131 :
原文:
昼休みになって、教室は騒々と活性化する。
食堂に向かって飛び出していく男子、机をくっつけてテーブルを作る女子のグループ、弁当を手にしてゆったりと教室を出ていく生徒。
そんな光景を眺めながら、自分の机に購買で買ってきた三角パンと牛乳を置く。
「ったく、相変わらず小食だな遠野は」
……目の前にこの男がいるのは、もはや日常なのでいまさら文句を言っても始まらない。
「しっかしさあ、大の男が二人きりで顔合わせて昼飯っていうのもナンだよな。食事に華がないのはどうかと思うんよ、オレ」
「そう。華がないならあっちのグループに入れてもらえば? 別に止めないよ、俺は」
「ばかもの、華っていうのは可憐なのが一輪咲いているからいいんじゃねえか。ああゆうふうに徒党をくんでるのは駄目だね。美しくないどころかありふれて毒に見える」
……女子のグループに聞かれていたら石でも投げられかねない発言をする有彦。
幸い、今のところコイツの毒舌がクラスの女子に聞かれたコトはない。
「……ひどい言いようだね、有彦。おまえは前からひどいヤツだったけど、最近特にひどくなってないか? ひどいというより外道いって感じ」
「仕方ないだろ。実際に美しい華が学校にいるんだから、鑑識眼も厳しくなるってもんだ」
「……はあ。美しい華って、誰さ」
「それは秘密ということで。あんまりライヴァルを増やしたくないんでね」
ふふふ、と野心に満ちた笑みをこぼす有彦。
こいつの剥き出しの感情表現は、自分にはないものでちょっと感心したりする。
132 :
原文:04/02/11 00:25 ID:eOB/iQps
――――と。
教室のドアから、ついさっき出会った人がこっちに向かってやってきた。
「…………あ」
お弁当片手にやってくるその姿は、見間違えるハズもなく―――
「こんにちは遠野くん。お邪魔しにきちゃいましたけど、いいですか?」
「え―――あ、もちろんいいですけど―――」
……シエル先輩は笑顔のまま、当たり前のように椅子を持ってきて座ってしまった。
「あの……先輩、やっぱりケガしてたんですか?」
「いいえ、ケガなんかしてませんけど?」
笑顔でそんな返答されても、困る。
「わたし、遠野くんにお昼休みにおいでって言われましたから、こないとまずいかなって」
「う……確かにそうは言ったけど」
……俺としては、もしケガでもしてたら責任をとるから来てくれって意味だった筈だ。
「せ、せ、先輩っっっっつ!」
ダン! と音をたてて立ちあがる有彦。
「あ、乾くん。あれ、もしかして遠野くんとお知り合いだったんですか?」
「ええ、知り合いも知り合いッスよ! 遠野とはガキの頃からの友人ですから! な、遠野! オレたちゃあ、むしろマブと呼び合ってもおかしくない友情ぶりだよな!」
「―――――――」
ぐぐっ、と握りこぶしをして力説する有彦。
そこには同意の言葉も反論の言葉も差し入れる隙間がない。
133 :
原文:04/02/11 00:26 ID:QuxIULfR
「へえ、そうだったんですか。遠野くんと乾くんが友人同士なんて、偶然ってあるんですね」
「そうッスね! まったく、このヤロウは大人しい顔してやがって、いつのまに先輩と仲良くなってたんだろうなー、とか純粋に疑問に思いますよオレは!」
ははは、と先輩に笑いかけながら、ぎろりと俺を睨みつけてくる有彦。
こういうのも八面六臂の大活躍って言うのかな、とぼんやりと思ってみる。
134 :
添削済み:04/02/11 00:27 ID:RCCJgZJQ
昼休み。
騒々と活性化する教室から食堂に向かって飛び出していく男子。机をくっつけてテーブルを
作る女子のグループ。弁当を手にしてゆったりと教室を出ていく生徒。
そんな光景を眺めながら、購買の三角パンと牛乳を机に置く。
「ったく、相変わらず小食だな。遠野は」
と、有彦。
「……」
特に返す言葉もない。目の前にこの男がいるのは、もはや日常。今更何をか言はんや、だ。
「しっかし、大の男が二人で昼飯っていうのもなあ…。食事に華がないのはねえ…」
溜息交じりの有彦に、俺はちらりと横を向き、
「ま、華が欲しいのなら、あっちのグループに入れてもらえば? 別に止めないよ。俺は」
「ばかもの。可憐なのが一輪咲いているから華なんだ。あんな徒党はだめ。毒の花」
女子に聞かれたら石もて追われかねないセリフだ(幸い、今のところは聞かれてないが)。
「ひどい言いようだねえ。前からだったけど、お前、最近特にひどくなってないか? ひど
いというより非道いって感じだ」
「仕方ないだろ。雑草の中に美しい華が一輪咲いてんだ。華を基準にすりゃ、雑草にゃ厳しく
なるのが当然ってもんだ」
135 :
添削済み:04/02/11 00:28 ID:eBEwc4Y8
「はあ? 美しい華? 誰のこと?」
「ふっふっふ、それは秘密だ。ライバルは増やしたくないからな」
野心に満ちた、剥き出しの感情表現。
これは俺にはないものだな、と、ちょっと感心する。
と―、
ガラッ
「…あ」
ついさっき出会った人がこちらに。
136 :
添削済み:04/02/11 00:29 ID:ZbJS9CCI
「こんにちは遠野くん。お邪魔しにきちゃいました。いいですよね?」
お弁当片手にやって来たその姿を見間違えるハズもない。
「え…、あ、もちろんいいですけど…」
シエル先輩は笑顔のまま、当たり前のように椅子を持ってきて座る。
「あの…、先輩、やっぱりケガしてたんですか?」
「いいえ、ケガなんかしてませんけど?」
と、笑顔で返答。
「……」
困った…。
「遠野くん、お昼休みにおいでって言いましたよね? 来ないとまずいでしょ」
「う…、確かにそうは言ったけど…」
もしケガでもしてたら責任をとるから来てくれって意味だったんだが…。
と、その時、
ダンッ!
「せ、せ、先輩っっっっつ!」
137 :
添削済み:04/02/11 00:29 ID:GxMj7TDI
有彦が音をたてて立ちあがる。先輩はにっこり微笑むや、
「あれ? 乾くん。もしかして、遠野くんとお知り合いだったんですか?」
白々しいセリフだ。
「ええ、知り合いも知り合いッスよ! ガキの頃からの友人です! な、遠野! オレたちゃ
マブダチだよな!」
「……」
ぐっ、と、握りこぶしで力説する有彦に、同意も反論も差し入れる隙がない。
「へえ、そうだったんですか。遠野くんと乾くんが友人同士なんて、偶然ってあるんですね」
と、一層にっこり微笑む先輩に、有彦は、
「そうッスね! まったく、このヤロウは大人しい顔してやがって、いつのまに先輩と仲良く
なってたんだろうなー、とか純粋に疑問に思いますよオレは! わははは!」
と、笑いながら畳みかけ、返す刀でぎろりと俺を睨みつける。
こういうのも八面六臂の大活躍って言うのかねえ。