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,べV //
ネリーみたいなクールな女には / 〃  ̄ ヾ; / ./
sage進行がぴったりよね〜 ! i ミ(ノハソ / /./
!ik(i|゚ ヮ゚ハ<///
リ⊂}!廿i つベ/
く/Цレ'
し'ノ
" タイムアクセラレイト
´∴ # __ ゜ヾ´ ″´∴
「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
__くi イノノハ))≡―=',((( )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
, ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒) _/ / ̄ =―≡― _
´∴'≡く / ∧ | y'⌒ ⌒ ヽ イノノハ))( ≡―=‥、,、
″″ \/〈(((ノ从| / | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
" ||( ゚ヮ゚ー' | |ヾノ //
=―≡ ̄`:, | , | ( ̄=―≒‥,,
" ,゛"=―≡―=',/ ノ )∵`=≡―=
″( ゚ヮ゚∴/´/ / | | , ゚ヮ゚ノ'ゞ ∵゛、 ゜ ¨
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,゛"=―≡―='( | ( |=―≡―∞=@ , 、∴
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・ / / | | | ヽ/⌒〉
.... . ............ . .(_ 「 _) (_〈_/....... . .. . .... . . .
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「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
先制点呼決めます!
お題「最も心に残るフレーズ」
「行くも地獄、行かぬも地獄。どうせ倒れるのなら前のめり」 8スレ537 ヽ(`Д´)ノ<1>
SALVAGE ホントのラスト「――で、強くなってどうする、坊主?」 <2>
>>1さん、スレ建て本当に乙です。
4スレ669...は前スレで言ったので、3スレ562「ネリー後ろ!」のAA!!ムチャクチャワロタ。
7 :
6:04/12/22 23:58:31 ID:XTFwdVyI
さっそくやっちまった…<3>で。
8 :
1:04/12/22 23:59:00 ID:en9vw5Ob
おぉ、すまん。まとめるのに手間取ってた(汗
ということで、以下、点呼応答よろ〜。
お題は
>>4の通り。
>>4-6を例に。
なお、書ける人はどんな風にorどうして心に残ったか書くとベター。
ただし、纏まらない人は省略可ということで。
「だ が そ れ が い い 。」 1スレ1 ヽ(`Д´)ノ<4>
正確にはその前の文章全て込みでなんだけど、
その積み上げの後にこれが来てヤラレますた。
5スレ604「『黒ネコファー子』
黒ネコ飼いたくなる〜そんで「ファー」って名前付けて〜もふもふしてえ〜〜<5>
いっぱいあってわかんねーよ!
ということで<6>。ゴメンナサイ。
>1さん乙でした。
1スレ512より
「ヘリオンたんは、テラーの台詞からして、天性の隠れS属性を有すると確信する。」
それまでの仔犬っぽいという考えから、一気に造形が深まってしまった一言でした。<6>
紅蓮様、ぼちぼち落ち着いてきたと思うのでそろそろおながいしますです。
雨の音が五月蝿かった。
ざぁざぁ。ざぁざぁ。ざぁざぁ。ざぁざぁ。
止まらない音が耳朶を叩く。他の音は何一つとして聞こえない。聞こえない。
ざぁざぁ。ざぁざぁ。
それとも、これは、自分の中を流れる血液の音なのだろうか。
外に流れれば消え行く命の水。
人間の血は水より濃くても、妖精の血は水より儚い。
だから、今も。
足元では、命が儚く消え去ろうとしている。
おかしな方向に折れ曲がった右脚。
肘から骨の飛び出した左腕。
ばっさりと切り開かれた横腹。
百合の花のように折れた首。
それを。
ひどく──酷く、五月蝿い雨の中、ただ見下ろし、
そしてようやく自分の口が、ああ、と、耳に聞こえる音を発した。
無感情に。
曇天の下、一様に同じ格好をした兵士達が規則正しく整列し立っていた。
彼らの視線の先には、同じように規則正しく並ぶ石柱が並んでいる。
元は雑草の茂っていたであろう地面は掘り返されたばかりで、土の茶色をあらわにしている。
そこは墓地だった。
ラキオス城からやや離れた敷地。殉職した兵士達の共同墓地である。
昨日、先日の帝国の襲撃により死した王と王妃、その葬儀と、レスティーナ新女王の即位式が終わった。
他にも雑事は多くあったが、その前にレスティーナの希望で、兵士達の葬儀が行われることとなった。
死んだ人間は決して少なくはなかった。その日城内の警備に当たっていた者の約半数が命を落とした。
ここに集っているのは、その日非番だった者と、無事だった者の中でも比較的軽傷の者達である。
「王のため、祖国のために死した英雄達の魂に、マナの祝福のあらんことを──」
先頭に立つレスティーナが、厳かに告げた。
その後ろで、兵士達がその剣を、槍を、天に向かって真っ直ぐに掲げる。
皆が黙祷を捧げる後ろで、啜り泣く声が聞こえた。死んだ兵士達の家族だ。
親しい誰かが死ぬというのは、誰にとっても哀しいことだ。それは、人間もスピリットも変わらない。
──自分はどうだったろうか、とレスティーナは思った。
彼女もまた、一度に両親を喪った。
葬儀の場での自分は毅然とした態度を取っていた。
新女王という立場もあったし、正直、哀しいという感情は湧いてこなかった。
今は──少しだけ、胸が苦しかった。
野心に満ちた考えも顔も嫌悪の対象でしかなかったし、憎悪すらしたこともあったが──
(それでも、私にとっては父なのですね)
ルーグウ・ダイ・ラキオス。
どんな人間であっても、彼はレスティーナにとってはただ一人の父だったのだ。
ふと思う。父は私を愛してくれたのだろうか。
他の家庭の赤子と同じように、その手に取り、一度でも抱き締めてくれたことがあっただろうか。
……二人ともいない今では、確認のしようもないのだけれど。
「──剣を下ろせ」
静かな声に応え、兵士達の剣が下ろされる。
この墓のどこかに、自分が死ねと告げた兵士達も眠っている。彼らは、満足の行く生を歩めただろうか。
前を見る。灰色の石が並ぶ様は、どうにも寂しそうだった。
自分らしくない。レスティーナは今の自分を断じた。いつもの、毅然とした私はどこにいった?
こんな感傷的な気分になったのは、今にも泣き出しそうなこの空のせいだと思うことにした。
その数日後に齎された、マロリガン共和国からの宣戦布告──
それが通達されてからラキオス国内はにわかに緊迫した。
現在、ラキオス、マロリガン、サーギオスの戦力は拮抗している。不利でも有利でもない状況だ。
だが、マロリガンはあの厳しい砂漠地帯の中で長きに渡り歴史を刻んできた強大な国家である。
間違いなく一筋縄でいく相手ではない。
そういう思いから、ラキオススピリット隊もいつにも増して訓練を積んでいた。
「──打ち込みが甘い!」
ガン、とセリアの剣がヘリオンの剣を弾いた。ひぅ、と小動物じみた反応でヘリオンは身を竦める。
「目を閉じない! ちゃんと前見る! この程度で腰が引けてたらこの先やっていけないわよ!」
「せ、セリアさん顔が怖いですよぅ〜」
ひー、と今にも泣きそうな顔で、危なっかしいながらも何とかセリアの激しい打ち込みを凌いでいく。
今この国のスピリット隊には、隊長の悠人と副隊長のエスペリアが不在だ。
女王からの密命を受け、一ヶ月前にラキオスを出た。
主戦力である悠人がいない今、この前のように奇襲されたら冗談にもならない。
皆を纏めるリーダー的存在であるセリアが、必要以上に気合を入れるのも当然と言えた。
「ていうか入れ過ぎー!」
情けない叫びを上げながら、ずざー、とヘリオンの身体が地面を滑っていく。
今のセリアは、そこらのレッドスピリットよりも周囲の温度を上げている状態だった。
「次! ──って、シアーだけ?」
視線を向けた先には、ちょっとおどおどとしている幼いブルースピリットの片割れがいなかった。
「あ……ネリーちゃんは、オルファと……」
「サボリね」
途端にセリアが渋い顔になる。ふぅ、と髪をかき上げ、
「まったく……ちょっと探してくるわ。アセリア、シアーの相手してあげて」
「ん」
アセリアが頷く動きで応じた。
「ファーレーン、次はヘリオンをお願いね」
「分かりました。──っと」
ひゅん、と顔の真横を掠めていった槍の穂先を目で追いながら、ファーレーンは答える。
相手は彼女の妹分、ニムントールである。セリアはそれを見ながら、屋外訓練所を出る。
その途中、入れ替わりに入ってきたヒミカとハリオンを見つけた。
「ああヒミカ。ネリーとオルファ見かけなかった?」
「私は見てないけど……ハリオンは?」
「うーん、分かりませんね〜。ああ〜、でも、ナナルゥが外にいるから知ってるかもしれないですよ〜」
「そう。じゃ行ってくるわ」
言い残してセリアは立ち去る。二人は中に入っていった。
中では丁度、ファーレーンとニムントールの戦いに決着が着こうとしているところだった。
「ふっ!」
鋭い呼気と共にニムントールが〈曙光〉を突き出す。
ファーレーンは剣を逆手に持ち、もう片方の手をその峰に添えるようにして前に突き出す。
穂先が剣の鍔元近くに触れるその瞬間。ファーレーンは刀の向きをそっと傾けた。
傾けられたその方向に、刃の反りに沿って槍の軌道が変えられる。
受け止めるのではなく逸らす。激しさのない、優しい動き。それは優雅ささえ感じさせるものだった。
ニムントールが体制を崩す。そこに、順手に握り直し峰を返したファーレーンの〈月光〉が打ち込まれる。
だがニムントールもそう簡単には終わらない。傾く身体に逆らわず、〈曙光〉を地面に突き立てた。
地を蹴り身体を浮かせ、横一閃に流れる〈月光〉を飛び越える。
槍の長さに対し小柄な彼女ならではの動きだ。そのまま足の裏で姉の顔に蹴りを放つ。
が、ファーレーンはそれを首の動きだけで難なくかわし、既に〈月光〉を離した手でその脚を絡め取った。
そのまま捻るように引き落とす。ニムントールの手から槍がすっぽ抜け、地面に叩き伏せられる。
結果は、ファーレーンの勝利に終わった。
「ニムの動きは、ちょっと直線的過ぎるわ」
声色に微笑を乗せて、神剣を拾ったファーレーンは手を差し伸べる。ニムントールはそれを握った。
「それと次の戦場は砂漠だから、今みたいな避け方はできない。槍が刺さらないもの。分かった?」
うん、と素直に頷いてから、
「……お姉ちゃん、もう一回」
「でも私はヘリオンの相手しなきゃいけないし……困ったわね」
そう言ってファーレーンは周囲を見回す。ヘリオンにあてがう相手を探しているのだろう。
ニムントールにあてがう相手を、ではない辺り、妹離れできていないとヒミカは思う。
アセリアとシアーは現在訓練中なので、ファーレーンの視線は自分達に向くことになるのだが──
「あ〜、それならわたしがやります〜」
と、それを感じてかハリオンが名乗りを上げた。
「じゃあ、お願いしていいかしら」
「はい〜」
ぱたぱたとハリオンがヘリオンの前に立つ。よろしくお願いします〜、とハリオンが頭を下げる。
(ハリオンさんならセリアさんみたいに怖くないから、大丈夫だよね……?)
内心ほっとしつつ、こちらこそ、とヘリオンは返した。
が、
「じゃあ行きますよ〜」
ずん、という音がして地面が僅かにへこんだ。
あ、と間抜けな声で反応するヘリオンの眼前には、いつも見ている笑顔がある。
本能が警告する。ヘリオンは素直にそれに従い、受身も考えないで後ろに跳んだ。
後退するヘリオンの腹を追うように、片手で握る〈大樹〉の石突が迫ってきた。だが長さには限界がある。
途中で止まったそれを見てほっとしたのも束の間。
「それ〜」
くるん、とバトンを回すように〈大樹〉が回転。穂先が、油断していたヘリオンの頭上から降ってきた。
必死に後退しながら剣を振るうヘリオン。だが狐が兎を追うように降りた穂先がヘリオンを狙う。
完全に、機先を制したハリオンが主導権を握っていた。
右に左に、ヘリオンが必死に剣を振るって、繰り出されるハリオンの槍の悉くを凌いでいる。
だが──ヒミカは見抜いている。ハリオンは本気ではない。
ヘリオンがぎりぎり付いて来れる速度で攻め立てているのだ。そうしながら、少しずつ速度を上げていく。
そうすることでヘリオンも気付かぬうちにその速さについていくようになる。
元々、ヘリオンの潜在能力は高い。気弱な性格はやや不安だが、磨けば光る玉なのだ。
右耳を狙う鋭刃を首の動きだけでかわし、左肩に迫る切っ先を立てた神剣で凌いでみせる。
既に、槍は当初の三割以上速度を増している。
右膝、左脇腹、鳩尾、左脛、右胸、右肩、眉間、左腿、右脇、左鎖骨、下腹部、頚動脈──
各部位を正確無比に狙う穂先の群れを、ヘリオンはそれぞれ回避し、打ち払い、受け流していく。
やや余裕の出てきたヘリオンの動きに、ふふ、とハリオンは笑った。
(いい感じです〜……)
後輩が成長していく姿を見るのは、純粋に嬉しい。
傍からそれを見ているヒミカも、ヘリオンの動きには感嘆せざるを得ない。将来、彼女は強くなるだろう。
──もっとも、そうなる前に、この戦が終わってくれることを望むのだけれど。
思わず、溜息をついた。
「──どうかした?」
とそこで、唐突に声がかけられた。横を振り向くと、いつの間にかセリアが立っていた。
視線を下にずらすと──そこには、首根っこを掴まれてぐったりしているネリーの姿。
「そっちこそ、それ、どうしたの?」
セリアは疲れ切った溜息を吐きながら答えた。ふと見ると、鮮やかな青い髪には、所々木の葉がくっついている。
「林の中で追いかけっこ、よ。まったく、お陰で全身青臭くなっちゃったわ」
「……気絶するまでやってたの?」
「垂れ下がってた木の枝に頭ぶつけたのよ。もう訓練が必要ないくらい走り回る羽目になったわ」
「良かったじゃない」
「良くないわよ」
セリアは不機嫌そうな顔をする。思わず、ヒミカは苦笑した。
「そう言えばオルファは?」
「逃げ切られた。……というより、途中でエスペリアに会ってね。そっちについて行っちゃったわ」
「エスペリア? 帰ってきたんだ。じゃあ、ユート様も」
「帰ってきてるみたいね。今は、お客様を連れてレスティーナ陛下のところに行ってるみたい」
ふうん、とヒミカは頷いた。そうか、帰ってきたんだ。
「……嬉しそうね?」
頬が緩んでるわよ、とセリアが指摘した。
ヒミカは思わず言葉に詰まる。そんなに、私は嬉しそうに見えるのだろうか。
「……それは……嬉しいけど。一ヶ月ぶりに帰ってきたんだし。
やっぱりユート様がいないと、戦力的に不安が残ったままだったから」
ふぅん、と今度はセリアが気がなさそうに答えた。何故か、ヒミカはいたたまれない気持ちになる。
「ハリオン、そろそろ代わってくれない?」
それを誤魔化すように、ヒミカは呼びかけた。
「はいはい〜。それじゃ、そろそろ決着つけちゃいますね〜」
その言葉を皮切りに──槍が一気に疾くなる。迫る猛威に、思わずヘリオンがひっと息を呑んだ。
突き出された穂先が戻り切らぬうちに次が迫る──そんな錯覚さえ抱かせるほどの速度。
一撃、二撃、三撃目までヘリオンは受け、しかし掬い上げるような四撃目で、〈失望〉を弾き飛ばされた。
ヘリオンが得物を喪う。完全に無防備になった、その姿に、
「──動かないでくださいね〜」
ハリオンが笑みを深める。穏やかで優しい、いつも通りの彼女の笑みが──今は、恐怖でしかない。
ボッ、と空気が破裂した。ヘリオンの両ツインテールと顔の隙間を、左右ほぼ同時に何かが突き抜ける。
遅れてやってきた風が、ヘリオンのツインテールをばたばたと激しく棚引かせた。
残像すら認識できない、迅雷の如く繰り出された槍は、既にハリオンの手元に引かれている。
トスッ、と少し離れた場所でヘリオンの〈失望〉が地面に刺さった。
ヘリオンは、剣を弾き飛ばされた時の格好のまま動かない。
「あらあらあら〜……」
まじまじとハリオンがヘリオンをためつすがめつ眺め回すが……完全に凍り付いている。
「ちょっとやりすぎちゃいましたかね〜?」
首を傾げて、ハリオンは困ったように笑った。
「もう少し手加減してあげなさいよ、ハリオン。完全に凍ってるわ」
溜息に混じりに言いながら、〈赤光〉を携えたヒミカは二人の方向へ歩いていく。
「まぁいいわ。次は私ね。ヘリオンとやろうと思ったけど、しばらくは無理か」
「はいはい〜、受けて立ちますよ〜」
二人は軽い遣り取りをしながら、もう少し開けた場所へと歩いていく。
セリアは、ヒミカのその背中を見送っていた。
(『戦力的に不安が』、ねぇ)
それだけではあるまい、という確信が、セリアの中にはあった。
その言葉もまた本心ではあるのだろうが──ヒミカは悠人に惹かれている。それは間違いないだろう。
セリアにそれが分かるのは──セリアもまた、悠人に惹かれつつあるからだ。
恋と呼べるほど強い感情ではないにせよ、漠然とした好意が自分の胸には確かにある。
最初は、そんなもの欠片もなかったのだが……不思議と、彼には人を引き付ける力がある。
多分、ヒミカもまたそうなのだと思う。
(もっとも、本人は認めないかもしれないけれど)
そういう確信もまたあった。自分が悠人を好いていることを、きっとヒミカは認めない。
気恥ずかしさとか、そういったものとは別の部分で──彼女が、戦士であろうとすればするほどに。
それにしても、とセリアは思う。悠人とヒミカは良く似ている。
無論外見ではない。その在り方──他人の為に、自分の命を顧みないという点で、だ。
前に、ヒミカがぼやいていた。ユート様は今にも傷つき倒れてしまいそうで見ていられない、と。
だがそれを聞いた時、それはヒミカも同じことだとセリアは思った。
ヒミカは率先して敵の中に切り込んでいく。それだって、己の命を危険に晒していることに違いはない。
悠人は、仲間を死なせたくないがために。ヒミカは、後続の仲間が有利に戦えるように。
けれどヒミカのそれは、突き詰めれば仲間が傷つかないような戦場を作り出すということだ。
それはとりもなおさず、自分の命の危険を代償として支払うことで成り立つ。
それなのに彼女は悠人にばかり言うのだ。命を粗末にするな、と。
自分自身の在り方に気付かないほど、彼女は馬鹿ではない。ヒミカはそれを知った上で言っている。
──自分以外は死なせない。けど仲間のためなら、自分は死んでもいい。
ヒミカは、きっとそう思っている。
けれど、
(私だって、死なせたくないわよ)
セリアは思う。悠人もヒミカも、どちらも大切な仲間なのだ。死んで欲しくない。
だが──あの二人はどちらも自分の在り方を変えはすまい。その確信も、あった。
そしてそれは、ひどく、二人の昏い結末を予感させた。
賢者ヨーティア・リカリオンが第二詰所を訪れたのはそれから二日後のことだ。
勿論、ボサボサ頭に眼鏡、だらけたシャツといういつも通りの出で立ちである。
稀代の天才ということで少なからず期待していたヒミカは思わずぽかんとしてしまった。
セリアなどは見た瞬間思い切り眉を顰めていた。
「やー皆よろしくな。私はヨーティア・リカリオン、大天才だっ!」
だっ、の部分に思い切り力を込めてヨーティアは言う。セリアの眉根が更に皺の本数を増やした。
「おー、大天才! かっこい〜」「いい〜」
一部には人気だった。
「ふふふ見たかボンクラユート。お前も少しはこの子達を見習え。そして敬え」
「喜んでるのネリーとシアーだけだろ。第一詰所でも同じことやってウケたのオルファだけだし」
付き添いとしてイオと共に駆り出された悠人はすげなく答えた。
「そんなことはないぞ。なぁ、お嬢ちゃん?」
ヨーティアはニムントールへと視線を向けた。しかし当のニムントールはファーレーンの後ろに隠れ、
「胡散臭い」
セリアに負けないくらい眉根に皺を寄せてそう言い放ち、
「こらニム! そんなこと言っちゃ駄目でしょう! 人を見た目で判断しちゃいけません!」
ファーレーンが止めを刺した。ナイスコンビネーション、と悠人は心の中で親指を立てた。
「……まーそうだけどな。こんな格好してればそりゃ天才っぽくはないよな」
珍しくヨーティアがいじけている。大天才も、子供の率直な感想には勝てないらしい。
「そんなわけだからボンクラ、お前から私がどんなに素晴らしいかフォローしろ」
気のせいだったようだ。
「あー……ニム、こんなんでも一応多分ちゃんと天才だからさ。あんまりそういうこと言っちゃ駄目だ」
「フォローになってないっ! それに『一応』とか『多分』とか不確定要素に満ちた言葉を使うな!」
「いだだだだだだ」
ぎりぎりとヨーティアの指が悠人の耳を捻り上げる。分かった分かったと悠人は必死に振りほどいた。
「言い直せばいいんだろ言い直せば。まったく……」
喉の調子を確かめるように、あー、と発音し、
「ニム、見たまんまだから気にしなくていいぞ」
ガゴッ
今度は無言で脛に踵が食い込んだ。
「まぁ賢者だ何だって呼ばれてるけどな、ボンクラの言う通りナリもこんなだし。
私のことを呼ぶときは名前で呼んでくれればいいから。よろしく頼むよ」
無言の叫びを上げながらそこらじゅうをのた打ち回る悠人を無視し、笑顔でヨーティアはそう言った。
第二詰所の面々の自己紹介が終わったところで、よし、とヨーティアは頷いた。
「それじゃあ、そうだな。セリアとハリオンと、それとヒミカとファーレーン、ちょっといいか」
「何でしょう」
ファーレーンが問う。
「なぁに、そんな大した用じゃないよ。ちょっと調べたいことがあるだけさ」
口元に笑みを浮かべて言う。
「信用ならないなぁ」
ようやく脛の痛みから復活した悠人が、目尻に涙を浮かべたまま言った。
「別に妙なことしようってわけじゃないさ。それとも何か、私がこの子らを裸にひん剥くとでも思ったか?」
「そんっ──」
脳裏に、四人の裸身が一瞬滑り込んだ。
「──なことはないぞ。〈再生〉に誓ってありえない」
「今の微妙な間は何ですか」
眼を細め、じろりと悠人を睨みながら、セリアが詰る。
「まぁ、ユートさまも男の子ですからね〜」
うふふふふと笑うのはハリオン。ヒミカとファーレーンは、顔を赤らめてそっぽを向いていた。
助けを求めるように他の面々を見るが、
「「ユートさまのえっち〜」」
ネリーとシアーは愉しそうにユニゾンし、ニムからは睨まれ、ヘリオンも赤い顔をして顔を背けていた。
ナナルゥは相変わらずの無表情だったが……それが今は逆に怖い。
「弁解の余地はないようですね」
心なしか愉しそうに見える笑みを浮かべながら、最後の頼り、イオも悠人を遠ざけた。
(俺か!? 俺が一方的に悪いのか!?)
ううう、と悠人は頭を抱えてうなだれた。
ヨーティアに通されたのは、彼女専用の研究室だった。
「あーその辺に適当にかけといてくれ」
「その辺って……」
どの辺だと言うのか。本と書類とその他諸々でごちゃごちゃになった部屋には、座れる場所などありはしない。
唯一ハリオンが椅子を見つけて、本と書類の絶妙な隙間に置き、ちゃっかり座ってはいたが。
その他の三人は立ったままである。ヨーティアは奥の部屋に引っ込んでしまった。
「よーしこんなもんでいいだろ。おーい、一人ずつ来てくれー」
奥からヨーティアの声がかかる。四人は一度だけ顔を見合わせ、すぐさまセリアが立ち上がった。
他の三人は手持ち無沙汰になる。ファーレーンは瞑想を始め、ハリオンは手近な本を手に取って読み始めた。
もっとも、内容が分かっているのかいないのかは分からないが。
ヒミカもすることがないので、辛うじて内容が理解できそうな本を手に取った。この国の歴史書である。
五分くらいして、セリアが出てきた。次は私が、と入れ替わりにファーレーンが入っていく。
「何してたの?」
ヒミカの問いに、セリアは答えた。
「そんな大層なことでもないわよ。神剣の調子とかマナ放出量とかそういうの測られただけ。
ラキオスのスピリットが、どれくらいのものなのか調べたかったみたいね。あと神剣のことも」
「神剣?」
「そう。大天才の頭脳を以てしても、永遠神剣のことは完全には解明できてない、って言ってたわね」
それはそうだろう、とヒミカは思った。人間には、永遠神剣は扱えない。
もっともスピリットにしても、先天的に『理解』しているだけで、『解明』しているとは言い難いのだが。
立ち去るセリアを見送って、何気なく、ヒミカは自分の剣を見た。
ヒミカの神剣〈赤光〉は、ヒミカにとっては頼れるパートナーだった。
戦いを強制しないわけではない。しかしこの神剣の意志は人というよりは動物的なものだった。
語りかけて、言葉が返ってくるわけではないが、漠然とその意志は分かる。
戦いに身を置くヒミカにとって、戦闘においていつも応えてくれる〈赤光〉は頼もしかった。
それが一体『何』であるのか──生まれた時から側にありながら、誰もそれを知らない。
永遠神剣が何であるのかも、自分達がどこから来たのかも。
それを不安に思ったことは、ないけれど。自分の立ち位置くらいちゃんと把握しているつもりだ。
「ヒミカ〜?」
はっと顔を上げた。間近にハリオンが立っている。
「ヒミカの番ですよ〜。わたしももう終わっちゃいましたし〜」
「ああ……分かったわ」
考え事をしているうちに時間が経ってしまったらしい。ファーレーンの姿も既にない。
ハリオンを送り出して、ヒミカはヨーティアの待つ部屋へと入った。
「失礼します」
「おー、ちょっと待ってくれ。今纏めてるから」
イオの操作する無骨な計器類とにらめっこしながら、ヨーティアはせわしなく紙に何か書き込んでいた。
十秒ほどで手を止め、ガシガシと頭をかいた。
「ん〜、これでよし。ああそれじゃ、あんた、ヒミカだっけ? 神剣持ってそこに立ってくれ」
とヨーティアが指差すのは、表面に複雑な幾何学模様の描かれた台座だった。
言われるままに、ヒミカはそこに立つ。
「よし、それじゃあ神剣に力を通して。いつも訓練でやってるみたいに、マナを安定させてみてくれ」
「はい」
頷き、眼を閉じて神剣に意識を集中させていく。
神剣を通して投影されるイメージは、闇の中に浮かぶ炎だ。ゆらゆらと揺れる、強く、しかし不規則な力。
それを常に同じ程度の炎に安定させていく。風のない夜の中で灯る炎。留まる赤。
揺らぐべき炎を、揺らがぬ意志の統制下に据えるということ。
ピン、と張り詰める糸のように自分の意識を制御する。その状態をしばらく保ち──
「はい良ーし。もう楽にしていいぞー」
ふっ、とその炎を吹き消した。
眼を開けると、やはり紙に何か書き込んでいるヨーティアの姿があった。
イオは既に計器類を片付け始めている。もう終わりということだろう。
「はーん、やっぱりラキオスのスピリット隊は優秀だな。安定してるし出力デカいし。
それに何と言っても、神剣の意志に引っ張られてないのが素晴らしい」
ヨーティアはにやりと笑いながら言った。
「そうでもありません。幼いスピリット達は、安定しているとは言い難いです」
ヒミカはそう言ったが、ヨーティアは軽く答えた。
「そこはそれ年齢的なもんだろう。ガキはいつだって奔放で自由で不安定なもんさ。それで普通だよ。
寧ろ注目すべきは神剣に飲まれてないってとこだな。……ユートのお陰か?」
どきりとした。会って間もないのに、そこまで見抜いたのだろうか。
「その反応じゃ正解ってところだな」
にやりと笑う。
「天才を甘く見ないでくれよ、嬢ちゃん。……まぁそうでなくとも見てりゃ分かるんだけどな。
あんただって気付いてるだろう。あのボンクラ、この上ないお人好しだってさ」
「……はい」
最早周知の事実と言ってもいい。誰かを護ろうとすることに一生懸命で、そして、
「そして、何でもかんでも自分で背負おうとする人間だ。甘えることが苦手なんだなぁ、要は」
こりゃあ年上の魅力で癒してやらないとなぁイオ。ヨーティアの言葉を、しかしイオは意図的に無視した。
しばし反応を伺っていたヨーティアだったが、それがないことを知ると、今度はヒミカに矛先を向けた。
「あんたらから見て、ボンクラ……いや、隊長はどんな人間だ?」
そう問うてきた。
「……大体は、今仰っていたことと同じです」
何となく神剣に視線を落としながら、ヒミカは答えた。
「ですが、更に言わせて貰うなら──いつも見ていて不安な戦い方ばかりしています。
私達に怪我をさせまいといつも先頭に立って戦っています。……敵を殺すのは、今だって辛いはずなのに。
なのに前に立って戦って、傷ついて、斃れそうで……そんなのは、見ていて、辛い」
だから自分が護りたいのだ、と心の中だけで呟いた。
「はーん……」
ヨーティアはそれを聞いて、何故か愉しげに笑んでいた。
「何か?」
「いやな、ボンクラ愛されてるなぁって思ってさ、あんたに」
「…………ッ」
愛されて、って、そんなことは。
「違うのか?」
一目で意地悪と分かる笑顔でヨーティアが問う。
「違──」うのだろうか。
ヒミカは、一度深く息を吸い、吐いた。そして、答える。
「……違わないかもしれませんが、恋愛感情のそれでは、ありません」
「ほう。あくまで親愛なる隊長殿、である、と?」
「──そうです」
そう口にした時、どすりと重りが自分の中に落ちてきた気がした。
でも実際にそう思うのだ。
恋愛感情などというものはヒミカには分からなかったし──これから分かるつもりもない。
恋など、戦う上では余計なものだから。護るために戦う自分がそんなものを持つことは許されない。
悠人のことは隊長として、仲間として尊敬しているし、それが好意じみたものに変わるのも理解できる。
だがそれは悠人に恋愛感情を抱くこととイコールにはならないのだ。
敬愛と愛情は違う。そしてヒミカは自分の抱くそれが敬愛だと判じている。──そうでなくてはならない。
──そうでなくては、私は私の目指した私で在り得ない。戦士であることを望んだのなら。
戦士として生きると決めた時点で、個人の幸せも、何もかも捨てたのだから。
「……頑なだねぇ、どうも」
ガリガリと後ろ頭を描きながらヨーティアが渋い顔をした。
「あんたもあのボンクラも、もちっと楽に生きてもいいんじゃないかと思うがね」
言って、はぁ、と息を吐く。
「まぁそこは自分の問題だからどうも言えないんだけどな、結局は。……もう帰っていいよ」
俯いて黙ってしまったヒミカを気遣ってだろう。ヨーティアは敢えて突き放すように言った。
ヒミカは立ち上がり、失礼します、と告げて部屋を出た。
ヒミカの去った部屋で、イオはよろしいのですか、と問うた。
「何がだい?」
「ヒミカ様が、です。やや不安定なように見えますが。──色々と」
イオは、その全てを見晴るかすような赤い瞳で、ヨーティアを見た。
「いーんだよアレで。あんな風にしちゃあいるがな、結局のところ悠人を好きなことに変わりはないさ。
それが本物になるか誤魔化したままで終わるかは、二人次第ってところだけどねぇ。
まぁ、どちらにせよ悪い結果にはなるまいよ」
言って、ヨーティアは書き付けていた書類を放り投げた。それを上手くイオがキャッチする。
「しかしこの国のスピリットは大したもんだな。ちゃんとそれぞれ自分ってものを持ってる。
そうさせたのがあのボンクラだってんなら……成程、慕われるのも当然、か」
ぎぃ、と椅子を軋ませて、ヨーティアは天井を見上げた。
「レスティーナ殿も言ってたな。ユートはなくてはならない人材だ、と。
確かに、国を引っ張っていく勇者が人とスピリットを区別しないとなればその影響は大きいか。だが──」
もう一度椅子を軋ませて、ヨーティアはイオを見た。
「あいつは自分で色々背負っちまおうとする性格みたいだけどさ。
私らも、あいつに色々と背負わせすぎじゃないかね?」
イオは答えなかった。
──そして、マロリガン共和国との戦争が開始された。
ラキオススピリット隊は順調に進軍、スレギトまで到達したものの、マナ障壁の前には撤退するしかなかった。
その後、悠人達はヨーティアと共にマナ障壁発生施設まで潜入することに成功したが、
しかし止めれば爆発、という厄介な仕掛けを施されたそれは、如何に賢者と言えど易々とは解除できず──
結果として現在、悠人達はランサを防衛ラインとしての防戦が余儀なくされている。
急ピッチで解除方法の模索が行われているが、十日が経った現在でもまだその報告はない。
途中、砂漠で倒れていたウルカを見つけ捕虜としたが、実際の扱いは客分そのものだった。
常に前線で戦ってきたウルカからは、帝国に関する有益な情報を聞き出すことはできなかったが、
佳織の無事を確認できただけでも悠人にとっては僥倖と言えた。
無論、重鎮達からの反発はあったが、そこはそれレスティーナの手腕が物を言った。
現在彼女はラキオスのスピリットの館に居候する身である。
そして悠人は──兎に角疲弊していた。
作戦会議と前線の防衛で毎日ラキオスとランサを往復する日々が続いている。
エスペリアなどは少しくらいなら代わると言っているが、しかし悠人はそれを頑なに受け入れなかった。
その理由は、察するに余りある。
マロリガンの擁する二人のエトランジェ──
〈因果〉の光陰と〈空虚〉の今日子は、悠人のもといた世界では彼の親友だったからだ。
ヒミカには、悠人がそうして多忙に身を置くのは、それを忘れたいからではないのか──そう思えた。
親友が敵に回る、というのはヒミカには想像もつかない。
だから今の悠人の心境を察することも理解することも出来ない。
出来ないけれど──放っておけばそのうち倒れてしまいそうなのは確かだった。
(やっぱり、休むよう言うべきかしら)
聞き入れるかどうかは別として、とヒミカはミトンを両手に嵌めながら思った。
火傷しないように気をつけながら、そっと丸く背の低い金属の筒を取り出した。
その仲には、見事なキツネ色のスポンジが膨らんでいる。少し冷ましてから、スポンジを取り出した。
指で軽く押すと適度な弾力を伝えてくれる。上出来、とヒミカは笑みを深めた。
通常はランサの街から少し離れた、砂漠方面へと構えられた砦での防衛任務があるのだが、今は非番だった。
ランサの砦の内側に立てられた臨時詰所は、ラキオスのものと遜色ない設備が置かれている。
なのでヒミカは、暇な時間を利用してケーキを作ることにしたのだ。
ヒミカはハリオンを始め皆が一目置くほど、ケーキ作りが得意だった。
あまりその腕を振るうことはないが、たまには、任務で疲れて帰ってきた仲間に振舞うのも悪くない。
……本当なら、こんなことせずに自主訓練しているのが常だったが、どうもそんな気になれなかった。
原因は何だろう、と考えると、何故か浮かんでくるのは悠人の顔だった。
頭を振るって浮かんだ顔を払う。どうしてそこで彼が出てくる。
必要以上に疲れていく悠人が気になるのは確かだったが、それは強い理由にはならないはずだ。
意識しているのだろうか、と思うが、それを自ら否定する。そんなことはない。
だがそう否定する時点で意識しているのだということに、ヒミカはついぞ気付かない。
それよりも、とヒミカは思考を切り替える。今はケーキ作りと、そして現在の戦況のことを考えるべきだ。
今、ラキオスが置かれている状況は良いとは言えなかった。
こちらはマナ障壁のせいで進撃できないが、それを制御できる相手は攻め放題だ。
しかしだからと言ってこれ以上後ろに下がってしまえば、このランサは落とされる。
障壁はマナの少ない砂漠地帯でしか使えないとはいえ、これ以上進まれては更に攻める余地がなくなる。
そしてまた、ランサはマロリガンとラキオスを繋ぐ境界だ。
ここがマロリガンのものとなった場合、相手側に侵攻の足がかりを与えることになる。
進めもしない、退けもしない。今ヒミカ達が置かれているのは、そんな狭苦しい状況だった。
そして退けない防衛戦というのは、否が応にも兵力を疲弊させる。精神的・物理的に余裕がないからだ。
対し、マロリガン側は気が楽だろう。攻められる恐れはなく、攻めて負けそうになれば退けばいい。
その余裕と、そしてまた更にこちらを疲弊させるためか、マロリガンは連日、攻撃を仕掛けてくる。
しかも相手は、マロリガン共和国の精鋭である稲妻部隊である。
神剣に呑まれた者は一人もおらず、そして一人ひとりがまた強い。
そして自分の意識をちゃんと保っているということは──自分の命を惜しむということでもある。
故に攻め込む立場にありながらも、無理はしない。
負傷者は速やかに退いて回復し、動けるものが入れ替わって前に立つ。
そして戦闘時間が長引くと撤退する。ここ最近はずっとそんな戦いばかりだ。
だから、ヒミカ達はただの一人でさえ、稲妻部隊のスピリットを殺せていない。
当たり前にスピリットが死ぬ戦場においては、ある意味それは異常な事態とも言えた。
もっとも、悠人が参入してからそれはここに至るまで一人も欠けていない自分達も同じではあるが……
隊長の有能さ、皆をまとめ引っ張っていく力が兵の生存率に繋がると言うのなら、
(──あちらの指揮官も相当のもの、か)
そしておそらくその指揮官が、前に砂漠で姿を見せたエトランジェ・〈因果〉のコウイン。
神剣に呑まれているらしい今日子の方もそれはそれで脅威だが、ヒミカは本能的に光陰を『強い』と感じた。
態度こそ飄々としているようだが、その実、瞳の奥で鈍く光るものがある。
そして何より──迷っていなかった。かつての親友を前にして、殺すとさえ宣言した。
或いはそれは感情を殺しているだけかもしれないが、殺している時点で、その意志の強固さが伺える。
そんな人間に率いられた部隊が、強くならないはずがない。
そんな戦士達と、自分達は何とか拮抗している。否、善戦と言っていいだろう。
数量的に劣っており、そして余裕のない戦いでありながらも、今まで耐えてきたのだから。
だが──それは耐えているだけであって、決して勝てているわけではない。
自分達は波濤に削られる岩のようなものだ。ヒミカは思う。
最初は高くても、繰り返し波が打ちつける度に削られていき、最後には波間に消えてしまうような。
事実、最初の頃に比べ、一回の戦闘で出る負傷者の数が増えてきている。
エスペリア達グリーンスピリットのお陰で、次の戦闘にまで傷を残すことはない。
だが傷は回復しても、肉体的な疲れは完全に癒されるわけではないのだ。自然、疲労は蓄積する。
精神的にもそろそろ限界が近いだろう。自分などは兎も角、精神の幼いオルファ達のことは不安だった。
長くは持つまい。ヒミカは現状をそう認識していた。
早いところヨーティアに改善策を見出して欲しいものだが、こればかりは焦っても仕方ない。
踏ん張るしかないか、と溜息混じりに思った。
とそうこうしている内に、ケーキが完成した。
無意識のうちに作ってしまったが、ちゃんと出来ている。上に載った切ったネネの実が美味しそうだ。
上出来、と自賛しながら一人頷いたところで──悠人がリビングに入ってきた。
ふぅ、と無意識の溜息をつきながら、悠人はリビングに足を踏み入れた。
使い慣れたはずの、腰に下げた〈求め〉すら重く感じる。鏡を見れば、ひどく疲れた顔が映ることだろう。
つい今も、ラキオスでの作戦会議に立会い、エーテルジャンプで戻ってきたところだった。
エーテルジャンプするたびに身体がだるくなる気がする。
エーテルジャンプは使用者のマナを別の場所で再構成する技術だが、マナが不足している土地ではそれも不
完全なものになるんじゃないだろうか、と益体もないことを言ってみた。
無論ヨーティアの(性格は兎も角)技術力を信用していないわけではないので、冗談なのだが。
そんなことを考えたくなるくらい疲れていたユートは、エスペリアにお茶でも入れてもらおうと思ったのだが、
「……そっか、エスペリアはまだラキオスだっけ」
雑事があって少し遅れると言っていた。その程度も覚えていない自分が、いい加減不安になってきた。
さて、ではどうしよう。肝心のエスペリアがいないとなると、自分でお茶を入れるしかないが。
まぁそれもいい。前に淹れた自分のオリジナルブレンドは、佳織に好評を博した。
再会した時の為に、もっと美味しいお茶を淹れられるようになっておくのもいいだろう。
そう思いつつ台所へ足を向けると、
「──ユート様?」
丁度出てきたヒミカと遭遇した。
「ヒミカ? 何やってるんだそんなとこで」
きょとんとして問うと、途端にヒミカは素早い動きで台所への入り口を塞いだ。──何故か赤い顔で。
そして何やら誤魔化すようなぎこちない笑みを浮かべて、言った。
「いやその、なんでもありません、よ?」
「……いや、何やってるんだ?」
微妙に異なるニュアンスを込めて悠人はもう一度問うた。あからさまに様子がおかしい。
首を伸ばして見ようとするとそっちの方向をブロックされた。
何か隠しているのは分かるがそれが何なのかは分からない。
台所で見られてまずいものというと……失敗した料理とかぐらいしか思い当たらないのだが。
(それはそれで興味があるなぁ)
そう思った。それに、隠されると余計見たくなるのが男のサガである。所謂チラリズムという奴だ。
それは違うか、と脳内で自己完結しつつ、悠人は左右に動いて。ヒミカもその動きについてくる。
どうあってもここから先には通さないつもりらしい。
いつしか二人とも、互いの間合いを計りながらじりじりと足の裏だけで左右に動き始めた。
悠人は元の世界でのバスケットの授業を思い出した。何となく、状況が似ている。
となれば、と悠人は右半身に力を込めそちらに抜ける素振りを見せた。ヒミカもそちらに注意を向ける。
予想通りの動き。悠人は右に込めた力を抜き、一瞬で左足を踏み出した。
「…………ッ!」
フェイントを喰らったヒミカはたたらを踏む。隙を突いて、悠人は台所の入り口の縁に手をかけた。
そのまま身体を引き寄せるようにして、期待と共に中を見る。
そこには、見事にデコレーションされたケーキが鎮座していた。
「おぉ、美味そうだな」
率直な感想を口にした。ケーキは、そのまま店に出しても良さそうなくらいに見える。
「これ、ヒミカが作ったのか?」
訊くと、手を前で組んだヒミカは、赤い顔ではいと答えた。
「へぇ、ヒミカケーキ作るの上手なんだな。意外だ」
感心して悠人は言う。当のヒミカは更に顔を赤くして俯いてしまった。
「……やっぱり、似合いません、よね」
普段の威勢は何処へやら、すっかりしおらしくなってヒミカは言う。悠人は慌ててフォローした。
「ああいやそんなことはないぞうん。やっぱり女の子だもんな、お菓子作りとか得意なのはいいと思う」
女の子、という言葉にヒミカの心は少しだけ重くなる。
「得意、というわけでもありません。戦いの合間に、手慰みに覚えたことですから……」
「そうか? 自慢していいくらいだとだと思うけど。にしても、美味しそうだなぁ」
そう思っていると、不意に悠人の腹がぐぅ、となった。
思わず二人して顔を見合わせ、そして笑い合った。
「お食べになられますか?」
「ああ、頼む。できればお茶もつけてくれ」
承りました、とヒミカは頷いて、台所に入った。
ケーキを見られたのは恥ずかしいし、女の子扱いされたことに対してしこりは残るが──
それでも、自分の作ったものを食べてくれる人間がいるというのは嬉しいものだ。
悠人は椅子に座り、ケーキを切り分けるヒミカの後姿をぼんやりと眺めた。
ここにいる間、ずっとヒミカも悠人も戦闘服だ。襲撃の際その都度着替えている余裕などない。
ケーキサーバーが見つからないのか、ヒミカが身を屈める。
戦闘服の生地は薄いわけではないが、身体にフィットするように出来ているので、自然ラインが浮き彫りになる。
思わず悠人はそれに眼を奪われかけるが────その瞬間に、奇妙な予感があった。
これは来るな、と。
──ぎぃぃぃぃぃぃぃぃ……!!
石の壁を割れた爪で掻き毟るかのような不協和音が、音ではなく痛みとして脳髄を滅多刺しにする。
マナを奪え、と言うことすらなく、〈求め〉は強制を課してくる。無論、目の前のスピリットに対してだ。
何度も味わっているとは言え、慣れることのない痛みがこの身を苛む。
「が、ぁ」
背中を曲げ声を殺して、背筋を駆け上ってくる悪寒と飢餓感を必死に押さえ込む。
テーブルに突っ伏すようにしながら、ガリガリとその表面を引っ掻いた。
いつにも増して酷い痛みが、身体中を駆け巡る。それに耐えながら、収まるまでヒミカが来ないよう祈った。
「──ユート様っ!?」
だが間に合わなかったようだ。或いは気付かれたのか。
ヒミカが、驚愕と不安を綯い交ぜにした表情を浮かべてこちらに駆け寄ろうとする。
「近づくなッ!」
精一杯それだけを叫んだ。びくりとヒミカがその場に立ち竦む。伸ばしかけた手が所在無げに下ろされた。
手の届く場所にくれば、何をしてしまうか分からない。来るな、と思う一度言って、身体に力を入れた。
腹、減ってるのは分かるけどな、と思いつつ、悠人は〈求め〉を握り、振り上げ、
「頼むからもう少し黙ってろバカ剣ッ!」
振り下ろす。がごん、と音を立てて、〈求め〉の切っ先が床に食い込んだ。
干渉がやむ。それに何とか安堵しつつ、悠人は〈求め〉を引き抜いた。
「ユート様、大丈夫ですか!?」
悠人が顔を上げたのを確認して、今度こそヒミカが駆け寄ってくる。大丈夫だ、と悠人は答えた。
「今のは──神剣の干渉ですか」
「ああ……ここ砂漠だし、まともに戦いらしい戦いもしてないから、こいつも腹減ってるんだろうな……」
『…………』
そのことに関しては、悠人は少し〈求め〉に対して申し訳なく思った。腹が減れば誰だって辛いものだ。
「お身体のほうは──」
「大丈夫だよ。一度収まれば後は楽なんだ。だから、」
大丈夫、と安心させるために立ち上がろうとして──失敗した。
膝が折れ、がくんと視界が一気に下がった。ユート様、とヒミカが呼びかけながらその身体を抱き留める。
「ああ、すまない」
抱き締められるような形でヒミカに身を預けたまま、はぁ、一息ついた。自嘲気味にはは、と笑って、
「あんまり気付いてなかったけど、何だか俺相当疲れてるみたいだ……」
「毎日あんなに頑張っていては当然です。少しお休みになったらいかがですか?」
そう言うと、何故か悠人は無言になった。否定を意味する沈黙だ。
だからヒミカは、別のことを訊いた。
「……ご友人のことが、お気にかかりますか」
「……ああ」
僅かな沈黙の後悠人は答えた。悠人の頭はヒミカの肩に乗っていて、その表情は窺い知れない。
ただ、身体が強張るのは分かった。
「……どうしてこんなことになっちゃったんだろうなぁ」
吐息のように悠人は言った。ヒミカは答えない。どうしてだろうな、と悠人はもう一度呟いた。
しばしの沈黙の後、悠人の身体を押すように離しながらヒミカは言う。
「神剣のほうは大丈夫ですか?」
「あ、ああ。もう干渉はないと思う」
話題の転換に戸惑いながらも、悠人は答えた。〈求め〉は沈黙している。
干渉は厄介だが、腹が減ってるのは分かる。悪いな、ととりあえず心の中で謝っておいた。
「ユート様、もしかしてとは思いますが、これまでにも──」
「ああ、何度もあったよ。その割には慣れないし、正直言うと結構辛い」
そんな弱音を吐いてしまったのは、ひどく疲れてしまっていたからだろうか。悠人は思った。
だから次に出た言葉も、悠人が気付き、喉に制止を書ける前に滑り出してしまった。
「毎回毎回五月蝿くてな。──ヒミカを奪え、って」
「私を……ですか?」
あ、と間抜けな声を出すが、もう遅い。
奪う、というその言葉の意味を既に、しかも正確に咀嚼し終えたヒミカが、赤い顔でこちらを見ていた。
「いや、別に俺自身がそうじゃなくってだな。前に一回あってそれからずっとコイツが」
『始めに劣情を抱いたのは汝であろう』
ぼそりと呟くような〈求め〉の言葉が悠人を硬直させる。何でこんな時に限って喋りやがるかコノヤロウ。
念のために言っておくが〈求め〉が欲したのはヒミカだけではない。アセリアやエスペリア達もだ。
だがそれでも、一番欲した回数が多いのは確かにヒミカだったりするのだが──
それを言ったところでどうにもならないし、逆にマズいことになりそうなので悠人は沈黙するしかない。
ヒミカも赤い顔のまま黙っているので、当然二人の間に会話はなくなる。
そして──悠人は今更気付く。
ヒミカと自分の距離が、近い。
さっきまで抱き締められるような格好だったのだから当然と言えば当然だが、それにしても近すぎた。
吐息が触れ合う程の至近距離で、二人は見詰め合うような格好になっていた。
音のない声で、あ、と喉が動く。
間近で見るヒミカの顔は、ひどく綺麗な気がした。
砂に塗れた赤い髪と、少年のような凛とした顔。鮮やかな紅の瞳が微かに潤んで見えるのは、気のせいだろうか。
開いた窓から吹き抜けてくる乾いた風が、赤い髪を揺らした。
お互いの息の音がはっきりと聞こえた。
そしてどうしてか──それをもっと近くで聞きたいと思った。
これだけ近いのにもっと近くで。耳朶を通してではなく──肌を通して。
どちらからともなく、距離が短くなっていく。ヒミカが瞼を半分だけ閉じた。
悠人の頭の中は真っ白だったが、それでも勝手に身体が動いてく。
心臓の音が五月蝿かった。下ろされていたヒミカの手が、悠人の服の裾を握り締めている。
距離がなくなる。近づいていく。あと3センチ、2センチ、1セン
「ユート様ッ!!」
がたたん!と悠人とヒミカは瞬時に立ち上がった。リビングの入り口に息を切らしたセリアが立っている。
「ななななななななな何だセリア何もしてない何もしてないぞ何もしてないからななぁヒミカ」
「ええそうです何でもないです私とユート様は何もしてませんしてないです」
ガクガクと明らかに挙動不審な素振りで二人は捲し立てる。つまりそれほど混乱していた。
「別にいちゃつこうが乳繰り合おうが喧嘩しようが知ったこっちゃないですから少しは落ち着きなさい!」
セリアが一喝し、仕切りなおすように大きく息を吸い込んで、叫んだ。
「──敵襲ですユート様! 先刻、マロリガン共和国稲妻部隊の存在が確認されました!」
途端、悠人とヒミカの顔が引き締まる。
各々神剣を握り締めリビングを出て、すぐに駆け出した。
先導するようにセリアが前を走る。広くない臨時詰所を駆け抜け、乾いた風の吹き付ける外に出る。
「セリア、数は!?」
「確認された限りでは三十以上です!」
多いな、と悠人は呟いた。これまでの襲撃では多くとも二十を超えたことはなかった。
「総力戦、ということでしょうか」
「ああ……いい加減、向こうも痺れを切らしたのかもな」
ヒミカの言葉に頷きつつ、悠人は次の問いを発する。
「他の皆は」
「全員既に砦に集結しています。ナナルゥ、オルファは砦の上に配置しました。
エスペリアも先程戻ってきてすぐ向かいました。あとは私達だけです」
「分かった。急ごう」
はい、とセリアが頷き、三人は速度を速める。ヒミカは悠人の後ろを走っていた。
その大きな背中を眺めつつ──先程の距離を思い出す。
足を緩めることはしないながらも、ヒミカは指を口元に持って行き──指先で一度だけ、唇をなぞった。
ヘリヤの道の途中、砂漠の入り口、ランサを防衛する砦の前に、ラキオススピリット隊は集結していた。
ここがランサを護る第一防衛ラインであり、そして最終防衛ラインである。退くことはできない。
皆、沈黙して砂漠の彼方を見つめていた。既に神剣は敵スピリットの気配を感じ取っている。
空は晴れていた。青空の下、百メートル先の砂丘の向こうから、
「──来ました!」
エスペリアが叫ぶ。
砂丘の向こうからスピリット達が姿を現す。青と黒の影が空を舞い、緑と赤が砂丘に並んだ。
「……多い、ですね」
静かに、それらを眺めるファーレーンが言う。立ち並ぶ影は、四十を下らない。
「途中で伏兵と合流したのでしょうか」
「だろうな。他にもいるかもしれないから、気をつけとかないと」
ヒミカと言葉を交わし合いながらも、視線は砂丘から離さない。
スピリットの軍隊の先頭に──グリーンスピリットが一人、進み出た。
明らかに他とは一段以上上の力が伝わってくる。間違いなく、彼女がその軍を率いているのだろう。
そのグリーンスピリットは己の槍を天へと掲げ、
──その切っ先を、悠人達へと振り下ろした。
54 :
支援:04/12/23 01:02:09 ID:N1oLFa3+
もし、アク禁巻き添えなどでしたら避難所で報告なさるとよろしいかと。
支援&点呼<7>
1スレ448(寸劇@第二詰所)より、
(そう、考えて。すべてはそこから始まるんだから…)
ヒミカの優しさを感じました。
避難所に連絡ありました。
>雑魚スピスレに投下中の者ですがバーボンハウス行きになりますた(つД`)
>連続投稿しすぎたせいですかね……他の住民の皆さんに申し訳ないです。
>大人しく規制解除を待ちます……
とのことです。
では、少しだけ失礼して。大丈夫かとは思いますが一応即死回避に短編ひとつ。いきます。
どさりと地面に落ちた腕。
一瞬、自分のものと気付かなかった。
遅れて感じる腕の軽さ、認識すれば耐え難い痛み。
肘から先を刈り取られた腕が、止め処なく血を吐き出す。
皮肉な話。心を凍てつかせたと思っても、体に流れる血は温かい。
傷口を素早く凍らせ止血する。
自嘲の笑みが自然に浮かぶ。
なぜに自分はこんなにも浅ましく生にしがみ付く?
戦いの道具扱いされる事への抵抗か。私もひとりの命ある存在だという主義主張か。
道具としての生き方しか知らないというのに。
眼前には表情の無い黒スピリット。
神剣を構え、私を見る。獲物を狙う本能の目で。
黒い翼が広がり、死を告げる。
誰の記憶にも残らぬまま、私は消える。
誰にも知られず始まった命が、誰にも知られぬままに逝く。
嗚呼、これほど私に似合う終わりも無いだろう。
足掻き彷徨い、していたは足踏み。
ふと、私を呼ぶ声がした。
微かに残った卑しき心は、最後まで私を苦しめる。
希望という名の幻聴。
どこにでもある道具の私は、いてもいなくても変わらない。
透明な私は誰にも見えない。
その、筈だった。
吹き込んできたは紅の風。
思わず目を奪われた。
命取り合う戦場で、我忘れ呆と見惚れた。
赤スピリットの神剣攻撃上位型。受ける機会も幾度かあった。
しかし、今まで見てきたどれとも異質。
火焔纏いし三連撃(トリプルスイング)。
炎の軌跡を描きつつ、流れるように舞うように。
力強きは命の脈動。
黒い翼が炎に焼かれ霧と化す。
私の方へ、彼女は振り向く。
怒りの視線が心に刺さる。
一拍遅れて矛盾に気付く。
道具の私の心に刺さる?
呆然とする私の前で、彼女は手を振り上げた。
神剣を持たない方の手を。
頬が乾いた音で鳴る。
痛かった。斬られた腕より遥かにずっと。
「心配、したんだ」
彼女は私を抱きめる。
強く、優しく、慈しむように。
「心配、したんだよ」
混乱した。
無い筈の心が千々に乱れた。
自分でも見えてなかった私自身を、彼女は見つけてくれていた。
ここにいるよと、微笑んでくれた。
「ああ……」
舌が空回る。
道具としての言葉しか発してこなかった私は、自分の言葉を持っていなかった。
「あ、ああ……ああっ……!! うああああっ……!!」
もどかしくて、嬉しくて、何か言いたくて、それでも言えなくて。
涙だけぼろぼろ零れる。
「うあああああああああああーーーーーっ!!」
感情の爆発。
ただ叫ぶ事しか出来ないままで、彼女の胸の温かみを感じた。
叫びこそが、私の感情の全てだった。
道具である事に拘っていたは自分自身。
彷徨い続ける私の心の迷宮に、横から穴が穿たれた。
光差し込む別世界。こんな世界があったのか。
いや、そもそも私が目を逸らしていただけなのだろう。
手はけして届くまいと最初から諦めて。
差し伸べられた彼女の手を、私は取った。
あれから色んな事があった。
私に命を説いた彼女は、自分が皆の為に犠牲になりかねない行動ばかりするんだから世話が無い。
考えが浅いというか、目の前の事に精一杯。
立場は逆転、今では私が彼女の抑え役。
そんな私の心知らずに、彼女はいつも無茶ばかり。
でも。それでも。
そんな貴女が、私は好きです。
支援
ニム猫かわいいよニム猫>前スレ炬燵ネタ
>61-64さん
後からじわりと来ます、最後の一言が染みこむように。
すらりとこの言葉がでるのにはどれほどの暖かさで溶かせば良いのか。
容量稼ぎに炬燵もの小品、失礼します。
さて、ここに一連の炬燵騒動の始まりを、世界の裏側で眺めやる人物が居ました。
孤軍奮闘の日曜大工に精を出している悠人を見ているのはみんなご存知、時深おねえさんです。
「ああ、悠人さんたらあんな物を拵えようとするなんて。
きっとホームシックになってしまったんでしょうね、
色々と故郷の物が恋しくなる季節ですから」
ところが、『求め』を使ってテーブルの足を切り始める悠人を見て、ぽかんと口を開いてしまいまいました。
「永遠神剣であんな事をするなんて。悠人さんが『求め』の悪口を言う資格なんかなくなっちゃいますよ。
あらあら、どうしたんですかそんなに慌てて。
まさか、切った足を後でどうするか考えてなかったんじゃないんですか?
はぁ〜、本当に『求め』にいつも言っている言葉を返されてしまうなんて……
ん? どうやら何か思いついたみたいですね」
黙々と作業する悠人の動作一つ一つに息を飲み、手に汗握り自らに実況中継を繰り返します。
どうにかこうにか悠人が炬燵を完成させた時には、彼以上に疲れ果てた顔を見せていました。
「ふぅ、やっと形になりましたか。それにしても……」
そう言う時深おねえさんの脳裏に、数年前の悠人の姿が浮かびます。大体、学校の技術工作の時間でしょうか。
「あの頃から、デザインセンスはあまり変わりませんねぇ」
くすくすと、懐かしむような笑みを浮かべて再び完成品に目を向けます。
それでも、何処と無く味があるように見えるのは想いによる贔屓目になのかもしれません。
もそもそと自作の炬燵に潜り込む悠人の顔を見て、時深おねえさんに、ポン、と妙案が浮かびました。
「ふふ、それなら。もしも、私が予定通りにあちらへ行くことになった時には、
懐かしいものを作って差し上げましょう。きっと悠人さんも喜んでくれるはずです」
その時の悠人の顔を思い浮かべて、時深おねえさんの顔にはさらに深く笑みが刻まれました。
目の前に浮かんでいる光景を眺め続けながら、時深おねえさんは炬燵の上のみかんを手に取り、
三個目になるそれを、ゆっくりとむき始めました、とさ。
一人だと、テレビ(?)に突っ込みをいれてしまう時深さん。ということで。
それが開戦の合図となる。
四十のスピリット達は鬨の声を張り上げながら百メートルの距離を疾走してくる。
「撃てぇっ!!」
悠人も負けじと声を張り上げ、それに砦の物見に立つオルファとナナルゥが応じた。
「「フレイムシャワー!!」」
二人の声が重なり、同心円を描く二重の魔法陣が伸ばした手の先に展開する。
轟、と唸りを上げながら、限界まで引き絞った弓弦のように、二つの炎の塊が天空に躍り出た。
双子の炎は高く高く蒼穹へと上昇し──
風船が割れるように弾け、数秒の間を以て砂の大地へ、そこにいる妖精達へと降り注ぐ。
その名に違わず夕立のように落ちてくる灼熱の群れに、敵の赤い妖精が腕を振り上げる動きで応じた。
「──アークフレア!」
大気が破裂する音。
降り注ぐ驟雨の中心で炸裂した神剣魔法が、雨粒を次から次へと飲み込み誘爆させていく。
震えるような、十重二十重に重奏する爆音が砂漠を揺るがす。
巻き上がる砂塵に呑まれ、妖精達の姿が見えなくなった。──だが、それも短い間だ。
砂塵を長く伸びた羽衣のように纏いながら、スピリット達が宙へと躍り出た。
>『氷の微笑、炎の微笑』の中の方
うわ、キました、心に。
夜が暗ければ暗いほど、朝日は眩しいですね。
語るべき時に内に言葉がない状態、そしてその自覚、えらいきっつい。うん。
んでも、自覚するのは大事なんだよね。未来[まえ]に進むために。
いかん。しみじみしてしまった。ごめん。
>>69 …ごめんね、『求め』。
鋸どこから借りてくればいいかわからなかったんだ…
風が吹き、砂が風下へと吹き飛ばされていく。その下を潜るように残りのスピリット達も駆けてくる。
神剣魔法の攻撃を受けてか、隊列は千々に乱れていたが、それでもその闘気は衰えない。
「来るぞ! オルファ、ナナルゥ、降りて来い!」
了解、と落ち着いた声と元気な声が重なり、二人が飛び降りてくる。
セリアが皆を奮い立たせるように叫んだ。
「アセリア、ネリー、シアーは私についてきて! 空飛んでる奴ら叩き落すわよ!」
「ん!」「了解ッ!」「りょ、了解〜」
三者三様に応える声。ばさりと、四つの青が同じ色の空へと飛翔した。
「オルファ、ナナルゥは引き続き神剣魔法による援護を! ハリオンとニムは二人を護って! 私は前に出ます!」
エスペリアが告げ一歩前へ。呼ばれた四人も応え、後ろに下がって陣を敷いた。
最後に、悠人が叫ぶ。
「俺達も正面から迎撃するぞ! ついてきてくれ!」
『はい!』
エスペリア、ファーレーン、ヘリオン、そしてヒミカが答え、敵陣へと突っ込んでいった。
十三対四十。数字の上では三倍の開きのある二部隊の激突。
エトランジェたるユートの力を以てしても埋めがたい差の中で、戦闘は開始された。
正面を突っ切る悠人達は、悠人を中心に広く扇形の陣形を取って進撃する。
目の前にいるのは主に俊敏性と連続攻撃に長けたブラックスピリット達。
およそ十人ほどが、鞘に収めた神剣の柄を握ったまま、低く滑るように向かってくる。
「うぉおおぁっ!」
激突する目前で、裂帛の声と共に悠人が〈求め〉を真横に薙ぎ払った。
マナを乗せた剣圧が黒い妖精達にぶつかり、その足を止めさせる。
そこにヒミカ達が突っ込んだ。数で勝る敵の妖精達を勢いで吹き飛ばしていく。
ファーレーンの居合が敵スピリットの胸を十字に切り裂いた。ぐらりとよろけ、斃れようとする身体。
だが──突如として、死に絶えようとしていたその身体が淡い緑の光に包まれ、傷が癒されていく。
他も同様だ。勢いに押され傷を負ったスピリット達の傷が一度に癒される。
(ハーベスト……!)
グリーンスピリットの使う、治癒の神剣魔法の名を思い浮かべながら、ファーレーンは回復し再び斬りかか
って来た目前の敵を蹴り飛ばした。
右から差し出される刃を打ち払い、これもまた蹴り飛ばした。
斬ってもまた回復される、ということを想定して、相手の殺傷よりも自分の離脱を考えてだ。
同じく敵から離れたヒミカは、敵を前にして硬直してしまっていたヘリオンの助けに入る。
場慣れしていない彼女は、斃したと思った敵に復活されて、一瞬混乱状態に陥ってしまったのだ。
「何やってんのっ!」
叱責と共に飛び膝蹴りを敵スピリットのこめかみに見舞った。一瞬にして、その敵の意識が刈り取られる。
ふらりと倒れそうになったそれを、仲間の黒スピリットが素早く掬い上げて、遠ざかった。
ナナルゥのファイアボルトによる援護射撃が行われるが、それも上手くかわしながら自陣へと退いていく。
いつもと同じか、とヒミカは歯噛みした。決して無理はしない戦い方。
「た、助かりました〜。けど、なんで回復しちゃうんだろう……」
感謝と疑問を、ヘリオンは同時に投げかける。あいつらよ、とヒミカは奥の砂丘を視線で示した。
そこには、一番最初に見た、稲妻部隊を率いるグリーンスピリットが立っている。
その周りにも数名のグリーン。直接戦いに参加せず、戦局を見極めながら傷を負った仲間を癒していく。
中でも特筆すべきはリーダーのグリーンだ。回復の量と範囲が並ではない。
これまでにも幾度となく、彼女は襲撃の際参加していた。
敵スピリットが一人も喪われていないのは、あのグリーンによるフォローが大きいとも言えるだろう。
(厳しいわね……)
心中で一人呟く。が、だからといって攻撃の手を緩めるわけにも行かない。
「行くわよ、また次が来る」
「は、はいっ」
ガギン!と鈍い音が空に響く。
セリアは神剣ごと敵のブルースピリットを叩き落した。
斃せなかったことに舌打ちする。空中では立体的な攻撃ができるが、立体的な回避もまた可能だからである。
例え重い一撃を加えても、受け止められてその勢いに乗って逃げられては、次を加えることもできない。
よって現在セリアがやっているのは、向かってくる敵を片っ端から跳ね返すように叩き落とすことだけだ。
まぁ、敵は皆自分達に向かってきてくれるので、いちいち追いかける必要がないのは楽と言えば楽だが……
ところでウイングハイロウを持っているなら、数人がセリアの足止めをしてその隙に砦を越えてしまえば
制圧し放題なのだが、そうしないのには無論訳がある。
そうやって町だけを制圧したところで、近くにまだ戦えるスピリットがいれば、すぐさま奪い返される可能
性があるからだ。
それにスピリットだけが入っても制圧したことにはならない。
スピリットが押さえた拠点に、人間の兵士が入って初めて『制圧』と見なされるのだ。
あくまで主体は人間なのだ。スピリットだけではどうにもならない。
だが──逆を言えば。
拠点を護るスピリット達を殲滅することさえできれば、後は本当に制圧し放題なのである。
なればこそ、スピリット達は正面から激突し、戦いを繰り広げるのだ。
なのでセリアは、向かってくる敵を次から次へと叩き落す羽目になる。
ダメージを与えても、後方に待機したグリーンのせいで敵は常時回復状態なのだ。
はっきり言って消耗戦である。回復魔法を使える回数にも限度があるだろうが、その前に確実に負ける。
微かな苛立ちを募らせつつあったセリアが、ふとネリーとシアーを見た。
二人は互いの背中を護るようにしながら戦っている。その戦い振りもようやく頼もしく思えてきた頃だが──
「危ない!」
セリアが叫んだ。
ネリーとシアーがそれぞれ一人ずつ相手をしていたところに、横合いからもう一人割り込んできたのだ。
不意の出来事に二人が身を硬直させる。間に合わないとは知りつつもセリアは翼を羽ばたかせようとして、
「──フレイムレーザー!」
鋭い声がそのまま光条となったかのように、赤い光がそのスピリットの肩を貫いた。
バッと視線を地表に落とすと、神剣とスフィアハイロゥ──通称『ぴぃたん』を構えたオルファが見えた。
「ありがとー!」「今度、ヨフアル奢ってあげるねー!」
敵を弾き飛ばし、ネリーとシアーが笑ってオルファに叫んだ。オルファも同じ顔で、約束だよー、と返す。
思わずセリアは笑みを浮かべた。子供子供と思っていても、ちゃんとお互いを気にかけられている。
手を焼いていた三人の成長を喜びつつ──セリアは手を地表へと向けた。
マナを集束させ、神剣魔法を放とうとしているレッドスピリットへと。
「アイスバニッシャー!」
凍結の意を乗せたマナが、展開されつつあった魔法陣を凍結させる。──だが。
「ッ、もう一人っ!?」
魔法を封じられた敵の奥で、他のレッドスピリットが魔法を構築し始めていた。
しかも──集まるマナの量が半端ではない。あれなら、悠人達を丸ごと飲み込んでまだおつりが来る。
間に合わない、と思った瞬間。
「──アイスバニッシャー!」
真横から声が響いた。
視線を振り向かせると、〈存在〉を片手に握り、もう片方を地上に向けたアセリアがいた。
セリアの視線に気付いてか、彼女のほうを向き、ん、と一度小さく頷いて見せた。
セリアは少しぽかんとして──そして口元だけで笑った。
……まったく、本当に皆、頼りになる。そう思いながら、向かってくる敵をまた打ち落とす。
一人突っ込んでいくだけだったアセリアが、ちゃんと周囲を見てくれるようになったのが素直に嬉しかった。
誰も彼も、ちゃんと成長しているということだろう。ユート様のお陰ね、と地上で戦う少年に眼を向けた。
それを眺めながら、セリアは一つのことに気付いた。
──敵が、その攻勢を弱めていた。
ざっ、と背中を合わせるように、悠人、エスペリア、ファーレーンの三人は集った。
大概の敵を吹き飛ばして、ようやく攻勢が弱まってきた気がする。それでも周囲への警戒を怠りはしない。
神剣魔法は傷は癒しても、身体と精神の疲労までは癒せない。
途中から殺傷を目的ではなく、頭部、つまりは意識そのものに衝撃を与えるような攻撃を繰り返してきたが、
それが功を奏したのだろうか。悠人は安堵の息を吐く。
「──おかしいです」
だがそれを、エスペリアの声が掻き消した。
「いくらなんでも、攻撃の手が弱まり過ぎてます。今日より数が少ない時でさえ、こんなものじゃないのに」
「そうですね。あまりにも、あっさりしすぎている」
ファーレーンが同意する。そう言えば、と悠人も思った。確かに、やけに呆気ない。
と、三人目掛けて同数のスピリットが向かってきた。
剣の応酬を繰り返しつつ、エスペリアは思考する。どうして、敵の手が弱まった?
体力が尽きたか、ただの牽制だったのか。──前者は兎も角、四十人を投入しておいて後者はありえない。
ならば、何故。疑念を抱いたまま、それでも鋭く繰り出された穂先が、正面の敵の脾腹を裂いた。
そのスピリットは苦痛に顔を歪ませ、傷を押さえながら後退した。
(──傷が癒されない?)
回復担当のグリーンがダウンしたのだろうか。まさかそんなことはないと思うが。
そこまで考えて──ぞくり、と脊髄に氷柱が刺さったかのような悪寒を覚えた。
砂丘の上の、あのグリーンを見る。既に、そこには恐ろしい量のマナが集まっていた。
そういうことか。エスペリアは理解する。そこにマナが集まることに、誰も疑問を抱かなかった。
そこに集まったマナは、全て加護と治癒に回されるものだと思っていたから。
だから今も誰も気に留めていない。
だが──さっき斬った敵の傷は、治癒しなかった。
つまり、それは。
集まったマナが、治癒に使われていないということ。
ならば──その、集束した膨大すぎる量のマナは、一体『何』に使われる?
そのことに、上空から状況の趨勢を逐次見守っていたセリアも気付いていた。その目的に。
掲げられた槍の穂先、そこを起点に集束したマナが、座標を定め、名に課せられた役目を果たさんとする。
無意識のうちにセリアは、喉が張り裂けそうな声で叫んでいた。
「みんな逃げてぇぇぇぇッ!!」
だが、もう、遅い。
「エレメンタルブラスト────────────ッ!!!」
暴風が──
吹き荒れた。
聞こえるはずの爆音すら掻き消す衝撃が、砂漠を一粒たりとも残さず余さず蹂躙する。
本能的に張ったオーラフォトンバリアの向こうで、世界が歪曲していた。
荒れ狂う大地の怒り。癒しをその真逆へと転化した破壊の嵐。
咄嗟にエスペリアとファーレーンを抱え込むように護りながらも、悠人達は大きく吹き飛ばされていった。
背中を、怒れる大地の顎が掠めていくのを感じながら、流れに逆らわずごろごろと転がっていく。
口の中に砂が入る。その感触をやけに鮮明に感じた。ざりざりした。嫌な感触だ。
転がる速度が緩んできたところで、悠人は抱えていた二人を、嵐から遠ざかる方向へ放り投げた。
そして自分は素早く立ち上がる。視界は爆発による砂嵐で殆ど奪われていた。
「パパッ!」
「エスペリア! お姉ちゃん!」
後方支援だったはずの二人の声が聞こえた。そんなところまで、飛ばされてきたのか。
「ニム、二人を回復してやってくれ!」
駆け寄ってきたニムントールに、転がったまま起き上がらない二人を見ながら叫んだ。
だが、ニムントールは怒りと不安の混じった表情で悠人を罵倒した。
「ばかっ! ユートも傷だらけなのに!」
言われて気付く。服は所々が破け、大小様々な傷口から血が溢れ出していた。
ぼう、と温かい緑光が悠人達を包み込んだ。見る間に血が止まり、傷が塞がっていく。
「さんきゅな、ニム」
笑って感謝の言葉を告げたが、ニムントールはもう一度ばかと叫んで、悠人の腹を力なく叩いた。
悠人は泣きそうな顔になったニムントールの頭に手を置き、力なく起き上がった二人へと声をかける。
「大丈夫か」
何とか、とエスペリアが答え、髪についた砂を払った。
「ユートッ!」
「皆大丈夫ッ!?」
丁度そこにアセリア達四人が降り立ってくる。空にいたせいか、それほど深刻な被害はなかったようだ。
悠人はそのことに安堵しつつも、すぐにやるべきことを思い出した。
「アセリア、エスペリア達を頼む! 俺はヒミカ達のところに行く!」
「ん、分かった!」
自分達と同じように、ヒミカやヘリオンも相当吹っ飛ばされているはずだ。様子が気になる。
「お供します!」
セリアが悠人の隣を走る。二人は、視界の利かない砂の中へと駆け出した。
「んっ……」
一瞬意識を喪っていたヘリオンは、覚醒した時、自分が誰かに抱き締められているのを知った。
次の瞬間、はっとしてヘリオンは自分を戒める腕を振り解いて起き上がり、腕の主の名を呼んだ。
「ヒミカさん!」
呼ばれた声に応じるように、ヒミカは歯を食い縛りながら、〈赤光〉を支えにして起き上がった。
「ヒミカさん! 大丈夫ですか!?」
聞くまでもないことだが、聞かずにはいられなかった。
ヘリオンを庇ったせいで、ヒミカの背中はずたずたに引き裂かれていた。
生々しい傷跡から、マナの霧が立ち上る。動くたびに激痛が走るが、それでもヒミカはしっかりと立った。
「……どのくらい吹き飛ばされた?」
まずヒミカはヘリオンに聞いた。ヘリオンが周囲を見回すと、丁度そこにハリオンとナナルゥが駆けてくる。
「ヒミカ、大丈夫ですか〜!?」
相変わらず間延びしながらも、緊迫を含んだ声に、ヒミカはただ頷きだけで答えた。
「待っててください、今、回復を……」
「それどころじゃないみたいよ……!」
敵は、待ってくれないということだ。砂煙の向こうから、気配が二つ、こちらに向かってくる。
「ハリオンとナナルゥは下がりなさい! ヘリオン、まだ戦えるわね?」
頷く少女に、上等、と答え剣を構えた。その身を淡く緑が包む。背中の痛みが、幾分和らいだ。
「全部治してる時間はないです〜。ごめんなさいね、ヒミカ」
申し訳なさそうに眉を八の字にしたハリオンに、充分よ、と笑って答えた。
キン、と頭に針を刺したような鋭い感覚。ヒミカは砂漠に向き直った。
「──来る!」
その声とほぼ同時。未だ巻き上がる砂を貫くように、青と黒のスピリットが姿を現した。
黒がヒミカへ、青がヘリオンへと肉薄する。
剣戟の音が響く。痛みに軋む全身を、それでも動かしながら、ヒミカは敵の剣を捌いてく。
(……重いっ!)
舌打ちする。乱打の勢いを持って繰り出される剣は、その一撃一撃がどれも重い。
でも、通さない。その誓いを力に変えるように、十三合目を迎えた剣の衝突をヒミカは凌ぎ切った。
続く十四合をも打ち払い、敵が体勢を崩し──その陰から、別のスピリットが姿を現す。
仲間の陰に隠れるようにして槍を突き出すグリーンスピリット。その穂先が、ヒミカの首を狙う。
首を捻る。ぶつんと筋肉の断裂する音。切っ先が、首の皮一枚を切り裂いて通り過ぎた。
今度はヒミカが僅かに体勢を崩す。その隙をついて、先のブラックはヒミカに攻撃を加えるのではなく──
その横をすり抜け、彼女の後ろへと回った。
背後にいる、ハリオンとナナルゥへと。
意識がそちらへ向いた。──まずい。
防御力に長けていても瞬発力に劣るグリーンは、ブラックの猛攻に対処しきれない。
意識の逸れたヒミカへ槍が突き入れられる。意識を戻すが、遅い。穂先が、剣を握る右腕を切り裂いた。
失策、と己を呪い、ヒミカは瞬間的にスフィアハイロウにマナを通し──爆発させた。
何の技巧もない、方向を定めないマナの爆発は、ヒミカとグリーン両方を吹き飛ばした。
ヒミカは吹き飛ばされる勢いそのままにブラックを追う。
背中の傷に加え、爆発によって負った手足の傷の痛みに耐えながら、それでも。
裂かれた右腕は動かない。剣を振れない。けど身体が動くなら充分だ。まだ間に合う。まだ──護れる。
足裏が砂を噛む。後ろに蹴っていく。既に敵はハリオンに到達している。
太刀が繰り出される。一撃、二撃。足を踏み出す。一歩、二歩。
三撃目でハリオンが顔を歪めた。その間にもヒミカは更に進む。
間に合う。私が護る。護ってみせる。
そう、護ると誓ったのだ。かつてそう誓ったのだ。もう誰も死なせないと。
──例えこの身が、マナへと還ろうと。
四度目の撃音。ハリオンの槍が跳ね上がる。胴ががら空きになる。次はない。
第五撃が繰り出される、その直前。
ヒミカが、ハリオンとブラックスピリットの間に割って入り────
ヒミカの、眼に。
大きな背中が、映し出された。
「────────────────────え?」
呟く声が自分のものだと分からなかった。
袈裟懸けに剣が落ちる。
ヒミカの前に立ちはだかった悠人の身体が、右肩から左脇腹へとばっさりと切り裂かれた。
「が、」
耐えるような、獣じみた声。──それでも悠人は倒れない。
近すぎて振れない剣の代わりに振り上げた拳は、ブラックスピリットの腹へ吸い込まれ、その身体を大きくすっ飛ばした。
倒れかかる身体を、〈求め〉を地面に突き立てて支え、叫ぶ。
「撃てぇ、ナナルゥッ!」
搾り出す声に、これまで聞いたことのない、悲痛ささえ滲ませたナナルゥの声が重なった。
「──アポカリプス!」
悠人の前で赤い魔法陣が展開し──空を焦がす爆炎が、戒めの鎖を引き千切った。
砂漠に満ちる砂を吹き飛ばし、砂嵐が晴れていく。蒼天から降り注ぐ陽光が、再び地上を照らした。
晴れた砂漠の所々に、スピリットが倒れていた。だがどれもマナへ還ろうとはしない。
おそらくあの一瞬に、今も砂丘からこっちを睨みつけているグリーンが、全力で皆に加護を与えたのだろう。
「──総員、退却!」
力を使い果たしたのか、肩で息をしながらそのグリーンが叫んだ。
「動ける者は動けない者を運んで! もう一度繰り返す! 総員退却、急いで!」
ああして声を張り上げる姿は初めて見た、と悠人は場違いなことを考えた。
こちらの反撃を警戒してか、傷ついた身を引きずりながらも、それぞれ素早く退いていく。
だが悠人達の側にも、もう攻撃するだけの余力は残っていない。この場は痛み分け、ということだ。
それに悠人には、傷ついた者を更に責め立てる気も、またなかった。
最初とは逆に、スピリット達が砂丘の向こうへ消えていき、あのグリーンが最後に残った。
その彼女が、一度だけこちらを向いて頷いて見せた。
それが仲間を追い立てなかった自分への礼なのかどうかは分からなかったが、悠人はとりあえず曖昧に笑っておいた。
彼女が消えるのを見送って、悠人は振り返った。
ヒミカが立っている。傷だらけで酷い姿で、呆然とした表情をしていたが、それでも無事だった。
その後ろにはハリオンとナナルゥが。他の皆も、置いてきたセリアを先頭に、こちらに走ってきていた。
「──良かった」
護れた、と。そう呟いて、安堵と共に、遠のく意識を手放した。
89 :
紅蓮の人:04/12/23 03:22:37 ID:o5OglFDL
敵を誘い込んでMAP兵器で一掃するのは定石ですね。熱血必中。
投稿不可中トイレ行こうと思ったら倒れそうになりました。そういやまともに寝てなかった。
というわけで、ヒミカ補完ルート第三章をお送りしました。支援の方も毎回ありがとうございます。
それと今回は途中でブツ切りになってしまって本当に申し訳ありませんでした……
今回は三章のランサ防衛までを。マロリガンまでまだ侵攻してません。展開遅いです。
そして相も変わらず戦闘ばっかりです。これから先更に多くなります(ぇ
後半のランサ防衛戦は、多対多の戦闘というものを出来る限り描いてみました。
砦が立てられているのはランサから3マス進んだ所だと思ってください。
戦闘は、千人、万人単位の人間の戦争と違い、一度にスピリットが戦う数はそれほど多くはありませんが、
それだけに細やかな描写が必要かな、と思ってできるだけ頑張ってみましたが、どうでしょうか。
一応全員描写してみました。クドくなってる部分もあるかもしれませんが……
稲妻部隊がやけに強いですが、マロリガン最強を謳うぐらいなので、あれぐらいでいいかなぁ、と。
後方支援及びエレメンタルブラストのグリーンは、勿論彼女です(笑
四十人全員カバーしたり悠人達丸ごと吹っ飛ばしたり上方修正しすぎた気がしないでもないのですが……
誤字脱字ハリオンマジック等ありましたら指摘よろしくお願いします。
聖夜と正月は実家に帰ります。今の部屋は寒いです。ヒートフロア欲しい……
>紅蓮の人氏
まずは、割り込みになってしまって申し訳ないです。
こんな時間まで待機しての再開、本当にお疲れさまです。
マナよ、紅蓮の人の部屋を変えよ 炎の優しさに染まれ ヒートフロア!!
ということで、これから読んできますノシ
乙です。そしてエスペリアは頂いて行く!!<8>
ヒミカルート乙であります、戦闘シーンが実にイイ感じです!
途中の規制も何のその、こんな遅い時間にご苦労様でした。
マロリガンのグリーン・・・炬燵の所為でイメージがっイメージがぁ!
>>89 ふぃー。読み応えあったぁー。
バーボントラブルのお蔭で殊更原稿重いし。ずしっと心の手に。
戦闘も然ることながら、をとめなヒミカさん!(ゴロゴロ はっこれは…萌え?
でもやっぱり静・動両局面に於ける熱さだよな〜。
さて、冷静に返って。さすがに切り取り方というかアングル選びというか、巧いですな。
穿ってみると。ヨーティアの描き加減に精髄を見た気がします。
どうにも支離滅裂なままなような気がしますが、ご勘弁を。
<6>の人が2人いるんで番号補正します
本編「ヨーティア様にはよくしていただいております」
で、イオにすっころんだなんて物好きはきっと私だけに違いない<10>
ネリーバニッシャー覚えなさい覚えなさい、そこはあんたの出番でしょうがw
っと、それはさておき。
紅蓮の人さんトラブルにも負けず乙でございますた。
>>93氏の感想にも通じるんですが、紅蓮氏の作品を読んでると頭に絵が浮かぶんですよ。
それは挿絵ともいえるし、エロゲでいうところの一枚絵ともいえるもの。情景描写のうまさでしょうな。
…それを形にする画力はないわけですが_| ̄|○
前回の時も「ハイロゥを踏み台にするヒミカ」を描こうとして挫折した罠_| ̄|○
…「さん」と「氏」が混じってますね。どっちかに統一汁漏れ(吊
ろくに推敲してないけど勢いに任せて投下
後に数々の名作を生み出したヒミカにも苦悩の日々は存在した
名作の下には無数の駄作が積み重なって出来た物である事はあまり知られていない
そして全く筆が進まなくなってから数日が経った頃…
1.朝
寝ぼけ眼をこすりながら居間に下りると、炬燵の中から黄金の光が出てる
何かと思い布団をはぐって見ると、そこには体中からマナの霧が立ち込めてる人影が…
「%&$#@=〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
第二詰め所の清々しい朝に、甲高い悲鳴が木霊する。
悲鳴を聞きつけた仲間たちが続々と居間に集まってくる
もちろん、炬燵の中で酸欠になって死にそうな緑スピなどといった、うっかり者など存在していよ
うはずが………
2.昼前
買出しに出かけたら今日子に会った。ネタが無い事を相談してみると、ハイペリアのお話をいくつか聞かせてくれた。
一緒にヨフアルを食べてたヘリオンを光陰が口説く。
話し掛けてる途中で雷撃が光陰を直撃。だが見事に威力を半減させている。右半分だけ黒焦げになってるのにまだ生きてる。中々しぶとい奴だ
側から見ればお似合いの二人なのだが今日子の方はあまり自覚して無いらしい?
3.昼過ぎ
訓練時、ヨフアルがユートを連れてひょっこりやってきた。
ネリーとシアーは剣を投げ出してかぶりつきに行く。ニムントールは飽きれた顔でそれを見る。
ユートが一緒に食うか?と彼女を誘うと
「ホントは食べなくても良いんだけどアンタが食べて欲しそうにしてるから食べるんだからね!」
うれしい時はうなじのあたりの髪がひょこひょこ上下する事に気付いていないらしい
4.夜
机に向かって筆を走らせる。
うむ、中々順調に書けるではないか。
カリカリ……カリカリ…………………ガリッ
……気になって天井へ向かって声をかける。
「そこで何をやってるの?ナナルゥ…」
天井裏から引っ掻くような音がしたが、程なくして気配はすぅっと消えた
再度、机に向かうと…そこには紙束が置いてあった。タイトルは無い。
彼女の仕業だなと思いつつもナナルゥ本(仮)をめくってみる。
========================================
〜驚愕!?スピリット隊隊長と部下の濃密な夜の過ごし方!!〜
数々の戦果を上げる彼は妖精趣味&ょぅι゙ょ趣味!? ━━━6p
赤い妖精は情熱的!青い妖精はCool&Beauty!緑の妖精は妖艶!━━━42p
立てよ妖精趣味!ジーク・スピリット!! ━━━113p
女王様がゆく!世界一周ヨフアル食べ歩き列伝 ━━━132p
orzナンナンディスカ-
ページの半分でこれである。見た事を非常に後悔してしまった。
ゴミ箱に投げ捨てつつ、再度作業を開始する
…………………………………………………………隊長と部下の濃密な夜―
気になって全然集中できない。
やはり気になる事はとっとと処理してしまわねばなるまい
自分にそう言い聞かせながらゴミ箱から紙束を回収し、1枚…また1枚とめくり……
少し読み飛ばしてしまったか?1枚戻して…めくり…もどし…めくりめくり…もどし………
5.翌朝
「ンギュルンギュルギュッギュル!!」
オルファがまた変な生き物を拾ってきたらしい。朝食は決まりだな。徹夜したせいか思考が物騒になっている。
日の出前に一気に書き上げたが、仕上がった物は散々だった
ナナルゥ本に描いてあった、自分に似たキャラがあられもない姿で妄想煩悩全開で隊長に擦り寄る絵を見てしまっては、とても普通の思考で居られる筈が無い
とにかく、とっととこの紙を始末しなくてはならない
…ナナルゥ本はどこかに保管を…
小さ目の炎を呼び出し、赤い舌が紙を舐めていくとやがて黒い灰に全てが変わっていく。
そして最後にタイトル部分も炎に飲まれていった
タイトル『ツンデレ等』
>>89紅蓮氏
乙です!今回は大変でしたね。もう少し早くから支援出来ていれば良かったんですが...
相変わらずの描写力で安心して読めるというか、すでにゆとりさえ感じます。
ハリヘリ模擬戦やってくれたんですね。ニヤニヤしながら読みました。
何かリクエストしちゃったみたいですみませんw
ただ…どういう訳か第T部の頃のヒミカさんが一番可愛かったような気がします...
「まだまだぁっ!!紅蓮ヒミカはもっと可愛い筈だぁっ!!」
思いっきりプレッシャーかけてますが、貴方なら書けるハズ。
うーん...何と言うか...一度得意な戦闘シーンを封印するのもテかも知れません。
>>60 乙であります。熱いぜセリア!!
最後の一文がよくキいてます。
>>97 最後のは「など」と読むのか「らー」なのか、それが問題だ(違
乙カンヌヤシマヌでありんす。
>89 紅蓮の人さん
だんだんと、ヒミカが自分の想いを意識するにつれて張り詰めてしまっている、
そんな危うさが胸を打ちます。そんな彼女を、みんながそっと気に掛けている
ような空気を感じて、行く先の見えない中に少しだけ、
ヒミカを解きほぐす手がかりを見たような心地がしました。
笑顔で迫るハリオンのどアップが、アニメーション再生されてちょっとコワくなりました。
クォーリンは……敵として出てきたときのBossRank修正込みのパワーアップということでw
って、この返しはスパロボだけどちょっと違いますねぇ。
>97-99さん
おお もやして しまう なんて もったいない。
ささ そのてのなかの かみを こちらへ ……
紙と一緒に燃やされてきます∧‖∧
うわ、やっぱり出遅れた……
>>1さん乙です<11>
>>57さんと被ってますが譲れません。
1スレ448「(そう、考えて。すべてはそこから始まるんだから…)」
初めて赤スピに戦闘力以外のものを見た&考え始めた瞬間でした。
>>61-64さん
ああ、これがセリアなんだよなぁ……と唸らされてしまいました。
上手く言えませんが、よくぞたった4レスでここまで纏めて下さいましたと。
自分の中でまだ言葉に還元出来なかったものを見せて頂きました。G.J.です!
>>69さん
炬燵持ってるなら教えてくれればいいのに……
苦労している悠人を見てるだけってやっぱり時深嬢は時深嬢なんだなぁw
>>92さん
_| ̄|○ ホントスミマセン…………
>>97-99さん
そうか、ニム嬉しいとうなじの髪動くのか……
女王様がゆく!世界一周ヨフアル食べ歩き列伝が個人的に凄く読みたいですw
>>紅蓮さん
睡眠不足や規制の中、本当にお疲れ様でした。
相変わらずのリアルな戦闘描写、お見事です。特にエレメンタルブラスト。
木の葉の様に巻き上げられ吹き飛ばされる悠人達の絵が見えてきそうです。が。
「女の子、という言葉にヒミカの心は少しだけ重くなる。」
今回、個人的に一番印象に残ったのはここでした。
普通言われて悪い気持ちはしないはずのこの描写がとても自然に入ってくるのは
今までのヒミカの心情を凄く丁寧に解り易く掘り下げられてきた結果だと思います。
紅蓮さんのヒミカに対する「想い」がとても良く伝わりました。
ところでクォーリンが退いたのは仲間を庇った悠人に敬意を表したのでしょうかなどと逆推測したり。
願わくば、セリアの予感が当たりませんようにと祈りつつ続き楽しみにしています。
いっぱいあって選べません<12>
>>紅蓮さん、乙
ヒミカ好きにはたまらんですよ。
「女の子として見られたくないと意識する」ことが
「実は女の子として見て欲しい」という感情の発露、という
シチュは個人的に、女性が可愛く見えるベストシーンなんで……
この先も頑張ってくだせぇ。
>>97 うわはははは(w
>一気に書き上げたが、仕上がった物は散々だった
身につまされすぎる…… ○| ̄|_
散々でも投下しちゃてるけどなぁヽ(゚∀゚)ノアヒャヒャヒャヒャ
>>92 発想を逆転させるんだ!(板違
アレ(炬燵)がカコイイ振りするんではなく、コレがああなる、
スレ時間軸ではなく、ファンタズマゴリア時間軸で考えるんだ!
…(;´Д`)ハァハァ
好評なようでよかったです。
>>90 お気になさらないでください(笑 ヒートフロアありがとうございます。
>>95 読んでいて情景が浮かぶ、というのは、文を書く上で自分の目指す目標の一つなので、
実際に浮かべることができたのであれば嬉しいです。
>>97 嬉しいと動くって、コタツ話といい、ニムは猫ですか。
ああでも嬉しいと動くのは犬の尻尾ですよね……両方兼ね備えてる?
>>100 実を言えば萌えとか書けません!(何
可愛くは……どうでしょうか。自分の中でのヒミカは、甘い飴細工ではなく硝子のナイフなので。
>>103 張り詰めてます。もうぱんぱんに。一杯一杯です。……作者が(お前か
>>104 「女の子、という〜」辺りは、自分が一番不安に思ったところでもあります。違和感なく挟めるか、という意味で。
その辺りはちゃんと伝えられたようで安心しました。
>>105 より近く言うならば、「女を捨てた」はずなのに「女の子として見られるのが嬉しい」という感じなのですが(ぁ
自ら禁じたものを求めてしまう、という感じでしょうか。
次で全体の折り返しになるかと思います。
炬燵猫からこんなの連想
エスペリア≒オリエンタルショートヘアー(ふにゃー)
ハリオン≒ヒマラヤン(みゃ〜お)
ニムントール≒ロシアンブルー(……ぷいっ)
クォーリン≒ジャパニーズボブティル(みゅーみゅー)
ついでに犬系
ウルカ≒シェパード(がるるる)
ヘリオン≒ウエストハイランドホワイトテリア(きゅんきゅん)
ファーレーン≒シェットランドシープドッグ(ばうばう)
そういえば炬燵シリーズ、黒出てこなかったなぁ……やっぱり庭駆け回ってたのだろうかw
犬だからといって必ずしも駆け回るとは限らないわけでw
ウルカとファーレーンは動・静を弁えてる番犬できるタイプ、
ヘリオンは場・空気に飲まれるタイプ、
ネリーは落ち着きがなく絶対に番犬は務まらないタイプ、
シアーは泥棒が来ても気にもとめずに寝てるタイプw
かなぁ、とか。
ネリーは庭駆け回る。そうに決まってるw
ネ〜リ〜は喜びに〜わか〜け回り、ニ〜ムはこたつで丸く〜なる〜♪
なんか、以前あった野良スピ思い出しますな
「失礼します。ユートさま、よろしいでしょうか?」
軽快なノックの音とともにヒミカの声がする。
「―――入れ。」
ギシ、と椅子を軋ませ、悠人が立ち上がった。
「実は...また、お願いがあるのですが。」
入室したヒミカが切り出した。
その真紅の瞳は、まっすぐに長身のエトランジェに向けられている。
バスローブ一丁のいでたち。胸元から覗いている厚い胸板。
...だが、トレードマークのハリガネ頭は、どういう訳か短く刈り込まれている。
ヨーティアの部屋掃除の折にちょろまかしてきた煙草「トヤーア」の紫煙をくゆらせながら、
悠人はじろりと短髪の少女に視線を投げた。
ヒミカに頼られるのは悪い気はしない。...しないのだが、
はっきり言ってこれまでの、彼女の「お願い事」は一筋縄では行かないものが多く、
悠人としても出来れば回避したいところであった。
...しかし、今日の悠人は一味違っていた。
「用件を―――聞こうか。」
「はい。単刀直入に申し上げます。...ハリオンを、助けてやって欲しいのです。」
「―――ハリオンを?」
悠人の脳裏に美しいボディーラインのグリーンスピリットの姿がよぎる。
いつもマイペースを崩さず笑顔を周囲に振りまいている少女。
ヒミカのよき相棒でもあるそのスピリットは、しかし、助けを求めるような事は何もないように思われた。
「ご存知の通り、彼女は私の長年の友です。
苦しみや悲しみを他人に見せた事は、私が記憶する限り、ありません。
―――しかし、ハリオンもまた、神剣に呑み込まれたスピリットなのです。」
「ほう。」悠人は思わず感嘆した。悠人の知っている限り、
神剣に呑まれたスピリットは、押しなべて感情を失くし、
人間の命令に忠実に従う、―――つまり、自我を失ったロボットのような存在であった。
少なくとも、ハリオンというスピリットは、そのイメージからかけ離れていたのだ。
しかし、思い当たるフシが無いわけでもない。
ハリオンのハイロゥは、信じられない事に、
悠人がラキオスに召喚されるよりも以前から、黒く染まっていたのである。
悠人は黙って赤い少女の言葉の続きを待った。
「これは私の勝手な推測かも知れませんが...ハリオンも
心のどこかで悲鳴を上げているように思うのです。ユートさまの
エトランジェとしての力を持ってすれば...あるいは救い出せるのではないか、と。」
ヒミカが凛々しい相貌に苦渋を滲ませた。
この心優しきレッドスピリットには、人一倍他者の悲哀が伝わるのかも知れない、悠人はそう思った
「しかし...余り気乗りがしないな。」
神剣に呑み込まれた者を引き上げるのには困難と危険が伴う。
いや、下手を打てば自らが引きずり込まれる可能性もある。
「お願いします、ユートさま!もし、聞き届けて頂けるのならば、
このヒミカ、どのような形ででもユートさまのご恩に報いる覚悟です!」
決死の表情でヒミカが敬礼する。
「どのような形ででも...か。―――まあ、いいだろう、引き受けよう。」
厳しい表情を崩さぬまま悠人は答えた。
「あ、有難うございます!」
ヒミカはそう言って、いつもは神剣「赤光」を握っている右手を差し出した。
「...............」
しかし、悠人は差し出されたその色白の手を、無言で見つめるのみであった。
「あ―――これは失礼いたしました!確か利き腕を相手にあずける形になる握手という習慣を、
ユートさまは好まれないのでしたね。」そう言いながらヒミカは慌てて手を引っ込めた。
「用が済んだのなら出て行っていいぞ、ヒミカ。
報酬は......ラキオス銀行の口座に振り込んでおいてくれ。」
悠人のその言葉とともにヒミカは退座した。
「これがハイペリア流のエンゲキか...。ユートさまの部屋に入る時は
こういうふうにしろって言われたんだけど...私にはどこが面白いのかよく分からないわ。」
部屋を出たヒミカは、首を振りながらつぶやいた。
「でも...報酬って、幾らくらい払えばいいのかしら。
いくら何でも私達の小遣い程度じゃないわよねえ...。
ハッ?まさか、足りなかったら体を要求されるなんて事...?」
思わず手のひらに少し余るくらいの胸の膨らみを押さえるヒミカであった。
レスティーナが女王の座に着いてから、スピリット達にも毎月の給料が支払われるようになってはいたが、
生活の必需品は現物支給だったし、それは決して贅沢が出来るほどのものではなかったのだ。
『おいおい、バカにするなよ、ヒミカ。こんなハシタ金であれだけの危険な仕事が出来ると思っているのか?』
『ああ...申し訳ございません、ユートさま。一生懸命工面したのですが...。』
『ふふん、お前だってもう子供じゃないんだから、どうしたら良いかくらいはよく分かってるだろう?』
『か...覚悟は出来ております...。好きに...好きになさって下さい...。』
次々と頭の中にテロップが浮かぶヒミカの前に、運悪くセリアが通りかかった。
「ちょっと、ヒミカ、どうしたの?ぼーっとしちゃって。なんだか目も潤んでるし。」
「ククク...悪い子だ。最初から期待してたんじゃないのか?」
「え...ちょっ、なにいきなり...きゃあっ!」
完全に役に入り込んでいるヒミカに押し倒され、セリアは悲鳴を上げる。
「体は正直だな。だが、もっと抵抗してくれないと、面白味に欠けるというものだ。」
「や...やめて...ちょ、ちょっと、やぁ...っ!ダメよ、こんな所じゃ...!」
――かなりノリのいいセリア嬢であった。
ヒミカの出て行った部屋の中で、悠人は有りもしないブラインドを指で押し下げ、窓から外を眺めた。
「ハリオンの秘密か...なかなか厄介な仕事になりそうだな...。」
悠人はふと思い出したようにようやく髪の毛が生えそろってきた自分の頭を撫でた。
「ったく、ナナルゥのやつめ...何が特製のシャンプーだよ。全部抜けちゃったじゃないか...。
これじゃ外も歩けやしない。」悠人は眉をひそめて独りごちた。
「ん?でも、これで成功したら、ヒミカの好感度もグ〜ンとアップして、あんな事やこんな事...。」
このところヘリオンの悪い癖が蔓延しつつある第二詰所であった。
「...また、何か良からぬ事を考えているようですね。」
妄想に沈没する悠人の頭上で、音もなく天井の羽目板が一枚外される。
「ハッ!?ナナルゥ、いっいつの間に!?」
ワインレッドの長髪をなびかせて、細身の少女が、まるで赤い彗星のように天井裏から舞い降りた。
悠人の目の前1メートルの距離には、すでに真っ赤な魔方陣が完成している。
「.........天誅です。」
「こっ、この距離でアレを!?よせっ!!俺が悪kぐぎゃあ――ッ!!!」
...悠人の言葉が最後まで紡がれる事はなかった。
支援いきます
―――その日の昼下がり。
「よっ、ハリオン、買い物帰りか?」
悠人は愛想笑いを浮かべつつ、黒い買い物カゴに食材をいっぱい詰め込んだ、
二詰のお母さん的お姉さんこと「大樹」のハリオンに声をかけた。
「あら〜、ユートさまぁ。今日はイキのいいお魚が手に入ったんですよ〜。
これから料理しますから、お楽しみに〜。」
いまにも夕餉の香りが漂って来そうな、そののどかな雰囲気は、見るもの全てを家庭的な空気に包み込む。
神剣を持っていないハリオンを見て、一体誰が彼女を戦士だなどと想像できるであろうか。
「そうか、それは楽しみ...いやいや、今日はちょっと別の用事があるんだ。」
悠人はハリオンペースに乗せられかけて、慌てて我に返る。
「あら〜、大事なお話ですかぁ?では私の部屋に、お越しください〜。」
満面の笑みを浮かべてハリオンが詰所に入って行く。
その後ろ姿を見ながら悠人はある事に気が付いた。
「ハリオンの買い物カゴ...あれってハイロゥじゃないか?」
目をゴシゴシ擦りながら悠人はそのカゴに見入った。そう言えばいつもと大きさが違う。
いや、いつも買い物の量に合わせて大きさが変わっているのだ。
一見竹で編みこまれているように見えるその材質も、
よく見ると細かい粒子が幾重にも折り重なって波打っている。
一体全体、シールドハイロゥをそんな用途に使うスピリットが存在して良いものだろうか?
悠人は軽いめまいを感じながら、ハリオンを追うように詰所に入った。
「いらっしゃいませ〜。今日私が内緒で焼いておいたケーキですぅ。
ユートさまもおひとつどうぞ〜。」
甘い香りの満ちた部屋で、スマイルとともにカップケーキが、ハーブティーを添えて差し出された。
「あ、さんきゅ、ハリオン。...うーん、相変わらずいい感じに焼き上がって、
この口の中でふわりと溶ける感触が何とも...いやだから違うんだって。」
ついつい喫茶店のような雰囲気に巻き込まれてしまいそうになるのを、かろうじてこらえる悠人であった。
「実は話っていうのは...。」
「ふふふ〜、予想はついてます〜。我慢出来なくなったんですね〜。
男の子ですからぁ、仕方ありません〜。」
そう言いながらハリオンが、妙に艶っぽいマナを発しつつ、悠人ににじり寄ってくる。
「い、いや、そういう事じゃなくって!本当に話があるんだってば!」
思わず後ずさりながら悠人がハリオンを制止した。
慌てる悠人を無視するかのように、すい、とハリオンは背を向け、ベッドに向かう。
「なるほど〜、まずはピロートークですか〜。さ、こっちにどうぞ〜。」
やおらベッドに腰掛けたハリオンは、変わらぬ笑顔のままでポンポン、と膝を叩く。
「...は?」
「怖くありませんから〜、お姉さんに任せて下さい〜。さ、ど・う・ぞ。」ポンポン。
「うーむ...し、仕方ない...。」
笑顔の圧力に屈し、悠人はおとなしくハリオンに従って、膝枕して貰うことにした。
ほとんど丸刈りに近い悠人の後頭部に、ハリオンの張りのある太腿の感触がダイレクトに伝わってくる。
この暖かさに包まれたまま眠ってしまえば、さぞ気持ちがいい事であろう。
「...って、そんな事考えてる場合か!」悠人は自分にツッコミを入れた。
「あ、あのさ、ハリオン、うわっ、か、顔は近付けなくてもいいから!」
目の前10cmに迫るハリオンの顔との間に両手をねじこみ、何とかまともに話の出来る距離まで押し上げる。
「あらあら〜、恥ずかしがってるばかりじゃ、めっ、ですよ〜。」ハリオンが頬をふくらませた。
「―――頼むから少しは話を聞いてくれ。あのさ、前から一度訊こうと思ってたんだけど、
ハリオンの『大樹』ってのはどんな事を言ってるんだ?」
「あ、あら、ら〜?」ハリオンの表情が笑顔のまま凍り付いた。
それは、これまで見せた事のないリアクションであった。
―――契約者よ、余り不用意にこの妖精に近付かぬ方が、身の為だぞ。
突然、『求め』が警告音を発した。どうやらこの貪欲な魔剣もハリオンは苦手としているようだ。
だが、悠人はハリオンのうろたえぶりに、初めて覚悟を決めた。
―――アレをやってみるか。
悠人の頭に浮かんだ方法は、初陣の時にリュケイレムの森の中で、
アセリアが悠人に対して用いたものであった。
それは、神剣同士を重ね合わせ、お互いの神剣の声に耳を傾ける、という方法である。
当時は未だ覚醒していなかった悠人の『求め』を叩き起こすために、
神剣との親和性が最も高かったアセリアが、神剣の内部世界に入りこんで行ったのだ。
だが、今の悠人ならばその逆も可能であろう。
―――しかしそれは、精神の弱い者にとっては、諸刃の剣とも言える危険な手段でもあった。
「ハリオン、そういやこの部屋の中に見当たらないけど、ハリオンの『大樹』、どこにやったんだ?」
悠人は固まっているハリオンの膝の上から身を起こし、その顔を覗き込んだ。
「あ〜、えーと、どこかに...そうそう、押入れの中だったでしょうか〜?」
ハリオンは悠人から目をそらしながら立ち上がった。
「...押入れなんてあったのかよ。」悠人は余り深く考えるのは止める事にした。
「あらあら〜?見当たりませんね〜。」
部屋のあちこちを探していたハリオンが困ったような声を出す。
嘘や冗談抜きで、本当に見付からないようだ。
必死に思考を中断しようとしていた悠人の頭の中で、プチン、と何かが弾け飛ぶ音がした。
(スピリットって...確か神剣と一心同体だったよなあ。)
そのスピリットが神剣を紛失するという事が有り得るのだろうか?
神剣を持たない状態でハイロゥを展開できるものなのか?
いや、それよりも、そもそも今は一応戦時中である。突然出撃命令でも出されたら、
ハリオンはどうするつもりだったのだろうか?
「考えちゃ駄目だ考えちゃ駄目だ考えちゃ駄目だ......。」
悠人は平静を取り戻すため、ひとしきり頭を抱えた。
「ハリオン、落ち着いて考えてみよう。最後に『大樹』を見たのはいつだ?」悠人は半泣きで尋ねた。
「え〜と〜、そうですね〜、確か、お昼の訓練の時にはあった筈です〜。」
人差し指を顎に当てて視線を宙に泳がせるハリオン。
「昼の訓練...。」
悠人も目を閉じてその時の光景を思い出し始めた。確か、来たる対マロリガン戦に備えて、
ヒミカやセリアが模擬戦をやっているその傍に、ハリオンの姿があった…ような気がする。
「昼寝...してたんだっけ、大きな木の根元で。」
大きく溜息をつきながら悠人は言った。その時、確かにハリオンの永遠神剣『大樹』は、その木に立て掛けてあったのだ。
「あ〜、思い出しました〜、訓練場の横の木に...」ハリオンの言葉を最後まで待たず、
襲いかかる頭痛を振り払うように、ぶんぶんと首を振り回し、悠人は部屋の窓を開け放った。
「ヘリオン!!ヘ〜リオ〜〜〜ンっ!!!」
金斗雲を呼ぶ孫悟空のように、悠人は青空に向かって力の限り叫んだ。
支援
「はははいっ!お、お呼びでしょうかっ!?」
すぐさまバタン、と部屋のドアを開け、わたわたと慌しく小柄なブラックスピリットの少女が入室する。
「...何だ、詰所の中にいたのか、ヘリオン。立ち聞きしてた通りだ。ひとっ飛び、頼んだぞ。」
「たた、立ち聞きなんて、してませんよぅ!」
抗議は無視して、悠人は鬼のような形相でつかつかとヘリオンに歩み寄った。
「...へ?」
悠人は無言のまま、ヘリオンの背後に回りこみ、スピリット服の背中をむんずと引っ掴んで、その小さな体を持ち上げた。
「わっ、分かりましたっ!訓練場の大樹に立て掛けてある大きな木を持って来ればいいんですね!!」
じたばたと手足をばたつかせ、空中で犬掻きをしながらヘリオンが喚く。
「―――悪いけど、今はとても漫才やるほど心にゆとりがないんだ。
ミトラロ数える間に戻って来い!マナをオーラフォトンに変えて...いっけえぇぇぇ―――っ!!」
最大限まで引き出されたエトランジェパワーが、イクシードばりの推進力となって、ヘリオンの体を窓から射出した。
「せめてストラロス...わわわっ!」
危うく詰め所の前の大木「陽だまりの木」に激突しかけ、
間一髪でウィングハイロゥを展開させたヘリオンが訓練場へと飛び立っていった。
(注・ミトラロ=50、ストラロス=100)
「はあっ、はあっ...」悠人は窓枠に手をかけて、呼吸を整えた。
「あの〜、大丈夫ですか〜、ユートさま〜?」
背後から間延びした声が掛けられる。悠人は深呼吸をさらに2、3回繰り返し、平静を取り戻した。
「...ああ、大丈夫だ、ハリオン。で、どこまで話したっけ...そうそう、神剣が何を言ってきてるか、だったよな。」
悠人はあらためてハリオンに尋ねた。
「それが〜、実は、私にもよく分からないんですよ〜。」
ハリオンが小首をかしげる。再び悠人の頭の中でプチン、と音がした。
「分からないって、何だよそれ!何かあるだろ、ほら!!マナよこせとか、妖精を犯せとかさあっ!!」
我を忘れて喚き散らす悠人であった。
「まあまあ、落ち着いて下さい〜。そうですね〜、聴こえてるような気はするんですが、
何を言ってるのかが、よく分かりません〜。」
にこやかな表情を崩さずにハリオンが答えた。
「うぐ...ぐ...と...取り乱して悪かったよ、ハリオン。」
悠人はうなだれた。一般に神剣の位が下がるほど、その自我は弱まると聞いている。
ハリオンの『大樹』は第六位。スピリットの永遠神剣としては上位に位置するものの、
悠人の『求め』と比べると、さほど干渉する力が強くはないのかも知れなかった。
―――それとも...。
悠人は考えた。『求め』にしても四六時中干渉し続けている訳ではない。
それと同様『大樹』も、ここ一番でハリオンの意識を乗っ取ったりするのだろうか。
―――って、それは無いよな。
悠人はまじまじとハリオンの顔を眺めた。
数々の戦いをともにして、ハリオンとは少なからぬ時間を共有してきている。
その間、ハリオンが明らかに自我を失って『大樹』と同化している、と感じたことは無かった。
支援
「あっ、ありましたっ!」
息を切らせつつ、『大樹』を小脇に抱えたヘリオンが舞い戻ってきた。
見れば、こころなしか、その穂先からのいつもの輝きが精彩を欠いている。
持ち主に放ったらかしにされて、『大樹』もさぞかし心細かった事だろう。
「お、ご苦労さん。」
とにもかくにも、マロリガンやサーギオスの偵察部隊あたりに持ち逃げされなかった事の幸運を喜びつつ、
悠人はヘリオンに礼を言った。
「お手数をおかけしました〜。」ハリオンが神剣を受け取り、その柄に愛おしそうに頬ずりする。
「さて、ハリオン、今日の用事ってのは他でもない。
俺の『求め』とハリオンの神剣を同調させて、『大樹』の意向を探って見ようと思う。」
お茶を一口啜ってから、悠人はおもむろに宣告した。
「「え〜っ!?」」
ハリオンとヘリオンが同時に驚きの声をあげる。書き手としては余り好ましくないツーショットである。
「気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど...ほら、ハリオンのハイロゥって...前から黒いだろ?
だから、ひょっとしたら俺にも何か出来るかなって。」
悠人は少し躊躇いながら言った。さすがにハリオン自身も、ハイロゥの事は気にしているだろう。
「はあ、そう言われてみれば〜、黒いですね〜。」
ハリオンがシールドハイロゥを展開させ、それをあらためて見つめた。
―――気が付いてなかったのか!?いや、そんなバカな事!!
「あまり気にしてませんでした〜、ハイロゥの色なんて〜。」
あまりと言えばあんまりなその言葉。
ヘリオンと悠人の両名に、同時に頭痛・吐き気及びめまいが襲いかかった。
「...と、とりあえず外に出よう。ここじゃ手狭だ。あ、ヘリオン、もう帰っていいぞ。しっしっ。」
作者思いの悠人であった。
「いっ、いえっ!私も興味が有りますので!!」...作者に怨みでもあるのか、やけに反抗的なヘリオン。
だが、だいたい帰ると言ってもここは第二詰所であった。
「――ちっ、仕方ないな。」悠人は『求め』を片手に二人を引き連れて、詰所の庭へと出た。
「―――よし、じゃ、始めるとするか。ハリオン、『大樹』を構えてくれ。」
庭に大きく枝を広げる『陽だまりの樹』の前で悠人はハリオンに言った。
いつの間にか二詰の面々が建物から出て来て取り囲んでいた。
セリアが頬を上気させてヒミカと腕を組んでいるのが気になるが、ここはひとつ、雑念を払わなければなるまい。
「...は、はい。」ハリオンの声にも緊張の色が滲む。
見ると、その額にはうっすらと汗が浮かんでいる。
悠人だけでなく、取り囲むスピリット達も、この異様な雰囲気にゴクリと唾を飲み込んだ。
―――チャキッ。
ハリオンが中段に『大樹』を構えた。こうして見るとさすがにラキオス軍の誇る精鋭の一人である。
その姿は確かに歴戦の戦士のものであった。
「―――行くぞ。」
悠人は抜刀し、ゆっくりと『求め』の刀身を、差し出された『大樹』の穂先に重ね合わせた。
―――契約者よ、用心してかかれ。この妖精の神剣からは、我も今まで感じたことのない類の力を感じるぞ。
「へっ、大きなお世話だ、バカ剣。所詮は第六位の神剣だ。
俺だってそう簡単に精神をどうこうされるほどヤワじゃないぜ。」
強がって見せるものの、悠人もまた、『求め』の言うように『大樹』から放たれる形容しがたい力は充分に感じていた。
もし、このまま『大樹』に呑まれたら...そんな不安が胸中に湧き上がる。
「ユートさま、やっぱり〜...」表情を読まれたようだ。ハリオンが槍を引こうとした。
「いや...そのまま構えてろ、ハリオン。」
悠人はきっぱりと言った。
ピィィィ――ン...
冷たい金属音とともに悠人の意識は、ゆっくり神剣の中に吸い込まれていった。
鋭い振動音が徐々に自らの鼓動と重なり合い、それはやがて、どこか懐かしさを感じさせる声へと入れ替わっていった。
―――......長い......待って......
悠人は『求め』とは異なるその女性の声に、耳を澄ませた。
―――『大樹』...『大樹』だな?何だ、何て言ってるんだ?
さらに神剣に心を同調させ、昂ぶる気持ちを抑えつつ、悠人は呼びかけた。次第にはっきりする、その声。
―――私は......『大樹』...
―――ん?
聞き覚えがある、というか、ついさっきまで聞いていたような気がする、その声。
―――ここに、お客さんが来るなんて〜、久し振りです〜。あ、そう言えば〜、とっておきのお茶っ葉がぁ、あった筈なんですけど〜。
―――へえ、神剣の内部世界にもお茶が...
「うっ、うわあぁぁぁ――っ!!」
危うく精神を『大樹』に引きずり込まれそうになり、悠人は悲鳴を上げて、弾かれたように後方へと跳び下がった。
つ[支援]
最後の支援
「だっ、大丈夫ですか!?ユートさま!?」
危うく倒れこみそうになった悠人をヘリオンが受け止める。
息を荒げているエトランジェの周囲にヒミカやナナルゥ、そして『大樹』を携えたハリオン達が心配そうに駆け寄ってきた。
「ユートさまっ!い、一体何が聴こえたんですか!?」ヒミカが悠人の顔を覗き込んだ。
「はあっ、はあっ...わ...分かったぞ、ヒミカ...。ハリオンは、神剣と同化している訳じゃない...!」
喘ぎながら悠人が答えた。
「え...!?」
一斉に全員の視線がハリオンに集中した。しかし、当の本人は困ったような表情を浮かべるのみであった。
「神剣が...『大樹』が、ハリオンに同化しちまったんだっ!」
信じられない事であったが、ハリオンが神剣に呑み込まれたのではなく、『大樹』がハリオンに呑み込まれてしまったのである。
「...はあ〜、そうだったんですか〜。」ハリオンのどこか残念そうな答えが返ってきた。
実のところ、ハリオン自身も『大樹』が何を言っているのか気になっていたのだろう。
実際、スピリットにとって神剣の声が聴こえるか否かは死活問題である。『求め』の干渉に辟易している
悠人には理解し難いことであるが。いや、それ以前に神剣があべこべに持ち主に呑み込まれる、
という事のほうが理解し難いのではあるが。
...だが、ハリオンなら有り得る、そんな空気が居合わせたスピリット達の間に漂うのであった。
―――次の日。
「おーい、ハリオン、居るか?入るぞ。」ハリオンの部屋をノックし、悠人が入室した。
「あら〜、いらっしゃい、ユートさま〜。今お茶を入れます〜。」
いつもの笑顔、いつもの甘い香り。戦場の緊張を忘れさせるつかの間の憩いの時を、
こうやってハリオンは、誰にでも与えてくれる。
「お、そうだ。」悠人は『求め』を、ハリオンの『大樹』に重ねるように立て掛けた。
―――契約者よ、何のマネだ。
無愛想に『求め』が抗議の声を上げる。
「お前もたまには癒されて来い。『大樹』も寂しがってたみたいだしさ。」
―――我は別に癒やして貰おうなどとは...こっ、こらっ!!
照れる『求め』を無視して悠人は着席し、ハリオンのもてなしにあずかる事にした。
一瞬輝きを増した『大樹』が、悠人の目には頬を染める少女の姿のように映る。
『大樹』の影響を受ければ、『求め』も少しはおとなしくなるかも知れない、そんな事を考えて悠人は苦笑した。
「さ、どうぞ〜。」一服した悠人に向かってハリオンが膝をポンポンと叩く。
「うーん...ま、いいか。」少し考えたが、悠人は素直にハリオンの言葉に従い、席を立った。
「よっ...と。」ベッドにごろりと寝そべり、ハリオンの膝に頭を乗せる。
―――ひょっとして、もう呑み込まれちゃったかな、ハリオンに。
春の暖かい陽だまりのような体温に包まれながら、悠人は、それでもいいや、と思ってしまう。
「...ユートさま〜。」
悠人の体に毛布を掛けていたハリオンが、ふと動きを止め、何事かを思い出したかのように呼びかけた。
「んー?」
近付いてくるハリオンの息遣いに悠人は薄目を開けた。
視界に大写しになるハリオンのいつもの笑顔。――人によっては彼女の余りの警戒心のなさに、
かえって不安になるのかも知れない。何の思惑もなく、何の見返りも求める事なく、
誰に対してもこんなふうに笑えるものなのだろうか...と。
「―――さんきゅ、ですぅ。」
ただ、ハリオンのいつもの笑顔は、しかし、悠人には、いつもと違って見えた。
...それは、まどろみ始めた悠人の、錯覚だったのであろうか。
139 :
憂鬱の人:04/12/24 02:40:32 ID:Iw7fYNHV
もともと「憂鬱シリーズ」第六弾の予定で書いたものでした。
いつもの短編のつもりだったのが、頭の中の「常緑の樹(関西系)」のせいで、半ばハリオンルート化してますw
とにかく尺が伸びる伸びる。
ハリオンは「無敵のぼけぼけお姉さん」と紹介されてますが自分で書いてて「...こういう事か」と納得してしまいました。
>>61-64 名前も神剣名も出てきていない事に注目!!
これは実はシアーとナナルゥの話だったんだよ!!
・・・絶対に違う。
>>89 紅蓮様
心底乙です。
自分含め仲間を殺されかけながらも守り抜き、
それでも最後には、互いに死者が出なかった事に曖昧にでも笑う事ができる悠人・・・。
ヘタレじゃねーw
で、誤字かな〜と思われるもの2つ。意図したものなら無視してくださいな。
>こりゃあ年上の魅力で癒してやらないとなぁイオ。ヨーティアの言葉を、しかしイオは意図的に無視した。
>手の届く場所にくれば、何をしてしまうか分からない。来るな、と思う一度言って、身体に力を入れた。
>>139 憂鬱様
無敵です。ハリオン姉様。
求めまでハリオン姉様のたふたふな雰囲気に飲まれたら・・・そこは平和なファンタズマゴリアです。
>>139 ぶわはぁ(w
これならたしかに「無敵」かも。
戦闘チップ見る限り明らかにハイロゥは白いんだけど
あのルートではたしかに「最初から」って言ってるね。
いつが「最初」なのかはともかくとして(w
なんかスレネタ満載で雑魚スピスレマニア検定試験みたいだ(w
で、ハリオン→『大樹』→『求め』→悠人 と感染するんだな。
求:「あー、そういえばー、敵が近づいてー、きてたんだったー」
悠:「あー、それはー、困ったなー」
大:「まぁまぁ、とりあえずぅ〜、お茶でも〜」
ハ:「ケーキもぉ〜、ありますよぉ〜♪」
。。。
>>139 タイトルがぴったりw
『求め』と『大樹』、案外良いコンビかも。
そっか同化してもハイロゥ黒くなるんだ……
電撃プレステーションにPS2版の追加CGが3枚ほど掲載されています。
エスペリア、アセリアが各一枚、レスティーナとその他大勢で一枚。
ついでに佳織の新しい立ち絵が掲載されていた。
記事によると「ファンの要望にこたえて、より可愛くした」そうだ。
>>140 X'masだし、こんな平和な雰囲気もアリかな〜、と思いまして。
>>141 ナンテコッタ、レスノホウガオモシロイヨ......_| ̄|○
してやられた気分に浸っています(自虐的笑
そういや戦闘チップの「純白の翼ウルカ」って違和感ありません?
>>143 >そっか同化してもハイロゥ黒くなるんだ……
それはどうか分かりません。
...ハッ?場に静寂をもたらしている?(←気にするな、いつもの事だ)
>>144 チャリぶっこいで買ってきた。4月28日発売だね。
なんかキモウトがそんなにキモクない。だが!ネリシアの紹介が逆だあああ!
こうズラっと雑魚スピ並んでると…(;´Д`)ハァハァ
ちなみにレスティーナ&その他大勢のCGはハーレムルートへの伏線か?
まあ、髪の毛を下ろしてレムリア仕様の服装から推測するに、レスティーナルートか汎用エンディングCGなんだろうけどな。
冷静に見てみると新CGの顔、人丸じゃないよな?エスが別人・・・。
左上のパッケ?絵のアセリアもエライかわうい。
おそらく別人だろうね。
エスペリアのお姉さん度UPな感じは素敵だ。
>139
,.‐'´ `''‐- 、._ヽ /.i ∠,. -─;==:- 、ゝ‐;----// ヾ.、
[ |、! /' ̄r'bゝ}二. {`´ '´__ (_Y_),. |.r-'‐┬‐l l⌒ | }
゙l |`} ..:ヽ--゙‐´リ ̄ヽd、 ''''  ̄ ̄ |l !ニ! !⌒ //
i.! l .::::: ソ;;:.. ヽ、._ _,ノ' ゞ)ノ./
俺達は思い違いをしていたっ! いいかみんな、ハリオンの永遠神剣の名は『大樹』
大樹……樹……根……
そうなんだよ! 大樹から伸びる根っこがヒミカのmphjめっロ、で@kすエrよm゚お@オ〜hkr@t
とりあえず低マインドルートはどうなるのかしら?
さすがにイービルルートは無くなるだろうし。
>>139 乙です〜。
ヒ、ヒミカがぺったんこじゃない!?(驚くようなことか)
そしてヘリオンの扱いはやはりパシリ・・・
いつか逆襲しそうだ・・・
ハリオンの無敵のお姉さまっぷりが素敵です。
そのうちラキオススピリット総ハリオン化とかしそうだw
感染ルート
大樹→求め→その他の神剣→神剣の持ち主達
とか。
>>151 そうか! イビルルートの真の黒幕はハリオンだっぅは何をする巨nやめry
それよりキョウコシナリオってあのままなのだろうか…………なんだろうな ソコハカトナクw
立ち絵は・・・キモウト以外そのまんま?
つーかネリシアが逆なことには誰も突っ込まないんですか?w
PS2版と比べると余計にキモさが目立つな
とりあえずこれでスレ3:1氏は買いケテーイということだなw
冬→4月末か…攻略してみるテンプレ:その他:最後2つのQ&Aとか
思いd つ======( ゚д゚)=))>・∵. ターン
黒(夜)のスピリットってなんですか?
「シアーが!! シアーが死んじゃう!!」
ファンタズマゴリアはロウ・エターナルの手から守られ、『再生』の剣も砕けた。
レスティーナがガロ・リキュア王国の建国を宣言した数日後、光陰と今日子のもとに、ドアを突き破ってネリーが転がり込んできた。
「遊びに来てくれるなんて嬉しいなー」と言いかけた光陰も、いきなりドアを破壊されて呆気にとられていた今日子も、ネリーの様子を一目見て、ただ事ではない事を理解した。
「シアーを助けて!! 助けてよぉーー!!」
「落ち着けネリー。一体何があったんだ?」
泣きじゃくるネリーに視線の高さを合わせ、光陰が優しく語る。
しかし、動転したネリーの言葉は要領を得ない。
その時、
「コウイン様!!」
壊れたドアから飛び込んできたのはセリア。
普段冷静な彼女の慌てようからも、何かとんでもない事態だという事が伝わって来る。
「シアーが倒れました。出血が止まらないんです」
「何!? エスペリアとかハリオンがいるんじゃないのか?」
「駄目なんです。魔法が全く効かないんです。こんな事初めてで、私どももどうしていいのか……」
俯きかけるセリアに、光陰はやはり慌てず、迅速に質問する。
「場所は、シアーは今どこにいる?」
「第2詰め所のベッドで寝ています」
「解った。すぐ行こう」
「私も行く!!」
部屋を飛び出した光陰と今日子の前にはアセリア。
「飛んでく。しっかり掴まって」
セリア、アセリアというウイングハイロゥを持つブルースピリットが来たのはそういう事。
そしてそれは、一刻を争う事態という事。
風を切り裂き空を駆ける中、セリアがシアーの状態を語る。
「昨日からみたいなんです。本人は心配かけたくなくて黙ってたみたいで。それを、私達は疲れのせいだと思い、見逃してしまった……」
「本人の様子はどうなんだ?」
「朝食の時にいきなり倒れて……。意識ははっきりしてますが、気持ち悪くて腹痛がすると」
「原因に心当たりは?」
「ありません。同じ物を食べていたと思いますし……戦いも終わってようやく平和になると思っていたのに、どうしてこんな事に……」
「セリア!! お前が弱気になってるんじゃない!!」
「す、すみません」
セリアが下唇を噛む。
アセリアと今日子はさっきから黙ったままだ。ネリーも泣きじゃくったまま、後を突いてくるだけ。
ようやく第2詰め所が見えてくる。
表でおろおろとしていたエスペリアが光陰達を見つけ、急いでシアーの寝ている部屋に通した。
で。
部屋から追い出された光陰が、連絡を受けて慌てて駆けつけてきたヨーティアと一緒にお茶を飲んでいる。
今日子はスピリットの皆に原因と対処方法を説明中だ。
「しっかし、あせったぜ」
「何を言ってる。人にもよるが本当に辛いんだぞ、あれは。男にゃ死ぬまで解らん事かも知れんがな」
「違いない。しかし、月に一回は必ずか。女も大変だな」
「ま、それが女っつーもんだ。とりあえず今日はお祝いだな」
「赤飯……の代わりに何かあったかな? こっちじゃどういう事するんだ?」
「セキハンというのが何かは知らんが、大人になった祝いだ。酒でいいんじゃないか?」
「いいわけあるか」
そんな平和の一コマ。
えっとつまり他の皆はまだってことでskうわなにをやめ(ry
設定資料集からぐちゃぐちゃ説いてもいいけど…味気ないからやめた。w
ともあれ他のみんなはまdうわなにをや(ry
月と夜の加護を受けたスピリット
自分で小説書く気力も時間も無いからネタだけ投下しておく
・サンタさんは実はナマハゲ。赤い服は返り血
夜のお菓子
>>150 とりあえず返してやって欲しい(何を)
>>151 私はあくまで「隠れ儲」なので...
悠人ごときには渡さない、という屈折した愛情を感じて頂ければ。
>>162 乙〜。メル欄に漢を感じずにはいられません(*´Д`)
ス、スレが赤い…別の意味で(*´Д`)
170 :
聖夜の祈り:04/12/25 11:20:04 ID:t/BTsf8e
聖ヨト歴332年スリハの月黒ひとつの日。
珍しく朝から冷え込んだその日、悠人はふらっと第二詰め所の裏に来ていた。
そこではみんなが忙しそうに駆け回っている。
「あ、ユートさま!」
いち早く気付いたヘリオンがとてとてと駆け寄ってくる。
「いらっしゃい〜、もうすぐ出来ますよ〜」
少し離れたところでハリオンも手を止め、微笑みかけてくる。
悠人は少し見上げてほうっと白い息を吐いた。
「お〜、なかなか立派になったなぁ〜」
「そうだろうそうだろう。ま、これも俺様の努力の賜物がぁっ!」
「な〜にが努力よ、ネリーとシアーを追いかけて登ってただけじゃない」
いつの間にか横に立って自慢げに頷いた光陰が今日子にハリセンでシバかれる。相変わらずだ。
「お〜いユートさま〜」
「ネ、ネリーちゃん、大声出したら危ないよ〜」
ぶんぶんと大きく手を振って騒いでいるネリーと慌てて止めようとわたわたするシアー。
悠人は苦笑しながら手を振り返した。
171 :
聖夜の祈り:04/12/25 11:21:05 ID:t/BTsf8e
「ユート様、これを」
ファーレーンに渡された銀の十字架を首にかけながら、悠人はまじまじと観察した。
「へ〜、良く出来てるじゃないか」
「ん」
「みんなでアセリアに教わりましたから……」
少し照れくさそうにそっぽを向くアセリアとばつが悪そうにもごもごと口籠もるセリア。
「やっぱりこういうのは形から入らないと」
全員お揃いのネックレスが嬉しいのか不思議な言い回しのヒミカ。
「あ〜ニムニム、そこ違うよ〜」
「う、うるさいわね、ニムニムって言わないでよ!」
はしゃいだオルファに突っ込まれて珍しく顔を真っ赤にしているニムントール。
「ここはこうして……」
「な、なるほど…………」
ウルカとクォーリンも戦士としての欣持を今だけは忘れ、楽しそうに準備をしている。
エスペリアが最後の指示を出していた。
「はい、そこでO.K.です、クォーリン」
「…………よっと……よし、完成っ!」
一番高い所に居たクォーリンが巨大な星型のマナ結晶を設置した後飛び降りる。
「「「 完成〜〜〜〜〜〜〜!!!!! 」」」
全員から歓声の声があがる。「日溜まりの木」、X'masバージョンの完成だった。
172 :
聖夜の祈り:04/12/25 11:21:54 ID:t/BTsf8e
ささやかなパーティーが始まる。
それは戦いが終わり、平和が訪れたファンタズマゴリアを祝うスピリット達のこれからの宴。
悠人はその楽しい雰囲気に酔っていった。
それでも楽しい時間はあっという間に過ぎ、やがて夜も更けてくる。
「さ、準備は良い?」
エスペリアの合図に全員が頷く。胸の十字架を握りながら、各々目を瞑りだした。
先ほどまでの喧騒が嘘のような静寂が辺りを包みこむ。
まず最初にエスペリア、ハリオン、ニムントール、そしてクォーリンがハイロゥを展開する。
呼応した「日溜まりの木」がぽうっと緑色に光り出した。
次にオルファ、ヒミカ、ナナルゥの力を抑えたヒートフロアが辺りを赤くドレスアップした。
ウルカ、ファーレーン、ヘリオンが月の光を強調すると、木の装飾がきらきらと輝きだす。
最後にアセリア、セリア、シアー、ネリーがアイスバニッシャーを同時に唱えた。
「わぁ…………」
今日子が珍しく潤んだ瞳で空を見上げた。ちらちらと舞う白い雪。
「ほぅ…………」
光陰が感嘆の声を上げながら掌をかざす。
神剣魔法を唱え終わった全員がこちらを見て、満面の笑顔で唱和した。
「「「 メリー クリスマス !!! 」」」
ぎゅっと胸元の十字架を握り締める。冷たい筈の金属の感触が、泣きたくなるほど温かかった。
悠人は幻想的な景色の中で優しく輝く「日溜まりの木」に願わずには居られなかった。
どうかこの穏やかな時間が、何時までも続きますように。俺がこの世界から居なくなった後でも、と。
173 :
信頼の人:04/12/25 11:25:26 ID:t/BTsf8e
>>165−166からなんでこんなの連想したのかよく分かりません(汗
日本式クリスマスだね。
スピ達はマナ信仰だし、それで良いのでしょうね。
木良し〜♪
マーツモトー♪
ねりークリスマスッ!!
>162
えっとつまり他のみんなはらーじPONPOエrk@k@g44545k@kv@rtkb@
ネリー苦しみます(食べ過ぎ
ちゃっかり同じぐらい食べてけろっとしてるシアー
しかも一番おとnwぁdrftgyしんくlp;@:
>>140 遅レス申し訳ない。
一つ目は違いますが、二つ目の「来るな、と思う〜」は「来るな、ともう〜」の間違いです。
ご指摘ありがとうございました。
まずは『法皇の壁』を陥とすことがサーギオスを攻める為の必要最低条件である。
ラキオス軍はリエルラエルに主軸を集めてその機会を窺っていた。
定期的に偵察を送り、壁の敵情を探る。今夜その任に就いたのはヘリオンだった。
横を歩いている蒼い髪の少女をちらっと見る。アセリアはその視線を気にした風もなくさっさと前を見て歩いていた。
『ラキオスの蒼い牙』。かつてそう呼ばれた程戦闘力に長けた彼女と一緒に任務に就く。
その初めての経験に、ヘリオンはすっかり緊張しきっていた。
「あ、あのアセリアさん……」
「…………ん?」
「……いえ、なんでもないです…………」
「ん」
耐え切れなくなったヘリオンがアセリアに話しかける。
しかし何を話すかを決めてもいなかったので会話はあっという間に途切れた。
元々無口なアセリアはそんなヘリオンに軽く頷いただけでまた前を向いてしまう。
ヘリオンは今の会話でアセリアが機嫌を損ねたのかどうなのかすら知る術も無かった。
当の本人は全く何も考えていなかっただけなのだが、無言の圧力だけは伝わり重くヘリオンにのしかかっていく。
というのもあの日以来こっそり観察していたのだが、どうやらアセリアは自分にだけこういう態度らしい。
無口なのは相変わらずなのだが他の人との会話は不思議とそれなりに弾んでいるようなのである。
会話が続かないのはもしかして自分のせいなのだろうか。そこまで考えてちょっとへこんだ。
アセリアが急に立ち止まる。
「来た」
「え、な、なんですか、アセリアさん♪」
考えが袋小路に入ったところでヘリオンはアセリアの声を聞いた。
話しかけられた事に思わず嬉しくなって聞き返してくるヘリオンを一瞥した後アセリアはもう一度念を押す。
「敵。ヘリオンは……動かないっ!」
「へ?あ、ちょっとアセリアさ〜ん!」
情けない声を上げた時には既にアセリアの姿は消えていた。
しんと静まった中一人取り残されたヘリオンはどうしていいか判らずにおろおろとしていた。
時折聞こえてくる遠い剣戟にぴくっと体を縮こませる。
「うう〜動くなって、どうすればいいんですかアセリアさ〜ん」
既に涙目になっているヘリオンはきょろきょろと辺りを見回した。その時一本の木の陰。そこからがさがさと物音がした。
「はわっ!」
腰が抜けそうになるのを必死に耐えながら慌てて『失望』を両手で持つ。
それと同時にゆっくりと姿を現す敵の姿。しかし、そのスピリットはヘリオンを見てまず軽く溜息をついた。
「はぁ〜またアンタなの?」
…………現れたのは、この間のお姉さんだった。
「あっ!そ、その節はご迷惑をお掛けして大変申しわきゃっ!」
「…………貴女挨拶もまともに出来ないの?」
「う〜〜、舌噛んじゃいまひた〜」
およそ戦場とは思えない会話を繰り広げる二人。
「…………お前ら、なにやってんだ?」
いつの間にかやってきた光陰が呆れ顔で立っていた。
光陰を見てお姉さんの態度がガラリと変わる。一気に緊張を帯びたかと思うと2、3歩後退した。
「コーインさま、どうして?!」
「いやだなぁ、ヘリオンちゃんのピンチに駆けつけない訳ないだろ、俺が……ぐがっ!」
「な〜にがヘリオンちゃん、よ、たまたま近くを巡回していただけじゃない……よっ、ヘリオン大丈夫?」
「キョーコさま!あ、あのこれは……」
「ま〜タネを明かしちゃうとね、悠にお願いされちゃったのよ。それとなく見ていてくれってね……ほら光陰、いつまで燻ぶってんのよ」
「え……ユートさまが……?」
「アタタ……普通敵を目前にして味方を討つか?……ま、そういうことだ。それよりあちらのお嬢ちゃん、なんだかお冠のようだぜ?」
「ま〜、そんな怖い顔をしてると男が寄り付きませんことよ〜おほほ〜」
「……それはなんの真似なんだ、今日子」
「あああ〜キョーコさま、煽らないで下さいぃ〜……あの、これは違うんです、若気の至りといいますか……」
「………………ふっ#」
支援なら任せてよ
またもやすっかり無視された上漫才まで目の前でカマされていたお姉さんにヘリオンの意味の判らない弁解など届く訳も無かった。
瞬時に辺りに緑のマナが立ち込める。風を切る鋭い音。動いた、と思った時には既にお姉さんの手元から神剣が放たれた後だった。
たった一人でエトランジェに対抗するには油断を突いての速攻しかない。
とっさの判断力は流石であっただろう。しかしやはり少し頭に血が上っていたのか、数字の上での不利が計算に入っていなかった。
光陰が無造作に『因果』を構えた所にお姉さんの槍がうなりを上げて殺到する。
『因果』から生じた黄緑のオーラが槍を包んだ稲妻と激しく衝突して辺りが一瞬明るくなった。火花が光陰の頬を切り裂く。
槍が光陰の手前数センチの所で静止したのを見て、
驚きの表情を浮かべたお姉さんはそのまま意識を失っていた。
死角に潜り込んだ今日子の『空虚』がその首に軽く雷撃を放っていたのだ。
その鮮やかなコンビネーションにヘリオンはただ呆然と見とれていた。
普段はあんなに仲の悪そうな二人なのに。
その奥で繋がっている絆の強さを見せ付けられたヘリオンは密かに光陰を見直していた。
二人は既に雑談を始めている。
「まさか連れて帰る訳にもいかないよなぁ」
「いいんじゃない、別にこのまま放っといても。それより大丈夫なの?」
「お、ついに俺を心配するようになったか今日子。うんうん、長い道のりだった」
「〜〜〜ばっ、ばっかじゃないのっ!誰が、いつ、アンタの心配なんてしたっていうのさっ!」
「あ、あの〜キョーコさまそのへんで……きゃぁっ!」
不穏な空気を感じて仲裁に入ろうとしたヘリオンはいきなり光陰に抱き締められる。同時に背後で空気中の静電気の量が急増した気がした。
「あ〜、俺の味方はヘリオンちゃんだけだよ〜うるうるうるうる」
「ちょ、ちょっとコーインさま…………あれ?」
「ん、どうした、ヘリオンちゃん」
「あ、あ、あ、あんたってヤツは〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」
「うわごめんなっ、さっ、うぎゃーーーーーーーっ!!!」
「わきゃっ、ふひゃあぁぁぁ!」
「あっ!ゴ、ゴメン、ヘリオンまで……たはは…………」
今日子の雷撃に巻き込まれながら遠くなる意識の中で、ヘリオンは首を傾げていた。
何故か光陰に抱きつかれても全然ドキドキしない胸の鼓動を不思議に思って。
ちなみに戻ってきたアセリアが黙々と目を回しているヘリオンを詰め所まで運んだ…………おさげを引っ張って。
バツの悪そうな今日子はその光景を見ても何も口を挟めなかった。
決して自分は威圧されている訳じゃない、と心に言い聞かせつつ。
悠人達が帝国から持ち出した研究資料とマナ結晶、それになによりアセリアの回復と対帝国戦に向けて順風満帆に思えたラキオス。
そんな戦いのさなか、第二詰め所の面々を賑わせているのはもっぱら悠人とアセリアの関係についてだった。
光「ふう〜ん、俺達が戦った時はまるで人形みたいな感じだったからなぁ」
今「あはは〜、アタシなんかもうすっかり人形そのものだったしね〜」
ク「あっでもわかります、アセリアさんって人形みたいな綺麗さがありますよね」
今「クォーリンそれ褒めてないって……それでさ、悠の方はどうなのセリア」
セ「えっとわたしに振られても……あの娘の事なら昔から知ってますけど」
ナ「ユート様もアセリアを大事に思ってますよ……きっと」
ヒ「そうね、不本意だけどそれは認めるわ」
光「……ナナルゥもヒミカもどうしたんだ?急に暗くなって」
ハ「気にしないで下さい〜女の子には色々あるんですぅ〜」
ヒ「くっハリオン……知ってるくせに……」
ネ「ヒミカどうしたの?なんだか怒ってるよ〜」
シ「ナナルゥお姉ちゃんもなんだか変〜」
今「あのねネリーちゃんシアーちゃん、これは大人の話だから」
ネ「ぶ〜ぶ〜、ネリー大人だもん!」
シ「シ、シアーは……違うかも……」
ネ「あっコラ〜!シアーの裏切りモン!」
セ「こらこら……あれ、ファーレーンは?」
ニ「お姉ちゃんなら部屋に閉じこもってるよ、なんだかぶつぶつ呟きながら」
光「なんつーか……あれだな、悠人がどれだけ罪を重ねているかがよく解るな」
ク「コウインさまがそれをいいますか」
光「あん?クォーリンそれはどういう意味だ?」
ヒ「…………本気で言っているのかしら」
セ「本気みたいよ?ハイペリアの男の人ってみんなこうなのかな」
ナ「神経の伝達速度に一部問題があるみたいですね」
今「ちょっと落ち着いてみんな。向こうはこんなバカばっかりじゃないって。こいつらが例外よ例外」
光「何気に酷い言われ方をしているような気がするんだが、一体なんの話だ?」
ヒ「キョーコさまは何かご存知ないんですか?その……ユートさまについて」
今「へ、あ、あたし?そりゃまぁ長い付き合いだしさ、色々あるけど……」
ネ「あっ、ネリー聞きたい!ねっ、シアー?」
シ モジモジコクコク
セ「うん、まあ興味あるわね。キョーコさま、お願いできますか?」
今「いいけど……そうねぇ、昔から過保護っていうか、とにかく年下に構う癖があったわね」
光「おう、佳織ちゃんに近づく者は容赦しねぇって感じだったな、あれは」
今「光陰なんかよく気絶してたわよね〜佳織ちゃんにちょっかいかけるたび」
光「あれは今日子がやったんだろう……おかげですっかり頭にハリセンが馴染んじまったぜ」
ナ「コウインさまって……」
ハ「クォーリンさんも苦労しますね〜」
ヒ「なんだか色々同情するわ……」
ク「うっうっみなさん有難うございます〜」
セ「でもそれじゃアセリアとの説明には少し弱いかな……あれ?ヘリオンさっきから一言も喋らないけどどうかした?」
ナ「少し元気がないようですね」
光「ヘリオンちゃん、悩みがあるなら俺に話して…………がふっ」
ハ「あらあら〜見事に顎に入りましたね〜」
ニ「これは即死ね。ニム片付けるのイヤだよ」
ク「コ、コウインさま〜!!」
今「まったくこいつは……ねぇヘリオンちゃん、ひょっとして悠となにかあったとか?」
ヘ「え、ええ、ええええっ!そそそ、そんなことないですっ!」
セ「わっびっくりした。いきなり立ち上がらないでよヘリオン、お茶こぼすじゃない」
ヘ「す、すみませんセリアさん」
今「へ〜ただカマかけてみただけだったんだけど……その様子じゃ何かあったわね」
ナ「ヘリオン、ユートさまとなにかあったのですか?」
今「さ〜一体どういう事なのか、お姉さんズにさっさと説明してごらんなさい」
ヒ@お姉さんズ「キョーコさま、それなんとなくイヤなんですけど……まあいいや、ヘリオン、話してみたら?」
ヘ「あ、あの〜たいしたことじゃないんです……ただユートさまとアセリアさんの話を聞いていたらなんかこう、胸が痛くて……」
全「………………………………」
光「まったくあいつは自覚なしに次々と……」
復活した光陰が溜息交じりに起き上がった。
セ「やっぱりあれかな、アセリアが帰ってきたときかな」
ヒ「ああ、あの迷子になっていたときか」
ヘ「うう〜言わないで下さい〜」
ハ「ヘリオンさん、ユートさまに嘘ついていたんですよね〜」
ネ「そ〜そ〜ヘリオン一人で遊びに行ってるんだもん、ずるいよね〜」
セ「で、その間に二人っきりになっていた、と」
シ「ネリーちゃん、もしかしてスルーされてる?」
ネ「こら〜ネリーをいじめるな〜」
今「それでそれで?ヘリオン、悠と何してたの?」
ヘ「なんにもしてないですよぅ……ただ戦ってたらアセリアさんが来てくれて……」
ニ「肝心の部分を省略してるね」
ヒ「真っ赤になって否定しているところがアヤしい」
ヘ「うう〜これってもしかして尋問ですか〜」
セ「もしかしなくてもそうね。ヘリオン、さっさと吐いちゃいなよ」
ヘ「そんなこと言われても〜ただ……」
全「 た だ ? 」
ヘ「その……わたしドジだからユートさまを支えようとして失敗しちゃったんです」
全「ふんふんそれで?」
ヘ「えっとそれで逆にユートさまに抱き締められて……なんだか温かくて……心臓の音がとくんとくんって……」
全「……………………」
ヘ「ユートさまっておっきいんだって……それでもう少しこのままでいたいなって……」
ヒ「……どう思う?」
セ「どう思うってとりあえず見たまんまじゃない?」
ナ「重症ですね」
セ「こういうのもインプリンディングっていうのかしら」
光「免疫なさそうだからなぁ……でもそこがまたぐぉっ!」
今「光陰少し黙ってなさい」
ハ「っていうか〜完全に沈黙してますけど〜」
ニ「でもさ、みんなのもそのインプリンディングってやつじゃないの?免疫あるとも思えないし。心当たり、ある?」
心当たりのある人達「…………………………」
今「アタシは悪いけどアセリアを応援するわよ」
光「おいおいいきなり結論を出すのは早過ぎないか今日子」
ヒ「そうですよキョーコさま、ヘリオンだってまだ自覚がないようですし」
ヘ「あの〜ヒミカさん、一体なんの話ですか?」
ヒ「貴女は黙ってなさい。これは大人の話なんだから」
ヘ「ふぇ、で、でもわたしの名前がさっきから……」
ニ「いいからいいから。ニムとお茶でも飲んでようよ」
ヘ「あ、ありがとうございます……ってそうじゃなくて」
セ「ヘリオン頑張りなさい、まあ彼のどこがいいのかはさっぱり判らないけどね」
ナ「セリア、今度から自分で髪を切って下さい」
セ「何故っ!?」
ハ「まあまあナナルゥさん〜セリアさんだってなんだかんだ言いながら〜」
セ「ちょ、ちょっと待ってよ、今は関係ないでしょう、そんなこと」
ク「ヘリオン頑張ってね、貴女には何か同じものを感じるの」
ヘ「へぁ?クォーリンさん、あの、ですからみなさんなんの話を……」
ハ「でも〜、この場合アセリアさんが先約のようですから〜」
今「あのねハリオン、こういう事にやったもん勝ちって言葉は通用しないのよ」
ナ「キョーコさま、自爆ネタはあまりよくないかと」
今「なっななな…………おほほ〜なんのことかしら〜ナナルゥ?」
ナ「いえ。わたしの薬草をお使いになられたのもキョーコさまの方が後だったということです」
今「………………そ、そうね。おかげでホラ、なめらかさらさらしっとりなのよね〜」
光「話が全然見えんが大体今日子、お前さっきはアセリアを応援するって言ってたじゃないか」
今「うっ…………だってあのコ見てるとなんかさ……純粋っていうか、なんとなく応援したくなるのよね」
ハ「なるほど〜自分にないものをアセリアさんに見ているんですね〜」
今「ハリオン、それどういう意味?」
ナ「そんなことよりコウインさま、本当に判っていないのですか?」
光「ん?ナナルゥ、なんのことだ?」
ヒ「本気で気付いていないのかな、あれ」
セ「本気らしいね。ハイペリアの男の人ってみんなああなのかしら」
光「大体お前ら、肝心の悠人がどう考えてるかがすっぽり抜けてるじゃないか」
今「そ、そうね、悠の気持ちがはっきりすればこんなにややこしいことにはなってないわけだし」
ハ「そうですね〜、皆さん何か心当たりはありませんか〜」
ネ「は〜い!ユートさまはね、ネリーのこといっつも頭撫ぜて褒めてくれるよ」
シ「あのねあのねシアーも……」
ヒ「はいはいお子様は気楽でいいわね……大体わたしだってキャクホンを褒められた事くらいあるわよ」
ナ「いつも浴場で『ナナルゥに髪を洗ってもらうと気持ちがいい』と仰ってくれます」
セ「馬鹿馬鹿しい、そんなことならわたしだってこの間特訓した料理を褒められたわよ『セリア、おいしかったよ』って」
ニ「そういえばニムもよく髪撫ぜられてるけど」
ク「あ、それキョーコさまをお助けした時わたしにもして下さいました」
ハ「あらあら〜誰彼構わず髪を撫ぜて差し上げてるんですね〜ユートさま」
ニ「つまり纏めると、ユートは誰でもいいってことなんじゃないの?」
全「………………………………」
光「あれだな、悠人のやつ薄々気付いてはいたけどやっぱりロリコn」
姉「「「そんなことありませんっ!」」」
今「ヒミカにナナルゥにセリアっと…………アンタ達判りやすいわねぇ」
光「俺はむしろ何故みんなさっきからそんなに日本語に詳しいのかが非常に気になるのだが」
ニ「もういいからさ、決を取れば?アセリアなのかヘリオンなのか」
ヘ「ふぇ、ニムントールさんそれわたしのお茶…………へ?わたし?」
セ「貴女本当にお茶飲んでたんだ」
ハ「ある意味大物ですね〜」
ナ「状況認識力に大きな問題がありますね」
ヒ「まあいいわ……それじゃ現状アセリアを応援する人は挙手願います」
……………………
支援
ヒ「キョーコさま、ナナルゥ、ハリオン、それにわたしっと。それじゃヘリオンを応援する人は?」
ヘ「は、はいっ!」
ヒ「ヘリオン貴女は上げなくていいの……コウインさま、クォーリン、セリア、ネリー、シアー。ふ〜ん結構割れたわね」
ハ「あれ〜?ニムントールさんが上げていませんよ〜」
ニ「わたしはお姉ちゃんの味方だから」
セ「むしろ何故貴女がアセリアにつくのかが判らないな、ヒミカ」
ヒ「どんな時でも冷静に敵勢力を分析するのは大事よセリア。ユートさまの嗜好を考えれば自ずからどちらが与し易いか」
セ「……こんな場面で戦術論を持ち出すのはどうかと思うよ」
ヒ「そういう貴女は何故アセリアに付かないの?幼馴染じゃない」
セ「幼馴染だからよ。あの娘には数々味わされた屈辱の想い出があるからね…………ふふふふふ」
ヒ「…………貴女の親愛ってどっか歪んでるよね」
ネ「セリア、なんだか怖いよ〜」
シ「うう……いぢめる?いぢめる?」
ナ「コウインさまはどうしてヘリオンに……って聞くまでもありませんか」
光「ん?なんだクォーリン、お前もヘリオンにつくのか?」
ク「は、はい!コウインさまがこちらだから……それに、他人事の様な気がしませんし…………」
光「おかしなやつだな。まあいいけどさ」
ニ「クォーリン、たまにイヤになるときってない?」
ク「うっうっいいんですもう慣れてますから」
ヒ「それにしても変ね、コウインさまってなんでクォーリンに関してはこう鈍いのかしら」
ハ「あ〜それはわたしも気になってました〜あそこまであからさまだとわざとしか思えませんよね〜」
ヒ「そうよねオルファとかネリーとかシアーとかヘリオンにはしょっちゅうちょっかい出してるのに」
セ「並べてみると凄く判りやすい嗜好よね……」
ナ「案外クォーリンを認めているのではないのでしょうか」
ヒ「え?ああなるほど。つまり仲間として大事にされ過ぎてると。友達止まりの典型的なパターンね」
ク「だ、大事にされてるんですか♪」
セ「そこ嬉しがるとこじゃないと思うな」
ハ「そうですね〜そうなると男の方は逆に手を出し辛いと言いますからね〜」
ヒ「手を出すって……ハリオンそういう言い方は……」
今「………………」
ナ「キョーコさま、どうかしましたか?」
今「…………へ?あ、いやぁ〜ははははは…………」
ハ「大丈夫ですかぁ〜?なにかイヤな汗をかいているような〜」
今「な、なんでもないのよ〜オホホ〜」
光「今日子、口調がオバサンnぐhがlp$%!!」
ニ「でもさ、それってみんなにも可能性がないってことじゃない?ユートに信頼されてるようだし。心当たり、ある?」
信頼されている人達「……………………………………」
光「じゃ、じゃまぁ応援の仕方は各自検討の上あくまで安全な方法でっと。それでいいな?」
今「い、いいんじゃない?まあ一部しぶしぶっぽいのもいるけどね」
ク「お二人とも、なんだかボロボロですね…………」
ヘ「それはそうと……あの〜そろそろなんの話か教えてください〜」
セ「さっ、じゃわたしはもう寝るわね、おやすみ」
ハ「わたしもぉ〜失礼します〜ふぁぁ〜」
ナ「ハリオン欠伸が混じってますよ。一緒に戻りましょう。失礼します」
ヒ「ほら、ネリーとシアーも自分の部屋で寝る」
ネ「うう……ん……」
シ「すやすやすやすや」
ヒ「口ですやすや言ってるし……しかたない、わたしが運んでいくわね」
ニ「さってそろそろお姉ちゃんの機嫌直ってるかな」
ヘ「あの、みなさん?」
光「じゃあなヘリオンちゃん、俺の部屋は一番奥だからね待ってるがっぐっごっ!」
今「あら〜光陰変な寝言ね〜。それじゃヘリオン、お休み!」
ク「コ、コウインさまの目が真っ白に〜!」
ヘ「あ、あの〜………………」
叫びも虚しくぱたんと扉が閉じられる。
一人残されたヘリオンは呆然と周囲を見渡した。
あちこちに食べ散らかされたお茶請けや空のコップが散乱している。
「みんな片付けていって下さいよぅ〜〜〜〜」
ヘリオンは泣く泣く一人で自分の部屋を片付け始めた。
こうして第一回ラキオス第二詰め所会議は幕を閉じた。
(ヒミカ著:第二詰め所会議集より抜粋)
196 :
信頼の人:04/12/26 00:32:03 ID:korjtgJe
U あとがき
まずは支援して頂いた方、有難うございました。
無駄に長くなってしまいましたが……一度やってみたかったんです、詰め所会議。
ちなみにファーレーンが出てこないのは前回ラストで悠人に無視されたのを引きずってるからです。
決して書き手の個人的な事情があった訳では(ry
それでは読んで下さった方、有難う御座いました。誤字脱字今回特にハリオンマジック等ご指摘があれば幸いです。
乙です。GJであります。
まさかお姉さんが再登場するとは思わなかったw
なんだかんだいって悠人も光陰もモテモテですな。
本人まったく気づいてないけど。
それにしてもファーレーンは部屋にこもって何してるんだろう・・・
「ヘリオンばっかりヘリオンばっかりヘリオンばっかりヘリオンばっかり・・・」
とかつぶやきながら人形を・・・
ごめんなさいorz
お疲れさま。ん〜、和むねぇ、会議。
当スピたちはどうかわからんけどw
ニムは戦線外ですか、そうですか…
>139 憂鬱の人さん
考察もとい妄想……どうしてハイロゥが黒いのか。
呑み込まれた後はゆっくり、ゆっくりと蕩かされていくだけ。
蕩けた所からじっくりと吸収されて養分に……と、「ハリオン流」食マナ植物に!
いえ、もう十分に蕩けさせてもらいましたw
>161-162さん
平和になったからこそ味わえる、自分自身についての悩みの数々。実際、こうなりそうですね。
>173,196 信頼の人さん
一日に二作品の投稿、乙でした。
>聖夜の祈り
ひとしきり、しんみりとした気持ちに浸った後に、
ふと頂上の飾りを勝利の記念に持ち帰ったントゥたんに変えたバージョンを
想像してしまい「日溜りの木」が大変なことに。
>回帰 U
ニムの鋭い台詞に硬直するスピ隊に大ウケしてしまいました。
きっとその横でお茶を飲みながら首をかしげるヘリオンにも。
冷静に分析できるニムはファーレーン一筋なのでしょうw
>>153 一枚絵の手前の緑髪、誰?
もしかしてクォーリン?
>>163,177
元々スピには生殖能力は無かったようなのです。再生の剣から生まれるから。
再生が砕けた時に生殖能力が付加されたみたいなのです。
そういう事らしいです。
>>200 服から察するに、髪を下ろしたレムリアではないかと。
>>200-201 ところで、ニムとファーの奥に居るのは、ヨーティアだろうか?
だとするとレスティーナは、あの格好で陣頭指揮しているのだろうか?
それこそ平和になった後の女王陛下ヨフアル世界紀行に見えなくも無い。
インスマウンス面じゃないキモウトなんてキモウトじゃない!
只の妹Aだ
>>196 U-1を読んだエス「絶対...わざとに決まってますッ!」
憂鬱の人「まさか、俺と違って信頼さんはそんなイヤミな人じゃないよ」
エ「止めないで...止めないで下さいませ!」
憂「ん〜、じゃ、雷撃食らったヘリオンタンのぶんも宜しく」
...という訳で、エスが「献身」をりゅうりゅうとしごき上げながらそちらに
向かってますのでお気をつけ下さい。止めたんですけどねえ...
ヒミカ、こんな会議を記録に残してどうするつもりだ!?
個人的には敵スピのお姉さんが気になります。緑だしw
>>197さん
支援&読んで頂いて有難うございました。
ファーレーンが部屋にこもると何かたくらんでるような気もしますが、
まさか呪いの人形の風習まで知ってるとはw
>>寸劇さん
全員戦線内に入れると突っ込み役が居なくなるんですよ〜(涙
「ご機嫌」で勘弁してください(汗
>>道行さん
それだとトーテムポールになって全員槍に焚き火で凄い事にw>日溜まり
今回殆どヘリオン出番無かったのですが、おかしいトコなかったでしょうか?
>>憂鬱さん
たった今エスペリアが部屋に飛び込んできました。応戦します(汗
名無しお姉さん、何気に人気だなぁw
息を潜めて様子を窺い、油断無く左右を見渡します。
そのたびにフリフリと短いポニーテールが揺れています。
刃を握った手に一度だけ視線を落として、小さな溜息をつきました。
「何でこうなるの……」
年端もいかないスピリットが戦わなくてはいけない世界。
その小さな肩に掛かる責任は、スピリットだからなのでしょうか…………
それはセリアの……たった一人の戦いでした。
困ったことに、寡兵どころか本当にセリアだけでした。いつもなら要と成るべきエスペリア
お姉ちゃんはどこに行ってしまったのでしょうね? 思わず悪態をつきたくなりますが、セリ
アは我慢です。下手なことを言うとどこから『献身』が唸りをあげて飛んでくるかわかりませ
んので。
敵の跳梁を許したらセリア一人で持ちこたえられるでしょうか? ちょっと不安です。セリ
アは柄を握った手をさらに強く握りしめます。ょぅ……コホン 少女の小さなもみじのような濡れ
た手が、漏れ差す光を柔らかに跳ね返しました。
敵もたった一人ですが、ちょっとした手練れでした。その虚を突く動きは、流石のセリアも
翻弄されたりします。防戦一方です。これはやや厳しいかも知れません。
セリアのうなじに……ポニテにまとめ上げられたうなじにぴりぴりとしたプレッシャーが伝
わってきます。
いる。
きっと何処かでセリアのことを見ているのです。その致命的な一撃を加えるべく虎視眈々と。
今はどうしても守りに徹せざるおえない状況でした。こんな状況での戦い方なんて……誰も
教えてくれませでしたし。
いつの間にか切れていた指先をちゅっとなめてからセリアは気合いを入れ直します。
一歩間違えれば、この城は敵に蹂躙されてしまう。綱渡りの様ですね。そしてそれは、セリアの昏
い運命をも決定づけてしまいます。
あっ、敵は城門を開こうと、大胆にも正面から攻撃を仕掛けてきました。
なめてますね。
ですがセリアも負けてはいません。流れるような動きで右手が伸び、門を抑えにかかります。さ
らに左手は細やかに動き、敵の投じた一撃を受け流します。
さすがです。伊達じゃありません。
今の攻撃は完全に抑えきりました。それでも敵はあきらめません。しつこいですね。
全くと言っていいほど懲りず、めげません。
ですが、敵は確かに意表を突く動きを取るのですが、攻撃自体は直線的です。セリアは必死
になって、右に左に走り回ります。汗が光りポニテが揺れます。
もうちょっと。もうちょっと頑張ればきっと――――。
思えば、昨夜から何か変でした。
いつもなら落ち着いて夕食後のお茶を一服しているはずのエスペリアお姉ちゃんが、ソワソ
ワと立ったり座ったりを繰り返しています。さらにはいつも肌身離さず持っている手帖をぺら
ぺらめくっては溜息をついたり、うふふふふ、などと部屋の隅でニヤニヤしだしたり……あぶ
ないですね。
そして今朝です。昨夜も変でしたが、今朝はさらに変なのでした。
何を考えているのか、白黒緑赤青のフリルがこれでもかっ、といっぱいのブラウス。一応緑
を基調としていると言えるでしょうか?。もしかしてこれが最新ラキオスモード……なわけな
いですね。サイケというか……ピエロ?
そして膝丈の、白黒ツートンのフレアスカート。ところどころレースが入ったり……一体誰
の趣味なのでしょう。ハッキリ言って逝っちゃってます。
もしかしてこれも何時かお下がりとして、セリアの前にエスペリアお姉ちゃんの有無を言わ
さぬ笑顔と共に現れるのでしょうか。怖すぎますね。ガクブルです。セリアはぶるぶると首
を振って、思わず幻視してしまったいやな未来を追い出しました。
視線を戻すとエスペリアお姉ちゃんがまた同じ事をやってます。
目を閉じて手帖に頬ずりせんばかりに「ラスクさまぁ〜」とか言ってます。おめでたいです
ね。だいたいラスクとか今日日流行らないのです。所詮ロリ野郎です。先生面して禁断の関係
しちゃうぞーですか。いけませんね。汚れてますね。何年か後でシレっと「私は汚れています」
とか言いたいだけちゃうでしょうか。アセリアとセリアのお姉ちゃんともあろう者がこんな事
では小一時間…………
…………こほん。暴走でしたね。
さて、エスペリアお姉ちゃんの妄想が終わったようです。ささっと荷物を小さな巾着に入れ
ると、緑スピとは思えないす速さでお出かけです。何とかは盲目。緑スピなだけに炎上しちゃ
ってるのでしょうか。
っとその前に、セリアにとって聞き捨てならないことを言い残していきました。
「お昼は二人で仲良く作るんですよ♪」
…………怠慢です。お姉ちゃんをさぼってますね。原因はやはりあの戦術指南役に決まって
います。人目を忍んだ逢瀬です。良くある話しですね…………格好は派手な気もします。
えーと、そう、結局男です。幼い妹二人より男を選ぶのです。女なのです。業なのです。
セリアは心に刻みました。”男なんてイラナイ”と。あ、セリアのLvが上がりました。
それは戦いでした。油断無く左右に気を配っていないと何をされるかわかりません。アセリ
アは純粋にセリアの手伝いをしたいだけなのですが、正直それが一番たちが悪いのです。セリ
アの後ろでぼー、と立っていたかと思うと、音もなく鍋に近づいて…………セリアも、アセリ
アの純真な気持ちを無碍には…………「あっ!アセリアっ、フタ取っちゃダメーー。何でそこ
でキスキの葉入れるのっーー」
…………やはりそうも行きませんね。エスペリア亡き後、台所という城を守れるのはセリア
しかいないのですから。右手でフタを押さえて、左手でキスキの葉を取り除いていきます。
あっ思わず包丁を握る手に力が入ってしまいます。
ところで「亡き」とか言ってますが「無き」の間違いでしょうね、セリア?
要はアセリアをのけ者にすればすむ話しなのですが、セリアにはとてもそんな真似はできま
せん。何故って、そんなことがエスペリアお姉ちゃんの耳に入ったら…………
いやーっ! おしりペンペンだけはいやーっ!
思うだけでセリアはおしりがむずむずしてきました。経験有り?
これなら、ニッコリ笑って『献身』を頭上で振り回しての五月雨突きの方がましというもの
です。
アセリアはぼーと突っ立っています。表情は相変わらずです。
ですがセリアにはわかります。青い牙は虎視眈々と牙を研いでいるのです。この状態から予
備動作無しの信じられない動きを可能とするのです…………とりあえず青い牙には仕事を与え
ておきましょう。
「アセリア、ほらこれ刻んでおいてくれるかな」
サラダに使う葉物をアセリアに渡しました。喜々として――セリアにはそう見えます――包
丁を振るいます。なんだか刃物を手にしていればそれでオッケーなのでしょうか。そんな所を
横目で身ながらセリアはなんだか悪い気もしてきてしまいます。
ですがこれで、とりあえず一息つくことができました。その間に対策を考えますがセリアの
手も休みません。包丁が上下するたびにトントンとリズミカルな音がし、ポニテも一緒に
揺れています。二人の奏でる包丁のハーモニーは、思わず聞き入ってしまいそうになりますね。
ちなみに二人とも白いフリフリエプロンだったりします。眼福。
「あイタっ」
あーやっちゃいました。ほんの少しですがひとさし指を切ってしまいました。ハーモニーも
終わりです。って実は既に中指にも切り傷があったりしますけど。
アセリアは包丁を置くとセリアの傍らに寄り添いました。
「大丈夫か?」
「うん。これくらい平気だって」
セリアは、アセリアに心配させまいと笑みを浮かべて答えました。アセリアの心配顔が実は
セリアの苦手なものの一つでしたから。
「消毒、知ってる」
アセリアは呟いて躊躇無くセリアの指をくわえました。
「あ、ちょっとアセリアだめっあっぁぁァちょアセr」
…………なんだかセリアの声がうわずってますね。やはりエスペリア仕込み?
ちゅっちゅ ん んん………ん ちゅ ぱ んん………… あむぅ んぅ
「アセリア、あぁっやめて」
セリアは大人になりました。
嘘です。変な方向に走りすぎです。いけませんね。
「ふーふー」
やっと解放されたようです。肩で息をしながらセリアは考えます。ここは発想の転換をする
しかありません。
被害を最小限に抑えるには攻撃を防ぐよりも、アセリアのアタックタイミングを、いかに減
らすか。それが勝負所です。
そのためには”速さ”です。アセリアの”手伝い”の入る余地の無い、有無を言わさぬ”速さ”。
眼光鋭く一合で決めてしまうのが理想です。
それこそが、青スピリットとしてのセリアの身上でもあるはずなのです。
ヒ「と、言う訳で、セリアの料理が本人曰く”必要最低限”な理由を語ってみました」
ユ「…………そ、そうだったのか。よ、良く分かったよ。う、うんそれじゃー俺ヨーティアに呼ばれ」
ムンズ
セ「おわかりいただけましたでしょうか、ユートさま。ニッコリ 最後の戯れ言はヒミカの勝手な
脚色ですので忘れて下さい」
ア「そうなのかヒミカ?」
ヒ「ふふ、私は真実しか語らないの」
セ「そこ黙る。ユートさま、わたしの料理は、簡単で単純で簡素で適当で野戦食みたいで手抜きで、
3分間クッキングみたいに思えたわけですよね?」
ユ「い、いやあのさ、そこまで言ってないだろ。な、セリア。ただ椅子に座るとあまり待たなくて
済むってだけでさ」
セ「そうでしたね。申し訳ありませんユートさま。知らなかったのですからユートさまに非はありません」
ユ「そうだよなわかって」
セ「ですのでユートさまには今日から三日間私のフルコース料理を食べて頂くことが決定しま
した。今決まりました。アセリアも手伝ってね」
ア「ん、わかった。全力でいく」
ユ「ちょ、ちょと、まておい。ハイロウで縛るなっ!ヒミカっ助けてっ!」
ヒ「こういうオチなんですから諦めて下さい」
ハ「あら〜?一週間分の食材があったと思うんですけど〜なんだか減ってますね〜まだみっつの
日なんですけどね〜」
エ「わたくしは、弁明の機会どころか気にも掛けられないのですね」orz
は〜三週延びかな? 苦労しました。ってこの程度で言っていてはいけませんね。
で、まだつづいたり…………
「ほら二人とも。下着だけになったら食堂に降りてきてね」
エスペリアお姉ちゃんの言葉に、アセリアとセリアはうなずきました。
今日は、年に一度の”身体測定”でした。
二人は、服をんしょんしょとぬぎぬぎしたら、測定票をもって階下へと降りていきました。
セリアの票には昨年の結果が書き込まれています。もちろんアセリアのもです。
「今年こそ」
そう小さな胸に誓うセリアでした。
セリアの目算では、きっと勝っている、今年こそは。そう思っていたのです。
なのに…………
足りぬ……身長が足りぬ……
なんだか妙に低音の声が聞こえたような。気のせいでしょうか。
エスペリアの見ている前でウイングハイロウを展開なんて、ちょっと無理でしょうね。
ほんのちょこっと浮くことができれば良いだけなのにね。
だから、セリアは負けるとわかっている戦に赴かなくてはいけないのでした。うなだれて、
歩いていきます。まるで断頭台に歩いていくかのように。既にアセリアの結果は出ていますから。
「あら?セリアその髪どうしたの」
次の日、エスペリアは髪型の変わったセリアを見つけました。短い髪を無理矢理まとめて後
ろで一度持ち上げ、そこから垂れ下げていました。なんだか馬のしっぽのようですね。
「ちょっと気分転換なだけ」
セリアはなんだか顔が赤くなってしまいます。セリアの思惑なんてさすがのエスペリアだっ
てわかりそうもないのにね。でも今のままでは短すぎて用をなしてないかも…………
くいっ
「いたっ、ちょちょっとアセリアひっぱんないでって」
空間転移でもしたのかいきなり現れたアセリアがセリアの”しっぽ”を引っ張ります。そし
て呟くのです。
「これ、いい。私もしていいかセリア」
ばっと振り向いて。
「だめったらだめーー」
セリアは許すわけにはいきませんでした。
だってアセリアの髪はこのころから十分長いのですから、ね。
ほんとに終わり。
裏の背伸びネタ〜でした。思った通りの話しだぜって方、すいませんorz
乙彼さま〜
苦労スピ セリア の 細腕成長記w
嗚呼、同期がアセリアだったばっかりに…他の奴でもやっぱり苦労しそうだなw
つーか黒幕はむしろえspぇdrftgyそにくlp;@:
慌てず待っててよかった……厨房セリア、はじめての料理。
なんだかんだいってアセリアに出て行けとは言えないセリアの優しさが伝わってきました。
スピードを生かす調理をアセリアも見習ってほしいものです。
我が道を突き進むエスペリア、配慮の無さここに至れりですねw
それにしてもヒミカ、ナレーション腹黒すぎ…………(汗
そうかセリアのポニーは背を少しでも伸ばす為だったのか……てっきり顔グラ被(ry
>>217 乙でした。セリアのポニテとツンデレの起源に迫ってみたワケですねw
それにしてもエスペリアさん、貴方という女は本当に...
私が思ってたとおりのはらぐうわなにをsrm\\qえれめんtw¥bxlz
だ...第一回『やっぱりエスペリアタンが悪い』詰所会議を開きたいと...ガクリ
>217さん 髪結いの人さん
まさか、手早く料理を作るためにはこんな苦労をしなければイケナイとは……
スピード勝負の包丁捌きでも怪我をしなくなったのは、
アセリアの指ちゅぱに耐えられるようになってからのことでした。いけませんね。
「髪の毛で身長をごまかす、か。それなら良い髪型があったぞ」
「いえ、今はもうそんな事をする必要もないですから……あ、そんな強引に……」
「ちょんまげって言ってな。ポニーテールをそのまま前に持ってk」
ヘヴンズスウォード ヘヴンズスウォード ヘヴンズスウォード
>218
今は豪腕かも〜w 同期がヘリオンだったら……ハリオンだったら……セリアの人格形成がw
エスは良い子ですよ。
>219
すいません。喫茶えれぶらはお待たせしないのをモットーとしているのですがね。
やはり二人は竹馬の謎コンビ。ヒミカさんはえんたーていなーですから〜。セリアのポニーは
ねりーにも影響あるのかなぁ? エスは良い子ですよ。
>220
迫撃してみました。ちなみにEXでのネタです>必要最低限
背伸びと言うより意地っ張りかなw ハイロウドーピングは検査態勢が確立されてますのだ。
エスは良い子ですよ。
>222
三連ヘヴンズはネリーのだよっかってに使うなーーって確かに現在はセリアの方が長身っぽい>立ち絵
「ちょんまげですか……手前、今少しくわしく聞き賜りたく候。恐悦至極に存じ奉りますれば、ユート殿
のお言葉誠に勿体ない儀、重畳至極」ナニイッテルカワカリマセン
その包丁さばき…………既にラキオス一っ! 速いだけだけどな――。
エスは良い子ですよね。
第一回「やっぱりエスペリアたんハァハァ」会議を開きたいと………マナガタリネー
>221 ああっ振り込むの忘れてたorz
そしてウルカを筆頭にチョンマゲヘアーが流行り出すラキオス…………orz
てーん てーん てってってれーて てってってれって♪
ネリシア「「ぃえいっ♪」」
てーん てーん てってってれーて てってってれって♪ ぴぴこぴこぴこ♪
ヘリオン「そら けせらせら うらら♪ ちょっと もじもじと でーと♪」
セリア「こころ ころり ころんでも♪」
ハリオン「きっと ずっと きみとぼく♪」
ヘリオン「ゆめ みた みらい みな みたい♪」
セリア「ときめき どぎまぎ べりらっきー♪」
ハリオン「きらら ら せきらら♪」
ヘリオン「ひとり
ヘリオン&セリア「「ふたり
ヘリオン&セリア&ハリオン「「「ぴたり♪」」」
ヘ&セ&ハ『ぴったん たんた すぴりったん♪』
ててれてれっ てってんて♪
ネリシア「「わんつー♪」」
へ&セ&ハ『りんらん らんら すぴりったん♪』
ててれてれっ てってんてれー♪
ヘ&セ&ハ『ぴたたん♪』
てーん てーん てってってれーて てってってれって♪
ネリシア「「ぃえいっ♪」」
てーん てーん てってってれーて てってってれって♪……
…………
光陰「という夢を見たんだがどう思う悠人」
悠人「寝てろ」
完
大塚愛の「HAPPY DAYS」を聴くとヘリオンタンを思い出してハアハアしてしまう私は
既に半分逝っちゃってます...
突然ですがお題。
設定によると悠人召喚以前の小競り合いでラキオスのスピリットに
一名犠牲者が出ているそうですが、どんな色でどんな名前のスピだったのか
考えてみてください。ちなみにハ行では「ホ」、ナ行では「ヌ」「ノ」、サ行では
「サ」「ス」「ソ」が空白です。10点。
ガサゴソガサゴソ
悠「……ん?誰かいるのか?」
ガサゴソ
光陰「く……見つか…ねぇ」
悠「光陰?こんなところで何を…」
悠「おーい、光i
光陰「くそ!なんで見つからねえんだ!「サルでもできるナイペタツルリン体温高い系幼児体型魔法」の書ぉ!!」
……さて、今日子は何処にいたかな」
>>225 元ネタ知らないのに大爆笑してしまったw
同じ振り付けで踊ってるネリシアが「ぃえいっ♪」って……うわぁ、イイ!
雑魚スピコラボシリーズ化超希望w
>>226 現存する雑魚スピの数バランスから青とは考えにくい。
4部隊編成できるのにディフェンスの要緑が3人しか居ない事を合わせて犠牲者は緑と推定する。
頭文字で緑に使われてるのは『エ』『ハ』『ニ』。
それぞれ二次のマトリクスで五十音上被っていない所を見ると犠牲者もそれぞれの段とは被らないだろう。
つまり残っているのはう段かお段。次に行。ア行ナ行ハ行は被るので却下。
それ以外の行で一番スピの使用頻度が高いサ行の『ス』か『ソ』が怪しい。
『ソ』は某変態の頭文字なので、残る『ス』で考える。
ラキオススピはハリオンマジックに代表されるように、似たような名前が多い。
アセリア≒セリア、ハリオン≒ヘリオン、ウルカ≒ヒミカ。
そこで『スフィントール』なんかどうだろう…………などとつらつら考えてみた。
>225
ちょっとまった、光陰がセリアとハリオンを夢に見ちゃいかんっw
で ”きっと ずっと きみとぼく”で検索してみた。
tp://namco-ch.net/mojipittan/extra/download/music05.html
ゲームやらなくなって久しいのでよくわからん。上海? エロゲもこの三年くらいアセリアだけだし。
>226
むずいよw ぼけにくいし。まぁやはり赤スピにやられたんだから緑かな。で逆手を取って「ホリオン」とか
「フリオン」とか。「ヒリオン」は響きがヒリヒリ痛いな。「オリオン」はさすがにだめか。ファーが惚れて
ニム蠍に刺されると。
プリオン(コラ
>>225さん
大元をプレイする前に、OS版を先に知っていたせいか、
踊りながら時折ずっこけるヘリオンがエンドレス再生されました。
……髪の色が違うじゃないかorz
>>226さん
えーっと、序章のあの赤スピにやられたことになるんでしたっけ?それなら緑かな……でも。
作中、ラキオスには黒スピが少ないと言う台詞があった為、
多分元から二人だけのような気がする。青も
>>228さんと同様の理由でカット。
で、Nモード、ゲームスタート時点で戦力に数えられるスピ(個人的見解)は……
アセリア、セリア、エスペリア、ハリオン、ニムントール、ヒミカ、ファーレーン。
よって、赤スピが削られてしまったことにしてしまおう。
で、名前は『ホノオン』。
赤でオン使いたかっただけちゃうんかとk(ry
>>225 私も元ネタ知りませんでした。セリアの...セリアの、ツンのイメージがぁっ!!w
>>228-231 付き合って下さって有難うございます。自分でも出題した後答え考えててむずいと気付きました。
出題するって難しいですね...責任取って捨て身でボケます。
「〜ペリア」という名詞が多いのを踏まえて...
ヌルペリア ハリオンとエスペリアを足して二で割ったような緑スピ。(性格も)
_
/ /|)
| ̄|
/ / コレクライシカ オモイツカナイ…
>227
その神剣魔法は、本型永遠神剣『炉裏』の主じゃないと使えないぞっっっっっっっっ。
ちなみにハイペリアでは『炉裏』勢力と『柔倫』勢力の暗闘が…………ないらしい。
ぬるぺ
ガッ
ほんじゃちょっとした問題。
意外に気付いてない人多そうなお燗。
「レスティーナの弁当イベントで悠人は、ある物を何の前ふりも疑問もなく使っています。
さてそれは何でしょう? (配点7点) 」
まぁ佳織当たりを経由して入った情報かなぁ…………でも変だと思う。
携帯電話?
お箸?
その昔、召喚されたエトランジェが日本人だった……のかどうかは定かではない。
重箱?
>>234 左からセリア、ヘリオン、ハリオンだな。間違いない。
>239
風呂も和風だし、そうなんだろうな。
243 :
236:04/12/28 20:44:35 ID:ud5Q4Mkk
お箸です。238さん正解。って結構みんなわかってた?
求めのシドラス 誓いのソードシルダ 因果のえっとなんだっけ。
日本人だったらなんか風俗が残ってもいいかもね。
………
……
…
(゚∀゚)PS2公式更新キター(゚∀゚)
行けっ! 今すぐ逝けっっっっっっっ!!!
キャラの紹介欄が見にくいな。
そうだね。顔近づけないと字が小さくて読めんね。
セリアの紹介文とか、ニムのとか。なんかニヤリとしてしまう。まさかニムがねぇ…………
限定版買うしかないな、設定資料集付きでは。
なんか各キャラの性格付けが、ココと酷似してるのは気のせいか?
ともかく、ちっさく書いてある「個別シナリオあり」に期待してまう。
ハリオンのおっぱいがカットされた件について
>>248 ああ、「紹介文から」ってことね。いいんじゃない?ビジュアル的には
しっかり主張出来てるみたいだしw
それよりも自分の紹介文を読んだファーレーンが終わり二行で
酢を一気飲みしたような表情を浮かべている希ガス
公式設定?になってしまった>ファー (;´д⊂
未だに、と言うか今度こそか、呪いの今日子。また六位かよっ!
騎士の心ヒミカ。裾から白い布が出ていてもひっぱってはいけません。
セリアはまさにいいんちょ。
靴のデザインて前からああだっけ。
サブスピリット紹介のところ、ネリーの真上あたりにいる緑色の髪の長いやつ誰?
クォーリン?
ちっちゃく名前のアルファベット表記が判明してる。
ニムとかシアーとか、思ってたのと違ってて驚いた。
レスティーナでしょ。
雑誌掲載分のイベントCGから推察するに。
セリア・・・甘えるのも甘えさせるのも苦手か。
実にナイスだ。
ファーが不憫だなぁ・・・限界突破イベントとかあればいいのに。
まぁ、まずないだろうけど。
それと、日本一のキャラゲスト参加とかあったら個人的にはちょっと・・・
限定版欲しいけど手に入るかどうか不安だ・・・
限定版商法なんて嫌いだ・・・orz
>>252 多分レスティーナ。
ちなみにイベントCGは画像版に出てる。
服装がレムリアだ。
それよりも、大天才ヨーティア女史は全く出てきませんな・・・・・
やっぱ二ムが意外だったなあ。
ネリシアじゃなくて二ムだったんだー、最年少。
スタッフはココを参考に「ユーザーの声」を取っているにイピョーウ( ゚∀゚)ノ□
Exのときにも言った気がするけど、そうとしか思えない。
>>257 まぁ、スピの場合、物理年齢と精神年齢に人間以上に開きが出ても
おかしくないような希ガス。
てことで精神最年少はねryぃdrftgyへう゛んずvx3lp;@:
>>258 トップに sitemap.html への href 置いとけと小一時間(ry
そういえばエスペリアだけ髪の毛が茶色いな
>>260 俺は明日、ようやくエクスパンションなわけだが
ファーの髪が黒くない希ガス
Ex所有者、詳細キボー
>>261 ファーはどこも黒くない。目も髪も。
黒いのは見えない所。つまり腹だったんだよ!
263 :
名無しさん@初回限定:04/12/29 12:19:30 ID:oXQn+zy4
エスペリアの腹も緑?
264 :
名無しさん@初回限定:04/12/29 12:20:40 ID:YMv8QhqJ
エスは瞳が緑だよな。
悠人といちゃつきながら、説明していた記憶が。
>256
俺もそうオモタ
メインキャラクター
(ストーリーの本筋に大きく関わるキャラクターたち)
だったらなんでヨーティア先生とイオたんがスルーされているのかと‥‥
>>261 4スレ613「黒眉(こく−び)」参照のこと。
ファーレーンのニーソは立ち絵が黒なのにイビルでは白。
本当はどっちなのか、それが重要だ。
>>269 つまり、任務が終わるときちんと
着替えてはきかえていると…
ニーソをずらしている着替え中のファーレーン、
ハァハァ。
リバーシブルなのですよ
任務が終わってから、ニーソを裏返して履くファーレーン
………ヤダ。
正規ルートが黒なのは、PC完全版でファーレーンの足コキがあるからなんだよ!
…………足コキって黒じゃなきゃだめなのか?っていうかそれじゃイビル(ry
そうか、そうだったんだ。
ファーレーンのニーソは、本当は地肌だったんだよっ!!
これで黒グロだね>ファーレーン
エンディングでは、雑魚スピの行く末も言及してほすい。
別に愛のある足コキがあってもいいと思うが。
男が苦手(でもユートは好き)で手でも口でもできないから足で・・・とか
・・・・・・・駄目っすか?そうですか・・・・
いや、ファーレーン自体が腹g(ryの為、
正規のサブスピルートでも彼女のシナリオだけイビルルートうわまてやめ(ry
法皇の壁。
旧ダーツィー領ケムセラウトとサーギオス帝国領リレルラエルの間に横たわる巨大な防壁は、
そのまま大陸を横断して旧マロリガン帝国との接触まで遮断している。
「お〜お〜こりゃまた随分デカイ代物だなぁ、ここから見渡せる地平線全部壁じゃねぇか」
ケムセラウトの一室。窓際に立った光陰の呟きはあながち的外れでもなんでもない。横に並んで悠人が答える。
「でもそれを攻略しなければ帝国には侵入出来ない。佳織も取り戻せない。…………俺達はもうやるしかないんだ」
「ま、俺はもう悠人に従うって決めちまったからな、今更文句は言わんさ…………でも今日子、お前は残ってもいいんだぜ?」
「なに言ってるのよ、アタシだけ逃げる訳にはもういかないでしょ?それにアンタ達二人だと何かと不安だしね」
「今日子……ありがとな」
「な〜にシケた顔してんのよ悠!これはもう自分で決めたことだからさ。…………さっさと佳織ちゃんを助け出しましょ」
「そういうこった。悠人は大船に乗った気で俺達に任せとけばいいんだよ。何でも一人で抱え込むモンじゃないぜ」
背中を軽く叩いてそのまま肩を組んでくる光陰。悠人は黙ってもう一度二人に頭を下げた。
「友情って美しいですね〜」
「御三方の強い絆……感動いたしました」
「うう〜コウインさま、かっこいいですぅ〜」
「パパもなんだかおっとこらし〜!」
「これはジカイコウエンに使えるわね……メモメモっと……」
「……貴女いつも手帳を持ち歩いているの?」
「ヒミカのこれは最早癖になってますから」
「こほん……それはそうとユートさま、そろそろ会議に戻りませんと」
エスペリアの声に我に返った悠人を全員が注目していた。
とっとと終わらせて欲しいオーラを出しているニムントールと悠人の目が合う。
「あ、ははは……」
「…………ふんっ!」
「こ、こらニム……すみませんユートさま、折角感動的な場面でしたのに」
「ああ、いやこっちこそすまん、つい現実逃避してしまったみたいだ」
「だって〜退屈なんだもの。ねえエスペリア、部隊編成ってそんなに難しいものなの?」
「え、いえキョーコさま、以前はわたくしの一存に任されていたのですが……」
「ああ、エスペリアの指示は的確だったからそれで問題なかったんだよな」
「それでどうして今回は会議までしてるんだ?俺達のことなら気にしなくてもいいぜ?」
「そうそう、適当に悠のアシストでもしてるからさ」
「そんなもったいない……実は最近ユートさまの部隊にどうしてもという内密な相談を頻繁に持ちかけられてまして……」
「あ〜エスペリア、それ言っちゃダメだって言ったのに〜!」
「ネ、ネリーちゃん、ばらしてるよう……」
「…………へ〜悠って結構モテるんだ……どれどれエスペリア、誰と誰が悠と一緒に戦いたいって?」
「え、ええ……」
困った顔で一同を見回してから今日子に編成表を見せようとするエスペリア。
とたんその場にいたほぼ全員が弾かれたように立ち上がった。
「だめ〜!」「いけませんっ!」「キョーコさま、それだけはっ!」「あ〜れ〜」
その様子をイジワルそうな表情で流し目しながら今日子がエスペリアの手元を覗き込む。
「いいではないかいいではないか……ふんふん、ネリーシアーオルファヒミカファーレーンハリオンっと」
「お姉ちゃん、いつの間に……」
「ち、違うのよニム、これには遠大な訳があって」
「お姉ちゃん、ニムの目をちゃんと見て」
「う…………」
「ヒミカ、抜け駆けですか?」
「おかしな言い方しないでよナナルゥ、わたしはただアタッカーとしてお役に立てれば、と……」
「セリアさんは〜いいのですか〜?」
「こんなのはエスペリアの決めた通りでいいんじゃない?どうでもいいわよ」
「それにしては〜握った拳がぷるぷるしてます〜」
あっという間に喧騒に満ちた面々。エスペリアが溜息混じりに額に手を当てた。
「つまりあれだ、要するに悠人が決めちまえばいいんだ、とっとと決めろコンチクショウ」
悠人のモテっぷりに半ば呆れ顔の光陰が投げやりに提案する。しかしその一言が場を一気に沈黙させた。
「お、おい光陰…………うっ………………」
期待の視線が悠人に集中している。後づさりながら悠人はどうやってこの場を切り抜けるか必死で考えた。
「早くしなさいよ悠、会議が長引くじゃない」
「お、おぅ…………」
焦っている悠人に今日子がとどめを刺す。気のせいか二人ともニヤニヤと笑みを浮かべている。悠人は心の底から二人の薄い友情に感謝した。
(お前ら早く会議を終わらせたいだけだろう…………くそ、どうしろと…………)
もう一度一同を見渡す。らんらんと輝いた少女達の視線が痛かった。
連れていけるのは二人。名前の挙がった娘の内から選べば修羅場は間違いない。
ふと蒼い髪の少女と目が合った。無関心を装っているふりをしているが、視線を決して逸らそうとはしていない。
「その…………なんだ」
無言の脅迫。真剣な面持ちが心なしか睨んでいるような。鳴り渡る警鐘に背中を押され、悠人は一人の名前を挙げていた。
「…………アセリアと」
ほうっと溜息ともとれる声が会議室に立ち込める。それが更に緊張感を煽って悠人は息が詰まりそうになった。
もう無難な所で適当にエスペリアでも指名するかと考える。
(……いやでもそれじゃ他の部隊と戦力バランスが取れない。本末転倒だ)
(誰か適当に強すぎないでそれでいてアセリアのスピードに付いて行ける、出来れば青以外の…………あ)
部屋の隅っこで縮こまっている小柄な女の子に目をやる。うつらうつら揺らしているおさげ頭を悠人は指名していた。
「それじゃ、ヘリオンに頼むかな」
「…………ふぇ?…………は、はいぃ!」
いきなり名前を呼ばれたヘリオンが慌てて立ち上がり、体を勢いよく曲げる。がつんと机に頭を打ち付けた音が響き渡った。
「うう〜〜、い、痛いですぅ〜〜」
涙目で赤くなった額を擦ると、ヘリオンは無意味に辺りをきょろきょろと見回した。一同が注目している。
「あ、あれ?どうしたんですかみなさん、なんだか一部睨まれているような気がするんですけど…………」
―――――――――
ケムセラウトを出撃した悠人達は法皇の壁兵へ波状攻撃をかけていた。
とにかく城壁に篭るスピリット隊の数が半端じゃない。以前サルドバルトで戦った時、いやそれ以上の大兵力が巨大な壁に篭っている。
(“ただの壁”でさえこれだ)
戦いの最中、悠人はサーギオスの強大さを想像するたびに気の遠くなる思いがした。
(とにかく少しづつ削るしかない。それも、帝国からの増援がこないうちに)
そう決心した悠人はケムセラウトとの反復を諦め、城壁付近に陣を構えた。
そして何回目かの突撃の後。
悠人とヘリオン、アセリアは遂に城壁内部への侵入を果たしていた。
ここで敵主力を追い出す。そうしなければ、もう味方が限界だった。体力的にも、精神的にも。
城壁は基本的に居住空間ではない。上下に昇降するための階段があちこちにある多層構造だ。
狭い空間では比較的待ち伏せによる数の纏まった攻撃を心配しなくても済んだ。
ところで、高い位置からの展望は篭城戦では生命線である。
ここを押さえてしまえばもし主力が別にいても立ち枯れてしまうのは自明だった。
それでも広い頂上部に敵主力が控えているのは間違いない。アセリアが先頭に立ってひたすら上へと駆け上がる。
悠人達は意外と何の抵抗も受けず屋上へと到達した。
まず勢いよく飛び込んだアセリアの目に空の青が広がる。その時、風が動いた。
「…………はぁっ!」
猛然と襲い掛かる深紅の炎。イグニッションがアセリアを襲う。予感に逆らわず既に身を翻していたアセリアの『存在』が光り出す。
ウイングハイロゥを展開しつつ敵の数を確認しようとした所でひょっこりと通路からヘリオンが顔を出した。
「ふぇぇ〜ん、髪、少しコゲました〜」
「だから言っただろ、顔出すなって!全く落ち着かない奴だな!」
「う〜、すみませ〜ん」
「………………」
アセリアの身体からがくっと力が抜けた。
緊張感が一瞬抜けたのは敵も一緒だった。というか。
「またアンタなのかよぅっ!」
半ば投げやりなお姉さんの声がこだまする。つくづく縁のある人だった。
「まったくことごとく任務に失敗した挙句こんなとこに飛ばされたと思いきや…………」
そして地団駄を踏みながら、延々と愚痴をこぼし始める。
一応リーダー格なのだろう、突然の隊長の錯乱に他のスピリットの動きも完全に止まった。その隙を突いて、ヘリオンが挨拶をする。
「あ、あ、その節は、どうもっ!」
「……ヘリオン、知り合いか?」
「あ、アセリアさん、実はですねあの夜に……」
「ふんふん、ユート、あのお姉さんにも手を出していたのか?」
「どうしてそうなる!って、だーーーっ!そんなことはどうでもいいっ!おいお姉さん、ヘリオンと知り合いなら話が早い、ここは引いてくれ」
「誰がお姉さんよっ!そんな訳にいくかっっ!!!」
もう呼称がお姉さん確定になってしまった哀れな少女の鋭い一言で和平交渉はおしゃかになった。高速詠唱と共に敵の姿が緑の壁に包まれる。
同時に先程イグニッションを放ったスピリットの神剣の先にも赤い光球が複数浮かぶ。しかし構わず悠人達の言い合いは続いていた。
「大体“にも”ってなんだ、あの話は誤解だって言っただろう?!」
「そんなこと、ユートは言ってない」
「そういう問題じゃない、少しは読んでくれ空気を」
「うぇ〜んそういえば髪が…………」
「 無 視 す る な っ っ !!!!」
お姉さんの怒号と共に敵スピリット達が一斉に動き出す。
仲間割れを始めた悠人達に向かって怒りのファイアーボール(×4)が放たれた。しかしそのとたん、今までの喧嘩が嘘のように悠人が叫ぶ。
「ヘリオンは待機、俺は右、アセリアいいなっ!」
「ん、マナよ、凍てつく風を運べ 争乱を止め……」
「は、はいっ……ええと、ええと……って……え?待機?」
「うおおおっ!」
アセリアのサイレントフィールドが発動した瞬間お姉さんの怒り(自分で放った訳ではないが)はあっけなく霧散した。
同時にその左を駆け抜けていくアセリア。面食らったレッド・スピリットに次の詠唱をする暇も与えず殺到する。
攻撃力に特化した場で悠人は右手の敵をまとめて薙ぎ倒していた。蒼いオーラフォトンが『求め』全体に煌いている。
「…………なっ!」
お姉さんが驚きに目を見開いた時、敵は既に全滅していた。
――――――
アセリアに神剣魔法を封じられたお姉さんは殆ど為す術無く味方が全滅したのを確認すると逃げ出した。
「覚えてなさいよ〜〜〜!!!」
まるで悪役のようなセリフである。しかし悠人達はあえて彼女を追いかけようとはしなかった。
「よ、アセリアお疲れ」
「ん……ユート、怪我はないか?」
「ああ、アセリアも大丈夫そうだな…………ヘリオン?」
「へぅ!…………は、はいっ、今行きますっ!!」
アセリアと悠人のコンビネーション。
それが先日の光陰と今日子の姿に重なってしばし呆然としていたヘリオンは慌てて悠人の元に駆けて行った。
こうして法皇の壁が落ちたその夜。
ヘリオンは一人ベッドの中でいじけていた。
「そりゃあわたしはドジですけど、だけどいくらなんでも待機ってひどいじゃないですかぁ……」
昼間の悠人とアセリアを思い出す。あんなに喧嘩していたのに、呼吸がぴったりだった…………なんだろう、もやもやする。
コウインさまとキョーコさまの時はこんなこと考えなかったのに。ただ羨ましいだけだったのに。
結局自分が悠人に戦力として期待されていない事が悔しいのだろうか。でもそんなのは今更だし前はこんな気持ちにはならなかった。
「ユートさま、アセリアさんにはあんな顔で笑いかけるんだ……」
訓練に付き合ってくれた時の悠人の少し困ったような笑いを思い出す。比較している自分に驚いて頭をぶんぶんと振った。
枕に顔を押し付ける。
「ユートさまの…………ばか…………」
寝言のように呟いて、ヘリオンはそのまま不貞寝の中に落ちていった。
「ヘリオンは待機、アセリア行くぞっ!」
「ま、待ってくださいユートさま……って…………いっちゃった……」
法皇の壁を抜いた数日後。リレルラエル城に突入したラキオス軍は帝国軍と混戦の真っ最中にあった。
その中にあってめざましい活躍をしている悠人隊であったがその殆どは悠人とアセリアのコンビネーションによるものだ。
二人の完全に息の合った攻撃と防御。ヘリオンはただそこに居るだけといった格好である。
ぽつん、と取り残されたヘリオンは暫くその光景を眺めていた。
悠人のただ振り回しているだけのような剣技。その稚拙さはヘリオンでもこうすればもっと良くなるのにと思わずにはいられない。
ただその威力はやはり神剣『求め』の影響なのかそれとも悠人の潜在能力なのか、強大である。
逆に力に振り回されている様な気がしないでもない悠人をしっかりサポートしつつ、側でアセリアが『存在』をなびかせる。
無関心を装ってはいるが未熟な悠人に常に気を使っているのだ。更には自らも斬りこんで敵を倒す。
さりげなく背中に立って逸る悠人を抑え、バニッシャで相手の神剣魔法を崩す。
それらが全て暗黙の了解で行われているのだ。改めて見るとやはりお似合いの二人に見えた。
やがて周囲の敵が沈黙するのを見届けたアセリアが悠人に何か話しかけている。そして答える悠人の顔も笑顔に満ちていた。
ふと自分を省みてしまう。もしあの場に立っているのが自分だったら……もしもあんな笑顔で応えてもらえたら……
(わたしだって…………)
「ヘリオン、おいヘリオン、どうした?」
いつの間にかこちらに来ていた悠人が微笑みかけている。
でもやはりその笑顔はさっきアセリアに向けられていたものとは違うもの。保護するもの、例えるなら、まるで「妹」を見るような目。
ちょっと痛い心を抑えてヘリオンはにっこりとガッツポーズをした。燻ぶった心を悟られないように。
「大丈夫です!さ、行きましょう、ユートさまっ!」
その無理をした笑顔の意味に気付かなかった事を悠人は直後後悔することになる。
次の部隊を捕捉したとき。ヘリオンは悠人が指示を出す前にいきなり動いた。
「お、おいヘリオン、ちょっと待て!」
悠人の制止も聞かず、駆け出す。ウイングハイロゥを羽ばたかせ、加速をかけた。
「大丈夫です……いこう、『失望』!」
握った『失望』が共鳴して光り出すのを確認してヘリオンは詠唱を始めた。サポートに回っている敵に照準を定める。
自分だってやれば出来るというところを悠人に見せたかった。
(わたしだって…………!)
今出来る最大の詠唱魔法、ダークインパクト。それで敵の陣形を崩す。その間に……そこまで考えた時、ヘリオンの詠唱がいきなり絶叫に変わった。
「あそこを先に叩けば…………って、きゃ〜、ど、どいて下さい〜っ!!」
敵味方屈指のスピードが致命傷になった。詠唱前に敵に到達してしまったのである。ドジの本領発揮であった。
敵こそ驚いただろう。自らの神剣魔法の詠唱を終える前に斬りこんで来るスピリットなど聞いた事もない。
「あ、あわわ、ぶつかる〜〜〜〜」
「ちょ、ちょっと……きゃぁぁぁぁ!!!」
動揺しつつヘリオンを避ける敵の群れ。逃げそこなった哀れな一人がヘリオンに巻き込まれて壁に激突した。どすんと鈍い音が城内に響き渡る。
「〜〜〜〜〜〜〜きゅぅ」
「いたたたた〜〜…………あ、あの、大丈夫でしたか……あれ?」
頭に大きな瘤をこしらえて目をぐるぐるさせている敵グリーン・スピリットが下敷きになっていた。というかお姉さんだった。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさ〜い!!」
今度は怒る暇も与えられずに気絶させられてしまったお姉さんにヘリオンがぺこぺこと頭を下げる。かなり間抜けな光景だった。
一方動揺から立ち直った敵集団は仇とばかりにヘリオンに襲いかかろうとしている。そこにやっと悠人が飛び込んできた。
「大丈夫か、ヘリオン!」
駆け込みざま一人の少女を斬り倒しつつ悠人が叫ぶ。
「は、はい、大丈夫です!」
ヘリオンは条件反射で立ち上がると急いで悠人の側に駆け寄った。背中合わせになって剣を構える。
期せずして悠人とコンビが組めた。胸の鼓動が高鳴る。わたしだって…………ヘリオンは期待と緊張を抑えながら『失望』をぎゅっと握り直した。
「よし、それじゃ早速だけど……逃げるぞっ!」
「はいっ!…………ふぇ?」
予想外の悠人のセリフにあっけに取られ、ヘリオンは思わずまぬけな声を上げてしまう。
「だから逃げるの。アセリアが向こうでエーテルシンクを掛けるから、その隙に。……いくぞっ!」
駆け出す悠人。しかしその声はもうヘリオンには届いていなかった。
やっとアセリアさんみたいに悠人と戦える。やっとアセリアさんみたいに悠人と一緒にいられる。
アセリアさんみたいに。アセリアさんみたいに。それなのに…………
「…………やだ」
ヘリオンの呟きは悠人に聴こえない程小さい、でも初めて見せたヘリオンの我が侭だった。
――――――
悠人の背中が遠くなっていく。おそらく付いてきていない自分のことなど気付いてもいないのだろう。
――寂しい。悔しい。哀しい。様々な感情がヘリオンの中で渦巻いた。
判ってしまった。わたしはユートさまになにも期待されていない。でも、それも当然。
今までなにも出来なかったのだから。ひたすら甘えてきただけなのだから。守られて、いるだけだったのだから。
…………それなのに、今更アセリアさんの真似をしたいなどと考えるのがおこがましかったのだ。
初めて出来た大きな、兄のような存在。嬉しくて、甘えてきた。安心して、頼れた。いつも、後ろばかり追いかけていた。
それだけでよかった。今までは、それだけでよかったのに―――
「……でも、このままじゃ、やだ」
下を向いたまま呟く。
一度も横に並んだことなんて、ない。一度も助けたことなんて、ない。一度も対等に戦ったことなんて……ない。
…………認めてもらいたい。横に並んでもいい、と。助け合ってもいい、と。対等に戦ってもいい、と。
――――だから…………アセリアさんのところに。
「いっちゃ………………やだ」
迫ってくる敵の姿に被って悠人の背中が見えなくなる。ヘリオンはかっとなった。
「…………っわたしだってっっ!!」
あふれ出てくる感情をそのまま爆発させる。『失望』が呼応して大きく輝きを増した。
「わあああああああっ!!!!」
大粒の涙をこぼしながら、そのスピードを最大にして斬りこんだ。集中していた敵に対しての三連撃。袈裟、薙ぎ、振り下ろし。
一番近くにいた青スピリットが驚きの表情を見せたまま崩れ落ちる。ヘリオンはそのままハイロゥを羽ばたかせて飛び越えた。
着地と同時に悠人の姿を確認する。いた。ようやく気付いて振り向いた悠人の慌てている表情が見える。
そのまま駆け寄ろうとして…………肩に一撃を受けた。それでも走ろうとして……今度は肢と背中。体の力がふっと抜ける。
「……あぅっ!」
倒れこむ体を必死にささえているところに正面に立った黒スピリットの冷たい笑みが迫った。
細身の剣がヘリオンを貫く。腹部に熱いものを感じながら、ヘリオンの意識は遠ざかった。
追って来ないヘリオンに気付いた悠人が振り返ったとき、既にヘリオンは敵の集団に包まれていた。
何人かの剣から赤いものが飛び散るのが見える。悠人は弾かれたようにそこに駆けつけた。
「うおおおおおっ!!!」
背中を向けている敵にオーラフォトンブレードを浴びせ、周りを睨みつけて牽制する。
ふと今倒した敵が手に持つ剣が視界に入った。膨れ上がる嫌な予感。不自然に斜め上を向いているその神剣の先を辿る。
細く伸びた剣の先は途中で消えていた。どくんとひとつ大きく心臓が波打つ。更に追ったその先には……ヘリオンが赤く染まって立っていた。
からん、と妙に乾いた音を立ててその手から『失望』が落ちる。悠人は頭が真っ白になった。
「ヘリオンっっ!!!」
剣をその身深く貫かれたまま、ヘリオンはゆっくりと倒れようとしていた。それを悠人が無我夢中で強く抱き締める。
その身体が冷たく、やけに重く感じられた。血の気の無い青い顔を覗きこんだとき、なにかどす黒い霧の様な思考が悠人の頭を掠めた。
『求め』が鈍く、ひっそりと息づいている。しかし今の悠人にはそれに気付くゆとりなど無かった。
「くっ…………ヘリオン、ヘリオンっっ!!!」
叫びながら激しくヘリオンを揺さぶる。すると微かに細い眉が動いた様な気がした。
「…………う、うう………………」
「!!ヘリオン?!」
慌てて顔を近づける。と、僅かだがまだ息はあった。
アセリアのエーテルシンクで神剣魔法をバニッシュされた敵は斬りこんでくるアセリアをまず考えるべきだったろう。
しかし目の前でたかが一スピリットに泣きながらしがみ付く男に気を取られていた彼女達は猛然と突っ込んでくる『蒼い牙』に抗する暇も無かった。
数人倒された後で総崩れになり四散していく。それを確認したアセリアは悠人達の側に駆け寄った。小さく悠人の呟きが聞こえてくる。
「大丈夫……まだ生きてる……大丈夫だ……大丈夫だ…………」
アセリアは屈みこんだ。悠人越しにヘリオンの様子を窺うと尋常ではないマナが傷口から蒸発している。相当の重症であることがすぐに判った。
「大丈夫だ…………大丈夫だ…………」
それでも悠人はまだぶつぶつ呟いてヘリオンを抱き締めたままだ。アセリアは両手で悠人の頬を押さえ、こちらを向かせた。
そして真っ直ぐ悠人の目をみながら、激しくその頬を打つ。驚いた悠人の目に正気が戻ってきた。
「…………アセリア……?」
「ユート、ヘリオンはまだ生きてる。どうすればいい?」
「え…………?」
一瞬意味が判らない、といった表情を浮かべた悠人だったが、すぐにはっとなって考え始める。
「あ…………ああ、そうだ、すぐにエスペリア達と合流しよう。アセリア、位置は判るか?」
「ん、ユートはヘリオンを連れてきて」
駆け出そうとするアセリアに悠人が後ろから声を掛けた。
「……アセリア、ありがとな」
「ん。………………こっちっ!」
「ああっ!」
先行するアセリアに遅れないように、悠人はヘリオンを抱いたまま駆け出した。
ばきっ!
病室前の廊下に光陰の拳の音が響き渡った。
「お前がついていながら!なにをやってたんだ悠人っ!!」
「ちょっと光陰!」
「コーインさま、おやめ下さいっ!」
更に悠人に掴みかかろうとする光陰の腕を掴んで今日子とクォーリンが必死になって止めようとする。殴られた悠人はそのままうなだれて動かない。
「放せ今日子!コイツはっ!」
「だから少し落ち着きなさい!悠だってやりたくてこうなった訳じゃないでしょ!」
「当たり前だっ!俺が怒っているのはそんな事じゃない!おい悠人、なんでヘリオンちゃんを一人で放っておいた!」
今日子達を振り払ってそのまま悠人の胸倉を掴む。光陰は悠人を睨みつけたまま少し落ち着いた声で続けた。
「俺はなあ悠人、お前なら大丈夫だと思ってた。俺達が間違っていると、俺達が信じようとしなかったものを、救ってくれたお前なら」
「………………」
「なのに今日のざまはなんだ?お前、ヘリオンちゃんを信じてなかったばかりか追い詰めた挙句ほったらかしか?はっ、いいご身分だな!」
「………………」
「ちょ、ちょっと光陰…………」
「黙ってろ今日子、いいか悠人、あの娘はお前を慕ってる。悔しいがそれは事実だ。その意味をよく考えろ」
「………………」
「お前がアセリアに惹かれているのは判る。だけどこれはそういう問題じゃない。いつかはっきりしないとこんな事がまた起こる」
今まで無気力だった悠人が光陰のその言葉にピクリと反応した。俯いていた顔を上げる。
「俺がこんな真面目な話をするのはこれが最後だ……いいかよく聞け悠人、お前がマロリガンで見せてくれた戦う意味って何だ?」
「俺が……戦う、意味…………」
「そうだ、それは“ただ”守りたいものなのか?それとも信じられるものなのか?信じようと出来るものなのか?」
「………………」
「頭を冷やしてよく考えるんだな…………じゃあなっ!」
どんっと悠人を突き放すとそのまま光陰は去っていく。慌てて今日子とクォーリンがその後を追いかけた。
リレルラエルは陥ちた。しかしその代償は決して軽いものではなかった。
落城寸前ヘリオンを抱えた悠人達は法皇の壁に設置された仮詰め所に飛び込んだ。
たまたま帰還していたエスペリアと落城した城から戻ってきたハリオンが一昼夜治癒魔法を掛け続け、症状が安定したのが今夜の事だ。
既に戦いが終わってから2日経っていた。
しかし戦力の大幅ダウンで激戦を余儀無くされた他のスピリット達は傷だらけのままだったしエスペリア達は疲れ果てて眠ってしまっていた。
そして先程のいざこざ。仮詰め所内には重苦しい空気が立ち込めていた。
悠人は城壁の屋上に立っていた。分厚い壁の縁に寄りかかりながらリレルラエルの方角を眺める。
城は今ラキオスの一般兵士達で守られていた。篝火が幾つも点滅している。夜風が涼しかったが今の悠人にそれを感じる余裕は無かった。
「…………いい風ですね」
ふと声がすぐ側から聞こえる。
そこにはいつの間にか深緑の髪をそっと押さえたファーレーンがいた。先程の悠人と同じようにリレルラエルをじっと見つめながら。
「……ファーレーン」
「ユートさま、隣、宜しいでしょうか?」
「あ、ああ……」
にっこりと微笑んだファーレーンがすっと静かに腰を下ろす。流れる髪から微かに森の匂いがした。
「………………」
「………………」
少しの間、沈黙が広がる。二人とも視線を前に向けたまま、何も話さない。ゆっくりと時が流れた。
暫くの間があった後、ファーレーンが静かに話しかける。
「……ユートさまも涼みにいらっしゃったのですか?」
「…………え?」
何気ない一言にぼんやりと振り向く。するとファーレーンもいつの間にかこちらをじっと見つめていた。
そこで悠人は彼女がいつもの兜を脱いでいることにようやく気付いた。意志の強い濃緑の瞳。すっきりとした面長の顔にきゅっと引き締まった唇。
素顔の彼女は凄く大人びた優しい表情をしていて、とても昼間見せる冷徹な戦士の面影は無かった。悠人は少し恥ずかしくなってきて顔を背ける。
「あ、ああ、そんなところだ」
くすっと小さな忍び笑いが聞こえた。
「ねえユートさま、わたし思うんです。どうしてわたし達は戦っているんだろうって」
「?」
いきなりの言葉に悠人は答えようが無かった。返事が無いのを気にする風もなくファーレーンは話し始める。
「でもね、それはユートさまのお陰、なんですよ?」
「……俺?」
自分の名前が出て悠人は驚いた。
短く呟く悠人に、ファーレーンは眩しそうに目を細めながら微笑む。
「ええ、サモドアでユートさまがアセリアに仰ったというあの言葉……わたしはその場にいませんでしたけど、あのお芝居でちゃんと伝わりました」
以前ヒミカが行ったナナルゥ達の為の演劇。ファーレーンはそのことを言っているのだろう。悠人は懐かしく思い出した。
「ああ、あれか。でもあれは…………」
そこで言葉を飲み込む。アセリアに伝えたあの一言。あれは確かに自分の本心だった。だけど自分はそれを守れなかったのだ。
光陰に言われたことを思い出す。俺の戦いの意味。信頼出来るもの。信じられるもの…………
再び俯いてしまった悠人をファーレーンは優しく見つめて続けた。
「わたしはそれで守るべきものを確信することが出来ました。だから……ユートさまが今ちょっとだけ迷われていてもそれを信じる事が出来ます」
風が強く吹いた。乱れる髪を抑えながらファーレーンはそっと立ち上がる。
月を背にしたすらっとした長身。それでいて柔らかい女性的な物腰を備えたシルエット。
かちゃり、と腰の神剣が静かな音を立てる。名前と同じ穏やかな光を浴びて浮かび上がった影。
悠人はファーレーンに見とれた。綺麗だと、純粋に思った。
「だってそれが、ユートさまに教えて頂いたものだから。みんな、そう思っています。もちろんヘリオンも」
「あ……」
「ふふっ。あの娘はちょっとドジですけどね」
ヘリオン、という単語に反応した悠人の声が上ずったのを見て、ファーレーンは可笑しそうに肩を丸めてくすくす笑った。
ようやく苦笑いを返した悠人も立ち上がって答える。
「それは酷いなファーレーン。ヘリオンはちょっとじゃなくて、“一生懸命背伸びした”ドジだ」
悠人のおどけた口調に一瞬目を丸くしたファーレーンが直後ぷっと軽く吹き出した。
「まあ……それじゃなおさらユートさまがしっかり付いていてあげないと」
「ああ、やっと判った……じゃなくて思い出したよファーレーン。行ってくる」
「はい、行ってらっしゃい、ユートさま」
駆け出す悠人の背中にファーレーンの声が被さる。悠人はちょっと振り返り、はにかみながら呟いた。
「ありがとう、ファーレーン。その……さ、ファーの笑ってるとこ初めて見たけど、優しいお姉さんみたいな感じで凄く安心出来た」
「え…………あ…………」
立ち去った悠人の背中を名残惜しそうに見つめながらファーレーンはそっと囁く。
「もう…………今更やっと『ファー』なんて呼んで下さるなんて……あいかわらずズルい人ですね…………」
風だけが、それを聞いていた。
296 :
信頼の人:04/12/30 02:25:55 ID:a5Y3wHlN
V あとがき
光陰とファーレーンかっこいいこと言ってますが、何気に二股容認です、いけませんね。
読んで下さった方、有難う御座いました。誤字脱字今回特にハリオンマジック等ご指摘があれば幸いです。
というかナンバリング一つ間違えてた……_| ̄|○
乙です。
お姉さんついにレギュラー化。
でも、出てくるごとに酷いめにあってるし。
実は結構かわいそうなキャラ?w
アセリアと自分の違い、アセリアと自分に向けられる悠人の想いの違い、
それらに思い悩むヘリオン。
といった感じでしょうか。
ヘリオンの心情がよく描写されていると思います。
GJ!
・・・愛さえあれば二股だって・・・いや、ダメか?
乙です。
光陰がこのスレ的には珍しくカッコいい!親友とはこういう男をいうんだ!みたいな。
とかなんとか書きつつラストのファーレーンに一番萌えたわけですが・・・
なにはともあれGJです。
ところでファンタズマゴリア・・・っていうかラキオスは一夫一妻?
どこかにそこら辺の記述ありましたっけ?
もし一夫多妻ならハーレムエンドも・・・・駄目だ俺・・・
乙です。
うんうん、がんがれヘリオン。お前にはお前の良さが(ry
悩んでも。転んでも。きっと通過儀礼。いつか糧になる。
ま、周囲に恵まれてないとアレなんだけど。
やっぱり光陰は味ある助演だねぇ。笑いにも渋さにも熱さにも。
ファーレーンがおいしいとこ持ってくのは…まぁ信頼の人氏だしw
>>298さん
年上に憧れる少女が最初に感じる壁、みたいなものを書いてみました。
ヘリオンの心情が伝わってたら嬉しいです。
>>299さん
光陰とファーのマイナスイメージ払拭作戦展開中w
一夫一婦制についての記述は無かったと思いますが……むしろ思いたい(汗
>>300さん
なにせつけられた異名が黒☆魂ですからw >ファー
なんだかんだいってヘリオンは幸せ者なんですよね、いいお姉さんに囲まれて。
むしろ支えてくれる周囲の方が実は書いてて大変だったり(汗
ユートのくせにお姉ちゃんのこと馴れ馴れしくよぶなっ!、、、とか言われそうなユート君ですね。
ラキオスドラフト会議は逆指名の嵐っ!w
駄々っ子ヘリオン。いつの間にか立場逆転? のアセリア。
光陰、熱いぜっ。
「ねーねーニムントールちゃん。俺コブシちょっときれちゃった。ちょっとなおしてくれないかな〜」
「…………やっぱりバカ(見直してそんした)」
GJ!!ファーレーン!!
で、唐突に話は変わるのだが、さっき風呂にはいっていて、なぜかふと思った。
聖賢の問いに、答えはわからない。だから永遠に探し続ける。って答えた悠人の言動と、
聖緑の強さを示せという言葉に、弱さを無様にさらけ出して、且つそれを認めたエスペリアの行動って、
本質的に同じかも知れないなーと。
話をぶった切ってすまなんだ。
信頼の人さん、乙でした。
ちょっと早いですが、皆様、良いお年を。
>>296 信頼の人さん
お疲れ様でした。光陰もファーレーンもイイ!!しかしそれ以上に……
>「いっちゃ………………やだ」
に撃沈しました。切々と吐き出された後悔の後にこの一言。
想うだけでは何事かを成すには足りない。これが前回から続けられているように思ったのですが、
ヘリオンはこの先、この言葉を声に出したことから行動に出られるようになるのかどうか。
悠人にしてみれば、ヘリオンに対する行動は守るための行動だったのでしょうけれど、
その守り方は彼が妹に強いてきたのと同じような物でしかなかったのかなあ、と。
「初心に戻った」悠人がどんなアプローチを見せるのか楽しみになりました。
一旦決定しかけた流れを引き寄せるには、並大抵の努力じゃダメなんだ、ヘリオン。
だから、一生懸命努力して努力して努力して……ドジるのがヘリオンか。あれ?
特攻へリオン乙〜。
なんだか敵スピのお姉さんがタ○ムボカンシリーズの悪役と
被さって仕方ありません、うう...(泣
いや、それにしてもついに本気出してきましたね、ファーレーン。
だからあれほどファーだけは敵に回すなって言っておいたのに、ヘリオンの馬鹿ぁ〜w
>>302さん
イベント丸々駄々っ子に取られたアセリア。泣く子には勝てませんw
いかんせん相手が悪かったのかどうかは結局悠人次第です。
>>303さん
どちらも自分の弱さを認めた上で立ち向かう、そんな点が実はゲーム自体のテーマかも知れませんね。
良いお年を。又来年スレで会いましょうw
>>304道行さん
ヘリオンものを書き始めた当初中々この甘えん坊が一人歩きしてくれずに四苦八苦してた時、
初めて自分の中で「勝手に喋って」くれたのがこのセリフでしたので「撃沈」頂いたのは光栄ですw
今回は色恋よりも「悠人にどう見られるか」しかヘリオンは考えていませんが(汗
アセリアに比べて比較的「積極的」なヘリオンを悠人がどう捉えるか、その辺次回以降上手く出てたらなぁと思ってます。
ちなみに悠人はヘタレなのでそう簡単にアプローチは出来ないでしょう。
恋愛に関して何か切欠がないと自分から動けない、その辺アセリアと悠人は似ていると思ってますので(汗
>>305隠……ヘリオン儲さん?w
その内髑髏マークのボタンを押すようになります。嘘です(汗
いや今回のファーレーン、ヘリオンを応援してますよ…………ね?
悠人がふらついたのは多分作者の感情移入が(ry
(´-`).。oO(大掃除ネタ、ついに出てこなかった……)
…………面倒くさい
こらニム!そんなこと言うんじゃありません。
普段使ってない穴のお掃除
今さら
>>66に反応してみる
にむねこ【ニム猫】[名]
大地と木の妖精が猫化したもの、あるいはその逆とも言われる。
大木(広葉の常緑樹を好むとの説あり)のうろや根元、
冬の朝の毛布の中、炬燵の中などでの目撃例がある。
基本的に人を嫌うが、一度気に入られるととことん懐かれるらしい。
懐かれて幸せにしてやると、その者に大きな幸運を運ぶとも言われるが、
目撃例自体が極めて少なく、詳細は今なお不明である。
オルファは単体ならエスの手伝いしそうだが、ネリシアが絡むと散らかすほうに回りそうだ。
>>310 「うーん、随分と汚れがたまるもんだな。
これじゃ何のために空いてるか分からないじゃないか。
……ほら、指で擦っただけでこんなになっちまったぞ……
部屋じゃ駄目だな、こりゃさっさと風呂場で洗ったほうが早そうだ」
【……契約者よ、我を丸洗いにする気か。待て。冷や水は体に悪い】
「黙ってろバカ剣」
あの穴なんだろうね
軽量化?
切った肉が歯につかないようにするため?
薄っぺらな包丁なら意味あるだろうけど。
栓抜きくらいしか利用法が思いつかん。
あとは、ホントはあの穴にはめるオプションを出すつもりだったんだけど、案の定活用されるこ
となく流れたとか (謎
お風呂掃除に来た年長組。
エ「あらこんな所に穴が」
セ「穴ね、これ」
ヒ「これもしかして、誰も気付いてないとか」
ナ「穴発見。活用法思案完了」
ハ「あら〜ちょうどいいですね」
フ「あとでこっそり来ましょうか」
それぞれがそれぞれに発見し、誰も気付いてないと思い内緒に。
その晩。
「さーて、ひとっ風呂浴びて今年の垢を清めるかな」
居間にいた面々が一斉に動いた。
風呂の外壁沿いの茂み。
ヒ「ちょっとなんでセリアがいるの」
ハ「ヒミカこそ〜なんでいるのですか〜」
セ「わ、わたしはちょっと夜の見回りを」
エ「あなた達どういうつもりですっ」
ナ「エスペリア。自分を棚に上げるのは良くないと思います」
フ「順番で行きましょう。最初は私で異存ありませんね」
ネ「ユートさまーネリーとながしっこしよー」
シ「あーシアーも〜」
オ「あ、だめーパパはオルファのだよっ」
ニ「あんたらうるさいっ!!」
ヘ「きゅぅ〜〜」
年長組「……………………」
「永遠のアセリア」のSSが置いてあるサイトってありませんか?メインヒロインがらみのSSが読みたくなった
>>317 >>1の保管庫に沢山あります。雑魚スピ主体からメイン主体まで。
年長組みは今後もっと積極的になるなw
えっちな背中流しが楽しみだなぁ
ハリオン「ふふ〜♪ユート様〜、気持いいですか〜?」
ナナルゥ「ん…胸部の汚れは任せてください」
ファーレーン「ちゅ…くちゅ、んぅ…足も綺麗にしてさしあげますから…」
エスペリア「ユート様、その、私は…こちらの腕を…」
セリア「…では私が…こっちの腕を…」
悠人「…我が生涯に一片の悔い無し!」
今年の垢を存分に流しますた
なんとなく、年少組に混じってアセリアが普通にいそうな気がしたw
―――スリハの月、黒いつつの日。
ここラキオス王国でも、新年を清々しい気持ちで迎えるべく、皆が一様にせわしなく
年末の大掃除に明け暮れていた。
「...ま、こんなもんか。」悠人は早々に自室の片付けを終えてつぶやいた。
元々自分の持ち物がほとんどない上に、普段からエスペリアが行き届いた掃除をしてくれているお陰である。
「――にしても、今日は特別張り切ってたなあ、エスペリア。」
ここ最近は炬燵にこもる事の多かったエスペリアも、流石に今日は自分が主役とばかり獅子奮迅の活躍を見せている。
「他の様子も見てくるかな。」暇になった悠人は部屋を出た。
「キャッ!」
悠人が詰所の広間に出てきた時、暖炉からドスンという鈍い音とともに、聞き慣れた声の悲鳴が上がった。
「いたた...」腰をさすりながら出てきたのはエスペリアであった。
どうやら煙突掃除の真っ最中だったらしく煤だらけである。
「穴の掃除ってこの事か...。大丈夫か、エスペリア?」
灰だらけで這い出てきたメイド服の少女に、悠人は声を掛けた。
「え...ハッ!?ユ、ユートさま!?も、申し訳ございませんっ!!これはお見苦しいところをっ!!」
「いや、そんな事より、ケガしてないか?」
悠人がそう言いながら引き起こそうとして差し出した手を、しかし、エスペリアは首を振って拒んだ。
「ユートさま...私は汚れています...汚れているのです...。」
「...そりゃ、見れば分かるけどさ。―――ま、とりあえず来年もよろしくな。」
...出来れば新年こそは、関西路線から脱却したい悠人であった。
324 :
322:04/12/31 23:21:57 ID:bNeSKFPV
約半年間、私の懲りない関西仕事に付き合っていただいた方々、有難うございました。
来年こそは!と決意を新たにしております。(←さっさと引退したほうが...)
えー、良いお年を。
アセリアとセリアは幼馴染です。
二人は物心ついた頃、一緒にエルスサーオに転送されてきました。
以来、遊ぶのもご飯を食べるのも訓練を受けるのも寝るのもいつもいつも一緒。
同じ青スピリットだったこともあり、二人は絵に描いたような仲良しさん……とはいきませんでした。
生まれた時から何を考えているかよく判らないアセリアはともかく、
セリアは何をやっても敵わないアセリアを密かに敵対視していました。いけませんね。
「はい、それまで。アセリアよく出来ました」
ある日のこと。アセリアとセリアは初めて神剣を使った模擬戦闘を行いました。
まだ重い神剣を振るっての戦闘。それは幼い二人にとって過酷とも思える訓練でした。
しかしスピリットである以上、いつまでもそれを避けてはいられません。二人は懸命にお互いと戦いました。
特にアセリアに対してライバル意識の強いセリアにとってはどうしても負けられない一戦。
まだよく聞こえない『熱病』の声を懸命に聞き取りつつ、頑張りました。
しかし、結果は非情です。常に勝者は一人しかいません。セリアは見事にアセリアに負かされてしまいました。
「はい、これはご褒美ですよ、アセリアがちゃんと頑張った」
向こうでエスペリアお姉ちゃんがアセリアを褒めまくっています。セリアは寂しさと悔しさでいっぱいでした。
「わたしだって頑張ったのに…………」
今になって体中が痛みます。あちこちに出来た擦り傷をさすりながら、セリアは木にもたれて唇を噛み締めていました。
俯いたまま懸命に悔し涙を堪えていたセリアの側にとたとたと軽い足音が近づいてきます。
見なくても判りました、アセリアです。セリアは顔を見られたくなくてずっと下だけを睨んでいました。
するといきなりにゅっと差し出される細い腕。そしてその手に握られたもの。それは半分になったヨフアルでした。
アセリアはにこにこしながらそれを差し出しているのです。でもいじけたセリアは膨れっ面で俯いたまま。いけませんね。
「…………なによ」
「エスペリアに貰った。一緒に食べよう」
「いらないよ、そんなの」
「どうしてだ?おいしいのに」
ぷいっとそっぽを向いたセリアにそれでもしつこくアセリアはヨフアルを薦めます。でももちろんそんなものをセリアは食べたくないのです。
「いいっ!いらないっっ!!」
ばしっ…………がさがさがさ…………
「あ…………」
「あ…………」
なんという事でしょう、思わず振りかぶったセリアの手に当たってしまったヨフアルが遠くの草むらへと一直線に突っ込んで行きました。
まだ幼いとはいえスピリット。手加減なしで吹っ飛ばされたヨフアルの行方など、最早神のみぞ知るといった所でしょう。
暫くそれを目で追っていた二人の間に当然気まずい沈黙が走りました。
やがてその雰囲気に耐え切れなくなったのか、セリアが恐る恐るアセリアの横顔を窺います。
その瞬間でした。さっきまでなんとか堪えることの出来ていた涙が、ぽろぽろとセリアの頬を伝ったのは。
「………………っっ!」
それでもセリアは唇をぎゅっと噛み締めたまま、気付いた時には逃げ出すようにその場から駆け出していました。
哀しそうに草むらを見つめたままのアセリアを残して。何故泣いてしまったのかも解らずに。
その夜。アセリアは初めて一人ぼっちで寝ていました。あれからセリアが戻ってこないのです。
さわさわと聞こえるのは風に揺れる木々の声だけ。しんとした部屋には自分以外に物音一つ立てるものもありません。
夜の静けさがこんなに寂しく、不安なものだとアセリアは生まれて初めて知りました。布団を頭から被り直します。
自分のなにが悪かったのだろう、どうしてセリアは怒ったのだろう、もう戻ってきてはくれないのだろうか。
ただ一緒にヨフアルを食べたかっただけなのに…………
色々なことが頭の中でぐるぐる回ります。でも答えは全然出ませんでした。かといってこのまま眠れそうにもありません。
それはそうとパジャマがずり落ちてはだけた白い肩をなんとかしなさい。無防備もとい風邪を引きますよ。
……ことっ
扉の外で音がしました。ひょっとしてセリアが帰ってきてくれたのかもしれない。
アセリアは急いでベッドから飛び起きました。いつまで経っても開かれる様子がない扉をじっと見つめます。
我慢できずにそ〜っと扉に近づくと、向こうからかすかに気配がしました。見えなくても判ります。セリアです。
アセリアは勢いよく扉を開きます。するとそこにはぼろぼろになったセリアが落ち着かない様子で立っていました。
自慢のポニーテイルが解けていつもはサラサラの蒼い髪が乱れきっています。
支給されたばかりの戦闘服はあちこち破け、肩やおへそやエヒグゥパンツが丸出しです。
おまけにびりびり破かれた白いニーソックスから見える真っ白な太腿からは所々出血していました。まるで……いえ、なんでもないです。
それはそうと体中泥だらけのセリアはぷいっと無言で手の中のなにかを突きつけました。
「…………めん」
そっぽを向いたままセリアが差し出したもの。それは、草むらに消えたはずのヨフアルでした。
そう、すっ飛ばされたヨフアルは波乱万丈大冒険の末、なんと沼地まで辿り着いていたのです。
粉々にならなかったヨフアルもさることながら、それを見つけたセリアの嗅覚も常人とは言えません。まあスピリットなんですが。
ともあれ泥だらけになってしまったそれはもうとても食べれたものではありませんでした。それでもアセリアはそれを嬉しそうに受け取ります。
おお、そしてそのまま無言でセリアを抱き締めました。胸に押し付けられたアセリアの頭からくぐもった泣き声が微かに聞こえます。
セリアは真っ赤になったまま、鼻の頭を擦りながらもう一度呟きました。横顔に涙の跡を残したままで。
「…………ごめん」
「…………ん」
二人はその夜、アセリアが取って置いた残りのヨフアルを仲良く半分こにして食べました。
とても、とてもおいしいヨフアルでした。
泥だらけのヨフアルは、それからずっとアセリアの机の中に眠っています。
ヒミカ「で、これが問題のヨフアルか……」
ナナルゥ「もはや原型を留めていませんね」
ヘリオン「なんだか変な臭いがしますぅ〜」
ニムントール「そりゃ何年もほったらかしだし」
ネリー「これ、本当にヨフアルなの〜?」
シアー「うう、もうヨフアル食べられないよ〜」
エスペリア「何か異臭がすると思って掃除してみれば……」
ハリオン「最近暑かったですから〜」
ウルカ「ハリオン殿、そういう問題では……」
オルファリル「でもでも大切な想い出なんだよね、ね、ね、アセリアお姉ちゃん」
アセリア「ん、だからちゃんと今でも持ってるぞ、セリア」
セリア「……コレは何?拷問?拷問なの?ねえわたしそんなに悪い子だった??!!」
リアルタイムキター!!
相変わらずGJです
今年最後にほのぼのできたよ
330 :
あとがき:04/12/31 23:40:05 ID:Du3IGIlw
だれでも机の中にカビの生えた給食のパンを発見した事が一度はあるはず……え?自分だけですか?
>>憂鬱さん
Vって(汗
おお、タイムリーな大掃除ネタでくるとは。なぜか「汚れた」エスペリアの背後に第九が流れてくるようなw
えっと今年中はスレの皆さん、大変お世話になりました。
来年こそは誤字脱字を減らそうと決意しておりますのでまた宜しくお願い致します。
「あれ?ハクゥテがびしょびしょになっちゃってるよ〜。エスペリアお姉ちゃん、失敗しちゃったの?」
「いえ……ユートさまがこうする様にとお望みになったのですから失敗ではないはずです」
「それじゃあ、食べ方を説明するからよっく聞いてね〜!」
「つるつる〜って、すすればいいらしいよ?」
「どうしてあなたたちが食べ方を知ってるのかしら?」
「えっと……だいぶ前にコウインさまから聞いた事がありまして」
「これがハイペリアの料理……食べにくい」
「成る程、なかなかに興味深い味わい。手前も一度調理してみたいものです」
「ニム?せっかくの出来たてなのに口をつけないの?」
「……熱いから、まだムリ」
「時間経過と共に麺の含有水分の増加は避けられません。早期摂取を提案します」
「いやー、食べ慣れた食材でも違うもんだね。作り方を聞いといてくれないか」
「はい。……ですが作るのは、きっと私なのでしょうね」
「音を立てたほうが良い……それなら気兼ねなく頂きましょう(面倒くさくなくて良かったよー)」
「んー、やっぱりこれが無いと年越しって気がしないよな」
「そうだな、ちょっとだけ違うけどまあ似たようなもんだ」
「いーじゃないの。気にしない気にしない」
「……で、どうしてあなたはユート様たちと同じ道具を使った食べ方が出来るかな」
「(つるつる〜っ)お姉さんですから〜」
……一方、その頃。世界の裏側で……
「打ち立ての出雲ソバで年越し……なのに、なのにどうして……
さ、寂しくなんか無いんですからっ。……うぅ……(ずるずる)」
>>323 うお、こんなにおいてあるサイトがあったとは……。紹介どうもです。
ついでですが、どれが面白いですか?一気に全部は読みきれん……
好きな作品の傾向を提示したほうがいいんじゃないかな。
シリアスなのが好きなら、安息に一票いれておきます。
>321
素で忘れてたorz なんか年長組が足りない気もしてたんだけど。まあでもおそらく
「そういえばアセリアは?」
「いえさっきから見ませんが」
「「「「「…………まさか」」」」」
「ん、ユートの背中大きい」
「あーアセリアお姉ちゃんずるいずるいズルイっ!」
>322
「汚れていたってエスペリアはエスペリアだっ!」
「ユートさまっ…………(感涙)」
ユートと互いにかき抱き合………スカッ
「エスペリア、せっかく風呂に入ったのに汚れちまうだろ」
「ウフ、ウフフフフフ…………やっぱりこの腐れた根性をたたき直さないと」
来年こそ、と使命感に燃えるエスであった。
>317
もしかして新人さんですか。今から珠玉の名作をたくさん読めるなんて……ハイペリア一の果報者です。
どうせなら過去スレを読破するのがおすすめですが。
ttp://dendeba13.sakura.ne.jp/ <ここのはここので面白いのありますよ。『天使の休息』が一押しです。
ttp://www5b.biglobe.ne.jp/~ralf/ <ここは一作だけですが、スレに近いノリかと。
>325
キター(゚∀゚)っていうかこのタイミングで来るとは。二人は何でも分け合って、痛みも楽しみも。でもエス……
セリアが人を寄せ付けなくなったのはやはり……。アセリアは良い娘だなぁ。うん。
「まるで…………」コレは何?打ち身?切り傷? ツンデレ等ーが着々と完成に近づいてますね。いけませんね?
>331
何度目の年越しなのか>時深お姉ちゃん え?周期で数えた方が早い?
336 :
331:05/01/01 01:22:02 ID:zzteGj3x
遅レスすみません。
>>322 憂鬱の人さん
大掃除だというのに、頭に響いた曲は何故か「あわてんぼうのサンタクロース」でした。
……こちらの方もすっかり関西路線のようです。
>>330 信頼の人さん
カビパン、発見した事があるなぁと思い出が蘇りました。
ふとミカンの段ボール箱を覗いてみたら見事にカビかけているのがありましたorz
>>324 お疲れ様でした。本年も関西路線*も*よろしくお願いいたしますw
>>330 お疲れ様です。
何気にノリノリですな、「まるで…」の辺りとかw
今年もどうか突き進んで下さいまし。
あー、給食のパンかぁ…
チーズ入りよりレーズン入りの方が早くカビが来たっけか…
>>331 スパゲティをめんつゆで食すなら、かけよりも盛りの方がいけます。
わさびではなくしょうがを添えるのが吉。
盛りならニム舌でも大丈夫w
……漏れって… orz
さて、まずは、スレ数 2桁、そして、スレ一周年、
それぞれ目指して今年も、みなさん、がんばりましょう
ペタン ペタン
,べV /\⌒ヽ _
/ 〃  ̄ ヾ;/⌒)ノ/ \
! i ミ(ノハソ\ (( (ノハ\ i
!ik(i|゚ ヮ゚ハ' )' )) パヮ゚ ノ/
/ ⌒ノ ( ⌒ヽ⊂⌒ヽ
.( ノ ) ̄ ̄ ̄()__ )
)_)__) (;;;;;;;;;;;;;;;;;;;)(_(
339 :
墨光:05/01/01 04:45:34 ID:QFKi38qg
新年を迎えたばかりの早朝。
俺は暁に染まる、湖の見える高台へと足を踏み入れた。
うっすらと湖面から立ち上る霧。稜線をわずかに越えて差し込める赤い陽の光。穏やかな湖面
がきらきらと輝いていた。
ここまで駆け上がってきた俺は、脚を弛めてゆっくりと石積みの手すりへと近づいていった。
真っ白な呼気。
その向こうに、その人はいた。
曙光を背負った人影に俺は目を細める。
ゆっくりと振り返ったシルエットは、一瞬のざわめきを俺の胸にもたらす。
「…………ユートさま」
呟いた声はやはり逆光の中捉えた姿に違わなかった。
「ファーレーン? どうしたんだこんな朝っぱらから」
誰もいないと思っていたから、俺はちょっと、いや、かなり驚いていた。
新年早々、誰にも会わずここまで来たってのに、この場所に先客がいるなんて。
この世界に初日の出を拝む習慣があるとは聞いたこともない。もっとも俺もハイペリアにいた
頃やった試しはないけれど。
「ユートさま。ハイエリアの習俗、私も色々聞いています」
「えっそうなのか」
半身のファーレーン。半分だけがオレンジに染まった覆面越しに、口が動くのが見えた。
佳織か今日子か。光陰かもしれない。それなら不思議な事もないだろう。
それにもしかしたら、ファーレーンにも何か思うところがあったのかも知れない。ちょっとこ
のところスランプ気味だったし。
そんなことを思いながら、俺はファーレーンの元へ歩いていこうとした。
340 :
墨光:05/01/01 04:46:11 ID:QFKi38qg
だけど。
「来ないで下さい」
「えっ?」
思いがけない拒絶の言葉に、俺の脚が止まる。
なんだ? ファーレーン。なにかあったのか?
俺は戸惑いながらもファーレーンに問う。
でも俺の声は上滑りするだけで。
「ユートさま。わたし綺麗ですか?」
あまりにも場違いな質問。刹那、俺の脳裏を不健全な考えがよぎった。
もしかしてここは抱擁を交わす場面なのだろうか。いきなりの急展開?
いやまてまて、俺に触れることすら躊躇うファーレーンがそんな大胆ないやしかし大体俺には
エスペリアとかセリアとかナナルゥとかヘリオンとかヒミカとか…………あれ? なんか記憶
が絡まって…………。
「ユートさま。わたし綺麗ですか?」
勝手に混乱している俺に、また同じファーレーンの問いかけが来る。
一体どうしたんだ? なんだか不自然すぎる。
「ああ、ファーレーンは綺麗だと思う」
大胆だけど、今のファーレーンには素直な気持ちを伝える方が大事に思えた。だから正直に答
えた。その結果がどうなるかなんて俺にわかるはずもないわけで。
341 :
墨光:05/01/01 04:47:09 ID:QFKi38qg
「わたし綺麗ですか。本当に綺麗ですか」
「ああ、ホントに綺麗だと思うよ」
素顔なんてたまにしか見たこと無かったけどそう答えた。
「なら、これでも、綺麗ですか?」
そう言いながらファーレーンはもう半分身をひねる。右手が覆面に掛かった。
その時、稜線が爆発したかのように光線が差した。俺に正対したファーレーンの顔を遍く照ら
し出す。
何処ぞの都市伝説のやり取りみたいだな……一瞬そんな考えをもった俺の目に映ったのは、覆
面を脱ぎ捨てたファーレーンの顔で…………。
ひげ?
342 :
墨光:05/01/01 04:47:48 ID:QFKi38qg
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁん、ユートさまっ!」
「うおっ」
いきなり胸に飛び込んできた衝撃に咳き込みながら、俺の胸に顔を埋めるファーレーンを見下
ろす。こ、これはさっきの妄想が現実にっていうかいや待て俺。さっきのファーレーンの顔は、
「ユートさまっ、わたしいつものように早朝の稽古に行こうと早起きして、今日の覆面はどれ
がいいでしょうねーって鏡を覗いたら、いきなりこんな顔になってたんですっ。ヒドイと思い
ませんかっ!」
「あ、ああ非道いと思うぞ」
胸ぐらを掴まれグラングラン揺すられながら俺は答えた。なるたけファーレーンの顔を見ない
ように、見ないように…………プ あやばい。くく、抑えろ俺っ!
「非道いですよねっ? これ落ちないんですよっ! これじゃみんなの前にも行けませんっ!
新年早々こんなのってありませんよねっ?」
「あ、ああそうだな」
俺は必死で顔を空に向けながら答えた。きっと笑ったりしたら鱠切り確定だろう。あー雲が流
れていく…………。
343 :
墨光:05/01/01 04:48:24 ID:QFKi38qg
…………見詰めなきゃ現実を。
あーそういえば、佳織とオルファが正月の話ししてたっけ。何時だったっけかなぁ。多分その
時の話しが、オルファ経由アセリア行きナナルゥ終点で伝わったんだろうな。思いっきり歪み
を抱えて。素晴らしい逸材だっ!
「ユートさまっ!」
あ、でもこれでファーレーンも黒くなれたって事で新年早々幸先いいぜっ。
「ユートさま?」
って訳にもいかないよなぁ。どうしたものか……………………うむむよしこうするか。
「よしっ」
「キャッ」
「ああすまん、いいかファーレーンここで待っていてくれないか」
「え、ここで、ですか」
「ああ。きっと悪いようにはしないからさ。俺の事を信じて待っていて欲しい」
「ユートさま…………ハ イ わたしは、信じて待ちます。ユートさまのことを」
サンキュっといいながら俺は、口の周りにぐるりと見事な泥棒髭の書かれたファーレーンの頬
を撫でた。
プックク
「ユートさま(怒)?」
「い、いやなんでもないぞなんでもない。あっそういえばハイペリアには正月、顔を墨で黒く
するって祭りがあったぞ確か。無病息災を願うってやつでさ」
「そうなのですか。ハイペリアの」
「ああ、ファーレーンのその顔もハイペリアに関係してると思うぞ」
大体誰がやったかわかるしな。
「それじゃ待っててくれよ、後で呼びに来るからさ」
「はい。ユートさまのお帰りをお待ちしています」
そう言って頭を下げたファーレーンを後にして、俺は再び城へと駆け戻っていった。
344 :
墨光:05/01/01 04:48:54 ID:QFKi38qg
「やーい、オルファの負けだよー」
「ちがうもんネリーのずるだもんっ」
中庭に子供達の歓声が聞こえる。
「私、負けません、負けませんからっ」
「ニムに勝てる? まぁ無理だろうけど」
一人で暴走してたり、面倒くさがってこたつで丸くなっていた者も妙に力が入っていたり。
皆一様に顔中墨だらけだ。
「まったく、いきなり起こしに来たかと思えば遊び道具を作れとは、一体この大天才をなん
だと思っているのかね。このボンクラ。去年もバカだと思ってたが今年も」
「うるさいな、結局イオじゃないかやってくれたのは」
文句は言っているけれど、ヨーティアも楽しんでいる。その証拠にほっぺには×マークだ。
セリアもヒミカもアセリアもエスペリアも羽子板モドキで童心に返っているように見える。
きっとこれならファーレーンをつれてきても違和感はないだろう。
俺は皆の楽しげな声に背を向けると、ファーレーンの待つ高台へゆっくりと歩いていった。
多少の懸念はあったものの、ファーレーンは皆の中にうまく入り込んだようだ。っていうか、
誰も気付かないってのもそれはそれでなぁ。ニムすら羽子板バトルに夢中だし。
その晩。
「あの、ユートさま。結局私だけ落ちないんですけどこれ」
ナナルゥのハーブ入り墨汁は良い香りがした…………きっと弱酸性でお肌に優しいんだろう。うん。
”泥棒髭のファーレーン”もしかしたらこの二つ名が大陸に響き渡る日もそう遠くないのかも知れ
ない。
翌朝、ファーレーンが起きるとすっかり拭い落とされていたらしい。
新年早々オチ弱くてすまぬ。
クリスマスネタからぱくっとな。
それでは皆様本年もヤルンサイスルス。
>338
ネリが突きシアが捏ねし雑魚スピ餅、座して食らいたいよ…………フッガッフグ ウーどんどん
今年初ネタになるのかな、乙です〜。
も、もしやファーレーン、羽子板で負けてお腹にすmdrftgyがつりんtcx4lp;@:
アセリアが筆取ると他人の顔をキャンバスにしそうだな
「動くな………よし、完成だ」
セリアの顔には見事な龍の水墨画が描かれていましたとさ
SSなのかネタ合戦なのかよく分からなくなってきたここは
アセリアネタ&雑魚スピ分補充スレッド。
スレの皆様新年あけおめでございます。
>信頼さん
セリアに拷問...イケナイ事を連想してしまった私の心は
汚れています...汚れているのです...まるで....いえなんでもありませんw
>道行さん
よく動くマルチキャラ、相変わらずの切れ味ですなあ。
かしましい雑魚スピどもの声がよく聴こえます。なにげに総登場、レムリアまでw
>338さん
今年も表に裏に門番にとがんがってください。
>髪結いさん
曙光を背負ったファーレーンとはイカしてますねw
見覚えがある気もしますがそれはともかく。
何の呪いか339で「ハイエリア」になってます。
エスといっしょにケムセラウトまで戻って一回休み。
349 :
きグロう:05/01/01 11:51:23 ID:9o06PPrk
「そ〜れ、いっくよ〜」
かこーん
「わ、わ、…………え〜いっ」
かこーん
「やるな〜しあー…………てりゃ〜」
かこーん
「ま、まけないモン…………」
かこーん
聖ヨト歴333年ルカモの月青ひとつの日。
ラキオススピリット隊第二詰め所の庭でネリーとシアーが「ハネツキ」をしていた。
「悠人、眼福だと思わんか」
突貫で設置された「エンガワ」にどこから持ってきたのか座布団を敷いて光陰がお茶を飲んでいる。
なぜかつき合わされている悠人が渋い顔で答えた。
「お前だろ、あのやり方ネリーとシアーに教えたの」
「そうだが、それがどうかしたか?」
「あのな……前から一度はっきり言いたかったんだが」
「なんだ?礼ならいらんぞ、俺とお前の仲だ」
「どうしてお前はこう下らない事ばかり思いつくんだ」
「なにを言う悠人、日本の伝統文化の美しさを忘れてはいかん」
左右に飛び交う羽をネリーとシアーが自前の羽子板…………ウイングハイロゥで打ち合う。
いちいち腰を捻って打つ訳だから、その度二人の可愛いお尻がぷりぷりと揺れた。
「まったく…………おっ☆」
なんだかんだ言いながら半分上の空で右へ左へと忙しい悠人の視線。平和な正月だった。
350 :
きグロう:05/01/01 11:53:58 ID:9o06PPrk
一方その頃。
「ファーレーンさん、いきますよ〜」
かこーん
「…………えいっ」
すかっ
「あっあっ、また打ち返し辛かったですか?」
「いいんですよ。ヘリオン、上手ですね」
庭の別の一角ではファーレーンがヘリオンを相手にしていた。
とはいってもファーレーンはまだ一度も打ち返せていない。つまりラリーにもなっていなかった。
こちらも縁側に座って観戦している今日子と時深が不思議そうに首をかしげている。
「どうしたのかしらファーレーン、運動神経はいいはずなのに」
「スピリットなのですから運動神経とかそういった問題ではないはずですが…………ああ、なるほど」
「え?どうしたの、時深」
「子供に花を持たせてるんですよ、彼女らしい。あからさま過ぎて失敗してますけど、ね」
そう言ってくすくすと笑う時深。ああ、と合点がいった今日子は少しイジワルそうな顔で立ち上がった。
「それでも罰は罰だからね…………おーいファーレーン、ちょっと来て」
「あ、はいっ♪」
なぜか嬉しそうに駆け寄ってくるファーレーン。今日子は苦笑いしながら手元の筆を取った。
―――――――
「ね、ね、ニム、見て見てっ!」
「う〜んニムまだ眠い…………わわっ!」
炬燵で惰眠を貪っていたニムントールは駆け込んできた姉の顔を見て一気に目が覚めた。
「ど、どうしたのお姉ちゃんその顔!真っ黒じゃないっ!」
「ええ、いいでしょ♪これでもうお姉ちゃん、“身体にどこにも黒の目印がない”なんて言われないよね♪♪」
「………………」
くるくると踊りながらはしゃぐ姉の姿をニムントールはもうとても正視出来なかった。余りにも不憫過ぎて。
351 :
信頼の人:05/01/01 11:57:25 ID:9o06PPrk
正月早々自覚無しのファー、ニムの苦労が忍ばれます。で、気苦労(滝汗
>>331道行さん
年越しに湯気を立ち上げつつ頭をつき合わせて蕎麦をすするスピ達…………何故だか四十七士の討ち入り思い出したり。
>>338さん
ネリシア「ぺったん♪たった餅ぺったん♪」 …………すみません、頭に鳴り響くすぴりったん、止められないんです(汗
>>345髪結いさん
似たような事考えてる人いるだろうな〜とか思ってたら、やっぱりw
綺麗だと 旭に映える ファーの髭
「文字は判んないけどなんかムカつく」…………ニムに怒られてきますorz
>>348憂鬱さん
ほう、憂鬱殿もついに妖精趣味に目覚めましたか……くくっそれは大変興味深い。(by ソーマ・ル・ソーマ)
書初めも済んだことだし、皆様今年も宜しくお願いします。
正月ネタは誰か用意してるだろうな、とは私も思ってました。
ファー(;´д⊂ ウルカとアセリアのハイロゥバトルはちょっとやばそうw
誰か晴れ着着せてくれないかなぁ〜。
>346
いきなりお腹を出すファーレーン。
「ん、まかせろ」
「腹踊りですか…………どうせ私なんて イジイジ」
>347
ど、どうせなら背中にハァハァ 「新・極寒の女」正月封切り
>348
やっちまった……ハイエリア3541に逝ってくるぜ……ネリー、クフィルもってこいネリー、ミラージュの設計図
が先だぞネリー。
「おし、それじゃあこの不肖光陰、ハイペリアの慣習に則って「碧神社」を開こうではないか」
「おまえ仏教だろ……」
「何を言うか悠人。昔から神仏習合と言ってだな神も仏も本来ごった煮なのが日本というものなのだぞ!
さぁみんな願い事言ってね〜〜シアーちゃ〜んどお〜? あ、ほらヘリオンちゃんも」
「猫なで声気持ち悪い」
「こ、こらニムっ!」
「そういうことなら、本職の巫女であるわたしの出番ですね」
「…………あれって若い生娘じゃないとダメなんじゃないのか?」
「ば、ばか俺に聞くな悠人っ!!」
「ふ、ふふふ……悠人さん……あなたがそういうこと言いますか……誰が何のためにここまで
守ってきたと…………」 ズゴゴゴゴゴゴ
数千年後
「はいみんないいですか。この年にラキオス神社禁止令が発布されたんですよ。試験に出しますからね」
>>351 くるくるファー...不憫すぎる...
あ、でも...ちょっと可愛いかも(*´Д`)
>>352-353 ほほう、どうやら反省しているようですな。
新谷神社のお参りで一回休みは勘弁して差し上げましょう。
私は慈悲深いですから...フッフッフ...
ガンガレ
>>353 【ラキオス神社禁止令】
聖ヨト歴333年ルカモの月公布。
前年ラキオスに参戦した旧マロリガン共和国のエトランジェ・コーインが提唱した「神社システム」は
ハイペリアの風俗を導入しようという斬新な試みだったが、そのオプションである所の「巫女装束」に一部欠陥が指摘され、
精神障害(トラウマ)を刺激された某おば○○(閲覧禁止)にてラキオス全土に甚大な被害がもたらされた。
その後厄災を二度と引き起こしてはならぬと「神社」自体を凍結する運びとなったのである。
なお、当時の女王、レスティーナ・ダィ・ラキオスの言。「ユートくん、口は災いの元、なんだよっ」
おしょうがつとは光陰が二人いるってことだぁーーーーーー[BGM:Harrowing battle]
「ちょっとユート、ふざけたこと言わないでっ。冗談でしょ?そうでしょユート」
「ニム、すまん。俺の力じゃどうしようもないんだ」
「ひっ、お、お姉ちゃーん」
「コーインさまが二人いるよりユートさまが二人いる方がいいよねーシアー?」
「うん、いっぱいあそべるし〜」
「パパが何人いたって全部オルファのパパだよ!」
「ひとりじめはだめだよ〜」
「ユ、ユートさまが二人…………ボン」
「ユートさまっ! ニムをいじめるなんて大人げなすぎます。お暇でしたらわたくしの手伝い
をして下さいませっ」
「あーエスペリアユートさまつれてくなー」
「な〜」
「ん、知ってる。”ひめはじめ”ハイペリアの言葉」
「なんと、アセリア殿。それは一体どういう」
「はぁ、悠は今年も変わらず大人気ね。住職ちゃん」
「今日ちゃん、今なんて……わ、私だって今年は生まれ変われるんだから」
359 :
ニムの初夢:05/01/02 17:25:42 ID:5U3SD13w
温かな日差し。さわさわと気持ちのいい風。
木漏れ日の中、足取りも軽く駆け抜ける。
早く帰らなきゃ。そんな気持ちに急かされて。
やがて見えてくる赤い屋根。緑のドア。勢いよく開けるとそこには。
「ただいま、お姉ちゃん。ついでにユートも」
「俺はついでか。まあいいや、ニム、お帰り」
「お帰りなさい、ニム。もう、いいかげんユートさんを呼び捨てにするのはやめて」
苦笑いしながらも迎えてくれる二つの笑顔。寄り添う笑顔。
ベーと舌を出したままユートにしがみつく。柔らかい、落ち着く匂い。
「ユートはユートだもん!ユートだってニムのことニムっていってるし」
「もう、しょうがないですね…………」
「まあまあ、ニムも悪気がある訳じゃなし」
髪を撫ぜられる感覚が気持ちいい。ちょっと硬くて大きい手。頬を胸板に押し付けると暖かくて安心した。
ごろごろと音を立てそうな喉は恥ずかしいのでぐっと抑えておく。
「そうだよ〜、ニムはしょうがなく呼び捨てにしてるんだから〜」
「何を言ってるの、もう、この子は…………」
「おいニム、こんなトコで寝たら風邪引くぞ〜…………」
「お姉ちゃんの大切な人だから…………しょうがなく、なんだ、から…………」
軽く揺さぶっているのはお姉ちゃんだろう。もう、そんなに優しく揺られたらもっと眠くなるじゃない……あれ?
「ニム、ちょっと…………」
「起きろ〜お〜い…………」
声が段々遠くなる。代わりに激しくなってくる揺れ。浮き上がるような身体。何か頬が熱いような。あれ?あれれ?
ぱちくり。目を開けるとそこには。
「おい、起きろってば、ニム!」
「ユ、ユートさま、もう少し優しくお願いします…………」
心配そうに覗き込んでくる二つの顔。怪訝そうな顔。炬燵から這いずり出してぼーっと見つめる。
「お、起きたかニム。どうやっても起きないから心配したぞ」
360 :
ニムの初夢:05/01/02 17:26:09 ID:5U3SD13w
「………………」
声を無視して辺りを見回す。見慣れた部屋、見慣れた景色。頭がぼんやりしている。
ユートの顔。横に、お姉ちゃんの顔。もう一度、ユートの顔…………ぺたぺたぺた。
「うわわ!ど、どどどどうしたいきなりっ!」
「ちょ、ちょっとニム、ユートさまから離れなさい!」
うん、間違いない、ユートだ。じゃあさっきの続きをしてもらおう。なんたって気持ちいいから。
ぼふっと胸に顔を埋める。鼻を擦り付けるとユートの匂いがした。柔らかい、落ち着く匂い。
頬擦りする。すりすりすり。やっぱり暖かい。触れた部分がぽかぽかする。ふにゃ〜。
「あ、あ、あ、あ…………」
「ま、待てファー落ち着け、ちょ、一体なんなんだっ」
なんか雑音が聞こえるけど、まあいいや。あ〜気持ちいい。ほっぺたが暖かくてひりひりする…………ひりひり?
そっと頬を擦ってみる。熱い。なんだろう、腫れてるのかな…………ってなんでっ!?
がばっ。
「うわっ!」「きゃっ!」
声が唱和する。のけぞる二人を見ていたら、だんだん頭がはっきりしてきた。頬に手を当てる。
すりすりすり。うん、確かに腫れている。なるほど。っていうかだんだん頭に血が昇ってきた。
目がじと〜と擬音を発し始めているのが自覚出来る。どうやら機嫌が悪いようだ。
あんな良い夢を邪魔されたのだから当然だ。うん、ニムは悪くない。悪いのは…………
「ユ〜ト〜〜〜」
「な、なんだニム…………その、怒ってるのか?そりゃ平手はまずかったけど、あれは止むを得ず……」
「ふぅ〜〜〜〜」
言い訳なんか聞いてあげない。なんたってニムは気持ちよかったんだから。
唸りつつ、手探りで炬燵の中の『曙光』を掴む。おっと、マナをちゃんと送り込んで、と。
気配を察したユートが後ろに下がる。逃がさないわよ。……お姉ちゃんまで逃げ腰なのはちょっと悲しいけど。
「せっかく良い夢だったのに〜〜〜〜〜!!!!!」
「うぎゃーーーっっ!!!」
「ちょっとニム、止めなさ〜〜〜いっっ!!」
どたばたどたばた。暴れながら、それでも頬は暖かい。決して腫れていたせいだけじゃないと思うけど。
>>354さん
もしかしてくるくるパーと掛けてますか?確かにそれじゃ不憫すぎるw
>>357さん
不憫じゃないニムお届けしてみました。
>>358 すみません、BGMに一番笑ってしまいましたw どーんという音が光陰の後ろから聞こえてきそう。
「さーユートさま、ここなら誰にも邪魔されずにわたくしのお手伝いをして頂けますね♪」
「そ、それはいいんだが、なぜ服を脱ぎ始めるエスペリア…………」
「待って!お兄ちゃんの“ひめはじめ”は渡さないっ!」
「おお住職、いい所へ…………うそっ、ごめ、#%$&@〜〜〜!!」orz
>>361 うーむ、そう冷静に返されると言葉に詰まりますw
ファーの紹介もそうだけどネリーのも突き放した感じでいいなあ。ネリー本人にしか分からない。
色々あって酒でも飲んでないとやってられないバカ憂でした。
「絶対、お姉ちゃんをユートなんかに渡さないんだから」
「な、なんのことだ?」
「ん〜〜〜? アレッ? そ、そんなことユートは知らなくていいの」
どうして良い夢だったかはすぐに薄れたり。
でも良い夢だったことはきっとニムの心に残って。
…………曙光もこたつの中で腑抜けてたりしてw
ニムファーで明けた本年。さてどうなるのやら〜。
ひめはじめ→直訳:ソスハン マセクナム
(最初) (王女)
「あなた達、本物の”姫”を差し置いてなにを虚けたことを言っているのです。退きなさいエスペリア」
「こればかりは、たとえ陛下のお言葉でも譲るわけにはいきません」
「わ、私だって。大体レスティーナさんと胸の差1センチしかないもの。生まれ変わった私ならきっと」
「…………言いましたね。ならばユート本人に選んでもらいましょう。さぁユート」
「「「いないっ??」」」
「んしょんしょ。やっぱりユートさま〜重いよ〜」
「「「シアーっ!!!」」」
ちゃっかり。
つーか女王だよな。
新年早々、第二ファンタズマゴリアのラキオス地方では
毎年恒例となったユート争奪戦が行われている模様です。
では、現場のセリアさんに様子を伺ってみましょう。
セリアさん? …どうも現場付近のマナ場が安定していないようですので、
現場の様子はまた後ほどお伝えしたいと思います。
>ニムの初夢
おー、いーかんじで溶けてますなぁ。夢の中へ。
新発売 とろけるニム (10枚入り) 炬燵乳業
提供:倉橋製菓 時深だいふく絶賛発売中
CMの途中ですが、臨時ニュースです。どうやら現場のユートさまに何か動きがあった模様です。
えっ?はい、はい……あ、ただいま第二中継所のセリアさんにマナ放送が繋がったようです。
セリアさん、セリアさん?
「はい、こちら第二中継所で」
ドンッ
「あっ」
チュッ
プツッ
ただいまアクシデントのため不適切な映像を
お送りしてしまいましたことを謹んでお詫び申し上げます。
申し訳ありませんがしばらくそのままでお待ち下さい。
―― 雑魚スピスレ放送 ――
, -‐‐- 、
/二二二\
∠ノ,ノノ^ソ从ゝ <ちゃんねるはこのままですわよ
∠从リ ゚ ヮ゚ノ从ゝ _
(( /ヽ 〒 !7つ==∋)
人( iニノ ) ノ人  ̄
く/_|__ノ II
トゥルルル……トゥルルル ガチャ
「はい、いつもお世話になっております。雑魚スピスレ放送お客様センターでございます。あ、はい。
申し訳ありません。なにぶん生放送中の事故ですので。あ、はい誠に。今後はこのようなこと
は…………それでは失礼致します」
トゥルルル……トゥルルル トゥルルル……
トゥルルル……トゥル トゥルル
トゥルルル……トゥルルル トゥルルル…………
「ヨ、ヨーティアさまっ、大陸全土のラスフォルトのみなさんから抗議の神剣通話が殺到していますっ」
「あんのボンクラ〜〜##」
CM
光陰「HEY悠人!どうしたんだそんなに頭を抱えて?」
悠人「Oh光陰、ちょっと聞いてくれよ。次の町の緑スピリットが
強くて強くて。このままじゃ女王様から鞭を喰らっちまうぜ」
光陰「水臭いぜブラザー!そんなこと俺にお任せだ!」
悠人「なにかいい考えがあるのか?」
光陰「コタツさ、ko・ta・tu!こいつでニクい緑スピも一発だぜ!」
悠人「おいおい、こんなものでスピリットがどうにかなるなんて…
……………………………………………………
凄いじゃないか光陰!あのお堅そうな緑スピがあんなに軟らかくなってるぞ!?」
光陰「ハハァン、どんなものだい?これで万事解決さ!」
悠人「ああ、恩にきるぜブラザー!」
ナナルゥ「ラキオススピリット隊隊長も推薦する一品、コタツ。
今ならニム猫ぬいぐるみもつけてお値段据え置き28,000エーテルでのご提供です」
ヒミカ「さあ、今すぐこちらの神剣番号にお電話を!」
♪てーんてーんてってってれてれてーてれてれって………(BGM:すぴりったん)
赤スピインダストリー特製の「kotatu」購入者Aさんから
喜びの声が届いております。
「いやあ、初めは半信半疑で買ってみたんですけど、
使ってみてびっくり!今までなかなか倒せなかった
敵もあっという間に一掃ですよ!!
お陰でヘタレ隊長の名前も返上できたし、以前から
狙ってた可愛いあの娘にも付き合って欲しいと告白
されちゃうし...もう、ウハウハです!
これ、CMで流れるんですか?出来ればみんなには
秘密にしておきたかったなあ...」
マ ッ タ ク カ ン タ ン ダ
トゥルルル……トゥルルル ガチャ
「はい、いつもお世話になっております。雑魚スピスレ放送お客様センターでございます。お名前と神剣周波数をどうぞ」
「クォ…匿名希望のラスフォルトです」
「はい、匿名希望さんですね。ご用件の方は先程の放送事故についてでよろしいでしょうか?」
「あ、いえ、その…どうしてコーイン様争奪戦はないんでしょう、と…その…」
「………ユート様争奪戦はこちらで主催しているわけではありませんのでちょっとわかりかねますが…」
「あ、そ、そうですよね、すみません、つい…」
「そうですねぇ…『ラスフォルト神剣通話相談室』にエントリーなさいますか?」
「あ、いえ、結構です、すみません」
ガチャッ ツーッ ツーッ ツーッ
「セリアさん、セリアさんーん? 」
ブツ 「あ、つながったようですが、セリアさーん? あれ? どうやら画像だけで音声がつながっ
ていないようです」
ズルズルと運ばれていく、金色の霧と氷で覆われた物体の映像だけが固定カメラの片隅に映っている。
「…………あ、えーと」
《だめだもうこれ以上穴空けられるかっ! 次行け、次》
「そ、それでは回復の見込みが立たないようなので、えーと次のコーナーです。
題して、鼎談『エトランジェ達が語るハイペリアのお正月』です、ってユートさま…………」
「みんな!あけましておめでとー!」
「みんな、おめでとう。あ、俺への個人的なメールは後で番号表示されるからな。慌てないでね〜」
おこたを正面から映し、正面光陰左に今日子、右にはぽつんと特大ニムねこぬいぐるみ。
「あんたは正月からバカ言ってんじゃないの!手振るな」
「なんだよ、全国にいる数多のコーインさまファンの少女達の思いの丈をだな」
「自分で”さま”とか言ってんじゃないわよ。大体アンタハイペリアでもモテたこと無いくせにここなら
モテるとか思ってんのがお門違いてもんなのよ」
「なにを! ふっ今日子お前には黙っていたけどな一体何人に言い寄られたことか。だが俺は仏に帰依
する身。女性ニョショウに心を許すなどこの俺の金剛石もかくやという意思の前には」
「煩悩腐れ坊主がよく言うわ、、、あっネリーちゃんこっちおこた入ったらー」
「なにっネリーちゃんっ!? 俺の膝の上においで〜」
スパンッ
以下夫婦ドツキ漫才…………第二中継所にマイクが返ることはなかった。
匿名希望「あ、あの番号表示はまだなの?…………」
チラシの裏を前に沈黙。
三が日はこうして過ぎていった…………
>>373氏
幕引きほんと乙です。
いやはや、どうしようかと(汗
哀れ、ぬいぐるみに差し替えられたエトランジェw
残念、セリアは今年もツンツンですか?YES YES(ry
しかしあのぬいぐるみ欲しい。視聴者プレゼントはないのか?
え?ギョーカイの人が持って帰った?...汚いなぁ、大人の世界ってw
なにはともあれ、メインレポーターの
>>373さん、乙でした。
>>364 >新発売 とろけるニム (10枚入り) 炬燵乳業
特濃ハリオン乳もよろしうわなにをするやめくぁwえれmftgyぶらslp;
〃  ̄ ヾ;
i`_(ノハソ
ノ从;-;ハ, < 人がいない…いないよぉ…
( Ημ)| 助けて、ネリー…どこぉ、どこ…ぉ…
乙_∪ .∪
>>377 俺のかわいいパイナップル
お前に顔射したい気持ちだ
よーしほらヨフアルあげるからね〜おじさんに付いてきなみんなの所に連れてってあげるからね〜
「…………そこの不審者、その覆面ファーレーンのでしょ……ちょっと来なさい」
「イデッデデデデ ま、まって耳ちぎれ」
「シアーちゃんちょっと待っててね♪すぐ戻るから」
「う、うんわかった〜」
………
……
…
「さ、いこっ。あ、みんなのヨフアルおみやげに買ってこーか」
「うん、シアーねハイペリア味が良い〜」
――――――――
意外に、お姉さんしてそうな今日子。ハイペリア味とは、料理中のエスペリア・オルファのいる厨房で、
テーブルにあった卵と酢、食用油などを見た悠人が、ハイペリア時代佳織と小鳥の料理を手伝わされた時の
記憶で作ったマヨネーズのことらしい。ラキオス総マヨラー?
マヨネーズ味のヨフアル…………お好み焼き?
年少組の味覚、総関西化の悪寒…あ、いいかも(*´Д`)
関西弁のネリシア姉妹…
ヤベ、萌える
「な〜、シアー。ユートさま、大事な話があんねやゆうとったけど、どないな話なんやろな〜。」
「せやなあ、みんなに内緒でヨフアルくれるんとちゃうやろか〜?」
「あーん、それやったらウチ、ネネの実パイのほうがええわ。」
「あ〜、ウチ両方がええ〜。」
「欲張ったらあかんて、シアー。2エヒグゥを追う者1エヒグゥを得ず、ゆうやろ。」
「ネリー、あんた意外と学あんねんな〜!」
「まかしとき。でもアイスバニッシャーは、なかなか憶えられへんねんけどな〜。」
「あ〜、ウチもや〜!!」
「ウチら双子やさかいなあ、余計なトコまで似てんねんで、きっと。きゃはは。」
「笑い事とちゃうで、ネリー!ほんま、かなんわぁ。」
……………………………………………………………………
「エスペリア。マナが足りない。」
前置きもなく云う。
「帝国に勝つためには、佳織を助けるためには、足りない。」
エスペリアはただ、願う。
「二人...いる。あいつらは、戦えない。だから」
...以下原作者の抗議により中止。
>>383 い、イカン…ネリシアにオセロの二人が被ってきた…
頬を撫でる暖かい朝日を感じてシアーは目を覚ました。
「ふ、ふぁ〜〜〜…………うにゅう…………」
ゆっくりと上半身だけ起き上がり、こしこしと両手で目を擦る。少し目が覚めてきた。
とろいと見られがちだが案外と寝起きは良い。両手を繋げてそのまま上へ。
「う〜〜〜ん…………にゃぁ〜〜」
軽く伸びをしているとやや大きすぎるサイズのパジャマが肩からずり落ちた。
ひんやりした朝の空気がほてった身体に当たり、気持ちが良い。
ちなみにパジャマは以前ユートさまが着ているシャツが欲しくなって、
ヨーティア様に無理に頼んで内緒で作ってもらったものだ。
当然色も形もサイズも材質もそっくりそのまま。ネリーとお揃いでもある。
最近ささやかな主張を始めてきた胸の、膨らみの先っぽが擦れてやや気になるが、
それでもシアーのお気に入りである。
隣を見る。横ではネリーが相変わらずの寝相の悪さで枕を抱き締めていた。
幸せそうな顔をして涎を垂らしている。
「にゅふふ〜〜…………ユートさま〜〜」
何の夢を見ているかが判りすぎる姉の寝言にシアーは少し可笑しくなった。
「ネリーちゃん、起きて、朝だよ」
「ふむむむ〜ん…………だめだって…………」
軽く揺すりながら起こそうとしたが、やっぱり無駄だった。
散らばった蒼い髪が更に広がっただけである。ついでにパジャマは両肩ともずり落ちていた。
つぶれた胸元が小さな谷間を形作っているのが見え隠れする。
寝汗で少し汗ばんだ桜色の肌。膨らみが呼吸に合わせてゆっくりと波打っていた。
ほんのりと浮き上がった鎖骨の辺りは自分とそっくりだな、とちょっぴり嬉しくなる。
「ほらネリーちゃん、起きてよ〜」
「う、うう〜ん…………」
試しにもう一度揺さぶると、寝返りを打ったネリーが布団ごと巻き込んで全身で抱き込む。
パジャマの裾を捲り上げた体勢からすらっと伸びた細い足が太腿まで見えた。
どちらかといえばシアーの方がぽっちゃりな体型だ。
ネリーはスレンダーとまではいかないでもややすらっとした体型。従って細さでは敵わない。
しかしおへその形はそっくりだし、お尻の大きさだって足の長さだって変わらない。
つまり、「イイ女」では負けていない、と密かにシアーは思っている。
それはそうといい加減本当に起こさないとまずい時間になってきた。
シアーはいつも通り、話し合いによる平和解決を放棄する。
だけど一応最後通牒だけはしっかりと告げておいた。
「ネリーちゃん、起きないと大変だからね」
「んふふふふ〜〜〜〜…………」
ベッドのシーツを掴みつつ、姉の顔を覗きこむ。
鼻息の様な寝ぼけ声を上げて頬を枕に擦り付けているネリーは案の定何の反応も示さなかった。
時折思い出したようにぶるっと震えるのはイヤな予感ではなく単に寒いだけだろう。
そう思うことにして、シアーは掛け声と共に思いっきりシーツを引っ張った。
「も〜、知らないからね、ネリーちゃん…………えいっ!」
「う?……うわわ、うわわあわわわ〜〜〜☆%#&!!!」
手加減無しでスピリットの力を開放したままシーツを引っこ抜かれたネリーは、
その回転エネルギーを一身に受けたまま空中に浮き上がり、
ランダムな遠心力によって無理矢理ムーンサルトを演じた。
そして加速度×質量への肉体の応力により独楽鼠の様にきりもみしながら、
それでも運動エネルギーを消費しきれずに重力方向の加速度に従い地面に激突した。
「あいたたた…………」
「大丈夫?ネリーちゃん、ごめんね……」
自分でやっといてなんだが一応謝っておかないと姉の機嫌が悪くなる。
もう何度目か判らない経験がシアーを謙虚にさせていた。
腰を擦りながらきょろきょろと辺りを見回していたネリーの焦点がようやくシアーに落ち着く。
「あれ……?シアーちゃん…………???」
「おはよう、ネリーちゃん」
一瞬の静寂。
事情を理解したネリーががばっと起き上がるとぴょんぴょん跳ねつつパジャマを脱ぎ出す。
「おはよう、シアーちゃん!早く行かないとご飯遅れちゃうよっ!!」
そう言っている間にはもう服を着てポニーテールを纏め、前髪まで整えてたりする。
いつも思うのだがこの切り替えの速さはどうだろう。やっぱり性格なのだろうか。
或いは「姉」である事で一応「妹」よりしっかりしていると見せたいのかもしれない。
でも、どっちにしろ元気なネリーちゃんを見ていると、なんだか嬉しい。
いそいそと朝の準備をしている姉の後ろ姿を見ながらシアーはぽやぽやそんな事を考えていた。
何時の間にか『静寂』を腰に掛けながら、ネリーが入り口で叫んでいる。
「も〜遅いよシアーちゃん!早くしないと置いてくぞ〜〜!!」
「あ…………」
言われて気が付いた。まだパジャマも着替えていない。
「ちょ、ちょっと待ってよネリーちゃ〜〜ん!!」
慌てて握っていたシーツを放り投げる。
またハリオンお姉ちゃん辺りに叱られるだろうが気にしてはいられない。
わたわたとパジャマに手を掛ける。それでも、しわにならない様に十分気をつけつつ。
389 :
信頼の人:05/01/05 23:29:09 ID:EmspHGgB
スレの流れの勢いで書きなぐりました。
関西は入ってませんが_| ̄|○
ひどいんじゃないカナっっっっっっっっひどいんじゃ(ry
何でマヨネーズネタがネリシアおっきまで繋がるになるのか、小一時間ネリシアの寝顔と着替えを
見ながら語らおうと思うのだがどうか。
シアーたんゆっくり着替えていいからね〜'`ァ'`ァ
…………そうか、関西になるのですか、考慮外でした。関西弁ネリシア、イイ(゚∀゚)
ファーかハリオンには京都弁を。
ハイペリアの味覚の再現としてはお手軽かと思ったのです。材料はほぼ同じものがあるだろうし。
卵の流通とか希少性とか問題ありそうですがね。王室御用達になったりして。
でもブロイラーの生息環境聞いたら顔しかめそうだなみんな。
>383
そのSSは正直私的黒歴史なんだよ〜(汗) あげた後一回も読み返してないw
シリアスなのは向かないようで>ヨテト
で、おそらく言葉に不自由なユート君は訛ったヨト語使い姉妹に嫌気がさ(流転
あ...これは失礼しました、髪結いさん。トラウマだったとは露知らず。
ワケわかんない方は短編SS保管庫の「エスペリア」のカテゴリを開いて下さい。
トップに有るのがその問題作です。(←他人の書いたSSを問題作って言うな)
信頼さん、乙です。
いひひ、やっぱり二人とも下着は蒼の水玉模様ですかってスミマ…ゴメッ!!ホント、勘弁…しっ!!
衝撃の問題作。全ファンタズマゴリア四週連続一位。
「ユートさまっ、わ、わたくし主演女優賞候補ですって。ど、ど、どういたしましょう」
「おちけつエスペリア。ほ、ほらこう言う時は「人」って字を書いてだな、飲むんだよ」
「ひ、ひとですか? ウルゥ? ひとって何のことでしょう」
「あーそのなんだ、これでも飲め」
「は、はい」
ゴク
「☆#□ミ%■=|¥$/*!!#☆」
「な、何でこんな所に俺が序盤エスに飲まされた激辛い薬湯があるんだ!?」
「一位って操作しすぎ。プロパガンダ?」
「ちょっとセリア、そんな大きな声で言うもんじゃないでしょう」
「この話、ノーマルモードですよね? そうですよねっ!?」
「お姉ちゃん落ち着いて。大丈夫だよ、ニムはお姉ちゃんを見捨てたりしないから」
「…………」
とまぁ、べつに気にしなくてOKですのでw
>>389 乙〜。いいねぇ、日常。
世話焼きつつ焼かれつつ。でこぼこ姉妹。
ぽっちゃりな「イイ女」を維持するため、
日々もきゅもきゅです。
胸囲が上がりました。
新たな敵を発見しました。
日々挨拶です。
394 :
緑の少女:05/01/06 14:49:03 ID:BUDoISHy
降伏だけが理由でしょうか
「会えなくなるな」と右手をを出して
「寂しくなるぜ」それだけですか
向こうでキョーコさまが呼んでますね
マロリガンを発つコーインさまを微笑みで送りたいけれど
なにかがわたしの目からこぼれます
お別れにくださいボタンを一つ
「うおーいクォーリンっ!! やっぱりお前も来てくれーっ 実務に長けたやつがいないと向こう
とすり合わせんのが大変だからさーっ」
「は、はいっ!!」
大声を出してわたしは駆けていく。
お別れはまだきっと先。
コーインとクォーリン[発音似てるな]の馴れ初めきぼんぬ。
誰だだれだ、Hモード以降ならファーが第一候補だなんて言ってるのは!
だって仕方ありませんから。エスは変なブザー音がするだけだし。(←試したのか)
...あくまでキャラを調べるためだったんです、何かセリフが有るのかと思って。
某所に書かれてるようなマナ回収なんてしてません、本当です信じて下さい。
連書きスマソ
>>395 「安息」Diag. elements-1をドゾー。
いや、私もたった今読み返してきたトコですが。
>397
うわ、あったようななかったような……状態で書くもんじゃないですね……orz すまぬ>頼殿
エスからユートの初期状態と介護っぷりを聞いたりしたらクォが地団駄踏むかもなぁ。
>396
えーとお試しくらいならわたしも経験あるので。断m、あ、いやなんかセリフあるのかと。
たしかネリーだったかなぁ (遠い目) とりあえずファーレーンさんには最終戦の壁役がma(テラー
目覚めると、そこは天井だった。…………じゃなくて。
ここはどこだろう。ぱちぱちと瞬きをしながら、ヘリオンは起き上がろうとした。
「…………痛っ!」
体中に激痛が走る。動けなかった。そのままぱふっと再びベッドに倒れこむ。また天井が見えた。
「はぁ〜〜〜…………ここ、どこだろう」
「病室。大丈夫か、ヘリオン」
「ひゃうっ!」
いきなり横から答えが返ってきて心臓が飛び出そうになった。
胸の鼓動を抑えつつ、痛みが走らないようにそっとそちらを向く。
と、下を向いてなにやら一心不乱に格闘しているアセリアが椅子に座っていた。
「ア、アセリアさん?……………えっと………あ!」
今までのことを思い出す。自分が逸って飛び出したこと。斬られてしまったこと。そして…………
「あの〜わたし一体…………」
その後のことがわからないのと申し訳なさでおずおずしながら尋ねてみる。
しかしアセリアはこちらを向こうともせずに真剣な眼差しで手元を睨んでいた。
「…………?」
「………………できた。ん」
何をしているのだろうとヘリオンが覗き込もうとした時、ぷいと横を向いたままアセリアがなにか差し出してきた。
目の前に突きつけられた金属製の細い棒とその先に付いた食べ物。フォークに刺さっている……エヒグゥ?
展開についていけずに首を傾げるヘリオンに、アセリアは口を大きく開けたままハイペリア語で命令してきた。
「あ〜ん」
「…………はい?」
「だから、あ〜ん、だヘリオン」
「???……あ、あ〜ん…………むぐっ」
よくわからないままアセリアと同じように発音する。と、それがいきなり口の中に放り込まれた。同時に広がるのは果物の味。
目を白黒させたまま口の中を持て余してしまう。そこにまたもやアセリアの命令口調。
「噛む」
「んぐんぐ」
「よしよし」
言われるままに従って噛み締める。果物は美味しかったがもうなにがなんだかさっぱりだった。
「飲む」
「んっ……こくこく…………あっ!」
そして飲み込んだとき、ようやくヘリオンはそれがエヒグゥの形をした果物だということが判った。嬉しくなってはしゃぐ。
「アセリアさん、これ、おいしかったです!それにかわいいっ!」
「……ん」
照れくさそうにそっぽを向くアセリアの表情には満足感が漂っていた。
皿の上の“エヒグゥ”を綺麗に平らげた後、ヘリオンは事の顛末をアセリアから聞いた。
訥々と語るアセリアからヘリオンを責めるような調子は感じ取れない。それでもヘリオンは背中から大量の冷や汗を流し続けていた。
「そ、それでユートさまは…………」
「ユートはずっとヘリオンを看病していた。今は寝てる」
「そ、そうですか……」
それっきり部屋に沈黙が走る。気まずい。しかしそんなことよりも。
ずっと側にいてもらえた。しかしその喜びもこれでは半減どころか全滅だった。どんな顔をして悠人に謝ればいいのだろう。
「………………」
放し終えたアセリアはなにかを待っているようにじっとこちらを見ている。それは、ヘリオンの答えを待っている目。
静かに見つめる蒼紫の瞳を前に、ヘリオンは懸命に考えた。
(でもどうやって?……もしアセリアさんなら…………)
アセリアを窺ってみる。無表情に、それでもかすかに伝えたがっているなにかが見て取れた。以前のアセリアにはない瞳の色。
ふと、サモドアのあの芝居を思い出す。そして一度神剣に飲まれても戻ってきたアセリアが手に入れた戦い以外の意味。
自分にとっての戦う意味とは何だっただろうか。
(アセリアさんは一体なにを見てきたのだろう。ユートさまの背中を追いかけてきただけ、それだけじゃないなにか……)
『ラキオスの蒼い牙』。その強さは誰でも知っている。でもそれだけじゃない。少なくとも今は。
ヘリオンの口から、自然に言葉が漏れた。
「アセリアさんの戦う意味って、なんですか?」
訊ねるヘリオンの瞳は真剣だった。そしてまた、即答するアセリアの瞳も真剣だった。
「ユートの幸せがわたしの幸せ。ユートと歩くために、わたしは戦う」
その答えが自分の中に静かに染み込んでいく。ヘリオンは自分の中の意識がすっきり言葉に還元されたことでなにかが吹っ切れた。
(そうだ、謝って許してもらうんじゃだめなんだ。そうじゃなくて…………一緒に歩けるように…………)
決心したヘリオンはアセリアをじっと見つめ返した。そしてはっきりと言う。決心を自分に言い聞かせるように。
「アセリアさん、わたしに教えてください、戦いかたを」
「……ん」
短く答えたアセリアは優しく微笑んでいた。
「ヘリオンの目が覚めたって!?」
ばたん、と勢いよく悠人が扉を開く。驚いたヘリオンとアセリアが目を丸くした。
ヘリオンが目覚めてから今まで、誰もこの部屋を訪れていない。
いったい誰が伝えたと言うのだろう。アセリアが疑問をぶつけた。
「ユート、誰から?」
「たった今、ナナルゥから!そんなことより……」
天井裏っ!?二人の頭に同時に閃くものがあった。無意味に揃って上を見上げる。
悠人がそんな少女達のささやかな疑問を気にした風もなく続けていた。
「ヘリオン、もう大丈夫なんだな…………よかった…………」
「あの、ユートさま、落ち着いてください」
その場にへたり込んでしまった悠人にヘリオンが慌てる。
両手をぶんぶんと振り回してわたわたとするヘリオンを見て悠人は逆に落ち着いた。
「ああ……そうだな、ごめん病室で騒いで」
「まったくだ。ユート、うるさい」
「あああの、アセリアさんもそれくらいで……」
「ん。わたしはもう行く」
「…………?アセリア、なんか機嫌悪くないか?」
「………………」
アセリアはじと目で悠人を睨みつけると黙って去っていった。
「え?お、おい…………」
悠人が閉まった扉を不思議そうに眺めていると、後ろからヘリオンがしずしずと声を掛けた。
「ユートさま、すみませんでした。その、先走って、ご心配もかけて……わたし、だめですね」
先日の戦いのフライングについて言っているのだろう。
しょんぼり、という擬音を背中いっぱいに背負ってどんよりとしている。
しかしファーレーンのお陰で吹っ切れていた悠人はその件について他に言いたい事が山ほどあった。
とりあえずそれを先に伝えようとする。
「まった、俺にも言わせてくれ。確かにヘリオンは無茶したと思う。だけどそれはヘリオンを信じ切れていなかった俺のせいだ」
「どうかしてた。自分で決めた事だったのにな…………ごめん。だから、今度はちゃんと頼む。もう一度、一緒に戦ってくれ」
一気に喋り切る悠人。やや気圧されながらもその内容はきちんとヘリオンに伝わった。
しかしそれだけにヘリオンには信じられなかった。呟きがやっと口を零れる。
「え……」
「もう二度と繰り返したくないんだ、あんなこと。だからもしヘリオンさえよければ、今度はちゃんと……三人で、戦おう」
畳み掛ける様な、しかも思いがけない悠人の言葉にヘリオンの表情がみるみる明るくなる。体中の痛みも吹っ飛んでいた。
「あ…………は、はい!ユートさまっ、こちらこそ……こちらこそお願いしますっ!わたし、頑張りますっ!」
「え、あ、ああ、ありがとう、ヘリオン」
お互いにぺこぺこと頭を下げあうのに気付き、二人でしばらくくすくすと笑いあう。
「そうか、うん、よかった。でも今は怪我を治すのが最優先だな」
「はいっ、でもその間、ユートさまは…………?」
「え?ああ……当分はアセリアと二人っきりだろうな」
「えっ……………………わかりました、わたし頑張りますっ!」
「???」
なにが琴線に触れたのかふんっと力瘤を作って気合を入れるヘリオンに悠人はただ首を傾げていた。
それから数日後。すっかり回復したヘリオンは戦いの合間を見てアセリアに(悠人限定)秘密の特訓を受けていた。
アセリアが悠人役になり、その指示に従うという至極単純な特訓。それでも最初は中々ついていけるものではない。
「ヘリオン、右っ」
「は、はいっ!」
「遅い……もう一度」
「はいっ、お願いします!」
そんな掛け声が何回も交わされる。
剣を振るわけでもなく飛び回るアセリアに仔犬のように懸命について回るヘリオン。
ただひたすらそんなことを繰り返している二人を他の仲間達は不思議そうに見物していた。
休憩中のヒミカが隣に座っているセリアに話しかける。
「あの二人、なにしてるの」
「さあ、わたしには関係ないしね」
「その割には機嫌が悪そうじゃない、セリア…………はは〜ん幼馴染をヘリオンに取られたから拗ねてるんだ」
「ふぅ、なに言ってんだか…………」
(ばかね、敵に塩を送る、なんて今時流行らないのに……ホントに昔からバカなんだから)
セリアが小さく舌打ちをしながら首を振る。
「え?なにか言った?」
「なんでもないよ、ただそろそろかなって思っただけ。さ、訓練、訓練」
「?……ちょ、ちょっと待ってよもう!」
神剣を手に取り立ち上がるセリアをヒミカが慌てて追いかけた。
「……なにをしているのですか、アセリア殿とヘリオン殿は」
クォーリン相手に剣の稽古をしていたウルカがたまたま通りがかったファーレーンに訊ねる。
ファーレーンは少しそちらを見た後何故か可笑しそうに口元を緩めた。
「さあ、どうでしょう。これも正々堂々戦うというアセリアなりのスタイルかもしれませんが……ふふ、あの娘らしい」
「……ファーレーン殿?」
ますます判らない、といった表情のウルカをそのままにファーレーンはニムントールの方へと歩いていく。
頭に疑問符を沢山浮かべたままウルカはアセリア達へともう一度視線を向けた。
「もう一度お願いします!」
「ん、ヘリオン行けっ」
「はいっ…………ってどこへですか〜〜〜?!」
ヘリオンの泣き声が響き渡っていた。
ヘリオンの復帰は丁度リレルラエルでの防衛戦真っ最中の時だった。
混乱している事もあり、城の前面で悠人の部隊とは離れ離れになってしまう。
早速成果を試せると思っていたヘリオンは少しがっかりした。
「ヘリオンなにぼっとしてるの!左からまた来るわよっ!」
「は、はいっ!」
同じ編成のヒミカが叱咤を飛ばしつつ敵に飛び込んでいく。ヘリオンは慌ててそれに従った。
ウイングハイロゥを広げ、ヒミカに追いつこうと全力で駆ける。あっという間に差を縮め、同時に詠唱を始める。
「…………!貴女っ……!」
「神剣よ、我が求めに応えよ 恐怖にて、彼の者の心を縛れ…………テラー!」
既に横に並んでしまったヘリオンを驚きの眼差しでヒミカが見つめる。敵の動きが乱れたのを見てヘリオンが叫んだ。
「今です、ヒミカさんっ!」
「あ、え、ええ……はぁぁっ!!」
「んっ、そこですっ!!」
一緒に斬り付けるヘリオンが頼もしく見える。ヒミカは不思議に感じながら剣を振るっていた。
ヘリオンの成長は戦いを重ねるにつれ誰の目にも明らかになった。
元々の優れたスピードに加え、パートナーに合わせた的確なサポート。
攻撃に決定力が無いのが欠点と言えば欠点だが、確実で迅速なフォローはそれを補って余りある。
次第にヘリオンと部隊を組みたがる仲間達が増えていった。
しかしその分肝心の悠人とは中々組めない。ヘリオンの不満は次第に膨れていった。
リレルラエルでの防衛が一段落した後の事。ヘリオンにとって致命的なことが起きた。
敵を退けたラキオス軍がいよいよ秩序の壁に向けて進撃することになったのだが…………
秩序の壁は3つの城によって守られている。サレ・スニル、ゼィギオス、そしてユウソカ。
とりあえずサレ・スニル方面とゼィギオス方面、この2面に向けて進撃しなくてはならない。
その編成で、ヘリオンは悠人と逆方面担当になってしまったのだ。しかも悠人とアセリアは同じサレ・スニル方面という止め付き。
ヘリオンが焦るのも無理は無かった。それでもエスペリアの決定には抗えない。悶々としたままヘリオンはセレスセリスに出発した。
支援!支援!
「ヘリオン、そっちに行ったわよっ!」
「は、はいっ、え、えっと…………」
「危ないよっ!てりゃ〜っ!」
「あ、ありがとう、ネリーちゃん」
「も〜どうしたの〜?なんだか変だよ〜」
敵の反撃を受けたセリア、ネリー、シアー、ヘリオンはセレスセリスを目前にして足踏み状態が続いていた。
敵が予想以上の強敵だったこともあるが、あれだけよく動いていたヘリオンがまるで別人のようなのである。
ちょっと目を離すとすぐにぼぅっとして立ち尽くす。セリアは薄々原因が判るだけに叱る訳にもいかず、ただイライラしていた。
(まったくエスペリアももう少し場の雰囲気ってものを読んで編成してくれればいいのにっ!)
部隊編成が発表された時の悠人のすまなそうな視線が思い出される。ヘリオンはずっと俯いたままだった。
アセリアが何か言いたそうだったがその微妙な表情の変化に気付いたのは恐らく自分だけだろう。
「くっ、一旦後退するわよ!」
歯噛みをしてセリアは撤退命令を下していた。
一方悠人は悠人で府抜けた戦いを続けていた。
気を利かせたアセリアがなんとか誤魔化しているものの、動きに切れがないのは誰の目にも見て取れた。
「………………」
「ユート、ユート」
「あ、ああ、なんだアセリア」
「……なんでもない。シーオスに着いた」
「ああ、お疲れアセリア、ヘリオンも」
振り向いていつもちょこちょこついてきていたブラック・スピリットの少女を探す。しかし当然その姿はどこにもなかった。
「あ…………」
「………………」
アセリアの視線が複雑な色を見せた。
撤退の際には森の中に逃げ込む。そう指示されていた筈だった。
しかしうわの空でそれを聞いていたヘリオンはものの見事に仲間に置いていかれていた。
「あっ!」
驚いて駆け出したとき。木の上から何かが落ちてきた。
網の目のように組み合わされたそれがヘリオンの動きを拘束する。
そしてどこに潜んでいたのか明らかに今までとは数段威圧感の違うスピリット達が次々と現れ、たちまち取り囲まれる。
身動きが取れないまま敵の集団に見下ろされる状態。恐怖心が心をもたげた。
「これはこれは……思わぬ収穫ですね……」
「…………! だ、だれですかっ!」
敵の集団が一斉に二手に分かれる。声と共に木の陰から姿を現したその男は下卑た笑いを口元に浮かべた。
「勇者殿を迎え撃つつもりでしたが……まあいいでしょう、これはこれで面白い趣向というもの……」
「あ、あなたは……」
突然頭の後ろに強い衝撃。ヘリオンは倒れこみながら以前砂漠で遭遇したその男の名前を必死に思い出そうとしていた。
ついて来ないヘリオンに気付いたセリアが慌てて振り向いた時にはもう遅かった。
気を失っているらしいヘリオンを抱えたスピリット達が森の奥に消えていく。
それを率いているらしい男の横顔が見えた。あれは、あの男は…………
「…………ソーマ・ル・ソーマ!じゃああれがソーマズフェアリー……くっ!」
これだけのメンバーで太刀打ちできる相手ではない。もうすぐ後ろの敵にも追いつかれる。
セリアは竦んだ足に言い訳するように呟いた。
「ヘリオン、ごめんなさい…………」
凶報が届いたその夜。
悠人は占領したシーオスの街でヘリオンがソーマに攫われてしまったことを黙って聞いていた。
しかし、自然と握った拳に爪が喰い込む。よりにもよってソーマに…………口の中が切れて苦い味がした。
自分が怖い顔をしているのが判る。怒りと焦燥。ヘリオンの笑い顔が浮かんでは消える。
もう、判った。はっきりと、失いたくなかった。そうなんだ、俺は…………
頭を上げようとしないセリアの肩が小刻みに震えているのを見て我に返る。それでも出来るだけ優しい声を出すのが精一杯だった。
「セリアの判断は正しかったと思う。後は俺に任せて休んでくれ、セリア」
「はっ!申し訳ありませんでした!」
「顔を上げてくれセリア。別になにも責めてないから、さ」
「し、しかしユートさま…………」
そこで初めて顔を上げたセリアの瞳からは大粒の涙が零れ落ちていた。
仲間を見捨てた自分からか、悠人の心情を察しての事か。悠人にはよく判らなかった。
それでもその肩をそっと抱き寄せる。ぴくっと一回震えただけでセリアはすんなりと胸に飛び込んできた。
「すみません……ごめんなさい……」
セリアが泣き止むのを待つ間、悠人はずっとセレスセリスの方角を睨んでいた。
その夜。静かに仮詰め所の扉を開いた悠人は目の前にアセリアが立っているのを見て驚いた。
「……なんだアセリアか、どうした?散歩でもしてたのか?」
なるべく冗談に聞こえるように努める。アセリアはにこりともしなかった。
「ユート、ヘリオンを助けにいくのか?」
「…………」
思わず黙り込む。しかしこの少女にその手の沈黙は効果がない。気にした風もなくアセリアはとんでもない事を言い出した。
「ユート、ヘリオンを倒せるのか?」
「な…………!」
叫び声を上げそうになった。それほど意外なアセリアの冷たい一言。しかしすぐに思い直す。
あの『妖精部隊』の存在を。ソーマが何を施して彼女達を戦闘マシーンに仕立て上げるのかを。
もしヘリオンがそうなってしまっていたら…………自分はヘリオンを討たねばならない。仲間の為に。佳織の為に。
それが出来るのかどうかとアセリアは聞いているのだ。しかしそれでも悠人の心は決まっていた。
「……出来ないな。だから、そうなる前にヘリオンは救い出す」
何故か、苦笑いが漏れた。それを見てふと曇ったような顔をしたアセリアだったが。
「そうか、ならわたしもついていく」
相変わらずの即答だった。だがその瞳はなぜか捨てられる仔犬の様に寂しそうでもあった。
ふと違和感を感じた悠人だったが、すぐに気のせいだと思い直す。
「だめだ。もしアセリアまで捕まったら俺達はもうどうしようもなくなる。幸い俺は男だし、な」
「ユート…………」
今度こそ、アセリアが悲しそうな表情を見せた。
「なら、俺も連れて行ってもらおうか」
いつの間にか戸口にもたれていた光陰がいきなり声をかける。
『因果』を無造作に肩に担いだ相棒は相変わらず頼りがいのありそうな笑みを浮かべていた。
「こ、光陰、お前いつから聞いて……」
「幸い俺も男だし、な。それにヘリオンちゃんをあんな男にいつまでも預けっぱなしにしてられるか、な、今日子」
「光陰…………しかし…………」
「そうそう、こっちはアタシがなんとかするからさ、ねっ」
こちらもいつ現れたのか、今日子がアセリアの肩を軽く叩きながら微笑む。いつもとは違った、妙に大人しい登場だった。
「キョーコ……」
「こういう荒っぽいことは男達に任せておけばいいのっ。お淑やかなわたしたちはここで待ってましょ、アセリア」
変なしなを作って言う今日子にからかうような光陰の声が飛ぶ。
「よくいうぜ今日子。とっとと行こうぜ悠人、こっちにいるといつ今日子のハリセンが飛んでくるか判らんからな」
「光陰〜。そのよく喋る口は戦いには必要ないわよ〜」
「ぅわわっ、ごめんなさい〜〜!」
「二人とも……ありがとう」
いつもの調子でふざけ合う二人に悠人はそっと呟いていた。
「全く男ってどうしようもないわね〜、アセリア」
悠人と光陰が森に消えてしまうと、今日子はやれやれといった感じで大仰な溜息をついてみせた。
するとそれまで俯いて何も喋らなかったアセリアが急に顔を上げて口を開いた。
「キョーコ、わたしはどうしたら、いい?」
「うっ……そうねえ、今は待つしかないのかな」
咄嗟の質問に思わず直球で答える。言ってから今日子は激しく後悔した。自分の苦手な方へ話が進みそうだったからだ。
しかしもうこうなっては腹を括るしかなかった。
「待つ?」
「そう、待つ。出来る?ちなみにアタシは出来ないけどね、たはは」
「待つ……ユートを……」
ぶつぶつと考え込んでしまったアセリア。その様子を見て、しまった、と今日子は舌打ちした。
本当にやりそうだ。ただ自分の場合に置き換えただけだったのに。
こういう娘は元々受身なのだから、ただ待たせていては悠人の思う壺(?)ではないか。
傷つき倒れたヘリオンを前に腑抜けてしまった悠人を思い出す。結果は火を見るよりというやつだ。
今日子は慌てて訂正しようと試みた。早口でまくしたてる。
「ああ〜ほらでも悠も結構バカだからさ、ちょっとは態度で示した方がいいかな〜なんて……聞いてる?アセリア」
「ん、判った。やってみる」
…………全然聞いてはいないようだった。今日子は気付かれないようにそっと深く息を吐いた。自分でも驚くほど寂しそうな声が出た。
「…………ねえアセリア、アタシ悠と貴女ならきっと上手く行ってたと思う、ほんとよ」
「?」
よく判らない、そう言いたそうな表情を浮かべるアセリアに、それでも今日子は続けた。
「でもね、今悠は悩んでる、すっごく。ひょっとしたらもう答えを出しているかも知れない。でもそうだとしたら……」
「キョーコは、ユートの笑顔、好きか?」
「え?あ〜………………まあ、ね。昔からアイツ、笑顔って中々見せない奴だったからさ……」
話しながら、かつて居た世界を今日子は思い出していた。悠人と光陰と自分、そして……佳織。
悠人は佳織の前だけでは違う笑顔を見せていた。自分と光陰に見せるものとは違う笑顔。
そしてそれが今日子自身の感情を抑える鍵でもあった。佳織なら、仕方がないと思えた自分の気持ちを。
でもあれは今思うと、やっぱり本当の笑顔とは違った様な気もする。一方的に支える関係で笑いかけるということ。
悠人が意識していたとは思えないが、やはり佳織の想いが悠人の感情と釣り合っていたとは思えない。
ふと今話しているこの蒼い瞳の少女もそう考えているのだろうか、と思えた。ヘリオンやアセリアと佳織の立場が被る。
好きな人の幸せだけを願う気持ち。そんな純粋な気持ちをどれだけの強さで持つ事が出来るのか。
だがヘリオンは、そんな強さの更に上を行こうとしていた。対等に微笑み合える、そんな関係に。
むしろ気持ちが強くなればなるほど独占したいという感情が起きないはずはないから。
自分が見たところ、アセリアに足りないのはそこだ。
純粋過ぎるのが足枷になっている。もっと我がままになればいいのに、と思う。
「うん、わたしも好きだ」
まるで心を読んだかのようなアセリアのセリフが他人事のようには思えなかった。
今日子は苦笑いをしながら自分の“応援”が失敗に終わった事を確信していた。
心の中でひたすらアセリアに頭を下げつつ。
悠人と光陰が森の中に入って暫くした時。木の陰から銀色の髪が靡いた。
「きっと行かれると思ってました、ユート殿」
「ウルカか……止めても無駄だぜ。俺はヘリオンを助けに行く」
突然のウルカの出現に動揺しながらも悠人は悟られない様努めて冷静に答えた。
「そういうことだ。ウルカの姉ちゃん、コイツはこういう奴だ、言っても聞かないと思うぜ」
光陰が横に立つ悠人を親指でさして苦笑いする。
「ま、心配しなさんな、俺がいる限りヘリオンちゃんだけはちゃんと連れ戻してくるからさ」
「ちょっと待て、『だけは』ってなんだ『だけは』って」
「まあこの際悠人はどうでもいいからな、わはは」
「最初から誰も止めてはおりませぬ……それよりも」
脱線しかけた話を元に戻そうとウルカが何か言おうとした。
しかし最後まで話し終える前に飛び出してきた赤い髪の少女が悠人の目の前に仁王立ちで立ち塞がる。
追い詰められた様な瞳の色が紅くきらきらと睨んでいた。
「わたしも行きますっ!」
「ヒミカまで……一体なんだっていうんだお前達」
やや呆れた様な顔と口調の悠人に構わずヒミカはありったけの声と勇気で叫んでいた。
「ユートさまが心配だからですっ!」
「………………」
さわさわさわ。
突然の爆弾発言に沈黙が走った。それはそうだろう。ヘリオンを助けに行くのに悠人が心配だと言っているのだから。
ヒミカが畳み掛けるように捲くし立てる。
「わたし、もう我慢しません!ユートさまが心配だから心配しますっ!ユートさまだから…………」
はた、と我に返り、真っ赤になって俯いてしまうヒミカ。しかしそこで黙り込んでしまっては告白したも同然。
さすがヘタレの悠人でも言わんとしていることをおぼろげにだが理解してしまった。
ただ、理解したというだけで行動がついていける程にはとても落ち着いてはいなかったが。
「いやえっと……」
「あ〜ヒミカ、立て込んでるとこすまないんだが……」
「そろそろ行きませぬと皆が騒ぎ出します」
場合が場合。光陰とウルカがしぶしぶ助け舟を出した。
やや立ち直った悠人が心臓の動悸を抑えつつ結論を後延ばしにしようとする。
「そ、そうだな……すまんヒミカ、その話はまた後だ」
「………………はい、ユートさまがそう仰るなら……」
しぶしぶ、といった感じのヒミカだったがやがて思い直したのかきっと表情を引き締めた。
様子を見てウルカが話を戻す。
「それで、手前どもも連れて行って下さるのでしょうな」
「だけどなウルカ、相手はソーマだぞ」
「判っております。なればこそ手前は役に立ちましょう。帝国は自分の庭でありますゆえ」
「そうです、それに陽動が必要になるでしょう?」
色々と言いたい事はあったが諦めた。
「…………全く馬鹿ばっかりだな…………いくぞっ!!」
二人の微笑みに押し切られた悠人ははぁと小さな溜息を付いて走り出した。
支援いるかな
418 :
信頼の人:05/01/06 21:50:35 ID:ly/ggfbi
W あとがき
まずは支援ありがとうございました、おにぎりの中身さん。
周囲の影響が恋愛沙汰に与える影響は馬鹿には出来ないのではないか、と。
そっち方面苦手そうな今日子、支援無しヒミカ…………お二人のファンの方、すみません(汗
ちなみにネリシアはファーレーンに慰められてます。尺の都合で出てきませんがorz
読んで下さった方、有難う御座いました。誤字脱字今回特にハリオンマジック等ご指摘があれば幸いです。
>>290さん
いえ、元々考えていたネタなんですが>ネリーとシアーの日常短編リレーみたいなもの
たまたまスレの流れがねりしあになってたのでとりあえず寝起き編書いてみました。
で、誰か続きを書いてくれないかな〜とかお食事編とかお風呂編とか訓練編とか他力本願(汗
ぼたんって……卒業式?w 悠人、ぼたんが幾つあっても足りないかも。
お別れなんて、そんなマイナス思考はいけませんね、クォーリン。目指せロリ(ry
>>391さん
蒼の水玉の建設が終了しました>ねりしあ関西w
それだとお風呂編かなとついでに憂鬱さんを煽ってみるw
>>393さん
日々挨拶に爆笑しました。
ちなみに私個人はスレンダーよりややぽっちゃりの方が好きなようですが
そんなことはどうでもいいですねw
アンカー間違えた……
418の「290」は
>>390さんの間違えですorz
ナナルゥGJ!
なんかヘリオンもユートも成長してるのか疑問符がw
ハクゥテ、延命おめ
刃物使いは万全アセリア
セリアそこは遠交近攻だっ!!上げ潮だ
ユート君そこはかとなくムカツクw
ヒミカ、兵は神速を尊ぶのだぞ。出遅れ、おつ
アセリアマインド低下。ユート理由理解不能理解不能
コーイン、もー一回鉄拳きぼん
ヘリオン…………「シチュー焦げちゃう」とか言いませんよね ドキドキ
>ネリシア日常
うっ。読みながらつらつら妄想が広がってたのは確かかも……。
ほ、ほら誰か、そこの人、今ならネリシアを自由にできますよ。他力本願(スターダスト
前スレDAT落ちの模様。
422 :
憂鬱の人:05/01/06 23:55:26 ID:K5lHH7fA
くっそー、ソーマめ〜!ヘリオンタンをよくも...
心配で心配でネリシアのお風呂シーンなんて考えていられません!あうう...
へリオ〜ン!早く帰って来〜い!!
セリア〜!どさくさにまぎれて卑怯だぞ〜!!ファーかお前は〜!?
ああ、心配。
>>420氏
天に唾するとはこの事ですな。見事にトラウマをえぐられました>シチュー
未だに冷静に読み返せないんですよ、あのシーンだけは(涙
423 :
七草:05/01/07 00:16:52 ID:ONVAtPc+
光陰「今日は新年があけて7日目だ。 ということで‥‥」
悠人「ハイペリアの料理の七草粥というものを再現してみたんだ」
今日子「何度もこんなことやってるからいい加減市場かけずり回って似たもの捜すのにもなれちゃったわ」
エトランジェの3人組が今日の夕食を担当したいというので任せてみると
故郷の料理を再現していたようである
今日子「お正月の料理で疲れた胃腸を薬草入りのお粥でリフレッシュして健康でいましょうって行事なのよ」
光陰「それは違うぞ今日子。 本来は中国の人日の節句に由来する由緒正しい年中行事で
『神様と御先祖様に捧げた七種の草の汁をいただくと病気にならず、気力も充実して長生き出来る』と
そういう内容の行事だったのが今ではすっかりなくなって医学的に七草がどうとか嘆かわしいことしきりだ」
悠人「‥‥光陰、おまえそういう比較的どうでもいいことは昔からものすごくよく知ってるんだよな、何故か」
光陰「ふ、祖霊を慰める仏門の徒なら当然のことだよ悠人君」
と、悠人の発言の意図に気付かないのか意図的にスルーしたのかひとり自慢げな光陰
今日子「光陰の蘊蓄はおいといて‥‥どうかしら?」
テーブルを見回すと今日子たちの近くでは
セリア「ユートさまが作ったにしてはまともな方なんじゃないですか」
ニム「熱ッ‥‥何で冷ましておかないのよユート」
クォーリン「美味しいです、コーインさま」
ウルカ「さっぱりとしていて普段とは異なる趣‥‥」
なかなか好評のようである
424 :
七草:05/01/07 00:17:55 ID:ONVAtPc+
テーブルの奥の方に目をやると
ネリー「マッヨネッエズー」
シアー「マッヨネッエズー」
オルファ「マッヨネッエズあじのぉ〜 お・か・ゆ〜」
とかはしゃいでいて
エスペリア「三人とも食べ物を始末にしてはいけません」
たしなめられていたりする
マヨネーズ作って見せたのは失敗だったかなー
お代わりを頼まれて鍋の所に戻ると鍋を抱え込むようにしてお粥を食べている人影が一つ‥‥
今日子「アセリア‥‥お粥、おいしい?」
今日子の声が聞こえているのかいないのか、黙々とお粥を食べ続けるアセリアが
お皿が空になったタイミングでつぶやいた
「かゆ‥‥
‥‥うま」
投稿してから誤字に気が付いた‥‥orz
× 始末にしては
○ 粗末にしては
ごめんよエスペリア‥‥
ヽ)/
∠´ ハ`ゝ
彡//ノハハ〉
ゞ(リ´ 3`ノ! フゥーフゥー ほらニム。あーん。
真っ赤っかニム。 「ニ、ニ、ニムッテイウナ………バカ」
ク「コーインさまっ わわたしも熱いのだめなんですっ」
光「お? そうだっけか。マロリガン料理って熱くて辛いのばっかだったろ?」
マヨネーズ三姉妹のうた放送中
ねりー「ゾンビじゃないよねりーぐーるっ!」
ラキオスは薄口らしいから、お粥も受けそうだね。
年少組は濃いのが好きっぽいが、そのうちコーラご飯とかでてきたり。
>422
ナ「着弾確認しました。一度書いたものからは逃げられません。へっへっへ」
ヽ)/
∠´ ハ`ゝ
彡//ノハハ〉
ゞ(リ´ 3`(○=(゚ー゚*)
428 :
憂鬱の人:05/01/07 09:26:34 ID:yfkNXl3E
>>425 お、タイムリーネタ乙です。
光陰に対抗して薀蓄をひとつ。間違ってたらスマソ
セリナズナゴギョウハコベラホトケノザスズナスズシロ春の七草
クォーリン完全に馴染んでるなあw
ニムはやはりニム舌確定か?
アセリア今年はトリ年だぞ!...ってオチ分かってませんか、私?
>>426-427 こらこらケンカはいかんよケンカは、きみたちw
>>418 乙でやんす。
がんがれヘリオン。
ドジの星の下に生まれてもネタの星が君を見守っているからw
というかやっぱり悪いのはえswdrftgyりあlp;@:
>>425 マヨ味の粥か…えーと、ドリアで勘弁してくださいw
「マヨネーズ?知ってるわよ、作り方くらい。」
尋ねた悠人に向かって、事もなげに今日子が答えた。
「助かる!ハリオンに教えてやってくれないか?
いや、もうここんとこやけにハイペリアの味が懐かしくってさ。」
悠人が崩れんばかりの愛想笑いを浮かべて頼みこんだ。
「いいけど...悠、なんであたしに直接作ってくれって言わないの?」
ポリポリと頭を掻きながら片眉を吊り上げる今日子。
「う...。」
「いや勿論俺達が作るのは簡単だろう。しかし今日子、それではいつまでたっても
俺達はさみしいエトランジェのままだ。料理の好きなハリオンやエスペリアに
俺達の文化を伝えてこそ、正しい交流のあり方と言えるのではなかろうか?
いや、きっとそうに違いないぞ、うん。」
冷や汗を浮かべて言葉に詰まった悠人を、絶妙なタイミングで救う光陰。
その背中には気のせいか淡緑色の加護のオーラが光っている。
この時ばかりは、悠人もマナの導きに心から感謝した。
「ふふ、わかったわよ。誤魔化されてあげる。」
今日子が苦笑しながら言った。
「なるほどぉ〜、勉強になります〜。」
今日子の説明を聞きながら、熱心にメモを取るハリオンが頷く。
「これがハイペリアの調味料なんですか...。
私も料理の幅が広がって助かります。ありがとうございます、キョウコさま。
上手くハイペリアの味を再現できれば...新妻の座に一歩近付いて...」
その横でメモ帳片手に何故かうっとりした顔つきになるエスペリア。
ヘリオンの妄想癖は今や第一詰所まで拡大し、猛威をふるっていた。
「ま、作り方はこんなもんね。あとは好みでハーブでも入れるといいわ。保存もきくし、
多めに作ると良いんじゃない?」
「多めにって言ったけど...うーん、これだけあったら当分作んなくてもいいかもね。」
テーブルに置かれた木製のボウルに、なみなみとつぎこまれたマヨネーズを見て今日子が目を丸くした。
「うわあっ!何これ!?」帰ってきたオルファが目を輝かせる。
「ハイペリアの魔法の調味料ですよ、オルファ。どんな食べ物にも合うそうです。」
エスペリアが微笑を浮かべつつオルファに教えた。
「ここは大所帯ですから〜、多くて困る事はありませんよ〜、キョウコさまぁ。」
ハリオンも優しげな笑みを見せる。
「ねーねー、みんなで何してんのー?」
「わぁ、なんだか美味しそう〜、これなあに〜?」
元気いっぱいの双子がテーブルの周りではしゃぎ始めた。
「どんな食べ物でもおいしくなる、パパの世界の魔法の味なんだって!」
「ま、何にでも合うってのは言いすぎだけどね。」
肩をすくめて見せる今日子の声も、年少組には聞こえちゃいない。
「へー、すっごーい!あ、シアー、あれ持ってる?」
「うん、みんなのぶんもあるよぉ、ほら。」
ガサゴソと袋から取り出されたのは、湯気の立っているヨフアルであった。
「ちょ、ちょっと!」
今日子の制止も間に合わず、ボウルの中に突っ込まれた哀れなヨフアルを、
ためらいもせずにネリーとシアーが同時に頬張った。
「う...」
イケナイものを見てしまったかの如き表情を浮かべる今日子であったが、
次の瞬間信じられないことが起こった。
「「おいっしい〜!!」」
「...って、ウソでしょ、あんた達?ちょっと貸しなさい!」
シアーの手からヨフアルをひったくった今日子がおそるおそる一口かじる。
「あ〜、キョウコさま〜。返してよ〜。」
「ど、どうなんだ、うまいのか、今日子?」光陰が一歩引きながら訊いた。
「...うーん、何ていうか...お好み焼き?...関西の人なら口に合うかも...」
首をかしげながら今日子が答える。
「ひどいよ〜、キョウコさまぁ〜、シアーのヨフアル〜!」
「こら〜、シアーいじめたらあかんで〜!はよ返したってやー!!」
―――何故か口調の変わってしまっているネリーであった。
434 :
憂鬱の人:05/01/07 18:32:08 ID:yfkNXl3E
...やはり今年も関西仕事どっぷりのようです_| ̄|○
>>434 乙!
これまでの流れを綺麗に纏めましたなw
>427
ははは、ニムめ照れおって。
>433
戦闘前にマヨヨフアル食べれば、敵への恫喝になるかもw
「この距離はネリーの間合いやでっ、かかってきいや〜」
似非な上全然怖くない orz トーホク人ですからっ。
「ネリーちゃんはなんでとぶのん……?」 うおっシアーまでっ! 戻ってこーい。
一連の流れを検証すべく?ハーミット・グーグルに”マヨネーズ ワッフル”とかいれてたら、
単に”ヨフアル”で未見SSがいくつか引っかかったよ。何か幸いするかわからんね。
では関西弁のときだけ、ネリーのCVは坂本千夏というコトでw
♪じゅっじゅっじゅー(じゅっじゅっじゅー)
>436
ネリー「青スピだからー」
光陰「小さい子とか、好きだから!」
439 :
憂鬱の人:05/01/07 22:47:41 ID:yfkNXl3E
「シアーみてみ。コーインさまがまたウチらのほう見てはるわ。」
「かなんなぁ、ほんま。あ、人がおるでぇ、誰やろ。とりあえず挨拶しとこか〜」
「やめときって。どう見てもあれ敵さんやでぇ。」
すでに私の脳内では坂本千夏の声で喋る双子が..._| ̄|○ ダレカトメテ
住人の方々、余り安易に「関西」という単語をこのスレで使わないで下さい。
召喚されてる気がして落ち着かなくなります。とか言いながら燃え尽きかけてたハートに
火を付けられてしまったワケですが。特に
>>382さん!責任とってくれ〜。
>>434 そこはかとなくネリーよりむしろシアーの方が憂鬱な希ガス
きっと『シアーの憂鬱』ではネリーの方が(ry
今日子がうっかり「お好み焼き」などと言ってしまったがために今度は(ry
441 :
憂鬱の人:05/01/08 09:42:26 ID:dw/zQrop
/V\
/◎__ヽ
レ'´iミ(ノハソ
_ l !ik(i|;;゚ヮ゚ハ < つ...釣られないよ...440ちゃん...
ヽツ.(ノリ:::::::.::::.:..|) ネリーは...くーるやねんから...
ヾソ::::::::::::::::.:ノ
` ー U'"U'
>>420髪結いさん
キングオブヘタレが裏テーマだったりするのでユート君はムカつくのですw
一応成長するので(たぶん)暫くお待ちください(汗
>>422憂鬱さん
自分でも何でこのシーンでセリア抱きついていったのかよく覚えてないのですが……
多分ツンデレ以外のただ弱い部分みたいなものを書いてみたかったのか、と。……自分で推測してどうするorz
>>425さん
ファンタズマゴリアの七草って何使ってるんだろう……?……うま、ラナハナ。
>>429さん
ありがとうございます。これ以降少しシリアスになってしまうのでヘリオンのネタは余り無いのですが(汗
大体自分の作品ってエスペリアにはヤな役ばかり押し付けてます。
「いつもすまないねえ、エスペリア」
「それは言わない(ry」
>>ネリーの憂鬱
京風なのか広島なのか、それが問題だ(違
その後ラキオス城下でお好み焼ヨフアルやもんじゃヨフアルの屋台を引っ張るヒミカの姿が(ry
【状況】
>>441お魚ネリーを見て。
【被告人】
443(匿名希望)
【罪状】
処刑した悠人が捌いて摘みつつ生中片手に酔っ払って「シアー、ネタ持ってこ〜い!」と
叫んでいる姿を妄想してしまった。
【裁判官】
シアー
【判決】
「もきゅもきゅ…………あ、こんにちは〜」
【傍聴人(雑魚スピ一同)】
「って喰ってんのかよっっ!!」
…………_| ̄|○
何気に極めてしまうんだな、ヒミカw
「あー、あかんあかんっ!お客はん、ちょいかしてみ…よっと。うまいことひっくり返すんにはコツがいるんや」
…チャキチャキなヒミカはん…似合うかもw
>>443 (´o`).。oO(しかもマヨネーズで!?
447 :
憂鬱の人:05/01/08 15:56:18 ID:g+uW2CYu
/V\
/◎__ヽ
レ'´iミ(ノハソ
_ l !ik(i|;;゚ヮ゚ハ < ネタを探しにいったら寿司ネタになっちゃった
ヽツ.(ノリ:::::::.::::.:..|) 活きはいいからおいしいよっ
ヾソ::::::::::::::::.:ノ
` ー U'"U'
スピリットが寿司ネタだったら悠人はシャリだな、
どんなネタにでも乗っかかれてうわなにを(ry
寿司ネタ→スピ
シャリ →悠人
山葵 →ハリオン
つまり>447-448
は悠人とハリオンと他スピによる3Pを予言していたんだよ!!
光陰「で、時深のネエちゃんは“上がり”ってか?あの歳だし」
悠人「お前ってたまたま命知らずのエトランジェな発言をするよな……」
ムチャしやがって……>3
ヘリオンはまぐろ。ガリはヒミカ。
アセリアはタイ、セリアはえんがわ
ネリーは甘海老、シアーはタマゴ
いやなんとなく
ニムはプリン…いや、何となく。
…SS書かないとなぁ〜
ファーレーンはたまり。いやなんとなく。
ナナルゥは赤貝で決まりだな。(何故
それは小陰唇でh
エスペリアのアワ(ry
458 :
憂鬱の人:05/01/09 22:56:25 ID:x58505jA
ネタが詰まったところで。
お〜い、オルファ〜、ネタ持って来〜い!!
スピリット達のハイソの膝上が妙に高く設定されていることについて。
ガーターベルトを付けるため…………エスペリアしかしてないな。
アセリアだけ健康的なおみ足を晒しているのは何故か。
>>460 セリアの趣味。とか書いておくとア&セの人が一筆書いてくれそうでハァハァ
>>460 戦闘中の足の保護の為。
アセリアの場合は…
元、白ニーソ(エスペリアの趣味)→戦場での返り血で汚れて、ストックが…→仕方なく別の色(最有力候補色、黒)を選ぼうとしたが、エスペリアが猛反発!→エスペリアの強引な説得(と言う名の暴走)により、白ニーソから素足に…
又は…
ストック切れ→素足で作戦に参加→エスペリアとセリアの大暴走により大勝利→その後、エスペリアの策略によりアセリアの素足での戦闘参加が定番化
ここまで出てるなら自分で書けよ、俺…
>>460 IDが凄い事に……
>>462無名さん
何故最有力が黒なのか非常に気になりますが返り血はマナに還ってしまう気がするので第二案に一票。
大暴走の詳細キボン。
464 :
憂鬱の人:05/01/10 13:27:32 ID:WN7Gh5Un
止めを刺し損ねて敵スピが生き延びた場合、返り血もマナに還らないので
第一案も有力と思われ。
しかし、あえてアセリア実は水虫だった説に一票。(←夢がないなあ...)
アセリア白ニーソ、戦闘中突出するから所々破れて逆にエロティックに。
いけませんね、ってのはどうだろう。
セリアがアセリアのニーソをコレクションにしているから
足コk(ry
ラキオスってさ、所属するスピリットの数が少ないのよね。
なのに他の国と対等以上に渡り合い、勝利してる。
それはエトランジェの存在もあるけど、スピリットのレベルが凄く高いって意味でもあるわよね。
青い牙アセリア。緑の壁エスペリア。このあたりは大陸の誰でも知ってる。
ヒミカ、セリア、ハリオン、ナナルゥ、ファーレーン。戦場にいればこのあたりの名前も自然に覚える。
そんな、名の知れ渡った相手には出会いたくないと思ってたのよ。死にたくないしさ。
自分の実力にそれなりの自信はあったけど、それでも互角以上に戦える気はしなかったからね。
でさ、実際に戦場に立って、相手が年少のニムントールだって解ったとき、正直ほっとしたのよ。
私、完全に彼女をなめてた。
今考えると、愚か過ぎて逆に笑えてきちゃうけどね(苦笑)。
数度神剣を打ち合って、
「私に勝つだなんて、そんな事できると思ってるの?」
って私の問いに、彼女は笑ったの。
「愚問」
「できるできないじゃない、やるんだ。なーんてお寒い答えはやめてよ?」
「まさか。そんな答えは無いよ」
不敵に応えた彼女は、多分もう勝利を確信してたわね。
それは油断じゃなくて明らかな自信だったわ。きっと、「歩く事、できる?」って問いをぶつけても同じ答えだった。
「できる」
ってね。
それぐらい彼女にとっては当然で必然の答えだったわ。私の自信こそが過信、ただの思い上がりだったのよ。
ぶんっ、って音を立てて大気が引き裂かれたのを覚えてる。
でもまぁ、冷静に音を聴いていられたんだから、その初撃の威力、スピードそれ自体はあんまり大した事無いのよ。
ニムントールの神剣、『曙光』のバランスはとても悪くて、先端が重いから初速はホント遅いの。
でもね、距離を上手に調節されると、こっちは初動を邪魔する事ができない。
私の間合いは、完全に見切られてたわ。
この時に気付くべきだったのよね。
彼女の真の実力に。
『曙光』は、もう止まらなかった。
加速の上に加速を重ねて、遠心力を刃に乗せて、まるで巨大な独楽みたいだった。
必死でかわしたわよ。
受け止める事なんて、私にはもう不可能だったからね。
それでも『曙光』は止まらなかったわ。
更なる回転、更なる加速。それはもう一陣の竜巻になってた。
この時になって初めて恐怖したわ。
鋭く裂かれる風の音が、死刑宣告として耳に響いたもの。
この竜巻は、領域を犯す何者をも、全てを飲み込んで打ち砕く。
もう、ぶんっなんて鈍くて重い風斬り音じゃないのよ? ひゅんっていう鋭い音を立てて、まるっきりカマイタチみたいにあのでっかい『曙光』が吹き抜けるの。想像できる?
神剣であろうと、スピリットであろうと、他の何であろうとも、触れた瞬間微塵と化す。しかも、時を重ねる程に威力を増すの。
強大な破壊力を持った攻撃にして完全なる防御よ。
この旋風は私を巻き込んで、マナの霧にするまで止まらないって、はっきり解っちゃった。
冗談じゃないって思ったわ。この時になって、やっとね。
後悔は先に立たないとはいえ、我ながらマヌケな話よね(苦笑)。
震える足を意志で押さえて必死に考えたわ。
逃げるしかない。逃げた相手に追いつけはしない。疲れて止まったところを攻めればいい、なーんてね。
背を向けて、走り出そうとした瞬間に、やっぱりまた自分の考えが甘すぎる事を痛感させられたわね。
衝撃が背中を貫いたから。文字通り、痛感したわよ(苦笑)。
体の中から骨の砕ける音を聞きながら、肺腑から全ての息を吐き出しながら、理解したわ。
『曙光』の先端で地面を抉って、飛礫の弾丸を散らしたんだって。
で、ブラックアウト。
化け物揃いよ、あそこは。
それでもやっぱりニムントールは、ラキオスの中では戦い易い相手みたいよ。
私だって手加減されたとはいえ、相手の全力を見ながら、こうしてまだ生きてるしね。
あの時、背後から石の弾丸を打ち込まれたんじゃなくて、容赦なく『曙光』を投げられてたら、私は昆虫標本みたいになってたでしょうし。
それに、もしまぐれにまぐれが重なってニムントールを倒したりしようものなら、まず間違いなくファーレーンが私の喉をかき斬っていたでしょうしね。いや、それだけじゃ済まないか(苦笑)。
今思えばニムントールと当たった瞬間に、私の敗北は確定していたのよね(苦笑)。
本当に幸運よ。あんなに甘ったれた考えでラキオスとの戦いの場に立って、生き残れたんだもの。
目を覚ましたのは回復魔法をかけられたから。
「また戦場で会ったら、今度は殺すよ? 何度も同じ事言うの面倒だし。嫌ならもう出てこないで」
って、ニムントールは言ったわ。
目の前にニムントール。その隣にファーレーン。そして私に回復魔法をかけてくれたハリオン。更にその後ろにヒミカ、セリア、ナナルゥ。
バカみたいに頷く以外、できっこないわよ。
実際バカだった事を否定はできないけどさ(苦笑)。
あの日を境に、戦場に立った事は無いわ。だって死にたくないもの(苦笑)。
それで、音楽家を目指したって訳。呆れるほど消極的な理由でしょ。まぁ、元々好きだったってのもあるけどさ。
一流になった理由?
それはもちろんあの日の体験が理由。
甘ったれた考えでは、どこにいたって本気の相手に打ちのめされるだけ。それをそれこそ身をもって思い知ったわけだからね。
あんな思いは一度で十分だから。
で、ヒミカの注文してきた音楽はどういうのだっけ?
……全く、演劇に使うって言っても、注文が厳しいったら。
ま、思い知らせてあげましょ。私の実力を。
できるかって?
愚問ね。できるわよ(笑)。
>>468-471 おぉ、初の敵視点SS乙!
こういう使い方する分には全然いいんじゃないかと。>オリキャラ
>>468−471
蓮っ葉な敵お姉さんがいい味出してますね。
部隊脱走して作曲家。さながら戦場のピアニスト?w
>>461−462
むしろ
>>461さんや
>>462無名さんのハイソへの拘りを読みたいw>ア&セリア作者募集中
仮にもスピリットがつけるニーソなんだから、そんじょそこらのニーソとは訳が違うんですきっと。
中には金属の糸が編みこんであって防御効果を高めていたりケプラー繊維だったり。
そんなもんで足コ(略)しようもんならえらいことに……!
でもそれじゃ動きにくいということで、アセリアが自分からすぽーんと脱いだに一票。
勿論脱いだ後のニーソはセリアが保管しています……
>>469 GJ! 敵視点というのも新鮮でいいものです。
「まるで巨大な独楽みたいだった」のくだりで奔睫旋裂球を思い出したのは自分だけでいい……
分かる人はきっといないと思いますが(苦笑
ところで四章が完成したのですが、投稿しても大丈夫でしょうか。
前と同じくらい大きくなっちゃったんですが……(汗
476 :
憂鬱の人:05/01/10 22:58:16 ID:wrvIti7Y
>>468-471 某所の論議はともかく。
クールな風を感じる良いSSでした!こういう「物語の片隅を切り取る」視点というのも
SSの醍醐味の一つだと思います。何となく酒場でグラスを傾けながら話している
元敵スピのお姉さんが思い浮かんでしまいました。
>>474 なにげにニーソ好きですか、紅蓮さん?まぁ、私もですがw
出し惜しみせずに行っちゃって下さい!
但し、バーボンにはくれぐれもご用心を。
「スピりったん」の作者はこのお姉さんか〜〜っ!GJ!
独楽ニム「目、まわる……」ばたんQ にはならないのねw
ずらりと雑魚スピガ並んでところがなんかイイっ!。
ニーソは、生足に小さな切り傷>エスの魔法切れ>セリア暴走でどうか。
>464
実はスピ達のニーソは五本指ニーソだったんだよっっ!! 工工工エエエェェェ(д`;)
>465
それを推す。どうせなら書くのを推す。
では四章どうぞ〜
目の前で倒れていく身体。
鎖骨を砕く斬撃が肋骨を削りながら斜めに落ち、腰の骨に弾かれて肉から飛び出した。
倒れ掛かる身体を受け止めながら──吼える。
凡そ知性を持つ生物の発するものとは思えない咆哮を上げながら、彼女は右手の剣を突き入れた。
敵の心臓を貫く。自分を護った少女を斬った敵の。血を吐いて、後ろに倒れていく。
それと同じように倒れ行く友の身体を、剣を投げ捨ててしっかり受け止めた。
何度も何度もその名を呼んだ。視界の隅で、斃した敵がマナへと還っていく。
そしてまた、自分の腕の中で、少女も死に至ろうとしている。
なのに彼女は笑った。笑って自分を支える者を見上げて、言った。
──良かった。
そして少女は死に。後には、重さのないマナだけが残り。それもまた空へと還っていった。
────────跳ね起きる。
それと同時に肺が反射的に息を吸い込み、むせた。
咳き込む口に手を当てる。シャツが、汗を吸って重く濡れていた。
気分が悪い。思い出したくない記憶を、夢として連続で見せた自分の脳髄を憎悪した。趣味が悪い。
窓の外には月が浮かんでいる。その下には砂漠。それを睨みつけながら、ヒミカは舌打ちした。
ぼんやりと、視界が戻ってくる。
まず見えたのは見慣れない天井。良く知った、第一詰所の自室のものではない。
時間経過と共にものの輪郭がはっきりとしてくる。
天井の梁の木目が見えてきた辺りで、悠人はその方向へ手を伸ばし、強く握った。
自分の手の感触を感じる。自分がまだ生きている証明。吐息して、力なく手を下ろした。
上半身を起こそうとして──力が入らずに失敗する。全身が鉛のように重かった。
起きるのを諦め、代わりに悠人は記憶の糸を辿っていった。自分はどうしてここにいるのだろう。
しばらく脳髄を掘り返しているうちに、ランサの砦での防衛戦が思い出された。
あの時は、敵が退いてくれたのは覚えている。ちゃんと皆を護れたのも──
「って、そうだ。今はどうなってるんだ?」
思わず一人声に出し、飛び起きようとしてまた失敗する。
思い出す。ここはランサの臨時詰所の部屋だ。ここで、自分はどれくらい眠っていたのだろう。
自分が眠っている間に、マロリガンの襲撃はなかっただろうか。皆は無事なのか。
気持ちが逸る。全身に力を込めて、何とか上半身だけ起き上がらせた。それだけのことなのに、息が切れた。
「──ユート様?」
丁度そこに、聞き慣れた声が飛び込んできた。
開いたドアの向こうに立っているのは──セリアだ。手に、洗面器とタオルを持っていた。
一瞬呆然としていたセリアだったが、すぐに我に返り、悠人に駆け寄ってきた。
「ユート様! 起きられたのですか!?」
テーブルに水の入った洗面器を放り出し、悠人の手を取った。喜びと安堵からか、少し泣きそうな顔をしていた。
そんなセリアを珍しいと思いつつも、悠人は言葉を発した。
「ついさっきな。セリア、他の皆はどうしてる?」
言葉を受け、指先で涙を拭い、いつもの毅然とした表情になって答える。
「皆元気です。三日前の襲撃以来、斥候どころか偵察部隊すら見受けられなくなっています。
あちらも相当手酷くやられてましたから……見張りは置いていますが、それ以外は休息しています」
「そっか、良かった。……それにしても、俺は三日も寝てたのか」
「はい。最後に受けた傷が深かったようです。エスペリア達のお陰でなんとかなりましたけど……」
またセリアは泣きそうな顔になるが、それはすぐに怒った表情に変わった。
「何で、最後あんな無茶をしたんですか。あと少し深ければ死ぬところだったんですよ?」
「すまない。でもああしないと間に合わなかったんだ」
苦笑しながらにそう言われて、セリアは詰まる。だが何とか厳しい顔を保ち、言った。
「ヒミカを護ってユート様が死んでしまったのでは何にもならないでしょう。そんなの誰も喜ばない。
誰かを護って死ぬ、なんて美談でもなんでもありません。残る数が変わらないというだけです」
「そりゃそうだけどさ……でも、誰かに死なれるのはもう嫌なんだ。
それにほら、結果として俺は生きてるんだし──」
「結果論でものを言わないでください!」
「……はい」
厳しい声で叱咤されて、悠人は縮こまった。確かに、言い訳以外の何物でもない。
だが──それでも仲間が死のうとしているのを見逃すことは出来ない。自分の身を挺してでも護りたかった。
ふぅ、とセリアが溜息をついた。
「まったく……ユート様といいヒミカといい、無茶が過ぎます。そんなだからいつも怪我ばかりする」
「……そうだ、ヒミカはどうしてる?」
気になって、セリアに訊いた。セリアは何故か表情を硬くして、答える。
「背中や手足に傷を負ってはいましたが、ユート様よりは軽傷です。
もう傷を治して、昨日から職務に復帰しています。今日は砦で見張りをしているはずですが」
「それならさ、ヒミカが帰ってきたらこっちに来るよう言ってくれないかな。
多分、この前のこと気にしてると思うし、元気かどうか確認しておきたいから」
ヒミカのことだから自分のせいで俺が怪我したと思ってるだろうしな。悠人は内心苦笑しながらそう思った。
ずっと一緒に前線に立ち続けてきたから、そのくらいのことは分かるようになった。
しかし、セリアは表情を消して告げた。
「今は、会わないほうがいいです」
「──え、何でだ?」
セリアは視線を俯かせた。
「私からは何とも。少なくとも、彼女のほうから尋ねてくるのを大人しく待つべきだと思います。
……ユート様、もうしばらくお休みになっていてください。後でエスペリアかハリオンに診てもらいます」
抗う間もなく悠人はベッドに倒された。一度倒れると、中々起き上がることができない。
その隙に素早く絞った濡れタオルが額に乗せられた。冷たい感触が心地良い。
やはりまだ身体は疲れているのか、すぐに眠気が襲ってきた。悠人はそのまま意識を薄れさせた。
おやすみなさい、というセリアの声が遠くに聞こえた。
次に悠人が目覚めたのは、それから三時間後だ。ハリオンと、何故かニムントールが部屋を訪れた。
「エスペリアがいないからって何で私が……」
不満そうにぶつぶつ言いつつも、ニムントールは手際良く悠人の額のタオルを交換する。
その間にハリオンは、治癒の魔法を悠人にかけていた。身体がマナに包まれる感覚が心地良い。
「ん〜、傷はもう治ってますね〜。でも怪我した時に結構流れちゃったから、血が足りてないのかも〜。
前線のほうは私達で何とかしますから、ユート様はゆっくり休んでてくださいね〜」
後で栄養のあるもの作ってきます〜、とハリオンは微笑んだ。
つ[支援]
「ハリオン、ヒミカはどうしてる?」
先程セリアにしたのと同じ質問をしてみる。するとハリオンは笑っているのかいないのか微妙な表情になった。
「う〜ん……秘密です〜」
そして人差し指を唇に当ててそう言った。ニムントールは……初めから答える気がないようで、そっぽを向いている。
秘密、と言われた以上ハリオンから聞き出すことはできないだろう。悠人は素直に諦めた。
更に一時間後。
ハリオンの言ったとおり、確かに栄養のありそうな、具のたくさん入ったお粥が運ばれてきたのだが……
来たのは何故かアセリアだった。
「あ〜……アセリア」
「ん。何だ、ユート」
匙でお粥を掬って、それを無造作に突き出してきたアセリアに、悠人は念の為聞いておいた。
「そのお粥、誰が作ってくれたんだ?」
アセリアの料理では前に一度手酷い目にあっている。アセリアには悪いがもうアレは遠慮したい。
最近は料理修行に明け暮れ、少しは上達してきたようだが、それは外見だけということもありえるのだ。
目の前のお粥は確かに美味しそうで香りも食欲をそそるものだったが、味までは分からない。
「大丈夫だ。オルファとエスペリアが作った」
そんな悠人の心中を見抜いてか、アセリアは言った。それなら安心だ。悠人は遠慮なく匙に喰らいついた。
「うん、美味い。何て言うか、胃に優しい味だな」
口に広がる穀物と野菜の甘さを噛み締めながら、悠人は言った。
そうか、とアセリアも嬉しそうに二口目を差し出した。悠人はそれも口に含み、咀嚼した。
三口目を差し出そうとしたところで、何故かアセリアがぴたりと動きを止め、そして言った。
「……………………さっき、ユートに物凄く失礼なこと言われた気がする」
悠人は内心ぎくりとしたが、無理に笑顔を作ってできるだけ自然に言った。
「気のせいだアセリア。あー、でも本当にこのお粥は美味いな、うん」
不自然極まりなかった。
しかしアセリアは気付いた様子もなく、美味しそうだな、と相槌を打って匙を差し出した。
椀一杯に盛られていたお粥を、悠人はぺろりと平らげた。
食器を持って部屋を出ようとするアセリアを呼びとめ、やはりヒミカはどうしているか訊いてみたが、
「言えない」
「え?」
「ハリオンに口止めされてるから言えない。皆にもそう言ってた。ユートに訊かれても言っちゃ駄目って」
首を傾げながら、アセリアは言った。彼女自身、口止めされている理由は分からないのだろう。
どうやら先回りされたらしい。だが、悠人はどうしても、そして何故かヒミカのことが気になった。
ここまで固執するのもらしくないとは思ったが、気になるものは気になるのだ。
悠人は頭を捻って──別の方向から切り込んでみることにした。
「じゃあさ、アセリアから見て、ヒミカはどんな様子だった?」
「私から見て?」
「ああ。それともそれも口止めされてるか?」
ん、とアセリアは首を横に振り、そしてぽつぽつと喋り始めた。
「……ヒミカ、怖かった」
「怖かった?」
ん、と今度は首を縦に振る。
「周りが、凄くぴりぴりしてた。食事の時以外、皆の前にも出てこないし。
今日は砦にいるけど、他の誰かと交代した後はずっと訓練所にいて帰ってこない。
……うん、多分、物凄く怒ってる」
「怒ってるかぁ……」
悠人は吐息した。理由は想像できる。やっぱり謝らないといけないだろう。
セリアには会わないほうがいいと言われ、アセリアからの説明では相当怒っているらしい。
だが、会わないわけにもいかない。悠人は、動けるようになったら会いに行くことにした。
それから他のスピリット達や、レスティーナ、ヨーティアとイオも各々見舞いに来た。
オルファ、ネリー、シアーは案の定騒ぎを起こし、エスペリアに部屋から引きずり出されたりした。
日頃の疲れもあり、結局悠人はラキオスに戻され、丸二日休むことになった。事実上の休暇である。
この前の戦闘の傷が癒えないのか、マロリガンからの襲撃もなく、久し振りに悠人はゆっくり休むことが出来た。
スピリット達も暇を見てはラキオスに帰り、悠人の部屋を訪れた。
だが結局──その間ヒミカだけは、一度も悠人の部屋に来ることはなかった。
三日目。疲れも取れ、悠人はランサに戻ることになった。
途中遭ったナナルゥにヒミカの居場所を聞いてみると、彼女は一度もラキオスに戻らず、ずっとランサで
見張りを続けているという。
場所を聞き、悠人はすぐにそこに向かった。
砂漠を望む砦の物見にヒミカはいた。隣にはハリオンも立ち、一緒に見張りをしているようだった。
一瞬躊躇って、それでも悠人は、ヒミカ、とその名を呼んだ。
「──何ですか」
振り向いて答えた声は、ひどく冷たい。
いつもの闊達な彼女からは想像もできない、氷の棘を持った声だった。
悠人の身体が強張る。三メートルの距離を置いて、悠人はヒミカの方に歩み寄ることができなくなった。
ヒミカは尚も冷たい瞳で悠人を見る。
声をかけあぐねていると、あ〜、とハリオンが割り込むように声を発した。
「すいません〜、ちょっと用事を思い出したんで〜、ユートさまとヒミカで見張りお願いしますね〜」
「ハリオン」
静かに咎めるようなヒミカの声も無視し、ハリオンはそそくさとその場を離れてしまった。
砂漠の風の中に、悠人とヒミカの二人だけが残された。気まずい雰囲気ながらも、悠人はヒミカを見た。
しかしヒミカは無感情に悠人を一瞥し、視線を砂漠へと背けた。
背中からは何者をも拒むような意思が伝わってくる。
悠人はしばらくその場に突っ立っていることしかできなかったが、やがて重い足取りでヒミカの隣まで歩いた。
「あー、その、なんだ。ヒミカ」
歯切れ悪く切り出す。返事がないことに薄ら寒さを覚えつつも、悠人は続ける。
「……すまん。この前は迷惑かけた」
「そんなことはありません」
抑揚のない声は、血の通った言葉ではなく意味を為さない文字の羅列だ。
「ユート様はいつも通り、誰も死なせたくなかっただけなのでしょう。なら気に病むことはありません。
寧ろこの場合、助けてもらった私が感謝すべきなのですから。ありがとうございます。」
礼を言われても全然嬉しくなかった。
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「……ヒミカ、怒ってるか」
薮蛇とは知りつつもそう訊かずにはいられなかった。
「いいえ。逆に訊きますが、何故ユート様は私が怒っていると思っているのですが」
「いや、だって、……こないだ無茶したことを怒ってるのかなって」
「そんなことはありません」
同じ発音、同じ抑揚でヒミカは言う。そこで初めて、ヒミカは悠人を見た。
「結果として誰一人死なずに済んだのですから、それは喜ばしいことです。私が怒る理由など欠片もない」
「────」
悠人は沈黙し、そして少しばつが悪そうな顔を作って、言った。
「セリアに言われたよ。結果論でものを言うな、ってさ」
表情を消し、続けた。
「前に言ってたろ、ヒミカ。戦場で迷うなって。……けど今でも、敵を殺すことを迷わない時はないよ。
それでも殺してきた。たくさん殺して、今まで戦い抜いて、護りたいものを護ってこれた。
罪悪感は消えないけど、今ここに俺が生きていられるのも、きっとその時のヒミカの言葉があったからだ。
……こうも言ってたよな。ヒミカ。俺が死ぬと皆が哀しむって。今でも自分がそれ程の人間とは思えないけどな」
そして悠人は真っ直ぐにヒミカを見た。冷徹な表情を崩さないヒミカを。
「俺はまた、皆を哀しませるような戦い方をしていたんだろうな」
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だが悠人はそこで止めず、けれど、と言う。
「それでも俺は、皆を護りたいんだ。誰かに死んで欲しくない。
……すまない。分かって欲しいなんて言わないけど、俺は多分、これからも皆に心配をかけると思う」
「──だけで」
気付けば、いつの間にかヒミカが俯いていた。小声で、搾り出すように声を出していた。
バッと顔を上げ、そして叫んだ。
「心配だけで済むと思っているんですか!」
怒声。
空気を振動させる音が力を持ったように、その声は激しく悠人を叩いた。
「ユート様の戦い方は死ぬかもしれない戦い方じゃない、確実にいつか死ぬ戦い方です!
自分を死地に追い込んで──それで護るなんてできるわけないじゃないですか!」
それは悠人が初めて見る、ヒミカの激昂だった。
悠人は何も言えなかった。ヒミカは肩で息をし、再び顔を俯かせた。
そして一度大きく息を吸い、吐いて──俯いたまま、悠人の横を通り過ぎた。
「──ハリオンに、」
すれ違い様に、またさっきの冷淡な声で言う。
「体調が優れないので早退すると伝えてください。私はラキオスに戻ります」
それと、と背後から声がした。
「──今夜日付の変わる頃、詰所裏の森に来てください」
深夜。
ラキオスに戻り仮眠を取っていた悠人は、時間通りに目を覚ました。
寝巻きを脱いでいつもの戦闘服に着替え、〈求め〉を携える。
『……行くのか? あの妖精、相当気が立っていたようだが』
「心配してくれてるのか?」
〈求め〉がそんな風に声をかけてきたのが以外で、苦笑ながらに訊いてみた。
『ふん。怪我でもされたら困るからな。マナも足りず、我も本調子ではない』
不機嫌そうに言う声にまた苦笑しつつも、悠人は表情を改め、行くさと答えた。
「すっぽかすわけにはいかないだろ、呼ばれた以上は。それに、ヒミカの様子も気になるしな」
その原因が自分にあるとなれば、尚更に。
気を引き締めつつ、悠人は自室を出た。
「別に喧嘩したいわけじゃないんだ。ちゃんと話を聞いてあげられれば……」
そう口には出すものの、そうはならないことを、悠人はどこかで予感していた。
詰所裏の森に足を踏み入れると、押し殺された神剣の気配が伝わってきた。
その気配は微弱ながらも、研ぎ澄まされた切っ先の鋭さを以て悠人の背筋を貫いている。
「──ヒミカ」
足を止め、木の陰に居る気配の名を呼んだ。
すっ、と滑り出るようにヒミカが姿を現す。枝葉の隙間から差し込む月光が、無表情なその顔を照らした。
手には、抜き身の神剣を持って。その鋭さと同じ瞳で、悠人を見ていた。
「──剣を、お取りになってください」
静かにヒミカは告げ、腰を低く落とした。
「いやちょっと待てってヒミカ。俺は別に──」
戦いたいわけじゃ、と続ける前に。
右の眼球の二センチ手前に、殺気を纏った銀の棘が迫っていた。
「、あ」
理解するより早く本能が危機を感知し、全身を左に投げ出していた。
受身も取らず二転三転と転がり、身体を起こすのと同時に斬り上げる。
ギィン。剣を弾く。月を背に、赤い瞳が爛と輝いていた。
上方に跳ねた剣が風切り音より速く落ちる。片手を地に着き、悠人は後方に跳びずさった。
一瞬遅れて湿った落ち葉を〈赤光〉が貫いた。
「ちょっと待てって……!」
制止しようと声を上げつつ、四方八方から乱打される剣撃を凌いでいく。
風を殴りつけるような一撃に〈求め〉が跳ね上がり、がら空きの胴に膝蹴りが跳んだ。
「がっ……!」
衝撃が臓腑を貫き背中へと抜ける。悠人の身体がくの字に折れ、宙に浮いた。
打った膝を勢い良く地面に落として支点とし、そのままヒミカは全身を回転させて回し蹴りを放つ。
完全に無防備になっていた悠人は、それでも辛うじて〈求め〉を立て、それを受けた。
容赦のない一撃。身体が真横にすっ飛んでいく。無様に地面を転がり、木の根元にぶつかってようやく止まった。
「はっ、あ……」
酸素を欲しがる肺を押さえながら、悠人は立ち上がる。
視線の先には尚も零下の眼を向けるヒミカ。薄ら寒さを覚えつつ、悠人はなんで、と問うた。
「何で、こんなことやってるんだ、俺達は」
答えなど返ってこない。独り言に近い言葉を悠人は発した。
だが──ヒミカは答えた。
「……ユート様には、しばらく動かないでいて欲しいのです」
「な……、何だよ、それ」
呆然と悠人は言葉を発した。ヒミカは平坦な声で答える。
「この前の戦闘に限らず、ユート様の行動は軽率で、無謀すぎます。命を顧みていない。
昼間言った通り、それが私達を心配してくれている故の行動であることは理解していますが、度が過ぎます。
ユート様がなさるべきことは、まずご自分の命を第一に考えることです。
隊長が死んでしまったのでは元も子もないのだから」
「でも、俺は」
悠人の言葉を遮り、ヒミカは分かっています、と言った。
「それでも尚ユート様は皆を護ろうとする人だということは、分かっています。
でもユート様は、この国にとって必要な人間なんです。代用は利かない。それを分かっていますか?」
悠人は答えられない。相変わらず、自分がそんな大層な人間だとは思えなかった。
「事実です。そして──そんな人間を死なせるわけにはいかないんです。
でもユート様は放っておけばすぐに前線に行ってしまう。だから──」
迷いなく真っ直ぐに、ヒミカは悠人へと剣を向けた。
「少しの間──少なくともマナ障壁を解除し、マロリガンへ攻め入るくらいまでは、怪我をしていてもらいます。
その間に、ご自分の価値というものをよく顧みてください」
「なん──」
最早悠人は絶句するしかなかった。
ヒミカの言うことは理解できる。だが、やり方がいくらなんでも乱暴過ぎやしないか。
「無論これは私の独断です。私は処罰を受けるでしょうが、それでもあなたを喪うよりはいい。
処罰と言っても、戦力の足りてない現状です。実際は訓告程度のものになるでしょうね」
悠人に構わず、淡々と告げていくヒミカ。当たり前のことのように。
だが当然、悠人は彼女の言うことを受け入れられるはずもない。
「ちょ、ちょっと待てヒミカ! でも俺がいなかったら、皆が──」
「死ぬかもしれませんね」
あっさりとヒミカは答え、そして続けた。
「無論、死なせるつもりはありません。皆は、私が護りますから。──例えこの身がマナへ還っても」
無感情な覚悟を瞳に宿らせて、ヒミカは言う。間違いなく本気だった。
悠人は思わず声を張り上げた。
「そんなの駄目だ! 皆を護っても、ヒミカが死んだら意味がないだろ!」
「あなたが言えたことですか!」
厳しい声。ヒミカは悠人を睨みつけた。
支援
「あなたを見ていると苛々する。そうやっていつも自分から死地に飛び込んで、周りには死ぬなと言って!
ユート様が大切にする命の中には、ユート様が自身が入っていない!」
でも、それなら、
「そんなのヒミカだって同じじゃないか! 皆を護るためなら死んでもいい、だなんて。
ヒミカのやろうとしてることは、今ヒミカが俺に対して怒ってることと同じじゃないか!」
けれど、ヒミカは静かに答えた。
「私はいいんです。私はただのスピリットなんですから。死んだって、国には何の影響もない。
感情論で言えばユート様は私達を死なせたくないと思うでしょう。私もユート様を死なせたくない。
でも政治的、国家的には、私とユート様のどちらが大切で、必要か。それは考えるまでもないことです。
何度でも繰り返します。ユート様には、この国のために、生き残ってもらわなくてはならないし──」
少しだけ間を置いて、ヒミカは言った。
「……ユート様がいなくなったら、誰がカオリ様を護るというのですか」
その言葉が、悠人の胸に棘となって突き刺さる。『佳織のため』。それは、悠人の行動原理だ。
ヒミカの言うことは、正しい。国から見れば、ただのスピリットとエトランジェでは、その重みは違う。
勇者と呼ばれ始めたエトランジェと、その部下。あまりにも明白な価値の差。
そして、自分は佳織を助けるという目的がある。それは間違いなく、自分の中で一番強く求めることだ。
──けれど。悠人は、胸に刺さった棘を引き抜く。
「だからって──それはヒミカが死んでいいってことにはならないだろ!」
悠人は叫んだ。
確かに国にとっては自分のほうが大切かもしれない。佳織も助け出さなくてはならない。。
けれど、それは仲間を死なせていい理由にはならない。
欲張りかもしれないけど──今の自分は何もかもを護りたいのだ。手の届く範囲の、全てを。
「──認めない。怪我なんかしてやるもんか。俺は皆を護る」
「……仕方ありませんね」
ざわ、と木々の枝葉が揺れた。〈赤光〉に、獰猛な気配が集束し、研ぎ澄まされていく。
「では──力ずくで止めてみてください!」
轟、と大気が震えた。赤い軌跡が落ち葉を撒き散らす。
到達まで僅か半秒。展開された加護のオーラを上段からの一撃が滑り落ち、地面に衝突し跳ね上がる。
削られている加護を解き悠人は下がりながら横に剣を薙いだ。
ヒミカの身体が沈む。剣の軌跡を潜り抜け足払いをかけてきた。悠人は僅かに跳んでそれを回避する。
足を振り切ったヒミカが、剣を握っていない左手で地面を叩き──足から宙に浮き上がる。
悠人の顔面にヒミカの足裏が迫る。仰け反りつつ〈求め〉を立て防御、その衝撃で更に後退。
着地し無防備になったヒミカに、〈求め〉を振り下ろした。
ヒミカが横に跳ぶ。剣先が地面にめり込み、しかし力任せに土中で太刀筋を曲げた。
土を撒き散らしながら追い縋る〈求め〉を見ながら、悠人は既視感を覚えた。
──この流れ。
自分とヒミカの剣の流れは、過去に、この森で交わしたものの焼き直しだ。
なら、次は──
ヒミカが後方に飛ぶ。背後には木がある。剣が追う。ヒミカの足が幹を蹴る。
ヒミカが跳ぶ。切っ先が木にめり込む。頭上を飛び越える影が背後に降り立つ。
ここだ。悠人は思う。前は、ここで終わった。お互い相手の首に剣を突きつけたところで。
だが今は手加減などしていない。ヒミカの動きは前回に比べ数段早い。
このまま剣が喰い込んだら、抜く暇などなく自分は負ける。
「ぅ、」
だから、剣を握る手に力を込めて、
「ぉぉぉぉぉああっ!」
振り抜いた。
カッ、と竹を割るようないい音がした。勢いを全く殺さず振り抜かれた悠人の剣は木の幹を両断し──
その背後、悠人に剣を突き立てようとしていたヒミカへ、殺さぬよう峰を返した〈求め〉を振るった。
支援
勢い良くヒミカの身体が吹っ飛んでいった。
辛うじて〈赤光〉で身を護ったのか、一撃を加えた悠人の手にも痺れが残った。
「ヒミカ!」
堪らず、悠人は叫んだ。ずしん、と背後で切断された木が地面に落ちる。
遙か遠くで、よろよろとヒミカが起き上がった。
「もうやめろヒミカ! こんなことしたって──」
「うぁぁぁぁああ──────────────ッ!!」
その言葉を掻き消すように、ヒミカは叫んだ。
ドン、と地面が破裂する。一瞬で距離を詰め、全体重を乗せた剣撃を悠人に振り下ろした。
何の技巧もないがむしゃらな一撃が、しかしこれまで戦ってきたどのも剣より重かった。
鉄塊同士をぶつけたような、おおよそ剣戟と言うには相応しくない重い音が響いた。
「──昔!」
その凄まじい音の中で、ヒミカは張り裂けそうな声で叫ぶ。
「ユート様が来る前、私はハリオンと共にラースで防衛任務に当たっていました!」
叩きつけるような斬撃。びりびりと、〈求め〉を握る手が震えた。
「そしてもう一人、仲間がいました」
ぞぅ、と空気を貫く音が悠人の耳元をすり抜けた。風に煽られてヒミカの前髪が翻る。
その下に見えたのは、まるでひどい痛みに耐えるように、苦しそうな顔。
剣が引かれ、そしてまた斬音が繰り返される。
「私とハリオンとその子は親友でした。でもある任務の時に、その子は死んでしまった。──私を護って!」
ガァン。振るわれるごとに剣が重量を増していく。
──ラースに国籍不明のスピリットが侵入した時のことだ。それを殲滅するためにヒミカ達は出向いた。
森の中に入っていった敵を追ったものの、途中で待ち伏せされ、ハリオンとはぐれた。
その場は何とか切り抜けたものの互いに傷を負い、逃げる敵を深追いすることはなく二人は退却した。
その途中だった。先の敵とは別の一群と遭遇し、交戦。
満身創痍の二人に対し、相手は五人いた。それでも何とか、四人までは斃した。
だが五人目が、隙のできたヒミカに襲い掛かった。反応できず、そのまま斬られるだけだったヒミカを、
……その友が庇って、斃れた。
「──わたしがころしたんだ!」
自分を罵倒するようにヒミカが叫ぶ。
「私はその子を助けられなかった。目の前で死んでいくのを見ていることしかできなかった!
私はもう、あんな思いをしたくないから……!」
だから自分の身に代えてでも皆を護るのだと、ヒミカは言う。
でも、その言葉を聞く度に──悠人は、自分の中で違和感が募っていくのを感じていた。
「だから私は、あなたを見ていると不安になる。いつか死んでしまいそうで怖くなる!
私はもう誰も死なせたくないんです! ハリオンも、ナナルゥも──ユート様も!」
腹の底から湧き上がる感情を、ヒミカはそのまま声帯に通した。
それは国や政治的な理由からではなく、自分自身の感情であると気付かぬままに。
「そのためなら私は自分の命すら要らないのに、どんなことをしてでも『あなたを』死なせたくないだけなのに──
それだけのことを、どうして分かってくれないんですか!」
「分かるもんかァッ!!」
両者の剣は、叫ぶ声そのものだった。
ヒミカの剣を、ヒミカの叫びを、『違う』と悠人の剣は否定していた。
だってそんなの間違ってる。誰かを助けるのはいい、でもそのために自分が死ぬのは違う。
積極的に死を求めなくても、死ぬことを良しとするヒミカは間違っていると。
何度も何度も、叫びの度に重くなる剣を受けるその中で。
悠人は少しだけ自分のことを省みることが出来た気がした。
──初めに自分が剣を振るったのは、何のためだったか。
佳織のため? そうだ。それもあるだろう。けど実際に剣を持って戦場に立った時、一番強く思ったのは。
『死』というものを目前にして、一番強く求めたのは。
何よりも、自分が『生きたい』ということではなかったか。
誰だって死にたくない。それが当然。折角、今此処に居ることができているのだから。
けど──同時に悠人は思うのだ。仲間を死なせたくないと。
死ぬのは嫌だし、怖い。両親達の死を見、スピリット達に死を与えてきた今、余計そう思う。
自分が死ぬ苦しみも、取り遺される哀しみも、護りたい人達に味あわせたくない。
佳織だけを護りたかった昔とは違って、今は護りたいものがたくさんあった。
誰も死なせたくない。自分も仲間も、一切合財。それが悠人の想いだった。
そんなこととっくに分かっていたけれど──それを今、ちゃんと直視し、強く願えた。
そして直視できたからこそ、その中にヒミカを見出した。
ヒミカもまた、仲間を護るために戦っている。
かつて、自分を護って死んでしまった友の二の舞を出したくなくて。
けど、それは。自分が仲間の代わりに傷つき、そのための死をも厭わぬということ。
そして更にヒミカは言うのだ。自分は死んで良くても、悠人は生きなければならないと。
そんなのは間違ってる、と悠人は思う。生き物は、本来誰だって生きたいはずなのだから。
価値の差などなく、がむしゃらに生を求めるもののはずなのだから。
「そんな、仲間を助けるためなら自分の命なんて要らないなんてのは、絶対違う!」
だから叫んだ。
支援
「俺はヒミカの言う通り、自分の命を危険に晒すような戦いをしてた。皆を死なせたくなかったから!
でも俺自身を死んでいいだなんて、一度も思ったことはなかった!」
だからヒミカは間違ってる、と。そう悠人は言う。
けれど、ヒミカは叫んだ。
「そんなの分かってます! 私だって、自分から死を望むわけじゃない。
けどね、ユート様。私はあなたみたいに強くない。エトランジェなんかじゃない、ただのスピリット。
そんな私が皆を護りたかったら、命を賭けるしかないんです!」
ずん、と超重の一撃が〈求め〉を揺らす。
命の乗算。足りない力を補いたいなら、彼女の言う通り、自分の命をかけるしかない。
それは真実だろう。でも──
剣から伝わってきた想いは、ヒミカの言葉を嘘だと知っていた。
──そうじゃないだろ、ヒミカ。
言うことは正しくても、それが言った本人の真実だとは限らない。
ヒミカの言葉は言い訳だと、悠人は感じていた。
確かに彼女は、そう思っている。その思いのもとに、剣を振るっている。
でも、彼女にそうさせている根幹──命を賭けることすら厭わせない、一番強い想いは、
「私の友は、命を賭けて私を護ってくれた! だから──今度は私が命を賭ける番なんです!」
──それだ。
友を、自分のせいで喪ったという罪の意識が、彼女を駆り立てる。
親友が死んで、自分だけが生き残っているということを、きっと彼女は許せない。
だから。
「だからって、自分が死んでいいなんて思うんじゃねぇ!!」
悠人はそれを、許さない。
剣を通して感じた彼女の心。省みた自分自身。それらがもう一度心の中を駆け巡って、
「他人の中に──死に場所を求めるな!!」
ざくん、と。
その言葉は神剣より深く鋭く、ヒミカの心を貫いた。
それと同時、振り上げられた悠人の剣が、カィン、と軽い音を奏でヒミカの剣を上空へと打ち払った。
丸腰になったヒミカに悠人は剣を突きつける。ヒミカの背後で、〈赤光〉が地面に突き立った。
あれほど荒れ狂っていた空間が、今は、ひどく、静かだった。
「……遺された奴の哀しみは、ヒミカだって知ってるだろ」
その静謐の中で悠人は告げる。
悠人だって、遺された人間だ。だからその哀しみや、また喪ってしまうかもしれないという不安は良く分かる。
それを──同じヒミカが分からないはずがないのに。
「ヒミカが死んだら俺は哀しいし、皆も哀しむ。俺が死んだら皆が哀しむってヒミカが言ったみたいに。
ヒミカはその哀しさを知ってるだろ? それを知っているなら──死んでもいい、だなんて、言うな」
それに、と悠人は剣を下ろし、続けた。
「そのヒミカの友達はさ、ヒミカに死んで欲しくなかったから、ヒミカを護ったんだろ。
その子は、ヒミカがよりたくさんの仲間を助けて、その果てに死ねだなんて思って、ヒミカを護ったわけじゃないだろ。
ただヒミカに生きていて欲しかったからヒミカを護ったんだ。
それなら。その子の想いに応えてあげるのなら。尚更ヒミカは死んじゃいけない」
子供を諭すように言いながら、悠人はヒミカの頭に手を載せた。そしてそのまま自分の胸に引き寄せる。
あ、といヒミカは声を上げた。
額から、悠人の温かさが伝わってくる。
「俺だって──ヒミカに生きていて欲しいんだ」
悠人の言葉が、身体に直接染み込んでくるようだった。
支援
その心地良い温もりをずっと感じていたいと思いながらも──ヒミカはそっと、悠人の胸を押した。
そして言う。そんなこと、と。
「……そんなこと、ずっと前から分かってました」
自嘲気味に笑いながら、ヒミカは言った。
「あの子はただ、私に生きていて欲しいって思っていたことも、何もかも」
思い出したくなかった記憶を思い出す。
ヒミカを護って死んでいったスピリットは、その命が喪われる寸前に、振り返って笑って、言ったのだ。
────「良かった」。
そう言い残して、彼女は死んでしまった。護れた。生きていてくれて良かった、と。
その笑顔がどうしようもないくらい、ヒミカを縛っていた。
分かっていたのだ。ちゃんと。自分が戦う理由も、死地に突き進む理由も、自分自身に言い訳していることさえも。
今夜、悠人と戦ったのだって、数日前の彼の言葉と笑顔に、彼女を重ねて見てしまったから。
そんなこと、全部分かっていたのだけれど。
「それでもです、ユート様」
目を伏せ、言う。
「それでも私は皆を護りたいんです。皆を、死なせたくないんです」
自分が死ぬための言い訳のように使っていても──誰にも死んで欲しくないという想いは、本当だから。
「だからその果てに自分が死んでしまっても、私が死にたいと想うのとは別に、きっと仕方のないことです。
私は、ユート様のような力を持たないから」
そう言って、ヒミカは力なく笑った。そうか、と悠人も頷いた。
そして、悠人は強い意志を秘めた瞳で、言った。
「それなら──俺が皆を死なせない」
この上なく力強く、悠人は言う。
「ヒミカに力が足りないのなら俺が補う。皆は死なせないし、俺も死なない」
悠人はそう決めた。ヒミカの想いを目の当たりにして、そう強く誓った。
最初は、佳織と自分のためだけに戦っていた。周りの皆を利用することしか考えていなかった。
今は違う。今は佳織と同じように、仲間や国を護りたいと思っている。
目の前の強くて脆い、ガラスのナイフのような少女を、護りたいと思っている。
──でも、
「でも、そんなの!」
ヒミカが叫んだ。悲痛な声で。
「そんなのは、ユート様が辛いだけじゃないですかっ!!」
誰も彼も、一切合財まとめて助けるということは。
悠人がこれまで以上に傷を負い、死地に向かっていくということだ。
──誰かを死なせるのを厭う彼が、これまで以上に誰かを殺すということだ。
そんなのは、ただ悠人の心が悲鳴を上げるだけなのに。
「それでもだよ」
悠人はヒミカに背を向け、歩き出した。ユート様、と呼び止める声にも足を止めない。
「俺は絶対、仲間を死なせない」
そのために、見知らぬ誰かを殺してしまったとしても。悠人は覚悟を決めた。
その覚悟は誰か殺す覚悟ではない。殺した罪を背負う覚悟だ。
その罪を認め、背負い、それでも絶対に生きようとする意志だ。
「皆を護ることを、そのために敵を殺すことを、俺はもう『迷わない』よ」
それはあの日。同じように二人で戦った夜に、彼女が言った言葉への、答えだった。
「ユート様っ!」
なのにヒミカは不安になる。彼が迷わないこと。それは自分が望み、言ったことなのに。
遠ざかるその背に、ヒミカが叫ぶ。何故か彼が、遠くに行ってしまいそうな気がして。
「ユート様ぁ…………ッ!」
搾り出すように名を呼ぶ声が、夜の闇へと溶けて消えた。
──それから間もなく、ヨーティアから抗マナ変換装置完成の報告が入った。
すぐに悠人達は部隊を編成、スレギトの攻略に向かったが──その中で変化が一つ、あった。
悠人とヒミカの会話が眼に見えて少なくなったことだ。
とはいえ戦場では常に声を掛け合っているし、戦術的な相談も積極的にしている。
だが日常会話をすることが、全くと言っていいほどなくなっていた。
というよりはヒミカが悠人を避けている節がある。会っても挨拶を交わす程度だ。
悠人もそれに対しては何も言わないので、自然、両者の会話は更に少なくなる。
このことに気付いていたのはセリアやファーレーンなど一部の者だけだったが、本人達がそんな態度であ
り、不満などを見せない以上、こちらから訊くわけにもいかず──結果、傍から見守るだけだった。
それでも戦闘に支障はなく、悠人達は無事スレギトを制圧し、マナ障壁を解除した。
ここからマロリガンに続く道は三つ。悠人達はしばらくはスレギトで敵軍の攻撃を防衛し、然る後、中央
の道からマロリガンへの最短距離を突破することを決定した。
スレギト攻略では稲妻部隊は姿を見せなかった。おそらく、首都に着く前に戦うことになるだろう。。
そしてその時には、光陰と今日子も──
目の前には、かつてとはあまりに違う自分と彼らの距離を象徴するように、広大な砂漠が広がっていた。
進撃は順調だった。
ラキオススピリット隊は勢い良く進軍し、ミエーユまでの道程の半分を攻略した。
スレギトには、翼を持ち移動力に長けるアセリアやウルカ達数名を防衛として残した。
『青き牙』と『漆黒の翼』を含む防衛陣には、敵も簡単には手出しできない。
事実、イオを通して伝えられる情報では、マロリガンや帝国からの斥候部隊を悉く退けている。
人間の兵士達も多くスレギトに移っており、現在の主要拠点はランサからスレギトへ移っている。
だが主戦力を二人欠いている今、攻めに不安がありそうだが──そこは悠人がカバーしていた。
目に見えて、悠人の戦い方はそれまでとは違っていた。
常に前線に立ち、一切の容赦なく敵を薙ぎ倒していく。皆を率いる戦士としての姿がそこにあった。
かつてのような敵を斬る迷いも、苦痛の表情もなく。彼はその後ろに屍の山を築いていく。
その隣には常にヒミカがおり、彼女自身も戦いつつ、彼をサポートし続けた。
「……そうか。ご苦労さん、クォーリン」
椅子に座り、偵察部隊からの報告を聞いた光陰はふ、と口元に笑みを浮かべた。
「コウイン様?」
その表情を怪訝に思って、クォーリンは問う。
「いや何、俺のダチも頑張ってるなって思ってさ」
光陰は悠人の顔を思い浮かべた。元いた世界では妹にべったりだったが、中々どうして良くやっている。
「……友人。コウイン様は、ご友人が敵に回ってしまった今でも、友だと思えるのですか」
自分が複雑な表情をしていると自覚しながら、クォーリンは訊いた。
「ん、ああ友達だな、今でも」
事も無げに光陰は言い、だが、と続けた。
「そこはそれ優先順位の差だな。俺は悠人よりも今日子が大事なんだ。……まぁ、残酷な話だよなぁ。
所詮この世は苦界さ、クォーリン。もっとも、マナに還って浄土に行けるとは限らないんだが」
自嘲気味に笑いながら光陰は言う。時折光陰は独特の言い回しをする。
何でも、元いた世界での習慣なんだとか。ブッキョーとか何とか言う……
だが言っていることは良く分からなくても、その内容が明るいものでないことくらいは分かる。
まだ友人と思っているなら、それが辛くないはずがないだろうに。いくら割り切っているように見えても、だ。
いつも見せている飄々とした態度とは裏腹に、その裡には深い思慮を湛えている。
それを気の毒とは思うけれど──戦争は止められないし、その決定権もない。
決定権があったとしても、個人の意思で止められる戦いを戦争とは呼ばない。
そして残念なことに、今自分達がしているのは戦争なのだ。
「──クォーリン? 報告の続きをしてくれ」
はっと意識が引き戻される。失礼しました、と舌を噛みそうになりながら謝罪し、続きを報告した。
「──先の報告の通り、スレギトに部隊を残し、ラキオス軍はミエーユへ進軍しています。
スレギトに残った部隊には『青き牙』と……『漆黒の翼』両名が確認されました」
「ほう──」
光陰は思わず感嘆した。『漆黒の翼』は帝国に属していたはずだったが……それが何故ラキオスにいるのか。
理由は分からないが──何となく、それは悠人の影響ではないかと思えた。
「……クォーリン、一つ訊くが。お前から見て、ラキオスのエトランジェはどんな人間に見えた?」
訊かれ、クォーリンは先日の戦闘の時に見た悠人の姿を思い浮かべた。
「……戦闘力以外で、という意味なら、仲間の命を考えられる人間かと」
「ほう、そうかそうか」
愉しそうに──心底愉しそうに光陰は笑う。その真意を問えぬうちに光陰は表情を改め、続きを促した。
「半日を待たずして、ラキオス軍はミエーユへ到達するでしょう。
現在ミエーユの前線基地では篭城戦の準備を進めております」
「上等だ。なるべく正面切って相手するな。赤を動員して、遠距離からの神剣魔法で焼き払え」
「伝えておきます。それと、ガルガリン方面のほうは」
「帝国が砂漠越えしてくるかもな。デオドガン辺りで見かけたという報告は受けている。
そっちもミエーユと同様の警備をしとけ。砂漠と荒地が壁になるとはいえ、帝国軍は侮れないからな」
「了解しました」
つ[支援]
支援
指示を終え、光陰は一度ふぅ、と息を吐いた。
……自分達のやっていることは防戦だ。後に退けぬ戦いである。
少し前までの稲妻部隊とランサの関係が、規模を拡大して自分達と置き換わっている。
では自分達は耐え凌げるか? ──否、と光陰の冷静な部分は結論を出していた。
『運命に愛された者』。出撃前、クェドギンが自分にだけ語ってくれたことを思い出し、そんな単語を思い浮かべた。
勿論、それは悠人のことだ。いや、ラキオスそのもの、というべきか。
何故なら彼らは、傍から見れば物語の『主人公』なのだ。
ライバルがいて、肉親を攫われ、今はこうしてかつての友と相対している。
そして自分に降りかかる苦悩と試練を一つ一つ乗り越え、その度に成長していく。
まるで彼を主役にした脚本があって、その通りにことが進んでいるように見える。
──そして、脇役は絶対に主役に勝てない。
だが、と光陰は思う。こちらにも負けられない理由というものはある。
クェドギンは、その脚本に──運命に逆らうと言ったが、光陰はそれに強く共感していた。
だからこそ、彼がエーテル変換施設を暴走させようとしていることを止めようとはしなかった。
岬今日子。自分の愛する人。彼女を救いたいと光陰は願っている。──例え彼女の心が自分に向かなくても。
悠人を殺せば今日子は自分を恨むかもしれない。
恨まれるくらいなら、今、自分を必要としている彼女のままでいてくれたほうがいい──
そう思ったことも何度かあった。けどそれでも、元の今日子に戻って欲しいから。
今日子が、二度と自分に笑いかけてくれなくても──あの元気な姿を見たかった。
そのためなら他の全てを切り捨ててもいい。それが光陰が、自らに課した誓いだ。
──悠人はどうだろうか。光陰は思う。お前は自らに課した誓いがあるか?
他の何を投げ打ってでも護りたい、強い求めがあるか?
そうでないなら、お前は俺に勝てない。勝たせない。
「……クォーリン、もう一つ伝達だ。
もしミエーユがラキオスに落とされるようなことがあったら、無理をせず退くように伝えておけ」
「しかし、それは──」
「無論、もしもの話さ。が、落とされたんならそこに固執し続けても仕方がない。
少なくとも無駄に命を散らさせるな。ミエーユが陥落したら、次はそこを拠点に攻めてくるはずだ。
なら俺らは、マロリガンの手前でそれを食い止めなきゃならん。
あいつらを斃せば、大将も神剣を暴走させる意味がなくなるしな」
光陰は椅子から立ち上がる。
「あとな、これはただの勘だが。突破されるなら多分ミエーユのほうが先だ。
帝国のほうが先にガルガリン落としてこっちに攻めてくるってのは、多分ないな」
「何故ですか? 拠点としての規模も防衛力も、ガルガリンのほうが小さいのに……」
「言ったろ。勘だよ、ただのな」
しかし、光陰はその勘に確信を抱いていた。
そう、真実悠人が『運命に愛され』ているとしたら、ここで彼が先に来ないと物語としてはおかしい。
ラキオスより先に帝国に占領される、というのも意外性があっていいが……生憎とこのストーリーは、主
人公の設定からして王道的な展開のようだ。
ならば、先に来るのは間違いなくラキオス──悠人だと、光陰は思う。
──来てみろ、悠人。
窓の外を眺めて、笑いながら光陰は心の中で呟く。
──お前の力を見せてみろ。もしお前の力が、誓いが俺に及ばない程度のものだったなら、
「お前の運命、俺が潰すぞ」
その十三時間後──ミエーユ、陥落。
ラキオス軍はミエーユを即席の拠点とし、マロリガンの目と鼻の先で休息した。
技術者総出でエーテルジャンプクライアントを建設・設置し、ラキオス、スレギト間の移動を容易にして、
万一の際の襲撃にも備えている。
帝国の侵攻も伝わってきているが、今のところそれは上手く行っていないようだ。
ガルガリンを相手に小規模戦闘を繰り返しているようだが、中々切り崩せないでいるらしい。
悠人達はミエーユで体力を回復し、翌日の朝、マロリガンへ進軍する運びとなった。
…………はっ!読み耽って支援忘れてた!
「アセリア達が到着しました」
出撃準備を整えていた悠人に、ヒミカが報告した。
マロリガンでの戦いは総力戦になる。そのためスレギトに残していた人員もミエーユに呼んでいたのだが、
念の為、アセリア、ウルカ、ハリオンの三人には出陣ギリギリまで残っていてもらったのだ。
こんな無理が利くのもエーテルジャンプ技術の賜物である。
抗マナ装置といい、悠人は改めてヨーティアの技術力(だけ)を尊敬した。
「分かった。準備して、すぐこっちに来るように言ってくれ」
はい、とヒミカが頷く。悠人は必要最低限の携帯食料と水をまとめ、ふう、と息を吐いた。
と、側にはまだヒミカが立っていた。
「ん? どうしたヒミカ。まだ何かあったっけ?」
問うが、ヒミカは顔を俯かせて答えない。悠人もその理由は何となく察してはいたが、追求はしなかった。
──あの日から、ずっとこんな調子だった。
報告が済んでもすぐには去らない。しばらくこうして立ったまま、けれど何も言わずにやがて去る。
いくらボンクラ呼ばわりされていても、この程度のことに気付かないほど悠人も鈍感ではなかった。
『辛くないのですか』、と。多分、ヒミカはそう言いたいのだと思う。
それに答えるならば──辛くないはずなどなかった。
誰かを殺す罪悪感は常に胸に。
それでもそれを背負い行くと決めたのなら、間違っても弱音を口にしてはいけない。
言葉にすればそれはどうしようもなく自分を縛るから。
迷わぬ自分を貫き通すなら、強くあろうとするならば。決して口にしてはならない。
……それをヒミカの方も理解していたからこそ──彼の側に立つだけで、結局何も言えなかった。
自分の言葉は彼の在り方を壊してしまうから。
今の彼は強い。迷わぬこと。それは間違いなく自分がかつて彼に求めたことだったけれど──
今、自分が望んだことが果たされたというのに、ヒミカはただ辛いだけだった。
彼の強さは仲間を救うだろう。けど、それでは彼自身が救われない。
──いつからだろう。自分の中で、この人の存在がこんなにも大きくなってしまったのは。
喪いたくないと思うようになったのは。
そして喪いたくないと思うからこそ、ヒミカは、その言葉を口にしなければならない。
その問いが、今彼を苦しめるかもしれなくても、これ以上磨耗させたくないのなら。
「ユート様は、かつての親友と、戦えますか」
悠人の心臓に棘が刺さる。その痛みに耐えながら、それでも、悠人は答えた。
「戦う」
迷うことはできないから。
その言葉があまりに迷いなかったから、ヒミカはそれ以上何も言えなかった。
悠人は無理矢理笑顔を作って、言った。
「さ、行くぞヒミカ。さっさとこんな戦争、終わらせないとな」
「……はい」
小さく、ヒミカは答えた。
ラキオススピリット隊は全速力でミエーユ、マロリガン間を疾走した。
元々馬車で一日程度しかかからない道程だ。人ならぬ脚力なら日没までには着く道の、その途中。
「──よぅ悠人、遅かったな」
片手を挙げて、気さくそうに光陰が言った。その背後には稲妻部隊が約二十。
〈因果〉と接近したことで〈求め〉が強く身を打ち震わせるが、それを力で押さえつける。
「……どうしても止められないのか、光陰。俺達が戦う理由がどこにある?」
「……神剣に飲まれた今日子を救う為には、眷属の神剣を壊さなくちゃならん。秋月、お前、そして俺だ。
それにお前を倒せば大将も神剣を暴走させる必要はなくなる。最初は秋月の予定だったんだがな──」
尚も笑いながら光陰が言い、腰を低く落とす。背後に控える稲妻部隊、そして悠人達も剣を構えた。
「お前にとって佳織ちゃんがそうであるように、俺にとっては今日子が何より大切なんだ。
それにな──一度でいいから、俺はお前と全力でやりあってみたかったんだよ!」
数十の影が、一斉に己の敵へと斬りかかっていった。
巨大な双剣が大気を押し潰す。全体重を乗せた〈因果〉の一撃が、悠人の〈求め〉を震わせた。
手の中で〈求め〉が五月蝿い。〈因果〉を殺せ斃せと執拗に責め立てる。
「っは、やっぱりこいつら、仲が悪いみたいだな!」
光陰もその声を聞いているのだろう。顔を僅かに顰めながら剣を繰り出す。
真横に薙ぎ払う閃光を飛び越え、空中で剣の切っ先を光陰の首へ伸ばす。
首を捻ってそれが回避される。着地した悠人に剣が振り下ろされる。
「おぉおおっ!」
吼える。喉から迸る咆哮の任せるまま、悠人も剣を振り上げた。
──ガァン!
鉄塊の音。──押し負けたのは、〈因果〉のほうだ。巨大な剣が浮き上がり、胴ががら空きになる。
「コウイン様!」
それにいち早く気付いたのはクォーリンだ。
光陰を巻き込む可能性を考えながらも、その方向へ速攻で織り上げたエレメンタルブラストを放とうとし──
「──邪魔は、」
仰け反らせた頭のその眼前を、鋭い切っ先が通り過ぎていく。
「させない!」
強く〈赤光〉を握り締めるヒミカが、クォーリンと相対した。
「ン舐めんなぁっ!」
無理矢理振り上げた爪先が悠人の鳩尾を貫いた。景気良く悠人の身体が吹っ飛ぶ。
不恰好に諸手を着いて着地し、口から粘性の高い胃液を撒き散らした。
出てくる前に飯食わなくて良かった、と場違いなことを考えながら、悠人はバネのように飛び出した。
「んだらぁぁああぁっ!」
まだ光陰はよろけたままだ。このまま突っ込めば、確実に斃せる。
一直線に突っ込んでくる悠人に、光陰は辛うじて〈因果〉を突き出した。正面から来れば無論刺さる。
だが悠人は避けない。そのまま真っ直ぐに突っ込み、切っ先が左目の下に浅く刺さった。
その瞬間──光陰は恐怖した。『友を殺す』という現実に。
腕が勝手に動き、切っ先が横にずれた。頬の肉を裂かれながらも悠人は懐に飛び込んでくる。
その刹那の時間の中で、らしくない、と光陰は自嘲した。まったく今更になって、どうして。
だが、それでもいい。自分は死に、悠人は生き、そして悠人はきっと今日子を助けるだろう。
そしてその上、クェドギンのやろうとしていることまで止めて、この世界を救うかもしれない。
そうなればハッピーエンドだ。惜しむらくは、自分がそれを見届けられないことだが──
眼下では、剣を強く握り締めた悠人の姿があった。この間合いでは、〈因果〉は振れない。
光陰は己の死を予感し、
横っ面を、思いっ切り殴られた。
──悠人は光陰の懐に潜り込んだ。
必殺の間合い。このまま剣を振り上げれば、確実に光陰の首を刎ねられる。
手の中で〈求め〉が殺せ斃せと叫んでくる。その声に応じるように強く柄を握り締め、
──ユート様は、かつての親友と、戦えますか──
その柄を放し〈求め〉を投げ捨て、剣の代わりに己の拳を振り抜いた。
ゴッ、といい音がして光陰の身体が横に吹っ飛んだ。その手から〈因果〉が落ちる。
戦場の空気が止まった。稲妻部隊もヒミカ達も、例外なく剣を止め、悠人と光陰を見た。
「本気で戦いたいって言ったな、光陰」
起き上がる光陰に、悠人は言う。〈求め〉は拾わない。
「なら本気で戦ってやる。──但し、武器ナシだ」
「上等……!」
獰猛に、しかしどこか楽しそうに光陰が笑って、拳を振り上げた。
支援
それはもう子供の喧嘩と変わらない。
技巧とかそんなものはなく、ただ二人は殴り合った。
こめかみを殴る一撃が意識を揺らす。顎から頭に衝撃が突き抜ける。それに耐えて、何度も何度も。
お互い一度も倒れることなく、拳だけで相手を打ち据える。
だがそれも長くは続かなかった。ぐらりと、光陰の身体が一瞬よろける。
その顔に、悠人の拳が真っ直ぐにめり込んだ。
光陰の身体が後ろに倒れた。肩で息をしながら、悠人は言う。
「……俺の勝ちだな、光陰」
「ああ、俺の負けだ」
決着がついたことを察したハリオンが、二人に回復魔法をかけてくれた。
光陰は起き上がらないまま、問う。
「何で俺を殺さなかった?」
「殺す覚悟はしてた。……けど、どうなってもやっぱり、俺にとってお前は、友達だったんだ」
なんだ俺と同じか、と光陰は空を仰いで笑った。そしてむくりと起き上がり、息を吐いた。
「行ってこい主人公。お前の役目だ。さっさと今日子助けて来い」
「ああ、行ってくる」
頷き、〈求め〉を拾った悠人は駆け出した。
遠ざかる足音を聞きながら、光陰は空を仰いで言った。
「……剣を下ろせ稲妻部隊。この戦、俺達の負けだ」
荒野に──
ぽつんと、人影が一つ立っていた。間違えようもないその細いシルエットは、今日子のものだ。
「今日子……ッ!」
思わず悠人はその名を呼んでいた。
〈求め〉が、〈空虚〉を殺せと叫び続ける。〈空虚〉からも同様に強い気配が立ち上っていた。
それはさっきの〈因果〉との干渉よりも強い。どうやら、かなり仲が悪いようだ。
〈求め〉は〈空虚〉への憎悪を、悠人が今日子を憎むことにすり替え、悠人の心に植えつけようとする。
じわじわと張られる憎悪の根を力ずくで振り払い、悠人はしっかりと今日子に向き直った。
「……〈求め〉は、殺す……」
いっそ透明なほどの憎悪と敵意を宿らせた今日子が、虚ろな言葉を紡いだ。
今日子、ともう一度呼ぼうとした瞬間──その気配が異質なものに切り替わる。
「何度呼びかけても無駄だぞ、〈求め〉の主。今や、この娘の心は全て我が物となった」
今日子の身体を完全に支配した〈空虚〉が、今日子の声で冷たく言い放った。
「まぁ、呼びかけてみるのも面白い試みだな。最後に残った部分を、少し出してやろう」
キン、と幻聴がして、また今日子の気配が切り替わる。──今日子本人のものへと。
「悠、……ころ、して」
苦痛に顔を歪めさせて、今日子が言う。
「あたし、一杯ころしちゃった……スピリットも、人も……!」
馬鹿野郎、と悠人は叫んだ。
「俺だってスピリットたくさん殺してきた! でもだからって、殺してなんて言うんじゃねぇ!」
自分の生き方を他人に強要することも、他人に強さを求めることも間違っていると思う。
それでも、悠人は今日子が「殺して」というのが許せない。
だが更に今日子は叫んだ。
「アタシは! 悠みたいに佳織ちゃんを助けたいとかなかったんだよ!?
ただ帰りたくて、それだけで殺してた! ただの我儘で!」
「俺が佳織を助けたいって思うのも我儘だ。俺だっておんなじ人殺しなんだよ!
それに、お前が死んでお前に殺された奴らが戻ってくるか!? 違うだろ!
死んで終わるな! 本当に悪いと思うんなら、生きて、何か償う方法探してみろよ……!」
だが今日子は、弱々しく笑うだけで。
「……ごめんね。アタシ、もう駄目みたい。ね、悠人、……ちゃんと殺してね?」
それを最後に──凄まじい量のマナが今日子へと流れ込む。
意識が切り替わる。〈空虚〉のものへと。〈空虚〉はつまらなそうにふん、と鼻を鳴らし、
「時間切れだな。元より脆いこの者の心では、我に抗えんようだったな」
剣を構える。切っ先に集まるマナの圧力に、悠人も〈求め〉を構えた。
「おいバカ剣。〈空虚〉だけを殺すぞ。力を貸せ」
『無理を言うな。我々の戦いとはそんな生易しいものではないぞ』
「五月蝿い黙れ。やるっていったらやるんだよ!」
悠人が駆け出した。同じく地を蹴った〈空虚〉と接触するまでの刹那、〈求め〉は心中で吐息した。
(やれやれ、先刻も〈因果〉を砕く機会を失しさせた上、娘の生存まで望むか。
『戦う』と言いつつ戦わぬ。赤き妖精の一押しがあったとはいえ、優柔不断この上ない)
光陰と交錯する一瞬、悠人の脳裏に浮かんだ言葉を、また〈求め〉も知覚していた。
だが、と珍しく、〈求め〉は自嘲した。神剣という、本来感情の薄い存在としてはあるまじきことに。
(──力を欲するくせに、我が要求には応じない。そんな輩に力を貸し続けた我もまた酔狂か!)
〈求め〉は自らに眠る力を、刀身と悠人の全身へと漲らせていった。
両者が衝突し、〈求め〉が〈空虚〉を弾く。
〈空虚〉はレイピア型の永遠神剣だ。故にその剣撃は重さより鋭さと疾さを持っている。
渇いた大気を神速の切っ先が穿つ。掠めた切っ先が悠人の身体から血をしぶかせていく。
それらに耐えながら、悠人は更に一歩、懐へと足を進めた。
「くっ、離れろっ!」
〈空虚〉が罵声を上げるが悠人は今日子の身体に身を寄せ続ける。
刃を持たず、引いて突くという動作が必要なレイピアは、距離が近すぎると〈因果〉以上に身動きできない。
息が触れ合いそうな至近距離で、悠人は〈求め〉の刃の根元で〈空虚〉の鍔を押さえつける。
「聞こえるか、今日子!」
そして叫ぶ。精神の奥底に沈んだ、今日子の意識を引き上げるように。
「戻って来い! 帰りたいんだろ!? 佳織や光陰と……皆一緒に、元の世界に!」
剣を押す。鍔迫り合いだった今日子の身体が弾き飛ばされ、安定を喪う。
「だったら戻って来い! そしてそんな奴──さっさと振り払え!」
〈求め〉を振り下ろした。今日子の身体へではなく、胸元に掲げていた剣へと。
カッ、と何かを割るような気配が刃から伝わってきた。
「やったか!」
『その娘が、最後の最後に自ら〈空虚〉を切り離したようだな。〈空虚〉の気配は、もうない。
……ふ、人というのは面白い。一時ならば我々をも凌駕するか』
〈求め〉の言葉に頷きつつ、悠人は今日子に駆け寄り、抱き起こした。
意識を喪っているようだったが、命に別状はなさそうだった。
っ[支援]
支援
後方からヒミカ達と、数名の稲妻部隊が駆けてきた。おそらくは今日子を助けにきたのだろう。
「こいつを頼む。俺の、大切な友達なんだ」
稲妻部隊に今日子を抱かせ、悠人は仲間達を一度見回した。
「行くぞ! ──もう、前みたいなことはさせない!」
全員が頷く。悠人も頷き返し、マロリガンへと向けて走り出した。
既に天にはマナの流れが光の柱となって目視できる。確実に臨界が近づいていた。
夕暮れのマロリガンは激しい混乱状態にあった。
逃げようとする者、諦めた者が入り乱れ、人のいない店から物品を略奪する者までいる。
そんな状態の国民が、今更侵入者に気をやるはずもなく、悠人達はすぐにエーテル変換施設まで辿り着いた。
金色に染まる空は美しくすらある。
だがそれは、スピリットが還るマナの色。滅びの光だ。
丁度そこで神剣を通してヨーティアからの連絡が入った。
内容は、もう時間的にギリギリだということ。マナ消失範囲が大陸全土に及ぶということ。
いきなり大陸全土か、と悠人は思う。桁が違う。
「ユート。今、この世界の命運はあんたが握ってる。……頼んだよ」
変換施設内部は、遺跡のような形状をしていた。
ヨーティアによるとこれも帝国から喪われた技術の一つだという。
この中では、特定の振動数を持つ真剣の能力が異常なまでに高まるというのだ。
それは途中で遭遇したスピリットが嫌というほど証明してくれてみせた。
理性のない獣のような顔と動き。暴走寸前の変換施設のように異常に昂ぶったマナ。
神剣を通してヨーティアは言う。マナ結晶を用い、スピリットの能力を飛躍的に高める技術。
だがそれは、神剣もスピリットも使い捨てにするという、爆弾のようなものだ。
(──そこまでして、)
脳裏に、マロリガン城内で見たあの力強く冷徹な体躯と気配が蘇る。
「何がしたかったんだ、クェドギン!」
叫び、目の前のスピリットの胴を薙ぎ払った。
「やはり来たか。……いや、来させられたというべきか」
神剣の突き刺さった巨大なマナ結晶。その前に立つクェドギンは、前に会った時と変わらぬ声で言う。
「また会ったなエトランジェ、〈求め〉のユートよ。……む、一人か。仲間はどうした?」
悠人の周りには誰もいない。傷だらけの身体で、一人ここまで来ていた。
「皆は、あんたが暴走させたスピリットと戦ってるよ。俺を先にここに行かせるために。
あんたは……何のためにこんなことしてるんだ! 全部壊した先に何があるっていうんだよ!」
「お前こそ、妹を助けた先に何があるのか、分かっているのか?」
クェドギンが問うた。
「教えてやろうエトランジェ。この世界は、神剣に支配されているのだよ。
お前達は所詮神剣に操られて行動しているに過ぎない。神剣の求める世界を築くために、な」
悠人は敵の前だということも忘れて思案した。神剣が世界を支配している? 何の為に。
いや──そもそも神剣とは何なのだ。何の為に存在している。『何故』、『此処に』『居る』。
「分かるまい、エトランジェ。私にも何故あるのかは分からない。
だがただ一つ、これまで生きてきて理解したのが、神剣が人のためにあるのではないということだけだ」
そして、己の想いの全てを吐き出すように言う。
「──ここは、人の大地だ……!」
静かに、しかし確かに大気を揺らすその声を聞いて、悠人は言った。
「だからあんたは、この世界を壊そうとしてるのか」
「そうだ。私は、我々に強いられた運命が──我々に運命を強いる『何か』が許せんのだよ。
私の運命は私のものだ。支配されるくらいなら、支配する世界を壊してでもそれに抗う!」
「だったらもっと別の方法を取りやがれ!」
悠人は叫ぶ。クェドギンの言葉を、全て理解できるわけではない。だがこの行為は間違ってると思った。
クェドギンは笑う。
「そうだ、それでいいエトランジェ。そうしてお前は私を否定する」
す、とクェドギンは何かを掲げた。
右手には、切っ先のない平たい神剣を。左手には、一抱えもあるマナ結晶を。
「……この永遠神剣〈禍根〉は、お前達の剣とは違って意志を持たない。
どこで欠落したのかは分からぬが、人の扱える唯一の永遠神剣だ。
人の意志と、剣の意志。どちらが未来を握るのか──」
掲げた〈禍根〉とマナ結晶が、強く共鳴を始める。
鉄琴を鳴らしたような高い音が空間に満ち、背後の動力結晶もまた輝きを増していく。
マナが、クェドギンの手の結晶へ満ちていく。あまりのマナの昂ぶりに部屋全体が震え出した。
マナの色が、青から赤へ、そして白へと輝きを増していった。
その中に、一人の人影を浮かび上がらせて。
「遠くない未来、この世界は滅びを迎えるだろう。だがそれは永遠神剣の思惑によってなのだ。
そんなものが運命だというのなら、俺はそれに抗おう。この世界を消し去ることでな!」
光の中からクェドギンの声が響いた。
「神剣に生かされて、神剣の思惑通りに生きるなどあってはならない。
──俺達は生かされているのではない。生きているのだ!」
光の中に、クェドギンは笑みを浮かべて消えていく。
全てを白に飲ませながら、最後に言葉を伝えてきた。
『お前達が勝ったなら、俺の遺志を継いでくれ』
支援
っ[支援]
神剣に抗え、と。
クェドギンは、悠人達にそう遺した。
(だけど、ならどうして戦いを選んだ。取るべき道は、それだけじゃないだろう)
或いはクェドギンは、辿り着いてしまったのだろう。自分達には分からないような絶望に。
この世界の、残酷な真実に。それでも、彼のやり方は納得はできないのだけれど。
徐々に光が収まり──その中心には、一人の少女が立っていた。
白い髪、白い肌。手に〈禍根〉を握る雪のような純白のスピリット。
(……イオ?)
その名が脳裏に浮かぶ。この世界に一人しか存在しないはずのホワイトスピリット。
だが目の前の少女はイオとは全く似ても似つかない。
白の少女が〈禍根〉を真っ直ぐにこちらに向けた。長い前髪の間から、破壊の意を宿す真紅の瞳が覗く。
「勝てたら、ってのは、こいつにか」
呟き、その後ろにある動力結晶に目をやる。臨界は近い。
悠人は息を吸い、自らを奮い立たせるために声を張り上げた。
「行くぞ!」
悠人が地を蹴り、距離を詰める。だがそれは、白い手が剣を振り上げる動きによって阻まれた。
冷たく、〈禍根〉が空間を縦に斬る。その動きに応じて、空間に無数の魔法陣が展開された。
極彩色の魔法陣にそれぞれマナが宿り──業風となって吹き荒れる。
幾つものマナの嵐が渦を巻き、一本の太い竜巻となって周囲を蹂躙する。
オーラフォトンを展開し、その嵐に耐える。一瞬でも気を緩めれば五体がバラバラになりそうだった。
だがスピリットはそんなことお構いなしに責め立てる。視界の奥で、またたくさんの陣が光を放った。
(ッ、まずっ……!)
第二波が来る。耐え切れない。
──いや、耐える。
皆を護り自分も生きる。そう誓ったのだから。
「ぬぅぅぅうううあぁぁぁぁぁっ!!」
剣に力を込める。身体中の力を護りへと転化し、マナの壁を何重にも重ね展開する。
どん、と工事機械の鉄球で殴られたような衝撃。浮きかかる爪先を、身体を前に倒すことで留めた。
──その風の中。
竜巻の中心、無風の空間を、白いスピリットが剣を構えて飛翔する。
キリ、と糸が軋むような音が聞こえた気がした。
絶対零度の赤い瞳が、悠人を見た。
肉薄した白が剣を振り下ろす。自らの風を斬り裂きながらその中を滑落する。
「こ、のぉっ!」
マナを通す余裕はない。力任せに振るう〈求め〉で弾き飛ばす。
勢いに逆らわず、ホワイトスピリットは翼を羽ばたかせて後退した。──その途中、剣を振り下ろして。
バラバラに展開していた魔方陣が、悠人から見て一列に展開する。
後ろから順に魔方陣が光を放ち、次から次へと光の風を喰らって大きくなっていく。
蹂躙する暴風ではなく、穿ち貫く嵐の龍。
顎を広げ、その牙を悠人へと突き立てようとする。
耐え切れるか。耐え切れるか。耐え切れるか。本能が詰問する。
耐え切れない、と悠人の冷静な部分は判断を下した。だが、
──皆は死なせないし、俺も死なない。
「皆で生きるって、そう決めたァッ!!」
周囲に満ち満ちるマナを、〈求め〉を通して無理矢理吸い上げる。
龍の牙に、剣を振り下ろす。
「が、ぁ……ッ!」
牙が〈求め〉を押し退ける。耐え切れない。ここで負ければ皆も護れないのに。
力を込める。だが、それを上回る力で剣が持ち上げられ──
「──すまん、遅くなった」
横合いから、分厚い剣が差し出された。展開される黄緑色の加護のオーラ。これは──
「光陰!」
「よう。助けが必要か?」
いつも通り、飄々とした笑顔を浮かべた光陰が立っていた。
龍が叩き潰され拡散する。風が二人の周りを吹き抜けていった。
「今日子は無事だ。お前には色々言いたいことはあるし、白黒つけなきゃならんこともあるが──」
光陰は、動力水晶の前まで後退したホワイトスピリットを見やる。
「今はあれだな。まだ行けるか?」
当たり前だろ、と悠人は答える。自然と笑みが浮かんだ。隣に友が居るというだけで、力が湧いてくる。
「そうか、じゃあ、さっさと決着つけようぜ……!」
「ああ!」
頷き合い、二人は白い光へと駆けた。
──そして、マロリガンとの戦争は終結を迎えた。
エーテル変換施設の暴走を食い止め、悠人は光陰、今日子と再会を果たした。
光陰と今日子に城下町を案内した日の夕暮れ、悠人はヒミカと一緒に、城の中庭にいた。
「……ありはとうな。ヒミカ」
オレンジに染まる、咲き誇る花々を眺めながら、悠人は言った。
「出撃前のヒミカの言葉がなかったら、俺はきっと光陰を殺してた」
「違います。ユート様がコウイン様を殺さなかったのは、ユート様自身が殺したくないと思ったからでしょう?」
「それでも、後押しをしてくれたのはヒミカだったよ」
そうですか、とヒミカはただ頷いた。それからしばらく、沈黙が訪れる。
「……後は帝国だけですね。帝国のエトランジェを斃し、カオリ様を助ける」
「ああ。そうだな。そしてどうにかして、元の世界に帰りたいもんだ」
「──そう、帰ってしまわれるんですよね」
聞こえたヒミカの声は、少し寂しそうだった。
そうだ。元の世界に帰るということは、ヒミカ達と別れるということでもある。
帰りたいとは思う。だが、別れの時を思うと、少し寂しかった。
二人はそれ以上言葉を交わず──ただ、庭園の花を眺めていた。
・『紅蓮の剣』はエロゲSSのクセに少年漫画的です。用法容量を守って正しくお使いください。
紅蓮の剣、第四章をお送りしました。ようやくマロリガン攻略完了です。後半展開早くてすいませ(イン死ネレート
今回はヒミカとの「けんかしてなかなおり」編。似てるようで違う二人を描いてみました。
もしくはヒミカの八つ当たり編(笑)ということで。しかし悠人がヘタレてないのはどうしよう……
今度は悠人のほうが更に危ういものを抱えてしまうことになったし。
ヒミカの死んだ友人辺りは勿論捏造です。
ただ前にどこかで、悠人が来る前にスピリット隊に死者が出ているというのを見たことがあったので、それですね。
クェドギンやクォーリン辺りをもう少し描写したかったのですが(特に前者)、これ以上長くなるのも……
量的に多すぎるのもあれなので、内容的に今回はぎゅうぎゅう詰めになってしまったのは反省点です。
イオ戦も削ったし。前半戦に内容を割き過ぎたというか。もう少し短く纏められるようになりたいです……
内容・考察・分析的にも色々突っ込める部分もあるかとは想いますが(汗
誤字脱字ハリオンマジック等ありましたら指摘よろしくお願いします。
支援の方、ありがとうございました。
余談:ニーソ大好きですw
552 :
紅蓮の人:05/01/10 23:57:27 ID:iNrfH0V4
早速誤字がorz
57/57の四行目「ありはとうな」は当然「ありがとうな」です。
最後の最後肝心なところでなんつーコトを……
まず、おこがましくも自分が以前手がけたテーマと共通しているな、と思って
興味深く注目しつつ拝読させて頂いた2点について。
大切な人の死に直面した、まして自分がその原因の一端を担っている。
それを克服した上で、更にまた守りたい人を持ち得る。自らの生を軽んじないままで。
どんなにか、心の強さが必要な事なのでしょうか。
それは経験した事のある人にしか判らないものなのかも知れません。
ヒミカの心が軋む音が痛いほど伝わりました。
出来るかどうか判らないけど全てを守ろうとする悠人。
最初から一番大切なものだけを全力で守ろうとする光陰。
どちらが正しいかというよりも、悠人みたいな考え方が出来るにはやはり独りでは無理なのでしょうね。
そういう意味でもヒミカの支えが物語の中で光って見えました。
マロリガン戦、乙でした。
ここは戦いが多いので尺を纏めるのに苦労されたと思います。
それでも相変わらずの戦闘シーンの冴えに思わず読み耽ってしまいました。支援忘れる程に(汗
それでは読み返してきます。
554 :
憂鬱の人:05/01/11 00:07:03 ID:HnIFgpn2
お疲れ様&グッジョです、紅蓮さん。
「アセリア」はゲーム内容が濃いので、進行に合わせて書くと容量を食って、自分の書きたい部分が
制限されるし、かといって端折り過ぎるとストーリー展開が分かりづらくなるし...難しいところですね。
とりあえずゆっくり読んで改めて感想入れます。とりあえず一言だけ。
アセリア、そこは思いっきり悠人をぶん殴っていい所だっ!!w
「起きられたのですか」って……セリアさんよ……
GJGJGJGJGJ!!!!
相変わらず熱い展開ですね。
最後のあとがきでこれエロゲSSだったんだと気付きますたw
個人的にクォーリンにはもっと活躍して欲しいなとは思いましたが、
その辺は今後の楽しみに取っておきますw
つーかこれ本編シナリオでヒミカルートとして使ってくれないかなぁ。
>>551 乙。引き込まれるような展開でGJ。
> しかし悠人がヘタレてないのはどうしよう……
いやいやいや、ここ以外でも色々とSSが増える中で久々に格好いいと言うか
熱血なユート君を見る事が出来て、個人的に大満足です。しかし、無茶をするなヒミカ(笑)
光陰と今日子を無理矢理助ける所も少年漫画ぽいが、その強引さがまた良し。
やはり、熱血と自己犠牲精神は主人公の必須要素ですな < マテ
頑張って下さいな。
応援してますよ。
559 :
465:05/01/11 06:59:41 ID:LaCu8eX/
書いてしまった…書いてしまったからには仕方ない。
ダレモイナイ…投下スルナライマノウチ…。
えぇいままよ、勢いで投下してしまえ。
今日は育成中のスピリットたちの野営訓練です。
2・3人でペアを組み森の中での行動を学ぶ、と言うのはお題目でその実ちょっとした
ハイキングのようなイベントです。
普段はクールな振りをしているセリアも昨日はなかなか寝つけられないくらい楽しみに
していました。
リュケイレムの森、少し開けた場所に出るとエスペリアお姉ちゃんがみんなを集めました。
「はい、それじゃみんな組みを作ったら夕方まで自由行動です。
怪我をしたり天気が悪くなったりしたらここに帰ってくるんですよ?」
はーい、と元気よく返事をしながら、みんな思い思いにペアを組んでいきます。
さて、誰と行こうかな、などとセリアが考えているとアセリアが声をかけてきました。
「セリア、私と行こう」
「えっ…えーと…」
周りを見回すと最近仲良しのヒミカはハリオンとペアを組んだようです。
他のみんなも大体決まっているようでした。このままだとエスペリアお姉ちゃんに
アセリアと組むよう言われるでしょう。
それがセリアは面白くありません。
「…このままだとあんたがひとりぼっちになっちゃうし、仕方ないから私が組んであげるわ」
つん、とそっぽをむきながら言いますがアセリアは気にした様子もなく、ん、と笑みを浮かべられます。
セリアにはやっぱりそれが面白くありません。
難しいお年頃ですね。
まだそっぽをむいているその頬は少し赤らんでいたりしますが。
初めは不承不承なフリをしていたセリアも、ずっと楽しみにしていたイベントだったからでしょうか。
次第にはしゃぎ始めます。どんどん森の奥に進んでいった先で見つけた小川で水遊びを始めました。
履いていたニーソックスを脱ぎ捨て、裾が濡れないように捲り上げたスカートから覗く白く細長い足が
水に濡れる様は妙にエロティッkもとい健康的です。
あっ、アセリアに水を掛けられました。お約束ですね。
負けじとセリアも水を掛け返します。
二人の可憐な少女が楽しげにはしゃぎながら水遊びをする光景と言うのはとても良いものです。
どこぞの破戒エトランジェなどが見たら妙に息を荒げる事でしょう。
躍動的に動く濡れた太腿や水を吸って僅かに肌を透かす服などが良いと言うのでは
ありませんええそんなことは決して言いませんとも。
そうこうしているうちにあっという間に二人ともずぶ濡れになってしまいました。
二人とも青のスピリットですから火をおこしたりは出来ませんが、
幸い今は暖かい時期ですしまだ日も高かったので、日向ぼっこがてら服を乾かす事にしたようです。
二人して日向に座り込んでいるうちに、良く遊んだからかセリアのお腹がくぅ、と
可愛らしい音をたてました。
顔を真っ赤にしながら横目でアセリアを窺いますが、気にした様子もなくアセリアも
エスペリアお姉ちゃん特製のお弁当を取り出しています。
内心ほっとしながらセリアもお弁当を取り出し仲良く食べ始めました。
お腹がいっぱいになると今度は眠気が襲ってきます。
昨日は楽しみであまり寝られなかったのですから無理もありませんね。
服も乾いた事ですし、二人は木洩れ日の差す木の根元でお昼寝をすることにしました。
「……リア、セリア、起きろ…セリア…」
「…ん〜…なによぅ…今日は訓練お休みの日じゃない…」
「…起きろ、セリア」
ゆさゆさと揺すられてようやくセリアは目を覚ましました。空はもう夕暮れです。
ずいぶんと長いお昼寝だったようですね。このままでは集合時間に遅れてしまいます
。そして遅れたら待っているのがエスペリアお姉ちゃんのお仕置きです。
数々の恐怖が蘇ってきますがそれを振り払ってとにかく急いで戻る事にしました。
「ねぇアセリア…ホントにこっちで合ってるの?」
「…大丈夫だセリア、まかせろ」
さっきから4度も同じやりとりを繰り返しています。
妙に自信満々に進むアセリアの後にセリアはぴったりくっついてびくびくしながら
着いて行きます。もう辺りは薄暗くなり、鳥の鳴き声や羽音が響いています。
セリアでなくとも不安になるのも致し方ありません。
半刻も歩いた頃でしょうか、森はもう闇に覆われ、口を聞く気力もなくなったセリアは
ハイロゥの僅かな光を頼りにずっと足元を見ていたため、突然立ち止まったアセリアの
背中にぶつかってしまいました。
「…たっ、痛いじゃない!」
「……かこまれてる…」
「…えっ!?」
アセリアに言われ辺りを見渡すと、闇の中にいくつも光るものが浮かんでいます。
それが何なのか理解出来ると同時にアセリアは『存在』を構えて飛び出していきました。
「ちょ、ちょっとアセリアぁ!」
静止の声も聞かず森の中に飛び込んでいったアセリアが見えなくなると、
セリアは急に心細くなり何とか取り出した『熱病』を構えることも出来ず、
震える足を支えることしか出来ません。辺りからは何かが動いて葉を揺らす音と、
時折聞こえる動物の悲鳴だけです。
突然、近くの草むらがガサッと音を立てました。
「ひっ…」
小さな悲鳴を上げながら振り向くと、唸り声を上げながらこちらを睨んでいる大きな獣が
今にも飛び掛らんと牙を剥いています。
セリアは何とか『熱病』を構えましたが頭は恐怖で真っ白です。
血に飢える獣と目に涙をためて怯える少女。
唸り声を一つ上げると獣は飛び掛ってきました。
「っ! 助けて、アセリアぁ〜!」
恐怖の余り目を瞑ってしまったセリアでしたが、いつまで経っても痛みはありません。
恐る恐る目を開けると、そこには白い背中が見えます。
間一髪、アセリアが追い払ってくれたようです。
ふわりと振り向き、アセリアはにっこりと笑います。
「…ん、助けたぞ、セリア」
「……ふぇええぇん…」
助かって気が抜けたのでしょう。セリアはアセリアの胸に飛び込んで泣き始めました。
余程怖かったのでしょう。アセリアはそんなセリアの背中をぽんぽんと叩きます。
「ん、もう大丈夫」
「うぇぇぇん…」
ようやく泣き止んだセリアはアセリアが傷だらけなことに気がつきました。
「…あ、あんた…ケガ、してるじゃない…」
「大丈夫、舐めておけば、治る」
頬にも腕にも脚にも血が滲んでいます。
セリアは何故かアセリアの脚から目が離せません。
破れたニーソックスから覗く白い素肌、そこから流れる赤い、赤い血…。
「…そう、よね…。舐めておけば……」
あれ、セリアさんの妙に顔が上気してますね?
それに眼もどことなく潤んでますし、声もかすれ気味ですよ。
あ、セリアがアセリアを押し倒しました。今度は傷口に舌を這わせ始めました。
次は脚に…あ、あ、そんな所まで…。
これはいけません、いけませんね。
これ以上は年齢制限に引っかかるため割愛させて頂きます!
…その帰り道、どことなく上気した顔のセリアが、仲良く手を繋いだアセリアに言いました。
「…ねぇアセリア、もうニーソックスは履かないで」
「……? なぜだ?」
「どうしても!」
私の理性が持たないから、などとは口が裂けても言えないニーソックスの魔力を痛感した
セリアであった。
ヒミカ「…だからアセリアはニーソックスを履かないらしいわ」
セリア「………ちょっとヒミカ、妙な脚色入れすぎ…ってなんで皆私から距離をとろうとするのよ…」
ナナルゥ「容疑が限りなく黒に近づいたからです」
セリア「容疑って何のよ!?」
ニム「…マニアック」
セリア「そこ! こっそり呟かない!」
ヘリオン「…そんなに魅力があるんだったら…私も今度ユート様に…」
一同 ギロッ
ヘリオン「…な、なんでもありません〜…」
ファー「スピリット隊の制服からニーソックスを外すよう上申するべきかもしれませんね…」
セリア「何故!?」
ハリオン「私達の〜貞操を守るためです〜」
ネリー「てーそー、ってなにー?」
シアー「…わ、私も分からない…」
セリア「だからそれはヒミカの作り話で誤解だって……私の話を聞きなさーい!!」
569 :
465:05/01/11 07:13:36 ID:LaCu8eX/
レス数の計算ミスりました…orzゴメンナサイ
出来るだけ今までの雰囲気を壊さないよう気をつけたつもりですが…
ヘタレでスミマセンゴメンナサイ…。
…しっかし物語書くのは本当に難しいです。神々の偉大さを改めて確認しました。
本当はもっとニーソへのこだわりとかセリアのツンデレっぷりを書きたかったのですが、
如何せん力不足ですた…orz
誤字脱字感想批評叩き等お願い致します。
最後に、自分にSSを書く切欠を与えてくれたこのスレと
妄想を育んでくれたニーソ愛好家の皆様と(w
子供劇場の道を切り開いて下さった神々と
最後の一押しをしてくれた>477氏に
マナの御加護があらん事を。
割愛したシーンが見たいです…安西先生……
GJですた!破れて血のにじむニーソ(;´Д`)ハァハァ
>>551 紅蓮の人さん、G.J!!
ゲムでは見事なヘタレっぷりを見せてた悠人が
こんなに格好よくなってヒミカとラブラブ?になるなんて
くそぅ、羨ましい……
二人とも恋愛事には奥手そうなので、恋愛モードが楽しみですね
>>465さん
このスレにいるのは、21歳以上の人ばかりの筈なので
年齢制限は不要でございます。ぜひとも詳細を……!!
こんなに新着レスを溜めた状態で読むのは何スレぶりのことでしょう。
正月、新年ネタやネリシアおっきのあたりにはもう亀過ぎ……。
ひたすら笑いとほのぼのを受け取らせてもらえました。
>>468-471さん
作曲家お姉さん、いいなぁ。
こうしてヒミカたちに感服したスピリットたちはそれぞれ照明、音響、舞台装置などなど、
劇団員として第二の道を歩んでいくのでした……と、いつの間にやら大所帯になる未来図が。
>>紅蓮の人さん
剣と剣を使いながらも、大切な事は言葉で伝え合う事ができた悠人とヒミカ。
拳と拳で語り合う事ができた悠人と光陰。方法は違っていても、王道の熱血展開が読んでいて爽快です。
やっと、何に拘る事も無く背中を預けあえる戦友になれたという所でしょうか、
まだ悠人のほうには精神的に良きサポートが必要なようで、その位置に立ちつつ、
その先へと向かう二人の行く末を最後まで見守りたくなりました。長文乙でした。
>>569 465さん
初書き乙&GJです。
円く空いた穴から覗く透けるような白、ふにふにとした内腿に視線が釘付けです、いけませんね。
くっ、せっかくの21禁板とはいえ、ヒミカ姐さんに直接描写を求めるのは無理がある……
と書いた瞬間、そういうシーンを顔を赤らめて書きながら想像+αの世界に意識が飛ぶヒミカが出現しました。
>>459さん
ニーソ話。
もしニーソがあの長さでなかったら……
スカートの前垂れと横部分の隙間に生じる チ ラ リ ズ ム が無くなるから。
>465氏
バルガ・ロアーに飛び下りる覚悟完了っと メモメモw
素直に組めないツンツン。
水を掛け合いキャッキャッ
お腹減らしてクゥクゥ
獣に囲まれブルブル。
押し倒してペロペロ
手を繋いでデレデレ
…………ねーなんでその場に私はいないの?(血涙)
まったくセリアさん?理性なんて必要な時だけ付け外しすればいいんですよ?
我慢はいけませんってエスペリアお姉ちゃんに何度も言われてって普通逆ですねw
服を乾かす時は焚き火をして枝に服を掛け下着だけになるのが仕来りなのですが、
守られてませんね。いけませんねw ついでに「その火を飛び越えgんsixosaxももイvえb
コウインと同類に近づいているような気もする。セリアの明日はヒミカ次第だ!?
実は>477で>460な髪結いの人でした。
>551紅蓮氏
昨夜は眠かったんで、今読みました。
ヒミカと悠人の理由と願い。譲れない二人の思いの衝突は、その神剣に委ねられてしまう訳ですが、
最後、声を掛けることしかできないヒミカが何処か哀しいです。思う故なのに、悠人の変質を招いてしまうなんて。
変質者は間に合ってるってのにw 冗談は置いておいて、この二人のやり取りが私的白眉でした。
でも本質は変わらないヘタレユート君の発揮を心待ちにしています。
できたら悠人君看病記をもうちょっとくわしくw ヘリオンと散歩はーーー?
血が流れすぎた時は人肌で暖めるのがイイとかなんとか(横島
>482 尋ね>訪ね
>487 遭う>会う 誤字とも言い切れないけど一応。
>>465氏
GJ!!
苦情を言うなら割愛された場面が見たい!! というところですが、もしやこれは寸止めで我々を煽る高等技術でしょうか!?
あえて書かない事でこちらの想像(妄想)力の翼を広げさす技、ガード不可です。ハァハァ。
これからもどうかよろしくです!!
>>紅蓮氏
キャラが相変わらずかっこ良過ぎです。
アセリアの「青い牙」、ウルカの「漆黒の翼」に対し、ヒミカには「紅蓮の騎士」の二つ名こそが相応しいですヨ。
それと誤字(?)報告。
>>515(31/57)にて「〜戦うことになるだろう。。」で「。」が重なってます。
575 :
信頼の人:05/01/11 21:51:04 ID:4gAccRPL
新たな職人さんが加わりました。
>>465さん、初SS投稿お疲れ様&おめでとうございます。
ちょっと泣き虫なセリアもいいですね。なんだか新鮮な感じがします。
ただ一言言わせて頂ければ。割愛はいけませんねw
ア&セリア@原作者として
元々髪結いさんとのリレー気味に始まったア&セリアですが、作者募集に応じて頂いてありがとうございます。
拙作の世界をまた一つ広げて頂いて、本当に嬉しいです。
雰囲気、全然壊れてなんかいませんのでお気になさらずに。
小さな書き込みから妄想が膨らみ、遂にはSSやAAになる。それがこのスレの醍醐味ですから。
これからもどんどんこの調子で頑張って下さい。
きっとまだまだ書きたくなるようなネタも沢山転がっているはずです。
そうすれば、今度は465さんなりの作品世界も出来上がるはずです。そちらも楽しみにしてます。
長駄文になってしまいましたが
>>459の信頼でした。
576 :
紅蓮の人:05/01/11 22:52:10 ID:kYrMVASR
感想ありがとうございます。次回も鋭意執筆中ですので、しばしお待ちを。
回を追うごとにヒミカから色気が消えていってすいません……一章が一番可愛いじゃないか、と読み返し思った夜。
>>553 信頼氏
悠人と光陰の対比に気付いていただけたのなら幸いです。
尺纏めるの大変でヒーコラやって書いてたのですが、支援を忘れてしまうほどに引き込めたのなら、自分的に成功です。
ミエーユ攻略戦書きたかった……(この上まだ書くか
>>556 ヒミカルートとして使って欲しい、と思ってもらえるのなら、例えお世辞でも嬉しいことです。
まぁ実際使うとしたら言い回しとか尺とかがゲーム向きではないのですが……
>>571 すいません、自分、ラブラブとか書けないんです……orz 尽力します。
>>573 悠人対ヒミカの一連の流れは今回一番力を入れたところなので、愉しんでいただけたのなら幸いです。
看病記削ってすいませんすいませんすいません……
誤字指摘ありがとうございます。両方誤字です。が、
>>487のほうは正しくは「会う」ではなく「遇う」を使うべきでした。
漢字の意味を気にして使う細かい人間なので、こういう些細なミスが妙に自分で気になってしまったりします。
>>574 そこも誤字(というか消し忘れ)ですスイマセン……
577 :
465:05/01/11 23:33:25 ID:LaCu8eX/
書き上げた勢いに任せて投下した人生初SSでしたが、思いの外受け入れられている様で
ほっと胸をなでおろしております。
思っていたより寸止めに反応があってビックリでしたが(w
あのシーンに関しては皆様の妄sもとい想像力で補って頂きたく(w
信頼、髪結い両氏にもお言葉を頂き安堵しております…が、じつはこっそり煽られてたワケで…
何やら複雑な気分です(w
何はともあれ、破れニーソに滲む血&百合とゆー低マインドっぷり全開の妄想ワールドに
ご感想を頂き感無量です。
職人には程遠い、丁稚の465でした。
ありがとうございましたー。
>577
クェドギン「出来過ぎだと思わんかね…………我々は書かされているのではない、書いているのだっ!」
確かに出来過ぎかも……w
まぁなんというか、数えても数え切れない糸目が結ばれたわけです。信頼氏の糸は太っとい上、触s、、、
千手観音の如く無数にあるので、結びまくりましょう。「ほんと、勘弁……しッ」
とか言われてもw
スレに魅入られた465氏は呼びやすいように次作をきりきり書く運命と相成ったかと思われ。
いえ、”ニーソの人”で良いのならそれはそれで……w
未だ年季の明けない永遠の髪結い丁稚でした〜。
「はぁ、気になるあの人を振り向かせたい……ですか?」
コクコクと、壊れた機械のようにクォーリンが頷く。
顔はりんごのように真っ赤に染まり、手はそわそわと中空を彷徨っている。
ぱくぱくと口が開いたり閉じたりしているのは、相談したことを後悔しているからか。
――もう、誰がどう見ても、恋する乙女そのものだ。
そんな、クォーリンの様子をみながら、エスペリアは『気になるあの人』のことを考え、
深いため息をついた。
まったく。エトランジェという人は、鈍感にもほどがある。
「コウイン様は、気づいていらっしゃらないのですか?」
「え! あ……」
なにげなく尋ねた問いにクォーリンが、あうあう、と言葉にならない呟きをもらす。
失敗した、とエスペリアは思った。今の彼女に『コウイン』というのはNGワードなのだろう。
いたたまれない雰囲気を味わっている中で、
「――その、全然、まったく、これっぽっちも気づいてません」
ポツリと、クォーリンがもらした。
「なんというか、部下以上に扱ってくれませんし。いえ、それが不満というわけではないですが、
どうみても、ニムントールを始めとする一部のスピリットとは扱いがちがいますし。
信頼されている自負は十二分にありますけれど、それも最近は違うんじゃないかって――」
呪詛のようにクォーリンが言う。エスペリアは頭を抱えた。
なんてこと。うちの隊長と同レベルなんて。
「頼れるのはもうあなただけなんです! どうしたらいいですか……?」
捨てられた子犬のように、クォーリンがすがりついて来る。
「は、はぁ……」
けど。
そんなのは私に教えてください、とエスペリアは思った。
圧倒的過ぎるのにもほどがあるでしょう。
もしかして、私(達)はそんな星の下に生まれたのかと考え、納得がいくなぁ、と現実逃避してみる。
「ハリオンに聞いてみても、にこにこと微笑むだけで、アドバイスにならないアドバイスしか
してくれませんし」
ぽけぽけお姉さんですから、とエスペリアはつっこんだ。
「セリアは顔を真っ赤にして逃げていってしまいますし。逃げたかったのは私ですよ!」
デレ期に突入しましたから、とエスペリアはつっこんだ。
「ナナルゥもヒミカもこんな話には疎いはずですし……」
ナナルゥは言わずもがな。ヒミカは……どうだろう?
「もう、あなたしか頼れる人はいないんです!」
よりにもよって消去法かよ! とエスペリアは心の底からつっこんだ。
「――嫉妬……ですか?」
「はい。男性は独占欲が強いと聞きます。部下といえども、恋愛相談を受ければ、
気にしないという方が無理なはずです。まずは、そこから始めたらどうでしょう?」
言いながらエスペリアは、こんなことで恋が実るのなら、
ラキオススピリット隊の誰も苦労はしないのですけど、と胸中で呟く。
やってみる価値はあるだろうとは、思う。全く気にされていないということは、まだゼロだということ、
プラスになりこそすれ、まさかマイナスにはならないだろう。
「わ、わかりました!」
ぱああ……、と一面に花を咲かせたようなクォーリンの笑み。
そんな凄いアドバイスとも思えない。が、やっと効果的ともとれる案がでたのだ。
今のクォーリンの脳内は見事なまでの未来が展開されていることだろう。
期待しすぎると反動がすごいですよ、と忠告する。――ああ、全く聞いてない。
がたん、と椅子から勢いよくクォーリンが立ち上がる。
「早速、チャレンジしてきます。エスペリア、ありがとう」
少女のようにぶんぶんと腕を振りながら、クォーリンが第一詰め所を後にする。
エスペリアは頬を引きつらせながら、どういたしまして、とだけ言った。
「――というわけでして」
ドキドキと胸が高鳴るのを抑える。
期待しないなんて出来るわけがない。
クォーリンは表情が崩れるのを必死で押さえながら、
『気になるあの人』に『気になるあの人』を振り向かせる方法を尋ねた。
「ほう……」
『気になるあの人』――光陰がふてぶてしく笑う。
あばたもえくぼとは良くいったもの。クォーリンにぴったり当てはまる。
けれど。
「そうかそうか、クォーリンも悠人が気になるかぁ……」
クォーリンとエスペリアは、エトランジェを甘く見すぎていた。
「――――――は?」
「いやな。あまりにも浮ついた話が無いもんだから心配してたんだよ。
いや、全く悠人も罪作りな男だからなぁ」
「え? ……いや、そうゆう――」
「でも、悠人はシスコンだからなぁ。道は険しいが俺は応援するぞ。
千里の道も一歩からってやつだな」
こんらんする。
この人はいったい。なにを言ってるのか。
「おっと、今日子から呼ばれてたんだった。大丈夫、安心しろ。
このことは悠人に秘密にしておいてやるから」
俺はお前のことをわかってるぜ的なオーラを体中から出しながら、
盛大な勘違いした光陰は部屋から出て行った。
「――違うんですコウイン様! 私が好きなのは――――!」
だから、正気に戻ったクォーリンが投下した爆弾発言は、誰にも聞かれること無く、
むなしく響き渡るだけだった。
「ぐす、うぇぇ……。あんまりです。あんまりですよぉ」
ラキオス城下のとあるBAR。
見慣れないグリーンスピリット――クォーリンがやけ酒をあおっていた。
「うぁぁん。がんばった。がんばったのにぃぃ……。酷すぎです。ひどすぎですよぉ……」
ぼろぼろと涙を流しながら、隣に座るブルースピリット――セリアに絡む姿は、
どうみても酔っ払いにしか見えなかった。
ぽんぽん、とセリアがクォーリンの背中を叩く。
あまりにもツンツンしすぎて、デレ期に突入したの避けられやすい彼女は、
クォーリンの悲しみがよくわかるのだ。
それに、ねぇ? 恋敵じゃないし。
「マスター、追加! 追加をおねがいしますぅ。ぐす……。うえぇぇ」
――今日もまた、夜が更けていく。
まず。すみません、二番目は(1/5)ではなく(2/5)です。
↓気にせずどうぞ。
紅蓮の剣を読んでから、クォーリンが頭から離れません。
もうGJ! すぎて、こんなSSを書いてしまいました。
PS2アセリアには立ち絵クォーリンが! 無いよなぁ、無いかorz
クオーリン可愛いよクォーリン
上記以外の誤字脱字ハリオンマジック等ありましたら、指摘よろしくお願いします。
圧倒的……といい表現が気になりつつも、萌え。
しまった。
いい→いう
>ツンツンしすぎて
ツボに嵌ってしまいました(涙目
ありますよね〜、余りにもツンデレにありがちな罠。
BGMに「氷雨」が聞こえてきそうに哀しいクォーリンの物語なのに
何故にこんなにも笑いが止まらないのでしょう。セリア個人的においしすぎですw
ていうかクォーリン、好きな人に恋愛相談は大禁物です。
一歩間違えなくても引きます、特にヘタレエトランジェは(汗
藁をも掴むといいますが、よりによって初心者マーク揃いのラキオス隊を掴んでしまうとは(涙
酔えばや〜けに〜涙も〜ろく〜なる、こんな私許して〜下さ〜い〜♪
合掌。
【恋愛相談T】 嫉妬[鈍感]
対LP効果 10% 残1/最1
元がゼロだと%効果はないのです。エスペリアさんw
消去法でエスペリアってクォーリン……w ファーレーンは名前も出ないのね、見る目はあるってことかw
ウ「剣は心。心は剣。鞘に入れたままでは貫くことなど出来ませぬ」
589 :
憂鬱の人:05/01/13 00:15:54 ID:ZODDBMvT
うーむ、わずか二日ほどスレから離れたスキに、来訪者達が続々と...
この際遅レスを恐れずに(←あ、今この人シャレを言いましたよー!)
>>551紅蓮さん
前回分で前に立つ悠人の背中に、ヒミカが一体何を見て、何を感じたのだろう、と非常に
気になっていましたが、その辺りがしっかり今回分に描き込まれていてグッと来ました、涙腺に。
ヘタレてない悠人だけでなく光陰まで熱血なのが凄くカコイイです!この二人の殴り合いを
期待していた人は意外と多いのではないでしょうか、私も含めて。共通ルート部分を話の流れを
壊さずにアレンジするのもまた、SSの醍醐味。
あ、ヒミカ、今回は十二分に可愛かったと思いますよ。あえてどのシーンかは伏せますけど、思いっきり
ツボを突かれちまいました。前回の感想レスで余計な仕事を増やしてたとしたらら本当にすみません(切腹)
で、私からも誤字報告。541の3行目に真剣マジックあり。
>>465さん...でいいのかな?
GJ!そして、ようこそ、底なし沼の世界へw
っていうか、ファーレーン!余計な上申するなーっ!!
信頼、髪結い両氏に遠慮する必要はありません。むしろこれまでの流れと言うか、
雰囲気を少々壊すくらいの方がいい恩返しになります。
で、連書き。
>>584 ああ、このBARは一体ドコにあるのか?恋に破れしスピどもの集う所...
逝きたい!もう帰りたくな〜い〜♪(←帰ってこなくていいよ)
しかし、エスペリアのアドバイスが微妙にズレているのは天然なのか、それとも
彼女の腹黒さゆえなのか...。
それはそうと憂鬱シリーズへのご助力感謝いたします、全裸で。
非常に救われます、ヘバりかけですので、最近w
――朝の日差しが私を揺り起こした。
カーテンの開けられた窓からは柔らかな太陽が覗いている。
時折耳を掠めるのは、軽く窓を撫でる風と一日の始まりに歓喜する小鳥の歌。
ゆっくりと布団から抜け出すと、未だぼんやりした頭とふらふらと左右に揺れる身体を
引きずって階段を下りる。
明るい日の差す居間からも、清潔なテーブルが佇む食堂からも、誰の声も響くことは無い。
古いけれど手入れの行き届いた食器棚も、鮮やかに着飾った庭の草花を見渡せる
大きな窓も、今にも動き出しそうな躍動感を持ちながら朝の静謐な空気の中でじっとうずくまっている。
(まるで自分一人だけ別の世界に紛れ込んだみたい…)
居間と食堂の境界でぼうっと立ち尽くしたまま私はそんな事を考える。
(自分でご飯作ったりお洗濯しなきゃいけないな…)
ひとりぼっちが何より嫌いなのに、のん気な事を…――頭の隅から聞こえる。
そりゃそうだよ、ともう一人の自分に反論する。
だって、例え誰も居なくなっても、例え何所に行ったとしても――
「あら、おはようニム。朝ごはんもうすぐ出来るから、着替えて顔を洗っていらっしゃい」
「…ん、おはよ、お姉ちゃん」
――お姉ちゃんがいつも私の側に居てくれるから。
食後のお茶を飲みながら、隣に座ったニムをちらりと見る。猫舌なのでお茶が冷めるまで
待っているのはいつものことだが、普段ならば昨日あったことや読んだ本の事など、何かしら
話しかけてくるのだけれど、今朝はなにやら呆けている。
――飾り気の無い白磁のティーカップに注がれたお茶に映る自分の顔とにらめっこしてみる。
そんな自分の行動に違和感を覚え、なんとなく苦笑いが浮かぶ。
そもそも違和感なんてこの館中に満ち溢れている、とようやく気付いたから。
いつもは少々騒がしい朝の食堂も、今朝ばかりは静かな空気が流れている。
この第二詰所のメンバーは皆サルドバルドとの戦争に出払っているため、先日ようやく
別任務を終えた私達だけ。
考えてみればこの広い詰所に二人っきりになったことなどなかった。朝食の用意をしている時に
妙に台所が広く感じたのはそのせいだったのね、と一人納得する。
再びニムに視線を戻すと、ようやく飲める程度の温度になったカップに口をつけていた。
しかし依然として会話は無い。一見ぼーっとしている時のニムは、本当にぼーっとしているか、
何かに対して神経質になっているかのどちらかだ。
後者であっても無理はない、と私は胸の中で呟く。
ラキオスがついに戦争を開始したこの状況に加え、今日は本隊に合流するためラセリオ方面から
イースペリアに進軍しなければいけない。そしてこれはニムにとって初陣でもある。
かちゃり、とカップをソーサーに置かれる音を聞く。ニムのティーカップも私とお揃いだ。
ニムのは白磁に小さな赤い花が、私のには青い花が描かれていて、以前街で一目惚れし、
エスペリアに頼み込んで備品として購入してもらった私のお気に入り。
ヒミカやセリアなどには、少女趣味ねぇ、とからかわれたものだが。
ふと視線を上げてみるとニムがこちらを見ていることにようやく気付く。
「お姉ちゃん、いつ頃出よっか?」
「そうね…準備して戸締りしてからだから…一刻後くらいかしら」
「ん、わかった」
「二階の戸締りはよろしくね。私は下の片付けと戸締りするから」
「うん」
そう言うとニムは席を立った。
食堂を出て行く背中を見ながら私は僅かな不安を覚える。
軽い仕事を頼まれたニムは面倒、といつもの口調で返し、私は軽く笑いながらそれを
嗜める、といったやりとりを期待していたのだ。
(やっぱり神経質になってるのかしらね…)
少し温くなってしまったカップに口をつける。
エミナの葉から淹れたお茶の香りが鼻腔をくすぐるのを感じ、軽く嘆息する。
「…神経質になってるのは私のほう、かな」
ニムは初めて戦場に出る。
つまりそれは一度も私が戦場に立っている姿を見たことが無い、と言う意味だ。
もちろん多少の小競り合い程度の戦闘は幾度か共にしたこともある。
そんなものは戦場とは言えないし、私も本気で戦っていたわけではない。
しかし、戦場の私は、別人だ。それを見たニムは私をどう思うだろうか?
今度は少し深くため息をつく。エミナの葉のお茶には香りも味も爽やかな甘味がある。
それは発酵させることにより生まれる甘味で、生のままのエミナの葉は素晴らしく苦い。
そんな二面性が私に似ているから、と言う訳ではないけれど私はこのお茶を好んだ。
残ったお茶を飲み干すと、私も立ち上がった。
――今日もエミナのお茶だったな。
行軍用の荷造りをしながら、私はそんなことを考えている。
お姉ちゃんが戦場に出る前は、必ずエミナのお茶を淹れる。
エスペリアが、エミナのお茶には心を落ち着かせる働きがある、って言ってたからだろうか。
今朝のお姉ちゃんは少しおかしかった。
(優しいのはいつものことだけど、普段以上に私の顔色を窺っていたみたいだし。
…私も色々考えることあったから口数が少なかったけど)
「えっと、代えの戦闘服と下着と、パジャマと、雨具と…ブラシはお姉ちゃんと一緒で良いし…」
多分、私に戦っている姿を見せたくないんだろう。
しかし間接的、とは言え一応知っているのだ。
ヒミカからは何度もお姉ちゃんの活躍を聞いていたし、哨戒任務中にその片鱗は見ている。
実際に見たとしてもお姉ちゃんはお姉ちゃんだし、多分格好良いな、と思う程度だろう。
それに――
「…かさばったり重かったりするものはダメって言われてるけど…本持って行っちゃダメかなぁ…」
――そもそもそんな事で、私がお姉ちゃんを嫌いになったりするはずがないのに。
思わずくすっと笑みが漏れる。そんな心配性で優しい所がお姉ちゃんらしい。
「…うん、一冊くらいなら持って行っても怒られないよね」
枕元からヒミカに借りた読みかけの本を手に取り、鞄の中にしまう。
ふと、以前読んだ植物図鑑の一文を思い出す。
――エミナの葉は発酵させたものがお茶として広く親しまれているが、
生の葉は傷薬として重宝されている薬草でもある――
部屋の窓が閉まっているのを確認すると、私は他の部屋の戸締りをするために部屋を出た。
本の背表紙には真っ赤な文字でこう書かれていた――『紅蓮の剣』
595 :
465:05/01/13 03:05:37 ID:Uu1h9moY
おだてられるとすぐに調子に乗るお調子者でスミマセン(w
なんとなく思いついたままに好き勝手書いてみましたニム&ファー物です。
一応ニムメインでストーリーを考えてましたがファーを書いてるうちに妙にファーが可愛く
なってきて…最後がどうなるか自分でも予想がつきません(w
>紅蓮氏
スミマセンスミマセン勝手に拝借してしまいました申し訳ございません。
ニムに趣味読書、と言う設定を考えた時、読ませる本にふと浮かんだんです。
いえホントに一読者として続きが楽しみで仕方ないんです、えぇ決して催促しているつもりは(w
>髪結い氏
きりきり書いてみました(w
…百合の人とか寸止めの人とか呼ばれるよりはずっと良いですがー(w
>憂鬱氏
確かに底なし沼かも、と実感中です現在進行形で(w
では、誤字脱字感想批評叩き等お願い致します。
それは一人の少女の問いから始まった。
マロリガンとの戦いが終ってから数日たったある日
エトランジェ・今日子の部屋―――
「ああ、あのキョ、キョーコ様!き、聞きたいことがあるんです!」
「ちょっと・・・えーと、ヘリオンだっけ?落ち着きなさいよ、ほら深呼吸して・・・」
「すーはー、すーはー・・・・」
質問があるからとやってきたのはいいけど、この慌てようは何なのかなー。
なんだか小鳥とは違った意味で落ち着きの無い娘よね。
「どう?落ち着いた?」
苦笑しつつ尋ねる。
「は、はい・・・」
「で、私になんか訊きたいことがあるんでしょ?なにかな?
ま、大抵のことなら答えるわよ。我らが隊長殿の恥ずかしい話とか。」
「え、えぇ!ユ、ユート様のですか?ど、どうしよう・・・恥ずかしい話って・・・
あぁ、駄目です。でもでも・・・そんな・・・・い、いやぁ・・・・・・はっ!私ったら何を・・・
えーと・・・そ、そう今日訊きにきたのは違うことだし・・・」
うーん、この反応・・・分かりやすいわねー。
これで悠は何も気付かないんだから恐れ入るわね。
ところで一体何を想像したのかな?気になるわー。
つ[支援]?
「まぁ悠の話はそのうちね・・・で、そろそろ本題に入ろうか?」
このままだと無駄に行数増えちゃうしね。
「ええと、その・・・こ・・は・・の方法とか・・・」
ヘリオンが顔を紅くしつつ何かボソボソ言う・・・これは悠絡みなのは確実ね。
「ゴメン、よく聞こえないんだけど・・・」
真っ赤になっちゃって初々しいわねー
「あ、あの!ハイペリアではなにか特別な告白の方法とかあるんですか?」
やっぱりそういう話かー。うーん、こういう話は苦手なんだけどな・・・
でもヘリオンは真剣みたいだし、はぐらかしちゃ駄目よね・・・やっぱり。
「特別ねぇ・・・この世界とは違う方法ってこと?」
とはいえ『空虚』の支配から逃れたばかりだし、
この世界の告白方法分からないんだけど・・・
そもそも私ってちゃんと告白したことないような・・・
光陰とは何となく流れでそうなったし、悠とはそんな雰囲気にはならなかったし・・・
ん?私って恋愛経験浅いのかな?
「・・・・そうねぇ・・・・あ、あれかな?バレンタインデーがあるじゃない。」
そのぐらいしか思いつかない。でも女の子の告白イベントっていえばこれよね。
「ばれんたいんでー・・・・ですか?」
ヘリオンが首をかしげる。そりゃそーか、通じないわよねー。
「えーとね、バレンタインデーっていうのは・・・」
・・・・ここに光陰でもいればそもそもの起こりから気合を入れて薀蓄を語るわね。
でも残念ながら私にそんな知識はないんで割愛。
「女の子が好きな人にチョコレート渡しながら好きですって言うイベントね。」
まぁ、重要なのはここよね。
「ちょこれーとって何ですか?」
またもヘリオンが首をかしげる。あー、チョコの説明もしなくちゃね・・・
えーと、原材料は・・・カカオ豆?ってないわよねそんなの・・・
さて、どうしたものかしらね・・・あ、そうだ・・・たしか制服のポケットに・・・
「・・・あった!これがチョコよ!」
小さな袋詰めのチョコが数個でてきた。小鳥に貰ったの入れっぱなしだったわ・・・
なんか溶けて再度固まったみたいだけど・・・平気よね?袋に入ってた訳だし。
とりあえず一つ食べてみる・・・・うん、平気だ。それにしてもなんか懐かしいわね。
少しあっちの世界を思い出して切なくなっちゃったりする。
・・・まぁ、それはさておき・・・
「うーん、でもこれじゃあね・・・溶けたせいで形も悪いし・・・」
食べる分には問題無さそうだけどプレゼントにはね・・・
まぁ悠は気にしなさそうだけど。
「そうね・・・・これをハリオンかエスペリアに食べて貰えば
こっちの材料で似たもの作れないかな?」
あの二人は料理が得意みたいだし。
こっちにもお菓子はあるんだから似たものはあるかもしれないし・・・
「はい、じゃあ残りのチョコあげるからハリオン達に研究してもらいなさい。」
「はい!ありがとうございます、キョーコ様!」
数少ないあっちの世界のものを手放すのは惜しい気もするけど・・・
ヘリオン凄い嬉しそうだし・・・まぁいいか。
「あ、そうそうバレンタインのチョコは手作りが大事よ!
やっぱ自分で愛情こめないとね!」
「はい!がんばります!それじゃ、失礼しますね!」
凄い勢いで去っていくヘリオン・・・さすがブラックスピリット・・・いや、愛の力かな?
「しかし悠のどこがいいのかしらねー」
鈍感だし、頭悪いし、不器用だし、髪の毛ツンツンだし。
「・・・まぁ、私は人のこと言えないかな・・・」
私は苦笑しながらふと考える。
「・・・そうねぇ。私も光陰と悠に作ってあげようかな。」
私が私に戻れたのは二人のおかげだし・・・うん、義理で。
「そうよバレンタインを伝えるなら義理チョコの文化も伝えないと駄目よね!」
そう考えた私は慌ててヘリオンを追いかける。
次回予告
ハ「これが〜ハイペリアのお菓子なんですね〜」
ウ「ふむ、興味深い・・・手前もユート殿には恩がありますゆえ。」
ナ「作戦目的理解しました。調理に移ります。」
ヒ「あら?セリアも作るの?」
セ「ぎ、義理よ!そう!義理なんだから!」
ファ「その割にはしっかり手作りですね・・・・姑息な。」
ニ「はぁ・・・面倒。」
オ「あ、アセリアお姉ちゃん・・・いれすぎだよ・・・」
ア「ん・・・まかせろ・・・」(自信満々な笑顔)
光「なぁ・・・俺の分はないのか?やっぱり・・・」
今「義理ならあるでしょ・・・・多分。」
ク「わ、私のでよろしければ!」
光「まじっすか!そんなこと言ってくれるのはクォーリンだけだぜ・・・
例え義理でも。」
ク「・・・え?」
ネ「まぜまぜ〜♪」
シ「まぜ〜♪」
エ「二人とも床に垂れてますよ!」
ヨ「イオは作らないのか?」
イ「短編の方まで出しゃばるのも気が引けますので今回はお休みです。」
そんな感じで
(上記の予告は作成中のものです。予告無く変更する場合があります)
続く(多分)
年末年始忙しすぎた為久々投下です。
正月ネタは間に合わないだろうとバレンタインネタにしました。
・・・・・はやすぎですね。まだ1月だよ・・・
一応このスレも見てはいたんですが・・・書き込めず・・・
SSの感想書こうにも余りに多いので(盛り上がってて嬉しい限りです)
とりあえず割愛します・・・ごめんなさい。
とりあえず今日はこの辺で・・・誤字脱字あったらごめんなさい。
>>597さん支援ありがとうございます。
>>465さん
長編に足を突っ込んでしまいましたかw
私は完成してから投稿派なのでその辺の苦労は測り窺う事が出来ませんが、
連載しながら物語を作り上げるのは凄く大変だと思います。
(恐らくは霞さん辺りが今その辺で苦慮されているかと思われます)
このスレはきっと職人の皆さんが暖かい御助言を下さるので、頑張って下さい。
>黎明
レスごとの視点の切り替えがテンポ良いですね。
まだ始まったばかりですがこれからの465さんなりのファーニム、期待してます。
>>602霞さん
今日子の入れ知恵だとなんだかトンデモない聖バレンタインデーになりそうな……
ネリシアが何を混ぜてるかとどうでもいいことが気になったりしてます(汗
そういえばかなり前にバレンタインネタが上がってたな
もうすぐ1年経ってるのかー。なかなか早いな
雑魚スピスレ以前のSSも保管しておいたほうが
良いんじゃないかなとか思うんだがどうだろう?
確認した最古のアセリアSSはエロネギ版6-663(03/12/10)
「ちょこれーと大騒動」とか見れない人居たりするんじゃない?
ヒミカの日記より
ファーレーンを思い出す時、一つの場面が脳裏に浮かぶ。
戦争中、私と彼女とニムントールは敵の陥穽に嵌って孤立し、追われ、敵地の森に逃げ込んだ。
敵は何とか撒いたものの、戦闘に継ぐ戦闘、逃走に継ぐ逃走に心身共に疲弊し、夜の帳も下り、私は途方に暮れていた。
「早く戻らなきゃ」
焚き火の灯りも灯せない敵地の闇の真っ只中で、彼女はニムントールに膝枕をしていた。ニムントールは安心しきって眠っていた。
私は彼女の落ち着き払った佇まいに、ニムントールの幼い無防備な寝顔にすら、あまりの緊張感の無さに苛立ちに近い感情を覚えていた。いや、はっきりと苛ついていた。
心に全く余裕が無かった。それに気付けもしない程。
「焦っても仕方ないわ。幸い今夜は晴れ。星の位置で大体の進むべき方向は判ったし、気力体力が消耗してたら出来る筈の事も覚束無いわよ」
「何でそんなに冷静なの!? ここは敵地の中なのよ!? 私達の今置かれてる状況が解ってるの!?」
本来それは、支援に位置した私の責任。不慣れだったという言い訳も、己の無能の証明でしか無い。
まるっきりぶつける相手も的外れな、愚かな私の暴言に、彼女は自分の人差し指をそっと口の前に立てた。
ニムントールが起きてしまうから、静かにして、と。
敵地の中だと自ら言いつつ声を激する己に気付き、それでも不安を留め置くには私の心は弱すぎた。
「ファーレーン、あなたは帰りたくないの?」
先程よりは声を潜めながらも静寂を濁した私に、彼女はニムントールの頭を慈み撫でながら、優しく優しく言葉を詠んだ。
「私の帰るべき場所は、ここだもの」
あまりにも優し過ぎる目に、言葉に、動作に、当時の私は慄然とした。はっきりとした寒気すら覚えた。底の見えない優しさが、正直とても怖いと思った。
人は、理解の範疇を超える物事に、時に畏怖や恐怖を覚える。あの時の私が、正にそれ。
「大丈夫、私はニムやあなたが帰るべき場所に帰れるよう、死力を尽くすわ。安心して。今はまず心も体も休める事よ」
冷静に状況を見据えて、彼女は言った。
不安や焦燥を微塵も感じさせない落ち着きは、その場においてある種正しくあったがそれゆえ逆に不可解でもあった。
危険の香りが常に背後に漂う中で、なぜそんなにも冷静なままいられるのか、と。
それは彼女持つもう一つの顔の特性であったと思われるが、この事に関しては後述する。
兎にも角にも当時の私は、焦り、緊張、不安で一杯なところに、彼女の今まで知らなかった理解を超えた面を見せられ、感情がますます不安定になっていた。
「あなたの帰るべき場所は、ニムントールのところだけなの?」
口をついたその言葉は、彼女が理解の及ばない遠い世界に行ってしまった様に感じた私の、彼女を自分の理解の範疇に引き戻し留め置こうとする不安な意識の表れだった。
それほど私は怖かったのだ。目の前にいながらにして届かない程遠くに感じる彼女の幻視めいた取り成りが。
「……そうね。最近もう一つ、出来たかも知れない。帰るべき場所が……帰りたいと思う場所が……」
その後に彼女の語った言葉のみならず、以降その晩私達の交わした言葉をすら、私は何故か覚えていない。
だが彼女にとって、ニムントールと同列の存在がいた事がそれで解る。思い返せば今でも驚く。
彼女とニムントールの関係は、そこらに転がっているものでは無い、魂の絆とでも呼ぶべきもの。
彼女にとって、それ程の関係を有する相手が、ニムントール以外にいたのだ。
後の会話を覚えていれば良かったのだが、今更悔いても仕方無い。
あの時の彼女の言葉が誰を指していたものなのか、今もって私には解らない。
ただ少なくとも、私ではない。先の彼女の言葉からも明らかに。
そして、当時それほどまでに彼女が見ていたスピリットを、ニムントール以外に私は知らない。
自分達の関係を私達は手探りで模索している状態だった。彼女とニムントールの関係はその中に在って別格だった。
607 :
紅蓮の人:05/01/13 11:25:05 ID:aPM5Bnvz
>>584 いえいえ、そちらこそGJ!であります。クォーリン、このスレのイメージだと凄く健気ですよね。
本編じゃ名前しか出てないのに(禁句
ツンデレの哀しいところは、相手に惚れてもらえないと最初から最後までツンツンしてないと駄目ってことですね……
というわけでヒミカの場合。
駄目元で相談してみると、意外なことに親身になって相談に乗ってくれたヒミカ。
頼れる姉貴的な彼女についついクォーリンも洗いざらい話してしまい、激励を受け告白まで漕ぎつけた。
結果の如何は兎も角、相談に乗ってくれたヒミカにクォーリンはとても感謝したとか。
……数ヵ月後、とある少女の恋愛の顛末を描いた小説「恋は稲妻のように」が出版され、
国中の女性の間で、人間・スピリットを問わずベストセラーに……
ストーリーテラーver.でお送りしました。
>>589 真剣マジック! そうか、それもありましたね……orz
>前回の感想レスで余計な仕事を増やしてたとしたらら本当にすみません(切腹)
いえ、そんなことはありません。やっぱり戦闘シーンありますしね……
というか多分、戦闘のない回は存在しないかと(待て
>>595 いえ、寧ろ可愛いファーのほうが自分は好みなので大丈夫です。頑張ってください。
……催促と受け取りますw
後に、朧ながら家族という関係が見えてきて、更に状況が変わるに至り、私達スピリットも道具としてではなく確たる個として相互関係を築くに至ったのだが、それはその後の話である。
当時の私達をも、彼女は命を賭して守っただろうが、それは私達がニムントールの味方だからだ。
ニムントールを支えるのみならず、ニムントールを囲む世界をも全力で守る。そこにも彼女の愛情の深さを知る事が出来るが、逆に言えば、当時の私達はニムントールという存在を通してのみ、彼女に認識されていたという事でもある。
ニムントールにとってのマイナスファクターになると彼女に解されれば、私達が消されていた可能性もあっただろう。(これもまた後に語る事と密接に関係する)
当時のラキオススピリットの中にあって、前述のように彼女を家族以上と見なし見なされた人物がニムントール以外にいなかった事を傍証とし、あの時の言葉に彼女が示した人物は私の知らない人物と思われる。勿論、私が看過していただけという可能性もあるが。
これが真実であれば驚きもあるが、理解出来無い話でも無い。
良くも悪くも裏表のあった彼女の裏の部分を私は知らないのだ。
戦闘記録を見ていて気付いた。
彼女が別任務を帯びて数日間場を空けた後、決まって停滞しかけていた戦況が大きく動いていた。
それも、敵方重要人物が暗殺される、又は失踪するという理由でだ。
一度二度なら偶然かも知れないが、数度の繰り返しがあれば関連を見出す方が自然であろう。
彼女は相手方の重要人物を暗殺していたのだ。
あくまで推測の粋は出ないが、それで彼女の謎だった部分の説明がつく。
何より今の私は彼女と刃を交え、彼女の本気を僅かながら見せられ、この仮説をほぼ確信している。
当時はそんな事に気付くのはおろか、思いつきすらしなかった。
私が鈍いという要因もあろうが、私達が目の前の戦いに必死だった事、彼女が私達に暗殺者としての姿を(当然ではあるが)全く見せなかった事を言い訳としてあげておく。
彼女は暗殺に適した才を持ちながら、敵と真っ向ぶつかり合う戦場に於いても重要な役割を果たしていたし、その為の修練を欠かさなかった。
真面目一辺倒であった彼女は、自らを厳しく律していた。それでも戦闘力が伸び悩んだのはある意味当然の帰結といえる。
相手を認め、己の全てをぶつけるという戦い方は、いや、戦うという行為そのものが彼女の素質と正反対に位置するのなのだから。
暗殺とは相手をただ消すだけの行為。相手への理解や共感、敬意は不要以上に害でしか無い。
それを恐らく彼女自身でも理解していながら、それでも常に努力を続け、戦闘能力が伸びない事に悩み苦み喘いでいたのは、彼女を語る上で非常に重要な部分であろう。
結局彼女は最終的に、年若いヘリオンにすら(ヘリオンが天才的な戦闘センスを持ち合わせていたとはいえ)、正面からぶつかり合ったら及ばない様になっていた。
ヘリオンを始め、彼女を除いた私達は、訓練に於いて勝利より敗北から、成功より失敗から多くの経験を得て強くなった。
だが彼女は、勝利するしかない状況の中で自らを研ぎ澄ませてきたのだろう。
敗北や失敗は即ち死という、過酷な状況の中で。
そこに於いて正面から戦うというのは最悪の選択肢。己を確認されるなど、ましてや堂々と出て行くなど愚の骨頂。そのような状況になる前に相手を消して然るべき。
そんな奇麗事の通用しない世界の住人である彼女が、何故に戦うという、自らの否定とも言える行為を続けていたか。
それはニムントールへの手本、規範となる為。
他者への敬意を持たねばならない。正々堂々たる生き方をしなければならない。
ニムントールにそう伝える為に、彼女は姉としてその姿を見せねばならなかった。
優しく強い姉と、冷酷非常な暗殺者との両面を持つ彼女の苦悩は、いかばかりであっただろうか。
妹の幸せな未来の為に暗殺者として生きながら、それは理想の姉である事と決定的に相反する。
彼女の真面目な精神が、真面目に過ぎるがゆえに鋭い刃となって、彼女自身の純粋すぎる心を切り刻んでいただろう。
それでも彼女は、戦う事をやめなかった。敵からも、自分からも逃げなかった。
或いは精神を引き裂く苦痛すらも、自らへの罰としていたのか。
いずれにせよ、彼女は全てを受け止め続けたのだ。
今だから解る。
ニムントールがなぜあれほどまでに彼女を信頼していたか。
彼女がなぜあれほどまでにニムントールを愛していたか。
ニムントールは彼女の裏を知りながらなお、それゆえに姉を敬愛していた。
そしてニムントールは、自らの責務を自覚していた。
彼女の誇れる妹になる。それが責務の一にして全。ニムントールは責務を果たしきった。
彼女が、そんな妹の笑顔にどれだけのものを受け取ったかは、最早想像も付かない。
私は彼女程苛烈な道を歩んでは来なかったのだ。想像するにも限界がある。
戦いの後、彼女は罪の象徴と自らを定めた。
今なお影となり私達を支え、闇の部分を独りで背負った彼女へ、私は感謝を禁じ得ない。
私達は彼女に会い、自らの犯した罪、同属殺しの血に濡れた両の手を思い出すだろう。
しかし彼女は暗闇にありながら、私達のこれから取るべき道筋をはっきり示す。
闇を照らす月光のように。
『空虚より始まる』を受けまして。
465氏改め黎明の人氏への支援の意味を込めまして。(邪魔しただけかも)
ごめん、ファーレーン。でも、俺の中でのファーはこんなイメージなんです。
>>604 うーん、向こうのスレの保管庫に行けば見れるは見れるんですけど(最近また見たし)、
こっちにもあれば便利ではありますよね。
とはいえ、管理人でも向こうのスレで保管されてる作品の職人様でも無いので
こんな無責任な意見しか言えませんが。
>>紅蓮様
支援どうもありがとうございます(苦笑)
連投規制回避に(そんなに長文でも無いくせに)ノンビリ書き込んでました。すいませんー。
612 :
紅蓮の人:05/01/13 11:40:39 ID:aPM5Bnvz
支援というか割り込んじゃっただけですスイマセンスイマセンスイマセン……orz
あああ、再読み込みしてから投稿すべきだった。
ファー、GJです。ゲーム中での性能のアレさとニムの姉としての彼女を上手く絡めていると思います。
月光、そうですね。独り暗い夜に浮かんで、尚も道を切り開くのであれば、これほどファーに相応しい神剣もない。
その在り方が、タイトルのような、戦いから離れた生き方をヒミカに選ばせたということでしょうね。
613 :
605:05/01/13 12:12:32 ID:fMoguBya
あああ〜、修正。
>>606 それは彼女持つ〜 → それは彼女の持つ〜
「の」が抜けてました。
……「ま」じゃなくて良かった(マテ
614 :
憂鬱の人:05/01/13 19:55:09 ID:z3Y8PQUG
ホント、感想が間に合わないw
>黎明
題名からするとやはりニムものでしょうか。一見穏やかな出だしですが、その裏にピリピリした
緊張感も漂ってますね。さて、ニムの初陣は果たしてどうなるのか...?
>バレンタイン
時節ネタですな。一見穏やかなシーンの裏側に殺気が渦巻いてるなぁw
おーい、イオさんや、そろそろデバンジャナイノー?
>作家
し...渋い。どこかで書いた気もしますが、私的にはファーは印象薄のキャラなので
彼女主体のSSはいくつ読んでも新鮮です。
ところで、いつの間にか次スレの足音が。
テンプレ案急募...いや、もうテンプレ投下する頃合かな?
615 :
髪:05/01/13 21:02:32 ID:elTU+COI
間をおかず三本のSS乙〜。一本でも折れないのに三本ともなると「絶対防御」も紙のようにスパッと。
雑魚スピスレは超濃厚なマナに包まれてますね。
>595 黎明
普通の朝。普通の食卓。普通の姉妹。
二人だけの朝。二人だけの食卓。二人だけの、姉妹。
黎明に溶ける光と闇のような姉と妹は互いを優しく抱きしめあい静かに祈る。
二人の絆は、剣で切れるものじゃないからファーの危惧はきっと無用なはず。
きりきり来ましたね。二人イイですね。悠人と合流する前の二人がどういうものだったのか、楽しみです。
>602 チョコ
今日子とヘリオンって良いコンビですよね〜。
義理を装い本命を匂わすことで、鈍感な殿方もイチコロです>クォーリン たぶん。
ク「義理よ本命へと変われ、コーインさまの心を熱く揺り動かし我が思いを溶かし込めっ!」
「まぜまぜ〜♪」
「まぜ〜♪」
「チョコレートブラストッ!!」
ク「な、なな、なちょ、ちょっと一緒に溶けちゃったじゃないのっ。あぁ〜ん(泣き)」
……悠人の場合「はぁ〜こんだけ貰っても全部義理だもんな」とか言いそうですな。ムカツクw
>611 作家
コーイン殺しのほし確定かっ!? 推理小説家に転身?
月は、日が昇ると共に消えゆく運命。いや実際に消えるわけではない。
ただ見えなくなるだけなのだ。だからきっと、月に帰っていったのだ。ファーレーンは。ほくととみなみ。
月に闘技場あるのかしらんw
保管庫休みになった途端大盛況だなw
帰ってきた424氏が氏なない事を祈る。
>>611さん
非常な戦闘者としての仮面を外した後のたった一人の大切なものを守ろうとする優しい少女。
そんなファーが少しずつ少しずつ大切なものを増やしていく過程は
紅蓮さんの示されていた「悠人と光陰の違い」の間をゆっくりと移行している気がします。
道を作る人というのはどんな世界でもきっとそっと輝いているのでしょう、月光のように。
…………少し綺麗に纏めすぎました(汗
寸劇DVD喜多。
まだ開けてないけど楽しみ。
アセリア設定資料集も、保存用に一冊買いました。
三十分前? 違うなら一時間?
自分の感覚に任せるなら、もう一日が過ぎ去ったような気さえする。
けれど、時間は全然たっていなかったりするものだ。
――それがつらい事なら、なおさら。
「いやぁぁぁ! ……もう、もう、いやぁぁぁぁぁ!」
「今日子、しっかりしろ! 今日子!」
二つの悲痛な叫びを聞きながら、私は何も出来ずにただ立っている。
歯がゆい。手を合わせて祈ってみるけれど、そんなのはなんの助けにならないなんてこと、
当の昔に気づいているはずなのに。
「やめて、やめて! 私は、殺したくなんかないのにぃぃ!」
「くそっ! おい<因果>! なんとかできねぇのかよ!」
何時も冷静沈着なコウイン様が、こんなに感情的なのが事の必死さを伝えてくる。
――でも、私は何も出来ないのだ。
「ああああああああ!!!!」
キョウコ様のこの世全てを呪うかのような叫び。
――違う。キョウコ様が呪うなら、私。
グリーンスピリットなのに救える事すら出来ない、私。
そして、キョウコ様に<空虚>を使うことを強要するマロリガンそのもの。
「……ふぅ。――クォーリン、いたのか」
「あ、あの。キョウコ様は……?」
部屋から出てきたコウイン様に、キョウコ様の様子を尋ねる。
「ああ、寝ちまったよ。<空虚>もこれ以上は、今日子の肉体に負担が
大きいって気づいたんだろ。今までは苦痛を与えてただけなんだがな。
今日子の精神に目ぇつけやがった」
「………………」
無言で俯く私の頭をコウイン様が大きな手で撫でる。
「気にするな、とは言わねぇ」
「――――え?」
「その分祈ってくれや。な?」
顔を上げた私の視界に入ってきたのは、コウイン様の笑み。
「……は、はい!」
自分のしていた行為が、役にたっている。
そんな風に考えてもらえている。そのことが嬉しくて、私は――
「へぇ、なるほどなぁ」
「自分も少なからず神剣の干渉を受けていらしたようですけれど、全くそんな
素振りをされなくて。知っているのは稲妻部隊では私だけなんですよ」
ふふ……、と嬉しそうにクォーリンが言う。
第一詰め所でのお茶会。マロリガンのことを聞いているうちに話が脱線して、
何時の間にか光陰と今日子の話になった。
友達だからこそ見えないこと、とでも言おうか。クォーリンの話は、
とても興味深かった。
ちらり、と庭の方を見遣る。
「ニムちゃーん。シアーちゃーん。ネリーちゃーん」
年少組はお茶会もそこそこに、庭で遊んでいる。一人邪魔だな。
「コウイン様は他人だけでなく、自身も大切になさるお方ですから……」
満面の微笑みでクォーリンが言う。
全員が全員、深い深ーいため息をついた事は言うまでもない。
584です。
感想どうも有難うございます。
クォーリン可愛いよクォーリン。
SSを書くと愛しさが募るのはどうにかならないのか。
あと、SS書くと職人さんの素晴らしさがしみじみと感じられますね。
職人さんGJ! です。
>>585 スミマセン、スミマセン、スミマセンorz
(エトランジェの鈍感ぶりが)圧倒的過ぎるのにもほどがあるでしょう。
てなことです。穴! 穴に入りたいよ!
>>588 素で忘れてたよファーレーン。
腹黒ですから、とエスペリアはつっこんだ。
>>憂鬱の人さん
どういたしましてー。
助けになったのなら幸いですー。
>>紅蓮の人さん
執筆頑張って下さい。
こんな超短編でも二、三時間かかるのに長編は一体どの位の時間がかかるのか。
あ、胃が痛くなってきたよママン。
ここは地獄の激戦区。タイミング良くレスを付ける運は全てスレまかせ。
俺たちゃメインヒロインに別れを告げて、雑魚スピたちの手を取った
命知らずのエトランジェ!
押さえても押さえきれない想いを綴る、ここは第二ファンタズマゴリアまたは
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド、ナンバー10。
読んでくださった方に感謝しつつ・・・
>>603 信頼さん
トンでもない目にあいつつも悠人は幸せ者ですからねー
くそっ・・・ちょっとぐらいエライ目にあわせてやれ・・・(マインドが低下しました)
>>611さん
渋い・・・だがそれがいい。そういえばファーは弱いとよく言われるけど
属性攻撃あるから意外に強くないですか?
まぁ、他にもっと強いキャラがいるわけですが・・・
>>614 憂鬱さん
イオの出番は・・・もうチョイあとで。年末年始の忙しさで書く暇なかったので・・・
しかもバレンタインネタなんぞをたちあげてしまったし・・・
イオも好きだけど他のキャラも好きなんだーーーーー!!!・・・そんな感じで。
>>615 髪結いさん
いや、ほんと悠人は幸せ者ですよね。
くそ・・・アセリアとウルカ、もっと食わせてやれ。(マインドさらに低下中)
>>622さん
クォーリンかわいいよクォーリン。
書くと愛しさが募りますね確かに・・・
くそ・・・光陰もなんてやつだ・・・クォーリンが可愛そうだ。
でも空回りして報われないキャラはかなり好き。(やっぱりマインド低いな今日は)
お姉ちゃんからは色んな事を教わってる。
戦いの事に関しても、神剣の扱いから手入れの仕方まで。作戦の立案とか情報戦の方法なんかは、まだ良く解んないけど。
実際の戦い方に関しては、神剣の形はまるっきり違うけど、お姉ちゃんはそれでも教えるのがすごく上手い。
戦い方の基本とか、戦闘の時の心構えなんかは全部お姉ちゃんに教わったのが基本にある。
だから私は強くなれた。
お姉ちゃんは神剣魔法がちょっと苦手。
だから私も魔法はちょっと苦手。これはエスペリアとかハリオンにそのうち教えてもらおう。めんどくさいけど。
でもお姉ちゃんから一番最初に教わったのは、引く事。
訓練士の誰も、この事を教えてはくれなかった。
引く事と逃げる事、負ける事は違う。勝敗が決まるのはたったの一度だけ。そこで勝利を掴みなさい、ってお姉ちゃんは言った。
だから私は死んでない。
「クレムリンからホワイトハウスまで。義妹の代わりに小鳥だって連れてくるぜ」
っと。
ダスカトロン大砂漠じゃマナ障壁の代わりに砂漠空母を。艦上スピ満載。
>622
クォーリン、コウイン全肯定っ。
「汝の求めるものに純粋であれ」ザードガラハムは光陰には決して言わなそうw
などとトリガまで微妙に詰めつつ、黎明氏を応援してミル。
点呼案。
キャラの別名なんかを考えてみてはいかが?
公式にはアセリアの「青い牙」、ウルカの「漆黒の翼」、エターナルの皆さんの「聖賢者」「再生の炎」「法皇」「黒き刃」etc。
このスレではエスの「ラキオスの秩序の壁」、オルファの「赤い彗星」、ヒミカの「紅蓮の騎士」、クォーリンの「深緑の稲妻」、トキミの「おば(ry」、テムの「コアラ」などなど色々あります。
シリアスからギャグまでどーぞ。キャラかぶり、もちろんOKで。
……というのはどうか。
ツッコミ・修正適宜ヨロです。
sageネリー、時深乱舞は建てた人のご判断でドゾー。
631 :
465:05/01/14 01:04:38 ID:o/Qsv4Ni
>霞氏
GJであります。
…一ヶ月後用の伏線を既にお張りになるか(w
長短編とも続きが待ち遠しいです。
>611氏
GJ&ご支援感謝ですー。
黎明書くに当って、何度も他の方のSS読み込んでは台詞考えてるので、参考文献が
増えることほど有り難い事はありません。
…問題はご期待に添えるか否か、ですが(苦笑
>622氏
一人邪魔だな、に爆笑しますた…。
恋は盲目? でも相手が悪すぎますよクォーリン(w
>627氏
また応援頂けるとは…感涙の余り前が見えませぬ…。
微力ですが、全力で書かせて頂きます。
632 :
憂鬱の人:05/01/14 13:17:56 ID:qvcEQ3Fq
>>622 達観しすぎだってばクォーリンw
しかしそれでは今日子のライバルにはなれません。
光陰はお約束を待っているわけですから、そこは迷わず
エレメンタルブラストをぶっ放してあげるべきでしょう。
それにしてもクォーリン人気急上昇中だなあ...
>>625 シリアスver.のニムの造型が追加されました。
...短文ながらゲーム中のニムの特性をウマく突いてますね。
それにしても彼女のエレメンタルブラスト3000は誰に習ったのか?w
スフィアハイロゥを胸に入れてみるヒミカ
>>622さん
続いた!?w
年少組、本当に遊んでいるだけなのだろうか。
なんだか必死に逃げ回っている姿が目に浮かびます……(汗
クォーリンの湯飲みにピシッと音が。
>>629憂鬱さん
テンプレ貼りお疲れ様です。
さて、このスレの次スレ建てトリガは475kとなってます。
ちなみに現在459k程です。
一応481kまでは書き込める様ですが、幽霊船となっては一大事ですので
これからSS(特に長編)投稿予定の有る方はトリガを越えてしまわない様
テキスト容量に十分ご注意下さい。
一応ですが、新たな住人さん達にと思いまして。
あ け ま し て お め で と う
_ , ヘ , ヘ _ _ ,ヘ
, ^》ヘ⌒ヘ《ヾ '´ ⌒ヽ '´ ヘ ヘヾ ' ` ^ヽ '´ ⌒ヽ 〃 ' ^^ヾ 〃 ' ヘ ヘヽ '´ ⌒ヽ 〃/::::|ヽ
( リ〈 !ノルリ〉)) ! l」」ルl」」 ノ〈从ハ从〉ノ ル从ルリゝハ」」」l」」〉 i ハ从从リ ノi ミ从l~iルソ ! ソノノ~))) ∠ <====ゝ
ノノ(!リ゚ ヮ゚ノリ(( i !ゝ゚ -゚ノゝ 从ヲ´ヮ`ノヲ从リ゚ ー゚从 ヾゝ゚ ヮ゚ノゝノノゞリ゚ ヮ゚从(((ヾ(i|゚ -゚ノi|く人リ゚ ー゚ノiゝんヘi」゚ -゚ノ」
(( ⊂》|Tリつ ソ ⊂》|Tリつ ノ⊂》|Tリつ ⊂》|Tリつ ⊂》|Tリつ(((⊂》|Tリつ 从i⊂》|Tリつ ⊂》|Tリつ ⊂》|Tリつ
く/|_ノ⊃ ノノく/|_ノ⊃て(く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃
(フ (フ (フ (フ (フ (フ (フ (フ (フ
雑魚スピラインダンス。作品別スレ888からの転載なんだけど、テンプレに生かせないかな?
まああけおめ部分は適宜変えるとして。
エトランジェなのに10人目のスピリットって微妙に矛盾してるなと今更気付いたorz
後今の内に定番ですが職人の方々に業務連絡です。
どなたか投稿可能な次スレ即死回避用SS、用意されている方はいらっしゃいますか?
バッティングを含めての確認の意味で、念の為。
641 :
憂鬱の人:05/01/15 19:38:09 ID:ijicqIBp
毎度の事ながら何もありません>即死回避用SS
役立たず職人ですみません、うう...(泣)
我こそは、と言う方、挙手をおながいします。↓
>>634 >一応481kまでは書き込める様ですが、
書き込めなくなる限界値は500Kぐらいですね。
480K超えて1週程放置するとdat落ち。
新スレ即死と旧スレdat落ちの同時発生/幽霊船、
どちらも避けるために、dat落ち直前で新スレ移行、
即死回避確定後に旧スレをdat落ち圏到達or容量オーバーさせる、
ということで。
と、ツッコミ風解説風で促進の足しにしてみるテストw
うあ、ツッコミ有難うございます>642さん
書いていて何か変だなとは思ったのですが、慣れない事はするものじゃないですね(汗
お詫びといってはなんですが、少し促進してみます。
>>憂鬱さん
誰もいらっしゃらなければ『回帰』の用意あります。
欠伸を噛み殺していたシアーちゃんが本格的にうつらうつらと体を揺らしている。
抱える様に両手で握っている『孤独』がすっかり杖の代わりになってしまっていた。
「ん〜〜〜ユートさまぁ〜〜〜…………」
……相変わらず判りやすい夢だ。ちょっと吹いてしまった。
穏かな午後。ぽかぽかと柔らかな日差し。
こんな日は、シアーちゃんでなくてもお昼寝をしたくなっちゃうんだろう。
ネリーだったらオルファちゃんやヘリオンちゃんとどっかで遊びたいけど。
でも、ゲンジツは甘くない。ネリー達は夕方までここでお仕事なのだ。
お城の前でショウカイ&ケイビ。ほんと、ツイてない。イイオンナが台無しだよね。
それはそれとして、これはお仕事なのだ。寝てちゃいけないだろう。
決してシアーちゃんが静かだとネリーがつまんない訳じゃないよ、うん。すー…………
「シアーちゃん、起っきろ〜〜〜!!!」
「ひゃあ〜〜〜!!!」
いきなり耳元で叫んでやった。
一瞬髪の毛が逆立つ程驚いたシアーちゃんがぴょん、と可愛く飛び跳ねた。
「ひ、ひどいよネリーちゃん…………」
おトイレからの帰り道。まだ涙目のシアーちゃんがう〜っと睨んでいた。
「ごめんってば…………ね〜シアーちゃん、機嫌直してよ〜〜」
「…………知らないっ」
ぷいっと横を向いてしまう。トロいと思われがちだが意外と執念深い。
ちょっとやそっとじゃ許してくれそうにないなと思ったので、切り札を出す事にした。
シアーちゃんの耳元で囁く様に告げる。ぴくっと怯えたのはちょっと悲しかったけど。
「あのねシアーちゃん、ハリオンお姉ちゃんにおいしいヨフアル貰ってあるんだ」
「……………………ふたつ」
……我が妹ながら中々なカケヒキ上手だ。そんなぐずぐずと言われたら断れないじゃん。
むむ、いつの間にそんなイイオンナすきるを。
「しょうがないな〜もう」
「…………えへへっ」
苦笑いで了承する。やっとシアーちゃんがはにかむ様に笑顔を見せた。
本当は二個しか貰ってないんだけど、まあいいか。ネリーはお姉ちゃんなのだから。
お城の門まで戻ってきた時だった。
さっと何か、黒い影が走った。咄嗟にシアーちゃんを後ろに庇う。
『静寂』に意識を集中させてみたが、何の声も返ってこない。おかしいな、と思ったのも束の間。
「あっ!」
また何か、動いた。今度は後ろ姿もちゃんと見えた。あのアヤシイ頭の形は敵に間違いない。
急に叫んだらシアーちゃんがまたぴくっと怯えた。…………くすん。
「こら〜!」
心の寒さを誤魔化そうと大声でケンセイしてみる。すると案の定敵はだっと逃げ出そうとした。
ようやく気付いたシアーちゃんがおろおろしている。
「シアーちゃんはここにいて!……へへーん、逃がさないからねっ!」
「あっ、ちょ、ちょっとネリーちゃん!」
敵の動きは遅い。遅すぎ。あっという間に追いついた。ウイングハイロゥを展開するまでもない。
「てりゃ〜〜〜!!!」
そのまま『静寂』を振りかぶる。その時敵が振り返った。初めてはっきりと顔が見えた。
「……あれれ?」
「だ、だめ〜〜〜〜ネリーちゃんっっ!!!」
飛び出してきたシアーちゃんが間に割って入り、『孤独』で受け止めてくれなければ大変な事になっていた。
敵の顔、それは……変装したレスティーナ皇女さま、だった。目を回しながら腰を抜かして呟いている。
「び、びっくりした〜〜〜…………あら?…………シアー貴女、下着穿いて無いの…………???」
シアーちゃんの顔がみるみる赤くなり、ぼんっという音を立てた。
がみがみがみがみがみがみがみがみ
その夜。第二詰め所の廊下に立たされたまま、セリアお姉ちゃんに怒られていた。
一通りお小言をした後、ふぅっと軽く溜息をついて肩を軽く竦ませている。
「とにかく。髪型を馬鹿にしたのは痛かったわね。皇女さま、大層気にしてたわよ」
…………斬りかけた事よりそっちの方が重要だったんだ。
ネリーは思っただけなのに何で判っちゃったんだろう。バレバレな変装はするし、皇女さまって一体。
「じゃ、一応決まりだから、今晩はここで反省して。悪く思わないでね」
「〜〜〜はーーーーい…………」
立ち去っていくセリアお姉ちゃんに生返事を返す。誰も居なくなると、急に寂しくなった。
しょんぼりと下を向いてみる。その拍子にお腹がきゅるるるる〜とかわいい音を立てた。……かわいい音だもん。
……ん?くんくん。…………なんだろう、いいにおいがする。
「ネ、ネリーちゃん……」
「うひゃうっ!」
急に声を掛けられてびっくりした。何時の間にかシアーちゃんが横にいる。
おずおずと差し出されたヨフアルに思わずじゅるっと涎が出た。
もきゅもきゅもきゅもきゅ。
ひっそりとした深夜の廊下に二人のヨフアルを噛む音だけが静かに響き渡ってた。
「……………………」
「……………………」
結局シアーちゃんはその後も黙って朝まで一緒に立っていてくれた。欠伸一つ漏らさずに。
それでも今度は退屈でも何でもなかったよ、へへ♪
648 :
信頼の人:05/01/15 20:14:52 ID:QemQIUvb
「いつものねりしあ」を「ネリぃシアたぁ」と改めさせて頂きました。
無理を通して下さった保管庫の中の人に感謝いたします。
ババンババンバンバン♪
風呂入ったか!?
ババンババンバンバン♪
風邪ひくなよ!!あ〜ビバノンノ♪
なんにも思いつかないorz
今回のお題難易度高くて即死回避には向かない希ガス。。。
652 :
憂鬱の人:05/01/16 00:54:33 ID:BF18L2yE
ちょっと早すぎましたね。
自分でもこんなにあっさり建つと思わなかったんです(大汗)
前回ダメダメだったし。
いざとなったら信頼氏がSS用意してくれてるみたいですので
ゆっくり考えてみて下さい>点呼ネタ
653 :
献身の理由:05/01/19 07:24:51 ID:pUvhIdBg
神剣は、心を飲み込む。強大な剣程その力は大きい。
力を振るえば振るう程、蝕まれる心。闇に一歩ずつ近づく。
そんな姿は見たく無い。出来れば戦っては欲しくない。
だけど、貴方はきっと戦う。守る為に。自分を捨てても。
だから、わたくしは盾になります。
アセリアが、剣になる様に。それがスピリットなのだから。
――――俺も、戦うよ!
そんな一言で、こんなに動揺するなんて思いませんでした。
ミルクを温める手が震える。いけない。笑わなくちゃ。
軽く自分の頭を叩いて気を取り直す。
――――スピリットだって、女の子だろ?
そんな嬉しい言葉を仰らないで下さい。汚れた自分には過ぎます。
そう、私は汚れている。あの時、汚れてしまったのだから。
浮き上がる泡の白、綯交ぜに織り上げられる心。
コップに移したミルクに甘く味付けをする。お盆に載せながら、決心した。
あの優しい少年を、きっと守ってみせる。たとえマナの霧となっても。
それがラスク様への、せめてもの恩返しになるかも知れないから……
肩を叩く。まだ起きてると、寝ぼけた様な口調が可愛らしい。
「ふふ……本当は、もう眠られたほうがよろしいんですよ……?」
自然に笑みが零れる。穏かな夜、つかの間の刻。
カップを受け取りながら、不思議そうな顔で貴方は言います。
「ありがとう……って、エスペリアはいいのか?」
きっと、伝わらないでしょう。少々鈍い貴方だから。
でも、それでもいい。言葉の意味は、伝えるものだけではないから。
――ありがとうございます、ユートさま。わたくしは……大丈夫ですよ。
それが神剣を持つ、ささやかな理由になるのだから…………
654 :
信頼の人:05/01/19 07:29:46 ID:pUvhIdBg
第一章のワンシーンから。
憂鬱さんに捧げつつちょっとだけ前進。
エスペリア…………(;´д⊂
悠人がいれば、彼女たちは戦う理由を持てる。
気付けば既に絡んでいた、鎖の代わりに。
半身同然でありながら、分かつことなど出来ない永遠神剣と言う名の縛鎖。
あ、髪結いさんに気付かれたw
ちなみに気付いた方から一本づつ一レスでヒロインクラス補完リレー埋めですよ(ぇ
【残り あと4人】
それにしても縛鎖ってw
えーw
《手前はまた同じ過ちを繰り返すのか。エスペリア殿、オルファ殿、手前、この面恥……慚愧に耐えませぬ。
いつか、何時かこの雪辱を果たさんがため、生き恥をさらし、肝を嘗め薪に臥しましょう。
悠人殿、手前勝手は重々承知でありますが後のことはお願い申します。
追伸 探さないでくだされ。≫
「オルファ……この凄惨な現場はなんなんだ?」
「あ、はははは……な、なんなんだろうねぇ……」
大胆な10センチ大の野菜の乱切りがごろりと散らばるまな板。焦げ付いた鍋の底にわずかに残るどろり
とした物体X。ビクビクッっと未だに生きている切り口だけは見事な魚だけが、その魚眼で惨劇の一部始終
を見ていたのだろうか。
柱には短刀で突き刺された置き手紙。珍しくウルカだけが詰め所に残っていた隙の惨劇だった。
「ウルカ腕あげた……」
「…………ま、まあいい。オルファ片づけるぞ。その鍋はうるかしておけ」
「パパ、ウルカお姉ちゃんでお鍋ってなに?」
「ん? ああ、うるかってのは、ハイペリアの言葉でな、水に浸しておくことを言うんだ」
「へーおもしろーい。ウルカお姉ちゃんでお水にひたすことなんだー。ね、パパ他にも面白いのないの?」
「そりゃ後でな。ほらエスペリア固まってないで。エスペリアの城だろ」
「…………はい」
ふらりとよろけそうな足取りで、流しへ向かうエスペリア。だいじょうぶだろうか。
「ウルカ……ん、水も滴る女。うん、負けない」
勝ちも負けもしないで欲しい。
その後、二詰も含めて焦げた鍋のことを「うるか」と呼ぶようになった。俺の説明とは食い違うのだが……?。
ユート君は実は東北出身だった?
意味わからんうえに、補完になってないですね orz また壁を黒く塗ってしまった気がす。
ネタいっぱい抱えてるのに、振られるとついつい。
【残り あと3人】
尻軽とover the sunは含まないっと。
あ、タイトルは「う゛ぁにしんぐうるか」で。
うるかす……東北以北の方言。水に浸すことをいう。東北もんがこれ口走っても関東もんは笑わないでねw
うるかって酒の肴にもあるのね。
659 :
邂逅:05/01/20 00:10:30 ID:egNcZq/e
最近勢力を伸ばしているという専らの噂……ここだね。
話に聞いたとおり、人の流れが耐えない。物陰に隠れ、状況を見守ってみる。
懐に忍ばせた手がチャリンと頼もしい音を立ててくれた。
慣れた場所ではない事がこんなに緊張するなんて、あまりに久しぶりで忘れていた。
きっと、私が知っているこの町の姿など決して全てでは無いんだろう。
現に、いつも素通りしてたはずのこの場所。噂を聞くまでは注目しようともしなかったのだ。
息をつき、もう一度懐で握り締めた袋の重さを確認する。うん、大丈夫。
何食わぬ顔で、人通りが作る列の後ろに並ぶ。こんな当たり前のことが、こんなにも楽しい。
目当ての場所に近づくにつれて、だんだんと強まる芳香。
ともすれば、立ち上る匂いとともに意識まで天に昇ってしまいそう。
こんなに柔らかな香りを立てる一品を仕上げる職人だ。
きっと、作り手さえも柔らかな人柄に違いない……人に対する形容じゃないかも。
と考えているうちにあっという間に私の番。お客を捌く手際もいいらしい。
ま、とりあえずは注文注文っと。
ここでの私の口調で、ここでの私の笑顔で。両手に一杯のヨフアルを。
私に向かって差し出された手は、ここでは無い場所の私が知っている者の手だった。
思わず、ぴたりと止まった私を、彼女は不思議そうに気遣う。
慌てて首を振り、笑顔であつあつのヨフアルを受け取った。よかった、どうやらばれてない。
一つ先に並んでいたおばさんが、お嬢ちゃんこの店は始めてかいと笑いかける。
私が驚いた理由を少し間違えているのだろう。いや、確かに合っている部分はある。
笑顔を返し、袋に入ったヨフアルをさくりと一口。評判のヨフアルは、春の太陽のような味がした。
帰り際、売り子をしている彼女ともう一度目が合う。
また、いつでも来てくださいね、と全てを包み込むような笑顔で送り出される。
さっき思った事は、どうも間違いだったみたいだ。……でも。
売り子の彼女の笑顔と、ヨフアルを買っていった皆の笑顔。
私は、また一つ。私の町が好きになった。
660 :
道行書き:05/01/20 00:11:42 ID:egNcZq/e
ヒロインズ祭り三番手。気付いてしまったから、ついw
【残り あと2人】
>>信頼の人さん
くぅっ。やっぱり守られつつも守りたくなるのですよね、エスペリアって。
>>髪結いのひとさん
>焦げた鍋=ウルカ
黒いからですか、黒いからなのですか?擦っても取れないからですかー?
ウルカス……料理がちょっぴり下手な女子が情熱のあまり鍋を焦がしてしまうこと。(ラキオス詰所辞典)
―――振り下ろされる双剣。
「あはは、パパ、見て見てー!この敵さん、まだ動いてるよ〜!
すご〜い、オルファだったら、ここまでがんばれるかなあ?」
「オルファ...」
悠人にとって、それはまさに地獄絵図であった。最早戦意を喪失し、背中を向けていた敵のスピリット。
無慈悲にもなぶり殺しにしているのは、あどけない笑顔のままの幼い少女。
そして何よりも悠人の心を切り裂くのは、この、自分をパパと呼び、慕ってくれる少女に、
自分は何一つ届けるべき言葉を持っていない、その事実。
「パパー、これで倒した敵さんの数がストラロスになったよ〜!」
褒めて貰えると思っているのだろう、撫でてくれと言わんばかりに差し出される、小さな赤い頭。
「―――そっか。えらかったな。」
まだ返り血が金色に輝きながら立ち昇る、その頭に、悠人はそっと手を置く。
「えへへー。」この幼い少女は、悠人のその口調に翳りがある事にも気付いていない。
「パパの敵...だよね。なら、オルファみーんなやっつけちゃうよ!」
今日も少女は双剣を振るう。
でも、と悠人は思う。いつか、知って欲しい、と。悠人の敵がオルファリルの敵ではない事を。
自分の敵か、それとも与する者か、オルファが己の目で見極められるその日まで、この少女を見守っていよう、と。
662 :
憂鬱の人:05/01/20 01:14:21 ID:E2XIBh2l
気付いてしまった...
シリアス調の補完は苦手なんですよ(汗)
【残り あと1人】
まだ私が「存在」を握っていた頃のことを、今でも時々思い出す。もう遥か昔のことになってしまったけれど。
それはまるで何かに引き寄せられたかのような出会いだった。
今思えば、何故私がユートを見つけたのか。私は何故助けようと思ったのか。何もかもが不思議。
ただ、何となく彼のことを放っておけなかった。それだけだったのに。
バーンライトの城で、無茶をしてユートに諭されたことがあった。
今でもはっきりと思い出せる。あの時のユートの手、とても温かかった。
私の中でユートが特別な存在になったのは、あの時からかな。
ユートと一緒にハイペリアに飛ばされたこともあった。
私が体調を崩してしまったけど、ユートはそばにいて看病してくれた。ユートとずっと一緒にいたいと思ったのはこの時だと思う。
そういえば、あの小鳥とかいう女の子。もう今は生きていないだろうけど、彼女には幸せになって欲しい。
ハイペリアから戻ってしばらくの間、私の意識は剣に呑まれていた。あの頃のことは良く覚えていない。
「求め」が私の心に触れてきて、本当に大切なものを思い出させてくれた。「求め」にはいくら感謝しても足りない。
ユートにこの話をすると、彼は決まって遠い目をする。そして、「求め」との思い出話をしてくれる。
私は、その思い出話の時間が大好き。だって、その時に、ユートは一番優しい目をしてるから。
……ユートと初めて結ばれたのは、その日の夜。「ユートのこと、愛してる」と分かった瞬間から、もう止まらなくなってた。
初めてにしてはずいぶん大胆なことをしたと思うけど……トキミさんに話した時の真っ赤な顔が、とてもおかしかった。
トキミさんが現れ、始まったエターナル同士の戦い。あの時は正直、ユートと一緒にエターナルになるかどうか、少し悩んだ。
みんなに忘れられてしまうのは、やっぱり寂しかったから。でも。
「私の生きる意味は、ユートと共にある。私の幸せは、ユートと共にしかありえない。」
そう気づいたら、もう迷いはなかった。「永遠」を手に取り、ユートと一緒に、無限の時間に身を投じた。
そして今。私は永劫の戦いの中で、剣を振るい続ける。
ユートの限りない優しさに包まれながら。ユートのため、私のため、そして……おなかの中の、この子のために。
初投稿でこういう企画物に乱入するとは、なんたる無鉄砲か(大汗
…というわけで、一風変わったアセリアのモノローグ調です。
アセリアルートプレイ直後でここを見てしまったのが運のつき。
一気に書き上げた感じですね。
1レスにまとめるのがえらく難しかったです。4割くらい削りましたから…
「文章が長すぎます!」を6回食らいましたねw
文章がこなれてないとか、誤字脱字とかありましたら。(何?
665 :
信頼の人:05/01/20 07:26:09 ID:v0dH322T
>>664さん
初投稿お疲れ様でした。G.J.です。
アセリアの物語はやっぱりサモドアから始まってるんだなぁと再確認。
「思い出話の時間が大好き」が印象的でした。読書好きなアセリアらしいw
宜しければ今度は雑魚スピ辺りにも愛情を注いであげて下さいw
666 :
憂鬱の人:05/01/20 12:49:42 ID:yu21KVui
新人さんいらっしゃ〜い(三枝調で)。企画殴りこみ乙&グッジョブです!
文をまとめるのに苦労したとの事ですが、ふふふ、案ずる事はありません。
書き込むスペースは未来に向かって無限に広がっています。
雑魚スピスレがある限り、前進あるのみ!そう、まるでアセリアのように。
高マインドな私がおとも致します。(←新人さんを騙さないように)
>>665さん
ありがとうございます。そのシーンは私の中では1枚絵がある、重要な部分だったりするので嬉しいです。
あ、サモドアだった(吐血
何か地名がまだ頭に入ってませんな…多謝。
>>666さん
過去ログ読んで職人さんのマインドを判断してみよう…(何
668 :
憂鬱の人:05/01/20 17:01:10 ID:yu21KVui
過去に目を向けてはいけません!w
追伸:サモドアはバーンライト王国の首都ですから、あながち間違いじゃないです。
>667
「あなたのマインドに影響を与えるおそれがあります。
読み過ぎに注意しましょう」
ガロ・リキュア専売公社
なんだかあっけなく埋まりましたね。みんなスピホリック。
>レスティーナ
その街の笑顔。その街の柔らかな喧噪。そして熱々のヨフアル。
その小さな両肩が、支え支えられ今の街があるのです。ヒトもスピリットもまた同じ。
>オルファ
罪を自覚しないのは罪なのか。オルファが気付いた時きっとそばに誰かいるから。
「おっるふぁちゃ〜ん」 …………。
>アセリア
永久の世界に身を投じ、守り続ける恋女房、流れ続ける「川」の字作り、大地の果てへ親子道
「いま私は戦う意味がある。これからもずっとある」 なんか泣けるぜチキショウ
初書き乙。
>660
想いのこもったお焦げ。容赦なく金タワシにクレンザー。ああウルカのお肌が……ピシピシああひびがっ!
バラバラ 表皮がすべて落ちたそこには! 「よくぞ助けて下さいました。実は私は龍スピリット一族の姫。悪い紅白の魔女に
騙されてこのような姿に」 ひしっっと悠人にすがりつき。勇者とお姫様の大団円。
ブーブー 観客の雑魚スピ連からブーイング。
≪ネリー≫
【ヒューリー】
1.無言。画面効果はサポートスキル
【エーテルシンク】
1.「攻撃のタイミングを見極めて……。いつまでも好き勝手させないんだからっ!!」
2.「マナよ、我に従え。彼の者を包み、深き淵に沈めよ。」
「エーテルシンクッ!」
≪シアー≫
【サイレントフィールド】
1.「こ、これで少しは楽になるのかなぁ。」
「…………なるよね?」
2.「マナよ、我に従え。場を凍てつかせ、静寂となせ。」
「サイレントフィールドッ!!」
≪セリア≫
【サイレントフィールドT】
1.「サイレントフィールドッ!!」
【サイレントフィールドU】
1.「条件は同じ。だけど、動揺が無い分こっちが有利のはず。」
2.「マナよ、我に従え。場を凍てつかせ、静寂となせ。」
「サイレントフィールドッ!!」
≪ヒミカ≫
【フレイムシャワー】
1.「どこにいようと無駄よ。一面を焼き払えば、逃げ場なんてないもの。」
2.「マナよ、炎のつぶてとなれ。雨の如く、彼の者どもに降り注げ。」
「フレイムシャワー!」
【アークフレア】
1.「こんなに強力なのを使わなきゃいけないの?」
「……でも、やるしかないっ!!」
2.「マナよ、炎獄の世界となれ。」
「アークフレア!!」
【アポカリプス】
1.「埒があかないわね……。もっともっと、強い攻撃でいかないと。」
「…………これならっっ!!!」
2.「マナよ、怒りの炎となれ。すべてを灰とせよ!」
「アポカリプスッ!!」
【イグニッション】
1.「まずは一撃を与えること……。主導権を握らないと!!」
2.「マナよ、疾く進め。破壊となりて、彼の者どもを包め。」
「イグニッション!」
【スターダスト】
1.「油断なんてしないわ。わたしは自分に出来る最高をするだけ。」
「食らいなさいっ!」
2.「マナよ、星々の世界へ跳べ。天空の矢で彼の者を貫け!」
「スターダストッ!!」
≪ナナルゥ≫
【ファイアエンチャント】
1.「消沈よ……。私に力を。」
2.「炎よ、我が剣に宿れ!」
「…………いく!」
【ファイアボール】
1.「敵の位置を確認……。」
「いきます。」
2.「マナよ、火球となりて敵を焼き払え。」
「ファイアボール!」
【フレイムレーザー】
1.「……消えて。」
2.「マナよ、炎の槍となって敵を貫け。」
「フレイムレーザー!」
【ヒートフロア】
1.「…………心地よい熱を。」
2.「マナよ、世界を変えよ。炎の色に染まれ。」
「ヒートフロア!」
【インシネレート】
1.「……邪魔なのは、あなた。」
2.「マナよ、力となれ。敵の元へ進み……叩きつぶせ。」
「インシネレート!」
【スターダスト】
1.「逃げようとしても、無駄。」
「星の矢からは逃げられません。」
2.「マナよ、星々の世界へ跳べ。天空の矢で彼の者を貫け!」
「スターダストッ!!」
【インフェルノ】
1.「ここからなら、狙えます。」
2.「マナよ、渦巻く炎となれ。」
「インフェルノ!」
≪ハリオン≫
【ガイアブレス】
1.「がんばりますぅ。みなさんが怪我をしないように……。」
2.「神剣の主ヌシが命じる。マナよ、守りの衣となりて我らを包め。」
「ガイアブレス!」
【ウインドウィスパー】
1.「風よ、守って……。痛いのはイヤなんですぅ。」
2.「神剣の主ヌシが命じる。マナよ守りの力を与えよ。」
「ウインドウィスパー!」
【リヴァイブ】
1.「死んじゃダメですぅ。きっと、まだ間に合うはず……。」
2.「神剣の主ヌシが命じる。マナよ、倒れし者に再び戦う力を与えよ。」
「リヴァイブ!」
【パワーストライク】
1.「さてとぉ……いきますぅ。」
「えぇ〜〜〜いっ!!」
『えぇ〜〜〜いっ!!』
2.「痛かったらごめんなさい。あ、悲鳴はお好きにどうぞ〜。」
『えぇ〜〜〜いっ!!』
≪ニムントール≫
【アースプライヤー】
1.「死んじゃだめ。……寝覚めが悪いし。」
2.「神剣の主アルジが命じる。マナよ、癒しの力となれ。」
「アースプライヤー!」
【ハーヴェスト】
1.「……ふぅ。あまり世話かけさせないで欲しいんだけど。」
2.「神剣の主アルジが命じる。マナよ、癒しの風となれ。」
「ハーベスト!」
≪ファーレーン≫
【星火燎原の太刀】
1.「……あなたが強いからいけないんです。だから、わたしも本気にならないと。」
「はぁぁぁぁぁっっ!!」
『はぁぁっ、星火燎原の太刀ッッ!!』
2.「ただの一撃で突き崩す。これがわたしの力です。」
「はぁぁっ、星火燎原の太刀ッッ!!」
『はぁぁっ、星火燎原の太刀ッッ!!』
【ダークインパクト】
1.「弱点を攻めて、戦いを早く終わらせないと!このままじゃ傷つく人が多すぎるわ。」
2.「神剣よ、我が求めに答えよ。衝撃となりて、彼の者を貫け!」
「ダークインパクト!!」
【カオスインパクト】
1.「抵抗しても無駄……。お願い……もう立ち上がらないで!」
2.「神剣よ、我が求めに答えよ。彼の者を混沌に呑み込め。」
「カオスインパクトッ!!」
【ディバインインパクト」
1.「この力は、何者にも阻めない。当然、あなたにも……。」
2.「神剣よ、我が求めに答えよ。彼の者を阻めぬ衝撃で貫け!」
「ディバインインパクト!!」
【イニシャライズ】
1.「あるがままの世界に。ここに歪ヒズみはいらないのよ。」
2.「神剣よ、我が求めに答えよ。この地に漂うをすべて破棄せよ。」
「イニシャライズ!」
【サクリファイス】
1.「わたしの命の力を……。ニム、みんな……生きてね。」
2.「神剣よ、我が魂を食らえ!すべてを力と変え、皆へと宿れ!」
「サクリファイスッ!!」
【バニシングハイロゥ】
1.「しばらくお眠りなさい。ハイロゥ無しの戦いも久しぶりですけど。」
2.「神剣よ、我が求めに答えよ。別れ身にひとときの安らぎを。」
「バニシングハイロゥ!!」
>670-678
以上雑魚スピ裏スキルセリフ集でした。ヒロインず及びヘリオンは全スキルを覚えるので除外です。
*1 ネリーの【エーテルシンク】、ハリオンの【パワーストライク】はEXでは標準セットされています。
*2 ファーレーンの【イニシャライズ】のセリフ 「この地に漂うをすべて破棄せよ。」 は画面に文字が
表示されません。セリフは流れますがどう聞き取っても上記のように聞こえます。ヘリオンの場合
「この地に漂うすべてを破棄せよ。」です。 おそらくファーが慌ててかんだのでしょうw
*3 実際の効果は有ったり無かったりです。
ナナルゥとか結構怖いこと言ってるような……。セリフが聞きたい人は”SpoilerAL”で探してみて下さい。
その結果PC・アセリアに不具合が生じても責任はとれませんが。
作品別の方がいいかなぁと思うけど雑魚スピ限定だからいいよね? の髪結いのひとでした。
追記 『 』内のセリフは二発目以降のセリフです。
>髪結いのひと
乙といいつつおせっかいながら追加。ネリーのフューリーにもボイスはあります。
出すためには(ピー)なことをしなければなりませんが。方法の分かる人は、中の人の労に報いる意味でも1度は聞いてみるのもあり?
【フューリー】
1.「さっさとこっちを片付けないと!!」
2.「来る……? ううん、こっちが先に決める!」
『たぁぁぁぁぁぁっっ!!』
用法は全く同じです。「たぁぁぁぁぁぁっっ!!」が甲高くていい感じです(?)
さらに、効果の有無。
ネリー:エーテルシンクは、最新パッチ当てないとバニッシャーと同じ効果にしかなりません
サイレントフィールドは、
シアー:追加効果なし、ディバインマジックタイミングのスキルは封じる。
セリア:敵スピリットの使うものと一緒です。
ヒミカ:スターダストはエンドサポート。敵が既に殲滅されてる状態だと、何故かアセリアのエタニティーリムーバーのモーションが3回。
ヒートフロアは無効。他の威力は…まあお笑いです。彼女がかわいそうなので見なかったことにしてあげましょう。
ナナルゥ:ファイアエンチャントは行動回数-1。威力が腐ってる&回数1回なのでほとんど意味ないですが。
ファイアボール、インフェルノ、インシネレート、フレームレーザーは実質無効。
ヒートフロアは青属性up、赤属性down。スターダストは完全に無効。ヒミカの気遣いが効いてるんでしょうか?(違
ハリオン:アタックはExの通り。他は無意味ですが、リヴァイヴのスキルLvが何故か16だったり、ウィンドウィスパーの最大回数が1だったり、謎が多数。
ニム:アースプライヤーの最大回数がやたらと多いですが、回復は何にせよ効果ないのでなんともはや。
ファー:星火燎原の太刀の威力は、属性がないせいもあってしょぼいです。インパクトスキルはヘリオンよりもしょぼい。サクリファイスは40%。
他のサポートは普通に働きます。
もしかしてバイナリいじり? 解析とかそんな技術はありません〜。
ネリーのヒューリ−補完どもです。
細かいお話乙です。ファーのインパクト系が弱っちくてねぇ……効果はあるけどもうちょっと使える威力が欲しいです。
星火燎原も月輪の太刀使う方が強いし。
ヒミカは10ダメがいっぱいですっけ。アークフレアとアポカリのセリフが相反してるのが彼女の心境を映す鏡なのか。
ファーとニムは姉妹そろって魔法駄目。ダークインパクト150って orz
何を言う!
ニムには威力3000のエレメンタルブラストがあるじゃないか!!
……サンダーストームとかよりかなり弱いけど
684 :
憂鬱の人:05/01/23 17:03:59 ID:wxQ7IoAx
まったくもう、裏でこそこそ楽しく遊んでるなんて...
ずるいじゃあーりませんか。ともかく乙です、髪結いさん。
使われていないのに、しっかりキャラが主張されている発動ボイス。謎だ...
裏モードじゃないですがハリオン姉のエレメンタルブラストはボイスどうなってるんでしょうか?
ご存知の方いらっしゃれば教えてください。
追伸:ヒューリーではなく「フ」ューリーですよ、髪結いさん。
素で気づかんかった orz はっΣ(゚д゚) 短編保管庫っ
……雑魚スピ分少々U あう(ノД`)あう 竹竿に訂正請願書挟んでまってます……。
気を取り直して、
セリフ。使う気でいたのでしょうけどキャラの差別化のうえで切られたのでしょうか。
良いセリフが多くて勿体ないですね。ファーのサクリファイスとかナナルゥのインシネレートとか。
そういえば、EXでナナルゥの戦闘セリフって文言は同じだけど新録っぽいです。
悠人のセリフも一新されてます。
EXををやってないと、アセリア本みたいな勿体ねーって怖い夢見ちゃいますのでお早く。
…………あの夢ならみたいぞっ。
≪ハリオン≫
【エレメンタルブラスト】
1.「気は進みませんけどぉ……。でも、やりますぅっ!」
「えぇぇ〜〜〜〜いっっ!!!」
2.「神剣よ力を解き放て。まばゆき光にて、すべての敵をなぎ払え!」
「エレメンタルブラストッッ!!」
対HP効果 100
686 :
憂鬱の人:05/01/23 22:40:21 ID:gA+x2U9j
情報有難うございます。何かスッキリしましたw
EX...実はこないだ入手したんですが、今日子ルートに踏み込むだけの
勇気がなくって、まだインストしてません。情けねー。
雑魚の顔は見たいんですけどね。プレイしたら多分爽やかさんな今日の字は
もう二度と書けなくなりそうで...。ザウススレとか見てても評価が微妙だし。ていうか不評だし。
色んなアセリアSS見てきたけど、今日の字に萌えてる書き手って私以外見たことないし。
さて、どうしたもんかな。...なんか雑談ぽくなってる(汗)
>>685 個人的にはナナルゥの戦闘ボイスは前の方がよかったかな、とか思ってたり。
何かしっくりこないんですよね、EXのナナルゥは。
で、ネリーフューリーのボイスの出し方は…書くとやばいわなぁ…
>>686 個人的にはEXの今日子シナリオ結構好きなんだけどなー。
というか最大の問題は今日子じゃなくて、
悠人から奪い取るみたいなことをマロリガンで言いながら結局なにもしない光陰と
光陰に対して面とむかって謝罪→でも宣戦布告をしない悠人な気がしなくも無い・・・
男陣・・・へたれてないで惚れてんならもう少し何かしろやー
689 :
憂鬱の人:05/01/24 00:01:50 ID:15e6hCVH
>>688 うん...少し、プレイする勇気が出てきました。(←このヘタレが)
せっかく持ってんだからやらないと損ですよね。
おしっ!待ってろよ、ナナルゥ!w
今日が駄目でも明日があるw やってから考えましょう。
*注意 プレイ中顔が崩れる可能性が高いと思われるので周りに人がいる時はプレイを避けましょう。
>687
確かに、なんだか明るいというかね。元の方がぼそぼそとしてたか。
フューリーは……ネリー並みな脳みそレベルなもので (;゚д゚)ゞ
>688
そういわれるとそうですね。ま、全体に女が強い世界ですからね。あのシナリオは好かないけど今日子
に対する私的スタンスに変化はないです。
691 :
憂鬱の人:05/01/24 10:03:46 ID:GwSXQEDL
雑談ついでにもう少し。
無印プレイした時、今日子ルートも妄想したんですが、「今日子は俺のもんだ!」
みたいな光陰・悠人の殴り合いを考えたんですよ。ベタですけどねw
それだけに「紅蓮の剣」のあのシーンが印象的だったというか、溜飲が下がったというか。
紅蓮氏の意図する所だったかどうかはともかくとして。
ちなみに無印で一番泣けたのはアセリアルートの神剣抜きでユート君がスピ達と戦う
シーンだったりします。ヘタレの悪名高い彼ですが、漢だと思ってます、個人的には。
692 :
17:05/01/24 11:19:35 ID:D6wvmsHS
やばいなぁ‥‥
修羅場入っちゃってスレ読んでる暇がない
作業に集中するために最近LANケーブル抜いてたし
本スレ未読70‥‥しかも時間かかりそうなところだorz
個人的にはEXの2人のシナリオは無かったことにして欲しいひとだったりするw
危険な発言をしていく17であった
週末にはラクになっている‥‥はず‥‥
ああ、本当に疲れてる
素でスレ間違えた‥‥
進行中の現スレじゃなくてよかったorz
694 :
憂鬱の人:05/01/24 12:26:06 ID:GwSXQEDL
あああ、雑談のスフィアハイロゥをふり撒いてしまった...
すみません、17氏。お互いに早くここが沈む事を祈りましょう。
佳織ルート。
ユートはそれはそれは大変な思いをして帝国に辿り着きました。
そしてようやく瞬を倒したのです。
佳織と感動の再開。ひし、と抱き合います。
r‐-- -┐
/ /゙・ 皿・_ヽ<アノオンナノニオイガスル……
レ'´从リ从!〉
l从○_○从
(リ(つと)
く/_|〉
(_ノヽ)
……やばいです。佳織が何かに目覚めました。
弓形の永遠神剣を召喚しています。
r‐-- -┐
/ /゙・ 皿・_ヽ<おにいちゃんどいて! そいつ殺せない!!
レ'´从リ从!〉
l从◎_◎从
(リ(つと)
く/_|〉
(_ノヽ)
待て佳織うわなにをするやmr
〜GAMEOVER〜
| ̄ ヽ
|」」 L.!
|゚ -゚ノ| ・・・
|とl)
,べV
/ 〃  ̄ ヾ;
! i ミ(ノハソ
!ik(i|゚ ヮ゚ハ 。・゚・⌒) チャーハン作るよ!!
リ⊂! |T|!つ━ヽニニフ))
く/|_|〉
(フフ
__
「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l||;゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
699 :
埋め:
「ここも、誰もいなくなってしまいましたね」
かつて多くの人がいた世界に、時深はひとりたたずんでいた。
その人達も今や、新天地で楽しく過ごしている。
「……いつかはここも完全に忘れ去られ、無かった事になってしまうのでしょうか」
思わず口から出た自らの言葉に、いや、と時深はかぶりを振った。
時を改竄してなお『求め』のカケラを持ち続けていた佳織を思い出す。
人は前に向かい、進み続ける。
時が経てば、忘れてしまう事もあるだろう。
でも、それでいい。
例え人の記憶から忘れられたとしても、人の魂に何かは残る。
過ごした日々の積み重ねが、間違い無くその人を形作っているのだから。
自然に浮かぶ笑み。
「さて、私も行きましょうか」
未来に何が待っているのか、未来視の目をもってしてもはっきりとは判らない。
だから、積み重ねた過去の上に、未来に向かって、今を精一杯に生きる。
未来を見ても、過去を思い出しても、出来る事は結局今に帰結するのだ。
時深はすっと背筋を伸ばし、迷いの無い足取りで歩き出した。
永遠に続く道を、一歩ずつ。