1 :
名無しさん@初回限定:
そして恒例の即死回避点呼開始。
うおおおおおおっ、佳織いいいいいいっ!!ヽ(`Д´)ノ<1>
早く時深シナリオやりteeeeee!<2>
エスペリアー( ゚∀゚)ノシ<3>
忍者ナナルゥシリーズを書いてるけど、実はハリオンファン・・・
「めっ」って言われてええええええ <4>
アセリアだけ攻略してねー( ゚∀゚)ノシ<5>
9 :
3:04/08/04 17:45 ID:Z/EumvK5
>>8 どうやったらそうなるんだああああっ!?<6>
なぜイオたんは補完されないかー?
‥‥やってみようとしたら違うキャラになってしまってorz <7>
エキスパンション一般発売しろやゴルァ!!!!!! <9>
通販まで待てねーーー!!! <10>
ナナルゥーーーーーー<11>
乙です。
珍しくまだ出てこないのでヘリオン<12>
ではセリアで<13>
ファーレーンは俺の嫁です!〈14〉
ニムと付き合ってます! <15>
ネリーたん(;´Д`)ハァハァ <16>
プリキュアがなんぼのもんじゃい!!
ネリシアのほ〜が可愛い−−んじゃ−−−!!!<17>
>1乙
そしてヒミカは俺が貰った!!! <18>
俺はレムリアとヨフアル屋<19>軒はしごしてくる。
シアーとおつかい<20>
頭蓋骨
イラネ!
エスペリアとハリオンを侍らせてガロ・リキュアの王になるのが夢です<21>
クウォーリン頂いていきます<22>
フッフッフ
全員俺の脳内ハーレムに貰った! <24>
それは、求めの強制力に屈した悠人が、ネリーとシアーの双子の体とマナをじっくりと堪能
した日の翌日のこと。
何となく恥ずかしい夢を見てしまったことしか覚えていない悠人が、毎朝の日課であり生
きている証でもある行為のために個室へと向かった数分後のこと。
「うおおおおおおおぉぉ〜〜み、みどりっ!!」
下っ腹が張っていた。
快便だった。
今はスッキリしている。
_| ̄|○ <25>
ソーマズフェアリーは戴いていきます
<26>
マイナスイオンを出すらしいイオたんを貰っていきますね
<27>
「ネリシアとよぶな〜!」というわけで
ネリーだけ貰って逝きます。<28>
遠慮なくアセリア親子もらっていきますね
<29>
34 :
名無しさん@初回限定:04/08/05 02:57 ID:bpbLlUZG
>33
マテ、ユーフィは置いてけ。<30>
35 :
34:04/08/05 02:58 ID:bpbLlUZG
sage忘れた…
36 :
稲妻の道:04/08/05 07:15 ID:opnZG9+K
「ふぅ……、これでもう大丈夫なはず……」
マロリガン城付近の森の中。
今日子に「大地の祈り」をかけ終わったクォーリンは軽く溜息をついていた。
既に「稲妻部隊」はなく、ウルカとの戦いで負傷した為後方に回されていたのだが、まだ自分にも役目があったようだ。
あれ以来剣を振るってはいない。神剣に振り回されることに疑問を感じたのもあるが、別の道を極めてみようとも思ったから。
それは…………
ゆっくりと振り返る。そこにはいつの間にかナナルゥが立っていた。
「……ナナルゥか、久しいな。」
「…………決着を、つけに来ました。」
「……そうか、そうだな……。」
沈黙があたりを包む。緊張が静かに膨れ上がる中、二人は対峙した。ゆっくりと構える。
恐らく瞬速の勝負になるだろう。今の自分がナナルゥに勝てるとは思えない……が、しかし。
しかし、かつて『稲妻』とまで言われた自分だ。そうやすやすと負かされるわけにもいかない。
集中力を高める。頬を伝う汗が落ちた瞬間、クォーリンは動いた。
待っていたかの様に、普段からは考えられないようなすばやさでナナルゥが仕掛ける。
ガキィィィィィィン………………
勝負は一瞬だった。二人の投げた「くない」は寸分違わずお互いのそれを打ち砕いていた。
「…………腕を上げましたね、クォーリン。」
「まだまだだ。貴女が手加減をしたという事くらいはわかる。どういうことだ?」
「忍びの道は長く、そして険しい。精進なさい、クォーリン。」
「ナナルゥ…………」
言いたいことはもう無いかのように振り向き、去っていくナナルゥ。クォーリンは立ちすくんでそれを見送るしかなかった。
しばらく俯いていたクォーリンだったが、やがて吹っ切れたような爽やかな笑顔で呟く。
「…………負けた…………」
悠人「なんなんだおまえら」
>1乙でした。
暑いのでヘリオンと水浴び行ってきます<31>
>37-38
ころしてでもうばいとる<33>
40 :
飛翔の人:04/08/05 11:30 ID:s2cBZfxX
新スレおめでとうございます〜。というわけで<34>
先日HDがいかれて書き溜めてた分とプロットとか全部ふっとんだ飛翔の人です。
皆さんもバックアップは小まめにとりましょう・・・・orz
ただいまネカフェで鋭意執筆中ですので、第三幕以降はもう少しだけお待ちください〜〜〜〜。
41 :
飛翔の人:04/08/05 11:31 ID:s2cBZfxX
sage忘れた・・・あわわわわ。
まあ、とりあえずちっちゃい娘は全て頂いた!35
ハァハァ、ユーフィたんおじさん神剣が腫れちゃっry<36>
シアータンは預かった (36)
出遅れたので光陰とハンカチーフの隅を噛みながら見守りますね<35>
前スレ見ながらだったので更新してなかったorz
昼だから大丈夫だと思ったんだYO!
前スレ787で、上位永遠神剣ネタを集計したのですが、
すみません、雑魚スピスレ(無印)の集計をすっかり忘れてました。
再集計版はこちらです。
セリア 孤高>2スレ522,霊水>3スレ451,開放>3スレ452,
鎮魂>3スレ454,死神>3スレ455,絶命>3スレ455,
熱愛>3スレ455>3スレ459,熱海>3スレ456,草津>3スレ458,
癒し>3スレ462,熱情>3スレ470,情熱>3スレ470,
顔面蒼白>3スレ471,動悸>3スレ472,息切れ>3スレ472,
氷后>3スレ474,情操>3スレ475,情動>3スレ475,
水鏡>3スレ491,氷嚢>3スレ493,玲瓏>3スレ789
ネリー 静謐>3スレ789
シアー 絆>3スレ789,安息>3スレ789,親愛>3スレ789
ヒミカ 赤心>2スレ526,赤影>3スレ476,紅炎>3スレ789
ナナルゥ 至福>1スレ798,自我>2スレ521,誠実>2スレ526,
至誠>3スレ789
ハリオン 真実>1スレ489,超越>2スレ517,
豊穣>2スレ526>3スレ441>3スレ444>3スレ446>3スレ453>3スレ463,
天然>2スレ533>3スレ440>3スレ442,太陽>3スレ440>3スレ442-445,
陽光>3スレ447,将軍>3スレ448,根幹>3スレ448,
緑林>3スレ450,繁茂>3スレ450,森羅>3スレ461,
翠嵐>3スレ483,結実>3スレ492,鳴動>3スレ789
福音>3スレ789
上位永遠神剣ネタの続き
ニムントール 独善>2スレ522,耀光>3スレ220>3スレ227,陽光>3スレ449,
日輪>3スレ789,普遍>3スレ789
ファーレーン 盗人>2スレ517,贖罪,毒牙>2スレ521,腹黒>2スレ524,
朧>2スレ526,耀光>3スレ220>3スレ227,北辰>3スレ789,
破軍>3スレ789,葉隠>3スレ789
へリオン 真実1スレ487-489>1スレ500>1スレ834-839>3スレ340-370,
誠実>2スレ526,成長>3スレ484,昇格>3スレ484,自信>3スレ484
今日子 迅雷>2スレ518,輪姦>3スレ488,強固>3スレ490-491
光陰 輪廻>3スレ486,輪姦>3スレ487,口淫>3スレ489>3スレ491,
自在>3スレ492,無情>3スレ496
不明
真実>2スレ778,賄い>3スレ485
例外
ハリオン 聖緑>1スレ23>1スレ25
ネリシア 水月の双剣>1スレ94
おーし、今回のところはこのくらいで勘弁してやるか、野郎ども。
ってなところで、通常営業に戻りましょうかねノシ
50 :
飛翔の人:04/08/05 18:07 ID:s2cBZfxX
・・・と、言うわけで「明日への飛翔」第三幕を投下したいと思います。
なんというか、上中下にわけた前編のような感じですが・・・ではでは。
―――ランサ防衛隊特別練兵場。
この施設は現在はラキオス王国スピリット部隊の訓練に使用されているが、かつてはイースペリア兵によ
る数百人単位での演習が行なわれた事もあり、無骨ながら十分な奥行きを持っている。
戦闘が激化し訓練士達も皆王都に戻っている今では、年長のスピリット達が暇を見て自主訓練に使用する
他は、人影も無く、町の喧騒からも離れているので思索には持って来いの場所だった。
その練兵場の木陰で、エトランジェ――<求め>のユートは、ひとり悩んでいた。
ヘリオンが異動となってから、既に十日。エスペリアにはまだ前線に戻すつもりはないようだ。
数日してセリアも無事復帰し、配置はほぼ元に戻ったのだが、王都への報告事務は、あれ以来負担軽減の
為としてエスペリアが代行していた。
(何故か女王の機嫌が悪くなって来たというので、近々元に戻されるかも知れないが。)
昨日王都防衛の任務を終えて戻ってきたアセリアとオルファによれば、ヨーティア達にも慣れて案外楽し
そうにやっているらしいが、不安は尽きない。
隊長として贔屓をするつもりはないのだが、助けが必要な者がいるのならば、仲間としてそれを支えるの
は当然じゃないかという思いもある。
別に自分が・・・機会さえあればちょっかいを出してくる元気者達のその後ろに、仲間に入れて欲しそう
におずおずと控えているヘリオンの姿が見えない事に物足りなく感じているわけではない・・・と、思う。
そして何よりも。悠人は、あの日エスペリアが告げた言葉が気にかかっていたのだった。
十日前。夜襲に関する報告と作戦会議が終わった後、二人きりになると悠人はエスペリアに詰め寄った。
『それじゃ聞かせてくれないか。・・・さっき、一体何を言おうとしてたんだ?』
ヘリオンに異動を告げる際に、エスペリアが言い淀んでいたことである。
それに対し、エスペリアはゆっくりと悠人に背を向けると、逆にこう尋ねてきた。
『それでは、ユート様・・・ユート様は、ヘリオンについてどう思われますか?』
『どうって・・・ミスをしたことにか?・・・そりゃぁ、それが何度も続けば、指揮官として放って置く
わけにも行かないだろうけど・・・。でも、たまにポカするってのは、他の皆も同じだろう?・・・まぁ、
俺も偉そうな事は言えないけどさ。何もあんな・・・』
そう答える悠人の言葉を遮って。エスペリアは、悲しげにこう告げた。
『そんな・・・そんな事ではないんです!・・・ただの失敗ならば・・・勿論許される事ではありません
が、私もあれほど強く言ったりはしません。・・・ユート様、これは見舞いに行ったとき、セリアも言って
いた事なのですが・・・。』
何かに耐えるかのように言葉を切るが、見ればエスペリアの手は震え、その頬には涙が伝っていた。
『・・・あの子には、戦いは向いていないのだと思います。』
ヘリオンは、戦いに向いていない。・・・それは、悠人も感じ取っていた事だった。
あの子は他の者達のように、スピリットとしての義務感や、何かを守る為に戦っているのではない。
アセリアやナナルゥのように、神剣の意思に従っているわけでもないし、オルファやネリーがそうである
ように、無邪気なままでいるというわけでもなかった。・・・それはそれで困りものではあるのだが。
ヘリオンは、何と言うか・・・臆病である前に、戦いその物を忌避している所があった。
それは人間としては、素晴らしい感情であるのだろう。少なくとも、スピリットは全て人間と、永遠神剣
の為だけに存在する。・・・そんな馬鹿げた思想よりは、よっぽど共感することができた。
しかし、スピリットにとってそれは・・・戦えない、そして相手を殺す事ができないと言うことは、自身
の存在理由を否定することに繋がり、欠陥品の烙印を押される事になるのだ。
・・・だから、エスペリアはあの場で告げる事を避けたのだろう。
この世界の摂理とやらが、たまらなく憎く感じた。・・・いや、運命そのものがか。
このままへリオンを戦わずに済ませられるのならば良い。
だが、戦闘は日々激化し、ヨーティアが<抗マナ変換装置>を完成させた暁には、マロリガン共和国に対
する全軍による総攻撃を開始する事になるだろう。
そして例えその戦いに勝利できたとしても、今度は更なる脅威である神聖サーギオス帝国との戦いが待ち
受けているのだ。・・・今後、より多くの戦力が必要とされるだろう。
「・・・何とかしなくっちゃな。」
絶え間なくマナを求める神剣<求め>の干渉に晒されながらも、帝国に拉致された最愛の妹を思い、敵国
のエトランジェとして再会した親友達のことを思い・・・そして今また、新たな悩みを抱え込もうとする。
これが、例え愚かだと自覚しようとも、どうする事もできないこの男の性分であった。
「これはユート様。今から訓練ですか?」
思考を中断し伸びをする悠人に対し、声をかける者がいる。
振り返ればそれは、凛々しい素顔を兜で覆い隠したブラックスピリット<月光>のファーレーンだった。
「ん・・・あぁ、そうだな。これから始めようと思ってたところだ。」
「そうでしたか。それではご一緒します。」
せっかくだからと言う事で、少し体を温めてから模擬戦をして見ようと言う事になる。
「・・・全力を尽くさせて頂きます。」
「あぁ、よろしく頼む!!」
開始線に立ち、構え合う二人。模擬戦とは言っても、互いがその手に握るのは永遠神剣である。ちょっと
した気の緩みが、大事故へと繋がりかねない。それも剣技では一、二を誇るファーレーンが相手とあっては
悠人の声も自然と緊張した物となった。
「・・・ぃぁぁぁああああ!!!」
気合一閃。ファーレーンが一陣の疾風となって突っ込む。彼女が得意とする居合いの太刀である。
その動きを読んでいたのか、間一髪<求め>を間に入れて受ける悠人。
「くぅ・・・いきなり居合いとはな。峰打ちにはしてくれないのか!?」
「全力を尽すと、先に申し上げました。・・・それよりも、無駄口を叩く暇はありませんよ!」
二閃、三閃・・・ファーレーンの白刃が舞う。
悠人は辛くもそれを防ぐが、その剣速の前についに致命的な隙を見せた。
「そこ!!」
最速の踏み込み。しかし悠人は剣での防御を諦めると、守りのオーラを急激に集中させた。
――ギイィィン・・・!!
強大なオーラフォトンの壁に阻まれ、体ごと弾き出されるファーレーン。悠人はその一瞬を逃さず間合い
をつめると、体勢を整えるファーレーンの面前に<求め>を突きつけた。
「・・・お見事です。」
ファーレーンの投了である。
「さすがはユート様。半ば勝利を確信していたのですが・・・参りました。」
敗北を認め、その力を称えるファーレーンに対し、汗を拭きながら悠人が答える。
「いや、剣では完全に俺が負けていたよ。今勝てたのは、こいつを持っていたからさ。」
そう言って<求め>を持ち上げてみせる。
「それに、これが実戦だったなら、ファーレーンの本気の一撃はとても耐えられなかったと思う。」
実際、先の戦いでファーレーンは7分の力しか出してはいなかった。もっとも、あれが寸止めで済ますこ
とのできる彼女の全力だという事に嘘はなかったのだが。
それを指摘して見せる悠人に対し、ファーレーンが微笑して答える。
「いいえ、例えこれが戦場であったとしても、ユート様が勝ちを得られた事でしょう。・・・私も、そう
簡単にマナの霧へと還るわけには行きませんが。」
守らなければならない存在を持つ者同士、通じ合う物があったのだろう。二人は互いに頷き合うと、しっ
かりと握手を交わした。
その後個人訓練に移ってからしばらくすると、素振りを止めて悠人が呟いた。
「そういえば、ファーレーンとニムが王都防衛に就くのは明後日からだったかな?」
「はい、その予定でしたが・・・何か?」
打ち込みを中止し向き直るファーレーンに対し、先ほどからの思い付きを告げる悠人。
「実は、向こうに行ったらヘリオンの稽古を見てやって欲しいんだ。もしかしたらイオが見てやってるか
も知れないけど、ファーレーンなら同じブラックスピリット同士、気づく所もあるだろうし。」
「ヘリオンの稽古をですか・・・。」
口に手を当て、思案するファーレーン。
我ながら名案だと思う。こう見えてファーレーンは優しくて面倒見の良いところがあるし、実力は折り紙
付きだ。これで彼女の戦う姿勢を見て少しでもヘリオンに感じるところがあれば・・・。
抵抗を感じながらも悠人はそう期待したのだが、その思いは意外にもすぐに打ち破られる事となる。
「申し訳ありませんが・・・辞退させて頂きます。」
「え、辞退って・・・ダメってことか?」
拒絶されると思わなかった為に、思わず聞き直してしまう悠人。
「一体どうして?」
それに対して詫びながら、慎重に言葉を選び返答するファーレーン。
「私では、ユート様が期待されるような効果は得られないかと思われます。・・・それにその様子ではご
存知なかったようですが、ユート様は一体何故、私よりもあの子の方が先に配備される事になったと思われ
ますか?」
「それは・・・確か、あの頃ファーレーンは別の任務に就いていたんじゃなかったか?」
うん、エスペリアが以前そう言っていたような気がする。
「それもありますが、理由の全てではありません。・・・加えて、当時はニムの育成もまだ不十分でした
が・・・私の任務は、バーンライト王国侵攻よりも優先されるほど重要な物ではありませんでした。」
確かに、言われて見れば不思議だった。
エトランジェが出現し、魔竜討伐の成功により国力が増大していたとはいえ・・・あの頃のラキオスはま
だ、北方の小国の一つに過ぎなかった。戦力となるスピリットは一人でも多く必要というのが道理だろう。
それなのに、配備されたのは経験に勝るファーレーンではなく、未熟とされるヘリオンの方だった・・・。
「私の持つ<月光>は第六位の神剣ですが、あの子の<失望>は第九位に過ぎません。しかし、それでも
尚あの子が選ばれる理由があったのです。・・・これ以上は、デリケートな話題でもありますし私からは申
し上げられませんが・・・もしもユート様が詳しい事情をお知りになりたいのならば、エスペリアさんに尋
ねられると良いと思います。彼女は昔からラキオスのスピリット達のまとめ役でしたし、あの子を一番可愛
がっていたのも、彼女ですから・・・。それでは、私は警備に戻らなければなりませんので、これで失礼さ
せて頂きます。」
場を辞するファーレーンに応える事も無く、悠人は彼女の言葉の意味を考え続けていた・・・。
数刻後。悠人はエスペリアの私室の戸を叩いていた。
ヘリオンについて知りたければ、エスペリアに聞くと良いと言った、ファーレーンの言葉を思い出す。
・・・もしかしたら、エスペリアのあの涙の意味も解るかも知れない。
「はい、ただいま・・・あら、ユート様。ようこそおいで下さいました。今お茶をお出ししますね。」
悠人の来室を歓迎しながらも、その意味を図りかねている様子のエスペリア。
「いや、お茶はいいよ。ただ、ちょっと話を聞きに来たんだ。ファーレーンに、エスペリアが一番へリオ
ンを可愛がっていたって聞いて・・・。」
悠人がそう言うと、エスペリアは少しだけ驚いたようだったが、すぐに穏やかな表情を取り戻す。
「そうでしたか、ファーレーンが・・ふふ・・今は想像できないかも知れませんが、他の子達も、昔は皆
オルファのように私を『お姉ちゃん』と呼んで慕ってくれたんですよ?」
「へぇ・・。」
「ユート様があの頃この世界にいらしてたら、皆に『お兄ちゃん』と呼ばれていたかも知れませんね。」
それを聞いて微妙な表情をする悠人に対して、エスペリアが続ける。
「皆、とっても可愛い子達でした・・・ニムだけは、『私のお姉ちゃんは一人だけだもん』と言って、距
離を取っていましたが・・・それでも、お話を聞かせてあげる時は隅の方にやって来て。」
「ニムらしいな。」
「ええ、本当に。・・・でも、確かにファーレーンの言う通りかも知れません。その中でもヘリオンは、
一番私に懐いてくれましたから・・・。」
そこで悠人に向き直るエスペリア。
「ユート様、長い話になります・・・。やっぱり、お茶を淹れて来ますね。」
『〜〜。〜〜〜♪』
『あらあら、どうしたのヘリオン、今日はやけにご機嫌ね。』
『えへへ、だって私、エスお姉ちゃんにこうして髪を鋤いて貰うの大好きなんだもん。』
『まぁ・・・あ、ほらじっとしてなきゃだめよ。これからリボンをつけるんだから。』
『はーい♪』
『ねぇ、エスお姉ちゃん・・・?』
『なぁに?』
『どうして、ヘリオンの<失望>はあまりお喋りしてくれないのかな。アセリアお姉ちゃんは、剣と仲良
しなんだって言ってたよ。』
『・・・。』
『もしかして、<失望>は私と仲良くしたくないのかなぁ・・・。』
『そんなことないわ。きっと、<失望>はとっても恥ずかしがり屋さんなの。必要になった時には、ちゃ
んと<失望>は力を貸してくれるわ。・・・でもね、ヘリオン。その為にはあなたがもっともっと強くなら
なきゃダメ。体だけじゃなくて、心もね。』
『そうなんだ・・・うーん、難しいけど、エスお姉ちゃんがそう言うならがんばるね!』
『ええ、そうよ・・・だから、焦らずじっくり、ヘリオンの早さで。ね?』
『ん〜、えい、やぁ!・・っとっと・・・えーい!』
『ヘリオン・・・突き技の練習をしているの?』
『あ、エスお姉ちゃん!・・・うん・・・私、手が短いから、普通にやるとネリーに届かないの。』
『でも、持ち方がちょっと変よ?工夫するのは偉いけど、<失望>は槍じゃないんだから、ちゃんとこう
いう風に・・・。』
『でも私、エスお姉ちゃんみたいになりたいの・・・。』
『・・・嬉しいわ。ありがとう、ヘリオン。でもね、やっぱり武器には武器に合った持ち方があるの。お
姉ちゃんが見ててあげるから、ちゃんとした持ち方で練習しましょうね。』
『・・・うん♪』
昔の出来事を語るエスペリアは、見たことも無いほど良い表情をしている・・・悠人は、そう思った。
今も昔も、スピリット達の在り方に変わりはない。けれど、少なくとも今のような激動の時代ではなかっ
た。きっと、かけがえのない思い出なのだろう・・・エスペリアにとっても、恐らくヘリオンにとっても。
「・・・その頃のヘリオンは、とても大人しくはあったけど、今のように気弱ではなく明るい子でした。
他の子達とも、元気に走り回って・・・でも、そんな時あの事件が起きたのです。」
「あの事件?」
それまでとは打って変って、影が差した表情でエスペリアが言う。
「ラキオスでは、まだ幼く未熟なスピリット達に行われる特殊な訓練があるのですが・・・それが、完全
武装した訓練士の方との一対一の戦闘訓練です。」
「訓練士って・・・人間と?」
「はい。ただし、未熟な子供とはいえスピリットと人間では基本となる身体能力に大きな違いがあります
から、スピリットは永遠真剣を持つことは許されず、防具も無しに木製の武器が一本だけ与えられます。」
「そんな・・・それじゃ、勝敗なんてやる前に明らかじゃないか。」
「その通りです・・・。これはユート様だからこそお聞かせするのですが、恐らくあの訓練は、戦闘訓練
というよりも、人間に対する恐怖心を植えつける為だけに行われているのだと思います・・・。」
悠人はそれを聞き怒りに震えたが、これでもこの世界では人間的な訓練法なのだ。
「通常この訓練はスピリットが十分な身体能力を得るまで続けられます。そして当然、ヘリオンに対して
もその訓練が行われたのですが・・・・。」
何と、ヘリオンは初挑戦にして、板金鎧で完全武装した訓練士を返り討ちにしてしまったという。
「・・・三段突きだったと聞いています。木刀は砕け散ったそうですが・・・永遠真剣無しで幼いスピリ
ットがそれほどの力を見せたのは、ラキオスの記録では初めてのことでした。私が教えたからではなく、ヘ
リオン自身の才能の為だったのですが・・・。」
そう、その為に・・・幼いヘリオンは、訓練士の恨みを買ってしまったのだ。
「次の日から、あの子は他の子達とは遠ざけられ、特別訓練を受ける事となりました。私も一切の接触が
禁じられていた為に、これは伝え聞く噂と、あの子自身の様子から推測しただけの物なのですが・・・その
ほとんどは、野生動物や囚人との殺し合いだったそうです。」
「・・・殺し合い・・・あのヘリオンが?」
これほど似つかわしくない言葉もない。
同じ思いなのだろう。そう語るエスペリアの声も震えていた。
「いかに力があろうとも、幼いヘリオンにはあまりにも過酷な状況でした。・・・私でさえ、初陣の時に
は恐怖に震えていたのを覚えています。目の前で金色の霧となって消えていくスピリットの姿は、何か悪い
夢を見ているかのようでした・・・。」
悠人もまた、自身の初陣を思い返していた。あの時の恐怖は、今でもありありと覚えている。
ましてやヘリオンは、その時まだ今のオルファくらいの幼さだったという。
通常この世界の戦争で死ぬのは、ほとんどがスピリット達である。
罪悪感は覚えるが、彼女達には死体は残らず血の一滴に至るまでマナの霧となって消えてしまう為に、そ
の死はひどくリアリティに欠けるのだ。
・・・それが、元々は平凡な一般人に過ぎなかった悠人の、精神の崩壊を助けているのも事実だった。
しかし、相手が野生動物や囚人だとしたら、そうは行かないだろう。
そして<失望>は第九位の神剣だ。強い自我は持たず、倒す敵からマナも得られないとしたならば、ほと
んど反応はしなかっただろう。
アセリアのようにその意思に従って、自分を誤魔化すという事もできないのだ。
エスペリアと接して育まれた情操が、皮肉にもヘリオンを苦しめ続けた。
「訓練士の方々は、方法を誤りました。そうしてあの子は、戦う事が出来なくなって行ったのです・・・。」
「そんな事があったなんてな・・・。ヘリオンの過去については解った。でも、それなら尚更、どうして
ヘリオンがファーレーンよりも先に配備されたのかが解らないんだけど・・・。」
大事なのは、どうすればヘリオンが戦えるようになるかという事だったが、その疑問も不可解だった。
戸惑う悠人に対し、エスペリアは・・・それを告げるべきかどうか、迷っていた。
「ファーレーンもデリケートな話題だと言っていた。けれど、俺は全てを知りたいんだ・・・頼む。」
そう懇願する悠人の一言を受けて、エスペリアはその理由を口に出す決心をした。
「ヘリオンは・・・育成を放棄されたのです。これ以上無駄な労力を掛けるよりは、他のスピリット達に
時間を割いた方が良いだろうと・・・。『とんでもない失敗作だが、エヒグゥでも追い詰められれば反撃す
る。戦闘を続けていれば、すぐに神剣に呑まれてしまって、使い易くなるだろう。』・・・訓練士の方は、
そう言っていました。」
「・・な・・・に・・・・?」
一瞬にして悠人の怒りが頂点に達する。カップを持つ手が震え、椅子が音を立てる。
席を立とうとした悠人を、エスペリアが必死に宥めた。
「ユート様、どうかお静まり下さい!!・・・その方は国王派であった事もあり、今は女王によって遠ざ
けられました!・・・今は、他の者がそのような扱いを受ける事はありません・・・少なくとも、このラキ
オス王国に於いては、そのような事は無くなったのです。」
「・・・済まない、エスペリア。落ち着いたよ。」
あのまま激情に任せて行動していたら、レスティーナも自分を擁護する事は出来なくなっただろう。
「でも、そうか・・・。だから、ヘリオンが配備された時、俺達のいる本隊に配属させるように勧めたん
だな。・・・やっぱり、エスペリアは今でもお姉ちゃんなわけだ。」
エスペリアが照れて赤くなる。そして小さく抗議しようとした時、バタンと戸を開ける者がいた。
「ま・・オルファ、いつもドアを開ける前にノックしなさいと言っているでしょう!それに今は・・・」
「それどころじゃないの!・・ねぇ、パパ、早く来て!!・・・<理念>が言っているの。助けてって。
あのお姉ちゃんを・・・早くしないと間に合わなくなっちゃう!!!」
ランサでそうした騒動が巻き起こっていた頃。
王都ラキオスでは、大天才の空腹を満たすべく二人のスピリットが奮闘していた。
「わ・・・ここでネネの実の粉末を加えるんですか!?」
「ええ、隠し味になるんです。・・・味見して頂けますか?」
「・・・お、美味しい・・!・・なんて言えば良いんだろう・・・味に深みが増して・・・イオさまって
本当にすごいです。頭が良いだけじゃなくて、料理も上手で・・・尊敬しちゃいます!」
興奮の余りに小鳥化するヘリオンを見て、イオが控え目にクスクスと笑う。
「あ・・・す、すみません・・・私一人で舞い上がっちゃって。」
顔中真っ赤にして俯くヘリオン。
「これは、こちらこそ失礼しました・・・可笑しいと思って笑ったわけじゃありませんわ。・・・ただ、
ヘリオン様を見ていると、ヨーティア様がこの国をお気に召した訳が良く解ると思いまして・・・。」
「え?それってどういう・・・。」
「他の国には、戦いもせずに他の事ばかりに秀でるスピリットなどを褒める方はいませんから・・。」
「あ・・・。」
ヘリオンは、そう言って笑うイオに対して、何だか申し訳ない気になってますます俯いてしまった。
―――キィィ・・・ン
その時。イオにだけ聞こえる声で、<理想>が何事かを告げる。
「・・・・イオさま?」
突然真剣な表情に戻るイオを見て、訝しむヘリオン。
「あ、これは申し訳ありません、ちょっとぼうっとしてしまいまして。・・・恥かきついでに変な事を申
しますが・・・ヘリオン様。」
「はい?」
「転機が・・近づいて来ています。何となく、そう思うだけですが・・・食事の後に、第一詰所の掃除な
どされてはいかがでしょう。お客様が見えるかも知れませんし。」
「はぁ・・・。そうですね、午後から少し時間もありますし、そうしましょうか。」
そう応えながらも、イオの様子にしきりに首を捻るヘリオンであった。
と、いうわけで第三幕(?)をお届けしました。
今度はちゃんとFDに保存してあります。ご安心ください^^;
今幕はヘリオン分が少ないせいか、妄想度が高めとなっております。
自分の中では現代世界に例えるならエスペリアが大学生で、他の年長組が悠人と
同じくらい。年少組が中学生で、オルファが小学校4年生くらいというイメージで書いてます。
回想シーンのエスペリアは中学生、ヘリオンが小学校低学年くらいかな?
第四幕は執筆環境のせいでもう少し遅れそうですが・・・どうか気長にお待ちください。
それではまたのお目見えまで失礼します。あでゅ〜〜〜。
>飛翔の人さん
アクシデントの中、乙です。
丁寧に描写を重ねて書かれていて、話に引き込まれました。
エスと会話する子ども時代のヘリオンメチャ萌えです。……今でも子どもかな。
続きが気になる終わり方なので、楽しみにしています。
>>36 ナナルゥ「くのいちとは、”く・ノ・一”と書いて女と読む。ユートさまお分かりですか」
悠人「……ナナルゥ、何で漢字を……」
みんなGJだ
,.ィ , - 、._ 、
. ,イ/ l/  ̄ ̄`ヽ!__
ト/ |' { `ヽ. ,ヘ
N│ ヽ. ` ヽ /ヽ / ∨
N.ヽ.ヽ、 , } l\/ `′
. ヽヽ.\ ,.ィイハ | _|
ヾニー __ _ -=_彡ソノ u_\ヽ、 | \
.  ゙̄r=<‐モミ、ニr;==ェ;ュ<_ゞ-=7´ヽ > ♪孤独の中で生き続ける絆を……
. l  ̄リーh ` ー‐‐' l‐''´冫)'./ ∠__ なんてこった、『孤独』は上位永
゙iー- イ'__ ヽ、..___ノ トr‐' / 遠神剣『絆』の仮の姿だったんだっ!!!
l `___,.、 u ./│ /_
. ヽ. }z‐r--| / ト, | ,、
>、`ー-- ' ./ / |ヽ l/ ヽ ,ヘ
_,./| ヽ`ー--‐ _´.. ‐''´ ./ \、 \/ ヽ/
-‐ '''"  ̄ / :| ,ゝ=< / | `'''‐- 、.._
/ !./l;';';';';';';\ ./ │ _
_,> '´|l. ミ:ゝ、;';';_/,´\ ./|._ , --、 | i´!⌒!l r:,=i
. | |:.l. /';';';';';|= ヽ/:.| .|l⌒l lニ._ | ゙ー=':| |. L._」 ))
l. |:.:.l./';';';';';';'! /:.:.| i´|.ー‐' | / | |. ! l
. l. |:.:.:.!';';';';';';';'| /:.:.:.:!.|"'|. l' │-==:|. ! ==l ,. -‐;
l |:.:.:.:l;';';';';';';';| /:.:.:.:.:| i=!ー=;: l | l. | | / //
l |:.:.:.:.:l;';';';';';';'|/:.:.:.:.:.:.!│ l l、 :| | } _|,.{:: 7 ))
l |:.:.:.:.:.:l;';';';';'/:.:.:.:.:.:.:.:| |__,.ヽ、__,. ヽ._」 ー=:::レ' ::::::|; 7
. l |:.:.:.:.:.:.l;';';'/:.:.:.:.:.:.:.:.:.|. \:::::\::::: ヽ ::::::!′ :::| .:/
. l |:.:.:.:.:.:.:∨:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.! /ヽ::: `::: :::: ...
(´-`).。oO(ΣΩ ΩΩ ナ ナンダッテー!!)
69 :
憂鬱の人:04/08/06 09:58 ID:lSSCSyPR
一部で大好評だった前作「エスペリアの憂鬱」!!
あの続編がついに始まる!!
愚直・実直エスペリアと優しそうに見えて実は結構トゲトゲしいユート君が織りなす
笑いあり、涙ありの一大巨編!!今回は他のキャラも出番が多いぞ!!
まあジエンの煽りはこのくらいにして!!!
「憂鬱の人」は「飛翔」を読んで思った。
「やべぇ、プロットかぶっちゃったかも知んない」...と。
まぁ、あくまでこれはエスペリアものだから許してくれ!
では、「エスペリアの家出」はっじまり〜!!
「意外とあっけなかったな。」ノックもせずに光陰が悠人の部屋に入ってくる。
「ま、俺の実力から考えれば当然の結果かな。」
リレルラエル陥落の翌日。当初は難攻不落と思われていたサーギオスの要衝で
あったが、今日子・光陰達エトランジェ部隊の活躍もあり、作戦は予想外と
言えるくらい速やかに終結した。悠人はサーギオス上官が使っていたとおぼしき
城内の一室を使って、明日からの部隊編成に没頭していたところであった。
「あんま油断すんなよ、光陰。」苦笑しながら悠人が答える。全く、コイツと
話していると高校の教室に舞い戻ってきたような錯覚に陥る。二人そろって
学園の制服を着ているせいもあるのだが、やはり何といっても光陰の持つ
独特のマイペースな空気がそうさせるのだろう。
「まだ敵のスピリット達も主力はほとんど無傷で残ってるんだ。」
「なに、どんな奴らが襲って来たって今日子の鬼みたいな顔を見りゃビビッて逃げ出すさ。
それより悠人、お前今日は部屋にこもって何やってんだ?」机の上に置いてあった
カップに無遠慮に手を伸ばす光陰。先刻エスペリアが出前してくれたコーヒーだ。実は
悠人の飲みかけなのだが、そんな事は意に介さないらしい。
悠人のメモを覗き込む光陰に悠人は言った。「これか。これからの戦力配分を考えてたんだ。
今までは総力戦でやってきたけど明日以降は部隊を最低二つに分割しなけりゃならない。
ゼィギオス方面に向かう部隊と、もう一つは南下してセレスセリスに攻め込む部隊。
どうだ、光陰、これを見て何か考えがあれば言ってくれ。こういうアタマを使う仕事は
お前の方が得意だろ?」
「へっ。テストの勉強会じゃあるまいし。そういうのは隊長の一存で決めちまえば
いいんだよ。俺や今日子はあくまでお前の命令で動く部下に過ぎないんだからな。」
皮肉っぽい口調で言いながらも真剣な目でメモを見つめる光陰。
しばらくの間をおいて光陰がゆっくりと口を開く。「――――悠人、お前にしちゃ
上出来だ。なかなかよく考えてるじゃないか。」
悠人の編成案とは現時点でラキオス最大の戦力であるエトランジェで固めた部隊を
ゼィギオス側に向かわせ、残ったスピリットのほぼ全勢力でサレ・スニル方面に進攻
する、といったものであった。そして、やや戦力的に劣ると思われるスピリット達は
伝令・遊撃などを担当する支援部隊に充てる。決して最善の戦略ではないかも知れないが、
光陰が納得してくれるならば悪くないやり方だろう。
「まぁ、アレだな、欲を言えば俺はオルファリルって娘と一緒の部隊がいいな。
おい悠人、隊長権限でそこんとこうまく調整できないか。」ニヤニヤと笑いながら
光陰が悠人にすり寄ってくる。
――― ほんっと、素直じゃないよな、光陰も。
光陰のロリコンじみた言動は昨日今日に始まったことではないが、真意は他のところに
あるのではないか。最近悠人はそう思い始めていた。本当は今日子のことが好きで好きで
たまらないくせにわざわざそういう事を言ってツッコミを食らう。もっとも、こっちの
世界に来てからはそれはもうツッコミなどと呼べる生やさしいものでは無かったが。多分、
光陰以外の人間かスピリットが食らったら瞬時にマナの塵と化すことだろう。
――― 物騒な夫婦漫才だな、まったく。
止まってる。
支援か?
74 :
憂鬱の人:04/08/06 11:59 ID:lSSCSyPR
>>73 大正解です。連投規制にひっかかりますた。では、
引き続きお楽しみください。
「なるほど...たとえ隊長命令といえども今日子と一緒に戦うのはゴメンだ、
というわけか。今の発言は軍法会議モノだ、光陰。明日にでも処分を決定する。当然、
議長は今日子に担当して貰うからそのつもりで。」
光陰につられて笑いが浮かびそうになるのをこらえながら、少し芝居がかった口調で
悠人が光陰に宣告する。
「お、おいっ!悠人!俺を殺す気か?いいのか?化けて出てやるぞ!」顔色を変えた光陰が、
およそ仏に仕える者とは思えない言葉でわめき始める。
「俺としても親友のお前を失うのはツラいが、部隊を預かる隊長としては目をつぶる
訳にはいかないんだ、許せ、光陰。今まで一緒に過ごせて楽しかったよ、ありがとう。」
クソ真面目な顔で悠人が光陰に追い打ちをかける。
「お前なぁ...なんて友達甲斐のない奴なんだ。ロクな死に方しねえぞ。」さすがに
からかわれていると気付いた光陰が元の口調に戻って溜息をもらす。
「わかったわかった。隊長殿の御命令にそむいたりしないって。」
「はは。頼りにしてるぜ、親友。」
――光陰がぶつくさ言いながら部屋を出ていってしばらく後。ドアをノックする音が
響いた。
「よろしいでしょうか、ユート様。」エスペリアの声がする。
「お、来たか。入ってくれ。」
エスペリアがドアを開ける。横にはウルカが立ち並んでいた。
「手前もお呼びだと聞いたのですが。」
「そうだ。明日からの事で2人に話がある。ま、とりあえずこっちに来てくれ。」
――光陰とはえらい違いだ。
ふとそんな事を思いながら悠人は2人の方に振り返った。
「とりあえずこれに目を通してくれ。」そう言いながら悠人はエスペリアに
メモ用紙を渡した。2人がそれを見て怪訝な表情になる。
「これは...部隊の編成表でしょうか?」口を開いたのはエスペリアだった。
変だな、さっきコーヒーを持って来た時言った筈なのに何をわかりきった事を...と、
そこまで考えて悠人は、ある事にようやく気付いた。
「あ!ごめんごめん。2人とも日本語なんて読めないよな。」悠人はエスペリアにメモを
返してもらい、言葉を続けた。「うん、そうなんだ、エスペリア。俺が考えた編成なんだよ。
で、こんな感じで部隊を分けて...」悠人は光陰に話した計画の説明を繰り返した。
「―――と、まあこんなところなんだけど、どう思う、エスペリア?」悠人はまず、
これまで参謀を務めてきたエスペリアに意見を求めた。
「はい、戦力配分のバランスも取れているし、問題はないと思います。」エスペリアが
微笑を浮かべて答えた。
「そうか、ウルカはどうだ?」次いで、悠人はウルカに顔を向けた。
「手前も...なかなか良い戦法だと考えますが...」ウルカは言葉を濁した。自分が
呼びつけられた理由がよくわからないのだろう。
「ウルカに来て貰ったのは別の理由がある。」悠人はそう言いながら、エスペリアに
向き直る。
「サレ・スニルに向かう間はスピリット部隊だけの構成になる。戦いの事だから、
途中で場に応じて細かい作戦変更をする事もあるし、あるいはスピリット間の部隊編成を
組み替えることもあるかも知れない。そのあたりの細かい戦術指南はエスペリアに
任せるとして...」
悠人はいったん言葉を切り、再びウルカに視線を戻す。
「ウルカには攻撃前線の指揮をとって欲しい。」
「手前が...ですか?」ウルカが少し驚いたように問い返す。
「そうだ。」悠人はきっぱりといった。「ウルカがいいと思う。俺の考えで行くと多分
攻撃の主体はアセリアとヘリオンになる。アセリアは...まあその、野性的ってのかな、
だいぶ落ち着いては来たんだけど、まだまだ単独行動が多いし、とてもスピリット達を
まとめるタイプじゃない。ヘリオンはかなり剣も上達したけど、それでも全体を見渡す
だけのゆとりは...まだない。」ウルカは表情も変えず悠人の話に聞き入っていた。
「その点、ウルカなら常に冷静な判断を下せるし、それに...何よりリーダーとしての
経験もある。やってくれるよな?」悠人は有無を言わせぬ口調でウルカに告げた。
「―――ユート殿の命令であれば是非もない事ですが...。手前はもともとサーギオスの
出身です...皆がそれで納得しましょうか。」ウルカにしては珍しく自信なさげに口ごもる。
「もういい加減によそ者意識は捨てたらどうだ、ウルカ。心配ないさ、ウチの若い
スピリット達の中でお前の事を悪く思ってるヤツはいないよ。うん、むしろ良い手本に
なってるくらいだと思う。」躊躇するウルカに悠人がたたみかける。
79 :
憂鬱の人:04/08/06 12:16 ID:lSSCSyPR
さっそくですが誤植です。家出・2が1のまんまでした。
で、その中のセレスセリスは「サレ・スニル」の間違いです。
「―――承知しました、ユート殿。手前につとまるかどうか分かりませんが、そこまで
おっしゃって頂けるのならば。」ウルカは深々と頭を下げた。
「――エスペリアも、それでいいよな?」
「あ、はい、ユート様。そうして頂ければ私も助かります。」いきなり話を振られて慌てた
エスペリアが2度、3度と頷く。
「よし、じゃ、これで話はお終いだ。2人とも持ち場に戻ってイオを手伝ってやってくれ。」
「はい。では失礼します。」2人は一礼して悠人の部屋を辞した。去り際に、エスペリアが
悠人を見て、何か言おうとする。「どうした?まだ何かあるのか?」悠人が問いかけるが、
「いえ、何でもありませんユート様。では。」エスペリアはそれだけ言い残して立ち去った。
リレルラエル陥落にともない、急ぎ駆けつけていたイオは休む暇もなく城の改築に
取りかかっていた。改築といっても時間的に城の構造自体を変えるわけにはいかない。
もともとあった城門をつぶして入城出来なくしたり、その代わりに隠し門を作ったりといった
作業であった。たったそれだけの事でも効果は充分にあった。何と言ってもつい先日まで
帝国の拠点だった城である。当然城の見取り図くらいは敵の手中にあると考えてよかった。
―――やれやれ、説得も疲れる。
2人が出て行った部屋の中で悠人は、はあっと一つ大きな溜息をついた。ウルカに
スピリットの陣頭指揮をとらせる、というのは以前から考えていた事だった。どういう
訳か第二詰め所のスピリット達、通称雑魚スピは個性的な者が多く、中にはセリアや
ヒミカのごとく、悠人を隊長として認めない輩までいた。
これまで橋渡し的な役割を担ってきたエスペリアには言葉に出せない苦労もあった事だろう。
今まで上に立つ経験などほとんど無かった悠人には正直もてあます雑魚スピ達であったが、
何故かウルカに無礼な態度を取る者はいなかった。怒らせると恐い、というような事ではなく、
ウルカの持つ威厳とも言うべき雰囲気がそうさせるのだろう。
―――そう言えば。
悠人はふと、以前同じ黒スピリットであるヘリオンについてウルカと語り合った事を
思い出していた。
ウルカがラキオス陣営に来てまだ間もない頃。当時ウルカはまだ本格的に戦列には加わらず、
雑用のあいまに若いスピリットの訓練に当たったりしていた。悠人はベソをかきながらウルカに
シゴかれるヘリオンを見かねて、性格的に戦闘に向かないのではないか、と尋ねてみたのである。
何せその頃のヘリオンときたら度が過ぎるほど臆病な上に、ちょっとした事で動揺するため、
とてもではないが戦場には駆り出せないと悠人は思っていたのだ。
悠人としてはウルカに、だから余り厳しく訓練しなくていい、くらいのつもりで聞いた事だったのだが。
――― なに、臆病なくらいがいいのです、ユート殿。
悠人の心配をよそに、ウルカは笑って答えた。
――― 恐れを知らぬ者は、それゆえに落とさなくてもよい命を落とすことがあります。
そう言った後、ウルカは目を伏せた。かつて自分がサーギオスで隊長を務めていたとき、
守りきれなかった部下の事を思い出したのだろうか。かける言葉を見つけられないでいる悠人に
ウルカは再び笑顔を向けて話し始める。
――― ヘリオン殿はまだ自分の力を出し切れていないだけの事。いずれ手前も太刀打ち
出来ぬ程の腕前になりましょう。
そう言って、ウルカは我がことの様に嬉しそうな表情を見せた。小さな髪留めで束ねられた
ウルカの長い髪が夕風に吹かれ、絹糸の様に舞う。悠人は話を聞きながらもつい見とれて
しまった。自身はハリガネの様な髪質である悠人は一部で噂されている通り、サラサラヘアーに弱かった。
――― どうかされましたか、ユート殿?
悠人の視線があらぬ方向を向いているのに気付いてウルカは不思議そうな顔をする。
――― ウルカの弟子みたいなもんだろ、ヘリオン殿はよせよ、『殿』は。
照れ隠しの苦笑でごまかしながら悠人は言ったものだが、その頃はまだ、攻守に渡って
中核を担う現在のヘリオンの姿など、想像もつかなかった。
それまでは雑魚スピ達の中でもどちらかと言うと孤立する傾向のあったヘリオンだが、
ウルカが来てからというもの、次第に水を得た雑魚の様に生き生きと訓練に励むようになった。
さすがにまだウルカの剣技レベルには達していないものの、最近の訓練では逆にウルカの方が
打ち込まれる事すらあった。そんなヘリオンが、まるでウルカを姉か母親のごとく慕うようになったのも、
あるいは自然な成り行きだったのかも知れない。
尼さんエスペリア支援
86 :
憂鬱の人:04/08/06 12:36 ID:lSSCSyPR
第一部はこんなもんでおしまいです。
続きはあるのか?エスペリアはどうした?
さまざまなツッコミが聞こえる気がしますが、
第2部以降、(多分)近日公開予定!!
無粋な突っ込みかもしれんけど、作中で雑魚スピはかわいそうやんw
でも面白いわ。続きがんばってね
88 :
憂鬱の人:04/08/06 14:10 ID:lSSCSyPR
>>87 ひょっとしてあなたは関西人?
私もです。あえて「雑魚」と言ってる理由は
次回で明らかになります。乞うご期待!
ふ、伏線なのか!>雑魚スピ
乙
>憂鬱の人さん
前回は、急転直下のオチに笑わせてもらいました。またしてもシリアスな始まり方をしていますが、
果たしてこのままシリアスに進行するのか、そうでないのか。
シリアスだと決めてかかると、どうなるか分からないので全く油断できませんね。
第二部、お待ちしております。
水を得た雑魚w うまい。ワロタ。
「暑い……一体どうしちまったんだ、今年のラキオスは……」
本来なら一年を通して、常春と言って良い位の気候だっていうのに、この暑さは異常すぎる。
しかも、ただ気温が高いだけじゃ無しに、湿度も高く蒸していてどんどん不快指数が上がっていく。
けれども、なんだかこの蒸し暑さに懐かしさを感じるのは俺の気のせいだろうか。
「まるで、日本の夏みたいだ……」
戦装束と上着を脱ぎ、シャツとズボンだけになって首からタオルをかけ、
椅子にもたれていると、ここが異世界であるという認識が薄れていく。
「そうだろうそうだろう、その顔を見ればなかなかに懐かしさを満喫してもらえたようだな」
隣に同じ様にシャツ一枚にズボン、あまつさえ裸足になってタオルの代わりに
数珠をぶら下げ、馬鹿でかい剣を持った男だけがいる事も、その感覚に拍車をかけていた。
ああ、クーラーもつけないで我慢大会をした事もあったっけ……
って、剣を持ってる男の何処に日本を思わせるものがあるんだ。さらにそれよりも。
「いや、待て光陰。お前いつの間に俺の部屋に入ってた」
「ふふ、暑さでボーッとしている所に『因果』の力を使って忍び込めば造作もねえ」
「そうかよ……ところで、まるでこの暑さの原因に心当たりがあるみたいじゃないか」
「ああ、俺がやった。『蒼の水玉』と『炎の祭壇』、アクセントに『常緑の樹』を建てて見事に
日本の夏の気候を再現する事に成功したんだ。というか、悠人の指示でやった事にしたからな。
なにしろ、施設の建設権はお前にあるんだから」
自らも暑さで額から汗を流しながら、事も無げに言ってのける光陰。
それを聞いて俺の顔からは暑さによるものではない汗が吹き出し始める。
「な……何のために?」
「もちろん、懐かしき日本の夏を堪能するため、そしてハイペリアに興味津々のみんなに
この気候を体験してもらうために決まってるじゃないか」
光陰のやけに爽やかな笑顔を見て、即座にその言葉の中に含まれる真意を読み取る。
というより分からないほうがどうかしてる。
「単に、暑かったらみんなが薄着になるだろうって魂胆だろうが!
エーテルの無駄遣いは厳禁だって釘をさされてる所だって言うのに
なんてことをしてくれるんだよ!まあ、施設に使った分なら撤去すれば何とかなるけど……」
ヨーティアの言う、マナに還らない一部のエーテルが出てしまうかもしれない事に変わりない。
だっていうのに、光陰は更に予想外の事を口にし始めた。
「なに、要は無駄遣いと思われなきゃいいんだ。
その為に、この気候にぴったりの『訓練施設』の建設も既に終わらせてある」
そうほざく光陰の目にきらりと光が灯る。先ほどの爽やかな笑みの裏側にあるものが凝縮されたような光だったが。
強調されて発音された『訓練施設』の響きによって、すぐにその正体に思い当たった。
「……おい、まさか」
「全身運動、有酸素運動が的確に行われ、身体の訓練に最適!そしてこのぐったりとする暑さを吹き飛ばして
士気の向上にも繋がる『訓練施設』という触れ込みで天才の姉ちゃんに頼んだら快く承諾を得られたぜ」
「ヨーティアまで、何考えてるんだ……」
クラクラする。きっと暑さが原因なんかじゃない事だけは理解できる。
かくんとうなだれている俺に光陰は追い打ちをかけるように続けて言った。
「ちなみに悠人がデザインしたと言う事で、専用の訓練服も注文しておいたんだがな」
「待てっ、お前の趣味に俺を巻き込むなっ!
どうせアレだろっ、紺色で、厚ぼったい生地のアレを作らせたんだろうが!?」
光陰のシャツの襟元を掴んでがくがくと揺さぶったが、決して動じる事なく溜め息をつくだけだった。
「いんや、とりあえず最後まで聞いてくれ。
そうしたいのは山々だったんだが、説明をしている所で今日子に見つかっちまってなぁ、
訓練用のは規格物の競泳系ので統一されちまったんだ。
だけど、それだけじゃ楽しくないのは今日子も一緒だったようでな、
自由時間用にもう一着、今日子たちがそれぞれの好みで作る事になった」
ピタリ
光陰の言葉に反応して揺さぶる手を止めてしまう。
ニヤリと笑い、光陰は襟にかかった手を外しながら話し続ける。
「それで、俺たちも自分の分を作らなくちゃいけなくなって悠人の意見を聞きに来たんだ。
とりあえず、トランクスとビキニパンツと褌と。どれにする?」
「……トランクス」
「まあ、そうだよな。さすがに俺もみんなに引かれるような大胆さは求めんさ」
思えば、暑さでどうにかしていたのかもしれない。それか、単に興味と欲望に負けただけなのか。
かくして本日、ラキオス城に特別訓練施設「プール(25m×6コース)」が加わることとなった。
「へぇ、自分で作っといてなんだけど、結構気持ちの良いもんじゃないか」
「あのさ、ヨーティア。施設の影響で蒸し暑いのは俺たちだけのはずなんだけど」
マナによって構成されている俺たちエトランジェとアセリアたちスピリットはまともに施設の力を受けて
異常気象ともいえる暑さを体験しているけれど、人にとってはそれほどの影響は出ないはず。
にもかかわらず、ヨーティアはちゃぷちゃぷと足をプールにつけて遊んでいる。
あまりの暑さに耐えかねて、初めての自由時間に一番乗りで泳いでいた所に乱入してきたわけだが、
その気だるげな様子はとても光陰から聞いた説明だけでプールを作ってしまった天才だとは思えない。
「ははっ、固いこと言うんじゃないよ。ユートだってただ単にでっかい水風呂で遊んでるだけじゃないか。
たまたま暇になれたんだから、ちょっとは自分の作った物を試してもバチは当たらないよ」
「いや、まあそりゃ今は訓練もしてない自由時間なんだけどさ……」
他に娯楽らしい娯楽も少ないここで、暑さを紛らわせる手段があるというだけに
俺も含めて、みんな自由時間のほとんどをここで過ごす予定になっている。
一応、こんな所でも名目上は訓練施設なため、一見遊んでいるようでも自主訓練と見られるように
手配していた光陰の抜かりの無さには感謝するしかない。
……まあ、目の前のヨーティアにはバレバレだけども、
自分が息抜きできる場所を見つけたことでお咎め無しなのだろう。
「しかし、ハイペリアの風習に触れる事ができるのは貴重な経験だけど、水遊びをするための服があるとはねぇ。
技術者連中も驚いてたよ、これがハイペリアの訓練服なのですか?だってさ」
「とりあえず、水の中専用だけどな」
下手に説明を始めるとややこしくなりそうだったので話をあわせておき、
ヨーティアをその場に残してプールサイドに上がる。
時間は昼過ぎ、暑さもピークに達する頃でそろそろみんなもやって来る。
まだ水泳という行為に慣れていないみんなに危険が及ばないように、
俺たちは監視員めいたことをしないといけない。
「……ん?」
設置された監視台にかけてあるシャツを取って、頭から被ろうとした所で妙な視線を感じる。
振り返って目をやると、にやにやと口元を緩めてこちらを眺めているヨーティアの姿があった。
「なっ、なんだよっ」
「いやぁ、改めて見ると随分鍛えてあると思ってなぁ、何せ、『あの時』はしっかりとは見なかったもんだからさ」
からかうつもりなのだと思いたいけれど、その笑みを妖艶なものに変えてこちらに近づいてくる。
その言葉に思い当たって、意識とは関係なく顔が赤く染まるのが分かった。
「ば、馬鹿なこと言ってないで、さっさと上がれよっ、そろそろ他のみんなも来るんだからっ!」
明らかに照れ隠しだと自覚しながらも手早くシャツを着込む。
ホイッスルがあれば完璧だがそこまでは用意できなかったらしい。
情けないとは思うものの落ち着きを取り戻せないまま、逃げるように監視台に上がって腰を下ろしてしまった。
「へーいへい。それじゃ、また次の機会にな」
結局、ヨーティアは最後までにやにや笑いを止めないまま気だるげに戻っていった。
数少ない息抜きの時間だったのかもしれないのに、追い払うようにしてしまった事は少し悪かったと思う。
とは言え、みんながやって来たあとの騒がしさを考えると今のうちに帰ったほうが良いだろう。
「ただでさえ、みんなが自由にプールを使えるのは始めてなんだしな」
ふと、無意識に訓練用の競泳水着に身を包んだアセリアたちの姿が目に浮かんだ。
光陰や俺が変な気を起こさないようにと、今日子が徹底して露出度を排除してくれたおかげで
ほとんど全身を覆うタイプのものになってしまっていたのだ。
あんな競泳選手の一部が着るようなデザインに色気を感じられるほど
俺も、そして光陰でさえもマニアックな趣味をしているわけじゃない。
まあ、体の線ははっきり出てたんだけど……って、落ち着け、俺。
初めての自由時間。すなわち、みんなが作った……というか今日子の知識にある中から選んだ
と言う方が正しいだろうけど、とにかく、あれ以外の水着姿を見る事になる。
気にならないなんて悟った事が言える筈も無く、言ってしまえばさっきから期待に胸が躍りっぱなしだ。
「あ、洗体漕とシャワーの点検もしないと」
逃げ込んだ監視台から降りて出入り口へと近づいていく。
光陰の説明で作られたプールはかなりの部分が学園によくあるものに酷似している。
入り口を進んでいって洗体漕で腰まで浸かり、シャワーで全身を流し、
その後にプールに到達するという作りのアレだ。
こうして見るとこの中は完璧なまでに地球の光景を再現していて、
本当にここがファンタズマゴリアだってことを忘れかける。
いや、まあそれも。
「ねーねーユートさまっ、もう入ってい〜い?」
「ですか〜?」
「あーっ!オルファが一番乗りなんだからネリーたちは後だよっ!ねっパパ!」
「オルファ、まずはシャワーを浴びてからだと言ってるでしょう。
それに誰が最初でも同じです。ユートさまからも仰ってください」
「あ、ああ、ちゃんとしないと、みんな入れてやらないぞ」
こうして、日本じゃまず見られないほどの美人が揃ってることで現実に引き戻されるわけだけど。
「……パパ?どうしたの?」
「え、いや、なんでもない。それじゃシャワーを出すからみんな進んでくれ」
第一陣はネリーにシアー、オルファとエスペリアか。
歓声を上げながら洗体漕を抜けてシャワーへと突入するのは年少組のお約束だろう。
「パパー、どう、この『ミズギ』、オルファにぴったりだよっ」
「へっへーん、ネリーの方が似合ってるよ〜だ。ほら、シアーも見てもらいなよっ」
「ね、ネリー、引っ張らないでよぅ〜」
そのままの勢いでシャワーをくぐり抜けて、年少三人組が水着姿を見せびらかしにきた。
赤を基調にボーダーを入れて星模様を散りばめたセパレートタイプに身をつつみ、
上の水着のすそからおへそをちらつかせながらポーズをとるオルファの横で、
淡い青の地に濃い青で小さな雪の結晶の柄を一面にあしらっている、同じくセパレートを着こなして
オルファを睨みやるネリー。肩紐がオルファのものとは違って背中で交差するようにつけられているのが
対抗意識の現われなのだろうか。さらにその二人の後ろに隠れるようにしながら俺の様子をうかがっているシアーがいた。
薄い青の生地に白とピンク、そして濃い目の青でチェック柄をつけたワンピース、
足の付け根を隠すようにミニスカートをプラスしているのが奥ゆかしく、
また、胸元とスカートの腰についたリボンがポイントらしい。
「えっと、うん、三人とも良く似合ってる、と思う」
まんま「お子様用」に見えてしまう事は伏せておいて感想を言うと、
シアーだけは恥ずかしげにはにかみながら、トテトテとプールサイドを歩いていったけれど
残りの二人はどうあっても優劣をはっきりさせないと気がすまないらしい。
「ねーえ、パパァ、オルファの方が似合ってるよねー」
「この暑いのに赤いやつを着てたらよけいに暑く感じるよっ。
やっぱりくーるで涼しそうなネリーの勝ちだねっ」
バチバチと視線に火花が散るように牽制しあいながらじわじわと俺の方に詰め寄ってくる。
「あー、えーっと……」
答えあぐねてじりじりと押されるように後退する。
どっちかを立てたところで後に待つのはもう一人の方の怒りの抗議だ。
どうにか丸く治める方法を考え付かないかとエスペリアに視線で助けを求める。
そっと頷いて俺の視線の意図を汲んでくれたエスペリアがオルファとネリーの間に入った。
「二人とも、いくら水着が似合っていてもケンカをしているようでは台無しです。
褒めてくださった事が帳消しにならないうちにお終いになさい」
エスペリアに窘められるとさすがの二人もとりあえずは大人しくなってくれた。
最後に息を合わせて(?)そっぽを向き合うとシアーの元へと駆けていく、……って。
「こらっプールサイドを走るんじゃなーい!」
「あっ、ごめんねパパー!」
「ユートさまごめんなさーいっ」
ててっと俺の声に反応して少しだけ速度を緩める。しかし二人はそのままざぶんとプールに入ってはしゃぎ始めた。
「飛び込みもダメだって言ったろうに……」
「す、すみませんユートさま。後でしっかり言って聞かせますので……」
「いや、まあこれだけ暑けりゃ仕方ないけどな。俺だって子どもの頃何回怒られたかわからないくらいだし」
まぁ、とくすくす微笑むエスペリアを見て、そこでようやく彼女の格好に注意が向いた。
ハイビスカスによく似た柄の入ったワンピース、緑と赤のコントラストが白地にちょうどよく映えている。
腰に太ももを隠しきる大判のパレオを巻きつけているのは、
普段から脚を見せない服を着ているエスペリアらしいと言える。
でも、膝から下の白い素足やふくらはぎはしっかりと見えているわけで、なんとも新鮮な感じがする。
「ユートさま、あの、すみませんがじっとご覧になられると……
それに、先ほどからキョーコさまとコウインさまもお見えになられておりますし」
「えっ!?」
慌てて振り向くと、エスペリアの言葉どおりに監視台の所で
にやにやと笑っている光陰と、ジト目で俺を睨み付けている今日子の姿があった。
それでは、オルファたちを見てきますから。と離れていくエスペリアと入れ違いに光陰と今日子がやって来る。
「やれやれ、どうやら一足遅かったか。水の中じゃそれほどしっかりとは見られんからなぁ」
「アンタねぇ、それじゃ誰に監視がいるのか分からないじゃないの」
俺と似たような格好の光陰は割愛。
今日子の方は、下はいつものようなスパッツタイプの水着を着ていて、
上半身はTシャツの裾をお腹の上で結んでおへそを出し、少しでも涼しいように工夫している。
シャツの下にはタンクトップ系の水着を着込んでいるらしく、薄く黒い色が透けていた。
「それにしても、今日子、よくみんなにいろんな水着を作らせるなんて思いついたな」
「いやぁ、別に考えがあったわけじゃないんだけどね、
やっぱり同じような服ばっかじゃみんなもつまらないだろうなって。
でもね、別にアンタたちを喜ばせるためにやったんじゃないんだから
その辺はよく肝に銘じておくこと。さもないと……分かってるわよね」
今日子の瞳に危険な光が灯る。万が一ここで電撃なんかを出されようものなら全員に被害が及ぶ。
口元を引きつらせた光陰がへらへらと笑いながら頷くのに合わせて、同じように頷いておいた。
「よーし、それじゃアタシは先に遊んでくるから、アンタたちはちゃーんとみんなを見といてあげるのよ」
「はぁっ?おいちょっと待てよ今日子。俺たちだけ泳げないのかよ」
「悠はもう泳いでるでしょ、髪の毛見たら分かるもの。
それに光陰をこの娘たちと一緒に入らせたら何しでかすか分かんないし」
言いながらさっさとプールの方に向かって歩き出していく今日子。
「そりゃねぇぜ今日子、野郎二人でプールサイドにいたってしょうがねえだろうが」
なおも食い下がろうと光陰が一歩を踏み出した瞬間、今日子はTシャツの結び目を解いて脱ぎ捨てる。
「……!」
予想通りのタンクトップだったのだけれども、露わになった背中に目を奪われた光陰が足をとめた次の瞬間、
既にプールの中にはからかいを含んだ笑顔を光陰に向けている今日子の姿があった。
光陰は光陰で我儘には慣れたという顔で苦笑いを浮かべ、オルファたちに近い位置の監視台に向かっていく。
どうなっても知らないという事にして、俺は他のみんなを待つ事にした。
「アセリア殿、ヒミカ殿、お手柔らかにお願いします」
「ん……負けない」
「ええ、それじゃナナルゥ、号令と判定をしてもらうけれど……本当にいいの?」
「はい、みなさん頑張ってください」
第二陣、シャワーを終えたアセリア、ウルカ、ヒミカ、そしてナナルゥが飛び込み台の前に並んだ。
「ナナルゥ、アセリアたちは何をするつもりなんだ?」
念入りに準備体操をしている三人に話し掛けるのも悪い気がして、
一目見たところでは三人をぼうっと見ているように思えるナナルゥに声をかける。
実際には呆けていることなんか無しに即座に俺の声を聞きつけて、
すう、とナナルゥは顔を俺の方に向けなおして答える。
「競泳です。前回の訓練時に基本は押さえたので、試しに比べてみようという事になりました」
「ふぅん、それじゃあオルファたちにコースを空けるように言わないとな」
プールの中に目を移そうとしたその時、ちらちらとヒミカが俺に目線を送るのを感じた。
俺が気付いたのを確かめると、次には目をナナルゥに移動させる。……なるほど。
「今日子、光陰、オルファとネリーを、1コースから4コースに入らないように見張っといてくれ」
シアーは別に注意しなくても状況を見て動けるだろうからな。
「ユート様、コースが一つ多いようですが」
「ああ、号令と判定だっけ。それ、俺がやるからナナルゥも一緒に泳いできていいぞ。
そういうのも俺たちのやる事にして構わないしさ」
「……ですが、私の服装は競泳に適しているわけではありません」
そっと、自らの視線を下に向けてナナルゥが呟く。
確かにナナルゥの着ている水着は背中側で幾重にもストラップを交差させて留める形の、
胸元と腰にフリルをあしらえた可愛らしい薄いピンクのワンピース。
結構着やせするんだなぁと、押し上げられた胸元を見てしまい
無意識に緩みかけた頬を引き締めた所で他の三人にも目を向けてみる。
薄手で水色の生地に、右胸にワンポイントの花柄がついただけのワンピースを着ているアセリア、
前から見ると普段のレオタードと変わりないけど、背中側が実は大きく開いている水着のウルカ、
スピリットたちの中で一番の身長を誇り、そのすらりとした脚を強調するハイレグカットを施し、
ちょっときつめなんじゃないかと思うくらい身体にピッタリと張り付いてるフィットネス水着を身につけているヒミカ。
そう言われてよく見比べればナナルゥの格好で速さを競っても明らかに不利っぽい。
「……?どうした、ユート。わたしたちの服、どこかおかしいのか」
「い、いや、そんなことは無いけど。三人とも、何と言うか、実用性に富んだ水着だと思って」
いけない、あまりに視線を送りすぎてしまったようでアセリアが俺に近づいてきた。
少しばかり混じる興味本位の目線に気付くことなく、自分の水着の選び方が間違っているかもしれないと
落ち込みかけるその姿を見せられるのには非常に罪悪感を覚えてしまう。
「普段の服に似ておれば動きやすいのは道理でありましょう。
涼もとる事ができ、なかなかに便利です」
ふ、と口元を緩めるいつもの笑みを浮かべるウルカ。
よく考えれば、普段からこれくらいの大胆な格好をしていることに今さらながらに思い当たる。
まずい、これから先に顔をあわせればきっと今の格好が頭に浮かんじまいそうだ。
「ナナルゥ、ユート様もああ言っておられるのだからあなたも泳いだらどう?」
というヒミカの声に、軽く熱を持ちかけた思考が現実に戻ってくる。
「うん、別に本気で順位を決めたりするわけじゃないんだから、
有利か不利かとかで考えるんじゃなくてさ。ナナルゥがやりたい事を優先していいんだぞ」
さっきからのヒミカの様子じゃ、単に遠慮してるだけみたいだし。
「私のしたいこと……」
俺に言われて、ナナルゥはしばし俺の顔を見続けた後、
「ユート様、合図をお願いします。それと、最後まで見ていてください」
微かに目元と口を笑みの形に動かした、ような気がした。
三人に遅れて準備運動を始めるナナルゥを見やっていたかと思うと、ヒミカが俺に軽く頭を下げる。
「ありがとうございました、ユート様。私があれ以上いうと無理に泳がせるようになってしまって」
「いや、別に礼を言われるほどの事じゃないよ、
単にこの暑いのに泳がないのはきついだろうなって思っただけだし」
引き締まっているにもかかわらず柔らかそうな、全てが露わになっている太ももと、頭を下げた瞬間に水着の胸元から
ちらりと覗けた谷間から目をそらしきれずに、誤魔化そうとして思わず口調も固くなってしまう。
何とか視線をヒミカと同じ様にナナルゥの所に持っていったところでちょっと疑問が湧いた。
「ところで、ナナルゥの水着は誰が考えたんだ?確かに似合ってるけど……」
なんだかナナルゥらしくないと言うか。もっと実用一辺倒のか、訓練用の奴のまま来るような気がしてた。
俺の言う事を察したのか、ヒミカは妹の成長を見守る笑みを俺に向けた。
「いえ、あれはナナルゥが自分で。似合うと言ってくだされば喜ぶと思います」
戦いの時は凛々しく、こういう時には実に優しさに溢れるそのギャップにどきりとさせられる。
しかしヒミカはその笑顔を不意ににやりとしたものに変えて、
「ですが、あまりにじろじろと見ていると快くは思わない者も
いますでしょうし、ほどほどにしておいた方がいいですよ、ユート様」
くるりと踵を返してプールの中に入っていってしまった。
そりゃ、目線に気付かれない方がおかしいよな……
「ユート、顔が赤い」
「あ、暑いからだっ、ほら、もうそろそろスタートの合図をするぞっ」
「承知。アセリア殿、参りましょう」
それに。何となくだけど、ヒミカの言葉に二重の意味があるような気がするのを無視する事が出来なかった。
100m自由形の結果、健闘したナナルゥだったけど、体力の差からほぼ同着の三人からは少し遅れていた。
それでも、最後にプールから上がってきた時の雰囲気は満足そうだったのが印象的だった。
競泳を終えた後でも、流すように泳ぎ続けるアセリアたち。
今日子と一緒になって水のかけ合いをして遊んでるオルファたち。
その様子をプールサイドで眺めている光陰とエスペリア。……視線にこもる感情は別のような気もするけど。
三つの場所に分かれている風景を見ている所に、どうやら新しく入りにきた人物がいるようだ。
「二ムとファーレーンにセリアか。まだ空いてる場所はあるけど、何をするかで場所取りを考えないといけないぞ」
声をかけつつシャワーの栓を開けた。くぐり抜けるようにシャワーを浴び終えたセリアは、
俺が気付いたときには濡れた身体を隠すように、腿まで丈がある大きめの白い綿のTシャツを着込んでいた。
「あれ、セリアは泳がないのか?」
「泳ぐつもりはありませんから、どうぞお気遣いなく。水の側で涼みに来ただけです」
俺の目線に気付くと、セリアはそう言いながらキツイ視線を送ってくる。
どう控えめに解釈しても、「あなたが見てる前で水着姿になれると思っているのですか」という所だろう。
シャツの裾からはみ出している脚に目をやってしまえばさらに視線の温度が下がるに違いない。
「ユート、いつまでシャワー浴びてればいいの!もう入っていいんでしょ!」
「ああ、もう止めるよ。まあ、泳ぎたくなったらいつでも泳げばいいからな」
ぷい、と頷きも断りもせずに足を進めていくセリアの後姿を見ながら、シャワーを止める。
シャワーを終えたニムントールが近づいてきて、ポツリと呟いた。
「セリアのお尻見てるでしょ?言いつけてやるんだから」
「そんなことするかっ、命がいくつあっても足りやしないじゃないか」
慌てて声のした方に向き直り、その姿を確認する。
濃い緑色をした、フロントジップアップのワンピース。
ジッパーを下ろせばおへその辺りまでぱっかりと開いてしまいそうだ。
しかも、背中側は真ん中くらいまでが細いラインになっているため、肩甲骨が丸出しになっていて
ウェイトリフティングのユニフォームを想像させる。
「そうよ二ム、ユートさまがそんなことをするはずないでしょう」
ニムをたしなめながらやってきたのは、肩紐が無いワンピースに身を包んだファーレーン。
しかも、背中から見ればワンピースには見えない位に大きくバックの生地がカットされていた。
色は薄紫で、所々に藤のようなプリントが施されている。
ただ、たしなめると言うよりは、暗に俺が根性無しだと言うような含みがあったんだけど……
「でも、なんかお姉ちゃんを見る目つきがやらしい」
「え……」
目を細めて俺を睨みつけてくるニムに、頬を染めるファーレーン。
「だ、だから、そんなこと無いって!」
ぶんぶんと手を振って否定はしてみるが、自分でも説得力に欠けると思う。
何と言っても肩紐が無いんだ、つまりはその、
ワンピースなのに胸のふくらみの始まる所がばっちりと……
って、ダメだダメだ!見る見るうちにニムの表情が険悪になっていく。
「……お姉ちゃん、ユートなんか放っといて行こうっ」
「え、でもニム、あなたユートさまに見てもらうって……」
「いーのっ!ちょっとお姉ちゃんが大胆なのを着てるからって……知らないっ」
ぐいぐいとファーレーンを引っ張ってさっさとプールへと向かっていってしまう。
それを追って視線を動かした先に、じっとこちらを冷ややかに眺めているセリアの姿があった。
視線が合ったと理解した瞬間に、彼女からはまたしてもさっと目をそらされてしまう。
うわぁ……ほんとに注意しとかないと何を言われるか分かったもんじゃないな。
しかしその時、ニムとファーレーンを追うことを断念した俺の耳に入ってきた言葉は。
「大胆って、わたしの水着なんてキョーコさまたちに比べればまだ普通くらいでしょう」
……なんだって。
今の所、たしかに今日子の奴のが一番露出度が高いだろう。おへそも丸出しだし。
でも、キョーコさま『たち』ってことは、他にも……?
まだ来ていない人物に思いを馳せたその瞬間に。
「ユートさまっ、シャワーをお願いしますっ」
ぱたぱたぱたっと子犬のように駆けてくる人影が。声からしてもきっとヘリオ、ン……ッ!?
「な、何て格好をしてるんだよっ」
振り向いた俺の目に飛び込んできた映像は。
まだシャワーを浴びずに、洗体漕に浸かっただけなので、腰から下が濡れて光っている。
水分を含んでいるために上半身よりも下半身が濃い色に見える。
基本の形はワンピース。ほんの僅かに、腰の部分に存在するスカートのような布地。
大部分は濃紺。胸の所に白い長方形のあて布。……紛れも無い、旧式スクール水着だ。
ご丁寧に、たどたどしい平仮名で『へりおん』と名前まで書いてある。
「え、何て格好って……この水着、ユートさまがデザインをしたって聞きましたよっ!?」
途端に顔を不安に曇らせて自分の水着に手をあてるヘリオン。
慌てて、今日子の方に顔を向けて確認を求めると、目を丸くして首を横に振っていた。
「な、なあヘリオン、今日子からそれを止めて別なのにしろとか何とか言われなかったのか?」
「だって、キョーコさまが自分の好きなようにしなさいって仰ったんですから、
わたしの好きなようにするならユートさまが作ってくれたのが良かったんですよぅ」
胸元で腕を縦に振りながら力説するヘリオン。
ピコピコと揺れるツインテールと、幼さが残る身体とが相まって、
可哀相なくらいに似合いすぎていた。今さら着替えろなんて俺に言えるはずも無い。
たとえ向こうで、企みが的中して小躍りしそうなほどにを鼻の下を伸ばしてる野郎がいたとしても、
……似合っているのは、事実なんだから。
初めに言われたとおりにシャワーを出して、ヘリオンがそこを潜り抜けると、
「それで、ユートさま。その……に、似合ってますか……?」
足を軽く交差させて立ち、手を後ろに組んでささやかな胸を張り、上目遣いで尋ねてくる。
ただ似合ってると言うことは簡単だけれど、そんな風に言えば今日子からきつい一発を貰いそうで危険だ。
再び返答に困り、助けを求めて周囲を見回してはみたものの、毎度毎度そう都合よくいく訳もなかった。
何しろこの水着が『そういうもの』だって考えられるのは俺と光陰と今日子くらいなもので、
他のみんなにとってはただの露出度の低い厚ぼったい水着なだけなんだから、
何も感想を言わない俺が悪いと言うような雰囲気まで出てしまっている。
「……やっぱり、ダメなんでしょうか……」
あぁ、まずいっ、俺が何も言わないもんだからヘリオンの顔が落ち込んでいく。
何か、かけるべき言葉は無いのかっ!?……あぁ、だんだんと俺もパニックを起こしている。
この状況をどうにかしてくれるなら誰だっていい、
そう思いかけたときにまた一人の声が新たに聞こえてきた。
「ユートさま、お邪魔しまぁす」
この、ゆったりとした響きは。俺は縋るようにその声の方向に顔を向けた。
「ああ、ハリオンか。そうだっ、ハリオンはヘリオンのこの格好をどう……」
……
…………
………………なんだ、コレは。
目が捉えたものをすぐに認識できない。自分の記憶を思い返して、自らの間違いを理解した。
何が、競泳水着で身体の線が出ている、だ。あれでは水着という檻に自らの肉を押込めたに過ぎない。
身を束縛する牢獄の代わりに今の彼女を包む物は、黒の三角ビキニだった。
首と背中を紐で留めるだけのトップに、ボトムも紐で留めるタイプのもの。
普段着の上からでもわかる豊満な身体を申し訳程度に隠して、一見恥ずかしがる風も無く歩いてくる。
目の前にある光景は、衣服という檻からの解放に歓ぶ肉体のダンス。
ハリオンが一歩足を進めるたびに、たゆんたゆんと豊かな双丘が震えているのが目に映る。
「えっとぉ、それじゃ失礼しますねぇ」
すたすたと俺の横を通ってシャワーを出して、同じように戻って水を浴び、
再びハリオンが栓を捻ってシャワーを止めるまで、俺は馬鹿みたいに固まっていた。
とは言え、それはどうやら俺に限った事ではなくてハリオンの姿を視界に収めた全員が、
そのあまりと言えばあまりな出で立ちに思考を中断させているようだ。
「あの、ハリオンさん?」
何とか真っ先に気を取り直したはいいけれど、思わずさん付けで、しかも裏返った声で名前を呼んでしまう。
咳払いをしてどうにか声の調子を戻した俺の目の前に、首をかしげるハリオンが近づいてきた。
「一体何でまた、どう言ったらいいのか困るようなものを……」
なるたけ彼女の顔だけを視界に収めるように努めながら話し続ける。
その努力を分かっているのかいないのか、
全く気にした様子も無くにこにこと微笑みながらハリオンはパタパタと手を振った。
「いえ、それがですねぇ、ユートさま。訓練をするときの服だとどうしても、
色ぉんなところが窮屈でして〜。ですから、もうできるだけ楽に着けられる物にしちゃったんですぅ」
あっけらかんと言ってしまうハリオンに、その場にいた全員からのさまざまな視線が向けられる。
「そりゃ確かに……涼しそうだし、楽そうだなぁ」
思わず目線を下に向けて呟いてしまう。
ハリオンの動きに同期する身体の一部分から目を離せないまま見続けること数秒。
はっと気付いた時には、視線の矛先は全て俺に向いていた。
「い、いや、コレは単に涼しそうでいいなあと思っちまっただけで、
特にやましい意味なんか無いんだからなっ!?」
何とか誤魔化すようにそう口にした後、視界の端に、
光陰が呆れたように口元をゆがめるのが映ってしまった。
いつもは、俺が光陰の自爆を目の当たりにした時に浮かべる表情だ。
つまり、今のは自爆ってことなのか光陰!?
全身から血の気が引くのを自覚しながら、いやそれでも一部分には集中しているような気が……じゃなくてっ!
更なる弁解の為にハリオンの方に顔を向けた瞬間。
「やんっ、ユートさまったらぁ、そんな目で見ちゃ、めっですぅ」
ぐきっ
ハリオンは既に聞く耳持たないって感じに照れながら頬に手を当て、
もじもじと身体をくねらせながらもう片方の手で俺の顔面を力いっぱいあさっての方向へと捻じ曲げた。
痛みに悲鳴を上げる間もあればこそ。無理やり顔の向きを変えられた先では非常にまずい事態が進行中だった。
「あ……ヘリオン……」
忘れてたという事になっちまうよな、これは。
地面を見つめ、涙をこらえながらぼそぼそと何事かを呟いている。
「ど、どうしたんだ、一体」
「似合うとか似合わないとかじゃないですね……
わたしがちっちゃいから、スタイルよくないから……」
唇を軽く噛み締めながらの恨めしそうな視線を向けられてしまい、
首の痛みとヘリオンの視線と周囲からの圧力が俺から正常な思考力を奪っていく。
「そ、そんなこと無いぞ、ヘリオンっ」
「へ?」
体ごとヘリオンのほうに向き直り声を上げると、
目の前のヘリオンの顔が、きょとんとした物に変わった。
「その水着をしっかり着こなすのはハリオンには無理なんだから、
人それぞれってことで良いんじゃないかなっ」
一瞬、俺の言葉の中身を考える仕草を見せるヘリオン。何とかもう一息でフォローしきれるか……?
息を継ぎ、さらに一言を続ける。
「ヘ リ オ ン に は そ の 水 着 が ピ ッ タ リ だ」
支援
後で、今日子にどれだけ突っ込みを入れられて、光陰に仲間を見るような目で見られても仕方が無い。
半ばヤケになって言い放った言葉はしかし、今のヘリオンには逆効果だった。
「それってつまりは、わたしの体型じゃ色っぽい水着は無理だってことなんじゃないんですか……?」
あ、バレてる、……という顔をしてしまったのだろう。
「ふ、ぇ」
瞳を潤ませるくらいだった涙はあっという間にヘリオンの目から溢れ出し、
「ふえぇぇ〜〜〜〜ん」
水を含んだツインテールをなびかせながら、ヘリオンは俺に背を向けてプールの方に走っていってしまった。
「いや、待った!周りも見ないままプールサイドの端っこを走っちゃ危ないっ!」
慌てて彼女を止めるために後を追おうとする。けれども、プールの縁ギリギリを駆けているヘリオンは、
「えっ……きゃぁ!?」
俺たちの見ている前でつるりと足を滑らせて、勢いよく水しぶきをあげながらプールの中に落下した。
すぐに、水面でばしゃばしゃともがくヘリオンが浮かび上がる。
「まずい、ヘリオンってまだ泳げないのか!?」
座っていた場所から立ち上がってプールサイドを早足で歩むエスペリアに確認を求める。
返事は、無言ままの頷き。突然の事にエスペリアも慌てているようだ。
「万が一に備えて、神剣を取りに行ってくれ。もしかしたら回復魔法がいるかもしれない」
再び頷いて、プールの外へと急ぐエスペリア。同時に光陰に何か言われたらしい今日子も出て行った。
ヘリオンの様子を見る限り大変な事になりそうだ。
泳げない者が恐慌状態に陥ると、はたから見ていると信じられない事をする場合が多い。
例えば、膝までの高さしかない水場で溺れてしまったり、
今の場合だと、近くにプールの縁があるのに手が伸ばせなかったり。
俺も急いでプールに飛び込み、また他のみんなも一斉に泳げる奴からヘリオンの元に近づいていく。
一番ヘリオンの位置に近いのは……セリア!?
プールサイドで座っていた彼女は、世話が焼けるといった表情を少しだけ混ぜてはいたものの、
シャツを着たままで飛び込み、仲間を案ずる態度と迅速さをもってヘリオンの所に辿り着いた。
しかし、その近づき方は致命的だった。プールサイドの向こうから来る光陰の表情もそれを物語っている。
「セリア、正面から行っちゃダメだ!」
「何を、暴れるのを止めないと危険でしょう!ヘリオン、あなたも早く落ちつ……ッ!?」
遅かった。溺れかけてパニック状態の者にしがみつかれては、少しくらい体格の差があったって役に立たない。
セリアにしたって、まさかヘリオンに水の中に引きずり込まれるとは思ってもみなかったのだろう。
ヘリオンのパニックが伝染したように二人がもがいているのに気付いて、他のみんなも半ば呆然としてしまっている。
俺がその場に後ろから近づいた時には体力を消耗してしまっていたのか、
二人があげる水しぶきは小さくなってしまった上に、立ち上がる様子も見えない。
腕の中に二人を一度に抱え込んだ瞬間、セリアがびくりと我にかえったように震えるのを感じたけれど、
今は無視してすぐ側のプールの縁に手を伸ばす。
「よっ……と。大丈夫か、悠人」
「ああ、何とか。ヘリオンはどうなってる」
身体をプールサイドに引き寄せ、力の抜けているヘリオンを光陰に引き上げてもらった。
「んーむ。とりあえず、呼吸も止まってない。
ちょいと水飲んで、気を失ってるだけだ。それで、そっちはどうなんだ」
光陰の言葉に胸をなでおろしたのもつかの間、いまだ俺の腕の中に抱えられたままのセリアに光陰が視線をやった。
「ああ、意識もあるし、水の中に引きずり込まれて驚いただけだと思う。……だよな、セリア」
そっと顔を向けたけれども、セリアは俯いたままで何も反応が無い。
「セリア、大丈夫か」
心配になって、ちょっと強めに声をかける。一瞬体を震わせるとセリアはゆっくりと顔をあげた。
「ええ、もう平気です。……その、すみません」
えっと、一体どうしたんだろう。
先ほどまでの睨むような雰囲気が消えて、目をそらしながら呟くようにそう口にする。
何か謝られるような事をしてしまっただろうか。
「あ、悪い、いつまでも抱え込んでて。大丈夫ならすぐ離すから」
確かに長い間抱きかかえているのはセリアにとっては問題だろう。
しかし、離れられるように腕の力を抜いたにもかかわらず、彼女は抜けだそうとはしなかった。
「いえ、そうではなくて。確かに今回は私の判断が間違っていました。
よけいな手間を取らせてしまって申し訳なかったです」
「何だそんなこと、二人とも無事だったんだから気にしないでいい。
真っ先に助けに行ってくれたことに礼を言う事はあっても、叱ることなんかしないって。
それで、ほんとに身体は大丈夫なんだな」
静かに頷いたのを見て、セリアにプールの縁を掴ませる。
俺は一足先にプールサイドに上がり、セリアに向かって右手を差し出した。
一度、硬直した視線を俺に向けると、そっと自分の手を見た後にセリアはおずおずと手のひらを重ねてきてくれた。
「お、お借りします……」
「だから気にしなくって良いんだって。よっと」
ぐい、と彼女を引き上げて救出完了。
後はヘリオンが目を覚ませば一件落着だ、と思ったところでふと目に入った。
「な、な!?」
何故か、白いシャツの下にあるはずのものが無かった。
いや、本来あるべきものは恐らくヘリオンにしがみつかれた拍子にずれたらしく、
ノンストラップで、胸に巻きつけ背中で結ぶタイプの水着がお腹のあたりに場所を変えているのに気がつく。
……冷静に分析してる場合じゃない、つまりどういう事になっちまってるかというと、
ピッチリと肌に張り付いた布地に透けて、淡く色づいた胸の先端が見えてしまっていた。
「……え?」
その視線に気付いて、セリアは自らの胸元へと目をやる。
さっとセリアの顔に朱が走ったと思ったら、次には震えながら唇を引き結ぶ。
ヤバイ、マズイ、キケンの三つの単語が頭の中をぐるぐると巡る。
何か、何か隠すものはっ?
先ほどからの事故、ハプニングの連続で俺の脳内もパンク寸前だったらしい。
何を思ったか気がついた時には、俺は自分の着ている濡れたTシャツを勢いよく脱ぎ去っていた。
もちろん、それをセリアに渡そうとしてしたことなのだが、そう受け取ってくれる筈も無い。
ひっと短く悲鳴をあげて右手を振りかぶる。
「こ、のぉ……ケダモノぉっ!」
「いや、これはち、違……かはぁっ」
左手で胸元を隠しながら、空いた手で腰を入れたフルスイング。
平手ではなくて握り拳、頬をめがけてではなくてあご狙い。
プールに高く打撃音が響き、本気で放たれた一撃は俺をプールの中に放り込んでいた。
殴られた痛みと、鼻と気管に入った水の痛みをこらえて浮かび上がった所に、再びセリアの視線が突き刺さる。
その上セリアの上げた悲鳴によって、俺には色々な所から痛い視線が送られ続けている。
しかも、クリーンヒットした打撃はじわじわと俺の意識を刈り取り始めた。
「先ほどから周囲に邪な目線を振り撒いていると思っていたらこんな時にまで……
その上、いきなり状況もわきまえずに何をするつもりだったのか……
これじゃ、少しでも感謝していたのが……」
上手く全ての言葉を聞き取れずにいるうちに、セリアはシャツの肌に張り付いていた部分を引き剥がし、
組んだ腕で身体を隠しながら早々に引き上げようと歩き出した。
「げほっ、待って……これで隠せって言おう……と……」
力強く投げたはずのシャツはへろへろと飛び、びちゃ、とセリアの足元に落ちてしまう。
聞こえていたのかそうでないのかも曖昧な中で、
はたとセリアの足が止まるのを暗くなり始めた視界の内に確かめる。
最後に、エスペリアが『献身』を持ち、今日子がヨーティアとイオを連れて
プールサイドに現れかけたのを見たところで俺の意識も身体も、水の中へと沈んでいった。
「で、救護班代わりにあたしらを呼び出したのはいいんだけど、
どうしてヘリオンじゃなくってこのボンクラがくたばってるんだい」
「いやぁ、ま、何というか色々あったとしか言いようがないっつーことで」
「色々ねぇ、どうせカッコつけようとして失敗したって所なんじゃないの悠の事だから」
回復魔法の光に包まれた感覚がして気がついた時には、俺はプールサイドに寝ころがされて周りを取り囲まれていた。
「やれやれ、しかも単に気絶してるだけか、ユートだから言えるが面白くない」
ちょっと待てよヨーティア、人が気を失ってたのに面白い面白くないって何だよ。
何か、このまま黙って待ってたら色々と聞き出す事が出来そうなのでもう少し目を閉じていることにしよう。
「ヨーティアさま、ユートさまが倒れているのにそういう事をおっしゃるのはどうかと思うのですが……」
ありがとう、エスペリア。
「だって考えてもみろ、この訓練の前にひとつコウインたちから習った事があったろう。
確か……人工呼吸だっけか、あれを見物する機会になったかもしれない。
いや、ひょっとしたら実践することになるかもしれなかったのにな」
「た、……確かに」
前言撤回。そんなにあっさり丸め込まれないでくれ……
しかし、人工呼吸か……と、頭にちょっとした妄想が浮かびかけた所で全て霧散する。
どうせ今日子がいる限り相手は光陰に決まっちまうんだからそれを思い浮かべるのはゴメンだ。
その萎えた気持ちを表に出すのは、今気がついてまだ気分が悪いという風に目を開けるのに役立った。
鈍く痛むあごをさすりながら上半身を起こすと、身体に俺の着ていたTシャツがかけられている。
早めに支援、長編頑張れ!
「何かよくない提案が出されたような気がする……」
「あん、もうお目覚めかい。ほんっとうにしょうもない所で目を開けるんだなお前は。
これからが面白くなる所だったのに」
「面白い事って、俺を実験台に何しようって言うんだよ」
「いやぁ、せっかくだから呼吸のある相手でもいいから人工呼吸の練習台にでもなってもらおうかと。
それに、そうすりゃ一発で目が覚めるだろうとも思ったんだが……どうした、ユート、コウイン」
光陰も俺も、今日子に同時に目線をやった後に青くなった顔を見合わせた。
いや、本当に目が覚めてよかった。あぐらをかいた膝の上に落ちたTシャツを手にとって着る。
絞られていたけれども、まだ濡れているためちょっと気持ち悪いかもしれない。
ふと気になってこれを渡した相手の姿を探すと、びしょ濡れで役に立たなくなったシャツを脱いで、
透けているのを覗いた通りの巻きつけて結ぶトップに、ビキニのボトムを着けたセリアは
俺を取り囲む輪の一番外で軽く腕組みしながら時おりこっちに目をやっていた。
その隣には心から申し訳無さそうな顔で目を伏せているヘリオン。
「もう身体は平気みたいだな、ヘリオン」
「は、はいっ、えと、その、ごめんなさいっ」
「謝ること無いわ、じろじろといやらしい目線を振り撒いてた罰なんですから」
「そうだぞ、最初にいらない事言って泣かせちまったのは俺なんだから気にしないでいい……って、
セ、セリアのは、あれは事故というか、不可抗力じゃないかっ」
「お姉ちゃんの胸ばっかり見てたクセに」
「わたしの注意を忘れた、という事になるんじゃないんですか」
「もしかして、ネリーたちに似合うって言ってくれた時も見てたのかなぁ」
「え、えぇ〜!?」
「あらあらぁ、みなさんもだったんですか〜。ユートさまはいけない人ですねぇ〜」
「なによ、結局悠の自業自得じゃないの」
ここぞとばかりに、本気で睨んできたり呆れていたり、ノリで話に参加したり煽ったり。
どんどん立場を追いやられている俺を見て、今にも泣き出しそうだったヘリオンが
きょとんとしてしまった後でも、勢いは衰えずにみんなは俺を責め続ける。
「はいはいそこまで。さて、ユートも気がついたところで言いたい事がある」
大きく溜め息をついてヨーティアがそう切り出す。
さっきまでのからかう様子がさっぱりと消えた声の調子は、みんなの動きを止めるのに抜群の効果を発揮した。
「いくら自由時間だからって羽目を外しすぎちゃいけないって事くらい分かるはずだろう。
風呂の時でも水の側が危険だってのはよくあるのに何をやっているんだか」
うわ、なんというかまた、生活指導の教師のようなことを……
とはいっても言われている事が正しいために何も言い返せずにしゅんとするしか無いのだけれど。
「で、だ。残念ながら今回は呼ばれてみたわりに出番が無かったんだけれども。
次からの自主訓練の時間には万が一のことを考えて、あたしとイオが正式に救護班として参加することにする」
……は?
確かに、イオは訓練士も兼ねてる訳だから居ることに違和感は無いけれど、一体どうしてヨーティアが。
俺だけでなく、アセリアやナナルゥまでがきょとんとした雰囲気を見せている。
「施設を作ったのはあたしなんだから、手違いによる事故の可能性は無いけれども、
お子様たちだけに任せっきりってのも何だからねぇ」
などと続けている内に、ほとんどみんながヨーティアの思惑に察しがついた。
つまり、適当に息抜きできる場所が欲しいだけなのだ、と。
特に断る理由も無い、それにヨーティアたちなら少々の事ならうるさくされることも無いだろう。
さっと辺りを見回して、それぞれ軽く頷くのを確認してから、
「うん、そうだな。ヨーティア、イオ、それじゃ悪いけど頼まれてもらえるかな。
俺たちも、次からはあんまり危ない事はしないようにするからさ」
ヨーティアとイオに向かって頭を下げる。
イオはそっと微笑んで会釈を返し、ヨーティアは口の端をにぃ、と吊り上げた。
「あぁ、任せろ。いやぁ、せっかく作った物が無駄にならなくて済んだ。なぁイオ」
「はい、これで私も訓練時以外にも涼をとる事が出来ます」
あ、そうか。イオもスピリットの一員だ。
光陰の引き起こした事態の影響を浴びてまいっちまってるに決まってるじゃないか。
「そっか、だったら今からでも参加すればいいじゃないか、まだ終わるには早いくらいなんだし」
「そうかい、それじゃお言葉に甘えて。イオ、準備を頼んだ、後はユート、コウイン、ちょいと手伝いな」
「すみませんユート様、コウイン様、他の方はどうぞ危険が無いように続きをお楽しみください」
どうやら、俺がそう答えるのさえ予想のうちだったようだ。
有無を言う暇もないうちに、ヨーティアの言葉とイオの笑みに促されて他のみんなは
めいめいプールの中へと戻っていってしまった。
さて、一体何を手伝わされるのかというと。
プールの外には幾本かの金属製の支柱と、布の幕が用意されていたのだった。
俺の記憶に間違いがなければ、組み上げた時には簡易テラスが出来上がるのだろう。
幕の表にはもちろん大きく「救護班」の文字の一部が見えている。光陰の筆跡でかなりの達筆だ。
「光陰、お前こんなもんまで説明したんだな……」
「うむ、俺もまさかここまで乗りのいい姉ちゃんだとは思ってなかった」
「くっちゃべって無いでさっさと運んでおくれ、ユートが言ったんだから今日中に仕上げてもらうよ!」
何を言っても手伝わされる事には変わりないので、機嫌が悪くならないうちに済ませちまうに限る。
第一、イオにだけこんなことをさせるわけにもいかないし、実際に作業が始まれば何人かは手伝ってくれるだろう。
「わかったよっ、ここまでやるんだから救護班らしい事もしてもらえるんだろうな!」
手始めに金属柱を光陰と手分けして持つ。しかし、地球じゃ二、三人で運んでたような物を
一人で運べるのは便利になったというか何というか、複雑な気分だ。
城の中から持ってきたらしい木製の椅子を運びながら、イオが静かに歩み寄ってくる。
「ええ、泳ぎ疲れて気分が悪くなられる場合があるとお聞きしました。
他にもプールの壁に頭をぶつけてしまわれたり、
プールサイドで転んでしまわれたりした時の対処も把握しています」
「後、喉が渇いたときの飲み物もな。さすがにプールの水を飲む馬鹿は居ないだろうけどねぇ」
……悪い、俺はやった事がある。
情けなさを感じて溜め息をついたところで、何時の間にか俺の側にまで来ていたイオに気付く。
どうしたのだろうと考える時間さえ取らせないまま、
「それから、もしも溺れてしまわれた時にはお任せください」
耳元で囁くように口にした後、近づいた時と同様の静けさで離れ、唇をすっと笑みの形にほころばせた。
「ま、任せろって、何をだよ!?」
視線をやっても静かに微笑みを浮かべるだけで、ハリオンとはまた別種の不思議さをかもし出していた。
きっと赤くなっている顔を、重いものを運んでいるせいだという事にしてプールサイドへと辿り着く。
物珍しさに早速駆け寄ってくるオルファたち。
俺たちが運び込んだ物の組み立てに力を貸してくれるウルカやヒミカたち。
必死に作業を進める俺を遠くから眺めるニムにセリア。
早速、救護テラスに用意されたティーセットを使い始めるエスペリアにハリオン。
今日だけで何だか色々な事があったけれど、また明日からもさらにさまざまな出来事があるだろう。
まぁでも、みんなが楽しめるならそれで良いと思うので問題無しだ。
後は明日にイオがどんな格好でプールに現れるのかを心の内で期待する事にして……
「ユート、何か鼻の下が伸びてる」
「まだ懲りていないのですか、あなたは」
「何か酷くバカにされたような気がするぞ、このボンクラに」
いると、色々と突っ込まれる事請け合いなのでやめにして。
「それじゃ、救護テラスも建ったってことで、また自由時間だ。
上がる奴はちゃんとシャワーを浴びて帰ること。
それと、夕食の用意をする奴は早めに切り上げることを守るように!」
歓声を上げたり上げなかったりするみんなを見送っていたらところに、
「悠、そろそろ交代しよっか」
今日子がそう言いつつ監視台の上に昇っていった。
プールの方を見れば期待が宿った目で俺を見るオルファやネリーたち。
「ああ、サンキュ。じゃ、行ってくる」
彼女達に手を振りながら俺はプールに向かっていき、同じく、今日子に交代を許された光陰の所にそっと泳いでいく。
一つだけ気になる事が残っていたからだ。今日子の目があるために他のみんなから離れるようにしているらしく、
光陰の他には特に誰もいないから尋ねられる。
「ところで、沈んじまった俺を引き上げたのはやっぱり光陰か?
ちょうどその辺だけ完全に気絶しちまっててよく分からないんだ」
ほう、と呆れたように声をあげ、やれやれとかぶりを振る。
「さて、俺に言えるのは、ヘリオンちゃんの様子を見てたのは俺だってことと、
泳がないで『監視員の真似事をしてる俺たちの真似』をしてる娘がいたってことくらいだな」
「……そうか、だからTシャツか」
待てよ、という事は彼女は水着を着け直す前に……
「顔に出すぎだ悠人。明日からはもっと大変になりそうなんだからもうちょっと周りの事も考えてくれ」
「お前に言われたくは無いけどな、って、明日からってどういう事だよ」
「テラスに運び込まれる椅子の数を数えたか?あの姉ちゃんの他にも息抜きをしたがる人が居るだろうが」
「あ」
そうだ、ヨーティアがこうやってサボ、もとい息抜きに来るというのなら、
彼女もきっと視察だ何だと理由をつけて足を運ぶのだろう。
明日からのことに思いが飛んで、軽い疲れを感じる。しかし、そのどこかで楽しみを覚えているのも確かだ。
「光陰」
「あん」
「明日も、暑くなりそうだな」
「施設が建ってる間はな」
それもそうだ、この夏は光陰のバカらしい提案で作り上げた物に過ぎない。でも。
「その間くらいは、みんなに楽しんでもらうか」
「だからその為に俺が言い出したんだっつーの。
『みんな』の中にゃお前も入ってんだから楽しめるだけ楽しんどけって」
ばし、と音を立てて俺の背中を叩く光陰を軽く睨みかけたけれど、その言葉に毒気を抜かれた。
とても最初からそう考えて提案したこととは思えないけど、こいつの事だからそうなのかもしれないと納得させられる雰囲気がある。
「それにな、お前が楽しんでると、俺にもご利益があるんだよ」
「は?」
ニヤリと笑う光陰の横で意味がわからずに目を丸くしていると、ちょうどそこにオルファたちの声がかかる。
「パパ、もうちょっとで今日の自由時間が終わっちゃうよ!」
「ユートさまも、ついでにコウインも一緒に遊ぼうよー!」
「な?いやぁ、呼ばれちまったら行かない訳にはいかないなぁ。おら、行くぞ悠人、オルファちゃんたちを待たせるんじゃねえよ」
なるほど……けど、「ついで」で満足なのか、光陰?
いそいそと、今日子の顔色をうかがいながらオルファやネリーのところへ向かう光陰の背中に哀愁を感じながら、
これから先の暑い日々に思いを馳せて俺も光陰を追い、ざばざばと水を掻き分けて進むのだった。
125 :
道行書き:04/08/07 23:42 ID:x7kK/okr
余りにも暑いと思った勢いで書き始めてから、ますます暑くなったように感じます。
水着のチョイスは、あくまでも私の主観で行ってしまった物です。
やはり光陰は褌だろうとか、オルファこそ(キャラグラフィックから)褌なんじゃないかとか、
それに限らず、「みんなに似合いそうな、または着せてみたい水着は何か」をネタ振りにしてみます。
>保管庫の中の人さん
作品の収録、お疲れ様です。そしてありがとうございました。
できるだけ面倒をかける事が少なくなるようにしたいと思いますので、
これからも、宜しくお願いします。
>111さん、>117さん
ちょうどそのあたりで連投規制に引っかかりました。どうもすみません。
それでは、長文失礼致しました。
道行書きさん、GJです
「へりおん」最高
あと初めてリアルタイムで読めた・・・w
さり気に光陰とヨーティアが面白いコンビだなw
ぐじょ〜
>>道行書きさん
途中でひょっとしてと思ってましたが、やはり道行書きさんでしたかw
長編お疲れ様でした。G.J.です!正にタイムリーなテーマですね。
今日子の電撃に巻き込まれて骨が見えるスピリット達とか想像してしまった自分にorz
それにしても相変わらず一人称による状況説明が上手い……羨ましいです。
>着せたい水着
ネリシアに左右対称デザインのワンピースとか。
かなりの遅レスになりましたが、憂鬱の人さん。申し訳ないんですけど
掲示板だと色々な言葉使いたくなってしまう病気の人であって、残念な
がら関西人というわけでは。伏線楽しみにしてますよ。
道行書きさんも大作ありがとうございます。まさかアセリア世界でこんな
お約束を見ることができるとは思いもしなかったな。
文才のないうちには羨ましい限り。
GJ!
そうとも!乳は正義さ!俺は誰だぜ光の速さで一足お先に明日に向かってダッシュっすか!?
ハリオンの乳ハァハァ
たゆん
たゆん
(*´Д`) たゆん
現スレにも亀レス。
>『明日への飛翔・第三幕』
GJ!
そうか、こういう「過去」の形もありか…
高い作話力を感じ期待してます。
>『エスペリアの家出』
続編ってことは…ネタな展開になるのか!?
そんなとこ楽しみにしててスマソ…
>『ラキオスに訪れた夏』
GJ!
道行書き氏、作風広いっすね。
しかもこれだけ勢ぞろいしててきっちり立てて動かしてるし。
もう…次はいったいどんなのを…と今から楽しみにしてます。
133 :
飛翔の人:04/08/08 19:48 ID:yYSSAERd
いつもご贔屓にして頂いてありがとうございます〜。
新しいHDも買ってきて、やっと自宅で執筆する事ができるようになった飛翔の人です。
ちょうど今このスレは、99KBなんですねぇ・・うーん、キリが良いのか悪いのか。
と、いうわけで(?)「明日への飛翔」第四幕の、始まり始まり〜。
――帝国の"漆黒の翼"、ラキオス王国へ投降す。
その一報は日を置かずして、ラキオスの若き女王"レスティーナ・ダイ・ラキオス"の元へと届けられ、ラ
キオス首脳陣に大いなる衝撃を与えた。
それは数ヶ月前、敵対するマロリガン共和国が二人ものエトランジェを擁するという事実が明らかになっ
た事件にも匹敵し、これにより対帝国戦略に大きな進展が見られるのではないかと期待された。
女王レスティーナはこの事件について絶対の緘口令を布くと、報せをもたらしたエトランジェ<求め>の
ユートに"漆黒の翼"ウルカの監視その他一切を委任したのであった・・・。
同日深夜。ランサ仮詰所において、悠人は大量の事務仕事に追われていた。
(もっとも、悠人自身は決裁するのみで、真に忙殺されていたのは代行するエスペリアだったが。)
安請合いしてしまったが、明日からはウルカの監視の為、ランサ・ラキオス間を頻繁に往復しなければな
らない。その上オルファが一緒にラキオスに戻る事を強硬に主張して譲らなかった為に、王都防衛やランサ
守備隊の配置などを、急遽変更する必要に迫られたのだった。
結局アセリアとオルファが王都防衛の任務に戻り、悠人とエスペリアが柔軟に両拠点を往復。そして他の
者達でランサ守備隊を回すという事に落ち着きそうだ。
次々と運ばれる書類にサイン(自分の名前は悠人が筆記できる唯一の聖ヨト語である)をしながら、悠人
は先刻の出来事を思い返していた・・・。
『あのお姉ちゃんを助けて!!』
そう言ってオルファが乱入して来た時、悠人はエスペリアから、ヘリオンの過去について聞かされていた
所だった。
混乱する頭で、更に支離滅裂なオルファの言葉を何とか整理すると、何とあの帝国の"漆黒の翼"ウルカが
死にかけているので、助けて欲しいと言う。
<求め>ですら感知できないその微弱な気配を、どうしてオルファの<理念>が察知できたのかは不思議
だった。しかし、罠を警戒するエスペリアを宥めながら、オルファに導かれて砂漠を進んで行くと、そこに
は確かにあのウルカが倒れていたのだった。
半ば砂に埋もれかけた弱々しいその姿は、とてもあのイースペリアでアセリアと一騎討ちを演じ、また王
宮に襲来し佳織を攫って行った武人と同一人物だとは思えぬ程だった。
エスペリアの治療によりウルカは一命を取り止めたが、これほど名の知れた相手の処遇を悠人の一存で決
める訳にも行かない。
まずはレスティーナに報告しなければと、ウルカを連れてラキオスへと飛んだのだが・・・。
(・・・まさかそこで、ヘリオンにばったり出くわすとはなぁ。)
ヘリオンはその時たまたま第一詰所の掃除をしていたのだそうだが、悠人は丁度良いからと言ってウルカ
の身柄を預けて行ったのだ。そして報告の結果、ウルカを監視付きでラキオスに留め置く事が決定すると、
そのままヘリオンをなし崩し的に監視役に決定してしまった。
エスペリアなどは当然猛反対したが、何故か悠人には、ウルカにはもう危険は無いだろうと言う確信があ
った。一応本人には建前として情報を得る為に救ったのだと言っておいたが、力無く答えるウルカの姿を見
て、まるで母親とはぐれてしまった迷子の子供と会話しているように感じたのだ。
(明日から、また忙しくなりそうだな。)
悠人は・・・この出会いが、ヘリオンにとって何か大きなきっかけとなる予感がしていたのだった。
一方ラキオスでは・・・突如降って沸いた災難に、戦々恐々とするヘリオンの姿があった。
ウルカには第一詰所の空き部屋が与えられ、監視役のヘリオンもしばらくの間こちらに移る事となった。
ヨーティアは当初難色を示したが、最後には悠人の説得により、ヘリオンが今後も一日数時間、自分の下
に通う事を条件に異動を了承した。
帝国の"漆黒の翼"と言えば、"大陸の三傑"の筆頭にも上げられる、知らぬ者のない歴戦の兵である。
その彼女が投降して来たと言うのだから周囲の驚きは相当な物だっただろうが、まさか、自分がその監視
役を命じられるとは・・・。
ヘリオンはその重責に戦慄したが、敬愛する悠人に直接「頼む」と言われたからには、逃げ出すと言う訳
には行かなかった。
(お、落ち着かなきゃ、先ずは呼吸を整えて・・・・)
緊張の為か恐怖の為か、その手に持ったお盆がカタカタと音を鳴らした。
夕食にしても大分遅い刻限だったが、聞けばウルカはここ数日飲まず食わずの状態が続いて、救出当時、
極度に消耗していたのだと言う。ここに担ぎ込まれる前に一応水分の補給だけはしたそうだが、悠人による
尋問が終わった後は、またすぐに深い眠りについてしまった。
まだしっかりした食事を摂るのは無理かも知れないが、病人食でも食べて貰わない事には、体力も回復し
ないだろう。ウルカの看病も、ヘリオンの大事な仕事の一つだった。
「あ、あの・・・ウルカさま、入りますよ〜。」
起きていても聞こえるかどうか微妙な声で呼びかけながら、戸を叩くヘリオン。
返事は無く、耳を澄ませてみても物音一つ聴こえなかった。
(眠っているのかなぁ・・・。)
それならば良いが、油断はできない。何と言っても、相手はあの"漆黒の翼"である。
一応、窓から逃げられたりはしないように、警戒は怠らなかったつもりだ。
ユートさまはよっぽど彼女の事を信用しているのか、神剣を奪う事はしなかったが、もしも彼女が戸口に
立って、襲撃の機会を狙っていたとしたらどうしよう。
腰に佩いた<失望>と、お盆の上で湯気を立てる粥を確認するヘリオン。
・・・うん、そうだ。自分の力が通用するかどうかは解らないが、その時はこれをぶつけてやって、精一杯
抵抗してやろう。
ヘリオンはそう覚悟を決めると、ドアノブを握る手に力を込めた。
――キィィ・・・。
暗闇の中、ドアが開く音だけが不気味に響く。
幸いにもヘリオンが危惧したような事は何も起きなかったが、ウルカは眠っていた訳でもなかった。
ウルカは・・・灯りも点けず上半身だけを起こして、暗闇の中ただ、じっと窓の外を眺めていた。
「起きていらしたんですか?」
問いかけるヘリオンに対し振り返りはせずに、ウルカは夜空を見つめながら答えた。
「星を・・見ておりました。・・・そして手前は、何故こうしているのだろうと。」
「星・・・?」
それには答えず、再び静寂が闇を包む。
これが本当にあの、帝国最強の遊撃隊長と恐れられた"漆黒の翼"の姿なのだろうか。
ヘリオンには、彼女がまるでうちひしがれた詩人のように見えた。
知らず知らず、視線の先を追ってみる。
・・・そこには、雲ひとつ無い満天の星空が輝いていた。
どれだけの時間そうしていただろうか。
止まっていた時は、ヘリオンが思わずお盆を取り落としそうになる事によって動き出した。
「わわわ、危ない!」
慌てて落下を防ぐヘリオン。少し器から零れてしまったようだが、最悪の事態は避けられたらしい。
「ふぅ〜、間一髪セーフ・・・かな?・・・あはははは。」
笑って誤魔化そうとするが、その相手は、そこで初めてヘリオンの存在に気付いたようだった。
「いつの間に・・・。」
「え?」
「あ、いや、これは失礼致しました。・・・手前はウルカと申す者。以後ご厄介になります。」
「・・あ、はい、初めまして!・・・私はへリオンです。ウルカさまの・・・」
ここで監視という言葉を使うのは拙いだろうか。
「・・・看病などのお世話をさせて頂きますので、どうぞよろしくお願いします。」
「それはかたじけない・・・しかしヘリオン殿、手前のような者に敬称は不要です。」
言われて見れば、敵国の捕虜にさま付けするのもおかしな話だった。
「そうですか・・・では、ウルカさん・・で、よろしいですか?」
「お好きなように。」
自己紹介が終わった所で、ようやくここに来た本来の目的を思い出す。
「あ、それで、食事を持って来たんです。少し冷めちゃったかもですが・・・お腹、減ってましたか?」
黙々と食事を続けるウルカと、それを見守るヘリオン。
あれから口に出した言葉と言えば、灯りを点けますかとか、お口に合えば良いんですがとか、在り来りの
物ばかりだった。
先程までの恐怖は薄れていたが、こういう雰囲気もなかなか耐え難い。
「そうだ・・・ウルカさま。じゃなくて、ウルカさん。さっき星を見ていたって言ってましたけど、何を
考えていたんですか?」
あの時のウルカの様子が、頭から離れなかった。
そうした会話があった事すら忘れていたのか、少しだけ赤くなるウルカ。
しかし独り言のように語りだしたその言葉は、暗い陰りを帯びていた。
「手前が・・・今まで斬った者達の事を考えておりました。あの者達が、今の手前を見たならば何と思う
だろうかと。・・・剣の声が聞こえなくなり、敵を屠る事も出来ず、無様に足掻き続け・・・そうして今、
戦う事すら出来なくなった手前に、何の価値があるのだろうと・・・戦とはいえ、あの者達にも未来があっ
たはずなのに・・・手前一人、こうしておめおめと生き恥を晒しております。」
哀しげにそう語るウルカの姿を見て、ヘリオンは、自分が持っていた"漆黒の翼"のイメージが崩れていく
のを感じていた。
そして奇しくも二人は・・・互いに違う場所、違う時に聞いた、一人の少女の言葉を思い返していた。
・・・そう、今も遠く離れた兄の無事を祈っているであろう、あのエトランジェの妹の言葉を。
『私のいた世界・・・ハイペリアでは、人が死ぬとその魂は、お星様になって皆を見守るんだって言われ
てるんです。・・もしかしたら、スピリットさん達も・・生まれ変わる為に再生の剣に還るんだとしても、
その想いは天に昇って、私達を見守ってくれているのかも知れませんね・・・。』
明くる日から、ウルカは驚異的な回復を見せ、ヘリオンとも次第に打ち解けて行った。
悠人の後押しもあり、そんなウルカの様子を見て第一詰所の面々も彼女を歓迎した。
今ではかつて敵対していた事も忘れ、以前からの家族のように接するようになっている程だった。
(正確には、本当に警戒していたのはエスペリアだけだったのだが。)
ヘリオンはすぐにウルカの看病からは開放されたが、名目上監視役として彼女の側を離れる事はできず、
またヨーティアの下での仕事もある事から日々てんてこ舞いしていた。
もっとも、必ず日に一度は悠人が訪れて彼女を激励してくれた為に、周りには却って、以前よりも元気に
なったように見えていたが。
そんなある日の事。
ヘリオンは、鈍った体を鍛え直したいと言うウルカに連れ添って、王宮の訓練場までやって来ていた。
神剣の力を失ったウルカの剣は、かつてのような鋭さこそ失ってはいたが、その流れるような無駄の無い
動きは、彼女が依然、経験と不断の鍛錬に裏打ちされた凄腕の剣士である事を物語っていた。
「ウルカさんはいつだって、訓練を休もうとはしないんですね。」
ヘリオンが感心して呟く。
「日々続ける事こそが、己を高める第一歩ですから。」
「己を高める・・・ですか?」
「はい。技術の低下を防ぐのは勿論ですが、そうする事によって自身の心を戒めるのです。・・・現状に
満足する事なく、手前が常に前を向いていられるように。」
ウルカはたまに、こういう不思議な事を言う。
ヘリオンにとって、訓練とはいかに容易く相手を死に至らしめるか、もしくは自分が殺されない為にはど
うするかという事を学ぶ為の物だった。
己を高める為に訓練をしろなどと言う教えは、今まで受けた事がなかったのである。
(そんな考え方もあるんだ・・・。)
何故かウルカの言葉は、抵抗なく受け入れる事が出来た。
今まで戦いという物に向き合う事を避けてきたヘリオンだったが、ウルカと出会ってからのこの数日間の
内に、確実にその影響を受け始めていたのだ。
・・・それはまだ、まだ自覚もできないほどに小さな変化だったけれども。
ヘリオンがそうして新鮮な驚きに浸っていると、ふいにウルカが向き直り、こう告げてきた。
「ふむ・・・やはり一人ではいまいち勘が戻りませぬ。・・・ヘリオン殿、よろしければ一手お手合わせ
願えないでしょうか?」
ウルカの申し出に、その意味する所を図りかねて硬直するヘリオン。
「え?・・・え・・え、え〜〜〜〜!!?」
そして絶叫。あまりの声の大きさに、自分の耳がおかしくなりそうだった。
「お、お手合わせって、わ・・・私と、ウルカさんがですか?」
「はい。」
「そ、そんなの無理に決まってます!・・・私なんかとウルカさんじゃ、全然勝負になんて!」
「確かに今の手前の力では、ヘリオン殿には及びもつかぬでしょうが・・・丁度良い事に、ここには鋼で
出来た武器もあります。互いに得物を持ち替えれば、それほど退屈はさせずに済むかと思われますが。」
ヘリオンの言葉の意味を逆に取ったらしいウルカが、そう言って傍らの訓練用の武器を示す。
「す、すみません、そういう意味じゃなくて・・・。」
訂正し、何とか逃れようとするが、ウルカは既に自分用の剣を選び取ってしまっていた。
「では、手前はこれを・・・ヘリオン殿、どうぞお好きな剣をお使い下さい。」
事ここに至っては、押しの弱いヘリオンがその申し出を拒否する事など、出来る筈もなかった。
「う、うぅ〜・・・よろしくお願いします・・・。」
泣く泣く剣を取るヘリオン。いつも誰かが模擬戦をしようと言う時には、逃げ回っていたと言うのに。
何の因果で、あの"漆黒の翼"と剣を持って向き合うなどと言う事になってしまったのだろうか。
「それでは・・・いざ!」
始まってしまったからには仕方がない。出来るだけ怪我をしないように・・・。
「わわ!?」
そんな事を考えている内に、ウルカはもう目の前まで接近して来ていた。
「わとと、ひ・・・うそ、あうぅ・・・・。」
「・・・見事な受け流し・・・では、これではいかがでしょう。」
更に剣速を上げ続けるウルカの斬撃。しかしヘリオンは悲鳴を上げながらも、防戦一方ではあるがそれを
受け切って見せた。誰も見る者のいない訓練場に、二人が剣を打ち合わせる音だけが響いていく。
「・・やはり手前の目に狂いはなかった。これ程の胸の高鳴り、あの"ラキオスの蒼い牙"と死合って以来
の事です・・・さぁヘリオン殿、全力をぶつけ合いましょうぞ!」
「そ、そんな・・・きゃぁ!」
最早それは、模擬戦などという次元の戦いではなかった。
ウルカの剣には殺気こそない物の、篭められているのは紛れもない全力である。
そしてヘリオンは・・・その全力の剣を受けながら、そこに一片の憎しみも、虚栄すらも無い事を感じ取
っていた。ウルカはただ、こうして自分と剣を交える事その物に悦びを見出しているかのようだ。
(どうして、こんな表情が出来るんだろう・・・。)
いつしか恐怖は消え去っていた。そしてヘリオンは、この目の前の相手に、自分の技の全てを試してみた
いという欲求に駆られていたのだった。
それを感じ取ったのだろう。距離を取り、油断無く構えるウルカ。
張り詰めた空気の中、互いの呼吸音だけがかすかに耳を震わせた。
そして沈黙の時は去り、二つの影が交差する・・・!!
「・・・い、痛い・・・でも、ちょっとだけ気分良いかも・・・。」
脇腹を押さえ、うずくまるヘリオン。
二人の対決は、やはり数多くの戦場を往来し、修羅場を潜り抜けてきたウルカに軍配が上がった。
しかしそれを見下ろすウルカの表情は冴えない。
とても手加減をしている余裕などはなく、ヘリオンの突進を止めるには、峰打ちとは言え全力で振り抜か
ねばならなかった。これが人間相手ならば、肋骨を砕き、内臓が破裂していたとしてもおかしくはない。
「申し訳ありませぬ・・・しかし手前には、やはりヘリオン殿がこのような後方に配置される理由が解り
ませぬ。これだけの力があれば、戦場でも数多の功績を挙げられるでしょうに。」
「い、いやですそんな・・けほっ・・私なんて自分の神剣も使いこなせないで、ろくに止めも刺せずに皆
の足手まといになってばっかりなんですから・・・。」
「ふむ・・・。」
それでも尚、何か言いたそうに思案するウルカに対し、ようやく立ち上がる事が出来たヘリオンが言う。
「それよりもウルカさん、そろそろ詰所に戻って、夕食の支度をしないと。」
そうなのだ。昨日何か手伝いたいと言うウルカと料理をした時には、目の前で繰り広げられる光景に目が
点になっていて、気が付いた時にはとんでもない物体を生産してしまったが・・・。
「今日はユートさまもいらっしゃるそうですし、腕によりを掛けてお持てなしをしなきゃ♪」
「そうでありました・・・ご教授賜ります、ヘリオン殿。手前では未熟も未熟、とても調理の用は成さな
いと思い知りました故に。」
今しがた受けたダメージもよそに、足取りも軽く帰りを急ぐヘリオンに対し、神妙な顔付きで後を追うウ
ルカであった。
第一詰所のリビングで、食卓を囲む悠人とスピリット達。
「今日のご飯ってヘリオンお姉ちゃんと、ウルカお姉ちゃんが作ったんでしょ?・・・へ〜、美味しそう
に出来てるね♪」
昨日の惨状を知っている為か、はしゃぎながらも確認するように呟くオルファ。
「うん・・・美味しそう。」
アセリアも同じ思いのようだ。昨日はいなかったエスペリアと悠人だけは、素直に感想を口にする。
「そうだな。・・・それじゃせっかくのご馳走だから、温かい内にいただくとしようか。」
「「「「いただきま〜す♪」」」」
ハイペリア由来の挨拶を合図に、食べ始める面々。
しかしヘリオンだけは、緊張した面持ちでそれをじっと見つめている。
・・・実は、悠人に手料理を食べて貰うのは、これが初めてなのだ。
「うん、美味い!・・・めっちゃ美味いよ。手間暇かけてあって、心の篭った料理って感じだな。」
手放しの賞賛に、天にも昇る心地のヘリオン。知らず知らず、顔がにやけてしまいそうだ。
「・・けれど、ヘリオンはともかく、ウルカが料理なんて出来たとはなぁ。」
(え?)
実際は、ウルカは材料を切っただけで、後の味付け等はほとんど自分が一人でやったのだが・・・。
ヘリオンは何故かもやもやする胸を押さえ、舞い上がった気持ちが萎んでいくのを感じていた。
「いえ・・・手前は何も。ヘリオン殿がいなければ、とても形にもならなかったでしょう。」
「そうなのか、やるなぁヘリオン。・・・イオの下で修行でも積んだのか?」
「は・・ははは、はい!・・・イオさまは、料理の腕も素晴らしいので。勉強させて頂きました!」
「なるほどな〜。ヨーティアの奴、いつもこんな美味い物食ってんのか・・・。」
それを聞いて少しむっとするエスペリアに、慌てて弁解する悠人。
しかしヘリオンは、そんな様子も目に入らず、先程のもやもやも忘れてぼぅっとしていたのだった。
(・・・ユートさまに褒められちゃった・・・わぁ〜〜〜〜♪)
思わず頬が紅潮するのを感じる。こんなに幸せな気分になるのはどうしてだろう。
さっき少しくらいウルカが褒められたからと言って、もやもやしていたのが嘘のようだった。
自分が食べるのも忘れて、ただひたすらその幸福を噛み締めるヘリオン。
その時である。
アセリアがふと手を止めると、じっと悠人の顔を見つめていた。
「ん?・・どうしたアセリア。」
奇妙な間が空き、全員の視線が悠人に集中する。
そして、同じく忘我の世界から舞い戻り悠人を見つめていたヘリオンの目の前で、在ろう事かアセリアが
悠人の頬に口づけしたのだった。
(!!!!!)
瞬間、心臓を撃ち抜かれたかのような衝撃に襲われるヘリオン。
胸がズキンと痛み、心がざわめく。
「な、何するんだいきなり!?」
「ん・・・ユートの頬に、ごはんが付いてた。」
アセリアとしては、何の気なしにした行為なのだろう。
悠人も解ってはいたが、このような不意打ちをされれば狼狽するのも無理は無かった。
ガタンと席を立つヘリオン。
「あれ?・・・まだ全然食べてないじゃないか、どうした?」
「すみません、ちょっと食欲がないので・・・後で片付けはしますので、少し失礼します!」
そう言って部屋に駆け戻るヘリオンを、呆然と見送るだけの一同であった。
その晩・・・ヘリオンは、眠れぬ夜を過ごした。
自分は一体どうしてしまったのだろう。せっかくユートさまが褒めて下さったのに、あんな失礼をしてし
まうなんて・・・。しばらくして片付けに戻ったヘリオンに、悠人は労わりの言葉を掛けたが、ヘリオンは
そんな悠人の顔を見ることもできず、ほとんど無言のまま戻って来てしまったのだった。
あの瞬間を思い出す度に、胸が張り裂けそうになる。こんな事は生まれて初めての経験だった。
そうして悩み続けたまま、空が白んで来ても、ヘリオンの心は晴れることがなかったのである。
「い、急がなきゃ急がなきゃ・・・ヨーティアさまに、またお仕置きされちゃうよ〜・・・。」
朝と呼ぶには少しばかり遅い頃。ヘリオンは、ラキオスの街道をひた走っていた。
寝不足に加えて、朝食を摂る時間すら無く目が回りそうだったが、何としても遅れる訳には行かない。
以前に何かの器具を落として割ってしまった時には、『飲むとエヒグゥの耳が生える薬』の実験台にされ
て、あのまま元に戻らなかったらどうしようかと一日中悩まされたものだ。
ただでさえ最近研究所で働く時間が短くなり、少しいじりたりないと言われたばかりである。
今遅刻したら、何をされるか解った物ではなかった。
「あの角を曲がれば、研究所まではあと少し・・・・って、わきゃう!?」
ドォンという衝撃と共に、弾き飛ばされるヘリオン。いや、こっちが弾き飛ばした方か。
全力で走っていた為に、目の前に突然現れた少女に気付いても、止まることが出来なかったのだった。
「あ痛たたぁ・・・ちょっと、気を付けなさいよ!・・・って、ああああ!?」
見れば、四つん這いになったお団子頭の少女が、半泣きになりながら喚いている。
どうやら怪我はないようだが、取り落とした袋の中身が、散乱してしまったのが原因のようだ。
「私のヨフアル・・・どうしてくれるのよ!」
どうしてこうなったのだろう・・・。
ヘリオンは途方に暮れながら、その少女の後をついて歩いていた。最早遅刻は確定である。
『ふぅ〜ん、あなた・・・その様子じゃお金は持ってなさそうね。・・・それじゃ、はい。これでヨフア
ルを買ってきて。買えるだけよ。早く!」
しきりに詫びるヘリオンだったが、すごい剣幕で言われて、一も二も無くその指示に従う。
さんざん待たされて、やっとヨフアルを買ってきたのは良いが、お団子頭の少女は、ヘリオンがそのまま
研究所に向かう事を許さなかった。
『全く、まさかまた似た様な事が起きるとはねぇ。あんた達って、ホントにおっちょこちょいなのね。』
『?』
『あぁ、いや、こっちの話こっちの話。・・・ところであなた、お名前は?』
『あ、はい・・・私の名前は、ヘリオンと言います。』
『なるほどなるほど〜。じゃあヘリオン君。このまま私について来たまえ。』
『え?え?え?・・・で、でも私、これから用事があるんですが・・・。』
『だーめ!私にぶつかってヨフアルを買ってきた人は、それを一緒に処分しなきゃ行けないって言う決ま
りがあるの。・・・あぁそうそう、私の名前はレムリア。よろしくね♪』
そうしてヘリオンはお団子頭の少女・・・レムリアに強制連行される事となったのだが・・・。
(ヨーティアさま、今度は何を用意してるかなぁ・・・。)
できるだけ早くレムリアさんに満足して貰って、開放して貰おう。
ヘリオンがそう考えていると、やっと到着したらしく、振り返ったレムリアが宣言する。
「ようこそ、私の取って置きの場所へ!」
「わぁ・・・・。」
そこは、確かに取って置きと言うのに相応しい場所だった。
青く煌く湖を望めるその場所は、頬に当る風も心地良く・・・街の雑踏からも切り離されて、まるで別世
界に迷い込んだかのようだった。
ヘリオンの様子に満足したのか、レムリアがふふりと笑みを漏らす。
「気に入って貰えたようね。・・・そしてここで食べるヨフアルは、もう最っ高なんだから。」
そう言って差し出されたお菓子を見て、自分が朝食を抜いて来た事を思い出すヘリオン。
「美味しい・・・です。うん、とっても!」
「でしょでしょ!?・・何てったって、『ヨフアルは恋の味』だからね♪」
「恋の、味・・」
「そうよ。私にとって、ヨフアルは恋の味なの。・・・・この、口にした途端に広がる、甘〜い温かさ。
そして身を包む優しい幸福感・・・更には、もう残りわずかしかないと言う事に気付いた時の、身を切られ
る様な切なさ・・・ねね、巧い事言うと思わない?」
「わ、私には何とも・・・でも、それが『恋』なんですか?」
戸惑うヘリオンに対し、いつの間にか真剣な表情になって、諭すように呟くレムリア。
「・・・そっか、そうよね・・・でも、あなた達にも解るはずよ。いつかきっと・・・。」
(この人は、私の正体に気付いている?)
スピリット服に身を包み、神剣を携えてはいたが、外見が普通の人間とさほど変わらないヘリオンは、そ
れと気付かれずにやり過せる事も多いのだ。
レムリアの親しげな態度も、そのせいだと思っていたのだが・・・。
「私もね、恋をしているの・・・決して、許されない恋だと解ってはいるけれど・・・。うぅん、だから
こそ、こうして思い出の場所に足を運ぶのかな・・・。」
そう言って風に身を委ねるレムリアの姿は、ヘリオンの目にはひどく大人びて見えたのだった。
その夜・・・。
ヘリオンは、あの不思議な少女との出会いを思い返していた。
あの後二人で食べたヨフアルは、確かにレムリアの言う通り、温かく幸せな気持ちにしてくれた。
けれどそれは、天真爛漫なレムリアが隣にいたからこそ、そう感じさせたのかも知れない。
そして、それと良く似た、いやそれ以上の温かさを、自分は感じた事があった筈なのだ。
(私は・・・もしかして、ユートさまを・・・?)
許されない恋。レムリアが口にしたその言葉が、胸に突き刺さる。
しかし、一度そう自覚してしまった今、以前の自分に戻ることはもう出来なかった。
知っていた筈の感覚が、その何倍にも増幅されて、ヘリオンの心を支配して行った。
(ユートさま・・・・。)
ヘリオンがそうして、自分の想いの正体に初めて気付いた夜。
同じラキオスの空の下で、禍々しい意識が脈動を続けていた事は、まだ、誰も知らない。
『・・・使命を・・・・使命を果たさなければ・・・・。
・・・我に力を・・・そして、あの者に・・・・"死"を・・・・。』
150 :
あとがき:04/08/08 20:16 ID:yYSSAERd
・・・と言うわけで、第四幕をお届けしました。
これまででは一番長い幕だったのに、一度も連投規制に引っかからないとは運が良い♪
メインヒロインではウルカが一番好きなので、予定をオーバーしたんですよね^^;
さてはて、第三幕までで今作のヘリオンの設定等について、ようやく語り終えた所でしたが、
やっとこの第四幕から彼女の活躍(?)が始まります。
私の描くヘリオンが、皆様のお気に召すかどうか・・・どうぞ、生暖かい目で見守りください。
151 :
エロ大王:04/08/08 20:39 ID:7LNKtFoH
>>150 GJ!!
がんがれ、良かったです楽しみにしてます。
153 :
名無しさん@初回限定:04/08/08 22:19 ID:vLdvbyzH
どうせならファーレーンも加えて黒いスピリット三連星をキボンしてみる
その日・・ヘリオン、ウルカ、ファーレーンの三名は、日夜研究を重ねて編み出した、新たな戦術の披露をしていた。
悠「それじゃぁ、早速特訓の成果を見せて貰おうか。」
ヘ「で、では・・・失礼して、攻撃させて頂きます!」
次の瞬間。なんと三人は直列に並ぶと、同時にスタートを切って突撃して来た!
悠「なに!?」
ヘ「居合いの太刀!」
ファ「雲散霧消の太刀!!」
ウ「月輪の太刀!!!」
黒スピ三人の連続攻撃に、さすがのエトランジェもたじたじだ。
ウ「この攻撃の利点は、一回の攻撃で相手の防御回数を3回減らすことが出来る事です。」
ファ「・・・私達も、一度に三人の攻撃回数が減りますけどね。」
悠「いや、すごいじゃないか。これで緑スピの鉄壁もわけないな!」
?「果たしてそう上手く行くでしょうか・・・。」
何と、そこに現れたのはラキオス最高の訓練士、ホワイトスピリットのイオだった。
・・・というところで、オチが読めたのでこれくらいで・・・。
へ「ふぇ〜〜〜ん、私を踏み台にしないで下さい・・・。」
155 :
飛翔の人:04/08/08 22:52 ID:yYSSAERd
希望に応えたつもりが、名前が消えてたぞ〜〜。
・・・ヘリオンって、ちっちゃいから踏み台にし易そうですよね。
IDで兄者の仕事だってわかったよ
第4幕ともども、GJ
そしてヘリオン萌え
みんな大作G.J!!&乙
明日への飛翔> うおーヘリオンとウルカかぁ、考えつかんですよ。いい仕事です。
エスペリアの家出>「エスペリア腹減った飯まだ?」「……エスペリア…服汚れた……」「エスペリアお姉ちゃんっ、
あのね、ハクゥテがね、あのね、ハーブの苗をね」
「……実家に帰らせていただきます」
えっ違う?
とにかくGJ!!
しかし職人増えたなぁ。アセリアのアンソロジー本商業で出てもおかしくないよな。
たしか、アセリアの説明書のイメージの中に
2chビューアがあったような気がしたの
某ソフトハウスは、ユーザーからの応募シナリオをFDに入れたりしたんだよ
どうせなら、何とかできない?
それはそれで安直だと思うけどなあw
メーカーが金儲けで「他力本願」ってのは情けないというか……
もっとだ、もっと気合いを入れていこうぜ!>本醸造
>>143の変わりに
「さぁどうした?まだ足が2本斬られただけだぞ。かかってこい!!」
「!!」
「ハイロウを出せ!足が無くても羽で飛べ!!
神剣魔法はどうした!!剣を拾って反撃しろ!!
さぁ訓練はこれからだ!!お楽しみはこれからだ!!
ハリー!ハリーハリー!!ハリー!ハリー!ハリー!!!」
「ガクガク(;TдT)ブルブル」
>158
絵が描けなければアンソロジーなんて無理。
>162
まずまず。鍵系でSSだけのアンソロって出てたですよ。
・・・アセリアだってそれくらいになれば。
>161
「ばッ、化け物め!!」
「そうか貴様もそうなのか小娘」
「出来損ないの下らない生き物め」
・・・・ヘリオンを犬のエサにしないで・・・・
ソーマズフェアリーなら可能かもしれないが
求めに犯されたぐらいで音をあげているラキオス雑魚スピにはムリポ
くそっ、だんだんヘルシングネタでぶちかましたくなってきたぞ!
166 :
憂鬱の人:04/08/09 17:23 ID:YbLFDwwS
エスペリアが尼になって光陰のもとに!?
そいつは家出じゃなくて出家ですね!
>>85さん、ベタなネタ振りありがとう!!
長編が多くてどれがどの続きか分からない!!
そんなアナタに前回までのあらすじを!
「エスペリアはまだ家出してません。」
今回は今日子も応援だ!
「2発めっ、いっけえぇぇぇ―――!!」
無論雑魚スピの中で進境著しいのはヘリオンに限ったことではなかった。それぞれが
持ち前の個性を生かしながらぐいぐいとその実力を伸ばす。悠人はさほど自覚して
いなかった事だがこれには悠人自身が作り出した自由な空気も大きく影響していた。
特にヘリオンはじめネリー、ハリオン、ナナルゥ、ニムントールといった面々は、
もはや雑魚と呼ぶのがはばかられる程であった。
そう、まるで海中を自由に泳ぐマグロの如き大魚へと成長した雑魚スピ達はいつしか
ラキオス軍内でも畏敬の念を持って「スピツナズ」と呼ばれるようになっていた。
「―――スピツナズ、か。」悠人は誰もいない部屋の中で呟いた。聖ヨト語で「特別な
任務を完遂させる者」とかいう意味らしいが、ヨト語にも米ソ冷戦時代の情勢にも
明るくない悠人にはよく分からなかった。
「そう言えばエスペリア、何か話があったのかな。」
ふと悠人は先ほどのエスペリアの物言いたげな風情を思い出した。
「よし。ちょいと見回りがてらエスペリアんとこに行ってみるか。」
「あっ、ユート様!」
神剣「求め」を携えて部屋から出た悠人に背中から呼びかける声があった。
やや幼い顔立ちにあまり似つかわしくない戦闘服。
「聞きましたよ!ウルカ様が部隊長になるって!」
声の主は嬉々とした表情を隠そうともせず、トレードマークのツインテールを
なびかせながら、振り返った悠人に飛びつかんばかりの勢いで話しかけてくる。
「おお、黒マグロ...じゃなかったヘリオン。もう聞いてたのか、早いな。」
「はいっ!さっきエスペリアさんにお会いした時そう言われました!」
「ま、ウルカのいう事をしっかり聞いて、怒られない様にな。」
「任せてください!私っ、頑張りますから!ユート様も見ててくださいね!」
―――うんうん。ヘリオンもずいぶんウルカが来てから変わったなあ。
以前のオドオドした態度がすっかり無くなり、頼もしく感じる反面、少し寂しい気も
する悠人であった。
「...ところでユート様、さっきおっしゃってた『くろまぐろ』って、何ですか?」
不意うちのように、ヘリオンが形の良い眉をひそめて悠人に尋ねる。
―――聞こえてたのか。なんて耳のいいやつ。
「す...素晴らしい女性の事をハイペリアではマグロと言うんだよ、ヘリオン!特に
黒マグロなんて寿司屋でも最高級のネタで俺たち一般庶民には高嶺の花だっ!!」
必死に意味不明の言い訳を重ねる悠人であった。
「うう、よく分からないけど、褒めてもらえて嬉しいです、ユート様。」
疑う事を知らぬヘリオンに心の中で詫びながら、今度ヨフアルでも奢ってあげようと
悠人が思ったその時。
「あっ、ああっ!そういえばエスペリアさんに用事を頼まれてたんだった!」
わざとらしく手を打ち、ヘリオンがまわれ右をして、今来た方へ逃げるように去ってゆく。
「お...おい、突然」どうした、と喉まで出かかって言葉を呑みこむ。
背後から肌を刺すような不穏なオーラが漂って来たのだ。
「ずいぶん仲良さそうじゃない?悠!」
「...明日からの事で少し話をしてただけだ、今日子。それと、悠って呼ぶな、
ちゃんと隊長と言え、隊長と。」小さく溜息をつきながら悠人は振り返った。
「あっらー、ずいぶんエラくなったのねー。ねえ、そんな事より光陰知らない?
確かこっちの方に逃げてったんだけど。悠の部屋に行かなかった?かくまってたりしたら
承知しないわよ。」
悠人の話など聞いてはいない。
「光陰なら...来たには来たけど...だいぶ前に俺の部屋から出てったきりだぞ。」
「そう?じゃ、ちょっと部屋ん中見せてもらうけど、いい?」
返事も待たずに、悠人を押しのけて前進する今日子。悠人と同じハリガネの様な
頭から電流がパリパリ音を立てて光っているのが見える気がした。当然その右手には
「空虚」が、しっかりと握られている。悠人はあきらめ顔で今日子に従う事にした。
そういえば昔見たマンガかアニメで、浮気者の男に毎日電撃制裁を与える宇宙人の
女の子がいたなあ、などと思いながら。
「やっぱり...いないわね。」あちらこちらと部屋の中を捜索して、今日子が首を傾げる。
「言っただろ?人を疑うのもいい加減にしろよ。」少し怒った口調で悠人が説教を始めた。
「大体なぁ、お前達は痴話ゲンカが多すぎだよ。」
「ち...痴話ゲンカってなによぉ。」ソッポを向いて今日子が口をとがらせる。
今日子の反論は無視して悠人は続けた。
「お前達のケンカは危ないんだよ。これまでどんだけケガ人が出たか分かってんのか?」
―――さすがに最近はスピリット達も心得たもので身の危険を察知するとすぐに避難する
ようにはなっているが。
「俺たちのオーラフォトンはこっちの世界じゃデカい爆弾みたいなもんなんだからさ。
これからはせめて誰もいない広い所でやれ、広い所で。」
「...わかったわよ。」
まるで窓ガラスを割って叱られる野球少年の如くうなだれる今日子。ついさっきまでの
勢いがウソのようだ。
「うん...分かってくれればいい。まあ、ほどほどにな。」
少しかわいそうになって悠人は語気をやわらげた。余り長話をして
この前のようにヘンな雰囲気になるのもマズい。光陰と今日子が
ラキオスに来た日の夜の事は、悠人の心にトゲとして今でも残っている。
「じゃ...。押しかけてゴメンね、悠。」
トボトボと部屋から出て行こうとして今日子は出口に立てかけてあった「求め」に
目をとめて立ち止まった。
「あのさ...悠...」
「どうした?」
「悠のこの神剣は...あんまり話しかけてきたりとか...しないの?」
今日子は遠慮がちに尋ねてくる。つい最近まで「空虚」に心を支配されていた今日子は、
神剣の干渉を受け付けなかった悠人や光陰に引け目を感じているのだろう。
「そいつか...まあ、かなり静かにはなってるけど...こっちに来た頃は
話しかけるなんてもんじゃなかったな。直接頭の中に入り込んでくるって言うか...」
当時のひどい頭痛を思い出し、悠人は目を閉じた。
「そっか...。悠たちは、克服したんだよね...。」
―――克服した。
本当にそうなのだろうか。悠人は自問する。
「...やり方を、変えてきている。」独り言のように悠人は呟いた。
「―――え?」今日子が驚いたように訊きかえす。
「どういう事?」
「俺の神剣の「求め」の目的はマナを吸い上げることだ。
今のところその目的はスピリット達を斬り殺すことでそれなりに達成されている。
―――ただ、それだけが目的じゃないとしたら...」悠人は続けるべきかどうか迷い、
目を開けて今日子を見据える。今日子は視線をそらすこともなく黙って続きの言葉を待っていた。
「...今日子がさ、前に言ってただろ、スピリットを殺す時に何だか気持ちが良かったって。」
「―――あ。」悠人が言おうとしている事がおぼろげながら分かったのか、
今日子が短く声を上げる。
「もし、神剣の狙いがマナだけじゃなくて俺たちの精神そのものだとしたら...」
考えたくもなかったが、―――その快感が神剣の糧になるのなら。
脳裏に笑みを浮かべながらスピリットにとどめを刺すオルファの姿が浮かぶ。
悪夢のような光景。そして、殺したスピリットの数を嬉しそうに報告するオルファに、
自分は何と言っていた?
「―――俺の心は喰われかけてるってわけだ。」吐き捨てるように悠人は言った。
「やめるわけには...いかないわよね?まだ。」しばらく間をおいて今日子が悠人を見上げる。
「当たり前だ。佳織を、アイツから取り返すまでは。」悠人が静かに今日子に答える。
「それまでは...神剣を...このバカ剣を、こっちが利用してやるさ。」
―――俺の心は、俺のものだ。
悠人は自分に言い聞かせた。
一人になった部屋で、悠人は長椅子にゴロ寝した。
今日子の騒ぎに巻き込まれて、エスペリアと話をするつもりだったのが、
すっかり出鼻をくじかれてしまった。今は何だかスピリットと顔を合わせづらい、そんな気がした。
―――スピリットも人間も同じ。
悠人がかつて言ったその言葉がエスペリアに重くのしかかっていた。
「生きる、意味。」エスペリアは誰もいない部屋で力なくつぶやく。
スピリットは人に尽くすもの。今まではそれだけを考えていた。
悠人がラキオスに来た日からも、人間である悠人の為に動けばいい、
そう思っていた。悠人が望むことは何でも出来る――はずだった。
体を開けと言われればそうするつもりだったし、戦いで悠人の盾に
なって死ぬのならばそれこそスピリットとしての本懐――そう信じていた。
オルファ達若いスピリットの指標となるべき存在。それが自分だと。
―――楽な生き方だった、とも言える。
ただひたすら人間の言う事に従っていれば良かったのだ。
しかし、悠人の望みはどうやら違っている。最近になってようやく
その事が分かってきた。
結局これまで悠人に呼びつけられ、体を求められる事はなかった。
しかもエスペリアが動こうとすればするほど悠人はそれを封じ込めようとする。
今まで考えたことも、考える必要もなかったことを考えろという。
あろうことか、新たなスピリット達がエスペリアの知らない方向に向かって
進み始めているようにすら思えた。そして、そういったスピリット達のほうが、
これまでの殻をうち破り成長をとげているようにも。
人間のため以外に生きる意味を考えるというのは、エスペリアには
思いもよらない事だった。もし、エスペリアが生きる意味を考えることが
悠人の望みなら――それに応えることは出来ない。エスペリアには
それがくやしかった。
「私が、したい、事―――?」
そうつぶやくエスペリアの深緑の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「パパー、めしだよ、めしー。」ドアを開けてオルファが悠人を呼びに来た。
悠人は長椅子から飛び起きた。どうやら知らぬ間に
居眠りをしていたらしい。「お、悪い悪い。今行くよ。」
悠人は神剣を手にとって、オルファと食堂に向かった。
「オルファ、『めしー』なんて言ってたら、またエスペリアに叱られるぞ。」
跳びはねるように横を歩くオルファに悠人は言った。
「あっ、そうか。エヘヘ。」笑いながらペロリと舌を出すオルファ。
その仕草はやはり年相応の少女の姿だった。
「あ...でもねー、エスペリアお姉ちゃん、何だか具合が悪くて
もう寝てるんだよー、パパ。」
「へえ?珍しいな。うーん、まあ、エスペリアっていつも目まぐるしく
働いてるからな。たまにはゆっくり休むのもいいかもなあ。」
確かに、夕食にも、その後の作戦の打ち合わせにもエスペリアの姿は無かった。
「ねえ、悠、エスペリアどうしちゃったのよ?」
打ち合わせが終わった後、今日子が悠人を呼び止める。
横には焦げ臭い匂いを放つ光陰。あれほど言ったのに
またライトニングブラストをぶっぱなしやがった、今日子のやつ。
さっきの態度は何だったんだ?にらみつける悠人に今日子は平然と言う。
「大丈夫だってば。ちゃーんと、周りに誰もいないのを
確認してからやったんだから。」
...まともな説得は無理だ。あきらめて悠人は話を戻した。
「エスペリアならもう寝てるよ。体の具合が悪いらしい。
疲れがたまったんじゃないのか?」
「ふーん...ならいいけど。悠、あんた、また何かデリカシーの無いこと、
言ったりしてない?」横目で悠人をにらみ返して今日子が言う。
―――う。
思い当たるフシがある悠人は言葉に詰まった。
「ほら、やっぱり!あとでキチンと謝っときなさいよ。」
勝ち誇ったように今日子が胸をそらす。
何いばってんだよ!...とは言い返せなかった。
「べ、別に..謝るようなことは、何も...」
光陰がゆっくりと口を開く。
「―――ウルカが部隊のリーダーになるって、さっきの
打ち合わせんとき言ってたよな。」
いきなり核心だ。
「そ、それは...エスペリアの負担を減らそうと思って...」
悠人の答えはどうしても歯切れが悪くなる。
「隊長はお前だ、悠人。お前が決めることにケチをつけるつもりは
ない。ただ、俺がエスペリアの立場なら、
『ユート様のお役に立てなかった』って、思うかもなあ。」
光陰は笑いながら言うが、目だけは笑っていない。
「エスペリアは...俺の召使いじゃない。」
悠人はそれだけ言うと二人に背を向けた。
「やれやれ、悠人のヤツ、かなり意地になってんなあ。」
眉を吊り上げて今にも悠人を追いかけて行きそうな今日子を、
光陰が苦笑しながら制止する。
「もうっ、何でとめるのよっ、光陰!」今日子が鼻息を荒くして抗議する。
「これ以上言ってもますますムキになるだけだ、今はほっとけ。」
光陰が今日子をなだめにかかる。
「うー...もうっ、わかったわよっ!」少し息を整えてから、
今日子が悠人の去って行ったほうを見つめて、言った。
「悠って、結局世話女房タイプに弱いのよねー。」少し寂しそうな口調。
光陰が少しだけ力をこめて、言う。
「俺は、そういうのは好みじゃないなあ。」ハッとしたように光陰を見る今日子に、
こう続けた。
「オルファもいいけど、ニムントールやヘリオンも捨てがたいしなあ。」
「光陰、ほんっとうに、あんたって奴は...」
今日子のハリガネ頭がスパークする。遠巻きに見ていたスピリット達があわてて散開した。
―――自室に戻ってフテ寝する悠人。
「なんだってんだよ、光陰も今日子も。」
いや、自分の言い方にも問題があったのかも知れない。
そういえば、つい最近もエスペリアとこんな事があった。
自分の舌足らずを気にして、いじらしくも作戦解説の練習をしていた
エスペリアに、悠人はいたわるつもりでこう言ったのだ。
「あまり無理はしなくていいぞ、エスペリア。解説係くらいは
誰かに代わってもらってもいいんじゃないか。聞いたところによると
ナナルゥあたりなんて滑舌が良いらしいし。」
――― その後しばらくエスペリアは口をきいてくれなかった。
「うーん、やっぱり謝っといたほうがいいのかなあ。」
うじうじと悠人が悩んでいたその時だった。
「パ、パパー!!大変だよおーっ!!」けたたましい声で赤い疾風が部屋におどりこむ。
「エスペリアお姉ちゃんが、いなくなっちゃったのおーっ!」
「お...落ち着け、オルファ。トイレとか、よく探したのか?」
オルファのタックルをくらい、バランスを崩しながら、悠人が何とかなだめようとする。
「ちゃ、ちゃんと見たもんっ!ねえっ、パパ、これ見て、これ!」
オルファがポケットから取り出した小さな紙切れ。
「エスペリアお姉ちゃんの机の上に置いてあったのおー。」
ヨト語で何やら書いてある。
―――うーん、さすがはエスペリア、達筆だなあ。
字の読めない悠人にもそれくらいは分かる。しかし今はボケている場合ではない。
「なあ、オルファ、これ何て書いてあるんだ?」
「パパ、読めないのー?だめだよ、ちゃんと勉強しなきゃ。」オルファが小さな胸を張る。
「ごめんごめん、で、オルファは読めるのか?」悠人はポリポリと頭をかいた。
「うん、読めるよ、パパ。あのね、えーと...『じぶんをさがしにたびにでます、
さがさないでください』だって、パパ!」
「―――反抗期の女子高生かよ。」
183 :
憂鬱の人:04/08/09 18:16 ID:YbLFDwwS
とりあえず第2部終了です。
長くて読む気がしなかった人。あらすじを
書いておきます。
「さあ、やっと家出したエスペリア!
果たして帰ってくるのか?」
ぬぁ、何時の間に・・・やりますな。
目を離したのは1時間程度なのに、ピンポイントで投稿されるとは。
黒マグロかぁ・・・今日子が変な意味に取ってたら、悠人に命はなかったですねぇ・・・。
自給自足ができるエスペリアなら、オールラウンダーになっても頑張れるだろうけれど。
グレないで帰ってきて欲しいものです。
何はともあれ第二部乙でした。次を楽しみにしてます〜。
スピツナズ――スピリットとスペツナズを合わせたのか――と、思ったら
スピ *ツナ* ズ
三重の罠が仕掛けてあったとは……やるな!
>飛翔の人さん
悠人と一つ屋根の下で眠れぬ夜を過ごすヘリオンがいいですね。
このまま第一詰所に永住してくれるのでしょうか、
それなら今回以上に、日常イベントにヘリオンが絡んでくるので楽しみが増えます。
大きく物語が動き始めようとする中、こんなことを気にしててすみませんw
>憂鬱の人さん
まさかマグロ(ツナ)+スペツナズでくるとは思いませんでした……あ、先に言われてしまった。
勝手な予想は、魚ということから出世魚あたりを持ってくるのではと思っていたわけです、はい。
雑魚(ジャコ)から立派なコハダ、コノシロへ……とすると本編に関係なさすぎですね。
一筋縄では帰って来てくれなさそうな予感がします、いなくなって分かる大切さ、というやつでしょうかねぇ。
とにかく、お二方ともGJです!
187 :
道行書き:04/08/09 21:11 ID:Z379NI24
書く側として。
レス、ありがとうございます。
節操なく季節ネタ&お約束を散りばめてお送りしました。
何よりも節操なしだといえるのは、ヘリオンにあれだけ(道行第五幕後編)しといて
ハリオンのたゆんたゆんにも心を奪われるおのれの煩悩か……
えー、光陰とヨーティアは妙に気が合いそうな雰囲気がしますね、酒に付き合えそうですし。
>128さん
>ネリシアに左右対称デザインのワンピースとか。
今日も今日とて自由時間はプールの見張り。イオたちがいる分負担は軽いけどちょっと飽きてきたかも……
「ユートさまー!」
「ユートさま〜」
「どうしたんだネリー、シアー。水着を新しいのにしたのか」
その考えを払拭するように、右半身を白、左半身を青の生地で作られたワンピースに身を包んだネリーと、
右が青、左が白のワンピースを着たシアーがシャワーを潜り抜けてくる。
見慣れない格好というのはそれだけで気分が一新されるなぁ。
「うん、それでね、キョーコとコウインから面白い泳ぎ方を教えてもらったんだよ」
「ネリーと一緒に泳ぐ時は、この水着が良いんだって〜」
「と言うわけで、ユートさま見ててねー!」
「ふふ〜」
と、二人は俺に手を振ってプールの中へ。
……ん?ネリーの右手とシアーの左手にブレスレットが。何か意味があるのだろうか。
「なあ、その手首につけてるのはなんだ」
「ヨーティアお姉ちゃんに、もらったんだよ〜」
「どうせなら両手に欲しかったんだけどね」
二人がプールの真ん中辺りに辿り着くと、何処からともなく音楽が流れ始める。音の出所を探すと救護テラスの下、
ヨーティアの持つ妙な装置から発せられていた。どうやらヨーティア印のラジカセみたいなものらしい。
188 :
道行書き:04/08/09 21:12 ID:Z379NI24
「それじゃシアー、いっくよー」
「は〜い」
とぷん、と余りしぶきを上げずに二人が同時に水に潜る。これは、ひょっとして……
水面から生えてくるつま先、そこからだんだんとせりあがってくる二人の脚。
くるくると回転を続けながら今度はゆっくりと潜っていく。
ざばっ
次の瞬間には左手を上へ、右手を横へと伸ばしながら急浮上、身体を左に倒しながら再び潜行。
見まごう事なきシンクロナイズドスイミング。
さすがと言うべきか、恐らく見せるための練習もしたんだろうけど二人の息はピッタリだ。
「あれ、ブレスレットが……」
二人の動きが同調するにつれてぼんやりと光を放っている。光がだんだんとその輝きを強めていく間も、
ネリーとシアーは互いを追いかけあうように時計回りにゆったりと泳ぎ、プールの水面に渦を作る。
自ら渦に巻き込まれるように回転しながら立ち泳ぎに移行し、ネリーの左手とシアーの右手が繋がれて、
渦の中心に向かって身体の距離を縮めながら潜っていった。
「うわ、まぶしっ」
ブレスレットから放たれる光が極限に達し、目を開けていられなくなる。
ようやく閃光が収まったプールに視線を戻した俺の目に映った物は、果たして。
189 :
道行書き:04/08/09 21:14 ID:Z379NI24
『ユートさまー、どうでした〜?』
水色をしたワンピースの水着を身につけた、セミロングの青スピリットが一人。
どういうわけか二種類の声が聞こえてくる。
ぶんぶか手を振っているその両手首には一対のブレスレットが。
「が、が、合体したーーー!!??」
「クククク……上手くいったようだな。この『シンクロフュージョンブレスレット』が」
がたりと椅子から立ち上がりヨーティアが含み笑いを漏らす。
『わわっ、どうしちゃったのこれ!?』
「クク、本人達の動きと、ユートに見てもらうという心の同調が最大限に高まった時、
そのシンクロ率を有効に利用して起こした合体ってところさ。いや、なかなか面白かった」
『で、でも、くっついちゃった後は戻れるの〜?』
プールの中に取り残されたネリシア(仮名)と呆然とする俺を置いて、
結果に満足したヨーティアはさっさと引き上げていってしまった。
『ねぇ、どうしようユートさま〜〜〜』
……
…………
………………
幸い、その場にいたイオの助言により、ブレスレットを外すだけで二人は分離した。なんかこう、みにょん、と。
でも、何度もいろんな人に見せびらかして驚かせるのは勘弁してください、まる。
190 :
道行書き:04/08/09 21:19 ID:Z379NI24
レスを読んだら脳内の記憶と結びついてこんなもんが浮かびました。
変に長くなってすみません。それでは。
>>190 GJ
ところで
>ネリーの右手とシアーの左手にブレスレットが。何か意味があるのだろうか。
を読んでセックスブレスレットがあたまに思い浮かんでしまったおいら・・・
_
_ト |○ 青は「お口で」・・・
ウルトラマンAだな
ビームでわかる
道行書きさん、G.J.です。ネリシア(仮名)笑いました。
ってか、ネタでSS作ってもらったの始めてかも。こんなに嬉しい物とはw
なんかこう、みにょん、と。
ここにワラタ。
ある日二人が融合しようとした時に
蝿が紛れ込んで(以下略
蝿が紛れ込んで、みにょん。
ある日二人が融合しようとした時に
オルファが飛び込んできて(以下略
ネリーの股間からシアーの頭が生えるような状況は嫌だな
大
↓
木
ちょっと待ってくれ、今…本スレに怪情報が!
し、しかも追加情報の中に気になる一文が!
アセリアPS2版?
マジなんだろうか…。
>>サブスピリットのキャラクター付け(専用グラフィックやイベント)
↑こ れ か !
流れと全く関係なくてスマンが、SS書く上でアセリア本って必須?
教えて貰えると助かる。
正直ネットで検索すればほとんどの情報は手に入りますが・・・。
SS書かなくても、買っておくのが人の道かと。
・・・設定がゲームと違ってて、却って混乱する所もありますがネ。
電プレって何曜日発売?
>>サブスピリットのキャラクター付け(専用グラフィックやイベント)
↑ ΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩΩ な、なんだってーーーーー!!!!!?
↑このスレの人々
誤爆のうえに
本スレに金曜って書いてあった・・・OTL
スレ汚しスマソ
EDはやっぱあの2人追加かな?
まあ、多分陵辱イベントの代わりに何らかのエピソードを挿入するんだろうが…顔グラ追加があったら
いいなあ…
ヘ リ オ ン と フ ァ ー レ ー ン だ な !
あー
PS2もってたら買ったかも
今はないから買わない
PS2もセットで
ヘリオン
本スレにてニムとファーレーンらしきイベント絵の存在を確認。
全 軍 抜 刀 、 全 軍 突 撃 !
こちらでも一応訂正を 金曜日発売とか書きましたが
電撃PS次号は【8/12(木)】発売でした 謝罪して訂正しますorz
正直スマンカッタ。吊ってくる。
>>241 君がいなかったら訂正されなかったから
俺は金曜を待ちつづけて話題に乗り遅れてた
ありがとう、
>>214
雑魚スピの夏は終わらない・・・
雑魚スピにマップ用の顔もつけて欲しい
イビルルートの代わりに全員と仲良くほのぼのルートとEDを
ニム&ファーレーンの絵を見たら、あれがイビルルートの絵だとは思えない……
>>218 というかCSじゃどうしゃっちょこ立ちしてもイビルルートは不可能だから
ある意味移植に当たってこの仕様は当然だったとも思える。
だよな
ちなみに、悠人をレイプした雑魚スピにも立ち絵が!
なんて喜んだ漏れは負け犬。
PS2だし、あのシーンはカットされるよなぁ。
言われてみれば気になるな
どうやって吸い取るんだろ
注射器でちゅちゅちゅ〜っと。
の、濃厚なキスなんてどうですか?
異世界で出会った美しい少女と、いきなりキス。
しばらく暴れてるものの、徐々に身体から力が抜け、腰砕けの悠人。
やっぱり、引っかかりますか?
普通にストームブリンガーとかじゃねぇの?
>>224 ん?ストームブリンガーって……神剣だから?どう吸うって?
なんか書き込みの意図が全くわからんのだが……
剣で刺されて吸い取られるだけ。
でも最近はPS2もかなり緩くなったんじゃ
でもセックルは駄目だろ
マジキタ━━━━━━(゚(゚∀(゚∀゚(゚∀゚)゚∀゚)∀゚)゚)━━━━━━ !!!!!
追加に期待してもいいですかそうですかそうsでうsくかkldhkld、f・jkj
とりあえずくーるに落ち着いとこう、俺
この夏にでる他の移植モノと違って鬱要素が無いから
むしろ、追加分で雑魚スピが楽しめるなんて!!
230 :
():04/08/11 05:34 ID:+KyL0rmY
セリア・ブルースピリットがエトランジェ悠人率いるラキオススピリット隊に配属されたのは、
拠点となるリモドアの制圧を成功させ、サモドア山道からの奇襲部隊を退けたときだった。
同時に配属されたナナルゥ・レッドスピリットとの働きが無ければ、
奇襲部隊を退けることなど出来ず、バーンライト王国に白旗を上げていたといっても過言ではない。
ファンタズマゴリアにおける戦争とは、スピリットの運用なのだ。代理戦争を行うスピリットは、
まさに使い捨ての兵器。あるいは、人間のためにしか働けぬ哀れな奴隷か。
その現実を改めて知らされ、高嶺悠人は深いため息をついた。
「はぁ……。みんな命をなんだと思ってるんだよ」
答えなど決まっている。
悠人がスピリット隊隊長になってから、他人行儀になったエスペリアなら、
――私たちは戦いの道具です。
震える声で、そう主張するのだ。自身さえ納得していないのに、どうして悠人が納得できよう。
自身さえ嘘だと理解しているのに、どうして悠人がその嘘に引っかかるのか。
思い出すのは、リモドアの制圧の際に自分の言うことを聞かず、
敵陣に突っ込んでいったアセリア。サモドア山道からの奇襲部隊との戦闘で、
明らかに敵スピリットを屠ることを楽しんでいたオルファ。
やはり、自分が隊長として未熟なのか。悠人はそう思わざるを得ない。
アセリアやオルファ、エスペリアたちに信用されてないのでは……?
231 :
():04/08/11 05:35 ID:+KyL0rmY
そんな考えが浮かんでは消え、また浮かぶ。堂々巡りの思考は解決策が全く見当たらず、悠人はそのたびにため息をついた。
「考えてもしかたない。……行動あるのみか」
ベッドから立ち上がり、『求め』を背負う。『求め』からの干渉は酷いが、
まだ我慢できる範囲だった。元々、永遠神剣がなければ悠人は普通の人間でしかない。どんなに酷くとも、
『求め』の干渉には耐えなくてはならなかった。
ドアを開け、廊下に出ようとする。と、
「セリア……?」
セリアがドアの前に立っていた。
なにやら苦悩していたようで、ドアを開け、話し掛けてきた悠人をじと目で見て、
「……エスペリアが呼んでるわ。緊急だそうよ」
「緊急……?」
「詳しいことは聞いてない。……けど、レスティーナと話していたから、バーンライト王国に関連しているのは確かね」
一種の軽蔑を含んだ視線でそう言うと、
「急いだら?」
「あ、ああ。さんきゅ」
セリアの物言いに戸惑った悠人は、片手を上げ走り去った。
悠人の背中を眺めながらセリアは、
「莫迦莫迦しい。なんで、わたしがあいつの部屋に入るのに戸惑わなくちゃいけないのよ」
そう吐き捨てると、悠人とは逆方向に歩きだした。
?
前にも似たようなことあったけど、投稿してる途中にアクセス規制食らったとか?
もしそうなら、SS保管庫の連絡スレに行って善後策を相談しなはれ。
それにしても朝早いな
作品名と話数を書き忘れてる悪寒だ
セリアのツンデレSSの予感=期待大(゚∀゚)
235 :
230:04/08/11 14:50 ID:AQS0rAbs
>>232 その通りです。
ヤバイヤバイと試行錯誤していたら、回線の調子も悪くなってしまい、
SS保管庫の連絡スレに接続できなくなってしまいました。
>>234 >作品名と話数を書き忘れてる悪寒だ
すいません、書き忘れてました_| ̄|○イマキヅイタヨ
こんなことになってしまい、大変申し訳ありません。
現在、会社の休憩時間を利用して書き込んでます。
家に帰ったらアクセス規制が解除されたかどうか確認し、
されていない場合はSS保管庫の連絡スレで善後策を相談させて頂きます。
>230
大変でしたね・・・改めての登場、期待しています。
それでは、真打ちの前に前座として小ネタを一つ・・。
悠人がエターナルとなり、多次元世界への戦いへ身を投じた後・・・。
「なぁ時深、前から気になってたんだけど・・・。」
「なんですか悠人さん?」
「ファンタズマゴリアに来たとき、よく聖ヨト語なんて話せたなぁ。」
「何言ってるんです。話せる訳ないじゃないですか。」
「は?」
「私達は無限に広がる世界を旅するんですよ。いちいちその世界の言葉を学習して
たら、時間なんて・・・まぁ、たくさんあるけど、大変じゃないですか。」
「じゃぁどうやって会話してたんだ?」
「<時詠>が神剣の力で翻訳してくれたんです。・・・悠人さんも、早く<聖賢>
の力を使いこなせる様になって下さいね。」
「・・・じゃあ、その時詠先輩にちょっと翻訳して貰いたい奴がいるんだが。」
そう言って悠人が連れて来たのは、ントゥシトラと同じ世界の生物だった。
「・・・・・。」
「こいつ、何言ってるかわかんないんだよ。」
「ピキー!グァルゲルベ、ムヴァー!」
「と、時深が壊れた!?」
・・ちゃんちゃん。
・・・「翻訳して」の所を、「通訳して」だとお思いねえ。
某こんにゃくが来ると思った…剣の力だったんだorz
ともあれGJ!!
今日もまた、美幼女達を追い求め続ける男がいた。
光 陰「うーん、オルファたんも良いけど、ニムたんもぷりてぃ〜でちゅね〜。」
今日子「・・・あんた、やっぱり一回死んどかないと駄目みたいね。」
光 陰「げ・・・ま、待て、早まるな・・・ぐわぁ!」
ニ ム「ったく、うざったいたらありゃしない。けど、キョウコ様の持ってる武器、あれ何かなぁ?」
月 光『むぅ、まさしくあれこそは覇理閃。」
ファー「知っているの月光!?」
月 光『うむ。かつて聖ヨト王国の第三王子の元に現れたエトランジェ、"虚無"の羅怒が用いたと言う。
羅怒は右手に"虚無"、左手に"覇理閃"を持ち、伝説的暗殺剣"兵音零斗"を操り戦場を恐怖のどん底
に陥れたと伝わっている。・・・勿論世に言う"稲妻の様な突き"とは、"兵音零斗"の破壊力を表し
た最大級の賞賛である事は言うまでも無い。 』
ファー「覇理閃・・・キョウコ様、なんて恐ろしいお方なの・・。」
後に今日子が、第二詰所の面々にラキオス最強のエトランジェとして恐れられる様になったのは、自然の成り行きであった。
"兵音零斗"……読めねえ●| ̄|_
"兵音零斗(ぺねれいと)"
239がルビを振って置かなかった事を悔やんで吊りに行くのは、当然の成り行きであった。
しかも技名ペネトレイトじゃね
民明書房か。
ワラタ
なるほど、『月光』ね
>231からの続きとなります。
悠人が向かっているのは謁見の間。会いたくもないどころか、
殺意さえ消えぬラキオス王の前に跪かなければならない現実は、
悠人にとって悪夢でしかなかった。
その悪夢は佳織という存在が多分に関与しており、悠人は佳織を、佳織は悠人への
罪悪感を少なからず抱いていた。兄は義妹を守ることが出来ぬ歯がゆさを。義妹は己のせいで戦場へと赴く兄に。
けれど、二人は救いがあった。佳織はレスティーナ、悠人はエスペリア。
ファンタズマゴリアという現実に打ち勝つための救い。
永遠神剣第四位『求め』。エトランジェ。スピリット。
不安材料こそあるものの、悠人は自らが行うべき事柄が理解でき始めていたし、
佳織はレスティーナの元で知識を高めていた。
だけれども、
「ユートさま。ラキオス王から、バーンライト王国陥落戦の説明がなされます」
斜め後ろをぴったりとついて来るエスペリアは、どこか他人行儀で、
以前のような暖かさは感じられなかった。それは態度からも明らかで、何かと距離を置きたがり、
悠人を避けているとも言えた。
「ラキオス王はリモドア制圧。奇襲部隊戦の成果に大変満足されているご様子です。
……バーンライト王国陥落戦の指揮は、引き続きユートさまに任せると仰られております」
「だったら、いちいち謁見の間に向かう必要あるのか?」
ラキオス王にも敬語を使うエスペリアに、何故か嫉妬心を感じた悠人はそれを押し隠すようにして尋ねた。
「ラキオス王は、帝国のスピリットに酷い危機感を抱いております。……その忠告も含めて、
バーンライト王国陥落戦の最終決定を行うのでしょう」
慇懃無礼なエスペリアの答えに、「酷い危機感か……」と悠人は呟いた。
ラキオス王にとって、自分を含めたスピリットたちは利用するための道具でしかないと、
悠人は思っていた。そして、それは間違いではないとも悟っている。
あの他人を見下したような目。自分が頂点とでも誇示するかのような態度。
思い出すだけでも気分が悪くなるソレは、確かにラキオス王の本性。
それが、帝国のスピリットに酷い危機感を抱く? 解釈は二通りある。
帝国のスピリットがラキオスのスピリットより強力で、保有マナをエーテルに変換しよう
とも太刀打ちが出来ない場合。もう一つは、
「ユートさま。謁見の間に着きました。……前にも説明しましたが、
今は耐えるときです。どんなに辛くとも、耐えてください」
――ラキオス王の狙いが、帝国のスピリットに阻まれるかもしれぬ、ということ。
答えなんて決まっている。前者と後者を量りにかけたときに、傾くのは確実に後者。
だったら、ラキオス王の狙いは何なのか。バーンライト王国? それからのダーツィ大公国?
全てが正解で、誤りのような気がする。それが意味するのはつまり、
「考えても判んないよな」
達観するように悠人は呟くと、
「判ってる、あの時は助かった。あんな風になったら、また助けてくれ」
悠人はエスペリアの方を向き、「エスペリア。行こうか」
悪夢へと続くドアを開けた。
謁見はそれほど時間が掛かるものでは無かった。
呆気ないといえば呆気ない終わりに、不審感を覚えたほどだ。
ラキオス王は終始ご満悦で、その下衆のためにスピリットを殺し戦争を指揮して
いかなければならない事は、やはり悠人にとって苦痛でしかない。
そこには佳織のためという大義名分があったが、悠人も気づかずにいるほど間抜けではなかった。
それは言い訳。この世に残った唯一人の肉親を守るためとはいえ、殺人は許されぬ行為だ。
それでも悠人は、許されぬ行為を続けるしかない。義妹を守る方法が他には皆目検討もつかないのだから。
そんな訳で、悠人は七日後から開始されるバーンライト王国陥落戦――サモドアの制圧――について、
エスペリアと作戦を確認し直そうと考えていたのだけれど、
「まいったなぁ。エスペリアは何処に行ったんだよ……」
ラキオス王の謁見が終わった途端、掻き消えるように居なくなってしまったのだ。
第一詰所に戻っているのかと思い、急ぎ足で帰って見てもエスペリアは居なかった。
買い物に出た可能性もあるから、部屋に居たアセリアに聞いてみたが、誰か帰ってきた気配は無かった、
と言っていた。永遠神剣の雰囲気に、過敏に反応するアセリアのお墨付きだ。エスペリアが
第一詰所に戻っている可能性は無いに等しい。
ならば、すれ違いになったのかと謁見の間に戻り、近くを歩いていた
兵士――サードガラハム討伐から少し態度が変わっている――に聞いてみても、知らない、見ていないとの一点張り。
心当たりを回って見てもエスペリアの姿は無く、最後の場所として、悠人は第二詰所の前に立っていた。
「確か、造りは第一詰所とほぼ同じはずだったよな」
少しドキドキしながら、ドアを開ける。バーンライト王国戦が始まってから、第二詰所
のスピリットも少なからず悠人率いるラキオススピリット隊に配属されている。けれど、
悠人は第二詰所に来たのは初めてだし、こうして入るのも初めてだ。
よし、と決心して踏み出そうとした瞬間――
ちゃきという音ともに、首元に永遠神剣が突きつけられていた。
「……なんのよう? 内容如何によっては、このまま突き刺すわよ」
溢れ出す殺気を微塵も殺さず、セリアが問い掛けてきた。その目は本気であることを告げていて、
だから悠人は微塵も動けず、息を詰まらせるだけだった。
冷や汗が流れ出し、背中を濡らす。しどろもどろになりながら、
「えっと、あー、……エスペリアを、探していてさ。いろんな場所回ったんだけど、
いなくて、……第二詰所にいるかな、と思って」
拳銃を突きつけられた犯罪者のように両手を挙げ、悠人は弁解する。
その弁解を聞いたセリアは、緊張を解かず、
「……来てないわ」
簡潔に、悠人の弁解に対する答えを発した。
「んじゃ、……永遠神剣外してくれないか?」
「……出来ないわ。あなたの事信用していないし、そもそも第四位ならわたしの第七位くらい
軽くいなせるはずよ」それにね、とセリアは付けたし、「ドアの前でも十分に殺気を放っていたのよ?
あなたの『求め』から忠告、もしくは警告が出ていたはず。それでも、のこのこ入ってきた輩
を信用しろと? わたしには無理ね」
バカ剣がぁ……、と悠人は歯噛みした。ある意味八つ当たりに近かったが、
この状況で『求め』を恨まずにいられるほど悠人は人間が出来ていない。
「……だったらさ、どうしたらいい?」
「さあ? わたしに聞かないで欲しいわ。それよりも、いつまで騙し続けるつもり?」
「騙し続ける?」
何言ってるんだ? とばかりに悠人は目を見開いた。
それをブラフだと受け取ったのか、セリアは声をすこし荒げて、
「ふざけないで! 技術が未熟だという事を踏まえても、エトランジェとしてあなたは弱すぎるわ。
今もそうだし、どう考えてもサードガラハムを倒せるとは思えない。……だったら、わたしたちを騙している
と考えるのが当然でしょう?」
そう言われてもな、と悠人は思った。サードガラハムを倒せたといっても、その後の『求め』の干渉は
本当にギリギリだった。いつもあんな風に戦えと言われても、許容できるわけが無い。
だが、そこら辺をセリアに説明する事は出来ない。そんな事をしたら、エスペリアに
心配掛けまいと努力したことが水の泡だし、疑心暗鬼とも取れるセリアが納得してくれるには
あまりに都合が良すぎる。
苦悩する悠人を睨み付けたセリアは、『熱病』を逆手に持ち、腰に着けた。
「……わかったわ。今のところは、あなたに従う」
次は殺す、とも取れる言葉を発し、くるりと反転したセリアはそのまま第二詰所の中に入っていった。
それを、未だに両手を挙げたままの悠人は眺めながら、
「バーンライト王国陥落戦は、俺とアセリアと、……セリアがメンバーなんだけど」
ポツリと、呟いた。
エスペリアは、第一詰所に帰っていた。
251 :
230:04/08/12 05:07 ID:mVFfetO7
アクセス規制やら何やらで見苦しいところをお見せして、大変申し訳ありませんでした。
一応初SSという事になるかと思いますので、拙いとは思いますが、お付き合い下されば嬉しいです。
設定集は持っていないので、間違っているところはご容赦ください。
感想一番乗りだー!
声高らかにGJ!!
( ´∀`)ワーイ!ツンデレダー!ツンデレダー!
G J
早朝からお疲れ様です〜。
・・・選択肢間違えたら殺されそうな程ツンツンしてるや・・・。
これからどのように悠人に打ち解けて行くのか(わくわく)。
ツンデレキター
さて、コミケの準備をば。
256 :
飛翔の人:04/08/12 14:30 ID:yV78qrvR
PS2版アセリアの情報を見て、今からドキドキしている人(1/20)。
と、言うわけで、明日への飛翔第五幕をお届け致します。
ゲーム的には、「ヘリオン左遷」のイベントを見ていて、ウルカの愛情値が
十分に低くなければ発生しません・・・・。
前後編に分けるつもりがタイミング見計らってる内に一緒になっちゃって、
ちょっと長いかもですが・・・。それでは、始まり始まり〜〜。
ぴちゃっ・・ぴちゃっ・・・ぴちゃっ・・・・。
一条の光も差さぬ暗闇の中。
何か液体の滴り落ちる音だけが、遠く響く。
絶望に震えるその躯は小さくて。
か細い腕が抱えるのは、血塗られた<失望>・・・。
『・・・殺せ・・・殺すのだ・・・。』
闇が蠢き、質量を持った塊となって、そう告げる。
(い・・いや、嫌・・・私はもう・・・これ以上血は見たくないの・・・!)
そう叫びたいが、口を開けばこの粘り気のある空気が、肺腑を冒すだろう。そうなればきっと、ちっぽけ
な自分は瞬く間に塗りつぶされて・・・空っぽの器になってしまうに違いないのだ。
そして・・・例え自分がどれほど強く願おうとも・・・。
ここから、逃げる事など出来やしないのだと言う事は、もう、充分過ぎる程に理解していた。
『何を迷う事がある・・その小さな手はもう、拭い落とす事もできぬ程に穢れているだろう・・?』
(あ・・・ああ・・・・。)
『その翼は既に、しっとりと返り血に濡れているではないか・・・そう、翔る事も出来ぬ程に。』
瞬きすら忘れ、凝視し続けるその前で。
・・・塊は膨張し、分裂を続け・・・ある物は人の、またある物は獣の姿を形作る。
『そうだ・・お前が殺しきれぬ為に、苦しみ続ける者共よ・・・。』
脳髄が声にならない悲鳴をあげ、冷たく痺れていくのが克明に解る。
『さぁ・・・・<失望>の担い手よ・・・・その剣を振るうのだ・・・・!!!』
「・・・・いやぁぁああああああ!!!!」
第一詰所に設けられた、まだ見慣れぬ自分の部屋で。
幼子の様にうなされて、ヘリオンは目を覚ました。
「・・・はぁ・・はぁっ・・・はぁっ・・・・・・。」
まだ朦朧とした意識の中で、乱れた呼吸を整える。汗ばんだ寝巻きが、ひどく気色悪かった。
「今のは、夢・・・だよね?・・・あの頃の・・・。」
(あ〜ん、どうせならユートさまの夢が見たかったなぁ・・・。)
軽く体を流しては見たが、まだ悪夢が後を曳いているらしく、気分は優れない。
他の者達が目を覚ます様子はなかったが、またあの夢を見るかも知れないし、二度寝しようという気には
なれなかった。
気の向くままに調理場へと歩いてみると、朝食の下拵えをしている、エスペリアの姿が見えた。
「あら・・随分と早いのね、おはよう、ヘリオン。」
「あ・・お、お早うございます!・・・ちょっと、今日は夢見が悪かったので・・・。」
「そうなの?・・・顔色も悪いようね。健康には、気を付けなきゃダメよ。」
そう言って作業に戻るエスペリア。
「あ、あの・・・。」
――エスお姉ちゃん・・・そう呼びたい気持ちを抑え込んで、声をかける。
思えば、大好きなお姉ちゃんとぎくしゃくし始めたのも、あの頃からだった。
「・・・エスペリアさま、朝食の支度でしたら、わ、私も手伝いましょうか・・・?」
「そうね・・・ヘリオンには一昨日の晩に、すごい成長振りを見せ付けられちゃったから・・・。」
叱られた子供の様な顔をするヘリオンに、エスペリアが振り返って微笑む。
「今日は私の番と思っていたのだけれど・・・久しぶりに、一緒に作りましょうか♪」
「〜〜〜〜♪」
鼻歌混じりで、ヨーティアの研究室を掃除していくヘリオン。
いつもは一体どうして、こんな短期間に部屋中散らかす事ができるのか不思議だったが、今のヘリオンに
とってはそんな事は気にもならないようだった。
「あの子一体どうしたんだい?まるで新年と聖ヨト祭が、一緒に来たみたいな様子じゃないか。」
流石に気になるのだろう。ヨーティアが傍らで実験を手伝うイオに尋ねる。
「私にも何だか・・・よほど良い事でもあったのでしょうか。」
「まぁ、三割増しで能率も良くなっているようだから、こっちとしては大助かりだけどねぇ。」
首を傾げる二人をよそに、ヘリオンは野ネズミのように駆け回って行く。
思い出すのは、エスペリアとの久しぶりの共同作業。
そしてその成果に満足した悠人は、何度もおかわりして二人の腕前を褒めると、ヘリオンの頭をくしゃく
しゃと撫で回してくれたのだった。
「うふふふふ・・・・。」
忍び笑いを漏らすヘリオン。
そして顔を赤らめながら、にやにやする彼女を見て、イオが手を休めて尋ねる。
「ヘリオン様・・・今日は、随分と良い事があったご様子ですね。」
そこで初めて、自分のハイテンションに気付くヘリオン。
「え、え〜と・・・その・・・はい。」
「そうでしたか。・・・ヘリオン様が楽しそうにしているのを見ると、私達まで心が晴々として来るよう
ですわ。・・ところで、つかぬ事をお伺いしますが・・最近、身の回りでおかしな事はございませんか?」
ぎこちなく愛想笑いをするヘリオンに対し、何やら心配げな様子のイオ。
「おかしな事がなければ、そうですね、ちょっとした変化とか・・・・。」
尚も言葉を重ねるが、ヘリオンに取って、最近の変化と言えば・・・。
(ぼっ。)
途端に、真っ赤なゆでだこの様になって湯気を立てる。
「そ、そそそそそ、そんな事は・・・特にないです、はい!」
そう主張する端から呂律も回らなくなっていては、周りの余計な想像を煽るばかりである。
勿論、ヨーティアが想像した様なことは、何もなかったのだが・・・今まで免疫のなかったヘリオンに取
って、恋をするという経験は劇薬に匹敵する刺激をもたらすようであった。
「・・・ふむ、察するにボンクラ絡みで何かあったね、あれは。」
その後も挙動不審な態度を取り続けたヘリオンを、ようやく開放したヨーティアが呟く。
「はぁ・・・ヨーティア様もそう思われますか?」
「当たり前じゃないか。あれだけ解り易い反応をされれば、この天才でなくても気が付くさ。
・・・しかし、やけにあの子を気に掛けるじゃないか。イオにしては珍しいねぇ。」
「ヨーティア様に言われたくはありませんわ。・・・昨日などは、わざわざ専用のコスチュームまで用意
して・・・恥ずかしがって、泣いていたじゃありませんか。」
「今日なら気にせずに着てくれたかもねぇ。まぁ、イオだって喜んでいたじゃないか。」
そう茶化す主人をかわしながら、イオは、先程ヘリオンから感じた暗い気配について思い返していた。
(私の、気のせいならば良いのですが・・・。)
・・・ぴちゃ・・ぴちゃ・・・ぴちゃっ・・・・・。
恐らくは、血が滴り落ちる音が響く中。
ヘリオンは、再び暗闇の中を歩いていた。
「うぅ・・・またこの夢なの・・・?」
昨晩と違うのは、こうして自由に行動する事ができる点。
そして、その体も幼い子供の頃の物ではなく、普段よく見慣れている今の自分の姿をしていた。
「でも、やっぱりちっちゃいのに変わりはないんだけどね。・・・はぁ。」
自分で言っておきながら落ち込むヘリオンだったが、それだけ余裕が出て来たのだろう。
そうだ、今の自分は、あの頃のままという事はないはずなのだ。
「私だって少しは成長してるよね・・・うん。」
そうしてしばらく歩いていると、ヘリオンの目の前に立ち塞がる人影があった。
「わわわ・・・こ、怖くなんて、怖くなんてないんですから!」
自分を鼓舞し、<失望>を抜くヘリオン。
人影とは言っても、闇の中、更に濃い部分があると辛うじて判別できる程度である。
月と夜の加護を受けたブラックスピリットだとしても、こんな所での戦闘は御免蒙りたい。
・・・しかし、そのまま対峙していても。
相手からは殺気も感じられず、一向に攻撃してくる気配がなかった。
「えっと、勘違い・・・じゃ、ないですよね?」
「その声は・・・。」
「え?」
「ヘリオン、ヘリオンか?・・・俺だ、悠人だよ!」
悠人の声が響いたその瞬間。
・・・闇は討ち払われ、気が付くとヘリオンは草原の中、立ち尽くしていた。
そして目の前には、彼女の想い人の姿。
「あ、あれ?・・・ユートさま、本物のユートさまですか!?」
「ああ・・・突然闇の中に放り出されたと思ったら・・・ヘリオンも、この世界に来ていたとはな。」
そう言って目の前で微笑むのは、紛れも無い悠人その人であった。
(この現実感・・・私、夢を見ていたんじゃなかったっけ?)
「他の皆も来ているのかも知れない。すぐに探しに行きたい所だが・・・どうやらお客さんのようだ。」
何時の間に近付いて来たのか、虚ろな表情をしたスピリットの部隊が二人を取り囲む。
「神剣に呑まれているな・・・ヘリオン、後ろに隠れていろ!」
叫ぶのが早いか、単身、敵スピリット達の真っ只中へ斬り込む。
混戦の中、次々と敵を打ち倒して行く悠人。
<求め>が歓喜の唸りを上げ、金色の霧が舞い上がる・・・。
(いけない、私も・・・!)
その姿に見惚れていたヘリオンが、我に返り<失望>を手に駆け寄ろうとした時。
「・・・危ない!」
敵スピリットの一人が、頭上からヘリオンに襲い掛かった。
反応が遅れ、思わず目を瞑ってしまった後・・・ヘリオンが目にしたのは、自分を庇い、肩から血を流し
て倒れる悠人の姿だった。
「ユートさま、ユートさま!!」
泣きながら、悠人にすがりつくヘリオン。
・・・私のせいで、ユートさまが怪我をしてしまうなんて・・・。
「俺は大丈夫だ・・・それよりも、ヘリオン・・早く逃げるんだ。」
「嫌です、ユートさまを置いて逃げるなんて出来ません!!」
そうしている間にも、敵スピリット達は包囲を狭めて来ていた。
「私が・・・私が、命に代えてもユートさまをお守りします・・・!」
悲壮な決意を胸に、敵へと向き直るヘリオン。
それに対し、敵スピリットの群れを掻き分けて、姿を現す一人の男がいた。
「無様だな・・・。そうして女を盾にして、見苦しく生き延びようと言うのか。」
「あ、貴方は・・・?」
その男が身に纏うのは、破壊の力か、それとも狂気か・・・。
気圧されそうになるヘリオンの後ろで、<求め>を支えとして悠人が立ち上がる。
「これはお前の仕業か・・・・瞬!!」
(シュン・・・それじゃこの人が、あのサーギオスのエトランジェ!?)
確かに対峙しているだけで、感じる恐怖に身が竦みそうになる。
でも、それならば・・・。
「貴方をユートさまと、戦わせる訳には行かない!」
生まれて初めて殺気を篭めた、本気の一撃!!
しかし、その一撃を持ってしても。
・・・<失望>は瞬の<誓い>の前に、音を立てて砕け散ったのである。
「そ・・んな・・・。」
「元より貴様に興味は無い・・・そこで、愛する男が息絶える様を見ていろ!!」
そして崩れ落ちるヘリオンの目の前で、<誓い>は・・悠人の胸に・・・吸い込まれて・・・・
「・・・・・!!!」
ベッドの上で跳ね起きるヘリオン。
・・・思えば、泣き叫んで目が覚めるなどと言うのは、まだ生易しい事だったらしい。
肉体が鳴らす警鐘に、やがて意識が追い付くと、ようやく呼吸の仕方を思い出し、心臓が早鐘を打つ。
どうやら自分は、"夢に取り殺される"寸前まで行っていたようだ・・・。
何とか身体を動かせるくらいまでに回復すると、真っ先に枕元に置かれた<失望>を確認する。
(砕けて・・・ない・・・。)
脱力して、<失望>を胸に抱えたままベッドに倒れるヘリオン。
「良かった・・・・。」
あれが全て夢の中の出来事だったのなら、ユートさまは無事なのだ。
しかし、何と現実感のある夢だった事か・・・。
吹き付ける風や、草の香り、そして悠人の温かな血の臭い。
何よりもあのサーギオスのエトランジェなどは、とても想像の産物とは思えぬ程だった。
あの男が身に纏った狂気と、圧倒的な存在感。
そしてそれを象徴するような、白い前髪の隙間から覗いた・・・<誓い>と同じく、紅く光る双眸は、
忘れようとしても忘れられそうになかった。
(でも・・・。)
ヘリオンは思う。これが夢だったから良かったが、もし、現実にあんな事が起きたとしたら・・・。
自分に力が無い為に、ユートさまを失うなどと言う事になったならば・・・。
そうでなくとも、ラキオスには他に、多くの優秀なスピリット達がいる。
今に自分は必要とされなくなって、見捨てられてしまうのではないか・・・。
・・・それは次第に恐ろしい予感となって、ヘリオンの精神を蝕んで行ったのであった。
「・・・ヘリオンは、私と訓練がしたいのか?」
「はい、それも神剣を用いた、模擬戦を。」
これがアセリアだったからこそ、平静を保っていられたものの。
普段のヘリオンを知っている者ならば皆、その申し出に驚愕した事だろう。
しかしその日、悠人とエスペリアはランサに戻り、オルファは哨戒に出ていた。
他にその場にいたのが、まだ出会ってから日も浅いウルカだけだった為に・・・最後までヘリオンの異変
に気付く者は、誰もいなかったのである。
「それでは・・・手前が立会いを務めさせて頂きます。」
ラキオス郊外の草原で、神剣を手に対峙するアセリアとヘリオン。
これから果し合いが始まるかのようなウルカの口上も、あながち間違いではないかも知れない。
それほどに、ヘリオンは思い詰めた表情をしていた。
「・・・行く!」
ハイロゥの推進力を利用し、空中から<存在>を振り下ろすアセリア。
ヘリオンはそれを、紙一重で避けながら反撃を試みる。
しかし彗星の如きアセリアの勢いに、あえなく弾かれて体勢を崩してしまう。
次の一撃も何とか受け流すが、今度はアセリアが反撃に転じる隙を与えなかった。
暴風の様なアセリアの攻撃に、翻弄されるヘリオン。
アセリアの斬戟は一撃一撃が重く、ヘリオンはそれを巧みに防ぎながらも、消耗を余儀なくされていた。
俊敏さで上を行くヘリオンだったが、なかなか攻勢に転じる事が出来ない。
振り終わりを狙った会心の一閃も、アセリアの恐るべき反射神経の前には通じなかった。
(これが・・・アセリアさんと、<存在>の力なの・・?)
ヘリオンは、ウルカと並び称される、"ラキオスの蒼い牙"の実力をまざまざと見せ付けられていた。
その後の攻防も、ヘリオンの有利には進まなかった。
ウルカの全力をあれ程に凌いだ自分が、アセリアの猛威にはこれ以上耐えられそうに無い。
神剣を用いた戦いでは、これ程の力の差があるというのか・・・。
アセリアと<存在>がシンクロし、最強の一撃を叩きつける。
激しく吹き飛ばされるヘリオンに、もう戦う力は残っていないかと思われたが・・・。
「・・我が血を代償に、刃に一時の力を・・・。」
決着を宣言しようとしたウルカの目の前で、ヘリオンが神剣魔法を詠唱する。
そしてアセリアに向かうその構えは、あの日の訓練で最後に放った技・・・。
「・・ヘリオン・・・本気・・・?」
ハイロゥを全開にし、<存在>を握り直すアセリア。
「私の・・力・・・私の、力は・・・・!!!」
・・・二人のマナが増大し、臨界する直前に。
割って入ったウルカが、ヘリオンに<拘束>を突き付けた。
「勝負ありです・・・ヘリオン殿、これ以上は・・・。」
「・・・やっぱり。」
「ヘリオン殿?」
「この程度なんですね、私の力は・・・。」
二人を無視し、踵を返すヘリオン。
・・・その瞳には既に、狂気が宿っていた。
(私は力が欲しい・・・もっと、もっと大きな力が!)
そう・・・力を得なければならない。<存在>にも、他の誰にも負けない力を。
素質では劣っていない筈なのだ・・・ならば、更に強大な神剣さえあれば。
<失望>が鳴っているような気がしたが、もうこんな剣の事はどうでも良かった。
その晩・・・ヘリオンは、三度目の悪夢を見る。
『ハーブの世話・・で、ありますか?』
頃合を見て、誘いをかける。
『確かに、ユート殿や他の方々の留守中、何か出来る事はないかと思っておりましたが・・果たして手前
に務まりますでしょうか?』
そう、邪魔者はいない・・・ここにいるのは、私とこの女の二人だけだ。
『成程、このメモの通りに・・・しかし仕事には、それに応じた着衣が必要なのは解りますが、帯刀も許
されぬとは・・・いえ!ヘリオン殿の申される通りでありましょう。手前が不見識でありました。』
疑いもせずに従うその姿に、思わず笑みが零れる。
どうしてもっと早く、こうしなかったのだろう。
・・・目の前に、自分に相応しい神剣があったと言うのに。
ヘリオンが手にする抜き身の<拘束>が、妖しく光を放つ。
なに、どうせ元々敵国のスピリットだ・・・ふいに姿を消したとしても、誰も怪しむまい。
この愚かな女は、目論見通り水を遣る事に集中して、こちらを振り向く素振りも見せない。
せめて苦しむ間もなく、首を落としてやる事としよう。
・・・そうだ、殺すのだ・・・"使命"を果たさねばならない・・・。
我に与えられた、崇高なる"使命"。
・・・この女に・・・"リュトリアム・ガーディアン"に、確実な死を・・・・!!
その時・・・ウルカが助かったのは、まさしく奇跡の様な偶然に因る物だった。
たまたま偶然、女王レスティーナはその時ヨフアルを食べる為に、城を抜け出していた。
偶然エスペリアが一緒にいた為に、報告が出来なかった悠人は、寄り道もせずに詰所に戻る事にした。
そして偶然ヨーティアに急用が出来た為に、イオは<理想>を通じてヘリオンを呼び出し、彼女が何故か
<失望>を持ち歩いていない事に気付くと、<求め>に信号を送ったのである。
だが、もしも・・・この世のどこかに、運命を操作し、世界を遊戯盤に見立てて弄ぶ何者かが存在するの
だとしたら・・・この偶然も、或いは必然の成り行きだったのかも知れない。
『これは・・<献身>・・!?』
凶刃を振るおうとしたその直前。
突如目の前を翔け抜けた、翠の閃光の正体に気付き、ヘリオンが・・・
・・・いや、ヘリオンの意識を乗っ取った永遠神剣<拘束>が、驚愕の叫びを上げる。
「ヘリオン殿?」
「下がるんだウルカ・・・それは、ヘリオンじゃない。」
『ほう、一目で我の存在に気付いたか・・・そうでなければこの娘も、報われないと言う物だがな。』
ウルカを庇い前に出る悠人に対し、嘲笑う<拘束>。
ヘリオンの愛らしい唇が、奇妙に引きつる。
『この娘、貴様を好いていたらしいぞ・・・おかげで、容易く心の隙間に付け入る事ができたわ!』
「な・・・。」
『ふむ・・・しかしまさか、このタイミングで邪魔が入るとは思わなかったが・・・我は既に、意のまま
と出来る肉体を手に入れた。ここは退いて、次の機会を待つとしよう。』
「貴様、ヘリオンを一体・・・!?」
激昂する悠人の目の前で、ヘリオン――<拘束>は、ハイロゥを展開する。
その翼の色は、闇を溶かした漆黒・・・。
支援しとく?
「ユート様、これは一体・・!」
ヘリオンの飛び去った方角を見据え、エスペリアが叫ぶ。
「・・・詳しい事は解らないが、どうやらヘリオンは<拘束>に意識を乗っ取られたらしい。」
「そんな・・・。」
「手前の責任です・・・しかしまさか、こんな事が・・・。」
「貴女が!」
ウルカを睨み付け、かつてない激情を見せるエスペリア。
「仲違いしている場合じゃない!・・・おいバカ剣、ヘリオンを追えるな!?」
悠人はそれを制し、手にした己の神剣<求め>に呼びかける。
『無論だ・・・だが契約者よ、心するが良い。あの者が向かう先に、五つの神剣反応を感じる。』
「神剣反応?」
『その内の二つはラキオスの妖精の物だ・・・しかし、残りの三つは敵だろう。それも恐るべき力を持っ
ているようだ・・・我の力を持ってしても、容易くは討ち取れまい。』
「くそ!・・・エスペリア、ウルカ!・・・アセリアとオルファが正体不明の敵と交戦中のようだ。ヘリ
オンもそこに向かっている・・・東の草原だ、行くぞ!!」
エスペリアも、共に走るウルカに来るなとは言わない。
今はただ、時間が惜しかった。
(ヘリオン・・・・!)
駆けながら、<拘束>に操られたヘリオンの、紅く光る瞳を思い出す悠人。
(必ず助けてみせる・・・何か、何か方法があるはずだ!)
アパム 「砲兵!至急援護を要請!02-67に援護砲撃を頼む!」
272 :
飛翔の人:04/08/12 15:02 ID:yV78qrvR
まさにこれこそ助け舟!
支援頂けると、ひっじょーにありがたいデス♪
では、続きを・・・。
「ヘリオンお姉ちゃん・・・どうしちゃったの・・・?」
傷付いて膝をつくオルファが、悲しみの声を上げる。
そんなオルファを庇いながら、懸命に<存在>を振るうアセリア。
「オルファ・・・じっとしてなきゃダメ。」
四半刻前。哨戒中の二人は、前触れも無く正体不明のスピリット達の襲撃を受けた。
襲撃者は三名。共通するのは、いずれも暗い気配を纏い、虚ろな表情をしていた事。
数の上での不利は否めなかったが、それ以上にこの襲撃者達は精強だった。
その実力はあの稲妻部隊すらも凌駕し、ラキオスの主力たる二人も、苦戦を強いられざるを得なかった。
それでも、アセリアは一人を討ち取り、戦況を互角に持ち直したのだが・・・。
『存外に粘る・・・あの時の力も、その全てではなかったか。』
二人の襲撃者を従え、ヘリオンを操る<拘束>が呟く。
「・・やらせない・・・オルファは、私が守る!」
気力を振り絞って叫ぶが、疲労は隠せない。
ヘリオンの姿を見て、加勢に来てくれたと思い油断したオルファを、<拘束>は背中から斬りつけた。
幸い"ぴぃたん"が間に入り、重傷を負う事は避けられたが、負傷したオルファを庇いながらでは、流石の
アセリアも致命傷を避けて耐え忍ぶのが精一杯だった。
『イースペリアの頃より、成長しているとは思ったが・・・。』
構えを解き、襲撃者達の後ろに下がる<拘束>。
『・・・"ラキオスの蒼い牙"、過少評価していたようだ・・・まさか、仕留め切れぬとはな。』
口惜しげに呟く<拘束>の見つめる先で、土煙を巻き上げ急速に近づく影。
「アセリア、オルファ・・・無事か!」
詰所から走り続け、肩で息をしながら悠人が呼びかける。
「・・ん、私は・・・でも、オルファが。」
「パパ、遅いよ〜・・・。」
安心して気が抜けたのだろう。そのまま気絶するオルファに、エスペリアが駆け寄る。
少し遅れて、神剣を失ったウルカが到着するのを確認し、襲撃者達に対峙する悠人。
「こいつら、帝国兵か?・・・・やい、大バカ剣!!・・・貴様の目的は何だ!?」
『元より貴様は知らずとも良いことだ、<求め>の契約者よ・・・しかし、その為に手に入れたこの娘の
身体・・・軟弱そうに見えてなかなか骨を折らされたが、思わぬ拾い物だったわ。』
ヘリオンの声でそう言うと、<拘束>はそのマナを増大させる。
アセリアの様子を見ても、手加減が出来る相手ではなさそうだ。
(おいバカ剣、ヘリオンを正気に戻す方法はないのか?)
『あの妖精の精神は、<拘束>の完全な支配下にある・・・恐らく生半可な呼びかけでは、反応すらしな
いだろう・・・加えてこの状況、救う気で戦うなどと言うのは、現実的では無い。』
(ふざけるな・・・現実的だろうが無かろうが、俺は見捨てたりはしない!)
<求め>にそう宣言する悠人に対し、襲い掛かる襲撃者二人。
常ならば、その精密機械の様な連携攻撃の前に、手痛いダメージを被っていただろう。
しかし、<拘束>に対する怒りに燃える今の悠人の前には、相手になる筈もなかった。
「まずはこいつらを、何とかしないとな・・・!」
オーラフォトンを集中し、刀身に乗せて叩きつける!!
襲撃者の一人が、袈裟切りにされて、見る間に金色の霧となり四散する。
しかし<拘束>は、悠人の奮戦を見て取るや、後方に控え、ただその一瞬だけを狙っていたのだった。
『隙在り!・・・我とこの娘の秘められし力、その身で存分に味わうが良い!!』
「しまった!?」
紅い光の中、放たれた無数の突きが悠人を襲う。
オーラフォトンの護りが"削り取られ"、血飛沫を上げて吹き飛ばされる悠人。
「ユート様!」
エスペリアが駆け寄るが、その傷の深さに慄然とする。
アセリアもまだ全快には遠く、オルファの意識も戻ってはいない。
しかし悠人は、その全身を血に染めながらも、立ち上がったのだった。
『まだ足掻くか・・・だがその気力、いつまで持つかな?』
<拘束>が戯れに放ったその一撃すらも、悠人は完全には避ける事が出来ない。
「くっ・・負けるものか・・・・ヘリオン!」
『む?』
「目を覚ますんだ、ヘリオン!・・・俺は信じている。お前はいつだっておっかなびっくり暗がりを歩い
ていても、決して逃げ出したりはしなかったじゃないか!・・・そんな奴、跳ね除けてしまえ!!」
『ククク、無駄だ・・・この娘の精神は、悪夢の中、闇に拘われている・・・。』
「ユート様、このままではユート様ご自身の命が・・・!」
「エスペリア、俺は・・・俺には、仲間の命を見捨てる事なんて、出来やしない・・・俺は単なる人殺し
かも知れないけれど、だからこそ、見捨てる訳には行かないんだ!!」
『愚かしい・・・愚かに過ぎるぞ、<求め>の契約者よ・・・もう良い、茶番は終わりだ!!』
「させぬ!」
止めの一撃を繰り出そうとする<拘束>を、今まで沈黙を守っていたウルカが阻む。
動きの妨げとなる為か、着込んでいたメイド服は裾が引き千切られていた。
「ウルカ、一体何を!?・・・今のお前じゃ、こいつらには・・・。」
「手前とて、伊達に"漆黒の翼"と異名を取った訳ではありませぬ。・・・ユート殿、ここは手前にお任せ
下さい・・・一命に代えても、ヘリオン殿を救い出して見せまする。」
確かに、今の彼女の力はかつてとは比べるべくも無かったかも知れない。
けれどもその声には、紛れも無い意思の力が甦っていた。
そして感じるのは、初めて合間見えた時と同じ圧迫感・・・その表情は、鬼気迫る物があった。
「ユート殿、手前はここに来て、捜し求めていた何かを見つけたような気がします。」
歩みを続けるウルカに対し、腕を組み、見下して吐き捨てる<拘束>。
『今更何をしようと言うのだ・・・とうに翼はもがれ、地べたを這いずり廻る事しか出来ぬ者が。』
「手前の力、誰よりも貴様が知り抜いている筈・・・御託は良い。さっさとかかって来たらどうだ。」
そう言うウルカの胸中は、如何ばかりか・・・かつての彼女の相棒は、自ら手を下すまでも無いと、一人
残った配下をけし掛ける。
「破ぁぁぁぁあああ!!」
その時。
場に居合わせた誰にも、信じられない出来事が起こった。
神剣を失い、その力の多くを喪ったウルカは、襲撃者の非情の一撃に、敢え無く倒れ伏す筈だった。
しかし、ウルカはその大上段に振り下ろされた神剣を、両の掌で挟み受け止めてしまったのだ。
「真剣・・・白刃取りかよ。」
悠人が感嘆の声を漏らす。
そしてウルカは轟雷の様な蹴りを放つと、神剣を奪い取り、仰向けに倒れる襲撃者の胸に突き立てる。
その間数秒。まさしく、幻を見ているかの様な早業だった。
『無刀取り・・・か。まさかその状態で、これ程の技を使いこなすとは・・・。』
予想外だった。先程まで余裕を見せていた、<拘束>の声も震えている。
無言のまま、再び無手で向かい合うウルカ。
『奪った神剣は使わぬのか・・・だが、同じ手がそうそう通用すると思うなよ!』
そして見せたのは、ヘリオンが得意とし、悠人の護りを破った突きの構え。
「やばい・・・ウルカ、神剣を使うんだ!!」
『最早遅い!・・・"漆黒の翼"よ、やはりその命、この手で散らされる運命にあったのだ!!!』
悠人の叫びも空しく、次の瞬間<拘束>はウルカの胸を貫き通す。
しかし・・・。
『何、抜けぬ!・・・き、貴様、最初からこれが狙いで!?』
「・・今の手前の力で、限界まで能力を引き出されたヘリオン殿の斬戟を避ける事など、叶わぬと解って
いた・・・さ、さぁ、ヘリオン殿・・何をしているのです!・・今こそ戒めを破り、帰還を果たすのです!
・・・ユート殿が、皆が、待っておりまする・・・・!!」
「はっ・・・そうだ、ヘリオン・・・戻って来い!!」
「「ヘリオン!」」
悠人が、エスペリアが、アセリアが・・・口々に呼びかける。
元々の使い手だったウルカが、<拘束>を屈服させようと集中を高めた事と相まって・・・。
『ぐ、ぐぉぉぉおおおおおお!!!』
・・・・・・。
ヘリオンは、闇の世界を漂っていた。
時間すら解らぬその空間で、ただ意識だけが、虚空を彷徨う。
外の世界で起きている事は、<拘束>がそうしたのか、ヘリオンにも伝わって来ていた。
(私のせいで、ユートさまが・・・・)
罪の意識が、ヘリオンを縛り付ける拘束を、より頑なな物とする。
(私はただ、ユートさまのお力になりたかっただけなのに・・・)
その純粋すぎる想いの為に、<拘束>に付け込まれ、身体を明け渡してしまった。
けれども・・・。
そんな自分を、ユートさまは信じていると言ってくれた。
自分を仲間だと、見捨てる事は出来ないと・・・。
これ以上、ユートさまを傷つけたくない。
それだけを念じ、諦めかけていた心に抵抗の火を燈す。
己を取り戻したヘリオンを、暖かな光が包み込んで行った・・・・・。
断末魔の悲鳴を上げて。
<拘束>は力を失い、ヘリオンの翼に純白の輝きが戻る。
ウルカを貫いたその刀身から、何か錆びの様な物が落ちると、邪悪な気配は霧となって舞い上がった。
直後、共に崩れ落ちる二人。
・・・見れば、神剣が抜け落ちた後のウルカの胸に傷跡はない。
傍らに残されたのは、拵えは<拘束>と全く同じながらも、清浄な気を放つ一振りの神剣。
「終わったのか・・・?」
「ヘリオンの翼が、元の様に・・・。」
「・・ん・・・ユート、あれ!」
「何!?」
驚きに目を見張る悠人達の前で、収束して行く暗黒の霧。
それは次第に、ウルカに倒された襲撃者の、胸に突き立てられた神剣へと吸い込まれ・・・同時に辺りに
漂うマナが逆流し、襲撃者の身体が修復されて行く。
そして再生を終えて起き上がり、にやりと笑った襲撃者が放つその気配は・・・!!
『危ない所だった・・・"漆黒の翼"とその娘の力、甘く見ておったわ!・・・しかし、我は実体を持たぬ
神剣。故に決して滅びる事は無い・・・この肉体では、程度は落ちるが今の貴様らなど・・・』
「・・・ざけるな!!!」
復活を遂げた<拘束>が言い終らぬ内に。
悠人が放った怒号の一撃が、神剣ごとその身体を一刀両断にする。
『な!!!・・・ま、まさか、我が・・・不滅の筈の、この我が・・・・!!???』
文字通り叩き潰されて、<求め>が纏ったオーラフォトンに掻き消され、消滅する<拘束>。
「・・・ふざけるんじゃねえ、さっさと消えちまえ。」
もっかい支援
こうしてヘリオンの救出に成功した悠人達であったが、その消耗は激しく、第一詰所に戻るには王宮から
担架を借り出して来なければならない程だった。
今はそれぞれが自室に戻り、疲弊した心身を休ませていた。
中でも重傷だった悠人が、ようやく治療を終えて横たわっていると、コンコンと戸を叩く者がいる。
軋む体に鞭打って、応対する悠人。
・・・そこに立っていたのは、<失望>を胸に抱き、俯いて小さくなったヘリオンだった。
「ヘリオン・・良かった、意識が戻ったんだな。」
「はい・・ウルカさんも、先程目覚められて、後で話をしたいと言っていました。」
「そっか、じゃあ後で様子を見に行かなきゃな。・・・まあ、立ち話も何だから入りなよ。」
促されて、おずおずと部屋に入るヘリオンの表情は冴えない。
「俺の部屋に来るのは初めてだっけか?・・ほら、椅子。ちょっと待ってな、茶菓子でも出すから。」
「・・あ、あの!」
「ん?」
「ユートさまは・・・私を責めないんですか?」
「あれは・・・ヘリオンのせいじゃない。もともと俺がウルカの監視を命じなければ、<拘束>に狙われ
る事もなかったんだし。・・・皆無事だったんだから、それでいいじゃないか。」
「でも!・・・理由はどうあれ、私は皆を傷付けました。」
「・・・。」
「それに・・・それに何より、ユートさまの命を危険な目に・・私なんて・・・私なんて敵のスピリット
達と一緒に、斬り捨ててしまったら良かったのに!」
悔恨の涙を流し、<失望>を己の首にあてるヘリオン。
「ユートさま、知っていますか?・・・・ラキオスの法律では、人に重大な危害を与えたスピリットは、
こうやって処刑されるんです。」
「な・・・馬鹿な真似はやめろ!」
「ごめんなさい、私にはこうするしか・・・・!!」
(間に合わない!?)
悠人が<失望>を取り上げようと、ヘリオンに迫った時・・・。
突然部屋中が強烈な光に包まれ、目の前が真っ白になる。
「な、何だ!?」
「熱・・・!」
眩む目をこすり、ようやく悠人の視界が回復した時、そこに見えた物は・・・。
両手を火傷し、床にへたり込んだヘリオンの姿だった。
「どうして・・・<失望>が私を助けたの?・・・今まで、喋った事もなかったのに・・・。」
呆然とするヘリオンを、悠人の容赦ない平手が襲う。
「あう!・・・い、痛いです・・・。」
「痛くしてるんだから当り前だ!!」
そう言って強引に抱き寄せる悠人。
「いいか!?・・・俺は、決してお前を見捨てたりしない・・・佳織を救い出す為とは言え、誰かを犠牲
にして良い筈がないんだ!・・・確かに、俺は今まで生き抜く為に、多くの敵を殺してきた。たぶん、これ
からだって、そうしなければならないと思う・・・けれど、矛盾しているかも知れないけれど・・・自分の
命を大切に出来ない奴に、相手を本当に思いやる事なんて出来ないとも思う。」
そこで一旦言葉を区切るが、抱きしめる腕の力は更に強くして、悠人が続ける。
「自分でも虫の良い事言ってると思うけど、俺は出来るだけ、人に死んで欲しくないんだ・・・だからつ
まり、あ〜・・・上手く言えないけど、ヘリオンは死ぬな!これは命令だぞ・・・お前は良い奴なんだから
・・・これからも俺の側に居て、俺が悩んでたら助けてくれ・・・わかったな!?」
自分でも言いたい事が整理出来ずに、強引に勢いだけで納得させようとする悠人。
しかしヘリオンは、その熱い想いに触れて、嗚咽をこらえるのが精一杯だった。
「・・・ユートさま、私は生きていても、良いんですか?」
「当り前だ。」
「一緒にいても?」
「ああ。」
「・・・そ、それじゃ・・・もうちょっとだけ、こうしていて頂けたら、死ぬのやめます。」
「・・・・・・。」
「す、すみません、嘘です嘘です!・・・これからも、精一杯頑張ります!!」
「別に、嘘じゃなくても良いさ・・・でも、あと、もうちょっとだけだからな。」
・・・この事件を境に、ヘリオンは急激な成長を遂げ、前に歩き出す事となる。
そして本来の神剣<冥加>を取り戻したウルカは、悠人の生き様に感服し、これ以降その指揮下に入る事
となり、ラキオススピリット隊は大きく戦力を増大させた。
時期を同じくして、賢者ヨーティアは<抗マナ変換装置>の完成を宣言する。
それは停滞の時が終わり、再び時代が、大きく動き出す事を意味していた・・・。
284 :
あとがき:04/08/12 15:22 ID:yV78qrvR
・・・ご支援ありがとうございました〜〜〜〜〜!!!!
いやぁ、第五幕書き終わった後は、「こんな長いの投稿してもいいんだろうか;」
と悩んだものですが・・・・(不快な方は、お許しをorz)。
さてはて、前回ヘリオンの活躍が始まると言っておきながら、悠人やウルカの方が
目立ってしまった感のある今幕ですが、ようやくここまでこぎつけました。
次回「マロリガン攻略戦」で、成長したヘリオンは今度こそ活躍するのか否か・・・!?
どうぞ、気長にお待ち下さい。それでは失礼〜〜〜〜♪
GJ
ウルカかっけーw
次回も頑張ってください
モテュカレ。
G.J!!
なんか悠人のへたれ分が少なくてかっこいいス
職人様降臨直後になんですが、電撃PS買ってきました。
今日子が悠人に料理を作るというイベントらしきCGが掲載されているのですが、
今日子の傍らにツインテールのメイド服の少女が控えているんですが…まさか
ヘリオン?
特にPS2版という表記がないのでエキスパンションディスク収録のイベントの可能
性もありますが…
さらに、おそらくネリーと思われる雑魚青スピの立ち絵が掲載されています。既出
のファーレーン&ニムのイベントCGも崩れた城壁の前で傷ついたファーレーンに
抱きついて涙を流すニム、というものなのでPC版とはまったく違う雑魚スピ用イベ
ントがあるんでしょうな。…買うしかないのか_| ̄|○
SS職人の皆様方、毎度毎度GJ&乙彼さまです。
なにかここのところ怒濤のSSラッシュが続いてるなと思いましたら、
おかげさまをもちまして、スレ立てからわずか一週間でスレ容量が
200KBを突破していました。
このペースでいくと、今月中にもスレ移行が必要になるやもしれません。
そこでちょっと今後の見通しを立てておきたいので、近日中に投稿予定の
SS職人さんがおられましたら、保管庫の連絡スレまで予定の概算容量を
ご一報願えませんでしょうか?
以上の件、よろしくお願い申し上げます。
>>288 私も読みました。
やっぱりあの立ち絵はネリーですかね。イビルルートのCGとは雰囲気が違って見えたので迷ったけどセリアにも見えなかったし。
でもヘリオンのメイド姿かわいいねぇ。単体イベントでの登場キボンヌ。でも今日子さん、やっぱり料理できなかったのね。魚のお頭なんて血の涙流しているし。ヘリオンはあれを手伝ったのか!?
書き忘れたけれど、
「明日への飛翔」の作者様、GJです。
保管庫の中の人様ご苦労様です。
ところでPS2版、雑魚スピのみなさんの顔だけでなく、
コスチュームも一人一人変わらないかなー。
戦闘シーンのキャラグラまで変えなくてもいから。
雑魚スピイベントがまたイービルルートだけだったらやだな
陵辱の代わりに戦闘で使い捨てな扱いを受ける雑魚スピたち、とか
ぐぁlalaaaaa−−−−−!!!!
電撃PSがどこにもね〜〜!!!!
7-11で普通に売ってますよDPS? お求めはお近くのコンビニへ。
ていうか、電撃で公開されているのはどこまでがPS2でどこまでがEXなんでしゃうか?
雑魚スピもさることながら、ドラゴンのビジュアルもカコイイ事に注目。
まさか・・・
expにヘリオンの…
キターーーーーーーーーーーーー
でも通販待ち・・・OTL
皆さんネリーに見えますか・・・
俺は、ネリーだったらもっとにっこり笑うんだろうなと思って
セリアかと思ったんだが、
セリアならセリアでツンとしてるのかもしれないし
「明日への飛翔」GJです、次回楽しみにしています。
明日EXを買おうか、それともPS2まで待つか
両方買い。
PS2本体込みで。
エロゲ板とかも見てて思うんだけど
家庭用ゲーム機もってない人意外といるね。
ノ <持ってない奴
ノシ <持ってない奴
いっしょに買います
XBOXならあるぞ。
持ってるが、するもの無くて押入れに封印中
つーかどうみても黒スピにみえるんですが
持ってるには持ってるが型番が最旧で
最新作の読み込みが相性によってはかなりヤバイ。
この前買ったDDSとか始めるまでに20分ぐらいかかる。
アセリア買っても動かんとかだったら洒落にならんな…。
遅レスだが、「スペツナズ」「「おお、黒マグロ...じゃなかったヘリオン。」を見て、
ホームランAAの改変みたく、
神剣の代わりに魚を持って戦うスピリットを想像しちまったよ。
さらに無我の代わりにサメを持って戦うタキオスとか、
炎帝の代わりに鯛を頭にくくりつけているントゥシトラとかも・・・。
まだ発売すらされていないPS2版アセリアが、曲芸のごとく
PS2→PCに逆移植され、完全版みたいな感じで発売されるのでは……
なんてガクガクブルブル(AA略)な漏れは負け犬。
PS2版はいろいろ追加や修正が入りまくって
気が付いたら住職が普通の萌え義妹になってたらどうしよう…。
>>309 それなら某BALDRみたいに追加ディスクを別で制作…ってEXPが別ゲームの時点で無理ディスカorz
でもコンシューマのなにがいやってどんなに短くなったといわれても存在するロード時間etc.
PC再移植とかで買いかねん
ボーカル曲増えるような話ですけど・・・。
私、OPもEDもめっちゃ気に入ってるんですよねぇ。
増えるなら挿入歌にして欲しいなあと思ったり思わなかったり。
>>296,297
EXPも設定資料集も買えたが、
今帰省中なので明日まで中身を確認できない(泣)。
まあ、今日中に誰かがレポートするだろうけど。
いきなり限定1はきつかった。みんなプレイ中かな。さて私も始めますか。
雑魚スピに顔付きの立ち絵とセリフが・・・(涙
317 :
315:04/08/13 20:28 ID:Y8KaPitj
戦闘前のパーティ編成のところも変更されているよ。
>>314 ぬあぁぁぁぁlaaaa---!!!
くやしくないもん、くやしくなんか〜〜〜(泣)
……手に入れられない濡れ達は、PS版まで御預けか?●| ̄|_
319 :
315:04/08/13 21:32 ID:Y8KaPitj
>318
明日買いに行けば?
>>319 その何気ない一言が、その一言が心に突き刺さる−−−(泣)
↑怪に逝きたくても怪に往けない23歳(社会人)
アセリアEXディスクプレイ中…
…………このスレの住人ならば万難を排してでも手に入れるべきかと。
ヘリオン(;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ (;´Д`)ハァハァ
ところでイオ分の補充は有りや無しや?
(あ〜・・・暖かいですねぇ・・・。)
うららかな昼下がり。
緑さざめく公園で、少し一休み。
頬を撫でるそよ風が、心地良い。
『・・・あ〜、嬢ちゃん。スピリットだからって差別する訳じゃないんだが・・・ウチも
商売でやってるんでね、働きの悪いもんは、辞めて貰うしかないんだわ。』
親方の言葉を思い出す。
どうも私は、人間の仕事に向いていないらしい。
(これで6件目か〜・・・・でも・・・・。)
勿論私だって、落ち込んでいるのだけれど。
・・・それが少し嬉しいのだと言ったら、皆は笑うだろうか・・・・。
軍に残れば、パンと寝床には不自由しなかったんでしょうけどね。
何故かクスクスと笑いが零れる私の目の前に、コロコロと転がってくるボールが1個。
「あ、お姉ちゃん、ごめんなさ〜い。」
手渡してやると、女の子はにっこりと笑ってお礼を言った。
すると、自然と私も笑顔になった。
・・・あの子、ちょっとオルファに似てたかな?
今日は、ホントに良い天気だ。
駆け回る子供たちを眺めていたら、やっとヒミカがやって来た。
「ごめんなさい、午前中で仕事が終わらなくて・・・。」
「いいえ、わざわざ来て貰ってすみません。」
「そんな、別にいいのよ。・・・でもナナルゥ、失業したって割には明るい顔してるわね。」
「そうですか?・・・まぁ、世の中平和ですし。」
ヒミカは呆れているが、何だか少しだけ嬉しそうに見えた。
今日も世界はとっても鮮やかだ。
明日も、やりたい事がたくさんある・・・。
325 :
飛翔の人:04/08/14 01:57 ID:bjNbtezQ
EXディスク買えた人うらやまし〜〜〜〜〜〜。
・・・などと思いながら、エンディング後の風景を想像してみました。
(明日への飛翔第六幕はまだ執筆中でござります)
人間性を取り戻しながら、社会に溶け込もうと頑張ってるナナルゥ・・という感じです。
それでは、失礼しました〜〜。
(EXディスク・・・手段を選ばず手に入れるべきだろうか・・・・)
326 :
寸劇の人:04/08/14 03:47 ID:qf0czhxB
うぉ、やけにハイペースだな。
Exはともかく、名前が名前なだけに(wネタとして演劇は観たかったんだけど、
ポリシーとしてFCはおろか通販も不可なので、当日券に期待してたが、
メルパルク売りは無しですか、そうですか。コミケ並ぶ気力はさすがにない orz
15時とか16時とかに行って並ばずに買えるなら考えるけど。
メルパルク前にダフ屋出ないかなぁ…(無理)
ま、行ける人、私の分まで楽しんで来て下さい。
(個人的にはあんな大会場ではなく小劇場こそ真髄だと思ってるけど(w)
コミケ組の方、お疲れさまでした。本スレやここの書き込み見ると、
いろいろな意味で「惨状」だったようですね、お察し申し上げます。
さて、運良く購入できた方々は今頃お楽しみの最中であろうコンチクショウと、
拝察申し上げますがw 当スレにおいては未購入の方も多いでしょうし、
自ら手に入れるまではネタバレされたくない、と言う人情も他人事ではありませんので、
当面の間(Xuse本スレ準拠で、通常版販売開始まで?)ネタバレ禁止、ということに
させて頂きたいのですが、よかとでしょうか?
>保管庫の中の人
こんな時間に乙!
さて、電PS買って来たりスレ読んで追いついたりするか…
>>320 ナカーマorz
2日目の日がどうしても休めず結局初日三日目の休みも取り消したよ…帰省ついでもあるからなぁ
>>322 ま じ で す か
友人に頼んで入手報告は受けたが待ちきれん!!はやくかえって来い!(帰還は月曜以降)
ヘリオンとネリーハァハァ
これは、ネタバレには・・・・入らないですよね?
>本スレ654
ザコスピは人丸。
ん?ヘリオンだけ、あらきまきな感じがしないでもない。
てか、ヘリオンだけ、ずば抜けて可愛いんですが…。
う、うああぁぁ・・・。
やはり手段を選ばず(FCに入って)手に入れようかな・・・。
会報とか一般郵便で来るとモロ職場バレするんだけど・・・orz
買えなかった人たちはFC入るんだろうか………
ファーレーン+ニムにハァハァ中、ニムサイコー、ニム女王、ニム大統領。
>>333 今回いけないことが判って前日に入会(12
↓
当日(13)早朝友人からメール「欲しいところ新刊落としたから行きたいところに行ったゲル」
↓
真っ先にザウス指定。
↓
無事購入報告。
…後悔はしてない、してないぞ。まあ、スレ違いだけどイマにも期待してるので。
EXはコミケ用、祭り物販用、会員通販用でちゃんと分けてあるはずだから当日券買って購入という手も…
というかザウス祭り行く人こっち住人ではどのくらい?
ゲーム中のキャプ画像揚げても大丈夫なあぷろだってある?
336 :
424:04/08/14 17:21 ID:2lFPpn/Z
>336
dクス
とりあえず貼ってみた。
GJ!
遠のく意識を引き戻しつつプレイ中…
何かヒロイン出てくるまでの展開が、すでにここのSSだな(笑
ようやくEXP開始。
ネタバレ禁止中なので中身は書かないがこれだけは言わせてくれ。
へ 〜 リ 〜 オ 〜 ン ちゃ 〜 〜 ん ! ! ! ! ! ! !
>>340 そうそう、漏れも思った。
これまでのSS、ほとんど違和感がないよ。
改めて職人さまGJです!!。
流通量の増大に伴い、ネタ晴らししたくなる指数も上がるぜ
こりゃこまったw
>>338 GJ
あれ見てやる気出てきた
やっぱり電プレにのってたのはネリーだったようだな
>>345 あの立ち絵、よく見るとネリシアで胸の大きさに違いが…、
って何を言ってるん(ry
@茶店%メルパルク近傍(w
16時過ぎ:Xuseブース様子見
「本日終了」札。
「〜17:00」とアナウンスしてあるんだから
「全品(本日分)売り切れ」にして開けておくべきだと思うよん。
18時過ぎ:メルパルク周辺観察
途中入場対応のためか入り口にスタッフと思しき姿があったのは◎。
当日券を現地売りしない地勢上の理由は見当たらず。
と、アホなことした結果、
・明日行くのは無理。行ったら倒れる、暑くて(w
・アセリアというゲームは好きだけどXuseのファンにはなれそうにない。
と判断した。たったこれだけのために現調する私もたいがいバカだけど(w
こんな私はたぶん「アセリアファン」と言うより「スレ住人ファン」かな…
とりあえずExはキャラフェス・ドリパに淡く期待しておくことにしよう…
スマソ、前スレと間違えた orz
>>342 漏れもプレイ開始早々「スタッフは雑魚スピスレ見てるんだな、やはり」とか思った。
ナナルゥファンも絶対買っとけ!!
「セ、セリアさん、宜しければこの後食事でも・・・。」
「生憎だけど、スケジュールがびっしり詰まっているの。・・・他をあたって下さらない?」
身の程知らずな軟弱男を振り切り、風を切って歩く。
確かに侵略者達の脅威は去り、ファンタズマゴリアは平和になった。
しかし、ガロ・リキュアは内実、大きな変動の時を迎えていた。
エーテル産業が壊滅した今、新旧の勢力図は大きく塗り替えられようとしている。
情勢は刻々と変化し、一分一秒だって無駄にする訳には行かないのだ。
それだと言うのに・・・。
隠れ妖精趣味の連中が日の目を見る事になったせいかどうか。
所構わず求愛して来る、先程の様な手合いが本当に増えた。
その相手をする為だけに、どれだけの時間が浪費された事か・・・。
第一、私の理想は高いのだ。
私より強いのは当然として・・・。
行動力があって、意思が強く、決して諦めない。
少し甘ちゃんで、流され易い所はあるけど、優しくて、何だか憎めなくて・・・。
鈍感で、へたれで、おまけにシスコンだけど、一緒にいると勇気をくれる。
そんな・・・。
・・・・・・・・・・・・・。
いつから私は、そんな趣味になったのだろう?
何故か零れて来た涙を拭いて、辺りを見回す。
誰にも、見られなかったでしょうね・・・?
そして、再び私は歩き始める。それが、私にふさわしい筈だから。
351 :
飛翔の人:04/08/14 22:03 ID:lcj+HR0L
EXディスク買えないよ〜という欲求不満解消用SS第二段。
(FC入るかどうかは引き続き悩み中。)
今度はED後、若手女性実業家になったセリアを妄想してみました。
悠人がエターナルになって去った後、彼女に残った物は・・・という感じでしょうか。
うぅ…なんかホロリとくるねぇ
353 :
名無しさん@初回限定:04/08/14 22:14 ID:/gXLUlCl
乙。
EXディスク手に入れた人に質問なのだが、セリアの立ち絵はどうなってるんだ?
ネリーに被ってるのか?
髪型はどちらもポニテ
しかし、セリアの方が身長高くてお姉さんっぽいよ
EXPをプレイしてみたけど、このスレのおかげで雑魚スピの追加があったんだと
思えるくらいに違和感なかったわ。スレ住人に感謝感謝
早く通販きぼん。
時深・今日子補完ディスクという認識に過ぎなかったものが、ここ数日
で劇的な変化を遂げたものだなぁ。セリアとナナルゥとファーレーンあたり楽しみ。
当初から雑魚スピ分充満世界だったらこのスレもここまで充実しなかったろうし、
存在すら危ういかもな……。そうおもうと結果オーライだな>雑魚スピの扱い
356 :
315:04/08/14 23:47 ID:9J988Lt+
セリア立ち絵いい感じ。ストーリー中のセリフとも合わせてますますカコイイ!
ヒミカって戦闘中のミニキャラがロンゲだった気がするのは漏れの思い違い?
思い違いだと思われ。
たしかに、そう見えてもおかしくないが。
むしろ、服の上からだとヒミカがぺったんこでシアーが巨乳に見えるのが
すっげー気になったんだが。
とりあえず寝る前にもう一枚上げておいた。
これでほぼ全キャラ登場かな?
あんまり可愛くなりすぎないように苦心したような絵だな
理想―
嗚呼、雑魚スピが行く・・・
望まれること無く、Xausから捨てられし彼女等を動かすもの。
それは、脇役に萌えを求める者の意地に他ならない。
斑鳩かよw
ネリーの立ち絵がかなり萌える(;´Д`)ハァハァ
地方+仕事のせいでコミケが行けなかった漏れは、
セリアの為に有給取るべきだったのだろうかorz
口調とか、本当にツンデレなのかとか、悠人の呼び方とか。
果てしなく不安なのだが、其処んとこどう?
>>366 セリアはツンデレだということは、
「前はあんなにツンケンだったのにな」的な言い方があるぐらい。
本編中で悠人に冷たい態度を取ることはない、むしろ信頼してる。
ツンはないがデレがちょびっとといったところ。呼び方は通常通り「ユウト様」。
>367
なるほど、イービルルートでの態度と合わせて考えれば・・・。
最初「ツンツン」→いろんな出来事(作中では語られず)→信頼して「デレ」がちょびっと
という事で、間違いないわけですね?ですね?
呼び方は・・・なんか聖賢者っぽいですな。E化する前の呼び方はユート様かなぁ。
369 :
338:04/08/15 20:42 ID:jeLTrNVe
有明戦線より帰還。
上記にも出ているが、別キャラのCGもあるけど、どないする?
ネタバレ指数が上がるけど、顔を赤らめたナナルゥとかもあるぞ!
やってしまってかまわないなら、メイドヘリオンもあるが?
とりあえず風呂にでも入ってくるか…
>369
個人的には上げて欲しい。
>>369 俺も上げて欲しい。
特にまだ出てないナルルゥとセリア。
では、今更だけど画像板はしばらくネタバレ注意報発動と言う事で?
373 :
飛翔の人:04/08/16 01:03 ID:sK+mQvQu
では、流れを無視して明日への飛翔第六幕を投下して見ようかと。
EXディスクに熱中してる方も、そうでない方も、どうか後で暇を見て読んでやって下され〜。
・・・あ、いつの間にか日付変わって歳増えてたや・・・orz
聖ヨト暦331年、シーレの月。
女王レスティーナはマロリガン共和国に対する再進撃の号令を発した。
長らくラキオス王国の進撃を阻んで来た<マナ障壁発生装置>に対する切り札、<抗マナ変換装置>の完
成を受けての事である。
エトランジェ、<求め>のユート率いるラキオススピリット部隊は、これまでの鬱憤を晴らすかの様に瞬
く間にスレギトを制圧すると、マナ障壁の無効化に成功した。
対するマロリガンは稲妻部隊を派遣し、スレギトの奪還を試みたが、勢いに乗る悠人達はこれを撃破。
更にスレギトの防衛を続けながら一部隊を派遣し、デオドガンの制圧に成功する。
その後も悠人達は部隊を三方に展開し進撃を続け、ラキオス国民は戦果に大いに沸いたが、ここに来て事
態は急速な展開を迎える事となる。
開戦前から各地で調査を続けていた、情報部から二つの重大な情報がもたらされたのだ。
一つは、マロリガンに侵攻中だった帝国軍が、不可解な撤退を始めた事。
現在帝国に対しては、悠人達本隊に代わって、ラキオスを除いた旧北方四カ国から徴収されたスピリット
達による別働隊が警戒を続けている。
しかし、帝国軍が転進しラキオスに侵攻して来たならば、どこまで対抗できるかは心もとない。
そして二つ目は・・・何とマロリガン共和国大統領クェド・ギンが、自国のエーテル変換施設に立て篭も
り、動力中枢である永遠神剣の暴走を企てているらしいと言うのだ。
このままでは、イースペリアの二の舞どころか、その数倍の規模のマナ消失が引き起こされてしまう。
その詳しい影響範囲は現在計算中だとヨーティアは言っていたが、最早一刻の猶予もなかった。
(別に俺は正義の味方じゃないけど・・・もう二度と、あんな事は起こさせやしない・・・・!)
運命のカウント・ダウンを前に、怒りに燃える悠人であった。
――マロリガン共和国エーテル変換施設動力部
破滅へと向かって鳴動を続ける巨大な永遠神剣を、クェド・ギンは万感の思いを込めて見上げていた。
スレギトが制圧されてからのわずか数日で、自分の名は、"国民の信頼篤き大統領"から、"人類に仇なす
狂人"へと貶められた。
・・・しかし、それが何だと言うのだ!
懐から煙草を取り出し、紫煙を燻らせる。
思い返すのは、あの頃・・・帝国の未熟な一研究員に過ぎなかった自分。しかし、最も解放され、情熱に
満ち満ちた時代でもあった。
ヨーティア・リカリオン。歴史上最高の天才。かつて我が師であり、先達であり、目標であり、同僚であ
り、友人であり、天敵であり・・・恋人でもあった存在。
あの豪放磊落な賢者の下には、今も白き妖精が付き従っているのだろう。
ヨーティアに取って、永遠神剣とスピリットの起源については、永遠の命題の一つであった。
その研究過程に於いて、様々な副産物が生み出され、その内のいくつかは凡人には計り知れない研究成果
として扱われた。彼女は、決してそれを望みはしなかったが。
そして、帝国は・・・スピリットが持つ因子について調べる研究の中から、人為的にスピリットを生み出
す事の出来る可能性が導き出されると、イオを実験動物に供する事を自分達に迫ったのだ。
ホワイトスピリットを母体に、より戦闘能力の高い、複製を量産する為に・・・!
悪魔の所業だった。
哀れにも使役される者として生まれついた存在から、より罪深き存在を創り出そうとするとは・・・。
自分達はそれを阻止する為に、帝国を追われる身となった。
そして我が手元には、イオの「素」となるべき、マナ結晶体と特殊な永遠神剣<禍根>が残ったのだ。
「かつて悪魔の所業と呼んだ物に、ここに来て頼る事になるとはな・・・だが、しかし!」
例えこの身がバルガ・ロアーに堕ちようとも、私は運命に打ち克って見せる・・・!!
そうして決意を新たにするクェド・ギンの背中に、声を掛ける一人の男がいた。
「よぉ、大将・・・悪ぃな、またノックは省略させて貰った。」
そう言って笑う飄々とした態度はいかにも軽かったが、一見無防備に見えるその姿は隙が無く、纏うオー
ラは離れていても肌を刺すようだ。
そして、クェド・ギンはその男が瞳の奥に、高い知性と深い洞察力を宿している事を知っていた。
・・・だが、しかし。
「ここに至る通路には獣性を倍加させたスピリット達を配置していた筈だが・・・それすらもお前には障
害足りえなかったか、我が国のエトランジェよ。」
「止してくれ、買い被っても何も出ないぜ。・・・俺はただ、必死で逃げ回った上で、一人ずつ気絶させ
て来ただけさ。・・・当身でほいっとな。」
簡単に言ってくれる・・・クェド・ギンは、その男・・・<因果>の光陰が、以前『この世界の人間はハ
イペリアと違って、自分で戦わないから武術などでは遅れている』と言っていたのを思い出した。
その後『あくまで対人用の物はだが・・・』とも付け加えていたが。
「俺が片付けちまったら、後で大将が困るだろ?」
「それはありがたいな・・・だがしかし、それでは議会の老人共に言われて、私を止めに来たと言う訳で
もなさそうだな。まさか、生きてる内に会うことがあるとは思ってもいなかったが。」
「あいつらには恨みこそさえあれ、恩も義理もない・・・が、あんたは別だ。この世界に来て、俺達を人
間扱いしてくれたのは大将だけだったからな・・・。」
実際、クェド・ギンの保護が無かったならば、<空虚>に精神を取り込まれてしまった今日子は、とうの
昔に発狂するか衰弱死してしまったに違いない。
それを抜かしても、光陰は運命に嫌われたと自負するこの男に、同類めいた感情を持っていた。
「それこそ買い被りと言う物だ。私は、そう遇する事が双方に利すると思い、行動したに過ぎん。」
「まあ、そうなんだろうけどな。・・・それで、だ。こんなとこに篭ってちゃあ、外がどうなってるかも解ら
んだろうと思ってな。出る前に、戦況報告でもしておこうかと思ったわけだ。」
「ほう?」
今のクェド・ギンに取ってはマロリガンの戦況などは些事に過ぎなかったが、運命が遣わした者達がどれ
ほどの力を持っているのかと言う事については、興味があった。
そして果たしてその者達が、運命に抗う力を持っているのかどうか・・・。
「ぶっちゃけると、戦況はすこぶる悪い。・・・大将が俺達にもっと強力な権限をくれていれば、こうは
ならなかったんだろうけどな。」
「そういじめるな。・・・それで、老人共の言う通りにしたらどうなった?」
「ああ。元々稲妻部隊は、戦力ではラキオスの連中を上回っていた。けれど、部隊を三方に分けて、押し
包むように展開した結果、敵に各個撃破される隙を与えてしまったんだな。」
どうしようもない、と言う風に両手を挙げてみせる光陰。
「・・・ま、これは相手も悪かった。あの爺さん達ばかり責めるのも可哀相だな。ラキオスの連中も部隊
を三つに分けたんだが・・・まず北方ニーハス方面には、"ラキオスの蒼い牙"の姿が確認された。これは予
想の範囲内だったが、南方ガルガリン方面が問題だ・・・あの"漆黒の翼"が指揮を取っているらしい。」
「ふむ・・・"漆黒の翼"が、ラキオスの部隊をか・・・ラキオスが帝国と協力する事は有り得んから、や
はり奴がラキオスに投降したという情報は本当だったか。」
マロリガンの議員達はそれを誤報ではないかとうろたえたが、クェド・ギンはそれが事実だと確信した。
あの若き女王ならば、かつて敵であった者でも用いるくらいの度量は充分にある。
そして、彼女達に運命が味方しているならば、今この時期に帝国の遊撃隊長がラキオスに帰属するくらい
の事は、あってもおかしくないと思っていた。
「・・・これでラキオスには、"大陸の三傑"の内二人が揃った事になる。」
「エトランジェが出現してからは、影も薄くなっていたがな。では、我が方の"三傑"はどうしている?」
「クォーリンには、ミエーユの守りを任せてある。"深緑の稲妻"と言われるだけあって、今までラキオス
の侵攻を受け止めていたが・・・恐らく中央方面部隊があっちの主力だ。長くは持たないだろうな。」
「そうか・・・それで、とうとうお前も出ると言うのか。」
「前にも言ったろう?・・・ここまで来たら、大将に付き合ってやるって。決着をつけなきゃならん奴も
いるしな。・・・あ〜、防衛隊はまんま残して置くから、議会府の連中が邪魔する事はない。安心して篭城
してな。それじゃあ、気絶させた奴らが起きる前に行くが・・・。」
「どうした?」
「いや、何でもない・・・達者でな、大将。」
「ああ、健闘を祈っておるよ。」
そそくさと元来た道へ戻る光陰。
それを見送りながら、クェド・ギンは苦笑して呟いた。
「まったく、最後まで食えん奴よ・・・だが死ぬなよ。奴らもまた運命を乗り越えるとしたならば・・・
その時は、お前達もそちら側に行け。」
――北方ニーハス侵攻部隊。
「はぁ・・・面倒。どうせ私達本命じゃないんだし、テキトーにやっちゃダメかなぁ・・・。」
「こ、こらニム!私達も、ここを制圧したらマロリガン本土に向かわなきゃならないんですからね!?」
「は〜い。・・・やれやれ、お姉ちゃん真面目だからなぁ・・・。」
「・・・前方に敵影確認・・・来ます。」
「ん・・・来た敵は・・・倒す!!」
――南方ガルガリン侵攻部隊。
「私もパパと一緒が良かったなぁ・・・よーし、敵さんいっぱいやっつけて、褒めて貰うんだから!」
「あらあら〜・・・置いて行かないで下さいね〜?」
「ふむ・・・では、手前らも参りましょうか。くれぐれも、油断なさりませぬよう。」
「余計な気遣いは無用よ・・・それに勘違いしないで、私はまだ貴女を信用してないの・・・その働き、
見せて貰うわ。」
「望む所です・・・元より手前は、剣以外に証を立てる術を知りませぬ。」
・・・そして時は流れ、二部隊より遅れて侵攻した中央ミエーユ侵攻部隊。
「ねぇねぇシアー、ヘリオンって前線から離れてる間に、何かあったのかなぁ?」
「・・・解らないけど、すごいと思う・・・。」
双子の姉妹が話しに興じる内に、ヘリオンは先へ先へと急いで行く。
これまでに遭遇した敵の数は二桁に届こうという勢いだ。
そして、その半数をヘリオンが斬っていた。
(・・・<失望>が、いつもより身近に感じられる・・・。)
あの夜から、ヘリオンは自身に表れた明確な変化を感じ取っていた。
以前の自分は<失望>を信頼するどころか、ラキオスではただ一人第九位の剣を持つ事にコンプレックス
を感じ、また、育成期間の体験から血塗られた剣と忌み嫌っていた。
けれど、今の自分は違う・・・。
自分が心身共に強くなれば、<失望>は力を貸してくれる。
そう言ったエスペリアの言葉が、本当に理解できた気がした。
「ヘリオン、先行し過ぎよ・・・少し下がりなさい!」
「あ・・・す、すみませんヒミカさん!」
我に返り隊列に戻るヘリオンに対し、暖かく微笑むヒミカ。
「でも、その積極性は以前にはなかった物ね・・・それが無謀にさえならなければ、貴女を守ってくれるわ。
・・・私の見た所、斬った敵は皆急所を外していたみたいだけれど。」
「うぅ・・・や、やっぱりばれてましたか。」
「でも、今はそれで良いわ。十分戦闘不能に陥るくらいのダメージは与えていたし。・・・今日は敵を倒
すよりも、優先しなくてはならない事があるから。」
「はい!」
そしてヘリオン達はミエーユの行政地区にある中央広場に侵入するが、強い神剣反応を感じ急停止する。
直後、轟音と共に、その目と鼻の先を荒れ狂う衝撃波が襲う!
「あ、危なかった・・・。」
「・・・運の良い奴らだ、私のエレメンタルブラストに気付くとは。」
そう言って立ち塞がったのは、五名の稲妻部隊を引き連れたグリーンスピリット。
その神剣は槍状をしていながら、柄とは垂直にもう一つの刃が伸びて、その先が引っ掛けられる様に曲が
っている――ハイペリアで言う、「戟」に近い形状をしていた。
「そう言う貴女は、"深緑の稲妻"かしら。」
反応を見極めようと、ヒミカが問いかける。
「・・・ああ、<峻雷>のクォーリンだ。コウイン様に、このミエーユの守りを任されている。」
(やっぱり・・・。)
ヒミカの目配せに、ぎこちなく反応するネリー。
この落ち着いた態度といい、やはり充分に危険な相手のようだ。
「しかし・・・中央部隊は貴様らだけか?・・・南北の部隊ではエトランジェは確認されていないそうだ
が・・・ならば、一体どこにいる!?」
「ユートさまは、今は別の場所にいます・・・けれど、あなたをそこには行かせません!」
そう言って<失望>を構えるヘリオン。
ネリー、シアー、ヒミカの三人がそれに続く。
「まさか、三部隊全てが陽動だと言うのか・・・ならば、貴様らを蹴散らして探しに行くまでだ!」
対する稲妻部隊は六名。倍する敵に苦戦は必至だと思われたが・・・。
「よーし、いっくよ〜・・・・・サイレントフィールド!!」
ネリーが唱えた神剣魔法が、周囲のマナを沈静化させる。
それに伴い、各人の護りの力が低下し、同時に魔法が封じ込められた。
「へへ〜ん、<静寂>のネリーの力を見たか♪」
「こ、これで、しばらくは剣だけの勝負になります!」
接近するヘリオンと、迎え撃つクォーリン。
「面白い・・・ならば、我が<峻雷>の一撃、見事受けて見せよ!!」
それより少し前・・・。
悠人はエスペリアと二人、マロリガンを目指していた。
ミエーユを大きく迂回し、道無き荒野を駆け抜ける。
方角は、天を衝き立ち上る光の柱が教えてくれた。
神剣の気配を抑え、可能な限り速く、あの光の下へ・・・。
(ヘリオン、皆・・・無事でいてくれよ!)
悠人は駆けながら、先程の作戦会議を思い出していた。
『たった一人でマロリガンに向かうなんて・・・余りに無茶です!!』
悠人の提案に、エスペリアが噛み付く。
『けれど、他に方法がないんだ・・・今からではもう、部隊を呼び戻して再編成するのは不可能だ。なら
ば、各部隊が敵の防衛線を突破し、それぞれマロリガンを目指すしかない。』
ヨーティアからの通信を受けて、現状で考えられる唯一の手段がそれだった。
その基本方針は、既にイオが<理想>を通じて各部隊長に伝令している。
『俺達中央方面部隊は、このままミエーユを陥落させて進むしかない・・・けれど、もし、他の二部隊が
先に到達したなら・・・光陰と今日子が、黙ってはいないだろう。』
ミエーユを守るのは、光陰達エトランジェを除けば、稲妻部隊最強の"深緑の稲妻"である。
そうなる可能性は、決して少なくはなかった。
『あいつらと皆が殺し合うなんて、俺には耐えられない・・・だから俺自身が、決着を付けたいんだ。』
『しかし・・・・。』
『だいじょうぶ、俺だって死にに行くつもりはない。これだって、ちゃんと考えあっての事だ。』
支援だアパーム!
その時、抗弁しようとするエスペリアを遮って、ヘリオンが口を開いた。
『それでしたら・・・エスペリアさまが、ユートさまに付き従うと言うのはどうでしょうか?』
『な・・・!』
『一体何を・・・回復無しで、ミエーユを落そうと言うの!?』
『私もヘリオンに賛成です。要は、ユート様が敵エトランジェを倒す時間さえ稼げれば良いのでしょう?
・・・最初から撹乱と陽動を目的に行動していれば、被害は最小に防げる筈です。』
そう言って、ヒミカが助け舟を出す。
『それに・・・ネリーとシアーをこの中央部隊に加えたのは、敵サポーターを無力化する為だと理解して
います。強力な神剣魔法さえ防げれば、勝算は立てられるのではないでしょうか。』
『わ、もしかしてネリー達って、すっごく頼りにされてる?』
『そ、そうなのかな・・・。』
沈黙し、考え込む悠人。
『ユートさま・・・私達は決して死にません。ユートさまが、コウインさまとキョウコさまを救う事を諦
めていないように・・・例えどんな窮地に陥っても、決して諦めませんから!』
ヘリオンは、自分の心を理解してくれている・・・ならば、俺もそれを信じるのみ。
『解った・・・ミエーユの攻略はヒミカ以下四名に任せ、俺とエスペリアは敵の目を欺きながらミエーユ
を迂回、そのままマロリガンを目指す!』
・・・恐らく、その途中で光陰達と戦う事になるだろう。
どんなに気配を隠そうとも、<因果>の目には・・・いや、光陰の読みには、無駄な筈だ。
『但し、自分達の命を最優先に行動しろ。必ずマナ消失を回避し、俺達は生きて再会する。いいな!?』
『『『『はい!!』』』』
道無き道の先。疾走を続ける悠人達の前に、辛うじてそれと解る人影が見える。
ブレザーの上に、マロリガンの戦装束を着込んではいるが、紛う事無きそのシルエットは・・・。
「・・・光陰!」
「よお、元気そうだな・・・だがたった二人で来るとは、少々予想外だったな。」
そう言って、軽々と片手で<因果>を掲げて見せる。
背後には、直属の稲妻部隊数名が、光陰の号令を待ち待機していた。
「俺がこのまま、こいつらに攻撃を命じたらどうするつもりだ?」
「お前はそんな事しないよ。もし俺を殺るのなら、必ず一対一で戦う男だ。」
この緊迫した場面で、まるで冗談を投げ掛け合うかの様に会話する二人。
光陰はぽりぽりと頭を掻きながら、尚も続ける。
「さすが親友・・・だが、先に来たのが今日子だったらどうするんだ。・・・あのじゃじゃ馬姫も、今は
手加減してくれないぜ?」
「光陰・・・お前が、今日子を捨石にして俺の消耗を狙うなんて戦略、取る訳がないだろう!!」
激情と共に、オーラフォトンを展開させる悠人。
「あ〜〜、すまん、今のは俺が悪かった。・・・しかしその様子なら、戦う覚悟は出来たようだな。」
対する光陰も、悠人に匹敵するオーラを集中させる。
エスペリアも、稲妻部隊も、手出しをする様子はない。
・・・いや、したくとも、もはやその場の誰も、この二人の間に介入する事はできなかった。
「俺は仲間に恵まれてるからな・・・おかげさんで、覚悟はできた。・・・けどそれは、戦って殺す覚悟
じゃない。・・・何が何でもお前達を救って、一緒に元の世界に帰るって覚悟だ!!」
――場面は変わり、その頃のミエーユ。
「く、こいつ・・・本当にレッドスピリットか!?」
「・・・悪いけど、負ける訳には行かないの。」
スピリット同士の戦いに於いて、神剣魔法を封じ敵サポーターを叩くというのは常套手段である。
故に、稲妻部隊もそう行動したのだが・・・。
レッドスピリットの中では例外的に、接近戦をも得意とする<赤光>のヒミカに取って、容易く倒せると
油断した者を返り討ちにする事など、造作も無い事だった。
ましてや、自分が敵を引き付ければその分、他の者達の負担が軽くなる。
今のヒミカに対し初手を誤ったのは、致命的なミスと言えた。
「格闘は好き?・・・剣の力を借りた連撃、行くわよ!」
一方、ネリーとシアーはと言えば・・・。
「きたきたきた〜♪・・・この距離はネリーの間合い!」
「・・・もう、ネリーったら、背中に気をつけて!」
回転は速いが動きが粗いネリーの攻撃を、シアーが絶妙のタイミングでサポートする。
二人はまるでそれ自体一つの生き物の様に、互いを補完し合い戦場を翔け続けた。
その青い妖精達が織り成す舞に、さしもの稲妻部隊も翻弄されるばかりである。
そして・・・。
「どうした、黒い妖精よ!・・・逃げ回るだけでは道は開けぬぞ!?」
息もつかせず繰り出される、クォーリンのまさに稲妻の様な突き!
ヘリオンはそれを紙一重で避けながらも、反撃の機会を見出せずにいた。
(やっぱり、この人・・・とてつもなく強い!)
グリーンスピリットであるクォーリンは、神剣魔法を封じられた事によってその能力を制限されていた。
しかし、ネリーのサイレントフィールドには、敵味方問わず効力を与えると言うデメリットもある。
結果として、一対一で白兵戦を強いられるヘリオンには、より危険な役割が与えられたと言って良い。
加えてクォーリンの神剣の形状。
生半可な斬戟では、たちまち<失望>を絡め取られてしまうだろう。
(で、でも・・・。)
一人で複数の敵を相手にするヒミカも、最大戦速で翔け回るネリー達も、そう長くは戦い続けられない。
何より、こうしている間にも敵の増援が到着するかも知れないのだ。
自分が、指揮官であるクォーリンを倒し、突破口を開かねばならない・・・!
ヘリオンはそう覚悟すると、精神を集中しマナを高め続けた。
「やっと本気になったようだな。」
「私は、あなたを殺したくはありません・・・けれど、守るものの為に・・・勝たせて頂きます!」
「そうか・・・私にも、守らねばならないものがある・・・その為に全てを賭けよう、来い!!」
<峻雷>を構えるクォーリンの周りを、螺旋を描くように駆け続けるヘリオン。
空中から仕掛けても、ハイロゥでの姿勢制御くらいでは、この相手を出し抜く事は出来ない。
ならば自分の最大の武器である俊敏さを持って、撹乱し隙をこじ開けるしかない。
・・・・早く、速く、疾く・・・・!!
フェイントを織り交ぜ、突きを打ち払い、堅い護りを一気に断ち切るその機会は・・・。
「そこです!」
「甘い!!」
研ぎ澄まされたクォーリンの迅雷の突きを、反応速度で上回るヘリオン。
肉を切らせながら姿は既にそこに無く、向き直る前に最高の技で持って勝負をつける!
「野に放たれた火のように・・・・・・星火燎原の太刀!!」
・・・・・。
「今日子、諦めるな!・・・生きて償うんだ、俺達も一緒にいる!!」
悠人は・・・目の前で再び、<空虚>に支配されつつある親友に向かってそう叫んだ。
『しょせん、人は心弱き存在・・・私の支配に勝てる筈もなかったな。』
今日子の声で、<空虚>が嘲笑う。
『契約を果たすのだ・・・最早あの娘が己を取り戻す事は無い・・・<空虚>を破壊せよ!!』
(黙れバカ剣!・・・俺は光陰に誓った。必ずこのじゃじゃ馬を救い出すってな。)
『<誓い>だと!?その名を出すでない、契約者よ・・・我には及ばぬとは言え、<空虚>の力は絶大だ
・・・その娘では抵抗出来まい・・・<拘束>の時とは訳が違うのだ。』
(誰が<誓い>の話をした、このバカ剣が!・・・待てよ、<拘束>か・・・。)
悠人が<求め>と会話していても、<空虚>は容赦無く攻撃を続けて来る。
止むを得ず応戦し、互いに浅手を負うが、形勢に影響する物ではない。
「よし・・・いいかバカ剣、<空虚>の意識だけを断ち切るぞ!!」
『無茶を言うな・・・む?・・・ま、まさか、止めるのだ契約者よ!』
クォーリンをも上回る、<空虚>のペネトレイトの一突き。
悠人はそれに対して自ら左腕を差し出すと、今日子の動きを止めて、オーラを纏った蹴りを放った。
『・・・ぐあっ!!?』
衝撃と共に吹き飛ばされる今日子。
・・・そして<空虚>は、悠人の腕に突き刺さったまま沈黙する。
「痛って〜〜〜〜!だ、だがまあ、ウルカみたいに綺麗には出来なかったけど、上手く行ったか?
『この愚か者が!!!』
悠人が自らの閃きに満足していると、怒鳴り声と共に、<求め>が最大級の頭痛をお見舞いする。
「うがぁ!・・・って、何しやがるこのバカ剣!!」
『愚か者と言ったのだ、契約者よ・・・今のはその娘が、直前に<空虚>から意識を切り離したのだ・・
・・そうでなければ、傷口から直接電撃を流されて、今頃黒炭と化していた所だったぞ。』
「そ、そうだったのか・・・でも、それなら今日子は助かったんだな?」
『・・・あの娘なら、<空虚>の支配からは脱したようだ・・・だが喜んでいる場合ではないぞ。それは
つまり、生身の人間が無防備な状態で契約者の蹴りを受けたと言う事だ。』
「げ!?・・・エ、エスペリア、今日子を頼む!!」
最近シリアスにしていた為か、とんでもない大ポカをやらかした悠人だったが・・・。
すぐに治療に取り掛かった為、今日子の命に別状は無さそうだった。
(後できつい仕返しは覚悟しとかなきゃな・・・。)
その恐怖に身震いする悠人。
そして・・・。
今日子の部下に後を任せ、二人はやがてマロリガンへと到達した。
「この大気の震え・・・。」
「はい・・・あの時と同じですね。」
悠人と同じ物を感じ取り、暗い表情をするエスペリア。
マロリガン市街地からは、衝突する神剣反応が感じられた。
やはり、他の二部隊は先に到着しているようだ。
「必ず食い止めてみせる・・・行くぞ!」
合流を果たし、作戦会議を行う悠人達。
「遅れて済まない・・・しかし皆、良くやってくれたようだな。」
「ウルカさんとセリアさんが頑張ってくれましたから〜〜。勿論、オルファちゃんも〜。」
「わ、私は自分の役目を全うしただけよ。ウルカの働きは、認めてあげてもいいけど・・・そ、そんな事
よりも、他の四人はどうしたんですか!?」
「ヒミカやヘリオン達は別行動を取っている・・・必ず後から来る筈だ。」
悠人はそれだけを、しかし強い願いを込めて言うと、おもむろに口を開いた。
「先程ヨーティアから通信が入ったんだが、皆にも聞いておいて欲しい・・・マナ消失の影響範囲の計算
結果が出た。結論だけ言うと、大陸がまるごと吹き飛んでもおかしくないらしい。」
悠人の発言に、息を呑む一同。
「俺達の肩には、ラキオスだけでなく、この世界の命運が掛かっているという事だ。何としても、エーテ
ル変換施設の暴走を食い止め、マナ消失を阻止しなければならない。」
ユートの後を引継ぎ、作戦を説明するエスペリア。
「まず、ラキオススピリット部隊は一丸となって、エーテル変換施設までの突破口を開きます。その後数
名が内部に突入し、残る全員で稲妻部隊の妨害を阻みます。突入部隊の内訳は、ユート様と私、そしてウル
カにセリアの、合わせて四名です。防衛部隊の指揮は、ファーレーンに任せます。」
「えー!?・・・今度こそ、パパと一緒だと思ったのに〜。」
「・・・オルファ、この作戦は万に一つの失敗も許されないの。エーテル変換施設は既に臨界直前で、い
つマナ消失が起きてもおかしくない状態にある・・・その為少しでも影響を避ける為に、内部では強力な神
剣魔法の使用は控えなければならない。だからナナルゥもあなたも、連れて行く訳には行かないの。」
「ちぇっ・・・わかったよ〜。」
「それとファーレーン。戦闘は、あくまで殲滅目的でなく、時間を稼ぐ為にやってくれ・・・危険を避け
て、できるだけ相手側にも死者を出さないように。無茶を言うが頼む。」
「承知しました。」
「よし・・・じゃあ皆、行くぞ!」
マロリガンに残された最後の防衛線を突破し、強化され獣性を剥き出しにしたスピリット達を退け。
・・・悠人達は、暴走を続ける動力中枢の内部への進入を果たした。
それぞれの神剣は警戒音を発し、空気中のマナは、むせ返る程に濃い。
「やはり、来たか・・・ラキオスのエトランジェよ。」
悠然と振り返るクェド・ギンの瞳に、狂気の陰りはない。
ならば、一体何がこの男にそうさせたのだろうか。
「お前達は、自分の意思でここに来たと思っているだろうが・・・そうではない。考えた事はあるか?戦
い続けるその先に、何があるのか・・・我々は、運命という名の喜劇を演じる道化でしかない!」
「大統領、あんたが何を言っているのか、何をしたいのかは俺には解らない・・・けれど、俺は佳織や、
ラキオスの皆や、この世界の人間を破滅させる様な、そんな事を許す訳には行かない!」
「世界の破滅か・・・それを願っているのは俺ではない。俺がそうせずとも、遠くない未来、世界は滅び
を迎えるだろう・・・だが、それは永遠神剣の思惑によってなのだ。それが運命だと言うのなら、俺は抗お
う。人の手で脚本を塗り替える・・・そう、この世界を消し去る事によってな!」
そう言ってクェド・ギンは、一個のマナ結晶を取り出す。その右手には、永遠神剣?
「この<禍根>は、唯一人間が操る事の出来る神剣だ・・・さあ神剣の使者よ、人の意思と、剣の意思。
どちらが未来を握るのか・・・・。」
クェド・ギンの手の中で、<禍根>とマナ結晶が共鳴を始める。
それは次第に周囲のマナを取り込んで、白く輝き、クェド・ギンの姿が光の中に消える・・・!
「神剣の思惑通りに生きるなど、あってはならない。」
「よ、よせ!!」
「俺達は、生かされているのではない・・・生きているのだ!!!」
眩い光の中、悠人は確かにクェド・ギンの最後の言葉を聞いた気がした。
『お前達が勝ったなら――俺の意思を――継いでくれ』
その意味は解らない・・・けれど、悠人はクェド・ギンが己の野望や狂気の為に、こんな事をしたのでは
ないと確信した。彼も、何か・・・自分の命よりも大事な何かの為に、戦っていたのだ。
だが今は、感傷に浸っている場合ではない。
一刻も早く、神剣の暴走を食い止めなければ。
そうして悠人は歩き出すが、クェド・ギンが消えた場所に、一人のスピリットが立っている事に気付く。
「ユート様、あれは・・・!」
エスペリアが叫ぶ。
そのスピリットは、髪も、肌も、全身が抜けるように白かった。
自我は感じられず、ただ血の色に染まる瞳だけが、彼女がどのような存在かを示していた。
「俺達が勝てばってのは、こいつにか!」
それぞれがオーラフォトンを、ハイロゥを展開する。
先手必勝とばかりにウルカが斬りかかるが、その裂帛の一撃もホワイトスピリットの護りの前にはわずか
な傷しか与えられず、疾風の槍の前に飛び退かざるを得なかった。
続いて詠唱された神剣魔法は、セリアのアイスバニッシャーをも跳ね除け、悠人が精霊光のバリアを張っ
て尚、それを突き抜け猛威を振るう。
エスペリアが癒しの魔法を唱えるが、このままでは力尽きるのも時間の問題だった。
「ユート殿、一か八か手前が特攻を試みましょうか?」
「駄目だ・・・この暴風を潜り抜けた後では、一太刀で仕留められなかったら串刺しにされるぞ!」
まさしく手詰まりだった。
根競べをしようにも分が悪く、また時間も余り残されていはいない。
焦燥に駆られる悠人が、自ら賭けに出ようとしたその時。
悠人達の周りを、彼のそれとは違うオーラフォトンの護りが覆っていく。
いや、加護の力に於いては、悠人をも凌ぐその男は・・・。
「光陰!」
「苦戦してる様だな・・・やっぱりここで、真打ちが登場しなきゃな。」
振り返って叫ぶ悠人に対し、人を食った台詞で応じる光陰。
相変わらずのへらず口は、死に掛けても治るものではないらしい。
そしてその後ろには、ヘリオンとファーレーンの姿も見えた。
「へ、そんなボロボロで何言ってやがる。だけど本当に無事で良かった・・・そうだ、今日子は!?」
「稲妻のクォーリンに任せてある。まあ、あのじゃじゃ馬姫には良い薬だっただろ・・・だがびっくりし
たぜ、この嬢ちゃんが、クォーリンを抱えて俺の目の前に飛んで来た時にはな。」
そう言ってヘリオンを指し示す。
ヘリオンは照れて赤くなっているが、その動作には深い疲労の跡が見えた。
実はミエーユにはヒミカだけが残り、光陰の倒れていた場所まではネリーとシアーも一緒だったのだが、
ヘリオンは更にあの荒地から、光陰を抱えてマロリガンまで飛んで来たのだ。
「あの跳ねっ返りを説得して連れて来るとは、なかなか大した嬢ちゃんだ。」
「そ、そんな・・・私はただ、悠人さまは絶対にお二人を見捨てないって言って、クォーリンさんがそれ
を信じてくれただけで・・・だ、だから、全然大したこと何てないです!」
そう言って俯くヘリオンを見て、悠人は思わず胸が熱くなるのを感じていた。
「そうか・・・本当に良くやってくれたな、ヘリオン。」
「ユ、ユートさまなら、絶対にそうすると思ったから・・・。」
そんな二人の横から、申し訳なさそうにファーレーンが呟く。
「あの・・・報告しても宜しいでしょうか?」
「あ、ああすまん!・・・よろしく頼む。」
「では失礼して・・・外部での戦闘ですが、コウイン様の呼び掛けで現在は停戦状態にあります。・・・
ユート様が突入されてからは、ご命令通り双方に死者は出ておりません。大勢で加勢に来ても邪魔になるば
かりだと判断して、他の者は混乱したマロリガンの収拾にあたっています。」
「解った。ファーレーンもご苦労だったな・・・そうだな、俺達はこの後の事も考えなきゃな。」
「だが、先ずはここを切り抜けなきゃならんぞ、悠人。」
光陰の言葉には、どこか悲しげな響きがあった。
「・・・あれが大将の成れの果てか・・・楽にしてやらなきゃな。」
「ああ、勿論だ・・・行くぞ、光陰、みんな!」
今ならば、どんな困難にも打ち克つ事が出来る・・・。
悠人のその想い通り、彼等は空前のマナ消失による世界の崩壊を防ぎ、英雄として迎えられる事となる。
そしてマロリガン共和国は正式にラキオス王国への降伏を宣言し、併合されるのだ。
しかし神聖サーギオス帝国は、その戦力を法王の壁の内に駐留させたまま、不気味な沈黙を守っていた。
二人の親友を取り戻した悠人の前に、一体これから何が待ち受けているのだろうか・・・。
「どうやら間に合ったようだな・・・。」
立ち上る光の柱が消失し、大地の鳴動が止まったのを見てクォーリンが呟く。
傍らで眠る今日子は、まだ意識が戻る兆候は見えないものの、命に別状ない所まで持ち直していた。
「だからヘリオンが言ってたでしょ、ユート様は絶対にコウイン様もキョウコ様も助けて、マロリガンも
救ってみせるって。・・・ね〜、シアー?」
「う、うん・・・ホントにその通りになったね。」
同意を求められるが、実は半信半疑だったので言葉に詰まるシアー。
「わ、解ったから私にそんなに馴れ馴れしくするな!・・・まだ、終戦は宣言されてないんだぞ。」
「何言ってるのさー。私達の勝ちに決まってるじゃない。」
「そうだね・・・。」
「う、うぅぅ・・・もう良い!・・・とにかく急いで、私達もマロリガンへ行くぞ!!」
「え〜〜〜!?・・・人を抱えて飛ぶのって、すっごく疲れるのに・・・。」
「意識のない人を運ぶのって大変だよね・・・。」
悔しさ紛れに無茶を言いながらも、クォーリンは自分を倒した少女の事を思い返していた。
優位に立ったあの状況で、自分に止めを刺すことはせず、コウイン様とキョウコ様を助ける為にも、協力
して欲しいと真剣な表情で説得して来たブラックスピリットの少女。
結果として、その説得に乗ったおかげでコウイン様の命は助かり、救援に向かう事が出来た。
「ヘリオンと言ったか・・・。」
もしかして、この戦いの影の功労者はあの少女だったのかも知れない。
あの小さな身体に良くあれだけの力が宿っていた物だと、感心するクォーリンであった。
396 :
あとがき:04/08/16 01:56 ID:sK+mQvQu
どうも支援いただき、ありがとうございました〜♪
無理やり一幕に収めようとした為か、駆け足で通り過ぎた感のある第六幕ですが・・・
・・・とりあえず、雑魚スピ全員に台詞言わせられたから満足かな。クォーリンも出したし。
クォーリンについては、アセリア本を持ってないので、ほとんど創作になってしまいました。
・・・たぶん、緑スピだと思うのだけど・・・。
"三傑”については、第四幕で名前だけ出しておいたので、ここで使うだろうなぁと予想してた人も多いでしょう。
<峻雷>については、たぶん辞書開いても出てきません。
小説に出てきた架空の戦闘機の名前を拝借しましたから・・・。(他にも意味あるのかな?)
後は、<禍根>イオの設定とか、マロリガン議員が死んでないとことかは、小説版見て拒絶反応を
起こしたのでオリジ設定になっています。
だって、今日子が後で苦しむの解ってるのに、光陰がみすみす人殺しさせたりしないですよねぇ・・・。
それでは長いあとがきになってしまいましたが、またのお目見えまで、失礼〜〜〜。
遅くまでご苦労様です。GJ!!
お疲れ様です、EXを手に入れられない者にとっての潤いですなぁ。
青スピ、ぶっちゃけネリシアの編成は、色んな意味で最高です!
ゲームでもよく使ってましたし。
PS2版に合わせてネリシアの話を再構成していきましょうか(感化された)
最近のEヘリオンや、シンクロで合体ネタを見て
水月の双剣を使わなくても、色々出来るんだなと考えさせられました。
画像掲示板に全キャラ掲載してきました。
ネタバレが嫌いな人は、申し訳ありませんが注意深くページを開いて頂くよう御願いしますm(__)m
ちなみにEXですが、おばs(ryはドタバタ劇(本人含む)で初回の戦闘まで進み、今日子は
本編や設定の補完的な流れで進みます。
光陰視点で話しが進んでいるときに、おそらく悠人がエターナル化したであろう展開もあるんですが…
やっぱり寂しいわな
>飛翔の人
新作GJです(゜▽、゜)ノ
しかしSS職人がEX入手したら(すでにそんな人もいるかな?)、どのくらい影響を受けるかな?
てか、EXプレイした人間から見ると、ザウスがここの影響受けているとしか思えないんだがw
ナナルゥの立ち絵が全く弱気そうに見えないから違和感あるな。
あと、ハリオンが微妙にカエルっぽいのが可哀想というか
ま、時深すきーだからEXは大満足なんだけどね。特にメル欄(微妙にネタバレ?)
ナナルゥは別に弱気、ってわけじゃないんじゃ。それともEXで何か変化あるんだろうか。
本スレで商法含む(苦笑)完全版云々が言われてるけど、出るなら今更ながら雑魚スピ+α(クォーリンetc.)のその後もEDで流れないかのぅ。
…ああED曲の長さが半端じゃなくなりそうだからダメですか…orz
>>401 正直今回のEXはPS2版への布石というか、PS2用シナリオのお披露目じゃないかな?
なので、PCで完全版がでるか、それともPS2版がでるか…
最高のシナリオは、PS2版がでて、それの逆移植版をPC版でだすw
言われてみると、俺の勘違いイメージっぽいな<ななるぅ
ヘリオンとかネリシアみたいな感じだと思い込んでた。
PS2版ではキモウトの出しゃばりが本領発揮。
イビルルートならぬキモウトルートで大暴れです、な悪寒がしてしょうがない
>403,404
つ【証拠写真】
r‐-- -┐
/ /゙・ 皿・_ヽ<ナポリタン・レイ!」
レ'´从リ从!〉
l从○===================================
(リ(つと)
く/_|〉
(_ノヽ)
>>403 そういや演劇観にいったケド、開演直後のPS2版ムービーで
住職の技が炸裂してたよ
ATTACKER-SKILLでナポリタンが攻撃してた気が…や、やはりアレが本体か!
……ネタバレすんなよぅ・゜・(ノД`)・゜・。
ファーレーンの冷遇っぷりは相変わらずです。
ネタなのか、バレなのか判別できん。
>408
オレが暖めるからOK
遅れ気味で電プレ購入。
日本一ソフトウェア(ディスガイア)+電プレ=電撃データ。
という経験から、発売から半年くらいで、稲妻部隊(クォーリン)追加データが!?
などと考えてしまった。
>飛翔の人さん
GJです!
上記の事が浮かんできたのは、クォーリンがいい味を出している新作を読めたからでもあります。
もうヘリオンが過去の傷に悩まされる事は無いほどに、それを乗り越えた強さを見せているのが
クォーリンとの戦闘シーンから伝わってきました。
>>396さん
遅レスですが、G.J.でした。クェド・ギンカコイイ。
>飛翔の人さま
新作お疲れ&GJです。
アセリア本によると、クォーリンは確かに緑スピのようですよ。
"大地の祈り"を使えるようですので。
新たな法律が制定されました。
【妖精趣味は死刑】
特にスピリット隊隊長は、誤解を招き易いので
襟を正すようにとの女王陛下のお言葉です。
'´∋θ∈
! ノノ))))
i (リ゚ ワ゚ノl| <これで良し、と。
⊂)iゝヲiつ
ノl〈/ !芥!〉リ
く_/liVil,ゝ
顔グラ追加されてヘリオンたんがさらに萌えられるようになったなぁ。
ヤバイ、あの二人よりもヘリオンの方攻略したい。
>414
私の脳内では既にヘリオンたんルート10周目突入ですヨ。
・・・ところで、Pアレンジアルバムの歌詞カードの中で、右上に
ヘリオンたんのHCGがあるのですが・・・(天使の輪ついてるのね)
これって、ゲーム中では使われてない・・・よね?
>>415 このスレの住人たちの間では、お世話になっているイベントですよ
ヨフアルエンドの後は大変だな。エクスパンションの今日子シナリオを見ると
エターナルになっても○○は残ってるわけだから争奪戦だな
>416
あなたがラキオス国民なら死刑。
ガロ・リキュア建国まで生き延びられれば無罪。
漏れはヘリオンたんを連れて龍の爪痕の向こうまで逃亡します。
>>415 それは多分初期に描かれたイベントCGなんでしょうね。そのアルバムのケースのCDを収納する
スペースの左にあるCG、下から2番目は多分ネリーとシアーのイベントのボツ絵…と思ったらショー
トカットのスピリットのタイツが黒だ…誰だコレ?
EXP終了。
真っ先に浮かんだ感想は「社員絶対このスレ見てただろ」
なんつーかもう、ハリオンばりにライターの頭を撫でてやりたい。
>>418 ○○は結局誰にも相手にされない、ニムの冷たい反応を見る限り...
アレンジアルバムが欲しくなってきた...
>>421 社員がここを見てるんじゃなくてシナリオライターがここに書き込んでいる気がしてきた今日この頃・・・
アレンジアルバムはそれ目当てでなくても
Eternal SkyのVo.Ver.があるから買う価値あると思うがな。
これも初期ではED用だったのかねぇ。
426 :
422:04/08/17 08:36 ID:Jx+8CuPf
>>424 あら?気が向いたらネタバレの方で教えて
>>425 Eternal SkyのVo.Ver?!すげー、絶対買うわ
まだその辺にあることを祈りつつ…
>前スレ816氏
今回はタイムシフトまで成功したのか、乙!
>前スレ812氏GJ!
【聖賢】はマッハ100で飛ぶらしい・・・さすがだナ。
前スレ812は声優つながりってことか?
ファーレーン可愛いよファーレーン
>>415 初期のボツCG?は結構あるよな。
アセリアのデモに入っている”Eウルカ”の絵は、
かなり良いと思うんだがなぁ。
アングルが左斜め前からになってるやつだっけ?
アレもいいと思うけどサイズ的に収まらないからっぽいけど…
でもサモドアでのアセリアと悠人は横スクロールさせて見せてるな…あれ?
>>433 情報どうもです。
このスレは小ネタ・SS等の「二次創作」的色合いが濃いので、ちょっとそちらの
自治スレで見極めてきます。
立てるんならやっぱり「永遠のアセリア」スレになるんじゃなかろうか?
件の板は立てられたばかりで、関連板との縄張りとかローカルルールとか殆ど白紙の
状態ですね。
ただ、あちらの基本骨子は「ネタバレ感想・攻略」の線で固まっているようですので、
二次創作を主体とする当スレと、あちらに立てられるであろう「永遠のアセリア」スレが
相容れるかと言われれば、微妙な部分も多いように思われます。
当面、当スレは様子見を決め込んで容量を使い切るのが妥当というところでしょうか。
そのあとは、「アセリアキャラ総合スレ」との立場を明確にして、葱板に残留する道が
考えられます。現状、キャラスレは葱板の管轄になる空気がありますので。
ただ、今後の自治スレにおける議論の方向性によっては先行きはわかりません。
その場合は、SS保管庫の方を二次創作用の外部板として改装する、等の代替手段を
講じなければならないでしょう。
ニム「……はぁ、面倒。」
ファーレーン「ほらニム、そんなこと言わないの」
439 :
飛翔の人:04/08/17 22:44 ID:WHFcnyGF
いつもお世話様です。
最近書き込み過ぎな気もしますが・・・。
明日から仕事が始まる為に、これまでのようなハイペースは無理っぽい飛翔の人です。
一人で連投する事に対する抵抗もあるのですが、昨日誕生日を向かえハイになってる所なので、
明日への飛翔第七幕を投下して見ようかと思います。
今幕のテーマはドタバタコメディー+ラブロマンスちょびっとです。
それでは長い前振りとなりましたが、はじまりはじまり〜。
大陸を救った勇者達の凱旋を、ラキオス国民は諸手を挙げて歓迎した。
誰もが聡明な女王の下、新しい時代がやって来るのだという事を確信して疑わなかった。
しかしようやくマロリガンの混乱も沈静化して来た物の、国体の改変に伴う反発も大きく、一部抵抗勢力
の活動もあり、まだまだ予断は許されい状況だった。
加えて、いよいよ大陸最強の軍事国家である、神聖サーギオス帝国との開戦が間近となって来た事もあっ
て、軍部と諸機関はその備えに奔走していた。
とは言え――王都は未だ戦勝の興奮冷めやらず、悠人達スピリット部隊も束の間の休息を享受していた。
・・・それが嵐の前の静けさだと言う事は、彼等自身が一番良く理解している事でもあったが。
「いや〜、しかしラキオスの姫さんはやはり一味違うな。戦争犯罪人と言っても良い俺らを無罪放免した
上に、こうして自由に外出する許可までくれるとは。」
悠人の案内で、ラキオスの観光(?)をしている光陰が呟く。
「姫じゃなくて女王様でしょ。・・・まあ、勿論ラキオスに協力するって条件付とは言え、もともとこっ
ちはそのつもりだったしね。でもラキオスってヨーロッパみたいで、なかなか洒落てるじゃない。」
・・・と、満更でも無さそうに言うのは、以前から欧州旅行に憧れていた今日子。
「喜んでくれるのは良いが、はぐれて迷子になるなよ・・・実際、俺は昔なりかけたからな。」
風景はまるで違うが、三人でこうしていると、まるで昔に戻ったみたいだと悠人は思った。
二人がレスティーナと面会し、共闘を誓ったのは一昨日の事。
昨日は一日中、第三詰所の部屋割りや身の回りの整理等の為に費やしたので、ラキオスの街中を見て歩く
時間が取れたのは今日が初めてなのだ。
第三詰所とは、新たなエトランジェ二人と稲妻部隊から引き抜かれたスピリット達の為に、急遽古い兵舎
を改装して用意された宿舎である・・・その掃除の為にも、昨日はだいぶ手間を取らされたが。
「少しなら手持ちもあるから、何か欲しい物があったら言ってくれ。」
「ふむ・・・奢られるのは性に合わんが、寄進の一つだと思って有効に活用してやろう。」
「あ、それじゃアタシはこのお菓子・・・マロリガンでは、果物以外は辛い物ばっかだったしねぇ。」
言うが早いか、遠慮会釈も無く物色を始める友達甲斐のある二人。
「こ、こら、少しだぞ少し!・・・頼まれてたお土産も買わなきゃならないんだからな。」
そう言ってネネの実のパイを確保する悠人の前に、これでもかと存在を主張する不思議物体が一つ。
「・・・・こ、これは・・・・。」
「あん?」
思考が停止し立ち竦む悠人に気付き、何事かと光陰が覗き込む。それに続く今日子。
「うっわ・・・この世界にもこんなのあるんだ。」
「確かにそっくりだな・・・耳が倍になってるのがアレだが。」
そう、土産物屋の片隅にひっそりと陳列されたそれは、ナポリたんに瓜二つの被り物だった。
「言わばナポリたん2という所か・・・悠人、それ買うのか?」
「ぐ・・・。」
思わず手に取ってしまったが、こんな物を買ってどうすると言うんだ。
悠人は自分の正気を疑ったが、頭に浮かんだのはエヒグゥ耳のヘリオンの姿。
以前ヘリオンが、ヨーティアの怪しげな薬の実験台にされて顔を真っ赤にしていたのを思い出す。
もっとも同じエヒグゥがモチーフでも、ナポリたん2と生耳では雲泥の差があるのだが・・・。
元々悠人は普段から節約する癖が付いている為か、一つくらい余計な物を買っても懐が痛まない程度には
余裕があったのが運の尽き。(逆にいつもピーピー言っている代表格がネリーで、次点がオルファか。)
結局カウンターに持ち込まれた商品の中に、しっかりナポリたん2は紛れ込んでいたのであった。
その晩、今日子は・・・ひとり第一詰所を訪れ、悠人の私室の戸を叩こうとしていた。
昼間の散策の時とは違い、その表情は重く、強張っている。
光陰は情報提供に関する用事で王城に呼び出され、明朝まで帰らないと言っていた。
第一詰所に招かれた時、ちょっとした誤解からついカッとなって悠人を叩きのめしてしまった事を詫びね
ばならない・・・今日子はそう自分に言い訳して、こうして忍んできたのである。
「それじゃ、これで失礼します・・・。」
ノックしようとした直前、室内から耳慣れぬ少女の声が響く。
今日子が身を隠そうとするよりも前に、声の主は扉を開けて、バッタリと対面する事となった。
「あ・・・・。」
相手はそれだけ呟くと、予想外の出来事に硬直する。
小柄な、ブラックスピリットの少女。
その頭には、悠人が昼間買っていた、ナポリたん2を被っていた。
それが恥ずかしいのか、今日子に悠人の部屋から出て来た所を見られた事に狼狽したのか、気の毒な程に
紅潮し、緊張に震えている。
「え、えと、あの、その・・・し・・・・・失礼致しました!!」
少女は一礼してそれだけ叫ぶと、今日子が振り向いたときには、もう風のように消えていた。
「悠・・・今のは、誰?」
まるで浮気の現場を押さえた正妻の様な声で、今日子が呟く。
その迫力の前に、突然の来訪に訝しむ事すら忘れて、萎縮する悠人であった
「だ、誰って、ヘリオンだよ、ブラックスピリットの。・・・気絶してたから覚えてないだろうけど、マ
ロリガンでクォーリンを連れて来てお前を助けてくれたのは、あの子だぜ。」
「ふぅん、そうなんだ・・・それで何であの子が、こんな時間にあんたと二人っきりでいたわけ?」
「二人きりってお前、少し前まではエスペリアとオルファもいたよ。・・・ヘリオンはちょっと前から、
第一詰所で一緒に暮らしてるんだ。」
「一緒に、ねぇ。」
そこだけに敏感に反応して、不気味に沈黙する今日子。
見ればその髪の先からは放電が起き、右腕はいつでもハリセンを取り出せるように構えられていた。
「いや、だ、だから別に変な事は・・・って、そういえば今日子、何でここにいるんだ?」
目の前の殺気を何とか逸らそうと、ようやくそこに思い当たった悠人が問いかける。
それに対して今日子は・・・自分の目的を思い出し、今の態度がまんま嫉妬に怒り狂った物だったと気付
くと、途端に後悔して我に返った。
・・・アタシは一体、何をやっているんだろう。
卑怯にも悠人の優しさに付け込んで、弱い自分を慰めようとしていた・・・。
「あ・・・もしかして、昼間の事を謝りに来たのか?」
今日子の様子がおかしい事に気付き、戸惑う悠人。
「昼間の事を?・・・そう、ね・・・・うん、流石にアタシも、あれはやり過ぎたかなって思ってさぁ、
あはははは・・・でもほら、そう思って謝りに来たら、いきなりこれじゃない?・・・だからアタシてっき
り・・・あんたまだ懲りてないのかと。」
そう言ってごまかすように笑う今日子。
だが悠人も、何とか電撃制裁は免れたらしいとホッとして、不自然さはあえて気にしない事にした。
・・・うん、やっぱりやめやめ。
アタシはただの親友なんだ。これからも勝気で面倒見の良い、今日子おねえさんでいよう。
そう決心して、普段の自分に戻ろうとする今日子。
「そ、そうだったのか。いやお前、俺や光陰だから良いものの、他の奴等なら死んでるぞ冗談抜きで。」
「だいじょうぶよ、他の人はアタシに突っ込まれる様な事しないもの。」
「お前、ホントは解ってないだろ・・・まあ良い、せっかくだから茶でも飲んで行け。」
そう言って、エスペリア直伝のハーブティーを振舞う悠人。
しばらくして、今日子はどうしても気になっていた事を尋ねる。
「・・・ところで悠、さっきの子ヘリオンって言ったっけ?どんな子なのさ。」
マロリガンでのお礼も言いに行かなきゃいけないからね・・・と言うのは口実だが、あの子が最後まで悠
人の部屋に残り、贈り物まで貰っていたというのは事実なのだ。
別に執着していたつもりではなかった。
だが、悠人がヘリオンの事を語るその口ぶりをみて、今日子は次第にいらいらして来る自分に気付いた。
今まで今日子は、悠人が佳織以外の女の子の事を、こんなに楽しそうに、優しげな顔をして語るのは見た
ことが無い。醜い嫉妬は、もう抑え込んだ筈なのに・・・。
「へ〜、なるほど。大体その子の事は解ったけどさぁ。」
「ん?」
「あんた、あの子を佳織ちゃんの身代わりにしてるんじゃないの?」
「な・・・いくらお前でも、言って良い事と悪い事があるぞ・・・!!」
・・・あんたのそんな怒った顔も初めて見たよ。
そっか、あの子の為ならこのアタシとも喧嘩するんだ・・・。
本当はこんな事言いたくないと思いながら、それでも今日子は自分を止める事ができなかった。
「人の気持ちを弄ぶ様な事したら、このアタシが許しておかないからね!」
それだけ言って、今日子は悠人の部屋を飛び出してしまったのである。
(何でこんなにバカなんだろう、アタシ・・・。)
暗い夜道を歩きながら、今日子は後悔と自責の念に苛まされていた。
もはや第一詰所に戻るよりは、第三詰所に帰る方が遥かに近い。
歩みを進める度に、謝りに戻るという勇気は挫けていった。
(大体今更、あんな偉そうな事言っといて何て謝ればいいのさ。)
それでもやっぱり、と後ろを振り返りながら、その一歩を踏み出せずまた元に戻る。
そうして結局、たっぷり一刻もかけて今日子は第三詰所まで帰って来てしまったのである。
「もう、何だかどうでもいいや・・・とりあえず寝て、また明日考えよう・・・。」
今日子が暗闇の中、まだ慣れぬ自室までの道を思い出しながら歩いていると、広間に明かりが灯っている
のに気が付いた。何となく、そこに引き寄せられていく今日子。
「あの、コウイン様・・・そろそろ、お酒は控えられた方が・・・。」
心配気に諭すのは、クォーリンの声だ。
対する光陰の声は、やりきれなさを漂わせながらも、しっかりとしていた。
「いいんだ、飲ませてくれ・・・大体これっぽっちじゃ、全然酔えないんだよ俺は・・・戒律なんて知っ
た事か!・・・もっと呑んで酔っ払って、明日までに何もかも忘れたいんだ。」
「そ、それにしてもこの量は・・・。」
見ればテーブルの周りには、所狭しと空瓶が並べられていた。
いくら光陰が酒豪だったとしても、クォーリンの懸念は至極当然の物であった。
仕方なく追加を持って来ようとして、戸口に立つ人影に気付くクォーリン。
「あ・・・キ、キョウコ様・・・!?」
「・・・光陰、あんた何で・・・。」
「い、いや待て、実は会議が予定より大分早く終わってな。決してお前をたばかったわけでは・・・。」
電撃制裁に備え両腕でガードする光陰だが、怒りの一撃はいつまでも来る様子がない。
「光陰、もしかして気を遣ってくれたの・・・?」
「何のことか解らんが・・・。」
そこで今日子の様子に気付き、クォーリンに視線で促す光陰。
クォーリンは後ろ髪を引かれながらも、その場を後にする。
「ねぇ、何で、何でよ!?」
ハリセンは使わず、ポカポカと光陰の胸を叩く今日子。
その瞳には、涙が溢れていた。
「アタシってこんなにバカなのに、最低の女なのに・・・どうしてそんなに優しくしてくれるのよ!?」
「どうしてってなぁ・・・確かにお前は、ガサツですぐ早とちりして、人の言う事は聞かないしおまけに
手も早い凶暴な女だが・・・別に俺は、最低とまでは思わんぞ。」
何時もなら自分の死刑宣告文を読み上げるに等しい事を、わざと冗談めかして言う光陰。
対して今日子は手は止めたが、それに対して怒りはせずに苦笑いしながら言う。
「光陰、あんたって・・・・・本っっっっっ当にバカだわ。悠の奴もバカだけど、あんたそれ以上ね。」
「おいおい、いくら何でもそりゃないだろぉ。」
「いーえ、あんたはキング・オブ・バカ決定よ!・・・まぁ、だからこの最低女には丁度良いかもね。」
「今日子・・?」
戸惑う光陰の胸に、顔を埋める今日子。
悠人の顔が頭を掠めたが、不思議とつらい気持ちにはならなかった。
ここに来て・・・やっとアタシは自分の本当の気持ちに気付いたのだ。
「二度言わせたら殺すからね・・・好きよ、光陰。」
447 :
憂鬱の人:04/08/17 22:53 ID:mH+SuL5n
初めてリアルタイムで読まさせて貰ってます!
挨拶代わりの支援っと。
「だ、だ、だ・・・・・第九位だって〜〜〜〜!?」
「ひぃ、ご、ごめんなさい!!」
明くる日の朝。
何故か不機嫌極まる顔をしたクォーリンが、ヘリオンの部屋を強襲した。
戸惑いながらも応対すると、半分絡みながらもマロリガンでの働きをしきりに褒め上げる。
その内に話が、ヘリオンの持つ<失望>の事に及んだのだが・・・。
「それじゃ私は、第九位の神剣に負けたのか・・・あぁぁぁ・・・。」
褒め上げていたかと思えば、突然泣き出す。怒っていたかと思えば、今度は急速に落ち込む。
躍進著しいヘリオンも、日常の空間では相変わらずの気の弱さで、振り回されるばかりだった。
隣の部屋で瞑想をしていたウルカも何事かと馳せ参じ、騒ぎを聞きつけやって来た悠人も、事態を収拾さ
せる所か逆に絡まれてしまう始末である。
「大体ユート様、貴方がしっかり手綱を握ってさえいればこんな事には・・・貴方なんかに、貴方なんか
に私の気持ちが解ってたまるか!・・・・・うわ〜〜〜ん!!」
「クォーリン殿、事情は存じませぬが先ずは落ち着かれよ・・・見れば少々酔っているようですが、この
様な振る舞い、貴殿にふさわしくはありませぬ。」
「何だと?・・・ならば"漆黒の翼"よ、力尽くで私を止めて見せるか!」
終いには、<峻雷>を振り回すクォーリン。
ウルカが止むを得ず、<冥加>を抜き応戦する。
「お、おい二人ともやめろ、せめて外に行ってやってくれ!」
こうなっては、ヘリオンの私室が崩壊するのも時間の問題かと思われたが・・・。
「よぉ、助けは必要かぁ?」
場にそぐわぬ間の抜けた声で、話しかけるこの男は。
「光陰・・・昨日そっちで何があったんだ?・・・前見た時はこんな奴だとは思わなかったんだが。」
「あ、あ〜〜・・・そうだな、たぶんしがらみが取り払われて、開放的になってるんだろう、うん。」
心あたり大有りの光陰が、すっとぼけて呟く。
「とてもそうは思えないんだが・・・とにかくお前の方が付き合いが長いだろう、何とかしてくれ!」
「任しとけって。何せ俺は、じゃじゃ馬馴らしは手慣れたもんだからな。」
「だ・れ・が、じゃじゃ馬ですって・・・・・?」
意気揚々と部屋に乗り込もうとしたその後ろから、不穏な空気が流れる。
「・・・・・・すまん悠人、俺はもう駄目かも知れん・・・。」
「だ、駄目かもってお前なぁ!」
頼りない救世主に文句を言おうとした悠人に、今日子が話しかける。
「悠・・・昨日はごめん、ちょっと言い過ぎたわ!・・・とりあえずここは私が何とかするから、本当の
自分の気持ちがどうなのか、確かめて来なよ!」
まくしたてる様に言うと、悠人が反応する前にヘリオンを引っ張って来て、無理やり手を繋がせる。
「じゃ、そーゆー事でしばらくデートして来るのよ、良いわね!?」
「デ、デートってお前なに言って・・・。」
反論する前に戸を閉めて、二人を閉め出す今日子。
「あ・・・。」
「追い出されちゃいましたね・・・。」
そうして顔を見合わせて、やっと繋いでいる手に気付き、お互いに真っ赤になる二人であった。
今日子に言われたから、というわけではないが、二人はラキオスの歓楽街を歩いていた。
あの後すぐに繋いだ手は離してしまったのだが、顔が赤いのは二人ともそのままである。
思えばヘリオンが<拘束>に操られていた時、『貴様を好いていたらしいぞ』と<拘束>が言ってはいた
が、その後お互いに告白したわけでもない。
結局、悠人はそれがどういう意味での「好き」なのかも確認しないままに、今まで過ごして来た。
これまで佳織第一の人生を送って来た為に、恋愛経験の一つもない悠人は、ヘリオンに対してもどうやっ
て接して良いかも解らないでいたのである。
・・・要するに、一昔前の中学生同士の恋愛に近い。
それが中途半端な状態であるとは解っていたのだが、どうする事もできない。
ヘリオンとはあれ以降良く一緒に行動する様になり、それが心地良いとも思い、あえて現状を変える必要
もないのではないかと思っていたのだが・・・。
『あの子を佳織ちゃんの身代わりにしてるんじゃないの?』
今日子の言葉が、心に突き刺さる。
そんな筈は無いと思いながらも、慕ってくれるのを良い事に、自分からは好きだとも言わずに曖昧な状態
で過ごして来たのは、やはりそう言う事になるのではないか・・・。
そう思い、悠人は一晩中悩んでいたのである。
悩むくらいなら告白すれば良いじゃないかと人は思うだろうが、自分の本当の気持ちが解らないとか、ヘ
リオンの気持ちはどうだろうかと言う事にまで考えが及ぶのが、この男の「へたれ」たる所以であった。
「・・・あの、ユートさま・・・。」
それまで一言も喋らずに悠人の後をついてきたヘリオンが、立ち止まって口を開く。
「ど、どうしたヘリオン?」
「やっぱり・・・わ、私と一緒じゃ、つまらないですか?」
そう悲しげに呟いて涙ぐむヘリオンを見て、うろたえる悠人。
「そ、そんな事あるわけないだろ!?」
「でも、ユートさま先程からずっと、難しい顔をしてらしたし・・・。」
「あ、あれは・・・。」
上手い説明が思い浮かばず焦る悠人と、どんどん落ち込んでいくヘリオン。
そんな二人の前に、偶然通りがかる一人の少女の姿があった。
「あれ、ユートくん?・・・と、ヘリオンじゃない。」
手に何やら包みを持ち、ぽかんと口を開けるお団子頭のその少女は・・・。
「レムリア!?」
「・・・・・さん?」
「いや〜、偶然ってあるものね。やっぱり運命なのかな、でも、そうだとしたらちょっと皮肉・・・。」
戸惑う二人をよそに、何やら一人納得している様子のレムリア。
「えっと・・・二人は知り合いだったのか?」
「はい、以前ちょっとお世話に・・・。」
「実は私達、共に人生を語り合った親友なのだよ。ね〜?」
「え!?・・・あ、はい、でもそんな・・・うぅ・・・。」
突然の親友宣言に加えて、その時の会話の内容を思い出して赤面するヘリオン。
「でも私こそ、二人が一緒に歩いてるなんてびっくりだよ。」
そう言って、ちょっと悲しげに呟くレムリア。
「せっかくお弁当を用意して、ユートくんとの運命のデートを期待してたのになぁ。」
「え・・・じゃぁ、その包みってお弁当だったのか?」
確かに以前、そんな約束をした覚えがあった。
あまりの偶然に驚く悠人。
「えっと、あの・・・そ、それじゃ私、詰所に戻ってますから!」
「ちょっと待った!!」
走り去ろうとしたヘリオンの腕を、レムリアが捕まえる。
「ダメよ、それじゃ私が悪者みたいじゃない。」
「で、でも、お二人はこれからデートなんじゃ・・・。」
「もう・・・ヘリオンって、絶対損する性格よね・・・よ〜し、それじゃこうしましょ。これから三人で
お弁当を食べて、三人でデートしちゃおう♪」
「え?」
「は?」
「何よ二人して、バカを見るような目をして・・・そうすれば、私もヘリオンも楽しいし、ユートくんは
二倍楽しいでしょ?・・・皆が楽しいなんて、これ以上良い事ないじゃない。」
あまりの超絶理論に反論する事もできない二人をせかして、レムリアが続ける。
「ほら、そうと決まったら急ぐ急ぐ!・・・私の、もう一つの取って置きの場所に行きましょ♪」
そうして、三人は草原の中、レムリアのお弁当を食べる事となったのだが・・・。
悠人は、レムリアが嫌がらせの為に、わざとこう言う提案をしたのではないかと勘繰りたくなっていた。
『せっかくのお弁当なんだけど、味見のしすぎでお腹いっぱいだから・・・二人でどうぞ♪』
そう言うレムリアの天使の微笑みも、小悪魔の仮面に見えてきた。
レムリアのお弁当、それは・・・。
(あれは、リクェムだよな?)
悠人は、脂汗を流し、ひきつった笑みを浮かべながら重箱の中身を確認した。
リクェムとはピーマンである。だからあれは、ピーマンの肉詰めである。
だが肉詰めだろうが何だろうが、ピーマンである以上食べられるわけがない。
ピーマンを食べるくらいならば、隣の紫色の毒物を口にした方がまだ生存確率が高いであろう。
「わぁ、おいしそうですね〜。」
ヘリオンが呑気に感想を口にする・・・そうだ、ヘリオンがいたではないか!
「あ、ああ、そうだな・・・。」
同意しながら、しきりにヘリオンに目配せする悠人。
御願いだ、俺のアイ・コンタクトに気付いてくれ!!
「え、えっと・・・わ、私リクェムって大好きなんです、もしかして全部食べちゃうかも〜。」
「(ナイスだヘリオン!!)・・・そ、そうか〜それじゃ仕方ないな〜。残念だがリクェムはヘリオンに
譲って、俺はこっちのコロッケを頂こうかな。」
ヘリオンに対する好感度が跳ね上がるのを感じながら、紫コロッケを口にする悠人。
数秒後・・・彼はハイペリアの星となった、お婆ちゃんとの再会を果たす。
454 :
憂鬱の人:04/08/17 23:01 ID:mH+SuL5n
「よお、支援は必要か?」
「て、天国に行って来た・・・。」
何とか蘇生に成功し、エトランジェの沽券に賭けて毒物を処理した悠人。
「そんな・・・ユートくん、ちょっと褒めすぎだよ〜♪」
そう言って満面の笑みを浮かべながら、次を促すレムリア。
(い、いや・・・誇張じゃなくてマジで)
・・・結論を言うと、悠人はレムリアのお弁当に勝利した。
途中、二段目以降現れた刺客にヘリオンが撃沈しかけると言うハプニングもあったが、悠人は震える手で
尚も食べ続けようとするヘリオンを庇いながら、ついに完食を成し遂げたのである。
「さすが男の子だね〜、多過ぎるかと思ったのに、ほとんど一人で食べちゃうなんて。・・・でも、ヘリ
オンはあまり食べなかったみたいだね?」
「い、いやぁ、ヘリオンは食が細いからな〜・・・空きっ腹に慌てて好物のリクェムを詰め込んだから、
胃がびっくりしてしまったんだろう。」
「そっかぁ・・・ちょっと損しちゃったねぇ、ヘリオン。」
そう言って残念そうに言う姿を見ても、やはりレムリアの真意が掴めない悠人であった。
「う〜ん、気持ち良いね〜・・・。」
「はい・・うとうとして来ます。」
「そうだな・・・昨日寝られなかったし、ちょっとやばいかも。」
食事の後、草むらに仰向けになる三人。
・・・ヘリオンだけは、倒れたのと横たわったのが同時だった気もするが、今は何とか復調していた。
その様子は、のどかそのもの・・・。
「ずっと、こうしていられたら幸せなんだろうけどな・・・。」
悠人の何気ない一言に、緊張するレムリア。
まどろんでいた意識が覚醒すると、遠くからかすかな喧騒が聞こえて来た気がした。
「・・・ねぇユートくん、何か聞こえない?」
「何かって・・?」
半分寝惚けた悠人よりも前に、ヘリオンが気付いて飛び起きる。
「ユートさま、これは・・・町が襲撃されています!」
「何だと!?」
遅れて飛び起きて、意識を集中する悠人。
「襲われているのは、西の地区のようですね。」
「ああ、そのようだな・・・って、西地区って言えばレムリアが住んでる所じゃないか!?」
「えぇ!?・・・ユ、ユートくん良く覚えてたねぇ。」
悠人の叫びに驚愕するレムリア。
(そう言えば、そんな事言ったような気も・・・。)
レムリアの動揺を心配による物だと勘違いすると、真剣な表情で悠人が言う。
「安心しろ。俺達が必ず何とかする・・・だからレムリアは、心配だろうがどこかに隠れているんだ!」
「だいじょうぶ、ユートさまを信じていて下さい・・・私も、精一杯頑張りますから!!」
そうして二人は、突然の別れを詫び食事のお礼を言うと、西地区に向かったのであった。
「・・・全く、二人とも忙しいんだから・・・。」
二人が消えた方角を見つめながら、レムリアが呟く。
「でも、お似合いだよ・・・ちょっと妬けるけど、素直で一生懸命なとこも、お人良し過ぎるとこも、似
過ぎるくらい似た物同士なんだもの・・・。」
「今日は随分と、色々あったようですね・・・。」
残務処理の為に詰所を空けていた、エスペリアが嘆息する。
悠人とヘリオンが西地区に向かったのと同じ頃、王城では女王レスティーナの姿がどこにもないという事
実が判明し、一時は国家元首誘拐事件発生かと大騒ぎになった。
結局西地区の被害は少なく、実行犯が捕らえられた事から旧マロリガン強硬派の破壊工作であった事が解
り、レスティーナも間も無く無事が確認され事件は一応の解決を見た。
だが二人が詰所に戻ってみると、案の定ヘリオンの部屋は崩壊し、壁に大穴が開いていたのだった。
ウルカとクォーリンの激闘に加え、怒り狂った今日子が雷撃を放った事が直接の原因で、光陰を含めた四
名は罰として館の修繕と、一週間の謹慎が命じられた。
(余談だが、我に返ったクォーリンはこれ以降二度と酒を口にする事はなかったと言う。)
そして、今は夕食時。
食卓を囲む面々の中に、ヘリオンの姿はない。
第一詰所に他に空き部屋が無かった為、ヘリオンは第二詰所の元の自室に戻らなければならなかった。
・・・幸か不幸か、奇跡的に無傷で残ったナポリたん2だけを持ち帰って。
「全く・・・ヘリオンに早く戻って来て貰う為にも、館の修繕を急がなきゃな。」
憤懣やる方ない様子の、悠人が呟く。
結局、デートとは言っても、ヘリオンには何もそれらしい事はしてやれなかった。
それなのに、帰ってみればこんな事になっているとは。
「ええ、そうですね・・・。」
少し陰りを帯びた声で、エスペリアが応じる。
彼女に取って、この館は強い愛着を持ったものだったからそれも当然だったが、そこにヘリオンに対する
わずかな嫉妬が混じっていた事を、彼女自身気付いていたかどうか・・・。
その夜。ラキオスの訓練場で、剣を振るうヘリオンの姿があった。
「お部屋の事は気の毒でしたが・・・少し雑念があるようですね。」
それを監督していた、ホワイトスピリットのイオが呟く。
「す、すみません・・・。」
「少し中断して、話してみて下さいませんか・・・何か、力になれるかも知れません。」
イオの言葉に、頷いて駆け寄るヘリオン。
ヘリオンが<拘束>に操られたあの事件の次の日から、二人の夜の特訓は続いていた。
クェド・ギンの事もあり、時折悲しげな溜息をつくヨーティアを置いて来るのは忍びなかったが、ヘリオ
ンの熱意にイオが折れた形で、こうして時間外に訓練をする事になったのだった。
「なるほど・・・つまり、ヘリオン様は悠人様のお気持ちが知りたい訳ですね?」
「そ、そう言う事・・・なんでしょうか、やっぱり・・・だって私、イオ様さまのようにスタイルも良く
ないし、ちみっちゃいし・・・そんな私を、悠人さまが好きになってくれる筈、ないですよね・・・。」
そう言って落ち込むヘリオンの頭を撫でながら、イオが答える。
「そんな事はありませんわ。ヘリオン様の愛らしさは、掛け替えの無い物だと思います。」
「でも・・・。」
「私が思うに、ヘリオン様は大人の女性にコンプレックスがある様ですね・・・もしや、エスペリア様と
何か、ありましたか?」
その名にびくりと反応し、隠し切れないと悟ると、胸の内を吐露するヘリオン。
「きっと、エスペリアさまもユートさまが好きです・・・自分の気持ちに気付いてから、やっとそれに気
付きました・・・でも、エスペリアさまの気持ちが本物なら、私なんて・・・。」
そして言葉を飲み込むヘリオン。
きっと優しすぎるこの少女は、ユート様への想いと、姉代わりだったエスペリア様への想いの間で、苦し
んでいるのだろう・・・。
イオはまるで我が事のように、この少女の幸せをマナに祈るのだった。
459 :
憂鬱の人:04/08/17 23:13 ID:mH+SuL5n
G.J.です!
いつもながらすごい分量ですねー。
今回は軽いノリでしたが、次回からはまたシリアス調ですか、飛翔さん?
460 :
あとがき:04/08/17 23:13 ID:WHFcnyGF
>憂鬱の人さま。
支援ありがとうございました〜♪
・・・というか、「よぉ、支援が必要か?」のくだりでツボにはまって、
危うく同じもの連投する所でした・・・GJ!
今日子の気持ちの流れに余り文字数をかけられなかったので、何だか少し
嫌な女っぽくなってますが・・・。
光陰と今日子が上手く行くというのは、小説版と同じくしたかったので、
もともと悠人と光陰の両方が好きで悩んでいた・・・という風に解釈して下されば;;
クォーリンは・・・彼女も、あの晩に賭けていたのでしょう。
ヤケ酒に酔ってキャラ変わっていたということで。
レムリアとリクェムについては、前々から書く気満々でした。
・・・その為に悠人がリクェム克服するイベント省略したし。
それでは皆様、またのお目見えまで失礼〜。
461 :
飛翔の人:04/08/17 23:15 ID:WHFcnyGF
・・・とっとっと。
書いてたら出遅れました、憂鬱の人さま失礼を〜;
そうですね、次からはまたシリアス調で・・・。
たぶんあと完結まで4回くらいでしょうか。
気長にお付き合いをば〜。
乙。今は読んでないけど、終わったらまとめて読ませていただきます(*^ー゜)b
GJです。
執筆早すぎですね。これぐらい早くなりたいorz
一応、投下しに来たので明日あたりに投下したいと思いますー。
飛翔さんもがんばって下さい。
464 :
憂鬱の人:04/08/18 00:21 ID:GUwJNi5b
そっかぁ...小説持ってるのかぁ、いいなあ、飛翔さん。
私は田舎に住んでるのでいわゆる無印のみですorz
ルート分岐の都合上、W章以降の光陰・今日子は戦闘シーン以外
ほとんどセリフが無いのが不満で、補完しようと思って書き始めたのが
「家出」です。だからエスペリアもののわりにエスの出番が少ないw
自分が異世界に放り出されている所に、元の世界で
つるんでいた仲間が来たんだから、悠人はさぞ嬉しかっただろう、と。
(プレイしてた時のあの「助けが必要か?」には嬉しくて涙モノでした。)
ちなみに私の持ってる光陰のイメージは悠人の良き兄貴分、といったところです。
断片的に入るEXPディスクの情報では今日子ルートの光陰はどうなったか、
他人事ながら心配してますw なんかニムにまでバカにされてるっぽいし。
さ、こんなとこで油売ってないで続き書こうっと。カコイイ光陰に乞うご期待!
>飛翔の人さん
お疲れ様、そしてGJです。
ラブ分とコメディー分のバランスがちょうどよく、口元が緩む緩む。
ますますラブロマンス度が上がっていきそうだなぁ、
と予感させる引きに次回への期待が高まります。
>癒えない病気の人
亀になってしまいましたが、「癒えぬ病」を楽しませていただきました。
ツンデレセリアで進めてOKな様で、もうしばらくはツンツンされる恐怖も楽しめるのでしょうかw
GJ!
飛翔の人さんGJです
最近ペースあがってるようで、私としては嬉しい限りですね
続きも頑張って下さい
でも
>>454に一番笑ってしまった
468 :
道行書き:04/08/18 00:26 ID:EHIiVI4b
前スレ812でした……
>前スレ813さん
分かりづらいネタでしたので埋めネタとした次第です。
どちらかというと反応しにくいネタを書き込んだこっちが問題……
>428さん
そんなネタにどうもありがとうございます。
>429さん
指摘の通り声優つながりのネタ、穴子さんです。
ヘリオン編では自分の話の中身を使ってしまった為により分かりにくく……
やるならやるでもうちょっと捻るべきだったと反省。
続き楽しみにしております
さて、EXの今日子をやった後だとヨフアルエンドの後はおもしろそうだ。
雑魚スピあたりに囲まれる毎日になったりするとかありそう
一応エターナルが世界に関与してはならないというルールがあったから、それは
ないと思うんだけどな。
さてと、ユーフォリアが時深と初めて出会ったときに
「ぱぱ、このおばちゃんだぁれ?」
と言ったときの反応を妄想してくる。
>>飛翔の人さん
お疲れ様&G.J.でした。今日子の告白がらしくていいですねw
ヘリオンに新たな属性が加わりました。 「ちみっちゃい」
>>憂鬱の人さん
支援、笑いましたw これからこのスレで流行りそう。
ところで、もはや使い捨てではなくなった雑魚スピは公式(?)には「サブスピ」と
呼ばれ始めたようだが、このスレ的には「雑魚スピ」? 「サブスピ」? どっち?
雑魚スピ。
だって馴染むし。
雑魚スピ。
同じくもう馴染んじゃったし。
雑魚って響きのほうがペットのような彼女達の雰囲気にあってる気がするし
>>468 813じゃなく私のような気がする…
いや、メジャーなのはわかってるんで、変人な私が問題ということで、
気にしないでこれからもガンガンよろしく。
つーか私の方がよっぽど誰も反応できんネタ使ってる… orz
雑魚すぴだろ。決してサブではない
サブスピでは水を得られない(w
>472さん
雑魚スピで一発変換できるくらいに定着しきっています。
>475さん
やってしまったorz
アンカーミスすみません。
サブスピってなんかやだな
ホモっぽい
483 :
憂鬱の人:04/08/18 12:43 ID:GUwJNi5b
やっぱ採用されなかったか、「スピツナズ」は。
>>483 おおお! 意味はよくワカランがとにかくスゴイ自信だっ!
雑魚スピ推奨。もしもサブスピだと・・・。
知らない人→さぶらいスピリッツ?・・・古!
ネリシア →サブブルー、サブぶる〜
ほら、訳解らないでしょう?
んじゃま、次スレからのスレタイは
「永遠のアセリア&スペツナズ分補充スレッド」
にしてもよかとですか?
488 :
憂鬱の人:04/08/18 16:44 ID:GUwJNi5b
>>487 やっぱり恥ずかしいので雑魚スピのままにしてください。
それと、「ペ」じゃなく「ピ」です。念のため。
えーと……保安官?
ネタばれの方にもなんか沸いてるからあまり気にしないほうがいいと思うが
七日が経った。何時ものように訓練し、聖ヨト語を学んだ。順調に力を付けつつある
悠人、ラキオススピリット隊の面々。
バーンライト王国との戦争初期は,スピリットの戦力に差があったが、リクディウスの魔竜が
保有していたマナをエーテルに変換し終わった現在。あった差は見事に逆転していた。
元より、バーンライト王国が必勝を狙い展開したサモドア街道の奇襲部隊。
それを乗り切った時点で、ラキオス王国の勝利は決定付けられたといっても過言ではない。
帝国の軍事支援で強力なスピリットを保有しているバーンライト王国。それを転じるなら、
自国では帝国の軍事支援以上のスピリットは存在しないと説明できる。ならば、
バーンライト王国が今のラキオス王国と対等に戦える訳がないのだ。
首都サモドアが高い防衛力を誇っていたとしても、陥落するのは時間の問題になるだろう――
それが、ラキオス王国首脳陣の決定だった。戦争を舐めている、としか考えられないその決定は、
しかし佳織という人質がいる悠人に反対意見など出せるはずもなかった。
だから悠人は、その決定を真実にするためにラセリオとサモドアを繋ぐ、山間の道を
セリアとアセリアを連れ、駆けている。
七日前にセリアから言われた「……わかったわ。今のところは、あなたに従う」というのは守られていて、
けれども上辺だけ取り繕った物言いは、悠人を信用する信用しない以前の問題だった。
元々感情が希薄なアセリア、自分を信用していないセリアは水と油とも形容出来て、エスペリアが
何で二人を組ませる事に熱心だったのか、悠人には到底理解が出来なかった。
そんな事を考えながらも、危なげなく悠人たちはサモドアに近づいていく。エスペリアと考えた作戦は
単純で、リモドアを経由する正面から突入する部隊と、ラセリオとサモドアを繋ぐ、山間の道
から後背から衝く部隊を分ける、というものだ。前者にあたっているのが、エスペリア率いる部隊と
ヒミカ率いる部隊。後者にあたっているのが悠人率いる部隊。
念の為、ラセリオにはヘリオンとシアーが待機している。無いとは思うが、奇襲部隊が
何処かに潜んでいた場合、再び都合よく防げる保障はないのだから。
『ユート様。情報に無い部隊があるとのことなので、その部隊には特に警戒が必要です』
エスペリアが、作戦前夜に言っていたことを思い出す。――情報に無い部隊。一体、どんなスピリットなのか。
首都サモドアが見えてきた。サモドア平原の方を見遣ると、エスペリアたちが
陽動を行っているらしく、何人かのスピリットが戦闘を行っていた。
そろそろだな、と悠人は呟く。これ以上の悠人たちの進軍は、バーンライト王国にとってマイナスでしかない。
仕掛けてくるなら、今。『求め』も永遠神剣の気配を知らせてくる。距離は判らないが、数は二。斜め右方向――
「……行く!!」
そこまで悠人が察知した時、距離も掴んだのか、アセリアがウイングハイロゥを
展開し跳ぼうとしている所だった。止めようとした悠人に、微塵も注意を払わずアセリアが跳ぶ。
「ちっ!!」
思わず舌打ちをした悠人は、セリアを見遣りアセリアを追う。
残像すら残して駆ける悠人をチーターと称するなら、ウイングハイロゥの推進力を生かして
跳ぶアセリアは、まさしくミサイル。
そのまま敵陣に突っ込むと思われた飛翔は、敵スピリットに阻まれた。
居合の構えから繰り出される神速の一撃を、アセリアは瞬間的に作り出した水の壁で相殺する。
居たのは、ブラックスピリットとレッドスピリット。飛び出してきたアセリアを驚く事も無く迎撃したその
手法は、まさに芸術。
けれど、アセリアにはそんな事どうでも良かった。タン、と着地するやいなや地を這う蛇のように
ブラックスピリットへと肉薄する。しかし、既に鞘へと永遠神剣を収刀したブラックスピリットは、
不用意に間合いへと侵略する痴れ者へと、死の制裁を加えた。
――ように、見えた。
「――――な」
驚愕の声は、知らず悠人の口から漏れた。
どう見ても避けられるとは思えない必殺の一撃は、なぜかアセリアを断つ事はなく、逆にブラックスピリットを
マナへと帰した。もし悠人がアセリアより前に居たのなら、驚愕の声を漏らすこともなかったろう。
ブラックスピリットの永遠神剣は総じて刀の形をしている。自然、ブラックスピリットの行う技も抜刀術に
近いものとなり、剣の軌跡さえずらすことが可能ならば、致命傷にはならない。アセリアはそれを
行ったのだ。自身のウイングハイロゥを使い。
たった一瞬の出来事で仲間をマナに帰されたことに、何の感慨も浮かばないのか、漆黒のスフィアハイロゥを
展開しているレッドスピリットは、
「すべての根源であるマナよ。マナの支配者である永遠神剣の主として命ずる」
永遠神剣をアセリアへと向け、言葉を紡いでいた。
――ヤバイ!
ブラックスピリットを屠ったばかりのアセリアは体勢が崩れていて、レッドスピリットの駆る
魔法の標的にされている。
反射的に駆け出そうとする悠人を留めるように、セリアが前にでる。必死の形相の悠人を冷めた目で見ると、
「……無駄。紡がれる言葉、そしてマナの振動すら凍結させよ……アイスバニッシャーッ!!」
腕を突き出し、レッドスピリットよりも先に己の魔法を行使した。
効果は顕著だった。一気に絶対零度まで下がったと錯覚させるようなソレは、レッドスピリットを一瞬で
凍結させた。凍りついた状態はすぐに戻ったが、その時にはレッドスピリットの命運は決まっていた。
レッドスピリットの体勢は大きくずれていた。それは、隙。アセリアがそれを逃すはずがなく、『存在』が
風を切る音だけが空しく鳴った。回避不能の一撃は、やはりレッドスピリットを金色のマナに帰した。
は、と悠人は息を吐いた。時間にして十秒も経っていない。まさに刹那。ブラックスピリットを
技量のみで屠ったのがアセリアならば、そのアセリアを完璧にサポートしたのがセリア。悠人に出番
は無く、ただただ現前の光景に圧倒されるだけだった。
それで、気づいた。エスペリアが、アセリアとセリアを組ませる事を、なんであそこまで
こだわったのかという事に。
おそらく、アセリアとセリアは共同で何らかの任務、あるいは訓練を行っていたのだろう。
でなければ、あそこまで完璧なコンビネーションは不可能に近い。
放心状態の悠人を無視し、アセリアがサモドアへ向かって駆けて行く。
その表情は真剣そのものであったが、悠人にはこの上も無く恐ろしいものに思えた。自分の命を全く顧みることなく
行動するアセリアは、喩えるなら戦場を駆ける死神。悠人は、アセリアを含むスピリットの異常性を、再認識せざる
を得なかった。
「……あなた、なんの為の隊長なの?」
セリアが、問い掛けてくる。鷹揚がないその口調に含まれるのは、明らかに軽蔑。そこに含まれる意図に
悠人は気づいていた。悠人は、アセリアがブラックスピリットに殺されるのではないかと
あの瞬間、恐れた。それゆえ、冷静な判断を下せなかったと、セリアは糾弾している。答えない悠人と、駆けて行く
アセリアを見て、
「今は作戦中だから、別にどうこうしないわ」ジロ、と悠人を睨みつけ「けど、役立たずなら
ソレらしくしてなさい。リクディウスの魔竜を倒した勇者と讃えられている様だけど、今必要なのはそんな
ハッタリじゃなくて、正真正銘の力よ」
辛烈な口調で告げ、まるで悠人を空気のように無視し、セリアはアセリアを追いかけていく。
セリアの背中を見ながら悠人は。「正真正銘の、力」『求め』を強く握った。
サモドア平原で陽動を行うエスペリアが、そのスピリットに気づいたのは本当に僥倖だった。
気配は言うに及ばず、永遠神剣――『献身』――もそのスピリットを察知していなかった。敵味方入り乱れる
戦場において、そんなことは普通ありえない。けれど、ファンタズマゴリアにおいて強力なスピリット
こそが戦力。個人は団体に勝てないという地球の常識は、こと異世界であるファンタズマゴリアには
当てはまらなかった。
そのスピリット――エスペリアは、ブラックスピリットだと予測した――は、不利になっていく
バーンライト王国所属のスピリットたちを意思の無い目で見ながら、何をするでもなくただ立っているだけだった。
『献身』を振るいながら、エスペリアは後退する。戦況は圧倒的とまではいかないものの、それに近い戦果
は出せている。特にナナルゥの駆る神剣魔法は、ブラックスピリット主体のバーンライト王国にこれ以上
ないほど有効だった。ラキオスにもヘリオンというブラックスピリットがいるが、ブラックスピリットは他のスピリット
に比べ運用が難しい。
だからこそ、今回はシアーという護衛をつけてまで、ラセリオに待機させている。表向きは再び現れるかも
知れぬ奇襲部隊に備えて。実際は、まだ運用は無理だと判断を下した悠人によって。
良い判断だとエスペリアは思っていた。失礼だと思うが、ユート様はまだ隊長として未熟という以前に、経験が
足りない。カオリ様を助けたいというユート様の願いは、これからも戦争という形で襲い掛かってくるだろう。
ブラックスピリットの特色を理解し、運用するのはバーンライト王国を破ってからでも遅くは無いのだから。
そんなことを思いながら、エスペリアは、はるか現前に佇むブラックスピリットをどうしたものかと考えていた。
エスペリアが気づいた後に、遅れて察知した『献身』は警告を示していて、けれどエスペリアは倒した
ほうがいいのでは? と考えていた。
あのブラックスピリットがバーンライト王国所属なら、遅なかれ激突するはずだし、参戦前に聞かされた所属不明
スピリットだったとしても、竜の魂同盟を含めた味方スピリットである可能性はゼロに近い。
けれど、エスペリアは『献身』の警告も理解出来ていた。エスペリアは、あのブラックスピリットを
倒せない。それは、サードガラハムと戦ったときのような感覚。あの時の事は、言うなれば破れかぶれとも
説明できる。それに、ユート様も居た。
エスペリアに戦術を教えた師――ズキリ、と胸が痛む――の教えでは、どうだっただろうか。周りに細心の
注意を払いながら、思考する。と、
「……居ない?」
一瞬目を離した隙に、ブラックスピリットは掻き消えるように居なくなっていた。
497 :
飛翔の人:04/08/18 18:49 ID:JeRxwwAm
む、もしやリアルタイム?支援いりますか〜?
疾走していくセリアを追いかけながら、悠人はセリアの言葉を思い返していた。
『正真正銘の力』。それは、リュケイレムの森で、悠人が望んだものではなかったか。足手まといに
なるのが嫌で、『求め』という永遠神剣を持ちながら佳織を救うことが出来ないのが嫌で、けれどもそれを
可能にする力を持ちながら。
其の為に、悠人は危険を侵してまで力を手に入れた。言うなればそれは、他人のために振るう力だ。佳織のために
悠人は力を振るうことは、客観的に見れば恐ろしく自分本意で、だからこそ躊躇い無く力を振るう。
言い訳にもなるその考え方は、悠人の脆さでもあった。
――幼い頃両親に死なれ、引き取ってくれた佳織の両親でさえ、まるで悠人が疫病神であるかのように
死んでしまう。佳織だけでも生きていて欲しいと願った悠人は、『佳織を助ける』という奇跡を願う。願いは
聞き届けられた。だが、無償の奇跡など存在しない。願いを聞き届けた『求め』は、悠人にその代償を求める――
悠人の人生とは、つまるところ佳織のための人生だと説明できる。自分を顧みる事無く佳織を優先していく
生き方。そこには義妹という関係があったけれど、広義で示してしまえば、他人でしかなかった。
その『他人』の為に行動するのが、高嶺悠人という人間の在り方。
そこには、打算は無い。ただ純粋に、佳織の将来を願う悠人。そして、佳織の為だけに消費されるはずだった悠人
の人生は、ファンタズマゴリアに召喚されたことで変わった。
それは良いことなのか、悪いことなのか。少なくとも、佳織が人質である以上悠人に選択権などありはしないのだけれど。
セリアは、整地されているはずも無い山道を駆けて行く。それを追いかけるように、悠人も続く。
障害物が無く見晴らしの良い山道は、敵に発見されやすく、また敵を発見しやすい諸刃の剣のはずだった。
「――――!!」
最初に気づいたのは悠人。地面を陥没させるほど力で蹴り、セリアに追いつく。
セリアも気づいたのか、無視するような雰囲気は霧散し、悠人のほぼ真横に構えた。
ラセリオとサモドアを繋ぐ山間の道。その終着地点に、一体のブラックスピリットが佇んでいた。
漆黒のハイロゥを展開していているのは、先程のスピリットと同様。違うところと言えば、構えもせずただ立っている
事くらい。何処も映さないその瞳に宿るのは影。銅像のように不動のスピリットは、殺気を微塵も出さず、それ以上の
重圧を悠人に与えていた。
『求め』を強く握る。横目で見れば、セリアも『熱病』を構え、鷹を思わせる厳しい目線でブラックスピリットを
射抜いていた。
それでも佇むは、ブラックスピリット。此処より先は通さない、とばかりに不動。
セリアがウイングハイロゥを展開した。タイミングを見計らい、
「――っ!!」
声にならない音を発し、悠人が一瞬で間合いを詰めた。ブラックスピリットは意思の無い目で悠人を見遣ると、振るわれた
『求め』を鼻先で避け、悠人に打撃を加える。けれど、オーラフォトンに触れた拳は弾き飛ばされた。
その隙を見逃さず、悠人の背後から『熱病』を構えたセリアに、
「………………テラー」
呟くように詠った言葉は、セリアを影から表れた無数の槍が貫く。一撃一撃がエーテルを離反させる。
動きが鈍ったセリアの『熱病』は、ブラックスピリットを傷つけることがなかった。
ス、とブラックスピリットが永遠神剣を構える。流れるような動きは、不自然なほどに自然すぎて、セリアには
反応することが出来なかった。
放たれた軌跡は三つ。首、胴体、足。全てが必殺であるが故に、避けることが不可能なブラックスピリットの
抜刀は、吸い込まれるようにセリアを襲った。
それに悠人が飛び込む。一瞬、そのブラックスピリットに、アセリアを幻視した悠人は、
「―――――っつああああああ!!」
気合のみで、全ての攻撃を叩き落した。
一瞬、ブラックスピリットの表情が歪むが、それもまた無表情という仮面に隠される。
タタン、とリズムを取るようにブラックスピリットが離れる。セリアを背中に庇う悠人は、眼光だけをランランと
輝かせて睨みつける。
「オーラフォトン……エトランジェ……」
機械のようにぎこちなく、ブラックスピリットが言葉を発する。
「――退く」
発した言葉が空気を震わせ、悠人に届いたときには、ブラックスピリットの姿はどこにもなかった。
バーンライト王城の制圧は、セリアが到着したときには佳境に入っていた。
サモドアに到着したときには、陽動を行っていたはずのエスペリアたちが、バーンライト王城を守る
スピリットを駆逐していて、ラキオス王国の兵士たちが雪崩れ込むだけだった。
ラセリオとサモドアを繋ぐ山間の道に現れたブラックスピリットは、まるで力試しでもするかのように
セリアと悠人を襲い、満足したのか掻き消えてしまった。
何処かに潜んでいるかもしれないから、セリアは慎重にサモドアまでやって来たが、ついに
ブラックスピリットは現れなかった。
髪を掻き揚げて、セリアが溜息をつく。悠人を役立たず呼ばわりしておきながら、結局、悠人に助けられた。
そして、セリアを助けた悠人は一言。
『アセリアが心配だから、行ってくる』
なんとなく気に入らなかった。ライバル意識とでもいおうか。セリアは断じてそんなことを認めない
だろうけれども。
ラキオス王国の兵士たちが王城に雪崩れ込む喧騒を一瞥し、セリアはアセリアと悠人が居る一帯を
目指して歩いて行く。
「俺はまだ、アセリアのことはよく分からない。エスペリアのことも、オルファのことだって……」
声が聞こえてくる。悠人の声だった。そこにはラキオススピリット隊の面々が居た。
「でもさ、俺、この世界に来て。アセリアとエスペリアに助けられて、オルファに励まされた――――」
――セリアを含むラキオススピリット隊の面々は、それから続く悠人の言葉を、一字一句噛み締めるように聞いた。
戦争はまだ始まったばかり。その時にはもう、ダーツィ大公国が宣戦布告をしていたのだから。
飛翔の人さん、支援どうもありがとうございますー。
10そこらなのに引っ掛かるなんてorz
戦闘シーンに緊迫感がないのは諦めて、ツンツンセリアに集中して貰えれば。
というか、EXディスク欲しいです。
ナナルゥとかヒミカとかの口調わかんないし、セリアもなんか怪しい感じ。
Xuse早く通販してくれー。
503 :
飛翔の人:04/08/18 19:09 ID:JeRxwwAm
お疲れ様です〜。
戦闘シーン、擬音とかが状況を彷彿とさせて、良かったと思いますよ〜。
EXディスク無い者同士、想像力を武器に頑張りましょう・・・orz
まだまだ物語りは始まったばかり、いわばツンツンMAXなセリアと悠人の
今後が気になります。
それでは、失礼しました〜。
(´∀`)オツカレサマー。
ツンデラーとして今後に展開に激しく期待
画像版に張り付いているCG、ネタバレ対策というか、わざと展開がわかりにくいところが張られていますからね。
もう少しテキストとしてわかるところ張った方が良いのかな?
聖ラキオス女学園の「姉妹(ス―ル)」システム
この学園の高等部には「姉妹(ス―ル)」という学生の自主運営のシステムがある。
これは、清く正しい学園生活を受け継いでいくために、姉である先輩が妹である後輩を指導する(淑女としての「躾」をつける)もので、
この「姉妹の契り」は神剣の授受によって成立。
1人のお姉さまに対して、妹になれるのは1人きりなので、契りを交わしたことで、2人は1番親しい間柄だと周囲から認めてもらえる。
このシステムは創立当時より存在し、連綿と受け継がれてきた。
__
「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| <はくそりーなへ
j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
508 :
憂鬱の人:04/08/19 11:07 ID:eBhB4rk0
雑魚が育ってマグロになった!
そいつはめでたいスピツナズ!
エスペリアはお局状態に嫌気がさしたか敵前逃亡!
今回は笑い少なめの「エスペリアの家出」、
第三部、スタート!
食堂兼会議室に全員を集め、悠人は静かな口調で、告げた。
「エスペリアが、いなくなった。」
いち早く反応したのは今日子であった。
「こんの、ドあほう―――ッ」
喚声とともに今日子のハリセンが炸裂する。以前は3連発止まりだったのが
このところパワーアップして5連発だ。何でも「スペシャル・ハリセン・サンダー」
という必殺技らしい。
「―――支那虎か、お前は。」
薄れゆく意識の中、悠人は意味不明の言葉を遺し、ぶっ倒れる。
―――数分後。
体勢を立て直して悠人は席に着いた。頭から黒煙が立ち昇る。
「今は、いなくなった者の事を言っててもしょうがない。」
そう言って全員を見渡す。
「しょうがないって、あんた...本気で言ってんの?」
怒りでわなわなと体を震わせ、今日子がハリセンを握り直す。集まっていた
スピリット達は、いつでも逃げ出せるようにと、腰を浮かした。
「忘れるなよ、今日子。ここは戦場だ。」
悠人は今日子を真正面から見すえ、そう言った。
「だったらなおさら危ないじゃないの!早く追いかけて捜しなさいよ!」
「俺が戦列を離れるわけにはいかない。」
「じゃ、じゃあ、誰か別の...」
さらに何か言おうとする今日子をさえぎり、悠人は続けた。
「心配するな。エスペリアだって子供じゃないんだ。自分の事くらい
自分で何とかするさ。」
「そう...もう、どうなっても知らないからね。」今日子がふてくされて
ガタン、と席に座る。
「―――ウルカ、作戦についてはこれまで通り、概ね変更はない。さっき戻って
来た二人はどう言っていた?」偵察を終えて帰還したファーレーンとシアーには、
まずウルカに報告に行くように命じてあった。
「―――はい。サーギオスの軍隊は現在二手に分かれ、それぞれシーオス、
セレスセリスを越えて、我々のいるリレルラエルに向かっているとの事です。」
ウルカが席を立ち、食卓中央に拡げられた地図を指し示しながら
淀みなく説明する。「偵察隊の話をまとめると――おそらく明日の
午前中には、ほぼ同時にここに到達するものと思われます。」
「―――同時、か。イオは?」
「イオ殿も...ほとんど休まれずに頑張って頂いてはいるのですが...
明日の開戦には間に合いそうにない、との事。」
僅かに顔を曇らせてウルカが答えた。
「そうか。完成するまでにどれだけ持ちこたえられるかが勝負だな。
――ネリー!」
「な、なあに、ユート様?」
突然名指しされたネリーがあわてて顔を上げる。
「敵の火焔魔法や回復魔法はかなり強力らしい。対抗出来るかどうかはネリーの
アンチスキルに懸かっている。今夜はイオの手伝いはいいからゆっくり体を休めておけ。」
「だ、大丈夫よ。まとめてぜーんぶ氷結しちゃうんだから。」
気丈に答えるネリーもさすがに緊張の色は隠せない。口調にいつもの
軽さはなかった。
「それからアセリア、へリオン。」次いで悠人は二人に呼びかける。
「初っ端の斬り込みは二人に任せる。ただ、余り深入りはするな。ヤバいと思ったら
すぐに引き返せ。」
「はい、ユート様。」硬い表情でヘリオンが頷く。アセリアは、いつもの
ポーカーフェイスで悠人に視線を返しただけだった。
「―――ハリオン、そして、ニム。」悠人が二人のグリーンスピリットに顔を向けた。
「エスペリアの穴は二人に埋めてもらう事になる。きつい戦いになるかも知れないが、
今の二人なら充分やれるはずだ。なるべくニムは防御に、ハリオンは後方支援に
まわるようにしてくれ。」
「はいー、おまかせくださいー。」
例によって間延びした喋り口でハリオンがにっこりと頷く。この状況においてもなお、
動じていないとは、さすがと言うしかない。
「―――あのさぁ、ユート。」面倒くさがりやのニムが口を開いた。
「何だ、ニム?」
「これからは食事は全部ハリオンとあたしが準備するの?」ニムがぶっきらぼうに訊く。
「――いや、もうその必要はない。」
「どういう事?」ニムが驚いたように聞き返す。
「―――実はさっきラキオスに連絡を取った。今夜中には新しい食事係が到着するはずだ。
戻ったばかりのファーレーンとシアーには悪いが、ケムセラウトに迎えに行ってもらっている。」
「ちょっと待て、悠人。その食事係ってのは人間か?」
身を乗り出して尋ねる光陰に悠人は平然と答える。
「当たり前だろ、光陰、他に誰がいる?」
「え―――っ!?」その場にいたスピリット達が一斉に驚きの声を上げた。
「フム...そうか。」光陰はしばらく腕組みして考え込む。
「ま、当然といえば当然だな。」
しばらくして光陰は悠人にニヤリと笑みを向けた。
「よし、じゃ話はこれで全部だ。みんな、明日は気合い入れてけよ。」
パアンと一つ手を打って悠人が会議の終了を宣言した。
―――夜更け過ぎ。悠人は城のテラスに出て、城壁越しに真っ暗なトーン・シレタの森を
見下ろしていた。時折りイオの作業の音がかすかに聞こえる以外、全く何の物音もしなかった。
―――嵐の前の静けさってやつだな。
あと十時間もすれば悠人はここに指揮官として立っているはずだった。ただ、戦いを前に
緊張して眠れないのかといえば、そうでもない。
悠人が思ったとき、背後に人の気配がした。
「―――光陰か。」
光陰は無言のまま悠人の横に来て、一緒に静まり返った森を見下ろす。
「これで負けたらレスティーナにぶっ飛ばされるな。」悠人は言った。
普段からスピリット達の開放を目指している若き女王は、
さすがにエスペリアがいなくなった事を告げるとびっくりしていたが、
食事係については快く請け合ってくれたのだ。
「女王の腕の見せどころ、ってやつだな。」光陰が答える。
国のために戦っているとはいえ、スピリットの為に人間が食事を作るなどと言うことは
恐らく前代未聞の事であろう。しかし、逆に言えばそれくらいの命令が
レスティーナに出来なければ、スピリットの開放などはおぼつかない。
「なあ、光陰。俺の言ってる事はそんなに間違ってるのか?」
ややあって悠人が光陰に問いかけた。
「どうした、悠人。おまえにしちゃ、やけに弱気だな。」
「真面目に訊いてるんだ。」
「―――エスペリアの事か?」聞き返す光陰に、悠人は頷く。
「俺の道具としてじゃなく、自分の生き方を考えて欲しかったんだ、エスペリアには」
悠人はそう言って城壁に腕を乗せかけ、眼下の森に視線を移した。
悠人にとって、いつもスピリットと人間との違いを強調するエスペリアの態度は、
最近は腹立たしくさえあった。
光陰は少し考えて、言った。
「どうだろうな。――悠人、多分お前の言ってる事は間違ってないと思う。
ただ、俺たちは異世界から来たエトランジェだ。俺たちには当然と思えることでも
こっち側の連中には簡単に納得出来ることじゃないかもな。なにしろスピリットにとっちゃ
人間に逆らえば殺されても仕方ない、そんな世界だからな。」
―――人間もスピリットも違いはない。
かつてそう言ったのは他ならぬ悠人だ。しかし、特に光陰達がラキオスに来てから、
悠人はその違いをひしひしと感じずにはいられなくなっていた。とにかく、冗談が通じないのだ。
下手な冗談が人間の命令と受け取られたら、思わぬ結果を招くかも知れない、
そんな危うさを感じていた。
「さ、俺はもう寝るぞ。お前も風邪ひかないうちにさっさと引き上げろ。」
光陰はそう言って城内に向かって歩き出したが、「あ、そうそう」と立ち止まった。
「今日子が謝ってたぞ、さっきの事。」
「はは、味方としては頼もしい限りだ、って言っといてくれ。」
悠人はそう答え、もう一度森を見下ろした。
「―――エスペリア、死ぬなよ。」
まだエスペリアに言い足りないことがたくさんある。悠人のそんな思いを乗せた
祈るような言葉は、しかし、闇深い森の中に吸い込まれていった。
――同じ頃。
エスペリアは森の中で佇んでいた。もうどこをどれだけ歩いたのかも憶えていない。
飛び出しては来たものの行く当てがあるわけでもない。
「はあ、もう疲れた...。」
エスペリアは「献身」を地面に突き立て、倒木に腰を下ろした。
「―――ユート様、私には...わかりません。」
エスペリアは自分に生きる意味を考えろ、と言ったエトランジェの名を口にしていた。
悠人から離れれば、あるいは冷静に考えられるかとも思ったがその答えは見えてこない。
今まで、自分の感情を殺して、人間の期待に応えることばかり考えて生きてきたエスペリアにとって、
自分の為に生きる意味を考えるという事は困難だった。いったい自分が何をしたいのか、
何を望んでいるのかが、いつの間にか見えなくなっていたのだ。
悠人がラキオスに来た頃。今にして思えばその頃が一番楽しかったのかもしれない。
何をするにもエスペリアの助けが必要だった悠人。エスペリアの文字通り献身的な世話を
有り難がり、喜んでいた悠人。――今、自分を苦しめているのは悠人なのに、
エスペリアは悠人を憎む気にはなれなかった。
やがて、考えるのが馬鹿らしくなり、エスペリアは溜息をついた。
「――――!」
突然、「献身」が警告音を発する。
「敵?」エスペリアはやにわに立ち上がり、「献身」を構えた。
「か、囲まれてる?」敵は2人や3人のスピリットではなかった。次の瞬間、
強大な斬撃がエスペリアに襲いかかる。咄嗟に展開させたシールドで何とかしのいだものの、
敵が次々と間合いを詰めてきているのがわかった。
「大地の精霊よ、力を!」エスペリアはエレメンタルブラストを放った。しかし、
それはあっけなく封殺されてしまう。敵の魔法力も並々ならぬものがあった。
再び四方から刃が迫る。エスペリアにはそのスピリット達に、どこか見覚えがあった。
「待ちなさい!」
エスペリアめがけて何本もの剣が振り下ろされようとしたその時、男の声がかかった。
命令と同時に津波のような攻撃は嘘のように止み、スピリット達は剣を収め、
その男の下へと集まる。まさに一糸乱れぬ動きであった。
声の主がゆっくりと近付いて来る。エスペリアにとって忘れようもない、その男。
「ソーマ、様...」エスペリアは絶句した。
ソーマ「支援は必要でしょうかね?」
「こんな夜中に気配も消さずに、単独でウロウロしているスピリットがいるなどとは、
おかしいと思いましたが...これはとんだところで再会したものですね、エスペリア。」
ソーマはニヤつきながらエスペリアに歩み寄る。「あのエトランジェ殿はどうしました?
見当たらないようですが。」
エスペリアはその男の顔を直視できないでいた。
しばらくの沈黙を置いて、うつむいたままエスペリアが答える。
「―――私はもう、ユート様にお仕えする事は出来ません。」
その答えを聞いたソーマは会心の笑みを浮かべた。
「ほう、あなたもスピリットのあるべき姿がわかったようですね。私が言っていた事が
ようやく理解出来ましたか。―――よろしい、ならば私に付いてきなさい。
まだじゅうぶんやり直しはききますよ。」
エスペリアはスピリット達の後を重い足取りで歩き始めた。ひょっとしたら、この男のもとならば、
スピリットとして迷わず生きることが出来るかもしれない、そう思いながら。
――翌朝。
悠人は結局ほとんど眠れないまま夜を明かした。早めの朝食を終えた頃、敵襲を知らせる
鐘の音が城内に響き渡った。「――来たか。」
悠人達ラキオス戦士が続々とテラスに到着する。城壁越しに土煙を上げて向かって来る
サーギオスのスピリット部隊が見えた。「かなりの大軍です、ユート殿。」
ウルカが顔色も変えずに悠人に振り返る。
「敵さんも本気出してきたってことか。」悠人は軍勢に目をやって、言った。
翼を持ったスピリットが悠人達を見つけたようだ。狙いを定めて突っ込んでくる。
「へっ、秋月のヤツに、戦いは数じゃねえってこと、教えてやるさ。」光陰が不敵な笑みを
浮かべてうそぶいた。
「ほら、悠、ボーッとしてないで指示出しなさいよ。」
今日子もすっかり臨戦態勢に入っている。悠人は苦笑しながら、言った。
「全く...こんなところで命のやり取りか...馬鹿げてるけど仕方ない。
住職、もといっ、佳織のためだ、みんな、行くぞっ!!」
悠人のやや緊張感に欠けた合図の下、アセリアとヘリオンが飛び立った。
522 :
憂鬱の人:04/08/19 11:35 ID:eBhB4rk0
あはは。最後で番号間違えましたね。39でした。
とりあえずこれで第三部終了です。
激動の第四部、近日公開!
支援どーもでした。感想お待ちしてます。
余計なとこで支援しちゃったかな〜と思いつつも、
>>454 を思い出すとやらずにはいられませんでした・・・。
先ずはお疲れ様&GJです!
前振り通り緊迫した展開の中、真面目な悠人と光陰のやり取りがいい味出してる・・・。
・・・と思いきや、最後にこの合図ですか!?・・・やられました、憂鬱の人には叶いませんさorz
激動(ホントカナ)の第四部、期待しております♪
524 :
憂鬱の人:04/08/19 11:57 ID:eBhB4rk0
>>523 自分で書いててアレなんですが、余りのシリアス調に
耐え切れず、ついやってしまいました、関西人のサガってやつですかねw
次回は私が苦手とする戦闘シーンで始まります。
暖かい目で支援ヨロです。
真っ昼間からオツ。
なかなか良いテンポで進んでるようで、見ていて退屈しませんな
今後ともガンガッテ下さいな
嫉妬に身を焦がす綺麗なお姉さんは好きですか?私は大好きです(どうでもいい)。
最近一連のスレ作品のエスペリアにはハァハァしっ放しでしたが、溜まった鬱憤が爆発したか、
この作品ではついに家出を敢行!?
というわけでニヤける顔を抑えつつ楽しんでいた「エスペリアの家出」ですが、
ソーマ様の登場で一気に緊迫感が。本編でも心の闇に怯えていたエスペリアのこと、まさかまさか・・・。
ますます目が離せなくなりました。
・・・エスペリアどうなるんだ〜?!?!
>>526 このすれじゃヒロインじゃないからなぁ・・・>エスペリア
雑魚スピ活躍のための贄になt(以下略
通称は「雑魚スピスレ」ではあるが、今は「アセリアネタ総合」のはずなんだが……orz
>>528 まああれだ、『本音と建前』とか『需要と供給』とか。
今なら言える
EX一枚絵「あんまり食事に見えない」のアセリアはマジかわいい、つーか萌へ
当スレは雑魚スピでもメインでも誰でも何でもウェルカムっ……!!
>>530 同意しておく。
ついでに言うと、あの時のユートが微妙にタキオスっぽく見える。
>憂鬱の人さま
お疲れ様でした〜♪
悠人がすごく頭良く見える・・・と思ったら、しっかりボケを。
ウケを狙わずにいられない悠人・・・突っ込み(今日子)が優秀だから、頑張って欲しい物です。
>530>532
私も同意。ユートは特に感想なかったけど、
アセリアが某グエンディーナの魔女の色違いに見えた・・・orz
いつもお世話になっております、飛翔の人です。
前回「明日への飛翔」第七幕では、作風を変えて挑んだコメディータッチの展開に、
思いがけない好評を頂きましてありがとうございました。
そして今回お届けする新たな「明日への飛翔」ですが・・・。
【注意】 今回スピリットは一切登場しません。故に萌えも全くなしです。
【告知】 つまり全編シリアス調で展開します。受け付けない方はどうぞご回避を。
【推奨】 無印アセリアのOPを思い返し、気が向かれたら確認して頂けると尚楽しめます。
それでは「明日への飛翔・幕間」、どうぞお楽しみ下さい・・・。
―――その日僕は、全てを失ったのだ。
何処とも知れない、西欧風の城の中。
中世の騎士の如き装束を身に纏い・・・。
・・・僕はその報せを、ただ待ち続ける。
いつもの――
・・・・ああ、またこの夢か。
幼い頃から繰り返し見続けて来た夢。
どうして僕が、この場面を見続けなければならないのか。
どれだけ『もういい』と思っても、自らこの夢を終わらせる事は出来ない。
ここでは僕は、無力な登場人物の一人に過ぎなかった。
そうして最後まで見せられるのだ。
この、決して救われる事のない悲劇を・・・。
『・・・ソードシルダ様!・・・あの方の行方が知れました・・・ラキオスのエトランジェ、
<求め>のシルダスの姉君、レティシア様の行方が・・・!!』
息せき切って、従者が駆けつける。
僕は報せを受けて、胸を躍らせて向かうのだが・・・。
・・・そこで目にしたのは、物言わぬ、変わり果てた恋人の姿だった。
『こ、これが・・・これがあの、レティシアだと言うのか・・・!』
言葉では言い表せない衝撃が、僕であるその騎士を襲う。
既にレティシアは死病に冒され、昔日の美しさは見る影も無かった。
ここまで持ったのが奇跡だったのだろう。
見ればその痩せこけた体からは、残り火の様にマナが滲み出していた。
それは、やがて確実に訪れる、死の前兆・・・。
『我々が救出にした時にはもう、手遅れでありました・・・やはり<求め>のシルダスは、ラキオス王に
よって暗殺された模様です・・・人質の価値が無くなったレティシア様は、恐らく・・・』
『言うな!!』
その先を想像する事は、許されなかった。
レティシアは、既にこの世の苦しみを味わい尽くしたのだ。
『・・・これ以上、彼女を辱める事は私が許さん・・・!!』
そうして僕は、今まさにマナに還ろうとしている恋人を抱きしめる。
『何故だ、シルダス・・・何故守りきれなかった!!・・・やはり貴様に任せるのではなかった・・・。
これが私達の、運命に翻弄された私達の結末だと言うのか!!!』
同じ村に生まれ、共に育ったかつての親友を思い浮かべる。
神剣に翻弄され、時には憎しみ合いながらも、ついに殺す事は出来なかった男。
僕達三人は、貧しいながらも、互いに助け合い、その日その日を懸命に生きて来た・・・。
それが何故、こんな事になってしまったのか・・・!!
『レティシア・・・ああ、レティシア・・・必ず幸せにすると、誓ったのに・・・。』
いつまでも、いつまでも・・・その慟哭は、決して止むことは無かった・・・。
そして僕は哀しみの中、現代に覚醒する。
目を覚まして見れば、やはりそこは変わる事のない自分の部屋。
とうに見慣れてしまった、秋月の屋敷の一室だった。
「幸せにする、誓い・・・。」
脳裏に佳織の顔が浮かび上がる。
僕が唯一心を許し、愛する少女。
出会ったのが先か、この夢を見るようになったのが先か。
思い出す事すら出来ない程に、僕達は幼い頃から一緒に遊んでいた。
何故あの少女に、こんなにも心惹かれるのか不思議だったが・・・。
子供心に、好きな女の子を想うばかりに、あんな夢を見るのだと思っていた。
そう・・・今こうしていても思い浮かべる事ができる。
佳織が成長すれば、きっと美しかった頃のレティシアそっくりになるだろうと。
これがただの夢ではないと気付いたのは、あいつと出会ってからだ。
僕と佳織の間に割り込んで来た、憎き邪魔者・・・高嶺悠人。
第一印象からして最悪だったが、僕は直感的にあいつが敵だと悟った。
あいつの顔を見た瞬間、シルダスの面影がそれに重なったのだ。
出会ってもいない人間が、僕が見続ける夢に出て来るなど常識では考えられない。
ならば僕達は・・・運命によって、出会うべくして出会ったのだ。
同時に僕は、忘却の彼方に何かを置き忘れて来た様な感覚に囚われる。
ここ最近、度々襲い掛かる激しい頭痛。
そして囁くこの、聞き覚えのある声は、果たして幻聴なのだろうか・・・?
今日もまた、退屈な一日が始まる。
佳織が通っている。ただそれだけの価値しかない、程度の低い学校。
――今の僕は本当の自分じゃない。
何故かそれだけは解っていたから、佳織以外の人間などまともに相手をする気にもなれなかった。
・・・理由も無く、廊下を歩いているものじゃない。
よりによって、あの悠人が歩いて来るのにぶつかってしまった。
「ッチ・・・。」
前世だけでは飽き足らず、生まれ変わって尚、佳織を不幸にする疫病神・・・。
「邪魔だ。」
それだけ言って通り過ぎようとするが、身の程知らずにも難癖をつけて来る。
態度だけは大きくて、取り巻き二人も煩わしい事この上ない。
本来ならば、相手をする事も無かったのだろう。
だが僕は、自分の犯した罪も忘れて、のうのうと佳織の保護者ヅラしているこの男が気に入らなかった。
「ふん・・・。おい、貴様に言いたいことがある。」
佳織ですら覚えていない前世の事を持ち出して、こいつらに馬鹿呼ばわりされるのは耐えられない。
どうせ理解も出来ないだろうが、かつての親友として忠告だけはしてやろう。
「お前はいなくなった方がいい。佳織はお前が現れるまでは幸せだったんだ・・・僕はお前の知らない、
佳織の笑顔をいっぱい知っている。それをお前が奪い取ったんだ・・・佳織はお前といたら絶対に幸せにな
れない。どこかにいなくなる事が彼女の為だ。」
教室に入る僕の背中の向こうで、岬とか言う女の声が聞こえて来る。
「ほんっと、あんた達は仲悪いわねー・・・前世の因縁でもあるんじゃない?」
その夜・・・何故か胸騒ぎがして眠れなかった僕は、外の空気を吸いに出た。
こんな時僕は、庭園で一人心を落ち着けるのだ。
秋月の屋敷は広く、誰も僕を邪魔する者はいない。
いつもは、そのはずだったのだが・・・・。
「本当に、良い夜ですわね。」
いつの間に侵入したのだろう。
振り向くとそこには、奇妙な白い洋服を纏った、見慣れぬ少女が立っていた。
「貴様、何者だ!?」
誰何する自分の声が、震えている事に気付く。
まさか、この僕が気圧されている・・・?
目の前の少女はどう見ても、まだ小学校に入学したかどうかという幼さなのに。
いや、しかし・・・。
この少女はまさか、秋月の警備網を潜り抜けて、ここまでやって来たと言うのか。
「貴方を迎えに来た者ですわ・・・もうすぐ、契約の時が来ます・・・そして貴方は本来の、自分の役目
を果たすのですわ・・・私の、駒の一つとして。」
「何だと・・・?」
「もうすぐ・・・本当にあともうすぐですわ・・・それでは、その時までご機嫌よう・・・。」
次の瞬間。信じられない事に、その少女の姿は目の前から掻き消えてしまった。
余りにも不可解な体験。だがこれが、夢だとは思えない。
強烈な圧迫感から解放された僕は、座り込み、乱れた呼吸を整えねばならなかった。
「契約だと、何の事だ・・・だがこの感覚・・・僕は、あの子供を知っている・・・?」
それからの数日間。
僕は何時にも増して、ひどい頭痛と、ある強迫観念に囚われ続けた。
思い出さなければならない・・・。
白い少女が言っていた、「契約」と言う言葉の意味。
・・・あの夢の後、僕達はどうなったのだ?
レティシアは助からなかっただろう。
彼女を失った僕が、まともに生きていけたとも思えない。
その寸前まで来ているのに、成し得ないもどかしさ・・・。
そして学園祭当日。
頭痛に耐え、気力を振り絞って辿り着いたそこで、僕は全てを思い出した。
(この音色・・・。)
曲も違う。演奏しているのは佳織だけではない。
それなのに、僕の魂を揺るがすこの音色は・・・。
かつてレティシアが、農作業の合間に聞かせてくれた、あの歌と同じ想いを感じる・・・。
この僕が、人前であるにも関わらず、流れ出る涙を止める事が出来なかった。
次々と浮かんでくる数々の思い出と、僕達が辿った数奇な運命。
――やはりあの夢は、かつて在った出来事だったのだ。
あれ程僕を苦しめて已まなかった頭痛が、嘘の様に消え去っていた。
同時に僕は、自分が何を為さなければならないのか悟ったのだった。
佳織を悠人から引き離さなければならない・・・。
このままでは、佳織は再び同じ運命を辿る事になってしまう。
「い、いやっ!秋月先輩、離してください!」
「なんで嫌がるんだ?僕が佳織に酷いことするわけないだろう?」
できるだけ紳士的な態度を取るように努めるが、もう一刻の猶予もないのだ。
「佳織に聞いて貰いたい事があるだけだよ。」
「痛いっ!」
しまった・・・。
焦る余り、佳織を苦しめてしまった。
うろたえる僕に、突然怒鳴りつける男の声。
「瞬、何しているっ!!」
またこいつか・・・佳織に不幸を呼び込む元凶め・・・。
憎しみが僕の心を支配する。
悠人も同じ気持ちなのだろう。
ここでこいつを殺してしまえば、佳織は助かるんじゃないか・・・?
一触即発の空気の中、佳織の悲痛な声が、廊下に響く。
「いやぁ!お兄ちゃん、もうやめて!!・・・・・秋月先輩・・・もう・・・行ってください・・・。」
何と悲しそうな声で言うのだろう。
それほどまでに、悠人への思いに囚われていると言うのか・・・。
断腸の思いで、引き下がる事を決意する。
「そうか。佳織がそう言うなら、僕は退こう。」
残された時間は少ないが、邪魔者のいるこの状況で、佳織を説得するのは不可能だった。
・・・どうにかして、佳織を救わなければ。
瞬は、夕暮れ時の教室に残り、一心にそれだけを考えていた。
封印されていた、前世の記憶・・・。
瞬の前世・・・ソードシルダは、レティシアの最期を看取ると<誓い>に呼びかけた。
『どういう事だ、<誓い>よ・・・私の願いは、レティシアを幸福にする事・・・お前はその為の力を、
私に与えるのではなかったのか!!』
『確かに我は力を与えた筈・・・契約者よ、最後の決戦で<求め>の契約者に止めを刺さず、この事態を
招いたのは汝の責任だ・・・だが案ずる事はない・・・契約は輪廻の果てまで有効であり、果たされぬ事は
在り得ない・・・汝は来世で再びあの娘と出逢い、また再び<求め>の契約者と争う事になるだろう。』
『来世で、私が・・・?』
『だがその為には代償が必要だ・・・代償無き奇跡は存在しない。汝には、最後の役目が残っている。』
そうして・・・ソードシルダはサーギオスの皇帝を暗殺すると、自らの喉を突きその生涯を終えたのだ。
ただ再び、愛する娘との再会だけを願って。
「・・・だが僕や佳織と同じく、悠人もまた転生した・・・恐らくシルダスが<求め>と交わした契約に
関係があるのだろうが・・・二度と情けはかけん・・・もう二度と、佳織をお前に渡すものか!!」
瞬はそうして、新たな誓いを立てるのだったが・・・。
それは無情にも、決して果たされる事はなかった。
「なかなか興味深い話ですが・・・駒に余計な情報は必要ありませんわ。」
瞬が振り向くよりも早く、目に見えない衝撃波が彼を襲う。
「ぐっ・・・・。」
吹き飛ばされ、黒板に打ち付けられる瞬。
その一撃だけで目の前が暗くなり、身体から力が抜けていく。
しかし瞬は、最後までその少女から目を離さなかった。
「あら、まだ意識があるとは・・・頼もしいですわ。」
超常の力で瞬を吹き飛ばした、白い少女が笑う。
「貴様・・・覚えているぞ、貴様が僕達の運命を弄んだんだな!」
「ほほほ、面白い事を言う坊やですわね・・・人の運命など、私達の使命の前では塵芥のような物。」
冷たく言い切るその言葉には、一片の温かみもない。
この様な外見はしているが、あどけない表情のその裏には、どれ程の邪悪が潜んでいるのだろうか。
「百年、いや八十年くらい前か・・・お前は幸せに暮らしていた僕達の前に現れて、あの世界へと飛ばし
望まぬ戦いを仕組んだんだ・・・また同じ事を繰り返させるつもりか・・・一体、何を企んでいるんだ!」
「素晴らしいですわ・・・そこまで記憶を、取り戻したと言うのですか。」
白い少女はその問いには答えず、不可思議な力に縛られ身動きできない瞬に近づく。
「な、何を・・・!?」
「賢い人間は嫌いではありませんが・・・余計な事をされる前に、修正する必要がありそうですわね。」
少女が瞬の額に手をあて、何やら妖しげな呪文を唱えると・・・それきり彼の意識は、完全に途絶えた。
「私、記憶操作は得意ではないのですが・・・まあ、多少人格に異常を来たした方が、都合良く事が運ぶ
かも知れませんわね・・・このまま、新しい世界へと送り届けて上げますわ・・・ふふふふ。」
薄暗い教室の中。無邪気な笑い声が、不気味に響く。
・・・そしてこれ以降、ハイペリアで秋月瞬の姿を見た者は、誰一人としていなかったのである。
時は流れ、現在・・・サーギオス皇帝の間。
「何か、夢を見ていたか・・・?」
本来ならば皇帝の所有物である筈の玉座で、うたた寝をしていた瞬が呟く。
どんな夢だったのか記憶はない。
だけどそれは、とても大事なことだった様な気がするのだが・・・。
瞬が思い出そうとする前に、<誓い>が激痛と共に彼を急かす。
「ぐぁっ!?」
『契約者よ・・・<求め>を砕け・・・一刻も早く、<求め>を破壊するのだ!』
「く・・・解っている、必ずあいつらには死をくれてやるから、黙っていろ!!」
瞬が激昂して命令すると、<誓い>は沈黙する。
(全く、道具の分際で・・・気に入らない奴だ。)
いや、<誓い>だけではない。
瞬は彼を取り巻く何もかもが、気に入らなかった。
せっかく救い出したと言うのに佳織は、悠人の呪縛に囚われて、目を覚ましてくれない。
佳織の救出を命じたスピリットは、その後帝国を裏切りラキオスについた。
<求め>のユート率いるラキオススピリット部隊は、法皇の壁を越え、リレルラエルを制圧したと言う。
何と言う部下共の不甲斐無さか・・・やはり自分と佳織以外、誰も信用出来ない。
「待てよ・・・?」
一体何故、これまで気が付かなかったのだろう。
部下なんて元々必要ない。
僕と佳織さえいれば、用は足りるんじゃないか・・・。
「そうだよ・・・ハハハ、僕とした事がうっかりしていたな・・・だったら、僕自身が出向いてあいつを
殺してやれば良いんじゃないか・・・ハハハハハ、そうだよ、そうすれば良いんじゃないか!!」
その瞳に狂気を漲らせ、哄笑を上げながら、紅く光る<誓い>を手にして。
・・・瞬はその朗報を届けるべく、佳織の部屋へ向かうのだった。
545 :
あとがき:04/08/19 22:46 ID:qq6bY0n4
・・・「明日への飛翔・幕間」をお届けしました。
需要無視、萌え一切ナシと言う事で、「幕間」と銘打ちましたが、いかがでしたでしょうか。
(道行書きさんのマネしたというのもあります)
「アセリア」には魅力的なキャラが沢山いるのですが、その中で「瞬」は、その佳織への執着がどこから
来ているのかゲーム中で描かれることが無く、未消化で不満に思っていたキャラでした。
それを何とか解き明かしたいなぁと思って話を考えていたのですが・・・。
年表から逆算すると、瞬と佳織の出逢いって、遅いと小学校入学するかどうかくらいですか・・・orz
「物心付く前から一緒に遊んでいた」とはあるけど、飛行機事故を境にまた離れ離れになるし。
行き詰まってOPからやりなおしていた私に、光明を見出したのがある一文。
「契約は輪廻の果てまで有効であり、果たされぬことはありえない。」・・・・コレダ!!
と、いうわけでこう言う話が出来上がりました。
シルダスの姉の名前については、資料が無かったので悩んだ末にこうしてみました。
アセリア本とか持っている方、もし公式設定があったのなら脳内で入れ替えて下さい;;
では、次幕からまた「永遠のアセリア・ヘリオンルート」こと、「明日への飛翔」本編に戻ります。
長々と失礼しました〜〜〜♪
まあ、なんだ、アレだ。
なんつーか、gj
おもしろいな!
俺もずっと瞬が狂った過程が描かれてないのが不満だった
コレは普通にアツイっぽい
GJ
イイ!
ぬほっ、そうきましたか!!
テムオリン様…。
GJです!!!
雑魚スピが出てこないのでスキップした俺はこのスレに於いて反逆の徒?
GJ!
今まで納得いかなかった瞬の狂気も執着も、自分の中でやっとすっきりした感じ。
いいお話でした。
ハイペリアにいる頃の瞬の粘着異常性が目に付いて
その内面的なことが語られていなかったので
とてもよい感じの保管になりました。
553 :
飛翔の人:04/08/20 01:35 ID:jRuTwwFI
皆さん、ありがたい感想ありがとうございました〜。
正直、レスつかないか非難轟々というのを覚悟していたのですが・・・。
(思わず気になってこの時間まで起きていてしまいました)
>550
いえ、無理も無い事かと。
私自身自己満足の為にこんなの投下して良いのかという気持ちもありましたし。
そこらへんは前書きに書いてある通りですので、どうかお気にせずに♪
というわけで、いい加減しつこいかもなので、寝ます・・・zzz
アセリア関連の二次創作なら何でもバッチこーい! ってなもんですよ、ええ。
まあ、よほど投下に躊躇われるのでしたら、保管庫の方を経由する手もありますので。
何はともあれ飛翔の人氏、GJ&乙です。
なんかもう、これはやったもん勝ちですね、正直やられました。
本編の続きも頑張ってください。
それはそうと、350KBいきましたね、このままだと今月中にスレ移行迎えそうです。
ここのところ、投稿のバッティングの可能性も出てくるようになりましたので、
SS投稿予定者の方は、予め保管庫の連絡スレまで投下予告と予定容量を
ご一報下されば幸いです。
555をゲッツした保管庫からのおしらせです。
来る8月29日(日)に、保管庫へのバックアップを実施します。
対象は、前スレに未保管の以下の通り。
夏風邪セリア
鮮やかな命(ひ)
溜息
ネリーの不満
なつまつり
風邪は万病の元?
エスペリアの憂鬱
明日への飛翔・第一幕
第二幕
おしおきナナルゥ
誤字脱字等、改訂の申請はお早めに。
556 :
憂鬱の人:04/08/20 12:44 ID:aaOY9s0+
遅レスながら。飛翔様、乙でした。
相変わらず筆の進みがいいですね、羨ましい限りです。
ストーリーとゲーム中の瞬のセリフとのマッチングが絶妙!
是非本編(ヘリオンのほうね)も頑張ってください。
>保管庫の中の人氏
毎度お疲れ様です。
ところで、ここ以外でアセリアのSSが読めるサイトってどう言うのがあるかな?
自分で検索して結構見つけたけど、雑魚スピスレ諸氏のオススメが聞きたい。
dream elementは結構面白いのが多い。なんか一人感想少なくて拗ねてるのが居るが。気持ちは分かるし、
あの手の発言も一度は許せるんだけどな……。
それはおいといて。
雑魚スピメインのSSは寡聞にして知らない。、他は、その後を描いた話が意外にあるものの、アセリアルー
トAfterばっかでここ的には不満かも。ユーフィーが居るからだろうけどね。
>>558 登場人物紹介の時点で読む気失せるのがあるんだが……
いや、でもまあ正月のやつはこのスレと通ずるものがあって面白かったな。
ヒミカが自室で悩んでいる。
「なんで…」
凄く悩んでいた。というより落ち込んでいる、に近い。
「なんで私だけ…」
彼女をここまで落ち込ませる悩み。
「胸がないのよ…」
…乙女であれば至極普通の問題であった。
――再生の剣を破壊したことにより新しいスピリットが「生成」されることはなくなった。
その代わり、今までいたスピリットたちは「成長、および老化」するようになっていた。
(そのほかに生殖能力も付加されたのだが、彼女達がそれに気づくのはまた後の話である)
そのため、「生まれて」からまだ比較的時間のたっていないスピリットたちは目にも判るほど成長している。
無垢な子供のような顔立ちもやがて恥じらいを含むような少女のそれになり、身長なども伸びてきている。
だが、逆に比較的長い時間をすでに生きたスピリットたちはあまり成長することはなかった。
そんな彼女達でも人間に置き換えればまだ17,8の乙女くらいであるからまだ成長する余地はあるが、
どうしても年(?)少のスピリットよりその度合いは小さかった。――
「エスペリアも、ハリオンも、ファーレーンも、セリアも、ナナルゥもあんなにあるのに…」
ヒミカより先に生まれた、あるいは同時期に生まれたラキオスのほかのスピリットたちはサイズこそ差はあれ、
皆乳房とわかるほどの胸がある。自分だけ、という感覚が小ささを気にする理由でもあった。
「はぁ、いつまでもうじうじしてても仕方ないわね。汗流して寝ましょう。」
思考をさえぎり入浴の準備をして彼女は大浴場へ向かった。
「あら?」
大浴場にはネリーとシアーの二人がいた。
「あ、ヒミカさんだー、こんばんは!」
「こ、こんばんは」
「こんばんは、今日も一緒なのね」
昔ほどではないとはいえ、やはりこの二人は行動を共にすることが多かった。息もとても合っている
「ねえ、ヒミカさん、また体洗って!」
そういってネリーはヒミカに背を向けていすに座る。
前に洗ってやったのを思い出し、懐かしくなったのだろう。シアーもして欲しそうな表情をしている。
ヒミカも懐かしくなり洗ってやることにした。
「はいはい。じゃあ、タオル貸して。シアーも次に洗ってあげるから」
そういうとシアーは顔を綻ばせた。
ヒミカは手際よく背中を洗ってやり、ついでに前も洗ってやる。ネリーはくすぐったそうにしてたがそれでもどこか嬉しそうだった。
「はい、じゃあシアー、こっちに来て」
「はーい」
ヒミカの前に背を向けて座るシアーの身体を手際よく洗っていく。そうやって背のほうを洗い終わってシアーを自分の方へ向かせる。
だが、そこにはヒミカが予想していなかったものがあった。
そう、シアーの胸のところ(当たり前だが)にははっきりと目に判るほどの乳房があった。
軽く、いやかなりのショックを受けている様子ヒミカだったが、身体を洗ってやっている手前、シアーに訝られると困る。
心の中で(平常心、平常心)と唱えながらシアーの体の前面を洗っていく。しかし…
―ふに。
「あっ」
―ふにふに。
「やぁ…」
(…)
胸を通るたびに感じる柔らかな感触、そしてそのたびに声を上げるシアー。
そのためにどうしても意識してしまい、ずいぶんと時間がかかってしまった。
「はい。おしまい。」
「ヒミカさん、ありがとう」
そういってシアーは軽く湯船につかり、ネリーと一緒に浴場を出て行った。
「はぁ…」
ヒミカは大げさにため息をついていた。
(いつか私が一番小さくなるのかしたら)
気分転換を兼ねて入浴をするはずが来る前より落ち込んでしまった。
そうやって物思いにふけっていると浴場にハリオンが入ってきた。
「あらー?ヒミカさんもお風呂だったんですか〜」
そういってハリオンはヒミカの隣に座った。
「え、ええ。(また、今度は規格外なのが…)」
ハリオンの「サイズ」は他のスピリットたちに比べても中に何か入れてるのでは、と思うほど大きかった。
(もうさっさと洗って上がろう)
そう頭を切り替えてヒミカは髪を洗い始めた。
そうして、髪を洗い終えてなんとなく隣を見たヒミカは驚くべき光景を目にした。ハリオンが胸を揉みしだいているのだ。
「な、なにしてるのっあなた!?」
「はい?なにがですか〜?」
「何が、って何で胸揉んでるのよっ!」
「ああ〜、これは揉んでるんじゃなくて〜、洗っているんですよ〜」
そういうハリオンの身体はところどころ泡に包まれている。
「タ、タオル使いなさいよ、持ってるんでしょ」
「え〜、だめですよ〜?ここは敏感なんですから手で優しく洗わないと〜。それに…」
「それに?」
「こうやって洗うと大きくなるんですよ〜?」
「なっ!?」
そういってハリオンはまた胸を「洗い」だす。
「へー、そ、そうなんだ」
ヒミカは平静を装って答えたが実際はかなり動揺していた。
(そんな方法があったなんてっ…!…い、今からやっても効果があるのかしら…)
そんなことを石鹸を持ちながら考えて固まっていると。
「ヒミカさーん?」
「な、なに?…って、ハリオン?」
ヒミカは隣を向いたがそこにハリオンの姿はなかった。
(どこに行ったのかしら、もしかしてもう上がった?)
そう思っているといきなり何かに胸を覆われた。
「ひゃぁっ!?な、なに?」
「ふふ、ヒ・ミ・カ・さん。体洗ってあげますねー。」
触れてきたのはハリオンだった。上がったのではなくヒミカの後ろに回りこんでいたのだ。
「な、ハリオンっ?こ、子どもじゃないんだから自分で出来、るっ…んんっ!」
「遠慮なさらないで下さいー。それにーヒミカさん私の洗い方に興味があるみたいでしたし、ね?」
そういいながら申し訳程度にしかない胸を石鹸の泡がついた手で「洗って」いく。
「そ、そんなっこと…っ」
ハリオンの手を振り解こうとするが、身体にうまく力が入らず、思うように抵抗できない。
「おねがっ、い…ハリオン、やめっ、、、だ、めぇっ!」
「いいえ〜、やめません。まだ私の洗い方教えきってないですもの〜」
そういうハリオンだが実際は胸しか「洗って」いない。
「本当にだめ、だかっ、らぁっ、…やあっ、乳首擦ら、ないでっ…!」
「ふふっ、ヒミカさんの胸、ちっちゃくて可愛いです…」
「〜〜〜っっ!」
胸の大きさのことを言われてヒミカは身体を縮こまらせる。
「あ〜、だめですよヒミカさん、それじゃ洗えないじゃないですか〜」
「も、もういいからっ、後は自分で出来るか…」
ハリオンはそういうヒミカの言葉をさえぎるようにしてハリオンヒミカの乳首をつまんだ。
「ひっ!?あっ、あああああっっ!!」
今までの「洗い」でぎりぎりまで高まっていたヒミカは、その行為で達してしまった。
結果ヒミカはハリオンに身体を預けるようになってしまう。
「あらあら、気持ちよすぎちゃいました〜?」
「ああ、はあぁ…」
上からヒミカを覗き込みながら話しかけるハリオンだがヒミカは答えるのもままならない様子だった。
「…それじゃあ、…」
体洗っちゃいますね、と続くと朦朧とした頭で思っていたヒミカは「この行為」がまだ続くとは露ほどにも思っていなかった。
「もっと、気持ちよくしてあげますね?」
「え、ちょ、ま、わた、し…もう…」
「まあまあ、遠慮なさらずに」
「遠慮な、んて、してな、いっ…んんっ…!」…………
光陰が物陰からこっそり支援(;´Д`)ハァハァ
………
……
…
しばらくして、二人ののぼせ上がって大浴場で倒れている姿がヘリオンによって発見された。
だが、ヘリオンは顔を真っ赤にしてただ「倒れていた」としか答えず、当事者である二人も
笑ってごまかしたり、はたまた逆切れして真相を知ることは出来なかった。
「私は知ってますけど」
そうつぶやいたのはナナルゥであった。
ナナルゥはペンを置き、ノートを閉じた。
ノートの表紙には…「ヒミカ観察日記」…
ナナルゥは統一後からずっと、何を思ったのかヒミカを観察し、それを記録していた。
朝起きてから寝るまで、気が向いたときには彼女が寝ているときも観察した。
ヒミカはそんな彼女を訝るどころか「雛鳥みたいで可愛い」などといい、抱きついてくることもあった。
そんな日々のおかげで彼女のことならほぼすべてのことを把握できるようになっていた。
そんなナナルゥも今回のことは衝撃的であり、また興奮する出来事であった。
風呂場でのヒミカを想像し、ハリオンを自分に置き換える…
「………………へっへっへ。」
ナナルゥはなんとも変態臭い笑いを浮かべながら枕元にノートを隠し、ベッドに入った。
「いつか、私も…」
そういうナナルゥの手は自分の手と秘部に伸びていた。
(尺が短いまま了)
というわけで
「ヒミカ胸ちっちゃ!!シアー結構あるのに!」とか思って勢いを投下しみました。
支援してもらっておいてこんな落ちでまじですみません。(連投4でストップなのね…)
エロテキストもっと書こうと思ったんだけど、レズレズは
無理ですた…orz
つーか朝にこんなもの投下するな、って話ですね…
今度はもっとまともなの書いて夜に投下します
朝っぱらからエロいなぁw
でも普通にワロタ
GJ
>>566 乙&G妄想!
pink分が補充されますた(;゚∀゚)=3
朝からハァハァさせて頂きますた。
がんがってくだされ〜。今後も期待してます〜。
「へっへっへ」(゚д゚)ウマー!
このスレ的にハリオンはエロ姉としてキャラが固定されてる気がする
ありがたやありがたや
胸の大きさで悩むお姉さんサイコーw
「イビルのイベント絵に比べて、(胸が)縮んじゃったよ……orz」
とか思っていて、新しい立ち絵に違和感があったのが一気に吹き飛びました。
物理攻撃得意だから、ペタになっちまったのかな……ヒミカ姐さん……
胸が軽いから身軽
ボインなナナルゥは魔法主体
>572
なるほど納得だ。だからハリオンはおっとりしてるのか・・・。
アセリアEX、今日トレーダーで\7980だった。古川の異常な買取値からもっと高くなっているのかと思った。
通販が始まるまでに売り切らなくちゃならないだろうから、値段を監視していたら結構面白いかも。
スレ違いすまん。
¥7980・・・目の前で売ってるの見つけたら迷わず買っちゃうなぁ・・・orz
・・・とまぁ、これだけだとあれなので。
ヒミカ姐さんは痩せると胸から減っていくタイプなのだと想像して見る。
きっとトレーニングした後に汗を流すと、一人思い出して落ち込むのです。
576 :
まえがき:04/08/21 20:41 ID:l4Pka/Gy
いよいよ佳境を迎えた、悠人達の戦い。
次はファンタズマゴリアNo.1の変態、ソーマ様の登場だ!
一通り書き終えて、「エスペリアの家出」を読み直すと飛翔の人はこう思った。
『よ、よし・・・これならたぶん、プロットかぶってないだろう。』
それでは「第二ヘリオンルート・明日への飛翔第八幕」スタート!!
「くそ・・・俺は一体何やってんだろうな、こんなとこで。」
悠人は癒えぬ身体に歯噛みしながら、ベッドに横たわり天井を見つめ続ける。
悠人達スピリット部隊は、帝国への宣戦布告と共に旧ダーツィ領ケムセラウトに陣を構えると、難攻不落
とされた法皇の壁を突破し、激戦の末リレルラエルの制圧に成功した。
強大な帝国軍の反攻を跳ね除け、その版図に橋頭堡を築いた事は、その戦略的価値以上に、悠人達に確か
な手応えと勇気を与え、女王レスティーナの理想も決して夢物語ではないと確信させた。
しかし・・・そんな矢先、スピリット隊長であるエトランジェ、<求め>のユートが意識不明の重態のま
ま、王都へ移送されるという事件が発生する。
士気の低下と混乱を避ける為、その詳細は公表されず、復帰に支障はないとだけ伝えられたが・・・。
哨戒中だった悠人が、突如現れたサーギオスのエトランジェ、<誓い>のシュンの挑発に乗って戦闘にな
り、敗北したというのがその真相だった。
そして今、悠人は王都ラキオスにある、第一詰所の自室にいる。
その治療には最善の処置が尽くされたが、<誓い>によって受けた傷は、ラキオスに残った二線級のスピ
リットの魔法では遅々として回復しなかった。
(サレ・スニル方面には光陰やウルカがいるし、ゼィギオス方面にはエスペリアやヒミカ達がいるから、
指揮の上では問題ないだろうけど・・・これじゃ本当に俺、隊長失格だな・・・。)
昨日レスティーナに散々遣り込められた為か、悠人が殊勝にも自分の猪突猛進を恥じていると・・・。
コンコン、と控え目にドアをノックする者がいる。
昨日の今日で多忙なレスティーナが来れる筈もないから、介護の者だろうか?
「・・・鍵は開いてるよ。悪いけど、入って来て貰えるかな。」
そうしてやっとの事で身体を起こす悠人の前に現れたのは、予想もしない意外な人物だった。
「イオ・・・?」
そのホワイトスピリットの華人は、突然の来訪を詫びると優雅に一礼する。
見知ってはいたがそれほど親しい間柄ではない。ならば何か用事があって来たのだろう。
「女王陛下の命により、ユート様の治療の為に参りました・・・しかしユート様、話に聞き心配していた
よりは元気なご様子に、ほっと致しました・・・。」
たおやかに笑うその仕草に、思わずどきりとする。
元来スピリット達は皆美しく、朴念仁の悠人などは慣れるまで大分戸惑ったものだ。
しかしイオは、その妖精達の中に於いてさえ尚際立ち、一種神秘的なまでの雰囲気を醸し出していた。
その彼女と寝室に二人きりで居るのだから、悠人が知らず緊張するのも無理はなかった。
「そ、そうか、悪いな・・・皆には、迷惑掛けてると思う。」
悠人の言葉にイオは一瞬手を止めたが、そのまま水差しから何やら薄褐色の透明な液体を器に注ぐ。
「ユート様、これは私が調合した霊薬です・・・味は多少強めの酒に似て、飲みづらいかも知れませんが
・・・ユート様の体内のマナを活性化させ、回復力を高める効果があります。」
イオはそう言って、ユートの側に歩み寄る。
「なるほど・・・イオの作った薬なら、確かに効きそうだな。」
「咽ないように、少しずつ口に含んで下さい・・・そう、ゆっくり飲み干して・・・。」
(・・・喉が・・・熱い・・・味はそれ程でもないけど、それよりも・・・。)
介添えする為とは言え、息の届きそうな至近距離にいるイオを意識して、知らず赤くなる悠人。
いや、顔や喉だけではない。全身が熱く、火照って来たような・・・。
「どうかされましたか・・・ユート様?」
「い、いや、あの・・・。」
妖艶な笑みを浮かべ、甘く囁く。
動揺するユートから離れると、イオはするりと着衣を脱ぎ去った。
その下には、生まれたままの、白い裸身。
「イ、イオ!?」
「顔を真っ赤になさって・・・可愛らしい。その霊薬には、人を昂ぶらせる副作用があるのです・・・。
ユート様、もう、苦しいのではありませんか・・・?」
言われるまでも無く、悠人は自分の身体が抑えがたい衝動に疼いている事を自覚していた。
悠人自身である一部分が熱を持ち、肉付きの良い均整の取れたイオの肢体から、目が離せなくなる。
「どうか、はしたないと思わないで下さい・・・今この時だけ、私を愛しては下さいませんか・・・?」
「こ、こう言う事は好きな人同士でする物であって・・・。」
「・・・ユート様は、私がお嫌い?」
イオは悠人の手を取ると、自らの胸にそっと導く。
「そ、そそそ、そんな事はないけど・・・・あ、あぁああ・・・ご、ごめん・・・!!」
思わずイオを突き飛ばすと、ベッドの上で土下座する。
「恥をかかせるようだけど、ごめん!!・・・イオは本当に魅力的だと思うし、俺も嫌いじゃないけど、
やっぱりそう言う事は出来ないんだ・・・この時だけだとしても、俺には君を愛してやる事が出来ない!」
それだけ言って、悠人はイオの言葉を待つが・・・。
いつまで経っても、返事が返ってくる様子は無かった。
「イオ・・・?」
もしや突き飛ばした時に、気絶でもさせてしまったのだろうか。
そう思って悠人が顔を上げると、イオは何事も無かったかのようにいつもの服に身を包んでいた。
「どうかされましたか、ユート様?」
「え、あれ?・・・だって、今のは・・・。」
先程と同じ台詞。だがイオの口調が余りに普段と変わらなかったので、呆然とする悠人。
しかし、この身体の昂ぶりが、あれが夢ではないと証明していた。
「私は未だ、殿方を愛した事も愛された事もございませんわ。」
「な・・・そ、それじゃ、俺をからかったのか!?」
平然と言うイオに、薬の副作用もあって頭に血が上る悠人。
「ヘリオン様から――」
ピタッ・・・呟いたその言葉に、今にも掴みかかろうとしていた悠人が静止する。
それを確認すると、にこりと笑ってイオが続ける。
「――伝言が届いております。『・・・ユートさま、御身体の具合は如何でしょうか。許されるならすぐ
にも見舞いに駆けつけたい所ですが、誠心誠意任務に当る事によって、その志の代わりとしたいと思います
・・・帝国の攻撃は激しいですが、私達は全員、一丸となって頑張っています。ですからどうか安心して、
ゆっくり静養なさって下さい。――ヘリオン』以上原文のまま、確かにお伝えしました。」
遠く離れた戦場から送られた、ヘリオンのメッセージに心打たれる悠人。
その様子を見て、穏やかに微笑んでイオが告げる。
「どうか無礼をお許し下さい・・・この度の事では、私少なからずユート様を不満に思っていたのです。
こんなにも健気にユート様を想う方がいながら、一時の感情で身を危険に晒すとは・・・ユート様、出過ぎ
た事を申しますが、その身体はご自分一人だけの物ではありません。どうかご自愛を・・・。」
(゚∀゚)! 俄然読む気が湧いてきたのでいきなり 援護しちゃうぞ
「・・・そっか、ヘリオンがそんな事を・・・俺って情けないなぁ。」
「うふふ・・・しかし、私の誘惑も通じないとは、流石は<求め>の干渉を撥ね退けて来られたユート様
です。これで私も、少し安心致しました。」
「イオが、安心・・・?」
その言葉に、少し不審に思う悠人・・・そう言えば、<理想>による通信にも、莫大なエーテルが必要と
されるのだ・・・本来ならば、ヘリオンが軽々しく利用できるような物ではない。
「なあ、どうしてイオは、こんな事をしたんだ?」
「そうですね・・・ヘリオン様への、友情の為と言う事にしておきましょうか。」
友情・・・本当にそれだけだろうか。
下手をすれば、自分が犯されていたかも知れないのに。
待てよ、『殿方を愛した事も、愛された事もない』って、まさか。
それを察知したのかどうか、悠人を制して報告するイオ。
「――先程の霊薬、効能は保証致します。恐らくあと二、三日で、前線に戻る事が出来るでしょう・・・
情報部からの連絡によれば、ソーマズフェアリーが戦線に投入されたそうです。ヘリオン様はゆっくり静養
して欲しいと言っておられましたが、一刻も早い復帰が望まれているのが現実です・・・。」
「ソーマズフェアリー・・・あいつらか。」
ヘリヤの道で進軍中に出会った男。
そう言えば、エスペリアが異常に怯えていたのを思い出す。
すっかり出鼻を挫かれた悠人を尻目に、イオが退室の挨拶をする。
「あ、ちょっと待った・・・もしさっき、俺が誘いに乗ってたらどうしたんだ?」
「・・・・・お知りになりたいですか?」
「い、いや、いい・・・今日はありがとな。」
それだけ言って、イオの背中に手を振る悠人。
あの微笑を見た瞬間、背筋に冷たいものが流れるのを感じた。
「怖ぇ・・・神秘的どころじゃない、魔性の女だな・・・。」
イオの言葉通り、悠人はその後間も無く復帰する事が出来た。
サレ・スニル方面侵攻部隊は順調に戦果を挙げ、今はユウソカに達しようかという所まで来ている。
攻略拠点が多い為に、光陰や今日子が率いる元稲妻部隊の面々に加え、アセリアやウルカ等の実力者達を
持って当らせたのが功を奏した形だ。
その為悠人はエスペリアに指揮を任せていた、ゼィギオス方面侵攻部隊へと合流する事にした。
既に彼女達はゼィギオスの制圧に成功し、そこを拠点に帝国の反攻を受け止めていた。
ヘリオンとも再会を果たし、まずは一安心と悠人は思っていたのだが・・・。
「エスペリアは、随分調子が悪いようだったな・・・。」
引継ぎや現状説明の作戦会議を終えて、悠人が呟く。
常ならばその博識と明敏さを活かし、会議をリードしていたエスペリアだったが、今日は終始どこか上の
空で、一度した説明を繰り返したり、質問に対し慌てて聞き返すという様な場面が何度もあった。
そして会議終了後は、体調不良を理由に一番に自室に戻ってしまったのだ。
「数日前からあの調子です・・・民衆の不満も強く、制圧時に大半の防衛施設が破壊されていた事から、
駐留は困難を極めているのが現状なのですが・・・ユート様が来て下さって、本当に助かりました。」
会議中もエスペリアをサポートしていた、ヒミカが応じる。
恐らく、と前置きして口を開くのは、同じく古株の一人であるファーレーン。
「彼女がああなった原因は、ソーマズフェアリーの指揮官にある様に思います・・・詳しい事情は解りま
せんが、先の戦闘で相対した時には、あの男は明らかに知り合いである様な口振りをしていました。その時
エスペリアさんが、冷静な彼女らしくもなく狼狽していたのを覚えています。」
それを聞き、悠人はラキオスを起つ前にレスティーナに聞いた、ある情報を思い出していた。
ソーマ・ル・ソーマがかつて、ラキオススピリット隊の隊長であった可能性。
エスペリアの様子を見るに、二人の間に何か因縁があるのは間違いなさそうだ・・・。
悠人が臨時会議室に残り考え事をしていると、しばらくしてヘリオンとナナルゥの二人がやって来た。
「おや・・・珍しい組み合わせだな。二人ともどうしたんだ?」
どこか緊張した面持ちで、ヘリオンが答える。
「あ、あの・・・実はユートさまに御願いが・・・私達が言う様な事じゃないのかも知れないですけど、
エスペリアさまを元気付けてあげて欲しいんです。きっと、ユートさまなら出来るんじゃないかって。」
ヘリオンがどういう気持ちで言っているのか。
悠人は何となく悟りながらも、普段通りに応じる。
「勿論、エスペリアは大切な仲間だからな・・・俺に出来る事があるなら、力になってあげたいと思って
たよ・・・ところでひょっとしてナナルゥも、エスペリアが心配なのか?」
こうして一緒に御願いしに来てるのだからそうなのだろうが、悠人はこの少女がそう言った感情は希薄だ
と思っていたので、少々驚いたのも事実である。
「このままでは、任務に支障がありますから・・・・・それに・・・。」
「それに?」
「・・・エスペリア様には、暇を見て洋裁等を習っていたのですが・・・この状態が続くと困ります。」
「洋裁って、服を作るあれか?・・・へぇ、ナナルゥがそんな特技を持ってたなんてな。」
俯いていたヘリオンが、少しだけ元気を取り戻して付け加える。
「ナ、ナナルゥさんってすごいんですよ、手先が器用で、もうほとんど本職の人みたいなんです・・・。
この間も、私にエスペリアさまとお揃いの服を仕立ててくれたんですよ。」
「練習の為です・・・ユート様の方針の元に、戦闘以外の技術の習得に努めなければなりませんから。」
そう言ってナナルゥは視線を逸らすが・・・もしかして照れているのだろうか?
戦う事以外に生きる意味を見つけろと言ったのを、そう解釈したのか・・・。
だが悠人は、この少女に人間らしい感情が戻りかけているのを見て嬉しくなった。
「解った、二人とも俺に任せろ・・・俺も、少しはエスペリアを助けなきゃな。」
それからの数日、悠人は帝国軍の襲撃がない時には極力エスペリアの間近にいて、彼女を助け、勇気付け
ようと苦心した。
それを見てヘリオンは胸を痛めながらも、大好きなエスお姉ちゃんが元気になればと祈っていた。
・・・しかし二人の思いも空しく、エスペリアはますます暗く沈み、体調を悪くしていったのである。
そんなある日、エスペリアは話があると言って、悠人を砦の屋上に呼び出した。
「ご足労頂き申し訳ありません・・・いいえそれだけでは無く、私の為にユート様に気遣いを・・・。」
「これくらいどうって事ないさ、スピリットだとか人間だとかは関係ない・・・俺達は仲間だろう?」
「仲間・・・ありがとうございます。私の様な者に・・・でもこれ以上、ユート様に優しくされる訳には
参りません・・・そうしたら、欲張りな私はこの関係に、満足出来なくなってしまいます・・・。」
「・・・・。」
「理由は告げません。私は穢れていますから・・・でも、ユート様が愛しているのはあの子でしょう?」
「エスペリア、俺は・・・。」
「良いんです、私もあの子が好き・・・私なんかの為に、身を引こうとしている馬鹿なあの子が。」
エスペリアは無理に笑顔を作ると、悠人に背を向け語り続ける。
「ソーマ様は・・・いえ、ソーマ・ル・ソーマは、私のかつての主でした。冷酷で、スピリットを人形の
ように操る事に長けている・・・そしてあの夜、私が今立っているここで、あの方は言ったのです。」
『まだ解らないのですか?・・・私達はわざと、ここを放棄したのです。貴女方が勝利したのではない。
防衛施設は破壊され、用を成さない。今のゼィギオスは攻めるに易く、守るに難い・・・言わば裸の城!!
・・・私達はいつでも、攻め上る事が出来るのです。これから貴女方は、いつ来るとも知れぬ襲撃に怯える
日々を迎えるのですよ・・・エスペリア、貴女は私の操る人形に過ぎない・・・もうすぐ、自ら私の所有物
である事を認める時が来ます・・・その時を楽しみにしていますよ・・・では、さらば!!!』
「そうしてソーマはここから飛び降り、配下のスピリットと共に逃走しました・・・ユート様、私はあの
方が怖いのです・・・今の私は、ユート様のお力になれない・・・。」
泣き崩れるエスペリアを前に、悠人が掛ける言葉も無く立ち尽くしていると・・・。
「あああ!!・・・ユート、エスペリア様、こんな所にいたの!?」
そこら中走り回って探したのだろう。上気したニムが、息を切らして叫ぶ。
「ニムが慌ててるなんて初めて見たな・・・一体何があったんだ?」
「私だって慌てるわよ、何を呑気な事言ってるんだか・・・良く聞いて!・・・ネリーが・・・もしかし
たらネリーが、ソーマズフェアリーにやられて死んじゃったかも知れないの!!」
「何だって!?」
驚愕する悠人の後ろで、エスペリアが崩れ落ちる。
弱り切った精神が、その衝撃に耐えられなかったのだろう。
「エ、エスペリア!?・・・仕方ない。ニム、ちょっと手伝ってくれ。エスペリアを部屋に運んでから、
詳しい話を聞く。」
「わ、解った・・・けど、もしかして私のせい?」
「うぅぅ・・・ネリー・・・っく、ひっく・・・。」
・・・広間の中、<静寂>を胸に抱いたシアーの、すすり泣く声だけが響く。
集合した面々も、誰一人口を開く事なく、重い表情をしていた。
大よそのあらましはこうだ。
その時ネリーとシアーは、二人で哨戒任務に就いていた。
しかしトーン・シレタの森でほんの少しの間はぐれた後、ネリーの姿は見えなくなった。
心配してそこら中探し回ったシアーは、森の中に落ちていた<静寂>だけを見つけて、泣きながら一人で
帰って来たのだと言う。
「シアー・・・まだネリーが死んだと決まった訳じゃないんだから、元気を出して・・・。」
それまでずっと背中をさすってあげていた、ヘリオンが励ます。
確かに神剣だけ残してスピリットがいなくなるのは異常だったが、誰も死んだ瞬間を見た訳ではない。
「・・・それじゃ、その少しだけネリーとはぐれてる間には、神剣反応は感じなかったんだな?」
「ひっく・・・はい、はっきりとは言えないですけど、戦ってる気配は感じませんでした・・・。」
それを聞いて、考え込んでいたファーレーンが推理する。
「例えネリーが、襲撃者に気付くこと無く一撃で倒されたのだとしても、スピリットがマナに還る時には
それなりの反応を感じる筈です・・・ましてやネリーに一番近いシアーがそれに気付かなかったのだとした
ら、ネリーは死んだ訳ではないのでしょう・・・すると考えられるのは、ネリーは不意をつかれて神剣を奪
われ、何者かに連れ去られたという事ではないでしょうか。」
「うん、おっちょこちょいのあの子なら有り得そうね。」
「こ、こらニム、もう少し言い方があるでしょう。」
「・・・そうだな、敵の狙いが二人を殺す事にあったのなら<静寂>をそのままにしておいたり、シアー
を無事に帰したりはしないだろう。何らかの目的があって、ネリーは攫われたのかも知れない。」
だが、このタイミング・・・もしネリーを攫ったのがソーマならば、狙いはエスペリアにあるのではない
だろうか・・・悠人はそう直感したが、敢えてそれは言わずに指示を出した。
「とにかく今は憶測でしかないけど、俺はネリーが生きていると信じている・・・夜間の捜索はミイラ取
りがミイラになる危険があるから、明日以降部隊を組んで、捜索する事にしよう・・・相手の出方も解らな
いし、決して一人で外に出歩かない事・・・では、解散!」
そして深夜、日付が変わる直前。
エスペリアの事、ネリーの事・・・自室で悩む悠人に、突然鳴り響いた警鐘が敵の襲来を告げる。
「くそっ・・・よりによってこんな時に!!」
廊下に飛び出した悠人の下に、ヒミカが駆けつける。
「ヒミカ、状況は解るか!?」
「今の所、まだ侵入は許していないようです。敵は恐らくソーマズフェアリー。ファーレーンとニムが、
いち早く迎撃に当っています。」
「解った・・・俺達も急ぐぞ!」
敵は付かず離れず、襲撃と撤退を繰り返した。
内部への侵入こそ防いでいるものの、その攻勢が止む気配はない。
自らも軽い手傷を負いながら、三人目の敵を屠った悠人が叫ぶ。
「いやらしい攻撃だな・・・全員無事か!?」
「私達は、何とか・・・しかし人員が減っている中、長期戦は不利です。」
ファーレーンが一人を仕留め、悠人の確認に応じる。
ニムはぶつくさ言いながらも皆をサポートし、ナナルゥが範囲魔法で敵を押し退けた後、ヒミカが果敢に
斬り込んで敵陣を崩す・・・見れば、ひどく落ち込んでいたシアーでさえ、懸命に敵と渡り合っていた。
エスペリアは未だ寝室で起き上がれないでいるのだろうが・・・。
「・・・おい、ヘリオンはどうした?」
「え?」
「誰も見た者はいないのか?・・・ヘリオン、返事をしろ・・・ヘリオン!?」
ヘリオンがいない・・・。
その事実は、一様に悠人達を不安にさせた。
シアーに確認させると、ヘリオンの部屋にその姿は無く、ただ<失望>が机の上に置いてあったという。
(どう言う事なんだ?・・・無事でいろよヘリオン!)
一方その頃・・・。
ゼィギオスから近い、トーン・シレタの森の中、ソーマは成功しつつある策略にほくそ笑んでいた。
「あと僅かです・・・フフフフ・・・もう間も無く、エスペリアは再び私の物となります。」
その後ろから、大木にロープでぐるぐる巻きに縛り付けられたネリーが叫ぶ。
「何言ってんのさ、エスペリア様があんた見たいな気持ち悪いおっさんの物になるわけないじゃない!」
「おっさん?・・・お嬢さん、口の利き方には気をつけたほうが宜しいですよ。」
「すごんでも怖くなんてないんだから・・・何よ、私にHな事でもする気!?」
「貴女の様なおてんば娘には、興味はありませんよ。しかし貴女を殺せばエスペリアは私の物になるのを
躊躇ってしまうでしょう・・・だから手出しせずにいてあげているのです。慈悲深い私に感謝しなさい。」
「だーれが、感謝なんかするもんですか、べ〜〜〜!」
この状況で尚、やかましく口を閉じようとしないネリーだったが、ソーマは猿轡を咬ませる事はしなかっ
た。いや逆に、無力なネリーが見苦しく喚くほど、この男の快感は昂ぶるのである。
「先ほどゼィギオスに投げ文をさせました・・・私の忠実な部下達が勇者殿を引きつけている間に、エス
ペリアは一人ここにやって来るでしょう・・・自分が貴女の、身代わりになる為にね。」
「な・・・!」
「彼女は必ずそうします。エスペリアさえ手に入れれば、貴女は解放して差し上げましょう。」
・・・もっとも、すぐにゼィギオスに攻め込んで、殺してあげますが・・・。
かつての仲間が敵の尖兵として攻め込んで来るのを見た時、勇者殿はどんな反応をするでしょうねぇ。
その光景を想像し暗い愉悦に浸るソーマに、ソーマズフェアリーが何事かを告げる。
「お嬢さん、喜びなさい・・・救い主が、現れたようですよ。」
一人でやって来るようにと書いた以上、今のエスペリアは必ずそれに従う筈。
しかしソーマは、悠人達が彼女の後をついて来るのを防ぐ為に、森の中に特に感知に優れたスピリットを
配置しておいた・・・その知らせによれば、近づいてくるのは間違いなく<献身>と<静寂>のみ。
「エスペリアは貴女を逃がす為に、<静寂>を持ってきたようですねぇ・・・そんな事はせずとも、私は
約束は守るのですが・・・いやはや、信用されないというのは悲しいものです。」
「そんな・・・エスペリア様、本当に来ちゃったの・・・。」
「そうです、私に仕える為にね・・・さぁ、二人で彼女を出迎えようじゃありませんか。」
ソーマは配下にネリーの拘束を解かせると、呼び出した場所へと歩き始める。
もしネリーがここで抵抗しようとしても、配下のスピリット達が瞬時に彼女を切り刻むだろう。
「ごめんなさい、エスペリア様・・・。」
夜の森の中、対峙するソーマとエスペリア。
一目を避ける為かフードを目深に被っている為、その表情を伺う事はできない。
しかしソーマは、それを想像して歓喜に震えながら、エスペリアに呼びかける。
「よくぞ来ましたね、エスペリア・・・私がどれ程この時を待ち望んでいた事か、解りますか?」
「解りません・・・それよりも、ネリーを解放して下さい。」
押し殺した声で小さく呟くと、エスペリアは<静寂>を掲げる。
「勿論ですとも・・・ほら、どこへなりと行きなさい。貴女の役目は終わりました。」
それを聞いて、ネリーが駆け寄る。
この時まで、ソーマは自分の策略が完全に成功したと確信していた。
エスペリアの性格は知り尽くしている。
だからここに至って、二人が反抗する事など100%有り得ないとタカを括っていたのだが・・・。
「・・・どうして今まで黙ってたのよ!?」
涙ぐむシアーを、厳しく叱責するのはニム。
それを庇うのは、ファーレーンと先程起き出して来た"エスペリア"だった。
<献身>がどこにも無いことが解ると、シアーが目に見えて挙動不審になった為に問い正したのである。
「だ、だって、ヘリオンが絶対に言うなって・・・・。」
広間での話し合いが終わった後、悲しみに沈むシアーと心配したヘリオンは、一緒に廊下を歩いていた。
そしてエスペリアの私室の前を通りかかった時、偶然部屋の中の異変に気付いたのだ。
駆け込んでみると、エスペリアは相変わらずベッドに伏していたが、部屋の中で投げ文を発見した。
何とそこには、ネリーを助けたければエスペリア一人で、森の中に来いと書いてあるではないか。
ヘリオンは咄嗟に判断し、シアーを廊下に連れ出すとこう言った。
『これをエスペリアさまに見せる訳には行かないわ・・・今のエスペリアさまじゃ、このソーマと言う人
に会ったら大変な事になっちゃう。』
『で、でも、それじゃネリーは・・・?』
『だいじょうぶ、私に考えがあるから・・・だからシアーは、この事を誰にも気付かれない様にして。』
そう言ってヘリオンは自室に戻り、エスペリアそっくりな格好に着替えると、<献身>を持ち出して出か
けてしまったのだという。
『お願いシアー、私を信じて・・・ネリーを攫って、シアーをこんなに泣かせただけじゃなく・・・エス
ペリアさま、うぅん、エスお姉ちゃんまで苦しめようとするなんて、許さないんだから!』
「何てこった・・・。」
あのヘリオンが、大事な友達やエスペリアの為とはいえ、そんな事をしたと言うのか。
随分と成長したとは思っていたが、それにしても何て無謀な事を・・・。
「それじゃシアー、この地図の場所にヘリオンは向かったんだな?・・・・皆、悪いが後は頼む!」
>>572 ナナルゥのあの胸には、神剣魔法用のマナが詰まってると推測。
そして少しでも減らしたくないヒミカは強力な神剣魔法を使わない。
と下らない書き込みをしつつ支援
「い、一体、何故貴女がここにいるのです!?」
フードを脱ぎ去り正体を現したヘリオンに、怒り狂ったソーマが叫ぶ。
「・・・エ、エスお姉ちゃんを苦しめる人は、私が許しません!」
<献身>を構え、負けじとソーマを睨み付けるヘリオン。
「あはは、でも私もびっくりしちゃった・・・もしかして、ソーマズフェアリーってバカばっか?」
<静寂>を取り戻したネリーが、今までの仕返しとばかりに神経を逆撫でする事を言う。
「こ・・の・・小娘共が・・・お前達、八つ裂きにしてしまいなさい!!」
「昔はよく勝手に持ち出して、怒られてたっけ・・・お願い<献身>、エスお姉ちゃんを・・・あなたの
ご主人様をこの人から守る為にも、私に力を貸して!!」
襲い掛かるソーマズフェアリーを薙ぎ払い、一閃すると距離を取る。
「すごーい・・・ヘリオン、槍なんて使えたんだ。」
「・・・使えないよ。」
「へ?」
「昔ちょっとだけエスお姉ちゃんに習っただけ・・・どこまでいけるか解らないけど、頑張ろう!!」
「う、うっそ〜〜〜!?」
悲鳴を上げながらも、互いを庇い合い立ち回る二人。
戦場にも関わらず姦しいことこの上なかったが、それでも何とか善戦を続けていた。
陽動の為に多くのソーマズフェアリーがゼィギオスに向かっていた事と、ヘリオンが思い掛けない奮戦を
見せた事がその原因である。
・・・専門は違うがその槍捌きはなかなか堂に入っていて、高い練度を誇るソーマズフェアリーをも寄せ
付けない。ヘリオンが秘める才能と、純粋な想い。それが<献身>の共鳴を呼んだからこそ成る業だった。
「ば、バカな、私の芸術作品が、こんな小娘共に・・・。」
後ずさるソーマを、ヘリオンが追う。
「逃がさない・・・貴方だけには、容赦しません!」
「いけない、ヘリオン気をつけて!」
その時・・・草叢から突然飛び出し、ヘリオンに襲い掛かるスピリットが一人。
このスピリットこそ、神剣反応を極限まで隠蔽し、ネリーを誘拐したソーマの切り札だった。
「うはははは、愚か者め・・・自らの無謀を悔いるのです!」
完全な不意討ちと、慣れぬ武器。
反応が遅れたヘリオンが、その攻撃を防ぐ事は不可能だと思われたが・・・。
「な・・・。」
「え!?」
必殺の剣閃がヘリオンに襲い掛かるその寸前、突如展開されたシールド・ハイロゥがその身を守る。
『貴女の無事を願う契約者の祈りが、遠く離れた私に届きました・・・。』
「この声は・・・<献身>・・・?」
『しかしそれは一瞬の力です・・・さあ、早く敵を倒しなさい!』
「ありがとう<献身>・・・そして、エスお姉ちゃん!!」
数合切り結び、ソーマズフェアリーはヘリオンの裂帛の突きの前に敗れ去る。
それがどんな強敵であろうとも、今の彼女を止める事は不可能だった。
「すみません・・・貴女達の無念は、私が背負いますから・・・。」
そうしてヘリオンは、森の奥へ逃亡したソーマを追うのだったが・・・。
「・・・観念したんですか?」
逃げる事を止め、闇の中不敵に笑うソーマにヘリオンが尋ねる。
「・・・いやはや大したお嬢さんだ。私の完敗です・・・ところで物は相談なのですが、私を見逃しては
頂けませんかね?・・・もう二度と帝国には戻らず、貴女方の前に姿を見せないと誓いましょう。」
「え・・・?」
突然の申し出に、困惑するヘリオン。
今の彼女は、避けられない戦いなら容赦しないと言う心の強さを身につけていたが、命乞いをする相手を
殺そうと考える程に、非情に成り切れる筈もなかった。
「本当に、二度と現れませんか?・・・もう二度と、スピリット達を苦しめませんか?」
ソーマの真意が図れず、<献身>を突きつけながらじりじりと近づくヘリオン。
だがそれこそが、ソーマの最後の狙いだった。
「信じられませんか?・・・信じられないでしょうねぇ・・・でも構いませんよ、ほら!!」
「きゃぁっ!?」
ソーマが隠し持っていた何かのスイッチを入れると、突然ヘリオンを強烈なマナの波動が襲う。
倒れ伏し、身動き出来なくなったヘリオンを見下ろして、ソーマが勝ち誇る。
「はっはっはっ引っ掛かりましたね・・・私の逃走は、貴女をここに誘い込む為の、罠だったのですよ。
この装置はトーン・シレタの森に漂う高濃度のマナを利用して、瞬間的にマナ障壁の様な物を造りだす事が
出来るのです・・・さて、それでは私の邪魔をしてくれた御礼を、たっぷりとしてあげましょうかね!」
高笑いしながら、ヘリオンを全力で踏みつけ、蹴り上げる。
「もう少しでエスペリアが手に入ったものを・・・よくも、よくも、よくも、よくも、よくも!!!!」
「はぁっ・・・はぁっ・・・ふふふ、ハハハハハハ!!・・・いやぁ、愉快愉快・・・これでようやく、
溜飲が下がったと言うものです・・・ではそろそろ、楽にしてあげると致しましょうか!」
そうしてソーマは剣を抜き振りかぶったのだが、直後襲い掛かる殺気に、そのまま硬直した。
――バキィィン!!
オーラフォトンの光線が、ソーマの剣を根元から破壊する。
同時に熱に当てられて、苦悶に顔を歪ませるソーマ。
「く、くふ・・・はぁぁぁ・・・?」
「ユート・・・さま・・・。」
「こ、こここここ、これは、勇者殿ではありませんか・・・。」
「だいじょうぶか、ヘリオン?・・・今助けてやるからな。」
ヘリオンの危機にぎりぎり間に合った悠人が、優しく声を掛ける。
「・・・ふふふ・・・正義の味方登場という訳ですか・・・では勇者殿、そのお嬢さんがどの様にして、
私に敗れたのか知りたくはありませんか・・・?」
「!!・・・ユートさま、離れて!!」
ヘリオンが叫ぶより早く、ソーマはスイッチを押し、簡易版マナ障壁が悠人に襲い掛かる!!
「何と、何と愚かなのでしょう・・・ははははは・・・は・・・はぁああ!?」
ソーマの哄笑が、驚愕に変わり、やがて凍りつく。
多少のダメージは与えたのだろうが、オーラフォトンに守られた悠人は、ただソーマだけを見据え歩み続
ける・・・静かな怒りを湛え、一歩、また一歩と。
「な、何故です、何故死なないのですか・・・早く死になさい、死ぬのです!!!」
連続で使用できない事も忘れ、狂ったようにスイッチを押し続けるソーマ。
その驚愕の表情は、首が胴体と永遠に泣き別れするまで、変わる事はなかった・・・。
「・・・全く、何て無茶するんだか・・・せめて、行く前に俺にだけでも伝えろよな。」
「す、すみません・・・。」
ヘリオンを抱き起こした悠人が、拗ねた様に呟く。
「私、どうしてもネリーと、エスペリアさまを助けたかったんです・・・でも、ユートさまが来て下さら
なかったら、今頃・・・。」
「ふむ・・・実はな、ラキオスで静養してた時に、レスティーナとイオに怒られたんだ・・・俺の身体は
俺一人の物じゃないんだから、無茶すんなってな。」
「は、はぁ・・・。」
「だけどな、俺も同じ事をヘリオンに言う・・・いいか、今後絶対に、俺に黙って無茶はするな。」
そしてヘリオンが答える前に、キスで口を塞ぐ悠人。
「〜〜〜!?」
「・・・ぷはぁ・・・え、えっと、あのな・・・ここに来るまでに、物凄く心配した。もしもヘリオンに
何かあったらどうしようってな・・・俺もヘリオンと同じくらい、ヘリオンが大好きだから。」
まだ目を白黒させて、状況が掴めないでいるヘリオン。
「で、でもエスペリアさまは・・・。」
「ああ、そう言えばエスペリアも言っていたぜ・・・私の可愛い妹をよろしくってな。」
「そ、そんな、それじゃ、私・・・えぇ〜!?」
「愛してる・・・ヘリオン。」
「・・・ユートさま・・・。」
そして深い森の中、見詰め合う二人・・・・・・・・・の横から、突然響く祝福の声。
「ヘリオン、おっめでと〜〜〜〜♪」
「な、何!?」
「ネリー!?」
「見ちゃった見ちゃった〜・・・愛し合う二人、まるで物語の登場人物みたい・・・これはもう早く戻っ
て、皆にも教えてお祝いをしないとね♪」
「見ちゃったってお前・・・。」
「うん、ユートさまがかっこ良く登場して、ソーマをやっつけちゃう所から・・・私も早く、ヘリオンを
助けなきゃって追って来たんだけど、ユートさまってば私に気付かないでどんどん行っちゃうんだもん。」
「そ、そうだったのか・・・。」
「・・・もしかして、ネリーを助けに来たのに忘れてたんじゃないでしょうね、ひどいよユートさま!」
「い、いや、そんな事はないぞ・・・勿論、ネリーも心配だったさ。」
「む〜ホントかな〜〜〜?・・・ちょっと怪しいけど、まあヘリオンに免じて許してあげますか・・・。
それじゃ皆心配してるだろうし、早く帰らないとね♪」
上機嫌に笑って飛び跳ねるネリーを見て、帰ったら一騒動ありそうだと脱力する二人だった。
一方ゼィギオスでは、辛くも襲撃を退けたエスペリア達が、三人の帰りを待っていた。
「もう随分経ちますが、だいじょうぶでしょうか・・・。」
ファーレーンの言葉を受けて、エスペリアが強く答える。
「心配は要りません・・・ユート様なら、必ず二人を救い出してくれる筈です。」
「あら、言い切ったわね。このところ腑抜けていたのに、そろそろお局様復活かしら?」
「な・・・誰がお局ですか、ヒミカ!」
「ごめんごめん・・・まあ、今日は久しぶりに付き合ってあげるよ。ファーレーンも飲むでしょう?」
「戦闘直後こそ気が抜けて危ないのですが・・・仕方ありません、エスペリアさんの為ですし。」
「どうしてそれが私の為になるんですか、二人とも!?」
そう言って頬を膨らませるエスペリアに、もう暗い影は残っていない。
夜明けは確実に近づいていた・・・この戦いの終焉まで、後少し・・・。
>dLcBFsVc様
ご支援ありがとうございました・・・・が、悠人が誘いに乗るとBAD END直行なので、
お色気はあそこまででした、平にご容赦を^^;
仕立て屋ナナルゥは、髪結いの亭主を読んで、ナナルゥは手先が器用というイメージが
あったので出して見ました。
伏線としては無くても良かったのかも知れませんが、書きたくなる気持ちをお察し下さい。
<献身>を持って戦うヘリオンですが・・・。
アセリアが<存在>と<求め>の二刀流をしてたので、条件さえ許せば自分のじゃない
神剣で戦うシチュエーションも書いてみたいかなぁと思っていたので、ソーマを騙す
ひっかけと絡めて出して見ました。
それでは、今作も残すところあと僅かとなりました。
皆さん次スレでお会いしましょう。さようなら〜〜〜♪
リアルタイム投下に立ち会えました、G.J.
前回での瞬の変貌の理由付けは、何かつっかえていたものがすとんと落ちるような感覚がしました。
もう「永遠のアセリア」じゃなくなるけれど、
エトランジェ四人組で前世の因縁(テムオリン達)と決着をつける、などという裏ルートが一瞬よぎってしまいました。
第八幕は、もう最高潮ですね。
槍使いヘリオン大活躍!と思っていたらさらに悠人がおいしい所を持っていって……
晴れてラキオススピリット隊公認の仲となった二人がこの先どうなるのか、楽しみにしています。
一つ懺悔を。BAD ENDでもいいかな……と思ってしまいました。ゴメンナサイ
きっと誘いに乗ったら、イビルに進むようなBADでは無いんでしょうね……怖。
相変わらずの速い更新、お疲れ&GJです。
前回のラストの相談からヘリオンのために文字通り一肌脱ぐイオ様。
いいですねー。ここで選択肢があったら迷わず誘いにのるほうにポチッとな…。
嘘です。ヘリオンタンごめんなさい(平謝り)。
>>600 私もエトランジェ全員でコアラ様と戦うルートをXUSEに追加してほしくなりましたよ。
それから、投稿早々無粋かも知れませんが、
後々、保管庫・連絡スレに要望を出すときの参考として誤植に関して少々。
>>578内の「華人」は「佳人」の方が正しいと思われます。
「華人」だとチャイナ服を着た人になりますので。
それはそれで着てみてほしいですが。ヒミカさんやハリオンお姉さんが似合いそう…。
それから、過去ログで飛翔の人さまはEXPを持っていないといっておられたと思いますが、
EXP内でネリーはエスペリアのことを呼び捨てで呼んでいました。
今後の作品の参考になれば幸いです。
来週頃予定されている次回作も楽しみにしています。
602 :
飛翔の人:04/08/22 01:09 ID:k/yIxKr4
次スレで会いましょうと言いながら、いきなり登場してしまう自分^^;
>600
「わ〜、なんだか褒めすぎだよ〜♪」・・・と言う訳で、紫コロッケを進呈します。
>601
華人・・・おおおお!?・・・ほ、ほんとだ、誤植してる・・・。
佳人薄命の佳人のつもりだったのに・・・orz
・・・チャイナ服いいですね、レムリアだと物凄く似合いそう・・・。
ネリーのエスペリアに対する呼び方共々、貴重なアドバイスありがとうございます♪
>600、601
エンディングまであと僅かですが、第八幕で最高潮に達したけど、
あと尻すぼみ・・・なんて言われない様に頑張ります。感想ありがとでした♪
603 :
エロ大王:04/08/22 07:06 ID:XW7+xFxh
ソーマが情けなく死ぬところを見ると興奮する。
>566、599さんGJ!
しかしあれだな、捕らえたネリーにソーマがあんな事やこんな事をと想像した漏れは・・・orz
>601
ん?前回のラスト?・・・ああなるほど、
>>458 の事か。
幕間の方に意識が行ってたけど、確かに無くてもちゃんと話が通じてるわけだな。
とりあえず400KB行ったみたいだけど、次スレ論議もそろそろかな?
まあ、寸劇の人登場とか職人様方の力作に期待してるわけだが・・・。
>>605 仕切り屋が動き始めるのは420KB突破したあたりからです
・・・と、書き忘れてたので、ここでネタを一つ投下。
スピリットと言うのはあの世界では『国有の財産』なわけだよな?
と言うことは、金の無いサルドバルトあたりから、ラキオスに譲渡された
スピリットがいた・・・と考えてもおかしくはないわけだ。
ラキオスで一番古株なのはエスペリアなわけだが、彼女がヒミカやファーレーン、
ハリオンあたりよりずっと年上だと言うのはちょっと考え難い。
そうすると、同盟国からフリーエージェントされて来たのがいた。
・・・と考えるのは乱暴だろうか?
>>607 年表見直してみると、エスペリアとアセリアって一歳しか違わないのね。
でもアセリアが入隊したのはソーマがいなくなってから3年後だから、
配属年が遅くてもお姉さんズの誕生時期って皆同じなのかもね。
>605
>捕らえたネリーにソーマがあんな事やこんな事を
ほら、あれだ……ソーマって巨乳好きだからネリーに今すぐどうこうする気にはならないんだよ。
シアーだったらヤバカッタかもしれないと思ったわけだがorz
ソーマが連れて行ったスピリットたちは王都にいる当時の主力だけで、
アセリアやセリア、ヒミカたちは別の町や都市で訓練中という事になるのか。
ラキオスでラスクに鍛えられたという事が、
ヒミカよりも幼いエスペリアにスピリット隊のまとめ役に抜擢された理由なのだろうか。
あるいは、王都に長くいたってだけで、副隊長にされたのかもしれないな、あの王の下じゃ。
>609
なるほど、もうすぐご馳走(エスペリア)がやって来る筈だったんだしなぁ。
しかしニムのセリフ読んでて途中、ネリー死なせたらどうしてやろうと思ったのは内緒だ。
薬屋でエスペリアFXって目薬発見
爽やかなエメラルドグリーンの液体
ガロ・リキュア王国大辞典
ガロ・リキュア王室編纂
主宰 レスティーナ・ダイ・ガロ
編集者 ヨーティア・リカリオン
イオ・ラスフォルト
エスペリア・ラスフォルト
ヒミカ・ラスフォルト
聖ヨト歴339年。ガロ・リキュア王国建国以来初の国語辞典制作をガロ・リキュア女王
が発起する。それは大事業であったが、数多の協力者の力により342年無事発行され
た。既に何度も改訂が行われており、今回第五版を数えることとなる。
今回の主な追加みだし
p98
こく-び【黒眉】
永遠戦争の英雄の一人、ファーレーン(後のラスフォルト)は、その特性を示すはずの身体
的特徴が極めて微弱であり、その蒼翠の眉の中に数本の黒い毛が混じっていただけだった
と云うことに由来する。ファーレーンには妹(ニムントール→p210)があり、そのためには、
いかなることも躊躇せずこなし続けたと云うことから、転じて腹黒の意。(関連:泣いてニ
ムントールを斬る→p198)
斬られたのか!?なんてこったよ!亮は悪魔だ!
>613
ウマイ!けど、悪い意味かよ!w
>609の引用部分を書く前に
「ネリーが捕まってあんなことも!こんなことも!」
に脳内変換が起こったのは内緒……∧‖∧
「で、どうしてニムントールに斬りつけたの?」
「だって……だって……」
「泣いてちゃわかんないでしょ、ファーレーン。ちゃんと話して、ね?」
「ううっ……昨日、ユートさまが部屋にきたんですぅ……」
「(ピクッ)うんうん、それで?」
「それで、『おはよう、ニムントール、ファーレーン』って……」
「うんうん。それで?」
「それでって!『ニムントール、ファーレーン』って言ったんですよ、『ニムントール、ファーレーン』って!」
「いやあの……話が見えないんだけど、ファーレーン。それがどうしたの?」
「わぁぁぁぁん!ニムの方が先に呼ばれるなんて〜!!!」
「………………」
「どうしてですか?!どうして、ニムの方が先なの?!私の髪が蒼いから?そうなんですか?!」
「…………あ、ユートさま」
「えっ?どこどこ♪」
「有罪」
「なんでやねん」
……調子に乗って腹黒くし過ぎた。今は反省している。
そういやファーレーン腹黒説ってどっから発生したのだ?
「はぁっ・・・はぁっ・・・ど、どうしてダメージを与えられないの!?」
「お姉ちゃん本気出してるの?・・・はぁ・・面倒。」
「えーんTT 居合いの太刀!(ぺちっ)」
「エレメンタルブラスト!(ファーレーンのゲージ真っ赤)」
「・・・ニ、ニム、何時の間にこんなに強く・・・もうお姉ちゃんは要らないのね。(ドサッ)」
・・・SHDモード、ニムLv93、ファーレーンLv42の春だった。
>618
泣いてニムントールを斬る。
転じて「Lvの差は無情」の意。
>>613 ヒミカって「ラスフォルト」の姓を貰ってたっけ?
漏れの脳内では瞬のオーラフォトンブレイクで雑魚スピ
全滅してるんだけど。
「泣いて雑魚を切り捨てる」
今スレは大作SSがイパーイで、あまり小ネタが無かったので仕事中妄想してみた。
ワタクシには大作なんて書けないのだよ ヽ(`Д´)ノウワーン
>614 何たって永遠神剣『臥龍』の持ち主ですから。そう言えばヨーティアは一顧の
礼で済みましたな。
>617 二代目スレ70あたりからドゾー チナミニ81は私ですが私に罪はありませんよ?
泣きじゃくるファーレーン イイ(゚∀゚)ですな。緑は黒より出でて黒よりも黒し。あ、これ
じゃニムの方がさらに腹黒にw
ちなみに長女・次女・三女はガロ・リキュア史書に記載はない……三国志知らんと
分かりませんね。「白眉」の語源の人と、馬謖は五兄弟の四男と五男なんですな。
|編集者の身代わりにおしおきです!|
 ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
__
「,'´r==ミ、パンパンパンパンパン
くi イノノハ))) ∩
| l|| ゚ヮ゚ノl彡☆))Д´)☆))Д´)
>>622 ⊂彡☆))Д´)☆))Д´)
>>620(ついで)
>>620 あの時点で生き残ったスピは全員もらってます。で、何故ヒミカかというと、「StoryTellerHimika」から、
引っ張ってきてます。意外にも文系なヒミカと言うことで、言葉に深い造詣がある…と。
なんか面倒なので、スレの法則に則って今後は「髪結いの人」で通します。ちょいと気恥ずかしかったり。
>623
__
「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| orz 見出しから削除するよう云っときますので
627 :
信頼の人:04/08/23 00:03 ID:C58OIR+e
>>髪結いの人さん
>二代目スレ70あたり
げ…………そのあたり私のSSなんですが、私のせいでもないですよ……ね?
私の中ではここまで腹黒くはない筈なんですが、一体どこで間違えたのやらw
んじゃ「自由」の意味もらったのは誰?
>628
トヤーア=自由 ニコチン1000mg配合。素人にはオススメできない。
>>627 あーいや流れ的に70あたりからと言う意味でして。
私も腹黒度で云えばエスの方が上かと思うのです。
「どうぞ山吹色のお菓子です。お納め下さい」
「ふ、腹黒屋。そちも悪よのう」
「いやいや、スピリット隊副長殿には敵いませぬ」
「はーはっはっはっは」
「む、何奴っ」
「一つ人世のマナをすすり……えーとなんでしたっけ。ま、まぁとりあえず、
ご禁制のヨフアル密造容疑で切り捨てますっ」
「者共であえっであえっ」
「スピリット隊副長、予の顔を忘れたか」
「なにぃ、、、、ままさか、女王様っ」
「そうこのラキオス守り龍の入れ墨を忘れたとは言わせねぇ」
_| ̄|○ スマソ
>631 山吹色のお菓子って・・・ホントにお菓子かい!
たまに出てくる黒幕は?
634 :
憂鬱の人:04/08/23 22:00 ID:1Jwjc2Gn
雑魚ニモマケズ
ソーマニモマケズ
出番ノ少ナサニモ腹黒疑惑ニモマケナイ
ソンナスピリットニ ワタシハナリタイ
そんな訳で(どんな訳だ)エスペリアの家出・第4部スタート!
雑魚A「○ーマ様、エスペリアが捕らえられた由にございます。」
黒 幕「何とエスが・・・も、もしや勇者殿が!?」
雑魚B「いえ、何でもお団子のような髪型をした、旗本の三女が・・・。」
黒 幕「むぅ・・・えぇい忌々しい、必ず目に物見せて差し上げます!」
城を取り囲むサーギオスのスピリット達は見る間にその数を増やしてゆく。
攻撃の主体をなす敵のブラックスピリットが次々と斬り込んでくるが、
ことごとく光陰の分厚いオーラフォトンのシールドにブロックされる。
突然潮が引くように攻撃を止め、引き上げる敵のスピリット達。
それに呼応するかのように上空が真っ暗になり、何本もの火柱が悠人たちに襲い掛かった。
――スターダストか!
「ネリー!頼んだ!」悠人の指示を待つこともなくネリーが氷結魔法を詠唱した。
凄まじい勢いの火焔があっさり氷の壁に阻まれる。
「見た見たー?ユート様、ネリーの魔法、すっごいでしょー!?」
自称「クールな女」ネリーが悠人に手を振ってはしゃぐ。悠人にしてみればクールというより
「青いオルファ」といった感じなのだが、こと神剣魔法に関する限り、
今やネリーの右に出るブルースピリットはいなかった。
「ユート殿!次が来ます!」ウルカが叫ぶ。
「ったく、キリがねえな。」光陰がぼやいた。絶大な防御力を誇る加護のオーラも
さすがに連戦で弱まっている。
「よし、今日子!アレをやるぞ!」悠人が今日子に呼びかける。
今日子は軽く頷き、パワーセーブされたイクシードを放った。――合図だった。
左右に展開していたアセリアとヘリオンが舞い戻ってくる。
悠人はマナをオーラフォトンへと換え、「求め」の刀身に注ぎ込んだ。
次の瞬間、「求め」から放たれた光の渦がサーギオスのスピリット達を呑み込む。
一瞬にして何体かのスピリットがマナの塵に帰した。
「―――ッ!」射精にも似た快感が悠人の体に突き抜ける。あまりの威力に
戦場に居合わせた者すべてが、つかの間、沈黙した。敵も、そして味方も。
――――変態だよね、あたし。変態の殺人鬼だよ。
ラキオスに来た日、そう言って自嘲気味に笑っていた今日子の姿が甦る。
その時「求め」が青白い光を放っているのが悠人の目に入った。
――ちっ、嗤ってやがる。
悠人は心の中で舌打ちしながら、自ら手にしている「求め」を睨みつけた。
そう簡単に喰われてたまるか、と。
「パパー、すっごーい!」オルファが無邪気に喜ぶ。
「うるさいっ!」
悠人は知らず、怒鳴っていた。
「パパ...?何で怒るの...?」いきなり怒鳴りつけられ、オロオロするオルファの目に涙が浮かぶ。
「――おい、悠人。」さすがに光陰も咎めるような口調になった。
「え...?あ!ご、ごめん、オルファ!」ハッと我に返った悠人が慌てて謝る。
「い...今、このバカ剣と話してたんだ。こいつが余計な事言うからさ、つい...」
「ほら、そこ!油断しない!」今日子が振り返って言う。まるで悠人に助け舟を出すように。
「まだ敵はうじゃうじゃいるんだからね。」そう言いながら悠人から顔をそむけて、再び攻撃の体勢をとる。
日が暮れるころにはラキオス側の優勢が固まりつつあった。イオの突貫工事もほぼ終わったようだ。
悠人達に攻撃、防御両面の主導権が移っていた。無数とも思えたサーギオスのスピリット達が
徐々にその数を減らしてゆく。
「とりあえず、ひと段落ってとこか。」悠人の緊張が緩む。
「きゃあっ!!」突然前方で悲鳴が上がった。
守備に回っていたグリーンスピリット、ハリオンが血煙をあげて崩れ落ちた。
「なっ...いつの間に!」テラスに舞い降りたスピリットが悠人に向きを変え、
倒れたハリオンの体を乗り越えて無言で飛びかかって来た。
「くっ、速いっ!!」悠人にとってはそのスピリットの動きを目で追うのが精一杯で、
とてもかわしきれる攻撃ではなかった。即座にシールドを展開させ、
亀のように身を縮めて斬撃を弾き返す。攻撃の失敗にも表情ひとつ変えないまま、襲撃者は飛び去った。
「お怪我はっ、ユート殿!?」ウルカが駆け寄ってきた。
「俺は大丈夫だ!光陰っ、ハリオンを!」悠人が叫ぶ。倒れたハリオンの顔から見る間に血の気が引いてゆく。
光陰がハリオンを抱き起こし、加護のオーラで包みこんだ。
「このくらいなら何とかなる。悠人っ、また来るぞ!」
「くそっ、そう何度も...」悠人が迎撃態勢に入ったその時、悠人の脇を滑り抜けるように黒い影が疾駆した。
「ユート殿っ、ここは手前に!」声だけを残し、ウルカが飛び込んでくるスピリットを空中で迎え撃った。
「ウルカっ、そいつはただもんじゃない!無理するな!!」
上空で金属音を響かせ、斬り結ぶ二つの影。双方とも尋常なスピードではない。
やがて、力尽きたように一方が悠人達の前に墜落した。
「ど...どっちだ?」落ちてきたスピリットを確認し、悠人は胸をなで下ろした。
――横たわっているのは、先程の襲撃者であった。続いて、ウルカがゆっくり降下する。
「おい、大丈夫か?」ウルカの肩口から鮮血が流れていた。
「ウルカ、どうした!?」自分が傷を負った事すら気付いていないかのように倒したスピリットを凝視するウルカ。
そのスピリットは半ばマナの霧へと化しているところだった。
固まったままのウルカに、悠人はオーラフォトンの手当を施した。
光陰やグリーンスピリットの回復魔法ほどではないが、悠人のオーラも同様の効果を持ち合わせている。
「―――あ、ユート殿、これはかたじけない。」
ようやく治療する悠人に気付き、ウルカが慌てて頭を下げる。
「動くなよ、ウルカ。」
傷がふさがってゆくのを確認してから悠人は顔を上げた。
「―――ずいぶん腕の立つスピリットだったな、こいつ。ウルカと互角に渡り合うなんてさ」
そう言って倒れたスピリットの方を見る。そのスピリットはもうほとんど姿を消していた。
「――手前の」
ウルカが絞り出すような声で、言った。
「手前の、部下だった者です、ユート殿。」
悠人は息を呑んでウルカを見つめた。
総員、スピリット隊を支援せよ!
「あの眼は、完全に、神剣に、支配されておりました。」固く目を瞑って、少しずつ言葉を区切りながらウルカが続ける。
「――たやすく神剣に呑み込まれる事はない、そう思っておりましたが――」
震える声はいつか、鼻声になっていた。
「アセリアお姉ちゃん、大丈夫!?」オルファの大声に皆の視線が一斉に動く。
血まみれのアセリアがヘリオンに抱きかかえられるようにしてテラスに膝を付いていた。
「アセリア!」悠人が駆け寄って傷を確認する。
「私は、大丈夫だ、ユート。」そう答えるアセリアだが、脇腹と背中をかなり深く斬られていた。
悠人の手当てでは間に合いそうにない。
ウルカが傷だらけのアセリアを見て、唇をかんだ。
ハリオンの応急処置を終えた光陰が再び加護のオーラを展開し、アセリアの治療に当たる。
「厄介なのがいるみたいだな。」光陰がアセリアを抱えながら言った。
「――どうやらウルカの部下だった連中らしい。どのくらいの数かはまだ分からないけど、
全部がさっきハリオンを襲った奴くらいのレベルだったら、厳しいな。」
>>632
「ご禁制」ということは・・・w
ここで
1.亡き者にする
2.ははー私が悪うございました(泣
3・逃げる
「...あの、ユート様」アセリアの具合を心配そうに覗き込んでいたヘリオンが遠慮がちに口を開く。
「そうだ、ヘリオン、怪我はないか?」
ヘリオンも手傷を負っていたが、出血はさほどではなかった。どうやらうまくかわしたらしい。
「ごめんなさい、ユート様。私一人じゃ手に負えそうな相手じゃなかったので早めに逃げてきたんです。」
うなだれるヘリオン。
「謝ることはないよ、俺がそうしろって言ったんだから。――それより、よくアセリアを助けてくれたな。」
「――で、ヘリオン、まだいるのか、そいつらは。」光陰が尋ねる。
「――はい、アセリアさんが一人やっつけたんですけど、あと2人くらいいたと思います。」
――臆病さが役に立つ、か。
今さらながら悠人はウルカの言葉を噛みしめていた。
「悠、あれじゃない?」今日子が前方から声をかける。悠人が駆け出し、城壁から身を乗り出して見ると、
彼方から猛スピードで突っ込んでくるスピリットの影が二つ確認できた。
「ユート殿、手前が行きます!」言うが早いか、ウルカが飛び出していった。
――自分の責任だと思ってやがる、ウルカめ!
今、明らかに冷静さを欠いているウルカには任せたくなかったが、悠人の制止は届きそうにない。
「ヘリオン、どうだっ?まだ動けるか!?」
「私は行けます、ユート様!」ヘリオンが力強く答えた。
「よし、ウルカの援護を頼む!」
相手の能力を考えるとヘリオンにもうひと踏ん張りして貰うしかない。
ヘリオンが翼を広げ、前線に向かった。
出て来た相手の実力を察知したのか、空中で制止し、背中合わせに剣を構える二体のスピリット。
ウルカとヘリオンが前後から挟み込む形になった。
「悠、あたしがやろうか?」今日子が雷撃の構えを見せる。
「――いや、あの至近距離じゃウルカ達が巻き込まれる。」そう言って悠人は「空虚」を下げさせた。
潮合きわまり、ウルカとヘリオンが同時に仕掛けた。しばらく四つの影が一つにかたまり、激しく斬り合ったが、
やがて一番小さな影がそのかたまりから弾き出された。その影は飛ばされた勢いのまま大きく間合いを開けた。
「逃げた...の?」今日子が不安げに言う。悠人は何も言わず、「求め」にオーラを送り込んだ。
飛び出した小さな影を追う事なく、二体のスピリットがウルカと対峙する。
――二対一、か。
もしこれでウルカが討たれるような事があれば悠人は迷わずオーラフォトンを叩きつけるつもりだった。
しかし、続くヘリオンの動きを見て、悠人は神剣を握る手の力を抜いた。
―――そうか、ヘリオン。ここでやらかす気だな。
悠人は先日の事を思い出していた。
『ユート様に見せたい物があるんです。』そう言って上機嫌で悠人の腕を引くヘリオン。
『何だ、変な帽子でも買ってきたのか。』苦笑いしながら連れられた場所は駐屯地の近くの草っ原だった。
『違いますっ!』向き直ったヘリオンが真剣な顔で怒る。『新たな技を習得したんですっ!』
『悪かった、ヘリオン。』真っ赤な顔のヘリオンにまさか『日々前進ですなあ』とも言えず、悠人は謝った。
『それで、どんな技だ?ここで見せてくれるのか?』
『ユート様、見事受けて下さい。』ヘリオンは余裕の笑みを見せ、「失望」を抜き放った。
『やれやれ、俺は実験台か。』顔をしかめて「求め」を構える悠人。だが、まさか数秒後に自分が吹っ飛ばされるとは思ってもみない。
『ユ、ユート様っ、大丈夫ですか!?』
余りの衝撃に痺れる腕を押さえながら悠人は立ち上がった。
『あはは、ユート殿もやられましたか。』
『――隠れて見てるなんてずるいぞ、ウルカ。』ウルカを恨めしげににらむ悠人。
『あれは ――ウルカが教えたのか?』
『いえ。ヘリオンが、自ら考えた物です。どう思われますか?』
ヘリオンも固唾をのんで悠人の評価を待ち構えている。
何というニアミス・・・_| ̄|○<せめて支援しまっさ。
『正直びっくりしたよ、危うく首がなくなるとこだった。』悠人は笑いながら言った。
技の出来ばえよりも、ヘリオンが自分で工夫して考えた、その事の方が嬉しかった。
『まあ、実戦でどのくらい使えるかは分かりませんが、...
ユート殿やアセリア殿のように「一撃の重さ」を持たぬヘリオンには、あるいは、切り札になるやも知れません。』
『そうか...そう言えばハイペリアにも似たような事をする鳥がいるよ。』
『あっ、そうだ、ユート様!この技の名前、付けて下さい!』
好評に気をよくしたヘリオンが悠人にねだった。
『へりおんあたっく、なんてのはどうだ?』
『かっこいい!ユート様、ありがとうございます。』
『おお、さすがユート殿。それで行きましょう。』悠人はボケたつもりだったが、
二人がそれを上回る天然という事を計算に入れていなかった。
「こっ、この際名前はどうでもいい!しくじるなよ、ヘリオン!」
ヘリオンが夕日を包み込むように、弧を描いて急上昇に転じた。
天空高く舞い上がったところで、鋭角にターンし、敵のスピリットに向かって滑空する。
ハイペリアのハヤブサにも似たそのヘリオンの動きは、完全に相手の死角に入っていた。
ヘリオンの軌道が敵の黒い影と交錯した。凄まじい衝撃音を残し、1体のスピリットが落下してゆく。
そして、次の瞬間、突然のへリオンの攻撃に気を取られたもう1体のスピリットを、ウルカが斬り倒していた。
ヘリオンが意気揚々と引き上げて来る。ウルカはしばらくその場に留まっていた。
かつての部下を今現在の愛弟子が斬る、考えてみれば皮肉な話だった。
「見てくれました、ユート様!?」
「ああ、よくやった。大成功だったな、『風早の太刀』。」
「へ?あの、確か『へりおんあたっく』って...」
「だーれがそんなセンスのないネーミングをするんだね、ヘリオンくん!」
なぜかヨーティア口調になる悠人。
やがて、ウルカがゆっくりと戻ってきた。
「ウルカ、無理はするなって言った筈だぞ。」強い口調で悠人がウルカに釘をさした。
ヘリオンが心配そうな表情で2人のやりとりを見守る。
「はい...ですが、これは手前の至らなさが招いた結果ゆえ...」ウルカが口ごもる。
「気持ちはわかるが、お前一人で戦ってるわけじゃないんだ。――まあ、とにかく無事で良かったよ。
敵も静かになったみたいだから、ケガ人を中に運んで、ウルカも今日はもう休め。」
「――は。承知しました。」
ウルカは悠人に頭を下げ、ハリオンを支えながら城内に入っていった。
――ちょうど同じ頃、サレ・スニルの街の一角にあるソーマ部隊の臨時詰所で、料理に洗濯、掃除にと
コマネズミの如く働くエスペリアの姿があった。
「――みんな、私の事忘れてなければいいんだけど。」
ホウキを持つ手を止め、夕焼け空を見上げながら、誰にともなく不安げにつぶやくエスペリアであった。 続く。
651 :
憂鬱の人:04/08/23 22:25 ID:1Jwjc2Gn
てなわけで第4部終了です。
さっそくですが誤植のお知らせ。
50が変な題名になっていました。
お詫びして訂正いたします。
わ、わざとやってたのかと思ってた>ヘリオン大爆発・50
・・・と言う訳で、乙&GJでした!
いやぁ、迫力ある戦闘シーンを堪能させて頂きました。
(心配通りエスペリアの事忘れていたのは内緒です。)
最後に、更新怠って小ネタで割り込んでしまい申し訳ない・・・orz
支援させていただきマツタ。GJです!!
ちょうど飛翔の人さんの「明日への飛翔」と内部時間が重なって
きましたので双方とも楽しく読み比べさせていただいています。
>へりおんあたっく
…スバラスィ。特殊効果はやはり攻撃力減ですか?ってそれはおるふぁ(ry.
>――みんな、私の事忘れてなければいいんだけど
もちろん忘れてないですよ。というか早くその変態から離れ(ry.
654 :
憂鬱の人:04/08/23 22:41 ID:1Jwjc2Gn
>>652>>653 ご感想&ご支援ありがとうございます。
いえいえ、50はあくまで誤植です、誤植。
あ、それとへりおんあたっく改め「風早(かざはや)の太刀」ってのは
あくまでヘリオンのイメージから考えた技です。
Lv99まで育てて習得しなくてもバグじゃありません、あしからず。
ヘリオン大爆発!!で。エスペリアさんあなたという人は・・・何馴染んでるんですかw
>>649 タイトルにワロタ
保管庫に入る頃には戻ってしまうんだろうな
それはそれで惜しい気がする…
とりあえずGJ
前スレがdat落ちしたけどブラウザの操作間違えて
787以降のログ取り逃した……
(;つДT)
今まで画像掲示板しか見てなかったけど、アンテナとかあったんだな……
人丸氏とか、EXPのライター氏とか入ってないけど。
おば
「雑魚スピに待望の立ち絵が」と狂喜し、巫女さんに萌えたのも束の間
PS2版の追加CGを待ちきれず再び暴走し始める住人達の前に新たな職人が現れる
「よぉ、SSは必要か?」
数多の矛盾を更なる矛盾と妄想で覆い隠し、永遠に向けて加速し続けるここは
「永遠のアセリア総合スレッド」
662 :
憂鬱の人:04/08/24 17:51 ID:mOT0xm26
いやー、スレで改めて読み返すと、あいまに
小ネタがはさまっててもあんまり違和感ないですね、私のSSってw
あと、ウチのユート君からの苦情です。
「3時間かけて考えた技の名前より5秒で思いついたテキトーな
名前のほうが評判いいなんてorz」
>>憂鬱の人さん
個人的には「ヘリオン大爆発・50」を消して欲しくなかったりw
それはそうとG.J.でした。
ヘリオンの技属性が気になりますが、それよりも……
何時出てくるのかと思ってたら、よりによってどこにいるんですか、貴女w
遂にEXPディスクにて雑魚スピの補完が始まった(かもしれない)アセリアワールド。
イベント追加のPS2版発売も決まる中、今度はいかなる幻想が現実となるのか?
職人さんたちの力作と声援に支えられる第二ファンタズマゴリアにおいて
神剣と妄想に導かれた住人たちの運命が今再び動き出すここはアセリアネタ総合スレッド。
もう一ひねりホスィ…。
665 :
661:04/08/24 22:12 ID:Ndn/O813
>>664見て気付いたが、俺とかスレタイからしてちがってるし...OTL
666 :
1の改変:04/08/24 22:14 ID:Ndn/O813
おば
「雑魚スピに待望の立ち絵が」と狂喜し、巫女さんに萌えたのも束の間
PS2版の追加CGを待ちきれず再び暴走し始める住人達の前に新たな職人が現れる
「よぉ、SSは必要か?」
数多の矛盾を更なる矛盾と妄想で覆い隠し、永遠に向けて加速し続けるここは
永遠のアセリアネタ総合スレッド
×永遠のアセリアネタ
○アセリアネタ
しかもルビずれたし...orz
吊ってくる...
登場人物紹介
青スピ
アセリア(第7位『存在』・第3位『永遠』)
ゲーム中ではメインヒロインを張っているが、ここのスレではほとんど出番のない不憫な朴念仁。
「・・・ん」が口癖。エターナルになると『永遠』を持つが、某ONEとは関係ないのであしからずご了承ください。
ネリー(第8位『静寂』)
自称くーるな女だが、中身はくーるとはかけ離れて活発。このスレでは双子の妹であるシアーと一緒にユートに対し
ツインアタックをかけてくる。結構大胆に攻めてくるので、注意が必要だ。寝込みを襲われないように。
シアー(第8位『孤独』)
いつもネリーと一緒にいるのに何で『孤独』やねんと突っ込みたくなるスピ。姉のネリーに比べれば引っ込み思案で
あるため、付き合うにはこっちからのリードが必要だぞ、勇者殿。
また、食事のスピードがめちゃくちゃ遅いことになっている。
セリア(第7位『熱病』)
ツンデレ党青スピ派代表。このスレのツンデレ信者の心を鷲掴みにして離さない。
彼女を主人公にしたSSも多く、ツンデラーの増殖率の高さも伺える。ちなみに、これを書いてる俺もツンデラーだ。
君はまだ〜ツンデレラさ〜♪
緑スピ
エスペリア(第7位『献身』・第3位『聖緑』)
メイドの鏡ことエスペリア。通称エス。ユート様のために朝のご飯作りから夜のご奉仕までなんでもこなす。
真剣なSSからお笑いSSまで何でも登場し、ユートから他のスピを遠ざけ、自分のものにしようとする。
また、第2宿舎のスピたちとの不仲説まで出てる。でも、彼女はユート様さえいてくれれば幸せ。
ニムントール(第8位『曙光』)
「はぁ・・・めんどくさい」でおなじみのツンデレ党緑スピ派代表。通称ニム
姉も大好き、ユートも大好き。でも、お姉ちゃんもユート様が好き。
お姉ちゃんにユートを取られたくない。ユートにお姉ちゃんを取られたくない。
今思うと、実にジャイアニズムである。
ハリオン(第8位『大樹』)
もともとこのゲーム自身、巨乳が少ない。そのため、巨乳派と天然派のファンたちの心をつかんで
一大勢力になった謎の多いハリオン。このスレでは間延びした声からは考えられないほどの高い能力を持ち、
あらゆる面で第2宿舎の面々をサポートするお母さんのような存在。また、色んなSSで結構エロにもなったりする。
彼女のファンは多いが、彼女がヒロインのSSは少ない。しかし、ありとあらゆるSSに出現する。
これもまた、彼女の人徳ならぬスピ徳か。
赤スピ
オルファリル(第8位『理念』・第2位『再生』)
このゲームで最大のロリっ子だが、このスレではロリ派はネリシアやヘリオンにいってしまったためイマイチ人気が出ない。
出るときはたいてい、ネリシアと一緒にユートに3人で「じぇっとすとりーむあたっく」を仕掛ける。
ヒミカ(第6位『赤光』)
いちよう、第2宿舎のまとめ役となっているが、結構めちゃくちゃな設定になってきたスピ。
全スピの中で一番背が高く、モデルのようなスラっとした体系だが、胸の小ささが悩みである。
超文型で、辞書の編集や物語の語り部としてこのスレでは活躍している。
敵にはきつく、仲間には優しい。特に、年下のスピに慕われている。ハリオンが母なら、ヒミカは第2の父である。
ナナルゥ(第7位『消沈』)
最近までパッとしなかったが、忍者の設定になってからはかなりの人気になってきたシンデレラスピ。
あまり喋らないように思えるが、ここのスレでは良く喋る。
特技は問答無用のイグニッション。先制攻撃が大好きな隠密機動である。
しかし、その能力をほとんど他人の観察に当てていることが問題か。
黒スピ
ウルカ(第6位『冥加』)
このスレでもゲームでも、一番設定が変わらないのが彼女である。どちらにしても武人であるイメージは変わらず、
ユート殿に忠誠を誓う一振りの剣である。その強さ、風貌からかヘリオンに慕われている。
ファーレーン(第6位『月光』)
太眉でがチャームポイントで、兜を取ればかなり美人の黒スピ。ニムントールの姉として、精一杯妹をかわいがっている・・・が、
このスレでは激しく腹黒であり、ユート様のためなら自分の妹すら地獄の業火に投げ込みかねない。
ヘリオン(第9位『失望』)
このスレ最大にして最強のヒロインとなったのは、やはり『失望』の道行のあまりの出来のよさから来ているのか、
それとも、最初は最弱だが最後にはザコスピの中で最強の力を誇ることが戦後日本の復興を思い起こさせるのか
それとも、ただ単にツインテールでかわいく、他人のために剣を振るう姿に惚れたのか、とにかく人気が高い。
現在でも長編SSが発表されており、彼女の人気はしばらく続くものと思われる。大のユートファンであることも有名。
連投? テンプレ用なのかな?
大樹は六位だね、あと漢数字を使った方が良いぞ。
とりあえず、まとめ乙
エトランジェ
ユート(第四位『求め』・第二位『聖賢』)本名:高嶺悠人
全てのスピに愛され、全てのスピに振り回され、忙しいながらも楽しい日々を過ごす勇者様。
その一方で戦う意味を考え続け、自分のやっていることは妹を助けるためとはいえ、ただの殺人ではないかと悩み続ける。
求めからの干渉に悩ませられ、それでも彼は歩いていく。
彼の言葉「強くなろう、何も諦めずに済むように」は自分の中で一番好きな台詞である。
しかし、このスレではエロくなったり変態になったり、求めからの干渉なしにスピを襲うなど、
見事なへたれっぷりを見せてくれている。
コウイン(第五位『因果』)本名:碧光陰
変態中の変態。ロリマスターの称号を持つ彼は、ネリシアやオルファに間違ったことを吹き込んでユートを襲わせるなど
本当に危ない変態おっさんと化してきている。キョウコがいなかったら、いまごろ彼はラキオスで指名手配されていたことだろう。
キョウコ(第五位『空虚』)本名:岬今日子
このスレではユートとコウインに超電磁ハリセンを喰らわせる為だけに存在する。
予断だが、電撃というものは男に食らわせると、精子が以上をきたすため、子供を作れない体になったり、
体に障害のある子供が生まれる可能性がある。ユートとコウインが不憫でならない・・・
エターナル
トキミ(第三位『時詠』・第三位『時果』)本名:倉橋時深
おばさ(ryと言うと飛んでやってきてタイムアクセラレイト・クリティカルワン・タイムシフトなどを
ぶちかます脅威の巫女さん。EXで彼女のシナリオが作られたのは、やはり彼女を恐れてのことだろうか・・・
気をつけろ、トキミはいつもアナタを狙っている・・・
テムオリン(第二位『秩序』)
トキミとオバサンズを結成してはや1000年。見た目は幼女だが中身は諦観したオバサンである。
トキミがたまにスレで暴走するので、その鎮圧に一役買っている。
その他
レスティーナ女王陛下
ヨフアルマニアで城下町にヨフアルを買いに行く。ユート見物のために宿舎に行くなど、女王らしくない行動も目立つが、
中身はしっかりとした女王様である。
ネリシア
材料:ネリー・シアー
作り方:フュージョンする。ネリシアというセミロングの女の子が完成する。
特徴:ネリーでありシアーであるため、よく喋る割りにおとなしい。フュージョンするときはみにょんとくっつき、
分かれるときもみにょんと分かれる。
ソーマ
コウインと並ぶほどの変態。このスレでも未だにエスペリアを狙い暗躍している。
ゲームの設定とスレの設定を色々見直してみて、書いてみました。よかったら次スレのテンプレにでもくわえてあげてください。
また、結構うろ覚えの部分があるため、誤字脱字設定間違いキャラ忘れなど、多量にあるかと思います。
その指摘も踏まえて、色々書き直していきたいと思います。
>>6727さん
いやはや、確かに漢数字をつかったほうが永遠神剣はしっくりきますな。てか漢数字カコイイ。
そしてハリオン、本当にスマンカッタ。まさか張りオアンファンであるこの俺がこんな凡ミスをするとは・・・_| ̄|○
>>676 いやー実楽しいミスを連発するねぇ先生。
乳は正義だぜ
ミスで思い出したが、最近ハリオンマジックが炸裂しなくなったなあ。
初代スレあたりでは、ヘリオンがおいしいシチュを迎える度にハリオンに
かっさらわれてたものだが。
ヘリオン萌えがハリオンマジックを淘汰したんだ
>>676 エトランジェが2匹足りないのは仕様ですか?
誤字は
>>670の 超文型→超文系 位だと思います。
おもしろいけど、このスレの総意みたいな形でテンプレにするのは
その設定を強要している感じがしてどうかと思う。
あんましテンプレ長くするのも、>1に負担かける事になるしね
確かにこれから書かれる作品で各スピ達のキャラがステレオタイプ化してしまうかもね。
あ、でもこれまでの傾向って感じでおもしろいですよ。
おにぎりの中身の人氏、まとめ乙です。
さすがに「テンプレ」にするには偏りがあるように思いますので、
>>684さんの言うように、「雑魚スピスレ」のダイジェストとして張るのはどうでしょうか?
>682、683
うん、私もだいたい賛成だね。
おにぎりの中身の人氏の試みは評価できるけれど、テンプレという形では
ちょっと使い辛いと思う・・・例えばこれがどこかのサイトのコーナーで、
【登場人物紹介――アセリアSSの傾向と豆知識――】
・・・なんて具合に整理されて、どんどん追加・更新されて行けばこのスレの
スレ初心者向けにも常連向けにも面白いかもね。
言うのは簡単だけど実際やるのは大変だけどナ・・・orz
うお、書いてる途中でトイレ行ってたらまた意見が・・・orz
でも684、685の両氏も大体同じような意見のようでちょっと安心。
ほな、雑魚スピスレ・エンサイクロペディアスレ作りまひょか?
>>689 適当な事言ってすいません
でも、話題に上ったしあると嬉しいかも
いやはや、皆様のおっしゃるとおりです。
上の俺の書いた奴は「今までのまとめ」として受け取ってください。
そして・・・ハリオン、本当にスマンカッタ。煮るなり焼くなり食べるなりすきにしてくれ・・・・
業火のントゥシトラ
生年月日 不明(千年を越える時を生きているらしい)
出身地 不明
身長 五尺七寸
体重 十八貫目
血液型 エターナルAB型
永遠神剣 第三位『炎帝』
流派 脊髄反射
好きなもの ンギュルゥ!!!
嫌いなもの ンギュゥ!?
コンプレックス ンギュ!?
尊敬する人 ンギュゥギュゥ!!!
剣の道について ンギュルギュル!!
特技 ンギュー!!
平和を感じるとき ンギュルギュルギュルギュル!!!
好みのタイプ ンギュルゥゥゥゥゥゥ!!
声優 大畑 伸太郎
元ネタから声優消し忘れた……
どうもキャラ紹介見るとAチーム思い出す。
”ラキオスで鳴らした私たちスピツナズは、出番を切られイービルルートに詰め込まれたが、
原作を脱出し雑魚スピスレに潜った。しかし、スレでくすぶってるような私たちじゃあない。
神剣さえありゃ気分次第でなんでもやってのける出番知らず、不可能を可能にし、巨大な悪を粉砕する
私たち雑魚スピ軍団スピツナズ!
私は、リーダーのセリア・ブルースピリット。通称熱病のヒミカ。料理とサポートの名人。
私のような超級人格者でなければ、第二詰め所の奇人変人達のリーダーは務まりません。
あたしはネリー・ブラックスピリット、通称静寂のネリーっ!
あたしの自慢のルックスに、ユートさまもイチコロだよ!ネリーくーる!
おねだりして、ヨフアルからEJユニットまで、何でもそろえてみせるよ!
ナナルゥ・レッドスピリット、通称消沈のナナルゥ、神剣魔法の……………天才。
エターナルでもタコ殴りにしてみせます。でも、青スピだけは………ご容赦を。
はぃ〜〜〜、お待ちどうさまです〜〜〜、わたしがハリオン・グリーンスピリットですぅ〜。通称大樹のハリオンですよ〜
ディフェンスは天下一品の自信があるんですよ〜〜?!巨乳?エロ姉?なんのことでしょうか〜〜?
なんか混じってるw
「スピリット隊隊長サモドア守ユート。そのほう、悪事に荷担したわけではないが、隊長の身に
ありながら副長供の専横を防げなかった不届き、罪を免れる者ではない。よって蟄居申しつける」
「ハハッ」
「副長エスペリア、さらに腹黒屋、禁制品ヨフアルの密造まことに許し難いが、これまでの功績に
免じて罪一等を減じラキオス払いとする。よいな」
「ハハッ」
♪えっへへ〜ユート君前に佳織が居た部屋で蟄居だよ。サモドア守に就けてから全然逢えない
んだもん。でもこれから毎日逢えるよ。ヨフアル一緒に食べようね。あっ違うよヨフアルじゃなくて
ワッフルだよ。ヨフアルじゃないから作っても良いんだよ〜。邪魔者は追放だし、運命は自分で引
き寄せないとね。
あ、あとネネ太郎侍じゃないよ。超絶美少女遊び人レムリアだよっ!
しょうるいよふあるきんしれい【生類ヨフアル禁止令】
希代の名君と謳われたレスティーナ・ダイ・ガロ唯一の失政。一説には勇者ユートの「太ったな」
の一言がこの天下の悪法の原因であるとの話もある。
あ、マジだ。
試行錯誤の末の果てに 熱病のヒミカ とか 黒ネリー とか ハリオンのセリフに要らん「!」が一個ついていたりする
∧||∧
( ) ヨッコイショ
もう440KB越えてたんだな
最近スレッドの伸びが早くなってない?
EXP効果?
>>701 ヒミカはともかく、黒ネリーはネタじゃなかったんかい。
EJユニットて‥‥
確かにインプレッサのイメージカラーは青だけどさw
おねだりされるとエンジン持ってくるユートさまも大変だな‥‥
「う゛ー((((((;゚Д゚))))))ガクガクぶるーぶるー」
悠人はベッドで震えていた。別に恐怖におののいているわけではない。寒気だ。きっかけは今日の朝のことだった。
悠人は時々第二詰所で生活することにしている。
スピリット隊が、エスペリア、アセリア、オルファリルの三名のみだった間は悠人が第一詰所で起居していても問題はなかったが、人数が増え、第二詰所も併用されるようになると、どうしても温度差というか距離感というかが生じるようになった。
仮にも隊長という立場にある以上、隊員との意思疎通を欠くことがあってはならないし、作戦の立案・実行指揮を行うに当たって各員の性格や向き不向きを把握しておく必要がある。
そんな理由から、第一詰所と第二詰所の両方に済むことにしたのだ。まぁ、そもそもはオルファに自慢されたネリーが泣きついてきたのが発端だったが。
理由はともかくネリーは大喜び。オルファを宥めるのが大変だった。理を説きながらもエスペリアまで恨めしげな視線を向けてきたっけ。
熱のせいか思考がぶれる。とにかく今朝のことだ。
今日からしばらく第二詰所で暮らすべくやってきた悠人は、中庭に水を撒くハリオンの姿を見つけて近づいた。第二詰所の生活関係の雑務を取り仕切っているハリオンに、今日から悠人の分の食事等が増えることを伝えておこうと思ったのだ。
一応、第二詰所が問題なく運営されている以上大丈夫だとは思ったが、のんびり屋のハリオンが相手だから念のためだ。まぁ、ハリオンがかなりののんびり屋であることがわかったのも第二詰所での生活の成果のひとつではあった。
「ハリオン、今日から…」
悠人が声をかけると、
「はい〜?」
ハリオンが振り向いて、悠人はずぶ濡れになった。声をかけられて振り向いたはいいが、水を撒く手は止まらなかったらしい。これでエスペリアの劣らず詰所を切り盛りできているのだから不思議なものだが、まぁこれがハリオンだと思うことにしている。
「…あー、今日から俺、こっちなんで、よろしく」
「はい〜、わかりました〜。よろしくですぅ〜♪。……あら〜、すいません〜」
水をかけてしまったことの認識が後になるのも、まぁ、ハリオンだ。
「えっと〜…お風呂に入ってらして下さい〜、風邪をひいてしまいますと大変ですから〜」
「あ、あぁ、わかった」
「これが終わったらお背中流しに伺いますから〜」
「いや、それは要らないから」
そして悠人は風呂へと向かった。「どうして朝っぱらから風呂が沸いてる?」などと尋ねたりはしない。相手はハリオンである。要らないと言っておいたものの、ハリオンが背中を流しに来る気がしたので、悠人は風呂を早々に切り上げた。
脱衣所を出て廊下で鉢合わせたハリオン曰く、
「あらあら〜、ようやく水撒きが終わったからお背中流してあげたかったのに〜」
ということで、予感は当たったわけである。その割りにしっかり脱衣所に着替えが用意してあったりする辺り、侮れない。
そんなことがあって、昼過ぎ頃、悠人は寒気を感じ始めた。それから悪化の一途を辿って今に至る。
おそらく風呂でしっかり暖まらなかったために湯冷めしてしまったのだろう。脱衣所を出てハリオンの姿を見たときには、俺の読み勝ちだ、と思ったものだったが、それで風邪をひいてしまった今となっては、勝ったのか負けたのかわからない。
といって、あのまま風呂に浸かっていれば、ハリオンは冗談ではなく入ってきただろう。じゃあどうすればよかったのか、ついそう考えてしまって頭痛が酷くなる。熱のあるときにややこしい考えごとは禁物だ。ましてやハリオンが絡んでいることは。
悠人がうんうん唸っていると、ハリオンが部屋に入ってきた。
「失礼しますぅ〜。大丈夫ですか〜? お夕飯を持って来ましたよぉ〜♪」
いつの間にかもうそんな時間だった。
「あ、あぁ、大丈夫だよ」
あまり大丈夫でもないのだが、極力元気ぶってみせる。一応、風邪をひいた原因にハリオンが無関係でもないので、心配させたくないからだ。まぁ、ハリオンが心配するかどうかは定かではない。というか、そもそもそんなこと考えるかも定かではないが。
「んもぅ〜、嘘は、めっめっ、ですよぅ〜?」
どうやら無理してるのはバレたようだ。…声をかけられるまで入ってきたのに気づかなくて、それまで唸ってたんだから当たり前か。頭回ってないなぁ。
「でも〜、それならご飯食べられそうですね〜。やっぱりちゃんと食べないと〜、元気出ませんからね〜」
と言いながら持ってきたお盆をサイドテーブルに置くと、ハリオンはベッドに腰を下ろした。
「はい、がんばっておっきして下さいね〜」
何かにつけてはお姉さんぶるハリオンだがさすがに「おっき」は…、などと思っている間に悠人の体はあっさりと引き起こされていた。急激だったせいで眩暈がして、そのままハリオンの方へ倒れこんでしまう。
ぽふん。
やわらかな着地。と同時に何だか爽やかな香りが立ち昇った気がした。それは香水のような強いものではなく、香りと言うにはあまりにも微かで、むしろ雰囲気と言う方が近いかもしれない、そんな感じ。
えーと…フィトンチッド、だっけ? 森林浴の有効成分って。そんな関係あるようなないようなことを思っていると、ふよん、と抱きしめられた。そう、「ぎゅっと」でも「きゅっと」でもなく、「ふよん、と」。
その感触はやわらかであたたかく、ぬるめの風呂あるいは冬の朝の毛布にも似た、えも言われぬ魅力を持っていて。事ここに至って、悠人はようやく気がついた。「ぽふん」「ふよん」の正体に。ハリオンの胸だ。
「あ、あ…えーと…ごめん」
そう言って体を離そうとするも、悠人の背に回されたハリオンの腕が離さない。自然、声はくぐもった。
「いいですから〜、しばらくこのままで〜」
ハリオンの掌が悠人の背中をゆっくりと這い回る。むずかる赤子を宥めるように。
「で、でも…」
「んもぅ〜、お姉さんの言うことは〜、素直に聞くものですよぉ〜?」
悠人は未だにハリオンのお姉さんモードにどう抗ったらいいのかわからない。反抗は諦めることにした。意識するな…意識するな…忘れろ…忘れろ…ついさっきまでの気づく前の状態に戻るんだ…。そう自分に言い聞かせる。
ふよん、ふよん。ハリオンの動きに合わせて感触が押し寄せる。
だぁーーーーーーっ! 意識すまいとすればするほど余計に意識してしまう上にこの攻撃。無理っ!! 何かしょうもなくて終わりのないことでも考えて意識を逸らそう。えーと……そうだ、「ハリオンの『お姉さんモード』対抗法」、これだ。
未だ答えの見えない問題にして、万一答えが出たらそれはそれで有効だ。ナイス、俺。そもそも、どうしてお姉さんモードになられると俺は無条件降伏しちまうんだ? 苦手なのか? 苦手…かもしれないなぁ…嫌いというわけではないと思うんだが…。
あー、そもそも姉がいないから「お姉さん」にどう接していいのかわからないってことか? う〜ん、考えてみれば、近しい年上の女性ってもの自体、義母さんを亡くして以来縁がないんだよなぁ…あ、バアちゃんも入るのか? まぁどちらにしても昔には違いないな。
敢えて言うならエスペリアぐらいか。でもなぁ、エスペリアはたまにお姉さんっぽい言動をすることもあるけど、基本的には『献身』というか尽くすってイメージだよな。
んで、ハリオンみたいに「お姉さん」を全面に出されると弱いわけだ。年齢的に本当に「お姉さん」かどうかは置いておいて。ということは、だ。佳織のような気安さで、バアちゃんのように甘やかされればいいわけか?
こっちが守るんじゃなくて、守られる側っていうのがポイントだな。「仲間」だ「家族」だと口にする以上、一方的に俺だけが守る側ってのは不公平なのかもしれない。あとは慣れあるのみ。
ふよん。
……佳織にこれはないな。つーか、姉持ちはみんなこれに慣れてるのか? えーいっ、がんばれ、俺! 意識しないでいられれば癒される気分なのはたしかなんだし。…エスペリアとはまた違った意味で。
「あら〜? だいぶ落ち着いたみたいですね〜」
ずっと悠人の背中を撫で回していたハリオンが、悠人の内なる変化を察したかのようなタイミングで声をかけた。
「少しは気分が良くなりましたか〜?」
悠人は頭痛も寒気もずいぶん引いていることに言われて初めて気がついた。まだ体のだるさが残っているものの、ずいぶんと楽になっている。
「…なぁ、ハリオン、魔法でも使ったのか?」
神剣を持ってきていない以上それはないと思いつつも尋ねてみた。
「い〜え〜、別に何もしてませんよぉ〜?」
「何だかだいぶ楽になったみたいなんだけど…」
「え〜と〜、そうですねぇ〜、それじゃあ、『お姉さんの魔法』ということにしておきましょうかぁ〜♪」
ハリオンが本気とも冗談ともつかない調子でそう言うのを、悠人は否定できなかった。悠人自身が魔法とでも思うしかない心境だったからだ。
ヨーティアなら「必ず説明はつくはずなんだよ、ちゃんと考えさえすればな。これだから凡人は…」とでも言うだろうか。まぁ、凡人の悠人としては、「いいじゃないか、夢があって」と思っておくことにしよう。
「それじゃあ、お食事にしましょうね〜」
そう言ってハリオンがサイドテーブルから取り上げたお椀からは湯気が立ち昇っている。してみると、けっこう長い時間が経ったと思っていたが、そんなこともなかったようだ。
「ちゃ〜んと、消化にいいものを用意しましたからね〜」
どうもハイペリアでいうところのお粥に相当するものに見える。それはいいのだが…。
「はい、あ〜ん♪」
ハリオンはスプーンとも蓮華ともつかないものですくって悠人の口元に差し出した。
「い、いや、それはさすがに…」
「あらあら〜、お姉さんとしたことがうっかりしてました〜」
それはいつものことだろ、と思わず心の中でツッコミを入れる悠人。
ラキオス王「ほぉさすがはエトランジェ...支援無しでこれほど動けるとは」
「ふ〜、ふ〜。…はい、あ〜ん♪」
やはり、ハリオンは悠人の反応を「自分で食べられる」とはとってくれなかった。あまつさえ、吹いて冷ますというより本当に言葉を発するかのような「ふ〜、ふ〜」のおかげで恥ずかしさ倍増だ。
「あれ〜? もしかして〜、熱いの苦手ですかぁ〜? ふぅ〜ふ〜」
悠人が食べようとしないのを猫舌だと勘違いしたのか、さらに冷まそうとするハリオン。なんだか、「ふ〜、ふ〜」が「夫婦」に聞こえてどうかしそうになった悠人は降参することにした。
「わ、わかった、食べるよ」
「はい、あ〜ん♪」
…やっぱり、いざとなると……えーいっ、ままよ。
「…あ、あーん」
口にスプーン(?)が入ってくる。ぱくっ。スプーンが滑り出て行く。もぐもぐ、ごくん。
「おいしいですかぁ〜?」
「あ、あぁ」
「ん〜、ちゃんと言ってくれないと〜、お姉さん悲しいですぅ〜」
「あ、うん、おいしいよ」
「はい〜、それじゃあ、次行きましょうね〜。ふ〜、ふ〜。…はい、あ〜ん♪」
繰り返すこと数度。食事を摂り終えた悠人はベッドに寝かしつけられた。と、何を思ったか、ハリオンがベッドに入り込んで来るではないか。
「お、おい、ハリオン、何を!?」
「はい〜、夜伽を〜」
「ぶほっ……よ、夜伽ぃーっ!?」
早めにサポートスキル発動!
「あ〜、こーゆーときはぁ〜、添い寝って言うんでしたっけ〜?」
たしかに、夜伽という言葉には看護とか警護という意味がある。が、女が男の相手を…その、そういう意味もあるわけで。看護という意味だとしても、あまり使って欲しくない、悠人としては。どうしても、その…驚いてしまうから。
悠人がかろうじて衝撃から立ち直る間に、ハリオンはすっかりベッドに潜り込んでしまっていた。どうやってハリオンを追い出そうかと考えて、けれど結局そのままにしておくことにした。
普段から何かにつけお姉さんぶるハリオンは、実は「姉弟」というものにあこがれていたのかもしれない。それならそれで、少しぐらいそれを満たしてやるのもいいじゃないか。ちょっと勘違いしている面があるとしても、だ。…まぁ、行き過ぎない限りは。
ハリオンが本当はどう思っているのかは知らないが、悠人はそう思って接することにした。それが違っていたなら、そうわかったときにそれに合わせてまた考えればいいさ。
さっきよりもう少し踏み込んだ結論。指針があれば人は慌てずに済む。…はずだったが、さすがに気恥ずかしくて、悠人は身をよじってハリオンに背を向けた。
さわさわ。なでなで。
悠人の硬い髪をハリオンの手がゆっくりと梳いては撫で梳いては撫で…くりかえし、くりかえし…。それを感じながら悠人は目を閉じた。心の闇から湿っぽく揺れる何かが溢れてくるのを感じながら。それでも幸せな気持ちに包まれながら。
目が覚めると夜だった。いや、微かに光が差している。それも灯りではなく陽光のように感じる。してみると朝なのだろう。しかし、悠人の視界は暗かった。
ふよん。
ん? 悠人は首を回してみる。
ふよん。
片目に陽光が射し込んだ。眩しい。思わずぎゅっと目を閉じて、それからゆっくりと開いていく。やはり朝だ。本格的に起きる前に、安らかな眠りを惜しむように枕に顔を擦りつける。
ぐりぐりぐり。
ふよふよふよん。
なんだかいつもと違う感触に体を離そうとして、動かなかった。
何だ? と、首だけ後ろに動かすと、目の前にはハリオンがいた。正確にはハリオンの胸があった。どアップで。
しばし呆然。まだ半分寝ぼけていたのが急速に覚醒を始めた意識と感覚を総動員して、なんとか事態の把握に努める。結論。何故かは知らないが、ハリオンに抱きしめられている。悠人の頭を胸に押しつけるようにして。
つまり、さっきのは枕ではなく、当然…。うわーーっ、と叫びそうになって、危うく堪える。この状況でハリオンが起きてしまったら……ん? どうということもないような気もするな…。
が、ハリオンはともかく、悠人の方がどんな顔していいかわからない。ここはどうにかハリオンを起こすことなくこの抱擁から脱出しなくては。
というわけで、もぞもぞ。何故か強く抱きしめられているので、起こさないようにそっとというのはこれがけっこう難しい。
もぞもぞ、もぞもぞ。
「あん♪」
「え?」
目が合った。固まる悠人。
「……もしかして、起きてた?」
「はい〜」
と即答するハリオン。もちろんですぅ〜と言わんばかりに。
「えーと…いつから?」
「ユートさまがぁ〜、目を覚ます少し前からですぅ〜♪」
…… _| ̄|○ と、くずおれたいところだったが、抱きしめられたままではそれも叶わない。
「と、とりあえず、離してくれないか?」
「離さないとぉ〜、だめですかぁ〜?」
「だーめ」
もったいない、もう少しと、ぐずるハリオンをどうにか説き伏せて解放してもらう。そして、ハリオンにベッドから出てもらうと、悠人は思う存分、うなだれた。
もう体のだるさもなく、悠人自身の認識では全快だったので、朝食は普通に食べられた。「あーん」は回避されたのだ。
しかしながら、ハリオンが頑として譲らず、悠人はベッドで静養を続けさせられていた。さすがに退屈というか、部屋に篭りきりで気が滅入ってきたので、昼食後、部屋に連行するべく悠人の腕を取ったハリオンを止めて言った。
「なぁ、どう考えてももう大丈夫だし、外の空気も吸いたいし、剣の素振りをしたいんだけど」
「んもぅ〜、そんなの、めっ、めっ、ですぅ〜。治りかけがぁ〜、大事なんですよぅ〜?」
やはりハリオンに否定されてしまった。まぁ、病み上がりなのはたしかなので、悠人も反論に困るところだ。しばしの交渉の後、どうにか許可されたのは、中庭で日向ぼっこすることだった。
本当は体を動かしたいところではあるが、まぁ外の空気を吸えるだけでもましだろう。というか、ハリオンから譲歩を引き出せただけでも良しとすべきかもしれない。
「それでは〜、ちょっと待っていて下さいね〜」
そう言い置いてハリオンはどこかへと歩いて行く。程なくして戻って来たハリオンは毛布を抱えていた。
「また風邪をひいたら〜、大変ですからね〜」
毛布に包まって日向ぼっこというのは意味があるのだろうか? ……まぁ、ニムントール辺りなら似合いそうな気もするが。あまりにあんまりで、悠人は思わず叫んだ。
「ハリオンの過保護っ!」
「お姉さんですからねぇ〜♪」
全くこたえてないどころか嬉しそうなハリオンに、悠人はやっぱり敵わない自分を自覚したのでだった。
援護いたします。
悠人はハリオンに連れられて中庭にある木の下にやって来た。どうやら、ここで日向ぼっこということらしい。木の下ではあるが、向きが良いのか陽の光は届いている。
空を見上げていた悠人が振り返ると、ハリオンは木に寄りかかって座り、お腹から足にかけて毛布を広げていた。毛布の膨らみから、足を広げているのがわかる。
「さぁ〜♪」
えーと…
「さぁ〜♪」
それは…そこに寝ろと?
「さぁ〜♪」
はい、俺の負けです。言葉にこそしないものの、ため息をついて、悠人はそこに寝そべった。高すぎないように、低すぎないように、頭がハリオンのお腹に来るように。
その結果、視界には……たゆん、たゆん。悠人は慌てて目を閉じた。と、ハリオンが悠人の脇に手を入れて引き上げる。そして広げていた毛布を折り返した。
「お、おい?」
「こうしないと〜、お顔に毛布がかかってしまいますからね〜」
ま、いいか。
悠人は眠気が体を浸していくのを感じていた。
昨夜たっぷり眠ったはずなのに。急速に。
頭の後ろにやわらかな感触を感じながら。
どこからかエスペリアの声が聞こえた気がした。聞こえ始めたハリオンの寝息に消されてか、すぐに聞こえなくなったが。
ごめん。今は負けさせて。
この心地良い、お姉さんといっしょの眠りに―――
その翌日、今度はハリオンが風邪をひいていた。
伝染[うつ]ったのか、昼寝で寝冷えしてしまったのか。
何にせよ、今度は悠人が看病することにした。
どちらにしても悠人が原因に無関係ではないだろうから。
「あらあら〜、すいませんねぇ〜。わたしがこんな体でなければぁ〜」
「それは言わない約束だろ」
もちろん、そんな約束などしていない(笑)
終わったのかな?おつかれ〜
720 :
寸劇の人:04/08/25 22:14 ID:GyE5F1bB
>>705-709,711,713-715,717-718
『この樹の懐で』でした。
ひたすら悠人がハリオンのお姉さん攻撃に晒される模様を小ネタで、
と書き始めて、終わってみたら想定してたより容量で言って倍以上になってました。
道行書き氏の『ラキオスに訪れた夏』の影響を受けてますね。
本来が小ネタのつもりだったので、
・山? 何ですか、それは? ハリオンのむn(ペチン
・落ち? 落ちません。弾みます。たゆn(ペチン
・意味? 萌えるなり癒されるなり和むなり笑うなり、何かをお届けできたならそれが全てです。
という代物です。
GJです!
ハリオンお姉さん久しぶり〜♪
722 :
寸劇の人:04/08/25 22:18 ID:GyE5F1bB
支援下さった方(々)、ありがとうございました。
連投規制にかからないであろう間隔での投下がルーチンワーク化されてまして、
せっかくの支援を有効に活かせてません。ごめんなさい。
と、とりあえず、トリガーに向けて、のんびり促進ということで。
胸に枕しお粥に口糊す。窒息GJ。
ハリオン暖簾の様で押しが強いとはこれ如何に。しかしこの樹って……ファー&ニムでおなじみの?
GJ!
癒されますた
寸劇の人さん
_、_
.∩( ,_>`) GJ
(ヨ )
>>725 どうも
にしても支援なしでラストまで動けるとは...寸劇の人さんは神だ
>>710 あんたはわかってるッ!心底わかってるヤツだッ!
大きい物が好きなことは生物学的に正しいっ!
(*´Д`)たゆんたゆん...........ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ
>>710 デブ親父が何故そこにいるゥゥゥゥ!!??
>>705 ∧||∧
( ) ブラン gj
732 :
667:04/08/25 22:43 ID:rHzcp1sO
寸劇の人氏、乙&GJでした。ええ、もうばっちりとたゆんたゆん(ry
頃合いですので、次スレテンプレを投下します。
今回タイミング的に私はスレ立て規制に引っ掛かると思われますので、
トリガである475KBを超えた時点で、どなたかスレ立てをお願いいたします。
次スレタイトル・永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 5
>>727 テンプレ1(候補1)
>>728 テンプレ1(候補2)
>>730 テンプレ2
なおテンプレ1には候補が2つありますので、スレ立てされる方がどちらかを
お選び下さい。
以上の件、よろしくお願い申し上げます。
寸劇の人さんお疲れ様〜〜〜〜
・・・お姉さんもいいなぁ・・・・
なんと言うか、ほわほわほわほわ〜〜〜〜という感じでした・・・
>>733 相変わらずご苦労様です。
3スレ目からこの世界に召喚されたのでようやく過去スレよめました。
1スレ目序盤から爆笑。
>>726 神ってかエターナル
寸劇の人さんほんとにGJだよ
>寸劇の人さん
年少組には振り回されてしまう悠人君、
ハリオンお姉さんが相手では包みこまれて身動きが取れないという
なんとも色々な意味でおいしい状況に入り込んでますねぇ。
ふかふかとした雰囲気と抱擁に癒されました。G.J.&乙でした。
>>704 至極どーでも良いことだが。
EJユニットのEJは多分確実にE-teru Janpu ユニットと思われ
おまいのレスみた瞬間「水平対向かよ!」と全力でツッコンでしまったが……
これ、ファーが見たらまた駄々こねるんじゃない?ハリオンさんばかりずるいっ、私もやるっ
私もユートさま抱えて寝るっーー!!って。エスに見られたのもどうかと思うが。あとでちくちく
言われるのだろうかw
>>738 俺は自分が勘違ったのかと思って、とりあえず様子見してたが
やっぱこっちなんだよな
あと
Ether Jump
ってちゃんと書いた方がカコイイかと
その後添い寝をしてるファーを見てニムが……
「ユート、ちょっとこっちに来なさい」
「ん?なんだよいきなり」
「いーからこっち来いって言ってんのよ!あたしが行くのは面倒じゃない!」
「…………」(しぶしぶとニムに近づく)
「……あたしもう寝る、…………あたしが寝てる間にどっか行ったらただじゃおかないわよ!
本気よ!面倒だけど本気で怒るからね!絶対だよ!」
「………………」ヽ(´ー`)ノ ……ヤレヤレ
>>744 行ってみたけどあんまり書き込みないのね。
アセリアフリークはここかXuse総合か作品別版に流れてるのかのぉ。
>>746 まぁまだ情報も少ないしな
>>744以外にアセリアの話題出せるトコが3つもあるんだったら、わざわざ行かんだろ
PS2版出る前におちそうだ罠
そういえば、このスレ住人でEX入手してない人って居るのかな?とくにSS職人さんで。
自分は会員だけど、既にコミケで入手しているから、諸経費込みで代講しても良いかなとか思ってみたが。
749 :
寸劇の人:04/08/26 20:34 ID:FQS4j7v9
まずは総論で。
とりあえず、「何か」が届いたようで一安心です。
着想段階では「何か」は癒しを目指してたんですが、
上がってみたら、癒しが残ってるか怪しい状態で(w
そんなわけですので、癒しが届いた方がいたのは幸いでした。
>たゆんたゆん分
当初はほんの少しの想定だったんのにいつのまにか…
視覚ではなく触覚がメインで行ってたんですが、
結局最後には「たゆん」が出てきてしまいました。
もうね、「たゆんたゆん」を導入した道行書き氏に  ̄|_|○
>連投関係
支援なし完投可能宣言をしてるわけではなくて、
他スレに充分な書き込みがありそうな間隔を当て推量してるだけです。
(timecount/timecloseはスレ単位ではなく板単位)
で、当然、外れることもあります。その時は間隔広げるだけで。
支援を頂くことでより安全になってはいますが、
それを活かして間隔を縮めることはしていないということです。
んで、各論。
>>723 日向ぼっこ会場の方かな? タイトルの方かな? つーか「おなじみ」?(汗
とりあえず、ウルカ@花壇イベント周りから、庭っぽいものがありそうだと。
で、勝手に、第一・第二にそれぞれ中庭っぽいものがあると想像して、
少なくとも第二の方にはちょっと大き目の木があると妄想しました。
今回の木と寸劇@のdigressionの木は、私の脳内では同一のものです。
で、タイトル。本文中では「木」なのに、タイトルは「樹」。
さらに言えば、「懐[ふところ]」→"breast"→「?」と。
と、まぁ、重ねてあるわけです。
>>729 えーと、アンカー違うけど、状況的に私宛てかな? とりあえずそういう仮定で。
「わかってる」判定ありがとう。「心底」って…
う〜ん、自覚はないんですけどねぇ(w
>>734 うん、最初は本当にほわほわだけなはずだったんですよ。ホントですよ?
>>737 そうそう、雰囲気。
いわゆるストーリー性なしでも雰囲気だけで満たされることってありますよね。
ことにハリオンは(w
>>739,742
こういう風にさらなる妄想の糧になれると無上の喜びです。
>>739 えーと、エスペリアはねぇ…
声が聞こえた「気がした」。
ってことで、本当に居たのかどうかは定かではありません。
1a). 居た
→ たたき起こされて…
1b). 居た
→ 悠人が安らかな眠りから覚めると、目の前には『献身』をりゅうりゅうとしごくエスペリアの姿が!
2a). 居なかった
→ 妙な圧迫感を感じて悠人は目が覚めた。心なしか息苦しい。デジャ・ヴ。
と、まぁ、テキトーにいろいろ想像してみて下さい、ということで(w
752 :
飛翔の人:04/08/26 22:13 ID:44nOPPnJ
>>748 心優しき貴方に乾杯。
私は友人経由で手に入る予定なので、もう少しの辛抱ですじゃ〜。
>>750 フフリ、実は734は私だったり^^
今のを書き終わったら、私もほわほわにんまりする小話に挑戦したいものです。
「明日への飛翔」ですが、第九幕まで書き終わってラストをどうしようかと
うんうん唸っている所でござります。
というか、ラスト考えてる内に外伝とか小話ばかり思いついて、なかなか
進まなかったり・・・第十幕で完結予定だけど、それとは別に書いてみようかしらん。
・・・それでは皆さん、失礼しました〜〜。
753 :
704:04/08/26 22:26 ID:a9rJGk/K
>738
>740
しまった‥‥
この手のエーテルの綴りは"AEther"だと思ってて考えが及ばなかったよorz
>>752 楽しみにしてます
早く続き読みたい
から475KB到達に協力
なんか、jbbs.shitaraba.com の挙動が変わったみたい。
IE等だとわからんかもしれんが、2chブラウザだと物によっては取得できんかも。
その場合は登録を jbbs.shitaraba.com から jbbs.livedoor.com に変更してみると吉かも。
あと、
>>727 >>728 のテンプレ 1/2 は
× 外部板:雑魚スピスレ画像保管庫(画像掲示板)
○ 外部板:雑魚スピスレ画像補完庫(画像掲示板)
だね。
…と、促進。
>>742 結局ずるいのはユートですな。地区正目
>751
723=739 なもので。
おなじみって、「寸劇」以外でもちょっとしたネタであったような樹がしましたんで。
とりあえず上位永遠神剣『日溜まり』の樹ということでOKですがなにか。
エスは……被害妄想?
なんか感触が変わってる?ちょっとヴォリウムが減ったようなと思ったら、
エスと入れかわっていたとか ソレハソレデ
どれ埋めネタでも仕込むか……
幸福で、とても心地の良いまどろみの沼へ、悠人の五体がとっぷりと沈み込むその刹那。
怒髪天を衝くばかりの憤怒を纏ったエスペリアが、顕現した『献身』の穂先をりゅうりゅうとしごきつつ傲然と立ちはだかった。
「私というものがありながら……そんな不埒な真似は、させませんっ!!」
晴天の霹靂さながらの大喝を発して、翠に爆ぜる雷光と化した『献身』を悠人目がけて投擲する。
寸分の狂いもなく、一刹那ごとに殺風を巻いて、それは突き進んだ。
「ぬおあっっっ!?」
たちまち全身全霊が、尋常ならざる戦気に感応して粟立ち、悠人は眠りの泥から引きずり上げられた。
が、身を起こして目を開いた、まさにその鼻先に「必殺の一撃」が在った。
呼吸も瞬きも身じろぎの一つも出来ぬ間に、悠人の命が散華するは必定。不可避。最優先事項。
さて、セーブファイルをロードするか。
「も〜、お昼寝の邪魔したら〜、めっ、ですよ〜」
融通の利かないラプラスの魔をあざ笑えるとしたら、それはこんな間延びした声の持ち主なのかも知れない。
……なんて思ったときには、どういうペテンを使ったものか、ハリオンがユートの前に立ちはだかり、
奔流と化した『献身』をがっちりと受け止めていた。
「なっ!?」
「えっ!!」
>>755 どれどれ、俺のゾヌでは…
あ、本当だ。
thx!!!
ニュアンスの異なる驚愕の声がほぼ同時に上がる。
ハリオンは『大樹』を振るってはおらず、またシールドハイロゥを展開した気配もない。
無論、防御魔法の発動も感知されない。
にもかかわらず、悠人を寸断するはずだった『献身』は、ハリオンの目の前で勢いを殺され、ぴたりと静止していた。
「……ま、負けた……う、うえ〜んっ!!」
それを目の当たりにして、顔面を蒼白にしたエスペリアが、崩れ落ちるように逃げ出していく。
無理もない、渾身の一撃をいともたやすく受け止められては、戦士としての矜持が許すまい。
悠人は、自分の命が狙われたことなどきれいさっぱり忘れて敗者の心情を忖度し、はたと気がついてハリオンの安否を気遣った。
「大丈夫か、ハリオ……へ?」
ハリオンの前に回り込んで、その光景を目の当たりにした悠人は凍り付いた。
「はい〜、お姉さんですから〜、このくらい朝飯前です〜」
確かに、彼女には朝飯前であろう。いや、彼女以外の誰にこのような所業がなせようか。
悠人は、呼吸をするのも忘れて、ハリオンの豊かな胸の谷間に挟み込まれた『献身』を凝視した。
「あらあら〜、ユートさまったら〜、どこ見てらっしゃるんですか〜?」
それは、「たゆんたゆん」と揺れていた。
というわけで、次スレ移行作戦、状況を開始してくださいまし
確かに負けた……完膚無きまでに……w
762 :
飛翔の人:04/08/26 23:34 ID:44nOPPnJ
>>757-759 や、やられた・・・こう来るとは・・・orz
>>754 ありがとうございます^^
・・・でも、上のこれを読んだ後じゃ霞むかも・・・;;
763 :
758:04/08/26 23:35 ID:T6CHqfAc
ごめん、リロードしてなかったよ。
なんて間の悪い……orz
>>760 さすがだね〜りゅうせきだね〜ながれいしだね〜! … ̄|_|○
重複さけるために、建てに行く人は宣言してから、で、合否報告、がいいかな。
まあ、やったもん勝ちと言うことで一つよしなにw
>>764 そうですね、先着順にお願いします。
ちょっくら逝ってくる
>>766さんは苦戦してらっしゃるのでしょうか?
万一に備えて二番手の方、立候補願います。
じゃ、一応、二番手に立候補しておきます。
が、とりあえず待機しておきますので、タイムアウト判定任せます。 > 保管庫の人
769 :
766:04/08/27 00:04 ID:VWAhAOqv
正直スマンカッタ
それはできんかったという意味でいいんでしょうか?
もしだめなら・)ノ(3)
>>769 おつかれさまでした。
>>768 それでは、お願いします。タイムアウト判定は、10分後の0:15ということで。
あ、タイムアウト判定はこの場合いりませんでしたね……
>>770 >>768さんのギブアップ宣言がありましたら、三番手願います。
773 :
768:04/08/27 00:07 ID:761jz/la
逝ってきます
アクシデントはしょうがないですよ。
>>768さんがんがー
776 :
前766:04/08/27 00:10 ID:VWAhAOqv
誤爆...orz
>>777 お疲れさまです、そしてご協力下さった皆さんありがとうございました。
さて、当スレはスレ移行の道標としての役目をしばらく果たさねばなりませんので、
穴埋め投稿は今しばしご遠慮願います。
リレルラエルを出発した悠人一行の前に突然、閃光とともに瞬と佳織が出現した。
「なっ...瞬!貴様ッ!」
「アハハ、あんまりお前たちが遅いんでこっちから来てやったよ、悠人。
フン、取り巻きも一緒か。まとめて殺してやる、オーラフォトンブレイクッ!!」
「うわ、なんだコイツ、いきなり技の名前を絶叫しやがった。恥ずかしいな、おい。」光陰が言った。
「それは言い過ぎだぞ、光陰。」ダメージをくらった事も忘れ、悠人が血相を変えて光陰に詰め寄る。
「そうよ、光陰、秋月に謝んなさいよ!」今日子も身に覚えがあるらしい。
「何だよ、今日子まで。ん、まあ、でも言い過ぎたよ。俺もたまには『プロテクション!』とかって
言ってる気がする。悪かったな、秋月。」
「き...貴様ら、もう許さんッ!」瞬が斬りかかろうとしたその時、佳織が両手を広げて間に割ってはいる。
「やめて下さいっ、秋月先輩!」
コソコソと佳織の背中に隠れながら悠人が言った。
「佳織、やっぱお前っていいやつだな。住職なんて言って正直スマンかった。」
佳織の表情が一変する。「秋月先輩、かまわないからぐっさりと殺っちゃって下さい、この人。」
ぐいぐいと悠人を押し出す。「うわわ、シャレになってないぞ、佳織!」
「よってたかって僕を馬鹿にしやがって...」怒りに震える瞬。
「でもなあ、佳織、瞬じゃダメなのか?」
「何言いだすのよ、お兄ちゃん。」
「だってアイツん家、金持ちだぞ?俺より勉強だって出来るし、
ルックスは...まあ、俺ほどじゃないにしても、かなりイケてるし。」
「最後の一つはともかく...私、自分のこと『僕』って言う人は苦手だよ、お兄ちゃん。」
佳織の言葉にオーラフォトンノヴァ10回分のダメージを受けた瞬が倒れる。
「――佳織、お前、結構キツいな。俺の影響かなあ。」悠人が肩を落とした。
783 :
憂鬱の人:04/09/01 15:06 ID:ojL1vKzW
以上、埋め草がわりの小ネタでした。 チャンチャン。
「何故、俺達を使わないんだ?」
ラキオス王城の一室で、俺はレスティーナに直談判していた。レスティーナは何を云われた
のかイマイチ理解できない様子で、目をまん丸に見開き俺を見つめるばかりだ。
「だからさ、俺達がただじっとしていることに何の意味があるのかって云ってるんだ。外は未
だにバケツをひっくり返したような大雨だ。風だって少しは弱まってきちゃいるけど、まだま
だ収まりそうにない」
堅牢な石造りの城中では、外の荒れ狂う風雨も耳を澄ませなければ聞こえることはない。外
に向けた窓すらないこの部屋ではなおさらだった。
レスティーナは、俺の言葉の意味を考えあぐねていた。不思議なことに、レスティーナとい
えども俺達を戦争以外に活用するという考えを持つことができない様だった。
なんだか……な。
「……それは、あなた達を市街へ派遣し、救援活動を取らせるという意味なのですか?」
「ああそうだ。……色々懸念もあるだろうけど、今はそんなこといっちゃ居られないだろう?
街は、特に一般市民街は酷い状態だろ?みんな頑張っちゃいるようだけどさ、俺達ならきっと
役に立つ」
街の男衆や兵士たちが雨と泥にまみれながらかけずり回っている。皆必死だ。なのに俺達は
ただ座しているだけ。誰も何も言わない。兵器には何も期待しないんだ。
「……わかりました、エトランジェユート。スピリット隊に市民の救助を、要請します。追っ
て指示を出しますから、直ぐに現場へ向かって下さい」
思案顔のレスティーナは暫くしてからやっと口を開いてくれた。
「よしっ、了解だっ」
俺は直ぐさま駆けだすと、城から近い第二詰め所へと向かった。
だから、レスティーナが既に居ない俺に向かって頭を下げていたことなど知るわけもなかっ
た。唇を噛みしめながら。
街は想像以上の無惨さを呈していた。季節感はあるものの、自然の猛威というものを現すこ
との少ないラキオスでは、ここまでの嵐というものは記録にないかも知れないとのことだ。ヨー
ティアが云うには、マロリガンのマナ障壁の影響がここまで及んでいるのかも知れないらしい。
一瞬、光陰と今日子の顔が脳裏に浮んだ。でも今は、目の前のことが大事だ。
「いいか、みんな。俺達は、街のみんなを助けに向かう。含むものがあるかも知れないけど、
今はそれを忘れて全力をもって当たって欲しい。いくぞっ!」
目の前に並ぶ仲間達に言葉を掛ける、何の巧さもないつたない言葉だけど。皆はおうっと応え
てくれた。
ラキオス市街を流れる運河は水門などものともせず、街の低地を水浸しにし、吹き荒れる暴
風は街路樹をなぎ倒し家屋を吹き倒す。
皆必死になって体を動かしていた。指揮する兵隊、土嚢を積む男達。炊き出しや、負傷者の
救護に当たる女達。そしてその中を飛び回り駆け回るスピリット達。
青スピリットと黒スピリット達には、空を飛び回り、負傷者の発見、搬送に。
緑スピリットと赤スピリット達には、倒壊した家屋の撤去や、人間の医者の助手をさせた。
結局俺達は、いくら超常の力を持っていても、この町を一人で瓦礫の山に変える力を持って
いても、こんな時には、人よりいくらかマシな程度に過ぎなかった。癒しの力は人には効かな
いから、神剣魔法も何の使い道も無かった。
「ほらっ、男なんだからピーピー泣くんじゃないのっ!死ぬわけじゃ無いんだからっ」
救護所では、ニムが同じ年頃の男の子を叱っていた。包帯を巻く手もいつの間にか様になっ
ている。エスペリアやハリオンの巻き方を見ている内に上達したようだ。もっともファーレー
ンが負傷者を運んでくると直ぐさま直行し、「お姉ちゃんにくっつくな」と喚くのは苦笑する
しかなかったけど。
遠目には、セリアが助け出した老女に、両手を握られ何度も何度も礼を言われているのが見
えた。
母を亡くした赤子を抱いて立ち尽くすナナルゥがいた。
救助の手をはねのけられ、有無を云わさず引っ張り上げるヒミカがいた。
濁流に取り残された犬を拾いに行くシアーがいた。
「ユート、何ぼうっとしてる。仕事はいっぱいだぞ」
アセリアも、飛び回っていた。
みんな泥だらけのずぶ濡れだった。
いつか嵐は過ぎ去り、救助作業も終焉を迎えた。皆疲れ切っていたけど、戦いとは違う充足
感があった様に思えた。
皆、びしょ濡れで、泥まみれで、
「みんな、美人が台無しだな」
さっきまで両の手を見つめていたセリアが、冷たいセリフを吐く。ニムがファーレーンに抱
きついて俺を悪し様に言いつのる。重たくなったツインテールを振り回すヘリオンに、妙に浮
かれるネリー。
やっぱり、みんな良いやつらだ。
「ねぇ、パパ。ラースは大丈夫かなぁ」
引き上げ途中、浮かない顔をしたオルファが俺に話しかけてきた。作業中も時折南西の方を
眺めていたけど、おそらく、エスペリアから聴いたことがある女の子のことを心配していって
いるのだろう。
「大丈夫だよ、ラースの方は大した被害がないっていうからさ」
「そうなんだ、よかった〜」
オルファは直ぐに笑顔になった。
「災害は忘れた頃にやってくるってな。ハイペリアでよく言われてた言葉さ。もしもの時はオ
ルファが真っ先に駆けつけるんだぞ」
「うんっ、わかったよパパ」
嬉しそうに云い、エスペリアの処へ駆けていく。
明日も仕事は山積みだ。きっと台風一過ってやつで、快晴になるだろう。
やっぱり空は晴れている方が良い。それだけは、ハイペリアもファンタズマゴリアも変わら
ない。今晩はぐっすりと眠れそうだ。
うほ、先超されたっ。
西日本て大変だな、と思いながら仕事中構想を練ってみました。
なんか予告?と違うような……(汗)即興でできた話の方が書きやすいんですよ〜。
実際の被害に遭われた方には、不謹慎かも、ごめんなさい。
>783
いじめだっ(笑)
雑魚スピスレ初のリレー小説でもやってみませんか?
ただしこのスレに書き込めなくなるまでで、一人一行のみ。
要するによくある「一行リレー小説」ってことで。
バッティングとかその辺の細かいことは気にせずに、混沌と楽しみましょうw
ある日のこと。ユートが城下町に出かけると、道ばたに焼き立てのヨフアルが落ちていた。
それを目にした瞬間、ユートの頭に神の声が響き渡った。
792 :
飛翔の人:04/09/01 18:54 ID:o/fqsuR9
まだ温かい・・・ならば落とし主がいるかなと、ユートは辺りを見回したが。
美食のユーザーン「お前が焼いたのは、この黒いヨフアルか?それとも紫のヨフアルか?」
「右!右のほう!」
その声を発しながらふらふらと近づき、落ちているヨフアルを手にとってしまった。
【追加ルール】
一度投稿した人は、30分経過しないと再投稿できない。
「えっ?」「あっ?」ありがちに、誰かの手と触れ合ってしまった。
瞬「……これは僕のだ。佳織だけに飽きたらず、ヨフアルまでこの僕から奪うつもりか!?」
……とりあえず斬っとこう
「ンギュルギュギュルギュギュギュー!!!」瞬はとっさに横にいたントゥたんを盾にした
「ンギュルギュルー!」そしてパックリと割れたントゥたんの中からは、何と玉の様な女の子が!
しかしその頭蓋骨は…
/ /゙・ 皿・_ヽ<○===================================
一方その頃。
光陰が、悠人の居ぬ間に第二詰め所へ潜入していた
「な、何、この気配は!?」
807 :
信頼の人:04/09/01 21:37 ID:LlGSwm31
セリアが振り向いた途端、雷撃の束が詰め所全体に襲い掛かる
「お、おいおい…… こりゃちょっとシャレになんないぜ…… うぅっ、ぐ……ふ……」
?????「キョウコ様、第二詰め所を制圧しました。」
810 :
憂鬱の人:04/09/01 22:33 ID:zibaqELz
時詠のトキミ「そうはさせません、腹黒屋。タイムシフト!」
今日子「よくやったわ、ントゥ子。これでコウインはおろか、コウインが狙ってる子も謀殺できた・・・ふふっ」
追加ディスクってさ、
ヘリオンハリオンネリーがやばすぎないか?
とくにヘリオン。
もう萌え転がって止まらないよ
813 :
信頼の人:04/09/01 22:44 ID:LlGSwm31
そんな呟きを漏らしながら蘇った光陰は、一目でントゥ子を気に入った。
しかし、実際には誰も死んでいなかった。ハリオンの「たゆんたゆんパワー」により、雷はすべて跳ね返されていたのだ。
ハリオンはブレスト・スパークを覚えた
816 :
道行書き:04/09/01 23:10 ID:nQmERxD2
その跳ね返された雷は、ントゥ子を抱きしめていた光陰に再び収束した。
一方そのころ、悠人と瞬はヨフアルの所有権を巡って死闘を繰り広げていた。
瞬「隙があるぞ、悠人ォォォォォッ!!」
悠人「まあ待て、お前はこのントゥから生まれた頭蓋骨を見て何とも思わんのか?」
821 :
信頼の人:04/09/01 23:42 ID:LlGSwm31
ントゥ子「ンギュルルンギュ!(忘れないよ、おにいちゃん)」
822 :
憂鬱の人:04/09/01 23:44 ID:7e2upnYq
雷撃のとばっちりで飛んで来たントゥ子たんがその頭蓋骨と合体したのだった。
(瞬д)゚ ゚ 「なんっ……だと……!?」
824 :
道行書き:04/09/02 00:01 ID:BZ7MATC9
頭蓋ントゥ子「頭蓋骨をントゥに返すためには王子さまのキスが必要なの!」
瞬は逃げ出した!! 悠人も逃げ出した!!
しかし回り込まれてしまった!!
「あーあ、せっかく見逃してやったのに…恩を仇で返すなんて最低だよ」と強がる瞬
「あれほどお前が切望して止まなかった佳織が目の前にいるんだぞ? 今さらお、俺に遠慮なんてするなよ!」
829 :
信頼の人:04/09/02 00:27 ID:F0apiTT/
絶体絶命の二人を救ったのは通りすがりのラキオス王だった。
「エトランジェよ、妹を解放してほしかったら神剣を持って戦うのだ」
従うほか、なかった。
だがそこに救世主が現れた。「よぉ、支援は必要か?」
〜ちょっと時間を巻き戻して第二詰め所〜
ミトセマール「腹黒偽ロリはともかくなんで目玉の方があたしより出番が多いのさ!!」
ハリオン「あらあら〜、それは、大変ですね〜」ミトセマールの愚痴を聞きながら、お茶とヨフアルを給仕する
「ああ……強いですねぇ こうなるとは、思いませんでし…た……」隣でウルカの神の一手の前にメダリオが投了する。
「いいですよー、どうせちっちゃいですしー」 部屋の隅では『たゆんたゆん』に打ちのめされたヘリオンがいじけていた。
そこで突然アポカリプスXCIX(99)
ヒミカ「乳は・・・たゆんたゆんの乳はどこだーーーー!!!!教えろ!その秘密をぉぉぉぉおおおお!!!」
そのころ、瞬と悠人は頭蓋ントゥ子に苦戦していた。
841 :
信頼の人:04/09/02 07:22 ID:gXmwHKUk
悠人 →『佳織〜っ!落ち着け〜っ!と叫ぶ』 『ここは大人しく見守ろう』 『説明は省略していい』
その頃のテムリオン両手を胸に当てて、すとーんぺたーん「はぁ…」
843 :
憂鬱の人:04/09/02 08:39 ID:sTNLN1d1
テムオリン「いい加減、私の名前を覚えて欲しいものですわ」
アナゴ「おばさんというのがエターナル満場一致で確認されましたが?」
そして光陰は、コアラ様に萌えて再び復活を遂げたのであった。
一方、瞬は「自分の弱さにそんな言い訳を付けたのか」と言って、いつまでも選択しない悠とをけしかけていた
そして
>>832。ネギしょって来たカモに瞬と悠人がババを引かせたのは当然だったわけで・・・・。
タキオス「うむ、強者との戦いこそが我が生きがい。頭蓋ントゥ子よ、貴様に俺が倒せるかな?」
頭蓋ントゥ子「ンギュルギュル!」(二人も三人もヒロインがいる必要はない!萌えを求めた結果、私はここにたどり着いた!)
しかし頭蓋ントゥ子の悲痛な叫びは、誰にも理解できなかった…
瞬「――なんだか馬鹿馬鹿しくなってきたよ。悠人、酔狂ついでに、酒でも呑みにいかないか?」
悠人「ああ――!?光陰が、光陰が頬を染めながらヤツに近づいていく!?」
光陰「なに、邪魔しないようにひっそり支援するだけさ」と今更こっちにきた光陰
光陰「俺は、お前から奪い取らなきゃならないものもある」
時詠のトキミ「そう言う事なら、私もご一緒させて頂きます。」としゃしゃり出てきたのはアポカリプスXCIX(99)で焦げた時深。
今日子「だ が や ら ん !」
頭蓋ントゥ子「ンギュルギュルギュル!」(ントゥ子、ンギュルギュルとしか喋れないから誤解されがちだけど本当はインテリなんだよ。二番手なのがその証拠だよ)
>>857 だがしかし頭蓋ントゥ子の悲痛な訴えは(ry
(
>>858の続き)なんと光陰に届いたのだった!!
そんなやりとりを密かに観察しているナナルゥ。(萌)
ナナルゥ「……まとめて、消し飛ばします。 マナよ、怒りの炎となれ アポカリプス!」
そして、ついに訪れるスレッドの終焉…その時、瞬は
瞬「くっ・・・(スレ残量もあんまりないし)今だ、時深おb(ry!!」
>>1-863 " タイムアクセラレイト
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>>1-863 " タイムアクセラレイト
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