1 :
名無しさん@初回限定:
____ ________ _______
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 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
,ィ
,べV //
ネリーみたいなクールな女には / 〃  ̄ ヾ; / ./
sage進行がぴったりよね〜 ! i ミ(ノハソ / /./
!ik(i|゚ ヮ゚ハ<///
リ⊂}!廿i つベ/
く/Цレ'
し'ノ
" タイムアクセラレイト
´∴ # __ ゜ヾ´ ″´∴
「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
__くi イノノハ))≡―=',((( )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
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´∴'≡く / ∧ | y'⌒ ⌒ ヽ イノノハ))( ≡―=‥、,、
″″ \/〈(((ノ从| / | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
" ||( ゚ヮ゚ー' | |ヾノ //
=―≡ ̄`:, | , | ( ̄=―≒‥,,
" ,゛"=―≡―=',/ ノ )∵`=≡―=
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ヾ =―≡ ̄`:゛/ / \| |≡―=‥、,、 ヾ
,゛"=―≡―='( | ( |=―≡―∞=@ , 、∴
/ | | |\ \ ´ ∴ ヾ .
・ / / | | | ヽ/⌒〉
.... . ............ . .(_ 「 _) (_〈_/....... . .. . .... . . .
__
「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
そして即死回避点呼開始!
ヽ)/
∠´ ハ`ゝ
彡//ノハハ>∩
ゞ(リ ゚ -゚ノ!彡 たゆん!たゆん! <1>
<´ii ⊂彡
U |.Tii<
<_ノ_jイ_ゝ
>>1乙、前スレ722はタイミング悪くてすまなかった
ヽ)/
∠´ ハ`ゝ
彡//ノハハ>∩
ゞ(リ ゚ -゚ノ!彡 貧乳!貧乳! <2>
<´ii ⊂彡
U |.Tii<
<_ノ_jイ_ゝ
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「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
ヽ)/
∠´ ハ`ゝ
彡//ノハハ>∩
ゞ(リ ゚ -゚ノ!彡 おっぱい!おっぱい! <3>
<´ii ⊂彡
U |.Tii<
<_ノ_jイ_ゝ
<4>そしてヘリオンはもらっていくっ!
ではヒミカは私がもらっていきますね……<5>
だが、ニムだけは譲れない<6>
イオたんはいただいたッ!<7>
今、今日子ルート終わった。悠人すら許せないようなきがする<8>
ネリーはささっといただきっ!<9>
ではセリアは私が頂戴しよう。
じゃ、自家製旧型ヒミカさんを回収しときますね <10>
出番の少ないユーフィーで<12?>
メイドの鏡、エスペリアさんは私と供に!<14>
ファーレーンと飯食ってくる<15>
ナナルゥと一緒に屋根裏に潜んでくる<16>
「シャッコウ」と「シツボウ」がニュータイプに目覚た<17>
「自らが求めることに純粋であれ」
守り龍の助言を胸に、
萌えを求めた結果、俺たちはここにたどり着いた!
何はともあれ、シアーはいただきます。<18>
>1さん乙です
縁音と魚屋に買い物に行ってきます<17>
レムリアとヨフアルを食べに行きますね<20>
では私はクォーリンを貰っていきましょう!<21>
なんか結構いるんですね
ではテムオリンさまはいただきますね<22>
それじゃ私はナナルゥに忍びの極意でも伝授されてきます<23>
いい加減点呼は秋田<24>
30getしたし、
じゃあこれでおしまいかな?<25>
,'^》フ⌒´ヽ》ヘ
( ノ i」」」」」〉))
ノノ(!リ゚ ヮ゚ノリ(( <ユート様一筋、へりおんあたーっく
(( ⊂! |T|!つ=lj==
>>9( ゚∀゚)・∵.==
く/|_|〉
(フフ
終わったところで一言。
次の点呼では、何スレ目から雑魚スピの地に降り立ったのかを申告してみない?
あー、なんとなくいいかも、それ。
ちなみに俺は3スレ目。
34 :
保管庫の人:04/09/08 21:39 ID:pLM2EofA
私の場合は……え? 言うだけ無駄?
>>33 次スレ用のネタに取っておきましょうや。
EXPネタ解禁ということで早速ネタ振ってみようか。
雑魚スピが登場人物として確立し、アセリアの世界により広がりを感じたEXP。
単純に雑魚スピの立ち絵とイベントが追加されたのは嬉しいことだったが
何よりも素晴らしかったのは、その雑魚スピを含めての色んなキャラ同士の掛け合いだと思う。
つーわけで、おまえらの萌えた(もしくは見たい)キャラの組み合わせを教えれ。
ちなみに俺はヒミカ×ハリオンの凸凹コンビに萌えた。
昔から付き合ってるということだが、その胸の成長具合に嫉妬したりしたのだろうか。
確かに全キャラに立ち絵がついただけで、
会話があんなに面白くなるとは思わなかったな
ネリーとオルファが争ってる隙に
ちゃっかりシアーが...ってのが一番萌えた
>>35 あのやり取り見た後、
二人のENDロール(各キャラのその後のやつ)があったら、
絶対、お菓子屋かパン屋を始めてそうだと思ったよ。
自分は、光陰の「へっへっへ」と言う笑いを、皆で真似しだしたとき、ナナルゥが「自分もやったほうがいいですか?」
と言うアレだな。
「下品だからやめろ」と言われたとき、一瞬しょぼーんとするけど、そのあと端っこで、我慢できずにやってしまう
ナナルゥが萌え
EXTRAの部隊編成画面を見て思ったこと。
深夜、森の中で待つ時深の前に現れた悠人…と三人。
で、剣の試練を済ませた悠人に飛びついていくエターナルの幼…少女。
さらにファンタズマゴリアに帰還した後、悠人について時深を問いただすエトランジェ。
最後にブチ切れる時深。
そしてしっかりキモウトは回避する悠人。
今日子とヘリオンの会話に萌えました、それ以上に(((;゚д゚)))ってなったけど。
画面写真が公開されたときから震えてましたがまさかここまでこの二人が絡むとは。
さんざん言われてますが、中の人も大変だなぁと思いながら読み進めてました。
>39
私はあのシーンのシアー萌え。
,ィ^i^!1-、
,(レ´  ̄ ヽ) ユ゛ート゛サ゛マ゛
i`_l !i_!li_!i!リ γ⌒'ヽ
jixi」*゚ヮ゚ノリ i ミ(二i
(ヽ)llΨ)ヽ ヽ、,,_| |ノ
ん/うt___|lう r-.! !-、
`'----'
,ィ^i^!1-、
,(レ´  ̄ ヽ) ショウ サ゛マ
i`_l !i_!li_!i!リ γ⌒'ヽ
jixi」*゚ヮ゚ノリ i ミ(二i
(ヽ)llΨ)ヽ ヽ、,,_| |ノ
ん/うt___|lう r-.! !-、
`'----'
でもアセリア発表直後って異世界召還ってことで「ダンバイン?」って意見結構見たような(w
おらの農土が拓かれた〜♪
バイストンウェルで風魔の小次郎みたいな剣持ってMTGっぽいバトルするエロゲ
と友人に説明してた自分。
俺はエロゲ版サモンナイトと思ってたな
サモナイ殆どやった事ないけどなw
アセリアルートの中盤現代編なんてモロにダンバイン呼ばわりされてたしな。
まあ確かにまんまだったが…いっそタキオスとは新宿で戦ってほしかったな
オーラロード開くの失敗して、片方あぼーんじゃない分マシかと。
54 :
憂鬱の人:04/09/10 15:00:09 ID:asmf/ZDT
ダンバインか...美人だったなあ、マーベル...
と、懐かしがってる場合じゃない!
スレまたぎもいいところの「家出」いよいよ最終回!
今回はちょっと長めだ!新スレで初めて見る人にこれまでのあらすじを
2ch風味でまとめて見ました!
今日子・光陰・ウルカキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
↓
エスペリアガイシュツ
↓
ソーマとマターリ(←おいおい)
↓
悠人あぼーん
きれいにまとまったところで、行ってみよー!
「いやあ、ホント、死ぬかと思ったよ。」
あははと笑いながらベッドの上の悠人がのんきな事を言う。
「いや、あれは間違いなく死んでたって。お前って奴は...」
「あはは、じゃないわよ、悠。バカは死ななきゃ治らないって言うけど、
あれってウソだったのねー。」あきれ果てた光陰と今日子が仲良くツッコミをいれる。
「全くです、ユート殿。手前には常々命を大切にしろ、などとおっしゃっておきながら。
あんな危険なケンカをなさるとは...コーイン殿達の事はとやかく言えませんぞ。」
珍しく、ウルカまでも苦々しい口調で苦言を呈する。
「そうよ、もう、二度とあんな面倒な魔法、遣ってやんないんだから。」横でニムがふくれっ面をする。
本当に、隊長として皆に愛されているのか疑問を感じつつも、悠人は言った。
「やれやれ。でも助かったよ、ニム。魔法は苦手だなんて言ってたけど、
ニムがいなけりゃあのままアウトだったからなあ。」
「べーだっ、ユートの馬鹿!あたしもう知ーらないっと。」
そう言ってそっぽを向きながらもニムは、チラリとはにかんだような笑顔を見せた。
ニムの笑顔を見ながら胸の内になんとも言いようのない安心感が広がるのを感じた悠人は、
グリーンスピリットには、生来癒やしの特性のようなものが備わっているのかもしれない、そんなことを考えた。
サレ・スニルでエスペリアと悠人が死闘を繰り広げた翌日の昼下がり。
エーテルジャンプで一旦ラキオスに引き上げた面々たちは、
久し振りに訪れたのどかな時間を楽しんでいた。
悠人が「死んでいた」間に起こった出来事については、今日子が今朝、二人きりで話してくれた。
エスペリアが悠人の後を追おうとした事、それをオルファと光陰が止めてくれた事。
ニムが一世一代の蘇生魔法をかけてくれた事。
『――けっこうカッコ良かったよ、光陰のヤツ。』
今日子は、これは秘密だけどね、そう付け加えながら、笑って言った。
悠人は当初、ラキオスのたった独りのエトランジェ戦士として戦っていた頃に比べて、
いつの間にか増えた仲間に助けられていることを実感していた。
レスティーナが悠人の部屋に入って来る。
「ユート、体の具合はどうですか?」
「ああ、心配かけて悪かったな、レスティーナ。でも、ニムのおかげで、
もうほとんど傷も残ってないし、なんなら、明日からでも動けるよ。」悠人は笑って答えた。
「余り無理はしないで下さい、エトランジェ・ユート。私達はまだそんなに急いでいません。
実のところ、帝国への侵攻が予想より早かったので拠点整備が追い付いていないのです。」
レスティーナは微笑をたたえた。
「あのさ、それより――エスペリア、どうしてる?」
悠人は声のトーンを落とした。エスペリアも悠人達とともにラキオスに戻っていた筈だが、
まだ悠人の前に姿を見せていなかった。正直、悠人もどんな顔をしてエスペリアに話をするべきか、悩んでいた。
レスティーナは首を振った。
「あまり良くありません...。何と言うか...ふさぎこんでいる、そんな感じです。
戻ってきてから、ほとんど食事にも手を付けていないようですし。」
そう言ってレスティーナは悠人の顔をうかがう。
多分、今、誰よりも孤独感にさいなまれているのはエスペリアであろう。
――俺が逃げてるわけにはいかないな。
「そうか...じゃ、俺が行って話してみるよ。」
悠人はベッドから立ち上がって、掛けてあった制服に袖を通した。
「そうして貰えると助かります。」レスティーナはホッと胸をなで下ろしたように、
悠人に向かって頭を下げた。
気取らない女王は最初からそれを頼みに来たのだろう、そう思って悠人は微笑を浮かべた。
「出来ればうまく仲直りして下さい。」レスティーナはそう言ってクスリといたずらっぽく笑った。
悠人はその笑顔をどこかで見たことがあるような気がしたが、思い出せなかった。
ニムが悠人の後ろ姿を複雑な気分で見送り、小声で呟く。「何か...ムカつく。」
悠人はエスペリアの事が好きなのだ。それは分かっていても素直にそれを応援する気にはなれなかった。
今日子が悠人は世話好きに弱い、というような事を言っていたのを思い出し、ニムはポツリと漏らした。
「――薬の勉強する前に、ハリオンに料理の特訓してもらおうかな。」
悠人の出て行った部屋の中で秘密会議が始まった。
「さて、あの二人の問題はこれでいいとして...エスペリアの処分は、どうしましょう。」
レスティーナが言った。さすがに悠人との戦闘は伏せられていたが、
エスペリアが行方不明だったことはラキオスの臣下たちにも伝わっていた。
あまりあからさまにエスペリアを特別扱いする訳にもいかない。
「やっぱり、敵前逃亡って事になるよね...ねえ、光陰、あんたこういうの得意でしょ。いいアイデアないの?」
「全く、面倒な事は全部俺に押し付けやがって...」光陰が眉をしかめて考え込んだ。
「―――そうだな、こういうのはどうだ?レスティーナの特命を受けて敵の内情を探りに行ったってのは。」
「ほう、さすがはコーイン殿。事実、ソーマは元上官であったのですから、
それならばサレ・スニルでエスペリア殿が見つかった事にも得心のゆく説明が成り立ちましょう。」
目を細めて光陰を褒めるウルカを、少し警戒する今日子であった。
「エスペリア...いるか?入るぞ。」悠人はエスペリアの部屋をノックした。
中からドタバタと、軽やかな足音がドアのほうに向かってくるのが聞こえた。
「エスペリアのほかに誰かいるのか―――?」
いぶかしげに半開きになったドアを覗き込む悠人の目に入ったのはオルファだった。
「パパ...。」小さな妖精がドアから首だけを出して言った。
「あ...オルファ。見ててくれたのか、エスペリアのこと。」
「うん...でも、元気ないの...エスペリアお姉ちゃん。」
そう言ってオルファはそっとドアを開けた。室内のベッドの上で座っているエスペリアの姿が見える。
「――みたいだな。」あんな事があった後じゃ無理もない、悠人はそう思った。
「ちょっと話してみるよ。悪いけど二人っきりにさせてくれないか?」
「ん―――。」オルファが悠人の顔色をうかがう。
「―――パパ、もうエスペリアお姉ちゃんとケンカ、しない?」オルファは、おそらくエスペリアが
はやまった事をしないように、ずっと見守っていたのだろう。
ことによると一晩中ずっと傍に付き添っていたのかもしれない。
悠人は少し膝を曲げてオルファと視線の高さを合わせた。
「約束するよ、ケンカはしない。」
しばらく悠人とエスペリアの顔をを見比べて、オルファは元気に頷いた。
「わかった!じゃあ、オルファあっちに行ってる!」
そう言って駆け出すオルファの背中に、悠人は心の中で頭を下げ、部屋に入った。
「ここ、いいか?」悠人はそう言ってオルファの温もりが残るベッドの横の椅子に腰を下ろした。
エスペリアはベッドで上体を起こしたまま無言でうつむいていた。
「――エスペリア。俺、知らないうちにずいぶん追い詰めちゃってたんだな。」
しばらく流れた沈黙の後、悠人は言った。
「エスペリアにはあんなに世話になったのに、生き方がどうとか、
えらそうな事ばっか言って、ほんとにゴメン。」
悠人の言葉を黙って聞いていたエスペリアの肩が震え始め、その瞳に見る間に涙が溜まってゆく。
こらえきれず、エスペリアは両手で顔を覆った。
「あ、ああ、いや、あの、別に泣かせようと思ったわけじゃ――」
慌てる悠人に、鼻声でエスペリアが答える。
「違うんです、悪いのは私です。一人で、勝手にいじけて、勝手に飛び出して、
ユート様にも、みんなにも迷惑ばっかりかけて―――!」
悠人はエスペリアが子供のように声を上げて泣くのを黙って見守った。
「―――私、ユート様がこの世界に来て、世話を任されたとき、
ユート様が全然動けなかったから、本当は嬉しかったんです。」
ひとしきり泣いた後、エスペリアが意外な事を言い始めた。
「ユート様のこと、独り占め出来るって、思ってました。ずっとこのままだったらいい、
そんな事まで考えてました。だから、ユート様が動けるようになって、
私の出来る事がどんどん少なくなっていくのが寂しかったんです。オルファのことが――本当は羨ましかったんです。
私にはあんなふうに素直に抱き付いたりするなんて、出来なくって。そのくせ、
スピリットとしての分をわきまえろなんて、説教して。スピリットが人間のために尽くすのは当然だ、なんて
言い訳しながら夜中に――こそこそユート様の部屋に入って行ったり―――自分だけは特別、みたいな顔して。
―――卑怯です、私。」
エスペリアが体の中の毒をすべて吐き出すように告白するのを聞き終え、悠人は幼子をあやすように、言った。
「わかった。もういい。あんまり自分を責めるなよ、エスペリア。エスペリアが、
その――夜の世話までしてくれた時に、止めなかった俺にも責任はある。
本当はさ、悦んでたんだ、俺も。ただ、人間なら誰にでも同じ事するのかって思うと、ムカついちゃって...
俺も同じだ、エスペリアのこと、独り占めしたかったんだよ。」
悠人は小さく息を吐いてエスペリアの手をそっと握った。
「それに――妖精趣味って言われるのが怖くて...人間もスピリットも違いはないなんて言っときながら...俺は...」
そう言ったうつむく悠人をしばらくの間、驚いたように見つめていたエスペリアの瞳に、再び涙が溢れ出した。
「なのに、私―――、あんな馬鹿な事―――もう、取り返しが――んっ!」
いきなり悠人がエスペリアの小さな唇を自らの口で塞ぐ。
エスペリアは目を見開いていたが、やがて、ゆっくりと目を閉じた。
小さな部屋に静寂が訪れる。
悠人はされるがままになっているエスペリアの体を押し倒しながら、その、服の上からでも
ふくよかさが見てとれる胸に手を這わせた。
「あ...」エスペリアが小さな声を漏らした。
薄い生地越しにエスペリアの胸を揉みしだいていた悠人の手に、
いつのまにかコリッとした先端の突起が触れるようになった。
悠人はしばらくの間その突起を指でつまむように弄んだ。
「う...く...」悠人が少し力をこめるだけでエスペリアは敏感な反応を見せる。
悠人は見慣れたメイド服のボタンを外しにかかる。やがて、エスペリアの胸があらわになった。
――うーむ、結構エスペリアって胸、大きいなあ。
手のひらでそれを包み込み、今度はじかにその先端を指先で転がしながら、
つい悠人はそんな事を考えてしまう。脳裏に先日見たハリオンのたゆんたゆんが浮かび上がった。
――さすがに、あれにはちょっと負けるかなあ。
「ユート様...何か...考え事ですか?」
快感に体をよじらせつつ、まるで悠人の心を読み取るかのようにエスペリアが言った。
支援
「あ、いや、何でもないんだ。」
悠人は左手でエスペリアの胸を揉みながら、慌ててごまかすように右手をエスペリアの
スカートの中に潜りこませた。むっちりと肉付きのいい太ももが触れた。
悠人はその隙間に手を差し入れ、上のほうへと移動させた。
人差し指の横側がエスペリアの脚の付け根に行き当たる。悠人はゆっくり手を回転させた。
熱い、そして、下着の上からでもわかる湿り気をもってエスペリアの恥丘が悠人の手の中に収まった。
悠人の手が動きやすいようにエスペリアが脚の間を広げる。
悠人は手のひらを女陰全体に密着させ、中指の先で浮かび上がった縦筋をなぞった。
「はあっ...ダ...ダメです...ユート様っ!」エスペリアがきゅっと目を閉じて悠人の肩に腕を回す。
下着が湿りによってエスペリアの秘裂に食い込んでゆく。
「もう...脱がすぞ、エスペリア。」悠人は体を起こし、両手でエスペリアのスカートを捲り上げた。
薄い下着がエスペリアの女陰に張り付き、その形が完全に透けていた。
悠人は下着に手をかけ、下へと降ろしていった。エスペリアが少し腰を浮かせる。
女陰から溢れた愛液が下着に糸を引いた。
エスペリアのしなやかな細い指が悠人の股間に伸びる。
「あ...もう...こんなに大きく...」悠人の制服の上からその怒張にゆっくりと
指を這わせながら、エスペリアは喘ぐように言った。
悠人は傍らの椅子の上に制服を脱ぎ捨てた。
「わがままな...お願いですけど...忘れさせてください...何もかも。」
エスペリアが全裸になった悠人に顔を向けて言った。
「ん...やってみる。」
緊張すると人はアセリアのような口調になるのだろうか。悠人はなんとなく、そんな余計な事を考えた。
悠人はエスペリアの上に覆いかぶさった。
――えっと、この辺かな?
とても経験豊富とは言えない悠人は、男根をエスペリアの深部に入れようとしたが
なかなかうまく行かない。エスペリアが少し腰をずらしながら、そっと優しく悠人の怒張に手を添えた。
ヌルリとした感触とともにエスペリアの体の中に悠人の怒張が侵入してゆき、
わずかに悠人が腰に力をこめて突き出すだけで、奥に突き当たった。
悠人に深々と貫かれながらエスペリアの瞳に新たな涙が湧き出てきた。
「――あ、い、痛かったか?」少し乱暴にしすぎたのだろうか、そう思って悠人はエスペリアに尋ねた。
「違います。」エスペリアは横になったままかぶりを振った。エスペリアの髪の毛から
甘い香りが、石鹸の香りと入り混じって悠人の鼻腔に届いた。
「こんなに...好きな人と一つになる事が、こんなに嬉しいなんて...
お、おかしいですね、嬉しいのに、――涙が、涙が止まりません、ユート様。」
悠人は繋がったまま、何も言わずにエスペリアを抱きしめた。
―――やがて。
果てた二人は狭いベッドで身を寄せ合うように並んで横になっていた。エスペリアが言う。
「私、決めました。これから先、何があってもユート様のそばにいます。
――ユート様にうっとうしがられても、――汚いと思われても。」
それは、今までのどんな時よりも強い、エスペリアの言葉であった。
「――なかなか言ってくれるじゃないか。」悠人は笑った。
「はい。それが私の選んだ道です。」そう言ってエスペリアは体を起こし、悠人に口づけた。
そしてそれは、悠人が何よりもエスペリアの口から聞きたかった言葉でもあった。
「お帰り、エスペリア。」悠人がエスペリアにキスを返し、再びその体をベッドに押し倒した。
翌日の午後。久々にラキオスの面々が会議室に勢ぞろいした。
なぜか酒臭さが漂う。光陰が悠人の横で二日酔いの青白い顔をしている。
「もうっ、光陰ったら飲み過ぎよ!!」
「耳元で怒鳴るなよ、今日子。頭にガンガン響くだろ。」
うんざりした顔で光陰が抗議する。実は昨夜、何故かエスペリアの部屋から出て来なかった悠人を祝って、
ヤケ酒の乱痴気騒ぎが繰り広げられたのだった。光陰は美女たちの酌を受け、と言えば聞こえは良いが、
要するに愚痴の聞き役をしていたのだ。
いくら飲んでも顔色一つ変えないハリオンはともかく、ウルカの泣き上戸や、ニムの笑い上戸、
果てはヘリオンのおっさん臭い説教上戸まで全ての相手をしていたのだから、
いかに酒に強い光陰とはいえ、グロッキーになって当然であった。
ラキオスにも未成年者飲酒禁止法を制定すべきだ、自分の事は棚に上げて、
光陰は心の底からそう思った。
「こここ、これは一体どういう事ですかっ、ユート様!!」
久々の会議で燃え上がるエスペリアが、横に座っている悠人に噛み付いた。
対照的に悠人は一滴も酒を飲んでいないのに何故か光陰と同様、青白い顔をしている。
「なんだよ、エスペリア。なんか問題でもあったか?」悠人が及び腰で答える。
「なんだよじゃありません!この報告書に目は通されたんですか!?」悠人の目の前で一枚の紙をひらひらさせる。
「ああ、それか。なんたら言う技術者がいるとかいないとか。」眼前で泳ぐ紙を見ながら悠人は答えた。
「なんたらいう、ではなく、クォーフォデ・リウ様です!」
「別にいいだろ、もう充分技術者は揃ってるんだし。
その場所にいるかどうかだってはっきりしないんだしさあ。」悠人は投げやりに言った。
「いいえ、ユート様。クォーフォデ様は名うての技術者です。
最大の誠意と努力を持って説得工作に当たるべきです!」
「分かった、分かったって。そんなに怒るなよ、エスペリア。」
開き直った女ほど強いものはない。つやつやと生気に溢れるエスペリアの顔を見て、
それを思い知らされた悠人は白旗を上げる。
佳織「支援するね、お兄ちゃん」
「だいたいコーイン様やキョウコ様が付いていながら、こんな事では困りますっ!」
エスペリアの怒りの矛先が悠人の右側にずれてゆく。
「な、なによ、あたし達は関係ないじゃないの。」今日子が反撃を試みる。
「いいえっ、大いに関係があります!クォーフォデ様は旧マロリガン領にいらっしゃるのですから、
当然あなた方も人脈を当たって然るべきです!」
「あ、あたしは、ほら、助っ人って言うか、戦うの専門だからさあ...ねえ、光陰、何とか言ってよ。」
旗色が悪いと判断するや、横の二日酔いの男の肩をゆする。
「――俺に振るな、今日子。おい、悠人、エスペリアはお前の担当だろ、俺も面倒見きれないぜ。」
バトンが悠人に戻ってきた。悠人が仕方なく立ち上がる。
「まあまあ、エスペリアも落ち着けよ。みんなだってやっと戦闘が一区切りついてのんびりしてるんだからさあ。」
そう言って愛想笑いを浮かべた。
「私にはそうとも見えませんが...」そう言いながらぐるりと周囲を見渡すエスペリア。
嬉しそうにメモに何やら、多分新作のお菓子のレシピを書き込んでいるハリオンを除いて、
ほとんどのスピリットがぐったりしている。全員酒が抜け切っていないのだ。
「まあ、いいでしょう。私も帰ってきた早々、説教ばかりするのは疲れますから。」
そう言ってエスペリアはいつもの微笑を浮かべた。「では、酔いざましのお茶でもいれて参ります。
あ、そうそう、その前に特製のシチューの火加減も見ておかないと。」
嬉しそうに言ってエスペリアが退室する。全員がホーッと溜息をついた。
――ま、あれがエスペリアだよな。
パタパタと鼻歌混じりで去って行くエスペリアを見送りながら悠人はそう思って笑った。
「やっぱり、エスペリアさんも『まぐろ』ですね。」ヘリオンがニコニコしながら言った。
穏やかなひとときに浸る悠人が一気に凍り付く。
―――ヘリオン!お前って奴は!!
「ヘリオン、何言ってるの?」今日子の目がすうっと細くなる。
「だって、ユート様がハイペリアでは素敵な女の人の事をそう言うんだって、教えてくれましたから。」
ヘリオンが笑顔を絶やさずに答えた。
「―――悠、あんた、こんないたいけな娘に一体ナニしたの?」
今日子のオーラが瞬時にレッドゾーンに達した。光陰が二人の間から素早く離脱する。
「ご、誤解だっ、今日子!俺は何も!」冷や汗を滝のように流し、悠人が弁明する。
「私もすごく高級な女性だそうです。」全く状況を解さず鼻高々にヘリオンが続ける。
「ヘリオン、『マグロ』って言うのはねえ...男と女が―――」
余りに痛々しいヘリオンを見かねた今日子の、恥ずかしげもない解説に、
今までぐったりしていたスピリット達が一斉に起き上がり、エヒグゥのように耳をそばだてた。
「ひ、ひどいですっ、ユート様!たた、試した事もないくせにっ!!」
今日子の解説を聞いたヘリオンが涙目になる。
「いいのか、試しちゃっても!?」言ってから悠人は自分の失敗に気付く。
美味しすぎる天然につい突っ込んでしまった、その事に。
しかし、それは遅すぎた。背後に危険なマナを感じ、振り向いた悠人の目には、リュールウと言いながら
「献身」の穂先をしごき上げるエスペリアの姿が!
「ユート様、信じておりましたのに。」エスペリアが微笑を浮かべて、言った。
「むう、全然信じてる顔じゃないぞ、エスペリア。」
じりじりと間合いを詰めながら、エスペリアが神剣魔法の詠唱に入る。
「大地の精霊よ、力を貸して。ユート様のクサレた根性を叩き直すために、この力が必要なの。」
会議室が燦然とエメラルドグリーンに輝く。
「はいはい、お嬢ちゃん達はこっちに集合〜。」光陰が加護のオーラを展開し、それをビーチパラソルのように広げた。
逃げるべきか、それともこのまま見物すべきか迷っていたスピリット達が、われ先に傘の下に潜り込む。
支援
「おお、光陰、我が心の友よ。助かる、マジで。」悠人もこそこそと逃げ込もうとした。
「残念だな、悠人。もう定員オーバーだ。」光陰が冷たく突き放す。「悪いが、勝手に一人で死んでくれ。」
「そんなつれない事言うなよ、碧くん。お、アセリア、そこちょっと詰めてくれよ。」
揉み手をしながら悠人が傘に近付いた。
「ユート、往生際、悪い。」
「ちっ、どうやらアイスバニッシャーで援護してくれる気もさらさら無さそうだな。
いくら無表情でもそのくらいは分かるぞ、アセリア。」
「――ん。わかれば、いい。」
「じゃ、ネリー、シアー...」アセリアをあきらめて青い双子に愛想笑いを向ける悠人。
「行け行けー、ユート様!エスペリアなんかやっつけちゃえ!」
「ちゃえー。」二人は完全に野次馬モードだ。
「――頼むからこれ以上エスペリアを刺激するな。お前達に頼った俺が馬鹿だったよ。
あ、ニム。俺に万一の事があったら、例のやつ、頼むぞ。」
「はあ、面倒。」
「百パーそれを言うと思ったよ。おお、ウルカ、ウルカなら助けてくれるよな?」
「ユート殿。男には負けるとわかっていても、戦わねばならぬ時があります。」
クールにウルカが言い放つ。
「って、お前は女だろうが!」
「パパー、がんばってー!エスペリアお姉ちゃんに負けるなー!」
「――オルファ、昨日言ってた事と全然違うぞ。」悠人は肩を落とす。
「元気出して、パパ。あ、そうだ!オルファがおまじないしてあげるよ!」
悠人のお尻に、オルファがポンッ!と可愛らしいキックをお見舞いしてくれる。
「おるふぁきっく『絶』だよ、パパ!」
「絶対わかっててやってるだろ、お前。こんな時に、オルファ...
オルファもとうとう笑いをとる事を憶えてくれたんだね。パパ...パパ、うれしいよぉっ!」涙ぐみ、かすれゆく声。
「そろそろごたくは並べ終わりましたか、ユート様?」にっこりと笑いながらエスペリアが近付いてくる。
「ま、待ってくれ、話し合おうじゃないか、エスペリア!」
「この期におよんで...問答無用ですっ!!」
エスペリア最大の攻撃魔法、エレメンタルブラストがお約束のように炸裂した。
シールドを展開する間もなく、2倍ダメージの悠人はあっけなく床にぶっ倒れた。
――翌日。
ラキオスの青い空に、トンカントンカンと部隊全員総出で、詰所再建をする大工仕事の音が響いた。
「はあ、なんであたしまで...鬼軍曹に鬼参謀...マロリガンにいた頃が懐かしいよ、実際。」
ノコギリを持った今日子が、慣れぬ作業に音を上げる。
「まあ、そう言うなよ、連帯責任ってやつだ。」ハチマキを巻いて、金づちを持った隊長がいさめる。
「だいたいあんたが余計な事言うからでしょうが、バカ悠!」
「何だと、もういっぺん言ってみろ!」ノコギリと金づちがオーラフォトンをまとい、青白く輝く。
「いい加減になさい!」いつの間にか二人の後ろにレスティーナが立っていた。
「エトランジェ・ユート!ここは私がやっときますからあなた方はとっととユウソカを攻め落としてらっしゃい!」
羅刹の形相で、若き女王はそう言って悠人の金づちをひったくる。
「はっ!かしこまりました、女王陛下!」悠人が最敬礼をした。
レスティーナに蹴っ飛ばされるようにしてエーテルジャンプで移動したラキオスの精鋭部隊が
ユウソカを視界に捉え、ずらりと勢ぞろいした。
「あそこが...ユウソカか、ウルカ。」
「はい。サーギオス最大にして最後の砦です、ユート殿。」
ユウソカは町全体が要塞のような風貌を呈していた。唯一の出入り口である門の前に、
恐らく守備に特化しているであろうスピリット達が大勢並んでおり、悠人達を睨みつけている。
「ぐふふふ...俺たちの怖さが分かってないようだな。よし、先陣はエトランジェチームだ、
行くぞ、光陰、今日子!」
このところヘタレた場面の多い悠人が、イービルルートさながらに目を血走らせ、雄叫びを上げた。
光陰、今日子がそれに続く。
「オーラフォトンッノオヴァァァァ―――ッ!」
「ライトニングブラスト!!」
「プロテクション!!」
―――阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されるか、と思いきや、何も起こらなかった。
「「「おいおい、3人ともサポートに回ってどうすんだよ(のよ)!!」」」
同時にボケて同時に突っ込む。どこまでも息の合う同級生たちであった。
エトランジェたちの醜い内輪もめが始まる。
支援
支援
「今日子っ、隊長は俺だぞ!勝手なマネすんなよ!」
「何よっ、バカ悠!あんたのなんて1回ポッキリで、いちいち拠点に戻らなきゃだめなんて、
使えないったらありゃしない!」
「そうだ、ここは手堅く俺のありがたい御仏の加護を優先させろ!」
「何を、光陰!だいたいこないだ、技の名前を絶叫するのは恥ずかしいとか言ってたのはお前だろ!」
「――まったく、あいつらには任せておけないわね。」これまでほとんど出番がなく、
うずうずしていたセリアが言った。
「アセリア、あなたはどうせ正面から行くでしょ?ヒミカは側面から、ウルカは攪乱をお願い。」
「ちょっと待った、セリア殿!ユート殿直々の命を受けた攻撃隊長は手前です。
ここは手前の指示に従って頂くのがスジと言うもの!」ウルカも黙ってはいない。
「――ん。セリアも、ウルカも、ちょっとエラそう。」珍しくアセリアがムッとした表情になる。
「そこの3人!ラキオス部隊の副長であるこの私をさしおいて、勝手な行動は許しません!」
完全にエンジンのかかっているエスペリアが割って入り、スピリット達による第二次紛争が勃発した。
「みなさーん、ケンカはっ、やめましょうっ!」けなげにヘリオンが仲裁に回る。
敵を目前にしながらの、余りのラキオス戦士たちの余裕ぶりに恐れをなし、
ユウソカ防衛のスピリット達が、三々五々逃げ始めた。
「あーあ、敵さん、逃げちゃってるよ。あの人達はほっといて、さっさと行こう、シアー。」
ネリーが翼を広げ、颯爽と飛び立った。
「あーん、待ってよぉ、ネリー。」追いかけるようにシアーが飛んで行く。
「わわわ、私を置いてかないで下さい!」
仲裁をあきらめたヘリオンが、慌ててウィングハイロゥを展開する。
「ゆ、悠人、俺たち置いてけぼりくらってるぞ!」ようやくネリー達に気付いた光陰が叫んだ。
「ま、まずいっ!ようし、みんな、あそこの要塞のてっぺんに一番最初に立った奴が次期隊長だ!
それで文句ないな!」悠人が後の事も考えず、無謀な事を高らかに宣言する。
「おうっ!!!!」
突き抜けるように澄みきった青空の下、ラキオスの精鋭達が一斉に走り始めた。
エスペリアの家出・完
GJ!おつかれー
85 :
あとがき:04/09/10 16:12:36 ID:asmf/ZDT
長い事お付き合いくださった皆様、有難うございます。
少しまじめにあとがきします。
もともとエスペリアの名(?)ゼリフ「私は、汚れています。」
これに重みを持たせたいな〜、と軽い気持ちで始めたSSでした。
だからソーマに犯される場面はもっと細かい描写をするつもりだったんです。
しかし!書いてるうちにどんどんエスに感情移入しちゃいました。
あえてそこまではエスの出番も少なくしたんですがねえ。
筆力の限界ってやつですね。あんなぼかした表現でも書くのが
つらくてつらくて。
もう一つの動機は初めてゲームやった時にエスと悠人がラキオスで戦うシーンを見て、
「絶対リベンジしてやる、こいつ。」と思った事。エス、許せ。
でもあっさり悠人負けちゃいましたね。あはは。
中盤がどろどろしたので最終回は思いっきりさわやかに、と考えて書きましたが、
読後感はいかがでしょうか?しばらくシリアスが続いたのでネタも全開で行きましたが
笑って頂けたでしょうか。「ネリーの不満」「この樹の懐で」などからの無断拝借分も
あります。各作者様怒らないでね。
では。
86 :
飛翔の人:04/09/10 17:39:58 ID:i+o5EV6H
>>85 お疲れ様です〜♪
いやはや、前回の憂鬱さが吹き飛んだ感じの爽やか(?)ならラストに、
思わず顔がにやけてしまいました。
エスペリアと結ばれてラブラブムードに・・・・・・という所で終わらずに、
しっかりとお約束をしてくれるエトランジェ達。
彼等にはいつまでもおちゃらけ三人組でいてほしいですね。
しかしここでまたマグロネタが来るとは・・・あれはここへの伏線
だったんですねぇ・・・でも私としては、ヘリオンがおっさん臭い
説教上戸だったという驚愕の事実にショックを受けました^^;
こうしてめでたく新スレのこけら落としも終わったわけですが、
拙作「えたーなるへりおん」と新作については、もう少しだけ
お待ちを・・・諸般の事情でなかなか時間が取れないでいましたもので;;
まだ以前予告した9月中旬は過ぎてないですが、遅れるかも知れない
ので一応お断りしておきます。どうか気長にお待ちを・・・ではでは〜。
87 :
憂鬱の人:04/09/10 18:26:34 ID:asmf/ZDT
>>86 さっそくのご感想どーもです。
容量差は有りますがあなたの仕事っぷりに引っ張られて
何とか完走できました。
ちなみに家出・48のアレはナポリたん2の事ですよ、
気が付いてましたか、飛翔さま?
酔っ払いシーンは番外編ででも、と思ってますが、
イメージは光陰とクォーリンのヤケ酒シーンから持って来ました。
またお会い出来る日を。
>>憂鬱の人さん
お疲れ様でした。しかし122レスですか……凄いの一言ですね。
連絡スレの方で昨日お見かけしたので仕事早々に切り上げて拝読させて頂きました。
あ〜、やっぱり仕事の疲れが癒されるなぁといった感じです。
雑魚スピが次から次へとネタと共に殺到する感じで、とても楽しめました。
でもやっぱり「クサレた根性〜」の下りでしょう。大爆笑です♪
エスペリア、その手の言葉も巧みに使えるようになってしまって悲しいやら面白いやらw
雑魚スピの酒癖も面白いですね。
ハリオン=抱きつき癖 ヒミカ=いきなり腕立て セリア=甘え とか妄想したりして。
なにはともあれG.J.でした。
でも途中エヒグゥが出てきた時トラウマが走ったのはナイショですw
89 :
憂鬱の人:04/09/10 21:02:18 ID:zqBZhumX
>>88 信頼様
そこまで楽しみにして頂けるとは...
そう言えばすっかり今日子化してますね、エス。
作者の好みが反映されてます。(←マゾか?)
光陰も悠人もいい突っ込み女房を持ったってとこでしょうか。
安心してボケまくれますね、きっと。
お仕事頑張って下さい。
私も今回のSSではだいぶ支障を来たしましたがw
>憂鬱の人さん
完結おめでとうございます。
最終的に丸く収まった……と思いきや、
待ちかねていたような笑い、ボケ、ツッコミの嵐に
モニターの前でお腹を抱えて、別の涙まで出るはめになりました。
真面目に戦う悠人も格好良いけれど、こうしてスピリットたちから
総ツッコミを入れられるのも似合うんだなぁとしみじみ思いましたw
長い間、お疲れ様でした。改めてG.J.です。
91 :
憂鬱の人:04/09/10 23:25:51 ID:dHEKKDBg
たゆん様
>>90 ええ、ええ。ここんとこネタと鬱憤がたまってましたので。
ストーリー的には111で終わってるんですけどね。
しつこいくらいネタに走ってますねw
自分でもどこまでオリジナルでどこまで他のSSとかぶってるか
正直よく分かりません。先人の苦労がしのばれます。
また使っちまいました、あの言葉。
では、そろそろおやすみなさ〜い。
次期隊長、誰かなあ...
>>85 乙&GJ! そして何よりも連載完走おめでとうございます。
最後のネタ全開に笑わせて頂いたというか和ませて頂いたというか
心があたたまりました。
93 :
憂鬱の人:04/09/11 09:53:31 ID:cfPq4dzd
>>92 楽しんで頂けたようで何よりです。
メル欄何のことかと悩みましたが
たぶん以前のアク禁のことですね。
お蔭様でやっと終わりました。
ストーリーがぶれそうなので封印してたノベルを
読み始めたとこです。夕べ上巻を読破しましたが、
エス満載ですね。思ったより雑魚スピの描写が少なくて
がっかりしてます。
次回はナナルゥものを構想中です。
他の職人さんのSS洗いなおそうっと。
>>93 あ〜、あれは貴方でしたか…
って、メル欄@
>>92は
>>85で樹懐が上がってたので…だったんですが(汗
やはり元々低いレス能力が落ちまくってるな、私 orz
95 :
憂鬱の人:04/09/11 14:35:11 ID:Fve5xT+o
>>94 いや、あれは私ではありませんが、何か広告の裏が
どうとかで印象に残ってたもので。私こそ勘違いしてすみません。
「りゅうりゅう」ちょいとヒネってみました。結果として意味不明の
文章になりましたがw
>>95 あ〜、1bですか…。
「りゅうりゅうとしご」く は元々は私じゃないんですよ。
SS投稿スレ#7の360参照って感じで。
あの方が1bに反応したのは、たぶんそういうことでしょう(w
つーか、なんというヒネリかたを(w…(・∀・)イイ!!
さて、そろそろちょっとネタ振りしてみる?
季節ネタを思いつけないので…
悠人からの課題第二弾。
それは―― 作 文
テーマは基本的に
・将来の夢 または わたしはこうなりたい
・楽しかった想い出
・ユートについて思うこと
の三択。
ただし、別途、悠人が許可した場合はその他のテーマも可とする。
安直な上に広がらないかな?(汗
あ、もちろん、憂鬱の人先生へのお便りは引き続き募集ということで。
いいか、みんな
(゚д゚ )
(| y |)
憂鬱の人が
憂鬱 .( ゚д゚) 人
\/| y |\/
欝を脱したとき
憂人 (゚д゚ ) ポイ
\/| y |\
ヾ欝
そこにあるのは
人 .( ゚д゚) 憂
\/| y |\/
優しさだ
( ゚∀゚) 優
(\/\/
99 :
憂鬱の人:04/09/12 08:47:43 ID:393KvnpK
>>98 は、恥ずかしいけど...書いてて良かった...
あ、そうそう、「先生」だけは勘弁して下さい。
ところで信頼様!実はノベルゆうべ読み終わったんですが
なんとノベルでは、ハクゥテ=うさぎ、エヒグゥ=パスタでした。
だからどうした、と言われると困るんですけどね...
EXクリアして、久々にエンディングの年表見て思ったんだが、
アセリア 21歳
エスペリア 22歳
オルファリル 9歳
なんだよな…アセリアなんて年下にしか見えんし、18の時のエスペリアはつるぺただ。
案外ヘリオンも童顔幼児体型なだけで、ユウトと同年齢か年上だったりして。
ネリシアはおつむの出来がオルファと同レベルだから、そういうことは無さそうだが。
>>99 憂鬱の人さん
……ホントですか?!
それは肩の荷が下りるというか……w
でもオフィシャル設定集ではエヒグゥ=うさぎなんですよね……う〜ん。
情報ありがとうございました。では『代償』の方はノベルズの設定ということでお願いしますw
>>100 オルファリルは間違いなくハイペリア年齢18歳以上ですよ、ええ、そうですともw
>100さん
「案外」どころか、ずっとヘリオンは悠人、アセリアと同年齢くらいと考えてた。
なのに体型や持ってる雰囲気のせいで年下扱いされて悲しいやら、悠人に優しくされて嬉しいやら、
……光陰に気に入られてしょんぼりするやら。
ttp://www.d-dream.com/cm/aseria/chara.htm この年齢設定を信じて良いのかは自己判断。
EX終了〜、EXの立ち絵で、妙に色気を感じるなぁ>ニム
で、途中で中断していた「家出」を読みました。
――ついに人もスピリットも区別しなくなったエスペリア。その口撃の矛先は
エトランジェをも巻き込む刺突の嵐となる。それはラキオススピリット隊全体
に波及し悠人の有るか無いのか分からない威厳も風前のマナ蛍同様だ。
これこそが悠人の望んだ世界、皆が笑って暮らせる世界。(えー
で、ニムたんはあきらめちゃったんですか!?「勝負はこれからっ!!」 です?
>>103 ・・・ちょっと、待て。
ヨーティアの名前変わってないか?
>>100 ファンタズマゴリアの暦とハイペリアの暦は違うからアセリアが年下ってこともありうるのでは?
あ、でもそんなことになったらオルファが(ry
>>104 hermit=隠者
っていうか、この表記、他でも結構使われているような?
賢者ヨーティアとは呼んでも、sageと表記されないはなぜ?
>>105 例えばエスペリアだと
聖ヨト暦308年生まれ
悠人がエスペリアに会ったのが
聖ヨト暦330年チーニの月(3月)で
その時のエスの年齢は(ファンタズマゴリア年齢で)
21歳3ヶ月〜22歳2ヶ月となる。
聖ヨト暦で1年は12ヶ月、1ヶ月は4週間、1週間は5日なので
1年は240日になる。
エスの年齢を日数にすると
21×240+3×20=5100日(位)〜22×240+2×20=5320日(位)
で、ハイペリアの一年は365日だから、それで計算すると
13歳11ヶ月25日〜14歳7ヶ月位になる……
皆、ロリになった。
年表はオフィシャル設定資料集、暦の数え方は小説についてた解説より。
計算、おかしかったらスマン。
…………まぁなんだ、ロリマンセーーってことでいいじゃないか
>>108 …ちょっとマテ14・5歳であんなにたゆんたゆんなのかΣ(゚Д゚;)
>>109 つまり
周期単位の年齢の方々はおしまいですわ。
って事か。
|久しぶりにおしおきです!|
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__
「,'´r==ミ、パンパンパンパンパン
くi イノノハ))) ∩
| l|| ゚ヮ゚ノl彡☆))Д´)☆))Д´)
>>111 ⊂彡☆))Д´)☆))Д´)
>>112(ついで)
>>110 妖精は人間じゃないよ
YU-NOのように幼年期が短く、成年期が長いのかも
ハエも成長は急激です
スピに寿命って有るのかな。老いさらばえるのは勘弁だな。ファティマみたいに外見は変わらず、
体にはガタが来るって感じだろうか。
116 :
108:04/09/12 22:20:21 ID:SbzQyYb1
ごめん、間違えた……
5100÷365=13 あまり355
なんで、13歳と書いたけど年齢の数え方だったら
14歳だよな……
まぁ人間じゃないから、イイけど。
117 :
110:04/09/12 22:41:48 ID:cXTX0btA
>>112 その理屈で逝くと、トキミおば…お姉さんが貧…美乳なのはなんでだ?
>>114 たぶんそんな所だろうけど、ハエと同類扱いはどうよw
118 :
110:04/09/12 23:14:31 ID:cXTX0btA
>>117 しまった。
エターナルはエターナル化した時の姿に固定されるだったか。
スマン逝ってくる。
>115
ある程度の歳になったらマナに戻すんだからあまり関係ないと思われ。
エターナルでもない奴が歳を食うと見苦しいだけだし。
>>103 無理だね。なぜなら、時深さんが三つ年上で済むはずがなうあやめていたいよおbs
" タイムアクセラレイト
´∴ # __ ゜ヾ´ ″´∴
「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
__くi イノノハ))≡―=',(((
>>120)≡―=‥、 ∵゛、゜¨
, ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒) _/ / ̄ =―≡― _
´∴'≡く / ∧ | y'⌒ ⌒ ヽ イノノハ))( ≡―=‥、,、
″″ \/〈(((ノ从| / | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
" ||( ゚ヮ゚ー' | |ヾノ //
=―≡ ̄`:, | , | ( ̄=―≒‥,,
" ,゛"=―≡―=',/ ノ )∵`=≡―=
″( ゚ヮ゚∴/´/ / | | , ゚ヮ゚ノ'ゞ ∵゛、 ゜ ¨
ヾ =―≡ ̄`:゛/ / \| |≡―=‥、,、 ヾ
,゛"=―≡―='( | ( |=―≡―∞=@ , 、∴
/ | | |\ \ ´ ∴ ヾ .
・ / / | | | ヽ/⌒〉
.... . ............ . .(_ 「 _) (_〈_/....... . .. . .... . . .
__
「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
j /ヽ y_7っ= 余り仕事を増やさないで下さいね
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
>119
戦時ならソウかもだが、ガロ・リキュア建国後はスピも軍役を強制されたりしないだろうし、天寿を全うするんでは?
老い方が疑問だけど。
それでも、死ねばマナに還るのだろうな。もしかするとその辺の世界の理が変わってるかもしれんが。
ただ、ファンタズマゴリアに蓋がされたあと、彼女たちがどっかの人間の男と添うのかと思うと面白くないなw
>122
それなら俺ファンタズマゴリアの住人になるよ!!
あははははははッ
>>122 レスティーナENDの場合、全員ユウトのお手つきになります。
ふとおもった。ファーレーンは礼儀にうるさいらしいが悠人の前で、それも起居が困難な悠人の前で、
兜も覆面も取らないってのは何事だっ! と。
ファ「こら、ニム。また失礼なことを。何度も云っているでしょう?ユートさまをにそのような態度では……」
ニム「もう、お姉ちゃんは直ぐにそう言うことばっかり云うんだから」
エス「……ファーレーン、前から思っていましたけど、ここはユートさまの部屋です。あなたがいつも緊張感
を持って過ごしているのは結構なことですけど、ユートさまの前では兜と覆面くらいは外しなさい」
ファ「え、あ、エスペリアさん…………そ、それは、あの」
ニム「あ、そうだ、エスペリアの云うとおりっ。お姉ちゃんが一番失礼じゃない」
ニムがエスペリアに同調するのは珍しい。ニムは勝ち誇ったように云う。
ファ「あ、あのでもエスペリアさん」
なぜか狼狽するファーレーン。
ユー「あ、いや俺はべつに気にしてないから、構わないぞ」
エス「いいえ、それでは示しが尽きません。ほら、何を躊躇うことがあるのですか」
ファ「は、はい。分かりました」
観念したファーレーン。兜の緒を弛め、覆面を外す。
見慣れぬファーレーンの姿に、ユート惚ける。
ファ「あ、あのユートさま、あまり、見つめないでください」
頬を染め、うつむきながらチラチラ悠人を見やるファーレーン。
ユー「あ、す、すまん。そ、そのファーレーンって素顔あんまり見たこと無いからさ」
ユート、ジーと見つめ続ける。ファーレーン困ったようにチラチラ見る。
チラ
ジー
チラ
ジー
ファ「…………ユートさま」
ユー「…………ファーレーン」
ニム・エス「……エレメンタルブラストッ!!!」
キックオフ空間 _| ̄|○ スマソ
キックオフを知っている世代はもう少ないかとw
戦闘中はともかく、実は貞操観念が非常に強く、
どこかの国みたいに容易に異性に肌を見せない戒律があるとか。
「ユートさまに……男の人に見られた……もうお嫁に行けない……しくしくしく……」
「……どーいう意味だよ、それ……」
「ユートさま!」
「は、はい!?」
「わたくし、決めました!こうなったら、ユートさまにお嫁に貰って頂きます!」
「え?ちょ、ちょっと、おい待てファーレーン、落ち着けって、うわわわわっ!助けて〜!お婿に行けなくなる〜っ!」
……朝っぱらから何を……orz
ユート「あの仮面の下の素顔は一体…」
後ろからこっそりひっそりゆっくり近づき……がばっ
「ンギュルギュルュルッ!ギュルンギュル!!!」
脱兎
ヤハリソウイウコトカ!
ファーレーン「ユート様……申し訳ありません……」
(覆面をしたまま、変わり身の術)
仮面をとったら中にもうひとつの仮面が。
それをとったらさらに中に(ry
ふと思ったが……イラストを見る限り、アセリアの剣ってバランス悪くない?
柄の部分は長いのに刀身そのものはショートソードかブロードソードくらいの大きさしかないし。
ゲームの戦闘シーンでは両手で持って大きく振りかぶって叩き付けてたけど……逆にそういう
戦い方はやりづらいデザインの気がする(w
それとも、あれは絵が変なだけで実物はもっと刀身が長いんだろうか?
武器は本来はポールウェポンなんだけど
アセリアが我流で振り回している・・・という考えでも大分無理があるな。
そして、何の奇跡か電波か知らないが
「お姉ちゃんにも見られたこと無いのに・・・」と恥ずかしそうなニムボイスが
脳内に響いてきた・・・仕事中だというのに、どうしたらよいだろうか。
柄の部分は軽いけど刀身の素材が比重の重い物ならあんな戦い方になるかも。
まぁそれだとアックス型の方が使いやすそうだが。
体重が軽いのをカバーする仕様という事で。
筋力があっても、振り回せば相応の遠心力が発生するわけだから、
筋力だけで何とかしようとしたら、両手でないとバランスが悪いんじゃないかと。
赤のが一番バランス悪いというか、
チップアニメであれを片手で振り回せてるのが
でもって、ビシッと制動してるし。
あれは両手でもって遠心力つかって振り回すもんだと
かってに想像してる。
インドあたりの象牙武器みたいなやつ
赤スピは双剣を、バトントワラーの要領で振り回している、と想像してみる。
・・・で、でっぱりがあると引っかかりやすいため、
赤スピは凹凸が少ない、っと。
そうか、だからナナルゥは魔法主体なんだな(w
オルファの将来は期待大だな
しかしエターナルになって容姿が固定されるという罠
初めて双剣を振り回したナナルゥ
ざくり
ナナルゥ「ひぎぃっ!」
自分の豊満な乳に剣が刺さった
トラウマになり以後は力いっぱい剣は振れない
ヒミカ「……なんなの、そのやる気のないスイング(汗」
ナナルゥ「理由を、お話ししても良いのですか?」
んで、ントゥたんは自分で自分の名前言えますか?
理由を聞いてヘコむヒミカ
SS投稿がないとこうも寂れるものなんだなw
脳内SS満載ですがなにか。
SS自体のレス数をさっ引くとそう変わらないかもしれんね。
一昔前の帝国では、神剣を振るうのに邪魔なほどの胸を持つ
スピリットに対し、その胸部を削ぎ落とすという改造が行われていた。
一部の研究者らの抗議、批判により一時は収まりを見せるものの、
件の研究者たちの出奔を境にその非道は再開されることとなってしまう。
そんな折、ある時期を境にぴたりと胸部を改造されたスピリットは帝国から姿を消した。
噂によれば、新しく帝国に登用されたスピリット隊顧問がその原因だという。
その男唯一の善行となるかに思えたその行為も、単に自らの趣味を優先しただけである事が
明るみに出ると、影の意味を込め人々はこう口にした。
「ア マ ゾ ネ ス から、スピリットっすか」
(あぁまぁソーマですから、スピリット好き)
……orzオアトガヨロシイヨウデ
乳びんたIV:豊満な胸で相手をおもいっきりはたく。
キョニューな妖精しか使うことができない上に、乳の差がそのままダメージに直結する
ヒンニューが使うと精神ダメージが大きく、行動不能になることがある
>>148 だが、貧乳スピに対してはその効果は絶大である。
ユ「だ、大丈夫かっ、ヒ○カ!!」
ヒ「・・・ダメです。立ち直るまで一ヶ月くらいかかるかと。」
ユ「ハリオン!ヒ○カの手当てをっ!」
ヒ「・・・・・・マジっすか、ユート様・・・・・・orz」
プロジェクト・ファンタズマゴリア
コアラ様「貴方たちはなぜ邪魔をするのですか
再生、世界、すべては私が作り出したもの
分かたれた神剣を、第一位神剣に戻すこと
それが私の使命
神剣を破壊する者
秩序を破壊する者
エターナルには不要ですわ
私は回帰するために生まれました
私は使命を守り、第一位への帰依を誓います
修正プログラム最終レベル
全神剣チェック完了
戦闘準備完了
カオスエターナル確認、排除開始
正直スマンカッタorz
>>150 シュン「ソーン・リームへようこそ。
これが『世界』だ。
俺はついにこいつと一つとなった。
もう誰も俺を止める事は出来ない。
死ね!」
そのタイトルならこっちじゃないかとw
今の流れなら言える
ネリーグール
155 :
153:04/09/17 00:50:40 ID:nTwz9CjF
それは、ニムの「あ、ヤバ」と言うセリフから始まった事だった。
「おー、ふむふむふむ〜これは興味深い。興味深いぞ〜。これが食マナ鬼か。文献でしか読ん
だこと無かった、非常にまれな現象をこの目で見れるとは、眼福眼福ぅ」
ニヤニヤしながら部屋に入ってくるヨーティア。明らかに分かってやっている。
「ヨーティア……楽しんでるだろ。冗談じゃないぞ、早く何とかしてくれっ!」
「いや〜はっはっは。なんだ理性の限界かぁ、ん〜?」
「ふざけないでくれ、まじでさ」
正直、ヤバイ。情けない顔でヨーティアに頼み込むしかない。
なんたって、いまの俺の状態は……
椅子に座った俺。その左太股にネリーが跨って、俺の首っ玉にすがりつき密着し、首筋に舌
をはわせている状態。冗談抜きで、俺の両手は今にもネリーの背中に廻ってしまいそうだ。
ンハァ、ハァハァ。
ネリーの吐息がやけに大きく聞こえる。耳に近いんだから当然だ。
「まぁ、心配するな。ネリーも腹がふくれれば、元に戻るさ。それまでの辛抱だ。ま、そのあ
とのユートの運命までは関知しないがな」
全てはニムの蘇生魔法の失敗からだった。呪文をとちった為にマナの収束がうまくいかず、
ネリーは体組織のマナが希薄なまま生き返ってしまったのだ。そのため極度の飢餓感に襲われ
いきなり俺の首筋にかじりついてきたってわけだ。その場にいた中で、俺が一番マナが強いか
らだとはヨーティアの弁だが、ネリーが生きるか死ぬかって場面だったのが、違う意味で凍り
付いてしまい、今度は俺が命の危険にさらされている…………。今は皆静観しているけど……
いや、だからこそ俺の両手はネリーを掴むわけにはいかないんだ。俺は気力を奮い起こし、
揺るがぬ理性を保ち続けなくてはいけないんだっ!
「ンン、ユートさまぁ、はぁちゅっちゅっ」
も、保つのかっ?
首筋の小さな傷。そこから立ち上る金色のマナ。ネリーの小さな赤い舌がちろちろと蠢き、血
ともマナとも分からぬものを一心不乱に掬い上げる。
「せ、せめて、ネリー体くっつけるのやめてくれないか」
無駄だと分かっていながらも俺は云うことしかできない。
「ユートさまぁだめだよ、ハァちゅっ。この距離はネリーの間合いなんだからぁ」
…………俺頑張れ。
エス「ユート様のマインドが低下しました。
フレンジーU、オーラフォトン・ビームが解禁になりました。」
>>155 GJ。いや
クソっ、悠人のヤツめ美味しいところを・・・だったら
−−ブシュゥ−−
ネ、ネ、ネーリーちゃん
こっちのマーナも美味しいぞ
この後、落雷と出血過多により生死の境をさまよいます。
「エスの家出・96裏Ver.」
ウルカ「ってな訳で、蘇生の魔法が。」
――でかしたっ、ウルカ!!
半ば金色のマナと化している悠人が、死にかけとは思えぬ勢いで体を起こし、エスぺリアにとりすがる。
「それだ、それそれ。こちとら死にそうなんだ、早いとこ頼む。」
「そ、それが、ユート様。ガイアブレスを習得した時にうわが...あわわ、どういうわけか忘れてしまいまして...」
「マ、マジかっ、エスぺリア!」
「申し訳ございません、ユート様、マジです。」
見えざる神の手には逆らえない。「上書きされたスキルは二度と習得されませんがよろしいですか?」
そんな確認ウィンドウも出たではないか。天国から地獄。まさにその言葉を実感した悠人は再び倒れこんだ。
「光陰...佳織その他もろもろ...頼んだぞ。」
>>155 先生! 序章でユウトからマナ奪った赤スピのやり方の方が効率的だと思います!
という野暮な突っ込みは置いといてGJ!
皆さんEXPANSIONのExtraマップ何ターンくらいでクリアしました?
自分は140ターン…かかりすぎ_| ̄|○
>>161 70ターン。
EXPANSIONはハリオンが最高でしたな。
製作者はこのスレを見てるに違いない。
>>162 マジック発動してしまった。
ヘリオンだってば俺orz
いや、ハリオンも悪く無いどころか「お姉さんですから〜」はかなりツボ
俺はニムにやばいくらい萌えたぞ
こっちのマーラも美味しいぞっと。
「ま、待てセリア!不可抗力って奴だっ。それくらい分かるだろう?」
「ふかこうりょく……?ハイペリア語など分かりません」
「……しっかりヨト語で云ってるじゃないかっ。あ、エスペリアっお、俺はあくまで
隊長としてだな、隊員の危機を救う義務を果たしただけであって」
「はい。理解しています。隊長として………ユートさまも私たちも、それ以上でも
以下でもありません」
「思いっきりGMエスペリアで語ってるっ。ヒ、ヒミカさんあのあまり振り回すとたく
ましい胸筋に当たっちゃいますよ、そんな物騒な物は、あ、ファーレーンななんで、
腰落としてるんだよ。ニムッ元はと言えばおまえが、あ嘘です。光陰くたばってな
いで助けろっ。ハリオンは俺の立場を理解してくれるよな、な」
「メ〜です〜」
うおおおおおお〜 俺の薄くなったマナ障壁はたやすく突破され俺は星になった。
「ユート、リバイブかけたげよっか?」
「…………いへ、いいです………」
EXPANSIONでアセリアヒロインの法則が見つかった。
悠人と一緒に風呂で、ってイベントがあるんだ、あの7人は。
無印じゃ一人だけ無かったのに追加されてるしな。
……彼女は『求め』が相手だったから……
振るネタ考えていたら、
季節的には中秋の名月ってことで月見かな、
とか思ったが、ちと難しいかな。黒スピはともかく、他が。
団子とかでどうにかなるかなぁ…
と、だめで元々で言ってみる(w
>>167悠人と一緒に風呂で、ってイベントがあるんだ、あの7人は。
それを言ったらキモウトまで・・・
EXPANSIONでファーレーンはヤムチャから餃子に格下げになったな。
一応ニムを釣るための餌くらいの価値は残っているようだが。
月にはエヒグゥが住む。
「えーホントなの?パパ。それじゃハクゥテもお月様にいるの?ハイペリアにいるんじゃないの?
オルファも行きたいよ〜」
FLY ME TO THE MOON
花より団子、食欲の秋
バルバロイの若林詩織が人丸原画とこのスレの影響か緑の雑魚スピに見えてきた。
リンリンリン、と優しい虫の音が夜の世界にBGMを奏でる。
雲ひとつない夜空に浮かぶ真っ白な満月。煌々と輝く星々は緩やかに、ゆっく
りと動いていく。青々とした草花の月光浴。月の光を浴びてなお鬱蒼と茂る森林地帯。
その中心にある僅かばかりに拓けた草地で―――……少女は舞っていた。
キンッ―――…一度―――キンッ―――…二度―――キンッ―――…三度。
鋼と鋼を打ち付けたような甲高い金属音。鳴り止まぬ剣戟。
一振り、二振り、三振り……。少女は舞い続ける。後ろで一括りに縛ったその
美しい空色の髪が少女の動きに合わせてゆらり、ゆらりと揺れる。
草を踏み締める音、甲高い剣戟、吐息の音、血の舞う音。
全てを舞台演出に少女はただ舞っていた。
少女の舞いの相手はやや小柄な少女。その緑色の髪と同じ戦闘服に身を包み、
手に持つは少女の背丈以上はあろうかという長く、鋭い―――槍。
それを少女は何の苦もなく、まるで自らの手足のように振るい、突き、叩きつける。
けれど、その剣戟には殺気も勝負に対する感情も……一切含まれていない。
少女の瞳には光がなかった。
少女の持つ槍が、一瞬煌き……怒涛の突きが放たれる。けれど、青の少女は手に
持ったやや小振りな刀剣を翻し、それら全てを防いでいく。あるときは刀の刀身を相
手の槍に合わせ、またあるときは突きの威力を殺さずに刀で流したり、そして少女は
徐々に踏み込む。
槍のリーチは刀剣のそれを遥かに上回る。
もしも刀剣が槍に勝とうとするならば刀剣の使い手は槍の使い手よりも三倍は強くならないといけない。
しかし、青の少女は全てを見切り、流し、受け止め……緑の少女を間合いに捉える。
―――――一閃
ピタリと剣戟の音が止んだ。静寂が辺りをゆっくりと包み込む。青の少女の剣に返り血はない。
緑の少女の槍は何もない虚空を貫いて停止している。
一分か一秒か、それとも……けれど確かに今、この場の時は完全に止まっていた。
やがて、ゆっくりと時は流れ始める。
リンリンリン、とまた虫の音が辺りに響き渡り、木々のざわめきがオーケストラとなる。
青の少女はゆっくりとしたバックステップで緑の少女の懐から飛びのいた。
それと時を同じくして緑の少女の頭部が―――ズレた。
首の左から右へ抜けるように入った一本の線。それに沿うようにゆっくりと緑の少女の頭
部が流れていく。やがて、ドスッという重々しい音と共に緑の少女の精気のない顔が草む
らに転がった。首の傷口からは消失した頭部を求めるかのようにゆっくりと金色の霧が立
ち上り始める。徐々にそれは首、胸、手、腰、足と広がり、その手にあった槍をも包み込
み消えていく。
サアッと緩やかな風が流れた後には緑の少女の姿はどこにもなかった。
青の少女は眉一つ動かさずにそれを見届け、また剣を構えなおす。
ザザッと木々のざわめきが少し大きくなる。
と、同時に青の少女の周りに都合六つの影が降り立った。
――――少女の舞いはまだ終わらない。
少女は思う。
「つまらない……」
と。
戦いこそスピリットの意味、殺し合いこそスピリットの存在価値。
そして、私はただの戦闘機械。
右斜め後方から音もなく駆けてくる影。同じ青色の髪が視界に広がる、と襲い来る銀の煌き。
それを剣で受けると、体重を掛けた右足で相手を蹴り飛ばす。ほぼカウンター気味の一撃に
相手は後方へと吹き飛ばされる。それを視界に納め、身を屈めると―――剣を後方に振り抜いた。
ピチャッと生暖かい血飛沫、上空から斬りかかろうとしていた影が真っ二つに両断され、地面に転がる。
それには目も向けず、純白のウィングハイロゥを展開、空へと舞う。
一瞬前までいた地面で幾つもの剣戟が重なり合った。
空中で半回転、地面を視界に加えると、空を蹴るようにして加速。目の前に爆発的な勢いで迫ってくる青々とした地面。
―――一閃、二閃
ウィングハイロゥを最大限に利用し、着地。ドサリと二つの影が草地に沈む。
「残り、三」
呟きと共に、地面を蹴りつける。後ろから槍を突き出した影の頭上を越えるように空中で回転、
着地すると同時に視界に入った無防備な背中に剣を突き立てる。
断末魔の叫びすらなしに影は崩れ落ちた。
そこに迫る二つの影。
突き刺した剣は抜けない。僅かばかりに舌打ちすると、何の躊躇もなく自らの剣を手放し、
目の前の死体から今にも霧になりそうな槍を奪い取り、投擲。
予想外の攻撃に影は体勢を崩し、地面を転がる。が、もう一方の影が迫る。
闇の中で尚暗い、漆黒の髪。鞘に納めた自らの刀に手を添えながら影が走る。
チンッと一度だけ鯉口を切る音がした。
ズルッと上半身と下半身が分かれ、霧とかえる少女。
それは緑の戦闘服を着た少女―――。
ヒュッと風を切る音がした。
居合いの影は自らの過ちに気付く暇もなく金色の霧へと変わっていた。
ゆっくりと立ちあがった青の少女は最後の影の下へと歩き始める。
最早、最後の―――少女と同じブルースピリットは虫の息であった。
先程投擲した槍が少女の腹部を貫通、大きな風穴を開けている。
しかし、それでも少女は立とうとし、けれど崩れ落ちて残り少ない生を消費していっている。
ゆっくりと歩み寄った青の少女は倒れた少女の喉元に自らの剣を突きつける。
「死にたい?」
彼女は問う。
けれど、倒れ付した少女は荒い息を突きながら澱んだ瞳でこちらを見るだけだ。
その瞳には何も浮かんではいない。
「そう……」
けれど彼女は何かを理解したかのように頷く。
「貴女も……人形なのね」
少女に聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で呟くと突きつけていた切っ先を心臓へと移動させる。
ゆっくりと切っ先が血に塗れた戦闘服へと潜り込んでいく。
一瞬だけ少女の澱んだ瞳に光が戻った。
それは、憐憫か、憎悪か、次の瞬間には身体に侵入してきた異物によって消え去った。
ゆっくりと金色のマナの霧へと返っていく少女を見てセリアはただ無表情だった。
トスンッと軽やかな音を立てて『熱病』が力なく地面に突き刺さる。
木の幹に背をあずけ、ずるずると滑り落ちるように木の根元に腰をついた。
ただひたすらに心が………寒かった。
ギュッと自らを守るように、僅かな体温すら逃さないように膝を抱え、身体を丸める。
もうすぐ、夜が明ける。
日の日差しを浴びれば多少は温もるか、と思ってみたがすぐその考えを嘲笑う。
「何を今更……」
彼女が寒さを感じ始めたのは、他人を拒絶し……彼女が一人になった時から。
思い出したくもない過去、関わりたくない未来、その全てが彼女を締め付ける。
人の温もりはいつも優しく、包み込んでくれ、癒してくれる。
けれど……失ったときの悲しみ、痛みは信じられないほどだ。
幾度となく経験し、傷つき、疲れ果て、もう他人はいらないと思ってしまった。
どこでも、冷たく、他人を拒絶していればあの痛みを感じずに済むから……。
けれど、他人と連携を取れないモノはどこでだって邪魔者になる。
そうやって、幾つもの場所をタライ回しにされて今の場所にたどり着いた。
結局、どこにいったとしても他人を拒絶することに変わりないはずなのに……。
「その……はずなのに」
温もりはいらなかった……信頼はいらなかった。
まだ、寒さのほうが痛みよりも耐えていけるから。
「あら?セリア、こんなところにいたの?」
けれど、今は………。
「全く、斥候に出たっきり帰ってこないから皆、心配―――って、きゃ!!」
朝日に煌くレッドワイン色に輝く髪、心配げに歪められたその顔。
知らず知らずのうちにヒミカへと身を投げ出していた。
「えっ?ちょっと!?セリア!?」
「ごめんなさい……でも、ヒミカ、もう少しだけ…このままで」
まるで何かに怯えているようなセリアの声に困惑気味なヒミカが溜息をつく。
「はぁ……はい、ヨシヨシ」
まるで赤子をあやすようにポンポンと背中を叩いてくれるヒミカ。
ゆっくりとその体温がこちらを暖めてくれる。
その振動に身を任せて少しだけ目を閉じる。
けれど、今は………この温もりに溺れてしまいそう。
181 :
風変わり:04/09/19 22:52:05 ID:Hg/ojgFX
……あれ?おかしいな、どこから百合に。
と、とにかくヒミカとセリアしか出てナイデスネ、ハイ、ゴメンナサイ。
自分でもよく分からないですが、書いてるうちにこんなになっちゃいました。
やっぱりウチのセリアをユート如きにあげるのはモッタイナ―――グハッ!
まあ、とりあえず……いつもの如く逃走!
ええっおぼれちゃったの? ハリオンの相棒を奪い取ってしまうなんて「赤熱」
するくらい熱いんでしょうね。それとも セリア⇒ヒミカ⇔ハリオンなのかっ?
何にせよ、北の王国ではく〜るな女には燃える女がにあう♪っと。
>風変わり氏
やはりまた来てくれましたね。乙です。
重い話だなぁと思いながら読んでいたら…(w
これぐらいなら百合と言えば百合、違うと言えば違うぐらいですかねぃ…
で、ほらほら、逃げないで。せめて画像板を覗いてから。
>>170 ワラタ。
その勢いのままに書いてみる。先に反省しておく_| ̄|○
「わたしは腹黒じゃありませんっ! そうですよね、ユート様?」
「あ、あぁ…とりあえず、『月光』はどけてくれ」
これまでも何度かあったことではあるが、「ファーレーンはどこに黒スピリットの特徴が出ているのか」議論が沸き起こったのだ。いいかげんファーレーンも軽く流せばいいのにと悠人は思うのだが、意固地になって反論するのでこうしてしばしば話題にされてつつかれる。
ふと、悠人の頭に豆電球が浮かんでピカッと光った。たとえファンタズマゴリアにいても、やはりハイペリア人としては閃きのエフェクトはこれしかない。まだハイペリアにいたときに、小鳥と今日子に何やら怪しげな診断テストをやらされたのを思い出したのだ。
「よし、じゃあ、診断テストをやってみよう」
ということで、今日子と光陰の協力で腹黒度診断テストが製作された。というか悠人は何もしていない。ただ診断結果が穏当になるようにリクエストしただけだ。
こうして作られた診断テストを前に、ファーレーンの表情は緊張を帯びていた。
なんとしても汚名返上しなくては。いや、濡れ衣を晴らさなくては。
えぇと、第一問は…
Q1: テストであなたは好成績を残さなくてなりませんが自信がありません。
うーん、そうですねぇ…ユートさまにお願いする、かしら。
A1: 教官に袖の下を送る
(中略)
Q10: あなたは自分が腹黒いと思いますか?
A10: そう思わないけど、そう言われる
そして…今日子から結果発表。
>腹黒度チェック>結果
あなたの【腹黒度】がどれくらいかを診断してみました。
あなたの【腹黒さ】はこんな感じ!
あなたの腹黒度は凡人レベル、【人の不幸は蜜の味】です。
魂の黒さ 88%
心の黒さ 100%
ルックスの黒さ 82%
輝く白さ 24%
「なーんだ、凡人レベルじゃないか」
予定調和でそう言って悠人はファーレーンの方へ振り向いたが。
「あぁっ、ファーレーンが真っ白に…もとい真っ黒に燃え尽きている!? ファーレーン、しっかりしろっ! って、あぁっ、ウィングハイロゥが黒く!?」
( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )
「魂の黒さが88%も…」
「心の黒さが100%ですって…」
しまったーっ、数値の方まで気にしてなかったーっ!!
かろうじてハイロゥも白く戻り、無事だったファーレーンだが。次のファーレーンが食事当番の日。テーブルの上を見て一同は愕然とした。
どの品も誰かしらの嫌いなものでかつニムントールの好物というチョイス。焼き物は中心部に焦げ目が。黒っぽいソースが真ん中辺りにかけられているものも。
((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
ちなみに、リクェムはなかった。
Q7: 母親と恋人と自分。一人しか助からないとすれば?
A7: 恋人を助ける
その晩のこと。悠人は水を飲んで戻る途中で、ファーレーンの部屋からニムントールの声が聞こえることに気づいた。
「まったくもぅ、世話が焼けるんだから」
ニムントールが何やらぶつぶつ言ってるが、ファーレーンの声はしないので眠っているのだろう。
こんな夜中に何をしてるんだ? そう思って悠人が覗いてみると…
ベッドで眠っているファーレーンの服の裾をまくってそのお腹に何やら白い粉を擦り付けているニムントールの姿があった。
(『腹黒』ってそういう意味じゃないぞ、ニム)
ツッコミを心の中だけに留めて、悠人は静かに立ち去るのだった。
>風変わりさん
他人との関わりを避けるのは、自分が傷つきたくないから。
けれど逆に、他人に失う悲しみを与えたくないからだ、とも考えてしまいました。
心の外側を覆った冷たい仮面を溶かすのは赤い火の暖かさかぁ……と最後に笑みもこぼれました。
>184さん
……結果は凡人なのに、数値が黒さMAX……私もか……
何というか、質問【4】 親友と同じ人を好きになりました。 の答えが知りたかったり(w
その晩のこと。ニムは水を飲んで戻る途中で、ファーレーンの部屋から悠人の声が聞こえることに気づいた。
「まったくもぅ、世話が焼ける奴だ」
悠人が何やらぶつぶつ言ってるが、ファーレーンの声はしないので眠っているのだろう。
こんな夜中に何をしてるんの? そう思ってニムが覗いてみると…
ベッドで眠っているファーレーンの服の裾をまくってそのお腹に何やら白い液体を擦り付けている悠人の姿があった。
(『腹黒』ってそういう意味じゃないよ、悠人、というかナニがはみ出てます)
ツッコミを心の中だけに留めて、ニムは面倒くさそうに立ち去るのだった。
これは正直ワラタ。感動した。
ファーレーンが周りに向けるのはいつも同じ方向なんだろう。で、裏側はね、見えないから 「ただの一撃で突き崩す、
これが私の力です。はぁぁ、聖火燎原の太刀っ」 ズバッ*4 こ、これも裏、のわざ…… (´・ω:;.:...
人は誰でも闘争本能と言うものを持っている。
戦いを前にして血が騒ぎ、喚起の声をあげるのは当然の事だ。
―――例え、それが人ではなく『妖精』だとしても―――
雲ひとつない晴天
青草の敷き詰められた草原にて一人の少女が高らかに宣言する。
「これからちょっと皆さんに……殺し合いをしてもらいたいと思います」
周囲から漂ってくるのは喧騒でも困惑でもなく、明らかな闘志(一部を除く)
―――それはある一人の男の言葉によって全てが始まった―――
「ねえ、ネリー……」
「ん?なあに?」
「わたしと……組まない?」
幾つも張り巡らされた糸は
「セ……セリアさん!?どどどどうしてここが!」
「知ってる?ヘリオン……」
「え?」
「死体のない殺人は殺人にならないのよ?」
複雑に絡み合い……
「まさか……貴女と戦うことになるとはね」
「……いきます」
唯一つの結末へと集っていく
「オルファ、いっくよ〜!」
「ん、いく」
「なっ!?二人掛かりとは卑怯というものではありませんか!」
鳴り止まぬ剣戟
「お…お姉ちゃん?ど……どうして?」
「ごめんなさい、ニム。わたしを……許して」
裏切りの果てに儚く散る命の灯
「ヘリオン!無事か!?」
「ふえ〜〜ん!ユートさまぁ!」
彼女たちは戦いの中で何を思うのか
「ユート様……みていてくださいませ」
全ては愛しの主の為に
「うぇ〜ん……みんなどこぉ」
義理と人情、迷子一人
そして、規格外の最終兵器起動
「ふふ〜、悪い子にはお仕置きしないといけませんね〜」
―――生き残れるのは―――
ただ一人
「俺の出番は……?」
『アセリア的バトルロワイヤル』
coming soon
195 :
風変わり:04/09/21 00:37:33 ID:cbsPt2eR
……すっかり貼るのを忘れてました、テヘ!
先日のSSの後に貼る予定でしたのに……はうあ
最近は次回予告が流行っている(?)そうなのでやってみました(`・ω・´)
……上手く出来ないですね
もう、寝ちゃいましょう……
(´・ω・`) ショボーン
( ´・ω・`) ? >191-194
(`・ω・´) シャキキーン!!
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
>184
思うに、診断テストをファーレーンだけ受けるのは公正を欠くのではないか。
と、背中にチクリとした痛みを感じながら悠人が皆に云う。
「そうです。その通りですフェアじゃありません不公平ですっ!!」
30分後皆の結果が張り出される。
( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )
「あきらめが悪いんだから」
「ただの追い打ちですね〜」
「うわ〜〜ん、ひどいっあんまりです」
夕日に向かって走れっ。ファーレーン。
だけど、気づかれてないと思ってるかもしれないが、後ろをチラッと見て、追いかけてきてくれるのを
期待しながら走るのは止めるべきだ。
「どこがいいかしら、やっぱり森に連れ込む……いいえ、人気のない袋小路とか……はやくユートさまっハート」
腹黒は終わらない。
女郎蜘蛛のファーレーン
あのテストは数値が当てにならないよ
だって同じ項目にチェックをつけてチェックボタンを押したら魂の黒さが0〜9の範囲で変動したもの
気にすること無いよ、ファーレーン
200 :
184:04/09/22 01:43:57 ID:r8xJR76A
('-`) ファーレーンへげんきですか。いまもう一度反省しています。
J( `o) うるさいです死んで下さい 今更反省しても遅いです殺しますよ
('-`) ごめんね。sage寸はじめて腹黒ネタに乗ったから、ごめんね。
J( `o) うるさいくたばりなさい、乗るんじゃありませんっ!
('-`) ニムにフォローしておいてもらいました。少しは白くなりましたか?
J( `o) フォローになってませんっ!!(月輪の太刀
俺100 100 100 50 だけど凡人レベルだったよ。
つまりオブラートに包んでるだけで凡人レベルがさいkyo(ry
ファーレーンにはユートのこくまろみるくが必要だな
みるくをお腹に塗りこみながら走れ走れファーレーダビッドソン
>>202 内側に? 外側に?
レベルが上がるにつれて能力もスキルもヘリオンに追い越され、二軍落ちの危機。
そのときファーレーンが取った選択とは……?
J( `o) ユート殿の夜伽専属に…
('-`)('-`)('-`)('-`) ('-`)('-`)('-`)('-`)('-`)('-`)('-`)('-`) ダメー!!!!!!!!!!!!
↑ ↑
第一詰め所 第二詰め所
序盤エスの代わりにファーがきてそのままハァハァ
「ああ、ユート様…すごく大きいです…ちゅ、ぺろっ」
「くっ…ファーレーン、なんで…」
「ん、じゅっ…私は、はぁっ、伽をするしか能が、あむっ、ちゅうぅぅ…スひリットなんれす、はからほのまま…んっんっんっ」
「うわぁっ!?や、やめっ…!」
「ぷはっ…あは、ユート様の先走りおいしぃ…」
「ファー、レーン…」
「もっとしてあげますから、私のお口で気持ちよくなってください…」
なことを会議中に思いついた漏れは駄目な奴でつねorz
最初にハァハァしたのはナナルゥ
アセリアが頃したのは変わり身
保管庫が重い……
鯖メンテ中だってさ<保管庫
15〜16日といい、今回といい、バタついてるね。 < JBBS
10月もまだパタパタしそうな悪寒がするし。既に脱出組も出始めている模様。
我らが保管庫がどうなるのかは、保管庫の神の味噌汁…
『無償の奇跡などというものはない、
―――契約の代償を支払う時が来た』
脳天に突き刺さるような声が悠人を襲う。
『マナを...マナをよこせ!』
「ははは、そうか、守護神とは名ばかりの、あの役立たずの魔龍を、エトランジェが倒したかっ!」
ラキオスの国王、ルーグゥ・ダイ・ラキオスは報告を聞き、高笑いした。
聖ヨト暦330年、エクの月、青みっつの日。
ラキオスに召還されたエトランジェ、高嶺悠人は永遠神剣「求め」の力により、
リクディウス山脈に潜むサードガラハムの魔龍を屠った。これにより、ラキオス王国は眼下の敵、
バーンライト王国に先んじて、膨大なマナを手中に収めた。だが、それは、新たな戦いの幕開けでもあった。
「失礼いたします、ユート様。」
数日後の深夜、エスペリアが悠人の部屋に入って来た。
「あ...なんだ、こんな時間に?」
「どうか...そのまま、楽にしていてください...」
エスペリアの柔らかい手が、触手の様に悠人の股間に伸び、這い回った。
「何を...止めろ、止めてくれ!」しかし、エスペリアに軽く押さえつけられただけで、
悠人は起き上がることすら出来なかった。昼間のアセリアとの模擬戦で、
身動きできないくらい力を使い果たしていたのだ。――やがて、悠人はエスペリアの口の中で、果てた。
――なにやってんだ、俺は。
エスペリアの出て行った部屋で、悠人は快感の余韻に浸るよりも、
どうしようもない敗北感に打ちのめされていた。傍らの「求め」があざ笑うように青白く光った。
―――数ヶ月が過ぎたある日。。
悠人はラキオスの国王に呼び出され、スピリット部隊の指揮を執る事を命ぜられた。
「スピリット達はお前の好きにしてよいぞ、エトランジェよ。」国王はそう言って皮肉な笑みを浮かべた。
悠人は、しかし、ニヤつく国王の顔を正視出来ずにいた。
部屋に戻った悠人のもとへ、ノックとともにエスペリアがやって来た。
「ユート様。我がラキオス王国は、バーンライト王国に対して正式に宣戦を布告しました。」
そう言ってエスペリアは今後の作戦の内容、悠人に与えられた権限などを説明し始めた。
「―――以上です。ここまでは宜しいでしょうか?」
「ひとつ、――訊きたい事がある。」椅子に座ったまま悠人はエスペリアを見上げた。
「エスペリア達は、それでいいのか?一度戦争が始まってしまえば、エスペリア達だって、ただじゃすまなくなるぞ。」
エスペリアは哀しげに目を伏せる。
「―――私達は、人間にお仕えする道具です、ユート様。」
悠人がファンタズマゴリアに召喚されてから何度となく聞かされた言葉で、エスペリアは答えた。
「道具、―――か。」これ以上は水掛け論になる、そう思った悠人は腕組みをして目を閉じた。気まずい沈黙が流れる。
「わかった。説明はもういいよ、エスペリア。」悠人はゆっくり立ち上がった。
「ただ、これだけは憶えといてくれ。」そう言って悠人はエスペリアを見据えた。
「――なんでしょうか、ユート様?」
「道具だって言うんなら、俺の命令以外のことはするな。」
悠人が語気を強めて、言った。エスペリアの肩がビクリ、と動く。
「返事はどうした?」
「――わかりました。それではこれで失礼いたします、ユート様。」
エスペリアは、逃げるように悠人の部屋から出て行った。
―――これで、良かったんだ。
悠人は窓の外の景色に目を移した。
多分、これでもう夜中にエスペリアが訪れて来ることもないだろう、悠人はそう思った。
バーンライト王国との決戦に備え、新たなスピリット達が配属されたのは、その翌日の事だった。
「あなたが、新しい隊長ですか?」
燃えるような瞳をしたレッドスピリット、「赤光」のヒミカが悠人をじろじろ見ながら尋ねる。
「そうだ。まあ、よろしく頼むよ。」悠人は愛想笑いを浮かべた。
「何だか、頼りないわね。」無遠慮に横槍を入れたのはブルースピリット、「熱病」のセリアだった。
「あらあらー、そんな事言っちゃ、めっ、ですよー。」
間延びした声で悠人をフォローしたのはエスペリアと同じグリーンスピリット、「大樹」のハリオンである。
「確かに、みんなと比べると戦闘経験も少ないし、頼りないかも知れないけど、
俺もどうしても戦わなきゃならない訳があるんだ。」
悠人は第二詰所の前に並んだスピリット達を見回しながら、言った。
妹の佳織が人質となっている事は、スピリット達も知っているはずであった。
「ま、邪魔をしない程度に頑張ってね。」
そう言い放ってセリアは、無造作にくくったポニーテールをなびかせ訓練場に向かった。
「失礼ですよ、セリア!」叱責するエスペリアの声にも振り返ることはない。
「ねーねー、これがユート様の神剣なのー?触ってもいい?」
「だ、だめだよぉ、ネリー。」
先刻から悠人の腰の周りに興味津々でまとわりついているのは「静寂」のネリーである。
同じブルースピリット、「孤独」のシアーがそれをはらはらした目付きで見ていた。
――何だか、想像していたのと違うな。
悠人は苦笑した。これほど個性派ぞろいのスピリット達の隊長としてやって行けるのか、
不安もあったが、少なくとも、ただひたすら人間の命令に忠実に従うだけのスピリットばかりではない。
その事は悠人にとって好ましい事に思えた。
「ほら、あなたもユート様に自己紹介をしなさい。」
溜息をつきながらエスペリアがもう一人のレッドスピリットにうながす。
引っ張り出されるように悠人の前に進み出たのは先程から無言で突っ立っていた、おかっぱ頭の少女だった。
「――ナナルゥです。」
ゾクリ、と悠人の背筋に冷たいものが走る。
ちらりと悠人に向けられたその瞳は、ヒミカと同じ深紅だったが、そこには人間らしい感情を垣間見る事は出来なかった。
スピリット達は総じて人形のような整った顔立ちをしている。それだけに、表情の乏しさは、不気味さと直結していた。
これまで接触のあったスピリットの中で言えば、アセリアが近いのかも知れないが、
アセリアには、それなりにすっとぼけたような感情表現があった。
だが、目前の、ナナルゥと名乗った少女からは、それすら感じられない。
「お、おう、よろしくな、ナナルゥ。」悠人は思わずそのスピリットから目をそらし、助けを求めるようにエスペリアに尋ねた。
「こ、これで全員かな、エスペリア?」
「――いえ、もう一人います。今は訓練の最中だと思いますが。」
「そうか、じゃ、そっちに行ってみるか。」悠人は訓練場に向かって歩き始めた。
そのとき、ヒミカがどことなく悲しげな視線を悠人に向けている事に気付く。
―――?
なんとなくヒミカにとっつきにくさを感じていた悠人は、その時は、余りその事を気に留めることもなかった。
「はは、はいっ、先生!ご、ごめんなさい!」
草野球のグラウンドのような訓練場の真ん中で指導を受け、オーバーアクションで謝っている黒髪の少女。
それがもう一人のブラックスピリット、「失望」のヘリオンであった。
エスペリアによるとまだ実戦に出られるほどの能力ではない、との事だったが、
その動きは、悠人の目には充分すぎる程のスピード感が有った。
――全く、お笑いぐさだぜ。
悠人には、ヘリオンに「先生」と呼ばれ、偉そうに訓示を垂れている訓練士が、いっそ滑稽なものに映った。
ラキオスにはその訓練士をふくめて3人の指導者が在籍していたが、
実際のスピリット達の戦場ではその全員を束にして並べたとしても、5分と立ってはいられないであろう、
悠人はそう思っていた。それ程人間とスピリットの間には、その能力に開きがあった。
訓練といっても、戦いの場での精神論を唱えたり、こんな時はああしろこうしろと言うだけで、
スピリット相手に模擬戦をする事すらない。いや、出来ないのだ。
―――どこの世界でも、無能な奴ほど他人に教えたがるもんだよな。
そんな訓練士達でも、悠人やスピリット達よりは、はるかにいい暮らしをしている。
それでもまだ戦いに関わっているだけマシなのかもしれない、悠人はそう思った。
大多数の人間はスピリット達が従順なのをいい事に、汚れ仕事を全て押し付けてのうのうと生活しているのだ。
エスペリアが訓練場の中央に進み、何事かを訓練士に頼んでいる。
多分、訓練を中断して挨拶させて欲しいと言っているのだろう。
フン、と蔑んだような目で訓練士が悠人を見る。悠人は下げたくもない頭を下げた。
「あの、あの、ヘリオンです!あ、新しい隊長様ですね!いっぱい訓練して早くお役に立てるように頑張りますっ!」
悠人のもとに駆け寄って来たブラックスピリットの少女が、緊張でガチガチになりながらツインテールの頭を振り下ろす。
「様は付けなくてもいいって。俺も昨日隊長になったばっかりの新米なんだ、よろしく頼むよ、ヘリオン。」
悠人は笑って言った。
「はは、はいっ!では、私はまだ、訓練がありますのでっ!」
悠人の笑顔を見て、真っ赤になったヘリオンが疾風のように去ってゆく。訓練場の片隅で、アセリアが、
小気味良い金属音を響かせながらもう一人のブルースピリット、セリアと剣を交えている姿が悠人の目に入った。
模擬戦といえども、双方とも熱の入った練習である。恐らく悠人でも、神剣の力を借りなければ、
その動きを目で追うことすら困難であろうと思われた。
先に城に向かったエスペリアと別れ、訓練場を後にした悠人を待っているスピリットがいた。
「えっと――、ヒミカ、だったかな?」悠人が声を掛けると、そのレッドスピリットは一礼した。
些細な動きにも隙がなく、いかにも戦士、という印象を受ける。
「はい。――あの、ユート様、少しお話しする時間を頂けますか?」
頭を上げながらヒミカが言った。その口調から、ついさっき挨拶したときのよそよそしさが、少し消えていた。
「ああ。いいけど、――歩きながらでもいいか?」
二人は詰所に向かって、並んで歩き始めた。
「実は、ナナルゥの事なのですが――」ヒミカが切り出す。
「ナナルゥって、――ああ、もう一人のレッドスピリットか。」
悠人の脳裏に、無表情な長髪の妖精の姿が浮かんだ。
「そうです。ユート様は、どう思われましたか?」喋り口ははきはきしていたが、ヒミカの口調には翳りがあった。
「うーん、どうって言われてもなあ...俺も今日初めて会ったばっかりだしなあ。」
悠人は言葉を濁した。何となく、ナナルゥから受けたイメージをそのまま話せばすべて悪口になりそうだった。
「――ヒミカは、仲がいいのか?ナナルゥと。」
「仲が良い、というほどのものでは無いのですが――。」今度は逆にヒミカが口ごもった。
「ユート様の――目が、気になったものですから。」
―――気付いてたのか。
悠人にとってはヒミカの鋭い洞察力の方が驚きだった。悠人は、自分でも知らないうちに、
スピリットの感受性、そういったものを侮っていたのかも知れない。
「いや、別に嫌だとか、そんなんじゃないんだ。ただ、今まで俺の知ってるレッドスピリットっていったら、
オルファリルくらいだからさ、ちょっとびっくりしただけだよ。」
オルファは、戦闘をゲーム感覚で楽しんでいるような所を除けば、どこにでもいるような活発な少女だった。
炎の妖精である事を考えると、レッドスピリットはみな、情熱的なのだろうなどと、悠人も勝手な先入観を持っていたのだ。
ただ、これまで戦ってきた敵のスピリットは、確かに表情に乏しいものが多かった。
その点で言えば、ナナルゥはむしろその典型に近いとも言える。ラキオスに来てまだ日の浅い悠人には、
どちらがスピリット本来の姿なのか、よく分からなかった。
「そうですか、変な事を訊いてしまってすみません。」
悠人の答えに納得したのか、ヒミカは立ち止まって悠人に敬礼した。
「ヒミカは――心配してるのか?ナナルゥの事を。」
このまま話が終わりそうな気配を感じた悠人は、ヒミカを引き止めるように尋ねた。
「え――?」今度はヒミカが驚く。
「心配――、そうかも知れません。ナナルゥは―――呑まれかけているのです、神剣に。」
そう言って、ヒミカは口をつぐんだ。
あるいは、これまでにナナルゥとの間に何かあったのかとも思ったが、さすがに気が咎め、
悠人は、それ以上問いただす事はしなかった。
「神剣に呑みこまれかけている、か。」
ヒミカと別れて戻った詰所の自室で、ベッドにごろ寝をしながら、悠人はつぶやいた。
もしかすると、平然と戦っているように見えるスピリット達も、悠人の知らないところで神剣の干渉に耐え続けているのだろうか。
「――にしても、スピリットも同じ色同士のほうが気が合うのかなあ。」
まさかスピリットの間で色の優劣があるとは思えなかったが、今日出会ったスピリット達は全体的に同色コンビが多かった。
悠人はふと、セリアとアセリアが並んでお茶を飲んでいる姿を想像して苦笑した。
223 :
あとがき:04/09/24 16:46:55 ID:Tpg0Q6iR
以上、何の前触れもなく、「SALVAGE」第一部をお届けしました。
今回はエスぺリアものじゃありません。エス萌えの方、悪しからず。
実は題名をどうするか悩んだのですが、ヒロインが一筋縄どころか
ワイヤー10本くらいないとどうにもならない感じなので、カッコつけて
こんな横文字にしてみました。
...にしても、
>>205、エロ杉w
職場でこっそり開くのに苦労するじゃないかっ!!
でも、ファーレーンにあんな事言われたら、ユート君も怒るに怒れなかっただろうなあ。
224 :
風変わり:04/09/24 21:26:03 ID:bLqaH7I7
>>223 | Λ
|ω・) .........
⊂)
|/_|
|'ノ
| Λ
|ω・)
| )b ビシッ!!
|/_|
|'ノ
| サッ
|)彡
|
|
GJでした。
>ヒロインが一筋縄どころかワイヤー10本くらいないとどうにもならない感じ
確かにw
GJ&続きを期待してます。
ナナルゥに幸あれ。
228 :
98:04/09/25 08:05:27 ID:zAdNfnk0
とりあえずageときますね
230 :
名無しさん@初回限定:04/09/25 19:53:17 ID:RNykDKGg
agaってないし…(鬱
俺みたいなクールな男は、ちょっと吊ってくるのがピッタリだよね♪
[処刑台] λ...
>>230イ`
死んで償うなんていうけどあれはウソだ。死んじまったらなにもできやしないじゃないか。
(だったっけ?)先週やったばっかなのに忘れちった。
てへ。
>>231 そんなの俺たちのせいじゃない。
……そういやアレはマナの導きだしあながち間違ってもいないよーな。
「時深を見た目で若いと思ったのに、急におばさんだと思った事があるだろう?
俺にはそれがうわなにをすあwせdrftgyふじこ」
>>232 >>4
どしゃぶりの雨の中、一人の男が立っている。
引き締まった彫りの深い顔。紺色のブレザーの上にカーキ色のコートを羽織
っている。背中に背負っているのは男の背丈ほどはあろうかという巨大な双剣。
その扇風機の羽を一枚?ぎ取ったような剣は、無機質な、けれどどことなく生命
を感じさせる気配を放っている。
雨を防ごうともせず濡れるがままに任せている男の腕の中には一人の少女。
腕から零れ落ちる艶やかな髪は曇天の空よりも暗い黒髪。人形のような顔に
生気はなく、意識がないのか、絶え間なく降り注ぐ雨にピクリともしない。
男が立っているのは、本来、雨とは無縁のはずの砂漠であった。特にマナ消失
地帯であるこの場所では当然のことながらマナが希薄であり、雲ひとつないとい
うのが普通なのである。それが、何故か豪雨なのであった……男の周りだけ。
けれど、男はそのことを気にした様子もなく腕の中の少女を見つめる。
ニヤリ、と一瞬、エロい邪笑を浮かべると曇天の空に顔を向けた。
ポツポツと男の顔に幾つもの雨粒が当たっては弾ける。
「……こりゃ、一雨来るかな」
どしゃぶりの雨の中で、男がポツリと呟いた。
ピカッ!!「え……ピギャァァアァァァァ!!」
雷が落ちた。
さて、超大型ハリケーン「キョ○コ」がマロリガン領を蹂躙している中、
そこから遠く離れたラキオスは平凡そのものであった。
空は実に快晴、洗濯日和。詰め所の庭に広がるのは一面の白い海。
優しい風が吹き抜ける度にシーツは軽く揺らめき、差し詰めそれは
波打ち際の白い泡のよう……。
そんな、陸に広がった白い海の中を茶色の物体と赤色の物体が泳いでいる。
茶色の物体は軽やかに動き、赤色の物体は茶色の物体の後をちょこちょこと追っている。
二つの物体がまだ何も掛かっていない物干し竿の所に来ると、途端にそこにも白い海が生まれた。
ふぁさ、と白いシーツが宙に舞う。
次々と生まれていく白い海はやがて庭を埋め尽くすとピタリと止まった。
「これでおわり〜〜〜!はふぅ……つかれたよぉ〜」
元気なのか疲れてるのかよく分からない声をあげながら白い海から
飛び出してくるのは先程の赤色の物体―――『理念』のオルファリルである。
そのまま、ばたっと青草の上に寝転がるとごろごろ転がり始める。
「こら!オルファ、いけません!」
続いて、叱責の声と共に出てくるのは怒った顔をしながらも優しげな瞳を湛えた『献身』のエスペリア。
空っぽになった洗濯籠を両手で抱えながらゆっくりと歩み出てくる。
「えー……」
235 :
『The Spirit BR』:04/09/26 12:53:04 ID:JhO+SADG
怒られた為かもの凄く不満そうな声を出しながらも、オルファは渋々と立ち上がる。
裾についた土埃や草の葉を手で払い落とすとちょこちょことエスペリアの方に駆けてくる。
それを見届けてから、ポスッと空の洗濯籠をハーブが植えられた花壇の横に置いた。
「地面に寝転がっちゃ駄目ですよ、オルファ」
服が汚れてしまいます、と付け加えるとエスペリアはオルファの頭にのった葉を
丁寧に取り除いてあげる。それを不満そうな顔をしながらもくすぐったそうに受けるオルファ。
いつもの日常なのであった。
「ッ…………ハッ!!」
所変わって、城内にある屋内訓練場。
本来は人間の兵士用に設けられたこの場所で二つの影がぶつかりあっていた。
一つは黒の影、駆けるその姿は神剣強化されたスピリットの眼でも見切れるものではなく、
固い石床を蹴る音と辛うじて見える残像だけが存在を証明していた。
もう一つは青の影、黒の影には速度で劣るもののその動きは洗練されていて無駄はなく、
展開されたウィングハイロウを駆使して縦横無尽に舞い踊っている。
二つの影が互いにぶつかり合う度に虚空に火花が散り、甲高い金属音が響き渡る。
互いの力は互角……そんな二人の激突を見守る三対の眼。
「うわぁ……、ねえねえ!シアー、どっちが勝つかなぁ〜?」
興味津々、眼を輝かせて見守るのは『静寂』のネリー。
「え?ん〜…と……え〜とぉ……」
少々舌足らずな声で律儀にネリーの問いに答えようとするのは『孤独』のシアー。
そんな二人の傍で一言も喋らず、食い入るように固唾を呑んで見守る『失望』のヘリオン。
訓練所の壁際にある休憩用のベンチに座り、一心不乱に対決を見守る姉妹。
と―――空気が動いた。
「はぁっ!!!」
「……ふっ!!」
ガキンッ!と一際高い金属音を最後に音は止んだ。
互いに自分の得物を振りぬいた姿勢で停止している。
青の影が扱う大剣のような剣は黒の影の首筋に触れるか触れないかの位置で
停止し、一方黒の影が扱う細身の刀は青の影の喉元に寸分の狂いもなく突きつけられている。
互いに無言。張り詰めた空気の中、鋭い視線が宙でぶつかり合う。
と、黒の影が先に動いた。
喉元に突きつけていた切っ先を下げ、スッと音もなく鞘へと仕舞う。
それにあわせて、青の影も突きつけていた剣をゆっくりと引き戻した。
張り詰めていた空気も和やかなものへと変わる。
「……いい鍛錬になりました」
一歩下がり、礼をすると『冥加』のウルカが呟いた。
「……ん」
なんだかよく分からないが小さく頷く『存在』のアセリア。
そんな二人に興奮冷めやらぬまま、駆け寄るネリシア姉妹とヘリオン。
こちらも、またいつもの日常なのであった。
またまた所変わって……。
城内の一角にある木彫りの大扉。その奥に広がる少しホコリっぽい空間。
外壁に沿ってみれば一部、突出しているようにも見えるその部屋は『資料室』であった。
大きめの本棚に無数に納められた書籍の数々はレスティーナ女王によって各地から
収集されたものである。『聖ヨト初代王』や『歴史年表』、『四英雄伝説』などなどその量
は膨大な数となる。それに伴い、書庫、本棚の数も膨大になっている。
が、一見日当たりの悪そうに見えるこの空間は、実のところそれなりに日当たりが良かったりする。
他の各部屋よりも多めに設けられた窓、加えてこの部屋が北向きに少々突出しているため
日中は絶え間なく陽光が降り注ぐのである。
気持ちのいい風と穏やかな陽光に照らされるこの場所はお昼寝スペースとして有名なのであった。
現に今も寝ているものが二人。
本棚の間を貫くように出来た通路の先には、シンプルなテーブルにイス、
簡素なソファーなどが置かれ、申し訳程度の観葉植物が鎮座している少々広がった空間がある。
そこのソファーに腰掛け、窓から差し込む陽光と穏やかな風を受け、
うつらうつらと船を漕いでいる妖精が一人。
おでこから頭部全体を覆うようにデザインの整ったプロテクターをつけ、
目から下を黒い布で覆った不審人物丸出しの―――『月光』のファーレーンである。
唯一、プロテクターと布の隙間から覗いている瞳も今は気持ちよさそうに閉じられている。
そんなファーレーンの膝元……ピッタリと閉じられたふとももに頭を乗せて
惰眠を貪っている妖精が一人。
窓から広がる景色と同じ緑色の髪、まだあどけなさの残る顔にやや切れ長の瞳、
大好きな姉の膝枕で気持ちよさそうにしているのは『曙光』のニムントール――通称『ニム』である。
さて、そんな一枚絵にもなりそうなほのぼのとした二人から少し離れたイスに腰掛け、
静かに本を読んでいるのは『熱病』のセリアである。
ページをめくる乾いた音。
ほとんど無表情で次から次へとページをめくっていくセリア。
別に、何かを探しているわけでも読んでいないわけでもない、彼女としてはこれが普通のペースなのであった。
ちらりと見えた本の題名は―――『ツンデレ理論』。
「『ツンデレとはツンツンしていたキャラがあることをきっかけに―――』……ふぅ」
小さく溜息をつくとテーブルの上に置かれていた紫のしおりを本に挟み、パタリと閉じる。
閉じた本は横へ……見れば幾つかの本がそれぞれバラバラのページに紫のしおりを
挟まれて積まれている。そして、反対側にはまだ手をつけていない二、三冊の本。
その一冊を手に取るとまたページをめくり始める。
今度の本の題名は―――『百合の生態』。
一瞬ちらりと見えたページでは
『百合の生態を観察する為、私は二人の女性を一つの部屋に閉じ込めた。結論から言えば……』
と、なんとも卑猥なことがつらつらと……。
しかし、どこから見つけてきたのか怪しげな本を無表情で、
けれど熱心に読んでいるセリアの姿はちょっと滑稽であった。
しばらくの間、ページをめくる乾いた音と静かな寝息だけが辺りに響いていた。
と、ちょうどセリアが今読んでいた本にしおりを挟み、次の本へと手を伸ばした時、小さな異音が聞こえた。
ピタリと動きが静止する。
そっと腕を引き戻し、少々きつめな視線を部屋の片隅へと向ける。
「………ナナルゥ、出てきなさい」
部屋の端、何もない空間に向かってセリアが言う。
無言、小さな寝息以外は静かな静寂が辺りを包み込む。
と、コトッという小さな音と共に天井の板が外され、そこから赤の影が床に降り立った。
腰まで届くロングな紅の髪、セリア以上に無表情な顔には少し気まずそうな雰囲気。
以前は神剣に呑まれかけ感情を失っていた『消沈』のナナルゥであった。
その姿を視界に納めるとセリアは大きく溜息を吐いた。
「何してるの?ナナルゥ」
セリアが問いかける。
「……隠密行動、しいて言えば覗きですが?」
ナナルゥが答える。
セリアが額に手を当てて、微かに首を振った。
神剣の支配を脱し、僅かながらに感情が戻ってきたのはいいのだけれども、
以前のあの従順な頃が良かったと思うのは間違いなのか、と思うセリアなのであった。
「あのね――――」
「あ、セリア……とナナルゥもここにいたの?」
セリアが言葉を繋げようとしている時に入った割り込み。
声に振り向けばちょうど扉を開けて二つの影が部屋に入ってくるところだった。
ナナルゥと同じ燃えるような真紅の髪、けれどこちらはざんばらに
切りそろえられたショートヘア。第二詰め所では姉御的存在な『赤光』のヒミカである。
もう一人はニムと同じ深緑の髪、グラマーな肢体を窮屈そうなメイド服に包み、
おっとりとした雰囲気を漂わせている。いつでもおっとりニコニコな『大樹』のハリオン。
ハリオンの腕の中には幾つかのティーカップに大きめのポット、
そして某少女の大好物である数個のヨフアル。
「お茶に〜、しませんか〜?」
そう言いながらヒミカの後をよたよたと歩いてくるハリオン、危なっかしい事この上ない。
けれど、無事テーブルまで辿り着き、ティーセットを広げ始める。
「ん?セリア……何読んでるの?」
テーブルに辿り着いたヒミカが積まれた本に手を伸ばそうとする―――が、
それよりも早くセリアの腕が本を奪い取る。……ちょっとばかし焦っていた。
「む……分かった分かった。見ないからそんなに睨まないでよ」
それでも、本を隠し終わるまでセリアの視線がヒミカから離れることはなかったのだった。
「読んでいたのは―――」ナナルゥの口を塞ぐのも忘れない。
これも、また……たぶん日常なのであった。
ちなみに、悠人はというと――。
「…………Zzzz」
エスペリアに昼食の知らせで起こされるまで爆睡していたのであった。
何の変わりもない、いつもの日常を彼女たちは過ごしていく。
戦いのない平和な時間、ほのぼのとした仲間達と過ごす時間。
けれど、その日常は自分が持っている発言力というものを甚だ理解していない、
一人の男の言葉によって簡単に崩れ去るのであった。
Next Stage coming soon.....
243 :
風変わり:04/09/26 13:11:48 ID:JhO+SADG
| Λ
|ω・)< はい、という訳で予告通りBRの始まりなんですね
⊂) ……本当はあの方の長編が終わるまで待とうとしたのですが
|/_| まあ、いっか…繋ぎ繋ぎということで投稿してしまいました…
|'ノ 久しぶりに長編書くのでダレダレですが、そこの所は勘弁してくださいヾ( ゚д゚)ノ゛
| サッ
|)彡 デハ、サラダバー!
|
|
一つsage忘れてごめんなさい((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
乙&GJです。なんかこっちまで眠くなってましたがw
ところで、今続編待ちの長編ってなんかあったかしらん?
飛翔、憂鬱はもう終わってるし……はて?
245 :
憂鬱の人:04/09/26 15:58:37 ID:RkYMNMjt
>>243 GJです。
このあとほんとに血で血を洗うBRになるんでしょーか?
と、思わずにはいられない穏やかな出だしですね〜。
私のは終わるのを待ってたらいつになるか分かったモンじゃないので
遠慮なく書き上がり次第投下して下さいな。
>>244 SALVAGEの事だと思うんですけど#
・・・と、マジレスしてみる。
GJ!BR本編楽しみ。
>>223 憂鬱の人さん
恐らくヒロインじゃないかと思うのですが、
この時点で私が今書いてるモノと設定が凄く被っているキャラがいますw
更に恐らくヒロインに絡むであろうキャラまで似てますww
なので、この後どうなるのかある意味興味深深です。
もしかしたら違った答えみたいなものが拝読させて頂けるかもと楽しみです。
勘違いかも知れないので文章支離滅裂気味になりました、すみませんorz
>>243 風変わりさん
G.J.でした。
嵐の前の静けさというやつでしょうか。
BR個人的に好きなので今から期待大です。
一体何がきっかけで戦いあうのでしょうかw
舞台とか光陰も気になりますね。
っていうか、このスレで培われてきた雑魚スピの特徴、勢ぞろいな感じがなんともw
……ところで前スレ、そろそろ埋めなくてもいいんでしょうか?
>>247 信頼さん!え――っ!?もしかしてヒロイン被っちゃったんですか?
それともキャラが被っただけ?(←なにビビッてんだよ)
信頼さんは青スピ専門だと信じていたのに...(←勝手な思い込み)
青スピに全く萌えない私は、信頼さんとだけはカチ合わないと思ってたんですがw
もったいぶる必要もないし、分かってる方もいるみたいですから言っちゃいますが
今回は93でチョイ予告した通りのナナルゥものです。
EXPではどうやらヒミカ―ハリオンがコンビらしいですね。でも無印の印象では
ヒミカ―ナナルゥの方がしっくり来るんですけどねえ。
ちなみに私の設定はこれまでの雑魚スピスレから持って来てるものがほとんどなので
被って当然かも、です。
ま、信頼さんは私のようにヒネクレた性格の持ち主ではないと思いますので
ストーリーが被る可能性は皆無かとw
今、投下寸前の第二部見直しつつ「これじゃイービルルートだよorz」と自己嫌悪中なもので。
そういやイービルSSって見た事ないなあ。
誰でも知ってる、ラキオスの小話。
「理想の女性とは何か?」
「ヒミカの様に胸があって
ハリオンの様にはきはきしていて
ナナルゥの様に感情を表に出し
ファーレーンの様に裏表が無く
ニムントールの様に働き者で
セリアの様に情熱的で
ヘリオンの様に背が高く
ネリーの様にくーるで
シアーの様に誰にでも挨拶する人」
「……と、光陰が言っていたんだが」
「「「「「「「「「ユート様、ちょっと詰め所の裏まで」」」」」」」」」
モテモテだな。
ベルギー人のジョークだっけ?
いや、ヨーロピアンのジョークだった気もする
どっちもか。
252 :
風変わり:04/09/27 00:26:48 ID:LGGfJqhN
おりょ…、高名なお二人にレス貰えるとは、感激で((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル
>>244 >>245の憂鬱の人氏が言ってる通り、SALVAGEの事ですたい
>>245 血で血を洗う……近い感じになりそうです、内容は軽いですけども(`・ω・´)
それにしても今回の氏の作品はシリアスちっくなので、間に軽いの入れると失礼かなぁと
思いまして待とうとした訳なのですが……そう言われるならお邪魔にならない程度に
投稿しますですヾ( ゚д゚)ノ゛
>>247 あははは…あんまり期待されても困ります(;´Д`)
でも、一応BRの設定は微妙に再現されていたりしなかったり……
ここだけの話……光陰の出番はここだうわなにをすあwせdrftgyふじこ
というか……言われて初めて気付きましたけど前スレ埋まってなかったんですね
>>249 そんなパーフェクトジオングみたいな
珍妙な生き物いるわけがないじゃないですかッ!!
フィクションだッ SFだッ ファンタジーだッ
数週間が過ぎ、悠人達に出撃命令が下った。言い渡されたのは、ラキオスから東に移動し、
国境に位置するエルスサーオの砦を拠点に、リーザリオ、リモドアへ侵攻する、という戦略であった。
悠人にとっては隊長として初めてのミッションである。これまでも何度か戦闘はあったが、
散発的、防衛的であった事もあり、本格的な国同士の争いは悠人にとっては、
これが初めての経験であった。無我夢中で神剣を振り回していただけの悠人ではあったが、
これからはそうも行かない。自分の判断に部隊の命運がかかっているのだ。
――今までは、頼りっぱなしだったもんなあ。
悠人は傍らを静かに同行するアセリアの顔をうかがった。
相変わらず何を考えているのかつかみにくい少女であったが、
オルファのように戦いを楽しんでいるようにも見えなかった。
「うおおおっ!!」
エルスサーオに押し寄せるバーンライト兵との交戦が始まった。
悠人が咆哮とともに敵のスピリットと斬り合う。スピードで言えばスピリットに分があったが、
悠人のオーラフォトンのバリアは敵の斬撃を受け止めても、びくともしなかった。悠人は攻撃を失敗し、
完全に無防備になったスピリットの体を存分に薙いだ。
無表情なスピリットが、最後の一瞬、その人形のような顔に絶望の色を浮かべる。
「求め」が容赦なくマナを吸い上げ、肉と骨を絶つ感触が、悠人に快感を与えた。
エスペリア達と同じ、生身のスピリットの最期の呻きが悠人の耳にこびりつく。
――死にたく、ない。
自分のやっている事は、佳織のためとはいえ、ただの人殺しだ、その現実を
受け入れる程には悠人は、強くなかったのかもしれない。
―――こいつらは、道具だ!俺は、道具を「壊して」いるだけだッ!
いつか、悠人の心に、免罪符のような、そんな気持ちが浮かぶようになった。
そんな中、ナナルゥが習得した強力な火焔魔法は悠人にとって、まさに都合の良い「道具」であった。
常に先手を打てる高速詠唱魔法である事に加え、効果を及ぼす範囲が広く、
一気に敵全体を焼き払う事が出来る。また、セリアやアセリアとは対照的に、
ナナルゥは悠人の命令に対して実に素直に従った。
何より、ナナルゥと行動を共にしている限り、悠人自身が手を汚す必要がほとんどない。
「やるじゃないか、ナナルゥ。」
悠人のねぎらいにも、紅い瞳の少女は小さく頷くだけで、眉ひとつ動かさなかった。
――やっぱり、戦場では、スピリットは道具として扱うべきなのかな。
勝手なもので、悠人はナナルゥと初めて会った時に嫌悪感を抱いた無表情さにも、余り抵抗を感じなくなっていた。
「何だよ、ヒミカ、話って。」
戦闘が小休止状態に入ったある日。二人きりで話がしたい、そう言ってヒミカが、
悠人の使う駐屯所の一室にやって来た。
「ユート様。出来れば、ナナルゥの神剣魔法を余り多用しないで欲しいのです。」
ヒミカは苦渋の表情で悠人に訴えた。
「何でだよ。神剣魔法だって立派な戦力なんだから、使うのは当たり前じゃないか。」
「勿論それは私にも分かっています。ただ、神剣魔法は、それが強力であればあるほど、
遣いすぎると剣に呑み込まれやすくなるのです。」
「―――なるほど。そういやヒミカはあんまり魔法を遣わないな。」
火焔魔法を得意とするレッドスピリットの中にあって、武闘派のヒミカの存在は、むしろ異色と言えた。
「ただ、今やナナルゥの神剣魔法は我が軍の主戦力となりつつあります。
私のわがままなお願いだと、そう思って頂いても構いません。」そう言ってヒミカは深く頭を下げた。
自分より冷静に状況判断をしているヒミカに軽い嫉妬を覚えながらも、悠人は答えた。
「分かったよ。でも、ナナルゥの魔法を制限したら、
その分ヒミカ達の負担が増えると思うけど、――それでもいいか?」
「私はそれでも結構です。むしろそうして下さい、ユート様。」
ヒミカは、ホッとしたような笑顔を浮かべた。
バーンライトの攻勢が強まり、戦闘が激しくなった。
悠人はヒミカに言われたとおり、ナナルゥの火焔魔法の使用を控えていたが、
言うだけの事はあって、ヒミカがそれを補うように前線で奮闘していた。
悠人達ラキオス軍は徐々にリーザリオへの南下を開始した。
ただ、それに伴って、別の問題も浮き彫りになっていた。
「セリアっ、下がれっ!」悠人の声は届いていた筈だった。
セリアが一瞬ちらりと振り返るが、聞こえないかのように敵陣の奥深くへ突っ込んでゆく。
「くそっ!ネリー、シアー!!セリアを援護しろ!!」
悠人はやむなく双子のスピリットに命令した。
「了解了解。ほら、行くよ、シアー。」ネリーがまるで近所に買い物にでも出かけるかのように
気軽な口調で返事をして、突入する。シアーが不安げな顔で続いた。
その夜、進軍を一旦中断し、エルスサーオに引き上げた悠人は、駐屯所の会議室に全員を呼び集めた。
「どうだ、ハリオン、ネリーの容態は?」遅れて入室したハリオンに、悠人は尋ねた。
「はい、今は寝てますけど...しばらくは動けないんじゃないでしょうか。」
セリアの援護に向かったネリーが重傷を負っていた。
「セリア、何べん言ったら分かるんだよ。単独行動はするなってあれほど言った筈だぞ。」
苦々しげに悠人はセリアを睨んだ。
「私は別に応援を頼んだ覚えはないわ。」憮然としてセリアが応えた。
「これでも状況判断しながら動いてるつもりよ。素人のあなたが余計な事をしなければ、
ネリーだって怪我せずにすんだのに。」そう言いながらセリアは立ち上がった。
「話はそれだけ?私も疲れてるから今日はもう休ませてもらうわ。」
「待ちなさい、セリア!ユート様のおっしゃってる事は――」
エスペリアが言いかけるのを、悠人が片手で制止した。
「―――セリア、待てよ。」悠人の、いつになく低い声にセリアが立ち止まった。
「よく聴こえなかった。――悪いけど、もう一回、言ってくれないか?」
「ユート様――?」隣に座るエスペリアが、ギョッとしたように悠人を凝視した。
ゆっくりと立ち上がった悠人の腰で、「求め」が鈍い光を放ち始める。
「ユ、ユート様、待ってください!セリアにも自分なりの考えがあってやったことです!」
ヒミカが弾かれたように立ち上がり、言った。
「ヒミカは黙ってろよ。――俺はセリアに訊いてるんだ。」ヒミカに目もくれず、悠人はセリアを睨み続けていた。
会議室を、重苦しい沈黙が包み込む。
「――申し訳ありませんでした。これからは気を付けます、ユート、様。」
ややあって、観念したように、セリアが肩を震わせながら頭を下げた。
「――道具が。謝るくらいなら、最初からデカい口を叩くな!」悠人が吐き捨てるように言った。
「怖いよぉ...パパ...」今にも泣き出しそうな声でオルファが言った。
「俺は――パパなんかじゃない。」
オルファに冷徹な一言を残して、悠人は部屋を出て行った。
悠人の退室した部屋で、オルファがハリオンに抱きかかえられながら泣きじゃくっていた。
「フン...何よ、人間の隊長らしくなってきたじゃない。」セリアの強がりが虚しく響く。
勝ち気なヒミカの目にも涙が浮かぶ。
「ユート様は...違うと思ってたのに...」
「人は...力を持つ事で、変わってゆくのです。」エスペリアが、目を伏せて、
半ば自分に言い聞かせるように、言った。
「ユート様の指示には絶対に従う、これが、私達の使命です。」
――エスペリアは、当たり前の事を、どうしてあんなに悲しそうに言ってるんだろう。
こんな騒ぎの中でも、ナナルゥは一人、全くその表情を変えることはなかった。
ナナルゥには、何故セリアが、隊長である悠人に刃向かうような事をするのかも、全く理解できなかった。
「ぐわあぁぁ――っ!!」
部屋に戻った悠人を最大級の頭痛が襲った。
――契約者よ。汝の言った通りだ。あの者達は道具に過ぎぬ。
何をためらう事があるのだ。妖精たちを犯し、殺せ!
「ふざ...けるな、バカ剣...あいつらは、俺の、部下だっ!
敵の連中から...さんざんマナを...吸わせてやったはずだぞ!」
苦痛に身をよじらせながら悠人が怒鳴る。
――ククク、我の力を持ってすれば下位神剣の主をひざまずかせるなどたやすい事だ。殺すのが
嫌なら汝の下僕たちを片端から犯してゆけ。悪い話ではなかろう?
「そんな事しなくたって...スピリット達は充分俺に...従っているっ!!」
――面白い。そのやせ我慢がいつまで持つか、見届けてやろう、契約者よ。
悠人の抵抗を楽しむかの如く「求め」が語りかけ、その刀身から光が消えていった。
―――翌朝。
バーンライトのスピリット達がエルスサーオに到達し、戦闘が再開された。
ラキオスのスピリット達は、ぎこちない動きながらも、悠人の指令におとなしく従うようになっていた。
しかし、それとは裏腹に悠人は孤立感を深めていた。時折り指示を仰ぎに来るエスペリアを除いて、
ほとんど悠人に話し掛ける部下はいなくなっていた。ひとなつっこいオルファですらも、
悠人と目を合わせようとしなかった。そんな状況においても、ただ一人、全く悠人に対する態度が
変わらないスピリットがいた。――ナナルゥである。その、赤い妖精は悠人の言うがままに
神剣魔法を発揮していた。すでに、悠人の頭の中から、余りナナルゥに
魔法を遣わせないで欲しいという、ヒミカの願いはかき消されていた。
悠人は、自らもまた、何かに取り憑かれたように「求め」を振り回していた。
数日が経過し、戦闘が膠着状態に入った。悠人はその夜、自室で一人横になっていた。
エスペリアも、あれ以来、夜中に悠人のところへ忍んで来た事は一度もない。
―――これで、良いんだ。余計な感情は、判断を鈍らせるだけだ。
そう自分に言い聞かせながら悠人は襲い来る孤独感と戦っていた。
その時、ふと、悠人の胸中に、従順な赤い妖精の姿が浮かんだ。
――ぴちゅっ...くちゅ。
薄暗い部屋の中で、ベッドに腰掛けた悠人の股間に顔をうずめる妖精の姿が、あった。
切り揃えられた赤い前髪がリズミカルに揺れる。時折り漏れるナナルゥの吐息とともに
淫猥な、湿った音が響いた。
――犯すわけじゃないし、このくらい、大丈夫だよな。
エスペリアに比べると拙く、機械的な奉仕に身を委ねながら、悠人は心の中で言い訳していた。エスペリアも、
性欲の高まった状態では神剣に呑み込まれやすい、そんな事を言っていたのだ。
悠人は戦闘服の上から、ナナルゥの豊かな胸に手を這わせた。
「んっ...んんっ...!」
閉じられた目から表情を読み取る事は出来なかったが、悠人の愛撫に反応したのか、
ナナルゥはわずかに眉間にしわを寄せ、くぐもった声を上げた。
「う...そろそろ、いくぞ...っ!」
きゅうっと乳房を鷲づかみにし、もう片方の手で、ナナルゥの頭を押さえ込んだ悠人が、
限界を迎えた。朱唇に咥えこまれた怒張から、白濁が、ナナルゥの口内にぶち撒けられた。
一瞬紅い瞳が見開かれたが、それはすぐに何事も無かったかのように閉じられ、
ナナルゥの白い咽喉がコクリ、コクリ、と音を立てた。
「ありがと、ナナルゥ、気持ち良かったよ。」
目の前でひざまずき、小さくなってゆく悠人のモノを見つめている赤い妖精に向かって、
悠人は小さな声で礼を言った。
「―――気持ちが、いいのですか?」
ナナルゥが、きょとんとした顔つきで尋ねる。
どうやら冗談で訊いているわけではないらしい。
――今まで、何だと思ってやってたんだ?
真面目に尋ねられて、かえって気恥ずかしさの増した悠人は、ナナルゥから顔をそらして短く答えた。
「ああ。もういいよ、部屋に戻ってくれ。」
「―――はい。」
ナナルゥは静かに立ち上がり、悠人の部屋を出て行った。
身勝手な悠人の要求にも、淡々と応えてくれた少女の後ろ姿を見送る悠人の
胸の内に残ったのは、しかし、苦々しい罪悪感だけであった。
その背後で、「求め」が鈍く光った事にも、悠人は気付かなかった。
翌日は朝からひどい雨が降りしきっていた。
悪天候を衝いて、バーンライトの攻勢が、その激しさを増した。
「来たぞっ、ナナルゥ、頼む!」悠人が振り返った。雨で額にべったりと
前髪の張り付いたナナルゥが、いつもと変わらぬ無表情のまま、頷く。
だが、火焔魔法の詠唱に入ったナナルゥの姿を見て、悠人は表情を凍り付かせた。
「ナナルゥ、あなた―――?」
そばに居合わせたヒミカもまた、ナナルゥの異変に気が付き、声を失った。
二人の視線の先で、ナナルゥの頭上に浮かび上がった輪状のハイロゥが、墨を刷いたように、黒く染まっていた。
豪雨をものともせずに燃え盛る火焔で、敵陣にぽっかりと穴が空く。
「うおおお―――ッ!!」
責めるようなヒミカの視線から逃れるかのように、悠人は、その中に突っ込んで行った。
常に悠人の背後でサポートするように命令されていたナナルゥが、それに続く。
「危険ですっ!お下がりください!!」
「ナナルゥっ!危ない、戻ってっ!!」
エスペリアと、ヒミカの同時に発した悲痛な声も、土砂降りの雨と、敵の喚声にかき消されてしまう。
やがて、悠人とナナルゥの姿が敵のスピリット達に飲み込まれ、見えなくなってしまった。
267 :
憂鬱の人:04/09/27 16:57:03 ID:DpyMQ5VR
おいおいおい、引き上げる役目の奴が、沈没させてどーすんだっ!
と、ツッコミが聞こえてくるような第二部でした。
嗚呼、ド顰蹙隊長よ、ナナルゥを連れて何処へ行く?
次回、意外な人物が登場します。
んで、題名は「ユート君の家出」に変更されます。(←ウソ)
もつかれさまでした。
なんか最近は暗めの話が流行ってるのか、そういうふうなSSが多いように思われます。
(単発はネタの宝庫ですが)
完全ネタSS書いてるんですが、できるまでまだまだ時間がかかりそうです。筆が早い人はうらやましいのぉ
うーむ、中途半端に凌辱ルートの悠人はメチャ違和感あるな……
一日の半分は求めに意識を乗っ取られているとか言う状態なら、ともかくとして。
この展開では、後々ナナルゥが救われたとしても仲間からの信頼は戻らんのでは。
>>267 憂鬱の人さん
イービルSS、確かに拝読させて頂きました……痛い……_| ̄|○
痛いのですが、展開に引き込まれるのも確かで……
考えてみればラキオスだってスピリットの扱いや彼女達の自覚はこの通りだった筈だし、
そう見ればセリアの「人間の隊長〜」の下りはかなり自然かつ印象的に伝わりました。
(もっともセリアですので皮肉と失望が言葉の裏にあるでしょうが)
逆にいい意味で妙に「人間」臭いヒミカが仲間から浮いた存在っぽく感じるのは狙いなのでしょうか?
どちらにしろ“エスペリア”の時も感じましたがこれはかなり難しい構成だと思いました。
それだけに今後の展開が楽しみです。
ところで予想通りヒロイン?は被っていましたw
ただ時間軸の違い(本編でのストーリーの進行等)が違ったので、
こちらも予想通り設定や流れも違い、ある意味バッティングは避けられたか、と。
(以前ファーレーンで寸劇の人さんと被った事があるので……)
どちらにしても筆が遅く、まだ少しかかるので、
「SALVAGE」のナナルゥを楽しみにしています。頑張ってください。
悠人がここまで孤立するってのは考えたこと無かったです。悠人君コワー
求めに飲まれないまでも、悠人自身がこういう道を取る可能性は無い訳じゃないもんなぁ……。
苦しむくらいならって自己防衛が働くやもしれず。
まあこれも1つのifだとは思う。
ダーク系SSは落としどころが難しくなりそうけどがんがれ。
273 :
憂鬱の人:04/09/28 00:21:30 ID:jC1IU37G
本当はSS自体で答えを出すべきなのですが、スレに不穏なマナが
立ち込めてきたのでのこのこ出て来ました。
ゲームっぽく、少しネタばらしをすると、序盤でルート分岐があった、という事になります。
前回(エスの家出)
エス「私達スピリットは道具です」
悠「いやそれは違う」
今回
エス「私達スピリットは道具です」
悠「はあ、そんなもんですか」
・・・と、まあ今回のユート君は前回よりもヘタレてるので、いきなりエスルートが
消滅しちゃったんですね。
それと、私はラブラブなストーリーを書きたいので、展開上、「悠人がナナルゥを好きになった理由」
を出来るだけストーリーの中心に持っていこうと思ってます。
そうすると前半はイービルに近くなっちゃうんですよねえ、どういうわけか。作者の人間性の問題か?
ちなみに第二部終了時点では悠・ナナは、お互い好感度ゼロです。
信頼さんたち、援護有難うございました。ううう...(泣)
>>267 お疲れ様ですー
・・・・・・うは、これはまた思い切った性格変更ですな。変な方向にヘタレ。
偽善的でも、それがスピ達の信頼の元だった原作の悠人の良い所が欠片もないカモ。
あんまり好きじゃない展開ですが、新境地を見せてくれると勝手に期待。
とすると、これの最後はナナルゥと愛の逃避行Endか?(違
「失恋のヘリオン」
ハートブレイクWを習得しました
「わたし、ちっちゃいですけど… いえ、だからっておはぎに敗けるなんて、さんぽ……ユートさまとさんぽ……
ちょっとよろけたユートさまを支えたりして、すまないヘリオン、っていえそれは言わない約束ですってユートさ
ま寒くないですかっていや大丈夫さヘリオンがあったかいからなってそろそろ戻りましょうっていやもう少しヘリ
オンと歩きたいって
Divine Magic Timing 終了
だから次って何時なんですかぁっ!」
「くそっ、何だよ、こいつらっ!!」
敵の追撃を辛くも逃げ切り、森へと迷い込んだ悠人とナナルゥに襲い掛かってきたのは
オオカミのような肉食獣の群れであった。何度かナナルゥの火焔魔法で追い払ってみたものの、
隙を見ては、後から後から湧いて出るように二人に牙を向いてくる。
「こんなところで、こいつらの餌になるなんて、ゴメンだっ!!」
やみくもに神剣を振り下ろす悠人ではあったが、さすがにその数の多さに疲労が溜まってくる。
スピリットを斬るのと違い、マナを吸い上げる事の出来ない「求め」の力も次第に弱まってきていた。
―――逃避行はすでに数日に及んでいた。
深く森の中に入り込んだ二人は、もはや自分達がどの方向に向かって走っているのかさえも、分からなくなっていた。
「ぐうっ!」
ナナルゥが小さく呻いた。その細い足に、獣ががっちりと鋭い牙を食い込ませていた。
「くそおっ!」
悠人は「求め」を一閃させ、その首を断ち切った。ごろり、とイヌのような頭がナナルゥの足下に転がる。
「大丈夫か、ナナルゥ!?」
苦痛に顔を歪めるナナルゥに悠人は訊いた。
「く―――、はい。」
しかし、ナナルゥはまともに歩けないようだった。
ナナルゥに悠人が肩を貸す格好で、二人は再び逃走を始めた。
――やがて、突然、獣たちの追撃が途絶えた。
森を抜け出た二人の目前に、剥き出しの岩肌が、人がやっと通れる程度の
洞穴とともに現れた。
「――ナナルゥ、足、見せてみろ。」悠人はしゃがみこんだ。ナナルゥの深紅の
ニーソックスが破れ、華奢な右脚のむこうずねに歯形がくっきりと残っていた。
そしてその歯形から下が、ありえない方向に曲がっていた。
「――折れてるじゃないか。」悠人は眉間に皺を寄せた。
「――はあ。」あまり痛みも感じていないかのごとく、ナナルゥが間の抜けたような返事をする。
悠人は木の枝を拾い、上着を脱いでナナルゥの脚に縛り付けた。
「これで、そえ木がわりにはなるだろ。――よっと。」
悠人はナナルゥの体を支え、再び立ち上がり、改めて洞穴を見つめた。
支援
「ナナルゥ、確か、この辺りって...」
悠人は、エスペリアに習った、乏しい地理の記憶を辿った。
「ラシード山脈の麓だと思います。」
ナナルゥが抑揚のない口調で答える。
「―――魔龍の巣窟だと、聞いています。」
「―――だよな。」
悠人はサードガラハムの龍の姿を思い起こしていた。
今の二人の戦力では、魔龍には到底太刀打ちは出来ない。
「どうだ、バカ剣、なんか感じるか?」
悠人は「求め」に問うた。
―――全く、無駄に我を振り回してくれたものだな、契約者よ。
苦々しく「求め」が語りかけてくる。
「しょうがないだろ、お前だって俺が死んだら困るんじゃないのか。」
―――神剣の気配は、ない。魔龍が潜んでいる様子もないな、契約者よ。
しばらく反応を探ってから、「求め」は言った。ナナルゥも「消沈」に
精神を同調させていたが、問いかけるような悠人の視線に、首を振った。
もしも…悠人が「求め」を折られずに逆に「誓い」を折っていれば……
もしも…そのままエターナルにならずにファンタズマゴリアを救うことが出来ていたら……
……「救世の英雄」の妻の座を巡り、仁義無き戦いが展開された、かもしれない。
注目対戦カードは友誼で結ばれてた「はず」の戦う癒し系エスペリアとヨフアル大好きレスティーナの対決、
そして声はそっくりだが性格は全然違う、一途なヘリオンと二股のキョウコの一戦……
とか馬鹿なことを考えてた俺はマナの塵になります。
まあ、レスティーナが悠人たちの活躍を喧伝してたのは、戦意高揚が目的だけじゃなくて
悠人が自分のお婿さん候補として申し分ないという世論を作ろうとしてたのかなぁ、とかは思ってたりして。
そして佳織が足引っ張ったせいで女王様の野望は潰えてしまうわけだが。
「――よし。あの穴に入ろう。雨露くらいはしのげる。」
二人はその、鍾乳洞のような洞窟に潜りこんで行った。
洞穴の奥に進んで行った二人の前に、何者かの、ゆっくりと近付いて来る気配があった。
―――中に、誰かいたのか?
悠人はほとんど反射的に神剣を構えた。
「―――ククク。まったく、性懲りもなく、またバーンライトのスピリットが迷い込んできおったか。」
突然、低い声が聴こえる。
「な―――?」
悠人は愕然とした。その声は、口調に相反して若い女のものであった。
洞窟の闇の中に、ランプの光が浮かび上がった。そして、その光に照らし出されたのは、重そうな甲冑を身に着けた女兵士であった。
「だ、誰だっ!?」悠人は叫んだ。
「礼儀を知らんな、若いの。他人のところに勝手に上がりこんできて、その挨拶か。」
からかうような口調で女兵士が近付きながら、言った。
「あ...いや、俺達は森で獣に追われてここに入って来たんだ。」
少し毒気を抜かれた悠人が言い訳した。
ナナルゥは敵意を隠そうともせず、双剣を握る手に力を籠めている。
「なるほど...ほう、「求め」の遣い手か。―――外界がキナ臭くなってきたと思ったら、
そういう事か。」その声の主が右手にランプを掲げ、完全に姿を現した。
端正な、しかし、冷酷さをあわせもつ顔立ち。ショートカットにされた
濃いブルーの髪の毛、透きとおるような白い肌、そして、切れ長の薄茶色の瞳。
しかし、悠人は甲冑に包まれたその体を見て驚かされる。
――左手が、ない?
その女兵士は隻腕であった。
「知ってるのか...?この剣の事を。」今にも飛び掛かって行きそうなナナルゥを押さえ、悠人は尋ねた。
「もう一人は...どうやらレッドスピリットだな、それもかなり「呑まれて」いるようだ。」
悠人の問いに答えず、皮肉な笑いを浮かべてその女は、挑発的に言った。
支援
「この娘は、怪我をして気が立ってるんだ、気を悪くしないでくれ。」
悠人はとりなすように言った。
「ここには龍はいない。マナが欲しいのならよそを当たれ。それとも、私を退治してみるか?」
女兵士は笑いをかみ殺すような表情で続けた。
「見ての通りの体だが、退屈はさせんぞ。」
どこまでが冗談でどこまでが本気なのか得体が知れない。
「森で獣に襲われて逃げてきたんだ。本当に、龍退治とかじゃない。信じてくれ。
俺は、ラキオスのエトランジェ、ユートだ。こっちは、同じラキオスのスピリットで、ナナルゥって言うんだ。」
「フン...貴様がエトランジェだというのは分かっている。そうか、―――ラキオスに現れたか。」
女の顔から笑いが消えた。その瞳が細められ、悠人を舐め回すような視線が送られた。
「まあ、いいだろう。ついてこい。」
そう言って女兵士は洞窟の更に奥深くへと歩いて行った。
「バカ剣、どうなんだよ、あの女は...人間なのか?」
悠人は小声で尋ねた。
―――ふむ、神剣は持ち合わせていないようだ。という事は、やはり、人間という事になるな。
「求め」が興味深げに言った。
―――しかも、我の事を知っているふうであった。人間であったとしても、
用心に越した事はないぞ、契約者よ。
「どうした、早く来い。」洞穴の奥から女の声が反響した。
「あ...待ってくれ。」悠人はナナルゥを支えながら歩き始めた。
「ナナルゥ、やたらに仕掛けるな。それに、その脚じゃかえって怪我がひどくなるぞ。」
「―――はい。」ナナルゥが、その紅い瞳から殺気を消して素直に頷いた。
細く続いた洞窟の小道をゆくと、少し広がった部屋のような場所に出た。
どうやら女兵士はそこで生活しているようであった。片隅にいろりのような
一角があり、チロチロと燃える火に鍋がかけられていた。
煙が漂ってこないところを見るとどこかに通風孔が開いているのだろう。
真ん中に木を切って自作したと思しき簡素なテーブルが置かれ、その中央に先程のランプが置かれていた。
「これでも飲んで気を鎮めろ。」
カタン、と硬質な音を立てて金属製のカップが二つ、テーブルに置かれた。
その中には強いハーブの匂いがする黄色の液体が湯気を立てていた。
「フフフ、安心しろ、毒など入っていない。」
カップを見つめてどうするか迷う二人を見て、片頬に笑いを浮かべながら女が言った。
支援
「あんたは―――一体、誰なんだ?」カップの中身を飲み干して、悠人が尋ねた。
「私か?まあ、貴様が知ってどうなるものでもないが――訓練士だ、雇われの。
もっとも今は隠居の身だがな。」
訓練士―――その言葉を聞いて悠人がいぶかしげに眉宇をひそめた。
悠人は、ラキオスの訓練場で、ヘリオンに「先生」と呼ばれていた居丈高な男の姿を思い出していた。
「その腕は――神剣のせいですか?」唐突にナナルゥが口を開いた。悠人がしまったという目でナナルゥを見る。
「訊きにくいことをずけずけ訊くスピリットだな、お前は。―――まあ、そんなところだ。
―――昔の話だが。」気分を害したふうでもなく、破顔しながら女兵士は答えた。
「さて、もう話は終わりだ。お前達も一休みしたらとっとと出て行くがいい。」
「待ってくれ。今の状態じゃこの娘を連れて出て行けない。あんただってここに住んでるなら知ってるだろう?」
「――ふふ。森であいつらに噛まれたか。まあお前達の方が侵入者だからな、仕方ない。
慣れればかわいいもんだぞ。」女兵士はナナルゥの足を見て、言った。「貴様らと違って
他人の縄張りには絶対入って来ないしな。私の番犬みたいなもんだ。おかげでこの洞窟に
辿り着くのは生き残りのスピリットくらいだが。」
悠人はごくりと唾を飲み込んだ。
「そのスピリット達は―――どうなったんだ?」
「―――教えて欲しいか?」女の声が低くなった。
「まさか、あんたが―――?」背筋に冷たいものを感じながら悠人は尋ねた。
「この辺りは上等の鉱脈が走っているらしい。バーンライトにとっては
喉から手が出るほど欲しい資源だ。――私はここで静かに暮らしたいだけなのだがな。
まったく、人間の欲望というのはキリがない、そう思わんか、若いの。」くっくっと笑い声を
漏らしながら女兵士は続けた。「降りかかる火の粉は振り払うしかない。たとえそれが、
人間の欲望の手先になり下がった哀れなスピリットだとしても、だ。―――どうだ、話が見えてきたか、坊主。」
「なんとなく、分かってきたよ。魔龍が棲むっていう噂は―――あんたの事だったんだな。」
「少しは頭が働くようだな。」女の冷ややかな視線が、悠人に投げかけられた。
「―――俺には、信じられないよ、この世界にスピリットよりも強い人間がいたなんて。」
はあっと悠人は溜息を吐いた。送り込んだスピリットが次々と消えてゆけば、
誰でもそこには強大な龍が棲んでいると考える筈であった。
「―――神剣やスピリットに頼ってばかりいるから、そういう事になる。自分の
持っている力を信じられなくなった人間ほど、哀れなものはない。」
女兵士の口調が初めて、感傷を帯びた。悠人はその言葉を、どこか懐かしいものに感じた。
「―――頼む!なんでもするから、俺に、剣を教えてくれ!」悠人は自然と手を付いていた。
「強く、なりたいんだ!」
支援
「はははっ、そう来たか!ずいぶんムシのいい話だが...で、強くなってどうする、貴様。」
試すような目付きで女兵士は悠人の顔を覗き込んだ。
「守りたいんだ、佳織を。―――俺の妹が、人質にとられている。」悠人は哀願するように、言った。
「ふむ...残念だが、もう弟子はとらんと決めたのでな。―――まあ、そのスピリットも
どうせしばらくは動けまい。しばらくの間はここに置いてやろう。」
妹という言葉を聞いて、女兵士の表情が僅かに和らいだ。
「今日のところはもう休め。そこの穴を抜けて少し行ったところに空洞がある。
いつもは私の寝室だが、特別にお前達に貸してやろう。私はここで寝るが、
興味と度胸があれば襲ってくれてもいいぞ、若いの。」
悠人はぶるぶると首を振った。
悠人とナナルゥは女兵士に言われた「寝室」に入って行った。
一人になった女兵士はやおらテーブルの上に茶色い液体の入った瓶を取り出した。
「あのエトランジェも...少しばかり心を喰われているな。―――「四神剣」か。
若い身にはあの貪欲な剣は辛いだろうが――自分で乗り切って貰うしかない。」
その女はごくりとウィスキーのような液体を一口飲んでつぶやき、カップを
置いた手で、そっと自らの左の肩口を押さえた。
ナナルゥと二人きりになった途端、「求め」の干渉が悠人を襲ってきた。悠人が頭を抱え、うずくまる。
「ぐっ、ぐううっ!!」
―――契約者よ、このままでは、汝に力を貸すことなどは出来ぬ。さっさとマナをよこせ!
「な、何言ってんだ、バカ剣!ここには魔龍もいなけりゃ、敵だって
いないのは知ってるだろ!どうやって――。」
―――そこに、いる。使い物にならなくなった妖精が。
「―――!!」悠人は血走った目でナナルゥを見つめた。
傷を負った脚を投げ出して座っているナナルゥが相変わらずの無表情で悠人を見返していた。
「―――冗談じゃない。これ以上ナナルゥを犠牲になんて、出来ないよ。」
弱々しげにかぶりを振る悠人の顔が蒼ざめた。
―――これ以上抵抗しても無駄だ、契約者よ。汝の精神はすでに我の手の内にある。
神剣の声とともに、悠人の意識が遠のいた。その双眸から光を失った悠人が、ふらふらと
立ち上がり、青白く輝く「求め」を振りかぶる。
悠人をじっと見つめていたナナルゥが目を閉じ、まるで首を差し出すようにうなだれた。
―――あんまり、面白い事ってなかったなあ。
死を覚悟したナナルゥの胸中には、しかし、思い出らしいものは浮かんでこなかった。
自分の感覚は、どうやら他のみんなとはズレているらしい、その事に気付いてから、
周囲との関わりも避けるようにして生きて来たのだ。誰かに指示された事を諾々と
受け入れて行動するだけにしよう、そう思っていた。悠人が隊長になってからは
命令も多かったので、ナナルゥにとっては、むしろ好都合であった。
―――もう、何バカな事言ってるのよ、ナナルゥ。
ふと、そう言って苦笑するヒミカの顔が思い出された。
ナナルゥが何か言うごとに、彼女にたしなめられたものだ。あるいは
周りからナナルゥが浮き上がらないように心配してくれていたのかも知れないが、
もう、今となってはどうでも良かった。
最近ではそのヒミカとも、すれ違う事が多くなっていた。
支援
求め」を振り上げた悠人の、僅かに残った心の視界に、ナナルゥの頭上にぼうっと現れた
真っ黒なハイロゥが飛び込んできた。
「ぐわぁぁぁ―――っ!!」
獣じみた叫び声とともに、振り下ろされた剣が、ナナルゥの体をそれ、背後の岩を打ち砕く。
ナナルゥの体が、びくりと動いた。悠人は「求め」を握り締めたまま、地面の上で、のたうちまわった。
―――まだ抵抗する力を残しておったか。しかし、我を受け入れる他の選択肢は残されておらんぞ、契約者よ。
「いっ、嫌だっ!!ナナルゥを殺してまで助かろうなんて、そんなマネが出来るかっ!!」
悠人が絶叫する。その声の大きさに比例するように「求め」の輝きが増した。しかし、悠人は叫び続けた。
「死んでも、お前の言いなりには...ならんっ!もう、これ以上...お前の...助けは...借りないっ!!」
―――どのくらいたっただろうか。
ガシャッ。
悠人は完全に輝きを失った「求め」を地に放り出し、ぜえぜえと喘ぎながら、仰向けに寝転がった。
―――俺は、無力だ。
ランプに照らし出される岩肌を見つめて、悠人は思った。
―――結局、神剣の力を引き出して、佳織を助ける事も―――、部隊のスピリット達を
まとめる事も出来なかった。・・・俺は、一体、この世界に何をしに来たんだ。
少し視線を動かした悠人の目に、赤い妖精が座ったままこちらを見ている姿が映る。
―――やった事と言えば、ナナルゥのハイロゥを黒くしたことぐらいかよ、全く。
ナナルゥは、そんな悠人をただ黙って見守る以外なかった。どうやら悠人が自分を処刑出来ずに
困っているようだ、というくらいの見当しかつかなかったのだ。やがて、ふとある事に
思い当たり、ナナルゥは悠人へと這い寄って行った。
ほうけた様に天井を見つめる悠人の下半身から、カチャカチャと音がした。
我に返った悠人が見ると、慣れぬ手つきでベルトを外そうとしているナナルゥの姿があった。
「――?何してるんだ、ナナルゥ。」
悠人はゆっくりと起き上がった。
「はあ。あの、――ユート様が、喜ぶかと思って。」
ナナルゥが自信なさそうに、首をかしげながら答える。
「喜ぶ―――俺が――?」悠人は、一瞬、何を言われているのか分からなかった。
「―――!」悠人は赤い妖精のしようとしていた事を理解し、その両肩を
弱々しく押し返しながら、笑い始めた。「何、考えてんだよ。
――はは。こんな時に、――は、はは。」また場違いな事をしたのか、と困惑するナナルゥの
戦闘服の裾から、パタパタッと雨の雫がしたたるような音がしはじめた。
「は...くくっ。く...うっ、くっ。」悠人の笑い声が、いつしか嗚咽に変わっていた。
「―――何故...泣くのですか、ユート様?」ナナルゥは不思議そうに悠人の顔を見つめて、尋ねた。
「―――人間てのは、―――悲しいと、涙が出るんだ。」かすれる声で、悠人が答える。
悠人はナナルゥの赤い頭を引き寄せ、泣き続けた。
「―――はあ。」半ば溜息のような返事だった。ナナルゥは、どうしてこの男が
泣いているのか、よく分からなかった。ただ、その涙の理由が、理解できない自分が、悲しかった。
――翌朝。
「ほら、起きろ、朝だ!飯だぞ!」
泥のように眠る悠人に威勢の良い声が掛けられた。
――あれ、ここは――?
寝ぼける悠人を叩き起こすように、女兵士が続けた。
「食ったら、少し遊んでやる!ありがたく思え、坊主。」
普段は寝起きの悪い悠人が飛び起き、がばっと地に伏せた。
「あ、ありがとう...ございます!」
「ククク。一文にもならんが、腹ごなしの運動だ。途中で後悔するなよ、エトランジェ。」
ぴしりと悠人の頭を引っぱたいて、女兵士は笑みを浮かべた。
304 :
憂鬱の人:04/09/30 20:50:13 ID:63O0U3+7
諸般の事情であとがきはまた後ほど。
305 :
憂の字:04/09/30 22:18:10 ID:63O0U3+7
史上初(?)のイービルSSとして、賛<否両論の「SALVAGE」、
第三部でした。いかがでしたでしょうか。
暗雲たれこめる中、一筋の光が、という感じで書いてみました。
謎の女の正体はいかに!?
無印をやってる人にはバレバレですね、はい。
外見その他はほとんど創作です。ノベルにも出て来ません、この人。
設定があるのみ。
ファンタズマゴリアに蔓延するロウ的発想を、38のセリフで打ち破って
くれるのはこの人しかいない!ってな感じで、ご登場願いました。
では近日中に、また。
悠人、どこまで続くぬかるみぞ………。がんがれ、ナンキム。
その一筋の光が、ナナルゥの黒いハイロゥをも照らさんことを。
乙です
イービルSSとありますが、ユートは飲み込まれずに耐えたし
一筋の光に期待!
309 :
憂の字:04/10/01 14:59:54 ID:o4i0jfE6
声援感謝いたします。
次回よりぼちぼちドン底隊長の逆襲(?)に入ってゆく
予定です。作者ともども見捨てないでね。
>>305 憂鬱の人さん
遅くなりましたが第三部、拝読させて頂きました。お疲れ様です。
たぶんですが、悠人のLvがMaxに上がる訳ですねw
直接その描写が無いにもかかわらず、最初から読むと
悠人が神剣支配から立ち直るのがごく当たり前に感じられるのは凄いと思いました。
ちなみに今回読み終えた後最初の感想は、
「あ、ナナルゥの心象文初めて出てきた」でしたw
>>310 いつも暖かく見守って頂いて有難うございます。
謎の女wは...そうですね、「孤高の天才」+「年齢不詳の女性」で、
なんとなくヨーティアをモデルにした感じでしょうかね。
隠者生活というのも似てるし。
ナナルゥ心象を書くのは、エスの十倍くらい難しいです。
第二部まで読み返して、心象どころか二、三言しか喋ってないのに
気が付いて、作者も愕然としました。
むう、恐るべきナナルゥ。
312 :
信頼の人:04/10/01 18:35:34 ID:gsDpmljF
最近SSへ感想レスばかりでしたのでこれではイカンと書きなぐってみました。
言い訳はしませんorz
ある爽やかな朝の事。
何気なく第二詰め所を訪れた悠人を待ち受けていたのはただの悪夢だった。
「おはようっ! お兄ちゃん♪」
「お、おはよう……お、お兄ちゃま…………」
ガタッ!
今開けて入ってきたばかりのドアに勢い良く背中をぶつけてしまった。
自分の耳を疑うセリフが聞こえたような。よく判らないが、例えようの無い不安を感じる。
「ネ、ネリー、シアー……。お、お前ら一体……?」
「もーっ!朝の挨拶はおはようだよっ、おにいたまっ!」
「ぐふっ!」
最後まで言わせてももらえずに、オルファリルの体当たりを喰らってしまう。
色々な意味で悶絶した。っていうか、訳がわからない。
混乱した視界にたまたま?通りかかったファーレーン、ニムントール姉妹が
「あら、兄上様、おはようございます。……どうかしたのですか?なんだかお顔が……」
「アニキ、そんなとこで何やってるのよ、もう。」
「………………えっと…………」
たらたらと背中に冷たい汗が流れるのは決して腹部の鈍痛のせいではないだろう。
正直ニムントールにアニキ呼ばわりされるのがこんなに気味が悪いとは思わなかった。
「あらあら〜。なにか失礼な事を考えていますか〜、兄(にい)や〜。」
「うわっ!ハリオン、何時の間にっ!」
びっくりした。慌てて横を見ると、にこにこ顔のハリオン…………と、ヘリオン。
「あっ!あのっ!」
「は、はい?!」
反射的に返事をしてしまう。
するとみるみるうちに真っ赤になったヘリオンが、殺人的な一言を放った。
「兄チャマ、ヘリオンのこと、応援して下さいねっ♪」
「………………」
きゃーーっ!と悲鳴を上げつつ駆け去ってしまうヘリオン。
ドキドキしながら悠人は心の中でそっと突っ込んでいた。
――――ヘリオン、それは版権的に大丈夫なのか……?
で、なんなんだ、コレは?
それはそれとして、とりあえず頭痛を感じた。こめかみに人差し指を当てながら懸命に考え
ばたんっ!
いきなりドアが開いた。咄嗟の事で対応出来なかった悠人はそのまま床に。
更に入ってきた人物が容赦なく踏んずける。痛いって。
「おじゃまし…………きゃっ!兄上様、ど、どうしてそんな所に!すみませんっ!」
「にいさま、じゃま。」
「………………」
アセリアに踏んずけられて動けないまま、悠人はふたたび心の中で突っ込まざるを得なかった。
――――エスペリア、お前は年上だろうが………………
嗚咽に浸って現実逃避しようとする悠人に、しかし容赦なく声がかかる。
「あら?あにぃ、いらっしゃい。久し振りですね。」
「…………兄(あに)くん。なんで寝ているのですか?」
ヒミカ、お前もか…… 何処かで聞いたセリフが思い出される。
っていうか、ヒミカ、違和感バリバリだ。
それにナナルゥ、お前は何故頬を染めている?
もはや突っ込みどころが判らなくなってきたが、とりあえず。
「お 前 ら 何 の つ も り だ ?」
悠人は絶叫していた。
「え〜?だってコーインが言ってたんだよ、ユートは『妹』が好きだって〜!」
「そうそう。それで、カオリさまが『お兄ちゃん』だから、皆はそれぞれ別の呼び方にすればいいって♪」
「…………またあいつか……どうしてあいつは俺の安寧をかき乱すのが好きなんだ…………」
脳裏に浮かんだ光陰はいかにも邪悪そうな微笑をたたえていた。
また酷くなった気がする頭痛ごと頭を抱える。
「それで、皆で決めたのです。兄君様の『妹』になろうと。」
「……いや、多分それ、説明不足だと思う…………わざとだろうけど。」
いつの間にか横にいたウルカにもはや突っ込む気力もない悠人は力無く答える。
すると二階からなにやらどたどたと駆け下りてくる足音。
それは部屋のドアを勢い良く開けて飛び込んできた。
「騒がしいわね!いったい何?!…………あ、あ、あ…………」
セリアは悠人の姿を確認したとたん、口をパクパクさせて動かなくなった。
やがて顔を真っ赤にしたかと思うともじもじし始める。普段は決して見れない仕草だった。
皆の注目の中、やがて意を決した様に顔を上げる。
「どうした?セリア。」
「あ、あ、ア…………」
「ア?」
「アンちゃんっ!」
「セリア、それゲーム違う。」
悠人は神速で突っ込んでいた。
―――終わる。
_| ̄|○
>>317 _| ̄|○ノシ メッサワラタハライタイ
ファーとエスが同じ呼び方してるのは、数の都合上?
ニムとファー違和感なさ杉。
320 :
信頼の人:04/10/01 20:37:34 ID:gsDpmljF
>>318 当たりですw 実は元ネタよく知らないので適当に検索かけて
雑魚スピに当てていったので他にも被ってるかもorz
でも笑ってくれた人いてくれてよかった……
やべえ似たようなネタ考えてたよw
それとGJ、ナナルゥに兄くんと言われたい(゚д゚)ヴァー
そういやネリシアに「ユートさまあそんで〜」とか言われるけど、
年少組のスピリットにとって悠人は年の離れた兄みたいな印象だったのかな……?
まあこれだけでは何なので、某漫画の台詞改変などしてみる。
「スピリットを決して友人・恋人として扱うな! スピリットは人ではない、“物”じゃ!
スピリットは道具にすぎぬ! 物として扱い、奴隷のように使いこなすのだ!
恐るるはスピリットを心の支えにしたときの指南役のもろさよ!
いまのお前には分からぬだろうが。だが大切に扱え、貴重な戦闘兵器なのだ。
甘えても頼っても構わぬが、心を通わせてはならぬ!」
これに真っ向から異を唱えた(エス除く)初めての同年代の異性が気にならないわけないよな、
とちょっと思ったり。
>>317 その戦法、結構ユートに密かな好感度上昇の効果がありそうな気がする(笑
と言うか、ハリオン。口調はぴったりでも体格に大きな差があるな……
後、
>>283の案が何と無くイイ感じのネタになりそうだなあと思ったり。
女王の夫には十分な立場なだけに、レスティーナが内心一番嬉しがってそう。
乙です〜。
青スピ軍団のセリフが何ともいい味ですなあ。
でも、ヒミカの「あにぃ」が一番萌え。
誓いを求めが折ってしまったら……マジに考えるとあまり良い未来はないようなきが。
お気楽に考えると、帰る術の無い悠人と佳織。悠人はそのままガロ・リキュアの軍権を掌握。
佳織は、レスティーナの補佐として右に左に飛び回る、のは変だから秘書と息抜きの御伽衆みたいな。
もっとも悠人はどんな地位もイラナイという気もする。
救国の英雄とレスティーナの艶聞をわざと流し国民間に既成事実を構築。そして一気呵成に婚約発
表と言うところか。当然スピリットの間には不平が出る。元々のラキオス圏以外のスピ達からも不満出そう。
ただ、子を成せるかだな。ソーマがいるんだから可能かと思うが。でもスピとエトランジェの子らしい?血の
束縛を逃れるため共和制に移行。晴れて世継ぎの心配をせず悠人とつがうことができるとか。
求めが勝ってたらエターナル『統べし神剣ユウト』が誕生しちゃうんじゃないか?
……それもいいかも。皆に忘れられる事は無いし。
なまじコアラ様が『求め』のマナを吸い取っていたため『世界』になるにはマナが足りなかったりして。
『求め』はムカつく『誓い』を砕けて腹もいっぱいになって大満足、
そして今度は上位永遠神剣をおいしくいただく為に悠人に協力してやる、とか。
そして上位神剣を『求め』て悠人の旅が始まる。
そういえばトキミとテムオリンも「神剣コレクター」だけど、
テムオリンの神剣はロウ側についているって訳だよね。
すると一つになろうとする欲求が強いはずだけど、
悠人の『求め』みたいに夜な夜なテムオリンを責めたりはしないのかな?
統べし神剣ユウト:「これほどの歪みを抱えていたか!くくく・・・まさに逸材であったのだな!!」
住職:「お兄ちゃん・・・こわいよ」
統べし神剣ユウト:「む、まだそんなところに「歪み」があったか!」
住職:「!!ひどい!!ナポリタンレイ!!」
住職編、完
なるほど、一番の逸材は瞬でも悠人でもなく佳織だったのか。
そして、統べし聖頭蓋骨キモウトが誕生した
PC原人のようにフライングヘッドバットで攻撃
>>331 代々そんな名前継いでいくのかよ( ´Д`)
継いでいくと言えば、時深は消滅するエターナルは実際そういるわけではないってなことを言って
いたと思うのだが、そうなると聖賢再生永遠依存は主を失ってしまった数少ない例だと言うことに
なるのだろうか。永劫とも言える時の中で考えると、如何に低率でも起こり得ると言うことだろうか。
あまり突っ込んじゃいけないのかな
エターナルは、神剣を手放した状態で倒されれば消滅する。
方法自体ははっきりしているわけだから、起こり得る事は確かだろうね。
敵対陣営を潰したい両陣営とも、可能であればそれを狙うだろうし。
永劫に耐えきれなくなったエターナルが自らその道を選ぶ事もあるかも。
バックアップが効くと言っても、リュトリアム→オルファリルみたいなケースもあるし、
一概には言えないんじゃないの?
ウルカみたいに「剣の使い手がいないなら作っちゃえ」みたいなケースもありそうだしな。
レスティーナエンドで、いざ蓋が開いたら時、時深アボーンしてたら悠人どうすんだ?
それ以前に、蓋が開いた時にロウ・エターナルと戦える文明を維持してないと元の木阿弥だぞ。
レスティーナENDならともかく他のENDの場合、もし文明が崩壊してロウ・エターナルの存在についての
伝承が残っていなかったりしたら、今度こそファンタズマゴリアの危機だ。
オルファEND以外の場合は、成長したオルファがエターナルになるのかもしれないが。
再度ファンタズマゴリアを狙うメリットってあるのかなぁ。
上位永遠神剣だった『再生』と『世界』がすでにないもんな…。
下位の永遠神剣は無数に転がってるとは言っても、あまり狙われ無そうな気がする。
エターナルを蓋付き世界に閉じこめた上で倒したら、そのエターナルは
消滅するのだろうか、神剣の元に返るのだろうか。
前者だとしたら、ヨーティアの技術を目当てにファンタズマゴリア侵攻は
十分有り得る展開だが。
最近スレ違いの考証ばっかだな…
というわけで小ネタでもひとつ
「というわけでトキミ様がオハギを作ってくれるそうです」
「◎(`・ω・´)シャキーン」
「うわっ、ハリオン!ハイロゥ展開させるなっ!!」
「◎(`・ω・´)お菓子は作りたてが美味しいんですよ〜」
「いやでもな、先にヘリオンとの約束が…うわぁぁあ!?」
∞=P|_|〇/◎(`・ω・´)ズルズル
「(´・ω・`)お散歩…」
思いつきスマソ
回線切って吊ってくる
「悠人、貴様には過ぎ足ものが二つあるっ!
えーとニムちゃんにネリーちゃんにシアーちゃんにオルファちゃんにヘリオンちゃんに、さらに佳織ちゃんだあああああああ」
(BGM:Harrowing battel)
洞窟の外に出て、神剣を構える悠人に、女兵士がつかつかと歩み寄り、
悠人の体のあちこちをパンパンとはたいた。
「――ふん、少しは鍛えてあるようだが...それにしてもその構えは何だ、貴様。よく
それで今まで生き延びて来られたものだな。」心の底からあきれ返った声で、女は言った。
悠人は返す言葉もなかった。今までやってきた事はオーラフォトンのバリアに
頼っていただけの話で、武術とはかけ離れている。
女兵士は大上段に振り上げられた悠人の神剣を下げさせ、剣先が眼の高さになるように直した。
「重心のかけかたも無茶苦茶だ、手間をかけさせる。」美しい眉宇に皺を刻み、女は拾い上げた
小枝で軽快な音をたて、悠人の背中や腰、膝を打った。不思議と、それだけで悠人の構えが自然な形をなした。
「運動にもならん。今日は私がいいと言うまでそのままでいろ、若いの。」
そう言って女兵士は甲冑を鳴らしながら洞窟へと戻っていった。
日がな一日、構えを執らされるだけで数日が経過したある朝。
悠人はだいぶサマになってきたナナルゥの手料理を食べながら、女兵士に尋ねた。
「なあ、一体いつになったら剣を教えてくれるんだ?」
女兵士は呆れたように首を振った。
「お前は口の利き方も知らんのか。―――まあ、少しは型が出来てきたようだ、少し揉んでやろう。」
洞窟の前で、二人は向かい合った。入り口から、ナナルゥがさすがに心配そうな面持ちで、壁に
寄りかかって見守る。悠人が教えられた中段に剣を静止させた。
「どうだ、その神剣は何か言って来ているか?」
女は短い木刀を右手にぶら下げ、悠人の前に突っ立ち、問うた。
「いや、ここに来た日から、うんともすんとも言わないよ。全然神剣の力も引き出せなくなった。」
悠人は答えた。事実、「求め」はあの夜以来、ただの重剣と化していた。
「神剣にしても木切れにしても、所詮自分の腕の延長にすぎん。いちいち剣の力などに
頼るなと言った筈だぞ、小僧。」ニヤリと笑みを返し、女兵士は居合いのような構えを見せた。
「――始めるとするか、エトランジェ。」
女が構えた途端、怒涛の如き闘気が悠人に押し寄せる。今までアセリアやヒミカと練習で
立ち会った経験もあり、相手の圧力には慣れていたはずの悠人の足がすくんだ。
―――マナでも、オーラフォトンでも、ない!これは...、これが...人間の持つ殺気か!?
悠人の膝がガクガクと笑い始める。
「――クク。どうした、掛かってくる気がないならこちらから行くぞ。」
直後、女兵士の影が、揺らいだ。重い甲冑を着けているとは信じ難い速さで、その影が奔る。
―――こっ、殺されるっ!!
降り注ぐ小太刀の嵐を一撃も受け止める事が出来ず、悲鳴をあげて悠人は地べたに這いつくばった。
悶絶する悠人の下半身を生温かい尿が濡らしてゆく。
「―――あ、気が付きましたか、ユート様。」洞窟の入り口近くで寝かされていた悠人の横にナナルゥが座っていた。
「―――え?あれ?――ぐっ!!」体のそこかしこが軋みを立て、起き上がろうとした悠人は苦痛に顔をしかめた。
「な、何だ、俺は―――何も出来なかったのか。」
苦痛に身をよじりながらも、悠人はこみあげる喜びを隠せなかった。
「ナナルゥ、凄いぞ、―――あのひとは。」
幾多のスピリットを倒したという女の言葉はハッタリではなかった。悠人の目に、本当に
久し振りに、希望の光が宿った。悠人は痛みも忘れて、かけられていた毛布をはねのけ、立ち上がった。
「―――あ。」下半身が裸になっていた。
「あの―――、洗っておきました。」ナナルゥが言いにくそうに外を指した。木立に悠人の
ズボンと下着が架けられていた。
「お目覚めか、いいざまだな、若いの。」女兵士が苦笑しながら洞穴の中から顔を出した。
「どうする?まだ続けるか、小便小僧?」
「当たり前だろ。このまま終われるかよ。」悠人が拳を握り締める。
「―――前くらい隠してください、ユート様。」ナナルゥが目をそむけた。
―――その夜。
悠人は全身を覆う痛みになかなか眠れなかった。
顔も倍くらいに腫れ上がり、口の中の至る所が切れ、喋るたびに血の味がした。
「――大丈夫ですか、ユート様?」ナナルゥも気になって眠れぬ様子であった。
「――ああ。」呻くような声の返事があった。
「やっぱり、神剣の力もなしに訓練するのは無理だと思います。――体が先に潰れますよ。」
「俺が弱いんだから仕方ない。あれでもずいぶん手加減してもらってるんだ。」
「弱い――?」ナナルゥにはセリア達を威圧していた悠人が、自分の事を「弱い」と言っているのは理解しにくかった。
「弱いから、逃げたんだ。戦う事からも、みんなからも。」そのあげくに一番従順な部下を
巻き込んだ、その事実だけが残っていた。「―――もう、逃げたくない。」悠人の声が鼻声になる。
「はあ。」ナナルゥは体を起こした。
「ごめんな、――ナナルゥ。」すすり泣く声がする。
「え―――?」よく泣く隊長だ、ナナルゥは傷だらけの悠人の横顔を見ながら、そう思った。
それでも今は、少しだけその涙の理由が分かる気がした。
おぅこんな時にリアルに遭遇、支援するぞナナルゥ!!
筆舌に尽くしがたい、昼夜を分かたぬ訓練の日々が過ぎていった。
失禁には至らなくなったものの、悠人は何度となく反吐にまみれ、転がされた。しかし、いつしか、悠人は
名前も教えてくれぬ女剣士の事を「師匠」―――、そう呼ぶようになっていた。
「ほら、どうした、足が止まったぞ。」まるで背中に翼を持つがごとく、右から左へと
体を入れ替える「師匠」が、じゃれるように次々と悠人の体を打ち据える。
「くっ、そっちかっ!」悠人が渾身の一撃を放った時にはすでにそこに女剣士はいない。新たな傷が
悠人の体に刻まれるだけであった。しかし、ナナルゥの傷が癒え、歩けるようになるころには、
小太刀の打ち込みを「求め」でどうにか受ける事が出来るまでに、悠人は成長していた。
「ナナルゥって結構料理の才能があったんだな。」
並べられた料理を次々に平らげながら悠人が言った。
「第二詰所でも、食事の準備は当番制でしたので。」少しばかりムッとした口調になってナナルゥが言った。
「へえ、俺はてっきり、全部エスペリアとオルファがやってるもんだと思ってたよ。」
炊事を任されていたナナルゥの料理の腕は、これもやはり「師匠」の手ほどきを受けていたようだった。
食材はほとんどが女剣士が獲ってきた魚や獣肉、山菜等であった。
「何をくだらん話をしている、さっさと準備しろ、ユート。」
「おうっ!」
ここにいたってようやく「坊主」やら「若いの」といった呼び名から昇格した悠人が、神剣を手にして立ち上がった。
―――同じ頃。
「クッ、まだエトランジェは見つからんのかっ!!」ラキオス国王は従卒を怒鳴りつけた。
当初は順調に戦果が上がっているという報告に相好を崩していた王であったが、ある日
忽然とエトランジェの隊長が行方不明となり、主力を欠いたスピリット部隊はエルスサーオの砦に
足止めを食らっている状況が続いていた。
「―――と言って、もう一人のエトランジェの下に神剣が現れるわけでもない...。
一体どうなっておるのだっ!!」
欲にかられ、身動きの取れなくなった父親を、たった一人の娘は、哀れむような視線で見ていた。
元はと言えば自分が、人質を取って悠人を脅して戦わせるなどという、品のない事を
するからだと、そんな事には思いも及ばぬ父親を。
「―――でも、今頃ユートはどこで、何をしているのでしょう。」レスティーナはつぶやいた。
父の言う通り、神剣が佳織の前に出現していない以上、悠人は死んではいないと言う事になるが、
ただ、妹を放って逃げ出したと言うのも考えにくかった。
更に数ヶ月が経った。
斥候の兵士がエスペリア達の駐屯するエルスサーオにやって来た。
「王からの命令だ、ここには最小限の部隊だけ残して、お前達はラセリオの防衛に当たれ!」
バーンライトが主力部隊を投入し、サモドア山道経由で、ラキオスの要衝ラセリオ急襲に向かったとの報告であった。
「―――はい、かしこまりました、直ちに。」
エスペリアは沈鬱な面持ちで頷いた。今、戦力を分割するのは自殺行為に等しかった。
しかし、開戦そのものがエトランジェの戦力を当てにしてのものだったのだから、仕方のない成り行きとも言えた。
「私達がここに残るわ、エスペリア。」
セリア、ヒミカ、ハリオンの3名がエルスサーオに駐留する事を引き受けてくれた。――時間稼ぎの
駒にしかならない事を承知の上での事であった。
―――明日は我が身、か。
エスペリアは胸の内でつぶやいた。果たして、あの、変わり果てた隊長の下で戦っていた方が
良かったのか、それとも今こうして破滅に向かって突き進むのが良いのか、エスペリアには分からなかった。
「今日は手加減抜きで相手してやる、有難く思え、ユート。」
ある日の朝。
そう言った「師匠」はいつもの小太刀を携げていたが、常に身に着けていた甲冑を外していた。
――そういや、師匠っていつもあの重い鎧を着込んでたんだよな。
向かい合って、悠人は薄手のシャツに包まれた女らしい体つきに眼を奪われながらも、改めて畏怖を感じた。
その甲冑を忘れさせるほど、「師匠」の動きは流麗であった。
「――――行くぞ!!」低い声とともに小太刀が襲いかかった。
「くっ!!」かつてない異様なスピードに、これまで叩き込まれたもの全てをつぎ込んで、悠人は応戦した。
「ふむ...まあ、よく持ち応えたほうだな。」
呻き声をあげて、木偶のように転がった悠人の傍らで「師匠」がつぶやいた。
「聴こえてるか、ユート。今日で私の気まぐれは、しまいだ。最後に名前を教えてやる。私の弟子としては
まだまだ恥ずかしい腕前だがな。」
そう言って女剣士は悠人のそばにしゃがみ込んだ。
「ミュラー。―――ミュラー・セフィス。それが、お前の師匠の名だ。もう、会うこともないだろう、精進しろ、ユート。」
「し、師匠―――」
別れを覚悟した哀しみか、弟子と認められた歓喜だったか―――。
悠人の、薄れてゆく意識に歌うような声が届き、一筋の涙がその頬を伝った。
「行こう、ナナルゥ。」悠人は僅かな荷物をまとめ、ナナルゥに呼びかけた。悠人が気付いた時には
すでに「師匠」の姿はなかった。ナナルゥにも行き先を告げずに出て行ったとの事であった。
「―――あいつら、無事でいてくれるかなあ。」悠人は残して来た部下達の顔を思い出していた。
自分がした事を考えれば、すんなり受け入れてくれるとは思えないが、今、悠人とナナルゥの帰るべき場所はそこしかない。
「だと、いいですね。」ナナルゥは、ふと洞窟を振り返った。
―――?
何だか、ここから離れたくないような気がしていた。ミュラーは悠人に対しては鬼のような
剣の師匠だったが、ナナルゥにはいろいろな事を優しく教えてくれた。
―――楽しかったんだ、ここの暮らしって。
ナナルゥはやっと後ろ髪を引かれる理由に気が付いた。悠人と過ごしたこの場所は、ナナルゥにとって
初めて、殺し合いとは無縁の日々を送った所でもあった。心の中が暖かいもので満たされてゆくのを感じ、
ナナルゥはそっと胸を手で押さえた。
「おい、どうした、行くぞ。」悠人が立ち止まっている赤い妖精に声をかける。
「あ、―――はい。」振り返ったナナルゥは、悠人を追い越して先に森に入ってゆく。
「一人で行くなよ、危ないぞ。」
悠人は慌てて少女の後を追いかけた。しかし、追い越しざま、ちらりと見えたナナルゥの顔は笑っているように見えた。
―――気のせい、だよなあ。
二人は西へと向かって、森の中深く進んで行った。凶暴な獣達が群れている、その中を。
「―――まあ、確かに、師匠に比べればかわいいもんだよな。」悠人は苦笑した。
「今日はここで野宿するしかないな。ちぇっ、もうちょっと食糧持ってくりゃ良かったよ。」
悠人は焚き火の用意を始めた。思ったより森は広大で、一日では抜け出る事は不可能だった。
途中で何度か獣に襲われはしたが、ボスらしき一頭を倒すだけで、群れは素直に引き下がって行った。
「でも、こっちの世界にもウサギがいたんだなあ。角、生えてるけど。」
ナナルゥによるとそれはエヒグゥと呼ばれる生き物、とのことだった。
ナナルゥは手際よく悠人が獲ったエヒグゥをさばき始めた。
「―――でさ、ナナルゥ、このキノコは食べられるのか?」
悠人はナナルゥが途中で見つけたキノコを火にかけながら尋ねた。
「はい、ミュラー様に見分け方を教えて貰ってましたから。それに、何度かラキオスのお店で売ってるのを
見たことがあります。―――私達はお金を持つ事が出来ないので、買った事はありませんけど。」
やがて、周辺に香ばしい匂いが立ち込め始めた。
「ぷはあっ、食った食った。まさか三匹全部なくなるとは思わなかったよ。」悠人は満足気にお腹をさすった。
「今日は一日中歩きっぱなしでしたから、仕方ありません。」そう言ってナナルゥは悠人に水を差し出した。
「お、さんきゅ、ナナルゥ。ちょっと可哀そうな気もするけど、まあ仕方ない。」
悠人は骨だけになったエヒグゥを見やった。
「―――ナナルゥの魔法があると、マッチがいらなくって便利だな。」焚き火を見て、悠人は笑った。
昔、光陰や今日子、佳織達と仲間うちだけでキャンプに出かけた時、火を起こすのに苦労したものだ。
「そうだ、ナナルゥ、祈りの歌って知ってるか?」悠人はその時のキャンプファイヤーを思い出して、言った。
「―――はあ。」嫌な予感に襲われたナナルゥが答えた。
「一回だけ、オルファに歌ってもらった事があるんだけどさ、歌えるなら、ひとつ頼むよ。」
「私は、―――歌は苦手で...」ナナルゥがうつむいた。
「はは。そんな事言わずに、やってくれよ。どうせ俺以外聴いちゃいないって。」
その『俺』に聴かれるのが嫌なのだとも言えず、しぶしぶ、といった表情でナナルゥが歌い始めた。
「暖かく、清らかな母なる光―――」
静かな、落ち着きのある歌声が森の中へと吸い込まれて行った。
「―――マナの光が、私たちを導きますよう――。」
「うん、うまいもんだよ。これでウサギも天国行きは間違いない。」
歌い終わったナナルゥに悠人は拍手を送った。
「ウサギではなく、エヒグゥです。―――ユート様、ハイペリアにも、歌はあるのですか?」ナナルゥが悠人を見据えて、言った。
「な、なに?」今度は悠人が嫌な予感に襲われる番であった。「そりゃ、あるけど―――。」
「では、お願いします。」某スポ根マンガの主人公の如く、メラメラと燃えるたき火を瞳に映し、炎の妖精が迫った。
「お、俺は歌が苦手で!」
「その言い訳は通用しません。どうせ私以外聴いている者もいません、ユート様!」
「くっ!」悠人は調子に乗りすぎた事を後悔したが、遅かった。
「じゃ、じゃあ、一曲だけ。」悠人は観念して、バイト先のコンビニに流れていた、うろ覚えの歌を歌った。
「もう、これで勘弁してくれ、本当に歌はダメなんだよ。」歌い終え、悠人は真っ赤になって頭を掻いた。
「ふふ。―――はい。」
その時、悠人は目を疑った。
ナナルゥが―――笑っていた。その頭上に純白の光輪を浮かべて。
「あの―――、どうかしましたか?」
ほうけたように悠人が自分を見ているのに気付き、ナナルゥが問うた。
「―――ナナルゥ、ハイロゥが白くなってる。」涙がこぼれそうになるのをこらえ、悠人は言った。
「え?―――あ!」悠人に言われて初めてその事に気付いたナナルゥが、驚いたように声を上げた。
「ナナルゥってさ、笑うとそんな顔するんだな。」綺麗だ―――、悠人は素直にそう思っていた。
「―――あ、ほんとだ、ふふふ。笑ってましたね、私。」
「あはは。自分で気が付いてなかったのか、あはははは。」
「ふ、ふふ。笑うなんて久し振りです、ユート様。うふふふ。」
「あははははは、はーっはははは。」
二人は笑い続けた。
「あは、はははは、お、おかしい、笑いが、ははは、と、止まらないっ、ははは!」
悠人は腹を抱えて涙を浮かべた。
「ふふふふ、あは、わ、わたしも、です。あは、あははは。」ナナルゥも身をよじった。
「あははは、ナ、ナナルゥ、あのキノコ、あはは、やっぱり、ははは。」
「も、申し訳、あはは、ありません、ユート様、キノコは、うふふふ、見分けるのが
難しいから、注意しろと、あれほど、あはは、言われたのですが。」
二人は死の恐怖と戦いながら、地面を転げ回った。
「はあっ、はあっ、い、――生きてるか、ナナルゥ?」肩で息をしながら、木々の間の夜空を見上げて、悠人が訊いた。
「は、はい、―――なんとか。」悠人の横手からかすれ声が返ってきた。
「良かった。こんなところで二人で笑い死に、なんて、シャレにならないもんな、あはは。」
「そうですね―――ふふ。」それもいいかも知れない、ナナルゥはそう思いながら、言った。
「早く、――みんなの所に戻らなけりゃ、な。」
ナナルゥの事を心配していたヒミカに、さっきの笑顔を見せてやりたかった、悠人は
そう思った。ふと、捕らわれている妹の姿が胸中をよぎる。
―――もし、生きて会えたら、笑ってくれるかな、あいつ。
自分がいなくなった事で、殺されたりしていないだろうか、悠人はそんな心配を胸に押し込めた。
「生きて―――帰ろう、ナナルゥ。一人でも、悲しむやつがいるんなら。」
「―――はい。」
残り火に照らし出される悠人の横顔を、炎の妖精がいつまでも、見つめていた。
「ヒミカっ、大丈夫?」戦いは一昼夜に及んでいた。セリアが、負傷したヒミカの前に
回りこみながら、背中で訊いた。ハリオンがヒミカを抱き起こす。
バーンライトのスピリット達が、手薄になったエルスサーオの砦の防衛ラインを突破しつつあった。
「ハリオンっ、ヒミカを中にっ、早く!!」セリアが集中攻撃を仕掛ける敵を迎え撃ちながら、叫ぶ。
「で、でもぉ...」自らも、すでに傷だらけになったハリオンが躊躇した。
「ここは私がくい止めるわ、いいから早く!!」追い立てるようにセリアが言う。
―――雑魚も、群れると手こずるわね。一対一なら、負けないのにな。
たった一人で仁王立ちになったセリアが凄絶な笑みを浮かべた。
「くうっ!」セリアの太腿が、血を噴いた。かわし切れなかったグリーンスピリットの槍が突き立っていた。
槍のけら首をつかんで引き寄せた敵を斬り倒しながらも、セリアは片膝を付いた。
その劣勢を見て取ったスピリット達が一斉に襲いかかる。
―――ここまで、か。
視線を落としたセリアの目に血まみれの「熱病」が映った。
―――色恋沙汰なんて冗談じゃないって思ってたけど、いっぺんくらいなら、良かったかもね。
自分とは無縁の名を持つその神剣を、セリアは見つめた。自分が自分でなくなる気がして、
激しい恋愛感情に溺れてしまう事を、セリアは恐れていた。
死を覚悟して、目を閉じたセリアは、不意に、敵のスピリット達が退いてゆくのを感じた。
顔を上げたセリアの蒼い瞳に、敵の後方から次々と金色のマナが立ち上ってゆくのが映る。
そして、さらに、猛烈な炎が敵スピリット達を襲っていた。
「あ、あれは―――?」
一直線に自分に向かってくるその姿に、セリアは我が目を疑った。
「セリアっ!!大丈夫か!?」
「―――ユート様―――?」
「――怪我してるのか。ナナルゥ、セリアを運んでくれ!」しゃがみ込んでセリアの様子を見た悠人が、背後にいた赤い妖精に言った。
「ナナルゥ、あなたも―――生きてたの?」
「セリア、エスペリアや他のみんなはどうしたんだ?まさかもう、やられたのか?」
「――い、いえ、ユート様。ラセリオが襲撃を受けて、そちらに回りました。」
「生きてるんだな。―――良かった。」悠人が安堵の表情を浮かべた。
セリアは以前、自分を処刑しかけた、その男の顔を唖然として眺めていた。
「長いこと空けてて悪かったな、セリア。――森の中で、迷子になってたんだ。」悠人は立ち上がった。
「でも、もう迷ったりしないから、安心してくれ。」そう言って再び集結しはじめたバーンライト兵を見渡した。
「――手伝わなくてもいいのですか、ユート様?」ナナルゥが同胞の体を支えながら尋ねる。
「このくらい、手伝って貰ってたら、師匠にどやされちまうよ。」悠人は立ち上がって、言った。
「はいはい。それじゃ、行きましょ、セリア、歩ける?」
セリアはナナルゥの優しいまなざしに気付いた。――無表情だったはずの妖精の、
一度も見たことの無い、微笑をたたえたその紅い瞳に。
「おい、いつまで狸寝入りしてんだ、バカ剣、さっさとここを片付けてラセリオに行くぞ。
――ただ、今度余計なマネしやがったらドブ川に叩き込むからな。」
悠人はそう言って、敵陣の真っ只中に踊りこんだ。
「求め」があきらめたように光り始めた。
369 :
あとがき:04/10/04 18:11:58 ID:36l3PRnu
少し長めの第四部でした。支援どーもでした。
なんだか最終回みたいですがまだまだしつこく続きます。
イービルルートからホーリールートに変わってゆく過程を
感じて頂ければ、と思っています。
イービルファンの方、スマソ。(←いるのか、そんな人?)
次回、戻ってきた隊長を待ち受ける第二詰所の面々は果たして...?
ハイロウが輝く白さになりました。(画像はイメージ映像です)
駆け落ち出戻り乙。
なんか途中から、作者の地が出てきたような気がする。地べたはいずるばかりじゃなくて、
笑っていかなくちゃね。
出迎える方は……リュールゥ、じゃすまないか?
すみません、途中いい場面で噴出しました。
向こうにもあるんですねぇ、ワライダケw
それはそうと無事ナナルゥのハイロゥが白く輝いた訳ですが、
そのきっかけはやっぱり内に秘めた願望みたいなものだったのでしょうか?
そと(神剣)からの拘束が自然と解けるナナルゥもいいなぁと思いつつ。
後は第二詰め所の反応……特にヒミカ辺りが気になります。
悠人タコ殴りなんてオチでは無いような気もしますがw
【クラスが上がりました】
失望のヘリオン ⇒ 妄想のヘリオン
【新たな技を習得しました】
妄想具現化U 乙女のパワーで妄想を具現化することが可能になったヘリオン。
レベルが上がるにつれて具現化する妄想もヒートアップする。用法・用量を守って正しくお使いください。
なお、これを応用すれば○○の効率が30%アップすることが検証により明らかとなった。(ヘリオン談)
問:○○の中に当てはまる語句を埋めよ (サーギオス大学入試問題)
真っ黒だったハイロゥが驚きの白さに!!
乙ですグッジョです、こーゆー展開を待っていました。
無表情キャラは、このスレ的には
他人のプライバシーを探る忍者でしたから。
天井裏で抜かれた悠人も浮ばれる事でしょう。
元はネリシアヘリオン、ニムLOVEだったのに
ハリオン、ファーレーン、そしてナナルゥと
お姉さんキャラも属性が付加されてしまいましたよ
そう我々は、雑魚スピ属性。
マロニー
オイニーって言うな! 逆さまに言うな!
378 :
憂鬱の人:04/10/05 18:13:50 ID:q3V4+IDd
亀レスですが。
感想頂いた方々有難うございます。
>>370 作者の「地」ですか?
それは純白に輝くハイロゥの様な?え、違う?
>>371 毎度どーもです。
ナナルゥと「消沈」の会話も入れたかったんですが、尺の都合でかなりはしょってます。
なんだか先を読まれてそうでコワイです。
>>373 ナナルゥの事が新たに好きになった方が一人でもいれば無上の喜びです。
忍者キャラは脳内から洗い流すのに苦労しましたが、この先やっぱり
ネタで使いそうな自分が怖いです。
では。
>>283Endの後は、やっぱりユートは王宮に済む事になるんだろうか。英雄として。
んで、雑魚スピは身の回りのお世話とか。ファーレーンやハリオンなんて適任かも。
でも、アレで戦いが終ってしまうとスピ達の地位上昇が難しそうだなあ……
「ラスフォルト」の意味を日本語で表しなさい。
1:気高き者
2:毛深き者
3:深きモノ
>>379 EXPによるとエターナルになってもユートへの感情は変わらないんだろう?
つまりヨフアルエンドの場合どちらにしろ争奪戦が始まるわけだ。
誰か書いてくれ
>>379 >でも、アレで戦いが終ってしまうとスピ達の地位上昇が難しそうだなあ……
瞬のところで戦いが終了してしまうと、普通の国家間の戦争になってしまうからなあ。
スピリット達の地位とか待遇改善は確かにムズそう。レスティーナに頑張ってもらうしかないな。
そんな場合、やっぱり鍵はユートだろうか。パッションでもあったけど、
街中で雑魚スピたちとわいわいやっているのは物珍しく映っているかもしれん。
妖精趣味の変態と思われていると言ってみる。
エトランジェだからスピリットと同類(同種族)に思われてるかもしれない、と言ってみる。
>>383 こっちの世界というかリアル世界だったら、どれくらいのことをしているんだろうな?
いい年した高校生が、幼女10人くらい侍らして街中歩いているようなものか?
いや、それ以前に「スピリット=道具」だから、人形でも持ち歩くようなものか?
幼女侍らして歩いているのも、「戦争の道具=武器」を持っているのも、
明らかに問題があると思われ。
お風呂シーンの頻度からして、雲のヒューイ的存在かと
他人から見れば、幼女といちゃいちゃしてたり腕っぷし強かったりで羨ましい限りなのに
最後の将のために無駄死にする
この場合の将は頭蓋骨w
あ、ジュウザだった間違えた orz
悠人達の戻ったラキオス部隊は、破竹の勢いでラセリオからバーンライトの首都サモドアを陥落させ、
更に勢いを駆ってダーツィ大公国を攻め落とした。
それはもう、信じられないスピードの進攻であったが、断じて尺の都合では、ない。
「みんな、俺が悪かった!」
久し振りにラキオスに戻り、食堂兼会議室に勢ぞろいしたスピリット達に向かって悠人は平謝りした。
エルスサーオに居合わせていなかったヘリオン、そして新たに隊列に加わったファーレーン、ニムントールは
訳が判らず、謝る悠人を呆然と眺めた。
「今さら、許してくれるとは思わないけど...」そう言ってスピリット達の顔つきをうかがう悠人に、ハリオンが言った。
「あらあら〜。何があったか知りませんけど〜、今さらそんな事言われてもぉ、信用出来ませんよ〜、ねえ、セリア。」
意外と冷たい事を言うハリオンが、ニヤニヤしながらセリアに水を向ける。
「う...そうね、私だってそう思うわ。散々迷惑かけられた訳だし、ねえ、ヒミカ。」何故かヒミカに丸投げするセリアであった。
「まあまあ、いいじゃないの、二人とも。ナナルゥだってこうして無事に戻って来たんだし。」
ヒミカが困ったような笑顔を見せる。
「いや、セリア達の言う事も、もっともだ。」悠人が言った。
「ここは一つ、目に見える形で俺の誠意を示そうと思う。」
スピリット達は悠人が一体何を言い出すのか、身を乗り出して見守った。
「本日限りで、俺は隊長を降りて、新入りのヒラ隊員になる!要するに、この中で、
一番下っぱとして扱ってくれ!」
余りに馬鹿げた提案を聞いて頭痛が襲ったのか、ナナルゥが頭をかかえた。
「何を言い出すんですか、ユート様!」エスペリアが血相を変えて立ち上がった。
「パパ、オルファ達の家来になるの〜?」オルファが目を輝かせる。
「そういうことだ。みんなの言う事は何でも聞くよ。」
「わ、私は賛成ですっ!」
どういう訳か、ニムたちにも先輩づらをされている、通称・二詰のパシリ・ヘリオンがすっくと立ち上がる。
「ユートさ...ユート、ユート...」ぶつぶつと独り言を言い始めるヘリオン。
どうやら呼び捨てにする練習を始めたらしい。
「ねーねー、シアー、何してもらう?」すっかりネリーもその気になっている。
「で、でもぉ...」今さらコトの発端はネリーの負傷であった、とは言い出せない気弱なシアーであった。
「――ヘリオン、ネリー、あなた達は黙っていなさい。いいですか、ユート様。
隊長を任命したのは国王です。この命令は絶対ですっ!」エスペリアが決然と言った。
「うーん、じゃあ、俺の隊長命令で、おれ自身を格下げするっていうのはどうだ、エスペリア。
つまり、左遷ってことだ。」悠人が無い知恵をしぼって反論する。
「なあんですってえっ!?そんな事は―――っと。」言いかけて、エスペリアは着席した。
「ふう。あやうくオヤジギャグをとばす所だったわ、私としたことが。」
エスペリアは喉まで出かかった言葉をお茶と一緒に飲みくだした。
「じゃ、エスペリアにも了承を得たということで、改めてよろしく頼む、みんな。」
悠人はエスペリアの隙をついて、なし崩し的に話をまとめた。
「ユート様ぁ、新入りだったら寝泊まりする場所も変えないとだめだよー?」
ネリーのこの一言が第二詰所に嵐を呼んだ。
「うーん、やっぱりそうだよなあ。じゃあ、誰か第一詰所の俺の部屋と入れ替わってくれるか?」
一斉に第二詰所のスピリット達が外に飛び出してゆく。
「セリア、あなた第二詰所のリーダー格でしょ?順番から言えばあなたが行くべきよねえ、第一詰所に。」
ヒミカが微笑を浮かべて、言った。しかし、目は笑っていない。
「何言ってるのよ、私が新入りを指導しなくてどうするの?残念だけど
第一詰所行きはあなたにゆずるわ、ヒミカ。」
突然ぴゅうっと吹いてきた北風にポニーテールを揺らめかせながら、セリアが応戦する。
「ふふふ〜。私がいなくなるとぉ、第二詰所のおやつタイム、なくなっちゃいますよぉ?」
不敵な笑みを浮かべ、ハリオンが甘党のネリーやシアーを取り込もうとする。
「そっ、それなら私がケーキを焼きますっ!」ヘリオンがマジック仲間のハリオンに反旗をひるがえした。
「ねえ、お姉ちゃん、こんな面倒な言い争いしたってしょうがないよ。」
ニムがあきれた声でファーレーンの説得にかかりはじめる。
「あなたの言う通りね、ニム。みなさん、ここは一つ正々堂々と戦って決めましょう。」
完全に意味を取り違えているファーレーンが臨戦態勢に入った。
スピリット達のバトルロワイアルが始まりかけたが、残念ながら某SS職人の抗議により、それは中止の運びとなった。
結局、悠人は第二詰所の広間に引っ越す事となったのだった。
当然、それを快く思わないスピリットもいた。
「そんな事は―――させませんっ!」物陰からそのスピリットは音もなく立ち去った。
「ククク...新入りとは言っても俺達は同期みたいなもんだ。そうだろ、ファーレーン?」
悠人はその夜、ファーレーンの部屋に忍び込んでいた。
「ユート様...そんな...事っ!」ファーレーンの悲痛な声が響く。
「フン、さすがに初めてだときついな。ギュウギュウ締め付けやがる。
まあ、今のうちだけだ、いずれ拡がってなじんでくるさ。」
少女特有の甘酸っぱい匂いが、悠人の鼻腔をくすぐった。
「ああ...やめて下さい、ユート様...」
覆面を剥ぎ取られ、明かりに晒されたファーレーンの端正な素顔が、羞恥にゆがむ。
「ユート様だと?俺はお前の知っているユート様じゃない。まだ分からないのか?」
「ねえ、ユート。お姉ちゃんばっかりじゃずるいよお。ニムにも、ちょうだい。」ニムが甘えたような声を出した。
「わかってるよ、ニムが協力してくれたんだからな。ちゃんとお返しはさせてもらおう。」
悠人はニヤリと笑った。
「―――それにしても、ファーレーンは小顔だな。俺にはこの覆面はちょっときつすぎるよ。」
悠人は鏡の前で、ファーレーンの残り香がする覆面を被りながらぼやいた。
「首周りの締め付けがなあ。ま、そのうちなじんでちょうど良くなるだろうけど。」
「ユート様、見てて恥ずかしいからやめて下さい。」ファーレーンが頬を染める。
「バカ、ユート様じゃないって言ってるだろ。俺は、えーと、そう、謎の覆面戦士、神剣マンだ。
もうすぐエスペリアがレスティーナを連れて来るらしいから、ちゃんと調子を合わせろよ、ファーレーン。
なんたって同期みたいなもんなんだから、俺達。」
「一発でばれると思うんですけど...そのネーミングのセンスは何とかなりませんか、ユート様。
そんな事より、お礼のヨフアル、忘れないで下さいね。」しっかり自己主張をおりまぜて要求するファーレーンだった。
「ねえ、ユート、お姉ちゃんの説得、ニムも協力したんだから私にも買ってちょうだい。」
「わかってるよ。結構うたぐり深いな、二人とも。」
「あの、それで、ユート様、私はこれから覆面なしで過ごすんですか?」
ファーレーンが心配そうに尋ねた。
「一応、替えの覆面ももらってくよ。一枚だけじゃ洗い替えがきかない。さすがに花柄のはかぶれないけど。」
悠人はファーレーンに向き直り、真顔で言った。
「でもさ、そんなに可愛い顔してるんだから覆面で隠すのはもったいないぞ、ファーレーン。」
「やだ〜♪ユート様ったら、正直なんだから〜☆」
照れまくるファーレーンを見ている悠人が、覆面の下でほくそ笑むのを、ニムは見逃さなかった。
―――ユートって、お姉ちゃんを上回る腹黒かも知れない。
完全に手玉に取られる姉を見て、思わず悠人に惚れ込んでしまう腹黒好きのニムであった。
「一体なんのマネですか、その格好は、エトランジェ・ユート!」
仰天したレスティーナの声が第二詰所を揺るがす。
「ねえ、ラキオスに戻ってからおかしくなっちゃったんですよ、王女様。」
まるでジャイ○ンに告げ口するス○夫のようにエスペリアが言った。
「王女様、私は『求め』のエトランジェ・ユートではありません。平和の使者、神剣マンです。」
悠人がしゃあしゃあと答えた。
「何をバカなことを...では、腰にぶらさがってるその剣は何ですか?」
あきれたレスティーナが問い詰める。
「よくぞ聞いてくれました。これは太陽神剣第一位の『バカ剣』です。」
「え...そうなんですか?そう言われて見れば、そんな気が...」レスティーナが悠人に近付いて神剣を眺める。
「確かに、あまり知性は無さそうですね。」侮辱に耐えかねたのか、「求め」が青白く光る。
「なに丸め込まれてるんですかっ、王女様!どう見たって覆面かぶっただけのユート様じゃないですか!」
エスペリアが立場も忘れて突っ込んだ。
「レスティーナ王女。隊長だったエトランジェ・ユートはいなくなりました。
ここにいるのはただのスピリット部隊の新入り隊員です。」
悠人は少し真面目な口調に戻って、言った。
「―――なるほど、そういう事ですか。分かりました、神剣マン。
我がラキオスへの御助力、感謝いたします。」レスティーナは一礼した。
「国王には私からうまく言っておきましょう。」
そう言って王女は微笑した。
哀れなエスペリアが湯気の噴き出す頭をかかえてうずくまる。
「えっと、ここにいるのは隊長のユート様じゃなくってヒラ隊員の神剣マンで、
私は副長の隊長代行で...いやいや、そうじゃなくって...あれ、私は誰ですか?私は私よね。妖精だもの。」
翌朝から悠人の二詰生活が始まった。
「お、今日の炊事当番はハリオンか。」
当面悠人は下っ端として、毎日の当番手伝い、という役どころに就いていた。
「お姉さんが、優しく教えてあげますから〜、安心してください〜。」
寝ぼけまなこの悠人をハリオンスマイルが出迎えた。
「何だか安心できないなあ、その笑顔。で、俺は何をすればいい?」
「そうですね〜、では、そこの野菜を切ってってもらえますか〜?」
「あ、これか。苦手なんだよなあ、ラナハナ。」
「好き嫌いは、めっめっ!ですぅ〜、新入りさん。」
悠人はナイフを手に、並べてあった野菜を切り始めた。
「そういや、ハリオンって普段はメイド服なのに、戦場では戦闘服だよな。」
「うふふ〜、当たり前じゃないですか〜。コスプレしながら戦うなんて、そんなバカな事出来ませんよ〜。」
「いや、その発言はなにかと物議をかもすと思うぞ、俺は...って、いたた!」
「あらあら〜、指、切っちゃいましたね〜。お姉さんに見せてごらんなさい〜。」
「よそ見しちゃったよ。はは。」悠人は思わず手を差し出した。
「消毒してあげます〜。んむ...ちゅ...れろれろ。」
「・・・・・・・・・。」
「あ〜、今、興奮してましたね〜。」
「いや、だから興奮してないってば、ハリオン。」
どこかであったようなやりとりが交わされる。
「思うんだけどさ、そんな事しなくてもハリオンなら回復魔法で
このくらいすぐ治せるんじゃないのか?あ、いてて!噛むな噛むな!」
「それは言わない約束です〜。」野良犬のように唸りながらハリオンが睨む。
「うう。約束ごとが多いんだな、この世界は。」
悠人は歯型の残る手を押えた。
ドアの外は黒山の人だかり、ではなく黒赤青山のスピだかりであった。
「うーん、いい雰囲気っぽくない、あの二人?」セリアが眉間にシワを寄せる。
「ぐぬぬ。ハリオンったら色仕掛けなんて、卑怯なマネを!」
その横で覗いていたヒミカが拳を握りしめる。
「色仕掛けなの、あれ?けど大きな声出しちゃダメよ、ヒミカ。覗いてんのがバレるじゃない。」
「でもぉ、ユート様、やっぱりああいうお姉さんタイプが好みなんでしょうか〜?」ヘリオンが半泣きになる。
「てっきり妹みたいな女の子が好きなんだと思ってたのに!」
どこから仕入れた情報なのか、ネリーが地団駄を踏んだ。
「ただの巨乳好きっていう説もあるわよ。」セリアの言葉にヒミカが肩を落とす。
「私も、無印の時は大丈夫だったんだけど...。」何やら意味不明の愚痴をこぼすヒミカであった。
「そうか〜、ユート様って胸がおっきいほうがいいんだ。ふ〜ん、それならぁ、私にも...」
「「私にも、何?」」勝ち誇るシアーをネリーとヒミカがにらみつけた。
「うあ〜、生き返るなあ。」
その夜、雑用から開放された悠人が第二詰所の風呂につかって足を伸ばした。
「まあ、風呂も一番最後だけど、その方が落ち着いて入れるってもんだよな。」
第一詰所では、何故だか悠人が入浴するたびに不測の事態が発生していた。
その為、オナ、もとい、自己処理もままならぬ悠人であった。
「では、久し振りに...」周囲を見回し、股間に手を伸ばしかけた悠人の耳に、脱衣所からドタバタと足音が聴こえる。
「―――やれやれ、またこのパターンかよ。」悠人はがっくりとうなだれた。
「パパー、オルファが背中流したげるよぉ!」
すっぽんぽんのオルファが、かけ湯もせずに湯船に飛び込んだ。
「お前は第一詰所に居たんじゃなかったのか、オルファ。」すでに運命にあらがう気力の失せた悠人が弱々しく言った。
「だあってえ、パパがいないからつまんないんだもん。」オルファがぷうっとふくれる。
「あ、来てる来てる、オルファ、先に入ってるなんてずるーい!」
威勢良くやって来たのはこれもまた素っ裸のネリーであった。後方でシアーがもぞもぞ服を脱いでいる。
「お前達はさっき風呂終わっただろ!」
悠人の言うことなど聞いちゃいないといった風情の三人組の乱入で、一気に浴場が賑わった。
「ユート様ぁ、シアーがやさしく洗ったげるぅ。」
悠人の腕を抱え込んで、自信ありげに胸をこすりつけながらシアーが積極的に迫る。
「わわ、よせ、シアー!ホント、しまいに犯すぞ、お前ら。」
「ねえ、ユート様、ひらききっていないつぼみをたんのうしてみないー?」
「ネリー、またエスペリアに変な本借りてきたな、お前は。
こないだやっとこさダーク系から這いずり出して来たとこなんだから、勘弁してくれよ。」
光陰ならば歓喜のあまり気絶しかねないこの状況にもかかわらず、悠人は思わず顔をしかめた。
「昨日何でも言う事聞くっていったくせにー!!」
「くせに〜!」
ねー、と三人で頷きあうのを見ると、悠人は反論できなくなる。
「よし、じゃ3人ともそこに並んで座れ。新入りの俺が背中流してやるよ。」
「「「やったー!!」」」
「お疲れ様でした。」
風呂から上がり、広間に戻った悠人の前に、コトリとお茶が置かれた。
「お、さんきゅ。まだ起きてたのか、ナナルゥ。今日は参ったよ、まったく。」悠人は赤い妖精に向かって苦笑した。
「全然参ったって顔じゃないですね。お風呂も楽しそうだったし。」
「う...見てたのか。」思わず悠人は目をそらす。
「ふふ。これでも観察眼は鋭いですから。―――でも、みんなユート様が戻って来て、嬉しいんですよ。」
「そうかなあ。」ヒラだけどな、という言葉を飲み込む悠人だった。
「――そうだ、ナナルゥも先輩なんだからさ、なんかして欲しい事があったら言ってくれよ。」
ナナルゥは少し考えてから言った。
「それでは...歌を一曲歌ってもら...」
「そ、それだけはやめてくれ!ほかの事なら何でもするから!」悠人はあわててさえぎった。
「ふふふ。じゃあ、歌はまたの機会に。おやすみなさい、ユート様。」ナナルゥは広間を後にした。
「ああ、おやすみ。」悠人はどんな時でも文句一つ言わず、ずっと見守ってくれた少女を感謝の念で見送りながら思った。
―――初めて会った頃と全然雰囲気が違うよなあ。ひょっとして...あのキノコ、まだ効いてんのかな。
少し不安になって自分の顔を押さえる悠人であった。続く。
404 :
憂鬱の人:04/10/06 17:14:23 ID:Ef8PseIU
おお、何だかすっかり癒やし系だぞ、ナナルゥ!
と、作者もびっくりの第5部でした。
ヒマな方は最初の登場シーンと比べてみて下さい。
ダークになったり、お笑いになったりと忙しいサルヴェージですが、
一応これでもストーリーは崩していないつもりです。
さて、少しお休みしてから後半に続きます。
―――って、まだ前半だったのかよ!
>>憂鬱の人さん
ココまでが前半ですか……!
後半もしっかり楽しめそうです。
新しい境地を開いていくナナルゥGJ!!
406 :
風変わり:04/10/06 19:00:45 ID:3G8NsWOi
>>憂鬱の人様
| Λ
|ω・)
| )b ビシッ!!オツカレサマデス!!
|/_|
|'ノ
毎回毎回、楽しんで読ませて貰ってます〜
しかし、ナナルゥ……可愛くなっちゃって……(´Д⊂グスン
イービルから徐々に正規ルートへと……
でも、これで前半…後半もまだまだノリノリみたいですね
楽しみにしてるのでどんどん書いちゃって下さいな〜
407 :
保管庫の人:04/10/06 19:14:54 ID:fbd6lh+P
乙ですグッジョです!
これはイービルルートと偽装したハーレムルートへの複線ですか?
あぁそれにしても、ナナルゥかわいいよナナルゥ。
かわいくなっても忍者なのは変わらないんですね(むしろ望むところだ)
二詰の丁稚乙。年季はいつ明けますか?
しかしそのうちナナルゥの爆弾発言がありそうな気が……
ニムはなんか893もんに身をひさぐような子になるのですか ヽ(`Д´)ノ
410 :
憂鬱の人:04/10/07 18:27:58 ID:pjpob6Zg
ご感想有難うございますです。
イービルルート転じてイビラレルートに、という狙いだったんですが、
読み返すとこれっていつものユート君と違わないような...
あまりイビリ役に適任のスピもいないですねー。みんないいやつだなあ。
>>406 これは某SS職人様w
いえ決して続きを催促している訳ではうわなにをするやm\\jwks\d
では、後半までしばしのお別れを。
411 :
鎹−A:04/10/08 17:42:24 ID:smiq18Sg
「ただいま〜」
「おかえりなさいニム……あら?」
普段からあまり感情の表現が豊かではないニム。
そのせいか、周囲はニムがいつも不機嫌そうな印象を持っているようだ。
でも。
「……なに?お姉ちゃん……」
気まずそうに視線を逸らす。
そんな表情を見ていると、何故皆がその変化に気付かないのかをむしろ不思議に思う。
「ううん。そうだニム、久し振りに髪を梳くってあげる。」
「え……いいよ、そんなの、めんどくさい。」
「いいからいいから……ほら、座って。」
「あ……もう、しょうがないなぁ。」
ぶつぶつ言いつつも素直に座ってくれる。隠しているけど嬉しそうな目元。
仕草一つ一つにちゃんと自己主張があるニム……でも『めんどくさい』は直させなきゃね。
そりゃ少しきつい言い方で話す事もあるけれど。
それだってちゃんと相手を立てた上でのニムなりの配慮なのだ。
…………ちょっと素直じゃないかな、とは思うけど。
そんな伝わり難い不器用さがニムの美点とか思うのは身内贔屓なのだろうか?
綺麗に刈り揃えられたさらさらの髪をゆっくり梳かす。
しばらく続けているうちに気持ちが落ち着いたのだろう、ぼそぼそとニムが話し始めた。
「ねぇお姉ちゃん……実はね……今日ね……」
「……うん。どーしたの?ニム……。」
……………………
夜。すっかり安らいだニムの寝息を聞きながら、頭を撫ぜてあげる。
すうすうと気持ちよさそうに寝入っているニムを見つめているだけで安心する。
大切な、たった一人の妹。
かけがいの無い存在を自分が与えられている事に感謝しながら、私も目を閉じた。
412 :
鎹−B:04/10/08 17:44:37 ID:smiq18Sg
「ただいま〜」
「おかえり〜……あれ?」
いつも隠してるつもりでバレバレのお姉ちゃん。
判りすぎる表情に、周囲はそれがお姉ちゃんの無意識の計算だと考えているようだ。
でも。
「……ふええ〜……ニムぅ……」
泣きながら抱きついてくる。
そんな仕草を見ていると、何故皆がそんな疑いを持つのかをむしろ不思議に思う。
「わわ、どうしたの、お姉ちゃん……ほらほらよしよし……」
「ううっ…………ぐすっ…………」
「もう、ほら面当て外して、鼻かんで……しょうがないなぁ……」
「ちーん……うう、ごめんねぇ……」
まだぐつつきながらも素直に従ってくれる。隠そうともしない赤く腫れた目。
仕草一つ一つに素直な可愛さがある……妹が言うのもなんだけど。
そりゃ多少美味しいトコ取りみたいな時もあるけれど。
それだって『お姉ちゃん』である為に一歩控えた自己主張のただの結果なんだ。
…………覆面みたいな面当てはやり過ぎだ、とは思うけど。
そんなちょっと無理してる優しさがお姉ちゃんの美点だとか思うのは妹の贔屓目だろうか?
綺麗なさらさらの長い髪をゆっくり撫ぜる。
しばらく続けているうちに気持ちが落ち着いたのだろう、くすんくすんとお姉ちゃんが話し始めた。
「あのね……ニム、あのね……今日ね……」
「うんうん、どうしたの、お姉ちゃん。」
……………………
夜。すっかり泣き疲れて眠ってしまったお姉ちゃんに抱き枕にされている。
すうすうと気持ちよさそうに寝息を立てているお姉ちゃんを見ていると安心する。
大切な、たった一人のお姉ちゃん。
かけがえの無い存在を自分が与えられている事に感謝しながら、私も目を閉じた。
413 :
信頼の人:04/10/08 17:48:04 ID:smiq18Sg
『腹黒ファーレーン』の引き金を引いた一人っぽい?のも踏まえてw
いきなりですが、個人的にファーレーンが『腹黒い』とは全然考えていません。
むしろ容姿も含めてかなり好きなキャラです。
ですのでファーレーンの『腹黒ネタ』を拝見する度密かに心痛めていました(ぇ
とか言いながらたまに乗っていたのは好きな娘をいじめてみたいというアレですw
そこで今回はそれを払拭したいなぁと書いてみました。
今回はファーニムですが、ネリシアとかでも出来そうです、とかさりげなくネタ振ったり。
>>404 憂鬱の人さん
なんだかイイ感じに砕けたエスペリアの方が気になったり。
逆にナナルゥが以前のエスペリアみたいな地位に納まってますねw
これで前半ということは後半さぞやラブラブのキノコねたが……あれ?
414 :
憂の字:04/10/08 20:16:29 ID:MMyIfxrY
信頼さん。
これ題名なんて読むんですか?(←自分で調べろよ)
それはともかく。
もうすでに一編のポエムですね、コレ。
こんな短編でもニムファーの体温が伝わってくるようです。
いや、イヤらしい意味じゃなくて。
ネリシアものもそうなのですが、信頼さんのキャラに対する優しさがにじみ出ています。
「家出」もそうなんですが、私が書くとどうもキャラいびりが多くってorz
ちなみに私もファーレーンが腹黒だとは思ってません。
腹黒と言われてムキになって否定するファーレーンが好きなだけです。
ついついいじめたくなるんですよねえ、黒スピって。
それにしても、鋭い感想いつも有難うございます。
多分次回は信頼さんの予想通りの展開になると思います。ちょっと悔しい。
>>409 ひょっとしてニムのお父様ですか?
あそこは笑うトコですからニムの将来を心配されずともよろしいかと。
ただ「家出」の時と同じキャラではつまんないかなー、とか思ってヒネってみたのですがw
かすがいか……実は二人ともおなkaにユUトの古賀っ!? (チガ
しかしユートにけんもほろろにあしらわれ、思わず神剣を握りしめ、「どりゃ〜タマとったるぅっ!!ユートさまを殺して、
私も死んだらぁっ!!」ということで、BAD END。
>>414 いっき、とよみます
だいこんたべてすぴーどあっぷです
雑魚スピ達に戦闘服以外着せるとしたら
どんな服が似合うと思う?
ヘリオンにチャイナ服!!...って、そのまんまか。
それはそう……昼食時のことであった。
「え?一番……ですか?」
スピリット第一詰め所の玄関脇。そこにある食堂から少し間の抜けた声が小さく聞こえた。
覗いてみれば食卓にはアセリア、オルファ、エスペリア、ウルカ、そして悠人といういつものメンバーの姿。
テーブルの上には焼き立てなのか香ばしい香りを放つパンに、詰め所の裏でエスペリアが
栽培しているハーブのサラダ、そして食欲を誘う暖かなエヒグゥのハトゥラが並んでいる。
アセリア、ウルカは黙々と、オルファは騒々しく、エスペリアは料理の感想を聞きながら、
ユートはガツガツと、といった和気藹々とした第一詰め所特有の食事風景が展開されている―――はずだった。
「…………?」アセリアは千切ったパンの欠片を口に入れる一瞬前で止まり、
「一番……」ウルカはハトゥラをすくったスプーンを虚空で停止させながら困惑顔。
「パパ?お姉ちゃん?」さらにオルファはきょとん?とした顔で周囲を見回し(隙を見てラナハナを悠人の皿の中へ)、
「やだ……私ったら」エスペリアに至っては思わず素の声を出してしまったせいか口元に手を当てて赤面している。
多種多様な驚き方だが、彼女たちの問いかけるような視線はただ一人に……。
寝起きのせいかまだ寝癖が存分についた針金頭をガシガシと掻きながら
「何かおかしい事言ったかな……俺。」という感じの顔で、固まった少女達を見回す異邦人、
その名はエトランジェ『求め』の悠人であった。
「えーと……だからさ、部隊の中で一番強いのは誰かな……と」
時は戦乱、北方五国を制圧し、束の間の平和を手に入れたラキオス王国。
制圧した他の四国の内政整理が続いておりレスティーナやヨーティアなどは忙しい日々を
送っているが、スピリット隊の方は戦闘もなく休息と訓練を繰り返す日々が続いている。
アセリアとウルカは剣の訓練をし、オルファとエスペリアは姉妹のように過ごし、
ネリシア姉妹にヘリオンは悠人と遊び、ヒミカ、ハリオンにセリアは静かな場所でお茶会をし、ニムにファーレーンは日向ぼっこでお昼寝。
それぞれがそれぞれの楽しみ方で殺し合いから解放された、この一時の安らぎを満喫していた。
そう、スピリット隊の誰もがこのような時が長く続けばいいと思っていた。
けれど、それは所詮叶わぬ夢物語なのである。
大陸中央部から西部に掛けて広がる大国『マロリガン共和国』との和平の決裂。
と、同時に出されたマロリガン共和国からラキオス王国への宣戦布告。
北方五国を統一し、領土的には強大になったラキオス王国だが内部地盤がまだまだ安定していない。
そして、マロリガン側には二人のエトランジェの存在が確認された。今、戦争が開始されれば劣勢……いや、敗北は必定だった。
が、予想に反してマロリガン共和国は沈黙、兵を送り出すこともせず自らの領地内に留まっている。
まるでラキオスが軍備を整えるのを待っているかのように……。
が、対してラキオス王国もマロリガンの東部に広がる砂漠―――マナ消失地帯に阻まれ、兵を送ることが出来ないでいた。
その為、宣戦布告からしばらく戦争は膠着状態に陥っていた。
尤も、膠着状態と言ってもいつ侵略されるか侵略するかも分からない為、
スピリット隊の隊長である悠人は少し頭を悩ませていた。それは――――。
「いや、ほらさ、部隊編成時に考えなきゃいけないだろ?誰に誰のサポートをさせるかとか誰と誰に先陣を任せるとか……。」
ようするにマロリガンとの戦闘に関する部隊編成のことであった。
悠人にとっては全員が家族のようなもので誰一人として死んで欲しくはない。
その為にはより生存率を高める組み合わせでいかなければならないのであった。
「やっぱり、個々の戦力を把握してないと色々と難しいからさ」
「なるほど……」
カチャッとスプーンをお皿の上に戻し、ウルカが何度か頷いた。
が、すぐに眼を細め、難しい顔になると言葉を続けた。
「しかし、『誰が一番か』を決めるのは……」
「やっぱり分からないか?」
「そうですね……実際に競い合ったわけではないですから推論だけで決めるのは難しいかと」
「それに、スピリットにはそれぞれ得意とする分野があります。例えば手前などは速度、技ですが、
アセリア殿はパワーと技のキレ、エスペリア殿は守りと癒し、オルファ殿は神剣魔法とそれぞれ個々に能力が違いますから」
ブルースピリットは剣技、グリーンスピリットは守備、レッドスピリットは魔法、ブラックスピリットは速度が一般的な能力だ。
また、それぞれにもそれぞれの弱点があり、緑は赤の魔法に弱いし、赤は剣技に弱いし、かといって青や黒も苦手なものもある。
そしてこれに個々の能力まで加えると一概に誰が一番などと決めるのは難しくなってくるのである。
特に、ラキオス王国のスピリット隊は特殊だ。
そう、スピリットの定説を無視しまくった例外のオンパレードなのであった。
例えば有名なのが第二詰め所の姉御ことヒミカなどである。
レッドスピリットのくせに神剣魔法は全く使えず、剣技に関してはブルースピリットにも負けず劣らぬ威力。
ちょっとおかしいだろという声も某所でちらほらと………。
ネリシア姉妹はブルースピリットなのに剣技に関してはほとんど威力がなし、しかしこれはまだ幼いせいもある。
しかし、ヘリオンはブラックスピリットの命である速度を天然ドジで殺しているし、いざ戦闘になれば尻込み。
その他も強化魔法ばっかりで回復魔法を覚える気なしのグリーンスピリットやら諸々だ。
個性があるのはいいことだが編成を考える身にもなって欲しかった……。
「いっそ全員で手合わせをしてみれば分かると思いますが……」
「うーむむむむ………」
考えすぎで知恵熱でも出したのがガクリと机に突っ伏してしまう悠人。
その横に、コトリと湯気の立つコップが置かれた。
横目でちらりと見ればお盆を持って苦笑しているエスペリアの姿が眼に入る。
「ユート様、あまり考えすぎないで下さいね。お体を壊されては元も子もないですから」
「あー、ありがとう。エスペリア」
一言お礼、コップに入った液体を一口口に含む。
ふわっとしたハーブの香りが漂い、心を落ち着けてくれた。
ふと、気付けばいつの間にか昼食も終わりに近づいて来ているのかエスペリアなやウルカなどの皿は綺麗になっている。
アセリア、オルファに至ってはすでに食堂にすらいない。
自分の手元を見ればほとんど手付かずで残った料理(何故かラナハナ大量)。
慌てて料理を口に詰め込む悠人の姿を苦笑しながら見つめる妖精達であった。
天井にいる何者かに気付かずに――――。
「はぁ……」
小さな溜息がすっかり夕闇の帳が降りた大気の中に溶け込んだ。
二階角の部屋、開け放たれた窓から身を乗り出してうなだれているのは悠人である。
室内にあるエーテル機関によってほぼ無尽蔵に煌々と光を放つ事が出来るランプも、
今は光が落とされ、室内はゆったりとした暗闇に包まれていた。
物思いに耽るかのように外を見続ける悠人の貌を照らし出すのは青白い月光と、
ラキオス郊外に立てられたエーテル変化施設から上空に立ち上るPillar of Mana-マナの柱-だけであった。
『ふむ、何を考えているのかは知らないが………似合わないぞ、契約者よ』
真っ暗な部屋の隅、立てかけられた無骨な剣が青白い光を放っている。
それを横目でちらりと見、けれどすぐまた外に眼を向けた。
「なんだよ、バカ剣。お前には関係ないだろ」
『それもそうだが………契約者よ、一つ言いたいことがある』
「言いたいことがあるならはっきり言え」
『マナをよこせ』
「却下」
……即答だった。一分の隙もない完全完璧な拒絶だった。
『求め』から漏れる青白い光が弱弱しくなる。
そして―――。
『腹減った〜、お腹すいた〜、マナをくれ〜、マナをよこせ〜』
『求め』が壊れた。
『大体お前さ!俺はお前の求めに答えてるのに俺の求めにお前が答えないのってどういうこと?』
最近、平和続きで『求め』に対するマナ補充が完全に滞っていた。
その為、今までの戦争で溜めた分はあるものの二ヶ月近く絶食状態なのであった。
…………そりゃ、おかしくもなるね。
『俺ばっかり扱き使われてさ……毎回約束破られても力貸すって俺ぐらいしかいないよ?』
『求め』、すっかりブチ切れモード。
『あんたはもっと俺の重要さを知るべきだと思いますよ?例えば―――』
うざくなってきたので気合いで強制切断。
しばらくの間、ガタガタと部屋の隅で『求め』が怒ったように揺れていたが、やがて拗ねたような気配と共に大人しくなった。
「はぁ………」
どっと疲れが出てきたのか、もう一度深く溜息をついた。
気分が削がれたのか窓をパタリと閉じると、眠りにつくべくベッドの方へと足を進める。
が、その途中、テーブルの上に正方形の白い紙が置かれているのが眼に入った。
(確か、部屋に入ってきたときは何もなかったはずだけど……)
不思議に思いながらも紙を手に取る。そこには簡潔な一文がただ一行。
「 明朝、部屋まで来られたし fromレスティーナ 」
ちょっと微妙に果たし状チックな手紙に恐れおののきながら眠りにつく悠人であった。
――――そう、これが全ての始まりだった――――
「おかしい………」
照り付けるような日差し、遠くの景色は熱のためか歪んで見える。
マロリガン東部に広がる広大なマナ消失地帯、ダスカトロン大砂漠。
幾つもの砂丘が連なる砂漠のただなかにポツンと生首が転がっていた。
「何故こんなことに……」
生首が言葉を発し、自問自答する。
いや、正確には生首ではない。首から下が砂に埋められ、露出しているのが頭だけなのである。
ざんばらに切り揃えられた茶髪に年齢からは考えられない鋭く精悍な顔つき。
マロリガン側エトランジェ『因果』の光陰であった。
そして、その周りには赤青緑黒、色とりどりのスピリット達。
そのどれもが皆一様に、少々怯えたような表情で光陰を見下ろしている。
さらに、見下ろされている光陰の頭の上に押し付けられている少し厚底のブーツ。
それを辿っていけば片手に細身のレイピア、もう片方にナックルのような盾、
そしてマロリガンの装甲服を見につけた同じくマロリガンのエトランジェ『空虚』の今日子の姿が……。
ぐりぐりと今日子が頭を踏みにじる為に微妙に埋まっていく光陰。
「お、おい!ちょっと待て!話せば分かる!話せば!」
「何だ?」
ようやくピタリと冒涜的な行為がとまった。
「何故、こんなことになっているのか説明してく……いえ、シテクダサイ」
「スピリットに手を出した、以上」
即答だった。
「何故だ……今日子に今は自我はないはず、チャンスのはずなのに!」
ここで説明しよう!!人を殺していく罪に耐え切れず今日子の自我は心の奥底に沈んでしまい、
今は神剣の意志である『空虚』が今日子の身体を支配しているのである!
「何……をしている?」
虚空に向かって視線を投げかけ、なんとなく決まったような顔をしている光陰に『空虚』が問いかけた。
「いや、なんでもない……」
がくりと首を垂れる光陰であった。
そんな光陰にお構いなく『空虚』は言葉を続ける。
「とにかく、スピリットに手を出さないで頂こう。私のマナの供給源でも―――」
「なにぃぃぃ!?」
ガバッっといきなり頭をあげる光陰、その衝撃で足をのせていた『空虚』がバランスを崩す。
「キャッ!」という小さい悲鳴と共に尻餅をつく『空虚』。
「百合か!?百合なのか!今日子〜いつの間にそっちの世界に……」
「黙れ」
素早く身体を起こし、光陰の脳天に踵落としを叩き込む『空虚』。
より一層、埋まる頭。
「ふ……ふふふふ」けれど、光陰は不気味な笑い声をあげる。
「甘いぞ、この程度で俺が諦めると思ったか?ふっ、今だって……」
そういうと器用に頭を巡らせて周囲を見渡す光陰。
大抵スピリットの戦闘服というのはスリットが極端に入っていたり、ミニスカートだったり……。
そして、光陰の眼の位置は地面すれすれ。この二つから導きだされる結論は!
ようやく気付いたのか、「キャッ!」と周りのスピリット達がスカートの裾を抑え、一気に光陰と距離をあける。
………ピキリと今日子のこめかみに青筋が浮いた。
「こ〜〜〜お〜〜〜〜い〜〜〜〜〜ん〜〜〜!!!」
にへらと相貌を崩していた光陰も地獄からの呼び声に我に返る。
見れば今日子、もとい『空虚』の手の中には―――。
「何!そ、それはお笑い神剣第一位の『ハリセン』!今日子専用の武器が何故ここに!」
幾度となく今日子の殺人ハリセンを味わった光陰の額を冷や汗が流れる。
だが、現実世界のときと違い、微妙にハリセンが帯電しているように見えた。
「って、ちょっと待て!それを使えるということは今日子か?やっぱり、今日子なのか!」
「私は『空虚』ですけど、何か?」
にこりと笑った顔は間違いなく今日子だった、絶対に。
光陰への怒りだけで『空虚』を押しのけ浮上してきた今日子、恐るべし。
「お、落ち着け!なっ?『空虚』なら俺を叩く必要もないよな?」
「いやぁ〜、身体が勝手に動いちゃってさ……だから」
先程まで雲一つない青空が今はどんよりと薄暗く曇り、ところどころで紫電が漏れる。
いまや、今日子の相貌はエターナルも裸足で逃げ出す壮絶さだった。
「問答無用……ね♪」
雷光を纏ったハリセンが悲鳴をあげる光陰(by生首)に振り下ろされた。
―――その力は第二位の神剣さえも上回るという、つっこみ殺人技「ライトニング・ハリセン・スラスト」誕生の瞬間であった。
428 :
風変わり:04/10/09 13:47:58 ID:mCmWwLaK
| Λ
|ω・)< ………チャプター2!!
⊂) お久しぶりです、すっかり忘れ去られたBRです
|/_| 憂鬱の人様の方も少し一段落されたみたいなので投稿してみました〜
|'ノ ……まだ本編が始まりません、書いてるうちにどんどん長く(;´Д`)
次回からようやくBRになってくると思いますのでいましばらくお付き合いのほど……
大丈夫かな……私
支援しますかい?
430 :
429:04/10/09 13:53:33 ID:mhRLXVy2
終わってましたか。なんつーか申し訳ないorz
求めタン可愛いぞw
>『あんたはもっと俺の重要さを知るべきだと思いますよ?例えば―――』
宇宙ヤバイを思い出したけど、改変ネタ断念・・・。ムズ
433 :
憂の字:04/10/09 22:06:20 ID:YxyOi1GC
乙です、爆笑しました。
今日子ならホントに言いそう。
「私は『空虚』ですけど、何か?」
光陰も今日子を助けたかったら、小細工せずに
最初からこうすりゃ良かったんだよなあ。
>>428 風変わりさん
>「キャッ!」と周りのスピリット達がスカートの裾を抑え
「キャッ!」と
「キャッ!」と
…………可愛すぎるw という訳で変なトコでツボに入りましたw
クォーリンもいたのかなぁ。
戦闘力1番を決める戦いはリュケイレム辺りで行われるのでしょうか?
あ、でも森の中だと緑スピが一番地の利があるし不公平かも。
そんな事まで考え始めると……イカン、ネタが沢山有って楽しそう過ぎるw
ここは公正を期すためにロンドに遠征すべし。あそこなら属性修正は公平だし。
…で遠征の道中にも小ネタがちりばめられる、と。
乙であります。そしてGJ。
壊れた求めと悠人の皿にラナハナを移動させるオルファが可愛すぎですな。
ハトゥラってなに?ググッてもそれらしいのはないのだが。
「おいしいよ〜パパ。ハクゥテも食べるかなあ」
設定資料集によるとシチュー
そっちか。流石に気付かなかったよ。
戦闘前
「私達これから戦い合うのよね。」
「どうやらそのようね。」
「なのにこんな仲良く揃って戦場に向かっていいのかしら?」
「まあ、呉越同舟っていうし。」
「ああ、なるほど。」
「……なんでそんな諺を普通に使ってるんだ、お前ら……」
戦闘後
「……私達……いままで、戦い合ってたのよね。」
「ゼェゼェ……どうや、ら、その、よう、ね……」
「なのに、こ、こんなに、仲良く……ぐふっ、帰っても……」
「……ま、まぁ、昨日の敵は、きょ、今日の友って、ハァハァ、言うし……」
「な、なるほど……ガクリ。」
「お、おい、しっかりしろ!今のは諺じゃないぞっ!」
ノーサイド
442 :
風変わり:04/10/10 14:14:36 ID:iT+/ZaMe
はっ!……たくさんのご感想有り難う御座います
どんどん暴走していっている風変わりです、コンニチワ
>>429 あ、支援有り難う御座います
支援してくださる前に終わっちゃいましたけど、感謝です〜
>>433 憂鬱の人様……略してユン様。
少し一段落されたみたいなんで投稿しちゃいましたけど大丈夫でしたかね?
>>434 実を言うと場所はまだ決まってなかったりしちゃったり……
たぶん近場ということでリュケイレムやらリクディウスになりそうですが
ロンドもありかもしれま……せん(;´Д`)
でも、私の貧弱チックな頭ではさほど妄想力が働かなさそうデスガ
でわ、次回の『The Spirit BR』 chapter.3でお会いシマショウ
ふははははは………痛ッ
前スレDAT落ちの
悠人がセリアルートに入ってからそれなりに過ごしたある日。
沈みゆく夕日を眺めて少し感傷的な気分に浸っていた悠人の空気をぶち壊したのは
いきなりやってきた光陰が放った一言だった。
「なぁ悠人よ、もうすぐ夏も終わりだし、どうだ?夏の最後の思い出に肝試しなんてのは?」
「……ラキオスは常夏だし暦の上でも今はもう秋だ。なんだそのイキナリな提案は。」
「そうか悠人は反対なのか残念だな。皆も残念がるだろう。」
「お前の場合下心丸出し過ぎなんだ……ちょっと待て、なんだ“皆”って。!お前まさかっ!」
「ああその通り。既に第二詰め所の面々には快く了解して頂いた。お前で最後だ。」
「……なんでお前はいつもいつもいつもそうやって外堀から俺を埋めていくんだ……」
「悠人に最初に相談するといつも反対されるからな。全く消極的な奴で困っちゃうぜ。」
腰に腕をあて、ふははははっっと高らかに笑う光陰。何故か得意げに空を仰いでいる。
悠人はこめかみに手を当てて頭痛を抑えながら、なんとか打開策を考えていた。
「あのなぁ……。そうだ、今日子はどうした?そんな提案、今日子が飲むはずが……」
「今日子は今朝から帝国方面へ視察に行った。そんな事も忘れるなんて、隊長として迂闊だな、悠人。」
「ぐっ…………」
「さぁ、もう我々を阻むものは何も無い。逝こうではないか、愛とスリルの涅槃へと。」
「待てっ!いつの間にか我々とか言うな!なんだその怪しげな涅槃はっ!」
「うるさい奴だなぁ。一体何が不満なんだ?こんなに楽しそうなイベントなのに。」
「お 前 だ お 前 っ ! お前のその邪悪そうな笑みのどこに安心できるというんだっ!」
「はぁ……しょうがないなぁ、悠人は欠席っと……。じゃあ俺はネリーちゃんとでも楽しんでくるかな。」
「……ちょっと待て光陰。俺が不参加なら中止だろ?おい。」
「ふっ……。自意識過剰だな、悠人。皆楽しみにしてるんだ、中止になんか出来るわけないだろ。」
「そんなバカな……ネリーやシアーはともかくセリア辺りがそんなバレバレなイベントに乗る訳……」
「ああ、『夜間訓練』と銘打っているからな。俺様にかかればちょろいもんよ。」
「そこまで計算づくで……。まったくお前ってやつは……」
「そんな訳でじゃあな。一人寂しく月見でもしててくれ。」
「………………待て。俺も……行く。」
「わかった。わかったから首を絞めるのは止めてくれ悠人。」
いっそ『求め』で斬り殺してやろうかという衝動をぐっと抑えつつ、悠人は光陰に従った。屈辱だった。
「コーインさまの言うところによるとつまりハイペリアでの夜間訓練『キモダメシ』というのは……」
「『男女ペアで一組』『脅かし役が必要』『暗く静かな処』『目的物に辿り着く』……こんなトコかしらね。」
第二詰め所の居間では、全員が頭を突き合わせて肝試しの概要について語り合っていた。
「つまり実際に訓練出来るのはユートさまとコーインさま、それにペアを組む二人だけってことになるわね。」
ナナルゥとヒミカにセリアが口を挟む。それに反応して真っ先に手を上げたのはヘリオンだった。
流石はスピードを身上としているだけのことはある。
「ハイハイッ!わ、わたし、ユートさまと、その、組みたいですっ!……えと、夜、苦手なので……」
「え〜っ!ブラックスピリットなのに夜苦手なの〜?変なの〜。」
「あぅっ…………」
「ネリーもネリーもっ!夜怖いからユートさまと組みたいっ!」
シアーの突っ込みにあっけなく沈没するヘリオン。ネリーの参戦で話が拗れ始めた。
ファーレーンが覆面越しにごにょごにょとなにか呟いている。
「わ、私も黒スピリットですし……出来ればユートさまと……」
「お姉ちゃん、それに皆も、なんでユートに拘るの?その理由ならコーインでもいいんじゃない?」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
ニムントールの一言で一瞬にして場に重たい空気が流れ出す。会議は一時中断した。
「……と、とにかく、役割は公平にくじで決めましょう。みんなそれでいいわね?」
気を取り直したセリアが場を仕切りなおす。全員が真剣な顔でうんうんと頷いた。
「それじゃっと……あみだくじでいい?作ってくるわね。」
「……ちょっと待ってください、セリア。それでは不正の恐れがあります。」
「そうですね〜。セリアさんが自分の都合の良い様に改竄する恐れは十分あります〜」
「なっっ!!なんで私がそんなことっ!冗談じゃないわよっ!私は悠人となんか……」
「セリア、誰もアンタがユートさまと組むように……なんて言ってないわよ?」
「うぁ…………」
ナナルゥとハリオンの突っ込みに逆上したセリアはヒミカの誘導尋問にあっけなく引っかかっていた。
再び場に重たい沈黙が広がる。
「あ、じゃあさじゃあさ、くじを作る人をくじで決めるっていうのは?」
「ネリーちゃん、それ、きりが無いんじゃないかな……?」
「そうですよぅ……。あ、そうだ、くじを作った人が最後に引くというのはどうでしょう?」
その後も紆余曲折があったものの、年少組の提案が結局は通った。
完成された「あみだくじ」を取り囲む一同の間に言いようの無い緊張感が漂う。
自らが作成したくじを前に、セリアは冷静に思っていた。
(みんな戦いでもこの真剣さがあればいいのに…………)
くじ、とは言っても「当たり」は二つ……いや、彼女達的にはたった一つである。
それ以外は「おどかし役」しか無い訳で、必然的にその確率は7/9。
つまり大体ははずれである。
そんな訳で次々と引かれていくくじはみな一様に「はずれ」であった。
落胆の声の中残った二つの選択肢。それを前にして、約二名が色々な汗を掻いていた。
「あ〜あいいな〜。セリアとヒミカが主役かぁ〜。」
「ネリーちゃん、どうやって脅かそうか〜。」
「あ、そうだね!えへへ、これはこれで楽しみ〜。」
「あ、わたし、こんなのがいいと思うんですけど……」
「う〜んここはもう少しひねることが出来そうです〜」
「……こうすればもっと効果的かと。」
「ナナルゥ、鋭いわね……じゃあ、こんなのはどう?」
「お姉ちゃん、楽しそう……」
二人を蚊帳の外にして盛り上がるその他七名。
その楽しそうな雰囲気を横目にしてヒミカは選択を迫られていた。
(どっち……どっちがユートさまなの……?)
間違わなければユートさまとの逢瀬?が叶う。こんなチャンスはまたとない。
逃すわけにはいかなかった。だがしかし。一歩間違えれば…………
自分が対象外だという自信はある。あるがしかし、あのコーインさまである。
それなりの警戒だけは怠る訳にいかないだろう。そんな訓練はイヤ過ぎる。
ちらっとセリアの顔色を窺うと同じ事を考えていたのか無表情を装いながらも一筋の汗が流れていた。
確率は1/2。ごくり、と息を飲む音がやけに大きく感じた。
「…………こっちっ!!」
気合と共にヒミカは右を指差した。
戦いの時、敵をやや左に置いて戦うのが彼女のスタイルだったのだ。
そんなよくわからない理由に縋りながら、ヒミカはあみだくじの先を指で追っていく。
いつの間にか再び集まった面々が緊張の面持ちで見つめていた。
...支援します。(ボソッ)
支援?
「という訳で、ユートさまはセリアと組んで頂きます。」
リュケイレムの森。
その入り口の集合場所に訪れた悠人と光陰にナナルゥが冷静に説明していた。
「ああ、よろしくな、セリア。……ところで俺達はどこに向かえばいいんだ?」
「は、はい、こちらこそ。えっと真っ直ぐ行った所にマナ結晶があって、それを持ってくれば任務完了です。」
「マナ結晶?よくそんなモノ見つかったなぁ。ってセリア、なんでこっちを見て話さない?」
「なんでもないっ……ありません。それより……」
落ちつかない様子のセリアが何か言いかけたとき、光陰の大きな声がそれを遮った。
「ところで、俺のパートナーは?」
「……………………」
「……………………」
「……………………」
一言で皆黙りこくってしまった。全員がそれぞれをちらちらと覗き見ている。
いわゆる“あんたが言いなさいよ”的な状態だった。
暫くの牽制戦の後、またもやナナルゥが重たい口を開く。
「……今回は初めてでもあり、コーインさまには『脅かし役』の指南をして頂きたい、と……」
「…………へ?」
面々が一斉にうんうんと頷く。予想しなかった答えに光陰はしばらくあっけにとられていた。
「おいおいそりゃないぜ、それじゃなんの為に……」
「訓練の為だろ光陰、往生際が悪いぜ。」
「悠人お前……っておわわっ!」
「いいからいいから、コーイン、早く行こー!」
「行こー!」
「わっ引っ張るな……まあいいか、これはこれで……」
「それではユートさま、また後で。」
「じゃあねユート、変なコトしちゃだめだよ。」
何だかよく判らないがとっさに話を合わせると、光陰はあっけなくネリーとシアーに連れ去られた。
それにつられてぞろぞろと森の中に消えていく脅かし役達。
…………ニムの一言が気にはなったが。
後には悠人とセリアがぽつんと二人残された。少し気まずい空気が流れる。
ごまかそうと悠人はやや明るすぎる口調で言った。
「えっと……それじゃ、行こうかセリア。」
「……ええ。」
こうしてやっと肝試しが始まった。
ホーホー
梟の様な泣き声が森のどこかから聞こえる。
いやファンタズマゴリアに梟がいる訳は無いのだが、どこでも夜の森はこんなもんなんだな、とか悠人は思っていた。
「なぁ、あれはなんていう鳥なんだ?」
隣のセリアに聞いてみる。答えが無いので横を見てみるといきなりセリアは居なかった。
もしやもうはぐれた?慌てて後ろを振り返ると……いた。
やや離れた後方、戦いでいうところの一息の間合い…………って。
「なんでそんなに離れてるんだ、セリア?」
当然の疑問を口にする。すると何故か怒った様な口調でセリアが反論した。
「なんでもないっ!それ以上近づかないで!それ以上離れないで!!」
「へ?なに言ってるのかわかんないぞ、セリア。……おいってば。なに興奮してんだよ?」
どうしていいか判らず少し近づく。すると真っ赤になったセリアがぶんぶん頭を振りながら同じだけ後退した。
「だからダメだってば!いい?悠人はその位置を保つ事!判った?!」
「…………お、おう…………」
「……………………」
「……………………」
ホーホー
なんだか訓練以外の緊張感が漂っている。
悠人は後ろから付いて来る足音だけに集中しながらひたすら前を見て歩いていた。
黙っているのも気まずいので話題を振ってみる。
「そういえば、なんで光陰は脅かし役なんだ?アイツ楽しみにしてたのに少し可哀想だったぞ?」
心にも思ってはいなかったが。
「だ、だって訓練だから……。脅かし役も、た、大切でしょ?」
「?いや、別にそれなら俺が光陰と交代してやっても別に良かったけどな…………イテッ!」
一瞬にして背後に迫ったセリアに腕をつねられた。驚いて振り向いた時にはもうすでに元の間合いに戻っている。
「…………なんだよ?」
「…………ふんっ!」
訳がわからない。そっぽを向いて膨れっ面をしているセリアを見て悠人もだんだん腹が立ってきた。
「大体セリアもこれがどんなイベントかもう判ってるんだろ?なんで参加なんかしたんだ?」
「な、なんのことよ。これは訓練よ。そうに決まってるじゃない。」
「ならなんで目を逸らす。こっち向けよ、セリア。」
「なによしつこいわね……。こっちこないでっていってるでしょ、もうっ!」
がさっ!
だんだん痴話喧嘩みたいになっていた悠人とセリアの会話は謎の物音に遮られた。
……いや、謎もくそも無いのではあるが。
そのとたん。
「キャーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
芸も何もなくただ草むらを揺らしただけの哀れなネリーとシアーは
突然の絶叫に身体中が痙攣を起こしてその場に倒れた。
後日談になるが、そのときのショックで二人はここ数時間の記憶が途切れたという。
事態が掴めず咄嗟に耳を庇った悠人に弾丸の様な勢いで何かが飛び込んだ。
「ぐふっ!」
「キャーキャーキャーイヤー!!」
腹部を襲った激しい痛みとホンの少しだけ漂ういい匂いに気が遠くなりかけた悠人は
頭を振って必死に自分を取り戻そうとした。
(ええと…………)
見下ろすと、見慣れたポニーテールが激しく揺れている。
そこで初めてしがみ付いているソレがセリアであることに気が付いた。
状況を理解した悠人はもしかして、と一応聞いてみることに。
「あー……ひょっとしてセリア、こういうの……苦手?」
横揺れのポニーテールが縦揺れに変化した。割と冷静な反応である。
「バカだなぁ……じゃあなおさらなんで参加なんかしたんだよ?」
ゆっくりと頭を撫ぜて落ち着かせながら訊ねる。
するとまだ目尻に涙を溜めながら、セリアが上目遣いでしゃくり上げた。
(う…………)
その仕草は反則だ。
「だって……私が来なかったら他の娘が悠人と……」
消え入るような声で呟いたかと思うと真っ赤になって胸に顔を埋めてくる。
だから反則だって。
「そんなのヤだから……だから……」
うわ、もう辛抱たまらん。
理性の焼ききれた悠人が思わずセリアの背に手を回しかけた時。
第二の刺客が目の前を横切った。
…………いや、刺客もなにも無いのではあるが。
第二の刺客は悠人の目の前数十センチの所で漂っていた。
ふわふわふわふわふわふわ。
「……………………」
どう見てもファイヤーボールと思われるそれは、どうやら火の玉を目指しているらしい。
しかし超スローで打ち出された光球はただ放物線を描いてゆっくり落ちていくだけだった。
ぽて。
「………………おい」
「…………失敗」
草むらから出てきたナナルゥは別段残念そうでもなくつまらなそうに地面でのたくっている球を見つめている。
こいつらホントに怖がらせるつもりがあるのか…………?
こんな子供だましに騙される奴がどこに、と言いかけて悠人は腕の中の異変に気付いた。
一心に地面の「火の玉」を見続けているセリア。その表情がみるみる変化してゆく。
「お、おい冗談だろ?ちょっと待て、落ち着けセリア……」
「イヤァァァァァァァァ!!!」
再び森中を絶叫が包んだその瞬間、悠人は見た。セリアの背中に輝く純白のハイロゥを。
止める暇もなく『熱病』を振るったセリアはすでに周りが見えていなかった。
ヘブンズスォードの爆風に巻き込まれながら遠くなっていく意識の中、
悠人はナナルゥが漫画みたいに森の彼方に飛ばされていくのを見送っていた。
後日談ではあるが、その後ナナルゥはこの時のショックで暫く神剣魔法が使えなくなったという。
どぉぉぉぉぉんんん…………
遠くに響く炸裂音としばらくして舞い上がったきのこ雲を確認しながら光陰は愉快そうに呟いた。
「おお〜、あっちはあっちでどうやら盛り上がってるようだなぁ〜♪」
「……あの〜コーインさま?わたしたちこんなことしてて……はっ……いいんでしょうか……?」
「ああ、いいのいいの。肝試しっていったらこれが定番なんだから。」
「あ……で、でも…………ぅんっ!」
ざっざっざっ…………
「ヘリオンタンったらそんな可愛い声出して……ふんっ!」
「あっいたっ……痛いです、コーインさま……」
「あ、ゴメンゴメン……痛いのは、ココかな?」
「あんっ、ちょっとくすぐったいですぅ……」
ざっざっざっ…………
「あ……でも、痛いけど、ちょっと楽しく……ぅんっ……なってきました……はぁっ!」
「そうだろそうだろ……ココをこうするともっと……それっ!」
「ああっ!そんなに激しくしたら……だめですよぅ、コーインさまぁ……」
「いいではないかいいではないか……ハァハァ……」
「あん、だめぇ……だめですぅ……」
「いいかげんにしなさいっ!ただでさえ狭いのに鬱陶しいっ!」
げしげしげしげしっ
「いたたたっ!こらっやめろヒミカ!踵は痛い、痛いって!」
「ヘリオンもちょっと豆が潰れただけで泣き言言わないの、訓練なんだからっ!」
「ひ〜ん!ごめんなさい〜!」
「豆が……ヘリオンタンの豆が潰れる…………ハァハァ…………」
「…………ふふっ…………辞世の句は済んだ様ですね、コーインさま……」
「うぉっ!ヒミカそれ、スコップ!そんなもんで殴られたら俺様のナイスな頭脳が……ごっ!」
「まったく……早く掘らないとユートさま達が来ちゃうでしょうが……」
「あの〜、コーインさま、白目剥いちゃってますけど…………」
光陰たちは落とし穴の中でそれなりに楽しんでいた。
一方その頃。
一部生死の境を彷徨うというトラブルはあったものの、悠人とセリアは順調に進んでいた。
ただし出発当初とは違い、セリアが悠人の服の裾を常に掴むようにはなっていたが。
「なぁセリア……」
「な、なによ……」
「怖いんなら最初からこうしてれば良かったんじゃないか?」
「………………」
「………………?」
また黙ってしまったセリアの顔を覗き込む。
すると自分が見られていることに気付いたセリアは視線を逸らしつつ呟いた。
「だって、恥ずかしいじゃない……」
「…………え?」
「その…………みんなに見られるのが…………」
なんというか。
色々な意味でツボに嵌った。
つまり悠人が他の娘と一緒なのは嫌で。怖いけど頑張って。でもやっぱり恥ずかしくて。
「そうか、それであの距離なのか…………ぷっ!」
「な、何よ、悪い?!もう何笑ってるのよ〜っ!」
「ははっ、ゴメンゴメン。あまりにもセリアが可愛い事ばっかり言うからさ。」
「っ!なななななな……そ、そんな事言ってごまかそうとしても…………」
「いや、それにしても凄い強運なんだな、セリアって。倍率1/9だろ?」
「あ…………それは実は…………あら?悠人、なにあれ?」
「…………はぁ。どっからこんなモンを……」
何か言いかけたセリアは何故か道のど真ん中に出現した「井戸」を指差していた。
既に展開が読めてしまった悠人が一応セリアに釘を刺しておく。
「いいかセリア、今からあそこから変な格好した……そうだな、ファーレーン辺りが出てくるけど驚くなよ。」
「え?う、うん。」
井戸の中で悠人の声を聞いてしまった第三の刺客ことファーレーンは出るタイミングを完全に逸していた。
「ど、どうしようニム、ユートさま気付いてるみたい。」
「……お姉ちゃん、本当にコレが気付かれないと思ってたの?」
仕方なく姉に付き合わされたニムントールが溜息をつく。
あからさまに地面にこんなものがあれば誰だって警戒するだろう。
ハイペリアからの知識から採用したものだから、ユートだったらなおさらだ。
そんなことにも気付かないこの姉は一体…………いや、そんなとこもいいかも。
姉バカ全開のニムントールはしかしせっかく仕掛けたんだからと姉を説得してみる。
「うう〜、じゃ、いくわね……」
「はい、行ってらっしゃい、お姉ちゃん。」
少しの躊躇の後、ファーレーンは名残惜しそうに浮上し始める。
見送るニムントールはしかし確実に凹んで戻ってくるであろう姉をどうやって慰めようかと考えていた。
美しい姉妹愛である。
そんなぷちドラマが繰り広げられているとはつゆ知らず、
井戸に近づいた悠人は出現してきた人物に速攻で突っ込んでいた。
「うらめし〜…………」
「ようファーレーン、頭巾もなかなか似合うじゃないか。」
「はぅっ!」
その瞬間ファーレーンは精神的なショックよりも物理的な衝撃で井戸の中に叩き落されていた。
まるで切れ味の無い『熱病』で脇を横殴りにされたのである。
「イヤーーーッ!お○わさんーーー!!」
ドップラー効果を伴うセリアの悲鳴を聞きながら陥ちていくファーレーン。
それを呆然と見送りながら悠人は密かに突っ込んでいた。
(セリア……どこでその名前を……)
自慢のスピードも技も生かす暇を与えられず、何のために出てきたのか判らないファーレーンは
地面でニムントールと激突していた。
「お帰りなさいお姉ちゃん……でももうニム、何も見えないよ……ガクリ」
「ニム、ニム……お姉ちゃん、守ってあげられなくて……ごめんねぇ……ガクリ」
後日談になるが、この時のショックで(ry
井戸の中でパクリと思われる姉妹愛ぷちドラマPart.2が展開されている頃、
その頭上ではセリアがなにやらぶつぶつ唱えながらうずくまっていた。
「お皿が一枚お皿が二枚お皿が三枚…………」
もはやどこから突っ込んだら良いものやら判らない悠人が呆然としている間も呪文は続く。
まさかこんなに怖がりだとは思わなかった。あんなに念を押しておいたのに。
「お皿が八枚お皿が九枚…………ああ、一枚足りない……」
セリフがよりマニアックになった所ではっと我に返った悠人が
これ以上は色々危険だと優しくセリアの肩を叩く。
しかし慌てて咄嗟に思いついたセリフは
「セリア………セリアはセリアのままで、ここに居てもいいんだ…………」
全然慰めにもなっていなかった。っていうか、パクリだった。
ホーホー
「お月様がきれいですねぇ〜」
そのころハリオンは月見をしていた。時期的にかなりまともな行為だった。
姉さん、支援です。
ホーホー
「なかなか来ませんねぇ〜」
「そうだなぁ…………そんなことより……ヘリオンタン……ハァハァ……」
「わわっ!ど〜したんですかコーインさまっ!そんなに顔を近づけたら……」
「そーよ光陰、危ないじゃないの、そんなに顔を近づけたら。」
「いやいや、これもハイペリアのコミュニケーションなんだよ。」
「え、でも、あの…………」
「ふーん初めて聞いたわアタシ。アンタ意外と詳しいのね、ハイペリアに。」
「そうそう、向こうではこうされたら女の娘はそっと目を閉じるもんなんだよ…………え?」
「なるほどなるほど。そ・れ・で?」
「あ、あははは……あ、ヒミカさん、待ってくださいよ〜!いつの間にぃ〜!」
たたたたた……………………ホーホー…………
「……………………」「……………………」
「よ、よう、今日子。随分早かったなぁ……は、はは……」
「ええ、おかげさまでね。で、アンタはこんなとこで何してる訳?敵と思われて殺されても仕方ないわよ。」
「……………………」「……………………」
…………パチッパリパリパリ…………ホ、ホーホー…………
「な、なぁ。気のせいか、wave効果音に何かノイズが走ってないか?それになんだか鳥肌が……」
「そんな人外の説明が最後に言いたい事だったのかしら、侵入者。覚悟はいい?」
「待てっ!落ち着け、侵入者じゃない、光陰だ光陰、おまえだってさっきそう言って…………」
「さあ忘れたわね。うちのスピリットに手を出そうとした大馬鹿者ならこれから抹消するけど。」
「わぁ!笑みを浮かべながら『空虚』を振りかざすなっ!いや振りかざさないで下さい!」
「そろそろ念仏を唱えたほうがいいわよ。得意なんでしょ、自分を送ってやんなさいよっっっ!!!」
「お前、発言が矛盾しすぎっ!うわわわごめんなさぃぃぃぃ………………」
その日局地的に発生した史上最大の紫雷は帝国首都でも観測されたという。南無。
「ありがとう……悠人……おめでとう……おめでとう…………」
まだ続けるか、と思いながらもいまだ混乱しているセリアに突っ込むのを控えつつ、悠人達は進んだ。
しばらくすると落ち着いたのか、ようやくこっちの世界に戻ってきたセリアがぽつり、と話し始める。
しかし、なんとなく展開が端折られている気がするのはどうしてだろう。
「さっきの話だけどね……実は、その、くじに細工、したの……」
「へ?ああ…………って、細工?セリアが?」
すっかり忘れていたがそんな話もしていたっけ。
それにしてもセリアが不正をねぇ……
「あ、でも意識してやった訳じゃ無いわよ。……ただ、コーインさまの、その、名前を書き忘れて……」
「へ?またどうして?」
「ムッ。悠人はわたしが他の男の人と一緒に歩いてもいい、の?」
「うっ…………それはその…………でも訓練だろ?そんなのしょうがないじゃ……」
「わたしはイヤ。悠人は?」
「ううっ…………」
じーーーーーーーーー
二人きりの時、たまにセリアはこうなる。
普段は見せられない素直な感情表現に悠人はめっぽう弱かった。惚れた弱みである。
しかしこんなセリアを苛めるのもまた楽しいわけで。
「セリアはどうなんだよ。俺が他の娘と一緒に歩く可能性とか考えなかったのか?」
「うっ…………それはその…………でも悠人モテるから……そんなのしょうがないじゃ……」
「俺は嫌だ…………って、え?」
同じ口調で返してからかってやろうとした発言は完全にカウンターとなって悠人に返ってきた。
うろたえた悠人に満足したのかくすっと笑ってセリアは腕を組んでくる。
「もうっ、自覚無いんだから、この朴念仁さんは♪ さ、行きましょっ!」
「お、おぅ……」
セリアに引きずられながら、悠人はかなわないな、と顔をニヤつかせていた。
ホーホー
こうして一組のバカップルがようやくマナ結晶に辿り着いた時、あたりにはまるで人の気配がなかった。
森の中だから当然だが最後に何か仕掛けてくるだろうと身構えていた悠人はすっかり拍子抜けした。
一方何が嬉しいのかセリアはあれ以来妙に機嫌がいい。
もう夜の森を怖がっている様子も無かった。
「あっ、あったわ悠人、これがマナ結晶ね。どうするの?」
「ああ、やっぱり開放するのがいいと思う。みんなのマインドも上がるし。」
「そうね、持ち帰るとマナ蓄積量が増えるけど……うん、わたしもその方がいいと思うわ。」
「じゃあ開放するか……セリア、結晶に手を当てて……そう、じゃ、唱えるぞ……せーのっ!」
「バルスッ!」
「バルスッ!」
二人の掛け声と共に輝きだしたマナ結晶はゆっくりと空に昇っていく。
やがて雲の向こうに消えていったその輝きを、悠人とセリアは手を繋いだままいつまでも見送っていた。
……っていうか、最後までパクリだった。
インチキな感動のラストを演出している二人の頭上から突然声が聞こえる。
「よくやったエトランジェ・ユート。これで世界は救われるであろ〜う。」
「…………その間抜けな語尾はヨーティアだな。いつからいた?」
「失礼な奴だな、この天才科学者を差し置いてこんな面白そうなイベントをしてるくせに。」
「ヨ、ヨーティアさま?いつから…………」
「ああセリア、気付かなかったのか?ほら、ずっとホーホー言ってただろうに。」
「ア ン タ だ っ た の か よ っ ! ! ! !」
死屍累々のラキオスが誇るスピリット部隊が全員リュケイレムの森から救出されたのは次の日の昼過ぎだったという。
その後一時的にラキオスの戦力が落ちたというのは後世の歴史学者達の一致した見解である。
―――ラキオス歴(ry
……どこからパチモンになったのかはよく憶えてません。多分煙草が切れたあたりからでしょうw
以前『信頼』を投稿する際に削っていた部分を季節ネタとして仕上げようとしてずるずる先延ばしになっていたモノです。
この連休中台風でどこにも行けなかった鬱憤を晴らそうと少しやり過ぎました、スミマセンスミマセンorz
途中で引いてしまった方も最後まで読んでいただいた方も有難うございました。
誤字脱字某マジック等ご指摘があれば幸いです。
472 :
信頼の人:04/10/10 17:56:32 ID:tQc51AAy
あ、途中支援していただいた皆様、有難うございました。
お疲れ。
さすがヨーティア、真の天才はなんでもこなすねw
ハリオンがただのお月見お姉さんで終わってるw
「おだんごおいしいですね〜」
俺も御一緒したいなぁ。
日曜洋画劇場を見てスピの戦闘てこんなんかなぁと思ったのは俺だけですか、そうですか。
話自体は、ハァ?( ゚д゚) といった感想だったがね。
しかし、マナ結晶でマインドが上がるのは、解放しなかった場合な気が…。
>>471 こんばんは、高島○伸です。(←違うって)
かなり溜まってますね、信頼さんw。今回は○ヴァっすか。
「セリアはっ...セリアのままでいたいのにぃっ!」
いかん、まだイービル後遺症が。
ハリオン姉さん、圏外なのかあ...フッ...(←寂しい笑い)
スピ達に囲まれ、もみくちゃな悠人を助けに、何故か逆さまになりながらセリアが飛来。
互いに両手を広げ、しっかとかき抱き合い、悠人をかっさらっていくセリア。
「悠人ーーーーっっっ!!」
見知らぬ洞窟に不時着する二人。
「龍の巣……? これが……」
「マナの祈りの歌にあるの。マナサイクルから離れては生きられないのよ」
「ふふふ、スピが雑魚のようだ」
「雑魚スピは滅びぬ、何度でも萌え返るさ」
「悠人と二人きりで三分間その股間の大砲で勝負するかね」
「時間よ、答えを聞きましょう」
あの、セリアさん何を見たのですか ((( ;゚Д゚)))
というか、久々に見返すとラピュタ内部の石のデザインってまんまパクって……
>悠人と二人きりで三分間その股間の大砲で勝負するかね
ヘタレなので3分も耐えれないと思う
481 :
信頼の人:04/10/11 22:41:08 ID:XmxDPJFo
皆さん、レス有難うございます。
正直今までで一番反応が怖かったので、嬉しかったです。
>>474さん
ヨーティアについてはまだ補完し切れていないところが多いので、
これから妄想を膨らませてみようかと思っています。
>>475さん
ハリオンって意外と人気があるんですよね。
実はもうすぐ脱稿出来そうな長編でメインなのでネタにし辛いというか
書きにくくてあんな形になってしまったというかw
>>477さん
うぁぁ、今確認しました。ご指摘有難うございます。
ちょっと長いの書くとどっかにアラがあるの、どうにかしないと…………orz
>>478 憂鬱の人さん
支援ありがとうございました。
パクリの方はやり過ぎてしまったのでもう止めようと反省してますorz
温かい反応に感謝です。あと、ハリオン姉さんは「今回は」圏外です。
一応セリアルートでもありますしw
>>479さん
「龍の巣」爆笑しました。上手い!の一言ですね。でもセリアと悠人、性別逆なような……w
あとセリアさん、なんだか判らないけど詳しすぎますw
ラピュ○の飛行石(だったかな?)のデザインと同じなのは、
結晶体としてあれはあれでしょうがないかと。むしろ剣が刺さっているのは斬新ですし。
482 :
479:04/10/12 00:27:23 ID:RhKC6Ogv
ああ、いや石ってのは、あのブロックのことです。模様の付いた。
時の迷宮とか、再生の間を構成してるやつ。あれとラピュタ内部のブロックは似てるなと。
ジブリは「魔女の宅急便」からあとは全然見てないなぁ。
オ「セリアが・・・死んじゃった・・・」
エ「身を持ってントゥシトラの怒りを鎮めたのよ・・・
あの子はファンタズマゴリアを守ったの・・・」
ントゥシトラ達(画面いっぱい)の触手(触毛?)がセリアを持ち上げて
金色に光りだしその中でセリアが目を覚ました。
エ「ああ・・・その者青き衣を纏いて金色の野に降り立つべし・・・
古き言い伝えは真だったのね・・・」
悠(青スピはみんな服青いじゃないか・・・)
メダリオ、ミト姐放置。
>>479を見てたらなぜか頭の中にこんな光景が・・・スマヌ。
死んだら金色の霧になるんじゃないのかよ!とか言うツッコミはなしの方向で
ふ、服の取り替えっこしたのはだだれですか?ハァハァ
【゚F】 とあるスピリットのとある測定値を100とした時、他の人物の同様の測定値を相対表記
する為に使われる単位記号。読みは「どファー」。
ヨーティアの設計による測定器で計測される。参考として、エスペリア:90゚F キョウコ:97゚F
の記録がある。理論上は上方には限りがないはずだが、今のところ100を超える記録が出
ないのが研究者達の議論を呼ぶところとなっているらしい。
゚Fって華氏温度?
この場合ブラックストマック度数のことだろう
>>486 omg!!!dam!!!fxxk!!!!Sxxt!!!
なんてこった!
ようやくここまで読んだ orz
>SALVAGE
すんげー励まされました、個人的に。ヒミカさん…
幸せになれよ、ナナルゥ。
おててのしわとしわをあわせるんだ!
間違ってもふしとふしをあわせるんじゃないぞ。
…寒い…ヒートフロアおながい…
>The Spirit BR
あ〜、これから「血飛沫の舞う」展開になっていくんですかねぇ…
のんびり空間もこれはこれで和んでいいなぁと思いつつ。
つーかセリアさん、何つーもの読んでますか(w
>肝試しセリア
セリアさん…
忍者ナナルゥに続いて「隠れヲタ セリア」がネタ設定として定着するのかしら(w
まぁ、ライダーマンだし…
まだまだ削られたネタが豊富に埋まってるヨカーンなので適宜お願いしますね。
スレは安泰だし、仕事がんがろ…∧||∧
仕事モード戻る前に振るだけ振って振り逃げしてみる。
過ぎちゃったけど体育の日ってことで、
運 動 会
ってネタとかどんなもんかいね?
なんか 『ラキオスに訪れた夏』+152@画像板 になりそうな気はするが(w
>>491 恐ろしくハイレベルな戦いになりそうだな。
そんなことより聞いてくださいよ
PS2のシステム情報のページが更新されたんですけれど
>合計7人の攻略ルートがあります。
イービルルートはハーレムルートとなりえるのだろうか・・・
キモウトエンドだったり
orz
だ、だがまだ希望は捨てぬ!
今のところ「好評可能な」エンディング数とも考えられるからねぇ
裏と言うか、隠しシナリオとか十分に考えられるよ。
第一雑魚スピに表情とか出来ているわけだし!
と、好意的に考えてみるテスツ
食事の後片付けを終え、廊下を歩いていた悠人はふと足を止めた。
食堂でヒミカとナナルゥが並んで座り、お茶を飲みながら、何やら楽しげに談笑していた。
おそらく二人の失われた時間を取り戻しているのだろう。
その姿を見て、ここに戻って来て良かった、悠人は心底からそう思った。
「―――友達、か。」
光陰達の顔を思い浮かべ、悠人はつぶやいた。
「ユート様。」
広間でくつろいでいた悠人の下にヒミカが来訪した。
「お、どうした、ヒミカ?」
「あの、少しだけ、お話を。」ヒミカがややあらたまった態度で話し始める。
「いいよ。立ちっぱなしじゃなんだから、座ってくれよ。」悠人は笑って椅子を勧めた。
「―――はい、失礼します。」
ヒミカは頭を下げて悠人の向かい側に座った。隊長時代の名残りなのか、
ヒミカの態度は礼儀正しいままである。
「あの、―――有難うございました。」ヒミカにいきなり礼を述べられ、悠人は面食らった。
「何か礼を言われるようなことしたっけ、俺?」
「―――ナナルゥの事です。」
「―――?」そう言われても悠人にはピンと来ない。
「昔の、あの子に戻していただきました、ユート様に。」
「昔の?」
「はい。―――ナナルゥはもともとよくしゃべる子でした。
ただ、何というか、的外れな事を言う事が多かったので、私はひやひやものでしたが。」
「へえ、そうなのか。」
悠人は以前のナナルゥを思い出し、ヒミカの言っている事が、何となく分かるような気がした。
ヒミカが頷きながら言葉を継いだ。
「ナナルゥの、――世話をしていたつもりだったのです。」ヒミカの口調が沈む。
「でも、私がかばうたびに、あの子は寂しそうに笑ってました。――段々、口数も減ってしまって...
多分、それで、話し相手が神剣しかいなくなっていったんだと思います。」
「そうか、それで、ヒミカはやけにナナルゥの事を心配してたんだな。」
「ハイロゥが黒くなった時は、私も、目の前が真っ暗になりました。」
「―――あれは、俺のせいなんだよ。」自分がナナルゥにした仕打ちをまざまざと思い出しながら、
ふうっと溜息をついて、悠人は言った。
「―――聞きました、ナナルゥから。何もかも。」
「え!?」悠人はその言葉に驚かされる。
ラキオスに戻って以降、ヒミカは一貫して悠人に対し友好的な態度を崩していなかった。
それどころか、悠人と他のスピリットが険悪な雰囲気に陥らないように気配りをしているフシすらあった。
「――我々も悪かったのです。ユート様に対して失礼な態度を取っていたのは、
セリアだけではありません。私も正直、素人扱いしていました。
ユート様を孤立させてしまったのは、私の責任でもあります。」
「あまり何でもヒミカが自分のせいにするのはどうかと思うけど...」
恥ずかしさもあって、悠人はやんわりと反論した。
「でも、ユート様はもう充分苦しまれました。ひょっとしたら、今でもまだ苦しみ続けておられるのでは有りませんか?
でなければ、自ら格下げするなどという事はされないはずです。」
それは、ゆっくりと、励ますような口調だった。
「苦しむも何も...それだけの事をしたんだからしょうがないさ。」悠人は目を伏せた。
「―――私は、今でも、いえ、今のユート様こそ隊長にふさわしいと思っています。」
ヒミカはそう言って立ち上がり、一礼した。
「ユート様。ナナルゥの事、よろしくお願いします。今のあの子にはユート様が心の支えになっています。」
「そ、そう、かな。」さすがに照れくさくなって悠人は頭をかいた。
「はい。私と話す時もユート様のことばかり言っています、ナナルゥは。」そう言ってヒミカはクスリと笑った。
「ふう。―――全部、つつ抜けって訳だな。」
苦笑を浮かべて悠人は言った。「でも、少し楽になったよ。さんきゅ、ヒミカ。」
「あ――いえ、すみません。また、差し出がましい事を言ってしまったようですね、私は。」
悠人に礼を言われると、ヒミカは慌てたようにぺこりと頭を下げ、立ち去った。
「―――ヒミカの目は、ごまかせなかったか。」
独りになった広間で、悠人は言った。ラキオスに戻って以来、つとめて明るく振る舞ってつもりだった。
「ナナルゥの保護者みたいなもんかな、あいつ。」
もし今後ナナルゥを悲しませるような事があれば、ヒミカが黙っていないだろう。
「―――それにしても、ナナルゥのやつ、まさか俺が小便漏らした事まで喋ってないだろうな。」
そう思って新たに戦慄する悠人であった。
「ねえ、ヒミカ。さっきの話、まだ続きがあるんだけど...」
ナナルゥが、廊下を歩いていたヒミカを目ざとく見つけ、駆け寄ってくる。
「はいはい。続きはあっちでゆっくり聞かせてもらうわよ、ナナルゥ。」
自分と同じ赤い妖精の肩に手をかけ、まわれ右をさせながらヒミカは苦笑した。
面倒見が良すぎるのも考えものだ、そう思ってヒミカはそっとつぶやいた。
「――いつか私も、こんなふうに笑えるかしらね。」
第二詰所の生活にも慣れてきた悠人であったが、やはり、平和な日常は長くは続かなかった。
「イースペリアって、確かラキオスの友好国の?」
「そうです、ユート様。サルドバルトが仕掛けてきた模様です。
先ほど、国王より救援命令が下りました。」久し振りに第二詰所にやって来たエスペリアが報告した。
「―――そうか、わかった。」
悠人は何か不吉な予感に襲われながらも立ち上がった。
あの国王が、素直に救援を考えているとは思えなかったのだ。
『人間の欲望にはキリがない。そう思わんか、若いの。』
師匠が耳元でささやいている気がした。
ランサから、ミネア、ダラムへの進軍は順調に推移した。
どういう訳か、下っ端であるはずなのに、スピリット達は以前よりも悠人を隊長扱いしていた。
セリアまでもが、悠人の思惑に沿って動くように後輩達に指示しているようであった。
「ま、死なない程度に、適当にやろうぜ、みんな。」
時には昂ぶり、時にはおびえる仲間達に、悠人はいつしか、こんな事を言うようになっていた。
「エスペリアっ、まだか!?」
アセリアと後方を警戒しながら悠人は叫んだ。
イースペリアのエーテル変換施設中枢に入りこみ、装置を停止させよとの指示であった。
「もう少しです、ユート様!」エスペリアが苛立ったように、それでも手を休めずに答える。
「悪い、焦らずにやってくれ。」
余りにも簡単に施設に入り込めたことが、かえって悠人の嫌な予感を増幅させていた。
「―――ちっ、やっぱり来やがったか。」ひときわ強大な神剣反応に、「求め」が警告を発する。
狭い室内に黒い疾風が飛び込んできた。素早くアセリアがウィングハイロゥを拡げる。
「アセリアっ、無理すんな!」
悠人は地上で虚しく叫んだ。空を飛べるスピリットにはどうしても直接対決を挑みにくい。
「あれは...漆黒の翼、ウルカ!」エスペリアが振り向いて驚愕の表情を浮かべる。
「サーギオスのスピリットが、どうして、ここに!?」
そのブラックスピリットはアセリアと激しい空中戦を展開していた。
三合ほど斬り合ったところで、アセリアが負傷して床に落下した。
「アセリアっ!大丈夫か!?」悠人はその場に釘付けにされながらアセリアの様子をうかがった。
「―――ん、大丈夫。」
脚を抑えながらアセリアが応える。そのブラックスピリットは無言で悠人に向き直った。
悠人は音も無く真正面中段、いわゆる正眼に神剣を構え、そのスピリットを睨みつける。
「―――美しい構えをされております。貴殿の名を、お聞かせ願いたい。」
ウルカが間合いをとったまま、不意に口を開いた。
「ユート、ラキオスのエトランジェ・ユートだ。」
緊張に身を包まれながらも、どことなく師匠と似た雰囲気を持つウルカに、悠人は答えた。
「貴殿が...そうでありますか。」相手も悠人の事は知っているようだった。
「手前の役目は終わったようです。―――また、いずこかでまみえん事を!」
収刀の音を残し、ウルカが飛び去った。それに呼応するかのように、室内の機械音が停止した。
「ユート様...終わりました。」エスペリアが言った。
帰路に着いた悠人の横にエスペリアが並んだ。
「ユート様、少し気になる事があるのですが―――。」
そう言ってエスペリアは、肌身離さずに持っていた手帳を開いて見せた。
開かれたページには大きな赤い×印が付けてあった。
かつて採点すらされずに返ってきたテストの答案用紙を思い出し、悠人の胸に黒い予感が渦まいた。
「エスペリア、それって―――。」
「これは私がかつて師事した方に、絶対してはならないと教えられた操作手順です。」
「で、まさか―――」
「実は、私が本国から指示されていた手順がこれと同じだった気が―――。」
「ば、馬鹿っ!うっかりさんにも程があるっ!!」悠人は最後まで聞かず、全員に退避命令を出した。
「みんなっ、命が惜しい奴は全力で走れっ!!」
次の瞬間、すさまじい衝撃波が襲ってきた。スピリット達が悠人の展開したシールドに飛び込むのと同時であった。
――あってはならない事だったのかも知れない。
この日を境に、大陸の地図からイースペリアという国の存在が消滅した。
悠人達がラキオスに戻った日の夜、第二詰所の広間に集まるスピリット達の姿があった。
誰もが一言も言葉を発しない中、その中心にいた悠人が顔を上げた。
「―――来たみたいだな。」
城を抜け出てきたレスティーナが、すでにかなり手狭になっている広間に入室した。
「手は、打ってあるのか?」悠人は簡潔に尋ねた。王女が頷く。
「―――本来なら、あなた方の力をお借り出来るような義理ではないと思っています。
私が、自分自身で決着をつけるべきなのですが、―――。」
その表情に苦渋を浮かべて、国王の一人娘は言葉を紡いだ。
先日のマナ消失で、レスティーナ自身も、親友であるイースペリアの若き女王、アズマリアを失っていた。
「勘違いすんなよ。別にあんたの為になんて思っちゃいない。
命令を出したのは国王だが、実際に手を下したのは俺達だ。
俺は、―――自分でやった事の後始末をする。あんたは、たまたま俺達に協力した、それだけだ。」
普段、他の者の前では、レスティーナに対して、決して礼を失さぬ態度を取っている悠人が
この時は、あえてぞんざいな口調で話していた。
夜更けが過ぎるころ、城の中に向かう二つの影があった。
門番は何も言わずに扉を開いた。城の中にはなぜか護衛の兵士の姿も無かった。
カチャリ、と鍵を開ける音とともに国王の寝室の扉が開かれる。
「な、何者だっ!」国王が王妃とともに飛び起きた。
「―――俺だ。」悠人は短く答える。神剣は持っていなかった。
「無礼者っ!ここがどこか判っているのか!?」国王が怒鳴りつける。
「判っている。―――かつて、国王だった奴の部屋だ。」悠人が静かな声で言った。
「何だと!?」言いざま、不穏な空気を感じ取った国王が結界を張った。悠人を耐え難い頭痛が襲う。
「くっ...やっぱり神剣なしでも、駄目かっ...!」
悠人がうずくまるのを見て、国王は落ち着きを取り戻す。
「エトランジェよ、お前の妹の命が我が手中にある事を忘れたのか?何を血迷っておるのだ。」
音もなくもう一つの影が入室した。その手には、背丈をゆうに超える槍を携えていた。
「エスペリア...後はまかせる。」悠人は頭を抱えながら言った。
「エスペリア!?お前まで、何のつもりだっ!」国王が再び声を張り上げた。
硬い表情でエスペリアが応じた。
「私は...これまで自らの意思で神剣を振るった事はありません。戦う事も、本当は好きではありませんでした。
それでも、スピリットは人間の道具として生きてゆくのが使命だと、そう信じておりました。
―――ですが、その事がどれだけ罪深い事か、貴方が教えて下さいました、国王陛下。」
エスペリアが「献身」を構えるのを見た国王と王妃が凍り付く。悠人は最後まで見届けることなく退室した。
「せめて...苦しまないように―――。」エスペリアの祈るような声を背中で聞きながら。
―――翌日。
国王の急逝に伴い、レスティーナ女王が即位した。
国王の死は病死と発表され、王妃がその後を追ったとの事であった。
その夜、久し振りに第一詰所の自室に戻る悠人の姿があった。
「お兄ちゃんっ!!」佳織が悠人の胸に飛び込んだ。悠人は久し振りの再会に言葉もなかった。
その夜、ささやかなパーティーを終えた二人は久し振りに語り合う時間を得た。
「ねえ、お兄ちゃん、お嫁さんにするなら、どの人がいいの?」
「何だよ、いきなり。久し振りに会ってその話題か。」悠人は苦笑した。
「ちゃんと答えてよ、お兄ちゃん。ねえ、どの人?エスペリアさん?」
「別に...あんまり考えた事もないよ。」
困惑しながら悠人は答えた。戦闘の日々に身を置いていたのだから、当然といえば当然であった。
「―――お兄ちゃん。」
佳織の声が真剣味を帯びる。思わず悠人はベッドの上で姿勢を正した。
「逃げよう、お兄ちゃん。どこか見つからない所で、二人で暮らそう。
ここにいたらいつまでも戦わされちゃうよ。私がお兄ちゃんのお嫁さんになってあげるから。」
突然の告白であった。悠人は知らぬ間に成長していた義妹を見つめて、言葉を失った。
「――私じゃ、ダメなの?」
「佳織―――。」佳織の目は真剣そのものであった。ごまかすのは許されない、悠人はそう思った。
「どこか、誰もいない所で二人っきりで、か。」悠人は目を閉じた。
「―――佳織、ごめんな。そんな暮らしもしてみたいと思うけど、そこにいるのは―――別の娘だ。」
悠人の胸中に、洞窟で訓練に明け暮れていた頃のことが呼び起こされた。苦しくも懐かしい日々。
そして、悠人の思い描いた情景の中、静かな笑顔で寄り添っているのは、―――紅い瞳の少女だった。
「そう、―――そっか。うん、わかったよ、お兄ちゃん。」そう言って佳織は笑って見せた。
「佳織―――」ゴメン、と再び謝りかけて、佳織にキッと睨まれ、悠人は言葉を飲んだ。
「その人の事―――幸せにしてあげてね、お兄ちゃん。」
絞り出すようにそれだけ言って、佳織は悠人の胸に顔をうずめ、泣いた。
血も繋がっていないのに、自分と同じハリガネのような少女の髪の毛を、悠人はいつまでも、なで続けていた。
「ユート様、申し訳ありません!!」
数日の後の夕方。エスペリアの悲痛な声が悠人の胸を切り裂いた。
一緒に買い物に出た佳織を、例のブラックスピリットが連れ去ろうとしていたのだ。
悠人が「求め」を引っ掴んで外に飛び出した時、リュケイレムの森の上空に、
気絶した妹を抱えるウルカの姿があった。
「ウルカっ!!」悠人の叫び声にウルカは空中で静止した。
「何で佳織を―――!卑怯だぞっ!!降りて来い!!」喉も張り裂けんばかりの悠人の声を聴いて、
ウルカが顔をそむけ、飛び去って行った。
夕焼け空の彼方、黒い点になってゆくその姿を見ながら、しかし、悠人にはなすすべもなかった。
「あれ―――?」
佳織は、自分の頬を濡らす雫に目を覚ました。自分を抱きかかえる黒い妖精の、涙であった。
再び佳織と生き別れた悠人が悲嘆にくれる間もなく、新たな戦乱が巻き起こった。
サルドバルト兵達がラキオス領土南東に位置するラースの街に向かって進撃して来たのだ。
悠人達はサーギオスの息がかかっているとおぼしきスピリット部隊を迎え撃つべく、ラキオスの城下町を出立した。
「今日子、しっかりしろ。」
光陰のさとすような優しい声と裏腹に、今日子は獣じみた悲鳴を上げて床の上を転げ回っていた。
「―――無理か。お前、ホントはそんなに、強くないもんな。」
数ヵ月後。
北方五国を統一したラキオスに対し、マロリガン共和国より宣戦布告がなされた。
悠人達ラキオス部隊は、新たに技術協力者としてラキオスに赴いてきた天才科学者、ヨーティア・リカリオンの
エーテルジャンプ技術によって旧イースペリア領の軍事要衝・ランサへと飛んだ。
「こりゃ、話には聞いてたけど、本当にきついな。」スピリット達を率いて進軍する悠人は、滴る汗をぬぐった。
ランサからマロリガン領・スレギトへと続く「ヘリヤの道」は、道と呼べるシロモノではなく、
荒涼とした砂漠に、ところどころ道標が立っているだけであった。
「―――それにしても、ナナルゥ。」
悠人は横に並んで歩くナナルゥに話し掛けた。
「はい、なんでしょうか。」
ナナルゥはさすがに炎の妖精だけあって、照り付ける日射しにも涼しげな表情を崩していなかった。
「あれ、―――うまそうだよなあ。」悠人はオルファの胸元から顔を出している「それ」をちらりと見やった。
エスペリアが丹精こめて育てたハーブをたらふく食べている「それ」は丸々とよく太っていた。
「多分丸焼きにしたら、そのまま香草焼きになるぞ、あれ。」
「何てことを!オルファのかわいいペットに向かって!」ナナルゥが声をひそめながら悠人を叱りつけた。
ちなみに「あれ」とはオルファが森で捕まえてきたエヒグゥで、佳織の帽子にちなんで「ハクゥテ」という名が付けられていた。
「はは。ごめんごめん。でもさ、ナナルゥもイグニッション掛ける時は、方向に気を付けろよ。」悠人は冗談めかして言った。
「そ、そんな事―――あ、当たり前じゃないですか。」妙にうろたえる炎の妖精が、ゴクリと唾を飲み込んで答えた。
オルファとナナルゥは別部隊に引き離して配置しなければと、悠人は視線をそらすナナルゥを見ながら、
強くそう思ったのであった。 続く。
513 :
あとがき:04/10/13 16:26:53 ID:SwsHQ8en
相変わらずマインドの低いこと言ってますね、ユート君。
ナナルゥもつられて引きずり込まれないように。後が大変なんだからw
今回は物語の重要な部分なので丁寧に仕上げたぶん、時間がかかってしまいました。
丁寧と言ってもこの程度ですが。あはは。
信頼さん。ヒミカの動き、完全に読まれてたみたいですね。
13あたりでさりげなく伏線張ったつもりでしたが、浮いちゃってましたか、ヒミカw
寸劇さん。いつも寸劇印のハリオン姉さんには癒やして貰っていますので、
少しでもお返しできたなら嬉しい限りです。
でも、何だか寸劇さんにも先読みされてたような気がします。
だからヤなんだよなあ、職人の眼って。(←こらこらこら!!)
いえいえ、お二方ともディテールまでしっかり読んで頂いてた証拠ですよね、有難うございます。
序盤で不幸は底をついてますからご安心ください、寸劇さん。
ヒミカに食われた感じのナナルゥですが、彼女の凄味が出るのはもうちょっと先です。
今回は「家出」で書ききれなかったエスの成長っぷりも補完してみました。
時間軸的に矛盾してますけど。
PS版ではエスルートが少し変更されるようですが、まさかソーマ様に!?(←絶対ないって)
乙。そしてGJ!
今回は結構一気にストーリーが進みましたね。シリアスとギャグの同居具合がイイ!
エヒグゥの味を覚えてしまった二人。
ハクゥテに二人の魔の手が迫る!(迫らない)
>憂鬱の人さん
100レス突破乙です。
登場スピの大半がダークヴァルキリーになりそうな序盤に少し胸を重くしながら
それでも読むのが止められないと引き込まれているうちに、
だんだんとマインドが回復していくように明るくなる面々が見られて読む方も幸せです。
佳織誘拐イベントがこう変わりましたか。
何か、この時点でウルカのマインドが一番高いような気がするなぁw
嗚呼、エスペリア。
逆光に透き通る新緑の様な柔らかな緑色が、木枯らしに耐える常緑樹のような昏い緑色にっ!w
ユート君汚れ仕事は進んでやりましょう。皆がやりたがらないことを自分からやるように小学
校で教えられませんでしたか。
って小説の方でも光陰が似たようなことを……
読み進めていくうち、ヒミカさんが責任を「体で」取ってくれるのかと思ったりしたことは既にナナルゥ
によってばらされてしまったりするのでしょうか。やはりナナルゥは細作・乱破で流言ながして、悠人
との仲を既成のものへ……
>>513 憂鬱の人さん
寿命が縮まった国王陛下に黙祷w
冗談はさておき乙でした。
ヒミカの動きはとある理由で自然に目に止まったものだったのですが……
ナナルゥ、ヒミカ、光陰、今日子、そして恐らくはハリオン……
いやぁ、同じ事考える人っているもんですねぇ……orz
これであの人まで補完されたりしたらとビクビクものな反面、
テーマの違いに新鮮味を感じたりと忙しいです。
それはそうとよくしゃべるナナルゥ、ちょっと見たいかもw
>憂鬱の人氏
乙です。
ダークも恐れずじんわりもありほっこりもあり笑いもあり
持ち味をいかんなく発揮してますね。GJ!
先読みは全然してないですよ(汗
もうひたすら単純に、EXが世を席巻してる現状でこのヒミカさんの風味が
わたし的にキタということで。
難航しているお話が違う意味でヤバめなので、
ヤバめなところにも踏み出して行くその勇気に打たれたというのもあります。
まだまだ先は長そうですが、がんがってください。
憂えさせられながらもどこか優しくて温かく笑いを忘れない
憂印の続きに期待しております。
519 :
憂の字:04/10/14 09:00:19 ID:O7ULVCNg
おお、みなさん、親切な感想どうもです!
>>514 私食べた事ありますけど、結構うまいですよ、ウサギ。
――ごめんなさい。オルファにファイヤーボール喰らって来ます。
>>515 多分そうだと思うのですが、道行さんも私と同じくウルカびいきっぽいですね。
黒スピ属性は私よりはるかに上だとは思いますが。
>>516 私もできればヒミカさんには体で払って欲しいですが、そうするとまた
イービル一直線ですからねえ...
>>517 ほう、同じ事を考えてましたか。信頼さんもようやく私に追い付いて来たようですね。(←逆だ、逆。)
あの人って...ソーマ様?(違
>>518 サルヴェージのヒミカ姐御は寸劇作品なしには生まれてません。
寸劇さんの眼は結構気にしながら書いてるんですよ、これでも。
悠人との二人三脚に向けて熾烈な争い(くじ引き)。
引き当てたはいいけれど、ヘリオンは一歩ごとに転んでしまう……
転んだ時に色々と怪しい体勢になってしまっているのを少しだけ惜しみながら、
慌てて起き上がりつつヘリオンは小さく頭を下げた。
「うぅ、すみません。わたし、ちっちゃいから歩幅が合わないんですね……」
ヘリオンの場合は体格がどうこうと言う以前に、肩と腕が触れ合ったり太ももが擦れあったりするだけで
スタートを切る前から心臓だけが大爆走を始めている状態だったのが原因なんじゃないかと思いながらも、
自分まで必要以上に意識する訳にもいかないと悠人は言葉を飲み込んだ。
ともすればヘリオンの細い肩や、滑らかな足の感触に心を奪われそうになるのは悠人も同じなのだから。
解けかけた二人の足をくくる紐を直して、悠人も立ち上がって呟く。
「だめだ、このままじゃビリになっちまう。ん、ちっちゃい……?よし、これだ!」
慣れない競技に悠人たちほどでは無いものの前方でのたくたとてこずっている面々を後ろから見据え、
一つ頷くと悠人はおもむろにヘリオンの腰に手を伸ばし、力強く抱え込んだ。
「きゃぁ、あ、あの、ユートさま一体何を」
先ほどよりも確かな密着感に動揺、あるいは興奮してしまうのもつかの間、そのまま悠人は駆け出していく。
「ひゃああっ、ゆ、ユートさまぁっわた、わたし浮いてますっ、地面に足がついてませんよぅっ」
「いいから、そのまましっかり捕まって走ってるフリをしてろって。ゴールしちまえばこっちのもんだ!」
そう言われて、ヘリオンは驚いた拍子に、振り落とされないように相手の身体にきつく腕を回しているのに気が付いた。
まるで自分の身体を押し付けるようにくっついているのを自覚し、どんどん頭に血が上ってしまう。
真っ赤な顔でしゃにむに地面から離れた所で足を空回りさせるヘリオンを抱えて、悠人はそのまま、
同じく体格差でペースが合わないエスペリア、オルファペアを抜き、
急ぎがちなネリーとそれに未だ合わせられないシアーのペアを抜き、
横に並ぶと差がはっきりと出てしまう、ハリオンとヒミカの(いろんな所が)凸凹コンビを抜き、
ついにえっちらおっちら一度も転ばずに先頭を進んでいるファーレーン、ニムントールペアを捉え、
その異常なまでのスピードのまま抜きさって、今一着でゴールイン!
……
…………
………………
『大会実行委員長、レスティーナ・ダイ・ラキオスによる、審査結果の発表です。
ただいまの競技にてエトランジェ・ユート、ヘリオン・ブラックスピリットペアの
不正が発覚しました。大会実行委員会審判部イオ・ホワイトスピリット、ヨーティア・リカリオン
両名による観測と審査の結果、当該ペアは失格。繰上げにより、
二位のファーレン・ブラックスピリット、ニムントール・グリーンスピリットペアが一位となります』
実行委員会特別テラスにて。
「ついカッとなってやった。悪気は無かった。今は反省しているが金メダルは返さない」
「なに訳のわからんことを言ってるんだボンクラ、ばれない方がおかしいぞ。それにこっちはこっちで」
呆れて溜め息をついたヨーティアが悠人を睨んでいた目を逸らし、ヘリオンに視線を向けると、
イオに注意を受けながらも、ぽーっと顔を上気させたままふらふらとしてうわ言のように呟いているのが映る。
「ふわぁ……がしっと、それからぎゅぅーって……」
「まだ地に足がついていないようですね」
一位の表彰台にて。
「ユート様とあんなにくっついて……羨ましくなんて、羨ましくなんてっ」
「試合に勝って勝負に負けたってことね、お姉ちゃん」
支援!!...って、あれ?
くうぅ―――っ!
ハリオン姉さんと組んで転びたいっ!
あー、小ネタでしたから後書きは無しで……(汗
>憂鬱の人さん
>ウルカびいき
「道行」を書く時にヘリオンと二人パーティで
進めてましたから(鍛えた上に難度はノーマルですが)
ウルカルートのイベントが頭から離れないのですw
>>523 すっ、すみません!今、私の後ろでナナルゥが炎獄とかなんとか
ぶつぶつ言ってますので逃走させて頂きます〜っ!!
でも、一言だけ「道印のウルカはイイ!」
...ぐわああああ―――っ!
あー!審議の青ランプですっ。
「ただいまのレース結果についてお知らせ致します…………一着入線のフタツシッポボクセキ号は
片足走行の走法違反のため失格とし、二着入線のムニニムクログロ号の一着繰り上がりと致
します。繰り返します――――」
うおおおおぉぉぉ 場内どよめいています、どよめいています。これは波乱です。いま確定の赤ラン
プに変わりました。あっ配当が出ました。これはすごい今年度ラキオスGI最高がでました、スピ単で、3541ヨ
フアルですっ。
「やったーやったよーユート君切って良かったよ〜今までの負け分取り返したも〜ん。勝負師だね、えっへん」
ってあんた主催者側じゃ……
>>519 いや、むしろ気にせずのびのびと行って下さいな〜
>>520-521 期待に応えてくれてありがとうごぜいやす。あいかーらず上手いですな。
しっかり落ちまで…ん?浮いたままで落ちてないのか(w
障害物とか借り物とかいろいろネタにできそうな種目はあるだろうから
SSの合間の小ネタ妄想の題材にどぞーということで。昔みたいに。
「覚えていますか?過ぎしあの頃」
もちろん、SSはSSで適宜投入よろです。
両立していきたいよね、と。
俺は、廊下を往くセリアを呼び止めた。
「セリア、俺に、俺に付いてきて欲しい」
「は?」
小首をかしげるセリア。
「他の奴らじゃ……だめなんだ、俺にはセリアじゃないと。セリアとならきっとうまくいく。
そう、思えるんだ」
じっとセリアの目を見ながら言う。
「ユ、ユートさま、あ、あのいきなりまさか心の準備というものが……」
恥ずかしげに目を伏せ、長い睫毛が揺れる。
「セリア……俺はもう我慢できないんだっ!!」
セリアの手を掴み、俺は駆け出す。
「あっ ユ」
普段からは想像も付かないか細い抵抗と、吐息のような声をあげただけで、為す術無く
俺の手を握り、うつむきながらセリアは付いてくる。
「助かったよセリア。アセリアだと加減を知らないから全開しかできなくてさー。ネリーと
シアーも、コントロールが未熟でさ。やっと念願の物が味わえるよ」
俺は、ガラスボウルの中の乳白色の物体を優しくかき混ぜながら言った。セリアは期待通
りの働きを見せている。やはりこう言う時頼りになるのは「ラキオスの永久凍土」といわれ
るセリアだな。
「セリア、さっすがー」
「さすが〜」
ネリーとシアーは、既にパブロフの犬の如き状態でスプーンを握りしめている。
「アイスバニッシャー アイスバニッシャー アイスバニッシャー アイスバニッシャー…………」
「そうそう、流石セリア。冷やしすぎるとがちがちになっちまうからさ。良い加減で。こう
してかき混ぜると空気を含んで舌触りが…………ん、どうした?」
「――――アイスバニッシャーXXッッ!!!」
ピキーン
「…………ヒューリーXIII……」
ドカッ ズバッ ビシュッ
ズガーンッ!!ガラガラ ゴロゴガンッ
――――シーン。
529 :
髪結い:04/10/15 20:05:21 ID:+YaMS9Y/
イオでは面白くなかった
セリアの冷気は一杯だった
次のネタはない orz
中3スレで続編? というほどでもないけど、久々の記名カキコがこんなんでした。
すまぬ。
530 :
借り物競争:04/10/15 20:57:13 ID:EkSFUfdI
最初にそのスピードを生かして殺到した青スピリット達が掴んだ紙はそれぞれ
アセリア『針金』セリア『嫌いなもの』ネリー『お兄ちゃん』シアー『お姉ちゃん』だった。
「……………………」
一瞬の間の後全く違うものが書かれていたにもかかわらず、
シアーを除く三人が一斉に悠人に向かって駆け出す。反応が遅れたシアーもネリーを追いかけていった。
逆走してくる四人に危険を感じた悠人は競争を放棄して逃げ出した。
次に到着したウルカ、ファーレーン、ヘリオン、それに黒スピリットに混じって健闘したヒミカが紙を掴む。
ウルカ『赤光』ファーレーン『冥加』ヘリオン『月光』ヒミカ『失望』。
「……………………」
お互いの顔を見合す。一瞬のイヤな空気の後、真っ先に諦めたヘリオンが何故か謝りながら逃げ出した。
四すくみの一角が崩れる。残りの三人も追撃せざるを得なかった。
遅れて到着した赤スピリットの二人は誰も居ない事に不審を感じながらも紙を取る。
ナナルゥ『マナ結晶』オルファリル『光陰』。
ばか正直に旅に出たナナルゥはリタイア。オルファリルは光陰を連れ出そうとするも、
引っ張っていく直前で誤解した今日子の雷撃を喰らい、巻き添えで気絶した。
さらに遅れて紙を掴んだ緑スピリット達はのんびり(一部除く)と紙を引いた。
エスペリア『はずれ』ニムントール『当たり』ハリオン『ファンタズマゴリア』。
「なんですか、これは!」「なによ、これ!」「これは〜なんですか〜?」
意味の判らない単語を目にして叫ぶ(一部除く)三人。
大会運営委員のイオが呟く。
「……ヨーティア様、ホンキで勝者が出ると思ってないでしょう?」
「当たり前だ、普通にやるだけじゃつまらんじゃないか。」
数日後。帰還したナナルゥはまだ片付けられていないゴール線の前に立っていた。
「…………ごーる。」
手にしたマナ結晶が空しかった。
寸劇さんと道行さんに触発されて書きました。
我ながらツマラン…………orz
>>529 髪結いの人
スレ2 740 以来の雑魚スピ分ですね、乙です。
ツインテール化も良かったけど悠人のあのセリフだけで黙って付いて来るセリア……w
今回も何か妄想を駆り立てられそうです。
「あっ ユ」
\(゚∀゚)ノ
>>529 お、久〜
いやいや、たった2レスでドキドキ→落とし決めてる辺り、小ネタとしてバッチリですがな。
#けっこう寝かせてたでそ…ボソッ
>>531 >シアー『お姉ちゃん』
がイイなぁ。
きっちり着順読み読みな辺り、さすが大天才だ、ヨーティア(w
ナナルゥ…ええ子や…(´Д⊂)
かなりスレ違いなネタなのだが・・・
デュエルセイヴァーの未亜は、電波だサイコだと罵られ、
向こうのスレで「キモウト」呼ばわりされているのだが、
中に「鬼妹」という当て字があった。
・・・佳織なら、「畸妹」だろうな・・・。
こっちはインスマウンス面だからな
だめだ…どうしても頭から離れない…
最大トーナメント風スピ紹介文が…
デカァァァァいッ!説明不要ッ!!
たゆんたゆんッ!
<大樹>ハリオンだーーッ!!
とかw
他考えてみるか…
トーナメントとか面白そうだな・・・
もちろん商品は悠人で(w
食欲の秋記念杯、料理トーナメントとか。
539 :
髪結い:04/10/16 22:28:12 ID:+8/EHqwW
>531
これは信頼アンちゃん、氏の嫁をまた汚れに使ってしまいました。深く反省しています _ト ̄|○
まぁでもあれですよ、ツンドラにもいつか春が来、ツンデレに成るのです(ウルゥー 太陽には自覚がないのが
アレですが。
IIIを習得するため日々鍛錬です。腕立て10回でいいですか。
「借り物競走」ナナルゥがかわええですよ〜(´Д`) ハァハァ 無人の会場で、
こう両手を上げてポンと飛び上がってテープを切る風景が脳内に展開中です。
遁走悠人w。
次は
_ ∩
( ゚∀゚)彡 フォークダンスッ!! フォークダンスッ!!
⊂彡
>532
\(゚∀゚)人(゚∀゚)ノ
>533
いや二日ほどの浅漬けでした。思いつくのはいつも仕事中…………テヘッ
でも一ヶ月以上寝かせてるのも二作ほど(汗) 完成はしてるけど片っぽの出来がどうも
思った風にならないので。前面書き直ししようか……。
おっとそう言えば、名無しを隠れ蓑に結構カキコしてますよ。アレとかソレとか。
>>526 寸劇さん
では、お言葉に甘えまして。
>>531 信頼さん
ノシ ナナルゥの持って帰ったマナ結晶は頂いていきまーす。
これからのSSの糧として大切に使いますね。
>>539 汚れですか、セリア?充分可愛いですけど。青スピ萌え分量の少ない私には
ツンデレセリアをうまく料理出来る方々が羨ましいです。
トーナメント…………三位商品 ラキオス城下町一日食べ放題
白熱の三位決定戦。三位狙いはだれだー
ビョオオオオ―――ッ
リクディウス下ろしの強烈な北風の中、制服をたなびかせる三人のエトランジェが並んで立っていた。
スピリットとではハンデがありすぎるというレスティーナの言により、
エトランジェ対抗の競技が始まろうとしていた。
「悠人よ、手加減は抜きだぜ。一度お前とは全力で戦いたいと思ってたんだ。」光陰が不敵に笑みを浮かべる。
「ぬかせ、光陰。今の俺なら、剣の力を全て引き出せる!」
「あたしは女の子なんだから、そこんとこ考えてね、二人とも。」
今日子が慣れないウィンクをして見せる。
「「こんな時だけ女を強調するな!」」二人が同時に今日子に突っ込んだ。
「いいのかい、あんな連中に競争させても?」ヨーティアが心配そうにレスティーナに訊いた。
「いいのです。いつもガキ...こほん、子供のケンカみたいな事ばかりしてますから、
あの三人にはさわやかにスポーツの汗で発散させてあげましょう。」レスティーナが優雅な微笑を浮かべた。
543 :
その2:04/10/17 09:21:05 ID:15LORjBn
「しかし...」光陰が前方に目を移す。「あれ、障害物なのか?」
一直線にゴールまで引かれた白線の上に色とりどりの美少女達が待ち構えていた。
「どう見ても障害『物』じゃないよなあ、『物』じゃ。」悠人も眉をひそめる。
「私達スピリットは人間の道具です。道具も物も大差ありません、ユート様。」
「うわっ、エスペリア!いつの間に後ろに!?」
驚いた悠人が振り返るとそこにはチェッカーフラッグを持って立っているエスペリアの姿があった。
「私がゴールでお待ちしております。皆さん、お体にお気をつけ下さいませ。」
物騒な言葉を残してエスペリアがタッタッタと走り去っていった。
戦闘シーンの緊張感ぶちこわしのジョギングみたいな効果音は何とかして欲しいと思う悠人であった。
スタートの笛が鳴った。
「まず、第一の障害物は...」悠人が目標を見定める。
「―――敵?なら、倒すだけ。」殺気に満ち満ちた声が風に乗って三人の耳に届いた。
次の瞬間、空中から研ぎ澄まされた神剣の衝撃波が襲う。ほぼ同時に目くばせをしあう今日子と悠人が、
素早く光陰の背後に回りこんだ。
展開した加護のオーラを突き破られ、光陰が「存在」の餌食になった。
「お...おいおい...こりゃ、シャレになんないぜ...うぅ、ぐふっ」
「よくやったっ、アセリア!」倒れた光陰の屍を蹴飛ばし、今日子、悠人が奔る。
544 :
その3:04/10/17 09:23:16 ID:15LORjBn
「さて、お次は...」今日子が前方を見据えた。
「パパー、いっくよー、てりゃあ――っ!!」オルファのハイキックが悠人を捉える。
「へっ、悪いけどオルファ、このくらい何ともないぜ!」ほとんどダメージを受けずに悠人が今日子の後を追った。
「まとめて...消しとばします。」紅蓮の炎が巻き起こった。
「「ぐわあぁぁぁ―――っ!!」」地に倒れる今日子と悠人。
「――やってくれたわね。」しかし、先に立ち上がったのは今日子であった。
「ぐう、しまったっ!...やっぱり...『絶』だったか!」
毎度おなじみの手に引っかかり、やや遅れをとった悠人が再び走り始めた。
後方から追い付いて来た光陰の両頬にくっきりと真っ赤な手形が付いていた。
「...ニムにリヴァイブかけて貰ったのか。お礼とかなんとか言って変な事しようとしたな、光陰。」
「なっ、なぜそれが!?」
前方でネリシア姉妹の双子攻撃に惑わされる今日子に追いつき、再び三人が並ぶ。
「最後の障害は...」
「こ、ここから先は通しません!私、ちっちゃいですけど、こう見えても怖いんですよ!
こ...怖いんですkむぎゅぎゅっ!!」
口上の長いヘリオンがそのスピードを生かす事のないまま三人の踏み台になる。
「「「ゴールだっ!!」」」
「エレメンタル〜ブラスト〜〜」嗚呼、ゴールテープ直前で静止する来訪者たち。
袋叩きに遭うバカップルを尻目に、そのままハリオンにお持ち帰りされる悠人であった。 続かない。
3レスも使ってこれか...
もう、言い訳はしません...orz
事象の地平線ハリオン。捕まったら逃げられないぜ。
捕まえてほしい (;´Д`)HAa HAa
黒色矮星ヘリオン。さすがヘリオン踏まれても何ともないぜw。
ふ、踏まれたい (;´Д`)HAa HAa
>絶
HH?
運動会シリーズ色々キテル――――(゚∀゚)――――!!
>525さん
それだけヨフアルが在っても一回に16個を平らげればあっという間に無くなりそうですねw
>髪結いの人さん
雪(女)印のアイスクリーム、一口食べれば熱で優しく蕩けます。を売り文句に。
>信頼の人さん
ナナルゥの無事が確認され、借り物競争もつつがなく終わった後……
ハリオンのファンタズマゴリア征服記の始まりに気付いた者は居なかった……
>憂鬱の人さん
光陰専用障害「ロリ三連星」
「だ、だめだ俺には踏めねぇ、いやむしろ踏んでくれーっ」
付加効果により突っ込みの今日子の足止めも可能。
ジェットストリームアタック
>>550 はじめの目くらましは・・・ナナルゥか?忍法(ry
>>545 憂鬱の人さん
エスペリア、開き直ってるなぁw
目の前でハリオンにお持ち帰りになる悠人を旗を持ったまま見送るエスペリア……
突然旗がべしっと折れたりしてw
ところで前から気になってたんですが、憂鬱さんってSSでは「……」使わないんですね。
「―」か「...」で。いえ、なんとなく参考にしてただけなんですが。
「というわけで〜健康診断の季節がやってきましたよ〜」
唐突だがハリオンの言うとおりである。他国に比べて、スピリットの福利厚生に力を入れ
ているこのラキオスでは、毎年秋に全隊員の健康診断及び身体測定を行っているのだ。
「あーなんというか、各自速やかに各測定や検査を消化していって欲しい。えー全部終了後、
俺の所に提出してくれ」
「えっあ、あのユートさまに見せるんですか」
「冗談じゃないわ、私たちにだってプライバシーがあります」
「いやっ決して見ないぞ。ほ、ほらこの封筒に入れて出してくれればいいから。な?これなら
見えないから大丈夫だって。このままヨーティアに渡すから」
皆のじと目に怪しさ爆発で弁解する悠人。でも、後で透かして見えないかなとか思っている。
とりあえず光陰を拘束するため、今日子と供に詰め所を出て行った。
今回は、第二詰め所食堂にて執り行われることとなったのだが、一部の者にとっては、アン
ニュイな行事である。
「あう〜全然成長してないですよぅ〜」
「くっ、シアー侮れないわ。脅かす芽は早めに摘まなくては」
「このままでは、ニムが私の前に立つことになってしまいます。前に立つと言うことは敵ですね」
なんだか物騒なセリフをのたまう赤髪・覆面の人も居たりするがおおむね順調に進んでいった。
「ハリオン、いくつだった?」
ヒミカがハリオンに尋ねる。敗北感に浸るだけなのは分かっているのに聞かざるおえないこ
の哀しい性。惜しげもなく測定票を見せるハリオン。
「…………ラキオスの緑の奴は化け物か」
「わたしもちっちゃいですけど、お、大きくなりたいです。ハリオンさん何か秘訣とか無いん
ですかっ!」
「もってなに。『も』って」
疑義はスルーされ、皆耳をエヒグゥのようにしてハリオンの言葉に聞き入る。
「ふふ〜一つ良いこと教えますよ〜胸が無いならお菓子を食べれば良いんですよ〜」
衝撃だった。ブルジョワだった。そう言えばシアーもお菓子が大好きだった。真理は意外な
ところに潜んでいるのだった。
「なによこれっ! ちょっと検尿って何よっ!、これもユートさまに提出しろってのっ?」
羞恥プレイも潜んでいた。
秋の夜長が私を狂わせたんです。きっと。
エロ!でもグッド!
ハリオンも胸大きいけどエスペリアも大きいですよね。
グリーンスピリットってみんな胸大きいんだろうか・・・
ということはニムもいずれ・・・
「ニムは84だって。お姉ちゃんいくつだった?」
「・・・・・・(チャキ)」
>>555 髪結いの人さん
身体測定とはいっても関心は胸に集中するんですねぇ。
どこの世界でも女の戦いは熾烈な訳でw
でもスピリットって皆スタイルいいからダイエットとかの苦労もないんだろうなぁ。
……エスペリアやファーレーン辺りはやってそうだけどw
他に視力測定とかもあったり。
「はい、セリアは両目とも0.4ですね。今度から戦闘中は『眼鏡等』です。」
「……スピリットっていつから免許制になったのよ…………」
「という訳で我がロウ陣営でもファンタズマゴリアの風習に習って身体測定をすることになった。」
「…………いいんですか、タキオス。」
「いうな…………あの方の考えている事は俺にも及びがつかぬのだ……」
「ンギュルギュルッ!」
「……………………」
「……………………」
「ンギュルギュルギュルッ!」
「だ〜か〜ら〜!誰もアンタのスリーサイズになんか関心ないってーのっ!空気読めよっ!」
「ンギュルギュルップッ!!」
「はぁ?そんなに負けるのが怖いのかって?このっ! つけ上がるんじゃないよ!!アバズレ女っっ!!」
「ンギュルッ!ンギュギュルッ!」
「………………ふっ。アンタに言われたくないとはよく吐いたわ。
私を本気にさせる……? うふふ…! …面白いじゃないか!ゾクゾクするねぇっ!!!」
「ンギュルルッルッ!!!」
「ものは相談ですが…… タキオス、諦めてもらえませんか? そうすると僕も助かるのですが……」
「存分に、存分に戦いましょう……」
「むぅ…………これが心の力、というものか…………」
本編ver.でもントゥ娘に変身した……よもや雌雄同体!?w
あ〜かいヒミカとみどりのハ・リ・オン♪(゚Д゚)
うわ、一晩寝てる間に小ネタ大会が!!
>>552信頼さん
普段ギコナビ使ってるんですよ私。「…」と「・・・」の違いが
分かりにくいんで「―」多用してます。ントゥたんのダメージ時の
涙を流す姿は男には見えないですよねー。
>>555髪結いさん
頭の中に常緑の樹が生えてる私には緑スピの胸ネタは
こたえられないです。...あ、また花が咲いた。(←そろそろ病院行けよ)
宣戦布告から日数が経過していたがラキオス・マロリガン双方ともダスカトロン砂漠を越えて
攻め込むだけの戦力が整っておらず、両にらみの状態が続いていた。
悠人とオルファがランサ近辺を哨戒していたある日。
「あれ〜?」頓狂な声を出したオルファがわき道にそれて行った。
「おい、勝手に隊列から離れるなよ、オルファ、危ないぞ。」悠人が慌てて追いかける。
「パパー、こっちこっち!」岩陰にしゃがみこんで、オルファが悠人に手招きした。
「何だよ、一体―――。」悠人は行き倒れ同然のブラックスピリットを見て息を呑んだ。
「お前は―――!」そのスピリットの颯爽とした戦士ぶりを発揮していた頃を知る悠人にとっては、
見る影もなかったが、その姿は過日、佳織を連れ去ったサーギオスの『漆黒の翼』、ウルカに間違いなかった。
「―――これは、ユート殿。お見苦しい姿を晒してしまい、申し訳ない。」
悠人達の声に気付き、気丈にもニヤリと笑ってウルカが立ち上がろうとする。
「あー、ダメだよぉ、お姉ちゃん、無理しちゃ。」
ウルカとはまだ会った事のないオルファが小さな体で黒い妖精を支えた。
どうやらウルカは立っている事もままならぬ程、衰弱しきっていた様だった。
「―――かたじけない。かような体でなければユート殿と立ち会い、たたっ斬って頂けたものを。」
ウルカがあきらめたようにオルファに体を預けた。
「やれやれ。―――ったく、何が起こったか知らないが...とりあえずオルファ、
そのお姉ちゃん運んでくぞ。」
とても佳織の事を問い詰める気にならず、悠人はオルファと二人でやつれきったスピリットを支えた。
「瞬が―――!あいつもこの世界に来てたのか!」
ランサの街に戻り、ようやくまともに喋れるようになったウルカに、事の次第を聞いた悠人は驚愕した。
しかし、当のウルカはどういう訳か神剣がまともに扱えなくなり、サーギオスから追放されたという事だった。
「じゃあ、オルファ達の所においでよ!」無邪気にオルファがはしゃいだ。「ねえ、いいでしょ、パパ!」
「おいおい、このお姉ちゃんはエヒグゥとは訳が違うんだぞ。」
苦笑しながらも、悠人はウルカが神剣の力が引き出せなくなった理由に、思い当たっていた。
「ま、やっぱり道具じゃないって事だよな。」妹を連れ去った張本人であったが、
何となくウルカに対して憎めないものを感じる悠人であった。
「ウルカ、行くところが無いんだったらウチに来い。」
「は―――?」悠人の申し出に目を丸くするウルカであった。
悠人達は、哨戒にあたる部隊だけを交代でランサに置き、ラキオス本国と
エーテルジャンプで行ったり来たりの比較的平和な日々を送っていた。
「おい、ウルカ、ちょっと稽古に付き合ってくれよ。」ある日の事、悠人はウルカを詰所の裏に連れ出した。
「どうだ、神剣の声は聴こえるようになったか?」間合いを開けたまま悠人は尋ねた。
「いえ。―――もはや手前には戦士としての能力は残されておらぬかも知れません。」
ウルカがうつむく。
「神剣の声が聴こえなきゃ、自分の声に耳を澄ませる事だな、ウルカ。」悠人は笑って言った。
悄然と立ち尽くすその黒い妖精の姿は、かつての自分と同じものであった。
「じゃ、始めるとするか。ラキオスの―――、一番下っ端の俺が相手だ。」
自分にも『蒼い牙』とか『黒い翼』とかのシャレた別名が欲しいと思う悠人であった。
「しかし―――、ユート殿、神剣をお持ちではないようですが――?」ウルカが怪訝な顔をした。
「俺はこれで充分だ。ウルカが一太刀でも俺に浴びせる事ができりゃ、バカ剣で相手してやるよ。」
悠人は素振り用の木刀を構えた。「―――来いっ!」
「こ、こんな―――、馬鹿な!」ウルカが肩で息をしながら言った。ウルカの剣は悠人にかすることもなく、
虚しく空を斬り続けていた。いくら神剣の力を借りる事が出来ず、動きが鈍っているとは言え、
人間相手に全く歯が立たない事が、ウルカには信じられなかった。
「うーん、型はキマってるんだけどなあ。」対する悠人は息一つ乱れていなかった。
「ま、そのうち体調も戻ってくるだろ。今日はこのくらいにしとこうか。」
「ユート殿、お教えください!その剣技は我流のものではないとお見受け致します。
一体どなたの下で修練を積まれたのですか?」ウルカが哀願するような口調で問うた。
「俺の師匠か...あんまり名前出すなって言われてるんだけど...。」
ウルカなら口外する事もないだろうと思い、悠人はその名をウルカに耳打ちした。
「あの―――伝説の――!生きておられたのですか、あの方が!」
「へえ、やっぱり有名人なんだな、師匠って。」妙に納得する悠人であった。
「ホントはもう弟子は取らない主義らしいんだけど、俺の熱意に胸を打たれたらしくってな。
まあ、師匠の歴代の弟子の中でも、俺はかなりスジがいいって言われてたけどな。」
ついでに張らなくてもいい見栄を張るのがこの男の悪い癖である。
「おお、さすがはラキオスの勇者として名高いユート殿です。実にお見それいたしました。」
深々と頭を下げる素直なウルカであった。
「ちょっとちょっと、どういう事よ、アレ。」
詰所の影に、ひそひそ声で顔を寄せ合う赤い妖精達の姿が有った。
「なんだかすっごく仲良さそうなんだけど。いいの、ナナルゥ?」
「でも、ユート様もウルカを心配して訓練してあげてるんだと思うし...」
ナナルゥが困ったような顔つきでヒミカに答えた。
「それだけではありません!」いつの間に背後に来ていたのか、エスペリアが二人の背後から言い放った。
「うわっ、びっくりさせないでよ、エスペリア!」
ヒミカの言葉に耳も貸さずエスペリアが続ける。
「ユート様の趣味はこの私がよく分かっています。とにかく、弱っているとか、
ケガをしているとかのキーワードに弱いのです。強い女には見向きもしません。
今のウルカはまさにその状況ですっ!」
ギリ、とエプロンの裾を噛みながら、エスペリアが内緒話をしているウルカと悠人を睨む。
「なんだ、それならあなたと一緒じゃないの、エスペリア。」ヒミカがあきれた口調で言った。
「むむ...言われて見れば、なんとなく思い当たるフシがあるわ...」
思い起こせば、自分が骨折をしていた頃が一番優しくしてくれていたような気がするナナルゥであった。
「でも、このまま放っておくのもまずいわね。―――よし、じゃ、こうしましょう、二人とも、協力してくれる?」
ヒミカが何事かを思いつき、三人は顔を寄せ合った。
「俺みたいな勇者様になりたい、か。」
ある日の午後、ラキオスの城下町を散策していた悠人は去ってゆく少年の後ろ姿を見送りながらつぶやいた。
「―――俺、強くなったのかな。」
幸せな気分に浸りながら第二詰所に戻った悠人を、ヒミカが待ち構えていた。
「ユート様、訓練に付き合って頂けませんか。」
「お、それじゃ久し振りに手合わせして貰おうか。」
「おい、ヒミカ、どこまで行くんだ?」
先に立っていつもの訓練場を通り越し、ずんずん進んで行くヒミカの背中に不審を感じ、悠人は問いかけた。
―――ま、まさか責任を体で払ってもらえるとか!?
「この辺りでいいでしょう。ここなら邪魔も入らないし――おや、ユート様、どうかされましたか?
鼻の下が伸びきっておられますが。」
よこしまな考えにどっぷりのめりこんでいた悠人が現実に引き戻される。
「―――はっ!?い、いや、ヒミカ!もっと自分の体を大切にしないと!―――って、あれ?」
よだれを拭う悠人の前に、草陰からエスペリアとナナルゥが姿を現した。
「訓練相手は私一人ではありません。」
ヒミカが『赤光』を構えながら言った。「もちろん、付き合って頂けますね、ユート様?」
「う、うむ、練習熱心なのはいい事だぞ、三人とも。」
妙な考えを悟られないように、慌てて悠人は答えた。
「求め」を構える悠人の前にその三人がずらりと並ぶ。
「むう、三人同時か。赤緑赤とは...シブすぎる組み合わせだぜ。」
「先制攻撃......決めます。」
「ちょっ、ちょっとナナルゥっ、それはやりすぎ...って、ああっ!!」
ヒミカの制止にも、高速詠唱は止められない。
「くううっ、食らっちまたかっ!」何度パッチを当てても修正されない誤植に業を煮やしながら、悠人が呻いた。
「でも、ホントにこれって訓練なのか?私情がまざってる気が―――って!?」
「私の全力で...行きますっ!!」
すでにその身を激情に委ねている、エスペリアの猛烈な刺突が襲いかかる。
「はああぁぁぁ―――っ!!」
「ユ、ユート様っ!大丈夫ですか!?」ボロ雑巾のように崩れ落ちた悠人を三人が抱き起こした。
「お、お前ら...練習熱心なのもいいが...もう少し手を抜いても...いいと思うぞ...ガクッ」
結局最後まで何が起こったのかよく分からない悠人であった。
そんな平穏な日々が続く訳もなく、戦力を整えた悠人達は、再びスレギトを目指し始めた。
道なき道を突き進んでいた悠人達ラキオス部隊の前方から、異様な気配が漂ってきた。
「―――みんな、ちょっと待て。」緊張した声で、悠人は部隊を制止した。
雲ひとつなかった空が突然かき曇り、同時に誰もが経験した事のない衝撃が襲ってきた。
「なんだっ!...これは!」悠人の顔から血の気が引いた。
それは、全開で張ったシールドをものともせずに突き破る雷撃であった。
「へっ、あれをまともに受けて立ってられるとは、たいしたもんだな、悠人よ。」
全身が痺れるのも忘れさせるような、懐かしい声であった。
「光陰!?お前達も...!?」駆け寄ろうとした悠人は旧友の横に佇む少女の姿に息を呑む。
それは、神剣に呑み込まれ、瞳から完全に生気を失った今日子の、変わり果てた姿であった。
「今日子...?それ、今日子なのか?」
「全く、どういう事なのか、な。俺もお前も、神剣を持ってこの世界にいる。
どうやら、今日子をこの剣から引きずり出すには俺達が犠牲にならなきゃならんそうだ。
―――そういう訳で、悠人よ、俺達に殺されてくれ。」
「ま、待ってくれ、光陰!なんで俺達が―――!」
悠人の言葉も聞かず、光陰は少女を抱きかかえる様にして、その姿を徐々に消した。
「ま、今日のところは挨拶だけにしとけってマロリガンの大将に言われてるんでな。」
数週の後。
スレギトに到達したものの、マナ障壁に阻まれ、悠人達はランサに足止めを食らっている状態であった。
結局その後、光陰達と再び邂逅することはなかった。マロリガンの部隊もまた、
ヘリヤの道を越えて攻撃するだけの態勢は整っていないようであった。
悠人は駐屯所の一室で押し黙ったまま座っていた。
「―――ユート様。」赤い妖精がいつの間にか入室して、悠人の横に座った。
「何だ、ナナルゥ?なんか話か?」視線も上げずに悠人はつっけんどんに尋ねた。
「――――――。」ナナルゥもまた、今の悠人になんと言葉を掛けてよいのか分からなかった。
「友達―――だったんだ、あいつら。」やがて、沈黙に耐えかねたように、悠人が重い口を開いた。
「でも...今は、敵です。」返ってきたのは、ナナルゥの静かな声であった。
「ナナルゥなら―――ッ!」悠人は机の上で両の拳をきつく握った。「ナナルゥなら、戦えるのかよっ!!
もし、ヒミカやセリアと戦えって言われたらっ!!」
悠人の声が自然と大きくなる。
「―――戦います。それで、救われるものがあるのなら、私は戦います。」
ナナルゥがきっぱりと言った。
「―――ッ!!」悠人がその紅い瞳を睨みつけた。
「―――でも」ナナルゥが視線を真っ直ぐに返しながら続ける。
「でも、ユート様がどうしても戦えないのなら、仕方がないと思います。今までユート様に頼りすぎていたんです、私達は。
ユート様抜きでも―――私達だけで戦い続けます。」
「――!」エトランジェの力は、スピリットとは比べ物にならぬ程、絶大だった。
悠人は、自分が初めて今日子の雷撃を受けて、その事に気付いていた。
そのエトランジェ戦士を二人も擁するマロリガンの精鋭部隊を、ラキオスのスピリット達だけで迎え撃つのは不可能である。
そんな事はナナルゥにも、充分に分かっている筈であった。
悠人は、ナナルゥの言葉に、自分がいつのまにかナナルゥに甘えている事に、初めて気付いた。
「―――ごめん、怒鳴ったりして。」
「――いえ。」ナナルゥは微笑を浮かべて悠人の拳の上にそっと手を乗せた。
―――なんだよ、俺よりずっと人間っぽくなってやがる。
「なあ、ナナルゥ。」
「はあ。」
突然の問いかけにナナルゥは、出会った頃のような、妙に間の抜けた返事をする。
「友達って...何なんだろうな。」
「友達、ですか?」少し首を傾げたナナルゥは、続けた。
「――――思い出がある人の事じゃないでしょうか。」
漠然とした質問に返って来たのは、悠人自身期待していなかったくらいの、明確な回答であった。
「―――へ?」今度は悠人が間抜けな声を出す。
「私、あんまりいい思い出ってなかったんです。――楽しかったって思える事が。
ヒミカに、心配されてる自分が、嫌でたまりませんでした。多分...心の中も空っぽだったんだと思います。
でも、ユート様とラシードの洞窟で過ごした頃が、今は、ものすごく懐かしいんです。」
ナナルゥがその手で、記憶を追いかけるように胸を押さえた。
少女の、紅い瞳が細められてゆく。―――純白のハイロゥを取り戻したあの日のように。
「ふふ。今でもあの頃の事を思い出すだけで嬉しくなります。ユート様は毎日苦しい訓練ばっかりだったから、
余り思い出したくないかも知れませんけど...でも、私は全部憶えています。
ミュラー様に教えてもらった事も、ユート様が言った事も、した事も―――泣いた事も、何もかもです。
私にとってはあの思い出が、宝物なんです。」
悠人は本当に嬉しそうに話す炎の妖精の笑顔を、ほうけたように見つめていた。
それは、焚き火の前で、悠人が心から美しいと思った、あの笑顔であった。
「――ナナルゥ。」
「はい?」
「綺麗だ。」悠人はそう言うのが精一杯だった。だが、ナナルゥは一瞬何を言われたのかよく分からないようだった。
「え―――?」充分な間を置いてから、悠人の言葉にナナルゥが驚きはじめた。その顔に、見る見るうちに朱が注がれる。
「なっ、と、突然何を言い出すんですか、もうっ!」
髪の毛から耳の先まですべてを鮮やかな緋色に染めて、紅の疾風と化した炎の妖精が、部屋の外へ逃げ去っていった。
「す、すごい数ですねえ...」
聖ヨト暦330年、スフの月。
ヨーティアの尽力により、マナ障壁の解除に成功したラキオス軍は、
制圧したスレギトで、次々と集結してくるマロリガン兵達を眺めていた。
「怖いか、ヘリオン?」
朗らかな口調で悠人が語りかけた。
「い、いえ、そんな事は!」悠人をキッと睨み返して黒い妖精の少女が答える。
「ま、戦いは数だけじゃない。今の俺達なら充分、勝てるさ。」
明るく振る舞う悠人だったが、さすがに今回は自信が持てなかった。敵は眼前のスピリット兵達だけではない。
「ユート殿!出遅れて申し訳ありません!」
急ぎランサから飛翔してきたウルカが、悠人の目の前にひらりと舞い降りた。
「ウルカ―――!もう、体は、大丈夫なのか?」
問いかける悠人にサーギオス最強と謳われたブラックスピリットが力強く頷く。
「ユート殿のおっしゃられた通りです。ようやく手前にも己の声が聴こえるようになりました。」
そう言ってウルカは携えた神剣をいとおしむように撫でた。「必ずやこの剣で、ユート殿に恩を返させて頂きます。」
『冥加』―――それがその神剣の新たな名だ、ウルカはそう言った。「手前の――命に代えましても、必ず。」
「あんまり気張りすぎるなよ、ウルカ。」
悠人はそう言って笑みを浮かべ、スピリット達を見回した。
―――そうだ、俺はもう、一人ぼっちじゃないんだ。
この世界で、出会い、一時は神剣に呑み込まれそうになった自分を見捨てることなく、
快く許して迎え入れてくれた仲間達の姿がそこにあった。
そして、どの仲間も出会った頃とは比べ物にならないほど、逞しくなっていた。
「さて、敵さんがお待ちかねだ。みんな、適当に片付けて行こうか。」
そう言った悠人の目は遠く、マロリガンの街を望んでいた。
かつて、親友だった者達が待っているであろう、その街を。
576 :
あとがき:04/10/18 17:02:15 ID:TSBH2ZRm
ネタでも混ぜないと恥ずかしすぎて書いてられない第七部でした。
...序盤のあの展開はなんだったんだ?
でもヒロインは、まだまだパワーアップする予定です。
こっそり投下して、撤収!
ええ子や…ナナルゥ、あんたホンマにええ子や〜。
サポート、相談役に徹するヒミカ姉さんがやはりイイですね、
色々と頼りになっていてくれそうで。
スレの中で受け継がれて来た味がどんどん広がっているように思います。
>>576 憂鬱の人さん
……多分、572で最接近しました(何が
それはそうと568辺りからニヤニヤしっぱなしですw
悠人vs光陰・今日子がどう描かれるのかも楽しみにしてます。
うお、王道だよ。唇歯輔車だよ。ウルカ相手に範垂れてるよw 体で払ったのはユートだったよw。
!!! GJ !!!
今日子光陰をどう描くのでしょうか怖さと期待が同居中です。
おっと、強い女は不要なようなので引き取りますね。
レスティーナ「ラキオス最強のスピを見たいか―――ッ!!!」
「「「「オ―――――――ッッ!!!!」」」」
レ(私もです…私もです皆さんッ!!)
レ「選手入場ッ!!」
全選手入場です!!!
竜殺しは生きていた!!
更なる神剣を得て主人公が蘇った!!
聖賢者、高峰 悠人だァ―――ッ!!!!
赤スピ剣術はすでに私が完成している!!
<赤光>ヒミカ・レッドスピリットだ―――ッ!!!
組みつきしだい舐めまくってやるッ!!
エロチック代表、<献身>エスペリア・グリーンスピリットだァッ!!!
真の先制攻撃を知らしめたい!!
寡黙なる魔法使い、<消沈>ナナルゥ・レッドスピリットだァ!!!
全スピリットのベスト・ツンデレは私の中にある!!
青スピのお姉さまがきたッ!!
<熱病>セリア・ブルースピリット!!!
タイマンなら絶対に敗けん!!
黒スピの剣技見せたる!!
漆黒の翼<冥加>ウルカ・ブラックスピリットだ!!!
バーリ・トゥードならこのスピが怖い!!
ラキオスのピュア・ファイター!!
<理念>のオルファリル・レッドスピリットだ!!!
デカアァァァァァいッ説明不要!!
たゆんたゆん!!
<大樹>ハリオン・グリーンスピリットだ!!!
くーるな女に磨きをかけ!!
<静寂>ネリー・ブルースピリットが帰ってきた!!!
日本ウン千年の年齢が今ベールを脱ぐ!!
カオスエターナルから倉橋 時深だ!!!
日本古来のハリセンが今振るわれる!!
エトランジェから<空虚>岬 今日子だ!!!
ょぅι゙ょの前でなら俺はいつでも全盛期だ!!
萌えるロリコン<因果>碧 光陰、本名で登場だ!!!
第二詰め所の仕事はどーしたッ!?ちゃっかり者のあざとさ未だ無くならずッ!!
漁夫の利も涙ぐむも思いのまま!!
<孤独>シアー・ブルースピリットだ!!
特に理由はないヒロインが強いのは当たり前!!
他の青スピには内緒だ!
ラキオスの蒼い牙!<存在>のアセリア・ブルースピリットだ!!
シエン
実戦だったらこのスピは外せない!!
超A級神剣魔法使い、<曙光>ニムントール・グリーンスピリットだ!!!
黒スピ剣術はこの女が完成させたッ!!
ラキオスの切り札!!
<月光>ファーレーン・ブラックスピリットだ!!!
幼きスピリットが現れた!!
何処に行っていたんだ黒スピリット!!
私たちはお前を待っていた!!
<失望>ヘリオン・ブラックスピラットの登場だ―――――ッ!!!!
レ「以上17名によってラキオス最強争奪戦を行いますっ!!
くわえて負傷者発生に備え超豪華なエターナルを四名
用意しました!!」
<無我>タキオス!!
<不浄>ミトマセール!!
<流転>メダリオ!!
「……ッ!どーやらもう一名は到着が遅れているようですが
到着しだい皆様にご紹介いたしますッッ!!」
ついカッと(rya
一度はやってみたかった…
ファンタズマゴリア最強の生物を決める戦いだw
スマソ…携帯でカキコんだら誤字だらけ…
ントゥに灼かれてくる
支援dクス
へたに負傷すると大変なことになりそうな所がなんとも……
>>586 お―――っとォォ!!
携帯からこれだけカキコむのかぁ――ッ!?
一体どんな携帯だァ――ッ!?
やっぱみんなウルカみたいなレオタードで戦うのだろうか...(←悠人・光陰は除外)
>>577 ユートが作者並みの低マインドだったら押し倒していたことでしょう、ヒミカさんをw
ちなみにそのヒミカ姐はサポートではなくディフェンス役です。(←何てベタなレス...
照れ隠しに無印フリークには今さら〜〜な解説を。
緑アタック・ソニックストライク
赤ディフェンス・Fクローク
赤サポート・イグニッションorアポU
これで超攻撃的編成の出来上がり。敵サポが青の場合を全く計算に入れていない
いさぎよすぎる組み合わせです。
>>576 G J。
このシリーズ今までの作品で一番好きなんで楽しみにしています。
絵師様方どうか、ミュラー絵の補完を、、、。
>>580-583 >デカアァァァァァいッ説明不要!!
めちゃめちゃワラタ。
>>578 ニアミスでしたか...
ちなみにその戦いはタッグマッチになります。
>>579 ウチのは本当に「永久凍土」ですので持ってって
溶かしてあげて下さい。
多分デレデレセリアは恥ずかしくて書けません、私には。
ナナルゥまでが精一杯...orz
あの描写では絵師様も描きにくいかも。そんな
>>589さんにネタばらしを。
昔Z(ゼータ)ガンダムていうアニメがあって、それに出てくる
フォウ・ムラサメって娘がすっごく美人だったんで、そのイメージです。
>萌えるロリコン<因果>碧 光陰
一瞬、光陰が萌えるロリキャラだという風に読んでしまった……
「光陰です……」
「ニムントールちゃんにすごくバカって言われたとです……」
「光陰です……」
「AAの『因果』がどこでもドアに見えるとです……」
「光陰です……」
/| 「ワールウインドZを残してしまったとです……」
/i | 「光陰です……」
| | | 「風呂のお湯がいつも新しいとです……」
| | | '´⌒ ヽ 「光陰です……」
|《]| | ゙「_~~_i 「スプーンに「コウイン専用」と書いてあったとです……」
| ||| ヾ(! 'A`ノ <「光陰です……」
| |||⊂「[]! Y![]つ 「洗濯物が無くなった時に真っ先に疑われるとです……」
| !メ ノ_!!人!ゝ 「光陰です……」
|/ /_ノ >_> 「住職は俺のことだと思うとです……」
「光陰です……」
「『因果』で気配を消したら、晩飯に呼ばれなかったとです……」
「光陰です……」
「最近、今日子にさえつっこんで貰えません……」
「光陰です……光陰です……光陰です……」
俺たちはとんでもない思い違いをしていたのかも知れない!
まず、エスペリアは神剣を暴走させる禁忌の技術を持っている。
そして、エスペリアの攻撃スキルには「ストライク」が付く……
これは――エスペリアはファイナルストライクを使えると言う伏線だったんだよ!
な、なんだってー(AA略
※ファイナルストライク:全エネルギーを暴走させる事によってオーロラを生み出すほどの強力な一撃を繰り出す技。代償として剣が壊れてしまう。
「カ、カオリ」
「間に合った!このままハイペリアに帰ったんじゃかっこ悪いまま歴史に
残っちゃうからね!」
「ふっ・・・何をごちゃごちゃと・・・お前から始末してやる!」
「上等です!このわたしが・・・倒せますか!?」
「オルファ!オルファのエヒグゥ・・・かわいかったよ!」
「・・・カオリ・・・」
「アセリアさん!少しはお料理でも覚えて女の子らしくなってください!」
「・・・・・・」
「エスペリアさん!いつまでもみんなをいたわる、優しさを忘れないで!」
「・・・・・・」
「お兄ちゃん!お兄ちゃんとは一度一対一であんなことやこんなことしたかったよ!
いいお友達ができたね・・・・・・」
「・・・佳織・・・」
「死ね!」
「それは!こっちのセリフです!」
自爆
でもメインキャラ死亡によりゲームオーバー。
佳織がなんか変な人に・・・ってか相手だれやねん・・・
今は激しく反省しているorz
596 :
風変わり:04/10/19 20:24:02 ID:TIRgO2hN
もう十日……もう十日も立っちゃってるorz
最近、ちょっと忙しくて家に帰ったら寝るだけの生活……
というか、風邪をひきました……セリアー、看病をー
おかげでなかなかBRの続きが完成できませぬ
>>580-583 | Λ
|ω・)
| )b ビシッ!!
|/_|
|'ノ
なんとか今月中に書き上げて見……せる。
(待ってる人いるかどうか知りませんが……もしかして忘れられてたりしてorz)
>592
ガンガレ…………そのうちある人に一目惚れするからガンガレ。
(;´д⊂
>549
>それだけヨフアルが在っても一回に16個を平らげればあっという間に無くなりそうですねw
永遠存在悠人を手に入れたレスティーナのSスキル「ヨフアルVIII」なんてのがあったり。
http://web.archive.org/web/20040214024616/http://www66.tok2.com/home2/kanzou/Aselia/lestiina/ 肝心なところが見えない
http://www66.tok2.com/home2/kanzou/Aselia/lestiina/ 消えてる…………ので抜粋。作者さんごめんね。
ヨフアル8(Limited skill)
修得Lv:初期
Lv:16 属性:緑
対HP効果:100% 最大回数:16 行動回数:8
種別:すべて(ab)
ターゲット:支援【味方】 ターゲットスキルLV:16
マインドバランス:0〜100
ヨフアルを食べてHPを回復するスキル。
スタート、アタックサポート、ディフェンスサポート、アタック、ディフェンス、ディバイン
マジック、インタラプト、エンドタイミングに一回ずつ、計8回発動する特殊なスキル。
一度の戦闘で8個もヨフアルを食べる姿に敵も味方も呆れるばかり。
アンチブルースキルのため、誰にも邪魔されずに食べることができる。
発動ボイス1
レスティーナ
「胃袋の限界を超える……。
食を求めた結果、私はここにたどり着いた!」
「ウォォォォォォォォォッッ!!」
--------------------------------------------------------------------------------
発動ボイス2
レスティーナ
「この程度ではないぞ。
焼きたての美味しさ、とくと味わってやる!」
599 :
憂の字:04/10/19 22:47:14 ID:QgDUdWyH
>多分デレデレセリアは恥ずかしくて書けません、私には。
何か嫌味っぽいので補足します。
サルヴェージでセリアを書いてて、余りにも自分に似すぎてるので
これ以上(特に恋愛感情なんて)内面描写出来ない、という意味だったんです。
>>596 最近お見かけしないと思ったら...
忘れたりしてませんよ〜。
休養充分の状態で続編がんがって下さい。
ウチのセリアを見舞いに寄越します。
「何サボってんのよ。さっさと続き書かないとアイスバニッシャーくらわせるわよ!」
...元気出ました?
600 :
549:04/10/19 22:58:39 ID:gDWlqISv
>598さん
頭の中ではそのページを思い浮かべてレスしたんですが、
行動回数うろ覚えのまま16個って書いたらミスってた…
補足サンクスです。
第一詰め所がやけに騒がしい。
神剣魔法の訓練をしていたナナルゥは、やや気になって詠唱を止めた。
「あら〜?ナナルゥ、どうかしたのですか〜?」
にこにこしながらハリオンが首をかしげている。
先程からそこにいてじっとナナルゥの訓練を眺めていたのだが、気にも留めていなかった。
初めてそこに居たことに気付いたかのように、ナナルゥはゆっくりとそちらを向く。
「…………なんでもありません。」
「そうですか〜。ああそういえば今日は、ユ〜トさまの元にカオリさまが戻られる日でした〜」
「………………」
自分の心を見透かされたようでやや不快だったが、なるほどそういう事かと納得は出来た。
しかし今のナナルゥにはそれ以上の興味も感想も湧かない。再び神剣魔法の詠唱に入る。
「ユ〜トさまは嬉しいでしょうねぇ〜。カオリさまとはずっとお会いしていないそうですから〜」
何の為にここにいるのか判らないハリオンが、のんびりと話し続けている。
(嬉しい?……ふーん…………)
精神集中がやや乱れた。ナナルゥはもう一度最初からやり直そうと、一旦構えを解く。
そんなナナルゥを、優しく微笑みながらハリオンは見守っていた。
はぁっ、はぁっ、はぁっ………………
暗闇の中、少女が怯えている。抱え込んだ膝の震えを両手で必死に抑えている。
はぁっ、はぁっ、はぁっ………………
息遣いがやけに大きく響く。全身を駆け巡る心臓の鼓動。噛合わない、奥歯。
はぁっ、はぁっ、はぁっ………………
緊張は既に、少女の神経を限界まで追い詰めている。このままでは焼ききれてしまうだろう。
その肩にそっと手を添えてみる。ひっと小さく息を飲む気配。もう大丈夫。私が、守るから。
――――――振り向く瞳。そこに浮かぶのは、ただ、「恐怖」。
少しだけ昔の、大切な出会い。大事な記憶。
「………………朝、ですね〜」
自室のベッドの上、ぽやぽやと呟く。朝の日差しが柔らかい。今日も良い一日になりそうだ。
彼女にしてはだいぶ覚めてきた目をこすりながら窓際に向かう。窓を開くと気持ちの良い風が流れてきた。
窓の外、中空には雲一つない空。それに明るい太陽。訓練場の方からは皆の元気な掛け声が聞こえる。
「あらあら〜〜?」
のびをして、誰にとも無く呟く。天高く輝く太陽を眩しそうに見つめながら。っていうか。
「もうお昼でしたか〜〜〜」
訓練場で、ヒミカが『赤光』を振り回しながらこちらを見て何か叫んでいた。
「まったく、居ないと思ったらこの時間まで寝ているなんて…………」
目の前で大げさに溜息をつきながら、ヒミカが心底呆れた、という風にハリオンを見ている。
ハリオンも、心底困った、というような顔でヒミカに反論してみた。
「え〜でも〜、あの後私はご飯を頂いてきましたから〜、正確には今まで寝ていたのではなく〜」
「アンタね!あれだけ大声で呼んだってのにのんびりご飯食べてきたっていうの?!」
間髪入れずにヒミカの鋭い突っ込みが入る。
「今日の朝ごはんは美味しかったですよ〜。慌てて食べるのはもったいないです〜」
「もう『朝』ごはんじゃない!ってはぁ〜〜〜…………もういいわ、訓練に入って。」
こめかみを押さえ、頭痛に耐えるように溜息を漏らすヒミカ。
しかしハリオンは、わかりました〜と言いながら森の中に歩いて行こうとしていた。
「…………ちょっと待ってハリオン。アンタどこに行こうとしてるの?」
「え〜〜?ですから訓練に〜〜」
「いやだから、訓練って…………そっちはナナルゥが…………」
微笑みながら去っていくハリオンに対して、ヒミカは何故か声を掛けることが出来なかった。
神経を集中し、『消沈』と意識を繋げる。同時に紡がれる詠唱。
それが暗示となり、躯の周りにスフィアハイロゥが展開される。
凝縮していくハイロゥはやがて一つの塊となり、そして矢が放たれるように開放された。
一瞬。轟音と共に遠くの岩がこなごなに砕け散る。それを見てナナルゥはほぅ、と体の力を抜く。
イグニッション。今ナナルゥが使える最大の技である。それ以上は何となくまだ覚える気は無かった。
ちら、と横に座る人物に目を向ける。
グリーン・スピリット、『大樹』のハリオン。相変わらずぼーっと視線が定まっていなかった。
神剣魔法の威力が大きくなるにつれ、集団の中ではかえって周囲に危険を及ぼすと、
ナナルゥはこの頃一人で訓練をすることが多くなっていた。
ひとつには、一人の方が意識を集中し易い、というのもある。それはむしろナナルゥ向きともいえた。
しかし最近、このハリオンがいつの間にか側でそれを見ているようになっていた。
最初は集中に支障をきたすと思い煩わしかったのだが、それもじきに慣れた。
それというのもハリオンは、いつも側で座っているだけで他になにをする訳でもないし、
話している時も果たして自分に話しかけているのかそれとも独り言なのか判断に困るものばかりだったのだ。
そんな訳で、今ではナナルゥはハリオンを半ば黙殺するようになっていた。
しかし今日は、そんなナナルゥも少なからず心に衝撃を受けざるを得なかった。それというのもハリオンが……
「く〜〜〜………………」
寝ていた。
いや、寝ている事はさほどの問題でもない。
普段の彼女の行動を見ていれば、そんな事は驚くほどの事ではないだろう。
しかし今、ナナルゥは神剣魔法を放ったのだ。それも、今の彼女が放てるものの内でも最大級のヤツを。至近距離で。
その轟音や衝撃波や閃光の中で、こうも安らかに眠れるものだろうか?
しかもハリオンの頭上。そこにいつの間にか浮いている緑色のリング…………
そう、彼女はシールドハイロゥを展開させつつ居眠りをしているのである。
側では主を守るが如く、『大樹』が光を放っていた。
「……………………」
微笑みながら寝こけているハリオンを、ナナルゥは唖然としてただ見つめていた。
戦士であるスピリット達にももちろん休日はある。
ファンタズマゴリアでも珍しい程寛容なラキオスの政策により比較的自由な身分である彼女達は、
休みを利用して各々の趣味を楽しんでいる。
そんなある休日のこと。
ナナルゥは、郊外にある高台へと足を運んでいた。
頼んでいた散髪用の鋏を入手したついでに同じく洗髪用の薬草を取りに行こうと思ったのだ。
詰め所内で頼まれている内にいつの間にか趣味みたいなものになってしまった髪結い。
ナナルゥ自身は自覚してはいないが、そのこだわり方は既に本職を凌いでいた。
最近特に拘っているのは髪を柔らかくする為の薬草。
もともと凝り性なナナルゥの部屋には既に数十種類の薬草が並んでいる。
しかしそれらをどう調合しても、どうしても柔らかくならない髪の持ち主がいる。
「……あの方の髪は、一体どうなっているのだろう……」
エトランジェとは、ファンタズマゴリアの人々と髪の組成まで違うのだろうか。
針金の様な髪では、散髪も洗髪もし辛い。
そう考えたナナルゥは、今まで幾度となくこっそり調合した色々な薬草を使って
彼の髪を柔軟にしようと格闘してきた。…………もちろんその臨床実験を悠人に断ったことはなかったが。
だが今のところ、努力の成果は残念ながら現れてはいない。
何が足りないのだろう……と考えた所でナナルゥはふと足を止めた。
高台の広場。そこで悠人が見慣れない女の子と何かを話していた。
反射的に身を隠す。隠してから、何で隠れるんだろうと自問自答していた。
「何故隠れるのですか〜?」
とたん、すぐ後ろから声を掛けられる。ナナルゥは思わず叫びそうになった。
「あらあら〜?あれは、ユートさまですね〜?」
相変わらずのんびりとした口調で話すハリオン。不覚にも全然気付かなかった。
「……どうしてここに?」
動悸を抑えつつ、冷静を努めて訊いてみる。
「なにか良い雰囲気ですねぇ〜。ユートさま、楽しそうです〜」
質問は全く無視された。ナナルゥは諦めて視線を悠人達の方に戻す。
「……………………」
確かに楽しそうだ。悠人は凄くリラックスしている様に見える。
相手の娘も嬉しそうだ。話しながら、ころころと笑っている。
ふと、なにかちくり、としたものを胸に感じた。
「………………?」
なんだろう、と胸にそっと手を当てる。動悸がまた少し早くなっていた。
さっきハリオンに不意を突かれた時とは明らかに違う異変。
胸の中がなにかざわめいている。これは…………不快感?
「あら〜?話が、聞こえてきますね〜」
その時風に乗って、二人の会話が流れてきた。
ハリオンの声に我に返ったナナルゥは、思わず耳を傾けてしまう。
かすかに聞こえてくる女の子と悠人の声。
「レッドスピリットも情熱的な人が多いんだって。」
「情熱的…………」
「…………情熱、的?」
期せずして悠人とナナルゥの呟きが被った。
そっと横にいるハリオンの様子を窺う。
案の定、ハリオンはにこにこと微笑みながらナナルゥの顔を見つめていた。
「…………なに?」
「いいえ〜。何故隠れているのかなぁと思いまして〜」
「……………………」
最初の質問に戻されてしまった。しかし逆に今度はその意味を考えてしまう。
何故私は隠れてしまったのだろう…………二人に見つかりたくなかった?私が?何故?
それはさっき感じたものとなにか関係があるのだろうか…………
「あらあら〜。ユートさまったら、手なんて握ってますよ〜?情熱的ですね〜」
どくんっ!
再び遮られた思考。慌ててそちらを見てみると、確かに二人は手を合わせている。
よく見ると、指を絡めているようだ…………なにをしているのだろう?
…………気になる。他人の動向がこんなに気になるのは初めてだった。
更に大きくなった鼓動の中に、なにかもやもやしたものを感じる。
先程の不快感とは又少し違う感覚。なぜかもうこれ以上、ここに居たくない気がする。
きびすを返し、歩き始める。ハリオンが何か言っているが、聞こえなかった。
気になるのに見たくない。
そんな不思議な感情を持て余しながら、ナナルゥは足を早めた。
薬草を取り忘れた事に気付いたのは、詰め所に着いたあとだった。
ナナルゥは第一詰め所に来ていた。訓練の成果を悠人に報告する為だ。
いつもはヒミカが行っているのだが、たまにナナルゥが頼まれる事がある。
なんでもキャクホンのシメキリが迫っているのだそうだ。
よく判らないが忙しそうなので、ナナルゥは黙ってそれを引き受けた。
悠人の部屋に行ってみたが不在だったので、廊下を歩きつつ探してみる。
大浴場の前まで来た時、中から声が聞こえてきた。
「ぶっはぁっ!」
聞き覚えが有る声。なるほど、入浴中ですか…………
戻ろうとしたナナルゥの耳に、明るい大声が飛び込んでくる。
「えへへ〜、パパの負けぇ!」
ぴたりと足が止まる。……オルファリル?
「お、お兄ちゃん、大丈夫!?」
続いて止めを刺すような佳織の声。
ナナルゥは大浴場の入り口を見つめたまま動けなくなった。
(一体何故カオリさままで………………)
疑問が頭の中を忙しく巡る。
男性と女性が一緒に……という事の意味はナナルゥもある程度知っているつもりだった。
もちろんナナルゥも何回か悠人と大浴場に入ったことはある。
しかしそれは洗髪の為であって、一緒に入浴する、という訳ではない。
ナナルゥにそんな意識はもちろん無かったし、悠人にもそれがあったとは思えない。
しかし今、悠人はオルファリルと一緒に大浴場にいる。
つまりはそういう事なんだろう、と思うのだが、そこにカオリさまがいるのが解せない。
よく知らないけど、そういうのは男女一対のことなんじゃないだろうか?
考えていると、また胸の辺りがちくり、と痛んだ。何故だろう、いたたまれなくなってくる。
「ラキオスでは、大切な人の背中をお風呂で洗うってことはすごい良いことなんだよ〜?」
オルファリルの楽しそうな声を背に、ナナルゥはとぼとぼと大浴場を後にしていた。
…………大切な人………………最後に聞こえたその意味が足どりを更に重くしている。
直後、後ろの方からなにか騒ぎ声が聞こえてきたが、ナナルゥには届いていなかった。
『消沈』に神経を集中する。体を構成しているマナを視覚化出来るようにイメージする。
展開するスフィアハイロゥ。神剣魔法を詠唱しようとして、そこでナナルゥは諦めた。
ふぅっと溜息をついて剣を下ろす。やはり集中できそうにも無かった。
横で座っているハリオンに目を移す。
ナナルゥが振り向いたのに気付き、にっこりと微笑を返してくる。
それを確認してその側に座る。それを待っていたかの様に、ハリオンは話し始めた。
「わたしがいると、お邪魔ですか〜?」
先程自分が詠唱を中断した事を言っているのだろう。
さほどすまなそうにもないその口調に思わず苦笑が漏れる。
めったに見せないその僅かな変化にハリオンは目を細めて微笑んだ。
「そういえば昨日、ユートさまがお風呂で〜」
いきなり飛び込んできた悠人の名前に、ナナルゥの顔が強張る。
そもそも何故かそれが原因で今日の訓練が上手くいかないのだ。
今はその話題に触れたくなかった。
しかしそれを知ってか知らずかハリオンは話を続けている。
「オルファさんに襲撃されたそうですよ〜」
「…………襲撃?」
あまり風呂に相応しくない単語が飛び出した。
「ええ〜。それでエスペリアさんがそれはもう大変なことに〜」
なにが大変なのかよく判らなかったが、その疑問とは別の事が口から突いて出た。
「……カオリさまも、居らっしゃいました。」
「あら〜?なぜしっているのですか〜?」
「…………そんな事より、何故三人は一緒に入浴を?」
「あ〜、それはですね〜…………」
元々気乗りしないはずの話題に自分から参加している。
ナナルゥはそんな自分をどこか不思議に感じていた。
腰の『大樹』を壁に立てかけ、そのままベッドに潜り込む。
目を閉じると緩やかな眠りに包まれていく。
心地いいその感覚に身を委ねながら、ハリオンは今日の出来事を振り返っていた。
「それでは……」
「ええ〜、別にユ〜トさまが望んだ事じゃないと思いますよ〜」
「そ、そうなのですか……」
「……ナナルゥ、なんだか嬉しそうですぅ〜」
「そんなことは……ありません。」
そう言って訓練に戻ったナナルゥは、隠してたけど首筋がほんのり赤かった。
あんなに素直に表情を出した彼女を見たのは何時以来だろう。
あれは雨の日。そう、初めてナナルゥと出会ったあの日…………
思い出に浸りながら、ハリオンはそのまま夢の世界に溶け込んでいった。
朝誰も居ない内に……
初めての分割連載になります『安息』です。
既にラストまで書き終わっているのですが、長すぎる(またか)ので今回このような形での投稿になりました。
章単位で8回です。一応ナナルゥ、ハリオン、ヒミカ嬢補完なのですが、位相的には6本の軸で構成してます。
時間設定は北方5国制圧直後からマロリガン制圧まで。アセリアルートを追っています。
例によって興味の無い方は遠慮なくスルーお願いします。
ナナルゥ 髪結いの人さん「髪結いの亭主」より
ヒミカ 寸劇の人さん「寸劇@第二詰め所」より
U−7 冒頭ヒミカのセリフ 憂鬱の人さん「エスペリアの家出」より
それぞれ勝手に設定を拝借してしまいました。
意識して使ったのはこれだけだと思いますが、知らず使ってしまったのもあるかも知れません。
事後承諾になってしまいました事をお詫び申し上げます。
信頼様
>一応ナナルゥ、ハリオン、ヒミカ嬢補完なのですが
赤緑赤とは...シブすぎる組み合わせだぜw
でもホントにかぶっちゃいましたねー。
私のほうはハリオン―ナナルゥラインはほとんどありませんが。
でも似ているようでもやっぱり、書き手が違うとこうも雰囲気が違うものか、とびっくりしてます。
頼印ナナルゥ、これからの展開を楽しみにしてます。(ビビりながら)
ヒミカは「家出」では一言も喋ってなかったと思いますが、
使えそうな物があればいくらでも持ってって下さい。
……時代はナナルゥなのか!?
Sir! Yes, Sir!
>安息
ハリオンさん、全てを画策してそうな御仁ですな。寝ててもそれじゃ寝込み襲えないですよ?
ナナルゥ、インフォームドコンセントw ハーバルエッセンス(;´д⊂ おそらく気が付いてない>悠人
ヒミカさん、絵本から戯曲まで。そのうち部屋に缶詰にならないと。
赤と緑は捕食の関係……あチガ、補色の関係。どのように絡み合い昇華するのか楽しみです。
あ、と。「腰の『大樹』を」というのはどうでしょう。槍型ですから。まぁハリオンだから納得しますが。
ナナルゥネタは「髪結いの亭主」の後日談くらいしか思いつきません。お二人の『安息』と『SALVAGE』期待しております。
さて、ここは未踏の処女地、単品シアーねたでも仕込むか……。
>>596 BRもいいのですが前回のセリア百合物、もしくは心変わりの続編もきぼんします。
>>安息
GJです。
>アセリアルートを追っています。
てことは悠人との恋愛要素は薄めになりそうですな。
つーかみんないい加減別の男に走ってもいいんじゃないかと思うんだが。
ここのSSは世界設定ぶち壊しにするような
異常な強さのオリキャラとか出てこないので安心出来ます。
>>613 「話す前後にソゥと言え!」
「ソゥ、キス、ソゥ!」
…だっけか?
「何とか、ひと区切りついたって感じだな。」
悠人は他のスピリット達を見回して言った。
スレギト防衛戦が始まってから数週間が経過していた。
新戦力のウルカや、ヨーティアの側近・イオの要害設置もあって、悠人達ラキオス部隊は
マロリガン兵を撃退させることにほぼ成功していた。
負傷者の数も半端ではなかったが、ハリオン、エスペリアといったグリーンスピリットが
救護係に徹していたお陰で致命的なダメージをこうむった者もいなかった。
「もうちょっと歯ごたえがあるかと思ってたのにね。」セリアが余裕の表情を浮かべる。
以前なら悠人が不快に感じていた、そういったセリアの言動も、慣れたせいなのか、
今では頼もしくすら思える悠人であった。
悠人は主力をスレギトに残し、南下することを決断した。
まだ、少人数ずつではあったがスレギトへのマロリガン兵の攻撃は完全に沈静化してはいなかったのだ。
偵察隊によると少し遠回りにはなるが、デオドガン・ガルガリンを経由するルートが
比較的敵の守備が薄い、という事だった。
「じゃ、出発しようか。」
悠人と行動をともにすることになったのはヒミカ、ハリオン、そして、このところ火焔魔法が
いっそう強力になったナナルゥの三名であった。
「―――ご武運を、ユート殿。」微笑を浮かべて見送るウルカに頷き返し、悠人達はスレギトを後にした。
悠人達の進撃は快調であった。
しかし、なかなか姿を見せないかつての親友たちに、悠人は漠然と不安を感じるようになっていた。
「ユート様。」敵部隊を撃破し、先を急ごうとする悠人にナナルゥが言葉を掛ける。
「ん?何だよ、ナナルゥ?」
「―――焦らないで。」ナナルゥの、いつもの静かな声だった。
悠人は溜息をついた。本来なら自分が言うべき事であったその短い言葉が、
悠人の心に沁みこみ、冷静さを取り戻させる。
―――もし、あの時。
悠人はかつての自分に思いを馳せた。スピリット達から孤立していた自分。
あの時、もしナナルゥがいなければどうなっていただろうか、と。
「求め」に命令されるがまま部下達を次々と蹂躙していたであろう自分を、本当に紙一重で繋ぎとめ、
そして神剣に沈み込んだ悠人を引きずり上げててくれたのは、寡黙な赤い妖精だった。
「よし、今日は日も暮れてきたし、ここらで野営しようか。」
「あらあら〜、見てられませんね〜。」
仲良さげに焚き火の準備をする悠人とナナルゥを遠目に見ていたハリオンが、ヒミカをつつく。
「何も砂漠の真ん中で焚き火しなくてもぉ〜。」
「なによ、羨ましいの?ハリオン。」ヒミカが笑う。
「まさか〜。ふふ〜、あんな手のかかる甘えんぼが相手じゃあ、ナナルゥも大変ですね〜。」
ハリオンは二人を見守る母親のように目を細めた。
―――でも、良かった。
ヒミカは胸の内でつぶやいた。ナナルゥが自分からだんだん離れてゆく事に一抹の寂しさは感じていたが、
それもまた自分が望んでいた方向であった。
―――このまま、何もかもうまく行けば良いんだけど。
マロリガンの首都が近付いていた。
「――見えてきたな。」
砂漠の彼方に蜃気楼のように浮かび上がる都市が悠人達の視界に入る。
この数日は全く敵の迎撃もなく、怖いくらいに静かな道を、悠人達は進軍していた。
その時、悠人の腰で「求め」がブウン、と唸った。
「――お、電話か。ヨーティアかな。」
悠人は砂漠の熱を吸って、熱くなっている刀身に耳を当てた。
『ユート、まずいことになった。』それはいつもの、人を食ったような口調ではなかった。
『マロリガンで神剣が暴走し始めている。このまま放っておくと、大陸ごと吹っ飛ぶくらいの規模のマナ消失が起きるぞ。』
「―――何だよ、それ――!」悠人は言葉を失った。
ヨーティアの説明によると、マロリガンの大統領、クェド・ギンという男の動きによるもの、という事であった。
『ユート、あの男を、止めてやってくれ。』ヨーティアは苦しげな声で続けた。
その男は、サーギオスの研究所で働いていた頃の、ヨーティアのかつての恋人でもあった。
「ちょっと急がなきゃなんないみたいだな、みんな。」悠人は振り返って、スピリット達に言った。
「ユート様、あそこ...」ヒミカが前方を指し示した。
その先で、街の影に重なって、人影がゆらゆらと砂漠の熱気に揺れていた。
「―――出てきやがった。」悠人がその人影に眼を凝らす。巨大な双剣を携えたその影に。
「みんな、下がっててくれ。」
そう言って悠人は独りで歩き出した。エトランジェ同士の戦いにスピリット達を巻き込むわけには行かなかった。
「大丈夫よ、ナナルゥ。」不安げなナナルゥの肩を、ヒミカがそっと抱いた。
「ユート様なら...何とかするわよ。」
「遅かったな、悠人よ。」光陰が微笑を浮かべる。その顔を見ているだけなら、
これから二人が戦う事など信じられないほどの穏やかな表情であった。
「―――今日子は、どうしたんだ?」悠人は緊張に声を上ずるのを感じながら、光陰に問うた。
「じゃじゃ馬姫さまなら向こうで待ってるよ。―――俺か、お前が来るのを、な」
光陰の表情に、わずかに淋しさがいり混じった。
「さあ、やりあうとするか、悠人。手加減は抜きで相手してやるぜ。」光陰が双剣を構える。
その神剣「因果」が静かな、しかし、研ぎ澄まされた殺気を放っていた。
「どうしても、やらなきゃダメなのか、光陰?」
自分でも無駄だと分かっていながら、悠人はその質問を口にする。
自分一人が死んで、今日子が救われるのなら、友達と戦うよりマシだと、悠人はそう思っていた。
だが、今は自分にも守らなければならないものがあった。
「ここまで来て怖じ気づいたのか?それなら目をつぶって念仏でも唱えてろ、悠人。
俺が苦しまないようにカタをつけてやる。」
『降りかかる火の粉は、払うしかない。』――悠人は師匠の言葉を思い出していた。
「そうだ。――たとえ、それが友達であっても。」
悠人は「求め」を中段に構えた。それは、師匠に体で叩き込まれた構えだった。
「来いっ、光陰!!」
悠人の一喝に引き込まれるように、光陰が奔った。
巨大な双剣「因果」が悠人の頭上めがけて一直線に振り下ろされる。
「くっ!」スピリットとは比べ物にならない衝撃を「求め」で受け止め、しかし、悠人はそれを弾き返した。
予想もしていなかった悠人の力を目の当たりにした光陰の双眸に驚きが浮かぶ。
二、三歩後ずさった光陰に、今度は悠人が無言の気合いとともに神剣を一閃させる。
受け止めようとした「因果」ごと、光陰がその身に斬撃を受けて倒れた。
「ぐ...つうっ!」
立ち上がろうとした光陰が呻き声を上げる。大丈夫か、と喉まで出かかった言葉を、悠人は呑み込んだ。
「―――ちっ、やっぱり俺は...白馬の王子様には...向いてねえな。」
苦痛に顔を歪めながら光陰がつぶやいた。
「行けよ、悠人。行って―――あいつらを、止めてやれ。」
ニヤリ、とふてぶてしい笑いを浮かべながら光陰が顎をしゃくった。
「ハリオン、光陰を―――頼む!」悠人はそれだけ言い残して、走り始めた。
城壁に囲まれたマロリガンの都市の入り口に、スピリット達を従えて、武装している少女の姿があった。
その瞳にかつての快活な輝きはないが、それは紛れもなく今日子であった。
「今日子!」悠人は叫んだ。
だが、返って来たのは明るい声ではなく、天空を指した「空虚」から放たれた雷撃だけであった。
「よせっ、今日子っ!!」シールドを展開させても防ぎきれない衝撃であった。
よろめく悠人の耳に、不意に、懐かしい少女の声が届いた。
「悠...私を...殺して...!」
顔を上げた悠人の目に、目を血走らせ、唸り声を上げる今日子の姿が飛び込む。
「私...いっぱい、殺しちゃったよ...お願い...ころ...し...」
「今日子っ、しっかりしろっ!」悠人はふらつきながらも今日子に近付いた。
その時、再び今日子を支配する「空虚」が閃いた。
「ちっ!」悠人は、反射的に「求め」を差し延べた。
ガッ、と鈍い金属音とともに「求め」の刀身の空洞部分に、「空虚」が突き刺さった。
悠人は手首を回転させ、「空虚」をもぎとり、後方へと振り飛ばした。
すでに精神の大部分を占めていた「空虚」から引き剥された今日子は、
マナの渇きに耐えかね、地の上で転がり回った。
「早く―――ッ、殺して!」熱砂の上で、その体をくの字によじりながら今日子が絶叫した。
「今日子...」悠人は暗然とその姿を眺めていた。
かつてナナルゥを斬り殺そうとしていた時の自分が、今日子の姿に重なっていた。
今日子の苦しみが痛いほど伝わる悠人には、「求め」を振り下ろす事が、どうしても出来なかった。
「―――殺してやれ、悠人。」ギョッとして振り向く悠人へ、ハリオン達に連れられて来た光陰が歩み寄った。
「悠人、よくやったよ、お前は。もういい。楽に―――してやってくれ。」光陰の声が震える。
「今日子、心配するなよ。―――王子様の役どころにゃイマイチだが、俺が付いてってやる。」
そして、光陰は赤子をあやすような口調の鼻声で、今日子に語りかけた。
―――助ける事は、出来ないのか...俺には。
悠人があきらめかけた時、赤い妖精が、静かに今日子のもとへ近付いていった。
「ナナルゥ――!」悠人は止めようとして、息を呑んだ。
その片手には、悠人が跳ね飛ばしたはずの「空虚」が握られていた。
「ナナルゥ、よせ!危ない―――」そう言いかけて悠人は、振り返ったナナルゥの視線に射すくめられた。
紅い瞳に映し出されていたのは、初めて見る、その少女の怒りの炎だった。
「―――甘えないでください。」
ザクッ、と今日子の目の前に「空虚」を突き立てて、ナナルゥが口を開いた。
今日子の血走った目がカッと見開かれる。
「――友達が、貴女のこと、殺せるはずないじゃないですか。命を絶ちたいなら、自分の手でやってください。」
「がああぁぁ―――っ!!」
神剣をつかんだ今日子が、獣じみた咆哮とともに、ナナルゥに飛びかかった。
ナナルゥが、「消沈」の真ん中で、斬撃を受け止める。二人はクロスした神剣を間にはさんだままの格好で静止した。
「ずるいです、そんなの!自分のやったことから逃げて、―――友達に、後始末だけ頼むなんてッ!」
動きを抑えこまれたまま、なおもナナルゥが言葉を続ける。
今日子のオーラフォトンが、ほとばしる電流となって、ナナルゥの体を焦がし始めた。
小さな破裂音とともにナナルゥの戦闘服のあちこちが弾けるように裂け、
悠人のところにまで髪の毛を焼いたような臭気が漂ってくる。
「――おい、ヤバいんじゃないのか、悠人。」光陰が悠人の肩に手を掛けた。
「あ、ああ...」しかし、悠人は足を踏み出すことが出来なかった。
傷だらけになったナナルゥの背中は、それでもなお、助けを拒んでいた。
「貴女の...友達は...ッ!」ナナルゥの肩が震え始め、声がくぐもる。
―――ナナルゥ...泣いてるのか――?
悠人は呆然と、赤い妖精の後ろ姿を見つめていた。
「貴女の、友達は...決して自分のした事から...目をそむけたりは、しなかった!
やった事を神剣のせいにして...逃げるような...卑怯な人じゃ...なかったッ!!」
それは、悲鳴に近いような、嗚咽の混じる声だった。
「貴女が...その人の友達だなんて...認めたくありませんっ!!」
後方から見守る悠人達にもナナルゥの体から徐々に力が抜けてゆくのが見てとれた。
雷撃でボロボロになったナナルゥの躯体が、少しずつ後退し始める。
「―――限界だ。悠人、お前がやれないんなら、俺がやる。」
光陰が悲愴な決意とともに「因果」にオーラを送りこみ始めた。
「―――くっ。」光陰に今日子を斬らせる訳にはいかない、
そう感じた悠人もまた、「求め」に力を集中させた、―――その時。
「あ――っ、もう!!うるさいっ!!」
今日子の絶叫とともにナナルゥの体が弾き飛ばされた。
ほとんど、立っている事もおぼつかなくなっている、その弱りきった体を、悠人が抱きかかえるように受け止めた。
今日子が「空虚」を地面に叩きつけ、再び地上をのたうちまわり始める。
「痛いっ!!何よっ、これ!!光陰っ!!頭痛薬くらい持ってないの、あんたっ!?」
血走った目をギラギラさせながら、それでも、確かな光をその瞳に宿した悠人の幼なじみが、光陰に毒づいた。
―――はやく、行きなさいよ、バカ悠。
ほんの一瞬あった視線が、悠人の背中を力強く押した。悠人が頷く。
「光陰っ、この娘を頼むっ!」
気を失っているナナルゥを光陰に預け、悠人は駆け出した。
「――まったく、恐れいったぜ。」光陰がナナルゥを抱きかかえ、加護のオーラを展開させ始めた。
赤い妖精の眉間に寄せられた皺が消え、やがて眠るような表情へと変わってゆく。
「――もう、大丈夫だな。―――へっ、どの世界でも女は強し、ってか。」
光陰はゆっくりと、優しく、その少女の体を地上に横たえた。
「――ここが心臓部だな。」
マロリガンの中枢部に侵入した悠人を待っていたのは、精悍な顔付きの男であった。
「あんたが、大統領か。なんだってまたこんなバカな真似をするんだ。」
「――出来すぎてるとは思わないか?」クェド・ギンが悠人の質問を無視するかのごとく唐突に切り出す。
「神剣を持つ若きエトランジェ...理想の世界を目指す美しく、聡明な女王...なにもかも、そろい過ぎている。」
「何言ってんだ、あんた?」悠人が「求め」を構えたまま、訊き返した。
「この世界は大きなうねりに突き動かされている、という事だ。神剣の意思とでもいうものにな。」
「何となく言ってる事は分かるけど...それと、あんたのやってる事と、どういう関係があるって言うんだよ。」
「私は、運命と云われてるものに挑戦したくなったのだよ、エトランジェ。
このままでは、この世界は神剣の意思に支配されてゆく。」
そう言いながら大統領が永遠神剣を見せた。
「そんな事はあってはならん...我々は生かされているのではない、生きているのだ!」
「だからこの大陸ごとぶっ壊そうって言うのかよ。―――ふざけやがって。」
悠人はその男を睨みつけた。
「これは人間が扱える唯一の神剣『禍根』だ。エトランジェよ、この世界は近いうちに神剣の力によって破壊される。
そんな事は...あってはならんのだ!」
クェド・ギンがもう片方の手に持ったマナ結晶を高々と掲げる。
悠人は禍々しい光を放ち始めたその結晶に、本能的に「求め」の一閃を放った。
カシャン、とグラスが割れるような音を残してその結晶が砕け散った。
「貴様―――!!」後ずさったクェド・ギンが体勢を立て直し、「禍根」を悠人に向ける。
次の瞬間、素早い身のこなしから、大統領が渾身の突きを繰り出した。
悠人は耳朶すれすれに「禍根」の一撃をかわし、すれ違いざま抜き胴を放った。
「ぐっ―――ッ!」たたらを踏んだ大統領がゆっくりと崩れ落ちる。
「あんたも―――人間の力を信じられなかったんだな。」
斃れた大統領の姿に、悠人は師匠の言葉を口にしていた。
あるいは、この男にも信じられる仲間がいれば、その行動は違っていたかも知れない、悠人はそう思っていた。
「そ、それにしても...」
横たわったナナルゥの肢体を見ていた光陰が、ごくりと唾を飲み込んだ。
ナナルゥの裂けた戦闘服から、ふくよかな胸の谷間がのぞいていた。
「ふうん、あんたのロリコンって、巨乳好きのカモフラージュだったの?」
「そういう訳じゃないんだけどな。これはこれでまた、違った趣きが―――って!?」
パリパリと響くスパーク音に光陰が凝固する。
ハリセンを握りしめた同級生が、いつの間にか背後に仁王立ちしていた。
「きょ、今日子!よ、良かったなあ、神剣から脱け出したのか!しし、心配したんだぞお!」
精一杯の愛想笑いを浮かべる光陰。
「私は『空虚』ですけど、何か?」冷徹に応える今日子がハリセンを振りかぶった。
ハリオンが、普段の彼女からは想像もつかない素早さでナナルゥを抱えこんで逃走する。
「ダーリンっ!!天誅だっちゃ!!」
今日子の喚声と同時に、マナ消失にも引けをとらないのでは、と思われるくらいの雷撃が
破戒坊主の頭上に炸裂した。
「お...おいおい、そいつは本当にシャレになんないぜ...うぅ、ぐ...ふっ!」
冥府へと旅立ちながらも、ダーリンと呼ばれてちょっと嬉しい光陰であった。
「まったく、ハイペリアの人はみんなこうなんですかね〜。」
黒焦げになった光陰を見ながら、ほとほと愛想がつきた口調でハリオンがぼやく。
その傍らで、同じく再び気を失った今日子に、マロリガンのグリーンスピリット、稲妻のクォーリンが
回復魔法を施していた。
「ユート様の友人でなければ、私がとどめを刺してるところですぅ。」
剣呑な言葉にヒミカが眉をひそめる。
「もう、冗談はいいから、はやく治してやりなさいよ、ハリオン。」
「冗談ではないんですけどぉ...。」しぶしぶハリオンが治癒の魔法を詠唱し始めた。
その姿にクォーリンが苦笑する。「お手数をおかけします。バカな上官を持つと、お互い苦労しますね。」
「こんなにこき使われて...超過勤務手当て、出るんでしょうか〜。」
ハリオンがようやくいつものスマイルを見せた。ほんの数時間前まで敵であった、そのスピリットに。
「あ...終わったみたいよ、ハリオン。帰ってきた!」
ヒミカが市街から駆けて来る人影に、手を振った。
施設の暴走をかろうじて食い止め、仲間のもとへ戻る悠人の姿が、そこにあった。
スレも終盤に入ったところで、クライマックス(と、作者は思っている)の第8部をお届けしました。
クェド・ギンにはやっぱり最後まで人間の姿のままでいて欲しかったので、例によって塗り替えしてます。
そっちのイオファンの方、スマソ。(←だからいるのかって)
スピリットはますます人間臭く、人間は逆にどんどんお馬鹿になってゆきます。
風変わりさん、許して。ついに人の道を踏み外してしまいました...
あとがきを兼ねてこのSSの題名『SALVAGE』の説明を少しだけ。
もちろんナナルゥの「消沈」にも由来していますが、引き上げ役は
意外にもそのナナルゥだった、というのが最大のテーマです。
ユート君がナナルゥを引き上げるためには、いったん相手より
深くに潜りこむ必要があるのではないか、という意図もあり、序盤が
イービル展開になった、というわけです。
次回は「家出」の舞台でもあった対帝国戦へと差しかかります。
前回分で、ウルカに調子ぶっこいてたユート君の無事を祈らずにはいられません...
↑
......あ〜あ、やっちまいましたね。「あとがき」と入れるべきところで
トキミにタイムシフトかけられてますねw
>信頼の人さん
新ペア誕生でさらに第二詰所の人間関係が広がっていくように感じました。
ハリオンは誰とでも組めそうな割りに、深く関わらせにくいなぁと思っていたのですが、
その思い込みを覆されてとても新鮮に読む事が出来ました。
>憂鬱の人さん
対今日子戦でようやく、『SALVAGE』ってまさか……と思ったのですが(遅い
後書き・解説でさらに分かりやすく。序盤を思い返したり読み返したりしてみて、
潜りすぎた悠人を引き上げるうちに、一緒に浮上していたのだなぁ、と思うことしきりです。
637 :
信頼の人:04/10/21 21:32:01 ID:2scQWv6S
皆さんレス有難う御座います。
>>憂鬱の人さん
>ヒミカは「家出」では一言も喋ってなかったと思いますが
あ〜……実はヒミカのセリフじゃないのですが、
何故かヒミカに言わせたかった言葉を引用させて頂きました。
正確には言ってもいないのですが……
>SALVAGE
やっぱりどうしても自分の作品と比べてキャラ等を見てしまうのですが……
こちらのナナルゥの方が可愛く見えてしまうのはどうしたらいいのでしょうかw
あと驚いたのは同じテーマの部分が別の視点で見せて頂けた、という事です。
幸い?そこまで被ってなかったのである意味安心したのですが……
いや〜同じ事考えてる人っているんですねぇw
>>614さん(髪結いの人さん……かな……)
ハリオンは……まぁキィなのですが、とりあえず何か画策しているという程のものではありません。
行動には意味がありますが、ハリオンですからw
ハリオンの『槍』は少し悩んだんです、実は。
大体本編でもEXでも緑スピリットって神剣持ち歩いているシーンがないんですよ(汗
どこに何時も携帯しているのか?だからって背負うってのもなぁ……という訳で、
苦肉の策で軽く流してみたんですがやっぱりそういうのはダメですね。
ご指摘有難う御座います。あとファンタズマゴリアにインフォームドコンセントの概念はありませんw……きっと。
>>615さん
少しネタばれすると悠人と雑魚スピのラブラブ展開というのは全くないです。
アセリアルートを選択する事も物語の展開上必要だったからなのですが、
それとは別に出来るだけ恋愛感情の後押し無しで神剣からの開放は出来ないものか、と考えて書いてみました。
(もちろんそういう話の方がスレとしての需要が多いのは承知の上なのですが)
>>636さん
感想有難う御座います。ハリオンとナナルゥはペアというか……なんですが、
「T」だけ読むとそんな感じですねw まだ連載に未熟なので……難しいです。
あのイオって…クェド・ギンだったのか…
知らなかった……
アップトリム全開!しかも無刀取りっ!(チガ 正規訓練悠人強いっ。
てっきりハリオンと光陰のロマンスが……と思ったら。大きすぎるのは情緒がないというわけですねw
柔らかなマシュマロの中に針を飲み込んでいるハリオン コワー
大統領、大量破壊兵器を互いに持ってるのですから自爆テロよりみんなで何とかしようと思ってくれ゚(゚´Д`゚)゚
>637
挟むところなら有るじゃありませんか。三本くらいいけるでしょうw ニムには無理ですね。
悠人が流れるような黒髪になったら……「敵……発見」
>>636 ナナルゥのハイロゥを白に戻すタイミングですが、
もう一つの候補がこの今日子戦の後だったんです。
ただ、やっぱり笑顔に黒いハイロゥは似合わない、と思って
焚き火のシーンに決めました。
>>637 可愛いと言って頂けると心強いです。
信頼作品ならイービル化する事もないでしょうから
安心して読み進められますねw
私のよりはるかにゲーム進行に沿った『安息』、続きを楽しみにしてます。
>>638 私も一周目は全く気付きませんでした。
光陰の「あれが大将のなれの果てか」で
え、そうなの?と。
>>639 光陰はなんだかんだで今日子命ですから
実は隠れ巨乳派では?
ハリオンは色々と謎に包まれたキャラ、という事はポジティブに考えると
逆にどんな性格設定でも出来るのではないでしょうかw
強いユート君って、書いててもつまんないんですよねー。
だから光陰との戦闘シーンはダイジェスト版w
ヘタレ風味がいいのかも知れません、彼は。
ついに痴漢者となった光陰。その特異且つ強大無比なサポートスキルは敵味方双方から恐れられている。
エターナルローティーン(Limited skill)
Lv:16 属性:青
対HP効果:【自分】100% 最大回数:14 行動回数:1
ターゲット:【全体】 ターゲットスキルLV:16
マインド:0〜100
どんな存在であろうと女性であるならば、問答無用で12から14歳ほどの外見年齢に引き戻し
てしまう、ただそれだけにして最高のスキル。これでセリアもヒミカもみんな光陰の射程内に
なってしまうかと思うと身震いするほど恐ろしい。
セリフ
「どんな歳食ってようが、俺の掌の内さ。
甘露の如き水色時代へ! エターナルローティーンッッ!!」
こ、これだよ。中○生の今日子っ!! 俺が惚れたのはこのころの今日子なんだっ!!あのころ
何度、このまま成長しないでくれって神様に祈ったことか分かんないぜ。御仏は俺を見捨て
なかった!。
「こんのあほんだら〜。あんた何やったっ!!元に戻せバカ光陰!!あ、ちょっとこら寄るな、寄るなってば」
「ふっ今日子。いたいけな中○生がいくら振り回したってそんなハリセン届きもしないぜ?おとなしk ウゴッ」
「ま、まてなんで完全にかわしてるのにウゲッブゴッ 何故なぜナゼェ――――」 ズゴーン プスプスプス
当たり判定は変わっていなかった。
ちなみに、今日子の電撃ハリセンで幾度も生死の境を彷徨った果てに体得した禁断のアタックスキル
「ファイナルビッグバンロリータ」もあるよ。
すみません。オチがいつも同じですみません。詰め所の風呂へはきっと日暮れをえらんで参ります……orz
痴漢者トーマスはザウスの本でしか知りません。
か、隠れ巨乳派じゃなかったのか、やっぱり。
これで巨乳妖精趣味のあほうはただ一人、あの男だけに...
いかん、またマインドが下がってきた。
次回分エロシーン執筆中のバカ憂でした。うわなにをするやめドカバキグシャ
≫643
光陰と書いてロリコンと読む男ですからなぁ・・・しみじみ
ところで剛田によるとPS2移植に当たってオルファがふんどし(ふんどし言うな)
からスカートに変更されるもようですな。他も変更されるのかしら?
オルファって、いやラキオスの赤スピって
前張りじゃなかったのかな、なんて・・・コレは光陰の策略?
>>642を読んだら、しょうもない妄想が浮かんできた。
今までROM専だったけど投下してみようと思う。
イヤ、ホントニショウモナイモウソウナンデスガネ。
というかこんな時間に何をやっとるんだ漏れはorz
「もし光陰がエターナルになったらどんな神剣を持つんだろう?」
自分や瞬、それに今日子までもがエターナルとなっているのだ。光陰だってエターナルになる資格はあるに違いない。
そう思ったからこその疑問なのだが――
「さっぱりわからん。」
そもそも、カオスエターナルが所持しているという上位永遠神剣のことですら詳しくはないのだ。
「だったら、詳しいヤツに聞けばいいんだよな。」
「なんでしょうか、悠人さん。」
「いや、ふと思ったんだが、光陰がエターナルになれる可能性はあるのか?」
ここは自分をカオスエターナルに引き込んだ張本人、時深おb
「何か変なことを考えていませんか?」
笑顔が怖い。この笑顔の前ではタキオスのプレッシャーなど屁みたいなものだろう。
……時深に聞いてみた。
「確かに資格自体はありますが、光陰さんに相応しい神剣がカオスエターナル側にないのでまず無理ですね。」
そう言われるとは思っていた。むしろここからが本題だ。
「それじゃあ、光陰に相応しい神剣ってどんなもんだ?」
「そうですねぇ……」
「前に聞いた話ですので実在するか分かりませんが、その話の通りのものなら正に光陰さんの為にあるような神剣があります。」
「どういう神剣なんだ?」
「話によると、二つの下位永遠神剣が合わさって出来た上位永遠神剣らしいです。
その下位永遠神剣は二つとも特殊な条件を満たす人間からしかマナを吸収しないそうなんですが、
上位永遠神剣となってからはその特徴が見られないとのことです。」
「それが何で光陰に相応しいんだ?」
「それがですね、この下位永遠神剣の特殊な条件というのが、“幼い女の子である”というものだそうだからです。」
「なるほど、光陰にぴったりだな。」
しかししょうもない神剣だな。まあ、あのバカ剣も触手好きだったし、下位永遠神剣というのはどこか歪んでいるのかも知れないな。
「で、その神剣の名前はなんて言うんだ?」
「人伝に聞いた話なので正確な階位は知りませんが、『悟り』と言うとか。」
小五ロリキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
あらゆる意味でハマり過ぎだ……お見事。<悟りの光陰
>>647 ……こうしてまた因果なスレ住人が一人増えたのだった。
ここは全ての者を混沌の世界へいざなうアセリアネタ&雑魚スピ分補充スレッド
下位神剣「炉理」「瞑土」
>>647 GJ。しかし・・・つまりかつては
第?位「小五」
第?位「ロリ」
という神剣があった、ってことかorz
>>650 ネタが光陰だけに、まさしく「因果」だな。
永遠のロリ→エターナルローティーン→永遠者→ザウスの本のトーマス漫画→ベジータ
思考の流れはこんなんか?あ、ファイナルロリータもあったか。
>644
寺の跡取りですから、どっちもOKの両刀遣いなのでしょう。
「悠人。俺は常々、お前と本気で犯り合って――――」<<それ違う両刀っ
痔とはやまいだれに寺と書く…………
>645
そんな……そうなると急所丸出し悠人を助ける時のアセリアの意味無しパンちらも消えるのか。親指はどうなるんだろう。
>648
ちょ、ちょっとまってっ、光陰用誘いの巫女はど、どうなるの?ハァハァ あ、取り乱しましたることお詫び致します。
えーと新人さんご案なーい、幾周期も末永くごひいきのほどを……ジサクマダー
>652
永遠神剣 『小一』『小二』『小三』 あ、いえ気にしないでください。
朝から降り続けている激しい雨は森の中をすっかり濃灰色に染め上げていた。
空は分厚い雲で覆われ、光を完全に塞いでいる。
大量の水分を含んだ地上は所々踏み荒らされ、そのつどそこに水溜りを増やしていった。
ある大木の下。一人の少女が膝を抱えてうずくまっている。
横殴りに吹く風がその場所から雨宿りという利点を完全に奪いきっていた。
容赦なく浴びせられる雨粒に、それでも少女は動く事が出来ない。
時折風が運んでくるかすかな剣戟の音が、少女をそこから動けなくしていた。
じっと聞いているとそれがだんだん近づいてくるような気がして、堪らず耳を塞ぐ。
すっかり冷え切った躯を全身ごと抑え付けるように抱え込む。
放り出した神剣には目もくれず。
噛合わない奥歯をガチガチと震わせながら、少女は必死に呟いている。
ウラクテカレウトハイサムウラクテカレウトハイサムウラクテカレウトハイサムウラクテカレウトハイサム……………………
――――――背後から、気配。今一番恐れていたモノ。
それは少しだけ昔の、忘れてはいけない過去。忘れられてしまった過去。
ふと目覚めると、ヒミカが覗き込んでいた。
「おはよう。さ、起きて。朝ごはん出来てるよ。」
そう言って思い切り窓を開く。眩しい陽光が部屋いっぱいに広がり、ナナルゥは思わず目を細めた。
「……おはようございます、ヒミカ。」
「はい、おはよう。今日もいい天気ね。」
「そうですね、快晴だと思います。」
手早く着替えを済ませ、最後に側にある『消沈』を手に取る。ナナルゥにとって、いつも通りの朝。
「ヒミカは、今日ですか?」
「うん、王宮へ行くまでにはまだちょっとあるけどね。ナナルゥは待機だっけ?」
ヒミカは部屋中に並んでいる整髪剤をこつこつと順番に軽く叩いている。なんの効果があるのだろう?
「はい。訓練でもしてようと思います。」
「アンタねぇ、たまには……はぁ、ま、いいけど。さ、行きましょ。」
なぜ溜息をつかれるのかよく判らなかったがとりあえずそろって部屋を出た。
戦時中でもあり、スピリット隊には交代での王宮警護の任務が課せられている。
今日はヒミカが初めてその任務に付く様だ。なるほど、それで納得がいく。
「……今日は起こす手間が省けました、ヒミカ。」
ナナルゥは先を行くヒミカに聞こえないようそっと呟いた。
いつも起こすのに苦労している相手に起こしてもらうというのもたまには新鮮だ。
こうしていつもと“ちょっと違った”朝が始まった。
宮門前を警護していたヒミカが王宮内の騒ぎに気付いたのは配置に付いてすぐの事だった。
「……一体なに?」
直後、奥でドゥンと鈍い炸裂音が響き、続いてところどころから煙が立ち昇る。
「事故?……っ敵!!」
『赤光』を軽く握り締める。僅かにその力が解放され、敵の存在が感じられた。
同時に大まかな位置も捕捉する。振り返り、駆け出そうとしたその時。
――――――何か黒い影が横切った気がした。
脇腹が焼ける様に痛い。斬られた、と気付いた時には反転した敵が既に迫っていた。
スフィアハイロゥを展開する暇も無い。夢中で自分から転がり辛うじて第2撃を避わす。
今度は肩から鮮血が飛び散った。あまりの速さに防御も反撃も追いつかない。容赦ない敵の攻撃は続く。
その目に映らない程速い斬撃を、ヒミカは立ち上がりざま背中に受けていた。
「うぁぁぁぁぁ!」
切り裂かれた激痛に悲鳴が零れる。よろけながら何かに体が当たった。
熱い背中に感じる岩肌の感触。いつの間にか城壁まで追い詰められていたのだ。
壁を背にしてかろうじて姿勢を保つ。そこで初めて「敵」の姿を見た。
ゆっくりと振り向く漆黒の翼。細身の剣を握る褐色の肌。
敵のダメージを冷静に分析している赤い双眸。あれは…………
「『漆黒』のウルカ…………」
絶望の呟きが漏れる。あの大陸一とも言われる帝国の剣士。
もはや伝説にすらなっている使い手が自分の相手だと知った時、ヒミカは自分の死を覚悟した。
戦闘服は竜巻に出遭ったみたいにズダボロだった。
体のあちこちに出来た何かに捻じ切られた様な傷口からは恐ろしい勢いでマナが抜けていく。
最初に受けた三撃。たったそれだけでヒミカはもうこれ以上の戦闘に耐えられる体では無くなっていた。
長い銀色の髪を風に弄らせながら軽い足取りで近づいてくるウルカ。
霞んだ視界でその姿を見上げたヒミカはそこにありえないものを見て更に驚愕した。
「…………ひ、と?」
呟きが搾り出される。驚くべきことだった。ウルカはその腕に人を抱えているのである。
(あのままでこの戦闘を……!)
今まで微かに持っていたレッドスピリット唯一の剣士としてのプライド。
『ラキオスの青い牙』ともいざとなったら互角に戦ってみせるというそんな自負がこなごなに消し飛ぶ。
最早確認するまでもなかった。その事実だけで、彼我の戦闘力は隔絶している。
ヒミカは絶望感とともに自分を倒すはずの相手を睨みつけた。最後の抵抗のつもりだった。
(………………?)
ふとウルカが抱えている人物に見覚えがあることに気付く。小柄な少女だった。
特徴のある、栗色の髪。大きな白い帽子。あれは…………
「カオリさま!」
ヒミカは気を失っている少女に向かって叫んでいた。
ヒミカは以前佳織と話す機会があった。それは佳織と悠人が再会して第二詰め所に挨拶に来た時。
「初めましてヒミカさん!お兄ちゃんがいつもお世話になってます。」
「これからよろしくおねがいしますね。私に出来ることがあったらなんでも言って下さい!」
屈託の無い笑顔で話す佳織。スピリットを人と区別しないその話し方は悠人と全く同じだった。
そしてそれに気付いたとき、ヒミカは佳織に対して悠人とはまた違うある種の親密感を持った。
保護欲とでもいうのだろうか。ファーレーンやネリーの気持ちが初めて判った気がした。
妹というものが自分にもあれば、と悠人とじゃれ合う佳織を見て憧れたものだ。
――――――そのカオリさまが、今敵に連れ去られようとしている!
その事実を認識したとき。ヒミカの中で不思議な力が弾けた。
残った力を全て込めて『赤光』を握り締め、スフィアハイロゥを展開する。
とどめを刺そうとしていたウルカの動きがピタリと止まった。
敵の尋常でない雰囲気を感じ取ったのだろう、構えを少し低く落とす。
青眼の構え。全ての剣技の基本に帰るその構えは、基本なるが故に最強でもある。
相手の打ち気を誘い隙を窺う為のその構えからは、油断というものが微塵も見られない。
両者の間に緊張感が膨れ上がる。圧縮されたその時間が、ヒミカにはとても長く感じられた。
先に動いたのはヒミカだった。ヒートフロアの詠唱を始める。
間に合うともそれで対抗出来るとも思ってはいなかったが。
しかし意に反してウルカは全く動こうとはしなかった。
詠唱の完了と共に周囲が赤のマナで包まれる。
一時的とはいえ傷の痛みを忘れる事が出来たヒミカは次の攻撃を組み立てながらウルカの様子を窺った。
(…………?)
まるで相手がベストの状態になるのを待っているかの様なその態度に不審を感じる。
やろうと思えば自分の神剣魔法など軽く打ち消すことが出来ただろうに。
そんなヒミカの動揺を読み取ったかの様に、今まで沈黙を守っていたウルカが初めて口を開いた。
「手前はサーギオスの剣士、『拘束』のウルカと申す。……宜しければ、御名も伺いたい。」
「……ヒミカ。『赤光』のヒミカよ。カオリさまは返してもらう。」
辛うじて答えたヒミカに対し、意外にもウルカはさっと剣を引いた。
「そうか、ヒミカ殿……出来ればもう少し剣を交えたいと思ったが……。また、いずれ。」
ウルカはそう言い放つとその黒いウイングハイロゥを羽ばたかせ、そのまま城壁の上へと飛び移っていく。
「待て…………つぅっ!」
追いかけようと動いた瞬間、今まで忘れていた痛みが襲い掛かった。
霞んだ視界が気持ち悪く、重くなった瞼が自然に下がる。
そのまま崩れ落ちる身体。しかし倒れこんだ先は、冷たい地面では無かった。
ふわっと温かい感触に包まれ、ヒミカはそっと目を開ける。
「おいっ!大丈夫か、しっかりしろ、ヒミカ!」
遠くなりかけた意識が少し戻ってくる。目の前に、隊長の顔があった。
悠人の顔を見た途端、安心感で緊張が一気に解けた。
力の抜けた身体を悠人に預けながら、ヒミカは申し訳無さで胸が一杯になる。
「申し訳ありません、ユートさま……カオリさまを…………」
「もう喋るな!エスペリア、ヒミカを頼む!」
「あ…………」
そのまま地面に横たわらせられる。
身体が離れる感覚に、ヒミカは少し寂しさを感じた。
エスペリアが治癒魔法を唱えている。心地よいマナが体中に流れ込んでくる。
駆け出す悠人の後姿を見送りながら、ヒミカの意識はゆっくりと落ちていった。
――――――――
悠人と対峙しながら、ウルカは先程会見えた剣士の事を考えていた。
あのレッドスピリット。三度もの我が斬撃を逃れた。
完全にふいを突いた筈の『雲散霧消の太刀』と呼ばれるそれを。
三度とも致命傷を与えるつもりで斬り込んだ筈なのに。
(それでも倒れず、拙者を防ごうとした……)
そして、神剣魔法を詠唱していたあの時の眸。あの威圧感はなんだろう。
追いかけてくるエトランジェの気配を感じて咄嗟に引いたが、
あのまま戦っては脱出は容易では無くなっていただろう。
「ヒミカ殿、か……“三度(みたび)”剣を交える事があるだろうか……」
ウルカは誰にとも無くそう呟いていた。
雨の中を、走っていた。
孤立した少女を助ける為に飛び出していった友達を追って。
雨の中で、見つけた。
孤立したココロを助けた友達と、助かった新しいチカラを。
泣きじゃくる少女が見せた初めての力。
それは幻想的ともいえる美しいハイロゥの発動だった。
――――――その幻想的な光景を、雨が上がるまで見つめていた。
戦場に遅れて到着したナナルゥは、炎上した王宮を背にして立ちすくむ悠人を見つけた。
火に映るその横顔に悲しみともとれる苦渋の色が浮かんでいる。
声を掛けるのを一瞬戸惑ったが、状況を確認する為にも話しかけるべきだった。
「あの、ユートさま。」
「ナナルゥか……ごらんの通り敵には逃げられちまった、すまん。」
遅れてきた自分の方こそ謝罪が必要なのに、先に謝られる。
多少の後ろめたさを感じながらナナルゥは質問を続けた。
「いえ……それで、被害は……」
「まだ判らん……けど、佳織を連れ去られちまった……くそっ!なんでっ!」
「え……?カオリさまを?何故……」
意外な名前が出てきて、思わず反問する。悠人が吐き捨てる様にそれに答えた。
「知るもんか、そんな事!……あ……悪い、どなったりして。」
「……いえ…………」
悔しがる悠人に、初めて自分が触れてはいけない事を訊いたのだと気付く。
なんだろう、この違和感。ユートさまの顔を見ているとなんだか締め付けられる様な……
しゅんとなってしまったナナルゥを見て、悠人が精一杯の笑顔を浮かべる。
「ごめん、大丈夫だから、少し一人にしてくれないか?」
「…………はい。私の方こそ申し訳ありませんでした。」
何故自分が謝っているのかよく判らないままナナルゥは悠人に背を向けた。
もやもやした、自分でもてあますような何かを感じながら。
せっかくだし支援。
「行かないで、ユートさま」
「止めるな、漢には負けると判っていても戦わねばならない時があるんだ、ヒミカ」
「ユートさま……私は…………」
「さらばだ、ヒミカ。これが今生の別れとなろう」
ぱからっぱからっぱからっ
「ユートさまー!かむばーーっく!!」
……………………色々な意味で変な夢を見ていたような気がする。
最近キャクホンに根を詰めすぎたせいだろうか。頭を軽く振りながら、ヒミカは身を起こそうとした。
ふにっ。
とたん、手に何か柔らかい感触が伝わる。なんだろう。
ふにっふにっふにっ ……あんっ!
「…………アンタ、なにやってんの?」
そこには人のベッドで勝手に寝ているハリオンがいた。寝ぼけまなこをぽやぽやと擦っている。
「おはようございます〜。ヒミカさん、お具合はいかがですか〜?」
「アンタねぇ、何で私のベッドで……って、具合?」
一瞬胸の具合を聞かれたのかと勘違いしたが、すぐに思い直す。そうだ、漆黒のウルカと戦って、それから…………
「ハリオン!敵は?敵はどうしたの!?」
「あらあら〜。もうすっかり元気そうですね〜。」
「え……ああ……。貴女が看病してくれたのね……ありがとう。」
「いいええ〜。ところで、『かむばーっく』って、なんですか〜?」
ぼっ!!
音が聞こえた気がした。恐らく顔が真っ赤だろう。動揺を隠す事も忘れ、ハリオンの胸倉を掴んで問いただす。
「あ、あ、あ、アンタ、どこまで聞いたの?忘れなさいっ!今すぐ忘れなさいっっ!!」
「あらあらあら〜。そんなに揺らすともっと思い出しちゃいますよ〜?」
首をぐらぐらと揺すられながら、ハリオンは相変わらずの笑顔のままだった。
だから、ヒミカは知らない。
意識を失ったヒミカに神剣魔法を掛けながら、泣きじゃくっていたハリオンを。
『赤光』を振りながらぼんやりと考え込んでしまう。
そんな気の抜けたヒミカを同じく訓練中の皆が不思議そうに見ていたが、
肝心の本人はそんな事に気付きもしなかった。
助けられた時の悠人の顔がちらついて、訓練どころでは無かったのだ。
「ユートさま……」
なんだか夢見心地な顔で名前を呟いてみる。
とたん、夢の中で白馬に乗った悠人の爽やかな?笑顔が蘇り、照れ臭さが倍増した。
(きゃ〜、きゃ〜っ!)
真っ赤になって剣をぶんぶん振り回す。周囲の輪がずざざっと後退した。
(わ、わたしったらなにをっ!なにを考えてるのか、し、らっっ!!)
ぶんぶんぶんっ!
……そうかと思うと、ふっと力が抜けて剣を落したりする。
(ああ……。カオリさまを助けられなかったんだ……ユートさま、ごめんなさい……)
しゅんとなったりばらばらに剣をふりまわしたりと忙しいヒミカを、
不気味になってきた皆が遠まわしに見守っている。
通りすがりのナナルゥはその光景を眺めて一人納得していた。
「なるほど、情熱的…………」
うんうんと頷きながら、ナナルゥは自分の訓練に戻っていった。
5bpCzGzkさん、支援有難うございました。
「U」です。そろそろキナくさくなってきてます。
ヨト語はアセリア設定資料集から勝手に作り出した言葉です。
間違っているかもしれませんがご容赦下さい。
その他誤字脱字某ハリオンマジック等ご指摘があれば幸いです。
>>憂鬱の人さんへ
TのあとがきでU−7となっていましたがU−8になってしまいました、すみません。
注:ウラクテカレウトハイサム 誰か助けて
ヒ・ミ・カ! ヒ・ミ・カ! 二やつきつつ読みました。ヒミカ著の私小説読みたいなぁ……
ヒミカは装甲の薄さがネック。真っ向勝負では分が悪いですよね。
ウルカ渋い。この緊張感が有れば、外野やっても山なり返球などあり得ないだろう。
このまま敵役で行くのかな。
少女は一体誰なんでしょう……どの娘が誰なのか……?
ストーリーが動いてきましたね。
セリフって、あのウルカのやつだったんですか...
あれって元ネタ何なんでしょうかね、自分で書いててアレだけど。
なんか、ヒミカの活躍シーンにウルウルしてしまいます。
うーん、脳味噌が半分くらいファンタズマゴリアに逝っちゃってるなあ。
それはそうとヒミカ、キャクホンにハイペリアの知識がそうとう混ざってるぞ!
ラキオスにつかの間の平和な日々が訪れた。
新たに戦列に加わったのは旧マロリガン共和国のエトランジェ、今日子・光陰である。
ハリオンのご厚意により復活した光陰は、戦後処理の話し合いをするべく、
女王レスティーナ・ダイ・ラキオスに呼ばれ、謁見の間に向かっていた。
そして同じ頃、悠人は今日子を引き連れ、ラキオスの城下町を案内していた。
「やっぱり、ずいぶん街の感じが違うのねー。」
ワッフルを片手に、ヨーロッパに似た街並みを散策する今日子は、いつになく上機嫌であった。
悠人はかつて出会った事のある少女に教えてもらった高台で、今日子と並んで座った。
「悠も一つ食べる?おいしいわよ、このワッフル。」
心地よい潮風に吹かれながら、今日子が袋から取り出した焼き菓子を一つ、悠人に手渡した。
「こっちじゃヨフアルって言うんだそうだ。」
今日子相手にこの世界の言葉を教える事になろうとは、つい先日まで思いもよらない事であった。
安息を噛みしめる悠人の口の中に、蜂蜜のような甘味が広がる。
「...ねえ、悠。」
食べかけのヨフアルを手に、海を眺めながら今日子が言う。
「ん、どうした?」
「あの娘、もう大丈夫なの?」
「――ナナルゥの事か?まあ、ウチのグリーンは優秀だからな。」
「―――ナナルゥって言うんだ。...なんだかおとぎの国の魔法使いみたいな名前ね。」
「はは。実際、神剣魔法は得意な娘なんだけどな。」
「――謝っといてくれる?こないだの事。」
「自分で言やいいじゃないか。」悠人は笑った。
「あたしからは、ちょっと...ね。」今日子にしては歯切れの悪い口ぶりだった。
「佳織ちゃん、知ってるの?その娘のこと。」
「知ってるのか、って、何を?」
今日子この場で突然妹の名前を出す事の真意を量りかねて、悠人は尋ね返した。
「あんた、好きなんでしょ、そのナナルゥっていう娘。」
「な――いきなり、何を...」不意をつかれ悠人はうろたえた。
「―――やっぱり。でも、いいじゃない。あの娘だって悠のこと好きみたいだし。」
「そんな事...」
佳織といい、今日子といい、なぜ話題がそこに集中するのか、理解に苦しむ悠人であった。
「いいのよ、別に。」
そう言って今日子は立ち上がり、古ぼけた石壁から身を乗り出して、眼下に広がる海を見つめた。
「――あたしさあ、あんたの事、好きだったのよねー。」
「―――え?」突然の言葉に驚き、悠人は今日子の背中を凝視する。
どうやら冗談で言っているわけではなさそうだった。
「あはは。いきなりでびっくりした?」
「いや...そりゃ、まあ...」悠人は振り返る今日子の目を見ることが出来なかった。
「―――母さんにもね...よく言われてたのよ。自分の気持ちに正直に生きろ、って。」
この数年、今日子と母親の関係がうまく行っていない事は悠人も知っていた。深く理由を尋ねる事はなかったが。
「そんな付き合い方してたら光陰に対しても失礼だ、ってね。」
「今日子...」
「――佳織ちゃんからあんたを奪い取るようなマネは出来ないって、思ってたんだけどなあ。」
そう言って今日子は空を見上げた。
「佳織には――こないだ話したよ。」
悠人は佳織と再会した日のことを思い出しながら言った。「泣かせちゃったけどな。」
「そう。――いい娘ね、ナナルゥって。あの娘がいなけりゃ私も戻って来れなかったわ。」
今日子が小さな溜息をついた。
「さあって、捕われのカオリ姫、早いとこ助けに行かなきゃね!」
ヨフアルを食べ終えた今日子が、ぐんっと背伸びをしながら力強く言った。
「そうだな。―――あいつも、自由にしてやらないと、な。」
悠人は半ば自分に言い聞かせながら、そう答えた。
「お、なかなかいい事いうじゃない、バカ悠にしちゃ。」からかう様な口調の今日子に悠人は言い返す。
「バカっていうな、バカって。」
「ホント、なんでこんなバカに佳織ちゃんみたいないい娘が惚れるのかねえ。」
自分の言った事はまるっきり棚に上げる今日子であった。
「あんた、大事にしなさいよ、あの赤い女の子。」
「――わかってるよ。」
佳織と同じようなその言葉を、今の悠人は素直に受け取る事が出来た。
「――ところでさ、あんた達、あたしのこと、殺そうとしてなかった?」今日子がニヤリと笑みを浮かべる。
「あ――そ、それは...!」
「言い訳無用!目ぇつぶんなさい、バカ悠!」ポキポキと拳を鳴らしながら今日子が迫る。
「―――はい。」悠人は仕方なく従った。
歯を食いしばった悠人の口に、弾力のある柔らかい感触が残される。
「え―――?」間抜けな顔で立ち尽くす悠人が目を開いた時、既に今日子は背を向けて駆け出していた。
「お、ハリオン、どうだ、ナナルゥの具合?」
日が暮れ始めた頃、二詰に戻った悠人は庭で水撒きをしているハリオンに声を掛けた。
「どこに行ってたんですか〜、ナナルゥ、寂しがってましたよ〜。」
ややトゲのある含み笑いでハリオンが答えた。
「あ、いや、その、今日子がさ、どうしても街を案内して欲しいって言うからさ...」
つい視線をそらしてしまう悠人であった。
「ふふ〜、ナナルゥならもうピンピンしてます〜。」
「そ、そうか。ちょっと見てくるか。」
ハリオンの笑顔に胸騒ぎを感じつつ悠人はその場を離れた。
「――あれ、いないのか。」ナナルゥの部屋に入った悠人は中を見回しながらつぶやいた。
「ま、部屋から出られるくらいなら大丈夫、だよな。」
「お帰りなさい。」
いきなりの背後からの声に悠人は飛び上がった。
「な、なんだ、いたのか、ナナルゥ!びっくりさせるなよ。」
「―――どこ行ってたんですか?」
それはまるで出会った頃のような、抑揚のない口調であった。
「どこって...あ、あの、今日子に頼まれてさ、近くを案内してたんだよ。
あ、そうだ、謝ってたぞ、今日子のやつ。」
「キョウコ様はユート様の『トモダチ』ですから、別に気にしてません。」
依然その声には感情がこもっていない。
「なんでそこだけハイペリア語になってんだよ。それよりなんか変だぞ、さっきから。」
「どうせ私は変です、ユート様。」
「ホントにおかしいぞ、お前。なんかあったのかよ。」
全く表情を変えないナナルゥをいぶかしく思いながら、悠人は言った。
「ユート様!」ずい、と赤い妖精が詰め寄る。
「な、なんだよ。」気のせいか、紅い瞳が燃え上がっていた。
気圧された悠人がじり、と後退する。
「ハイペリアでは友達でもあんな事するんですか?」
「あんな事って―――あ!」猛烈に悪い予感が悠人を襲った。
「ひょっとして...み、見てたのか?」
まさに晴天の霹靂だった。少なくとも今日子と歩いている間、
後をつけられている様な気配はまったく感じなかった。
「あれはっ、不意打ちっていうか...別に俺がしようと思った訳じゃ...」
しどろもどろで言い訳を始める悠人の眼前で、ナナルゥの表情がみるみる険しくなる。
「ただの友達じゃなかったんですね、キョウコ様って。」
「ただの友達だよ、ホントに。そもそもあいつは光陰と付き合ってるんだぞ。」
「じゃあ、キョウコ様は、コーイン様ともキスするんですか?」
...完全に見られていた。
「いや、それは...知らないけどさ。」思わず炎を宿す瞳から目をそらしてしまう。
「―――好きなんですか?キョウコ様のこと。」
「おいおい、何言ってんだよ。」悠人は苦笑した。「ほんとに、どいつもこいつも...。」
突然怒りの炎が消えたナナルゥの紅い瞳に、じわりと涙が浮かび始めた。
「...ナナルゥ―――?」まさか泣かれると思わなかった悠人は何も言えなくなってしまう。
支援、いきます
「私には...教えてくれないんですか?」
溢れ出す涙を両手で抑えながら、ナナルゥがうつむいた。
「―――あれは、本当に不意打ちだったんだよ。」悠人がやっとの思いで答えた。
「答えに、なってません。」嗚咽をこらえながらナナルゥが言った。
すーっとひとつ息を吸って、悠人が覚悟を決める。
「俺が好きなのは、ナナルゥだけだ。」ナナルゥの肩がびくり、と震えた。
「え―――?」ナナルゥが顔を上げた。涙に濡れた瞳が悠人を見つめる。
カーッと顔に血液が逆流するのを感じながら、悠人はその宝石のような深紅の瞳を見つめ返した。
「あの時から、ずっとだ。」
思えばナナルゥが初めて悠人に笑顔を見せた時、その時から悠人の心の中には、もう他の誰も入りこむ余地はなかったのだ。
「あの、時―――?」ナナルゥが小さな声で訊き返した。
「――ほら、歌ってくれただろ、『祈りの歌』。森の中でさ。」
「――!」ナナルゥの顔に小さな驚きが浮かぶ。そして、再びその瞳に涙が溢れ始めた。
「う―――、ああーッ!」ナナルゥが悠人に駈け寄り、その胸に顔を埋めた。
しばらくの間、胸の中で泣き続けた赤い妖精が落ち着くのを待って、
悠人はナナルゥにゆっくりと顔を上げさせた。ナナルゥが静かにその瞳を閉じる。
「ん―――。」
それは二人にとって長いような、短いようなキスであった。
「――これで、私もユート様の『トモダチ』ですね。」ナナルゥが恥ずかしそうに微笑んだ。
「いや、別にハイペリアでも友達同士でする事じゃないんだけどな。」悠人は苦笑を浮かべる。
「じゃあ、何て言うんですか?」
「そうだなあ、『コイビト』...かな。」
悠人はもう一度ナナルゥの唇を奪い、ゆっくりとベッドの上にその華奢な体を押し倒した。
ナナルゥの長く、紅い髪がベッドの上で扇型に広がった。
「あ―――!」ナナルゥが小さく声を上げる。悠人が戦闘服の上からそっと、少女の豊かな胸に手を這わせた。
「う...んっ!」ほんの少しその胸を揉みほぐすだけで、ナナルゥが首を反らした。
悠人は胸口のファスナーを降ろし、その中へ手を差しこんだ。
吸い付くような柔らかい双丘が、少しだけ汗ばんでいた。しばらくの間、悠人はその感触を愉しみ続けた。
「...くぅっ!」突然の刺激に悠人の声が漏れる。
いつの間にかナナルゥのしなやかな手が悠人の下半身をまさぐっていた。悠人のそれは、もう充分に膨らんでいた。
「ユート様...。」恥ずかしげな、甘い吐息が漏れた。
「―――うん。」少女の潤んだ瞳を見つめ返しながら、悠人は頷いた。二人は、身を覆うもの全てを脱ぎ捨てた。
「不思議ですね...。」
ナナルゥがつぶやいた。「あの時は、全然恥ずかしくなかったのに―――。」
悠人の胸中に、チクリとした痛みが走った。表情を読み取ったのか、ナナルゥが微笑を浮かべて続けた。
「心の中に、火が灯ってなかったんですね、きっと。」
炎の妖精はみな情熱的なのだろう、その悠人の勝手な先入観は外れていなかったのだ。
「――今は、私の心はユート様でいっぱいです。」
聞くほうが恥ずかしくなるような事を言いながら、赤い妖精は笑顔を見せる。
悠人は顔を隠すように、ふくよかな胸の先端に舌を這わせ、手をナナルゥの柔らかい恥毛に覆われた秘所へと移した。
一瞬固く閉じられた両脚の力が徐々に抜けてゆく。
たやすく悠人の指の侵入を許したナナルゥの女陰は既に潤っていた。
「キャッ!」悠人の指が秘裂の上にある小さな突起を捉えた時、ナナルゥが短い悲鳴を上げた。
悠人の怒張を握った細い指に力がこもる。
「い、今...体が...ビクッ、て...あっ、ああっ!」
指の動きに呼応するかのようにナナルゥの体が小さな痙攣を繰り返す。
悠人はゆっくりとナナルゥの中へ、指を挿し入れた。窮屈なその中は、悠人が驚くほどの熱を持っていた。
「こんなに...熱いんだ...」思わず悠人は言葉を漏らす。
「い、言わないでください、そんなこと。」紅い瞳が悠人を睨みつける。
「あ...ゴメン。」
「うぅ、あやまらないでください!」
泣きそうな顔でナナルゥが抗議するが、悠人は「じゃあどうすればいいんだよ!」...とは、言えなかった。
「あの...もう、大丈夫ですから...。」ナナルゥがすらりとした両脚を開いた。
充分に濡れそぼった秘所に、悠人は怒張をあてがった。
その時、ふわりとナナルゥの頭上に、白いハイロゥが出現した。二人は顔を見合わせる。
「黒くなったり...しませんよね。」
「そ、それはないと...思うんだけど...」悠人も根拠のない返事をするしかなかった。
「ふふ。もし、黒くなったら責任とってくれますか?」
ナナルゥがいたずらっぽく含み笑いをしながら言った。
「―――そうだな。はは。ラシードの山に行って、あのキノコ、採ってくるよ。」
悠人も思わずつられて笑う。
ナナルゥにこの笑顔がある限り、純白のハイロゥが濁ることはない、そう信じたくなっていた。
悠人はゆっくりと、怒張をナナルゥの奥深くに侵入させた。
それは、つかのまの抵抗感を越えると、熱い妖精の体内に呑み込まれていった。
...やがて、ベッドが規則的な音で軋みはじめた。
「ねえ、シアー、どうだった?」
ナナルゥの部屋を偵察しに行っていた少女が広間に戻って来た。
部屋に入れなくなったヒミカが不安そうに尋ねる。
「ほんとに、やめとけよ。悪趣味だぞ、お前ら。」光陰が顔をしかめる。
いつもは悠人が使っている二詰の広間に、スピリットとエトランジェ全員が集合していた。
悠人がなかなかナナルゥの部屋から出てこないという情報のもと、どういう訳かみんなが集まってきたのだ。
「あのねぇ、ナナルゥが苦しそうにしてた。」
心配げに報告するシアーの言葉に、多様な反応が起こる。
うんうんと頷いたのはウルカ、ヒミカ、セリア、そしてなぜかヘリオン。
「――くっ!」奥歯を噛みしめるエスペリア。
「ふーん。」割と冷静さを保つニム。
「それはいけませんね。ちょっと私が確かめに...」
立ち上がろうとして四方から伸びて来た手に押さえつけられるファーレーン。
「あらあら〜」...説明不要。
「―――ん。」分かっているのかいないのかよくわからないアセリア。
「ねー、シアー、他になんか聴こえなかったのー?」ぐぐっと身を乗り出すネリーとオルファ。
「えっとぉ、ナナルゥがねぇ、キノコ食べたいって言ってたみたい。ユート様がぁ、食べさせてあげるよ、って。」
的を得ているのかいないのかよく分からぬ報告に、スピリット達が、「お―――っ!」と歓声を上げる。
「プ、プ、プライバシーって言葉がないのか、この世界には!」
とめどなく流れる涙をこらえきれない光陰であった。
「ま...まあまあ、みんな、いいじゃない...ね?」
たちこめる訳のわからぬ桃色のマナに圧倒された今日子が全員をなだめるように言った。
「そうですよ〜、めでたい事です〜。」
にこにこと笑顔をふりまきながら、ハリオンがひと抱えもある樽を開ける。
ネネの実の芳醇な甘い香りが漂い始めた。
「おい、酒じゃないのか、それ?」
未成年者ばかりで構成されているはずの部隊を見やって、光陰が眉をひそめながら尋ねた。
「私が作ったジュースですぅ、もう、固い事は言いっこなしですよ〜。」
あくまで笑顔で応酬するハリオンが、有無を言わせぬ迫力で光陰を黙らせる。
「手前は、これで。」ウルカがあぐらをかいてハイペリアの一升瓶に酷似した容器をドンッ、と床に置いた。
その瓶にはラベルに「リレルラエル酒造・武士の誉」と毛筆体で表示されている。当然ヨト語であるが。
「めちゃくちゃ似合ってるな、その姿。これで桜が咲いてたら完璧だぞ。
――しかし、それうまそうだな。いけるクチか、ウルカ!」
さっきまでの優等生ぶりを豹変させた光陰がウルカにすり寄った。
「おお、コーイン殿も是非ご一緒に。まあまあ、まずは一献。」
光陰のグラスに中身を注ぎ始めるウルカも、考えてみれば未成年者のはずであった。
「ま、いいか、あたしも飲みたい気分だしね。」今日子の寛容なお言葉により、宴会がスタートした。
「手前はねっ!!手前は、この男のためなら死ねる!!あの時そう思いましたよ!
聞いてますかあ、コーイン殿っ!?」
すっかり出来上がって涙を流しながらクダを巻くウルカに、光陰が絡まれ始めた。
「聞いてるって。酒グセ悪いな、ウルカ。」襟口を引っ張られながら光陰が溜息をついた。
「うっうっ、夜伽の役目はいつでも私にお申し付け下さいと、あれほど...。
私、心の準備は出来ておりましたのに...ユート様ぁ〜。」
エスペリアがスピ目もはばからずに泣き言を言う。
「そういう気持ちはですね、ちゃあんとぶつけなきゃダメなんですよ!
だいたいユート様は言われるまで絶対気が付かないタイプなんですからっ!!」
ヘリオンがいつもの弱気はどこへやら、腕をぶんぶん振り回して、恐ろしい事にエスペリアに向かって力説し始める。
「はっ!こんな事をしてる場合じゃないわ!来たるべき決戦に備えて鍛錬しないと!」
ヒミカが突然部屋の隅に行って腕立て伏せを開始する。...まあ、この中では比較的まともな行為であった。
「ね〜、コ〜インさまぁ、私にもそのお酒ついでくださらなぁい?」妙に艶っぽい声を出してセリアがロリ坊主ににじり寄った。
「だから微妙に射程外なんだよ。なんだ、射程外って?」
いま一つ喜べない光陰であった。
「やはりこの場にゆーろさまがいないのは納得れきませんね。
わらしがいって引き連れて参り...ぐえっ!」
「きゃははは、お姉ちゃん!ま〜た言われるよお、あの言葉!」
ろれつが回らなくなりかけたファーレーンに明るくヘッドロックをかますニム。
「―――ん〜、もっと飲め、コーイン。」
もくもくとネネの実酒を飲み続け、雪のような白い肌を朱に染めているアセリアが、
光陰のグラスに溢れんばかりに酒を注ぎ込む。
「いや、マジでこれ以上はやばいですって、アセリアさん。」
何だか情けない新入社員のような声を出す光陰であった。
「あれー、もうなくなちゃったよ、このジュース。」意外と酒に強かったオルファがハリオンにおかわりを要求する。
「......。」
「ねーねー、ネリー、さっきから何でひとっこともしゃべんないの〜?いつものネリーらしくないよ〜!?
ほらほらー、もっとパーッとやろうよ!!」...姉妹逆転現象が起こっていた。
「やっぱり〜、盛り上げるためにも〜、ここは私が余興を〜。」
二つ目の樽を持ってきたハリオンの顔色はまったくいつもと同じであったが、目の焦点が微妙に定まっていなかった。
「キャ――ッ!!ハリオン!!ななななに脱ぎ始めてんのよっ!!」
自慢のプロポーションを披露しようとするハリオンを今日子が慌てて止める。
―――ラキオスのスピリット部隊史上最低の夜は、こうして更けていった...
686 :
あとがき:04/10/24 20:50:46 ID:0FajDeZm
今回は冒頭から、未だ明快に説明されていない岬家の母娘不和の真相に迫ってみました。
もし悠人・光陰がらみなら、多分こんなとこでしょう。
ノベル読んだ方はご存知だと思いますが、もともと今日子ルートは存在していなかったわけですから。
では、次スレでお会いしましょう。
激しくGJ!!
やっと二人が結ばれましたな。
酒宴のシーンで吹きましたw
>>686 憂鬱の人さん
久し振りにリアルタイムで拝読、しかもナナルゥのHシーンとは……眼福眼福ですw
それだけじゃなく酒盛りネタまで。一粒で二倍美味しいですね。
腕立てする友人が実際にいるのでヒミカ特に笑いました。
今日子母娘の確執ってそういえば軽く流されていて考えた事ありませんでした。
ノベル持っていないので良く判りませんがなにか深い事情があるのでしょうか?
>>667 髪結いの人さん
いつも感想有難うございます。
ウルカは「軸」の1本ではありますが、ヒミカと対かも。
「少女」は……所々伏線は貼っているのですが、どうでしょう。
酒盛りは何かネタになりそう…………月見とかで。
>>687 「家出」ではカットされた宴会シーンです。
当時、エスは欠席でしたが今回晴れて(?)酔っ払いの
仲間入りを果たしました。
自分的にはアセリアがいい味かなー、なんて思ってますw
>>688 またまたー、とぼけちゃって。スピの酒癖は貴方の意見を
かなり取り入れてるんですよ〜、信頼さん。
ぶっちゃけ全員分考えるの大変ですから。(←手ぇ抜くなよ)
光陰!調子に乗ってセリア持ち帰るなよ〜!!
♪赤い靴履いてたおんなのこ 異人さんにいれられて
――――チクショウエトランジェめっw
母上は、娘のフラフラ尻軽優柔振りにやきもきしてたんですかね。その辺もしかすると、両親の不仲とかも絡むかも。
天井から飛び降りてくるのかと思いました>ナナルゥ
くだ巻き酒宴、光陰が常識人になってるwシアーに偵察に生かせるとは誰の発案だ?DownネリーHighシアー(゚∀゚)イイッ
ファーは酔ったふりですよ?「つぶれたふりしてユートを誘う。はらぐろファーレーンにぴったりよね」「な、なんですってシアーッ!
もう一度言ってみなさいっ」「「「「やっぱり正気じゃん」」」」
キノコはワラタ。この先生きのこれますよみんな無事にw で、ハリオンワカメ酒マダー ≡=―−( ゚д゚)一・∵ .トスッ
>>690 お、これは髪結いのダンナw 今のところ憂印ナナルゥは散髪屋さんじゃないですが。
今日子フラグは佳織とかぶってるし、多分あれで間違いないかと。
ノベルでは今日子のH相手は光陰ですからねー。いい話です。
ハリオンの暴走を止めた今日の字にはスレの皆さんからの非難ごうごうかもw
いけないいけないと思いつつ腹黒ファーになってしまう...
ネリー、気に入って頂けましたか?まさに「静寂」のネリー!ネリーくーる!(←酔ってるのか、俺?)
みんな乙〜
私の中で
>>560が大ヒット。
もう少しでお話が浮かびそうな気がしたけど今一歩届かず orz
>憂鬱の人氏
ついにエチも迎えいよいよ終盤へ…最後をどうしてくれるのか
今から楽しみにしてます。
>信頼の人氏
英字系(Proposition等)ラインの振り加減が絶妙ですな、相変わらず。
そろそろそっちのラインの像が見えて来た気もしつつ、
まだまだ一捻りも二捻りもしてくれそうでわくわくですよ。
>>611 問題ないですよ〜、と一応明言しておきますね。
G.J!!
しかしスピって二日酔いは大丈夫なのかねぇ……
>>692 今回はエターナル編までやってみようと思っています。
駆け足で行って、あと2回プラスαくらいでしょうかねえ。
何となくラストシーンのイメージはあるんですけど。
乙&グッジョゥ!
個人的に桃色のマナが大ヒットしましたw
行為前
「『うわっ、小さ』」
「へ?ナナルゥ?」
「どうしましたか?ユート様」
「い、いやなんでもない。」
行為後
「はぁ、ユート様・・・」
「なんだ?ナナルゥ」
「『へたくそ。』」
「・・・・・・」
「ユート様?」
「なぁ、ナナルゥさっきのもそうだけど、それハイペリア語だよな?誰に聞いた?」
「コーイン様がユート様はこう言うと喜ぶと・・・」
「そうか・・・」
ガスッ! 出来心でした ゴスッ! す、すいま・・・ゴメッ・・・! ドガッ!
ほんと、勘弁・・・しッ メゴシャアッ!
とかいうネタが浮かんでしまいました。
生まれてきてごめんなさい。orz
)696
『へたくそ』と『なあ、ナナルゥ (ry』の間に本気で落ち込んで
ナナルゥの奉仕メインの2回戦が開始する光景が真っ先に浮かんだよorz
>>696 光陰め、疑うことを知らないナナルゥになんて事をw
このスレ的には、光陰が笑いの主役ですねー。
ちなみに桃=ネネの実です。ネネの実色では伝わりにくいので。
うんうんと頷いてたスピ達が放出したものと推測されます。
ナナルゥインプリンティング。
くの一ナナルゥ。
どっちもナナルゥらしさが出てるのがこのスレの不思議w
>>692 寸劇の人さん
うっ……もうライン見えて来ちゃいましたか……
ミスリーディングを連載で演出するのって難しいですねorz
英字系?は前作含めて全部数学用語です(バレバレ?)。
翻訳されるとネタばれっぽくなるんですけどそんな暇な人はいないだろうとw
あ、あと許可頂いて有難う御座います。
この作品、実は「寸劇@第二詰め所」がきっかけなのでほっとしました。
光陰が死んだ。
享年35歳。早すぎる死ではあったけど、アイツは十分満足してたと思う。
心残りがあるとすれば、それは情けない私の事だろう。
世界を救った英雄の死に、国葬が行われた。
でも、私は出なかった。
光陰が、そんな事望むとは思えなかったから。もう別れは済ませていたから。
でも、その日から私の中にはぽっかりと穴が空いて、何をしていいのか、何をすべきなのか、全然判らなくなった。
今まで光陰に頼りっきりだったのがよく判る。情けない事この上無い。
昔の戦友達が会いに来てくれた。
女王陛下の秘書をしている者。軍で戦術を教えている者。天才学者の手伝いをしている者。
作家になった者。花屋になった者。配送業をしている者もいた。
みんな自分の道を歩んでいる。
そんな彼女達と会う度に、息が詰まるような思いに囚われた。
私だけ、自分のすべき事が見つけられていない。英雄と呼ばれても、平和な世の中じゃ何も出来無い。
そんな私の思いを見透かしたのだろうか。作家になった彼女が、一枚の紙を渡してくれた。
それにはある住所が書いてあった。
街の外れ。戦争で破壊され、もう誰も住んでいないような区画。
何をすべきかも判らなかった私は、まるで導かれるようにふらふらとそこへ向かった。
そこには闘技場が在った。
薄汚れたその闘技場の真ん中に彼女はいた。
彼女の対戦相手だろう男に一発拳でお願いして、役目を代わってもらう。
こんな拳の一発で沈むような奴が、スピリット相手に戦える訳も無いだろうに。
闘技場に上がる。
彼女は驚いたふうも無く、軽く私に微笑んで見せた。
『空虚』を取り出す。
彼女も自分の荷物から、『月光』を取り出した。
客席がざわめく。それはそうだろう。
挑戦者が一人の女に叩きのめされ、格闘ではなく剣での、それも永遠神剣での戦いが始まろうというのだから。
永遠神剣を用いての戦いは、軍以外には許可されていない。永遠神剣の力を考えれば当然だ。
でも、そんなこと今は知った事じゃない。
すぅっと世界から音が消える。
彼女の恐ろしいほどのマナを感じる。
刺すような剣気。そして久しぶりに、本当に久しぶりに感じる純然たる殺気。
刹那。
何メートルも離れていた私達は、闘技場の中心でぶつかっていた。
弾けるマナの火花。認識しきれない速さで奏でられる金属音のスタッカート。
避け、弾き、斬る、突く、刺す。
『月光』が円月の軌道を描き、『空虚』が跳ね上げられる。
腹に激痛。蹴りがまともにめり込んでいる。
体がくの字に曲がり、吐瀉物が胃から逆流する。
倒れた私を彼女は一片の容赦も無く蹴る。蹴り続ける。
あまりの痛みに頭がスパークする。
まるであの頃の様。戦争をし、命のやり取りをしていたあの頃。
思い出す。昔の自分を。
……ああ、そうだよ。忘れてた。本当に、完全に、完膚なきまでに忘れてた。
私達は大陸を統一した勇者なんかじゃない。
平和を導いた英雄なんかじゃない。
私達は、スピリットを殺し、人を殺していただけの……
ただの殺人鬼じゃないか!!
止めとばかりに振り下ろされる踵を転がって避け、素早く立ち上がる。
『空虚』を構えなおす。彼女も『月光』を構える。
優しいな。『月光』で私を貫いていれば、勝負はついていたのに。
私が目を覚ますのを待っていてくれたのか。
大丈夫。もう目は覚めた。もう遠慮はいらない。存分に全力で殺し合おう!!
『月光』が煌き、空気が裂ける。光にしか見えない剣筋を読み、避ける。
そうだよ。剣筋が見える訳が無い。相手の動作から、武器の形状から判断して回避するしかない。
全部思い出したよ。だからもう手加減しなくていい。
『月光』が再び煌く。さっきとは比べ物にならない剣閃。
読み、避ける。首が軽く斬れる。問題無い。かすっただけ。
でも、判断が一瞬でも遅れていたら、首と胴はお別れしていた。
これだ。これが戦い。殺し合い。私達がしてきた事!!
『空虚』で突く。刺す。突く。刺す。攻撃がかすり、彼女の二の腕から僅かに煙が上がる。
まともに当たれば黒焦げになる『空虚』での攻撃。
私はこれでどれだけの消し炭を作ってきたのか。
避け、弾き、斬る、突く、刺す。
血飛沫の中、狂気の笑いを浮かべながら私達はただひたすらに斬り合った。
壮絶で、無慈悲で、凄惨で、容赦無い戦い。
……最後に立っていたのは、私だった。
倒れている彼女に息はある。良かったと思う。
でもそれは勝負がついたからこそ思う事。さっきまでの私は、純粋に彼女を殺す為に神剣を振るっていた。
ありがとう。私が何者なのか思い出した。
世界を救った英雄? 平和を導いた勇者?
馬鹿馬鹿しい。私達はただの殺人鬼。戦争というただの殺し合いをし、命を奪いとっただけ。
目が覚めた。
私にはまだしなければいけない事がたくさんある。
罪を償う為に。
光陰が目を背けさせてくれていた。それに気付かずにただ幸せな毎日を過ごしてた。平和で間抜けな私の頭。
倒れたままの彼女を見る。彼女は笑っていた。
見れば彼女の全身には傷痕がある。それらは剣の傷痕だったり火傷痕だったり。
彼女が人間に不覚を取る訳は無い。
だとすれば、彼女はどれだけのスピリットを、こうして導いてきたんだろう。
彼女は光の後ろの影として生き続けている。
凄い女性だと思う。強い女性だと思う。
だからこそ、私は何も言わず、感謝の気持ちを込めて一礼だけして、彼女に背を向けた。
影を確認し、光の方向を確認したら、後は光に向かって進むべきだから。そう、たった今教えてもらったから。
「進め」
背中に声がかけられた。
強くて優しい言葉。
「英雄に、なれ」
「ええ。約束する」
それが私と彼女の交わした最後の言葉。
恐らく、もう二度と会う事も無いだろう。
大丈夫。もう迷わない。
私は光に向かって進んでみせる。
>光陰が死んだ。
> 享年35歳。
ワラタ
こうして35歳の女英雄(崖っぷち)が生まれた
のだった
>700
GJ!
しかし、冒頭一文読んで
「死因は感電死‥‥?」
とか思ってしまった
のだった
>>700-704 凄い。光陰以外名前が無いのに誰が誰か判ってしまう。
それにしてもファーレーン、就職先闘技場だったのか……orz
なんかかっこいい。月光を背中に受け、進む先はやっぱり戦いかも知れないけど……
未亡人キョウコさんw ガンガレ。
花屋さんだけ分からないのだが……シアーだっけ?
光陰死んじゃったのかぁ。いい奴だったのに...ううう…(泣
この際作者は誰?というような無粋な突っ込みは置いといて。
これが『始まる』のか、もう既に『終わってる』のかが一番気になる…
>>708 何となく緑っぽいので...ニム?
>>699 いやいや、まだ五里霧中に影を見た気がしただけですよ。
霧の中の真実か、はたまた錯覚幻か…。
てなわけで、しっかりミスリードされてる可能性は高くて。
そろそろ予想を立て始められるぐらいには材料が出始めたかな、という感想です。
まだまだ新しい材料に踊らされて右往左往することになるとは思いますが、
それもまた楽しみのひとつです。
記憶にない語は辞書引いてます(w < 英字サブタイトル
あ、許可とかたいそうなんじゃなくて。気にする必要ないですよ、と。
私も他の方の影響受けてますし。相互にプラスな影響を与え/受けて
各人・スレ共に良い方向に行けるといいですよね。
そもそも「寸劇」書いてみた動機の多くを占めていたのが、当時の状況に
繋ぎなり材料なりになればいいなということでしたので、
きっかけになれたなら願ったり叶ったりですよ。
>>700-704 このスレ的にはなかなか斬新な切り口かもしれない(w
短い中に心情の変化がしっかり凝縮されていて読ませますねぇ (・∀・)イイ!!
>>708-709 「緑の指」ってことで緑スピの線も捨てがたいけど、
初代スレ760でヘリオン花屋というのもありましたね。
でも今回の列挙の中ではヘリオンはあっちなのかなぁ…?
サーギオス帝国に佳織が攫われた後の数週間は慌しく過ぎた。
国王を白昼堂々と暗殺されたラキオスは、その体面を保つ為にも望まない戦いに挑むことになる。
レスティーナ皇女が自ら赴いたマロリガン大統領、クェド・ギンとの
対帝国軍事同盟の交渉はどうやら不調だったようだ。
これでラキオスはサーギオス・マロリガン両大国相手に戦うことが避けられなくなった。
しかし悪い材料ばかりでもない。
元帝国の天才科学者ヨーティア・リカリオン。
マナの理論から実践、その他幅広い分野に彼女の残した功績は数知れない。
隠遁生活を送っていたその彼女がラキオスの召喚に応じてくれたのだ。
彼女が手をかけてあっという間に実現した『エーテルジャンプシステム』はこれからの戦いに即役立つものだった。
彼女が加わったラキオス陣営は充実したスピリット部隊やエトランジェ・ユートと共に、
レスティーナ皇女の下、きたるべき戦いに着々と備えていた。
誰もが漠然とした不安を胸の中に抱え込みながら。
交渉の決裂により、自動的にマロリガンと交戦状態に入ったある日の事。
第一詰め所の台所が当分使い物にならないとかで、悠人達が第二詰め所にやってきた。
どうやらアセリアが何かをしたらしく、横で今座っている姿もなんとなく落ち込んでいるように見える。
厨房ではハリオンが上機嫌で何か作っていた。いつもより大人数なので張り切っているのだろう。
「お、さ、え、てぇ〜もっおっさっえっきれないっっ揺・れ・るっこの谷ぃ間ぁ〜わぁ〜♪」
…………色々と危険そうな歌が聞こえてくるが気にしないでおく。
料理というものはやったことがないが、それなりに楽しいものらしい。
ナナルゥ的には栄養を摂取出来ればどんな形でも構わないと思うのだが……
少し疑問に思い、向かいに座るアセリアに訊ねてみる。
「アセリア、何故料理をしようと?」
いきなり話しかけられたせいか、ちょっと驚いた風なアセリアがちらっと悠人の方を見た。
テーブルの向こうでネリーとシアーにじゃれられている悠人を確認してから視線をこちらに向ける。
「……ん。なんとなく。」
「……そうですか。」
もともと無口な二人なので会話が成立し難い。
たまたま横で聞いていたオルファリルが補足説明を買って出た。
「あのね〜。アセリアお姉ちゃん、パパに褒められたかったんだよね〜♪」
「オルファ……ちがう。」
よく見ていないと判らないほど微かに頬を染めてそっぽを向くアセリア。
その様子から判断してオルファリルの言う事は正しいのだろう。でも。
「……なぜ褒められたいの?」
感情というものが今だよく掴めないナナルゥはそんな疑問を呟く。
しかし、可笑しそうな顔でそれに答えたオルファリルは明確にして至極単純だった。
「変なの〜。だって大好きな人に褒められるのは、すっごく嬉しいでしょ?」
あまりにあっけらかんと答えるオルファリル。その笑顔はなんだか凄く楽しそうだった。
その笑顔に釣られた訳ではないが、試しに自分が料理を作って悠人に褒められているのを想像してみる。
悠人の嬉しそうな顔を想像するのは………………少し、楽しかった。
「さ〜、出来ましたよ〜」
そう言ってハリオンが披露した料理は普段の数倍は豪華だった。
手早く皿を並び終えたハリオンが当たり前の様に悠人の隣に座る。
そして全員が席に着いた事を確認した後にこにこと手を合わせ、
「いただきます〜」
不思議な掛け声を上げた。聞き慣れない単語に第二詰め所の面々が注目する。
悠人にエスペリア、オルファリルにアセリアまでが何故かくすくすと笑っていた。
「ねえハリオン、それ、なに?」
第二詰め所を代表して、セリアがまず質問した。うんうん、と皆が頷いて聞き耳を立てている。
「ああ、それはですね〜、ハイペリアでの食事の前の挨拶だそうですよ〜」
「挨拶?食事の?」
「はい〜。何か色々と感謝をするそうです〜。ユートさま達はいつもなさっているそうで〜……」
「いただきます!」
「「「いただきま〜す♪」」」
ハリオンの説明も最後まで聞かず、あちこちで掛け声が上がる。
真っ先に声をあげたのはヒミカだった。きらきらと睨みつけるような瞳で悠人に挨拶をしている。
大合唱に少し引いた悠人がそれでも苦笑いしながら挨拶をしていると、ふとナナルゥと目が合った。
何か言いたそうにじっとこちらを見ている。
(…………?)
なんだろう、と悠人が話し掛けようとした時、ナナルゥがぼそっと呟いた。
「…………いただきます」
そのまま黙々と食事を摂り始めるナナルゥ。良く判らないまま悠人はフォークを取ろうとした。
「……あれ?」
食器が、ない。自分の分だけ。おかしいなと首をかしげていると、横からフォークに刺さったリクェムが差し出された。
ハリオンがにこにこしながらこちらににじり寄って来ている。
「あの、ちょっと、ハリオンさん?ってうわわ、胸!胸を押し付けるな!!」
「え〜、こうしないと食べさせてあげられないじゃないですか〜。はい、ユートさま、あ〜ん♪」
がしゃん!
ヒミカとナナルゥが食器を落とす音が食堂に響き渡った。
灼ける様な熱風が肌を焦がす。照りつける太陽の眩しさは改めて見上げるまでもなく厳しい。
砂山と中空だけの蜃気楼で歪んだ風景。もう既に一行は見飽きた景色にウンザリする余裕も無かった。
口の中が砂でざらつく。踏みしめる足はとっくにその感覚が無くなっている。限界を感じ、悠人は休憩を命じた。
ダスカトロン大砂漠。
ラキオスとマロリガンの間に横たわる巨大な砂漠。
そこを舞台にラキオスとマロリガン両国の戦いが始まっていた。
「戦い」とは言っても、幸か不幸か砂漠が広大過ぎるが故に敵と遭遇する事は殆ど無い。
それでもここが安全な地だという訳でもなく、常に警戒が怠れないのには違いが無かった。
問題は、それがこの条件下で行われているという事。
生存がそもそも難しいという極限的な環境は、精神の疲弊を加速度的に増加する。
ましてやマナが殆ど枯渇したがゆえに砂漠化したこの土地。
生身である悠人はともかく、その身体をマナで構成しているスピリット達にとってこれほど過酷な条件は無かった。
緑スピリット達が自らを守る為に最小限展開していたシールドハイロゥを少しだけ大きくする。
そうして出来た空間に全員が潜り込んだ。
撃ち抜かれた肩から血が吹きだす。
しかし驚いた顔をしているのはむしろ撃った少女の方だった。
「あ…………、あ…………」
その怯え切った瞳は、既に恐怖というより恐慌の色が濃い。
自分自身に驚いているその様子は、神剣を持つその手がカタカタと震えている事でも判る。
神剣が刺さったまま、そっと少女を抱き締めた。
これ以上、怯えさせないように。そのココロを、壊さないように。
「あ……………………」
一瞬の驚き。そして小さなその両目からぶわっと涙が溢れ出す。
小さく呟かれるゴメンナサイの声。
私はそっと動く方の手で頭を撫ぜてあげた。
――――――もう大丈夫。わたしが守ってあげるから………
………それは、少しだけ昔に遠ざかった想い出。与えられた想い出。
昼夜の気温の高低差が激しいのはもといた世界と同じなんだなと、悠人は変な所で感心せざるを得なかった。
日中あれだけ苦しめられた熱風は今はピタリと熄み、砂漠全体が澄んだ静寂に包まれている。
自らが踏みしめる足音だけが響く世界は不思議な幻想感に満ち、
肌に触れるヒンヤリとした空気はその存在自体がこの退屈な景色に静謐さを醸し出していた。
「ハリオン、起きて下さい。出発です。」
「……あ〜、もう、そんな時間なんですか〜?」
「全く凄い特技ですね、うたた寝しながら全員を守るシールドを展開するなんて……」
「そうですね〜、凄いですねぇ〜」
皮肉交じりのナナルゥに、寝ぼけながら答える。
横で見ていたヒミカは首をかしげるナナルゥと目線を合わし、溜息混じりに呟いた。
「アンタって昔からそうよね……。寝てるときでも全員を庇う様な感じで。人間の、『お母さん』って感じ?」
「はぁ〜。お母さん、なんですか〜? それはいいですねぇ〜」
「ぷっ……。だから、アンタのことだってばっ」
何がいいのかぽやぽやと線になった目で答えるハリオンに、ヒミカは思わず吹きだしてしまう。
そしてそれにつられるかの様にナナルゥが。
―――――――くすっ…………
本当に、ささいな一瞬の微笑。瞬きの間に消えたそれは、それでもハリオンが待ち望んでいた兆候だった。
支援必要かな?
通称「ヘリアの道」。
道とは名ばかりのその荒れ果てた地面を、黙々と進む。
一つの丘を越えればまた新たな丘を。それを一体何度繰り返しただろう。
何時になったらスレギトに着くのか。疲労からか、詮の無い事を考えてしまう。
流れる汗を拭おうと『赤光』を持ち直したヒミカは、そこでふと違和感を感じた。
軽く周囲を見渡す。といっても相変わらず見慣れた景色には砂と空しか無かった。
(………………?)
モヤモヤした気持ちを抱えたまま目前の丘を越えたとき、先頭を行く悠人の背中に緊張が走る。
たまたますぐ後ろを歩いていたヒミカも、僅かの後それに従わざるを得なかった。
―――そこに、居た。漆黒の翼を持つ、最強のスピリットが。
呆然と立ちすくんだのは、しかし一瞬。無言のまま襲い掛かった一閃が、ヒミカを現実に引き戻した。
「みんなっ! 逃げてっ!!」
叫びざま、身を避わす。自分はそのまま悠人ごと倒れこんだ。
ヒミカの脇すぐ横を襲ったその一撃は、
疾風の様に切り込んできたウルカによって竜巻を巻き上げながら後方へと過ぎ去る。
もし神剣で受けていたらそれごと真っ二つだったであろうその威力。
驚きと共に湧き上がる恐怖を懸命に抑えて振り返る。
ウルカは自ら起こした砂塵の中央でゆっくりと立ち上がろうとしていた。
静かな殺気を宿すその双眸。背中に冷たい汗が流れるのを感じながら、ヒミカは先程の違和感の正体を知った。
ウルカの周囲に忽然と現れる複数の影。いうまでもなく帝国の『妖精部隊』。
一目で強敵と判るそのスピリット達は、しかしいずれもその瞳に感情というものが感じられない。
敵に囲まれたと冷静に認識しつつ、もう一方で感じるデジャヴューにナナルゥは戸惑っていた。
なんだろう?彼女達に良く似た誰かを自分は知っている…………?
そんな考えが意識を掠めたが、すぐに戦闘に集中すべきだと思い直した。
緊張で汗ばんだ手で『消沈』をぎゅっと握る。
(え……?汗…………?)
こんな事は初めてだ。戦闘において、緊張は躯に硬さを生む。
それは当然隙となって状況を不利にさせる。
神剣に身を委ねていれば、精神は戦闘に集中し、雑念による緊張など発生しない。
ナナルゥは今までそうしてきた。いや、むしろ自然にそうなっていたと言うべきか。
しかし今、ナナルゥは自らの感情の起伏を認めざるを得なかった。
周囲を囲むスピリット達の視線に囚われ、『消沈』を持つ手が小刻みに震え始めているのである。
「こんな、事って…………」
言う事をきかない両手に力を込めようと必死になっているナナルゥに近づく一つの影。
肩を叩かれる感触に我に返ったナナルゥは急いで振り返る。
そこにはにこにこと微笑むハリオンがいた。
その甚だしく場違いな笑顔に思わずほっとする。
不思議に躯の震えが止まり、自然に言葉が出た。
「ありがとう。もう大丈夫。」
二人で背中合わせに警戒しつつ、中央で対峙する悠人とウルカを横目で見る。
何を話しているのかは良く聞こえないが、どうやら話は決裂したようだ。
二人の間に緊張が高まるのが判った。
(いよいよね…………)
もう一度剣を握り締めた時。周囲のスピリット達が、さっと引いた。
「…………またお会いできて恐悦です、ヒミカ殿。」
すっと目を細めたウルカは特に感情を込めずにそう言った。
「……ええ、出来れば会いたくはなかった、けど。」
気持ちで負けてはいけない、そう自分に言い聞かせながらヒミカは懸命に言葉を紡ぐ。
「しかし残念です。今日の手前の目的は、貴殿と戦う事ではありません。……そこをどいていただけませぬか。」
「……そう、残念ね。わたしはココが気に入っているの。貴女に譲る気は無いのよ。」
「……そうですか。ならば剣で道を拓くのみ。覚悟致されよ。」
ウルカは一度剣を鞘に収める。やや前かがみのその姿勢は獲物を狙う肉食獣を連想させた。
「……貴女こそ、この間みたいに逃げるんじゃないわよ。」
ただ対峙しているだけで神経をすり減らされるような威圧感に耐えながら、ヒミカは神剣魔法を詠唱しようとする。と。
「…………待ってくれ、ヒミカ。」
ヒミカは悠人に肩を掴まれていた。
「……ユートさま!危険です!」
思わず悲鳴の様な声が漏れる。実際今この瞬間にでもウルカが斬り込んでくるかもしれないのだ。
自分達の隊長を、ましてや密かに憧れている人をみすみす危険に晒す訳にはいかない。
心配そうなヒミカにしかし悠人は軽く苦笑いを浮かべて答えた。
「大丈夫だよ、少し話をするだけだ…………奴には訊きたい事がある。」
そう言ってウルカを睨む悠人の目は真剣そのものだった。
一方のウルカもそれを待っているのか、先程の姿勢からピクリとも動こうとしない。
ちらっと後ろに待機しているエスペリアの顔色を窺う。
やや曇っているその表情には、それでも悠人の言い分を通すようにとの意思が感じられた。
「…………判りました。どうか、お気をつけて。」
悠人の目をしっかりと見つめながらヒミカはそう言って少し離れた。
いつでもその「盾」になれる様にと心に留めて。
「それでも、許せないんだよっ!」
悠人の叫び声が一騎打ちの始まりだった。
先に動いたのは悠人だった。
オーラの一部を開放し、自らの攻撃力を高めるエトランジェ独特の神剣魔法を唱える。
その詠唱が終わるや否や、それを意に返す風もなく、ウルカが斬り込む。
目に映らないほどの四連撃。ヒミカが目で追えたのはそこまでだった。
烈風ともいえるその斬撃が通過した後。舞い上がる砂埃の中、悠人の影が動いた。
渾身の一撃。攻めの終わりの隙を突かれたウルカは、それを避わすことが出来なかった。
咄嗟に神剣で防ぐ。跳ねあがった無骨な剣がウルカの『拘束』をはじき飛ばしていた。
「…………くぅっ!」
たまらずウルカが膝を着く。勝負は一瞬で決まっていた。
負った傷ははるかに悠人の方が重傷だった。
しかし何故かやや動きに精彩を欠いたウルカは自ら負けを認めたように俯いて動かなかった。
………………………………
……………………
…………
去っていくウルカを、何故か悠人は追わなかった。
佳織から伝えられた言葉を手の中のお守りと共に握り締める。
「…………負けない、か…………」
そっと呟く悠人の横顔にヒミカは声をかけることが出来なかった。
周囲から襲い掛かる悪意のカタマリ。
生まれて初めて逃げたいと心の底から思った。
生まれて初めて助けて欲しいと思った。
でも逃げ場は無くて。こんな時いつも居てくれた奴も居なくて。
そんな、初めてのどうしようもない中。
アタシの中で声が響いた。
掴めば助かると言われてその細い藁にしがみついた時。
――――あたしは、アタシじゃ無くなっていた。
「よう、目は覚めたか、お姫さん?」
目の前の男が話しかけてくる。
がっしりとした体格、身に纏う見慣れない服装。短く刈り込んだ髪。顎から生えた無精髭。
意志の強そうな眸が彫りの深い顔で光っている。
……ああ、そうだ。
胸からは何か良く判らない珠が連なってぶら下がっている。
そしてもっとも特徴のある、その巨大な神剣。
……ここは、砂漠。
永遠神剣第五位『因果』。今は一時的に共同戦線を組んでいる。
その主が目の前で話し続ける。
「来たぜ。挨拶に行こう。」
……やっと、殺せる。
先に立って歩き始めるその背中。いずれは倒さねばならない相手。しかし今は。
……『求め』。やっと、殺せる。
不敵な笑みを浮かべて今日子は立ち上がった。傍らの『空虚』を握り締めて。
「やばいぞ、これは。アセリア!」
悠人が前方で叫び声を上げた時には周囲の異変は目に見える程だった。
悠人の更に前方。一見何も無いその場所に赤いオーラが集積する。
それは同心円の文様をとり、たちまち赤紫色に変色していった。
あれは…………オーラフォトン!エトランジェ!?
「みんな距離をとれ!狙い撃ちにされるぞ!はやくっっっ!!」
叫ぶと同時に防御魔法を唱える。一斉に散開するスピリット達。
そして悠人がレジストを唱え終わると同時に。紫紺の雷が悠人を襲った。
辛うじて防ぎきったがそれでも服がずだずだになっている。その威力に悠人は鳥肌が立った。
「ユ、ユートさま!ご無事ですか?」
ふらふらになった悠人にエスペリアが、続いてオルファリルが駆け寄っている。
後方にいたハリオンは衝撃の余波に耐えながら、しかしなによりも岩場の上に視線を奪われていた。
女が、立っている。
「……次は、殺す。」
なんの感情も持たずに呟かれた一言。意志の無い声は明らかに神剣に飲まれたものだ。
そして紫電を纏った細身の神剣から発せられる圧倒的な力。あれは……
『大樹』からの悲鳴の様な警報が頭の中に鳴り響く。
ハリオンは理解するよりも先に悟った。
伝えられる四本の神剣。あれは間違いなくその内の一本なのだと。
そしてそれを使いこなせるのは……当然、エトランジェ。私達が必ず、敵わない者。
横に立っているナナルゥの様子を窺う。感情の無いはずの瞳が、ゆらゆらと揺れていた。
「ふふん。やっぱりこの程度じゃだめだよなぁ。」
場の緊張とはそぐわない声が追い討ちとばかりに辺りに響く。
現れた二人目の人影。その威圧感は持つ剣を凌駕している。
……いや、その巨大な神剣が放つ圧倒感は、それがどんな存在かをふんだんに示していた。
明らかに、自分のそれとは位の違う神剣の力。男はそれを軽々と抑えつけているのだ。
――結論は、本能より後に来た。マロリガンが擁するエトランジェ。
遂にその二人が揃って目の前に現れたのだ。
『消沈』の意識がすっと後退する。敵う相手ではない事を悟った剣の自衛。
代わって浮上したナナルゥの意識は、とりわけ女性のエトランジェの方に囚われていた。
また、あの感覚。確かに自分は“あんな状態の誰かを知っている”。
同時に一つのビジョンとなって浮かび上がる記憶。
悠人が岩場に向かって何か叫んでいる。
すると男のエトランジェがそのオーラを更に膨れ上がらせた。
黄緑色のそのオーラフォトンは見た目の優しさとは裏腹に強烈な殺意を周囲に撒き散らす。
気の遠くなるようなプレッシャー。どうにもならない死に近づく感覚。
瞳に映るその光景は、どこか遠い処の出来事の様に。
「あ…………あ…………あ…………」
いけない。なにか。忘れている。いけない。思い出さなくては。でも。
戸惑いながらも手繰り寄せようとした記憶。
浮かんできたソレに手を伸ばそうとすると同時に辺りのプレッシャーがふっと消えた。
現れた『消沈』に意識の大半が塗りつぶされてしまう。
視界が戻ってきた時、既にマロリガンのエトランジェは姿を消していた。
その一連のナナルゥの様子を、ハリオンはずっと見つめていた。
敵が去った後もずっと震え続けている、ナナルゥのその姿を。
支援
朝って本当に誰もいないんですね……6w0+nz7zさん、支援本当に有難うございました。
少し長い「V」ですが、これで軸が4本です。
スレのトリガが近いので「W」以降は次スレになると思います。
例によって誤字脱字某ハリオンマジック等ご指摘ありましたら幸いです。
>>710 寸劇さん
辞書引いてたんですか……判りづらい単語ばかりでスミマセン。
参考までに「数学基礎用語集」でググレばあるサイトに結構説明あります。
うぁ、会社に遅刻しそうだ……
信頼さん。
風景描写が丁寧ですね、相変わらずですな。
殺風景な職場にファンタズマゴリアの風が吹いてくるようです。(←そろそろクビになるぞ
ハリオン姉さんの(ハイペリア風味の)テーマソング、最後まで聞きたいなあ。
ひょっとして夕べの酒がまだ抜けきってないとか?w
私はまだ雨の中の少女の見当が付きません。後々楽しみにしています。
>>710 どうやら光陰殺しのホシに思い当たるフシがあるみたいだな、寸さんw
私もヘリオンあっちに行ってる説に賛成。間違ってたら二人で吊りましょうね。
>>728 あ、あっちって「手伝い」ね。紛らわしくてごめん。
ホシについては別のヤシと見る。理由は(ry
>信頼の人氏
ハリオン…(w < III-2
いえいえ、それもまた楽しみですよ。 < 辞書
…といいつつブクマクしますた(w
コレはソレと思うがアレは…やはり幻を見ただけだったか…しかし4/6か…んー…
というわけで、最後まで楽しく悩みながら読むことになりそうです。(嬉
>>729 そっか、さすがはベテラン刑事。ここに牛乳とアンパン置いときますね。 つ自Θ
>>730 では観客の中の観客たる漏れ様が頂こう 自Θ(´Д`)
>信頼の人さん
むう、話の糸目が結ばれない……
この時点で何度も考え方変更してるしorz
軸が絡み合って形が出来上がるのを楽しみにしています。
>憂鬱の人さん
宴会、大笑いしっぱなしでした。
幸せの絶頂にいる二人ですからこのままさらに幸せに……
いきそうに無いのがファンタズマゴリアの世界なのでしょうかw
>700-704さん
濃い内容が凝縮されていて、一気に読まされてしまいました。
>>714 ユートの体もマナ構成じゃなかったっけ?
彼女が、異世界の住人である彼に初めて出会ったのは必然。
全てが偶然としか思えない、正に奇蹟と称するに相応しい
出会いは、――彼にとっては運命だったのかも知れないが――
彼女にとって、それほど重要なことではなかった。
彼女は与えられる使命を黙々とこなすだけ。文句も意見も無い。
そこに、己の意思は全く介在しない。否、そもそも、意思が
あるのかどうかさえ怪しい。神剣に呑まれかけている仲間が
居たが、彼女は『神剣に呑まれかけ』て、意思が無くなって
いるのではない。彼女の持つ神剣の名の示す通り、意思が
『存在』していないのだ。
だから、エトランジェと思われる少女が発見されたと報告が
あった時に、再び歴史の軌跡をなぞるのならば、もう一人
エトランジェが現る筈。探せ、他国に知られるな! などと
信憑性に欠ける命令にも、口一つ挟まずに従った。
尤も、彼女と一緒に住む二人も口一つ挟まずに従ったのだが。
根本的な所では、やはり違っていた。
風を切るような疾走。木の幹との距離が一瞬でゼロになる。
ステップを踏むようにかわしながら、息一つ乱さず、彼女は
かくれんぼには些か広すぎる森を居るかもどうかも判らない
エトランジェたった一人を目指し、かけていた。
命令を受けてどれほど時間が経ったのか。辺りは薄暗く、闇に
覆われ始めていた。ザ、と枯葉を踏みしめながら彼女は止まり、
人工的に作られたことが一目で分かる、森に作られた広場を
発見した。
違和感を感じながら、彼女は森に作られた広場を目指した。
違和感――無かった筈の広場、まるで隠されていた様――を
考えから締め出し、エトランジェと思われる彼と、所属不明の
レッドスピリットを視界に納め、彼女は『存在』を構えた。
彼女――アセリア――が、彼――悠人――に出会った最初の日。
なんの為に生きていくのか、そんな、単純だけれど一番難しい
問いに気づき始める日。
アセリアにとっての第二の人生が、始まった日。
本スレから追われてこっちに来たか
ナナルゥが忘れているのは……光陰殺しのホシ。 ナ、ナンダッテー
冗談は置いておいて、ハリオンママ。太陽と北風の二役風味が隠し味?
ナナルゥは、消沈に沈む心をサルベージできるのか。引っ張るのは悠人ではなさそうだなぁ。
少女、解らないのは俺だけじゃないということに安息を感じています。
>736
いやさ、言い切る材料あるのですか?
最初の四行くらいはなんか滅裂な気もするけど。
皆さんレス有難うございます。
>>728 憂鬱の人さん
仕事中のブラウジングはめっですよ〜とハリオンさんが言っておられますw
それはそうとあのOP。自分で思いついておいてなんですが、
それ以来本物がそうとしか聞こえなくなってしまったので危険ですw
>>729 寸劇の人さん
サイトいかれたんですか。しかもブックマークまでw
主に位相でタイトル決めてるので日本語に直されるとかえって混乱しませんか?w
ちなみにあと一個だけ英字タイトル出ます。
>>732 道行書きさん
「V」まで使ってまだ伏線全部出てないんです。
雨のシーンの解決が「X」以降で、その後テーマが出ます。
ので、宜しければもう少しお付き合いくださいorz
>>733さん
ご指摘有難うございます。
ってうわ……もしかしなくてもまたやってますねorz
第三者視点にしたのが失敗でした、すみません。
>>737 髪結いの人さん
わ、何気に核心を突いてるっぽい(汗 いえ、光陰殺しのホシじゃない方ですがw
展開読まれているかも知れませんね。
安息で落ちまでつけていただいて……感想レスで笑ってしまいましたw
うう、ネタばれしないようにレスするのって難しい……
今まで連載してきた方々の苦労が良く判りました……orz
わかった!光陰の死因は毒キノコだっ!(←わかってないって)
>>732道さん。
ネタ気に入って頂けたようで何より。そんな関西親和的アナタの為に
次回イチかバチかの大ネタ用意してますよ〜。すべったらスマソ。
>>738頼さん。
ハリオン姉さんに「めっ!」されたので程々にしときますね。
...にしても寸・髪さんは読めてるのか〜。いやっ!見込み捜査は禁物だぜ。
じっくり時間と足を使って...
>>736も焦るな。ほれ、牛乳とクリームパン つ自Θ
アセリア本編の設定が根底から覆るのを踵の先で支えつつ、
自由気儘に補完されていく第二ファンタズマゴリアの妖精達。
或る者は真面目に戦い、又或る者はただ酔っ払う。
或る者は腹黒く企て、又或る者は天井裏に潜んでプライバシーを蹂躙する。
その持てる特性をフルに使い、彼女達は遂に闘技場で集い合う。
真の戦いの果て、悠人は一体誰の手に堕ちるのか。
光陰はどうなってしまうのか。
そして巨乳ナンバーワンの栄光を掴むのは果たして?
スレの内容を正確に伝えたような伝えていないようなここは
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド。
ハリオン「ん〜、胸なんて〜飾りですよぉ〜
ちっちゃい人には〜それがわからないのかもぉ〜」
__
' ` ^ヽ '´ ヘ ヘヾ
ヽ _ ___ _ ノ ル从ルリゝ ノ〈从ハ从〉
;; `);; ヽ ー ‐‐ ―‐ ― 从リ"ロ从 λ!ヲ´ヮ`ノヲ
);; ⌒)‐‐ ―‐ ― ‐=ニ二l]OO[l二ニ=‐ ノi⊂》|Tリつ
;) ;;) ;;;`ヽ⌒`)⌒ _ __ く/|_|〉 て((く/|_|〉
;) )´⌒;;)´⌒;;)⌒;;);; )_ ___(/し' (フフ
マロリガンとの戦いの後、第一詰め所は別の意味で戦々恐々としていた。
日々鍛錬後の気怠いけど静かなお茶会。エスペリアが入れてくれたお茶が疲れた体に染み渡る。
些細な、だけど大切な日常の出来事について語り合い、笑いあう。
そんな俺達のささやかにして穏やかな時間を今日も粉微塵にする敵の襲来があった。
「オルファちゃ〜んっ!あ・そ・ぼ〜〜っ!!」
まるで小学生かなんかのような謎の雄叫びが聞こえた。
申し合わせたように無視を決め込む。しかしあれだけ弾んでいた話題が今は全く沈黙していた。
「オ・ル・ファ、ちゃ〜〜〜んっっ!…………ハァハァハァ〜〜〜っ!!!」
増々幼児化していたそれは聞くに堪えないものへと変化していく。とても健全な高校生とは思えなかった。
「…………………………#」
黙々とお茶を飲んでいたアセリアの動きがピタリと止まる。
エスペリアの湯飲み?がピシッと軽い音を立ててお亡くなりになった。
ウルカでさえ平静を装ってはいるものの、眉間の皺は隠せないようだ。
当のオルファリルは額から漫画のような大粒の汗を流して苦笑いを浮かべている。
沈黙はここにいる全員の感情が一致団結したある意味感動的な瞬間の象徴だった。
「…………ユートさま」
「…………ユート」
「…………ユート殿」
「…………パパ〜」
4人同時にこちらを見る。一部睨んでいる気がするが、考えすぎだろうと思い直すことにした。
それぞれの顔を1人ずつ見渡す。目線が合うと申し合わせたように皆コクリと頷くだけだった。
「……………………わかったよ」
無言の圧力に屈した。軽く溜息をつきながら立ち上がって入り口へ向かう。
扉の前で振り返ってみた。様子を窺っている4人が一斉に手を振る。感動的にイヤな一致団結だった。
743 :
両成敗 に:04/10/29 21:11:39 ID:9CwAXYY3
「オ〜ル〜ファ〜……ぶぉっ!!」
入り口の外で先祖還りを起こそうとしている親友に無言のまま勢い良く扉をぶつける。
エトランジェとしての最大パワーでぶつけたつもりだったが奴はのけぞっただけで踏ん張った。
さすが防御だけはいっちょ前である。ちょっと悔しかった。
「……よぉ悠人、ハデな挨拶だなぁ。おかげでちょっと鼻血が出ちゃったぜ」
爽やかな笑顔で何事もなかったかのように振舞う光陰。だが致命的に鼻血がカッコ悪い。
というかその鼻血は本当に今出たものなのかと小一時間問い詰めたかったがぐっとこらえる。
「オルファは留守だ。いないと言ってくれと言っている。じゃあな」
「ちょっと待てよ、そりゃないだろっっと!」
開けた時と同じ勢いで扉を閉めようとする俺と、間に体を挟んでそれを阻止しようとする光陰。
白と黄緑のオーラフォトンが干渉し合い、あたりに美しいプラズマが飛び交う。
ぎりぎりぎりぎり。笑顔のままでのせめぎ合いが暫く続いた。
「冷たいな悠人。第一詰め所までわざわざ足を運んだ親友に対する仕打ちじゃないぜ?」
「ストーカーかお前は。あまりしつこいと嫌われるぜロリ坊主」
「ふっ、おかしなことを言うなよ。俺はただオルファタンに愛に来ただけだ」
「それをストークというんだ。なにがタンだ。あと意識的な誤植を止めろ」
「さすがだな悠人、よくこの状況でそれだけ突っ込みが入るもんだ。流石は我が親友」
「“可哀相な”親友を持った運命を呪いつつ言うぞ。いいか、これが友としての最後の忠告だ。か・え・れ」
「や・だ・ね・♪」
「………………ふ、ふふふふふふふ」
「は、ははははははははは」
ばきっ!!
共に友情を讃え合う爽やかな笑いの後、あっけない音を立てて扉が粉砕した。
元々エトランジェ同士の戦いに扉ごときが介入出来るものではない。
今までもっていたのがむしろ不思議というべきだろう。
名も無いその扉は静かにそして眠るように、美しい金色のマナの塵になっていった。
扉を送る念仏をおごそかに唱えた後、さっぱりした顔で光陰は振り向いた。
「さっ、障害は無くなった。これで心置きなくオルファちゃんを賭けて戦えるな、悠人」
なぜそうなる。既に目的がすり替わりつつある親友の瞳は限りなく澄んでいた。
この純粋な衝動をなにか他のものに使えないのか。頭が痛くなってきた。
「おれはかねがねお前とは全力で戦いたいと思っていたんだ」
「俺達が戦う意味がどこにあるっていうんだっ!」
「…………戦う意味、か………………」
憂えた表情で天井を仰ぐ光陰。場面が場面なら感動的なシーンなんだろう。
惜しげもなく流用する光陰につい律儀にも付き合ってみたが頭の悪さは拭えない。
ところで何故かいつもならそろそろ現れるはずのハリセン襲撃が来ない。
訝しげな俺の様子に気付いたのだろう、ニヤニヤと光陰は不敵な笑みを浮かべた。
「悠人よ。俺がそう何回も同じ轍を踏むと思うか?」
「通算で63回だな。あと一回でプレ○テと同スペックになれたものを。それはそうとハリセンはどうした?」
「よくわからない例えだがまあいい。今日子なら今頃ベッドでぐっすりだ」
「あ?お前…………そこまで堕ちたか…………薬使ってまで…………」
「激しい勘違いをするな。ふふっ、毎日毎日『空虚』をフル稼働したんだ、そりゃ疲れもたまるだろう」
「!!まさか…………?!」
「正解だ。俺が意味もなく毎回雷を素直に喰らっていたと思うか?」
ふははははと意味も無く勝ち誇る光陰。なんでそんなに偉そうなんだ。ていうか、真性だコイツ。
計算づくであの雷撃を毎日喰らってたとは。まさかとは思うが、Mの気でもあるのだろうか。
さすがの俺もMでロリでは庇いようが無いのでこれ以上考えないようにする。
しかし困ったことになった。今日子がいないのではオチがつかなくなる。
いや、そんなことで困るのもどうかとは思うが。
「……こんなことならあの時砂漠で助けるんじゃなかったぜ」
「ほう、俺無しでSHやEXを切り抜けられるつもりか悠人よ。無駄に戦闘回数が増える事になるぜ」
「異次元の会話はヤメろ。ガキの頃からそうだった。お前を助けるとロクなことにならない」
「ふっ、都合が悪くなると昔話を持ち出すのは歳を取った証拠だぜ」
「なんとでもいえ。俺は忘れてないぞ、近所の駄菓子屋での一件を」
「いきなり懐かしいな。あの頃はよく悠人には盾になってもらったもんだ」
「…………腐れ縁はもうお腹いっぱいだ。佳織や小鳥がほんのちょっぴりだけ悲しむかもしれないが仕方が無い」
「お、どうした悠人、今日はヤケに切れるのが早いな。駄菓子屋がそんなにトラウマになっていたか」
「やかましい。あ、今日子。オーラフォトンノヴァ」
「なに?まさか……ぐぉぉぉぉぉぉ…………………………」
………………
いきなりなんの予備動作も起こさずに『求め』の力を放ってやった。淡々と、あくまで冷静に。
微妙なフェイクを入れて背中を向けた後頭部に予想外にクリティカルヒットしたような気もするが、
まぁヤツも一応はエトランジェだ、そう簡単に死ぬこともないだろう。
それにしても条件反射というのは恐ろしいものだな、うんうん。
746 :
両成敗 ご:04/10/29 21:24:08 ID:9CwAXYY3
米粒よりも小さくなっていく光陰を見送りながら俺はやっと精神の安定を取り戻した。
『求め』を使っておきながら精神安定もへったくれもないとは思うが気にしない。
清々しい勝利感に浸りながら額の汗を拭って振り返るとなぜかそこに皆がいた。
「やぁみんな、俺の勝利を祝いに来てくれたのか…………ん、なんでコップ持ったままなんだ?」
「……………………」
「それにイキナリ日に焼けたような顔をして……え、え?なんで無言でにじり寄って来る?」
がしゃん!鋭い破壊音に一瞬びくっとなる。背筋が無意識にぴんと伸びた。
「お、おいエスペリア、それ気に入ってたやつだろ?ちょっとまてアセリア、なぜ『存在』を抜く!」
「……………………」
「ウルカ、どうしたんだこいつら…………ってハイロゥ黒い!黒に戻ってるって!」
そこまで叫んだ俺はいまさら気が付いた。第一詰め所が消滅していることに。綺麗さっぱり。
イヤな汗が流れた。ああ、条件反射って恐ろしいなぁ…………
げしっ
いきなりオルファに背中を蹴飛ばされる。抵抗力0のまま、俺は殺気だった三人の前によろけ出た。
もはや無駄だと思いつつ、それでも言わずにはいられない。言いながら半分覚悟はしていたが。
「は、はは…………ごめうぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
当然俺の謝罪は最後まで聞いてもらえなかった。
スレ促進ということで。
殴り書きみたいなテキスト見つけたので少し修正してみました。
誤字脱字某ヘリオンマジック……は今回はないと思いますが、ご指摘があれば幸いです。
>741
「ユートさま、ちょっと揉んでもらっていいですか〜」
「ええっい、いいのか?」
「はい、おねがいします〜」
モミモミ
「ああ、ユートさま、上手です〜。気持ちよくてああっ声が漏れてしまうくらいです〜」
「ハ、ハリオン。なんだか、硬く……なってる……」
バタンッ
「「「「ちょ、ちょっと、あんたら何やってんのっっ!!」」」」
「あら〜皆さん勢揃いでどうしましたかぁ〜。ユートさまにぃ肩揉んでもらってたんですよ〜。なんだか私だけ
肩凝りがひどいんですよ。どうしてでしょうね〜」
「「「「…………ムカツク」」」」
:::: ラキオス王国 :::: 首都ラキオス ::::
保有マナ 2150 保有エーテル1530 変換施設 3器
=コマンド スピリット数 5
情報
人事
訓練
建築
→ 計略 【偽書偽妹】
外交 → 【流言卑語】
出兵 【破戒活動】
詰所 【扇動 】 → 【マロリガン共和国】
【サーギオス帝国 】
,ィ^i^!1-、
,(レ´  ̄ ヽ) エスペリア曰く、
i`_l !i_!li_!i!リ 「流れる血は少ない方が良いでしょう」
jixi」*゚ヮ゚ノリ
―――――――――――――――――――――――――――――――
( ´д)ヒソ(´д`)ヒソ(д` )
「エトランジェ・コウインってロリペド野郎なんですって」
「キョウコなんて、確信的二股だって噂よ」
SEブッブー
「これ以上効果は望めません」
三国志風?
少しおかしくなってしまった orz なぜかIDも変わってるし。748=749です。
>747
光陰(;´д⊂そこまで…… しかも高校生って明言しちゃって……。
第一が無くなったら第二だろうけど、悠人と光陰は物置に追いやって置かれそう。
次スレもう立てても良いのかな、470KBだけど。あ、後 >32をお忘れ無く。
>749
悠人「なんでも恥ずかしいひみつまで隠してるって噂ですわよ」
エス「んまぁ!」
クォーリン「コウイン様、町で妙な噂が流れております。」
光陰「やってくれる。ならこっちも面白い情報を流してやろう。悠人はシスコンでへたれだってな。」
クェドギン「まるで子供の喧嘩だな。」
セリア「シスコンでへたれ?何を今さら」
ファー「そのような話で私たちを惑わすことなど出来はしませんね」
ハリオン「むしろ、そこがお姉さん心をくすぐると言いますか〜」
トリガ前に用意したけれど、SS保管庫のURLがこのままで良いか微妙……
とりあえずこのままでよろしいでしょうか?
>>3も入れたほうがいいと思ふ。
保管庫のURLは10月一杯とか補足しておけばいいのではないでしょうか?
759 :
757:04/10/30 23:28:38 ID:yZRIvqnN
>>758さん
ご意見どうもです。
ああ、そうか。
>>3とか
>>4とかテンプレに入れとけばあの時点で建てられましたね。
SS保管庫については
外部板:SS保管庫@アセリアネタ総合 (10月一杯まで)
としておきます。
私にかかればチャーハンなんてこの通り…
__
「,'´r==ミ、 。・゚・
くi イノノハ))) 。・゚・。・゚・
| l|| ゚ヮ゚ノl| // ぁっ
j /ヽ y_7っ━ヽニニフ
\__ノ卯! 彡
く/_|_リ
何時の間にか次スレコンポーザーが!
建てに行ってみます。
>>762 乙です。
次スレなのですが、即死防止用のSS用意されている方どなたかいますか?
恐らく憂鬱さんが『SALVAGE』を用意されていると思うのですが、
風変わりさんとかとバッティングすることも考えられますので一応確認をと思いまして。
容量確保用の小ネタ、8Kbほどのがあります。
落とした後も、もう少し点呼を続けた方が良さそうな感じでしょうか。
それでは投下してきます。
>>764 道行さん
次スレでも書きましたがスレ立て乙でした。
即死回避が何kだったか良く憶えていないのですが
もうすぐ12時間なので一応私も投稿してきます。
766 :
名無しさん@初回限定:04/11/06 13:34:31 ID:ngEmIU0r
使え
埋めを兼ねてスピ達が悠人にお弁当を作るとどんなのか予想してみる。
1.ファーレーン……三段幕の内、あ〜ん付き。ついでにニムのヤッカミ付き。
2.ニムントール
焦げてたり生焼けだったりわざと嫌いなものを入れていたりして
一見嫌がらせみたいだが、指が絆創膏だらけで頑張って作ってくれたのが一目瞭然。
3.ハリオン……カップ麺と500mlコーラ
「ハリオンッ!お、おいこれどっからもってきたんだっ!!」
「あんっユートさまがっつかないで下さいよ〜。私まで食べる気ですか〜?」
「冗談言ってないでどうしたんだこれ、教えてくれっ!」
「え〜さっき森の中でですね〜変な光がありましたので飛び込んでみましたら、
なんだか見たことのない風景で、あ〜ほら以前ユートさまに教えていただいた
ハイペリアの文字がぁ一杯看板とかにありましたので〜もしかしたらここハイペ
リアかな〜なんて」
「あうう、、く、も、森だな、ハリオン案内してくれっ!速くっ!」
「え〜私が出てきたら閉じちゃいましたよ〜やっぱりお呼びした方が良かった
ですか〜?」
悠人脱力。しばらく飯も食えない状態にw
4.ヘリオン……愛情溢れる愛妻(になったつもり)弁当。
「あ、そのえと、い、彩りを添えなきゃって思いましてっ……
でも、その、ふ、ふえぇ……」
ご飯部分にハートマークを飾りつけ
……するも、蓋に桜でんぶ(有ると思ってくださいな)がくっついてひび割れ中。合掌。
5、セリア・・・時間をかけて一生懸命つくるけど素直になれず渡せない。
夜、素直になれない自分に自嘲しつつ捨てようとするところを悠人に見つかる。
「お?捨てるのか?なら、夜食がわりに食べるからくれよ。」と言われる。
内心凄いうれしいのに、やっぱり素直になれず
「捨てるよりはマシだから・・」とか言ってしまう。それであとでまた自己嫌悪。
落ち込んだり、喜んだり忙しいセリアさん。当然悠人は気付かない。
6.ヒミカ
夜間の見張り中のユートに差し入れを持ってくる。
「隊長を労うのも補佐の役目です」とカタブツ演じながら押しつけるが、中身は沢山のカワイイ手作り菓子。
ヒミカが去った後、喜んで食べようとするが、よく見ればケーキ級の重鎮甘味が沢山で正直冷や汗。
7.黙々と作り続けている内に熱中してしまい、いつの間にか夜に。
「ただいま〜。お、今日はナナルゥが晩飯当番か?」
「………………」
7.ネリシア
オルファに張り合って鍛えた腕を振るえばちょちょいのちょい
幼く見えても侮れない
ネリー「はい!完成ー♪」
シアー「かんせ〜♪」
机の上には可愛いお弁当箱が……2つ
寸分の互いもない
詰められたおかずが鏡写しのようだ
あとはおにぎりをつくるだけ
ネリー「ユート様のだからチョコレートを入れよう♪」
シアー「いれよ〜〜♪」
幼く見えても侮れない
おおっと!シアー選手、ここでフェイント!
入れようとしているのは……カレーだぁぁ!! 完
8.
1KB足りない……これで逝けるだろうか
9.トキミおばさん、女体盛r
" タイムアクセラレイト
´∴ # __ ゜ヾ´ ″´∴
「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
__くi イノノハ))≡―=',((( )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
, ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒) _/ / ̄ =―≡― _
´∴'≡く / ∧ | y'⌒ ⌒ ヽ イノノハ))( ≡―=‥、,、
″″ \/〈(((ノ从| / | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
" ||( ゚ヮ゚ー' | |ヾノ //
=―≡ ̄`:, | , | ( ̄=―≒‥,,
" ,゛"=―≡―=',/ ノ )∵`=≡―=
″( ゚ヮ゚∴/´/ / | | , ゚ヮ゚ノ'ゞ ∵゛、 ゜ ¨
ヾ =―≡ ̄`:゛/ / \| |≡―=‥、,、 ヾ
,゛"=―≡―='( | ( |=―≡―∞=@ , 、∴
/ | | |\ \ ´ ∴ ヾ .
・ / / | | | ヽ/⌒〉
.... . ............ . .(_ 「 _) (_〈_/....... . .. . .... . . .
時深は鮮度がたりて無ぬるぽ
老獪トキミぬるぽ
779 :
名無しさん@初回限定:04/11/13 22:41:37 ID:UISViMSL
時深き時深は時をみる人ぞ
歌丸です