葱サバイバル4.1

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1名無しさん@初回限定
葉鍵ロワイヤルに負けないモノを作ろうではないか!
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1073371138/
から始まったリレー小説です。
どんどん書いて次に繋げて行きましょう。

このスレは作品投下スレ(本スレ)です。感想・意見は此方へ。
葱サバイバル意見・感想・議論スレ2
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1078803641/

前スレ
葱サバイバル3
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1079233213/

葱サバイバル4(即死)
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1082114440/

まとめサイト
ttp://www.h5.dion.ne.jp/~p_force/negi.htm
現状をまとめたダイジェストにルールまとめたものや人物表など
役立つものばかり。 書き手さん・読み手共に必読。
書き手間用の意見・打ち合わせ・補足・設定などを決めるBBSもあるので
それらの内容はそちらへどうぞ。

また新規の書き手様は、此方の必読条件をしっかり熟読する事をお願いします。
作成者:紫零氏Thx!!

作品投下前には、被らないためにスレをリロード、誤字等の最終チェックをしましょう!
2名無しさん@初回限定:04/04/19 20:53 ID:bvlYIOyM
ヴィルヘルム・ミカムラは、誰よりも魔法を愛していた。
これこそが、人類にとって必要不可欠なものであるのだと思い
長い時を生きながら、その研究に没頭した。
やがて近年になり、科学文明の発達により魔法は弱体化していった。

彼は自分の世界に失望し、新天地を求め動き出す。
魔法が栄え、誰もが魔法の恩恵で生きる世界を作る…彼は理想の実現のために動き出した。

そして計画の為に集まった、比良坂初音、ケルヴァンの2人の協力者。

ナナスが作成している異世界から勇者を召還する事のできる「イデヨン」。
その試運転の日、ヴィルヘルムの計画は実行に移された。

それぞれの思惑が錯綜する中、物語は動き始める。
3名無しさん@初回限定:04/04/19 20:54 ID:bvlYIOyM
現在の最終登場話。(196話:それぞれの信念まで対応、生存者のみ記載。その場に居る筈のキャラは【】で閉じてあります)

満月の夜後
エアリオ(144話:満月の夜)
ドライ、佐倉霧(145話:シューティスト二人or偶然の見えざる手)
牧島麦兵衛、広場まひる、遠葉透、岬今日子、碧光陰(158話:逃れられぬ因果)
ナナス、小野郁美、江ノ尾忠介、闘神ユプシロン(162話:阻む者、名将の機転)
鷺ノ宮藍、ケンちゃん(166話:運命の分岐点)
凶アリア、七瀬凛々子、山本悪司 、大空寺あゆ、カレラ、ライセン、【大十字九郎、深山奏子】(182話:それぞれの『危機』?)
リャノーン(184話:死の接吻)
橘天音、君影百合奈、朝倉ゆうな、朝倉まいな(187話:知る事と知られる事)
エレン、天城小次郎、名無しの少女(188話:存在証明)
ミュラ、リック、原田沙乃、吾妻玲二(189話:karma)
アイ、カモミール芹沢、白銀武、鎧衣尊人、綾峰慧(192話:始まり、終わる)
ケルヴァン・ソリード、鑑純夏、御剣冥夜(193話:情報戦)
双厳、命、皇蓉子、柳生十兵衛、無影(194話:策動)
鳳あかね、鳳なおみ(195話:子供の権利条約)
ヴィルヘルム・ミカムラ、友永和樹、ギーラッハ(196話:それぞれの信念)

満月の夜前
結城ひかり(83話:蜘蛛の糸)
蔵女、葉月(130話:想いという名の痛み)
河原末莉、山辺美希(134話:非日常の日常、あるいは日常の非日常)
ランス、山本五十六(148話:WAR HEAD)
ハタヤマ・ヨシノリ(151話:求めるものは)
比良坂初音、アル・アジフ、速瀬水月、涼宮遙、鳴海孝之、伊藤乃絵美(159話:ほんとうのたからもの)
直人、ゲンハ(164話:死闘幕引)
高嶺悠人、飯島 克己、春日せりな(173話:刻まれし十字架)
鴉丸羅喉、鴉丸雪、モーラ(180話:博打、開始)
4名無しさん@初回限定:04/04/19 20:55 ID:bvlYIOyM
キャラ名逆引き【キャラ名(話数で表示)】

ナナス(14.47.77.84.105.109.161.162)
ミュラ(51.58.60.143.146.148.168.176.185.189)
ライセン(51.58.60.143.146.148.168.180.182)
リック(60.143.146.148.168.176.185.189)
ヴィルヘルム・ミカムラ(1.49.52.60.65.74.80.96.112.140.144.196)
ハタヤマ・ヨシノリ(21.62.65.108.125.132.140.151)
比良坂初音(1.3.7.18.22.42.50.56.79.83.92.116.121.123.131.159)
深山奏子(8.47.70.138.141.165.)
ケルヴァン・ソリード(1.12.26.28.45.52.62.68.70.74.79.80.96.112.129.134.135.138.139.140.141.150.151.157.172.177.193)
朝倉まいな(2.20.70.97.130.187)
朝倉ゆうな(2.20.70.97.130.187)
小野郁美(3.47.77.84.105.109.161.162.)
橘 天音(4.22.29.33.39.54.78.97.130.187)
君影 百合奈(4.22.29.33.39.54.78.97.130.187)
鷺ノ宮 藍(22.29.33.39.71.85.102.126.166)
結城ひかり(11.83)
牧島麦兵衛(11.83.117.120.139.156.158)
広場まひる(7.18.117.120.139.156.158)
遠葉透(7.18.117.120.139.156.158)
原田沙乃(8.26.35.91.95.153.176.185.189)
近藤勇子(8.14.38.59.67.87.89.113.175)
土方歳江(8.14.38.51.58.66.87.89.113.175)
沖田鈴音(8.14.38.59.67.87.89.137.150.175)
カモミール芹沢(8.14.38.59.67.87.89.137.175.181.192)
吾妻玲二(8.26.35.91.95.153.176.185.189)
ドライ(8.42.51.58.66.95.145)
エレン(24.53.95.100.115.171.188)
友永和樹(17.23.28.36.51.58.66.93.98.127.152.157.172.191.196)
河原末莉(23.36.93.98.142)
5名無しさん@初回限定:04/04/19 20:56 ID:bvlYIOyM
山辺美希(26.28.134.142)
佐倉霧(26.91.93.98.122.145)
大空寺あゆ(27.43.90.94.107.113.137.163.178.180.182)
涼宮遙(42.75.76.116.159)
鳴海孝之(42.75.76.116.159)
速瀬水月(42.79.116.121.123.131.159)
碧光陰(34.81.106.136.156.158)
岬今日子(34.81.106.136.156.158)
高嶺悠人(73.110.119.124.149.154.155.164.173)
鴉丸羅喉(38.101.133.147.167.170.178.180)
鴉丸雪(38.101.133.147.167.170.178.180)
伊藤乃絵美(40.55.123.131.159)
モーラ(40.43.137.178.180)
ギーラッハ(41.61.72.118.157.172.174.183.191.196)
大十字九郎(44.56.75.76.86.114.116.122.145.165)
アル・アジフ(50.86.114.116.121.123.131.159)
アイ(47.62.65.94.107.137.175.181.186.192)
葉月(48.49.55.69.115.130)
蔵女(48.49.55.69.115.130)
皇 蓉子(85.103.111.160.174.190.194)
天城小次郎(53.95.100.171.188)
鳳あかね(53.153.195)
鳳なおみ(53.153.195)
直人(84.93.119.124.128.155.164)
白銀 武(56.66.76.86.114.116.121.179.181.186.192)
鑑 純夏(56.66.79.177.193)
御剣 冥夜(56.66.79.177.193)
鎧衣 尊人(56.66.79.177.186.192)
綾峰 慧(56.66.76.86.114.116.121.179.181.186.192)
飯島克己(73.110.119.124.127.128.164.173)
ランス(61.90.143.146.148)
山本五十六(27.43.90.94.107.113.143.146.148)
6名無しさん@初回限定:04/04/19 20:57 ID:bvlYIOyM
カレラ(61.137.163.168.176.180.182)
江ノ尾忠介(63.64.77.84.105.109.161.162)
山本悪司(90.94.107.170.178.180.182)
春日せりな(72.104.119.124.149.154.155.164.173)
双厳(89.92.118.160.174.190.194)
柳生十兵衛(89.92.118.160.174.183.194)
命(89.92.118.160.174.190.194)
無影(89.92.118.152.157.172.183.194)
ゲンハ(93.119.124.149.154.164)
七瀬凛々子(101.133.147.167.170.178.180.182)
名無しの少女(100.115.171.188)
闘神ユプシロン(112.140.162)
リャノーン(184)
凶アリア(138.141.165.182)
エアリオ(114.145.150)

魔獣枠
神風(129.134)
7名無しさん@初回限定:04/04/19 20:59 ID:SGLpKOsX

      (⌒Y⌒Y⌒)
     /\__/
    /  /    \
    / / ,.==-    =;
 (⌒ /   ーo 、  ,..of
 (  (6     ̄  i  ̄}
 ( |      .r _ j /
    \    'ー-=ゝ/
     \     ̄ノ
         ̄ ̄
8名無しさん@初回限定:04/04/19 21:38 ID:rde4TG8J
即死防止
9悪魔、墜つ。:04/04/19 22:10 ID:AKM+DmiM
カレラは思っていた。

「………ッ!」

篭絡させる自信はあった。

「うあっ!」

幾ら強く、逞しい魂を持っていたとしてもそれは所詮定命の者の話だ。

「いっ、嫌ぁ……!」

それが男性であれ女性であれこの体と性技で夢中にさせ、その精力を全て奪い取る。
今までだってそうして来たし、今回もそうなる筈であった。

「ゆっ! 許して! 許してぇ! もうイキた……ヒィッ!?」

ならば何故、自分はその篭絡させるべき相手に哀願しているのか。

熱い掌が、胸を激しく揉みしだく。
冷たい指先が、秘所の突起を柔らかく弄る。
吐息が優しく耳朶に吹きかけられたかと思えば、
股間には肉棒が発情期の獣以上に貪欲に突き立てられ、掻き回される。
恋人が交わすような口付けの後には、
同じ口に奴隷を扱うかのように手荒に白濁液を注ぎ込まれる。
まるで、年齢も性癖も全く異なる複数の男から際限無く責められるような限りない苦しさと快感。
10悪魔、墜つ。:04/04/19 22:11 ID:AKM+DmiM
そんな中響く悪司の優しく、甘く、無慈悲な声。

「……まだギブアップには早えぜ、カレラ……これから本物の天国と地獄、
 一辺に見せてやるんだからな」
「だっ……駄目ェ! こ、これ以上されたら、アタッ
アタシ、本当に……!」
「全部、俺に任せりゃいい……ほらよっ!」
「アウウッ!」

一体、この相手は何故未だに余裕を見せているのか。
確かに悪司のモノは立派だ。大きさも、固さも、熱さも。
だが、この程度ならばカレラとて未経験では無かった。
むしろ比較すれば、ランスの方が立派かもしれない。
では、自分はテクニックだけで翻弄されていると言うのか?
歓喜と悲鳴が入り混じった叫びを上げつつ、カレラは自分の意識が混濁してゆくのを感じていた。


例えば、ランスにこういった質問をしてみる。
「貴方にとってセックスとは?」
そうすると、こういった返事が返ってくるだろう。

「そんなの決まってるだろうが。
 気持ちいいから、ヤる。ヤりたいから、ヤる。
 おまけに俺様に抱かれれば女の子もうはうはだから最高だぞ」

では、この質問を悪司にしてみるとどうなるか。
11悪魔、墜つ。:04/04/19 22:12 ID:AKM+DmiM

「(考え中)……改めて聞かれてもなぁ。そーだな……
 相手を騙す時とか、拷問の時とか、交渉の時とか、部下への褒美とか、
 仲間に引き込む時とか、女に言う事聞かせる時には大抵使ってるな……
 ま、後は色々だな。惚れた女を抱く時にはまた話が違うけどよ」

こう返ってくる。
つまり、悪司にとってセックスとは快楽以外での用途が主なのである。
それゆえに、必要とあればそれが例え老婆であろうと誰だろうとモノを立てる事ができるし、イカせる事ができる。
更に極端に言えば、悪司は多くのセックスにおいて自らの快感を考えていないのである。
カレラにとって不幸だったのは、彼女は主に召還してきた相手が多かれ少なかれ
自分の快楽の為にカレラを抱こうとした事である。
その際、カレラは召還者の命令は聞きつつも主導権自体は彼女にあった。
まあ、中にはそうでない者もいたし、かつてカレラが天使に捕らえられた時の
ように強制的に犯された事もあるにはある。
だが、それらの場合はカレラは際限無い性欲と体力で最終的な主導権は自分の
ものにしてきたのである。
では、主導権を握られ、かつ体力的にも劣らない相手の場合は?
その答えがこの現状であった。
12悪魔、墜つ。:04/04/19 22:13 ID:AKM+DmiM


「あー……! あー……!」
もはや、何度イカされたのかすら分からない。
多分二十回は軽く越えているだろう。
既にカレラの眼の焦点は酔ったように合っておらず、
その口からは言葉にならない『あー』という音が漏れるだけである。
「どうしたってんだ、カレラ?」
からかうように言いつつ、悪司が対面座位の姿勢で下から突き上げる。
「あっあっあっ!」
一瞬カレラの声の感覚が短くなる。
「はー……あー……あー……!」
そして、速度が戻ると再び声も戻る。
「おーい、聞こえてるかー?」
「あっあっあっあっあんっ!」
今度は回転を加えながら動く。
こくこくこく。
言葉にはならないが、首を上下させて悪司に応えるカレラ。
「おし、そんじゃ頼みがあるんだけどよ……実は、俺達はあのヴィルって野郎を倒すつもりだ」
言葉は聞こえる。でも意味は分からない。
「……協力してくれねえか?」
13悪魔、墜つ。:04/04/19 22:17 ID:jzoeI8Mw
何を言っているのかは分からない。
でも、これを受け入れてしまうと『何となくマズい事』になりそうな気がする。
ふるふるふる。
左右に振られる首。
「そうかい」
悪司のあっさりした返事。そして、
「……………よっ!」
「ッ!」
カレラの奥にどすんと突き込まれる肉棒。
「駄目か?」
「あ……ケ……」
「ケルヴァンって大将が怖いのか?」
「あっあっあっ!」
怖いわけじゃない、ただ、下手に怒らせたらまずいかなーって、
そうなのかな?
違うのかな?
分からない、気持ちいい、わからない、きもちいい。
「………?」
ふと、悪司の動きが止んだ。
カレラの両肩を抱き締め、頭をぽんぽんと父親のように叩く。
「安心しな、そん時は俺が全部護ってやるからよ……」
ああ、駄目だ。
アタシ、安心している。
コイツへの『安心』はコイツへの『服従』だ。
奥にコツンコツン当るのが気持ちいい。駄目、魂、コイツの、
抱き締めてた指が背中をなぞりつつ降りてくる。
冷たい、熱い、熱いのはアタシなのかな。ああ、駄目、聞こえる、声が、声が。
14悪魔、墜つ。:04/04/19 22:18 ID:jzoeI8Mw
「……お前は俺のもんだ、カレラ」
そんな、そんな事無い、アタシはアタシ。悪魔、誰のものでも、
「アウッ!」
いい、お尻、グリッってされるのが凄くいい。
汗と汁でヌルヌルだから奥まで入っちゃう。いい、お尻気持ちいい。
何を考えていたんだっけ? そう、お尻だけじゃなくて、前に前に、
「あー……あー……!」
凄い、まだどんどん激しくなる、いい、いい、どうでもいい。
駄目、何が? 何がだろう。わかんないや。凄くいい。
おまんこも、お尻も、おっぱいも、全身が凄くいい。
それ以外の事は、もう、どうでもいい。

「……いいな?」

―――こくり。
最後の絶頂を感じ、意識が失せる寸前。
カレラは自分の首が上下に動くのを感じていた。


【山本悪司 @大悪司 (アリスソフト) 招  △(腰痛) なし  
       行動目的:ランス(名前、顔は知らない)を追う・本拠の捜査】
【カレラ@VIPER-V6・GTR(ソニア) 鬼?招?(悪司に篭絡)
        状態○ 所持品:媚薬(残り1回分)】
15Skull guys:04/04/19 22:46 ID:x/q86LvV
「酒は傷に触るぞ、やめとけ」
戦いを終えて船工場に戻ったゲンハと直人は傷の手当てをしたり、そこら中を物色したりと体勢を整えつつあった。
工場は広いわりには大した物はなかったが、それでも収穫がなかったわけではない。
その僅かな収穫を拾い集めつつ、彼らは古ぼけたガレージの中で、小型トラックを見つけたのだった。

ガレージの中、ゲンハは予備のガソリンを空き瓶に注ぎ、せっせと火炎瓶を作って行く。
そして直人は何もせず、ただ空き瓶の中にわずかに残ってた酒を1つの瓶に集めて水で割り、
それをちびちび煽るという何ともセコイ真似をしていた。

「大体それ飲めるのか?酒は酒でも工業用か消毒用アルコールなんじゃねぇのか?」
火炎瓶を作りながらゲンハは直人に忠告する。
アルコールは血管を拡張させ、出血を止まりにくくさせる。
事実、ふさがりかけていた直人の傷口から、また血が滲み出してきていた。

「どうせ死ぬんだ」
釘に貫かれた身体がしくしくと痛む、傷もそうだが、このままだとどうせ数日後には破傷風で御陀仏だろう。
だが、それでも構わないと思う。
「生きて帰っても、とどまっても死…か」
だったらしたい放題してから、くたばるべきだろう。
ほんの少しだけメロウな気分の直人、彼とて24時間女のケツのことばかり考えているわけではなかった。
サカリがついているわけではない、ただ欲望に忠実なだけだ。
(思春期のガキじゃあるまいし…)

そう思いながら酒をまたちびりちびりと煽る直人。
「いいかげんにしやがれ」
見かねたゲンハが直人から酒ビンを取り上げる、その瞬間直人の瞳が憤りに満ちる。
「俺に命令するな!!俺に命令していいのは紳一様だけだ!!」
16Skull guys:04/04/19 22:47 ID:x/q86LvV
「そのシンイチだがなんとか」
「様をつけろ」
直人のツッコミに、ゲンハは仕方ねぇなと言わんばかりに付け加える。
「へぇへぇ、その親愛なるシンイチサマはいったいどこのドイツでオランダなんでしょうねェ」
ゲンハの嘲りには乗らず、直人はぽつりと呟く。

「俺の助けなんぞ求めちゃいないさ、今ごろここにいれば誰かのアナルにでもブチこんでるんじゃないか」
直人、古手川、木戸…彼らと紳一との関係は忠誠こそ絶対だったが、それだけがすべてというわけでもなかった。
揺るぎ無き主従はあれど、どちらかといえば同志に近い存在だった。
無論、救えるなら救う、それが勤めだ、だが紳一はきっとこう言うだろう。
俺に構わず好きなだけ犯せ、と。
(だから有り難く好き放題させて貰いますよ)
何度も考えていることだが、どうせ遅かれ早かれ死ぬのだ。

直人はゲンハから酒瓶を取り替えすと、またちびりちびりと煽り出す。
今度はもうゲンハは止めなかった。
「ケッ!死にたきゃ好きにしろ、そのかわりくたばったら置いていくぞ」

「お前こそ…お前の方が重傷だろうが?」
応急措置こそ施してはいるが、ゲンハの背中の傷はその程度では如何ともしがたかった。
「うるせぇ!テメェの身体の心配だけしてろ!!…つつ、大声ださせるんじゃねぇ!傷が痛むだろ!!」
17Skull guys:04/04/19 22:48 ID:x/q86LvV
「だったら俺にも構うな…そのかわり」
ああそうだ、まだ死ねない…不思議なものだ、達観しているにも関わらず、
その一方で自分は生きることを望んでいる、もしあの女が先に死んでいたら自分はどうなるのだろうか?
そう、憎しみこそが、欲望こそが生への原動力…いくらとりつくろうとも、
それは全ての生命体にとって共通なのではないか?
「アイツだけは俺に譲れ…他の女は全部くれてやる、いいか必ずだぞ」

直人がまた再び憎悪をチャージしてる間にも、ゲンハは火炎瓶や鉄パイプ、包丁だの物騒なものを
次々と荷台に詰みこんでいく。
だが肝心のトラックはボロボロで今にも壊れそうだ、エンジンをかけると黒煙がもくもくと立ち上った。
無言で直人がハンドルを握る。
「コラ!飲酒運転は免停だぞ、俺も色々やってきたがな…免停は恥ずかしいぞぉ」
直人はそのままアクセルを踏む、トラックはガタピシと異様な音を立てながらのろのろと動き出す。
「俺の前に立ちはだかる奴が悪い」
その言葉を聞いてゲンハがケケケケッと笑う、ツボに入ったのだろう…違いねェ違いねェと何度も頷く。
「おだててもマイレージは貯まらないからな」
「トラックで貯まってたまるかよ、それに俺じゃない、俺たちだろうが、派手にやろうぜ派手に、よ…ククククッ」

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、やせ我慢しています)
 所持品:鉄パイプ・包丁・火炎瓶x4】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル】
(トラック搭乗、おんぼろの上に飲酒運転なので遠くまではいけません)
18名無しさん@初回限定:04/04/20 22:42 ID:qeFdvSGF
保守
19ただ一人の女のために:04/04/21 02:02 ID:I2n4Tg7f
「ちょっと何やってんのよ! 遅いわよ二人とも!!」
「わりぃわりぃ、いやー悠人んちで佳織ちゃんにお茶出してもらってな?
飲まないで来るのも悪いからって、そのまま三人で話し込んでたら遅くなっちまった」
「…八割近くはお前がしゃべってたろうが。いいかげん佳織に色目使うのやめろ」
 毎度の事ながら、悠人が半眼で文句をたれる。
 そう易々と俺のライフワークをやめられますかっての。
「…ほほー…それで二人してこのあたしを二十分も待たせたわけ…」
 ドスの効いた声。…まずい。予想は出来ていたが、俺達のお姫様は大分ご立腹だ。
 ぴたっと悠人の動きが止まってる。てか、俺もだ。
 今日子のこめかみに怒りマークを確認。
 にこやかに微笑んじゃいるが、いつの間にかハリセン握ってるし。
「あ、いや、そのな! 忘れてたわけじゃないん…ふごっ!?」
 スパーンと小気味いい音と衝撃が顔面に炸裂する。
 続く後頭部の衝撃と眼前の光景に、地面に倒れたんだと認識できた。空が…青いぜ…。
「ま、待て今日子! 話せばわか…ぐふぁ!!」
 続いて悠人の声。
 やれやれ、お前もか。こんなんばっかりだな俺達。
 まあ、しゃあないわな。今回は俺らが悪い。
 悪くない時でもぽんぽん殴られてるが、それも今日子だからしゃあない。理不尽だけどな。
 とにかく今日は一日、今日子に付き合うとしようぜ? 相棒。
 ふっ、と腹に気合を入れて起き上がる。
「ほれ起きろ悠人、いつまで寝てん…」
 …………
 ………
 ……
 …なんだ?
 なんで、悠人の首が無いんだよ? タチの悪い冗談だぜ、新手のドッキリか!?
 熱い血液が、地面についた俺の手足を濡らし、粘りを持って指に絡みつく。
「今日子! 何なんだよ、これは!?」
 そう叫んで今日子を見た俺の目の前に、信じられない光景が広がっていた。
 累々たる死体の山。
 佳織ちゃん、小鳥、クェドギンの大将にラキオスの姫さん、稲妻部隊や悠人の連れていたスピリット達。
20ただ一人の女のために:04/04/21 02:03 ID:I2n4Tg7f
 そして、それらの前には今日子。
 さっきまでの私服じゃない。制服の上に鎧を身に着け、細剣を持った今日子が、
無表情なんていう、今日子には絶対あり得ない表情で俺を見ている。

  ――どんっ

 衝撃。
「…が…っ!?」
 今日子の細剣が、俺の胸を貫く。
 俺は…この剣を知ってる…。こいつの名は…
「空…虚ぉ!!」
「…『空虚』? 違うな、我をそのような脆弱な存在と同じにするな」
 今日子の口から、今日子の声で……しかし、今日子のものではない声が聞こえる。
 …思い出した。こいつに…今日子は…
「我は『今日子』でも『空虚』でもない。我が名は――」
「…きょ…」
「――無貌の神」
「今日子おおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」


「――っ!」
 目が覚める。と同時に、眩しさに目を焼かれた。
 俺の視界の先に広がるのは、高く遠く広がる、抜けるような青空。
「……空がこんなに毒々しい色に見えたのは初めてだぜ」
 腕を持ち上げ、手に何もついていないことを確認する。
「まったく…何て悪夢だ」
 身体を起こす。その挙動で、全身にびっしょりと寝汗をかいていることに気付く。
 肌に張り付く服が、不快この上ない。
 普段なら、適当にシャワーでも浴びたいと考えるところだが、そんなのは後回しだ。
 今日子を、助けなきゃな。
21ただ一人の女のために:04/04/21 02:05 ID:I2n4Tg7f
「…気が付いたね」
 男の声に振り向くと、あの三人組の一人が俺を見ていた。
 確か…遠葉透とか言ってたか。
 すぐ側には、広場まひるって子が眠っている。
 胸が上下しているところを見ると、何とか命は取り留めたようだ。
「ああ、最悪の目覚めだけどな…」
 言って、透に向かい合って座る。
「その子、大丈夫か?」
「多分ね」
 無表情のまま、それだけぽつんと漏らす。
 いかんな、やっぱ印象は悪いらしい。
 助けたのは俺とはいえ、死にかけたのは今日子の…じゃねぇな、あの神とやらのせいだ。
 だけど、透にとってはどっちでも同じなんだろうな。俺達に会わなきゃ、こんなことにはならなかったんだ。
「まひるを助けてくれたことは感謝してる」
 お?
「だけど、その原因は君の彼女だ。相殺ということで、礼は言わないでおくよ」
 …なるほど。
「ああ、それでかまわない。それはそうと一人足りないな?」
「……牧島は、行っちゃったよ」
「…そうか」
 突っ込んで聞くのはヤバそうだな。
 まひるが目を覚まさないうちに、俺も退散するとしようか。
「さっきの、手を貸すって話だけどな…」
「分かってる。どのみち、こっちからお断りだよ」
 まひるの方を見たままでそう答えてくる。
 表情は見えない。見えない方がいい。
「君は今日子さんを追うんだろう? 俺はまひるを守る。お互いの為にも、ここで別れた方がいい」
 確かに。そいつは同意だ。
 俺にとっては透達は足手まといだし、透達にとっては俺と一緒にいるのは危険すぎる。
22ただ一人の女のために:04/04/21 02:10 ID:I2n4Tg7f
「そうだな。じゃ、俺は行くぜ。…もう、俺や今日子に会わないように気をつけろよ」
 俺は立ち上がり、透に背を向けて歩き出す。
 振り向く直前、透が何かに気付いたようにこっちを見るのが分かった。
「…君、まさか…」
 その呟きが、俺達の別れの言葉だった。


 ぼーっとしてるように見えて、意外と鋭い。
 人は見かけによらないもんだ。ちっとばかし悠人に似てるな、透の奴。
 目的地に着いた俺は、何となくそんなことを考える。
 目的地と言っても、実際はどこだって構わなかった。
 ただ、出来れば透達から離れていたかったのと……ここなら、ひょっとしているんじゃないかと、微かに期待していただけだ。
 目の前にはデカい化け物と、八雲辰人の亡骸。
「ま、いるわけないか」
 ため息と共にそう漏らし、俺は俺の目的を果たす為の行動に移った。
「いくぞ、『因果』」

  ――ドンッ!!

 大気を震わせ、俺の足元に魔方陣が展開。黄緑色のオーラフォトンが渦を巻く。
 何をするわけでもない。ただ力だけを放出する。
 この力を感じ取れるものが、俺を見失わないように。
 闇雲に探すんじゃなく、呼び寄せればいいわけだな。
「ま、ちぃっとずつ小休止は入れるからよ。気合入れてくれ、『因果』」
 なにせ来てくれないと困るんだよな。俺一人でこの島から今日子を探し出すのは、はっきり言って滅茶苦茶難しい。
23ただ一人の女のために:04/04/21 02:12 ID:I2n4Tg7f
 俺が期待してる展開は3パターンある。
 一つは、最も期待してる展開。
 今日子自身がここにやって来てくれることだ。
(つっても、今はあの神とやらに乗っ取られてる状態だからな。可能性は薄いだろうな)
 二つは、その次に期待する、だが最も可能性の低い展開。
 俺以外で、無条件に、全力で今日子を守ってくれる唯一の男。
(悠人…、お前はここに来ているのか? 来ているなら力を貸せ。俺達のじゃじゃ馬姫様がピンチなんだ!)
 あの世界では敵対しちまったが、今日子が『空虚』の束縛を離れた以上、少なくとも命を懸けて争う理由は無くなった。
 もっとも、今まで以上にヤバい状況になっちゃいるわけだが。
 虫のいい話だが、あいつの力を借りられれば心強い。
「ま、来てるかどうかすら分かんねぇけどな」
 それでも。微かな希望を持って、俺は『因果』の力をさらに開放していった。


 …もう何十分繰り返してるんだろうか。
 何度かの休憩を挟みつつ、俺は飽きずに力を放出し続ける。
 俺ってわりと気の長い奴だったんだな。
「いいかげん、誰か来いよな…寂しくなるだろうが」
 疲れてきたぞ、さすがに。
「…独り言は不気味だからやめた方がいいと思うよ」
「ふむ、幾分待たせてしまったか?」
 独り言に反応があった。
(ようやくかよ)
 力の放出を止め、現れた声の主に視線を移…
「…コスプレ?」
「その言葉の意味は分からんが、我等を侮辱する気ではあるまいな。貴様」
「いや、そんな気はさらさらないけどな」
 まるで太秦映画村に来た気分にはなったわな。
24ただ一人の女のために:04/04/21 02:14 ID:I2n4Tg7f
「一応聞くが、あんたらは召還者側の人間か?」
「そうだ。私は新撰組副長、土方歳江。この場で露骨に力を使っている者がいると聞き、貴様の保護に来た」
「一番近くにいたから、私達が来たんだよ。私は近藤勇子。こう見えても局長なんだよ」
「…沖田鈴音です」
 保護、ね。逆らうなら斬り捨てると言わんばかりの殺気で言われてもなぁ。
 しかし、名前まであの新撰組と一緒なのかよ、こいつら。案外、本物だったりしてな。
 ま、なにはともあれ、三つ目の展開にはなったわけだ。
 あの放送を信じるなら、この世界で唯一の組織。つまり、この世界で最も情報収集力に長けている集団と接触すること。
 交渉材料は俺の力。
 あの放送内容じゃ、自ら進んで保護されようって奴はほとんどいないはずだ。
 無理矢理連行する奴が必要だろう。逆らう者を始末する奴も。こいつらの様にな。 
「待ってたんだぜ、あんたらを」
 まひるの妹、透達の仲間を殺した初音って女も、召還者側だって話だ。
 俺は今、そんな連中の仲間になろうとしている。
 褒められたことじゃないんだろうけどな。今日子の為なら…俺は、何だってしてやるさ。

「俺は碧光陰。条件付きで、あんたらに力を貸したい」



【碧光陰@永遠のアセリア(ザウス) 招 状態○ 所持品:永遠神剣第六位『因果』 スタンス:『空虚』を砕いて今日子を助ける】

【近藤勇子@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品:銃剣付きライフル】
【土方歳江@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品:日本刀】
【沖田鈴音@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品:日本刀】

【遠葉透@ねがぽじ(Active) 狩 状態○ 所持品:妖しい薬品 スタンス:まひるを守る】
【広場まひる(天使の力喪失)@ねがぽじ(Active) 招(今は狩?) 状態×(取りあえず死の危険はない)所持品:なし】


【『満月の夜』後】
25トラフィックス 2nd:04/04/21 02:41 ID:ESCtjMis
「けっ!このオンボロトラックが!!」
ゲンハは忌々しげに、しかし楽しそうに早くも動かなくなったトラックのフロントガラスを、
鉄パイプで叩き割って行く。
直人はといえば、アルコールが今になって回ってきたのか、木陰でゲーゲーと胃の内容物を吐き散らしている。
「おめぇもやんねぇのか?」
ゲンハはいい汗かいたとばかりに鉄パイプを直人に差し出す。

「いい、これから歩きだろ…」
直人はゲンハが座っていたトラックの助手席を見る、シートには僅かながらも血がついている…。
(全くよくやるよ…)
「無駄に暴れるのは好きじゃない、ましてこんな体じゃな…それに見ろよ」
直人は顎でゲンハに背後を見るように示す、そのまま振り向いたゲンハの目に映ったのは、
中程度の広さのガレージだった。
さらに目を凝らすと何人かの兵が見える、何かの拠点であることは間違いなかった。
「お互い、トラックより人間の方が壊しがいがあるんじゃないのか?」
「あたぼうだぜぇ!」
舌なめずりをしながらゲンハと直人はそっとガレージへと近寄っていく、二人の手には包丁と、
それから背中には鉄パイプがあった。
「女はいないみたいだぜ」
「いたらお前が犯せばいい…ただしあの女だけは別だぞ」
歩哨が大あくびをした瞬間だった、山猫のような身のこなしで飛び出した直人が、
背後から歩哨の首を包丁で切り裂く、そしてそこからが惨劇の始まりだった。


それからしばらく経過して、ようやく丘を超えたミュラたち一行、
丘を越えた彼らが見たもの、それは半壊状態の武器庫だった。
4人は慎重に、しかし素早く丘を下って武器庫へと接近する、その動きはたった今出会ったばかりとは
思えないほど連携が取れていた。

4人は散開し、同時に他方向から武器庫に侵入する。
人気は無かった…どうやらここを破壊した何者かは立ち去った後らしい…。
26トラフィックス 2nd:04/04/21 02:42 ID:ESCtjMis
リックは自分の足元の死体を眺める…メッタ刺しにされた挙句、頭を割られている…。
(もしかして、と思ったが…こりゃ俺たちの敵だな)
少なくともこんな殺し方をする連中とは仲良くはなれそうになかった。

「リック!この人まだ息があるわ!」
そこにミュラが一人の兵士を担いで戻ってきた、しかし兵士の胸は血で染まっている、意識こそあるようだが
もはや長くはないだろう。
「おい、何があった!誰にやられた!」
リックは問いかけつつも、そっと手持ちのペットボトルの水を兵士の口に含ませてやる。
水を飲んだおかげで意識が安定したのだろう、兵士がゆっくりと息を吐く。
玲二と沙乃もそこに合流し、本格的な尋問が始まろうとしていた。

「あれは恐ろしい…人殺しとただ破壊を心から楽しんでいる、そんな人間の目だった」
まず開口一番、兵士はしみじみと感想めいた言葉を口にした。
「でしょうね…少なくとも沙乃たちの味方になることはなさそう」
死体はどれも不必要なまでに痛めつけられている、その戦闘スキルまでは伺えないものの、
ここを襲った連中がいわゆるサディストであることは明白だった。

彼の話によると、一人は囚人服を着た傷だらけの男、そしてもう一人はこれも傷だらけのアフロへアの男。
彼も一撃で致命傷を負ったものの、その際階段から植込みに転げ落ちたおかげで、
止めを刺されることはなかったのだという。
そしてガレージがもぬけの空だとわかると、彼らは腹いせにそこら中を壊して去っていったということだった。
たったのこれだけじゃ喰いたりねぇな、などとボヤキながら。
そこまでの一部始終を兵士は苦しい息の中でリックらに証言する。
「武器はどうなったんだ?ここは武器庫じゃないのか?」
玲二の言葉を聞いて、兵士は皮肉げに笑う。
27トラフィックス 2nd:04/04/21 02:42 ID:ESCtjMis
「おまえらも…武器がほしかったのか?でも無駄足だったな、武器はもうすでに別の場所に移してある」
その言葉を聞いてミュラとリックが顔を見合わせる、自分たちの行動が原因だったことは間違いない。
「どこだ?」
「そこまでは知らない、本当だ…新しい武器庫の場所は…限られた幹部クラスにしか知らされていないんだ
 本当だ…」

そこまでいい終わったところで、がくがくと兵士の体が痙攣を始める。
「おい!まだ聞きたいことが」
しかし玲二の声もむなしく、それ以上兵士が口を開くことはなかった。

「悪く思うな、俺たちは生きなくちゃならないからな」
玲二は死んだ兵士の遺品を物色し始める、ここは現在では単なる連絡拠点に過ぎなかったようだ。
その証拠に確認できる他の死体は明らかに武器を持っておらず、身包み剥がされた形跡もない。
「こいつは何だ?わかるか?」
リックが何かのケースを持って玲二の元にやってくる、この兵士を見つけた植込みの中にあったのだという。
「えっと…暗視ゴーグルか、こいつは使えるな」
ケースの中を確認して玲二は頷く、夜間の移動や攻防を考えた場合、これほどの必需品はない。

引き続き兵士のポケットを探り出す玲二、結局見つけたのは拳銃が1つ手榴弾が2つに、スタングレネードが1つ
そして彼個人のものだろうシステム手帳。
几帳面な性格だったのだろう、予定などがびっしりと書きこまれている、それらの検証は後に回すとして…。

「何かしら?」
手帳備え付けの地図を見たミュラが、怪訝な顔をする。
地図自体はすでに彼らが入手していたものと相違は無かった、ただしこちらの方は赤ペンで色々と書きこまれている。
その書きこみの中の一つに、何も説明がされてないまま、2重丸で囲まれている個所があったのだ。
28トラフィックス 2nd:04/04/21 02:51 ID:ESCtjMis
地図を見る限りそこは何もない森のど真ん中だった、しかしいかにもな感じで2重丸で囲まれているあたり、
何かがあるのだろう。
「こんなところに何があるっているんだ」
「もしかしてここが新しい武器庫かしら?」
「いや、それはないだろう…わざわざ移動させるにしては地理的に近すぎる」
4人は現在位置とその2重丸地点の距離を確かめる。
「歩いて30分ほどだ…行ってみるのも悪くはないかもな」

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、やせ我慢しています)
 所持品:鉄パイプ・包丁・火炎瓶x3】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル】
(何らかの武器、アイテムを手に入れている可能性があります)

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2 スタングレネードx1 暗視ゴーグル】
【原田沙乃@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼(現在は狩) 状態○ 所持品:十文字槍 食料・医薬品等】
【ミュラ@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:長剣 地図】
【リック@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:戦斧】

(『満月の夜』〜『機神立つ』の間です)
29偽りの信頼:04/04/21 19:41 ID:xKWYgXlO
 友人と思っていた人間に裏切られた。
 敵に……人殺しを平然とやってのける人間に情けをかけられた。
 誰も信じまいと誓った時、自分の命を賭けて助けてくれた人が居た。

 誰を信じていいか分からず、どうすればこの状況から逃れられるのかも分からずにひたすら走り続けた。
 助けてくれたあの人の想いを無駄にしたくなかったから──だから言われた通りに、何も考えずに走り続けた。

 夢遊病者のように走り続けていた為、いつの間にか目の前にあった建物がなんであるか理解するのに数分の時間を要した。
 外観こそ彼女が日頃見慣れたコンビニエンスストアであるが、建物には少し離れた場所からでも容易に分かるほどの
異臭が立ち込めていた。
「誰か……いるの?」
 恐る恐る呼びかけて見るも返答はない。
「そうよね…いくらなんでもこんな場所に人が居る訳が…」
 そうは言って見たものの、入り口についた足跡が少なくとも誰かが中に入った事を如実に示していた。
 足跡は複数あったがその中でも取り分け小さい物がある。
(この足跡……九郎さんが言っていたアル・アジフって名前の女の子の物かもしれない)
 気は進まないが中に行ってみるしかない。アル・アジフという名の少女の手がかりなんて他には無いのだから。
 
 九郎から預かったイタクァが指に触れる。
(何かあった時の為に隠して置いた方がいいわね…)
 いつでもイタクァを取り出せる位置に隠すと、ボウガンを構えてコンビニに踏み込んだ。

(ちょっと……なんなの…これは…?)
 ある程度は覚悟していた霧であったが、内部の常軌を逸脱した様相に身がすくむ。
 奥の方でガタガタ物音がした。
(誰かいるのは確かみたいだけど…それならどうしてこんなに荒らされてるの…?)
 不安がどんどん膨れ上がり、思わず逃げ出したくなる衝動を必死で捻じ伏せる。
 そうだ───これ以上あてもなく逃げ続けてどうしようというのか。
 胸の中のイタクァの重みを確認するとボウガンをいつでも発射できる体勢でゆっくりと奥に足を進める。

「なっ…!? あなた達大丈夫?」 
 レジカウンターの隅で隠れるように横たわっていた二人の少女を見つけ、駆け寄る。
30偽りの信頼:04/04/21 19:42 ID:xKWYgXlO
「う…」
 虚ろな目で少女の片割れが霧の顔を見つめる。
 霧が近づくと怯えるように体を震わせる。
(一体どんな目に会ったのか……怖がらしたら駄目よね……)
 ゆっくりと深呼吸をして、心を落ち着かせる。
「大丈夫だから……私は何もしないから…」
 そう言いながらゆっくり近づいてゆく。
 少女にあと一歩で手が届く距離になって、少女の背後に何か転がっているのが見えた。
(何……?まさかあれは…!)
 暗闇に浮かぶフォルムから『それ』が何であるかくらいは霧にもわかる。

 マシンガン……実際に見るのは初めてだが、映画やテレビの中では見慣れた物だ。
 少女が動く。
「っ……!」 
 反射的にボウガンを構え、トリガーに指をかける。

「っく……ひっく……怖かったよぉ……おねえちゃん…」
 胸の中で泣きじゃくる少女の体温を感じる。
(私……何をしようとしてたの…? こんな小さい娘を…殺そうと……)
 腕から力が抜け、ボウガンが床に転がる。
 今霧にできる精一杯の微笑みを浮かべながらゆっくりと少女を抱きしめる。
「もう大丈夫だから……私は怖くないから…」
(そうだ…私が、守ってあげなきゃ……私しかいないんだから…!)


「……で私達を襲った人達は物音がしたから裏口から逃げていったの」
 先に目覚めた少女──鳳なおみは赤い目をこすりながら彼女達姉妹が受けた仕打ちを説明した。
「最初はやさしい人だと思ったのに……急に…」
 もう一人の方の少女──こちらは鳳あかねと名乗った。
 血こそ出てはいないが真っ赤に腫れた二人の顔。銃を乱射しながら追いかけられ滅茶苦茶になったという店内。信じられない程古い食べ物を無理矢理口に入れられた結果だという汚物。
 これ以上聞かずとも姉妹を襲った人物が外道である事だけは、霧にもはっきりと分かった。
 そして、その人物が誰であるかも。
31偽りの信頼:04/04/21 19:43 ID:xKWYgXlO

 男の冷たい目、背丈の小さな女、女の奇妙な衣装……それらの符号から吾妻玲二と原田沙乃の二人であると霧は確信していた。
 最初にあの二人に感じた人殺しの気配はやはり間違いではなかったのだ。
 人の弱さにつけこんで信用した所を裏切り、狩を楽しむかのように追い回し、最後には……
 幸いにも姉妹は最後までいかずに済んだが、これから先再び彼等に会わないとは限らない。

 イタクァの重みを確認して、霧は口を開く。
「ね、二人とも私と一緒に行こう? 安全な所まで…私が連れていってあげるから。ね?」
 霧の言葉にも姉妹は黙っている。
(しょうがないわよね……仮にも一度は信じた人間に裏切られたんだから…)
 信じていた者に裏切られるというのがどんなにつらいか霧はその身で知っている。
 そしてその後人を信じるのがどんなに難しいかという事も。
 しかし霧には姉妹を置いて行くつもりもなかった。
 もしここで姉妹を置いて行ったら後で自分を絶対に許せない気がしたからだ。
 だから姉妹が答えを言うまでずっと……ずっと……待っていた。

 途中何度か姉妹がぼそぼそ話すのが見えたが、小さな声だったので何を話しているのかまでは分からなかった。


「信じても……いいの?」
「おねえちゃんは……騙したりしない?」
 すがるような目で霧を真っ直ぐに見つめる。
「大丈夫…私はあんな人殺しとは違うから……」

(そうよ、私は裏切ったり騙したりなんかしない……)

 霧の先導で裏口から外に出る。
(ねえ、あかね。まだ鼻が痛いんだけど…)
(しょうがないでしょ? 涙なんて咄嗟に出るもんじゃないだから…)
 姉妹は霧に聞こえないように小声で話す。
(それにしても思いっきり鼻を叩くと涙が出るなんてよく知ってたね)
32偽りの信頼:04/04/21 19:46 ID:xKWYgXlO
(アイドルはいつでも泣けないと……ね)
(でもおかげで顔が真っ赤になった…)
 なおみがあかねに抗議の視線を向ける。
(いいじゃない…おかげでいい盾が手に入ったんだから)
 そう言うと霧の背中を見つめる。
(苦労したんだから役に立って貰わないとね)


【佐倉霧@CROSS†CHANNEL 狩 状態○ 装備品 ボウガン 矢の数は二本(撃ったら拾うので矢自体はなくならない、二発目を撃つ時には装填準備が必要)回転式拳銃(リボルバー)『イタクァ』残り弾数不明(13発以下)】
【行動指針:アル・アジフを探す。鳳姉妹を守る】

【鳳あかね@零式 状態○ 装備品 AK47(使いやすい火器だが、子供につき命中率低め)クレイモア地雷x2 (狩?招?)】
【鳳なおみ@零式 状態○ 装備品 AK47(使いやすい火器だが、子供につき命中率低め)プラスチック爆弾 (狩?招?)】
【行動指針:絶対に二人揃って生き延びる。吾妻玲二を殺す。佐倉霧は利用するだけ利用する】

【満月の夜後、子供の権利条約後〜】

備考
鳳姉妹は吾妻玲二、原田沙乃の名前を知りません。
クレイモア&プラスチック爆弾は隠し持っています。
33分かれ道:04/04/21 21:37 ID:OQE8NKUl
 「……これは参ったね」
 迂回して東へ向かおうとした三人の前に立ちはばかったのは、崖と下に流れる川。
 向こう側との距離は、とてもじゃないが、今の彼らで渡れるような距離ではない。
 (渡れる所を探すにしてもこのまま下れば時間が……)
 「どうするかい?」
 悩むナナスへと忠介が話し掛ける。
 「材料さえあれば、渡る事は可能なんだけどもね……」
 ふぅとため息を付きながら忠介が続けていった。
 (材料を集めて渡るか? ダメだ、それも時間がかかる……)
 既にあれから一時間は、ゆうに過ぎている。
 このまま下った場合、戻る時間を計算に入れれば彼の作戦の成功率は益々低くなる。
 だが上った場合、せっかく迂回したのにまた中央へ近づいている期間が長くなる。
 「上ろう」
 考え末た挙句、ナナスは覚悟を決めた。
 このまま下って時間を無駄にした方が確率が下がる、と踏んだからだ。
 「虎穴に入らずば虎子を得ず……。
  まぁ、一応迂回して時間も立ってるしね」
 「郁美さん、歩けます?」
 ナナスと忠介と違い、良門がいるとはいえ郁美の身体は極普通の女の子のものだ。
 先の襲撃で埃も浴びれば、ここまで歩きとおしたので疲れもたまっている。
 「私は大丈夫です、行きましょう」
 私の為に時間を取るわけにはいかない、と郁美は足手まといになる訳にはいかないと思っていた。
 「解った。 急ごう、もう一踏ん張りだ」
 ナナスの指揮と共に、三人は崖沿いの道を上り始めた。

 「ビーンゴ♪ これは正解だったね」
 しばらく歩いた後、彼らは崖にかかる橋を見つけた。
 俗に言う吊り橋ではあるが、向こう岸に渡るだけならこれで良さそうだ。
34分かれ道:04/04/21 21:38 ID:OQE8NKUl
 「これなら時間にも十分間に合う!」
 嬉しさの余りナナスが感激の声を上げる。
 「はい、行きましょう!」
 「待った! 一応罠があるかもしれないからね。
  慎重に行こう……」
 少々浮かれる二人を忠介が止めた。

 吊り橋は不安定ではあるが、細工がされている様子はなかった。
 「問題は反対側か……」
 こちら側の吊り橋のチェックを終えたナナスが言う。
 「この状況なら半々だと思うけどね。
  いや、むしろ此方側になくて、あちら側にあるという方がおかしいよ」
 「そうですよね、考えすぎかな……」
 忠介の言葉を聞くとナナスは、ゆっくりと橋へ足をかける。
 「うん、大丈夫です、行きましょう」
 ナナスの安全を確かめた言葉と共に二人も後を続いて渡り始める。

 三人が丁度、橋の中間地点に来た時だ。

 ターン!!

 一発の銃声が響き渡る。
 「がっ!?」
 ナナスの右肘に一発の銃弾が打ち込まれた。
 「しまった!! 敵!?」
 痛みよりも今は、この状況の対処だ。
 耐えながらもナナスは、忠介と郁美は周りを見渡す。
 「ビンゴって所だねぇ……」
 向こう側の木の陰から、ゆっくりとドライが姿を現した。
35分かれ道:04/04/21 21:41 ID:OQE8NKUl
 「悪いけど、あそこにいた時に把握されてるんだ。
  言い訳はできないぜ?」
 ドライの銃口は此方側を向いたままだ。
 (でもこの距離なら……!?)
 ナナスが対抗しようと改造エアガンを懐から取り出そうとする。
 本物の銃に比べれば、飛距離は短い。
 相手には届かないかもしれないが、威嚇にする事くらいはできると読んだのだ。
 だが。
 2発目の銃声が響いた。
 今度は、動かそうとしたナナスの右手が見事に打ち抜かれている。
 「ぐぅっ!?」
 「私をあんまり甘く見てもらっては困る」
 未だ銃の眼光は、三人に向けられたままだ。
 (ダメだ……、彼女の腕はすさまじい。
  隙を与えてくれない!!)
 「……さっさと殺したらどうだい?」
 忠介がドライへ向かって口切った。
 「いや、上の人から勧誘もしろと言われてるんだ。
  一応無駄とは思うがさせて貰わないとね」
 「さっきと言ってる言葉が矛盾してないかい?」
 「いやいや、全員へ向けてじゃないさ。
  お前だよ、江ノ尾忠介……で合ってるよな?」
 「それで、この僕に何のようだって言うんだい?」
 「話が早いのは、助かるね。
  『君の事は全て把握してある。
   君さえ望むのなら、中央に来たまえ。
   元の世界にいては決して手に入らない科学を、魔法を、知識の数々を習得する事ができる。
   君にとって決して悪いようにはさせない』
  だそうだ」
36分かれ道:04/04/21 21:44 ID:OQE8NKUl
 (ケルヴァンから渡された情報によれば、こいつはこういえば、
  中央につく可能性があるって事だが……)
 「…………」
 黙る忠介。
 確かに彼ら中央に従えば、彼の知的探究心はこれまでにないほど満たされるだろう。
 元の世界に戻ってしまっては、決して得られない全てを。
 「僕の考えは決まっている」
 「忠介さん!!」
 忠介の言葉にナナスは、嬉しさと共に申し訳なく思った。
 嘘でも従えば彼だけは生き残れるというのに……。
 「二人とも、ごめん」
 「なっ!?」
 次の瞬間、ナナスと郁美は、吊り橋から突き落とされた。
 「ひゅう、いい判断だ……」
 「これで僕が中央に従うって言う証明はできたかな?」
 言いながらゆっくりと忠介がドライの方へと歩いていく。
 「OK。 それじゃ、あたしは河口にいる仲間に連絡を取るよ。
  死体の確認、生きてたらトドメを刺して貰わないと困るからね」
 ドライが伝言役の使い魔と連絡を取ろうと合図を出そうとする。
 ドライが背を向けたその一瞬の隙を狙って、十分に近づいた忠介は塩酸の入った瓶を握る
 「残念」
 忠介がまさに投げつけようとしたその時、ドライは彼の方へ振り返った。
 
 銃声が二発響いた。
 一発は、忠介の手の塩酸の瓶に。
 そしてもう一発は、彼の胸に。
 そして、彼は地面に倒れる。
37分かれ道:04/04/21 21:45 ID:OQE8NKUl
 「いい演技だったよ。
  けど、あいつらを吊り橋から落とした時、あいつらへの殺気がなかった。
  その殺気は最初から私に向けられてたからね」
 ゆっくりとドライが近づいてくる。
 (次が最後のチャンスか……)
 右手は塩酸で焼け爛れている。
 さっきのより分量は落ちるが、この左手に握ったのが最後だ。
 幾らドライとて、これを真正面から受ければ、失明は免れない。
 (もう少し……、もう少し近づいて来い!!)
 ドライが近づいてくるのが解る。
 (……止まった!?)
 「本当に演技が得意だね。
  胸を打ち抜いたはずなのに、血が何も溢れ出てないんだ。
  防弾チョッキか、何かを着込んでるんだろ?」
 忠介は顔を上げる、瞳に映るのは、最低限の距離を置き、自分の頭に銃を向けるドライ。
 「仲間を助ける為に、自分が悪役になる。
  そう言うの好きだぜ。 けど仕事は仕事だ、悪く思わないでくれよ」
 「ふっ、天才ともあろう僕がこんな所で志半ばに倒れるとはね……」
 「……せめてもだ、死に際に教えてやるよ。
  河口に仲間がいるっていうのは尻尾を掴むための嘘だよ。
  それと、もしあの二人と会う事があったら、殺す前にお前の事を教えてやるさ」
 いい終えると共にドライは、ゆっくりと引き金を引く。
 「できれば、その優しさに免じて見逃して欲しいけどね……」
 「わりぃな。 そりゃ無理だ」
 ドライの言葉と共に銃声が響いた。
38分かれ道:04/04/21 21:47 ID:OQE8NKUl

 「がふっ!?」
 一方、川に突き落とされたナナスと郁美。
 (郁美さん!?)
 何とか郁美を救い出そうとするも川の流れが速くナナスも流される事だけしかできない。
 郁美の方は、どうやら落下のショックで意識を失ったらしい。
 次第に二人の間隔が空いていく。
 (このままじゃ……、っ!?)
 川が二つに分岐している。
 このままいけば、ナナスは右の方へ押し流されるだろう。
 そして、郁美は逆側へと……。
 (ダメだ、流れに逆らえない!! くそっ!! せっかく集えた仲間だって言うのに!!
  忠介さんが僕らを助けてくれたって言うのに!!)
 ナナスは理解していた。
 忠介の行為は、裏切りによるものではなく、二人を助ける為にされた物だということを。
 (こんな所で絶対に死ねない!! 僕は生き延びなきゃ!!)
 見事に、二人は島の正反対に流されていったのだった。
 
 「むっ、人!?」
 町へ戻った後、モーラに雪を任せ、川へ水を汲みにきていた羅喉の目に流される郁美の姿が映る。
 「いかん、大分流されたみたいだ、衰弱してる!?」
 郁美を川から抱き上げると羅喉は、そのまま港町へと戻っていく。
39分かれ道:04/04/21 21:48 ID:OQE8NKUl

 (大分下まで流されたみたいだ……。 海の音が聞こえる気がする)
 意識絶え絶えにナナスは、流れが緩くなった所で何とか岸へと這い上がる。
 「てっきり化け物かと思えば、人か……」
 (……!?)
 疲労のせいで声が出ない、意識もぼんやりとしてるがナナスの頭の上で誰かの声が聞こえる。
 (ここまでか……、ごめん)
 ナナスの意識もそこでようやく途切れた。
 「意識を失ったのか。
  さて、どうしたものか」
 克己は、目の前に倒れるナナスをどうするべきか悩むのあった。

【ナナス@ママトト(アリスソフト)状態×(意識喪失、右手右肘に銃痕) 所持品 強化皮膚の装甲 改造エアガン 招】
【小野郁美@Re-leaf(シーズウェア)状態△(意識喪失) 所持品 メッコール(飲むとあまりのまずさに気絶)強化皮膚の装甲 ハンマー 招】
【江ノ尾忠介@秋桜の空に(マロン) 死亡】
【鴉丸羅喉@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 狩 状態○ 行動目的:雪を護りぬく・戦力集結、郁美の介護】
【ドライ @ファントム・オブ・インフェルノ (ニトロプラス) 状態○  鬼  所持品 ハードボーラx2】
【飯島克己@モエかん(ケロQ) 狩 状態○ 所持品:ワイヤー 行動方針:ナナスをどうするか決める】
40分かれ道:04/04/21 22:33 ID:OQE8NKUl
連投規制中に人来た。

【満月後、阻む者、名将の機転〜】
41千載一遇x3 :04/04/22 00:19 ID:4Wr/vGDS
「おい?大丈夫か」
森の中でついにへたり込んだゲンハを心配そうに覗きこむ直人、
ゲンハの背中の傷はかなり悪化している、もう長い時間は保たないだろう。
彼らは先ほどから、森の中をさまよいつづけていた。
すでに出血多量で身動きが取れなくなりつつあるゲンハを肩に担ぎ、直人は地面に刻まれた跡を辿っていく。

「置いていけ…キャラに合わないことをすると死んじまうぞ」
「お前が俺を見捨てるのは別に構わない、だが俺はお前に借りを作ったまま死なれるのは気に食わないからな」
「お前…飲みすぎじゃねぇのか、よくそんな恥ずかしいセリフが吐けるな…それとも」
ここでゲンハは急に真顔になる。
「俺に友情感じてないか?…照れるぜ」
直人は無言でゲンハを肩から振り落とす。
「てぇな!何しやがる!」
「お前こそ似合わないこといってるんじゃねぇ!」
(友情だと!?下らん…俺はこいつに盾以外の利用価値なぞ認めていないはずだ)

このアフロの男もきっとそうだ…土壇場ではきっと自分を優先するに決まっている、
しかし何故かそう思っているにも関わらず、
またゲンハに手を差し伸べる自分に、困惑する直人だったが、その一方で納得もしていた。
お互い人の世では決して許されぬ行為をあえて行ってきた、それゆえにわかるのだ。
下衆には下衆なりの誇りが…それなりに自分に課した掟があるのだ。
その掟に従っているのだろうか?彼はやはりゲンハを捨てられなった。
42千載一遇x3 :04/04/22 00:21 ID:4Wr/vGDS
それより僅か前の出来事。
「ほう…結界か?小賢しいのう」
岬今日子、今は無貌の神が一人ごちる。
所詮は急場凌ぎの結界…まかりなりにも神である彼の目をごまかすことは出来なかったようだ。
だが、そこに結界があるといっても、侵入する方法までは彼といえどもわからなかった。

「強引に切り裂くのもありかもしれぬが」
今の宿主である小娘では自分の持つポテンシャルを全て引き出すことは出来そうにない。
より強力な器を手に入れねばならない…それも単純な強さではなく資質がなければならない。

と、その時だった、唐突に一人の警備兵が姿を現したのだった。
警備兵は、やっーてらんねーよななどといいながらくわえタバコで立ちションをしている。
そしてそれを見逃す無貌の神ではなかった。
「おい、ここはどこで一体何がある?」

「ほう?」
警備兵の背中に剣をつきつけ、結界を突破した彼の前に一つの建物が見える。
これといって特徴の無い施設だったが、結界を張る以上何かがあるのだろう。
「なあ…教えたんだから助けてくれよう」
泣きながら哀願する警備兵、しかし無貌の神は情け容赦無くその身体を切り裂く。
「さて、中の主がどのような輩か、とくと拝見させてもらうか…その前に」
無貌の神は哀れな兵士の遺体をさらに切り裂いて、より血の匂いが溢れかえるようにする。
「道標じゃ、混沌に魅入られしものどもよ、これに気がつけば集うがよい」

そして無貌の神、ゲンハらに遅れる事数分。
「ほんとにここなのか?」
何度も何度も地図を確認し、色々と調べた上にようやく”道標”を発見し
ミュラたちも結界を越えたのだった。
43千載一遇x3 :04/04/22 00:23 ID:4Wr/vGDS
施設は小さめで警備の兵士もそれなりにしか存在しなかった。
ゆえにミュラたちはほとんどノーチェックですり抜けることが出来た。
しかし妙だ…何故こんな施設にあんな重要そうなチェックを?
再び2重丸の意味を考えるミュラたちだったが。

「待って…」
沙乃の表情が変だ、冷静沈着な彼女にしては珍しく何やら動揺している。
彼女は見てしまったのだ…。
(どうして、こんなところに)
ケルヴァン・リード!!、最高司令官ともあろう彼が何故こんなところに?
そのケルヴァンは自分の他に2人の少女とお茶を楽しんでいる最中だった。
その様子はまさに無防備と言ってもよかった。

「あれが…ケルヴァン、敵の最高司令官」
沙乃の指示にしたがい集まった残りの3人も驚愕を禁じえない。
しかし、最高司令官ともあろう者がこんな場所までわざわざ備えもナシに出て来ているとは信じがたい。
だがこれが千載一遇のチャンスであることは間違い無い。
4人の方針はすでに固まっていた、彼を人質に取りこのふざけた世界から脱出する。
それが叶わなくとも最高司令官たる彼の身柄を抑えることができたならば、
とてつもないアドバンテージとなりうることは必定だ。

4人はわすかな時間ながらも作戦を練る。
「俺とリックがケルヴァンを抑える、ミュラたちは女の子たちを頼む…見た感じ
 ボディーガードというわけでは無さそうだ、それから逃走経路は〜」
地面に見取り図を描きながら玲二が作戦を説明する、こういう強襲作戦は何度も経験がある、
作戦立案はお手のものだった。

「十秒だ…十秒間が勝負だぞ、それも一発勝負だ」
玲二の言葉に頷く3人。
「もし十秒で確保に失敗したら…各自散開だ、自分のことだけを考えろ…そして」
44千載一遇x3 :04/04/22 00:26 ID:4Wr/vGDS
玲二は3人にあらかじめ渡しておいた地図の写しのとある一点を示す。
「8時間以内に、ひとまずここに集まるんだ、そこで2時間待っても現れなければ…」
そこから先は言いたくなかった。

「いくぞ…いち、にの」
4人は呼吸を整えながらそっと目を閉じる、無論ケルヴァンらの位置関係はしっかりと焼きつけて
玲二はスタングレネードのピンを外し、アンダーハンドでケルヴァンらへと投擲する。
「さん!GO!!」
4人は目を閉じたまま手はずどおり一斉に飛び出す、そしてすさまじい閃光が周囲を包んだ。


「俺が死にかけてるってのに…あの野郎め両手に花かよ」
暗視ゴーグルを(先のガレージで最初に殺した歩哨から奪った)着用しているゲンハが、
やはり物陰からケルヴァンらを見て忌々しげにぼやく。
「身体が動く間にとっとと殺っちまおうぜ」
「ああ…ただし一人だけ、あの気の強そうな女は生かしておけ」

直人はやけにシリアスな表情でゲンハに告げる。
「何かワケありか?ああん」
直人は驚きを禁じえない・・・なぜこんな場所に、御剣冥夜が、あの御剣財閥の令嬢がぬくぬくと茶を飲んでいるのだ?
(まさか…御剣がこの1件に絡んでいるのか?)
御剣財閥の規模は、勝沼グループを遥かに凌駕する、それだけの巨大グループとなれば謎も多いのだ。
ありえない話ではない、がそんなことはそうでもいい。
(千載一遇だな)
あの御剣財閥の令嬢を手中に収め、帰還することが出来たならば、保釈も夢ではない。
45千載一遇x3 :04/04/22 00:28 ID:4Wr/vGDS
「でよう、あのお姫さまは俺が頂いてもいいのかよ?」
死の瀬戸際にいるにも関わらず、ゲンハの肉欲は衰えを見せなかった。
流石にあきれ顔で直人はゲンハの顔を見るが、その表情は暗視ゴーグルに阻まれて伺えなかった。
まぶしくてたまらないだろうに…しかし気持ちはわからなくも無い。

「冥土の土産だ…好きなだけ犯していいぞ、壊しても構わん」
ゲンハは満足げに頷くと、直人から渡されたシグザウエルを構える。
「最悪、呼吸さえしていれば人質の価値はある…行こうか?」
と、直人らが無造作に姿を見せたとき、スタングレネードが炸裂した。


「あの娘!欲しい!!」
無貌の神はにたりとだらしなく笑う、その視線の先にあったのは鑑純夏だ。
「千載一遇とはこのことよ」
彼女は現在の宿主である今日子よりもか細く見えたが、しかし彼にとってはそうは映らなかったらしい

辰人には及ばぬまでも、少なくともこの宿主よりは遥かに優れた資質を持つようだった。
そしてその資質は、ヴィルヘルムやケルヴァンが求めるものとはまた違った方向性の物だった。
事実、彼女より遥かに優れた魔力・身体能力を持つケルヴァンや冥夜には、彼はまるで興味を持たなかったのだから。
(それにしても退屈せぬわ、さて、と)
無貌の神は刃にこびりついた血を払うと、そのままささやかな茶会へと突撃した。
46千載一遇x3 :04/04/22 00:33 ID:4Wr/vGDS

【鑑 純夏 マブラヴ age 状 ○持ち物 ハンドガン(あの後貰った) 装填数 20発 狩】
【御剣 冥夜 マブラヴ age 状態 ○ 持ち物 刀 狩】
【ケルヴァン:所持品:ロングソード 地図 状態△(魔力消耗) 鬼】

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、かなり危険な状態)
 所持品:シグ・ザウエル 暗視ゴーグル 火炎瓶x3】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:鉄パイプ・包丁】
(目的:御剣冥夜の確保)

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2  暗視ゴーグル】
【原田沙乃@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼(現在は狩) 状態○ 所持品:十文字槍 食料・医薬品等】
【ミュラ@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:長剣 地図】
【リック@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:戦斧】
(目的:ケルヴァンの確保)

【岬今日子(無貌の神)@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○所持品 永遠神剣第六位『空虚』(雷撃2発分の魔力)】
(目的:鑑純夏の確保)
47名無しさん@初回限定:04/04/22 00:38 ID:EPrFCs2h
ケルヴァンは情報戦で【△(魔力消耗気味)】に改善されてるよ。
後時間は?
48千載一遇x3 :04/04/22 00:50 ID:4Wr/vGDS
申し訳無い

時間(「情報戦」直後)
【ケルヴァン:所持品:ロングソード 地図 状態△(魔力消耗気味) 鬼】
49千載一遇x3 :04/04/22 00:54 ID:4Wr/vGDS
もう一つ捕足を
玲二パーティの持っている食料や医薬品は、襲撃時点で
4等分されていると考えてください
50千載一遇x3 :04/04/22 03:34 ID:0Lhqd9oJ
さらに捕足、>>41>>42の間に以下を挿入してください
夜更かしのおかげで気がついたよ


森は唐突に行き止まりを迎えていた、いや実際にはその先があったのだが、
何故か進もうという気持ちにはなれなかった。
「無駄足だったな」
踵を返そうとした2人だったが…。
「おい?」
「ああ」
2人は同時に確認の声を出す、長年嗅ぎなれた匂いが、血の匂いがかすかに漂ってきている。
鼻をくんくんと鳴らしながら場所を辿っていく、と藪の中から兵士の死体が転がっている。

それと同時に何故分からなかったのだろう?目の前にこじんまりとした建物が見える。
そう、彼らは結界を越えたのだった。
「目くらましか…手の込んだ真似を」
原理はてんで分からないが、多分そういう類の何かなのだろう。
それはともかく、直人はいよいよヤバそうな感じのゲンハに元気付けるように言う。
「とりあえず適当な奴ぶっ殺して薬でも手に入れようぜ」
51名無しさん@初回限定:04/04/22 09:50 ID:MatsDYKU
議論スレが壊れている模様・・・
52Pursuits:04/04/22 13:40 ID:saB1Ute4
「きゃあ!!」
突然のスタングレネード=閃光弾の襲撃に三人の目は眩む。
「くっ!?」
目を眩むと同時にケルヴァンが手に魔力を込め詠唱を始めると
すると直ぐさま辺りが深い霧に包まれ始める。

「ぐおお!?」
運悪く同じタイミングで飛び出ていたゲンハと直人も同じだ。
冥夜をとっ捕まえようとケルヴァンたちの前に飛び出たのはいいものの目が眩み前が解らない。
「ど、どうなってんだよこいつは!!」
挙句の果てにケルヴァンが周囲を霧で包むものだから、二人の行動は完全に封鎖された。

そして最後に目を瞑って飛び出した玲二達だが、目を開けるとそこは深い霧に包まれていて
さらに霧の中の人影は五つと増えている。
(しまった!!あの人は一流の魔法使いでもあったんだ!!)
沙乃は自らの認識不足を後悔した。
純粋な魔力ではヴィルヘルムや初音に劣る。
だがケルヴァンはその分この島の結界の構築を始め術のエキスパートなのだ。
自分達新撰組やドライを死人として蘇らせたレベルの高さ。
そしてとっさの状況に強い機転の良さ。
彼らはケルヴァンを侮っていたのを認識させられた。
(い、一体どれが!?)
四人は悩んだ。
ケルヴァンの位置はしっかり把握したが、その近くに同じようなガタイの影が二つ浮いて出た。
二人の少女の影は解りやすかったが、閃光の衝撃でよろめいたりしたら三つとも十分にありえる範囲だ。
確率1/3のでかい博打である。
(ともかく、少女の方の確保は頼む!!)
玲二は小声で沙乃に話すとリックと共にケルヴァンらしき人物を捕獲することにした。
53Pursuits:04/04/22 13:42 ID:saB1Ute4

「二人とも私の手につかまれ」
この二人をここで失っては後々尊人に合わせる顔がなくなる。
篭絡することも難しくなるだろう。
二人の手を掴むと奥のバルジャーノンの置かれた場所へとケルヴァンは移動しようとする。

「頃合だな…」
スタングレネードの後、慌てることなく様子を伺っていた無貌の神が純夏の前に飛び出す。
「いかん!!」
二人の手を離し腰につけたロングソードを抜くとケルヴァンは剣に魔法を込め飛び出す。
「邪魔をするな!!」
無貌の神の手に握られた『空虚』がケルヴァンに振るわれる。
ケルヴァンはそれを魔法を込めた剣で迎え撃つ。
「どけ!!我が欲しいのはその後ろの少女よ!!」
目の前にあるのに手が届かないもどかしさに無貌の神に怒りが募る。
(後ろの少女!?魔力保持者ではないのになぜ!?)
目の前の襲いくる影の発した言葉に疑問を抱きながらも受け流す。

鈍い音とともに一人の影が倒れる。
玲二が鳩尾に鋭い一撃を加えたのだ。
「くそ!!こんだけ近づいても顔が見えないのかよ!!」
心なしか周囲の音も聞こえづらい。
リックが倒れた男を肩に担ぐ。
「だが、外れだとしてもこの施設内にいたんだ。利用する価値は十分にあるはずだ」
代わりにリックの戦斧を受けとると玲二は彼を扇動して脱出へと行動をうつす。

「ケルヴァンさん!!」
ケルヴァンの後方で純夏が叫んだ。
「静かにして」
ミュラが純夏の後ろにつくと彼女の口を塞ぐ。
「ごめんなさい、後で説明するから」
そして彼女の首筋に当身をくらわせて意識を失わせる。
54Pursuits:04/04/22 13:45 ID:saB1Ute4

「なにをする!?」
剣士の感で背後に迫る者へ向けて、冥夜は刀を振る。
(しまった!!失敗した!!)
かわしたものの彼女を確保しようとした沙乃はこれ以上は無理そうなのを悟る。
(玲二達は!?)

「おい、ゲンハ!!ゲンハ!!」
死にかけの相棒の名前を必死に呼ぶ直人。
「もしかしてやられてしまったんじゃないだろうな」
見ると影が倒れ、それを担いで逃げさろうとしてる二つの影があるではないか。
「まさか中央のやつが!?」
俺とゲンハは魔力保持者だといつぞやの甘ちゃんが言っていたのを思い出す。
ならばゲンハがその中央の人間に連れ去られてもおかしくない。
「これで貸し借りはなしだからな!!」

「純夏、無事か!?」
冥夜が声を張り上げる。
だが純夏の声がない。
「ケルヴァン殿、純夏が連れ去られた!!」
「なんだと!?貴様の狙いはこれか!?」
ケルヴァンが目の前の相手に問いかける。
「おのれ!!我が狙っていた器を!!」
だが無貌の神は彼の予想とはかけはなれた台詞を上げると同時に
彼との斬り結びを止めて、取り付かれたような速度でこの場から脱出してしまった。
「逃げるか!!」
ケルヴァンが手で印を結ぶと周囲の霧が晴れていく。
55Pursuits:04/04/22 13:46 ID:saB1Ute4

「くっ!!やつらの目的は一体何だというのだ」
霧が晴れた時、ケルヴァンと冥夜の目に映ったのは互いの姿しかなかった。
「純夏、無事でいてくれ…」
純夏の身を案じる冥夜。
「すまない、私の判断が足りなかったようだ…」
騒ぎに気づき、やってきた警備兵へとケルヴァンは後始末と中央から神風の召集を命じる。
私が霧の魔法を使ったせいで純夏が攫われた。
ケルヴァンは責任を感じていた。
「どこの誰だか知らないが、借りは返すぞ…」

それぞれ反対側から出た玲二・リックコンビと沙乃・ミュラコンビ。
「霧が晴れた!?安全な位置に行くまでは振り返るな、このまま走るぞ!!」
玲二を前にしてリックたちは施設から離れて行く。
遅れて施設から出てきた直人。
「これはゲンハに渡した銃じゃないか」
遠くに人を担ぎ走り去っていく二人組の姿がある。
「世話焼かせやがって!!これっきりだからな!!」
酔いの頭痛がまだ消えきらない身体に鞭打ちながらゲンハは追跡を開始した。

「ごめんなさい、こっちは失敗したわ」
一緒に出てきたミュラへと沙乃が話す。
「仕方ないわ。あちらは成功したみたいだし、今はここから離れるのが先決よ」
純夏を担いだミュラは休むことなくそのまま沙乃と共に走り去る。
やっとこさ施設から出てきた無貌の神はそれを見ると怒りに震え上がる。
「我の獲物をよくも横取りしおって!!逃がすか!!」
無貌の神もまたミュラと沙乃の追跡を開始した。
56Pursuits:04/04/22 13:47 ID:saB1Ute4
【御剣 冥夜 マブラヴ age 状態 ○ 持ち物 刀 狩】
【ケルヴァン:所持品:ロングソード 地図 状態△(魔力消耗気味) 鬼】

【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:鉄パイプ・包丁 シグ・ザウエル】
(目的:ゲンハの救出)

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2  暗視ゴーグル 食料・医薬品等 戦斧】
【リック@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:ゲンハ(まだゲンハとは気付いていない) 食料・医薬品等】
【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態×(裂傷多数、背中に深い刺し傷、かなり危険な状態、気絶)
 所持品:暗視ゴーグル 火炎瓶x3】
【原田沙乃@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼(現在は狩) 状態○ 所持品:十文字槍 食料・医薬品等】
【ミュラ@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:食料・医薬品等 長剣 地図 純夏】
【鑑 純夏 マブラヴ age 状 ×(気絶)持ち物 ハンドガン 装填数 20発 狩】
(目的:逃走後、合流)

【岬今日子(無貌の神)@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○所持品 永遠神剣第六位『空虚』(雷撃2発分の魔力)】
(目的:鑑純夏の確保)

(『千載一遇x3』後)
57封じられし戦女神:04/04/22 15:13 ID:nyhZBIL8
例え何者かに踊らされているているとしても──彼に他の選択肢はない。
初音を倒せる力、それがあると信じて牧島麦兵衛はここまで来たのだ。

「やっぱり誰もいない、か」
倉庫の扉を開き中を見回したが、あったのは神棚に祭られた短剣一本だけであった。
「どうやら罠じゃなかったみたいだが、このナイフであの女を倒せる?冗談だろ?」
あの鳩はここにあるのは剣だと言っていた。
目の前の物体は剣というのは短すぎ、呼ぶならばナイフと呼称する方が正しいような気がする。
麦兵衛はあるはずの物を探して内部を見渡す。
しかし決して広いとは言えない倉庫の内部には、目の前の短剣以外には何も見当たらない。

(つまり…もう他の誰かが剣を持って行っちまったって事なのか)
だとすれば麦兵衛がここに来たのは全くの無駄足である。
「俺達の洗脳に失敗した時点で回収したのかもしれないな…」
ならばいつまでもここに居ても無駄であろう。
(最初に見つけた時に来て置くべきだったのかもしれないな。しょうがない、透達の所に戻るか)
その場から立ち去ろうとした麦兵衛の目にナイフが目に留まる。
「こんなもんでもないよりはましか…」
手に取れる程に近づいて初めて分かったが短剣は思ったよりも汚れていた。
「随分と汚れてるな。どうせ飾っとくんならもう少しきれいにしてもいいんじゃないか」
なんにしても錆びてさえいなければ取りあえず護身用にはなる、そう思い短剣を手に取った。

(随分と失礼な事を言ってくれる)
「だ、誰だ!?」
突然聞こえて来た声の主を探して辺りを見回すが、人影は見当たらない。
「女性の声?まさか幻聴……?しっかりしろ麦兵衛。こんな状況だからこそ冷静に……」

パン!

麦兵衛は両手で頬を思いっきり叩いて気合を入れる。
続いて深呼吸を10回。
58封じられし戦女神:04/04/22 15:14 ID:nyhZBIL8
「幻覚とか幻聴とか見てる場合じゃない。早く透達の所に戻らないと」
(で、落ち着いたか?)
「……とうとう俺は頭がおかしくなったのか」
(さっきから本当に失礼な奴じゃな……)
おかしい、幻聴にしては声は確固たる存在感を持っている。
もしかするとこの声も魔法を使った会話の一種なのかもしれない。
麦兵衛はそう考え声の主に話しかける。
「誰だ?どうして俺に話しかけてくる?」
(お主、私を探していたように見えたのだが違ったのか?)
「俺は誰も探してなんか……ってまさか?」
(そう、私はお前の手の中にある剣だ。もっとも本来の持ち主の手を離れておるから、今は只の短剣だがな)
麦兵衛は己の手の中にある『彼女』を見て嘆息する。
「むしろ違ってくれた方が希望があってよかったかもしれないんだが……そういえば名前を聞いてなかったな」
(先程から失礼にも程があるぞ……そっちから先に名乗るのが礼儀であろ?私は力を貸す側なのだからな)
力を貸す──そう言われてもこの短剣に初音を倒す程の力があるとは思えないが、今は僅かでも力が欲しい。
「俺は麦兵衛、牧島麦兵衛だ」
(我が名はハイシェラ……ついでに言うと麦兵衛、一々声に出さずとも会話できるぞ。
簡単に言うとお主が無礼な事を考えてたら筒抜けだ)
麦兵衛はそれを聞いて顔を引きつらせた。
「そう言う事は早く言ってくれ。しかし考え事もできないのかよ」
(まあ、今はこんな姿だからそう思うのも無理はなかろうが、お主程の魔力があれば多少は私も……)
「待て。俺に魔力があるっていうのか?」
ハイシェラの言葉を遮って麦兵衛が口を挟む。
(今のままでは使い物にならんがな。……魔力があるからこそ、この地に召喚されたのではなかったのか?)
呆然としている麦兵衛を見てハイシェラは言葉を続ける。
(無自覚だったのか……まあ、よいわ。そちらの事情次第では協力してもよいぞ?)
「……俺が事情を話したらハイシェラさんは力を貸してくれるのか?」
(気が向いたらな。時にその『さん』付けは慣れん。呼び捨てで構わん)
今の姿こそ短剣であってもハイシェラも元は魔神とまで呼ばれた魔族の中でも最高の力を持つ存在の一人。
59封じられし戦女神:04/04/22 15:15 ID:nyhZBIL8
気に入らない者には力を貸したりはしない。
「女性を呼び捨てするのは慣れてないんだ。どうしても嫌なら考えるが」
麦兵衛は困った顔をして言った。
(まあ、どっちでもよいわ。で、話すのか話さんのか)
「そうしないと協力してくれないんだろ……」


(仇討ちと救出か。協力してもよいが、こちらからも条件がある)
「条件?」
麦兵衛がハイシェラの言葉をオウム返しする。
(そうだ。その目的には異存ないが、魔力がある事に対して無自覚と来ては少々不安が残るのでな。
私を使いこなせる事を示して貰おう)
「こういうのはお約束だから別に構わないが…具体的にはどうすればいいんだ?」
麦兵衛があっさり了承したのが意外だったのか、ハイシェラは言葉に詰まる。
(……こんなに安請け合いする奴は初めて見たわ)
「こういうのはお約束だしな……それにどの道ハイシェラさんの力がなけりゃ、ひかりさんも助けられない」
(そういうものなのか? まあ、やる事は単純……的に一撃当てるだけだ。ただし…)
「ただし?」
いつの間にか麦兵衛の前に女性が立っていた。
「!?」
女性は手には鞭とも剣とも定かではない武器を持っている。
「ただし、的の方からも攻撃してくるがな」
目の前の女性──剣ではない本当の姿を取ったハイシェラは小悪魔的な笑いを浮かべた。

鞭と剣を合体させたかのようなハイシェラの武器──連接剣がゆうに10メートルはある距離を飛び越え麦兵衛に襲い掛かる。
「──っていきなりか!」
生命の危機を感じ取り、咄嗟に横に跳んで真っ直ぐ伸びてきた連接剣を避ける。
「これで避けた思ってもらっては困る」
今度はコンパスが円を描くような美しい軌道で連接剣が横薙ぎに襲い掛かる。
(受けるか!? 無理だ! こんなナイフで受けれる訳が──)
後ろも駄目、横も駄目……そうなれば残るは一つ……
「当てるもなにもっ──!」
60封じられし戦女神:04/04/22 15:16 ID:nyhZBIL8
悲鳴に近い声を上げながら体を限りなく地面に密着させる。
何かが耳の傍を通り過ぎて行く音と、髪が斬られる感覚。
それらが過ぎ去ったのを確認すると立ち上がり、後ろに跳んで距離を取る。
「当てるもなにもリーチが違いすぎるだろうが!」
「私の力を多少でも使えれば補える問題だ。むしろそれくらい出来て貰わねば宝の持ち腐れになってしまうわ」
そう言いながら再びハイシェラは剣を構える。
「しかし今のは悪くなかった。多少は力を使えておるようではあるが……逃げてばかりでは末路は変わらんぞ」
今のは運良く避けれたものの何度も避けれる保障はない。
(何とか当てないと……とは言っても力の使い方なんて分かるわけが…)
「さて、少し本気を出すか」
ハイシェラの方は麦兵衛の心境など意に介さず再び連接剣を振るう。
本気の言葉通り、先程の攻撃と比べて遥かに速い。
そして麦兵衛が生まれて初めて感じる殺気。
連接剣の予想外の速度に麦兵衛の反応が遅れる。
もしこれを避けてもまた先程と同じく横薙ぎが来るだろう。ハイシェラも先程と同じ手では避けさせてはくれないだろう事は想像に難しく

なかった。
(……こうなったらいちかばちか受けるしかない!)
麦兵衛の命を左右するのは今手の中にあるちっぽけなナイフ。
「うぉぉぉおおおおおおおおお!!」
小さな命綱を握り締め、真っ直ぐ連接剣に向けて突き出す。
剣が激突する瞬間、麦兵衛の手の中で重みが増した。
「む? これは…」
ハイシェラが呆然としているのを好機と捉え、そのままハイシェラに向けて突進する。
考えられない程体が軽かった。僅か3歩でハイシェラに肉薄するとそのまま連接剣を叩き落す。

「勝った…?」
麦兵衛自身にも何が起こったか正確には分からない。
はっきりしているのはハイシェラに一撃加える事ができたという事だけ。
61封じられし戦女神:04/04/22 15:18 ID:nyhZBIL8
(まさか本当に使いこなすとは……大したものだ)
いつの間にかハイシェラの姿は消え、先程までの頭に直接響く声で語りかけてくる。
「こっちは本当に死ぬかと思ったぞ…」
(死ぬ訳なかろうが。あれは幻覚だ)
「は? 確かに髪を斬られ……なんともない」
(あれはリアリティを出す為の演出よ。まあ、五感に直接作用するのは楽ではなかったが)
ハイシェラの忍び笑いを聞きながら麦兵衛は重要な事を思い出す。
「それで約束の方は守ってもらえるのか?」
(それについては今私がこの形をしているのが答えという事になるな)
見れば手の中の短剣は多少短めながらも立派に剣と呼べる物に変化していた。
「さっきの剣が重くなった時にこうなったのか…」
(使い手の魔力次第で姿は変えるが、麦兵衛の魔力ではこの状態が限界だな。ついでに言うともう一個条件があるのだが)
「もうさっき見たいなのはごめんなんだが……」
必要な時以外物騒な事をしたくはない。
元よりひかりを、まひる達を守る為でなければ力など求めはしなかったのだから。
(そう難しい事ではない。元々私は麦兵衛の居た世界とは違う世界の住人なのだが、どうも召喚に巻き込まれたようでな。
元の世界に帰る方法を探して欲しいのだ。私は自分では動けんのでな)
「それだったら言われなくても探す。俺達だって帰りたいのは同じだからな」
麦兵衛の言葉を聞いてハイシェラが頷く雰囲気がする。
(では、しばらくの間よろしく頼むぞ。麦兵衛)
「こっちこそよろしく頼む。まずは透達の所に戻るか」

【牧島麦兵衛@それは舞い散る桜のように(バジル) 招 状態◎(身体能力上昇) 所持品 ハイシェラソード
行動目的:初音を倒す。結城ひかりの救出。透、まひると合流】
【ハイシェラ(ハイシェラソード)@戦女神(エウシュリー) 人数に含まない 状態ショートソード
行動目的:元の世界に帰る。今は麦兵衛に力を貸す】
【時間:逃れられぬ因果後】

補足:
牧島麦兵衛の身体能力上昇はハイシェラソードを持っている時限定です。
ハイシェラは招キャラ限定で彼女が認めた相手にのみ力を貸します。
62仲間という名の利害関係:04/04/22 19:58 ID:nyhZBIL8
 巨大ロボット、バルジャーノンのコクピットの中には、綾峰慧と鎧衣尊人、二人だけがいる。
『たける〜、ごめんねー』
 気の抜けるような声のままに、バルジャーノンを操縦している尊人が呟く。
 すると手元にある備え付けのスピーカーから、別の声、白銀武の声が流れ出してくる。
『い、いいから……。もっと、ゆっくり……』
 今にも死んでしまいそうな弱々しい声。
 武は今、バルジャーノンの手の中にいた。
『白銀の軟弱者』
『う、るせぇ……。なんで、俺だけ……』
 綾峰の言葉に対するつっこみも弱い。
『あはは、レディファースト、って奴かなー?』
『お前、男だろうが……、って、おわ! 尊人! もっとゆっくり動かせよ!』
 尊人の軽口に武が口を挟む、すると機体が大きく揺れた。
『あははー、ごめんね。手元が狂っちゃったよ』
 彼等は現在、バルジャーノンを操りながら森の中を走り、そして時には木々を飛び越えながら冥夜達の待つ場所へと向かっていた。
 その先で現在何が起こっているかを知らぬままに。
 彼等は冥夜、そしてケルヴァンの待つ場所へと向かっていた。
 
 男の身体が大きく後ろ側へと吹き飛ぶ。
「お前のせいで純夏が!」
 殴ったのは武、殴られたのはケルヴァン・ソリード。
「この事態は私にも予想していなかった。よもや、この場所を狙ってくる者がいようとは……。
 戦略的には無価値、そしてここにある武装もこの機神のもののみ……、この事は私以外の者にはほとんど伝えていないはずだったのだが……
 貴公の仲間を拉致られた責任は全て私にある、それは覆せぬ事実だ。
 白銀武。貴公には私を殴る権利がある、だが、その後でもいい、私の話を聞いて欲しい。
 この通りだ」
 殴られ、地に伏せたままケルヴァンが頭を下げる。
「武、やめてよ! この人について行こうって行ったのはボクなんだから!」
63仲間という名の利害関係:04/04/22 20:00 ID:nyhZBIL8
「タケル。その者を殴るのなら、この私も殴ってくれ。私の目の前で純夏が連れて行かれたのだ。
 この男は私達の仲間ではないにも関わらず、純夏を助けようと試みていた。
 しかし私もこの男も、力及ばなかった……。責は私にもある、いや、むしろ私の方がその責任は大きい」
 尊人が武の身体を押さえつけ、その前に進み出た冥夜がそう悔しそうに口にしてから静かに目を閉じる。
「尊人、冥夜……」
 湧き上がる感情を抑えられぬまま、それでも武は振り上げた拳を下げた。
「……俺にも、責める資格なんて無かったんだよな……。俺は、委員長を、千鶴を……、殺しちまったんだから」
 武の中に思い浮かぶ榊千鶴の亡骸。
 武はその場に集まった人間達、一人一人に視線を向け、最後にケルヴァンの元でそれをとめる。
「話を、しよう……。俺があの男を追って遭遇した全部の出来事を話すから。あんた……」
「ケルヴァンだ」
 武が問いかける前にケルヴァンが名を告げる。
「ケルヴァン、あんたが知っている事も全部教えてくれ。それが出来なきゃ俺は、
 いや、俺達は、今すぐあの機体に乗り込んで、この場から逃げ出してやる」
 武の呟きは、しかし真に迫っていた。
 ケルヴァンにも、今白銀が口にしている言葉が口先だけのものではない事を理解した。
 故に。
 ケルヴァンは立ち上がると、白銀武の視線を真っ向から受け止めた。
 そして言葉を口にする。
「判った。全て話そう。私の目的と、そしてこの島で何が起こっているのかという事を……」
 
「元々私は、ヴィルヘルム、この計画を立ち上げた男だが、その男の信念に感応して手を貸しているわけではない。
 覇王、世界を統べる力を持つ者、その者を見つけ出す為に、彼の者に力を貸した」
「じゃあ、あんたが責任の一端を担ってるって事じゃねぇかよ!」
 武は席から立ち上がり、ケルヴァンに詰め寄る。
「最後まで話を聞け、白銀武。そう、確かに私にも責任はある。しかしそれは断じて、力無き者を排除する今までまかり通ってきたやり方を
肯定するものではない!」
 ケルヴァンの恫喝を受け、武もしぶりながらも席へと戻る。
64仲間という名の利害関係:04/04/22 20:01 ID:nyhZBIL8
「私は元々、力ある者だけを呼び寄せるものだと考えていた。しかしあの男は、君達を呼び寄せる装置を暴走させ、
 無作為に人々を呼び寄せてしまったのだ。偶然を使ってでも魔力を持つ者を呼び寄せる、そのような事を言いながらな」
 ケルヴァンは言葉を続ける。
「奴の力は強大だ。この私の力を持ってしても、あの者と相対すれば、まず命を失うだろう」
「あのバルジャーノンを使っても駄目?」
 尊人の呟きを受けて、ケルヴァンはその方へと視線を向ける。
「例えば、空に浮かぶ星々をいくつも頭上から落とす、そんな魔法があるとしよう。その力に対して、君はどう対処できる?
 或いは、一つのみならば、あの機体の力で対処できるかもしれぬ、例えば打ち落とす等とな。
 しかし、十数個の星を同時に打ち落とす事など出来はしない。あの男はそのような魔法を扱う事が出来る。つまりはそういう事だ」
 その言葉を聞き、ケルヴァンを除く者達の顔が青ざめる。
「だから私は、これまで秘密裏に、或いは機を狙う事で、少しずつ戦力を広げてきた。そして、先ほどの満月、あれが決定打だ」
「決定打?」
「あの男は死人の記憶を読む事ができる、いや、出来た、と言った方がいいのだろうが、その力のせいで私は今まで表立って動く事が出来なかった。
 私の目の届かない所で、私が真実を話した者が死んでしまえば、全てがあの男に知られてしまう。
 そうなれば、あの男は、手を組んでいるこの私であろうとも、排除してくるだろう」
「では、あの満月時に、その記憶を読む力を防ぐ事が出来る『何か』が現れた、という事か?」
 冥夜が尋ねると、ケルヴァンは大きく頷く。
「ああ、そのように私が細工をしたのだからな。ともかく、これからは私も動く事が出来る。
 おそらくもう一人の協力者も、ヴィルヘルムの力が失われたとしれば、動き始める事となろう。
 その前に私は、準備を済ませておきたいのだ」
「もう一人の協力者って?」
「比良坂初音。一見すると、長い黒髪の少女、ああ、君達くらいの年齢ほどの女に見えるのだが、
 その実、何百年も生きた蜘蛛の化け物という存在だ。
 少し前まで派手に動いていたのだが、最近はおとなしくしているが……、ん、どうした?」
65仲間という名の利害関係:04/04/22 20:02 ID:nyhZBIL8
 武達の表情におかしなものが浮かんだ事に気がついたのか、ケルヴァンが尋ねる。
「黒い髪の女……。もしかしてタマの時の?」
「ケルヴァンさん。もしかしてその人、真っ黒いセーラー服を着てたりしない?」
「せえらあ服というものがどのようなものかは知らぬが、奴は常に黒い服装で身を固めていたな」
 武達は、やっぱり、というような表情を浮かべながらお互いの顔を見回した。
「俺達、そいつの事を知っている……。タマを、俺達の仲間を預けたんだ」
 ケルヴァンは武の言葉を聞くと、ふむ、と呟いてから何事かを思案する。
「そのタマ、という者は女か?」
「あ、ああ……。だけどそれがどうした?」
「ふむ、ならばもう一つ尋ねよう。その女は生娘か? 男と交わった事の無い娘であったのか?」
 ケルヴァンと武を除く視線が、武の元へ集まる。
 その視線を受けて、ケルヴァンも武へと向けた。
「お、俺はそんな事やっちゃいねぇぞ!」
 どこか焦ったように、両手を振り回して否定しながら、武が叫ぶ。
「ならば……。君達の仲間が命を失ったのは、その蜘蛛が関係しているやもしれん」
 仲間が死んだ事の真実、それが思いもよらぬところから出てきた事で、武達の表情に緊張が走った。
「どういう事だよ!」
「蜘蛛は生娘の命を食らうのだ、しかも戯れにな。タマという者が殺されたのも、その事で君達が苦しむのを楽しむ為だったのかもしれん」
 武はそれを聞くとすぐに立ち上がる。
「目的は……、決まったな。純夏を取り返した後、比良坂初音を探し出す!」
 後に続くように、綾峰、鎧衣、御剣も立ち上がる。
「蜘蛛の元へ行くというのか? 今しばらく待てば、私が中央から呼んだ手勢をいくらか分け与える事も出来るが?」
「いや、それはいい。それよりも、あんただ」
 武がケルヴァンに向かって問いかける。
「私がどうかしたのかね?」
「俺達はこれから、その比良坂初音って奴を探す。勿論、純夏の事が先だけどな。それで、そいつの話によっては戦う事になるかもしれない。
 あんたはそれでいいのか? 
 仲間……なんだろ?」
66仲間という名の利害関係:04/04/22 20:13 ID:nyhZBIL8
 そういう事か、そう呟きながらケルヴァンも立ち上がる。
「私に仲間などいないよ。蜘蛛を追うというのなら止めはしない。白銀武、私は私の目的のために、最大限の力を貸そう。私の負った責、鑑純夏の件については私に任せてもらおう。
 目の前で連れ去られるという事実、これは君達だけではなく、私にとっても屈辱だからな」
 それに、そう呟いて言葉を続ける。
「あの機神も君達に分け与えよう。二つとはいかんが、片方だけならば好きなように使うがいい。武器もある」
「……サンキュー」
 武はそう口にしてから、右手を差し出した。
「利害関係の一致による協定か。いいだろう。ケルヴァン・ソリード、ここにそれを示そう」
 同じく右手を差し伸べるケルヴァンに、武が笑いかける。
「難しい事言ってんじゃねぇよ。あんたに仲間がいないってんなら、俺達が仲間になってやる。
 純夏を助けてくれるんだろ? あんたから見れば俺達は、利害の一致、かもしれないけど、
 俺達にとっちゃそれだけで十分に『仲間』なんだよ」
 まるで、ままごとのようだ、ケルヴァンは心の中でそんな事を呟いた。
 仲間なんて、所詮薄い薄氷の上に成り立っているもの。
 ある者は裏切り、信頼している者でもあっさりと命を失う。
 そんな世界で生きてきたケルヴァンにとって、書状もなく、契約もない、ただの『約束』という意味で、
仲間だどうだと言っていても、そこに意味など無い。
 それでも、ケルヴァンはその時、一瞬だけこんな事を考えていた。
(こういうのも、悪くは……無い)
 そうして、彼等は手を組んだ。
 
【白銀 武 マブラヴ age ○ サブマシンガン、ハンドガン、共に残弾0 招 】
【御剣 冥夜 マブラヴ age 状態 ○ 持ち物 刀 狩】
【鎧衣 尊人 マブラヴ age ○ ハンドガン(装填数 20発) 狩 】
【綾峰 慧 マブラヴ age ○ 弓 矢残り7本 狩 】
(四人の目的〜純夏を取り返し、初音を探す バルジャーノン一体使用可)
【ケルヴァン:所持品:ロングソード 地図 状態△(魔力消耗気味) 鬼】
(目的〜神風達の到着を待ち、ファントム、ママトト組を追う)

(時間:『Pursuits』後)
67トラフィックス 3nd:04/04/22 20:59 ID:hbqql9tJ
「離してぇ!離してよう!!」
ミュラの腕の中で暴れる純夏、彼女は見かけによらず腕っ節は強い、しかもめちゃくちゃに暴れるものだから、
沙乃にミュラと、二人がかりでも取り押さえることは容易ではなかった。
気絶させるのは簡単だったが、誘拐の負い目があるのでそこまでの強行手段はとりたくはなかった。
「これ以上近づいたら、撃つからね」
強引に二人を振り解いた純夏は震える手でハンドガンを構える。
「任せて」
そういうとミュラは自分の危険も省みず、刀を納めると無防備をアピールするために両手を広げ沙乃の前に立つ。
「あのね…私たちは」
ミュラは誠心誠意純夏に聞かせた、自分たちのことや、その目的を…。
その様子を沙乃は感嘆の眼差しで見る、この女性はどうしてこれほどまでにたくましく、そして優しいのだろうか?
その強さは母のごとき愛を彷彿とさせた。

「あなたをさらってしまったのは、私たちの力が及ばなかったから、ごめんなさい」
ミュラはそういうと純夏に頭を下げる。
その微笑みと率直な態度に純夏の頑なな態度も氷解していく。
「じゃあ、タケルちゃんの所に返してくれるの?」
「もちろんよ、さぁその銃は危ないからしまいましょうね」
ミュラはそっと手を差し伸べる、純夏もそれに応じようとした時だった。
バスっ!!
渇いた破裂音が周囲に木霊する。
彼女はうかつにも、いやもしかすると最初からかもしれなかったが…銃の安全装置をはずしたままだったのだ。
決して故意ではない、しかし暴発した弾丸を食らったミュラの体がふらりとよろめき、
そしてその背後の急勾配の坂を転がり落ちて行く。
何も出来なかった、純夏はもちろん沙乃までも…ただ転落するミュラの姿を見ていることしか出来なかった。

「どういうつもりよ!この嘘吐き!」
先に金縛りが解けたのは沙乃、彼女には純夏が不意打ちを食らわせたとしか見えなかった、
そしてそれは彼女にとって、もっとも憎むべき、恥ずべき行為に他ならなかった。
「ち…ちが」
純夏はもちろん弁明しようとする、そんなつもりじゃないと、しかし言葉は出てこなかった。
68トラフィックス 3nd:04/04/22 21:00 ID:hbqql9tJ
憤懣やるかた無い沙乃、今すぐにでも斬り捨ててやりたいが、ミュラの方が心配だ。
「沙乃は許さないかんね!あんたなんか死んじゃえばいいんだから!」
そう吐き捨てると、沙乃もまた転がるように坂を下っていった。

残された純夏はうわ言のように呟きを繰り返す。
「わたっ…わた、わたしぃ…」
自分が人殺しになってしまったという事実、しかも自分を助けようとしてくれた人を殺してしまったという事実、
その2つが純夏を責め苛んでいた。
「どうしよう…私、人殺しになっちゃった…」
目に見える光景全てが色あせて見える、もうあの頃には…帰れない、無論…武の元にも。

「死んじゃえばいい…か…」
それが一番いいように思えた…、少なくとも間の悪い自分に彼女はほとほと嫌気が差していた。
「タケルちゃん…さよなら」
それだけを口にすると、純夏はそのまま何処かへとあてもなく向かおうとしていた。
その時だった。

声が聞こえる…。
「おぬし…死ぬのならばその体をわれに与えるがよい…さぁ」
その声は麻薬のように心地よく純夏の耳に響いた、それは抗い難き誘惑だった。
無貌の神にとって心神喪失状態の少女を篭絡することなど児戯にも等しかった。
ふらふらと純夏は、その声の主である少女の傍へと向かい、そして純夏はついに少女のから手渡された剣を、
手にしたのであった。

「生きてる…」
ミュラは信じられない様子で自分の身体を眺める。
弾丸はミュラの着用してる胸甲にめりこみ停止していた、銃の口径が小さかったのが幸いしたのだ。
もっとも衝撃のあまり、しばらく呼吸することはできなかったが。
そこに沙乃が息を切らしてやってきた。
69トラフィックス 3nd:04/04/22 21:02 ID:hbqql9tJ
「あの子、悪気はなかったのよ…許してあげましょう」
ミュラの第一声はそれだった、その言葉を聞いて沙乃は改めて決意する、この女性を死なせてはならないと。
「行かないと…」
無理を押して立ち上がろうとするミュラ、せめてそのタケルとやらに事情を説明しなければ申し訳が立たない。
だが、みぞおちに当身をかまされて倒れ伏せるミュラ。
「ごめんなさい、沙乃は賛成できないわ…あんな卑怯者の心配なんかしてやる必要なんかないんだから」
そう呟くと沙乃はミュラの身体を担いでその場を去っていった。

「クククッ!なじむっ!なじむわ…ククク」
無貌の神はようやく手に入れた宿主の身体をいとおしげに撫で回す。
これとても完璧とは言えないが、状況が状況だけに贅沢は言えない、ともかく家は手に入れた、次は…。
「食事の時間としゃれこむか」
無貌の神は先ほどわずかだが刃を交えた男を思い出す、なかなかの魔力の持ち主。
再出発の門出としては、まさにふさわしき獲物といってもいいだろう。
「さてと、まずはあの男の魔力を頂きに参上仕るとするか」

無貌の神は気絶している今日子の身体を捨て置くと、また元来た道を引き返し始めた。
70トラフィックス 3nd:04/04/22 21:03 ID:hbqql9tJ
(ん?)
玲二が振り帰ると、背後につけていたはずのリックの姿が見えない。
建物の中を突っ切る以外に逃走路がなかったために、はぐれてしまったようだ。
(生き残れよ…)
それだけを心の中で呟くと玲二は再び先を急ごうとする。
そこで始めて背中に背負う人質が気にになり出す。

「なんだこいつは?」
それはケルヴァンではなかった、暗視ゴーグルを被ったアフロの男だった。
「何もみえねぇ…みえねぇよお…」
男はうわ言のように苦痛のうめきを繰り返している、おそらくグレネードの光を直接見てしまったのだ。
(そりゃ暗視ゴーグルをつけてちゃなぁ…)玲二といえども同情せざるを得ない。
おそらく男の網膜は完全に灼けてしまっているだろう。

いずれにせよこいつには用は無い、黙らせるためにもう一度当身を食らわせる、その時だった。
上空から轟音が響く。
自分の周囲を覆う影に、それが巨大な何かがだということを玲二は即座に理解した。
素早く男を自分の視界内の物陰に転がし身を潜ませるのと、
その何かが着地するのとは同時だった。
71トラフィックス 3nd:04/04/22 21:06 ID:hbqql9tJ
「なんで…なんでファントムまでいやがるんだよ!!」
直人は物陰に潜みながら、小声ながら思わず叫んでしまう。
英才教育によって生み出された最強最悪の暗殺者…闇社会に多少でもかかわったものならば、
知らぬものとてない伝説の存在。

(引退したとか聞いてはいたが…)
しかし今、視界にとらえるその姿は紛れも無く本物、自分など足元にも及ばぬまさに本物の殺しのプロだった。
ゲンハの姿は見えない、だが近くにいることは確かだ。
しかし助けるには…ファントムを最強の暗殺者を向こうにまわさねばならない。
絶対不利の中、だがそれでもゲンハを見捨てるという考えは直人にはなかった。

(何とかしてやる…何もできなくても何とかは必ずしてやる…でなきゃ俺の中の誇りが、掟がゆるさねぇんだ!!)

「許可できません」
「何だと…」
その頃、神風の投入を命令したケルヴァンだったが、その命令は部下によって却下される。
「考えても見てくださいよ、何も連絡せずに何時間もフラフラしておいてそれですか?中央は誰が守るんです?」
部下は辛らつな言葉をさらに口にする。
「大体、投降者の確認もしないで…監督不行き届きもはなはだしいですよ」

「とにかく!何考えてんのかは預かり知りませんがね、今後、必要以上の深入りは慎んでください!」
ガシャン!!と一方的に通信を切る音が耳を貫く、その痛みに顔をしかめるケルヴァン。
「言いたい放題だな…まったく」
しかし考えてみれば中央を落とされでもすれば元も子もない、それにケルヴァンもまた悪司らの投降には、
薄々ながら何か裏があると感じてもいた。
責任と画策、その両天秤でゆれるケルヴァンだったが、
72トラフィックス 3nd:04/04/22 21:08 ID:hbqql9tJ
「一度戻るしかないのか…」
やはりまずは立場を維持しなければ何もならない、後ろ髪を引かれる思いだったが、
最低限してやれることはしてやった、あとは連中次第だ。
いずれ改めてコンタクトを取るしかないだろう、ともかく戻ればまた来ることもできるのだ。
「わかった、山本悪司らのについての1件をまずは優先しよう、その後改めて対策を考える」

そう改めて連絡すると、いやいやながらも彼は武らの元に足を向けた。
73トラフィックス 3nd:04/04/22 21:14 ID:hbqql9tJ
【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、失明、瀕死)
 所持品:なし(玲二が回収)】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル 鉄パイプ・包丁】

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2  暗視ゴーグルx2 火炎瓶x3】
【原田沙乃@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼(現在は狩) 状態○ 所持品:十文字槍 食料・医薬品等】
【ミュラ@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:長剣 地図】

【鑑 純夏(無貌の神) マブラヴ age 状 ○持ち物 ハンドガン 
装填数19発 永遠神剣第六位『空虚』(雷撃2発分の魔力) 狩】
【岬今日子@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○所持品 なし】

【ケルヴァン:所持品:ロングソード 地図 状態△(魔力消耗) 鬼】

(仲間という名の利害関係とほぼ同時進行)
74葉鍵信者:04/04/22 21:15 ID:TFn7nF7/
あちゃー。
担いでたのリックだよ。
持ち物欄にもかかれてたのは笑ったけどw
75トラフィックス 3nd(修正):04/04/22 21:21 ID:hbqql9tJ
>>70
「おい!」
何かが転ぶ音がする、と同時に途中から2人で担いでいた荷物の重みが
ずっしりと加わる。
振り返るとやはりリックが転んでいる。
「俺に構うな、こいつを頼む」

幸か不幸か、彼らは建物の中を突っ切る以外に逃走路がなかった、
この程度の警備兵、蹴散らすのはワケも無かったが・・・
刻一刻を争う状況では踏みとどまってはいられない。
(生き残れよ…)

それだけを心の中で呟くと玲二は再び先を急ごうとする。
そこで始めて背中に背負う人質が気にになり出す。

76トラフィックス 3nd(修正):04/04/22 22:37 ID:B17uJBi3
>68の

その時だった。

声が聞こえる…。
「おぬし…死ぬのならばその体をわれに与えるがよい…さぁ」
その声は麻薬のように心地よく純夏の耳に響いた、それは抗い難き誘惑だった。
無貌の神にとって心神喪失状態の少女を篭絡することなど児戯にも等しかった。
ふらふらと純夏は、その声の主である少女の傍へと向かい、そして純夏はついに少女のから手渡された剣を、
手にしたのであった。

を削除お願いします、それから

>69の一節を
「口惜しいわ…」
無貌の神は歯噛みする。宿主の体力が劣っていた故にむざむざ逃してしまった。
それはともかく、無貌の神は気持ちを切り返る。
「食事の時間としゃれこむか」
無貌の神は先ほどわずかだが刃を交えた男を思い出す、なかなかの魔力の持ち主。
再出発の門出としては、まさにふさわしき獲物といってもいいだろう。
「さてと、あの男の魔力を頂きに参上仕るとするか」

に修正します。
77トラフィックス 3nd(修正):04/04/22 22:39 ID:B17uJBi3

【鑑 純夏 マブラヴ age 状 △ (心身喪失) 持ち物 ハンドガン装填数 19発 狩】
【岬今日子(無貌の神)@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○所持品 永遠神剣第六位『空虚』(雷撃2発分の魔力)】
に修正します。

78光差す方へ:04/04/23 03:21 ID:J2BfGQ38
幾重にも張り巡らされた巣の中で、アルは寝乱れていた身体を整えていく。
色々あったが長居し過ぎたようだ。
身支度を整えると、未だだらしなく裸同然の姿で寝そべっている初音の頭を蹴り飛ばす。
「痛いわね、私はまだ眠いのよ」
「何を言っておる、汝も行くのだ」
アルは駄々をこねる初音を強引に起こしていく。
「汝を救ったのは、と言うより生かしてやったのは妾だぞ、付き合っても良いのではないのか?」
それを言われると何も言い返せない。
初音は渋々ながら衣服を整えはじめた。

初音にも目的があった、乃絵美の話に出てきた赤い爪の童女・・・それが気にかかっているのだ。
(危険な存在ね)
だが、恩義を盾にされてはどうしようもない、それを反故にすることは彼女のプライドが許さなかった。
悪は悪でも彼女にはいわゆる任侠系な部分があるので、約束を破ったり恩を痣で返す真似はしたくないのだ。
「ですが何故に貴方はそこまで私に拘るのかしら?」
服に袖を通しながら初音はアルに問いかける。
「聞きたいか?」
言いたくってたまらない表情でアルは初音に問いかける、言いたくてたまらないくせにと初音は思う。
自分が何だかんだといいながらも彼女に付き合おうとしてるのは、
恩義とかを抜きにして、そういう部分が気に入っているからかもと初音は思った。
79光差す方へ:04/04/23 03:22 ID:J2BfGQ38
「ならば教えてやる!それはな、汝の両手をもうこれ以上無益な血に染めさせぬためだ!」
そこからは止まらなかった、アルは次々と言葉を吐いていく。
「比良坂初音!その手は人を殺めるためのものでしかないのか?違うであろ?
 人の両手は愛する者を抱きしめる、そして守るためにあるのではないのか!」
あえてアルは初音を人と呼んだ。
人という言葉に思わず反応する初音、それを見逃さないアル、さらに畳み掛けていく。

「だが、汝の重ねた罪は赦され難き大罪!汝の殺めた者に愛し合う恋人同志がいなかったと思うか?
 仲睦まじき母子がいなかったとでも思うのか!!」
アルの演説はまだまだ続く、それを怯えた目でじっと見ている水月と乃絵美。
「その償いが終わるまでは決して死ぬことは赦されぬのだぞ!」

「償いですって、いまさら何を」
口を挟もうとした初音をアルは制して続ける。
「汝が心まで悪鬼なれば何も言わぬ、だが妾は見た、汝の心の中の一片の汚れ無き光を、その清き涙を…
 なればこそ妾は決して汝を捨ててはおけぬ!」
それはまさにか細き光だったが、何よりも強く輝いていたとアルは思う、
充分に賭けるに値するものだと。
「千の命を殺めたのならば、万の命を救え!万の悪を討つのだ!そしてその手始めに
 必ず生きて深山奏子の元に帰るのだ、さすれば」
「いずれ赦しの時も訪れるやもしれん・・・」
演説は終わった、乃絵美が水を差し出し、それを一息に煽るアル。

「それに汝は敵だらけであろうが?」
ここまで初音はあまりにも無軌道に襲撃を繰り返し過ぎた、それゆえ各方面から恨みを買っている。
そしてかく言うアル自身もその一員なのであった。
80光差す方へ:04/04/23 03:22 ID:J2BfGQ38
「いちいち謝って回れとでも?」
初音の軽口にアルは言い返す。
「謝ってすむ話なら当然そうしろ」
「私が九郎さんを殺していたらどうなさるの?」
意地悪く問いかける初音。

「その時は妾が真っ先に汝を討つ、他の誰にも譲らぬよ」
アルは即答する。
「ただしそれでも汝を深山奏子に会わせて、それからだ、その時がきたら辞世の句でも考えておけ、だが」
「安心しろ、九郎は決して死んではおらぬよ、だから探す、見つかるまで付き合え」
ぞんざいな口調だったが、温かみが篭っていた。
「妾と九郎、そして汝が手を組めば、きっとこの下らぬ企みも粉砕できる」

「それに、強がっても無駄だ・・・」
アルはくるりとリボンをはためかせ振り返る。
「妾は汝の正体など、とうにお見通しなのだからな」

【比良坂初音@アトラク=ナクア(アリスソフト) 状態:○(鬼) なし 行動目的:アルに付き合う、生き残る】
【アル・アジフ@斬魔大聖デモンベイン (ニトロプラス) 状:○ ネクロノミコン(自分自身)(招)
 行動目的: 九郎を探す、初音を更正させる 島からの脱出】
【速瀬 水月@君が望む永遠(age) 状態:○ (狩)スナイパーライフル(鬼側の武器を初音が持ってきた)】
【伊藤乃絵美 @With you〜見つめていたい(F&C) 状態:○ 所持品:ナイフ 行動方針:不明 】

(初音の【巣】の結界は人間の精神に作用する類のものです、つまり侵入を拒むというのではなく、そもそも
存在を気づかせないタイプの結界です)
(初音の蜘蛛は中央へは侵入できません)

(情報戦直後)
81略奪者と探索者と調整者と。:04/04/23 10:31 ID:FHS7uFV7
「やられた……」
 突如初音の様子が豹変する。
「むっ? どうした?」
「要蜘蛛がやられたわ…」
 忌々しげに初音は口にする。
「かなめくも…なんじゃそれは?」
 初音の言葉の意味をアルは理解できなかった。
「ここともう一箇所の巣の結界を維持するためのもの……誰かが巣に入ろうとしてるわ。
少し留守にするわ。あれを盗られるわけにはいかない」
「妾も共に行く、先程も言ったであろう? 汝にこれ以上手を汚させる訳には……」
 アルの言葉に初音は頭を振る。
「あなたはさっきこうも言ったわね…。もし九郎が死んでいたら絶対に自分で仇を討つ、と。
同じ気持ちの人間はたくさんいるのよ。そういった戦いに水を差すのは無粋ではなくて?」
(そう……もし『彼』が来たのなら私がお相手して差し上げないとね)
「汝は……」
 言葉を詰まらせるアルと乃絵美の横を初音は無言で通り過ぎる。
「留守の間二人をお願いするわ。悪いけれどさっきの約束はその後でね」
 そうして再び蜘蛛は戦場へと舞い戻って行った。
「阿呆が……汝は分かっておるはずだ。このままではもっとも嫌悪するあの男と同じになってしまうという事が…」


 ママトト武将と交戦した後、ランスと五十六は中央に対抗しようとする者達の捜索を続けていた。
 とはいってもそう簡単にそういった者達が見つかるわけもなく……
「くそっ! 使えそうな奴らどころか、誰にも会わないってのはどういう事だ!?」
「やはりそう簡単には見つからぬ物ですね……」
 手掛かりがある訳でもない捜索がそんなに上手くいくはずもなかった。
「ええい! 五十六、一端休憩するぞ」
 山の斜面に乱暴に腰を下ろす。
「五十六、お前も無理せず休憩しろ。肝心な時にばてるようじゃ困る」
 ランスの言葉にも反応せず五十六はある一点を見つめ立ち尽くしている。
82略奪者と探索者と調整者と。:04/04/23 10:32 ID:FHS7uFV7
 すなわち、ランスの頭上を凝視したまま微動だにしない。
「どうし……たぁ!?」
 不意に矢が放たれ、ランスの頭上に突き刺さる。
 あと数センチ下であったら即死コースだ。
「……なんの真似だ?」
「失礼しましたランス王。毒蜘蛛が居りましたので……」
 五十六の言葉通り、矢は拳程の大きさの蜘蛛を見事に射抜いていた。
「よく気付いたな……」
「斜面の盛り上がり方が不自然でしたので」
 さすがに弓兵だけあって目はいいらしい。
「しかし俺様も長いこと冒険者やってたが、周りの色に同化するなんて蜘蛛なんて初めて聞いたぞ」
「この島特有の種とではないのですか?」
「こんなのはいなかったと思うがな……近くに仲間がいるんじゃないだろうな?」
 そう言いつつ周りを見渡すランスの目に、先程通ってきた道の途中に斜面を繰りぬいたような洞窟が見えた。
(これから行く道ならともかく、なんでさっき通ってきた道にあんな物があって気付かなかったんだ?)
「ランス王…」
 五十六も気付いたらしい。
「ああ、何かあるな……全く俺様の目をごまかそうなんざ一万年早いわ!」
 やっと見つけた手掛かりにランスは勇んで向かって行く。


 一方初音が巣から出て行くのを見つめる者達が居た。蔵女と葉月である。
「どう攻めるか手をこまねいていたが……これは好都合じゃな」
「空き巣みたいであまり気は進まないけれどね」
 蔵女がコロコロと笑う。
「まあ、空き巣というよりは用心棒がいない隙を狙う山賊なのじゃがな」
「僕は無理して襲う必要はないと思うけどね……蔵女、君の調子はよくないんだろう?」
 そう言いながら蔵女の左肩の銃創を見るが、正確に言うと葉月が気にしているのは銃創の事ではない。
「呪詛返しによる反動の事か。呪縛に使った力がそのまま自分に返って来るとはな…。人を呪わば穴二つとはよく言ったものよ」
 いくら呪詛を返されてもそれ自体が原因で蔵女が死ぬ事はないが、その分一時的に力が削がれる事は防げない。
 弱った所を狙われればそれまでである。
 もっとも呪詛返しのおかげでこの場所が分かったのだから悪い事ばかりではないが。
83略奪者と探索者と調整者と。:04/04/23 10:33 ID:FHS7uFV7
「はぐらかさないでもらえるかな。君の状態が良くないのは傷口を見れば一目瞭然なんだから無理せず休んだ方がいい」
 葉月の言う通り先程から蔵女の傷は広がり、蔵女の着物には血の染みが広がっていた。
「葉月、お主には嫌われていると思っておったが……いざ心配されてみると複雑なものよの」
 確かに葉月にとって蔵女の所業は容認できるものではないが、それでも見殺しにするような真似はとても出来なかった。
「僕は……いや、誰だって目の前に助けられる人がいるなら助ける、それだけだよ。だから別に君の行動を容認するわけじゃない」
「その言葉胸に刻んでおくとしよう。……とにかく今はあそこにあるネクロノミコンを奪取せねばいかんぞ」
 ネクロノミコンを初音の元に置いておけば再び赤い爪の呪縛が返されかねないし、何より力を合わせられたら結界が崩壊してこの世界そ

のものが破壊されてしまう恐れもある。
 結界の崩壊を防ぐのに関しては葉月も文句を言ったりはしない。
「宴は問題なく進んでおるようだし、この作戦が上手くいけば我等もしばらく静観してもよかろうて。
 葉月、もう少ししたら突入するぞ」
「僕はこんな狂った宴は早く終わらせたい所だけどね…」


「なんだこの糸は……ええい! 鬱陶しい!」
 洞窟内部を埋め尽くさんばかりに張られている巨大な糸をランスは片っ端から叩き斬って奥に進む。
 延々と糸を斬り続けようやく洞窟の奥の壁が見えた頃
「ランス王。人が…」
 五十六の指差す方向には糸に包まれた人間が見える。
 無言で人間を包む糸を切り裂き中身を確認する。
「女か…気の強そうな顔してるな。上玉だな、連れて帰って俺様のハーレムに加えるとしよう」
「ランス王…」
「分かってる。取りあえず他に何かめぼしい物は……」
(五十六とはさっきの約束があるからな。俺様のハイパー兵器を活躍させるのは後でも構わん)
 ランスは楽しみをひとまず頭の隅に追いやり、五十六と手分けして洞窟内の探索を行う。
「……なんかあったか?」
 しばらく壁に隠しスイッチがないかと調べていたがどうやらその手の類の物はないらしい。
「私も特にこれといった物は見つけることが出来ませんでしたが…」
84略奪者と探索者と調整者と。:04/04/23 10:34 ID:FHS7uFV7
「まあいい、この女だけでも連れて帰るか。わざわざこんな場所に隠してあるくらいなんだ。重要人物なんだろう」
「そう…大事な人質よ。だから渡す訳にはいかないわ」
 背後からの声にランスと五十六が振り向くとそこには初音の姿があった。

【比良坂初音@アトラク・ナクア(アリスソフト) 鬼 状態○ 装備品なし】
【アル・アジフ@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 招 状態○ 装備品 ネクロノミコン(自分自身)】
【速瀬水月@君が望む永遠(age) 狩 状態○ 装備品 スナイパーライフル】
【伊藤乃絵美@With You〜見つめていたい(カクテルソフト) 狩 状態○ 装備品 ナイフ】
【ランス@ランスシリーズ(アリスソフト) 鬼(但し下克上の野望あり) 状態○ 装備品 リーザス聖剣】
【山本五十六@鬼畜王ランス(アリスソフト) 招 状態○ 装備品 弓矢(弓残量15本)】
【蔵女@腐り姫(ライアーソフト) 招 状態△(力半減。左肩銃創、呪詛返しの影響で傷口拡大) 装備品 (能力)赤い爪、通信機】
【葉月@ヤミと帽子と本の旅人(オービット) 招 状態○(力半減) 装備品 日本刀】
【結城ひかり@それは舞い散る桜のように(バジル) 招 状態×(気絶中、外傷等は一切なし) 装備品なし】

(時間:千載一遇x3 と同時刻)
85ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 10:59 ID:nvuVOqAQ
まいごのまいごの こねこちゃん あなたのお家(うち)は どこですか
お家をきいても わからない 名まえをきいても わからない
ニャン ニャン ニャン ニャン ニャン ニャン ニャン ニャン
ないてばかりいる こねこちゃん 犬のおまわりさん 困ってしまって
ワン ワン ワン ワン ワン ワン ワン ワン

                       童謡『犬のおまわりさん』より


同じ曲が何度も脳内に流れ続ける。
あゆは考えていた。
「犬のおまわりさん」に登場する犬の警官は、最後にはヤケになっていたんだろう。
何を聞いても泣くばかりの子猫。正直お手上げという気分になっても無理は無い。
「(……良く分かるわ、その気持ち)」
ベッドの上、汗と愛液に塗れた姿で大空寺あゆは何となくそう考えていた。
既にその身は全裸で、あゆの足元辺りにかつて「すかいてんぷる」の制服であった布切れが
ボロボロになって丸められている。
そして、あゆの傍らでベッドに腰掛け泣き続ける一人の、こちらも全裸の少女。
あゆはまだその名前を知らない。
訳も分からないまま突然押し倒され、犯され―――まあ、処女は奪われなかったものの―――
さんざん弄られ、擦られ、揉まれたのはあゆの方である。
正直、泣きたいのはこっちだった。
だが、その加害者が被害者よりも陰気に泣いているのだからどうしようもない。
86ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 11:00 ID:nvuVOqAQ
「……おーい」
「……………」
声をかける。少女は答えない。
「……ちょっとー」
「……………」
やはり答えない。
「……………」
「……………」

一瞬の沈黙の後、

「うが〜〜〜〜〜ッ!!!」
あゆの恐ろしく短い導火線はあっさりと燃え尽きた。
流石にこれには少女も驚いたのか、眼を丸くしてあゆの方に向き直る。
「ぜえ、ぜえ……やっと、こっち、向いてくれたわね」
「……ごめんなさい……」
かぼそい声での謝罪、その瞳には先程までの狂暴な欲望は全く見えない。
「あああぁぁぁ! もう、謝るのは後ででいいさ! それより、アンタ誰さ!?」
「あ……」
そこで初めて少女は自分が名乗ってもいない事に気付いたようだった。
ほんの少しだけ声を上げるものの、すぐに元の調子に戻ってうつむいたまま答える。
「……ライセン」
87ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 11:01 ID:nvuVOqAQ
「ふぅ、これでやっとお互い普通に話ができるわね……アタシは大空寺あゆ。
 ……で、何でこんな真似をしたのさ」
「……ごめ……」
「ストップ!」
再度謝ろうとしたライセンの眼前にあゆは手を広げて押しとどめる。
「だから謝るのは後ででいいって言ってんでしょ? アタシは全然……ってのはちょっと
 ウソだけど……ま、それはそれとして」
「はあ……」
「アンタが何者で、何であの痴女に攫われて、何でアタシを急に襲った後さめざめ泣いてんのか、
 全部聞かせてもらうわよ。それがアンタが今するべき本当の謝罪。いい?」
「……分かりました」
ぴしゃりと言い伏せるあゆの勢いに、ライセンも僅かながら冷静さを取り戻したようだ。
小さく頷くと、彼女はゆっくりと語り出した。
自分がママトトの仲間と共に繰り広げた戦いの事。
武器庫を襲撃した事。
死んでしまった仲間達の事。
単独行動をしたほんの僅かの間にカレラに襲撃を受け、薬を飲まされた事。
意識が朦朧となり、気がついたらベッドに寝かされ、目の前にあゆがいた事。
そして―――自分の中の衝動が抑えきれなくなり、彼女を襲った事。
そこまでの一連の話を聞き、あぐらの姿勢であゆは呆れたように言った。
「……何だ、そんじゃアンタ悪くないじゃないさ」
88ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 11:02 ID:nvuVOqAQ
「え?」
驚いた顔であゆを見るライセン。
「だーかーら、要するにアタシを襲ったのはあの痴女に変な薬打たれたからなんでしょ?
 だったらアンタが罪悪感持つ必要は全然無いじゃないさ」
しかし、ライセンの重い表情は変わらない。
ライセンにとって、ここで自分の罪を許してしまう事は誇りの放棄に思えたのである。
まあ、彼女は本来がネガティブな性格であり、それに起因する所も少なくはないのだが。
「でも……私がした事に変わりはありませんから……(むにっ)ひゃっ!?」
言葉を返そうとしたライセンは、あゆの思わぬ反撃に会った。
突然両の頬を引っ張られたのである。
「ひゃ、ひゃひほ……?」
「……アンタが今すべき事は、アタシに謝ってひたすら落ち込む事?」
むにむにむに。
頬をむにむに弄りつつあゆが言った。
「……………」
「アンタが出来る事は、まだある筈さ……それでもアンタが罪の意識がどーこーって言うなら、
これがアタシからの仕返し、いい?」
「………ふぁい」
「ん、そんじゃこれで仲直りさ(ぱっちん)」
「………ッ!」
「あ! い、痛かった? いつもアタシがされてる位でしてみたけど……」
「いえ、大丈夫……です……」
頬を撫でつつ答えるライセン。先程までの重苦しい表情はやや薄れている。
「(やれやれ、悪司とかに『用心しろ』って言ってんのに、アタシも人の事言えないさ)」
89ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 11:04 ID:5IzhHIGq
内心でため息をつき、あゆは着替えを探すためにベッドから降りようとした。
「……!?」
その時、ライセンが再び身を固くし、怯えるように顔を伏せた。
「ど、どうしたさ!?」
「……………」
ライセンは答えない。ただふるふると首を振るのみである。
「ひょっとして、まだ何か悪いとか思って……」
四つんばいでベッドの端のライセンに近づく。
「……………!」
「わ!?」
気がつくと、あゆは最初と同じようにライセンに組み伏せられていた。
「ちょ、ちょっとライセン! アンタ一体……」
「……ご、ごめんなさい……!」
再び謝罪の言葉、しかし今度は最初よりは明確な意思で言っているようだ。
あゆの汗ばんだ体をまさぐりつつ、ライセンが言う。
「ごめんなさい……薬、まだ……!」
その頬は紅潮し、呼吸は荒くなっている。
それだけであゆは彼女の身に何が起こっているか理解した。
先程までの営みで収まったのは、媚薬の『波』の一回分に過ぎなかったのだ。
しかし、それも無理からぬ話であった。
一回分だけでも淑女を狂わし、聖者を欲望の虜にする程の効果を持った媚薬である。
それを四回分もライセンは食らってしまったのだ。常人ならばとうに理性を失い、
肉欲だけの狂人になってしまっても不思議ではない。
彼女が理性を残しているだけでも、十分凄い事であった。
90ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 11:04 ID:5IzhHIGq
「(ったく、あの変態痴女は……!)」
おそらく今は悪司とよろしくやっているであろうカレラの姿を想像し、あゆは悪態をついた。
一方、ライセンの瞳からは再び涙が溢れつつあった。
みじめだった。
情けなかった。
敵の薬にいいように操られ、初対面の少女を陵辱してしまったのみならず、
それでもなお自分に励ましの言葉をかけてくれた彼女を自分はまた犯そうとしている。
「(獣以下ね、私……)」
一度はあゆの励ましで明るさを取り戻した思いが、再び暗くなる。
「(いっそ、ここで舌を噛んでしまえば……)」
そこまで考えが至る。
熱い吐息の中、舌を伸ばす。
できそうだ。
「(どうせ、私なんて……)」
ああ、さぞ今の自分の姿は彼女には醜く映っているだろう。
「(でも、これで……終わる)」
そう思い、歯を思い切り噛み締めようとした瞬間―――

ぎゅっ。

ライセンは、あゆに抱き締められていた。
91ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 11:06 ID:5IzhHIGq
「!?」
自分のされている行為が理解できず、あゆの目を見る。
「……言ってんでしょ? 悪いのはアンタじゃないって」
彼女は笑っていた。
無理な作り笑いでもなく、愛想笑いでもない。
不敵なまでに悠然とした、全てを包み込むような微笑み。
「……いいわよ、アンタの気の済むまでしても。その分はあの変態痴女に倍返しで返してもらうさ」
「ア……」
一度収まった涙が、また流れ出す。
だが、その涙は悔恨の涙ではなかった。
「大空寺……さん……」
「あゆでいいさ」
なでなで。
柔らかくライセンの頭を撫でるあゆ。
「あゆ……!」
ライセンは感極まったようにあゆに唇を押し付けた。

『多分この部屋だと思うんですけど……』
92ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 11:07 ID:5IzhHIGq
「あゆ……あゆ……あゆ……!」
愛おしさの混じる口付け。
「(やれやれ、何だかなつかれちゃったみたいね……)」
そう思いつつも、あゆはあゆで彼女に放っておけないものを感じていた。
それは、愛情とはまた異なる感情。

『……ここか!?』

「あ……♥」
あゆの口からも、甘い声が漏れ出す。
ライセンの口は、胸を経由して次第に下半身へと進んでいた。
が、

「あの、大空寺さんいますか……きゃ!?」
「悪い! アンタ達外でアルって子を……」
一組の男女―――大十字九郎と七瀬凛々子が部屋に入ってきたのはその瞬間だった。

「「「「あ」」」」

四つの『あ』が、綺麗に同時に発せられた。
93ウェイトレスは振り向かない:04/04/23 11:08 ID:9Able7Ca
【大空寺あゆ@君が望む永遠(age) 招 状態:○ 装備:スチール製盆  行動目的:敵本拠の捜査】
【ライセン@ママトト(アリスソフト) 狩 状態△(媚薬により発情中) 所持品:なし】
【大十字九郎@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 状: △ 所持品 自動式拳銃(フルオート)『クトゥグア』、
残り弾数不明(15発以下 行動方針:苦悩中】
【七瀬凛々子(スイートリップ)@魔法戦士スイートナイツ(Triangle) 招 状態○(軽傷有り) 
       所持品:グレイブ 行動目的:敵本拠の捜査】
94ロートル書き手:04/04/23 11:11 ID:9Able7Ca
時間軸記入忘れ失礼。
『悪魔、堕つ』とほぼ同時刻で。
95進むべき道:04/04/23 18:26 ID:2J//0UmB
 「やべぇな……」
 ランスが五十六に向かって呟く。
 「ランス王、あの者、信長と同じような禍々しい雰囲気を感じます……」
 かつて従っていた魔人信長と同じ魔性のモノの気を、五十六は感じ取っていた。
 「確か、ケルヴァンの配下であってたわよね。
  なら、私の目的と行動、そして権限は知っているでしょ?」
 初音からの警告である。
 従わなければ実力行使に移る。
 ランスでもそれは解る。
 (せっかく見つけた極上の獲物だってのに……。
  だが、こいつはまずい。
  他の奴ならともかく、こいつはあらゆる意味でやばさの桁が違う。
  レイか? それよりもノス? いや明らかにカミーラ何かとは桁が違う強さだ。
  下手したら、ジルの野郎並かもしれねぇ……。
  カオスがあってもいけるかどうかの奴相手に、俺と五十六で挑めってか?
  ……絶対に無理だ。
  それにこいつは、ケルヴァンとヴィルヘルムを入れたトップの一人だ。
  今、こいつと事を起こすと言う事は、俺様は嫌でも今から反逆しなけりゃいけなくなる。
  まだ今の時点で謀反を起こすわけにはいかねぇ。
  謀反だって、どっちに転んでもいいようにするためのもんだ。
  それに俺様の女を危険にあわすわけにはいかねぇ)
 「しかし、私の要蜘蛛を始末するなんて……。
  意図的だったのかしら?」
 初音の最終宣告だ。
 ここで彼女の意に従わなければ、間違いなく襲い掛かってくるだろう。
 「……返す」
 ランスがひかりを初音に受け渡す。
 「ふふ、賢い男は好きよ」
  ひかりを受けとると初音。
 「偶然だったのは蜘蛛からの情報で解ったわ。
  今回は、その潔さに免じて、そこの娘と共に見逃してあげるわ……。
  では、ご機嫌よろしくてよ」
96進むべき道:04/04/23 18:27 ID:2J//0UmB
 そのまま初音は、言葉を残して消えてしまった。
 「申し訳ありません、ランス王……」
 五十六はランスに向かって頭を下げた。
 今のランスの決断は、配下である自分の身を案じてくれたからだと思ったからだ。
 それと共に、無闇に突っ込まなかったランスの判断と案じてくれた事を心嬉しく思った。
 「気にするな……。 五十六のせいじゃねぇ。
  俺様の力が足りなかっただけだ……」
 それ程までにカオスのポテンシャルが高いのだ。
 リーザス聖剣など足元にも及ばないほどに。
 王になってからのランスは、戦闘の繰り返しだった。
 元より人より遥かに少ない経験値でLvUPでき、更には才能限界値無限。
 何をやっても経験値(主にSEX)にできるという特性。
 そこでレイ、ジークというとんでもない経験値を持った魔人を二匹も撃破したのだ。
 その成果は、対リックの時に現れた。
 本来ならば、模擬なら五回やって一回一本取れればいいくらい。
 実戦ならば五分といった感じであった。
 だが、あの戦闘の時、ランスは気づく事はなかったが、
戦闘の繰り返し、魔人から得た莫大な経験値、そして彼の特異性により、
彼の実力ははっきりとリックを上回っていた。
 でなければ、幾らランスとて、剣筋を読んだくらいでは2:1で勝てるはずがない。
 ましてや、超音速のバイ・ラ・ウェイを防ぐ事など……。
 そのランスですら、まだ及ばぬ初音。
 彼は、自分の実力に怒りを感じた。
 「五十六」
 「はい」
 「俺様は、これからもっと強くなる為に敵をいっぱい倒す」
 「それは……?」
97進むべき道:04/04/23 18:28 ID:2J//0UmB
 「幸いこの島には、モンスターもいる。
  そいつらを倒してレベルをもっと上げる。
  それに専念したとしても、保護をしやすくするためだといっとけばいい。
  それと中央にも召還した者にも害を成すのもいるらしい。
  そいつらも危険そうなら倒す、うん。
  勿論、対抗する奴らは、俺様の眼鏡に叶えば泳がす。
  外道なら殺す、後々邪魔になるかもしれないしな」
 「ランス王……」
 「なんだ?」
 五十六は、嬉しく思った。
 今のランスの判断は、彼女の望む王としてあるべき姿だった。
 「この山本五十六、何があってもランス王についていきます」
 「……行くぞ」
 照れを隠すように、ランスはマントを翻して歩き始めたのだった。

 ひかりを抱え、一旦別の巣に移動した初音は、アルがいないのを機に考えに耽っていた。
 彼女の言葉の数々である。
 一度は、覚悟した事、捨てた事。
 人の身を捨て、蜘蛛となった時に、人の考えを止めた。
 アルの言う事は、正しい。
 だが、万人にとって正しいかと言えばまた別だ。
 世の中には、完全なる悪であるゲンハ等もいる。
 また価値観の違う種族もいる。
 人間の間でもしばしばそれで戦さが起きるくらいだ。
 (人……、懐かしい。
  とうの昔に私はそれを捨て去った。
  その私が情を持っている……)
 「お笑い種ね……」
 初音は理解している。
 アルは、得れたものだからこそ言えるのだと。
98進むべき道:04/04/23 18:29 ID:2J//0UmB
 彼女の立場だからこそ言える台詞なのであると。
 普段の初音なら、そう一蹴していた。
 一見余裕に見えるが初音は、失ったものなのだ。
 そして、現在も失うかどうかの瀬戸際にある。
 だからこそこの計画に加担したのだ。
 例え、この島で叛旗を翻そうが、アルに免じて一人帰還しても
彼女を待ち受けるのは、更なる修羅の道である。
 (この島に来てから、少しおかしくなっていたのかしらね……)
 アルの言葉は、捨て去ったはずの人の部分に響く。
 だが、長い年月を経て蜘蛛となった、修羅となった彼女の心はそれを否定する。
 そこで認めてはいけない。
 自分は何の為に生き続けてきたのだろうか?
 泣き寝入りでもすれば、共に戦ってくれるのだろうか?
 そんな事は、彼女の信念が間違っても許さない。
 例え、借りたとしてもあの時に比べて力の劣る自分に負けたのだ。
 九郎とアルの力が加わった所で、銀の強大な力の前には何ら変わりないだろう。
 もし、初音がこの宿命を他者の力で断ち切ってもいいと考える弱さならば、
とっくにヴィルヘルムやギーラッハ等に頼み込めばいいだけのこと。
 彼女にとって好きではない、相容れぬ人であったが、ケルヴァンのように嫌いではなかった。
 彼らの持つその信念の強さには親近感を覚えたからだ。
 誇りを捨てれたらどんなに楽だろう?
 今までの背負ってきた因果の鎖から解き放ればどんなに楽になれるだろう?
 その為には、つけなければいけない決着がある。
 そのケリの優先順位は、この企みを潰す事ではない。
 初音なら、理由さえつければ一人や二人くらいなら自分と共に帰還する事は可能なのだから。
 彼女にとって、この計画は、力を増強させる為のものだ。
 その見据える先は、唯一つ。
 銀。
 この宿命の敵を自らの手で討ち取る。
 でなければ、彼女は永遠にこの鎖を断ち切ることはできない。
 奏子のためにも。
99進むべき道:04/04/23 18:31 ID:2J//0UmB
 そして、この計画は彼女にとって譲れないラインだ。
 アルの言葉は、初音に懐かしく人の考えと情を与えてくれた。
 だが、それは全てを断ち切ってからだ。
 その先であってこそ、成立するものなのだと初音は知っていた。
 あの二人のパートナーも全てを乗り越えて今があるのだろう。
 その姿に初音は惹かれていたのかもしれない。
 「ありがとう……」
 目の前にいないアルに向かって初音は言った。
 (もしこの計画が終わった時、あなた達が生きているのならば……)
 そこまで考えて初音は止めた。
 「私も弱くなったものね。
  私はこれから全てを背負い進むわ……。
  次会えば、再び戦う事になるでしょうね……」
 挨拶はしない。
 会えば、きっと再び人の心が浮き出て揺らぐからだ。
 それを許してはいけない。
 今許せば、彼女の全てが崩れる。
 (彼女なら、二人の少女もよくしてくれるはず……。
  ふふ、彼女はきっと私を裏切り者と思うでしょうね)
 アルに会わないという事は、彼女への恩義を捨てる事になる。
 だが、初音には、それより先の譲れない物がある。
 心が痛む、どちらの心が痛むのかはもう解らなかった。

 修羅の道を突き進んできたからこそ乗り越えなければいけない試練。
 それは闇に生きる者ならではの試練。
 (それを乗り越えた時は……。
  あなたの言葉を思い出しましょう)
100進むべき道:04/04/23 18:34 ID:2J//0UmB
【比良坂初音@アトラク・ナクア(アリスソフト) 鬼 状態○ 装備品なし】
【ランス@ランスシリーズ(アリスソフト) 鬼(但し下克上の野望あり) 状態○ 装備品 リーザス聖剣】
【山本五十六@鬼畜王ランス(アリスソフト) 招 状態○ 装備品 弓矢(弓残量15本)】
【結城ひかり@それは舞い散る桜のように(バジル) 招 状態×(気絶中、外傷等は一切なし) 装備品なし】

【略奪者と探索者と調整者と。後 】
101HAERT OF DARKNESS:04/04/23 18:44 ID:lW+YvsWY
「何を話しているんだ?」
玲二は物陰からじっと様子をうかがう、脱出路をふさがれているお陰で逃げることが出来ないのだ。
と、ケルヴァンと少年が握手をするのが見える、何らかの契約が成り立ったのだろう。
ケルヴァンが去っていく、そして少年たちはまたロボットに乗り込んでいき。
庭の方に移動していく、チャンス到来だ。
アフロの男はまだ気を失っているようだ・・近くにあったワイヤーでアフロを縛ると
玲二はそっと動きを開始した。

「ええとまず操縦方法は」
尊人は冥夜らにバルジャーノンの動かし方を教えていく、しかし冥夜にしてみれば
やや勝手が違うようだ。
「これは何だ?」
冥夜はコクピットの端のボタンを押す。
「ああそれはセンサーだよ、範囲は切り替え可能でこうやって狭めるとその分精度が高くなるんだ」
尊人は画面をてきぱきと切り替えていく、とその時画面に何かの動く影がくっきりと映ったのであった。

「そこで動いてるやつ!!」
そのアナウンスに直人はびくりと身を震わせる・・・ばれたか?
「俺じゃなかったらしいな・・・」
ふーっと直人は息を吐く。
ゲンハまでの距離はまだ遠い、しかしそれでも・・・ファントムの姿は見えない
それが逆に恐ろしかった、どこから狙われるのか?しかしそれでも直人は逃げなかった。


「俺のことか・・・」
玲二は仕方なく立ち止まる、確実に死角をついて逃げていたというのに。
チャンスはチャンスでもノーチャンスだったらしい。
さすがに巨大ロボには勝てない、そう判断した玲二は両手を掲げて彼らのもとへ向かった。
102HEART OF DARKNESS:04/04/23 18:46 ID:lW+YvsWY
「何だと!!それじゃあんたが純夏を攫おうとしたってのか!!」
「ああ、結果的に巻き込む形になってすまなかったと思っている」
武器を奪われ後ろ手に縛られたまましれっと答える玲二。
「この・・・!」
武は玲二に殴りかかるが、いとも簡単に避けられ、しかもそのみぞおちに膝蹴りが炸裂した。
「何で反撃するんだ・・・」
咳き込みながらしゃがみこむ武。
「俺にも引けない、そうしなければならない理由があった、だからこれは50/50だ」
無表情で武に告げる玲二。
確かにその通りだった。
一方はケルヴァンに接近することで、そしてもう一方は敵対することで明日を掴み取ろうとしてたのだ。
「話の途中だったな、まぁ遺言と思って聞け」
まな板の鯉とはこのことだろうか?いずれやってくるその時がついに来たのかもしれないな・・・。
そう思いながら、玲二もまたこの島で遭遇した出来事を、
そしてミュラたちから伝え聞いたことを武たちに語っていった。

「なるほど・・・あんたの言い分はわかった、けどな!」
武がS&Wを玲二に突きつける、しかし玲二は身じろぎもしない。
武の構えはまるで映画ヒーローみたいな構えだった。
それでは実際5M先の標的も命中できまい。
(こいつ二挺拳銃みたいな無茶してそうだな)
相手が相手だったこともあるが、これまで武がまるで戦果をあげられなかったのも無理はなかった。
「わかった上でやっているのか?」
「ああ・・・」

乾ききった震える声で応じる武、尊人たちは一歩も動けない。
これまでとは話が違う、今度こそ自分たちは最後の一線を越えてしまうのだ。
しかもいわば無抵抗の相手を・・・。
103名無しさん@初回限定:04/04/23 18:46 ID:9oE05l/I
施設から出て逃走した連中が何で施設内に戻ってるの?
しかも大分離れたところにいたやつらが。
104HEART OF DARKNESS:04/04/23 18:46 ID:lW+YvsWY
「わからないのか?純夏に手を出した時点であんたはもう俺たちに宣戦布告しているんだ!」
「だから俺を殺すのか?短絡的だな」
「あんたのような存在は・・・無用に争いを撒き散らす、だから死んでくれ」
確かに玲二の言い分にも一理ある、自分もどこかで歯車が狂っていれば同じ道を辿ったに違いない、
しかし武は思う、力のあるものがその力を思うがままに振るってもいいのだろうかと?
否であろう、武にとって玲二はそんな危険な存在に思えた。

「それにあんたの情報だけじゃケルヴァンが荷担しているっていう決定的な証拠にはならないんだよ」
確かにそれもそうだが、あまりにも好意的な見方だった、人は信じたいものを信じるのである。
「純夏を必ず助けてくれるとあいつは約束してくれている、戦う力も与えてくれた!」
純夏の存在がなければもっと冷静に話し合うことが出来ただろうに・・・。
少し離れた場所で二人のやり取りを見ていた冥夜は尊人に耳打ちする。
慧は動かない。
「そろそろ止めるぞ・・・万が一もありうる」

「だから俺はケルヴァンを信じる」
武は玲二から見ればなっちゃないとしか思えぬ体勢で改めて銃を構えている。
「できるのか?お前に・・・」
玲二の瞳が武を見据える。
「できる・・・俺は仲間を友達を守るためなら何だってできる!!」
「無理するな、お前に殺しは出来ない」
こいつもそうだ、強いやつはいつでも同じようなことを言う。
武はあのいけ好かない探偵を思い出していた。
「それにそれだけじゃないだろう?お前は憎しみと手に入れた力を使いたいという気持ちが先走っている・・・
 それを仲間のためだの友達のためだのと転嫁してるだけだ」
「お前らがこれから」
玲二は巨大ロボを見つめる。
「何をするのかは知らないが、憎しみの力を振るうことで、もしかすると今のお前と同じ存在を
 何人も作ることになるかも知れないんだぞ?お前に背負えるのか?」
105HEART OF DARKNESS:04/04/23 18:49 ID:lW+YvsWY
「もしお前が本当にそれでも正しいというのなら・・・これから先自分が行うであろう
 全てに責任が取れるのなら」

「俺を撃て」

あまりにもむごい質問だった。
それは玲二のような境遇だからこそ言えるのであって、自分の周囲で精一杯な一介の学生には
あまりにも荷が重すぎた。
「馬鹿にするなぁ!!」
そしてついに武の心のヒューズが飛んだ。
「やめよ!!」
冥夜の声とトリガーを引くのは同時だった、
破裂音と同時に銃弾は玲二の肩をほんの少しだけ掠めて彼方へと飛んでいった。
初心者にシングルアクションは無理な話だった。
頬にわずかに飛び散った血に武は金縛りにあったように動けない。
玲二の体から流れる血・・・それが初めての戦果…しかし喜びはなかった。 
「わかったか・・・・憎しみだけじゃだめなんだ」
確信めいた言葉で玲二はその場から一歩も動かず淡々と言葉を吐いた。
あたらないとわかっていて・・・卑怯だなと思いながら。

「おいゲンハ!行けるか?」
「なおと・・・世話ぁかけるなぁ」
「俺じゃない、俺たちだろうが、自分で言ったろ?」
青白い顔のゲンハを担ぎ離脱しようとする直人だったが、そのとき頬を掠める弾丸
ファントムか!?
あわてて左右を見渡す直人、見ると学生服の男が拳銃を持っている。
ファントムでない安堵に胸をなでおろす直人だが、次の瞬間踊らされた怒りが込み上げてくる。
反射的に直人はシグを抜き放つ
「あの野郎・・・置き土産だ!受け取れ!」
銃声がまた木霊した。
106HEART OF DARKNESS:04/04/23 18:51 ID:lW+YvsWY
「憎しみで・・・何が悪い」
武はまた銃を構える、ここで初めて慧が動こうとする、その時だった。
「危ない!!」
風切る音に玲二がいち早く反応する、狙撃だ!
縛られてた縄を振りほどき・・・(縛られて30秒後にはもう解けていた)
武を突き飛ばし覆い被さる玲二、それを驚きの表情でみやる武。
(何でだ!なぜ俺をかばおうとした、殺そうとしていたんだぞ!!)
だが悲鳴は別の個所からあがった。
「鎧衣!?」
本来武の頭に命中するはずだった弾丸は玲二が突き倒したお陰でねらいが外れ
そしてそれは背後のバルジャーノンに命中し跳ね返り、尊人の足に命中したのだった。

「尊人ぉ!!」
苦しみ暴れる尊人に駆け寄る武、玲二はすばやく銃を拾うと何発か打ち返す。
「どけっ!!」
反撃を終えた玲二が武を突き飛ばすようにして尊人の傷を確認する。
傷は太ももの付け根・・・出血がかなりひどい・・・。
「まずいな、おい運ぶぞ」
「あんたの指図は」
その前に武は殴り飛ばされていた。
「お前は言ったよな?仲間を、友達を守るために戦うんだろうが!!うろたえるな!」
その言葉ににらみ返す武だが、相手にするなという冥夜の言葉に従い
そのまま尊人を背負って建物の中に入っていった。
107HEART OF DARKNESS:04/04/23 18:56 ID:lW+YvsWY
それを追いかける玲二に慧がそっと声をかける。
「こんなときに言うことじゃないけど、縄、最初から解けていた」
ほうと玲二が賞賛の息を吐く、この子なかなかの観察眼だ。
「それに殺されそうになったのにそれでも白銀を庇おうとしてくれた」
「名前?教えて」
「吾妻だ、吾妻玲二」
「鑑を巻き込んだのは許せないけど・・・それでも吾妻を少しだけ信じても・・・いい」

その言葉で少しだけ救われたような気がした。

【白銀 武 マブラヴ age ○ サブマシンガン、ハンドガン、共に残弾0 招 】
(彼が作中で使用したのは玲二から取り上げた銃です)
【御剣 冥夜 マブラヴ age 状態 ○ 持ち物 刀 狩】
【鎧衣 尊人 マブラヴ age △(重症) ハンドガン(装填数 20発) 狩 】
【綾峰 慧 マブラヴ age ○ 弓 矢残り7本 狩 】

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、失明、瀕死)
 所持品:なし(玲二が回収)】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル 鉄パイプ・包丁】
 (すでに逃走しています)
【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明)】 
 
(コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2  暗視ゴーグルx2 火炎瓶x3)
(これらの所持品は現在武らが所持)


108葉鍵信者:04/04/23 19:13 ID:9oE05l/I
うお、出かける直前によってまた凄いのが。
取りあえず12時くらいまで何もできんから審議はだしとく。
『HEART OF DARKNESS』
明らかに場にいないキャラが何の説明もなしに
前の脈絡を無視して、いる事になっています。
せっかくの新書き手さんなのにぃぃぃぃぃぃ。
109葉鍵信者:04/04/23 19:15 ID:9oE05l/I
って、先に警告した時に名前忘れとったのに気づいた。
書いておけばもっとはやく気づいてくれたかもしれないのに_| ̄|=○
大丈夫だと思って、用事行く前の風呂入りにいっちゃったんだよな……。
110HEART OF DARKNESS:04/04/23 19:20 ID:lW+YvsWY
だれですか?それは修正できるならやります
111書生:04/04/23 20:39 ID:FHS7uFV7
『HEART OF DARKNESS』と『トラフィックス 3nd』を一端審議対象扱いで。
両作品で使用されているキャラクター

ゲンハ、直人、吾妻玲二、原田沙乃、ミュラ、リック、ケルヴァン、岬今日子、
鑑 純夏、白金 武、鎧衣 尊人、綾峰 慧、御剣 冥夜

を使用する作品、及びこれらに続く内容の作品を投下しないようお願いします。
『トラフィックス 3nd』、『HEART OF DARKNESS』の作者様自身が意見がある場合は、議論スレか書き手BBSに書き込みをお願い致します。
「許可できません」
「何だと…」
神風の投入を命令したケルヴァンだったが、その命令は部下によって却下される。
「我々としては、ここは一旦お戻りいただいた上でのご命令を頂きたいのです」
「ヴィルヘルム様も何やら動いている様子、まずはお戻りを」

ケルヴァンは考える、中央を落とされでもすれば元も子もない、それにケルヴァンもまた悪司らの投降には、
薄々ながら何か裏があると感じてもいた。
責任と画策、その両天秤でゆれるケルヴァンだったが、
「一度戻るしかないのか…」
やはりまずは立場を維持しなければ何もならない、後ろ髪を引かれる思いだったが、
最低限してやれることはしてやった、あとは連中次第だ。
いずれ改めてコンタクトを取るしかないだろう、ともかく戻ればまた来ることもできるのだ。
「わかった、山本悪司らのについての1件をまずは優先しよう、その後改めて再編成および対策を考える」

それだけを告げて通信を切ると、もうケルヴァンは振り向かなかった。
武に殴られた頬がまた痛んだ。

少し時間が遡る。

「離してぇ!離してよう!!」
気絶から覚めてミュラの腕の中で暴れる純夏、彼女は見かけによらず腕っ節は強い、
しかもめちゃくちゃに暴れるものだから、
沙乃にミュラと、二人がかりでも取り押さえることは容易ではなかった。
気絶させるのは簡単だったが、誘拐の負い目があるので、もうそこまでの強行手段はとりたくはなかった。
「これ以上近づいたら、撃つからね」
強引に二人を振り解いた純夏は震える手でハンドガンを構える、だが言葉だけなのは明白だった。
「任せて」
そういうとミュラは自分の危険も省みず、刀を納めると無防備をアピールするために両手を広げ沙乃の前に立つ。
「あのね…私たちは」
ミュラは誠心誠意純夏に聞かせた、自分たちのことや、その目的を…。
その様子を沙乃は感嘆の眼差しで見る、この女性はどうしてこれほどまでにたくましく、そして優しいのだろうか?
その強さは母のごとき愛を彷彿とさせた。

「あなたをさらってしまったのは、私たちの力が及ばなかったから、ごめんなさい」
ミュラはそういうと純夏に頭を下げる。
その微笑みと率直な態度に純夏の頑なな態度も氷解していく。
「じゃあ、タケルちゃんの所に返してくれるの?」
「もちろんよ、さぁその銃は危ないからしまいましょうね」
ミュラはそっと手を差し伸べる、純夏もそれに応じようとした時だった。
バスっ!!
渇いた破裂音が周囲に木霊する。
彼女はうかつにも、いやもしかすると最初からかもしれなかったが…銃の安全装置をはずしたままだったのだ。
決して故意ではない、しかし暴発した弾丸を食らったミュラの体がふらりとよろめき、
そしてその背後の急勾配の坂を転がり落ちて行く。
何も出来なかった、純夏はもちろん沙乃までも…ただ転落するミュラの姿を見ていることしか出来なかった。

「どういうつもりよ!この嘘吐き!」
先に金縛りが解けたのは沙乃、彼女には純夏が不意打ちを食らわせたとしか見えなかった、
そしてそれは彼女にとって、もっとも憎むべき、恥ずべき行為に他ならなかった。
「ち…ちが」
純夏はもちろん弁明しようとする、そんなつもりじゃないと、しかし言葉は出てこなかった。
憤懣やるかた無い沙乃、今すぐにでも斬り捨ててやりたいが、ミュラの方が心配だ。
「沙乃は許さないかんね!あんたなんか死んじゃえばいいんだから!」
そう吐き捨てると、沙乃もまた転がるように坂を下っていった。

残された純夏はうわ言のように呟きを繰り返す。
「わたっ…わた、わたしぃ…」
自分が人殺しになってしまったという事実、しかも自分を助けようとしてくれた人を殺してしまったという事実、
その2つが純夏を責め苛んでいた。
「どうしよう…私、人殺しになっちゃった…」
目に見える光景全てが色あせて見える、もうあの頃には…帰れない、無論…武の元にも。

「死んじゃえばいい…か…」
それが一番いいように思えた…、少なくとも間の悪い自分に彼女はほとほと嫌気が差していた。
「タケルちゃん…さよなら」
それだけを口にすると、純夏はそのまま何処かへとあてもなく向かおうとしていた。

「生きてる…」
ミュラは信じられない様子で自分の身体を眺める。
弾丸はミュラの着用してる胸甲にめりこみ停止していた、まさに幸運としかいえなかった。
(あの子はこれで人殺しじゃなくなるわ)
もっとも衝撃のあまり、しばらく呼吸することはできなかったが。
そこに沙乃が息を切らしてやってきた。

「あの子、悪気はなかったのよ…許してあげましょう」
ミュラの第一声はそれだった、その言葉を聞いて沙乃は改めて決意する、この女性を死なせてはならないと。
「行かないと…」
無理を押して立ち上がろうとするミュラ、せめてそのタケルとやらに事情を説明しなければ申し訳が立たない。
だが、みぞおちに当身をかまされて倒れ伏せるミュラ。
「ごめんなさい、沙乃は賛成できないわ…あんな卑怯者の心配なんかしてやる必要なんかないんだから」
そう呟くと沙乃はミュラの身体を担いでその場を去っていった。
「おい!行き止まりだぞ!!」
建物からようやく離れた、未だ逃走中のリックと玲二…その目の前にあったのは逃走を阻むようなフェンスだった。
ここまで来たというのに…。
追っ手が迫っている、どうやら自分たちに引き寄せられてきたらしい。
「二手に分かれるぞ、武器をよこせ!」
リックは玲二の持つ戦斧を玲二はリックの担ぐ人質を、それぞれ背中越しに瞬時に容れ更える。
両手がふさがっていては斧は使えないが、拳銃なら片腕でも撃てる…それゆえの判断だった。

「生き残れよ!」
2人は同時に叫ぶそのまま正反対の方向に走った。

迂回するようにまたもとの方向に戻り、建物の中を突っ切った玲二がようやく振り帰ると、
背後につけていた追っ手はすでに見えなかった。
どうやらリックがすべて引きうけてくれたようだ。
(生き残れよ…)
それだけを心の中で呟くと玲二は再び先を急ごうとする。
そこで始めて背中に背負う人質が気になり出す。
「なんだこいつは?」
それはケルヴァンではなかった、暗視ゴーグルを被ったアフロの男だった。
「何もみえねぇ…みえねぇよお…」
男はうわ言のように苦痛のうめきを繰り返している、おそらくグレネードの光を直接見てしまったのだ。
(そりゃ暗視ゴーグルをつけてちゃなぁ…)玲二といえども同情せざるを得ない。
おそらく男の網膜は完全に灼けてしまっているだろう。

いずれにせよこいつには用は無い、黙らせるためにもう一度当身を食らわせる、その時だった。
上空から轟音が響く。
自分の周囲を覆う影に、それが巨大な何かがだということを玲二は即座に理解した。
素早く男を自分の視界内の物陰に転がすのと、その何かが着地するのとは同時だった。
「なんで…なんでファントムまでいやがるんだよ!!」
足元には死体が転がっている、彼とて侵入者の一人である、そのどさくさで見失ってしまった標的を、
施設をさまよう中でまた見つけたのは良かったが…。
直人は物陰に潜みながら、小声ながら思わず叫んでしまう。
英才教育によって生み出された最強最悪の暗殺者…闇社会との癒着が深い勝沼グループの中枢にいたがゆえに
またインフェルノの力が衰えたがゆえの情報漏れもあり、直人もその存在を知っていたのである。
(引退したとか聞いてはいたが…)
しかし今、視界にとらえるその姿は紛れも無く本物、自分など足元にも及ばぬまさに本物の殺しのプロだった。
ゲンハの姿は見えない、だが近くにいることは確かだ。
しかし助けるには…ファントムを最強の暗殺者を向こうにまわさねばならない。
絶対不利の中、だがそれでもゲンハを見捨てるという考えは直人にはなかった。
(何とかしてやる…何もできなくても何とかは必ずしてやる…でなきゃ俺の中の誇りが、掟がゆるさねぇんだ!!)

「口惜しいわ…」
無貌の神は歯噛みする、宿主の力を上手く使えなかった故にむざむざ逃してしまった。
それはともかく、無貌の神は気持ちを切り返る。
「食事の時間としゃれこむか」
無貌の神は先ほどわずかだが刃を交えた男を思い出す、なかなかの魔力の持ち主。
この憂さを晴らすには、まさにふさわしき獲物といってもいいだろう。
「さてと、あの男の魔力を頂きに参上仕るとするか」
【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態△(裂傷多数、背中に深い刺し傷、失明、瀕死)
 所持品:なし(玲二が回収)】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル 鉄パイプ・包丁】

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2  暗視ゴーグルx2 火炎瓶x3】
【原田沙乃@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼(現在は狩) 状態○ 所持品:十文字槍 食料・医薬品等】
【ミュラ@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:長剣 地図】
【リック@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:戦斧 食料・医薬品等】

【鑑 純夏 マブラヴ age 状 ○持ち物 ハンドガン 装填数19発 狩】
【岬今日子@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○所持品 永遠神剣第六位『空虚』(雷撃2発分の魔力)】
【ケルヴァン:所持品:ロングソード 地図 状態△(魔力消耗) 鬼】

(仲間という名の利害関係の直前および直後)
「うう……」
リックの背中に背負われたゲンハが呻き声を上げる、まだ意識は明瞭ではないようだが。
もう大分施設から離れたようだ。
霧のどさくさのおかげで、追っ手も自分達を把握できなかったらしい。
地面に腰を降ろし、一呼吸入れる二人。
その二人の目に映ったのは、勿論暗視ゴーグルをかけたゲンハだ。
「ケルヴァンじゃなかったか……」
リックが落胆の声を上げる。
「だが、重要施設?にいた兵だ、きっと何かしらの情報や鍵を知っているはず」
ゲンハは、暗視ゴーグルをかけていたために、先と同じ兵に間違われた。

「おい、あの施設は何だったんだ?あそこで何があった?」
直球で玲二が問いただそうとする。
「し、しらねぇ……しってんのはあの髪の長い姉ちゃんこそ真のくろまく……」
そこでゲンハの意識は再び闇に陥る。

2人はその言葉の意味を考える。
「俺達の知ってる限りでは、ケルヴァンが現場を担当する将軍で、
一番トップに立つのがヴィルヘルムだったらしいが……。
「まさかあの施設にそれ以外の黒幕がいたというのか?」
「いや…いたというよりこれから来るのかもしれない…」
ケルヴァンの隣で談笑していた2人の少女に関しては、両者の態度から見て、
おそらく彼の言う黒幕ではないだろう。
だとすればここは秘密の会見場かなにかか?
いずれにせよ、こうなればもう少し調べるのもありだろう。
「ちょっといいか、リック?」
「なんだ?」
「お前は、このまま集合地点にいって沙乃達と合流してくれ」
「そっちはどうするんだよ?」
「俺は、こいつを連れてあの施設に潜入して情報をもっと探ってみようと思う」
「……解った、この作戦の大将はあんただ、けど探りに行くだけだぜ? 絶対に戦闘をしようとしないでくれ。
それと最初の約束の時間は守ってくれ」
「解ってる……」
玲二はリックに戦斧を。
リックは玲二にゲンハを受け渡す。
「気をつけてな!」
そして、2人は互いに別方向へと走り去っていった。

こうしてまた施設に再侵入した玲二だったが、背中に担いだゲンハのうわ言にまた愕然とする。
「見えねぇ…何も見えねぇ……」
(暗視ゴーグルをつけたままだったのか…)
玲二といえども同情せざるを得ない。
おそらくグレネードの光を直接見てしまったのだ、男の網膜は完全に灼けてしまっているだろう。
(ということは…オイ)
目が見えなければ確認のために連れてきた意味が無い。
となればもうこいつには用は無い、黙らせるためにもう一度当身を食らわせる、その時だった。
上空から轟音が響く。
自分の周囲を覆う影に、それが巨大な何かがだということを玲二は即座に理解した。
素早く男を自分の視界内の物陰に転がすのと、その何かが着地するのとは同時だった。

「なんで…なんでファントムまでいやがるんだよ!!」
休憩していた彼らに追いついたのは良かったが…。
直人は物陰に潜みながら、小声ながら思わず叫んでしまう。
英才教育によって生み出された最強最悪の暗殺者…闇社会との癒着が深い勝沼グループの中枢にいたがゆえに
またインフェルノの力が衰えたがゆえの情報漏れもあり、直人もその存在を知っていたのである。
(引退したとか聞いてはいたが…)

しかし今、視界にとらえるその姿は紛れも無く本物、自分など足元にも及ばぬまさに本物の殺しのプロだった。
ゲンハは玲二に担がれ、再び施設の方へ戻っていく。
しかし助けるには…ファントムを最強の暗殺者を向こうにまわさねばならない。
絶対不利の中、だがそれでもゲンハを見捨てるという考えは直人にはなかった。

(何とかしてやる…何もできなくても何とかは必ずしてやる…でなきゃ俺の中の誇りが、掟がゆるさねぇんだ!!)
121潜ミ休ム:04/04/25 10:14 ID:Imfyzz8w
 「どうしろって言うんだ、これで……」
 場所は、中央要塞の隅に位置する独房室。
 中で双厳が喚く。
 「まぁ、何かあるとは思ってはいたがな……」
 多少、生気が戻ったのか気が楽になった十兵衛。
 あの後、彼らは、無影の呼んだ専用の兵に連れられ中央に案内された。
 ケルヴァン直属の兵の方も、無影に頼まれたとはいえ、害意の方が明らかである彼らをどうするべきか悩んだ。
 だが、敵意があっても協力をしているものは既に何人かいる。
 結果、敵意ははっきりと感じ取れたが、ケルヴァンとの無影の間の約束という事で中央へ入れる事は決めた。
 他の者だったら、思慮深いケルヴァンの命令だ。
 確実に殺されていただろう。
 中央に入れるに当たって、彼らは幾つか条件をつけられた。
 一つ目は、無影は名前通り影として動いてる為、彼の仲間であるのは他の者へは秘密である事。
 この事を知るのは、ケルヴァンの部下でも和樹やギーラッハ、この兵を含めても数人もいない。
 二つ目は、元々の約束が双厳は確保するとの事だったので、周囲の目のためにも他の者のような部屋は与えれない。
 三つ目は、ケルヴァンから何かしらの指令が届くまでは部屋で待機。
 もしもの場合は、護衛を伴う事。
 以上、三つを約束付けられていた。
 その結果が、牢屋よりはマシなこの独房である。
 「入り口は頑丈な鉄壁。 いちかばちかで斬鉄でもやってみるか?」
 十兵衛が冗談交じりに言う。
 「馬鹿言うな、さっき薬を貰ったとはいえ、まだ動くには早い」
 一杯の水。
 怪我を負った三人の中でたった一杯だけの治癒の水が与えられた。
 この対応には、不服であったが、貰えるだけましである。
 重傷度の高い十兵衛が半分を、残りを命と蓉子が分け合って飲んだ。
 おかげで、十兵衛の出血は止まり、青ざめていた顔の血行は大分良くなった。
 命の方も出血や傷口の化膿は回避されたようだ。
 蓉子の方も一応骨がついて動くようにはなったらしい。
 双厳は、「生かさず殺さずかよ」と皮肉を垂れていたが……。
122潜ミ休ム:04/04/25 10:15 ID:Imfyzz8w

 その後、彼ら四人は、男と女で別けられて二部屋の独房に入れられた。
 「そういえば、さっきあの兵が言っていたが俺達以外にも中央に来たのがいるらしいな」
 話題を変える為に十兵衛が切り出した。
 だからこそ、彼ら四人は、無影の守秘の為、そして万が一の為に今の待遇を受けている。
 「完全に従う意思だったやつらに何の期待ができるんだ?」
 悪司達は、マークされてるとはいえ、検問を正式に突破したのだ。
 「……そうなると後は無影がどう動くかだが」
 「あいつが仕事を早く終わらせれば、俺達も帰してもらえるか……」
 「そうだ。 その場合、俺達も協力した方が彼等の目的が早く終わるのは間違いないな」
 「癪だな……。 それに可能性があるだけだろ?」
 「一番上は、そのケルヴァンではないらしいしな。
  やはり、ここは頂点に立つのに交渉するか、無理なら実力行使がいいんだが……」
 「お前が赤子のように扱われたあの剣士より遥かに強いらしいが?」
 「それが問題だな……」
 少なくとも今の戦力で、手持ちの装備で勝てそうな相手ではないらしい。
 これはあの無影のお墨付きだ。
 どうにでもなる相手なら、あいつなら「殺しに行こう」と言う筈である。
 更に敵の本拠地真っ只中である。
 逃走経路、1:複数を作り出す作戦、他の兵への対処。
 問題は山積みである。
 「寝るか」
 十兵衛が言った。
 「そうだな……。 まずは寝て体力を整えて、それからだな」
 「俺達にはあまり時間はない。
  かといって、焦って事を仕損じる何てのも持っての他だ」
 そう言うと十兵衛は、カンカンと壁を叩き始める。
 「何してるんだ?」
 十兵衛の不可解な行動に双厳が疑問を抱く。
123潜ミ休ム:04/04/25 10:16 ID:Imfyzz8w
 「隠密に使う暗号会話だ。
  今さっきの会話を伝えようと思ってな」
 十兵衛達は知らないが、モールス信号みたいなものである。
 「外の兵にばれないか?」
 「貧乏ゆすりくらいにしか思われないだろ」
 「で、届くか?」
 「駄目元だ」

 カンカンカン……。
 知ったものからすれば、規則性のある音が響く。
 「これは、暗号……?」
 「どう言うことだ?」
 蓉子が命へと尋ねる。
 「柳生が使う隠密の暗号会話の一つです。
  待っててください、今聞いてる所ですから……」
 やがて、壁から響いていた小さな音が絶える。
 「で、どんな内容なのだ?」
 言われるまま、黙っていた蓉子が口開く。
 「『寝て、体力を回復させろ。
   その後で考えて動こう』
  だそうです」
 「そうだな……。
  確かに安易に行動を起したのでは、事を仕損じる。
  ならば、万全の状態にしてから機会を伺うというわけか……」
 「ええ、今、合図を返しますから……」
 (うう、双厳と離れ離れかぁ……)
124潜ミ休ム:04/04/25 10:17 ID:Imfyzz8w

 「お、返ってきたな」
 十兵衛と双厳の部屋にカンカンと小さい音が響く。
 「『了解』だそうだ。
  また短い返答だな」
 「じゃぁ、寝るか?」
 「そうするか。 が、お前と寄り添うのは勘弁だ」
 「そりゃ、俺もだ」
 それだけ皮肉が言えれば十分と双厳は苦笑いしながら言った。

【双厳@二重影(ケロQ)状態○ 装備品 日本刀(九字兼定) 狩】
【命@二重影(ケロQ)状態△) 装備品 大筒 煙弾(2発) 通常弾(9発) 炸裂弾(3発) 狩】
【柳生十兵衛@二重影(ケロQ)状態△(左腕欠損、貧血気味) 装備品 日本刀(三池典太光世) 狩】
【皇蓉子@ヤミと帽子と本の旅人(オービット)状態△(接合したが左腕の骨は不安定) 
装備品 コルトガバメント(残弾16発)マガジン×2本 クナイ(本数不明) 招】
【行動方針:体力回復後、行動開始】
時間、ウェイトレスは振り向かない〜
125葉鍵信者:04/04/26 20:59 ID:9nzpBLko
『トラフィックス 3nd』、『HEART OF DARKNESS』
規定通り、三日経っても問題解決されたとみなされず、自動削除となりました。
これに代わる話の投下は、これより24時間後となります。
126想い抑える者、願い叶える者:04/04/27 00:45 ID:0SBbXro5
 初音の姿が見えなくなり、アルは溜息をつく。
(あの様子だと……いや、考えすぎであろう)
 しかしアルはどうしても先程の初音の言葉に深い意味を感じずにはいられなかった。
(あまり長い間留守にされても困るのだぞ……)
 アルの後ろに誰か立つ気配がする。
 誰かはわかっているので振り向いたりはしない。
「行ってしまったんですね」
 乃絵美の声には不安の色が浮かんでいた。
「あの者がいなくなって不安か?」
 アルとて十分護衛としての役割は果たせるのだが、自分が他人からどう見えるかという事は九郎の知り合い達の反応から学習している。
「そうじゃないんです。何か大事な事で、どうすればいいのか迷ってる感じがして……
 でも私はあの人の事をよく知らないから、何も言ってあげれませんでした……」
 乃絵美は元来体が強くはないのだろう。房中術で呪縛こそ解けたものの体調は良くないようだった。
「初音が帰ってくるまでに、しばらくかかるであろう。汝も休んでおいた方がいい」
「そうですね……そうします」
 奥に向かう乃絵美の足音を聞きながらアルは呟く。
「……意外に汝のような普通の人間が、初音を闇の底から救えるのかもしれぬな」


 これは夢なんだろうか?
 違う。
 何より私が望んだことが現実になった。そう──間違いなく現実だ。
 孝之の子を宿した。そして孝之が私の物になった。もう誰にも渡さないで済むのだ。
 あの数年間眠っていただけの女──遙にも渡さないで済む。
 今孝之はどこにいるのだろう?
 一秒でも一瞬でも早く会って伝えたい。

 あなたの子がお腹にいる、これからはずっと一緒だ。
 もう───こんな女なんかに義理を通す必要はない。

 これを言ったら遙はどんな顔をするだろう?
127想い抑える者、願い叶える者:04/04/27 00:46 ID:0SBbXro5
 見苦しく同情を引こうと泣き喚くだろうか? それとも自分が何もしなかった事を棚に上げ私を罵倒するだろうか?
 それとも……これこそが私が望んでいるものかもしれない。

 現実に耐えられず再び夢の世界に旅立ってしまうだろうか?
 それでもいいと思う。
 只でさえあの女はメルヘン世界の住人のような思考回路を持っているのだ。
 だったら再び夢の世界に旅立ったとしてなんの不都合があるだろう。

 孝之の傍に一秒でもあの女が長くいるのが気に食わない。
 でもあせる必要はないのだ。
 だってもうあの女が何をしても孝之は私の物なんだから。


 カラーン、コローン、カラーン、コローン。

 洞窟に足音が響く。
 破滅を防ぐ為に人を破滅させる者の足音が。
「あ、あなた達は……!」
 乃絵美は湧き上がる恐怖を必死で抑えながら、後退する。
「下がれ」
 乃絵美の様子から相手の正体を見取ったアルが乃絵美の前に立ち塞がる。
 侵入者達は独り言を呟き続ける水月の横を無言で通り過ぎ、アルと睨みあう。
「娘、また逢うたな」
 乃絵美はその声に萎縮してしまい、完全に足が止まってしまう。
 アルと初音が最も警戒していた人物──赤い爪の童女が目の前に居る。
「ネクロノミコン、我等と共に来て貰うぞ」
「汝と? 冗談にも程がある。あのような悪趣味な魔術を使う者に協力する道理はないわ!」
 アルの手には魔力の塊が、蔵女の手には赤い爪がちらつき互いに一歩も退かない。
 両者共に戦闘態勢である。
 だが互いに動けない。
(あの魔力……まともに受ければ今の状態ではひとたまりのないの)
(あの爪……威力自体は大した事はないが、食らえば自意識が消える……実質的に死するのと変わらぬ)
128想い抑える者、願い叶える者:04/04/27 00:47 ID:0SBbXro5
 共に一撃必殺の状況で睨み合う。

(なんとかしないと──)
 もし、アルが負ければ乃絵美は再びあの爪を突き立てられる……だが今の彼女を動かすのはそういう恐怖ではない。
 乃絵美にとってこの戦いは勝ちとか負けとかいった問題ではなかった。
(こんなの……やめないと! 止めないと!)
 乃絵美には他人を押しのけてまで一つの物、一人の人が欲しいと思った事はない。
 それ故なのか人と何かを巡って争った記憶が乃絵美にはない。
 戦わなくても、争わなくても解決出来る方法はあるはず……
 乃絵美の目に複雑な表情を浮かべる葉月の姿が映る。
(あの人は……あの時はあの子を止めようと……)
 思い出す、着物の少女が自分に爪を突き立てる瞬間にあのセーラー服の女性が止めに入った事を。
 今、葉月がしているのはあの時と同じ表情だと……葉月の方も乃絵美の視線に気付く。
「……止めれないんですか?」
 乃絵美の言葉に葉月は一層表情を強張らせる。
「これは必要な事だから…僕からはごめん、としか言えない」

 今この場でもっとも蔵女を止めたいと思っているのは他ならぬ葉月なのだ。
 だが同時にこの作戦の重要性を理解しているのも葉月である。
 かつて葉月が初美と共に暮らしていた世界は一度乱入者により崩壊した。
 気が進まないまでも今回の役目を引き受けたのは、他の世界をあの二の舞にしてはいけないという想いからであった。
(僕にこんな役目をやらせるなんてね……リリス、君を恨むよ)
 葉月は覚悟を決めた。

(なに!?)
 それまで蔵女の後ろで傍観者に徹していた葉月が動く。
 ゆっくりと一歩づつアルの手の中の魔力弾を警戒しながら……その動きは常人にしては見事だと言わざるを得ない。

 側面から徐々に迫る葉月にアルの注意が逸れる。

 当然、その機会を見逃す蔵女ではない。
「ただ己に正直になるだけの事、臆する必要はない」
129想い抑える者、願い叶える者:04/04/27 00:48 ID:0SBbXro5
 軽く一歩を踏み出す。
 当然、これは牽制の為の動き。
 アルとは距離が離れ過ぎていて、もう少し近づかなくては間合いに届かないのだ。

 蔵女は葉月に合わせながら前進する。
「諦めた方がいいのではないか? 同時に二人を相手にはできんであろう」
 アルは蔵女の言葉を鼻で笑う。
「妾にもマスターの諦めの悪さが移ったようでな」
 彼女なりの強がりか、それとも初音が帰って来るまでの時間稼ぎか……
(見せて貰おうではないか、その諦めの悪さという奴を!)
「行くぞ!」
 掛け声と同時にアルに向かって蔵女と葉月が飛び掛る。

 アルの手の中の魔力弾が消滅する。
 撃ったのではない。
 アルは貯めていた魔力を体内に戻し、一気に変換する。
「アトラック=ナチャ!!」
「む……!」
 蔵女は糸状の魔力に絡め取られ突撃した勢いのまま転倒する。

 マギウスのいない彼女がそれを使用するには、溜め時間が必要だ。
 それでも九郎がいる時とは桁違いに範囲は小さい。
 だから身を危険に晒してでも二人が近づくのを待たねばいけなかったのだ。
 アトラック=ナチャの特性を一番知っているアルだからこそ今の一撃に自信を持って運命を賭ける事ができた。
 だが、アトラック=ナチャの特性から言って最もありえない事態が起こる。

「───はぁぁぁぁあああああああ!」
 気合一閃。
 葉月の刀がアトラック=ナチャの糸を切り裂く。
「なっ──!」
 圧倒的強度を誇るアトラック=ナチャの糸が斬られる事を誰が予想出来ようか。
130想い抑える者、願い叶える者:04/04/27 00:49 ID:0SBbXro5
「……終わりだ」
 葉月は有無を言わせずアルに峰打ちを見舞う。
「くっ…く…ろう……」
 アルはそのまま意識を失った。

「葉月、相手がお主でなければ間違いなくこの娘の勝ちであったの」
 アルが意識を失った事により、糸の束縛が解けた蔵女は体の調子を確かめるように腕を回す。
「……問題ないか。さて、残るは……」
「……!」
 蔵女の視線の先には乃絵美。
「……やめておいた方がよさそうじゃな。どうにもこの世界では成就せぬ願いのようじゃ」
 乃絵美と葉月が息をついたのも束の間
「ただこちらは娘はそうではないようだの」
 水月に赤い爪を突き立てた。
「蔵女! 君は……!」
「目的は達した。行くぞ、葉月」
 蜘蛛がいつ帰ってくるかわからない以上、なるべく素早く撤収しなければいけない。
 葉月の返事も待たず、大きさが同じ位あるアルを背負って蔵女は歩き出した。
「いつも勝手だね……僕らも行くよ」
「え!?」
 突然葉月に手を引っ張られ、乃絵美は困惑気味だ。
「ここにいる事が安全だとは思えない。この場所の持ち主は恨みを多く買っているようだからね」
「でも」
 葉月は乃絵美の声を遮り、誓いを籠めて宣言した。
「大丈夫だ。もう君にも……他の誰も蔵女に手を出させたりしないから」
 乃絵美の手の震えが治まる。
「分かりました。あなたを……その目を信じます」
 葉月は力強く頷くと
「君も……」
 その言葉は水月に向けられたものであったが、水月の姿は既に洞窟内からは掻き消えていた。
131想い抑える者、願い叶える者:04/04/27 00:51 ID:0SBbXro5


 孝之……私だけの孝之。
 私がいないと寂しいでしょう?
 待っててね、今から会いに行くから。
 そしたら勘違いしてるあの女───遙の前で言ってちょうだいね。
 私以外あなたの傍には必要ない、遙は必要ないって。
 それでも分からないようなら……目の前で見せつけてあげましょうね。
 あなたの気持ちよくなる所、あなたの好きな所、私は全部知ってるんだから。

 直ぐに行くからちゃんと待っててね。
 私だけの孝之……
  

【アル・アジフ@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 招 状態×(気絶) 装備品 ネクロノミコン(自分自身)】
【伊藤乃絵美@With You〜見つめていたい(カクテルソフト) 狩 状態○ 装備品 ナイフ】
【蔵女@腐り姫(ライアーソフト) 招 状態△(力半減。左肩銃創、呪詛返しの影響で傷口拡大) 装備品(能力)赤い爪、通信機、ネクロノミコン(アル・アジフ)】
【葉月@ヤミと帽子と本の旅人(オービット) 招 状態○(力半減) 装備品 日本刀】

【速瀬水月@君が望む永遠(age) 狩 状態○(赤い爪の呪縛) 装備品 スナイパーライフル】
【行動方針:孝之、今すぐに会いに行くから待っててね……】
(時間:進むべき道と同時刻)
132タイムリミット:04/04/27 03:05 ID:0SBbXro5
「総帥様とやらは環境意識が足りないな」
 建物内部のうんざりする量の書類と格闘しながら、小次郎はぼやいた。
「いや、もしくは巨大なコンピューター業界の謀略に嵌るのがそんなに気に食わないかのか……」
「紙媒体はセキリュティの観点から言えば理想的ともいえるわよ」
 建物内部に踏み込んだ二人が始めた事は、施設に残された書類から有用な情報を探す作業である。
 かといって当然ヴィルヘルムが電子媒体にそういった情報を保存する訳がなく……
「これだけ漁って収穫はなしか」
 芳しくない成果に溜息をつく。
「まさかこの建物自体、巨大な犬小屋ってオチじゃないだろうな……」
「……あまり考えたくない可能性ではあるわね」
 結構な時間書類の山と格闘を続けているが、こうも情報が得られないと頭ごなしに否定も出来ない。
「そろそろ逃げた方がいいだろうな。距離からして敵が来ても不思議じゃない」
 エレンが弾き出した地図上の距離から計算して、中央から兵を向かわせればそろそろ到着する時間である。
「そうね。……ここがいいか」
 入り口のドアにナイフでメッセージを残す。

『ここには何もない 江蓮』

 これは玲二に当てた伝言だ。
 場所まで記さなくても玲二ならば雨でぬかるんだ地面の足跡を追跡して自分を追って来れる。
 だが、それは同時に招かれざる者も呼び込む危険を孕んでいる。
(中央に従えば安全は保障する……信用したいものね)
 エレンにすれば、中央に従っても構いはしないのだ。
 只、向こうがエレンを必要とするかどうかと、玲二がいる事が条件ではある。
 そして……おそらく後者の条件が充足される事はないであろう事もまた分かっているのだが。

「プリン、遠足は終わりだ」
 プリンは小次郎の言葉に反応する事無く、窓を双眼鏡で覗き込んでいる。
「そんなに双眼鏡を見るのが楽しいのか、お前は……」
「うん……」
133タイムリミット:04/04/27 03:06 ID:0SBbXro5
 まだ出会って一日も経ってはいないが、小次郎もプリンの反応には慣れたもので強引にプリンを背負う。
「小次郎、先に出て」
 エレンの仕草から何をするか察した小次郎は外に出ると近くの木陰に身を潜めた。

 エレンは射程距離ギリギリ、ドアを閉まらないように固定して部屋の外から装置を撃つ。
 危惧したような爆発はなく、鈍い音を立てて装置はその動きを停止した。
「これでいいわね」
 発電装置(エレンと小次郎にはそうとしか見えなかった)さえ破壊しておけば建物の機能は失われる。
 この施設の役割を知りたくはあったが長居して命を危険に晒したのでは元も子もない。
 エレンはしっかりとした足取りで建物を後にした。

 エレン達が去った後、建物に近づく影があった。
 ユプシロンである。
 ナナス達の方を迎撃していたのでこの場所から距離があったのと、
ユプシロン自体の重量がぬかるんだ地面を移動する速度を低下させていた。
 その結果、結界装置の破壊を許してしまった。
 当然このままにして置く訳にはいかない。
 ユプシロンはエレン達の逃走経路を予想し、追跡しようとするがエレン達の行く先は外周沿いにある街である。
 ナナス達の時同様追跡は不可能であった。
 仕方なく、ケルヴァンに伝令を出すと再び哨戒任務に戻るのだった。


「蔵女か? 何のよう……ああ? ちょっと待……あの餓鬼、切りやがった!」
 突然入った通信に出た小次郎だが、通信時間は僅か5秒に満たないものであった。
「どうしたの? まだ定時連絡には早いけれど」
 半ばやけくそになりながら小次郎はエレンに答える。
「要件は言わずに話したい事があるからさっきの街でだとよ……罠じゃないといいけどな」
「罠だとしたらいくらなんでも見え透いているわ。……あの子には出来ればプリンを預かってもらいけどね」
 どうもプリンが一緒にいると行動に制限が大きい。
 フットワークを軽くする為に軽装備なのにも関わらず、プリンという大きな荷物があるのでは意味がない。
 蔵女の戦闘能力はエレンが身を持って体感している。
134タイムリミット:04/04/27 03:07 ID:0SBbXro5
 蔵女ならばプリンを預けても守りきってくれるだろう。
「話すだけ話してみるしかないわね……」

「葉月、話がついた。行くぞ」
 蔵女は意気揚々として街への道を歩き出す。
「話って……一方的に言うだけ言って切った気がしたんですけど……」
 乃絵美の言葉に葉月は気にしてもしょうがないと答える。
(主催者側ではない人間にネクロノミコンを預け、戦力を強化して戦いを加速させる……あまり褒められた事じゃないね)
 直接的に手を下さないにしろ、間接的に人を殺すのは否めない。
 しかしこれが蔵女と話した結果の妥協点。
 葉月はネクロノミコンが持ち主の手に戻りこの宴を終わらしてくれるのを願うばかりだった。

【エレン@ファントムオブインフェルノ(ニトロプラス)招 状態○ 装備品 ベレッタM92Fx2 ナイフ 結界装置の設計図】
【天城小次郎@EVE〜bursterror(シーズウェア)狩 状態○(右腕が多少痛む) 装備品 食料 水 医薬品 地図 通信機
 カセットレコーダー(無影とケルヴァンの会話及び魔道学会員Bとの会話録音)】
【プリン(名無しの少女)@銀色(ねこねこソフト)? 状態△(片足の腱が切れている) 装備品 赤い糸の髪留め 双眼鏡】
【行動目的:街に向かって蔵女達と合流、プリンを預けたい】

【アル・アジフ@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 招 状態×(気絶) 装備品 ネクロノミコン(自分自身)】
【伊藤乃絵美@With You〜見つめていたい(カクテルソフト) 狩 状態○ 装備品 ナイフ】
【蔵女@腐り姫(ライアーソフト) 招 状態△(力半減。左肩銃創、呪詛返しの影響で傷口拡大) 装備品(能力)赤い爪、通信機、ネ

クロノミコン(アル・アジフ)】
【葉月@ヤミと帽子と本の旅人(オービット) 招 状態○(力半減) 装備品 日本刀】
【行動目的:街に向かってエレン達と合流、アルを預けたい。その後休憩】

【闘神ユプシロン@ランス4(アリスソフト) 鬼 状態○ 装備品 通信用水晶球】

(西の結界装置破壊)
(時間:想い抑える者、願い叶える者後〜)
135這いよる混沌:04/04/27 05:15 ID:4zdLt4qZ
「こちらです」
 大十字九朗は凶アリアに案内され、今、一つの部屋の前までやってきていた。
「個室? 俺一人に対してこんな部屋与えてたら、部屋の数がいくつあっても足りないよな」
 九朗の口から思わずそんな言葉が漏れる。
 泰子の部屋を出てからというもの、とはいっても数分でしかないのだが、その間凶アリアは無言。
 やっと会話が出来そうな話題が出来たのだ、軽口の一つも出るというもの。
「ええ、足りません。それが何か?」
 しかし凶アリアの返事は素っ気無い。
「あ、ああ、やっぱり足りないのか……。なら、いいのか? 俺がこの部屋を使っても」
 凶アリアが九朗の方へ視線を向ける。
「私はあなたの身柄をドライさんから頼まれましたが、泰子さんと同じ部屋に一緒にいさせるわけにもいきませんし。
 それに貴方の身体も見かけよりも悪い、違いますか?」
「……なるほどね。やっぱばれてたか」
 苦笑しながら九朗が呟く。
 凶アリアは一度だけ大きくため息をつくと言葉を続けた。
「この部屋は少し前に空室となったそうです。おそらくそうすぐには次の者が入る事も無いでしょうし、しばらくこの部屋を借りても問題は無いはず、心配はありません」
「へぇ。少し前にって事は、それ以前には誰かがいたって事だよな?」
「聞きたいですか?」
 凶アリアが無表情のまま問い返す。
「まぁ一応な。どんな奴がいたのかってのは、やっぱ気になるもんだ」
「男性が二人、女性が一人です。部屋の広さは泰子さんの部屋と同じくらいですが、貴方一人だけですし、不便さは感じないでしょう」
 九朗はそれを聞くと、ふーん、と呟きながら頭をポリポリと掻く。
「で、先住民さん達は今何を?」
「死にました。先ほど、この廊下を少し先に行った辺りの場所で」
 頭を掻いていた手がピタリと止まる。
「……は?」
「貴方がどのような人間なのか私は存知あげませんが、泰子さんの精神衛生上良くない事は避けるようお願いします。では」
 凶アリアはそういうと、小さく一礼をしてその場を去っていった。
 後には、頭の上に手を乗せたまま動かない九朗の姿だけが残っていた。
136這いよる混沌:04/04/27 05:16 ID:4zdLt4qZ
 ベットに横になると、急激に今までの出来事が思い浮かび上がってくる。
 白銀武、彼とその仲間達。
 誤解から始まり、そのまま彼等には命を狙われ、そしてようやく分かり合えたと思った矢先に、あの蜘蛛の出現。
 比良坂初音。
 先ほど出会った少女が姉と呼んで慕っている存在。
 そして、己の身体に多大な傷を負わせ、さらにこの世界でやっと出会えたパートナー、アル・アジフとまた離れ離れになる事となった原因でもある。
 アルは無事なのだろうか。
 そして、アルが、自分の大切な存在がもし無事では無いと判った時、果たして自分はどう想い、行動に移すのか。
 あの泰子という少女に初音を会わせてやりたいという気持ちと、悪を討つという己の信念が交差する。
 そう、よほどの例外を除き、どのような悪にも理由がある。
 悪を討つ為ならば、純粋に想う人の気持ちを踏みにじってもいいのか?
 否。
 ならば、悪をのさばらせて、罪無き人々を苦しませる事は良い事か?
 否。
 九朗はかつて願った。
 世界を守る事なんて出来ないが、それでも自分の身近にいる人達だけでも守っていきたい、と。
 その為に己が力を高めてきたのだ。
 そう考えた時、ふと自分を助けてくれた少女の事を思い出す。
 同時に彼女にはまだ名前すら聞いていなかったという事も。
 己の相棒ともいえる物を預け、そのまま自分の下から去っていった少女は、果たしてアルと出会えたのだろうか。
 出会っていて欲しい、と思う。
 願う事しかできないならば、せめて願い続けよう。
 そんな事を考えながら、いつしか九朗は深い眠りについていた。
 
『やぁ、九朗。久しぶりだね』
 突然、耳元からそんな言葉が聞こえてくる。
「……ナイア?」
 紅い瞳。
 豊満な肢体を、常に黒色のスーツで身を固めている女性。
 九朗がもといた世界の、寂れた街の片隅にある古本屋の主人。
『そう、ボクだよ。忘れちゃったのかい? 寂しいねぇ、寂しくてボクは泣いちゃうよ?』
「どうしてあんたがここにいる? それにここは……?」
137這いよる混沌:04/04/27 05:17 ID:4zdLt4qZ
 暗い闇。
 何も無い空間。
 九朗はそんな場所の中に立っていた。
 いや、立っているという表現は今の状況には似合わないだろう。
 大十字九朗は、今、その場所に『存在』していた。
 困惑している九朗を、嘲笑うかのように微笑みながら、ナイアが言葉を続ける。
『これは夢さ。夢なのだから、こうやって何も無い場所に立っていられるし、その場にいないはずのボク達がこうやって話す事も出来る』
(よく言う……)
 内心で九朗が呟く。
 彼は僅かながらも魔力の波動を感知していた。
 おそらく、九朗が眠り無防備になった頃を見計らって、魔力だけを飛ばしているのだろう。
 そんな事を頭の中で考えながらも、九朗は飄々と話を続けた。
 ナイアは何らかの目的があってこのような事をしてきたのだろう。
 その目的を探るために。
「あぁ、そうだよな。夢なら何が起こってもおかしくはないよな。……で、あんたは俺の夢ん中にまで出張してきて、
 一体何を話そうっていうんだ? 言っとくけど、無駄話は先に断っとくよ、俺は今、結構疲れているんだ」
『つれないねぇ。ならこういう話はどうかな? 例えば……、ネクロノミコンの居場所、とかさ』
 ナイアの呟いた言葉を聞くと、九朗が勢い良くその身を乗り出した。
 何も無い空間ゆえ、動きは無いが、それが現実ならば、ナイアの胸倉を掴み上げていたかもしれない。
「知っているのか! アルの居場所を!」
 ナイアは、ハハハ、と甲高い嗤い声を上げる。
『ああ、知っているともさ。あれだけの力を持った魔道書なんだ。少しくらい、そう、例えば百光年くらい離れていたって、ボクには判る』
「……どこにいるんだ? 教えてくれ、頼む!」
 そういって、九朗が頭を下げると、ナイアは嗤うのを止めて、彼の姿をじっと見つめ、そして呟く。
『九朗。あまり情けない所ばかりボクに見せないでおくれよ。キミはその気になれば、どんな世界だって思うがままに変えられるんだ。
 キミと、そしてネクロノミコンの力があれば……ね?』
「俺にそんな大それた力なんて無い……。俺が出来るのはせいぜい近くにいる奴等を守ってやるくらいの事だけだ……。
 苦しんでいる人間を全て救う事なんて出来やしない……」
 九朗が苦々しく呟く。
138這いよる混沌:04/04/27 05:18 ID:4zdLt4qZ
 思い出されるのは、目の前で力を失っていった珠瀬壬姫と、撃ち抜かれて死んでいた榊千鶴、その二人の姿。
『大十字九朗』
 ナイアが九朗の名前を呼ぶ。
『なら、キミは一体何をしたい? そして何を望む?』
「え?」
 ナイアの口調は変わらない、しかし雰囲気だけが変容していた。
 それは闇。
 例えるならば、混沌。
「俺は……」
 九朗が呟く。
 初めは小さな声で、しかし次は大きく。
「俺は、あいつを、アルを連れ戻す!」
 ナイアはその答えを聞くと、また嗤い始める。
 暗く、静かに、淡々と、高らかに。
『それでこそボクの九朗だ! ネクロノミコンは、案外キミの傍にいるかもしれないよ。
 目が覚めたら探してごらん。きっときっと、見つかるからね……』
 ナイアの姿が、すぅ、と薄く消え始める。
「待てよ! あんたもこの世界にいるのか? いるのなら、手を貸してくれ!」
 ナイアの姿は見えなくなり、声だけがおかしそうに嗤いながら九朗に向かって言葉を告げる。
『存在(い)るといえば、存在(い)る。いないと言えばいない。だけどボクはいつもキミの傍にいるよ。
 そう、キミのすぐ後ろに……ね? ハハッ、ハハハハハッ、ハハハ……』
 その言葉を最後に、ナイアの気配、その全てが消えていく。
 同時に、九朗の周りの空間も、まるでガラス細工が壊れるように霧散して、そして消えていった。
 
 九朗の目が、瞳だけが開く。
「……夢、か」
 そう呟く九朗の表情に、もう迷いは無かった。
 身体を休めたら、まず何よりも先にアルを探す。
 大切な存在を自分の手で守り抜く為に。
139這いよる混沌:04/04/27 05:35 ID:4zdLt4qZ
(あの化け物蜘蛛の事とか、白銀武の誤解を解くとかは、その後でもいい……)
 一つ気になるのは、イタクァを託した名前も知らない一人の少女。
「……流石に、あんな娘を放っておいたら、あの古本は激怒するだろうしな……」
 九朗に迷いは無い。
 そのせいで彼にとっての優先事項は増えてしまったが。
 目の前で、或いは、知っている人間が死なないようにするという事。
 その中にはアルアジフも、そして名前も知らない少女、佐倉霧も含まれている。
(エゴかもしれない、無理かもしれない。それに……、もう遅いかもしれない)
 最悪の展開が頭をよぎる。
 それでも、九朗は思う。
「出来やしないと、諦める事だけはしたくない!」
 その為に。
 彼はまた、しばしの眠りへとついた。

『……悪いねぇ。少しだけ力を貸してもらったよ』
 女が嗤いながら呟くと、空間に漂っている『何か』がぼんやりと形作り始めた。
『ふん。我は主、主は我。元々一つの存在が今更何をしようと何も変わるものはない』
 やがてそれは一つの形になっていく。
 人のようでいて、あるいはこの世に存在する全てのものとは違うモノ。
『ハハ、そうだね。……ところで、こっちの世界で、果たしてボクは九朗ともう一度会えると思う?』
 変わりに女の姿が薄く揺らいでいく。
『さぁな。それよりもそろそろ力を返してもらおうか』
 その問いかけに、しかし『影』の返答は素っ気無い。
『ハイハイ……』
 呆れたように呟いたその言葉を最後に、女が完全に消える。
 力を貸したのは一瞬。
 ほんの一時、『魔力(ちから)』を大十字九朗の下へ送り込んだだけのもの。
 影はしばしその場に留まっていたものの、やがて元の場所へと戻っていた。
 まるで、影が足元を這いずるように……。
140這いよる混沌:04/04/27 05:36 ID:4zdLt4qZ
【大十字九郎 斬魔大聖デモンベイン ニトロプラス △(部屋の中で寝ている) 自動式拳銃(フルオート)『クトゥグア』、残り弾数不明(15発以下 招
 目的 アルと霧を見つけ出して保護】
【凶アリア デアボリカ アリスソフト ○ トンファー ? 目的 泰子を守る】
【ナイア 斬魔大聖デモンベイン 存在は無し 意識のみ】

 時間 Red Tint〜(この区間は睡眠中)〜タイムリミットと同時期まで
141葉鍵信者:04/04/27 12:04 ID:GCC2jYP2
二つ。

結界装置の件に関して。
これより書き手BBS等で議論を開始しますので、壊れた事による影響や
他の結界装置の破壊の話は、議論で決定するまでは投下しないで下さい。

『這いよる混沌』
外部召還・来訪・干渉を決める為に、一旦停止の必要性あると見受けられます。
厳密に言えば対象作からの審議ではありませんが、続く話は同じように投下しないで下さい。
142名無しさん@初回限定:04/04/28 21:13 ID:Jf4y6rK1
誰も感想スレの新スレたてないの?
たてちゃうよ?
143名無しさん@初回限定:04/04/28 21:21 ID:Jf4y6rK1
ほい、たてちゃいました。
保守協力よろしくな。

葱サバイバル意見・感想・議論スレ 3
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1083154770/l50
144目覚め、出会い:04/05/01 03:20 ID:PgF4nF3u
 ドサッと、何かが床に下ろされる音がして、春日せりなは目を覚ました。
 ここは森の中にある丸太小屋。
 目の前には、未だ眠り続ける高嶺悠人。
 その呼吸は規則正しく、顔色も随分と良くなってきていた。
(…寝ちゃってたんだ)
 悠人の身体を拭いてから、飯島克己に呼ばれてトラップを延々作らされた。
 その後、疲労困憊して小屋に戻り、悠人を看ているうちにそのまま寝入ってしまったらしい。
(どのくらい寝てたんだろ)
 そう考えつつ窓を見ると、外はまだ明るい。そんなに長い間寝ていたわけではないようだ。
 そして、また悠人の容態を看ようと室内に視線を戻し、
「あれ?」
 見知らぬ人物が増えていることに気付いた。
「誰? その人」
「知らん。川上から流れてきた」
 飯島は悠人のときと同様、手際よくその青年――ナナスの服を脱がせていく。
「ほぅ…何やらごわごわすると思えば、なかなか頑丈なものを着込んでいるな」
 強化皮膚装甲を脱がし、置いておいた改造エアガンの脇へ放る。
 意外と武装してるんだなぁと、せりなは感嘆した。
 悠人や飯島に比べると線が細く、随分頼りなく見えるが、それだけに装備には気を使ったのだろうか。
 と、せりなはその青年の異常に気が付いた。
「飯島さん、その人の腕…」
「ああ、銃で撃たれていやがる」
 ………
「え、えぇええ!?」
 一拍間をおいて、せりなの驚愕の声が響く。
「やかましいぞ、春日。自分で気が付いといて驚くな」
「だ、だってだって! 大丈夫なの、その人!?」
「弾は貫通している。拾った時に止血もしたがな。如何せん、消毒はできんから化膿はするかもしれん」
 言われてみれば、上腕部と傷口にきつく布が巻いてある。これが止血なのだろう。
 布の出所は…彼の服らしい。
145目覚め、出会い:04/05/01 03:21 ID:PgF4nF3u
「いいの? 勝手に服破っちゃって」
「俺の服じゃないからOKだ。どのみち、手当てはしなけりゃならんだろう?
今の俺達には情報が決定的に不足している。ひょっとしたら、貴重な情報源かもしれんからな。
まだくたばってもらっちゃ困る」
 と、脱がした服をせりなに向けて放る。
「わぷっ!」
「木の枝にでも干して来い。この天気だ、すぐ乾くだろ」
「それはいいけど、投げないでよ…」
 ぶつくさ言いながらも、せりなは言われた通りに外に出る。
「…それにしても、男の身体見慣れちゃってるのは問題よね。乙女として」
 言いながら、小屋の側にある木の枝に服を引っ掛けていく。
 濡れた布地が、ひんやりとむき出しの腕を撫でていくのが心地よかった。
 せりなが着ている鹿島学園の制服は、片方の袖がない。
 胸元を隠す為に、飯島に切り取ってもらってサラシのように撒いているのだ。
「けど、見たことない服だよね。これ」
 あの髪の色からして、外人なのは間違いないと思うが。
(言葉通じるのかなぁ?)
 などと考えていたせりなの耳に、それが聞こえてきたのはその時だった。
 ずっと目覚めを待っていた、男の声。


 感じる。この力。
 この世界に召還される少し前に、ファンタズマゴリアで感じた加護のオーラ。
 この力を使える人物に、一人だけ心当たりがある。
 永遠神剣『因果』の主。俺の、親友。
「――光陰!」
 無意識に、悠人は傍らにあった『求め』を掴み起き上がりかけ、
「…いててててて!」
 腹部に激痛を感じて、そのままうずくまった。
「何をやっている。阿呆か貴様」
 飯島が呆れたように声をかけるのと、
「悠人!!」
146目覚め、出会い:04/05/01 03:24 ID:PgF4nF3u
 せりなが叫びつつ小屋に飛び込んでくるのがほぼ同時。
 そのまま、せりなは悠人のところまで駆け寄った。
「ちょっと、ねえ! もう大丈夫なの!? 痛くない? 痛くない?」
 がっちりと悠人の肩を掴んでガクガク揺さぶりながら言う。
「いて、いたた痛いって! とにかく、落ち着け! 揺さぶんな!!」
「…殺す気か」
 二人の対照的なツッコミに、せりなはハッと我に返った。
「ご、ごめん!」
 あわてて手を離す。
 悠人は力尽きたかのように、ポテッと後ろに倒れた。寝ていたときの状態に戻る。
「えと、…大丈夫?」
 今度は恐る恐るといった感じで尋ねるせりなに、悠人は苦笑いを見せる。
「今のは効いたけどな。ま、なんとか」
「…ごめんね」
 謝りつつも、せりなの表情は嬉し泣きのそれだ。
 心配されていたことを嬉しく思いつつ、悠人は仲間達の顔を見回した。
 せりな、飯島、そして――
「――長崎さん…は?」

 その言葉に、せりなは長崎という人物があの兵隊のことだと悟った。
 最後まで戦い抜き、悠人を護り、そして殺された男。
 はたして、その事実はそのまま伝えてしまっていいものなのだろうか。
「…えっと…あのね」
「長崎は死んだ。あの戦闘でな」
 飯島が、歯に衣着せず事実を叩きつける。
 その直後、悠人の顔が強張ったのをせりなは見た。
「すぐそばで戦っていたんだ。貴様も覚えているはずだな、高嶺」
 言葉が心の奥底まで突き刺さる。
 飯島の言う通り、悠人は確かに見ていた。
 自分の窮地を救い、そしてあの男にめった刺しにされる旗男の姿を。
 朦朧とした意識の中で、それでもそれは、はっきりと悠人の記憶に刻み込まれていた。
「ちょ、ちょっと!」
147目覚め、出会い:04/05/01 03:26 ID:PgF4nF3u
 容赦のない言葉にせりなが見かねて口を出すが、飯島はせりなを手で制し、さらに続ける。
「まあ、奴が死んだのは自業自得でもあるがな。貴様に賛同して余計なことに首を突っ込んで…」
「やめてくれ!!」
 たまらず悠人は叫ぶ。
 飯島は一瞬口をつぐみ、フンと鼻を鳴らした。
「長崎の死をどう受け止めてどう感じるかは貴様次第だがな。
勝手な行動は、周りの連中をも危険に晒すというのは分かったろう。
そのことは覚えておけ」
 言い返す言葉がなかった。
 悲鳴を聞いてすぐに駆けつけたからこそ、せりなは今こうしてここにいる。
 助けに行ったこと自体は、間違いではなかったはずだ。
 だが、その代わりというかのように、旗男の命はその戦闘で尽きた。
 一体、何が正しくて、何が間違っていたのだろう。
 今分かるのは、長崎の死の理由の一端が、自分にあるという事実。
(長崎さん…)
 自責の念が悠人を包む。
 冷静に考えることなど、出来そうになかった。
148目覚め、出会い:04/05/01 03:28 ID:PgF4nF3u
「…悠人」
 せりなはどうなぐさめてよいのか分からなかった。
 大体、せりなも当事者なのだ。悠人と旗男に助けられた身である。
 当事者故に、うかつな発言はできなかった。
 とその時、せりなはあの青年が身じろぎするのを視界に捕らえた。
「あ! この人、目を覚ましそうだよ!」
 半ば強引に話題を変える。
 あまりに露骨過ぎて呆れたのか、飯島が肩をすくめた。
「…この人は?」
 思考が限りなくマイナスに流れていた悠人は、強引にでも話題を変えてくれたことに内心で礼を言いつつ尋ねる。
 今の言葉で、初めてその青年の存在に気付いたのだ。
「うん、飯島さんが連れてきたんだけど…」
「俺も拾っただけだからな。ま、それは今からこいつ自身が語ってくれるだろうさ」
 飯島の言葉に呼応するかのように、青年――ナナスが瞼を開ける。
「お目覚めか。気分はどうだ?」
 口の端を歪めた笑みでナナスを見下ろし、飯島はナナスに語りかけた。



【飯島克己@モエかん(ケロQ) 狩 状態○ 所持品:ワイヤー】
【春日せりな@あしたの雪之丞(エルフ) 招 状態○ 所持品:保存食の壷×2】
【高嶺悠人@永遠のアセリア(ザウス) 狩 状態×(腹部に深い刺し傷 永遠神剣の力により安静状態なら数時間で△まで回復(歩ける程度)) 所持品:永遠神剣第四位『求め』】
【ナナス@ママトト(アリスソフト) 招 状態△(右手右肘に銃痕) 所持品:なし】

【備考:改造エアガン、強化皮膚装甲は飯島の脇に置いてあります】

【時間:『刻まれし十字架』『分かれ道』後、『ただ一人の女のために』と同時刻】
149名無しさん@初回限定:04/05/01 09:57 ID:FW3MQ64I
葱サバイバル意見・感想・議論スレ 3.1
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1083372989/l50

3が落ちたので立てました。
保守よろしく。
150葉鍵信者:04/05/02 00:12 ID:mq0nXX94
『言い寄る混沌』

今回は通すが、今後は
たまにナイアが出てきて当たり障りのない事しゃべるぐらい。
情報を教えたり使ったりとか、ナイア独自の目的を持ったりするのは、NG。

と言う事でまとまりました。
ではこれより24時間後から続く話の投下が可となります。
151亡霊が機神に送る歌:04/05/02 16:33 ID:hkRPzyqg
「たける、気をつけてね」
「心配するな尊人、こいつに乗ってる限り負けやしないさ。……必ず純夏を連れて帰ってくるからな」 
 自身の決意を確認するかのように声に出して、銀色のバルジャーノンのコックピットに乗り込む。
「綾峰さんと御剣さんには……」
 尊人はこの場にいない二人の名を口にする。
 ケルヴァンとの会談の後、綾峰は冥夜の付き添いで部屋に連れていかれた。
 表面上こそ普段通りであったが、やはりタマと千鶴の死による心労は計り知れないものがある。
「多分綾峰は無理してると思うからさ。これ以上不安の種を増やす事もないだろう? 尊人もあいつを支えてやってくれ」
「……ボクにはたけるの方が無理してるように見える」
「そうかもしれないけどな」
 おそらく尊人の言う通りなのだろう。
 今の武は純夏を助ける使命感だけで自分を奮い立たせているに過ぎない。
「でも俺は……」
 しかし今はそんな偽者の気力でも必要だった。
 助けを待ってる仲間がいるから、それに応えるまで止まるわけにはいかないのだ。
「俺は純夏を助けに行かないといけないからな。休んでる場合じゃない。
 二人に言っておいてくれ、嫌味は帰って来てからちゃんと聞くってな」
「わかったよ。でも後で散々言われると思うから覚悟を決めといた方がいいよ」
 武は尊人の言葉に苦笑した。
「覚悟しとくさ──じゃあ行ってくる」
 そう言ってコックピットを閉めようとした時
「帰って来るまで私は待てんぞ。道中ずっと言い続けてやる」
「冥夜!? なんでここに……」
 綾峰を部屋まで送っていった冥夜が戻ってきていた。
「タケルの考えが私にわからないと思っていたか。それに……ここでもたもたするような男ならとっくに見限っている」
 そう言いながらコックピットに乗り込んだ。
152亡霊が機神に送る歌:04/05/02 16:34 ID:hkRPzyqg
「私も一緒に行こう。純夏をさらった者達はかなりの使い手だった。タケル一人ではきついだろう」
「そうだな……こいつのサーベルじゃ純夏ごと傷つけちまう。
 さらった連中とやりあうなら外に出る事になるかもしれない。
 その時はさすがに一人って訳にもいかないしな。悪いが尊人、綾峰の事頼んでいいか」
 武の頼みを尊人に断れるはずもなく。
「わかったよ。……でも二人とも本当に無理はしないでね」
 尊人の言葉に武は親指を立てて答えた。
「よし、カイゼル発進!!」


「……そうだ。ハタヤマをいつでも出撃できるように準備させておけ。
 決して私が戻るまでの間、くれぐれも山本悪司達の監視を怠るな。万が一の事があればハタヤマと神風で対処しろ」
 ケルヴァンが中央にいない間にも状況は刻一刻と変化する。
 今まで武達にかまけていた為に部下への指示が遅れ気味になっていた。
『分かりました。それと、新撰組のカモミール芹沢が大砲の使用許可を求めて来ていますがいかがしましょうか?』
(大砲……例の88mm砲とやらか。先程の襲撃者の存在もある事だ、戦力はあるに越した事はあるまい)
「いいだろう、大砲の格納庫の鍵を渡しておいてやれ。……待て、今新撰組はそっちにいるのか?」
『いえ、カモミール芹沢と加賀野アイの2名だけです』
 一瞬、その取り合わせに疑問を持ったが、おそらく芹沢にアイが引っ張られてきたのだろうと結論づけた。
 それと同時にケルヴァンの頭の中で計算が行われる。
 万が一山本悪司達が造反した時、それに対抗できるだけの戦力が今中央にあるのかどうか。
 考えるまでもなかった。
「念の為カモミール芹沢と加賀野アイの両名は中央で待機させておけ。……そうだ、私が戻るまでの間だ」
 指示を出し終え通信機を切った。
 ケルヴァンは急いで中央に戻る支度を始める。
 悪司達以外にも不安材料は山ほどある。
 それも部下に任せる訳にもいかないような危険な要素が。
153亡霊が機神に送る歌:04/05/02 16:36 ID:hkRPzyqg
(ヴィルヘルムが和樹を破壊するような事がなければいいが……。
 それと無影が連れてきた者達。直に様子を探ってみるか……)
 だがそれらすら些細なものだ。
 現在一番の不安材料は……
(リャノーン……カトラとスタリオンにすら感づかれていた事を考えるとこのまま中央に、というのは考えものかもしれんな)


「……で、見事に人違いだった訳だな」
 リックの背中の人物を見て落胆の色を隠せない玲二。
「あの霧の中だったからな、しょうがないさ。しかしこんな奴いなかった気がするんだけどな……」
 リックの記憶が確かならば襲撃の時、あの場いたのはケルヴァンと少女二人だけだったはずだ。
 服装から明らかにあの施設の警備兵でない事が伺い知れる。
 と、すれば自分達と同じくケルヴァンに対する襲撃者だろうか?
(もしそうだったとしても……仲良く手を取り合って、という訳にはいかないだろうな)
 目の前の男──ゲンハからする血の臭いは今までのゲンハの所業を何よりも雄弁に物語っていた。
 ゲンハからする血の臭いからリックはなぜか先程武器庫で見た兵士の死体を思い出す。
 そして恐らく自分の勘は間違っていないだろう事も確信していた。
「暗視ゴーグルを着けてたのか。気の毒だがこいつは失明してるだろうな…」
 玲二は腫れ物を触るように慎重にゲンハの暗視ゴーグルを外す。
「リック、取りあえず追手が来ないうちに出来るだけ離れよう」
「そうだな。ぼやぼやしてる訳にもいかない」

(くそっ! 分が悪すぎるぜ)
 直人はなんとか玲二達を見失わずに追跡する事ができ、二人が休憩している隙に追いついたもののさすがに隙がない。
 この不利な状況の中どうやってゲンハを救出するか……微妙に酔いが残っている頭で必死に思考する。
(ちっ…やっぱり飲むんじゃなかったか……頭がまわりゃしねえ。せめて何かきっかけでもあれば……)
 玲二達に再び目をやるとそれぞれ持っていたゲンハと戦斧を交換していた。
(賭けだがやるなら今しかねえな……なんだ? この音は──)
 直人が今飛び出さんとした時、施設の方角から空気を裂く音と共に地面が振動した。
「ったく! 一体なんだってんだ!」
154亡霊が機神に送る歌:04/05/02 16:37 ID:hkRPzyqg

「巨大ロボット!? こっちに来る……まさかあれが追手か!?」
「ママトトみたいに直接要塞が動かないだけましと言えばましだが……」
 玲二達の目に飛び込んで来たのは明らかに自分達に向かってくる巨大な人型ロボット。
「……リック、先に行け」
「玲二!?」
「いくらお前でも相手があれじゃ無理があるだろ? 心配するな……後で追いつく」
 リックは玲二の目から決意が堅い事を知る。
「勝算はあるんだろうな?」
「ああ、成功率は限りなく低いけど……な。お前がいると邪魔なんだ。さっさと行ってくれ」
 玲二はゲンハをその場に下ろして敵を迎え撃つ体勢を整える。
「わかった。……また後でな」
「ああ、また後で」
 リックが走り去る音が耳から遠ざかっていく。
 完全に聞こえなくなってから一瞬のチャンスを逃さないように全神経を集中させる。
(先制攻撃で目を潰す……もしカメラの位置が違ったら一貫の終り……本当に博打だな)
 玲二は愛銃──S&Wを握り締めた。

「あいつらか!?」
 銀色のバルジャーノン──カイゼルは木々の間を飛び跳ねて移動しているため、
視界がぶれてこの距離では相手をはっきり確認する事ができない。
「私も相手の姿は見ていないのではっきりそうとは言えないが……人を背負っているな。可能性は十分にある」
 近づいて行く間に相手のうち一人が走り去って行く。
「逃がすか!」
「タケル、落ち着け。まずは純夏が先だ。……どうやらもう一人は覚悟を決めているようだな」
(俺が食い止めるからお前は先に、ってやつか? 悪役がやっても様にならないぜ)
 あと少しで相手の輪郭がはっきりと見える距離にまで近づける。
 同時にスピーカーを通じて玲二に向けて言い放った。
『お前! 純夏をよくも……あれ? 純夏じゃない!?』
 ようやく確認できた人質は純夏ではなく全く見知らぬアフロの男であった。
 武と冥夜が人違いを悟った瞬間、銃声と共にモニターが闇に包まれる。
 最後にモニターに映し出された光景はアフロの男が立ち上がる所であった。
155亡霊が機神に送る歌:04/05/02 16:38 ID:hkRPzyqg
【ケルヴァン:所持品:ロングソード 地図 状態△(魔力消耗気味) 鬼 行動目的 中央へ帰還】
【鎧衣 尊人@マブラヴ age 状態○ 所持品 ハンドガン(残弾なし) 狩 行動目的 武の帰りを待つ】
【綾峰 慧@マブラヴ age 状態○ 所持品 弓(矢残り7本) 狩 行動目的 武の帰りを待つ 】
(施設内部)

【アイ@魔法少女アイ(color) 鬼 状態○ 装備:ロッド】
【カモミール芹沢 @行殺!新撰組 (ライアーソフト)鬼 状態○ 装備:鉄扇、88mmキャノン『カモちゃん砲』】
(中央結界内部、行動目的:有事に備えて中央で待機)

【白銀 武@マブラヴ age 状態○ 所持品 サブマシンガン(残弾0) 、ハンドガン(装填数 20発) 招 】
【御剣 冥夜@マブラヴ age 状態○ 所持品 刀 狩】
(『カイゼル』のコックピット内)
【銀色のバルジャーノン『カイゼル』 状態 アイカメラ破壊、外部の状況確認できず】

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾x2  暗視ゴーグル×2 食料・医薬品等】
【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態×(裂傷多数、背中に深い刺し傷、かなり危険な状態、失明)  所持品:なし】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:鉄パイプ 包丁 シグ・ザウエル】

【リック@ママトト(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:戦斧 火炎瓶×3 食料・医薬品等】

(仲間という名の利害関係後)
補足、持ち物交換
尊人のハンドガン⇔武のハンドガン
156葉鍵信者:04/05/03 01:53 ID:kj/YrHUL
『亡霊が機神に送る歌』作者様。
神風召集の却下とケルヴァンが中央へ戻ると言う行動方針は、
NGになった『トラフィックス3nd』での内容です。
もし間違えていて書いてしまっていた場合の為にご確認のお返事だけ下さい。
改訂される可能性があるために続く話の投下は、合図するまで停止して下さい。

157葉鍵信者:04/05/03 14:42 ID:/C6an+6w
何も間違い等の問題はなかったようなので、このままお進め下さい。
一応、止めてしまったために続く話はこれより24時間後でお願いします。
158餓狼伝説:04/05/08 16:31 ID:PL/1UNcO
 一面に広がる暗闇。その光景に対する既視感。
 鳴り響く轟音。機械を通した人の声。
 ──なんだ? この感覚は? 一体俺はどうしちまったんだ?

 耳元で銃声が響いた。

 ああ、そうだった。直人と馬鹿騒ぎしてたからこの感覚をすっかり忘れていたぜ。
 思い出した、この暗闇は……

 没入だ。

 ネットにダイブするあの瞬間。
 全ての行為が容認されるあの世界へ入る為の儀式。
 ──だが、いつまで経っても何も見えない。いつものあの感覚が甦らない。
 それでようやく彼は理解した。
(そうか……目がいかれちまったんだな)
 彼はこの時何より重要視したのは目が見えなくなった事実ではない。
 彼にとってのもっとも重要な事はここが現実であり、己の生を確認した事であった。
(生きてさえいればどうにかなるぜ……なにも勃たなくなった訳じゃねえんだ。相手の面拝めないのは残念だけどなぁ!)

 傍に感じるこの気配。
 さっき殺した──あの軍人と同じ臭いだ。
 少し距離があるが女の臭いもする。これは直人が狙っていた女の匂いだ。
 ゲンハは歓喜に震えた。
「殺りがいのある敵と犯りがいのある女……戦いはやっぱりこうじゃねえとな!」
 何も見えない暗闇の世界に向かい、復活の咆哮を上げた。

 ゲンハが咆哮と共に放った奇襲の蹴りは見事に玲二のS&Wを遙か彼方にまで吹き飛ばした。
 見えないのに相手の男の狼狽した顔が手にとるように分かる。
「今のはここまでのタクシー代だ。釣りはいらねえぜ」
 だから相手の戦意がなくならない内に挑発する。
159餓狼伝説:04/05/08 16:33 ID:PL/1UNcO
 歯向かってこない奴は敵じゃない。そんなものはただの的だ。
(さあ来い。女の方はお前をぶっ殺した後にゆっくりいただく)
 相手が息を飲む気配。
 息づかい、足が大地を蹴る音、拳を空気を切り裂く音。
 ──そうだ、目なんて感覚器の一つでかない。
 愛する者同士は見えなくたってなんでも分かり合えるっていうじゃねえか。
 俺は人間全てを愛してる。
 だから見えなくたって相手のやろうとする事がわかるのは当然だ。
 ただ殺る事か犯る事でしかそれを表現出来ねえけどな!
 
(こいつ……目が見えないんじゃなかったのか!?)
 それは間違なく事実だ。
 確認してみても間違いなくアフロの男の目は光をとらえてはいない。
 ではどうしてこの男は自分の位置が正確に分かり、玲二の攻撃を受け止め、避ける事が出来るのか……
 ──いや、それ以前の問題にどうしてこの男は自分と戦っているのだ?
 中央の人間であるなら、あのロボットに助けを求めればいい。
 もし目論み通り、視界を奪えていたのだとしても手に持った剣を一薙ぎすれば視界の有無は殆ど関係ない。
 しかしそれすらしないのは自分達を同じく中央に逆らう側の人間なのか、それとも……暴れたいだけの人間か。
「お前は……なんで俺と戦うんだ?」
 問いかけは自然に口をついて出た。
「簡単なことだろうが! 男は殺す! 女は犯す! てめえが男だからぶっ殺す。他に理由が必要か?」
 気味の悪い笑い顔だった。
 あの男──マスターサイスを思い出すような……そんな全てを嘲笑うかのような笑い。
 だが皮肉にもそれを思い出す事が出来たおかげで玲二の覚悟が決まった。
「お前は……お前のような奴はこの場で息の根を止めてやる」
「そうだ! その意気だ! そうじゃなきゃおもしろくねえ!」
 その決意すらも嘲笑うと、ゲンハの攻撃はさらに激しさを増した。

「あれは純夏じゃなかった。でももしかしたら純夏を見てるかもしれない」
 コックピットの外から微かに怒号や叫び声が聞こえる。
160餓狼伝説:04/05/08 16:34 ID:PL/1UNcO
 事情はわからないがどうやら戦闘の真っ最中のようだ。
「しかし聞ける雰囲気ではなさそうだしな……。
 そもそもいきなり攻撃してきたり、逃げ出したり……あの者達にもやましい事があるのではないか?」
 幸か不幸か武はアイとの戦闘で銃声は嫌と言うほど聞いたので、モニターの故障の原因は直前の銃声にあると考えていた。
 もし銃声を知らなければモニターの故障が攻撃によるものだとは気付けなかったかもしれない。
「そうだな……もしそうなら簡単には話してくれないか」
 相手を尋問にかければ純夏の手掛かりが見つかるかもしれない。
 しかし尋問に手こずっている間に純夏に何かあったら?
 こんな所でぼやぼやしてる場合ではなかった。
 冥夜は武の言葉を待っている。
「まず、外にいる奴らを倒す。その後コックピットを開いて外の様子を確認しながら純夏を探す」
 そうだ…こんな所で立ち止まる訳にはいかない。
 この場所でやるべき事はないから。助けるべき人はいないから。
「こいつなら適当に腕を振り回すだけでも十分凶器になる」
「タケル…いいのだな? 外に居る者達は友の仇という訳でもない。そういう者達を殺す覚悟があるのだな?」
「ああ……」
 冥夜には今の自分はどう映っているのだろう。
 簡単に自分の今の表情が思い浮かび、何も映さなくなったモニターで確認すると想像通りの顔をしていた。
 滑稽だった。
(情けない顔してるな……本当)
 だけど今しばらくは見逃して貰おう。
 まだやる事が残っているうちは。

 戦いはいつ決着がついてもおかしくない状態でありながら、いつ終わるかわからない膠着状態に陥っていた。
 コルトさえ抜く事が出来れば勝算はあるのだが、相手も薄々それを察しているのか攻撃を絶え間なく繰り出し常に間合いを詰めている。
161餓狼伝説:04/05/08 16:35 ID:PL/1UNcO
 そんな状態の中、巨大ロボットの動きに気付いたのは玲二だけだった。
 駄々をこねる子供のように腕を振り回して近づくロボットを見るや、玲二の頭にある考えが浮かぶ。
(先程に続いて賭けになるがしょうがないか…)
 ゲンハの負っている傷で勝手に倒れてくれるのを狙うのが一番現実的であるのだが、ゲンハはそんな素振は一切見せない。
「こうしながらどうやって目の前の相手をぶち殺すのか考えるだけでもゾクゾクするだろ? 互いにそう思いあってりゃ楽しいぜぇ……」
「お前は……狂ってる」
 その言葉を聞いてゲンハの攻撃が激しさを増した。
「ヒャーハハハ! そうさ、人間狂ってるくらいがちょうどいいんだよ!」
 玲二はゲンハの攻撃をやりすごしながらも機を伺う。
(今だ!)
 ゲンハの拳が顔面にまともに入るがそれでも止まらず体ごと突っ込む。
「がっ…!」
 そしてゲンハはそのまま後方……カイゼルの方に突き飛ばされた。
 同時に玲二も体勢を崩し、前のめりに倒れこんだ。

 突如カイゼルが揺らぐ。
 その巨体が横薙ぎに倒れる。
 その倒れた脚部につまづいて転び、ゲンハは空を見上げる格好になる。
 本来ならば上半身と下半身が泣き別れしていても不思議ではない状況であったからこれは幸運──
「ったく、お前は無茶しすぎなんだよ」──いや、当然の結果だった。
 鉄パイプを構えた直人がゲンハを見下ろしていた。
「その声……直人か」
 直人はゲンハの言葉を聞いて舌打ちする。
 やはり直人の姿は見えていないのだ。
 玲二との殴り合いはその事実を忘れさせる程の戦いぶりであったが、それでも改めてその事実を目の当たりすると衝撃だった。
「遅えじゃねえか。何してやがった?」
「一番格好よく登場できるタイミングを見計らってたんだよ」
「そうだな! 俺達は主役だからなぁ! そういう事には気を配らねえといけねえ」
162餓狼伝説:04/05/08 16:37 ID:PL/1UNcO
 ゲンハは大笑いしながら言った。
 本当は直人はリックが引き返してきた場合に備えて息を潜めて機を伺っていただけなのだが、物は言い様である。
 ゲンハと共に笑う直人に立ち上がり、銃を構える玲二の姿が見えた。
「そういや直人。さっき取り逃がした女が近くにいやがる、お前見えねえか?」
 直人の心配もよそに全く変わらない調子でゲンハが問う。
「それは後だ! さっさと立て! 今はそれ所じゃねえ!」
 無理矢理ゲンハの手を引っ張り起き上がらせる。
「出来の悪い恋愛映画みたいなワンシーンだな」
「だからそれ所じゃねえって言ってるだろ!」
 そう言う間にも玲二が撃った銃弾が顔を掠める。
 慌てて二人はカイゼルを盾にして隠れる。
 ゲンハが直人の手をとって立ち上がる。
「おい! 気でも触れたか!? 今立ったら…」
「狂ってるのは前々からだぜぇ!」
 銃弾の中を走り抜ける。
 ゲンハは半死人の物とはとても思えない程の力で、直人を引っ張り木陰に飛び込む。
 その瞬間先程までいた場所で炸裂音が鳴り響いた。

(あいつら予知能力でもあるのかよ)
 玲二は困惑していた。
 投擲した手榴弾を避けられた上に、狙い撃ちしたはずの銃弾をも全て避けられた。
 再び巨大ロボットが立ち上がるのが見える。
(あんな奴を見逃したらろくな事にならないのは分かりきってるんだけどな)
 それでもこの場は退いた方が賢明だ。
 落としたS&Wを拾うとゲンハ達と反対方向に駆け出した。
 
 だが、3歩も走らないうちに玲二の目に飛来する物が映る。
「ちっ…!」
 辛うじて身を反らして回避する。
 それの飛んできた方向には
「吾妻玲二…人の皮を被った悪魔……私が殺す」
 ボウガンを構える少女とその影に隠れるようにする双子の姿があった。
163餓狼伝説:04/05/08 16:38 ID:PL/1UNcO
【白銀 武@マブラヴ age 状態○ 所持品 サブマシンガン(残弾0) 、ハンドガン(装填数 20発) 招 】
【御剣 冥夜@マブラヴ age 状態○ 所持品 刀 狩】
(『カイゼル』のコックピット内)
【銀色のバルジャーノン『カイゼル』 状態 アイカメラ破壊、外部の状況確認できず】

【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態○ 所持品:S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明)手榴弾 暗視ゴーグル×2 食料・医薬品等】

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態×(裂傷多数、背中に深い刺し傷、かなり危険な状態、失明)  所持品:鉄パイプ 包丁】
【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル】

【佐倉霧@CROSS†CHANNEL 狩 状態○ 装備品 ボウガン(現在矢は装填されていません) 矢の数は一本(撃ったら拾うので矢自体は

なくならない、二発目を撃つ時には装填準備が必要)回転式拳銃(リボルバー)『イタクァ』残り弾数不明(13発以下)】
【鳳あかね@零式 状態○ 装備品 AK47(使いやすい火器だが、子供につき命中率低め)クレイモア地雷x2 (狩?招?)】
【鳳なおみ@零式 状態○ 装備品 AK47(使いやすい火器だが、子供につき命中率低め)プラスチック爆弾 (狩?招?)】

(亡霊が機神に送る歌直後)
補足
霧のボウガンの矢のもう一本はカイゼルの傍に落ちています。
164入隊試験:04/05/08 22:23 ID:Gl6U30Fo
「条件付きとは、どういうことだ?」
「大事な女を探している」
 土方歳江の問いに、俺は答えた。
 存外、真剣な顔になっちまったのを自覚する。
「俺はあんたらの為に働く。その見返りとして、あんたらは俺の女を…今日子を探して欲しい」
 近藤勇子が「まあ」と呟いて、口に両手を当てる。
 歳江は表情を変えず、あらためて問うてきた。
「貴様、働くというが、何をするつもりなのだ?」
「何でもだ。拉致でも殺しでも、依頼されれば何だってやってやるさ」
「…ずいぶんと殺伐した発言だな」
 殺伐。…そうだよな。殺伐してるよな。
 今日子や悠人とバカやってた頃は、こんなこと口にする時が来るなんて思いもしなかったぜ。
 ――だが、今は。
 不敵な笑みが浮かぶ。
「合ってるだろ? あんたらのやってることと」
 これは、カマだ。だがほとんど確信に近いカマ。
 俺の視線と歳江の視線がぶつかる。
 しばしの沈黙の後、歳江が「ふっ」と冷笑を浮かべた。
「腹の探り合いは無しにした方がよさそうだな。いかにも、我等の任務は今貴様が言った通りだ」
 引き出した。まずは第一段階成功か。
「貴様の言い分はわかった。同志が増えるのは我等としても望むところだ。
その為に、貴様の要望を上役に進言するもやぶさかではない。
…だが」
 ここから、第二段階。
「貴様の要望を通すには、一つ我等に示さねばならぬものがあるな?」
 そう、示さなきゃならないよな。
 俺は『因果』を目の前の地面に突き立てる。
 その行為に、沖田鈴音が刀に手を添えるのが分かった。歳江と勇子は身じろぎもしない。
 俺はそのまま詠唱に入る。
165入隊試験:04/05/08 22:24 ID:Gl6U30Fo
「神剣の主として命じる。光となりて我を守れ!」

  ――ドンッ!

 足元に魔方陣が展開。加護のオーラフォトンが俺を包む。
「こっちは準備OKだぜ? いつでも来な」
 勇子がふわぁと声を上げる。
「すごいせっかちさんだよ、歳江ちゃん」
「だが話は早い。そーじ!」
 呼ばれた鈴音が前に出る。
 日本史の授業でも謎だったんだが、何で『沖田鈴音』で『そーじ』なんだろうな?
 こんなちっこいのに新撰組最強ってのも謎なんだよなぁ。
「こやつ、面妖な力を使う。加減はしろ、だが油断はするな」
 …無茶を言う。鈴音も普通に頷いてるし。
「こちらはこの沖田鈴音が相手をする。貴様の実力、見せてもらおうか」
 そう言ってはいるが、力を試す以上に俺が信用できるかどうかも試されるはずだ。
 ここでしくじる訳にはいかねぇな。
 だが、だからといって必要以上に気負うのはかえって危ない。
 俺は俺らしく、マイペースに行かせてもらうぜ。
「あいよ、お互い程々にってことで気楽にやろうぜ」
 

「いきます」
 刀を逆手に持ち替えた鈴音が向かってくる。
 この世界、結構何でも出てくるからな。
 もしこいつらが本物の新撰組だとすれば、幕末屈指の剣豪と手合わせするってことか。
 へっ、なかなか出来ることじゃないよな!
 地面に刺さったままの『因果』を強引に引き抜く。
 土塊を鈴音に向けて飛ばすようにして。
166入隊試験:04/05/08 22:25 ID:Gl6U30Fo
「…!」
 あっさりかわしやがった。突進力も変わんねぇ!
 逆刃の一撃が俺に向けて振るわれる。
「っと!」
 これは防御。
 次いで逆袈裟! これも防御。
 次も連撃かと思ったが、今度は下がって間合いを取った。
 加減はしてるんだろうが、このくらいなら見えるな。
 防御集中してればの話だが。
「…攻める気ないんですか? 守りだけでは勝てないですよ」
 ………
 …鋭いな、おい。
「いやー、とりあえずは防御の手並みを見せとこうかと思ってな」
「そうですか。では、見せてください。もう少し速くします」
 言うなり、来た。
「おおっと!」
 ――ガガガッ!
 上段、小手、ツバメ返しての袈裟切り!
 全部防御した。俺って凄ぇ。
 間合いを取った鈴音の顔が少し引き締められた。
「…次、いきますよ」
 速攻。
 ――ガガッガガガガッ!
 袈裟、上段、フェイント入れて胴、小手――これ以上は無理だ! なら!
「ててっ!」
 喰らいつつ前に出る。肩口と脇腹に痛みが走るが、耐えられないほどじゃない。
 オーラフォトンの防御がなければ、骨にひびくらい入ったかもしれないが。
「えっ!?」
 鈴音が困惑の表情を浮かべる。
 カウンターで突貫した俺は、鈴音の襟首を掴んで密着することに成功する。
「組み打ちか!」
167入隊試験:04/05/08 22:26 ID:Gl6U30Fo
 歳江の声が聞こえる。
 鈴音が身を固くする。
 俺はフッと勝利の笑みを浮かべると、『因果』を離した手を鈴音の背後に回し――
「あ〜、やっぱちっこくて可愛ええ〜」
 かいぐりかいぐり。
 ぎゅっと抱きしめて頭なでなで攻撃に入った。
「なっ!?」
「わお」
 歳江と勇子がそれぞれ驚愕の声を上げる。
 鈴音は一瞬固まってされるがままだ。…ったが、
「…ひ、いやあぁーーーーー!」
 悲鳴と共に、肘で顎を打ってきた。
「ご!」
「やめてくださいーーーー!!」
 両手でどーんと突き飛ばされる。
「のおっ!?」
 意外と強い力で吹っ飛ばされた。
 起き上がった俺の目に、歳江の後ろに隠れてガクガク震えている鈴音の姿が見えた。
 …やりすぎたか?
 歳江は歳江で烈火の表情で刀構えてるし。
 勇子はなんだかなぁという表情で苦笑してるだけだが。
「き、貴様ぁ! 大事な女を探しているというのは狂言だったか! この女子の敵が!!」
 今にも斬りかかってきそうな雰囲気でのたまう。
「いや、嘘ついたわけじゃないぜ。まーなんというか条件反射みたいなもんでな。
可愛い女の子には目がないんだ、俺」
 それに、あの状態から当てようと思ってマジ反撃なんぞしたら…こっちの加減がきかねぇからな。
 当たるかどうかはともかくとして。
「では貴様は、心に決めた女子がいながら…!」
「ちなみに、こういうことは今日子の目の前でもやってるぜ? だからこれは俺と今日子との問題だ。
最近の武士は他人の男女間問題にまで口を出すのか?」 
 半分は嘘だ。直接的な行動には、まず出ない。
 今回は例外だな。
168入隊試験:04/05/08 22:28 ID:Gl6U30Fo
 ともあれ、歳江はぐっと言葉に詰まった。
 構えた刀は小刻みに震えたままだったが。

「で、試験的には俺の評価はどうだい?」
 まだ冷静に見てそうな勇子に向かって尋ねる。
「え? そうだね、鈴音ちゃんの剣をあれだけ止められるのは凄いと思ったよ。
でも守ってばっかりだったよね? 剣技の方も見せてもらわないと…」
 だろうな。
「OKだ。そいつは今から見せよう」
 言って、鈴音を見る。
 ぶるぶると首を振って拒否された。
「じゃあ、勇子ちゃん頼むわ。俺から行くぜ」
「え? 私?」
 問いかけた時には、俺は地を蹴っていた。
 数メートルの距離を一気に跳躍。
「うわ!?」
 勇子が叫んで銃剣を構える。だが、
「上段横一文字で行く! かわしてくれよ、止めようなんてすんな!」
 俺は叫ぶ。
 正直言って、剣技で認めさせるのは難しいだろう。
 攻撃能力で俺が見せるものは、一つだ。
 勇子を指名したのも、動かれる前に即座に攻撃に移ったのも、立ち位置がいいからだ。
 木を背にしたその位置が。
 勇子の目の前に着地、同時に『因果』にオーラフォトンの輝きが宿る。
 勇子が身を低くした。
 よし!
「おおおお!」
 叫びと共に、俺は『因果』を振るった。
 直後、破壊音が轟く。
 勇子の背後にあったニ抱え近くはありそうなその木は、俺の一撃で真っ二つに叩き折られていた。
「うわわわ!」
 砕け散った破片が勇子に降りそそぐ。
169入隊試験:04/05/08 22:29 ID:Gl6U30Fo
 次いで、叩き折られた木が盛大な音と土煙を上げて後方に倒れた。
 振りぬいた姿勢を保ったまま、俺は尋ねる。
「とまあ、破壊力が俺のウリなわけだが、試験結果はどうなった?」
「……合格だ」
 苦虫を噛み潰したような歳江の声が聞こえた。


「…じゃあ、本拠地に一旦戻らないといけないのかよ」
「そうなる。今言った通り、こちらからでは連絡が取れん」
 不便な。何で双方向の連絡手段を持たせないんだよ。
 味方として認めてもらって、いざ行動に入ろうって時にこの体たらくだ。
 すぐにでも捜索に出たかったが、仕方ねえか。
 上の連中に今日子の説明をしないことには、こっちについた意味がないからな。
「ま、いいさ。ならとっとと中央に行くとしようぜ」
「うむ、それなのだが…」
「二手に分かれた方がいいと思うんだよ」
 いきなり戦力分散かよ。
「なんでだ。全員で行動した方がいいんじゃないか?」
「うん、そうなんだけど…、中央から光陰君の情報をもらった時に聞いたんだけどね」
 俺の質問に、勇子が苦笑しつつ答えてくれた。
「私達の他にも同じ任務で行動してる人達がいるんだけど、結構な人数が中央に戻ってるみたいなの。
だから、外の警戒が手薄にならないように、できるだけ外で行動して欲しいって言われてるんだよ」
 …なるほどな。それで、妥協案で分散行動か。
 組織っていうと、やっぱ色々あらぁな。
「それでね、私と光陰君が中央行き。歳江ちゃんと鈴音ちゃんが外の哨戒がいいと思うんだけど」
 む、鈴音ちゃんと一緒じゃないのか。
 まあ、歳江には嫌われちまったようだしな。歳江と一緒よりはいいか。
 と、勇子の提案に歳江が不満の声を上げる。
「待て、勇子。まだこやつが完全に信用できるかは疑問だ。局長たるお前が行くことはあるまい。私が行こう」
 いやそいつは勘弁してくれ。
 つーか裏切る気もさらさら無いんだけどよ。
170入隊試験:04/05/08 22:32 ID:Gl6U30Fo
「ん〜、でも歳江ちゃんと光陰君相性悪そうだし、鈴音ちゃんに行かせるのは可哀相でしょ?
私が一番適当な人選だよ」
 切ないことに、まだ歳江の後ろに隠れたままの鈴音ちゃんがコクコク頷いて同意してくれた。


 結局。
 なんだかんだで勇子に説得された歳江は、鈴音ちゃんと一緒に行っちまった。
 戻ったら芹沢と鉢合わせることになるとかなんとか言って説得してたから、たぶん中央にはカモミール芹沢がいるんだろう。
 史実でも仲悪かったようだからな。
 で、俺は今、勇子に連れられて中央を目指している。
「きっと要望は通ると思うよ。今日子さん、早く見つかるといいね」
「…ああ、そうだな。サンキュ」
 その為に、最善の方法と思える行動を取った。
 正義だモラルだは二の次でいい。
 中央に行ったら、それからは透達召還された者を狩ることになる。
(ま、組んだのが殺伐が似合わねぇ勇子だってのは、ある意味救いかもな)
 そう思いながら、俺は勇子と共に中央への道を歩いていった。



【碧光陰@永遠のアセリア(ザウス) 招 状態○ 所持品:永遠神剣第六位『因果』 スタンス:『空虚』を砕いて今日子を助ける】
【近藤勇子@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品:銃剣付きライフル】
【土方歳江@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品:日本刀】
【沖田鈴音@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼 状態○ 所持品:日本刀】

【『ただ一人の女のために』後】
171それぞれの選択:04/05/09 00:58 ID:DuVScvBL
「なんのつもりだ? あんたには感謝されこそすれ、恨まれる覚えはないんだが」
「そうね……私自身にはあなたに対する恨みはないわ。…でもこの子達にした事、忘れたとは言わさないわ」
 霧は自分の後ろの双子に目をやる。
 双子は怯え、悲鳴を上げる事すら出来ない様子だ。
(……厄介だな。あの様子じゃ双子に完全に騙されてるな)
 説明した所で信じてもらえるだろうか?
 玲二の事が信用出来ずに一度は逃げ出した霧を説得するのは容易な事ではない。
 しかし玲二はあえて困難な道を選ぶ。
 もしエレンが傍に居たら呆れ顔をして危険性を説いただろうが、
彼女とてそうする方が玲二らしい、と言う理由で内心では賛成してくれるだろう。
(だがあまり時間はかけれないな……あのアフロとロボットが来る前になんとかしないと……)

「佐倉霧…だったな確か。俺の話を聞いてくれないか」
「殺人鬼の言う事を信用しろっていうの?」
 霧はボウガンからイタクァに構え直し、その銃口は玲二を捉えている。
 だが、ここまでは玲二の予想通り。
 玲二はゆっくりと銃を地面に投げ捨てる。
 コルトとS&Wは霧の足元で止まった。
 その行動に戸惑ったのか霧の表情がこわばる。
「これで俺は君に危害を加える事は出来なくなった。話を聞いてもらえるか? あまり時間がないんだ」
 もう後戻りは出来ない。
 なんとしても霧を説得しなければ玲二自身の命もない。 
「あなたはどうしてそこまでして……」
 霧の背中に重みが加わる。
 双子の一人、なおみが霧の背中にしがみついていた。
「信じたら駄目だよ、お姉ちゃん。あの男は私達の時もああやって騙したんだから……」
 そうだった。
 この子達はなぜあんなに怯えていた?
172それぞれの選択:04/05/09 00:58 ID:DuVScvBL
 それは裏切られたからではなかったのか。
 信じたはずの守ってくれるはずの存在に裏切られたから……
「……お前達、そうやって騙したのか?」
 双子の姉妹に傾きかけていた霧の気持ちを玲二の言葉が冷静にさせた。
「あんたも……霧の方も不思議に思わなかったのか? 俺が霧を助けた時、そんな機関銃を持っていたか?
 霧もそれくらいは覚えてるはずだ。まさか俺の持ち物だったなんて与太話を信じてる訳じゃないよな?」
 ───そんな話を信じていた。
 あの時の双子の涙ながらの話を鵜呑みにして、疑いすらしなかった。
(じゃああの機関銃はあの子達の───)
「こんなに早くばれるとはね。しょうがないなぁ」
 霧が真実を知った時には既に遅かった。
「「えい!!」」
 掛け声と共に双子が霧を押し出す。
 よろめきつつも前に押し出された霧を玲二が受け止める。
 即座に玲二は次に来るであろうAK47の攻撃に見越し霧を抱きかかえたまま横に跳んだ。
 その瞬間、玲二の目に飛び込んで来たのは駆け足で木陰に隠れる姉妹……そして鳳なおみが手に持つリモコン。
 体中を駆け巡る悪寒。
 霧の全身を見る。
(───あった!)
 霧の背中に挟んであったプラスチック爆弾を掴むとそれを放り投げ、それと逆方向に再び跳ぶ。
 なおみが笑った気がした。

 爆発音が鳴り響いた。

「なんだ今の音は!」
 音だけ聞こえるのが逆に不安を募らせ、武は我慢出来なくなりコックピットを開けて外部の状況を確認した。
 揉み合ったまま崖下に転がり落ちて行く男女が見えた。
「タケル!」
 冥夜が言うまでもなく、武は崖下に向けてカイゼルを発進させていた。
「くそっ、一体何が起こってるんだ!」
173それぞれの選択:04/05/09 00:59 ID:DuVScvBL


「二人共死んだかな?」
「どうかな……ここからじゃ確認出来ないね」
 今後の憂いを絶つ為にも二人の状態は確認しておきたい所だが、子供には二人が落ちた崖を下るのは不可能に近い。
 もっともあの爆発では直撃しなくてもどうなっているのかは容易に想像出来ることであったが。
「また、利用出来る人間を探さなきゃね」
「めんどくさいね…」
 互いに顔を見合い溜息をついた。

「成る程。大した悪党だな、お前らは」
「俺達が言う台詞じゃねえだろうが。なんせ俺達の方がもっと悪人なんだからよ」
 それまで戦況を静観していたゲンハと直人が姉妹の前に姿を現す。
 突然現れた二人の男に対し、姉妹は一瞬戸惑ったもののすぐにAK47を構えた。
 こういう状況下で下手に演技しようとするとろくな結果にならないのは先程思い知ったばかりだ。
 姉妹の判断は間違ってはいない。
 だが、相手が悪すぎた。
「おらよっ!」
 既に間合いを詰めていたゲンハがなおみの銃を蹴り飛ばす。
「くっ…!」
 あかねがそれを見てゲンハに照準を向けるがこちらは
「どうもゲンハと居ると俺の影が薄くなる気がするんだよなぁ」
 直人がシグ・ザウエルで弾き落とした。

「……で、犯るのか?」
 木の蔓であかねを縛りながら直人はゲンハに問いかける。
「はっ! 当たり前だろうが。女目の前にして妙な事言ってんじゃねえぞ」
 ゲンハはなおみにのしかかりすっかりやる気である。
「ひっ…! やめ…!」
174それぞれの選択:04/05/09 01:01 ID:DuVScvBL
 なおみも必死の抵抗を見せるが腕力でゲンハに適うはずもなく簡単に押さえつけられてしまう。
(俺が言いたいのは最後の相手がこんな餓鬼でいいのか? って事なんだがな……)
 実際の所ゲンハにとっては相手の外見ではなく相手が女である事が重要なのだろう。
 目が見えようと見えまいと戦闘力に大差なかったのはそういう所もあるのかもしれない。
「なおみを放せ! この! この!」
 どうでもいいことに考えが及んでいた直人の思考はあかねの声によって現実に引き戻された。
 あかねは足をばたつかせ抵抗を試みるががっちりと木に縛り付けられ、全く身動きがとれない。
「で、直人。てめえはやらねえのか? せっかく二人いるんだ、分けるのも簡単だ」
 ゲンハの提案に直人は首を振った。
「わざわざ聞く事じゃねえだろうが。俺はたった一人の女にぶちまける為に我慢してるんだ。お前はお前で遠慮なく楽しめ」
「クックッ……待てば待つほど狂おしくなる。俺の言った通りだったろ?」
 ゲンハの言葉に直人は笑みを浮かべた。
「ああ、全くだ。こればかりはお前に感謝してるぜ」
「助けてやった恩は忘れたのかよ」
 不満げに問うゲンハに直人は
「さっき助けた分でチャラだ」
「なるほど! 違いねえ!」
 何がおかしいのか二人でずっとゲラゲラ笑っていた。

 それから少しして。
「行くのか?」
「ああ……言っただろ? 俺には会わなきゃいけない奴がいる」
 直人は立ち上がった。
 ゲンハの下でもがくなおみを一瞥して立ち去る。
「じゃあな。地獄で会おうぜ」
「馬鹿か。俺が死ぬ訳ねえだろ。地獄に行くのはてめえだけだ」
「死ぬまで言ってろ、馬鹿」
175それぞれの選択:04/05/09 01:03 ID:DuVScvBL
 それが彼らの別れの挨拶だった。

 玲二の投げた銃を回収した直人の耳になおみの悲鳴が響く。
(あいつだけは確かに死にそうもねえなぁ…)
 直人は自分の考えのおかしさに笑い出す。
(これで本当に言葉通りゲンハが死ななかったら、それはそれでおもしろいのかもしれねえな)

「俺が先に逝くか、それともお前ら二人が先に逝くか……真剣勝負といこうじゃねえか!」
 己の存在意義をかけ、ゲンハはなおみに己の凶器を突き入る。
 なおみの悲鳴で命を賭けた勝負は幕を開けた。


【白銀 武@マブラヴ age 状態○ 所持品 サブマシンガン(残弾0) 、ハンドガン(装填数 20発) 招 】
【御剣 冥夜@マブラヴ age 状態○ 所持品 刀 狩】
(『カイゼル』のコックピット内)
【銀色のバルジャーノン『カイゼル』 状態 アイカメラ破壊、外部の状況確認できず、現在コックピット開放中】
【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態? 所持品:手榴弾 暗視ゴーグル×2 食料・医薬品等】
【佐倉霧@CROSS†CHANNEL 狩 状態? 装備品 回転式拳銃(リボルバー)『イタクァ』残り弾数不明(13発以下)】

【ゲンハ@BALDR FORCE(戯画) 招 状態×(裂傷多数、背中に深い刺し傷、失明、かなり危険な状態)  所持品:鉄パイプ 包丁 AK47】
【鳳あかね@零式 状態×(縛られて身動き不可能) 装備品なし (狩?招?)】
【鳳なおみ@零式 状態×(ゲンハに押さえつけられている) 装備品なし (狩?招?)】

【直人@悪夢(スタジオメビウス) 招 状態△(傷は多いが命に別状なし) 所持品:シグ・ザウエル S&W(残弾数不明) 
 コルトガバメント(残弾数不明) クレイモア地雷×2 AK47】

(餓狼伝説直後)
176Dark Roads:04/05/09 01:54 ID:Ph3/uKF8
「調子はどうかね?」
 戸を叩く音が聞こえると、男がゆっくりと部屋に入ってくる。
「体調の方は整いました……」
 ベッドの上に置かれていた……横になっていたハタヤマが起き上がる。
「とすると後は、ヴィルヘルムの呪いか……」
 ケルヴァンは、手を顎に当て、ふむ、と考えると思いついたように指を鳴らした。
 彼の後ろから入ってきたメイドが、ケルヴァンに用を尋ねる。
「倉庫に一つだけアレがあったはずだ……。
 持ってきてくれないか?」
「かしこまりました」
 ケルヴァンの意図を汲み取ったメイドが後ろに下がる。
「さて、今来たのは他でもない頼み事があるからだ」
 ハタヤマの座るベッドの横にあった椅子にケルヴァンも腰掛ける。
「頼み事ですか?」
「私は、この後少々中央から離れなくてはいけない。
 その私の留守の間、非常時には君も中央、いや要塞の防衛に参加してもらいたいのだよ。
 できるなら戦闘で力をつけ、心を鍛えて欲しいという私の願いでもある。
 ……君に覚悟があるならね」
 力を得るための覚悟。
 この先の道で起こることは、ハタヤマにも想像できた。
(……引く訳には行かない。
 その方が、彼女を侮辱する事になる)
「解りました、やります」
 多少悩みながらも頷くハタヤマ。
「ありがとう。 君は、私にとって大切な客だ。
 危険と感じたら、引いてよいし、万が一の為の補佐の兵を幾人かはつけよう」
 そう話してる内にメイドが水の入った瓶を持ってくる。
177Dark Roads:04/05/09 01:55 ID:Ph3/uKF8
「さぁ、その水を浴びたまえ。 解呪の泉の水だ。
 君にかけられた呪いを解き放ってくれる」
 ハタヤマは、彼に言われるまま、瓶を受け取ると恐る恐る蓋を開け、水を体にかける。
 部屋に光が溢れる。
 水がかかると同時に、ハタヤマの身体がぱぁっと光り輝いたのだ。
「どうやら成功したようだな……」
 光が消え、落ち着いたのを見計らってケルヴァンが口を開いた。
 ハタヤマにかけられていた呪いが完全に消去されたのだ。
「さて、先程言ったように私は少々出かけねばならない。
 もし何かあれば、また連絡しよう。
 それまでは休んでいてくれたまえ、君に働いてもらうのはそれからだ」
 ハタヤマの様子が落ち着いたのを確認するとケルヴァンは、部屋から出て行った。

 廊下を歩きながらケルヴァンは考えていた。
(今の所、候補は三人か……。まぁまぁと言うべきか)
 武達の所へ向かいながら、彼が目をつけた主な三人を思い浮かべる。
(まずは、山辺美希。
 彼女の性格は、大いに期待できる。
 後は、時間をかけて見合った力をつけさせるべきだな)
 そして現在向かっている者の事。
(次は、白銀武。
 カリスマと言う点では、彼は素晴らしい。
 だが、このままではリウィと何ら変わりない。
 どう彼を染めていくかだな。
 リウイで失敗したノウハウを活かせるといいのだが……。
 最後にハタヤマ。
 潜在能力としては、彼が一番力があるだろう。
 武よろしく、どう人格を改造していくかだな……)
 コツコツと廊下にケルヴァンの足音が響いていった。
178Dark Roads:04/05/09 01:56 ID:Ph3/uKF8


 それから数時間後……。
「失礼します」
 ハタヤマの部屋にケルヴァンからの指令を携えた兵がやってくる。
「ケルヴァン様からの伝言です。
 出撃できる準備をして置いて貰いたいと……」
 来た。
 ハタヤマは思った。
「準備するので、待っていて貰えますか?」
 ハタヤマの返答を聞くと兵が部屋から退出する。
 ドアの向こうで待っているのがハタヤマには解った。
(とうとう始まる……)
 彼の選んだ道を進み始める時が来た。
(戦い続ける内に、何時か僕と同じ境遇に当たる人、
彼女の知り合いともやがては戦う事になる。
 けど、僕は引く訳には行かない。
 僕が存在すると言う事が、僕が選んだ償いだからだ)
 遇えば、彼らはきっとこう言うだろう。
『彼女がどう思うか?』
 部屋へ案内された時、ケルヴァンは言った。
『死者がどう思うかなど、我々には解らない事だ。
 重要なのは、本人の気持ちだよ。
 中途半端に曲げるようであるなら、それこそ曖昧な気持ちと言うものだ。
 ハタヤマ君、君は、どちらの道を選ぶ?
 一生、他者の罪と言う言葉に振り回され続けるかね?
 それとも……』
 ハタヤマが許しをこいても、完全に許しては貰えないだろう。
 また、自分達に味方するように等と都合よく言ってくるかもしれない。
 最悪、哀れな奴だ、と見捨てられるだけに終わる。
 だから、彼は、ケルヴァンの言う事を正しいと思った。
179Dark Roads:04/05/09 02:01 ID:Ph3/uKF8

 彼がこれから歩む道は、証明の為の戦い。
 例え、その結果、修羅の道を歩む事になっても。
 いや、既に歩いてる、だが引き返す気はなかった。

 目を瞑り、意識を集中する。
(あの時の感覚を思い出すんだ……。
 メタモル魔法であって、メタモル魔法でない、その先にあったモノを……)
 ゆっくりと、ゆっくりとハタヤマの身体が光に包まれ、人の形へと移り変わる。
 彼が目を開いた時は、成功していた。
 彼がイメージした通りのアーヴィの姿だ。
 彼が辿り着いた先、完全なる変身魔法。
 その結果が、今ここにある。
 ただ本物とは違い、冷酷なイメージの漂う姿。

 服は、メイド達がご丁寧に綺麗に洗濯してくれてあった。
 アーヴィとなった身体にそれを通す。
「準備できたよ」
 ハタヤマの声を聞き、部屋に入ってきた兵は、驚いた。
 ケルヴァンからハタヤマの身に起こった現象は聞いていたが、
やはり、実際目の当たりにすると驚愕である。
「失礼、これはケルヴァン様からあなた様へ渡すようにと……」
 兵の手から、ハタヤマの手に見覚えのある杖と水の入った瓶が手渡される。
「この水は?」
 当然のようにハタヤマが尋ねる。
「ハッ!! 治癒の水といい、飲めばその名の通り、治癒の魔法と同じ効果があります。
 あなた様が、回復魔法を使える事は知っていますが、ケルヴァン様が万が一のためにと……」
 そこまで自分の事を把握している事に驚きつつも、アーヴィの顔は、真剣な表情である。
(絶対に死ぬわけにはいかないな……)
 ポケットに瓶を入れると、ハタヤマは、部屋を出るのだった。
180Dark Roads:04/05/09 02:02 ID:Ph3/uKF8

【ハタヤマ・ヨシノリ:所持品:魔力増幅の杖 治癒の水(一回分)状態○(アーヴィに変身中) 招→鬼 行動目的 要塞の防衛、絶対に生き抜く】

【亡霊が機神に送る歌後】
181固有の記憶が紡ぐもの:04/05/09 13:28 ID:RsjjZUZO
 中央要塞。
 ヴィルヘルム・ミカムラの居城であり、この新世界の要となる場所である。
 そのような場所であるゆえに、様々な人間や魔族が住まい、様々な施設が存在する。
 たとえば山辺美希がいるこの場所、武器庫もその施設のうちの一つだった。

「ゴイシャス」(訳注:ゴイス(凄い)+デリシャス)
 開口一番、美希はのたまった。
 ちょっとした講堂くらいの広さの部屋に、所狭しと武器が並べられている様はまさに圧巻である。
 物珍しげに周りを見回しながら奥に進んだ美希だったが、ふと足を止めた。
「…うあー、まさかあるとは」
 陳列されている数多の武器の中から、美希は目に留まったそれを選び手に取った。
 ――バックマスター社製・マックスポイントクロスボウ。
 しかもコッキング装置付き。
 狂気に満ちたあの世界で、最も扱い慣れた凶器がここにあった。
(何であるんだろう、つーか何で見つけちゃうんだろう)
 これを手に取ると思い出してしまう。
 これで、自分は一体何回……
「あーー!! NO!でりーと!思考消去!思考消去!」
 あわてて思考を打ち消す。
 できれば思い出したくない記憶だ。
「ふぅ、何とか内なる自分に打ち勝ちました、先輩」
 架空の黒須太一がグッジョブと親指を立てた。


 河原末莉の部屋で一度目覚めかけた記憶がある。
 スキテキシュことメイドさんが戻って来た時だ。
 その時、末莉は泣いていた。
 どうしたのかと尋ねるメイドに、何でもないと一生懸命言い訳していたように思う。
 その後また眠りに落ちてしまい、気付いた時にはいつの間にか自分の部屋に戻されていた。

 体調が戻った美希は、すぐに行動に移った。
 ここも、絶対安全な場所ではない。
182固有の記憶が紡ぐもの:04/05/09 13:31 ID:RsjjZUZO
 それを知ってしまった以上、じっとしているわけにはいかなかった。
 どういう理由があったのかは分からないが、あの男女の始末を命じたのは、やはりケルヴァンだろうから。
 自分も同じ目に合う可能性は、あるということだ。
 たぶん、ケルヴァンの目的に反することをしたんだろうと予想はしている。
 彼に従っている間は安全だと思うが、万が一ということもある。
 幸い、一度要塞内を練り歩いたおかげで顔と名前は知られている。
 特に兵舎関係の施設は顔パス状態だった。

 とりあえず、今の自分に出来ることは何かと考えると。
 もしもの時の為、護身用の武器を確保することと、脱出経路の確認、利用できる人材の選別…くらいなものだろう。
 まずは武器の確保。
 それで美希は一人でここを訪れていた。
 兵舎にいた兵士に伝えた訪問理由はそのまま。護身用の武器が欲しい。


「でもこれが一番使い慣れてるわけだしな〜」
 考える。自分の目的は何なのか。
 自分が可愛い。死にたくない。生きたい。なら必要なのは?
「身を守れる知恵と力、なのですのだ」
 一週間が永遠にループし皆が初期化されていく中で、自分が身に付けたもの。
 何十週も固有の記憶を持ち続けてようやく得られた、生き残る為の、強さ。
 たとえ誰であろうと、騙すことも、犠牲にすることも厭わない歪んだ強さが、自分を守る絶対不変の武器だ。
 クロスボウを付属の布で包み小脇に抱える。
 矢筒もセットで持ち、美希は中庭に面した窓へと向かった。
 この周辺の地理は、事前に頭に叩き込んであるので間違いない。
 格子がはまっていたが、これらを外に出すことくらいは出来そうだった。
 外に誰もいないことを確認し、窓下の茂みに放る。
「これでよしっと」
 そして美希は、また武器庫内を物色し始めた。
 兵舎で待っていた兵士に、護身用としてスタンガンの持ち出しを許可してもらったのは、そのすぐ後である。

183固有の記憶が紡ぐもの:04/05/09 13:34 ID:RsjjZUZO
 自室まで誰にも発見されずにクロスボウを運んだ美希は、クローゼットの中にそれを隠すとまた外を練り歩いていた。
「う〜ん、思いっきり身体検査されたなぁ」
 もちろん女性兵士がやったわけだが。
 自分が、と立候補したチヌ野郎(訳注:チヌダイ(魚類)の様な顔をした男の意。相手を侮辱する言葉)もいたが、
その女性兵士と一緒に四本のツンドラ気候並みに冷たい視線で射抜いてやったら大人しくなった。
 ともあれ、次は脱出経路と手駒だ。
 利用できる人材は現状では極端に少ないので、これから発見していくしかない。
 もしケルヴァンから命を狙われる立場になったとしたら、中央の者はほとんど敵になるだろう。
 今の立場ならほとんど味方だろうが。
 どちらの立場でも使えそうな人材といえば。
(強いて上げれば、末莉ちゃんくらいかな)
 彼女に何かさせるのは難しい気がするが、人質としては使えそうだ。
 とすれば、仲直りしておくのが上策だろう。
「ああ…なんかもうヨゴレ確定だなぁ、私…」
 とほー、と肩を落としながら歩いていた美希の目に、一組の男女の姿が映った。
 少し先の十字路を横切っていく。
「にょー!?」
 思わず声を上げるが、その二人は美希に気付かずそのまま走り去り、見えなくなった。
 美希は十字路に急ぎ、二人が進む方を覗き込む。
「うーわー…ここにもそういうお店ってあるのかなぁ」
 美希が驚いたのは女の方の服装…というかコスチュームだ。
 やたらめったら露出度の高いセーラー服みたいなコスチュームを着ている。
 長物を持っているが、あれはなにかの小道具だろうか。
 きっと、自分のような処女には想像もつかない、もの凄い使い方をするのだろう。
「これは、どういうシチュエーションなんすかねぇ…愛の逃避行?」

『B子さん、あなたのような娘がこんな店で働いてはいけない!』
『Aさん…』
『僕と一緒に逃げましょう!』
『はい!』

 むくむくと野次馬根性が沸き起こってきた。
184固有の記憶が紡ぐもの:04/05/09 13:37 ID:RsjjZUZO
(あ〜…どうしよ。後つけてみようかな)
 今しか出来ないことだが、今やらなければならないことではない。
 かと言って、有事の際の下準備がそんなに急務なのかといえば、そういうわけでもない。
 悩んだ。
 数秒、美希なりに悩んだ末に結論を出し――
 ――そして美希は行動を開始した。



【山辺美希@CROSS†CHANNEL(フライングシャイン) 招 状態○(覚醒?) 所持品:スタンガン】
【大十字九郎@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 招 状態△ 所持品:自動式拳銃(フルオート)『クトゥグア』、残り弾数不明(15発以下)】
【七瀬凛々子(スイートリップ)@魔法戦士スイートナイツ(Triangle) 招 状態○(軽傷有り) 所持品:グレイブ 行動目的:敵本拠の捜査】

【『ウェイトレスは振り向かない』直前】

【備考1:美希の部屋のクローゼットに、クロスボウ有り】
【備考2:美希の行動は任意】
185Escape Battle:04/05/09 20:03 ID:dK/re/OR
「ふぅ……」
 カレラとの一戦をやり終えた悪司はベッドの横に腰掛ける。
「大分、時間が経っちまってるな……。
 あたた、流石にちょっと腰もいてぇ」
 横には、精魂果てたカレラが横たわっている。
(篭絡したのはいいが……、これじゃもうしばらく起きそうにないな)
 考えながらも悪司の腰も少々痛みを上げる。
(少し休んで、カレラを叩き起こして、情報を聞き出すと共に要塞内を案内させるか)
 カレラの寝顔……、いや気絶した顔を見ると悪司もゆっくりと眠りについた。

(なるほど、彼女が和樹殿の目的か……)
 部屋の入り口で、ギーラッハは、和樹と話す末莉を見ていた。
(和樹殿の信念の強さが解る気がする)
 目の前には、和樹の変わり果てた風貌に驚く末莉と、怒られあたふたする和樹。
 ギーラッハがそこへ入り込む余地はなかった。
(和樹殿は、信ずるに値する人物だな……)
 無影の一連の後、ギーラッハの中にあった蟠りが多少解消された。
 ヴィルヘルム、和樹……、どちらも己にとっては信用するに値すると彼は思った。
 逆にケルヴァンに対しては、少しずつだが、不信感は募っていく。
(だが、仕事は仕事だ……)

(さて、これ以上、覗くのもヤボと言うもの……)
 二人の邪魔をしないよう、音を立てずサッと部屋からギーラッハは出て行った。
「あ、ギーラッハさん!!」
 自分を助けてくれた誇り高き戦士の話をしようとした所で和樹は彼の存在を思い出す。
「行っちゃったか……」
 廊下の奥に消えていく、ギーラッハの後ろ姿が和樹の目に映った。
186Escape Battle:04/05/09 20:06 ID:dK/re/OR

「目を覚ましたか?」
 この間と違って、隣に横たわるのは悪魔だが美女だ。
 悪司の声も多少ニヤニヤとしたものになる。
「わ、私……一体……」
 あの想像を絶する快楽の並から意識を戻した後である。
 カレラの頭が寝ぼけたかのように多少混乱をする。
「覚えてるか?」
 飼い主のように、悪司はカレラに語りかける。
(ああ、そうか私は……)
 悪司の声でカレラは何があったかを思い出す。
「さ、話してもらうぜ……。
 まずは、ランスの居場所と俺とあいつどっちが強いかだ」
 悪司の瞳が険しくなる。
 主にしかられた犬のように、カレラは答え始めた。
「今は多分、外で仕事してると思うわ……。
 あなたもあった新撰組たちと同じよ」
「で?」
「あく……」
「俺が聞いてるのは、テクの事じゃない。
 俺とランスが純粋に闘った場合、どちらが勝つかだ」
「……今は勝てるかもしれない」
 カレラの言葉に悪司は、驚く。
「……どう言うことだ?」
「ランスは、どんどん強く慣れるわ。
 それも普通の人より遥かに早い速度で……。
 しかも彼には限界と言うものがないの」
 黙ってカレラの台詞に集中する悪司。
187Escape Battle:04/05/09 20:08 ID:dK/re/OR
「乾いた砂が水を吸収するかのように、彼はどんな事でも成長するわ。
 悪魔であった私だから解る。
 彼は私との行為でさえも成長の糧にしていたわ」
「……」
「最後に私が見た時は、悪司と互角くらいね。
 けど、外で仕事を重ねる内に、戦いを続けていれば……」
「互角から、はっきり俺より強くなっているかもしれないか……」
 最後まで聞く必要はなかった。
(そんな事で諦める俺じゃねぇ……。
 絶対に絶対にアイツは、俺だけの手で倒す!!)
 では、次に聞くべき事は何であろうかと悪司は考え出す。
(当初の目的通り、まず施設内を案内がてらに把握して、その後あゆ達と合流だな)
「それじゃ、重要施設の場所を教えてくれ。
 それと何か役に立ちそうなアイテムのある場所とかな……」
「ええ、解ったわ……」

 廊下を歩く内に兵達の話してる会話から、
ギーラッハは中央に従う者が来たのだと言う事を知った。
(騒がしい、騒がしいと思っていたらそう言うことか……)
 横では、あの娘の衣装がそそるとか会話している兵もいる。
(女か……、己の知っている者であろうか?)
 であるなら、多少顔を確認しては見たい。
 ギーラッハは、客室の方へと向かって行く。
「あれは……」
 その行く先の彼の目に入ったのは、一組のカップル。
 片方は見覚えのある女……。
188Escape Battle:04/05/09 20:10 ID:dK/re/OR

「帰還するにはどうしたらいいんだ?」
 歩きながら、悪司がカレラに囁く。
「……私は知らないわ。
 上の人たち、多分ヴィルヘルム、ケルヴァン、比良坂初音。
 知っているのは、このトップの三人だけね」
「ひらさかはつね?」
 前二人の名前は、嫌と言うほど聞かされてきたが、初音の名前は、初耳である。
「普段は黒髪のセーラー服を着た少女だけど、蜘蛛の化身よ。
 後は、絶対に闘っちゃ駄目としか言えないわ……」
「桁違いの強さと言うわけか……」
「……その三人を除けば、恐らく最強があの男よ」
 そして、自分達の方へと向かってくる赤い騎士の方をカレラは見た。

「久しいと言うべきかな?」
 先に言葉を発したのはギーラッハだった。
「ええ……、こっちは山本悪司って言うの。
 多分もう知っていると思うけど、中央に着てくれた人よ」
 カレラの話を聞きながらも、ギーラッハの目は悪司を捉えて離さない。
 その様子にむすっとした顔をしながらも悪司は挨拶をする。
「よろしくな……」
 だが、ギーラッハは少し悩んだ様子をすると、彼には珍しく意地悪げな返答をし始めた。
「大切な嫁を殺されてまで尚、中央に従うか……、男として最低の部類だな」
(まずい!!)
 カレラは、焦った。
 恐らく、あの放送の件をギーラッハも聞いていたのだ。
「所詮、自分の命が惜しいだけの信念も何もない輩。
 尤も、ランスのあの行為に対しては、己も余り良くは思わないが……」
189Escape Battle:04/05/09 20:11 ID:dK/re/OR
 抑えてはいるが、悪司の顔が、気が怒りに溢れているのがカレラにも解る。
(悪司、お願い、落ち着いて!!
 さっきも言ったようにギーラッハは、あなたでは……)
「だが、それでも今の貴公は、そのランスよりも劣っているとしかいいようがない。
 まぁ、そんな男を選んだ女の目が……」
 グワッ!!
 咄嗟に前へでた悪司の拳がギーラッハに振り上げられる。
 彼の怒りの臨界点をとうとう超えたのだ。
「ふふ……、やはりな」
 一歩後ろに下がったギーラッハが、悪司に向かって構えを取る。
 対する悪司の方は、しまったと言う後悔の念と怒りが入り乱れている。
「先程の言は、失礼した。
 貴公がそのような男でない事は、直ぐに理解できた。
 だからこそ、試させて貰った」
 ギーラッハが大剣を握る。
「己は、己の仕事をしなければいけないのでな……」
 ギーラッハの顔がニヤリと綻ぶ。
 この男もまた強き者。
 戦いにおける興奮がふつふつと湧き上がってくる。

「悪司!!」
 カレラが叫ぶ。
 それと同時に、カレラは媚薬の瓶をギーラッハに投げつける。
「何っ!?」
 これにはギーラッハも多少驚いた。
 カレラは、中央の側へ組するものであると思っていたからだ。
 だが、そうおかしくも思わなかった。
(あの男に魅了されたか……)
 手で払いのけると瓶が廊下に落ちて四散する。
 その隙に、カレラが悪司の手を引き、二人は、逃げ出していた。
「悪く思うな……、逃がすわけにはいかない」
 廊下の角を曲がっていく二人をギーラッハは追い始めた。
190Escape Battle:04/05/09 20:15 ID:dK/re/OR

「くそ!!」
 走りながら悪司が声を出す。
(はやく、他のみんなに知らせねぇと!!)
 あゆやリップがいた場所への部屋へと向かう。
 ふいに、カレラが悪司に話し掛ける。
「悪司は、先に行って、私は、時間を稼ぐわ」
「馬鹿言うな!! 言った筈だ。
 俺が責任を持って護るって!!」
「このままじゃ、他の兵も来るわ。
 二人でかかっていっても無駄死にするだけよ。
 私は、時間を稼いだら必ず逃げ出すから」
 続けてカレラが言う。
「仲間がいるんでしょう?
 彼女たちまで無駄死にさせる気なの!?」
「……解った。
 いいか、お前は俺の女だ!!
 絶対に帰ってこいよ!!」
「そう、それでこそあなたらしいわ……」
 走るのをやめ、すっと悪司の唇に、カレラは唇を重ねた。
 ほんの少しの抱擁が終わると悪司は、客室の方へと走るのを再開する。
 その様子を見届けるカレラ。
「命を狙ってたはずなのにね……。
 命を助ける事になるなんて……」
 角からギーラッハの姿が飛び出る。
「悪司、絶対に死んだら駄目よ。
 あなたは、悪魔である私を屈服させたんだから……」
 赤い悪魔へとカレラは、勝てぬ戦いを挑みに行く。
191Escape Battle:04/05/09 20:17 ID:dK/re/OR

「くそう、くそう、くそう、くそう!!」
 あのキスの時。
 カレラは、思念を通じて悪司に出来る限りの情報を伝えた。
 一つは、島の地図のイメージと共に東西南北の結界装置のありか。
 ユプシロン等の危険な鬼側の強敵。
 そして、最後にこの要塞からの脱出で最も安全な経路を……。
 本人が否定しようとも悪司には、それらの行為の意味が解った。
(結局、俺は、また守れないっていうのか!?)
 そして、彼は次の覚悟も決めた。
 下手をすれば、彼らが気づかない内に先に手が回っているかもしれない。
 この辺りに彼等はいるはずなのだ。
(たった一言……、それだけで敵より早く行動できる内容のを……)

「失敗だ!!」

 悪司の大声が響き渡った。

「この声は!?」
 リップとあゆが同時に声を上げる。
 アルの事を尋ねようとしていた九郎も何事かと動きが止まる。
「先程、話した悪司さんの声です!!」
 リップが九郎に伝える。
「あのだあほは、もうばれたのかーっ!!」
 悪司がへまったのだろうとあゆは思った。
「早く、ここから脱出しないと……」
 リップの先導と共に、あゆがライセンを支えて、四人は部屋を出る。
「確かあちらの方から声が……」
 悪司の声がした方へと四人は移動しようとする。
192Escape Battle:04/05/09 20:20 ID:dK/re/OR
 ヒュン!!
 突如として、四人の前に弓が飛び出る。
 その威力は、壁を貫通した程の強い一撃が……。
「何処へ行くのです?」
 神風が弓を引きながら、姿を現した。
 恐らく、ケルヴァンの命の後、監視をしていたのだろう。
(俺以外は、みんなまだ若い女の子だ……。
 やれるか? いや、ここでやらなきゃ後でアルにしかられる!!)
「ここは、俺が防ぐ!!
 みんなは、その悪司と合流してくれ!!
 こいつを倒したら、俺も直ぐ行く!!」
 走り出した中で一人、その場に九朗は留まった。
「九朗さん!?」
 リップが振り向いて叫ぶ。
「はやく!! この時間を無駄にするな!!」
「は、はい!!
 必ず助けに来ますから!!」
 九郎の迫力に気圧され、ライセンを二人で担ぎ悪司の声の方へと走り始めた。
 それとほぼ同時に……。
「ぐぅ!?」
 九郎の右足に神風の弓が突き刺さる。
 神風の次の弓を引く音が聞こえる。
(逃げ場のない早撃ち勝負か……、望む所だ!!
 俺は……、絶対に負けない!!)
193Escape Battle:04/05/09 20:21 ID:dK/re/OR

 その様子を後ろからつけてみていた美希は、動きが完全に止まってしまった。
 だが、動きこそ止まったものの、不思議と美希の頭の中は物事を考え始める。
(見た所、あっちの四人が反逆者だったみたいだけど……)
 ポケットの中のスタンガンを美希は握り締めた。
(あの弓女に協力すれば、私は今後共に絶対に安全が確約されそう……。
 だけど、それはまたあの光景が……)
 見過ごすか、協力するか、それとも見なかった事にして去るか、美希は悩み始めた。

【山本悪司 @大悪司 (アリスソフト) 招 ○ 行動目的:ランス(名前、顔は知らない)を追う・中央から脱出】
【カレラ@VIPER-V6・GTR(ソニア) 鬼→狩(悪司に篭絡) 状態○ 所持品なし】
【大空寺あゆ@君が望む永遠(age) 招 状態:○ 装備:スチール製盆  行動目的:悪司と合流】
【ライセン@ママトト(アリスソフト) 狩 状態△(媚薬により発情中) 所持品:なし】
【大十字九郎@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 状: △(右足負傷) 所持品 自動式拳銃(フルオート)『クトゥグア』、
残り弾数不明(15発以下 行動方針:苦悩中】
【七瀬凛々子(スイートリップ)@魔法戦士スイートナイツ(Triangle) 招 状態○(軽傷有り)所持品:グレイブ 行動目的:悪司と合流】
【山辺美希@CROSS†CHANNEL(フライングシャイン) 招 状態○(覚醒?) 所持品:スタンガン】
【ギーラッハ@吸血殲鬼ヴェドゴニア(鬼) 状態:○ 装備:ビルドルヴ・フォーク(大剣)】
194Escape Battle:04/05/09 20:49 ID:dK/re/OR
【固有の記憶が紡ぐもの、Dark Roads後】
195嘘で固めたペルソナ:04/05/10 00:11 ID:GwHOBURP
(落ち着いて、落ち着いて…って波乱万丈すぎだよここ〜!
心の準備もないままいきなり修羅場にーッ!)
 身の安全。血と肉の光景。その両天秤で揺れる思考を、美希は何とか制御しようとしていた。
(弓女に手を貸すとしても、どうすればいい…? 男の方を狙うのは危なすぎるし…)
 あの弓女なら、自分が斜線上にいても躊躇無く撃って来そうな気がする。
 思考できる時間は長くない。
 こうしている間にも、女達はどんどん廊下の先へと走っていく。
(…って、あの方向は…)
 瞬時に、美希の脳裏にこの建物の見取り図が思い浮かぶ。
 自分で歩いた時の記憶が確かなら、出口までは少し遠回りになる。
 向こうにも階段はあるが、ここからの最短距離は美希のいる方の階段を下りることだ。
 しかも、女達は二人で一人を抱えるようにして走っている為、そのスピードは遅い。
(先回りは、可能)
 思った瞬間、美希は背後の廊下に走り出していた。
 走りながらも、思考だけは忘れない。
(考えて、考えて…。これはチャンスなの。百回に一回もない超レアイベントなんだから!)


「お前ら無事か!」
「ちぇいさーーーーーっ!!!」
 廊下の角から悪司が姿を現すと同時に、あゆの蹴りが飛んだ。
「うお! 何しやがる!」
「何しやがるじゃないさ、このボケェ!! あんだけ気ィ付けろ言ってたアンタがへまってどうするさ!!」
 一気にまくし立てる。
 それを受けて、悪司の顔が苦渋の表情に歪んだ。
「…それについちゃ、面目ねえ。だが、とにかく今はここから脱出するのが先決だ。俺の後について来い。
…そっちは一人増えてんな、俺に貸せ」
「は、はい」
 リップは支えていたライセンの顔を見る。
 声を出すのも辛そうだ。必死に、内からの衝動に耐えているようだった。
 悪司は手早くリップからライセンを引き受け、背に背負う。
 が、リップの次の言葉に一瞬だけ動きが止まった。
196嘘で固めたペルソナ:04/05/10 00:13 ID:GwHOBURP
「悪司さん、カレラさんは…?」
「そうさ大将、あのコスプレ痴女はどうしたさ?」
「……」
「…大将?」
「…後から来るっつった。だから先に行くぞ」
 二人は悟った。
 つまりはそういうことなのだ。
 九郎と同じ。自分達を逃がす為に、その場に残った。
 助けに行こう、と喉まで出掛かった言葉を寸前で飲み込む。
 先ほど見せた悪司の苦渋の表情。
 誰よりも、真っ先に助けに行きたいのは悪司のはずなのだ。
 だが助けに戻るその行為は、カレラの覚悟を、意思を、完全に無にする行為。
 そしてそれは、九郎にも同じことが言えた。
「…はい、行きましょう」
「まったく…カッコつけばっかりさ」
 中央になど来なければよかったのかもしれないと、そんな考えが頭に浮かぶ。
 結果論だとは分かっている。
 来なければ、ライセンを連れ出すことも出来なかった。
 だが、悪司が、あゆが、リップが、カレラと九郎を死の危険に晒してしまったことも、紛れも無い事実だった。
(畜生…カレラに何かあって見やがれ。絶対にただじゃすまさねぇぞ!)
(大丈夫さ…あの痴女がそう簡単に死ぬわけないさ…)
(大十字さん…ごめんなさい)
 憤りと、後悔と、懺悔と、決意と、諸々の感情を胸に秘め――
 そして彼等は走り出した。


(来る…)
 廊下を駆ける音が近づいてくる。
 先回りして廊下の角で待ち伏せていた美希は、目を閉じて一つ深呼吸をする。
(大丈夫、できる)
 悪司の声は建物中に聞こえたらしく、そこかしこでざわつく音がする。
 兵達も出動しているかもしれないが、ここにはまだ到着していなかった。
197嘘で固めたペルソナ:04/05/10 00:15 ID:GwHOBURP
 気を落ち着ける為に、もう一度深呼吸。
(…ん!)
 目を開ける。
 先ほどまで微かにあった焦りや不安の表情が完全に消え、いつもの美希の表情に戻っていた。
 そして美希は、廊下へと一歩を踏み出した。

「はえ!?」
「おわっ!?」
 美希の声と悪司の声が同時に響く。
 突然目の前の角から出てきた美希に衝突しそうになったが、悪司はなんとか止まることに成功した。
「っと、大丈夫か? ねーちゃん」
 目の前でぺたんと尻餅をついた美希に、悪司は声をかける。
 びっくりしたのか、美希のその表情は固まっていた。
 演技ではない。実際、美希は驚いていた。
(一人増えてる…)
 しかも屈強な男だ。恐らく、あの声の男。
 こんな短時間で合流されるとは思わなかった。
 女二人なら何とかなる気がしていたが、この男の行動一つで自分の計画は水泡に帰すかもしれない。
「ん? アンタその制服…ひょっとして日本人?」
 あゆが美希の制服を見てそう声を漏らす。
 その言葉で美希は我に返った。
 そうだ。もう後戻りは効かない。騙せ、演じろ。群青の仲間達をずっとずっと騙し続けてきたように。
 ――ここは怯えるように、戸惑うように。
「そ、そうです。無理矢理、連れてこられて…」
 その言葉に、あゆとリップは破顔した。
 残った二人のことがあるだけに複雑な心境ではあったが、目の前の少女を救出できることは素直に嬉しかった。
「ちょうどよかったさ! アタシ達はここから脱出するとこさ」
「もう大丈夫よ。外には他にも私達の仲間がいるの。一緒に行きましょう」
 ――呆けるように。
「…へ?」
「おい、ねーちゃん展開速過ぎてついてきてねーぞ。いいか、悪ぃが説明してる時間は無ぇ。
ここから出たいか出たくないか、それだけ今答えな」
198嘘で固めたペルソナ:04/05/10 00:17 ID:GwHOBURP
 ――気圧されたように。
「で…出たい、です」
 答えの直後に、ぬっと手が伸びてきた。
 あゆが、掴まれというかのように手を差し出している。
 おずおずと、その手を掴む。
 ぐいと引っ張られて立たせられる。
「そりゃそうさ。よろしく、アタシは大空寺あゆっていうさ」
「私はスイート…」
「自己紹介も後にしろ。行くぞ!」
 言うなり、悪司はライセンを背負い直し、走り出しかける。
 ここだ。
 ここが成功するかどうかの、分岐点。
 ――我に返ったかのように。
「ま、待ってください!」
 美希は大声で叫んでいた。

「なんだ!?」
 皆が美希を見る。
 美希は、悲痛な表情で、必死に訴えかけるように言葉を発した。
「妹が、部屋にいるんです! お願いします、霧も助けてください!!」
 思わず――その名前が出た。
「妹さんが…いるの!?」
 リップが焦燥を浮かべて問い返してくる。
 美希は、悲痛な表情のまま頷いた。


 美希は自分が好きだ。自分が可愛い。
 だけど、思わずその名前を…その名前の少女を助けてくださいと言った瞬間の自分は――
 一瞬だけ、大嫌いだった。
199嘘で固めたペルソナ:04/05/10 00:18 ID:GwHOBURP
【山辺美希@CROSS†CHANNEL(フライングシャイン) 招 状態○(覚醒?) 所持品:スタンガン】
【山本悪司 @大悪司 (アリスソフト) 招 ○ 行動目的:ランス(名前、顔は知らない)を追う・中央から脱出】
【大空寺あゆ@君が望む永遠(age) 招 状態:○ 装備:スチール製盆  行動目的:中央から脱出】
【ライセン@ママトト(アリスソフト) 狩 状態△(媚薬により発情中) 所持品:なし】
【七瀬凛々子(スイートリップ)@魔法戦士スイートナイツ(Triangle) 招 状態○(軽傷有り)所持品:グレイブ 行動目的:中央から脱出】

【『Escape Battle』直後】
200守りたかったもの:04/05/13 19:11 ID:gHDqJXgw

(ぬ……)
「どうしたんだ?」
 透達の所へ戻ろうとしていた麦兵衛にハイシェラの思念が語りかけてきた。
(この先に何かおるな)
 ハイシェラの真剣な様子に麦兵衛も状況を察する。
「……さっそくヤバイやつなのか?」
(相当まずい気じゃな。 禍々しくて、それに……、私の世界で言う神に似た感じがある)
 古き神である魔神達を滅ぼした存在、外より来た新たなる神。
 ハイシェラは、それらと良く似た感じがすると言うのである。
「神なんて、手におえないんじゃないか……」
 現代社会における一般人としては極普通の反応である。
(安心せい。 お主の世界ではどうだかは解らぬが、神は無敵ではないし、
やろうと思えば私とおぬしでも十分殺せる。
 私も昔は、神と呼ばれていたのだからな)
 詰まる所、力ある存在なだけというのだ。
 そして、麦兵衛には、それについて思い当たる節がある。
「まさか……」
(知っておるのか?)
 思い出すようにハイシェラに語り始めた。
 今日子の身体を操り、まひるを襲い、逃走した無貌の神の存在を。

「リック達は逃げきれたかしら?」
 あれから大分走り続けた。
 幸い、兵が追ってくる事もなく、あの施設が目に見えなくなって大分になる。
 未だ気絶した純夏を沙乃が背負い、定められた集合地点へと歩きつづける。
「あの二人がそう簡単に死ぬとは思えないけど……」
 自分達の方に追っ手が来なかったということは、リック達の方が成功したという可能性も考慮できた。
「だといいのだけれども……!?」
201守りたかったもの:04/05/13 19:16 ID:gHDqJXgw
 ミュラがふと足を止める。
「どうしたの……?」
 疑問に思った沙乃。
「下がって!!」
 ミュラが沙乃に向かって飛び出し叫んだ。
 それと同時に物陰から影が飛び出してくる。
 鈍い音が響いた。
 見れば、ミュラの脇腹に剣が突き刺されていた。
「ミュラ!?」
 純夏を背負った沙乃がミュラへ近寄ろうとする。
「来ないで!!」
 だがそれをミュラは拒んだ。
 直ぐさま相手へ向けて剣を振り上げる。
「ふむ……、攻撃の際に感づかれた……か」
 影の正体である女は、剣を引き抜き後ろ回避していた。
(駄目、立てない、力が……、あの剣に吸い取られたのが解る)
 幸いなことに臓器への損傷はなかったが、続く力が出ない。
 刺された時に力を吸われたのだ。
「まぁ、魔力無しとはいえ丁度いい腹の足しにはなるな。
 その後でゆっくりと奪うとするか」
 そういい担がれた純夏を見据える。
「絶対に許さない!!」
 純夏を地に投げ、沙乃が槍を繰り出す。
「其方はもう動けないだろう、後はお前だけだ……くくく」
 怒りに燃え上がり、立ち向かってくる沙乃を見て、無貌の神はいやらしく笑った。

「やっぱりあいつか……」
 目に忌まわしき姿が見える。
 せっかく分かり合えた仲間を引き裂いた根源、無貌の神。
202守りたかったもの:04/05/13 19:17 ID:gHDqJXgw
(あれが先程の話のやつか……、どうするんじゃ?)
「あの剣を砕けば、彼女の意識も戻るらしい。
 このままじゃ、どちらが勝ってもどちらかが死んでしまう。
 ……もうそんなのはごめんだ!!」
(当然じゃな)
 ハイシェラが満足そうに頷くと麦兵衛は四人の中へ飛び出していった。

「どうした? 息が上がってるぞ?」
 無貌の神が目の前で槍を振るう沙乃に向かって話し掛ける。
「っく!?」
 懸命に振るうが、無貌の神は、軽く攻撃をいなし続ける。
(な、何で相手は疲れないのよ!?)
「無理しないで……、あなただけでも逃げて……」
 地に倒れたミュラが絶え絶えな息で沙乃に言う。
「お願い、ここで二人とも死んだら……」
「嫌!!」
 だが沙乃はそれを否定する。
「美しい友情だ……」
 彼らの前に立つ無貌の神に操られた今日子の表情が妖しく微笑む。
「だが、そろそろ飽きた……、楽にしてやろう」
 沙乃が槍を振るった瞬間、無貌の神はその懐を掻い潜ってきた。
(やられた!?)
 死を覚悟した。
 だが、痛みはない、意識がある。
「あなたは……?」
 二人の間に割って入るように麦兵衛が立っていた。
203守りたかったもの:04/05/13 19:18 ID:gHDqJXgw

「不意打ちとはやってくれるな……、引かなければ我も死ぬ所だった」
 無貌の神は、自らの前に立ち構える麦兵衛を見た。
「そうか、あの時横にいた小僧か……、だが貴様如きでは我には……」
「うおおおおお!!!!!!」
 無貌の神が言い終える前に、麦兵衛が動いた。
「なっ!?」
 その動きは、常人とは思えぬ、一流の剣士のそれと変わりなかった。
「凄い……」
 沙乃が感嘆の声を上げる。
「くっ!?」
 突然の動きに無貌の神も後手に回った。
 受け止めつづけるだけで精一杯だ。
 ハイシェラソードと空虚のぶつかり合う音が空に響きつづける。
(良いか、狙うはあの剣じゃぞ。
 話に聞き、そして間近で感じて解った。
 恐らくあれが本体!!)
「解ってる!!」
 ハイシェラの指示通りに身体を動かす。
 向上した身体能力がそれを可能にさせていた。
「そうか!! 貴様も我と同じ!!
 その剣が力の源、本体か!!」
(寄生して宿主をいいように操るお主と一緒にしてもらいたくはないな!!)
「ははははは!! 何を言うか、貴様も元の世界に帰りたいのだろう?
 そいつを良いように動かす貴様と我と何が違うというのだ?」
(違うぞ!! 私は、貴様のように本人の意思を無視したりはせん!!
 私とこの者の目的が一致したから協力している、そう仲間だ!!)
「くっくっく、それは貴様に力があるからだろう?」
204守りたかったもの:04/05/13 19:20 ID:gHDqJXgw
 ハイシェラと無貌の神の言い合いが、攻防の中で続く。
「ふむ、思ったよりも少々厄介だな……、ではこれならどうだ?」
 空虚が妖しく光り輝く。
(いかん!! 避けよ!!)
 ハイシェラが叫ぶと同時に麦兵衛に向かって雷撃が放たれる。
「こ…・・の野郎ォォォォ!!!???」
 雷撃をハイシェラソードで迎え撃ち、全力で弾く。
 弾かれた電撃は、辺りに四散し、すさまじい光となる。
「これも防ぐか……」
 その様子を見た無貌の神は瞬時に考えを巡らせる。
(これは、続けても少々分が悪いかもしれないな……。
 一旦引いて、出直すか……。
 無理に肉体を狙って死滅しては、何の意味もないのだしな)

「はぁはぁ……」
(良くやった)
 気づくと前に無貌の神はいない。
 見回すもその姿は何処にもあらず。
 すると……。
「今回は此方も万全ではなかったから引かせてもらう」
 何処からともなく無貌の神の声が聞こえてきた。
「何処だ……!?」
「そこの気絶している少女は、また次回にするとしよう。
 精々、それまで死なずにいるんだな」
 辺りに無貌の神の笑い声が響く。
 やがてその声が途絶えた時、場には四人だけが取り残されていた。
205守りたかったもの:04/05/13 19:23 ID:gHDqJXgw

【原田沙乃@行殺!新撰組(ライアーソフト) 鬼(現在は狩) 状態○ 所持品:十文字槍 食料・医薬品等】
【ミュラ@ママトト(アリスソフト) 狩 状態×(極度の消耗状態) 所持品:食料・医薬品等 長剣 地図 純夏】
【牧島麦兵衛@それは舞い散る桜のように(バジル) 招 状態◎(身体能力上昇) 所持品 ハイシェラソード
行動目的:初音を倒す。結城ひかりの救出。透、まひると合流】
【ハイシェラ(ハイシェラソード)@戦女神(エウシュリー) 人数に含まない 状態ショートソード
行動目的:元の世界に帰る。今は麦兵衛に力を貸す】
【岬今日子(無貌の神)@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○ 所持品 永遠神剣第六位『空虚』(雷撃1発分の魔力)】

【Pursuits後】
206伝えたい思い:04/05/14 00:23 ID:4qbjznEJ
「駄目だ」
 他の誰よりも早く悪司がはっきりと言い切った。
「お願いします、私の妹も!!」
 ここで引いてはいけないと美希も必死に演じるが
「それでも駄目だ!!」
 先程よりもきつい口調で悪司は返した。
 彼の意思は固く、揺るごうとはしない。
「悪司さん……」
「大将、きつすぎないか?」
リップとあゆが申し訳なさそうに言う。
「戻れるんなら俺が一番戻りてぇよ!!
 だけどなぁ、ここに今いる全員が、その思いを我慢して来てるんだ!!
 あんたにどんな理由があっても!! どんな我侭を言っても!! 俺達は戻るわけにはいかねぇ!!」
 他の奴らも戻らせないという宣言通告だ。
 その言葉に、リップもあゆも悲痛な顔を浮かべる。
 悪司がカレラを受けているように、彼女達も九郎の行為を受けている。
 だからこそ、悪司の感情が良く解る。
 ここであの客室の場所まで戻ったら、彼等の覚悟を無駄にすることになる。
 目の前にいる少女には辛いが、彼らが尋ねられるのは一つしかない。
 残るか・一緒にくるか。
「ごめんなさい……、戻る事はできないの。
 だから直ぐに選んで、来るか残るか……」
 凄惨な現実をリップが突きつける。
 正義の味方でありながら、助けてやることが出来ない事にリップの顔も歪む。
「お前が本当に妹の事を思っているなら残ってやれ」
 美希に向かって、悪司が再び口開く。
「従っている限りは、絶対に殺されないだろうさ……。
 だけど、お前だけ逃げ出したら、残った妹はどうなる?」
「そんな……」
207伝えたい思い:04/05/14 00:24 ID:4qbjznEJ
 悪司達から見れば、妹を助けれない、脱出できない悲しみにくれた言葉。
 だが美希本人からすれば、せっかくの作戦が台無しになる悔しさの言葉だ。
 そして、悪司は続けて言う。
「俺達はもう一度戻ってくる、必ずだ。
 その時は……必ず助けてやる」
「あ……」
「行くぞ!! もう時間は許されない」
「ごめんなさい……」
「絶対に死んだら駄目さ」
 悪司の合図と共に背負われたライセンと共に、四人は走り去っていった。

 取り残された美希。
(あいつらせっかくのあたしの演技を〜!!)
 顔は平穏を装っているが、心の中は煮え繰り返っていた。
(私に非はない。 超レアイベントをダメにしたのは彼らよ。
 全く人情の欠片もないんだから……)
 ぶつぶつと走り去っていった悪司達の悪口を言う。
(けど、それなりの抵抗勢力もいるのね……)
 賢い彼女の頭は直ぐ様、別の事を考える。
(今ので彼らに私の印象を植え付ける事には成功っと。
 万が一、彼らが再び舞い戻って、ここの人たちを倒すようなら……。
 うん、私はどの道に転んでも安全ね)
 先程までの怒りをけろっと忘れて、先の行動の利点を示し出す。
(どっちになっても私にとっては損じゃない。
 でも、ここの人たちについていた方が望む者は手に入るから、
 当面は、ずっと此方よりかな)
208伝えたい思い:04/05/14 00:26 ID:4qbjznEJ

「大・悪・司!!」
 前方に現れた兵達に向けて、悪司が必殺技で突撃する。
 声もなく、兵はそのまま悪司の拳の前に倒れていく。
 彼の切り開いた道を続けて駆け抜けるリップとライセンを背負ったあゆ。
「気張れよ!!」
 前から来た時は、悪司が道を開き、後ろからの追っ手は、リップが防ぐ。
 そしてライセンを抱えてあゆが中を走る。
 必然と出口に向かう前方の方ばかりから兵がやってくる。
「邪魔なんだよ!!」
 二度目の大悪司が放たれた。

 神風の弓は、一直線に彼の胸元を狙っている。
(骨が砕けたか……本当に逃げ場はないな)
 壁を貫通したほどの威力の矢だ。
 九郎の右足のささった個所の骨は、砕けていた。
 神風の矢に気が込められていくのが解る。
 先程のと違って、今度は全力の一撃だ。
 食らえば、骨のように身体が砕けるだろう。
(勝負は一瞬……。
 頼むぜ相棒……アル!!)
 九郎が銃を前に構える。
 それと同時に十分に威力が込められた神風の矢が放たれる。
 そしてクトゥグアが唸る。
 気が込められ一条の光となった矢に向かって弾丸が放たれた。
 弾丸が矢に当たるも矢はそのまま突き進む。
 が……。
 矢が九郎の身体にあたる事はなかった。
 その矢は九郎の横の壁を貫いている。
209伝えたい思い:04/05/14 00:29 ID:4qbjznEJ
「真正面にぶつけてたらそのまま貫いてきただろうな!!」
 そう、九郎は矢尻に対して斜めに当たるように撃ったのだ。
 飛んでくる矢に当てるだけでも軌跡に近い技である。
(いちかばちかしか残されてないなら、それにかけるしかないだろ!!)
 弓矢は次の間が空く。
 対して九郎のクトゥグアは連射に特化した銃である。
 続けて、弾丸が幾つも神風に打ち込まれていく。
 そして神風は倒れた。
「やった……か?」
 一息ついたものの右足の骨が砕けているため思うように動けない。
「脱出は……無理だな、隠れないとダメか……」
 
「これでラストォォォォォ!!」
 5度目の大悪司を放つ悪司。
 出口付近の兵を吹き飛ばされ、そこを過ぎれば要塞から脱出は成功する。
「ぜぇ……さっさと行くぞ!!」
 必殺技を何度も使いつづけたせいで悪司の体力は限界に近い。
 彼を今突き動かしているのは、精神の一言である。
 この計画が失敗した責任とカレラと九郎のためにも。
 悪司の心はそのために突き動いていく。
「羅喉達の待ってる場所は……、あっちか!!」
 あの時頭に浮かべさせられた地図を思い出し、悪司達は再び走り続けた。

 身を隠そうとして壁に手を当てて、別の部屋へと歩く九郎。
 元いた部屋は、弓のせいで壁が一部壊れているし、
片付けや現場を見に来られたら危ないと踏んだからだ
 悪司達の方に兵は集中したのか。
 それとも神風がいたからか。
 この付近には兵が見当たらなかった。
210伝えたい思い:04/05/14 00:33 ID:4qbjznEJ
「……なんだ?」
 廊下を歩く音が聞こえる。
「くそっ!!」
 廊下の途中の為、身を隠せる物がない。
 とにかく銃を構えておかなければいけない。
「凶と出るか吉と出るか……」
 そして、足音の主が姿を現す。
「なっ!?」
 九郎の目に映ったのは、美しい少女が一人。
「これは……?」
 目の前の少女が、この荒れた状況を見て疑問を浮かべる。
 九郎も敵か味方か解らず引き金を引く事が出来ない。
 もし、リップ達やアリアのような立場だったら早とちりとなる。
 かといって警戒を解くのも気早い。
 そして、少女は、廊下の向こうに倒れた神風の方を見る。
「……あなたが?」
 少女がそう言った。
「ああ……」
 クトゥグアを握りながらも、九郎は何気なく答えた。
「そう……」
 残念そうな顔をして少女が腕を軽く振るった。

 九郎の足が、手が、腹が、地面から生えた氷のツララに貫かれる。
「ぐあああああああああああ!!!!!」
 声にもならない絶叫が響き渡る。
 握り締められたクトゥグアも地面に落ちる。
 その様子を見ながら、一歩一歩少女が近寄ってくる。
 意識が遠のいていくのか、少女の姿が歪んでいく。
211伝えたい思い:04/05/14 00:37 ID:4qbjznEJ
「そんな!?」
 彼の瞳には、目の前に近づいた自分がいた。
「こんなものかな……、さようなら」
 彼自身の手が九郎の身体に触れる。
 そして……、その手を通して電撃が彼の体の中に流された。
(俺は……、俺は……!?)
 薄れゆく意識の中で、走馬灯のように頭の中で物事が浮かんでいく。
 足止めを買って出た時に、半ば覚悟はしていた事だった。
 だが、それでも無念は消せない。
(アル、アル……、すまない)
 離れてしまった最愛のパートナーへ語りかける。
(せめて、せめて、ここで起こった事を……。
 初音と奏子の事を、そして俺の思いを届けたい……)
 死の間際に、床に転がったクトゥグアが目に入った。
(頼む、アルに伝えてくれ……)
 そして、九郎は崩れていった。
 それと同時に、誰も気づかなかったがクトゥグアもまた消えうせていた。

 目の前の男が灰となり崩れ落ちたのを確認すると化けた九郎は、少女の姿に戻る。
 そして、神風の元へと歩いていく。
「大分手ひどくやられたみたいだね」
 少女が倒れ伏せる神風に話し掛ける。
「滑稽か?」
 すると苦しそうにしながら、神風が膝を付きながらも起き上がった。
 そう神風は、人間ではない、モンスターである。
 それ故に通常の人間よりも耐久力が遥かに高い。
212伝えたい思い:04/05/14 00:42 ID:4qbjznEJ
 ましてやケルヴァンに強化されたのなら尚更の事。
 無念ながらも九郎の銃撃を何とか生き長らえていた。
「話は聞いてるよね?」
 そう言いながら少女は、神風に回復魔法をかける。
「勿論だ。 私の仕事の中には、あなた達を守護する事も含まれている」
「それなら僕の敵じゃない。
 ……銃弾は、後で抜いてもらってね」
 神風が動けるまでになると、ハタヤマは冷たい笑みをし、
騒ぎが治まったのを察すると部屋へと戻っていった。

【山辺美希@CROSS†CHANNEL(フライングシャイン) 招 状態○(覚醒?) 所持品:スタンガン】
【山本悪司 @大悪司 (アリスソフト) 招 △(極度の疲労) 行動目的:ランス(名前、顔は知らない)を追う・中央から脱出】
【大空寺あゆ@君が望む永遠(age) 招 状態:○ 装備:スチール製盆  行動目的:中央から脱出】
【ライセン@ママトト(アリスソフト) 狩 状態△(媚薬により発情中) 所持品:なし】
【七瀬凛々子(スイートリップ)@魔法戦士スイートナイツ(Triangle) 招 状態○(軽傷有り)所持品:グレイブ 行動目的:中央から脱出】
【ハタヤマ・ヨシノリ:所持品:魔力増幅の杖 治癒の水(一回分)状態○(アーヴィに変身中) 招→鬼 行動目的 要塞の防衛、絶対に生き抜く】
【大十字九郎:死亡】

魔獣枠
【神風:状態 △】

【嘘で固めたペルソナ後】
213想い託して:04/05/14 06:13 ID:5TyvBmEx
 佐倉霧は軽い頭痛と共に目を覚ました。
 何か大変な事が起こったようなそんな覚えがある。
「っつ…!」
 体中がひどく痛む。
 気を失う前の微かな記憶。
 崖を転がり落ちていた。
(違う……それもあるけど…)
 その前にもっと大事な事が……
 私はあの二人に見事に騙されて……それでまたあの男───吾妻玲二に助けてもらって……
 そういえば吾妻玲二はどこにいるのだろうか?
 辺りを見渡す。
「よう……気がついたか。この台詞も2度目になるな、つくづく奇妙な縁だ」
 探して見れば驚く程近くに玲二は居た。
 岩肌に背をもたれて気だるそうに霧を見つめている。
「あまり無理に動かない方がいいぞ。さすがに今回は無傷って訳にはいかなかったみたいだしな」
 霧は奇跡的に骨折などはしていなかったが、体中に無数の擦り傷が出来ていた。
 それでも十分幸運だったと言える。
 玲二が助けてくれなかったら間違いなく霧は死んでいただろうから。
 そういえばまだ助けてもらった礼を言っていなかった。
「……ありがとう」
 前回の分助けられた分も含めて礼を言っておく。
「どういたしまして……と。取りあえず傷は消毒しておいた方がいいな。
 悪いが自分でやってくれるか。
 こっちもさっきの戦いで疲れて動けそうもない」
 消毒液とガーゼを玲二が投げて寄越す。
「服、脱ぎますから後ろ向いてて下さい」
「……体捻るのも辛いもんでね。少しの間目を瞑るからそれで勘弁してくれ」
 不満はあったが玲二の様子を見ると無理強いも出来ず霧は渋々ながらもそれで承諾するのだった。

 言葉が止まり無言になる。
214想い託して:04/05/14 06:15 ID:5TyvBmEx
 そうすると嫌でも先程の出来事が脳裏に甦る。
「私はあの時死んでいた方がよかったのかもしれません」
 思わず出た呟き。
 後ろにいる人物からの返答はない。
 寝てしまったのだろうか? それでもいい。元々答えを望んでなどいない。
 自分の体についた傷を消毒しながらも言葉を続ける。
「私さえいなかったら九郎さんも捕まる事もなかった。私さえいなかったらあなたもこんな目に会わずに済んだ」
 いつの間にか涙が零れていた。
「裏切られるくらいなら誰も信じなければいいのに……一人で生きていけばいいのに……私はそれすら出来なくて…!」
 自分が無力であるがばかりに誰かを傷つけてしまう。
 それならばいっその事いなくなってしまったほうが──

 手が自然に動いていた。
 イタクァを持ち、銃口をコメカミに押し付ける。
 ここまで来たら後は引き金を引くだけ。
 指を少し動かせば銃弾が飛び出し、命が終わる。
 もう誰も傷つけなくて済む。裏切られなくて済む。
 こんなつらい思いをするくらいならば自ら命を絶った方がましだった。

 そう思っているのに……なぜか指は動かなかった。
 凍りついたように引き金に指をかけた状態から微動だにしないのだ。
 再び涙が零れた。
(私は……意気地なしだ……)

「気は済んだか?」
 背後から声。
「目……閉じてるんじゃなかったんですか」
 この男は今霧がした事の一部始終を見ていたのだ。
「すまん。話かけられたから大丈夫だと思って開けた」
 玲二はあっけらかんと言った。
「……なんででしょうね…こんなにつらい事ばっかりなのに、どうして私は生きてるんでしょう」
215想い託して:04/05/14 06:16 ID:5TyvBmEx
 分からない。自分にはもう何もないはずなのに。生きているだけで誰かを傷つけてしまうだけなのに。

 沈黙が続く。
 しかし霧は失望などはしなかった。
 答えなど元々期待してはいない。
 只、この島に来てからずっと押し殺していた思いを誰かに聞いて欲しかっただけなのかもしれない。

 このまま玲二とは別れようと思って立ち上がった矢先だった。
「君が生きている理由…か。馬鹿がこの島に沢山いたからだろう? 俺も、君が言った九郎って奴も、自分の事なんか省みずに他人を助け

たいヒーロー願望の持ち主の馬鹿だって事だ」
 霧を呼び止めるように玲二は言葉を発した。
「自分で自分を馬鹿だって言う人は初めて見ました」
「ここで君をこのまま行かしたら本当の馬鹿になってた所だけどな」
 皮肉を皮肉で返され、霧は苦笑する。
「でもな、本当の所はそんなもんだと思う。
 本当はさ、君を一時的にせよ助ける事が出来た時点で満足するべきなんだと思う。
 けどさっき言ったように俺みたいな馬鹿はその後の事まで責任を持ちたがる。
 後悔するんだ、『どうして守ってやれなかったのか』って。
 …だから君が九郎っていう奴に、俺に、少しでも感謝してるんだったら君は絶対に生き延びてくれ」
 玲二は長い言葉を終え、息を吐いた。
「一つ聞いていいですか? どうしてさっき私を──引き金を構えた私を止めなかったんですか?」
 玲二は霧の質問に困った顔をする。
「これから後の事は俺には責任持てないからな……だから君がその道を選ぶならしょうがないとも思った」
「それはどういう意味──」
 そこまで口に出して気がついた。
 玲二の影が不自然な色をしていることに。
「あ……」
 なんで今まで気がつかなかったんだろう。
 冷静に考えればあの至近距離での爆発で二人共無傷な訳がないのだ。
「あなたは──!」
 どう見ても致命傷だった。
216想い託して:04/05/14 06:17 ID:5TyvBmEx
 どう見ても致命傷だった。
 本来ならば霧が負うべきだった傷。
 それもこの男は引き受けた。
 血溜まりが少しづつ広がってゆく。
 とうの昔に覚悟は出来ていたのだろう。
 あくまでも動揺する様子はない。
「すまないが沙乃に会ったら代わりに謝っておいてくれるか。
 それと……もしエレンって子に会えたら伝えてくれ」
「そんな…やめて下さい……そんなの自分で伝えて下さい…」
 玲二はゆっくりと目を閉じた。
「君だけは生きてくれ」
 それはエレンに向けた言葉なのか、霧に向けた言葉だったのか…
 ともかくそれが吾妻玲二の最後の言葉になった。

 霧は玲二の言葉を噛み締める。
(私は…生きなきゃ)
 少なくとも彼の言葉を伝えるまでは死ぬわけにはいかない。


【吾妻玲二@ファントム・オブ・インフェルノ(ニトロプラス) 狩 状態 死亡】
【佐倉霧@CROSS†CHANNEL 狩 状態? 装備品 回転式拳銃(リボルバー)『イタクァ』残り弾数不明(13発以下)
 手榴弾 暗視ゴーグル×2 食料・医薬品等】

(それぞれの選択後)
217想い託して:04/05/14 06:34 ID:5TyvBmEx
テンプレ修正
【佐倉霧@CROSS†CHANNEL 狩 状態○(擦り傷多数だが行動に支障なし) 装備品 回転式拳銃(リボルバー)『イタクァ』残り弾数不明(13発以下)
 手榴弾 暗視ゴーグル×2 食料・医薬品等】
218馬鹿ギ信者:04/05/14 12:39 ID:5Mjx74sc
たくさん死にました。そして中央に来ました。
ヴィルヘルム「フハハ!我輩のターン!変身魔法使用!我輩は最強だ!スゴイぞー!カッコイイぞー!」
ハタヤマ「甘いぜヴィルヘルム!ここで伏せカードをオープン!メタモル魔法を使用!氏ね!!」
ヴィルヘルム「バ、バカな!うぎゃー!!」

どかーん(効果音)

全員「悪は去った!けど俺たちの冒険はまだまだ続くぜ!?」
ハタヤマは夕日に向かってキメていた。


〜葱サバイバル・第一部完〜
219葉鍵信者:04/05/15 12:47 ID:rnFf1hSu
打ち合わせ制度導入開始します。
正確には、現在話し合っている所ですが、
今後、それらに乗っ取られていない話は、容赦なくNGやアナザーとなる可能性もあります。
作品の投下を決定するまでは、中断してください。
220名無しさん@初回限定:04/05/16 19:07 ID:JMFexO/f
>219
それはハカロワのようにするって事ですか?それならあなたの意見に賛成します。
221名無しさん@初回限定:04/05/18 04:28 ID:Y6mUjYm7
>>219
確かにここらで統括する必要はあるな。
とりあえず、頑張ってくれ
222葉鍵信者:04/05/20 00:09 ID:hZkMC870
と言うわけで、メールからのやり取りの結果
応じてくれた四名の方、全てご理解、ご賛同頂けました、ありがとうございます。
これにて打ち合わせ制度導入、再開します。

葱サバイバル展開・作品・設定検討会議場
http://doom.on.arena.ne.jp/cgi-bin/giko/hinan/test/read.cgi?bbs=erog&key=084978886

また荒らしが立てた由来の議論を省き、新規の作品への感想スレとして
正常にするべきだという声もあり、感想スレも新規となりました。
現在の通称:議論スレは廃棄とあいなります。

葱サバイバル感想スレッド5
http://doom.on.arena.ne.jp/cgi-bin/giko/hinan/test/read.cgi?bbs=erog&key=084979100
223名無しさん@初回限定:04/05/20 09:41 ID:9CATviRE
>222
すいませーん。
名無しの読み手は、作品に疑問があった時にどこで議論すればいいのですか?
ちゃんと区別しないと、感想スレが議論まみれになると思うけど。

あと、↑読むと
「議論スレは荒らししか居ないので廃棄、都合のいい感想だけ聞かせてください」
って言ってるように聞こえるけど。
224名無しさん@初回限定:04/05/20 11:14 ID:yLQ33v8T
要は自分の反対が多いから逃げたいと?
225隠密行動開始:04/05/25 00:39 ID:kTScR7Tv
「こっちに来たらしいぞ!!」

「騒がしいな……」
 独房の前を駆け巡る兵士達の声で、双厳たちは目を覚ます。
 十兵衛の貧血も大分回復したようだ。
「サンダー!!」
「邪魔だ!! どけぇぇぇぇぇぇ!!」
「ぐああああああぁあああ!!!!!」
 響き渡る兵士の声と男と女の声。
「おい、何があったんだ?」
 壁越しに尋ねてみるが、返事がない。
「どうなってるんだ?」
「返事どころか、兵士の気配すら感じないが……。
 いっそのこと外に出てみるか?」
 鉄の扉を前に双厳が刀を構える。
「お前、斬鉄出来るのか?」
「そんなに分厚い扉じゃなさそうだしな……」
「大丈夫か? 俺がやった方が良くないか?」
「気が散る」
「すまん……」
 双厳が息を吸い込んで目を瞑る。
 カッ!!と目を開けると共に刀を引き抜く。
「ハッ!!」
 十兵衛がやってみせた横一文字と同じく居合で挑戦したのだ。
226隠密行動開始:04/05/25 00:39 ID:kTScR7Tv

「……」
「……で?」
 やったはいいが扉が切れた様子が無い。
「……失敗か」
 言いながら十兵衛が扉を触る。
「やれやれ……、と!?」
 彼が手をかけた瞬間、扉が音を立てながら真っ二つに崩れ落ちる。
「成功じゃないか」

「酷いな……」
 部屋から出た二人は、部屋の前にある惨状を目の当たりにした。
「こっちは、黒焦げ」
「こっちは、顔が歪んでるな」
 どうしたものかと二人は、顔を合わせる。
「せっかくの機会だ。
 非常時だって事で多少探索しても起こられないだろう」
「そうだな」
 二人は、息絶えた兵士の懐から部屋の鍵を漁り盗ると、命と蓉子のいる独房の扉を開けた。

「双厳、十兵衛様!!」
「何があったのだ?」
「見ての通りだ」
 二人も何があったのかと不思議な顔をしていたが、
目の前にある二つの死体を見て大体を予測する。
 命と蓉子の方もゆっくりと休んだおかげか体調は戻っているらしい。
「声と足音はあっちへ向かっていった。
 もしかしなくても侵入者だろうな」
「……追いかけるか?」
「上手くいけば協力できるかもしれないしな」
227隠密行動開始:04/05/25 00:44 ID:kTScR7Tv

 悪司達が通っていった後には、兵の死体が点々とあったため辿るのは容易だった。
 その様子を見ながら、後を辿る四人の一行。
「死ぬか」
「は?」
 突然の十兵衛の発言に双厳が何言ってるんだと問う。
「本当に死ぬわけじゃない、死んだ事にするのさ」
「どう言うことだ?」
「いい機会だ。 焼け死んでるのもいる、俺たちの服と交換する。
 そうすりゃ、あちらさんは、身元不明で解るのは衣服の一部。
 俺たちが巻き込まれて死んだととる」
「なるほどな……。
 そして俺達は自由に動ける。
 上手くいけば、ケルヴァンってのが無影に対して借りもできるしな」
「そう言うわけだ。
 さっ、とっととやるぞ!!」
 焼けていない方の兵士の服を剥ぎ取ると四人は大急ぎで着替を始める。
 途中、命と蓉子が渋ったが、双厳と十兵衛はその間、後ろを向きながら周りを見張っていた。

 着替えながら、各々が使えそうな物はないかと軽く物色する。
「これは使えそうだな……」
 そういいながら蓉子が兵士の持っていた銃を奪う。
「命、お前も護身用に持っておけ」
 同じく十兵衛が兵士の持っていたサバイバルナイフを命に手渡す。

 悪司達が兵士達の目を惹き付けてくれていたのもあり、彼等のその行為が見つかる事はなく済む。
 そして彼等の持っていた衣服を死体に被せると……。
「命、炸裂弾を一発くれ」
「どうするんですか?」
「こうするんだ」
 玉を切り、中の火薬を死体に被せる。
228隠密行動開始:04/05/25 00:45 ID:kTScR7Tv
「後は、頼んだぜ」
 蓉子の肩をぽんと叩くと、十兵衛は後ろへ下がっていく。
「なるほどな……、下がってろ」
 距離を取り銃を火薬の塊の場所へ打ち込む。
 見事、誘発し、爆発と共に彼等の衣服を着た死体は、焦げ飛び散る。
「肉が食べれなくなりそう……」
 爆発の瞬間、思わず目を瞑っていた命の第一声がそれだった。
 先程よりも酷い光景である。
「長居は無用だ。 追いかけるぞ」

「大・悪・司!!!!!」
 男の張り上げた大声が聞こえる。
「近いな……」
「だが、どうするんだ?」
「この場で話かけるのも不味いからな。
 ここは隠密の腕の見せ所……、影から追跡して中央から離れた所で交渉を持ちかけよう」
「無事に逃げおおせてくれるといいんだがな」

【双厳@二重影(ケロQ)状態○ 装備品 日本刀(九字兼定) 狩】
【命@二重影(ケロQ)状態○ 装備品 大筒 煙弾(2発) 通常弾(9発) 炸裂弾(2発)サバイバルナイフ 狩】
【柳生十兵衛@二重影(ケロQ)状態△(左腕欠損) 装備品 日本刀(三池典太光世) 狩】
【皇蓉子@ヤミと帽子と本の旅人(オービット)状態○(但し左腕の骨は不完全な接合) 
装備品 コルトガバメント(残弾16発)マガジン×2本 クナイ(本数不明)ベレッタM92(残弾15発)  招】
【行動方針:悪司達を追跡、中央から出た所で交渉を持ちかける】
229残された思い:04/05/25 19:06 ID:kTScR7Tv
「やぁ、遊輝」
「誰が遊輝じゃ。 というかお主が何故此処におる?」
 見渡す限りの暗い空間の中、アルと対面するは……。
「そもそも此処は? ナイア、お主の仕業か?」
「強いて言うなら君の中。
 解りやすく言えば、意識を失った君が見る夢。
 そして、僕は只の傍観者。
 面白い現象(モノ)を見に来ただけの野次馬さ」
「…………お主もこの世界におるなら、何とかできんのか?」
「無理だね」
 万が一と思って聞いてみたが、やはり予想通りの返答であった。
「此処は僕の力の及ぶ所じゃない。
 この地に置いての主導権は、僕ではない僕だ。 僕は只のオマケ。
 故に僕が行使できる力は、君よりも劣る、微々たる物だ」
「主導権を握っているお主でも無理なのか?」
「無理だよ。 この地に置いて、僕らは力を大幅に制限されている。
 そして主導権を握っているやつが死ねば、僕もまた消える。
 全く、無貌の神はとんでもない所に迷い込んでくれたものだよ。
 だからこそ期待していたのにね……」
「どう言う意味じゃ……?」
 訝しげな顔をしたアルがナイアに詰め寄ろうとした時、
「さぁ、僕が見たかった奇跡というべき邂逅の時間だ」
 ナイアが大きく手を振りかざし、歓喜ともとれる声を上げる。
「何を言っておる? ……これは?」
 アルの前にゆっくりと光を放ち始める球体が浮かぶ。
「君であって君でない君の一部。
 本来なら起こりえないはずの現象、すなわち奇跡。
 彼の思いか、魂が生したのか、死の間際に起きた不思議な現象。
 僕はその奇跡を見に来た観客。
 主役は……アル、君だ」
230残された思い:04/05/25 19:07 ID:kTScR7Tv
 ゆっくりと光の球がアルへと近づいていく……。
 やがて、それはアルの差し出した両手に包まれ、そして彼女の胸の内に消えていった。
「ああ……」
 夢の中だというのに、彼女の両目から涙が溢れ出す。
 彼の込められた思いが、そこで何があったのか、伝えたかった事が彼女の中に次々と浮かび上がってくる。
「バカモノ……」
 全てが伝わり終わった時、彼女は絶えぬ涙と共にそれだけ呟いた。
「さて、僕はもうお邪魔だ。
 去らせてもらうよ」
 言い終えると共に、ナイアは闇の中へ消えていく。
 そして、一人闇の中に佇むアルだけとなった。

「泣いている?」
 アルを背負う葉月は、彼女の肩を濡らす存在に気づいた。
「身体の痛みから……? それとも……」
「……くろう」
「行くぞ、葉月。 目的地までもう少し」
 立ち止まった葉月に、先を行く蔵女が声をかける。
 蔵女の声により、アルの呟きが葉月に伝わる事は無かった。
 

【アル・アジフ@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 招 状態×(気絶) 装備品 ネクロノミコン(自分自身)】
【伊藤乃絵美@With You〜見つめていたい(カクテルソフト) 狩 状態○ 装備品 ナイフ】
【蔵女@腐り姫(ライアーソフト) 招 状態△(力半減。左肩銃創、呪詛返しの影響で傷口拡大) 装備品(能力)赤い爪、通信機、ネクロノミコン(アル・アジフ)】
【葉月@ヤミと帽子と本の旅人(オービット) 招 状態○(力半減) 装備品 日本刀】
231Strengthened:04/05/25 22:14 ID:Ny2PEUmw
「おらぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
肉を切り裂く剣の音。
剣を振るう男の叫び。
「トドメだ!! ラァァァァァンスアタァァァァァァック!!!」
ランスの放つ必殺の一撃が爆風を巻き起こす。
リックに放った即席のとは違い、十分に気が練られ全力で放たれたランスアタックを
まともに受けた一つ目の怪物、サイクロプスは上から半分、胴体が吹き飛ぶ。

「ふぅ、大分狩ったな」
「お疲れ様です、ランス王」
あれから数時間、ランスと五十六は、モンスター狩りに勤しんだ。
元々冒険者だったランスの感と腕で見つけ、そしてこちらから仕掛けるという事により、
数少ない残る島のモンスターの大分を狩ることに成功していた。

「しかし、段々と見つけにくくなってくるな」
「大きい島とはいえど、固体は強いのが多いですが、モンスターの数は少ないみたいですからね」
ランスの横で五十六が答える。
「狩れば狩るほど、狩り難くなるわけか……むむむ」
「ランス王、調子の方はどうですか?」
「ここじゃLv神を呼べないからわからんが……ランスアタックの威力は着実に上がってるぞ」
レベル神がいない世界のため、どれくらい強くなったかは体感でしか解らない。
そこでランスは、敵を倒す時は、トドメにランスアタックを放つことにしていた。
威力が上がっていれば、それは彼の成長を示すことになる。
必殺技の威力の上昇は、必然的に彼の身体能力の向上も示すのだから。
「Lvで言えば、2〜3は上がったのでしょうか。
しかし、ランス王の成長速度には驚かされます」
「ガハハハハハハハ!!! 俺様は天才だからな。
だけど、これくらいじゃあいつには足りねぇ……」
232Strengthened:04/05/25 22:15 ID:Ny2PEUmw
「どういたしますか?」
先を見据える主君に五十六が尋ねる。
「あの女は、少なくともノスより強い。
仲間の方は、あのリックを泳がせてあるからそれを待てばいい。
ってーと武器だな。 カオス並のがありゃいいんだが……」
「では、一度中央の方へ戻るか、補給地点へ尋ねてみてはどうでしょう?」
「む、流石だな。 よしそれでいくぞ」

【ランス@ランスシリーズ(アリスソフト) 鬼(但し下克上の野望あり) 状態○ 装備品 リーザス聖剣】
【山本五十六@鬼畜王ランス(アリスソフト) 招 状態○ 装備品 弓矢(弓残量15本)】
【行動方針:武器の入手、モンスは優先的に狩る】
233表層の士:04/05/27 00:07 ID:IAs7NDXj
「ここが武器庫か…」
 双厳達との一悶着を終えた後、こちらの人間用の補給地点へ案内された。
 何でも逆方向にあった施設は二度も強襲されたので撤収したらしい。
「んー……いっぱいありすぎるな」
 強そうなのもいっぱいあるが、やはり使い慣れた獲物(コイツ)が一番だ。
 ならば、それを有効に使うためには…
「おい、そこの兵士さんよ」
「なんだ?」
 入り口にたたずんでる見張りの兵に声をかける。
 こういうのは詳しい奴に聞くのが一番手っ取りはやい。
「毒薬はないか?」
 暗殺で最も使われる手段。
 そして使い慣れたコイツに塗ることで威力を発揮できる。
 なにより俺にとっては無害と言うのがいい。
 今もそうだが、元より俺の身体に毒は通用しないからな。
 相手だけを確実に仕留めれる俺に適した格好の手段だ。

 ケルヴァンの野郎のお墨付きだけに渋々と兵が言うことに従ってくれる。
 兵が探してるのを後ろでのんびりと見させてもらう。
 いつの時代も他者を見下すってのはいいもんだねぇ。
「確かこれだったかな」
 そうこう考えてる内に頼みの物を探し当ててくれたようだ。
「この箱の中に入ってたはずだ」
 言いながら、俺に木箱を投げつけてくる。
「へっ、ありがとよ」
 不満な表情で兵士は表へ戻っていく。
「さて、こいつを愛刀に塗ってと…」
 木箱を空けると中には、更に木箱。
234表層の士:04/05/27 00:09 ID:IAs7NDXj
「………」
 その中にある物を見た俺の思考は一瞬止まった。
「指輪…」
 ふざけてるのか、まじなのかがわからん。
 それとも裏に毒が仕込まれてるという種類か?
 間違えたに決まってるが…こんな所にある以上ただの指輪ではないだろう。
 何らかの効果があるには違いない。
「填めてみるしかないのか」
 呪いの類の危険性も考えたが、毒にしろ俺の場合は指を切り落とせば外れてくれる。
「さて、凶と出るか吉と出るか…」
 
「特に変わった事はないな」
 本当に何も変わりがない。
 こりゃ外れか?と思ったその矢先だ。
「入らせてもらうぞ」
「お待ち下さい!!」
 兵士の抑制も聞かずドカドカと音を立てて入ってくる気配がする。
 兵士は俺の存在を隠すために制止してくれたんだろうが、相手はお構いなしのようだ。
「やべえな、ケルヴァンには隠密に徹しろと言われてるんだ」
 物陰に隠れようと動いたその時だ。
「…ん、軽い?」
 一歩踏み出した時の感触がおかしい。
 正確にいや一歩が早い。
 俺の頭で行なわれている感覚よりも足が速く動いた。
「まさか…」
 指輪を抜いて一歩踏み出す、普通だ。
 指輪を填めて一歩踏み出す、速い。
「こいつは当りだな、っと」
 足音がとうとう武器庫の前に来た。
 扉が開けられると同時に物陰に気配を消して潜む。

「ふーむ、大分いっぱいあるな」
235表層の士:04/05/27 00:13 ID:IAs7NDXj
 中々出てくれないな。
 しかも片っ端から漁ってやがる。
 やばい、このままだと俺の方に来る。
 こっそりと部屋を出たいが、扉は閉じられてる。
 このままだと見つかるか…
 止むを得ないな、姿を出して話を持ちかけるしかない。

「よう」
 俺様の前に突然ふって沸いて出た忍者。
「誰だ貴様?」
 すかさず剣を相手の喉元につきつけて牽制してやる。
 男か、つまらん。
「物騒だな、止めてくれ。俺はお前の同志だ」
「その割には見たこともなければ聞いたこともないが?」
 うむ、あかさらまにあやしいやつだ。
「姿をみてわからないか?俺は隠密なんだ。
 ケルヴァンの下で秘密裏に動く忍者なんだよ」
(あながち間違いじゃないな)
「証拠はあるのか?」
「俺の付き添い役がいる。
 表の兵士でもいい、どちらかに聞けばわかるはずだ」
「ランス王、彼は怪しいですが言っていることは本当のようです。
 おそらく表の兵が私たちを止めた理由がそれでしょう」
 五十六の言うことも一理ある。
 目の前の青忍者の目をじっとみる。
「なんだよ…」
 うむ、悪人だ。
 だが、ここは我慢だ。殺したらまずい。
「ちっ、仕方ないな」
 突きつけた剣を引いてやる。
「ありがとうよ」
 男に感謝されてもつまらんぞ。
236表層の士:04/05/27 00:16 ID:IAs7NDXj
「なぜ、あなたはここへ?」
「ちょっと装備の補充にね…」
「俺様たちと一緒か」
 つまらん。
「俺の方は用事が済んだから失敬させてもらいたいんだが…」
 何かを訴えるような目でこちらを見てくる。
 男に見られても嫌気しかないぞ。
「俺の存在は秘密でね。この事を知ってるのはあんたらを含めて10人もいないんだ。
 他のヤツラには俺のことは厳守にしておいてもらいたい」
「…ほう?」
 面白いことを聞いた。
 思わず顔がニヤリと笑ってしまう。
「ケルヴァンの命だが…」
「わかったわかった。お前のことは秘密な」
 ふっふっふ、いい情報だ。何かしらに使える可能性があるな。
「ふぅ、それじゃ俺は先に失礼させてもらうぜ。
 こうして遇ったのも何かの縁だ。俺の名は無影、いい仕事ができるといいな」
「俺様はランス様だ。こいつは俺の配下の五十六」
「覚えとくぜ、それじゃな」
 俺様の肩をポンと叩くと青忍者は行ってしまった。
 それにしてもあいつの動きがやけに速かったような。
 せっかちってわけでもなさそうだな。
 敵に回したら厄介そうだな。
「五十六は、あいつの事をどうみる?」
「難しいですね。ただ言えることは…」
「なんだ?」
「彼もまた素直に従っているようじゃありませんね。
 表情の裏に隠した本音と一面がありそうでした」
237表層の士:04/05/27 00:17 ID:IAs7NDXj
「もしかしたら使えるかもしれない…か?」
「諸刃の剣ですね」
 ………今、そこまで考えても仕方がないか。
「武器探しを再開するか」
「はい」


 こいつは面白い逸品だ。
 俺の動き、敏捷力を上げてくれるとは!
 毒薬が手に入らなかったのは残念だが、こいつはそれを補ってあまる。
 まずは、この身体の感覚とどこまでの速さを出せるか使い慣れしないとな。
 くっくっくっく、楽しくなってきやがった。
「さて、ぼちぼち仕事も始めるとするか」


【無影@二重影 (狩) 状態:○(回復)  装備:日本刀(籠釣瓶妙法村正)メガラスの指輪(敏捷力上昇) 
行動方針:魔力なしの駆除】

【ランス@ランスシリーズ(アリスソフト) 鬼(但し下克上の野望あり) 状態○ 装備品 リーザス聖剣】
【山本五十六@鬼畜王ランス(アリスソフト) 招 状態○ 装備品 弓矢(弓残量15本)】
【行動方針:武器の入手、モンスは優先的に狩る】
【Strengthened後】
238淫魔:04/05/27 02:11 ID:vYlCpHzH
「どうしても歯向かうか……」
「ええ、彼のためにもね」
 目の前の男と対峙するだけで、カレラの額から汗が吹き出る。
 適わぬと解っている勝負を挑むことへの絶望感と緊張感が彼女に入り乱れる。
「悪く思うな……」
「覚悟はできてるわ」
「そうか……」
 ギーラッハが動いた。
 彼女には反応できぬ速度で詰め寄ると大剣が振り下ろされる。
(ここまでね……、さようなら悪司)
 ギーラッハの姿が瞳いっぱいに映される時、カレラの意識はそこで途絶えた。


 カツーン。
 靴音が冷たい空間に響き渡る。
 その音がカレラの意識を呼び覚ました。
「…………ここは?」
 自分は、ギーラッハに真っ二つにされたはず。
 ならば、ここは死後の世界なのだろうか?
 周りを見渡せば、石と鉄に囲まれている。
 そう、かつてハタヤマが捕われていた場所。
 即ち牢屋だ。
「目が覚めたようだな」
 カレラの前に立っているのは、彼女を死に追いやったはずの人物。
「ギーラッハ……、あなたも死んだのかしら?」
「……悪い冗談だ」
「……っ!? あなたの趣味かしら?」
 カレラは動こうとした時にやっと気づいた。
 己の四肢を壁にくくりつける拘束。
 しっかりと固定され、両手足を動かす事は適わない。
239淫魔:04/05/27 02:12 ID:vYlCpHzH
「……それは牢に放り込んだ兵がやったものだ」
 ギーラッハの顔が少し歪んだのがカレラには面白かった。
「しかし、意外ね……。
 気絶させただけで済ましてくれるなんて」
「一応、貴様は、此方側の人間であったしな。
 それにあの者達の事も聞かねばならん。
 尤も己は尋問など性に合わん、ケルヴァン殿の帰りを待つことだな」
 伝えるべき内容だけ言うとギーラッハは、後にしようとくるりと身を翻した。
「そうそう、言い忘れてたが」
「何かしら?」
「その拘束は魔封じも兼ねているらしい。
 尤も貴様にはそんなに必要はないが……ではな」
「待って!!」
「何だ?」
 カレラにはどうしても聞きたい事があった。
「悪司達は?」
「貴様ともう一人のおかげで中央からは逃走していった……それからは知らん」
 無愛想に言い終えると彼は、牢屋から出て行ってしまった。

「ケルヴァン様、いえケルヴァンの指示待ちか……。
 ほんの少し命が延びただけね」
(悪司は、無事に逃げおおせたか……。
 悪魔の私が何やってるんだかなぁ)
 身動きの取れない彼女に残された道は、ケルヴァンの裁定を待つだけ。
(けど、この拘束をつけた奴もいい趣味の持ち主してるわ……)
 先程、動いた時。
 動いた分だけ、拘束が腕を強く絞めるとほんの一瞬、針が飛び出た。
 痛みを与えて、苦痛で抵抗を失わせようというものだとカレラは最初思った。
 だが、時が経つにつれ、段々とおかしな感覚が身体に巡り始める。
240淫魔:04/05/27 02:13 ID:vYlCpHzH
「はぁ……はぁ……」
 息が段々と荒くなる。
(身体が……、まさか悪魔の私に効く媚薬だなんて。
 人に快楽を与えるはずの私が……こんな目にあうなんて)
 拘束は、抵抗をしないために作られたものではなかった。
 疼く身体を慰めれないためのもの。
 カレラにとって最大の苦痛を与えている。
「くっ!?」
 身を悶えさせようと激しく動こうとすれば、針が飛び出て更なる疼きを与える。
 それが余計に身体を悶えさせたくなる原因となる。
 永遠と巡る悪循環である。
(ケルヴァンが来るまで持つかしらね……)
 
【カレラ@VIPER-V6・GTR(ソニア) 鬼→狩(悪司に篭絡) 状態△(発情中) 所持品なし】
【ギーラッハ@吸血殲鬼ヴェドゴニア(鬼) 状態:○ 装備:ビルドルヴ・フォーク(大剣)】
隠密行動開始後
241Warteleute:04/05/29 02:16 ID:QV6MAd46
羅喉に背負われる彼女の姿を見た雪の第二声。
「しかし、お兄様って気絶してる方を助けるのに縁があるのですね……
まるで王子様みたい」
羅喉に連れて来られた郁美は、まだ意識が戻っていない。
少し前のリップと同じ状況だ。
嫉妬と心配が入り混じった妹の瞳が羅喉には少し痛かった。

彼女と同じように煎餅布団に寝かされた郁美。
ただ、彼女の場合は川に流され水の冷たさで急激に体力を失っている。
羅喉の出払っている間に服は脱がし、乾かすために囲炉裏の近くに干す。
更に暖めるようにとお湯が沸かされ、起きた時のために
羅喉が釣って来た魚の骨でダシが取られた質素なスープが作られていた。
海水を川の水で適度な塩分に抑え、骨で出汁を取る。
「様子はどうだ?」
戸を開ける音と共に羅喉が再び帰ってきた。
腰に魚篭、手に釣り竿。
もう一度魚を取りに行ってたのだ。
「ええ、大丈夫ですわ。後は意識が戻るだけです」
布団の横で答えるは、その間、介護を任されていた雪だ。
「此方の方も特に目立った動きはないわね」
戸の横に立っていたのはモーラ。
「そうか……」
「何にしても、彼女の目が覚めないことには何も始まらないわ」
布団に寝かされた郁美を見詰めながらモーラは答えた。

「……さて、今度はスープにしないといけないのだったな。
魚を捌いてこよう」
そう言うと羅喉は奥の台所へ向かう。
「随分と家庭的なのね」
その姿を見てモーラが感心したように声かけた。
それを聞いた羅喉は、苦笑いしながら奥へと向かっていった。
242Warteleute:04/05/29 02:16 ID:QV6MAd46

「悪司さんたち、大丈夫かな……」
モーラと二人きりになった雪が呟いた。
「無事だといいわね」
「えと、モーラさんはどう思いますか?」
「変な事をしなければ無事でしょうね」
「変なことって?」
モーラの意図がわかりかねない雪は素直に尋ねる。
「出すぎたことをしないって意味よ。
彼らがあくまで情報収集のみに徹して、直ぐに切り上げてくれればの話」
「それって……」
「好機だと言わんばかりに暴れれば生還率は下がるわ。
もう一つ、不安なのは彼…… 悪司が私情に走らないこと」
「……元子さんのことですね」
「そう、だから本当は彼には遠慮してもらいたかった。
けど、彼のやる気を止めることも不可能だった。
それにかける彼の熱意もわかっていたから」
悲しそうなのか、それとも無感情なのか。
ただ雪にはそれを語るモーラの表情は少し冷たく見えた。
ゴソッ。
物音が響くとびくっと雪が身体を振るわせた。
「あっ!」
そして物音の場所、布団の敷かれた所を見て理解した。
「起きたんですね!」

「さて、こんなものか」
捌いて骨と内蔵を取り、身を適度に切り分ける作業を終える。
料亭のようには上手くいかないが、雪にいつも作ってやっていた家庭料理の杵柄だ。
丁度、切りおえた時に雪の声が居間から響いてくる。
「起きたか。さてお腹も空かせてるだろう。
はやく持っていってやるとしよう」
骨はまた次のために残し、切り身を持って羅喉は居間へ向かった
243Warteleute:04/05/29 02:17 ID:QV6MAd46

【鴉丸羅喉@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:なし 行動目的:雪を護りぬく・戦力集結】
【鴉丸雪@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 招 状態○ 所持品:なし 行動目的:兄についていく】
【モーラ@ヴェドゴニア(招)状態:○ 装備:巨大ハンマー】
【小野郁美@Re-leaf(シーズウェア)状態△(疲労) 所持品:なし招】
【分かれ道より後】

補足:メッコール(飲むとあまりのまずさに気絶)強化皮膚の装甲 ハンマーは囲炉裏の傍に置かれてます。
244名無しさん@初回限定:04/06/04 19:42 ID:j+nxLdPj
まだここあったんだ・・・誰か読んでる奴いるのかなぁ?
245名無しさん@初回限定:04/06/04 21:06 ID:2jwdE+Nu
ぶっちゃけ、MIND BREAKERをどのように改変して、ハタヤマを正当化するのか。
そこだけは楽しみにしている。
246名無しさん@初回限定:04/06/16 23:11 ID:00Uf92dQ
「紅の雪となりて――」

「だいじょうぶ・・・ですか?」
恐る恐る声を掛けてくるゆうなちゃんに私は出来るだけ笑顔で言った。
「大丈夫です・・・。」
だが、実際はどこが大丈夫なのか自分でも不思議なくらい衰弱していた。

――あの子を殺せば呪いが晴れる・・・。あの子を殺せば・・・。

――大輔さんに見つめてもらえる・・・。

(違う!違うっ!!)
自分の浅ましい本心に対抗することは容易ではなかった。
もう・・・限界だった・・・。
「ゆうなちゃん、二人を・・・迎えに行ってあげて・・・。」
「でもぉ・・・」
「お願い・・・。」
「・・・・・・。」
何度か後ろを振り返りながらゆうなちゃんは二人の後を追うように林の中に消えた。


「百合奈先輩、こんなところにいたのか。」
247名無しさん@初回限定:04/06/16 23:12 ID:00Uf92dQ
一人になり、気を緩めた時にそんな声がかかった。
「え?」
私は声のした方を振り返る。
「大輔・・・さん・・・。」
「何、そんなに驚いてるんだ?生きてた事がそんなに不思議だった?」
そこにいたのは間違いなく大輔さんだった。
「どうして・・・」
「どうしてって・・・やっぱり、百合奈先輩の事が心配だったから・・・。」
そういってはにかんだような笑顔を見せる。
「大輔さん・・・。」
「百合奈先輩を残して死んでられないよ。」
大輔さんは私の所まで来ると、座ったままの私に目線を合わせるように屈み込む。
「まだ、百合奈先輩の絵を描いてないしさ。」
「大輔・・・さん・・・。ありがとう・・・。」
再び逢えた事と大輔さんの優しさに涙が止まらなくなる。


「笑ってくれる約束だろ?泣かないでくれよ・・・。」
「はい・・・。すみま、せん・・・。」
「ほら・・・」
涙を拭ってくれる。
いつも以上に優しく感じた。

「百合奈・・・。もう泣くな。」
248名無しさん@初回限定:04/06/16 23:12 ID:00Uf92dQ
・・・!
「どうした?」
「・・・違います。」
急に正面から見据えた私を怪訝そうに見つめ返す大輔さん。
「何が?」
「貴方は・・・大輔さんじゃない・・・。」

「何言ってるんだ?俺は――」
「違う!私が望んでいるのはこんな事じゃない!!」
私を名前だけで呼んで欲しい――。
それは、まだ大輔さんには言っていない本心だった。
それを知っている・・・大輔さんじゃない・・・!

――手近にあった太く鋭い木の枝。

私はそれを手に取ると、躊躇う事無く自分の腹部に突き刺した。

「馬鹿な・・・!何やって――」
最後まで言い終える事無く、その姿が消える。
「橘さん・・・ごめんなさい・・・。私は・・・――」


「おねえちゃん!あれ!!」
まいなちゃんの悲鳴に近い声で、私は想像だにしない光景を見ることになった。
「百合奈・・・せん・・・ぱい・・・」

――それは月光の中に浮かび上がった、オブジェの様だった。
249名無しさん@初回限定:04/06/16 23:14 ID:00Uf92dQ
身体を弓なりにしならせ、顎を仰け反らせて、今にも仰向けに倒れ落ちそうな姿。
その視線は遥か虚空を彷徨っている。
その儚い命を削り取っているような血溜まり。

そして――腹部に突き刺さった太い枝。

「百合奈先輩!!」
駆け寄って倒れる寸前に抱きかかえる。
「しっかりして!」
「たち・・・ばな・・・さ、ん・・・。」
「おねえちゃん!」
「死んじゃヤダよぉ・・・っ!」
二人も先輩にすがって泣き叫ぶ。

「ごめん・・・なさ、い・・・。私、は――」
口を開く度に鮮血が流れる。
「ダメ!しゃべっちゃダメ!!」
その言葉に先輩はゆっくりと力なく首を振った。
「私は・・・大輔さんが、羨ましかった・・・。」
私を見る視線が合っていない。
もう・・・
「始めは・・・私の絵を描いてくれる、という、そんな・・・ゴホッ!ゴホッ!!」
「おねえちゃん!おねえちゃんっ!!」
ゆうなちゃんが泣きながら百合奈先輩の背を擦る。
「貴方がいて・・・大輔さんは、幸せそうだった――辛かった・・・憎かった・・・。」
冷たくなりゆく手が私の頬に触れる。
「でも・・・最後に・・・こうして、橘さんと、話せて・・・」
250名無しさん@初回限定:04/06/16 23:14 ID:00Uf92dQ
「あ・・・あぁ・・・」

「だ――」
突如、背後に聞こえた声に「誰?」と言う間もなく――。
「そ、そんなこと・・・――。」
「藍・・・ちゃ、ん・・・。」
そこには両手で口を押さえて立ち尽くす藍ちゃんがいた。
「信じて・・・信じていましたのに・・・っ!」
「違う!これは――」
「私の唯一の助けになってくれる方でしたのに!!」
藍ちゃんはそう叫んで森の中に消えていった。
「たち・・・ばな、さん・・・もう、私は――」
その瞳が私に「藍ちゃんを追って」と言っているような気がした。
「百合奈先輩・・・」
「最後まで・・・あり、が――」

言い終えるより早く。
月明かりが照らす森の中で。
私の手の中に合った温もりが、一瞬にして消えた。

――紅の、雪となって・・・。
251名無しさん@初回限定:04/06/16 23:15 ID:00Uf92dQ
「はぁ・・・はぁ・・・。」
藍はしばらく走ると、大きめの木の下で走るのを止めた。
そしてそのまま座り込む。
「ヤケになったらあきまへんで、姉さん・・・。」
胸元から這い出してきたケンちゃんが諭す。
「分かって・・・いますわ・・・。」
その口元が――。

・・・微かに笑っていた。

ケンちゃんはそれに気付かずに背を向けて、まるで教師が生徒に言い聞かすように話し始める。
「こないな状況下で、普通の精神状態でいられるほど、ヒトっちゅーもんは強く出来てないんですわ。」
「そうですわね・・・。」
藍には納得できた。
そうだ。あの橘さんでさえ、人を殺すんだ。
それは自分の侵した罪を、罪とは認識させない力として十分だった。
だから・・・。
「フフフ・・・。」
「どないした――」
振り向きかけたケンちゃんの腹部を銃弾が貫く。
「な――!?」
「クスクスクスッ・・・。」
「なん・・・で・・・です、の・・・?」
藍を助け、支えようとしていた小さなインコは、その場で絶命した。
「ここでは生きる事が全て。貴方のようなヒトを扇動する存在は邪魔なのですわ・・・。フフフッ・・・。」
すっきりしていた。
手元の銃を眺める。

――そう、私には、力がある。

「生きるための、力が・・・。」
252名無しさん@初回限定:04/07/21 22:11 ID:0oH7TxnW
嫌がらせのように保守。
253名無しさん@初回限定:04/07/28 21:48 ID:8fBoQZc3
保守
254そらきば:04/07/29 12:48 ID:/VW1IUp1
正直悪役ばっかり強くて
正義の心を持つ人がどんどん死んでくね

勝てないよ
255名無しさん@初回限定:04/07/30 01:43 ID:mp9SOeQs
善人役と悪役との人数比が無茶苦茶すぎるんだよ。
悪役が少なすぎて貴重だから、殺すわけにいかなくなる。
はっきりと害意のあって、なおかつ微妙な実力の鬼をもっと増やせばやりようがあったのに。
この設定だと召還者どうしで争う理由がない、
っていうことをもっと早く把握すればよかったのだが……
256名無しさん@初回限定:04/08/04 23:01 ID:EAlFm/tg
>>255
既に半ばで言われてはいましたが、書き手の中で「大丈夫なんじゃないかな」
という考えがどこかにあったのかもしれません。

…と考えていたかもしれないと思ってみるテスト。
257名無しさん@初回限定:04/08/06 23:44 ID:uS0jnbkI
長らく潜っておりましたが、全ての準備が整いました。

まとめサイト
ttp://f51.aaacafe.ne.jp/~negisaba/

感想スレ
http://jbbs.livedoor.com/bbs/read.cgi/otaku/2779/1091787835/

これから一同頑張っていきます。
258名無しさん@初回限定:04/08/07 01:15 ID:JfVFdR2i
おいおい続きを書くつもりなのか?
259交錯する思惑:04/08/07 01:31 ID:QuLBYhDw
「悪いが預かれない」
 一言の元に、プリンを預かってほしいという二人の願いは却下された。
 それどころか、彼女達は、葉月が背負う少女を持っていけというのだ。

 左にエレン、小次郎と並び、その後ろにプリンと呼ばれる名無しの少女がいる。
 対して、右側には蔵女が一歩前に出、隣に葉月がアルを背負い、横に乃絵美がいる。
 
「此方の荷物は増やすというのかしら?」
 多少怒りが混じりながらエレンが口開いた。
「荷物ではない」
 全てを見通している蔵女の表情。
 それが人を馬鹿にしているかのように見える。
「意味を理解しかねるわ……、そんな条件受け入れられないわ」
 エレンの口からため息が漏れる。
「せっかく便利なアイテムを渡してやろうと思ったのにな」
 意地悪くクスクスと笑いながら蔵女が言う。
「蔵女、いい加減にしないか」
 一歩引いた所で見ていた葉月がぐいと前に出てくる。
「君達に引き渡したいこの少女だけど、彼女は人じゃない」
 人を茶化す蔵女に代わって、葉月がそのまま説明を始めた。
「どういうことだ?」
「彼女は人の形をしたアイテム……古の魔法道具」
 二人は、まさかという顔をしたが、蔵女の能力。
 そして今ままでの状況から、心の中では否定しなかった。
「それに見ても解るように、僕たちもこの娘を保護しないといけない」
 確かに葉月の後ろには、何の変哲もない少女がいる。
「悪いけど、今の僕たちにその少女を預かる事は無理だ。
 その代わり、この娘を渡すからそれでやりくりしてほしい。
 きっと強い戦力になるはずだ」
 葉月の後ろで蔵女がふんと勝ち誇ったような顔をしていた。
260交錯する思惑:04/08/07 01:32 ID:QuLBYhDw


 彼女達が交渉をしている最中。
 少し離れた木陰から、彼女らを覗く人物がいた。
「獲物を見つけたのがいいが……、あの人数はちょっと厄介だな。
 それに……」
 赤い着物を纏った少女。
 彼女からは、自分と同じ異質なる力を感じる。
「あのまま合流するなら見逃すしかないか……」
 彼女達が動いた。
 どうやら赤い着物の少女達の方が、意識を失った少女を預け、また別々に行動するようだ。
 ここに来るまでにどこまでできるかの試しはしてきた。
 どうやら彼女達に戻る気はないようだ。
「早速、実践に移させてもらうとするか……」


「蔵女」
 彼女達はアルをエレン達に引渡し、逆方向へと歩き始める。
 しばらく歩いて、葉月が蔵女に話し掛けた。
「気付いた?」
「今さっきな、そちらもだろう?」
 蔵女は、にやりと笑うが引き返そうという意思はない。
 むしろ、どんどんエレン達から離れて行く。
「あのネクロノミコンを使いこなすいい機会だ」
「そう……」
261交錯する思惑:04/08/07 01:34 ID:QuLBYhDw
【無影@二重影 (狩) 状態:○(回復)  装備:日本刀(籠釣瓶妙法村正)メガラスの指輪(敏捷力上昇) 行動方針:魔力なしの駆除】

【アル・アジフ@斬魔大聖デモンベイン(ニトロプラス) 招 状態×(気絶) 装備品 ネクロノミコン(自分自身)】
【エレン@ファントムオブインフェルノ(ニトロプラス)招 状態○ 装備品 ベレッタM92Fx2 ナイフ 結界装置の設計図】
【天城小次郎@EVE〜bursterror(シーズウェア)狩 状態○(右腕が多少痛む) 装備品 食料 水 医薬品 地図 通信機
 カセットレコーダー(無影とケルヴァンの会話及び魔道学会員Bとの会話録音)】
【プリン(名無しの少女)@銀色(ねこねこソフト)? 状態△(片足の腱が切れている) 装備品 赤い糸の髪留め 双眼鏡】

【伊藤乃絵美@With You〜見つめていたい(カクテルソフト) 狩 状態○ 装備品 ナイフ】
【蔵女@腐り姫(ライアーソフト) 招 状態△(力半減。左肩銃創、呪詛返しの影響で傷口拡大) 装備品(能力)赤い爪、通信機】
【葉月@ヤミと帽子と本の旅人(オービット) 招 状態○(力半減) 装備品 日本刀】

【表層の士後】
262名無しさん@初回限定:04/08/07 14:02 ID:eGORPMrh
なんか変なのかえってきたー
263folgenden:04/08/07 18:25 ID:TIW+NoZA
「んで、五十六。使えそうなのは見つかったか?」
「我々が使えそうなのとなると難しいですね」
 大分探したが良さそうなのが見つからん。
 話に聞くと凄い物や注意すべき物、チューリップ一号みたいなのもあったが、
いかんせん、俺様や五十六が使えるようなものじゃない。
 強化系アイテムとかもなさそうだしな、どうしたもんだか。

 その強化系アイテム、最も当りであったのは一足先に無影が持ち去ったのだった。

 大体部屋は調べ尽くしたが、使えそうなのはこの二本の刀。
 そして少量の世色丸だけ。
 刀はちょっと勝手が違うんだが、五十六もいるし、持っておいた方がいいだろう。
 
「これからどうしますか?」

 ここは、どうやら俺たちに合うような武器は余りないみたいだ。
 あのドライとかいうねーちゃんの持ってたのと似たようなのが主流だ。
 そうなると…

「やっぱり中央しかねぇのかな…」

 五十六の事もある、一度戻って体制を整えるというのもありだろう。
 俺様の行動もまだこの時点じゃ芽吹いていない。
 十分、俺様たちは、まだアチラがわだ。
264folgenden:04/08/07 18:25 ID:TIW+NoZA

 それと共に時間を確認する。

「そろそろ夕方か、夜も近いな…
 五十六、中央に行くぞ。
 俺様たちは夜型じゃないからな」

 そんな俺様の言葉を聞き終えた五十六は「クス」と笑いながら

「わかりました」

 と返答した。

 ちっ、五十六のためってのがばれてるな。

【ランス@ランスシリーズ(アリスソフト) 鬼(但し下克上の野望あり) 状態○ 装備品 リーザス聖剣 刀 世色丸数個】
【山本五十六@鬼畜王ランス(アリスソフト) 招 状態○ 装備品 弓矢(弓残量15本)刀】
【行動方針:武器の入手、モンスは優先的に狩る】
【表層の士〜】
265名無しさん@初回限定:04/08/07 18:46 ID:QkZolZ6v
んで? もうハカロワIIは飽きちまったのかい?
266虚像の勝利:04/08/12 00:53 ID:RMmyCeON
 彼女が欲しくてやまなかった男が目の前に座っている。
 背を壁に寄せ、赤い池の上でぐったりと垂れ下がっていた。

「……やっぱりこうなっちまったか」
 
 夕暮れの中、玲二の遺体の前、佇むドライ。

「玲二の性格だ、半ば解ってたんだけどね……。
 でも直視するとやっぱりな……」

 涙はでない。
 やせ我慢しているわけではない。
 そういう事態も見据えた上での契約だったのだから。

「確かにあたしの勝利さ……。
 この仕事が終われば、もう玲二はあたしの『仲間』なんだからな……」

 ケルヴァンと取り交わした約束。
 もし玲二がこの島で死ぬ事があれば、褒賞の一つとしてドライと同じ『仲間』にすること。
267虚像の勝利:04/08/12 00:54 ID:RMmyCeON
 ドライと新撰組の面子と同じリビングデット。
 ドライの立場からしてみれば、エレンに対してこれ以上にない最高の勝利だろう。
 もしエレンが死んでも彼女は、『仲間』になれずそのままだ。
 『仲間』にしようとするものもいない。
 ドライと玲二だけが、永遠に在れる。
 玲二の心は永久に得れなかったとしても……。

 だが、ドライの心は、渇いている。
 できれば、玲二は生きていて欲しかったというのもある。
 しかし最大の理由は、それではない。

「決着をつけずしてか……」

 できれば、エレンと戦って、そして生きている玲二を勝ち得たかった。
 最大のライバルと戦わずしての勝利。
 不戦勝という形が彼女の心を渇かせる。

「…………」

 玲二を守れなかった自分、そして選ばれたはずなのに彼を守れなかったエレン。
268虚像の勝利:04/08/12 00:57 ID:RMmyCeON

 決着をつけたい。

 彼女の心の中に、エレンと自分への二つの怒りがふつふつと湧き上がる。

「ぶつけてやるさ……あたしとあいつのどちらの想いが勝つか。
 だが、手始めは……玲二をこんな姿にしたやつら。
 そいつのケリくらいは、あたしの手でつけさせて貰う。
 あいつにだけは絶対にさせない」

【ドライ @ファントム・オブ・インフェルノ (ニトロプラス) 状態○  鬼  所持品 ハードボーラx2】

【想い託してよりしばらく後】
269名無しさん@初回限定:04/09/29 17:11:06 ID:fKUE4f+a
 
270名無しさん@初回限定:04/12/24 17:28:17 ID:Fh644So1
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271名無しさん@初回限定:04/12/24 17:28:34 ID:Fh644So1
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272名無しさん@初回限定:04/12/24 17:28:47 ID:Fh644So1
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287名無しさん@初回限定:04/12/24 17:38:40 ID:yha8Ioia
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288名無しさん@初回限定:04/12/24 17:38:53 ID:yha8Ioia
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310名無しさん@初回限定:04/12/24 17:52:44 ID:Akns1bNH
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312名無しさん@初回限定:04/12/24 17:54:21 ID:Akns1bNH
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316名無しさん@初回限定:04/12/24 17:56:24 ID:Akns1bNH
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317名無しさん@初回限定:04/12/24 17:57:32 ID:Akns1bNH
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321名無しさん@初回限定:04/12/24 17:59:27 ID:Akns1bNH
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(  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ
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322名無しさん@初回限定:04/12/24 18:00:16 ID:Akns1bNH
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(  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ
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323名無しさん@初回限定:04/12/24 18:00:31 ID:Akns1bNH
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(  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ
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324名無しさん@初回限定:04/12/24 18:00:42 ID:Akns1bNH
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(  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ
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325名無しさん@初回限定:04/12/24 18:00:57 ID:Akns1bNH
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(  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ   (  ⌒ ヽ
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326名無しさん@初回限定:04/12/24 18:28:42 ID:RMMBpJj1
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327名無しさん@初回限定:04/12/24 18:29:44 ID:RMMBpJj1
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328名無しさん@初回限定:04/12/24 18:30:48 ID:RMMBpJj1
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329名無しさん@初回限定:04/12/24 18:32:16 ID:RMMBpJj1
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330名無しさん@初回限定:04/12/24 18:34:03 ID:RMMBpJj1
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331名無しさん@初回限定:04/12/24 18:34:23 ID:RMMBpJj1
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332名無しさん@初回限定:04/12/24 18:35:52 ID:b6gNILSm
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333名無しさん@初回限定:04/12/24 18:36:05 ID:b6gNILSm
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334名無しさん@初回限定:04/12/24 18:37:13 ID:b6gNILSm
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335名無しさん@初回限定:04/12/24 18:38:57 ID:b6gNILSm
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336名無しさん@初回限定:04/12/24 18:39:49 ID:b6gNILSm
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337名無しさん@初回限定:04/12/24 18:40:02 ID:b6gNILSm
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338名無しさん@初回限定:04/12/24 18:40:59 ID:b6gNILSm
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339名無しさん@初回限定:04/12/24 18:41:22 ID:b6gNILSm
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340名無しさん@初回限定:04/12/24 18:42:19 ID:b6gNILSm
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341名無しさん@初回限定:04/12/24 18:42:31 ID:b6gNILSm
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342名無しさん@初回限定:04/12/24 18:42:43 ID:b6gNILSm
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343名無しさん@初回限定:04/12/24 18:43:01 ID:b6gNILSm
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344名無しさん@初回限定:04/12/24 18:44:50 ID:b6gNILSm
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345名無しさん@初回限定:04/12/24 18:45:04 ID:b6gNILSm
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346名無しさん@初回限定:04/12/24 18:45:16 ID:b6gNILSm
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347名無しさん@初回限定:04/12/24 18:45:26 ID:b6gNILSm
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348名無しさん@初回限定:04/12/24 18:46:17 ID:b6gNILSm
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349名無しさん@初回限定:04/12/24 18:46:28 ID:b6gNILSm
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350名無しさん@初回限定:04/12/24 18:46:43 ID:b6gNILSm
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351名無しさん@初回限定:04/12/24 18:46:55 ID:b6gNILSm
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352名無しさん@初回限定:04/12/24 18:48:44 ID:zb2R0X8t
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353名無しさん@初回限定:04/12/24 18:48:56 ID:zb2R0X8t
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354名無しさん@初回限定:04/12/24 18:49:08 ID:zb2R0X8t
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355名無しさん@初回限定:04/12/24 18:49:21 ID:zb2R0X8t
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356名無しさん@初回限定:04/12/24 18:50:32 ID:zb2R0X8t
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357名無しさん@初回限定:04/12/24 18:51:56 ID:zb2R0X8t
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358名無しさん@初回限定:04/12/24 18:52:07 ID:zb2R0X8t
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359名無しさん@初回限定:04/12/24 18:52:18 ID:zb2R0X8t
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360名無しさん@初回限定:04/12/24 18:52:30 ID:zb2R0X8t
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361名無しさん@初回限定:04/12/24 18:53:49 ID:zb2R0X8t
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362名無しさん@初回限定:04/12/24 18:54:03 ID:zb2R0X8t
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363名無しさん@初回限定:04/12/24 18:54:18 ID:zb2R0X8t
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364名無しさん@初回限定:04/12/24 18:54:29 ID:zb2R0X8t
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365名無しさん@初回限定:04/12/24 18:54:41 ID:zb2R0X8t
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366名無しさん@初回限定:04/12/24 18:57:42 ID:qdgOQpEh
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367名無しさん@初回限定:04/12/24 18:57:53 ID:qdgOQpEh
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368名無しさん@初回限定:04/12/24 18:58:16 ID:qdgOQpEh
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369名無しさん@初回限定:04/12/24 18:58:29 ID:qdgOQpEh
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370名無しさん@初回限定:04/12/24 19:00:01 ID:qdgOQpEh
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371名無しさん@初回限定:04/12/24 19:00:14 ID:qdgOQpEh
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372名無しさん@初回限定:04/12/24 19:00:25 ID:qdgOQpEh
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373名無しさん@初回限定:04/12/24 19:00:36 ID:qdgOQpEh
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374名無しさん@初回限定:04/12/24 19:01:33 ID:qBnEIfbB
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375名無しさん@初回限定:04/12/24 19:01:44 ID:qBnEIfbB
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376名無しさん@初回限定:04/12/24 19:02:52 ID:qBnEIfbB
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377名無しさん@初回限定:04/12/24 19:03:02 ID:qBnEIfbB
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378名無しさん@初回限定:04/12/24 19:03:14 ID:qBnEIfbB
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379名無しさん@初回限定:04/12/24 19:03:24 ID:qBnEIfbB
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380名無しさん@初回限定:04/12/24 19:03:50 ID:qBnEIfbB
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381名無しさん@初回限定:04/12/24 19:04:00 ID:qBnEIfbB
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382名無しさん@初回限定:04/12/24 19:04:10 ID:qBnEIfbB
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383名無しさん@初回限定:04/12/24 19:06:00 ID:qBnEIfbB
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384名無しさん@初回限定:04/12/24 19:06:14 ID:qBnEIfbB
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385名無しさん@初回限定:04/12/24 19:06:32 ID:qBnEIfbB
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386名無しさん@初回限定:04/12/24 19:06:47 ID:qBnEIfbB
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387名無しさん@初回限定:04/12/24 19:08:10 ID:qBnEIfbB
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388名無しさん@初回限定:04/12/24 19:08:20 ID:qBnEIfbB
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389名無しさん@初回限定:04/12/24 19:08:34 ID:qBnEIfbB
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390名無しさん@初回限定:04/12/24 19:08:48 ID:qBnEIfbB
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391名無しさん@初回限定:04/12/24 19:09:58 ID:ixW+ocPw
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392名無しさん@初回限定:04/12/24 19:10:12 ID:ixW+ocPw
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393名無しさん@初回限定:04/12/24 19:11:52 ID:ixW+ocPw
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394名無しさん@初回限定:04/12/24 19:12:03 ID:ixW+ocPw
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   ((  し.ノ し.ノ  ))≡
395名無しさん@初回限定:04/12/24 19:24:12 ID:3vcoCGHL

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   ,-‐'"~,..‐'"   ( ,ノ
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      /  |         |
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      し,,ノ         |
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          |   |   |'| |
         |   )  )| |
         (__ノ_ノ |'|'|
396名無しさん@初回限定:04/12/24 19:24:23 ID:3vcoCGHL

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      .   _,-─‐"─ ̄ ̄─...-──''' ̄,.--─‐''"" ̄,.--─‐''"" ̄
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   ,-‐'"~,..‐'"   ( ,ノ
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   /⌒      ( y) |
   |(◯)   ,γ,つつ ))
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         (__ノ_ノ |'|'|
397名無しさん@初回限定:04/12/24 19:24:35 ID:3vcoCGHL

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         (__ノ_ノ |'|'|
398名無しさん@初回限定:04/12/24 19:24:48 ID:3vcoCGHL

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399名無しさん@初回限定
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     __                   : \  ((  从⌒从  )) /   ;
      l/ ―/―| | ―― ヽ /  ・     ((  ((    ・)) * ζ /
      /  // |        /     \ 煤E  ((  ∵  ))    )) / ・
  ________            \  (( :   ))   ((  从  ))ζ
  |   ∧.∧  :|□l//        ・    煤@ 从⌒从 ε  (( ∵    )) ̄*
  |   (,,゜Д゜) :|□l 三三三三三三三三三三三 *     。((  ⌒  )) ζ
   ̄ ̄l ニ⊃/ ̄ ̄ヾ\          /  煤@((     ・  从 从 ))  \
    〜(_ヽ               *  / (( 从⌒从 )) (( : ζ  \  ∵
    ⊂  U                      (( W (( ・ W )) *