俺には7歳の妹がいる。両親は4年前に事故で亡くなった。
両親が僅かながら残してくれていた蓄えでなんとか食っている。
俺はいつも妹が帰ってくる時間になると、「職探しに行ってくる」と書置きをして
外をブラついていた。もちろんウソだ。
家でただ悶々としているのを見られたくなかったのだ。
本屋で立ち読みしたり、パーツ屋を冷やかしたり、
ハードオフで中古のエロゲを漁ったり・・・そんな風にダラダラと過ごしていた。
「お兄ちゃん、今日はどうだった?いいお仕事見つかった・・・?」
家に帰ればこう聞かれるのは目に見えている。
もう、この世から消えてしまいたいと何度思ったことか。
だけど一人残された妹はどうなる・・・両親には身寄りがなく、親戚はいない。
施設に入るのだろうか・・と思った所で
施設の方がまだマシじゃないか、と苦笑した。
すっかり人気のなくなった公園のベンチで、すでに使えなくなった時計代わりの
ケータイの画面を見た。もうすぐ20時か・・・。
妹は22時ごろには床に就くので、それまで外で時間を潰しているのだ。
寂しがっているだろうか。いや、だらしのない兄の顔を見ずにすんで
せいせいしているかもな。
俺は一体いつまでこんなことを続けるのか・・・。
アパートの前に着いた・・・部屋の電気は点いていない。
ホッとしつつ、俺は起こさないよう静かに鍵を開けた。
台所にはいびつな形のお握りが3つ、置いてあった。
「お兄ちゃん、おかえりなさい。こんなのしか作れなくてごめんね。おやすみなさい。」
と書かれたメモ帳が添えられていた。
妹はすやすやと寝息を立てて眠っている。
妹が小さな手でこさえてくれたお握りを頬張りながら、俺は決意した。
「(無職・・・(・A・)イクナイ)」
暗闇に慣れてきた目で、俺はずっと妹の寝顔を眺めていた・・・