【最狂の寝取られとは? 第6夜】

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 無駄ぁ〜に広い福山邸であるが、その地下には、リサが黒魔術にいそしむ時
に籠もる石造りの部屋がある。
 今日も今日とて、呪われたように脚がねじ曲がったテーブルに向かい、漆黒
のローブをまとったリサは、妖しげな薬品と器具の山に囲まれながら、黒魔術
の薬の配合に余念がなかった。
 リサの眼前の作業スペースには、沸騰しているわけでもないのにコポコポと
気泡を立てている、ひと舐めしただけでも卒倒しそうな気味悪い暗紫色のドロ
ドロした液体が入ったビーカーがあった。
 部屋の雰囲気をいやが上にも不気味なものにしている、壁に掛けられた松明
を象った低照度ランプの光を受けて、リサの瞳にゆらゆらと、期待が籠もった
煌めきがたゆたう。
 彼女の手には、異臭を放つ黄土色の液体が満ちた細い試験管が抓まれていた。
 それをビーカーの真上まで持ってくると、
「いくわよ……」
 ほんのわずか……傾けた。

 一滴──

 ペンキのようなドスの効いた黄色の雫がポチャリと、昏い紫の水面に王冠を
作った。
 すると、沸点を極めた水のように、これまでにも増して夥しい気泡の群れが
ゴボゴボと大合唱を始める。まるで怨霊コーラスの始まりである。
 巨象でものたうち死にそうな凶悪な臭気が発生し、目の前にいるリサはもろ
に被ったが、既にもうガスマスク装着していた。
 地獄の釜ゆで状態のビーカーを愉悦げに眺め下ろした。
「フフ……フフフ……順調のようですわね……」
 しばらく続いたのち、やがてそれは徐々に潮が引いていくように収まってい
き、最後に大きな泡が一つ立つと、完全に終息した。

 ビーカー内の色はすっかり変わっていた。

 ゴーッと空調が効く音がし、室内に残留する悪臭が取り除かれると、マスク
を外し、ビーカーに鼻がつきそうなほど顔を寄せる。
 中の色具合をじっと観察する。
 先ほどまでの粘液のような状態とは比べられないほどの、濁りのない半透明
の綺麗な薄緑色だった。
 次第にリサの肩が震えはじめた。
「……ふふふ……やった……やった……やったわ……!」
 我慢しきれない風に、だぶだぶの袖を翻して歓喜の諸手を挙げるリサ。
「やりましたわ! 完成、完成ですわ! ついに出来上がりましたわ! 雪成
様の女性恐怖症を治す薬がっ!」
 すると、背後の光の当たらない部屋の隅の陰から、
「おめでとう御座います」
「おめでとう御座います、リサ様」
と、黒服姿の男女──疾風と小雨が現れた。
 調合の間、いつものように暗がりからずっと見守っていたのである。
「やっと……念願の薬が出来上がったのですね」と、疾風は嬉しそうに顔をほ
ころばせながら言った。「世界中を調査してようやく見つけ出した、特効薬の
調法が記された古書。しかしそれを入手してからも、難易度の高い調合に悪戦
苦闘の日々が続いた……。ですが、お嬢様は決して諦めず、艱難辛苦の末、つ
いにここに成功した……! これで、あとはその薬を彼に飲ませれば──」
 その言葉に相づちを打ち、小雨が続ける。「佐々木雪成の心はリサ様に傾く
に違いありません」
「ええ、きっとそうなりますわ」
 満面の笑みを浮かべて振り返るリサ。
「でも、いちおう試験はしておきたいわね。これ、副作用が不明なのよ。劇薬
も色々と使ってて、その点がちょっと心配だから」
「なるほど。それでは、動物での臨床実験でもしますか」
 疾風がそう提案すると、リサは下唇に人差し指をあて、思案顔になった。

「うーん……どうせ試すなら、女性といわずとも対人恐怖症を持った被験体が
欲しいのよね。女性に限らず、対人恐怖症に効果があるってことだから。動物
でいえば同類を恐れるってとこ? でも、そんな動物いるのかしら……?」
 と、その時。
 やけにふらふらとした一匹のハエが、三人の真ん中を横切った。
 さきほど部屋に充満した異臭にやられたのだろうか。まるで死にかけのよう
な緩慢な飛び方に、リサ達が会話をやめ何気なく目で後を追うと、のたくたと
した放物線を幾重にも作りながらテーブルに向かい、ビーカーの縁にとまった。
 小雨がスッと進み出て、追い払おうと腕をのばした。
 と──
 一休みといった感じで前脚をスリスリしていたハエは、突然、その姿勢で時
が止った。そしてそのまま力無く崩れ落ち、薄緑の液体にポチャンと小さな水
音を立てた。

 ジュッ

 変な音がし、薄い煙がのぼったかと思うと、水面を潜った時にはもう、その
姿は無くなっていた。

「…………」
「…………」
「…………」

 なんともいえない三者の眼差しが、穏やかなライム色の液体をたたえるビー
カーを見下ろす。
 ビミョ〜な空気が流れる。

 すると、
「おーいリサ!」
と部屋に闖入してきたのは誰であろう、彼女の兄──福山和春だった。
「あら、お兄様」
「やっぱりここにいたか。毎日毎日しょーこりもなく、よくこんな場所に引き
籠もっていられるな」
「余計なお世話よ」
 毎日毎日女の尻を追いかけ回してばかりの兄に言われたくない、と、リサは
かなり本気に思った。
「それで何かご用かしら?」
「おおそうだそうだ。リサ! お前、俺の大事な畑を荒らしただろう!?」
「え?」
「え? じゃなーい!」ガーッと怒りを露わにする福山。「裏庭にある畑だ!
せっかく俺が丹誠込めて育てていた大切なマンドラちゃん達が、根こそぎごっ
そり抜き取られていたッ! お前の仕業だろう!?」
「マンドラ……? ああ──」ハッとするリサ。「──もしかして、マンドラ
ゴラのこと?」
 別名アルラウネ、曼陀羅華ともいう、根の部分が人間の裸体に似ていると言
われる植物。ナスの一種で毒持ちの薬草が本物と知られているが、リサが見つ
けたのは「真の」マンドラゴラだった。

 裏庭で黒魔術の儀式に使う薬草を採取していた時に偶然発見したそれは、大
きさこそ野菜サイズなものの、頭からつま先まで完全に人体を模した、まるで
精緻な人形のように素晴らしい出来栄えのものであった。
 こんな立派なマンドラゴラは見たことがないと、早速完全遮音のイヤーパッ
ドを引ったくるように取って返し、嬉々として全部収穫したのである。
 そしてそれは、今テーブルの上に乗っているビーカーの中身の一部に変わっ
ている。
(そういえば、思い返してみれば全て女体でしたわね……)
 どうせ育てていた理由など、解りすぎるほど解ってしまう。またしょーもな
い趣味を──と、リサは自分のことはさておき、軽くゲンナリ感を覚えた。
「裏庭をあんな奥地まで入り込めるのは、俺の他にはお前ぐらいしかいないは
ずだからな!」
 犯人はお前だーッと言わんばかりの福山。
「え、ええ、まあ、確かに採ったのは私ですが……」
「やっぱりお前か! 俺は誰にもナイショでコッソリと、一人楽しく世話をし
ていたんだぞ!? 収穫が楽しみで楽しみで仕方なかったのに! もうすっかり
成長していて、後はもう掘り起こすのを待つばかりだったというのに……!!」
「あの……お兄様はマンドラゴラがどんなものかは知っていたのですか?」
「もちろんだ。兄をバカにしてはいけないぞ? 世界にも稀な、自然に育つ生
体ドールだろう? ほら、髪が伸びる人形とかの親戚みたいな」
 それ全然違います。
 ゲンナリ感が微かなめまいに変わる。
「ああ、今ここでこうしていても、瞼を閉じれば鮮やかに思い浮かべられるぞ!
壁一面にズラッと並んだ、自然が造り出す多種多様な造形美の数々! あーん
な格好やこーんな格好のマンドラちゃん達……! それを一つ一つ細部に至る
まで、心ゆくまで堪能する至福の観賞タイム……! くふふ……くぅぅ……!
それなのに……それなのに……嗚呼……なんたることだっ……!」

 血涙を流しそうなほどの眼力を迸らせたり、部屋の雰囲気より暗くしょげか
えったりと忙しい兄の姿に、めまいがほんのりとした頭痛になってくる。
 リサは付き人の顔を見た。二人とも虚ろなまでに表情はないが、それだけに
内心がありありと窺えた。似たような思いなのだろう。
(うーん……お兄様には悪いことしたけど、ハッキリ言って、こうして人のた
めになる薬になった方が遙かに……あ)
 ひらめく。
 いた。
 再び付き人の顔を見た。目配せ。リサの瞳の中に危険な光芒が一瞬よぎった
だけで、長年付き添ってきた二人の護衛はすぐさま理解した。彼らはまったく
ためらいなく瞬時に行動に移った。
 顔を戻したリサは、目をうるうるとさせ、許しを乞うように胸の先で手を合
わせて兄の足下にかしずいた。
「ごめんなさいお兄様! 私が悪かったわ。反省しますから、そんなに怒鳴ら
ないで! 大事なお兄様の喉が涸れちゃう。せっかくの美声が台無しにっ!
さ、これでもお飲みになって気を落ち着かせて下さい」
 リサの言葉が終わるや否や、ピッタリと息の合ったタイミングで、小雨が傍
からライム色の半透明の液体が満たされたコップをさっと差し出した。
「お? おお、こりゃすまんな」
 何の疑問も抱かずそれを受け取りグッと飲み干す福山。

「ヌ"ホォォォオオオ"オ"オ"オ"ーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!!」

 城のように重鎮する福山邸を震わす大絶叫が響き渡った。


 それから数日の間に、雪成の周囲で異変が起こっていた。
 ミハル、桐絵、コヨミ、トモカ──揃いも揃って四人とも、全員が忽然と姿
を消したのである。
 目撃した人もなく、何処に行ってしまったのか、雪成には皆目見当もつかな
かった。
(ミハルちゃんやコヨミちゃん達は何らかの理由でセーレンに戻ったとも考え
られるけど……桐絵はどうしちゃったんだろう……まさか誘拐!?)
 いなくなった翌日に桐絵の親が警察に届け出ていたが、手がかりがまったく
無いため、年に何万件もの失踪が起こる昨今、この日本の治安を守る公的機関
はあまり頼りにはならなそうだった。
 雪成は毎日下校するその足で深夜まで捜し回ったが、ほんの少しでも見かけ
たという情報はおろか、消えた直前の足取りさえ掴めなかった。
 祈る気持ちで帰りを待っていたが、彼女たちは何日過ぎても戻ってくる気配
はなかった。

 そうして何の進展もないまま、半月ほど経ったある日。
 朝、雪成が学校に行こうと玄関を出ると、段ボールが置かれていた。
「……なんだこれ?」
 封をされず開きっぱなしの口を広げて中を覗いてみると、何十本もの真っ黒
なビデオテープが入っていた。

「……???」
 背を上にして二段に分かれ、整然と並んで詰められているテープ群。
 一本、また一本と順番に取り出して眺めてみる。どれも、どこにでも売って
るようなごくありふれた市販テープだった。ただ、ラベルもジャケットも何も
ない剥き出しのままで、全てツメが折られていた。
(何だこれ……誰が置いたんだろう……?)
 しかし――なんとなく漠然と、あまり良くない気分になった。
 突然、失踪したミハルたち。
 突然、目の前に現れた謎のビデオテープ。
 なにか、どっかで、こんな状況的なものを見聞きしたような気がした。映画
か、雑誌か、本か、そんなもので……。
「……まさか、ね……」
 しばらくの間、雪成は不安げな眼差しで段ボールの中身を見下ろしていたが、
やがて決心し、それを家の中に運び入れた。

 現在、雪成の両親は父親の単身赴任地にいる。雪成は一人っ子で、本来なら
独り暮らしになる筈だったが、ミハルやコヨリたちが転がり込んで来たため、
寂しさというものはまったく無かった。
 だが、彼女たちの居ないここ半月、いやというほど孤独を味わっていた。
 寂然とした空気が漂う居間にあるテレビの前に座ると、
「本当に……どこに行っちゃったのかな……」
と、雪成はそうぽつりと呟きながら、テレビの台座の中に置かれたビデオデッ
キの電源を入れ、適当に選んだテープを差し込んだ。
 とりあえずざっと中身を確認してから、処分を考えるつもりだった。
 自動的にテープが回り始める。
 十数秒ほど真っ黒な画面が過ぎると、チャッチャラ〜♪と軽薄さすら感じさ
せるようなBGMとともに市販ビデオの企業ロゴのようなデモが始まった。
 楽園を思わせるほど美しい草原や森林などの自然を空から鳥瞰しながら飛翔
するように奥に流れてゆくアニメーション。3DCGをふんだんに使った美麗
な映像は、大手配給会社のそれかと見まごうばかりの完成度だった。 
 だが、その終わりに画面中央にデカデカと浮き出てきたアルファベットの単
語を読むと、雪成の目は驚きに見開かれた。
「F……U……KU……ふくやま──福山ゴージャスコレクションズ!?」
 驚いているうちにデモが終わり、本編らしき映像にフェードインした。

 信じられない光景が広がった。

 屋内らしき場所。薄暗く、どこかは判らない。
 カメラはアイレベルで、水平に部屋らしき空間を映し出していた。奥にベッ
ド──それもホテルなどでしか見たことのないようなどでかいサイズ──があ
り、誰かいるのか、その上に激しく蠢くものがあったが、なにぶん薄暗いため
遠目に見る黒い影の塊といった感じでよくわからない。
 ただ、テレビのスピーカーから、
「アッアッアッアッアッ!」
と、思わずギョッと跳び上がってしまう女性のあえぎ声が響き渡り、「あわわ
わ」と雪成がうろたえながら音量を落とそうとテレビのボタンに指を伸ばした
時、パッと画面が変わった。
 桐絵。

 ──裸の。

「えええッッ!?」
 薄暗い画面の中、ベッドに浮かび上がっている柔らかい輪郭の、目が吸い込
まれそうなほど女らしく整った白い肢体。そのからだが後ろから弾かれるよう
に押し出され、また元に戻るを早いテンポで繰り返している。そうしてからだ
が弾むたびに、豊かに張ったバストが同調してぷるんぷるんと揺れているのが
一番目についた。その責めを堪えているのか、目を瞑り表情がゆがんでいるが、
一糸まとわぬからだとともにガクガクと上下に揺れている顔は、見紛うはずも
ない。確かに桐絵本人だった。
「き、き、きりっ──桐絵ぇェェ──――――ッッッ!!??」

 桐絵が――お──お──おおお犯されてるッッ!?

「アッアッアッ、ア、アッ、アアッ、アアアッッ!!」
 あえぎ声の正体は彼女だったのだ。少女と呼ぶのはもうそぐわぬほど成熟し
た肉体をとらえたカメラには、横バックで激しく腰を打ち付け、もう片腕を胸
に回して揉みしだく、背後にいる男らしき身体も映っていた。
 声に混じって性器が擦れ合う音までもが明瞭に聴こえる。

 グチュッ! グチュッ! グチュッ! グチュッ!

「な、な、な、ななななななあ……ッッッ!!??」
 雪成が愕然と見つけているうちに、画面はまた変わり、今度は結合している
股間のどアップ。
 見せつけるように片脚が持ち上げられ、開かれた桐絵の秘陰は、ぬらぬらし
た透明の淫液で内股までグッショリとまみれていた。赤黒く雄大な肉棒が少女
のクレバスにずっぽりと埋まり、カチカチの鉄柱のような裏筋を見せながら浅
く深く抽送を繰り返している光景は、とてつもなく卑猥であった。肉茎は陰嚢
までてらてらと濡れ光っていた。
 いやらしい水音を立てながら、ぱっくりと割れた秘裂に出入りしている、醜
悪なかたちの男根──
「ううううそッ……!? あ、あ、あああ……き……桐絵……!? まさかこんな
……こんなぁ……!?」

 画面が桐絵を中心にしたさきほどのフルショットに戻る。

 グチュッ! グチュッ! グチュッ! グチュッ!

「アッアッアッアッ! アアッアアッアアッ!」
 剛直が肉襞を巻き込みながら出たり入ったりするたびに、少女の口から感に
堪えない声が生まれてくる。
 段々落ち着いて聞いてみれば、それは苦悶の呻きではなく、鼻にかかるよう
な上擦った声──
 さらなる衝撃に、脳天を思い切りブン殴られたようにクラクラする雪成。
 雪成も男である。女性恐怖症とはいえ、女嫌いなわけではない。こっそりと
AVを借りたりして、演技とはいえ女優のあえぎ声を聴いたこともある。女が
キモチイイ時に出す声音がどんな感じであるかは、何となく判る気がした。
「桐絵……桐絵……そんな……!?」
 今、ビデオに映されている少女は、苦しそうな顔をしているが、緊張にこわ
ばっているわけではなかった。口元は緩み、ハァッハァッと熱い吐息を漏らし
ている。目をつぶっているのは、痛がっているというより、下半身の運動に意
識を集中させているようであった。
 抗う素振りはまるでなく、そう──明らかに、禍々しいほどに反り返った肉
凶器で体奥深くまで貫かれている刺激を──そのからだで受け入れていた。
 演技にはとても見えなかった。カメラを気にしている──というか気付いた
様子もなく、ごく自然体で、男の行為を迎えている。
「桐絵ぇ……!?」

 グチュッ! グチュッ! グチュッ! グチュッ!

「ハァッ、ハァッ、ハァッ、ハァッ……!」
 その時、桐絵の後ろに隠れ、背が高いのか首から上が切れていた男が動き、
画面内に入ってきた。
 その顔を見た雪成に、またもや衝撃が走る。
「ふ、ふ、ふ──福山ッ!?」

 その顔も間違いなく、雪成のよく見知っている人間だった。
 いつも性懲りもなく桐絵たち女子にちょっかいをかけまくっているセクハラ
好色魔人・福山和春。

 その福山と桐絵がセックスしている。

 桐絵と福山が……ど――どうして!? なんで!? なんで!?
 わかんない……わかんないよ!

 一瞬でパニックに陥る雪成。
 目の前に流れている映像が到底信じられなかった。
 ウソだ、ウソだ、ウソだ。
 確かに福山はスケベだ。同性としての共感を超越してスケベだ。人間性の隅
から隅までスケベだ。好色の塊といっていいだろう。
 だが、雪成の記憶が間違ってない限り、福山の悪戯はいつもセクハラまでで
止まっていた──はずだ。
 ついに一線を越えてしまったのか。
 そうとしか取れない。
 どう見たってソックリさんが真似ているようには思えない。映像も音声も息
を呑むほど鮮明でリアルで、これが偽物とは到底思えなかった。
 本人だ。本人同士の行為だ。
 桐絵は、あれだけ忌み嫌ってる男とセックスしているのだ。
(……嫌がる素振りもなく!)
 頭がクラクラしてきた。
 それが一番信じられなかった。

 ピストンの速度を落として身体の揺れを少なくし、桐絵の首すじに顔を埋め
る福山。れろーっと舌を這わせながら肩から首をのぼると、
「ンハァ……♥」
 わずかに開いた唇から、桐絵は気持ちよさそうに吐息をつく。
 そこへやって来る福山の舌。
 桐絵はそれを感じると、うっすらと目をあけ、まるでそうするのが当たり前
といった風に、自らの舌も突き出した。
「な……な……!?」と雪成。
 テレビの向こうで二人は小鳥のくちばしのようにチロチロと互いの先っぽを
触れ、それから、ねっとりとした唾液にまみれた舌を絡ませ合う。

 ンチュ……ピチュ……

 舌を絡ませたまま、福山はまた徐々に腰の動きを早めはじめた。
「ン……ン……ン……ンンンゥ……ッ♥」
 福山は持ち上げていた少女の脚を下ろし、クリトリスをやわやわと弄くり始
める。
「ンウウゥ……ンンン♥」
 唇、乳房、陰核、秘芯――四カ所も同時に責められ、桐絵は実に気持ちよさ
そうにウットリとした表情になった。喜悦の涙をこぼし、全身を駆け巡る快感
にからだを蕩けさせながら、福山の首に手を回して自分の方から積極的に舌を
吸い、尻をすりつけてゆく。
「は……あ……ああぁ……イイ……イィ……♥」

「あわわわ…………」
 桐絵と福山が……
 あんなに気持ちよさそうに――貪り合うように――
 ど――どうして!? なんで!? なんで!?
 わかんない……わかんないよ!
 確かに外見だけを抜き出せば、福山は美形で背も高くて格好いいかも知れな
いけどッ!?
 でも、あんなにあいつを嫌い抜いてたのは桐絵自身じゃないか!
 それが……なんで……どうして……こんな……!?
「桐絵ええぇぇ…………!!」

 幼稚園の頃からの幼なじみ。
 小学校も中学校も高校も――すべて一緒だった。
 桐絵が雪成を尻に敷くような、あまり対等とはいえない関係だったが、かた
ちはどうあれ、付き合いの良い友達であった。
 普通なら、思春期を迎えたあたりで、なんとなく疎遠になっていくのだろう。
だが、高校生になった今でも桐絵は頻繁に佐々木家へ遊びに来るし、登下校も
一緒。雪成のところにミハルやコヨミたちが上がり込んでも、二人の関係は昔
からのままだった。
 一方は何の取り柄もない上に難儀なアレルギーを持ち、もう一方は才色兼備
の優等生。
 雪成は自分と桐絵の関係に特別な想いを巡らせたことはなかった。桐絵との
思い出は沢山ありすぎて、幼い頃はよくいじめられてもいたが、大きくなると
逆にかばってくれたりもして(それ以上にそんなアレルギー克服しろ! とさ
んざんどやされたが)、ここまで来れば腐れ縁と、そんな腹を括っていた。
 出来ればいつまでもこんな風に続くといいな……という、漠然とした淡い期
待を胸に抱いていたのかもしれない。
 幼なじみの、腐れ縁の、ちょっと気になる親しい友達。

 そんな桐絵が、他の男に抱かれていた。

 ――と、雪成がテレビの前で情けなくおろおろとパニックに陥ってる間にも、
二人の情交は無情に続く。
 福山は横バックから少女のからだを抱いて仰向けになり、桐絵を自分の身体
の上に乗せるかたちにすると、寝そべらせたまま下から突き上げるようにピス
トン運動を再開した。

 ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ、ズチュッ!

 先ほどまでとは違う体勢で膣内を責められる感覚に、涙をこぼしながらよが
る桐絵。
「ンアア! ンヒ、ンヒイィ♥ こッ、これえッ! えぐられる、えぐ
られるうぅぅ♥!」
 たまらないといった風に、気持ちよさそうな嬌声が上がる。盛大にふるえる
乳房の頂もピンと硬く凝り、その言葉に賛同を示していた。
「どうだ桐絵、いいのか、いいのか!?」
「イイッ! イィ、イィよぅ!」と、夢中に叫ぶ桐絵。
「桐絵の中も……よく締まってて最高だ!」
 そう言いながら、福山はさらに激しく腰を打ち上げていった。

 ズッチュ! ズッチュ! ズッチュ!

「アアッ! アアッ! アアッ♥! ダメェ、激しすぎるぅ♥!」
 自分で激しいと言っているのに、桐絵は上半身を起こすと、自ら腰を振り始
めた。福山に合わせて自分の方も動くことによって痛みを和らげつつ、もっと
快楽を生み出そうということだろう。
 二人のリズムはすぐにピッタリに合い、桐絵は背すじを仰け反らせ、無尽蔵
に襲い来る快感にわなわなとからだを震わす。顔が淫らに蕩け、口をだらしな
く開き犬のように舌を垂らし、
「アハッアハッアハッアハッ♥! コレ……コレェ……♥ お腹が……お腹が
溶けちゃう……♥ おかしくなるうぅぅ……!」
と、頭を振りながら、うわごとのような嬌声を上げる。

「もういきそうか?」
「あぁ……まだ……もっと……もっと突いてぇ……!」
「よし……なら、桐絵が満足するまで存分に突いてやるかな」
「アアァ……♥!」
 桐絵の表情に淫欲の歓喜が広がり、福山の肉棒をさらに迎え入れるように尻
をくゆらせる。
「来て……来てぇ……♥!」
「フフ……そんなに俺のチンポがキモチいいのか?」
「うん……! からだが疼いて仕方ないの……あぁ、もう……ねぇ……欲しい
の……もっとしてぇ……!」
「フハハ、いやらしい奴め。桐絵はカラダもココロももうすっかり淫売女だな!」
「バカァ……私をこうしたのはアンタでしょ……ね……お願いだからもっとし
てよぉ……♥」
 すると、
「こら桐絵」
と、福山は不機嫌な顔になった。
「アンタじゃないだろう。福山様・和春様・ご主人様のいずれかで呼べと言っ
たハズだっ! 聞き分けがないなら、これでお終いにしてもいいんだがな……」
 そう言って腰を引こうとする福山。
「あっ、やだ、抜かないでぇ! ごめんなさい……その……福山様……これか
ら気を付けるから……!」
 福山のペニスが引き抜かれるのを本気で厭がり哀願する、テレビの中の桐絵
の姿に、雪成は愕然となった。
(そ、そんな……桐絵……!?)
 福山がニタリと笑った。離そうとしていた身体を密着し直し、ズニュ……と、
肉棒を再び少女の体内に埋めると、桐絵のからだは肉悦に震えた。
「――ッあはあ……♥!」

「それでいい……もうお前は完全に俺の肉奴隷になったんだからな。狂うぐら
いの快感を得る代わりに、一生俺のペットになることを誓ったんだ! そら、
罰だ、お前だけ動くんだ。まずは俺をイカしてみろ。ご主人様に奉仕して悦ば
せるんだ!」
 福山は鞭を振るう調教師の如く二三度大きく腰を突き上げ、桐絵のからだを
荒っぽくゆさぶる。
「アア、わかりました……!」
 桐絵は戸惑いがちに腰を上下に動かし始めた。
 これも雪成にとって驚くべき光景だった。
(あの桐絵が……福山の言いなりになってるなんて……肉奴隷だって……!?)
「ん……く……ンン……あ……ああぁ……!」
 ゆらゆらとうごめく、桐絵のよく引き締まったかたちよい尻。彼女の腰が上
げ下げされるたびに、ガチガチに怒張したペニスが見え隠れする。
(福山のデカイ……)ゴクリ、と雪成の喉が鳴る。(あんなので桐絵のアソコ
が蹂躙されてるんだ……) 
 たまらなく淫猥な光景であった。ヌヂュ……ヌヂュ……と、繋がった部分か
らいやらしい音がひっきりなしに立ち、太い淫棒を美味しそうに何度も根元ま
で呑み込む桐絵の牝穴。
「ンン……アア……ン……ク……ィッ……クゥンッ……♥!」
 何往復もしないうちに、桐絵の声色は先ほどまでの湿り気を取り戻していた。
「ア……ア……ハァ……ア……♥!!」
「フフフ、その調子だ……もっとイヤラシイ声で鳴け。ケツを動かせ! 桐絵
の一番奥まで俺様のチンポを咥え込むんだ」

 福山の言いなりに、桐絵は遠慮なく声を上げ、腰の動きを早めてゆく。

 グチュッ、グチュッ、グチュッ、グチュッ!

「アァ、ハイィッ! ア、アア、アァ、アア、アゥ――アァ……ンッ、ンア、
ンハ、ンハァッ、ア、ア、ンアアッッ♥♥!!」
 桐絵の尻肉が、乳房が、大きな波を打つように揺れる。はちきれそうなほど
肉づきのよい双乳の動きは、特に雪成の目を捕らえて離さなかった。弾けるよ
うな健やかさの血色よい肌が淫靡な朱に染まり、全身から玉のような汗が飛沫
となって飛び散っていく。
「イイ、コレ、コレェ……♥」

 グチュッ、グチュッ、グチュッ、グチュッ!

 この上なく淫猥な嬌声と結合音が、テレビから盛大に響いてくる。近所に聞
こえるほどのボリュームではないハズなのだが、他には何も聞こえないほどに
雪成の聴覚を支配するのだった。
「アァッ、イイ、イイよぉッ♥!」
「おお……いいぞ……桐絵の膣肉がスゴク締め付けてきて……たまらない密着
感だ……!」
「福山……様のも……熱くて……奥まで……届くのぉ……ア……ア……アァ……♥!」
 桐絵はもうほとんど夢中で腰を振っている。本当に気持ちよさそうだった。
洪水のように溢れた愛液が尻肉までも濡らしていた。官能に背すじをゾクゾク
としならせる。そんな桐絵のピンと張った背中を、薄い笑みで口端を吊り上げ、
首の後ろで手を組み寝そべったまま楽しげに眺める福山。

「ハッ、ア、ア、すごい、当たって、当たってる、奥に当たってるうぅぅ……♥!!」
「フフフ……俺も桐絵の子宮の入り口を感じるぞ……コリコリしてて気持ちい
い……! クク……そんなに根元まで呑み込むまで腰を打ち付けて……奥に当
たるのがいいんだな。欲しいのか。奥の奥まで突き回されるぐらい欲しいのか!?」
 桐絵は腰を振り続けたまま上半身をひねり、顔を福山に向ける。淫らな期待
に満ちた輝き。
「あぁ……欲しい……欲しいです……!」
「それなら、ご主人様におねだりしてみろ。桐絵は福山様のセックスドールで
す、私のいやらしいお汁あふれる牝壺を存分にご使用下さい、メチャクチャに
犯して下さいってな。そうしたら俺からも動いてやってもいいぞ?」
「え……!? ああ……そんな……」
 羞恥に頬を赤くして目をそらす桐絵。
(そうだよ……桐絵……そんなセリフ言っちゃダメだ……!)
 雪成はテレビに食いつかんばかりににじり寄りながら、奥歯を噛みしめ握り
拳を作る。
 悪魔に魂まで売り渡さないでくれ、桐絵――!

 だが――

 桐絵の唇がおずおずと、しかしその後にあるものを渇望して開く。
「き……桐絵は……福山様の……セ……セックスドールです……! 私のい…
…いやらしいお汁あふれる牝壺を……存分にご使用下さい……メチャクチャに
……犯して……犯して下さいぃッ!」
「桐絵ッ!?」と、雪成は悲鳴のような叫びを上げた。

 だが、どんなに声を大きくしようが、録画の中の人間に届くことはない。
 画面の向こうで、福山の邪悪な笑みが一層深くなった。
「よーし。それでこそ栄えある俺様専用肉便器第1号の候補生だ!」
 そう言うと抽送を再開し、二人の動きはたちまち同化した。
「アア、アア、イイ、イイ、イイのぉッ! コレ、コレ、コレェェ……♥!」
「そら、もっと食らい尽くす勢いで腰を振れ! ご主人様のチンポを美味しく
いただくんだ!」
「ハイッ、ハイッ、ハイィィッッ♥♥」

 ズッチュッズッチュッズッチュッズッチュッ――!!

 福山の命ずる通り、桐絵はこれまでにも増して腰を振り立てた。二人の結合
はさらに密度を深め、やがて言葉も少なくなり、ただひたすら肉欲を貪るだけ
の獣と化していった。
 熱い吐息、あえぎ声、結合音、ベッドのきしみ、シーツが擦れる音――どの
音も耳を塞ぎたくなるほどクリアに拾われ、映画にも負けない臨場感で絶え間
なく流れ出てくる。
 雪成は音を消したくなった。ビデオも止めたかった。
 でも。
 できなかった。
 目は二人の痴態に釘付けになり、身体は金縛りにあったように動けない。
「あ……あ……あ……」
と、言葉にならない呻き声を漏らしながら、目を見開いて食い入るように見つ
め続ける。

 二人はどれだけの時間、肉を交わらせていただろうか。
 存分に桐絵の肉壺を堪能していた福山は、彼女の太腿をガッシと掴んで押さ
えた。
「クッ……そろそろ出るからな……桐絵のお望み通り、一番奥にぶちまけてや
るぞ……!」
「え、やだ……!」わずかに正気に帰る桐絵。「ダメ……も、もう……中には
……お願い……!」
「フハハ、何言ってんだ。これまでだって、さんざん中出しされてるたびに気
持ちよさそうに搾り取ってたじゃないか、え? 奥をガンガン突かれて、この
福山様のおちんぽと精液で膣内(なか)が充満するのがいいんだろ? たぷた
ぷ音がするほど出されるのが気持ちいいんだろ?」
 喋りながら腰の動きをヒートアップしてゆく福山。
 押さえつけられて動かせない下半身に、双臀をいやいやとゆらめかせながら、
力無く首を横に振る桐絵。
「ア、ア、ア……! ダメ、ダメ、ダメェ……赤ちゃんが……赤ちゃんが出来
ちゃう……!!」
「ククク……安心しろ、桐絵。何の心配もない。もうお前は隅から隅までこの
福山和春様のモノなんだからな。どんなことがあっても、お前の世話はしっか
り見てやる。たっぷりと俺様の子種を膣内出ししてやるから、俺の子を受胎し
て体の中から俺様のモノになれ!」
「アアァ……!」
 諦念か絶望か――抗う気力はもうないのか、顔を伏せ涙を流す桐絵。だが、
妊娠させられると知っても、なりふり構わず逃げる気配がないのが、雪成の気
になった。
「桐絵……だめだよ桐絵……福山なんかの……! なんで……なんでもっと厭
がんないんだよ……!?」
 テレビを揺らしながらそう叫ぶ雪成。

 だが、桐絵は小刻みに激しく突き揺さぶられるままに、福山の広げた両脚の
中に手をついて、何とかその責め立てを堪えるのがやっとといった風情だった。
目端に涙を溜めながら、福山のラストスパートを一身に受け止める……。
「アッアッアッアッアッアッ!!」
「クウゥッ――出すぞ桐絵ッ!」
 福山は太腿を押さえ込む腕に力を籠め、本能が号令するままに思い切りグイ
グイと腰を突き上げた。まるでブリッジのように弓反り、たまらずに桐絵のか
らだが後ろに傾き、福山の上に被さった。

 ドビュブッビュブッビュブッビュブウッ
 ドクッドクッドクッ……!

 悪魔の音。
 どれだけ性能の良いマイクを使っているのか、それとも福山の射精がそれほ
どに凄まじいのか、中出しされているのがありありと分かるほど、胎内での射
精音までもが克明に記録されていた。
 玉袋が女陰に触れるまでえぐりこまれた肉棹が、ドクドクと力強く熱い精子
を送り込んでいる。
「アア――アア――アアアーーーーーーーーッッッ♥♥!!!!!!」
 聞く者をゾクゾクさせる、桐絵の気持ちよさそうな嬌声。
「奥で――奥で熱いのが出てるうぅぅ――ッッ♥♥!!!!」

 ドクッ、ドクッ、ドクッ……!

「おおお……!」気持ちよさそうに深い吐息をつく福山。「たまらん……桐絵
の熱い肉襞が盛んに蠢いて……俺の子種を一滴残らず飲み干そうと搾り上げて
くる……!」
 ツンととがった乳首とともに天井を見つめ、全身を震わせながら口をぱくぱ
くさせる桐絵。紅潮した頬は快感に蕩けきっている。
「ンア……ンア……ンアア……♥! 入ってくる……入ってくるうぅ……♥!
福山の精子が……私の中に……ドクドクと……ハアァ……アアァァァ……♥!」
 桐絵は、腹の底から気持ちよさそうな、吐息とも喘ぎともとれぬ息を深く深
くつく。
 なされるがままだった。あれだけ嫌っていたはずの男の精液を流し込まれ、
体奥に受け続ける少女。
 股間のアップ。福山のペニスを根元までぱっくりと呑み込み、痙攣するよう
に締め付ける入り口。棹の下にぶらさがった精嚢が生き物のように収縮していた。
 繋がりの隙間からじわじわと白い液が溢れ出きて、愛液と混じって会陰を伝
い、シーツの上に垂れていった。
 福山の射精は長く――雪成にとっては永遠にも等しく――全てが桐絵の中で
吐き出され続けた。それでもまだ飢えた獣のように、射精の最中もグイグイと
何度も突き入れられる肉棒。
 雪成はもちろん、他の男の射精など見るのは初めてだったが、彼など及びも
しない長い射精だった。
 桐絵の膣内で、途方もない量の精液が生出しでまき散らされているのだ。
(こんなに出されたら、絶対妊娠しちゃうよ……!)
 桐絵が福山の子どもを孕む……まさか……そんな――
 へたへたとくずおれる雪成。

 やがて放出が終わると、福山は満足したように力を抜き、ドサリと腰を落と
した。二人分の体重でベッドが大きくきしむ。
 しばらくそのまま、二人とも深い呼吸を繰り返しながら、グッタリしたよう
に動かなかった。

 やがて福山は、自分の上で荒い息をしている桐絵のからだに腕を回し、撫で
さすりはじめた。
「最高だ桐絵……お前とのセックスが一番気持ちいいぞ……さすがは俺が思い
定めた女のひとりだ……」
「ぁ……ん……くすぐったい……」
「ン……お前もイッたのか……?」
 蕩けきり潤んだ眼差しで男を見る桐絵。
「だって……奥の感じるところをあんなに突かれるんだもん……もう……変に
なるのを抑えられないわ……」
「フ……そうか……それにしても、桐絵への中出しはもう数え切れないぐらい
になってるはずだが……そろそろ受精しないもんかな」
「えっ――」
と、雪成。段ボールとテレビに交互に目を運ぶ。まさか――
 桐絵はそれには答えず、視線を落とす。
「なんだ、まだ惑いがあるのか? もう余計な考えは捨てろ。お前は俺の女に
なったんだ。それとも、まだチビナリなんかに未練があるのか」
 自分の話題が出て思わずドキッとする雪成。
 桐絵は悲しそうな翳を顔に落とし、横に背けて何も言い返さなかった。
「フン、まあいいさ。どちらにしろ、もうお前は俺様から逃げられやしないん
だからな!」
「ああっ――!?」
 桐絵の驚いた声が上がる。
 入ったままだった福山が、また動きはじめたのだ。彼のモノはまったく硬度
を失っていなかった。
「今日は徹底的にヤるぞ! 抜かず三発ってヤツだ! アハハハハ!」
「アッ、いやっ、まだイッたばかりで――あ、あ、アアアッ♥!!」
 桐絵の声がまた、欲望の海に沈んでゆく。

 その後も二人の濃密なベッドシーンは延々と続いた。福山は体位を様々に変
えながら、何回も何回も桐絵の中に放った。その回数は三発など軽く超えてい
たが、福山は疲れなど知らないように、飽くことなく桐絵を責め立て続けた。
たまに中に出すのに飽きてパイズリで桐絵の豊かな胸を汚したりもした。
 桐絵は福山に弄ばれるうちに、快楽によがり狂う一匹の牝と化していった。
途中から中出しを厭がることもなくなり、むしろ悦んで迎え入れる始末だった。
桐絵もまた、あられもない嬌声をひっきりなしに上げながら、数え切れないほ
どイキまくった。奥を突かれてイクのが癖になりつつあるようで、精液を膣奥
に浴びせられるたびに、その白いからだがブルブルと気持ちよさそうに震え、
絶頂を迎えるのであった。
 ほぼ全て中出しするため、二人の結合部はすっかり白濁液でまみれ、抽送の
たびに粘っこい白い飛沫が飛び散り、ザーメンが泥流のように溢れ続けたが、
それでも終わることはなかった。
 最後の方はもう、二人とも体じゅう淫液にまみれ濡れながら絡み合い、から
だをぴったりと重ねて理性を捨てた貌で互いの唇を貪り、疲れ果てていてもな
お、淫熱に浮かされたように律動した。
 桐絵の腿を閉じさせた正常位で挿入していた福山は、
「桐絵……桐絵……これが今日最後の種付けだ……しっかり受け止めろっ!」
と、桐絵を強く掻き抱き、全身の体重を押しつけるように、ぬるみきった肉壺
の最奥を深く突くと、依然力強さを失わない射精音が発せられた。

 ドクッドクッドクッドクッ!!

「ア――ア――アアア――――――ッッッ♥♥♥!!!!!!!!」
 福山の首をギュウッと抱き返しながら、からだをガクガクと痙攣させる桐絵。
「ア……ア……ア…………」
と、声にならない声が徐々に小さくかすれていったかと思うと、不意に途切れた。
 「ん?」と福山が見下ろすと、桐絵はとうとう失神してしまっていた。

「なんだ、気をやったのか……。ふむ、今日はこれで終わりだな……」
 そう言って、福山は桐絵を寝かしたままベッドから離れた。
「また近いうちに……たっぷりと可愛がってやる。チビナリなど忘れさせるぐ
らいまでにな……フフフ……」
と、彼自身はまるで疲れを感じさせない悠然とした足取りでカメラの外に消え
ていった。
 桐絵の股間が大写しになり、開かれた脚の付け根にパックリと割れた陰唇か
ら、ドロドロに濃縮されたような白濁液が溢れ返った。少女の胎内でさんざん
に撹拌されて出来た無数の泡を立たせながら、まるで徳用缶入りの液体のりを
ひっくり返したようにシーツに海を作っていった。想像を絶する量だった。
 ビデオはそこでブツッと切れた。


「……………………………………………………」
 テレビの前で茫然自失の態の雪成。
 へたりきった姿で、停止させることも忘れ、砂嵐を見つめている。

 こんな…………こんな………………

 やはりどう見ても、作り物には思えなかった。
 のろのろと頭を巡らし、力を喪った虚ろな視線をビデオテープが詰まった段
ボールに向ける。
 まだまだ大量にあるビデオテープ。
 今みたいな映像が、他にもこんなに……!?
「ひょっとして、他のみんなも…………」
 雪成の身体に震えが走りはじめる。

 まさか――福山は確かにドスケベだが、ここまでする奴だっただろうか。そ
れに、桐絵だって自分の身に危険が降り掛かれば、文字通り体を張って福山の
魔の手を撃退するはずだ。こんな事が……こんな事が……!
 しかし、そう思う一方で、福山が金の力にあかせて本気で不埒な事を実行し
ようとすれば、どれだけ腕力があっても防ぐことは難しいだろう、という妙に
冷静な思考も働いていた。
 でも――信じられない。信じられるわけがない。
 だが、このビデオは。この桐絵と福山の生本番ビデオは。
「ミハルちゃん……コヨミちゃん……まさかトモカちゃんまで……!?」
 雪成は震える手を箱に伸ばした。
 どれを。
 目印もなにもない以上、また適当に選ぶしかない。
 隣合ったものには、桐絵の別の嬌態が映っているのだろうか。福山に弄ばれ
るままに……それとも自ら進んで……。
 あるいは、これら全てが桐絵一人のビデオで、他の女子は無事であるとか。
 出来ればそうであって欲しかった。桐絵には悪いが……こんな気が狂いそう
な衝撃映像が、これらのテープすべてに全員分収められていると考えるだけで
吐き気がした。
 でもわからない。中身を見なければわかるはずがない。
 ろくに回らなくなった頭で選別するのは諦め、今度は下段の一番左端のもの
を取った。
 抑えきれない手の震えが、カチカチ……カチカチ……と、テープを鳴らす。
 何度も唾を飲み込みながら、テープを交換した。

                          (たぶん続かない)