21 :
1/2:
昼頃になってようやく目を覚ますと、家中に甘い匂いが漂っていた。
階段を下りると、台所に妹がたっているのが見えた。
「おっ、チョコ作ってるのか」
「あっ、おにぃ、おはよ」
「うまそうな匂いだな」
「朝から大量につくったからね」
「ふーん、こんなにいっぱいつくってどうするの?」
「あげるにきまってるじゃん、午後から部活あるし、男子にあげるのよ」
「へー、お前もそういう気配りが出来るようになったのか」
「しっつれいね、私だってチョコくらいあげるわよ」
「ふーん、で、この一つだけ大きいのは本命用か?」
「あ……、触っちゃダメっ、文字が崩れる!」
「ああ、悪ぃ、でもこれ文字なのか? 全然読めないぞ」
「Je t'aime toujours.って書いてあるの。フランス語だからおにぃには読めないかもね」
「フランス語ねぇ、けど今年もオレが食う羽目になるんじゃないのか?」
「え……」
「だってお前、毎年チョコ渡せなかったっていって、オレにくれるじゃん」
「――それは……」
「今年は、ちゃんと渡せるといいな」
「うん……ありがと」
22 :
2/2:04/02/14 12:40 ID:yogASZXL
「じゃあ、学校いってくるね。おにぃはどっか出かけるの?」
「あいにく、チョコを貰うあてもないからな。その辺ぶらつくくらいだろ」
「そっか」
「お前からチョコ渡されたら断れる奴なんていないんだから、頑張って渡せよ」
「……」
「ん、どうした?」
「本当かな。私のチョコ貰ってくれるの……かな」
「ああ、お前は十分かわいいから、お前からのチョコは喜ばれると思うぞ」
「……」
「頑張って渡せよ」
「……、――あのさ、……おにぃ」
「ん? どうした?」
「あのさ……これ……おにぃにあげる」
これ以上ないくらいに真っ赤に染まり震えた言葉を発した妹は、、
カバンくらいある大きな包みを僕に受け取らせると、
きょとんとした僕を尻目に、足早に玄関へかけて行った。