてのは、解らないってことさ」
「――でも、でも」
「人は君の本当も嘘も、どちらも正しく信じることができる。だから、精神科医はけして現実に勝てない」
「だから、僕は君を信じる。君がありたいと願う現実を。そうなりたいと願う未来を」
ルドルフが何処に住んでいようと関係ない。
「僕は君と話す。ルドルフと話した。それで君を信じるには十分だ」
だから結城、お前は。何に怯えることもない。何を恐れることもない。何を後悔することもない。
君が父と母を愛している。それだけで、君は最初から許されているんだから。
「私は……母さんを壊したり、してないの?自殺を図った彼女を……壊さなかったの?」
「壊れたのは君だけのせいじゃない。君の手が何かをなしたとしても、君はもう報いを充分に受けた」
「そんなの……そんなの楽天的すぎるよ」
「――人が犯す罪の全てが永遠に許されないのなら、世界は一日ごとに滅んでなきゃいけないはずだ」
「僕が、君を許す。君を認める。君を信じる。それじゃ足りないか」
「――せんせ」
「今すぐ結婚したい、と言うのは嘘だ。だが、君が卒院してから以降は嘘にする気はないぞ」
「……なんで、そこまでするの?何で、私なの?」
「男が可愛い女の子に惚れるのに理由がいるか」
「……聞きたいよ、わたしは」
「そうだな。結城ちとせは……可愛い嘘つきだから、かな」
「――滝沢先生は、嘘つきだよ」
「証明できるか?」
「さっきの話だと、できないんだよね。……じゃあ」
結城の眼が悪戯っぽく光った。だいぶ、いつもの彼女に戻ってきたような気がする。
「せんせが、自分で嘘つきでないって証明して」
「――どうすれば、君は納得する?」
「そだね」
くすり、と、笑って。
やっと、笑って、言った。
「――私が眼を閉じている間に、せんせがすること。それが気に入ったら、納得するかも」
「僕が出来ることは、一つしかないぞ」
「――それで、いいよ」
そうして。
僕、滝沢司と結城ちとせは。
初めてのキスを、交したのだった。
P.S.
「ルドルフとは毎日キスしてたけど」
そうなのか。
なんとなく落ち込む僕。
「でもでも」
あわあわ、と手を振ってから。
僕の首に彼女はそっと手を回す。
「あったかいキスは……初めてだよ」
結城は、ちとせは、僕を見上げて、
「せんせぇ」
「何だ?」
「大好き」
めでたしめでたし……というところで如何でしたでしょうか。
都合五話お付き合いいただき有難うございました。
結城ちとせは情報が少ない分、自分で補完していく楽しさがありましたが
皆様のイメージと乖離してなければ非常に嬉しいですね。
とりあえずPULLTOP様に立ち絵ぷりーずな感じです。
もし気に入って頂いた方で転載等ご希望の方はご自由に再利用して下さいませ。
作者名:紅茶奴隷と端っこにでも書いておいて頂ければ幸いですです。
あなたがかみか。
よし、今すぐPULLTOPに就職して下さい。
ファンディスクかにしの特別編シナリオ、よろしくお願いしますね?
>>539そういってくれるだけでSS書きとしては作者冥利に尽きますね。有難う御座います。
健速氏の描写した「頼れる教師」司のイメージを大事にしてみましたが
……言葉で人を説得するのって難しいですね。改めて実感。
ちとせのSS上手すぎるよ・・・
GJ!!
ここに恋姫†無双のSSが投下されていたので
私も投下してみます。
注意点
・これにはもろネタばれを含みます。本編のEND辺りからの開始になります。
・作者はど素人であり、内容も表記も電波ばっかりです。
・前半部は本編と同じような表現が使われていますが勘弁してください。
その時、俺は……
皆の事を思い浮かべた
>翠の事を思い浮かべた
淡い光を放ち始める鏡。
その光はこの物語の突端に放たれた光。
白色の光に包まれながら、俺はこの世界との別離を悟る。
自分という存在を形作る想念。
その想念が薄れていく事を感じながら、それでも俺は心の中に愛しき人を思い描く。
翠――――。
ずっと側にいてくれた意地っ張りな少女。この戦いの物語の中でずっと俺を支え、時には励まし、そして時には導いてくれた大切な半身。
その少女との別離の刻が迫っていく。
自分という存在の境界があやふやになっていく恐怖の中で、ただ俺はその少女の事を思う。
このまま消えたくない。約束したじゃないか。
翠の前から消えるなんて、絶対したくない!
この世界から切り離されていく感覚。その運命の中で、愛しき人に手を伸ばす。
ただ、側にいたい、彼女の笑顔を見たいと願う一心に。
翠「ご主人様!」
薄れていく意識の中、耳朶を叩く愛しき人の声が俺の心を奮い立たせる。
一刀「すい……」
物語の終演を告げる運命の光。
決して逃げることの出来ないその光から、必死に手を伸ばした。
一刀「す…い……」
ただ、会いたい。ただ、声を聞きたい。そして、ただ一緒に居たい。
いつまでも、続くと思っていた2人がいる楽しい日々。
それをただこれからも続けていきたいと心の底から求める。
いつまでも、いつまでも。
共に過ごした時間
共に過ごした記憶
それらが、水滴となって地面へと落ちて、そして弾けていく。けど、それに抗うかのように俺はそれを受け止めようとする。
翠と俺が楽しいと感じた思い出は忘れたくない。
絶対に、例え運命であったとしても。
決して逃れられぬものだとしても。
俺にとって、彼女との思い出は何よりも大切なものなのだから。
一刀「す…い……」
それなら、どんな流れでさえも足掻いてみせる!
翠「ご主人様!」
白い光がご主人様の姿を消していこうとする。
翠「待ってくれよ、お願いだから!」
精一杯叫んでも、届いていると信じていても、その光が止まることはない。
言ったのに。
ずっと、あたしを楽しませてくれるって言ったのに。
翠「居なくなったら一生恨むって言っただろ!」
もう、誰か大切な人が居なくなるなんて嫌なんだよ。
翠「あたしを1人にしないでくれよ!」
あの幸せを感じられる日々が終わるなんて考えられない。
一刀「翠……」
翠「ご主人様!」
父上が死んだ時、あたしはもう楽しいって感じられないって思っていた。
でも、ご主人様はそれでも楽しいって思えるようにしてくれた。
翠「やだよ……あたしはやだよ!」
そのご主人様が消えたら、あたしはどうすれば良いんだよ。
もう、終わりなんて、絶対嫌だ。
翠「離れてたまるかよーーーーー!」
左慈「ふっ……そんなに奴が好きなら、一緒に死ねば良いんだよ!」
彼等に向かい駆けようとする左慈。
鈴々「とりゃーーーー!」
左慈「くそっ!」
しかし、それは3人の影より阻まれてしまう。
鈴々「翠の所には絶対に行かせないのだ」
巨大な蛇矛を持つ鈴々
星「2人の恋路を邪魔するのは野暮というものであろう」
槍を構える星。
紫苑「求め合う2人を邪魔するなんて、決して私たちは許しはしないわ」
弓で射抜かんとする紫苑。
3人は左慈の前に立ちはだかり、一歩も通すことさえ許しはしない
左慈「この傀儡風情が……」
星「傀儡であろうとなかろうと、私たちは自らの誇りにかけて仲間を守るだけだ」
紫苑「たとえ、私たちが消え去る存在だとしても、それが変わることは決してないわ」
鈴々「そうなのだ。鈴々達は翠を見捨てるなんて絶対にしないのだ」
左慈「ふん、なるほど。これが定められた役割というものか。良いだろう。最後まで相手をしてやるよ」
鈴々「いっくのだーーーーーーーー!!」
背後には、俺達を守ってくれる仲間がいる。自らの全てを投げ打っても守ってくれる仲間が。
だったら、俺は目の前の愛しい人に向かう事にためらう事はない。
翠「絶対に……絶対に離れたりしねぇからな!」
決して縮むはずのない距離を、少女は必死に無くそうと懸命に手を伸ばす。
変わらぬ日々を、楽しい日々を、あの愛し合った日々を続けるために。
翠「ご主人様―――――!」
一刀「翠――――――!」
決して離れないという二人の胸の中の熱い思いは、
その溶けるはずのないその運命という名の氷壁を溶かしていく。
ただ、相手の温もりを、そして、温かな変わらぬ日々を求めるために。
一刀「翠――――――!」
翠「ご主人様―――!」
相手の想いは自分の手を、自分の想いは相手の手を求める。
そして――――
2人の絆は結びついた。
一刀「ん……んん……」
ゆっくりと意識が覚醒していく。だが、俺の頭は未だにぼんやりとした靄に包まれている。
翠「おい……ご主人様!ご主人様!」
耳の側で聞こえる少女の声。その声に俺は聞き覚えがあった。
一刀「す……い?」
翠「良かった……無事だったんだな」
視界が正常になれば、そこにいるのは安心しきっている翠の姿がある。
一刀「ここは?」
翠「分からない。ただ、貂蝉の言ってた別の世界ってやつだと思う」
恐らく彼女も出来事を正確に理解できていないのだろう。いや、たぶん朱里でも理解できないような内容だから、翠には絶対無理だろうな。
翠「ご主人様、今、すっごい失礼な事考えなかった?」
一刀「いや、そんな事は……あれ?」
翠の言葉を耳に入れながら、周りを良く見てみると、そこには懐かしい風景が広がっている。
翠「?どうした?」
一刀「ここは……聖フランチェスカ?」
翠「何だ?その『せいふらんちぇすか』ってのは?」
一刀「ああっ、俺が以前いた学校の事だよ」
そう、ここが以前、俺が翠達と出会うまでいた世界。
翠「えっ……て、ことは、ここは天上の世界なのか?」
一刀「分からない」
その問いには、単純に頷く事が出来なかった。貂蝉の言っていた事、
『新しい外史を作る事が出来る』
つまり、ここは俺が以前いた外史でも、翠達がいた外史でもない、全く新しい外史なのだろう。
一刀「新しい外史か……」
翠「ええっと……つまり、鈴々達がいない世界って事なのか?」
一刀「多分な……」
だが、それは一つの可能性も同時に示される。
翠「……もしかして、みんな消えちまったのか?」
愛紗や鈴々、朱里や星、紫苑。一緒にあの世界で過ごしたみんなが。
だが、俺は、
一刀「いや、違うと思う。みんな、違う外史で生きてると思う。愛紗も鈴々も他のみんなも……」
俺達には感じる事のできない、また別の世界。そこで、彼女達は存在していると思う。
翠「そうだな。星なんかはひょっこりそこら辺から出てきそうだしな」
同時に、少しだけ翠の笑顔が戻った。うん、やっぱり翠には笑顔が似合ってると思う。
一刀「でも……これからどうしような」
2人だけになってしまったこの世界で、どうすれば良いのか。
翠「大丈夫だって、ご主人様がいれば……」
一刀「はっ?……ってうわっ!」
唐突に腕に重みとぬくもりを感じる。それは翠のものだとすぐに分かった。
一刀「翠?」
翠「ご主人様はさ、あんな時のあたしでも、楽しいって感じさせてくれた。だから、今度も大丈夫だと思う」
恐らく、彼女が言っているのは、初めて2人きりで話をした川での出来事。まだ、彼女が父親の死を引き摺っていた時の事。
翠「きっと、ご主人様は楽しい日々にしてくれると思う」
その、翠らしからぬゆっくりした口調。その重みに俺が気付く事になるのはいつになるのだろうか?
一刀「……そうだな。楽しい毎日にしていこう」
そして、俺は彼女両肩にそっと手を添える。
翠「なっ!」
途端に翠の顔が赤に染まる。そう、ここにいるのは、ずっと側にいてくれた翠なんだ。
一刀「だから、一緒に行こうか」
少し顔を俯ける翠。だが、その後に、確かにその返事は聞こえていた。
翠「うん……」
頬を真っ赤に染めた顔に、俺はゆっくりと唇を……
??「ほぉ……主も意外に大胆なお方だな」
一刀&翠「●×△★※……!」
唐突に茂みから聞こえた聞き覚えのある声。同時に、ガサリという音が茂みから漏れてくる。
??「いや……翠も大胆になったものだ」
そう。この独特の雰囲気の声。確かに聞き覚えがある。そして、その声の主はゆっくりと姿を現す。
一刀「星!」
星「ふむ……そう驚かれても心外だな。私が居てはいけないのか?」
そこから出てきたのは普段と変わらない、昇り竜こと趙子竜その人だ。
翠「ななななな……何で星がここにいるんだよ!」
おお、久しぶりにこの翠の慌て様。やっぱりこういうところが可愛い……じゃなくて!
一刀「星……お前もこの世界に来てたのか?」
星「私だけではないぞ。ほれ……」
すると、星が指し示した方向から次々と声が上がると同時に次々と姿を現していく。
愛紗「ご主人様!」
何故か慌てている愛紗
鈴々「む〜、翠だけずるいのだ〜」
拗ねた様に頬っぺたを膨らましている鈴々。
朱里「はわわ〜〜〜」
いつもの口調で慌てる朱里。
紫苑「あらあら……」
そして、何故か微笑んでいる紫苑。良く見れば彼女の背中には瑠々ちゃんまで……。
翠「……な……何で……」
北郷軍全員集合!とタイトルが付けられそうな集合ぶり……翠は何故か口を開けたまま立ってるし。
星「私たちにも良く分からん。たまたま、気が付いたらここにいたのだ」
一刀「何で……」
しかし、俺はそこで一つの可能性が浮かび上がった。
変わらぬ日々。俺が望んだ、そして翠のために望んだ事……なら。
一刀「もしかして、これからも続けられるのか?」
翠「へっ?」
一刀「いや、翠が望んでた変わらない日々ってやつを、この世界でも……」
翠「あっ……」
みんなと一緒にいられる、翠の笑顔が見られるこの日々を続けたいと願うなら。
鈴々「あー!翠とお兄ちゃんだけ何か知ってるのだ!」
星「ほぅ……それは興味深いな」
どうやら、2人は何か気付いたらしい。このままだとくどくどと文句を言われるのは目に見えてる。
一刀「んじゃ、行きますか!もしかしたら、他のみんなもいるかもしれないからな!」
そうされる前に、俺は翠の手を握って走り出していた。
翠「お…おい、待てよ!」
少しだけ、焦りながらも、彼女は笑いながら答えてくれる。そう思えば、これからの不安なんてないだろう。
だって、翠の笑顔がいつでも見られるのだから。
>>543-551 とりあえず、馬鹿でごめんなさい……orz
やりたかっただけなんです。感覚的に言えば、
『カッとなってやった。反省はしているが、後悔はもっとしている』です。
ちなみに、前半543−547までは、本編どおり曲の流れる部分という事を意識したので……本当にごめんなさい。
とりあえず、こんなSSにもならない駄文でも楽しんでいただけたら幸いです。
やっぱ星達の最後スルーっぷりは哀れだったからね。
ちゃんと一緒になれてよかった・・・
あとやっぱばちょうかわいいよばちょう
>>547 馬超の最後は「一刀様―――!」になるんじゃね?
確か、関羽も張飛も孔明も最後だけ「ご主人様」じゃなかった気がする。
というか、「翠エンド」じゃなくて「ほぼ真エンド」なのなwww
何故だろう…
『ドッキリ大成功』と書いたブラカードをいそいそ準備する
華蝶仮面1号2号が脳裏から離れてくれないw
ゲームの時はちっともそんな気しなかったんだがww
人気投票支援SSです。今回の主人公は三嶋鏡花ともう一人。
お楽しみ頂ければ幸いです。例によってえちはないです。ごめんなさい。
「受け継がれるもの」
一月も半ばの、ある晴れた午後。
三時のお茶にはまだ早い、そんな狭間の時間。
少女は温室の扉を開けた。
花々の間をゆっくりと歩んでいた女性が振り返る。
「――あら。いらっしゃいませ、三嶋さん」
榛葉邑那がそこにいた。午後の光を浴びたその髪はさながら金色の滝のようだ。
「……っ」
一瞬眩暈を感じたのは、外と温室の温度差ゆえか。それとも眼前の光景ゆえか。
ただそこに居るだけで彼女はその閉じた空間全てを占有し支配する。
温室という王国の女王。ある人が彼女をそう呼んだという。三嶋鏡花は実感する。
それは皮肉でも誇張でもないと。いや、彼女自身、前から薄々は気づいていた。
――この人は、此処に居ながらにして別の遠い場所にいる存在だと。
「……お邪魔ではなかったでしょうか?」
「――お客様はいつでも大歓迎ですよ。お茶でよろしかったですか?」
「頂きますわ」
ほそくしろいゆびが傾ける小さなポットから、
琥珀色の紅茶が注がれていく。
辺りを見回すと、若干雰囲気が変わったような気がする。
以前はどことなく息苦しい感じを覚えることもあったこの空間が、
今は……何と言うか、そう、暖かい。
「――花がいくつか変わったような気がしますが」
「そうですね。今お友達にいくつか世話をお任せしているので」
その人が持っている別の小型温室に移したものがあるという。
「冬はどうしても、維持が大変なものもありますし」
「整理しているということですの?」
「――そんなところでしょうか」
改めて、邑那の顔を見やる。穏かな微笑みを浮かべたその顔は変わらない。
「わたくし、卒業とともに、理事長の秘書として仕えることになりましたの」
「おめでとうございます。三嶋さんならきっと立派におやりになりますわ」
「――学院を去られると、お聞きしました」
一瞬、自分に茶を注ぐ彼女の手が止まったが
「――暁先生ですか」
口調は平静のまま、そう答えた。返事を期待した言葉ではない。
漏れる場所はそこしかないと知っているが故の確認。
「わたくしが鎌をかけました。先生が自分から話したわけではありません」
「先生は責めませんよ。あの方の任務上、風祭に情報が流れるのは既定事項ですから」
自分の分をついで、ふわりと鏡花の前に座る。
「三嶋さんは何かわたしに、聞きたいことがあったのでしょうか?」
限りなく無表情に近い微笑み。
相談はシンプルなものだった。
風祭の、後継者の一人の秘書となれば、綺麗な話ばかりを聞いているわけにはいかない。
あのあまりにも真っ直ぐすぎる理事長の耳に入る前に決済せねばならない事項も多かろう。
例えば、手を汚す作業。裏の、影の、闇に対処するための作業。
自分が、彼女たちが望もうと望むまいと。風祭の中で生きていくには。
自分たちの場所を手に入れるには全てを避けては通れない。
そもそも、対処法を知らなくては避けることすらできまい。
「理事長もリーダさんも、そうした作業に向いた方ではないと。三嶋さんはそうお考えなのですね」
「僭越ながら、そう思いますの。ならば、補佐すべき立場のものが……
その、そういう部分に慣れておかねば、と思いまして」
「あなたが――それを引き受けると?頼りになる男性陣もいらっしゃるでしょうに」
「――わたしは、理事長と学友たちにこの身を救われました。既に気にかけるような係累もおりません。
理事長とこの学院のためなら、全てを引き受けるのはわたくしであるべきだと思います」
一瞬、邑那の眼が眼鏡の奥で細められ――また普段どおりに戻る。
「三嶋さんの決意は理解しましたが――なぜ、わたしのところに?」
「榛葉さんと李燕玲が通ってきた過程において……何を考え、何を考えなかったのか。
それをお聞きしたかったのですわ」
「わたしたちの手が、どれだけ紅く染まっているかはご承知の上で、なお聞きたいと?」
「――ええ。だからこそ、ですわ。だからこそ」
いざその時。きっと自分は揺らいでしまう。今の自分では。
「自分は知っていなくてはならない――そう思いますの」
だから。それを乗り越えてきた人に、聞きたかった。
どうあるべきなのかを。どうあるべきでないのか、を。
「全てご存知の上で、そう仰るのですね――」
二杯目のお茶を二人に注いだ後。
何かに納得したように一人頷くと、邑那はゆっくりと語り始めた。
鏡花に向き合いつつも、何処か遠くの一点を見つめながら。
それはまるで過去の自分を覗き込むかのように。
「――井の中の蛙大海を知らず、されど空の蒼さを知る」
語句の異同はあれど、よく知られたそんな言葉がある。
人によってはそこから実に様々な意味を読み取る文章でもある。
「私たちは幼き日に、井戸の中にいながら大海を知る術を得ました」
陽道グループ。いや、蘆部源八郎と言う名の深く暗い井戸。
そして大海を泳ぐ術を与えた彼女の友、李燕玲。
「――ですが、その代わりに空を見上げる術を忘れてしまいました」
月日を経て体は大きく、力は強くなり、その眼も手も遠くまで届くようにはなったけれど。
「そのままであれば、私たちは例え大海に泳ぎだそうと、いかに巨大になろうと
それはやはり一匹の蛙にすぎなかったでしょう」
でも、と邑那は続ける。
「ある人が、わたしに空をもう一度見ることを教えてくれました。
悔しいから本人には教えてあげませんけど、わたしは本当に感謝しているんですよ」
彼女は言葉を紡いでいく。何の影も束縛もない笑顔を浮かべつつ。
――ああ。彼女は、榛葉邑那は、こんな風にも笑える人なのか。
「わたしも貴方も、世界という巨大な井戸の中にいます。
わたしたちの足掻きは、所詮水面に波を起こす程度にすぎません」
それでも。泳いで居なければ。わたしたちは沈んでしまうから。
空を見れなくなってしまうから。
とても、綺麗な。
「空を見ることを忘れなければ」
遥かに仰ぐ空を。
「わたしたちは――やっていけるのだと思います」
恥じることもなく。後悔もなく。……いや、違う、と三嶋鏡花は理解する。
恥じても。後悔しても。それでも。自分と、友と、大事なもののために。
――必要なのは足掻いて、足掻いて。それでも深淵ではなく、空を見続けることだと。
何のために行うのか。誰のために行うのか。
深淵と空は「何のため」でも「誰のため」でもありうる。状況によって変わる。
だけど大切なのは深淵ではなく、空を選ぶという――その意思。
邑那が管理室からファイルを持ってきてテーブルに置いた。
「これをお持ちになってください」
「……開いてみてよろしいですか」
「どうぞ」
読み進めた鏡花は己の眼を疑う。その三冊の長大なファイルは。
風祭外部の敵に関する対処法。躱し方から排除と解体と吸収の手順まで。それも全て個別に。
グループ自体の脆弱性とそれに対する方策。付随するのは風祭財閥に内在する裏切り者のリスト。
その中にはあろうことか陽道と通じる者の名まであった。
そして最後に、理事長の家族兄妹に対する詳細な。詳細すぎるといっても良いデータ。
文字通り、風祭グループの死命を制しうるほどの秘匿資料だった。
「――なぜ、これをわたくしに?」
声が震える。
「いかなる武器も、いかに用いるかはその人間次第です」
王国の女王が。その数え切れないほどの過程の中で、常に考えてきたこと。
考えて、考え尽くして、尚無くすことの出来なかったこと。
だからこそ、けして言い訳をしないであろう所業の数々。
「わたしたちは今に至る過程で沢山の間違いを犯しました。
全てを予測できたとしても、最終的に全てが思い通りになったことなど一度もありません。
だからこそ、用い方には細心の注意が必要なのだと、常に肝に銘じています。
出だしから間違っていては最後はもう大変ですね。最近も酷い目にあいました」
「バタフライ・エフェクトですか。最近も、とは?」
くすり、と邑那は笑う。ああそうか。鏡花は分かってしまった。
その話のときだけは、彼女はただの娘に戻れるのだと。
「この春、最大の間違いを犯してしまいましたから」
分かってはいるけれど。それでも突っ込みを入れてみる。
「……参考までに、間違いの内容をお聞かせ願えませんかしら?」
「一人の迷える殿方に、お茶を振舞ってしまったことでしょうか」
もう既にオチが見えましたけども。
「それでは最大の成功も、今年迎えたのですわね?」
「――ご想像にお任せしますよ?」
なんかちょっと耳が赤くなってるし。こういう話にはまだ慣れていないのだろう。
それを言えば、鏡花だってそうなのだけれど。ちょっとだけ悔しい。
「……そうですわね。おのろけというのは長々と聞くものではなさそうですわ。
では最後にお尋ねします。もし風祭の利害とあなたの利害がぶつかることになったら?」
そうですね、と邑那は落ち着いて答える。
「そうならぬためにこそ、三嶋さんやわたしがいるのだと思っていますけど」
鏡花は唐突に気づく。そもそも、この資料を邑那が持っているという事自体、
その気になれば、陽道を掌握した暁に彼女自身が風祭を破滅させることも可能ということ。
それをあえて鏡花に渡した意味を考えれば。
彼女自身にこそそれを、「風祭」と理事長たちを守る役割がゆだねられたのだということ。
密かなる同盟者。いや「話の分かる」敵として、三嶋鏡花が選ばれたのだと。
――大事なものならば守ってみせなさい、という挑戦にして教育。いわば試験。
だからこそ。ティカップをそっと置いて、彼女は。
「やむを得ず、そうなってしまったのなら」
迷い無く邑那は答える。そう。それこそが女王の矜持。
「全力で、叩き潰します」
鏡花は頷く。ならばわたくしも応えよう、彼女の気持ちに。
「ではわたくしも、その時は同じ言葉を持ってお応えしましょう。
――その前に、まず全力で回避しますけど」
穏かに邑那は笑う。
「鏡花さんは、良い秘書になられると思いますよ」
呼び名が、鏡花に変わっていた。
「そうですね。良い学友に恵まれましたから」
「その中に、わたしも入れていただけるのでしょうか?」
「勿論ですわ、邑那さん」
「ふふ、光栄ですね。――もう一杯、如何ですか?」
下の名を呼んだことに、彼女は何も言わず微笑んだ。
そして緩やかに時間は流れる。
多分最初で最後の、彼女たちだけの時間。
「――そういえば、相沢さんから聞いたのですけど」
「なにか?」
と邑那は首をかしげる。
「試験用の貸し出しノートには、邑那さんは必ず嘘をいくつか混ぜておくのだとか」
「そんなこともあったかもしれないですね」
「ひょっとして、この資料も?」
「さあ、どうでしょう?」
にっこりと笑う邑那。
かなわない。
本当に、この人にはかなわない、と思わせられる。
――今のところは。でも、いつかは。
あなたのように。あなたが間違えたところを間違わずにいられるような自分に。
あなたたちが手に入れたものを失わせずに、自分たちが失わずにいられるように。
あるいは同じように間違えて。それでも、あなたたちのように前を向いて。
迷いなく。あるいはずっと迷いながら。それでも前に進める自分たちであれるように。
――そうなりたい、と願う。この世界に。あの空に。
ふっ、と息をついて、鏡花も笑う。
「わたくしは丸写しは避けることにしますわ」
「それがよろしいかと」
それから二人とも。
今度は同時に笑った。
それは、冬のとある一日の風景。
温室の窓からは、蒼く澄んだ冬の空。
遥かに仰ぎ、麗しの――
空。
後年。
凰華女学院が「風祭の玉石」と呼ばれるようになったころ。
若く美しい小柄な理事長の傍には、常に二人の美女の姿があった。
一人は金髪碧眼の慈母のごとき侍女。
そしてもう一人は、美しき黒髪の秘書。
彼女は、味方からも敵からも等しくこう呼ばれたという。
「優しき魔女」――と。
読んで頂いた方はお分かりでしょうが邑那√ベースです。
邑那も鏡花もがんばれ、ということで書きましたです。
ではでは――。 by 紅茶奴隷 でした
おお、遂に三嶋のSSが! GJです、作者殿。
ラブラブ要素のない話も、なかなか面白いですね。
確かに、あのキャラ群で邑那に対抗できそうなのは三嶋だけ。
良い意味で冷徹で、かっちょいいです。三嶋も邑那も。
でも、三嶋は本編でラブ要素がなかったので、SSではほんのりラブ風味な話も読んでみたかったりします。
次は是非、そちらの方向で〜♪
>>564 GJです!
邑那萌えの漏れとしては、
>>559が鏡花の質問(過去の覚悟)とは
ポイントのずれた返答になってるような気がするのが
少し気になりますが、イェンとの王国を守る邑那の覚悟と
みやび&リーダを守る鏡花の覚悟では、自ずと違ってくるので
まあ、これはこれでいいのかな、という気も。
つうか、ノロケだしw
また、次のSSも楽しみにしてます。
紅茶奴隷です。感想ありがとん。
>>565らぶらぶは苦手なのです……
>>566そうですね。鏡花が行間読みすぎたような感じの理解になってしまったかも。
もう少し行数かけてもよかったかな?でもあんま長いとブラウザが文字で真っ黒になるしorz
また何か思いついたら書きます。ではでは。
>>567 ちとせSSの方も読ませていただきました。
クレタ人の嘘つきパラドックスのあたりは、
理系ネタで本校司っぽい感じですが、
時々分校司が混じるのは、ひょっとすると
司も多重人格なのでしょうか?w
しかし、「笑うミカエル」まで読んでいるとは
おそるべし、司。
次のネタは「銀のロマry」
>>568 紅茶奴隷です。こんな時間にありがとうございます。
司が混じってるのは私があまり両者を区別してないせいですね。本校も分校も好きなので。
川原泉は昔から好きなんです。銀の……ネタでやると
動作の一つ一つがテロリズムな女学生ですか。……弥生かな?w
スポーツ馬鹿な弥生はありかも。
支援SSはどうなんでしょうか。投票期間中にもう1編ぐらいは書きたいけど
ここばっかり使うのもまずい気もするし。
>>571 Me too !
久々にやられた。orz