アリス・ロワイアル開催を企むスレ2【議論兼用】

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1名無しさん@初回限定
ここは、もしもアリスソフトのキャラクター達でバトルロワイアルが開催されたら?
という妄想を実現する参加型リレー小説スレッドです。

開始一歩手前の段階までこぎつけ、近日開始できる予定。
開始後は感想・議論スレ兼用となります。SSはこちらで宣言した上で本スレへ投下してください。
逆に、本スレに感想などを書き込まないよう注意してください。

前スレ:アリス・ロワイアル開催を企むスレ
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1121445503/l50
2名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 00:12:50 ID:GQ/egQEH
2get
>>1乙!
3名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 00:13:17 ID:Bob4mKKW
>>乙(自作自演)
4名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 00:14:57 ID:GQ/egQEH
「殺しあえ、最後の一人に至るまで」

見知らぬ古城の中、目を覚ました52人の男女に、
3人の魔人はそう告げる。
それがゲームの始まりだった。

自分のために殺すのか。誰かにのために殺すのか。
状況に立ち向かうのか。流されるだけで終わりなのか。
強制された極限状況で、各々が下す決断は―――

「全ては、娯楽」

このスレッドは、もしもアリスソフトのキャラクター達でバトルロワイアルが開催されたら?
という妄想を実現する参加型リレー小説スレッドです。
ルールを守り、21歳以上にふさわしい態度で、物語を楽しみましょう。

此処は感想スレです。
投下スレは別のスレとなりますのでご注意下さい。
5名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 00:15:53 ID:GQ/egQEH
【参加資格】
 ・21歳以上であること
 ・叩かれても泣かないこと
 ・誰がどんな状況でくたばっても泣かないこと
 要は大人であること、です。

【作品投稿の際の注意点】
 ・スレ冒頭にあるルールに沿っているか
 ・ここまでのストーリー上破綻の無い展開であるか
 ・NG定義に抵触しないか
 これらが守られていれば、原則として受け入れられます。

参加キャラのリストは>>6です。
6名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 00:19:08 ID:GQ/egQEH
(9/9)【ランスシリーズ】ランス/シィル/魔想志津香/ミネバ/トーマ/マリア/パットン
(9/9)【大悪司】山本悪司/岳画殺/山本一発/山沢麻美/素敵医師/支倉アエン/支倉ハイネ/由女
(4/4)【闘神都市2】シード/葉月/幻杜坊/シュリ
(4/4)【超昂天使エスカレイヤー】恭平/エスカレイヤー/マドカ/イガロ
(4/4)【Only you−リ・クルス−】魔神勇二/タイガージョー/鴉丸羅候/ミュシャ
(3/3)【ぷろすちゅ★でんとGood】遠藤悟郎/桜小路牡丹/魔窟堂野武彦
(3/3)【夜が来る!】羽村亮/火倉いずみ/七荻鏡花
(3/3)【ママトト】ナナス/カカロ/リック
(3/3)【アトラク=ナクア】比良坂初音/深山奏子/銀
(3/3)【DiaboLiQuE】アズライト/レティシア/凶アリア
(2/2)【ぱすてるチャイムContinue】薙原ユウキ/フィル・イハート
(2/2)【大番長】斬魔狼牙/京堂扇奈
(2/2)【アンビヴァレンツ】修羅/フェンリル
7名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 00:27:04 ID:GQ/egQEH
以下は決まったルールです

作品が終わった後には
【場所/時間】を決まった通りに明記すること

時間は
0〜3…深夜
3〜6…明け方
6〜9…朝
9〜12…昼前
12〜15…昼
15〜18…夕方
18〜21…夜
21〜24…真夜中

地図は
http://f19.aaa.livedoor.jp/~bokuzyo/clip/img/17.jpg
8名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 00:45:35 ID:fd8MVfe+
連投規制か? 支援。
9名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 00:57:30 ID:tIY7Tyla
腹減りました
10名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 01:00:09 ID:GQ/egQEH
決まったこと
黒幕鯨、管理者栗鼠+手下数人

禁止・制限される能力・アイテム
死者復活能力禁止
ワープ移動禁止
回復魔法・回復能力減

・ 本拠地は魔王城。開始直後にランダムワープ。
・ 生き残った奴のご褒美は、なんでもいいから願い事を一つ。
・ 時計なし、名簿は名前のみのものを配布。
11名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 01:30:17 ID:gZqONJG8
とりあえず投票の続きを
2-2で、意思を持つアイテムは禁止

それとMAPだけど地名で場所を示すのか、それともHEXを書いて座標で示すのか
どちらがいいだろうか?
地名表記なら、地名が判別できるサイズのMAPが必要かも
12名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 02:05:08 ID:Bob4mKKW
基本ルールに関しては、せっかくまとめてくれたんだし
ttp://ranobe.sakuratan.com/up/updata/up46447.txt
をテンプレに貼り付ければいいんじゃないかな。
基本的にNG議論以外は、読み手は読む必要がないものだし、
スレに直接書く必要はないと思われ。

>>11
HEXではなく、おおまかな地名を書くで決定したはず。
前スレの250付近を参照。
確かに、地名を書き込んだ地図を用意しないとね。
13名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 02:08:36 ID:Bob4mKKW
ごめん、間違えた。こっちだ。
ttp://ranobe.sakuratan.com/up/updata/up48822.txt
14名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 02:15:23 ID:Ihzr2oeH
>>12
基本ルールとか設定ってようは

・基本的に最後の一人まで殺しあう。
・参加者全員には以下の物が平等に支給される。
・一日に二回主催が放送を行なう。
(ようはバトロワの形態であること等のゲームの基本設定を述べる)

・死者復活は禁止
・勝手な新キャラの追加は禁止
・積極的に運営が手を下す話の禁止。
(NG議論云々以前の絶対の禁止項目)

まぁ、各々解ってるだろうから書かないのもありかもしれないが。
が、「書いてないからNGではない」って駄々をこねた厨書き手を野球の方で見たことがある……
複雑にする必要はないから基礎的なことだけ基本設定・ルールと入れた方がいいと思うよ。

アイテムの方は2-1で。
銃器溢れられても面白くない+ウィミィ兵のライフルとかで銃は大悪司とかから引っ張って来れると思うし。
意思ありアイテムに関しては、主なしで勝手に動き出すとか魔法を唱えて攻撃に参加したり等の自主的な行動禁止で会話まではOKにしたい。
15名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 02:36:47 ID:6tWR1Oeo
2-1で。
作品数が半端じゃないから普通に賄えると思うし、出られなかった作品のアイテムだけでも焦点を当てたいし。
意志アイテムの方は勝手な自立行動なしならありで。日光の人型やカオスも勝手に飛び跳ねたりは無しで。
16名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 02:58:51 ID:GQ/egQEH
2-2だな
弓があっても銃器は不足するだろうし
アリス作品外から出せた方が物語の選択は広がると思う
まぁその場合も極端な外れは無しの方向で

意志アイテムは単独では動けない&攻撃しない
日光は人Verになれないって感じで
カオスが女の子キャラに触手を伸ばすのはぎりぎりセーフw
17名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 07:19:53 ID:5o9E5bG8
俺も2-2に一票
18名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 07:19:54 ID:7cmwaJDO
前スレ見てない人、何の投票してるかわかんないと思われ。
今、↓の投票やってます。


アイテムに関しての投票

1−1:参加ロワ作品内からのみ
1−2:参加ロワ作品内+現実兵器
2−1:アリス作品内からのみ
2−2:アリス作品内+現実兵器
3:元ネタあればオールOK
19名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 07:28:22 ID:7cmwaJDO
ageた……onz

それと、明日明後日には開始しようということになった。


2-1に一票。
自立行動しなければ意思ありアイテムも可で。
20名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 13:55:42 ID:pd5QS0pP
2-2に一票
21名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 18:10:35 ID:Bq+eMXkX
2−2
まー現実兵器よりアリスワールドの武器の方が効果ありそうだけど。
22名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 21:37:53 ID:9qvWG5NL
2-2かなぁ
選択肢が多いに越したことはないってことで
23名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 21:58:20 ID:pcm+ETd/
後はOPの改変と地図か。
もうすぐそこまで来てるな。
24名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 22:00:31 ID:pcm+ETd/
投票忘れてた。

スプーンだとかしゃもじだとか日常用品等は範囲外で。
また軍隊用品だとか小麦粉の粉塵爆弾とか使い方次第でとかの屁理屈も範囲外で。
『現代兵器』ということで2-2に賛成を。
25名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 23:29:01 ID:Bob4mKKW
テンプレどうする? あのままでOKか?
それとも基本ルールを、もう少しスレ内にちゃんと書く?
26名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 23:40:05 ID:w6GavEhy
で、どうするの?
今夜開幕?それともあと一晩待つか?
27名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 23:44:36 ID:pcm+ETd/
書くにしても地名記入された地図が欲しいので、あと一晩でなんとかできないか?
今の段階だと鬼畜王所有してる人としてない人で差が出すぎる。
それとアイテム決まって、はいすぐ。は作品を考える猶予がなさすぎるというか。
28名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 23:49:22 ID:6tWR1Oeo
>>23
OPはルドの存在を匂わすかどうか以外に問題出てたっけ?
29名無しさん@初回限定:2005/08/01(月) 23:56:55 ID:w6GavEhy
あとクイブリスに質問するのは初音じゃなく
他のキャラの方がいいのではという意見もあったね
30名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:07:14 ID:pQXb1jFO
いよいよ煮詰まってきた!
開催までもう少しだ。

アイテムは2-2で決定か。
ただし外れなしでって意見が二つあるね。

>>24を参考に

2-2
アリス作品内+現実“兵器”、に決定でいいかな?

残る問題

OP
ルドの存在を匂わすのは止めた方がいいという意見
質問するのが初音だと奏子の存在から不自然になるのではという意見

見せしめ死亡するキャラは関係キャラに影響を与えるが、特に意見も出てないのであの人選でもOKと見なし。

地図
地名書き入れられたのpls、でないと鬼畜王所有という格差がでるという意見。

以上でOK?
他にはなんもないよね?
31名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:09:45 ID:DIO0tSQw
■■■基本ルール■■■
・参加者全員で殺し合い、最後まで生き残った一人が勝者となります。
・勝者は、なんでも願いを一つ叶えてもらう事が出来ます。
・ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はありません。
・ゲーム開始時、参加者はスタート地点(魔王城)からテレポートさせられMAP上にバラバラに配置されます。
・参加者全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となります。
・開催場所は特別に用意された空間であり、外に逃れることは不可能です。
・全ての参加者の首には首輪がかかっており、以下の条件で爆発します。その参加者は確実に死亡します。
 1.魔王城の周囲の障壁内に侵入する。
 2.無理やり外そうとする。
・参加者全員には以下の物が平等に支給されます。
 「食料」 → 複数個のパン(丸二日分程度)
 「飲料水」 → 1リットルのペットボトル×2(真水)
 「開催場所の地図」 → 会場全体の地図
 「鉛筆と紙」 → 普通の鉛筆と紙。
 「方位磁石」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「リュック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。
 「名簿」→全ての参加者の名前が載っている。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが一つ入っている。内容はランダム。
 別にリュックに入りきらないものでもよしとします。
 各キャラの最初の作者が支給品の説明を書くのが望ましいです。
・日の出、日没の1日2回、主催者が会場内に『放送』を行います。
 この間に死亡した参加者は放送中に名前が発表されます。
32名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:10:32 ID:DIO0tSQw
■■■書き手の心得・禁止事項■■■
・一度死亡が確定したキャラの復活は、何があろうと絶対に禁止です。
・新規キャラの途中参加は禁止です。
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる話は避けてください。
・時間軸を遡った話の投下は避けてください。
・以前の話を熟読し、矛盾が発生しないよう、十分に注意してください。
・話の丸投げはやめてください。
 初めから、後から修正する事を目的に、適当な話の骨子だけを投下する事等です。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄もありえます。
・中途半端な書きかけ状態の作品投下はやめましょう。
・主催者側が積極的にゲームに手を下す話は避けてください。むしろ、書かないのが基本です。
・前の話を無視した作品、キャラの性格・心情的、状況的にありえない作品、
 前後の繋がりがおかしいと思われる作品等が出た場合は冷静に申し立てて下さい。
・投下する前に、議論スレで投下宣言をしてください。
 投下し終わったら、投下終了宣言をしてください。
・投下宣言と確認し、他の人が投下しているときに割り込まないように注意しましょう。
33名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:11:37 ID:zUnEWPYo
>>30
投稿スレのテンプレは大丈夫か?
いまからスレを立てて来いといわれて、立てるのは難しそうなんだが。

後、アイテムの意志に関しては、
意志はありだが自律行動は禁止というのが、5票。
意志があるアイテムは禁止というのが、1票。
日光やカオスが会話するぐらいは、ありだということになりそうだね。
34名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:12:16 ID:DIO0tSQw
前スレラストあたりで言われてた基本事項をまとめてみたよ。

テンプレは、前スレ>>989-990に、これと、まとめテキストでどうだろうか。
35名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:15:06 ID:zUnEWPYo
いい感じだね。良かったらこれも付け足しといて。

・テンプレとして本文の後に、場所、時間、登場人物、登場人物の状態と持ち物、残り人数を書く。

場所: 地図の中から大まかな地名を書く。
時間: 具体的な時刻ではなく、大まかな時間帯を書く。時間帯は一日を8分割するぐらいが目安。
状態: 登場人物の状態を書く。前作と変化してなくても書くこと。 
アイテム: 登場人物が持つ主要なアイテムを列挙する。前作と変化してなくても書くこと。
例:
【二日目夕方、リーザス城近郊】
【ランス: 状態:良好 アイテム:リーザス聖剣、ベレッタ(残弾5)】
【シィル: 状態:全身に裂傷、瀕死 アイテム:弓矢(矢は5本)】
【残り25人】
36名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:17:02 ID:/aRENcKP
テンプレ等は問題無しかな、あとはOPと地図、これが揃えば
明日の24時スタートが理想だけど
いけるかな?
37名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:19:09 ID:zUnEWPYo
OPもいいんじゃないか?
クジラをにおわせるのも、あれぐらいなら適正だと思うし。
初音に違和感があるといっても、
他の人が書いたのを、自分から書き直すほどのものではないし。
38名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 00:34:46 ID:pQXb1jFO
ところで、首輪を解除しようとしたやつの首輪が爆発する認識でOK?
39 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/02(火) 00:58:47 ID:DIO0tSQw
OP書き手は今いる。
放送時間と開始時間、かなこ、この当たりを修正した部分だけちょっと上げてみる。
クジラは自分ではあれでいいと思ってるのでそのままだが。

地図は、最悪始まってからでもOKだと思うよ。

>>38
それは、他人の首輪を解除しようとしたら、とかそういう意味?
40OP試案(4/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/02(火) 00:59:58 ID:DIO0tSQw
「分かったと思うけど、僕達に楯突いたり無理に外そうとすると爆発するからね。
ちなみに、元の世界ではその程度耐えられそうな人達も混じってるみたいだけど、ここでは無駄だから。試すのは自由だけどね」
 視線の先にいる老人がフンと鼻を鳴らした。
「今はその線を越えたらだけど、殺し合いが始まったらこの城の近くに来るだけで爆発するようになる。
少しでも長生きしたければ、ここには近づかないことだね。間違って入らないように障壁は張っておくけど。
それから、日の出、日没の一日二回、それまでの死亡者を発表する放送を流すから、気をつけるように。
もうすぐ日が昇る時間だから、最初の放送は日没になる。せいぜい聞き逃さないようにするんだね。
何か質問は?」
 その言葉に、一人の女性の手がすっと挙がった。
 傍らにいた少女が驚き見上げてくるが、その女性は大丈夫だと言うように少女の頬をひと撫でして口を開く。
「最後の一人まで……と言ったけれど、その最後の一人まで残ったらどうなるのかしら?」
「確か、なんでも願いを一つ叶えてあげるってことになってたわね、ケーちゃん?」
 確認をとるメディウサにケイブリスは鷹揚に頷いた。
「俺様が叶えてやる訳じゃないがな。神とやらがそう言った」
 その言葉に、今まで反感一色だった参加者達の雰囲気に一部変化が生じた。
 他の参加者達はそれに気付いたのかどうか。
「私達をここまで引っ張ってくるほど力のある存在が、ということね。……分かったわ、ありがとう」
 その丈の長い学校の制服を着た黒髪の美女は、そう答えて薄く微笑むと、不安そうな表情を湛える少女を腕の中に掻き抱いた。

「他に質問はあるか? ないな? じゃあ、自分のリュックを持て。
二つ持っていこうなんて考えるなよ、ルール違反者は首輪ボンの刑だからな!」
 ケイブリスの言葉に、各自それぞれ様々な思惑を胸にリュックを手にする。
 それを確認して、ケイブリスはにやりと笑った。
「それじゃあ、殺戮ゲームの開幕だ!」
 声と同時に、パイアールが手元の機械を操作する。

 一瞬の後、その場には魔人達と二つの死体しか残っていなかった。


【ななか 死亡】
【ガレイズ 死亡】
【残り48人】
41名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 01:05:33 ID:Bi+Yh7Y0
>>35
細かいけど、残り人数は死亡者が出たとき以外らなくねえ?

>>38
多少は弄くっても爆発しないと思うが。
戦闘の衝撃で爆発しない程度の遊びはあるかと。
そりゃ破壊しようとしたり、外そうとしたら爆発するだろうが。
42名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 01:13:37 ID:pQXb1jFO
>>39
そそ。
嘘ついて外そうとするとか、戦闘中に銃弾クリティカルに受けるとかw

>最悪始まってからでもOK
知らない書き手は現在地が書けないが。
現在地不明をなしにするなら、地図は始める前に最低必要。
それでも、既存MAPのために森の中とか湖の近くとか山の中の表現も限られてくるからね。

クジラは匂わせすぎだとは思うかな?
「俺たちのスポンサーが願いを叶えてくれるってよ」ってくらいがいいかと。
神って表現はちょっと……
まぁ、拘りだが。
43名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 02:19:33 ID:VYvI9wgi
>神って表現はちょっと……
それ、あなたの好みであって、何らかの必然的な理由があるわけじゃないっしょ?
それなら悪いが、んな細かいことに一々こだわって欲しくない。
自分が書く分にはいくらこだわってくれても構わないが、人の文章にこだわり入れていたら切りがない。
44名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 02:39:17 ID:pQXb1jFO
>>43
好きか嫌いかの拘りではなくて、ルドラサウムの存在を匂わせるかどうかについての意見だが?
ルドラサウムを最初から関与示してる表現だと後々対主催行動の表現(移項ではなく)にしろ面倒じゃないか?
単純にあの魔人三匹がいるだけってしといた方がいいと思うのだが。
後OPであるということを忘れずに。
拘りという表現がおかしかったね、ごめん。
45名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 02:46:11 ID:zUnEWPYo
とりあえず、地図UP。
途中で力尽きたので、明日もう少し書き込んでみようかな。
色の関係で、読みにくい文字も多いし。
でもまだクリアしてないから、遠隔地の名前は分からないっす。

http://f19.aaa.livedoor.jp/~bokuzyo/clip/img/22.jpg

46名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 02:47:04 ID:zUnEWPYo
あ、ごめん。最初のhを削ってない。
ttp://f19.aaa.livedoor.jp/~bokuzyo/clip/img/22.jpg
47名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 02:51:37 ID:pQXb1jFO
ちょっと解りにくいかな……
前ロワがルドラサウムを全面に出したから収拾のつけようがないって言うかその辺りが手詰まりっぽくなってた感じがあったから
ケイブリス達を倒すような事がない限りは率先して匂わすのは止めた方がいいんじゃないかって意見だ。
気にしすぎというならそれで構わない、そう返してくれ。
だが、別に好き嫌いの主義で意見したのではないことだけ解ってもらえれば。
決め付けられるのだけは勘弁な。

>>45
モツカレ、GJ!!
地図見て思ったのだが、死の大地は生命力の低い一般人が入ったらその瞬間腐り死ぬことに……
最悪、開始と同時に死ぬなんて展開も……
有り、なし、効果が弱まってる、くらいは軽く決めた方が良くないかな?
投票とかまでではなくて、いくつか意見あればそれ総合してって感じで。
48名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 07:32:03 ID:667KZhse
>>46
超GJ!
できれば、カラーの森と、リーザス・ヘルマンの間の山脈(名前忘れた)もお願いします。


>>47
言いたいことは分かったよ。だが、気にしすぎだな。
OPで書こうが書くまいが、途中でどうにでも変化するよ。
今からそんなとこまで考えるのは皮算用としか言えん。

>死の大地の特殊効果
どう考えてもいらない。
49名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 19:50:13 ID:Yg7Bcje3
>>46
GJです。

OPはもうあれでいいと思う。
そんな何回も修正かけるのもね……完璧を求めずとも、と思うです。

首輪は>>41とほぼ同意見。
そう簡単には爆発しない、というか>>31に書かれてる通りでいいです。

死の大地の効果はいらないと思う。
面倒だし、殺し合いする分には余計な設定だと思う。
それに、万が一本当に開始早々死の大地効果で死亡する話が投下されたら嫌。
>>47は冗談で言ったんだと思うけど。

で、00:00から開始ってことでFAなんだよね?
50名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 20:15:29 ID:Dx54NIwK
>死の大地
死ぬまではいかないが、いると疲労がでてきてHPがゆっくりと減り始める。休んで自然回復する事のないエリア。
くらいに効果落とすなら面白そうだと思うけど、ややこしいからない方がいいね。


ゲーム中だと巨大戦艦やホ・ラガの塔近辺も兵士がぱたぱたと倒れて死ぬ寒さだったなぁ。
こっちは寒さだから軍隊の兵士より装備が整ってれば死ぬ可能性は低くなるけど。
ま、開始早々こういう場所に放り込まれて死ぬ話はないと信じたい。
釘刺しときゃ大丈夫だろ。
51名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 21:33:39 ID:Dx54NIwK
……何か誰もいないな。
テンプレは後で張ればいいと思ってスレ立てだけでもやろうとしたが駄目だった。
52名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 21:52:01 ID:zUnEWPYo
いるよー 今帰ってきた。
スレもう立てちまうか?
53名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 21:52:24 ID:Y4duKnht
まとめテキストを修正しました。
圧縮してあるけど……

他のとこだと長い間持たないので、ロワ用のうpろだを使わせてもらったんだけど、
どうもtxtは変になるらしく。

ttp://f19.aaa.livedoor.jp/~bokuzyo/clip/img/23.lzh


>スレ立て
では俺ががんばってみる。
54名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 21:55:05 ID:Y4duKnht
うわっはあ、今自分でDLできるか試してみたけど
アクセス権無い言われてできねえ_| ̄|○

仕方ないので他を借りよう……
55名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 22:01:47 ID:Y4duKnht
くぅ、駄目だった>スレ立て
クッキーは設定してるはずなのに……

他の人よろしく。
56名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 22:55:28 ID:Y4duKnht
まとめテキスト
ttp://ranobe.sakuratan.com/up/updata/up49215.txt

人いない……
57名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 22:59:06 ID:Dx54NIwK
どーしよっか。
明日正式開催に延ばす?
58名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 22:59:38 ID:FSRXLyC7
あと一時間か・・・
こちらもスレたては無理でした。
とりあえず投稿と議論兼用で今のスレを使う?
59名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:01:30 ID:Dx54NIwK
>>56
>>31-32,>>35の追加もキボン
60名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:03:35 ID:Y4duKnht
>>59
ああ、>>34方式でいくものと思ってたので、あえて入れてませんでした。
入れた方がいい?
61名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:06:24 ID:Dx54NIwK
>>60
ああ、それなら一回スレ立てした時にまとめてはっつけてとけば以降大丈夫だと思う。

で、マジでどうする?
案としては今日開催が不明確だったから一日伸ばして
8/3水曜24時には絶対開催なんじゃごるぁと正式開催告知するか
>>58の言うようにスレを兼用させて強引にスタートさせてしまうか。
62名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:15:27 ID:Y4duKnht
正直、明日になっても人いる可能性あまり変わらないと思う。

今、「いつでも投下出来るぜオラァッ」って人いる?
いるなら00:00からスタートでもいいと思うけど。

その場合、以降も本スレは立てずに進めていくことになるのかな。
63名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:19:10 ID:FSRXLyC7
>>62
ただ先週末から秒読み状態だったし、もともと人口少ないし
それを考えると引き伸ばしはデメリットしかないと思う

あと一応作品は用意してる、ただちと論議を呼ぶ内容かもしれない
64名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:20:11 ID:FSRXLyC7
今回のスレを使い切ったら改めて投下スレと議論スレに分ける
で、いいんじゃないかな?
65名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:23:38 ID:Dx54NIwK
デメリットすらもない気がする。
そのくらいの状況選択だと思うわ。

んじゃ、24時スタートでOKか?
66名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:26:44 ID:Y4duKnht
確かに人数いないし、大して進行スピード速いわけでも無いから、
本スレ議論スレ兼用でも問題ないと思うしね。

では、00:00からということで。
>>34方式でテンプレ、次いでOP、その後作品投下という流れかな。
ここでやるならテンプレはいらないかな?
67名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:28:19 ID:Dx54NIwK
テンプレに足りてないのって前スレであった企画の方向性くらいか?
人数少ない分、序盤で一レス殺しとかはあまりやらずしっかり描写していくってやつだっけ?
68名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:37:15 ID:Y4duKnht
そういえばあったね。
まあ、その辺は書き手がケースバイケースで判断していいことだと思うけど、入れておく?
69名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:42:58 ID:Dx54NIwK
本当は前スレ見てもらうのが一番解りやすくいい感じだよね。
あまりにもぞんざいな死はNGとなる可能性あるとかってルールにあったっけ?

ああ、ないか。
なら、入れとく?
ケースバイケースで左右される時があるのも当然だが。
70名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:55:18 ID:Y4duKnht
ズガンレベルの作品をNGにするのは当然だけど、
そうでなければ初登場で死亡する話でも容認したいんだよね……実に今更なんだけど。
正直、あの決定は書き手にしてみれば縛り以外の何物でもないんだ。

すまない、個人的にそれは賛成したくないので、任せます。
71名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:56:31 ID:Y4duKnht
一応

ズガン

あるロワで、「ズガン」の3文字だけでキャラが死亡した話に由来。
ぞんざいここに極まれりな死。
72名無しさん@初回限定:2005/08/02(火) 23:56:52 ID:rfxKkCaP
まあぶっちゃけね、納得できるだけの内容があるかなんだけどね。
ようは空気嫁ってことなんだよね。
73 ◆CysS/VAVo. :2005/08/03(水) 00:00:10 ID:AfDpkS0K
投下していいのかな?

投下していいよね?

投下していいよな?

投下するぞー!?
74名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 00:01:26 ID:qKip09+W
待って待って、OP!
75鬼畜冒険者出発 ◆CysS/VAVo. :2005/08/03(水) 00:01:29 ID:AfDpkS0K
 森の中をひょうひょうと歩く若い青年がいた。
 右手には日本刀をぶんぶんと振り回しながら。
「どうっすかなぁ……」
 気がついたら訳の解らないまま、いきなりゲームに参加しろと言われた。
 危うく、ジルに変な空間に閉じ込められる所だったので助かったと言えば助かったなのだが。
 裸だったのが、服だけは何故か着せられていたのは情けによるものだろうか。

「素直にゲームに乗るのは癪だ。このスーパー超絶美形ランス様があんな下品なリスに従うなんてゴメンだ」
 しかし
「あいつらも魔人かよ……クソ、やっとこさ倒したノスの奴よりも強そうだぞ」
 地竜の魔人ノス。
 前々魔王ジル復活のためにサテラとアイゼルをだまくらかしてヘルマン第三軍であるパットンに組し、リーザス城を陥落させた魔人である。
 バレス、マリア、リック、レイラさん、ミリ、ミルとリーザス兵計18名が総出でかかってもノスは蹴散らした。
 カオスの効果で攻撃が通じるようになっていての状態でだ。
 流石、闘えば闘うほど進化する魔人。
 その後をすかさず、ランス、シィル、志津香、かなみ、マリス、リアの総出でかかってやっと倒した。
「あいつは殴ってる内にどんどん堅くなっていったからなぁ……」
 思い出すだけでも嫌気がさす。
 ダメージを与えれば与えるほどノスは強くなった。
 最後の方など、殆どギリギリで倒したようなものだ。
 そのノスより強いケイブリス。
 それに従う二人の魔人。
 構成は先のノス、サテラ、アイゼルの三人と全く同じ数。
 いや、ノスよりも強く感じれる魔人ケイブリス一人の存在だけでもより厄介なヤツラだ。
「魔人三匹と魔王を倒したと思ったら、また魔人三匹。今度はバックに神とくら……」
 そういえば、光の神のプレートをゲシゲシと踏んだのを思い出す。
 思い当たる行動に罰が当たったのかとランスは考えた。
76 ◆CysS/VAVo. :2005/08/03(水) 00:02:39 ID:AfDpkS0K
>>74
そうか。先にOP貼り付けるのが常識か。
すでにあるからいいと思ってた。
気づかなくてスマンカッタ。
77名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 00:03:16 ID:qKip09+W
では、OPから投下するけど、いい?
78 ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 00:06:00 ID:QS+A6Mjs
了解です、いきなりかぶりそうで不安だけど
79オープニング(1/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 00:06:39 ID:qKip09+W
 ななか……ななか……
(ん〜、お姉さまぁ……だめもう食べらんない)
 たべ……? もう、起きてよ、大変なんだよ。ななか……
 だめだ沙由香、こいつ完全に寝ぼけてやがる……
(む、きょーへー? なんでここにいんのよ、お姉さまから……)

「離れなさいよおぉぉぉっ!」
 叫びと共にななかは跳ね起きた。
 そのまま、そばにいた恭平に食って掛かろうとして……、そして周囲の異常に気付いた。
「え……なに、ここ?」
 中世の城の様な大きなホール。
 だが中は薄暗く、テレビ番組で見たような優美な印象は欠片もない。
 そして自分達の周囲には、見たことのない数十人の男女。
 確か自分は、リビングのソファーで昼寝をしていたはずなのに……
「ななか、落ち着いて」
 混乱するななかを落ち着けさせようと沙由香が声をかけるが、
「おう、これでやっと全員起きたな。遅ェからイライラしたぜ」
「最初のが起きてから五分も経ってないでしょうが。はいはい注目〜。それじゃ説明始めるわよ」
 それを遮るように男と女の声が響いた。
 視線を巡らすと、自分達とは離れた玉座に座る化け物と、その横に立つ女性と少年、そして三人の前に倒れている何かが目に映った。
(なんだろ、あれ)
 ななかの注意がそれに向きかける前に、玉座に座った化け物が声を上げた。
「まず名乗っておくぜ。俺様は魔人ケイブリス。こっちも魔人で、女がメディウサ、ガキがパイアールだ」
「魔人が三人……だと?」
「ランス様ぁ……」
 周囲の一角で声が上がった。
 玉座の三人を睨み付ける緑の服を着た男と、その後ろで心細げに身を小さくしているピンクの髪の少女。
 彼らの他にも、魔人と聞いて身構えた者達がいるようだ。
 しかし、ケイブリスはそれらの動きを全く意に解すことなく、皆が注目する中、高らかに宣言した。

「これから、お前達には殺し合いをしてもらう」
80オープニング(2/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 00:07:40 ID:qKip09+W
 ざわっ……と周囲からどよめきが上がった。
「ルールは単純だ。えぇと、あぁー……なんだっけな」
「あたしが説明するから、ケーちゃんは黙ってなさいって。
ほんとルールは単純。最後の一人になるまで殺し合いをするだけ。
この後、あんた達は会場のどこかにバラバラに飛ばされるわ。あたし達の世界のミニチュア版だけどね。
あんた達の前に置いてあるリュックに地図や食料が入ってるから、持って行くの忘れちゃだめよ。
役に立つかもしれないアイテムも、ランダムに一つづつ入ってるからね。アタリが出たらあたしに感謝、ハズレが出たらケーちゃんを恨むよーに。
あと、少しは禁止事項もあるから、その説明を……」
「ふっっっっっざけんじゃないわよ!」
 メディウサの声が怒号に遮られた。
 声の主――ななかが、怒りの形相で立ち上がる。
「お姉さまと殺し合えですって!? 冗談も大概にしなさいよ!!」
「ななか、駄目ッ!」
 引きとめようとする沙由香の腕が空を切った。
 言葉と同時に突進したななかは、拳を握り込み三人に肉薄する。
(こいつらをとっちめて元の場所に戻させる。それが一番手っ取り早いわよ!)
 自分と沙由香がいればどうにでもできるはず。
 それに、周りの連中の中にも加勢してくれる奴がいればもっと楽になる。
 完全に慢心してはいるが、ななかなりに勝算あっての行動だった。
 だが――

 Pi……Pi……

「えっ!?」
 突如、自分の首から聞こえてきた音に驚き、ななかは立ち止まった。
 首に手を当て、初めてそこに首輪がはまっていることに気付く。
81オープニング(3/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 00:08:34 ID:qKip09+W
「な、なにこれ!?」
 狼狽するななかの耳に沙由香の声が響く。
「ななか、ななかぁっ!」
「行ってはいけません、沙由香さん」
「そうです。あなたの首輪まで発動してしまいますよ!」
 振り返ると、恭平に加えて人波から飛び出してきたマドカ、眼鏡をかけた長身の青年の三人がかりで取り押さえられている沙由香が目に映った。
 そして、先ほどまでは気付かなかった、自分と沙由香達の間に引かれている白線にも。
(首輪の発動……?)
 次第に早くなっていくこの音が聞こえ出したのは、あの線を越えた辺りだ。
 何かの境界のように引かれた線。徐々に早まる首輪の音。取り乱す沙由香。"発動"という言葉。
 不吉なものを感じて、ななかは魔人達の方を振り向く。
 その前に倒れ伏していたのは……赤い髪の男――ガレイズの、分かたれた頭部と胴体。
「!!」
 思わず息を呑む。
 沙由香や他の者達の反応の訳がようやく飲み込めた。
 皆、知っていたのだ。恐らく、自分が目を覚ます直前に、自分と同じ行動を取った者がいたから。つまり、自分の末路は――
「い、いやあっ!」
 首輪に手をかけ、なんとか外そうと試みる。途端にぐんと音のスピードが上がった。
「ななかっ!」
「お姉さま、助け――」

 ――爆音。

「いやあああぁぁぁぁぁぁっ!!」
「……ちくしょう」
 眼前の光景に悲鳴を上げる沙由香。その肩を支える恭平も、悔しさに歯噛みした。
「ふん、説明を最後まで聞くこともできないような馬鹿な女だ。死んで当然だね」
 今まで沈黙していたパイアールが口を開いた。
82オープニング(4/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 00:09:51 ID:qKip09+W
「分かったと思うけど、僕達に楯突いたり無理に外そうとすると爆発するからね。
ちなみに、元の世界ではその程度耐えられそうな人達も混じってるみたいだけど、ここでは無駄だから。試すのは自由だけどね」
 視線の先にいる老人がフンと鼻を鳴らした。
「今はその線を越えたらだけど、殺し合いが始まったらこの城の近くに来るだけで爆発するようになる。
少しでも長生きしたければ、ここには近づかないことだね。間違って入らないように障壁は張っておくけど。
それから、日の出、日没の一日二回、それまでの死亡者を発表する放送を流すから、気をつけるように。
もうすぐ日が昇る時間だから、最初の放送は日没になる。せいぜい聞き逃さないようにするんだね。
何か質問は?」
 その言葉に、一人の女性の手がすっと挙がった。
 傍らにいた少女が驚き見上げてくるが、その女性は大丈夫だと言うように少女の頬をひと撫でして口を開く。
「最後の一人まで……と言ったけれど、その最後の一人まで残ったらどうなるのかしら?」
「確か、なんでも願いを一つ叶えてあげるってことになってたわね、ケーちゃん?」
 確認をとるメディウサにケイブリスは鷹揚に頷いた。
「俺様が叶えてやる訳じゃないがな。神とやらがそう言った」
 その言葉に、今まで反感一色だった参加者達の雰囲気に一部変化が生じた。
 他の参加者達はそれに気付いたのかどうか。
「私達をここまで引っ張ってくるほど力のある存在が、ということね。……分かったわ、ありがとう」
 その丈の長い学校の制服を着た黒髪の美女は、そう答えて薄く微笑むと、不安そうな表情を湛える少女を腕の中に掻き抱いた。

「他に質問はあるか? ないな? じゃあ、自分のリュックを持て。
二つ持っていこうなんて考えるなよ、ルール違反者は首輪ボンの刑だからな!」
 ケイブリスの言葉に、各自それぞれ様々な思惑を胸にリュックを手にする。
 それを確認して、ケイブリスはにやりと笑った。
「それじゃあ、殺戮ゲームの開幕だ!」
 声と同時に、パイアールが手元の機械を操作する。

 一瞬の後、その場には魔人達と二つの死体しか残っていなかった。


【ななか 死亡】
【ガレイズ 死亡】
【残り48人】
83 ◆CysS/VAVo. :2005/08/03(水) 00:10:45 ID:AfDpkS0K
お疲れさまです。では、>>75より続きを

「当面どうするかだな……」
 まずは知り合いと合流。んで生き残る。
 そして首輪外して魔人どもをぶちのめす。
 光の神は……まぁ、何とかなるだろう。

「うーん……何かがしっくりこねぇんだよなぁ」
 先程の会場でシィルがランスにワンワンと泣きすがってきた。
 シィルは突然の出来事と魔人という恐怖で気づかなかったのかもしれないが、ランスはシィルにどことなく違和感を抱いていた。
「シィルに間違いはねぇんだ……でも俺様のシィルとは何かが違うんだ。
 さっきまで一緒にいたシィルより大人の色気みたいなのがあって……」
 それがランスがどうしてもシィルを直ぐさま探す気になれなかった理由である。
 似て否なるもの。に感じられて仕方がないのだ。
 あれがシィルなのは間違いない。とランスの本能が告げる。
 だけども――俺様のシィル――とは違うとも告げているのだ。
 最もシィルを知っているからこそ、シィルからの違和感にだけは反応したのだ。

 でも、やっぱりシィルが死ぬのは見たくなかった。
 それに大人っぽいシィルとうはうはしてみたいという欲望も少なからずあった。
 俺様のシィルと何か違うという感覚から、少しだけ拒絶感もあったが……。
「まずあのシィルを探すか……その後はマリアと志津香だな」
 機械弄りの好きなマリアなら、この忌々しい首輪を外せるかもしれない。
 それに俺様の女を危ない目に遭わせるわけにはいかない。
「そういえばカワイコちゃんいっぱいいたな……」
(怯えるカワイコちゃん、襲われるカワイコちゃん。
 そこへ颯爽と現われて救う俺様。それを見た女の子は俺様にドキドキ。
 エスコートして首輪外して魔人どもを倒せば、もう俺様にメロメロ。
 そしてお礼に……うん、グッドだ)
「ガハハハハハハハハ」
84 ◆CysS/VAVo. :2005/08/03(水) 00:11:43 ID:AfDpkS0K
 飛躍した想像を頭に浮かべ、アヘアヘと下品な妄想にひたる。
 優勝するという事は女の子を手にかけなければいけない。
 そんなのはランスの信義に反する。
「おぉっとっと……こんなことしてる間にもカワイコちゃん達がこのランス様の助けを待っているのだ」
 とそこで見たくもない野郎どもの集団も思い出す。
 中にはあのパットンとトーマとミネバという最悪三人衆の存在もあった。
(あの筋肉達磨どもになんか会いたくもないぞ……)
 というか彼らなら、自分を見た瞬間襲ってくる、と考える。
(あーでも他の野郎はどうすっかなぁ……)
 相手にするのはまた三人の魔人。
 様々な知恵と人員でようやく倒した事を考えると、幾ら自意識の強いランスでも一人では無理なのが解る。
(うーん、敵意さえなければ俺様のために協力させてやってもいいか)
「まずはどこにいこうかなっと……」
 配られた地図を広げて方位磁針で位置を確かめる。
 その辺りはランスも手馴れた冒険者だ。
「北に高い山、地図から見てもありゃ有名な翔竜山だな。
 ってことはここはゼス付近の森か」
「付近の街でも探索してみるか、街なら誰かいるだろ」

【一日目朝、ゼス付近翔竜山南の森】
【ランス: 状態:良好 アイテム:不知火】
85Wandering Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 00:12:28 ID:QS+A6Mjs
「あああっ!」
夜明けの森林に悲鳴が轟く。
見ると長い髪の少女が、禿頭の巨漢に組み敷かれている。
(シード…)
瑞原葉月は苦しい息の中で闘神大会以来行方知れずの恋人の名前を呟く。
もはや抵抗を試みることすら出来ない、その四肢は関節もろとも粉砕されている。
彼女も相当な剣の達人だが、若き頃より無敵の格闘家として知られるカカロにはまだ及ばない。
しかも彼女は丸腰だった。
「ふふふ…よき父、そしてよき王を演じておるとストレスがたまってのう、まずはチューといこうかの」
カカロは舌なめずりをするとその唾液まみれの唇を葉月の端正な唇へと重ねる、が
ちくりとした痛みと同時に緩みきった顔が一変する、唇を噛み千切られたのだ。
「こざかしい!」
カカロの拳が葉月の顔面に炸裂する、ぐちゃとくぐもった水音が響く
「顔面がつぶれてしもうたか、かわいそうにのう…まぁ穴があればわしとしては事足りる、それに用が済めば
どの道殺すつもりだったからのう」
外道以外の何者でもない言葉を呟き、早速ズボンを下ろすカカロ
そしてその欲望を何度も何度も葉月の中に放つ。

(ころして…やる)
カカロに犯されながら葉月は心の中で何度も何度も憎い男を殺す。
(ころしてやるころしてやるころしてやる…でもなんでこんなめにあわないといけないの?)
(だれでもいいよ…助けて…そしてもいちどシードに会いたいよ)

「さて、と」
葉月とは対照的に満足げなカカロ、その足元に転がる葉月の蹂躙されつくした身体は、
もはや風前の灯だった。
「一思いに楽にして…」
そこでカカロの顔が歴戦の格闘家のそれに変化する、背後にただならぬ気配、
「無粋な奴…じゃのう」
ついでに叩き潰してやりたいが、あまりにも娘の具合がよかったので精を放ちすぎてしまった、ここは退くか。
軽く舌打ちすると、カカロは森の奥深くへと消えていった。
86Wandering Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 00:13:09 ID:QS+A6Mjs
そして後に残されたのは瀕死の葉月。
「ボク…死ぬんだ…」
歩み寄る影を目にしてももはや無感動な葉月
(お坊さんかぁ、ちょうどいいや…さすが職業柄鼻が利くなぁ)
だが、その男は葉月が思ってるのとは違う目的で彼女に近づいたようだ。
「声が聞こえての…主の嘆きの声が…娘よ、主には2つの道がある」
僧形の男は編み笠の中から淡々と話す。
「1つはこのままここで人として死ぬということ、そしてもう1つは」
「人を捨て、魔性となって望みを叶える道よ」
淡々と響く声。
「たとえ人じゃなくなっても、シードにまた会えるのなら…かまわない…よ」

葉月は深く考えてはいなかったし、もはや考えることも出来なかった。
ただ…やっぱり死にたくはなかったし、それに・・・。
「そうか、ならば主の願い聞き届けようぞ」
僧は笠を外し、満足げな表情で葉月を見下ろす、銀色の髪が風になびく。
と、その身体が人のものから、異形の…銀色の蜘蛛へと変化していき、やはりカカロと同じように葉月の身体へとのしかかる、
それを抵抗もせず、いやできずにに葉月はただ受け入れるのだった。

どれくらい時間が経過しただろう?
風に頬を撫でられ、目を覚ます葉月…おそるおそる自分の顔を撫でる、潰されたはずの顔面はすっかり元通りになっている。
砕かれた四肢も異常はない…しかし目を開けたその時彼女は本能で悟った、
自分が何になってしまったのかということを。
「や…やだよ、こんなの…やっぱり…」
起き上がり、自分で自分の身体を抱きしめ震える葉月、その目の前にはあの僧が置いていったのだろうか?
黒塗りの剣が地面に突き立てられている。
これで戦えという意味だろうか、いや、違う…この剣の意味は、つまり絶望したならこれで命を絶てということだ。
87Wandering Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 00:15:01 ID:QS+A6Mjs
剣を発作的に握る葉月、刃を握ったために掌が傷つく、しかしそこから流れる血はもう人の証である暖かな赤ではなく、
汚らわしい緑色の血。
「ボク…バケモノに…蜘蛛になっちゃった」
悲しげに呟き、その刃を喉に当てる葉月…だが、そこからどうしても手が動かない。
彼女の胸の中に去来するのは、道場での日々…そしてあの決勝戦の夜の温もり、それを思い出してしまえば
もう命を絶つことなど出来ようがない。
「シード、もうボク人間じゃなくなったけど…それでもキミにあいたいよ…だから…痛っ…」

カカロに傷つけられた個所がまた疼き出す、回復したように見えるがそれは見た目だけ、
植付けられた蜘蛛の力で保たせてるだけだ、早くこの力を我が物にしないといずれ…
ふらりと立ち上がる葉月、彼女は悟っていた、痛みを止める方法をそして命を繋ぐ方法を…
それは…人を襲い、その血肉を喰らうこと。
もちろんそれは人としては最悪のタブーである、だが愛する者のため魔に堕ちる決意をした彼女に
憂いはあれど、迷いはなかった。

そしてその様子を樹上から伺い、満足げに笑う僧侶、銀の姿があった。
もっとも笑顔に隠れてはいるが、その消耗は隠しようがない・・・この地でこれ以上眷族を増やすのはさしもの彼でも
無理といったところか、それでも骨を折った甲斐はあったというもの。
「初音よ…主はひとまず後回しじゃ、主より楽しき玩具を見つけたからの…くくく」


【1日目朝、ポルトガル近郊】
【瑞原葉月(蜘蛛): 状態:消耗・重傷(HP残30%、見た目上は無傷) アイテム:ブラックソード】
【銀: 状態:疲労 アイテム:なし】

【カカロ: 状態:良好 アイテム:不明x2】
88Wandering Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 00:17:34 ID:QS+A6Mjs
※蜘蛛について
現在葉月は銀によって蜘蛛を植えつけられて生かされております、
人の血肉を喰うことでHPが約20%回復し、(死体の場合はその半分)その分だけ肉体が魔に染まっていきます
現在でも反応速度や筋力などがUPし、蜘蛛としての能力も行使できますが、
なりたてなので初音や銀には遠く及びません
それから他人を蜘蛛や贄にすることはまだ(少なくとも今回は、生き残って数十年後くらい経過すれば…)出来ません

12時間以内に何らかの方法で蜘蛛を除去できれば人間に戻れますが
その場合は未回復のダメージが全てフィードバックすることになります
(1人も襲ってない状態だと先の瀕死状態に逆戻りします)

また蜘蛛化そのものによる葉月の精神や思考への影響はないとします
(付随する人食いによって精神がどうなるかは別問題です)
89 ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 00:18:46 ID:QS+A6Mjs
というわけでいきなり冒険してみました
どうでしょう?
90名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 00:19:52 ID:AfDpkS0K
>>89
話自体はいいのではないでしょうか?
ただ

>人の血肉を喰うことでHPが約20%回復し、(死体の場合はその半分)その分だけ肉体が魔に染まっていきます
>現在でも反応速度や筋力などがUPし、蜘蛛としての能力も行使できますが、
>なりたてなので初音や銀には遠く及びません
>それから他人を蜘蛛や贄にすることはまだ(少なくとも今回は、生き残って数十年後くらい経過すれば…)出来ません

>12時間以内に何らかの方法で蜘蛛を除去できれば人間に戻れますが
>その場合は未回復のダメージが全てフィードバックすることになります
>(1人も襲ってない状態だと先の瀕死状態に逆戻りします)
そこまで補足で決めるのはどうかと……。
91名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 00:22:43 ID:ZIKygB8n
こっちでやることになったのか。
とりあえずMAPを暫定的に完成させたので、投下。
これ以上書き込むとちとウザイ気がする。
シベリアとかなら、ヘルマン領、氷河地帯に面した街とかでいけるはずだし。
ttp://f19.aaa.livedoor.jp/~bokuzyo/clip/img/24.jpg

書き手の皆様方、がんばってくだちい。
92名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 00:24:30 ID:qKip09+W
お二人とも乙です〜。

ランスの再現度高! GJです。
3〜4までの間のランスでしょうか。
シィルはもう少し後の時系列みたいですね。

そしてあぁぁ葉月が……
話としては全然OKだと思いますよ。クロスオーバー万歳。
ただ、HP等補足の部分は蛇足かと思います。
その辺は続く書き手さんに任せても良いのではないでしょうか。

……別のキャラで似たようなことやってるカカロの話考えてたのは秘密。
93 ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 00:26:10 ID:QS+A6Mjs
>>90
ですか・・・ただ自分でも能力云々で揉めるかもと思ったので
ある程度は明文化した方がいいかと思いまして
94名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 00:27:14 ID:AfDpkS0K
>>92
感想どもです。
OPの方もケイブリス達の掛け合いの再現度が高くて素晴らしかったです。

>3〜4までの間のランスでしょうか。
作中で解るかと思いますが、ジルに亜空間に引きずり込まれて……の後で書きました。
敢えてこの時期のランスにしてみたり。
95名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 00:29:59 ID:qKip09+W
>>91
乙彼さまです。
素晴らしい。
96Thinking Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 00:52:18 ID:QS+A6Mjs
掴み取れなかった…。
初音はまさに無念の表情で右手をわなわなと振るわせる
その手にはまだ最愛の少女のぬくもりが残っていた。

あの茶番に満ちた開会式が終わると、参加者たちは皆50音順に並ばされドアをくぐって行くことになった。
あるものは無感動に、あるものは泣きながら、そしてあるものは堂々と門をくぐっていく
そしてついに彼女の番がきた。
初音は眼鏡の少年に促されるままにバッグを受け取る、そしてその瞬間
「おいでなさい!かなこ!」
バッグを宙に放ち、注意がそれる絶妙のタイミング、初音は列を逆走し、
彼女がただ1人心から愛する少女の名前を叫ぶ
「は…はいっ!」
返事と共に奏子は初音へと手を伸ばし、2人はお互いの手を堅く握り合う、
まだ投げたバックは宙に舞っている、それほど僅かな時間…
そして空いた手でバッグを掴み、今度こそドアをくぐろうとしたのだったが

「姉様っ!」
奏子の顔が悲しげに歪む…その身体に巨大な白蛇が絡みつき奏子の動きを封じていた。
すでにドアに身を投じていた初音にはなす術もない。
繋いだ手がきしみ出す、初音の足の下では空間が渦を巻いて、その身体を引っ張り込もうとしている。
みしみしと肉体がきしみ、痛み出す…このままでは引きちぎられてしまうかもしれない。
97Thinking Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 01:00:08 ID:QS+A6Mjs
それでも初音は握った手を離そうとはしない…しかしそれも無益な抵抗に過ぎず
初音の手が少しづつ奏子の手から離れていき、初音の瞳が悔し涙で曇っていく
だがそれでも奏子の姿だけははっきりと見える…その唇がかすかに動いた。
(もう…いいんです…どうか姉様は姉様のことだけを考えて…)
反論する時間すらなかった。
(さようなら…姉様)
奏子の手が緩み、初音はそのまま渦の中に飲み込まれていったのだった。

そして、雪の舞い散る巨大な建造物の頂上で初音は決意を固めた。
「かなこ…私が迎えに行くまで生きているのよ」
そしてこんなふざけたところから早く逃げ出そう、方法はあるはずだ…きっと。
そのために何をすればいいのかを考えなければ、ここで焦れば思う壺。
それこそ奴らの手に踊らされたも同然だ。

初音はまずは斥侯として子蜘蛛を何匹か放つ、それほど遠くまでは無理だろうが
それでも彼らは自分の目となり耳となって情報を集めてきてくれるはずだ。
そして彼女自身ははやる気持ちを抑えながら、まずはじっくり考えることにした。

「それにしても持たされた得物がこれとは皮肉ね」
初音は手にした長物を忌々しげに振り回す、シャランと綺麗な音が鳴るのだが
それが余計に腹立たしく思えてくる。
「まぁ…いいわ…銀、今はお前に構っている場合ではないのよ、かなこを見つけて
それで気が向いたらあの時の続きをやりましょう」

【1日目朝、巨大戦艦頂上】
【比良坂初音: 状態:良好 アイテム:錫杖】
(蜘蛛に周囲を探索させています)
98素敵な追いかけっこ ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/03(水) 01:01:39 ID:cZFdWwxE
「解剖しちゃるやき!」
「キャアァァァァ!!」
リーザス領最北に位置するアランの街に少女の悲鳴が響きわたる。

血塗れの包帯の男が狂気の笑みを浮かべ、狂刃を片手に少女を追う。
迫り来る死と狂気から逃れんと少女は駆る。

その少女の名は高円寺沙由香。
またの名を、侵略軍団ダイラストの怪人軍団と戦う正義のヒロイン『超昂天使エスカレイヤー』。
エスカレイヤーに変身することが出来れば、迫り来る男も勝てない相手ではない。
だが、殺し合いという異常な状況に、変身に必要な性的興奮など覚えるはずも無く。
ドキドキダイナモのエネルギーは、今現在殆ど空であった。
つまり、今の彼女は何の力も無い、唯の少女に過ぎないのだ。

迫り来る男、その名は長谷川均。
またの名を素敵医師。
薬の打ちすぎて壊れてしまった、元・天才医師である。
彼にとって殺し合いという状況は何のことは無い。
いつもの日常と変わらない、やりたいことをやるだけだ。
そして、目の前に少女がいたから襲い掛かった、それだけの話だった。
99 ◆onsJGWZT0w :2005/08/03(水) 01:02:01 ID:QS+A6Mjs
というわけで、今夜は寝ます
100素敵な追いかけっこ ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/03(水) 01:03:52 ID:cZFdWwxE
生死をかけた追いかけっこは続く。
だが、極限状況の中、全力で走り続け、ただの少女である沙由香の体力は限界が近づいていた。
唐突に走るその足が縺れる。
バランスを崩し、支えきれなくなったその体は地面に投げ出された。
立ち上がろうとするが、疲労と恐怖に足が震え、すぐに立ち上がることが出来ない。
その様子を見つめ、素敵医師が狂気を浮かべ沙由香にゆっくりと近づく。
「いや! 助けてっ…マドカ…恭ちゃん…!」
迫り来る死を前に、後ずさりながら少女は愛しい名を呟く。
だが、そんなことは関係なく素敵医師は少女を追い詰め、剣を持ったその手を振り上げる。
「さあ! 内臓見せちゃり!!」
振り上げられた狂刃が下ろされ、少女に迫る。
だが、その狂刃は少女に届くことは無かった。
その刃が少女に達しようとした瞬間、素敵医師の体は大きく宙を舞った。

「へっ、お前みたいな野郎はどこに行ってもいるもんだな」

いつの間に現れたのか、その場に一人の男が悠然と立ちふさがる。
その男。身に纏う学ランは純白、鋭く光る眼光は狼の様。
そしてその髪型は茄子を連想させた。

「なんがや、お前は! い、い、いきなり蹴るなんて卑怯やき!!」
蹴り飛ばされた顔面を押さえ、立ち上がった素敵医師が叫ぶ。
「俺の名は斬間狼牙…聖城学園の番長だ。覚えときやがれ!」
それだけで常人ならば怯むほどの威圧感を放ち、その男、斬間狼牙は素敵医師を睨みつける。
101素敵な追いかけっこ ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/03(水) 01:05:08 ID:cZFdWwxE
「あんた大丈夫か? …って、委員長?」
振り向き、沙由香の顔を見た狼牙が間の抜けた声を上げる。
「えっ? あの…」
「…ああ、いや、人違いだ気にするな」
そういって狼牙は沙由香から視線を外し、目の前の素敵医師に視線を戻した。

「じゃ、邪魔せんとき、その子を解剖するんやき!」
素敵医師はその手に持った剣を振り回し狼牙に向かい咆える。
「けっ、前言撤回だ。お前みたいないかれた野郎は初めてだぜ」
吐き捨てるようにそういうと、狼牙は素敵医師に向かって駆け出した。

【一日目朝、リーザス領最北アランの街】
【斬魔狼牙: 状態:良好 アイテム:不明】
【素敵医師: 状態:少しのダメージ アイテム:リーザス聖剣】
【高円寺沙由香: 状態:疲労 アイテム:不明】
102名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 01:44:04 ID:ZxIufOH5
おぉ、ついに始まったんだ
書き手の皆さん、乙であります
みなキャラの特徴がうまく出ていて、その場面を想像しやすいです
今後もがんばってください



…開始早々葉月が犯されるなんて夢にも思わなんだw
103名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 02:15:55 ID:qKip09+W
乙です!

◆onsJGWZT0w氏
姉さまの静かな怒りが伝わってきますね。

◆Wf0eUCE.vg氏
確かにちょっと委員長に似てるかも。眼鏡でおにくんだしw
そしてバトル勃発! 続きが楽しみです。


そして投下宣言します。
104人外の邂逅(1/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 02:17:52 ID:qKip09+W
 自由都市群、カスタムの町。
 街中の一角にある広場で、その大柄な赤い髪の女はリュックを漁っていた。
「地図に食い物、これは……名簿かい」
 手に取って開いてみる。
 その中で自分が知っている名は二つ。
 一つは自分、そしてもう一つは……
「修羅」
 900年以上もの間、その女――フェンリルの母であるディアドラを追って戦い続ける呪われの騎士。
 自分を真っ向から打ち破った男。
 自分が純潔を捧げた男。
 自分を霧散させた男。
「ありゃあ、いい男だったねえ」
 邂逅の時を思い出し、にやりと笑う。
 最初の会場でもちらりと見かけた。
 気軽に声を掛け合うような関係ではないし、あの場で戦う訳にもいかなかったから放置していたが、修羅の方も自分には気付いていたはずだ。
「しっかし……ほんと、なんであたしが生きてんのかねえ」
 最後の記憶は、修羅に抱かれて逝った時のものだ。
 そこからいきなり、あの会場に飛んでいる。
 ディアドラが生き返らせてくれたわけではないだろう。第一、ここではそのディアドラの存在を全く感じ取ることが出来ない。
 不可解ではあるが、だが――
「それでも感謝するべき、なんだろうね」
 自分は戦いに生きる者だ。戦いが好きとかいうレベルではなく、神聖視すらしている。
 修羅に敗れた時、確かに自分は満足していた。戦って散るなら本望だと。
 だが、こうして再び生を得た今、どうしようもなく身体が求めてしまう。戦いを。自分はまた戦いを求めている。
 おあつらえ向きというべきか、ここは戦いが推奨された場だ。
 しかも、最初の会場で見た限り、腕の立ちそうな猛者がごろごろいる。
 半ば強制されている戦いであることが気にかかるが、ここなら自分を満たしてくれる戦いに巡り合えるだろう。
 そう、どこにいても自分のやることは変わらない。強者に真っ向からぶつかり、勝ち、殺すだけだ。
 そして、その為に必要な得物も、しっかりとリュックに収まっていた。
105人外の邂逅(2/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 02:19:45 ID:qKip09+W
「よっ!」
 掛け声と共に引きずり出す。
 ズン……と音を立てて、その得物は大地に突き立った。
 明らかにリュックに収まりそうにない大剣。というより、剣の形に整えた鉄の塊。
 その威容にフェンリルは思わず口笛を吹いた。
「ちょいと重いが、まあ振るえないほどじゃないか。……えーと、なんだい? 『かち割り』? ひねりの無い名前だねえ」
 付属の覚え書きに記述されていた武器の名前に苦笑し、『かち割り』を振って肩に担ぐ。
 ずしりと、頼もしい重みが肩にかかってきた。
「さて、そんじゃとりあえず歩き回ってみるとしようかい」
 武器の重みに満足した笑みを浮かべ、フェンリルは気の向くままに歩き出した。


106人外の邂逅(3/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 02:23:02 ID:qKip09+W
「……全弾、装填完了しました」
 同じくカスタムの一角にある民家の軒先、その小柄な緑の髪の少女もまた、支給品の点検を行っていた。
 彼女のそれは機械式の弓。ただし、一度に七本もの矢を同時発射できるとんでもない代物である。
 セブンスター。それがその武器の名前であった。
「とはいえ、使いづらい武器ですね。どちらかというとハズレです」
 矢は三十本入っていたが、それでもフル活用したら四回しか撃てない。また、装填にも時間がかかる。
 『数撃ちゃ当たる』を地で行く武器であるゆえか、一つ一つの照準が滅茶苦茶であるため、節約して撃ってもまず当たらない。
「奇襲、一撃離脱しかありませんね。首尾よくそれで倒せれば矢も回収できます」
 それでも、その武器での最も効率的な戦い方を、彼女――マドカの人口頭脳は瞬時にはじき出す。
 これからの自分の行動も、迷いなくすでに決定していた。
(沙由香さん、恭平さんの保護を最優先。障害は全て排除します)
 沙由香は変身前の姿だ。この状況でDDD(ドキドキダイナモ)のエネルギーを充填できる可能性は低い。
 つまりは、恭平と同様、一般人でしかないのだ。
 しかも、唯一戦力として当てに出来そうだったななかは、すでに帰らぬ人となっている。
 他に知り合いのいないこの状況では、実質戦力はマドカ唯一人であった。
(できれば信用できる協力者を見つけたいところですが……他の参加者の情報が少なすぎます)
 強いて言うなら、会場で共に沙由香を止めたあの男だろうか。
 だが、あれだけでは信用に足りないし、どこにいるかも不明だ。結局、当てにはできない。
(とにかく、行動しましょう)
 リュックを背負い、セブンスターを両手に抱えて、マドカは移動を開始した。


107人外の邂逅(4/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 02:29:13 ID:qKip09+W
 大柄な女は角を曲がる。
 小柄な女も角を曲がる。
 そして両者は――
「おや? さっそく最初の相手が見つかったかい」
「……うかつでした」
 ――数十メートルの距離を置いて、対峙した。



【一日目朝、自由都市群、カスタムの町】
【フェンリル: 状態:良好 アイテム:かち割り】
【マドカ:   状態:良好 アイテム:セブンスター】
108 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/03(水) 02:31:06 ID:qKip09+W
投下終了。
も、寝ます。
109名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 03:34:49 ID:AyGJQ/JI
職人さん、乙であります
どーでもいい事なんだが素敵医師の本名、はじめてしりました
110名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 12:03:28 ID:SOt+mFfR
職人さんたち乙!
だけど葉月話微妙・・・
話自体は構わないけど序盤でやる話ではないと思う
最初に1人1人のキャラをしっかり描くって約束があるのに
しょっぱなから組み伏せられて眷属化はつまらない
早い者勝ちがリレーのルールだとしてもあまりではないかね

まぁ他の人が良いってならいいけれどさ
111名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 12:06:24 ID:07Dm2K0V
最初に1人1人のキャラをしっかり描くって約束があるのに

…何それ?
112名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 12:15:44 ID:SOt+mFfR
前スレでなかった?
キャラを深く書くから人数少な目って
70人以上いるロワならこれでも十分だろうが
スレ見たらいきなり始まっててすでに葉月はやられて眷属化していましたってズガンと同レベルの扱いジャン
ある程度の数投票されて参加しているって認識を作者に持って欲しい
あれじゃあんまりだ
作品的にもテンポ速すぎるし
113名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 12:28:26 ID:07Dm2K0V
テンプレにもなってなければ大多数の賛同を受けたわけでもない議論上の話を持ち出して煽るのはあんまりだし、
50人という人数を過小評価するのも止めて欲しいねえ。
そういう基本ルールを抜いても、前提として二次創作な上に殺し合いなんて設定なんだから、妙な期待をするなっていう。
114名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 12:35:13 ID:AfDpkS0K
一応企画の方向性として決着がついたことでは?
でも深く書くの意味が違う気がする……。
あれは
ズガン、一レス殺、死体役は止めて殺すにしてもしっかり描いてあげましょう。
という意味だったと思うけど……。

葉月も戻れる可能性あるらしいし、自分で筆を取って導いていくのも一つの手かと。
115名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 17:08:10 ID:S8FwBlrx
ランスが筋肉達磨三人衆言うてるけど、VとWの間のランスならパットンと面識ないんジャマイカ?
116名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 20:49:12 ID:VVQWwrY0
>>112
ズガン同レベルなんてあまりにも失礼だよ
117名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 21:01:49 ID:3p3FPSsX
>>112
眷族といっても葉月自身の意思は残ってると明言されてるわけだし
むしろ葉月が今後どうなっていくのか見所では?
118名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 21:04:52 ID:3EEog29/
ちょっと気になったんで、ざっとまとめてみたけど格闘系の人多いね。
パットン・悪司・一発・麻美・アエン・ハイネ
勇二・ジョー・羅喉・ミュシャ・牡丹・カカロ・フィル
119名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 21:08:01 ID:S8FwBlrx
狼牙モナー。
120名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 21:14:37 ID:VjeU/3ox
Only You全員格闘系だΣ(゚Д゚
121名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 23:37:01 ID:07Dm2K0V
普通に考えれば剣術使いや兵器使いが圧倒的に有利になりそうな状況だけど、アリスの格闘家は化物だからねえ。
ちなみにトーマの技能LVわかる人いる? もしくは3で何を武器に使ってたか覚えてる人。
122名無しさん@初回限定:2005/08/04(木) 01:40:32 ID:BfTa1M//
さすがに今日は投下ないね
昨日で書き溜めたてもの全部出た感じ?

トーマはわかんねえ
人類最強クラスだから、剣戦闘Lv2くらいは持ってそうだけど
123名無しさん@初回限定:2005/08/04(木) 02:38:19 ID:cN1DcADK
正直このペースだと最初の10人弱ぐらいはサドンデスしてもいいとは思うけどね。
まあ、一口にサドンデスでも本当にただ人が死ぬ奴から、
ちゃんと後の話につながる奴まで千差万別だから、結局は空気嫁になっちゃうんだろうけど。

しかし、四肢の間接破壊に顔ぐちゃぐちゃのレイープか。
張り切ってるなぁw
124名無しさん@初回限定:2005/08/04(木) 08:29:17 ID:XU/o7h/P
今回は投下なかったのね(´・ω・)
書き手さん、1話作るのにどのくらい時間かかるの?
125名無しさん@初回限定:2005/08/04(木) 14:54:46 ID:d8JUAabP
今思ったんだが
作中時間をどうするかはともかく、その作品の登場人物の時間だけは
きちんと合わせたほうが後々トラブルが少なくなると思う
ランスシリーズなら全員できる限り初出であるランスの時間軸である
V〜Wの間に合わせるとか

まぁこれは正直作者次第だと思うので、一応考慮してねという程度です。
126名無しさん@初回限定:2005/08/04(木) 15:07:21 ID:LZNI9Xu3
961 名前:名無しさん@初回限定 投稿日:2005/07/31(日) 12:45:37 ID:D5E56qu/
羅喉に関しては票があっただけにどうするか決める。他は問題が出ない限りは書き手の自由。
を提案しておく。
>>957のように別々の世界から召還も面白いと思う。
爽やか羅喉とED前勇二、鬼畜王ランスと3又は6パットンとか面白そうじゃね?


962 名前:名無しさん@初回限定 投稿日:2005/07/31(日) 12:48:36 ID:1HuQs3J7
>>957のように別々の世界から召還も面白いと思う。
爽やか羅喉とED前勇二、鬼畜王ランスと3又は6パットンとか面白そうじゃね?

これ同意。
別世界から呼ぶデメリットがどこにあるんだっていう。
会って会話に矛盾が起きたらむしろ面白いじゃん。


むしろ別々の方が面白いという結論が出ております。
127名無しさん@初回限定:2005/08/04(木) 16:51:45 ID:yBhom1cn
既に牽制球投げ出してる人間がいるのかw
書き手自体少ないというのにお目出度いことだ。
128 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/04(木) 20:37:26 ID:RsN53ZjA
連荘になってしまいますが、投下宣言です。
129閃真流の名に懸けて(1/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/04(木) 20:39:27 ID:RsN53ZjA
 ――お前達には殺し合いをしてもらう。
 魔人ケイブリスはそう言った。
「そんなこと、できるわけがない!」
 だが、そうして勝者となる以外に日本へ帰る方法はないだろう。
 彼の身に宿る破滅の刻印。そのために、各国から彼の命を狙って暗殺者が送り込まれている。
 彼――魔神勇二が行方不明になったからといって、それで終わらせる連中ではあるまい。
 秋月や美咲、若人など、勇二の友人達に接触し、手段など選ばず行方を知ろうとするに違いない。
 事実、秋月と美咲は危うく犠牲になりかけたことがあるのだ。
 このまま帰らなければどうなるか……その先を想像しかけ、勇二は頭を振ってその考えを打ち消した。
「くそっ! 俺は、俺は一体どうすればいいんだあっ!?」
 天に向かい、絶叫する。
 その時、聞きなれた声が勇二の耳朶を打った。

「そんなことで悩んでいるのか……愚か者が!」

 ハッとして、思わず周囲を――経験上、高いところを――見回す。
 そして見つけた。
 森の中でも一際高い、少し離れた大木の天辺に腕組みして立つ虎頭の男を!
「タイガージョー! よかった、最初にあんたに出会えるなんて……」
「うむ、無事で何よりだ。だが勇二よ、そのようなことで何を悩んでいる!」
 登場早々叱責してくるタイガージョー。
 自分なりに必死になっていた勇二は、少しムッとしつつ反論した。
「何をって……俺の命が狙われていることは知っているだろう!
俺が戻らなければ、代わりに秋月達が何をされるか分からない! だから悩んでいるんだ!!」
 だが、タイガージョーはその言葉にフッと失笑を返しただけだった。
 そして、諭すように語りかける。
「勇二よ、友を思うその気持ちがあるならば、悩むことなど何もないはずだ。日本に帰る。そのためにすべきことも自ずと見えてこよう」
130閃真流の名に懸けて(2/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/04(木) 20:41:29 ID:RsN53ZjA
「だが、帰るためには……! ……そうか……わかったよ、タイガージョー!」
「うむ!」
「友のために、あえて情を捨てて殺戮者になれというのだな!?」

「こ の 大 馬 鹿 者 が あ あ ぁ ぁ ぁ っ ! !」

 ――バキイィィィッ!!!

 一瞬で目の前に現れたタイガージョーの鉄拳が、勇二の頬に炸裂した。
「ぐはあぁぁっ!? タ、タイガージョー、いきなり何を!」
「いきなり何をではない痴れ者が! 悪の走狗と成り果てるが閃真流を修めた武術家の道か!? 断じて否!!
人を活かすことこそが閃真流人応派の極意なり!」
「だ、だがタイガージョー……それではどうやって帰れと言うんだ?」
「分からぬか……ではよく聞け勇二よ。こちらが相手の言うことを聞くのではない。相手にこちらの言うことを聞かせるのだ!
このような悪魔的所業に加担してはならぬ。殴ってでも止めてみせよ!」
「!!」
 ガーン、と頭を殴られたような衝撃が勇二を襲った。
 早く日本に帰ることだけを考えるあまり、敵に提示された条件のみが唯一の方法だと錯覚していた。
 自分の視野の狭さに無性に恥ずかしさがこみ上げてくる。
「くっ……そ、その通りだ、タイガージョー……俺は、なんて浅はかなんだ……!」
「分かればよい。それも若さゆえ」
 一つ頷き、タイガージョーはさらに続ける。
「その為には、この首輪を外さねばならん。まずは参加者を保護しつつ、首輪の解除法を探すのだ。分かるな、勇二よ」
「ああ。だがそう簡単にそんな方法が見つかるだろうか?」
「見つかるか、ではない。見つけ出すのだ。全てのものはいつか朽ち果てるが自然の摂理。この首輪とて例外ではない」
 タイガージョーの言葉に、勇二は大きく頷いた。
 考えてみれば、日本でも、こういう機械にめっぽう強い少女がいたではないか。
 参加者の中にも、そういう人物がいるかもしれない。希望は十分にある。
131閃真流の名に懸けて(3/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/04(木) 20:43:59 ID:RsN53ZjA
 ならば、やはりまずは参加者の保護が最優先だ。殺し合いに乗った参加者の毒牙にかからぬ内に、一人でも多く。
「ああ、そうだな。では行こうタイガージョー! 俺とあんたが揃えば、どんな相手にも負けないはずだ!」

「こ の 大 た わ け が ! !」

 ――ベキイィィィッ!!!

 先ほどと反対側の頬を殴られて、勇二は盛大に吹っ飛んだ。
「ごふうぅぅっ!? こ、今度は何だ、タイガージョー……?」
「お前はこのフィールドに一体何人の参加者が散っていると思っているのだ、愚か者!
共に行動すれば、それだけカバーできる範囲が狭まるということに気付かんのか!?」
「!!」
 ガガーン、と再度頭を殴られたような衝撃が勇二を襲った。
 自分達二人が揃えば、確かに大抵の敵には負けないだろう。
 だが捜索範囲は確実に減少する。実質、手分けした場合の半分と言える。
 それだけ、保護できる参加者は減り、殺し合いに乗った者の手にかかる参加者が増えるのだ。
「くっ……そ、その通りだ、タイガージョー……俺は、なんてどこまでも浅はかなんだ……!」
「分かればよい。それもまた若さゆえ」
 一つ頷き、タイガージョーはさらに続ける。
「とにかく、ここからは別行動だ。ついては勇二よ、お前に渡しておくものがいる。来るが良い!」
 『ある』ではなく『いる』と発言し、タイガージョーは自分のいた大木の方を振り返った。
 と、大木の陰から何かがふよふよ〜っと飛んで、タイガージョーの頭上に滞空した。
「タイガージョー、これは!?」
「私の支給品だ。その名も専属看護婦さん!」
「専属看護婦さん!?」
 よく見ると、確かに看護婦さんに見えなくもない。
 小さな円盤に乗っており、なぜだかやたらとにこにこした表情をしている。
 何をやっているのか、円盤から妙な光がタイガージョーに放射されていた。
「看護婦さんよ、アイテム譲渡だ。以後は勇二についていくが良い」
 タイガージョーがそう言うと、得心したのか勇二の頭上へと移動する。
 さっそく同じ光が勇二に向けて放射された。
 と、徐々にではあるが、殴られた頬の痛みが引いていくのが分かった。
132閃真流の名に懸けて(4/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/04(木) 20:46:30 ID:RsN53ZjA
「治療してくれているのか?」
「うむ、私よりお前が持っていたほうがよかろう。もし怪我をした参加者を保護したら譲渡してやるが良い」
「ああ、恩に着る。タイガージョー」
 礼を言う勇二に一つ満足そうに頷くと、タイガージョーは腕を組み、大声で命じた。
「では行け、勇二よ! そして閃真流の名に恥じぬよう戦い抜くのだ!」
「ああ分かった! あんたも死ぬなよ、タイガージョー!」
 叫びと同時に拳を突き出す。タイガージョーもそれに応じた。
 拳と拳がガシッと打ち合わされる。そして、それを合図に、勇二は背を向け走り去っていった。


(……そうだ、最後まで諦めず戦い抜くのだぞ、勇二……)
 勇二の姿が完全に視界から消え、その場にはタイガージョーだけが残った。
 と、突如――
「ぬ……ぐうぅ……」
 ガクリとタイガージョーの膝が落ちた。
 呼吸も僅かに荒くなり、先ほどまでは微塵も感じさせなかった気の乱れが露わとなる。
 明らかに、相当のダメージをその身に負っていた。
「……行ったか」
 そして森の中から一人の男が姿を現した。
「うむ……待っていただいた事、感謝する」
「なに、あ奴を気にして貴様が本気を出し損ねるようでは興醒めじゃからの」
 その初老の男――山本一発は、白いひげを撫でながら勇二の消えた方向を見据えた。
「やせ我慢しおって。やはり弟子の前で無様な姿は見せられんか」
「……」
 そう言う一発の身体にも戦いの痕跡は残っていた。
 上半身の衣服は衝撃で吹き散らされたように破れており、胸には青あざが出来ている。
133閃真流の名に懸けて(5/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/04(木) 20:48:25 ID:RsN53ZjA
「しかも支給品まで渡すとは……形見のつもりか、貴様」
「……勘違いしてもらっては困る」
 その言葉に、タイガージョーは立ち上がった。
 ヒュウウゥゥゥゥゥゥ……コオオオォォォォォォォォ……
 息吹一つで呼吸を整え、痛みを気力で押さえ込む。
 そして振り返った時には、ベストコンディションと変わらぬ、無敵とも思える武術家の闘気がその身体から立ち上っていた。
「あれに必要なものと思えばこそ預けたに過ぎん。無論、私は勝つつもりでいるのだ。閃真流の恐ろしさ、私はまだその片鱗しか見せてはいない」
 一発はその言葉に笑みを見せた。獰猛な、肉食獣の笑みを。
「それでこそよ。死ぬつもりの相手と戦ってもつまらんからの!」
 両者が構えると同時に空気が変わった。びりびりと刺すような大気が、辺りの木々をざわめかせる。
 辺りの小動物達は、異変を察してすでに逃げ去っていた。
「先ほどの話は本気だ。貴方の力も貸していただくぞ」
「ならば儂を倒して言うことを聞かせてみせい!」


 ――激突。大気が震えた。



【一日目昼前、カラーの森(ヘルマン領寄り)】
【魔神勇二:      状態:良好     アイテム:不明、専属看護婦さん スタンス:参加者の保護、首輪解除法を探す】
【タイガージョー:   状態:ダメージ・中 アイテム:なし】
【山本一発:      状態:ダメージ・中 アイテム:不明】
134閃真流の名に懸けて(6/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/04(木) 20:49:22 ID:RsN53ZjA
【備考:専属看護婦さんについて】
専属看護婦さんは喋れません。
所有者についていく、所有者の治療をする以外の自立行動も行いません。
詳しい回復効果のほどは続く書き手さんに任せますが、あまり強力な回復力は持たせない方向でお願いします。
勝手な目安としてですが、このくらいが丁度良いかと思います。

・骨折等の大怪我:止血して安静にしていれば半日ほど(動いているなら治らない)
・致命傷:治せない

135 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/04(木) 20:50:49 ID:RsN53ZjA
投下終了です。
136名無しさん@初回限定:2005/08/04(木) 23:57:46 ID:cN1DcADK
おお、魅力的な対決カードがきたな。
勇二とタイガージョーのかけあいもなかなか良くてグッジョブ。
137名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 00:18:23 ID:cNVyIBMe
キャラは被らなかったがネタが被ったなぁ……w
もちょいしたら投下しまつ。
138 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/05(金) 00:28:10 ID:hElzzOZX
投下します、あと初の死者です
あえて大物を殺しました
139最初の犠牲者 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/05(金) 00:29:26 ID:hElzzOZX
街の中、初老の紳士、支倉ハイネは背後からの殺意に踵を返す。
そこに立っていたのは剣を構えた青年剣士、シード・カシマだった。
「話そうという雰囲気ではないようですね…どうやら」
ハイネの言葉を肯定するかのようにシードは改めて臨戦体勢を取る。

「こんな身体の俺でも待っててくれる人が助けなきゃいけない人がいるんです…だから死んでください!」
叫びと同時に走るシード、その太刀筋は間違いなく殺意が込められている。
罪悪感?躊躇?
そんな物はあの夜からもう自分には必要なくなった。
今はこの忌わしき肉体でひたすら地の底を目指して立ち塞がる者は全て斬り、そして女を犯す日々だ。
何度絶望したか分からない、何度死のうとしたかも分からない。
だがそれでも…。
(葉月)
その度にシードは恋人の笑顔を思い出し、いつかまた彼女の元に戻れる時を願い、
そうすることで潰えてしまいそうな僅かな希望を奮い立たせ、ここまで生き抜いてきたのだ。
だから…こんなところで死ねない、死ぬわけにはいかない。
ましてここには葉月がいるのだ、あの時確かに確認した。

だが…彼女の後姿を目の当たりにして、彼は固まってしまった。
会ってどうする?
そりゃあ会いたい、会って抱きしめたい…でも
こんな忌わしい肉体で、血に染まった心で彼女に会ってどうするというのだ。
結局…彼は何もできなかった。

しかし彼は一つの決心を固めていた。
それはただ葉月のために、その身体を血に染めること。
あの地獄への道のりと同じように、立ち塞がる…いや目の前の相手は全て斬り、
そして最後は自分も命を絶つ、こうすれば葉月は助かる。
140最初の犠牲者 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/05(金) 00:31:00 ID:hElzzOZX
だから一刻も早く、1人でも多くを殺さなければならない…しかし。
幾多もの相手を斬ってきた自分の剣技が、まるで目の前の紳士には通用しない。
そればかりか…
「大切な者がいるのは君だけではない」

静かな、しかし怒りを秘めた一喝と共に繰り出された拳がシードのこめかみを掠める。
衝撃で脳が痺れる、天使喰いとして人を超える強靭な肉体を持ってしてこれか?
目の前の男の実力を読み違えたことに歯噛みするシード。
だが…もう退くわけにはいかない、なぜならば…目の前の相手もまた自分を殺そうとしているのが明白だったからだ。

支倉ハイネにもまた生きて還らねばならぬ事情がある。
PM崩壊後、彼は自らの主である桃山リンダと共に野に下っていた。
いつの日かPMを再興させるため…いやそれ以前に頭は切れるが世の中を知らない未熟な主を命の続く限り支えるため。
いや、自分だけではないのだろう?ここに集うもの全てがそれぞれの世界に愛すべき誰かを残してきているのだ。

だからこの目の前の、自分が一番不幸だと思い込んでいるような…勿論ハイネにはシードの苦しみを理解することなど叶わないが
シードの一撃をたくみに交わし、間合いを取りながら冷笑するハイネ、
この青年、腕もいいし場数も踏んでいるようだが、力の配分が苦手な様子…ガス欠を待って一気に蹴りをつけてやろう。
シードにもハイネの狙いは分かっていた、しかし、攻撃の手を緩めるわけにはいかない。
手を止めた時が自分の死ぬ時だ。
(何か…きっかけさえあれば…)

その時だった。
背後に気配、無論その程度で動じるハイネではない。
その気配の主が、いきなり攻撃をしかけて来ても、その余裕はまるで変わらない。
(熱線…この攻撃規模だと、青年の仲間ではあるまい…おそらく2人まとめて屠るつもりか、だが)
ハイネは背後から放たれた熱線をギリギリまで引き付けて交わす、しかもその動きはシードから見てブラインドになっていた。
(彼の反応速度からいってこれは避けられまい、終わりです)
果たして…シードの身体は炎に包まれる、常人では生きていられないほどの高温…だが、その時ハイネは信じられない物を見た。
141最初の犠牲者 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/05(金) 00:32:10 ID:hElzzOZX
灼熱の炎に通まれながらも、シードは動きを止めずにこちらに突進してきたのだ。
(バカな!)
ハイネは自分が読み違えたことを悟った、しかしもう間に合わない、万事において抜かりのないこの執事が勝利を確信した時、
思わぬ落とし穴が待っていた。 
そして回避の最中のスキだらけのハイネの首筋に刃が押し当てられ、一閃。
半ば切断された自分の首から噴き出る血の海の中でハイネの脳裏に、
(私も執事である前に…親…だったのですね)
袂を分かった娘たちの顔が…浮かんで消えた。

一方、ふらつきながらも生き残れたことに安堵するシード。
「防御力が落ちてる…やっぱり」
ラベルケースを犯したことにより手に入れた炎に対する絶対的な防御力が弱体化している。
身体には火傷1つ出来てはいないが、体力はかなり持って行かれている。
今の魔法を撃った相手がどこに潜んでいるかは、ある程度見当はついていたが…今は自重すべきか。
「葉月…」
それだけをあえぐように呟き、シードは街を出て行ったのだった。


そして最後に残ったのが
「何よあいつ…ファイヤーレーザーの一撃に耐えるなんて」
威力が自分の思ったよりも落ちていたこともあるが、
それでもちょび髭の執事を斬殺した青年のタフネスに魔想志津香は舌打ちする。
おそらく炎に対する耐性があるのだろう。
多少効いてはいるようだが…撃つか。
彼女の使いうる最強の攻撃呪文である白色破壊光線、あれなら倒せる、だがあの呪文は激しく燃費が悪い。
ただでさえ消耗が激しく、しかも威力も保障されない状況で使うのはためらわれた。
142最初の犠牲者 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/05(金) 00:40:06 ID:hElzzOZX
志津香は考える。
あのホールの中から彼女の考えは一貫している。
自分とその仲間以外は全員倒す、これが脱出への一番の近道、彼女はそう考えていた。
ランスはともかくマリアやシィルは怒るだろうが、あんなお人よし連中と

「私は違うのよ」
博愛主義では生き残ることは難しい、だがそれでも彼女らに人殺しは無理だろうし、させたくもなかった。
だから自分が戦わなければならない、彼女らは彼女らで脱出のプランを練ればいい。
自分はその援護射撃をする、それでいい。
少なくとも彼女らと合流できるまでは、こうやって出来る限りを倒していく、それだけだ。

「さてと、行こうかしら」
志津香はシードが去ったのを見て自分も先へ進む。
その歩みは非力な魔法使いとは思えぬほど速かった。


【一日目朝、リーザス城近郊】
【シード・カシマ:   状態:ダメージ(HP残り60%)アイテム:人切りの剣、不明】
【魔想志津香:    状態:良好、MPやや消耗 アイテム:身軽の羽】

【支倉ハイネ:死亡】
(残り47人)
143 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/05(金) 00:41:28 ID:hElzzOZX
終わりました、痛み分けというのも選択肢にはありましたが、
あえてスバッと殺してみました。
144名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 00:49:13 ID:RugEcWXE
おおGJ!
ハイネが逝ったか、南無。
次の戦況を予測できるがゆえに、か……冷静さが逆に仇になったな。
放送まで生き残ったとしたら、アエンの反応がちょっと楽しみ。

志津香はともかくシードがマーダー化したのは予想外。
次も期待してます。
145名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 01:24:49 ID:qKS4HWWp
書き手さん、乙です

◆/XKGMGuaLw 氏
こんな状況でもいつもの展開、アホだw…とか思ってたら一転してシリアスな展開に
この先が気になる

◆V.AE0Rs0Lw 氏
シードのマーダー化も予想外だったが、こんなに早くハイネが逝くとは…
ちなみにシードって何人くらい天使喰った状態なのかな?
146強者達 ◆CysS/VAVo. :2005/08/05(金) 01:42:38 ID:cNVyIBMe
「おかしいな。私は魔神邸に招待されたはずなのだが……」
 会場の奥では身の毛もよだつような魔物が下品な笑い声を浮かべている。
 殺し合え、と叫んでいるがそれより
「……」
 知り合いはいないのか、と会場を見渡す。
 今すぐにでもあの化け物達へ向かっていきたい気分だが、熱くなっては周りを見渡せない。

 第一にどうやって自分達をここに連れてこられたのか。
 第二にこの首輪は一体何なのだ?

 だが、その第二の疑問は直ぐに解けることになる。

 少しすると彼の強敵と書いて『とも』と呼ぶ男の弟の姿を遠くに見つけることができた。
「あちらは私に気付いていないようだな」
 前の方へ出た彼から今にも飛び掛りそうな怒気が感じ取れる。
 恐らく怒りで辺りを見渡せてないのだろう。その辺りがまだまだ兄と比べて若い。
 だが、それも一人の少女の死によって思いとどませられる。
 彼から感じる怒気はより膨れ上がったが、勇一の足は止まった。
 それと同時にもう一つ、会場内に強敵の気が沸き立ったのを感じる。
 何処に潜んでいるかは、姿が見えず確認できなかったが、確かに知った彼の気を感じていた。
 少女の死で同じように怒りを顕にする勇一の気を。
 また同じように怒りを顕にする自分もそこにいた。


「やれやれ、出会う暇もなかったな」
 ゲームの説明が終わった後、あの兄弟と接触しようとしたが、五十音順だったせいで自分の順番が直ぐに来た。
 おかげで勇一の姿を探すことすらままならなかった。
 だが、彼らより早く前に呼ばれたおかげで、名前から自分がいるのは確実に伝わったはずだ。
147強者達 ◆CysS/VAVo. :2005/08/05(金) 01:44:04 ID:cNVyIBMe
 しかし、名簿を見渡しても勇一の名前は見つからないのが不思議だった。
「確かに彼の気を感じたのだが……」
 死力を尽くし闘った宿敵の気を勘違いするはずがない。
 きっとこの中のどれかにいるはず。と信じる。

「出会えるといいのだが」
 こんな虫唾の走るゲームに乗る気などしない。
 凶悪な化け物達だったが、自分と『とも』の力を合わせれば倒す事も決して不可能ではないはず。
 とっとと奴らを倒し、残された雪の元に戻らなくては。
「しかし、首輪が厄介だな……」
 先程の語りは、首輪を外した場合の仮定だ。
 何をするにしてもコレが外されなくては事は起こせない。

「―――誰だ?」

 突如、羅喉は声を出す。
 背中から語るように自分の後ろへ向かってと。

「良く気づいた……」
 背にした建物の影から獰猛な獣のような声が返ってきた。
 否、その姿は獲物に飢えた獣そのもの。
 沸き立つ彼の闘気は、一点に自分へと向けられている。
「さぁ、気づいたのなら俺と戦ってもらうぞ」
 獣が構える。
「―――戦う気はないといったら?」
「クックック。だが貴様の身体は正直だ」
 身体は自然と構えをとっていた。
 目の前の強者に対して、武闘家の血が騒ぐ。
「俺はゲームに乗る気はない」
148強者達 ◆CysS/VAVo. :2005/08/05(金) 01:45:25 ID:cNVyIBMe
「それがどうして私と戦いを?」
 二人はじりじりと足を地面に摺り寄せる。
「知れたこと! 俺の生き甲斐は強者と戦うこと!
 貴様と同類だ!」
 
―――貴様と同類だ!

 その言葉を出されて羅喉の身体は熱くなる。
 獣の嗅覚は、己と同じ種の匂いを嗅ぎ分けたのだ。
 格闘家の血が叫び、身体を支配する。

―――闘いたい―――

 強き者と死力を尽くして闘う事こそ彼らの生き様。
 目の前からヒシヒシと感じれる強き獣の気。
 今まで考えていた事よりもこの異形の者と闘いたいという欲求がふつふつと湧き上がる。

「悪い癖だな……」
 鳴り上がる鼓動を抑えきれない。
「私は悪い兄のようだ」
 
「俺は、こんな下らないゲームになど興味はない。
 だが、この強者溢れる状況は俺にとって最高のもの!
 いずれはあのケイブリスとも闘う事こそ我が望み!」

 それは獣の誘惑。
 羅喉の血をより滾らせる囁き。
 なるほど、ゲームに乗る気はしない。
 しかし、格闘家として強者と戦うという絶好の舞台である事実にも気づく。
149強者達 ◆CysS/VAVo. :2005/08/05(金) 01:47:13 ID:cNVyIBMe
「ふっ……いいだろう」
 羅喉がニヤリと笑う。
 それを見た獣の口も大きくニヤリと開いた。
「貴様との勝負受けよう」
 ケイブリスと闘うのが望みという事は、今は強者を狙っていても、やがてはこの男は力無き者も手にかけて辿りつく気だろう。
 ならば、それを見過ごすわけにもいかない。

 だけれども
 それよりも何よりも

 しばし、元いた世界では味わえぬこの至高の戦いを楽しみたかった。
 
「我が名はイガロ! 勝負!」
「閃真流神応派、鴉丸羅喉!! 参る!!」

 二人の足が地を蹴った。

【一日目朝、ラング・バウ都市内】
【鴉丸羅喉: 状態:良好 アイテム:不明】
【イガロ: 状態:良好 アイテム:不明】
150少女達の出会い ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/05(金) 18:21:58 ID:yha9//OC
「ランスさまぁ…」
リーザス領ティティ湖の畔に、もこもことしたピンク色の髪が、シクシクと揺れる。
魔法使いシィル・プラインは、草陰に身を隠し一人泣き崩れていた。

突然現れた三人の魔人。
魔人の脅威はシィル自身良く知っている。
逆らえないという恐怖。
そして転がる二つの死体。
命じられた殺し合いというゲーム。

命を奪い奪われる恐怖がシィルを縛る。
これまでだって、命を賭けた戦いを経験たことが無い訳じゃない。
それどころか、無敵とまで言われる魔人と幾度と無く戦ってきたのだ。
だが、それもこれも主人であるランスが共にいたから乗り越えてこれたのだ。
一人は寂しく、心細い。
不安と恐怖で押しつぶされてしまいそうだ。
「ランスさま…」
もう一度愛する主人の名を呟く。
だがその声に答えるものは無く、その呟きはただ風のざわめきに浚われていった。
151少女達の出会い ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/05(金) 18:24:01 ID:yha9//OC
カサリ。

震えるシィルの背後から、小さな物音が聞こえた。
反射的にピクリと体が反応し、シィルが後ろを振り返る。
だが、それよりも早く。風のように迫る小さな影がシィルの動きを拘束し、その片腕がシィルの喉笛を掴んだ。
「動くな。妙な動きを見せたら、即刻この喉笛を握りつぶす」
冷たく静かな声が響き、喉笛を掴む小さな腕に僅かに力がこもる。
「これから幾つか質問をする。それに首の振りだけで答えろ。わかったか?」
恐怖に震えながらも、その声にシィルはコクコクと首を振る。
「うむ。では、お前はここがどこかわかるか?」
その質問にシィルは首を縦に振った。
「ふむ。私と出会うまでに誰かとであったか?」
その質問にシィルは首を横に振った。
「では最後の質問だ、お前は殺し合いをするつもりがあるか?」
その質問にシィルは慌てたように首を横に振った。

質問を終えた拘束者は、小さく震えるシィルを見つめ、小さく息を吐いた。
そして、シィルを拘束していた両腕を離し、シィルの正面に向き直った。

見れば自分を拘束していたのは、明らかに自分よりも幼い少女だった。
頭の両側で縛られた髪は銀色に輝き。
年相応のセーラー服を身に纏っていた。
そしてその瞳は、年にそぐわぬ全てを見通すような深い色を携えていた。
152少女達の出会い ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/05(金) 18:26:07 ID:yha9//OC
「すまなんだな。私の名前は、岳画殺。殺すと書いてさつと読む」
堂々と。シィルと対照的に殺し合いという舞台に動じた様子も無く、少女は自らの名を明かした。
「えっ? あっ、私はシィル・プラインです」
慌てたように名乗り返すシィルだったが、少女の持つ独特の威厳というか威圧感に思わず敬語になってしまった。
「あの…殺さん」
「そうかしこまらんでもよい。気軽に殺ちゃんとでも呼んでくれ」
「は、はぁ…殺ちゃんは緑色の服を着たこれ位の背丈の男の人を見ませんでしたか?」
想像のランスの頭にあわせるように、シィルが空に手を伸ばす。
「すまんな。私もここにきてシィル以外の人物を見ていない」
「そうですか…」
酷く残念そうに項垂れ、シィルが声を落とす。
「ふむ。どうやら探し人がいるようだな。どうだ私と共に行かんか?
 私も合流したい者が何人かいるしな。共に探し人なら協力したほうが安全であろう」
「え…はい! 私でよろしければ、よろしくお願いします!」
大きなピンクの髪を前後に振るい、シィルは喜びを表す。
これで一人でなくなる、一人は不安なのだ。
目の前の少女の正体はわからない、だがそれ以上に孤独は怖い、一人は嫌だ。
その思いがシィルの警戒心を緩めていた。

「殺ちゃんの探してる人ってどんな人なんですか?」
すかっり元気を取り戻したシィルは、何気なく疑問を口にした。
「なに、可愛い甥っ子だ。未熟なところもあるが、なかなか頼りになる男だ」
「…甥ですか」
目の前の小さな少女の甥と言われ、シィルは少女よりも小さな少年を思い浮かべる。だが実際はその想像は大きく外れているのだが。
「…父もいるようだが、あれはそう簡単に死ぬたまではないだろう」
誰に言うでもなく、殺はそう小さく付け足した。
153少女達の出会い ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/05(金) 18:39:21 ID:yha9//OC
「時にシィル。戦闘の心得はあるか?」
「あっ、はい。魔法なら少し」
「そうか、私は重火器の扱いならできるのだが、生憎素手での格闘などは専門外だ。
 支給されたものもこのボタン一つ。足手まといになるようならすっぱり切り捨ててくれてかまわん」
冷徹に何の迷いも無く、殺はそう言い放つ。
「そんなっ…! あっ、そう言えば…」
何かを思い出したかのようにシィルは自分のリュックを漁る。
「あの、使えるかどうかわからないんですけど…」
不安げにシィルが声をあげながら、何かを取り出し、殺に手渡した。
殺は手渡された玩具のような銃を見つめる。
「…ぽわわ銃か」
「知ってるんですか?」
「うむ、扱い辛い代物だが、意外と使えるだろう」
そう言って殺は、近くの小石目掛け引き金を引いた。
すると銃の先端から輪っかのレーザーが飛び出し小石を弾いた。
シィルは心底意外そうな顔をして殺の手元の銃を見つめた。
「すまぬがシィルよ。この銃を私に貸してくれんか」
「あっ、はい、かまいませんよ」
疑うことも無く、シィルは快くその申し出に答えた。
「代わりといってはなんだがこのボタンはシィルが持っていてくれ。
 そのボタンからはなにやら不思議な力を感じる。唯のボタンというわけでもないようだ、持っていて損は無いだろう」
そういって殺はシィルにボタンを手渡した。

「先ほどシィルはここがどこかわかると言ったな。ここ辺りの地理には詳しいのだろう?」
「はい、この辺りは私たちの家が近いですから」
「ではシィル道案内を頼む」
互いに頷き、二人は歩を進めティティ湖を後にした。

【一日目朝、ティティ湖付近】
【岳画殺: 状態:良好 アイテム:ぽわわ銃】
【シィル: 状態:良好 アイテム:幻惑の学聖ボタン】
154名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 20:58:02 ID:4NT/bWEx
これさ、もうちょっとキャラ多くても良かったんじゃない?
特にパットンがいてハンティがいないのは片手落ちだし

と、いってもまあ初っ端からそんなに多くても大変かねえ
100前後でも良かったと思うんだが
155名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 21:30:01 ID:HvUV4ni0
前スレ見れ。もしも見て言っているのなら、無駄なこと言うな。
このスレ議論兼用となってはいるが、その段階はとっくに終わっている。
156名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 21:38:08 ID:LRMMQRuq
まあ、もうちょっと穏便な言葉使いでいこう。
前スレ落ちとるし。

書き手がもっと多ければそれでもなんとかなるかもしれないが、五人くらいしかいないからね。
100じゃおわらんだろうという結論に達したわけで。
50でも、このペースだと終わるまでかなり長い期間かかるだろうし。

常に書き手募集中状態なんで、>>154もどうよ?
今言っても皮算用だけど、これが無事に終わったら次は100でやれるかもしれんよ。
157名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 21:42:51 ID:4NT/bWEx
>>156
書き手5人じゃ流石に苦しいか

俺はタイトル知っててもやったのはランスと大悪司だけなんですぐは無理
ある程度出てきてキャラ掴めれば考えるけど
158名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 22:11:31 ID:LRMMQRuq
感想。

>強者達
黒羅喉か白羅喉か議論されてたけど白になったか。
白羅喉に投票してた書き手さんだね?
VSイガロではどっちが勝ってもおかしくないだけに、続きが気になるね。
……しかしファイトに飢えた連中の多いロワだなぁw

>少女達の出会い
シィルとさっちゃんキター
シィルは誰と組もうが主導権握られまくるだろうと思っていたが……相方がさっちゃんでは、もう確定だな。
今後向かうのはアイスの街かリーザス方面だろうけど、この大陸東は危険だな。マーダー天国。
はてさてどうなることやら。
159名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 23:03:53 ID:qKS4HWWp
アリスロワなだけに、みんな血の気が多いなw
一般人がマーダー化しても対抗できるのだろうか?
160名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 23:27:46 ID:geYgGFYb
>>157
つーか、投票具合見るに多少枠が増えたぐらいじゃハンティは参加できないと思うぞ。
後、ランス6ではストーリー内の大半ハンティなんて存在してなかったがパットンはちゃんと存在感あった。
単にハンティが好きで好きでしょうがなくて参加させたかった不満を変に装飾するなっつーのw
161名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 23:37:34 ID:4NT/bWEx
>>160
ランス6はやってないから解らんわ

それにしても、低脳が多いな
俺はハンティ好きだし、好きだからこそある意味出てなくてほっとしてるんだが。ロワなんて酷い目にあってなんぼだし。
それにしたってパットンとハンティのライン考えれば残念ながら居て当然だろうなと思ったから書いただけなんだが

なんで無駄に煽るのが後から後から沸いてくるん?
162名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 23:44:06 ID:geYgGFYb
うはw
顔真っ赤にして書き込んでんの丸判りwww

>なんで無駄に煽るのが後から後から沸いてくるん?

釣りにきまってんだろ胼胝wwww
163名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 23:44:54 ID:KjEXGUb4
>それにしても、低脳が多いな

>なんで無駄に煽るのが後から後から沸いてくるん?
164名無しさん@初回限定:2005/08/05(金) 23:48:15 ID:cNVyIBMe
>>158
感想ありがとうございます。
黒羅喉状態バーと白羅喉状態バーがあってどちらにするか悩んでいた所、
タイガージョーと勇二がED前になったので白にしたので投票主ではありませぬ。
ED後とED前という状態の彼らが起こすギャップを書きたく、もしジョーか勇二、羅喉、誰か一人でもED後なら残る二人はED前というする気でいたので……。
165名無しさん@初回限定:2005/08/06(土) 01:08:48 ID:4oBx1nM/
今夜は投下終了かな?
乙でした
しかし顔見せだけでも結構時間かかりそうだな
166名無しさん@初回限定:2005/08/06(土) 01:20:02 ID:66auAfuI
仮にトーナメント形式で一話一人殺していったとしても47話かかるしね。
167 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/06(土) 09:14:35 ID:YSnl2INl
おはようございます。
なんか変な神が降りて来て、ささっと一話書き上げられました。
投下します。
168うにーく!(1/3) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/06(土) 09:17:14 ID:YSnl2INl
「う、ううぅぅ……うぉーいおいおいおい……」
 目の前の光景を、火倉いずみはどうすることも出来ずに見ていた。
 ゲーム開始と同時にこの場所へ飛ばされて、すぐに聞こえてきた泣き声。
 それを聞いてやってきた先で、このガクランを着た大男は泣き崩れていた。
(あの二人のうち、どちらかの知り合いだったのかな)
 最初の会場で命を落とした者達のことを考える。
 大の男が恥も外聞もなく大泣きしているのだ。尋常な悲しみ方ではない。
 結構近くまで寄っているというのに、いずみを気にする気配もなく、ただただ泣き崩れるばかり。
 ここに来るまでは警戒していたが、どう見てもゲームに乗るようには見えなかった。
(ここまで悲しめるんだもんね……きっと悪い人じゃないよ)
 声をかけ辛い雰囲気ではあったが、いつまでもこのままでいるわけにもいかない。
 意を決して、いずみはこの男に話しかけてみることにした。
「あの、なんて言ったらいいか……元気、出してください」
 その言葉に、ガクランの男――猿藤悟郎は涙でぐしょぐしょになった顔を向け、一礼した。
「ううぅ、ありがとうございます見知らぬお嬢さん……こんな基本的人権もない俺に、優しい言葉をかけてくれるなんて……」
「……こんなことになったのは、キミのせいじゃないよ。そんな自分を卑下しなくても」
 卑下しているわけではなく、実は本当に基本的人権がない。
 ともあれ、二人は互いに自己紹介を済ませた。
「その、ご愁傷様だったけど、前を向いていこう!」
 うなだれる悟郎をなんとか元気付けようと、いずみは拳を握り必死に語りかける。
「私はキミの痛みがどれほどのものか分からないから、無責任な発言に聞こえるかもしれないけど、
ここでキミが何もせずに死んでしまったら、本当にそこで終わりになっちゃうよ。
辛くても、悲しくても、今は前に進まなきゃならない時なんだよ!」
 そう、いずみはそうして進んできた。兄、火倉ソウジが、一族を裏切り失踪した時からずっと。
 辛くても、悲しくても、前を向いて自らの道を邁進してきた。
 今の言葉は、悟郎に送ると同時に自分にも向けられた言葉。
 自分もまだ、ここで死ぬわけにはいかないのだ。
169うにーく!(2/3) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/06(土) 09:19:24 ID:YSnl2INl
「ここを脱出して、元の世界に帰ろう。やるべきことも、待っている人もいるんでしょ?」
 彼も、自分も、亮も鏡花も、まだ見ぬ他の参加者達もそのはずだ。
 その説得は、彼女の本心からの想い。だからこそ――その言葉と真摯な瞳は、悟郎の絶望に満ちた心に届いた。

「……う、うおおおぉぉぉぉん! まさにその通りだああぁ……ああ! 俺は猛烈に恥ずかしい!」
 天を仰ぎ、号泣する。だがその涙は今までとは違う、決意の涙だ。
(よかった。これで少しは大事な人を失った悲しみからも……)
「BS超弩級アニメ祭りをリアルタイムで見れなかった悲しみとはここでお別れだああぁぁ!」
「……え?」
 カクンと首が傾いだいずみと対照的に、だんだん悟郎は絶好調になっていく。
「アディオス俺の悲しみよ! これからは、VHSビデオデッキ60台で録画してる分、
コタツで腐りかけのバナナ食いながら120時間ぶっ続けで観賞する夢に向かって、俺は走るぜ!
草葉の陰で見ててくれじっちゃん!(注:←死んでません) 待っててくださいお嬢さん!
男猿藤、こんな腐れゲーム即刻叩き潰して光の速さで舞い戻ってみせます! みせますとも!」
「……アニメ祭り? あ、あの、会場で亡くなった二人とは知り合いじゃあ……?」
「いいや全然」(きっぱり)
 恐る恐るといった感じで聞いてくるいずみを一刀両断。
 いずみは言いようのない脱力感が圧し掛かってくるのを感じた。
(あ、あはは……勘違い?)
 もはや笑うしかない状況だった。
「そうだ、戻れたらいずみさんも一緒に見ようぜ! 早く戻れば後半はリアルタイムで見れるし……って、わりぃ、
いずみさんはアニメなんて興味ないよな……」
 ハイな状態からいきなり素に戻った。
 今まで女性に似たようなことを話しても、賛同された例がないからなのだが、
「そんなことないけど……小さい頃はよく見てたし」
 初めての賛同者がここにいた。
170うにーく!(3/3) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/06(土) 09:43:36 ID:jYhQyztx
「ほ、本当か!? なつかしアニメの総特集みたいな番組企画なんだが、"あぶない天狗伝説"とか"哀少女ローラ"とか"まるちっぽ☆うにーく"とか」
「あ、最後の知ってる! こんな歌あったよね〜。 ――おっいらにおっまかっせまるちっぽ♪」
「おお! ――しっぽじゃあないよちっぽっぽ♪」
 すぐにピンと来たのか、悟郎もすかさずそれに続いた。
「まるまるぽっちは男の誇りっ♪」
「うに〜 うに〜く ごっごごー♪」
「うに〜 うに〜く ごっごごー♪」
 ――がしっ
「ひゃっ!?」
 いきなり両手で握手されて思わず声を上げる。
 悟郎は男泣きに号泣していた。
「うおおおぉぉぉぉん! 俺は今、猛烈に感動している! こんなところで初めてじっちゃんと博士と犬神以外の同士に出会えるなんて!」
「あ、あはは……まぁ、元気になったみたいでよかったよ」
 勘違いから始まった上に、同士と言うほどアニメ好きでもないのだが。
(ま、いっかぁ)
 困ったような笑顔を浮かべたまま、いずみは結果オーライとしておくことにした。



【一日目朝、琥珀の城近郊】
【火倉いずみ:  状態:良好 アイテム:不明】
【猿藤悟郎:   状態:良好 アイテム:不明】
171 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/06(土) 09:45:04 ID:jYhQyztx
投下終了です。
連投規制に引っかかった……
172名無しさん@初回限定:2005/08/06(土) 09:49:22 ID:i3pHORxF
>>167
書くのはやっ!
推敲とか見直しとかってどのくらいかけてます?
173名無しさん@初回限定:2005/08/06(土) 10:03:07 ID:jYhQyztx
こんな朝から他に人がいるとは……!
推敲は、自分の場合書きながらやってます。少し書いたら推敲、少し書いたら推敲の繰り返しで。
見直しは、大抵いつも別なことして頭切り替えてから、ですね。
書いたのは昨夜なので、朝起きて頭切り替わった状態で2度ほど見直して修正しました。
それでも悟郎の再現度にちょっと自信ないですが……

今回はなんか筆が乗っただけで、普段はこんなに早くないです。
174名無しさん@初回限定:2005/08/06(土) 10:07:09 ID:i3pHORxF
>>173
朝起きて筆が乗ったというので、てっきり起きてから全て仕上げたのかとw

作品が一度形できてからの推敲もやるといいと思いますよ。
175名無しさん@初回限定:2005/08/06(土) 10:13:15 ID:jYhQyztx
どうもです。そうですね、見直しだけでなく。
もうちょっと余裕持って推敲してみるとします。

>朝起きて筆が乗ったというので、てっきり起きてから全て仕上げたのかとw
そこまでの神業はとてもとてもw
176広報:2005/08/06(土) 18:08:11 ID:u+jxwVKb
現在未登場

【ランスシリーズ】マリア/パットン/ミネバ/トーマ
【大悪司】山本悪司/山沢麻美/支倉アエン/由女
【闘神都市2】/幻杜坊/シュリ
【超昂天使エスカレイヤー】恭平/
【ぷろすちゅ★でんとGood】桜小路牡丹/魔窟堂野武彦
【夜が来る!】羽村亮/七荻鏡花
【ママトト】ナナス/リック
【Only you−リ・クルス−】ミュシャ
【アトラク=ナクア】深山奏子
【DiaboLiQuE】アズライト/レティシア/凶アリア
【ぱすてるチャイムContinue】薙原ユウキ/フィル・イハート
【大番長】京堂扇奈
【アンビヴァレンツ】修羅

死亡 支倉ハイネ
177名無しさん@初回限定:2005/08/06(土) 20:57:23 ID:0hk3dqaU
猿藤・・・。・゚・(ノД`)・゚・。

>>176
まだ半分もでてないんだな
178名無しさん@初回限定:2005/08/07(日) 01:08:29 ID:DhFTwptH
今夜は投下どころか人すらいないな。
平日より進まないとはどういうことだ。

>>168>>176
GJ!
179名無しさん@初回限定:2005/08/07(日) 01:24:11 ID:h4q8sGCb
ROMってはいるぞ
進まないって言っても書き手さんの人数が少ないからしょうがないと思う
180名無しさん@初回限定:2005/08/07(日) 02:10:01 ID:gVPnlnV3
キャラ被った。
181名無しさん@初回限定:2005/08/07(日) 02:16:45 ID:DhFTwptH
>>180
…ドンマイ
182名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 04:14:20 ID:1S1dT7BK
完全に止まったな
183名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 09:08:42 ID:5m0RIoAm
うむ……ちょっとビックリではある。
まあ、ほら。みんな夏休みで、どっか旅行とかいったんだよ。きっと。
184名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 17:45:38 ID:P8yWeEQb
みんな同じ時期に旅行?
なんか変じゃない
185名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 18:24:23 ID:/0PWrFua
実はアリス社員が書いていたんだよ!(AA略
186名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 18:34:08 ID:ZhnRvqX5
まだ二日だ。問題ない。
187名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 19:11:14 ID:GYLIrD6C
そろそろ盆休みとかで帰省ラッシュ開始だしな。
188名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 19:45:08 ID:GYLIrD6C
そうそう。
今やっと3のトーマ戦まで進んだぜ。
>>121
鉄球振り回して攻撃してくるw
189名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 20:01:31 ID:1S1dT7BK
俺なんて昨日20回くらいこのスレ更新したぜ
ギコナビの「プーッ」って音ばっか
190名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 20:23:55 ID:VHRYxABy
消える前あたりのれちこ書こうと思ってデアボリカ再び始めたけど……
デアボリカ長いよデアボリカ。
191猛将、裏切りに散る ◆onsJGWZT0w :2005/08/08(月) 21:51:46 ID:tVEkxKvI
「誰かと思えば将軍閣下じゃないか」
「おおミネバか」
唐突にかけられた声に振り向くのは、ヘルマンにその人ありと謳われる猛将トーマ
声をかけたのはこれもヘルマンの女将軍、ミネバだ。
まずは再会を喜び合う2人、

「ともかく腹ごしらえといこうじゃないか」
女性とは思えぬほどの隆々とした身体を揺らし、ミネバはバックから食料をトーマに手渡す。
さすがのトーマも味方に出会えて安心したのか、表情を緩め、ミネバから缶詰を受け取ったのだった。

「で、これからどうするつもりなのさ」
水を飲みながらトーマに話し掛けるミネバ
「まずは王子と合流するのが先だな、となるとやはり目指すは我が王都だろう」
缶詰の中身を頬張りながらトーマは応じる。
「へぇ…こんな状況でもあきらめちゃいないんだ」

「無論だ、いかなる場合でも軍人たるもの国家への忠誠を失ってはならぬ」
厳しい顔をさらに険しくするトーマ。
「そしてその後、王子を中心として人材を募り反撃の機会を待つ…むざむざ魔人どもの奸計に乗るわけにはいかん
もっとも乗る奴がいるとも思えんが」
トーマの言葉に笑うミネバ、その笑い方があまりにも豪快なので、つられてトーマもつい笑い出してしまう。
「ははははは」
「ははははは何言ってるのさ、今ここにいるじゃないかさぁ」
192猛将、裏切りに散る ◆onsJGWZT0w :2005/08/08(月) 21:52:48 ID:tVEkxKvI
その声に笑い声が一瞬で消える。
「何!?」
言うが早いか、ミネバの拳がトーマの胸板を狙う、間一髪で避けたトーマだが。
「ぐっ…」
強烈な痛みが胸を貫き、こみ上げる物に口元を押さえる、口元を押さえた手のすきまから鮮血が溢れ出す。
毒を盛られたのだ。

「気でも…違ったか…ミネバ」
致死量の数倍の薬物を盛られているにも関わらず、トーマは震えながら立ち上がろうとする。
「あたしは正気さぁ…こんなチャンス見逃すわけないだろ」
その様子をにやにやと眺めるミネバ。
「それにあんたは前から気にいらなかったんだよ」

全身の激痛に耐えながらなんとか立ち上がったトーマ、しかしそれが限界だった。
何の苦もなくミネバはトーマの背後に回りこみ、その背後から首をギリギリと締め上げる。
「何故、魔人どもの話に乗った…」
「決まってるだろ、望みを叶えるためさ…」
あいかわらずにやついた声のミネバ。

「愚かな…魂を売ってまで得る栄光に何の意味が…」
トーマのその一言はミネバの感に触ったらしい、彼女の表情が一変する。
「うるさいんだよ…もういいさっさと死にな!王子もすぐに傍に送ってやるから地獄で忠犬やってな!」
ミネバが腕にほんの少しだけ力を込めると、それだけでトーマの首の骨はへし折れてしまったのだった。

トーマの死体を投げ捨て、先へと進むミネバ、目指すはやはり王都ラング・バウ。
「あたしは王に、ヘルマンの王になるんだ」
もはや欲望を隠そうともせず、ミネバはぎらついた目で呟くのだった。
193猛将、裏切りに散る ◆onsJGWZT0w :2005/08/08(月) 21:54:47 ID:tVEkxKvI
【一日目朝、死の大地付近】
【ミネバ:  状態:良好 アイテム:不明】
(本来の支給品である毒入り缶詰は使い切りました)

【トーマ:死亡】(残り46人)
194 ◆onsJGWZT0w :2005/08/08(月) 21:57:19 ID:tVEkxKvI
というわけで動かしてみました、どうでしょう?
195名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 22:28:47 ID:GYLIrD6C
俺のランス3プレイ乙。
196名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 22:53:16 ID:5m0RIoAm
ドンマイ
197名無しさん@初回限定:2005/08/08(月) 23:35:11 ID:8Cg2FQi8
狙ってやったかのごとくタイミングであわれすぎた
198 ◆onsJGWZT0w :2005/08/08(月) 23:58:03 ID:tVEkxKvI
すまん・・・でも狙ったつもりは毛頭ない
バイトで遅くなって投下が遅れてしまってこのタイミングなのです
199名無しさん@初回限定:2005/08/09(火) 00:04:44 ID:nVEdpz80
なんとなくメガテン風に属性わけ

【ランスシリーズ】
ランス/NEUTRAL-CHAOS
シィル/NEUTRAL-LAW
魔想志津香/NEUTRAL-NEUTRAL
ミネバ/DARK-CHAOS
トーマ/NEUTRAL-LAW
マリア/LIGHT-NEUTRAL
パットン /NEUTRAL-NEUTRAL

【大悪司】
山本悪司/DARK-LAW
岳画殺/DARK-LAW
山本一発/DARK-LAW
山沢麻美/LIGHT-LAW
素敵医師/DARK-CHAOS
支倉アエン/NEUTRAL-CHAOS
支倉ハイネ/DARK-LAW
由女/LIGHT-LAW

【闘神都市2】
シード/LIGHT-NEUTRAL
葉月/LIGHT-LAW
幻杜坊/DARK-CHAOS
シュリ /NEUTRAL-NEUTRAL
200名無しさん@初回限定:2005/08/09(火) 00:05:37 ID:nVEdpz80
【超昂天使エスカレイヤー】
恭平/NEUTRAL-NEUTRAL
エスカレイヤー/LIGHT-LAW
マドカ/NEUTRAL-LAW
イガロ /DARK-CHAOS

【Only you−リ・クルス−】
魔神勇二/LIGHT-LAW
タイガージョー/LIGHT-LAW
鴉丸羅候/LIGHT-LAW
ミュシャ /NEUTRAL-NEUTRAL

【夜が来る!】
羽村亮/LIGHT-NEUTRAL
火倉いずみ/LIGHT-LAW
七荻鏡花/ LIGHT-CHAOS

【ママトト】
ナナス/LIGHT-LAW
カカロ/DARK-CHAOS
リック/ NEUTRAL-LAW

【アトラク=ナクア】
比良坂初音/DARK-LAW
深山奏子/NEUTRAL-NEUTRAL
銀/ DARK-NEUTRAL
201名無しさん@初回限定:2005/08/09(火) 00:06:58 ID:nVEdpz80

【DiaboLiQuE】
アズライト/NEUTRAL-LAW
レティシア/LIGHT-LAW
凶アリア/ NEUTRAL-LAW

【大番長】
斬魔狼牙/LIGHT-NEUTRAL
京堂扇奈/LIGHT-LAW

【アンビヴァレンツ】
修羅/NEUTRAL-LAW
フェンリル /DARK-CHAOS
202名無しさん@初回限定:2005/08/09(火) 00:17:19 ID:KgG6F2t3
>>199-201
これを見る限り、LIGHT属性持ち以外、あるいはCHAOS属性持ちは
マーダー化の可能性があると見えるな

それとぱすチャとプロGが抜けてる
203運命の分岐 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/10(水) 00:55:36 ID:c46L5PNP
「ここは…どこだ?」
修羅は荒涼とした氷の大地を見渡していた。
「俺としたことが…」
つい数分前の出来事を彼は思い出す。
連中の説明が終わり、白衣の少年がリュックを積んだワゴンを押してやってくる。
「さぁ、今から〜」
「?」
修羅はそのリュックの中に自分のよく知っている物が入っているのを感じていた。
この気配…間違いない、自分の愛剣草薙丸の気配だ。
修羅はさらに神経を集中させ、気配を探る…普段なら造作もないことでも、
力を封じられているので、この程度でもいちいち集中しなければ分からないようだ。
だから、彼は気がつくのが一瞬遅れた。

「ズルはいけないよ」
少年の言葉と同時にリュックがいきなり投げ渡される。
と同時に足元が消滅、彼の姿は奈落へと消えていった。
「と、この期に及んでまで妙なことはしないように、あ、殺しちゃいないから安心してね」
そう言ってパイアールはにこりと微笑むのだった。


死のう…
風が吹き荒ぶ城の屋上で深山奏子は決心した。
(わずかな間でしたけど姉様と過ごした日々、本当に幸せでした、私はその思い出を胸に先に逝きます。)
自分が最後まで生き残れるとは思えない、
奏子の脳裏に無残な最期を遂げた、ガレイズとななこの姿が蘇る。
あんなに苦しそうな、そして悲惨な死に方だけはいやだ、いや、ヘタに生き残るともっと苦しい死が待っているかもしれない。
だから、少しでも楽な方法で死のう…幸せな思い出だけを考えながら。

奏子はまた一歩足を進め、バルコニーの手すりから身体を乗り出す。
地上が遠くかすんで見える、ここから落ちればきっと痛みさえ感じず楽に死ねる。
(ちなみに最初は支給品である長剣で喉を突こうと思ったのだが、長すぎて彼女では扱えなかったのだった。)
204運命の分岐 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/10(水) 00:56:23 ID:c46L5PNP
(お別れです姉様、私はここで死にます、でも姉様だけはどうか最後まで生き残ってください)
奏子はまだ最愛の人の温もりと残り香がかすかに残る手をそっと撫でる。
(姉様の手…暖かくて、そしていい匂いがしたなぁ)
奏子はゆらゆらとバルコニーの手すりの上に乗り、はぁはぁと呼吸を整える。
死ねる…今なら死ねる。
「さよならっ!姉様!!」
そのまま遥か下の地上に身を投げ出そうとした時だった。

「バカっ!何やってるのよ!!」
奏子の襟元を誰かが掴み、そのまま彼女をぐいと引き戻す。
「はなして!離してください!!私が生きていたって姉様にご迷惑をかけるだけ…」
ぱあんと奏子の頬が鳴る。
「ほんとにバカね、その大事な姉様はあなたを最後まで助けようと、傍に置こうとしてたのを忘れたの!」
(この人…)

奏子は自分を生者の世界に引き戻した金髪の少女をみてあることを思い出す。
(あの時私の背中を押してくれた人だ)
「少しでもあなたのことを迷惑だなんて思っていたら、絶対あんなことはしないはずよ…だから」
そこで少女は少し考えてから奏子の肩を両手で掴む。
「あたしがあなたの姉様に会わせてあげる」

「え…」
(そんなご迷惑をおかけ)
「迷惑なんかじゃないわよ全然、おせっかいと思ってくれても結構よ…少なくとも今死のうとしてる誰かを見捨てて先に進むほど
人間腐っちゃいないわ」
奏子の機先を制するように少女はまくし立てる。
もう奏子には彼女に反抗する力は残ってなかった、死のうとするにはそれなりの力と決意が必要なのだ。
それに…やっぱり死にたくなかったし、この状況でこんな言葉をかけてもらえるとも思ってなかったのだろう。
奏子の目から安堵の涙が零れだす。
その頭をやさしく撫でてやりながら、七荻鏡花は思う。
205運命の分岐 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/10(水) 00:57:06 ID:c46L5PNP
(このアタシが魔物の味方をすることになるなんて…いずみが聞いたら何て思うかしら?)
彼女が姉様と慕う比良坂初音が魔族だということは最初から容易にわかった、だがそれと同時に彼女がこの深山奏子を思う気持ちも
紛れもなく真実だということも。
だから…彼女もまた初音に会い、確かめたかった…あの時読めた感情は真実なのかどうかを。

(それにしても、色々トラブル続きね)
鏡花はここに飛ばされるまでのことを思い出していた。

あの美白の男が奈落に落とされてから
彼女らはパイアールとかいう少年の指図に従い50音順に並ばされ、
ドアを通してあの男が落ちた穴へと入っていかされたのだが…
「次、ナナス」
いよいよ自分の番がきた、と身構える鏡花だったが肩透かしをくってしまう。
「あたし…」
じゃないのと口走ろうとしたのだが、そのナナスとかいう青年が口元に指をあてるジェスチャーをしたので
だまっておくことにして、そのままそっと列の後ろへと回った。

そして例の騒動があり…その後何人かがドアをくぐった後
「次、三輪坂真言美」
え、真言美もいたの…と周囲を見渡す鏡花、だが真言美は当然いない。
「聞こえていないのか、三輪坂真言美、お前だ!そこの金髪」
「へ?」
そこで彼女はようやく察したのだった、
「あの…アタシ七荻鏡花って名前なんだけど」
名前を読んでいたリス頭の魔人は明らかにこちらをバカにした口調で言い返す。
「お前はバカか、ここにそう書いてあるんだからお前は三輪坂真言美だろう?自分の名前も覚えてられんのか?」
「はぁ?アンタこそバカじゃないの!普通は人違いって思うでしょ!」
「う…うるさい!バカという奴がバカなんだぞ!」
自分でもバカという意識はあるのだろう、図星をさされさすがにムッとするケイブリスだったが、
206運命の分岐 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/10(水) 01:00:00 ID:c46L5PNP
「ちょっと…ちょっと…」
その時袖に引っ込んでいたパイアールがケイブリスに声をかける。
「これ修正前台本じゃないか…ほら」
「なんでそんなのが俺様の手元にあるんだ」
「そんなこと知らないよ、ちゃんと確認してよ」

気まずい雰囲気の中、コホンと咳払いをするケイブリス。
「なら改めましてだ、七荻鏡花」
ちっ!と舌打ちをして彼女はドアに向かい、パイアールからリュックを受け取る。
「ごめんね、人違いしちゃって」
本気とも嘲りともつかない口調で謝罪の言葉を口にするパイアール、心を読んでやろうかと思ったが気分が悪くなりそうだったので、
やめることにした。
「人違いなら元の世界に戻してくれてもいいんじゃないの?」
「じゃあ三輪坂さんを君の代わりにするけど、いいの?」
「わかったわよ」
さすがに観念したのか、鏡花はそのままドアを無言でくぐるのだった。


で、全ての参加者たちを送り出した後の魔王城の中では、
「でもまぁ2.3間違いがあるだけの分でよかったよ、最初の試作品とかだと10人以上が違うからね、それを読み上げてたら大恥だよ」
「で、その試作品とやらはどこなんだい」
メディウサの言葉にテーブルの上を指差すパイアール。
「ああほらそこだよ…」
「これかい?」
メディウサが手に取ったそれを後ろから覗き込むパイアールだったが、一瞥してだけでしまったという表情を、
一瞬だけだが浮かべる。
207運命の分岐 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/10(水) 01:05:27 ID:c46L5PNP
それを訝しげに見つめるケイブリスとメディウサ。
そう…いま彼らの手元にあるのは試作品ではなくれっきとした完成版だった。
では、試作版はどこに?
「多分、参加者の誰かが持ってるんじゃないかな、でもまぁ、1人くらいそういう運の悪い奴がいても仕方ないよね」
何言ってやがんだコイツ…という2人の視線を物ともせず、照れ隠すパイアールだった。

で、その試作品の名簿を渡された運の悪い参加者はというと。
「花梨…待ってろ花梨」
修羅はいるはずの恋人の名を呼びながら氷の大地を1人彷徨していたのだった。


【一日目朝、ヘルマン領最東端】
【修羅:  状態:良好 アイテム:不明(ただし名簿が不良品)】


【一日目朝、悪の塔頂上】
【深山奏子:  状態:良好 アイテム:バイロード】
【七荻鏡花:  状態:良好 アイテム:不明】
208 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/10(水) 01:11:03 ID:oAteqQ6m
続いて投下します。
209ペットの躾には飴と鞭(1/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/10(水) 01:13:23 ID:oAteqQ6m
「うわっ! ……寒いですねぇ、ここ」
 薄着な自分の衣装を多少恨めしく思いながら、京堂扇奈は思わず身体を抱いて震えた。
 雪こそ降っていないが、崖で遮られた対岸は氷河で覆われているのが確認できた。
「狼牙さん……はいないですね。都合よく同じところに飛ばされたりはしませんか」
 狼牙どころか、他の参加者も誰一人見当たらない。
 辺りの状況を確認すると、扇菜は荷物の確認に移った。
「これは……」
 支給された武器をリュックから取り出す。
 黒を基調とし、グロテスクな意匠を施された大型の西洋剣。
「西洋剣ですか。日本刀の方が良かったんですけど」
 それでも、剣が支給されたのは剣士である扇菜にとってはありがたいことだった。
 次いで他の支給品を確認し、問題ないことを確認する。
「さて、まずは狼牙さんを捜しましょうか」
 いつもは日本刀を下げている左腰に西洋剣をくくりつけると、リュックを背負い歩き出す……が、
「きゃっ!?」
 いきなり尻を撫でられる感触がして悲鳴を上げた。
「だ、誰かいるんですか!?」
 慌てて繰り向くが誰もいない。
 それはそうだ。先ほど自分で確認したのだから。
「……気のせい……ですか?」
 確かに感触がしたのだが。
 不可解なものを感じながらも、扇菜は再び歩きだす。……と、
「ひぃッ!?」
 今度は尻から前の方まで触られる感触がして飛び上がった。
「だだだ誰ですかあっ!?」
 尻を押さえてせわしなく辺りを見回すが、やはり人っ子一人見当たらない。
「? ? ?」
 半泣きで疑問符を浮かべつつ、それでも辺りに異常がないのでどうしようもなく、扇菜は警戒しながら三度歩き出した。


210ペットの躾には飴と鞭(2/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/10(水) 01:15:52 ID:oAteqQ6m
(むふふふ〜ん)
 歩き出した扇菜の腰で、その剣――魔剣カオスは満足そうにほくそえんだ。
(やぁーっと、やあああぁぁーーーっとピチピチギャル(死語)の使い手じゃて。……ホント、長かったのう)
 魔人を斬ることの出来る二つの剣の一つ。聖刀日光と対を成す、意思を持つ伝説級の魔剣である。ただし、超絶エロおやじ。
 男の使い手にしか恵まれなかった分の、溜まりに溜まった鬱憤を、ここで晴らす気満々であった。
(むふ〜ん、ええのええの〜、ぴちぴちのむちむちじゃ〜。どれもう一回……)
 カオスの刀身から、実体のないオーラのような触手が発生した。
 その先端が手の平のように形を変え、わきわきと卑猥に蠢く。そして三度扇菜の尻を触ろうと触手が伸ばされ……しかし空を切った。
(あら?)
 スカッた触手をひらひら振ってみるがやっぱり届かない。
 というか、目線が遠い。腰のすぐそばにあった目線が、今は大分離れた位置にある。
(え〜と)
 目線を上に上げると、柄を握った手があって、さらに上に――にっこり笑ってこちらを見る扇菜の顔があった。
「あなただったんですね♪」
 ね♪ の部分で可愛らしく小首を傾げるが、カオスはなぜかその仕草に可愛らしさより恐怖を覚えた。
「いや、あの……」
「あら、喋れるんですね? 喋る剣なんて初めて見ましたけど、そういう悪い子にはお仕置きですよねー♪」
 そう言うなり、カオスを地面に引きずったまま崖の方へ歩いていく。時折、石にぶつかって剣先が跳ねるが気にしない。
「いた、痛いっちゅーに! せめて持って歩いてってねぇ嬢ちゃん聞いとる儂の話!?」
 聞く耳持たずで崖っぷちに到着すると、ちょこんと座ってカオスを持った手だけを崖の外に出した。
 もし手を離せば、深遠の奈落へまっさかさまである。
「おわ、おわ、おわああぁぁぁっ!」
 さしものカオスもこれにはたまらず悲鳴を上げた。
「じょ、嬢ちゃん考え直せ! 儂、伝説の魔剣よ? 魔人も斬れるお徳用よ? 魔剣カオスって聞いたことあるじゃろ?
減るもんじゃ無し、ちょっと尻触ったくらいで……」
 おもむろにカオスを握っていた手が開かれた。
「どぅわあああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 という悲鳴が開始される前に、もう片方の手がはっしと落下する柄を捉えた。
211ペットの躾には飴と鞭(3/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/10(水) 01:18:36 ID:oAteqQ6m
「あ、成功しました」
 ぞっとすることを言う。
 にっこり笑顔のままで言うものだからさらに怖い。
「成功しました、って……儂、死ぬよ? いくらなんでも。こんなとこから落ちたら……」
 もうカオスは傍目から見てもガクガク震えていた。
 まさかこんなところで、長らく忘れていた死の恐怖を体験するとは、夢にも思っていなかったに違いない。
「そう言われましても、お礼参りは三倍返しと言いますし」
「尻触って三倍で死なすの!?」
「それはもう、女の子にとっては死にも勝る屈辱を受けたんですから」
「儂、さすがにそれは言いすぎだと思うんじゃけ……」
 離す。
「のわあああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
 捉える。
「あ、また成功しました」
 ………
 ……
 …
 
 ようやくカオスが許しをもらったのは、さらに二回ほど奈落にダイブし損なってからだった。

「ぜぃ……ぜぃ……し、死ぬかと思ったわい」
 九死に一生を得たカオスは、ぐったりとした感じで地面に横たわっていた。
「ぶちぶち……儂、伝説の魔剣なのに……なんでこんなぞんざいな扱い……」
(あらら、ちょっとお灸を据えすぎましたかね?)
 いじけだしたカオスに扇菜は一つ溜息をつくと、柄を握って立たせ、話しかけた。
212ペットの躾には飴と鞭(4/4) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/10(水) 01:22:03 ID:oAteqQ6m
「え〜と、カオスさんでしたか? 自己紹介が遅れましたけど、私は京堂扇菜です」
 言いながら、白魚のような指でカオスの刀身を、つつと撫で上げていく。
「お、おお?」
「さっきは怒っちゃいましたけど、私にはあなたの助けが必要なんです」
 触れるか触れないかのタッチで、上へ下へと。
「おおおおおおお?」
「捜さなくてはいけない人がいますし、ゲームに乗った人達とは戦うつもりです」
 "の"の字を描くように、ゆっくりと、焦らすように。
「おおおおおおおおおおおおお?」
「私を、守ってくれますか?」
 それまでの焦らすような刺激に加えて、すがるようなその視線に、カオスのボルテージはあっさりMAXを超えた。
「お、おお! どーんと任せい! 念願の美少女剣士じゃし、心のちんちんも大喜びじゃ! がんばっちゃうよ、儂!」
(効き目抜群ですね……なるほど、狼牙さんに有効な手はカオスさんにも有効、と)
 俄然元気を取り戻したカオスに、扇菜は心の中で舌を出した。
「おおよ、魔人だろうが何だろうが、儂が全部たたっ斬ってやるわい! じゃから、褒美に一発……」
「た・だ・し」
 不穏なセリフを遮るように、扇菜は一言一言区切って駄目押しをする。
「さっきみたいなセクハラはNGですよ? 帯剣してるだけでも腰や太ももには時折触れるんですから、それで我慢してください。
もし、またやったら……」
 そこでちらりと崖の方を一瞥し、
「ブン投げますよ♪」
 満面の笑みでそう言った。

 心のちんちんはしぼんだ。


【一日目朝、シベリア近郊、崖ふち】
【京堂扇菜: 状態:良好 アイテム:魔剣カオス】

213 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/10(水) 01:23:23 ID:oAteqQ6m
投下終了。
うまくキャラが再現できてればいいんですが。
214名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 01:26:38 ID:km26AVLn
>>213
お疲れ様

『運命の分岐』はいいの? これ?
色々突っ込みたい所いっぱいあるんですが……
215名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 01:52:02 ID:km26AVLn
一個ずついこう

>(わずかな間でしたけど姉様と過ごした日々、本当に幸せでした、私はその思い出を胸に先に逝きます。)
いや、別に幸せってわけはない。
「奏子、お前の主人は〜」といって好意抱いてた男を逃がすよう懇願しても見逃さなかったり、
かなり辛い目にもあっています。

>(ちなみに最初は支給品である長剣で喉を突こうと思ったのだが、長すぎて彼女では扱えなかったのだった。)
バイロード長いよ、でも喉つく以外の選択肢0って……扱えないって、喉つくのが難しいだけで他にもやりようはいっぱいあるのに奏子は池沼ですか。
死ぬ覚悟してる人間が他の選択肢選ばないって時点でおかしすぎる。
素直に最初から身投げでいいのでは?

>「これ修正前台本じゃないか…ほら」 =名簿関連の介入
いいのかな、そういう設定をボコボコ付け足して介入しちゃって。
アケ以外ならかなり危ないラインだと思う。
運営の意図が積極的に介入していないだけで、行動的には当てはまる。
序盤は、主催側のそういった描写は極力避けるのが普通では?
216名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 02:22:45 ID:K9mqNFAK
でも正直、今NG議論をやれる体力はこの企画には無いぜ?
奏子が幸せだったのかとか、パイロードで自殺が無理とかは、流せる問題だと思う。
感想としてどうかは、また別としても。

修正前台本に関しては、あまり褒めれた方法ではないにしろ、
アイデアとしては面白いと思ったな。
217名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 03:53:07 ID:km26AVLn
幸せかどうかはまだ個人判断だから俺も流してもいいかなとは思います。
だが、バイロードは流していい問題じゃないと思う。
行動基準がちぐはぐどころか池沼キャラになってるのは流していい問題じゃない。

修正前台本はアイディアとして面白かろうが、基本の崩してはいけないルール部分を主催を積極介入させて弄ったわけだから駄目だと思う。
これを有りにすると面白ければ何でも崩してよくなってしまう。
その度に一々議論するのもアレですし、キッパリここで決着をつけるべきだとお思います。

体力がないからといって駄目(この時点ではかもしれないとしておきます)なモノを見過ごしていいわけはありませんしね。
218名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 04:32:29 ID:LsW5qs9+
あのハカロワ2でも、序盤において、この手の類についてはきっかりNGだしてたな。
つか、これ有りなら、今後主催動かして持ち物等いじってもいいことになっちゃうんだが、てか、これ自体がそうだし。
219名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 07:07:11 ID:fyNTKZ7G
バイロードまでは流していいと思うな。
死のう… の直前に喉突こうとしてて、混乱しててそれ以外思いつかなかったと解釈すれば
多少強引だが問題ない。
幸せうんぬんは、奏子の主観でどうだったかだから、別に問題ない。

ただ、台本は前の人たちと同じでヤバスと思う。

ついでに今まで気になってたことも言ってしまうが、『運命の分岐』もそうだが、『Thinking Spider』、『強者達』も
OPの出だしとまるで違うんだが、もうこれは流すでいいのか?
初日からNG議論もどうかと思って、あえて流してたんだが。
220名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 07:17:27 ID:km26AVLn
>>219
その割に落下死なら、痛み感じないかな?とか……うーん、強引OKが多勢なら何もいうことはないです。

>OPの出だしとまるで違うんだが、もうこれは流すでいいのか
『Thinking Spider』がそもそもの発端?
一瞬で散り散りにされたはずなのにこの話が真っ向から矛盾(否定)して、
それを受けた『強者』がおかしい描写をして……
『強者』の方は、まだ該当部分削れば話の本筋には影響ないだろうけど、
『Thinking Spider』は話そのものが成り立たない?
+『運命の分岐』も前者がないのでNG確定になる。
221名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 07:25:58 ID:km26AVLn
一言だけ付け加え

多少強引なのもOKだとは思いますが、受け手側にあまりにも強引な解釈を要求するのが前提の話、しなくてはいけない話はリレーである以上良くないと思ったので……
222名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 07:27:09 ID:km26AVLn
>>219
>>220
『強者達』かorz
タイトル間違い失礼しました。
223名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 07:36:06 ID:fyNTKZ7G
ま、出だしについてはNG議論するなら投下された時に言っとけよってことになるので、「次から気をつけようぜ」で流していいんじゃないかとは思う。
修正できるならするにこしたことはないが。
224 ◆CysS/VAVo. :2005/08/10(水) 08:42:56 ID:vNMFUCdm
うおー、前の話を呼んで「こういう風に出発するのか」と見事に脳に上書きされてました。
言い訳になりませんね、完全に自分のミスです。
こりゃもう見落とした人の責任ですわ……。
幸いまだそれぞれの第一話で続きもきていないので、今晩にでも修正をあげさせて頂きます。
225名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 08:58:14 ID:dZany/rR
前の話の問題もあるから、君だけ修正しても・・・という気がする
個人的は全部ひっくるめて通しで構わない。
226 ◆CysS/VAVo. :2005/08/10(水) 09:02:54 ID:vNMFUCdm
>>225
全部通しにしてしまう場合、OPの方がおかしくなり、こちらが要修正になってしまいます。
どちらにしろ、修正は避けられない道だと思いますので自分は素直にミスした己の方をOPに従って修正する事にします。
227名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 10:50:18 ID:b3KW7Bbc
別にいいと思うがな、これくらいなら、最初だし
228名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 11:28:19 ID:omR/xEru
OPの件についてだが、指摘されるまで正直気がつかなかった・・・
つまり自分にとってはその程度だということ、重大な不都合があるならともかく
この程度なら別にいい・・・かなぁ。
229名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 14:58:46 ID:LsW5qs9+
修正できるなら、修正すれば、いいんじゃないか?
気付かなかったからって矛盾を許していいわけじゃない。
なんにせよ、残り二人の書き手の話も聞くべきだな。
新作の方は、台本があるからさけれんし。
230 ◆CysS/VAVo. :2005/08/10(水) 20:59:41 ID:vNMFUCdm
宣言通り修正版ができました。

>>227-228
最初だからとかの理由で後の話の矛盾を押し通していい事にはなりません。
上記であったような面白いからというような理由も含めて、
それらを建前に後の話を優先し、前の話を無視していい事にはなりません。
覆していい事にもなりません。
また前の話を修正させるような事なんて以ての外です。企画が成り立たなくなってしまいます。
これはリレーSSである以上、不変の戒律だと思います。
ミスをした以上は、書き手として責を負わねばいけないのは当然の事です。
ですので、自分は修正させていただきます。
231強者達(修正版) ◆CysS/VAVo. :2005/08/10(水) 21:01:40 ID:vNMFUCdm
>>146
>「やれやれ、出会う暇もなかったな」
から
>きっとこの中のどれかにいるはず。と信じる。
までの部分です。


「やれやれ、出会う暇もなかったな」
 ゲームの説明が終わった後、あの兄弟と接触したかったが、有無を言わさず飛ばされてしまった。
 気づけばこの地にいた。
 おかげで勇一の姿を探すことすらままならなかった。
 だが、支給された袋の中には、自分と勇二の名前もはっきり書かれている名簿の存在がある。
 これなら、名前から自分がいるのは二人に確実に伝わる。
 しかし、名簿を見渡しても勇一の名前は見つからないのが不思議だった。
「確かに彼の気を感じたのだが……」
 死力を尽くし闘った宿敵の気を勘違いするはずがない。
 きっとこの中にいるはず。と信じる。
232 ◆onsJGWZT0w :2005/08/10(水) 22:07:21 ID:d1QkPJlm
えーうっかり原因を作ってしまって申し訳ないです
それでは修正してみますね。
233Thinking Spider(修正) ◆onsJGWZT0w :2005/08/10(水) 22:07:56 ID:d1QkPJlm
掴み取れなかった…。
初音はまさに無念の表情で右手をわなわなと振るわせる
その手にはまだ最愛の少女のぬくもりが残っていた。

あの茶番に満ちた開会式が終わり、リュックをそれぞれ手にする参加者たち。
あるものは無感動に、あるものは泣きながら、そしてあるものは堂々と胸を張っている。
初音はそんな中でも奏子の手を決して離さずに握っていた。
繋いだ手から震えが伝わってくる。
「安心なさいな、私がいる限りお前には指一本触れさせはしないから」
初音は奏子に優しく言い聞かせる。

そして眼鏡の少年が機械を操作した瞬間、不意に周囲の光景が暗転し。
全ての参加者たちが一瞬のうちに闇に飲み込まれていく、
それでも初音は奏子の手を、彼女が今やただ1人心から愛する少女の手を決して離すまいと力を込める、
しかし。
「かなこ!」
闇の中、奏子の身体に巨大な白蛇が絡みつきその動きを封じていた。
もはや初音にはなす術もない。
それでも初音は握った手を離そうとはしなかった、しかし
奏子の唇がかすかに動いた。
(何?…かなこ一体今何を言ったの?)
反論する時間すらなかった。
2人の手は引き離され、そのまま彼女らは他の参加者と同じく闇に飲み込まれていった。
時間にしてわずか一瞬だったが、初音にはそれが永遠の別離のように感じられた。
234Thinking Spider(修正) ◆onsJGWZT0w :2005/08/10(水) 22:09:32 ID:d1QkPJlm
そして、雪の舞い散る巨大な建造物の頂上で初音は決意を固めた。
「かなこ…私が迎えに行くまで生きているのよ」
そしてこんなふざけたところから早く逃げ出そう、方法はあるはずだ…きっと。
そのために何をすればいいのかを考えなければ、ここで焦れば思う壺。
それこそ奴らの手に踊らされたも同然だ。
確かに戦うのは簡単だが、
(かなこが悲しむようなことはもうしたくないわ…やっぱり)

初音はまずは斥侯として子蜘蛛を何匹か放つ、それほど遠くまでは無理だろうが
それでも彼らは自分の目となり耳となって情報を集めてきてくれるはずだ。
そして彼女自身ははやる気持ちを抑えながら、まずはじっくり考えることにした。
「それにしても持たされた得物がこれとは皮肉ね」
初音は手にした長物を忌々しげに振り回す、シャランと綺麗な音が鳴るのだが
それが余計に腹立たしく思えてくる。
「まぁ…いいわ…銀、今はお前に構っている場合ではないのよ、かなこを見つけて
それで気が向いたらあの時の続きをやりましょう」

【1日目朝、巨大戦艦頂上】
【比良坂初音: 状態:良好 アイテム:錫杖】
(蜘蛛に周囲を探索させています)
235名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 22:17:32 ID:LsW5qs9+
前二作は、これで大丈夫そうだな。
後は、運命の分岐の作者待ちか。
台本の件と併せて、修正無理な気はするが。
236名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 22:57:50 ID:fyNTKZ7G
通しでいいんじゃないかって意見も多い中、ちゃんと修正されたんだ……

ちょっと感心した。
他意とか裏の意味とかは無しで、マジで。
237 ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/10(水) 23:30:08 ID:q6L0yjD3
ではこちらも修正します
対処としては修羅登場のパートと名簿のパートをすべて削除ということで
238運命の分岐(修正) ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/10(水) 23:30:56 ID:q6L0yjD3
死のう…
風が吹き荒ぶ城の屋上で深山奏子は決心した。
(わずかな間でしたけど姉様と過ごした日々、本当に幸せでした、私はその思い出を胸に先に逝きます。)
自分が最後まで生き残れるとは思えない、
奏子の脳裏に無残な最期を遂げた、ガレイズとななこの姿が蘇る。
あんなに苦しそうな、そして悲惨な死に方だけはいやだ、いや、ヘタに生き残るともっと苦しい死が待っているかもしれない。
だから、少しでも楽な方法で死のう…幸せな思い出だけを考えながら。

奏子はまた一歩足を進め、バルコニーの手すりから身体を乗り出す。
地上が遠くかすんで見える、ここから落ちればきっと痛みさえ感じず楽に死ねる。
最初は支給品である長剣で喉を突こうと思ったのだが…刃を見るとあの巣での出来事を、
自らの手で自分を犯した男を処断しようとしたあの時の記憶が蘇り、握ることすら出来なかった。

(お別れです姉様、私はここで死にます、でも姉様だけはどうか最後まで生き残ってください)
奏子はまだ最愛の人の温もりと残り香がかすかに残る手をそっと撫でる。
(姉様の手…暖かくて、そしていい匂いがしたなぁ)
奏子はゆらゆらとバルコニーの手すりの上に乗り、はぁはぁと呼吸を整える。
死ねる…今なら死ねる。
「さよならっ!姉様!!」
そのまま遥か下の地上に身を投げ出そうとした時だった。

「バカっ!何やってるのよ!!」
奏子の襟元を誰かが掴み、そのまま彼女をぐいと引き戻す。
「はなして!離してください!!私が生きていたって姉様にご迷惑をかけるだけ…」
ぱあんと奏子の頬が鳴る。
「ほんとにバカね、その大事な姉様はあなたを最後まで助けようと、傍に置こうとしてたのを忘れたの!」
(この人…)
奏子は自分を生者の世界に引き戻した金髪の少女をみてあることを思い出す。
(あの時私の背中を押してくれた人だ)
本当に一瞬だったが、奏子は確かに覚えていた。
239運命の分岐(修正) ◆V.AE0Rs0Lw :2005/08/10(水) 23:32:07 ID:q6L0yjD3
「少しでもあなたのことを迷惑だなんて思っていたら、絶対あんなことはしないはずよ…だから」
そこで少女は少し考えてから奏子の肩を両手で掴む。
「あたしがあなたの姉様に会わせてあげる」
「え…」
(そんなご迷惑をおかけ)
「迷惑なんかじゃないわよ全然、おせっかいと思ってくれても結構よ…
 少なくとも今死のうとしてる誰かを見捨てて先に進むほど人間腐っちゃいないわ」
奏子の機先を制するように少女はまくし立てる。
もう奏子には彼女に反抗する力は残ってなかった、死のうとするにはそれなりの力と決意が必要なのだ。
それに…やっぱり死にたくなかったし、この状況でこんな言葉をかけてもらえるとも思ってなかったのだろう。
奏子の目から安堵の涙が零れだす。
その頭をやさしく撫でてやりながら、少女は、七荻鏡花は思う。

(このアタシが魔物の味方をすることになるなんて…いずみが聞いたら何て思うかしら?)
彼女が姉様と慕う比良坂初音が魔族だということは最初から容易にわかった、だがそれと同時に彼女がこの深山奏子を思う気持ちも
紛れもなく真実だということも。
だから…彼女もまた初音に会い、確かめたかった…あの時読めた感情は真実なのかどうかを。

【一日目朝、悪の塔頂上】
【深山奏子:  状態:良好 アイテム:バイロード】
【七荻鏡花:  状態:良好 アイテム:不明】
240名無しさん@初回限定:2005/08/10(水) 23:53:41 ID:bJTM0938
バイロード

リーザス一の剣士である赤の将に代々受継がれてきた魔法の剣。
刃は赤く輝く魔法の光で出来ている為、非常に軽い。
また、使い手の意思によりある程度のその長さを伸縮が出来る(短剣程度〜超長剣)。
しかし切れ味はそれほどでもない。

意外と単なる超長剣としか認識されてないようなので参考までに
241名無しさん@初回限定:2005/08/11(木) 00:00:36 ID:K9mqNFAK
ありゃりゃ、修羅の件はなしか。アイデアとしては面白いとは思ったが。
とにかく修正お疲れ様です。書き手の皆様。
まあなんていうか、人がいるのを確認できたのは良かったよw

これだけだとなんなので、最近の作品の感想を。

【猛将、裏切りに散る 】
まあ、どうしてもとりあえず殺した感はぬぐえないが……
とにもかくにもこういう話がないと、先にすすまないわけだしそういう意味ではGJ。
もうちょいタメがあれば、人が死ぬことの重さとか、ミネバのすごみとか出せたとは思うけど。

【運命の分岐】
全体的に唐突感はする。いきなり死のうとする奏子とか、
突然現れて、初音とあわせてやる約束をする鏡花とか。
サトリの能力をうまく使っているとは思うけど。

【ペットの躾には飴と鞭】
大番長はやってないけど、それでもキャラの魅力は伝わってきた。
やり取り面白いし、かなりナイスコンビだと思う。
カオスはキーアイテムだし、これからに期待かな。
242名無しさん@初回限定:2005/08/11(木) 00:11:42 ID:3cczWpfB
そういや、トーマが死んでるのにミネバが驚かないで普通に話してるってことは3のトーマ死ぬ以前か。
まだリーザス進行前ってのもありうるな。
243名無しさん@初回限定:2005/08/11(木) 00:17:26 ID:R1chtqLc
鬼畜王かも、一応完全なパラレルでしょ、あれってたしか?
244名無しさん@初回限定:2005/08/11(木) 00:18:33 ID:3cczWpfB
>>243
4.シリーズ以降から、5Dに分岐するか鬼畜王に分岐するかだから
そこまでは歴史一緒だよ。
245名無しさん@初回限定:2005/08/12(金) 18:04:42 ID:XVTtfmoi
また止まったな、皆どうしたんだ?
246名無しさん@初回限定:2005/08/12(金) 18:23:41 ID:lwGJ7vmS
夏の祭典
247名無しさん@初回限定:2005/08/12(金) 18:24:10 ID:DvjmTq/I
今の時期は色々と忙しいんじゃね?
248 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/14(日) 20:15:20 ID:vQzrPDcl
明日あたりで一話書き上げようと自分を追い込んでみたり。

>>241
感想どうもです。
やっぱ貰えると励みになりますわー。
249素敵で深刻な勘違い(1/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/16(火) 00:18:35 ID:52VvU4nC
「う、動かんとうせ! お、お、お前から解剖しちゃるき!」
「冗談じゃねえな……おぉらっ!」
 振り下ろされる剣を掻い潜り、再び狼牙の拳が素敵医師の顔面にめり込んだ。
「へきゃーーーーッ!?」
 打撃音と共に数メートル吹っ飛ばされて地面を転がり、民家の壁に激突して止まる。
 手から離れたリーザス聖剣が、壁と地面に跳ね返って甲高い音を立てた。
「へッ、どうした包帯野郎。もう終わりか?」
「へけ……ま、まだまだじゃき。センセをあまり見くびらんとき」
 言葉とは裏腹に、ひざをガクガク言わせながら壁伝いに這い上がるようにして立ち上がる。
 いきなり足にキているようだ。
(ままままずいが……コイツめちゃめちゃ強いがよ)
 受けた拳がとんでもなく重い。
 伊達に番長と名乗っているわけではないということか。
「へ、へけけ……こ、こんなときこそオクスリやき。センセのオクスリ、オクスリ……」
 がさごそと自分の身体をまさぐるが、手になじんだ注射器は一本も出てこない。
「な、ないがよ?」
 多少呆然としたような感じでぽつんと呟く。
 そして思い出した。個人所有物は魔人達によって没収されているということを。
 薬漬けになったときから、あって当然の物がなくなっている。動揺は意外と大きかった。
「ないがよ、オクスリ……セ、センセの……キヒ、キヒヘヘヘヘヘ……」
 奇声を発したかと思うと、次第にその身体がガクガクと震えだした。
「な、なんだこいつ……」
 狼牙は薄気味悪そうに眉をひそめた。
(まるでなにかの禁断症状でも起こしてるみたいだぜ)
 みたいではなく、実際その通りだった。
 長い間、日常的に打ち続けてきた薬物だが、この世界に来てからまだ一度も打っていない。
 なおかつ、手元にそれが無いと意識したことにより、一気に禁断症状に陥ったのだ。
「へけ……き、来たがよ、ガクガクブルブルするが……来た、来たきたキタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!」
 頭を抱えて奇声を挙げたかと思うと、リーザス聖剣を引っ掴め、狼牙に向けて飛び掛かった。
「センセのオクスリ出すがーーーーーッ!」
「そんなもんねえっ!」
「へきゃーーーーッ!?」
250素敵で深刻な勘違い(2/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/16(火) 00:20:43 ID:52VvU4nC
 カウンター一閃。
 先ほど同様、よだれを撒き散らしながら盛大に吹っ飛ばされ、大地に叩きつけられる。……が、
 今度は間を置かず、突然ガバッと起き上がった。
「お、オクスリの匂いがするがよ?」
 くんかくんかと鼻を鳴らし、風上を見る。
 殴り飛ばされたこの場所から風上にいたのは……極限まで疲労し、へたり込んだままの沙由香。
「お前きゃーーーーーッ!」
「え!? わ、私!?」
 いきなり標的変更して向かってくる素敵医師に、驚いた沙由香は必死に身を守ろうともがく。
「ちっ、しまった!」
 気付いた狼牙もあわてて沙由香に駆け寄るが、初動が遅れた分わずかに間に合わない。
「オクスリーーーーーッ!」
「きゃああぁっ!」
 リーザス聖剣の斬撃を、とっさに自分のリュックをかざして受ける。
 別に剣に熟達しているわけではない素敵医師の一撃は、それで沙由香を切り裂くことなく止まった。
 だが、リュックは裂け中身は飛び散り……
「見ィつけたがあぁぁぁぁ!」
 ……その中に、素敵医師の目当てのものはあった。
 宙に浮いたそれを捕まえ、一動作でそのうちの一本を抜き取りキャップを外し、さらに沙由香の胸元に手をかけて思い切り引っ張った。
「あ、あんたナイスやき! センセからのプレゼント、受け取っとうせ!」 
「い、いやっ!」 
 ブチブチッという音とともに、沙由香の衣服のボタンが弾け飛ぶ。
 そして、素敵医師は露わになった乳房にそれを――使い慣れた自分の注射器を打ち込んだ
「ヒッ!?」
 何かわからないものを注射され、沙由香の表情に怯えの色が浮かんだ。

「てめえ、相手は俺だろうが!」
 ここで狼牙が到着した。
 素敵医師本人が壁になって沙由香が何をされたのかは見えなかったが、素敵医師の声と沙由香の悲鳴で一足間に合わなかったのは理解していた。
(くそっ、失態だぜ!)
 守りきれなかった悔しさも上乗せして拳を繰り出す。
251素敵で深刻な勘違い(3/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/16(火) 00:23:03 ID:52VvU4nC
「おおおおおっ!」
 ――バキイィィィッ!
 クリーンヒット。今までで一番の手ごたえが狼牙の拳に返ってきた。が、
「……へきゃ♪」
 殴り飛ばされ、地面に倒れた素敵医師の表情が笑みの形に歪んだ。
「お、お前にもプレゼントやき。気に入ってくれたかや?」
「て、めぇ……」
 狼牙のひざがガクリと落ちた。
 その腕に、一本の注射器が刺さっている。
 殴り飛ばされる瞬間、避ける事を放棄して素敵医師が注射したものだった。
「ぐ……一体、何打ちやがった」
「び、媚薬が近いやね……せ、成分は聞かん方がええがよ? センセ特製のオクスリやき。い〜ろいろたっぷり入っとるけんね」
 素敵医師の言葉を裏付けるように、下半身の一点にものすごい勢いで血液が集まっていくのが分かった。
 身体の制御が徐々に狼牙の意思を離れていき、呼吸が荒くなってくる。
 効力が高いだけでなく、恐ろしく即効性のある薬のようだ。
「くそ、なんてもん打ちやがる……!」
「け、けへへ……あまり我慢しない方がええがよ? そのままほっといたら、狂い死にするけんね。
ほ、ほれ、なんならその娘で解消したったらええやき」
「な! てめ、この娘にも……!」
 ぎょっとして思わず沙由香を見る。
 沙由香はぐったりと横たわっていた。意識はまだはっきりしているようだが、時折うめき声を上げ、身体を振るわせる。
「そ、その娘に打ったんは筋弛緩剤が主やき。お前さんほど発情はしとらんが、その代わりしばらくは口もきけんしほとんど身動きもできんがよ」
 言いつつ、震えるひざを押さえて素敵医師はなんとか立ち上がる。
 が、ダメージと禁断症状でひざがガクガクし、どうしても普通に立てない。
「あががが……め、めっちゃ効いとるがよ。セ、センセもオクスリ打たんと、オクスリ……」
 殴られた時に手放してしまったが、目の前に一本だけ落ちていた。
 すぐさま拾って、自分の腕に注射する。
「はああぁぁ〜効くがぁ〜〜……うっとり」
 その一本で、禁断症状は治まった。

「ほ、他のも拾っとかんとね。そんで、こいつらで遊ぶんやき」
 不穏な言動をしつつ、他の注射器セットを探して素敵医師は視線を彷徨わせる。
252素敵で深刻な勘違い(4/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/16(火) 00:25:12 ID:52VvU4nC
 そしてそれは程なく見つかった。
「あ、あったがよ。センセのオクス……リ……?」
「ミュ?」
 ただし、妙な兎の面を顔の横に被り、背中にバズーカと剣を背負った少女の腕の中に、であったが。
「……な、なんがやお前は!」
「み、見つかっちゃいました! えと、ミュはミュです。こんにちは」
「こ、こんにちはじゃないがよ! そのオクスリは……と、その剣も! どっちもセンセのじゃき、返しとうせ!」
 背中越しに見える剣の柄に見覚えがあると思ったら、リーザス聖剣だった。
 だがその言葉に、ミュ――ミュシャ・カレニーナはいやいやをして後ずさる。
「だ、だめです。ミュが拾ったんだからミュのです。これもお姉さんのだけどミュのです。全部ミュのおうちに持って帰るです!」
 背中のバズーカをぺちぺち叩きながら、唯我独尊をのたまう。
 あれも他の参加者からパチッてきた物なのか。
「な、なに言うがよ! それはセンセの大事な……」
「ばびゅーーん!」
「あ! は、話ブツ切りでどこ行くがよ! 返しとうせーーーっ!!」
 こうなると、狼牙達で遊ぶどころではなかった。
 いきなり駆け出したミュシャを追って、素敵医師もまた駆け出していった。


「……な、なんなんだ」
 嵐のように現れて嵐のように(素敵医師まで引き連れて)去っていった少女に、狼牙は思わず呟いた。
(しかし……ヤバイな)
 静寂が戻ったことで沙由香の息遣いが鮮明に聞こえるようになり、自分の意思とは無関係に身体が反応してしまう。
 素敵医師がいなくなったのはありがたかったが、狼牙と沙由香の身体の問題はなんら改善されていなかった。
 選択肢は、二つ。
 このまま性欲を抑えて狂い死にするか、彼女をレイプして生き残るか、だ。
(へっ……こいつは選択肢とは呼べねえな)
 強い者だけが得をする、そんな間違った世界をぶち壊す為に狼牙は戦い続けてきたのだ。
 ここで彼女を犯してしまえば、そんな世界にはびこる下衆共と同類だ。そんなことができるわけもなかった。
 だが、むざむざと死を待つのが自分らしくないことも狼牙は分かっていた。
253素敵で深刻な勘違い(5/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/16(火) 00:28:46 ID:52VvU4nC
(選ぶ道は決まってる。薬に抗って、生き残る!)
 恐らく相当に分の悪い賭けだ。賭けに負ければ、待っているのは死。
(……俺は死なねえ、死なねえ。扇菜も捜さなきゃならねえし、こんなとこでくたばったら狼牙軍団の皆はどうなる!)
 だが、抗おうとすればするほど薬の効果を意識してしまい、劣情と苦しみが増大する。
 沙由香を残してこの場を去れば劣情は少しは押さえられるだろうが、誰が来るかも知れないこんな場所で動けない女を放っておくなど、
狼牙には出来ない相談だった。
 目をつぶり、雑念を排除しようと試みる。
 できるだけ沙由香を意識の外へ追いやり、心を平静に保とうとする。が、
「あ……ぁ……」
 沙由香のうめき声が聞こえてきて、それは失敗に終わった。
「なんだ、何が言いたい?」
 具合が悪くなったのかと心配して声をかける狼牙に、沙由香は口の動きのみで言葉を伝える。その言葉は――
『が ま ん し な い で』
「……あんた」
 狼牙の男の部分が反応した。だが、すぐに頭を振って狼牙は劣情を押さえ込む。
「俺の女だったら迷わず抱いてるとこだけどな。気持ちはありがたいが、俺なら大丈夫だから……」
 あくまで我を通そうとする狼牙に、それでも沙由香は言葉を続ける。
『わ た し が が ま ん で き な い か ら』
「……」
 ここに至って、狼牙は素敵医師の言葉を思い出した。
『――筋弛緩剤が主やき。お前さんほど発情はしとらんが――』
(発情……ってことは、この娘も媚薬打たれてんのか!?)
 口ぶりからすると狼牙ほど深刻な症状はないように思えるが、その狼牙が最悪の症状なので全く安全材料にならない。
 一体どんな後遺症があるかも分からない。下手をすると死亡の可能性も考えられた。
(マジかよ)
 そうなると、抱かない理由がなくなってしまった。
 レイプではなく和姦であり、かつ彼女が助かって自分も助かる。
(……仕方ねえ)
 狼牙は覚悟を決めた。
「いいか、今からあんたを抱く。抱くからには悪いようにはしない、今は俺に任せてくれ」
 沙由香はその言葉にこくりと頷いた。
254素敵で深刻な勘違い(6/6) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/16(火) 00:31:19 ID:52VvU4nC
(ごめんね……、恭ちゃん)
 ここにはいない男に心の中で謝り、身体から力を抜く。
 そして狼牙は沙由香の上にのし掛かっていき……

 ――ゴッ!
「ぐあっ!?」
 衝撃とともに、後方の地面に叩きつけられた。
「まったく……アイテム泥棒を追ってみれば、とんでもない場面に遭遇したもんだわ」
 狼牙はその声に頭を振って身を起こす。
 狼牙と沙由香の間に、派手な衣装の女が立ちふさがっていた。
「こんな状況だからってね、いきなり女襲ってんじゃないわよ下衆野郎!」
 気の強そうな目で射殺すように狼牙を睨み付け、その女――支倉アエンは啖呵を切った。


【一日目朝、リーザス領最北アランの街】
【斬魔狼牙: 状態:媚薬毒により戦闘力激減・強い性衝動 アイテム:不明 備考:女を犯す等、何らかの対処をしないといずれ死亡します】
【高円寺沙由香: 状態:媚薬、筋弛緩剤により行動不能・強い性衝動 アイテム:なし 備考:症状の重さについては次の書き手に任せます】
【支倉アエン: 状態:良好 アイテム:なし】

【素敵医師: 状態:かなりのダメージ アイテム:なし】
【ミュシャ: 状態:良好 アイテム:うさ仮面うさ、チューリップ1号、リーザス聖剣、素敵医師の注射器セット】


【備考:うさ仮面うさについて】
効果は被ダメージ半減です。
打たれ強くなります。
255 ◆/XKGMGuaLw :2005/08/16(火) 00:32:48 ID:52VvU4nC
狼牙が沙由香襲ってるようにしか見えない状況作って終了です。
一話でちょっと色々やりすぎたかも……
256名無しさん@初回限定:2005/08/16(火) 00:43:57 ID:qCTRQC6R
内容としては面白いが、急転直下過ぎるのと描写はしょってて解り難い個所が多くてもう少しレス数が欲しい中身だと思った。
追い詰めて無理に一日で仕上げようとせず、ゆっくりと書いて欲しかった気がする。
257ママトト ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/16(火) 01:59:59 ID:0N2zC/vn
ママトトの軍師ナナスが降り立ったのは、見渡す限り一面の砂が広がる砂漠の中心であった。
幸い、程なくオアシスを発見しナナスはすぐに身を落ち着けた。
ナナスはまず、オアシス『シャングリラ』の散策を始めた。
多少の魔法は使えるものの、彼の本分は軍師であり戦闘員ではない。
もし敵が潜んでいたのならば、自分はいとも簡単に殺されてしまうことだろう。
再度の幸い、ナナスは一通りシャングリラを見回ったが、どうやら今のところこのオアシスには自分以外の誰もいないようだ。
一つ大きく息を吐き、ナナスはその場に腰を下ろし支給品の確認を始めた。

自分に支給されたアイテムはボタン。
何の変哲もない服のボタンに見えるが、不思議な暖かさのようなものを感じる。
どのような効果があるかはわからないが、とりあえず身につけておくことにした。
続いてナナスは名簿を取り出し、参加者の名を見つめ頭に叩き込む。
そして、その中に二つの知った名を見つける。

―リック。
彼ならばこんな殺し合いなどには乗らないだろうし、何より信頼できる。
それに、彼よりも腕の立つ剣士を自分は知らない。
合流できればこれほど心強い者もいないだろう。

―――カカロ。
何故父上はあんなことをしたのだろう。
何故自分を息子として育てたのか。
本当にただ戦争の道具としてしか見ていなかったのだろうか。
本当にいつも僕らに見せていた顔は嘘だったのだろうか。
聞きたい事が沢山あった。

「…………」
ジッとしていても始まらない。
危険かもしれないが、人を探すのならば歩き回るしかないだろう。
そう思い至り、ナナスは荷物を背負うと砂漠に向かい歩を進めた。
258ママトト ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/16(火) 02:02:22 ID:0N2zC/vn
遠く霞む山を横目に、赤い騎士は進む。
「…まったく。おかしなことに巻き込まれちまったな…」
大きく溜息をつき、一人悪態をたれる。
リックは歩を進めながら、幾度か開いた名簿に目を落とす。
そしてその目は、毎回同じ名の上で止まる。
「大将は喧嘩弱いからな…。とっとと探し出さないと」
軽口を叩きながらも、その足取りは焦るように速い。
実際、その軽口は外れてはいないのだから。
ナナスは軍師としては右に出るもののいないほどの天才だが。
その戦闘能力は低い、早く探さないと不味いだろう。

そして、リックの頭を占める不安はナナスの安否だけではなかった。
――カカロ王。
確かにあの時、自分が止めを刺したはずだ。
生きているはずはないのだが。
同名の別人だろうか?
しかしカカロなどという名はそうはない。
果たしてこのカカロとは、あのカカロ王なのだろうか?
仮にカカロ王として、このゲームでなにを成そうとしているのか?
このゲームに乗って、殺人を犯すか?
リックも戦乱の国に使える騎士だ、戦場で人を殺したこともある。
だがこれは違う、この舞台はまったくの別物だ。
もし、このゲームにカカロ王がのっていたらどうする?
殺すのか?
また、殺すのか?
様々な思いが脳裏を掠める。
259ママトト ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/16(火) 02:04:26 ID:0N2zC/vn
幼き日、ママトトにつれてこられたリックは、厳しくも優しくカカロに鍛えられ、育て上げられた。
その姿は偽りの演技だったのかもしれない。
唯の手駒の育成だったのかもしれない。
それでも確かに、その時の彼はリックの父親だったのだろう。
様々な不安がリックを過ぎり、その歩を早める。

いや、リックよ、なにを迷うか。
この身はママトトに捧げているのではない、ましてやカカロ王にでもない。
この身はナナスに捧げ、仕えているのだ。そう決めたはずだ。
誰であろうと、ナナスに仇成すならば討つのみ。
それ以外のことは考えるな、自分は唯の肉切り包丁に過ぎないのだ。
迷いを断ち切るように、リックは更に歩を早めた。
260ママトト ◆Wf0eUCE.vg :2005/08/16(火) 02:06:41 ID:0N2zC/vn
葉月を犯したカカロは、ポルトガルから離れた物陰に身を隠し身を休めていた。
先ほどの女の具合は非常に満足のいくものだった。
カカロは満足げな顔をながら噛み付かれた唇を撫でた。
他にもなかなか具合の良さそうな女も沢山いる。
この遊戯も悪くないのかもしれん。
それに、魔人と名乗る奴等は行った。
勝ち残れば『神』が願いを叶えてくれると。
それが真実ならば、もはや箱に頼る必要も無い。
これほどの事をしでかすのだ、神というのもあながち冗談でもないだろう。
しかし、悪魔の代わりに神を頼るとは我ながら節操の無いことだ。
そう思い、カカロは少しだけ笑みを浮かべた。

続けてカカロは名簿に目を通す。
どうやらナナスやリックもいるようだ。
目的のため利用してやるのもいいだろう。
そう、これまで通り、私の思い通りを成し遂げるための道具として。
クククと笑いを漏らし、カカロはこれまで以上に邪悪に口をゆがめる。

ここで僅かな食い違いがあった。
他の二人と違い、カカロがこのゲームにつれてこられたのはパンドラの箱を開く前。
つまり、彼自身は自分の本性がナナス達に知れている事を知らないのだ。

微妙なすれ違いを抱えながら、ママトトの民は進む。
それぞれの思いを持ちながら、運命に近づくように、遠ざかるように。

【一日目朝 シャングリラ】
【ナナス: 状態:良好 アイテム:鉄壁の学聖ボタン】
【一日目朝 ゼス宮殿】
【リック: 状態:良好 アイテム:不明】
【一日目朝 Mランド近郊】
【カカロ: 状態:良好 アイテム:不明x2】
261名無しさん@初回限定:2005/08/17(水) 06:44:29 ID:sHFkiXDz
うぉ、新作きてたー
俺もたまには感想でも書いてみよう


素敵で深刻な勘違い
素敵医師のステキっぷりがタマラン(*´д`)
確かに展開は速いかな〜と思ったけど、今置かれてる状況はうまいなぁと思った
アエンの前で狼牙がどうなることやら…

ママトト
同じ世界でありながらナナス、リックとカカロが微妙に違う時期ってのがおもろい
シィルの時も思ったがこの設定を今後うまく生かして欲しいと思う
あとナナスの知将っぷりにも期待


書き手さん方、また〜り待ってますんでがんばってください
262名無しさん@初回限定:2005/08/19(金) 17:58:40 ID:EjqMgxcS
人いなホス
263名無しさん@初回限定:2005/08/20(土) 18:02:52 ID:4CbOAmyQ
投下期待ホセ
264そして想いは黒く染まる(1/3) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/21(日) 13:46:14 ID:VIX0zqGs
 ――マスターは人間が好きだと言いました。
 人間を守って戦ってきました。何年も、何年も、ずっと。
 だから私も人間を守ってきました。何年も、何年も、ずっと。
 ……いつかきっと戻られるマスターを待ちながら、一人で、ずっと――

 鬱蒼と茂る森の中で、アリアは一人佇んでいた。
(マスター)
 心の中で主を呼ぶ。
 彼女達の再会は予想もしない形だった。
 何の前触れもなく広いホールに集められた人々の中に、マスター――アズライトと、
そしてもう一人の少女がいたのだ。
 レティシア。
 アズライトに大事な人だと紹介され、あの状況でも幸せそうにはにかんでいた。
 彼女の姿を思い出すと、アリアの胸にちくりと棘が刺さったような痛みが走った。
 レティシアはマスターの大事な人なのだ。
 守らなければならない人なのだ。
 そのはずなのだ。
 そのはずなのに……
(なぜ、私はレティシアがいなくなってしまえばいいと思っているのですか)
 たった一人で孤独に待ち続けた主の隣には、彼女がいた。
 その事実が、アリアの胸に黒い感情を生ませていた。
(なぜレティシアなのですか。なぜ私ではないのですか。レティシアがいなくなれば……
私が立てるのですか? マスターの隣に)
265そして想いは黒く染まる(2/3) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/21(日) 13:49:53 ID:VIX0zqGs
 目を閉じると、初めて出会った時と変わらぬアズライトの姿が浮かぶ。
 レティシアが死んだら、アズライトは悲しむだろう。
 それはアリアの望むところではない。
 しかし、先ほどの感情も偽らざる本音であった。
(レティシアと会ったら、私はどうするのでしょうか)
 守るのだろうか。
 殺すのだろうか。

「なあ、あんた」

 ……考えても、答えは出なかった。
 いざ出会った時に答えを出すことにする。
 それより、当面の問題として、他の人間達をどうするべきかを考える。
 アズライトもアリアも人間を守って戦ってきた。普通ならばそれに準ずるところだが……
(ここでの人間は、恐らく積極的にマスターを殺そうとしてきます)
 普通の人間にアズライトが敗れることなどありえないが、あの部屋には強い力を持つ者が大勢いるようだった。
 それに、やむを得ず反撃することはあっても、アズライトの方から仕掛けることはないと思えた。
 恐らく、親しくなった者がいれば守り、かつ襲ってきた相手を殺さずにどうにかしようとするはず。
 強い力を持つ者達にその甘さを突かれれば……
(万が一、ということもあるかもしれません)
 その場面を想像しかけ、ぐっと手に嵌めた支給品の手甲を握りこんで堪える。
(それなら……)
 マスターの言いつけを破るなど、凶としてあってはならないことだ。
 だが、アリアにとって……いや、知性ある凶にとって、マスターの命に代えられるものなど何もない。
266そして想いは黒く染まる(3/3) ◆/XKGMGuaLw :2005/08/21(日) 13:51:08 ID:VIX0zqGs
 だから、アリアは決意した。
 今後アズライトと合流した時に、すでにアズライトと親しくなっていた者達は除くとしても。
(他の人間は残らず殺します)
 まずは――

「なあって、聞こえていないのか」
「聞こえています」
「聞こえているなら返事してくれ。火倉いずみと七荻鏡花って女の子を捜してるんだが、心当たりはないか?
……それと、その、目のやり場に困る……なんか下履いてくれ」

 ――この目の前の男からだ。



【一日目昼前、引き裂きの森】
【凶アリア:  状態:良好 アイテム:雷穿甲】
【羽村亮:   状態:良好 アイテム:不明】
267名無しさん@初回限定:2005/08/21(日) 14:21:48 ID:VIX0zqGs
そして感想いってみます。
書き手だけど、感想は読み手としてつけるんで敬語も無しでさっくりと。

>猛将、裏切りに散る
いきなりトーマ死んだあ! が、人死ななきゃ進まないのでこれは良し。
まぁ相手がトーマじゃ、こういう手使うのは納得したなぁ。
ガチで戦ったら分が悪いの分かってるだろうし。
目指すはラング・バウ……の玉座? 遠いががんばれミネバ。

>運命の分岐(修正後)
奏子自殺志願。もういっぱいいっぱいで、初音が悲しむとかあまり考えてないっぽい?
生き残れないだろうから、楽な死の方がいいというのはよく分かった。
殺されるより自殺の方が、心構えがある分楽そう。
バイロードでの自殺を思いとどまった理由も納得いった。
そのバイロードは宝の持ち腐れになりそうだけど。鏡花も剣使えないし。

>ママトト
ママトト勢一気に。
やはり時間軸が違うのがキモか。この辺の設定は生かしたいねぇ。
リックは割り切ってるから、カカロと出会っても迷いなく行動できるだろうけど、ナナスはまだなんか迷いがありそうな感じ。
これからどうなっていくのか。
鉄壁の学聖ボタンは、ナナスに足りない体力補強のためかな?
268Awakening Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/21(日) 19:04:12 ID:/qKR8kgi
近い…血の匂いを感じる。
あれから当てもなくただ走っていただけの葉月だったが、
本能に訴えかける匂いを察知するや、くんくんと鼻を鳴らしながら駆ける。
その身体は人であったころよりも遥かに軽ろやかに跳ねていた、
そして茂みの合間にそれは無情にも放置されていたのだった。
「あった…けど」
その支倉ハイネの屍を前にして流石に逡巡する葉月、何をしなければならないのかは分かってる。
しかし…

「やっぱり…怖いよ」
死体の前にへたり込み、そしてうなだれる葉月。
身体と本能は激しく血肉を求めている、しかし…心はまだそれを拒絶していた。
こんな身体に、魔物になってまで恋人に会って、そして何をするというのだ。
やはりあの時…自分は死ぬべきだったのかもしれない。

そうすればシードの中でいつまでも自分は人間のままでいられた、思い出の中でずっと。
「でもボクはやっぱりキミに会いたい!思い出なんていやだ!」
迷いを振り払うと、葉月は己の手を鉤爪に変化させ、そのままハイネの身体を引き裂く、
そしてその肝を取り出すと…眼を瞑ってそれを口の中に放り込んだ。

人食いの第一印象としては、正直大したことはなかった。
ただ血の匂いと血の味がしただけだし、満腹になったわけでもない…。
が、味はともかくとして、自分の身体に充足感が満ちていることのに葉月は気がついていた。
まるで消えかけていた灯火に油を注いだかのような…そんな感覚だ。
身体中に僅かだがまた力が戻ってきたようだ、特に脇腹のあたりに力が集中しているのを感じる。
「ううっ…ううっ…ううーん」
269Awakening Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/21(日) 19:05:23 ID:/qKR8kgi
葉月はその脇腹に貯まった力を解放するかのように伸びをする、と、
めりめりと音と同時に脇腹が裂け、そこから銀色に輝く蜘蛛の脚が勢いよく飛び出した。
わきわきと動く蜘蛛の脚を馴染ませようと葉月は左右に身体を揺らしている。
さらにその足元には小さな蜘蛛たちが何匹も集まっていた。
「おなかすいてるの?いいよ…食べて」
葉月の言葉を聞くや否や、どこに潜んでいたのか無数の蜘蛛たちがハイネの身体に群がりその肉を喰いつくしていく。
その凄惨な様子から思わず眼をそらした葉月だったが…


「な…なんなんだあれは」
薙原ユウキは自分の眼前での異様な光景に絶句する。
最初に見たのは死体の前でうなだれる美少女、声をかけようか迷っている間に、
その美少女はあろうことか死体を喰らい、さらにその背中から昆虫の脚を露出させているのだ。
「モンスターか…ならっ!」
容赦はしないとばかりに剣を抜こうとしたその瞬間。
「!!」

いつの間にか目の前に立っていた少女から放たれた、神速の居合い斬りがユウキの立っていた場所を薙ぎ払っていた。
まさに一瞬、わずかな風の流れに気がつかなければ真っ二つだっただろう。
さらにそこから第二撃、第三撃が次々と放たれる。
(強いっ…)
最後の闘神としても知られる葉月の剣技はユウキのそれを大きく上回っていた、いや彼のみならず
完柳斎や沙耶よりも上だろう。
さらに蜘蛛と化した彼女の身体能力は人間のそれを凌駕している。
(くそっ…何としてでも逃げないと…)
270Awakening Spider ◆onsJGWZT0w :2005/08/21(日) 19:08:39 ID:/qKR8kgi
一方の葉月も必死だった。
もし逃がしてしまえば魔物と化した自分のことがシードにばれてしまうかもしれない、
今の彼女にとって自分がどうなろうが正直、シードにさえ会えれば興味はない。
だがシードに会う前に死ぬことと、シードに自分の正体がばれてしまうのだけは受け入れられなかった。
だがら、目の前の少年には死んでもらうしかない。
(ゴメンね、気の毒だけどボクのためなんだ)

そしてそんな2人を木陰から冷笑しながら、銀が見つめているのだった。



【1日目昼前、リーザス近郊】
【薙原ユウキ: 状態:良好 アイテム:ブロードソード】
【瑞原葉月(蜘蛛): 状態:消耗(HP残40%、見た目上は無傷) アイテム:ブラックソード】
【銀: 状態:疲労 アイテム:なし】
271名無しさん@初回限定:2005/08/22(月) 12:04:42 ID:bMHPvuzf
この人、どっか空気読めてない気がする
いきなり、OP無視したり、行きすぎな補足したり、自己リレーで文句のあった葉月の方向性決定付けて……
葉月はもう眷属の蜘蛛を扱えるのでいいのか?
自分であれだけ注釈をつけたのに。
272名無しさん@初回限定:2005/08/22(月) 20:04:29 ID:YtekNReK
>>271
OPの件はともかく
一応注釈に蜘蛛の能力を行使可能って書いてる
自己リレーも別にそこまでいわんでもという気がする。
273名無しさん@初回限定:2005/08/22(月) 20:37:35 ID:OZdhjebi
アリアがマーダー化か
レティシアと出会ったときが見物だな

葉月はカニバリズム全開だなあ
なんかもう元の葉月には戻れそうにないか・・・

>>271
言いたいことは分かるが、ま、そういうこともあるってことで
ちょっと気にはなるが問題はないわな
自己リレーも別にいいだろ、自己リレーしかしないなら問題だけどな
274名無しさん@初回限定:2005/08/22(月) 20:44:29 ID:HEUA/ojD
と言うか、このスレの場合。
なんかの続き書こうとしたら1/5で自己リレーだぜ…
275名無しさん@初回限定:2005/08/22(月) 21:20:32 ID:HPYnlmQB
このスレって週一更新って認識でおkですか?
今現在、書き手五人もいるのだろーか…
276名無しさん@初回限定:2005/08/22(月) 21:31:32 ID:YtekNReK
トリ付きは4人だね>作者
277名無しさん@初回限定:2005/08/22(月) 21:50:25 ID:OZdhjebi
普段書き込まないけど読み手はいるんだよな、人数
278名無しさん@初回限定:2005/08/25(木) 18:13:52 ID:6dUPAESA
日曜日期待ほす
279名無しさん@初回限定:2005/08/27(土) 01:50:14 ID:4TfcuyM0
保守
280名無しさん@初回限定:2005/08/27(土) 12:56:06 ID:2bNAn8fd
もう少し書き手さんの数が増えてくれるとうれしい今日この頃
281名無しさん@初回限定:2005/08/27(土) 16:39:40 ID:yUj9Der1
保守
282名無しさん@初回限定:2005/08/27(土) 19:01:04 ID:vqYGimAK
俺も保守しとく
283名無しさん@初回限定:2005/08/27(土) 21:03:49 ID:4TfcuyM0
書いてみたいがキャラの性格がよく分からないから無理だなぁ
284名無しさん@初回限定:2005/08/29(月) 22:36:58 ID:OUPOiS+v
新作がないよぅ……
当方は最近妙にリアルが忙しくてなかなか書けないという罠。
なんとか今週中に一本上げられる……か?
285名無しさん@初回限定:2005/08/29(月) 23:07:22 ID:DvvYlPzy
がんがれ、超がんがれ
286名無しさん@初回限定:2005/08/30(火) 01:06:31 ID:1OaTmi7p
>>284
期待してるぜ!!
287名無しさん@初回限定:2005/08/31(水) 23:31:28 ID:ESLCCahG
保守
288名無しさん@初回限定:2005/09/01(木) 00:32:50 ID:0n+KsNSJ
書き手さん、もうほとんど残ってないのかねぇ……
期待してるんだが。
289名無しさん@初回限定:2005/09/01(木) 06:17:49 ID:TZmLcMo+
保守
290名無しさん@初回限定:2005/09/04(日) 16:04:58 ID:XB+phhwM0
保守
291キラー・ファイト(1/8) ◆/XKGMGuaLw :2005/09/05(月) 01:45:23 ID:KOapUJrn0
「ちょっと待ちなっての! いきなり逃げるかい、普通!?」
「正面から戦う方がどうかしています」
 追う女と逃げる女。
 ここカスタムの町では、現在奇妙な鬼ごっこが展開中だった。
 偶然に対峙したフェンリルとマドカだったが、フェンリルの姿を見るなり、マドカは踵を返して逃げ出したのである。
(くそ、こりゃつまんない奴に当たっちまったかねぇ?)
 フェンリルは内心でぼやいたが、だからといって見逃すつもりはなかった。
 角を曲がって逃走を図るマドカに追いつくためにスピードを上げる。
 超重量武器を担いでの疾走だが、フェンリルは人ならざる身――ドゥエンディである。
 彼女の並外れた筋力は、その重さをものともせずに、通常通りのスピードで走ることを可能とさせていた。
 それでも……
「……ちっ、逃げられたかい」
 その距離を埋めることは叶わず、角を曲がったフェンリルの視界にマドカの姿は映らなかった。
 大通りとはいえ、住宅や商店が乱立する地区である。
 建物の影に紛れて逃げられたら、再び見つけ出すのは至難の業と思えた。
「やれやれ、仕方ないねぇ。別の相手を捜すとするか」
 そうぼやきながら武器を地面に下ろそうとした瞬間――ぞくり、と背が泡立った。
「――ッ!!」
 反応できたのは、常に一線で戦い続けてきた経験の賜物だった。
 地面に突き立つ前に『かち割り』の峰に一発膝蹴り。反動を利用して右手だけで頭上に振り上げ、もう片方の腕でも頭部を庇う。瞬間――

 ――ドドドドドドドッ!

 天空から霰(あられ)のように降り注いだ七本の矢がフェンリルを襲った。
 三本は外れて地面に突き立ち、二本は武器で弾かれ、一本は足を掠めるだけに終わったが、しかし、
「ぐっ!?」
 残る一本が深々と、頭部を庇った腕に突き立っていた。
 ギリッと奥歯を噛んで頭上を睨み付ける。
 民家の二階の窓から、弓を構えて見下ろすマドカと目が合った。
「やってくれるねぇ、お嬢ちゃん……!」
「……化け物ですね。戦力評価を修正する必要がありますか」
 フェンリルの眼光に動じる様子もなく、一言呟いてマドカは部屋の中に消えた。
292キラー・ファイト(2/8) ◆/XKGMGuaLw :2005/09/05(月) 01:47:55 ID:KOapUJrn0
「ハハッ、上等だよ!」
 怒りの中にもどこか嬉しそうな響きを交えてフェンリルは吼え、腕に突き立った矢をへし折った。
 折った拍子にずきりと傷が痛んだが気にしない。
 この程度の痛みには慣れているし、下手に抜いて血液と邪気が失われるよりよほどいい。
(訂正だ。つまんない奴だなんて、とんでもないね!)
 獰猛な笑みを張り付かせ、フェンリルは民家の中に突撃した。


(さて、とりあえず撤収しなければなりませんね)
 部屋の中で、マドカは逃げる算段を立てていた。
 セブンスターは連発できない。悠長に装填などしていたら、装填しきる前に踏み込まれて終わりだろう。
(普通、あのタイミングは防げるものではないのですが)
 わざわざ武器を下ろす瞬間を狙ったというのに。
 あの武器さえ振り上げられなければ、致命傷を与えられたはずだ。
 恐らく相当戦い慣れしているとマドカは踏んでいた。
(やはり、ここで排除しておくべきですね。今の沙由香さんや恭平さんでは太刀打ちできないでしょう)
 防がれたのは多少驚きだったが、全く想定していなかった展開というわけでもない。
 部屋にあった椅子を持って、マドカはあらかじめ開けておいた別の窓に近寄り……そして思い切り振りかぶった。

 上から破砕音が聞こえてきて、フェンリルは一瞬足を止めた。
「何やってんだい、一体」
 慎重に階段を上る。
 身を隠すところがない場所だ。ここで待ち伏せがあるかと思ったが、何事もなく二階に上がることが出来た。
(ふぅん? 大抵の奴ならここで一撃食らわすんだろうけどねぇ……)
 多少不審に思いながらも、マドカのいた部屋に侵入する。
 だが、そこにはマドカの姿はなかった。
 ただ普通の部屋の光景と違うところは、開け放たれた窓から隣の民家の割れた窓が見えることだった。
「……また逃げられたかい」
 それとも待ち伏せか。こちらの部屋からでは、隣の民家の部屋の中は窺い知る事は出来ない。
「やってくれるよ。まったく」
 舌打ちして、フェンリルは忌々しげに呟いた。
293キラー・ファイト(3/8) ◆/XKGMGuaLw :2005/09/05(月) 01:54:09 ID:KOapUJrn0
 はたしてマドカは待ち伏せなどしていなかった。
 隣の民家へ移った彼女は、そのまま玄関から外に出て、今度は向かいの民家へと侵入していた。
 また二階へと上り、民家と隣接する側の窓を開けて逃げ道を探す。
 同一規格の住宅なのか、またうまい具合に隣家の窓が目の前にあった。
 リュックを下ろして矢を取り出す。
 そのまま矢の装填を始めようとしたが、ふと思い立って窓際に移り、手頃な椅子に座ってそこで作業を始めた。
 ここなら外が良く見える。外からもこちらが見えるということだが、相手の位置を見失って至近距離で遭遇する事態を避けるには仕方がない。
 マドカも普通の人間よりは耐久力があるが、接近戦を前提として造られてはいない。
 武器の差もあるし、何よりあの馬鹿力は脅威だ。接近戦はなんとしてでも避けたかった。
 センサーの感度を上げておけば対処可能だが、ここではエネルギーを補充できる見込みはない。
 できるだけ、エネルギーは節約したかった。

 五本目を装填し終えたところで、マドカが脱出に使った民家からフェンリルが姿を現した。
 目が合った瞬間、フェンリルは駆け出し、マドカは照準をフェンリルに向ける。が、
(無理ですね)
 大剣を盾の如く構えて突進してくる姿を見て、マドカは射撃を諦めた。
 致命傷を見込めない状況で撃っても意味がない。
(初手で仕留められなかったのは、やはり痛いですね)
 それならばと、相手の動きを気にしながらも六本目を装填する。
 フェンリルが民家に飛び込むとほぼ同時に装填完了。
 立ち上がり、座っていた椅子を引っ掴んで隣家の窓に向かってブン投げた。
 盛大な音と共にガラスが飛び散り、逃走経路が出来上がる。
 そしてリュックを背負い、マドカは隣家へと転がり込んだ。

「ちっ、またかい!」
 つい先ほどまでマドカがいた部屋へなだれ込んだフェンリルだったが、またしてもマドカの姿はなかった。
 また逃走に使ったと思われる、割れた窓を睨み付ける。
「いいさ、とことんまで追いかけてやるよ!」
 今までは慎重に行動していた為、後手後手に回ってしまった。
 向かいの家に移る時も待ち伏せを警戒して時間がかかってしまい、相手に時間的な余裕を与えてしまっている。
294キラー・ファイト(4/8) ◆/XKGMGuaLw :2005/09/05(月) 01:56:04 ID:KOapUJrn0
 だが、最初の階段でも、向かいの家でも、この家の階段でも待ち伏せはなかった。ならば――
 意を決して、フェンリルは隣家へと強襲することを決めた。


(……)
 隣家の部屋で、マドカはじっと息を殺していた。
 窓からは見えない、すぐ後ろには開け放たれた扉がある位置で。
 窓からフェンリルが飛び込んできた瞬間、セブンスターで一斉射を行う為に。
 仕留められれば良し、仕留められなければすぐに逃走するつもりだった。
 大剣を防壁にしながらこちらへ移ってくるのは、窓のスペース的に不可能だ。
 それに、今まで待ち伏せを行えそうな場所で、マドカは一度も待ち伏せを行っていない。
 矢の装填に時間がかかるからでしかないのだが、そろそろ相手も焦れている頃だろう。
(不意を打つには、いい頃合です)
 フェンリルがやってきたのか、隣家から声が聞こえる。もうすぐだ。
 タイミングを確実なものにするため、センサーの感度を上げる。
 足音が少しだけ遠ざかった。
(?)
 マドカが不審に思ったのもつかの間、フェンリルがこちらへ向かって助走をつけたのが分かった。
(一気に飛び込むつもりですか……!)
 やはり焦れていたのか。
 窓へ向けてセブンスターを構えたまま、タイミングを逸しないようにマドカは集中力を研ぎ澄ます。

 ――窓まであと四歩。

 ――窓まであと三歩。

 ――窓まであと二歩。

 ――窓まで――
295キラー・ファイト(5/8) ◆/XKGMGuaLw :2005/09/05(月) 01:58:31 ID:KOapUJrn0
(――窓……じゃない!?)

 足音の向かう先が窓からずれている。
 それに気付き、マドカの目が驚愕に見開いた、その瞬間―ー
「りゃあああああああっ!!」
 雄叫びと共に、壁の一部が砕け散った。
 爆砕したかのごとく破片が飛び散り、マドカの身体に叩きつけられる。
「くうっ!?」
 思わず声を上げながらも相手を確認する。
 超重量武器とドゥエンディの膂力で無理矢理壁をぶち抜いて現れたのは――無論、フェンリル。
「よぉし! どんぴしゃあぁっ!」
 マドカの姿を確認するなり、飛び込んだ勢いそのままにマドカに向けて肉薄する。
「くっ!」
 思惑は外れたものの、マドカもすかさず照準をフェンリルに向ける。が、
「させないよっ!」
 照準を向けた時にはもう目の前までフェンリルは迫っていた。
 両手で持っていた大剣を手放し、向けられたセブンスターを左腕で弾く。だが、同時に六本の矢も発射されていた。
 うち一本が、弾いた左腕の甲から肘までを縦に裂き鮮血が飛び散ったが、フェンリルは止まらない。
 そのままマドカに体当たりをかまし、扉を抜けて廊下の壁に叩きつけた。
「くはっ!?」
 叩きつけられた拍子に、マドカの口から空気が漏れる。
(……いけない!)
 思った時には髪の毛を無造作に掴まれていた。
 腕も取られ、そこを支点にして身体を振り回される。向かう先は、開け放たれた扉の蝶番。
 ――ガッ! という音と共に、視覚センサーの奥に火花が散った。
 一瞬、視界がブラックアウトする。
(逃げ……なければ……!)
 そう思うが、身体の制御はフェンリルに握られていた。
 二度、三度と顔面から叩きつけられ、視界が完全にブラックアウト。表皮は破れ、バランサーもおかしくなったか平衡感覚も歪んでいく。
「ハハッ! ようやっと捕まえたよ、お嬢ちゃん!」
296キラー・ファイト(6/8) ◆/XKGMGuaLw :2005/09/05(月) 02:01:40 ID:KOapUJrn0
 髪の毛が離されたかと思うと、フェンリルは腕を掴んだまま部屋の中にマドカを引きずり込み、
「おおおりゃああぁっ!!」
 そのままジャイアントスイングのようにマドカの身体を振り回した。
 今度の向かう先は、壁際の本棚。
「――か……は!」
 成す術もなく叩きつけられ、再びマドカの口から空気が漏れる。
 衝撃で、棚に収まっていた本がどさどさと床に落ちた。
「まだまだいくよっ!」
 再び振り回され、叩きつけられ、マドカの身体の機能が破壊されていく。
(逃げ……な……ければ……)
「もう一丁おおぉぉ!」
 三度振り回されるが、腕のジョイント部が先に悲鳴を上げた。
 ミシッと嫌な音を響かせて関節がありえない方向に曲がり、支えを失って失速したマドカの身体は床に投げ出された。
 そのことで、寸断なく襲い掛かってきていた衝撃が止まり、フリーズしかかっていた意識が復旧する。
(逃げなけれ……ば……、身体の機能は……?)
 右腕はもう駄目だ。左腕と両足はまだ動く。問題は視界とバランサーだ。
 と、ブンッと一瞬ノイズが走り、唐突に視界が回復した。
 そして最初に見えたのは、今まさに振り下ろされるフェンリルの足。
「……っ!」
 直後に衝撃。破砕音と共に、左肩が粉砕された。
「こういう時に油断かますのが一番危ないんでね。両腕、壊させてもらったよ」
 言ってすかさずマドカを引っ張り上げ、壊れた両腕ともども胴に手を回してギッチリとホールドした。
 ベアハッグ。
 フェンリルの左腕からの出血が多くなるが、一向に構わず締め付ける。
「く……あ……」
 ぎりぎりと胴にかかる圧力に、苦悶の声が漏れる。
 身体の中で、みしみしとフレームが軋む音が聞こえる。
 マドカは考える。なぜ、こうなったのだろう。自分はどこで読み違えたのだろうか。
「な、なぜ……?」
「なぜ待ち伏せがばれたってかい? あんた、一回あたしを狙ってやめたじゃないか。あん時、あんたの弓にまだ空きがあったみたいだったんでね」
 締め付ける力は緩めないまま、フェンリルはマドカの問いに答える。
297キラー・ファイト(7/8) ◆/XKGMGuaLw :2005/09/05(月) 02:04:07 ID:KOapUJrn0
「待ち伏せしてないのはおかしいと思ったんだが、考えてみれば当然だぁね。あんなけったいな武器、そんな簡単に装填できるわけがない。
だから、待ち伏せがあるとすればそろそろだと思っただけさ。確信とまではいかなかったけどね」
「……よく、見て……ますね」
「そうでもなけりゃ、800年も戦場で生き延びられないからねぇ……そろそろ逝きな!」
 腕に一層強く力が加わり、マドカの身体が悲鳴を上げる。
 体内でいくつもの回路がショートし、目の前に火花が散った。
(ここまで……ですか……?)
 無念だった。沙由香も恭平も見つけ出せず、何も出来ないままここで終焉を迎えることが。
(すみま……せん、どうか……ご無事……で……)
 心の中で、守るべき二人に詫びる。
 唇が動いた。最後に彼女が呟いた言葉は……
「きょう……へ……さ……」

 ――バキィッ!

 最後まで言葉を紡ぐことも叶わず、マドカの身体は限界を迎えた。


「……痛っ、ちょいと深いね」
 民家の一階で左腕の傷の治療を済ませ、フェンリルは一人ごちた。
 少し家探ししたが薬品の類は見つからなかったため、治療といっても拝借した服を裂いて包帯代わりに巻きつけただけだ。
 十分とはいえないが、当面はこれで我慢するしかない。
 その傷の原因となったセブンスターはというと、全弾装填状態で傍らのテーブルに置かれていた。
(やれやれ、最初っから手傷を負うとはね。やってくれるよ、あのお嬢ちゃん)
 特に、あの不意打ちは紙一重だった。思い出すと、自然と笑みがこぼれてくる。
 上の階で横たわっているはずのマドカを見上げ、ふとフェンリルは唇の端を歪めた。
「そういや、名前も聞いていなかったねぇ」


298キラー・ファイト(8/8) ◆/XKGMGuaLw :2005/09/05(月) 02:05:02 ID:KOapUJrn0
【一日目朝、自由都市群、カスタムの町】
【フェンリル: 状態:左腕に深い切り傷 アイテム:かち割り、セブンスター】

【マドカ:死亡】
(残り45人)
299名無しさん@初回限定:2005/09/05(月) 02:12:03 ID:KOapUJrn0
投下終了。
自己レスですが、周りにフリーのキャラが多いおいしい位置なので、
早いとこ自由に動かせる状態にしたかったとです。
300名無しさん@初回限定:2005/09/05(月) 22:07:26 ID:mv2oeQUX0
>>299
過疎ってる状態で言うのもなんだが、
盛り上げようとして自己レスしたのはわかるが、発言が迂闊だ。
それでは、そのためにマドカは殺されてしまったのかとか悪いように取る人も出るから。
301名無しさん@初回限定:2005/09/05(月) 22:12:49 ID:4CjhV9wI0
過疎ってるからこそ、早い者勝ちでいいと思うよ。
最後まで生き残るのは作者の愛情+物語の流れ。
◆/XKGMGuaLwさん
情景が良く出来てて、面白かったですが、ただカスタムの町の特色が少しでも出れば面白かったかなぁと。
町ネタがかなりだせる場所でもあると思うので^^;
302名無しさん@初回限定:2005/09/05(月) 23:06:31 ID:mv2oeQUX0
>>301
いや、問題が全然違うよ。
問題のある発言は止めようって事なんだが……
>>300見ても解るように早い者勝ちと何も関係ないよ。
と言うかリレーにおいて早い者勝ちは当然なんて解ってますってば。
303 ◆/XKGMGuaLw :2005/09/06(火) 03:12:03 ID:1/y5l9aN0
誤解させるような文だったのは申し訳ない。

自己フォローすると、フリーにしたかったから殺したわけじゃないです。
それなら痛み分けでもよかったわけで。
マドカの死は、前の話書いた時から漠然と考えてた結末です。
あまりに放置されるようなら自己レスする気でいたんですが、過疎ってるし、なにより>>299の状況になったし、
いっそ今書いてしまえと思っただけで。


>>301
感想ありがとうございます。
……あああ、これは全く頭にありませんでした。>カスタムの町の特色
場所の特色をもうちょっと気にしていれば……
精進。
304名無しさん@初回限定:2005/09/06(火) 17:08:29 ID:0NBgeuGj0
やっぱ職人さんが少なすぎる
305名無しさん@初回限定:2005/09/07(水) 00:06:10 ID:LN9JOg8J0
確かに。
書き手さん超キボンヌ
306名無しさん@初回限定:2005/09/07(水) 00:10:23 ID:+yQkk9T10
葱が復活してしまうと
どうしてもそちらに行ってしまうんだよ
愛着もあるしまだ終わりそうだし
307名無しさん@初回限定:2005/09/07(水) 01:06:38 ID:xftot4ir0
見てきたが、行って…るか?
8月中旬から保守しかなかったぞ
308名無しさん@初回限定:2005/09/08(木) 14:03:07 ID:nJE58vy60
保守
309名無しさん@初回限定:2005/09/14(水) 01:38:40 ID:ub/GwbQWO
ほしゅ
310名無しさん@初回限定:2005/09/14(水) 01:48:54 ID:1kZcJuPP0
保守だけでなくSSを頼む、心から・・・
311名無しさん@初回限定:2005/09/18(日) 10:59:19 ID:DxjiFf4X0
ほしゅ
312名無しさん@初回限定:2005/09/19(月) 19:57:31 ID:wDtWYpJ9O
さて、仕事中に少し考えるかな
313名無しさん@初回限定:2005/09/21(水) 21:59:52 ID:xz3e4un50
まとめサイトみたいなのは無いのか?
今はまだ見れるけど、今後話が進むと、話が判らないという質問に対してログ見れ、と返答できなくなってくると思うが。
314名無しさん@初回限定:2005/09/21(水) 23:33:32 ID:9unnBVWE0
まとめるほど話が無いという問題が。。。
315名無しさん@初回限定:2005/09/25(日) 06:01:02 ID:1U3zWFgI0
始めるまであれだけ長々相談しといて、
これでオシマイなのか…?
316名無しさん@初回限定:2005/09/29(木) 01:30:23 ID:Jvnv8TMe0
まだだ、まだ終わらんよ! たぶん
317名無しさん@初回限定:2005/09/30(金) 02:55:19 ID:CfXPjgQv0
気長に待ってる
318名無しさん@初回限定:2005/10/09(日) 12:04:37 ID:ghQubVRQ0
今回の敗因
@職人さんが少ないにもかかわらず、
 勉強して読み手→書き手への移行者が0だった。
A他のロワスレを読み、目の肥えた読み手たちが文句を垂れ流し。
 フォローする人たちの努力もむなしく、職人さんのやる気を失わせてしまった。

まぁ、あれだ。2割の働きアリと8割の怠けアリでは無理ということです。
319名無しさん@初回限定:2005/10/09(日) 20:04:31 ID:q33/0m7c0
初っ端からOP無視する書き手とかもいたしな。
320名無しさん@初回限定:2005/10/14(金) 17:53:33 ID:/IH2z+180
ダメポ。
321名無しさん@初回限定:2005/10/21(金) 06:08:13 ID:+rNJDJo00
こういうイベントを発足する時は、設定をつめる事も大事だが、
やはり書き手を十分に集める事がやはり必要なのかもな。
後は、まとめサイトを作るなどしての、新規参入者をフォローする為の場を作るとか。
過去ログ嫁は過去ログがあるからこそ読めるのであって、
過去ログが無くなったり、また過去での話が二転三転して纏まっていなかったりした場合、
新規に参入したくとも出来ない、という事が起きる可能性がある。
以前の葉鍵や葱ロワなんかでは、初期にそういったシステム構築した人と賛同者がそこいらを纏めたから結構長く持ったと思われる。
惜しむらくは、その人(あるいは、達、が)が書き手も兼ねてしまった、という事だろうか。
システムを作り、ある程度の目処が立ったら、ナナシに戻り、作品を投下する。
でないと、この人は初期メンバーだし、という優越感などが生まれ難いし、
遠慮が起きる可能性も少ない。

結局、今回は、書き手が二、三人しかいなかったって事が一番の問題なんだろうけどな。
322名無しさん@初回限定:2005/10/25(火) 03:22:48 ID:Gr3UoB9c0
SSを書きたくなるほどアリスに思い入れが
ある人が少ないというのもあると見た。

読むだけなら別にかまわないんだけど。
323名無しさん@初回限定:2005/10/25(火) 22:47:18 ID:mOxfwAgA0
アリスSSサイトもどんどん減ってるしな……
しかし一番の問題は何故今更バトロワ?なような気もする。
324名無しさん@初回限定:2005/11/02(水) 23:35:42 ID:FUbiu8h60
それでも保守
325名無しさん@初回限定:2005/12/01(木) 00:29:02 ID:SNCf8Qzv0
もうすぐ1ヶ月か・・・
326名無しさん@初回限定:2005/12/01(木) 10:37:07 ID:S2wnDpXtO
バ−−−カ!
ギャハハハハハハハハ


 ■■  終 了  ■■
327名無しさん@初回限定
保守