男としての本能か、それとも格闘家としての勘か?
相手が悲鳴を上げる直感した新は、即座にクリスの口を塞いでそれを阻止する。
「モゴモゴ・・ンンン・・モガガガ!!」
なおも抵抗するクリス。
(な、なんでここにクリスが?と、とにかくここは・・・。)
すばやく背後を取り、絡め手を極めて相手の動きを封じる。
さすがは練習を積んでいるだけのことはある。恐るべき早業だ。
「モガガガガガガガガ!!」
「ク、クリス。ま、まずは落ち着け!!」
「モガ・・・・・。」
どうやら、ひとまず落ち着いたようだ。とりあえずは大丈夫だろう。
塞いでいた口を解放して、現状の把握に努める。
「な、なんでお前がのんびり俺の家の風呂に入ってるんだ!?」
「ぼ、僕だって好きでここにいるんじゃない。」
「じゃあ、なんで?」
「成り行きだ。仕方なかったんだ!!」
(どんな成り行きだよ!!まあ、どうせいつもと同じように、
他の王女の誰かとトラブルを起こして、結果的にこうなったって感じか。)
「と、とにかく、新!!その手を離して、ここから出ろ!!」
「あ、ああ、すまない。この話はまた明日・・」
「ただいまー。」
!!!!!
「だ、誰だ?」
「しまった。姉ちゃんが帰ってきたんだ・・・。」
「ただいまー。」
「お、おかえり、姉ちゃん!!」
「なんだ、まだ入ってたのか。ん?何を慌てているんだ?」
「べ、別に慌ててなんかないぜ・・。」
「まあいい。私も風呂に入りたい。食事の準備をしているから、早く出てくれよ。」
(さすがは姉ちゃん。鋭い・・・。)
「ど、どうするんだ!?」
「(大きな声を出すな!!)」
「(う・・・。)」
「(今俺が出たら、すぐに姉ちゃんが入ってくる。)」
「(それはマズい。早く僕を逃がせ!!)」
「(どうやって?)」
「(ここはお前の家だろ!何とかしろ!!)」
「(何とかって言われても、お姉ちゃんがそこにいる限りは無理だ。)」
「(そこを何とかするんだ!!)」
「(わ、分かった・・。とりあえず、落ち着いて作戦を練ろう。)」