エロゲー全般のSS投稿スレです。あなたの作品をお待ちしています。
エロエロ、ギャグ、シリアス、マターリ萌え話から鬼畜陵辱まで、ジャンルは問いません。
そこの「SS書いたけど内容がエロエロだからなぁ」とお悩みのSS書きの人!
名無しさんなら安心して発表できますよ!!
【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを30行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
なお、一回の投稿の最大行数は32行、最大バイト数2048バイトです
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
自分がアップしたところをリダイレクトする。
>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が470KBを超えた時点で、
ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。
保管サイトはこちら
http://yellow.ribbon.to/~savess/ 過去スレ
>>2-4辺り
乙の一手
扱うネタの性質スレの伸びに波があるから
即死が怖いな
>1乙
さて、なんか書くか
1乙。というわけで前スレに間違って投稿したのを改めて…
とりあえずエロゲ作品別の「あやかしびと11」
>>288-289が元ネタ
ああ、嗚呼。もう嘆く事すら出来ない。もう涙も流れない。
代わりに出来たのは殺すことだ。代わりに流れたものは血だ。
ざぁざぁ、ざぁざぁ。
豪雨。降りしきる雨の中で、彼らは、彼女らは戦っていた。
ざぁざぁ、ざぁざぁ。
雨音を切り裂くように嗤い声が響く。男の笑い声。雨のせいで垂れてしまっているが、普段はつんつんとした髪型の男の、嗤い声。
彼の名は武部 涼一だった。そして如月 双七だった。今はただの妖。名もなきあやかしが笑っていた。
それに相対するは四人の男女だった。
一人は教師。眼鏡をかけたどこか人のよさそうな男だ。草臥れたスーツはところどころ切れており、身体は満身創痍に近い。
一人は師匠。隻眼で白髪の大男。わき腹を何かで抉られたのかどろどろと血を流している。傘を支えに、彼は立っている。
一人は老人。だが既にその身は戦える状態ではなく。血にまみれ雨にまみれ泥にまみれ、大地に臥している。
一人は恋人。かつて如月双七であったものを愛し、今も彼を愛し、それでも、それでも――決意した、女性。
その四人――正確には三人だが――を見据え、名もなき妖は疾った。その手に持つは螺旋双剣。狙うは、隻眼の男、九鬼 耀鋼。
「魔刃――」
「させんっ!」
凶刃が九鬼を穿つ寸前、まるで疾風の如くその真横に教師――加藤 虎太郎が現れ、人妖の能力にて鉄板すら貫く拳をまっすぐに振りぬいた。
軽く舌打ちしてそれを避ける妖。その動きは人にあらず。止まれる筈のない速度だったのだが、その足から奇怪に生える刀の刃が大地を抉り、止まった。
それを見て九鬼が傘、カンフェールと呼ばれるそれを突き出した。先端はチタンで作られ、そして鋭く磨き上げられている。鋭い刺突は妖の顔面を抉ったかに見えた。
だがまるで閃光のように迫るそれを妖はその口――歯でガチリと掴んで見せた。甲高い音と不可解な状況。そのまま妖は身体を動かしカンフェールごと九鬼を投げ捨てた。
「チィッ」
宙を舞いながらも九鬼は体勢を整え、不恰好ながら着地する。抉られた腹部から血が溢れ、九鬼は片膝をついた。
「おいおいその程度かよ九鬼 耀鋼。如月 双七の知る…いや、武部 涼一か。あれが知っていた九鬼はもっと強かったぞ」
「――ほざけ。その顔、口であいつの名を出すな」
静かに。九鬼 耀鋼は憤っていた。同時に加藤 虎太郎も拳を握り締める。
そんな様子を彼の恋人は――一乃谷 刀子は、ただただ苦悶の表情で見つめていた。その表情が晴れることは、ない。
ぐりん、と首を動かし妖は刀子をなめるように睨み付ける。
「刀子さんも、だよ。いい加減割り切ってくれないかな。如月 双七はもう死んだんだ。君を守るために死力を尽くして――まさに死力、だね。
そしてもうあれが残ってないのを知ってるのに刀子さんは俺を斬れないんだよね? はは、嬉しいな。嬉しいよ刀子さん」
「お黙りなさい…っ!」
その言葉に激昂し、激情のままに刀子は駆けた。文壱を振るい、妖を両断せんと斬りかかる。
刹那に浮かぶは双七の笑顔。双七の泣き顔。双七の――愛おしい愛おしい如月 双七の顔が。
「……っ!」
振り払う。彼はもう帰ってこない。逢難の魂は完全に双七と結合した。彼の知識は、記憶はあるが、あれは既に”彼”ではない。
文壱を振るう。螺旋双剣がそれを受ける。通常の刀の数倍重い文壱にあわせ、怪力の能力を持つ刀子の一撃を妖は受けて見せた。受けきって見せた。
そこに隙ありと虎太郎が走りよった。拳を放つ。鍔迫り合いをしているのならば、そこに隙が存在する――!
硬く、固く拳を握り締め虎太郎はかつて如月 双七だった妖の顔面を狙う。その顔は、かつての彼からは考えられないほどに酷く歪んで――嗤っていた。
瞬間、視界に入ったのは巫女装束の後ろ姿だった。
「しま…!?」
った。と思った瞬間に螺旋を描く刃が虎太郎の足を貫いていた。
鍔迫り合いをしていた妖はその螺旋に文壱を引っ掛け、突撃してくる虎太郎の眼前に放り投げたのだ。閃光の如く速い、それ故に一瞬の判断の遅れがあった。
それが致命傷。深く足を抉られ――加藤 虎太郎は倒れた。足の腱を抉られたのか、動かない。
九鬼 耀鋼も動けない。血は止め処なく溢れ、既に身体は死に体だ。
「一人だけになっちゃったね刀子さん」
「くっ…!」
自分を目隠しに使われたのに気づいて刀子は下唇を噛んだ。
――強い。
この妖は、強い。神沢市を出た名もなき妖は、日本各地にある幻咬の尾を殺して回り始めた。同時に、大量の人と鴉天狗を殺しながら。
尾との戦いも凄まじく周囲には何百、何千という被害者が出た。故に、彼を殺さねばならないと――彼らは本格的に動き始めたのだ。
そんな中虎太郎、九鬼、鴉、刀子の四人がこの妖に遭遇できたのは運がよかった――いや、悪かったというべきか、兎も角そうとしかいえなかった。
既に滅ぼした尾の封印された場所に、何故か戻ってきたのだ。
手がかりはないかと探していた四人の前に現れた妖は、まず驚き、そして愉悦に塗れた表情を浮かべ――戦いが、始まった。
結果は見るも無残なものだ。鴉は切り刻まれ倒れ臥し、九鬼は脇を抉られ、虎太郎は足を潰された。
そして刀子は――刀子は、その妖と正面から切り結んでいた。
一合、一合。切り結ぶ度に刀子の記憶の中から如月 双七との思い出が傷つけられ、泥に塗れ、腐っていった。
あぁ、彼はこんな顔では嗤わない。こんな風に戦わない。優しい、優しい人だったのだ。
悲しくて、辛い人だった。優しくて、切ない人だった。故に好きになったのだ。情けないと、自分を嘆く姿を見て一乃谷 刀子は――
だがその双七は残ってはいない。いるのは妖。ただの化け物。鬼神の如き強さを誇る、九尾の尾が一つ、逢難。
切り結ぶ。切り結ぶ。切り結ぶ。切り結ぶ――!
穢れて行くのは如月 双七の笑顔。あぁ、もう堪えられない。ざぁざぁと降る雨の中。彼女はただ刀を振るった。
手加減をしてるのだろう。一瞬で切り殺せるはずなのに――ガンガンと刀のぶつかる音は、続いた。
もう幾度と切り結んだだろうか。妖がトンっと軽く後ろに飛んで距離をとる。その表情には怠惰が浮かんでいる。
「楽しかったけどもう終わりだよ刀子さん。九鬼先生は倒れたし加藤教諭も動けない。鴉さんも――あぁ、もしかしたら死んでしまったかもしれないね」
「だから、どうしたいというのです」
「面倒くさくなったし逃げようかとも思ったんだけどね刀子さん……あぁ、そう。あぁそうだよ」
一瞬にして怠惰は愉悦にする変わった。恍惚の笑みを浮かべ、続ける。
「貴女を殺したいんだ刀子さん」
だからゲームをしようと妖は嗤った。
「ゲーム…?」
「そう、ゲームだよ刀子さん。今から、君を殺す気で剣を放つ」
語る目には嘯く色はない。
「だから刀子さんも殺す気で来てくれ。一回、一撃だけの勝負だ」
純粋でわかりやすいだろう? と妖はまた嗤う、哂う。
挑発だ。一乃谷 刀子をなめきった挑発なのだ。受けなければ死ぬ。だが、受けても死ぬ確立のほうが、高い。
だが彼女はそんな事を考えていなかった。確立など関係ない。ただ哂う妖を見ていた。
――なんて、醜悪な。
彼の笑顔が穢れていく。堪えられないのはそれだけだ、彼の思いが崩れていくのを見るのは、辛い。
だから、彼女はゲームに受けて立つことを決めた。振り払う、ために。
「じゃあ合図を決めよう…この百円玉が地面についたらゲームスタートだ」
一体何処で手に入れたのか。使いもしないであろう百円玉を取り出して妖は笑顔を浮かべる。一瞬、それが双七に重なったのを感じて刀子は吐き気を覚えた。
行くよ、という言葉と共に澄んだ音をたてて百円玉が宙をくるくると飛ぶ。
文壱を握り締める。勝負は一瞬、故に一撃。その一刀で、首を絶つ。
ゆらゆらとコインが落ちていく。その様は、まるで殺し合いをしているときの自分の心境のようだと刀子は思った。
ただ、なんとなくそう思った。だから少しだけ、悲しげな表情を浮かべたのだ。
コインが、地面に落ちた。
疾風。刀子は身を風にせんとばかりに走り、文壱を鋭く一閃させる。
鞘から刀身が抜け切った瞬間、世界が遅く見えた。走馬灯のようなものだろうかとぼんやり彼女は考える。
未だ刀は走っていない。だというのに、捻じるように放たれた妖の螺旋双剣のほうが速いというのがわかってしまった。
死んだ。この一撃に頭蓋を抉られ死ぬのだ。
死ねば双七に、あの双七に会えるだろうか。彼の精神は死んだに等しい、故にまだ現世にあるのかも知れない。だから、あえないかもしれない。
それが少しだけ残念で――刀子は、それでも安堵した。
これで、終われる。
――それは、気のせいだったのかもしれない。
え、と刀子は情けない声を出した、のだと思う。実際、そうだったのではないだろうか。
ゆっくり進む世界の中で、見えたのだ。
螺旋を描き放たれた刺突が、一瞬だけ止まったように見えたのだ。
刹那世界は色と速度を取り戻す。
振りぬかれた文壱は妖の胴体を真横に切り裂いた。
鮮血。その後、吐血。信じられない、といった表情を浮かべたまま、妖はどしゃりとその場に崩れ落ちた。
カラン、と乾いた音がした。ふと音のしたほうを見ると、手から文壱を落としていた。
文壱は血に汚れ、肉片がこびりついている。だがそれは降りしきる雨に少しずつ、少しずつ流されていく。
足元には、仰向けに倒れた妖が。
どうしてだろう、なんて表情を浮かべている。なんでだろう、なんて表情を浮かべている。
そして驚愕に満ちた瞳で刀子を見て――口元を歪めた。
刀子自身も何故斬れたのかわかっていなかった。唐突な事実に驚き、茫然自失としていた。
それを、どう受け取ったのか。
妖は笑った。
13 :
名無しさん@初回限定:2005/07/31(日) 00:38:23 ID:PAbbpRWh
ざぁざぁ、ざぁざぁ。
豪雨が、雨が、雨が雨が雨が――雨が、降っている。
そんな中に刀子はたっていた。文壱を持って立っていた。見下ろしているのは、未だ息をしている妖だった。
だが、それは朽ちかけている。理由はわからない。この程度の傷、修復できてもおかしくないのだが――それが始まらない。
浅くなる息。絶えかける、呼吸。そんな妖を見ながら――見ながら、刀子は、手に残る妖を斬った感触を思い出していた。
「ひ……どい…や……、とう…こ……さん」
「……………」
「こんな……ふ、うに……斬る…なんて…」
「……………」
「……きず……ふさがらない…や…、は、はは……おかしい、おか…おかしい……」
雨が、降っている。
「は…はは、はは、あはは……は…ははっはは」
「……………」
「君が殺した、貴女が殺した。俺を、如月 双七を、貴女の恋人を、貴女が殺した」
「……………」
「酷いや……――信じて、たのに」
雨が、降り注ぐ。
「く…は…はは…ははは…が…はぁ…はは…!」
「……………」
「は…ははははは、ははは、あははははははははははははははは―――!!」
「……………何故」
「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは――」
「何故泣いているのですか?」
雨が、まるで、涙のように。妖が、泣いているように、見えた。
哄笑がぴたりと止まった。
ざぁざぁと雨が降っている。時間が停止したかのように二人は動かないが、その雨が時が動いてることを証明していた。
数秒か、数十秒か、数分か――一時間か。どれほど時間が過ぎたか、わからない。
ただ雨にまぎれて「ごめん」と聞こえた気がした。続けて、何か――
――気づけば、妖は死んでいた。
「―――なん…で…――」
ざぁざぁ、ざぁざぁ。
豪雨。降りしきる雨の中で、彼女は立ち尽くしていた。
ざぁざぁ、ざぁざぁ。
雨音を裂く哄笑は、もう響かない。
――Next→ エピローグ
何年か、時が過ぎた。
一乃谷 刀子は境内を掃除しながらふと振り向いた。彼女の息子がとてとてと走ってくる。
その容姿は心の中でいつも会っていた兄にどこか似ている。名前も愁厳と名づけた。その由縁は、いつか話したいと思っている。
「母様!」
「あらあら、どうしたの? そんなに急いで」
「はい、聞きたいことがあるのです」
なんだろうか、と考える。この子は先ほどまで蔵を漁っていた。何か古いものでも見つけたのだろうか?
愁厳は屈託のない顔で、続ける。
「父様はどんな方だったのですか?」
――気づいたら愁厳を抱きしめていた。
「か、母様!? あの、一体…」
「――――」
「……母様」
思い出したのは彼の笑顔だ。思い出すのは彼の泣き顔だ。思い出すのは彼の照れた、真摯な表情だ。
同時に、両手に忌々しい感覚が、人を切った、妖を斬った感覚が蘇る。
嫌悪感を感じ、振り払おうとして――また一つ、思い出した。
最期の、笑い顔。雨で泣いてるように見えた、あの、笑顔。
ごめん――さよなら、刀子さん。
「どうしたの、ですか?」
悲しいのですか、息子が聞いてくる。物言わぬ母に疑問を持ったのだろう。
「ううん」と首を振って息を整える。答えよう、答える言葉は、決まってるのだから。
少しはなれ、息子の頭をそっと撫でる。 自分は今、笑顔を浮かべているだろうか―――?
「貴方のお父さんは、本当に最後まで優しい人だったから」
ただ、涙がすぅっと頬を伝った。それでも笑顔を浮かべていられればな、なんて――そんな事を、考えた。
――End
というわけで一回あげちゃったりとんでもねぇミスしたりしましたがこんなオチです。
結局、妄想したのを具現したくて書いてしまいました。
こんなENDがあってもよかったかもなぁ、なんて思っただけなのですが
GJ!!
向こうのスレの288or299氏かな?
ネタ出してから2時間…書き上げるのがお早いですな。
個人的に気になったのが「螺旋双剣」
アレって「双身螺旋刃」とかじゃなかったっけ?
1御苦労
>>16 乙。
薫さんじゃなくて鴉さんなのね。
まぁ、確かに恋愛感情じゃなくとも双七になんらかの感情を持つ女性が
パーティにいたらヒロインの立ち位置がボヤけるからこの方が良いね。
なんつか「痕」を思い出したよ。
>>17 ……あぁ。本当だっ!? 惰性のまま書いたツケが…orz
正しくは双身螺旋刃です。まとめに載るようでしたら、修正のほうしていただければ幸いです。
あ、あと、289です。読んでいただいて感謝の極みです。ありがとうございます
>>6-15 仕事はやっ!
構想からしてかなり大きくなるのは避けられないので
駆け足気味になってしまったのは残念ですが、双七を
自分の手で切った感触が直にキて大変でした。GJ
>>6-15氏
乙。そしてGJ。
すげぇ、妄想が形になってる・・・・・・しかも決着が決闘スタイルで燃え。
しかし、これに味をしめて二匹目の泥鰌を狙ってスレで過多な妄想を
垂れ流さないように自戒せんとなぁ。
ところで逢難は不滅の存在だそうだが、妖状態で殺されるといっしょに
死ぬという設定ですか?
>>14 でもそんなことはどうでもいい位すげぇー面白かった。
新スレ乙
そして短編めりっさぐっじょぶ
日本を発ってから、いろんな事があった。
すずは潜水艦が狭いと愚痴をこぼし、トーニャはそんなすずをからかった。
それは以前と変わる事のない、それでいて切り取られたような、日常。
愛しいものが、そのときは残酷に感じたものだ。俺は、切り取られることの無い日常の中にいたのだから。
自分はまたかけがえのないものを失ったのだと、そう実感してしまう。
すずはそうじゃないのか?トーニャはそうじゃないのか?
そんな問いかけが苛立ちに変わるのに、そう長い時間かからなかった。
普段どおりでいる二人に憎悪さえ感じるようになってしまった。
だが。今考えると、それは全く違っていたのだ。
すべてが偶然、とは言い難い。
「陰気くさい顔ばっかしてないで、たまには気分転換してきなさい」
すずの言葉に、仕方なしにあてがわれた部屋以外をうろうろすることにした。
しかし、潜水艦である。見た目とは大きさとは裏腹に、人間の行ける範囲など、たかが知れている。
水圧に耐える分厚い板金、浮沈を制御するバラストタンク、それに各種武器庫。
加えてこの船は本来、チェルノボグのような部隊を乗せる為の艦だ。当然詰め所のような部屋をはじめ似たような構造の部屋が多くなる。
そんな事に気付いたのもぐるりと艦を一周しかかった頃だった。だから。
それに気付いたのだけは、まぁ偶然と言っても差し支えないとおもう。
トーニャが艦長室に入っていくところだった。
「トーニャ?」
失敗だったかもしれない、と思ったのも声をかけた後だった。彼女の表情が、歪んだように見えたから。
それも刹那。繕われた。
「双七君?」
「何…してるの?」
正直に言おう。自分はこのとき、邪推をしていた。艦長室には…当然艦長しかいない。
ウラジミールさんと昔馴染み―ということはトーニャと昔馴染みの可能性もある―――俺はそんなありえないことを考えていたのだ。
だから、次の言葉を聴いた時。俺は。
「ああ、……兄の話を…聞こうと思って」
自己嫌悪で、死にたくなった。
少々気まずい間。それでも。
「あのさ……俺も、一緒に聞いて…いいかな?」
こう聞けたのは、このとき既に自分の心が変わり始めていた兆候だったのかもしれない。
「ええ、当然じゃないですか」
トーニャはうってかわっての笑顔で頷いた。
艦長の部屋へと入る。
「…トーニャくん、また来たか。……ん?今日は彼も一緒に?」
俺には、余りよい感情を持ってなかった。と後に彼は語ってくれた。俺たちが艦を降りるときだ。
曰く「娘を取られたみたいだ……と言うのは冗談だがね。………必死になってる彼女らを察してやれってことだな。そんな鈍感な所がな嫌いだった。ん?今?…少しはましになったかな?」
などと言っていたが。…正直、正論なだけに返す言葉もございません。
「でも…いいのか?」
「構いません。彼には……聞いて貰いたいと思ってましたから」
それから、彼はウラジミールさんのことを語りだした。
手紙の話。
艦長さんとウラジミールさんのロシア海軍時代の話。
ウラジミールさんが語った、イヴェンスキ研究所に引き取られてきた話。
彼が好きだった、アニメやゲームの話。
「私にはさっぱりだったがね」
それはそうだろう。そう頷いた矢先。
「でも、彼がなんでそういうものを好きだったかはわかっているつもりだ」
「え?」
ちょっと信じられないことを聞いたので、思わず訊き返してしまった。
「信じられない、かね?」
こういうとき、顔にでるのは心底イヤだと思う。しかしそれは、俺だけに向けられたものではなかった。
「あんなもの好きなのに理由なんて…」
「あるんだよ。彼はね、確かに『モエ』とかいうのも好きだったが…それ以上にヒーローものが好きだった」
あぁ…なるほど。だから。
「……」
「彼は、弱者はヒーローが助けてくれる、そんな漫画や何やらが好きだ、と言っていたよ。信じる者は救われるべきだ、とも。……あいつはさ、……いい意味で…純粋な奴、だったんだな。大真面目にそんなコト実行するんだからよ」
トーニャのことを、妹の無事を純粋に信じるトーニャのことを、守ろうと思ったのか。
アントニーナ・アントーノヴナ・ニキーチナは、ウラジミール・ガヴリーロヴィッチ・シューキンのことを何も知らなかった。それは、ここへ来て、一層残酷だった。
「…馬鹿…馬鹿……ッ!!…死んじゃったら……死んじゃったら何にもなんないじゃないっ!!悲劇のヒーローなんて気取りすぎよぉっ!……」
トーニャは号泣した。涙。彼女の涙を見るのは、兄と妹が――ウラジミールとサーシャが亡くなったとき以来だった。
彼女は………俺以上に溜め込んでいたのだ。当然だ。俺は今までの生活を失っただけだ。しかし彼女は――――それだけでは決してない。
俺は自分が情けなかった。自分が悔しかった。……そして――彼女を見てられなかった。
「あれ、ひっく……こん、なっ、ぐす…はず……じゃ、なかっ…ひっく…たんだ…け――――――」
なら、することは一つ。抱きしめてた。ぎゅっと。
「ごめん」
謝った。許してくれていた彼女に。何を?それは勿論。
「なん、ひっく…でっ、そうっ、しち…ひっく、くんが、……あやま…るん、ひっく…ですか?」
彼女のことを気遣うことがなかった自分を。自分のことしか考えられず、彼女の事を考えられなかった自分を。
「それでも、ごめん」
俺は思った。取り戻してやれないか、と。彼女の大事な物を。
そうして考えたとき。
「ああ、簡単じゃないか」
それは当然、頭には有った事。けど。
「…?」
彼女に、ここでそれを言うのが一番だと思ったのだ。
「俺達の神沢市(ふるさと)へ…いつか、帰ろう、な?」
トーニャは。
俺の胸に顔をうずめるようにして、泣いた。
再び俺が、立ち上がれるようになった、そんな日。
大変なのはそれからだった。
トーニャはこう言った。
「終わらせておきたいことが、あります」
トーニャの言葉は――そしてその内容は――半ば予想できたことではあるが、俺は一も二も無く頷いた。
すずは、
「ま、これで借りが出来るわねっ!狸娘ッ!」
などと言っていたが…照れ隠し混じりの冗談だと信じたい。
そんなこんなで。
俺たちは、ドイツの某都市に潜伏した。
トーニャのやりたい事――もとい、俺たちが成そうした事をやり遂げるには、その方がいいと思ったから。
ウラジミールさんには悪いと思ったが、ここは、譲るわけにはいかない。俺もトーニャもすずも、そういう道を選んだのだ。
日本に帰るのには、時間が必要。なぜなら、警戒を解いてもらう必要があるから。
それならば―――他の事に時間を費やそう。
そう。
イヴェンスキ研究所を潰す。曰く、
「国の機関であるあの研究所を簡単に潰すわけにもいかないでしょう。―――サーシャや兄のような人を生み出さないためにも…あの研究所は潰すべきです」
彼女は決して『自分のように』とは言わなかった。トーニャにそのことを言うと
「馬鹿。双七君がいて、すずさんがいて…自分は今こんなに楽しいですよ?不幸であることなんて一つもないです」
泣きそうになった。
「双七君、また泣くの〜?」
「……ぐす……っ!泣いてなんかいません!」
笑う(偽)姉妹。最近さらにコンビネーションに磨きがかかってきた気がする。負けっぱなしだ、俺。
「――七くん、双七くん?」
我に返る。
スヴェルドロフスク州。イヴェンスキ研究所。
それが、今俺たちが向かう先だ。
ここにたどり着くまで二年。本当に長かった。最近銃の扱いにもなれ、彼らの声もよく聞こえるようになった。正直、銃の扱いになれる自分はどうかと思ったが…選んだ道だ。甘んじて受け入れよう。
それより……かぶっている、帽子(なんていうのかはよくしらない)が気になる。
「どうしたんですか?」
いい言い訳だ。
「いや、その……突入する時…さ、帽子かぶらないでいいかな?」
気になるのは、まったく持ってその通り。自分の髪の毛に少しだけ感謝――――間違っても、過去のトーニャの泣き顔を思い出してましたーとか、いえない。
「えー、ふかふかであったかくて気持ちーのに」
すずは、この帽子がお気に入りのようだ。
「別にいいですけど…寒いですよ、ロシア……!あぁ温まりたいからウォッカが欲しいですかそうですかそれではですね」
「嬉々としてウォッカを勧めないでください…」
こんな会話も、今後のための大事な活力剤。明々後日、ようやく帰郷への第一歩――イヴェンスキ研究所へと、俺たちは向かう。
入念な下準備。見取り図、潜入経路、脱出経路、奪取すべき物、破壊すべき物。
全ては、整った。後は運を天に任せ―――八咫鴉―――いや駄目だ。自分で切り拓こう。
明日は飛行機。いよいよロシア入りだ。
「じゃあ、そろそろ電気消すよー」
すずの声。
「飛行機乗るの初めてだからって、田舎から出てきた人にならないで下さいね、お二人とも」
トーニャの声。
守り守られ―――そして、共にある声。
俺たちは三人で、神沢に帰る。
そうして、俺は目を閉じた。
>27-31あやかしびと幕間「帰郷を目指して」
でした。拙い文章スミマセヌ。
目欄に書いたように、人気投票トーニャ支援作(笑)
頑張れ、とーちん!!って事で。
SS作家さん激しくGJ。刀子さんの日記は今週中にだすんで勘弁を。
自「今日は僕たちが適当にしゃべっていいらしいよ」
ク「でも、なにしゃべっていいかわからないよ」
包「いいじゃないですか、私たちが喋れることなどそうないのですから。」
傘「それなら我は言いたいことがあるぞ」
包「なんですか?」
傘「うむ、我が主にだ。」
ク「ああ、あの怖い人ですか?」
傘「そうだ、我は常々考えておった。我はなんだ?」
自「なんだ?って、刺突武器じゃないんですか?」
ク「あとは耐火バリア?」
包「なんかいつも刺さりたそうにしてますよね?」
傘「我は傘だ!!なんだ揃いも揃って人(物)を危険物扱いしおってからに!」
自「といわれても、危険物ですよどう考えても。」
傘「それだ!何故危険物扱いされるのかというと」
包「使い手の問題ですね」
傘「だろう?我は傘らしく晴れの日の駅のホームでゴルフのスイング練習でもしてほしいのに」
ク「普通に雨の時にさされるんじゃダメなんですか?」
傘「濡れるのはイヤだな、錆びたら刺さり具合も悪くなるし」
全「やっぱり危険物ですよ。あなた。」
どこかの異次元での日常。おしまい。
なんかさすがにジャックされてるような気がしてきた。
よし、じゃあ俺が今更葉っぱのSSでも!
だからといってあやかし禁止なんて心の狭いこといってると、
保守とマダーだけでスレが埋まる過疎スレに戻るだけだぞ?
>>36 鼬害
じゃあここで今は亡き超先生の誰彼の短編でも書くかっ
まだコンプしてないけどな。いつになるかしら
同じ発売日にあれだけ出てSSが書かれているのがあやかしびとだけという現状を裏返して言っているだけだよなぁ>ジャック
多分AYAKASHIとか出たら書くかも
>39
まあ、ここは前から片寄る傾向があるけどね。
「萌え」とか「燃え」とかが、はっきり前面に出ていて、
比較的判り易いものが、好まれるっぽい。
ま、読む人、書く人ともに母数が大きいだろうからね。
ちょいと質問よろしいでしょか。
前回「笑顔でさよなら」(あやかしびと)を書いたのですがそれの別枠的な話も思いついたのですね。
そういうのって続き? みたいな形になるんですが、やっても大丈夫なのでしょうか。
おk。まったくおk。
対応ありがとうです。
んでは今から書き上げます
というわけで少し前の「笑顔でさよなら」の別枠話、というか補間となります。長いです。
「笑顔でさよなら」を読んでないといまいちわからない展開だと思います。すずメイン
まるで先日の雨が嘘のように空は青く晴れ渡る。酷い。私が望んだのは曇天だ。
私の奥底にあるどろどろとした感情のような曇天がほしかった。それがあれば、心を映して気がまぎれるのに。
体中から力という力が抜けている。髪はボサボサだし肌も荒れてるのかもしれない。
口元が少し乾いている。おなかも、空いた。だけど何かを食べる気には、どうしてもなれなかった。
涙なんてもう枯れた。一滴も流れはしない。
青い空が憎い。曇天の空が見たかった。冷たい雨を浴びたかった。
雨を浴びれば涙を流せるのに。
頭に響くのはどこか大人びた、少年の声。
何度も何度も繰り返される。どこか間違ってないか? 誤りはないのか? 何度も繰り返すが、その言葉は変わらない。
『逢難を確保した……そして同時に――如月 双七は死亡した』
涙なんて枯れ果てた。なら、今頬を伝う熱いものは何なのだろう。
「双七君」
答える声は、ない。
季節は秋も終わるところ。秋が終われば来るのは当然冬である。
神沢の冬は厳しい方だ。雪は積もり、積もり、最初は喜びこそするものの後になれば「まだ降るか」と驚愕せざる得ない。
四季の変化は森の色と大気の熱。時たま降る雨と雪で予測されていた島とは全く違う冬。
如月 すずはぼたぼたと降る白い粉を目で何度も追っていた。
落ちる、下を向く。新しいのを探す、上を向く。落ちる、下を向く。以下同文……
「何をやってるのですかあなたは」
「あ、タヌキ」
ため息混じりにかけられた声にいつも通り返す。振り向いた先にいたのは薄く青い髪をポニーテールにした美少女だった。
だがその端正な顔には血管が浮かび、鬼も泣いて帰らんとばかりの形相でこめかみがぴくぴくしている。
「誰がタヌキですか、誰が。ついには娘すらなくなりましたか」
「じゃあ陶器女」
「……もういいです。で、何をしてるんですか。ズベ狐」
「見てわかんないのトーニャ・タヌキ・ポンポコポン。雪を見てるのよ」
そんな具合に二人はよくわからない話題で喧嘩を始めた。いつも通りだ。いつもと同じ、平穏な、日常。
その世界で如月 すずは笑う、泣く、怒る、悲しむ――日常を、歩んでいく。
一人ぼっちで。
「って聞いてるんですか、すず」
「へ? え、あ、ごめんごめん。聞いてなかった」
「…最近考え事が多いみたいですね。元々そんな処理能力が高くない小さい野生的脳味噌なんですから物事を深く考えると破裂しますよ」
トーニャのズケズケとした本音と皮肉と悪意と、ほんの少しの心配する思いが篭った言葉にすずは大いにむかついた。
だからといって何かを返すわけでもない。話を聞いてなかったのは自分だ。非はある。だがちょっと言い過ぎではないだろうか。
「うっさいわね。で、何なのよ」
そこら辺をとことん突き詰めていくと話は永久に平行線である。すずは自制心を働かせて話を進めることを優先した。
だがそんなすずの様子を見てトーニャはしばし黙ってから、「やっぱりいいです」といって踵を返した。
「ちょ、ちょっとぉ! 気になるじゃない、なんなのよ」
「別に大した事ではありませんよ。単なる世間話です」
「…世間話を聞いてないだけであそこまで言うわけねあんた」
結構むかついてる。
しかしそんな様子をちらりとも見ずトーニャは鞄を持って教室から出て行った。出て行く寸前に「浸るのも程々に」と告げてから。
時刻は既に放課後。教室にはすず以外の誰の人間もいなくなっていた。
「あ…もうこんな時間だったんだ」
帰りのホームルームが終わったから未だ数分しかたってないと思っていたのだが、雪を見ている間に随分と時間が過ぎたようである。
気づけばホームルーム時はまだ大して積もってなかった雪も、随分と積もっている。帰るのに難儀しそうで、少々げんなりとした表情を浮かべた。
雪を踏むとさくさくと氷の粒が割れる音がする。それが少しだけ楽しくて、妙にリズムをつけながら歩いた。
向かう先はマンションだ。彼女は今一人暮らしである。未だちらちらと降ってくる雪に顔を顰めながら、彼女はマンションへと歩いていく。
うっすらと白く染まったマンションに辿り着く。エレベーターに乗っていつもの階に行き、いつもの扉にいつもの鍵を入れて入っていく。
「ただいま」
家に入ってから靴を脱いで玄関に上がる。そうしてから振り向いて――誰もいない、誰も開かない扉を見つめて、泣きそうな表情を浮かべる。
おかえりなさい、とは言わない。否、いえない。言うべき相手は、既に死んでしまっているのだから。
それでも呟かずにはいられない。
「おかえり、双七君」
答える声は無論ない。だがこの無意味な問答は、如月 双七が死んでからのすずの日課になっていた。
その度に彼女は身を切り裂かれる悲しみに襲われる。思い出すのは妙に晴れた朝の事だ。
血まみれの刀子が、血まみれの双七を抱えて泣いていた。
それはどこか幻想的で、悲しい程に鮮明で、イラつく程に悲劇的だった。
故に忘れることなど出来ない。脳裏にこびりつくのは――最後に見た、全てに裏切られたという表情を浮かべる双七の泣きそうな顔だけだ。
どうすればいいのだろう。許されないのはわかってる。わかってるのに――全て自分の責任のようで、吐き気がする。
痛いな、と思った。誰が、とか、何が、とか、何処が、とかではなく、ただ痛かった。
「―――」
呟いた声はかすれていた。無意識だったので、自分でも何を呟いたのかわからなかった。
『尾は死なない。故にどうするか――意識を取り戻しても、意味のないような場所に送ってしまえばいい』
無責任だけどね。といって少年は苦笑いを浮かべた。曰く、宇宙の彼方にすっとばしてしまうらしい。なんとも豪快な話だ。
何でも文壱による一撃で逢難は一時的な眠りについていたという。その時点で無茶を利かせ、既に人ではなくなっていた双七は、死んだという。
意識はとうに食いつぶされ、記憶と、抜け殻だけが残った。彼の魂が何処にいってしまったのかは、わからないが。
双七が死んだことにより、直接手を下した刀子は常に茫然自失とし、自分を見失っていた。見ているこちらが痛々しくなるほどで、本当に、辛かった。
自分を取り戻したのは身篭った事を知ったときだ。
彼女の中には双七の残した意思があった。彼女の兄である一乃谷 愁厳の願いがあった。
嫉んでないというのは嘘だ。それを酷くうらやましいと思い、次に、自分には何も残ってないことに気づいた。
驚いて、呆然として――何もかも、それを妖が壊したのだと思い出したとき、泣いた。
生きる支柱がいなくなった。崩れるだけ崩れて、後はどうにでもなってしまいそうで――それでも、支えようと頑張ってくれた人がいた。
故に如月 すずは立っていて、今も平穏を歩んでいる。
心の闇は、晴れそうになかったが。
――そして、少し、時間が流れた。
49 :
名無しさん@初回限定:2005/08/03(水) 00:04:12 ID:ybak8PwE
墓がある。如月 双七と書かれた、墓がある。
そこに一人の男がいた。酷く草臥れた、白髪の男だ。年は四十代であろう、だがその体はしっかりと作りこまれ、隻眼という風貌も合わさって多少若く見える。
名を九鬼 耀鋼。武部 涼一の師匠であり、そして妖に挑んだ男でもある。
一輪、そこら辺で適当に拾った、それでも多少は綺麗な花を添えて九鬼は黙祷した。
「来てたのね、九鬼」
そこに女性の声が響いた。九鬼は面倒くさそうにそちらを振り向く。
振り向いた先には可憐な少女――否、女性がいた。幾分か大人びて体も成長したようだが、根本は変わってはいない。
「如月 すずか」
5
「いちいちフルネームで呼ばないでよ」
可愛らしい唇を尖らせてすずは抗議した。軽快な足取りで九鬼の横まで歩き、如月 双七と書かれた墓の隣の墓に、手に持っていた花束を添える。
如月 双七の墓には既に花がいくつか乗っていた。
「重くてさ。一回じゃ持って来れなかったの」
だから、愁厳は後。そういって彼女は薄く笑った。少しやつれて見えるのは九鬼の気のせいだろうか。
彼女は数年前。鴉天狗達と共に残った尾の完全封印の手伝いをするため神沢市を発った。
数えて幾年たったか。奇しくも彼女は双七の死んだ丁度七回忌の日に帰ってきたのだ。
「九鬼は、今何してるの?」
「教師だ」
柄じゃないがね、と九鬼は苦笑いを浮かべる。
「馬鹿共に空手を教えてる。性根が腐った連中だから叩きがいがあってな。成る程、こんな道もあるのかと驚いたよ」
くっくっ、と笑って肩を竦め、九鬼は立ち上がった。失礼、と一声すずにかけてから胸ポケットに入れていた煙草を取り出し、火をつける。
人以上に鼻が利くすずは顔を顰め、すぐに立ち上がって境内の方へと歩き始めた。
「行くのか?」
「えぇ……刀子には、まだ会ってないから」
そして、双七と彼女の息子にも。
息子が生まれたことは知っていた。名前も、知っている。愁厳と名づけたそうだ。さぞかし似ているのだろう…怖いが、その分会うのは楽しみだった。
九鬼は「そうか」、とだけ呟いて煙草をふかし始めた。白い息を細く吐き、中空を睨みつけている。
その姿に――どこか、誰かに■っているようで、少しだけうらやましいと思った。
境内は神聖な匂いに満ちていた。
逢難は既に有らず。一乃谷の神社は清浄に保たれ、とても綺麗な空気と色をしている。
気分よく境内を歩いていると、ふと子供の声が聞こえた。
胸が高鳴る。怖い、その分楽しみ。だが――本当に、怖い。今から会うのは双七の息子だ。刀子の息子だ。さて、自分はその少年にとって何なのだろうか。
自然と足が止まる。会いたくない、だが、会いたいというよくわからない思いがぐるぐるとし始めた。会って何をしようというのだろう、それとも――
「お客様ですか?」
そんな風に問答してると、目の前にいつの間にか来ていた少年に声をかけられた。どこか大人びた――でも子供っぽい、そして誰かに似ている少年だ。
――あぁ、この子が。
すぐにわかった。だから声が出なかった。彼は愁厳に似ている。とてもとても似ている――きっと、彼よりも素晴しい人物になるのではないかと、思えるほどに。
「――初めまして。私は…」
私は? なんと言うのか。如月 すずと名乗るのか。”私が如月を名乗るのか?”
「…―私、は……」
言葉に詰まってしまう。同時に、何故か泣きそうになってしまった。
どうしてだろうか。ただ、少年に正体を聞かれているだけだ。だというのに何故こんなにも泣きそうになるのだろうか。
あぁ、わからない。どうすればいいのかがわからない。何度か思っていた事が、何故かこの時ずん、と胸を突いた。突いてしまった。
――脳裏を過ぎるのは裏切られた悲しみに嘆く彼の表情。全てに絶望した、彼の表情。
違う、あれは双七君じゃなかった!
――信じてたのにと、言ってもいない台詞が頭を這う。何故拒絶したと、私の中で何かが訴える。
大声を上げて叫びたかった。私は、彼を見捨ててなんていないと!
――本当に?
そういって響く声は、酷い事に私の声そっくりだった。
その場にしゃがみこんでしまう。あぁ、何故、何故今になってそんな事を思い出したのか。
尾の封印作業中も何度か思い出した。その度に泣きはらし、どうしようもないほどに枕を濡らした。
それが何故、今。涙が止まらない、どうしても止まらなかった。
きっと目の前にいる少年はそんな女性を見て気味を悪くするだろう。いきなり目の前で大の女が泣き出したのだ。それほど奇妙な事はない。
だが泣き止もうと。なんでもないよと。言おうとするのに、口から漏れるのは嗚咽だけだった。
情けない。それも自分のせいだ。私が、私があの時――
ぽふっと、暖かい、小さな手が頭の上にのった。
「―――え?」
驚いて顔を上げると、しゃがみこんだ私の頭を目の前にいる少年が一生懸命に撫でていた。その表情は驚くほど真剣で、そして悲しそうだった。
私が見ていることに気づいたのか、少年はきっぱりとした口調で言った。
「泣いては、駄目です」
少し、涙声になりながらも続ける。
「悲しい時は泣いてはいけないのです。涙を見せるのは嬉しい時のみです。父様が、よく仰ってました」
今はもういませんけど。と少年は付け足す。
――あぁ。
「ですので、泣いてはいけません。お願いします、泣き止んでください」
計算すれば七歳児か。そうとは思えないしっかりとした(それでも少し泣きそうな)声で彼は一生懸命頭を撫でる。
――この子は。
この子は、双七君とは話したことなどないのに。この子が生まれたときには、既に彼は死んでいたのに。それでも――覚えてる。聞かされている。誇りに持ってる。
あぁ、似てるんだ。だから似てると思ったんだ。
一生懸命頭を撫でるその子を、私はゆっくり抱きしめた。
それでも少年は何も言わず頭を撫でる。私の涙は止まらない。嬉しいのと悲しいのがごっちゃになって、よくわからない。
「ごめんね」
不意に口をついた言葉に自分自身で酷く驚いた。
ごめんね。そう、ごめん、だ。心の中でぐちゃぐちゃしていたものが一気にすっきりとした。頭の中の不明瞭な部分が唐突に理解できた。
そうだ、私は――私は、彼に謝りたかったんだ。
信じられなくてごめん、と。見捨ててしまってごめん、と。
私の考えはどうであれ、実際に私は彼を拒絶してしまったのだ。だから、酷く悲しかった。
そう思ってしまった自分が悲しくて、だから…だから彼に会って一言謝りたかったのだ。
安っぽいのはわかっている。こんなこと、自己満足にしかなりえない。
それで許される筈がない、許されるわけがない、彼が許してくれるはずがない。でも、それでも、ただ。
「ごめんなさい」
私は彼に、謝りたかったんだ。
ごめんなさい、と私が言うと少年の動きが少し止まった。それもそうだ、いきなり謝られたのだ、意味がわからないだろう。
だから返答なんて期待してなかった。ただ、頭を撫でてくれたのが少しだ嬉しかったから――抱きしめる力に少し力をこめた。
それでも、少年は――愁厳は、少し考えるそぶりをしてから、笑顔を浮かべた。
何でそんな笑顔を浮かべたのかすずにはわからなかった。でも笑顔はまるで…そう、まるで。本当によく似ている。愁厳に、刀子に、そして――
「大丈夫です。きっと、許してくれます」
――彼に、似ている。
理由も経緯も知らないのに、許してくれると彼は言った。事情も何も知らないのに、それでもだ。
そんな所まで、彼に似ている。
涙がまた流れた。暫くは止まりそうになくて――何故か、少しだけ嬉しかった。
残ってるものはない。でも、彼が残そうとしてくれたものはある。私がそれを探そうとしてなかった、それだけの話。
だから私は涙を流す。嬉しいときは涙してもいいんだよ――ね? 双七君。
END
ま た a g e て る し
いい加減このミスなくしたいです。というわけで書き終わりました。
「笑顔でさよなら」のアフターです。メインすず。こんな葛藤もあったんじゃないだろうか、と考えました。
次はいい加減あやかしびと以外書きたいです。何かないかな…
>>45-53 …GJ。
雪が降ると世界がしんとするんだよな。
雪はいつか溶けるが、すずはこれからの永劫ともいえる時を
虚無を抱えて生きていかなければならない。
本編はうまく解決したからいいけど、一歩間違えれば
こうなっていたと思うと震える。
イイね。
何故か全員が生きているどたばたっぽいAfterStoryも好きだが、
こう言うしんみりとしたBadEndも好きです。
Badじゃないけど、ヴェドゴニアのリァノーンEndなんて静かで好きだったなあ。
何はともあれ、乙。良き話でした。
好きな人に止めを刺してしまった刀子なんてのもツボ < 鬼か
GJ。
すずのトラウマがまた一つ……
しかし、仲間を殺そうとする敵すら人殺しできなかったのに(すずルートで)、
双七殺してしまっては、もう立ち直れんのでは > 刀子
逢難と融合したままEndってあったら面白かったのになあ、とふと思った。収拾つかんか。
そういえば、前スレですずエンド後のを頼まれた人はどうなったんだろ。
「それで、何を望む?」
「何を、とな。それはもちろん黒き器の中身。アレの持つ暗き力は私にとってなんと力になることか。」
二人の妖は笑う。
「貴様こそ何を望む。」
「マスターオブバベルと同等の能力を持つ少女の身柄よ。こちらは聖杯でおぬしは身柄。このような割りの良い取引は悪くないと思うが?」
二人の妖は探りあう。
「まさか、先日発見された門も関係あるのではないか蟲よ。」
「ふぇふぇふぇ、何のことか解らないのぉ狐。仮に関係があったとしても些細なことよ。」
黒き器、空っぽの門、魂を縛る言葉。
これら全てが交わるとき、本来ならばありえない運命に出会う。
人と人外と妖と、魔なる都の争いへ、いざ行かん。
Fate/stay night、塵骸魔京、あやかしびと、他数作品クロスオーバーSS
「UNKNWON...」(タイトル未定)
刀子ルート:如月双七
「すずは返してもらう。いや、必ず取り返す!」
UBWルートGOODEND:衛宮士郎
「ごめん、遠坂。やっぱ桜は放っておけない。」
イグニス生存ルート:九門克綺
「さて、うちの克綺が世話になったようだな人外の魔術師。」
「イグニス、世話になったというのは幾らか語弊がある。世話になったというのは一般的に考えて、暮らしの中における障害が発生したとき手助けをしてもらった場合だ。
だから拉致監禁されたことを世話になったと言うのは本当におかしい。」
かみんぐすーん(実現率20%実現不可ならどっかのサイトでちくちくこっそりやってく。)
つまんね
こういう予告だけはっつけてく奴って何がしたいんだろう?
続編キボンとか言われたいん?
きもいだけだな
ただ書いてみたかった。反省はしてる。
じゃ、いつものROMに戻るな。正直スマンかった。
また今度は予告じゃないやつを書いてくれよ
>61
この手の『予告編』とやらを垂れ流す香具師が、
本編をはっつけたのを見たことない。
たとえ評判が良くても。
ま、SS自体が多かれ少なかれ自慰行為を含むけど、
お手軽なオナニーといったところでは。
嘘予告でもうまい人が書くと本気で面白いんだけどな、
上のは糞だが。
お金が溜まった。神沢に来てから使った分。これから二人で暮らすのに必要な貯えも別にちゃんとある。
神沢市の交通規制が緩和されて市外にでるのも比較的楽になった。(これでショタ鴉に借りを作らないですむ。)
少し迷う。もうドミニオンは無く、狙われているわけではない。
それでも迷う。あの人は数年前に出会った奇妙な強盗のことなどすべて忘れているはずだ。
しかしお金が盗まれたということは覚えているだろう。
会い、自分が数年前の強盗だと告げれば罵倒されるかもしれない。
それでもお金は返さなければならない。そしてきちんと謝らなければ俺たちは前には進めない。
お金をバックに詰め込み、すずに声をかける。
すずが「ようやく決心がついた?」とたずねる
俺はうなずき、それでも泣くかもしれないからとフォローを頼んだ。
「もう、しょうがないんかなあ双七くんは」すずが優しく微笑み頭を撫でる。
じゃあ、行こうか。あの人に会って、お金を返し、感謝の言葉を伝えるために。
暑い夏の日、二人で歩いていくための一歩を俺たちは踏み出した。
おっちゃんエンディングへとつづく。
しょうがないんかなあでワロタ、
神沢訛り?w
ひどく間が開いたアレだが、GJ
>>66 「しょうがないんかなぁ」は作者の意図するところではないだろうと
思われるので、不本意かもしれんが、嫌味でもなんでもなく、素直
に萌えた。
俺の脳内でボイス付で再生されたくらい。
保守
保守ってどのくらいのペースだろ。
今のスレ数&スレ制限数だと、スレ立て嵐が来たりスレ数制限が変更されたりしなければ保守自体要らない。
まあ月一くらいあれば平気ジャマイカ
アリスソフトの「ぱすてるチャイムC」のエロパロを書きましたので投稿します。
リナの「セクハラ・オーディション」の陵辱ルートです。寝取られ風味です。
机や椅子の色濃い斜影が奇妙なアートオブジェのように廊下側へ伸び、放課
後の教室は前衛芸術家の個展会場であった。
壁の時計を見上げた。夕方の4時。
練習ダンジョンに潜っているなら、かなり歩を進めているはずの時間だった。
なのに、こんな所で何もせず、影が伸びるのをうすらぼんやりと眺めている
だけか――俺は。
(……なにやってんだかよ…………)
机に脚を投げ出し、我ながら呆れて、「チッ──」と舌打ちする。後ろ足で
立たせた椅子をギシギシ鳴らしながら、
「薙原」
「おわっ!」
ふいに近くで発せられた声にびっくりしてしまい、ガタガタと派手な音を立
てて椅子を滑らした。
急転する光景。崩されるオブジェ。
悲鳴を上げる芸術家──はいない。
騒音はすぐに止んだ。
「……何やってんの?」
学校の天井というのは何でこう無機的なんだろうかと考えている俺の視界に
入って来たのは、鈴木だった。
「天井はその空漠さ故にもっと有効活用されるべき空間として無限大の可能性
を秘めているのではないかという研究論文を然るべき機関に提出その成果をビ
ジネスに転用特許独占儲けてウハウハするためには天井はもっと無為無用にな
るべき空間であるために天井十カ年計画を練りに練ってそのあまりの完全無欠
天網恢々ぶりに卒倒しそうになっていたところだ」
呆れたような目で見下ろされた。
細い脚がスカートの中から伸びているのが、いやでも目につくアングルであ
り、少しドキッとしてしまう。しかしパンツまでは見えない距離と角度。考え
てるな。
「鈴木か……」
俺はばつの悪い顔で立ち上がった。
「何か用かよ?」
「なんか、ふてくされた顔してるわね」
「べつに……」
そんな顔をしているのかと思いながら、倒してしまった後ろの机と自分の椅
子を直す。
俺をじろじろ見ながら、鈴木は腕を組んだ。そして言葉を続けた。
「リナ……今日が二次選考だっけ?」
「知らねーよ。勝手にアイドルにでもなるんじゃねーのか」
「…………」
鈴木はすぐに言葉を返さなかった。
ほんの少し、黄昏に染まる教室に相応しい沈黙が降りる。
鈴木の口が再度開き、沈んだ空気は破られた。
「アンタがどう思ってるか知らないけど……調べたから一応言っておくわ」
あまり人と話したくない気分だったかもしれない。俺は鈴木から視線を逸ら
して横顔を向け、座り直してまた脚をドカッと置いた。
しかし、次の言葉で俺の俯いた顔は跳ねるように上がっていた。
「マロプロのプロデューサー、好色で有名なんですって。オーディションは、
すべて勝者の決まった出来レース……応募してきた子から、好みの子を見つく
ろってやらしい事を迫るらしいわ」
頭(こうべ)を巡らし、鈴木と視線を合わす。鈴木はじっと俺の顔を見返した。
「…………。……本当の話か?」
「噂よ。確証はないわ。確かめるなら、行くしかないわね」
「…………」
鈴木の顔が教室の時計に逸れ、
「時間、今からなら間に合うはずよ」
また戻ってきた。
その目には、俺を射抜く眼光が宿っていた。
「意地をはりたいなら、ここに居ればいいわ。リナの事が心配なら──」
心臓がドクン、と強い鼓動を打つ。
俺は──
キュ、と奥歯を噛みしめた。
ふわふわとした足取りで控え室の入り口をくぐると、一番近くの空いている
腰掛けに落ち着き、
「はぁ……緊張した」
と、リナは深い溜め息をひとつ吐いた。
たった今、オーディションでの出番を終え、戻ってきたのである。
二次選考だけあって、会場内の雰囲気も前回と比べて明らかに格段上の熱気
を見せていた。
「周りの子……みんな可愛かったなあ……」
水着の着用を義務づけられたため、会場はさしずめ、水着美女の揃い踏みと
いった観であった。
リナもアイドルを目指しているだけあって、自分の容姿にそこそこの自信は
抱いているが、正直敵わないと思ってしまうほどの、モデル級の美人が何人も
いた。はっきりと負けを感じたプロポーションの持ち主もごまんと。
「スリーサイズかあ……」
リナは水着に包まれた自分の身体を見下ろした。
上から85・57・86。数字だけなら、他の子に負けてないと思う。この
プロポーション作りのために、けっこう頑張ってきたつもりだ。胸はちょっと
垂れ気味だけどそれは自重のせいだしある方……だと思うし、ウェストは厳し
く管理したし、冒険で鍛えているボディには無駄なぜい肉はない……ハズ。
自分のカラダをそういう風に見るのは気恥ずかしさもあるけど、
「アイドルになるためには仕方ない事だもんね……」
と、自分で自分を納得させるしかなかった。女の子としての魅力もアイドルに
は重要な要素だった。アイドルは仕事であり商売であり、女性差別だとかいう
話は的外れな議論なのだ。それを肯定し、むしろ武器として利用できるように
しないといけないのだった。
(合格……できるかな……)
何せ、今回のオーディションの主催は、業界でもトップクラスの芸能プロダ
クションである。集まってくる女の子のレベルは他よりも数段違っていた。超
難関といっていい。
だが、もしここのプロデューサーの目にとまることができれば、アイドルに
なるという夢は半ば成功したも同然となるのだ。
しかも今日来ているのは、マロプロでも屈指と呼ばれている敏腕プロデュー
サーだった。彼が拾い上げたアイドルが各メディアやチャートシーンを賑わせ
ているのは、いちいち調べる必要もないほどである。
そんなオーディションを、二次選考まで残ることができたのは、かなりの大
チャンスと言っていい。
リナがアピールしていた時に注がれていた視線は、サングラスで遮られこそ
していたが、その全身から漂っていたオーラは、
(これが業界ナンバーワンのプロデューサーなんだ……)
と思わせるぐらいの迫力というか、存在感があった。
その時、控え室のドアが開いた。
「あの竜胆リサさん」
「あ、は、はいっ!?」
いきなり入ってきた若い男に突然話しかけられ、リナは素っ頓狂な声を出す
ところだった。
よく見れば、会場でプロデューサーの横にいたAD(アシスタントディレク
ター)であった。
「あの……プロデューサーからお話があるそうでして……ちょっと別室に来て
もらえませんか?」
鎮まりつつあった鼓動が、また一気にドクンと高まった。
(うそ──)
と脳裏に過ぎったのは一瞬で、
「は、はいっ!」
リナは返事とともに立ち上がっていた。
(なんだろ……もしかして合格! とか?)
それまで不安に満ちていたリナの目が、輝きに開かれる。
心が浮き立つのを感じながら、リナはADの後について廊下を歩いていった。
間近で見るムンクPはテレビで見るよりがっしりとした体格で、精悍そうな
顔つきをしていた。
彼が言葉を発すると、まるで存在感の塊がぶつかってくるようで、リナは幾
度も生返事をしそうになるほどだった。
こういうのをカリスマっていうのかな……さすがは芸能界きっての大物プロ
デューサーと言われる人だわ──と、リナは緊張の中でそう感心した。
そんな男が、リナを気になったという。
リナは舞い上がってしまいそうだった。
(アイドルになれるかもしれない)
夢が現実になる……!
そう考えただけで喉が渇いてきて、リナは勧められるままにジュースのグラ
スを手に取った。
オーディションは関係者だけで催されており、参加者の知人でも入ることは
禁じられていたが、「危急の用事があって」と入り口の受付係を何とかだまく
らかし中に入った。
ロビーには参加者らしき少女たちがちらほら見えたが――いない。
ユウキはその一人をつかまえて訊ねた。
「おい、竜胆リナっていう参加者知らないか」
「え? エントリーした子なら、審査中じゃなければ控え室やここにいると思
うけど」
そう教えられ、ロビー脇の通路に入る。
控え室に続くドアの前は『関係者以外立ち入り禁止』という立て札で塞がっ
ていたが、構わずにまかり通った。
楽屋を一つ一つ回り、中にいた娘たちにリナの特徴を告げて行方を訊ねると、
「ああ、その子なら確かさっき、ADに連れられてどっか行ったわよぉ」
と言う娘がいた。
「ホ――ホントか!?」
「嘘言うわけないじゃん。いいわよねぇ、個人的に呼んで貰えるなんてさー。
あーあ、私もお呼ばれしたいなぁ」
ユウキは奥歯を噛んだ。胸のモヤモヤが色濃くなる。
良くない予感がした。
踵を返して出て行こうとすると、娘が逆に訊ねてきた。
「ねぇ、あんた、あの子の彼氏ぃ?」
「ただの知り合いだよ」
「ウッソー」
ケタケタと笑う娘。あまり品がよろしそうではなかった。
「急いだ方がいいかもよぉ」
娘は室内を見渡し、他に聞こえないようヒソヒソと耳打ちしてきた。
「……たぶんあの子、あの人に呼ばれたと思うから」
「……ムンクPってやつか?」
「……あ、なるほどねぇ」ニヤリと笑う娘。「わかってんなら、早く行きなよ」
「すまないっ!」
ユウキは弾丸のように控え室を飛び出していった。
「う、うう……ユウキッ!」
痺れ薬で動けないリナの白い喉から、か細い悲鳴が上がる。
言葉をやや取り戻しても、依然身体が言うことを聞かないリナの様子に、ム
ンクの口端が歪んだ。
「さーて、最終審査といこうか」
ムンクの指先が下の水着の隙間に入り込もうとした時──
「ダメだ……この先は……」
「うるさいな! だから知り合いって言ってるだろ!」
廊下から大きな声が上がり、揉み合うような音が聞こえてきた。
通せんぼしようとするADらしき男を荒っぽく壁に押しやると、ユウキはそ
の先にあった部屋に飛び入った。
そこには──
「…………あれ?」
──人っ子一人いなかった。
「……え……?」
ユウキは怪訝な目つきで部屋内を見渡した。
(おかしい……部屋の外で押し問答してる時は、確かに……人の気配がしたの
に……?)
とりあえず、ユウキは部屋の中をうろうろと歩き回った。
だが、ソファやテーブル、観葉植物などが応接室然として置かれた室内には、
どこにも人の影など見当たらない。
壁にでっかい鏡が張ってある。それ以外特に目立ったものもなく、テーブル
の上にある飲みかけのジュースのグラスに水滴が浮いているのが、唯一の人の
居た証拠であった。
「き、君……」
遅れてADが入ってきた。ユウキと同じく室内を見回し、「あれ?」といっ
た顔をする。
「おい!」ユウキはADの胸ぐらを掴んで吊り上げた。「ここに誰かいただろ!
どこにいった!?」
「ぐふっ……な、何するんだ……!?」
「答えろ!」
「し、知らない……!」慌てて首を振るAD。「俺はただ審査の邪魔が入らな
いよう……部屋の前で見張っているよう言われただけだ……!」
「ムンクってやつだよな」
「そ、そうだ」
ADから手を離し、ユウキは、「くそっ」と舌打ちした。
通路の奥に非常口のような扉が見えた。あるいは、そこから出て行ったのか
もしれない。
「ゴホッ、ゴホッ……何も言わずに移動するなんて当たり前さ。芸能界で一番
偉くて忙しいプロデューサーなんだから」
「そいつがリナを連れてくるよう指示したんだろ」
「あ、ああ。気に掛かったから個人的に面談したいと言ってね。……しかし居
ないってことは、もう終わったんだろう。だいたい、君は何の用があってここ
に来たんだ」
「知り合いに会いに来ちゃ悪いのかよ」
「当たり前だ!」怒りを露わにするAD。「今は、無関係者お断りのオーディ
ション中だぞ!?」
「わかった。無理に押し入ってすまなかった」
そう言うと、ユウキはADを押し退けて部屋を出て行った。
「ふぅー……間一髪だった」
ムンクは額に浮かんだ冷や汗を拭った。その腕の中には依然、リナが捕えら
れていた。
そして彼らの目の前には、ユウキとADが言い争う光景が見えていた。
──1枚の鏡を隔てて。
それはマジックミラーであった。ムンクとリナがいる暗い部屋の中は、決し
てあちら側には映らない。
ユウキが乱入する少し前、廊下の騒ぎを敏感に察知したムンクは、秘密裏に
作らせてあった隣の隠し部屋にいち早く待避したのだ。まだ身体の自由が効か
ないリナは、ムンクに抱え上げられて連れ込まれるしかなかった。
さきほど弄ばれていた時と変わらない胸をはだけたままのあられもない姿で、
リナは涙をこぼしながら、
「ユウキ……! ユウキィ……!」
と、鏡の向こう側にいる幼なじみの少年に向かって何遍も名を呼んだ。
だが、無人の室内で戸惑いを隠せない顔つきを盛んに巡らせているものの、
赤毛の少年はリナの声に気付く素振りもない。
腹に力が籠もらないリナの声は、あまりにか細すぎて届かないのかもしれない。
リナ自身もそれに気付き、悲痛に顔を歪ませた。
「ユウキィ……!」
そんな少女を両腕に抱え込んでいるムンクといえば、ここへ逃げ込んだ時の
慌てぶりはどこへやら、グフフと余裕の含み笑いを発した。
「おうおう、彼はキミの関係者──いや、恋人か何かかい? キミのその様子、
彼のあの必死な表情……間違いないね、そうだね、そうなんだね? オレは凄
腕のプロデューサーだから、その辺はすぐ見抜けるんだよ。いやいやいや、突
然のハプニングでビックリしたけど、これはこれで面白いことになったようだ。
ドッキリなどのやらせより遥かに素晴らしい状況じゃないか!」
そう言いながら、今度は目の下の汗を拭う。
(ここに隠し部屋を作らせたのはつくづく正解だったな)
いつも部下に見晴らせているとはいえ、比較的人が出入りしやすい場所で事
に及ぶのは、さすがに「自称大物」のムンクでも幾ばくかの不安があった。い
や、大物を自負すればこそ、簡単に尻尾を出して権勢の座から転落するような
惨めな結果は出したくない──でもスケベな事はしたい。
目星をつけた娘にアイドルにすることを約束する代わりに、そのカラダを要
求する──天下のマロプロからのデビューを秤にかけ、その身を差し出す覚悟
を決める少女は多かった。
後は誰にも邪魔されない場所があれば、アイドルを目指すうら若い娘たちの
魅力的なカラダを、思う存分心ゆくまでしっぽりと楽しめる。
だが、オーディションは大抵の場合外部の施設を使うので、そう上手くいく
とはなかなか限らない。
そこで、ムンクはオーディションをなるべく特定の会場で行うことにした。
それも、金と欲望に簡単に転びそうなオーナーがいるところを狙って――その
白羽の矢が立ったのが、この施設だったのだ。
ムンクはオーナーと昵懇の中になり、金と女を与える代わりに、このVIP
ルームを作らせた。オーナーである初老の男はムンクの考えを察し、「時々私
にもいい思いをさせてくださいよ……」と下卑に笑って了承した。
近くにあった一人用のソファを鏡の前に引き寄せて座ると、ムンクはリナを
膝の上に乗せ、先ほどとまったく同じ体勢になった。
鏡の向こう側から漏れる光を浴び、リナのからだがなめらかな光沢をもって
浮かび上がる。
その艶めかしいボディラインを眺め、舌なめずりをするムンク。
「さあ、仕切り直しといこうじゃないか。個人審査の続きだ……!」
「ひゃあっ……! い、いや……!」
再び我が身に降りかかる陵辱の予感に、リナは恐怖と嫌悪感で喉を震わせた。
舌は比較的回るようになったが、全身に行き渡った薬の効果はいまだ切れる気
配を見せず、ムンクに背後から絡み取られるように抱えられ、為されるがまま
で拒むことすら出来ない状態だった。
(ユウキ、お願い、気付いて……!)
その心の叫びを聞き届けたのか、ユウキの視線がリナと合った。
(ユウキ……!!)
リナの唇がほころぶ。
……だが。
ユウキの視線は少しも触れず、すぐに反らされてしまった。
(……!?)
呆然とするリナ。
今、確かに見つめ交わしたハズなのに……!?
(──まさか、これ……マジッ──)
リナの思考は突如として中断された。ムンクの愛撫がいよいよ再開されたか
らだ。
幾多の美少女アイドルを食いまくったと噂される好色プロデューサーの魔の
手が、リナのしなやかではりつやのある肢体をいやらしく這い回ってゆく──
「う〜む、やっぱり年頃の子の肌はピチピチでいいねぇ。特にキミは惚れ惚れ
するほど綺麗だよ。冒険者を目指すだけはあるね〜」
「あ、あ、あァ…………!」
今度は、さっきよりも感じてしまう。太い指で乳房を揉みしだかれ、先端を
コリコリと弄ばれるのを。耳の裏から鎖骨までヒゲの生えた口で舐められ、吸
われ、撫でられるのを。
「ん、んっ……!」
ムンクが与えてくる刺激を、どうしても感じてしまうのだった。
からだをいやらしくまさぐられるにつれ、リナの吐息が徐々に早くなり、頬
の赤みが次第に鮮やかになってゆく。
「や……や、はぁ、はぁぁ……!」
こんなのが審査だなんて……絶対に違う…………!
「ふふ、息が熱くなってきたじゃないか。感じてるようだね。さすがはこれだ
けのボディを持っているだけのことはある」
ムンクの見たところ、この少女のからだは充分に成育していた。後はこれか
ら手をかければ、さらに女らしい身体になっていくことだろう。
「ふぁっ……くあ、くぁふひてなんか……あ……あ……っ!」
嘘だった。
敏感になった乳首がしぼられたり、しごかれたりするたびに、体内に薬の効
果ではない痺れが──得体の知れない感覚が走り、
(ああ……!)
と、切ない吐息をつくしか余儀なくされるのだ。
特に……触られている部分はピリピリとざわめき、からだの奥に浸透してゆく。
肌が火照ってくるのを止められなかった。
それが恥ずかしいからだけなのかどうか……リナ自身にはわからなかった。
わからなくてもいい。
今は少しでも早く、このセクハラ行為から逃れたい気持ちでいっぱいだった。
しかし、身体の自由が全く効かない上に、せっかく助けに来てくれたユウキ
からも隠されてしまい、リナにはどうすることも出来なかった。
指一本動かせないままに弄ばれる少女のからだは、己の意志とは無関係に熱
を帯びはじめ、じっとりと汗が浮かんでくる。
「あ……あ……んああぁ…………」
リナの口から漏れる吐息のような微声も、次第に回数が増してゆくのだった。
「んん〜、オーディションではかなり緊張したようだね。リナ君のカラダから
立ちのぼる体臭、とても甘酸っぱいよ……しかし、それでいてフレッシュで嫌
味が全くない……フェロモンは合格だ……たまらないニオイだ……!」
「や──やはああぁ……!」
肌に直接鼻を当てられ、ニオイを嗅がれている──その恥ずかしさに、リナ
の頬がカッと紅に染まった。
しかし、ムンクの行為はもっと恥ずかしい段階に移った。
リナの左腕を上げて顔をくぐらせると、横からの眺めも充分な小高い乳丘の
景観に満足の笑みをこぼし、脇から少女の左乳首を吸い、同時に右乳首を甘い
指遣いでこねくり回し始めたのである。
チュウチュウと卑猥な音が立ち、スケベ顔の口の中で可憐なピンク色の蕾が
たっぷりと嬲られる。
「はあ……んあっ……んはぁ……! だ……だめへぇ……!」
それは常時であれば甲高い悲鳴になっただろうが、薬が回っている今は弱々
しい声にしかならない。
「やめてぇ……! あっ……あぅん……んや、や、いや、あぁぁん……!」
しかも、身体は動かなくても、感覚は生きているのだ。
乳首を盛んに吸い立てられる刺激に、若く健康なリナの性感は否応無しに呼
び覚まされてゆく。動かないはずのリナの腰のあたりがピクピクとひきつり、
ムンクのいやらしい乳辱愛撫に反応を示してしまうのだった。
「むちゅむちゅ……いやあ〜、最高にオイシイよ、リナちゃんのおっぱい……
むちゅむちゅむちゅ…………」
(ああ、そんな……! 私、おっぱい吸われてる……ユウキの前で……いやぁ、
おっぱい吸わないでぇ……!)
さっきまでとは逆で、リナはユウキがこちらに気付かないよう祈った。こん
な恥ずかしい事をされている今の自分を見られたくない。
向こう側を正視できず、リナはあまりの恥ずかしさに目を瞑った。
その拍子に、涙が頬を伝い落ちる。
しかしリナは気丈に、望まぬ性辱の荒波に翻弄される自分を励まし、懸命に
堪え忍ぼうとした。
(だめ、だめよ……おかしくなっちゃだめ……!)
だが──心ではそう思っても、からだの反応は違っていた。執拗なまでに弄
くられる乳房が、乳輪が、そして乳首が──本人の意志に反して張りつめ、ム
ンクの愛撫は徐々に甘美なものに変わっていってしまうのだった。
(ああ、だめ……さっきからなんか……へんな感じがする……胸がムズムズし
て、気がおかしくなりそう……だ、だめ……いけない、いけないの…………!)
それを、百戦錬磨の好色漢が見逃すはずがなかった。
「おやあ……? 胸をちょっと触られたぐらいで、もうエッチな気分になって
きちゃったのかい。ウブな娘だと思ってたけど、なかなかスケベな素質ありだ
ね、これは」
「ち、ちがう……これっ、ふぁ、ふあぁ……!」
反論しようとしたが、舌がうまく回らない上に、ムンクの愛戯がいよいよ粘
湿さを増し、言葉が跳ね飛んでしまった。
「んああっ、んあ、んうう、ふぅぅん…………!」
ムンクは執拗なほど熱心な愛撫でリナの美乳を揉みしだき、乳首を嬲り回し
続ける。
「ら、らめぇ……ひょんなにおっぱいしゅわないでぇ……お、おかふぃくなっ
ちゃうぅ……!」
ムンクの愛戯は手慣れていて、時折──秘部をわざと外し──他の箇所にも
愛撫の手を伸ばし、舌を這わせ、その欲望にぎらついた表情とは裏腹に、あく
までもソフトにリナの柔肌をまさぐってゆく。女がどこをどういう風に弄られ
れば感じるかを知り尽くしているようだった。
リナは、それを、身をよじることさえ出来ない状況で受け続けている。しか
も目も瞑っているため、意識がどうしてもすっかり心地よくなってしまった感
覚に集中してしまう。
やがて、リナはムンクの腕の中で全身をぷるぷると小刻みに震えさせ、眉を
ひそませながらも、
「あ、あ、あ…………!」
と、朱に染めた満面がだらしなく緩んでゆき、次第にあえぎ声を漏らすだけに
なっていった。
(だ……だめ…………い……いっ、いけない……のに……こ、こんなの……感
じたことない…………はあっ……ああああっ…………♥!)
いやらしい行為に身を固くしようとしても、弛緩したままの身体は容易に愛
撫を受け入れてしまい、蕩(とろ)けそうな気持ちよさが、奥深いところまで
浸透してゆく。からだが勝手に感じてしまう。
――言いしれない感覚だった。
からだの奥が疼き、理性がメチャメチャに掻き回される。
(厭なのに……厭……なのに……どうしてえ……!?)
「だいぶ可愛らしくなってきたね」
口を半開きにしてよだれを垂らすリナの惚けた様子に、ムンクは目を細めた。
いい感じだ。ここまで来れば、この娘は頂いたも同然だろう……。
その時、ガチャッと何かが外れる音がして、マジックミラーの脇の壁がドア
一枚分開いた。
「ムンクさん」
入ってきたのは――あのADだった。
「おお、キミか」
ムンクは口だけを離し、手は動かし続けたまま喋った。
「さっきはご苦労だった。あ、そのドアちゃんと閉めてね」
「はい……腕力だけはありそうなガキで大変でしたよ」
ADはそう言うと、ユウキに締め付けられた首あたりをさすった。そしてム
ンクの腕に抱かれているリナの様子をちらっと見て、いやらしい笑みを浮かべた。
「もうメロメロな感じじゃないですか。さすがはムンクさん」
「まあ、オレもこの道ウン十年だからね。プヒャヒャヒャ!」
「さすがだ……それじゃあ、いつものように後の事はやっときますんで」
「ウム……いや。そうだ」
サングラスの奥でムンクの目が底光りした。
ADを手招きすると、リナに聞こえないように言う。
「さっきの小僧……もしまだぐずぐずするようだったら、隣の部屋で待たせる
んだ。オレがこの娘を連れてどっか行ったことにして、じきに帰らせるとでも
言ってな。オーナーにも連絡して、閉館時間が過ぎても居られるようにしとけ」
聞き始めはぽかんとしていたADは、すぐにムンクの悪巧みに勘づき、みる
みるその顔を卑しく崩した。
「わかりました……そりゃまた……たまらない趣向ですね……!」
「だろ、だろ?」
可哀想な女だ――ADはそう思わないでもなかった。この娘も、弄ばれるだ
け弄ばれて最後はポイ、かな……。才能があれば、少しは可能性もあるかもし
れないが……しかし、オーディションを見たところでは、目を奪われるほど惹
きつけられるものは感じられなかった。冒険者という肩書きは珍しいが……。
ムンクPも決して馬鹿ではない。人を見る目がない人間が、いつまでもこの業
界のトップに君臨していられるわけがない。天下のマロプロから輩出するアイ
ドルが、並の人材では釣り合わないのだ。十中八九、捨てられるだろうな……。
だが……。ADはゴクリと喉を鳴らし、リナの生のおっぱい――そして裸体
を眺めた。
間近で見ると、想像以上に……美味しそうなからだしてやがるな……。
「あの……また今度……オレも……」
「んん? ああ……むろん考えている。近いうちに、お前が好みだと言ってた
あのアイドルでも呼んで、楽しくやろうじゃないか」
「ホ、ホントですか!? ありがとうございます!――じゃ、オ、オレ、うまく
やりますんで!」
ギラギラと目を欲望に輝かせ、ADは部屋を飛び出していった。
「ククク……餌をちらつかせれば、人間はよく働いてくれる」
ムンクはリナの乳房を揉みしだき、チュウチュウと乳首を強く吸った。
「はぁあん……!」
「じゃ、そろそろ隣の部屋では果たせなかった続きに移ろうか」
そう言うと、彼はリナの乳房の片側から手を離し、リナの内股に滑りこませ
た。少女は脚を閉じることもできず、股間はムンムンとした熱気を溜め込んで
いた。
「はっ……あ……だ……だめぇ……!」
ムンクはリナの悲痛な制止の声も気にも留めず、むっちりとした内股の肌に
這わせた指を、内へ内へと沿わせてゆく。
「おや、リナ君……濡れてるじゃないか」ムンクの顔が喜悦に歪む。「割れ目
の所の色が変わってるよ」
「えっ……やっ……やああぁぁ……!」
羞恥に身体を震わせ、涙目をあさってに背けるリナ。
ムンクの言葉通り、ボトムの一部分が内側からにじみ出た水気によって変色
していたのだ。
「やっぱりオレのテクに感じてたんだね。プヒャヒャヒャ!」
(いやあ、恥ずかしい……ああ……ユウキ…………!)
リナは泣き腫らした目をうっすらと開き、鏡を見た。
ユウキ、助けて……!
──鏡の向こうは無人だった。
(え…………!?)
「ん? 今ごろ気付いたのか。彼ならついさっき出て行ったよ。諦めて帰った
んだろう」
「……そ……んな…………!?」
少女の心に冷え冷えとした氷塊が投げ込まれる。
「ククク……さ、観念して審査の続きといこうじゃないか。なあに、怖がるこ
とはないからね。オレが処女の扱いも慣れてるってことは、もうわかっただろ。
もっとたっぷりと感じさせてあげるからね。プヒャヒャヒャヒャ!」
「いひやぁ……ユウキ、たひゅけて……ユウキ……!」
リナは唇が動くままに、ユウキの名を何度も口にした。
好きでもない人と裸でベッドに入って……いいように抱かれて……こんな……
こんな……!
その現実に、リナの心は半ば痺れてしまい、追いついていかない。
「ユウキ……ユウキ…………!」
うわ言のようにそう呟き――リナは霞む目でマジックミラーの向こうを見た。
……やはり、部屋は無人だった。
(ああ…………!)
恐怖、怒り、悲しみ、諦め――ぐちゃぐちゃになった暗澹な気分が、じわじ
わと心の中に広がってゆく。
どうして、こうなっちゃったんだろう……。
冒険者になり父親を捜すという目標に進みはじめたユウキを見ていて、自分
も頑張らなきゃ――私はそう思って、子どもの頃からの夢だったアイドルを目
指すようになった。それもただのアイドルじゃない、歌って踊れる冒険者に。
それは、私の諦めきれない想いだったのかもしれない。
たとえユウキの中に私がいなくても、せめて同じ方向に進んでいけば……彼
が頑張っているように、私も頑張れば……それだけ近くに……ユウキとの間に
感じた隙間を埋められる。そう……思っていたのかもしれない。
でも、ファルネーゼに行ったユウキが光綾学園に来て、一緒のクラスになっ
て、一緒に冒険するようになって――休みにはデートするようにもなって――
隙間はどんどんと縮まっていった。
夢のような、とても嬉しくて充実した日々だった。
だけど――
(やっぱり、ユウキと別れたあの日から……彼とは……もう…………)
突然、
「ハアアァンッ!」
思考がぶつ切りにされるほどの刺激に襲われて、リナは思わず甲高い嬌声を
上げてしまった。
乳肉を嬲り、乳首をしゃぶりながら、布越しにムンクの指が秘裂をなぞり上
げたのだ。
「おお、もうすっかりココも濡れ濡れじゃないか。なんてはしたない娘だ」
「ち、違う……違うの…………!」
「違うものか……このスケベ娘が。この布の下がどうなってるのか、さらに審
査しなきゃいけないな〜?」
そう言うと、ムンクはリナをひょいと抱え上げ、「よいしょっ」と、後ろに
あったベッドに倒れ込んだ。
「んひゃんっ!」
(フフ、たとえあの小僧が戻ってきても、こっちの部屋に通じる隠し扉の位置
はオレとあのADぐらいしか知らない。しかも厳重な鍵付きだ。どうやったっ
て見つけられっこないのさ)
心中で哄笑しながら、ムンクはリナのからだをひょいっと仰向けに寝そべら
せた。それだけではなく、股をM字に広げ、恥ずかしい部分が大開きという格
好にした。まるで人形の扱いであった。
ほの暗い部屋に映えるリナの白い肢体。覆うのは、もう、股布一枚だけ。
(いやぁ……こんな……こんなのって……! 恥ずかしくて死にそう……!)
「ぷひゃひゃ! いや〜、リナ君、よく似合ってるよ。花も恥じらう乙女がこ
んなそそる格好をするなんて、最高にいかすミスマッチだよ!」
ムンクは喜色満面でそう言う。
(美味そうなカラダの娘が、恋人を近くに感じながら他の男に犯される……最
高のシチュエーションだな……!)
セックスなど数え切れないほどやり、一通りのプレイも体験してきたが、こ
れは今までにない最高の昂奮材料であった。
(こりゃ、日頃鍛えたテクニックを駆使して、恋人の前でおとすっきゃないな)
ムンクはそう決めると、着ている衣服を乱暴に剥いでベッドの外に放り、一
足先に全裸になった。
股間のモノはバキバキに怒張し、天を衝くほどに屹立していた。四十路とは
信じられない勃起力である。
偉塊を見つめて、「ひっ……!」と息を詰めるリナに、ムンクは底知れない
愉悦を感じた。
これまで幾人ものアイドルを泣かせてきたイチモツだった。赤黒く淫水灼け
した太く長い肉茎。皮は完全に剥け、カリ首も太く充血した亀頭。勃起の強さ
もなかなかのもので、ムンクは己の男根に自信を持っている。
今の地位までのし上がれた要因の一つは、女を上手く抱けたことにある……
ムンクはそう考えていた。
彼はオーディションでつまみ食いするだけに飽きたらず、現在芸能界のトッ
プにまで躍り上がっている娘にまで手をつけていた。やはり最初は皆、仕方な
くといった風に抱かれるのだが、そのうちまんざらな様子でもなくなってくる
のである。ムンクもその辺の機微を掴むのが巧みで、執拗に迫ったりはしない。
そのため、過酷な仕事のストレス解放のために、向こうから誘ってくるアイド
ルもいるぐらいだった。彼がセックスに自信を持つだけのものはあった。
腹は年相応にでっぷりとしていたが、それを除けば身体はなかなかの引き締
まり具合であった。海や山などでよくバカンスするため、それなりの筋肉はつ
いているのである。
「オレはアウトドア派でね、けっこう体力にも自信あるんだよね。夜は長い……
グフフ、楽しもうじゃないか……」
そうして、哀れな動けない子猫に覆い被さってゆく。
リナの脳裏にさっきまでの愛撫と快感がぐるぐると回る。こんな状態でまた
あんな風にやられたら、もう、ガマンできない……!
「ユウキ……ユウキィ…………!」
リナは泣きはらしながら、幼なじみの名前を何遍も呼んだ――もはや半分以
上諦めと絶望に浸りながら――――
赤髪の少年はもう一度しらみつぶしに会場内を捜し回っていた。
オーディションは終わったらしく、舞台は撤収作業が始められ、参加者の娘
たちは私服に着替えて思い思いに帰っていく。
しかし、そのどこにもリナの姿はなかった。
「くそっ……どこだ、どこにいるんだ……!?」
会場施設は思いのほか広く、全てを一人で見回るのは難行であった。だが、
ユウキは脚が棒になるのも構わず、走りに走りまくった。
『ああ、その子なら確かさっき、ADに連れられてどっか行ったわよぉ』
さっきの娘の言葉が脳裏でリフレインしている。
だが、そのADらしき男が番していた怪しい部屋にも、誰もいなかった。A
Dも「知らない」の一点張りでらちがあかない。
(なんでどこにもいないんだ……!?)
激しく嫌な予感が高まり、胸を締め付ける。
そんなユウキを、スタッフや女の子が怪訝そうに見ていた。
ホール内に入り、またロビーに出ようとしたところへ、先ほどのADが走り
寄って来た。
「ああいた、君、君」
「なんだよ」
ユウキの押し殺した気迫にADはムゥッと顔を引いたが、なんとか気を取り
直して言った。
「今、ムンクさんと連絡がついてね。君が捜してる女の子、やっぱりムンクさ
んといるんだって」
「なにっ!?」
「そ、そんな怒鳴るなよ。面談場所を変えただけだから」
しかしそれでも心配は消えなかった。二人きりにでもなって、やらしい事を
迫るんじゃないのか――?
「どこにいるんだ」
「場所までは教えられてないし、もし聞いてても、部外者に教えることはでき
ないんでね」
「……」
ユウキは剣呑な表情で握り拳を作った。
「いや、話は最後まで聞けって! 本来ならこんな事するのはおかしいんだが、
君の事も伝えてあげたんだぞ!?」
「本当か?」
「あ、ああ……そしたら、荷物も残してるから、終わり次第こっちに戻るって」
「それはリナのことか?」
「そうだよ。彼女は今、将来に関わる大事な話をしている最中なんだ。だから
君はここで大人しく待っててくれないか」
「……」
ユウキは迷った。こいつ……なんかくさい。締め上げれば何か吐くんじゃな
いのか。
「あのさあ、君……。何考えてるのか知らないけど、ここまで優しくしてあげ
るのは異例のことなんだよ? 今の状況、警察を呼ばれてもおかしくないって
こと、分からないかな」
「くっ……」
てめえのボスが――と言いかけて、ユウキは止めた。これじゃ単なる言いが
かりだ……。
そう。この男の言う通りだった。証拠現場でも押さえない限り、俺がここに
いる正当な権利はない。オーディション中の会場を走り回って、叩き出されな
いだけマシなのだ――
噂。確証はない。鈴木はそう言った。
肩から力が抜けていった。
「……わかった……すまない……いや、すいませんでした……」
「……フン。じゃ、これね」
と、ADは手に持っていた物をユウキに差し出した。リナのカバン。
「これだってわざわざ探して来てあげたんだ。命令じゃなきゃ、暴力行為をす
る奴なんか助けたくないんだけどね。ホント感謝して欲しいよ、まったく……」
「……どうもすいません」
「さっき君がムリヤリ入った部屋があるでしょ。あそこで大人しく待ってて」
カバンを受け取ると、ユウキは力ない足取りで歩き始めた。
「あ、それと、これは個人的な意見なんだが――」
ユウキは足を止め、上半身だけ振り向いた。
「君さ、どうせ彼氏なんだろうけど……彼女の足を引っ張りたくなければ、彼
女自身の問題に、あんまり首突っ込まない方がいいよ」
「…………」
ユウキは何も答えずに、また歩き出した。さきほどの部屋へと。
どこにいるんだ、リナ…………。
「ふぅ――」
ADはユウキの後ろ姿を見ながら、顎を伝っていた汗を拭った。この傍若無
人な若者の威圧感は、明らかに戦い慣れしているものだった。制服もおそらく、
この近くにある光綾学園とかいう冒険者育成学校のもの。武器は見当たらない
とはいえ、どこに仕込んでいるかわからない。喧嘩はしたくない相手だった。
(これだから好きこのんで武器を振るうような野蛮な奴らは嫌いなんだ。オレ
はムンクさんのようにずる賢く立ち回って、可愛いアイドルを抱けるような偉
い地位にいくぞ……)
そう思うADの若い男であった。
「ヒッ……ン、ンアッ……! い、いやぁ……! そ、そこはダ、ダメ……ン
アア……ンアアアア…………!」
リナの喘ぎ声は途切れることがなかった。
ムンクのペッティングは本当に執拗であった。
乳肉を揉みしぼられ、乳首をしゃぶられまくる。責め嬲られた乳房は張り詰
め、乳首は痛いほどに尖り、弄くられるたびにアソコまで快感でズクズクと疼
いてしまう。 そのアソコも、今や弄られ放題であった。
仰向けに脚を大股開きした姿勢にされて、紐パンも抵抗もできずに脱がされ
たのである。今や全裸と全裸で絡み合っていた。
もはやからだの隅から隅まで、ムンクの指と舌が届かないところはなかった。
下を脱がされる時、すっかりアソコの形に染みがついていて、糸まで引いて
いることを指摘され、顔から火がでるぐらい恥ずかしかった。
そして、アソコは──秘陰から蜜が溢れて濡れぼそっていた。
(大事なトコロまで──見られちゃった──)
ショックが連続していて、ついに開帳されてしまったことも鈍い痛みにしか
ならなかった。
中指と薬指を穴に入れられ、親指でクリトリスを撫でられながら、処女膜ま
で届かない膣口近いところを掻き回される。それを乳嬲りと同時に行われるも
のだから、
「ヒァァンッ! ンアアッ! ンア、ンヒャアァンッ! ンイイイッ♥!」
リナはたまったものではなかった。
もはや抑えられず甘い嬌声を上げ、すっかり発情してしまったからだをくね
らせて、ビクビクと背を反らし腰を浮かす。──反応を返せるほどに身体の動
きは回復したが、ムンクを悦ばせるだけであった。
「ダ、ダメェッ……ク、クリそんなに弄くらないでぇ……!
ハアァッ、ハアゥン、ンハアァァ……♥!」
半ば蕩(とろ)けきった表情で口端から涎を垂らし、切なく懇願するが、そん
な言葉一つで男が手を休めるはずもない。
(しかし、ここまで感じるとはな……)
ムンクも己の愛戯には自信を持っていたが、このリナという少女ももともと
感じやすいからだなのだろう。処女でもそういった娘はいる。
何にせよ、彼にとって食べ甲斐があることに変わりはなかった。
と――
人の動きを視界の端に感じ、「ん?」とムンクは後ろを向いた。
瞬時に喜色が目に浮かぶ。
(グフグフグフ……来た、来た、来た……!!)
隣の部屋の正面にあるソファに座った人影――赤髪の少年。
ムンクの血がカッと騰がり、倒錯感に頭がクラクラしそうになった。
なんというたまらない瞬間だろうか。
(男から何歩も離れていない場所で、他の男に抱かれる少女か……! なんと
……またとない状況だ……!)
リナは快楽に囚われた表情のまま、まだ気づく様子もいない。
ムンクの全身に愉悦が充ち満ちた。
(小僧……この娘はもう堕ちる寸前だ……このオレの手の中でな!)
体奥から久しく感じたことのない精気溢れる昂奮が湧き出てくる。
娘で気付くまで黙っているか。楽しいことになりそうだ……!
リナの悩ましげにくねる肢体に、ムンクはさらに熱心に愛撫の雨を降らせ始
めた。
「いやあ、感じてる顔も可愛いねえ、リナ君。最高だよ!」
(い、いやだぁ……おっぱいも……あそこも……か、からだ中こんなに……も
てあそばれちゃってるよおぉ……ヒッ……ヒゥゥンッッ♥!)
もう自分が悲しんでいるのか、悦んでいるのか分からない。
しかしどちらかというと──
クイックイッとクリトリスを撫でる親指の回転が活発になった。
「あっ、あっ、あっ、あっ♥!」
あくあでも柔らかく触れるムンクの指の動きは、歯が震えるような快感を盛
り上がらせ、腰のビクビクがまた始まる。喜悦の涙を流しながら、指を差し込
まれた穴がキュウウッと締まり、喘ぎ声が早まってゆく。
(ダッダメッ気持ちよくて──気持ちよくて、あ、あ、あっ、イッ、イク──
イッちゃううぅぅ〜〜〜ッッ♥!!)
すると、ムンクの親指がパッと離れた。
「ククク、ココではイカせないよ。満足しちゃうからね」
「あ、ああぁ……ま、また…………」
さっきからこの調子であった。クリトリスを責めて急速に昂ぶらせ、いいと
ころで止める。そしてまた穴や乳などばかりをねぶるのである。それも確かに
気持ちいいのだが、燻るようにゆるやかにしか昂ぶっていかないので、絶頂に
まで導かれず、焦らされて悶えるばかりなのだ。
だが、確実にリナは追いつめられていた。
リナのからだが快感のさざ波に反応し、ビクビクとくねる。切ない吐息を漏
らすだけの唇――。本人の意思とは裏腹に、まだ男を迎えたことのない処女肉
はすっかり熱くなって、ムンクの指を歓迎するようにキュウッと締め付けるの
だった。
「グフフフ……処女の窄(すぼ)まりはたまらんね〜!」
「ハアア、ア、アッ、ぃいや、いや、いやああぁ…………!」
「さあ、またオマンコを吸ってあげよう」
「ヒィ……ヤ、ヤアァ……!」
涙を流したままフルフルと首を振るが、ムンクはリナの脚元までにじり下が
り、まだわずかしか割れていない秘裂を指で左右に開いた。まったく色の沈み
込んでない清らかなサーモンピンクの肉庭が露わになる。だがそこは今や赤く
充血し、いやらしくぬめってメスのフェロモンを発散していた。
「おおう、恥ずかしい穴をこんなにヒクヒクさせて……ラブジュースの溢れ具
合もすごいじゃないか……なんていやらしい処女だ……」
そう言いながら股の間にひげ面をつけるムンク。両手は臀部の下に潜り、持
ち上げるようにしてたぷっとした尻肉を揉みしだく。
ジュルジュル、ジュルジュルルッ!
「ハァ……ハアァ……も、もう……やぁ……あ……ああぁ……!? あ、あ、ア
ア、あああぁ……♥!」
リナの甲高い嬌声が喉の奥から発せられた。
熱く火照った秘陰はもうぬかるんだようにグチョグチョになっていた。そこ
から溢れる蜜液を媚肉ごとすすり上げられ、鼻でクリトリスを押され、舌で膣
口や肉ビラをねぶりまくられ、
「ハアァ、ハアアァン……ッ! そ、そんなに吸っちゃ、だめェェ……♥!
ヒゲがクリをす、……擦ってえェ……ッ! ダッダメェ、ダメェ〜♥!」
もう気がどうにかなりそうだった。これまで味わったこともない淫虐の嵐に、
リナの精神は決壊寸前だった。
自由を奪われた体内を跳ね回りまくった快感は、これ以上我慢できそうにな
かった。
人差し指を甘噛みしながらリナはまだ思うように動かない脚をガクガクと震
わせ、指先まで突っ張らせた。焦点の合わない目が中空に彷徨う。
アソコが熱く、頭の奥が痺れ、全身がどろどろに溶けそうだった。肌は敏感
な所を撫でられるだけでゾワゾワと粟立って甘く染みこみ、ビンビンに勃った
乳首に息を吹きかけられるだけで感じてしまう。
もう、気が緩むと快楽のことしか考えられない。
(助けて……ユウキ…………!)
なぜかユウキの後ろ姿が浮かんできた。練習ダンジョンに潜っている時にい
つも眺めている、ユウキの背中。体力のない仲間を守るのが戦士の務めとはい
え、ユウキに守られているんだという実感を持って、なんだか胸の中が温かく
なったことは幾度となくあった。
その姿は、今は遠かった。
自分を嬲っている男の背の向こうにその本人がいるなどとは、考えつきよう
もなく──
ジュルッ、ジュルジュルッ、ジュルルルッッ!
「あっ、あっ、あひ、あひぃぃ……あ、あ、ああぁぁ〜〜〜♥!」
アソコに与えられる肉も骨も蕩(とろ)けてしまうような淫らな衝撃に、煉瓦
色の豊かなロングヘアを振り乱し、大きな嬌声を絞り出すしかなかった。
その瞳からは加速度的に意志の光が剥げ落ち、夜霧に包まれるように快楽の
闇に沈み込んでゆく。
(ああっ、そ、そのままクリッ、クリもっと擦って……! ハアァッ♥!
イイ、イイよう、アア、アァ、イヒィィ……ッ♥!)
淫悦に浮かされるまま、リナは無意識にムンクの後頭部に手を当てていた。
もうガマンできない。もっとやって欲しい。この昂ぶりを収めて欲しい。この
ままイクまで……お願い……!
すると、そんなリナの様子に気付いたのか、ムンクは口戯を止め、顔を上げ
てしまった。
「あ……あ……そ……そんなぁ…………!」
リナは哀切な眼差しで男を見つめた。からだは火照り、アソコがズクズクと
疼く。もう少しでイケたのに……なんでやめちゃうの……!?
ムンクは顔中についた愛液を拭いながら、
「イキたいのかい」
と尋ねた。
「はっ……はい……!」
思わずリナは答えてしまっていた。すぐに、(あ……!?)と気付いたが、一
度口に出してしまうと、もう堰き止められなかった。
ごめん……ユウキ……もう私……ダメみたい………………
「お、お願いです……」リナはか細い声を震わせながら、ムンクを見上げた。
「もっと……もっとやって……イカせてください……!」
「グフフフフフ……」
ムンクは下卑た笑みを満面に張り付かせた。
彼の身体でちょうど隠されている、隣室の人影。リナが首を少し傾ければ見
えるだろう、赤髪の少年。
背を向けたまま、嘲るように問いかけた。今、お前の女が何と言ったかわか
るか。
(聞こえていないのが残念だ……!)
リナの脚を閉じて交差させ、膝裏を片手で支えて落ちないようにすると、い
やらしくパックリと口を開けているリナの雌穴に中指を入れ、 ヌチュヌチュヌ
チュヌチュと早い抜き差しを始めた。
「あ、あ、あ、あ、あああ〜〜〜♥」
入り口付近はほぐれていたが、肉が狭まった処女孔には指一本でもハッキリ
とした淫撃が与えられた。これまでと同じ焦らすような快感だったが、その早
さが心地よく、うっとりと目を瞑ってリナは嬌声を上げた。
いやらしくからだを這いずり回る手と舌。気持ち悪い脂の浮いた中年の身体
からたちのぼる、嗅いだことのないような濃い体臭。
最初はおぞましく感じていた筈なのに、いつの間にか気にならなくなってい
る自分がいる――
(あ、あ、あ……だめ、だめぇ……こんな……感じちゃう…………!)
「イキたいんだね、リナ君?」
「はい……はい……!」
端に淫悦を浮かべた目で泣きはらしながら何度も頷くリナ。
ぬるぬるの肉壁がムンクの指をキュウキュウと挟み込む。筋肉の弛緩はだい
ぶ取れてきたようだった。今なら立ち上がることも出来るのではないか。
しかし……少女はこうされることを望んだ。すぐ近くにいる若者の存在に気
付くこともなく……。
ムンクの顔に、ハッキリと昏い笑みが刻まれた。
「望みを叶えてあげてもいいが……キミはさっきから、オレのこの特別審査を
厭がってばかりだ」
ヌチュ、ヌチュ、ヌチュ、ヌチュ!
「あーー……♥ あーー……♥」
「これ以上拒まなければ、という条件なら……イカしてやってもいいんだぞ?」
「は……は……はいぃ……! んあ、んあぁ……も、もう拒みません……拒み
ませんからぁ……♥!」
「よーし、よくぞ言った」
ムンクはリナを掻き抱くようにして密着し、胸や腰など柔らかい少女のから
だの感触を楽しみながら横臥位に誘導した。片脚を曲げさせて──もうある程
度自分の意志で動かしているのに、本人は気付いていない──手を突っ込んで
からまた閉じさせて二本愛撫を再開し、首から回り込ませた手で右乳を揉みな
がら、首すじや耳にキスの嵐を降らせ始めた。
「ちゃんとイカしてあげるから、楽しもうじゃないか」
「は、はいぃ……♥」
リナもムンクの背に腕を回してしがみつき、「あ、あ、あ♥」と甘くうわ
擦った声を上げながら、愛撫に浸ってゆく。
その耳に口髭を当てながら囁いた。
「キスしよう」
「えっ……あ、や……」
思わず顔を背けてしまうリナ。ムンクは苦笑し、
「舌を出すんだ。舌と舌同士だけならいいだろう……?」
「…………」
リナはためらいがちに向き直り、細目でおずおずと口を開いた。
可愛らしく突き出してきた舌を、ムンクの唾液をたっぷり乗せた舌が蛇のよ
うに絡め取った。
二人の舌が艶かしくうごめき、お互いの熱い息を感じながら絡まり合う。少
女の舌はたっぷりとねぶられ、舐め、擦り、絡められた。ムンクの舌につつか
れ、リナも消極的に、舌を動かし始めた。
「ン……ン……ンァァ…………!」
それは淫靡な光景であった。唇を重ねることなく舌だけが踊る。男の方が動
きが活発で、まるで生贄に差し出された舌が捕食されているかのようであった。
(あ……あ……なんで……舌だけなのに…………!?)
頭の中にじんわりと、これまでとはまた違った甘美感が湧き上がってくる。
胸が熱くなる。このまま唇を奪われてしまうかもしれないのに──逆らうこと
ができず、吐息が淫らに高まってゆくのを抑えられなかった。
ムンクは二本指で浅く弄くっていたのを、逆さにした手で秘裂をピッタリ覆
うようにして、手のひら全体をバイブのように振動させ始めた。
「ふっ……うぅん……ふあぁ……あ、あ、あ……ふぁああぁぁ……♥!」
リナの陶然とした表情がますます深まっていく。徐々に膝が曲がり、脚が自
前で開いていった。まるでもっと弄って欲しいように……。そして頭を仰け反
らせて白い喉をさらし、うっとりと目を閉じ、
「ああ、ああ、あああ♥ いい、いいよぉ…………♥」
と、淫欲にけぶった声でさえずった。
もはや、ムンクの愛戯の虜であった。
なんと可愛らしい姿か。二人密着した今の状態は、まるで仲の良い恋人同士
みたいではないか。
ムンクのイチモツはガチガチに勃起し、極度の昂奮状態で射精感すらこみ上
げていた。だがこの歳になると、一度出すと回復に時間がかかる。出したいの
を我慢し、最後の瞬間までとっておくのも一つの楽しみであった。
(しかし……そろそろいいかもしれんな……)
その清純な肉体を淫らに発情させてしまうほど、少女はもうメロメロの状態
である。
クンニしながらリナのからだを押しやって、また仰向けにしてその上に覆い
被さると、ムンクは再び舌を出すよう要求した。リナは大人しく従った。
思う存分リナの舌をねぶり――そのまま顔を落として、あっけないほど簡単
に唇を奪った。
「ふぅっ――うぅぅん…………!」
少女の柔らかい口腔をたっぷりとディープキスで犯し、唇をはみ、唾液を流
し込む。
ムンクにしがみついていた腕がギュッと強張り、ブルブルと震える。驚きに
見開かれた目から、また新たな涙が溢れてきた。
ムンクは秘肉のマッサージを、柔らかく揉み込む優しい動きに変えた。
リナの肉唇がキュウッと狭まり――徐々に全身が脱力してゆくとともに、そ
の鼻息は熱くなっていく。
そして……つたなく弱々しいが、少女の舌が応えはじめた。
淫湿な水音が立ち、唇の交歓が続く。
少女の甘い唇をむしゃぶりながら、その脚を片方ずつ曲げながら大きく拡げ
ていき、膝裏に腕を通す。
「ふぁん……ふうぅ……んん……!」
リナもそれに気付かないわけなく、何をされているのか、何をされるのか──
予感したようで、そのからだの熱がカッと昂ぶり、震えが大きくなった。
キスをしながら、剛直を秘裂に当て、なぞるように擦り上げる。
ぬっちゅ ぬっちゅ ぬっちゅ
陰唇を割って熱くぬめった肉庭を通ると、何回か往来しただけで、リナの体
奥から溢れる蜜でべっちょりになった。
「ん……んぁ……んふぁあぁぁ…………♥」
リナの喉が気持ちよさそうに鳴り、キスの密度が増してゆく。
(このまま……やっちまうか…………)
ゆっくりと顔を離すと、太い糸が下唇同士を繋ぎ、垂れ落ちていった。
「あ……あ…………あ…………♥」
リナは目をとろんとさせ、ムンクを見ているような見ていないような――夢
の世界を漂っているような表情であった。
ムンクはリナの腰を掴み上げて腰高位になった。
「さあ、女になる時間だ」
「ああ……あああ……!」
ついに。
予感していた瞬間が来た。
キスに続いて、初めてまでも……。
(ごめん……ユウキ……ごめんね…………)
リナは枕に顔を埋め、こんこんと涙を溢れさせた。
でも、これでアイドルになれるかもしれないから…………。
だから私………………!
──少女はその事実を頑なに否定する。
快楽と蕩(とろ)けるからだが、ズクズクと疼いている胸とアソコが、焦らし
に焦らされた末、いよいよという時を迎え、期待感に昂ぶってもいたことを。
涙をこぼす目に湛えられたものが、悲痛だけではなかったことを……。
クチュッ――
ついに先端が入り口に触れ、小さく湿った音がした。
「あっ…………!」
あたってる……男の人のアレが……私のアソコに……!
指とは明らかに違う大きさの感触。
(あんな大きいの、入らない……)
持ち上げられたリナの尻が、わずかにたじろいで揺れる──が、逃げはしな
かった。
枕の端をギュッと掴む。
緊張と不安……期待──リナの背すじが震えた。
そして、ゆっくりと。
ヌプッ──ヌジュプ、ヌ"ヌ"ヌ"ヌ"──
「あ……あ……ああ…………!」
(ユウキ――――――……………………!)
処女肉を押し分けて、野太い肉棒が突き入れられていった。
「あああーーーーーッッ!!」
脂ぎった男の肉厚の逸物が、大量の愛液と熱く潤んだ媚肉の助けを得て狭い
膣孔をたやすく割り拓き、リナの胎内にずぶずぶと埋(うず)まっていく。
処女強奪。
幼なじみの少年をずっと想っていた少女の、秘めた想いが散華した瞬間だった。
破瓜の痛みがリナの四肢を強張らせる。だが、それは想像していたより軽く、
リナの顔に浮かんだ苦痛もそれほどではなかった。
処女膜の抵抗はあって無きが如しで、最奥までスムーズに到達し、根元近く
までずっぽりとはまった。
「おおおお…………」
ムンクは思わず深い吐息をついた。
リナの膣内(なか)の具合は極上の心地であった。今押し広げられたばかり
の隘路にみっちりとはまった肉棒。それを若々しい媚肉がキュウキュウと搾り
上げてくる感触は、何ものにも代え難い悦楽だった。
結合部からにじみ出し、シーツの上にポタリ、ポタリと落ちてゆく、まごう
ことなき純潔の証──
「ん……んん……!」
リナの下腹に感じる鈍い痛みが、ロストバージンしたことを何よりも謳い上
げていた。
「おお……素晴らしい具合だ……最高だよリナ君……」
「あ……ありがとう……ございます…………」
「どうたい、女になれた感想は」
「……う、うれしい……です…………」
思いも寄らないかたちになった初体験に茫然自失となりながら、リナはなん
とか口を動かした。別に大切にとっといたわけじゃない……だけど――褒めら
れても嬉しくなんてなかった。
「フフフ、優しくしてあげるからね」
ムンクは相好をだらしなく崩したまま、ゆっくりと腰を使いはじめた。
グッチュ……グッチュ……グッチュ……グッチュ……
雄々しく反り返った怒張が、リナの処女肉をほじるようにして、膣内の入り
口から奥まで、丁寧に擦り上げてゆく。滑りも上々で、よく濡れた肉同士が熱
く柔らかく密着し合った。
「んっ……んあ……あっ、あ……ああぁ……っ!」
シーツをきつく掴みながらからだを震わし、苦しそうな声を上げるリナ。
だが、少女の秘腔は、痛みに惑いながらも、瑞々しい弾力を湛えた肉壁を灼
けそうなほど潤ませ、突然に押し入ってきた侵入者に精一杯の奉仕を行うので
あった。
処女特有のこなれ足りなさを感じるが、セックスデビューはこのぐらいの青
臭さを持ってなければつまらんと、ムンクは強く思う。
しかも。
ムンクは腰を動かしながら、ちらりと後ろを見た。
少年はまだそこにいた。しきりに時計を気にしながら、落ち着かなげに脚を
揺すっている。時折こちらが見えるように顔を向けるのが、ムンクはたまらな
い昂奮をかき立てられた。
お前が待ちわびている娘は、オレが女にしてやったぞ。
(ククク……クククク…………!)
グッチュ……グッチュ……グッチュ……グッチュ……
少年の目線を感じながら、ことさら丹念にストロークする。膣の奥に突き当
たるまで埋(うず)め、カリ首が出るほど引く。肉ビラが巻き込まれ、淫猥に
かたちを変える。破瓜の血が混じった透明な蜜液が掻き出され、内股を伝って
シーツに薄桃色の模様を描いた。
「う……うぁ……うぅうん…………!」
痛み以外の感覚が湧き上がっているのだろう、リナの腰がビクビクと震え、
肉襞がざわめきキュッキュッと締め付けてくる。
(キミの彼女は……何メートルも離れていない所で……こうして肉穴から愛液
を垂れ流して別の雄のチンポをハメられているんだよ……!)
ムンクはこれまで体験したことのない征服感に陶酔した。恋人のいる娘を抱
いたことなどいくらでもある。
だがこの状況は――たまらないじゃないか――――!
「グヒャヒャヒャヒャ…………!」
抑えきれない哄笑を発し、さらに腰遣いに情熱を籠めはじめた。
グッチュ、グッチュ、グッチュ、グッチュ
(ああっ……早くなってきた……だめ、だめ……あ、ああ……あああ……!)
リナは熱い吐息をつきながら、たゆんとした乳房の揺れが大きくなってゆく
のを眺めた。乳房は張れ、ぷっくりと膨れた乳首が自分でも驚いてしまうほど
勃っていた。
私……悦んでる。犯されて悦んでるなんて――
そんなの認めたくなかった。
……でも…………
(この人に気に入られれば……デビューできるかもしれないんだ…………ガマ
ンすれば……アイドルになれるんだ…………)
──それに、とリナは思った。
優しくすると言った通り、ムンクは決して荒っぽくせず、リナが痛がらない
よう配慮してくれていた。それどころか、気持ちよく感じたポイントを重点的
に責めてくる。表情や反応で分かるらしい。
抜き差しされるたびに感じる鈍痛は、徐々に、痛みなのか、疼きなのか、わ
からないぐらいにまで治まっていった。
乱暴にされないだけ、マシなのかも……それどころか……すごく上手で……
(あ────)
そう考えた瞬間、
ゾクッ
(ああ――ッ……!?)
痺れるような震えが背骨に走った。脚の力が一瞬抜け、崩れ落ちそうになる。
からだの中で、今、何かが……変わった。
いったんそう考えてしまうと、早まっていく律動に押されるように、アソコ
から湧き上がる気持ちよさははっきりと強く、大きく膨らんでゆくばかりだった。
(ああっ、ダメ、ダメ……このままじゃ……ああ……ああ──!)
ユウキは思い出したように頭を上げて部屋の時計を見て、もう何回目か分か
らない時間の確認をした。
針は7時を回っていた。
待たされ始めてから、二時間以上経っている。
(遅い…………)
疑念が頭を渦巻いていた。
やっぱり、何かおかしい気がする。オーディションはとっくに終わっている
はずだ。なのになんでリナだけ束縛されているんだ。
しかし動こうにも、もう手遅れだった。参加した少女たちは帰り、スタッフ
はいつの間にか全員撤収し、会場内は静まりかえっていた。
「くそっ……」
両手をぐっと握りしめ、俯いた。
騙された……か。
「あの野郎……!」
ADの顔が浮かんだ。まんまと担ぎやがったな……!
こうなったら、マロプロとかいう所に直接乗り込むか。
あの野郎を見つけ出して、殴ってでも居場所を吐かせてやる。
そんな事を考えていると、不意にガチャッとドアが開いた。
中に入ってきたのは、あのADの男であった。
室内をキョロキョロと見回して、
「やっぱまだ帰って来てないか」
と言った。
ユウキはソファから腰を浮かしていた。
「あんた……帰ったんじゃなかったのか?」
「ん、ああ……ちょっと気になったから、仕事上がりがてら寄ってみたんだ」
そう言って髪の毛を掻くAD。
わざわざ戻って来たのか――怒りは急速にしぼんでいった。
「あれからもう一回、ムンクさんから連絡あってね。リナって子を気に入った
から、食事でもしながらもっと話をするって言ってた。人のざわめきとか聞こ
えたから、特に問題のある所にはいないと思うよ」
「そうか……」
事情を説明され、ユウキは胸のつかえが取れていくのを感じた。
(噂は噂、ってことなのか…………)
だとしたら、これは逆に喜ばしいことなのだろう。
あのリナがアイドルになる――にわかには信じられなかったが、
(明るくて活発なあいつだったら、きっと人気出るんだろうな……いちおう、
可愛いっちゃ可愛いし……)
歌って踊れる冒険者か……あいつらしいな。
なんだか急に遠く感じるぜ……。
「……あいつもまだ学生なんで、遅くならないうちには帰すよう伝えてくれま
せんか」
「ああ、わかった。でもムンクさんもその辺はちゃんとわきまえてるよ」
「すみません」
「君はどうする? 彼女はここに荷物を取りに戻るよ。何だったらまだ待って
るかい? たぶん、あと1、2時間のうちに来ると思うけど」
「じゃあ、もう少し待たせて貰います」
ADは笑って軽く頷き、「頑張れよ」と変な言葉を残して部屋を出て行った。
ユウキは座り直し、ふうっと息をついた。
わざわざ知らせに来るなんて、本当はいい人だったんだな……とにかく、取
り越し苦労で良かった。
時間に目鼻が付けば、待っているのも耐えられる。
ユウキはふと思った。
(俺……リナのことが好きなのかな…………)
改まってそんな事を考えるのは恥ずかしかったが、
(つまり、それって好きってことだよな……)
と、正面にある巨大な鏡に映る自分を見つめた。
リナの方は……俺のことどう思ってるんだろうか。
やっぱ、単なる幼なじみとしか見てない……かな。
その壁一枚向こうでは、当の竜胆リナが他の男に抱かれて悶え喘いでいた。
ムンクの腰の振りは、貪るような勢いに変わっていた。
「ア、ア、ア、ア、ア♥!」
枕に埋まった顔を真っ赤にし、歓喜の涙を流しながら、開けっ放しの口から
ひっきりなしに喘ぎ声を上げるリナ。みっちりとハメられた淫裂から赤黒い肉
棒が抜き出されるたびに、蜜汁が滴り飛び散っていた。
尻はブルブルと震え、脚には力が入っていない。ムンクが持ち上げている腕
だけで支えられている状態であった。
今までの快感は肌の上からだったが、これはまったく違った。からだの奥か
ら突き上がってくるような快感であった。アソコの奥まで突かれ、掻き回され
ているからだろうか。
オーディションのために丁寧にセットした髪は今や結び目も解け、シーツの
上で乱れ広がっていた。
(いや、怖い、怖いよ……あ、ああ、アアアアッ……♥!)
意識を圧倒する快感に、悩ましげに肢体をくねらせるリナ。
「クク、ずいぶんと気持ちいいみたいだね」
ムンクはそう言うと、いい加減疲れたのか、少女の下半身を下ろし、正常位
になった。腰を使い続けながら、その首すじや乳首をいやらしく舐め回し、乳
肉を揉みしだく。
「ハァアア……ハアァアッ、アァ……アアアァ…………♥!」
「んーふっふっ……」ムンクは愉悦げに喉を鳴らした。「こうして肌を合わせ
てみると、リナ君の良さがどんどん伝わってくるよ。女の子の色気と健康美が
絶妙なバランスでマッチした肉体が特に素晴らしい……。冒険で鍛えたんだね。
実にエロいボディだ…………!」
「やあ……やああぁ…………!」
「何度も言っているが、これが審査なのは嘘じゃないからね。こうして互いに
余計なものを脱ぎ捨てて向かい合って、初めて解ることもあるんだ。オレはそ
ういうのを重視してるんだよね」
「ン、ン、ンア、ンア、ンアアッ♥!
も、もう……ダメ、ダメェッ……イク、イッちゃううぅ…………♥!!」
淫らにうねる肉の心地よさに低い呻きを漏らしながら、ムンクは本能の欲求
にギラついた眼で、
「よぉし、思いっきりイカせてやる……オレ様のチンポの味をそのからだの奥
まで刻み込んでやるからな……!」
と、リナの背に覆い被さるようにのしかかると、これまでとはうって変わって
打ち下ろすような激しいストロークでリナのアソコを猛烈に責め立てた。
グチュ、グチュ、グチュ、グチュッ!!
「このいやらしいマンコがッ! 処女のくせにこんなに激しくされて感じると
はッ! フンフンフンフンッ!」
「アアー、アアーッ! アアアーーーッッ♥!」
肉も神経も痺れわななく雷撃のような快感の嵐。
リナは髪を振り乱してあられもない嬌声を上げまくった。
白い光が急速に近づいてくる。
もう快感以外何も感じられなかった。
「ハアアッ、ハアァ、ハアアー……
イクッ、イィッ、イッちゃう、イッちゃううぅ〜〜〜〜〜ッッ♥!!」
切羽詰まったように叫ぶリナ。とろとろに溶けた肉穴が、いよいよ本格的な
収縮を始める。
「オオオオ! オオオオオ!」
「ンアアアアアッッ♥♥!!!!」
最後の絶叫を絞り出し、リナはもうたまらずにシーツから顔を上げ、背中を
仰け反らせた。
(アアッ、イクッ! イクッ! イク〜〜〜〜〜ッッッ♥♥!!)
快楽の光に消えかかる視覚の中で、鏡の向こうが見える。
赤い髪の毛。
「…………………………………………え――――――」
ビュビュッビュッビュッッ!!
ビュビュッビュビュルルルッッッ!!!!
次の瞬間、彼女の胎内で熱いほとばしりが爆ぜ、リナも絶頂に輝く竜巻に呑
まれて白い世界に飛ばされていった。
もはや何も出し渋ることはない。ムンクは本能の衝動に任せ、思いきり奥ま
で突き入れていた。
リナの膣内いっぱいに膨らんだオス肉が、力強く脈動した。長いおあずけを
くらって射精欲も最高潮に達していた灼熱の肉塊が、気持ちよさそうに胴を震
わせ、キツキツに締まる雌穴の奥底めがけて熟精された濃厚な種汁を次から次
へとぶちまけていく。
「オオオ……! オオオオ…………!」
ムンクは涎を垂らしながら獣のように唸り、リナの最奥に遠慮なくたっぷり
と精液を注いでいった。
「いやらしい処女マンコにオレのザーメンをたっぷりと味あわせてやる……!」
勢いよく発射されるスペルマが、絶え間なくリナの子宮に浴びせかけられる。
「オオオォォ……! 久々に……すごい量だッ……!」
ビュルビュルビュルビュルといつ果てるともない射精であった。五回、六回
と射ち出されていくごとに、この少女を征服したという達成感が深まってゆく。
いつもの数倍は濃い白濁粘液が、絶頂で膨らんだ膣奥に溜まってゆく。勢い
よく逆巻き、結合部からぶちゅぶちゅと溢れかえってくる。やがて子宮内にも
流れ込み、精子の訪れを悟ったリナの子宮が生殖の予感に昂ぶり、膣と一緒に
うねり始めるのだった。
津波のようなオルガズムを浴びたリナの淫肉が、痙攣するように盛んに収縮
する。
「アーーー…………アーーーーー………………♥♥」
リナはからだをビクンビクンとさせながら、途方もない絶頂に包まれていた。
もうほとんど何も考えられなかった。味わったこともない真っ白な世界。言
葉にできない解放感に何もかも奪われ、悦楽の理想郷を翔ぶ。
その中で――胎内でどくんどくんと脈打っている熱い塊が感じられた。何か
をほとばしらせている。
そして――
(あああ……あああああ…………! なんで、どうして、ユウキがっ……ユウ
キがっ…………!?)
本能の歓喜と、張り裂ける心。
目の前に赤髪の少年がいた。
まっすぐこちらを見ている。
「ンンッ……アアッ……い、いや……だめ……い……い、いやあぁ、もう、も
う……あ、あぁ、アアァァ……ッッ♥♥!!!!」
だが、いったん解き放たれたオルガズムは抑えようなどなかった。突き上げ
てくる膨大な快感の塊の前に、快楽に屈した意識など薄紙同然に吹き飛ばされ
るだけであった。抑えようとしただけ、何倍にも感じる強烈な快感が跳ね返っ
てきて、全身の感覚が一時的にシャットダウンしてしまうほどの絶頂の津波に
狂わされた。
「あ……あ…………ユ…………ウ、キィ………………♥」
リナは少年を見つめながら、そのからだを何度も何度もビクンビクンと強く
震わせた。快感と驚愕両方のショックで理性が剥げ落ち、本能の歓喜に沸き立
つ胸の熱さを受け止めてしまう。
押し潰されるぐらいのしかかられて。一番深くまで突き入れられて。アソコ
がうねっている。きもちよくうねっている。脈動を強く感じた。奥まで届いた
熱い塊が、私の中に精液を注ぎ込んでいるんだ。
(中でびゅくびゅく出てる……子宮にかかってる……あはぁぁ…………♥!)
きもちよかった。骨まで蕩(とろ)けそうだった。
ユウキに見つめられながら、イッちゃった――――
いつからそこにいたの……どうして助けてくれなかったの……なんで、何も
言わないの……どうして…………どうして…………
「あ…………あ………………あはは……あはははは…………♥」
放心したように枕にくずおれる。
リナの顔から表情が無くなり、淫猥な充足感にほころんでいった。
最後の一滴までリナの雌穴に注ぎ込むと、深い満足の吐息をつき、ムンクは
ようやく腰を引いた。
カリに掻き出されてきたペースト状の白濁粘液が団塊状になってこぼれる。
そして、
にゅぐぽ――
卑猥な音とともに、柔らかくなった男根が現れた。
「ンアッ――」
リナのからだがビクッと跳ねた。
少し遅れて、ぽっかりと開いた肉孔の奥から、膣肉の蠕動に押し出されるよ
うに精液が逆流してきて、穴を覆うぐらいこんもりと溢れ返ると、ドロドロド
ロドロと垂れ落ちていった。
「こりゃまた我ながらいっぱい出たな」
「……ア…………ァ…………♥」
リナはときおりビクン、ビクンとからだを弾ませながら、魂の抜けたような
顔でマジックミラーの向こうを見つめ続けた。
「審査はこれぐらいにしようか。最高だったよ」
ムンクはベッドの端に座ると、絶頂にブルブルと震える豊かな肉付きの尻を
撫で撫で言った。
「キミはたいへん有望だ。デビューの件、よく考えさせてもらうからね」
だが、リナの耳には届いていないようだった。
「ユウキ…………ユウキ………………」
ぽっかりと虚ろになった瞳にその姿を映しながら、少女の唇は、いつまでも
想っていた人の名を呟いていた。
(終)
や、やっと投稿終わった…スンゲー規制きつかった…
エロパロ板が恋しい。
>>73-118 すげー。神
出来れば未遂だったフィルの輪姦も書いてくれたらうれしい
121 :
119:2005/08/25(木) 22:58:03 ID:tstKT5ld
>>120 有り難う御座います。
でもすいません、フィルルートは未プレイで…。
……ふと思ったんだが、なんでこのスレエロパロ板に引っ越さないんだ?
エロゲ限定だからここでも問題ないという事では
エロパロはエロでないものをエロくする場所じゃないのか?
一般向け作品をエロにするのがエロパロ板。
元からエロのエロゲは葱板。
>>119 ぐっじょぶ。
>オーディションのために丁寧にセットした髪は今や結び目も解け、シーツの
上で乱れ広がっていた。
のところにフェティッシュな快さを感じた。
みゃあ みゃあ
ウミネコの甲高い声が蒼穹に吸い込まれていった。空はただ遠く、ゆっくりと形を変えていく雲だけが時間の流れを指し示している。
あ…
とがったショートの髪の少年は、釣り糸の先を水中から引き上げると恨めしそうにそれを見つめた。
あーあ…。また餌だけ持ってかれちまった…
軽く嘆息を吐くと、少年はイソメの入った箱に手を伸ばす。
(まあ…その…なんだ、双七君。餌を取られることなどよくあることだ。気にしないほうがいい)
その場にいるはずの無い人の声が、双七の思い出の中から語りかけた。
はいはい、わかってますよ、会長。
双七は、新しいイソメをつけた針をゆっくりと埠頭の下に沈めた。それはゆらりゆらりと海中を踊りながら、やがて見えなくなっていく。
その場で動いているのは、ただ彼の頬を撫でる潮風だけ。他には何も動かぬ。
刹那も一時間も、その情景の中では等価だった。
…会長は、どんな思いで釣り糸を垂れていたのだろう?
彼は、今はいない人に想いをはべらせて、折りたたみ式の簡易椅子に佇んでいた。生徒会会長、一乃谷愁厳、彼の友であり愛する人の兄。
このゆっくりと流れる時間。会長はどんな風に感じて、どんな喜びを得ようとしたんだろう…?
愁厳には時間が無かった。特殊な事情を己が内に抱えた彼は、生きるにせよ譲るにせよ常に有限の時間と向き合ってるしかなかったはずだ。
双七には、わからなかった。いや、わかったような気もするのだが、そう思ってしまうのはあまりにも会長に対して僭越に過ぎる気がしていた。
なぜなら、決して同じ立場にはなれないのだから…。
「あ…」
ピクリ、ピクリと二度竿の先が沈み込んだ。双七はアタリををスナップでクイっと合わせる。
「きた!」
その瞬間、竿がものすごい力で引っ張られた。海中の獲物が暴れ始めたのだ。
双七はその力に負けまいと必死で竿を引き上げる。右へ左へと揺さぶりながらゆっくりと力強くリールを巻き上げていく。彼はたもを握ると、海面近くまで引き上げられたそれを掬い上げた。
「…釣れた」
双七の目の前でまだも暴れ続けてるのは、小振りながらも丸々と太ったメバルだった。
(よかったな、双七君)
愁厳のその言葉は、彼の胸の中にじんわりと染み込んでいく。
「うん…うん…」
双七の眦に、暖かいものが溢れていった。
「双七さん、ここにいらしたのですね」
背後から静かな女性の声がかけられた。双七は慌てて顔を袖でぬぐうと、「あ…うん…」とだけ答えた。
彼の隣に長い黒髪の純白のセーラー服姿の少女が並ぶ。彼女はその汚れも気にすることなく、双七の横に体育座りで腰を下ろした。
「刀子さん…」
双七が呟く。刀子はにっこりと彼に向かって微笑み返す。
「すずさんが探してましたよ。折角の休みなのに朝から姿が見えないって心配してましたわ」
すず…双七の義姉…が彼の恋人である刀子に真っ先に連絡したのは疑いようも無い。
「あ…すみません」
双七は頭を下げた。刀子のほうが年上なせいか、恋人同士だというのにどうしても他人行儀な言葉遣いが抜けきらない。
刀子は水平線の先を見つめた。潮風が彼女の髪をそっと揺さぶる。
双七も同じ先を見つめていた。空と海の青が交わる果てには、こことは違う世界の入り口があるような錯覚さえ覚えてしまう。
決して刀子は「お兄様のことを考えてたのですか?」とは口には出さない。必要も無かった。
学園の先輩としての、そして友人としての愁厳を知る双七。互いに分かちがたい時間を過ごしてきた兄としての愁厳を知る刀子。
二人の知る愁厳はそれぞれ違う。しかしこの瞬間、二人は同じものを見ているような気がしていた。
「双七さん。…釣れました?」
不意に彼女は尋ねた。
「え!?ええ!ついさっき、一匹だけ」
双七は頬を緩ませながら、嬉しそうにクーラーボックスを引っ張り出した。
終わり
>>120 何を言っているフィルならちゃんとまわされてるCGがあるじゃないか?
ムンクは腰を密着させると、クリトリスごと押し潰してグリングリンと円を
描いた。
リナの四肢が痙攣するように震え、熱く火照ったからだに粘っこい汗がにじ
み出てくる。喉を反らせ、
「アアッ、アアッ、アアーーーッ♥!」
リナは本気で感じている喘ぎ声を上げた。
(よし……)
その一番深くまで打ち込んだ体勢でいったん動きを止めると、リナの手を首
に回させて子猿のようにしがみつかせ、
「よいしょっ……と……」
少女が隣の部屋を見ないよう首を内に曲げさせて上半身を抱き上げると、繋
がった部分を支点にして器用に半円を描き、頭と足の位置を逆にした。
「フゥッ……♥! フウゥン…………♥!」
肉棒を根元まで挿入されたまま身体の向きを変えられ、またもや味わったこ
とのない悦感に襲われてるリナ。
(なっ、膣で……アレがビクビクしてる……!)
あまりの昴奮に我慢できず、少女は打ち震えながらぎゅうっとしがみつき、
ムンクの肩に口を当てて噛んだ。
「おお、奥が締まる……! ずいぶん感じてるようだね、それじゃもっとやっ
てあげようじゃないか」
ムンクは枕をリナに渡すと、その身体をひっくり返し、四つん這いの格好に
させた。そして、獣の交尾のような姿勢でピストン運動を再開した。
「ンアアッ! ンアッ! ンヒッ! ヒイィィッ♥!」
涙と涎でベトベトになった顔を掻き抱いた枕に埋め、快楽に泣き叫ぶリナ。
「どうだね、感じるかね!?」
「はっ――はいっ、ア……アソコが熱くて……奥まで届いて……ア、ア、アア、
アア〜〜〜ッ♥!」
「ムハハハ! オレ様のチンポの味は格別だろう!?」
「は、はい、はいっ、い、いっぱい擦れて……! 気持ちイイ……ッ♥!」
うねうねと締め付けてくる肉壁が、リナの言葉が真実であると如実に語って
いた。
132 :
119:2005/08/29(月) 15:19:38 ID:7tcxFf+N
なんか正常位から突然後背位になってるなーと思ったら、
42/47が抜けてました・・・たいへん申し訳ありませんでした。
134 :
130:2005/08/29(月) 23:14:09 ID:E+XCW+qs
別に嘘は言ってないだろ(冗談です・・・やっぱ使い古され過ぎたかこのネタ)
135 :
127:2005/08/29(月) 23:19:43 ID:QFwcTgsE
お父さんED直っちゃったよ
なんとも寝苦しかったので、高屋敷青葉はベッドから抜け出ると階下へと降りて、縁側で月でも眺めることにした。
そう思ったのはたんなる気まぐれである。
青葉は芸術家を標榜してはいるが、通人を気取っているつもりはない。だから常ならば月見などという風流を好むような真似はしない。絵画においては写実主義を、人生においては現実主義を――高屋敷青葉とはそんな女である。
だが、今夜はぼんやりと月を眺めていたい、そんな気分だった。
だからやはり気まぐれである。
「それにしても――」
殊更熱帯夜というわけでもないのだが、今宵はどうにも寝付けなかった。日中殆ど躰を動かさなかったので、力が内に篭って眠気を駆逐してしまったものかとも思ったがそれもどうも違うように思える。
――末莉。
己が妹を役づけられた少女の名が唐突に脳裏に浮かび上がる。
思い出す。
昼間はあの粗忽な妹の被害を随分と被った。洗いたての服を地面に落とされ泥だらけにされたのに始まり、朝食のみそ汁をひっくり返され、躓いた拍子に床の間の掛け軸を破り捨てられる――というそれはもう怱怱にして散散たるものであった。
よくもまあ、一日という短な有限の中でこれほどの粗相が出来るものだと、怒り呆れながらも半ば感心したものだ。
怒りなのか。
怒気が抜けず気持ちが昂ぶっているのか。それで眠れぬのか。
違う。
気持ちはいたって穏やかである。
では、一体何で――
「――――」
止めよう。詮無いことだ。
眠れぬことにいちいち理由などないのかも知れない。
そんなことをつらつらと思っているうちに、気付けば青葉は目的の場所に到着していた。
不意にすぅと風が頬を撫でた。硝子戸が開いている。
縁側には先客が居た。
件の愚妹――末莉だ。
座布団を枕に、寝巻き姿ですやすやと寝息を立てていた。
「なにやってるのかしら、この子は――」
そういえばどうもこの娘、夢遊病の気があるらしく、時折ふらふらと家中を徘徊すると聞いたことがある。
それにしても、真夏とはいえ夜中である。そのような格好で風に晒され寝ていれば躰も壊しそうなものだ。
「まあ、私には関係のないことだけど」
末莉が風邪を引こうが蚊に食われるようが知ったことか。他人なのだ。それよりも問題は――。
「邪魔ね」
先だって場所を奪われた形となって、なんだか出鼻を挫かれたような気分になる。
つまり、不愉快。
足元で小さく丸まっている末莉を軽く爪先で小突いてみた。
「う〜ん。そのカップリングはちょっと変ですよ――むにゃ」
「――――#」
殴ってやろうとも思ったが、流石にそれは止めておいた。
溜息一つ。
――どうしたものか。
隣りにこんなものが転がっていたのでは月見という気分にもならない。かといって、このままおめおめと部屋に引き返すのも癪である。
末莉如きに行動を阻まれたとあっては、鬼すら道を譲る(沢村司談)と謳われた高屋敷青葉、末代までの名折れである。
「ふん」
結局、末莉は無視してその隣りに腰掛けることにした。こうなると最早意地であった。
月が綺麗だった。
素直にそう思えた。
風があるのでとても涼やかだ。心地よい。
偶には気まぐれをおこすのも悪くない。
青葉は空っぽになった。
「ああ――おにーさんが攻め! そんな斬新な――あ、でもこれはこれで――むにゃむにゃ――」
「――――#」
しかし一瞬で現実に引き戻された。
キッと睨みつけてみれば、だらしなく頬を緩ませ、末莉はなんだか幸せそうな顔をしていた。
寝ながら笑っている。
そういえば――末莉の屈託のない笑顔をこうしてまじまじと見たのは随分と久しぶりな気がする。末莉はどうも青葉の前ではぎこちない笑みしか作れない。だから青葉の記憶では、末莉の笑顔は硬く強張ったものか、遠目に眺めた曖昧に霞んだはっきりとしないものかの何れかだ。
だからだろうか――改めて思う。
――なんて笑顔の似合う娘だろう。
青葉は、いつの間にか月ではなく末莉の寝顔を眺めていた。
気づけば青葉は闇の中、腐臭漂う塵の山の上に独り立ち尽くしていた。
其処は小さな小さな孤島の様でもあり、周囲は昏い奈落の如き大海に囲われていた。どうどうと狂った様な波の音だけが脳髄を直接打ち付ける様に響く。
足元には、砂利の様に敷き詰められた塵やガラクタの群れ。
捨てられ、存在を否定されたモノの熟れの果て。此処は――
此処は愛されなかったモノたちの墓場だ。不必要の烙印を押されたモノ達の吹き溜まりだ。
何て寂しくて――哀しい場所だろう。
無性に遣り切れなくて青葉は、全てから目を逸らす様に空を見上げた。
空には蒼褪めた月が冴え冴えと輝いていた。
その月を追いかけるようにして、青葉はふらりと塵の山を登って行く。
踏みしめられ砕かれる塵の音が、そのまま憐れなモノ達の呻き声の様に聞えて厭だった。
それでも登る。
何故だかあの月に少しでも近付きたくて、ただ足を動かした。
漸う登りきった山頂には、孔が一つ穿たれていた。
古い古い井戸のようだ。
その苔生し朽ちかけた石井戸に青葉は吸い寄せられたように近付き、覗き込んだ。
井戸の底に一人の少女が居た。
冷や水を浴びせられた様にぞっとした。
「――ま――つ――り――」
少女は孔の底から出ようと必死にもがいていた。その矮躯の何倍もある深みから脱出を試みていた。細い腕を目一杯伸ばして、小さな手を精一杯開いて、まるで、頭上の小さく切り取られた空に浮かぶ月を掴み取ろうとするかの様に飛び跳ねていた。
少女の爪は割れ、血が滲んでいた。その眼には涙が浮かんでいた。
しかし、傷つき泥に塗れても口だけは一文字に確りと結び、決して諦めることなく天に手を翳し、飛び続けていた。
無駄なのだ。駄目なのだ。そんな風に手を伸ばしたとて掴めるはずもない。そんな風に跳ねたとて逃れられるはずもない。
なのに――。
なのにこ娘はいつだって――。
不意に少女の半身を侵す汚水がぶくりと量を増した。それは、みるみる内に溢れて、少女の小さな躰を呑み込まんとする。
それでも少女は、泣きながら、足掻きながら、もがきながら、それでも月を掴もうと、この暗闇から逃れようと、その手を――
手を――。
まるで心臓を叩かれたかのような衝撃を覚えて、青葉は覚醒した。
鼓動が早い。息が荒い。額からつうと汗が一滴垂れる。
目の前に広がるのは見慣れた景色。高屋敷の庭。
「夢――」
あれは――先刻の全ては夢だったのか。
何時の間にか眠ってしまったのか。
青葉は、袖で額の汗を拭うと、大きく息を吸い込み呼吸を整えた。
すぅと湿った夜気が躰に染み渡り、思考が冷えた。
あれはなんだったんだ――
あの少女は――
あの娘は間違いなく――
「――末莉」
隣りで眠っているであろう末莉に視線を遣る。
末莉は泣いていた。
眠りながら泣いていた。
そして泣きながら、苦しげに空に向かって手を伸ばしていた。
その細い指が虚しく虚空を掴む。あまりに儚い――。切り取られた小さな小さな夜空に浮かぶ月は、少女がずっとずっと求めて止まなかったものだ。それをずっと少女は暗い暗い闇の底から見上げていたのだ。
あんなにはっきりと見えるのになんて遠い――。
何で――どうして届かない!
それでも――それでも――。
あの夢は――あれは――
青葉の目の前で頼りなく震える、細く白く幼い掌。
それを青葉はそっと握り締めてやった。
理由は――
解らない。
なんとなくそうしたかった。そうすることが良い気がしたのだ。
気まぐれである。
末莉は、強く強く青葉の手を握り返す。まるで母を求める幼子だ。
やがて安堵したのか、末莉の表情に微笑みが戻った。
それを見て、青葉も自然に微笑んでいた。
月を見ようなどという気まぐれを起したのだ、その気まぐれついでに憎たらしい妹の手を握ってやることくらい構うまい。
月が美しいと思った。
妹には笑顔が似合うのだと知った。
偶に気まぐれを起すと思いの外良いものを見ることが出来る。
「ふふ――」
何だか可笑しい。
天を仰ぐ。
雲一つない夜空には煌煌と輝く月一つ。
「全部アナタの所為ね――」
眠れなかったのも。月を見ようと思ったのも。変な夢を視たのも。末莉の手を思わず握ってしまったのも。そして――
こんな気持ちなのも。
全部全部この月の所為。
気まぐれな月の視せた、一夜の気まぐれ。
そう思うことにしよう。
末莉の髪をさらりと撫でて――
青葉は静かに瞳を閉じた。
「――あん、おにーさん、ソコはダメですぅ――――むにゃ」
「――――#」
了
予想通りの落ちGJ
面白い作品でした
( ^ω^)
hosyu
誉め&保守
さて、刃鳴散らすとか群青の空を越えてのSSを待っている俺が来ましたよ。
さぁ職人の諸君、張り切ってどうぞ〜
いや、別にどんな作品のSSでも美味しくいただきますけどね。
保守
今更あやかしびとプレイして過去のSSを読みふけってる俺が来ましたよ
ハナチラと咎狗のクロスオーバー(超短編)を書こうかナーと思ったんだが、いまいち進まず。
書いたとして、ここに出していいんじゃろか?ぱやぱやは無し、罵りあいと殺し愛オンリーで。
OKじゃね?
開店休業状態よりは
何か商品を出して、売っていた方がましってモンよ
つか以前巣ドラで書いてた職人さん、
ダンシング・クレイジーズでは書かないのかな。
『ネバー・ランドへGoGo!連れて行ってよ!夢を忘れない少年のまま
ネバー・ランドへGoGo!連れて行ってよ!破れかけたあの日の地図で』
そんな歌声を耳にしたのは、本当に偶然だった。
いつもは通らないちょっと遠回りな道を選んで帰ったのも、
その日に限って遊んでいる子供たちの姿に目を奪われたのも、
そして子供たちの真ん中で朗らかに歌っている女性の姿を見たのも、
全部ただの偶然だった。
でも、その歌詞は私にはちょっと聞き逃せないような内容で、
歌っている人には他意はないのだろうことは判っていても、
それは私にとって胸の内側に小さなわだかまりを作ってしまう歌だった。
だからだろうか。
普段はしないようなことを出来てしまったのは。
「あの、すみませんが、ちょっとお尋ねしても良いでしょうか?」
「はい?」
振り返った女性の顔は生気に満ちていて、自分とは違うな、と最初に思ってしまった。
「ふ〜ん、今の歌がそんなに気になったの?」
「ええ、なんだか胸にこう、なにか残るような感じがして・・・」
「おおー、そうですかそうですか、不肖ワタクシメの歌声は通りすがりのこんなお嬢さんをもたぶらかすことに成功したわけだ」
「・・・・・・」
そういってからからと笑う女性の顔はやっぱり屈託というものが感じられず、私は少し黙り込んでしまった。
「あー、いけないなー。こういうのはノリが大事なのにー。」
「すみません。」
「そんなとこであやまんないでよー。私がバカみたいじゃないのー」
あっけらかんとして笑う。
やはりこういった人は少し苦手だ。
あの先輩を思い出してしまうから。
「で、なんでこの歌がそんなに気になったの?」
好奇心いっぱいの顔で聞かれた。
目をきらきらさせて、いかにも聞きたくて仕方ない、といった風情で私の顔を覗き込んでくる。
その顔が今は離れ離れになってしまった親友を思い出させ、つい本音でしゃべってしまった。
「大事な人を思い出すんです。その歌の歌詞が、私の大事な人のことを言ってるみたいで」
「おおー!!ってことはそれってあなたの彼氏!?」
予想通り大げさに盛り上がっている。苦笑して返した。
「そんなんじゃありませんよ、もう今はいませんから」
すると、彼女は黙ってしまった。
「あ、ごめんね、ひょっとしてつらいこと聞いちゃったかな」
体中で「ごめんなさいオーラ」を出しながら聞いてくる。
こういったところまで親友にそっくりでもう一度苦笑してしまった。
「彼氏とか恋人、というのとはちょっと違いますね。私にとってあの人はほんとに判らない人でした。
子供っぽいようで大人びてるし、人のことを良く見ているくせに理解できてないし」
ここで、自分があの人をどう思っていたかを思い返して、少し黙る。
「あの人は、いつでも外の人でした。
輪の中心にいるくせに、自分が一番外にいると思ってる。
誰とでも親しいくせに、誰も中には入れようとしない。
他人の気持ちにすごく敏感なくせに、誰にも自分を判らせようとしない。
そんな、さみしい人です」
「何ていうか、自分勝手なやさしい人なんだね」
驚いた。
こんな、とりとめの無い自分の独白で、あの人の人としての本質みたいな部分を言い当てられたから。
私はよほど驚いた顔をしていたのだろう。
彼女は寂しそうな優しい目をして話し出した。
「私にも似たような知り合いがいるから。その人はもうちょっと判りやすい人だけどね」
そう前置きして語りだした、その「知り合い」の話は御伽噺のような優しい話だった。
何のつながりも無い人たちが一軒の家に集まり、
さまざまな問題やいざこざを抱えつつそれを乗り越えていくことで「家族」としてまとまっていく。
そんなうそのようなほんとうのような話だった。
「っということで、その人は今も元気に妹みたいな彼女と暮らしてるってわけ。
ごめんね、なんか長々と聞かせちゃって」
「いえ、とてもいい話だったと思います。」
「そういってくれると嬉しいかな。」
そういって、彼女はきれいに笑った。
「そうだね、話してて思ったけどあの人たちがいたあの家は、ネバーランドだったのかもしれないね」
「え?」
「大人ってね、理不尽や不都合なことに慣れちゃうでしょ?
でも、それに対して我慢できないって言って、立ち向かうっていうのはおとぎばなしの主役の役目。
ピーターパンはいつでもそんな立ち向かう人の味方なのよ、きっと。」
そういって、もう一度、彼女はきれいに笑った。
「あなたのその大切な人もピーターパンだったのかもしれないね。」
「そうかも、しれませんね」
少し、息が詰まった。
「あ、ごめんね。私悪いこといっちゃったかな?」
私のそんな小さな躊躇を見逃さず、彼女は謝ってきた。
「いえ、そうじゃありませんよ」
なんだか、嘘は吐きたくない気分だった。
「確かにあの人は、ピーターパンでした」
よその世界から、この世界にやってきた、小さな女の子の味方。
「でも、私はウェンディじゃありません」
だけど、私は助けられるのを待っているような女の子にはなりたくない。
「ネバーランドでしかいられないなんて、そんなことを言ってるようなら」
そう、あの人が自分はこの世界にいられないなんて考えているようなら。
「空なんか飛べなくたって一緒にいられればそれでいいから」
私があの人の居場所になって、受け止めてあげるから。
「私のことが好きならこっちにきて一緒に戦って!っていっちゃいます」
この世界で、一緒に、生きていたい。
「だから」
だから
「ネバーランドは、いりません」
私のところに、帰ってきてほしい。
夕焼けの中、あの人の顔を思い浮かべて泣きそうになったけど我慢した。
「強いね、あなたは」
あっけにとられたような顔をした後、軽く微笑んで、彼女はそういった。
「強いんじゃなくて、我が侭なだけかもしれませんよ?」
同じように微笑みながら私も返す。
「でも、それだけ真剣にその人が好きってことだよね?」
ちょっと戸惑った後あの人の顔を思い出して、
「はい!」
私は自分の一番いい笑顔で、そう返事をした。
(完)
159 :
155:2005/10/18(火) 00:37:12 ID:qg+2ae+B0
衝動的に書いてしまった、反省はしていない。
皆様の突っ込みお待ちしています。
掛け合いが不自然。
句読点の不統一。
一つ一つの文が冗長すぎる傾向。
「自分の」「私の」といった指示語がくどい。削れるものが多い。
158からのくだりが好きだ。
誰と誰の会話か最後まで判断できなかった。
掛け合いが不自然ってのもあるかも。
http://yellow.ribbon.to/~savess/index.html 復活の保守サイト更新〜
いやしかし、まさか赴任先がネット環境無いとは思わんかった……
ということで、
>>155については次回の更新時に追加します。申し訳ない。
ま、ともかく保管サイトの方は今後ばんばん更新していくので、職人さんは投稿よろしく。
俺? いや、PS2でやったリアライズに今更ながらに入れ込んじゃってねぇ
なお、ダンクレはコンプするまでSSは書かないつもり、って内に旬が過ぎそうな気がす
ホシュ
165 :
名無しさん@初回限定:2005/10/27(木) 00:36:12 ID:wkTx3cVC0
浮上
ひとつ、質問なのですが。
笑顔でさよなら→伝えたかった言葉
と、設定を引き継いだのはGOサインをいただいたのですが、そのまんまの設定でつらつら書いていくのはありなんでしょうか?
ok
ほす
古いですが、「ねがぽじ」で香澄BADEND以降のお話
コメディタッチです。
「それでは、乾杯!」
香澄の音頭取りで始まった宴。会場はあたしの部屋、名目は――。
傍らの透が紙コップを持って立ち上がる。
「えー、ここで私が祝辞を。この度はまひるの怪我も意外に軽く、大変元気に退院されて何よりです。
あたしは答える。
「ありがと。透もありがとね。色々動いてくれて。おかげで皆の誤解も解けて。そのためのお礼の宴会
でもあるもんね」
「その通り!自分で言うのも何ですが、学園側の黒い霧を晴らしたのはこの私、透であります。
そこで――」
透があたしのほうを見て一言。
「お礼に一発やらせろ」
ゴイン。香澄が手にした辞書の角で透を殴る。
「何だよ。軽いおやぢギャグじゃないか、おぉそれは新明○国語辞書、なかなか絶妙なチョイス」
「しょっぱなから素面で飛ばすな」
「いや、酒がすすんで、香澄に先に言われちゃまずいと思って」
「誰が言うか!」
「あー、香澄だったら『わたしに一発して』か」
ゴイン。今度はジー○アス英和辞書。
「もう我慢できない。二人とも、作戦行くわよ」
言うが早いか、透を羽交い絞めする香澄。美奈萌も手早くスピリタスと書かれたウオッカのビンを
開け、次々飲ませていく。1本、2本、3本……おいおい。美奈萌の指示が飛ぶ。
「とどめに小鈴ちゃん、シェイク」
「こ、こうですか」
ワシュワシュワシュ。遠慮なく透の頭を揺する小鈴ちゃん。さしものの透もぐったりと意識を失う。
そのまま浴室に運び込まれ、しばらくして香澄が戻ってくる。
「ふぅー。透はちゃんと縛り付けておいたから大丈夫―――それでは」
今度は香澄がコップを持ち上げて宣言する。
「ここからが本番、争奪杯を始めましょう」
パチパチパチ、二人の拍手。え、何?
「ルールは簡単。お酒の飲み比べで最後まで残った者の勝ち。そして、賞品はまひる」
――待て。
「そんな話聞いてない」
「だって言ってないもん」
と美奈萌が返す、そんなこと急に言われても…ともごもご言ったら、
「それなら自分が優勝すればいい」
と香澄。―――この鯨に飲ませるほど用意されたアルコール類はそのためだったか。よくみると
割る為にあるらしい、炭酸やジュースがあってもビールは見当たらない。代わりにウィスキー、日本酒
スピリッツにリキュール…恐ろしい。
小鈴ちゃんがおずおずと手を上げて言った。
「あの、やっぱり、わたしお酒はあんまり。前にビールをちょっと飲んだんですけど苦くて」
香澄は微笑んで言う。
「大丈夫、それなら甘いカクテル作ってあげるから……これなんかどう?」
小鈴ちゃんは黒い液体にロックアイスを浮かべたものを受け取り、こくんと一口。
「あ、甘くておいしい。これならいくらでも飲めちゃいそうです。なんていうカクテルですか?」
「そう、よかった。ブラックルシアンて言うのよ」
香澄、それウオッカとカルアのミックス、多分、カルアミルクやスクリュードライバーより凶悪。
「ラスティネイルもおいしいわよ」
それってウィスキーのリキュール割りじゃん!
「これならわたしも参加できますね!」
本気なの?小鈴ちゃん。
かくして酒宴は始まった。
*************************
意外にゆったりしたペースで皆飲んでいる。お互いけん制しあってるのかな。
改めて皆の様子を見てみる。
優雅にワインを(紙コップにだけど)片手にしてるのは香澄。うすい緑色の柔らかそうな布地の
ドレス。肩には白のショール。結婚式の2次会にぐらいには出られそうな装いだけど、不思議に
この場でも浮いていない。
「負けないもん」
小さく呟いたのは美奈萌。飾り気の無い身体にフィットした茶のセーターも細身の黒のジーンズも
よく似合ってる。耳元には天使の翼をモチーフにしたようなイヤリング。それをそっとお守りのように
握り締めると
「負けないんだから」
美奈萌はもう一度呟いた。
「…………ひくっ」
小鈴ちゃんはもう駄目そう。そりゃさっきから殺人カクテルばかり飲まされてるもん。清潔そうな
淡いピンクのカットソーから覗かれる鎖骨の方がより濃いピンク色をしている。
「一寸、酔ってきました」
とにっこり笑う。いや、一寸じゃないから。フレアのロングスカートでよかった。タイトやミニだったら
今ごろ目も当てられないことになってたかも。
*************************
―――又しばらく時間が経過。
あたしは観戦モードに入り、体力を温存することにした。どちらに勝たれても、どうにか身を守れる
ように。案の定、香澄と美奈萌の一騎打ち、涼しい顔の香澄に何とかくらいつく美奈萌…あ、倒れた。
「ふふふ」
不敵な笑いを浮かべ、勝利の美酒を飲み干す香澄。
それからフロアに手をつき、あたしの方ににじり寄ってくる。とりあえず逃げよう。と、背中が
ソファにあたる。逃げ道無し?刹那、もう鼻先に香澄の顔があった。よく見ると、目は潤み、頬も
何気に桜貝の色。やっぱり酔ってるんだ。完全に固まっているあたしのブラウスのボタンを外していく。
三つ目まで外され、何とかあたしは言う。
「ねぇ、香澄、どうして今日はこんなに積極的なの?」
らしくない、問わずにはいられない。
「―――まひるはいつも全力でしょ?―――私を守ってくれる時だって、だから、今度は私が」
ショールを外すと、清楚だったはずのドレスが、男を誘う魔性のものへと様変わりした。
肩は露わになり、胸元もぎりぎりまで見えて、
「私が―――あなたの事を、この体全部で―――」
抱きしめられ、柔らかく、そのくせ張りのある胸が押し付けられる。気が遠くなりそう。
駄目なの?私じゃ魅力無い?欲情しない?」
「いや、あの、多分お酒が廻っちゃってそれどころじゃないような」
手をほどくと、今度は香澄は唇を近づけ囁く。
「それじゃ、もう一度私と……」
あぁ、あたしもう駄目、そう思って目を閉じた瞬間。
どう、とあたしの上に倒れ伏し、香澄はくーくーと控えめな寝息を立て始めた。
た、助かった。と、入れ替わりに美奈萌が起き上がり、香澄を上から見下ろし、言った。
「作戦勝ちね、あなたの飲んだ日本酒には少しずつウオッカを混ぜていたのよ」
「うわ、卑怯」
美奈萌は急いで香澄を払いのけると、あたしの両肩を掴み言った。
「まひる、あなた大丈夫、何もされなかった?」
とりあえずこくこくうなずいたが、ブラウスのボタンが外されているのに美奈萌が気づく。
「なによ、私だって負けないんだから!」
そういうなり、美奈萌はジーンズのベルトをカチャカチャと外し始めた。あたし、まさか
襲われちゃう?
「あの、みなちゃん一体何を…まさか」
「みなちゃん言うな。 前にまひる言ってたでしょ、男と女の違いを見たいって。だから私が、
今から、ここで」
「あわあわ」
「―――初めてじゃなきゃやなの!まひるの初めては何でも私なの!告白だって、裸を見せる
のだって、その先だって!」
「いや、あの、それにしてもここではまずいのでは、わぁ、ファスナーに手をかけてる」
あせりのあまり、あたしは背後でゆらりと人影が動いたのに気がつかなかった。
「それじゃぁ、あたしはぁ、先輩のぉ」
あれ、小鈴ちゃん起きたの、と振り返った瞬間。
「ファーストキスもらっちゃおー」
小鈴ちゃんに跳びかかられ、押し倒され、なおかつ、
「え、あ、んぐ」
唇を奪われる。
ふっくらとした柔らかさと、くらっと来る甘いお酒の香り。『ふふふ、ファーストキスは私
だもんね』そう香澄が寝言を言ったような気がしたけど、気のせい?目が妖しく光る小鈴
ちゃん。酔ってるだけ――だよね?
「そぉいえばぁ、あたしもぉカクテルの作り方思い出しましたぁ」
小鈴ちゃんの意外にしっかりしたホールドにあたしは動けない。
「先輩がぁジンを口に含んでぇあたしがベルモットを口にしてぇ二人でキスして混ぜ合わ
せてマティーニ作るんです、うふ」
「つ、通だね」
あたしは訳のわからない感想を述べる。
「マティーニ飲みます?あ、そうだ」
体重でしっかりあたしを押さえつつ、小鈴ちゃんの左手はあたしのスカートにのびる。
「こ、今度は何?」
「確認です」
急にまじめな声で小鈴ちゃんが言い切る。
「まひる先輩、時々聞きますよね『小鈴ちゃんはあたしの事どっちだって思ってる?』って、
わたしはどっちだっていいんです、まひる先輩であれば」
「ん、うん」
「それだったら、私だって知りたいです。先輩はどっちの目でわたしを見てるのかを。
でも、教えてくれないんでしょ、まひる先輩は」
「小鈴ちゃん」
と、真剣な目がニマっとゆるみ再び妖しく光りだす。
「だからぁ今日はとりあえずワタシが外から確認しまぁす」
わぁ、やっぱりただの酔っ払いだぁ。誰か、あ、美奈萌たすけて・・・
「そうよね。人のを見たいんならまずは自分からよね」
―――え?
「手伝うわ、小鈴ちゃん」
何ですとぉ!
「小鈴ちゃんと二人でというのもなんだけど、香澄はもう見てる訳だし、これでおあいこ」
二人はうんうんとうなずき合ってるけど、
「あたし的には全然おあいこじゃなーい」
「いいんですぅ今日はまひる先輩が主役なんですからぁ」
これじゃ、主役じゃなくて生贄だよ。
「う……ん何の騒ぎ」
香澄が起き上がり、皆の様子を見て声をあげる。
「わあ、まひる、あんた又、剥かれる気か」
「自発的に剥かれてるんじゃないやい」
「ふむ二人とも確認してみたいと」
「そ、そうみたい」
「そうか、でも、私もそんなにはっきり見たわけじゃないのよね」
怪しい雲行き―――
「せっかくの宴だし、ここはひとつ、これをメインイベントにしましょう」
「するなぁ!指をわきわきさせるなぁ!」
「おお、そういうことならおぢさんもお手伝いしよう」
わ、すける、いつの間に。
「誰が手伝わせるか!」
ブン。またもや辞書を振り下ろす香澄。今度は華麗によける透。
「ふっ、あまいな」
「く、やはり広○苑は重さがありすぎたか」
いつしかメ インイベントは二人のバトルとなり、うやむやのうちにあたしの危機は免れたのだった。
「ふぅ酒はさめていたが、縛りがきつい上に的確で、なかなか縄抜け出来なかった。もしや香澄は、
忍びの出か?」
そんな透のぼやきは無視して香澄は訊く。
「じゃあ、どこから話を聞いてたのよ」
「香澄が迫ってったあたりから」
一同がどよめく。明るく答える透。
「いやぁ皆気にしないで、俺、まひるじゃなきゃ反応しないから」
「「「それはそれで失礼だ!!!」」」
の、三重唱の後、
ゴイン、新○解
ゴイン、ジー○アス
ゴイン、広○苑
の連打。今度こそ死んだな。
********************
「じゃ、月曜日に。貸したノート、忘れないように」
「まひる。ティーラウンジのネタ、ちゃんと考えておきなさいよ」
「さよなら、先輩、えと、月曜日に又、会えますね」
駅の近所までお見送り。
ずるずる、引きずられる透。今日の寝床はどうやら公園になるらしい。
3人とも残りのジュースを飲み切り、シャワーを浴びたら回復したようで、元気に帰っていった。
『女って怖い』とちらっと思ったあたしはやっぱり男なんだろうか。――深く考えるのは止めよ。
二日酔いの薬とスポーツドリンクを買い、部屋に戻ると、…ひなた。
「何、この惨状。退院祝いをもってきてみれば」
「一応、ざっと片付けたんだけど」
「何か空気がよどんでる…でも、このシロップみたいのはおいしいかも」
一寸待って、この部屋にノンアルコールのものってもう無いはず。
「ひなた、それ駄目!」
ゆっくり振り返る、ひなた。
何だかうつろで、でも楽しそうで、とってもデ・ジャ・ビュな目付き。
「ふふふ、まひるぅ」
「わ―――」
宴はまだ終わらない―――のかな?
おわり
ねがぽじネタGJ!
本当まひるは男にしておくのは勿体無いヒロインだったなぁ…
サンクスです。
ついでにもひとつ。小鈴のキス未遂の後の話を。マイナーで申し訳ないが、短いので勘弁。
179 :
唇で想うこと:2005/11/07(月) 21:06:21 ID:hHUDadRQ0
「ごめんなさい、お友達とハンバーガー食べてきちゃったから、夕飯はいらない」
そんな嘘をつき、小鈴は自室へと戻った。まずはベッドに腰掛け、薬用リップを丁寧に塗りつける。
本当だ、少し荒れてる。憧れの人にみっともないところを見せてしまった。頬が赤らむ。
「ファーストキス、か」
そんな独り言に恥ずかしくなり、耳の先まで赤くなる。
違う、違う、唇にふれたのは先輩の舌先。刹那の出来事で。だからあれは違う。
でも、あれがキスじゃなかったら、本当のキスをしたら、わたしはどうなってしまうのだろう。
そこまで考えて小鈴は慌てて首を振る。さながら雨に濡れた子犬のように。この場合、振り払い
たいのは雨粒ではなく、邪念であったが。
「お風呂沸いたわよ」
「うん、入る」
母の声に助けられた様に小鈴は感じた。変な考えはお湯に流してしまおう。
―――ここにさっき先輩がふれてたんだ。
湯船の中、どうしても思い出してしまう。何故か切なさの感じられた囁きの後、一瞬だけ
ふれあった。
そのまま目を閉じてしまったら、どうなっていたのだろう。
まひる先輩の唇を自分の唇で感じることが出来たのだろうか、一寸触れただけの舌はわたしの口の
中で、お互いの舌を絡めあったのだろうか。
やめておけばいいのに、つい又蒸し返してしまう…むしろ悪化。おかげで小鈴は、
「あら、お風呂熱かった?そんなに真っ赤になって」
と、母に尋ねられる羽目になった。
「まひる先輩、あれも特訓だって言うんですか?」
枕元にある男の子の人形を手にとり、先輩のつもりで話し掛ける。 人形の無防備で平和そうな
笑顔は、いつも、まひる先輩のことを小鈴に思い出させる。
『そうだよ』先輩ならあっさり答えるかもしれない、それから、『大丈夫だったみたいだから、今度
は本式にキスをしようか』ぐらいは言うかも…。
ぎゅっと人形を抱きしめながら小鈴は呟く。
「そんな事言ったって駄目なんですからね」
180 :
唇で想うこと:2005/11/07(月) 21:08:37 ID:hHUDadRQ0
キスなんてしてしまったら、きっと先輩は自分にとって男の人になってしまう。小鈴は又呟く。
「だってわたし美奈萌先輩に嫉妬したくないし、それに」
まひる先輩に、もっと側にいてほしくなってしまうから、その先を求めてしまうから。
「ううん、きっといつもの冗談なんだから」
小鈴は呟く。
冗談には冗談で返さなきゃ―――そうだ、今度のデートの時、まひる先輩のほっぺについた
クリームをなめてとってあげよう、きっと先輩目を丸くするはず。そう、こんな風に。小鈴は
人形にそのまねをしてみせて、くすっと笑う。それから、
「ふぁー」
あくびを一つ。先輩のせいで眠れない夜になるかと思ったのに、先輩のことを思い眠くなるなんて
不思議と小鈴は思う。
それがあんまりにもふんわりとした幸せだったから。
自分の身体の中に灯ってしまった小さな火に小鈴はまだ気づけないでいた。
〜 fin 〜
ねがぽじネタ烈しくGJ
どーも。誉められると素直に嬉しいです。続いていかせてもらいます。
”ねがぽじ”より「可愛い君と」エロありです。
183 :
可愛い君と:2005/11/09(水) 21:33:28 ID:LMqgLG7q0
「うー、わかんにゃい。もっとかみくだいて、おせーて」
あたしは自分の家のちゃぶ台に突っ伏した。
「これ以上どうしろというの?無理」
美奈萌が呆れ顔で言う。
「香澄なら出来た」
「今はいないんだからしょうがないでしょ」
「美奈萌が追い返した」
「人聞きの悪い。用事があるって言ってたじゃない」
「んにゃ、あれは美奈萌の凶悪なオーラに気おされてた」
「ぐっ」
言葉に詰まる美奈萌。あたしは続ける。
「せっかく三人で同じクラスに転入できたのに。学年末テストで落第して、あたしはきっと
留年するんだぁ」
「そんな」
ちゃぶ台にあごをつけたまま、上目遣いに甘えた子犬の目を美奈萌に見せてみる。
「香澄連れて来て」
「え?」
「美奈萌が謝ってでも、土下座してでも連れて来て、そうでなきゃもう駄目」
耐え切れないとでもいう様に美奈萌は立ち上がり、大声を上げた。
「あぁもう、うっとうしい!私は帰る」
「えー何でぇ」
「うるさい!もう、えっちな事だってさせてあげないんだから!」
「美奈萌、何てこと言うんだよぉ、やだよぉ」
ぎゅうと美奈萌の腰にしがみつく。
「あんた、どっちをいやがってる?えーいもう!あ!」
ドアのほうに足を向けようとし、美奈萌はうっかりポテトチップスの空き袋をふみ、思い切り
こける、あたしもろとも。
ドタ――ン。
184 :
可愛い君と:2005/11/09(水) 21:34:05 ID:LMqgLG7q0
「あたた…ん?」
捲れた美奈萌のスカートの中を見てしまう―――黒?
慌てる美奈萌に構わずセーターも捲り上げる。お揃いの黒のブラ、思わず顔がにやける。
「そっか、そっか」
「な、何よ」
「そんなに期待してたんだ、してほしかったんだ」
「そんなこと―――」
「だから、香澄追い出しちゃったんだ。これ、お気に入りの下着だったでしょ?」
あたしはゆっくりと美奈萌の上に乗りかかる。
「―――そうだけど」
美奈萌は恥ずかしくなって横を向いてしまった。逆にあたしの方に向けられる形となった耳元に
吐息をかけながら、言葉を続ける。
「お泊りするって言ってきたんでしょ?一晩中いっぱいしてほしかったんだ」
「ち、違うもん」
「美奈萌は天邪鬼だもんね。わざとあたしとは全然違う人のことタイプって言ってみたり、見ちゃ
駄目って言いながら、あそこをぬらしちゃったり」
「やだ、そんな事言っちゃ」
か弱く呟く美奈萌の顔をこちらに向けさせて、あたしはやさしくキスをする。やっと出したかの
ような囁き声で美奈萌は言う。
「だって、まひる、さっきから香澄、香澄って。勉強教えてもらう時だって楽しそうだし、わたしは
あんなに上手に教えてあげられないし、悔しくなっちゃって」
あたしは微笑んで美奈萌の口に、ほっぺに、瞼に、首筋に何度も小鳥がついばむようにキスをする。
「天邪鬼でやきもち焼きでそれに…」
美奈萌の下着の中に指をもぐりこませ、茂みを通り越し、ぬかるみに触れる。
「えっちな女の子かな?もう濡れ始めてる」
「…バカ」
「可愛いよ、美奈萌」
あの日から何度も伝えた言葉を又、あたしは繰り返す。
服を脱がせていく。下着を外すとき美奈萌は一寸残念そうな顔をした。あたしは笑いながら言って
あげる。
185 :
可愛い君と:2005/11/09(水) 21:34:54 ID:LMqgLG7q0
「また後でじっくり見てあげるから」
「うん」
素直にうなずく姿が愛しくて、首筋に、胸元に、キスを繰り返しながら、あたしも自分の服を
脱いでいく。
「あ、やだ、そこ、感じちゃう」
うなじにキスをすると、ぴくんと体を震わせる。あたしは更に舌で美奈萌の耳を弄びながら、言う。
「ここも、でしょ?美奈萌の弱いところは知ってるから、あたしだけが」
「わたしだって知ってるもん。まひるの感じるところ、全部」
張り合うように、美奈萌が抱きついてくると、指先であたしの背中をなぞり、舌で乳首をなぶるように
責めてくる。
「あ、ん、ん、気持ちいい、美奈萌……」
思わず、あえぎ声をもらす。美奈萌はその声にすら興奮し、あたしの太腿をまたぐと、執拗な愛撫を
続けていく。自分の愛液の流れるままに、むしろ、太腿にこすりつけるように。
あたしは美奈萌のお尻を掴み、それから、中指を割れ目に沿ってなぞらせ、お尻の穴を探り当てる。
「駄目、そんなとこ汚い―――や、指入れちゃ、ん、ん、やだ、こんなとこで感じちゃったら―――」
美奈萌は口でそう言いながらも、力が入らないのか、あるいは快楽から逃れられないのか、穴を
いじられるがままにしている。こらえきれない喘ぎ声があたしの耳にまで届く。
あたしは囁く。
「ここに、おちんちん入れちゃおうか」
「そんなの嫌、嫌なの」
「美奈萌は天邪鬼だからなぁ、本当は入れてほしいんじゃない?お尻で乱れる美奈萌も見てみたいな」
中指の動きは続けながら、あたしは言葉でも責めつづける。
「いや、駄目。ここに入れちゃ。入れていい穴がここにあるのに」
美奈萌はぐちょぐちょに濡れた股間をあたしに擦り付ける。
「どこ?何て言う穴?」
「ここよ―――女の子の穴」
「そんなのじゃわかんないよ。言って、美奈萌、ちゃんと四文字で」
「うそ――いや――」
「甘えた声出しても駄目。ここでやめちゃうの?さぁ、言って」
観念したように、堰を切ったように美奈萌の口から卑語があふれ出る。
186 :
可愛い君と:2005/11/09(水) 21:36:06 ID:CDcQ4j1Q0
「―――入れて。おちんちん、入れて。美奈萌の…おまんこに。中で、かき回して、感じさせて、お願い」
「よく言えました、じゃ、あげるね」
あたしはソファの隙間から避妊具を取り出し、つけてからパタンと仰向けになり、言った。
「美奈萌、自分で入れてみて。下から見てみたいの、美奈萌の可愛く乱れる姿」
「そんな」
あたしは手を取り、すっかり興奮し、反り返るあたしものを美奈萌に触らせる。
「ねぇ、美奈萌、入れて。あたしの。早く入りたいってピクピクしてるでしょ、だから」
「ん―――う、ん」
胸をどきどきさせ、呼吸を荒くしながら、美奈萌はあたしの腰にまたがり、右手で自分の花びらを
広げ、左手はあたしのに手を添え、角度をあわせるようにしながら、迎え入れていく。
「は、ぁ、ん……あ」
ゆっくりと、確かめるように、味わうように腰を落としていく。やがて、すっかりくわえ込む。
「全部、入っちゃった、まひる」
「そうだよ、美奈萌の中あったかいよ。さぁ、動いて感じてみせて」
あたしは美奈萌の太腿をなでながら言う。
「う……ん」
恐々、動き出す。もちろんぎこちない動きだけれど。いつもとは違う角度からの快感、下から見上げる
乳房の揺れ、自分のする行為に恥じらい、上気させ、興奮していく美奈萌の姿、全てにあたしは刺激され
ていく。
「……気持ちいいよ。美奈萌もよくなるように動いて」
「嬉しい。あ、あ」
すこしずつ、動きを早めていく。より感じる場所を探すために腰を回しながら。
二人のつながったところから、湿った音が響く。
くちゅ、くちゅ、くちゅ。
「や、ぁ、音、聞こえちゃう、ん、ん」
「そうだよ、もっと聞かせて、可愛い声も、乱れたとこも」
「あ―――ん、感じる」
快楽に気をとられる美奈萌は目をうつろにさせ、口は半開きになっている。とても淫靡な―――様相。
あたしの胸を時に右手でなぶりながら、左手を床につけ、身を反らせる。のど元を汗が伝う。
187 :
可愛い君と:2005/11/09(水) 21:36:44 ID:CDcQ4j1Q0
くちゅくちゅくちゅくちゅ。
音も動きも、よりリズミカルになっていく。
「すごい、いいよ、美奈萌」
締め付けてくる快感に、あたしも自然に、腰が動く。
「まひるぅ、あたし、や、ぁ、恥ずかしいのに――気持ちいいの――自分で動いちゃうの――止まら
ないの」
「そんなにしたら、もう出ちゃうよ」
「うん、来て。わたしももう――いっちゃう」
あたしは上半身を起こし、しっかり抱きしめ、美奈萌と揺れる。首筋を舐め上げる。
「ま…ひ…る、わたし、もう」
「うん、いっぱい出してあげる」
「……あ…ああ、駄目、駄目、ああ!」
「あたしも、出ちゃう、ん、ん」
ドクン ドクン ドクン ドクン
精液を注ぎ込む。まるで、ほとばしる液を残らず飲み干そうとするかのような美奈萌の中の
うごめきを感じながら。
「あぁ、すごい、まだわたしの中でトクントクンって言ってる」
うっとりとした声で美奈萌が呟き、私の胸に顔をうずめた。
****************
「ねぇ、まひる、わたしやっぱり香澄のところにノート借りに行こうか」
「大丈夫、月曜でもなんとかなるでしょ」
「でも…」
カターン、カターン。
何かが玄関のドアを叩く音がする。回覧版かな。ジャージを着て、見に行くと、コンビニの袋、
中にはノートが2冊。手書きで「おサルさんでも分かる要点ノート〜国英社」と「―――理数」
188 :
可愛い君と:2005/11/09(水) 21:37:24 ID:CDcQ4j1Q0
「あのさ…ドア、鍵かかってなかったんだけど」
「…まさかね」
メモがひらりと床に落ちる。『せめて鍵ぐらいはかけとくよーに』
……………。
「美奈萌、香澄に電話して」
「……一体、何て」
「先ほどはとんでもないところをお見せしまして」
「言えるか!」
「だって、美奈萌の方が乱れてたし」
「そんな風にしたのはまひるじゃないの……」
顔を見合わせ、くすっと笑う。それから、どちらからともなく二人は優しいキスを交わした。
おわり
GJ。
問題は、俺がねがぽじを知らん事だけだ……○| ̄|_
実はエロ物初挑戦だったんですが、受けていただけて何よりです。
確かに本編も知ってると、より楽しめるとは思いますが・・・
また「ねがぽじ」で申し訳ない。ひなたエピソード、エロなしで「新しい朝〜ねがぽじより」
191 :
可愛い君と:2005/11/10(木) 20:42:39 ID:hhJY0lL/0
「ごちそうさま」
二人で手を合わせる。
「ひなた、おいしかったよ、最後の晩餐」
皿を片付けながらわたしは言う。
「何、縁起でもないなぁ。まひる、お風呂に入っちゃって、歯磨きしたらちゃんとバッグにしまって
おくようにね。転校初日なんだから、朝、慌てて香澄さんや美奈萌さんに迷惑かけたら駄目だよ」
「はーい。ひなたはしっかり者だなぁ、きっといいお母さんになれるよ」
「そこ、普通『いいお嫁さん』でしょ」
思わず言い返したけど返事が無い。浴室に行ってしまったらしい。
皿を洗い、よく拭いて、片付けていく。湿気を残さないように。この部屋はしばらく無人になるの
だから……
「おっ先ぃ!」
わたしが物思いにふける間もなく、能天気な声でまひるがお風呂から上がってきた。
********************
―――さしてすることも無く、明日も早いので、もう寝ることにする。頭と頭を突き合わせソファに
毛布で寝るのもすっかり慣れた。もう少し寒くなっていたら、布団もこの部屋に入れることになって
たのかな。
「おやすみ、ひなた」
「おやすみ」
「…………」
「…………」
「あのさ、まひる」
我慢できずに話し掛ける。少し驚いた気配が伝わる。
「何、何」
嬉しそうなまひる。そんな様子についとまどい、素っ気無い口調になる。
「さっき、『ひなたはいいお母さんになれる』って言ったでしょ」
「うん、うん」
「何で『いいお嫁さん』じゃないわけ」
よく考えたら、何こだわってるんだ、わたし。『やっぱりどうでもいい』そんな風に言おうと
する前に、明るい声でまひるが答える。
「それはもう、クリアしてるから」
「え?」
「あたしね、お嫁さんてさ、まぁ、お食事やお洗濯やお掃除やそんなのもお仕事だとは思うんだけど、
一番大事なものって……………」
「寝てない?」
「そんなことないって、んー、引き上げることだと思うんだ」
「は?」
「誰だってさ、ましてや外でいろんな人に会って働く男の人って、きっと、つらくなったり、
へこたれたりしてさ、沈んでっちゃう ことってあると思うのよ」
「うん」
「そんな時に自然にさ、当り前に元気付けてあげられるのって大事だと思うんだ」
一寸間があく。言葉に思いを込めるようにまひるが口を開く。
「ひなたは、あたしにそうしてくれたんだよ」
「そんな事―――してない」
「してくれたよ!自分では気づいてないだろうけど」
ガサ、わたしの顔をまひるが上から覗き込む。
こんなに近い距離に――心も身体も――二人がいるのはあの日以来かもしれない。
あの日、まひるに助けられた、まひるは覚えてないけど。そして誰も知らない、あの日から始
まった、そして今も続くわたしの想い。
「それなら、まひるだって」
「あたしは、そもそも男だか女だかも怪しいからなぁ」
「まひるだって!―――蓼食う虫も好き好きって言うしさ」
「はは、ナイスフォロー、かぁ?」
素直になれない自分にわたしはそっと舌打ちした。
「そういえば不思議でさぁ」
まひるは、つと離れるとうつぶせになって話を続ける。
「あたしってば結構、しょっ中ドジったり、バカやったり、インパクトのある事してる割には
昔の記憶とか曖昧なところがあって―――まぁ、鳥頭なだけかも知んないけど」
突っ込まれる前に自分で言う、まひる。
「でも、そんなこぼれ落ちた自分のかけらをひなたが全部拾い集めてさ、守ってくれてる様な
気がするんだよね」
一寸詰まりながらも何とか返答する。なるべくいつもの口調に聞こえるように。
「わたしが生まれる前のことは知らないわよ」
「そりゃ、そうか……ねぇひなた、何か話さない?」
「別にいいけど」
無愛想に答えながらも、わたしはうつぶせになり、まひると向かい合った。
「んー、それじゃあさ」
それから、わたしたちは他愛の無いおしゃべりを続けた。今までよそよそしく感じさせた二人の
溝を埋めるように。でも、本当にわたしの伝えたかったことは何も言えないままで。
*****************
「んにゃーねむいー」
案の定、寝不足のまひるは半分溶けたような顔で、みんなの前に現れる。いるのは一緒に女学院に
通うことになっている香澄さんと美奈萌さん。それと何となく見送りにきたという透さん。
「もう、初日だってのに何、その顔は。夜更かししてたの?」
「ちぃーす、美奈萌。朝まで別れを惜しんでひなたと生トークしてたのさ」
「そっか」
ぽつんと呟く、香澄さん。
わざとか天然か、明るい声で透さんが言う。
「いやー、でも寂しくなるなぁスチャラカ三人組がいなくなると」
「…誰がスチャラカだぁ…」
「まひるの事でしょ」
「あんただ、あんた」
寝ぼけて力の入らないまひるの反論に、するどくつっこむ二人。スチャラカかはともかく、いい
三人組であることは間違いない。
わたしは二人に向かって丁寧にお辞儀をして言った。
「いたらぬ…まひるですが、よろしく面倒を見てやってください」
「あー、そんな気にしないで」
「自分で言うな―――まひる、そう言えば、今度はいつ帰省するの?冬休み?」
困ったように少し眉をしかめてまひるは言う。
「あー、それね」
「もしかして帰らないの?実家に」
「んー、この部屋も借りといてくれるみたいだし、ほら、一人ってのも気楽だし、ハハ、あ、そろそろ
駅行った方がいいのかな…ふぁー…」
寂しがりの癖にまひるは強がる。でも、帰ってきなよ、とわたしは言えない。父さん、母さん、まひる
とのギクシャクした関係を見たくなんか無かったから。
「一寸、まひる寝ないでよ」
「しょうがない二人で運ぼう、美奈萌」
「まったく。あ、じゃあ、ひなたちゃん、透、行くね」
「またね、ひなたちゃん、透」
言いにくいことを言って、気が抜けてふにゃふにゃになったまひるを、香澄さんと美奈萌さんが
両側から持ち上げ、連行していく。
それはそのまま三角関係の図だ。まひるはどっちを選ぶんだろう。あの屈託の無い笑顔を独り占めに
するのは誰なんだろう。
―――わたしじゃないんだ。まひるにとって、わたしはただの妹なんだから。事実は違っているにせよ。
「お互い取り残されちゃったね」
話し掛けられて、わたしの物思いは中断される。透さんの言葉をはぐらかすようにわたしは言う。
「あの、まひるが寮生活なんて不安で。いくら三人一緒の部屋っていっても、あ、でも透さんも
女学院にもぐりこもうとしてたとか?」
多分、まひるの冗談だろうけど、そう思いながら訊いてみる。
まじめに透さんは答える。
「あー、いろいろ八方手を尽くして、手続きをしてみたんだが」
「無茶だ」
「学校側の転入日確認の電話を、親がとってばれてアウトだ」
「そこまでやったんかい」
ついつっこんでしまった。―――それにしても、香澄さんや美奈萌さん、透さん、三人とも、
「あたしには真似できないや」
「いや、そんなことは無いよ。学力審査さえとおれば、後はどうにでもしてあげる」
「そうじゃなくて―――みんな、まひるに真っ直ぐだなぁって」
冗談めかして聞こえるように、無理して笑いながら言う。
透さんが腰をかがめ、わたしの顔を覗き込んできく。
「ひなたちゃんは―――あきらめちゃうの?」
「え?」
「きょうだいじゃないんでしょ?本当は」
「何でそれを―――」
頭が真っ白になる。何で透さんが?まさかまひるも…
出し抜けに透さんが頭を下げる。
「ごめん、かまかけた」
「あ、ハハ、やられた。えと、何で分かったんですか」
「見てたら分かる―――まひるのこと大好きな人たちのことは―――あきらめちゃうの?」
トクン、と自分の鼓動が聞こえ、わたしの足は走り出す。駅に向かって、と、急ブレーキ、振り
返って、透さんに言う。
「ごめんなさい、わたし、まひるに忘れ物!」
透さんが手をあげる。ついでに訊いてみる。
「どうして、ライバル増やすような事してくれたんですか?」
にっと笑って答える。
「香澄と美奈萌は手強そうだからさ、かく乱作戦しようと思ってね。ひなたちゃん、グッドラック!」
わたしも親指を立てて、ウインクして返す。
「グッドラック!」
*******************
間に合うかどうかも、何を伝えたいのかも分からないまま、わたしは走る。
駅に着き、ポケットの小銭でどうにか改札を潜り抜ける。ホームにつくとまひるの背中、電車に
乗り込もうとする………わたしは叫ぶ、思いのありったけをこめて。
「まひる!」
プシュー。扉が閉まる。ホームにはまひる。香澄さんと、美奈萌さんを乗せたまま、電車が走っていく。
「いっちゃったか、ま、どうにかなるでしょ。どうしたのひなた」
「まひる!」
駆け寄っていく、少し二人の間に距離を置いて、立ち止まる。
「どうしたの、あたし何か忘れ物した?」
「お布団、お部屋に入れとくから!」
「え?」
「やっぱり考えてなかった、もっと寒くなってからも毛布一枚じゃ寝てらんないでしょ」
「ありがと」
照れたように鼻の頭をかくまひるに、わたしは続ける。
「わたしの分も置いとくからね」
「え?」
「帰ってくる時はちゃんと電話するんだよ。独りぼっちになんか、もう、させないんだから」
「ありがと」
そう言って、まひるはわたしの方に一歩近づいて、言った。
「ひなた―――いっぺんしてみたい事があったんだ、いいかな」
あっと思う間もなくまひるはわたしの側により、そして、ぎゅうっと抱きしめた。それから
頭を撫ぜながら、
「どうだぁ、まるで仲のいいきょうだいみたいだろー」
まひるが嬉しそうに言った。
「しょうがないなー」
わたしは目を閉じ、笑みを浮かべた。
―――それから、しばらくして次の列車が駅に着いた。まひるは何の憂いも無いような笑顔で言う。
「いってきまーす」
わたしも精一杯の笑顔で言ってみせる。
「いってらっしゃい」
今度はもっともっと素敵な『おかえりなさい』が言えるように。
おわり
管理人さま&皆様 191から 「新しい朝」始まってます。前の名前残してた…
ひ、ひなたぁー!
本編でシナリオのないひなたに日の光を当ててくれたあなたに感謝を。
GJ!
「透さん」「ひなたちゃん」と呼び合う二人に凄まじく違和感がw
(ファンディスクの雰囲気も大好きなもんで)
でも、今頃になって「のがぽじ」のSSをまた読めるなんて嬉しいよ。ありがとー
200 :
199:2005/11/11(金) 15:07:16 ID:+DluuxVc0
「のがぽじ」ってなんだよ…… orz
喜んでもらえて、書く甲斐があるってもんです。
ところで、スレッドは何番目ぐらいであげるべきなんだろうか。長文控えたほうが
いいんですかね。そういうつもりでではないけれど、次は短編で。
「ねがぽじ」より「再会の前に〜美奈萌〜」
本編とは多少異なります。
次回はエロあり載せます。大体出来てるんで。
ん、あれは。まさかね。まだ入院してるはずだし。
友達の家に寄った帰り、いやに見覚えのある人影が向こうの通りの小道に入っていくのを見かけた。
小ぶりの背丈の女の子、何が楽しいのか赤茶の頭をピョコピョコ上下させながら。
追いかけてみようかと思ったけど、結局、しない。人違いかもしれないし。まひるだとしても、
きっと、わたしには追いつけない。ウサギを追いかけるアリスと同じ……。
夜、お布団に入り、今日のことを思い出し、おもわず独り言。
「退院したのかな」
あ、でも、まひるの家はあの辺じゃないか。……スカートもはいてたし。
「今度会うときは男の子なんだもんね」
ゴロン。何となく寝返り。うつ伏せで頬杖つきながら、男の子っぽくなったまひるを想像してみる。
学生服姿で、背を少しだけ高くして、頬も気持ちこけさせて、私の隣に並んで………
ゴロン、ゴロン。また寝返り。何で私の隣?自問の答えを出す前に、別の考えが浮かぶ。
「男の子になったら、もてたりして」
さすがに同級生の子達は戸惑いを見せるだろうけど、下級生の子達には結構慕われてるし。
「上級生の女の人たちから『かぁわいい』とか言われたりして」
―――わたしが先に目をつけたんだから!
ゴロン、ゴロン、ゴロン、パスン。
寝返りに飽きたわけじゃないけど、今度は枕に顔を突っ伏してみる。
……本当に心配なのはわたしの気持ちだ。あの時凍らせた気持ちが溶け出すのが怖い。
わたしのたった一つの願い事は、多分、まひるの側にいること。男とか女とかどうでもよくて、
ただ、まひるの側に。卒業してからもずっと……。
「…もう、寝なきゃ」
じたばたしても、明日は勝手にやってくる。学校に行くんだから。まひるはそこに居ないけど。
翌朝、いないはずのまひるが教室にいた。
今までと変わらない背丈、笑顔、声………スカート。
「………って、あたしさぁ、…あ、みなちゃん。おっはよー」
―――わたしはカバンでまひるの頭をはたいてやった。
結局、変わったのは周囲だけ。勝手に異端なものを見つけ出し、排除しようとし―――。
まひるは変わらないことを選んだ。
そんなまひるの事は、決して揺らぐことの無い、わたしより強い人たち、香澄と透がきっと
守ってくれるはず。だから、せめて、わたしは―――
ベシ。後頭部をカバンで叩く。
「何、みなちゃん、痛いなぁ」
「みなちゃん言うな。あんた、明日までに放送ネタ考えときなさいよ」
「え、何の?」
「放課後、番組始めることにしたから。タイトルは『美奈萌とまひるの午後のティーラウンジ』ね」
せめて、わたしはあなたの”日常”を守ろう。
おしまい
204 :
名無しさん@初回限定:2005/11/13(日) 07:11:44 ID:I0eqa4SK0
ねがぽじ特集かよ なつかしいな
わり しょうもない感想で 間違ってあげちったよ
アンタすげえよ…神様だぁよ。
感想なんて口はばったいもん言えやしねえが、大好きだ。
暮れに実家帰ったら、ひさびさにやるかな、ねがぽじをさ。
そこまで言ってるもらえると、えと、光栄の至りです。照れますな。も少し載せてもいいかな。
>199 いやぁ、ファンディスクどころか最近初プレイの身の上で、あんな感じになって
しまいました。購入すべきですかね、作品スレでも、結構入手しにくそうだし。
それでは予告しましたとおり、エロありの載せさせてもらいます
『ねがぽじ』より「お勉強しましょ」
だぶついた学生服、ところどころ染みまでついて。大きすぎて、きちゃな過ぎて袖のところなんか
折り返したいぐらいだ。でもせめて次の仕送りが届くまでは、この制服で我慢しなくちゃ……。
「あ、ちなみに俺の中学時代のお古ね」
だぁ、すける!人のモノローグに勝手に入ってくんな!
結局、あたしは男として学校に通っている。いろんな悪い噂が、どうもあたしを追い出すために
一部の先生らが故意に流したらしいことが分かり、一応いじめも無くなった。
「まひる、土曜日なのに今日も部活なの、学年末テスト大丈夫?」
香澄が声をかける。
「実は結構危ない、でも行くのだ」
「あ、そ。ところでまひる、数学の範囲変更&絶対出る重要ポイントは聞いてた?――な訳
無いわよねぇ」
慌てて振り返り、香澄がちらつかせるノートに飛びつく、さっと上に逃げられる、飛びつく、
逃げられる。飛びつく………
「うー香澄はあた…ボクのこと嫌いかぁ!」
涙目で腕を振り回す。目一杯背伸びしたところを、香澄に前からムギュっと抱きしめられる。
「やーもう、可愛いんだから!無理してボクなんて言っちゃって」
振りほどこうにも腕力に差がありすぎて…その上、豊満な胸を顔に押し付けられて脱力するばかり。
「駄目だよぉ、こんなところ小鈴ちゃんに見られたら、拗ねられちゃう」
やっと腕を振りほどく。いや、香澄が力を抜いてくれたのか。
「そうよね、まひるには小鈴ちゃんがいるのよね。もう少し、私の愛玩動物でいてほしかったのに」
悲しげに額に手を置きうつむく香澄に、あたしは声をかける。
「まぁまぁ、香澄も他の男の人にでも目を向けてみたら。ほら、例えば、あそこに雄雄しく一人
立つ男なんか、いかがっすか?」
「どれ…ってあれ透じゃない、あ、ノート返しなさいまひる!」
一目散に部室に向かう。でもなぁ、あたしはこっそり思う。
結構二人お似合いだと思うんだけどな。何せ香澄はあの通り完璧星人だし。すけるだってごく稀に
いい事言うし、体育の授業のときなんかたまぁーーーに格好よく見えなくも無いときもあるし…
考えてみるほどに、すけるには香澄は勿体無く思えてきた。やっぱり今のなしなし、片手で空間を
払いながら部室に入る。
「何してるんですか」
目を丸くする小鈴ちゃんにあたしは答える。
「ワイパーの真似」
部室には美奈萌もいた。ノート持ってこなくても良かったか。
**************
ミーティングも終わり、あたしと小鈴ちゃんと美奈萌の3人は部室に残り、しばらくおしゃべりを
していた。
「さぁて、じゃ、お先に」
しばらくして美奈萌が腰を上げながら言った。
「えー、にゃも、もう帰るの」
「にゃも言うな。もうすぐテストでしょうが、あんたも少しは勉強なさい。小鈴ちゃんは頭いいし、
余裕あるだろうけど」
「いやぁ、なんとかなるものだよ、世の中。いじめもあのとおり収まったし」
「おうおう、流石、私のことを二度も振った人の言うことは違いますなぁ。さて、後は若い二人に
任せて、私は失礼しますかな」
「え、何二度もって」
聞こうとしたあたしを無視し、美奈萌は小鈴ちゃんに意味ありげな目配せをして行ってしまった。
あたしは小鈴ちゃんのほうを向いて言った。
「じゃあ、あたしたちも帰ろうか……家来る?」
嬉しそうにうなずく小鈴ちゃん。それを見ているだけであたしは幸福感で胸がいっぱいになる。
****************
うちに着き、制服を脱ぎスカートに履き替える。ん、こっちのほうがやっぱり落ち着く。一応二人で
お勉強会。机は拾ってきたちゃちな作りのちゃぶ台。
「―――だから先輩そこは係り結びだから……」
「あー、なるほど『こそ〜已然形』ね。確か遥か昔に聞いたような…」
「えー、一年生で習うんですもんね」
何故か楽しそうに答える小鈴ちゃん。
一年生と二年生でお勉強、とはいえ勉強が苦手なあたしが小鈴ちゃんに教えてあげられるはずも
無く、逆に教わる始末。
「次は数学かぁ」
数学は流石に教われないな、そんな考えを見透かすように、小鈴ちゃんはにっこり笑いながら言う。
「数学は教えてあげられませんね」
「あう」
うなだれながら返事するあたしを覗き込むようにして、小鈴ちゃんが言う。
「同じ学年だったらよかったんですけどね」
「あう」
「そうしたら学園祭も修学旅行も一緒に行けるんですけどね」
畳み掛けるように小鈴ちゃん。
「留年しちゃいません?先輩。」
「あ……」
今度はこっちが小鈴ちゃんの顔を見る。冗談めかした口調だけど、もしかしたらマジ?小鈴ちゃん
てば小悪魔?ちょっと前のはやりの……。
とりあえずスカートをめくって調べてみる。
「きゃっ、何するんですか、まひる先輩」
「尻尾が無いかと思って」
「もう、私のお尻だったら何度も見てるじゃないですか」
ついでにお尻をなでつつ、あたしはこの小悪魔ちゃんへの仕返しを思いつく。
「ねぇ、小鈴ちゃん、やっぱり柳川先生、転勤するってね」
急に何の話だろ、そんなきょとんとした表情で小鈴ちゃんは返事する。
「ええ、そうみたいですね」
「寂しくない?」
「え、何でです?」
「柳川先生のこと好きだって言ってたでしょ?」
小鈴ちゃんは少し慌てて答える。
「昔の話じゃないですか。それならまひる先輩だって―――」
「だって、あの時、あたしは女だったんだもーん」
「私は!」
少し怒ったように小鈴ちゃんが続ける。
「まひる先輩が柳川先生にいつも素敵な笑顔を見せてるのを見て、大好きな先輩がこんな顔を見せられる
人って、きっといい人なんだろうなって、だから、少し気になってただけで―――いけませんか?」
必死にあたしに語りかける小鈴ちゃんを思わず『そんなことないよ』と抱きしめたくなるのを堪えて
あたしはもう少し続けてみる。
「でもさ、柳川先生だったら満足させてくれるかもしれないよ?」
「何をですか」
「あたしのより、ずっと大きなものがここに入ってくるんじゃないかって事」
下着の上から指でそっと小鈴ちゃんの入り口に触れてみる。小鈴ちゃんはぴくんと体を震わせながら
も呟く。
「そんなこと…関係ないです」
「普通の男の人のが小鈴ちゃんの中を出たり入ったりしちゃうんだよ、どきどきしてこない?」
指をそのまま入り口から、彼女の敏感な尖りまでなぞり上げる。
息が次第に甘くなっていく。
あたしは彼女の背中側に廻り込んで、右手を上着の裾からもぐりこませ、左の乳房をつかむ。
左手の中指は、少し湿り気を持ち始めた下着の上から優しく愛撫を続ける。
「ほら、感じてきている」
「やだ、違います。先輩の指が――息も首や耳にかかって…」
「そう?おっきくて、ふといのを想像してるんじゃないの?こ・こ・に」
あたしの吐息に合わせ、背中をくねらせる小鈴ちゃん。中指を穴に突き立ててあげるとしびれた
ように全身を震わせる。
「そんなの、いや!」
目の周りを赤くして、泣きそうな怒ったような声を小鈴ちゃんが上げた。
「いやです。小鈴の中はまひる先輩のじゃなきゃ、いや。まひる先輩のだけでいっぱいになっちゃう
んだから―――」
強引に身体をこちらに向けると、小鈴ちゃんがあたしの唇を奪う。上気した頬、興奮のあまり、
小鈴ちゃんは自ら舌をあたしの口に中に割り込ませる。
二人で舌を絡ませながら、小鈴ちゃんの下着を脱がせる。両脇の紐をほどいてやるだけだから、
簡単に…あ、でも。
唇を離し、やさしく抱きしめながら耳元で囁く。
「脱がせてあげる前に濡れちゃったね。せっかく期待してはいてきたひもパンだったのに」
さっきよりも顔を赤らめ、やっと呟くようにあたしに言う。
「あまり、いじめないで、まひる先輩」
そんな風に言われたら、可愛くて、又いじめたくなる。今度は直接、小鈴ちゃんのぬかるみを
中指でかきまぜる。わざと音が聞こえるように、でもじらすようにゆっくりと。
くちゅ、くちゅ、―――淫猥なリズム、それに小鈴ちゃんの吐息が加わる。
「ん、あん、やだ、音が聞こえちゃう」
「小鈴ちゃん、おもちゃ買ってあげようか?」
「え?」
「大人のおもちゃ、バイブ。あたしが入れてあげるから、少しずつ。そしたら入るようになっ
ちゃうかもよ、この中に」
くちゅくちゅくちゅくちゅ―――リズムを早めていく。
「いやぁ、いやです、そんなの入れるの」
あたしは指の動きを止め、熱い吐息を耳元にかけながら聞く。
「じゃあ、何ならいいの?」
「え?」
「何ならこの中に入れてもいいの?」
「そんな…言えません」
「じゃあ、あたしの指も駄目なのかな」
あたしがゆっくりと指を抜こうとすると、小鈴ちゃんは切なげに訴える。
「あ、駄目、指抜いちゃ」
「他は駄目なの、指だけ?この中にほしいのは」
くちゅん、指に吸い付く感触を楽しみながら、なおも問い詰めると、我慢できなくなった
小鈴ちゃんはとうとう言ってしまう。
「指でも舌でもおちんちんでも、まひる先輩のだったらほしいの。小鈴、まひる先輩だったら、
おもちゃになってもいいの」
それならとばかりに、あたしは小鈴ちゃんの服もブラもすっかり脱がせてしまうと、両手で
両方の乳房を包み込む。それから、優しく、柔らかくもみ始める。
「ん、ん、あ…」
全てを口にしてしまった小鈴ちゃんの身体は火照り、喘ぎ声の漏れてしまうのも押さえられない。
尖った乳首を口に含ませ、舌で転がせながら更に尖らせていく。
「あ、ん、気持ちいいです」
耐えられない、とでも言うように腰をくねらせながらも、両手はあたしの頭をしっかり抱え込む。
逆の乳首も同じようにしてあげる、喘ぎ声は止まらない。
そのまま舌を身体に這わせながら、左手でふとももをなぜながら、囁く。
「さぁ、足を開いて見せて」
「恥ずかしいです」
「あたしのおもちゃなんでしょ、言うこときかなくちゃ…花びらのところもちゃんと開いてね」
「あ―――ん」
甘えとも嘆きとも取れる声を上げながらも、小鈴ちゃんは言葉には逆らえず、ゆっくりと足を
広げ、両手の中指で花びらを左右に広げて見せた。
あたしは顔を近づける。
「綺麗な色をしてるよ、だけど、すごくいやらしく濡れてる」
「あぁ、いや――」
あたしに言われたことで、自分が淫らになっていることに気づかされ、小鈴ちゃんはますます
昂ぶっていく。花びらの奥が妖しくうごめく。半ば、それに誘われるようにあたしは顔を近づけ、
そのまま舌を入れる。愛液をなめ取るように、あるいは逆にあふれさせるように。小鈴ちゃんの中の
うごめきに従うように、逆らうように、舌を自在に動かしていく。
「先輩―――すごいの、中でくねくねして…」
そういう自分も舌の動きに合わせ、全身をくねらせていることに多分、小鈴ちゃんは気づいて
いない。そんな様子に刺激されて、舌でなおも責めつづける。
「わたし、そんなにされたら、ん、ん、」
それから、敏感な尖りを口に含み、そっと吸いながら、舐め上げる。
「あ、あ―――!」
くねらせていたからだの動きが止まり、切ない声を上げ、身体をそらせ、小鈴ちゃんは
イってしまった。
拭いてあげよ、ティッシュをとりに行こうとする、あたしの右手を掴み、小鈴ちゃんが言った。
「まだ、まひる先輩が」
あたしはいとおしげに髪を撫ぜながら、でも意地悪く言う。
「今、イっちゃったのに、おちんちんでも又、イキたいの?えっちな子だね」
「わたしは、まひる先輩にもよくなってほしいから…だから…えっちな子になっちゃってもいいの」
それから、さっきの仕返しのつもりか、軽くあたしをにらむように見て言う。
「それとも、小鈴の中じゃ気持ちよくなれませんか?」
わたしは少し笑みを浮かべ、おでことおでこをコツンとあわせて言う。
「あたしだって小鈴ちゃんが一番気持ちいいよ」
「じゃあ、来て。先輩」
「…うん」
もどかしげに服を脱ぎ捨てると、避妊具をつける。
ふと、小鈴ちゃんの理性のたがをもっと外してみたくなり、思い付きを言ってみる。
「ねぇ小鈴ちゃん、あたしのこと”先輩”ってつけないで呼んでみて」
そそり立つものを見て、期待に頬を染め、目を細める小鈴ちゃんにあたしは言う。
「え…なんでですか」
「いいから、『まひる』って」
戸惑いながらも、あたしのほうに手を広げて囁く。
「…まひる…おちんちん、ちょうだい」
あたしは彼女の両足を肩にかけると、一息に挿入する。
「は、あ、ん」
一度達したにもかかわらず、中は蠢き、程よく締め付けてくる。
ギチュ、ギチュ、ギチュ。音を響かせながら。
「あ、、ん、おかしくなるぅ」
「苦しいの?」
ギチュ、ギチュ、ギチュ。そう聞きながらもあたしは動きを止めない。
「ううん、よすぎて、おかしくなるの、まひる、まひるぅ」
「もっと、おかしくなっていいよ」
あたしの言葉に泣き声交じりで答える。
「私だけじゃ、いや、まひるも……」
「もうなってるよ、腰の動くのが止められないもん」
「あ、あ」
そううめくとあたしの首筋に手を回し、二人は濃厚なくちづけをする。口の中で別の生き物の
ように、舌が絡み合う。唇をそっと離し、あえぐようにあたしは言う。
「大好き。小鈴の上のお口も、下のお口も」
「うれしい、まひる、あ、あ、あ」
つながったまま、あたしは小鈴の右足を床に下ろす、それから、左足の太腿をしっかりと抱き、
腰を動かして、自分のたぎったものを打ち付けていく。
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ
「ん、ん、駄目、そんな、中で動いたら、こわれちゃうぅ、えぐれちゃうぅ、まひる…だめぇ」
「壊れちゃえばいい……駄目になっちゃえばいい……」
「いっちゃう、まひる、いっちゃう」
ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅ
「うん、一緒にいこう…小鈴、あ、ん」
「まひる、まひる、まひるぅ!」
「あ、、出る!」
「あ――あ!」
どくん、どくん、どくん
甘美なほどの射精感に、二人は抱きあったまま、しばらく動けないでいた。
*********************
シャー。シャワーの音が響く。浴室から声がする。
「今日、泊まっていってもいいですよね?お着替えも借りられるし」
「うん」
返事しながらも考える。今晩、ううん、明日も試験勉強どころじゃないんじゃないだろうか。
『留年しちゃいません?』甘い囁きがこだまする。――それもいいかも……あわわ、考えを打ち
消すように、慌てて両手を振り回す。
と、そこにバスタオル一枚で浴室から出てきた、小鈴ちゃんがあたしの背中に抱きついてきて
言った。
「また、ワイパーの真似ですか?せ・ん・ぱ・い」
おわり
>5.スレッド容量が470KBを超えた時点で、
> ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。
ところでこれってどういう意図のルールなんですか?
埋め立てレスによる容量の無駄遣いを避けるため?
>>216 投稿がスレをまたいでしまうことを防ぐためではないかと
「投稿」ガイドラインだから、レスは関係ないんじゃないか
ってスレ違いだよな、こういう話は……
218 :
名無しさん@初回限定:2005/11/23(水) 15:10:29 ID:8oNj0NW4O
するめ
>>216 単に500KB越えた時点で書き込みができなくなるので、
次スレ立て&誘導が済むまで書き込みを控えておいてくれ。
ってダケの話です。前に一回、誘導出来する前にスレが落ちた
ことがあったので。
まあ、実際次スレに誘導さえできればいいってだけの話なんで
そんなに神経質になることもないですが
220 :
216:2005/11/24(木) 03:07:30 ID:gaH4ztU20
保守
はぴねすスレの住民から紹介を受けやって参りました。
どうかお手柔らかにお願いしますノシ
※今回はどちらかっつーと俺個人の完全な妄想です。
※特に本編のどこら辺の話ってことはありません。しいて言うなら恋人関係になった後か。
※以下すもも嫌いな方、イメージ崩されたくない方はスルー推奨。
ついでにモロなエロ描写嫌いな方もご遠慮くださいw
※どうしても回避したい方は「雄真とすもも、朝のカンケイ。」←この「」内のフレーズか、
私のIDのいずれかをNGワードに登録されることを勧めます。
↓では、下のレスからドゾー
○月×日 △曜日:早朝 雄真自室
カチャッ……
わたしは息を殺しつつ、静かに兄さんの寝室へと忍び込んだ。
時刻は今、7時30分……
さっき自分の時計を10回確認しましたから、間違いありません!
それよりも、早く兄さんを起こさないと、また遅刻してしまいます……
「……」
ゆっくりと、兄さんのもとへと近づいて行くわたし。
兄さんはそんなわたしの動きに全然気づくことなく、静かに寝息をたてている。
そしておもむろに、兄さんの布団をめくり上げ……
「!!!!」
思わずびっくりして、後ずさってしまうわたし。
(はぅぅ……兄さんの……ちょっと大きすぎです……
……でも、ここでひるんじゃったら、兄さんの彼女失格ですよね……)
わたしは意を決して、兄さんの布団の中に忍び込んだ。
そしてどぎまぎしながら、兄さんのパンツに手をかけて……
○月×日 △曜日:朝 雄真自室
……ッ……クチュッ……
下半身に伝わる、妙な感覚。
俺は寝ぼけた頭で、その妙な感覚の正体を考えてみた。
「どうですか……兄さん……目、覚めましたか……?」
(また……すももの夢か……)
これでついに、3日連続記録更新だ。
すももと「兄妹」でなく、「恋人」として接するようになってから、ずっとこうだ。
特にこの数日間は、隙あらばすぐにすもものことが頭をちらついて、
頭がどうにかなってしまいそうだった。
まさか自分が、ここまですももの奴に夢中になってしまうとは……小日向雄真、一生の不覚!!
クチュ……チュプ……ッ
(それにしても……今日は何か妙にリアルな……)
そのまま、すももタンでお待ちください・・・
_
∠'´ `ヾヽ
くi"〈ノ从))〉>
_ ノ从゚ ヮ゚ノ从_
/ ⊂) 条 (つ/\
/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/
| みかん |
>>225d。再開します
「って、な、何だコレっ!!!!」
下半身に伝わる妙にリアルな湿っぽさ、そして俺の布団の妙な盛り上がり……
この符合が示すものは、ひとつ……
ガバッ!!
「あ、兄さん。おはようございます」
布団をめくると、そこには俺の恥ずかしいところを舐めているすももの姿が!!!
「お前……な……何やって……」
「何って……兄さんを起こしてただけですよ」
微妙に起こす場所が間違っている気がするのは、兄さんの気のまわしすぎですか?
「お、お、起こしに来たと言ってもだな、お前……
もう少しその、起こし方ってもんがあるだろうが!!」
「兄さんが悪いんですよ?
兄さん、もうわたしが普通に起こしただけじゃ起きてくれないんですから」
「そ、それは……その……だな……」
「だからこうして、起こしてあげてるんじゃないですか……あむ……ん……」
「って何か普通に舐めちゃってるし!!」
朝っぱらでフィーバーしちゃってる息子にそんな刺激加えられたら、
いくら兄さんでも我慢できませんって!!
「ん……んふっ……ん……ちゅ……
ちゅ……ちゅぷっ……んは……ん……ちゅる……っ」
ん……しかし、何かすもも……妙にうますぎじゃないか……?
「……どうですか? 兄さん……気持ちいいですか……?」
「き、気持ちいいって……その……」
どこでそんなテク覚えてきたんだ、すももの奴……?
と、俺はふと部屋の一隅に目を向ける。
無造作に広げられた本の山……その正体は……
「って、こ、これは!!!!」
それは、ハチが俺に押しつけて帰って行った男のバイブル……もといエロ本!!
それが無造作に読み散らかされているということは……もしや……
「そのとおりですよ、兄さん」
「ぬがっ!!!」
すももが妙な笑顔をこちらに向ける。
「兄さんを喜ばせるために、私……いっぱい勉強しちゃいました!」
「べ、勉強って……お前な……」
「さすがに姫ちゃんほど胸はないですから、胸技は使えませんけど、
そのかわり、お口でなら誰にも負けませんよ」
何ですかその胸技とは……
「それより、兄さんもしてほしいことがあったら言ってくださいね。
わたし、できることなら何でもしちゃいますから」
「そ、そっか? えっと、じゃあ……」
「あ、言わなくてもわかってますよ。兄さんはこうされるのがいいんですよね」
クスッと軽い微笑みを浮かべると、すももは俺の茎のほうに軽く口づけた。
229 :
名無しさん@初回限定:2005/12/10(土) 12:22:19 ID:Bwraxk5x0
まだまだ、すももタンでお楽しみ下さい・・・
_
∠'´ `ヾヽ
くi"〈ノ从))〉>
_ ノ从゚ ヮ゚ノ从_
/ ⊂) 条 (つ/\
/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/
| みかん |
sageチェック効かなかった・・・スマソ
「ここを……こうして……と」
俺の茎を、根元から筋を伝って、ねっとりとねぶりあげるすもも。
その艶めかしい舌の動きが、どうしようもなくいやらしい。
同時に空いてる手で、俺の袋を愛撫するのも忘れない。
「んふ……ん……んんっ……」
雁首の方に舌をたどらせたかと思うと、スッと下へ戻り、
再び根元から舐めあげるのを繰り返す。
異常に期待感を煽るその舐め方のせいで、俺もだんだん抑制がきかなくなってくる。
「ん……あれ……兄さん……?」
「ん……何だ、すもも……」
「兄さんのここから……いっぱい……溢れてきてます……」
そう言うと、すももは俺の鈴口に舌をつけ、その汁をぺろりとすくった。
「んふっ!!」
いきなり訪れた慣れぬ刺激に、俺は思わず声を上げてしまう。
「兄さんのこれ……しょっぱくて……おいしいです……」
口を離したすももの舌から、いやらしい液が銀色の掛け橋となって垂れ落ちる。
普段決して見せることのない、すももの大人な表情。
その光景に、俺は柄にもなくどぎまぎしてしまう。
「ふふ……じゃ少しだけ、手でしてあげますね」
そう言うと、すももは鈴口に指をつけ、手のひらでその液を亀頭全体にまぶした。
ンチュ……ヌチュ……
粘液にまみれた亀頭が、すももの手の中で、卑猥な音をたてる。
「兄さんのこれ……すごく……あったかい……びくびく……動いてます」
ふくふくとやわらかいすももの手が、俺の最も醜いところを扱いている……
そう思うだけで、俺はえもいわれぬ興奮を覚えていた。
「あと、こっちも……忘れちゃいけませんね」
そう言うと、すももは俺の股座に顔を入り込ませ、睾丸を片方そっと口に含んだ。
ちろちろと、可愛い舌の感触が俺の袋に伝わる。
「ん……ぁあ……」
亀頭と玉……感度の違うふたつの地点を同時に攻められ、思わず声を上げてしまう俺。
そんな俺を、すももはうっとりとした表情を浮かべながら見つめている。
「ふはぁ……かわいいです、兄さん……」
「……それを言うな。恥ずかしいだろ」
「……兄さん……」
すももは俺の袋を舐めるのをやめ、再び俺の亀頭に口を近づける。
「もう一度、ここ……舐めても、いいですか……?」
「……あぁ……頼むよ、すもも」
「わかりました……あむ……んん……」
すももは嬉しそうに、俺の亀頭を口に含んだ。
すもものやわらかな舌が、俺の亀頭にねっとりと絡みつく。
「……んはぁ……兄さん……んむ……ちゅ……
んふ……んん……はふっ……んちゅ、んんっ、ちゅ……」
実においしそうに、俺のあそこにしゃぶりつくすもも。
俺はすももの口の暖かさに、思わず下半身がとろけていってしまいそうな、危うい感覚を抱いていた。
まだまだ、すももタンでお楽しみ下さい・・・
_
∠'´ `ヾヽ
くi"〈ノ从))〉>
_ ノ从゚ ヮ゚ノ从_
/ ⊂) 条 (つ/\
/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/
| みかん |
「……はふ……ん……ぁむ……ちゅ……
ん……んん……あふっ、ん……ちゅ……ちゅぷ……っ」
俺は次第に、すももの口の感触を楽しむのに夢中になっていた。
ずっとこのまま、すももの口の中に入れていたい……
だが、俺の下半身はそれを許そうとしない。
亀頭の先にじわじわと湧き上がる射精感に、俺は徐々に耐え切れなくなってきていた。
「っ……すもも……俺……もう……」
声を上ずらせながら、すももに限界が近いことを伝える俺。
「……兄さん……」
すももはこくりと頷くと、俺のものをひときわ強く吸い上げ始めた。
「んんっ、んちゅ……んはっ、ちゅ、ちゅぅぅぅっ」
「んああっ……す、すもも……」
腰が浮き、すももに全てを吸い上げられてしまいそうな感覚。
そしてすももが、更に強く俺のものを吸い上げた瞬間……
ひときわ熱いものが、俺の下半身を通り抜け……
びゅく、びゅくびゅくん!!
「!!! ん、んんんっ!!」
俺はすももの口の中に、ありったけの想いを吐き出していた。
びゅく、びゅく、びゅくん……!!
どくどくと、熱いものが俺の尿道を通り抜けてゆく感覚。
それらが確実にすももの口を汚していくのも構わず、俺は射精の快感を味わい続ける。
「ん、んふぅっ、ん、んんっ……」
やがて俺は、全てを吐き出し終え、ぐったりとベッドに倒れ伏せた。
すももの口から、にゅるんと白濁液にまみれた赤黒い頭が顔をのぞかせる。
と同時に、すももの口から、白濁したものがだらしなくこぼれ落ちた。
「兄さんの……まだ少し溢れてる……わたしが、きれいにしてあげますね」
そう言うと、すももは俺のものを口にくわえ、
未だそこに絡まっている精液を全てきれいに舐めとった。
そして……
「ん……こくっ……」
すももの喉の奥を、何かが通り過ぎてゆくのがわかった。
「兄さんの……ちょっと苦くて……とってもあったかいです……」
「すもも……」
すももの愛に溢れたその行為に、俺はふつふつと熱いものが込み上げてくるのがわかった。
すもも、頑張る
_
∠'´ `ヾヽ
くi"〈ノ从))〉>
_ ノ从゚ ヮ゚ノ从_
/ ⊂) 条 (つ/\
/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/
| みかん |
「えへへ……兄さん」
がばっ!!
すももが急に、俺においかぶさってくる。
そのまま俺たちは、ベッドの上に倒れ込む形で抱き合うこととなった。
ふにゅ……
すもものやわらかい唇が、俺の口に当たる。
俺の欲望を全て吐き出したばかりのそこは、妙に苦くて生臭く、
ものすごくいやらしい空気を放っていた。
「んふ……ん……ぷはぁ」
ひとしきりキスした後、すももはまるで水から出た後のように息を吹き返した。
「ふふ……また……キスしちゃいました」
「すもも……」
全身に心地よくかかる、すももの重み。
すももの体はとても暖かく、やわらかくて、
その感触に思わず溶け込んでしまいそうな感覚を、俺は覚えていた。
「ちょっと前まで……兄さんとこんな風になるなんて……全然想像できませんでしたね」
「そうだな……すもも」
すももと一人の女の子として付き合うようになって、まだ数日。
いろいろと紆余曲折は経たものの、俺たちは今、互いの想いを確かめ合い、
こうして抱きしめあっている。
「すももは……こうなるもうずっと前から、俺への気持ちに気づいてくれてたんだよな……」
「兄さん……」
「すももは偉いよ……こんな不肖の兄のことをずっと想ってくれて……
自分の気持ちに、精一杯答えを出してくれて……
それなのに……俺は……ただ兄妹だっていう理由だけで、
お前の気持ちを受け入れようとせず、ただ逃げ回っていた……
俺は……お前に何て言っていいか……」
「それは……もう、昔のことじゃないですか……」
俺の言葉に、すももが優しく微笑む。
「それに……今は兄さんが、こうして私のことを抱きしめてくれている……
そうでしょ?兄さん」
「あぁ……そうだな」
すももが今、俺の腕の中にいる。
俺たちにとって今一番大事なのは、その事実なのだから。
もちっと、頑張れ
_
∠'´ `ヾヽ
くi"〈ノ从))〉>
_ ノ从゚ ヮ゚ノ从_
/ ⊂) 条 (つ/\
/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/
| みかん |
「もう、この手……絶対離さないでくださいね……兄さん……」
「それはこっちのセリフだ……もう、どこへも行くなよ……すもも……」
「うん……兄さん……大好き」
再びキスを交わし、互いの愛情を確かめあう俺たち。
ふと俺は下半身に、ふたたび血が昇ってゆくのを感じた。
「あ……兄さん……///」
俺の下半身の変化に、すももも気づいたらしい。
みなぎる元気をたぎらせる俺のそこは、一度放ったくらいではおさまりそうになかった。
「すごいです……兄さん……また、おっきくなってきてます……」
俺のあそこによみがえる、すももの口の感触。
激しくいきり立つ下半身の感覚に、俺は我慢できなくなり、
つい懇願するようなセリフを口にしていた。
「す……すもも……俺……まだ……」
「……ダメですよ、兄さん」
「ふぇ!?」
すももの返答に、思わず情けない声を出してしまう俺。
「すももの目覚ましサービスは、1日1回までと決まっているんです。
後は兄さんが自分で何とかしてくださいね♪」
「そ、そうなんだ……あはは……」
「さ、早くしないと朝ごはん冷めちゃいますよー」
そのまま明るい声で、階下へと駆けてゆくすもも。
「……」
(絶対、離さないでください……か)
少しくすぐったいような、それでいてほわっと胸を満たしてくれるような、そんな感情。
「幸せ」ってものを形にするならば、きっとこういうものなんだろうな。
(いっしょに、幸せになろうな……すもも)
俺は微笑みを浮かべつつ、しばらくは言う事を聞かない我が愚息をどう慰めるか、
悪戦苦闘する羽目にあったのだった。
(終わる)
投稿お疲れ様でした
昼休みが終わっちゃったので、仕事終わったらゆっくり読ませて頂きます (o^−’)ノシ
はぴねすはやったこと無いがGJ。しかしこれ、確実に遅刻しそうなw
久しぶりに作品が来ていてGJ
作者も支援者も乙
面白かったよ。
GJ!
ほしゅ
乃絵美でガッツ@104の続きまだっすか?
昨年、「ねがぽじ」大量投稿させていただいた者です。
で、また「ねがぽじ」ネタで、しかも、poetはいってるやつですが、一寸魔がさして
投稿します。
2レス分なんでそんなに邪魔にはなんないかと。ご笑納ください。
他にもss執筆中ですが、「ねがぽじ」香澄ルートと「ねがぽじ」ダークストーリー編
加えて「AngelCore」ネタというマイナー路線ばかりですが。もしかしたらそのうちに。
では、「ねがぽじ」より「君には見せない 誰にも言わない」
「初恋はうまくいかないものだ」 言ったのは小学生の時の担任
自身の未熟さと 神様、仏様が人生修行させるためだ とか何とか
信じきったわけじゃないけど 心に残ってた
だから 告白の返事をもらった時 終わりを恐れた
私だけの天使に抱かれた日
せめて 思い出だけでも残るよう 祈った
この身の 快感を苦痛を なにより あなた自身を忘れないように
見つめ続けた 目を逸らさずに
これが通り魔みたいな きまぐれな優しさでも後悔しないように
「かわいかった」という嬉しい言葉には
可愛げのない言葉で 返してしまったけど
二人が一つになる意味って 約束?それとも絆?
前に考えたことがある 今の答え――どちらでもない
抱きしめ合うのは 未来のためじゃなく 今、あなたが 私が
ここに同じ思いでいる事を 確かめるため…だと思う
「今も 終わりが怖い?」 私は首を横に振る
だって これは只の初恋じゃない 私の一生分の想いをかけた恋だから
神様も片目をつぶってくれるんじゃないかな なんて思ったり
私が図太くなっただけ? ま、いいよね?
**********************
美奈萌が手帳を閉じ、机の上に置いてから十五分後、そーっと別の手が伸びる。
「こらっ!!」
ペシッ。その手を美奈萌が容赦なく叩く。
「あいたぁ」
「絶対見ないでって、いつも言ってるでしょ」
「だってさぁ、美奈萌のことは全部知りたいんだもん」
甘えたように言うまひるに、つい、微笑んでしまいそうになるのをこらえて、きっぱり言う。
「駄目なものは駄目」
「けちぃ」
「そんなことより、お茶淹れて、まひるが持ってきてくれたケーキ食べよ」
「うん、あたし、苺が乗ってるほうね」
「普通、持ってきた人が、自分で言う?」
「たっのしみぃ♪」
―――だってね。そんな事あるはず無いって思いつつも。
もし、読ませたら、まひるが何か思い出してしまいそうな気がして。
誰かに見られたら、まひるにかかった魔法が解けてしまうような気がして。
天使が空へと帰ってしまわないように。
だから、手帳も、この想いも。
君には見せない。誰にも言わない。
準スレで予告してたオトナの起こし方行きたいと思います。
「何だお前かよ!」等のツッコミはヒラにご容赦をw
※時系列的に「雄真とすもも〜」の1日前jの話になります。
※一応一般の方の目を意識して書いておりますが、扱ってるキャラがキャラなので、
同性愛を髣髴とさせる表現があるかも知れません。閲覧時は注意。
また準スレの方にはやや物足りない内容かも知れませんwご了承下さい。
※以下準やすももが苦手な方、イメージ崩されたくない方はスルー推奨。
回避したい方は名前欄かIDのいずれかをNG登録しておくと便利です。
↓でははりきってドゾー
ガラガラ……
「失礼しまーす! 準さんはいらっしゃいますかー?」
あたしのことを呼ぶ、聞きなれた声。
「すもも? 準ならここにいるぞ」
「あ、準さん!」
そう言うと、すももちゃんは嬉しそうにあたしのところまで駆けて来る。
すももちゃんが雄真じゃなく、わざわざあたしに会いに来るなんて珍しいわね。
「よかった……準さん。まだ帰ってなかったんですね」
「うん。今から帰ろうかなと思ってたところなんだけど」
「すみません……いきなり呼び出したりなんかしちゃって」
「いいのよ。すももちゃんならいつでも大歓迎」
実際すももちゃんにこうやって頼られるのって、悪い気はしないしね。
「それで……話なんですが……あの……その……」
「? どうしたの? すももちゃん」
何やら話しづらそうに、目を伏し目がちにするすももちゃん。
その目線が、たびたび横にいるハチや雄真を追ってることに、あたしはすぐに気づいた。
「……すももちゃん。2人でどっか静かな場所に行こっか」
「あ……はい。そうしてもらえると……嬉しいです」
すももちゃんの言葉を受け、あたしは即座に雄真に目線を送った。
「ちょっと……すももちゃん借りてゆくわね。あんまり遅くはならないようにするから」
「……まぁ、すももきっての頼みだしな。よろしく頼むよ、準」
「うん。ありがと、雄真」
「おい雄真……大丈夫なのか?
大事なすももちゃんを、仮にもオトコノコである準と2人っきりになんかさせて……」
「少なくともお前より1000倍は安全だ」
「がーーーん!!!!」
何やらショートコントを繰り広げている男たちを無視し、
あたしはすももちゃんの手を取って言った。
「じゃ、さっそく場所移そっか」
「はい! よろしくお願いします」
「うん……ここならいっかな」
誰もいない学校の屋上。
女2人で腹を割って話をするには、絶好のスポットよね。
「それで……話って何? すももちゃん」
「えっと……ですね……」
少し話しづらそうに、すももちゃんがもごもごと重い口を開く。
「準さんに……教えてほしいことがあるんです……」
「あたしに?」
「……(こくり)」
すももちゃんがあたしに教えてほしいことって……一体何なんだろ。
「……あの……ですね……
準さんが……前に言ってた……その……オトナの起こし方っていうの……
できれば……教えて……ほしいです」
「オトナの……起こし方……?」
そう言えば前に、冗談ですももちゃんにそんなこと言いかけたことあったっけ。
「でも、何で……急に?」
「はい……自分でもわかんないんですけど」
おずおずと、すももちゃんが話し始める。
「以前のわたしだったら……純粋に兄さんを起こしたいという気持ちで、
こういうこと知りたがったのかも知れません……
でも今は……わたしは……兄さんの恋人ですから……
だから……兄さんに妹としてでなく、恋人として、何かできることがあれば……
わたしは、どんなことでもしてあげたいんです」
「そうね……何たって恋人だもんね」
好きな人に、恋人として、喜んでもらいたい……
女の子だったら誰だって、そんな気持ちになって当然だもの。
「それじゃ……これはすももちゃんには、
できれば教えない方がいいかなって思ってたんだけど」
「はい……よろしくお願いします」
早速、2人だけのオトナの授業が始まる。
「オトナの起こし方……一番ポピュラーなのは、お口を使う方法かしら」
「おくち……ですか?」
すももちゃんが、きょとんとした表情であたしを見つめる。
「それはその……兄さんの耳元で、思いっきりわーっと叫んだり……ですか?」
「……雄真の鼓膜が大事なら、それは避けた方がいいわね」
「んじゃあ、どうするんですか?」
「ふふ……それはね……」
あたしは顔に笑みを浮かべつつ、右手の人差し指を1本立ててみせた。
「雄真の元気なコレを、すももちゃんのお口で……パクッ! とね」
「え……え……えええええええええっっっ!!??」
あたしが人差し指をぱくっとくわえるその仕種に、面白いくらい慌てふためくすももちゃん。
準にゃ〜ん、支援
「ええっと、兄さんのあれをこうするってことは、つまりそういうことで、
わたしのお口が、その……あぅぅぅ」
「……ごめんねすももちゃん。落ち着いたらまたお話しよっか」
「はぁはぁ……はい。もう落ち着きました」
さすがにすももちゃんには刺激が強すぎたかしら……少し反省。
「で、それで……兄さんは喜んでくれるんでしょうか……」
「少なくとも、これをされて喜ばない男の子はいないわね」
「そう……なんですか……?」
すももちゃんが少し、怪訝そうな表情を浮かべる。
「実際、身近なカップルとかでも結構やってるみたいよ。
朝の一番元気な時にされるのは、結構キクらしいし」
「ふぇぇ……そう……なんだ……」
すっかり上の空になってしまったすももちゃん。
きっと、オトナの階段の険しさに、驚き戸惑っている最中なんだろう。
「もちろん、やるのはすももちゃんだから、どうしても無理ならやる必要は全くないんだけどね」
「……」
その場でうつむき、何やら考え事に浸っているすももちゃん。
やがてすももちゃんが、意を決したように顔を上げた。
「ありがとうございます……準さん。明日、さっそく兄さんにやってみます!」
「うん……決して無理はしちゃダメよ」
「はい! 今日は本当にありがとうございました!!」
「あ、それとね……」
そのまま踵を返して帰ろうとするすももちゃんを、あたしは急に呼び止める。
「言い忘れてたけど……」
「? 何ですか? 準さん」
「その……今日あたしがすももちゃんにこんな話したってこと、雄真には内緒にしてね」
「兄さんには、内緒……ですか?」
「うん……あたしがこんなこと話したって聞いたら、きっとアイツ……怒るから」
「……そうですね。兄さん、けっこう怒りっぽい性格ですから」
……それだけじゃない。
雄真が、すももちゃんのことを、誰よりも大切に思ってるから……
だから、あたしがすももちゃんに変なおせっかいを焼いたことは、
絶対……アイツには知られてはいけない。
「それじゃ、今度こそ失礼します!」
本当に屈託のない笑顔で、あたしに会釈するすももちゃん。
その顔が、夕日に映えてとても奇麗で……
少しだけ、羨ましくなった。
あたしが雄真にしてあげられるのって、せいぜいこのくらいだもの……
「……あーあ」
ひとりになった屋上で、ため息をつくあたし。
「すももちゃんにここまで思わせるなんて……罪作りだぞ! 雄真!」
自分の中に溜まったよこしまな想いを吹き飛ばすべく、
あたしは夕日に向かって言葉を吐き出していた。
(「雄真とすもも、朝のカンケイ。」
>>223-243に続く)
>>255-263以上です。
ご支援いただいた方、本当にありがとうございました。
次回ははぴねす!レギュラーメンバーで温泉に行く話を予定しておりますが、
書き上げてみたところ、ざっと100レスは越える大ボリュームになってしまいました;
一応全体をいくつかに分けて連載という形をとろうかと考えておりますが・・・
ご意見があれば、ぜひお願いします。
ねがぽじ、投げ放しGを補完してくれてありがたいよ。
なんか、他にあるだろー?ってゲームだったしね。
じわじわ、投下して下さい
>>264 それなら、捨てメアドかなんかで送ってくれるなら
保管サイトの方で掲載してリンクを張り付けることもできるけど
ってか、保管サイト更新しないと。
>264
100レスとは、スゴスギ!
>266みたいに言ってくれてるんだったら、
始めの方をここに投下して、残りを保管サイトさん様方に
掲載してもらうのがいいんじゃない?
268 :
名無しさん@初回限定:2006/01/21(土) 19:00:52 ID:dgf9aZHBO
自分のサイトのページURLを貼付けるの不可?
>268
唐突に貼られても何だな。
あんまり長いんだったら、続きはこちらでって感じが
いいんだが。
あと、粘着を呼び込む危険があるのを忘れないように。
271 :
名無しさん@初回限定:2006/01/23(月) 05:41:52 ID:CwkDhM7fO
>270
いやもう更新できないサイトで短いんだが…現在、当方携帯しかネット環境がないから、コピー&ペーストも不可能で…orz
ちなみにねがぽじもの。
>100レス超え
とりあえずとりとめも無く書いてたらこんなに増殖しちゃったわけで・・・orz
>>266(管理人様)
なるほど、その方法もよさそうですね。
管理人様にはいらぬお手数おかけする事になりますが・・・
とりあえず、もう少し自分でいろいろ検討してみることにします。
どうもありがとうございました。
鎖のSSなんですが、ここに投下してもよろしいんでしょうか?
住民の方、いらしたらご意見をねがいます。
273じゃないんですが、鎖ネタ、たった今、完成したんで、載させてもらいます。
ちなみにここ最近「ねがぽじ」ネタ、投下しまくった者です。
エロ無しですが。
『鎖』より「この世界で――遅れてきた救援者ver.2」
はかない笑顔を見せ、恵は船中に消えていった。恭介は哨戒艇の中から、はっきりとそれを見た。
「船を戻せ!でなきゃ、俺だけでもここから降ろせ!聞いてんのかよ」
乗組員の男たちに向かって吠える、が、通じるはずも無く、錯乱しているとみなされ、恭介は
屈強な男たちに取り押さえられる。
「くそ!くそぉ!放せよ!」
押さえつける男たちの腕の隙間から、炎上する船を睨みつける。
と、思いも寄らぬ方向から叫び声が現れた。
「きゃー!!いやぁー!ここからおろしてぇ」
明乃が。
「やだぁー!どこに連れて行く気ぃ」
珠美が。
「なにするのよ!触らないで!」
可憐が。
次々と騒ぎが起こりだす。乗組員たちが一瞬対応に詰まり、恭介を抑える手が緩む。戸惑う恭介に明乃が
目で促す。「行け」と。乗組員がパニックに戸惑う中、恭介は海に飛び込む。
その背中に明乃は声をかける。
「恭ちゃんならきっとできるから!信じてるからね。恵を、私の親友を必ず連れて帰ってきて」
いざという時にストレートな言葉を出せるのが、明乃の強さかもしれない、と恭介は思う。
ふと、恭介は振り返る。ちはや。本当なら一番に守らなければいけないはずの存在。船へのはしごを上り
ながら叫ぶ。
「ちはや、すまん!」
いろいろな思いを心中に残したままで、恭介は船に乗り込んでいく。
「言い訳は帰ってきてから聞くからね。だから、お兄ちゃん――」
ちはやは、そっと呟き、それから指を組み祈りを捧げる。その背中に可憐が声をかける。
「――あ、そうだ、ちはやちゃん、プラチナの指輪もらったでしょ」
「え、はい」
「あれ、わたしのなんだ。返してくれない」
「あ――はい」
もしかしたら形見になるかもしれない、そんな不吉な考えを振り払うように、すぐに指輪を外し、渡す。
可憐は軽く微笑んで受け取ると、自分の肩越しに、背後へとリングを投げた、海の中へ。
ポチャーン。
騒がしいボートの上からでも、その音は皆の耳に届いた。
「え、えー!何してるの!?」
明乃が頓興な声を上げる。取り上げたと思ったら、そのまま海に放り投げてしまったのだから無理もない。
「ん、何かもう縛られるの、やめよって思ったの。それとついでにおまじない。肩越しにコイン代わりに
指輪を水の中に投げ入れて『また二人に、恭介と恵に会えますように』ってね」
可憐は胸を張り、得意げに答える。
「姉ちゃん、それちょっと違う」
珠美があきれ顔で言う。
「いいのよ、細かいことは」
珠美が言葉を続ける。
「それにだな―――婚約者に『指輪は海に投げ捨てましたって言うよりも』黙ってそのまま突っ返したほうが
より効果的だったんであるまいか」
「あ、そうか、しまった!珠美、『海の中に落とした指輪を見つける裏ワザ』とか知らない?」
慌てて可憐は海を覗き込むが、見つかるはずもなく、あきらめて顔をあげる。燃えゆくバジリスク号。その
炎に少女たちの顔は照らされて。
だしぬけに珠美が大声を出す。今はもう船中にいる恭介に向かって。
「戻ってきたら、映画一回くらいはおごってあげるよー。ポップコーンは半分こだけどねー!」
明乃も精一杯声を張りあげる。
「恵ぃ、夏物一掃セール、一緒にいく約束守ってよねぇ!」
他の娘たちも各々の思いを込めて、船に向かって叫ぶ。
「――恭介ぇ」
「――恵ぃ」
少女たちの声はいつまでも響き続けた。船中の二人に届こうが、届くまいが。
***********************
船中で、悲壮な決心を固めた、そんな目をしている恵を、恭介は見つけた。
「恵!」
その瞳はさらに悲しみの色を深める。
「どうして・・・どうして戻ってきちゃったの!危ないのに!」
「そんな、母さんみたいに怒らないでくれよ」
とぼけた調子で返す。それでも恵の眉間の皺は取れない。仕方なしに恭介も真顔で言う。
「奴の息の音を止めるのは、俺の仕事だ」
恵はその言葉にすがってしまいそうになる気持ちを押さえ込み、両手のこぶしを握り締めて、叫ぶ。
「駄目!やっぱりあなたは手を汚しちゃいけないの!あなたに地獄を覗かせたくないの!」
「もう、とっくに地獄に落ちるだけの罪は背負っているさ。―――怠惰の罪を。犯すためだけに人を殺し
続ける男を、いや、狂った獣を檻に入れただけで、満足していた。怖いからと言うわけじゃなく、ただ、嵐を
自分の身に受けるのを避ける為に・・・・・・俺は、もう、逃げない」
パチ、パチ、パチ
拍手の音が聞こえる。階下から。
「なかなか面白かったよ、少年」
岸田が心底愉しんでいるかのごとく陽気な声をかける。
恭介は岸田を見据えたままで、右手を恵へとのばして言う。
「恵、拳銃を俺によこせ、奴は俺が間違いなく殺す」
いかにも愉快そうに片眉を上げ、岸田が声を上げる。
「うるわしきは極限状態の愛の形か。だが恵、少年に渡すのはやめておけ。所詮彼には人は殺せない。
『お前』とは違う」
挑発には乗らず、恵は自分が持っていた銃を渡す。
「恵は帰り支度をしてな、こっちはじきにけりがつく。きっとこいつが救命ボートの準備をしてるさ、
自殺を望むほど愁傷な奴じゃない」
恭介は一気に岸田へと駆け寄る。
「ほざけ!」
岸田が剣を振る。が、怒りに任した振りなどそれほど怖くない。しっかり、自分の持っている剣で
その一撃を受け止める。
ガチーン、チーン、ガチッ、ガッ、ガッ
何度となく剣を交わす音が響く。そして、つばぜり合い。顔を付き合わせる、と、岸田が、不意に
にっと笑い、恭介に言う。
「お前の妹は俺に犯される時、『初めてはお兄ちゃんが良かったのに』って叫んでたぞ」
「な・・・・・・!」
恭介は思わず動揺する。その隙を岸田は見逃さない。すかさず、恭介の手から黒塗りの剣を弾き飛ばす。
「おしまいだ!この青二才!」
剣を岸田が振り上げる。
ドシュ
鈍く、それでいてはっきりした音がする。岸田洋一の腹に矢が突き刺さる音。
「くぅ、な、何だと・・・・・・」
岸田が倒れ付す。恭介が上を見る、恵。あの時、恭介の手からはじかれたクロスボウを携え。恵が叫ぶ。
「恭介!ボートにキッチンの食料と水、詰め込んだから!ついでにアシストさせてもらったけど!」
「サンキュー。それじゃ、待ち合わせはボートの中な、先に行ってて、俺は止めを刺してく」
恭介はまるで恋人同士が放課後の約束をするような気楽な言い方で言った。
ほんのわずかの逡巡のあとこくりとうなずくと恵は走っていく。恭介は自分をにらむ岸田に、
遠慮のないけりをくらわせる。顔に、最も痛むであろう腹に。思い切り踏みつける。
「ぐがぁ・・・・・・」
やがて声を上げることすら岸田は忘れる。服従の色すら浮かべて。
恭介はあらためて銃を構える。
照準をしっかり合わせ、深呼吸を一回――ためらいではなく――狂気という言い訳を使わないために。
正気のままで確かにこの男を殺すために。
そして、恭介は引き金を引いた。
***************************
救命ボートの中二人は揺られていた。恭介は恵の膝枕に満足げにしている、まるで昼寝中の子猫のように。
頭上から恵が話し掛ける。
「案外、私一人でけりはつけられてたかもよ。むしろ二人で救命ボートに乗ることになって、生き延びる
可能性が減っちゃたかもね」
恭介が答える。
「それでもさ。もし、恵が絶対に大丈夫ってわかってたとしても、俺はきっと船に戻っていた」
「何で?」
ごろん。恭介は膝枕されたままで背中を恵に向ける。少しふてくされたように。
「だって、言っただろ。『恵の事を守る』って。いつだって恵は言うこと聞いてくれないけど、覚えてくれてる
かも、あやしいけど」
くすくすと恵が笑う。恭介は言葉を続ける。
「お前の背中はいつだって俺が守るから」
恭介は再び寝返りをうち、顔を恵のおなかに押し当て、呟いた。
「・・・・・・だから、俺のいない世界なんか、もう選ばないで」
まるで、母に泣きながら訴える子供のように、そのまま、ぎゅうっと恵を抱きしめる。
恵はそんな恭介の髪を、ただ黙ってなでてやる。それから、やさしく微笑んで目を閉じる。
ブォー ブォー
船の汽笛の音が近づいてくる。二人はたゆたう夢の中でそれを聞いていた。
―― 了 ――
乙です。やっぱり、本編にもこういうENDであって欲しかっなぁー。
ただ、惜しむらくは短くて読み足りない。orz
もっとロングverでねちっこく、書いて欲しかったです。
282 :
273:2006/01/27(金) 10:32:04 ID:wa6Z6GIU0
>>275 読ませていただきました。GJ!
私が投下しようとしていたSSも、同じく恵が船に残るENDのアフターで、
みごとに被っていました。 orz
やっぱりあれは、みなさん投げっ放され感が強かったみたいですね。
・・・なんか、安堵。
それでは、投下させていただきます。
鎖の恵エンド補完SSで、『永遠にさよなら・・・After』です。
焔の欠片達が、風に舞い、くらやみに吸い込まれていく。
星々にかわって全天を覆いつくし、紅いの群は、その盛衰の姿を
見る者がなくとも踊りくるうのだろう。
ちりちりとうなじを灼く火の粉にいらつき、既に形くずれしてい
たおだんごを解く。あっという間に海風が髪をさらっていった。
デッキの手摺に両肘をついて体重を預けると、笑いかけた膝が、
少し持ち直してくれた。
焙られて粘度を増していく潮気が、体全体に吹き付ける風にも混
ざって纏わりついてくる。
宴から離れた甲板も、遠からず狂操の舞台になるだろう。
主演女優、 …片桐恵。いや、違うか。
わたしは役を終え、今は舞台袖で物語の結末を見つめている。そ
してエンドタイトルの前に、ここからも立ち去らなければならない。
どこへ?
まばらだけどスケジュールの入ってた手帳。
家に置いてきてしまったんだ。
時折、海風と上昇気流の起こしたいさかいが、髪と制服の襟と、
カギ裂きだらけのスカートの裾を掻き乱す。
ばたつくスカートを片手でなだめていると、ふいにあの日の事が
思い浮ぶ。
「うちの制服って、スカート短すぎるんだよね」
少しふくれた明乃の顔。
風強かったの始業式の日。
ピロティの掲示板に貼り出された、クラス替えの座席表を三人で
見に行ったんだ。
吹き上げるような春風。座席表に気をとられていた明乃は、まと
もにくらって、盛大に…。
あの時はわたしも危なかった。どうした気分だったか、結構大人っ
ぽいのを着けていたから。
しばし恭介以下、居合わせた男子達のディーヴァになってしまっ
た明乃は、帰り道でも珍しい程に機嫌を悪くしていた。
早間がどうとかバイトがなんとか言って、恭介はすでに逃亡。
男って馬鹿。
「太モモ隠せないし、何かみんなに太いって見られるのが嫌」
そう?とか流しつつも、それは同意。
「いいなあ、恵は。スマートで憧れるな、うらやまし過ぎるよ」
出るとこ出てないのに、太モモだけ明乃級なんですけど?
「恭ちゃんも最近、えっちだしさ。話しする時なんかも顔見ない
で、なんか下の方見てるし」
いいじゃない、えっちな恭介くんとは違うクラスになった事だし。
意地悪なわたし。明乃が不機嫌な訳。
いいなぁ、恵は・・・、恵はいいな・・・。
明乃は二、三歩わたしの前に駆け出して、何度か繰り返した。
両手で握った鞄を振り子のように揺らしながら。
そして風が明乃の後髪を揺らして通り抜けていく。
わたしの前髪をかき乱して通り過ぎていく。
「ねえ恵」
修学旅行も、明乃は別行程。
「明日も午後から授業ないしさ」
体育祭は敵同士。
「映画見に行こうよ」
文化祭は違う催し。
「恭ちゃんの見たがってた、あのやつ」
卒業アルバムも別の頁。
「三人で行こーよ!」
明乃は同窓会には呼ばれない。
「今日、見られちゃったから、絶対おごらせてやるんだから」
だけど、わたしは一緒。
「逃がさないで、連れ出して来てねー」
そして体ごと振り返った明乃は、たっぷりある放課後のプランを
楽し気に話し出す。
わたしは、ひどい女だ。
何気ない一言を使い、明乃をたやすく傷つける事ができた。
口にしてはいつも悔んでた。
なんで明乃は、こんなわたしから離れて行かないんだろう。
次の朝、ホームルームまでの時間。
わたしは隣に座る恭介を軽くたぶらかし、放課後のプランを了承
させた。
明乃は映画とパンフとクレープといちごオーレをおごらせて本当
に嬉しそうだった。
恭介はわたしにもポップコーンとアイスミルクティーをおごって
くれた・・・。
昏い水平線に眼を凝らしても、なにも見えない。哨戒艇の船舶灯
は、とうに彼方へ消えてしまった。
ここはどこなのかな。
帰りたかった場所の方向も今は分からない。
そもそも、何もかも投げ打ってでも帰りたかった場所って何処?
そこには何があったっけ・・・。
いつしか口ずさんでいた。
彼が教えてくれた、ありきたりなラブソング。
わたしの耳にすら届く事なく、海鳴りと炎の喧騒に欠き消えてる。
誰とも、群れず、離れず、奢らず、媚びない。
自分の目線はいつもふらついてるくせに、みんなの目線は、結
局あなたに集まる。
いつも見てたの。明乃に紹介されるまで、見ているだけだった。
熱くなって、バカやって、笑い、笑われて、満たされない表情。
どこか欠けてるあなたに気付いて、その欠けてる何かに思い巡ら
す。それはどこかが欠けてるわたし自身の探索だったかも。
あなたと交わす言葉は、あなたを探る、情報収集。
そして、いつしか気付いてしまった。
あなたは、わたし。割れた器の、片割れ同士。
半身を欠いたわたしを満たす、わたしだけのの大きなピース。
でも、これはないしょ。わたしだけの秘め事でよかった。
なんとなく、彼と気持ちが通い合ってたつもりでいたわたし。
なんとなく、彼と『家族』でいたようなわたし。
わたしにとって特別な彼と、彼にとっても特別なわたし・・・。
そんな淡い想いは薄氷のように散った。
日は沈み、闇が帳となってわたしを覆っていた永い時間。
確かにわたしは、彼の血で手を染める覚悟があった。
憎かった。あいつじゃなくて、彼が憎かった。
明乃を救いに飛び出した、彼が憎かった。
可憐や珠美を見捨てた彼が憎かった。
わたしをひとりにした彼が憎かった。
わたしの身体が、こころが、傷にまみれ、穢れ切ってしまっても、
気付かない彼が憎くて、憎くて・・・・・・想いは凍りついていった。
わたしはこの暗闇から這い上がる。代わりにあなたが闇に呑み込
まれていけばいいわ。踏みつけて、使い捨ててあげる。
そう決めて、わたしは心を縛った。
でも本当は違うんだ・・・。そうじゃないの。今は、気付いている。
『彼をこの手に掛けてしまいたかった』
『彼をわたしの全てから消し去ってしまいたかった』
『彼がいなければ、わたしはこんなにも惨めじゃない』
『彼がいなければ、わたしはこんなにも可哀相じゃない』
『彼がいなければ、わたしはわたしを辱めずにすむ』
『彼が、女に絶望すればいい・・・』
『彼が、わたしも含めた全ての女に絶望すればいいわ・・・』
そうすれば・・・、そうすれば・・・・・・。
わたしは、今のわたしを、ずっと、耐えていける・・・・・・。
あの人に拒絶される恐怖に、わたしは狂ってた。
傷つけられ、踏みにじられた大切なもの。でも彼が、身体と心を
浸したのは、自身で切り流す血。そして退かずに俯かずに立ち向か
うのは、傷つき踏みにじられた大切なものを、再び胸に抱くため。
彼が守ろうとしたのは、自分以外の大切なもの。
わたしは、自らすべてを差し出して、何を守ったの?
人としての誇りも、女としての尊厳も差し出してしまった。
あげようと、もらってもらおうと思った時から、大切にしていた
自分は、みんなあいつに取り上げられ、捨てられてしまった。
もう、わたしはいない。
ここにいるのは砕かれて、破片を欠いた、器だったものの残骸。
もう、わたしにはあなたに重なるピースはない。
それだけは、あなたに知られたくなかったから・・・。
あの人の心から切り出される事におびえ、狂っていたんだ…・・・。
あの人に抱かれるまで気付かなかった。
わたしのすべてがあの人の身体に触れられ、溶け込んで、あの人
がわたしのすべてになっていくまでは。
男のことを、もう分かったつもりで、見切ったつもりいた。
男は女の深淵を、決して分かりえないと思っていた。
でも、生まれながらに女のわたしは、生まれながらの男の性など
知りえない。あの人の苦悩など、知る気もなかった。
あなたの欠いていたものは、わたしの欠いているものは違うもの。
同じピースを欠いた器がひとつになりえない、当り前の話。
ばらばらに砕けたわたしの欠片は、あの人がひとつひとつ拾い上
げ、繋ぎ合せてくれた。
そして自分の一部を割り取って、わたしの器に大きな欠片を加え
くれた。
馬鹿なのは女。愚かなのも女。わたしの嫌いな、女の、性・・・。
彼の紡いだメロディは、最後となった日常に、わたしへを連れ戻
してくれる道標。
ねえ、かみさま。
わたしも星座になって、あの人を守りたい。
あの人の時間の半分でいいから。
あの人が天に還る時、替わってわたしが地の果てに堕ちるから。
・・・ああそうか、わたしは今更気付いている。
あの人が守ろうとしたのは、あの日の続き。わたしが帰れる場所。
わたしは何をしていたの。
すべてを壊して、わたしは告げた。永遠にさよならなんて、彼の
心を抉る手応えに酔いしれながら、別れを告げた。
最後まで後悔している。いい気味だわ、恵。
スカートのポケットに入りきらない拳銃。もう海に投げ捨てよう。
響き渡る爆発音と逆巻く旋風が、わたしの退場を奏でてくれるメ
インテーマ。お似合いよね?
刹那、衝撃と、激痛に変わる灼熱。左の足から崩れ落ちる。
そして遅れてくる・・・爆発音?
違和感が、急速に不安へと膨張していく。まさか・・・、いや、で
もわたしは確信する。なぜ突然、左の太腿にシャフトが生えてるの?
振り向くと、あいつが笑ってた。本当に嬉しそうに、声もなく嘲笑っ
ていた。幽鬼のような影をゆらして。
わたしはそんなに可笑しいかった・・・?
「いやいや、何が可笑しいものか。お前は最高だよ、片桐恵!お前を
女として扱ってしまった事を済まなかったと詫びようと、黄泉路を
引き返して来たのさ」
確かに胸を打ち抜いて、確かにあいつのシャツは血に染まった。
泣きながら、動かないあいつの頭を、何度も何度も力の限り蹴り
飛ばした。
でも、動かないあいつが炎の海に沈んでいく前に、わたしはロビ
ーを後にした。あいつのそばで死ぬのは嫌だったから。
「詰めが甘いとは言わない。ご褒美とはいえ撃たせてやったんだか
らな。残念だが、まだ俺に門は開いてくれないらしいぞ」
シャツの裏地からオイルライターを取り出し、わたしに投げてよ
こす。
銃弾が食い込み、ライターの反対側はささくれ立っている。
「頭をサッカーボールにされた方が、応えたよ」
首をひねって見せた。
左の太腿に突き刺さったシャフトは、身を捩るたびに気が遠くな
りそうな痛みをもたらし、涙が滲む。・・・くやしい。
「さあ、そろそろ俺は次へいく。お前なら、連れて行ってやっても
いいと考えているんだが」
どこへ連れってくれるのかしら?
「ここにこういうものがあるんだが?」
ポケットから取り出した手帳らしいものでひらひらと扇ぐ。
あれは・・・ウチの生徒手帳?
誰の・・・?わたしのじゃない。当り前だ、修学旅行じゃあるまいし
あんなもの、遊びの旅行持ってくる訳がない。制服だって、明乃が
着て来いって言わなけりゃ。・・・まさか。
「母親は不謹慎極まりないが、娘は品行方正みたいだなぁ。お前のよ
うに賢しい優等生ではなくて、可愛げがあるじゃないか」
明乃の生徒手帳・・・。
「お前たち、同級生なんだろ?ほほぅ公立かぁ、なら家も近いんじゃ
ないのか?幼馴染の恭介くんも、ご近所さんなんだろうなぁ」
あなた、船から船へ渡り行く、洋上の殺人鬼でなんでしょ?
声が震える。痛みのせいじゃない。皮膚が粟立つ震え。
「あの少年はヒット作だ。あんなに楽しませてくれたら、続きも気
になるじゃないか?」
血が冷えていく。
「是非とも、続編を希望する」
心が冷えていく。
「たまには陸も恋しくなるもんだ。ここじゃ楽しい出会いが限られ
てくる。久しい刺激に出会えば尚更な」
これ以上、どうする気よ・・・。これ以上どうしようっての・・・?
分かりきってる。
「少年からもらえるものは、お前だけじゃなさそうだ」
生乾きの傷を、抉られる思い・・・。ふるえて視界が揺れる。
「妹さんには、中途半端なことをしてしまって、悪かったと思って
るんだ」
心が、冷えていく。
「豚の娘も、心残りではあるしな」
やめて。
「お前も、死屍累々の挙句に、傷だらけのヒーローと傷つかないヒ
ロインだけがハッピーエンドって話は好みじゃないだろ?」
やめて。やめて・・・。
顔を上げ、涙で濡れた顔をあいつに向けるのはくやしかった。
「一緒に見に行こうか?送り狼ちゃん。お家に帰りたかったんだろ?」
行かないわ。
続編は、期待外れに終わるものよ。
「ほう?」
あそこには、行かせない。絶対、行かせないの。
「そうかぁ?」
けれんなく放たれたシャフトがわたしの左肩を灼熱に包む。左半
身を奪う激痛。苦悶。突っ伏した甲板はぬるく濡れそぼっていた。
「まぁ、お前にはお前の終焉の美学があるだろう。」
肩をすぼめ、残念がるパフォーマンスが、歪む視界の端に覗く。
「じゃあ、俺は行くぞ。この船にはお前だけだ。お前から貰ってお
くものは、さすがに無いだろうしな。この船にももう用はない。直
に燃料室に火が回る。先に門を開けて待っていてくれ、マイシスタ−。
少年に会えたら、伝える言葉はあるかい?」
・・・あいしてました、で、よかったかあぁぁぃぃぃ・・・・・・?
あいつの声は嘲りを含んで遠ざかっていく。歩み去っていく。
ようやく顔を上げた時、あいつは陽炎のように消えていた。
幻であって欲しい。悪夢の続きであって欲しい。でも、わたしの残
されているこの耐え難い痛みは、あいつの存在証明・・・。
あいつは、わたしから、本当にすべてを奪った行った。
そして、あの場所をも奪いに行った。
彼が守ろうとした、わたしの帰れたかもしれない、あの場所を。
ポップコーンを憮然と差し出した、あの表情が浮かんだ。
ありがとう、と戸惑っていると、飲み物を買っていた背中が振
り返る。恵は、冷たいミルクティーでいいんだろ?
しょうがないなって、はにかんだ顔。財布を広げて逆さに振る。
そのうしろには戦利品を抱えた明乃。上機嫌で、早く入ろって・・・。
声にならない絶叫が、響き渡り、わたしの身体を震わせた。
この叫びは慟哭じゃない。業火にも海嘯にも消されない。
絶対に奪わせはしない。絶対に壊させはしない。
わたしは立ち上がる。不思議と痛みは去っていた。
ポケットの拳銃には、まだ弾が残っているんだから。
制服のスカーフで太腿をシャフトごと縛りつける。幸い大きな血
管は傷ついていないみたいだ。そうでなければ、もう血を失って死
んでいる。左肩のシャフトは一気に引き抜く。指先まで血が滴るの
にまかせたが、なんとかなりそう。
バシリスク号から脱出する。
最短で為すべき事を、脳裏に列挙する。
出来る出来ないは走りながら考えよう。
甲板の救命ボートは引き出されたままだったはずだ。
ロビーから這い寄る熱気で髪が燃え上がりそう。
圧縮空気のボンベから安全ピンらしいのを引き抜くとびっくりす
るような勢いでオレンジ色の物体に成長していく。
大丈夫みたい・・・かな。
知らず止めていた息を継ぐ。
船体は火災を起こしているが、防災設備が機能している。鎮火は
期待できないが、まだスプリンクラーは海水を撒き散らしている。
船内で火が回っていないエリアは、ある。
しかしプロムナードには炎が長い舌先をさらしている。
この足で駆け抜けるのは可能?
そもそもこの火災は、船首ロビーの吹き抜けを粉塵爆発させて起
こしたものだ。こうした客船は各エリアがそれぞれ防火構造になっ
ている。一気に火炎は船内を駆け抜けているだろうけど、その炎や
煙もある程度の範囲で封じ込められているはずだ。
特に、あいつが口にした燃料室。ここに火の手が回るのは2Fの
床が焼け落ちる時。
あいつは後ろからわたしをクロスボウで射抜いた。
あいつは船尾側から現れ、船尾側へ消えた。
あいつがバシリスク号から脱出する際に、わざわざ船底の一番奥
にある場所へ、火を掛けに行く必要があっただろうか?
否。
とすれば、甲板の非常口から船底に降りれば、まだ無事な燃料室
を通って2Fの調理室までは行ける。防火扉が、客室ゾーンの火災
から、まだ作業ゾーンを守っているだろう。
もし、あいつが機関部や燃料室に火を放っていたら、この非常口
を開いた時、どうなるか。
空気を吸い込んで一気に爆発炎上し、船の構造体が持たず崩れる。
電気系統や発電設備が損壊すれば、防災設備と排水設備が沈黙し、
いずれ船体が傾き始める。衝突でに開いた大穴から海水が流れ込ん
でくれば、半刻を保たず、バシリスク号は太平洋に消える。
非常口に手を掛けるが、熱くはない。祈ることなく一気にハッチ
を開く。様子をみるが大きな空気の流れはない。いけそうだ。
滑り落ちるように燃料室に降りて行く。足より左肩が痛くて脂汗
がにじむ。
船底は未だ平穏だった。
燃料室に何か持ち出せそうなものは無いか、見回す。いくつかの
ロッカーが眼に入り、開けるとオレンジ色の服が掛かっていた。取
り出して見るとどうやら防火服のようだ。酸素ボンベもある。
僥倖だった。急いで一番小さいものを何とかして身に付ける。が、
左腿のシャフトが引っ掛かり、足が通せない。意を決して引き抜く。
激痛をかみ殺し、傷口にハンカチをねじ込みスカーフで縛り上げる。
時間を無駄に出来ない。
防火服はボンベとマスクまで合わせると少し重かったが、意外と
動やすそうだった。
足を引きずりながら忌まわしい機関室に入る。クランクシャフト
が目に入り、血の気が引いていくのが分かった。
船員らの私物の入ったロッカーやキャビネットがあり、無造作に
開くと、戸裏には誰かの家族らしい写真が貼ってあった。
少しだけ眼を瞑ろう。
ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい・・・。ごめんなさい・・・。
涙が滲んでくる。
みんな、帰れるはずだった。
摘み取られてしまった、いくつもの、平凡な未来。
・・・わたしが、あいつを門の向こうに連れて往く。
そして今はもう、感傷を捨てよう。
持って行ける物には限りがある。
肩から下げられる道具袋には、一通りの工具とヤスリやワイヤー
ブラシ、接着剤など役立ちそうなものがコンパクトに詰め込まれて
いた。
釣り道具もあった。少し考えて、糸や針なんかが入っているツー
ルボックスを、道具袋に詰め込んだ。
救急箱も見つかった。鎮痛剤やガーゼ、消毒薬が入っているのを
確認して、少し気が楽になった。貴賓室にある志乃さんの医療キッ
トが欲しかったけど、3Fから上は火の海だったので、半ば諦めて
いた分モチベーションが上がる感じ。
あと、着替えの入ったカート付の旅行カバンがあった。まだ洗い
立てのタオルやシャツを残して他を取り出してスペースを作る。
ざっと見繕った戦利品をまとめ、とりあえずここに仮置きしてお
いて、いよいよ2Fへ上がる。マスクとボンベを装着し、ハッチに
手を掛ける。
やはりロックはしてなかった。すんなり開くハッチの向こうは煙
こそ薄いが、キナ臭い。2Fの通路の先で水密扉が閉まっている。
3Fロビーを隔てる扉からは、はっきりと白煙が漏れ出していた。
あせりを感じる。
急いで厨房で水と食料を調達しよう。左半身は麻痺しかけている。
防火服の内側は、血と汗を吸った制服が肌に張り付いている。
缶詰やレトルト、真空パックらしい食材や、小麦粉などのの乾物
を選び、ひとまとめにしていく。生ものは諦めざる終えない。
ミネラルウォーターの入ったポリタンクをどれだけ持っていくか
が問題だった。生存に必要な水は、一日どれだけの量なんだろう?
10L入りのタンクを3つ、持って行こう。
一日1L。一ヶ月分は持たせられよう。想像したくはないが、公
海上で、それ以上の漂流に身体が耐えられるかどうか、という思い
がある。
食材を船底の倉庫から運び込むハッチがある。料理用のタコ糸を
寄り合わせたもので、それらを一度船底に下ろす。水を下ろすのは
骨が折れた。身体の自由が利かなくなってきているのを感じる。腰
を降ろすと、そのままになりそうだ。
壁に寄りかかりながら階段室に辿り着くと、煙が充満していた。
船底に降りるハッチに取り付き、重い身体を引きずり込むが、足
に力入らずタラップを踏み外してしまった。あちこちをぶつけなが
ら、下まで転げ落ちる。息が出来ず、苦悶する。。顔は涙と汗でぐ
ちゃぐちゃになっているはずだ。
今になり、あいつの思惑を感じる。一割の希望を残し、それに縋
って足掻く者を、・・・突き落とす。
3Fへの扉が開放されたままなら水も食料も、手に入らなかった
はずだ。脱出を急ぐ者が、戸締りに気を回すはずが無い。
唇を噛み締める。・・・でも、あいつはどこで、舌を出す気だろう?
恐らくは、救命ボート・・・。
船首で見たあれには何かある。あれは嘲うあいつの足元にあった
んだ。
とにかく、甲板に戻ろう。
厨房から下ろした水と食料、船底での戦利品を燃料室の非常口の
下に運び込む。甲板に上げる事を考え、気持ちが折れそうになる。
少し休もう。
膝を抱えて座り込む。左肩と左腿の感覚はない。重く、身体に付
随した塊に成り下がっている。
あとどれだけの時間が残されているのか?まだ電気は生きている。
火災は収まっていない。むしろ拡大しているようだ。スプリンク
ラーが何らかで止まったのかも知れない。
船内に響いていたはずの非常放送やサイレンも、いつからか聞こ
えなくなっていた。
遠くで轟音と振動が起こっている。
もう・・・、疲れちゃったなぁ・・・。
じわりと涙が溢れる。洟をすすり上げる。膝に顔を埋める。
ここはわたしひとりきりの世界。
スーパーマンは、もうここには来ない。
怖い。寂しい。
こわい、時間・・・。さみしい、世界・・・。
でも。
あの歌が唇からこぼれ落ちていく。
涙が頬を伝い、唇に届く。
いくつかの顔が浮かんだ。数時間前の事が、ひどく懐かしい。
みんな、今何をしてるのだろう。
死んだような眠りの中かな。
でも、あなたはきっと、わたしを想って眠れない。これは確信。
わたしは意地悪な魔女だから、気になるあなたに、ついつい呪文
をかけちゃったのよね。
羊でも砂男でも、あなたに安らかな眠りを提供出来でしょう。
悪かったわ。
ちろりと舌を出してひとり微笑む。
呪文は解きに行ってあげるから。それまでわたしも眠らない。
跳ね起きる。
怪我してる手足がついてこず、もぎ取られるかのような激痛が全
身をかきまわす。
ね、眠気覚ましにはきつかったかなぁ・・・。
全身が硬直する激痛が、何故か心地よいスパイス。
荷物を小分けにし、荷造り用のナイロンロープで括る。それをま
た一つのヒモにまとめて口に銜える。
竪穴の頂上にある非常口を目指し、タラップをよじ登る。
ハッチを抜け、甲板に転がり出ると、そこは緋色の空間。
頭上を仰ぎ見ると、ブリッジが巨大なファイヤーストームとなり
天を焦がしていた。
口に銜えたナイロンロープを解き、ひとつひとつの命の糧を引き
上げる。慎重に、滞りなく。
簡単に火に包まれるものはない。わたしは懸念の救命ボートへ駆
け寄る。・・・やはり、あいつめ!!
救命ボートに以前の張りが消えていた。空気が抜けている。
奥歯を噛み砕かんばかりに噛み締める。
明らかに、どこかをわずかに破られている。針で突いたように。
あと、天幕も根元で切り裂かれていた。これでは、陽射しも雨風
も避けられず、被る波を防ぐことも出来ない。
これで海原へ漕ぎ出していればどういう運命を辿るのか。
この場で修繕は無理だ。時間も必要な道具も材料も分からない。
穴を穿たれた場所が船底だったらお手上げだ。遠からず、沈む。
でもわたしは他人事のように冷静でいた。
あいつの頭の向こうが透けて見えていた。
あいつの消えたプロムナードは、炎の舌が舐め尽している。
灼熱の、あの先には何があったのか。わたしは知っているもの。
救命ボートの収納ボックス。小さいやつが船尾甲板の左右に張り
出していた。乗船前にこれから乗り込む船体をなんとなく眺めてた
時、明乃が教えてくれたんだっけ。救命ボートって、小さな船がそ
のまま吊るされていると思ってたんだ、実は。
あいつの残した解答はそこにある。
あいつにとって、わたしは使い古したベビードール。
もう思い出すことも無い古びたおもちゃ。
でも、捨てる間際に愛着が湧く上がるのかしら?
あいつはわたしに構わず船を去ればよかった。足や肩なんか狙わ
ず、わたしの胸を射抜けばよかった。
けど、そうしなかったのは、・・・なぜ?
もう、わたしは行動に移っていた。
張りを失った救命ボートに甲板に引き上げた荷物を放り込み、括
りつける。手近の救命浮輪を幾つか引っつかんできて、何本かに切
分けたビニール紐を救命ボートの周辺に結わえつける。
なんとか甲板の手摺が外れるところを見つけ出し、救命ボートを
海面へ突き落とす。無事着水したのを確認できて息を継ぐ。
ここからが、本番だ・・・。
防火服のフードを被り直し、マスクを着ける。圧縮空気のボンベ
を調整し呼吸を確認する。誰もこのスタイルが正解かを教えてくれ
ないけど、行くしかない。
もうプロムナードは火の海だった。一歩踏み出しただけで、視界
紅蓮に染められる。足を引きずり、甲板へ急ぐ。
都合、4度爆発に曝され、一度は海に投げ出されかける。
不思議なものだ、わたしはあいつの優等生。そんな自負がある。
ちなみに彼は、手のかかる問題児。
くすっ・・・。
1000度を超える地獄、門の向こう側の世界がここにあるのに。
なんだか、おかしい。
ストレスを感じない。
痛みも感じない。夢見心地。
わたしの身体って、あきれちゃう・・・。本当に痛いのが嫌いみた
い。・・・この、裏切りもの。
体感時間は狂ってる。いつ、側舷のプロムナードを抜けたのか。
わたしは炎の回廊を抜け、船尾にいた。
呆けた一瞬のあと、目指したものが、視界に入った。
マスクと、防火フードを剥ぎ取る。
手前には、救命ボートを吐き出した収納ボックスが。
その先に、閉じられたままの収納ボックスが、・・・あった。
動かない足を引きずり、取りつく。切り離しに使う爆発ボルトは
そのままだ。全体を見回す。表面になぞられたものに気付いた。
『BON VOYAGE!』
血文字だった。
吹き出しちゃうセンス。
どうも、ごていねいに。
バアウゥゥゥゥゥゥゥンンと響き渡る爆発音。
器用に膨らみ、広がりながら落下していくオレンジ。
わたしは防火服を脱ぎ捨てた。
なんていう身軽さ。
なんていう清々しさ。
風が髪を解きほぐしていく。
わたしは、まだ、ここにいる。
海原に顔を向ける。
蒼い、薄墨を流した風景が広がっていた。
水平線に消え行く星座たちに別れを告げる。
わたしは、今、ここから飛び立てる。
そして、あなたに、会いにいくわ。
あなたから抉り取ったものを返しにいくの。
そしたらかわり、あなたから分けてもらうんだ。
あなたの一部を。
ううん、ちょっぴりでいいから。
もう、絶対失くさないから。
それで、ひとりの時間は終わるから。
黎明の海原。
わたしは恭介のいたあの場所へ向かって、飛び込んでいった。
その直後の記憶は薄い。
我に返った時には、濡れねずみで救命ボートの中だったし、荷物
を託して先に放り出したボートも手繰り寄せ、その載せ換えも終え
ていた。どうやら、七人の小人がやってくれたみたい。
・・・・・・感謝。
朝日が眼に痛い。
バシリスク号は、もう水平線の向こうに消えていた。
たなびく煙が緋色に染まり、空へ続いていた。
天に届く柱のように。
海は優しく、ゆりかごを揺らす。
わたしはいつしかまどろみに落ちていく。
おやすみなさい、恭介。
先に寝ちゃうわね。
女はずるいのよ。
悪いけど。
303 :
283:2006/01/27(金) 12:51:14 ID:JNnZKCCp0
拙文、お目汚し致しました。
タイトル横の総レス数が18だったり19だったりとか、
見苦しいミス、多々あり。
申し訳ないっす・・・。
304 :
275:2006/01/27(金) 13:40:41 ID:Yj9TEG6Y0
いろいろ、謝ることがありまして。
とりあえず、タイトル:誤)救援者→正)救援 です。
元のゲームを尊重する意味で。内容的には特に違和感は無いと思います。管理人様も
誤タイトルのままで全然問題ないです。よろしくお願いします。
>281 乙メッセージありがとう。
本当ならねちっこく行きたかったんですが、どうも描写より、書きたいことを先に書いてしまう
癖がありまして、今後の課題だと思います。精進させていただきます。
>283
抜け駆けのような形で申し訳ないです。こちらとはまた違った雰囲気の作品なようで。
また読ませていただきます。
>管理人様
保管サイトにも行かせて貰いました。本当にお疲れ様です。
ところで、投稿の際にハンドルネームつけてもよいでしょうか。以前、一通り投稿し、
気が済んだと思ってたのですが、どうもまだまだ書きたいものが出てきてしまって。
新たに自分に活を入れる意味でも名乗りたいのですが、いかがでしょうか。
次回は多分、ねがぽじか、鎖のちはや編あたりを18禁モードで投稿させてもらおうかなと、
思ってます。完成はしてないですが。
前回「次回は温泉の話で」と言ったくせにこんな話書いてました。スミマセン。
余興と思ってお納めください(余興と言う割には25レスもありますが・・・orz)
※作品別スレPart13の
>>433-465あたりの皆様にこのSSを捧げますw
※一応「魔法とHのカンケイ。」のあるHシーンにヒントを得て書いてますが、筆者が未プレイですので、
あえて元ネタの存在を無視して私の脳内妄想だけで書かせて頂いてます。ご了承ください。
※以下小雪嫌いな方、イメージ崩されたくない方はスルー推奨。
(作品別スレじゃ春姫しかいないって声が多かったんですが、あえて小雪さんで)
ついでに極端な羞恥表現やアブノーマルなシチュを好まれない方の閲覧もご遠慮下さい。
※どうしても回避したい方は「小雪、ナイショの野外授業。」←この「」内のフレーズか、
私のIDのいずれかをNGワードに登録されることを勧めます。
↓てなわけで下のレスからドゾー
○月×日 △曜日:放課後 私立瑞穂坂学園
「……一体何のつもりなんだろ、小雪さん」
俺の手の中にに光るのは、何の変哲もないひとつの指輪。
今日の昼休み、『Oasis』に寄った帰りに、小雪さんから手渡されたものだ。
『今日の放課後……この指輪を持って……いつもの公園に来ていただけますか……?』
「って……言われてもなぁ……」
小雪さんの行動がなかなか読めないのは、今に始まったことではない。
こと小雪さんと正式に付き合い始めてからは、小雪さんのこういった
突飛な行動に振り回されるのも、一度や二度じゃなかった。
だから……こういう時、あまりその理由を深く考えても仕方ないってのは、
俺が一番よくわかっている。
でも……
思い出されるのは、俺に指輪を渡す時の、小雪さんの表情。
まるで何かを思いつめているような……何やら決心を決めかねているような……そんな表情。
一体小雪さんは、何を思って、俺にこの指輪を託したんだろうか……?
「……」
俺はふと、小雪さんから渡されたその指輪に興味を抱いた。
そっと左手を広げ、その人指し指に、その指輪を静かにはめてみる。
………………
「……って、はめたからって何か起こるわけじゃないよな」
少し苦笑を漏らす俺。
そうだよな……小雪さんの指輪だからって、いくら何でも……
と、俺は廊下の向こうに、見覚えのある人影を発見した。
「ん? 柊?」
廊下の向こうから、おそらくバイト帰りであろう柊が、疲れた表情でてくてくと歩いてくる。
「柊……今バイト終わったとこか?」
「……??」
俺の声に、立ち止まって不思議そうな顔をする柊。
あれ? こいつ……俺のことに気づいてないのか?
「ほーら、どうした柊? 疲れて俺のこともわかんなくなっちまったか?」
柊の意識を呼び戻すかのように、柊の顔の前で手を振ってみる俺。
しかし柊は俺に反応するどころか、何やら怯えた表情であたりをきょろきょろ見回している。
「まさか……幻聴よね……アハハ……あたし、疲れてるんだわ」
……幻聴? 俺は確かにここにいるのに?
そのまま心ここにあらずといった体で、ひたひた歩き出す柊。
「って、ちょっと待てよ柊」
「ひぃっ!!!!」
俺が柊の腕を掴みかかった瞬間、柊がものすごい勢いで驚くのがわかった。
「雄真が……雄真が……化けて出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
そのまま短距離走の選手もびっくりな勢いで、廊下を駆けて行く柊。
「何だよ……変なヤツ」
そんなことさらに驚く必要なんてないだろうに……
……と、俺はふと横の窓のほうに目をやった。
そこには、何の変哲もない学校の廊下が反射して映っている。
……ただ1つを除いて。
「……???」
俺は思わず、その窓に顔を向けた。
俺の姿が……映って……いない……?
まさか……俺はちゃんと、ここにいるはずなのに……
「……まさか」
俺は左手にはめた指輪に、目を向ける。
「……」
俺は静かにその指輪をはずし、改めて窓の方に目を向けた。
……そこには俺の姿が、ちゃんときれいに映し出されている。
「……」
指輪をはめ、窓の方を見る。
いない。
指輪をはずす。
いる。
指輪をはめる。
いない……
「……」
これで疑問は確信に変わった。
この指輪をはめた者は、その時だけ、周りから見えなくなってしまうのだ。
そして、さっきの柊の反応から察するに……
この指輪は、姿を隠すことはできても、その声までも隠すことはできないのであろう。
しかし、俺の唯一にして最大の疑問……
小雪さんがなぜ、こんな不思議な指輪を俺に託したのか……
そこまでは、うかがい知ることはできなかった。
「……公園へ急ごう」
とりあえず公園に向かえば、小雪さんの真意もきっとわかるはず……
危険防止のため指輪を一時はずし、俺は小雪さんの待っているであろう公園へと走って行った。
○月×日 △曜日:夕方 公園
「はぁっ、はぁっ、はぁ……」
俺は息を切らしながら、側にある木にもたれかかっていた。
確かに小雪さんはあの時、ここで待ってると言った。
しかし……
探せど探せど、小雪さんの姿は微塵も見当たらない。
「……くそ……」
どこに行ったっていうんだ、小雪さん……
……と。
「……あの……雄真さん……?」
「?」
後ろから聞こえてくる、謎の声。
それは確かに……小雪さんの声だった。
「小雪さん……いるんですか? そこに……」
「はい……」
確かに声は聞こえるものの、いくら見渡しても、それらしき姿が見当たらない。
きっと……小雪さんもあの指輪で、姿を隠しているんだろう。
「よかった……もう会えないかと心配しましたよ、小雪さん……」
「……」
しかし……
こうやって姿を隠されてたら、まともに会話なんてできやしないぞ。
「……小雪さん……このままじゃ、小雪さんの姿が見えませんから、その……
もしよかったら……指輪……はずしていただけませんか?」
「!!! それは、その……」
俺の頼みに、妙に敏感に反応する小雪さん。
「……すみません……指輪は……その……はずすわけにはいきません……」
「でも、それじゃ小雪さんの姿が……」
「すみません……そのかわり、雄真さんもその指輪、つけていただけませんか……?
それできっと……私の姿も、見えるようになるはずですから……」
……?
何だか妙なことを言うな、小雪さん……
別に姿を見せるだけなら、わざわざ俺まで姿を隠させる必要なんてないだろうに……
……だが、これ以上姿の見えない相手に、ひとりごとみたく言葉をかけているわけにはいかない。
俺は小雪さんの言うとおり、指輪をはめてみることにした。
シュン……
その瞬間、小雪さんの言ったとおり、小雪さんの姿がスライドショーのように映し出された。
しかし、その姿に……
「!!!!!」
俺は思わず絶句していた。
生まれたままの姿に、三角帽子とブーツだけというあられもない格好で、
地べたにしゃがみこんでいる小雪さん。
全裸にブーツというその倒錯的な姿が、逆に俺の興奮を煽る。
確かにこんな格好じゃ、指輪なんてはずせるわけないわな……
……って、そうじゃなくて!!!!
「な、何て格好してるんですか小雪さん!!!!」
「あ……あ……あの……///」
俺の言葉に、顔を真っ赤にしながら、言葉をどもらせる小雪さん。
「こ……この前また……雄真さんの考えていることが……見えてしまいまして……
その……雄真さんが……こういったことをご所望だったようでしたので……」
「あ……」
そういえば少し、思い当たる節があるぞ。
確かに俺は、小雪さんと外で、こういったことをしてみたいと思ったことはある。
しかし……それはあくまで、森の木陰とか体育館の裏側とか……
人目につかない場所でっていう条件つきであって……
こういう……衆人環視の中でっていうのは……全く、想定していなかったわけで……
「あ……あの……小雪さん……」
「そ……そうですよね……雄真さんはやはり、こういった格好はお好みではなかったんですよね……」
「い、いえ……格好というよりも……その……」
さすがに今からここで始める気にはなれません。俺。
しかし……
「すみません……私、少し……早とちりしてしまいまして……
雄真さんが……ご所望でないとあらば……私……」
すごくがっかりした表情で、傍らに置いてあった服に手をかけ始める小雪さん。
……何か、このままじゃ、ちょっとかわいそうな気がしてきたぞ。
せっかく小雪さんが、俺のために、恥を偲んで頑張ってくれたっていうのに……
「……ちょっと待ってください、小雪さん」
「……?」
服に手をかけたまま、涙目でこちらに振り向く小雪さん。
「雄真さん……?」
「やりましょう……小雪さん」
「え……あ……でも……」
「小雪さんは、俺に喜んでほしくて、頑張ってくれたんですよね……だったら……
俺は……そんな小雪さんの気持ちを……無駄にするわけにはいきません……」
こんな所で小雪さんを抱くのは、まだ少し抵抗があるけど。
「……雄真さん……」
「それに……小雪さんが俺のために、そんな格好してくれたんだって思うと、俺……」
「……?」
きょとんとした表情で、上目遣いでこちらを見つめる小雪さん。
うぅ……そんなにじっくり見つめられると、何だか照れ臭いぞ……
「雄真さん……?」
「あの……何つーかその……すごく嬉しくなっちゃうじゃないっすか……」
うわ……何変なこと言ってんだよ、俺……///
「……!!」
俺の言葉に、思わず笑顔をぱぁっとほころばせる小雪さん。
「よかった……喜んでいただけて……嬉しい……です」
普段あまり表情を表に出さない小雪さんの、満面の笑顔。
こういう時、俺はいつも、小雪さんの恋人でよかったなぁって実感するんだ。
「それでは……その……優しくしてくださいね……」
「……わかりました、小雪さん」
俺は小雪さんをそっと抱き寄せ、優しくキスをした。
「あふ……ゆ……雄真さん……」
立ったまま木の幹にしがみつく格好で、こちらに訴えかけるような目線を送る小雪さん。
その荒々しい幹の表面と、小雪さんの白くて滑らかな肢体とのギャップが、
俺にさらなる興奮を呼び起こす。
「ここ……もう、こんなになってる……」
「あ……やぁっ……」
きゅっと狭められた小雪さんの股の間から奇麗なおつゆが滴り、夕日にきらめく。
俺はその付け根に指を這わせながら、小雪さんの耳元で呟く。
「ずっと……期待してたんだ? 小雪さん……」
「そ……そうなのでしょうか……私……」
「だって……ここ……もう、こんなに滴って……」
「あ……///」
小雪さんの愛液でねとつく指先を目の前に見せて、小雪さんの羞恥心を煽ってみる俺。
「いや……私……こんなに……///」
「言い出しっぺのくせに……こんなに……濡らしちゃって……いやらしいんだ。小雪さん」
「そ、そんなこと……あ! はぁっ……」
小雪さんが何か言いかけたところで、俺は再び小雪さんの股の付け根に指を差し入れた。
小雪さんの蜜壷から、とめどなく愛液がほとばしり、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立て始める。
「はっ、あぁっ、あん、んふっ……あっ、あああっ……
んあぁっ、あっ、はふっ、んんっ……」
膣口を絶え間なく襲う指の刺激に、絶えず歓喜の声を上げる小雪さん。
ふと俺は、小雪さんからもらった指輪の特性を思い出した。
「……感じてるんですね、小雪さん……」
「あぁっ、ぁはっ、ぁぅ……」
「でも……そんなに大きな声出したら……みんなに、聞こえちゃいますよ?」
「!!!」
俺の言葉に、思わず全身をぴくりとさせる小雪さん。
小雪さんもきっと、その意味するところに気づいたんだろう。
「せっかく指輪で見えなくしてるのに……みんなにバレちゃっても、いいんですか……?」
「そ……そんな……あ、ふぁっ」
小雪さんが答え終わるのを待たず、俺は更に膣口への愛撫を続けた。
「んっ、んんっ、んふっ、んん……」
周りへバレてしまうのを警戒してか、顔を真っ赤にし、必死で声が出るのを我慢する小雪さん。
その姿に、俺はどうしようもない欲情を感じていた。
「んんんっ、んふ、ん、んんっ……」
徐々に涙目になり、自由になりたいと言わんばかりに、お尻をふり始める小雪さん。
気のせいか、そこから滴る愛液の量も、少しずつ増えてきている気がする。
思いどおりに声を出せないもどかしさが、逆に小雪さんの被虐心を煽っているのだろう。
「すごく……かわいいです……小雪さん……」
「ん……んんんんっ……」
顔を紅潮させながら、やるせなさそうにこちらに視線を送る小雪さん。
……ふと俺の中に、小雪さんへの征服欲が、ふつふつと湧き上がってくるのがわかった。
小雪さんのことを、もっと、メチャクチャにしてやりたい……!!
コッコッコッ……
折りしも公園の向こうから、年老いた夫婦がこちらに歩いてくるのがわかった。
俺たちが今ここでやっていることにも気づかずに、平和そのものといった表情で散歩を楽しむ老夫婦。
「……小雪さん……」
「……雄真さん……? え……」
俺は小雪さんを後ろから羽交い絞めにし、そのまま小雪さんの体を老夫婦の方へと向けた。
指輪をしてなかったら、小雪さんの裸体が完全に老夫婦の目に晒されてしまってる状況だ。
「……やっ……っ……」
小雪さんは身をかがめて体を隠そうとするが、所詮女の人の力だ。
身を縛る俺の力を振りほどくことはできない。
更に俺は小雪さんの両足に手をかけ、そのまま両足をぐいっと広げてみせた。
小雪さんの蜜滴る花弁が、あられもなく夫婦のもとに晒される。
「あっ……雄真さん……こんな……格好……」
「静かにして……小雪さん……」
「あ……」
俺の言葉に、ムチに打たれた犬のごとく、体を硬直させる小雪さん。
そして俺は小雪さんの花弁に手をかけ、そこを指でゆっくりと押し広げた。
小雪さんの膣内の奥の奥まで見えて、とてもいやらしい光景だ。
「……っ……!!」
迫り来る羞恥心に、思わず身を固くする小雪さん。
「……小雪さん……」
小雪さんの耳元で、俺はそっと囁く。
「……え……?」
「このままの格好で、最後まで我慢できたら……小雪さんに、ご褒美あげますね」
「あ……」
そして俺は、右手に輝く小雪さんの指輪に、そっと手を触れた。
「少しでも声上げたら……これ、はずしちゃいますから」
「……」
小雪さんはしばらく涙目でこちらを見つめていたが、やがて意を決したかのように頷き、
そのまま正面を向いた。
「……っ……」
目を閉じて、唇をつむり、迫り来る羞恥心に必死に耐えている小雪さん。
その気になれば、空いてるもう片方の手で、いくらでも恥ずかしいところを隠せるはずなのに……
小雪さんはそれをせず、ひたすら自らの羞恥心と戦っているのみだ。
………………
……それから、どれくらいの時間が経ったのであろう。
小雪さんの被虐心を煽った平和な老夫婦の姿は、いつの間にやら影も形もなくなっていた。
辺りに再び訪れる、2人きりの静寂。
「……もう大丈夫ですよ、小雪さん」
「あ……」
静かに目を開け、誰もいないことを確認する小雪さん。
「よく……頑張りましたね、小雪さん」
「あ……うぅ……っ」
小雪さんは思わず顔をくしゃくしゃに歪ませ、俺の胸元へと飛び込んできた。
「う……うぅっ……ぐすっ……」
緊張の糸が切れたのか、俺の胸元でひたすら泣き咽ぶ小雪さん。
……時間にしてみれば、ほんの数十秒程度のことだったのかも知れない。
だけど、小雪さんにしてみれば、きっと永遠より長い時間に思えたに違いない。
俺は、俺のためにここまで懸命に恥ずかしさと戦ってくれた小雪さんが、すごく愛おしく思えて……
俺は思わず、小雪さんを強く抱きしめていた。
「雄真……さん……おいたが……過ぎますよ……っ……んんっ……」
俺はそのまま、小雪さんが泣き止むまで、小雪さんの頭を優しく撫で続けていた。
……やがて、泣き止んだ小雪さんが、おずおずと顔を上げた。
「雄真さん……」
何も言わなくとも、小雪さんの言いたいことは全てわかっていた。
「お約束です……雄真さん……ご褒美、下さいね……」
「……あぁ……」
俺は頷き、自らの膝の上に、小雪さんをまたがらせた。
小雪さんの下では、俺のものが、今か今かと唸り声を上げている。
「ゆっくり……行きますからね……小雪さん……」
「はい……雄真さん……」
そのままゆっくりと、俺のもの目がけて腰を降ろしてゆく小雪さん。
そして俺のものが、静かに小雪さんの秘密の場所を貫き……
「!! あ、はぁぁっ……」
ようやく訪れた挿入の瞬間に、思わず歓喜の声を上げる小雪さん。
あんまり長いこと周囲の目に晒されていたせいか、小雪さんの膣内はしっとり濡れそぼり、
いとも簡単に俺のものを受け入れる。
肉棒に絡みつく粘液の感触に、俺はどうしようもない快感を覚えていた。
「雄真さんのが、あっ、私のを貫いて……あっ、あぁっ……
はぁっ……雄真さんの……凄い……ですぅ……あっ、はぁっ、くぅぅっ……」
あまりの快感に耐えかねたのか、小雪さんが俺の上で腰を振り始める。
その度に、膣壁が俺の雁首をなぞり上げ、痺れるような快感を俺に与えてゆく。
「っ……小雪さん……ちょっと……ヤバすぎ……」
このまま小雪さんにこすられまくったら、すぐにでもイッてしまいそうだ……
俺はあわてて、小雪さんの腰を押さえつけ、腰の動きを無理矢理制止させる。
「ゆ……雄真さん……?」
「小雪さんは、少し、休んでいて下さい……後は、この俺が……」
そう言うと、俺は小雪さんの腰をつかんだまま、ゆっくりとピストンを開始した。
「あ、ふぁぁっ、あ、はぁっ、んっ、ふぁぁっ……」
下から次々と突き上げられる感覚に、力の抜けた表情で歓声を漏らす小雪さん。
……もはや俺たちに、周りの視線を気にする余裕はなくなっていた。
ただひたすら、お互いの体を貪ることだけに夢中になっていた。
「小雪さん……っ……くぅっ……」
最後と言わんばかりに、小雪さんのあそこに腰を打ちつける俺。
「ふぅぅ……ん……雄真……さぁんっ……んぁ、はっ、あぁぁっ……」
小雪さんの子宮が、俺の子種を誘い出すがごとく、ぎゅうぎゅうと俺のものを圧迫する。
その刺激に後押しされ、俺の下半身に、じわじわと射精感が訪れるのがわかる。
このまま一気に、小雪さんの膣内(なか)で、果ててしまいたい……!!
「……小雪さんの、中で……っ……!!」
「……雄真……さん……あっ、あはぁ……っ」
俺は下半身に溜まったものを押し出すがごとく、小雪さんの奥底を深く貫きだした。
その度に、小雪さんの体が小さく跳ね、痙攣した子宮が俺のものを激しく締め上げる。
そのうち、互いのピストンの数も減り、ただひたすら子宮の圧迫に任せ、
互いの絶頂を待つだけとなってゆく。
「いやっ、ああああっ、雄真さん……雄真……さぁん……」
「小雪……さんっ……あぁ……」
びゅくっ、びゅくっ……!!!
小雪さんが俺のものを一気に締めつけるのを合図に、俺は小雪さんの奥底目がけて放っていた。
同時に絶頂を迎えた小雪さんの子宮が、より強く、俺の子種を搾り取るべく収縮を繰り返す。
びゅくん、びゅくん、びゅくんっ……
「あぁっ……雄真さんのが……私の……中に……っ」
膣内に熱いものを注ぎ込まれる感覚に、恍惚とした表情で耐え忍ぶ小雪さん。
「はぁっ、はぁっ……」
やがて全てを吐き出し終えた俺は、背中の木に寄りかかり、激しく息を切らしていた。
「……雄真……さん……」
小雪さんもまた、全身の力が抜けたように、ゆっくり俺の上へと負いかぶさってきた。
「少し……疲れてしまいました……しばらく、こうさせてくださいね……」
「……小雪さん……」
そのまま俺たちは、つながったまま、幾度もキスを繰り返していた。
「……雄真さん……」
「……何ですか? 小雪さん……」
俺たちは今、お互い素っ裸になって、夕暮れの芝生に寝転がっている。
「こうやって……お外で裸で寝転がっていますと……何だか……動物さんになったような気分です」
「はは……そうっすね」
今更ながら、自分たちの滑稽な状況を省みて、苦笑いを浮かべる俺。
「でも……雄真さんといっしょでしたら……
また……こういうこと、やってみるのもいいかも知れません」
「……そうですね。たまには」
始めは小雪さんの突拍子もない発案で始めたことだったけど……
いつしかすっかり、この行為に病みつきになってしまってる自分がいる。
「でも……あくまでたまには、ですね。あんまりやり過ぎたら、
今度は普通のHじゃ満足できなくなっちゃいそうですから」
「クス。そうですね」
小雪さんの笑顔が、俺に安らぎをくれる。
小雪さんの行動には、俺はいつでも驚かされっ放しだけど……
たまにこんなおいしい思いができるんだったら、それもいいのかも知れないな。
「さて……そろそろ服着ちゃいますか。あまりこうしてると、風邪引いちゃいますから」
「そうですね。もうあたりも暗くなり始める頃ですし」
俺たちはさっそく、脱ぎ散らかしっ放しにしてた服を集め始めた。
そこへ。
「……あれ?」
公園の向こうに、何やら見覚えのある人影がやって来るを発見した。
「あれは……神坂さん?」
「!!」
思わぬ伏兵の登場に、思わず俺の背中に隠れだす小雪さん。
そんな小雪さんに、俺は優しく声をかける。
「大丈夫ですよ小雪さん。この指輪がある限り、俺たちの姿は神坂さんには見えっこありませんから」
「……ですが……」
「心配でしたら、そのまま俺の後ろに隠れてて下さいね」
「……」
そのまま俺の背中に、ぴったりとくっつきだす小雪さん。
やがて神坂さんが、俺たちの近くに通りかかり……
そこで、ふと立ち止まった。
(……!?)
今、ひょっとして、目が合った……?
んなわけねーよな……指輪もこうしてちゃんとつけてるわけだし……
しかし、俺の思いとはうらはらに……
「……!!!」
何を思ったのか、いきなり顔を真っ赤にさせる神坂さん。
「あ……あ……あの……///」
その場に立ち尽くし、何やら口をぱくぱくさせている神坂さん。
そして……
「し、失礼しましたっ!!!」
そのまま大慌てで、神坂さんは公園を去って行ってしまった。
ま……まさか……今のって……
俺は思わず、後ろでうずくまっている小雪さんに目を向けた。
「小雪さん……これは……どういう……」
「……すみません……雄真さん……」
いや、そこでいきなり謝られても……
「確かにこの指輪は……つけた対象の存在次元をずらして、
周りから見えなくする効果がありますが……
ですが……その魔力にも、限界がありまして……
……神坂さんクラスの使い手ですと……簡単に……見破られてしまうんです……」
「な、何だって!!?」
ということはつまり、俺たちは神坂さんに、この恥ずかしい姿をバッチリ見られて……
……ふと俺は、目の前が真っ暗になるのがわかった。
バタッ
「……ごめんなさい、雄真さん」
薄れゆく意識の中で、俺は二度とこんなプレイはしない……そう固く心に誓ったのだった。
(終わり)
>331
すでに落ちてます。
ここで、はぴねす!のss読んで、よかったのでHPにいって、ほほ〜と思う。次は、体験版おろすんだろうな.
下手したら買っちゃたりして。まんまとといった感じだ。>おれのばあい
やたら、ねがぽじ書かせてもらってるものです。
今回も「ねがぽじ」ものではありますが、透とまひるで。 ファンディスクの世界は無視の方向です。
ネタバレあり エロなし 電波風味 という三重苦そろってますがよろしかったら。
ガンパレマーチ(ゲームのほう)に多少影響されたような、関係ないような・・・
予告してたものを仕上げる前にこんなものを・・・勢いで書いてしまいました。
それでは「ねがぽじ」より「屋上にて」
放課後、透は一人で屋上へと向かった。校内にあまり残りたがらない彼にとって珍しい事だ。
人の波に逆らうように階段を上っていく。それから、少し、重めの扉を開ける。と、先客がいた。
多分、この学校で一番屋上を愛する者。透が笑い掛けながら言う。
「まひるは本当に高いところが好きだな」
「透だって来てる」
「今日は特別だ」
「え?」
疑問に答える気は毛頭ない透は、ただ言葉をつづる。
「知らないだろうけどさ、なるほど、お前が愛するだけあってこの屋上にはさまざまな物語の可能性があるんだ」
まひるが戸惑っているのが分かるが、透は気にしない。ただ、遠景を見つめ、ゆっくり語る。
「・・・例えばここは、本当の気持ちに気がつかないようにしていた二人が、勇気を見せて、互いに一歩を踏み
出したところ」
遠くを眺めやっていた透は屋上の出入り口のほうへ体を向ける。言葉は続けたままで。
「また、ある時は、強がりで、人には笑顔しか見せない誰かさんが、思い切り泣いていい、涙を見せていい人を
見つけた場所だった」
スタン、スタン、スタン。透はアンテナ検査用のかすがい状の上り口を使って、屋上の入り口の屋根へ
―――いつもより更に空に近い場所へと上っていく。
慌てて、まひるは後を追う。何度か跳ねてかすがいに飛びつくが、なかなかうまく上れない。
「下からパンツが見えるぞ」
いつもの調子で透が軽口を叩く。
「誰もいないでしょ」
「そうだな。校舎に残ってる人ももう、ほとんどいないはずだ。それで、この高さにいるのは俺たち二人
だけ――この町の中で、もしかしたら世界で――そう錯覚してもいいか」
「一体何を言って…」
背を向け下界を眺めていた透が不意に振り返り、両手を広げる。
「そして、この屋上である男は、自分の力と頭脳さえあれば不可能など無いと信じていた男は、
世界とひきかえにしてもいいほど愛している、ただ一人の人の事すら、本当には救えないことを
思い知らされるんだ」
再び透はまひるに背を向ける。
「いろいろな未来の中で、確かに男とその人との距離はけして遠いものではない。けれど一番近く
には成り得ないんだ。それならいっそ」
透は何となくといった感じで空を見上げる。しかし、両のこぶしはしっかり、握りしめて。
「駄目だよ、透」
まひるには何のつもりか知る由も無い。それでも、何か言わずにはいられない。
「落下も飛翔もたいして変わらないさ」
透は、鳥のように、あるいは十字架のように、両手を真横に伸ばすと、ためらうことも無く、屋上から
この世に別れを告げた――はずだった。
「バカ透!」
透の頭の上から、まひるの声がする。右手で透の襟首をつかみ、もう片手ではアンテナの台を抱え込んで。
「おかしいな」
透は思わず口に出す。振り返った時、まひるはまだ上りきれていなかったはずなのに。
「まったく、お前はいつも俺の計算外だ」
せっかく、家にいかにもノイローゼの学生めいた遺書を残しておいたというのに。こちらは
心の中だけで呟く。
「こんのぉ、バカ透、よく聞け!あんたの左手のほうに雨どいだかパイプだかがある。それで右足の
方に釘、じゃなくてえーと、くないじゃなくて」
「ボルトか?」
「多分それ。それがあるから、それ使ってどうにか上がってきて。スケルだって嫌でしょ、あたしと
心中みたいになったら、どんな噂になるか」
「死んじゃったら、関係ないだろ」
「ぐ・・・・・・」
噂か、まひるとだったら望むところだけどな。そんな考えを頭によぎらせながらも、透はおとなしく
言うことに従う。手を離すなんて選択肢がまひるにあるわけがない。
*****************************
「ふぁ〜。一生分の馬鹿力使い果たした〜」
ぺたんとまひるがへたりこむ。
「流石に俺も」
仰向けに寝転がり、空を見上げる。
――あぁ、青いな。さっきから散々空を見ていたはずなのに。今、気づいた。
雲ひとつ無いはずなのに、影がよぎる。まひるの顔。怒ってる。
「もう、スケルとなんか絶交だ」
「当然だな。それに――」
言葉の続きを遮るように、まひるが言った。
「でもね、駅前の『ラ・メール』のスペシャル・パルフェ&ホットショコラをおごってくれたら、
許してやってもいいよ」
透が驚いて上半身を起こす。と、次の瞬間、まひるはもう、満面の笑顔を見せていた。
「安い友情だな」
皮肉に聞こえるのを覚悟の上で透が言うと、何てことも無いようにまひるがこたえる。
「知らなかった?友情はけして高いものじゃない――でも、非売品なんだよ」
「敵わないな、まひるには」
あたりまえか、太陽相手に勝てる奴なんていない。雲にその姿を隠されたって、当の太陽はちっとも変わらずに
中で輝いているんだ。仕方ないと思いつつ、ちょっとだけ抵抗。
「なぁ、『よしかわ』のクリームあんみつで手を打たないか」
「わ、この人、安い友情を更に値切ろうとしてるよ」
「今、懐具合が悪くてさ、よしかわなら何とかツケが利くから。仲直りは早いほうがいいだろ」
「んー、じゃ、香澄と美奈萌と小鈴ちゃんと、ついでにひなたも連れて皆で行こう。勿論、透のおごりでね」
「・・・・・・かえって高くつくじゃないか」
まひるは腰に手を当て、胸を張り、高らかに宣言する。
「は、は、は、あたしの勝ちぃ」
お日様を前に俺たちがすべき事。手を広げて、全身でその陽を浴びればいい。それから、お日様に
向かって、ただ、二カッと笑えばいい。
ほしゅ
【先生は誰】
食卓でぼんやりしていた俺の腕を取り、ミオが言った。
「ショーイチ、お風呂入ろっ!」
「うん……? かなでは?」
「ごめん、翔ちゃん。ご飯遅くなっちゃうから……。ミオちゃんをお風呂に入れてくれないかな?」
料理の用意をしているかなでが、キッチンからすまなそうに言う。
――今日、店じまいの時間遅くなっちゃったからな。
「ねっ、ショーイチぃ?」
じゃあ、俺が入れるか。
「ん、そうだな。ミオ、晩飯の前に入るか」
「うんっ。じゃあ先に行ってるね」
ミオが風呂場に駆け出していく。
パタパタパタ……。
「わーい、ショーイチとお風呂だぁー!」
姿は見えないが、風呂場のほうからミオの声が聞こえてきた。
やれやれ……なにがそんなに嬉しいのかねぇ。
「み〜ちゃん、もうすっかり甘えん坊になっちゃったねー……モグモグ」
出来たてのおかずをつまみ食いしながら、茉理が言った。
「お兄ちゃん、うれしいでしょ〜? み〜ちゃんにお風呂に入ろっなんて言われて。
お兄ちゃん、『ちっちゃくて可愛い』女の子が大好きみたいだし」
「……おっきくてひねた妹より、ちっちゃくて可愛い娘のほうが好きかもな」
「ほぅほぅ、いわゆるひとつのロリ――痛っ! お兄ちゃん、頭にチョップしないでっ!」
ひょい、ぱくっ――新しい獲物を口に入れながら、茉理が言葉を続けた。
「モグモグ……。初めの頃、お兄ちゃんとお風呂に入るの恥ずかしがってたの、嘘みたいだね」
「うふふっ……私は嬉しいな。ミオちゃんが、翔ちゃんのこと好きでいてくれて」
テーブルとキッチンを往復しながら、俺たちの話を耳にした、かなでが言った。
「おねえちゃんがここに来てから、おねえちゃんとお兄ちゃん、み〜ちゃんのパパとママになっちゃった
もんね。モグモグ……おおっ、これはなかなか!」
俺とかなでが恋人同士になり……やがて、かなでがここに住むようになってから、
いつの間にか、そんなふうになってしまっていた。
――それはそれでいいと思っている。
「あ、そうそう。お兄ちゃん、おねえちゃん。み〜ちゃん、なんか性に目覚め始めたみたいなんだけど……どうしよ?」
初耳だった。
「どうしよって言われても……。かなで、何か思い当たることあるか?」
「え? うん、一緒にお風呂入ってるとき、たまにね……。『おっぱいっていつ大きくなるのかな』とか、
『どうして毛が生えてるの』とか聞かれたかな……。私はミオちゃんに、その……生理が……来たらそういうこと、
きちんと教えようと思ってたんだけど」
なるほどね……。
「あたし、この前み〜ちゃんに『赤ちゃんってどうやってできるの』って聞かれたから」
「あ、教えたんだ?」
「うん。キャベツ畑でとれるって答えたよ――てぃひっ!」
それ、だめだろ……。
「あ、でもでも……お兄ちゃんは橋の下で拾ってきたって言っといたから――。み〜ちゃん、ものすごく同情してたよ。
ショーイチ可哀想っ、にゅーんって」
……自分の身の上と重ねて、ひとごととは思えなかったんだろうなあ。
「おいおい……。俺と買い物行ったとき、橋のたもとで悲しそうに俺を見たぞ……それかよ……」
「みぅ……茉理ちゃん……」
「え……?」茉理が、俺とかなでを見て、しょんぼりと項垂れる。
「うう……ごめんなさい。み〜ちゃんに、ちゃんと取り消しとくよ……」
「でもさ、橋の下で拾ったなんてのは、親からよく言われる話なんだよなぁ」
「あっ……。うんっ」茉理に笑顔が戻る。
「言われたことあったよ、おとんに……あたし本気にして泣いたもん、あははっ」
母さんはそういうことを言う人ではなかったが、親父には言われたっけ……。
「えへへっ、私は言われたことないよ?」
かなでは……まあそうだろうなぁ。
「お兄ちゃんっ、お兄ちゃんっ……この家には一人だけ良い子がいるみたいだよ?」(ヒソヒソ)
「うん、一人だけ良い子がいるな」(ヒソヒソ)
「えっ、で、でも、ミオちゃんは良い子だよ、悪い子側じゃないよ?」
「いーや、み〜ちゃんはあたしたちの仲間だね。見てればわかるもん」
「かなでだけが良い子か、残念だなあ」
「他の三人と仲間はずれかぁ。おねえちゃん、かわいそう……ぐすっ」
「みう……」
何の話だったっけ――そうそう、ミオの話だった。
「性教育ね……こころがけたほうがいいんだろうな、俺も」
「あー、お願いするよ。お兄ちゃん、おねえちゃん。あたし、何だか恥ずかしくてさ……」
「ふふっ」
茉理が妙に恥ずかしがるのが意外だったか、かなでが小さく笑っていた。
「あのさ、主にかなでがミオに教えてやってくれないか……俺も、ちょっと言いにくいこともあるし……」
「そうだよね……うん、任せて。私、ちゃんと教えるよ。でも、翔ちゃんも、茉理ちゃんも、協力してね?」
「わかった。あたしも協力する……でも、男の子パートはお兄ちゃん担当だよ?
お店には女の人ばっかりで、お兄ちゃんしか男の人いないんだから」
「……何か、責任重大だな」
トタトタトタ。
「にゅーん、ショーイチ遅い〜」
「あっ、駄目だよ、ミオちゃん。はだかでうろうろしたら」
「おっ、み〜ちゃんはだかだー。……ハァハァ」
「うう〜、まちゅり、なんかやだー」言って、胸を抑えるミオ――下は隠さなくていいのか。
「だって、ショーイチがいつまでたっても……」
「うんうん、そーだよね〜。ほらほら翔ちゃんっ、ミオちゃんとお風呂お願いね」
「おう――じゃ、風呂入ってくるから。行くか、ミオ」
「うん!」
「いってらっしゃーい、モグモグ……うまっ! ちょっとちょっと、この唐揚げ激うまだよっ。おねえちゃん!!」
「ありがと……わっ、茉理ちゃん。そんなに食べちゃったの? ご飯のおかずなのに――」
「うん、大丈夫っ。今食べてんのお兄ちゃんの分だからっ」
「みゅー……」
「お風呂から出てきて、ショーイチのおかず残ってるかな……」
一抹の不安を感じつつ、俺はミオと風呂場に向かった。
どうして服が一つも籠に入ってないんだ……。
「よっと……」ゴソゴソ
俺はミオの服を片付けると、遅れて風呂場の扉を開けた。
「ショーイチ、ショーイチっ。頭洗ってっ」
ミオはシャンプーハットを手に、俺を待っていた。
「了解。じゃ、シャワーからいくぞ」
「は〜い」
ザーッ……。
…………………………………………………………。
……………………………………………。
………………………………。
【楽しいお風呂】
「ねぇ、ショーイチ」
風呂につかるミオが浴槽の中から、体を洗う俺に声をかけてきた。
「ん?」
「おちんちんって不思議だねぇ?」
おっ、きたか……。
「そうか?」
「だって、男の人にしかないんだもん……」
「まあ、そういうもんだし」
ミオもそういうことに興味を持つようになったか。
娘の成長を、世の親御さんたちはこういうささやかな事柄で感じるのであろう。
しみじみと思い耽る俺。
「ねぇねぇ、なんでついてるのかなぁ?」
「あー……。男の子と女の子を分けるためかな」
「そっか……」
――ミオが言った。
「あのね、ショーイチ。おちんちん、よく見せてよぉ……」
「……と」
「だって、よくわかんないんだもん……。猫のおちんちんはいっぱい見たことあるけど、
人間のは見たことないし」
「ダメ?」
ミオが俺を見つめ、答えを待っていた。
学校にも行ってない。だから、今のところ同年代の友達もいない。
(いや、学校には行かせようとは思ってるんだけど)
無論、男親も兄弟も……男としては、俺が教育するしかないんだよな。
性教育とはこういう日々のくらしの中で、自然に行っていくものであろう、うん。
「おう、見せてやるって」俺は快く答えた。
「見せて見せてっ」
チャポンッ。
俺は湯船の中に立ち、ミオに向かって下半身をさらした。
「ふーん……?」
「何だ?」
「ちゃんと見ると、意外とちっちゃいんだねぇ……ほら、あれ……『ぽーくびっつ』みたい!」
いたく傷ついた。
「そ、そっか……ちっちゃいか。あははは……」
「あ……。でもでも、可愛いよっ! ショーイチのおちんちん、可愛いってばぁ〜。
だから、そんなにがっかりしないで、ねっ?」
偉く傷ついた。
「そっか……可愛いんだ。あははは……」
「にゅ〜ん……。も、もう言わないよう……」
ミオは瞳を輝かせて、俺の下半身を見始めた。
「ふむふむ………………………………」
「ほうほう………………………………」
「なるほどなるほど……………………」
「くんくん」
ミオが、俺の股間に鼻を近づけてにおいを嗅いだ――はて?
「どうして、においを嗅ぐんだ?」
「え? だって、猫は食べる前ににおいを嗅ぐんだよ。ほら、ミオは猫だもんっ!」
そっか、ミオは猫だからな。うん、猫じゃしょうがないや――えっ、食べる前って!?
「ちょっと待て、ミオッ――」
「いっただきまーすっ!」
ミオは俺のちんちんをつかむと、パクッとかぶりついた。
「おわっ!?」
うぁ……FISH ON?
「モゴモゴ……くふふっ」ミオが、上目遣いに俺を見て、にこやかに笑う
釣られた魚……いや、釣られた猫はなぜか嬉しそうだった。
そっと後ろに下がって、引き抜こう――しかし、俺の背中はすぐに狭い浴槽の壁に当たった。
「ひょういひ。ふほいははへ」(ショーイチ。動いちゃだめ、といっているらしい)
「駄目だってば……離してくれよ」
「ひぃひゃはい、ひょっほはひひはへへ」(いいじゃない、ちょっと味見させて)
……ミオが話すときの口の中の刺激に反応して、俺のちんちんは若干大きくなっていた。
「はえ?」ミオが不思議そうな顔をして俺を見る。
……まずいかな。
「ひょういひ――」
「あーミオ、話すの……禁止」
「はんへー?」(なんでー?)
「ほら、かなでにも言われただろ……『口にモノを入れたまま話してはいけません』って」
……ちょっと違う気がした。
「は、ほうはっ」(あ、そうかっ)
「はむはむ…………」
「なぁ、もういいだろ? 勘弁してくれよ、ミオ……」
「…………」(やだ)
ミオは横に首をふる。
「はう……」ちょっと気持ちいい――じゃなくてっ!
……ミオが首を振る刺激に反応して、俺のちんちんがさらに大きくなっていた。
「はむ?」ミオが不思議そうな顔をして、また俺を見た。
……まずいかも。
「あー、コホン……。横に首振るのは禁止ということで」
「…………(こくこくこくこく)」ミオは(はいはいわかりましたっ!)とでも言いたげに、
何度も縦に首を振った。
「ひぅっ……」
こ、これはテクニシャン――じゃないんだってっ!
……ミオが首を縦に動かす刺激に反応して、俺のちんちんは固さを増していた。
「はにゅ?」ミオが不思議そうな顔をして、再び俺を見た。
……まずいだろ。
「あー、こほん……。上下に首を動かすのも禁止……」
「むーっ……」
「ぴちゃっ、ぺちゃっ…ちゅっ…ちゅ〜…」
「あー、舐めちゃ……吸っちゃ駄目だってぇ……」
ミオの口の中で舌が動き、そのたどたどしさが却って俺を興奮させる。
「あうっ……」
悪気は無いんだよなぁ、知識の不足なんだ――なのに怒鳴りつけたりするのもなあ……。
かと言って、無理に引き抜くと俺のちんちん危険かもしれないし――。
「んむー……」ミオが不満そうに俺を見る。
……俺のちんちんはより大きくなっていた。まあ、これだけしゃぶられたら無理も無い……。
「ふうひぃ……(苦しい)」
ミオは、息をするのも辛そうだった。
ミオの苦しそうな表情に、何だか興奮する俺…………ああ俺駄目だ、人として。
「んぷー……むむ……」
そして、俺のちんちんは、ビクビクッ――と力強く反応した。
「むぐっ!? ――ぷはぁ」
口の中をつついてしまったわけだが、どうやら当たり所が悪かったらしい。
ミオはえづき、そしてとうとう俺から口を離した。
「けほっ、うぇっ……く、くるしかったぁ――のどの奥におちんちんが……けほっけほっ」
ミオは涙目だ。
「ショーイチのいぢわるっ……。わざと、おちんちん、大きくしたり動かしたり……」
いや、俺が何かしたわけでもなく……したわけでもあり……。
「そ、それはだな――」
「初めはあんなに小さくしといたくせにぃ……」
「あぅ……」
「うにゅ〜ん。もういい……」
浴槽の縁に頭を載せ、ミオはぐったりとなった。
固いままの股間を両手で押さえながら、俺は言った。
「とにかく、これでおしまい……。もう咥えちゃ駄目だぞ?」
「うん……」
俺は浴槽から出て、椅子に腰掛けた。
「はぁ……」
まったく……お子様のやることは、わけがわからない。
とにかく、無事に終わって良かった、出さなくて良かったと、俺は安堵していた。
……………………………………………。
………………………………。
ようやく息を整えたらしいミオが、浴槽の縁に頭を載せたまま俺に言った。
「はあ……ミオには無理。かなでは、よくおちんちんを咥えてられるねぇ」
……アナタハ ナニヲイッテマスカ。
「きっと、かなでは……ミオより食いしん坊なんだねっ。やっぱり、かなで、すごーい!」
『かなで、すごーい!』と言われても、きっとかなでは喜ぶまい――。
それよりも……俺とかなでの「あんなことやそんなこと」が見られてたということか?
川の字で3人で寝てるとき、やったときあるけどさ……起きてたのか、ミオ?
「あっ、そうだっ! ショーイチとかなで、嘘つきだよっ? ちっとも甘くないじゃない!」
「甘くないって……何が?」
「ショーイチの、おちんちんっ……」
ええーっ!?
「俺、そんなこと言ったか?」
「言ったよ。ショーイチ、かなでに言ってたもん! 『俺のちんちん、甘いから舐めろっ』て。
それでそれで……、かなでが、ぱくぱく〜って食べて、『おちんちん、おいしい』って、言ってたもん……」
――思い当たる節は有った。
【いつでもパティシエ】
(以下、ミオの話を俺視点で)
かなでの布団にもぐり込んで、俺は後ろからかなでの胸をそっと揉んだ。
フニュ……フニュフニュ……。
「かなで……しよう?」
「あんっ……ミオちゃんが起きちゃう……だ、駄目だよ」
「大丈夫だって……」
俺は布団から上半身を起こし、ミオに話しかけた。
「……ミオ、起きてるか?」
「すー…すー…」
「ミオ、ケーキがあるぞ」
「すー…すー…」
「……チーズケーキだぞっ?」
「…………………………」
「嘘だけど……」
「すぴーっ#……………」
…………………………………………………………。
……………………………………………。
「ほら。ミオはもう寝てるって」
「う、うん……。でも、今日……私、女の子の日なんだよ? どうしよう……?」
「なるほど……。じゃあ、今日は特製ケーキを食べてもらおうかな……」
俺はおもむろに立ち上がる。
「……?」かなでは、なにごとかと体を起こし、布団の上に正座した。
「いらっしゃいませ、ひよこ館へようこそ」そう言いつつ、パジャマのズボンとパンツを脱ぐ。
「えっ? えっ?」
そして、俺は布団に横たわる。
「はい。俺の『ひよこもご機嫌、あまあまなエクレール=ショコラ』」
「みゅー……」かなでが、悲しそうに鳴いた。
「お客様、ひよこ館のパティシエの自信作でございます……とっても甘いと一部マニアに大人気かも?」
――お客さんと菓子職人への冒涜だった。
「翔ちゃん、それ違う……ものすごく違うよぉ……」
そう言うと、かなでは、俺の『エクレール=ショコラ』から目を逸らした。
外したか……いや、恥ずかしがったら俺の負けだ。
俺は男らしく、さらに押した。
「お客様に新鮮なケーキを食べてもらうのが、ひよこ館のこだわりなんだっ」
――よくわからなかった。
「みっ……!!」
よし、もう一押し。
「えっへん、ケーキはねぇ、愛だよ、愛っ」
――さらにわからなかった。
「みうっ……!!」
困った顔でかなでが、俺を見る――しかし、俺は真剣な眼差しでかなでを見つめ返した。
「じーっ…………………………」
「あっ……えっと……その……」
「じーっ…………………………」
「そうかも……? うーん……」
やがて、かなでが言った――。
「うん、言いたいこと、わかったよ。翔ちゃん、私頑張るっ!」
……かなでは、納得したらしかった。
「そ、それじゃ……いただきます」
そして、かなでは恥ずかしがりながらも、身をかがめ俺の分身を口にした。
…………………………………………………………。
……………………………………………。
「美味しいか、かなで?」
「はむっ……ちゅっ……んっ。……うん、美味しいよ」
「みちるさんのケーキとどっちが美味しい?」
「もうっ、翔ちゃんっ……」
俺をたしなめる口調で、かなでが言う。
――しかし、頬を染めながら、その後を続けた。
「翔ちゃんの方が……翔ちゃんの……おちんちんの方が私は好き、だよ……」
俺は、かなでの頭に手を置き、撫でた。
「あ、翔ちゃん……。うふっ……気持ちいいよ……」
そう言いながら、かなでもまた、俺の股間を優しくもてあそんでいた。
「あ、そうそう。言っとくけど、かなで――」
「なに、翔ちゃん?」
「それ、ひよこもご機嫌、あまあまなエクレール=ショコラだからな」
「みゅー……。翔ちゃん、まだ言ってるぅ……」
「ほら、俺はパティシエだから」
「そんなこと言ってると……翔ちゃん? 私、本気で食べちゃうよ……」
(ミオの話、俺視点終わり)
「それから、かなでが頭をまえとうしろに動かして……おちんちんからなにかを飲んで、
かなでも『甘くて美味しい』って……それがすっごくおいしそうで……」
――俺とかなでが、ミオに不必要に高度な性教育を施していたことが判明した。
「あれれ? かなでが飲んでたのって何て名前だったっけ……えっと、えっと……」
ミオは真剣に思い出そうとする……。
「あー……無理に思い出さなくても――」
「あっ、そうだ! しあわせちんぽミルクッ、しあわせちんぽミルクだっ!」
はぅっ……。
「うん、思い出した。そうそう、しあわせちんぽミルク♪」
これからは『大人の言葉遊び』は慎みます……だから、もう許してください神様……。
「ねぇねぇ、ショーイチぃ。かなでが飲んでたのは、『しあわせちんぽミルク』っていうんだよね?」
……生まれてきてすみません。
「頼む……もう言わないでくれ……ぐすっ」
コレを店で言われた日には、ひよこ館の命運は尽きること確実だった。
そうだ、ミオに口止めを――。
「あのさ、ミオ……」
「な〜に?」
「その夜のことと、今日のお風呂のことは、かなでに言わないでくれ。……ミオ、頼むっ!」
「どうして?」首を傾げて、ミオが俺に尋ねる。
――かなでが恥ずかしがるとか、困るとかって言ってもわからないか。
ミオが納得する理由で口止めしなくては……。
「なんだ……その。俺のちんちんは、もう、かなでのだったんだ。ミオが勝手に食べちゃいけなかったんだ……」
「えぇ! そうだったのっ!?」
俺は悲しそうに、切なそうに続けた。
「そうなんだ。……言ってなかったよな……ごめん」
「にゅにゅ〜ん……」
「それとな、かなでは俺のちんちんを美味しいって思うけど、他の人が食べてもおいしくないんだよ」
「ふにゃっ? ……ホントかなあ?」
無理は承知で、俺は押し切る。
「どうしてだかわかるか? それが『愛』なんだっ!! 恋人同士、夫婦同士でないとこの美味しさ
はわからないんだっ!!」
「うーん……?」
ミオがじっと俺の顔を見つめる。
…………………………………………………………。
やがて、納得したようにミオが言った。
「そっか。ショーイチとかなでは恋人同士だもんね。だから、だね……」
「うむ。俺とかなでは、愛し合っているからな」
…………………………………………………………。
瞬間、ミオが悲しそうな表情をした――ように見えたのは俺の気のせいだったろう。
「ふむふむ、愛ってオケがふかいんだねぇ」
そう言いながらにっこり微笑むミオ。
「そうだな。奥が深いんだよ、愛は」
ミオの言葉に苦笑しつつ俺は言った。
「じゃ、そろそろあがるか……あ、ミオがお風呂の中で、百数えてからな」
「ひゃくまでなの?!」
「よく温まらないと風邪ひくんだぞ」
「にゅーん。もう、イッパイあったまったよう……」
…………………………………………………………。
……………………………………………。
「俺、ビール飲むかな」
「やー、あれ苦いから嫌いー……」
「なんで味知ってるんだ、ミオは?」
「ギクッ! まちゅりと一緒に少し……少しだけだよ?」
そんなことを話しながら、俺たちは風呂を出る。
「ごはん〜、ごはんだ〜♪」トタトタトタ……。
調子っぱずれの歌を聴きながら、俺はミオの後ろに続く。
(ミオと一緒にいると驚かされるよ……退屈しないけど)
子育てってのはこういうことなんだろう、きっと。
【まちゅりといっしょ】
その夜。
今日はみ〜ちゃんはあたしと寝る日だ。
だって、毎晩3人じゃ可哀想。お兄ちゃんはどうでもいいけど、おねえちゃんが…ねえ。
新婚さんなんだし。
「み〜ちゃん、電気消すよ?」
「いいよー」
…………………………………………………………。
……………………………………………。
ベッドに入って。
(あ、そういえば――お兄ちゃんを橋の下で拾ってきたって言ってたことを訂正しなくちゃ――)
思ったと同時に、隣のみ〜ちゃんが話しかけてきた。
「あ、そうだ。まちゅり…」
「何、み〜ちゃん?」
「さっきお風呂でね、ショーイチのおちんちんを――」
あ、早速性教育にとりくんでるんだ、お兄ちゃん。
「なめてみたよ」
「げっ……」
「おちんちんって、おいしくないね……本当においしくなるのかなあ?」
「なっ、なにっ!? どしたのっ?」
「あのね……ショーイチが、美味しいからなめてって言ってたから。それで、ホントにおいしい
のかなぁと思って、今日お風呂でなめてみたんだ」
「み〜ちゃん、お兄ちゃんが言ったの? 本当に、美味しいから舐めてって言ったのっ?」
こみ上げてくる怒りを抑えて、あたしは聞いた。
「うん、とっても甘いからって。だから、一生懸命舐めてたんだけど……口の中で、おちんちんがブワッて、
すごく大きくなったんで、ミオびっくりしたよ!」
「……………………………………………」
ブルブル……。
「それなのに、ショーイチってば……舐めちゃ駄目だとか、吸っちゃ駄目だとかいうんだよ?」
「ふっ………………………………………」
ブルブルブル……。
「あっ。それでね、かなでには黙ってろって言われたんだ。かなでが怒るからって……」
「ふざっ……………………………………」
ブルブルブルブル……。
「かなでが怒るなら、黙ってたほうがいいのかな? でも、嘘ついてるみたいでやだな……
かなでのこと好きだから……」
み〜ちゃんは心配そうにあたしを見ていた。
「ふっ…ふざけんなっ、誰が性技まで教えろって頼んだあぁぁぁーーーーーっ!?」
「まっ、まちゅり!? どしたのっ?」
あたしは跳ね起きると、幼女に性的な悪戯を行った犯罪者のところに向かいました。
359 :
名無しさん@初回限定:2006/03/04(土) 18:28:15 ID:lQebtMBS0
ぱじゃま作品はぷりっちしかやったことないけど、これはいいね。
パティにゃんやってみたくなった
361 :
名無しさん@初回限定:2006/03/10(金) 23:51:48 ID:ykOfROae0
流れが完全に止まってる
神の降臨を望む・・・
362 :
名無しさん@初回限定:2006/03/10(金) 23:53:41 ID:R+u9uvSo0
>>361 もしらばを書いてるんだけど
ここって発売一ヶ月まで禁とか昔は決まりがあったよね
アレって今はないの?
過疎気味だし、しっかりと元ネタとネタバレの有無が書いてあれば
新作でも問題無いんじゃないかと思う
神の降臨はどんなものでも待っているものだ
つーか
>>264の温泉の話は?
あれから投下を待ってるんですが・・・
>>366 ちょうど昨日文整理してました・・・待たせてしまってスミマセン。
できれば今夜にでも出だしうpしようかと思います。
というわけで、少し早いですが投下します。
メインヒロインやみんなと温泉に行くお話@はぴねす!です。
一応オールキャラ出演で、相手役は春姫となっております。
他のヒロインとのカップリングを望まれる方は申し訳ありません。
ではまずは第1章「ようやく到着!温泉宿」
「うわぁ、すごいお宿!」
「ホントだ、こりゃ思ってた以上だな……」
春姫とともに見上げる、宿舎の立派さ。
柱などに使われている木の色から、確かな年代を感じさせるものの、
そのどっしりとした構えは、現在も決して揺るぐことはない。
「……来てよかったな、春姫」
「うん、そうだね。雄真くん」
向かい合い、互いに笑顔を交わす俺たち。
「……どーでもいーけど」
と、後ろから何やら不満げな声が聞こえてきた。
「いちゃついてるヒマがあったら、とっととこの荷物、持ってってくれない?」
「あ……ゴメンね杏璃ちゃんι」
……そう。今回は残念ながら、春姫と2人っきりというわけじゃないのだ。はぁ。
俺が魔法科に転入して、はや数ヶ月。
魔法科の能力検定でしばらく忙しい日々を送っていた俺たちだったが、
その日々もちょうど昨日で終わりを告げた。
そこへ小雪さんが、俺たちの労をねぎらってくれる目的で、
俺たちを実家の温泉宿へと招待してくれた次第である。
「しかし、姫ちゃん達と温泉宿か……
魔法科の女の子たちとめくるめくラブロマンスの予感……ぶつぶつ」
「はいはい。ボケてる暇があったら、これも運んでよね」
「準さーん! この荷物は、どこに置いたらいいんですかー?」
……何故か約3名ほど、魔法科でない奴が含まれてるのはともかくとして。
「ほらほら雄真も! かよわい乙女にこんな重いもの運ばせるつもり?」
「……あえてツッコむのはやめておくぞ、準」
愚痴をたれつつも、俺は車から積み荷を運び出す作業に戻った。
「……おい、信哉よ……」
「いかがなさいましたか、伊吹様」
雪の敷き積もる山道を通る、3人の人影。
その内訳は、私……式守伊吹と、道案内役の信哉、そしてその妹沙耶である。
「どうもこうもない!! 小雪の言っていた宿とやらは、いつになったら到着するのだ!!」
「それは……おそらくこちら側へ向かえばよろしいかと」
「先刻も通ったばかりではないか、そちらは!! もうよい!!
そなたに道を聞いた私が愚かであった!!」
「……兄様に道案内を任せたのが、最大の失敗だったようですね」
「……ぐぅ」
最愛の妹にまで呆れた顔をされて、さすがの信哉も黙り込む他ない。
「むむ!! どうやらあちらの道が妖しいようだ!!
沙耶!! 伊吹様!! さっそく参るぞ!!」
「……勝手にお一人で彷徨われて下さい、兄様ι」
こんな状況でも未だ覇気を損なわぬ信哉に、打つ手なしとばかりに諸手を上げる私と沙耶であった。
まったく……出だしからこれでは、先が思いやられるぞ……
「それでは、こちらが露天風呂になりますね」
小雪さんの案内に従い、大浴場の前までやって来た俺たち。
「当高峰の湯は、遥か天保の時代より温泉宿として栄えてきた名湯であり、
かの名だたる文豪たちもその湯を嗜んだと言われております。泉質は……」
「……説明は嬉しいけどさ。さっそくみんなで入らないか?
俺たちもう長いことあの雪道にいたせいで、すっかり体冷えちゃったよ」
「さんせーい。さっさと入りましょうよ、小雪先輩」
俺の提案に、みんなも乗り気のようだ。
「……そうですね。ではさっそく、皆で楽しむことにしましょう」
となれば善は急げ。俺たちは男女に分かれて、更衣室へと向かうこととした。
……って、ちょっと待て。
ぐいっ。
俺はあわてて、女子更衣室へ向かおうとした準の襟首をつかんだ。
「あれぇ? どうしたの、雄真?」
「……どうもこうもない。お前何でナチュラルに女子更衣室へ向かおうとしてるんだよ」
「女の子が女子更衣室に入るのは、当然でしょ?」
「……おんなのこならば、な」
何かコイツと話してると、こっちまで勘が狂ってしまいそうになる。
「と・に・か・く!! お前はれっきとした男なんだから、さっさとこっちへ来い!!!」
「やん、雄真のスケベ! かよわい乙女を男子更衣室に連れ込んで何をするつもりなのよ!」
「どーもせんわ!! いいからとっとと来る!!」
やたら騒がしい準をハチと2人で押さえつけ、俺たちも男子更衣室へと入っていった。
「……狭いな、ここ」
「……文句言うな、ハチ」
こっちこそ何が嬉しくて、ハチと密着状態で服など脱がねばならんのだ。
それもこれも、準のヤツが更衣室内に男性禁止領域などを勝手に取りやがったせいだ。
俺たちに着替えを見られたくないって気持ちはわからんでもないが、
それにしても半径3mはさすがに取り過ぎだぞ、準……
「おっしゃ! これで準備万端!!」
タオル一丁になったハチが、相撲の力士みたく自分の体をパンと叩く。
「準備も何も、ただ脱ぐだけだろ? 何そんなに意気込む必要があるんだよ」
「チッチッチ。甘いな、雄真クン」
早くも呆れ顔になってる俺に、ハチが舌打ちしながら指を振る。
「冬の温泉宿。女の子たちと一緒に風呂に入ってやるコトはひとつだろ?」
「……悪いハチ。話が全然見えない」
そもそも何で女の子と一緒なのが前提になってるのか、理解できないんだが。
「かーーーーっ!!! これだから雄真はダメなんだ!!!
いいか? 冬の露天風呂!! これは一種の楽園だ!!! いわばパラダイス!!!」
「いや、それ訳しただけだし」
「湯船で近づく男と女!!! 生まれたままの姿で向き合う2人!!!
やがて2人の間には愛が芽生え……」
「……アホらし。先に行くぞ、ハチ」
「コラ雄真!! 抜け駆けは許さんぞ!! 一番ノリはこの俺だぁぁぁ!!!!」
あーあ。元気そうに駆けて行っちゃったよ、ハチの奴。
そもそもそんな都合よく混浴なんて……
「……グ!! グギャアアアアアアアアア!!!!!」
な、何だ!? 今の悲鳴は!!
ハチが勢い込んで入っていったその扉の向こうから聞こえてきたみたいだが……
「……!!」
俺は反射的に御薙先生からもらった指輪をはめ、扉の向こうへと走って行った。
「……準?」
「あら、雄真じゃない」
そこには、全身にバスタオルを巻いた準が立っていた。
そして、その足元に倒れているのは……
「……ハチ? ハチか!?」
俺が声をかけても、ぴくりとも反応しないハチ。
妙に顔が嬉しそうににやけてるのが、すごく気がかりなのだが。
「くそっ……一体誰がこんなことを……」
と俺は、準の右手に何やら妙なものが握られていることに気づいた。
「……まさか、準?」
「……ゴメンね雄真。さすがにこの先は、ハチには目の毒だしね」
……間違いない。準は右手に持ったそのスタンガンで、ハチを気絶せしめたのだ。
しかし、一体何の目的で……
ん? 目の毒?
目の毒って一体何なんだよ!?
「さ、さっそく行きましょ、雄真♪」
「うわっ、手を引っ張るな準!!」
考える暇もなく準に連れられて、俺は浴場へと入っていった。
げ、番号間違えた。
>>374は5/5です(見ればわかるか)
とまぁ、微妙に歯切れ悪いところで第1章完了。
ここからお風呂の中でまぁお約束とも言えなくもない展開になってゆくわけで・・・
一応全17章を予定しているんですが、さすがにそれらを全部ここで公開するのは
半ばスレジャックみたいな形になってしまいそうで、少し戸惑いがあります。
そこで質問なのですが、住民の皆様はどのような公開形式をご所望でしょうか?
1.スレジャック覚悟でこのスレで公開
2.ここでzipなどで固めうp→保管庫で公開
3.無料鯖借りてそこで公開し、こっちにリンク貼る
4.別に専スレ立ててそっちでやる(最悪の場合)
他に提案がございましたら、言っていただけると幸いです。
1だ。
構う事はない。存分に乗っ取りたまえ
>>376 同意
ここで公開した方が手っ取り早くて良いです。
苦情が出るような内容のSSでもないですし。
>>370-
>>374 これって18禁?
18禁を激しく希望。
>>376-377 というわけで、次回以降もこちらで連載という形を取らせていただきます。
ご意見どうもありがとうございます。
>>378 一応作中に本番を匂わせる描写はありますが、具体的なエロ描写には至りません・・・
ご期待に沿えず、申し訳ありません。
今回はエロよりまったり萌え重視ってことで、どうかご了承くださいませ。
んで調子に乗って第2章投下。
第2章「お風呂でバッタリ大騒動」
そこは普通に趣のある岩風呂であった。
俺と準以外、入浴客の姿は見当たらない。
「……ったく、驚かせやがって。別に何てことない普通の温泉じゃねーか」
「……フフフ」
気になると言えば、さっきからこの調子でニヤけまくってる準である。
「何か妙に嬉しそうだな、準」
「だぁってぇ、雄真といっしょにお風呂に入れるんだもん♪」
「……頼むから、春姫たちの前ではその手の発言謹んでくれよ」
「えー、どうしよっかなー?」
この場に春姫たちがいなくて、本当に助かった。
もし春姫たちにこんな状況見られたら、一体どんな噂立てられることか……
「……あれ? 雄真くん?」
そうそう、きっとこんな感じで……
「……って、えぇっ!!??」
突然の出来事に、俺は思わず振り向いていた。
「あ、兄さんだー♪」
「げ。何で雄真がここにいんのよ」
「クス。お待たせしました」
……それはまさにデインジャラスと言わざるを得ない光景だった。
春姫他女子ご一行様が、あられもない姿でこちらを見つめてる図。
「あ……あ……あがが…………」
対する俺は、あまりに突発的な事態に思考がまとまらなくなっている。
「うふふ。そういうことよ、雄真♪」
準のからかうような口調にも、反応する余裕がない。
「わが高峰の湯は、古くから男女問わない裸の社交場として、多くの方々を楽しませて参りました」
「男女問わず……ですか?」
「はい。男女問わず……です」
笑顔で具体的な状況説明ありがとうございます、小雪さん。
って、そーじゃなくて!!!
「お、お、お前らは平気なのかよ!! その……俺たちと一緒に風呂入るの!!」
途端にきょとんとした表情になる一行。
「わ、私は……雄真くんとなら……いいよ」
「兄さんといっしょにお風呂に入れるなら、わたし、大歓迎です♪」
「……ま、ハチじゃないだけマシよね」
柊さんだけ妙に言葉にトゲがありませんか?
「そういうことです。皆さん、雄真さんとなら大歓迎ですよ」
「そ、それは光栄なんだけど……」
改めて見ると、皆これがまたとんでもない格好で来ているのだ。
普通女の子がこの手の混浴に入るときは、大体バスタオル等で体をぐるぐる巻きにして、
万全の状態で入ってくるものだろう。
現に今、隣の準がそんな格好でいるし。
しかし、彼女たちは違った。
大きめだが薄めの生地のタオルを、あろうことか巻かずに胸元で端っこを押さえつけ、
かろうじて前面の危険な部位を隠してるに過ぎないのだ。
……つまり、後ろから見れば……丸見え。
「この格好に、興味をお持ちですか?」
「ぎくっ!!!」
さすが小雪さん。俺の思っていることをあっさり当ててのける。そこに(ry
「あたしも納得いってないんだけどさ……小雪先輩がこのカッコで入れって言うのよね。
湯船を汚さないための工夫だーとか言って」
……素直に信じちゃうあなたもどうかと思います。柊さん。
「つか……これって……」
普段は目に付かないレベルの細かい体型の差までわかって、ムチャクチャえっちくないですか?
ほら、現に今目の前にいる春姫とか……
「……///」
うわ……タオルじゃ隠しきれない春姫の胸の大きさが際立って……
正直、すごく刺激的だ。
「雄真くん……えっちな目になってるよ」
「うぁ……」
……いかん。我を忘れるところだった。
「くすん……姫ちゃん胸おっきすぎです……ずるすぎます」
「泣かないのよすももちゃん! いい? あれはあたしたち人類の敵よ!!
雄真を色香で惑わす、あたしたちの敵!!!」
「いいんです、柊さん……きっと兄さんは胸の小さなわたしのことなんか」
「だぁぁぁっ!!! お前ら、そこで漫才するなぁぁ!!!」
これから数十分間、この調子でこいつらと関わることになるのだ。
身が持つかな、俺……
とまぁ、微妙にお約束な展開になったところで今日は終了。
次は第3章でお会いしませうノシ
>乙
この調子でバシバシ投下をお願いします
それでは今日も張り切って投稿します。
第3章「ちょっとえっちな入浴タイム」
で。
どういう状況ですか? コレは。
「……」
湯船につかる俺の隣には、左手に春姫、右手に準。
そして向かい合ったところには、左からすもも、小雪さん、柊。
この男女6名のそうそうたる面子が、この狭い円形の湯船にところ狭しとつかっているのだ。
……この情景、ハチにでも見られたら殺されるぞ、俺。
「……それにしても」
口を開いたのは柊。
「やっぱその胸は大人気ないわ……そう思わない? みんな」
「お、大人気ない……ってι」
「……春姫が困ってるから、変な言いがかりはやめた方がいいんじゃねーか?」
「よくないわよ!! 大体春姫、何食べたらそんなにおっきくなるのよ!!」
……ダメだ。この状態になったら誰も柊を止めることはできない。
「私は別に、何かこだわって食べたりとかしてないんだけどな……ι」
「んむぅ。春姫はいつもそーやってごまかすんだから。
何か秘密の特訓とかやってるんでしょ? 言いなさいよ、春姫!!!」
「わ、私は別にそんな……」
柊がマジで春姫に詰め寄りだしたところで、小雪さんがすかさずフォローを入れた。
「でも、柊さんも神坂さんに負けず劣らず、いいものをお持ちですよね」
「か、からかわないでくださいよ先輩……春姫のに比べたら、あたしのなんて……」
「いいえ、本当に羨ましいです。柊さんのそのツンと上向きで、きれいなお椀型の胸」
「ちょ、ちょっと先輩!! 雄真もここにいるってのに///」
小雪さんの言葉に、思わず顔を真っ赤にし、両腕で胸を抱え込む柊。
しかし、急に抱え込んでしまったせいで、柊の胸元にくっきりと魅力的な谷間が……
「あ……///」
その光景に、思わず息を呑む俺。
「ちょっと雄真ぁ……人の胸じろじろ見ないでよ……///」
「いや、その……」
やば。少し見惚れてしまった。
そうだよな……柊だって、自分で言う程胸が小さいわけじゃなくで……
「……コホン!!」
「!!!!」
い、今……背中を何か寒いものが……
「は、ははははは春姫!!?? いや、これはその……」
「じーーーっ……」
うぐ……すっげぇ見つめられてる、俺……
「はは、やだなぁ春姫……俺はいつだって、春姫の胸が一番に決まってるじゃないか」
「私、まだ何も言ってないけど?」
乾いた笑いで場を取り繕う俺を、春姫の言葉が容赦なく突き刺す。
「……ゴメンナサイ、春姫さん。もう二度と他の人に見惚れたりしません」
「フフ。よろしい」
ひたすら平謝りする俺と、それに笑顔で答える春姫。
こういう時、春姫の満面の笑顔がかえってすごく恐ろしい。
「あーはいはい……春姫のその規格外の胸は、そこのスケベのおかげってことね」
「神坂さんにだけ許された、雄真さんの魔法の手……といったところでしょうか」
「……もうそういうことでいいっすよ……」
何やら妙な結論で、この話題はお開きとなってしまった。
「ところで……このお湯には、肌の美容効果もあるんですよ。
肌のキレイな皆さんのために、誠心誠意ご用意させていただきました」
「ふーん……言われてみれば、心なしか肌がすべすべになったかも」
「皆さんもたっぷりつかって、美肌に磨きをかけてくださいね」
「「はーいっ♪」」
何故お前まで普通に返事してるんだ、準……
「そう言えば……準さんも男の子なのに、とても肌キレイですよね」
「ふふ……ありがと、すももちゃん」
こうやって会話聞いてると、準がマジで女に見えてくるから不思議だ。
「とっても羨ましいです……準さん。
わたし……女の子なのに、肌にはあんまり自信がなくて……」
「あら、そんな事ないわよ、すももちゃん」
「でも、わたし……そんなに胸もありませんし……これじゃ、兄さんに喜んでもらえません」
「……待て、すもも。妹が兄を喜ばさなければならないなんて法は、この国にはないぞ」
大体、妹の胸が大きくて喜ぶ兄なんているのか?
「……すももさん。男の人には胸の大きな人を好むタイプと、
胸の小さな人を好むタイプと、2種類に分かれるそうです」
「……小雪さん。何故それをすももに吹き込むんですかι」
「いいじゃありませんか、たまには」
小雪さん……たまにはって……ι
つか俺的に、もう胸の話題は勘弁なんですけど……
「……兄さんは、どっちのタイプなんでしょうか……」
すももが不安げな表情で、小雪さんに尋ねる。
「さぁ……こればかりは、雄真さんに直接聞いてみませんと……」
そう言うと、小雪さんは俺に意味ありげな視線を送った。
口元が妙ににやついているのが、すごく気にかかる。
「雄真さんは、どちらのタイプなのでしょうか?」
「え……えええっ!?」
いきなりそんなこと聞かれましても、回答に困りますって!!
「あ、それ興味あるわね! 雄真、どっちなのよ!!」
準のヤツまですごく興味しんしんに尋ねてくるし!!
「兄さん、わたしどんな答えでも受け入れてみせます!!
わたしの目を見てしっかり答えてください!! 兄さん!!!」
「い……いいから詰め寄って来るな!! すもも!!」
「ゆ……雄真くんはさっき言ってくれたよね! 私の胸が、誰より一番好きだって……」
「は、春姫……それは、その……」
「はっきりしてください、兄さん!!」「はっきりして、雄真くん!!」
2人の気迫に押され、思わず沈黙する俺。
「フフフ……若いっていいですね、雄真さん」
「火付け役が何他人事みたいに言ってるんですか!? あーもう、お前ら少し落ち着けって!!!」
それからしばらく、俺は自分の胸の好みについて、さんざん問い詰められることとなったのだった。
うぅ……恨みますよ、小雪さん。
その後。
「あ、そうだ。姫ちゃん……」
「ん? 何、すももちゃん」
すももがにわかに、春姫に切りだした。
「姫ちゃんと、お話したいことがあるんです……ちょっと、向こうの湯船まで来てもらえますか?」
「向こう……?」
すももの指差した先には、ここよりも更に一回り小さいサイズの湯船があった。
ちょうど、すももと春姫がいっしょにつかってちょうどよいくらいの。
「うん。いいわよ、すももちゃん」
「やったぁ☆ じゃ、先に行って待ってますね」
そう言うと、すももは湯船を上がり、こちらに背を向けた。
すもものまだ発展途上なかわいいお尻が顔をのぞかせる。
「ぬがっ☆」
その光景に、俺は思わず頭がくらくらするような衝撃を受けていた。
すももはそのまま、向こうの湯船へとてとてと走ってゆく。
「「かーわーいーいー☆」」
柊と準が、声をハモらせながら感嘆の声を漏らした。
「やっぱすももちゃんはいつ見てもカワイイわねー……妬けてきちゃうわ、あたし」
「あんなカワイイ妹に慕われちゃって、雄真も罪作りよねー♪」
終始ニヤニヤしながら、俺の方を見つめる2人。
くそ……言わせておけば好き放題言いやがって。
……と、問題はそこではない。
今、すももがこちらにお尻を向けたように、春姫も……
「……///」
きっと春姫も、同じ事を考えていたのだろう。
戸惑いながら、俺の顔と向こうにいるすももの姿と、かわりばんこに眺める春姫。
「……行って来いよ、春姫」
俺は小さく、春姫の後押しをしてやった。
春姫はしばらくこちらを困ったような表情で見つめていたが、
やがて意を決したかのように立ち上がった。
「……じゃ、行ってくるね。雄真くん」
そう言い残し、こちらに背を向け、湯船を立ち去る春姫。
……
お、おしりだ。
俺もいつも拝ませてもらってる、春姫の丸くてつやつやなお尻。
それが、あろうことか……みんなの目の前にあられもなく晒されてしまっている……
「…………」
俺は口をぱくぱくさせながら、その情景をただ見守るしかなかった。
後に残されたのは、気まずい沈黙。
「……やっぱ違うわ……」
先に沈黙を破ったのは、準の方だった。
「あの肌のハリといい、曲線のなめらかさといい……
やっぱ、ホンモノの女の子にはかなわないわねー……」
「てゆーか、あれはもはや詐欺よ!!
天は二物を与えずって、あれは絶対に嘘だわ!! 信じられない!!!」
準の横で何やらマジギレしている柊。
……確かに、春姫の体はすごく魅力的だ。
もう随分長いこと春姫と付き合ってる俺ですら、思わず惹きつけられたくらいだから。
だが、それだけに……こいつらにだけは見られたくなかった……!!
「それにしても、アレを毎晩拝んでるなんて、雄真も結構ススんでるのねー♪」
「本当に羨ましいわ……あたしも一晩代わりたいくらい」
好機が訪れたとばかりに、俺のことをはやしたてる2人。
「からかうんじゃねぇ!!! それに毎晩は言い過ぎだ!! せいぜい1週間に1度」
「あーら聞きました奥さん? 小日向さんちは今でも週に1度はいたしてるんですってー♪」
「本当にお盛んよねー♪ もう付き合って半年は経つというのに」
「お前ら……言わせておけば……」
だからこいつらには、見られたくなかったんだよ!!
絶対こうやってからかわれるの目に見えてるんだから!!
「フフフ……」
柊と準が目配せしながら、妙な笑みを交わしている。
「な、何だよお前ら……気持ち悪いぞ」
その声を合図に、柊がいきなりこちらに背を向け、準と寸劇を始めた。
「『春姫……ここじゃ少し騒がしいだろ? 俺と2人で、どこか静かな所に行かないかい?』」
「『うん、雄真くん……ここじゃいろいろと不便だから……ね』(チラッ)」
「ごふっ!!!!」
じゅ……準のヤツ、何つーもん見せつけやがんだ!!!!
「以上、春姫ちゃんと雄真の日常生活」
「……本気でぶん殴るぞお前ら」
「あははー☆ 雄真が図星指されてテレてるー♪」
マジでお前らに殺意沸いたんだが、俺……。
つか、今バッチリ見えちまったぞ……
柊の……控えめだが形のいい……お尻が……
(って、何考えてんだ俺は!!!!)
「……ちらっ」
「あぁっ、小雪さんまでぇ!!!!」
小雪さんまで今し方2人がしてみせたようにこちらにお尻を見せてのけるし!!!
「あははっ、小雪先輩何ソレー!!」
「雄真さんを、喜ばせてみるテスト」
何ですかそのテストってのは……ι
「わーい、先輩もっとやれー!!」
「お前もはやしたてるなっつの!!」
「でも雄真さんは、神坂さんのでないと、なかなか喜んではくれないのです……
悲しいです……寂しいです……心が張り裂けそうです……」
いやに恨みがましそうな目で、こちらに訴えかける小雪さん。
うぅ……絶対からかわれてる、俺。
「うわ、雄真が小雪先輩泣かしてる!!」
「よっ! 雄真! この女泣かせっ!!」
「お前らいい加減にしろーーーーーー!!!!」
この調子で俺は、残された3人に散々おもちゃにされる羽目にあったのだった。
うぅ……恨むぞ、妹よ。
書いててちょっとだけUMAに殺意が沸いたのはここだけの秘密だ!w
ではまた第4章でお会いしましょうノシ
>乙
おもろいです
続きもお願いします。
正直1日2回ペースはどうかなと思いつつ投下。
第4章「恋人として、妹として」
「何だか向こう、ちょっと騒がしくなっちゃいましたね」
「うん……そうだねι」
さっきより随分活気づいてしまった、向こうの湯船。
きっと私とのことで、みんなが雄真くんのことをからかってるんだろう。
「……ごめんなさい。きっと……わたしのせいですよね」
「うぅん、気にしないで。私も、すももちゃんとお話したかったから」
普通科と校舎が離れ離れになってから、なかなかすももちゃんと
お話する機会って得られなかったからね。
「それで……お話って何? すももちゃん」
「えっと……ですね……」
少し気恥ずかしそうに、言葉を紡ぎだすすももちゃん。
「兄さん……魔法科で……元気にしてますか……?」
「……うん。元気にしてるよ。時々あまりのレポートの多さに、
普通科に戻してくれーって愚痴こぼしたりしちゃってるけど」
「そうですか……少し安心しました」
ほっとしたように、笑顔をほころばせるすももちゃん。
しかしその笑顔も、束の間に消えてしまう。
「でも兄さん……少し心配です。最近も毎日帰りが遅いようでしたし」
「……まぁ、最近は検定とかいろいろ忙しかったから。
それももう終わったから、しばらくはそこそこ早く帰れるんじゃないかな」
「だったら……いいんですけど……」
すももちゃんが物憂げな表情で私を見つめる。
「……姫ちゃん……わたし……すごく怖いんです」
やがてすももちゃんは、自分の中にずっと秘めていた想いを、訥々と私に語り始めた。
「一度は魔法を諦めた兄さんが、もう一度魔法を目指すと聞いたとき……
わたしは何だか、ひどく嫌な気持ちになったんです。
兄さんの新しい門出を、わたしは妹として、歓迎してあげなきゃいけない……
そう、頭ではわかってるはずなのに……」
「すももちゃん……」
「そして……兄さんの魔法科編入が決まったとき……
わたしは初めて、その想いの正体に気づいたんです」
ひとつひとつ、噛みしめるように言葉をつなげるすももちゃん。
その姿に、私も少し、胸がしめつけられるような想いを感じる。
「わたし……怖かったんです。魔法を知った兄さんが、
いつかわたしの手の届かないところへ行ってしまうような気がして……」
ここまで語った後、すももちゃんは込み上げる想いにひとしきり身を震わせた。
「そして……もし兄さんが選んだのが、姫ちゃんじゃなかったら……
きっとわたしは、兄さんの夢を壊してでも、
わたしのもとに、兄さんを縛りつけていたかも知れない……!!
そう思うと、自分で自分が、何よりも一番……怖くて、仕方がないんです……」
雄真くんの夢を捨てさせてでも、雄真くんに自分のもとにいてほしい……
そう願うすももちゃんの気持ちは、私にも痛いほど理解できた。
だってもし、私がすももちゃんの立場だったら……
私もきっと、同じ事を願ったに違いないから。
「……お願いします、姫ちゃん」
「……」
「兄さんのこと、ずっと……支えていてあげてください」
「……」
「姫ちゃんじゃなきゃ、ダメなんです……
兄さんの夢を、誰よりも理解してあげられる……姫ちゃんじゃなきゃ……」
「……すももちゃん……」
私にしがみつくすももちゃんの想いが、すごく伝わってきて……
あぁ、雄真くんはこんなにも大きな想いを、その身に背負っているんだな……
そう思うと、私は少しだけ誇らしさを感じた。
小日向雄真というひとりの人間と、人生を共に歩んで行けることに。
「……何だか、すももちゃんに、私の言いたいこと全部言われちゃったな」
「……姫ちゃん?」
笑顔で、私はすももちゃんに語りかける。
「私も……同じなんだ。すももちゃん」
「同じ……なんですか?」
「うん。おんなじ」
きょとんとした表情で、私の顔を見つめるすももちゃん。
「確かに私は、魔法というひとつの道を、雄真くんといっしょに歩んでゆける。
雄真くんの夢を、いっしょに追いかけてゆくことができる。
だけどすももちゃんは、雄真くんのたったひとりの妹として、
私よりも遥かに長い時間を、雄真くんと共に過ごしてきた……
それが……すごく、羨ましいんだ」
「……」
すももちゃんは少し顔を赤らめ、水面に視線を落とす。
「私は……魔法という接点を使わなければ、こうして雄真くんとはいっしょにいられないから……」
私はふと、すももちゃんの小さな手を取っていた。
その手を自らの掌と共に、月明かりに透かしてみる。
「支える手が、何本あったって、いいじゃない」
「姫ちゃん……」
「雄真くんの夢を、いっしょに追いかけていたい。
そう願う気持ちは、きっと、同じだから……」
「……」
とても眩しそうに、その手を見つめるすももちゃん。
その顔に、本当の意味での笑顔が戻ってくるのがわかった。
「ふふ……わたし、姫ちゃんとお友達で、本当によかったです」
「私もだよ……すももちゃん」
向かい合い、互いに微笑みを交わす私たち。
「兄さんのこと、いっしょに応援しましょうね。姫ちゃん」
「うん。私も……すももちゃんといっしょなら、すごく心強いな」
「うふふ……何たって、たったひとりの妹ですからね」
支えあう気持ちは、きっとひとつだから。
その想いを確かめ合うように、私たちはその手を堅く握りしめあっていた。
……よろっ……
ふらつく足に鞭打って、気絶から立ち直ったハチが立ち上がっていた。
「……くそぉ……まだ体がシビれてやがる……
だが!! この俺の情熱は、これしきのことで消し去れはしない!!!」
起き上がったばかりというのに、妙に元気なハチ。
「ひーめちゃーん、すももちゃーん!! 今行きまーーす!!!」
勢い込んで、浴場へと飛び込んだはいいが。
がらーん……
「……あれ?」
「……みんななら、もうとっくに上がっちゃったわよ」
「がーーーーん!!!!」
準の非情な一言に、一気にうなだれるハチ。
……何だか、少し気の毒な気もしないでもないな。
「そんな……俺と姫ちゃんとのラブロマンスが……うぅ……」
……前言撤回。一生のたうち回ってろ、こいつは。
ハチはそのまま、力のない足取りで脱衣場へと戻ってゆく。
「……あらぁ、どこへ行くの? ハチ」
「ほっといてくれ……夢破れた俺には、もはや行く道など」
「あらぁ、そんなこと言っていいのかな? お楽しみは、まだまだこれからじゃない」
「……ぁ?」
準の声に、ふらっと顔を向けるハチ。
「春姫ちゃんが、たった今までそのしなやかな肢体をあずけていた、
入りたてホヤホヤの、お・ゆ♪」
「入ります!!!!」
先ほどの覇気のなさはどこへやら、目をらんらんに輝かせて湯船にダイビングをかますハチ。
この立ち直りの早さこそ、ハチのハチたる所以だ。
「他にも、杏璃ちゃんにすももちゃん、小雪さんにあ・た・し。
まさにもう、よりどりみどりじゃない♪」
約1名ほど、余計なものが混じっていた気がしたが、ツッコんだら負けだ。
つか、ハチの奴もう聞いちゃいないし。
「姫ちゃんのエキスがしみ込んだこのお湯……この高溝八輔、
ハラがちぎれるまで飲み尽くす所存!!!!」
さっそくおいしそうに、そのお湯を吸い込みだすハチ。
「……一応そこ、俺も入っていたんだが……」
「まぁいいじゃないの。ハチが幸せそうなら」
「……まぁ、それもそっか」
……ん? ハチが幸せなら……?
俺は胸に言い知れぬ違和感を抱き、思わずハチの姿を見やった。
「んぐっ、んぐっ、んぐ……」
実においしそうに、春姫の入った浴槽の湯を飲み尽くすハチ。
春姫の。お湯を。おいしそうに。
…………
「エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ……」
「浴槽壊さない程度にねー♪」
俺が怒りの呪文詠唱に入るのを、準は実に愉快そうに笑い、そのまま脱衣場へと引っ込んで行った。
「エル……アダファルス!!!!」
ドォォォォォォン!!!!
「ぐぎゃああああああああ!!!!」
俺の魔法が、ハチに華麗にヒットした。
一応フィールドは展開しておいたから、浴槽が壊れる心配はないはずだ。
バタッ……
「くっ……さすが姫ちゃん……効き目も刺激的だぜ……ぐふっ」
「お前はもう二度と目を覚ますな」
無様な姿でぶっ倒れるハチを無視し、俺も浴場を引き上げた。
というわけで、前半のしんみりとした雰囲気をハチが華麗にぶち壊した形で第4章終了。
先はまだまだ長ぇや( ゚∀゚)アハハハ八八八ノ ヽノ ヽノ ヽ/ \/ \/ \
次回は一時UMA視点を離れ、ちみっちゃいけど魔力は最強な
あの方の視点でお送り致します。
それではまた第5章でノシ
>乙
春姫がらみになると、やっぱり雄真もあんな風に怒るんですね。
続きを楽しみにしてます。
>>408 UMAは本編でも、ハチが自分の彼女狙うような発言すると結構キレてますね。
小雪さんルートとかするとわかるw
てなわけで今日も張り切って投稿。
第5章「伊吹、温泉でのひととき」
「……ようやく到着か……信哉よ……」
私たちが宿に到着したのは、あれから2時間近く経った後であった。
「全く……もっと早くあの方法に気づいておれば、もう少し早く着けたのではないのか?」
「むむ。かたじけない……伊吹様」
「地元の警察の方に、詳しい道をうかがってから、約10分。
兄様と彷徨われた時間の、約10分の1でしたね」
「ぐっ……」
沙耶に鋭い指摘を受け、沈黙する信哉。
まったく……沈黙したいのはこちらであると言うに。
「それよりも、そなたのせいですっかり体が冷え切ってしまった。
早く暖かな湯船に身をあずけたいものだが……」
「では、僭越ながらこの私が……」
「兄様はもう下がっていてくださいι」
信哉に任せておっては、風呂に辿りつく前に夜が明けてしまうわι
そこへ。
「……あれ? 伊吹か?」
「……雄真? 小日向雄真か!」
浴衣姿でこちらへ向かってくる小日向雄真と目が合った。
体から立ちのぼる湯気から、入浴直後であることが見てとれる。
「信哉に……沙耶まで! お前らも小雪さんの誘いか?」
「あぁ……奇遇であるな、小日向雄真よ」
「そっか……今日は随分にぎやかな夜になりそうだな」
「……///」
小日向の笑顔に、自分の顔が赤らんでゆくのがわかる。
うぅ……どうしたというのだ私。
小日向ごときに情を乱されるなど、私の本意ではなかろうに……
「……伊吹様」
「あひっ!!!」
沙耶の急な一言に、私は思わず奇声を発してしまった。
「さ……沙耶よ!! 後ろから急に声をかけるでない!!」
「いえ……ちょうどよい機会です。
小日向さん、浴場へはどちらへ向かえばよろしいのですか?」
「あ……」
そうだ。考えてみればよい機会ではないか。
ここで小日向に風呂場の位置を聞いておれば、探す手間が省ける。
「あぁ、風呂場なら、この廊下をまっすぐ行った突き当たりだな。
大きな暖簾がかかってるから、すぐ分かると思うぞ」
「廊下の突き当たりですね……ありがとうございます、小日向さん」
「今ちょうどみんな上がったところだから、お前らもゆっくりしていけよ」
「はい……では、失礼致します」
「……ふん」
とりあえず、沙耶のおかげで、風呂場の位置は把握できた。
しかし、いまいち釈然とせぬ……
本来なら、小日向に道を尋ねるのは、この私の役目であったろうに……
「伊吹様?」
「あふぅ!!!」
うぐっ、1度ならず2度までも……///
「わ、私は……そなたが小日向雄真と特別親しいからと言うて、別に咎めるつもりなど」
「いえ……浴場へと参りませんか、伊吹様」
「……そ、そうであったな」
その言葉を機に、私たちは風呂場へと向かうこととなった。
しかし、何だか……小日向と沙耶に見事に調子を崩されておるようで、どうにも気分が悪い。
どうしたというのだ、私は……
「おおっ、これは……!」
「これはまた、非常に美しい岩風呂ですね」
沙耶と共に、感嘆の言葉を漏らす私。
「……小雪の奴も、たまにはよきはからいをしてくれるものだな」
「そうですね。ふふ」
これほどの美しい湯船ならば、日頃の疲れも十分癒せるというものだ。
小雪には、後で礼を言っておかねばならんな……
チャプ……
さっそく、湯船へと身を沈める私と沙耶。
「ふぅ……体が芯からあったまるようだ」
先ほどまであんまり長いこと雪道の中におったものだから、この湯の温かさが余計に身にしみる。
「……」
しかし……唯一気になるとすれば……
あちらの湯船につかっている、あの黒髪の青年……
ん? 青年!?
なぜ青年が、こちらの湯につかっておるのだ!!?
「……兄様!?」
その姿に、沙耶も気づいたらしい。
思わず発せられた言葉に、何故か先に入っていた信哉がこちらを振り向く。
「……沙耶? そして、伊吹様も!?」
向き合ったまま、硬直する私たち。
「どういうことだ? 俺は確かに、男風呂に入ったはずであるが……」
「それはこちらの台詞だ!! そなたこそ、何故女風呂であるはずのここに」
「……伊吹様。大体、見当はつきました」
頭をかかえるように、沙耶がつぶやく。
「おそらくこれは、小雪様のはからいのひとつではないかと……」
「はからい? 男と女が風呂を共にするのが、はからいと申すのか!?」
「小雪様なら、それくらい考えられてもおかしくはありません……」
……まいった。してやられたようだ。
第一あの小雪が誘った湯だ。何も起こらないはずがないのは、重々承知の上ではなかったか。
「伊吹様……それより……」
まだも話しづらそうに、私に声をかける信哉。
「ま……まだ何かあるのか! 信哉よ!!」
「いえ……淑女たるもの、みだりに人の前で体を晒すのは……」
「!!!!」
がばっ!!!!
私は反射的に、体を抱え込んでいた。
み……見られたぞ……
信哉の奴に……全て……
小日向の奴にも……見せたことは……ないと言うに……
「……えぇい信哉よ!!! そなたは私の半径五尺以内に近寄るでない!! わかったか!!」
「……承知致しました、伊吹様」
そのまますごすごと、退散してゆく信哉。
まったく……小雪のはからいとやらで、もう散々だ……
「……///」
ふと気づくと、沙耶が何やら顔を赤くしてうつむいている。
「どうしたのだ、沙耶よ……」
「いえ……」
少しだけ顔を上げ、沙耶が気恥ずかしそうに答える。
「小日向さんも……この湯を、お使いになられたということで……そう考えると、つい……」
「……!!」
ふ、不覚であった……
私は今し方、小日向の使ったばかりの湯を、こうして使っておるわけで……
私はふと、自らのつかっている湯に目を落とす。
……
(小日向のあの体が……この湯の中に……)
って、何を破廉恥なことを考えておるのだ、私は!!!
「お湯加減はいかがですか? 伊吹さん」
「ぬあっ!!!!」
背後から唐突に声をかけられ、私は本日3度目ともなる悲鳴を上げてしまった。
「こここここここ小雪!!! そなた、いつからそこにおった!!!」
「ついさっきから、です」
「つ、ついさっきと……」
その割に、全く気配を感じなかったのだが……
「……それよりもそなた!!! 今し方、小日向と共に上がったのではなかったのか!?」
「えぇ……ですが、またここの湯が恋しくなってきまして……
たった今、戻ってきてしまいました」
「そ、そうであったか……」
確かにここの湯は、とても居心地がよい。
小雪の奴が、またここの湯を恋しく思ったのも、無理からぬ話であろう。
「ですから伊吹さんも、ゆっくり楽しんでいってくださいね。
雄真さんも、ここの湯にそれは満足しておいででしたよ」
「そ……そうか……小日向の奴が……///」
うぐ……これだから小雪の奴は苦手だ。
こちらの心中を、手当たり次第まさぐられておるような気がして……
「それよりも……伊吹さんも、一杯いかがですか?」
小雪はそう言うと、何やら白く濁った湯が入った湯飲みを私に差し出した。
「? 何だ、この面妖な湯は」
「ここの温泉の源泉です。体内浄化作用があって、体も芯からあったまりますよ」
「……そうか……かたじけないな、小雪よ」
私はゆっくりと、その源泉に口をつける。
「……何やら妙な味がするな……血の味に近いと言うか……」
「ふふ。おかわりはいっぱいありますからね」
小雪のすすめで、私はしばし体の内外からその温泉を味わうこととなった。
とりあえず言い訳。
小雪さんが伊吹に与えた湯は、別に変なものじゃないです。
以前筆者がどこぞの温泉で飲んだ湯が、ホントに血っぽい鉄の味がしたもんでw
次回は再びUMA視点に戻り、春姫とちょっとあまあまなお話。
ではまたノシ
面白いから頑張れ、超頑張れ
なんだか『春姫が彼女+ハーレム』っぽい展開に・・・
まぁ、杏璃と小雪さんはいまのところ違うっぽいですが・・・
とにかく面白いです!
そしてこの後の『春姫とちょっとあまあまなお話』がかなり、いや、すごく気になり楽しみです。
春姫ファンとしては、雄真と春姫には是非とも最後までいた(ry
続きを楽しみにしてます。頑張って下さい。
ちょっとじゃなくかなりあまあまな展開を夢見ます
続きがたのしみです
個人的には誰か個別END後じゃなくて真END後のハーレムがよかった…
>>419 そこは作者様の趣味ということで
と、春姫ファンなので安心&楽しみとしか感じていない者の都合の良いマジレス
>419
いやほら、さすがに枯れるだろ、UMAが。
>421
大丈夫でしょ。だって小日向だしw
>>422 ものすごく納得したwwwwwwwwwww
んで少しだけ報告。
当初はHシーンの直接描写なしで話を進めておりましたが、
こちらのスレでHシーンの描写を望む声が多かったので、
自分自身のチャレンジも兼ねて現在Hシーン追加して話を書き直しております。
というわけで、申し訳ありませんが今夜の投稿はなしということで。
明日また第6章でお会い致しましょうノシ
>>423 OK
頑張ってチャレンジしてみてくれ
いまはここで君は神だな。
続きがいっそう楽しみになった
久々にここに来たら、はぴねすのSSがあってビックリ。
あのゲームはキャラが良いのに二次創作があんまり無かったので、かなり嬉しいデス。
長編になりそうで、続きをまったりとお待ちしてますー
エロ追加したらえらい長くなっちゃいました・・・
おそらく全章中最多の13レスです。
では行きます。
第6章「湯船で触れ合うふたりの気持ち」
「……もう終わったか? 春姫」
「うん……あともうちょっとだけ待ってね」
扉の前で、対侵入者用のトラップ魔法を詠唱する春姫。
「……くれぐれも、電気ショックとかはナシで頼むぞ」
「ふふ、わかってるって」
湯船から念を押す俺に、春姫が笑顔で答える。
……本当にわかってるのか? 春姫……
「しかし、まさかこんな便利なお風呂があったとはな……」
俺たちは今、大浴場とは別に用意された小さな家族湯に、2人で入っている。
風呂場の中にいるのは、俺と春姫の2人だけ。
それ以外に、俺たちを邪魔するものは、何もない。
「どうせなら、始めっから2人でこっちに入ればよかったかな? なんて」
「ふふ。そうしたら、またみんなにからかわれちゃうね」
「ははは……そうだなι」
大浴場でのドタバタコントを思い出し、苦笑する俺。
やがて、トラップを仕掛け終えた春姫が、俺の隣へゆっくりと入ってきた。
湯船の中で密着する、俺と春姫。
「あったかいね……雄真くん」
「あぁ……何だか、やっとまともに温泉につかれたような気がするよ」
「そうだね……もう、みんなよってたかって、雄真くんのこといじめるんだもん」
「あはは……ι 聞こえてたんだ、アレ」
あの会話を春姫に聞かれるのは、さすがにちょっと恥ずかしいぞ。
「……そう言えば」
「ん? 何?」
「あの時、お前……すももと2人で、一体何を話してたんだ?」
大浴場のすみでこっそり行われた、女同士の秘密の会話。
やっぱり男としては、気にならないと言えば嘘になるわけで……
「ふふ……知りたい? 雄真くん」
「そりゃあ、まぁ……一応、恋人だからな」
「ダーメ。これは私とすももちゃんだけの秘密」
春姫は人差し指を口元に当て、いたずらっぽく微笑んでみせた。
「えー? いいじゃんかよ、俺と春姫の仲じゃねーか」
「いくら雄真くんでも、こればっかりは言えないよ。
もしムリヤリ詮索したら、馬に蹴られちゃうんだから」
「はは……それは是非とも勘弁願いたいとこだな」
「ふふ。何たってすももちゃんと私は、切っても切れない赤い糸で結ばれてるからね」
「それはさすがに、男の俺が無断で割り込んじゃいけないってことか?」
「ふふ。そういうコト」
すももと春姫の会話……気になるけど、今度ばかりは我慢するか。
「空が、とってもキレイだね……」
「あぁ、そうだな……」
眼前に広がる、無限の星空。
俺たちの言葉以外、全ての音を飲み込んでいってしまうような、そんな幻想的な空間。
「何だか……私たちだけ、この世界から切り離されたみたい……」
「そうだな……春姫」
広い世界に、取り残されたのは俺たちだけ……
何だかとても、ロマンチックな雰囲気だ。
「……」
俺はふと、春姫の体を見つめた。
春姫の肌が温められて、ほんのりバラ色に色づいている。
その吸い込まれそうな滑らかな肌に、俺はふつふつと抑えきれぬ想いを抱いていた。
「……あのさ、春姫……」
「……何? 雄真くん」
「……そんなキレイな春姫を見つめてたら……その……
俺……我慢できなくなってきたって言うか……」
「あ……///」
俺の言葉に、春姫が顔を赤らめさせる。
「雄真くん……///」
「あ……ゴメンな春姫!! せっかくいい感じでロマンチック入ってたのに」
「うぅん。気にしないで、雄真くん」
あわてて春姫が、俺に笑顔を作ってみせる。
「それに……私も、その……少し、期待してたから……」
「……そっか」
湯船の中で触れ合う、俺と春姫。
そのゆったりとしたお湯が、俺と春姫との距離をも近づけてくれるような気がして……
俺はそっと、春姫を抱き寄せていた。
「春姫……」
「雄真くん……」
月明かりの照らし出す浴槽で、俺は春姫と静かに口づけを交わしていた。
「……ぇろ……ん……」
春姫と口づけしながら、ゆっくりとその舌を春姫の口内に侵入させる俺。
彼女の唇、歯列、そして舌の両面……
それら全てを味わってみたくて、夢中で舌を動かす。
「……ぁは……あ……雄真……くん……」
春姫もまた、俺の舌の動きに同調して、懸命に舌を絡ませてくる。
徐々に春姫の目が、とろんと潤んでくるのがわかった。
お口いっぱいに広がる、春姫の甘ずっぱい匂い……そして、春姫の恍惚とした表情……
それらが今後の期待感を増長させる。
「春姫……もしかして、感じて……くれてる……?」
少し口を離し、春姫の反応をうかがってみる俺。
「……うん……雄真くんのキス……とても優しくて……痺れちゃいそう……」
「春姫……」
俺に優しく微笑みかける春姫の表情が、とてもいとおしくて……
俺はもう一度春姫と、熱くて甘いキスを交わした。
「……久しぶりだから、かな……? 私……雄真くんに……いっぱい甘えたい気分……」
「久しぶりったって……まだあれから1ヶ月も経ってないぞ?」
「それでも……いいでしょ? 私、検定の間ずっと我慢してたんだから……」
からかい混じりの俺の言葉に、春姫がかわいらしく拗ねてみせる。
正直、我慢できないのは俺も同じだった。
……きっと、温泉というこの場の魔力のせいだ。
いつもの春姫が、今日はことさら綺麗に見えて仕方がない。
「……春姫……」
「あ……」
俺は春姫を抱き寄せたまま、俺と春姫との間を隔ててる邪魔なタオルをそっと取り外した。
春姫の豊かな乳房が、ふるっと揺れて湯船に浮かぶ。
「……うゎ……」
大きな胸って、本当に湯船に浮かぶんだな……
春姫の胸なんていつも見慣れてるはずなのに、それでもまだ新しい感動があるなんて。
「触るよ? 春姫……」
「うん……」
春姫が照れ臭そうに頷くのを合図に、俺は春姫の乳房にそっと手をかけた。
「あ……」
胸に伝わる感触に、思わず甘い声を出す春姫。
温泉の湯でじっとり湿った春姫の胸は、驚くほど吸いつきがよく、そして柔らかい。
何より温泉の浮力のおかげで、片手でもいとも簡単に持ち上げることができる。
(以前に比べても……何だか、すごく揉み心地がよくなってきたような……)
何度も俺としてきたせいで、春姫の乳房も俺好みに開発されてきたってことなのか?
そんなことが実際にあるのかどうか、俺にはよくわかんないけど……
この感触のいい胸を、俺の好き放題こね回してもいいんだって思うと、すごく嬉しくなる。
俺は夢中になって、両手で春姫の胸をこね始めた。
「あはっ……ぁん……はぁ……あぁ……」
乳房がぐいっと持ち上げられるたび、春姫がかすかに声を上げる。
「やぁ……ぁっ、はぁっ……あっ、ぁは……っ」
次第に春姫の表情が、ぽわーっとくだけてくるのがわかった。
気持ちいいけど、あとひとつで昇りつめられないでいる、もどかしげな表情。
その顔に、俺はどうしようもない欲情を感じる。
俺は自分の手の中で踊っている春姫の乳首を、そっと口に含んだ。
「あ……やだ、雄真くん……」
唇がそこに触れた瞬間、春姫が全身をぴくりと震わせる。
俺は口内で春姫の乳首をいじめながら、同時に空いた右の手で、春姫の秘裂にそっと触れた。
「やっ……だめ、そこは……」
温かな湯に覆われた春姫のそこは、既にじっとりと蜜が溢れ出していた。
さらっとした湯の感触とは明らかに違う、春姫の粘液の感触。
それらのおかげで、俺の指はいとも簡単に内部へと飲み込まれていく。
「ひゃ……ぁん、はぁん、あん……あぁっ、はぁ……っ」
膣口からクリトリスまで、割れ目に沿って指をスライドさせる俺。
同時に口の中で、春姫の乳首を愛撫するのも忘れない。
「はぁ……ぁ……あん、あ、あぁっ……」
乳首と秘裂……2つの地点の相乗効果で、春姫の感度も徐々に上がってきてるのだろう。
口内で暴れる春姫のそこは、既にはち切れんばかりに膨張してた。
「ん……あ……春姫……」
春姫が俺の愛撫で、すごく気持ちよさそうにしてくれている……
それがすごく嬉しくて、俺はより強く春姫の乳首にむしゃぶりついた。
「ひゃあああ……っ、ぁあっ……あぁ……だめ……雄真くん……」
春姫が俺の頭上で、声にならない声を上げている。
「はぁんっ、あっ、あぁ……気持ちいいの……雄真くん……」
迫り来る快楽に、呼吸を忘れひたすら喘ぐ春姫。
とても甘くて官能的な、春姫の喘ぎ声。
その声を聞くだけで、俺のあそこは抑えきれないくらいびんびんに反応していた。
「……!?」
ふと俺は、その下半身に違和感を感じた。
温泉の湯が意志を持った粘液と化して、俺の肉棒に絡みついてくる感覚。
……言うまでもなく、春姫が俺のものを握りしめているのだ。
「は……春姫……?」
「いつも……されっ放しじゃ……悔しいから……ね? いいでしょ?」
そう言うと、春姫は握りしめたその手をこしゅこしゅと上下させ始めた。
「っく……は……春姫……」
いつも自分でするのとは全然違う、春姫の滑らかな手の感触。
お湯の潤滑も手伝って、どうしようもない快楽が下半身に伝わってくるのがわかる。
「あふ……雄真くんの、もう、こんなになってる……凄いね……」
「ぅぁ……っ……はる……ひ……っ」
顔を上気させながら、必死に俺のそこをいじめぬく春姫。
その口から、次第に喘ぎ声にもよく似た吐息が発せられるのがわかった。
見ると春姫は、空いた方の手で、しきりに自分の乳房をいじっている。
(……まさか……)
俺のをしながら、春姫が……感じている……?
あの春姫に……まさか、こんなにえっちな一面があったなんて……
いつもの彼女からは到底想像もつかないその状況に、
俺は夢とも現(うつつ)とも知れぬ曖昧な感覚を抱いていた。
「んく……ん、ねぇ、雄真くん……」
「? 何だ……春姫……」
「……舐めてもいいかな? 雄真くんの、これ……」
「……あぁ……」
春姫が、自分からフェラチオを求めてきている……
俺の方に、そのありがたい申し出を断る理由などない。
俺が頷くと、春姫は俺の両足を肩にかけ、俺の腰を水面まで持ち上げた。
「……重くないか? 春姫……」
「うぅん、全然。お湯のおかげで、ずいぶん楽……」
「春姫……」
春姫はうつむくと、水面にぽっかり顔を出した俺のものに顔を近づけた。
「雄真くん……私が……いっぱいしてあげる……」
そう言うと、春姫はおずおずと俺のものを口に含んだ。
ふわっと、亀頭の先が温かな感触に包まれる。
「ぅあ……」
まるでこの世の極楽とも見紛うような、強い快楽。
春姫にしてもらうのは別に初めてでもないのに、
何故だか初めてしてもらった時のような新鮮な感動がある。
春姫はくわえこんだその口を、唾液といっしょに上下運動させ始めた。
じゅぼじゅぼと、淫靡な響きが浴場中に響き渡る。
「うぁ……っ……ぁ、っく……っ」
あんまり久しぶりだったせいで、感度がいつもの数割増くらいになっているようだ。
俺の下半身はおろか、脳内までとろけていってしまいそうな感覚に、俺はしきりに喘いだ。
「ああっ……ダメだ、春姫……もう……」
腰を浮かせ、限界が近いことを知らせる俺。
「ゆうま……くん……」
春姫は頷くと、さらに激しいストロークを俺のあそこに加えた。
俺の精液はおろか、ペニスごと持っていかれそうな感覚。
俺は春姫の頭を、がしっと押さえつけ……
びくん!!びくんっ!!!
俺は春姫の喉元目がけて、一気に精を放っていた。
「っ……ぁ……ゆぅま……くん……っ」
あまりに多くの量がほとばしったのだろう。
ひとしきり出した後、春姫は思わず咳き込み、手の中に俺の精液を吐き出していた。
「んもぉ……雄真くん……出しすぎ……」
苦笑しながらも、春姫の方に別段嫌悪感を抱く様子はない。
「……悪い……こっちも……久しぶりだったから……それに……」
「雄真くん……?」
一度出したばかりだというのに、未だ激しく自己主張している俺の息子。
これはもう、春姫の中で果てないと収まりがつきそうになかった。
「……なぁ……春姫……いいかな……? そろそろ……」
俺の問いかけに、春姫がこくっと頷く。
「うん……来て……雄真くん……」
俺は春姫を抱き起こし、湯船のへりにその体を横たわらせた。
月明かりに照らされた、春姫のよく濡れた肢体。
見てるだけで思わず射精してしまいそうなその情欲に耐え、
俺はゆっくりと春姫の足を開いていった。
「……優しくしてね、雄真くん……」
春姫がかすかに笑顔を浮かべ、俺に懇願した。
ここで期待に答えずして、男を名乗る資格なし!
激しく膨張する己が肉棒に手を添え、俺はその先端を春姫の秘裂にあてがった。
じわりじわりと、亀頭の先が粘液の泉に飲み込まれてゆく感覚。
そして、俺は一気に腰を前にスライドさせ……
「!!! ひゃ、ああっ!!!!」
俺のペニスは、一気に春姫の奥底まで貫いていた。
一気に膣底を攻められる感覚に、思わず全身をピクリと震わせる春姫。
「ぁっ……もぉ……慌てすぎだよ、雄真くん……」
「ご、ゴメン……春姫」
思わず苦笑いする春姫に、情けなく平謝りする俺。
久しぶりで興奮してたのは、どうやら俺の方だったようだ。
「約束だよ、雄真くん……今度はちゃんと、優しくして……」
「あぁ……わかったよ、春姫」
春姫の言葉に従い、俺はゆっくりとピストンを開始した。
亀頭の先をじらすように、春姫の膣壁にこすりつける俺。
「ん……ぁっ……はぁ……っ」
春姫の膣内は、相変わらずとてもきつく、それでいてとても滑りがよい。
何よりペニスに絡みつく襞(ひだ)の感触が、何とも言えぬ快感を俺に与えてくれる。
(きっとこれが、名器ってやつなんだろうな……)
春姫以外の女の人の感触を、俺は知っているわけじゃないけど。
気を抜けばすぐにでも逝ってしまいそうな感覚に耐え、俺はぼんやりとそんなことを考えていた。
「んぁ、ぁぅ……うん……っ、あ、あん……」
すぐに達してしまうことのないよう、じっくりと前後運動を繰り返す俺。
……本当は今すぐにでも、春姫の膣内をかき回したい衝動でいっぱいだった。
だけど、それじゃきっと、春姫は満足できないだろう。
せっかく数週間ぶりに春姫を愛してやれるのだから、
俺だけが満足して終わってしまうのだけは、絶対に避けたいところだ。
フラッ……
(……え?)
一瞬だけ俺は、気が遠くなるような感覚を覚えていた。
と言っても、気持ちよさのあまり気が遠く……とか、ありがちな話ではない。
何というか……ちょうど朝の集会で脳貧血を起こすような、そんな感覚に似ていた。
(……当たっちまったかな、俺……)
確かにここに来てから、湯船にずっとつかりっ放しだったからな……
こりゃ俺が気を失うか、春姫といっしょに絶頂を迎えられるか、勝負といったところだな……
「春姫……そろそろ、動いていいか……?」
朦朧とする意識を何とか繋ぎ止めつつ、俺は春姫に問い掛けた。
「もう、逝きたいの……? クス、せっかちなんだね、雄真くん……
でも、いいよ……私の中に、いっぱい、ちょうだい……」
「あぁ……春姫」
晴れて春姫の許可も得たことだし、もう俺の方に遠慮する理由はない。
俺は春姫の腰に手をかけ、一気にラストスパートを仕掛けた。
「!!? ひっ、ぃやっ、あっ、はぁっ……」
俺の腰の動きに合わせて、春姫の喘ぎ声がリズミカルに響く。
振動に合わせ揺れ動く、春姫の大きな乳房。
それが視覚的な刺激となって、俺に更なる興奮を呼び起こした。
「あぁっ、はっ、あっ、うぅっ、あ……ああああっ……!!」
快楽に喘ぐ春姫の目が、徐々に焦点を失ってゆくのがわかった。
と同時に、春姫の子宮が、これまでよりも更に強烈に俺のものを締め上げる。
(感じてるんだ……春姫……!!)
春姫と共に昇りつめられる歓びに打ち震えつつ、俺は更に春姫の奥底を攻め続けた。
先ほどの大きなピストンとは違う、奥底のみを攻める微弱な動き。
ただそれだけでも、春姫の身体はまるで電流を流されたかのようにびくびくと反応する。
「っく……あ……春姫……っ!!!」
「雄真……くん……っ、ひゃ、あああああっ……!!!」
春姫が、にわかに全身をびくっと仰け反らせた。
その瞬間、俺のペニスを、これまでにない強烈な圧迫感が襲い掛かる。
その締めつけに耐え切れず、俺は……
びゅくっ、びゅくっ……!!!
股間に溜まった俺の気持ちを、存分に春姫の中へと注ぎ込んでいた。
「はっ、あぁっ……ゆぅま……くん……」
びくっ、びくっ、びくっ……
絶頂を迎え、脱力する春姫の中で、俺はなおも射精の快感を味わい続ける。
「はぁっ、はぁっ……春姫……俺……」
……やがて全てを出し切った俺は、力尽きて春姫の上へと覆い被さった。
「あっ……もう、雄真くんったら……」
春姫もまた、絶頂後の心地よい虚脱感からか、俺の体に腕を回し余韻に浸る。
……フラッ……
……あれ? 俺今どうなっちゃったんだ?
今下で組み敷いてるはずの春姫の感触が、微塵も感じられない……
あるのは、ただ一面の白。
春姫の存在も俺の存在も、全てどこかへ消え去ってしまった、一面の混沌。
(……雄真くん?)
あぁ、俺きっとやっちゃったんだな……
湯あたり寸前であんな激しくやっちゃったら、そりゃ気絶しちゃうのも当然かー……
でもま、いっか。
久しぶりに、春姫のかわいらしい喘ぎ声が聞けたんだもんな……
ガクッ
(雄真くん!? しっかりして、雄真くん!!)
……本当は今すぐにでも、春姫のエロSSで抜きたい衝動でいっぱいだった。
だけど、それじゃきっと、読者のみんなは満足できないだろう。
せっかくこんなに多くの人たちが読んでくれてるのだから、
俺だけが満足して終わってしまうのだけは、絶対に避けたいところだ。
↑以上、エロシーン執筆中の俺の心境でした。
エロ書いてると別のものもかきたくて仕方がなくなるんですがorz
湯あたりで気絶しちゃったUMAのその後も気になるところですが、
次回からしばらく伊吹他式守一派中心の話が続きます。
春姫ファンの皆さんは、今しばらくご辛抱下さいね。
>>440 GJ!!
いやいや、ラブラブかつエロエロで大変ご馳走さまでした(w
それだけ騒ぐと他の面々に聞こえているような聞こえていないような……
そう言う可能性無視して、気絶しなかったらもう一戦くらいしそうだけど(笑) > UMA
キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)━━━!!!!
>>440 乙andGJ!!
エロ初めてにしてはかなり上手かったです。
ラブイチャどころか最高に愛し合っちゃってますな?お二人さん。
確かに気絶しなければまだまだやりそうな予感・・・ってかするな、絶対。二人ともまだ足りんでしょう。
ラブラブな雄真と春姫のHが読めて、この二人推奨な自分にしてはもう言う事なしです。
伊吹他式守一派中心の話も楽しみですが、この後の展開がとても楽しみです。
これからも頑張って下さい。
実はこの話、もともとは
>>429の後ハチがトラップにかかって終わりという
どうしようもないオチでした。
・・・ホント、エロ追加してよかったわ・・・
では朝も早いですが投稿。
第7章「伊吹と杏璃、宿命の対決!?」
「……まぁ、よい湯であったな」
風呂を上がり、廊下をしばし歩き回る私。
信哉と沙耶の奴は、早々に部屋へと引き上げてしまったからな……
私ひとり、手持ち無沙汰で少しまいる。
「さて、私も部屋に戻るとするか……」
あてもなくなり、あてがわれた部屋へと引き返そうとする私。
そこへ。
「いえーい!! これで杏璃ちゃんの10連勝っ☆」
「また負けちゃいました……強いです、柊さん」
「ふっふーん☆ この柊夫人に勝とうだなんて、千と10年早くてよ♪」
妙に聞き慣れた声が、廊下の向こうからこだまする。
(……何事か……?)
半ば引きつけられる形で、私はその声のする方へ向かった。
と、そこにいたのは。
「あ、伊吹ちゃん♪」
「……すもも……!?」
私がその正体に気づくよりも前に、すももが私に抱きついてきた。
「わーい、伊吹ちゃんだー☆ こんな所で会えるなんて、とっても嬉しいです♪」
「すもも……そなたも来ておったのか」
「はい! わたしたちみんな、小雪さんのお誘いです!」
そうか……すももも来ておったのか……
まぁ冷静に考えれば、小日向の兄が来ておる地点で、何となく察しがつくものであるが。
「そうか……しかし残念であるな……
もしそなたが来ておることを知っておれば、何よりも先にそなたを風呂に誘っていたのに」
「そんな、伊吹ちゃんは気にしなくてもいいですよ?」
「だが……」
私が心底残念がるのを見て、すももは笑顔で提案した。
「そうだ! 明日朝起きたら、いっしょにお風呂に入りましょうね!!」
「明朝か……そうだな。たまには、朝風呂も悪くないかも知れぬ」
「じゃ、約束ですね! 伊吹ちゃんとお風呂、今からとっても楽しみです♪」
この、時折しつこいまでの気配りのよさ。
私がすももに心を開くことができたのも、すもものこの気配りのおかげかも知れぬな。
「それよりも……すもも達は今、何をしておったのだ?」
「卓球ですよ。温泉に来たら、これは基本ですよね」
「たっ……きゅう?」
見たところそれは、網をはさんだ卓の上で行う遊びのようだ。
他に見当たるのは、すももたちの手にしておる面妖な板と、橙色の小さな球。
「それは一体、どのような遊びなのだ?」
「じゃ、今から準さんとやってみますね。とっても楽しいですよ♪」
「あら、あたしがご指名? それじゃ、行ってくるかな」
そう言うと、すももと準の奴が、互いに卓をはさんで向かい合った。
「では、よろしくお願いします! 準さん!」
「ふふ……お手柔らかに頼むわね、すももちゃん」
互いに挨拶を交わした後、すももの手から橙色の球が放たれる。
カン……コン……カン……
卓上で跳ねる橙色の球を、手にした板で跳ね返しあう2人。
やがて、球はすももの目の前で弾け飛び、そのまま後ろへと飛んで行った。
「あはは……さっそく一本取られちゃいました」
「でも、何気にラリーは続いてたよね。結構いい感じじゃなかった? 今の」
「そうですか? 準さんにそう言ってもらえると、わたし、嬉しいです」
なるほど……見たところ、羽根つきや毬つきと同じ類の遊びであるのだな。
その後、すももはこちらに振り返って言った。
「……とまぁ、こんな感じの遊びです! 伊吹ちゃんもやってみますか?」
「わ、私がか?」
唐突な提案に、思わず固まる私。
「しかし……かような遊びは、私も少々苦手な方で……」
「そんなことありませんよ! 伊吹ちゃんなら、きっと大丈夫です!」
「……しかしだな……すももよ……」
「はっはーん♪ 伊吹はさしずめ、この杏璃ちゃんに負けるのが嫌ってことかしら?」
「!!!!」
ひどく挑発的なその台詞に、思わず私は後ろの人影を睨みつけた。
「その声は……柊杏璃か!?」
「だったらなぁに? まさか式守の当主様ともあろうお方が、
たかだか一般人上がりのこのあたしの相手すら出来ないなんて言わないわよね?」
カチン!!!
私の中で、何かがキレるのがわかった。
「……言わせておけば柊杏璃!!! 誰がそなたなど怖がる必要があるか!!!」
「ほっほー……負け犬ほどよく吠えるって言うけど、
この程度の挑発にまんまと引っかかるなんて、やっぱお子ちゃまはお子ちゃまよねー♪」
「言うたな柊杏璃よ……前々から貴様のその高慢な態度は腹に据えかねていたところだ!!!
今宵こそ、貴様のその生意気な鼻っ柱を叩き折ってくれるわ!!!!」
「望むところだわ。やれるもんならやってみなさいよ、この三流魔法使い!!!!」
「わーい、伊吹ちゃん頑張れー!!」
眼前の女と今生の決着をつけるべく、私はすももからもらった羽子板を手に卓へと向かっていた。
今回は短めなので、ついでにもう1本行きます。
さてその頃、部屋に戻った上条兄妹は・・・?
第8章「シスコン兄貴と妹の想い」
「……沙耶」
「いかがなさいましたか? 兄様」
「どうした? そこにいては寒いであろう。早く布団の中に入らぬか」
兄様と2人きりで入れられた寝室。
その中に用意されたただひとつの布団の中で、兄様が私に手招きをする。
「いえ……そう言われましても……私……」
「何を遠慮してる。俺と沙耶、知らぬ仲でもあるまいに」
「……」
……兄様はきっと、わかってません。
年頃の兄妹を1つの部屋に入れて、用意された布団はたったの1組。
これはどう考えても、小雪様の「粋なはからい」のひとつではありませんか……
「さぁ、入りたまえ沙耶。子供の時分はよくこうして共に寝ておったではないか」
「……あの頃と今とは、話が違います。兄様と、布団を共にするなど……」
「むむ……実にけしからぬ考え方だ、沙耶」
……年頃の男女が床を共にする方が、けしからんと思うのですが。
「大体人というものは、昔から座って半畳寝て一畳と言うではないか。
布団がこうしてひとつ用意されておるだけでも、ありがたいとは思わぬのか、沙耶よ」
「……」
だったら、兄様が外で寝たらいいんです……
そう思っていたところで、兄様がにわかに床を立った。
「……仕方ない。寝床はお前にくれてやろう」
「……え?」
突然の兄様の行動に、思わず面食らう私。
「でも兄様は、いかがなさるおつもりですか?」
「俺は外で寝る」
「え!?」
兄様、それはあまりに極端なやり方では……!?
そう思う私の思いとは裏腹に、兄様はにわかに扉を開け、外気に身を晒しだした。
外は一面の銀化粧。
幸いにして吹雪いてこそないけれど、この時分、浴衣姿では相当身に堪えるはず……
「ぬぅ……今宵の風は少々身にしみるな……
だが!! これしきの寒さなど、心頭滅却すれば火とまた同じ……!!!」
さすがの兄様でも、これは止めないと、大変なことになってしまいます……
……まったく、仕方のない兄様ですね……
「……兄様」
「……何だ? 沙耶」
私は布団を上げ、ちょうど兄様が入れるくらいの領域を作ってみせた。
「久しぶりに……一緒に、寝ませんか?」
「何を言う沙耶よ。お前は……」
「いいんです。兄様が一緒でないと、また怖い夢を見てしまいそうですから……」
本当はもう、ひとりでもちゃんと寝られるんですけど……ね。
「……そうか。仕方のない妹だ……どれ、共に寝てやるとするか」
そう言いつつ、布団に潜る兄様は、本当に嬉しそうで……
「……仕方のないのは、兄様の方です」
「ん? 何か申したか? 沙耶」
「何でもありません。クス」
久しぶりに感じる兄様の温もりを胸に、私はゆっくりと夢の世界へと入って行った。
というわけで今朝はここまで。
伊吹と杏璃、宿命の対決の行方はいかに・・・?
次回第9章でお会いしましょうノシ
>>452 >乙
今回も読ませて戴きました。
はたして卓球を知ったばかりの素人の伊吹が何気に強い杏璃に勝てるのか・・・
負けそうになったらどっちも魔法使いそうな予感
そして8章はシリアスでしたが読み応えがありました。
で・・・
雄真と春姫はどうなったのか・・・色々楽しみです。
またキタ━━━━ヽ(゚∀゚ )ノ━━━━!!!!
>8章
筆者としてはあまりシリアスにしたつもりはないですw
どちらかというと、上条兄妹中心のまったりコメディといった感じ?
むしろ今回の話のほうがシリアスかも。
では今夜も投稿。
第9章「友達ということ、傷つけるということ」
「いえーい☆ 杏璃様の11連勝〜っ♪」
「ぐっ……こんなはずでは……」
歓声をあげる柊杏璃のもとで、敗北感にうなだれる私。
試合結果は、11対0。
この私が、柊の奴に1点も返せずに、敗北を喫してしまったのだ……!!
「やーっぱり、伊吹は魔法以外のことは大したことないのねー♪」
「……」
柊の言葉に、一言も返すことができない。
『秘宝』の継承を望んだあの時でさえ、かような屈辱に身を焼いたことはなかった……
「……もう気が済んだであろう? 私は部屋に戻らせてもらうぞ」
「伊吹ちゃん……」
すももの腫れ物に触れるような言葉が、余計に私の胸を締めつける。
「がたい無理な話であったのだ! この私が、かような高等な遊びを嗜もうなど」
「……伊吹ちゃん……」
すももはしばらく悩むように顔をうつむけていたが、やがて何かを思いついたように顔を上げた。
「そうだ!! 伊吹ちゃん、わたしとダブルス組んでみませんか?」
「……だぶるす……?」
また、私の聞きなれぬ言葉だ……
その言葉に、私は否が応にもすももとの間に抗えぬ壁を感じてしまう。
そんな私の様子を察してか、すももが私に笑顔で説明する。
「えっと……つまり、わたしと伊吹ちゃんの2人で、準さんたちと勝負するってことです!」
「な、何だと……!!」
それはつまり、私の失策が、そのまますももの失策となるということではないか!!
「そ……そのような案、私が承諾できるわけがなかろう!?」
「え? 何でですか? 伊吹ちゃんとなら、きっと楽しい試合になりますよ」
「……そなた、今の試合見ておったろう?
私などがそなたと組んだところで、何が変わるというのだ」
「そんなことないですよ! 伊吹ちゃんがいっしょに戦ってくれるだけで、わたし」
「……理解できぬ。私のような素人の手を借りたところで、あやつらに勝てるわけがなかろう?
むしろ私が、すももの足を引っ張るやも知れぬに……」
「……怖いですか? 伊吹ちゃん……」
すももがそっと、私にささやきかける。
「……そなたこそ、怖くはないのか……? 私などと組んで、無様に醜態を晒すこと……」
「いいえ。怖くなんてありません!
むしろ、伊吹ちゃんといっしょに戦えるって考えると、わたし、わくわくしてきます!」
「……」
すももの言葉が理解できず、うなだれる私。
何故そんなに明るく、返事ができるのだ……?
「伊吹ちゃん……」
そんな私の顔を、すももの手が優しく触れる。
「自分のせいで、大切な何かを傷つけてしまうかもしれない……
その不安は、わたしにもよくわかります」
「すもも……」
「わたしも……同じでしたから」
出逢った時から、常に私から逃げずに向き合ってくれたすもも。
そのすももが……今、私にも決して見せたことのない悲痛な表情を見せている。
「伊吹ちゃんが、『秘宝』をつけ狙う悪い人だって知ったあの時……
わたしは、一度だけ……伊吹ちゃんから逃げてしまいそうになりました。
伊吹ちゃんの中にある、『秘宝』に対する強い想いを知って……
もうわたしの声は、二度と伊吹ちゃんには届かないんだ……そう思って」
私がかつて瑞穂坂で犯した、最大の禁忌。
『秘宝』を手に入れ、名実ともに式守の後継者たらんことを願ったあの日。
そして結果的に、那津音姉様の、すももの……皆の想いを踏みにじったあの日……
思い出す度に私は、身を焼かれるような後悔にさいなまれる。
「……でも、そこでわたしは思ったんです。
ここでわたしが逃げ出してしまったら、伊吹ちゃんは一体どうなってしまうんだろうって……」
「……」
「あの時、わたしが傷つき傷つけることを恐れていたら……
きっとわたしは二度と、伊吹ちゃんとこうして笑いあうことはできなかったと思います」
「すもも……」
かような醜い欲望に駆られた私のことを、なおも見捨てず想い続けてくれたすもも。
そのおかげで今の私があることは、疑いようのない真実だ。
「……傷つけ合うことを、恐れないでください。伊吹ちゃん」
「……」
「わたしは伊吹ちゃんの、たったひとりのお友達じゃないですか……」
「……すもも……」
すももの私に対する強烈な想いを、ひしひしと感じ……
私は、すももの顔を見ていられなくなり、思わず顔をそらした。
「……ホントにいい娘じゃない、すももちゃん」
遠くで私たちのやりとりと見ていた柊杏璃が、静かに口を開いた。
「あんたみたいなのを、ここまで真剣に想ってくれるヤツなんて、そうそういないわよ?
大事にしてやんなさいよ、伊吹……」
「……柊……杏璃……」
柊の切なそうな声が、私の心にじんわりと影を落とす。
まったくだ。私のようなくだらない人間など、捨て置いてくれてもよいはずであろうに……
何故ここまで、私などに心を砕ける?
何故ここまで、たくさんの想いを私にくれる……?
「……そんな顔しちゃ、ダメですよ? 伊吹ちゃん」
「すもも……」
「女の子はいつでも笑顔でいなきゃ! って、お母さんがいつも言ってますよ」
「……ふっ」
……思えば私は、何を下らないことを考えておったのだ。
人間たるもの、傷つき傷つけ合うのは、当然の理ではあるまいか。
「まったく……お前のその強さは、一体どこから来ておるのだろうな」
「え? わたしは強くなんてありませんよ? さっきから準さんや柊さんには負けっ放しで……」
「そういうことではないのだが……まぁ、よしとするか」
今ならば、すももに本当の笑顔で向き合うことができる。
確たる自信を胸に、私はすももに笑顔で言葉をかけた。
「参るぞすもも!! 今度こそ、あの女狐めに一泡吹かせてやらん!!!」
「はい!! 頑張りましょうね、伊吹ちゃん!!」
「やっとその気になったようね……あたしも手加減しないから、全力で来なさい!!!」
「ふふ。よろしく頼むわね。すももちゃん、伊吹ちゃん」
羽子板を握る手に確たる想いを込め、私はすももと卓へと臨んだのだった。
それから十数分後……
試合を終え、卓球台の近くの長椅子で、くつろいでる私たちがいた。
「また……負けちゃいましたね、伊吹ちゃん」
「あぁ……負けてしまったな」
すももの心地の良い笑顔が、私に安らぎをくれる。
11対3。それが、試合結果であった。
結果だけ見れば、確かに私たちの圧倒的敗北である。
だが……心の中には不思議と、ある充実感が芽生えていた。
「すまぬなすももよ……あそこで私がうまく返せておれば」
「そんなことありませんよ! むしろ伊吹ちゃんがいてくれたおかげで、
あの準さんと柊さんから、3点も取ることができたんですから!」
「そ……そうか、すもも///」
うぅ……何やら妙に照れ臭いな。
「全くよねー……得に最後の伊吹のスマッシュ! あれは完全にしてやられたわー」
「ひょっとして、瑞穂坂最強のコンビだったりして! すももちゃんと伊吹ちゃん」
かつては敵だった柊と準も、私たちの健闘を笑顔で褒め称える。
お互いの事を、心から認め合える、そんな関係。
いつしか私は、この場に居心地のよさすら感じていた。
「……友達とは、本当にいいものだな。すももよ……」
「はい。本当に……ステキな関係ですよね」
「数ヶ月前の私であったら……このような素晴らしいものにも、気づかずにいたのであろうな。
我ながら、実に愚かしいことだ」
自嘲気味に、それでいて穏やかに微笑む私。
いつしかその微笑みは、私たち4人全員を包み込んで、穏やかな笑いの渦を形作っていた。
「ねぇみんな、次どーする?」
やがて柊が、皆に話を切り出した。
「そうねぇ……卓球もそろそろ飽きてきた頃だし、みんなでカードゲームでもやらない?」
「そうですね! この人数ならば、きっと楽しくなりそうです!」
かぁどげーむ……あぁ、小日向雄真が時折準たちと嗜んでいたアレであるな。
「ふむ……頭を使う遊びであらば、私も心得がある。次は負けはせぬぞ!」
「じゃ、それで決まり!! さっそく部屋で準備しようよ」
「「はーい!!」」
満場一致で、次の遊びはカードゲームに決まった。
そこへ。
「ふっふっふ……キミタチ!! カードゲームと言えばこの俺!!
瑞穂坂一の勝負師、この高溝八輔を忘れてもらっちゃあ困るぜ!!!」
まぁたうるさいのがやってきたぞ、おい……
というか自ら勝負師などと名乗っておる地点で、その実力もたかが知れたものであろうが。
「で勝負の内容だけど……無難に大富豪とかでどうかな?」
「ナポレオンとかも面白そうですよね! 準さん」
「あたし、ポーカーやりたいな! ポーカー」
「って俺完全無視ぃ!!?」
……この種の手合いは、いちいち相手をしないに限る。
「……何だかうるさいのが吠えてるけど、すももちゃん、相手にしちゃダメよ」
「そうよ。あの手の獣をつけ上がらせると、大変なことになっちゃうんだから」
「はいっ、わかりました! 準さん、柊さん」
「そんな……すももちゃんまで……しどい……」
無様に泣き崩れる八溝に、すももが情けをかける。
「ふふっ、冗談ですよハチさん♪ それより、ハチさんもいっしょにどうですか?
人数は多い方が、きっと楽しいですよ♪」
「うぅ……すももちゃん優しい……やっぱすももちゃんは俺の天使だ……」
まったくこやつは……仕方のない輩だな。
「はいはい。すももちゃんに変な気を起こさないようにね」
「同感だな八溝とやら。すももに狼藉をはたらく事あらば、そなたの命はないものと思え」
「高溝っす……」
ビサイムを鼻先に突きつけられ、沈黙する八溝。
こうやって先手を打っておかねば、何をしでかすかわかったものではないからな……
「じゃあ改めて、みんなでお部屋に向かいましょう!!」
「「はーいっ!!」」
男女5人の大所帯で、私たちはあてがわれた部屋へと向かうこととなった。
ここでやっと折り返しです・・・先はまだまだ長い。
次回は再びUMA視点の話に戻ります。
それではまたノシ
まだ折り返しなんですか!?
さらに続きを期待しています
>>464 一応全17章予定なので・・・
ホント長くてスミマセン。
>乙
いやいや長くてもこれはおもしろいので、全然構いませんよ?
次は雄真視点に戻りますか・・・いまから楽しみです
これからも頑張って下さい。
>>463 乙〜
少し前のエロラブな話から、なんかええ話や的な展開になるとはビックリ。
上条兄妹といい各々キャラが生きてますなー 続きを楽しみにしてまする。
あ、
>>464はむしろまだまだ読みたいぜって感じなのでは?
何にしてもこう言う大作っぽいのは大好きです。
UMA視点と言いながら最初に春姫視点を追加してみた俺。
時と共に変化する、それが温泉の話クオリティ
では投稿。
第10章「お疲れ気味の雄真くん」
「ふぅ……ありがと、ソプラノ」
「いいえ。他でもない春姫の頼みですもの」
私はソプラノの力を借りて、雄真くんを脱衣場まで運んでいった。
雄真くんの反応がなくなった時は、一瞬どうしちゃったんだろうと思ったけど……
脈も体温も、今のところちゃんと安定してる。
……多分、検定の時の疲れが、今になってどっと押し寄せてきたのだろう。
「……ごめんね、雄真くん」
こんなに疲れてたのに、なお私のためにいっぱい頑張ってくれた雄真くん。
その姿に、私はちょっとだけ申し訳ない気分になる。
「……さて、服着せてあげないと……」
棚に入ってる男物の下着を手に取った後、雄真くんの方へ向き直り……
「……あ……」
私は思わず、胸がどきどきとときめくのを感じた。
私の体とは、どこもかしこも全然違う、雄真くんの肢体。
そんなにムキムキってわけじゃないけど、男の子なんだと主張するくらいには強張った、
雄真くんのきれいな肉体……
「……」
私はいつも、この体にどんな風にいじめられてるんだろう……
想像するだけで、私の頭はぽわーっとして、正常な判断を失いそうになる。
「……雄真くん……」
私は朦朧とする意識の中、そっと雄真くんの体に口づけしていた。
雄真くんの胸板、脇腹、そしておへその辺り……
それら全てに口づけするだけでは飽き足らず、更に舌も使って雄真くんの体を愛撫する。
しょっぱくて少しだけほろ苦い、雄真くんの味、そして匂い……
それらが寄り集まって、私をどんどんえっちな娘に変えてゆく。
「……雄真……くん……っ」
我慢できなくなった私は、そっと自らの秘密の場所に手を伸ばし……
「……春姫?」
後ろから聞こえた、私をたしなめるような声に、思わず我に返った。
「そ、そそっ、ソプラノ!? ひょっとして、今の、見てた……?」
「えぇ、バッチリ。春姫がまさか、そんな大胆なことをする娘だったなんて」
「……ぁぅ……///」
改めて自分のやった行為を思い返し、耳までまで真っ赤になる私。
「……お願い、ソプラノ……このことは、雄真くんには言わないでね……」
「えぇ、もちろん。それよりも、早く雄真様に服を着せて差し上げたら?」
「あ……そ……そうだったね……アハハι」
ソプラノにたしなめられつつ、私は雄真くんに服を着せる作業に戻った。
「うぅ……まだ頭クラクラする……」
「……もぉ。ハリキリすぎだよ、雄真くん」
春姫に肩を貸してもらいながら、千鳥足で廊下を歩く俺。
あの後、俺が目を覚ますと、そこは家族湯備え付けの脱衣場だった。
しかも俺はご丁寧にも、下着や浴衣まで着せつけてもらっている始末。
どうやらあの後、俺が目を覚ますまで春姫がつきっきりで看病してくれたらしいんだけど……
……思い出すと、自分のすっげぇ情けなさに涙が出てくる。
「……」
体のあちこちに、覚えのないキスの跡が残ってるのが、微妙に気になるけど。
「……何か、せっかく久しぶりだったのに、満足に愛してやれなくて、ゴメンな」
「うぅん。雄真くんこそ、今日はもうムリしないでね」
「あぁ……ゴメン、春姫」
うぅ……春姫っていつも優しい。
こういう時、春姫の優しさがかえって胸にズンとくる。
ともあれ、これ以上春姫に心配かけるわけにはいかない。今日はもう寝るとするか……
ガラガラガラ……
俺は部屋の扉を開け……
「……フッ。八溝とやら、これで私の3連勝のようだな」
「がーーーーーん!!!」
「ふふ。ハチったら、カードゲームになるとからっきし弱いんだから」
……パタッ。
俺はそれを見なかったことにした。
「……雄真くん?」
「……春姫。俺と少し、散歩にでも出かけないか?」
「え!? でももう夜も遅いし、それに……」
「いいんだ。ちょっと外の空気を吸いたい気分だから……」
春姫が制止するのも聞かず、俺はよろよろと玄関の方へと歩き出した。
そこへ。
「あら雄真さん……先ほどのお風呂の時ぶりです」
つい今し方お風呂から上がったばかりらしい小雪さんと目が合った。
「こ、小雪さん……こんばんは」
やば……そういや俺、あれからずっと春姫と2人っきりだ……
……小雪さんにいろいろ詮索される前に、何とか話を反らさないと……
「こんばんは。今宵もよい月夜ですよ」
「そうっすねー……瑞穂坂じゃ、こんなキレイな夜空はなかなか見れないっすから」
おっしゃ! 我ながらキレイな返しだ!! 今日の俺は少し冴えてるぜ!!
「雄真さんは今まで、どなたとこの月を眺めておられたのですか?」
「ぐほぉ!!!!」
痛い、痛すぎるよ小雪さん……
その返しは、今の俺には身を裂かれるくらい痛いです……
「ふふ……これ以上、お若いお2人の邪魔をするわけにはいきませんね。私は、お先に失礼致します」
そのまま小雪さんは、妙な笑顔を浮かべながらその場を去ってしまった。
……スミマセン、春姫さん。俺やっぱ、この人には生涯勝てそうにありません。
「んもぉ……高峰先輩ったら……///」
春姫は春姫で、顔を真っ赤にさせてうつむいてしまってるし……
しかも俺たちの受難は、このくらいでは終わらなくて……
「こっ、ここにいたか雄真ーーーーーー!!!!」
「げっ、ハチ!?」
「あたしもいるわよ、雄真♪」
運悪く、今部屋から出てきたばかりの準とハチにつかまってしまった。
「さぁ吐け雄真!!! 雪の降りしきる家族風呂で姫ちゃんと2人でナニしてやがったぁ!!!!」
「それをお前に教える義理はない!!!」
「へーぇ……春姫ちゃんの魔法で扉閉め切って、2人で人に言えないようなことしてたんだぁ♪」
「何で魔法の事知ってんだよ準!!!」
見ると横で春姫も、俺と同じように柊に絡まれている。
「それにしても、やるじゃん春姫♪
あたしたちの目を盗んでちゃっかり雄真とよろしくやっちゃうなんてさ♪」
「あのね杏璃ちゃん……雄真くんとは」
「はいはい。言わなくてもわかってるって!
あたしは春姫と雄真の一番の味方だから、安心して2人でらぶらぶしてきてちょうだい」
「だ、だから……杏璃ちゃん……ι」
「だぁぁっ!!!! お前はお前でいらん事するんじゃねーーっ!!!!」
ったくこいつらは、人をからかうことしか頭にないのか?
「フッ。全く……飽きぬ連中よの」
あ……忘れてた。伊吹がいたか……
「さてすももよ。私は先に休ませてもらうとするぞ」
踵を返し、部屋へと戻ろうとする伊吹。
ひょっとして、ここの雰囲気に未だ馴染めてないのか?
「え? 伊吹ちゃん、もう寝ちゃうんですか?」
「せっかくなんだし、もうちょっとすもも達と遊んでったらどうだ?」
「そういう訳にはいかぬ。私は式守の家で培った生活の流れがあるからな。
遅寝は私の最も不徳とするところだ」
「あ、なるほど」
考えてみれば、いかにも規律にはうるさそうな式守の家だ。
早寝早起きは、もはや日常的な習慣として、伊吹の身に染み付いてしまっているんだろう。
「うんうん。寝る子は育つって言うもんな。偉いぞ、伊吹」
俺は小さな子供をあやすがごとく、伊吹の頭を撫でてやった。
「……小日向雄真。そなた、私のことを馬鹿にしておろう」
伊吹があからさまに、不快感をあらわにしてみせる。
「そんなことないぞ。俺はただ、純粋に偉いなって思っただけで」
「そなたの生活態度がふしだらなだけであろう!! それに、子供扱いはやめいと何度」
「いいえ、伊吹ちゃんはホントにいい子ですよ。ほら、いいこいいこ」
「うぅ……兄妹して私をからかいおってからに……///」
すももにまで子供扱いされ、わなわなと体を震わせる伊吹。
「……ともかく!! 明朝6時半に風呂場で待っておるぞ!! 約束だ、すもも!!」
「6時半ですね。わかりました! おやすみなさい、伊吹ちゃん」
「……フン」
そのまま伊吹は、ふてくされたように鼻を鳴らし、自分の部屋へと引き上げて行った。
「じゃ、明日に備えて、わたしも少し寝ますね……ふぁぁ」
伊吹が去ったことで、抑えていた眠気が一気に襲ってきたのだろう。
寝ぼけ眼をこすりながら、すももが生あくびをしてみせる。
「そうだな……明日うっかり寝坊して、伊吹との約束すっぽかすわけにはいかないしな」
「むぅ……わたしと兄さんとをいっしょにしないでください」
からかい混じりの俺の言葉に、すももがかわいらしくふくれてみせる。
「ハハハ……じゃ、また明日な。すもも」
「はい。おやすみなさい、兄さん」
伊吹に続き、すもももまた寝床へと戻って行った。
さて……ちびっ子2人も退場しちゃったことだし、俺もそろそろ休むとするかな……
2人の後を追うがごとく、俺も部屋へと戻ろうとした。
が。
「あーら、どこへ行くのかな? 雄真♪」
歩き出した俺の背中に、準が目ざとくしがみついてきた。
……しまった……俺はまだ、こいつらに絡まれてる最中だった……
「ひどいわ雄真ったら!! わたしというものがありながら、
あろうことか姫ちゃんとしっぽり入浴タイムだなんて!!!」
「だからしっぽり言うなハチ!!!」
「ふふふ……今夜は寝かさないわよ、雄真」
「いいから離してくれーーーーーー!!!!」
俺も自分の身をもっといたわってくれる友達が欲しいです……(泣)
「……あのね、準さん、高溝くん」
あまりに悲惨な俺の状況を憂えてか、春姫がフォローに入ってきた。
「雄真くんは、その……ホントに疲れてるの。
ここんところ毎日検定のお勉強で、慣れない生活送ってたから……」
「騙されちゃあいけませんよ姫ちゃん!!
コイツはこうやって弱い顔して、女の子に取り入るのがうまいんですから!!!」
「だがらぐびじめんなはぢ……」
俺の首をホールドするハチの腕を、横にいた準が取り払う。
「ちょっとアンタは黙ってて。雄真……それホントなの?」
「あぁ……でももう大丈夫だぞ。小雪さんの温泉のおかげで、疲れもこのとおり」
そうやって背伸びをしようとした俺を、ふたたび目まいが襲い掛かった。
「ゆ……雄真くん!!」
あわてて支えに入った春姫にもたれかかる俺を見て、準が呆れ顔でため息を漏らす。
「何が大丈夫よ……春姫ちゃんにこんなに心配かけておいて。
男の子だったら、自分の体調管理くらい自分でちゃんとやんなさいよ?」
「あぁ……面目ない、準」
「あたしに謝るのはいいから、もう今日は寝なさい。いい?」
そう言い残すと、準は振り返り、ハチの腕をとった。
「というわけで予定変更! 今からハチを存分にいたぶる会に変更でーす♪」
「な、何ぃ!? 聞いてないぞ、準!!!」
「はいはーい♪ いじられ役に発言権はありませーん♪」
「あぁっ、助けて姫ちゃーーーーーん!!!!」
準に無理矢理腕を引っ張られ、哀れハチは暗闇の中へと消えて行った。
合掌。
「……ひょっとして、準さんなりに気を遣ってくれたのかな?」
後に残された春姫が、俺にそっと問い掛ける。
「だと思うぞ。アイツ……ああ見えて、いざという時の気配りは俺たちの比じゃないからな」
「うん……ホントにいいお友達だね、準さん」
「あぁ……情けないけど、アイツには毎度ホントに頭上がんないよ」
準のさり気ない思いやりが、こういう時胸にとてもじんわりくる。
「じゃあ、準の親切に甘えて、今日は早めに休ませてもらうとするか」
「うん。お休みなさい、雄真くん」
春姫と軽くおやすみのキスを交わし、俺はゆっくりと自分の部屋へ戻って行った。
「……あーあ。雄真までいなくなっちゃったわ。張り合いないわねー……
こうなったらアンタでいいわ。春姫、いっしょに部屋に行きましょ」
残された柊が、心底つまらなそうに春姫を誘う。
「え? 杏璃ちゃん?」
「たまには女同士でパジャマトークと洒落こむのもいいでしょ。さ、早く行くわよ」
「あっ、待ってよ杏璃ちゃん……」
柊になかば強引に誘われ、春姫も部屋へと戻って行った。
そんなこんなで、ようやく次回1日目が終了しそうです。
ではまたノシ
またまたキタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━━!!!
残りも楽しみにしていますノシ
・・・スミマセン。一箇所だけ訂正箇所発見。
>>470の14行目
(誤)耳までまで真っ赤に→(正)耳まで真っ赤に
続きが来るのはえー(嬉
何はともかくGJ
>>477 ソプラノ、もしかしてずっとコトの最中観察していたんでしょうか(w
体中にキスマークつけられても、まるで気にしないUMAに乾杯。
>乙
なんだか大変アダルトな展開に・・・
まぁ、春姫も雄真相手にはああいう風になるのは当然かもしれませんな
コトの後に詮索されていじられるのは必至ですね
次はどんな展開なのでしょうか?
続きも期待しています
>ソプラノ、もしかしてずっとコトの最中観察していたんでしょうか(w
おそらく日常茶飯事ですw
では早速投稿。
第11章「春姫と杏璃、夜の語らい」
「……で、実際どうなのよ、雄真」
部屋の布団の中で、杏璃ちゃんが私に問い掛ける。
「どうって……どういうこと?」
「とぼけないの! アイツ、いつになく覇気のない顔してたじゃない……
まぁ大方、原因は予想つくけど」
「あ……」
そういうことか。
杏璃ちゃんも、雄真くんのこと、心配してくれてるんだ……
「まぁアイツのことだから、どうせ必要以上に気合入れて、検定の特訓に励んでたんでしょ。
アンタに少しでもいいトコ見せてやりたくて」
「う、うん……そう……かも」
「それでアンタのことだから、どうせ雄真が何か成功させるたんびに、
わーすごいすごいって言いながら、無神経にはやし立ててたんじゃないの?」
「す、すごーい杏璃ちゃん! 何でわかっちゃうの?」
「わからいでか!!!」
妙に怒りっぽい口調で答える杏璃ちゃん。
そんなに、私たちのことってわかりやすいのかな……?
「はぁ……何のための恋人なのよ、アンタ。
雄真が少しでも無理しそうだったら、アンタが止めてやんなきゃダメじゃない」
「そ……そう……だね」
「アイツああ見えて、あたし以上に思い込んだら周り見えなくなっちゃうんだから。
それくらい、見ててわかるでしょ?」
「……うん……」
確かに……雄真くんはいつもまっすぐだ。
今回の検定の時も、とても一生懸命に、合格目指して頑張ってたし。
たまにその一生懸命さがたたって、今日みたいに精力を使い果たしちゃうこともあるから、
そこを私がセーブしてあげなきゃっていう杏璃ちゃんの言葉も、理解できなくはない。
でも……私は知っている。
雄真くんの、魔法に対するひたむきな想いを……
その想いを前にして、私に一体、どんな言葉がかけられると言うんだろう……
「はぁ……つくづくあたしってお人よしだわ。
人の心配する前に、まずは自分の心配しろって話よね」
「杏璃ちゃん……」
そう言えば……杏璃ちゃんの浮いた話って、あんまり聞かないよね。
「……杏璃ちゃんは、誰か好きな人っていないの?」
「うーん……恋人同士って関係に憧れがないわけじゃないけど……
いざ自分が誰かと付き合うって考えてみると……正直あんまりピンと来ないのよね。
今は男の子と仲良くするより、魔法の練習とかしてた方が楽しいし」
何だか……すごくもったいないな。
杏璃ちゃんってとってもかわいいから、すぐに恋人って作れそうな気がするんだけど。
「……そうだ、杏璃ちゃん。高溝くんなんてどうかな?」
「は、ハチぃ!?」
私の提案に、露骨に嫌そうな顔をする杏璃ちゃん。
「ほら……高溝くんってとってもにぎやかで、何だか楽しそうじゃない?」
「あーダメダメ!! ハチだけはマジ勘弁!!!」
「そうかなぁ……高溝くんとだったら、結構お似合いな気がするけど」
「……何気に心にサクッとくること言うわね春姫……」
杏璃ちゃんがジトーッとした目で、私を見つめる。
「と・に・か・く、ハチだけは絶対にないわ!!
あんなロマンもデリカシーのかけらもない男、こっちから願い下げよ!!!
大体あんなのと付き合ってやろうもんなら、アイツ絶対つけ上がるに決まってるし」
「うーん……ι」
言われてみれば、それは……あんまり擁護できないかも。
「はぁ……つくづくアンタが羨ましいわ……
ずーっと想い続けた初恋の君とめでたくゴールインなんて、今時純愛映画でも流行んないわよ」
「……うん……そうだね」
杏璃ちゃんのその言葉が、私の心に影を落とす。
「……何か興醒めしちゃったわ。あたしはもう寝るわね。おやすみ、春姫」
「うん……おやすみ、杏璃ちゃん」
そのまま私に背を向け、すーすーと安らかな寝息をたて始める杏璃ちゃん。
「……」
ひとり残された寝室で、私はひとり、考えを巡らせていた。
……確かに、恵まれてるんだ、私。
絶対に会えないと諦めてた憧れの男の子と、この瑞穂坂学園で偶然めぐり逢えて。
私の気持ちを、精一杯受け入れてくれて……
それが、どのくらい幸せなことかってくらい、私にもわかっている。
……でも……
雄真くんは、どうなんだろう。
雄真くんはあの時、自分はあの時の男の子である確証がないと言った。
そして……私と付き合いたいという安易な気持ちだけで、答えたくはないとも言ってくれた。
でも……結果的に私がわがままを押し通した形で、私たちは付き合うこととなってしまった。
その事実が、今……私の心に妙なしこりを残している。
「雄真くんは……私のこと……どう思ってくれてるのかな……」
その問いに、自分ひとりでは答えが出せそうになかった。
今はせめて……私を好きだと言ってくれる雄真くんの気持ちを信じるだけ……
それが……恋人として、私にできる精一杯のこと……
「さーて、一緒に寝ましょうか、ハチ」
「い……嫌だぁぁぁぁ!!! 俺の操は、姫ちゃんに捧げると決めてるんだぁぁぁ!!!」
「あたしだって、ハチとなんかより雄真といっしょに寝たいわよ。
それを今日は仕方なく、ハチといっしょに寝てあげるって言ってるんじゃない……
ほーらハチ……今日だけあたしが春姫ちゃんになってあ・げ・る♪」
「あぁっ……神様……仏様……」
「(がばっ)何奴!!?」
「兄様……今のは風の音です……いい加減慣れて下さい」
「ぬぅ……そうか。しかし安心しろ沙耶……お前を狙う不貞の輩は、必ずやこの俺が」
「いいからもうお眠り下さい……ι」
「……いよいよ明日やな、姉さん」
「そうですね……ここまで、本当に長かったです。
ですが……明日ついに、雄真さんの……」
「くーっ、今から腕が鳴るでぇ!!」
それぞれの想いを秘めつつ、夜は静かに更けてゆく……
以上で、無事1日目終了となります。
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
1日目はラブエロとコメディ路線中心で進行して参りましたが、
2日目はこれまでとはまた違った路線で進めていきたいと思います。
是非最後まで、お付き合い下さいませ。
>乙
なんか雄真関連で動きがありそうな予感
春姫の不安も円満に解決して欲しいですな
続きも楽しみにしてます!
男としての本能か、それとも格闘家としての勘か?
相手が悲鳴を上げる直感した新は、即座にクリスの口を塞いでそれを阻止する。
「モゴモゴ・・ンンン・・モガガガ!!」
なおも抵抗するクリス。
(な、なんでここにクリスが?と、とにかくここは・・・。)
すばやく背後を取り、絡め手を極めて相手の動きを封じる。
さすがは練習を積んでいるだけのことはある。恐るべき早業だ。
「モガガガガガガガガ!!」
「ク、クリス。ま、まずは落ち着け!!」
「モガ・・・・・。」
どうやら、ひとまず落ち着いたようだ。とりあえずは大丈夫だろう。
塞いでいた口を解放して、現状の把握に努める。
「な、なんでお前がのんびり俺の家の風呂に入ってるんだ!?」
「ぼ、僕だって好きでここにいるんじゃない。」
「じゃあ、なんで?」
「成り行きだ。仕方なかったんだ!!」
(どんな成り行きだよ!!まあ、どうせいつもと同じように、
他の王女の誰かとトラブルを起こして、結果的にこうなったって感じか。)
「と、とにかく、新!!その手を離して、ここから出ろ!!」
「あ、ああ、すまない。この話はまた明日・・」
「ただいまー。」
!!!!!
「だ、誰だ?」
「しまった。姉ちゃんが帰ってきたんだ・・・。」
「ただいまー。」
「お、おかえり、姉ちゃん!!」
「なんだ、まだ入ってたのか。ん?何を慌てているんだ?」
「べ、別に慌ててなんかないぜ・・。」
「まあいい。私も風呂に入りたい。食事の準備をしているから、早く出てくれよ。」
(さすがは姉ちゃん。鋭い・・・。)
「ど、どうするんだ!?」
「(大きな声を出すな!!)」
「(う・・・。)」
「(今俺が出たら、すぐに姉ちゃんが入ってくる。)」
「(それはマズい。早く僕を逃がせ!!)」
「(どうやって?)」
「(ここはお前の家だろ!何とかしろ!!)」
「(何とかって言われても、お姉ちゃんがそこにいる限りは無理だ。)」
「(そこを何とかするんだ!!)」
「(わ、分かった・・。とりあえず、落ち着いて作戦を練ろう。)」
>>489-491 妄想小説を書くのは初めてだが、案外楽しいものだな。
本スレではこれから祭りが始まるとのことなので、
要望に従い、続きはその後に投稿する。
>>492 乙ですノシ
今後とも是非妄想全開で頑張って下さいねw
前回の話からあまり時間経ってないけど投稿。
第12章「目覚めの朝、忍び寄る影」
「オン・エルメサス・ルク・アルサス……」
まだ薄暗い早朝の森の中、あたしの声だけが静かに響く。
あたしの手元に浮かぶのは、集中力養成用のキューブ。
その中央に緑色の穏やかな光を湛え、キューブは静かに揺れ動いている。
「アスターシア・ルース・エウローサス・メテア……!!」
光は拡散しては収束し、徐々にその光量を増してゆく。
「……ふぅ」
やがてあたしは魔法の発動を止め、深く息を吐き出した。
ただの棒きれと化したキューブが、雪積もる地面へと散らばってゆく。
「まぁ、最初はこんなものかな」
あたしが魔法科に入ってから欠かさず続けている、秘密の特訓。
いくら旅行中だからって欠かしたりしたら、いつになっても春姫には追いつけないからね。
「しかし……いつまでも集中力の特訓だけじゃダメよね……
ここはそろそろ、次のステップへと進む時だと思うんだ。そう思わない? パエリア」
「くれぐれも焦りは禁物ですぞ、杏璃様。
自分にできることを地道に続けることこそが、自らを高める最善の道です」
「そうは言うけど……このまんまじゃ、春姫にずっと負けっ放しじゃない。
もう二度と春姫の背中は追わないって決めたけど……やっぱ、納得行かないし」
そう……何よりも納得しないのは、あたし自身。
ともすれば、春姫の幻影にいとも簡単に負けてしまいそうになる、あたしの弱い心。
儚い虚栄心から高みを目指そうとしたって、何にもならないってわかってるのに……
……そこまで考えて、あたしは首を横に振った。
「……うぅん。やっぱり、パエリアの言うとおりだわ。
地道に今、あたしのやれることをやってかないと……
ね、もう一番付き合ってくれる? パエリア」
「承知致しました、杏璃様」
散らばったシャフトを集め、キューブを再構成するあたし。
「……?」
ふとあたしは、森の一角にある違和感を感じた。
開け放たれた蛇口の如く、高位の魔力がだだ漏れになっているような、そんな感覚。
「……」
間違いない。この森には、誰か、いる……!
「……予定変更。行くわよ、パエリア」
あたしはパエリアを手にし、違和感の感じる方へと駆けて行った。
そこにあったのは、禍々しい瘴気。
岩陰から覗いていてもわかる程の、強烈な魔力の波動……
「……何なのよ……これは……」
岩肌に隠れて、それの正体は判別できない。
ただ、それの発する魔力だけで……それがとんでもない化け物であることはわかった。
「ちょっと……本気でマズくない? これ……」
パエリアを握る手に、じわりと汗が滲んでくるのがわかる。
こんなの……どう足掻いたって……あたしひとりの力じゃ……!!
ガサッ……
「!!!!」
急に発せられたそれの足音に、あたしは思わず身を隠した。
……まさか、気づかれた……!?
ドクッ、ドクッ、ドクッ……
静寂の中、あたしの心音だけがやけに高く響いている。
「あーあ……姉さん、こりゃ絶対気づかれとるで?」
「……そうみたいですね、タマちゃん」
ふと向こうから、何やら会話らしき音が聞こえてきた。
「まーったく、姉さんも短慮もえーとこや!
誰もおらん森でこないなモン引き連れよったら、嫌でも気づかれるに決まっとるやんか」
「そうですね……少し、油断してしまいました」
「大体こない大層なモン使うてまで知りたいもんか? 兄さんの」
「タマちゃん、ごー!!」
「い、今のは失言や!! 姉さん堪忍ーー……」
ヒューー……ドォォォォン……
「また貴重な残機が失われてしまいました……残念です」
その会話の雰囲気に、あたしは嫌という程心当たりがあった。
(……一体、この森で何が起こってるっていうのよ……!!)
というわけで、微妙に気になる展開で幕を開ける2日目。
UMAたちを待ち受ける、奇妙な事件の全貌とは・・・?
次回以降もお楽しみにノシ
杏璃が戦ってるは春姫やその幻影じゃなくて、春姫とよく比較されるされる事による劣等感
だと思う。成績とか評価なんて他人が勝手に決め付けた価値でしかないからな・・・・・・・・・・・。
>>487 >>497 乙ー
就寝前の会話は各々キャラが出ていて良いですねー
上条兄妹がなにやら異様にマイペースですが(w
2日目は1日目とは結構雰囲気が変わりましたな。
にしても、小雪さんの言動が怪し過ぎる……(笑
>乙
なにかが起こってるなー。
やっぱ雄真関連かな?
小雪さんはやっぱり策士ですな・・・
続きも期待
>>497 乙。二日目がどういった展開になるのか期待
>>498 「春姫とよく比較される事による劣等感」は、あくまで杏璃のコンプレックスの
ひとつの構成要素に過ぎないと解釈します。
だけど「春姫の幻影・・・」云々のくだりは、杏璃が春姫という存在そのものに
畏怖を抱いているという解釈になりそうで、確かに本編の記述とは矛盾しそうですね。
(杏璃はあくまで自分のコンプレックスの裏返しとして、春姫に対抗心を燃やしてるだけ)
ご指摘ありがとうございます。
さて今回はいよいよあの2人が登場!
第13章「いきなり乱入?2人のかーさん」
「あれ? お母さん?」
伊吹ちゃんと一緒に入ったお風呂で、わたしは意外な人と出会っていた。
「あらぁ、すももちゃん。かーさんもついて来ちゃったー♪」
「……すももの母か? 相変わらずえらく若いな……」
お母さんと久しぶりに会った伊吹ちゃんが、目をぱちくりさせている。
「んもぉ、若いだなんて! 相変わらずお上手なんだからっ♪」
「えへへっ! 何たって、わたしの自慢のお母さんですからね!」
「そうか……それより、何故そなたまで来ておるのだ、御薙鈴莉よ」
そう。来ていたのはお母さんだけではない。
お母さんの古くからのお友達にして、兄さんの本当のお母さん……
御薙鈴莉さんも、お母さんといっしょにお風呂に入っていた。
「何故って……音羽に泣きつかれたのよ。
『雄真くんやすももちゃんばっかりずるーい! わたしも行く』ってね」
「うー……だってぇ、主婦業やってるとたまーに休みが恋しくなるんだもん!」
「とは言え、大の大人が実の子供相手に本気で嫉妬するほどのものか? 理解できぬぞ……私には」
「うーん……そんなに理解できませんかね?」
お母さんはいつでも、自分のやりたいことに正直なだけなんだけど。
それが、そんなに変なことなのかなぁ?
「それより、御薙さんは今、お母さんと何のお話をしてたんですか?」
わたしたちが生まれるずっと前から、お母さんと仲良しだった御薙さん。
その2人の会話、娘としてはすっごく気になります!
「ふふ……音羽と出会ったあの時のことを、少しね」
御薙さんの言葉に、わたしは思わず目を輝かせた。
「お母さんと御薙さんとの出会いですか? うわぁ、すっごく興味あります!!」
「教えてほしいのね。ふふ。じゃあ、始めから……」
しかし、御薙さんがちょうど口を開きかけたところで、お母さんが慌てて止めに入ってきた。
「ちょ、ちょっと鈴莉! あの話はもう忘れてよ!!」
「お、お母さん?」
お母さんがこんなに慌てるなんて、一体何があったんだろ?
「ふふ……思い出すわ……20年前のあの日」
「キャ〜〜、鈴莉ぃ!! さすがに娘の前ではやめてーーー!!!」
すごい……あの無敵のお母さんが見たことない勢いで暴れてる……ι
お母さんのこんな姿、初めて見ました……
「すももちゃんはどう? お母さんの昔の話、聞きたくはないかしら?」
「それは……聞きたい……ですけど」
「すももちゃん! 大人になれば知らなくてもいいこと、いっぱい出てくるの!!
いい子なら、お母さんの言う事聞いて!! ね? お願い」
「お、お母さん……えっと……ι」
2人の大人の女の人の間で、どうしてよいかわからず戸惑うわたし。
「まったく……いい大人がこぞって娘を板ばさみにするか? すももも気の毒にな……」
横で伊吹ちゃんも、呆れた表情でお母さん達を見ている。
「御薙さん……せっかくですけど、遠慮しますね。お母さんが、本当に嫌がってますから……」
「そう……残念ね。じゃあ、今度音羽がいない時にでも」
「うぅ……鈴莉がわたしのこといぢめるぅ……」
本当はいろいろ聞きたいけど、さすがにこれ以上、お母さんを困らせたらいけませんから。
「……?」
ふと、伊吹ちゃんが顔を上げる。
その反応と、御薙さんが顔をしかめだすのと、ほぼ同時だった。
「……御薙鈴莉よ……そなたも気づいておるか……」
「えぇ……これは間違いなく、あれから発せられる魔力……」
顔を合わせ、わたしにはわからない次元の会話を繰り広げる伊吹ちゃん。
やがて伊吹ちゃんが、湯船から立ち上がり、わたしにすまなさそうな顔を向けた。
「……すまぬ。すももよ、私はどうしても行かねばならぬ用ができた。
今日の埋め合わせは、後日また必ず」
「そんな……気にしなくてもいいですよ、伊吹ちゃん。
それより伊吹ちゃんこそ、あんまり無理はしないでくださいね」
「わかっておる。心配するな、すもも」
わたしに軽く笑顔を見せ、伊吹ちゃんは浴場を駆け出して行った。
「それじゃ、私もそろそろ行かないと……この話はまた後でね、音羽」
伊吹ちゃんに続いて御薙さんも、浴場を離れてゆく。
「行ってらっしゃーい……はぁ、やっと解放されたわ」
「お疲れ様です、お母さん」
御薙さんのお話からようやく逃れられたお母さんが、ほっと安堵のため息をつく。
「しかし、鈴莉も相変わらずよねー……
旅行の時くらい、仕事のことなんか忘れてパーッと遊べばいいのに」
「……そう、ですね……」
お母さんの言葉に、わたしは曖昧な返事を返す。
険しい顔をしてこの場を去ってしまった御薙さんのことも、もちろん気になるけど……
一番気になるのは、伊吹ちゃんの存在。
旅行先に来てまで為さなければならなくなった、伊吹ちゃんの大切な用事。
それが、どんなに大変なことなのか、わたしには見当もつかないけれど……
(せめて、無事に帰ってきてくださいね……伊吹ちゃん……)
朝もやかかる外の景色を眺めつつ、わたしはひとり、伊吹ちゃんの無事を祈るのだった。
というわけで今回はここまで。
また第14章でお会いしましょうノシ
>乙
今回はさぐり的内容でしたね
続きが気になります〜
>>506 乙。幕間っぽい感じですね。
前回までの思わせぶりな内容といい、そろそろ新展開かな?
たぶん我等が主人公関連でしょうけど、楽しみに続きを待ってますー
>>506 乙。
この頃、このスレを見るのが日課になってきた
この話もいよいよ終盤ですね・・・
スレ容量的にもそろそろ次スレにまたぐかな?
では投稿。
第14章「迫る凶兆、明かされる真実」
「あ、雄真くん。おはよう」
「……春姫? それに、柊もいるのか?」
旅館の玄関では、既に春姫と柊の2人が魔法服姿で待ち構えていた。
柊の方は大体見当がつくとして……何で春姫まで?
「随分遅い出勤ね、雄真」
「出勤って……ι そもそも、こんな朝早くから急に俺なんか呼び出したりして、
いきなりどうしたって言うんだよ?」
俺の問いに、2人は互いに顔を合わせ、うなずき合った。
春姫がゆっくりと、口を開く。
「たった今、ここから東の森に、とても強大な魔力の流れが感知されたの。
私たちは今から、その正体を探りに行くっていうわけ」
「強大な魔力か……せっかくの旅行だってのに、何だか物騒だな」
「文句言わないの! そのためのあたしたち魔法科生徒じゃない。
それに……アレはちょっと、あたし1人じゃ手に負えないシロモノだからね」
「……? 見てきたのか、柊……」
俺が柊に問い返すと、柊はより険しい表情で実情を語り始めた。
「うん……遠くから見ただけだから、詳しい姿形まではわかんないけど。
とにかく、パッと見でとてつもなくヤバイシロモノだってことはわかったわ」
「……そっか」
あの柊ですら怖れるほどの物だから、きっと相当なものに違いない。
しかし、それにしても。
「前から思ってたんだけどさ……この時期、そんな格好してて寒くはないのか?」
2人がその身にまとう魔法服は、いずれもひらひらスカートに生肩丸出し。
春先とかに着る分にはちょうどよいかも知れないが、この時期さすがに堪えるのでは?
「うぅん。案外ちょうどいいんだよ、これ」
春姫は、そんな俺の疑問を事も無げに否定する。
「……そうなのか? 俺としては、見てるだけで寒くなってくるんだけど……」
未だ納得できずにいる俺に、春姫が笑顔で解説した。
「この魔法服は、通常の服よりもはるかに魔法伝導率の高い素材で織られていて、
術者の持つ魔力に従って、簡単な防寒フィールドを自動で形成する性質があるの。
慣れれば、普通の防寒具よりもずっと快適で動きやすいんだよ」
「へぇ……便利なんだな、魔法服って」
あの魔法服に、そんな仕掛けがあったとは……俺もまだまだ勉強不足だ。
「ま、雄真クラスの人間が着ちゃったら、たちまち寒さで凍えちゃうところだけどね」
「う……確かに」
そうかも知れないけど、いちいち一言多すぎだっての、柊……
「それより……約束して、雄真くん」
ふと春姫が、真剣な目つきで俺に切り出した。
「何だ? 春姫」
「ここから先……もし戦いになるようなことがあったら、
雄真くんは攻撃よりも、まず先に抵抗(レジスト)を優先して。
雄真くんはまだ、実戦経験もあまり豊富な方じゃないから……」
「……あぁ、わかってる」
ここから先、確たる力も策もなしに強大な敵へと向かってゆくことの愚かさ……
それは俺が、誰よりもよく理解している。
「春姫の言う通りね。くれぐれもムチャなことして、
春姫の足引っ張っちゃったー、なんてことのないようにしてよね」
「わかってるって。お前こそ、春姫相手に変な意地張ったりするなよ」
「任せといて! あんたとの格の違い、きっちり見せてあげるから」
決して一時の虚栄心からではない、柊の芯のこもった一言。
柊のヤツ、いつからこんなに強くなったんだろうな……
「……じゃあ、行こっか。みんな」
春姫の号令で、俺たちは行動を開始しようとした。
そこへ。
「待たれよ、小日向雄真! そしてその連れ一行!!」
「つ……連れぇ!?」
後ろから聞こえたやけに尊大な口調に、柊が真っ先に反応する。
「今のはちょっと聞き捨てならないわね。誰が、誰の連れだって?」
「……すまない、柊殿。伊吹様が過ぎた事を申したようで」
「敵地に赴かれるのでしたら、私たちも是非同行させてください」
そこにいたのは、伊吹に信哉、沙耶のお馴染み3人組と……
「これでちょうど、役者は揃ったようね。
さて……出発の前に少しだけ、私の話、聞いて行ってはくれないかしら?」
俺たちの直接の師であり、俺の実の母親でもある人、御薙鈴莉先生だった。
「……先生も、ここにいらしてたんですね」
「私も少し、この地に個人的な用があってね」
御薙先生は軽く微笑むと、すぐに表情を強張らせ言った。
「あなたたちに是非知っておいてほしいの。これから、あなたたちが戦うこととなる相手……
その、正体について……」
「……これから戦う敵の、正体……?」
「是非教えてください、先生」
敵の情報は、多いに越した事はない。
俺たちはまず、御薙先生から精一杯の情報提供を受けることにした。
「……高峰の、秘宝……?」
先生から発せられたその言葉に、目を丸くする俺たち。
「正確には、この地に祭られている高峰のご神体、いわば守り神といったところだけど」
「それって……式守の家にもあったあのすっごいのが、高峰にもあるってこと!?」
「まぁ……魔力キャパシティからすれば、ほぼ同等のものとみていいでしょうね」
あまりに唐突に告げられた、衝撃の真実。
驚き戸惑う俺たちに、御薙先生は淡々と事実を語ってゆく。
「式守の秘宝……それがどのようなものであるかは、もはや語るまでもないわね」
「あぁ……」
二度と忘れるものか、あの忌まわしき出来事……
「式守の秘宝は、もとは森に巣食う使鬼たちを鎮守の杜へと誘う装置……
その力が代々の当主の手で強められ、結果的に禍々しき力を得た経緯こそあれ、
それ自身が動いて人に危害を加えることは、原則あり得ない」
「……っ」
後ろで聞いていた信哉が、唇を噛みながら手にした風神雷神を堅く握り締める。
無理もない。自分の父が、主君から大切な人を奪うきっかけとなった宝の話だ。
「だが高峰の秘宝は、その生まれからして違う。
仮にも私は今『守り神』って表現を使ったけど、まさにその通りなの。
高峰の人間が、自らの信仰の拠り所として作り上げた偶像……それが、秘宝の正体」
「偶像……高峰の守り神……」
春姫はうつむいて、先生の言葉を噛み砕くように復唱している。
「そして最大の特徴として……それ自身が確固たる自我を持っているということ。
自分の意志で考え、動き、暴れ回る……そんな危険な生命体」
「……」
よくはわからないけど、これはとても大変な代物なんじゃないか……?
明確な自我を持たない式守の秘宝ですら、みんなあんなに手を焼いたのだ。
それがあまつさえ、自我を持って動き出したとあらば……
これはもはや、俺たちでどうこうできる次元を超えてしまってるんじゃ……!?
「まぁ今回のケースは、そこまで心配する必要はないと思うわ」
「でも……先生……!」
「高峰の秘宝がその力を最大限発揮するのは、あくまで極レアなケース。
私たちはただ、力を発揮される前に、それをなだめて帰せばいいだけ」
「だけど……」
更に口を濁す俺の前に、信哉が躍り出た。
「俺は参ります。御薙殿」
「信哉……!!」
「俺はかつて、式守から賜った恩義に報いることができなかった……
しからばせめて、他の家にまでこの悲しみを広げぬべく、尽力する所存!!」
「私も……兄様と同意見です」
先生の前に立つ2人の意志は、とても固かった。
例え秘宝の前にその身を擲(なげう)とうとも、秘宝の暴走を止めてみせる……
そんな確固たる決意が、2人の身からひしひしと伝わってくるのがわかった。
「……わかりました。俺も……できることをやってみます」
俺もまた、先生にその決意を伝える。
信哉たちにこんないいカッコされちゃ、俺も黙ってる訳にはいかないからな。
「他のみんなも、決意はよろしいかしら?」
先生の問いかけに、みんなが次々と回答を返してゆく。
「覚悟はできてます、先生。私にできることがあれば、何でも」
「春姫が行くって言うなら、あたしだって行くわよ!」
「フッ……そなたにはまだ借りが残っておるからな。ここで存分に返させてもらうぞ」
とても心強い、仲間たちの言葉。
この仲間たちと一緒ならば、きっと何だってできるような気がするぞ。
「……あなた達なら、きっとそう言うと思っていたわ」
俺たちの言葉に、先生も安心したかのように微笑む。
「くれぐれも、気をつけてね。あなた達ならば、できると信じているわ」
「それじゃ、行って来ます! 先生!」
先生に出発の言葉を告げ、俺たちは意気揚々と森の中へ入って行った。
何やら妙な展開に・・・;
それはともかく、今回は本編で敵役だった式守一派が仲間として活躍します。
本編で春姫たちを苦しめた彼らが、今回は一体どんな活躍を見せるのか?
どうか最後まで、お付き合いくださいね。
>>516 伊吹達に敵キャラヘタレ化法則が発動しなけば言いが・・・・・・・・・・・・・・?
↓
・対象キャラは主人公の敵だった時は圧倒的な実力を見せ付けたが、味方になると弱体化する
・対象キャラは死亡する事が多いはそのパターンは
かつて(敵だった頃)の組織のメンバーに遣られるか、敵の攻撃で仲間を庇う行動に多く見られる
・対象キャラは”過去の因縁に決着つける”をつけるとか、”罪滅びし”と称して主人公に仁義尽くす
・対象キャラは人柱によくされる、あるいは自身が1番に名乗り出る
キングフロスト。
>>515 GJ。
むう、こんなシリアスそうな展開になるとは思わなかった……
導入部なんで何とも言えませんが、伊吹だけは味方にするとまずいのでは(汗
たぶん、単体では最強キャラだったと思いますし、これに対抗できる敵キャラとなると
インフレ状態になるヨカン。
あ、それともそう言う「敵」じゃないのかな? ひとまず続きを待ってます〜
萌え萌え小説じゃなきゃヤダアアアアアア!!!11111
俺にもこう思ってた時期がありましたよ(・3・)
>>516 まじ頑張れ!!!111
>乙
なんかRPGみたいな展開に・・・山場ですな。
>>517 たしかによくあることだな。そういうこと。少し期待してしまうよ。
でも伊吹は春姫ルートの時は圧倒的な強さだったし、もしバトルになったら心強い。
ようやく後半・・・か?
とにかく頑張れ!!
WBC日本優勝記念カキコ
>>517-521 皆さんのご期待に沿える内容か否かはわかりませんが、頑張ってみますね。
一応ヒント:敵役は第12章に出てきたあの人
では投稿。
第15章「仕掛けられた罠」
それから十数分ほど森の中を彷徨った後……
俺たちは、柊が森の中でヤツと出会ったという地点までたどり着いた。
「それで、どの辺にいたんだ? そいつは」
「んと……確か、このあたりだったと思うんだけど……」
柊がおずおずと、向こうの岩陰を指差す。
そこは見たところ、これまでと何の変わりもない森が続いているだけ。
……少なくとも、素人目に見れば。
「……確かに……感じるわね」
柊の指差す方向に、春姫が鋭い目線を向ける。
「……」
春姫の言う通り、その方角から、やけに忌々しい気配が伝わってくる。
魔法科に入って間もない俺ですら、これだけ鋭敏に感じられる程の気だ。
その気配だけで……それがどのくらいヤバイものなのかは容易に想像がつく。
「……」
春姫が静かに、こちらに目を向ける。
雄真くんは約束どおり、安全なところに下がっていて……
春姫の、無言の意思表示だった。
(……わかってる、春姫)
ここで俺が下手にでしゃばれば、皆の連携を崩すことになってしまう……
真っ先に敵の標的になることのないよう、俺は位置取りにも細心の注意を払い歩いてゆく。
「……!?」
ふと俺は脳裏に、あるイメージが浮かぶのがわかった。
強力なエネルギーが、ものすごい速度でこちらに向かってくるイメージ。
そして、その標的は……
「……春姫!!!!」
「え」
俺が叫ぶよりも早く、その一撃は襲いかかってきた。
ぎらぎらと黄色に輝く、高密度に集束された魔法の矢。
春姫が障壁を張るのはおろか、自分の状況を判断する余裕すら、与えられない……!!!
「ぬぅっ!!!!」
ガキィン……
だが間一髪で、信哉の太刀が間に合った。
打ち砕かれた魔力が、金色の光の粉となって霧散する。
「……無事か!? 神坂殿!!」
「ありがとう、上条くん……おかげで、戦闘態勢バッチリ整ったわ!!」
たった今起こった状況にもうろたえることなく、春姫は低い姿勢でソプラノを構える。
美女の魔法使いをかばって立つ、精悍な野武士の図。
……悔しいけど、絵になってるぜ、信哉。
「今だ沙耶!! 向こうの方角だ!!」
信哉の合図で、沙耶がサンバッハを静かに奏でる。
「幻想詩・第三楽章……天命の矢!!」
詠唱が終わると共に、幾筋もの光の矢が、敵のいる方角目がけて降り注いだ。
ちょうと、初弾のエネルギーが発射されたとおぼしき場所に。
「今のでわかりました……敵は、あそこにいます!」
「わかったわ! 行きましょう、みんな!!」
春姫の合図で、俺たちは敵の方へと駆け出していった。
迫ってくる、幾人もの人の気配。
私もよく知っている、馴染み深い魔力の流れ。
間違いない。彼らは今、私の仕掛けた罠に向かって来ている。
「………レ……ん……様……」
慈しむべきその『ご神体』に触れ、私はひとり、想いを巡らせていた。
検定直後というこの慌ただしい時期に、あえて雄真さんたちをここに招待した、本当の理由。
「雄真さんは、きっと……お怒りになりますよね」
ぐぉぉんと、その『ご神体』が私に応えかける。
数年ぶりに目覚めたばかりの、その『ご神体』。
ともすれば、あの式守の秘宝よりも強大な魔力を、その身に秘めし存在。
目覚めさせたのは、この私。
「……」
迷いはあった。
ともすれば私は、自ら友と信じるものたちの気持ちを、裏切りかねないことをしている……
だけど……それでも私は、確かめておきたかった。
ずっと前から感じていた、雄真さんと私との間に立ち塞がる妙な違和感の正体を……
タッタッタッタッ……
……やがて彼らの足音が、はっきりとした形で耳に飛び込んできた。
あと数分もしないうちに、彼らはここまでたどり着くであろう……
もう、迷う事は許されない。私はまっすぐ、雄真さんと向き合って来なければ……!!
「……それでは、行って参りますね」
ガシッ……
杖を握る手に力を込め、私は皆さんのもとへと向かって行った。
というわけで、次回いよいよ両者ご対面・・・といったところです。
現在スレ容量は440KB程度ですが、これひょっとしたら次スレいくかな?
ともあれ、もうしばらくお付き合い下さいませ。
>乙
やっぱり主人公関連でしたか・・・
次回は本格的なバトルがありそうですね。
次スレ行っても全然OKですよ。
というよりも本格的な小説になってきましたね。
次も楽しみです。
今回はついに、敵の正体が明らかに・・・?
第16章「小雪の想い、雄真の運命」
そこには、魔法服姿の小雪さんがひとり立っていた。
柊が目にしたという化け物の姿は、微塵も見当たらない。
「……高峰先輩? どうしてここに……」
「皆さんこそ、朝早くからみんなでお散歩ですか?」
「……質問に質問で返すなんてフェアじゃないわ。何してんのよ、こんな所で!!!」
柊の敵意むき出しの発言にも全く動ずることなく、静かに微笑みを湛えている小雪さん。
「さぁ、何をしていたのでしょうか? 忘れてしまいました」
「とぼけてもムダよ!! だいたい怪しいと思ってたのよ……
小雪先輩があんな朝早くから1人で森の中にいるなんて、どう考えたっておかしいじゃない!!」
「でもあの時、柊さんもおひとりでしたよね。一体何をしてたんですか?」
「そっ……そんなの、先輩にはどうだっていいでしょう!?」
柊……お前の秘密特訓のこと、多分小雪さんにはバレバレだと思うぞ。
「……高峰先輩。私たちは、この森の中から発生している魔力の源について、
みんなで調査しているところなんです」
「……」
あくまで冷静な態度で、小雪さんに問い掛ける春姫。
小雪さんが静かに、春姫に目を向ける。
「疑いたくはありません……高峰先輩は、私たちにとっても大切な先輩ですから……
ですから……私の質問に、正直に答えてください」
「……わかりました」
小雪さんの返答を受け、春姫が一歩前に歩み出る。
「杏璃ちゃんの質問の繰り返しになります。先輩はこの森で、何をなさっていたんですか?」
「……あるものを、目覚めさせて参りました」
「あるもの……?」
「はい……私にとっても、一番の親友のひとりです」
「……」
春姫はにわかに考え込んだが、やがてもう一度小雪さんに問い掛けた。
「もうひとつ質問です。高峰先輩が、私たちを温泉に招待して下さった本当の理由。
是非……お聞かせ願えませんか?」
「……」
今度は小雪さんが黙り込む番だった。
あたり一面に、気まずい空気が漂いだす。
「やはり……神坂さん相手では、隠し通せそうにありませんね」
小雪さんはふと、顔に笑みを浮かべた。
まるで、俺たちがここまでたどり着けたのを、楽しんでいるかのように。
「神坂さんが今、考えている通りです。私はいわば、皆さんを試すためにここに招待しました」
「試すため……だって?」
「はい。それと……もっと個人的な理由もあるんです」
ここで小雪さんはふっと一息つき、俺の方へ視線を投げかけた。
「それは……私が、雄真さんとの間に抱いている疑問」
「……俺への……疑問?」
「はい。雄真さんと出会ってから1年以上もの間、ずっと……抱えてきた疑問」
小雪さんが俺に……一体どんな疑問を抱いてるって言うんだ?
そんな俺の疑問をよそに、小雪さんは訥々と自らの心中を語り始める。
「最初は……そうですね。雄真さんから見える数奇な運命に惹かれたのが、全ての始まりでした」
「……」
『あなた、とても不幸な相をお持ちですね』
入学早々小雪さんから告げられたあの言葉が、ふと頭をよぎる。
「その後、お母様が予言していたとおり、雄真さんの周りにはいろんな事件が巻き起こりました。
まるで、雄真さんが特別な星のもとに生まれていることを、象徴するかのように……」
「……」
思い返される、半年前の事件の記憶。
式守の秘宝を巡るお家騒動、そして明かされる俺の出生の秘密……
どれもこれも、普通に生きてたらまず遭遇しないような事件ばっかりだ。
「……そして事件が全て終わった時……私は、少し安心していたんです。
これで私は、雄真さんの運命を全て見届けることができたんだって……ですが……」
少しだけ言葉を止め、視線を斜め下に落とす小雪さん。
「私の、雄真さんへの興味は……決して、消えることはありませんでした」
「それって、どういう……」
「……見えるんです。雄真さんの歩む先に待ち構える、今までよりも更に波乱万丈な運命が……
それが具体的に、どのようなものなのか……私にも、わかりません」
「……」
「私はただ、その正体を知りたいだけなのかも知れません」
パチン!
小雪さんが指を鳴らすと、森の奥から何やら巨大なものが近づいてきた。
「私にはもう、この方法しか思いつかないのです……
雄真さんの中に眠る、その大きな力……そして、それを取り巻く皆さんとの強い絆……
そこにきっと、ヒントは隠されているはずですから」
「!!!」
突如として迫ってくる強大な魔力の持ち主に、思わず杖を構える俺たち。
そして現れた、そいつの姿に……
「……!?」
場にいる皆が皆、言葉を失っていた。
背丈は、普通の人間の数倍ほど。
横向きになだらかな楕円を描くその体と、薄黄色のふかふかな表皮が、妙に目を引く。
っていうか……これって……
「カレーまんっすか!!??」
「ご名答。我が高峰家に伝わる伝統的アイドル、カレーまん様です」
「え……えっと……ι」
先ほどまでのシリアスな空気はどこへやら、呆気に取られやる気を失う一行。
「言い伝えによると、カレーまん様の体内に詰まったルーで作ったカレーは、
この世のものとも思えない極上のコクと旨みを醸し出すそうです。
私も一度、食べてみたいものです」
「……マジで?」
側にいる巨大カレーまんを見つめ、うっとりとした表情を浮かべる小雪さん……
何かそこだけ、俺たちの入り込めない別世界と化している。
「……はぁ。どーせこんなオチだと思ってたわよ」
「解せぬ……高峰の人間の考えることは、私には一生理解できぬわ」
俺の横で、柊と伊吹が本気で頭を抱えている。
しかし……なりはこんなでも、こいつは立派な『秘宝』のひとつだ。
油断してかかれば、命はない……!
「さぁ、見せてください。雄真さんの、皆さんの、力を……!!」
小雪さんの合図で、その『秘宝』が甲高い雄叫びをあげた。
「……来るぞ!!!」
俺が言葉を発するよりも早く、皆が一斉に動きだした。
あー・・・ついにやっちゃったよ俺・・・
シリアスからカレーまんで落とすって流れは、この話書き出した頃から考えてたんですけどね。
次回いよいよ最終章・・・です。
どうぞお楽しみにノシ
「運命って言うのがあるのなら逆らえないかもしれないが予防だけはやってみよう」
って某コミックの主人公がこう言ってたなぁ・・・・・・・・。
>乙
カ、カレーまんにやられたらシャレんなんねー・・・
ってかこのカレーまんを倒したら雄真の運命はなんか変わるのか?
でも、いつもヘラヘラ笑ってるキャラがやたら強いっていうことも良くあるし・・・
カレーまん落ちはありましたけど、続きは楽しみです。
カレーマンに笑っちまった時点で俺の負けだw
いや、GJ!!
ある意味凄くはぴねすらしいよw
>>533 シリアスがぁぁぁァァァー?!(www
ふと叫んで見ました。乙ですー
でも、変に深刻な話にするよりかはこっちの方が個人的に好み。
小雪さんらしいと言うかなんと言うか(笑)
続きを楽しみにしていますが……これ、魔法で吹っ飛ばしたら
周囲一帯カレーだらけになるんじゃ(w
思ったより受けがよくて安心したw<カレーまん。
では参ります。
第17章「決着〜それぞれの力〜」
「エル・アムダルト・リ・エルス……」
春姫の詠唱に呼応して、ソプラノの先端が紅い輝きに包まれる。
「ディ・ルテ・エル……アダファルス!!!!」
ゴォォォォォォ!!!
杖の先端から、まばゆい帯状の炎が放たれた。
春姫の十八番、炎属性の直接射撃だ。
……だが、その分厚い表皮は、春姫の直接攻撃をものともせず受け流す。
直撃を受けた部分に、焦げ目ひとつ残されていない。
「……やっぱりね。この程度の攻撃じゃ、通用しないか……」
春姫が感心する暇もなく、『秘宝』は口を大きく開け、攻撃の構えを見せる。
シュウウウウ……ドォン!!!
その口から、強力な魔法弾が発射された。
先ほど春姫を狙ったものと同じ、高密度に集束された黄金色のエネルギー弾だ。
「散っ!!!!」
前衛に構えた信哉が、正確にその魔法弾を叩いてゆく。
しかしそれに臆する様子も見せず、敵は2手目、3手目を打ち込んでくる。
「やっ!! はぁっ!!! でぁぁっ!!!」
息つく暇もなく、その魔法弾を叩き落としてゆく信哉。
次第に風神雷神を握るその手が、ふるふると震えだすのがわかった。
……無理もない。あれほどまでに強力な魔法弾だ。
ただの一撃を返すだけでも、相当な精神力を消耗することだろう。
それが、あれ程まで立て続けに放たれたら、さすがの信哉でも……!!
「……兄様。しばし下がっていてください」
「……頼んだぞ、沙耶」
信哉は魔法弾を弾くその手を止め、一歩後ろへと下がった。
たちまち襲いかかってくる魔法弾の雨を、沙耶の防御魔法が迎え撃つ。
「幻想詩・第二楽章……明鏡の宮殿」
キィィン……
張り巡らされた光の鏡が、敵の魔法弾を受け止める。
「これでしばらくは大丈夫です……ですが……」
沙耶の魔法障壁を狙って、更に多くの魔法弾が襲いかかってくる。
このままでは、障壁を抜かれるのは時間の問題……!!
「……ここは一気にカタつけないとね……春姫、アレ試してみない?」
「アレ? 実戦じゃ使ったことないけど、大丈夫?」
「あたしを誰だと思ってんのよ! いいから、行くわよ春姫!!」
「うん……杏璃ちゃん、しっかりタイミング合わせてね」
春姫と柊は互いにうなずき合い、フォーメーションを組んだ。
「エル・アムダルト・リ・エルス・ディ・ルテ……」
春姫が静かに、詠唱を始める。
その様子を、後列から隙のない目で見つめる柊。
「エル・アダファルス!!」
先程放ったのと同じ帯状の炎が、杖の先から放たれ……
「アデムント・アス・ルーエント!!!」
バッ!!!
炎は唐突に、いくつもの炎弾へと分かれた!!
炎弾の突然の変化に、思わずひるむ様子を見せる『秘宝』。
「ディ……アストゥム!!!」
春姫の巧みなコントロールで、炎弾が『秘宝』の全身を取り巻き……爆発する!!
グァァァァ!!!
その衝撃で、『秘宝』がわずかに隙を見せる。
その隙を、柊は見逃さない!!
「こっちが本命よ……ウォルク・ラ・アウル・フォーラスト・フェイム・エフス!!!!」
ギュオオオオオオオ!!!!
敵の魔法弾の数十発分の魔力が、『秘宝』目がけて発射される!!!
ズドォン……
それは『秘宝』の体を見事貫き、空の彼方へと飛んでいった。
「いぇいっ、決まったぁ!!!」
自分の魔法の成功を確認し、思わずガッツポーズをとる柊。
「す、すげぇ……」
春姫の手数重視の魔法弾で敵の動きを封じ、その隙に柊の威力重視の魔法で刺す……
まさに理想のコンビネーションだ。
こいつら……俺の知らない間に、どこでこんな完璧な連携プレーを……?
「ふっ……私のことも忘れてもろうては困るぞ」
『秘宝』の頭上には、早くも伊吹が展開した紅き魔法陣が広がっている。
かつて瑞穂坂を絶望の淵へと陥れたそれが、今や俺たちの希望の象徴だ。
「ラ・ディーエ!!!!」
伊吹の一声で、ものすごい量の光の雨が『秘宝』目がけて降り注いだ。
それらは確実に『秘宝』の姿を捕らえ、打ち据える!!
グルルルル……
後に残されたのは、こちらの波状攻撃で満身創痍となった『秘宝』の姿だった。
「……やっぱすげぇわ、みんな」
たった1人でも心強いClass Bの使い手が、何と3人も……!!
こいつらの手にかかれば、きっと倒せない敵なんていないんじゃないか?
……だが。
グ……グォォォォ!!!
「!!?」
あれ程の攻撃を受けていながら、なおも変わらぬ叫びをあげる『秘宝』。
「まさか……嘘だろ……?」
しかもまずいことに、今の攻撃で『秘宝』はすっかり機嫌を損ねてしまったらしい。
『秘宝』から発せられる気の量が半端でなく増えているのが、何よりの証拠だ。
こんなの……一体どうしろって言うんだよ……!?
ガッ……!!!
「……来るわ!! みんな下がって!!!」
春姫が叫ぶと同時に、『秘宝』の口から超強力な魔法弾が発射された。
先ほどのものとは比べ物にならないほど、太くて強力なエネルギー……!!
「ディ・ラティル・アムレスト!!!」
春姫の前方に、幾重にも重ねられた魔法障壁が展開される。
その障壁は、『秘宝』の放った魔法弾をがっちり受け止め……
「……!?」
にわかに春姫の表情に、翳(かげ)りが見えるのがわかった。
ぐいぐいと押し込められてゆく、春姫の魔法障壁。
その衝撃は、坂道を転がるダンプカーを片手で押し上げる苦行にも似て……
「……ぐっ……あふ……っ」
衝撃に耐えかね、ひとつ、またひとつと消えてゆく春姫の障壁。
その数に比例して、春姫の表情が、どんどん険しくなってゆく……
「ぃやっ……あああああ……っっ!!!!」
耳を劈(つんざ)くほどの、春姫の悲鳴。
その声は、俺にあるひとつの決意を迫っているように思えた。
(もう、これ以上……)
指輪をはめた右手で、がしっと汗を握りしめる俺。
(春姫だけに……負担をかけるわけには……いかないっ……!!!)
気がつけば、俺は地面を蹴って、春姫のもとへと駆け出していた。
がくがくと震える春姫の腕に手を添え、腕の震えを抑え込む俺。
「雄真……くん……!?」
「俺の魔力を……春姫に……だから、春姫はそのまま……」
「……うん……いくよ、雄真くん……!!」
それ以上の言葉は、もはや俺たちには不要だった。
目を閉じ、右手に触れる春姫の温かさにのみ、気を集中させる……
「「エル・アムダルト・リ・エルス……」」
じわじわと、俺の中にある熱が春姫の中へと流れ込んでゆく感覚。
それはまるで、俺の心を満たす春姫への熱い想いにも似ていて……
「「レイテ・ウィオール・テラ・ヴィストゥム……カル・ア・ラト・リアラ・カルティエ……」」
まばゆい光の中に溶け込んでゆく感覚の中、俺たちは静かに、言葉を紡いだ……!!
「「ディ・エル・クォーナ!!!!」」
「……あれ?」
気がつけば俺たちは、雪降り積もる冬の大地に、2人してぺたりと座り込んでいた。
春姫が俺の肩に寄り添い、はぁはぁと肩で息をする。
「……どうなったんだ? ヤツは……」
「……わかんない……雄真くんの魔力を、『秘宝』の魔力に干渉させたところまでは、
何とか覚えてるけど……」
あれ程俺たちを苦しめた『秘宝』の姿が、微塵も見当たらない。
ちょうど俺の魔力と『秘宝』の魔力が拮抗していた地点に、何やら妙な茶色の液溜まりが生じ、
カレーのいい匂いをふわふわと漂わせている。
「……『秘宝』のヤツなら、さっき向こうに行っちゃったわよ」
柊が俺たちのもとへ駆け寄り、状況を説明する。
「ホンット、アンタってバカよね……
今のはたまたま春姫が魔力をうまくコントロールしてくれたからよかったけど、
一歩間違えたら、アンタも春姫も、無事じゃ済まなかったんだから……」
呆れたように、それでいてどこかホッとしたように、柊がつぶやく。
「あはは……ホントにバカだよな、俺」
柊や春姫にあれだけ前には出てくるなって、釘さされたばっかだったってのに……
思い返すと、自分のカッコ悪さに思わず笑みが浮かんでくる。
「……全くだ、小日向雄真よ。そなたとの決着はまだ着いておらんのだから、
勝手に死に急ぐような真似は、金輪際やめにしてもらおうか」
「あぁ……悪かったよ、伊吹」
「ともかく、無事でよかったです……小日向さん、神坂さん」
心の底から、俺たちのことを本気で心配してくれる仲間たち。
俺は心底、この仲間たちと一緒で本当によかったと感じていた。
「お疲れ様です、雄真さん……そして皆さん」
やがて森の奥から、コトの元凶である小雪さんが姿を現した。
「さすがです……あのカレーまん様を、見事撃退してしまわれるとは……
やはり、私が見込んだだけのことはありますね」
「……アハハ……ι」
確かに褒められてるはずなのに、何だか釈然としないのはどうしてだろうか。
そして、小雪さんの横からもうひとり……
「ハイ! みんな、どうもお疲れ様」
意外な人物が、ひょっこり顔を出してきた。
「み、みっ……御薙先生!!?」
それは確かに……御薙先生だった。
「まさか……今回の元凶は……」
「えぇ。今回の事件は、私と高峰さん、2人で考えたものだったの」
呆れ返る俺たちをよそに、御薙先生は真実を語ってゆく。
「始めに話があったのは、高峰さんの方からだったわね。
高峰の家に伝わる秘宝の力を、数年に一度、解放するときが近づいている……
その解放の儀に、是非私も参加して欲しいと……」
「はい……ですが、ただ解放するだけでは面白くありませんから……
御薙さんとお話して、今回の計画を思いついたんです」
「……えーと、それは……」
つまり何ですか? 俺たちは先生や小雪さんの一時の楽しみのために、
散々おもちゃにされてきたってことですか?
「あ! ですが……雄真さんの未来のことが気になるっていうのは本当ですよ?
雄真さんの未来は、いつ見ても波乱万丈で見てて飽きませんから」
「あぁ……そりゃ……どうもι」
小雪さんに自分の未来のこと褒められても、あんまり嬉しくないんですが。
「それにしても……みんなも本当に、随分成長したわね」
御薙先生がふと、嬉しそうに頷きはじめた。
「まずは上条くん兄妹……お兄さんの退魔の力を、妹の沙耶さんがうまくフォローできてたわね。
相変わらず、素晴らしいコンビネーションだったわ。是非今後とも、兄妹仲良くね」
「……いや、俺はまだまだ未熟だ……
沙耶を、そして伊吹様をお護りするためにも、俺はますます精進せねば……」
「せめて褒め言葉くらいは素直に受け取っても、バチは当たりませんよ。兄様」
「そうか……そうであったな。御薙殿、お褒めにあずかり感謝する」
何だか相変わらずだよな……この2人も。
「伊吹さんも……周りに反発することなく、しっかりと自分の務めを果たしていたわね。
那津音様も、きっと側で喜んでいるわよ」
「……勘違いするな!! 私はそなたへの借りを返しただけのこと!!
それ以上でも以下でもないわ!!」
「フフ。そういうことにしておくわね」
思えば……あの伊吹と共に戦う日が来るなんて、あの時は全く想像もできなかったよな。
「で、柊さんだけど……もう少ししっかりと、周りを見つめる余裕ができるといいわね。
神坂さんとのコンビネーション攻撃は、なかなかよかったと思うけど」
「うぅ……相変わらずキビシイ……」
御薙先生にしっかり釘をさされ、さすがの柊も少々ヘコみ気味だ。
「そして、何より……」
そう言うと、御薙先生は何やら含みのある目線をこちらへ向けた。
「……な、何すか? 先生……ι」
「まさかあのタイミングで、神坂さんを助けに向かうなんて……お母さん、少し見直したわ」
「へ、変なこと言うなよ母さん!! あれは、その……」
「フフ。照れなくてもいいのよ。まさかあの雄真が、もう一度魔法で誰かを救う日が来るとはね」
「あ……」
思えばこうやって、誰かのために本気になったのって、一体どれくらいぶりのことだろうか……
「春姫……」
俺はふと、俺の肩に寄り添っている彼女のもとへと振り返った。
「ふふ……また、雄真くんに助けられちゃったね」
「春姫……ゴメンな。あの時は、俺も無我夢中で……」
「うぅん、いいんだよ。雄真くんがまた、あの時と同じように私を助けてくれた……
それだけで、私……」
「春姫……」
俺は胸に込み上げる想いに耐え切れず、そっと春姫の体に手を回し……
「あらあら。おアツいのね、お2人とも」
「!!!!」
御薙先生の声に、俺たちはふと我に帰った。
「あ、いやっ、これは、その……」
「フフフ。おあつい、おあついです」
小雪さんまで先生に同意するかのように口元をニヤニヤさせ始めるし!!
「さてと、お邪魔虫は早々に退散しなきゃね。じゃねー、春姫!」
「あ、杏璃ちゃん!! 私は、ただ……///」
「お疲れ気味の皆さんのために、カレーライスを用意させて頂きました。
先程採取したカレーまん様のルーで作った、高峰家特製の味です」
「ほう……南蛮渡来の米料理か。俺も少し、興味を持っていたところだ。
では、小日向殿、神坂殿! 俺たちはしばし失礼致す!!」
「フフ。末永くお幸せに、小日向さん」
「お前らいー加減にしろーーーーーーーーー!!!!」
何だかいつもの調子で、この場はお開きになってしまった。
「ったく、あいつらときたら……ほら春姫、もう立てるか?」
遅れて俺もゆっくり立ち上がり、春姫に手を差し延べた。
しかし春姫は、俺の手をつかんだまま、そこから立ち上がろうとしない。
「……? どうした、春姫……」
「あの……私……カレーライスは、あんまり好きじゃないし……
それに……今はあの、その……」
「俺といっしょにいたいから……ってか?」
「……もぉ。雄真くんったら……///」
ま、かわいい彼女のせっかくの頼みだしな……
俺は小雪さんのカレーライスを我慢し、しばらく春姫とふたりっきりの時間を楽しむことにした。
その後、遅れて入ったカレーパーティで、小雪さんたちに散々からかわれたのは、言うまでもない。
「……何だか、あっという間の2日間だったよな」
「そぉ? いろんなことがありすぎて、あたしはすっかり疲れちゃったわよ……」
夕日差し込むワゴンの中で、柊が不貞腐れるように言葉を漏らす。
「でも、わたしはすっごく楽しかったですよ!
久しぶりに、姫ちゃんや伊吹ちゃんたちといっぱい遊ぶことができましたし」
「うぅ……結局姫ちゃんとあんまりお近づきになれなかった……しくしく」
「何か約1名ほど、楽しみの方向性を間違っちゃってるヤツもいるけどね」
「あはは……ι」
帰り際でもまだにぎやかな車内で、俺もふと笑みをこぼしていた。
いつもの日常とは少し違うけど、いつもと変わらないメンバーで過ごした、とても貴重な2日間。
きっと大人になっても、この2日間のことはずっと忘れないだろう。
「楽しかったか? 春姫」
「うん……ちょっと慌ただしかったけど……高峰先輩に、ちょっと感謝……かな?」
「あぁ……そうだな」
向かい合い、互いに微笑みを交わす俺たち。
「またいつか、このメンバーで温泉に行きましょうね……小雪さん」
「えぇ……カレーまん様もきっと、皆さんの再来を心待ちにしてますよ」
「うぇ……それはさすがに勘弁ι」
きっと待っているであろう、瑞穂坂の騒がしい日常へ向け。
俺たちを乗せた車は、どこまでも高らかに唸り声を上げていた。
「……ところでこの車、一体誰が運転してるんすか?」
「フフフ……それは秘密、です」
「ほなここでいっちょとばすでー!! きばりや兄さん!!!」
「え゙☆」
(終わり)
とりあえず、魔法バトルについてはあんまり突っ込まんどいてください;
一応データベースサイトとか巡って、詠唱文はひととおり確認しましたが・・・
ともあれ、これで温泉の話は終了です。
実に2週間近くもの間お付き合いいただき、本当にありがとうございました。
今後もまた新しいネタが書きあがったら、こちらのスレにお世話になりたいと思います。
ではこれにてノシ
お疲れ様でした〜〜〜〜
GJ!お疲れ
GJです〜
ほのぼの大団円と言う感じで良かったですね。
最後らへんはキャラが多くて何がなにやら賑やかでしたが(笑)
お疲れ様でしたー
>乙
最後はほのぼのと円満に解決しましたね。
最後まで雰囲気を壊さないで良かったです。
お疲れ様です〜。
さて、書き氏がいなくなるとネタがなくなるのはこのスレの宿命か・・・?
また、ぼちぼちいくさ
丸一日書き込みなしかよ・・・
たった一日くらいで何言ってんだ?
一日程度でへこたれるんじゃないっ!
実際>557が書き込まなければ無レスでかなりの間経過しそうだな・・・
以前は2、3週間放置なんて平気であったのになぁ・・・
そうなると書き込みにくく感じるのは俺だけか?
あのとき私が見ていなければ・・・
そのとき伝えていれば・・・
もしかしたら悲劇は起きなかったかもしれない。
全ては確立の上で動いている。
未来なんて誰にもわからない。
だから今があるんだ。
「もしも明日が晴れならば 伝わった思い‐香坂彩乃‐」
565 :
564:2006/03/30(木) 03:29:06 ID:FmdT+Nx10
( ゚Д゚) ポカーン
不手際で原稿のメモ帳削除しちゃった・・・。
樹海行ってくる
がんばれー、戻ってこいよー。
ウヒャwテラワロスw
幽霊になって、実体験を元にSS書くんだ!成仏する前にな。
もしらばって、最近作品別に小ネタ氏がいるよな。
こっちに書けばいいのにと思うのは、俺だけ?
ナナミはきらはちゃんがだいっすき♪
大好き、大好き、だいっすき♪
だいだいだいだいだいだいだいだいだい
だいっすきーーーっ!!(≧∇≦)
>>568 (´ー`)………みんな作品別スレやキャラスレにはなんかしらの思い入れがあるもんなのさ。
某ゲームの女の子モード見て「これやってみてぇw」と衝動的に書いてしまいました。
「雄真とすもも、朝のカンケイ。」(
>>223-243)のすもも視点バージョンです。
(ただし
>>223は初めからすもも視点なので省略)
基本的に
>>223-243と内容は全く同じ。
しかし双方の視点から眺めてみると、新たな発見があるかも?
↓では下のレスからドゾー
……ッ……クチュッ……
真っ暗な布団の中で、無心に兄さんのそこを貪るわたし。
「どうですか……兄さん……目、覚めましたか……?」
たまにこうして、表情の見えない兄さんに言葉をかけながら。
……正直言って、兄さんの表情を伺えないままただひたすら兄さんのものを舐め続けるのは、
かなり根気のいる作業だった。
兄さんを起こし始めてから、はや10分。
いくら大好きな兄さんのものとはいえ、こんなに長いこと単調な愛撫を繰り返していては、
いい加減お口の方も疲れてきてしまう。
(お願いだから……早く……起きて……)
物言わぬ兄さんのものをしゃぶりながら、そんなことを考えてたその時。
「って、な、何だコレっ!!!!」
言葉と共に、兄さんの体がぐいっと起き上がるのがわかった。
兄さんのそこを歯で傷つけぬよう、慌てて兄さんのから口を離すわたし。
……だがすぐに、わたしは兄さんのものに口づけていた。
ガバッ!!
布団の持ち上がる音とともに、まばゆい朝日がわたしの顔に降り注ぐ。
「あ、兄さん。おはようございます」
兄さんのそこを舐めながら、笑顔で挨拶してみるわたし。
「お前……な……何やって……」
口をぱくぱくさせながら、兄さんがわたしを見つめている。
「何って……兄さんを起こしてただけですよ」
わたしの行為に、兄さんはまだまだ解せないようだ。
「お、お、起こしに来たと言ってもだな、お前……
もう少しその、起こし方ってもんがあるだろうが!!」
兄さんの言葉に、わたしは少しだけむっとくるものを感じた。
せっかく朝の弱い兄さんのために、一生懸命頑張ってたのに……
「兄さんが悪いんですよ?
兄さん、もうわたしが普通に起こしただけじゃ起きてくれないんですから」
「そ、それは……その……だな……」
至極真っ当なわたしの意見に、兄さんはもはやぐぅの音も出ない。
「だからこうして、起こしてあげてるんじゃないですか……あむ……ん……」
ちょっと悔しくなり、わたしはもう一度兄さんのそこにむしゃぶりついた。
「って何か普通に舐めちゃってるし!!」
こうなったら、兄さんがきちんと感じてくれるまで、この行為を続けるまで……
慌てる兄さんの言葉を無視し、わたしは再び兄さんのものを攻め始めた。
「ん……んふっ……ん……ちゅ……
ちゅ……ちゅぷっ……んは……ん……ちゅる……っ」
以前兄さんの部屋で発見したえっちな雑誌に書いてあった、男の人を喜ばせる方法。
それを脳内で何度もリフレインしつつ、わたしは執拗に兄さんのものを攻め上げる。
「……どうですか? 兄さん……気持ちいいですか……?」
たまにこうやって、兄さんの反応をうかがいながら。
「き、気持ちいいって……その……」
わたしの問いかけに、思わず口篭もる兄さん。
と、兄さんはふと部屋の一隅に目を向けた。
その視線の先には……
「って、こ、これは!!!!」
そこには昨日、わたしが読み散らかしたばかりのえっちな本が、山と積まれていた。
兄さんもようやく、わたしのテク向上の秘密に気づいたらしい。
「そのとおりですよ、兄さん」
「ぬがっ!!!」
わたしは得意げな笑顔を兄さんに向ける。
「兄さんを喜ばせるために、私……いっぱい勉強しちゃいました!」
「べ、勉強って……お前な……」
半ば呆れたように、兄さんがつぶやく。
「さすがに姫ちゃんほど胸はないですから、胸技は使えませんけど、
そのかわり、お口でなら誰にも負けませんよ」
ちなみに胸技とは、男の人のそれを胸で気持ちよくしてあげるいろんな方法のことだ。
姫ちゃんくらいの立派な胸の持ち主になって、初めてしてあげられる究極の前戯。
だけど、悔しいことにわたしの胸はあんまり育ってくれなかったから……
だからせめて、お口では絶対誰にも負けるわけにはいかないのだ。
「それより、兄さんもしてほしいことがあったら言ってくださいね。
わたし、できることなら何でもしちゃいますから」
「そ、そっか? えっと、じゃあ……」
わたしの提案に、兄さんが嬉しそうに食いついてくる。
だけどここで、簡単に兄さんの言うことを聞いてあげるほど、わたしは優しい妹ではない。
「あ、言わなくてもわかってますよ。兄さんはこうされるのがいいんですよね」
わたしは軽い微笑みを浮かべると、そっと兄さんの茎のほうに口づけた。
「ここを……こうして……と」
兄さんの茎を、根元から筋を伝って、ゆっくりと舐めあげるわたし。
同時に空いてる手で、兄さんの袋を愛撫するのも忘れない。
「んふ……ん……んんっ……」
雁首の方に舌をたどらせたところで、スッと下に戻り、再び根元から舐め上げるのを繰り返す。
男の人を喜ばせる最大のテクニック、茎のみを攻めるじらし攻撃。
やはり舐めてほしいところをなかなか舐めてもらえないのは、すごくもどかしいんだろう。
雁首から舌を離すたびに、兄さんのものが切なそうにぴくりと反応する。
「ん……あれ……兄さん……?」
ふと兄さんの亀頭のてっぺんから、じわじわと何かがにじみ出てくるのがわかった。
男の人が本当に気持ちいいときに出す、先走りと呼ばれる透明な汁。
「ん……何だ、すもも……」
「兄さんのここから……いっぱい……溢れてきてます……」
兄さんが感じてくれてることが、とても嬉しくて。
わたしは思わず兄さんの鈴口に舌をつけ、その汁をぺろりとすくっていた。
「んふっ!!」
そんな敏感な場所を攻められるのは、きっと兄さんも初めてのことなんだろう。
兄さんがびくりと、全身をかわいらしく反応させる。
「兄さんのこれ……しょっぱくて……おいしいです……」
口を離したわたしの舌から、兄さんの汁がたらりとだらしなく垂れ落ちた。
ちょっとしょっぱくて生温い、兄さんの汁の味。
それがまるで、兄さんをいっぱい感じさせてあげられてる証みたいで、すごく嬉しくなる。
「ふふ……じゃ少しだけ、手でしてあげますね」
そう言うと、わたしは兄さんの鈴口に指をつけ、手のひらでその液を亀頭全体にまぶした。
ンチュ……ヌチュ……
粘液にまみれた亀頭が、わたしの手の中で、えっちな音をたてる。
「兄さんのこれ……すごく……あったかい……びくびく……動いてます」
わたしの手の中で、兄さんのものが、熱い想いをいっぱいたぎらせている……
そう思うだけで、わたしは頭がぽわーっとするような、えもいわれぬ感情を覚えていた。
「あと、こっちも……忘れちゃいけませんね」
そう言うと、わたしは兄さんの股座に顔を入り込ませ、
寂しそうに取り残されている睾丸にそっと口づけした。
表面はふわふわなのに、中身は少しごろごろな、とても不思議な感触。
その感触を十分に味わうべく、舌先で入念に刺激してゆく。
「ん……ぁあ……」
亀頭と玉……感度の違うふたつの地点を同時に攻められ、天を仰ぎながら喘ぐ兄さん。
気持ちよさを全身で表してくれる兄さんが、とても愛しくて……
「ふはぁ……かわいいです、兄さん……」
わたしは兄さんの睾丸を口に含みながら、うっとりとそんな言葉を口にしていた。
「……それを言うな。恥ずかしいだろ」
わたしの頭上で、兄さんが照れ臭そうに言葉を落とす。
「……兄さん……」
兄さんのことを、もっともっと、感じさせたい……!
我慢できなくなったわたしは、兄さんの袋から口を離し、再び亀頭の方に口を近づけた。
「もう一度、ここ……舐めても、いいですか……?」
「……あぁ……頼むよ、すもも」
「わかりました……あむ……んん……」
わたしは喜び勇んで、兄さんの亀頭を口に含んだ。
粘液にまみれてちょっとだけしょっぱくなった、兄さんの亀頭の味。
だがその粘液もすぐに唾液で洗い流され、元のやわらかな肉の味に戻る。
「……んはぁ……兄さん……んむ……ちゅ……
んふ……んん……はふっ……んちゅ、んんっ、ちゅ……」
兄さんのあそこの味を確かめるべく、夢中になって兄さんのものにしゃぶりつくわたし。
兄さんは目を閉じながら、あそこに伝わるわたしの口の感触を味わっているようだった。
「……はふ……ん……ぁむ……ちゅ……
ん……んん……あふっ、ん……ちゅ……ちゅぷ……っ」
わたしは次第に、兄さんの秘部の感触を味わうのに夢中になっていた。
ずっとこうして、兄さんのあそこを味わっていたい……
……だけど、兄さんの方は既に限界が訪れようとしているようだった。
それが証拠に、兄さんはしきりに腰を浮かせ、自分の想いを吐き出そうと呻いている。
「っ……すもも……俺……もう……」
声を上ずらせながら、兄さんがわたしに訴えかける。
「……兄さん……」
わたしはこくりと頷くと、兄さんのものをひときわ強く吸い上げ始めた。
「んんっ、んちゅ……んはっ、ちゅ、ちゅぅぅぅっ」
「んああっ……す、すもも……」
兄さんの子種を誘い出すべく、強烈な吸引を兄さんに加えるわたし。
そしてわたしが、更に強く兄さんのものを吸い上げた瞬間……
兄さんのそこが、にわかにきゅっと収縮し……
びゅく、びゅくびゅくん!!
「!!! ん、んんんっ!!」
兄さんの先端から、熱いものがどくどくと溢れ出していた。
びゅく、びゅく、びゅくん……!!
びくびくと、口内で兄さんのものが暴れ回る感覚。
収縮のたびに、粘液質のものが口内に溢れ、その匂いに思わずむせ返りそうになる。
「ん、んふぅっ、ん、んんっ……」
やがて兄さんは全てを吐き出し終え、ぐったりとベッドに倒れ伏せた。
わたしの口から、にゅるんと白濁液にまみれた兄さんの頭が顔をのぞかせる。
と同時に、わたしの口から、兄さんの想いがたらりと溢れ出した。
「兄さんの……まだ少し溢れてる……わたしが、きれいにしてあげますね」
兄さんの想いを、全部、受け入れてあげたい……
わたしは達したばかりで早くも縮小し始めた兄さんのものを口に含み、
未だそこに絡まっている精液を全てきれいに舐めとった。
そして、わたしは静かに目を閉じ……
「ん……こくっ……」
わたしは兄さんの想いを、喉の奥へと流し込み始めた。
兄さんの精液は、とても量が多くて粘りが強く、なかなか飲み下せない……
それでも辛うじて全て飲み下すと、わたしは上気した顔を兄さんに向けた。
「兄さんの……ちょっと苦くて……とってもあったかいです……」
「すもも……」
とても満足そうな兄さんの顔に、わたしは胸の奥がふわっと満たされるのを感じた。
「えへへ……兄さん」
がばっ!!
わたしは抑えきれない想いを胸に、兄さんをベッドに押し倒す。
そのままわたしたちは、ベッドの上に倒れ込む形で抱き合うこととなった。
ふにゅ……
兄さんの精液を飲み下したばかりの口で、兄さんの唇を奪ってみるわたし。
わたしの口から漂う精液の匂いに、兄さんは一瞬だけ躊躇したようだったが、
やがて嫌悪感を抱くことなくわたしに口づけを返してくれた。
「んふ……ん……ぷはぁ」
ひとしきりキスした後、わたしは酸素を求めて深呼吸した。
「ふふ……また……キスしちゃいました」
「すもも……」
とても広くてあったかい、兄さんの胸板の感触……
その暖かさを少しでも感じようと、わたしは兄さんの体にぴったり寄り添っていた。
「ちょっと前まで……兄さんとこんな風になるなんて……全然想像できませんでしたね」
「そうだな……すもも」
兄さんとひとりの男の人として付き合うようになって、まだ数日。
いろんなことがあったけど、兄さんは今、わたしの気持ちを受け止め、
こうしてわたしのことを抱きしめてくれている。
「すももは……こうなるもうずっと前から、俺への気持ちに気づいてくれてたんだよな……」
ふと兄さんが、独り言のように言葉を吐き出していた。
「兄さん……」
「すももは偉いよ……こんな不肖の兄のことをずっと想ってくれて……
自分の気持ちに、精一杯答えを出してくれて……
それなのに……俺は……ただ兄妹だっていう理由だけで、
お前の気持ちを受け入れようとせず、ただ逃げ回っていた……
俺は……お前に何て言っていいか……」
わたしのことを、妹としてしか見れないと言った、あの時の兄さん。
その切なそうな表情が、ふと目に浮かぶ。
……不安がないと言えば、もちろん嘘になる。
だけど兄さんはあの時……一生懸命わたしの気持ちを受け止めてくれた……
その想いだけは、きっと嘘偽りはない……そう信じているから。
「それは……もう、昔のことじゃないですか……」
わたしは兄さんを赦すように、兄さんに微笑みかけていた。
「それに……今は兄さんが、こうして私のことを抱きしめてくれている……
そうでしょ? 兄さん」
「あぁ……そうだな」
わたしは微笑みながら、そっと兄さんに囁きかけていた。
_
∠'´ `ヾヽ
くi"〈ノ从))〉>
_ ノ从゚ ヮ゚ノ从_ 支援
/ ⊂) 条 (つ/\
/| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|\/
| みかん |
「もう、この手……絶対離さないでくださいね……兄さん……」
「それはこっちのセリフだ……もう、どこへも行くなよ……すもも……」
「うん……兄さん……大好き」
再びキスを交わし、互いの愛情を確かめあうわたしたち。
(……?)
ふとわたしは、わたしの下半身に触れる兄さんのそこに違和感を感じていた。
「あ……兄さん……///」
たった一度出したくらいでは収まりがつきそうにない、兄さんの熱い想い。
その熱がわたしにも伝わってきて、思わず頭がぽわーっととろけそうになる。
「すごいです……兄さん……また、おっきくなってきてます……」
うわ言のようにつぶやくわたしに、兄さんが切なそうな顔で懇願してきた。
「す……すもも……俺……まだ……」
その時、私はふと、準さんの教えを思い返していた。
(オトコとオンナが長続きする秘訣……それは、決して飽きさせないこと!)
今ここでわたしがもう一度抜いてあげるのは、とても簡単なことだった。
しかし、ここで簡単に抜いてあげたら、兄さんはきっとその刺激に慣れちゃうだろう。
そうしたら、もう……わたしのお口じゃ満足してくれなくなる。
もう二度と、兄さんに喜んでもらえなくなる……!
「……ダメですよ、兄さん」
「ふぇ!?」
わたしの返答に、思わず兄さんが変な声を上げる。
兄さんのをしてあげたい衝動を胸に抑えつつ、私は更に続けた。
「すももの目覚ましサービスは、1日1回までと決まっているんです。
後は兄さんが自分で何とかしてくださいね♪」
「そ、そうなんだ……あはは……」
「さ、早くしないと朝ごはん冷めちゃいますよー」
あえて明るく振るまい、わたしは階下へと降りていった。
準さんに教えてもらった、恋する女の子の必殺技……
今日のところは、ひとまず大成功といったところだろう。
(えへへ……兄さん……///)
わたしは口元をにやけさせつつ、しばらくは台所でお弁当の献立を何にしようか、
悪戦苦闘することになったのだった。
(終わり)
>>583 ちょwwwwみかん箱の人まだいたんだwwwwwwwww
てなわけで終了
>>572-585 所詮は男性エロゲヲタの手で書かれた「作られた」女性視点なので、
ホントに女の子はこんな風に考えてるなんて思わないで下さいねwwww
女の子モード、今のところ昔作品別スレでうpした杏璃の胸の話と、
温泉の話第6章(
>>427-439)について執筆中です(案外難しい・・・)
他にも弾はいくつかありますが、それはまた別の機会にノシ
神の再来だ〜〜〜wwww
頑張ってくれ
激しくGJ!!!
ただ、実はあの時のみかん箱とは別人なんですけどね(汗)
あの時のAAを勝手にお借りしました(汗)
いつも楽しく読ませてもらってます。
それにしてもすももが途中で止めたのには
こんな理由があったとは(笑)
とにかくお疲れ様でしたー
もしらばのSSもほしーなー
>>590 悪くないな。だが、作品別では荒らしだ。
つか、なんでこっちに書かねーんだ?
ココの存在感が薄いからとか
ちゃんと向こうでも
「ココでやったらどう?」と誘導はされてたんだがな
作品別見てきたが、もろに荒らし認定されてるな。
あそこまで荒れてるとは思わんかったが。
まぁ、スレ荒らしが書いた物なら、評価するに値しねーな。
>>594 どっちかつーとSS嫌いの自演基地外が荒らしてたみたいだな、今見たら今度はコピペで荒らしてるし
しかしひどい荒れようだこと
_,,:-ー''" ̄ ̄ ̄ `ヽ、
,r'" `ヽ.
__,,::r'7" ::. ヽ_
゙l | :: ゙) 7
| ヽ`l :: /ノ )
.| ヾミ,l _;;-==ェ;、 ,,,,,,,,,,,,,,,_ ヒ-彡|
〉"l,_l "-ー:ェェヮ;::) f';;_-ェェ-ニ ゙レr-{ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| ヽ"::::''  ̄´.::;i, i `'' ̄ r';' } |
. ゙N l ::. ....:;イ;:' l 、 ,l,フ ノ | SS書く奴はうざいよ
. |_i"ヽ;:...:::/ ゙'''=-='''´`ヽ. /i l" < 俺のつばさを汚した野郎は
.| ::゙l ::´~===' '===''` ,il" .|'". | 即刻に謝罪を要求する!!
.{ ::| 、 :: `::=====::" , il | \________
/ト、 :|. ゙l;: ,i' ,l' ノト、
/ .| \ゝ、゙l;: ,,/;;,ノ;r'" :| \
'" | `''-、`'ー--─'";;-'''" ,| \_
もしらばスレがむちゃくちゃ荒れてると思ったら、
>>590が原因か。
正直、この程度の内容でなんで「擁護派」なんてものが出てくるのか分からんが・・・
つーか、あれだけ荒れてるところで誘導されても、こっちに596みたいに荒らしが
流れてくるだけで迷惑だな。
容量が480kbを超えた件について
ふとした思い付きで、「もしも明日が晴れならば」で1レスものを書いてみました。
千早がイツキと約束をした日の夜、ということで。
エチなしオチなしでスマソ
↓
イツキちゃんが雨の中へと帰っていった。
気がつけば、いつの間にか日は落ちて辺りは薄暗くなっている。
明日のことを考えて、時が経つのも忘れていたらしい。
もしも明日が晴れならば――
イツキちゃんとあの丘の上で、暗くなるまで遊ぶんだ。
そのあとお母さまに叱られるかもしれないけど、構わない。
だって、イツキちゃんと二人で過ごす丘の上は、きっとずっと楽しいから。
でも…、この雨があがらなかったらどうしよう…。
もしも明日が雨ならば――
その時は、暗くなるまでイツキちゃんとお喋りしよう。
イツキちゃんは雨が降っても来てくれる。ずっと側に居てくれる。
だから、たくさんたくさんお喋りするんだ。
あの着物を見てもらって、ちはやが知らない外のことを聞いて……
明日はきっと楽しくなる。だから今日は、もう眠らないといけない。
これまでは、夜眠るのはとても怖かった。とても不安だった。
でも今は平気。
だって…、夢の中でイツキちゃんに会えるから。
とても楽しい夢が見れるから。
イツキちゃんと出会うまで、ちはやはただ生きているだけだった。
する事もなく、考える事もなく、死ぬこともできずに、心にはぽっかりと暗い窓が開いて…。
でも、イツキちゃんが来て、灯りをともしてくれた。
ちはやの心の窓辺に、暖かで柔らかい灯りを。
もしも明日が晴れでもなく雨でもなく、たとえばとても強い風の日だったとしても、
イツキちゃんは逢いに来てくれる。
きっと、ちはやを呼んでくれる…。
>>600に名前入れるの忘れた・・・orz
元ネタの元ネタにあわせたので、ちょっと無理やり感がアリマス(;´д`)
スレ汚し失礼シマスタ。
>>601 組み立てとしては雨の中を帰っていくイツキを見送ったあとは
「もしも明日が晴れならば」をもってこないで
「もしも明日も雨だったら」をもってきて、ちはやに不安感を持たせるほうがよさそう。
そこから「だけど」と持ってきて希望に繋げるほうがメリハリが出る。
オチもないこの構成では、起承転結がなくて起承で終わってしまってる感じ。
>>601 「元ネタの元ネタ」を知らん人にとっては、まったくわけの分からん内容だな。
その辺のフォローがないという問題点が1つ。
さらに、「元ネタの元ネタ」をトレースしているだけで、創作ではないという問題点が1つ。
32行以内に押し込んだにしては読みやすい点は、評価してもいい。
睡眠から私は目を覚ます
「う〜ん今日もいい天気ね」
窓から外の景色を眺めながら、登校するための支度をする
いつもの通学路
ハチと一緒にしばらく待つと二人の男女が歩いてくる
「最近時間通りじゃない、雄真」
「すもものおかげだよ」
「すももちゃんに感謝しなきゃね」
「ほら、喋ってないで行くぞ」
いつも通りの朝にいつも通りの軽口を交わして私たちは学園に向かう
四人ずっと変わらない関係
いつまでこの関係が続けられるのかそれは分からない
でも、私には大切なものだった
「おはよう、小日向君」
「おはよってか、俺の机からどいてくれ柊」
「まぁまぁ、朝からそんなケチくさいこと言わないの」
「あのなぁ。なんで俺の机が集合場所になってんだよ」
「春姫はここにいるんだし、別にあんたの周りに集まってるんじゃないわよ」
「はいはい」
「もう雄真ったら、朝からこんな可愛い子達に囲まれて
幸せものね〜」
「待て。お前は断じて違うぞ」
「もう、照れちゃって可愛いんだから」
「違う!!」
賑やかな会話
気が付くと雄真の周囲はいつも女の子で囲まれていた
魔法科とクラスが合同になってからというのも
雄真と春姫を近づけさせようと、いろいろ画策
してみたものの今ひとつ効果がないまま時間だけが経過していた
(う〜ん、春姫ちゃんじゃないのかなぁ…だとしたら
すももちゃん?杏里ちゃんなのかなぁ…)
やはり、雄真の様子を見る限りでは一番可能性が
高そうなのは春姫だった
授業中自分の席から雄真の方を見つめる
すやすやと、教科書立てて眠っている
(もう、雄真ったら)
ずっとそちらを眺めながら、ふと思いつく
(もし、私が本当の女の子だったら、雄真は私を
選んでくれるかな……)
それはいつも頭をよぎる邪念だった
私は雄真の一番にはなれない
だからこそ、雄真の恋を応援しようと誓ったはずなのに
雄真を見るとそんな思いが湧いてくる
(はぁ……まぁ、仕方ないよね)
そう呟いて私は自分を納得させた
放課後、今日は特になにもない
「ってことで、雄真、一緒に帰ろ〜」
「なにが『ってことでなんだ』なんだ!つか腕を絡めるな!!」
「今日は特に私用事もないし、どこかで遊んで帰らない?」
「あぁ、別にいいけど。他に誰か誘うか?」
「そうだね…あ、春姫ちゃん、今からどこか遊びに行かない?」
「え?…あ、ごめんなさい。今日は杏里ちゃんと用事があるから」
「あ、そうなんだ…じゃあ杏里ちゃんも駄目ね」
「ごめんなさい、また誘ってね」
おっ、はぴねすのSSか。楽しみだなw
×杏里 〇杏璃 ね。
準だよw今後の展開に期待
教室の中をグルリと見回す
「あれ?ハチは?」
「ん?ハチならさっき『アニメの録画を忘れた!!』とか言って
慌てて帰ったぞ」
「そんなキャラだっけ……ってことは今日は雄真と
二人っきりってことね///」
「だったら別に行かなくてもいいだろうが!!」
「駄目駄目。ほら時間はそんなにないんだから、早く早く!!」
「わかった、わかったから、押すんじゃない!」
玄関口まで来てポカンと立ち止まって空を見上げる
「あー、なんでさっきまで、あんなに晴れてたのに急に降ってくるんだ?」
わなわなと震えながら空を睨みつける
「もぉ〜、なんでこんな時に降ってくるのよ〜」
ほんの少し前まで晴れていた空は今は厚い雲に覆われていた
振り出した雨は当分止みそうもない
「これは、きょうは遊びに行けないな準」
「せっかく、楽しみにしてたのに……」
「また、今度な。しかし参ったな、傘なんて持ってきてないし」
「そうよねぇ……あ、そういえば」
「どうした?」
「こんなこともあろうかと、置き傘してたのを忘れてたわ」
「なにぃ!?」
「乙女の嗜みってやつよ。少し待ってて。教室まで取りに行ってくるから」
「お待たせ!」
「おう、じゃあ帰るか」
そう言うと、何故か雄真はカバンを頭の上に構えた
「なにしてるの雄真…?」
「はぁ?なに言ってんだ?走らなきゃ濡れちまうだろ?」
「もう…なんの為に私が走って教室まで取りに行ったと思ってるの」
「って…ちょ…まさかおまえ……」
「さ、仲良く一緒に帰りましょうね〜」
「馬鹿言え!?そんなファンシーな柄の傘に男二人で入れるか!!」
「仲の良いカップルにしか見えないわよ。ささ、帰りましょうね〜」
「そ、そんな声だすんじゃない!」
ズルズルと抵抗する雄真を引っ張って私達は外に出た
「一度やってみたかったのよね〜あ・い・あ・い・が・さって☆」
「変なこと言うな。…つーか、お前だったらいつでも出来るんじゃないか?」
「もう、雄真と一緒じゃないと意味ないの」
「はいはい、わかったよ……」
非常用において置いた傘はそんなに大きくない
私は、雄真が濡れないようにそっと傘を傾けて身を寄せる
「おい、準、くっつき過ぎじゃないか?」
「しかたないじゃない。傘が小さいんだから」
「ってもなぁ……ん?」
雄真のほうに体を寄せて歩きながら、私は考える
(はぁ…女の子だったらこうゆう時、胸を押し当てたりしてアピールできるのに)
自分胸をに視線を落とす
ここら辺が超えられない壁のひとつだった
「おい、準」
「…え?どうしたの?」
「貸せ」
半ば強引に私の手から傘を奪い取る
「あ!ちょっと…」
「お前が濡れてんじゃねーかよ。俺のほうに傘向けやがって、
それでお前が濡れたら意味ねーだろうが。それになんつうかやっぱり
そのこの場合は俺が傘を持つほうが正しい気がするしな。お前は見た目は
女だから、俺が格好悪いだろ」
「雄真……み、見た目だけじゃなくて、心も女の子だよ」
「あぁもう、懐くな!ネコかお前は!」
(私にだってこんな風に優しいから……)
だから……ついありえない期待をしてしまうのか
それは……言い訳なのかもしれない
「今日、私の家誰もいないのよね〜」
「そうなのか?」
「可愛い一人娘をほったらかして何処に行ってるんだか」
「大変だな……お前の親も」
「どうゆう意味なのかしら〜」
「そのまんまの意味だが」
そうこう会話をしてる内に家の前まで来る
「あぁん、もう着いちゃったのね。ねぇ雄真もう一周しない?」
「するか!!」
「残念ね。でも、また今度しましょうね…くしゅん」
「次は、傘を忘れないようにするからな」
「ふふっ。釣れないわねぇ…くしゅん」
「じゃあ、この傘借りてくからな。明日の朝返すよ」
「うん、それでいいわよ…くしゅん」
「おまえ…大丈夫か?やっぱ結構濡れただろ?」
「大丈夫よ、これくらい。雄真も早く帰らないと、だんだん雨酷くなってきてるわよ」
「あぁ…ほんとに大丈夫なんだな?」
「んもう、そんなに、くしゅん、私のこと心配してくれるなんて、雄・真・」
「変な風に呼ぶんじゃない!!じゃあ、俺は帰るからな」
「今日は、楽しかったわ。また、明日ね…くしゅん」
玄関を開けて家の中に入った瞬間に、ふらっと眩暈がする
「あれ……?」
視界がはっきりと定まらない
私はそこで気を失った
準にゃんキタキタ
「ただいまー」
強くなりだした雨脚に、俺は急いで玄関の扉を開ける
「あ、兄さん。お帰りなさい。雨、大丈夫でしたか?」
「いきなり降って来るんだもんなぁ…」
「すももは大丈夫だったのか?」
「私は、置き傘してありましたから」
「女の子はさすがだな」
「兄さんは…その傘…」
「あぁ。準の奴が置き傘してたおかげで助かったぜ。さすがにこの
傘は恥ずかしかったが、仕方ないだろ」
「準さんに感謝ですね」
「まったくだな」
一息ついて、リビングに向かう
テレビを付けるとちょうど天気予報が流れていた
「しばらく…止みそうにないか……」
そこで俺はあることに気付いた
「……っておいすもも!今日母さん、傘持って行ったか!?」
「…え?あ、そういえば……」
どうやらもうひと仕事あるらしい
「俺が届けに行ってくる」
「外、酷い天気ですよ」
「しょうがないだろ」
そう言って玄関に掛けてある母さんの傘を手に持って俺はもう一度外に飛び出した
「はぁ…なんとか母さんが帰る前に間に合ったな」
俺が傘を届けに来たことを知ると母さんはものすごく喜んでくれた
「じゃあ、俺もさっさと帰りますかね―――」
そこで、頭の中に一人の顔が浮かび上がる
「あいつ…ほんとに大丈夫だったのか……」
どうしても頭から、別れる間際の顔が離れない
「えぇい、クソ!!最後にくしゃみなんかしやがるから!!」
「はぁはぁ……」
一時間ほど前に来た場所に俺は再びいた
雨の中を走ったせいで、だいぶ濡れている
呼吸を整えて、俺は呼び鈴を押した
「…………………?」
もう一度押してみる
「……………………」
やはりなんの反応もない
「なんだ、準の奴いないのか。とんだ無駄骨だったな…」
カチャ――
なんとはなしにドアノブに触れるとそれは音を立てて開いた
「あれ……?」
無用心だなと思いながらゆっくりドアを開く
中を見渡せば―――
「準!?お、お前!どうした!大丈夫か!?」
玄関で準が一人で倒れこんでいた
俺は駆け寄って、抱き起こす
「はぁはぁ…あれ…?はぁはぁ…どうしたの…私に…会いたくなった…?」
「んなこと言ってる場合じゃないだろうが!?」
準の額に手を当てる
「すげぇ、熱いじゃねえかよ!!ああ、もう、入るぞ」
出来るだけ優しく抱きかかえて準を部屋まで運ぶ
「はぁはぁ…ふふっ…これって……お姫様…抱っこ…よね…」
「なっ――!あぁ、もういい」
部屋のドアを開けて、そっとベッドの上に寝かせる
「まさか、あれからすぐ倒れたのか?」
「あれからって…どれぐらい経ったの……?」
「一時間くらいだ」
「…そうなんだ……」
「まったく、お前は……俺がこなかったらどうするつもりだったんだ」
「……ごめんね…雄真…急に力が…はいらなくなっちゃって…」
「ん……あぁ、そうか悪い。辛かったら無理に喋らなくてもいいからな」
「ううん……大丈夫…さっきよりは…楽になったから……でも……」
「?」
「どうして…雄真…戻ってきてくれたのかな……?」
「え、いや別に、母さんに傘を届けに行ったら、さっきお前がくしゃみしてたの
思い出してな、両親もいないって言ってたから、気になって来てみたんだ」
「ごめんね雄真……本当に心配させちゃったんだね」
「そんなことで謝るなよ、俺達の仲だろ。なんかあった時はいつだって
言えばいいんだぞ」
「うん……うん……雄真……」
「ば、ばか、泣くなよ!男だろ」
「だって……雄真が優しいから……」
「ほ、ほら、汗かいてるし着替えだ着替え、ここか?」
適当にクローゼットを開ける
「う……準…自分で着替えられるか?」
「…ごめんね…身体が…動かせないの……」
「わかった」
どうやら俺がやるしかないようだ
俺は意を決して、クローゼットを占める女物の服の中に手を入れた
「……ん…あっ…!!…雄真ぁ……」
「……………」
「だめ……そこは…んふぅ……はん…っ///」
「……………」
「や……っ…ん…ぁぁ……だ…め……」
「……………」
「ひゃん!……ぁうぅ…やぁ……ゆ、雄真ぁ……」
「ええい!着替えさせてる時に、変な声出すんじゃない!!」
「はぁ…はぁ……ゆぅまぁ……」
何故か先ほどよりも息絶え絶えな準
(はぁ……着替えさすのに……この苦労かよ)
「お前の両親は帰ってくるのか?」
「ううん……」
「そうか」
俺はポケットから携帯を取り出すと、家に電話を掛ける
「あ?すももか?…実はな準が………あぁ……そういうわけだから…
たぶん今日は帰れんと思う……明日?大丈夫だ…ああ…悪いな」
「あの……雄真?」
「だれもいないってのに、こんな状態のお前を置いてけるわけないだろ」
「でも……」
「病人は黙って言うことを聞くもんだ」
「分かった……」
「ん、じゃあ俺は下でなんか作ってくるから、
まぁなんかって言ってもおかゆだけどな。それでいいか?」
「ありがとう……雄真」
「ん」
雄真が部屋から出て行くと、私一人が部屋に残される
正直なところ、玄関先で倒れて動けなくなったまま、ずっと一人で心細かった
雄真が来た時はまるで――
(まるで、助けてって私の声が届いたみたい……)
病気で気弱になっているいま、雄真の優しさは胸の内に秘めた思いを暴露
させてしまいそうになるほどに嬉しくて、辛い
ずっと、昔からアプローチし続けてきた
好きといい続けてきた。けど、その先には怖くて踏み出せなかった
もし、はっきりと拒絶されたら、自分は今の居場所も失ったしまう
そばにもいれなくなってしまう。それが怖かった
でも、あれだけ優しくされたらもう駄目だ
自分に嘘がつけない
「雄真……好きだよ……雄真…」
「おい、準出来たぞ」
お盆を抱えて、私のエプロンをした雄真が入ってくる
(か、可愛い……)
「自身作だ。ほら、食べれるか?」
「ん……」
息を吹きかけて、ゆっくり口に運ぶ
「美味しい……」
それはいままでで最高に美味しいおかゆだった
「そうだろう、自信作だからな。しっかり喰って早く直せよ」
「さて、もう寝たほうがいいぞ」
食事も終わって、雄真がそう言ってくる
ただ、私は今日を終わらしてしまうのが勿体無いような気がした
「そう……よね……」
「…ん?……あぁ、心配するな。俺もここにいてやるから、安心して寝ろ
病気の時は誰であろうと傍にいてほしいものだしな」
「雄真……眠るまで…手握っていい…?」
「やれやれ。今日だけだぞ」
私はこくこくと頷く
「俺もこの部屋で寝るからなんかあったら起こすんだぞ」
そういって部屋の明かりを消す
私は雄真の掛けた魔法が解ける前に、人生で最大の覚悟を決める
「ねぇ……雄真…もうひとつ最後の…お願いしていい?」
「んん…?なんだ?」
雄真も、もう眠そうだ
当たり前だ。ずっと付きっきりで看病してくれていたのだから
私は、震える唇で言葉を紡ぎ出す
「……眠る…前に…最後に…キス…して…」
「な!?お前………」
雄真が悩んでいる
それもそうだ。私は男なんだから…
でも、溢れた思いは留められない
もし、雄真がしてくれなかったら私はキッパリ諦めよう
もし、雄真がしてくれたら私は――
今までの私から踏み出そう
冗談にするんじゃなくて、本気で―
風邪を直して学園に行くその日から―
春姫ちゃんも、杏璃ちゃんも、すももちゃんも、小雪さんもみんなのライバルとして―
意識がまどろんでくる……
(お願い……雄真ぁ///)
「……おやすみ……準……ちゅっ」
おしまい
ああ〜ごめんなさい
まとめてから貼ればよかったです
三時間もかけるなんて……
>620
楽しい三時間でしたよ。
>620
超乙!
624 :
名無しさん@初回限定:2006/04/13(木) 07:55:11 ID:nzUrkcuwO
多少クセはあったが、GJだ
もしらばネタとはぴねすネタの扱いの差がテラワロスww
準にゃんテラカワイス、超乙でした。
作者さんにお願い
出来れば準にゃんがキスした事を皆に暴露してヒロインズにライバル宣言するシーンを
追加でお願いします!!
かーさんの祝福込みで
>>626 ではやってみますね
ここは容量がきついので新スレのほうでやります
,ーーー-、
イ从ヘヾ ゙i
('(゚∀゚ ∩l 準にゃん!
ヽ 〈,リ
ヽヽ_)
まず見た瞬間『J女化SSか!?』と期待したが違ってがっかり・・・
だが読んでみると、それはそれで良い作品でしたな
準良いね
地味に良作でしたよ(誉め言葉