永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 8

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1名無しさん@初回限定

「永遠のアセリア」発売から早や一周年。
それでもなお色あせる事のない妄想と願望が、メインキャラから
雑魚スピたち、果ては憎っくき敵エターナルまでをも補完してゆく。
降り立った者達を次々と呑み込み、混沌の世界へといざなうここは
アセリアネタ総合&雑魚スピ分補充スレッド。

前スレ:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 7
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1099178827/
発売元:Xuse公式サイト(『永遠のアセリア』は【本醸造】より)
http://www.xuse.co.jp/

外部板:雑魚スピスレ画像補完庫(画像掲示板、SS保管庫併設)
http://etranger.s66.xrea.com/
外部板:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド避難所 2
http://www.miscspirits.net/Aselia/test/read.cgi/refuge/1099180045/
過去スレ、関連スレは>>2以降に
2名無しさん@初回限定:04/11/28 23:40:37 ID:Uo0pT7o+

過去スレ
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 6
http://etranger.s66.xrea.com/past/past6.htm
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 5
http://etranger.s66.xrea.com/past/past5.htm
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 4
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1091602820/
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 3
http://etranger.s66.xrea.com/past/past3.htm
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 2
http://etranger.s66.xrea.com/past/past2.htm
永遠のアセリア・雑魚スピ分補充スレッド
http://etranger.s66.xrea.com/past/past1.htm

関連スレ
エロゲー板:Xuse(ザウス)総合30
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1101484734/
エロゲ作品別板:永遠のアセリア 第二章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1097371492/
ギャルゲー板:永遠のアセリア-The Spirit of EternitySword-(仮
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1092327160/
3名無しさん@初回限定:04/11/28 23:43:34 ID:Uo0pT7o+
____      ________               _______
|書き込む| 名前:|            | E-mail(省略可): |sage       |
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                                        ,ィ
                         ,べV       //
ネリーみたいなクールな女には      / 〃  ̄ ヾ;  / ./
    sage進行がぴったりよね〜    ! i ミ(ノハソ / /./
                           !ik(i|゚ ヮ゚ハ<///
                            リ⊂}!廿i つベ/
                               く/Цレ'
                             し'ノ

4名無しさん@初回限定:04/11/28 23:46:32 ID:Uo0pT7o+

   " タイムアクセラレイト
     ´∴     #   __        ゜ヾ´      ″´∴
             「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
          __くi イノノハ))≡―=',(((      )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
        , ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒)  _/ / ̄ =―≡―   _
      ´∴'≡く / ∧   | y'⌒  ⌒ ヽ イノノハ))(  ≡―=‥、,、
     ″″    \/〈(((ノ从|  /    | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
     "        ||( ゚ヮ゚ー' |   |ヾノ   //
             =―≡ ̄`:, | ,  | ( ̄=―≒‥,,
  "       ,゛"=―≡―=',/  ノ )∵`=≡―=
            ″( ゚ヮ゚∴/´/ / |  | , ゚ヮ゚ノ'ゞ    ∵゛、 ゜  ¨
  ヾ       =―≡ ̄`:゛/ / \|  |≡―=‥、,、   ヾ
      ,゛"=―≡―='(  |  (  |=―≡―∞=@   , 、∴
               /  |  |  |\ \  ´ ∴  ヾ             .
  ・            / / |  |   | ヽ/⌒〉
     .... .  ............ . .(_  「 _) (_〈_/....... .  .. .  .... . . .

     __
  「,'´r==ミ、
  くi イノノハ)))
   | l|| ゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
   j /ヽ y_7っ=
  (7i__ノ卯!
    く/_|_リ

5名無しさん@初回限定:04/11/28 23:52:29 ID:Uo0pT7o+

それでは発売一周年点呼いきます。

怪我しないように頑張りましょうね♪ ファーレーンヽ(`Д´)ノ<1>
6名無しさん@初回限定:04/11/29 00:01:02 ID:mSf3/qXJ
とりあえず投稿するのは点呼が落ち着いてから、と

セリア〜、彼女は誰にも渡さないヨ……私にもヽ(`Д´)ノ <2>
7名無しさん@初回限定:04/11/29 00:03:47 ID:6R+8xfy5
>1さん乙です。

ほ〜らほら、怖いでしょ?……あ、なんか気分いいかも♪ ヘリオンヽ(`Д´)ノ<3>
8名無しさん@初回限定:04/11/29 00:11:27 ID:K5GAKD1v
ニムを下さい。
できればファーレーンとセットで。<4>

あ、>>1さん乙です。
9名無しさん@初回限定:04/11/29 00:12:18 ID:5RsxpkQj
あらあら〜えと、新スレですか〜〜?ハリオン<4>
10:04/11/29 00:16:42 ID:5RsxpkQj
しまった、被ってしまいました申し訳ない。
11名無しさん@初回限定:04/11/29 00:28:18 ID:jT0nCeqw
>>1さん乙です。
イオ下さい。でも最近小鳥も好きです。<6>
「二股なんですね?ハーレムなんですね?あーでもでも、ユート先輩なら
2号さんでもいいかも・・・(以下マシンガントーク)
・・・小鳥ルートなんぞを妄想した、イオルートを書く冬の夜。
12『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:31:18 ID:mSf3/qXJ
体を揺さぶる一定リズムの心地よい振動。
前か後ろへ……絶え間なくいかにも田舎といった平凡な景色が流れていく。
閉め切った窓からは外の世界の冷え切った空気は入ってこない。
遠くに見える山々は紅く染まり、まるで燃えているかのような紅葉を示し、景色の中に浮かぶ人影も心持ち厚着だ。
それらの景色を感慨深げに、そして若干の悲哀を込めた眼でただ見つめていた。

何分そうしていたのか、ふと視線を感じて向かい合った前の座席に目を向ける。
古ぼけた木を組み合わせてその上に硬いマットを敷いた簡素な座席。
けれど、そこには何も無い。

………いや、一つだけあった。

こちらを見つめるように深緑のシートの上にポツンと置かれた小さな"雪だるま"が。
車内の温度のせいか、若干頭が溶けかけグロ画像のような有様。
触れれば今にも溶けて崩れ落ちてしまいそうな"雪だるま"をそっと包み込むように抱え上げると
空いていた自分の座席の隣へとそっと下ろす。
……どこか"雪だるま"が寂しそうにしていたからだ。

今、この列車は深く、遠い世界へと向かっている。
今いる世界よりももっと寒く、厳しく、悲しい世界へと。

ギュッと皮の擦れる音に我に返る。
知らず知らずのうちに皮手袋を嵌めた手を強く握り締めていたようだ。
小さく、苦笑いをするとまた窓の外の風景へと意識を向ける。
なんら代わり映えのしない風景、ただその中で自分だけが異世界の住人のような気がする。
列車はカーブに差し掛かり……列車の前方には黒々としたトンネルが口を開けていた。
煙を吐き出す機関部が初めに吸い込まれ、二列目、三列目。
13『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:32:05 ID:mSf3/qXJ
………やがて、列車がすっぽりとトンネルに入りきってしまうと窓には自分の顔しか映らなくなる。
暗闇の中でうつる亡霊、痩せこけて、死人のような顔がじっとこちらを見つめていた。
車内に漂うのは通夜のような雰囲気、どの席の客も全員俯いて死人のよう。
幾刻の時間が流れたのか……、長い長い時間だったようで短い時間だったようで。
ただ、隣の座席に鎮座していた"雪だるま"はすっかり水溜りに変わっていた。

やがて、列車の前方に光が見えてくる。
暗闇のトンネルを照らし出すように、徐々に近づく光に眩しそうに目を細めた。

―――時は"冬"、トンネルを抜ければそこは―――

「くそっ!!弾切れか!」
「アパーーーム!!弾だ!弾を持って来い!」

全裸のマッチョな男達が闊歩し、噴煙と硝煙の煙が風に流れ―――
「見ろ!装甲列車が到着したぞ!マッチョな援軍だ!」
ウオォォォォォォ!と地響きのような雄叫びが上がった。
「いくぞ!!野郎ども!!」
さっきまで死人のような顔をしていた男達が居場所を見つけたような活き活きとした表情で次々と飛び出していく、全裸で。
時は第三次マッチョ大戦の真っ只中だったのだ。

―――トンネルを抜ければ、そこは"戦場"でした―――

14『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:33:17 ID:mSf3/qXJ
「っ!!!」
暴れ狂う心臓、声に鳴らない悲鳴が口から漏れる。
それに伴う意識の浮上、多少血走った目で辺りを見渡せば、何の変哲もない古びた岩肌と雑草達。
全身から噴出した嫌な汗のせいでピッタリと肌に張り付いた肌着が気持ち悪い。
額に浮かんだ冷や汗を服の袖で拭うと、安心したように一息ついた。

「夢……?悪夢だわ……」
全裸でマッチョな男達の汁が飛び交う汗臭い闘いを延々と見せられるのは悪夢以外の何者でもない。
少し脅えた目でもう一度確認するように辺りを見渡した。
やっぱり、視界に入ってくるのは古びた岩肌と申し訳程度に生えた雑草の数々。
ただ、夢のせいか、壁に『マッチョな雄姿を称え、ここに……』とか書いてあるように見える。

………何も言わずに神剣でその部分だけ削り落とした。

とにかく、眠るには少々イタダケナイ環境であるのは確かだが贅沢を言える状況でもない。
何せ、今は闘いの真っ只中なのだから。……決して全裸でマッチョではない。
……『BR』開始から約半日。
まだ、特に戦闘らしい戦闘も起こっていない。皆、混乱してどうしていいか分からないのだろう。
だから、その間に休息を取ってこれからの戦いに備える。
そう考えて、散策中に見つけた洞窟で睡眠をとっていたのだが夢見は最悪だった。………ちょっと後悔。

「ごほんっ……まあ、いいわ。」

誤魔化しがてら、大きく背伸びをすると、一度強く頬を叩き眠気を飛ばす。
寝る際は邪魔だから、と下ろしていた美しい空色の髪も頭の後ろでしっかりと一つに束ねた。

15『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:35:52 ID:mSf3/qXJ
次に、洞窟の入り口付近まで静かに近づき、張り巡らされたトラップを確認する。
(作動した形跡は……ないわね)
確認を終えると今度は一つ一つ慎重に外し、回収していく。貴重な罠だ、無駄には出来ない。
あらかた回収し終えると特に危険性の無い二、三個のトラップを残し、洞窟へと戻る。
今度は隠しておいた麻袋を取り出し、中身の再確認を始める。
少なく見積もって二日間ほどは持つと思われる簡易食料の数々、それに数は少ないが種類は豊富な生活必需品、そして……一冊の本。
これが、自分の当たった『戦略性の』武器らしい。
表紙にでかでかと描かれた題名は

『0歳児でも出来る簡単トラップ講座(悪用するなよ☆)』

……とりあえず一回岩肌に叩き付けたのは秘密。
ただ、読んでみれば意外と役立つのは確かだったりもする。
元々スピリット同士の戦いは相手を見つけたらひたすら力でのゴリ押し対決になるのが普通だ。
故に、言い方は悪いがこういう姑息な方法にはスピリットは基本的に免疫がない。

「戦略的に見たら使えるわよね……」
とりあえず袋に入れなおし、麻袋の口を紐で縛りなおす。
準備は万端、右手には神剣、左手には支給された麻袋、背中には純白のウィングハイロゥ。
完全武装でいつでも戦闘出来るような態勢で洞窟の外へと足を踏み出した。
広がる世界は僅かに翳った夕暮れ時。森たちも徐々に光ある姿から夜の姿へと変わりつつある。
瞬時に戦闘態勢に入ると、ゆっくりと足を踏み出し―――足元でカランカランと乾いた音。
視線を向ければ、危険防止の為に自分で仕掛けた音が鳴るだけの簡単なブービートラップ。
………問答無用で叩き切る、と同時に駆け出した。
照れなのか走り抜ける顔は少し赤い、お茶目なセリアでした。
16『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:36:39 ID:mSf3/qXJ
半日、それは戦闘訓練を受け続けてきたスピリット達に取っては心を落ち着けるには十分な時間だ。
もとより、この闘いを終わらせる方法は示されているのだから。

――――そう、自分以外の全てを倒せ、と――――

セリアが洞窟から駆け出したその瞬間に、もうすでに一組の闘いが始まっていた……。

緩やかに流れる清流の青と涼しさを際立たせるような森の緑、二つの色が規則正しく混同する空間に異質な色が混ざりこんでいる。
―――それは、燃えるような紅だ。
ちょうど、幅2m程度の川を挟んで睨み合うように存在している。
得物から、着ている服、持っている荷物まで鏡に映したように一緒だが、唯一髪の長さだけが違った。
川のこちら側にいるのが短髪赤毛の少女だとすると、向こう岸にいるのは長髪赤毛の少女だ。
両者共に時間が止まったかのように一歩も動かない。
ただ、まだハイロゥを展開していないことから今すぐに戦うというわけではなさそうだ。

「ナ、ナナルゥ……こんなところで会うなんて奇遇ね」

初めに口を開いたのは短髪の少女、ちょっと動揺しているヒミカ嬢。
「……そうですね」答えるナナルゥは相変わらずちょっと暗い。
それっきり会話は続かない。……仕方のないことではあるが。
二人がこの小川に足を運んだ理由は明白だ、ようするに飲み水の確保である。
麻袋には食料は入ってはいたが、飲み水となるようなものは一切入っていなかったのである。
やはり、長期戦となることを想定すれば飲み水の確保は絶対なのであった。
17『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:38:26 ID:mSf3/qXJ
「ね、、ねぇナナルゥ、ここは一旦休戦にして―――」
「お断りします」
チャキ、と自らの神剣『消沈』を捧げる様に水平に構えるナナルゥ。その目は本気だった。
「でもね、ほら、お互い水を汲みに―――」
「関係ありません」
「はぁ」と小さく溜息をつくとこちらは下段、腰だめに構えるヒミカ。
「仲間同士で戦うなんてね……でも、一度貴女とは戦ってみたかったし」
「奇遇……ですね、私もです。レッドスピリットなのに剣を使う貴女と……」
二人は不適に笑いあう。と、ナナルゥがヒミカへと問いかけた。

「一つ、聞いてもいいですか?」
「……何?」怪訝そうな顔で答えるヒミカ。
「どうして、神剣魔法を使わないのですか?」
ギクリッとヒミカの顔が強張る、微妙に引きつって面白い顔に……。
「し……失礼ね、ちゃんと使っているじゃない」
「……そうですね」
「うっ……」若干の呆れを込めた視線にたじろぐヒミカ。
確かに戦闘時に使っていることは使っているが威力が全く伴っていない。
目くらましぐらいにしか用途が無い神剣魔法というのもかなり珍しいとは思う。
「悪かったわね……目くらまし程度の威力で」
「そうですね」あまりに正直すぎるナナルゥにガクリと肩から崩れ落ちる。
「うう……まあ、いいわ。ホントの事だし……私、神剣の声が聞こえづらいのよ」
やがて、諦めたかのようにポツリとヒミカが呟いた。
ただ、それはどこか懺悔をするかのような響きを伴ってナナルゥの耳に届く。
「聞こえづらい?」
「そう……完全に聞こえないわけじゃないんだけど、何を言ってるのか分からないの」

18名無しさん@初回限定:04/11/29 00:41:19 ID:Ah+ReTNV
レスティーナ様に荒らされた城の厨房の片付けなどしつつ、支援<7>
19『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:42:20 ID:mSf3/qXJ

と言っても分からないわよね、と苦笑しながら付け加える。

神剣魔法とはその名の通り、神剣からマナを引き出し、その膨大なマナを具現化させ事象に変化をもたらすのである。
神剣からマナを引き出す性質上、神剣の声、ようするに支配力にも耳を傾けなければ一個師団を丸々葬るような威力など得られない。

「いつからかは忘れたけどね。たぶん、私自身が神剣を怖がって否定していたからだと思うわ」

だが、ヒミカはそれを拒否した。神剣魔法は強力である分、使えば使うほど神剣に呑まれていく。
その、いい例がナナルゥだ。神剣の声が聞こえなくなれば神剣に呑まれる可能性は少なくなるが、神剣魔法すら使うことができなくなる。
ヒミカの場合は神剣から僅かにマナを引き出し、そして自らの内のマナ、周りのマナを混合して使っていたのだ。
だが、それでは到底、敵を葬るなどという威力など得られるはずもなかった。
「………………」
「ほら、貴女は前に神剣に呑まれかけてたじゃない……、私も神剣に頼りすぎるとあんなになるのかな、と思うとどうしようもなくなって。」
それから、神剣魔法を使わないようにしていたら聞こえなくってた、とヒミカは語る。
ナナルゥは聞こえてくる神剣の声に忠実だった、ヒミカは神剣の声に耳を塞いでいただけ。
たったそれだけの違い、それだけの違いが全く正反対の二人のスピリットを生み出した。
「ま、そのお陰で剣技は上達したけど……つまらないこと話ちゃったわね」
「いえ……、良く分かりました。」

お互いに見つめあう、話は終わり、後に残されたのは生き残る為の闘い。

そして、展開される互いのハイロゥ。
一気に場の空気が張り詰め、一触即発の雰囲気を呈してきた。
20『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:43:11 ID:mSf3/qXJ

「じゃあ、ナナルゥ、手加減なしだか―――……え?」

唐突にヒミカの言葉が途切れる。驚愕に見開かれた視線はナナルゥ―――の後ろ。
別に誰かがいたというわけではない、ナナルゥのハイロゥがそこには展開されているだけだ。
先日、ようやく自我に復帰の兆しが見え、今や純白になったナナルゥのハイロゥ。
それ自体はなんら問題はない、問題はないのだが――――

「……折角ですから、お見せしようかと」
昔では考えられない、口の端を吊り上げるだけの小悪魔的な微笑を浮かべ、ナナルゥが呟いた。
そう、そこにあったのは―――大きく翼を広げた純白のウィングハイロゥだった。

「……ウィング……ハイロゥ?」
茫然自失、空気が足りない金魚のように口をパクパク開閉させているヒミカ。
対するナナルゥは完全な無表情、ふわりと一度の羽ばたきで僅かながら宙に浮かぶ。
ヒミカの周囲に展開されたスフィアハイロゥ、ナナルゥの後ろに展開されたウィングハイロゥ。
それは本来、有り得ない光景である。
だが、完全に有り得ないことか、と問われるとそうではない。
もともとハイロゥと言うのは決まった形を持たない、それぞれの色のスピリットに割り振られてようやく形を持つのである。ようするに一は全、全は一である。
そういうわけで訓練さえ積み重ねれば、ブルースピリットがシールドハイロゥを展開したり、レッドスピリットがウィングハイロゥを展開させることが出来るのである。
これは、より神剣との融和が進んだ自我の薄いスピリットほど成功する可能性が高くなる。

―――トンっ、と軽く地面を蹴る音。

21『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:45:04 ID:mSf3/qXJ

「ちょ……っ!」

ようやく頭の整理が追いついたヒミカが声を掛けるが、翼を広げたナナルゥは舞い上がる。
既に十分使いこなしているのか、決して低くはない木々を追い抜き、生い茂る緑の葉の向こう、広がる夕焼けの紅い空へと……。
声を掛けた一瞬、こちらをチラリと見据えた瞳には―――
「追ってこい……ってわけね」
『赤光』を握り締め、チラリと周囲に視線を走らせる。

―――このまま、何もなかったことにして水を汲み、次の戦闘に備えればいい。
―――無駄な戦闘をして消耗する必要は無い。

これが正しい選択だ、正しい選択なのだが……。

「どうにも……プライドが許さないのよね」

地を蹴り、駆けた。一跳びで眼前に広がる小川を飛び越え、竜の胴ほどもある木の幹を蹴りつけ、飛び上がる。
尤も、一蹴りで到底、空まで届くはずが無い。そんなに低い木々ではないのだ。
「ふざ―――」メキリと硬い幹に罅割れが奔る。思い切り蹴りつけ、その反動で対角線上にある別の木へ。
「けん―――」体を縮め、バネの要領で思い切り蹴りつけた。元々、大した太さもなかった木のせいか、蹴りつけると同時に致命的な音が響く。
が、それようも早く、まるで舞い上がるように飛び上がる。眼前には無数に張り巡らされた枝々、その向こうに広がる緑の壁。
「じゃ―――」既に体は地上から数十m、計算では後一蹴りでこの緑の空間を抜ける。
最後に体を反転、先程蹴り付けた木の幹にしゃがむように張り付き―――軽く蹴り付けた。
「―――ないわよ!」あっと言う間に迫ってくる緑の壁。
22『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:47:34 ID:mSf3/qXJ
それを冷静な目で見つめ……神剣を振るった。
一振り、二振り、振る度に神剣から纏わりつくような炎が舞う。削られて磨耗していく緑の壁。
削られた欠片は、全て火の粉となり地上へと降り注ぐ。
地上より遥か数十m、緋色の煌きに彩られて舞うように進むその姿はまさに炎の妖精。
が、唐突にそれは終わりを迎える。磨耗し切った緑の壁が大きく穴を開ける。
そのぽっかりと空いた穴へと火の粉を散らせながら潜り抜けていく炎の妖精。

――――その先に広がるのは『彼女』と『彼女』の戦場。

「ナナル――――っ!?」

沈みかけた太陽に焼かれた空、遠くに見えるリクディウス山脈を背に緋色の影が浮かんでいた。
大きく広げた純白の翼、突き出された左手を基点に『彼女』の前方に何重と重なって浮かび上がる幾何学文様。
背筋に悪寒が走り抜ける、それは美しくも恐ろしい魔方陣……。


――――――アポカリプス――――――


無表情に影は確かにそう呟いた。

まずい、と思う時間も、防御体制を取る時間すらもなかった。
それは一瞬の出来事、浮かびあがった魔方陣が一瞬膨張するのと同時に天から降り注ぐ一筋の紅い閃光。
それは寸分違わず、ヒミカの体を飲み込み、そのまま地面へと吸い込まれるように落ちてゆく。
「―――――――」一拍遅れて響く爆発音。
それを無表情で見つめるナナルゥ。一切を消滅させ、大地には半球体状の黒い穴。
手加減は一切なし、人間の軍隊なら一個師団丸々葬れる威力だ。
23『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:48:56 ID:mSf3/qXJ

「…………私の勝ち、ですか」

もう一度、辺りを確認。動くものは―――なし。神剣の気配も感じられない。
小さく息を吐き出すと、軽く左手を握ったり開いたり。指先が僅かに震えている。
……体力の消費も激しいが、精神の消費がもっとも激しい。
背中に広げたウィングハイロゥ、これを維持するのだけでもかなりの意志の力を使う。
それに併用して特大級の神剣魔法、一度堕ちた身としては神剣から流れてくる囁きは甘く、甘美なものであった。

それこそもう一度身を任せたくなるような―――。

ゾクリ、と背筋に震えが奔る。絶頂を迎えるかのような震え、破壊という名の媚薬。
息は荒く、唇を舐める舌は艶かしく、瞳は妖しい光を放っていた。

もう一度、もう一度あの感覚を……。
知らず知らずのうちに口は式を紡ぎ、左手からは幾何学文様の魔方陣。
理性は先程から警告を出しているが、どうにも頭が働かない。
式が終わり、最早、自分のものではない口が言葉を呟く。

「ふふ……人がゴミのようだ……」

空が煌き、一筋の閃光が森へと吸い込まれる。
ム○カ様のご光臨であった……。
24『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:50:04 ID:mSf3/qXJ
さて、少しだけ時間を遡り、洞窟から駆け出したセリアはというと……。

「こら、ヘリオン!逃げないの!」

――――ドタバタ、ドタバタ。
森の真っ只中、小屋と言うにはオンボロで、廃墟と言うには小奇麗な小さな家屋から慌てた声と暴れる音が聞こえてくる。

――――ドタバタ、ドタバタ……ドテッ。

窓から覗いてみれば鼻を抑えて涙目になっている『失望』のヘリオンと、その上に覆いかぶさっている『熱病』のセリア……ちょっと目が妖しい。

「はう……痛いです〜」ぽよぽよと頭の上で二括りにされた髪が揺れる。
「逃げるからでしょ……まったく」セリアが小さく溜息をつく。
ヘリオンの体がピクリと震えた。ちょうど吐いた息が耳に当たったせいだ。
「そ……そりゃ、逃げますよ〜!今は、敵同士なんですからね!」
「確かにそうね――――って、こら暴れないの!」
ドタバタドタバタ、なんとか拘束を振りほどいて逃げようとするヘリオン。

「――――ふあんっ!」

と、唐突に甘い声と共にヘリオンの体が震えた。
見れば、ヘリオンの耳たぶを甘噛みしているセリアの姿が……。

「ちょ……ン……何するんですか!セリアさん!」

自分の口から漏れた艶かしい声に顔を真っ赤に染めながらも抗議の声を上げるヘリオン。
25『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:50:34 ID:mSf3/qXJ
「さあ、ね……それより、ヘリオン……貴女―――」
肝心のセリアはどこ吹く風、チラリと視線を足元に向ける。
そこには先程こけた際に捲れ上がったスカートと丸見えになった―――

「―――いつから黒にしたの……?」

ボッ、と音すら立ちそうな勢いでヘリオンの顔がさらに真っ赤に染まる。
その隙にするりと手を足の方に潜り込ませる。

すべすべした肌にこれまたすべすべした艶のある材質、案外白より黒の方が……。

「って、ちょ……何触ってるんですかぁー!」
またも暴れ始めるヘリオン、羞恥の為か最早全身真っ赤っか。
「貴女、確かいつも白だったと思ったけど……ほら、理由を言わないと――――」
「ふあ……ちょ……言います!言いますから!」
労わるように太ももを撫でていたセリアの手が足の付け根に向かいそうになるのを必死で押しとどめるヘリオン嬢。
ようやく、止まった手に安心からか大きく溜息をつく。
「はう〜……セリアさん……女の子同士なんですよ?」
ジト目で訴えてみるが「ええ、それが?」と簡単に返されてしまった。
気力をなくし突っ伏したヘリオン、とその一瞬出来た隙に素早くヘリオンの上着を捲り上げる。
「え―――きゃっ!」可愛い悲鳴が聞こえた頃には既に白い素肌、小振りな胸とそれを覆う黒の下着が外気に晒されていた。

「下も黒だと……やっぱり上も黒なのね……」確認するようなセリアの声。

最早諦めたのか「……ひどいです」とヘリオンは一言呟くとがっくりと項垂れた。

26名無しさん@初回限定:04/11/29 00:53:05 ID:3hrcvBdp
支援&ヒミカゲット<8>
27『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:57:54 ID:mSf3/qXJ

「で……これが、貴女の袋に入ってた戦略性の武器ってことね」

ガバッ!と驚いたように顔を上げるヘリオン、実際に驚いているが。
「なっななな」二の句が告げなくなっているヘリオンに対してセリアは呆れ顔だ。
「なんで……って、そりゃ分かるわよ。大方、水辺で足を滑らせて落ちたんでしょ?
 貴女の服生乾きだからね。さすがに濡れたままの下着を履く気にはなれなかったから代わりを探していたら袋の中にこれがあった。」

そんなところでしょ、セリアの推理は驚き顔でコクコクと頷くヘリオンが肯定していた。

確かにまあ、戦略性の武器だろう。女性ばかりの戦いでなければ……。
「はぁ……ただの悪戯で済まそうかと思ったんだけど」一人例外っぽいのを除いて。
「え……ええ!?」何が何やら分からず慌てるヘリオン、それを舌なめずりして見つめるセリア。

「貴女が……悪いんだからね?」

今、まさに禁断の花園が展開されようとしたその瞬間、紅の閃光が辺りを包みこむ。
音もなければ熱さもない、が絶望的な危機感が身体を支配する。
このまま、ここにいてはいけない。そう、今まで自分を支えてきた勘が告げている。
「―――――っ!」
咄嗟に野外に飛び出し、地面を転がる。美しい青い髪が宙に散らばる。
閃光に一拍遅れてきた爆音と衝撃波にオンボロだった小屋はあっという間に瓦礫の山になった。
28『The Spirit BR』 chapter.4:04/11/29 00:59:07 ID:mSf3/qXJ

「っ!危ないわね……一体誰―――あっ」

慌てて小屋に視線を向ける、そこにはただの瓦礫の山があるだけ。
ちょっと辺りを見回してみる。姿は無い、目立ちそうなツインテールもない。
ということは……「ヘリオンっ!?」急いで小屋に駆け寄ると瓦礫をどけ始める。
ほどなくして瓦礫の下から見覚えのあるツインテールが出土する。
ほっと溜息をつくとそれを掴んで一気に引き抜いた。……扱いが雑です。
陶器のように白い肌、もう片方のツインテールも続いて出土する。
「うきゅ〜」目を廻してすっかり気絶しているヘリオン、微妙に半裸のままで。
そっとヘリオンを地面に横たえると服を直そう―――として辞めた。

このまま転送されるのも面白いかもしれない、悪魔の微笑を浮かべるセリア。

徐々に金色の霧へと変わっていくヘリオン。やがて、最後の一粒が虚空へと弾けた。

「さて――――」

屈んでいた腰をあげるとじっと空を見上げた。
冷たい、絶対零度の瞳が見つめる先には夕暮れの空に浮かぶ緋色の影。

「邪魔をされたお詫び……させてもらおうかしら」

氷の女王と灼熱の妖精、果たして勝利の女神はどちらに微笑むのやら……。
それは、神のみぞ知ると言った所か。

                             【残り10人?】
Chapter.4 End
29風変わり:04/11/29 00:59:59 ID:mSf3/qXJ
はい、というわけで一ヶ月振り?ですか。Chapter4のお目見えとなりました……。
終わりません、終わりませんね……自分でもいつ終わるのかちょっと不安になってきました。

最近、よく設定資料集を読んでみるのですが色々と予想外の設定を見つけてしまうと
どうしても使いたくなってくるのですヨ……そのせいでどんどん長くorz
それにしても前スレは実にSSラッシュでしたね(*´Д`)
新たな職人さんも増殖し、長編、短編ともに盛り上がり……全盛期以来なような。
人間の妄想っていうのは限りがないものなのですねぇ……うわ何をするやめあqwsでrftgふじこlp;@p

キャラが勝手に動くってどういうことか最近少しわかってきた風変わりでした。

#支援して下さった方々、感謝です……途中で支援されても連投規制されていたという離れ業が発動しましたがorz
30名無しさん@初回限定:04/11/29 01:27:08 ID:XtK09ko8

>>29 風変わりさん
お疲れ様です〜。
当然リアルタイムで拝読させて頂いた訳ですが、全裸男で眠気が吹っ飛びました。
さすがセリア、寝る洞窟も一味違いますw
ナナルゥは容赦ないわ(というかいい感じに壊れてるわ)ヘリオンは微妙にアダルトになってるわで
もう大満足です。
でもやっぱりオイシイところはセリアが持っていくんですね。「いつから黒に」の下り、大爆笑でした。
という訳でどんどん長期化希望してます。セリアがドロップアウトしないように祈りながらw
>前スレ
 楽しみなSSがどんどん増えてきて個人的には理想的なロムスレになったようなw
 やっぱり書くより読む方が楽しいかも。いえ、書くのも楽しいんですが(汗
31名無しさん@初回限定:04/11/29 02:14:14 ID:nv1YXt/O
>風変わり様
お疲れ様です。マッチョ…兄貴!兄貴!(ぉ

ナナルゥ→ム○カ様に笑いました。
ヒミカ→南無〜
ヘリオン→言うこと無いッス!戻って来たところを頂いて…じょ、じょおだんですよぉ〜○|_Γ
セリア→禁断に突入してく…グギャァァァ〜(天罰!


早く原稿を描き上げないと…(前回レス時から殆ど進まず
今から睡眠時間を削りつつ頑張ってきます


あ、ついでに点呼を…
ヘリオンたんを貰っていきますね。
32名無しさん@初回限定:04/11/29 02:26:51 ID:zdEoHdhV
ファーレーンはもらった。<10>
そして>>1さん乙。

>>29
乙です〜。GJ!
いきなりマッチョがくるとは流石に思わなかった・・・w
でも個人的にはそんな夢を見るセリア自身の方が気になったり。
そして大穴(と勝手に思ってた)のヘリオンとヒミカが早速脱落。
いや、ヒミカは実はこっそり生き残ってるかも。
セリアは普通に百合入ってるし、ナナルゥはムスカ入ってるし。
一体誰が勝ち残るのか?勝ち残った果てにあるものは?
戦わなければ生き残れない!(それはBRとは別ものです)
33名無しさん@初回限定:04/11/29 05:08:44 ID:mENO8xZA
>>1
乙ューリー

えーと、点呼は… もきゅもきゅシアーたん<11>

>>29
こちらさんも乙です〜。
最初何かと思いました(w
ヒミカさんは順当に脱落なのか、はたまた…気になるところです。
このセリアさんにトラップの組み合わせは…き、危険だっ!
ということで、セリアさん@BRに二つ名もとい称号を進呈してみる。
  百 合 の 狩 人
あ、ちょっ、セリアさん!?
やだなぁ、ちょっとした冗d あぁぁぁ(←足元に開いた穴へ消えて逝く)
34名無しさん@初回限定:04/11/29 06:30:10 ID:rQP7OEVr
こ、これはッ!!風変わりの兄ィ、支援に間に合わず申し訳ない!!
今回も冒頭から笑いっ放しですわ。
大体前回分の悠人の「この国はすっかり...」で完全に腹筋が緩んでます。
いるんだよなあ、一年位しか住んでないくせに国家批判するガイジンって。
今回も冒頭から笑いっ放しです。全くなにがアパームだよ...w
それにしてもいつにも増してディテール描写が丁寧ですねえ。
ナナルゥのウィングハイロゥ、やられました。私もサルヴェージではかなり悩んだんですよ。
確か無印で悠人の童貞奪った赤スピは翼持ってたよなあ...とか。
セリアの百合も気になりますが、ナナルゥ(ウィング付き)遠慮なく貰って逝きます。
35名無しさん@初回限定:04/11/29 06:40:08 ID:scq6C8Lp
ちょっと笑い過ぎてますね↑
多分笑い過ぎたせいです。

1さん、乙です! ←これも言い忘れてるし。
36名無しさん@初回限定:04/11/29 14:06:43 ID:7GgdsHff
半日出遅れた‥‥
1さん乙です

で、ヨーティア様の部屋で片付けたり散らかされたり罵られたり襲われたりしてきます‥‥<12>
37名無しさん@初回限定:04/11/29 16:45:17 ID:fqNe6e5+
ああ〜ヒミカが消えちまった〜(泣&<13>
>>1さん
>>29さん
乙です。


38おにぎりの中身の人:04/11/29 19:34:15 ID:7veRJZIm
たゆんがたゆんでたゆんたゆん<14>

スピリット検定1級 第3問 (30点)
あなた(ユート)はエターナルになりました。
ところが、第2詰め所のメンバーを含めて全員同じように接していた(同じように好感度をあげていた)ところ
全員がエターナルになってしまいました(クォーリン・イオ含む)。
全員、ファンタズマゴリアか出ることになりましたが、トキミお姉さまは
「全員で一緒に行動するのは流石に問題がありすぎる」ってことで、ユートが一緒に行動してよいスピリットは3人までに限定されてしまいました。
そこで問題です。
あなたなら誰を連れて行きますか?また、どのような生活をしたいか、自分の妄想・暴走をふまえて答えなさい。
39名無しさん@初回限定:04/11/29 19:58:25 ID:uRzs3STO
ハリオン、ナナルゥ、エスペリアの3人。
特に理由はありません。
無作為のアミダくじで選んだら、たまたまこうなっただけです。
妄想?理想の生活?何の事ですか?では忙しいのでこれで。
40名無しさん@初回限定:04/11/29 20:10:10 ID:z05jNmF6
むう、なかなか難易度が高くなってきましたね。
長女:ファーレーン 次女:セリア 末娘:ネリー ……かな。
ただし本人達が連れ合いと離れ離れになってもいいというのならという事で。
ちょっと回復・魔法攻撃系に弱い気もしますが。
41名無しさん@初回限定:04/11/29 20:28:03 ID:DSgvqm6Y
エスペリア・ハリオン・ヘリオン。
穏やかな生活が送れそうです。
42名無しさん@初回限定:04/11/29 21:14:38 ID:mSf3/qXJ
ここは……セリアは確実に外せないとして
セリア、ファーレーン、ナナルゥの三人でしょう
セリアは常に傍に、ファーレーンは台所番、ナナルゥはメイドとして……エヘ
……自分の深層心理は読みきれませんが私はもしかしたらヘリオンが嫌いなのかも知れませぬorz
毎回、毎回、毎回、毎回(ry ひたすらイジメ倒してますし〜

>>30 信ちゃん
はっ、遅くなりましたがスレ立てお疲れ様です
最近、セリアを見ていなかったせいかちょっと暴走気味です……
ツンデレ属性から百合属性に変化しつつあるセリア嬢、ガンバレ
ただ、このまま行くとホントに長期化しそうな予感ですヨ
まだ、あと10?人近くのバトルが残ってますしorz
私も頑張りますので、信ちゃんも新作をがんばっ(ry

>>31 無名様
マッチョムキムキ〜マッチョッチョ〜マッチョムキムキ物語〜
……ゴホンッ、原稿は焦らずに気楽に書いていけばいいと思いますよ
人のこと言えた義理じゃないですがorz

>>34
ユ……ユンちゃん!遅いよ!
支援してくれないから、途中で何回も連投規制に引っかかったじゃないか!
謝罪と賠償を要求s(以下略
とと、そのテンションに釣られ少し壊れそうになりましたヨ
ナナルゥ(ウィング)はたまたま設定資料集で見かけたので発動してみました
最初はどうやって使うかちょっと迷いましたけど……上手く登場できたかと思います
って、今持っていかれたら困ります〜次のBRでも使うんですから!(ぉ
43名無しさん@初回限定:04/11/29 21:15:31 ID:Ah+ReTNV
先生質問です。
光陰と今日子も、メンバーに含めていいんでしょうか?
44名無しさん@初回限定:04/11/29 21:37:47 ID:JPGYFbwk
>29 風変わりさん
亀レスになってしまいました、すみません……が、
ヤバイです、3レスに2回は爆笑してしまい、お腹が痛いです。
そのようにネタだらけの中で、緊迫感を持ってしっかり戦闘していたヒミカが真っ先に……?
これで終わるヒミカなのか、はたまたどんでん返しか。
これからも楽しみにしております。

>38 おにぎりの中身の人さん
初期メンバー:君主  聖賢者ユート
       軍師  ファーレーン
       外交官 ヘリオン
       内政官 ウルカ

三人を選べと言うのはハーレムルートを阻止せんとする時深お○さんの陰謀であった!
時深お○さんはその時を操る力で残りの面々の好感度を以前の状態に戻し、仲違いを画策する!!
ユートの元に残ったのは忠誠心が図抜けて高い黒スピ三人娘のみ。
次々と立ちはだかる時深の手先と化したスピリットたちをあの手この手で取り戻し、
ユートは再びその胸に抱く事が出来るのか!?
ラスボス、時深すらも受け入れて、目指せ真のハーレムエンド!

                              (○=姉)
45名無しさん@初回限定:04/11/29 23:05:06 ID:jT0nCeqw
>>29 風変わりさん
笑わせてもらいました。マッチョ最高。アパーム!
GJです。ヒミカさんが脱落?して悲しいですが続きをたのしみにしております。

>38 おにぎりの中身の人さん
優しいお姉さんイオ、キツイお姉さんセリア、頼れる姉御ヒミカの三人。
ヘタレなユートを支えてくれるお姉さん達との永遠の旅路。
お姉さん最高。あれ?ハリオンとエスは・・・
46女王陛下の憂鬱1/2:04/11/29 23:46:35 ID:0ESYsW3i
「しかし、これは余りに露骨な人選...。」

ナナルゥが持参したリストを見て、若き女王、レスティーナ・ダイ・ラキオスは絶句した。
「3名のエターナルだけを伴って行動出来るという事はトキミ殿から聞いてはいましたが...
まさかユートがこんな選び方をするとは...。ありがとう、ナナルゥ。もう下がっても構いません。」
レスティーナはかろうじて女王としての品格を取り戻し、エターナルとなった今でもなお忠誠の厚い
レッドスピリットに向かって、優雅に一揖した。
「はっ。それでは失礼致します。」
ウィングも付いて夜も安心なナナルゥが、城のバルコニーから飛び立って行く。
その後姿を見送りながら、レスティーナはある事を計画し始めた。

――その頃。
風呂上りの悠人は、エターナルとなった今でもなおパシリなヘリオンに買ってこさせた牛乳を、
自室でゴクゴクと飲み干していた、全裸で。
「まあ、選ぶのは俺なんだし、多少の小細工は許されるだろう。」
そう言った悠人はニヤリと笑った、全裸で。
彼の片手には過日行われた身体測定の結果表が握られている。
そして、表に書いてある数字の三ヶ所に赤丸が付けられていた。
「あとは明日のクジ引き大会を待つばかり、か。」
悠人は机上のアミダくじを見やって、満足気に頷いた、全裸で。完全に油断し、熟睡していた悠人が、
深夜に天井から降り立った人影によって、そのクジをすり替えられた事に気付く筈もなかった。
47女王陛下の憂鬱2/2:04/11/29 23:48:05 ID:0ESYsW3i
「おかしい...。」

悠人の額に脂汗が浮かぶ。
先刻から始まった抽選会にキャーキャー言いながら参加するエターナルとなったスピリット達。
そこまでは計算通りだったのだが、第一目標のハリオン姉さんがハズレを引き、
いつもマジックの犠牲になっているヘリオンが当たりを引いたのだ。
「わわ、私、牛乳飲んで頑張りますからっっ!」...残念ながらエターナルとなった者は、その姿も永遠に移ろうことはない。
「やったー、ユートさま!大当たりだよ〜、これでずーっと一緒だね!!」
「あ〜っ、いいなぁ、ネリー、時々オルファと代わって〜!!」
「あ〜ん、シアーもぉ〜!!」
(そ、そんなバカな!?)驚いた悠人は同時にハズレくじを引いたナナルゥに振り返った。
赤い妖精が申し訳なさそうにうつむく。
「あら、残念、私も外れてしまいました...。」ナナルゥの横でエスペリアが肩を落とした。
「エスペリアも?変だな、だってエスペリアは最後に引いたんじゃ...ハッ!?もう一本残っている!?」
事ここに至ってようやく事態の異常さに気付いた悠人の背中に、追打ちの如き声が投げ掛けられた。

「あ、ユートくん!ここで抽選会やってるって聞いたんだけど、私の分、ある?」

―――エターナル化したのはスピリットだけではなかった。
48名無しさん@初回限定:04/11/29 23:52:12 ID:0ESYsW3i
最近無記名の短編が以下略。
えーと、風変わりの兄ィ、こいつでひとつご勘弁を。
49名無しさん@初回限定:04/11/30 15:22:34 ID:+AnDTMEV
>>38 おにぎりの中身の人さん
ヒミカ、セリア、ニムで赤青緑のツンツンを楽しむ……
我ながらいいバランスです。カンペキ。
50名無しさん@初回限定:04/11/30 17:58:18 ID:ZG0Reu4V
>>38
ウルカ、ヒミカ、セリアの三人で。
理由:ベッドの上では弱そうだからっ。
問題はパーティ組むとディフェンス要員がいないことです……
51名無しさん@初回限定:04/11/30 18:05:14 ID:WOrlkn9X
>>38
エスペリア・ハリオン・トキミ
もう毎日朝から晩までウハウハのエロエロですw
スピリット限定を重視するなら、トキミの代わりにイオでもOK?
52名無しさん@初回限定:04/11/30 20:22:34 ID:8Rv8O4+l
>>38
ヒミカ、ナナルゥ、オルファ。
最近寒いから、(心も体も)暖めて欲しい。
但し火傷注意。
53名無しさん@初回限定:04/11/30 20:26:57 ID:6fXLGFMt
「2つも3つも萌キャラを持つ必要はない。ただ1つに熱を上げてこそ必萌となる」
「えーとエスペリアは外せないし〜結構アセリアも良いかもな〜後はセリアかファーレーンか……
うむむ、ここが思案のしどころだ。どっちがいいかな、ニム?」

54名無しさん@初回限定:04/11/30 23:05:35 ID:qexMaAP2
誰かアセリアメインの長編書いてくれないかなぁ
55名無しさん@初回限定:04/12/01 06:22:56 ID:yQlxVu/b
>>54
アセリアは動かすのが難しいんですよねえ...
ノベル版なんてどうでしょう?↓

ハーヴェスト出版「永遠のアセリア」全3巻各900円

あと可能性があるとすればこっそりとGJな前スレ637氏くらいでしょうか。
5654:04/12/01 08:04:12 ID:SwIqbDXL
丁寧にありがとうございます、ノベル版の存在は知ってたんですけどすっかり忘れてました。
アマゾンあたりで注文して読んでみるとしますー
57名無しさん@初回限定:04/12/01 22:47:17 ID:JMdzwL4N
>48
「あれ? なんでこれにテムオリンの測定値まで載ってるんだ?」
今頃気付いた悠人。
「ふっ、それはな悠人。俺と同じすばらしい視点を持つタキオスのおっさんからの
餞別ってやつさ。人間話せば解り合えるってもんだぜ? ま、それはそうと三人選
ぶのか。うむむ……5人中3人か……難しい、誰が抜けても画竜点睛を欠くってや
つだ。これは我が人生で最大の難問だな。
ヘリオンちゃん……む、いやオルファちゃんまてまてシアーちゃんも…………なあ、
後からチェンジ有り?」
「そうね、チェンジよりチェインはどうかしら?」
ジャラッ。ぶっとい鎖に帯電させて……ヒートロッド?
「うおっきょ今日子? ままて今のは非常に重要な由々しき火急の案件ってやつで」
「問答無用! ネビュラチェーンッ! (スクエア)」
「ってアンドロメダかよ。いやそれより光陰までエターナルになってたのか」
58名無しさん@初回限定:04/12/01 23:02:38 ID:X3kEKH3R
………瞬?
59名無しさん@初回限定:04/12/02 08:32:44 ID:oGN4bECI
「ねぇねぇパパー、この仔飼ってもいい?」
「ンギュルギュルッ!ギュンギュルッ」
「 捨 て て き な さ い 」
「(´・ω・`)ショ-ボン」

その夜
「ねぇハリオン…今日の肉なんか変わった味がしたわよ?」
60名無しさん@初回限定:04/12/02 10:41:33 ID:DNWjrroN

   _†_ンキュ?  
  [≦≧]   
  彡,,(◎)  
 彡((τ    
/| ̄V ̄V|\/
  | 拾って|/
61名無しさん@初回限定:04/12/02 19:03:56 ID:NuDjojLC
>>57
いくら何でも恋人のネタを取っちゃ駄目だよ今日子w
62ア&セリア子供劇場W 1:04/12/02 21:25:36 ID:/wu1v7oG

アセリアとセリアは幼馴染です。
二人は物心ついた頃、一緒にエルスサーオに転送されてきました。
以来、遊ぶのもご飯を食べるのも訓練を受けるのも寝るのもいつもいつも一緒。
同じ青スピリットだったこともあり、二人は絵に描いたような仲良しさん……とはいきませんでした。
生まれた時から何を考えているかよく判らないアセリアはともかく、
セリアは何をやっても敵わないアセリアを密かに敵対視していました。いけませんね。

そんなある日のこと。
二人はエスペリアお姉ちゃんに人間の暮らしについて教えてもらいました。
人は好き合う男女一組で家族を作り、生活しているというお話です。
セリアが何故『男女一組』なのかと質問したところでお昼の時間になってしまい、続きはまた明日ということになってしまいました。
年端もいかないいたいけな少女達に一体何を教えているのかは別として、セリアは非常にこの中途半端さが気に入りません。
なので食堂でご飯を食べながら向かいに座ったアセリアに聞いてみました。聞く相手を5次元くらい間違えている気もしますが。
「アセリア、なんで男女一組なのかなぁ?」
63ア&セリア子供劇場W 2:04/12/02 21:28:36 ID:/wu1v7oG

丁度スープをこくこくと飲んでいたアセリアは黙ってセリアの方を向きました。
そして最後までこくん、と飲み干した後、いつも付けている紫のリボンで口をもきゅもきゅ拭います。いけませんね。
テーブルマナーくらいはわきまえてもらいたいものです。
お行儀の悪いアセリアの仕草を注意したかったセリアは、それでも我慢強く黙って見つめていました。
今では考えられない忍耐力です。それだけどんな答えでもいいから聞きたかったのでしょう。
納得のいかないことを放ったらかしに出来ない性格は間違いなくA型だ、とユートさまが仰ってました…………こほん。
「よく、わからない」
「…………それだけ?」
「ん」
「じゃあさじゃあさ、『好き合う』ってなんだろう?」
「よく、わからない」
「…………それだけ?」
「ん」
「………………」
こめかみに指を当てながらセリアは考えます。このままではどこまでもループしていく会話を経験則で悟ったのでしょう。
なんとか打開策がないかと幼い知恵を振り絞ってうんうん唸っています。やれやれ、無駄なことを。
もともと無口なアセリアとの会話が弾んだためしがないことは判っているはずなのに、何とかしようと頑張っているのです。
直情的なのは全然変わっていません。あ、あと両手ともこめかみに当てると○休さんみたいなので止めた方がいいと思います。
64ア&セリア子供劇場W 3:04/12/02 21:32:22 ID:/wu1v7oG

「でも」
ボクボク音を立て始めたセリアの前で、下を向きながらアセリアがぼそっと呟きました。
その囁きはとても小さいものでしたが窮地に追い込まれていたセリアには正に渡りに船。やはりというかもの凄い勢いで食いつきました。
「え!え!なに、なに?」
好奇心キラキラの瞳に星が宿るセリア。期待を一身に受けてしまったアセリアは珍しく恥ずかしそうにぽっと頬を染めてしまいます。
「……なんでもない」
「え〜!気になるよ〜教えて教えて〜!」
とうとう机の上に乗り上げてしまったセリアのスカートがすっかりずり上がってるのですがどうやらそれどころではないようです。
真っ白なパンツ全開の上はしゃいでポニーテールがぴょこぴょこ跳ね、かわいいお尻がぷるぷる揺れています。
すっきりと細く伸びた健康的な肢をぷらぷら投げ出している無防備なその後姿などはその手の趣味の人にはたまらないものです。
それはどうでもいいのですが間近で見つめられたアセリアは益々赤くなってしまいました。
両手の指先をもじもじ絡めながら小動物の様に上目遣いでセリアの様子をじっと見ています。誘拐されそうな少女ランクイン間違い無しですね。
セリアはそれを見てじれったくなったのでしょう。或いは妙な嗜虐心が働いたのかもしれません。片鱗が窺えます。
「も〜っ、いっていっていっていっていってよ〜〜!!」
聞く人が聞けば鼻血を出して卒倒しそうなセリフを連呼しました。自分が何を言ったのかまるで自覚が無いようです。いけませんね。
アセリアがこれ以上フォロー出来ないと思ったのかは定かではないのですが、観念はしたようです。耳まで真っ赤なまま囁きました。
「わたしは、セリアが好きだ」
「………………」
二人の間に妙な沈黙が流れました。背中に薔薇の背景が見え隠れするような。見えてどうする。
真摯な瞳でじっと見つめてくるアセリア。どう答えたらいいか、セリアは一生懸命考えました。
「…………うん」
でも素直じゃないセリアはそれだけしか答えられませんでした。答えた後ちょっぴり後悔しながら、それでもそっぽを向いたまま。
65名無しさん@初回限定:04/12/02 21:33:30 ID:WDrDscFp
なあ、ここの人が新作でヘリオン作るッぽいんだが・・・。

ttp://www1.odn.ne.jp/doku_kaeru/doku_002.htm
66ア&セリア子供劇場W 4:04/12/02 21:36:06 ID:/wu1v7oG

その夜二人はずっと手を握ったまま眠りました。
アセリアは何も考えず、セリアはずっと何で『男女』一組じゃないといけないのかを考えながら。
ところでセリア、なんで肢をアセリアに絡めているのかな?



ヒミカ「………………」
セリア「……なんで自分で書いておいてわたしから離れていくのよ」
一同「………………」
一同「………………」
セリア「ちょ、ちょっとみんな、まさか本気にしてるんじゃないわよね、ねえ?」
ファーレーン「薄々はそうじゃないかって思ってましたけど……」
ニムントール「そういえば最近やけに触ってきて……」
ヒミカ「いきなり胸に飛び込んできて泣かれたり……」
ヘリオン「わたしの下着の色にもチェック入ってました……」
セリア「ちがうっ!ちがうのっ!なんで無言のまま下がっていくのよっ!っていうかヒミカ、あれは二人の秘密にしてって!」
ナナルゥ「二人の秘密……」
ニムントール「秘密……二人の……」
ヘリオン「でもユートさまに黙って付いていったことも……」
ナナルゥ「バイ……」
ヒミカ「バイね……」
ファーレーン「バイですね……」
セリア「だからちがうって!そこ、こそこそ話を膨らませない!大体あれは子供の頃の話だよ!アセリアも黙ってないでなんとかいってよ!」
アセリア「なんでだ?これ、セリアとわたしの大事な」
セリア「ごめん、やっぱり黙ってて」
67名無しさん@初回限定:04/12/02 21:37:51 ID:/wu1v7oG

つまりセリアは百合じゃないです_| ̄|○
68名無しさん@初回限定:04/12/02 21:59:04 ID:WDrDscFp
>>67
スマン。せっかくのア&セリア子供劇場をぶった切ってしもた。orz
69名無しさん@初回限定:04/12/02 22:00:21 ID:53ZrDqzp
>>67
GJ!! 大丈夫。ヒミカもファーレーンもニムもヘリオンも、ほんとはきっとセリアのことが好きだから!!
ついついいじめたくなっちゃうんだろうなあ。
70名無しさん@初回限定:04/12/02 23:22:59 ID:H5DLxs1I
>>67
百合ではなく、薔薇...と。(←ベタは卒業したんじゃなかったのか)
終盤が温もりのBR分少々混じってますねw
71名無しさん@初回限定:04/12/03 01:43:10 ID:GKOVcG24
>>67
子供劇場新作北━━(゜∀゜)━━!!
毎度(*´Д`)ハァハァなものありがとうございます。

にしてもいい感じに設定共有できてますねw
72名無しさん@初回限定:04/12/03 06:55:21 ID:nMBePBCg
ハァハァ、ハァハァ。
弱いマナ灯が一つだけ灯る部屋で、くぐもった吐息が漏れ聞こえます。
セリアの目の前では、弱々しい光が作り出す陰影の彫り込まれた、アセリアの
小さな顔があどけなく寝息を立てています。寝る前にセリアがよく梳いてあげた薄紫
の髪は枕の上にしどけなく散らばり、セリアの鼻先をくすぐります。
セリアはずっと眠れないままです。アセリアの寝顔を見詰めるばかりです。思えば、
アセリアの「白ロリ」が今のこのセリアの心境を決定づけたのかも知れません。さらに
あんな告白をされては……。
長い睫毛。小さく開いた口。そこからかいま見える可愛らしい八重歯。セリアはもうた
まりません。我慢なりません。全開寸前です。ふーじこちゃん。

ジャー。バタン。
「ふぅーすっきりした」
orz    

ついに来ました。ア&セリアIV。
バイ……倍……さらに倍

ヒミカ  ファーレーン  ナナルゥ 
 8      16       24

悠・ニム組「困った時のアポカリプス。ナナルゥに全部」
今・ヘリ組「黒さなら黒スピ。ファーレーンに全部」
光・クォ組「ここは堅実に脚本家を信じるぜ。ヒミカに全部」

ネタは置いといて。セリアさん…………子供の頃からどっちもOKってことかーこれもエスの教育のたまものか。
第二の面々はもう阿吽の呼吸でヒミカに話を合わせてセリアをネタにしてますな。 
735スレ226 前書き&注意:04/12/03 08:02:18 ID:GFmfPx+G
オリジナル神剣が出てきます。雑魚スピオリジナルエンド妄想SSです。
ZUSE総合スレでのもう見てらんない発言に少なからずへこまされましたので、こういうのが見てらんない方はどうかスルーをお願いします。スレ汚しとの批判はどうかご了承下さい。
勝手な妄想してんじゃねーよと言われても、ゴメンナサイ、スイマセンとしか言えませんので。申し訳無い。
だからこそ他のスレでは無く、こんな私でも許容してくれる可能性のあるこのスレにいると言うか。
ヒロインはナナルゥです。かぶってしまってギャーな感じです。
SS自体はかなり前に出来ていたのですが、他作品と中身が驚くほどにかぶる事かぶる事。
もしかして、どこかで見てるんじゃないかと失礼な事を考えてしまうほどに。
修正に追われました。
とはいえ、他の作品を読んだ方が無難だと思いますし、幸せになれると思います。
つまらねーぞ時間返せとか言われてもどうしようもありませんので、心と時間に余裕のある方のみ、寛容を持ってお読み下されば幸いです。
では、お付き合いいただける方(いるといいなぁ)、宜しくお願いします。
74あなたを見つめる私・前編 1/34:04/12/03 08:05:13 ID:GFmfPx+G
 生とは、一体何だろう。
 生きているとは、一体どういう事だろう。
 いつの頃からか私の中にある疑問。
 その答えがもう少しで見えてきそうな気がする。
 答えを示してくれそうな人を見つけた。


  あなたを見つめる私


 ラキオス王国がマロリガン共和国に勝利し、悠人と共にファンタズマゴリアに飛ばされてきた2人のエトランジェをラキオス陣営に加え、戦況も一つの区切りを迎えた。
 帝国との戦いがすぐ後に控えてはいるものの、今までただ闇雲に突き進んできた悠人にようやく希望というものが見えかけてきた、そんな時期。
75あなたを見つめる私・前編 2/34:04/12/03 08:10:22 ID:GFmfPx+G
 トントン。
 控え目なノックの音が響く。
「はい。入って良いよ」
「失礼します」
「ん? どうした、ナナルゥ。何かあったか?」
 悠人がラキオススピリット部隊第一詰め所にある自室でくつろいでいた時に訪ねてきたのは、ナナルゥ・レッドスピリット。
 以前は無表情で、感情を表に出さないというよりも感情が無いのではないかと思わせるスピリットだったが、最近では少しずつ悠人に色々な面を見せるようになってきていた。
 悠人の方でも、ナナルゥはどこか気になる、放っておけないと感じさせるスピリットだった。
 それがなぜなのかは、この時の悠人にはまだ解っていなかったけれども。
「何か、と言うほどの用は無かったのですが……何か特別な用事が無ければ来てはいけなかったでしょうか」
 僅かに寂しそうな顔をする。
 ナナルゥを知らない者が見れば、気付かないかも知れない程に僅かな表情の変化。
 しかし今の悠人には、この顔が今にも泣きそうな気持ちを抑えているのだと理解出来てしまう。
 これもコミュニケーションの成果である。
 仲間に命を預ける戦場は、他のどんな場面よりも濃密なコミュニケーションの場でもあった。仲間の事を理解し、信頼出来無ければ、それが敗北即ち死に直結するのだから。
 兎にも角にもそのナナルゥの表情に気付いた悠人は、条件反射的に大慌てでフォローする。
 ナナルゥがこうして能動的に行動する事自体、最近になりようやく見られる様になった事なのだ。それを否定する事など、お人好しな悠人に出来る筈も無い。
「そんな事無いさ。来てくれて凄く嬉しいよ」
「そうですか。良かったです」
76あなたを見つめる私・前編 3/34:04/12/03 08:15:07 ID:GFmfPx+G
 ほんのりと顔を赤らめ、ほっとした表情を見せるナナルゥ。元々が美人であるナナルゥのそんな無防備な表情(とはいえ、これまた他者には見分けが付かないかも知れないが)を見せられると、正常な若い男である悠人はどうしてもドキッとしてしまう。
 このままナナルゥを見ていると変な気分になりそうだった悠人は、自分の気持ちをごまかすように、動揺を抑えつつ言葉を発した。
「で、どうした? 用事は無いって言ってたけど、何の理由も無く来たって訳でも無いんだろ?」
 突然に顔が見たくなったというのでも、なんとなく足が向いたというのでも、とりあえずそれはそれで理由ではある。
「はい。少々質問がありまして」
「質問? まぁ俺に答えられる事なら答えるけど、何だい?」
 ナナルゥを席に促し、お茶を入れる。
 この辺りの気遣いはお茶の入れ方も含めエスペリアに習ったもの。
 元の世界では他人とのコミュニケーションが希薄だった悠人の、ファンタズマゴリアに来てからの成長の一つである。
 ハーブの清々しい香りが部屋に漂う。
 悠人が自分の入れたお茶を一口、口にする。程良くさっぱりとした味が口の中に広がり、うん、我ながら上手くいったと自画自賛。
 もう一口、と悠人がお茶を再度口にしかけたところで、ナナルゥが質問を発した。
「人を好きになるというのは、どういう事ですか?」
「……は?」
「ユート様?」
「い、いや。いきなり予想外の質問だったから。はは……」
 戦闘戦術関連の質問かと思っていた悠人は、ナナルゥが恋愛事について訊ねてきた事に少なからず驚いた。
 でも、だからこそしっかり答えてあげたいと悠人は思う。
 今まで戦う為だけに生かされてきた彼女達が、ようやく戦い以外に興味を持ち始めたのだから。
77あなたを見つめる私・前編 4/34:04/12/03 08:20:09 ID:GFmfPx+G
「人を好きになるっていうのはな……うーん、何だろう」
 知っているつもりの事でも、改めて問われると実は自分でもよく解っていなかったのではないかと思わされる事は良くあるものだ。
 悠人は特に最近、アセリアやナナルゥと話していてよくこういう場面に出くわしている。
 一般常識とか共通認識と思っていた物事を説明するのは、なかなかに難しい。
 そもそも、常識等というものは場所により、時代により、そして人によってすらまるで違うのだ。その事を悠人はファンタズマゴリアに来て痛感している。
 子育ての難しさというのは、こういうところにあるのかも知れないと、そんな事まで考えてしまう。
 おまけに、恋愛ときたのだ。今まで悠人は佳織の事で精一杯で、恋人を作った事も無かった。ファンタズマゴリアに来てからは戦い、生き残るのに必死で恋愛どころでは無かった。
 よく解らないというのが正直なところかも知れない。
 それでも悠人は真摯に考え、自分の意見を述べる。
「そうだな……その人を大切にしたいとか、いつも一緒にいたいとか、そういう気持ちになるって事じゃないかな?」
「その人を大切にしたい……いつも一緒にいたい……」
「本当にこの答えが正しいのかどうかは別として、これが今の俺の答えだな」
「ユート様の考える……好きになるという事」
「あんまり参考にはならないかも知れないけどな」
 悠人は、とりあえず自分では納得のいく答えが出せた事にほっとする。
 一息ついて、悠人が再びお茶を口にしたところに、ナナルゥが言う。
78あなたを見つめる私・前編 5/34:04/12/03 08:25:16 ID:GFmfPx+G
「ユート様」
「ん?」
「好きです」
「ぶぅーーーっ!!」
 思わずお茶を吹いてしまう悠人。
 とっさに横を向いたのでナナルゥにはかからなかったのが幸いだ。
「な、ななな!?」
「私はユート様を大切に思っています。可能ならばいつもユート様と一緒にいたいとも思います。先ほどの定義に当てはめれば、私はユート様を好きだという事になります」
「あ……あはは」
 悠人は吹き出したお茶を拭きながら、笑うしか出来ない。
「ユート様はどうですか?」
「ははは……は?」
「ユート様は私の事を好いて下さっていますか?」
「え、えーっと……」
「私を大切にしたいと思って頂けますか? 一緒にいたいと思って頂けますか?」
 自分で定義した事ゆえ、否定も出来ない。
「あはは……うん、まぁ、その定義に当てはめると、俺もナナルゥが好きって事になるかな」
「そうですか……ユート様が私の事を好き……」
 ナナルゥは頬を染め胸に手を当ててうつむき、しかしすぐにまた顔を上げて言葉を続けた。
79あなたを見つめる私・前編 6/34:04/12/03 08:30:29 ID:GFmfPx+G
「では、キスしていただけますか?」
「ぶぅーーーっ!!」
 何とか落ち着こうとして口にしたお茶を、人間霧吹きよろしく悠人は再び吹き出す。
「な、なな……!?」
「嫌なのですか?」
 しゅんとうつむくナナルゥ。
 このやり取りを確信犯で行っているのなら恐るべき恋愛駆け引きだが、2人のこれは天然である。
 天然ゆえにブレーキのかけ方も知らず、どこまでも転がっていく。
「い、いや……」
「やはり嫌なのですか……」
「あ、いやというのはその意味の嫌ではなくてだな、そうじゃなくて、あの、その、何だ……ナナルゥ、キスとか誰に聞いたんだ?」
「誰という事はありませんが、皆が言っているものですから」
「何て?」
「好きな人とはキスをするものだと」
「……」
 スピリットとはいえ年頃の女の子。恋愛事には興味津々なお年頃なのだ。
 そのような話をしていても無理は無い、むしろ、そういう事にも興味を持てるようになってくれた事が嬉しいと悠人は思う。
 しかし……。
 ナナルゥを見る。ついつい唇が目に止まり、悠人は鼓動が早くなるのを自覚する。
 口紅をひいた訳でも無いのに、しっとりとした丹花の唇。
 一度意識してしまうと、先程までは平気だった筈なのにもう直視出来ない。
80あなたを見つめる私・前編 7/34:04/12/03 08:35:53 ID:GFmfPx+G
「ユート様は私の事を好きだと言って下さいました」
「う、うん」
 悠人、激しく葛藤。
 ここで流されていいものか、と。
「……ユート様?」
「……えっと……」
 ナナルゥの表情が僅かに変わり、身を引こうとする。悲しそうに。寂しそうに。
「申し訳ありません。ユート様は私を気遣って好きと言って下さったんですね……。それに気付かずに変なお願いをしてしまい申し訳ありませんでした。好きと言って頂けただけで私は満足です」
「そ、そんな事無いぞ!! 俺がナナルゥを好きだっていうのは本当だ」
「……では、キスして頂けますか?」
「う、うん。分かった」
 チャンスに弱いくせに、押しにも弱ければ、引きにも弱い。
 ヘタレのヘタレたるゆえんである。
「……」
「じゃ、じゃあ、するぞ」
「はい」
 切れ長の目。ルビーを思わせる深紅の瞳が、悠人をじっと見詰めてその姿を映す。一見無表情に見えるその眼の奥にあるのは、期待だろうか、不安だろうか。
「……」
「……」
「あのー、ナナルゥ」
「何でしょう?」
「じっと見つめられていると、非常にキスしにくいのだが」
「では、どうしたらよいですか?」
「目、つむってくれる?」
「はい」
81あなたを見つめる私・前編 8/34:04/12/03 08:40:14 ID:GFmfPx+G
 ナナルゥが素直に目をつむる。
 ちゅっ。
 唇が触れ合う。
 悠人の唇に、ナナルゥの柔らかな唇の感触が伝わってくる。
 しばしその優しい感触を味わい、ゆっくりと唇を離す。
 ナナルゥが目を開け、自分の唇を軽く撫でながらほぅっと止めていた息を漏らした。その何気無い仕草がまた艶かしい。
 それにしても、と悠人ははっと我にかえった。
(俺、ナナルゥとキスしちまった!?)
 勢いに乗せられたと言っては言葉が悪いが、一息ついてから改めてたった今自分のした事を思い返し、焦る悠人。
 無理も無い事ではある。悠人が他人に対してキスした事など初めての経験なのだから。
 ……ファンタズマゴリアに来て、エスペリアの手コキのお世話になったり、フェラチオしてもらった事はあったけれど。それどころかこの世界に来た時にスピリットと初体験を済ませていたりはするのだけれども。
 それらは全て受動的な経験であり、悠人の側からはキスすらした事が無い。さすがキングオブヘタレ。
 顔を真っ赤にして身悶える悠人に、ナナルゥが更なる追い討ちをかける。
「好きな人とのキスは、舌を入れたりするものだと聞きましたが……」
「うぇ!?」
 以下、先程と同じようなやり取りがあって、結局悠人はナナルゥとディープキスをする事になる。
 ヘタレ全開。
82あなたを見つめる私・前編 9/34:04/12/03 08:45:18 ID:GFmfPx+G
「んくっ……ん……んん……ちゅるっ……」
 柔らかなナナルゥの舌が、悠人の口内を這い回る。
 始めはおずおずと、やがて激しく、強引と紙一重の大胆さで。
 拙く、それゆえに一生懸命に。
 口内で絡み合う舌に、悠人は頭の中まで撹拌されている様な錯覚に陥る。
「ん……ちゅく……ちゅる……ぷはっ」
 交じり合った2人の唾液が、唇同士に銀色の糸を引き、切れる。
 そして、再び悶える悠人に次なるナナルゥの言葉。
「互いに好きあった2人は、ベッドで愛を確かめ合うと……」
 以下略。
 ヘタレ万歳。
83あなたを見つめる私・前編 10/34:04/12/03 08:50:13 ID:GFmfPx+G
 一糸纏わぬ姿でベッドに横たわるナナルゥの姿は、幻想的と言って良い美しさがあった。
 胸はやや大きめ。しかし、巨乳というよりも美乳という形容が当てはまる。ウエストはきっちりとくびれながら、丸みを帯びた腰の曲線が女性らしさを感じさせる。
 手足はすらりと長く、肌はまるで透き通るかのよう。
 高度にバランスの取れた肢体は、もはや芸術品といっても過言では無い。
 しかしそれはただ美しいだけの芸術作品では無く、男性を否応無しに引き付ける生々しい女性としての肉の魅力、一種のいやらしさも有していた。
 それはナナルゥの命の証明。生の証。それがますます悠人の視線を釘付けにした。
 理想の女性の具現ともいえる体が、まるっきり穢れを知らない少女の無防備さでベッドの上に横たわっている。
「ドキがムネムネします」
「……は?」
「間違えました。胸がドキドキします」
 普段とはあまり変わらぬ表情に見えるナナルゥも、実際は緊張しているのかも知れない。
 とてもそうは見えないけれども。

 2人は気付いていなかった。
 運命の悪意にずっと翻弄されてきた者が、常に戦いの中で生きてきた者が、自分達の生まれたままの姿をこれ以上無く無防備に晒す事が出来ている。その意味に。
 それは一片の曇りも無い絶対の信頼があればこそ。
84あなたを見つめる私・前編 11/34:04/12/03 08:55:11 ID:GFmfPx+G
 恐る恐る悠人がナナルゥの胸に手を伸ばす。
 瑞々しくはじける様な張りがありながら、触ると自在に形を変える嘘のような柔らかさ。
 しっとりと指に吸い付くようでありながら、驚くほどに滑らかな感触。
 作り物めいて美しくも、温かく肉感的。
 異性に媚びる姿勢は皆無ゆえに、脳髄を蕩けさす程に蠱惑的。
 穢れの無い純真無垢な反応は天使の様で、その持つ妖しい魅力は悪魔の様。
 二律背反した魅力を同時に満たしたナナルゥの体に、悠人は夢中になった。
 自分の体とは全く異なる感触に、悠人は自らと異なる性、女性というものを否応無しに意識させられる。
 すべやかな手触り、掌から伝わって来る体温、力を込めずとも触るごとにふにふにと変わる形、それら全てからナナルゥを感じつつ、膨らみの先端に触れる。
「ん……はぁっ……」
 ナナルゥが少しずつ息を荒くしていく。
 悠人とて元の世界でAVを見た事が無い訳では無いが(最も自ら進んで見たのではなく、光陰に見せられたのではあるが)AVの様に女性が皆このような時に男好きのする嬌声をあげると思っていた訳でも無い。
 けれども、悠人にとってはAVで聞いた女性のあられもない嬌声よりも、悠人はナナルゥの荒い息が、途切れる息が、それに伴い吐き出されるほんの僅かなアルトボイスの方が、遥かに艶かしく、色っぽい旋律に聞こえた。
「ナナルゥの体、柔らかいな」
 胸だけでは無く、腕も、お腹も、ナナルゥの体はどこをとっても女性らしい柔らかさを誇っていた。無論太っているのでは決して無い。
 ダイエットどころか、体型の事について考えた事も無いのだろう。無造作に、しかしそれゆえに自然に形作られたそれは、人の作った美しさではけして及ばない神の作った奇跡とでもいうべき女性の体。
85あなたを見つめる私・前編 12/34:04/12/03 09:00:12 ID:GFmfPx+G
「ユート様の体は、固いです」
 つっとナナルゥが悠人の腕に触れた。
 元の世界にいた時から過酷なバイトをしており、ファンタズマゴリアに来てからは剣を振り続けた悠人は、実用的で強靭な筋肉を身に纏っている。
 ナナルゥもどこか感心したような顔をする。
 悠人がナナルゥの体に触れて驚いたのと同様、ナナルゥも悠人の体に触れ、感じるものがあったのだろう。
 悠人が堪えきれずにナナルゥの下半身、女性の部分に手を伸ばす。
「……ユート様」
「ど、どどど、どうした、ナナルゥ?」
 悠人、どもりまくり。
 そんな動揺しまくりの悠人の前で、ナナルゥは顔を赤くしてもじもじする。今までに無いくらい感情が表に出ている。
 悠人の動揺に反応しないのは、気にしていないのでは無く、ナナルゥの側にもその余裕が無いだけの話だ。
「私は……恥ずかしいと感じている……みたいです」
 ナナルゥの感じる羞恥心。それはナナルゥにとって今まで感じた事の無い類の感情だった。
 初めての羞恥心に、まるで荒波に浮かぶ舵の壊れた小船の様に翻弄されるナナルゥ。
 それを取り除いてあげようにも、悠人も経験が豊富な訳では無いのでどうして良いのやら判らない。
 だから悠人は、出来るだけ優しくキスをした。
「ん……ちゅくっ……んんっ……ぷはぁ」
 それが功を奏したのか、落ち着きを取り戻して、安心した表情に戻ったナナルゥの下半身に、悠人は優しく、優しく触れる。
86あなたを見つめる私・前編 13/34:04/12/03 09:04:18 ID:GFmfPx+G
 さわさわとした恥毛の下にある、ナナルゥの女性自身の感触が悠人の指に伝わった。
 ぷにっ。
 びっくり、どっきり。
 そこで悠人の手は止まる。
「えっと……どうしたらいいのかな」
 半ば勢いに任せてここまできたとは言え、知識経験の無さはいかんともし難い。
 とはいえ、ここで変な見栄を張らずに素直に質問が出来るのは悠人の長所だろう。
「どう、とは?」
「俺、女の子のここ触るの初めてだからさ。どうやったら良いのか判んないんだ」
 愚かしいほどに正直な悠人の告白に、ナナルゥもしばし考える。
 ナナルゥも初めてだから。
 頭の中を検索。該当結果2件。天井裏から観察したエスペリアとファーレーンの行動から情報を適用。
「まず、外側の部分を優しく撫でていただけますか?」
「うん」
 熱を帯びた柔らかな感触を悠人は優しく撫でる。
「そこからだんだん……あっ……中心部に。……中心部に行けば行くほど……んんっ……優しくお願いします」
 次第に構造は複雑に。色もサーモンピンクになり、生々しさが加速する。
 優しくして欲しいと言われずとも、優しく触れる事しか悠人には出来ない。恐る恐るといった手つきの愛撫は、それでも少しずつ少しずつナナルゥの体から快感を引き出していく。
「そこの割れ目の……んっ、上のところにあるぽっちは……んあっ……一番敏感なところなので……一番優しく……ひああっ!!」
 悠人が淫核に触れた途端、ナナルゥはびくりと震えた。
「はぁっ……、私……変です。気持ち良いです」
87あなたを見つめる私・前編 14/34:04/12/03 09:08:28 ID:GFmfPx+G
 ナナルゥの膣の中から、粘性のある液体が染み出ている。
 そのぬるついた感触に、悠人は更に昂ぶる。
「今度はユート様がここに入ってくるんですよね」
「あ、ああ」
「お願いします」
 それは昂ぶった悠人が待ち望む行為に至る許可の言葉。
「わ、解った」
 しかし、待ち望んでいたとはいえ、膨れ上がる緊張感に悠人の心臓は激しいビートを刻む。
 どっ、どっ、どっという心音が、悠人の全身に木霊する。これほどの緊張を悠人が感じたのは、ファンタズマゴリアに来ての初めての戦い以来の事。
 他者を殺すための行為、子を成す為の行為、対照的ながら命のやり取りという意味では同軸ベクトル上にある行為と言える。
 今のファンタズマゴリアのスピリットに生殖能力は無いとはいえ。
 それはさておき、悠人はしっかりと狙いを定めてナナルゥの中に侵入をはかった。
 狭い肉の門を無理矢理こじ開け、割り開く。
「つっ……」
「大丈夫か?」
「ゆっくりして頂くと……かえって辛いかも知れません。一気に来て下さい」
「よ、よし。解った」
 既に先端がナナルゥに包み込まれ、ともすれば暴発してしまいそうな快感の中、悠人は呻く様に答えた。
 先端だけですらこうなのだ。全てがナナルゥに包まれた時、どれだけの快感が待ち受けているのか悠人には想像もつかない。
 悠人が女性の中に入るのは初めてでは無いが、何が何だか解らない混乱の中に一方的に犯されて終わった初体験の時と今とではまるで状況が違う。
88あなたを見つめる私・前編 15/34:04/12/03 09:13:08 ID:GFmfPx+G
「いくぞ」
「はい」
 ぐっ、と悠人は力を込めた。
 ずずずずっ、とナナルゥの中に潜り込んでいく。
 途中、ふつり、という感触があった。それがナナルゥの処女喪失の瞬間。
「くぅっ!!」
「ああっ!!」
 快感に呻く悠人と、激痛に喘ぐナナルゥの声が重なり、二人は一つになった。
 きつく締め付けられ、暖かく包み込まれ、今にも爆発しそうな快感を押さえ込みつつ、悠人は辛い表情を隠そうともしないナナルゥに問う。
「ナナルゥ……痛いか?」
「……凄く……痛いです」
 素直に答えられて悠人は焦る。
 予定では、「平気です」という強がりな答えを期待していたから。
 現実は男の身勝手な妄想よりもシビアなものだ。
「……ごめん」
「まるでナイフで刺された傷口に……指を突っ込まれてるみたい……です」
「う……」
 悠人はその状態を想像して、もの凄い罪悪感に襲われる。
 その形容はあながち間違ったものでは無い。引き裂いたばかりの傷口を、今も広げるが如くに押し開いているのだ。
 体はこれ以上無い位の快感を感じてはいたが、悠人はナナルゥに提案する。
「もうやめようか?」
「それはダメです」
 はっきりと、ナナルゥは悠人の提案を却下した。
89あなたを見つめる私・前編 16/34:04/12/03 09:16:19 ID:GFmfPx+G
「でも、凄く痛いんじゃないのか?」
「凄く痛いけど止めてはダメです」
 言うと、ナナルゥは悠人の背中に手を回し、ふわりと抱きしめた。
 幼くして親を2度亡くして以来、限られた友人達以外からの人の優しさを拒絶していた悠人だから。
 その友人達にすらもどこか遠慮していた悠人だから。
 ずっと歯を食いしばって一人で佳織を支えてきた悠人だから。
 他人に頼らず、ずっと自分の力で生きてきた悠人だから。
「私はユート様を大切に思います。いつも一緒にいたいです。……ユート様、大好きです」
 優しく抱きしめられ、優しく語られたこの一言は、悠人の胸にとても重く突き刺さった。
 悠人はずっと絆を求めていたのだ。絶対の信頼が出来る相手を、何があってもどんな時でも味方でいてくれる相手を、限り無い優しさを与えてくれる相手を求めていたのだ。
 その心に応える声だったから、悠人の胸にナナルゥの言葉はどこまでも深く響いた。
 そして悠人が求めていた絆をようやく手にしたのと同様の事が、ナナルゥにも当てはまる。
 他人を拒絶していた、そうでない相手にも一歩引いていた悠人が、スピリット達に対してはそれが出来なかった。その理由がここにある。
90あなたを見つめる私・前編 17/34:04/12/03 09:20:17 ID:GFmfPx+G
 スピリット達は誰にも愛されていなかった。
 ただ道具として扱われ、使い捨てられるだけの存在だった。
 悠人は誰にも愛されない辛さを知っていたからこそ、スピリットの皆を拒絶する事が出来なかった。
 悠人には光陰がいた。今日子がいた。そして、佳織がいた。
 しかし、皆がいなかったとしたら?
 誰にも全く愛されず、誰にも必要とされない存在。
 代わりが幾らでもいる、いなくなっても誰も気にかけない存在。
 ナナルゥは悠人の一つの可能性だった。
 最も深い部分に悠人の存在を、体温を感じながら、ナナルゥは痛みすらも喜びに感じていた。
 それは生みの痛み、苦しみ、そして喜びと言えるかも知れない。
 ナナルゥは今、悠人に必要とされた。真の意味で唯一無二の存在として認められた。『ナナルゥ』という確たる存在がこの世界に誕生した。
 これが悠人、そしてナナルゥが、互いを心から必要だとはっきり自覚した瞬間だった。
 悠人は今まで、佳織の為だけに生きてきた。ナナルゥはこれまで、神剣の声にただ従って生きてきた。
 その二人が、自分の為に生きるその理由を見つけた瞬間でもあった。
 つっ……と自らの頬を濡らす感触に悠人は驚く。
 それは、悠人自身が流している涙の感触。
「あ、あれ? 俺……どうしたんだろう」
91あなたを見つめる私・前編 18/34:04/12/03 09:25:11 ID:GFmfPx+G
 ぼろぼろと出て来る涙に悠人は困惑する。
「大丈夫です。ユート様はもうお一人で頑張らなくてもいいんです。
 辛いときは辛いと仰って下さい。助けが欲しいときはいつでも呼んでください。好きな人に頼られるのは、好きな人の為に何かをするのはとてもとても嬉しい事なのですから。
 私にユート様を大切にさせて下さい。いつも一緒にいさせて下さい」
 ナナルゥに優しく抱きしめられたまま、ナナルゥの膣にきつく包み込まれたまま、悠人は声を出して子供の様に泣いた。
 ナナルゥはそんな悠人を最も深く繋がったままずっと撫でていた。
 まるで母が子をあやすかの様に。母と子が血による絆なら、繋がらぬ血を埋めるべく二人は深く固く体と体を繋ぎ合わせて互いの心を結んだ。
92あなたを見つめる私・前編 19/34:04/12/03 09:30:37 ID:GFmfPx+G
 やがて悠人の涙も止まり。
 二人はゆっくりと唇を重ね、体を重ね、心を重ねた。
 愛を与える事。愛を受け取る事。
 その2つは決して切り離せない。
 愛を与えるにも愛を受け取るにも、そこには相手が必要だから。
 お互いが愛を受け取る事で、その分また相手を愛したくなる。無限の愛の連鎖。
 いままで受け取ってこなかった愛情を二人は貪る様に求め、互いに与えた。
 愛される事に飢えていた悠人。
 愛される事を知らなかったナナルゥ。
 二人は体も心も深く交わるその中で、今まで心の底で求めてやまなかった温もりを感じ、満たされなかった欠落を埋めていった。
「私に、ユート様の望む愛情を与えさせて下さい」
「俺は……ナナルゥが好きだ。世界にたった一人だけのナナルゥが大好きだ」
「ユート様と離れたくない。今までこんな気持ち、知らなかったんです。私、ユート様が大好きです」
93あなたを見つめる私・前編 20/34:04/12/03 09:35:42 ID:GFmfPx+G
「私は、ナナルゥを救う事が出来なかった」
 ラキオスが帝国との戦いに入ったある夜、遊撃部隊として行動していたヒミカは、風の揺らす木々のざわめきが支配する闇の中、一人で見張りをしていた。
 交代の時間になり、起きたセリアが交代を告げたが、ヒミカはもう少し一人で考え事をしていたいと言う。
 セリアはゆっくりとヒミカの隣に歩み寄り、そのまま何も言わない。
 それは強く、気高く、優しく、そして不器用なヒミカを知っていたからこそのセリアの思いやり。
 それを感じ取れないほど、ヒミカは愚かでは無い。
 だから、それに甘えた。
「私はナナルゥにあなたは価値ある存在だと伝える事が出来なかった」
 ぽつりぽつりと言葉を紡ぎだすと、ヒミカの溢れ出す激情はもう止まらなかった。止められなかった。
「スピリットはただの戦争の道具で、私達の命に価値など無いとずっと教えられてきたから。私はナナルゥの事を大切に思っていたのに、その思いを素直に伝える事が出来なかった!!
 だから、ナナルゥは神剣に心を呑まれかけた!! ナナルゥが自分の心の価値を信じる事が出来なかったから!! それを誰もナナルゥに伝える事をしなかったから!!
 出来たのに!! 私にはそれが出来たのに!!」
 声を荒げていくヒミカを、セリアはただ黙って見守った。
 ヒミカの懺悔。
 心の澱は吐き出さねばならない。それをセリアは知っていたから、ただ黙ってそれを聞いた。
 ぱっと見がさつで大雑把で、でも他人思いで気が利いて。
 根っこの部分で自分にどこまでも厳しく、どこか決定的な部分で鈍感。
 ヒミカの全てを包み込むような穏やかな暖かさと、燃え滾るような熱さ。
 それによってセリアが自らの心に張っていた氷の壁は溶かされた。冷めきり凍て付いていた心に灯が燈った。
 けれどヒミカの心にある灼熱の炎の危うい揺らぎに、いつか彼女自身の心すら焼き尽くされるのではないかと、セリアは時々凄く心配になる。
94支援:04/12/03 09:40:06 ID:8xJkzXa+
 
95あなたを見つめる私・前編 21/34:04/12/03 09:40:33 ID:GFmfPx+G
 自分に対する悔し涙を流したヒミカは、やがて落ち着いた声で再び語りだした。
「ユート様がナナルゥを救って下さった。本当は私達が……私がすべき事だったのに」
 ラキオス部隊に戦争の途中で配属されたセリアは、ヒミカにどれほど助けられたか分からない。
 それは言葉では無く、何気ない行動、思いやりによるもの。それによってセリアは、ヒミカが自分の存在を大切に認めてくれていると気付き、自らの価値を見出すに至った。
 しかし、言葉では伝えられない事があるのと同様に、言葉にして伝えねば伝わらない事も確かにある。
 はっきりと言葉にして伝えねばならなかった事。それをし損ねた勇気の無さ。
 ヒミカがそれを自らの罪だと思うのならば、間違い無く罪なのだろう。
 罪とは倫理から外れる事。ヒミカの倫理感が自らの行動を許さないとすればそれは罪を犯したという事に他ならない。
 それでもヒミカは気付き、悔い、反省した。
 過去は取り戻せないけれど、未来は幾らでも変えられる。
 スピリットの未来はきっと良いものになる。そうセリアは確信していた。
「あなたは確かに間違ったのかも知れない。でもね、ヒミカ。私はあなたに救われた。他の誰が、たとえあなた自身が、あなたを幾ら責めるとしても、私はあなたに感謝してるわ」
 セリアはそう言葉にして、ヒミカに思いを伝えた。
 それはセリアの精一杯の告白。
 マナの霧と化すまで言う事は無いと思っていた言葉だったのだけれど。
 その想いが伝わったのか、そうでは無いのか。
 けれどもヒミカの笑顔が見れた事、それだけでセリアは心が満たされた。
(貴女は……本当に太陽みたいな人ね)
 いつの間にか雲間から顔を出した月の光が、木々の隙間から静かに二人を照らしていた。
96名無しさん@初回限定:04/12/03 09:43:14 ID:lW+0bbAL
支援
97あなたを見つめる私・前編 22/34:04/12/03 09:44:12 ID:GFmfPx+G
 運命は時に大きな試練を与える。
 『誓い』は『求め』と融合して第二位永遠神剣『世界』となり、誓いの瞬はエターナル・統べし聖剣シュンとなった。
 更に、ファンタズマゴリアを滅ぼそうとする新たなエターナルの出現。
 『求め』を失った悠人はエターナルになる事を決意する。
 この世界が、仲間達が、佳織が、そしてナナルゥが大切だから。悠人にとって掛け替えの無い守りたいものが、いつの間にか沢山出来ていたから。
 だからこそ、悠人は別れを決意した。

「ナナルゥ、一人か?」
「? 私は二人はいませんよ?」
「……そ、そうか」
「……」
「……」
 どこまでも青く透き通る空の下、草原で二人はしばらくの間、ただ隣あって座っていた。
 緑の薫る風に乗って、子供達の遊ぶ声が聞こえてくる。
 やがて、意を決したように悠人が口を開いた。
「俺、エターナルになる」
「はい。知っています」
 あっさりと。
「え? 知ってた?」
「はい。トキミ様や女王陛下からお話は伺っています」
98あなたを見つめる私・前編 23/34:04/12/03 09:48:22 ID:GFmfPx+G
「そっか」
「申し訳ありません、ユート様」
「え?」
「私もエターナルになろうと思ったのですが、どうやら無理みたいです」
「……そうか」
「……」
「……」
 詳しい話を聞こうとは、悠人は思わなかった。
 ナナルゥが色々と考え、努力し、悩み、苦しんだであろう事は手に取るように解る。それだけで悠人には十分だった。ナナルゥには申し訳無いが、そうしてもらえた事が嬉しいとさえ思う。
 二人はまたしばらくの間、ただ黙って頬を撫で髪を揺らす柔らかな風に吹かれていた。
「私に何か出来る事はありますか?」
 今度沈黙を破ったのはナナルゥだった。
「じゃあ、抱きしめてくれるかな」
「はい」
 ナナルゥはいつかのように優しく、ふわりと悠人を抱きしめた。
 身長、体格から見れば、悠人がナナルゥを抱いているという表現になるだろう。
 けれど悠人は、自分がナナルゥに抱きしめられていると感じていた。
 ずっと恐れていた他人との絆。切れる事が怖くて、裏切られる事が怖くて、ずっと避け続けてきた筈の他人との絆。
 それが今は、ナナルゥと固く繋がっている事を実感する。
99あなたを見つめる私・前編 24/34:04/12/03 09:52:12 ID:GFmfPx+G
 そして今日、悠人は再び一人で歩き出す。
 しかしそれは今までのように他人との絆を恐れての独りではない。仲間達との絆をしっかり手にしての一人立ちだった。
 ナナルゥの確かな温もりを感じる。
 この温もりをもらったから、悠人は前に向かって、自分の足で、自分の道を歩き出せる。
 それはナナルゥも同じ事。
 悠人との出会いがあったからこそ、今のナナルゥはある。
 今はただ限り無い優しさを、自分の意思で立つ強さをもらった事に感謝する。そして今日が二人の自立の日。
 ゆっくりと二人は体を離す。
「ありがとう。じゃあ、行ってくる。……さよなら、ナナルゥ」
「私の方こそありがとうございました。お気をつけて。さよなら、ユート様」
 悠人は胸を張って歩き出した。ナナルゥもまっすぐに立ってそれを見送った。風が遠くの子供達の声を運んで優しく吹き抜ける。
 つぅっとナナルゥの頬を一筋の雫が流れた。
 紅涙。ナナルゥは、涙の流し方を、知った。
100あなたを見つめる私・前編 25/34:04/12/03 09:56:15 ID:GFmfPx+G
 ラキオススピリット隊第3第4部隊であるセリア、ヒミカ、ヘリオン、ファーレーン、ニムントール、そしてナナルゥは全滅の危機に瀕していた。
 エルスサーオをエターナルミニオン達から防衛し、一段落ついたところで敵のエターナル水月の双剣メダリオにいきなり襲われたのである。
 万全な状況でも圧倒的実力差がある相手から、戦闘直後の疲れているところに奇襲を受けてはひとたまりも無い。
「あぁっ!!」
 ぴしゃっ。
 ナナルゥの顔面から鮮血が飛び散る。メダリオの手にはたった今くり抜いたナナルゥの左目が掴まれている。
 メダリオはさほど力を込めた様子も無く、ナナルゥを蹴り飛ばした。
 それだけで、ナナルゥの体がまるでボールのようにぽーんと宙に舞い、地面に激しく叩きつけられ、ごろごろと転がってようやく止まる。
「ナ……ナナルゥ!!」
 倒れた体を起こそうとし、失敗して再び倒れこみながらヒミカが悲痛な叫びを上げた。
 満足に動けるスピリットは、この場には最早一人としていない。
 ナナルゥは抉られた左目の部分を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。体にはまるで力がこもっておらず、ふらふらと危うい足取りながらそれでもナナルゥは印を組む。
「……まだ……いけます。……マナよ、地獄の業火となりて敵を包み込め!! アポカリプス!!」
 ナナルゥが最後の賭けとも言える魔法を発動する。
 強大なマナがナナルゥの手に収束していく。痛めつけられた体でのあまりに多大な魔力の制御。それだけで飛んでしまいそうな意識を繋ぎとめるナナルゥのその必死の表情に、薄い嘲笑で答えるメダリオ。
101支援:04/12/03 09:59:36 ID:8xJkzXa+
 
102あなたを見つめる私・前編 26/34:04/12/03 10:00:35 ID:GFmfPx+G
「おや? まだそんな力が残っていましたか。まさかこれが必要になるとは思いませんでした。誇ってもいいと思いますよ」
 メダリオが左手をかざすと黒い氷刃がナナルゥを包み込んだ。
「きゃあああぁーーーーっ!!」
 黒い氷の刃が、神剣魔法の為に集まっていたマナを全て凍て付かせ打ち消しながら、ざくざくとナナルゥの体を容赦無く切り刻む。
 すべやかな肌を切られ、しなやかな肉を裂かれ、白い骨すらも見える全身の傷口からまるで滝のように血が流れ出す。
 最後の切り札すらもあっさりと打ち消され、ナナルゥは己が作った真っ赤な水溜りにびしゃりと音を立てて倒れた。
「ふふっ」
 メダリオが手の上でもてあそんでいたナナルゥの左目を口に放り込む。
 口の中で眼球がぷちりと弾けマナへ返る感触に、メダリオは満足気な笑みを浮かべた。
「テムオリンは手を出すなと言っていましたが……こんなくだらないゲームはさっさと終わらせてしまいたいんですよ、僕は」
 スピリット達は皆重傷ながら、回復魔法は相手の隙を見つけなくては使えない。
 だがその為の隙を作ろうにも、隙を作る為に戦う者があっという間にやられ、傷つき、回復を必要とする状態になってしまう。
 その繰り返しでマナがどんどん消費させられていく。
 じわじわといたぶられる様な戦いは、圧倒的な実力差を示すもの。
 この上無く不快ながらも、状況を打開する手段は見当たらない。
 それでも、どんなに完膚無きまでにやられても、諦める訳には決していかない。それはこの場にいるラキオススピリット全員の共通意識。
「くぅっ……!!」
 ファーレーンがよろけながらも立ち上がる。
「へぇ。まだ動けたんですか。なかなか楽しませてくれる」
 ファーレーンは答えない。いや、答える気力すら残っていないと言った方が正しい。
 仮に気力があったとしても、メダリオの軽口に答えるかどうかは定かでは無いが。
103あなたを見つめる私・前編 27/34:04/12/03 10:04:58 ID:GFmfPx+G
 『月光』を構え、走り出す。
「せあーーっ!!」
 あらん限りの力を込めた月輪の太刀。
 しかしその太刀筋に、いつもの黒い閃光の如きスピードは見る影も無い。
 キィンッ!!
 最大速で放っても軽く受け止められた斬撃は、やはり造作も無く弾かれる。
 メダリオはそのままファーレーンの首を掴み、片腕で軽々と持ち上げた。
 首が絞められる。血管どころか気道までも握り潰され、ファーレーンの顔がみるみる青ざめていく。
「く……あぁ……」
「お、お姉ちゃんっ!!」
 ニムントールの悲痛な叫びに、メダリオはまたも薄く笑い饒舌に語る。
「ふふ、妹の目の前で姉をくびり殺すというのもなかなか良いものですね。そうですね、最後に妹に言い残す事はありますか? どうせすぐに後を追わせて差し上げますけれど。あなたが寂しくないように。慈悲深いでしょう?
 何なら命乞いをしても良いですよ。妹の命を差し出す代わりに自分の命を助けてくれと言うのならば、多少は考えなくも無いですよ?
 大きな声ではっきりと言ってください。妹にもよく聞こえるようにね。ははははははっ!!」
 余裕の表情でファーレーンの首を絞めていた手を僅かに緩める。
 ファーレーンはようやく気道を確保し、大きくむせ、息を吸い込み、
「ふッ!!」
 口に溜まっていた血を吹き付けた。
 たとえ自らの死を目前にしても、勝負は絶対に捨てない。
 仲間の為に、ニムントールの為に。
104支援:04/12/03 10:06:56 ID:8xJkzXa+
 
105あなたを見つめる私・前編 28/34:04/12/03 10:08:24 ID:GFmfPx+G
「!?」
 瀕死の相手にここまでの抵抗を受けたのは初めてだったのだろう。
 油断していたメダリオの左目を、ファーレーンの吹いた血が狙い違わずつぶした。
 僅かな隙が生まれた。
 ゼロコンマの勝率に挑むには、そのほんの僅かな可能性を強引にこじ開けねばならない。
 今がその時。
「たぁぁぁぁぁぁっっ!!」
「てやぁぁぁぁぁっっ!!」
 セリアとヒミカの同時攻撃。
 セリアは既に足を折られている為にウイングハイロウでの突撃、ヒミカも全身から血を流しながらの特攻。
 鮮血の尾を引きながら、二人はメダリオに突っ込む。
 後先を考える必要は無い。今勝たねば、その後など無いのだから。
「こざかしい!!」
 メダリオはファーレーンの首を持っていた手に力を込めた。
 ごきりという骨の折れる鈍い音と共に、ファーレーンの全身からスイッチを落としたようにぶらんと力が抜ける。
 更にメダリオはそのファーレーンの体を振り、突っ込んでくるセリア目がけて飛ばした。
「!!」
 セリアは突進の勢いを抑えきれず、ファーレーンの体にぶつかり、地面を転がる。受け止めたファーレーンの、力のこもらない体を庇いながら。
 そこにハリオンが這うようにしてやってくる。
106あなたを見つめる私・前編 29/34:04/12/03 10:12:33 ID:GFmfPx+G
「早く、ハリオン!!」
「わかってますぅ。アースプライヤー!!」
 相手の隙をついての回復魔法。首の骨を折られ、今にも金色の霧と化すところだったファーレーンの命を辛うじて繋ぎとめる事に成功した。
 残っていたマナを使い切り、ハリオンもまた気を失って倒れこむ。
 強烈無比なエターナルの攻撃をずっと防御しながらも、相手の隙を突いて部隊全体の回復を行ってきたのだから、今まで意識があったのが不思議なくらいだ。
 ハリオンがいなければ、既にこの場には生きているスピリットはひとりもいなかっただろう。
 一方のヒミカは、メダリオの死角から力を振り絞って熱風を伴った『赤光』を振るう。
 メダリオにとっては受けるに労しない攻撃ではあったが、メダリオは跳躍してそれを避ける。
 死に物狂いの相手の攻撃は避けた方が無難だと、メダリオは冷静に判断していた。少し時間をかければ相手は勝手に自滅する。
 まだ左目の視力は回復していない。窮鼠に噛み付かれるのは一度で十分だ。それすら十分すぎるほどの屈辱なのだから。
 しかし、メダリオが跳躍した先に、風を切り裂き神剣が飛んで来る。
 それはニムントールの『曙光』。
 文字通り全力で神剣を放ったニムントールは、そのまま力を使い切って意識を失い倒れる。
 ドスッ!!
「つぅっ!!」
 メダリオの二度目の不覚。空中にいて上手く行動を制御できなかった事に加え、ファーレーンの血によって作られた死角から飛んできた攻撃はしかし、メダリオの強固なオーラフォトンのバリアーに阻まれ脇腹に軽く刺さっただけ。
107支援:04/12/03 10:16:03 ID:8xJkzXa+
 
108あなたを見つめる私・前編 30/34:04/12/03 10:16:20 ID:GFmfPx+G
「まだだ!! 決まれえっ!!」
 ヒミカの追い討ち。
 流麗なる炎の舞と称されたヒミカの剣技が、フィラメントの最期の瞬きの如き光を伴い打ち込まれる。
 それをメダリオは『流転』の流れるような一振りで軽く叩き落した。
「ふん!!」
 ガキィン!!
 剣を叩き返され、ヒミカも地面に叩きつけられる。
「かはぁ……っ!!」
 ヒミカは受身を取る事も出来ず、地面に落下激突しごぽりと血を吐き出す。口の中が切れたのでは無い、内臓から逆流する大量の赤。
 ヒミカの下で、血溜まりがみるみる面積を増していく。
 だが、それすら命がけのおとり。本命の攻撃はセリアのもの。
 メダリオの死角から回り込んだセリアが、メダリオに浅く突き刺さったままの『曙光』の後部に『熱病』を叩きつける。
 質量さえ伴うオーラフォトンのバリアゆえ、逆に『曙光』が固定され、抜けていなかったのを狙った一撃。
「あたれぇっ!!」
 事態というものは、およそ考えうる可能性を超えて展開する事がたまにある。
 それは偶然とか奇跡とか、或いは運命としか言いようが無い。
 セリアの最後の力を振り絞った『熱病』の一振りは、『曙光』の後部にまるで吸い込まれるように命中した。
 『曙光』が衝撃の分、メダリオの体に深く突き刺さり、肉を抉る。
「ぐあぁっ!!」
 脇腹を大きく貫かれたメダリオが空中でよろける。
109あなたを見つめる私・前編 31/34:04/12/03 10:20:29 ID:GFmfPx+G
「くうっ!!」
 脇腹から血を流しながら、それでもメダリオは地面に両の足で着地した。
 それは力を全て使い切り、地面に墜落したセリアとは対照的な姿だった。
「窮鼠猫を噛むとは言いますが……よくもここまでやってくれましたね」
 だが、そのメダリオの言葉は、もう言葉を発する本人以外他の誰の耳にも届いていない。
 そこにいるスピリットは、全員が意識を失っていたから。
「止めといきたいですが……苦しむ姿を見れないのは少々興が乗りませんね」
 溜め息をついてひとりごつ。
「まぁいいです。一つ派手にぶちまけますか」
「待ちなさい」
「? 誰です?」
 突然にかけられた声に、メダリオは振り向く。
 メダリオを止めた声の主は時深。
 時詠の力でこの惨状を見、急ぎ駆けつけてきたのだ。
 息を切らしながらも、時深は構える。
「あなたとはいずれきっちりお相手します。今は退きなさい」
 別の戦場からそのまま全力で走ってきて時深も相当に疲れているとはいえ、今戦えば脇腹に大怪我を負ったメダリオに対し、時深の方がまだ優位だろう。
 だがそれは、この場に倒れているスピリット達の命の危険をも意味する。
 全員に一刻も早く治療をせねば危ない。ましてやここでエターナル同士が戦ったのでは、攻撃の余波で止めが刺される事もありうる。
 だから時深は、今この相手を倒す事を諦めてでもそう提案した。
110支援:04/12/03 10:22:18 ID:8xJkzXa+
 
111あなたを見つめる私・前編 32/34:04/12/03 10:24:27 ID:GFmfPx+G
「ふふっ、わかりました。正直このスピリット達の足掻きは予想以上でした。今日のところは引き上げましょう。つまらないゲームかと思っていたが、なかなかどうして楽しくなりそうだ」
 すんなりとメダリオは引き下がる。狡猾にして冷静な判断力。
「では、またお会いしましょう。次も楽しませてもらえる事を期待してますよ。願わくば、次はお互いにベストなコンディションであいまみえたいものですね」
 言って、酷薄な笑みを浮かべたままメダリオは飛び去った。メダリオの脇腹の血は、もう止まっていた。
 そこにようやく時深から遅れていた光陰達が到着する。
「な、何これ!? 一体何があったの!?」
 血の海と形容するにぴったりの惨状の中に倒れているスピリットの皆を見て、今日子が思わず息を呑む。
「そんなのは後だ!! まずはみんなの回復を!!」
 光陰とエスペリアが大急ぎで瀕死の皆に回復の魔法をかける。
 倒れていたヒミカ、セリア、ファーレーン、ニムントール、ハリオン。
 5人共重傷だったが、辛うじて一命を取り留めた。

 しかし、ナナルゥの姿だけが見つからなかった。
112あなたを見つめる私・前編 33/34:04/12/03 10:28:24 ID:GFmfPx+G
 とりあえず5人の傷はある程度回復させはしたものの、全員が命そのものであるマナを限界まで使い切っているので、回復力が低下しており、治癒魔法も思う程の成果を挙げられない。
 意識を失ったままの絶対安静の状態である。何はともあれ、早く休ませねばならない。
 エスペリアと今日子がそのままナナルゥを探す事とし、他の皆は一旦ラキオスに帰る事になった。
 ここに来たメンバーも、全員戦場からまっすぐ駆けつけてきたのだ。
 皆戦いで傷ついており、特にアセリアとウルカは最前線で戦っていた為に体力の消耗が激しかったし、年少のメンバーをここに残すのはあまりに酷だろうという光陰の判断である。
 光陰と時深が自分達も残ろうと言ったのだが、二人の怪我がアセリアやウルカよりも重いのは誰の目から見ても明白で、結局は辛い役割を押し付ける事になると半ば理解しつつも、皆に押し切られてラキオスに戻る形になった。

 夜になって帰ってきたエスペリアと今日子の顔は、悲嘆の涙でぐちゃぐちゃだった。
 ずっと探し続けていたが、結局ナナルゥは見つからなかったのだ。
 スピリットは死体を残さない。見つからないという事は即ち既に死んでいるという事に他ならない。
 どこかで生きていると思いたくとも、あの惨状を思い出すと希望が殆ど無い事も解ってしまうのだった。
113あなたを見つめる私・前編 34/34:04/12/03 10:32:15 ID:GFmfPx+G
「私はナナルゥが生きてるって信じてる。他の誰が信じなくても私は信じてる」
 全身に包帯を巻いたままのヒミカは満天の星空を見上げながら呟いた。
「……そう」
 隣で同じように夜空に瞬く星をを見上げていた包帯だらけのセリアがそれに答える。
「ヒミカ……。それがあなたの強さなのか、それとも弱さなのか、私には判断がつかないけれど……私はあなたのそんなところが……好きよ」
 言ってセリアはヒミカに抱きついた。
「セ、セリア!?」
 セリアは声をあげる事も無くただ静かに泣いていた。
 セリア自身、自分がなぜ涙を流しているのか判らなかった。なぜか涙が止まらなかった。
 ナナルゥに対しての涙なのか。
 それとも、ヒミカに対しての涙なのか。
 或いは、自分自身に対しての涙なのか。
 ただただヒミカの胸で涙を流した。
 ヒミカもそれに応え、セリアを固く抱きしめた。
 自分が今セリアに必要とされている事が、痛いほどに解ったから。
 そして、
 自分が今セリアを必要としている事に、気付いたから。
 そこから少し離れた木陰からゆっくりと立ち去るこれまた全身包帯だらけの一つの影。ハリオン。
「ふふっ。私の出る幕がありませんね〜。では、一足先に帰ってとっておきのケーキとあったかいお茶でも用意しておきましょうか。
 ファーレーンもニムントールも、そろそろまた死にかけて訓練所から運び込まれてくる頃ですしね〜」
1145スレ226:04/12/03 10:35:58 ID:GFmfPx+G
前編でした。
読んでいただけた方、ありがとうございます。
支援、ありがとうございました。
115名無しさん@初回限定:04/12/03 12:23:48 ID:8xJkzXa+
まずは乙でした。またハリオン姉さんに叱られますがリアルタイムで
拝読させて頂きましたw
いててて...ナナルゥの負傷シーンはちょっと痛みが走りましたが、
それを補って余りあるSSだと思います。
前書きで226さんも書かれてますが、余り卑屈にならなくってもいいんじゃないでしょうか。
「読ませる力」がなけりゃあっさりスルーされちゃうだけの事だし。
ええ、しっかり読みましたともw
例によって先読みせずに後編お待ちしてます。マジで。
暇があれば雑談スレ(通称・詰所の裏)にもお越し下さいな。
116名無しさん@初回限定:04/12/03 16:33:16 ID:dtu1GHT7
乙っす〜。
感想を携帯から投稿してるのに3度も阻まれた〜(泣
今からバイトなんで、帰宅後感想をカキコさせていただきます。
117名無しさん@初回限定:04/12/03 20:31:30 ID:si/bQEGq
>>226さん
乙です。しかしメダリオ強いですね……
ファー、首折れてるっって!と思わず叫びそうになるほど戦闘シーンが書き込まれていて固唾を呑んでしまいました。
微妙に素直なセリアもいいなぁ……
そしてナナルゥ。悠人との別れの後の自立はどうなるのか。とりあえず目は痛いです(汗
オリジナル神剣等は余り気になさらずとも良いかと。出る必然性があれば。
ただ基本設定を大きく外すと敬遠する方もいらっしゃるのでその辺は匙加減一つだと思います。
私個人的には気にならないのです。要は補完が出来れば楽しいですからw

>>68さん 大したものじゃないのでどうかお気になさらずに。

>>69さん そうなんです。実にいじり易い娘なんですよね、セリアってw

>>70 憂鬱さん あ、突っ込んでくれると思ってましたw

>>71さん ハァハァして頂けたようでよかったですw でもセリアは百合じゃ(ry

>>72 髪結いさん う、こっちの方が面白い……実は髪結いさんの方がネタ持ってるんじゃ?w
118名無しさん@初回限定:04/12/03 20:45:19 ID:4n5ZwzcC
>5スレ226さん
色々な意味で数多くのピンチに、読みごたえをたっぷり感じながら楽しませて頂きました。
前作(背後から悠人を不意打ち)に続いて、すっかりメダリオが非道の男に。
タキオスじゃこうは出来ないなぁと、ロウエターナルの使いどころに惹きこまれます。
長文お疲れ様でした、後編(あるいは中編でしょうか?)お待ちしてます。

>信頼の人さん
セ、セリアがますます新境地に追いやられていく……w
最近「いけませんね。」だけで反射的に笑い出すようになってしまっています。
119名無しさん@初回限定:04/12/03 21:58:36 ID:nMBePBCg
冒頭のやり取り、なぜかドリフの夫婦コントを思い出した orz 

ナナルゥの手管、悠人の退路をどんどん塞いでいくW 
メダリオかっちょえー。ホントはこういう冷徹冷血冷酷キャラだったんだろうなー。
ゲームじゃ何の変哲もないエターナルだけど。ファーボロ雑巾。盲ナナルゥ。
私もナナルゥエターナル話を妄想した時メダリオを敵役に考えてたり。設定にある「超絶の剣技」
が煌めくのを期待してます。メダリオの○○とかも。ってメダリオヒロインみたいな感想だなw

オリジナル神剣は、オリキャラとのコラボがなければ拒絶反応は出にくいかと。たぶん。
ところでユート君はどこに?ナナルゥはどこに?


そういや関係ないけど、時深さんの同僚の名がEXで出てるのに全然活用されないな……
記憶にないけどさ……
120名無しさん@初回限定:04/12/03 22:43:59 ID:cb8DooRt
GJです。
バイト終わって、カラオケ屋からレス〜

では、感想〜
「俺はこのキャラが好きなのに、なんでこんなに酷い事をするんだ〜」と思い、キャラに萌えている人にとって、このSSは拷問に近いでしょう。

しかしながら、彼女たちがいるのは戦場であり、戦っている以上、酷く傷つき、死ぬ事もあります。

賛否両論が出るSSだと思いますが、戦場の現実を書くと言う点では、優れたSSだと思います。

…結構、精神に響きますが

帰宅後、ヘリオンたんを描いて癒されてきます。(2割くらいル○○リが入った感じになってしまいますが…

…アセリアとかカラオケ屋に入らないかなぁ〜(歌えるのが18禁ゲームの曲か古い曲に偏ってるんで
121名無しさん@初回限定:04/12/04 00:41:40 ID:iT+RylmT
おお、セリアとナナルゥとメダリオ分が補給されてる。

>>67 信頼さん
GJです。セリアさんはいじられキャラなんですね・・・
だがそれがいい。セリアはいじられたり空回ってなんぼ
・・・いや、セリア好きですよ?
これからも期待してますヒミカさん(何か違う

>>114さん
こっちの目まで痛くなりそうです。ナナルゥ・・・
何はともあれGJです。メダリオカッコいい!
そーですよね、ゲームでは弱いけどヤツも本来は相当強いはずだし。
後編も楽しみにしております。

こういう状況で投下するのも胃に悪い。でも投下↓
122Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:44:10 ID:iT+RylmT
「お、おにいちゃーーーん!いやぁーー!離して!離してよぉ!」
闇の中、佳織の悲痛な叫びが響きわたる。
「我が主からの伝言がある、正確に伝えよう・・・」
黒き翼の女が淡々と告げる。
「佳織は僕のものだ。取り戻したければ、追って来い。
僕がいる場所まで這ってでも辿り着いてみろ。
僕の『誓い』で貴様の『求め』を破壊してやる。」
脳裏にヤツの・・秋月瞬の蔑んだ笑みが嫌でもよみがえる。
「シュン殿は我等の主。手前どもは『誓い』のもとに集う剣。」
『誓い』の名に『求め』が激しく反応する。
(砕け!契約者よ、『誓い』を砕くのだ!)
『求め』の憎悪が流れ込んでくる・・・
「そうだ・・・『誓い』を砕く・・・それが・・・我の・・・」
俺は神剣を構え意識を集中させる。
(邪魔をするものに死を・・・『誓い』の眷属に滅ぼせ!)
黒い妖精に向けてオーラフォトンを展開させる。
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
咆哮と共に放たれた光の矢が黒き妖精を・・・そしてその腕に抱えられた
少女を飲み込む。
123Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:46:08 ID:iT+RylmT
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
ガバッ・・・!
「はぁ・・・はぁ・・・ゆ、夢か・・・。」
ここ最近毎日のように見る悪夢。
忘れもしない・・・佳織が攫われたあの夜の出来事だ。
(うるさいぞ・・・契約者よ・・・)
傍らの『求め』が不満をいってくる。
「うるさい、バカ剣!文句があるなら夢の中のお前に言え!」
悪夢のせいで最近満足に眠れずイライラしている俺はバカ剣に当り散らす。
(それは八つ当たりというものだ・・・契約者よ・・・)
「そんなことは判ってるさ。だけどそもそもお前が・・・」
コンコンコン・・・
バカ剣と口論していると扉を叩く音がした。
「ユート様、少しよろしいですか?」
エスペリアがドア越しに尋ねてくる。
「・・・あ、ちょっと待ってくれ・・・」
バカ剣と話していて着替えるのを忘れていた・・・さすがに下着姿はマズイよな・・・
俺は慌てて着替えを済ませる。
124Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:47:20 ID:iT+RylmT
「よし。いいよ、入ってくれ。」
「失礼します。お休みのところ申し訳ありません。」
「いや、いいよ。ちょうど起きたところだしな。」
気分は最低だったが悪夢のせいで目は冴えていた。
「・・・あの、大丈夫ですか?ここのところお疲れのようですが。」
気分が顔に出てしまったのか彼女の顔が心配そうに曇る。
「いや、平気さ。ちょっと最近訓練を頑張りすぎたからな・・・
最近入った訓練士が厳しくてさ、はは。」
エスペリアを安心させる為に慌てて笑顔を浮かべながら話す。
・・・仮にも隊長だし皆に心配を掛けさせる訳にはいかないもんな。
佳織を助ける為に前以上に訓練してるのも事実だし。
「そうですか・・・それでしたらよろしいのですが・・・」
彼女にしては歯切れの悪い言葉。
勘のいい彼女は俺の無理に薄々気付いているのだろう。
「ところで何かあったのか?朝食には早いみたいだけど。」
話題を変えるために彼女が来た理由を尋ねる。
「そうでした。レスティーナ様から至急城まで来るように、とのことです。」
「レスティーナが?何だろう?」
マロリガンか帝国に動きでもあったのだろうか?
「何でもユート様にお客様だとか・・・」
「客?俺に・・・?」
俺にはこの世界に訪ねてくる知り合いなどはいないはずである。
まさかウルカや瞬が来るわけもないだろうし・・・
「まぁ、行ってみればわかるか・・・」
俺は『求め』を掴むと城へ向かった。
125Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:48:33 ID:iT+RylmT
「ユート、遅いでしょう。客人を待たせるなどと・・・」
急いだつもりだったが待たせてしまったらしくレスティーナに怒られる。
「お気になさらず。突然の訪問をしたのは私の方なのです・・・」
物静かな美しい声だった。
俺は慌てて客人に謝罪しようとする。
・・・綺麗な女性だった。
絹のように滑らかな髪、雪のように白い肌、そして白の中に映える赤い瞳。
美人は見慣れていると思っていたが、そうでもなかったらしい。
こちらの視線に気付いたのか微笑をうかべる。
俺は謝罪しようとしていた事も忘れて見惚れていた。
「・・・・ト!ユート!?聞いているのですか!?」
「うわっ!申し訳ありません!」
ボーっとしているのをレスティーナに咎められ我に返る。
「まったく・・・遅れてきたかと思えば・・・何をぼけっとしているのです!?」
「い・・いや・・・そ、そう!きたるべきマロリガンとの戦いに関しての部隊配置に関して
色々と悩みがありまして・・・」
まさか隣の美女に見惚れてました、とも言えないのでなんとか誤魔化そうとする。
「そうなのですか・・・?そうは見えませんでしたけど?」
何だか怒ってるみたいである・・・もしかしなくてもバレてる・・のか?
「・・・まぁ、いいでしょう。この方はある方の使者としてラキオスに来られたのです。」
気を取り直したらしいレスティーナが話をもとに戻す。
126Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:49:21 ID:iT+RylmT
「ラキオスのエトランジェ、『求め』のユート様ですね。
私はイオ。スピリットです。出会えたことをマナの導きに感謝します。」
イオと名乗るスピリットは深々と頭を下げる。
「顔を上げて下さい。えーと、ラキオスのエトランジェ、悠人です。よろしく。」
丁寧な挨拶に戸惑いつつ俺も礼を返す。
・・・しかし何だろう?違和感を感じる。
神剣を持ち間違いなくスピリットだとは判るのだが・・・
アセリア達とは気配からして何か違う気がする。
そもそも色が判らない、瞳は赤いけど赤スピリットじゃないみたいだし・・・
「私がラキオスにやって来たのは他でもありません。
主からの伝言を持って参りました。
若く聡明な女王レスティーナ様と『求め』のユート様に、と。」
イオは厳重に封のなされた書簡を取り出した。
・・・あれは帝国の紋章?書簡は帝国のものらしい。
ということはイオは帝国のスピリットなのだろうか?
しばし無言で読んでいたレスティーナが顔を上げる。
「わかりました、イオ殿。すぐに使者を出しましょう。
マロリガンとの開戦も近い・・・急がねばならないでしょう。」
「ありがとうございます・・・主もお喜びになるでしょう・・・」
一体どんな話が進んでいるんだろうか?
何だか取り残された気分がする。
「ユート。」
「はっ・・・」
「ラキオスのエトランジェ、『求め』のユートに命ずる。
イオ殿と共にラキオスの使者としてこの書簡を届けるように。
すぐに出発しなさい。」
「はっ、了解しました。」
マロリガンとの緊張が高まる中の任務だ。
レスティーナの態度からも事の重要さが感じられる。
俺は頭を下げるとすぐに館へ戻った。
127Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:50:13 ID:iT+RylmT
イオと共に館へ向かう途中、俺は彼女に尋ねた。
「イオ・・・一つだけ聞かせて欲しい。」
そう、これだけは今すぐにでも尋ねなければならない。
「君は帝国のスピリットなのか?」
もし、そうならば・・・
「いえ、違います。」
あっさりとイオは否定する。
「書簡のことですね?確かに私の主は以前帝国に仕えていたようですが・・・
随分前に出奔したそうです。私と出会う前なので詳しくは知りませんが。
今はどこの国にも仕えてはいません。書簡はたまたまあれしかなかったようです。
主はそういうことに無頓着ですから、誤解させてしまったようですね。」
イオが頭を下げて謝罪する。
「いや、頭をあげてくれよ。こっちこそ悪かった。何か早とちりしたみたいで。」
慌てて俺も頭を下げる。
「いえ、妹が帝国に攫われたと聞きました。
そこに帝国の者かもしれぬ相手が現れたのです。無理もないでしょう。」
レスティーナから聞いたのだろうか?イオはこちらの事情を知ってるようだった。
「それにしても私のようなスピリットに対しても頭を下げるなんて驚きました。」
そういってイオは微笑んだ。
「そんなのは当たり前だろ?スピリットとか人間は関係ないさ。」
俺も笑いながら答える。別段特別なことをしてる訳じゃないしな。
128Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:52:02 ID:iT+RylmT
「当たり前・・・ですか?」
「この世界の人間にとってスピリットが道具に過ぎない事は知ってるよ。
でも俺にはそんなこと関係ない、ラキオスのスピリットだって皆大切な仲間さ。」
心からそう思う・・・俺が今日までやってこれたのは彼女達の支えあっての
ことなのだから。
「・・・あなたの様な方もいるんですね・・・」
イオが小声でなにか呟く。
「ん?何か言ったか?」
「いえ、我が主のような方が他にもいることに驚いたのです。」
「へぇ、そりゃ会うのが楽しみだな。」
そんなことを話すうちに館に着いた。

「お帰りなさいませ、ユート様。・・・こちらの方は?」
「あぁ、えーと・・・イオ、紹介するよ。彼女はエスペリア、
ラキオスのスピリットの纏め役かな。」
「初めましてエスペリア様。イオと申します。」
「エスペリアです。こちらこそよろしくお願いします、イオ様。」
深々と頭を下げる二人。うーん、さすが礼儀が正しいもの同士・・・丁寧だ。
「それでレスティーナ様の話はどのような?」
「それは・・・・」
エスペリアの問いに対し先程のことを説明する。
「・・・という訳だからさ、留守の間部隊は任せるよ。」
「はい、お任せ下さい。では旅支度をしなければなりませんね。」
「ああ、手伝ってくれると助かるよ。」
129Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:53:42 ID:iT+RylmT
必要なものをエスペリアと分担して用意することにし、
自室に必要なものを取りに行く。
「着替えはこれ位か。あ、砂漠も通るんだっけか・・・砂漠って夜は寒いんだよな。」
前にTVでそんな話を聞いた気がする。
「旅か・・・そういや戦闘以外でラキオスから遠出するのは初めてだな。
まぁ任務だからのんびりする訳にもいかないし、あまり変わらないか・・・」
戦争が終わって佳織を助けたら帰る前に旅をしてみるのも悪くない。
ふとそんなことを思う。皆と一緒に各地を巡るのも楽しそうだしな。
一般社会を余り知らないスピリット達にとってもいい勉強になるだろうし・・・
「って気が早いか・・・まだマロリガンと帝国が残ってる訳だし。
取らぬ狸の何とやらってやつか?」
・・・でも本当にいいかもしれないな・・・その為には・・・
「早く帝国を倒し、佳織を救いださないとな・・・」
(ならば、我にマナをよこすがいい・・・)
突然『求め』が干渉してくる。
「くっ、最近は・・おとなしかったのに・・・またかよ!」
脳を掻き混ぜるかのような激しい頭痛が襲ってくる。
(あの白き妖精からマナを奪え・・・甘美なマナを・・・白き妖精を犯せ!)
脳裏にイオの淫らな姿が次々と映る。
抵抗するイオを押し倒し邪魔な服を引き裂く。
露になった白く滑らかな肌に舌を這わせる。
嫌悪に顔を歪めつつも次第に感じはじめ秘所が濡れてくる。
涙を流し懇願する彼女を貫き、腰を打ちつける。
相手のことなど考えずただ自らの欲望のまま犯し続ける。
130Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:54:27 ID:iT+RylmT
「く、そ・・やめろ・・・そんな事して・・・たまるか・・」
夢か現か区別できぬ程リアルなイメージに心が揺らぐ。
(抵抗するな・・・汝とてあの妖精の美しさに惹かれたのだろう?
犯せ・・・自らの求めに身をゆだねるがいい)
「俺は・・・そんなこと・・望んじゃ・・いない・・」
激しい頭痛で集中力が磨り減り理性が飛びそうになる。
キィィィィィィ−ン・・・
バカ剣からの干渉が更に強くなる。
(マ・・を奪・・!失・・・・し・・が・・ナを・・・・戻・・!
エタ・・・・・・に・・わ・・・・我・・・・・・を!)
全身が切り刻まれるかのような痛みでバカ剣の声も聞き取れない。
視界が歪み激しい嘔吐感に襲われる。
「う・・・・がぁ・・く・・」
握り締めた手に爪が食い込み血が流れ出す。
その痛みがかろうじて俺の意識を保つ。
「はぁ・・ぐ・・い、いい加減に・・しろ!!!」
力を振りしぼりバカ剣を床に叩きつける。
ようやく諦めたのか干渉が収まる、なんとか耐えられたらしい。
そのことに安堵したとたん体から力が抜け、視界が黒く染まっていく。
「く・・・あぁ・・・」
廊下を走る足音を聞きながら俺は意識を失った。
131Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:55:29 ID:iT+RylmT
ユート様の部屋から強い神剣の反応を感じた私達は急ぎ彼の部屋に向かう。
部屋についた私達は床に倒れたユート様だった。
「どうやら『求め』がユート様の意識に干渉したようですね。」
ユート様をベッドに移し、手の怪我を癒したエスペリア様が呟いた。
「このような事はよくあるのですか?」
「これほど強い反応を感じたのは久々ですが、干渉は度々あるようです。
ここ最近は比較的大人しかったのですけど・・・
おそらくマナに飢え始めているのでしょう。
マロリガンとの緊張は高まっていますが依然戦闘は始まっていませんから。」
エスペリア様は辛そうに顔を伏せる。
「『求め』の望みは私達を犯し、殺し、自らのマナとすることです。
契約者に対するその強制力は自我を壊すほどだと聞きます。
それでもユート様は耐えていらっしゃるのです・・・私達を傷つけまいと・・・」
先程の会話を思い出す。神剣の干渉、終わらぬ戦争、攫われた妹・・・
過酷な現実の中、どうしてあんなふうに笑えるのだろう?
それともあの笑顔の裏に苦悩を隠しているのだろうか?
「う・・・ん・・?俺はいったい・・・?」
そんなことを考えているうちにユート様が目を覚ました。
132Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:56:29 ID:iT+RylmT
「俺は・・・そうかあのまま気絶しちまったのか・・・」
まだ気分が悪い。久々に気合の入った干渉だった。
まったく油断するとすぐこれだ・・・
「ユート様、大丈夫ですか?」
エスペリアが心配そうに尋ねてくる。
「ああ、何とか・・・いつものバカ剣の干渉だよ。久々なんでちょっと疲れたけど。」
本当はちょっと所の騒ぎじゃないんだが心配させたくないのでごまかすことにする。
「出発は明日にした方がいいかもしれませんね。」
イオがそんな提案をしてくる。
「い、いや、平気だよ。心配させちまったみたいで悪い。」
イオの顔を見るとさっきのことを思い出してしまう。
うう・・いかん。心配してくれてるイオに何だか申し訳ない。
「・・・どうかなさいましたか?」
イオが怪訝そうに俺の顔を見ている。
「な、何でもない。うん、もう大丈夫だ。」
慌ててベッドから起き上がる。
「本当に大丈夫なんですね?」
エスペリアが念を押してくる。
「ああ、平気さ。マロリガンとの戦いはすぐにでも始まるかもしれないんだ。
のんびりしてる時間はないからな。」
「・・・畏まりました。ではすぐに荷物をお持ちします。」
エスペリアが部屋を出て行く。
「じゃあ俺達もいこうか。」
イオを促し俺達も部屋をでる。
133Gypsophila elegans 第2章・出会い:04/12/04 00:57:08 ID:iT+RylmT
エスペリアに用意してもらった荷物を受け取り館の外へ出る。
「はぅー。ユート様と二人旅・・・いいなぁ。」
「ユート様は別に遊びに行くわけじゃないのよ?」
「そうですよユート様がいない間、気を引き締めなくてはいけませんよ。」
「はぁ・・・面倒。」
どこから聞きつけたのかスピリット隊の皆が見送りに来ていた。
「それじゃ行ってくるよ。ヒミカにファーレーン、エスペリアの補佐を頼む。」
「はい。いってらっしゃいませ、ユート様。」
「お気をつけて・・・」
「ヘリオンとニムも頼むな。ランサにいる皆にも無理はしないように伝えてくれ。」
「は、はい!がんばります!」
「・・・面倒くさい。あとニムって呼ぶな。」
「もう・・・ニムったら・・・」
「あはは、じゃあ行ってくるよ。」

こうして俺達はラキオスを後にしソーンリームへ向かうことになった。

続く
134あとがきみたいなもん:04/12/04 01:10:45 ID:iT+RylmT
なにやら久々の投下。イオルートの続き。
主人公ようやく登場。でも作品内時間進まず。
『求め』も登場。とりあえず殺せー犯せーモード。
今後スピの出番が果てしなくなくなる予感。
全員に見せ場やるとまとめらんないし・・・私の腕では。
あとがきになってないけど終わり。
読んでくださった方有難う。
・・・・萌えを人に伝えるのは難しいです・・・
135名無しさん@初回限定:04/12/04 03:38:30 ID:AZBCnOI8
>>73
GJ!
こういう絶望的なバトル描写大好きです。
これだけエターナルっぷりを発揮させて貰えばメダリオも本望でしょうw
ここはミトセマールタソのより過激な暴力シーンに期待。


まぁそんなに凹んでるとは思いませんがw
雑魚スピスレに限らず原作ファンが二次創作敬遠するのは良くあることだし、
嫌なら見るなっつっても公に公開している以上うっかり見ちゃう人も居ると思うので、
そういう声が出てくるのはホントしょうがない事ではないかと。
ここのSSは毎回楽しみにしてる私でも、某SSサイト見たときは同じような事思いましたからw

ま、お互い野良犬にでも噛まれたと割切(ry

つーわけで、私も次回作楽しみしてまー。

>>134
同じくGJ!
エスペリアは同行しないって事は、やはりこの後の展開は二人で(ry
136名無しさん@初回限定:04/12/04 09:00:31 ID:6hTQ883D
>>134 霞さん
エスペリアエンドが無くなりました。(エス調)
イオの視点で見ると悠人の苦しみも別の意味が付加されるんですね。
辛い過去という意味では最強?のイオが今正に苦悩に直面している悠人にとってどういう存在になるのでしょう。
続きが楽しみです。
 >121 あー……少なくとも次のヒミカ嬢はやや大人しいかも知れません(汗) やや感動系なので(自称)

>>118 道行さん それはいけませんね。ヘリオン嬢がヤキモチ焼いちゃいますよw

ああ、117でまた変なアンカーつけて……すみません、5スレ226さん(死神さん……は変だしなにかないかなぁ)
137名無しさん@初回限定:04/12/04 12:35:47 ID:YUZN51TV
>霞さん
『求め』がいい感じで反抗期ですね。
イオの呟きに込められた想いが届くのは何時の日か。
章題どおり「出会い」を果たした二人がどのようにお近づきになっていくのか楽しみです。
138名無しさん@初回限定:04/12/04 15:04:53 ID:Ix8iWJKe
>>73
ああメダリオが格好良い……何か出し抜かれた気分です(ぇ
戦闘描写も生々しくて好きです。雑魚スピ達が切り刻まれてるの見て興奮してる自分はもう駄目だ。
血風飛び荒ぶ続編をお待ちしております。

>>霞氏
お疲れ様です。
……二人きり、イオと悠人が二人きり。
「昨夜はお楽しみでしたね」的な展開になるのでしょうか。どうなのか。

自分も早いうちに続編を仕上げます。草稿は既に出来上がっているのであとは書くだけです。
それが一番時間かかるんですけどね!(自爆
漢度で一杯なものにしたいです。
139名無しさん@初回限定:04/12/04 15:09:41 ID:sbbQ/8O6
> 5スレ226氏
 まずは、おかえりなさい(握手)
好みは人それぞれで、どうしても個と個がぶつかることはあるけど、
無難無難にしていったら物語など無くなってしまいますしね。
書き手側にもある程度は覚悟と努力は要るとしても。
 さて、何だかすごい展開に…うん、戦ですもんね。
きっと無駄な苦しみではないのでしょう、スピ達にとっても読者にとっても。
(ヒミカとセリアのやりとりに泣きそうになったのは秘密だ)

>霞の人氏
無事(?)出会って、次回は二人旅!二人は(ry
イオも霞の人氏もがんがれ〜、悠人ってばヘタレだから…
140名無しさん@初回限定:04/12/04 15:34:56 ID:oKeY2Q9B
そういえば、ニム主演の長編SSって見ないなぁと思ってネタだけ考えてみた

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・

うわ、ニムってムズッ!
SS書けるとはハナッから思ってなかったけど、ネタさえも思いつかなかったorZ
141ふたりはお菓子屋1/5:04/12/05 00:19:07 ID:rNhqj2sm
「はい、ヨフアル二つですね〜?それじゃあお代はこちらに。熱いので、ふ〜ふ〜して食べてくださいね〜」
「うん、お姉ちゃんありがとー!」
 町の一角にあるお菓子屋さんの、通りに面した窓から柔らかな声が響く。
ありがとうございました〜、と袋を抱えた子どもを見送る姿は、見る者の心まで本人と同じような
春の野原の雰囲気に染めるほんわかとした笑顔。深々と下げた頭をゆったりとしたペースで上げて、
その笑顔の主、ハリオンは店の中を見回した。
 小ぢんまりとした店舗の中にはヨフアルの他にも色とりどり、種類も様々なケーキ類やクッキー、
ビスケットなどが並んでいる。気を抜くと甘い匂いに誘惑されてふらふらと手を伸ばしそうに
なっているけれど、さすがに商品に手をつける事はしていない。
「今日のお仕事が終わったら、おみやげに頂きましょうかね〜」
 名残惜しそうにケーキの棚から視線を戻し、買い食いのお客さん用の窓に身体を向けた。
 時刻はお昼のピークを過ぎたあたり。店の中にも通りにも、ほとんど客の出入りは無く、
ぽかぽかと降り注ぐ柔らかな日差しを浴び、行き過ぎる爽やかな風に吹かれて、ハリオンはそっと目を閉じる……

 そのまぶたの裏に映る光景は、レスティーナが女王に即位し、現金による取引が出来るようになった頃のこと。
悠人の提案により金銭管理を学ぶと言う名目で部隊全員にお小遣いが支給され、
手続きのことを考えると訪れることは決して認められ無かったお菓子屋さんに
ちょくちょくと足を運ぶうちに店主に顔を覚えられてしまったのだった。
 ハリオンも、店の菓子の味に惚れこみ、買って帰っては自身のレシピを強化すべく研究する日々を送った。
 そんなことを続けていれば、困ったことになるのも当然のことで。
142ふたりはお菓子屋2/5:04/12/05 00:20:14 ID:rNhqj2sm
「ねぇヒミカ〜。ちょっと、お願いがあるんですけど〜」
「お願い?ハリオンが、私に?」
 少しお茶でもどうですか〜、と誘われた先でヒミカはこの発言を聞いた。
珍しいこともあるものだとヒミカは目を丸くしてハリオンに向き直る。目はいつものように笑みの形を整えているが、
眉を申し訳無さそうに寄せて両の手のひらを口元で合わせるポーズは、悠人が広めたハイペリアの「お願い」の
仕草だった。ヒミカからちょっとした手伝いを頼む事はままあるが、大抵を驚異的な速度と出来で仕上げてしまう彼女が
何を頼むというのか。私にできることならいいけれど、とヒミカは覚悟しながら次の言葉を待つ。
「あの、ですねぇ……お金を、貸してください〜」
「……はい?」
「だから、お金を〜」
「待ちなさい。頼みごとの中身は分かったから、どうしてお金がいるのか聞かせてちょうだい」
 ハリオンがかなりの頻度で町に出かけていることは周知のことだった。そして帰ってきては厨房に引っ込み、
食卓にデザートが追加されている。材料なり何なりを仕入れているのなら食材費で済ますことも
彼女なら可能だろうから、他にはどんな使い方をしてしまっているのやら。
「えぇっとですねぇ、城下町に、とぉってもおいしいお菓子屋さんがありましてぇ〜……」
 ゆったりとしたペースの語り口に、ヒミカは思わず言葉の切れ目のたびにうん、うん、と相づちをいれてしまう。
初めてその店のお菓子を食べたときの感動、店のたたずまい、品揃えなど、恐らく本題に関係無さそうなことまで
飛んでいく話を、いつものことだからと根気良く聞き続ける。下手に修正しようとするとまた最初から始まってしまう
ことは経験から分かっているので、こうするのが一番早い。はたから見れば舟をこいでいるような間隔で頭を
上下していると見えるのは、かなり恥ずかしいのだけれど。
143ふたりはお菓子屋3/5:04/12/05 00:21:01 ID:rNhqj2sm
「それでですねぇ、真似をしようと研究の為に食べ続けているうちに、ついつい使い込んでしまって〜」
「うん」
「そこで、申し訳ないんですけどぉ、次の研究のために少し融通してもらえないかなぁ〜、と」
「う……ん、じゃないっ!ダメに決まってるでしょっ」
 危うくつられて頷いてしまうところを、ヒミカはすんでのところで首を左右に振りなおす。
「えぇ〜そんなぁ〜」
「あのね、無駄遣いをしちゃだめだって、ユート様も仰ってたでしょう。
オルファやネリーだってそんなにぽんぽん買い食いばっかりしてないわよ、
それなのにあなたって人は……はぁ」
「無駄じゃありませんよぉ、私がそのお店の味を再現できたら、
みんなももっと美味しいお菓子を食べられるんですから〜」
 うっすらと涙までためながら、合わせていた手の指を組んでハリオンはさらに「お願い」を続ける。
ずいっと詰め寄ってこられて、潤んだ瞳を向けられるのは誰であろうと苦手であろう。
「ダメ、そんなことに使うためには貸せません」
 ふいと身体をハリオンの正面から背けて、冷めてしまったお茶を一口。確かに、お菓子を専門店で買える位の
蓄えなら十分にある。けれど、今まで手伝ってもらった分の借りを返すのなら、お金よりも同等の労力でないと
筋が通らないとヒミカは思う。それに何より、ヒミカにも貯金をする理由があった。
144ふたりはお菓子屋4/5:04/12/05 00:22:26 ID:rNhqj2sm
「ど〜しても〜?」
 何時の間にかハリオンは向かいの椅子から立ち上がり、再び目の前で瞳を潤ませている。
「ど……どうしても!」
 町に出かけて通りかかった先で見かけた雑貨店。そのショーウインドウの中に納められたおしゃれな万年筆。
「うう〜」
「唸っても、ダメな物はダメだったら……」
 ヒミカたちが貰っている金額を考えれば、あと数ヶ月分の値段がついていた。
「しょんぼりですぅ〜」
「……あぁ、もう……」
 だけれども。やはり目の前でこれ見よがしに落ち込まれては気が重い。甘やかしてはいけないと思いはするが、
普段はどちらかと言えば頼りにしているのはヒミカの方だ。気取られないようにそっと溜め息をついて、
ヒミカは出来るだけ突き放した調子で呟いた。
「で、そのお店はどこにあるの?」
「え……?」
「そんなに美味しいお菓子を、あなたったら一人で食べちゃったんでしょ。私たちにはその物まねを出しておいて。
いい?私が食べたいから買いに行くの。話につられてつい買いすぎちゃうかもしれないけど、ね」
「ひ、ヒミカ〜ありがとう〜」
 落ち込みの底から幸福の頂点まで駆け上ったらしいハリオンは、感極まった様子でヒミカに跳びついた。
頭にくるくらい豊かな胸に抱えられながら、ヒミカは静かに万年筆を持つ自分のイメージを少し先に遠ざける。
 この行いがどのような結果を生むのか、この時点ではヒミカには知る由も無かった。
145ふたりはお菓子屋5/5:04/12/05 00:24:26 ID:rNhqj2sm
 そして、再び現在。
「ハリオン!店番の最中に居眠りしちゃダメだって何回言えば分かるの!」
 厨房から、追加のヨフアルを箱一杯に入れて運んできたヒミカがハリオンの肩を小突く。
その刺激よりも、鼻腔に届く焼き立てのヨフアルの香りに反応してゆっくりと目を開いた。
「えぇ〜、わたし、寝てませんよぉ〜?」
 しょぼしょぼと瞬きを繰り返しながら言っていても、説得力は無い。
「あのね、それじゃ今どのくらいの時間か分かってる?」
「はい〜。えっとぉ、お昼の休憩が終わって、ついさっき、男の子にヨフアルを二つ買って頂いてぇ……」
「そう、その頃からうつらうつらとし始めてたわけね」
「え、それじゃあ、今はぁ……?」
 答える代わりに、ヒミカは店の前に出来上がりつつある行列に視線を移す。
つられて顔を動かしたハリオンにも、おやつ時を見計らって焼きあがるヨフアルを求めて
やって来た客たちの姿が見えた。
「あらあら〜?」
 既にこのやり取りにすら慣れが生じ始めている客たちにも、ヒミカと同じく呆れ半分、諦め半分の笑みが浮かぶ。
「それじゃ、ハリオン。居眠りしていた時間分はお給金から引くように言っておくから」
 ヒミカが懐からメモ帳、あるいは閻魔帳を取り出し、さらさらと書き込んでいく。
眉を寄せて落ち込むハリオンに、ヒミカはにやりと笑みを深くしながら、
まだ新しいと見て取れる万年筆をポケットにしまい込んだ。
「それが嫌なら、今からしっかりと仕事をしないとね。さ、忙しくなるわよ」
「分かってますよぉ、ご主人とヒミカのヨフアルは大人気ですからね〜」
「一足先に、免許皆伝を貰ったあなたに言われてもね……」
 ぽつりとこぼしながらも、ヒミカが自信作となった手製のヨフアルを見て満足げに口元を緩める。
 何時の間にやらずらりと整列した客たちを視界に収めながら、ふたりはとびきりの笑顔で客を出迎えた。
146名無しさん@初回限定:04/12/05 00:26:12 ID:rNhqj2sm
妄想元……
「あ〜かいヒミカとみどりのハ・リ・オンっ♪」
凸凹コンビを表す、素敵なフレーズでしたw

ネタ振りとして、お小遣いの使い道ということで例文っぽくしてみました。
ひたすら貯金に励みそうな人、ぱあっと使い切りそうな人、何を買うためにお金が要るでしょう?
147名無しさん@初回限定:04/12/05 00:51:43 ID:uxDFiW6B
「ユ、ユートさまの、、、、あ、あ、あいをくださいっ!!!」

SOLD OUT

148名無しさん@初回限定:04/12/05 01:07:11 ID:jwg9SJR+

押しに弱いヒミカのツボを突いた作戦、お見事ですハリオン嬢w
しかししぶしぶ付いて行った先でヨフアル職人になっているとは、案外ヒミカは凝り性なんでしょうか?

>お金の使い道
 何故か懐中時計の鎖と髪飾りを送りあう恋人の話を思い出してしまった……(汗
149ホワイト・クリスマス:04/12/05 01:13:35 ID:jwg9SJR+

今日はクリスマス。恋人同士がプレゼントを贈りあう、そんな素敵な日。
しかし昨日今日この世界に来た悠人には彼女に送るプレゼントを買うお金がありません。
それでもどうしても彼女に喜んでもらいたい。その笑顔が見たい。悠人は決心しました。そして……

「セリア、丁度いい所に。これ、セリアに似合うかと思って……ってその羽、どうしたんだ?!」
「こ、これはちょっとお金が足りなくて……それよりユートさまこそいつもの『求め』は?!」
「あ、ああ、ちょっとお金が足りなくてな……売ってきた……」
二人はしばしお互いを見つめた後、優しく笑いあう。そして静かに交換します。羽飾りと、剣の柄を。
飾るハイロゥも嵌める神剣も無かったけれど、それでも二人の心は温かかったのです。
150名無しさん@初回限定:04/12/05 13:06:53 ID:GuY6E4KA
>>146
あー、たしかに始めちゃったら突き進みそうかも、ヒミカさん。
ま、しっかり望みも果たして結果オーライで幸せなのかも。
ほのぼの。何気にハリオンひどい気もするけど(w

>>147
嬢ちゃん、愛は金じゃ買えないぜ
え? i ? うーん、そいつはうちじゃ売ってないなぁ

>>148
あー、O.Henryかぁ…
「最後の一葉」とか「警官と賛美歌」とか…か、悲しい orz

>>149
で、『求め』はいくらで売れたんでしょう?(w
151紅蓮の剣 U. 1/52:04/12/05 14:51:15 ID:tXh7DaDP
 ──斬られた傷が、熱い。
 腕から流れる血は、霧になるのが追いつかない量が流れ、地面に染みを作っていく。
 傷は深く、既に多くの血が零れて落ちた。
 痛い。
 熱い。
 苦しい。
 哀しい──
 どうしてか、ひどく、泣きたくなった。
 間違えようのない死の予感が、身体を蝕んでいる。
 バルガ・ロアーの死神が背中に張り付いているようだ。
 死ぬのは、怖い。死にたくない。
 だから、生きたいから彼女は歩いていた。自由の利かない脚を引きずって、前へ。
 生きたい。ただ、生きたい。それだけを望んでいる。他には何も要らない。何一つとして要らない。
 生きたい、と願いながら。
 彼女は、その場に倒れた。
152紅蓮の剣 U. 2/52:04/12/05 14:52:14 ID:tXh7DaDP
 ヒミカは城内を一人で歩いていた。ある人物を迎えに行くためだ。
 負傷しながらも一人も欠けることなく、ラキオススピリット隊はサルドバルトを制圧した。
 そこにエトランジェ・悠人の功績が認められ、彼に褒賞が与えられたのだ。
 人質に取られていた肉親、佳織の解放。
 ヒミカはその場にはいなかったが、口添えしたのはレスティーナ王女だという。
 殿下らしい、とヒミカは思う。
 彼女はスピリットに対して理解を示してくれている。立場上、それを表に出すことは決してないが……
 佳織の解放ということを、悠人はとても喜んでいた。彼の喜ぶ姿を見るのは、ヒミカも嬉しい。
 心の中で、ヒミカはレスティーナに感謝した。
 そして今ヒミカが迎えに行っている人物こそ、佳織本人である。
 当初オルファが行くと言って聞かなかったのだが、ここはきちんと礼儀を弁えた者としてヒミカが選ばれた。
 第一詰所の近くまで来たら、人間の兵士に引き渡すことになっている。
153紅蓮の剣 U. 3/52:04/12/05 14:52:48 ID:tXh7DaDP
 本来、迎えも送り届けるのも兵士の役目だったが、カオリとてエトランジェ。
 何か力を持っているのではないか、と兵士達は不安に思っている。
 城から出たところで脱走した場合に備え、直前まではスピリットたる自分が見張ることになっているのだ。
 けどそれは杞憂だ。
 もし本当に逃げるだけの力があるのなら、とっくに逃げ出しているだろうに。
 直前で送り届ける役が人間に代わるのも、あちら側の体面を保つためなのだろう。
 佳織の部屋はレスティーナ王女の部屋に近い。
 オルファから聞いたことだが、これも王女自身が望んだことだそうだ。
 いるはずの警護の兵士は、もう見張る必要がなくなったからか、いなくなっていた。
 喉の調子を確かめてから、コンコン、とドアをノックした。
「失礼します。カオリ様はご在室でしょうか」
『あ、はい、今開けます』
 中から少女の声が聞こえた。本人だろう。
 カチャリと音を立てて、分厚い木の扉が開いた。
 頭一つ下に、奇ッ怪な生物(?)の被り物が見えた。それが上に反り、下から少女の顔が姿を現す。
「どなた、ですか?」
154紅蓮の剣 U. 4/52:04/12/05 14:53:20 ID:tXh7DaDP
 大きな眼鏡をかけた幼い顔が首を傾げた。ヒミカは微笑を浮かべて答える。
「初めまして。ラキオススピリット隊、〈赤光〉のヒミカです。カオリ様をお迎えに上がりました」
 言って一礼。佳織も、はいこちらこそ、と頭を下げた。
「何か持って行くものはありますか? お持ちします」
 部屋に足を踏み入れながら、ヒミカは問う。
 部屋は、思ったより小奇麗だった。それほど酷い生活というわけでもないらしい。
「いえ、そんな迷惑をかけるわけにはいかないですから……」
「とんでもない。多少の荷物なら軽いものですよ」
「そうですか? ……でも、持って行くような荷物もあまりないし……」
 少し寂しげな苦笑を、佳織は浮かべた。
「ああ──」
 それは、そうだろう。佳織は期せずしてこの世界に呼び込まれたのだ。私物などないに等しい。
「考えが至らず、申し訳ありませんでした。カオリ様」
 己を恥じ、ヒミカは頭を下げた。今度は慌てたような声が聞こえた。
「そっ、そんなことないです。こっちこそ、なんか気遣わせちゃって……」
155紅蓮の剣 U. 5/52:04/12/05 14:53:54 ID:tXh7DaDP
「カオリ、まだいますか?」
 とそこに第三者の声が割り込んできた。
 ヒミカが振り向くと、丁度部屋に入ろうとしてきたレスティーナ王女と目が合った。
「こっ、これはレスティーナ殿下。カオリ様に御用事がありましたか。お邪魔なようなら、私は──」
 反射的にヒミカは膝を付き、頭を垂れた。
 頭上から降ってきたのは、思いの他穏やかな声だった。
「そう気を遣うことはありません、ヒミカ。私はカオリを見送りに来ただけです。
 顔を上げなさい。ここは玉座ではないのだから」
「はっ──」
 ヒミカは立ち上がり、直立不動の姿勢でレスティーナのほうを向いた。
 レスティーナが浮かべる表情は、玉座で見せる冷たい無表情とは違う、温かみに満ち溢れた微笑だった。
「それで、カオリはもう発つのですか?」
「はい。早くお兄ちゃんに会いたいですし……多分、待ちきれなくてそわそわしてると思います」
156紅蓮の剣 U. 6/52:04/12/05 14:57:13 ID:tXh7DaDP
「そうですか。──では、できればその前にお茶でも一杯飲んでいきませんか?
 次は、いつになるか分からないので……」
「はい、喜んで」
 お互いにこやかな表情で、二人は言葉を交し合う。
 それは間違っても一国の王女と人質のする顔ではない。親しい友人のようだとヒミカは感じた。
 レスティーナは侍女を呼び、言付ける。すぐに温かいお茶が運ばれてきた。──三人分。
「あなたも座りなさい」
 ティーカップを差し出しながら、レスティーナはヒミカに向かって言った。
「は? しかし──」
「こうして顔を合わせたのも何かの縁です。お茶を冷ましてしまうのも忍びないでしょう?」
「はぁ、では──」
 おずおずと、ヒミカも二人が囲むテーブルの椅子に腰を下ろした。
「カオリ、何か入り用のものはありますか? 出来る限り用意させますが」
「いえ、特にないです。……あ、良かったら、この部屋の本を幾つか持っていってもいいですか?
 まだ読み切れてないのもありますから」
「好きなだけ持って行くと良いでしょう。足りないようだったら、今後も届けさせます」
「はい、ありがとうございます」
 和やかな雰囲気だった。
157紅蓮の剣 U. 7/52:04/12/05 14:59:15 ID:tXh7DaDP
 近くで見るレスティーナの表情は豊かで、王の側に控えている時とは似ても似つかない。まるで別人だった。
「──殿下、今回のことは、ありがとうございました」
 会話が途切れた隙を見計らって、ヒミカはそう言った。
「カオリ様が解放されることを、ユート様はとても喜んでおられました。
 最近色々と心労が重なって、疲れていたようですから……本当にありがたいことです」
 そう言うと、何故かレスティーナは少し哀しそうな表情をした。
「ユートは本当によくやってくれています。本来ならば、彼はもっと称えられるべきなのに。
 ……私は、恨まれているのでしょうね」
「そんなことはありません。ユート様は、殿下にはとても感謝しているようでしたから」
「それならば良いのですが……」
 カップの水面に視線を落としながら、レスティーナはか細く言う。
 その言葉ごと飲み込むように、彼女はカップの中のお茶を飲み干した。
 それに倣うように、ヒミカと佳織もお茶を飲み干した。ティータイムは終わりだ。
「では私はこれで。カオリ、たまには城のほうにも顔を見せてください」
「はいっ」
 勢い良く佳織は頷く。
158紅蓮の剣 U. 8/52:04/12/05 14:59:54 ID:tXh7DaDP
「ヒミカ」
「はい」
「ユートを護ってあげてください。彼は、おそらくこの国にとって代え難い存在となるでしょう」
「──はい」
 力強く、頷いた。
 レスティーナが去った後、ヒミカは数冊の本を持ち、佳織を伴って部屋を出た。
「あの、重くないですか?」
 ヒミカに荷物を持たせている負い目からか、佳織がそう尋ねてくる。
「大丈夫ですよ。この程度苦にもなりません」
 ヒミカは笑って答えた。
 他愛もない会話をしながら城内を歩いていく。途中、何度か警備の兵士とすれ違ったが、誰も挨拶はしない。
 そのことに気づいてはいたが、いつものことなので気にもならない。
「──ヒミカさん、お兄ちゃん、無理してませんか?」
 そんな折、ふと佳織はそんな問いを発した。
 ヒミカは、言葉を選びながらそれに答える。できるだけ笑顔を崩さぬようにしながら。
159紅蓮の剣 U. 9/52:04/12/05 15:01:13 ID:tXh7DaDP
「ユート様は頑張っていますよ。隊長として、皆を引っ張っていってくれています。
 今回のサルドバルトとの戦での勝利も、ユート様の存在なしには成し得ないものでした」
「私の為に、お兄ちゃんは人を殺しているんですか?」
「────────」
 言葉を失う。
 気づけば二人とも足を止め、見詰め合うように立っていた。
 二人は既に城内を抜け、丁度中庭の庭園を望める回廊にいた。
 常春のラキオスの花々が、見事に咲き誇っている。
 佳織の瞳は、ただ真摯だった。強い意志を秘めた、瞳。
 ただ捕えられているだけの少女でもなかったのだな、とヒミカは感じた。
 ヒミカは佳織から視線を逸らし、美しい庭園を見ながら、答えた。
「────はい」
 息の呑む気配はしなかった。おそらくは、レスティーナ王女からある程度の近況は聞かされていたのだろう。
「……そうですか」
 搾り出すように、佳織はそれだけ言った。
160紫煙:04/12/05 15:04:09 ID:uxDFiW6B

161紅蓮の剣 U. 10/52:04/12/05 15:05:17 ID:tXh7DaDP
 無理をしているのか、という問いに正確に答えるならば、それは是だ。
 太刀筋には、もう前のような迷いは見られなくなっていた。
 敵を斃した後の罪悪感に満ちた表情もなくなったが、それは外に出さないだけだ。
 サルドバルトとの戦いで犠牲が出なかったのだって、彼が身を挺して皆を護ったからだ。
 それを無理と呼ばずして何と呼ぼう。
 命を捨てるような戦いをするな、と言った彼が、一番命を危険に晒している。
 否、それは命を『捨てる』ことにはならないだろう。
 十人を助けるため己一人を犠牲とする。一人が死ぬことで他が助かるなら、それは決して無駄ではない。
 無駄ではないが──喜ぶ人間も、またいない。
 数が問題ではないのだ。遺された者の哀しみを考えるなら。
 そして、まだ成すべきことがあるのなら。
「……ユート様は死なせません」
 だから、ヒミカは己の誓いを口にした。
「私が護ります」
162紅蓮の剣 U. 11/52:04/12/05 15:05:45 ID:tXh7DaDP
 レスティーナの言う通り、彼はこの国にとって大切な存在になるだろう。
 人とスピリットに分け隔てない彼の態度は、いつか今の二者の関係を変えていくかもしれない。
 北方五国統一の立役者として、民衆の注目も集まってきている。……まだ、ほんの少しだけれど。
 そんな彼を死なせるわけにはいかない。前にも増して、ヒミカはそう思うようになっていた。
 ──彼が皆を護るなら、私は彼を護ろう。
 例えその結果自分が死ぬことになっても。
 ありがとうございます、と佳織は言った。
「でも、無理はしないでくださいね。
 ヒミカさんが、お兄ちゃんを護って死んでしまったら……きっと、哀しむと思うから」
「そう、でしょうね」
 きっとスピリット隊の誰が死んでも、彼は哀しんでしまうだろう。
 だがどちらが生きることに価値があるなら、と問うなら、それは悠人だ。
 勇者の再来とすら呼ばれる彼と、一介のスピリットでは、その重みはまるで違う。
 だからもし彼が哀しむようなことがあっても、この身は彼の生を望む。
「それでも私は彼と、仲間を護ります」
 意志を込めてヒミカは言う。
163紅蓮の剣 U. 12/52:04/12/05 15:07:22 ID:tXh7DaDP
「無理は……しないでください」
 祈るように佳織は言った。それに頷くことは、ヒミカにはできなかった。
 しばらく、どちらも何も言わなかった。
 一陣の風が吹いて庭園の草花が揺れる。ざぁ、と潮騒のような音が聞こえた。
 とはいえ本物の潮騒がどんな音なのか、ヒミカは知らない。海を見たことなどなかった。
 知識として知っているだけの場所。
 ──もし最後まで生き残れたら、その時は海を見に行こう。
 さして理由もなく、漠然とヒミカは思った。
 ラキオスからもそう遠くはない、龍が渡ったといわれるバートバルト海に思いを馳せる。
 海を渡った龍は、どれほどの潮騒を聞いたのだろう。その龍は、まだどこかにいるのだろうか。
 ざぁ…………
 風が吹き抜ける。ヒミカの短い髪がわずかにさらりと揺れた。
 とそこで、佳織がヒミカの前に進み出た。
「ヒミカさん、早く行きましょう。お兄ちゃん、ほんとに待ちくたびれちゃいますから!」
 殊更明るく言う姿に、ヒミカは悠人の姿を幻視した。
 ──やはり、兄妹なのですね。
 ヒミカは頷き、その背を追った。
164紅蓮の剣 U. 13/52:04/12/05 15:07:49 ID:tXh7DaDP
 第一詰所に近づいたところで、佇む兵士の姿が見えた。
 その若い兵士は、目深に被った帽子の下の視線をちらりと一度だけこちらに向けた。
 だがそれだけ。後は近寄って来るでもなく、興味なさげに視線を戻した。
 ヒミカもそのまま佳織と並んで歩き、兵士の傍で立ち止まった。
「カオリ様、私はここまでです」
「え? でも──」
 そこで佳織は言葉を止める。息を詰めたような表情。聡明な方だ、そう思う。
「分かりました。じゃあ、ヒミカさん、また今度」
「ええ。では」
 にこやかに頷きあう。
「カオリ様をよろしくお願いします」
 兵士に荷物を手渡しながら言う。兵士は頷きさえしなかった。
 カオリから若干距離を置きつつ遠ざかるその背中を、ヒミカは見送った。
「──あらあら、寂しそうですね〜」
 突然聞こえた声に、びくんと背筋が伸びる。
165紅蓮の剣 U. 14/52:04/12/05 15:10:34 ID:tXh7DaDP
 声の主を探して視線を巡らせると、近くの木の陰から気の抜けたような笑顔を半分だけ覗かせている少女がいた。
 しかもその下には、こちらは表情というものが全くない顔が、しかし同じように半分だけ覗いている。
 笑っている少女の髪と瞳は緑、笑っていないほうは赤だった。
 ハリオン・グリーンスピリットとナナルゥ・レッドスピリットである。
 それぞれ永遠神剣〈大樹〉と〈消沈〉を持つ、ヒミカの親友と妹分である。
「……何をしてるの」
 やや憮然とした口調で、ヒミカは問うた。
「あらあら、ヒミカこそ何してるのかしら〜?」
「何って、カオリ様を送り届けに」
「だから〜、それだけでいいのかって言ってるんですよ〜」
 少し口を尖らせながらハリオンは言う。
「いいか、って……」
 そりゃまぁ不満はあるが。できるならちゃんと最後まで送ってやりたかった気もする。
166紅蓮の剣 U. 15/52:04/12/05 15:11:08 ID:tXh7DaDP
 僅かに逡巡したヒミカの隙をついて、ハリオンはがしっとその腕を掴んだ。
「ちょっ、ハリオン何を……」
「何って、カオリさまと感動のご対面を果たしてむせび泣くユートさまを鑑賞しに行くんですよ〜」
「鑑賞って」
 何か違わないかソレ、と突っ込んでやろうとしたが、更にがしっともう片方の腕をナナルゥに掴まれた。
「……ナナルゥ?」
「不謹慎と理解していますが、興味を禁じえません」
 相変わらず何を思っているか分からない無表情だったが、しかし意志の強い口調だった。
 悠人が来てから徐々に自我に目覚めつつあるのは嬉しいが、今は何か違う気がする。色々と。
「だからって何で私まで、」
「ユートさまとカオリさまの感動の再会シーン、見たくないんですか〜?」
 う、と詰まる。まぁ確かに、そういう姿の悠人を見たいような気もしないでもないが……
 でも興味本位で見てしまうのは不謹慎ではなかろうか。
167紅蓮の剣 U. 16/52:04/12/05 15:13:25 ID:tXh7DaDP
「それに〜、送り届けた本人が感動の再会シーンに立ち会えないのは、ちょっと不公平だと思うんですよ〜」
 自分には権利がある、と。ハリオンはそう言っている。
 それで、とうとう折れた。
(そうよね、別に兵士に引き渡すことにはなってたけど、ついて行っちゃいけないってわけでもないし……)
 そうやってヒミカが自分を納得させる理由を構築している間に、ハリオンとナナルゥはずりずりと
その身体を引きずり始めた。
「──────────────ってあんたらはただの出歯亀じゃないっ!!」
 やっとそう気付いて叫んだのは、既に第一詰所の裏手に差し掛かってからだった。
168紅蓮の剣 U. 17/52:04/12/05 15:14:07 ID:tXh7DaDP
 ひょこひょこひょこっ、と立て続けに、第一詰所の窓から少女の頭が三つ、出てきた。
 合計六つの瞳の先には、お茶を片手にそわそわと落ち着かない悠人の姿がある。
 もうすぐ、佳織と兵士が到着するはずだ。
 三人はスピリットの脚力で以て、ここに先回りして隠れていた。
「わくわくしますね〜」
 愉しげに言うのは、真ん中のハリオンである。
「愉しむものなの……?」
「…………」
 首を傾げるのは一番上のヒミカ、反応を示さないのは一番下のナナルゥだ。
 このまま戦場に出しても十二分に戦える完璧な布陣である。
 とそこで、玄関のドアを叩く音と、兵士の呼ぶ声が聞こえた。
169紅蓮の剣 U. 18/52:04/12/05 15:15:41 ID:tXh7DaDP
 思わず立ち上がりかけた悠人をエスペリアが制し、出迎えに行く。
 すぐに、駆けてくる軽い足音が聞こえた。今度こそ悠人が立ち上がり、その主を迎え入れる。
 部屋に駆け込んできた佳織が、勢い良く悠人に抱きついた。
 悠人もそれを抱き締め返し、そのまま、二人は言葉少なに抱き締めあっていた。
 佳織の身体は小さく、悠人の身体に隠れてしまっている。
「うぅ、感動のシーンですねぇ」
 ヒミカの下では、どこから取り出したのかハンカチで目元をそそと拭っているハリオン。
 最早突っ込むまい、とヒミカは決めた。
 しかし──ああして、最愛の妹を抱き締めている悠人の姿は、戦士ではなく確かに普通の人間だった。
 こうして彼が大切なものを取り戻せただけでも、自分達が戦ってきた意味は確かにあった。そう思えた。
170紅蓮の剣 U. 19/52:04/12/05 15:16:40 ID:tXh7DaDP
 と、そこで何気なく視線を動かすと、
 ──エスペリアと目が合った。
「…………」
「…………」
「…………」
 エスペリアは笑顔だ。だが、その笑顔がやけに怖く見えるのは何故だろう。
 これはあれだ、とヒミカは思った。敵にアイスバニッシャーを喰らった時の感覚。
 集束していたマナが動きを止められ、拡散していく時の独特の寒々しさ。
 ──さっさと去りなさい。
 口にせずとも、そう言おうとしていることはよく分かった。
「……逃げるわよ」
「はい〜」
「戦術的撤退です」
 頭が三つ、並んで仲良く引っ込んだ。
171紅蓮の剣 U. 20/52:04/12/05 15:17:28 ID:tXh7DaDP
 それから数日後の夕方。
 佳織と一緒にお茶を愉しんでいると、不意に悠人の結婚相手の話になった。
(結婚、ねぇ……)
 そういうことを考えたことはない。
 腕を組んで考え込んでみるが、特定の人物が浮かんでくるということはなかった。
「ちょっと分からないかなぁ……」
「そうなの?」
 うん、と頷いた。そしてぴんと閃いて、あ、でもと続ける。
「相棒として考えられる奴ならいるな」
 誰々?と佳織にしては珍しく、興味深そうに聞いてくる。
「ヒミカだよ。レッドスピリットの。こないだ第二詰所の皆紹介した時にもいたろ?」
「ヒミカさん? どうして?」
「うーん、なんていうかな。安心して背中を任せられるって感じだな。
 戦ってる時もよく皆をフォローしてるし、第二詰所でも皆を引っ張る役目みたいだし」
「あー、それ、分かるかもしれない」
 言って、くすくすと佳織は笑った。
172紅蓮の剣 U. 21/52:04/12/05 15:17:52 ID:tXh7DaDP
「お兄ちゃん、結構一人で突っ走っちゃうところがあるから、ヒミカさんみたいな人がいると丁度いいかも」
「何だよそれ。俺、そんなに突っ走ってるかな?」
「うーん、ちょっとね」
 苦笑して佳織は言うが、それが明らかに遠慮してのことであるのは明らかだ。
 そうなのか、と悠人はちょっと落ち込んだ。心当たりがないわけでもないので、余計に。
「……お兄ちゃん、ヒミカさんのこと、好き?」
 ふと、そんなことを訊かれた。
「好き……っていうのとは違うな」
 というか誰か異性を好きになったことがあっただろうか、と悠人は振り返った。
「じゃあ、ヒミカさんのいいところとか、聞いていいかな」
「いいところねぇ……うーん。やっぱり強いし頼りになるし、なんていうのかな」
 いい言葉が思いつかない。そもそも過ごしている場所が離れている以上、お互いの日常があまり交差しない。
 自然、戦いの中で見た彼女の姿ばかりを思い浮かべることになるのだが、そういうのは何か違うだろう。
173紅蓮の剣 U. 22/52:04/12/05 15:21:15 ID:tXh7DaDP
「誰に対しても礼儀正しいし、気を遣ってくれるし──」
 言葉を並べながら、悠人はこれまでの戦場に思いを馳せた。
 そういえば、戦闘中ヒミカと声を掛け合うことはあまりなかったように思う。一緒に前線に立っているのに。
 それはきっと──必要がなかったからだと悠人は思った。
 明確に指示をしなくても、ヒミカなら分かってくれるという妙な確信があったのだ。
 そして真実、ヒミカはそれに応えてくれていた。
「──信頼し合ってるんだよな、多分」
 きっとそうなのだろう。
 それに、何となくだが、自分とヒミカは似ている気がするのだ。無論外見ではない。
 それは本当に何となくで、何の確証もないことだったけれども。
「最後のは、いいところじゃなくてお兄ちゃんがヒミカさんをどう思ってるかだね」
 笑いながら佳織は言う。あ、そうか、と悠人も今更ながらに気付いた。
「……頼りにしてるんだ、ヒミカさんのこと」
「そうだな。凄く、頼りになるよ」
174紅蓮の剣 U. 23/52:04/12/05 15:21:44 ID:tXh7DaDP
 そこまで言って悠人は、あ、と素っ頓狂な声を上げた。
「佳織だって頼りにしてるぞ。料理とか家事とかで」
「フォローしてくれなくても分かってるよぉ」
 くすくすと笑う。つられて、悠人も笑った。
 その笑い声に混じって、
「──私も剣を持って戦えていれば、お兄ちゃんも頼りにしてくれる──?」
 か細く、佳織は呟いた。
「ん? 何か言ったか?」
「ううん、何にも」
 そうか、と悠人は頷いて、もう一口お茶を飲んだ。
 何故か、二人とも沈黙してしまう。そよそよと、窓から吹き込んだ風がカーテンを揺らした。
「……ねえ、お兄ちゃん」
「ん?」
 鈍感な悠人でも、佳織の声のトーンが微妙に下がったことは分かった。
「私ね──」
175紅蓮の剣 U. 24/52:04/12/05 15:22:10 ID:tXh7DaDP
 その時────けたたましい半鐘の音が鳴り響いた。
 その意味するところは、
「侵入者……!?」
 立ち上がり、不安そうにしていた佳織を安心させる意味で抱き締める。
(おいバカ剣、どうなってる!?)
『敵だな。……城のほうだ。数が多い上に寸前まで気配を感じなかった。相当な手練だろう』
 そう応えた〈求め〉を担ぎ上げ、その気配を悠人も感じ取った。
 圧倒的な破壊衝動──それが、肌を粟立てるほどに伝わってくる。
「お兄ちゃん……」
 佳織が縋り付いて来る。大丈夫だ、ともう一度強く抱き締めた。
「絶対、帰ってきてね。約束だよ」
「当たり前だ。佳織も、ちゃんと隠れてろよ」
 言い残して走り出す。不安げに振られる手を、肩越しに一度だけ振り返った。
 脚力を強化し、城への最短距離を駆け抜けた。
176紅蓮の剣 U. 25/52:04/12/05 15:22:41 ID:tXh7DaDP
 時を同じくして、第二詰所のスピリット達も城へと駆けつけていた。
「ヒミカ、どうする?」
 併走していたセリアが問う。ヒミカは僅かに思案し、応えた。
「城内には結構な数のスピリットが入り込んでるみたいね。しかも──」
 倒れて動かない兵士の姿をまた見つけた。──死んでいる。
「──人を殺せる」
 セリアが頷く。
 ヒミカは即決した。
「三班に別れましょう。全員で動き回っても仕方がない」
「そうね。──ナナルゥ、ネリーは私についてきて! 変換施設に行くわ」
 呼びかけ、ヒミカもまた号令を飛ばす。
「ファーレーン、ニム、ヘリオンは謁見の間に! シアーとハリオンは私と一緒に来て!」
 それぞれが応じる。ヒミカとセリア、ファーレーンは頷きあい、三つに別れた。
177紅蓮の剣 U. 26/52:04/12/05 15:33:10 ID:tXh7DaDP
 更に同時刻。
 王族の寝所にも敵スピリットが進入しつつあった。既に何人もの兵士が、その命を喪っている。
「殿下! 早くお逃げください!」
 護衛の兵士に周囲を固められながら、レスティーナは長い廊下を走った。
 考えるべきことはいくらでもある。ちらりと見た限り、スピリットは神聖サーギオス帝国の者のようだった。
 今はラキオス、サーギオスの間にマロリガンを挟み、小康状態になっている時期だ。
 そこを突く今回の奇襲は、理に適っていると言えた。
 そして、今攻め込んでいるスピリットは、人を殺す──
 ──遠くで、断末魔の叫びが聞こえた。
 レスティーナは思わず立ち止まってしまう。だがそれは、彼女を護る兵士達も同じだった。
 廊下の奥から、駆けてくる複数の足音が反響してくる。
 まだ遠いが、すぐにここまで辿り着いてしまうだろう。
「──殿下、お行きください」
 すっ、と。
 誰が促すでもなく、レスティーナの護衛をしていた五人のうち、三人が廊下に広がるように立った。
178紅蓮の剣 U. 27/52:04/12/05 15:33:31 ID:tXh7DaDP
「お前達……!」
 その意を察してレスティーナは止めようとして──できなかった。できるはずがなかった。
 彼らは、己の役目を果たそうとしているのだから。
 城を守ること、戦うこと。それが彼らの役目であり、彼らの家族を養う手段なのだ。
 前に立った三人と、レスティーナの隣の二人が、言葉もなくただ頷き合った。
 年配の兵士が、髭だらけの口で笑う。
「我々は大丈夫です。ですから殿下はお急ぎください。やり過ごしたら、すぐに後を追いますので」
 外に出れば我が国の妖精どももおりましょう、と彼は言った。
「殿下を護り通せるのが、結局、我々人間には役不足というのは癪ですが……」
 心底残念そうに──そしてスピリットを羨むように兵士は言う。
 顔を背け、兵士は廊下の奥に目を向けた。もう足音はすぐそこの角まで近づいている。
「お行きください、殿下。あなたは死んではならない人だ」
179紅蓮の剣 U. 28/52:04/12/05 15:33:54 ID:tXh7DaDP
 ずきん──
 心臓が軋んだ。
 数日前、彼と見た高台からの景色が思い出された。
 彼が、好きになってきたかもしれないと言ったこの国。
 彼が、仲良くなれるかもしれないと言ったこの国の民。
 ──目の前の彼らとも、これからは手を取り合えるかもしれないのに。
 今は無理でも、いつか、そう遠くない未来に。
 スピリットと対峙して人間が生き残れる確率は限り無く低い。
 それを覚悟で、彼らは自分を逃がそうとしてくれているのだ。
 戦う術を持たないレスティーナが、この場にいる意味は全くない。足手まといでしかない。
 ならば、
「──分かりました。……あなた方の武運を祈ります」
 私の為に死んでくれ、と。
 レスティーナはそれに等しい言葉を搾り出す。
180紅蓮の剣 U. 29/52:04/12/05 15:34:15 ID:tXh7DaDP
 ──ならば私は、絶対に生き残らなければならない。生きて、為すべきことを為さねばならない。
 彼らの想いに、報いるためにも。
 背を向けて走り出す。振り返らずに。
 本当ならば、このまま何も言わず、走ることに全力を傾けるべきなのだろう。
 だがそんなこと──自分を生かす為に己を捨てようとしている者達を背にしてどうしてできよう。
「──皆の者!」
 振り返らないまま、叫んだ。
「死ぬなどとは思うな! 己が生きる運命を、自ら引き寄せて見せよ!」
 ──自分が望むなら、どうにかして運命を引き寄せることだってできる……俺はそう思いたいよ──
 ──運命が絶対だなんて思わないからな──
 あの高台で、彼が、悠人が言った言葉を思い出しながら、涙の代わりに叫んだ。
181紅蓮の剣 U. 30/52:04/12/05 15:39:49 ID:tXh7DaDP
「運命を引き寄せる、か……」
 震える手で剣を握りながら、しかし、へへ、とその若い兵士は笑った。
 どうしてだろう。怖いはずなのに、不思議とそんなただの言葉が頼もしかった。
「殿下もいいこと言うよな……でも畜生、怖ぇよ、クソが」
「俺もだ」
 同年代の一人と、年配の一人とが震える声で軽口を叩きあった。
 ぎゅ、と強く強く剣を握り締める。兵士は、そんな言葉を言ってくれたレスティーナに感謝し──
 そしてまた、そんな言葉を言わせた切欠となる誰かがいるとしたら、その人物にも感謝した。
 廊下の奥から、三体のスピリットが駆けてくる。光のない眼球が六つ、こちらをしっかりと見据えている。
「畜生……」
 罵倒しながら、けれど彼は笑っている自分を自覚していた。
「畜生、畜生、畜生、畜生、畜生ォ……!」
 同僚は何度も何度も、そう繰り返していた。
 その繰り返される罵倒は、その度に湧き上がる感情は。求め、渇望するものは──
「死にたくねぇ、死にたくねぇよ畜生ぉぉぉぉっ!!」
 叫んで、兵士達は迎え撃った。
182紅蓮の剣 U. 31/52:04/12/05 15:40:21 ID:tXh7DaDP
 エーテル変換施設への道を悠人は辿っていた。イースペリアでのマナ消失が頭をよぎる。
 だがその途中、向かう方向からエスペリア達三人に出会った。
「ユートさま! ご無事でしたか!?」
「俺は大丈夫だ。そっちは」
「ん」
「だいじょぶだよ、パパ!」
 それぞれいつも通り答えた。怪我をしている様子もない。
「エーテル変換施設のほうは?」
「途中、敵が数名いたので殲滅しました。変換施設は無事です。これから謁見の間のほうに」
 ほっと息をつく。が、そんな場合でもないことを思い出した。
「しかし……どういうことなんだ。スピリットは人を殺せるのか?」
「……育て方次第では、不可能ではないかもしれません」
 言い辛そうに、エスペリアは答えた。
「それに、神剣に呑まれてるものが大半のようです。どの敵の瞳にも……光は宿っていませんでした」
 ぎり、と悠人は歯を食いしばった。誰が、そんな風なスピリットにした?
183紅蓮の剣 U. 32/52:04/12/05 15:40:41 ID:tXh7DaDP
「ユート様!」
 そこに、聞き慣れた声が飛び込んできた。
「ヒミカ!」
 ヒミカと、シアー、ハリオンが駆けてくる。無事だったことに安堵しつつ、悠人は現状を尋ねた。
「皆は三手に別れて行動してます。私達はこれから、上に」
「上──というと、王の寝所か!」
 頷きが返ってきた。そっちはどうだったのですか、と今度はヒミカは問う。
「変換施設は無事だった。謁見の間はまだ見てない」
「ではそちらに向かってください。ファーレーン達が行ってます」
「そうだな……」
 悠人は僅かに思案し、答えた。
「俺たちも別れよう。エスペリアとオルファは謁見の間に行ってくれ。
 アセリアはセリア達と合流して、まだ見てないところを頼む。俺は、ヒミカ達と一緒に上に行く」
〈求め〉を通して感じる気配は、どれも強いものなのに、位置が特定しづらかった。
 力が強すぎてムラが出来ている感じだ。
184名無しさん@初回限定:04/12/05 15:41:02 ID:yLQZaUKZ
煙草の煙
185紅蓮の剣 U. 33/52:04/12/05 15:41:13 ID:tXh7DaDP
 その中でも一番不鮮明に感じるのは、王族の寝所のほうだった。
 王は正直好きになれないが見殺しにはできない。レスティーナのことも心配だった。
「分かりました。お気をつけて」
 頷きあい、エスペリア達はそれぞれの方向に走った。
「俺達も行くぞ!」
 はい、と三人のスピリットは力強い頷きを返してくれた。
 全速力で廊下を駆け抜け、寝所へ続く階段を上る。
 上りきり、角を一つ曲がったところで──突き当たりに、青スピリットと戦っている人間の姿を認めた。
 いや、戦っている、と呼べるほど上等ではない。ただ必死に抵抗し、まだ生きているだけのことだ。
 と、その兵士が足を取られ、後ろに倒れこむ。
「ハリオン!」
「はいは〜い」
 ヒミカの声に応え、やや着抜けた声で答えながら、ハリオンは悠人の前に進み出た。
186紅蓮の剣 U. 34/52:04/12/05 15:47:17 ID:tXh7DaDP
 その瞬間、ハリオンの気配が変わる。
 右手に握る〈大樹〉に大気中のマナが集束し、左足を絨毯に強く、穿つように打ち付けた。
 そのままそこを支点に、身体をバネのようにしならせ、全身を前に。
「そーぉれっ!」
 掛け声と共に、右手で〈大樹〉を投擲した。
 きゅん、と大気との擦過音を後に残し、マナを纏った神剣は宙を駆け抜けた。
 刹那後、ゴガッ、と凄まじい音がする。
 視線の先で、兵士を殺そうとしていたスピリットが、心臓に〈大樹〉を埋めて壁に磔になっていた。
 しかしそれも数秒、生命活動を停止したスピリットは、やがてマナの霧となっていく。
「大丈夫か!」
 倒れていた兵士に駆け寄ると、それは悠人も見知った顔だった。
「……貴様か、エトランジェ」
 いつも悠人を殴っている、あの兵士だった。
 脚を斬られたのか、押さえた手の下からどくどくと赤い血が流れている。
187紅蓮の剣 U. 35/52:04/12/05 15:47:36 ID:tXh7DaDP
「まさか貴様に助けられるとは、な……」
 苦々しげに、しかし戸惑いを交えて兵士は言った。助けてくれるとは思ってなかったのだろう。
 だが助ける時にこの兵士であると分かっていたわけではないし──
 仮に分かっていたとしても、見捨てることなどできなかっただろう。
 悠人はあまりこの兵士に良い感情は抱いていなかったが、それでも答えた。
「殺されそうな奴を放っておくほど薄情でもないんでな。……他に生きてる奴は?」
「殿下は逃がした。俺の仲間はやられちまったよ。他にもまだ、何人か──」
 その言葉を掻き消すように、バン、と扉が開いた。
 兵士が二人、転がるように出てきたその部屋は──
 こちらに逃げてくる兵士の後ろから、レッドスピリットが躍り出た。
 既に神剣魔法を完成させ、今にも放たんとしている。
「──あ、アイスバニッシャー!」
 そこにシアーのアイスバニッシャーが割り込む。集束していたマナが消失し、敵が体勢を崩す。
 ──その時には既にヒミカがするりと背後に回り込んでいた。
 敵の赤が振り向こうとする。だが、それは叶わない。
 半瞬早く、〈赤光〉がその細い喉から生えていた。
188紅蓮の剣 U. 36/52:04/12/05 15:48:08 ID:tXh7DaDP
 かっ、という声にならない呻き。
 そのまま横に掻っ捌く。
 勢い良く血が噴き出し、ヒミカに降り注いだ。
 一度剣を振るって血を払う。短い髪をしとどに濡らす血も、やがてマナに還っていった。
 ぱちゃん、と血の池を踏んで、ヒミカの横に悠人が並ぶ。
 視線を交わし合い、斃したレッドスピリットが出てきた扉へと足を踏み入れた。
 そこは、王の私室だ。……灯りはついていない。
 バルコニーの窓は粉砕され、寒々しい風が吹き込んでいた。おそらくそこから侵入したのだろう。
 不気味な静寂。だが、握る〈求め〉は嫌というほど神剣の気配をこちらに伝えてくる。
 と、
 がたり、と音がして、隣の王の寝床がある部屋に繋がる扉に、人影が覗いた。
 見慣れた鎧は、この国の兵士のもの。思わず、悠人はそれに駆け寄る。
「おい、無事──」
『戯け!』
〈求め〉の叱咤と視界が後ろ側にすっ飛んでいくのを知覚したのは同時だった。
189紅蓮の剣 U. 37/52:04/12/05 15:48:31 ID:tXh7DaDP
 ズッ、と手を差し出すような滑らかさで兵士の胸から切っ先が飛び出した。
 それは悠人の心臓を追いかけ、すぐに止まる。
 乱暴に後ろに引っ張られた悠人は、部屋の入り口近くまで引き戻された。
「大丈夫ですか?」
 引っ張った当人であるヒミカがそう問うてきた。
 ともすれば己の心臓を貫かれていたという事実に背筋を寒くしながら、ああ、と頷いた。
 ずるり、と身体から神剣を生やした兵士が壁に寄りかかるように倒れ、そのまま動かない。
 兵士の後ろから姿を現したのは、闇に融ける色彩の、ブラックスピリット。
 僅かに差し込む月光が、マナに還らない血に鈍く光っている。
 その隣に、部屋の奥にいたのであろうレッドスピリットが並んだ。頬を赤く汚すそれは、一体誰の──。
 ざわり、と血液が蠢いた。この先の部屋にいるべき人間は、無論、一人しかいない。
 月光に影が差した。降り立つ足音すらもなく、バルコニーに二体のスピリットが舞い降りる。
 影の色は青と緑。四者とも同じ色彩ではなかったが──光のないその昏い瞳だけは、皆一様に同じ。
190名無しさん@初回限定:04/12/05 15:50:28 ID:EouMkuju
は〜い、支援しますよ〜
191紅蓮の剣 U. 38/52:04/12/05 15:59:42 ID:tXh7DaDP
「……ユートさま〜?」
 こんな時でさえ、この声は穏やかだった。背後、部屋の外から聞こえてきたハリオンの声に、悠人は答える。
「ここは俺達二人だけでいい。ハリオンは、シアーと一緒にあいつらを頼む」
「はい〜。丁度他の敵さんも一人来たみたいですし、迎え撃ってきますね〜」
 気配が引っ込んだ。
 自分を見つめてくる八つの無機質な瞳。油断なくそれを知覚しながら、ヒミカに視線を向けた。
 同じように、ヒミカも悠人を見つめていた。視線を合わせ、頷き合った。
 ひゅっ、と短く息を吸い込み、
 悠人は低く〈求め〉を振るった。剣先が豪奢な椅子を引っ掛け、凄まじい速度でバルコニーの敵へと投げ飛ばす。
 椅子に追い縋る様に二人は前へ跳んだ。悠人はバルコニーへ、ヒミカは寝所へ。
 ブルーの剣が椅子を打ち払い、その陰から現れた悠人に、返す刀で袈裟懸けに斬りつけた。
 悠人は立てた剣でそれを受け、力任せに横に払った。ブルーが刹那体勢を崩す。
 そこに第二撃を叩き込もうとして──真横からグリーンの槍が差し出された。
192紅蓮の剣 U. 39/52:04/12/05 16:00:09 ID:tXh7DaDP
 踵に力を込め後方へ。腋下を音速の穂先がすり抜け、浅く服が切り裂かれた。
 体勢を立て直したブルーが突っ込んでくる。
 悠人は二歩三歩と後退しつつ、駄賃とばかりに〈求め〉の切っ先を分厚い絨毯に引っ掛け、引いた。
 絨毯が波打ち、ブルーがそれに足を取られたたらを踏む。
 致命的な隙。大上段に構えた悠人の〈求め〉が、重力に膂力を上乗せして振り下ろされた。
 避けられる速度ではない。ブルースピリットは、咄嗟に頭上で神剣を構える。
 だが悠人の剣は真ん中からそれを叩き折り、そのまま頭頂から股間まで両断し、
「──ユート様!」
 声が聞こえた。背後に、別の神剣の気配。
「う、」
 振り下ろした剣を、止めることなく。
「お、おぉぁぁあっ!」
 柄から左手を放し、片手だけで〈求め〉を握る。
 身体を右に捻る。がりがりと絨毯の下の床を削りながら、全身の動きで背後へと振り上げる。
 上弦の月を描く剣閃は、背後に迫るレッドスピリットの身体を神剣ごと吹き飛ばす。
 その背後には──たまたま人の着る全身鎧が、構えを取って立てられていた。
193紅蓮の剣 U. 40/52:04/12/05 16:00:29 ID:tXh7DaDP
 ドスッ──
 嫌な音がして、スピリットの腹を深く鉄の剣が抉っていた。
 奇しくも、その剣で人間を殺したスピリットが、人間の剣に貫かれていた。
 だが──まだ終わらない。金色のマナへと還りながらも、そのスピリットはマナを織り上げる。
 赤い閃光が大気を貫く。だがそれは悠人へではなくその頭上、豪華なシャンデリアを吊り下げる鎖を灼いた。
 巨大な金と硝子の塊が垂直落下する。舌打ちしながら悠人は後ろへ引いた。
 二つに別れ、左右に倒れつつあったブルースピリットの屍が、ぐしゃりと押し潰された。
 飛び散る硝子の欠片に、蒸発するマナの光が反射し──
 その向こうに、槍を腰に構えた大地のスピリットの姿があった。
 マナが螺旋に渦を巻く。冷たい瞳は刃より鋭く悠人を捉える。
 直線的な動きを〈求め〉で叩き落す。地面に落ちた切っ先が、そのまま弾力を利用して跳ね返ってきた。
 顎先を掠める鋭刃。仰け反るようにそれを回避する。前髪が数本刈り取られた。
 上まで振り上げられた切っ先が、槍の中心を支点にそのままくるんと半回転し、
 入れ替わりに持ち上がった槍の石突を、捻るように前へと突き出した。
194紅蓮の剣 U. 41/52:04/12/05 16:00:48 ID:tXh7DaDP
「……ッ!」
 剣が間に合わない。石突は悠人の腹に深く突き刺さった。腹部を圧迫される苦しみに顔を歪める。
 と──すぐにそれからは解放された。音もなく横から滑り出た赤い影を、グリーンスピリットは受け止める。
 ヒミカの両剣がグリーンスピリットを攻め立てる。
 二方向から交互に繰り出される剣撃を穂先と石突で同じように受け止めていく。
 互いに押し、押されながら、しかしどちらからも肉を裂く音は聞こえない。
 だが、その交差もまた永遠ではない。
 一瞬、ヒミカが剣を握る手を緩めた。
 カンッ、と軽い音を奏で、ヒミカの神剣が空中で回転する。
 予想だにしない動きと手応えのなさに、敵に一瞬戸惑いが生じた。──それを、見逃さない。
 弾指にも満たぬ時間、重力から解放された剣を、ヒミカは逆手に握り直し、そのまま全力で突き入れる。
 ほぼ水平に構えていた槍では、点の動きである突きには対応できなかった。
 剣先が、スピリットの頭蓋を貫いた。
195名無しさん@初回限定:04/12/05 16:05:13 ID:gvMaY2p6
つ[支援]
196紅蓮の剣 U. 42/52:04/12/05 16:05:58 ID:tXh7DaDP
 スピリットが膝を折って、そのままうつ伏せに倒れた。
「……ご無事ですか、ユート様」
 肩で息をしながら、ヒミカが問うた。
「ああ。腹に一撃貰ったけど、怪我してるわけじゃない」
「そうですか……良かった」
 ほう、と眼に見えてヒミカは安堵の表情を見せた。
 その頬には、最初に見たブラックスピリットとの戦いでついたのだろう、浅い切り傷があった。
 ヒミカはぐい、と頬に流れた血を拭い、王がいるはずのもう一つの部屋を見た。
 悠人は黙って、その部屋へと足を踏み入れる。
 ……中は、酷く、静かだ。
 豪奢なベッドへと目を向けるが、その上には誰もいなかった。
 視線を横にずらしていくと──豪華な装飾を施された壷によりかかるようにして、それがあった。
 横に太い、寝巻き姿の屍体。王冠なく、服も違うが、それは間違いなく、王の亡骸だった。
 装飾を施された剣を握り締めたまま、頚動脈を切り取られ、夥しい量の血で絨毯を赤黒く染めて。
197紅蓮の剣 U. 43/52:04/12/05 16:06:46 ID:tXh7DaDP
「…………」
 何故か、悠人の心は凪のように静かだった。
 憎い相手だった。殺したいほど憎い相手だったはずだ。
 この世界に呼ばれた自分を、佳織を人質に無理矢理戦わせた張本人だったはずなのだ。
 それがこうして目の前で死んでいるのを見ても──悠人の心は動かない。
 麻痺しているわけではなく、或いはそれは、斃れた王が哀れに見えたからかもしれない。
「……ユート様」
 ヒミカの声が静謐な空気に染みた。悠人は頷きながら振り返り、部屋を出る。まだすべきことがある。
 部屋の入り口には、シアーとハリオン、そしてさっきの兵士が三人、待っていた。
「……不本意だが、礼を言っておく。エトランジェ」
 脚の傷のせいか。青い顔で、しかし尚も悠人をしっかりと見据えながら、仲間に肩を貸された兵士は言った。
 悠人は黙って頷く。そうするのが一番適当に思えた。
「レスティーナ殿下を頼む。中庭の地下に、お前らの館に通じる抜け道がある。
 殿下はそこに向かったはずだ。──お前らが、護れ」
「中庭というと……」
 悠人は窓へと視線を向けた。バルコニー、ここからは、中庭を一望できる。
198紅蓮の剣 U. 44/52:04/12/05 16:07:02 ID:tXh7DaDP
 ──と、
 僅かに、月光が陰る。
 雲、ではない。それ以外の何かが、地上に降り注ぐ月光の中に影を落としていた。
「……分かった。ハリオン、シアー、そいつらを頼む。
 安全な場所まで避難させたら、皆と合流して館に向かってくれ」
「はい〜」
「ユートさまは、どうするんですか……?」
 不安げにシアーが問う。
「俺は──」
 窓の外を見る。
「──まだ迎えなきゃいけない相手がいるみたいだ」
 そしてヒミカと頷き合い、バルコニーへと出た。途端、鋭い神剣の気配が、二人を突き刺す。
 バルコニーの手すりに足をかけながら、悠人は振り向いて、もう一度頼むと言った。
「お気をつけて〜」
 ハリオンの見送りを背に、二人は中庭に飛び降りた。
 折りしも、四つの影も花咲き誇る庭園へと降り立ったところだった。
199紅蓮の剣 U. 45/52:04/12/05 16:07:24 ID:tXh7DaDP
「──再びまみえることになるのも、また縁」
 降り立った影、その先頭に立つのは他でもない。帝国最強の剣士。漆黒の翼。
 銀の髪に月光を弾き、ウルカは静かに呟いた。
 ざぁ、と一度強く、風が吹いた。花びらが一斉に散り、空へと巻き上げられた、その中で。
 ──銀の直線が疾る。
 斬空の居合い、音もなく虚空を切断する剣に、一瞬、大気が停止した。
 はらり、と、その直線上にあった白い花びらが空中に静止し、そして二枚に分かたれ風に巻かれた。
 月光を背に、その黒と銀のスピリットはその手の剣の如き眼光を悠人達へと向ける。
「何故こんなことをした。ウルカ。お前も神剣に操られているのか」
 その花と月の中では、彼に声を荒げることすら忘れさせるのか。静かな声で、悠人は問うていた。
「手前に剣の声は聞こえぬ。それ故戦う意味を探している。この剣を振るう意味を」
「……人を殺して、か?」
 ざぁ。潮騒の音の向きが変わる。悠人からヒミカへと。その押し殺した怒りに応じるように。
200名無しさん@初回限定:04/12/05 16:08:34 ID:EouMkuju
永遠神剣「支援」の主、名無しが命ずる。マナよ、彼の者に祝福を。
201名無しさん@初回限定:04/12/05 16:08:51 ID:jjkDQyPf
支援の方向で
202紅蓮の剣 U. 46/52:04/12/05 16:13:04 ID:tXh7DaDP
「…………」
 その言葉に一瞬眉を顰めるが、すぐに元の無表情に戻る。
「……手前はウルカ、漆黒の翼ウルカ。ラキオスのユート殿、そして──」
「〈赤光〉のヒミカ」
 応じるようにヒミカが答え、揃って前傾姿勢を取った。
「ヒミカ殿、か。……相当の腕前とお見受けする。お相手願おう」
 ゆら、とウルカの周りで、花びらが行方を見失ったかのようにばらばらの方向に散っていった。
 肌が粟立つ殺気、生存本能が眼前の敵を脅威と認識する。
 逆に〈求め〉は、強敵と戦えることに歓喜していた。その身を青白い光に包みながら。
「お前達は手を出さぬようにな」
 静かに告げる。ウルカの背後に控えていた三人のスピリットが、音もなく後ろに下がった。
 一対二。有利であるはずの状況なのに、一分の余裕も心には生まれない。
 一度、ウルカは瞼を閉じ、
「感謝しよう。これほどの使い手達に出会えたことに。このマナの導きに」
 そして、瞼を開いた。
「────参る!!」
203紅蓮の剣 U. 47/52:04/12/05 16:13:31 ID:tXh7DaDP
 世界が加速した。
 最初に激突するのは黒と赤の妖精。
 音速の抜刀を流れるように〈赤光〉で受け流す。ウルカの剣は上方へ逸れ、胴ががら空きになる。
 反動を利用してそこに滑り込ませたヒミカの剣を、しかしウルカはパン、と掌で弾いた。
 鋭刃はウルカの脇の下を抜ける。互いに軌道を逸らされた切っ先が虚空を貫く。
 剣と一緒にヒミカは身を引いた。入れ替わるようにして横薙ぎの一撃を悠人が見舞う。
 その時には既にウルカは納刀を終え──そしてまた、銀髪に煌く光の如く剣を閃かせる。
 キ、と分厚い〈求め〉の刃に〈拘束〉の刃が触れる。
 ──押し負ける。
 ウルカは手応えのみでそう判断する。
 元より、この剣は重きに耐える剣ではない。受けず、流し、掠め斬る剣である。
 腕の筋肉を固定しそれ以上振らず、脚を浮かせた。
「…………ッ!」
 その意図に悠人は気付く。それは前に、ヒミカと手合わせした時の動作と同じだ。
 散る花の如きその手応えの無さ。咄嗟に、悠人は剣を引こうとした。
204紅蓮の剣 U. 48/52:04/12/05 16:13:50 ID:tXh7DaDP
 だが一度速度の乗った剣の勢いはそう簡単には止められない。ウルカの身体は容易く空中へ舞い上がった。
 それでもウルカは悠人への尊敬の念を禁じえなかった。あの一瞬、あの刹那で判断できるとは。
 それは過去の経験からのものであったが、それをウルカが知る由もなし。知っても評価は変えないだろう。
(遠ざかって神剣魔法で牽制するつもりだったが……潰されたか。さて、次手は──)
 予定より低く舞い上がったウルカの身体は、しかし既に悠人の剣の届かない位置にあった。
 その肩に──とん、と軽い重みが触れた。
 顔の横を通り過ぎる紅の影。空のウルカを追ってヒミカが跳んだ。
 繰り出される斬撃を、ウルカは僅かにウイングハイロウを羽ばたかせ横に回避する。
 だが無理矢理腕を捻り、切っ先はウルカに追い縋った。思わず〈赤光〉を受け、バランスを崩す。
 ウイングハイロウでバランスを取りつつ反撃する。空中にあって翼を持たぬヒミカは無防備だ。
 だが剣の辿る道筋の先にヒミカの姿は無く──ウルカを照らす月光が遮られた。
 影の主は上に。今、月光を背に飛ぶのは、漆黒ではなく紅の妖精。
 その傍らに浮かぶ、淡い光を放つ真円の球体──
205紅蓮の剣 U. 49/52:04/12/05 16:14:09 ID:tXh7DaDP
 ゴッ、とヒミカの剣が打撃音じみた風圧を伴って振り下ろされる。
 まだバランスは取れていない。避けきれない。ウルカは堪らず、それを剣で受けた。
(スフィアハイロウを、足場に……!)
 ビリビリと掌を震わす衝撃を感じながら、ようやくそのことに気付いた。
 背中に地面が迫る。翼を強く羽ばたかせ勢いを殺し、四肢を使って獣のように着地した。
 ざりざりと庭園の花を引っ掻きながらも、ウルカは着地する。
「はぁぁっ!」
 その目前には悠人の姿。即座、ウルカは立ち上がり、剣の柄に手をかけた。
「おぉぁああ──ッ!!」
 抜刀三連。
 神速の剣は、不可視の域に到達する。
 銀光の軌跡としてしか捉えられぬ剣閃が三筋、悠人の剣を真正面から迎え撃った。
 切っ先、中腹、鍔元。三点を正確に穿つ連撃が、全力で振るわれた〈求め〉を押し返す。
 悠人の剣が浮き、振り切られたウルカの剣が戻され──背後には、剣を構えたヒミカが。
 だが、
206名無しさん@初回限定:04/12/05 16:17:18 ID:jjkDQyPf
支援いきます
207紅蓮の剣 U. 50/52:04/12/05 16:23:48 ID:tXh7DaDP
「ヒミカ!」
 悠人は叫んだ。ウルカの背中は無防備である。なのに。
 その叫びに込められた意を、ヒミカは背筋を走る悪寒と共に正確に理解した。
 戻され、鞘に納められる動きを取るウルカの剣は、しかし鞘には『戻らない』。
 ヒュッ、という音。
〈拘束〉の切っ先は、鞘の上、左脇の下をすり抜け、背後のヒミカを狙う──!
 ────ガッ、
〈赤光〉の柄が、その切っ先を受け止める。しかし、ウルカの殺気は未だ衰えない。
 切っ先の点に重みがかかる。ウルカが地を蹴り、〈拘束〉を軸に、独楽のように中空へ身を躍らせた。
 鎌の動きで跳ね上がったウルカの足がヒミカの側頭部を強打した。ヒミカの身体が弛緩する。
 ウルカはそのまま一回転、足がつくなり今度はそれを軸に背後へと振り返り、突きの一撃を見舞う。
 刈り取られそうになる意識を必死に繋ぎとめながら、ヒミカはそれを防ごうと剣を構える。
 心の臓を狙った突きは、咄嗟に構えられた〈赤光〉に阻まれ、その軌道を逸らされ──
 ヒミカの脇腹を切り裂いた。
208紅蓮の剣 U. 51/52:04/12/05 16:24:10 ID:tXh7DaDP
「つぁっ……!」
 激痛。ヒミカ、と悠人が叫び、ウルカに斬りつける。だがそれを容易くかわし、ウルカは遠ざかった。
 膝を折ったヒミカに、悠人は駆け寄った。傷の具合を確かめながら、悠人はウルカへ向き直る。
 しかし当のウルカは既に剣を納め、戦う気配を見せない。
「今日はこれまで。手前は、別の使命がある故」
 そう言い残し、ウルカは仲間と共に翼を広げ飛び立った。悠人の静止の声に、何故か哀しい瞳を向けて。
 その向かう方向は──
「佳織ッ!」
 向かう先は自分達の住む館だ。あそこには佳織がいる。だが──
 悠人は、荒い息をしながら傷口を押さえるヒミカを見る。置いていくことはできない。
 それを察してか、ヒミカは悠人に言った。
「言ってあげてください……私は、大丈夫です。致命傷では、ないです、から……」
「けど、」
 絶え絶えに言うヒミカの声は、とてもそうは思えない。
209紅蓮の剣 U. 52/52:04/12/05 16:24:37 ID:tXh7DaDP
「大丈夫です。……それに、都合良く、助けが来たみたいですから」
 ヒミカが城のほうを見た。
 悠人もそちらを見ると、ハリオンと、途中で合流したのだろう、ナナルゥが走ってくるところだった。
「ハリオン! ヒミカが──」
「はいはい。分かってます〜」
 すぐさま、ハリオンはヒミカの治療に取り掛かる。
 その横顔には幾つもの切り傷があった。服もそこかしこ破れ、戦いの激しさを物語っていた。
「ユート様はナナルゥと先に行ってください。私達は後から追います」
 幾分しっかりとしてきた口調で、ヒミカは言う。その様子を見て安堵しつつ、悠人は立ち上がる。
「こちらです」
 ナナルゥが案内するように前に立った。悠人は座り込んだままのヒミカを一度見た。
「──すまない。行ってくる!」
 ナナルゥと共に駆け出す背中を、ヒミカは見送る。
 ──ひどく、まとわりつくような嫌な予感が、背中を離れてくれなかった。
 
 そしてそれは、そのすぐ後、的中することになる。
210紅蓮の剣 U.あとがき:04/12/05 16:25:26 ID:tXh7DaDP
Q.スフィアハイロウって踏めるんですか?
A.……………………多分。
実体ですよね、アレ。

ヒミカ補完ルート第二章をお送りしました。支援の方、ありがとうございます。
今回は主に本編中では語られなかった部分と、人間とスピリットの関係に目を向けてみました。
あとザコ兵士も補完(ぇ
彼は散るからこそ美しい花だとは思いますが、敢えてそれを生かすのもまた補完ということで。
もしもう少し悠人達が早く着いていたら、致命傷を負うには至らなかったのではないか、と考えました。
ちょっとレスティーナ王女にも見せ場を作ってみたり。
ちなみに海を渡った龍というのはレーズのことです。
後半は戦闘ばかりで申し訳ないですorz
自分は戦闘を書き出すと延々と書き続ける性癖の持ち主のため、実はアレでも随分削ったほうだったりします。
上手く臨場感を表せてたら良いなぁ。。
戦闘シーンを描く時は、三次元的なビジュアルイメージを思い浮かべながら書いています。
そういうのを、文章を通して感じ取ってもらえれば良いのですが。

書いてる途中、ハリオンならぬヒミカマジックが発動してました。何度ヒミカとウルカを書き間違えたことか……
そういうのを見落としてないことを祈りつつ。まだしばらくはお付き合いくださいませ。
211名無しさん@初回限定:04/12/05 16:28:05 ID:yLQZaUKZ
何はともあれ紅蓮の人、乙です
お茶ど〜ぞ( ゚Д゚)⊃旦
212名無しさん@初回限定:04/12/05 16:31:09 ID:868/6PfD
相変わらず緊迫した戦闘シーンにドキドキしながら拝読させて頂きました。
室内の様子が戦いの中で目に浮かぶように鮮明に描写されているのが凄いです。
戦いの工夫の仕方がいかにも戦闘のプロという感じで、
改めてスピリットは戦う存在なんだなぁと実感しました。
ヒミカ&ウルカは……どうしてこう紛らわしい名前ばかり付けたかなぁ(汗
私は諦めて途中から辞書登録してしまいましたがw
213名無しさん@初回限定:04/12/05 17:11:10 ID:GuY6E4KA
>>210
お疲れさまです。
対ウルカの戦闘はもう圧巻ですな。紅蓮節。
持ち味は活かす方向で行くのが作者も読者も幸せかと。
この先もがんがってくだされ〜、おながいします。
214名無しさん@初回限定:04/12/05 17:53:35 ID:uxDFiW6B
ハリオンさんの震脚。くんふー積んでます。
スフィアハイロウを踏み台にしたぁっ? いや、なんかソロモンの鍵みたいに
登ることも可能?

スピ達が同時に動いていくのがなんだか気持ちが良いですね。指示を飛ばす悠人、
隊長してます。戦闘はそれぞれの色と神剣の特性が現れた素晴らしい殺陣でした。
室内戦闘てのもSSとしてはあまり無かったかも。なんだか池田屋事件を思い浮かべてしまった。
魔法は使いづらいだろうし。

弾指って言葉、初めて知りました。
215名無しさん@初回限定:04/12/05 18:04:55 ID:qFJAO1QK
紅蓮の人乙!
戦闘シーン、迫力ありますねえ。スフィアハイロウでの空中姿勢制御はやられました。
こんなことするのはヒミカだけでしょうねえ。ナナルゥはそういう発想が無いだろうし、
オルファは嫌がりそうw

あと、密かに姫さま補完も乙です。お茶のシーン、兵士への激励。彼女の持つ
カリスマが滲み出てると思いました。続きもほんと楽しみです。
216名無しさん@初回限定:04/12/05 20:29:38 ID:lV7aMjdO
>>210
紅蓮の人G.J!!
ヒミカとウルカ、かっこいいー!
姫さんもイイすねぇ……
ヒミカと悠人は似たもの同士に思えるんで
おんなじ事で躓いてしまいそうで、どきどきします。
217名無しさん@初回限定:04/12/05 20:54:43 ID:NgHrsMhJ
>紅蓮の人さん
室内では調度品を絡めた牽制、駆け引きによって狭い空間をフルに生かし、
屋外では「赤スピの常識破り」の名をさらに揺るがない物にする空中機動戦……熱過ぎです。
前半で悠人が言った、「互いに信頼しあう戦闘」の光景を見せ付けてもらいました。

兵士の「人間らしい」叫びには少し複雑な気持ちにさせられます。
彼らの命を奪う者は、その叫びを発することさえ人間に奪われたスピリットたち。
勝手に感じ取ってしまっただけですが、その対比が心に残りました。
218名無しさん@初回限定:04/12/06 00:13:33 ID:6rUjFpMI
二日間スレを離れてた間にえらい事に!w
>霞氏
お、久々の第二部ですな、エスはお留守番ですか?
あの24時間360度監視カメラの網をかいくぐって萌え上がってこそ
漢というものなのに〜w
萌えを表現するのは難しいですよ〜。恥ずかしいし。
でも続き頑張って下さい。

>道行氏
赤と緑はクリスマスカラー。時節柄いいプレゼントになりました、個人的に。
多分信頼さんも刺激されたんでしょう。

>紅蓮氏
お、久々の(ry
この人のSSでハリオンとヘリオンが模擬戦とか始めちゃったら
とんでもない事になりそうだなあ。
でもいい風が吹いてます。ヒロインに対する私的な思い入れ
のせいかも知れませんが、爽やかな風です。

「わ、悪かった、オルファ!相手が黒と青ばっかりだったんで、つい...!」
「いくらパパでもぴぃたんイジメたら許さないんだからぁ!くらえっ、ふぁいあぼ―――るっ!!」

えー、悠人と一緒にバルガ・ロアーに逝ってきまつorz
219紅蓮の人:04/12/06 18:31:41 ID:PMIJde/i
好評なようで何よりですw ありがとうございます。

>>信頼氏
戦闘シーンでドキドキしていただけたなら成功でした。
元々、読む人間がハラハラしてしまうような文章を書くのを目標にしているものですから。

>>髪結氏
くんふーです。
池田屋は意識してはいませんでしたが、言われてみればそうかも。
元々、限られた空間の中での戦いや、そこらにあるものを利用する戦い方が好きなんです。

>>道行氏
ああ……気付いて貰えた(ぉ
その対比も、また描きたかったものなので。

>>憂鬱氏
そういうこと言われると、戦闘オンリーで書いちゃったりしますよ……?(ぇ


ヒミカの空中機動が予想外に反響が大きいですね。それほど意識したつもりはなかったのですけど(苦笑
ちなみに、スピリット達の攻撃方法は、本編中での動きを参考にしているものも幾つかあります。
前回はトリプルスイングを入れてみたのですが、気付いた人はいないだろうなぁ……分かりにくかったしorz
しかしハイロウは、どれくらいまでならスピリット本体から離して動けるんだろう……
220日々精進です。:04/12/06 19:50:52 ID:xIdW+cel

「ネリー、アイスバニッシャー頼むっ!」
「おっけ〜♪すべてを凍らせ、動きを止める…… ネリーみたいにくーるな女にぴったりよね♪」
「うわぁぁぁっ! 駄目だ、このままじゃ…」

「シアー、アイスバニッシャーお願いっ!」
「う、うん……マナよ、我に従え 氷となりて、力を無にせしめよ アイスバニッシャー!!」
「アイタッ! まだ終わらない…… 終われないんだからっ!」

 ………………

「いたたたた…………」
「すみませんキョーコさま、ちょっと辛抱してくださいませ」
向こうでエスペリアが今日子の手当てをしている。悠人はウルカに包帯を巻かれていた。
「しかし悠人よ、こりゃちょっとヒドイな」
惨況を見渡してさすがの光陰も溜息をつく。今日ネリーとシアーに付いて行った今日子と悠人が火傷だらけでだった。
「ああ、薄々気付いてはいたけどこれほどとは……」
「大体悠がちゃんと二人を訓練していないからこんな事になるんじゃないのさっ!……あたた……」
「いてっ!」
「ほらキョーコさま、もう少しですから動かないで下さい」
今日子が投げつけた包帯が悠人の頭に直撃した。
221日々精進です。:04/12/06 19:51:37 ID:xIdW+cel

マロリガン共和国を制し、サーギオスとの戦いに突入したラキオスは別の意味で危機に直面していた。
戦局の細分化に伴い部隊数を増やしたのはいいが、これまで全く使っていなかったネリーとシアーのスキルがまるで増えていないのである。
特にサポート系が酷かった。二人とも覚えているアイスバニッシャーは「T」のみ。
これではいくらノーマルモードとはいえ敵のインフェルノさえ防げない。
ついいつもの癖で二人にバニッシャーを要求してしまった悠人と今日子は当然というかこの有様である。
「しかしユート殿、もう訓練をしている暇などありませぬぞ。法皇の壁は目前です」
手当てを終えたウルカが呟く。そう。今から拠点に戻っていてはSSランクは覚束無い。
しかしリレルラエルでの連続戦闘が控えている以上消耗は出来るだけ避けたかった。
かといって部隊数を削る訳にもいかない。法皇の壁に控えている敵には波状攻撃が必須なのだ。
「………………」
一同に重苦しい空気がのしかかる。
「そうだ、光陰なら…………」
悠人がふと漏らした一言に皆の視線が光陰に集まる。困った時の壁役光陰。そうだ、その防御力の高さがあったではないか。
「ちょ、ちょっと待て……いくら俺でも使用回数制限に限界が……」
「大丈夫だ光陰、ちゃんと二人ともつけてやるから」
うろたえる光陰に悠人が追い討ちをかける。肩に手なんか置いたりして。
「良かったじゃない光陰、ネリーたんハァハァ、シアーたんハァハァなんでしょ?両手に花よ〜」
今日子がにやにやしながら止めを刺す。
「おいおい……そりゃないぜ…………」
親友達の見事な追い込みに光陰はふと諸行無常という言葉を思い出していた。

 ………………

その頃。
ネリーとシアーは悩んでいた。
「なんでネリーたちの魔法、効かないのかな〜?」
「敵さんたち、凄く強かったね〜」
「う〜ん……そうだっ、きっとTだからいけないんだよ!」
「でももうシアーたち訓練してる暇なんてないよ〜?」
「いいからいいから……ネリーにお任せ♪」
222日々精進です。:04/12/06 19:53:12 ID:xIdW+cel

次の日。
「ネリーちゃん、アイスバニッシャー……うぉっ、やっぱいい!」
「大丈夫大丈夫!いっくよ〜シアーちゃん!マナよ、我に……」
「う、うん……怖い……けど シアーだって〜〜!!」
「お、おいシアーちゃんはアタック……」
「氷となりて、力を無にせしめよ……」
「おいおいおいおい」
「「アイスバニッシャー(×2)〜〜!!」」
「す、すいま……ゴメッ……! ほんと、勘弁……しッ…………ぐああああ…………」
動揺した光陰が加護の力を発動する暇も無く敵の攻撃を全て受け、黒コゲになる。
見事に「壁役」を果たして燻ぶっている光陰の前でネリーは首を傾げていた。
「あれ〜おっかしいな〜。T+TはUのはずなのに〜」
「ネリーちゃん、やっぱりなんか間違ってたんじゃ……」
「ふ、二人とも……T×TはTのままだ…………がくり」


ラキオス布告令第2148
スピリット達は宜しく算術をよく学び、戦いに備える事を怠るべからざること。
またエトランジェはスピリットに平等に訓練を施し、常に非常の際に備える事。
上書き失敗などは持っての他である。わかった?ユートくん(怒
byレスティーナ・ダィ・ラキオス
223名無しさん@初回限定:04/12/06 21:35:56 ID:OlL31BJ/
ワラタ。
だけど、戦闘前のスキル確認を怠るのも良くないねw 「L」押下ばっかだと羽根を何度も見ることに
なるよw でもリクェム頭ネリーは愛すべき存在だぜ。
224名無しさん@初回限定:04/12/06 21:45:29 ID:OlL31BJ/
 夜、悠人は一階に降り、水を飲もうと食堂へ向かった。薄暗い廊下の奥、ドアから漏れる明かりに気付き
エスペリアの部屋の前へ歩いていく。しっかりとお茶と甘い者を用意してから。
 もしかして、また地図を広げて、廻らない舌をこねているのかと思ったのだが、今回は違った。
エスペリアは、半年に一回の決算書報告を前に、うんうん唸っていたのだ。
 食費や日常・戦闘両方のマナのやりくり。完全な赤らしい。色々小言を言われて悠人は渋面を作った。
やれ、訓練に偏りがあるから無駄な出費が増える。やれ、小さい娘達に悠人が甘い顔をしすぎる。やれ、
エスペリアと部隊が別れた時、他の娘達と仲良くしすぎる……最後のは違う気がする。
 で結局何が最大の問題かというと、計算なのだ。ずらりと項目ごとに並んだ出費。それらに人数を掛け合わせたり、
割ったり足したり。さらに一人当たりの平均だの三時のおやつ代やら、ネリーとオルファが壊した備品の補充やらetc……
 この世界には計算機など無い。算盤もない。有るのは訳の分からない、ごつくて使いにくい計算尺だけ。
 しかし、我らが悠人君はハイペリア人なのだ。そう、彼には九九がある。さらには当然ながら?高校生程度の暗算
が利くのだ。
「そこは、えーと一人3ルシルのヨフアルを16人分で、48ルシル。それが7日でえー336ルシルか。えーと一日の
必要マナが256マナで、戦闘時を除くと64日か……えー(紙に書いて縦書き筆算)16384マナだな」
 ぽかーんとした表情のエスペリア。驚くのも無理はない、エスペリアは書き物に関しては悠人は員数外として頭
から決めつけていたのだ。それがどうだろうか。いつのまにか聖ヨト語の数字だけは完全マスターし、エスペリア
の頭を煮えさせていたエスペリアにとっての難題をすらすら解いて行くではないか!
 そして、レスティーナへの進言によって、ラキオス公教育に九九が取り入れることとなり、さらにはおつむがちょっ
とあったかい年少スピリット達にも教育がなされることとなったのだ。
オ「すごーいパパ。あたまイイーー」  ネ「うへー、べんきょういやーー」 
シ「これが全問できればヨフアル……シアーがんばるもん」 光「悠人、天才だな。ここではw」
今「私よりバカなくせに……おもしろくない」 悠「うるさい。お前に言われたくないぞ今日子」
225名無しさん@初回限定:04/12/06 21:49:44 ID:OlL31BJ/
などとネタを書いてみたけど、実際佳織が居るから、何らかの話しはレスティーナに伝わってるかも。
学校のこと話してるだろうし。
226名無しさん@初回限定:04/12/06 22:17:00 ID:8CQcKZQ7
あ、なるほどー、連想がそっちに行っちゃったんですか、髪結い氏。何だか見覚えのあるシーンw

相変わらずシンクロしてますねw  私は「日々精進です。」読み終わって、
「こ、これはあの、物議をかもした短編『鮮やかな命(ひ)』の序章なのではないか!?」
などと邪推してしまいましたよ、ええ。いや、大マジで。
227名無しさん@初回限定:04/12/06 23:33:06 ID:KgAMg/z5
読んでくれた方々に感謝しつつ・・・
>>135
エスがいない方が纏まるかなと・・・まぁ『求め』いるし二人旅じゃないけど・・・

>>136 信頼さん
イオはエス同様辛い過去を背負ってますがあまり過去に縛られすぎると
エスと被りかねない・・・そこら辺のさじ加減が難しい人です。
ヒミカさんの新作も期待しております。感動系で新境地?

>>137 道行さん
『求め』は今後も出番多い予定。イオルートを構成する柱の一つですからー。
本編では後半いつのまにかいいやつだったので過程を補完してやりたいな、と。

>>138 紅蓮さん
草稿あっても書くのは時間かかったりしますよね・・・
私の場合は書き上げると大抵無駄に長いので困ります。
紅蓮の続きもお疲れ様です。戦闘描写凄すぎです。ヒミカかっこいい!
生き残った兵士Aは何気にアセリアでかなり好きなキャラなんで今後に期待。
彼なりに借りを返す見せ場があればいいな・・・(今回限りのキャラだったりして)

>>139
やはり二人旅に期待なのか。皆のプレッシャーを感じる(苦笑)がんばろう・・・

>>218 憂鬱さん
24時間360度じゃかいくぐれませんよ・・・(笑)
がんばって自分なりのイオ像を書けたらな・・・と思います。

次回のイオとの二人旅に期待が集まっている模様・・・
ようやく物語も動きはじめたし次回もがんばらんと。


228名無しさん@初回限定:04/12/07 00:31:52 ID:4qZTVT0H
>147
高嶺家家計簿より抜粋
○月×日
秋刀魚     二尾  \298
大根      一本  \148
酢橘      一袋  \200



ユートさまの ♥ Priceless
229名無しさん@初回限定:04/12/07 01:35:35 ID:U6RJFsUf
あーあー男の人っていくつも愛を持って(ry
>228
そ、それはまさか「高嶺縁音」さんの付けている黒革の家計簿っ!?
ずいぶん和風な食材ですね、ってちくしょう「ヘリオンの新妻アカウントブック」かよ。アイスバニッシャー
かけてやるっヽ(`Д´)ノ  冷えちまえっ ウワアアアアアアアン 

悠「ヘリオン、寒くないか?」
へ「だ、だいじょうぶですこれくらい。それに……」
悠「ん、なんだよ最後まで言ってくれよ」
へ「ユートさんとこうしているだけで……暖かいですから」

 ……………………(´・ω:;.:... 北風は消えゆく運命(サダメ)さ


>226
邪推しすぎですw 算数できないからって処刑候補……がくぶる。
バニッシュできないままだと、エスは前線に立つのが危険ですから、ホントに滑舌良くして
解説やるしかないですねw
230名無しさん@初回限定:04/12/07 17:32:13 ID:1XS5akLG
季節はすっかり「苦しみます」モードになってきたけど
ファンタズマゴリアではクリスマス(もしくはそれに準じた)
行事はあるのでしょうか?
まぁ、アノ世界に伝えるとしたら光陰&今日子で
とばっちりを食うのが悠人でしょうが……

231ブラック・クリスマス:04/12/07 20:43:53 ID:NhC+QJcE

「まぁ、クリスマスと言ってもこっちにはケーキもないしな」
「大丈夫ですよ〜ちゃんとキョーコさまからこの世界で代用できそうなものを教えて頂きましたから〜」
「お、さすがハリオン、既にチェック済みか。で、何が出来るんだ?」
「んふふ〜、それは今晩のお楽しみ、です〜」

 ―――――

「さ〜、お待たせしました〜。シチメンチョウノマルヤキですよ〜」
「お、おい悠人、これ、オルファちゃんが大事に飼」
「俺は何も見てない、いいな光陰、お前もだ」
向こうからオルファリルの叫び声が聞こえてくる。
「パパ〜、ハクゥテがどこにもいないよ〜……おっかしいな〜?…………」
232名無しさん@初回限定:04/12/07 21:07:10 ID:U6RJFsUf
そこで空々しく自然の大切さとか、野生動物を飼育することのエゴだとかを説くわけで。

>230
「クリスマス?ふっ、俺は仮にも御仏に仕える身だぜ? そんな俗世の浮き事にかか
ずらって「コーインさまーこれネリー達からのプレゼントだよー」おおっネリーちゃんっ!
シアーちゃんありがとうっ!…………でなにこれ?」
「うんと、キョーコさまがねーヨーティアさまに頼んで作ってもらった鈴だよ。これでコーインさまが
どこから忍び寄ってきてもすぐに分かるから”てーそう”の守りに心強いとか何とか言ってたよー「よ〜」
”てーそう”ってなんだろね?」
「そっか…………ありがとうネリ−ちゃんシアーちゃん。 へっ、何でだろうな俺の心の中はシンシンと雪
が降るホワイトクリスマスだぜ……」

「じゃーねーコーインさま。シアーはやくいこっ。ハリオンがご馳走作ってるってさ」
「あ〜まってよ〜ネリーちゃん」


サンタ役はやはり詰め所の父性ヒミカさんかな。赤いしw

233名無しさん@初回限定:04/12/07 22:12:35 ID:HBaroZH8
トナカイは、、セリアで
234名無しさん@初回限定:04/12/07 22:22:10 ID:U6RJFsUf
♪いっつもみんなのわらいもの…………あの、そこ、否定するところですよってばうばらjmう゛ぇrp
235ある一つの物語の終わり:04/12/08 11:43:29 ID:NjB1Phj+
12月24日クリスマスイヴ 小鳥の部屋

いつもなら大はしゃぎするわたしも今年ばかりはそんな気分にはなれない。
一緒に盛り上がってくれる今日子先輩も・・・
お坊さんなのにクリスマスに浮かれ、羽目をはずしてはハリセンで殴られる碧先輩も・・・
いつも一緒にいる大親友の佳織もいない。
そしてなにより・・・
「悠人先輩・・・」
わたし達に振り回され困ったような顔をしつつも最後まで付き合ってしまう人。
ぶっきらぼうな様でいながら本当はとても優しい人。
わたしにとって一番大切な人・・・悠人先輩もいない。
「みんな・・・無事なのかな・・・」
悠人先輩とアセリアさんがファンタズマゴリアに帰還してからまだ二日と経っていない。
だけど悠人先輩の話ではもう向こうでは随分時間が経過してるはずなのに誰も帰ってこない。
ついつい思考は悪い方に傾いてしまう。自分はもっと楽天的な性格だと思っていたのに。
236ある一つの物語の終わり:04/12/08 11:44:07 ID:NjB1Phj+
先輩達が過酷な状況に巻き込まれたことは自分の身をもって知った。
今でもあのことを思い出すと体が震える。
先輩にも本当は行って欲しくはなかった、側にいて欲しかった。
先輩の前では大丈夫なふりをしたけど、そんなに簡単に気持ちの整理はできない。
でも・・・止めることなんてできるはずがなかった。
佳織達にも帰ってきて欲しかったし、何より悠人先輩が皆を見捨てる訳は絶対にない。
だから笑顔で送り出した、先輩に心配をかけないように・・・
わたしにできるのはそれぐらいだから・・・・
「先輩鈍いから気付いてないんだろうけど・・・」
苦笑してしまう。わたしの気持ちだって思いっきりぶつけてるつもりなのに全然気付いてないし。
いつものテンションのままだから冗談だと思われてるのかな?
「悠人先輩が帰ってきたら真面目に告白なんかしちゃおうかな。
アセリアさんにも負けませんって宣言したし。あ〜でもアセリアさんは強敵だな〜」
暗くなりがちな気持ちを切り替えて楽しい事を考える。
「わたしが本気で告白したら悠人先輩どんな顔するのかな〜
きっと凄いうろたえるんだろうな〜先輩そういうのに疎いし。
あ〜でもでも俺も実は小鳥のことが・・・とか言われたりして。」
うん、どっちに転ぶかは判んないけど帰ってきたらわたしの気持ちを伝えよう。
悠人先輩のことは前から好きだったけど今回のことで確信した。
いなくなるかもしれないと考えたとき私は・・・・
237ある一つの物語の終わり:04/12/08 11:45:20 ID:NjB1Phj+
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あれ・・・?私なにしてたんだっけ?」
何かとても大事なことを考えていたような気がするんだけどな。
どうしても思い出せない・・・
ひょっとして寝ぼけてるのかな?
首をかしげながら、ふと窓の外をみる。
「雪だ・・・・」
外にはいつのまにか雪が降っていた。
クリスマスの町を彩る幻想的な風景・・・
だけどわたしには悲しい風景に思えた。
町を覆う白い雪。まるで全てをなかったことにするかのような・・・
「あれ・・・?」
窓に映るわたしは泣いていた。
「わたし何で泣いてるのかな?
雪を見て泣けるほど感受性は豊かじゃないのに・・・」
判らない・・・判らないけど涙が止まらない。
ただ・・・ただ悲しかった。

彼女は知らない悠人がその時エターナルとなったことを・・・
必ず帰るという約束も彼に対するその想いも・・・
238ある一つの物語の終わり:04/12/08 11:46:22 ID:NjB1Phj+
数ヵ月後
「ほらほら佳織ー。早くしないと遅刻するよー。」
「ま、待ってよ・・・小鳥。だいたい小鳥が寝坊するから・・・」
わたし達は学校にむけて走っている。
「そんなこと言ってると遅刻する・・・わぁ!」
佳織の方に振り向いた瞬間人にぶつかってしまう。
「おっとっと・・・大丈夫か?」
ツンツン頭のちょっとカッコいい人だった。
「あ、はい。ごめんなさい。大丈夫ですか?怪我してないですか?」
慌てて謝る。
「いや、平気だよ。こ・・・君も怪我がなくてよかった。」
優しそうな笑顔を浮かべる。
「ごめんなさい、急いでて・・・」
「遅刻しそうだもんなこの時間だと・・・お、か・・・友達も追いついたみたいだし
急いだ方がいいぞ。」
「あ、そうだ!遅刻しちゃう!佳織行くよ!」
「も、もう限界・・・」

走っていく二人を見送る。
相変わらず小鳥が佳織を振り回してるらしい。
元気そうな二人を見て安心する。
「ただいま小鳥、佳織。今までサンキュな。・・・それじゃ行ってくる!」
239名無しさん@初回限定:04/12/08 12:27:03 ID:WGpLh5dr
支援した方がいいのかな?
240名無しさん@初回限定:04/12/08 12:36:31 ID:NjB1Phj+
あ、すまない。慌てたら完とかいれるの忘れた。
終わってます。クリスマスネタってことで。(どこが?
後書きは・・・書くとしたらあとで・・・それではー
241名無しさん@初回限定:04/12/08 13:44:43 ID:gnb8BZNZ
>>240
お、そういや小鳥は久しぶりか。乙です。
切ないねぇ…
最後の「くる」がまた…泣かせるねぃ(´Д⊂)
242名無しさん@初回限定:04/12/08 14:36:53 ID:Nxw5cbQ1
>240さん
冒頭で、佳織と小鳥の演奏に乗って、
悠人と光陰のトナカイを引きつれた今日子サンタが大暴れ……
という喧騒が目に浮かんできました。チクショウ、ぼやけてきやがった(ノД`)

クリスマスネタなら。
Q.サンタコスチュームが似合いそうなのは?



A.……ラキオス王(太。髭。爺。)orz
243セリアの憂鬱1/4:04/12/08 14:51:44 ID:Wy0Wor2p
「じょーいとぅーざわーるうぃんど♪...っと?」

時はスリハの月。ハイペリアで言えば年の瀬である。
一ヶ月が20日までしかないこの世界には、本来クリスマスなどと言うものは存在しない。
しかし最近合流した今日子や光陰の話を聞かされたラキオス軍スピリット達も、
何となくその華やかな雰囲気を感じ取ったのか、このところ浮かれ調子である。
つられて上機嫌で鼻歌を歌っていた悠人に向かって、青い疾風が駆け寄ってくるのが見えた。
「セ、セリア!?」
「うわあああんっ、ユートさまっっ!!」
胸に飛び込んできたその衝撃に耐えながら、悠人は咳き込んだ。
というか、この状況が理解し難い。これがツンドラ永久凍土の名を欲しいままにした、あのセリアなのか?
胸に顔を埋める直前、ちらりと見えたその顔もまた、悠人の想像の範疇を超えていた。
244セリアの憂鬱2/4:04/12/08 14:54:21 ID:Wy0Wor2p
「ゲホゲホッ...と、とにかく落ち着け、セリア。い...一体何があったってんだ?」
悠人はセリアの体を引き離しながら尋ねた。
顔を見られたくないのか、はたまた流れ落ちる涙を抑えているのか、セリアが両の掌で顔を覆う。
「うっ、ぐすっ、クっ、クリスマスなんて大嫌いよっ!」
泣きじゃくるセリアというのもちょっと可愛いもんだ、などと不謹慎な事を考えてしまう悠人であった。
「...と、とにかくさ、分かるように話してくれ。俺で良ければ相談に乗るぞ?」
「ヒミカが...ヒミカがぁっ!」
「ヒミカがどうした?」
「私達は年長組だから...ぐすっ、オルファとかネリー達を楽しませてやらなきゃならないって言って...」
「あいつは年少組に甘いからな。まあ、でも悪い事じゃないと思うけど...。」
幼稚園のようなグループ分けもどうか、と思いながら悠人は言った。
「でも、でもっ、こんな事しなくたってっ!!」
そう言ってセリアは初めて顔を上げた。
「―――赤いな、見事に。」
見間違いではなかった。
...セリアの鼻は、ホオズキの実のようにつやつやと輝いていたのである。
245セリアの憂鬱3/4:04/12/08 14:57:33 ID:Wy0Wor2p
「ヒミカが、自分は『サンタさん』の役をするからって...」再びセリアが泣きじゃくり始める。
「...なるほど、セリアは『トナカイ』ってことか。ひどい事するなあ。」
「ひどいでしょ?ひどいですよね?落ちないんです、これっ!!」
セリアが悠人の胸ぐらをつかんで揺すった。
「わ、分かった分かった。でも、そんなに嫌なら断りゃ良かったのに。」
「う...断ったんです、一応!なのに...今朝起きたら、いつの間にかっ!」
恐らくヒミカの差しがねに違いないが、大体犯人の見当はつく。
「落ち着けってば。あんまり泣いてばっかりだと、本当にそんな鼻になるぞ。」
「なんですってえっ!」血相を変えたセリアが、胸ぐらをつかんだまま顔をぐい、と近付けた。
だが、ピエロの如きその鼻では、燃えさかる炎をも凍て付かせるような普段の迫力は、到底出せない。
「わ、悪かった。俺が何とかしてやるから。」
悠人は噴き出しそうになるのを必死にこらえ、己が眉間に全ての筋力を集中させた。
ここで笑えば自殺行為に等しい。
「ほ、本当ですか、ユートさま?あ、あ、ありがとうございますっ!!」
悠人の言葉を聞いたセリアが、ぴょこんとポニーテールの頭を下げた。
「とりあえず付いて来いよ。俺もここんとこ、ヒミカのセリアいびりは目に余ると思ってたんだ。」
そう言うと悠人は颯爽と先に立って歩き始めた。セリアが慌てて後を追う。
246セリアの憂鬱4/4:04/12/08 14:58:40 ID:Wy0Wor2p
「遅いじゃないの、セリア!どこ行ってたのよ?もうすぐ出番よ!...って、その鼻は!?」
サンタクロースの扮装をしたヒミカが、悠人と連れ立ってやって来たセリアを見て絶句した。
その鼻は、晴れ渡るラキオスの空のような水色に塗りたくられていた。
「やっぱり水の妖精なら青じゃないとな。今年のハイペリアのクリスマスじゃ、ブルーが流行ってるって言うし。」
瞳から輝きを失って茫然と立ち尽くすセリアの横で、悠人が満足気に微笑む。

まさか、自分の行いがセリアに追い打ちをかけていようとは、露ほども気付いていない悠人であった。
247名無しさん@初回限定:04/12/08 15:05:47 ID:Wy0Wor2p
>>240
乙&祝・小鳥カテゴリ誕生!
いいですよね〜、小鳥。ああいう元気な娘、大好きです。
そうか、悠人達がファンタズマゴリアへ戻ってから、エターナルに
なるまでの僅かなひとときを切り取って...。イイ!

再会を横取りされた佳織も、これなら納得でしょうw
248名無しさん@初回限定:04/12/08 15:59:10 ID:aquVvovI
>『セリアの憂鬱』の中の人

いびりじゃないっ、いぢりだっ! とか力説してみる(w
それはともかく、やっぱりみんなのアイドルなのね、セリアさん。
ここはひとつ、一言二言呟いて鼻の代わりにほっぺを赤くさせる方向で…
249遅刻しそうだった240:04/12/08 17:42:06 ID:NjB1Phj+
って慌てすぎですね。完とか忘れて支援の人惑わしたり。
>>239さん ごめんなさい。
クリスマスネタを考えて出たのはこんなの・・・クリスマス関係ない・・・

ときにゲーム本編で悠人召喚〜マロリガンとの開戦までが現代では1日なのに
現代で数日すごしてもマロリガン戦が進んでないのはなぜ?
時間の誤差かみ合ってないような・・・時深さんが何かしたのかな?

250名無しさん@初回限定:04/12/08 20:16:34 ID:B3nFyDVd
>249
小鳥は、一度その羽根に受けた風は忘れない……(;´д⊂

友情の印とか言って、なぜか二つに割れた求めの欠片を佳織から譲られる小鳥。
共鳴しあう欠片は、二人の人生の節目節目で不思議な縁を取り結ぶ。結ばれた糸目。

ゲームの方は、デウスエクスマキナ役だと思えば>おBあSあN

>247
ああっ!? だめっ! 絶対零度に達してしまうよっ! 
と言うことで、冷え切ったセリアはそのまま霜に覆われて雪だるまと化したのでした。
それはラキオスのスリハの月のことでした。めでたしめでt(アイスバニッシャーXX

憂鬱シリーズカテゴリ化まだー
251230:04/12/08 20:38:10 ID:I5pJMrvb
コンビニに行ったらクリスマス一色だったんで
書き込んでみたら……
>>230さん、>>232さん、>>240さん、>>247さん、ありがとございます。
そして、G.J.!!
252名無しさん@初回限定:04/12/08 20:50:02 ID:fgiTvcUp
>>240
乙〜。
胸にズーンと来ました。
こういうの好きだけど切ないなぁ・・・
でもやっぱり心のどこかに想いは消えることなく残ってるんでしょうね。

>>247
乙です。
青鼻のトナカイか・・・医療に精通してそうですな。(まてや)
ヒミカさんもすっかりいじめっ子に。がんばれセリア。

翌日、なかなか起きてこない悠人をエスペリアが起こしにいくと、
そこには氷づけの悠人が・・・
なぜ悠人は氷づけにされたのか。はたして犯人は!?

とかなんとか思い浮かべたり。
ところで、トナカイの格好はヨーティアが一番似合いそうです。なんとなく。
253名無しさん@初回限定:04/12/08 21:52:00 ID:CIogx6M5
トナカイの体にヨーティアの首が付いた物体を想像してしまった。






   『クダンは、嘘は、言はぬ』


……とか、喋ってそうだなw
254247:04/12/09 00:08:25 ID:U1rmGyfu
>>252
ヒミカさんにはいじめてる自覚はないんですけどねw
気配りして橋渡ししてるつもり。
でもヘリオンをパシリにしてる主犯も実はヒミカだったりする。
体育会系ってやつなんですかねえ...
255名無しさん@初回限定:04/12/09 07:45:57 ID:VHMuVPwt
>>254
次の夜。再び天井裏から奴が……
セリア「うわあああんっ、ユートさまっっ!!」
悠人「セ、セリア、どうしたんだその髪?!」
セリア「ううっ、朝起きたら……結べないんです〜!」
悠人「結べないって……ってその手っ!」
ものの見事に真っ赤なブーツみたいな「足」をつけられて泣きじゃくるセリア。いいかもしれない。
セリア「ひどいでしょ?ひどいですよね?取れないんです、これっ!!」
悠人「落ち着けって。しかしその調子じゃ今夜辺り角が生えてくるな」
セリア「そ、そ、そんなの死んでも嫌ですっ!」
悠人「まあそうだろうなぁ……でも奴の襲撃を防ぐのは至難の業だぞ」
セリア「うう、もうあの部屋で寝れない……」
涙目を一生懸命擦れもしない「足」でこしこしするロングストレートセリア。すごくいいかもしれない。
悠人「……じゃあ今夜、俺の部屋にくるか?」
しまった。思わずトンでもないことを口走ってしまった。しかも凄くベタだ。
さあ飛んでくるのは平手か、それとも足か?いや、この場合どっちも足か。ってこの非常時に俺はなにを。
セリア「……」こくっ
悠人「…………へ?」
真っ赤になって俯いたまま俺のシャツをぎゅっと握ってくるセリア。いや、握れてないけど。そんなことより。
悠人「お、おい今のは冗談」
セリア「ユートさま……明日はユートさまが髪を結んで下さいね……」
悠人「先にブーツを脱がさなきゃな……」
セリア「はい……優しく……脱がしてくださいね……」
通りがかりのニムントール「あんた達往来でなにやってるのよ」
256247:04/12/09 08:37:35 ID:U55CLzey
>>255
朝っぱらからツンデレブロウが!!??

くぅぅっ!食らっちまたかっ!...駄目...少し、食らい過ぎ...た...ごめんなさい...もう会えない...か、も...
257名無しさん@初回限定:04/12/09 12:25:41 ID:MjlLizsF
>>255
ナイスツッコミだ、ニムっ!(w
258名無しさん@初回限定:04/12/09 17:17:35 ID:/Gwg070B
徐々にでれでれになっていくセリアに期待
原作はツンだけでデレないし
259名無しさん@初回限定:04/12/09 17:23:46 ID:8hCmCVmD
デレてるじゃない。EXで。
260名無しさん@初回限定:04/12/09 17:48:51 ID:FpcMnzFX
これだけの人が雑魚スピ達を愛してやまないというのに、メーカーは

な ぜ ベ ス ト を 尽 く さ な い の か !
(訳:雑魚スピ追加シナリオ作ってくれ)

いや、無理だってのはわかってるんだ、うん……_| ̄|○
261名無しさん@初回限定:04/12/09 18:27:50 ID:8hCmCVmD
PS2版では雑魚スピ増強とか言ってるじゃない?
クオーリンの立ち絵とかも期待出来るのかな?
262名無しさん@初回限定:04/12/09 19:35:55 ID:K0cSz607
そして雑魚スピ全員分+イオのシナリオを加えた完全版を逆移植。やばい。諭吉の野郎を放流しちまいそうだ
263名無しさん@初回限定:04/12/09 19:58:21 ID:c192RZbe
ヨーティアと小鳥もおねがいします。
264名無しさん@初回限定:04/12/09 20:18:48 ID:L8WgQkrH
あのさ……佳織はどうしよう……?
265おにぎりの中身の人:04/12/09 20:51:08 ID:Ia93zguW
出すのか・・・永遠神剣「名堀端」を・・・

ヨーティア永遠神剣「盆蔵」
小鳥永遠神剣「機関銃」

3文字はやっぱきついのぉ
266名無しさん@初回限定:04/12/09 21:08:47 ID:piVZ97A7
永遠神剣「道頓堀」
267名無しさん@初回限定:04/12/09 21:26:59 ID:L8WgQkrH
カーネルおじさんの人形をぶん回す光景が浮かんじまったよ
268名無しさん@初回限定:04/12/09 21:43:24 ID:gXsCJKQt
光陰の服がハッピに見えた俺は、
是非タテジマのハッピ着せて「道頓堀」振り回させたいです
269名無しさん@初回限定:04/12/09 21:49:08 ID:VHMuVPwt
酔っ払ってカーネルおじさんぶん回すラキオス王
270名無しさん@初回限定:04/12/09 22:07:23 ID:Y54vjWRI
永遠神剣「揚鶏」
271名無しさん@初回限定:04/12/09 23:59:02 ID:VHMuVPwt
>>249
バーンライト制圧に数ヶ月費やしてもマロリガンはスレギト制圧して4日後に陥ちているとか
あまり深く考えない方がいいのかも知れないorz
272良い子の敵、黒サンタ1/3:04/12/10 00:48:43 ID:uE/Pm+VQ
クリスマスに興味津々の年少組に頼まれ、居間に移動してから少々の時が経ち、
悠人がひとしきりの知識を教え終わりほっとした所で、光陰がポツリと呟いた。
「ところで、悠人が説明しなかった事が一つあるんだが、こんな話があるんだ。
良い子にプレゼントを配るサンタクロースと対をなす、黒サンタがいるという、な」
「黒サンタ?」
身を乗り出して目を丸くする彼女たちに向かって、光陰はゆっくりと脅かすように続ける。
「ああ、そうさ。普通のサンタクロースは赤い衣裳に白いひげという悠人が言ったとおりの奴なんだが、
黒サンタはその名の通り真っ黒い衣裳に身を包んでいるのだ。そして、良い子にプレゼントを渡すのが
サンタクロースの仕事なら、黒サンタの仕事は物を取ってどっかに持っていっちまうことなんだ」
その光陰のからかいが混じる表情を見て、悠人も光陰の話の意図に気がついた。
ちょっと問題のある子をしばらくの間は良い子に変身させる、よくある脅し文句だ。
「泥棒なのに、仕事なの?それじゃあ悪い奴じゃない」
何時から聞いていたのか、もののついでとばかりに居間にやってきていたニムントールが
光陰を軽く睨み続けたまま面倒くさそうに言葉を漏らした。
普段はほぼ無視されるような状況にあったためか、
そのような反抗的な言葉にさえも嬉しそうに光陰は顔を向ける。
「いやいや、そうじゃないんだなぁニムントールちゃん。この黒サンタが物を盗んでいくのには理由があるんだ。
良い子にはプレゼントを配ってくれるサンタクロースがやって来る。
それなら、黒サンタがやってくるのはどんな子の所だと思う?」
ニヤニヤと笑いながら大仰に手を広げ、エンターテイナーのような調子で問い掛ける。
きっと、そのような態度がニムの癪に障るんだろうなと思いながら悠人が当人に目を向けると、
やはりその瞳をヤブ睨みの形にしたまま、ふいと光陰から目を逸らし、
「知らない」
と一言だけを返した。
気を悪くした様子も見せないで、光陰は唇の端をくい、と持ち上げる。
そのまま、再びオルファやネリーたちのほうにも視線をやりながら言葉を続けた。
273良い子の敵、黒サンタ2/3:04/12/10 00:49:35 ID:uE/Pm+VQ
「それはな、行儀が悪かったり、言いつけを守らなかったりする悪い子の所さ。
大事なものをお仕置きのために持っていっちまうってわけだな。
だから、ひょっとしたら黒サンタが来てしまう子がいるかもしれないなぁ」
そうして意味ありげにニムントールへと目を巡らし、
「例えば、礼儀のなってないことを注意されてる子、とか
いつも落ち着きが無いとか、ケンカをするなって怒られてる子とか」
順にネリー、オルファへと含みのある表情を向ける。
「お、落ち着きが無いなんてことないよ!」
「ケンカだって、あんまりしてないもん!」
ただ一人、光陰からは何も言われなかったシアーがゆっくりと喋り始めた。
「そうかな〜?昨日もおやつの時間に……ふむぅ」
左右から、見事な連携でシアーの口を塞ぐ二人。半ば引きつった笑みで、
互いに仲良しをアピールしているのを見て悠人も苦笑いを禁じえなかった。
その時、悠人は自らにじっと注がれた視線をふと感じ取った。
おや、と顔を向けた先でニムントールと目が合う。目と口をあっと開いてやや気まずそうに顔を伏せた。
「どうしたんだ、ニム?」
ピクリ、と肩を震わせてしばしの逡巡。悠人が首を傾げかけた瞬間、顔をばっとあげて声をあげる。
「ニムっていうな、ユートのバカ!」
「お、おい?」
「ユートのお話、もう終わったんでしょ。じゃ、ニムは帰るから」
ぷい、と悠人からも目を逸らして止める間もなくぱたぱたと自室に戻っていった。
あまりの唐突さに呆然としている所で、光陰が悠人の隣に近づいてくる。
「効果なし、だったかな」
「いやぁ、まああの位でニムの口の利き方が良くなる訳無いだろうし」
互いに苦笑いを交し合い、二人は目の前で一所懸命に良い子であろうと努力を続ける者たちと、
さらに大勢の相手へ渡すプレゼントの内容を吟味をし始めた。
274良い子の敵、黒サンタ3/3:04/12/10 00:50:41 ID:uE/Pm+VQ
カチャリと自室の扉を閉めて、ニムントールは静かに寝台の上に腰掛ける。
しばらく口を尖らせていたかと思うと、その口をついて小さな呟きが漏れた。
「黒くて、大事なものを持ってっちゃう」
そのまま目を閉じているニムントールの頭の中に、色々と「大事なもの」が浮かび始める。
その中で。もっとも最後に彼女の中に追加された「大事なもの」の姿が大きくなっていた。
そして、その姿の横にはもう一人の「大事なもの」が。
「そんなの、黒サンタなんてのじゃなくても、もう間に合ってるじゃない」
目を開けて天井に視線を移し、力を込めてそう口にする。だとするならば。
今の自分を「黒サンタ」から守るためには良い子でなどいられない。
自分を隠して、聞き分けのいい良い子でいたらあっという間に持っていかれてしまうだろう、と
確信を秘めた瞳で、頭に浮かぶ者に向かって視線を飛ばす。
「負けないんだから、ね」
口に出して、ニムントールは形の良い唇を小気味よく引き締めた。
275名無しさん@初回限定:04/12/10 00:53:29 ID:uE/Pm+VQ
やや乗り遅れたような気がしつつ、
まだ期間は終わってないとクリスマス(?)ネタでした。
276名無しさん@初回限定:04/12/10 03:25:41 ID:NFpMWeNK
最愛の姉が最大のライバル……なんとも不憫な……だがそれがいいw
277名無しさん@初回限定:04/12/10 09:01:07 ID:I6Y/fH0L
覆面をした黒サンタ...そういや最近ウチの近所でよく見かけるけど...
あれ、ファーレーンだったんだ...。道理で声掛けても恥ずかしそうに逃げてくはずだ。
内気だもんなあ、あの娘。(←早く警察に連絡した方がいいのでは)
278名無しさん@初回限定:04/12/10 09:43:10 ID:tl6C0c+b
光陰必死なだ(w
ファーは黒いパジャマに黒いナイトガウン、黒いナイトキャップっと。メモメモ
がんがれ、ニム。君ならミドリサンタになれるさ。
え?違う違う。碧じゃなくて緑さ。
ん?「緑サンタ」って何かって?
その前にまずはクリスマスツリーのお話をしないといけないね。
それはむかーしむかしの物語…(ry
279名無しさん@初回限定:04/12/10 18:36:11 ID:2gIOVWGA
感想ありがとうございます。
すみません、誤字がありました。
2/2最後の行
×さらに大勢の相手へ渡すプレゼントの内容を吟味をし始めた。
○さらに大勢の相手へ渡すプレゼントの内容を吟味し始めた。

>276さん
クリスマスでなくても、大事な『神剣(もの)』は
しょっちゅう持っていかれてるのでした。

>277さん
んー、袋が唐草模様なら要注意、ですか(的外れ

>278さん
ユートナカイをめぐって各色サンタが……と考えたら、
BRになってしまいました。
280名無しさん@初回限定:04/12/10 19:59:52 ID:H/pYF3Kb
近頃ではめっきり唐草模様の袋背負ったファーレーンが減ってしまいましたw
281名無しさん@初回限定:04/12/10 21:29:22 ID:dWvdPblR
「ねーお姉ちゃん。あの変な模様のおっきな袋何なの?さっきから動いてたりうめき声が聞こえたり」
「ふふふ。気にしないでニム。ただ、そうね。私達へのささやかなサンタさんからのプレゼントってところか
しらね。ニムにも貸してあげるから。ふふふ」

「ムグー フグ ンーーー
282名無しさん@初回限定:04/12/10 22:45:27 ID:KQQkhiAW
一方その頃、ネリーとシアーの部屋では…

「そぉっと、そぉっと…ぐふふ、眠ってる眠ってる。んー、ぷりちーだねぇ」
光陰サンタの魔の手が迫っていた!
キョロキョロと辺りを確認する光陰サンタ。雷サンタの気配はない。
いざ、プレゼントを…
「うわっ、たっ、つっ…ゴメッ……!」
雷サンタの手を煩わせるまでもなく、ネリーの寝相の悪さに撃沈される光陰サンタ。
意識が薄れ行く中、光陰サンタは思うのだった。
(これで眠ってられるシアーちゃんって、以外に大物かも…な…)
283名無しさん@初回限定:04/12/10 23:46:59 ID:xSxZq4IP
しかし、ファーレーンがかっさらって来た男にはおまけが付いていた。

「フングフムググ!(訳・何でお前が!)」
「しっ!危険です!大きな声を出さないでください!」
「フグフフフゴフ!(とにかくほどけ!)」
「駄目です。最近第一詰所にほとんどお戻りになられなかった罰です!
  私がどれ程寂しかったと...んむ...」
「グッフッ...オウア...グ......」

「ねえ、お姉ちゃん、さっきから袋の中の声、変じゃない?」
284名無しさん@初回限定:04/12/10 23:47:02 ID:MXhLrlOJ
一瞬頭をテムオリンサンタとそのそばに控えるタキオストナカイがよぎった。
285名無しさん@初回限定:04/12/11 00:48:10 ID:svrRCop1
じゃあその隣にはメダリオトナカイを鞭でしばくミトセマールサンタが居るな。
286名無しさん@初回限定:04/12/11 01:12:18 ID:NxwApHUf
そこに舞い降りる漆黒のサンタ帽子をかぶった女。
音速を遥かに超える居合抜きで唐草模様の袋を両断し
一瞬のうちにツンツン頭を小脇にかかえ飛び上がる。

「フングーフムググーー」
「我が主からの伝言がある、正確に伝えよう・・・」
黒きサンタ帽子の女が、やや顔を赤らめながら告げる。
「パパはオルファのものだよ(はぁと)。取り戻したければ、追って来て。
オルファがいる場所まで這ってでも辿り着いてね。
オルファの『再生』でエスペリアお姉ちゃんの『聖緑』を破壊してあげる」
287名無しさん@初回限定:04/12/11 01:23:51 ID:mO+znuPg
頭の冠をサンタ帽子に換装したントゥたん。
288名無しさん@初回限定:04/12/11 09:01:06 ID:6llmiy3d
「ぐうぅっ!!ウルカを使うなんてっ!!」
飛び立つ黒帽サンタを歯ぎしりしながら見送るエスペリアの後ろで
ファーレーンはorzとくずおれた。
「やっぱり...私は無視ですか...私そんなに印象薄いですか...。」
「ファーレーンさんっ!そんなにあっさりあきらてどうするんですかっ!」
「...ヘリオン?」
「追いかけましょう!今ならまだ間に合います!!」

―――悠人を救出すべく飛び立つ黒スピの影二つ。
     だが、「ミイラ取りがミイラに」というハイペリアの言葉を、この二人は知らない。
289名無しさん@初回限定:04/12/11 09:33:16 ID:+Tf67XEs
>>287
ソレダ!
290名無しさん@初回限定:04/12/11 11:48:56 ID:0UoTIoYV
とんでもないクリスマスプレゼントを残して飛び去った黒三人衆を目で追いつつ、
置いていかれたニムは本気で面倒臭がっていた。
「うっうっうっ…………やっとユートさまを取り戻したと思ったのに……」
さめざめとハンカチを噛み締めたりしているエスペリア。
姉とは別の意味で困った存在だった。
「……クーリングオフしたい」
緑スピの結束にひびが入った瞬間であった。
「ンギュルギュルル〜!」
ニムの溜息を聞きつけたのかどうか、ソーンリームの方角から飛んでくるのはントゥサンタ。
「………………」
「ンギュ、ンギュギュ〜!!」
ニムは無言でエスペリアを指差す。ントゥは一つしかない涙目を必死でふるふるさせた。
291名無しさん@初回限定:04/12/11 13:09:36 ID:9pry24ib
―――その頃。
「くっ...」ヘリオンとファーレーンに挟まれた黒帽サンタ。
「さあ、おとなしくユートさまを引き渡しなさい!この泥棒猫め!」
ファーレーンが高らかに宣告する。
「ファーレーン殿、ヘリオン殿。ここは、三人で山分けと参りませんか。」
追い込まれたウルカが、苦肉の策を打ち出した。
「いいでしょう。」即答するファーレーンであった。
「そっ、そんな事...ええっ?」二人の会話スピードについて行けないヘリオン。

                …ラキオスキャッツアイの誕生の瞬間であった。
292名無しさん@初回限定:04/12/11 15:26:35 ID:0UoTIoYV
「まさか…………裏切られた……?」
いつまでも帰ってこないウルカサンタにオルファは焦っていた。
『再生』を取り出して何となく星の飾りをつけてみる。……かっこわるかった。
「オルファ……こんなところでなにをやっているのですか」
「きゃあっ!」
いきなり窓の外から声がしてオルファは驚いた。一瞬ウルカが帰ってきたのかと思っていたが声が違う。
窓の外に浮かんでいたのは赤い髪を靡かせたム○カ様もとい、ナナルゥだった。
「やっぱりサンタといえば赤よね」
戸口にいつの間にか立っていたヒミカが囁く。
紅白に綺麗に色分けされたふわふわの衣装に赤い髪のヒミカはまさしくサンタに相応しかった。
…………裾の短いスカートに黒い網タイツが艶かしいのはどうかと思うが。
一部のマニア受けしそうなその姿はあえて言えば秋○原に相応しかった。
しかし取りあえずは赤サンタも三人揃った。
こうして黒と赤の壮絶なロシアン・ルーレットが始まろうとしていた。
293名無しさん@初回限定:04/12/11 17:43:40 ID:NxwApHUf
一方、結束を固める赤サンタ達の足元、第一詰所のリビングには…

「お父さん、遅いね…」
物憂げに父の帰りを待つユーフォリアと、料理をならべるアセリアの姿があった。
「大丈夫、ユートは約束を守るから」
「…うん」
「それよりユーフィ、サンタさんに何かお願いしたのか?」
「あのね、お父さんにも同じこと聞かれたからね、弟がほしいって教えてあげたの」
「弟」
「うん、そしたらお父さん、ちょっと照れたお顔してた」
「…ん」
「なんでかな?」
「…ユートを迎えに行こうか、ユーフィ」
「うん、いくー…あれ? お母さんもお顔が赤いよ?」
294名無しさん@初回限定:04/12/11 18:17:07 ID:+7LzvqlE
勝手に続き、スマソ

てくてくてく、
大きな月が照らす中、母娘は手を繋ぎ歩いていく。二つの黒い影と、ハイロゥの淡い影と。
「…ユーフィ」
「なぁに、お母さん?」
「ユートはそれから何か言っていたのか?」
「うーん…なんかごにょごにょ言ってたケド…お願いが叶うとイイな、って」
「叶うとイイな…か」
「うん」
てくてくてく、
「ユーフィ」
「…はい」
母のしっかりした呼びかけに、ユーフォリアはまじまじとアセリアを見つめる。
「サンタさんのお願いは叶うぞ」
「ホント?」
「ん、今日…叶える」
「やったぁ!サンタさんのお陰だね!」
自らの周りをくるくると回る娘を、母は柔らかな面持ちで見つめ…
そして毅然とした表情で、前を見据えた…顔は赤いまま。
「今日、叶える」
てくてくてく、二つの黒い影と、ハイロゥの淡い影と。
295名無しさん@初回限定:04/12/11 18:35:34 ID:5YDU1gS6
「――ぷはっ。一体、何がどうなって……う、気持ち悪ぃ……」
揺らされながら運ばれて、すっかりウルカ酔いした悠人の目に最初に映ったのは見覚えのある風景。
そこはラキオス近郊のリュケイレムの森だった。
噛まされていた猿轡の行方を探るために首を左右に振ってみると、背後から小さな囁きが届く。
「ユートさま、あまり動かないで下さいね。今、手の縄を解いてますから」
「あ、あぁ。ありがとう、ヘリオン。ところで後の二人はどうしたんだ?」
同じように囁きを返したところ、少しの時間の沈黙を伴って恥ずかしそうにどもりながらの声。
「えと、その。どちらが、上を取るか下を取るかでもめていますっ」
まだ自由ではないために頭を抱える事はできなかったが、顔にだけは十分に苦悩を表して悠人はヘリオンに視線で問う。
「あ、わ、わたしは……先に両手を……」
まさかヘリオンまで、と顔面を蒼白にした瞬間に悠人の両手が解放される。
この手を何のために、何処に触れさせられるのかと身を震わせる悠人の耳に願っても無い言葉が入る。
「さぁ、これで足も外せます。わたしが触ったらルール違反ですからね」
疑う間もなく、手早く足の縄を外して悠人の身は自由になった。
「でも、どうして」
「実は、元からそのつもりでした。わたし一人じゃウルカさんには敵いませんから。
待ってる人が、居るんですから。……ちゃんと帰らないといけませんよね。
……でも、一つだけ……」
軽く視線を逸らしながら、ヘリオンは呟く。悠人は黙って頷き、
「メリークリスマス、ヘリオン」
彼女の頭をくしゃりと撫でた。

待つ人の元へと駆け出した悠人を見送るヘリオンの呟きを聞くものは、今は誰も居なかった――
だがしかし、それで楽に帰すほど、残りの面子が甘いわけは無いのである。
296名無しさん@初回限定:04/12/11 19:12:55 ID:AvAT2/0O
「なかなか…良い度胸です、ヘリオン殿。」
「貴女に出し抜かれるとは…すっかり油断していました。私とした事が...。」
ジャリッ、と土を踏みしめながら二つの黒い影がゆっくりと小柄な少女に迫る。

―――これは、私一人の手には負えないかも、です、ユートさま。
ヘリオンは悲しげな笑みを浮かべた。……だが、その時。
一条の閃光が奔った。

「デュアルエーテルジャーンプ!!」
「光の使者、雑魚ブルー!」「ざこぶるー!」
「「二人はネリシア!」」
「闇の力の僕たちよ!!」
「とっととおウチに帰りなさい!!」
297名無しさん@初回限定:04/12/11 21:04:41 ID:+T1YDKI+
所帯持ちユート ワラタ。家族手当は出るんですかw しかもそうなると不倫……w

『隊長 高嶺悠人』    ヒロカネ・ヒミカ作  1〜7巻
『小隊長 高嶺悠人』  全18巻
『学生アルバイト 高嶺悠人』 全26巻

298じゃ、そろそろ終わりましょうか:04/12/11 22:26:36 ID:AjO6cbVk
「いてて...まったく、ネリータンめ、容赦ない蹴りを...ありゃ?」
痛む首を押さえながら詰所の広間に戻った光陰を、暖かい光と甘い香りが出迎えた。
「仏罰が下ったってやつよ、光陰。」呆れたように今日子が笑う。
「なんだ、意地悪だな、お前たち。こっそりパーティーの準備なんて。」
いそいそとテーブルに皿を並べるハリオンを見て、光陰も苦笑した。
「コーインさまたちが、色々ハイペリアの事を吹き込むからですぅ。
もうそろそろ、みんなも騒ぎ疲れて、戻ってくる頃だと思うんですけど〜。」
「ほーんと、ヒミカまで浮かれちゃって。私、いつまでこの格好でいなきゃなんないのかしら。」
トナカイの着ぐるみを着けたセリアが顔をしかめつつ、パコパコと両手にはまったブーツを鳴らす。
…けっこう気に入っているのかも知れない。
「...やれやれ、ひどいめに...ありゃ?」
帰還したハリガネ頭の大将が、光陰と同じような間抜けな声を上げる。

大型のキャンドルタワーの灯が揺らめいた。...何だか大きな目が付いているような気がするが。              
                         
                                
                                      X'masのから騒ぎ・完
299名無しさん@初回限定:04/12/11 23:14:38 ID:dWqufCOn
乙〜
特に >>298 の中の人、収拾お疲れ様です。

いやー、こういう「その場のノリ」も楽しいね。
私はほとんど見てるだけだったけど。
300名無しさん@初回限定:04/12/11 23:40:23 ID:Aj6aRE3+
なんの了解も無くネタが連鎖反応するこのスレの不思議。
……ってここ元々ネタスレだったか(汗
301名無しさん@初回限定:04/12/12 00:42:50 ID:vmnpmeJh
みなさんお疲れ様でした。
パーティー会場から差し入れだそうです。

 ,'^》フ⌒´ヽ》ヘ
 ( ノ i」」」」」〉))
 ノノ(!リ゚ ヮ゚ノリ((  < みなさん、お茶どうぞ〜
(( ⊂! |T|!つ旦リ
 ===く/|_|〉lj=    ∬∬∬∬∬∬∬∬
    (フフ      旦旦旦旦旦旦旦旦

    ,ィ^i^!1-、
   ,(レ´  ̄ ヽ)
   i`_lイノノハ))
    jixi」 ´ヮ`ノリ <ヨフアルもありますからね〜
    ⊂)ll Ψ )つ(#)  (#)(#)(#)
   ん/t___|l    (#)(#)(#)(#)(#)
    `tナナ'  ―――――――――
302名無しさん@初回限定:04/12/12 00:49:40 ID:THN1CcfA
ユートと黒3の4p
ユートと赤3の4p
ユートとトナカイセリアの擬似獣姦
ユートとアセリアの子作り

('A`) …
303ご機嫌斜め45°:04/12/12 02:40:04 ID:wlxXTsbj

「うわ〜かわいいっ!」
「お姉ちゃん、ホントにこれ、着てもい〜の〜?」
第二詰め所にネリーとシアーの歓声が上がる。
二人の視線はエスペリアが持ってきた衣装に注がれていた。
「ええ、もうアセリアやセリアには小さいから年少組にでも、と思って」
「わあ〜、あ、これこれネリー着たい!」
「え、え、じゃあ〜、シアーはこっち〜」
そう言ってシアーが取り出したのは普段エスペリアが着ているような濃緑のワンピース。
スカートの部分が大きく広がって白のフリルが裾にあしらわれている。
腰の辺りで纏めて後ろで結ぶ為のリボンもお揃いの白である。
ただ、そのサイズだけがやや小さい。彼女が幼い頃に着ていたものだった。
二着あるその衣装をネリーとシアーが奪い合っている。
「まあ折角の服もタンスの肥やしにしていてはしょうがないですし……」
説明しながらエスペリアは向こうでファーレーンと話しているニムントールに視線を向けた。
304ご機嫌斜め45°:04/12/12 02:41:59 ID:wlxXTsbj

「ニムントール、ちょっとこっちにいらっしゃい」
向こうからエスペリアの呼ぶ声が聞こえる。
話の内容は筒抜けだったのでニムントールにはなんの用件かは判っている。
それでも彼女はなかなか動こうとしなかった。
「ほらニム、エスペリアが呼んでるわよ、行ってみたら?」
優しく微笑むファーレーン。妹が先程からちらちらとそちらの方を窺っていたのは知っていた。
きっと気になってはいるが照れているのだろう。ファーレーンにしてみれば後押しのつもりだった。
しかし当のニムントールは面倒臭そうにはぁ〜とひとつ大きな溜息をついただけだった。
「?どうしたの、ニム」
「どうせ似合わないし、ニム、いらない」
「ちょ、ちょっとニム、そんな言い方はないでしょう」
「………………」
思いがけないニムントールの拒絶に慌てたファーレーンが嗜める。
ニムントールはそれを無視して立ち上がり、そのまますたすたと部屋を出て行ってしまった。
「あ、ま、待ちなさいニム……すみません、失礼します」
「え……あ…………」
ぱたぱたと後を追いかけるファーレーン。
エスペリアが何か言おうとする前にばたん、と部屋の扉が閉められた。
服を奪い合っていた二人の動きも不思議そうに固まっていた。
305ご機嫌斜め45°:04/12/12 02:44:57 ID:wlxXTsbj

ファーレーンが部屋に戻ると案の定、ニムントールはベッドの上で布団にくるまって背中を向けていた。
やれやれ、と軽く溜息をついてファーレーンは椅子に座る。
そして穏やかな口調で話しかけた。
「どうしたの、ニム。…………エスペリアの服、着たくなかった?」
「………………」
返事が返ってこない。しかしじっと話を聞いているらしい様子は窺えた。
「でもね、あんな言い方をしちゃだめ。エスペリアだって気を悪くするでしょう?」
「だってあの服、二着しか無かったんだよ」
「…………え?」
「ニムが我慢すればそれでいいじゃん……」
布団越しにくぐもったニムントールの声がそこで途切れる。
「…………そっか。偉かったね、ニム」
全てを理解したファーレーンはそれ以上何も言わずに妹の背中を優しく擦っていた。

 ――――――――

「よっ、ニム、相変わらず仏頂面だな」
「…………なによユート、ニムっていうな」
次の日の朝。訓練に向かおうとしていたニムントールに悠人が声を掛けた。
昨日の事もあり、普段から不機嫌そうな彼女の態度は拍車をかけて冷たい。
もちろん悠人が一言多いのも事実だが。ニムントールはそのまま歩き始めた。
「おいおい、ちょっと待てって。あのな、ニムに頼みがあるんだ」
「だからニムっていうなっ!…………はぁ〜、なによ頼みって。言っておくけど今日ニム、すっごく機嫌悪いんだからね」
「それはいつもの事……わわわそうじゃなくて、実はこれなんだが……」
キッと睨んで『曙光』を握りなおしたニムントールに、慌てて悠人は先程から抱えていた箱を差し出す。
不審そうな顔をしてそれを眺めた後、彼女はしぶしぶそれを受け取った。
306ご機嫌斜め45°:04/12/12 02:48:25 ID:wlxXTsbj

「……で、なんなのこれ」
「服だよ、昨日エスペリアに見せてもらったんだけどさ、俺どうしてもそれをニムに着てもらいたくて貰ってきたんだ」
「…………いらない」
即答して箱を放り投げるニムントール。慌ててそれを受け止めた後、悠人は大げさに溜息をついた。
「はぁ〜、そうだよなぁ……ごめんな俺の我侭だった…………あ〜でも見たかったなぁそれ着たニム」
「………………」
「他のやつ貰ってたネリーとシアーも可愛かったけど……でもやっぱりニムの方が似合うって思ったんだけどな…………」
「…………………………」
「それで無理言ってエスペリアにもう一着貰ってきたんだけど…………はぁぁ〜〜、やっぱり駄目だよな〜〜〜」
「……………………………………」
「あ〜、でも見たかったなぁ〜……きっと可愛いんだろうなぁ、それ着たニム…………」
「……………………………………………………」
「いや、でも無理言ってごめんなニム。本人が嫌がってるのに俺って何やってるんだろうな、ははははは……はぁ〜〜〜」
「……………………………………………………………………貸しなさいよ」
「え?」
「いいから貸しなさいよ、それ。着てあげる」
「え、え、えっ?……いいのか、ニム」
急に顔を上げて満面に嬉しそうな表情を浮かべる悠人。ニムントールはぷい、視線を逸らした。しかし首筋までが真っ赤である。
「そんな死にそうな顔で頼まれたらいやとは言えないでしょっ!いっとくけど、ユートがど〜〜〜してもっていうから着てあげるんだからね!」
「あ、ああ、ありがとな、ニム」
「ふんっ!ニムっていうな!まったく……ちゃんとそこで待ってなさいよっ!」
「ああ、期待してるよ、可愛いニムのドレス姿」
「〜〜〜〜〜〜ばっかじゃないのっ!!!」
怒鳴りながらも大事そうに箱を抱えたまま駆け出すニムントール。悠人は見えないようにやれやれと肩を竦めた。
307ご機嫌斜め45°:04/12/12 02:49:54 ID:wlxXTsbj

隠しているようで頭にしっかり♪マークを浮かべたニムントールが立ち去った後、悠人は後ろを振り返った。
「ふぅ、これで良かったか、ファーレーン」
声に応じて木の陰から現れたファーレーンがぺこり、と悠人にお辞儀をする。
「ええ、すみませんでした、ユート様。突然こんな事をお願いしてしまって」
「ああいいって…………やれやれ、それにしても素直じゃないな、相変わらず」
「ふふっ……それがニムの優しいところなんです、ユート様」
妹が去った方をいとおしそうに眺めながらファーレーンが呟く。
悠人も同じようにそちらを見ながら頷いた。
「うん、まぁそうだな。ちょっと判りづらいけど…………可愛い、よな」
「あら、いくらユート様でも…………ニムはそう簡単にはあげませんよ」
「な、ななななに言ってるんだ、そんなんじゃないって」
ファーレーンが悪戯っぽく小さな舌を出して悠人をからかう。上目遣いで囁かれて悠人はうろたえた。
「ユート〜〜〜…………」
向こうからぱたぱたと駆けて来る足音が聞こえてくる。
「あ、ほらユート様、宜しくお願いしますね」
「あ、ああ…………」
ファーレーンに軽く背中を押されて悠人はよろけ出す。振り向くとにこにこ顔のファーレーンが小さく手を振っていた。
一体なにをお願いされたのだろう。芝居の締めくくりだろうか、それとも…………
ニムントールの姿が見えた。朝日を背に大きく手を振っている彼女の姿は服装なんて関係なく悠人には眩しかった。
308信頼の人:04/12/12 02:55:12 ID:wlxXTsbj

あとがき

伝わりづらいツンデレの優しさは見る人の角度によって全然判らなかったり転ぶとあっという間だったりw
ていうかオルファ出し忘れてたのでぴぃたんばすたぁ喰らう前にちょっと逃げてきます。
309名無しさん@初回限定:04/12/12 11:39:16 ID:zGEZJfPm
>>308
乙〜
ツンデレというか不器用というか内なる葛藤というか…
そっと出口にいざなってあげないとね。あくまでそっと。

>転ぶとあっという間だったりw

ニムントールが駆けて来る。
「あっ」
べしゃっ
ちょっと注意が疎かになっていたのかニムントールは転んでしまった。
もともとあまり激しい動きをするのには向いていない服でもある。
慌てて駆け寄る悠人。
「あっ、だ、大丈夫か!?」
「うっ…うぇっ…うわぁ〜んっひっく」

…違いますね ∧||∧
310名無しさん@初回限定:04/12/12 12:47:47 ID:+MOavX/y
>>309
ニムがコケる→足ひねる→悠人、ニムをお姫様だっこ→恥ずかしがるニム→悔しがるファー→詰め所でしま(ry
とか、読みながら思った俺は重症かも…


なんか、光陰入ってきてるなぁ〜
311名無しさん@初回限定:04/12/12 13:12:38 ID:OGbWBeUZ
Before   ”\”

After    ”/”

で、ニムタンは何ロリなんだ〜〜ハァハァ
312名無しさん@初回限定:04/12/12 13:53:06 ID:Q9RcNTNO
やっぱ良いなあ、ニム。
ななめなにむにむ。
313名無しさん@初回限定:04/12/12 14:50:22 ID:zGEZJfPm
>>311

フ       ユ
 \(''*)


フ       ユ
     (*'')/


こういうことか(違
314名無しさん@初回限定:04/12/13 00:08:41 ID:y3LXCiy2
たゆんたゆん

悠人の目は自然と吸い寄せられた。説明不要っ! ハリオンだ。
服の上からでもわかるそのたわわな…
「痛ぇーーーーっ!」
男のさがに天罰を下したのはニムントールだった。
素知らぬ顔をして『曙光』の刃先で悠人の足の甲をぐりぐりしている。
「待ったっ待ったっ、ニム、降参っ、やめて、刃の方じゃシャレんなんないって!」
「フンッ」
サッと『曙光』が半回転して柄の先でドッと一突き、それからようやく悠人の足は解放された。
「痛いじゃないか、ニム」
「ユートが悪い」
「別にいつ…」
ぶっちゃけ「いつものこと」なんだが、ここでそれを言ってしまうのは危険だ。咄嗟に口を続きを飲み込む。
「ちっ」
見るとニムントールが今にも振り下ろさんと『曙光』を構えていた。あぶないあぶない。
「なによ、いっつもいっつも…ニ…」
何か言いかけたところではたと辺りを見回すニムントール。
第二詰所の食堂。居るのは悠人とニムントールだけ。ハリオンは丁度お茶を片付けて台所へ出て行ったところだ。
悠人の悲鳴は耳に届いていただろうが、まぁ、動じるハリオンではない、胸以外は。
それでもカップや皿を台所に置いたら様子を見に来るだろう。
「…ちょっとついてきなさい、ユート」
ニムントールは立ち上がってそう言うと、悠人の上着の裾をぐいっと掴んで引きずるようにして歩き出す。
「お、おい!? 伸びるって、いや、つーか、足痛いんですけど」
315名無しさん@初回限定:04/12/13 00:11:37 ID:y3LXCiy2

悠人が半ば引きずられるようにして連れてこられたのは、詰所の裏だった。
「ん、ここなら大丈夫でしょ。…コホンッ、さっきの続き、ね」
ずっと掴んでいた悠人の上着を放して、ニムントールは宣言した。
「………」
「………? どうした、ニム?」
「…ぅ゛」
これは…あれか? 話が中断してテンションが途切れたというか、移動してる間に少しは落ち着いたというか、そういうことか?
「じゃ、この件は落着ということで」
これ幸いと悠人はそそくさと逃げ出そうとしたが、
「却下っ!!!」
脳天直撃、『曙光』。
「なによなによっ、いっつもハリオンばっかしっ、ニムだって、ニムだって、あのくらい…」
却って怒りを取り戻させてしまったらしい。
それはまぁいいとしてもだ、ぐわんぐわん、世界が揺れる。
「と、とりあえず、『曙光』はどこかに置いてくれ」
悠人が必死に意識を保ち、どうにか世界が安定させる。
と、とっくに『曙光』を地面に置いていたニムントールが悠人にびしっと指を突きつけた。
「いーい!? ちゃーんと見てなさいよっ!!」
じぃーっ
「…ぅ、ぁ、そ、そんなにじっと見るなーっ!」
「いや、見ろって言ったのニムだし」
「う、うるさいわねっ、とにかくっ、じっと見ないのっ!」
「はいはい」
難しい注文だが、横を向きつつちらりと見る感じに努めてみる。
「…ぅぅ…い、いくわよっ」
踏ん切りをつけるように言って、ニムントールが軽くジャンプする。
ぴょんっ
316名無しさん@初回限定:04/12/13 00:14:38 ID:y3LXCiy2

「………」
着地したまま固まっているニムントール。
「………で?」
「〜〜〜〜っ!! 今のなしっ! もっかいっ!!」
そう叫ぶと、ニムントールは腰のベルトを外して本来の位置より上でぎゅっと締めた。
もう一度ジャンプ。さっきよりも強く。
ピョンッ

   にむんにむん

…まぁ、なんだ。揺れたな、一応。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」
ギリギリと歯をくいしばったかと思うとニムントールはダッと駆け出した。
「泣くほど悔しがることかなぁ…女の子ってのは難しいもんだな」
光陰が聞いたらさぞかし憤慨しそうなことを呟くと、悠人は『曙光』を拾って歩き出す。
ゆっくりと、だが、その歩みに迷いはなかった。
317名無しさん@初回限定:04/12/13 00:17:37 ID:y3LXCiy2

げしげしげしっ
悠人の視線の先、詰所の中庭にある木の下で、ニムントールが跪いて地面を叩いている。
しばらくそのまま眺め、やがて少しは落ち着いたのを見計らってから、ゆっくりと歩み寄って行った。
「忘れ物だぞ」
『曙光』の柄の先でニムントールのほっぺたを軽くつつく。にむにむ。
「泣くようなことじゃないだろ?」
「…泣いてなんかない、ない…もん…目にごみが入っただけ」
「そりゃ大変だ。こするなよ? 今、ハリオ…んごっ!?」
「バカッ!」
いつの間にひったくったものか、『曙光』でひっぱたかれた。
いいかげん頭蓋骨が歪んでしまいそうだ。
「別に胸が大きかろうが小さかろうがいいじゃないか」
「ニムは大人なんだもん、ネリーたちとは違うんだもん」
「いや、大人と胸は関係…ないこともないかもしれないけど、それは違うだろ。っていうか、一部のヤツを敵に回すぞ、その発言は。だいたいアレが特殊なだけだろ、どちらかと言えば」
「だって…だってュ(ートが…)」
ごにょごにょと何やら。
「だいたい、ニムはまだまだこれから大きくなるんだから。背も…その…なんだ…胸も」
すると、ニムントールがぐいとにじり寄った。
「今なんだもんっ! 今じゃなきゃだめなんだもんっ!!」
胸倉をぽかぽかと叩いてくるニムントールの頭を、ぽん、ぽん、と優しく撫でるように。
「今は今のままでいいじゃないか。大きくなる前にしかできないこともあるさ。…よっと」
そう言ってニムントールを抱き上げる。
「正直、ニムがハリオンぐらいになったら、こうしてお姫さま抱っこできる自信ないな」
「………ばか」
きゅっ
318名無しさん@初回限定:04/12/13 00:19:15 ID:y3LXCiy2
>>314-317


_| ̄|○  にむんにむんしてやった。今はにむにむしている。
319名無しさん@初回限定:04/12/13 00:33:22 ID:8cA4ILUa
              
( ´∀`)つ===========))>∀`)| ̄|_

ニム。君はまだ踊り場で足を止めているところなのさ。
また一段ずつ登っていけばいいのさ……。
大人って階段を。
320名無しさん@初回限定:04/12/13 00:46:53 ID:qMeCmM3T
いくら階段を上ったところで、遥かな山々の頂きには届かないものさ
321名無しさん@初回限定:04/12/13 00:53:27 ID:Q+rX7uol
エスペリアのことかーーーー!!
322名無しさん@初回限定:04/12/13 00:57:38 ID:Xr+ZHx/Q
>>320
そんな寂しい事言うなよおまいさん…(;´д⊂
ニム、絶対エターナルになんかなっちゃ駄目だぞ、いやもう個人的にうわ馬鹿なにをすrw\\km@しょこうmjkg
君はネリーたちと違ってぐりーんなんだからやめろ俺がわるkmj\\@にむkpgw\\

323名無しさん@初回限定:04/12/13 02:10:12 ID:4BbRgcSg
たゆんたゆん……にむんにむん……ぺりあんあん…………わはーw

……すみません、少し壊れました。にむにむしてきます。
324名無しさん@初回限定:04/12/13 10:46:55 ID:5SIhKQtG
ニ、ニム祭りキタ?
325名無しさん@初回限定 :04/12/13 13:32:55 ID:FPk/eY1m
時代はニムントールなのか?ぐりーんなのか?
326名無しさん@初回限定:04/12/13 16:24:57 ID:Xr+ZHx/Q
ごきげんななめなにむにむ。
ごきげんでなめなめなえすぺりあ。

...やはり時代はぐりーんなのかってわかったもうやめるからほんとドカボキブシュ
327名無しさん@初回限定:04/12/13 16:44:54 ID:5XWmQ7Ph
まて、ぐりーんならクォーリンも混ぜてやらねば。
ほら跳ねてみろクォーリン。
え?光陰の前じゃないとイヤだって?
またまた〜、ホントは微動だにしない胸を見られるのが恥zぐおっなんでもないでspq#m
328名無しさん@初回限定:04/12/13 18:37:00 ID:MPydwL8y
俺たちは勘違いをしていたのかもしれない…
実はクォーリンはさらしで胸を隠しているのではないか?
光陰がロリコンなのを知り、自らの胸を隠し少しでも光陰に気にしてもらおうと
努力しているのではないだろうか!?
ナ、ナンダッテー!?ΣΩΩ


童顔巨乳キャラに期待
329名無しさん@初回限定:04/12/13 19:53:30 ID:5XWmQ7Ph
光陰との訓練中サラシがずれてしまい、
たゆんたゆんを知った光陰に興味失われるクォーリンを想像してしまった……

逆騎士の心、柔隠orz
330名無しさん@初回限定:04/12/13 21:39:42 ID:mCYSfvj+
「跳ねてみろ、クォーリン。」
「え…!?コ、コウインさま、どーしてですか?」
「気になる情報があってな。いいから跳ねろ。命令だ。」
「うぅ…わ、わかりました//。」

ぴょんっ!……チャリチャリン。

「へっへっへ。やっぱり、持ってるじゃねぇか。」
331名無しさん@初回限定:04/12/13 23:07:00 ID:qMeCmM3T
第二詰所、浴室。
その脱衣所からは、幼いスピリットたちの騒ぎ声が漏れてくる。
汗を流していたのは、訓練を終えたネリー、シアー、ヘリオンの三人だった。
「はぁ〜、訓練よりも疲れましたぁ」
「ネリーはぁ、はしゃぎすぎだよ〜」
「そ、そんなことないもん」
「ありますよぉ。背面飛びでお風呂に飛び込んだあと、
 そのままお湯の中でウィングハイロゥを動かしてたじゃないですか」
「じゃないですかぁ〜」
「い、いいじゃない。ほかに入ってる人もいなかったんだから」
「私とシアーさんが入ってましたよぉ」
「いいでしょ! 今日はネリーたちで最後だったんだし…。
 二人だって思いっきりお湯をかぶって面白かったでしょ!」
「それはそうですけど…」
332名無しさん@初回限定:04/12/13 23:07:24 ID:qMeCmM3T
「……」
「な、なんですか、ネリーさん」
「……」
「シアーさんも、人の胸をジロジロ見ないでくださいよぉ」
「うん、えへへ、負けてない」
「負けてない〜」
「なっ、勝ったとか負けたとか関係ないじゃないですか!」
「へっへっへ」
「へっへっへ〜」
「あーっ、シアーさんまで馬鹿にしてぇ!
 そのうち、私だってヒミカさんよりもないすばでーになるんですからぁ!」
「ネリー達だって、ヒミカくらいは、ねぇ…」
「ねぇ〜」
お互いの、どことはなしに胸やらを見やり、
そして浴室で見た、慕うレッド・スピリットの少女の体の線を思い出す。
自分たちがヒミカの年になるまでに、
どれほど背は伸び、複雑な思いを詰め込んだこの胸はふくらむのだろう?
(でもせめて、ヒミカさんくらいは、きっと……)
口には出さずとも、それは年少組全員の胸に秘められた目標だった。
だが、しかし……
その目指す山の頂は思うほど高くはなく、そこに立った時、
その先にある、さらに高くそびえる山々が努力だけでは超えられぬことを、
幼い少女たちは、まだ、知らない…
333名無しさん@初回限定:04/12/13 23:18:10 ID:Pgayj2Dm
めっさヒミカが可哀想だ。・゚・(ノД`)・゚・。
漏れが撫でくり回してやろう
334名無しさん@初回限定:04/12/13 23:26:03 ID:z8OUc7n9
ヒミカこそサラシではなかろうかと思う漏れがいる。
いや・・・剣振るのにジャマだとかって・・・
335名無しさん@初回限定:04/12/13 23:34:09 ID:zpDjBx1L
>>334
無印版のイービル見ると・・・、
確かに。
336名無しさん@初回限定:04/12/13 23:56:04 ID:8cA4ILUa
>308+>318

「ネリー、シアー、私のお古ですけど〜良かったらどうですか〜?」
 食後のお茶が終わったところで、ハリオンが出て行ったと思ったら、箱を抱えてすぐに
戻ってきた。ネリーとシアーの前に行ってテーブルに箱を置くと、それを開く。
 何事かと覗いた二人は歓声を上げる。
「うわ〜かわいいっ!」
「ハリオン、ホントにこれ、着てもい〜の〜?」
 箱の中に入っていたのは、数着の衣装。やはり緑系の物が多いが、十分ふたりの少女
の心を満たす代物だ。
 さっそくその場で着てみる二人。悠人などそっちのけだ。
 丈はちょうど良い感じで二人のかわいらしさを存分に引き出していたのだが。
「あれーこれ胸の当たりが妙にゆるいよー」
「うん、シアーも〜。だぶだぶだよ〜」
 
「ニムも、こっちに来なさいな、ほら〜」
 ファーレーンと一緒におしゃべり中のニムにも、ハリオンの声が掛かった。
 話の内容は筒抜けだし、なによりネリーとシアーの声はハッキリ耳に届いていた。当然そんな状況で、
ニムのプライドが許すはずもなく。悠人がいるし。
「ニム、いらないっ」
 ガタンと席を蹴立てて、走り去っていくニム。
「あ、待ちなさいニム。すみませんハリオン」
 小さく頭を下げて、追いかけるファーレーン。
「あらあら〜」
337名無しさん@初回限定:04/12/13 23:56:54 ID:8cA4ILUa
「よっ、ニム、相変わらずカワイイな」
「…………バカ、ニムっていうな」
 次の日の朝なのだが、ニムの気分は相変わらずの急斜面。悠人の軽口も効き目薄。

「ほら、これ」
 そう言って、悠人はニムに紙袋を渡す。
「なによ、これ」
「昨日ハリオンの服いらないって言ってただろ。そしたらさ、ナナルゥが、自分の小さい頃の服を出して
きてさ。 ニムに渡してくれって」
「いらない」
 即答して紙袋を悠人に放り投げるニム。有る意味当然の話で、ハリオンがダメなのに、次点の人物
のお古をもって来ても「ツン」を解かすことなどできようもない。
「…………なぁ、ニム。そんなに気にすることは無いと思うんだけどな。まだこれから成長するんだからさ」
「ニムは、もう大人だもん。今じゃなきゃだめなんだもんっ!」
「そっか。でもさ、この服俺も見せてもらったけど。カワイイ服なんだよな〜ニムに似合うと思うんだけどな〜」
「ふん」
「ナナルゥもさ、ニムの年頃は、大して胸が大きくなかったって言ってたな〜。ニムと同じくらいだったかもって」
「…………ふ、ふん」
「残念だな〜、でも本人が嫌がってるんだもんな〜、そうだよな〜仕方ないからナナルゥに返すかな〜
でも見たかったなぁ」
「……………………貸しなさいよ」
「え?」
「し、仕方ないから着てあげるわよ。ユートがそんなに言うからだからねっ。そ、それにナナルゥにも悪いし、さ」
「ほ、ほんとか?」
「そ、そんなに嬉しそうにしないでよ、ばか。着替えてくるから待ってなさいよ。いなかったら曙光で磔だからね」
338名無しさん@初回限定:04/12/13 23:57:42 ID:8cA4ILUa
「ふう、こんなもんかなナナルゥ?」
「はい。作戦は成功です」
 ニムの姿が消えてから、入れ替わるようにスっと姿を現すナナルゥ。
「サンキュな。いきなり頼んじゃってさ」
「いえ、少し胸の辺りを詰めただけですから。大したことではありません。ですが…………」
「ん、なにか問題でもあるか?」
「これは、結果的にニムントールを欺いたことになるのではないでしょうか。嘘はいけないことではないの
ですか?」
 疑問を呈するナナルゥに悠人は、言葉に迷ったけど口を開く
「…………ああ、そうだな。いけないことだ。だけどな、ナナルゥ。嘘にもさなんて言うのかな……優しい嘘
っていうのかな。そう言うのがあるんだよ」
「…………優しい嘘、ですか」
 ナナルゥは悠人の横から正面に廻って言う。
「ユートさまは、優しいんですね」
 少し上目使いで。風が吹いてナナルゥの髪を揺らす。悠人は一瞬、ナナルゥの顔に見とれて。
「あ、いやそそんなことはないぞ、お、俺は」
「嘘です」
 絶句した悠人は、ナナルゥの小さな微笑みを見る。
339名無しさん@初回限定:04/12/14 00:07:47 ID:VZBasFRn
マジ、スマン ○| ̄|_
ナナルゥは、「明日への飛翔」からちょこっと拝借。つーかナナルゥが美味しいとこ持ってっちまって
るな(汗) 

ちなみに>319はツンツンしてるのであって刺してるわけではありませんのでご理解の程を。
あっ午前0時の鐘がなったw ガラスの靴代わりのID。
340名無しさん@初回限定:04/12/14 05:45:30 ID:vz7MgyVM
>>331-332
「ふう、あの頃は良かったなあ...」と、遠い目で無印に思いを馳せるヒミカが浮かんでしまった。
涙が、涙が止まりません...ヒミカ......っ。
>>339
ナナルゥかわいいよナナルゥ。頼むからヒミカにちょこっと分けてやってくれ。(何を)
341名無しさん@初回限定:04/12/14 06:46:17 ID:5osHMa61
>>331-332
本当に慕っているのか?年少組w 言われたい放題なヒミカ嬢の反撃はあるのでせうか。
>>髪結いさん
朝食吹きだした訳ですがw
ナナルゥ、その嘘は全然優しくないぞ。背中のウイングハイロゥがやや黒(ry
そういやニムはファーのお下がりとか着無いのかな?サイズが合わないということは無いと思うけど。
342名無しさん@初回限定:04/12/14 15:08:38 ID:tFn/1iTM
ファーの幼少期の服には、フードがついてそうな予感。

…拳闘士ファーレーン
得意技は神速のフック…に見せかけた肘(反則)

って、あの世界ってチビッコが拳闘出来るのか?
343名無しさん@初回限定:04/12/14 16:50:29 ID:GV85hZzU
エスペリアの幼少期は髪留めとニーソだけ
344名無しさん@初回限定:04/12/14 17:13:41 ID:Zh/GIQd7
生まれ落ちた時は皆ニーソだけ
345名無しさん@初回限定:04/12/14 17:30:41 ID:qOoy98oW
スピリットは神剣とニーソ型ハイロゥを持って生まれてくるのディスカ
346名無しさん@初回限定:04/12/14 17:36:30 ID:3y5sybkI
そっか!ネリーはニーソで空を飛んでいたのか!オルファはにーそばすたぁが必殺技なのか!(マテ

閑話休題。
>>340
個人的にはヒミカは並だと思っとります。少なくともぺたでは……ないと思いたい。いや多分…
そうでないと書き直さねばorz
347名無しさん@初回限定:04/12/14 17:58:54 ID:EXpgW1p1
>>346
こんな所でそんな個人的な解釈を主張されてもw
...うそうそ。ヒミカさんに関しては諸説が入り乱れており、現在彼女の胸の内は
彼女しか知らないと言う事になっています。うまいこと言うなあ、我ながら。
それはともかく。私が言いたいのはただ一つだけ。


「書き直さないで〜〜!!」


何書いてるのかはよく分からないけど。私の本能がそう叫んでます。
348名無しさん@初回限定:04/12/14 21:42:28 ID:rcPYOWhg
>>341
イビルルートで着てるメイド服はおねーちゃんのお下がりかも。
349名無しさん@初回限定:04/12/14 23:12:23 ID:pnE6UOy4
    〃〃∩  _, ,_
     ⊂⌒( `Д´) < ヤダヤダ!ヒミカは巨乳でないとヤダ!
       `ヽ_つ ⊂ノ
              ジタバタ
350名無しさん@初回限定:04/12/15 00:06:49 ID:fg25ouTN
Q1)ヒミカの乳はどの程度のサイズか?
下記選択肢より選べ。

1)たゆんたゆん
2)ばいんばいん
3)ぷるんぷるん
4)…つる、ぺたっ!


(ラキオス王国スピリット隊 第U詰め所入試問題より抜粋)
351名無しさん@初回限定:04/12/15 00:41:18 ID:+y3ytIVn
おぉ、ニムがいっぱい来ていたw
>308 信頼の人さん
ファーの立ち回りが良いですねぇ……
ただ、頭の中で

「だって、ユートは一人しかいないんだよ」
「…………え?」

などというシーンに拡大してしまいました。続きがどうなるのか怖くて思いつけません。

>318さん
なんて、じわじわとくる破壊力のある擬音なんだ。にむんにむん。
無いわけではなく有ることもなく適度に芯を残しつつふるふr(エレメンタルブラスト 3000
……壊れるくらいの威力を秘めておりました。

>331-332さん
ウイングハイロゥの力加減を間違えて風呂場から飛翔するネリー、全裸で。
三人には「適材適所」の言葉を送りたいと思います。無理はするな、とも。

>339さん
……あ、ナナルゥの嘘を逆に取って普通に萌えてしまった。
悠「そ、そんな(優しい)ことないって」
ナ「嘘です」
オチに気付いて、間違いに気付いて、二重で笑い直しました。

>350さん
一番近いのは……3)?
いや……妄想に忠実に、0点覚悟で、5)ふよんふよん。手のひらに少し余るくらいでFA。
352名無しさん@初回限定:04/12/15 00:54:44 ID:LbYQ9VlV
ヒミカは普通>手のひらに少し余るくらいでFA。に同意

巨乳:ハリオン

隠れ巨乳:ナナルゥ(着やせ)
次点巨乳:エスペリア、ファーレーン、ウルカ

ヒミカ>=ア+セリア (年の功で)

年少組:ヘリオン、シアー、ネリー、>>オルファ>>光陰、悠人
353名無しさん@初回限定:04/12/15 07:43:51 ID:GQAqPOQw
いや悠人と光陰は胸囲あると思う
鍛えてるし、少なくともヒミカくらいは

…まずい、神剣効果とかで性別反転した二人を想像してしまったorz
354名無しさん@初回限定:04/12/15 08:07:24 ID:jVYEAyBD
ヒミカは普通に胸ありそうだけど・・・無印見る限りは。
きっとあれです「私脱いだら凄いんです」みたいな感じ。
まぁハリオン、ナナルゥにはかなわないだろうが・・・
355名無しさん@初回限定:04/12/15 09:19:25 ID:F0o8wQDy
脱いで脱いで〜(トリプルスイング) グハッ...\(゜ワ::::::::::....

...失礼しました。
ちなみに私も>>351さんの解説でようやくオチを理解しますた(遅ッ!)
「(優しくないなんて)嘘です」かと思ってたのに...ナナルゥ(泣

>>350
さて、どれかなあ。手堅く...3)、いやいや、5)手のひらに少し余るくらい...うへへ...
だ...駄目だ...!心が壊れる...ッ!!(←もうとっくに壊れてるよ)
356名無しさん@初回限定:04/12/15 17:58:07 ID:pNNDBfOl
胸囲
光陰>今日子>悠人
357名無しさん@初回限定:04/12/15 20:17:23 ID:acvTF+1t
PS2版公式ページは、すみやかに雑魚スピのスリーサイズを公表しる
358名無しさん@初回限定:04/12/15 20:17:28 ID:lzQTtCxS
なるほど。光陰ってば、たゆんたゆんだったのね…。
359名無しさん@初回限定:04/12/15 20:18:02 ID:xaIPdWmT
>>350
うーん、3)…いや、2)…ほどでは……やはりここは 5) >>351 で!
360名無しさん@初回限定:04/12/15 20:20:32 ID:xaIPdWmT
「えー、第4回『ハリオンが悪い』第二詰所会議を始めます」
第二詰所の居間にヒミカの宣言が響いた。
「申し立てによれば、『服を着ていてもハリオンは猥褻物陳列罪である』とのことです。各自の意見をどうぞ」
「ぶふぉっ! お、おいっ、なんつー議題を…せめて俺のいないときにやってくれよ」
提示された議題のあまりのあんまりさにむせる悠人だったが、
「この件にはユート様も無関係ではないと判断しました」
ギロリと一瞥を食らい沈黙。
「まぁ、以前と違って非常勤とはいえ男の方もいるわけですから、少々問題があるというのは否めないのかもしれませんね、いろいろと」
議論を始めるべくか、冷静に切り出すセリア。言いながら悠人の方にギロッと一瞥が来たような気がする。
「あ、あの、あのあのあのっ、わたしたちの精神衛生上も良くないですっ」
ヘリオンがどもりながらも珍しく強く主張する。何故か頬を染めながら。
「あの〜、わたし〜、何もしてないんですけどぉ〜?」
おっとりハリオン。そもそも何が問題になっているのかを理解できているのかも怪しい。
「ふんっ」
ぷりぷりニムントール。まぁ、ニムントールが不機嫌なのは別に珍しいことではない。
「ある意味、抜け駆けとも言えるのかもしれませんね。恐ろしいことに、天然で…」
淡々とファーレーン。…というか抜け駆けってどういう意味だ?
「先制攻撃でしたら負けません」
おーい、ナナルゥ…。
「あ、あの、速さだったらわたしだってっ」
ヘリオン…いや、まぁ、アイデンティティは大事だけどな。
「ほらほら、論点がずれてるわよ」
そうそう、そうだよ。ヒミカの仕切りに悠人は内心でエールを送った。いや、よく考えてみれば、下手に口を挟むととんでもないことになりそうな針の筵よりいっそ、うやむやになった方が良かったかも…。
361名無しさん@初回限定:04/12/15 20:23:33 ID:xaIPdWmT

各員の意見が一段落したところでヒミカが暫定対策案を提案した。
「それじゃ、ハリオン、あなた、サラシを巻きなさい、ね?」
「ネリー、さんせー」
まぁ、ネリーはおもしろそうなら何でも賛成するし、な。
「……(もきゅもきゅ)」
シアーは特に意見はないようだ。…もしかして、誰かに買収されたのか? お菓子で。
「「「「異議なし!」」」」
大合唱。
「あの〜、物事は〜、自然なままが〜、いいと思うんですけど〜」
「あなたねぇ…自然なままって、服着てるでしょうが」
「わたしは〜、着なくても構わないんですけどぉ〜」
「却下。ツッコミ入れた私がバカだったわ」
ハリオンの天然をサックリあしらってる辺り、さすがだな、ヒミカ。
……生のままのハリオン…ぐぶるぶふぉおぉ〜〜〜っ!
「…次は、第32回『ユート様が悪い』会議かしら、ね」
ごめん、勘弁して。というか、既に30回以上ですか、隊長失格ですか、そうですか。
「んもぅ〜、しかたないですねぇ〜」
もぞもぞ。
「あー、こらこら、ここで脱がないの!」
「あら〜? どうしてですかぁ〜? わたしは〜ぜんぜんかまいませんよぉ〜?」
「あんたが構わなくても他が構うの!!」
ぐっ…ぅぼぶるぶほぉおぉ〜〜〜〜〜っ……バタッ。悠人は星になった。
362名無しさん@初回限定:04/12/15 20:26:32 ID:xaIPdWmT

星々の世界を旅して来た悠人が意識を取り戻してまもなく、別室に行っていたらしいヒミカとハリオンが戻って来た。
「ま、こんなところでどう?」
引き連れて来たハリオンを皆の前に差し出すヒミカの額は何故か汗に塗れていた。
「「「うっわぁ…」」」
面々から感嘆の声があがる。
「こ、これは…ずいぶん寂しく…あ、いやいや、すっきり…じゃなくて、な、何と言うか…奇跡?」
悠人の感想も思わず混乱。何と言うか、「普通」だった、信じがたいことに。
「ふーむ、信じられん。あのたわわな実りがここまで…」
思わず口から脳内垂れ流し。
じろじろ。
「…ぁのぉ、ぅごけなぃとぃぃますかぁ、ぃきがくるしぃんですけどぉ……」
じろじろ。
「…は…くちゅん」
悠人が観察に熱中するあまり、髪の毛がハリオンの鼻筋をくすぐっていたらしい。
「あっ!」
ヒミカが叫んだ、ような気がした。悠人はよく覚えていない。この一瞬後に起こったことのせいで。
ビシッ
何か音がした、と思う間もなく、悠人の目の前で。

   た ゆん た ゆん

「うぉっ!?  大 迫 力 !!!」
悠人は今、永遠の旅に旅立って逝った……


悠人とは違った意味で死屍累々の中、かろうじて、ヒミカの手が挙がった。
「……だ、第1回…『ハリオンにサラシは危険だ』…会議……」
ぐったり。
363名無しさん@初回限定:04/12/15 20:28:06 ID:xaIPdWmT
>>360-362

_| ̄|○   …………

364名無しさん@初回限定:04/12/15 20:51:51 ID:HwJJOZ4h
………… ⊂⌒~⊃。Д。)⊃ モエツキマスタ
365名無しさん@初回限定:04/12/15 21:30:53 ID:rh90WEbM
く、喰われる……喰われてしまう…………喰われてもいいかな?…………
366名無しさん@初回限定:04/12/15 22:09:09 ID:5kyQBfr8
そうか...寸劇さんも逝っちまったか...
ヒートフロアともきゅもきゅシアーをこよなく愛するいい人だった...

へへ...しかたねえなぁ...本当に、よぉ...
367名無しさん@初回限定:04/12/15 23:57:02 ID:evuEEjE0
ハリオンをサラスのもサラシも危険っと メモメモ えーと、凶器準備集合罪(フタツ)と猥褻物陳列罪の併合罪
でタイーホ 気が進みませんが、しょうがないので尋問は私が…………じろじろ。


ところで、もしかして>339ってオチわかりにくいですか?(汗) 実はあれはダブルミーニングを狙って……
ません。ちょっと茶目っ気を出したナナルゥのつもりでして。某ラブコメ青春野球漫画の一場面が脳裏に
あったのは確かかも知れませんが。


368おにぎりの中身の人:04/12/16 03:00:16 ID:Xuwbygdp
スピリット・エターナル検定 準1級問題
次の言葉を日本語訳しなさい(5点)
【ンギュルギュル!!ギュルルルルル!!!ギュル!】

次の3つの言葉を使って短文を作りなさい(5点)
【ハリオンマジック・たゆん・ヒミカ】
369名無しさん@初回限定:04/12/16 06:43:41 ID:ytzrRw8v
【上から95!!でもって55!!!10!】
【ヒミカタン さらしにパッド たゆんたゆん これぞまさしく ハリオンマジック】
370名無しさん@初回限定:04/12/16 07:32:22 ID:AEXPSOZn
次の式を計算しなさい(5点)
1: ヒミカ−セリア=
2: ニムントール+ファーレン=
3: ネリーxシアー=
4: ナナルゥ÷ヘリオン=
5: ハリオン^2=
371名無しさん@初回限定:04/12/16 09:17:02 ID:fTiG5GoX

1:ヘリオン
2:エスペリア
3:オルファリル
4:セリア(xでアセリア)
5:ばいんばいん
スレの流れぶった切ります。スイマセン。
前編、好評(というにも微妙ですが)なご意見が多く、少しほっとしました。
とはいえ、ここら辺から加速的に妄想大暴走してきますので、見てられない方は前編同様スルーをよろしくお願いします。
それでは、よろしくお願いします。
373あなたを見つめる私・中編 1/24:04/12/16 09:29:17 ID:3lHk8szw
 ナナルゥが行方不明になった数日後、悠人が『聖賢』を手にしてファンタズマゴリアに到着する。
 そこでナナルゥがいないと知った時の悠人のショックは凄まじいものだった。
「な……う、嘘だろ……なぁ!! 嘘だって言ってくれよ、時深!! 全員守るって約束してくれたじゃないか、なぁ!!」
「……ごめんなさい、悠人さん。力及ばなかった私の責任です」
「嘘だ……嘘だぁーーーっ!!」
 ラキオス城の中で、コントロールを失った悠人のマナが嵐のように吹き荒れる。
 時深も悠人との約束を果たせなかった手前、罪悪感ゆえに強く止める事も出来ない。
 その半狂乱の悠人を止めたのは、ヒミカだった。
「失礼します」
 短く切りそろえた緋色の髪を激しくなびかせながら、迷い無く竜巻の中心に歩み寄り、ぴしりと悠人の頬をはたく。
「え……?」
 嵐が止まり、飛ばされていた物が転がってたてる騒音も、やがて収まる。
 静寂の中、呆けた様な悠人の心にヒミカは凛とした声を響かせた。
「責任というのであれば、トキミ様よりも我々の方が重いでしょう。ナナルゥと同じ場所にいながら何も出来なかったのですから。
 ですが、それはあまりにもナナルゥを馬鹿にした発言ではありませんか? ナナルゥは自らの意思で戦っていたのです。誰かに命令されていた訳でも無く、ましてや神剣に操られていたのでもありません。
 ナナルゥは自分の足で立ち、自分で決めた戦いをしたのです。例え誰であっても、ナナルゥの生き方の責任を負おうというのは傲慢ですし、ナナルゥ以外の者に責任を問うというのは筋違いでしょう。
 ナナルゥの生は、他の誰でも無いナナルゥだけのものなのですから」
「……ヒミカ」
374あなたを見つめる私・中編 2/24:04/12/16 09:32:44 ID:3lHk8szw
「もし、それでも納得がいかない、ナナルゥの行方不明の責任を取れと申されるのであれば、今ここで自害する事も出来ますがどういたしますか?
 私が自決するのであれば恐らくマナ結晶体を残す事が出来るでしょう。それを役立てて頂けるのであれば、それで責任を取るという事になりますでしょうか」
 言って、ヒミカは『赤光』を取り出す。
 見れば、セリア、ハリオン、ファーレーン、ニムントールも各々の神剣を手にして悠人の言葉を待っていた。
 それを見て、悠人は落ち着きを取り戻した。同時に酷い自己嫌悪に駆られる。
「……すまない。そうだな。辛いのは皆同じだったな。……取り乱してしまって本当にすまない」
「いえ。こちらこそ頬を張るなどしてしまい申し訳ありませんでした。非礼の罰、何なりとお申し付けください」
「大切な事を思い出させてくれたんだ。感謝する事はあっても、責める事など出来ないさ。礼を言わせてくれ。ヒミカ、そしてみんなも、ありがとう」
 悠人は深く皆に頭を下げた。
 どうしようもない程の戦力差があった。それを、皆が命を賭してチャンスを繋いでくれたのだ。
 誰でもない、悠人に。
 もう彼女達の中に共に戦った悠人の記憶は残ってはいなかったけれど、それでも一縷の望みを託すべく、悠人を信じて皆頑張ってきたのだ。
 落ち着いてみれば、それが一見して解る。気丈に立ち振る舞ってはいても、深い疲労の影は到底隠せるものでは無い。
 彼女達の、そしてナナルゥの、文字通り命がけの信頼に応えずにどうするというのか。
 戦友達に報いる為には何をしたらいいのか、そんなのは考えるまでも無い。
「俺は、戦う。俺がファンタズマゴリアを守ってみせるよ。俺はその為にここに来たんだ!!」
 ヒミカ達が悠人の前に跪く。
「ユウト様がナナルゥの事を知っていらしたというのは意外でしたが、彼女の事をそこまで思って頂ける方であるならば、それで命を預ける理由は十分に足ります。
 戦えと言われれば誰とでも戦います。死ねと言われれば喜んで死にましょう。何なりと命じて下さい」
375あなたを見つめる私・中編 3/24:04/12/16 09:36:24 ID:3lHk8szw
「解った。……だがこれは命令では無く、共に戦う仲間としての頼みだ。絶対に死ぬな。この戦いを絶対に生き残ってくれ。頼む!!」
「了解しました。『赤光』のヒミカ、我が神剣にかけて聖賢者ユウト様と共に戦い、この戦いを絶対に生き残る事を誓います」
「同じく、『熱病』のセリア」
「『大樹』のハリオンですぅ」
「『月光』のファーレーン」
「『曙光』のニムントール」
 5つの剣が差し出される。
 更に、いつもより少しだけ複雑に笑った光陰の『因果』が、涙の笑顔の今日子の『空虚』が、涙を流したままのネリーの『静寂』が、シアーの『孤独』が、ヘリオンの『失望』が差し出される。
 遅れず、アセリアの『存在』、エスペリアの『献身』、オルファリルの『理念』、ウルカの『冥加』。
「ありがとう、みんな。俺達は、絶対に勝つ!!」
 時深が『時詠』を、悠人が『聖賢』を差し出し、全員の神剣が重なった。
「見ててくれ、ナナルゥ。俺達はファンタズマゴリアを絶対に守ってみせる!!」
376あなたを見つめる私・中編 4/24:04/12/16 09:40:11 ID:3lHk8szw
 悠人達はこうしてナナルゥの事を思い、苦悩し、葛藤し、それを乗り越えて団結した訳だが、何を隠そう実はナナルゥは生きていた。
 ただ皆に見つからなかったのには一つだけ原因がある。
 ナナルゥは上位神剣に召喚され、一種の結界内にいたのだ。
 その中で体力を回復した、正確には上位神剣に回復してもらったナナルゥが目を開けると、そこは不思議な空間だった。
 ナナルゥは状況を把握する為に辺りを見回す。四方にはありとあらゆる次元、世界の映像が映し出されている。探せばファンタズマゴリアもどこかに見つけられるかも知れない。
 とはいえ、左目の視界は失われたままだ。目のあった場所に手をやると、そこにはやはり眼球は無くぽっかりと空いた穴の感触だけがある。
 残っている右目で辺りを見回す。
 今までよりも狭い視界の真ん中に、いつの間にかぎょろりとした眼球が浮かんでいた。
『はろー。目が覚めたみたいね』
「?」
『はろー、はろー』
「???」
『こら。呼びかけられたら返事しなさい』
 どうやら、眼球がこの声の主のようだとナナルゥは認識した。
 突っついてみる。
『ぎゃーーー!!』
 どうやら認識は合っていたらしい。
『いきなり何するのよ!! もう!!』
「ごめんなさい」
377あなたを見つめる私・中編 5/24:04/12/16 09:44:39 ID:3lHk8szw
『う……素直にあやまるとは。やるわね。一本とられたわ。ここであなたを許さなかったら私の方が悪者みたいじゃない』
 ふむふむと感心したような気配の声。
 それにしても訳が解らないと、ナナルゥは思う。
 目玉が話しかけてきている。それも、若い女性の声で心に直接。全くもって訳が解らない。
『私は観察者。永遠神剣『夢幻』よ』
「……」
 ずびしっ!!
『ぎゃーーー!!』
「……」
『ちょっと!! 何するのよ!?』
「どう見ても目にしか見えないです」
『そりゃそうよ。私、眼球型の永遠神剣だもの。あー、痛かった。涙出ちゃったじゃないの』
 涙だか何だかよく判らないが、宙に浮いた眼球が水を滴らせる。かなりシュールな光景だ。
「訳が解りません」
『何言ってるの。永遠神剣というのは総称。槍だったり、双剣だったり、鞭だったり、杖だったりするでしょう? 鎌とか斧とか鉈とか弓とか銃とか鎧なんてのもあるわよ。
 ファンタズマゴリアに来たントゥシトラの永遠神剣『炎帝』は王冠型だしね。あ、あなたはまだ『炎帝』は見てないか。それに銃の存在も知らないか。
 でも他にもレアな型はいっぱいあるわよ。そもそも定型を持たない神剣もいるし』
「そうなのですか?」
『そうなのよ。基本的に神剣は他の神剣を打ち壊して一体化しようとする存在だから、攻撃的な形になるの。意識が形に反映されるのよ。
 仮に戦いを望んでいなかったとしても、襲ってくる相手から身を守る必要はあるだろうしね』
378あなたを見つめる私・中編 6/24:04/12/16 09:48:26 ID:3lHk8szw
「先ほど言っていた王冠型というのはどうなのですか?」
『所有者の頭に載る事で所有者を支配するという支配欲の表れかな?
 魔法を行使するには頭が一番重要な部位だし。直接戦闘型では無いという意味で私と似通った部分はあるかもね』
 確かに王冠型の神剣というのもかなり変わっているが、それにしたって目玉型というのは変過ぎだとナナルゥは思う。
『私は直接戦闘は嫌いだし、身を守って戦うくらいなら逃げるし、物事を観察する事が大好きだからこういう形になってるの。多分ね』
「多分、ですか?」
『んー。偉そうに説明しちゃったけど、私の言った事は半分予想。実際の話、ずっと色んな世界を観察してる私にも、永遠神剣て訳解んない事だらけなのよね。何でもありっていうのが一番的確な表現になると思うわ。難しく考えない方が良いわよ』
「自分の事なのに解らないんですか」
『あら。あなたはスピリットだけど、スピリットの事について何でも説明できる? 生まれ方は? 生まれた目的は? 体のつくりを、内臓の何もかもを説明出来る?
 心はどう? あなた自身の心のあり方ですら完全に説明出来る?』
「……確かに解らない事だらけです」
『そういう事。大事なのは理屈じゃなくて、ありのままの姿を観察し、事実を正しく認識する事。だと思うんだな、私は。
 ……自分自身の事が一番解らないというのもまた、事実の一端ではあるにしてもね』
「なるほど」
『大体、今の状況を見ると、中の人だって設定を完全に組み立ててるとは、ちょっと思えないしね』
「中の人?」
『ううん。こっちの話』
「……なるほど」
 何となくそれ以上突っ込んではいけない気がしたので、ナナルゥはその話題を切り上げた。
379あなたを見つめる私・中編 7/24:04/12/16 09:52:08 ID:3lHk8szw
『まぁそれはおいといて。ねぇ、ナナルゥ、私と一緒になってくれない?』
 唐突な『夢幻』の提案。
『私、あなたを見てるのが凄く面白かったのよ。一目惚れみたいなものかな?』
「……そうですか」
 目玉が一目惚れというのはギャグなのだろうかという問いをナナルゥは飲み込む。
『けど、このままだとこの世界、ファンタズマゴリアは多分滅ぶ。そしてあなたも、この世界と共に消える』
「!!」
『『時詠』のトキミはかなりの実力者だけれども、彼女の能力も本来戦闘向きのものじゃない。
 『秩序』のテムオリンなら何とかなっても、『無我』のタキオスや『世界』のシュンが相手となると苦しいでしょうね』
 ナナルゥの知らない名前も幾つか並ぶが、ファンタズマゴリアがピンチだという事を言っているのは理解出来る。
『後はユートがどれだけの力を携えて戻ってくるかだけど……。ユートの事を認める可能性の高い剣は『聖賢』。
 とんでもない潜在能力を持った第二位神剣ではあるんだけど、エターナルになったばかりの彼と『世界』と融合して神剣そのものとなったシュンとでは、明らかに分が悪いわ。
 『聖賢』以外の剣に認められたとしても、勝率は下がりこそすれ上がる事は無い』
「ユート?」
 どこと無く懐かしい響きを感じ、ナナルゥは思わず『夢幻』の言葉を問い返す。
『あー……トキミが言ってた、助っ人の事よ』
 問いに対し、『夢幻』は曖昧に答えて話を進めた。
 今はまだ言えない、というニュアンスを読み取り、ナナルゥはそれ以上の追求は無駄だと悟る。
『とにかく、このままだとかなりの確率でファンタズマゴリアは滅んでしまう。となると、あなたも死んでしまう。そーすると私はあなたを観察出来なくなる、という論法。
 面白くなってきたところで、それはちょっと遠慮したいのよ。もちろん、あなただけを別世界に飛ばす事も出来るんだけど、それはあなたにとっても不本意でしょうし』
380あなたを見つめる私・中編 8/24:04/12/16 09:56:17 ID:3lHk8szw
「そうですね。自分だけ逃げるというのは不本意です」
『で、あなたが生き延び、且つこの世界も継続する為には私も協力するのがベストかな、と思ってね』
「それで勝率は増えるのですか?」
『多分ね。私と一緒になるって事は、あなたもエターナルになるって事だし』
「!? あなたは上位神剣だったのですか!?」
『あら? 言ってなかったっけ? 私第三位永遠神剣よ』
「……意外です」
『そこはかとなく失礼ね。で、どう?』
「ですがあなたは先ほど、戦いは嫌いだと言っていたようですが?」
『まーね。でも、これしか方法が無いとなったら戦う事にやぶさかではないわ。
 私、後悔すると解ってる選択はしたくないの。結果がどうなろうとも、自分のやりたいようにやる。それが自分らしくあるという事。
 それを否定するのは自己の否定だわ。そんなみっともない自分は見たくない。でしょ?』
 確かに、とナナルゥは思う。
 以前であれば理解出来なかったかも知れないけれど、今のナナルゥは『夢幻』の言っている事に納得出来た。
『純粋な物理戦闘力は上位神剣の中でも最下位クラスだけど、魔法力はそこそこあるわ。あなたとの相性、いいかもよ』
 ナナルゥは以前、魔力制御の下手さをイオに指摘されていた。
 扱えるマナの容量が多く、強力な魔法を使える一方、魔力の制御自体が非常に下手で、効率的にマナを攻撃に変換出来ていない。
 10のマナから1から2程度のエネルギーしか取り出せておらず、残りはロスしてしまう。
 ゆえに、制御プロセスが比較的簡単な全体攻撃系の魔法はそれなりの威力を誇るが、魔力を絞って目標に向け照射するという細やかな魔力制御が必要な単体攻撃魔法が非常に苦手なのだ、と。
 逆に言えば、魔力の制御が上手くなり、無駄なくマナをエネルギーに変える事が出来たならば、ファンタズマゴリアでも一、二を争う神剣魔法の使い手になるだろう、ともイオは言っていた。
 端的に言ってしまえば、ナナルゥはもの凄く不器用なのだ。
381あなたを見つめる私・中編 9/24:04/12/16 10:00:25 ID:3lHk8szw
「魔力の制御は得意ですか?」
『それなり、かな』
「不安です」
『失礼ね。少なくともあなたよりは上手いわよ』
「ならば良いのですが」
『大体あなたより魔力制御が下手な存在なんて、そういないわよ。無駄が多すぎて収束した筈の魔法の威力が下がるなんて、本末転倒もいいところだわ』
「そんなものでしょうか」
『そんなものよ。っていうか、あたりまえでしょ』
「なるほど。それと、もう一つ……私の心を支配するつもりはありますか?」
 神剣に支配されかけていた時期があったからこそ解る、神剣に支配される怖さ。
 当時は何とも思っていなかったが、今となっては絶対にあの頃に戻りたくないとナナルゥは思う。
 たとえファンタズマゴリアを救う為だとしても、それは辛い。そう思わせる何かが、ナナルゥの心の中にある。
 はっきりとは思い出せない、けれど確たるものが。
 まして相手は上位神剣。支配力も、今持っている『消沈』とはまるで次元が異なるであろう事は容易に予想が付く。
 だが、そんなナナルゥの憂いはあっさりと否定された。
『まさか。支配なんて馬鹿な事はしないわ。そんな事したら観察対象が減っちゃうじゃない。私はあなたの思考、行動に興味がそそられてるんだから。
 それに仲間を神剣に支配された友人達の苦悩とかは、見ても胸が悪くなるだけよ。自分がその原因になるなんてぞっとするわ。
 物語はね、ハッピーな方が面白いのよ☆』
 『夢幻』の言葉は、軽く見えつつその本音を容易には明かさないけれど、決して嘘は付いていない。
 目は口ほどにものを言う。
 『夢幻』の不思議と澄んだ輝きから、根底にある限り無い優しさと誠実さを、ナナルゥは殆ど直感的に確信していた。
 そして、ファンタズマゴリアを、無二の友人達を救えるのであれば、皆に忘れられる事にも、エターナルとなって永遠の戦いの中に身を置く事にも迷いは無い。
 それほどまでにナナルゥは仲間達の事を大切に思えるようになっていた。
 それは図らずも、悠人のとったものと同じ決意。
382あなたを見つめる私・中編 10/24:04/12/16 10:05:04 ID:3lHk8szw
「解りました。一緒に行きましょう。あなたの言っている事を完全に理解出来た訳ではありませんが、何はともあれ私はファンタズマゴリアを救いたいですから」
『OK。利害は一致したって訳ね。それじゃ、今後とも宜しく。あなたが左目を失ったのも、もしかしたらマナの導きだったのかも知れないわね』
 ひゅるん、と宙に浮いていた眼球は、ぽっかりと空いたままだったナナルゥの左目があった部分、眼孔に飛び込んだ。
 そこから熱が伝わるような感覚に、思わずナナルゥは目を押さえる。
 体中がひび割れるような、溶かされるような痛みに包まれる。
「ぐ、ぐうぅ……」
『ごめんごめん。すぐ済むから、天井のしみでも数えてて』
「……天井なんてありませんっ……」
『あはは。ホントごめんね。私も他人と一緒になるのは慣れてなくてさ』
 体中に走ったぴしりという痛みを最後に、痛みは消えた。
 気が付くと、失われていた片側の視界が完全に回復している。
 そうナナルゥが思ったのも一瞬の事。実際は回復などという生ぬるいものでは無い。
 視力が恐ろしく上昇している。それだけでは無く、光の可視領域が広がり、赤外線による熱情報を始めとする圧倒的な情報が目から入ってきている。
 それは左目のみならず、右目も同様だった。
『これが上位神剣との一体化。半端じゃないわよ?』
 更に、強化されたのは視力だけでは無かった。
 聴覚も、嗅覚も、触覚も、そしておそらくは味覚も桁違いに鋭くなっている。
 先程までのナナルゥでは、この溢れる情報量を処理しきれなかっただろう。
 けれども今のナナルゥはその情報を完全に認識し、それを元にして、超の上にもう一つ超が付く程高速の思考を展開させていた。
383あなたを見つめる私・中編 11/24:04/12/16 10:08:16 ID:3lHk8szw
 根本的な部分で、頭の使い方もまるで違っている。
 様々な物事を並行して認識、処理、そして思考し、それらを間断無く統合する。
 今までの頭の使い方では得られる情報が増えても、導く結論は等加級数的にしか増加しなかった。
 しかし今の頭の使い方で導き出される結論は等比級数的に増大する。
 しかも、扱う情報量は以前とは段違い。最早未来予測すらも可能になっていた。
 様々な次元を同時に観察する『夢幻』の本領である。
『さてと、準備は完了したわね。これで忘れていた事も思い出したんじゃない?』
「忘れていた事、ですか?」
『そ。ユートの事』
「ユート……様……」
 ナナルゥの脳裏に次々と悠人の事が思い出されていく。
 出会った事。
 共に戦った事。
 演劇を見せてもらった事。
 告白した事。
 体を重ねた事。
 自分という存在を認めてもらい、必要としてもらった事。
 愛を語り合った事。愛を与え合った事。
 そして、別れた事。
「……思い出しました。これだけで、もうあなたと一体化した意味はあったと確信しました」
『サンキュ。さてと、これからちょっと面倒な戦いになるわね。今回はいつもみたいに逃げる訳にもいかないけど、思えばこれも新鮮よね。
 客席から舞台に上がるのも久しぶりだわ。ま、気楽に行きましょ』
384あなたを見つめる私・中編 12/24:04/12/16 10:12:08 ID:3lHk8szw
「では、この『消沈』はどうしましょう」
 まだ手に持ったままの永遠神剣『消沈』に目をやるナナルゥ。
『うーん、私、剣の扱い苦手だし、って言うか体を使う事自体がそもそも苦手だし、あなたも剣技は得意じゃないわよね?』
「はい。苦手です」
『それじゃあここに残っててもらいましょうか。必要な時には呼ぶという事で、お留守番』
 ナナルゥに、『消沈』の不満気な感情が伝わって来る。下位神剣ゆえに明確な言葉で話はしないが、感情は伝わって来る。
『(♯ ゚Д゚) ゴルァ!!』
「不満みたいですよ?」
『お留守番、頼めるわよねぇ? 『消沈』?』
 『消沈』は第七位永遠神剣であり、『夢幻』は第三位永遠神剣である。
 下位神剣は本能の力が強く、そして神剣の間において位の力は絶大だ。
 不満気な感情をもらしていた『消沈』は、『夢幻』に声をかけられた途端あっさりとおとなしくなる。
『((((;゚Д゚))) ガクガクブルブル』
『もう一度だけ言うわ。お留守番、頼めるわよね?』
『(;;゚口゚;;) モチロンデス』
『素直に言う事を聞いてもらえて嬉しいわ。『消沈』にも納得してもらえた事だし、さて、行きましょうか……ありゃ?」
385あなたを見つめる私・中編 13/24:04/12/16 10:16:17 ID:3lHk8szw
「どうかしましたか?」
『この空間の時の流れを変えていたのを忘れてたわ』
「?」
『ごっめーん!! もう最終戦、始まってるわ』
「それでは、急ぎましょう」
『あら、冷静』
「ここでこれ以上話をしていると、いつの間にかファンタズマゴリアが滅んでたなんて事になりかねませんから。
 それにあなたは、そして今や私も観察者。ならば現在を素直に見据えるのが道理でしょう」
『あははははっ!! オッケー!! じゃ、行くわよ!! 直接戦場に下りるから用意して!!
 あ、言い忘れてたけど、次元の門を越える訳じゃないから、あなたの事は仲間達の記憶に残ってるわよ☆』
「はい」
 少しだけほっとしながら、四方に広がるあらゆる世界の映像の中のひとつ、ファンタズマゴリアの映像にナナルゥは飛び込んだ。
 一瞬上下左右が無くなる感覚を経て、ナナルゥの視界が白く染まる。
 そこは雪の降るファンタズマゴリアのソーン・リーム台地。
386あなたを見つめる私・中編 14/24:04/12/16 10:20:18 ID:3lHk8szw
 ずしゃっ!!
 雪煙を上げて、ナナルゥがソーン・リームの地に降り立つ。
「ナナルゥ、見参」
「……え?」
「?」
 ナナルゥが降り立ったのはちょうど睨み合いの中心点。
 悠人達と水月の双剣メダリオが対峙する場面に華麗に登場した。
 あまりにも意外すぎるタイミングでのナナルゥの出現に、皆の頭は真っ白になった。
 ヒミカが信じられないといった表情で訊ねる。
「ナ、ナナルゥ……か?」
「はい。ご心配をおかけしました」
 悠人が夢でも見ているのかといった感じで訊ねる。
「本物の……ナナルゥか?」
「自分が自分である事を証明する事は非常に難しいですが、おそらくは」
 その淡々とした受け答えが、ナナルゥである事の何よりの証明。
「おかえりなさ〜い」
 ハリオンのおっとりした、いつも通りの声をきっかけに、悠人達は笑顔に包まれた。
387あなたを見つめる私・中編 15/24:04/12/16 10:24:10 ID:3lHk8szw
「ナナルゥ!! 良かった!!」
「心配したんだぞ!! 一体どこにいたんだ?」
「ちょっとエターナルになっていました」
 ナナルゥの答えに、はたと時深が気付く。
「そういえば……エターナルですね」
「はい」
 そこに至って、完全に無視され存在感を無くしたメダリオが自己主張の声を上げた。
 始めから気付かれていないのであれば背後から迷わず斬り付けるメダリオではあるが、エリートとしての道を歩み続けてきたプライドが、無視されるのには耐えられなかったから。
「あなたは前にもお会いしましたね。まさかエターナルに……」
「先制攻撃、いきます」
 どがーーーん!!
 ナナルゥの神剣魔法が突如口火を切った。あまりの早業にメダリオは虚をつかれ、魔法を打ち消す事も出来ずに防御するしかない。
「くっ、いきなりとは!!」
 神剣魔法の爆炎による土煙が収まらないうちに、ナナルゥはメダリオに接近していた。
「なっ!?」
 奇襲である事に加え、メダリオがそれなりに経験を持ったエターナルであり、ナナルゥが遠距離魔法攻撃タイプである事を見抜いていた事が仇となった。
388あなたを見つめる私・中編 16/24:04/12/16 10:28:11 ID:3lHk8szw
「えい、やあ、とお」
 どこと無く気合の入ってない掛け声と共に、ナナルゥが攻撃を繰り出す。
 虚をつかれれば、普段なら余裕で対処出来る事にも対処出来ない。油断大敵とはよく言ったもの。
 エターナルとしては非常に弱い部類に入るナナルゥの直接攻撃だったが、その手刀は見事にメダリオの双剣型永遠神剣『流転』を叩き落した。
 ナナルゥは打ち落とした『流転』を遠くに蹴り飛ばし、華麗に宙を舞い素早く間合いを離す。
 双剣は、それぞれ悠人と時深の足元に転がった。
「これで前回の奇襲の借りは返しました。ここからは貸し借り無しでの正々堂々の勝負です。どこからでもどうぞ」
「こんなの正々堂々じゃあ無い!!」
 神剣を奪われ丸腰となったメダリオは、周囲をナナルゥをはじめ、悠人、時深、光陰、今日子、他ラキオススピリット隊の面々に囲まれ絶望的な叫びを上げる。
「?」
「何言ってるんだこいつ、みたいな顔をするなぁ!!」
 それがメダリオのファンタズマゴリアでの最後の言葉。
「そちらから来ないのでしたら、こちらから行きますよ?」
 ドッゴーーーーンッ!!
 オーラフォトンが煌き、大爆発が起きる。打ち消す事も不可能な無属性神剣魔法がメダリオを無慈悲に吹き飛ばした。
「あなたは、相手を甘く見過ぎです。情け容赦の無い戦いの場は、あなた自らが用意したものだというのに」
389あなたを見つめる私・中編 17/24:04/12/16 10:32:39 ID:3lHk8szw
 ナナルゥとの再会の喜びも一段落し、皆は一旦僅かな時間ではあるが休息に入った。
 ソーン・リームに入ってからずっと敵の途切れぬ連戦で、全員が相当に消耗していた。
 そしてこれから先は、エターナルとの戦いが控えており、体力は可能な限り回復しておく必要がある。
 状況は決して良いとは言えない。
 『再生』の暴走まではもう時間が無い。
 加え、ナナルゥが参戦し、敵エターナルの一体であるメダリオを倒したとはいっても残る敵エターナルは5体。内2体は第二位神剣の持ち主である。
 翻ってファンタズマゴリアの部隊は、ナナルゥを含めてもエターナルは3人。第二位神剣の持ち主は悠人一人だけ。
 エトランジェが2人、スピリットも精鋭揃いではあるが、以前のメダリオとの戦いで証明されているように、エターナルとのレベル差は歴然としたものだ。
 けれど、そんな逆境の中でも、士気はこれ以上無い位に高まっていた。
390あなたを見つめる私・中編 18/24:04/12/16 10:37:07 ID:3lHk8szw
「でも本当にびっくりしたよ。二度と会えないと思っていたからな」
「愛です」
「……は?」
「愛なのです」
「あ、愛?」
「はい。私達は共に支えあい、愛を知り、強さを知りました。だからこそ私は生き残り、再びユート様に再会する事が出来ました。
 ですが、今までの愛は親子の愛というものに似たものだったのだと思います。そして、私達は一旦自立し、今再びこうして巡り合いました。
 今後の私達は、欠落を埋め、傷を癒し合う関係では無く、自分自身の足で立ちながら共に歩む、そういう恋愛関係、言うなれば恋人同士としての愛を持った関係になれると思いますが、どうでしょう」
 ナナルゥにしてはかなりの長広舌。めったに無い長いセリフが、ナナルゥの内面の興奮と僅かながらの不安を雄弁に物語っていた。
「……先を越されちゃったな。告白は俺からしようと思ってたんだけど」
 ぽりぽりと頭をかきながら悠人が返事をする。
 時の迷宮の中で久々に独りになり、自分にとってのナナルゥの存在の大きさを思い知らされた悠人は、戻ったら絶対告白しようと心に決めていたのだ。
 たとえ忘れられていたとしても、また忘れられるとしても、正直な気持ちを伝えたいと思っていた。
 ファンタズマゴリアに来てナナルゥがいないと伝えられ、先程の再会もあまりに予想外の展開で、時の迷宮での決心が頭からすっかり抜けていた。
「それは、了解頂けたという意味で捉えてよろしいのでしょうか」
「もちろん。これからも宜しく、ナナルゥ」
「はい。こちらこそどうか宜しくお願いします」
 どちらからとも無く、ゆっくりと抱き合い、口づける。
 恋人同士の軽いキス。
 それだけで互いの思いは十分過ぎるほどに伝わった。ソーン・リームの雪景色の中だからこそ、余計に温かく感じる互いの体温と共に。
 二人は恋人として、新たな絆を結んだ。
「むーーーーーー」
 時深が不満気な声を上げて頬を膨らます。
 が、二人の目には入らない。不憫だ。
391あなたを見つめる私・中編 19/24:04/12/16 10:41:00 ID:3lHk8szw
「それにしてもナナルゥの新しい神剣って、どれだ? 持ってないよな?」
「これです」
 訊ねる悠人に自らの左目を指差したナナルゥが答える。
「いや、あっかんべーをされても困るんだが」
「……あっかんべー? なんですかそれは?」
「あっかんべーと言うのはだな……」
「もしかして……観察者『夢幻』ですか!?」
 ラブラブながら微妙に噛み合わない2人の会話を呆れた様に聞いていた時深が、はっと弾かれたかの様に会話に割り込む。
「はい。そうみたいです」
「やっぱり……」
「観察者?」
「私も話に聞いただけですが、ありとあらゆる世界を観ながらにして本体は幻の如きと言われる『夢幻』。
 まさかこうして表舞台に現れるとは思ってもいませんでしたが」
「正確にはあらゆる世界ではありません。『夢幻』という観察主体が存在する場所しか観察出来なかったそうです。
 それと、観察とは視覚を用いて観るだけに限らず、全ての感覚をフルに活用して行う事だそうです。
 聴覚、臭覚、味覚、必要ならばオーラを使用しての触覚に加え、直感といわれる第六感も含めて」
「沢山の世界に存在して観察するって、そんな事可能なのか? まるっきり別の世界に遍在するって事だろ?」
「可能です。上位神剣は分離する事が可能ですから」
「……そうなんだ。凄いな」
392あなたを見つめる私・中編 20/24:04/12/16 10:44:58 ID:3lHk8szw
「ですが、なぜその『夢幻』が?」
「何でも私をじっくり観察したいとか。その為にファンタズマゴリアを救う事に手を貸す、と」
「……なるほど」
「え? 今ので解ったのか? 何でナナルゥが観察対象に選ばれたのかとか、何でその為に俺達に協力するのかとか、解んない事だらけなんだけど」
「悠人さん、上位神剣はちょっと浮世離れしている者が少なく無いので、あまり深く考えないでそういうものだと納得した方が良いです。
 多くの上位永遠神剣は何千年、何万年単位の存在ですし、そもそも私達とは異なった感覚を有していますから、ちょっと私達の理解が及ばない部分があるんですよ。
 『聖賢』などはその辺りも踏まえて私達に合わせて会話してくれる神剣ですけど、『聖賢』の持つ知恵を全て理解するのは今の悠人さんにはまだ無理っぽいでしょう?
 そういう事です」
「ふーん。けど、ちょっと『夢幻』と話してみたい気もするな。出来るかな、ナナルゥ?」
「少々お待ち下さい。……『夢幻』聞こえてましたか?」
 ナナルゥが一人語る。
『聴こえてるわよ。でも私、外部から情報を受信するのは得意なんだけど、外部に情報を発信するのは苦手なのよね』
 『夢幻』が答えるが、その声はナナルゥ以外には聞こえない。
「ではどうすればいいのですか?」
 傍目から見ていると、ナナルゥが独り言を言っているようにしか見えない。
 本来ならば心で思うだけで自分の神剣との意志の疎通は出来るのだが、ナナルゥは正直に言葉を発して神剣と語っている。
 淡々と語るナナルゥの雰囲気もあって、何だか危ない人みたいに見える。
 まぁ、悠人も今までの『求め』との付き合いの中で、一人で転げまわったり叫んだりしていたのだが。
 今更ではあるが、事情を知らない人が見ればさぞかしアブナイ人に見えていた事だろう。
 剣が語りかけてくるんです。俺を支配しようとしてるんです。なんて言ったら、一般人にしてみれば120%電波ゆんゆんだ。
 悠人は自分もこれからは気をつけようと静かに決意した。
393あなたを見つめる私・中編 21/24:04/12/16 10:48:45 ID:3lHk8szw
 そんな悠人の決意をよそに、ナナルゥと『夢幻』の会話は続いていた。
『ちょっとだけ体貸してくれる?』
「解りました。変な事はしないで下さいね」
『はいはい、解ってるわよ。全く、信用無いわね』
「では、どうぞ」
 すぅっとナナルゥの表情が変化する。
 目にいたずらっぽい光を湛え、口元には軽く笑みを浮かべるナナルゥの体の『夢幻』。
 悠人と時深の方を向いて一言。
「はろー」
「……」
「ナナルゥにも同じ挨拶をしたけど、あなた達の方が失礼ね。返事をしないのは一緒でも、ナナルゥはそんなアホみたいな顔しなかったわよ」
「あ、ああ、すまん。いきなりそんな挨拶されるとは思わなかったし。しかもナナルゥの格好だし」
「驚いたと言いますか……あきれたと言いますか……呆気にとられたと言いますか……」
「そんなものかしら? ちなみにナナルゥと初めて会った時のあたしの格好は宙に浮かぶ目玉だったんだけどね」
「……怖ぇ」
「あら、そうかしら? 「くけけけけけけけけけっ!!」と叫んでいきなり出現する目よりはカワイイ出現方法だったと思うけど、どうかな? ……どうかな?」
「2度言うな。とりあえず、それよりはましかも知れないが……っていうか、あんた本当に上位永遠神剣か?」
 思わずといった感じで訊ねてしまう悠人。少なくとも、世界を影から観察する者、というイメージからは程遠い。
「これでも一応第三位永遠神剣よ。剣の形をしてないのはご愛嬌ね。正直、戦闘は苦手なの」
 自分でも一応と言っている辺り、何だかんだで上位神剣らしくないという自覚はあるのかも知れない。
394あなたを見つめる私・中編 22/24:04/12/16 10:52:08 ID:3lHk8szw
「魔法はどうなのですか?」
 時深が訊ねる。
「いいえ。それなりには使えるけど特別得意という程ではないわ。
 単純な戦闘力で言えばそこらの下位神剣よりは強いでしょうけれど、上位神剣の中では下から数えた方が遥かに早いでしょうね。あはは」
「はぁ、そうですか……」
 あっけらかんと『夢幻』は自分が弱い事を語る。
「なぁ時深、こんな神剣ってありなのか?」
「神剣にも色々いますから」
 小声で時深に訊ねる悠人と、それに答える時深。しかし、今のナナルゥ(夢幻)の聴覚はその声を余裕で聞き取る。
「性格が不評みたいね。ショックだわ。……じゃあちょっと口調を変えてみようかしら。それだけでだいぶ雰囲気も変わるでしょうから」
「……口調を変える? 例えば?」
「オッス、オラ、ナナルゥ!! よろしくな!!」
「頼むからやめてくれ。眩暈がしてきた」
「そう? じゃあ、イメージが変わるように、力の一部を使って別パーツを構成しようかしら」
「どういうパーツを?」
「眼鏡」
「……は?」
「眼鏡っ子エターナル。萌えない? 知的に見えるわよ」
「……」
395あなたを見つめる私・中編 23/24:04/12/16 10:57:23 ID:3lHk8szw
 『夢幻』の冗談とも本気ともつかない言葉のオンパレードに、悠人は頭を抱える。
 それを助けるように、時深が悠人に声をかけた。
「かなり個性的な神剣みたいですが、戦力は期待出来ますよ」
「でも『夢幻』自身が、自分の事を弱いって言ってたぞ?」
「悠人さんも先程の魔法を見たでしょう」
「確かに」
 先程ナナルゥの放った神剣魔法の威力は、相当なものだったと悠人は思い出す。
「謙遜してるだけで実は強いとか?」
 それに対し、『夢幻』は飄々と答える。
「んー、ちゃんと力を引き出せば、第二位神剣である『聖賢』の方が遥かに強力でしょ。それこそ比べ物にならないくらいに。
 ただ、この世界はマナが少なくは無いけどとりたてて多くも無いという事と、何よりもあなたの力の使い方がまだまだなってないというだけ。
 私はナナルゥとばっちり一体化したから今のあなたと同程度の力は出せてるけど、今後大きな戦闘力の伸びは期待出来ないと思うわ。
 現段階でも、運動能力はあなた達より既に下だしね」
「一体化って……ナナルゥの精神は大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。精神は別。私は観察者で、今の興味の対象がこのナナルゥだからね。興味対象を消すなんて馬鹿な真似はしないわよ」
「そうか。よかった」
 悠人は安堵の溜め息を漏らす。
 『世界』と融合した瞬を見ているだけに、神剣との一体化という言葉に不安を覚えたのも無理なからぬ事だろう。
「ナナルゥと同じ心配をするのね。やっぱりあなた達お似合いだわ。安心なさい。この子の心はアナタのものよ、ユウト☆」
「そ、そうか」
 突然に妙な方向に進んだ話に、悠人はどう反応していいか判らずにどもる。
396あなたを見つめる私・中編 24/24:04/12/16 11:00:42 ID:3lHk8szw
「それと、アナタもなかなか興味深いわ、ユ・ウ・ト」
 『夢幻』はナナルゥの体で一歩近づき、ついっと悠人の頬に手を添えた。
 その瞳には、悪戯っぽい光にコケティッシュな色が加わっている。
 ナナルゥの姿で、しかも今まで見た事も無い魅惑の表情で迫られ、悠人は思わずどぎまぎしてしまう。
「どう? 一緒に自分の新しい一面を発見して……ぐぇ」
「ちょっと『夢幻』何やってるんですか#」
 こめかみに血管を浮かべた時深が引きつった笑顔で『夢幻』(=ナナルゥ)の首根っこを掴む。
「ちぇ。まあ、私は基本的には戦況を観察して、フォローするだけだから頑張ってね、ユ・ウ・ト。
 見られる快感に目覚める前にいきなりゲームオーバーになったりしたら承知しないからね☆」
 猫掴みされたまま言いたい事だけ言い、ひとつウインクを決めると、そのまま『夢幻』は引っ込んでしまった。
 ナナルゥの瞳が、冷静なものへと戻る。
 ナナルゥは二、三度瞬きすると、口を開いた。
「……ぐぇ」
「あ、ご、ごめんなさい」
 ナナルゥの首根っこを掴んだままだった時深が慌てて手を離す。
「どうでしたか? 『夢幻』と上手く話せましたか?」
「話せた。……疲れた」
「?」
 でも、と悠人は思う。
 『夢幻』のどこまでも色っぽい眼よりも、この何も考えていないようで底の見えないナナルゥの眼の方が心狂わす魔眼だよなぁ、と。
 恋は盲目。
3975スレ226:04/12/16 11:02:32 ID:3lHk8szw
中編でした。
読んでいただけた方、ありがとうございます。
398名無しさん@初回限定:04/12/16 11:07:28 ID:AEXPSOZn
オリ剣(゚∀゚)イイ!!
399名無しさん@初回限定:04/12/16 12:07:49 ID:oZJnkX8Q
き...鬼太郎?
オリ「剣」なのか、『夢幻』!?
いや、まあ、何とゆーか...とりあえず凹んでないようで安心しますた。
いやしかし、それにしてもあの前編は一体何だったのかと思わずにはいられません。
本当に同じ226さん?まさかこんな展開になるとは...爆笑したけど。
こうなると全く先が読めませんな。後編は果たして...??
それにしてもナナルゥかわいい。
400名無しさん@初回限定:04/12/16 16:09:23 ID:5gEhpAds
5スレ226氏、強いな…
8/24 辺りに糧として乗り越えたかなとか感じさせられたり。
見習わないとなぁ…

つーか、めっさお茶目ですね、『夢幻』(w
ある意味ナナルゥには向いているのかも。

「『消沈』のお留守番日記」…とか妄想しかける漏れはだめぽorz
401名無しさん@初回限定:04/12/16 16:30:44 ID:Zc7p6gIz
目玉の親父ですね(笑
うう、メダリオの不遇さがちょっと可哀想……自分相当好きだったりしますので、彼。
この先どうなるのか、期待と不安が入り混じったままお待ちします。
最後まで茶目ッ気たっぷりな気がするなぁ、〈夢幻〉……
402名無しさん@初回限定:04/12/16 17:21:00 ID:nHZ4PNWH
笑わせてもらいました。『夢幻』イイ!目玉型とは・・意表つかれました。
王冠型とかもあるし案外なんでもありなのかも・・・
後編も期待してます。
しかしメダリオの扱いが哀れだなー。
作品別の方のスレでも「どうせメダリオだし」とか言われる扱い・・・
403名無しさん@初回限定:04/12/16 18:49:46 ID:rvLYWC1k
>397 5スレ226さん
ノリと勢いとネタで快進撃になるエターナル話が読めるとは思わなかったです。
メダリオは……前編で非道に走りすぎたツケが回ってきたという事でスッとしました。
エターナルのSスキルなんだから、流転が発動するはずも無いですしね。
ただ『夢幻』の観察能力を使った、悠人とナナルゥの愛の協力バトルが
後のお楽しみとなっているように思えてちょっとお預けをくらった気分にw
後編もお待ちしてます。
404名無しさん@初回限定:04/12/16 19:35:47 ID:rvLYWC1k
>368さん
問1【だけど涙が出ちゃう!!女の子だもん!!!くすん!】

問2 
  私、ヒミカ・レッドスピリットはついに突き止めた。
  長い時間を共に過ごしたあの魔女の秘密を。
  ほんの少し前までは私と彼女に大きな差は無かった。
  同じ背景の中に浮かぶ、目を隠した赤い短髪と緑の長髪。
  違いはほぼそれだけで、あの部分に大きな差は無かったのだ。
  それが今や、片やたゆん、片や……。そう、それこそが魔女の秘密!
  吸っている!きっと私は吸い取られている!!
  この秘密に気付いた私は、じきにあの笑顔の持ち主に……。
  その前に危険を報せる。あの魔女の能力を、ハリオンマジックと名付ける。
  くれぐれも、吸われてはならない。ああ、扉がノックされて……

>370さん
1: ヒミカ−セリア= 独り寝の寂しい夜
2: ニムントール+ファーレン= バスト向上作戦開始
3: ネリーxシアー= 攻守反転合戦

              ナナルゥ
4: ナナルゥ÷ヘリオン= ―――――― = 秘密の鑑賞会
              ヘリオン

5: ハリオン^2= ハリオンマジック・窒息天国編
405名無しさん@初回限定:04/12/16 19:39:19 ID:rvLYWC1k
訂正します…連書きすみませんorz
                 ナナルゥ
4: ナナルゥ÷ヘリオン= ―――――― = 秘密の鑑賞会
                 ヘリオン
406名無しさん@初回限定:04/12/16 20:28:47 ID:oZJnkX8Q
>>404道行氏
どこが短文やねんw
それにしても、みんなよくあの難問にスラスラ快答を...
問1で挫折した私はヘタレ職人…orz
407名無しさん@初回限定:04/12/16 20:47:28 ID:8m2gs7zK
ファンタズマゴリアっていう名前のバンド、現実にあるのですね。曲を聴いたことはありませんが。
408名無しさん@初回限定:04/12/16 21:14:20 ID:iakIcu8H
>>369氏の短歌に乾杯
409『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:42:42 ID:aFsk/RcH

―――弾かれ合う二人を止める術はない―――

紅蓮の火の粉を背に舞い踊る緋の影、一撃一撃に『必殺』を込めて吼える青の影。
左手を突き出し、緋の影が呟く……この世界に漏れる絶対的な破壊の呪詞。
浮かぶ幾何学な炎の魔方陣、だがそれよりも先に青の影が冷たく呟いた。
一瞬にして下がる辺りの気温、まるで物質の振動を全て止めてしまうような絶対零度の呪詞。

―――本来なら実体を持たないはずの魔方陣が白く濁り、虚空に弾けた。

だが、両者の顔には何も浮かんでいない。
……当然だろう、止めて当たり前、止められて当たり前のことをしただけだ。
緋の影が軽く左手を払い、腕に白くこびり付いた霜を落とす。
ただ、冷たくそれを見つめる青の影。
溶けて水滴になった霜が重量に従い、眼下の地上へと落下を始める。
最早、二人の周囲は完全に世界から切り離され、さながら二人だけの戦場。
やがて、緋の影が双頭の神剣を前面に押し出すように構えると、それにあわせるように青の影も正眼に構えた。
……始まりの合図は他愛のないことで事足りる。

そう、それは例えば―――たった一滴の水の音でも。

そこから先はコンマ何秒の戦い、誰も……『彼女』達の空間には踏み込めない。
何もない、上下すら曖昧な世界をそこに確かな大地があるかのように……『彼女』達は駆ける。

―――ただ、眼につくのは血のような世界で尚一際輝く緋色の影。
―――ただ、眼につくのは血のような世界で尚一際異質な青の影。

410『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:43:22 ID:aFsk/RcH
何度かのぶつかりの中、徐々に自分が疲弊していくのがわかった。
一撃一撃が速く―――重い。
辛うじて、防いでいるが剣戟を続けるたびに神剣を取り落としそうになる。
目の前でロイヤルブルーの髪が舞い、それを追うように銀光が走り抜ける。
……舞踏会のように華やかでなく、けれど美しく舞うような剣戟に終わりはない。
甲高い金属音、神剣が噛み合い火花が散る。そんな中で互いの視線が絡み合う。
両者の瞳の奥で燻ぶる戦いへの歓喜、勝つことへの執念……。
ただ此の時を―――身を削り、精神を磨耗する―――この甘美な戦いの時を楽しみたい。


ギンッ!!と一際高い金属音が響いた―――華麗な舞はそこで終わる。


ついに度重なる連撃を受けきれなくなった手から神剣が弾き飛ばされ、
無表情で無防備な姿を晒しているであろうこの身に『必殺』の斬撃が襲い掛かる。
煌く一筋の銀光―――突き出された剣の道筋はその程度にしか見えなかった。

疾い、ただそう思った。

……元々、神剣魔法一筋で来て剣の腕はからきし駄目だったのだ。
それなのに接近戦で『剣』の妖精に敵うはずはなかった、この一撃で自分は脱落だろう。
……迫り来る煌きを見つめて、そう思った。

けれど、本能は否定した―――『こんなところで……終われない』、と。

411『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:43:50 ID:aFsk/RcH
ぞくり、と背筋を熱いものが駆け上がる感覚。

後の行動は、そのまま自分の体を突き動かそうとする力に従えばよかった。
ふっ、と世界がゆっくりと動き始める。突き出された剣は寸分違わず無防備な腹部へと。
口は破壊の呪詞を紡ぎ始める、紡ぎ終わるのが先か、腹部が切り裂かれるのが先か。
剣の切っ先が赤の戦闘服に触れる―――まだ終わらない。
切っ先は厚く編みこまれた戦闘服を易々と切り裂き、皮膚に赤い雫を浮かびあがらせ―――もう少し。
さらに切っ先が皮膚に潜り込み、鈍い痛みが鋭い痛みに変わりかけた時―――呪詞は終わる。

左手を基点に浮かび上がる小さな炎の魔方陣。
僅かに笑みを浮かべつつ、緋の影はなんの躊躇いもなく『それ』を"自分の胸に当てた"。


「……やるわね、ナナルゥ」
過ぎ去る爆風を一身に受けながらポツリと青の影―――氷の女王、セリアが呟く。
鼻につく肉の焦げる嫌な臭い、視界を埋め尽くす僅かに炎の残滓が混ざった黒煙。
……これでは追い討ちをかけることもできない。
刺突の構えを解くと、スッといまだ黒煙のなかに留まり続けていた神剣を手元に引き寄せた。
手応えはなかった―――それを証明するように煙の中から現れた『熱病』の切っ先には僅かな血糊が付着しているだけである。
それに多少の不快感を覚えつつ、血糊を袖で拭いとる。
……もう一度神剣を確認する、僅かに青みを帯びた刀身がキラリと鋭利な光を返して来る。
煙が晴れるまでの僅かな時間、セリアは神剣を構えるでもなくただ待った。

やがて、夜の冷たさを含んだ風が黒煙を吹き流してゆく―――。

412『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:45:10 ID:aFsk/RcH
やや、暗い青が混ざった緋色の空。
死人のような半透明な白い月が僅かに顔を覗かせている。
上空を吹き荒ぶ風は冬の到来を告げるかのように冷たく、厳しい。

―――そんな中、『彼女』は満身創痍で立っていた。

セリアから単純距離で50フィートほど、所々煤けて破れた戦闘服に、その隙間から僅かに覗く白い素肌には
無数の切り傷や軽い火傷の跡、とくに戦闘服胸部の焦げ跡はひどく、炭化しているような状態だった。

……当然だろう、いくら逃れる為とは言え、神剣魔法を自分に当てその爆風と反動で距離を取るなんていう無茶な戦法を取れば。

ただ、瞬時にあそこまでの判断が出来たのは賞賛に値する。
普通なら何ら対処するヒマもなく串刺しになっているところだ。
それなのに一瞬で詠唱を……と、ここでふと疑問が沸いてくる。

神剣魔法の詠唱が速すぎるのではないのか、と。
確かに速効性の神剣魔法もあることはあるが、普通どんな神剣魔法でも一秒も掛からず詠唱が終わるなどということは有り得ない。

なのに先程は―――ここで、初めてセリアは気付いた。
いや、正確にはさっきナナルゥの姿を視界に納めた時からどこかしらの違和感を感じていた。
それは、そのボロボロの姿でもいつの間にかナナルゥの手に納まっている『消沈』でもなく……

――――彼女の背中に浮かぶ、漆黒のウィングハイロウだった――――

413『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:45:53 ID:aFsk/RcH
ふっ、とセリアが口元に淡い笑みを浮かべる。
それはどこか恋焦がれる乙女が待ち人を見つけたような笑み……。

ナナルゥが初めて動く。
その能面のような顔を上げ、その満身創痍の身体を動かし、けれど瞳には意志の光を込めて。
そっとナナルゥの左手が右手に構えられた『消沈』の刃の上を滑るように撫でる。
と、ナナルゥの手が触れた跡をなぞる様にして幾何学文様が淡い光と共に浮かび上がる。
やがて、刀身全体が幾何学文様で埋め尽くされるように光る……それと時を同じくして刀身から吹き上がる炎。

     フ ァ イ ヤ エ ン チ ャ ン ト
―――― 炎  付  加 ―――――

刀身に絡みつくように蠢く、大気すら歪ませる高温の炎。
自分の身すら焼き尽くしかねない炎に、けれどナナルゥは微かに笑っていた。
……『裏ナナルゥ』完全覚醒。もう誰にも止められない。

あちらが炎剣だとすれば、さしずめこちらは氷剣。
いつの間にやらセリアの手元、『熱病』には薄っすらと氷の膜が張っている。
切り裂くような冷たさ、白く濁った冷気が絶えず、刃から漏れ出している。
それを掻き消すように、ヒュンッ!と一振り、何者も凍てつかせる刃に大気が甲高い悲鳴をあげた。

―――ほぼ同時に、倒すべき相手に向けられた互いの切っ先。
―――炎に彩られた紅蓮の堕天使、氷に閉ざされし氷結の天使。

沈みゆく夕日、浮かび上がる星が照明代わり。
……舞踏会の夜の部が静かに幕を開ける。
414『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:47:09 ID:aFsk/RcH
そんな危険な舞踏会が始まろうとしている、その足元……ナナルゥが穿った黒いクレーターの中心に一本の腕が生えていた。
所々埃や土やらで小汚くなった細い腕、まるで天を求めるかのように地面から突き出すように生えている。

と、ピクリとその指先が蠢いた。

虚空を二、三回掴むように掻いた後、なんとなく場所感覚が分かったのか地面をガシっと掴む。
僅かに血管が浮き出てピクピクと痙攣しているのは余程力が入っている証拠だろう。
地面に埋まっている本体を引き上げるように必死で足掻く細い腕、ちょっと本体は酸欠気味なのかもしれない。
やがて、地面を掻いていた腕がピタリと動きを止める。
そして、地中から僅かに漏れ出す式……動きを止めた腕を基点に幾何学文様の魔方陣が浮かび上がった。
その後は実に簡単、魔方陣から炎が漏れ出す前にそれを地面に叩きつける。

―――このクレーターが出来た時に比べれば小さな爆音が響いた。

「けほっ……ゲホッゴホッ……」
濛々と上がる土煙の中、咳き込む声が聞こえる。
……ちょっと酸欠気味で必死で息をしたら土煙を吸い込んでしまったのだろう。

やがて、新鮮な空気を求めて未だに辺りを包んでいる土煙の中から
ふらふらとリビングデッドしたてのゾンビのように彷徨い出てきたのは……『赤光』のヒミカ嬢であった。

「ゲホッゲホッ……すーはーすーはーすーはー」

ようやく新鮮な空気にたどり着き深呼吸を繰り返す、余程死に掛けだったのだろう。
必死で呼吸を繰り返し、ようやく落ち着いたのかその場に大の字で倒れ付した。
「あー……死ぬかと思った……」
至極、まともな意見だった。ていうか、普通は死んでる。
415『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:47:43 ID:aFsk/RcH
ナナルゥのム○カ様級神剣魔法を諸に受けて生きていられるのが不思議だった。
もしかして、ナ○シカ級じゃなかったから助かったのか……そんなわけはない。
と、ふと何かに思い当たったのか徐に煤けた戦闘服のポケットを探り始める。
煤やら、土やら、埃やら、爆風を諸に食らったやらでボロボロの戦闘服。
と、そんな中で何かを探り当てたのかポケットの中から握り締めた拳を引き出してくる。

―――そっと開いた拳の中には徐々に砂へと変わりつつある緑色の小さな結晶。

「はぁ……もう使っちゃうことになるとはねー……」
落胆した様子でがっくりと項垂れるヒミカ。
やがて、ヒミカの掌の中で完全に砂になり、風に流されていく結晶。
それは、ヒミカの袋の中に入っていた『戦略性』の武器……つまりはマナ結晶であった。
ようするに……先程のナナルゥの神剣魔法はこれが身代わりになってくれたらしい。
もったいなくはあるが、なければリタイアだったのだから仕方ないといえば仕方ない。
「はぁ」と、もう一度軽く溜息をつくと両手で土ぼこりなどを払いつつ立ち上がる。

――――頭上で鳴り響く爆発音。

先程寝転んだ時に気付いた、上空で戦う二つの影に。
いつまでもこんな見晴らしのいい場所にいると余計な巻き添えを食いかねない。
というわけで、さっさと退散しようとするヒミカ嬢―――と、ここでさらに気付いた。
右手……スカスカ、左手……スカスカ、周り……焼け野原。

「!?」

慌てて辺りを見回す、が何もない。自分の埋まっていた所……やっぱり何もない。
ということは、このだだっ広いクレーターのどこかに埋まっているということになる。
そのことに気付いた瞬間、本気でがっくりと項垂れるしかないヒミカ嬢。
かくして、愛しの神剣『赤光』を探して発掘の旅が始まったのであった……。(何
416『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:48:32 ID:aFsk/RcH
空はまだ夕焼け色が濃く残っているが一度森に足を踏み入れればそこは既に夜の世界。
鬱蒼と生い茂る木々が光を隠し、僅かにキノコ類や鱗類が光を放っている程度だ。
そんな森の一角に白い霧が発生していた。まるで迷い込むものを待っているように……。

「………うぅー、寒いよー怖いよー」

と、その霧の中から少し舌足らずな声が聞こえてきた。
……どうやら既に霧は獲物を捕らえていたようだ。
一寸先も見えないような白い霧の中でちょこちょこと揺れる二本に括られた赤い髪。
自分の身長以上の巨大な双剣を抱きかかえるように構え、一対のスフィアハイロゥ(通称:ぴぃたん)を
お供に覚束無い足取りで歩いていくのは『理念』のオルファリルである。
いくらスピリットと言ってもまだまだ子供、一人で夜闇に放たれれば怖いもの。

視界はすっかり閉ざされて、加えて今は戦闘中、いつ襲われるともしれない状況。
『理念』は辺りに神剣の気配はないと伝えているが、それだって本当かどうかも分からない。
何より……「キャッ!」――――暗いとよく転ぶ。

「う??………」顔から地面に突っ込んだオルファから漏れる怨嗟の声。
ガバッと泥だらけの顔をあげる、明らかにぷんすかぷんすか怒っていた。

「む〜〜〜!もういいもん!『理念』、焼き払っちゃえ!」

……もはや、何もいうまい。
オルファの叫びに応じて『理念』を中心に特大の魔方陣が浮かび上がる。
幾何学文様に光が走る度に神剣から僅かな炎が漏れた。

―――もしも、この時誰かが傍にいたならばこう言っただろう。
―――「この霧……粉っぽくない?」と。

417『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:49:09 ID:aFsk/RcH
薙ぎ倒された木々、まだ所々で掌ほどの小さな炎が燻っている。
放射円状に薙ぎ倒された木々の中心、焼け焦げてボロ雑巾のようにオルファが転がっていた。
すっかり眼を回して気絶状態、頭はパパイヤ○木もびっくりなアフロヘヤーに……。

―――気絶状態を感知したのか、オルファの首輪が淡く反応する。

金色のマナの霧となって転送されていくオルファ……しばらくはいじられるだろう、頭。
そんな中でオルファの傍らに転がった『理念』はその双剣の中心近くにポツンとある一つの瞳で見ていた。
薙ぎ倒されずに残った大木の上、緑の葉が生い茂るその太い枝に一人の妖精が立っているのを。
その時、『理念』は思った……この位置からだとスカートの中身が見える、と。
やがて、完全にマナの霧となり転送される段階になると『理念』の意志は途絶えた。


それを見続けていた一対の瞳。
やがて、オルファの姿が完全に消えると静かに地上へと降り立った。
大地色の短い髪に、草木色のエプロンドレス、グリーンスピリット特有の刃の広い槍、そして展開されたシールドハイロゥ。
「………………」
普段ならば、オルファの心配などをする彼女も今は鉄面皮。

何故なら今の『彼女』は―――我らがヒーロー!キッチンファイター!!

座右の銘は「料理は愛情」。
彼女にとっては今現在このリュケイレムの森全てが調理場……。
調理場である限り『彼女』は無敵、食材がコックに勝つ道理はないのだから。
くるりと身体を反転させると歩き始める『彼女』……そう、次の食材を探して。
次はどう料理しようか、と考えながら……。
418『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:50:10 ID:aFsk/RcH
そんな危険な戦士が徘徊している中、各地で続々と戦闘が始まりつつあった……。

向かい合う黒と黒の妖精。
互いに、たまたま偶然出会ってしまったのか多少の動揺が現れているようだ。
それでも、しっかりと両者が戦う構えを見せているのはさすがというかなんというか。
「……本当は皆さんと戦いたくはないのですけど」
少々くぐもった声をあげる片方の黒。
ロシアンブルーの髪の毛をデザインの整ったヘッドギアで、黒の覆面で顔を隠し、
僅かに瞳だけが露出したその姿、内面の腹ぐr(中略)が如実に顕れているような『月光』のファーレーンだ。
「それは手前とて同じ……共に過ごした仲間にどうして刃を向けることが出来ましょうか」
答えるもう一人の黒。
セルリアンブルーのロングヘアを首元辺りで一括りに、身体を包むのはピッタリとしたレオタードのような黒の戦闘服、
腰には下半身以下を包むような長いマント、最近寝返ったばかりなのにいきなり仲間発言している不思議妖精の『冥加』のウルカであった。
なんとも、消極的な二人の発言……けれど、戦う意志がないというわけでもない。

ただ、二人とも割り切れるものが欲しいだけだ。
と、いうわけで必然的に――――

「でも、訓練ですから」「しかし、訓練となれば仕方ありませぬ」
ほとんど同時に被る言葉、それが戦いの引き金。
展開される純白のウィングハイロゥ、大気が荒れ狂う。
掻き乱される髪を気にも留めずウルカが―――跳んだ。
姿勢は低く、右手は刀を握り締め、ほとんど地面と平行に滑るように駆ける。
常人には視認することさえ不可能な速さ、大陸最強のスピリットの名に違いはなかった。
対するファーレーンには、全くといって動きがない。
刀に右手を添えたまま、目を細め見透かすような瞳でこちらを見ているのみ。
419『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:50:49 ID:aFsk/RcH
……克ち合う視線の中で、不思議な違和感を感じる。

――――そう、何かが足りないような――――

それに気付いた瞬間、大地に踵を打ちつけ無理矢理後方へと跳んだ。
ほぼ同時に目の前を上から下へと通過する鋭利な光、それは広がるマントの裾を浅く切り裂き、地面へと突き刺さった。
背筋に悪寒が走り抜ける―――まだ終わっていない。
ほとんど直感的に鯉口切る。放たれた神速の居合い、白刃の一閃は、降り立った人影に吸い込まれるようにして流れていく。
硬い手応え、僅かに動揺する気配、それだけを認識すると手が痺れるより早く刀は鞘へと納まっていた。
ズザザザッと地面を削るように僅かに離れた場所に接地、すぐにハイロゥを駆使し力のベクトルを捻じ曲げ、横合いへと飛ぶ。が、思ったような襲撃はなかった。
ファーレーンとウルカの間に割り込むように降り立った襲撃者は、地面へと突き刺さった神剣を静かに引き抜くと、刀身を手で支えるように構えた。
「…………………」
耳の後ろ辺りで二つに括られた緑色の髪、やや吊り眼なキツイ瞳、ファーレーンと切って考えるのは不可能な『曙光』のニムントールであった。
「……油断しました、ニムントール殿を忘れていたとは」
忘れていたとは言え、全く気配を感じなかった。
―――もしも、気付くのが一歩でも遅れていたら……。

「お姉ちゃんには……指一本触れさせない」

チャキリ、と構えていた槍の穂先を突き出すようにこちらに向ける。
その顔に浮かぶの歴然とした決意……まさに『姉のためなら死ねる』。
そんなニムの後ろで、ファーレーンは僅かに細めた瞳で場を静観していた……。
420支援:04/12/16 21:51:04 ID:oZJnkX8Q
421『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:51:34 ID:aFsk/RcH
―――守りの戦いと攻めの戦い、二人を例えるならばそんな戦いだろう。
僅かな空間の中で二人の妖精がぶつかり合い、戦いは加速していく。
一足跳び一気に間合いを詰めたウルカの鞘から放たれる白い閃光、空気を切り裂き、太刀筋は視認さえも不可能。
それを、まるで先読みでもしていたかのようにニムのシールドハイロゥが弾き返していく。

ただ一回の鯉口を切る音と共に、都合六つの刃跡がシールドハイロゥに刻まれた。

チン、と刀が鞘に納まった瞬間、ニムの突きが繰り出される。
三連突き、人体の急所を的確に狙う突き。
……それを、顔を横に逸らし、身体を半歩ずらし、最後の刃を鞘で弾くことによって全て捌ききるウルカ。
タッ、と地面を軽く蹴り、後ろに飛ぶことによってそれ以上の追撃を封じる。
間合いを外されたニムも追撃を仕掛けてくることはなかった。

互角とも言える戦い、けれど僅かに勝機にウルカに傾いている。
先程のぶつかり合いで分かったことが一つ、都合六回の居合いは全て防がれたが回数を重ねるごとに僅かずつタイムラグを生じている。
ならば、攻略の答えは簡単―――防ぎきれないほどの斬撃を浴びせかければいい。

「――――参る」

―――駆けた。先程よりも速く、早く、疾く……。
一瞬で縮まる距離、ニムの顔に僅かに動揺が走る。

後はただ―――赴くままに刀を抜けばいい。

連続する大気を切り裂く悲鳴、縦横無尽に煌く白い閃光。
連撃では足りない、まさにマシンガンが放つ連続したマズルフラッシュのような閃光だった。
身体を固定するために地面を穿つように打ち付けられた足、腰溜めの状態から放たれる居合いは常軌を逸していた。
422『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:52:15 ID:aFsk/RcH
十連撃―――くらいまでは数えていられたが、最早そんな数はどうでもよくなる。
勘、そんな不確かで……頼りないものに頼って防ぐ。
『曙光』で―――シールドハイロゥで―――ただ防ぎ続ける。
右脇腹、左太腿、右側頭部、左足首、腹部、右胸部左手首左側頭部右手首左脇腹左太腿……―――。
白い閃光が『曙光』やシールドハイロゥの上を滑る度に散る青白い火花、手に響く痺れ。
―――じきに防ぎきれなくなるだろう、そうしたらそこで終わりだ。
徐々に出始めた剣戟に対する守りのタイムラグ、守りの間にあわなかった箇所が皮膚一枚切り裂かれ行く。
それでも……それでもただニムは防ぎ続けた。

―――けれど、終わりはあっけない形で訪れる。

剣戟を防ぐことだけにニムを集中し始めたのを見て取ったのかウルカが仕掛けた単純な足払い。
姿勢を低く、地面に手をつき身体を回転させるようにして掛けられた足払いにいとも簡単にバランスを崩すニム。
それは致命的な隙だった。
ウルカの顔に浮かぶ獰猛な笑み、チンッと一度だけ音がした。
それだけで、完全にバランスを崩していたニムの手から『曙光』が弾き飛ばされる。

弾き飛ばされた『曙光』が地面に突き刺さるのと、尻餅をついたニムの喉元に
鋭利な光を放つ『冥加』の切っ先が突きつけられるのは、ほぼ同時だった……。

「勝負……ありです」

厳かにウルカが告げる。
「はぁ……面倒……」
自分に突きつけられた切っ先を見ながらニムが静かに呟いた。
423『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:52:56 ID:aFsk/RcH
「どうされますか?ファーレ――――」
ウルカの顔に困惑が走る。
それを見て、ニムも辺りを見回し―――困惑顔になった。
今まで戦いに夢中で気付かなかったことに初めて気付いたのだ。

……そう、ファーレーンの姿がなくなっていることに。

「ニムー、ごめんね〜!」
と、その当の本人の声がどこからともなく……。
「むっ、ファーレーン殿!?そんなところで何を……」
声をあげたウルカが見上げる先、緑の生い茂(中略)にファーレーンの姿が。
―――何の変哲もないその姿……麻袋を三つ担いでいることを除けば。
「ちょっ!?お姉ちゃん!?それ!」
「え?これ?……左からニムの、私のと……あとウルカさんのだけど」
「そうじゃなくて!」たまにボケてるのか本気なのか分からなくなる姉です……。
よく考えれば簡単なことだ、最初から袋をパクることが目的だったとすれば。
さすが『見かけは純白、頭脳は漆黒、その名は……』なファーレーン。
「えーと……昔から猛者を倒すときには兵糧攻めは基本ですし……というわけでニム!ごめんね!」
言うやいなや脱兎の如く逃走を開始するファーレーン。
それを呆然と見守る二人の妖精、あっという間にファーレーンの姿は見えなくなってしまった。
後に残された二人……とりあえずニムは突きつけられた切っ先をどけて立ち上がる。

「えーと………降参?」

両手を挙げ、首を傾げつつ可愛くいってみるニム。
……振り向いたウルカは瞳を閉じて静かな笑みを浮かべていた。

―――直後、鳩尾に叩き込まれた腹立ち紛れの一発にニムの意識は刈り取られた。

424『The Spirit BR』 chapter.5:04/12/16 21:53:36 ID:aFsk/RcH

「くすくす…………」

リュケイレムで一際高い大木、そのほぼ頂上に当たる部分に一人の影が立っている。
冷たい夜風に身を躍らせながら影はおかしげに、楽しげに笑う。
遠くから聞こえる剣戟の音、爆音、叫び声、悲鳴を効果音に……。
揺れる黒のエプロンドレス、長いエメラルド色の髪が風に揺れ、片手で身長よりも巨大な槍を軽々と弄びながら辺りを見下ろす。

遥か眼下、影の乗っている大木の根元に倒れ付す二人の青い妖精。

姉妹である彼女達は消えるときも一緒なのか……ほとんど同時に金色のマナの霧へと変わった。
やがて、影のいるところまで上がってきた金色の霧を愛おしそうに見つめる。

―――ただ、ずっと見つめていた。

                              【残り8名】
425風変わり:04/12/16 21:54:41 ID:aFsk/RcH
……チャプターーー!5!
最近、粉塵爆発を引き起こしてしまった風変わりです、コンバンワ。
……いやー、びっくりしました。コンロの横で小麦粉倒したらボンッですもの。
幸い、全然被害はなかったですけど……おかげでネタも思いつきましたしorz

ようやく進行し始めたBRバトル……今回は大勢の死者が……。
……今回は脳内に多数の分岐が浮かび、どれを選ぶかで非常に悩まされました。
前回も大概、セリアとヘリオンの絡みで悩んだり……
実は最初に書き上げた方はひたすらヘリオンを(ピーーー)させて気絶させるというある意味危険なものだったのですよ。
さすがに、これをやっちゃうとセリア、完全百合化という事態になりかねないので止めましたorz
今でも小説入れの奥底に封印されています……
というわけで、今回も実に分岐分岐で悩みましたが……楽しめて頂けたら幸いです。
426名無しさん@初回限定:04/12/16 22:22:07 ID:oZJnkX8Q
前回支援しそこねて苦情が来たので次こそはと入魂の支援をしてみたワケですが。
―――はやっ!!投下開始からわずか10分で終了!?
まさにウルカ並みの神速投下でした。
...にしてもウルカ、しどいよ。ニムタン可愛く降参してるのに...あうぅ(;´д⊂
姉にまで見捨てられたニムに合掌w

何だかエスとハリオンが悪魔のような戦いっぷりですなあ...((((;゚Д゚))) ガクブル

―――うーん、今日はいいSS日和だ。
427名無しさん@初回限定:04/12/16 22:26:02 ID:nWCGvURK
風変わりさん乙です〜

クロ…黒すぎるよファーレン(笑)
コワ…恐過ぎるよエスペリア(爆笑)
本ッッ〜当に楽しませてもらいました。
428名無しさん@初回限定:04/12/16 22:35:10 ID:kvfWLHIQ
…ちゃっかりファレ兵衛?
不憫なニム…一足先に帰って悠人に甘えとけ(w
土木作業がんがれ、ヒミカさん。間違って古代兵器なんか発掘するんじゃないぞ(w
429名無しさん@初回限定:04/12/17 00:03:24 ID:VX+ASxuH
盗人ファーw  E-THI 
 found アサブクロ
 found アサブクロ

早く盗賊の短刀を見つけないと辛くなるよw ビショップヨーティアに鑑定してもらえ。

決死の厨房圏エスw 娘同然の存在すら……
殺意の波動覚醒ナナルゥ ファイアエンチャントかっこいいよ。宇宙刑事。
どっこい生きてるヒミカさん。発掘ガンガレ。

>397
目玉っ! これで悠人が浮気しても発覚確実w 
ユ「ナナルゥ、そのアホ毛は一体なんなんだ?」
ナ「探知機です。ユートサマが浮気心を心に持つだけで感知します」
ユ「おいおい……俺は浮気はしない。たぶん……ま、ちょっと。いや、えーと、いいか次は無我のタキオス
が相手だぞっ!油断ならない相手だ。そんな訳の分から」
ナ「感知しました。「ウホッ」です。

オリジナル神剣魔法に期待。
でも、『夢幻』なら心臓型とか。

メダリオ……悲しいよ。君はもっと強いはずだ。超絶の剣技はどこいった。
430名無しさん@初回限定:04/12/17 01:43:37 ID:QvYWrfi4
>425 風変わりさん
みんなみんな容赦が無いw
真面目ーに戦ってたウルカ・ニム組やセリア・ナナルゥ組の一方で
トリッキーに罠にはめるエス、ファー。何をしたのか不明のハリオンと
各々のバトルスタイルにも一癖二癖ありすぎて先読み不可能です。
今のところトリッキー勢がおいしい所を持っていってて、ニヤニヤとしてしまいます。
まだ密かに出番が無いキャラがどのような振る舞いをするのかも、楽しみです。
431名無しさん@初回限定:04/12/17 11:42:48 ID:ufINB62T
ナナルゥの『夢幻』って着脱可能…?小さな手足とか生えたりしない?
ついつい入浴シーンを想像した俺の脳はいったいどうなってるんだ?
432名無しさん@初回限定:04/12/17 19:38:36 ID:RR0Spspa
>>425
乙かれです。GJ。
ファーレーンがすげぇ生き生きしてるw
これこそ腹黒ファーレーンの真髄か。
ネリー&シアーも脱落。
この二人にはぜひ合体技とか使ってほしかったなぁ・・・
ダブルヘヴンズスウォードとか。まんまですな。

えっと、ところで前回の感想本気でゴメンナサイorz(>>32)
433名無しさん@初回限定:04/12/17 21:07:38 ID:/VkQbAxR
>425
「料理は愛情」で笑わせてもらいましたよ
しかしそれじゃダメだエスペリア‥‥
「料理は勝負!」とかいい出す人には勝てない宿命を背負ってしまう

もしかして愛情ってよく切れる刃物だったりとかします?
434名無しさん@初回限定:04/12/17 21:50:09 ID:jkiJnSMQ
いるいる。「愛してるって言ってよ!!」とか叫びながら刃物を向ける女。
とすると悠人は愛情に囲まれた生活を送ってるわけでつね。
435名無しさん@初回限定:04/12/17 22:31:00 ID:S9yrnwCj
かなり殺伐とした愛情精渇ですね…。
436名無しさん@初回限定:04/12/17 23:25:35 ID:c2kEufwl
……もっとユートを不幸にしましょー、運動を掲げています
あの子ちょっと恵まれすぎです、セリアはあげません(本音はそこか

>>426 憂様
今回は間に合ったようですね……よしよし(違
と、実のところ今回は不思議なことに一度も連投規制に引っかからずに投下出来たのですヨ
十連続で投下した辺りでなんだか人生の運をここで使ってるようで怖くなりました……
……BRではスピたちの隠れた性格が現れるのです(`・ω・´)

>>427-430

| Λ
|ω・) 
|  )b ビシッ!!   
|/_|  
|'ノ

>>432
……腹黒腹黒〜
と、前回の感想……なんでしたっけ?
ヒミカ……のことなら気になさらずとも、先読みされる私が悪いのです(´Д⊂グスン
次はもっと練りこんで書こう……

>>433
エスペリアの愛情は怖いです……ダイヤモンドも真っ二つです
何故なら今の彼女は―――キッチンファイター!(何
437名無しさん@初回限定:04/12/18 06:37:24 ID:lhEbQSFq
ちょっと離れただけで長編が二本……なんて目の離せないスレなんだw

>>397さん
ナナルゥが増々不思議ちゃんに…………しかしタイトルってもしかして観察者?
視野が広がると優しくなれると言いますからね(ぇ
メダリオ、まるでナナルゥを強化するだけの為に登場したみたいで少し不憫ですねw
双剣だけ残しておいてくれないかなぁ。神剣コレクションを更に増やした時深お○さん……チョト怖いか(汗

>>408さん
短文を短歌と勘違いして作った代物なのですが(あ、季語入れ忘れてるし)乾杯して頂いて恐縮ですw 

>>風変わりさん
セリア、アブソリュートゼロ→炎の剣と氷の剣→霧→風魔の小○郎を連想したオサーンです(汗
オルファ、粉塵爆発で自爆とは……ホントにこのスレでは出番が少ないですね……(涙
ハリオンなだけに毒でも盛られましたかネリシアw
438名無しさん@初回限定:04/12/18 13:07:35 ID:xsZpaHRg
ああ、このスレを見ると心が洗われる
439名無しさん@初回限定:04/12/18 13:47:34 ID:mSiZCexs
>>433
「料理は心」
ああ、エスの包丁は鉄パイプが切れるんですね……
サメを包丁一本でバラしたりできるんですね。
ハリオンは「料理はこてこて」とかいいだすと。
「料理は勝負」は誰でしょ?
440名無しさん@初回限定:04/12/18 17:06:22 ID:gPtfZ9+v
そのうち包丁型のオリ神剣が出てきそうですねw
441名無しさん@初回限定:04/12/18 18:26:24 ID:1LThpRGD
マグロの目玉って、料理の食材で使われるよね。

ある日のディナーで、メインディッシュの大皿の上にほど良く煮込まれたントゥたんが…


(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル  
442名無しさん@初回限定:04/12/18 18:30:09 ID:Ca+hKLTI
ントゥて体内に神剣もってるんだろ?
噛んだとたんにガリッ!ときそうで嫌だな。
443名無しさん@初回限定:04/12/18 19:06:41 ID:CqbbS7tQ
ントゥの神剣は王冠でなかったっけ?
444名無しさん@初回限定:04/12/18 19:07:36 ID:CqbbS7tQ
ントゥの神剣は王冠でなかったっけ?
445名無しさん@初回限定:04/12/18 19:27:58 ID:gPtfZ9+v
>>441
それを食した赤スピたちの魔力が大幅アーップ?
446名無しさん@初回限定:04/12/18 20:14:01 ID:G9r5WR3o

はじめに

このSSは一部以前投稿した『安息』の設定が所々使われたりしてます。
なのでそういうのが嫌いな方は遠慮なくスルーお願いします。

時期はサーギオス帝国と戦い始めるところから秩序の壁陥落までです。
話は一応ヘリオンメインです。ただしもう一人補完してます。全7回で完結します。
447回帰 T−1:04/12/18 20:14:44 ID:G9r5WR3o

ヘリオンはミスレ樹海で道に迷っていた。

「わ〜〜ん、ここどこぉ〜〜〜〜」
歩けば歩く程視界が狭くなってゆく。もともと無い身長が増々縮んできた気がする。
なんのことはない、ただ周囲の植物の丈が長くなってきたというだけのことだ。
つまるところ樹海の奥へ奥へと向かっているというだけの話でもあるのだが。
「こんなとこ、来たっけ……」
呟きながら確信も無いのに更に突き進む。典型的な遭難のパターンだ。
そうこうしているうちに掻き分けても掻き分けても草しか見えなくなってきた。
日の光が届きにくくなってきたのか、周囲の薄暗さが気味悪い。
心細さに空を仰いでみる。気のせいか、さっきと月の位置がずれていた。
ふいに風が吹いて周囲の木々がさざめく。森中に見られているような感覚に不安が増大した。
ここにきて、ヘリオンはようやく悟った。自分は迷子になったのだと。
普段からドジだドジだと自覚はしていたが、まさか作戦途中に迷子になってしまうとは。
「ふえぇぇぇ〜〜〜〜〜ん」
情けない泣き声をあげながらヘリオンは駆け出していた。もちろん、樹海の最深を目指して。
448回帰 T−2:04/12/18 20:18:24 ID:G9r5WR3o

悠人とアセリアが帝国領リーソカにある旧メトラ研究所に潜入している頃。
作戦をより円滑に行う為、スピリット達は旧マロリガン領でそれぞれに陽動作戦を展開していた。
ヘリオンが担当したのは比較的樹海に近いリエルラエル近郊。
そこに向かう途中、一行にセリアが説明していた。

セリア「ミスレ樹海はマナ濃度が不安定だし方向感覚も狂うっていうから気をつけなさい」
ヒミカ「セリア……子供じゃないんだからわざわざ作戦に関係の無い樹海に入る人なんていないでしょう」
セリア「そうなんだけどね……一応年少組もいることだし、確認代わりよ」
ネリー「も〜、ネリーそんなドジじゃないぞ〜」
シアー「シ、シアーもそんなバカじゃないもん……」
オルファ「そうだよ〜、オルファだってそんな変なことしないよ〜」
セリア「そうね、それもそうか……ごめん、ちょっと子供扱いし過ぎた」
ハリオン「そうですよ〜、もう少しセリアは皆を信用しないとめっ、ですよ〜」
ナナルゥ「ハリオンにかかるとまるでセリアの方が子供みたいですね」
セリア「うっ……ナナルゥ、それはちょっとキツいよ」
年少組「「「あははははは〜〜〜〜♪」」」
ハリオン「あれ〜そういえば、ヘリオンさんの姿が見えませんね〜」
一同「「…………………………………………」」

全員の笑いがピタリと止まった。
449回帰 T−3:04/12/18 20:21:44 ID:G9r5WR3o

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさ〜〜〜〜〜いっっ!!」
何故かみんなの罵声が聞こえた気がしてヘリオンは誰にともなく謝り続けていた。
走り続けてもう数時間。とっくに日は沈み、月が最初に見上げた時と同じ方向にある。
同じところをぐるぐる回っているようなのは決して気のせいではなかった。
焦る気持ちが歩様を乱れさせる。草に足をとられた、と思った時には派手にこけていた。
ずべたっと我ながらまぬけな音を立てて地面に頭から突っ込む。
泥だらけになった顔をなんとか上げようとした瞬間、お腹が可愛らしい声を鳴らした。
 クゥ〜〜〜〜
「ふぇぇっ、もう、やだぁ〜〜〜〜〜」
絵に描いたような不幸の連続。ヘリオンは心が挫けそうになった。


カキィィィィィン………………

ぐすぐすとべそをかきながら立ち上がって泥を払っていた時、遠くで何か硬い金属がぶつかり合うような音が聞こえた。
「………………ぅえ?」
よくそちらの方角を探ってみると、微かながらも確かにスピリットらしき気配がする。
その中に混じってなにやら懐かしいような身近なような匂いがした。くんくんと鼻を鳴らしてみる。
「???……………………あ!これ、ユートさま!助けに来てくれたんですね〜〜!!!」
はなはだしい状況誤認を繰り返したままヘリオンは仔犬のように駆け出していた。
450回帰 T−4:04/12/18 20:23:52 ID:G9r5WR3o

広場のような所で1本の大木に寄りかかっている悠人の姿を発見したヘリオンは、もし尻尾があったら千切れるほど振り回していたことだろう。
「ユートさまっ〜〜〜!!!…………きゃっ!」
嬉しさのあまりつんのめる。が、それが幸いした。
バランスを崩したヘリオンの頭上を鋭い切先が切り裂いていったのだ。
頭があった辺りの空間を薙いだ神剣はその持ち主ごとそのまま飛び出し、ヘリオンの前方に立ち塞がっていた。
「あれ…………?」
なにが起こったか判らないヘリオンがまぬけな声を上げる。
騒ぎに気付いた悠人が大きな声で警告を発した。
「ヘリオンっ!なんでここに…………危ないぞ!」
「え、え、わわわっ!」
目の前の影が詠唱を始める。周囲にぱりぱりとマナが集まるのが感じられた。
混乱したヘリオンは、反射だけで突撃していた。……剣も構えず。

ドジとはいえラキオスでも速さだけは屈指のヘリオンである。
涙目で突っ込んでくるブラック・スピリットに敵も動揺したのだろう。
詠唱が間に合わないと判断して、槍による直接攻撃に切り替えようとする。
その一瞬の隙をついてヘリオンが敵の懐に飛び込んだ。……もちろん素手のままで。
ふにっ
なにやら柔らかい感覚があった。僅かな沈黙。いやな空気が流れた。とりあえず感触をもう一度確認してみる。
ふにふにふにっ
「…………………………」
「……………………ふぇ?」
ヘリオンは恐る恐る上目遣いで様子を窺った。
するとすぐ間近にグリーン・スピリットの顔。
睨んでいるかと思ったその顔が、みるみるうちに赤くなっていく。アップでくしゃっとなるのを目撃してしまった。
「あ、あはは…………えっと…………」
「〜〜〜〜〜っ!イヤーーーーーーーーッ!!!!!!!」
「わっわっ!ごめんなさ〜〜〜〜いっ!!!」
つんざくような叫び声を上げて胸元を押さえしゃがみこむ敵になぜか謝りながら、
ヘリオンは悠人に向かって逃げ出していた。緊張感を吹き飛ばしつつ。
451回帰 T−5:04/12/18 20:26:11 ID:G9r5WR3o

駆け寄った悠人はよく見ると傷だらけだった。
しかもいつも傍らにあるあの無骨な神剣『求め』を握っていない。
持っているのは何の気配も感じない、ただの木の棒だけだった。
ヘリオンはどうやら悠人が助けに来てくれた訳じゃないらしいとようやく気付いた。
「ユートさま、これは一体?あっ、あっ、それに酷い怪我を……」
「ヘリオンどうしてここに?なんかあったのか?」
「それにそれにアセリアさんはどうしたんですか?まさか迷子になったんじゃっ!」
「いやだからどうしてヘリオンはここに…………って迷子?」
「どうしよう、わたし回復魔法なんてできないし、ユートさま死んじゃうよぅ」
「落ち着け、これくらいじゃ死なないよ。ヘリオンが来てくれたしな」
「でもでも〜〜ううう〜〜〜」
人の話を全く聞かずに暴走するヘリオン。
まず落ち着かせるのが先決だと悟った悠人はとりあえず華奢な両肩を掴んで同じ高さに目線を合わせ、出来るだけ優しく話しかける。
さすがに年下の扱いは手馴れたものであった。
「それで、ヘリオンはどうしてここに?」
「うぁ、あの実は……、そ、そうです!わたし、ユートさまを助けるようにセリアさんに命令されてっ!」
痛いところを突かれて我に返り、嘘八百を並べ立てるヘリオン。
「そうなのか。助かったよ、サンキュな」
しかしさすがというか全然それに気付かない悠人はわしゃわしゃと優しく髪を撫ぜてやった。
根元で二本に結い上げられたサラサラのストレートが指が抜けるたびに乱れるが、ヘリオンは全然気にしていない。
それどころかうっとりと目を細めてぽーっとしている。
「あ…………え、えへへ…………」
ほんわかとした空気が流れる。だがとりあえず、場の雰囲気とは全く噛合っていなかった。
452名無しさん@初回限定:04/12/18 20:29:08 ID:whziI/1l
支援
453回帰 T−6:04/12/18 20:29:13 ID:G9r5WR3o

結果的に無視され続けていた敵スピリット達の怒りは頂点に達しようとしていた。
特に先程ヘリオンに胸を揉みしだかれて百面相まで演じてしまった名も無きスピリットは、
ようやくそのショックから立ち直り物凄い顔でこちらを睨んでいる。
その様子に気付いた悠人がこほんと一つ咳払いをした。
「……とりあえず話は後だ。今はこの状況をなんとか切り抜けないとな」
「判りました。頑張ります!」
同意したヘリオンがこんどこそ『失望』を構え、その側に立って敵の数を確認する。
(四人。右のブルー・スピリットと前方のグリーン・スピリットが強そうだ。
 まず右を倒してそれから前のお姉さん……ええと……なにか物凄く怒っているようなんですけど……
 まあいいや、その間にユートさまに残りの二人を倒して頂ければ………………あれ?)
そこまで考えて首を傾げる。なにかとてもとても大事な事を忘れているような。
ヘリオンは背中合わせに警戒している悠人にそっと耳打ちしてみた。
「あの〜つかぬことをお伺いしますがユートさま……『求め』は?」
「ああ、今ちょっとないんだ」
「ふぇ?」
即答だった。ヘリオンは思わず訊き返していた。
「ないの、『求め』。もうすぐアセリアが持ってきてくれるはずなんだけど、それまではこれだけ」
それはどう見てもただの木の棒だった。スピリットからしてみればそんなものは武器とはいえない。
「え?え?」
「いや〜俺今ただの『人』だからさ、木刀でも重いのなんのって。ヘリオン達って凄いよな、改めて実感したよ」
「…………………………(汗」
あまりの衝撃的事実に口をぱくぱくさせるヘリオンに、振り向いてにっと笑った悠人がやけに眩しく映った。
「そんな訳で、ヘリオンが来てくれて本当ーーーーに助かったよ♪」
「う…………うわ〜〜〜〜〜〜〜ん!!!!!」
そんな笑顔で爽やかに言われてはどうしようもない。ヘリオンは泣きながら敵に突っ込んでいった。
454回帰 T−7:04/12/18 20:31:43 ID:G9r5WR3o

四方から同時に襲い掛かろうとしていた敵は逆に飛び出してきた小柄なスピリット一体に翻弄された。
意識してのことではないだろうが暗闇と草陰を利用してあちこちから出現してくるヘリオンの姿を捉えることが出来ない。
本人にしてみれば闇雲に剣を振り回しているだけなのだが定石を無視したその動きが敵の混乱に更に拍車をかけた。
「わわわ〜〜こないでください〜〜」
「な、なんなのこの娘…………」
来るなと言われても。
余程敵に胸を揉まれたのがショックだったのだろう、感情を一時的に取り戻した「お姉さん」が呟く。
なんだかばかばかしくなってきた。なんで戦っていたのか判らなくなってくる。それに正直ヘリオンのスピードに辟易し始めてもいた。
グリーン・スピリットである彼女ではヘリオンの速さにとてもついていけないのである。
「〜〜〜っ、やってられないわ!」
最後にそんな捨て台詞を残して名も無き「お姉さん」は去っていった。
残りの三人も一瞬顔を見合わせた後、あっけなくその後に続く。
「………………あれ?」
一人で駆けずり回っていたヘリオンは暫くして周囲に敵がいないことにやっと気が付いた。
きょろきょろ辺りを見渡していると後ろから弱々しいうめき声が聞こえる。
「そうだ!ユートさま?!」
「……ああ、よくやってくれたなヘリオン。お陰でなんとかなったよ」
膝をついていた悠人が立ち上がろうとしてよろけた。
駆け寄ったヘリオンがよく見ると悠人は先程より更に満身創痍である。木の棒は既にへし折れてその辺に転がっていた。
「ユートさま、しっかり!」
「ああ、大丈夫…………おっとっと」
慌ててヘリオンが身を支えようと手を貸すが、身長差がありすぎた。
腰の辺りに抱きつくような形になってしまいかえって悠人ごと倒れそうになってしまう。
「きゃっ!」
「あっと……ごめん」
「い、いいえ…………こちらこそ…………」
「……………………」
悠人がバランスを取ろうとヘリオンの背中に手を回したことで、抱き合うような形になった。
意外な展開に思わず二人とも黙り込んでしまう。月が明るく照らす大木の元、静寂が包んだ。
455回帰 T−8:04/12/18 20:34:57 ID:G9r5WR3o

手の平に感じる温かさ。押し付けられたささやかな胸の鼓動が伝わってくる。
ツインテールの小さな頭から懐かしいような甘いような子供っぽいヘリオンの匂いがした。
華奢な肩が緊張からか少し震えている。悠人は不覚にも一瞬くらっときた。
「あの……」「あのさ……」
二人の声が被った時、遠くに青白い光が浮かび上がる。それはみるみるこちらに近づいてきた。
光の中に蒼い髪をなびかせた少女が現れた瞬間、二人の声がまた被った。
「アセリアさん!」「アセリア!戻ったのか?!」
「……ユート、無事か?」
そう言って不審そうにじろじろと抱き合う二人を見比べるアセリア。
その視線に気付いた悠人が慌ててヘリオンから離れる。あっ、と小さな、残念そうなヘリオンの声が漏れた。
「…………あーこれはだな、ちょっと遠大な理由があって」
「はい『求め』……ヘリオン、来てくれたのか?」
「お、おうサンキュ……あのさ……」
「は、はいっ!アセリアさん、会えてよかったです!」
「よくユートを守ってくれた……ありがとう」
「そんなわたしなんてなんのお役にも立てなくて……ってえ?アセリアさん、元に戻ったんですね?!」
「ん……ただいま、ヘリオン。心配かけてすまない」
「おーい」
「ユートは黙ってて」
「…………はい」
こちらを向いたアセリアの瞳が物凄い威圧感を放っていて怖かった。
悠人は泣く泣く言い訳を断念する。『求め』から与えられているマナの温かさが今はやけに身に染みた。
「え、え、どうしたんですか?」
「なんでもない。さあ、帰ろう……みんなのところへ」
「は、はいっ!…………あの〜、アセリアさんも迷子だったんですか?」
「迷子?ううん、ちょっと違う」
楽しそうに話しながら去っていく女性陣二人に悠人はとぼとぼとついていった。
『契約者よ、どうやらいべんとふらぐが強制的に立ったようだな。違うるーとに入ったようだ』
「意味不明な解説はいいから少し黙っていてくれ…………」
異次元な『求め』の突っ込みが痛かった。
456回帰 T−9:04/12/18 20:37:42 ID:G9r5WR3o

ようやくミスレ樹海を抜け出した一行は他のスピリット達との合流を果たした。
三人を見つけたセリアが真っ先に駆けつけてくる。セリアはアセリアの瞳に光が戻っているのをみて驚いた。
「ヘリオン!ユートさまもご無事で……それにアセリア、貴女一体……」
「ん、セリアただいま」
「……ま、まあ別に貴女のことは心配していた訳じゃないけどね」
「ん、セリア、心配かけた」
「もう少し遅かったらヒミカに貴女の恥ずかしい過去をもっとばらせたんだけど」
「ん、セリア、もう忘れない」
「………………おかえりアセリア」
そっぽを向いて答えるセリアはそれでも久し振りに交わされた幼馴染との会話を楽しんでいるようだった。
遅れてやってきたみんながあっという間に四人を取り囲みたちまち賑やかになる。
「ユートさま、ご無事でなによりです」
「ナナルゥもお疲れ。そっちは大丈夫だったか?」
「アセリア……本当にアセリアなのね」
「ん、ヒミカ、心配かけた」
「そんなことどうでもいいわよ……でもよかった。その方がやっぱりあんたらしい」
「おや〜ヘリオンさんどこへ行かれるのですか〜」
喧騒を離れこそこそと逃げ出そうとしていたヘリオンを、ハリオンが目ざとく見つける。
「あっ!そういえばヘリオン、貴女どれだけみんなが心配したか!」
「わあんっ!ごめんなさ〜〜い」
今日何回目になるか解らない謝罪を述べるヘリオンの襟首をヒミカがむんずと捕まえる。
「おっと……逃がさないわよヘリオン…………ふふふふふふ」
「え?ヘリオンって俺達を助けに来てくれたんじゃなかったのか?セリアが命令したって……」
「へぇ〜〜〜〜〜この娘ったらそんな大嘘をついてたんだ…………ふっ、これはおしおきが必要ね」
「あっあっセリアさんこれには遠大な理由がありまして」
「はいはいその辺も踏まえてじっくりと話を聞くからさ、いきましょうヒミカ」
「…………すまんヘリオン、俺なんか余計な事を言ったみたいだ」
「あ〜〜〜〜〜〜助けてユートさま〜〜〜〜!!!!」
猫のようにヒミカに引きずられていくヘリオンの悲痛な叫び声が夜空に響き渡った。
457回帰 T−10:04/12/18 20:42:09 ID:G9r5WR3o

次の日の訓練場。何となく戦々恐々としていた悠人だったがアセリアの様子は一見普段と変わらないものだった。
思い切って話しかけてみる。
「よ、アセリアお疲れ。どうだ、その後体の調子とか、変な所とかないか?」
「……ん、問題ない」
ぷいとそっぽを向いてアセリアが答える。以前なら気付きもしなかったが今の悠人には判った。怒ってる。
(やっぱりアレだろうなぁ…………)
昨夜ヘリオンと抱き合っていたところを見られた事を思い出す。あれ以来アセリアはまともにこちらを見ようとしていないのだ。
やきもち……なら嬉しい事は嬉しいのだがこんな気まずい状態にはいつまでも耐えられない。
かといってこういうときもって回った言い方をしてもアセリアには通じない。
なんだかなぁ……頭を掻きながら悠人は直接訊いてみる事にした。
「なあアセリア、ひょっとしてやきもちとか、焼いてる?その……ヘリオンに」
「ん」
「………………」
いや、こういう娘なのだとは判っていた。感情を隠すという事を知らないアセリア。
判ってはいたのだが、こう素直に答えられるとこっちが赤面してしまうじゃないか。
458回帰 T−11:04/12/18 20:46:49 ID:G9r5WR3o

いきなり動揺した悠人をちらっと見たアセリアがぼそっと言う。
「ユートはヘリオンが好きなのか?」
「なぜそうなるっ!?」
速攻で突っ込んでいた。直球というか剛速球のやり取り。思考が飛んでいるようで最短を走っている。
「大体抱き合っただけで好き合ってたら大変なことになるだろ?なぁそうだろ?」
「そうなのか?」
慌てて文体がおかしくなった言い訳にアセリアが首を傾げる。
「そうなの!アレはただ単に助けに来てくれたヘリオンがバランスを崩してだな」
「ヘリオンは迷子になっただけ」
「だ〜〜〜っ、変な所を突っ込むなっ!とにかくヘリオンとはそんなんじゃないっ!」
「ん、わかった」
「…………へ?」
「ユート、訓練の続きをしよう」
「え?え?え?」
よく判らないが機嫌を直したようなアセリアに引っ張られながら悠人の頭の中で疑問符が飛び交っていた。
459回帰 T−12:04/12/18 20:49:33 ID:G9r5WR3o

更に次の日の訓練場。悠人は隅で一生懸命打ち込みを繰り返しているヘリオンを見かけた。一見普段と変わらない。
一心不乱に剣を振っているようだが思い切って話しかけてみる。
「よ、ヘリオンお疲れ。どうだ、その後体の痛い所とかないか?」
「あ、あわ、あわわ、ユユユユートさまっ!」
真っ赤になったヘリオンがお辞儀する。以前なら緊張してるだけかと思っていたが今の悠人には判った。照れている。
(やっぱりアレだろうなぁ…………)
偶然とはいえヘリオンと抱き合ったことを思い出す。あれ以来ヘリオンの自分を見る目が違うように思えてならないのだ。
自意識過剰……なら何も問題は無いのだがもし異性として見られてたら……どうしよう。
かといっていきなり冷たい態度を取るなんてことは出来ないし、それに妹みたいな存在として悠人はヘリオンを結構好きなのだ。
なんだかなぁ……自分のヘタれぶりに頭を掻きながら悠人は無難に笑いかけることにした。
「なあヘリオン、ヘリオンっていつも頑張ってるよな」
「は、はいっ!今度はちゃんとユートさまに付いていけますっ!」
「………………」
いや、こういう娘なのだとは判っていた。いつの間にか悠人を基準にして頑張るヘリオン。
判ってはいたのだが、こう素直に答えられるとこちらが赤面してしまうじゃないか。
460回帰 T−13:04/12/18 20:51:04 ID:G9r5WR3o

いきなり動揺した悠人をちらっちらっと上目遣いに見ていたヘリオンがぼそっと言う。
「あの〜ユートさまはその……ひょっとしてアセリアさんと付き合って」
「なぜそうなるっ!?」
思わず速攻で突っ込んでいた。しかも直球過ぎる質問につい否定的な答え方をしてしまった。まずい。ヘリオン、満面の笑顔を浮かべてるしっ!
「だ、大体一緒に作戦しただけでそうなったら大変だろ?」
「ふぇ、そうなんですか?」
慌てて思いっきりどもった説明にヘリオンが首を傾げる。
「そうなの!アレはアセリアを元に戻せるってバカ剣がいうからしかたなくだな」
「?バカケン……あ、『求め』さんのことですね」
「さん付けする程偉い剣じゃないけどな……ってそうじゃなくて」
「へへ、また一つユートさまのことが判っちゃいました」
「………………」
「あ、これからお暇ですか?でしたらあの〜……少し訓練にお付き合いして頂たいな、なんて……エヘヘ…………」
ムキになって否定したのが全くの逆効果になったのを思い知りながら、それでも律儀に訓練に付き合う悠人であった。

ちなみにそれまでヘリオンの練習に付き合っていたファーレーンは最後まで口が挟めずに置き去りにされていた。
461支援:04/12/18 20:51:43 ID:2g4veiZu

462信頼の人:04/12/18 20:53:02 ID:G9r5WR3o
あとがき

アセリアHシーンぶちこわし(汗

態度も感情表現も違うのに純粋さという一面だけで動かしてみるとアセリアとヘリオンの行動が非常に似ている気がします。
そんな中で決定的に違うものが一つだけ。そんなものが伝われば、と書いてみました。
もしかしなくてもただの自己満足ですがorz
読んで下さった方、それから支援頂いた方有難う御座いました。誤字脱字今回特にハリオンマジック等ご指摘があれば幸いです。
463名無しさん@初回限定:04/12/18 20:56:16 ID:2g4veiZu
業務連絡。
T−2。エスペリアが憂鬱になるような誤植が有ります。
隠れヘリオン儲より。
464名無しさん@初回限定:04/12/18 21:19:07 ID:G9r5WR3o
憂鬱さん、早速の報告有難う御座います。
……ふふ、エスペリアさん、貴女の苦労が判った気が…………_| ̄|○
465名無しさん@初回限定:04/12/18 23:19:07 ID:EAIcTG0e
すみません、どうしても私の脳内エスペリアが突っ込めって言うもんだから...
ちゃんとした感想を。
アセリア・ヘリオン並行ルートとは...なんかゲームの雰囲気が良く出てますねw
フラグは立ったのか消えたのか良く分かりませんが、今後二人の決定的な違いとともに明らかに!?

最後の一行には、信頼作品ではかつて無かった程の恐怖が予感させられてなりません(((( ;゚Д゚)))ガクブル
果たしてこのSSが終了した時、ヘリオンは無事に立っていられるのか?(違
466名無しさん@初回限定:04/12/18 23:35:24 ID:K0okVuUD
……セリアの出番が少ない(ボソッ

いやはや、楽しく読ませて貰いました〜
ふむふむ、アセリア・ヘリオン補完ですか……そういえば二人はなんとなく似てる気しますね
どこが、ていうよりふいんき(←なぜか変換できない)みたいな〜行動がみたいな〜
……例えるならヘリオンが犬で、アセリアが狼?(´・ω・`)

はてさて……二人の決定的違いとは何なのか!?
次回作楽しみにお待ちしております(`・ω・´)
467名無しさん@初回限定:04/12/19 00:13:26 ID:u4RK3fVS
こ、これはっっ!! 神剣に心を呑まれたスピリットのマインド回復方法がモミモミだったなんてっ!!!

ってことは…………ミッション終了毎に……
そんな……破廉恥きわまる……で、でも、あ…なんか気持ちいいかも

――――え、と。悠人君二股? 二人の差か……うーん、都合のいい解釈をするかどうか?
自分を最後まで押し通せるか?百合の気があるか無いか?


「リエルラエル」はすぐに気付いたw エスという英霊に敬礼 (`Д´)ゝ 
>447「日の光」だと「月」と矛盾するかも。スマソ

468名無しさん@初回限定:04/12/19 00:22:47 ID:v91iaTo7
>462 信頼の人さん
修・羅・場! 修・羅・場!(w
いきなりこんな始まり方をするとは……めちゃくちゃ驚いてます。
しかし、それ以上に楽しませていただきました。
この期に及んでヘタレ節全開の悠人に収拾をつける事ができるのやら。
「緑の彼女」がここにどのように絡んでくるのか、(絡むのでしょうか(汗))
U章以降を楽しみにしています。

アノ地名は鬼門です。見事に引っかかった身として_| ̄|○
469名無しさん@初回限定:04/12/19 01:02:06 ID:H1EnknHb
>>462

お疲れ様です〜。って、まだ始まったばかりですね(汗
がんばって下さいまし〜。
いや〜、老眼が進んで来たのか、ヘリオンに耳と尻尾が見えます。
犬ですね。しかも どしっ仔犬。
木の棒投げたら咥えて戻ってくる。うん、そうに違いない(w
470名無しさん@初回限定:04/12/19 05:10:03 ID:vvScKNPt
誰も居ないうちにこっそりレスしときます…………

皆さん読んで頂いて有難う御座いました。

>>465さん
フラグ消え→アセリア
フラグ立ち→ヘリオン 
無印でヘリオンとずっとパーティー組みながらアセリアルートを通ると、このミッションでヘリオンルートに分岐します。嘘です。
それとUにファーは登場しませんのでヘリオンも無事でしょうw

>>466さん
すみませんすみません。セリアもう少し待ってください(汗
アセリア狼……月夜に向かって遠吠えする。現在では一匹しか確認されていない。天然記念物指定。……とかだめですか?w

>>467さん
モミモミだったんですw 悠人も回復します。皆でもみもみ(違
たまに見上げると昼間なのにぽっかり浮かんでいる月。
あれなんて言うのか知らなかったので単純に「月」としたのですが……失敗だったかも。読み辛くてすみませんorz

>>468さん
うぁ、一番怖かった方の感想が(汗 楽しんで頂けたようで、ほっとしてます。
ヘリオン、壊れすぎない様に大事に扱ってますのでもう暫く貸しといて下さいorz

>>469さん
ヘリオンに耳と尻尾を見て頂けたならTはひとまず大成功だったので嬉しいです。
忠犬ヘリオン、マナ結晶埋まってる所でがしがししてくれたりw


あとがき思わせぶりな書き方になってしまっていてすみません。違いっていうのは(あくまで自分の中ではですが)
ヘリオン=自分から アセリア=悠人から
みたいな単純な対比です。動物に例えれば犬猫なんですが(汗
471名無しさん@初回限定:04/12/19 05:39:54 ID:u4RK3fVS
夕月
宵月
これ位しか明るい内見える月の呼び方は知りません。他にもあるかも知れませんです。

忠犬ヘリオン…………なんか切ない(;´д⊂
472名無しさん@初回限定:04/12/19 06:13:02 ID:kioXM493
>>470
>忠犬ヘリオン、マナ結晶埋まってる所でがしがししてくれたりw

掘れども掘れども出てこない。
くぅ〜ん(´・ω・`)ショボーン
そんでも「いいんだよ」と撫で撫でしたくなる
そんな、愛犬ヘリオン(w
473名無しさん@初回限定:04/12/19 09:57:20 ID:DuXAXg4E
モミモミがマインド回復の方法!?知らなかった、そっそんなっ、何て嬉しい!!

ユ「ふう、今回のミッションもやっと終わったか。――む?ハリオン、ナナルゥ、ずいぶんマインドが
  下がってるぞ。そうか、メインヒロインじゃないからボーナスが付かないんだな、かわいそうに。
  よし、じゃ、二人ともちょっとこっちに来い!」
ナ「......何するつもりですか」
ヘ「わ、私も下がってますっ!」
ヒ「なるほど、私はお呼びではない...と、そういう事ですか(チャキ)」

ア「―――ユート、マインドが下がりすぎてる。」
474名無しさん@初回限定:04/12/19 18:56:31 ID:9GbBtDs1
>439
ネタをネタ返ししてスルーされたらどうしようとか思ってましたよ

個人的にはハリオンマジックにかけて
「ハリオンの魔法は無敵だぜカカカカカーッ!」
とか連想しちゃったんで‥‥

475おにぎりの中身の人:04/12/19 22:08:12 ID:PHupRjah
スピリット・エターナル検定1級 最後から1つ前の問題。(30点)
>>38 の時のように、全員がエターナル化(クォーリン・イオ・今日子・光陰を含む)してしまいました。
そのため、人数的にもカオス側があまりにも多くなってしまったために、ロウ側から提案がありました。

「この世界をかけた戦い、団体戦にしないか?」

ロウ側のメンバー
先鋒:メダリオ/ントゥシュトゥラ(ダブルス)
次鋒:ミトセマール
中堅:タキオス
副将:テムオリン
大将:シュン

と、いうことになりました。(トキミお姉さまが「これなら被害も少ないでしょうし」ってことで勝手に決定。)
あなたはこのメンバーと戦うオーダーを決めてください。
ただし、第1試合はダブルスとする。もちろん、トキミ・ユートを使っても良い。
476名無しさん@初回限定:04/12/19 23:47:25 ID:8SgJ9YXl
>>462
信頼の人様 乙。
もみもみ…良い…
畜生、ユートめ、いつも戦闘の後でもんでんだな…

>>474さん
主役はそっちでしたか(w
477名無しさん@初回限定:04/12/20 00:41:23 ID:NjN0F9gl
>>475
先鋒:ネリー/シアー(ダブルス)
    デュアルエーテール(ry
次鋒:ヘリオン
    こ、恐くなんかないですよ? いぢめられ慣れてますからっ!!
中堅:ヒミカ
    あっつい剣戟
副将:トキミ
    どっかの時空の狭間で二人だけで醜い口喧嘩しててくれると世の中平和に…だめかなぁ?
大将:ユウト
    ユウトです。たまには仕事しないと主人公の座が危ういとです('A`)


捻りが足りませんか、そうですか orz
478名無しさん@初回限定:04/12/20 01:03:54 ID:H9akUOx9
>>462
乙です。
ヘリオンもいいけど、やきもちアセリアがもうw

犬ヘリオン:ドジだけど素直で悠人が大好き。感情表現豊かな甘えんぼ。
      ほめてあげると尻尾を激しく振って喜ぶ。
犬アセリア:悠人のことが大好きで、本当は甘えたいけど甘え方がわからない。
      ほめてあげても無表情だが、尻尾は嬉しそうに振る。

ということですな。ということですか?
続編、期待しております。GJ!

>>475
・・・全然思いつかない・・・orz
強いて言えば中堅戦はロリコン大決戦とだけ・・・
タ「幼女は素晴らしいな。」
光「ああ、素晴らしい。」

ところで、アセリアOVAのページが更新されてる模様です。
遅いかも知れないけど。雑魚スピたちどうなるのかしら?
http://www.aseria-jhv.com/index.html
479名無しさん@初回限定:04/12/20 01:07:01 ID:vCv8Gweu
OVAのこと、忘れましょう・・・・。
480名無しさん@初回限定:04/12/20 01:13:34 ID:2/Zj0Msv
>475 おにぎりの中身の人さん
先鋒:光陰/今日子(使い走り苦労人&ツッコミ度対決)
先鋒戦、苦労人度でメダリオやや優勢なるもツッコミの苛烈さに差がありカオスチーム一勝。

次鋒:セリア(女王様的態度決定戦)
次鋒戦、昔を思い出して冷ややかに振舞おうとするセリアだったが、
デレ移行からのブランクが響き、現役女王様の鞭が炸裂。ロウチーム一勝。

中堅:ヘリオン(決闘・忠義心)
忠犬戦(誤字に非ず)、共通指令『主の為にマナ結晶取って来い』
ではほぼ互角なるも、自由指令によって一気に覆ることとなる。
カオス側、指令者悠人『ご飯を作って』:エプロンの破壊力は想像を超えていた……
ロウ側、指令者テムオリン『今この場で奉仕なさい』:
カオスチーム、本人はちょっとやる気だったが、周りが全力で阻止。
ロウチーム、其の横で人目も憚らず濃厚なシーンを演出。指令者のえげつなさがロウチームの勝因。

副将:ファーレーン(ハ○グロ大決戦)
副将戦、原因不明の事態により戦闘経過の資料が行方不明に。
後に残されたものはお腹の萎んだテムオリンと苦い表情で立ち尽くすファーレーンのみであった。

大将:悠人
互いに後に引けぬまま、奇妙な団体戦もついに最終対決。
気になるお題は……『佳織を想うポエム戦争』。如何なる奇跡か瞬の精神が急速に回復。
三日三晩に渡って繰り出された熱く迸る二人の漢の魂の叫びに……敵味方共に撃沈。
よってこの勝負、引き分け!!

……だから、長いってば○| ̄|_
481名無しさん@初回限定:04/12/20 01:14:28 ID:cljTaSKa
>>478 OVA・・・出演していない雑魚スピが勝ち組・・・

アセリアの表情がハッキリしすぎなので、セリアかと思った

エスペリアを見て、ハリオンは絶対に出て欲しくないと願った
482名無しさん@初回限定:04/12/20 01:29:25 ID:+Sb5RXNI
アセリア・・・全然無愛想に見えんし・・・
あー、なんかやばそうOVA。
4835スレ226 後編の前書き&注意:04/12/20 05:59:42 ID:WLOM51Va
『あなたを見つめる私』の後編です。
かなり長くなってしまいました。
これまで同様、心と時間に余裕のある方のみ、寛容を持ってお読み頂ければ幸いです。
それでは、よろしくお願いします。
484あなたを見つめる私・後編 1/50:04/12/20 06:03:03 ID:WLOM51Va
 エターナルとなったナナルゥを加え、戦力を強化し進攻を再開した一行の前に、ロウ・エターナルが立ち塞る。
 王冠型永遠神剣『炎帝』を装着したエターナル、業火のントゥシトラ。
 非人間型、目玉のエターナル。
「同じ目玉同士、通じるものがあるのではないですか、『夢幻』?」
 時深がナナルゥに向かって言う。
「『夢幻』の言葉をそのまま伝えますね。『心外だわ。一にして千の目を持つ観察者と、たった一つの目すら己が欲望にくらんだ愚者とを一緒にしないでよね』だそうです」
「なるほど。結構プライドがあるんですね」
 ちょっと意地悪が言いたくなった時深。恋人いない暦1000年オーバー。今も継続中。
 ずっと狙ってきた悠人をあっさりととられ、目の前でいちゃつかれているのだから八つ当たりしたくなるその気持ちも解らないでは無い。
 だがそれは結果的に自らの墓穴を掘る事になった。
「『千の次元、万の世界を見てたんだから、もちろんあなたの事も見てたわよ』と」
「……え?」
「『エターナル全体を見ても数少ない時を操る存在、加えて複数の神剣に認められた存在ともなればチェックは当然でしょ?
 あなたがユートを見て、しょっちゅういやんいやんとツイストしてたのも観てたわよ』と」
「ち……ちょっと『夢幻』さん?」
 なぜかさん付け。
「『ストーキングしている人は、まさか自分もストーキングされてるとは思わないものよねぇ。ユートがお風呂に入ってるのを別次元から覗いてきゃーきゃー騒いでたのも観てたわよ』と」
「……時深、そんな事してたのか」
 悠人の冷ややかな視線が時深に刺さる。
485あなたを見つめる私・後編 2/50:04/12/20 06:06:12 ID:WLOM51Va
「『まだまだ、もっともっとあるわよ。他にもね……』」
「うわー!! うわー!! ごめんなさい『夢幻』!! もう言いませんから!! 謝りますから許してください!!」
「『あら、残念』と」
「……ふぅ」
 時深は思った。『夢幻』だけは決して敵に回したくない、と。
 とはいえ、こんな間の抜けた漫才をしながらも、油断をしないのはさすがエターナルである。
 ちりちりとした緊張感が高まる。
 燃え盛る炎がントゥシトラの周囲を覆い、その発する熱に雪が融け、空気が陽炎に揺らめく。
「厄介ですね」
「ええ。まともに戦ったらおそらくかなりの長期戦になります」
 ントゥシトラの動きから、観察者『夢幻』と一体化したナナルゥ、そして経験あるエターナルである時深は狙いを見て取った。
 それは防御主体の戦闘スタイル。
 メダリオは油断していたからこそあっさり倒せたが、今回はそうはいかない。防御に回った相手を打ち崩すのは容易では無い。
 既に『再生』の暴走までのカウントダウンが始まっている状況下、時間をかけていたら手遅れになる。
 今のロウ・エターナル達にとっては、防御こそ最大の攻撃なのだ。
486あなたを見つめる私・後編 3/50:04/12/20 06:09:09 ID:WLOM51Va
「ここは私達に任せて先に行って下さい」
 エスペリアが、アセリア、オルファリル、ウルカと共に前に進み出る。
 一刻も時間が惜しい今、方法はこれしか無いのかも知れない。
 とはいえ、これが全員で生き残るという目標に繋がるかとなると、かなり危険な賭けになる事も間違い無い。
「……くっ」
「では、私も彼女らに協力し、ここで戦いましょう」
 躊躇う悠人達の背後から声がかかった。
 声に振り向くと、そこにはマロリガンの戦闘服を着たグリーンスピリットがいた。
「遅くなりましたが、何とか間に合いましたね」
「クォーリンか!?」
 光陰が驚きに満ちた声を出す。その隣では今日子も目を丸くしている。
「お久しぶりです。コウイン様。キョウコ様」
 落ち着いた佇まい、モデル顔負けの長身、日に焼けた精悍な顔立ち。
 彼女こそマロリガンの精鋭にして、大陸三傑に数えられた稲妻のクォーリン。
「どうしてここに!?」
 光陰の問いに対し、クォーリンは当然のように答える。
「この戦いはこの世界を賭けたもの。この世界に生きる者全員で戦うのは当然です」
「来たのはお前だけか?」
「他の皆は各街を守っています。幾ら敵を退けても、この世界を破壊されてしまっては勝利の意味も薄れてしまいますから。
 それに、自分で言うのもなんですが、マロリガンスピリットの中では私が一番の腕を持っています。
 ……皆が私をここに送り出してくれました。私で無くば、エターナルとは戦えない、と」
487名無しさん@初回限定:04/12/20 06:14:08 ID:g3TMT6q7
488あなたを見つめる私・後編 4/50:04/12/20 06:29:30 ID:WLOM51Va
 確かに、砂漠のようなマナの少ない場所での戦いに慣れたマロリガンスピリットの中で、今のソーン・リームのようにマナの溢れた場面で思い切り力をぶつけ合う戦いが出来るメンバーは多くない。
 そしてその中でほんの僅かでもエターナルにくらいつく事が出来る可能性のあるスピリットといえばクォーリンしかいない。
 それが解っているからこそ、他のマロリガンスピリットのメンバー達は、無駄死にして仲間の戦意を削ぐのだけは避けようと、断腸の思いでここに来るのを諦めたのに違いない。
 前線に立つだけの実力が自分達に無い事を悔やみながら。
 かつて自分の指揮した稲妻部隊の面々を思い浮かべ、光陰はその思いに感謝し、決意を新たにする。
「よし、俺はもうお前達の隊長じゃないが、共に戦ってきた戦友として頼む。クォーリン、ここであの目玉のエターナルを抑えてくれ。だが、絶対に死ぬな」
「了解しました。コウイン様の頼みとあらば、命を賭して」
「だから命は大切にしろと言ってるんだが……」
「……死ぬ気で……いえ、生きる気で精一杯頑張ります」
「よし、頼むぞ!!」
「任せて下さい」
 クォーリンは生真面目に答え、ヒュンヒュンと戟型永遠神剣『峻雷』を回転させてウルカの隣に並んだ。
「いつぞやは世話になったわね。まさか共に戦う事になるなんて、夢にも思わなかったけど」
「貴公はあの時の……ならば背を預けるに足るな」
 ここに『蒼い牙』、『漆黒の翼』、『深緑の稲妻』、この世界の三傑と呼ばれる妖精が集結した。
 そこに仲間内から『ラキオスの秩序の壁』(防御力が非常に高い&実はその内側では何をしているかわかったものではうわなにをするやmr)と呼ばれるエスペリアと、自称『赤い彗星』オルファリルが加わる。
「よし、ここはまかせた! 行こうみんな!!」
 悠人が大きな声で指示を飛ばす。
 それは自分を奮い立たせる意味もあった。
「グル、アァァァアァァァ!」
「……この世界を……みんなの世界を、私は守る!!」
489あなたを見つめる私・後編 5/50:04/12/20 06:35:24 ID:WLOM51Va
 しばらく走ったところで、次なるエターナルが待ち受けていた。
「メダリオの坊やはやられたみたいだね。ントゥシトラはお仲間に任せてきたか」
 待ち受けていたのは不浄の森のミトセマール。
 毒々しいオーラを放ちながら佇むその姿は、強さというよりも怖さ、不気味さといった雰囲気を醸し出す。
 いずれにせよ、楽な相手でない事は明白である。
「ここは私達に任せてください」
 ヒミカが言い、セリアがスピリット隊に指示を出しミトセマールを囲む。
「だが……」
「悠人さん。今は時間がありません。ここは彼女達に任せましょう」
 時深が悠人に語りかける。
 これしか方法は無いのだと悠人も頭では解っているだろうから、誰かが背を押して感情にケリをつけさせねばならない。
 だから、時深は語る。自分も隠し切れない辛そうな表情をしながら。
「ここでもたついていたら、この世界ごと皆消滅します。そうならない為にも、行きましょう」
「……みんな、死ぬなよ。絶対に死ぬなよっ!!」
「無論です。あの時の誓い、忘れてはおりません」
 セリアがきっぱりと答え、皆も頷く。
「ナナルゥ!!」
 走り出そうとしたナナルゥにかかったのはヒミカの声。
「頑張れ」
 酷く抽象的な言葉。しかし具体的な言葉にするには、その一言に込められている想いは大きすぎた。
 だからナナルゥも、自分らしい言葉でそれに応えた。
「了解」
「よし、約束した!! じゃあここは任せなさい!!」
 にこりと吹っ切れたように笑い、ヒミカは視線をミトセマールに戻した。
 ナナルゥも悠人と時深を追って走り出す。そこに迷いは微塵も無かった。
490あなたを見つめる私・後編 6/50:04/12/20 06:40:10 ID:WLOM51Va
 キハノレに入った一行を待ち受けていたのは、第三位永遠神剣『無我』を持つ黒き刃のタキオス。
 光陰と今日子が進み出、タキオスに向かい神剣を構える。
「さて、ここは俺達の出番だろうな」
「ひとつ気合入れなきゃね」
「アイツは……恐ろしく強いぞ」
 思わず呻きたくなる様な迫力を感じながら、悠人が前に進み出た二人のエトランジェ、かつての無二の友人達に言う。
 エターナルの悠人ですら凄まじい威圧感を感じるこの状況で、エターナルで無い二人はどれほどの勇気を振り絞って立っているのだろう。
「これでも一応伝説の戦士と呼ばれたんだ。これくらいしなきゃ名前負けもいいところだろ?」
「そそ。まっかせときなって」
 不敵に笑ってみせる光陰と今日子。
 悠人が向かってくると思っていたタキオスは、馬鹿にされたと思ったのか顔を歪めた。
「何だお前らは。エターナルでも無い者が俺に敵うと思っているのか? なめるなよ、小虫風情が」
「はっ、小虫で結構。蜂の一刺しだって人は死ぬもんだぜ?」
「蝶の様に舞い、蜂の様に刺す、ってね。華麗な戦い、見せてあげるわよ」
 不敵な笑みをそのままに、光陰と今日子がタキオスに応じる。
「……ほう。単なる捨石かと思ったが、なかなか吠える。面白い。ならばやってみるがいい。俺を満足させてみせろ!!」
 失望から一転、エトランジェ二人の言葉に、タキオスは確かな意志を認めた。
 強さを求めるタキオスが、光陰と今日子を戦うに値する敵と認識した。
 黒いオーラフォトンを纏って、『無我』を構える。
 ただ立っているだけなのに、恐ろしいほどの力が迸る。
「光陰、今日子、絶対に死ぬなよ」
「あたりまえだろ? 俺達よりも自分達の心配しな。何しろこの世界の命運はユウト達にかかってるんだからな」
「ほら、早く行きなって!!」
 それは、以前と変わらぬ声。
 悠人に関する記憶が消えてなお、その言葉は悠人に勇気を与える。
 光陰と今日子の力強い声に送られて、三人のエターナルは走り出した。
491名無しさん@初回限定:04/12/20 06:42:06 ID:g3TMT6q7
492あなたを見つめる私・後編 7/50:04/12/20 06:44:12 ID:WLOM51Va
「はあっ!!」
 クォーリンが渾身の力で、横薙ぎに『峻雷』を振るう。
 大地を強く踏みしめ、震脚の音と共に繰り出される重く鋭い一撃。
 地球の中国武術の動きが取り入れられているのは、光陰に教わったからだ。
 深緑の稲妻の名を受けるに相応しい破壊力の攻撃が、エターナルとしては薄い部類に入るントゥシトラのオーラフォトンの壁を一文字に切り裂くものの、ントゥシトラの傷口からは灼熱の体液が爆ぜてクォーリンに降りかかる。
「くっ!!」
 幾ら防御が薄いとはいえそこはエターナル、全力で無くば破れるバリアでは無い。ゆえに、全力を込めた攻撃の後に降りかかる体液へのガードが間に合わない。
 ントゥシトラの体液がジュウジュウと音を立ててクォーリンの体を焼く。
 想像出来るだろうか、煮え立つ熱湯を正面から浴びせられる恐怖。浴びせられた後の全身の火傷の痛み。
 そしてその熱湯よりも遥かに高温の液体を全身に浴びながら戦う事の比類無き恐ろしさ。
「くぅっ!! アースプライ……」
 急ぎ回復しようとするクォーリンに、ントゥシトラの触手が襲い掛かった。
「シュシュ、シュシュシュ……」
「!? しまったッ!!」
 身をかわそうとしたクォーリンの左腕に触手が絡みつく。
 クォーリンの左腕からぶすぶすと煙が上がり、肉の焼ける臭いがする。
「うああああーーーーーーっ!!」
 生きながらに腕を焼かれるあまりの激痛に、抑えきれず絶叫する。
493あなたを見つめる私・後編 8/50:04/12/20 06:48:08 ID:WLOM51Va
「やぁぁぁぁぁっ!!」
 間髪入れずアセリアが、突進の加速をそのままに『存在』を打ち付け触手をクォーリンから引き剥がすが、その部分から更に体液が弾け、二人に降りかかる。
「雲散霧消の太刀!!」
 ウルカが『冥加』を振るい、宙を舞う体液すらをも斬り刻み金色のマナに返す。
 しかしウルカの全力、神速の剣技をもってしても無数の液体、全てを斬るには及ばない。
「間に合えっ!! ファイアボールッ!!」
 間一髪、オルファリルのファイアボールが降り注ぐ灼熱の体液、その残りを吹き飛ばした。
 大陸中のスピリット達に恐れられたオルファリルの炎も、ントゥシトラ相手では飲み込まれるだけでまるっきり効果が無い。
 だからこういうフォローしか出来ない。
 歯痒い。だけれども出来る事しか出来ない。ならばそれを精一杯に、全力を尽くすのみ。
「マナよ、癒しの力となれ!! アースプライヤー!!」
 エスペリアの癒しの魔法がクォーリンにかけられ、炭化しかけた左腕が肉を持った左腕に回復再生する。
 けれども、完全に回復する前にクォーリンはそれを止めた。
 少しでも回復魔法は温存しなければならない。とりあえず動くのに支障が無ければ、この戦闘中は十分。
 とはいえ、圧倒的な戦力差にアセリア達の戦力はどんどん削られている。遠からず体力も魔法力も尽きる事は目に見えている。
 一方で、ントゥシトラは殆どダメージを負った様にも見えない。
「くそっ!!」
 クォーリンが悪態をつく。
 左腕は動くとはいえ、あまりに酷い火傷ゆえに痛みすらも感じない。
 それ以外にも、全身至る所にントゥシトラの炎による水ぶくれができ、べろりと皮がむけ、じくじくとした痛みが走る。
 辺りは既に熱気で満ち、息をする度肺が炙られ、焼け付くような錯覚に襲われる。
494あなたを見つめる私・後編 9/50:04/12/20 06:52:04 ID:WLOM51Va
「これほど力の差があったなんて……けど、至近距離からのエレメンタルブラストなら或いは……」
「無理だ。冷静になれ」
 呟くクォーリンに、ウルカが冷静に諭す。
「生きる事を諦めるな。コウイン殿にもそう言われたであろう」
「でも、このままでは!! 私はコウイン様に受けた恩に報いたい!! コウイン様の為ならこの命も惜しくはないのよ!!」
 声を荒げるクォーリンに、静かに、だが強くアセリアが語りかけた。
「諦めてはダメ。諦めは覚悟なんかじゃない。そんなの私は認めない」
 それは以前、悠人が佳織に語った言葉。
「アセリアの言う通りです。全員で生きて帰ってこそ心から喜べるのですから。コウイン様の為にもです」
「そーそー」
 アセリアも、エスペリアも、オルファリルも、ウルカも、全身大火傷を負っていながら瞳には強い意志を失わない。
 共に大陸を統一した頃の悠人の事は覚えていなかったが、どんな絶望的な状況においても諦めないその強さはきっちりとラキオススピリット達の中に根付いていた。
 それを見てクォーリンも、見失いかけていた希望を取り戻す。
「……なるほど、ね。ラキオススピリット隊が強い理由が解った気がするわ」
 そういえば、と思い出す。
(先程コウイン様は私を戦友と呼んでくれたのではなかったか)
「そうね。死ぬ訳にはいかないか。戦いの道具として受けた命令ならまだしも、友と呼ばれ頼まれたのだから。私も道具としてでは無く、一人の存在としてコウイン様の信頼に報いるべく戦わねばならないわね。……よし、いきましょう!!」
「ん!!」
「承知!!」
495名無しさん@初回限定:04/12/20 06:53:17 ID:g3TMT6q7
496あなたを見つめる私・後編 10/50:04/12/20 06:56:14 ID:WLOM51Va
「月輪の太刀!!」
 抜刀速度を己の極限まで高めたファーレーンの一撃必殺の筈の居合いは、しかし軽くかわされる。
 一撃必殺、それ即ち決まらなければ大きな隙が出来るという事。抜刀術は本来見切れない筈の攻撃なのだから、隙は当然でもある。
 そのファーレーンの隙を、ヘリオンがカバーする。
「やーーーっ!!」
 疾風迅雷の連続突き。無数の閃光にしか見えないそれをも全てミトセマールは軽く見切り、『不浄』を振るう。
「そらっ!!」
「危ないっ!!」
 『不浄』の直撃軌道上にいたヘリオンを、体勢を整えたファーレーンが抱えて転がった。
 鞭のスピードは、時深や今のナナルゥといった特殊能力者を例外として、目では到底追いきれるものでは無い。
 ゆえに相手のモーションから攻撃の軌道を見切るしかなく、必然的に経験の占めるウエイトが大きくなる。
 ヘリオンは、単純な身体能力こそファーレーンに肉薄、或いは越えているにしても、戦闘経験の無さは如何ともし難い。
 ミトセマールの攻撃が、ヘリオンを庇ったファーレーンの肩に掠り、それだけでファーレーンの肩の肉が裂け、血が飛び散る。
 否、そんな生易しい状態では無い。血が飛び散るのでは無く、肉が抉れ飛び散っている。攻撃が掠っただけにも拘らず。
 その光景はまるで血と肉の花火。
「ファーレーンさん!!」
 かけられたヘリオンの声に応える余裕も無く、ファーレーンが素早く立ち上がる。
 血を溢れさすように噴き出し、骨すら砕けた肩の怪我を全く意に介さず逆の腕に『月光』を構える。
497あなたを見つめる私・後編 11/50:04/12/20 07:00:54 ID:WLOM51Va
 二人への追い討ちを狙ったミトセマールに、セリアが突っ込む。
「させないっ!!」
「見え見えだねぇ」
 バシイッ!!
 他方を狙う攻撃前のモーションから一転、攻撃はセリアを捉え、跳ね飛ばす。
 技術とか戦術という言葉が悪い冗談に思えてしまう程に、スピードの桁が違いすぎる。
 ミトセマールの攻撃は基本もなっていない本能的な攻撃だから、辛うじて攻撃の軌道が予想出来る。それでも回避しきれない。防御しきれない。
 血飛沫と共に宙に舞い上げられたセリアは、ウイングハイロゥを広げて空中で何とか体勢を取り戻す。
 致命傷だけは、避けている。
「おあああああーーーっ!!」
 ニムントールが叫びながら『曙光』を叩きつける。
 それをバックステップで軽く避けるミトセマール。
 『曙光』は地面に叩きつけられ、土や雪を撒き散らす。
 ニムントールはそのまま棒高跳びの要領で『曙光』を使ってジャンプ。
 同時にヒミカが、セリアが、ファーレーンが、ハリオンがミトセマールを囲んだ。
 周囲を囲まれ、上空からは重力をのせた一撃が迫る中、ミトセマールは『不浄』を荒々しく躍らせる。
 周りを囲んでいた四人は血煙を上げて弾き飛ばされ、ニムントールの空からの攻撃もはね返され、叩き落された。
「そろそろあきらめたらどうなんだい?」
「はぁ……はぁ……あきらめる?」
 口元から流れる血の筋を拭いつつ、セリアが立ち上がる。
「あんたが何言ってるのか、これっぽっちも理解出来ないわ」
 ヒミカも、ファーレーンも、ハリオンも、ニムントールも立ち上がる。
「神剣が砕けても、両手両足がもがれても、噛み付いてでも戦う。敗北するのは死んだときだけ。
 そして、私達は決して死ぬ訳にはいかない。絶対に死なない。二つの事柄を合わせた答えは、もう勝利しか無いでしょう?」
498あなたを見つめる私・後編 12/50:04/12/20 07:04:32 ID:WLOM51Va
 凄絶な戦いは続く。
 ヒミカが服を朱に染めて、転がるようにして下がる。
 見れば神剣を口に咥え、左腕には引きちぎられた右腕を持っているという凄惨な状態だ。
 咥えていた『赤光』を地面に置き、呟く。
「腕の一本分軽くなっても、これだけ差があるとやっぱりマイナスにしかならないわね」
 肉というのは意外に重い。
 体重が1kg増えたの減ったのと騒ぐ事があるが、実際その1kgは1lペットボトルの水の重量に相当する。当然2kgなら2l。かなりの重量である。
 それを鑑み、どうせ短期決戦、ヒミカは腕一本が引きちぎられた事をチャンスに転化しようとしたが、それで追いつけるようになるスピード差でも無く、反映されたのは片腕が無い事によるバランスの悪化だけだった。
「ハリオン、頼む!!」
「了解ですぅ!! アースプライヤー!!」
 爆ぜ、飛び出しかけた自らの桃色の内臓を、腹に押し込んで治したばかりのハリオンが、ヒミカに駆け寄り腕を繋ぎ合わせて動かせるように治療する。
「助かった!!」
「では、参りましょう!!」
 圧倒的暴力の前に、再び躊躇い無く飛び出すヒミカとハリオン。
 それと入れ替わるように今度はセリアとニムントールが弾き飛ばされてくる。
 セリアの両腕がずたずたに引き裂かれ、本来ありえない角度に折れ曲がり、捻じくれているのを、ニムントールが血だらけのままで回復させる。
「痛むよ」
「ええ、構わないわ」
 治療の為に折れ曲がった腕をまっすぐに伸ばす。仕方が無いとはいえ、骨折した部分を無理矢理動かす事に変わりは無い。
「つっ!!」
 セリアが激痛に、整った顔をしかめる。
499名無しさん@初回限定:04/12/20 07:07:59 ID:g3TMT6q7
500あなたを見つめる私・後編 13/50:04/12/20 07:08:10 ID:WLOM51Va
 ニムントールの手に感じられるのは、赤黒く変色した皮膚の下で、骨も肉もぐちゃぐちゃになっている感触。
 平和に生きる人間がそれだけで胃の中のものを戻してしまいそうな違和感を両の手の中に包み込み、淡々と作業をするように回復をはかる。
 機械の様な冷静さを保ち続ける。全ての思いは神剣に込める。
 前回の戦いではハリオン一人に回復の役目が集中してしまった。
 それを悔やみ、回復魔法が不得手なニムントールが、連日連夜の修練で会得した回復効果を持つウインドウィスパー。
「あなたの怪我は?」
「問題無い」
「そう」
 致命傷を避ければ、手足を引き千切られても、腹を抉られても、そう簡単には死なない。
 手術を思い浮かべてみるといい。手足を切断しても、腹を切られても、上手くやってさえいれば死ぬ事は無い。
 但し麻酔は無く、代わりに覚悟と気合で激痛を堪えているという違いはあるが。
 この段、精神論でどうにかなる実力差では無いが、精神力が無ければ心が折れるを飛び越えて、既に発狂していてもおかしくは無い。
 無論それ以前に、精神を集中していなければ、ミトセマールの猛攻から致命傷を回避するなど出来はしないだろうけれども。
 そんな二人にヘリオンがおずおずと訊ねた。ヘリオンの後ろにはネリーとシアーもいる。
「お二人は……皆さんは怖くないんですか?」
「何が?」
「何がって、敵のエターナルはあんなに強いのに!! みんな死んじゃうかもしれないのに!! どうして平気なんですか?」
 ヘリオンは、目の前の敵の圧倒的強さに、そして背筋を走る死の恐怖に小刻みに震えており、それはネリーもシアーも同じだった。
501あなたを見つめる私・後編 14/50:04/12/20 07:12:35 ID:WLOM51Va
 怖い。
 ヘリオンは心底の恐怖を感じていた。
 まるで相手の攻撃が捉えられない。捉えたところでガードが間に合わない。ガードしたところでガードごと吹き飛ばされる。
 逃れられぬ冥い運命がすぐ背後に口を広げているかのような感覚。足掻いても足掻いても、進む先は決められた死という未来が確定しているような絶望感。
 先程とて、ファーレーンが助けてくれなければ、ヘリオンは今頃物言わぬ無数の肉片と化し、マナの霧となっていただろう。
 それすら、助けられてはじめて気が付いた事。
 ネリーとシアーもまた、ヒミカのスフィアハイロゥが敵の攻撃の軌道を逸らしてくれなければ、ハリオンのシールドハイロゥが守ってくれなければ、もうこの場にいる事はなかった筈。
 リアルな死と隣り合わせである事を実感し、その上で平静を保つのは戦いの中に生きてきたスピリットにとっても至難の業だ。
 今までにも死にそうな目にあった事はある。けれど、これまでとは状況がまるで違う。敵の力が圧倒的過ぎる。
 次の瞬間には、自分でも気付かないまま死んでいるかも知れないという発狂しそうな恐怖の中で、どうして一片の迷いも無くエターナルに立ち向かっていけるのか、ヘリオンは訊ねずにいられなかった。
 セリアがそれに静かに答える。
「答えはYESであり、NOでもあるわね。怖いといえば怖い。でも、敵は怖くない。自分が死ぬ事それ自体もそれほど怖くはない。
 怖いのは、自分が死んだらみんなが苦しむであろう事と、仲間が死ぬ事。それだけだわ」
 セリアの言葉をニムントールが継ぐ。
「この前、ニム達はナナルゥを助けられなかった。結果としてナナルゥは生きてたけど、それは偶然みたいなもの。それで解った。
 本当に怖いのは、自分の大切なものが失われる事。
 ニムはみんなが好き。この世界が好き。お姉ちゃんが大好き。だから守る為に戦う。怖いから戦う。
 戦って、勝ったところにしか道は無いから」
502あなたを見つめる私・後編 15/50:04/12/20 07:16:41 ID:WLOM51Va
 セリアの腕が回復する。
 まだ傷は無数にあるが神剣を振るうのには問題は無いと判断。『熱病』を拾い上げ、ぐっと握って握力を確かめる。
「よし!!」
 回復を確認した途端、疾駆。セリアがあっという間に戦いに戻る。
「あなた達の大切なものは何?」
 最後に一言だけを残し、ニムントールもセリアに続いた。
 残されたネリー、シアー、ヘリオンはしばし立ちすくむ。
 鮮血で紅に彩られた、先輩達の姿を見る。
 絶対的な修羅場をくぐり抜け、なお果敢に困難に立ち向かうその姿は、崇高で美しかった。
 セリアとニムントールの言葉を反芻する。
 大切なもの? 大切なもの……
 ネリーは考える。
(ネリーは、いつもみんなと楽しく笑っていたい!!)
 シアーは考える。
(シアーは……みんなとずっと、いつまでも一緒にいたいよ)
 ヘリオンは考える。
(私は、これまでの戦いの中でやっと見えてきた未来を……希望を守りたい!!)
 三人は力強く頷き合った。
 言葉から、姿勢から、三人は先輩達の思いを受け取った。臨界寸前だった敵への恐怖が霧散する。
 自分達には守るものがある。その為にはここで絶対に勝つ!! それしかない!! 立ちすくんではいられない!!
 ネリー、シアー、ヘリオンは、三人同時に純白のウイングハイロゥを広げ、ミトセマールに向かって飛び出した。 
「全く、揃いも揃ってしつこさだけは一級品だね」
「意志があるならば、未来は開ける。必ずね!!」
503名無しさん@初回限定:04/12/20 07:18:38 ID:g3TMT6q7
時間切れ……スマソ
504あなたを見つめる私・後編 16/50:04/12/20 07:20:56 ID:WLOM51Va
「はあああぁっ!!」
 光陰が『因果』をタキオスに叩きつける。上段から全力で。
 ガシィン!!
 多くのスピリットやエターナルミニオンを防御の上から叩き潰してきた筈の攻撃は、『無我』に阻まれあっさりと止められる。
 まるで木刀で固い石を叩いているかのよう。タキオスはびくともせず、逆に『因果』を持つ光陰の手の方が痺れる。
 続く今日子が雷を乗せた刺突。
 これに対しては、タキオスは防御の姿勢すらとらない。
 攻撃は、タキオスの体を覆う強力な黒いオーラフォトンに完全に阻まれる。
「貧弱だな」
 ブゥン!!
 呟いたタキオスが、無造作に『無我』を真横に振る。
 大して力を込めたとも思えない一撃に、加護の力を使いガードを固めた筈の光陰が地面と平行に吹き飛ばされ、壁にしたたかに打ち付けられた。
「いってぇーーーっ!!」
 完全に攻撃を受け止めたにも拘らず、『因果』を持った腕が衝撃で折れてしまっている。
 ガードが意味をなさないとは言わない。直撃をくらっていたら一撃であの世行き決定だろうから。
 それにしても、と光陰は思う。
(防御には結構自信があったんだが、こいつは本物のバケモンだな。本格的にちとやばいか)
 急ぎ傷を回復する。泣き言を言うつもりは微塵も無いが、神剣を持てないのは困る。
「光陰!! 大丈夫!?」
「よそ見をしている暇は無いぞ!!」
「!?」
「今日子ーーっ!!」
505あなたを見つめる私・後編 17/50:04/12/20 07:32:33 ID:WLOM51Va
 ナナルゥが、くん、と鼻を鳴らした。
「『秩序』のテムオリンです」
 悠人にも時深にも気付かれない程、完全に気配を消していた法皇テムオリンが呆れたように姿を見せる。
 お約束の様に時深との言い合いが勃発しかけたが、そこにナナルゥが割って入る。
「トキミ様、この様な子供の相手をしている場合ではありません」
「こ、子供!? 私が子供ですってぇ!?」
「そうですが、何か?」
「私はあなたなどよりも遥かに長く生きていますのよ!?」
「……とてもそうは見えません」
「私は子供なんかじゃありませんわ!! 訂正しなさい!!」
「子供は皆そう言うのです」
「なっ!! そこまで言いますか!!」
「見た目は子供。頭の中身も子供。それ以外にどこで判断しろと?」
「キーーーッ!! 絶対に許しませんわ!! 細切れにして差し上げます!!」
「癇癪持ちの子供の相手は苦手なのですが……こうなった以上、私が相手をするべきでしょうね」
 ナナルゥがすっと進み出る。
「第二位神剣、『秩序』の力を見せて差し上げますわ!!」
 テムオリンが荒々しく魔力を込め、ナナルゥ目がけて無数の神剣を飛ばす。
 ナナルゥは優雅に魔力を操り、まるでオーケストラの指揮をするかのような動きで、あらゆる方向から襲い来る神剣全てにエネルギー球をぶつけて弾き返す。
「第二位神剣の持ち主とはいえ、このような力の使い方の相手であれば私でも対処できます。ユート様、トキミ様、ここは私に任せて先に……」
 ナナルゥが言いかけた時、数体のエターナルミニオンが突如悠人達の目の前に転送され、襲い掛かってきた。
506あなたを見つめる私・後編 18/50:04/12/20 07:36:15 ID:WLOM51Va
「ちっ!!」
 悠人が『聖賢』を一振り、エターナルミニオンを金色の霧に返す。
 時深も冷静に舞い、エターナルミニオンを撃退。テムオリンのやり口を理解しているから、動揺は微塵も無い。
 ナナルゥも襲いかかる敵の攻撃を飛んで避け、宙からエネルギー球を叩き込み、エターナルミニオンを消し去る。
 音も無く地面に降り立ったナナルゥがテムオリンに語りかけた。
「やはり正々堂々と戦うつもりは無いのですか?」
「おほほほほ、誰があなた方弱者如きに。1000年早いですわよ」
「私に卑怯さの勝負で挑むなど、なんて愚かな。やはり『夢幻』が観察したそのままの愚者でしたか。底の浅い……」
 ナナルゥがばばばっと素早く印を組む。
「ホワイトミスト」
 途端、辺りに濃い乳白色の霧が立ち込める。
 伸ばした手の先も見えない濃い霧に包まれ、その場にいる全員の視界が奪われた。
「こしゃくな!! めくらましですか!?」
 テムオリンが叫ぶ。
 周りには悠人も時深もいた。毒の可能性はおそらく無い。
「この程度で、私をどうにか出来るとでも思っているのですか!?」
 テムオリンは『秩序』を振りかざし、突風を起こして一息に霧を吹き飛ばす。
 霧が晴れた時、そこに残っていたのは時深ただ一人。悠人とナナルゥの姿は無い。
「他の二人は霧に紛れて先に行ったという訳ですか。ちょこざいな。あなたを倒してすぐに追いついてあげますわ」
「やってみるといいですわ」
 にやりと笑い、妙なポーズをびしっときめて時深が構える。
 見た事も無い時深の構えにテムオリンは虚をつかれた。
「エネルギー充填120%、発射準備完了!! いきます!!」
507あなたを見つめる私・後編 19/50:04/12/20 07:40:19 ID:WLOM51Va

     __
  「,'´r==ミ、
  くi イノノハ)))
   | l|| ゚ヮ゚ノl| <すーぱーあまてらす光線!!
   j l||(つと)===================================
  (7i__ノ卯!
    く/_|_リ

「……」
 虚をつかれてくらったが、それはまるでおもちゃの水鉄砲程度の威力でしかない。
「……時深さん。あなた、私を馬鹿にしておりますの?」
 こめかみに血管を浮かべながら訊ねるテムオリン。

 AA(ry

 撃ち続ける時深。
 そこに至ってようやくテムオリンは、この時深がマナで作られた人形である事に気が付いた。
 テムオリンのこめかみに浮かんだ血管がぴくぴくと動く。
「この私を完全に無視して進んだというのですか……」
508あなたを見つめる私・後編 20/50:04/12/20 07:44:12 ID:WLOM51Va
 AA(ry

 ぺちぺちぺち。
 額にあたり続けるすーぱーあまてらす光線なる攻撃がよけいに神経を逆撫でる。
「私が無視されるなどと……この様な屈辱生まれて初めてですわ!! ふざけてますわ!!」
 怒りに任せて時深もどきを攻撃するテムオリン。
 攻撃を受けた時深もどきは……大爆発した。

 ちゅどーーーーーーん!!

 それは完全に相手の虚をついた見事な攻撃。
「屈辱……です……わ……」
 呪詛の言葉を聞かせる相手もいない。その事すら呪いつつ、テムオリンは消滅した。
 法皇テムオリンの、屈辱にまみれた完全なる敗北だった。
509あなたを見つめる私・後編 21/50:04/12/20 07:55:19 ID:WLOM51Va
 その爆発音はテムオリンとの戦いを回避し、既にかなり走った悠人達にまで伝わった。
 とんでもない爆発であった事を示す大気の震え。
「ナナルゥ。あなたの仕業ですか?」
 時深にナナルゥは頷き返し、つまらなさげに呟いた。
「現実をしっかり見据える事が出来ないから、幻に囚われ自滅する。正面から戦ったのならば、まだ勝機もあったでしょうに」
 卑怯ととられかねないこの戦い方は、実際のところナナルゥの正々堂々である事を時深は見抜いていた。
 観察者ナナルゥの最大の武器は強力な魔力を利用した神剣魔法では無い。
 冷静無比な観察能力、状況把握力。
 例えば、打撃防御力の弱い赤スピリットには、高い直接攻撃力を持つ青スピリットが攻撃するし、打撃には強いが魔法に弱い緑スピリットに対しては、赤スピリットの神剣魔法で攻撃するのがセオリーである。
 相手に強力な神剣魔法の使い手がいたら正面から堪えるのではなく、青スピリットのバニッシュスキルで打ち消すし、相手に魔法を打ち消す青スピリットがいたら黒スピリットのアンチブルースキルで対応するのは当然である。
 戦いとはつまるところ、いかに相手の不利をつき、自分の得意な形に持っていくか、というのが重要なのだ。それが戦術というものである。
 相手の戦術に合わせるのは、相手の戦術に合わせる事それ自体が戦術で無い限り、勝利を捨てるに等しい。それは勇敢ではなく無謀といえる。
510名無しさん@初回限定:04/12/20 07:57:26 ID:WUDncw5r
人がいないのでしょうといいつつ支援なのれす。
511あなたを見つめる私・後編 22/50:04/12/20 08:00:01 ID:WLOM51Va
 その点ナナルゥは、相手を自分のペースに巻き込むのが非常に上手い。
 相手の弱点を見抜き、自分が動き、相手を動かし、勝負を決める。まるで詰み将棋の如く。
 傍目から見れば、全てがナナルゥの掌の上の出来事の様な錯覚すら覚える。
 それは相手の性格や戦術、周囲のあらゆる状況を正確に把握していなければ出来ない事。
 テムオリンは強い。時深は幾度も戦い、その実力の高さは骨身に沁みている。
 ナナルゥ本人の言う様に、正面からぶつかっての戦いでは、『夢幻』の、ナナルゥの勝ち目は薄かっただろう。
 それはメダリオに対しても同じく。メダリオの剣技に、ナナルゥが真っ向勝負で対抗出来たとは到底思えない。
 だが、ナナルゥは勝った。脆い部分を正確に突いて。
 軽くあしらった様にさえ見えるのは、相手がまるっきり実力を発揮出来無かった証左。
 その意味で観察者ナナルゥは、性格にムラがある彼らの天敵と言えるかも知れない。
(……もし私が戦うとなったら……)
512あなたを見つめる私・後編 23/50:04/12/20 08:04:03 ID:WLOM51Va

    ヽ)/
 ∠´ ハ`ゝ
 彡//ノハハ〉
 ゞ(リ ´ヮ`ノ!  < オーラフォトンビ━━━(゚∀゚)━━━ム!!!!!
  <´ii Yliンっ======================================
  U |.Tii<
  <_ノ_jイ_ゝ

 などとやられた日には、時深もテムオリンと同じ運命を辿る事は想像に難くない。
(……やはり絶対に『夢幻』と敵にはなりたくないですね)
 時深は改めてそう思った。
513あなたを見つめる私・後編 24/50:04/12/20 08:08:01 ID:WLOM51Va
「はあーーっ……はあーーっ……」
 荒々しく息をつくクォーリン。
 全身焼け爛れながらも、鋭い眼光は失われない。その射る様な視線の先にあるントゥシトラは、戦闘開始時よりも動きが少なくなり幾分弱っている様に見える。
「ん、もう一度、いく!!」
「承知!!」
「ええ!!」
 少しずつではあるが、確実にダメージは与えている。
 天秤はほんの僅かながらアセリア達に傾きかけている。
 そう、見えた。
 そこに微かな油断が生まれた。
 戦っているのは高度な知性と圧倒的戦闘力を持つエターナル。
 皆気力も体力も疲弊しきっており、視野が狭まってしまうのは決して責められる事では無かったとしても、一瞬の油断すら許されない戦いでのそれは、定められた最悪の解を導く。
「シュル……フシュル……アアア……!!」
 三人が飛び出そうとした瞬間、ントゥシトラがぐるんと丸まり炎を纏って突進した。
 目標は、エスペリア。
「!?」
 エスペリアが回復の要である事を見抜いてのントゥシトラの攻撃だった。
514あなたを見つめる私・後編 25/50:04/12/20 08:12:01 ID:WLOM51Va
 弱っていた? 違う。
 決定打を決めるチャンスを虎視眈々と狙っていただけ。ただ一撃で、この戦いの勝敗を決められる事を理解していたから。
 どんなスピリットであろうとも致命傷は免れないであろう威力の攻撃。
 それを魔法耐性の低い緑スピリットであるエスペリアがまともにくらったら、ひとたまりも無い。攻撃を回避出来るだけのスピードも無い。
 アセリアもウルカもクォーリンも、攻撃の態勢に入っていた為にフォローに回るのが遅れた。
 狙い澄まされた完璧なタイミングで、業火球と化したントゥシトラがエスペリアに迫る。
 エスペリアがやられる事は、ントゥシトラの考察通り、イコールアセリア達の敗北に他ならない。回復役を失うに留まらず、精神的な部分で勝敗が決定づいてしまう。
 一瞬でありながら永遠に感じる、絶望の時間。
「だめーーーーっ!!」
 その時オルファリルのかざした手に大気中のマナが集中した。
 今このソーン・リームの大気には暴走寸前の『再生』の影響により、高濃度のマナが満ちている。
 それがオルファリルの手に集中し、瞬く間に膨れ上がる。
 オルファリル本人すらも気付けなかったが、それは『再生』が本来の持ち主たるオルファリルの声に応じた結果。
 ハイペリオンスターズ。
 『再生』の以前の使い手リュートリアの必殺技が、オルファリルの手によって炸裂した。
 爆炎がントゥシトラを包み込む。
 閃光、炸裂音。
 世界が圧倒的な量の光と音に包まれる。
 それは宇宙の始まり、ビッグバンを彷彿とさせる爆裂。
515あなたを見つめる私・後編 26/50:04/12/20 08:16:19 ID:WLOM51Va
 ントゥシトラはあまりに突然の出来事に、抵抗も理解も出来ないまま無に帰す事となった。
 白一色だった世界に色彩が戻ってくる。
「お……オルファ?」
「オルファ殿、今の技は……?」
「わ、わかんない。必死だったから、無意識で」
「凄い威力だった……私達は、勝ったのか?」
「……」
「……」
 呆然としていた全員の表情に徐々に笑みが浮かんでくる。
「やったーーーーーーっ!!」
 全員で抱き合い、そのままオルファリルの胴上げになった。
 やがてそれも落ち着き、みんなで倒れる。笑顔のままで。
「コウイン様達は、大丈夫かしら……」
「大丈夫だよ」
 クォーリンの呟きに、確信に満ちたオルファリルの声が答える。
 根拠も何も無かったが、そう信じる事が出来た。
 いずれにせよ、全員もう動けないのだから同じ事。後は仲間達を信じるしかない。
 全員がゆっくりと休息に入った。
 今度は帰ってきたユウト達を胴上げする、その為の体力を養う為に。
516名無しさん@初回限定:04/12/20 08:16:29 ID:2/Zj0Msv
支援
517あなたを見つめる私・後編 27/50:04/12/20 08:20:26 ID:WLOM51Va
 ラキオススピリットの中でも屈指の爆発力を誇るネリーの連続攻撃。
 勢いはあるが荒削りなネリーの攻撃の間に、シアーが絶妙のタイミングで重い一撃を入れる。
 そしてヘリオンが集中力を最大限に発揮し、袖摺り合わすような接近戦の中で『失望』を鋭く繊細に舞わせ二人をフォローする。
 前後左右からだけで無く上からも、更には地面を抉り抜いて下からも、狂ったように飛んでくる『不浄』から致命傷を防ぐ。
 経験の足りなさを、至近距離に張り付き相手の行動を制限する事でカバー。黒スピリットの特性を活かした攻撃的防御。
 無数の傷を受けながらも、三人のコンビネーションは止まらない。
「ちっ!! うっとうしい!!」
 強力なオーラに阻まれ、ミトセマールに届くダメージは微々たるものであったけれど、その攻撃はミトセマールを苛つかせるに十分だった。
 苛立ったミトセマールは大きく腕を振り、強大なオーラを乗せた『不浄』の一撃を三人に叩きつける。
「!!」
 この攻撃は、軌道を逸らせるレベルでは無い。
 反射的に三人は協力して防御を固めたが、問答無用の破壊力に大きく吹き飛ばされた。
 その一瞬を、集中力を限界まで研ぎ澄ませたファーレーンが捉える。
「見えた!!」
 それを見極め、利用出来るのはファーレーンだけという刹那のチャンス。
 大きく振ったミトセマールの腕が延びきった瞬間に、腕に絡みつく。
 ファーレーンの神剣での攻撃では、幾ら隙を突いても致命傷を与えるには至らない。それは前回のメダリオとの戦いでの教訓。
「なにっ!?」
 飛びついての、腕ひしぎ十字固め。
 かなりの勢いで飛びつき、ファーレーンが全体重をかけたものの、ミトセマールは立ったままびくともしない。
518あなたを見つめる私・後編 28/50:04/12/20 08:25:11 ID:WLOM51Va
「ふん!! 私を地に這わそうだなんて、生意気なんだよ!!」
 しかも、完全に関節が決まっているにも拘らず、それをミトセマールは力で無理矢理技を解こうとする。
 技をかけているファーレーンの体の方が限界を超えた酷使にぎしぎしと悲鳴を上げる。
 ファーレーンが比較的力の無い黒スピリットである事を差し引いても、エターナルとスピリットでは身体能力が語るも馬鹿らしくなるほどに違いすぎる。
 全身から響くぶちぶちという血管、神経、筋繊維の軋みに耐えながら、ファーレーンが作る決定的な隙。その隙は僅かしかない。そこを無理矢理こじ開けるしか無い。
 ゆえに、皆がその瞬間に全てをかけて一斉に動くのも前回と同じ。
 この瞬間こそが勝利を掴むおそらくは最初で最後、唯一のチャンス。
 前回のメダリオとの戦いでは、チャンスがあったにも関わらず相手を倒しきる事が出来なかった。
 まともなダメージを与える攻撃手段が無かった。
 仲間が来て助かったが、そうでなければ間違い無く全員が消滅していた。
 だから必死で編み出した。エターナルに通用する一撃を。
519支援:04/12/20 08:29:13 ID:eDCtqWSL
のどかなオーラフォトンビームw
520あなたを見つめる私・後編 29/50:04/12/20 08:30:03 ID:WLOM51Va
 ヒミカの背にハリオンとニムントールが手を添え、更に二人の背にセリアが手を添えた。
(マナが命であるのなら、私の命の叫びを今全て伝えよう!!)
 セリアが今思う事。命を賭けた時に心を占める想い。
「青のせせらぎは緑を潤わせ……」
(ヒミカ、私はあなたと共に、この世界で生きていきたい!!)
 切なる想いをセリアは全てマナに込める。
 セリアの蒼い清涼なマナが、ハリオンとニムントールに伝わり二人の力を倍化させる。
 ハリオンもニムントールも、自らの想いを全てこの瞬間に凝縮する。
「緑の囁きは赤を熱く燃え上がらせる!!」
 ハリオンとニムントールの込める生命力に満ちた碧のマナがヒミカに伝わり、ヒミカの中で溢れんばかりのマナが弾ける。
「私達の想いの全て、剣に宿れ!! はああーーーーーっっ!!」
 猛り狂う紅いマナを、皆の想いを、ヒミカが受け取り『赤光』に思い切り流し込んだ。
 『赤光』が眩いマナ光を放つ。
「くっ!!」
 ミトセマールは本能的に危険を察知したのだろう。全力でファーレーンを振りほどいた。
 肉体限界を超え、まるでゴミの様に吹き飛ばされたファーレーンの口元には、しかしはっきりと笑みがあった。
 必殺の技の準備は既に完成していたから。
 眩く輝く『赤光』を、自分達の想いの全てを、ヒミカはミトセマールに思いっきり叩きつける。
「りゃあぁーーーーっ!!」
521名無しさん@初回限定:04/12/20 08:32:10 ID:KMeq+wZ+
コソーリ見てる奴の点呼1進毎に開始]∀゚)ノ いーちっ!
522あなたを見つめる私・後編 30/50:04/12/20 08:34:29 ID:WLOM51Va
 ドシュウッ!!
 あまりの熱量に白い光を眩く放つ一撃は、その攻撃に触れた部分を瞬時に気化させながらミトセマールの体を真っ二つに引き裂いた。
「何……だ……って……?」
 訳が解らないといった表情のまま、左の肩口から右の胴にかけて切断されたミトセマールの上半分がどちゃりと地面に転がり、遅れて下半分が崩れ落ちる。
「私が……殺されるのかい……アハハ……アハハハハハハハッッ!!
 ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッ!!」
 狂った笑い声を残し、不浄の森のミトセマールはファンタズマゴリアから消滅した。
 狂気の声が消え、つい先程までの戦いが嘘の様な静けさが戻ってくる。
「倒した……の?」
 静寂を破ったのはネリーの声。
「倒しましたね〜」
 ハリオンが大の字に倒れ、豊満な胸を上下させながら答える。
「あはは……やった……」
 ヒミカが倒れこみながらも、満足げな声をあげた。
「うおーーーーーっ!!」
 全員が歓喜の声を上げる。もはやまともな言葉にもなっていない。
 皆が皆満身創痍で倒れながら、それでも腕を空に向かって高く掲げて勝利の歓声を上げた。
 全員の力で掴み取った、紛う事無き勝利だった。
「やったわね、セリア」
「ええ」
 ヒミカとセリアは倒れたまま神剣から手を離し、互いの存在を確認するように固く手を繋ぎあった。
523名無しさん@初回限定:04/12/20 08:36:37 ID:WUDncw5r
∀・)ノ2(支援2回目)
524あなたを見つめる私・後編 31/50:04/12/20 08:38:20 ID:WLOM51Va
 今日子は倒れ、辛うじて呼吸をしているのだけが確認出来るがピクリとも動かない。
 光陰もまた、全身傷だらけで無事な部分を探す方が難しい。
「正直、ここまで粘るとは思ってもいなかった。敬意を表し、全力で塵にしてやろう」
 タキオスがゆっくりと上段に『無我』を振り上げる。
 その前に膝をついている光陰は息も絶え絶えで、もはや攻撃をかわす事も受ける事も不可能。
(手も、足も、動かねぇ!! くそっ!!)
 タキオスが持ち得る全てのマナを『無我』に込める。周囲の空間が歪む圧倒的な力が『無我』に集中する。
(奴なりの敬意かも知れんが、そんなんいらねえっつーの。あの攻撃を受けて生き残る可能性は、ゼロ、か。ち、冷静な判断力が恨めしいぜ)
 唯一つの結論が頭の中で導かれ、絶望に打ちのめされる。
 だからかも知れないな、と妙に透明な思考の中で光陰は思う。
 冷静に結論を見てしまう自分が、結論を考慮せずただがむしゃらに物事にぶち当たる今日子を好きになったのは。
 憧れる。凄いと思う。勝てないと思う。だからこそ好きになったのだろう。
 あれ? 他にも憧れた奴がいたような……。今日子に似た奴が誰か……。
「覚悟は出来たか? これで終わりだ!!」
 タキオスの声によって、光陰の思考はそこで遮られた。
「くっ!!」
 ザクッ!!
 湿った音が響く。
525名無しさん@初回限定:04/12/20 08:39:17 ID:+Sb5RXNI
∀゚)ノ さーんっ!
526あなたを見つめる私・後編 32/50:04/12/20 08:42:11 ID:WLOM51Va
「な……に……?」
 タキオスの神剣は振り下ろされなかった。
 『無我』を振り上げたままのタキオスが、自分の胸から生える神剣を見る。
「何……だと……?」
 ゆっくりと後ろを振り向く。
 そこには倒れていた筈の今日子がいた。
 攻撃に全力を込めたがゆえに防御のオーラが無くなる。
 その瞬間を狙いすましての一撃。
 オーラに守られていなければ、いかにエターナルといえども攻撃は通じる。
 相手のオーラを正面から打ち破る手段を持たない以上、そこにしか勝機は無い。
 唯一にして最大の問題は、いかにしてタキオスの防御のオーラを無くすかという事。その一点に尽きたのだ。
「やられたのは、フリだけよ。演劇の練習したかいがあったわね」
 今日子はありったけの力でタキオスに電撃を流し込んだ。
「がはぁっ!!」
 ばちばちと閃光が弾け、高圧電流に内臓を焼かれたタキオスがついに、どうっと地面を揺らして倒れこんだ。
「卑怯……な」
「何とでも言いなさい。光陰が私の為に手を汚してきた事に比べれば、こんな事くらいなんでも無いわよ。むしろ自分も光陰の為に泥をかぶれた事を誇らしくすら思うわ」
「く……」
527支援:04/12/20 08:43:50 ID:eDCtqWSL
総力戦だ!! ノシ よーん!
528あなたを見つめる私・後編 33/50:04/12/20 08:46:09 ID:WLOM51Va
 光陰が『因果』を杖代わりにゆっくりと立ち上がり、倒れかける今日子に肩を貸す。
 光陰もまたふらつき、今日子とお互いに支え合う。
「自分の戦闘方法を至上と思うのは勝手だが、それを相手に強制するのはどうかと思うぜ。俺達がそれに付き合う義理は無いんだ。
 それを相手に押し付けるなら、押し付けて勝利するだけの実力がなきゃな。戦いは、勝たなきゃ負けなんだ」
「こっちは、あんたみたいに遊びで戦ってるんじゃないの。どんな手を使っても勝たなきゃいけないのよ」
「なるほどな……。この敗北も……ひとえに俺の未熟さゆえ……か」
 タキオスが軽く笑い、黒い霧へと変化していく。
「いずれまた……お前達と戦いたいものだ」
「こっちは願い下げだね。殺しあいを楽しめるほど堕ちちゃいないんだ」
 タキオスが完全に消えた事を確認し、二人はへたり込む様にその場に腰を下ろした。
 息を切らせながら、それでも笑い合う。
「全く。隙が出来る前に光陰がやられちゃうんじゃないかってひやひやしたわよ」
「俺は今日子が死んでんじゃないかって気が気じゃ無かったぜ」
「敵を騙すにはまず味方から、ってね」
「へへっ、見事に騙された。……それにしても、今日子にはかっこ悪いところばっかり見せちまうな」
「何言ってんだか。私の為に戦ってくれる光陰が、かっこ悪い訳無いでしょ? いつもありがとう、光陰」
 今日子は光陰にキスをした。
 それもまた、完全な不意打ち。
 防御も覚悟も何も無く、光陰の唇には柔らかな感触。光陰の心には破壊的一撃。
529あなたを見つめる私・後編 34/50:04/12/20 08:50:27 ID:WLOM51Va
「!?」
「感謝の気持ちよ。とっておきなさい」
 あまりの照れくささに、そっぽを向く今日子。
「あー、俺、もう死んでもいいや」
 圧倒的実力差を見せ付けられてすら、心の片隅にも浮かばなかった言葉が出る。
 仏門の教えを受けた身だが、不惜身命どこ吹く風。
 光陰にとって命を捧げる相手は、一人しかいない。
「まったく、何言ってんだか。これからでしょ? これからは戦いなんかしないで私も普通の女の子に戻るんだから」
「そういう事言う奴に限って、普通の女の子には戻れなかったりするんだが……あ、ウソウソ、嘘です!!」
「死んでもいいなら、死なすわよ?」
 ライトニングハリセンを構える今日子に、謝る光陰。
 もうすっかり普段の空気に戻っていた。
「すまんすまん。でもまぁ、そうだな。キス以上に色々やりたい事もあるし……って、ごめん、マジ勘弁!! 今それくらったら本気で死ねるから!!」
「ほんっと、あんたってばろくな事言わないんだから」
「ま、何にしても未来が無けりゃあな。後はユウト達の勝利を祈るのみか」
「大丈夫よ、絶対に。何でか解んないけど、それだけは確信出来る」
「そうだな。ちょっと不思議な感じだが、俺もだ。じゃ、ちょっと休もうぜ。疲れて戦勝パーティーに出れないのも何だしな」
「異議無し」
 寄りかかり合い、目をつむる。
 触れ合った部分からお互いの体温を感じての、心から安らいでの休息だった。
530支援:04/12/20 08:54:21 ID:FNe6ZEX8
いきますよ〜 5です〜
531あなたを見つめる私・後編 35/50:04/12/20 08:55:04 ID:WLOM51Va
 悠人達三人のエターナルは暴走寸前の『再生』の目の前で統べし聖剣シュンとついに対峙していた。
 彼らの前に立っているのは、もはや瞬ではなく、第二位永遠神剣『世界』そのもの。
 仮に下位神剣に心を飲ませたところで、発揮出来るのは能力のほんの一部。
 自我の薄い下位神剣が元有る本能の赴くまま戦うというのは、赤子の駄々と同じ様なものだ。己を知り、能力を尽くのとは全く異なる。
 躊躇が無くなり、どんな事も平気で出来る反面、相手や自分の能力に合った戦い方を見出すような、応用力や発展性が無くなる。より高みに上る可能性が無くなる。
 だが、上位神剣となると、まるで話が変わってくる。
 強い自我を持ち、思考する上位神剣とは、長年培われた経験、技術を使い得る。思考し、成長する事も出来る。
 『世界』は生まれたばかりの神剣とはいえ、『求め』『誓い』として戦ってきた過去はその中に受け継がれている。
 全存在を賭けて互いに戦い、その中で命懸けで自らの力を高めてきた。互いの長所も、短所も知り尽くしている。そんな神剣同士が一体化したのだ。
 戦闘知識を得、己を知るという意味でこれ以上の経験は無い。
 『世界』の目が、禍々しい光を帯びて悠人を射る。
 悠人はその視線を正面から受け止め、横にナナルゥと時深が並んだ。
 『聖賢』は今ここで発揮できる全ての力を引き出すべく意識を集中し、悠人に全てを託した。
 『夢幻』もこの戦いをナナルゥに託した。自分は奥に引っ込んで、この大舞台を一瞬たりとも見逃すまいと集中しているのだろう。それもまたナナルゥを信頼している証といえる。
532支援:04/12/20 08:56:21 ID:eDCtqWSL
時間切れの信頼氏より伝言。 ろーくっ!
533あなたを見つめる私・後編 36/50:04/12/20 09:00:05 ID:WLOM51Va
「待たせたな、シュン」
「ようやく来たか」
 カオスエターナルとしての使命を果たすべく、時深がゆったりと構える。
「さあ、覚悟はよろしいですか?」
「いつぞやと一緒にするなよ。我はこの肉体を完全に掌握した」
「いかに速くなろうと、威力を増そうと、あなたの攻撃が私には見えるのですよ」
「ふん。見えていようがいまいが関係無い。見える事と食らわぬ事は同義では無い。それを今証明してやろう。
 その未来を見るという目に究極の力を焼き付けろ!! オーラフォトンブレイク!!」
 『世界』の中でオーラフォトンが膨れ上がる。
「!? や、やばいッ!!」
 桁違いに膨大な破壊の力が三人を飲み込む。
 力が溢れ狂い、空間が軋み、世界が歪む。
 三人は必死でオーラフォトンの壁を展開。力を合わせ辛うじて恐るべき破壊をやり過ごす。
「くっくっく……今回は何とか生き延びたか。だが、次はどうかな? 貴様の未来を見る目には何が映っている? 細切れになる己の姿か? 滅び消え去るこの世界か?
 確定した絶望に向かって進むしかない哀れな存在。惨めなものだな」
「……確かに、このままではまずいですね」
 ナナルゥが冷静に呟く。状況を的確に見据えてのその言葉は、重い。
「いつまでも連発出来る技では無いでしょうけれど、相手の力が尽きるまで私達が耐え切れるとも思えません。技後の隙を突こうにも、今の私達では防御に全力を注がねばならないのでそれも不可能です」
534あなたを見つめる私・後編 37/50:04/12/20 09:04:07 ID:WLOM51Va
「くそっ!! 『聖賢』は、自分の力は『世界』と同等だって言ってたぞ!?」
「確かに『聖賢』は『世界』と同等、それどころかそれより遥かに上の力を持っています。
 ですが永遠神剣の力を上手く引き出せないユート様と、肉体を完全に手中にし100%力を発揮する事が出来る『世界』では、明らかに向こうの力の方が上です」
「……俺って、情けない?」
「いえ。情けないというならば、それは私も同様でしょう。ですが、独りでは出来ない事も二人ならば出来るものだと私はユート様に教わったつもりです」
「そうか。そうだったな」
 見つめ合う二人。
「私もいますからね。仲間外れにしないで下さいね」
 こんな場面にも関わらず二人だけの世界に入り込みそうなところに、時深も慌てて割って入る。
 それは多分にして嫉妬交じりの行動ではあったが。
「それにしても、どうやって戦いますか、ナナルゥ?」
 油断無く構えながら、時深はナナルゥに問いかける。
「正面からぶつかり、勝ちます。この戦いは……この戦いだけは真正面から勝利しなくては意味が無いです」
「それで勝てると思うのですか?」
「この戦いがユート様の出発点、ユート様がエターナルとして歩む長き道のりの最初の一歩。
 なればこそ、正面から勝利を掴みとらねばいけません。この戦いでユート様の進む方向が大きく決まってしまいますから」
 その『夢幻』の名の示す、己を容易に掴ませずに相手を観察し、夢或いは幻の如く敵を惑わせ虚を突くのとは180°逆の戦い方。
 それは『夢幻』の、ナナルゥの最も不得手とする戦い方であろう事は容易に察しが付く。
「この戦いに、ファンタズマゴリアがかかっていてもですか?」
「大丈夫です。ユート様は勝ちます。『世界』にも、自分自身にも」
535支援:04/12/20 09:04:21 ID:2/Zj0Msv
ノシ しーち!
536あなたを見つめる私・後編 38/50:04/12/20 09:08:12 ID:WLOM51Va
 最も不得手とする戦い方に迷わず身を投じる事が出来る根拠は何か。
 全てを観察し在り様を捉える、観察者ナナルゥが最も確信を持って認識出来ているものがその根拠。
 それは自らの持つ悠人への絶対の信頼。
 観察者ナナルゥの行動の根源にして指針である観察力がそれを見出したならば、そこには迷いも躊躇も存在する筈が無い。
 それこそが、観察者の貫く道なのだから。なす事はただ赤誠を尽くすのみ。
「……ふふっ、そうですね。ですがそうすると私達はどうするのですか?」
「もちろん、共に戦います。私とユート様は、一心同体ですから。トキミ様は抜けますか?」
「一心同体ですか。なるほど。私も仲間に入れていただけるのであれば、抜ける手はありません。負けませんよ『世界』にも、そしてナナルゥ、あなたにも」
「?」
「……その、なぜ自分が競争対象に含まれるのか心底解らないという表情が、逆に敗北をこれ以上無く感じさせますね……」
 うなだれかける時深に、今度はナナルゥが問う。
「あの周囲の刃、何本までなら防げますか?」
「三本……いや、四本はぎりぎりでいけます」
 『世界』の実力は時深の予想以上だった。
 未来を読み、弾けるのは幾ら頑張ってもそこが限界だろう。
 『世界』の言う通り、攻撃が見える事とそれに対応出来るという事は同義では無い。加え、今の『世界』の攻撃は、未来の可能性を読むだけで一苦労だ。
「了解です。では、残り二本は何とか私が」
 共に戦うとは言っても、それは一歩引いた場所から戦況を見渡し、悠人が自分の持ち味を完全に発揮出来るようにフォローするという意味。
 自分は露払い、或いは脇役となり、舞台の主役にはならない。
 それが観察者『夢幻』、そしてナナルゥの戦闘方法であり、矜持の形でもある。
537あなたを見つめる私・後編 39/50:04/12/20 09:12:07 ID:WLOM51Va
 かり、とナナルゥは右親指の腹を齧り、血を出した。
 その血を使って左の掌に呪印をしるし、左掌の前に出来た空間の歪みから、『消沈』を取り出す。
 呼び出された『消沈』は、周囲の状況にびびる。
『(´・ω・`) … → (; ̄Д ̄) !? 』
 無理も無い。『消沈』は第七位神剣。そしてこの場には第二位神剣『世界』、『聖賢』、第三位神剣『時詠』、『夢幻』といった上位神剣が集って戦っているのだから。
 ナナルゥが、並み居る上位神剣を前に恐怖する『消沈』に語りかける。
「行くも地獄、行かぬも地獄。どうせ倒れるのなら前のめり」
『Σ(゚Д゚;≡;゚д゚) !?』
「……大丈夫なのですか?」
「大丈夫です。『消沈』も私のマナで強化しますし」
 ナナルゥは『消沈』にマナを込める。
 ドーピングの様に『消沈』の気分が高揚していく。
『ヽ(゚∀゚)ノ アヒャッヒャヒャ』
「以前は『消沈』に支配されかけましたが、今はもう完全に私が『消沈』を支配していますから」
「……『消沈』が少し哀れに見えてきました」
538あなたを見つめる私・後編 40/50:04/12/20 09:16:12 ID:WLOM51Va
 ナナルゥは続けて朗々と詩を詠むように魔法を唱える。
「この地を守っていた龍の魂よ、この世界を救う為に今一度力を貸して下さい。
 炎の具現ガリオーン、水の具現サードガラハム、大地の具現ネセトセラス、闇の具現クロウズシオン!!」
 大気中のマナが膨れ上がり、四体の龍の形を成す。
 その中には、悠人が以前手にかけてしまったサードガラハムの姿もあった。
「サードガラハム!!」
 悠人が思わず叫ぶ。
 サードガラハムは、悠人を見て満足げに笑ったように見えた。
「いい目をするようになった。長くこの世界が堕していくのを見てきたが、最後に見たお前の姿は希望の始まりだったのだな。嬉しく思うぞ」
 悠人はそんな声を聞いた気がした。
 錯覚だったかも知れない。そうだったとしても、悠人が決意を再確認するのには十分過ぎるきっかけだった。
「ああ。もう誰も傷つけさせやしない。絶対にこの世界を、みんなを守ってみせる!!」
 ナナルゥの魔法が続く。
「四つの力をもって、『夢幻』のナナルゥの名においてここに召喚します。来て下さい、守護者アシュギス!!」
 四体の龍の形のマナ光が眩しく光輝き、合わさり、一体の龍の形を成す。
 光が収まった時、強大な存在感を持った白い龍がそこにいた。
539あなたを見つめる私・後編 41/50:04/12/20 09:20:05 ID:WLOM51Va
 余裕の表情を浮かべてただそれを見ていたシュンは、純白の龍を目にしても馬鹿にしたように笑うのみ。
「フン、我も甘く見られたものだ。龍程度で我をどうにかできると思ったか? 全てまとめて吹き飛ばしてやろう。
 集えマナよ……我に従い、全てを爆炎で包み込め!! オーラフォトンブレイク!!」
 地獄のオーラ光が辺りを包む。
 アシュギスがそれに対抗してフォトンブレスをはく。
 全方位を破砕する『世界』の必殺技オーラフォトンブレイク。これを避ける事は不可能。防御を固めていても状況は悪化するばかり。
 ならば。
 避ける事が不可能ならば、突っ切る。それが三人の選択。
 この世界の守護龍の力を集中したフォトンブレスに、悠人、ナナルゥ、時深の三人は迷う事無く飛び込んだ。
 フォトンブレスの威力に乗り、オーラフォトンブレイクを相殺しながらシュンに迫る。
「小賢しいッ!! うおおおおぉっ!!」
「ギャオオオオォッッ!!」
 破壊力を増すオーラフォトンブレイクの前に、アシュギスは金色のマナと化す。
 しかしアシュギスは守護者の名の通り、圧倒的破壊からこの世界を救う三人のエターナルを守りきった。
「目障りだ!! おとなしく消滅しろ!!」
 宙に浮く六本の刃が、三人を目がけて襲い掛かる。
「ナナルゥ!!」
「了解です」
540あなたを見つめる私・後編 42/50:04/12/20 09:24:49 ID:WLOM51Va
 ナナルゥが自らの姿を模したマナ人形を、ダミーとして作り出す。
 分身とも見えるほど精巧な人形は、次々と刃に貫かれて霧散する。
 予定通り。
 一度に複数の攻撃を受けきる事は不可能。
 ゆえに、僅かでも攻撃のタイミングをずらさせる。
 反射的に体がベストな選択肢を取る程『夢幻』は戦いが得意では無い。
 戦いが不得手な事実を認めるからこそ、取るべき戦い方も見える。
 無我の反射反応に頼るのでは無く、自覚的に相手の攻撃を認識し、行動を決定する。
 一瞬が命取りになる戦闘、そこに生じる致命的な思考、判断のタイムラグを己が武器たる卓越した観察眼と判断速度で埋めていく。
 行動も素早くなければ間に合わない。魔力を体中に漲らせ、魔力によって体を動かす。
 いざとなれば、肉体の限界を無視する事も、思考回路さえ無事ならば骨や神経が切断された体を動かす事も可能。
 それだけの用意をしてもなお、『世界』の攻撃を回避しきれる保障は無い。
 認識により戦う、それは転じて認識する間も無くやられればアウトという事でもある。
 ナナルゥは観察者の目を持って刃を見る。
 軌道、威力、速度、全てを見切り、対応する。
 正面から受け止める事は不可能。純粋な力の差がありすぎる。
 だから力の方向を曲げ、刃の威力を利用して吹き飛ばす。チャンスは一瞬一度のみ。それを確実に、見切る。
541あなたを見つめる私・後編 43/50:04/12/20 09:28:30 ID:WLOM51Va
 まずは一本。
 右方向から喉元を狙う刃を、逆手の『消沈』で迎え撃つ。
 針の先程の接触面で刃の先端と先端が掠る様に触れ、『世界』の刃の軌道が逸れて喉の前を疾風が通り抜ける。
 斬られたのは、首の皮一枚。
 その瞬間にも迫る二本目の刃。
 右に突き出した『消沈』を今度は順手で滑らせる。
 剣を持ちかえている時間は無い。前後に刃のある『消沈』ゆえの戦術。先の迎撃を逆手で行ったのはこの為だ。
 正面から左胸の心臓を狙う刃に『消沈』が辛うじて追いつき、触れ合う。
 軌道を逸らしても勢いは止まらない。
 曲げられる角度は僅かなもの。僅かな安全地帯へと限界まで体を捻って、避ける!!
542あなたを見つめる私・後編 44/50:04/12/20 09:33:38 ID:WLOM51Va
 時深は時詠の目を持って刃を見る。
 次の瞬間の刃の軌道を見、それを弾く。
 上位神剣である『世界』の力は強く、未来は簡単には見えない。
 以前対峙した時とはもはや相手の完成度が異なる。
 力を総動員して未来を見る。あらゆる可能性を読み、動く。
 右斜め下と左から心臓を、正面から眉間を狙う刃を認識する。
 右手に持った『時詠』を右下から左方向へと一気に走らせる。
 一振りで一本!! 二本!!
 返す刃で跳ね上げるように三本目を弾いた瞬間、その三本目の刃の真後ろにあった四本目を初めて認識した。
 しまった、と思う間も無く時深の眉間に刃が迫る。
 時深は群を抜いたスピードを持っている訳でも、強靭なオーラのガードを持っている訳でも無い。
 だから実際の目で刃を認識し、それから避けるのも防ぐのも不可能。
 眉間を貫く『世界』の刃が、未来を見る目に映った絶体絶命の時、ナナルゥの指がくいっと動いた。
 ごきり。
 時深の頭は真後ろに引っ張られ、眼前を刃が掠っていった。目標を逃した刃が勢いを止めきれずあらぬ方向へと飛んでいく。
 全ては一刹那。
543支援:04/12/20 09:35:17 ID:FNe6ZEX8
だしときますね〜
544あなたを見つめる私・後編 45/50:04/12/20 09:37:58 ID:WLOM51Va
「……た、助かりました」
 首が痛くはなったが、死なずにすんだ。
「今のは?」
「魔力の糸で、トキミ様を動かしたのです」
 見れば、ナナルゥの指と時深の後頭部が細い魔力の糸で繋がっていた。
「とりあえずはありがとうございます」
「いえ。互いに助け合い、補い合う。それが仲間ですから」
 淡々と、けれども即答する。それが自然に語られるという事は、それが完全にナナルゥの中に根付いたという事。
「ですが、悪用しないでくださいね?」
 魔力の糸に操られ、へろへろと踊る自分の姿を想像した時深がナナルゥに言った。
「…………はい」
 数瞬遅れた返事が不安だった。
545あなたを見つめる私・後編 46/50:04/12/20 09:41:38 ID:WLOM51Va
「うおおおおっ!!」
 ナナルゥと時深のフォローを受け、全力で突っ込む悠人。
「でやああぁーーーーっ!!」
 技術も何も無い。
 持てるマナを全てオーラに変えての一撃。
 マナとは命。即ちこの一撃は悠人の全ての思いを、魂を込めての一撃。
 佳織、ナナルゥ、時深、光陰、今日子、共に戦ってきたたくさんの仲間達、斬り捨ててきたたくさんのスピリット達、自分を支えてくれたたくさんの人達、そして瞬への、全ての思いを乗せての一撃は……

 『世界』を砕き、シュンを切り裂いた。

 あっけなく。
 本当に驚くほどにあっけなく。
 断末魔の叫びすら無く、『世界』は煌き、掻き消えた。
 再生の剣もまた砕け、ファンタズマゴリアは救われた。
 聖ヨト暦の開始と時を同じくして始まった永きに渡る戦いは、ついに終わった。
546あなたを見つめる私・後編 47/50:04/12/20 09:46:28 ID:WLOM51Va
 ファンタズマゴリアの新たな出発を祝福するかのような金色の光の中、悠人が倒れた瞬に向かって寂しげに呟く。
「俺は自分だけを信じ、他の全てを拒絶していた。お前は自分だけを信じ、他の全てを支配しようとしていた。
 そして俺達は共に、信頼に足る佳織を自分だけのものにしようとした。俺達は似た者どうしだったのかも知れないな」
「……僕を貴様と一緒にするな。反吐が出る」
「!?」
 エターナルとしての生命力ゆえか、或いは重ねた業ゆえか、瞬は明らかな致命傷を受けながらまだ息絶えてはいなかった。
 苦しげにひゅうひゅうと息を吐きながら、それでも悠人を忌々しげに睨む瞬の眼光は衰えていない。
 だがそれは『世界』の眼光では無く、秋月瞬の眼光であった。
「貴様は何かを悟ったつもりでいるようだが、ならば貴様の見つけた答えとやらを聞かせてみろ。
 どうやって佳織を手に入れ、守ってやるというんだ、貴様如き疫病神が」
「手に入れるだの入れないだの言うのがそもそも間違いだったんだ。
 佳織はずっと手を差し伸べてくれていた。自分の元に無理矢理引き寄せようとするんじゃなく、手をとって共に歩んでいけばよかったんだよ」
「……ふん、甘ったれた考え方だ」
「人は誰かに支配されて生きてるんじゃない。自分の力で精一杯に生きてるんだ。
 今だから解る。相手をあるがままに認める事。その上で相手を愛する事。それが大切だったんだ。
 そうしなければ、本当の意味で人と一緒に歩いていく事など出来やしない。守る事と支配する事は違うんだ」
「……」
547あなたを見つめる私・後編 48/50:04/12/20 09:50:11 ID:WLOM51Va
「佳織も自分の意思で道を決め、自分の足で歩いていった。俺はそれを誇らしく思う。
 瞬、お前は気付いてたか? 佳織の強さに。見えてたか? 佳織の一人で立つ姿が」
「……」
「理解、出来たかよ」
「……図に乗るな。僕が貴様から教わった事など無い。何一つ無い。……僕が、自分自身の力で学んだだけだ」
「それでいいさ」
「最後の最後まで、気に入らない奴だ。僕は貴様のあるがままを見た上で言おう。悠人。僕は貴様が、大嫌いだ」
「ああ。瞬。俺もお前が、大嫌いだ」
 最後の最後まで憎まれ口をたたきあった二人の別れは、しかし最後の最後で笑顔だった。
548あなたを見つめる私・後編 49/50:04/12/20 09:55:16 ID:WLOM51Va
「お疲れ様でした」
 ナナルゥの赤心そのままの笑顔に、悠人も笑顔を返す。
 こうして聖賢者ユウトと観察者ナナルゥのファンタズマゴリアでの戦いは幕を閉じ、二人の永遠の戦いの幕が開けた。
549あなたを見つめる私・後編 50/50:04/12/20 10:00:11 ID:WLOM51Va
 後に。
 ファンタズマゴリアでは一冊の本がベストセラーとなる。
 神剣に半ば心を呑まれていたスピリットの少女が、ちょっと抜けたところのある、けれど優しく勇敢な少年と出会い、自分の心を見つけ取り戻していくこの物語の作者はヒミカ・ラスフォルト。
 ヒミカ・ラスフォルトは、この作品に関する質問に対してこう答えている。
「私には彼と彼女の細かい部分、ほんの些細な部分まではっきりと思い描けます。まるで過去にあった事を思い出しているかのように。だから私はそれを文章にするだけで良かったんです」
 そして物語の最後、他の全ての世界を救うべく無限の戦いに身を投じた二人のその後については、こう答えている。
「二人はずっと幸せに決まってますよ。誰よりも深くお互いを理解し、心から愛し合っていたのですから」
 と。

 なお質問に答えた後、ヒミカ・ラスフォルトが、
「今日これから人と会う約束があるので」
 と言い、嬉しそうに出かけていった事を付け加えておこう。
550あなたを見つめる私・あとがき:04/12/20 10:02:45 ID:WLOM51Va
ありがとうございました。
ヒロイン、内容、他色々、かぶったとわかった時には本当にどうしようかと思いましたが、開き直りました。
支援くださった方、本当にありがとうございます。(それにしても、平日の午前中にこんなに人がいるとは……。人のいない時間帯にこっそりやってるつもりだったのですが……意外過ぎて何だか嬉しかったです)
この拙いSSを読んで下さった方、そして黙ってスルーして下さった方へ心からの感謝を。
又、これまでの作品(SS,AA等)から勝手に色々と拝借しております。優れた作品を生み出した方々にも心からの感謝を。

内容の批判を頂ければとても嬉しいです。
前回の貴重なご意見(神剣強すぎ、仲間のザコスピ出番少ない等)が、この作品を書く大きな一要素になりましたので。
破壊の死神とあえて展開を似せて構成し、比較を考えた部分もありますが、正直なところ今ではもう恥ずかしいので前作は読んで頂きたくなかったり。
今回も批判、ご意見、ご感想、誤字脱字、言葉の使い方がおかしいよ等の報告、ハリオンマジック等のご指摘、頂けたならばそれに勝る光栄はありません。
5515スレ226:04/12/20 10:05:08 ID:WLOM51Va
ちょっと色々。

作品以外の場で自分で内容について書くのもみっともないのですが、本当に書きたかったのは実はナナルゥではなく、もちろんオリジナル神剣でもなく、後編のスピリット隊VSエターナルの同時進行三戦だったりします。
小説版アセリアを読んで、エターナルがあんな負け方をするのは納得いかない!! と思い、その不満を自分で解消しようというある種傲慢な考えがこのSSのきっかけでした。
それに加えてヒミカとセリアの関係とか、ヒミカのナナルゥに対する葛藤とか、ファーレーンのスタンスとか。

メダリオについて。前編であまりにも好評だったのでびくびくものでした。
作中で時深もちょっと触れていますが、個人的に、彼は凄く強い存在だと思います。(前回エターナル強すぎとかアドバイス頂きましたし。……それは今回もあまり変わってませんが)
が、その性格ゆえに鋭さと同時に脆さも持ち合わせていて、負ける時はころっと負けてしまうんじゃないかなーと。
ミトセマールとかテムオリンとかも同じく。
ゲームでもそうだったと思うのです。つぼにはまるともの凄く強力だけど、相性によってはあっさり、みたいな。
その意味で、『夢幻』という存在の性格(というか戦い方)が固まった時点で、『夢幻』が彼らの天敵化してしまいました。
メダリオ、テムオリン好きな人、ごめんなさい。

眼球形神剣について。オルファの『理念』とか、ウルカの『冥加』についてるのって、目っぽくないですか?

今回、見るという事、目というもの、赤という色をちょっと強調して書いてみました。タイトル他、微妙に複数の意味を掛けている言葉も自己満足的にぽつぽつと。
その辺も気にして頂けたら嬉しいです。
それでは、名無しに戻ります。
お付き合い頂き誠にありがとうございました。
552名無しさん@初回限定:04/12/20 11:03:24 ID:4kNCEy6R
>>551
5スレ226様、お疲れ様でした。
対ロウ・エターナル戦、熱いですね。
最初にエターナルの強さをメダリオ戦で存分に
アピールしていただけにスピ達がひかって見えます(光&今日も)

GJ!!でした。
553憂鬱の人:04/12/20 11:18:40 ID:eDCtqWSL
226氏、乙でした!
感想はまた後ほどで、ゆっくり書きますが、とりあえず失礼して次スレの準備に
入らせて頂きます(汗)

という訳で大至急テンプレ案募集。
点呼ネタは、ひとつ考えてみたんですが、「最も心に残るフレーズ」と言うのはどうでしょうか。

小ネタ、SSの一場面、カキコ問わず、短めにまとめて。出来れば何スレの○○○と場所も併記して。

例・4スレ669「彼女はユート様さえいてくれれば幸せ」

表エス儲の私はこのフレーズでハートにエレメンタルブラストを食らっちまいましたw
                     
                     ↑
                  こんな感じで。
554名無しさん@初回限定:04/12/20 11:44:33 ID:FDWdH5Tr
GJ!!燃えたよ!涙が出るほどに!前回の時から思ってたけど、消沈ラブリーすぎだ!
萌え!
555名無しさん@初回限定:04/12/20 14:18:48 ID:eDCtqWSL
改めて長編無事完結お疲れ様でした、226氏。
あなたのロウ陣営に対するアツい思いがビンビン伝わってくるSSでした。
前作「破壊の死神」終了後にあったレスについては私も「これはちょっと...」と眉をひそめるようなものが有りましたが
前編感想>>115でも言ったように、あのレスもまた「破壊」をきっちり読んだ人の偽りない「感想」でしょう。
まあ、私も感想レスで凹むのは日常茶飯事ですがw
貴方がそれを充分に消化し、復活した事。凹んだままで終わらなかった事。本当に良かったと思っています。
その点ではXUSEスレの発言もまた「読んだ人」のものではないだろうか、と私はポジティブに捉えてます。
私の根が楽天的なせいかも知れませんが、そのかわり投下する以上は「スルーはさせない!」という気合いを入れています。
名無しさんに戻っちゃうのは残念ですが、いずれまた何かの形で再会出来ると信じてます。
今の貴方の姿を見て、傷だらけのファーレーンもきっと微笑んでいる事でしょう。
556名無しさん@初回限定:04/12/20 14:56:35 ID:ayEO81jg
>550 5スレ226さん
長文の投稿お疲れ様でした。
血と肉片の舞うスピ隊VSエターナル戦では、傷の痛々しさから仲間への想い、
勝利の喜びまで三戦三様の燃え展開にモニタの前で思わずガッツポーズを取ってしまいました。朝から。
自分の中では特に、戦闘中に大きくレベルアップする年少組に殊勲賞をプレゼントしたいですね。
これが書きたかったんだ! という迫力がこれでもかと伝わってくるとともに、
もちろんナナルゥと『夢幻』、『消沈』にもしっかりと熱い活躍を見せていただくことができて大満足です。
オリ剣に真っ向から挑み、より高みを目指して完成させた物語、噛みしめるように味わいました。
557名無しさん@初回限定:04/12/20 19:07:21 ID:o57X0gIm
>5スレ226様
超GJ!!!

こういう絶望的な状況下で頑張って勝利を収める姿ってホントうつくすいですね。
読みながら「hallelujah」流してむせび泣いてました。

それにしても破壊の死神の時もそうですけど、
神剣がいいキャラしてますよねぇ。
顔文字で感情表現という画期的な萌え表現にも感涙です。
次回作も楽しみにしてます。
558名無しさん@初回限定:04/12/20 20:41:59 ID:g3TMT6q7
や、やっと仕事から直帰した……(汗
仕事中続きが気になってしょうがなかったですよ、まったくw

まずは4時間に渡る投稿、お疲れ様でした&G.J.でした、>>550 5スレ226さん。
3倍オルファリル。クォーリンさん、年頃の娘さんが「くそっ」なんて言っちゃいけませんね。
ミトセ姉さん、強すぎます。もう少し手加減してください、ファーとセリアには。
AA交えての戦闘シーンは感動していいのか笑っていいのかw
血と肉の匂いが臭ってきそうな描写の中で自己犠牲の愚劣さを語るスピリット達には
サモドアの悠人がしっかり生きているんだなぁとしみじみしました。
今日子と光陰も無事ハッピーエンドを迎えて幸せそう。
そしてラストバトル。ただただ『消沈』に尽きます、何もかもw
あ、あとサードガラハムもかっこいいし……なんて言ったらいいのでしょう。
作品を通じて登場するモノがみんな生き生きと動いているんですよね。
今までの経緯を(ゲーム含めて)考えるといかにもこう行動するだろうという自然さが
全体に滲み出ていて、とても「楽に」楽しめました。
それでは、もう一度じっくり読み返してきます。
追伸:名無しに戻るのなんてもったいないのでもっと作品を見せてください、「見つめる」さんw
559テンプレねた:04/12/20 20:59:42 ID:g3TMT6q7
長編短編目白押し、遅レス覚悟の感想レス。
迂闊に広げた小ネタリレー、たちまち生える常緑の木。
アイスバニッシャーでもバニシングハイロゥでも止まらない。
さあ、次にイグニッションを点火するのは一体誰だ?

そんな感じで未曾有の大盛況を迎えているここは第二ファンタズマゴリアまたは
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド、もう9。
560名無しさん@初回限定:04/12/20 21:02:59 ID:g3TMT6q7
>>553 憂鬱さん
点呼ネタ、賛成に一票です。
ただ纏まらない方は簡略してもよいというのではどうでしょう?
561名無しさん@初回限定:04/12/20 21:40:40 ID:LUEKYvfq
> 5スレ226氏
改めて、おかえりなさい&お疲れ様です。
熱いですねぇ。笑いも交えつつも。
ちょっと反動が強く出過ぎているあるいは無理してるような
気もしつつも、諦めるのではなく立ち向かう方向で、
その意気や良し! ですね。
少しずつ自らの内でのバランスを探して行って頂ければ、と願います。
エターナルどころかスピリットですらない人の身の我々ですが、
一刻を争う危機に晒されているわけではないですから。
きっと、氏はこのスレを見つめていることでしょうが、
スレもまた、あなたを見つめていますよ、きっと。

と、ちょっとズレた感想のようなそうでないような何か。
562名無しさん@初回限定:04/12/20 21:46:37 ID:YGgl7rHa
スピリット達の力。確かに「Spirit」でした。いや、「Spirits」ですね。
仰るように、悠人達よりも、スピリット達と光陰今日子に眼差しが向けられているように感じました。
熱さ痛さも悲願まで。それぞれがそれぞれの責を果たし、手を取り合える。そんな結末。良かった。

エターナルが永遠ならば、この世界、皆の住むファンタズマゴリアも永遠であれかし。


任侠ドーピング消沈ワロタ 
ちまちま考えてたEナナルゥ話しにちょこっと被りましたw
帰ってきて未読80越えにはビビったw
563名無しさん@初回限定:04/12/20 21:53:38 ID:YGgl7rHa
点呼ネタはそれがいいかと思います。オレはあれかなぁ……

アニメは、今更ながら悠人の年齢をみて、すっげえ違和感があったり。どうも二十歳くらいの青年の
イメージが焼き付いてますです。そりゃ元々学園二年生だけどさw 性年とか言うな〜w  
期待はメダリオ並みと言おうか、ヒミカの胸並みと言おうか。
564名無しさん@初回限定:04/12/20 22:03:31 ID:qcqqEvmg
>>551
〈夢幻〉や〈消沈〉もそうですが、ラストでの悠人と瞬の会話で不意に泣きそうになってしまったり。
ええ、瞬も好きなんです、はい……歪んではいるけれど彼は一途だから。
アシュギス召喚格好良いなぁ。燃えます。
何だか自分の中でさえ、今書いているものが霞んでしまいました(ぁ
実を言えば後半の展開が類似していて、尚且つ自分の書くものより燃えるものを投下された時点で、既に敗北感で一杯(苦笑
何はともあれ、お疲れ様でした。
565名無しさん@初回限定:04/12/20 22:28:21 ID:LUEKYvfq
>>563
>ヒミカの胸並みと言おうか。
どれどれ、じゃ、サラシを外してみうわごめwせdrftgyとりぷるswg;@:
566名無しさん@初回限定:04/12/20 23:21:28 ID:g3TMT6q7
「ナナルゥ、貴女とはいつか全力で戦いたいと思っていたのよ」
「では、ヒミカの胸並み拝見といきます」
「…………いまアンタ、わざと間違えたわね…………」
567名無しさん@初回限定:04/12/20 23:47:01 ID:siiDnEgX
先鋒:ユート&レスティーナ
  ヘタレ&王族対決:あまりの扱いに凹む二人を背景に、王とはかくあるべきやと激論を交わすレスティーナとントゥ
              しかし結局は言葉が通じずノーコンテスト

次鋒:ヒミカ
  はじめはまともに戦っていた二人だが、徐々にエスカレートし互いのテクニック対決に(何のだ
  そのまま二人同時にエレクトし恍惚状態に…ノーコンテスト

中堅:ハリオン
  方や『それは剣と言うには あまりに大きすぎた 大きく分厚く重く そして大雑把すぎた それは正に鉄塊だった』
  方や『それは乳と言うには あまりに大きすぎた 大きく柔らかく暖かく そしてたゆんたゆんすぎた それは正に肉塊だった』
  満場一致でハリオン勝利

副将:オルファ
  二人の熱い戦いにヒートアップする一同と、別の意味でヒートアップする一人
  戦いが最高潮に達したところで辛抱たまらんとルパンダイブする坊主
  直後、戦っていた二人をも巻き込む、かつてないほどの雷撃が…ノーコンテスト

大将:時深
  『時間を戻します…… キラー・ク○ーン バイ○ァ・ダスト!!』
  『いくぞっ! 死の世界を見せてやる 貴様にはさぞ似合うだろうさ 世界(ザ・ワー○ド)ッ! 時よ止まれ!!!』
  『私の時間を加速させよ 一瞬が無限となるように! ステ○ウェイ・トゥ・へブン!!』
  激闘の末、時深の勝利となるが宇宙が一巡したためノーコンt(ry


正直すまんかったorz
568名無しさん@初回限定:04/12/21 00:16:43 ID:xhcCWaKX
要約すると、
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
ってことね>ノーコンテスト

だがあえて言おう、肉塊とか言うなー。どっちかって言うと本懐?オレノ

そー言えばヒミカの顔グラ見た時、キャスカ?とか思ったなぁ。
569名無しさん@初回限定:04/12/21 00:24:30 ID:o1uOHmX3
>>551
GJ!おつかれさまです。ロウエターナルとの熱き戦いを楽しませていただきました。
笑いと萌えが共存するバトル・・・イイ!
てゆーか、アシュギス先こされたー(笑)・・・うん、早く続き書かないと。
何はともあれ完結おめでとうございます。
570名無しさん@初回限定:04/12/21 16:22:01 ID:SpvR7V+m
永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜ナナルゥとあそぼ!〜
2005年春発売予定 価格11760円
571名無しさん@初回限定:04/12/21 16:35:55 ID:8TjFrnHY
>>570
チッ、足元見やがってからに。それでも金出そうかと考えてる馬鹿がここにいるではないか。
…断腸の手にかかるとこうなるか?

永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜Vol.1 ネリー編〜 2005年1月発売予定!以後1月1本ずつ続刊!
永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜Vol.2 シアー編〜
永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜Vol.3 セリア編〜

永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜Vol.8 ファーレーン編〜
永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜Vol.1.5 ネリー&シアー特別編〜
永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜Vol.3.5 セリアとヒミカの百合箱〜
永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜Vol.7.5 ニムファー詰めちゃいました!〜

(ヘリオン編は永遠に出ません。)

以上それぞれお値打ち価格2,100円でのご奉仕!5本ごとに収納用ケースがついてきます。
572名無しさん@初回限定:04/12/21 17:47:01 ID:RajvPllk
>570
この高価格……ひょっとして、

いいななるぅ
1 1 7 60

と読めということなのか!?

>571
じゃ、
永遠のアセリア雑魚スピFanBOX 〜Vol.5.5 天然ハリオン・隠れナナルゥどっちがおっきい?〜
買い物籠に入れてきますね
573名無しさん@初回限定:04/12/21 18:27:03 ID:V57kOAEk
>>571
それはAlpha誤爆しない10連装以上のドライブ探せってことか?
('A`)…はぁ、面倒
(購入検討すっ飛ばして快適な雑魚スピライフの算段をする廃雑魚厨)
574名無しさん@初回限定:04/12/21 20:35:25 ID:Eyxut9Dd
ある冬の日こと。悠人は第二詰所の自室で一抹の物足りなさを感じていた。今やすっかり環境が整ってきて不足している品などないはずなのに、何かが足りない気がしてしまうのだ。
「うーん、何だろうなぁ…」
部屋の中を見回すと、テーブルの向こうにベッドが見える。その上では毛布がくしゃくしゃと丸まっていた。視界のその光景を見て、悠人は「足りない何か」の正体に気づいた。別に第一詰所と第二詰所の違いではない。
「そうか…うーん…この際だから、ちょっと試してみるか、雰囲気だけでも」
そう独り呟くと、悠人はテーブルを引っくり返して『求め』を手に取った。

数時間後。若干の試行錯誤の後、どうにか雰囲気だけはできあがった。
予備の毛布を借りてきて下に敷き、足を切り詰めたテーブル(後で金具で繋げて戻せるようにしっかり保管した)を設置、さらに毛布を被せ、どうにか調達してきた板を載せた。
そう、炬燵だ。さすがにこんなことにエーテルを使うわけにはいかないので熱源はなし。まぁ、暖炉で部屋自体は温まっているので、良しとする。雰囲気を味わうのが目的だしな。
「うん、こんなところだろう。うーん、こうなると蜜柑と煎餅が欲しくなってくるなぁ…」
蜜柑は…何か似たような果物ぐらいはありそうだな。煎餅は…難しいかなぁ…ヨフアルで妥協するという手もあるけど、ここはやっぱりしょっぱい物が欲しい気がする。
悠人がさらなる雰囲気再現に思いを馳せていると、ドアがノックされた。
「ユートさま〜?」
ハリオンの声だ。さっきからドタバタしてたので様子を見に来たのだろう。丁度いい、蜜柑と煎餅の代替品について相談してみようか。
「入っていいぞぉ」
「失礼します〜」
入って来たハリオンは一瞬不思議そうな顔を浮かべ、それから瞳を輝かせた。常に無いほどに。
「あらあら〜? それは〜何ですか〜? なんだか〜とっても幸せな予感がしますぅ〜」
「あ、あぁ…これはコタツと言って、本当は中に熱源を入れるんだけど…」
「まぁまぁまぁ〜、そうですかぁ〜、それはいいですねぇ〜、では〜さっそく〜」
説明を聞くやいなや部屋を出て行くハリオン。激しく嫌な予感に囚われて、悠人は突っ伏した。自作の炬燵もどきの上に。
575名無しさん@初回限定:04/12/21 20:38:23 ID:Eyxut9Dd

しばらくの間、聞こえてくる騒々しい物音を無理やり意識から追い出していた悠人だったが、いつまでも逃げ続けてもいられず、現実を確認することにした。既に物音は収まっている。
「これはまた…何と言うか…」
居間のテーブルがコタツに改造され、第二詰所の面々がくつろいでいた。お茶にヨフアル、ネネの実まで完備されてるし。
「さぁさぁ〜、ユートさまも〜♪」
「あ、あぁ…」
促されて悠人も加わる。
「あれ? 何だか微妙にあったかい?」
「水筒にお湯を入れて〜テーブルに付けてみましたぁ〜♪」
…上を行かれた。微妙に複雑な気分。
「おや? ネリーとニムはどうしたんだ?」
二人の姿が見当たらないことに気づいて、悠人が尋ねた。
「ネリーちゃんは〜…」
「たっだいまーっ!」
ハリオンが答えようとしたところで、ネリーがドアから飛び込んで来て、コタツに入った。
「お庭で〜遊んでたんですよね〜」
「そーだよー。寒いのは寒いので楽しまないとねー」
……まぁ、ネリーだしな。
「んで、ニムは?」
「いますよ〜、そこに〜」
ファーレーンの隣で横になっていた。
「ぅにぃ…」
あ、丸まった。……何と言うか、納得。
「とっても〜幸せですねぇ〜♪」
ほっこりハリオン。何だかトランプでも欲しくなってきた。言わないけど。
576名無しさん@初回限定:04/12/21 20:41:20 ID:Eyxut9Dd

そのままのんびりとした時間がどれくらい経過しただろうか。ふと、セリアが口を開いた。
「ところで、そろそろ夕飯の時間じゃないの?」
「そうですね、いつもなら」
応じるファーレーンはニムントールの髪を梳きながら。
「ねぇ、ちょっと、ハリオン! 準備は?」
至福の表情でコタツに伏せて眠っている(?)ハリオンをヒミカが揺さぶった。
「ん〜、お姉さんは〜眠いんですぅ〜、起こしたらぁ〜めっですよぅ〜」
「ハリオン! ていうか、あんた起きてるでしょっ!?」
「んもぅ〜何ですか〜? せっかく幸せな気分でしたのにぃ〜」
「ハリオン、夕飯の仕度はどうなってるの!?」
「ん〜…知りません〜…いいじゃないですかぁ〜、ヨフアルもありますしぃ〜」
満場のため息。二名ほどを除いて。

翌朝。
「くちゅんっ」
コタツに座ったまま一晩眠って風邪を引いたハリオンが発見され、コタツは撤去されることになった。

朝食後、自室に引き上げた悠人は呟く。
「やれやれ。炬燵がこんなに危険だとは。さて、俺の部屋のも片付けるとするか、雰囲気は味わったし。…でもその前に、もう少しだけ最後に」
そして、悠人が炬燵布団代わりの毛布をめくると、そこには丸くなったニムントールがいた。
577名無しさん@初回限定:04/12/21 20:43:21 ID:Eyxut9Dd
>>574-576
『緑スピホイホイ』とか何とかそんな感じで。我が内なる樹が囁くままに(w
次スレに向けて微速前進。
578名無しさん@初回限定:04/12/21 20:50:32 ID:Z3KMPgEM
こたつ【炬燵】

対グリーンスピリット捕獲用兵器の名称。
発案者エトランジェ ユート
現在特許申請中



………んなわけ無い。
579名無しさん@初回限定:04/12/21 22:23:20 ID:Eyxut9Dd
翌日。今日から悠人はまた第一詰所の住人だ。行ったり来たり、これも隊長の務めである。
第一詰所の居間に入った悠人は唖然とした。コタツだ。エスペリアが居眠りしている。お茶が三人分出ているところを見るに、アセリアとオルファもいたのだろう。しっかりヨフアルとネネの実も常備されている。
「……ん…ぇ? あ、ユート様!? すみません、ついうとうとと」
物音だか気配だかで気づいたらしく、エスペリアが目を覚ました。
「あー、それはまぁいいとして。どーしてコタツがここに…?」
「は、はい、あの…ハリオンが『とっても素敵なハイペリアの風習』と」
頭が痛くなってきた。ハリオン…お前というやつは…。
「で、アセリアとオルファがノリノリってとこか」
光景が目に浮かぶようだ。
「はい…その…(実は…わたくしもなのですが…)」
やれやれ。とりあえず落ち着こう、俺。テーブルがコタツに改造され、椅子は隅に退けられているので、コタツ以外に落ち着き場所がない。ということで、座ろうとして布団というか毛布をめくる悠人。
580名無しさん@初回限定:04/12/21 22:25:22 ID:ZHT4BaOx
やられたw こたつネタはあったんだよなー。つーかほとんど変わらない。そのうち書くかね……
ってその前にあれ書かんと。

セリアさんの溶け具合はどんなもんでしょうw
581名無しさん@初回限定:04/12/21 22:26:23 ID:Eyxut9Dd
「………ニム…お前というやつは…」
「ぅみぃ〜」
身を丸めてコタツにもぐっていたニムントールの姿を見つけた。
「えっ!? いつのまに…」
驚いて毛布をまくるエスペリア。まぁ、うとうとしている間に、だろうなぁ。口には出さずに心の中だけで悠人はツッコミを入れる。
「はぁ、どうしてそうコタツにこだわるかなぁ、ニムは。ほれ、出て来い」
ため息混じりにそう言って、悠人はニムントールを引きずり出す。ずりずり。
「ぅうぅ〜っ」
げしがしげしがしっ!
「ぐぉっ!?」
顔を引っ掻かれた。
「ユ、ユート様!? だ、大丈夫ですか?」
「くっ、あぁ、何とか。それより、水筒にお湯を詰めて持って来てくれないか」
「は、はい…?」
悠人の顔の傷を気にしながらもお湯を入れて来たエスペリアから水筒を受け取って、それをまたコタツに引っ込んでいるニムントールのほっぺたに当てる。
「ほーれ、そろそろコタツの方は冷めてきてるだろ、こっちの方があったかいぞー」
水筒を掴もうと伸びて来たニムントールの手をかわして少しずつコタツの外に誘導する。完全にコタツから出たところで、手の届く範囲のちょっとだけ先に水筒を置いた。
ニムントールがぱっと飛びついて水筒を抱え込む。またコタツに潜り込まれないうちに、悠人はニムントールを抱き上げた。
「よっと。じゃ、ちょっとニムを第二詰所に置いて来るわ、エスペリア」
そう言って居間を出て行く悠人を、エスペリアは指を咥えて見送るのだった。
582名無しさん@初回限定:04/12/21 22:27:59 ID:jqc38sO7
途中で無性に煎餅が食べたくなった訳ですがw
炬燵……セリアのツンデレ溶かしてくれないかなぁ(ぇ
583名無しさん@初回限定:04/12/21 22:29:20 ID:Eyxut9Dd

悠人が第二詰所から戻って来てみると、コタツにお尻が生えていた。もとい、エスペリアがコタツに頭を突っ込んで何やらもぞもぞしていた。ふりふりふり。……自分じゃわからないかもしれないけど、とってもえっちぃ
「…ぞ、エスペリア」
「きゃっ!? ユート様!?」
ガンッ!
やけにいい音がして、コタツの…もとい、エスペリアの尻がぽてんと倒れた。
「エスペリア!? だ、大丈夫か!?」
…大丈夫じゃなかった。
エスペリアを彼女の自室へ運んで頭に氷嚢を添えてやって居間に戻って来た悠人はしみじみと呟いた。
「どうしてお前らそこまでコタツが好きなんだ…」

やがて意識を取り戻したエスペリアが運ばれる時に意識を失っていたのを悔しがったということを悠人は知らない。
妄想もとい想像しているのと違ってだっこではなくおんぶで運ばれたということをエスペリアは知らない。
584名無しさん@初回限定:04/12/21 22:30:14 ID:jqc38sO7
凄い勢いでバッティングした(汗
>>577さんへのレスです…………
585名無しさん@初回限定:04/12/21 22:31:23 ID:Eyxut9Dd
>>579,581,583
『続・緑スピホイホイ』ってことで。
ツッコミ食らう前にエスペリアを登場させておいてみるテスト(w
586名無しさん@初回限定:04/12/21 22:42:59 ID:Eyxut9Dd
>>580
お、そいつはすまなんだ。気にせず書いてみて欲しいなっと。
まぁ、きっと何か違うだろうから。角度とか。

>>580,582
セリアの溶解はセルフサービスとなっております(w
587名無しさん@初回限定:04/12/21 23:16:48 ID:ZHT4BaOx
で、エスは何をやって?
>角度
 ポールの右か左かってくらいの差
>セルフサービス
 サ、サービスタイムはあるのですかっ!? 溶けない場合も正規料金?
588名無しさん@初回限定:04/12/21 23:27:26 ID:jqc38sO7

クォーリンは悩んでいた。
もとより砂漠地方の出身、暑さに耐性はある。
(でもなぁ…………)
目の前にはドアップで迫るエスペリアの寝顔。
これ以上近づかれたら女同士でディープなキスは免れない。
ちょっとでも首を動かすと背後に居るハリオンの吐息が首筋にかかって危険なので諦める。
足元でもぞもぞしているのはニムントールだろう。
頼むから涎だけは垂らさないでくれと強く願った。
(な、なんでこんなことになったんだろう…………)
声無き心の叫びが虚しく炬燵に響き渡った。
589名無しさん@初回限定:04/12/21 23:27:45 ID:jqc38sO7

事の始まりは簡単だ。
第一詰め所の炬燵がグリーン・スピリットの憩いの場だと聞いて来てみた。
するとそれは何の変哲も無いただのテーブル。それに毛布が被さっていただけ。
クォーリンはそれが何をするものなのかまでは知らなかった。
しかし自分もグリーン・スピリットである以上、ここで憩わねば、と思ったのだ。
そこでとりあえず潜ってみたのだが…………その後の記憶は無い。
恐るべきことだが自分はそのまま寝入ってしまったらしいのだ。
そしてふと起きてみるとこのありさまという訳である。
ラキオス中のグリーン・スピリットがこの狭い空間に大集合してしまっていた。
590名無しさん@初回限定:04/12/21 23:29:09 ID:jqc38sO7

(う、動けない…………)
クォーリンはそのままの体勢で固定されたまま、じっとしている他無かった。
それにしても暑い。気温が単純に上昇している砂漠と違い、人口密度の以上上昇は周囲の酸素も奪う。
そんなに苦しいなら飛び出すなり起こすなりすればいいと思うのだが、今はそうもいかなかった。
さきほどから周りで声がするのである。そう、光陰と悠人の話し声が。
「なぁ悠人、これは厳密には炬燵とはいわないぞ」
「そうか?突貫工事にしては良く出来てると思うけど」
「甘いな、炬燵はテーブルに蜜柑と煎餅が乗っていてこその炬燵!そうは思わんか?」
「いや……そう熱く語られても煎餅なんてないぞ。蜜柑っぽいのなら何とかなるかも知れんが」
知らない単語が飛び交っている。ハイペリアの何かについて語っているようだ。
内容もさることながら、クォーリンはその声がだんだん近づいてくるのに焦った。
(こんな状態をもしコーインさまに見られたら…………)
くんずほぐれつだらしなく寝転がっている女。
見つかってもしそんな風に思われたらマインドが限りなく0に近づいてしまうだろう。
591名無しさん@初回限定:04/12/21 23:31:15 ID:jqc38sO7

「あん?なんだ、コレ」
光陰のすっとんきょうな声に思わずピクッと反応したのがまずかった。
ハリオンが身じろいだ拍子に背中にぷよぷよと柔らかい感覚が広まる。
(…………あんっ)
思わず出かけた吐息を必死で抑えた。そう、背中はクォーリンの弱点だった。
「なんだいきなり大声出して……うん?足?」
悠人の声が訝しげに変化する。どうやら位置的にニムントールが出していた足を発見されたらしい。
「はは〜ん、誰かここで寝てやがる…………くすぐってみるか」
言うや否や光陰が何かしたとたん、寝ぼけたニムントールが頭をクォーリンの肢の間に潜り込ませた。
涎を垂らしたまま、つつーと太腿を撫ぜ上げてくる。
(ち、ちょっと、やだっ)
思わず上方に逃れようとするとエスペリアの顔が鎖骨の辺りにぶつかった。
半開きになった彼女の歯が強く当たり、クォーリンは軽く刺激を受ける。
(え…………痛……くない?)
自分に起こった反応が信じられなかった。
592名無しさん@初回限定:04/12/21 23:34:16 ID:jqc38sO7

「おいやめろよ、せっかく気持ちよく寝てるんだろ?」
「何っ?俺様の起こし方がまずいっていうのか…………そうだな、ここはお約束を行くか」
「お約束っておいまさか…………」
なんだか知らないが取りあえずニムントールへのちょっかいを諦めてくれた様だ。
おかげでこちらも三方からの攻撃が収まった。
クォーリンはほっと溜息をついたが、それが先程とは違い艶っぽく変化していることに気付かなかった。
しかし安心もつかの間。
「う、う〜ん…………」
(…………!!!)
鎖骨を甘噛みしながら吐息を吐くエスペリア。
(あっ!)
胸を押し付けながら背中をなぞるハリオン。
(あっ、ああっ!!)
そして太腿の付け根に頭を押し付けながら舌を這わせるニムントール。
(あっ、あっ、あっ、あっ…………)
三人の目覚めは別の意味でクォーリンにとっても「目覚め」だったのかもしれない。
「ひゃあああああ〜〜〜〜〜ん!!!」
「俺のお茶が飲めないって………………いうのかぁーーーーーー!!!!!」
光陰が「ちゃぶ台返し」をした正にその時、クォーリンは汗をほとばらせつつ快楽の叫びを上げた。

……その後クォーリンは二度と炬燵に近寄らなかったといふ。
593名無しさん@初回限定:04/12/21 23:36:12 ID:jqc38sO7

ヤッチマッタ…………_| ̄|○
594名無しさん@初回限定:04/12/21 23:54:19 ID:iqszQ6UZ
>>587
>エス
やはりでっちあげるの急ぎすぎたか ○| ̄|_
ニムの真似してだっこされてあやされようと目論むも
体が大きいぶん潜り込むに手間取って、
潜り込む前に悠人が帰って来た、と。

>セルフサービス
難易度が非常に高くなっております。
セリア溶解を扱っている人も存在するようですので、
場合によっては、そのようなサービスのご利用もご検討下さい(w


>>593
        ∬∬
コタツ (゚∀゚)⊃旦旦⊂(゚∀゚)  ナカーマ!
595名無しさん@初回限定:04/12/22 03:00:14 ID:GmKRGRMk
>>570
「いくら何でもヒロイン一人にその値段は高すぎだろー!」
...と、ぼやきつつ購入する自分の姿が目に浮かびます(泣)

>>571
「商売上手やなぁ、かないまへんわ」
...と、苦笑しながら購入する自分の(ry
vol.3.5 7.5 あと5.5 あたりは炬燵型のケースをキボン。
596名無しさん@初回限定:04/12/22 04:24:44 ID:/jT4347l
7.5は開けると眠りこけるニムのフィギュア(猫耳尻尾つき?)が!?
597名無しさん@初回限定:04/12/22 07:05:28 ID:qpFZw/L/
頭蓋骨型収納ケースがついてきます。
5985スレ226:04/12/22 11:01:41 ID:toq0XSdl
皆様、ありがとうございます。
こういう事をスレに書くのも何か違うと思いつつ、何も書かないのも無礼にあたると思いまして、トリガまで詰めつつ長文失礼します。
寸劇様、憂鬱様、他の皆様に励まされてしまいましたので。
えっと……落ち込んでいないのに励まされると落ち込みますw(渚@蔵)
ちょっと注意書きがくど過ぎましたかね。
オリ剣出しちゃうのは、ここでは少々異端なんですよね。補完じゃなくて創造になっちゃうので。
それが理解出来たので、そういうのが嫌いな方へスルーお願いしたのです。
スレの方々に甘えたというのも正直なところですが。(本当に謙虚なら、異端なものばっかりここに書いたりしませんw)
全否定されると直しようが無いのでさすがに凹むしかないですが、内容に関しての批判はすごく嬉しいのです。
文章を書いた経験があまり無いので、拙い事は自覚していますから。
その辺はこのスレの母体直系である「SS投稿スレッド@エロネギ板 #8改め」スレの348-360あたりに共感できたので、
それを読んで頂いた方が、私がだらだら書くよりも遥かに解りやすいかと。
加え、無責任な感想からも得るものは多々あります。言い方を変えれば、率直で素直な感想ともいえますし。
自分の中に、批判頂いても譲れない部分は当然ありますが、その確認にもなりますから。
勿論、GJと言って頂くのもすっごい嬉しいです。
実際、批評頂けなければ『あなたを〜』は出来ませんでした。
オリ剣強すぎ→『弱くても存在感があって、敵と戦い得るためには?』という事で夢幻は生まれましたし、
僅かでも喜んで頂けたのが嬉しくて出来る範囲でお返ししたいと思い、それが書く意欲に繋がりました。
5995スレ226:04/12/22 11:02:18 ID:toq0XSdl
スレでやる気とアドバイスとヒントという材料を頂き(勝手に拾い、無断でかっさらい……申し訳ない)、私が調理したという感じでしょうか。
調理がヘタでも喜んで頂けたら嬉しいです。アドバイス頂けたら努力していこうと思います。ご好意には報いたいと思います。自然な感情として。
私一人の作品ではなく、スレの皆様との共同制作という意識が強いです。勝手ではありますが。
何が言いたいかごちゃごちゃしてきたので、『消沈』に代弁してもらうと

消沈『щ(゚Д゚щ)カモォォォン』

てところです。
何か偉そうですねw

>>558
ハンドル固定しちゃうと、色々責任が絡んでくるので私にはちょっと辛いです。
2chという場での、匿名の無責任さを謳歌させて下さい。硬い文章書くのも苦手なのでw
いつもは本能レス入れてる人間なんですよ。ええ、私の書いた消沈みたいにw
その方が2chっぽくて好きなのです。
でも、しっかり見てますから。ひっそりと、いえ、「こっそりと」と書くべきでしょうかw

最後になりましたが、感想下さった方、本当にありがとうございます。身悶えするくらい感激です。
宜しければまたこの名前で文章書かせて下さい。
という事で、名無しに戻ります。長文失礼しました。
では。
600名無しさん@初回限定:04/12/22 13:11:27 ID:0Pzh9jXx
>>598
励ますというよりは、
戦いが一区切りついて城壁で佇んでいる時にウィスキーのポケットボトルをひょいと投げて渡す
ような感じだったりして(w

私も促進がてら。

本質はオリ剣ではないのだろうと思います。ここでの補完は、あったものを取り戻して補うのではなく、ないものを作り出して補う、わけで、やはり一種の創造でしょう。では何故オリ剣が焦点になるのか?
それは基礎(公式設定)からの距離ではないでしょうか。共通知識あるいは前提として、基礎の上に立っているわけですが、基礎から離れれば離れるほど、各個人の感性の違いが大きくなります。恐らく、オリキャラはさらに遠くにあることでしょう。
もうひとつ、連続性もあるでしょうか。繋がりあるいは延長線と言った方がいいかもしれません。
雑魚スピは非っ常ーっに少ない情報しかなかったわけですが、例えば、スレの中でナナルゥは所構わずお茶飲んだり忍者になったりいろいろしてましたが(w、所々で短い跳躍はありながらも、どこかしら基礎に根ざして次第に距離を伸ばしていった結果だと思います。
ところが、オリ剣はそもそも延長線どころか起点がありません。オリキャラもそう。距離の大きいことほど、人によるぶれが大きくなり、拒絶反応も大きくなる。それを出す/描く以上は、説得力・妥当性を持たせる努力が、その距離に比例して必要になる。
そういうことではないでしょうか。このスレに限らず、所謂二次創作全般に言えることのような気がしますが。

ちなみに、このスレが「SS投稿スレッド@エロネギ板」の直系かというと違うような気が私はします。指定番号部分が有意義な議論というのには同意です。
601名無しさん@初回限定:04/12/22 14:54:44 ID:HHoPqNby
あはは。話す事がなくなっちゃいました。寸劇氏の尻馬に乗っかる訳では無いんですが、折角ですから
オリ剣について少しだけ。以前信頼さんに私が吹っかけた議論、多分アレが貴方を凹ませた一因かと
いう罪悪感があって、「見つめる」にガラにもなく大マジメな感想レスを入れさせて頂きました。

持ち主の弱点を現した名前だ、とも書いた「神剣分身説」です。
実はアレは今後のSSにオリ剣が出てくる際に参考にでもなれば良いな、と思って持ち出した話です。
作中喋ってる神剣は「求め」「聖賢」がほとんどなので見逃されやすいんですが、他の神剣は全て女性です。
光陰の「因果」が喋っていれば男だったんでしょうけど。

当時信頼さんが「代償」で『静寂』『孤独』を女の声で喋らせたのは画期的な事だったと言えます。(SSスレッドの事は知りませんが)
信頼さんは「持ち主の特性反映説」を打ち出してましたが、結局のところ基礎設定、つまり何故そのスピがその神剣の
主なのか、という事を分かった上でオリ剣を出して来るのならOKと言えるのではないでしょうか。
信頼さんの言う「必然性」とはそういう意味なのでしょう。

悠人の例で言えば、何故高校でも落ちこぼれの彼が「聖賢」なのか?という事です。当然その答えは「時の迷宮」での
会話に集約されてるわけなんですが、「求め」+「無知の知」=「聖賢」って事です。
忍者ナナルゥで言えば神剣に呑まれかけている、という特性「消沈」→そういうスピは気配を消すのが得意→忍者につながったもの
と思われます。決して根拠の無い創造ではありません。
ついでに言えばオリ剣をSSに出したのは何も貴方が初めてでは有りません。
「道行」の『真実』がその一つですが、作者さんがセリフの切れハシというそれこそ「僅かな情報」から引き出した物です。
今後も試行錯誤は続くとは思いますが、あくまで神剣は「主」に仕える「従」の存在ってのを踏まえると良いのでは。
決して棚ボタ的に与えられた力ではなく。

最後に。私は好きなキャラにもっと強い神剣を持たせたい、と言うのは自然な感情だと思います。「サルヴェージ」では
ミュラー師匠がほとんどオリキャラ状態だったので断念しましたがw
602ハリオンの憂鬱1/4:04/12/22 16:10:49 ID:HHoPqNby
「うう。今年の冬はずいぶん冷えるなあ。」
懐手をしながら悠人が身震いする。
「―――お前、何年ここに住んでんだ。馴染みすぎだぞ、悠人。」
光陰が顔をしかめた。
確か、ラキオスは常春の国だったはずなのだが、異常気象というのはどこの世界にも有るもので、
この数週間は暖房が恋しくなるような日々が続いていたのである。
特に寒さに弱い緑のスピリット達は、ヨーティア特製の炬燵から離れようとしない。

「なんで私が...」後方からセリアがブツブツ不平を言っている声。
この日の宮中警護はハリオンたちの担当だったのだが、炬燵でうたた寝をしていて風邪をひいたので、
急きょ入れ替わったのだ。
「俺、あの娘苦手なんだよ。」光陰が悠人に耳打ちする。
「文句言うな、光陰。ああ見えて結構いい所もあるんだから。」苦笑をまじえつつ悠人が言う。
「おっそーい!いつまで待たせんのよ!」
王城では光陰達との交代を今か遅しと待ち構えていた今日子が眉を吊り上げていた。
「キョウコさま〜、早く行こうよ〜!」
「シアー、もうおなかペッコペコぉ〜!」
さすがに青スピリットだけあって、この寒冷のなかでも元気さの衰えない双子が左右から今日子の手を引っ張った。
603ハリオンの憂鬱2/4:04/12/22 16:12:29 ID:HHoPqNby
「あー、はいはい、仕方ないわね。それじゃ悠、あと宜しく。」
「なんだ、どっか行くのか?」光陰が詰所と反対方向に向かう三人を見て、怪訝な顔をした。
「喫茶店でお菓子奢ったげる約束してたのよ。じゃあね。」
「ネリーはヨフアルふたつ〜!!」
「あ〜っ、シアーはみっつ〜!!」
両手を掴まれたまま、顔だけ振り返って今日子がまんざらでもない表情を見せた。
「馴染んでるのは悠人だけじゃないってか。」光陰が笑った。
そう言えばハイペリア時代の今日子は、よくあんなふうに部活の後輩を連れて歩いていたものだ。
「―――へえ、喫茶店なんてあったんだ。」
なんとなく名残惜しそうに今日子を見送るセリアが小さく呟いた。

セリアの横顔を見ていた悠人は一計を案ずる。
「よし、じゃ、見回りついでに俺達も行ってみようか。」
「え?でも、ユートさま、警備の仕事が...」
「なあに、ちょっとくらい抜け出したって構わないさ。いろんな施設を見て回るのも立派な仕事だ。」
そう言って悠人は先に立って歩き始める。
「お、悠人、たまにはいい事言うな。隊長様の言う事は聞かなきゃダメだぞ、セリア。
ハイペリアではこういうのを「サボリ」と言ってだな、精神鍛錬には欠かせないとされているんだ。」
光陰がわざとらしく頷きながら妙な講釈を垂れた。
「はあ、そういうものなんですか。」
戸惑いつつも、ほんの少しだけ顔をほころばせたセリアが、二人の後を追い始める。
604ハリオンの憂鬱3/4:04/12/22 16:14:57 ID:HHoPqNby
「ここか...」三人は今日子達の入って行った店の前で顔を見合わせた。
この世界では喫茶店といえども油断は出来ない。中身は連れ込み宿だったりすることがままあるのだ。
もしそんな事態になったら、溶けかけたセリアが永久凍結するのは想像に難くなかった。
「ま、先客もいる事だし、大丈夫だろ。」無警戒の光陰がドアを押した。

カランコロン。
軽やかなドアベルの音がする。どうやら本当に喫茶店のようである。

「あ、いらっしゃーい、パパ!」
何と、出迎えたのはオルファであった。
いつものドレス姿であるが、こうして見るとそのままでウェイトレスに見える。
「なんだ、オルファの店だったのか。」悠人が苦笑した。
「ううん、違うよ。いつもはハリオンお姉ちゃんがやってるんだけど、
風邪引いてお休みしてるから、オルファたちが手伝ってるの。」
(ハリオン、俺達に隠れて何やってんだ...)悠人は軽いめまいを感じた。
「おおぅ、ここに来た甲斐があったってもんだな、悠人よ。」
対照的に感涙にむせぶ光陰が悠人の肩に手を掛けた。
「いらっしゃいませ。」
奥の厨房からヒミカが顔を出した。オルファとともに留守を預かっているようだが、
この店の盛況振りを知れば、ハリオンも布団の中で悔し涙を流す事であろう。
「やっぱり来ると思ってたわよ。悠、サボリをバラされたくなかったら、ここはあんたのおごりだからね。」
テーブルに腰掛けていた今日子がニヤニヤ笑いながら言った。
「はは。仕方ない。」悠人達も並んで腰を降ろした。
605ハリオンの憂鬱4/4:04/12/22 16:17:03 ID:HHoPqNby
「―――にしても、あったかいな、ここ。」
コーヒーとヨフアルで一服ついた光陰が店の中を見回した。
どうも暖房器具に当たるものは無いようである。
「暖かいというよりは...熱い...?」悠人の額に汗が浮かんだ。
横を見ると、いち早くアイスコーヒーを飲み終えたセリアも少々閉口しているようだ。
今日子はすでにハリセンを取り出して双子とともに涼を取っている。
「ちょ...ちょっと外に出ようか、セリア。」
汗だくになりながらも、しぶとく店内に居座る光陰を残し、悠人はセリアと連れ立って涼みに出た。

「セリア、そういやあの看板、何て書いてある?」店外で悠人はセリアに尋ねた。
「はい...えっと、『喫茶・ヒートフロア』...?」
「―――なるほど。床暖房完備、って事か。――へっくしょん!」

いつになくウスいオチに、寒々としたものを感じる悠人であった。
606名無しさん@初回限定:04/12/22 16:19:15 ID:HHoPqNby
スレにアイスバニッシャーを掛けてしまったのではないかという不安のもと、
ヒートフロアを掛けなおそうと思って勢いに任せてやった。

―――今では反省している。_| ̄|○
607名無しさん@初回限定:04/12/22 16:46:18 ID:BooWB9XZ
>>602
一番最後にサイレントフィールドがっ(ぇ
自分の部屋にもヒートフロアかけてください。寒いです。

>>601の憂鬱氏の発言に補足までに。
エキスパンションでは、〈因果〉もまた声色からして男性でした。……多分。
ちなみにエキスパンションに出ていた別の神剣も、男性のものがありましたね。
閑話休題。自分も好きなキャラに強い神剣を持たせたいというのは分かりますが、
「永遠のアセリア」は結局ゲームなわけで。ゲームバランスを崩しちゃダメだよな、と思った次第。
これから先にオリ剣を出す人は、その辺りを留意していて欲しいと思います。
まだ一作も書き上げていない人間が言う台詞でもないのですが(苦笑

三章完成しましたが、長さ的に次スレに移ってからのほうがいいですね……
608名無しさん@初回限定:04/12/22 17:23:11 ID:HHoPqNby
>>607
やば、EXPやってないのがバレた!!
別の男神剣って一体...!?(滝汗)
えっと、「分身説」は撤回って事で。(←もう少し自分の発言に責任を持て)

それはそうと、次スレ即死回避は「紅蓮の剣」第V部でFA?
609名無しさん@初回限定:04/12/22 17:23:37 ID:0Pzh9jXx
>>606
だ、だまされた、タイトルに(w
んでもヒートフロア GJ!
しかし、ホットの飲み物はあっつすぎて飲めない罠のヤカーン(w
610次スレテンプレ1/2:04/12/22 18:11:17 ID:0Pzh9jXx
長編短編目白押し、遅レス覚悟の感想レス。
迂闊に広げた小ネタリレー、たちまち生える常緑の木。
アイスバニッシャーでもバニシングハイロゥでも止まらない。
さあ、次にイグニッションを点火するのは一体誰だ?

そんな感じで未曾有の大盛況を迎えているここは第二ファンタズマゴリアまたは
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド、もう9。

前スレ:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 8
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1101652747/
発売元:Xuse公式サイト(『永遠のアセリア』は【本醸造】より)
http://www.xuse.co.jp/

外部板:雑魚スピスレ画像補完庫(画像掲示板、SS保管庫併設)
http://etranger.s66.xrea.com/
外部板:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド避難所 2
http://www.miscspirits.net/Aselia/test/read.cgi/refuge/1099180045/
過去スレ、関連スレは>>2以降に
611次スレテンプレ2/2:04/12/22 18:12:17 ID:0Pzh9jXx
過去スレ
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 7
http://etranger.s66.xrea.com/past/past7.htm
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 6
http://etranger.s66.xrea.com/past/past6.htm
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 5
http://etranger.s66.xrea.com/past/past5.htm
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 4
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1091602820/
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 3
http://etranger.s66.xrea.com/past/past3.htm
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 2
http://etranger.s66.xrea.com/past/past2.htm
永遠のアセリア・雑魚スピ分補充スレッド
http://etranger.s66.xrea.com/past/past1.htm

関連スレ
エロゲー板:Xuse(ザウス)総合30
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1101484734/
エロゲ作品別板:永遠のアセリア 第2章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1097371492/
ギャルゲー板:永遠のアセリア-The Spirit of EternitySword-(仮
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1092327160/
612名無しさん@初回限定:04/12/22 18:13:47 ID:0Pzh9jXx
>>559さんの煽り文でとりあえずテンプレ用意しときました。
スレタイは
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 9
で。
適宜ツッコミ&修正よろです。

sageネリー(>>3)
時の人乱舞(>>4)
は建てる人の判断で?
613名無しさん@初回限定:04/12/22 18:44:35 ID:P+pWSlMM
>>608
あー、もう時期が時期だけに言っちゃっていいだろうか。いいですよね?(ぇ
〈依存〉というのが出るんですが、それが男神剣です。

即死回避について。
構いませんよー。今日中にスレが立つのであれば投下できます。
そうでなければ投下できるのは明日午後かと。
ただ念の為、即死回避ネタは、各自ご用意お願いします。
614名無しさん@初回限定:04/12/22 19:02:26 ID:OskRhfBX
次スレ点呼ネタ思いつかないよ〜

>>613さんはじめ他の皆様
ちと早めにフライングで立てますか?それともみんなで即死回避しますか?

>>613
今日子の神剣だけ例外なんですよね。だから本当の意味で「キャラの内面」「必然性」が重要なんでしょう。
性別とかはあんまり重要なものではないと。
…ヒミカに持たせるなら「漢」な神剣が似合うだろうなぁと思う聖夜間近の夜でした。
615名無しさん@初回限定:04/12/22 21:31:02 ID:BeRzCGad
「ハリオンの憂鬱」っていうと、こんなの考えてたなぁ…………w

「おーいハリオンっ」
駆けてくる悠人。ハリオンの後ろ姿に追いすがって…………こけた。
「はい〜?」
振り向いたハリオン。回転運動で振られたそれは遠心力をともない、沈み行く悠人の横っ面を
見事に捉え…………

――――ハリオンの悠打
616名無しさん@初回限定:04/12/22 21:37:44 ID:aJJsVfL2
そのタイピングゲームはいつ発売ですか?
617名無しさん@初回限定:04/12/22 21:40:19 ID:Gb56CoNO
>>615
ぐぶるぶふぉ〜〜っ

>>616
最高レベルでもとってもゆっくりに違いない(w
618名無しさん@初回限定:04/12/22 21:56:13 ID:qji6vMO+
>>617 最高レベルでもとってもゆっくりに違いない(w

その事に関しては同感。
だがヘリオンの事だから、とてつもない不思議空間(word逆転とか)になってるのも間違いない(w
619名無しさん@初回限定:04/12/22 21:58:46 ID:aJJsVfL2
>>618
いつの間にかつるぺたになってるじゃねぇか!詐欺だ!!
620名無しさん@初回限定:04/12/22 22:07:59 ID:Gb56CoNO
うむ、ヘリオンならEASYでもかなり速かろう。
ツインテールでぺしぺしと(w
621名無しさん@初回限定:04/12/22 22:19:10 ID:CVf7DWIi
>>620
HARDならぺしぺし、
EASYならツインテールの先でこしょこしょと。
622名無しさん@初回限定:04/12/22 22:25:24 ID:P+pWSlMM
>>619
自分はそっちのほうがいいです!!
つるぺた万歳。

>>614
点呼ネタが思いつかないんであれば、即死回避引き受けます。
問題はスレ立て時に自分がオンライン状態にあるかどうかなのですが……
623名無しさん@初回限定:04/12/22 22:34:50 ID:Gb56CoNO
>>622
一応、点呼ネタは案が出てます>>553 (補正:>>560)
が、点呼は水物なんで、原稿あるに越すはないです。
えーと、今日中でしたっけ?
とりあえずザックリ3KBほど進めてみるかな。
と、姑息に改行微妙に多めにしてみる(w
624名無しさん@初回限定:04/12/22 22:37:19 ID:Gb56CoNO
エスペリアがコタツで頭を強打した翌日の朝。
悠人が居間に入ると、エスペリア、アセリア、そして、光陰、ヨーティア、イオまでがコタツで寛いでいた。
「あー…えーと…いろいろ聞きたいことはあるけど……まず、光陰、何でお前がここに居る?」
「ほら、この後、宮中警護だろ? それまで休もうかと思ってな」
「で、イオ…はどうせヨーティアが連れて来たんだろうけど、どうしてヨーティアがここに居るんだ?」
「それはまぁ、あれだよ、科学者というものは常に未知のことに興味を持たねばならんのだ。そもそも科学の心というものはだな…」
「あー、わかったわかった、御託はけっこう。よーするにコタツを研究するとか言うんだろ」
「むっ! 科学の心を理解しないとはなっとらんなぁ、このボンクラが!」
まぁ、とりあえず落ち着こうと腰を下ろしつつ毛布をめくって
「……居るんじゃないかとは思ってたけど…ニム…」
「何っ、ニムントールちゃんが!?」
ガバッと毛布をまくって確認する光陰。
「おぉっ、いつの間にっ、俺としたことが迂闊だったぜ!」
気づいてなかったのか…そう言えばたしかにニムントールは光陰から一番遠い位置に陣取っている。光陰…哀れな奴…というか何がどう迂闊だったんだ、おい。
「もういい加減、第二詰所に連行するだけ無駄な気がするなぁ。でも、ほれ、ニム、せめて頭ぐらいは外に出しとけ」
「う゛〜」
毛布からぎりぎり目までを覗かせて睨んでくるニムントール。
「そんな顔してもだーめ。ちゃんと頭出さないと、第二詰所に強制連行、水筒なし。しかもっ、光陰直々にだっ!」
ピョコンッ。瞬時に頭が飛び出て、ふるふるふるふる。…ここまで効くとは思わなかった。光陰がドヨーンと落ち込んでいる気がするがとりあえず忘れる。大丈夫、あいつは強い、少なくとも今日子の稲妻ハリセンを食らっても生きてる程度には。
625名無しさん@初回限定:04/12/22 22:39:10 ID:cmejNH09
遅ればせながら関連スレのリンク集作ってみました。
http://etranger.s66.xrea.com/past.htm

今日中に全部整理しときますがとりあえずURLだけ張っておきます。
スレリンク直貼りでもいいけど、この方がテンプレ2が無くなってすっきりするかなぁとか。

626名無しさん@初回限定:04/12/22 22:39:17 ID:Gb56CoNO

「ん? あれ? どうしてこんなに温かいんだ?」
ようやく腰を下ろした悠人はすぐにまた疑問にぶつかった。
「なーに、ちょいとイオの『理想』でな」
「おいっ!」
事も無げに答えるヨーティアに神速で悠人が突っ込む。
「コタツを知るのになるべく本来の状態に近くする必要があるわけだが、さすがにエーテルを使うわけにもいかんのでな」
「要するに、さすがの天才様もエーテル無しでは役立たずってことか」
「何だとぉっ! この 大 天才を捕まえて役立たず呼ばわりしようってのかい、こんのボンクラはぁっ!」
「というか、イオは大丈夫なのか?」
どうもヨーティアと話すと止せばいいのにいちいち突っ込んでしまう。適当なところで無視しないと際限ない罵り合いになる。
「えぇ、常に力を使っているわけではありませんし、これ位なら」
冷静で落ち着いた返答。さすがだな。これ位じゃないとヨーティアといつも一緒にいるのは無理なのかもしれない。
「そっか…」
ここで悠人はようやくテーブル…もとい、コタツの上に見慣れぬ物があることに気がついた。いや、どことなく見覚えがあるような気もするのだが。
「これは?」
そう言って手に取った瞬間、悠人の記憶層が刺激された。まさか…いや、しかし…。
「も、もしかして…」
口に入れてみる。しょっぱい。パリン、ボリボリ。
「まさか、『やんわり野菜』?」
「何だ? その『ヤンワリャーサイ』というのは?」
思わず漏れた呟きにすかさずヨーティアが食らいついてきた。
「あ、いや、忘れてくれ。煎餅か?」
固有名詞はきりが無い、一般名詞に留めておかないとな。
「そうそう、その『センベー』さ。コーイン殿が、コタツには欠かせない、と言うんでな。いくつか種類があるらしいが、近い物が再現できそうなものをエスペリア殿とイオに作ってもらったんだ」
「……光陰っ!」
「おうよっ!」
「(*^ー゚)b グッジョブ!!」

翌日にはヨーティアの手によって、エーテルも『理想』も使わない熱源効率の改善が行われた。こうして、うやむやの内に第一詰所のコタツは合法化。第二詰所のコタツの復活も時間の問題だろう。
大天才ヨーティア・リカリオンは今日も科学の道を往く。
627名無しさん@初回限定:04/12/22 22:40:30 ID:Gb56CoNO
>>624,626
『その後の緑スピホイホイ』とかなんとか。
促進の足しにまた炬燵ネタ(汗
私の頭の中では「続」の後すぐに撤去になってたんですが、
>>593氏、『ハリオンの憂鬱』と炬燵が続いたので、
撤去しない方向に考えてみました(w
こんな小ネタにこんなに饒舌なのも促進の一環ということで。
このレスの改行が多いのも促進の一環ということで。
無駄に姑息なのも(ry
628名無しさん@初回限定:04/12/22 22:44:14 ID:w1XSKTtL
>>622紅蓮氏
遅レスでスマンです。623さんとバッティングするとこでしたが、
一応点呼ネタは>>553で振ったやつでお願いします。>スレの皆様
「そんなもん無い!」という方は省略可って事で。
ネタ振り早すぎたかなあ(汗

ですので、(うまくタイミングが合えば)点呼が一段落したところで投下お願いします。
629名無しさん@初回限定:04/12/22 22:50:04 ID:w1XSKTtL
>>615
またまたぁ〜!いくらなんでも私がそんな関西的ベタベタダジャレを
書くわけないじゃないですかぁ〜...多分。(←何故に不安げ)
630618:04/12/22 23:01:40 ID:qji6vMO+
>618>619
ガッデ〜〜ム!!!
何で見直さなかったんだ俺。
こんな所でハリオンマジック炸裂させてんじゃね〜よ●| ̄|_











………個人的には『ヘリオン悠打』も有りかな…と思ってたりもする
631次スレテンプレ(勝手に修正):04/12/22 23:07:39 ID:cmejNH09
長編短編目白押し、遅レス覚悟の感想レス。
迂闊に広げた小ネタリレー、たちまち生える常緑の木。
アイスバニッシャーでもバニシングハイロゥでも止まらない。
さあ、次にイグニッションを点火するのは一体誰だ?

そんな感じで未曾有の大盛況を迎えているここは第二ファンタズマゴリアまたは
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド、もう9。

前スレ:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 8
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1101652747/
発売元:Xuse公式サイト(『永遠のアセリア』は【本醸造】より)
http://www.xuse.co.jp/

外部板:雑魚スピスレ保管庫
http://etranger.s66.xrea.com/
外部板:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド避難所 2
http://www.miscspirits.net/Aselia/test/read.cgi/refuge/1099180045/
外部板:永遠のアセリア関連スレリンク集
http://etranger.s66.xrea.com/past.htm
632名無しさん@初回限定:04/12/22 23:09:23 ID:cmejNH09
↑な感じで変更してみたんですけどどうでしゃう?
サイト名も今後は画像以外も全部扱ってくんで後で修正しときますです。
633名無しさん@初回限定:04/12/22 23:10:06 ID:P+pWSlMM
>>628
了解しますた。

書いた後ファイルサイズ見てみたら前回の1.5倍になってました。
短く纏めましょう、自分。
634:04/12/22 23:19:00 ID:h+WEekrt
とりあえず建てて来ます
635名無しさん@初回限定:04/12/22 23:21:23 ID:cmejNH09
とりあえず生きますね
636名無しさん@初回限定:04/12/22 23:21:54 ID:cmejNH09
危ない危ないw
637名無しさん@初回限定:04/12/22 23:23:30 ID:BeRzCGad
>630
「ヘリオンの悠打」 
それでは空振ってしまうw 反発係数も足りないので、来期のプロ野球には向いてるかもw
ハリオンは飛び過ぎか。…………だれだね?俺のバットでかっ飛ばしてやるぜ。とか考えてるのは?
通は打つよりはさmmんbvといgpr:;hjgp 
>615
記憶では「エスの悠打」で既にかましてるようなw
638名無しさん@初回限定:04/12/22 23:24:18 ID:BeRzCGad
>615 ×
>629 ○
639名無しさん@初回限定:04/12/22 23:31:11 ID:cmejNH09
勃たないようなので2陣逝っちゃっていいですよね?
640名無しさん@初回限定:04/12/22 23:32:46 ID:en9vw5Ob
give up宣言待ちがいい希ガス
641名無しさん@初回限定:04/12/22 23:33:46 ID:cmejNH09
らじゃヽ(´ー`)ノ
642:04/12/22 23:33:49 ID:XTFwdVyI
>>639
面目ない...お願いします
643名無しさん@初回限定:04/12/22 23:37:37 ID:cmejNH09
>>642
出来ませんでしたーorz

誰か代わりに勃ててー
644名無しさん@初回限定:04/12/22 23:38:36 ID:en9vw5Ob
じゃ行きます
645名無しさん@初回限定:04/12/22 23:43:12 ID:en9vw5Ob
我、成功セリア!

永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 9
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1103726460/

646名無しさん@初回限定:04/12/22 23:44:39 ID:cmejNH09
>>645
乙!!!
おばさんテンプレ張られてからの方がいいかな?
647名無しさん@初回限定:04/12/22 23:47:18 ID:en9vw5Ob
リクにつき貼りました
648名無しさん@初回限定:04/12/22 23:53:11 ID:cmejNH09
もう点呼おっぱじめておけーですよね?

↓てことで、いどー↓

永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 9
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1103726460/
649名無しさん@初回限定:04/12/22 23:56:01 ID:P+pWSlMM
乙!

では点呼が落ち着き次第、投下していきます。
650名無しさん@初回限定:04/12/23 02:36:08 ID:PC3IF9n4
651名無しさん@初回限定:04/12/23 14:37:32 ID:OUv+dHMQ
>>648が「アセリアおっぱい祭り」に一瞬見えたorz
652名無しさん@初回限定:04/12/23 18:54:36 ID:iSdApyQR
(゚Д゚;≡;゚д゚) !? ハッ? モウダレモイナイ !?
653名無しさん@初回限定:04/12/23 21:33:30 ID:AvnRcyLE
(´・ω・`)ショボーンまた点呼のりおくれた…
「いけませんね。」
654自信があるから:04/12/28 04:03:40 ID:XvyF0Xom
 彼女は私を見つめて言った。
「貴女につまんないプレゼントはあげたくない。出来るだけいいものをあげたい」
 照れたように頬を染めて言った。
「私、実はすごくナルシストなの。自分が世界で二番目にいい女だって思ってる」
 柔らかく微笑んで言った。
「だから、世界で一番いい女に、世界で二番目にいい女、あげる。もらってくれない?」
 そして彼女は目を瞑り、全てを私に委ねた。
655名無しさん@初回限定:04/12/29 20:14:51 ID:elCFmuG4
どちらがセリアでどちらがヒミカか、それが問題だ。
656エスペリアの憂鬱(承前):04/12/30 16:54:26 ID:N+vXe1aV

ユートの初陣 in 聖ヨト歴330年ホーコの月

戦闘前:「ユートさまもわたくし達も、この世界では“人”ではありません。その意味をお考え下さい」
戦闘中:「ユートさまは人です。私たちは人を護ります。ユートさまのために私が消えることなど……」

「ちょっと待てエスペリア、一体俺はどっちなんだ」
「…………たいした問題ではありません」
平然と言い放つエスペリア。だがそれは、俺にとっては我慢の出来ない言葉だった。
「俺が人か人でないかが問題じゃないだって?!」
言いようのない怒りと悲しみが沸き上がってくる。
そんなことを簡単に口にする、エスペリアが信じられなかった。
「……生きて、喋り続けなきゃ…………!」
言いたい事がどんどん奥のほうから沸きあがってくる。
「だから……勝手に、勝手に消えようとなんかするなよっ!矛盾を残していかないでくれ!!」
「そんなことされて、残された俺はどうすればいいんだよ!」
「もう俺の前で……解説を間違えてほしくない!勝手に噛んだりしないでくれ!頼むからっ!」
……情けなかった。俺のことを守ってくれたエスペリアに向かって勝手な感情をぶつけている自分が。
「私たちは人間ではありません。スピリットなのですから」
「なんだよそれ!そんなことどうだっていいだろ!?俺がどっちなのかが大事なんだよ!!」

BGM:Lost Days
657信頼の人:04/12/30 16:57:04 ID:N+vXe1aV
いやだから再プレイしてたら最初の戦闘でのやり取りでこんな妄想がですね……_| ̄|○ホントモウシワケナイ
658名無しさん@初回限定
乙です。
ワラタ
たしかにそんな感じだったっけか、前後。
私もそろそろまた再プレイするかなぁ…
善意に解釈すれば矛盾しないとしても
せっかくだからこのスレではネタにする方を選ぶぜ、って感じですか(w

人であり人でない揺れるその存在は
喋ってるエスペリアの中で何になっているの?
っと(w

しかし悠人よ、その願いは無理というものだ。
何せうわなんだやmdrftgyらえるlp;@: