葱サバイバル2

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358犬死せし者たち:04/03/07 03:52 ID:6knYUz0I
そして一方の恭也だったが、先ほどの先制攻撃によって彼は古傷の膝を射貫かれていた。
「血が止まらないよぉ、恭ちゃん!!」
美由希は恭也の傷口にハンカチを当てながら泣き叫ぶ。
おそらく両足の動脈を射貫かれてしまったのだろう、だとすると、つまりもう自分は助からない…。
しかしそれでも…、やらなければならない、こうなっては自分が何とかしなければ、
美由希だけでも助けたい…それに今、恭也は何故か妙な自信が満ちてくるのを感じていた。
「龍燐…貸してくれないか?」
「ムチャよ!そんな身体で!」
「こんな身体だから…出来そうな気がするんだ」
それは単に出血多量のため軽いトリップ状態になっているだけだが、
恭也は自分の集中力が確かに高まっていくのを感じていた、今なら…出来る、これしかない!

(たのむ、俺の身体よ、あと一瞬だけ動いてくれ!)
恭也は震える手、いやすでに震えは止まっている、で、構えを取る。
それを見た美由希の口から溜息が漏れる。
そう、恭也の構えはまったく非の打ち所が無い、まさに完璧だった、彼は死を目前にして
ついに奥義を極めたのだった。
「いいか…俺が切りこむのと同時に、お前はドアに走れ…」
美由希は駄々をこねるようにいやいやをするが、恭也の顔を見て、やがて力なく頷いた。
それを確認し、はーっはーっと恭也の口から気合が漏れはじめる、そして次の瞬間、
恭也は己の全ての力を注ぎ込んだまさに必殺の一撃を放ったのだった。

だが…神風は刃と化した恭也をくるりと身を翻し、あっさりと交わした、確かに凄まじい一撃ではあったのだが…。
彼の膝はもう限界を超えていたのだった。
結局、恭也が切り裂いたのはその背後の壁に過ぎなかった。
さらに、反転した神風の手からまた弦の音が響く、そして光の矢によって恭也の下半身が砕け散り、
階下に落ちていくのを美由希と舞人は確かに見た、
しかし恭也の顔は奥義を我が物にした改心の笑顔に満ちていたのだった。
359犬死せし者たち:04/03/07 03:54 ID:6knYUz0I
(恭ちゃん…)
後ろ髪を引かれる思いで美由希はドアに向かい走る、恭也の死を無駄には出来ない…。
それを見て神風がすかさず矢を放つ、が、
「させるかよ!」
舞人が美由希の盾になり、その身体に矢を受ける。
それを見て立ち止まろうとする美由希だったが。
「俺に構うな!逃げろ!俺たちの死を無駄にしないでくれっ!」
その言葉に一気にドアを潜り抜ける、もう彼女は振り帰らなかった。
そして舞人はドアの前に立ちふさがり、美由希が逃げるまでの時間稼ぎをしようとする。
風穴の開いた胸からは血が止め処も無く流れていく、
「聞けよ…俺の身体の血が一滴残らず流れ出すまで、俺はここを決して動かないからな…」
「さぁ、来い…桜井舞人の死に様を…」
だが、神風は舞人には付き合わず、そのまま恭也が切り裂いた壁の穴から外へと飛び出していった。

「くそったれ…め、お約束のわからねぇやつは嫌いだな
ずす…とへたり込む舞人、その傍らでは。
「わたしはただ…わたしはただ…」
胴体から吹き飛ばされ、壁に縫いつけられたリニアの頭が壊れたテープレコーダーのように、
同じ言葉を漏らしつづけていた。
「そう思うだろ?」
その言葉を最後に桜井舞人は息を引き取った。
そして誰もいなくなった部屋で、やはりリニアの声だけがエンドレスで響いていた。
「わたしはただ…わたしはただ…わたしはただ…わたしはただ…」
360犬死せし者たち:04/03/07 03:54 ID:6knYUz0I
美由希は階下で発見した上半身だけになってしまった恭也を抱え、ふらふらと歩いていた。
逃げなければという気持ちはあったが、その無残な恭也の姿を見てしまった瞬間、
自分の中の生きたいと思う気持ちが掻き消えていくのを感じていた。
「俺は…やったぜ、ついに奥義を極めたんだ」
「うん…凄かったよ…恭ちゃん」
涙ながらに応じる美由希。
「さてと帰らないとな、皆が待っているから、今日の夕飯は何だろうな」
帰るって…と言いかけて、美由希は口をつぐんだ。
もう、彼の心はすでに海鳴の街に帰っているのだろう…。

「今日はね…恭ちゃんの大好物…だよ、奥義習得記念だから…ね」
無理に笑顔を作る美由希。
「そうかぁ…嬉しいな、レンや晶もきっと喜んでくれるだろうなあ」
満面の笑顔で恭也は頷く、その口から血泡がこぼれる。
もはやかける言葉が見つからない、美由希はただ祈るように、このまま恭也が幸せな夢の中で
死ねるようにと祈りながら、その髪をそっと撫で続けていた。
だが…美由希はその目の中にこちらに進んでくる神風の姿を見つける。
「おねがい…来ないで、最後まで夢を見させてあげて…安らかに、死なせてあげてよ」
しかし神風は美由希のそんな願いを無視するようにわざと音を立てて弓を明後日の方向に飛ばす。
まるでお前は犬死だと言わんばかりに。

その弓の音に首を傾ける恭也、そしてその顔が絶望に彩られていく。
「何で…何であいつ生きてるんだ…俺は、確かに…」
そして彼は現実に戻ってきた、恭也の口から皮肉気な笑いが漏れる。
「くくっ…はははっ…ははっ…はははっ、わらっちまうぜ…こんな落ちかよ…」
「最後まで…半端者…か」
それが高町恭也の最後の言葉だった…彼は現実と自分自身に絶望しながら、死んだ。
361犬死せし者たち:04/03/07 03:57 ID:6knYUz0I
そして最後に残った美由希へと神風は矢を番える。
もはや美由希は逃げようとはしなかった。
俺たちの死を無駄にするなと言う、舞人の言葉が甦る、だが…。
「ごめんね、私そんなに強くないの…」
美由希は手に持った龍燐を自分の腹部に突き刺し、さらに真一文字に腹を切り裂く。
割れた腹からはらわたが飛び出し、周囲は真紅に染まる。
美由希の血で龍燐も真っ赤に染まっていく。
「そうよ・・・私たちの血と涙と苦しみと恨みと憎しみを・・・たっぷりと吸いなさい、そしていつの日か
 無念を・・・晴らして」
復讐の念をたっぷりと刃に送りながら、まもなく美由希も3人の後を追ったのだった。

神風はその様子をつまらなさそうに見ていたが、やがて無造作に美由希の手から龍燐を引き剥がすと、
それを庭石で粉々に粉砕してしまったのだった。

【高町恭也@とらいあんぐるハート3(JANIS) 死亡】
【高町美由希@とらいあんぐるハート3(JANIS)死亡】
【桜井舞人@それは舞い散る桜のように(バジル)  死亡】
【リニア@モエかん(ケロQ) 死亡】  
 
【神風 @ランスシリーズ(アリスソフト)魔獣枠 】
【スタリオン@ワーズ・ワース(エルフ) 鬼 状態○ 所持品なし】
【カトラ@ワーズ・ワース(エルフ) 鬼 状態○ 所持品なし】
362想いという名の痛み:04/03/08 22:43 ID:P/EgjIMp
合流地点になっている丘がうっすら森の向こうに見えた。
「大丈夫?休もうか?」
「あたしは平気よ、これくらい。」
額に汗をかきながらまいなちゃんが気丈に言い張る。
「わたしは・・・ちょっと休みたいかも・・・」
対照的にゆうなちゃんはもう限界みたいだった。
「ちょっと、ここで休憩しましょう。」
「そうですね。」
私と百合奈先輩は適当に場所を見つけると切り株に腰を下ろした。
それを真似してまいなちゃんとゆうなちゃんも大きな切り株に座ろうとする。
しかしゆうなちゃんの座った部分は苔むしていて、そのまま地面に尻餅をついた。
「いたいよぉ〜・・・。」
「大丈夫?」
目じりに涙を溜めるゆうなちゃんに私は声を掛けた。
「うん・・・。」
今度はゆっくりと座る。
ぽす。
そんな音がして苔の上に座ることが出来た。
「あ、けっこうあったかい・・・。」
「間に空気が入りますからね。」
のんびりした会話が聞こえてくる。
それはここが異世界であることを一瞬、忘れさせてくれた。
363想いという名の痛み:04/03/08 22:44 ID:P/EgjIMp
「百合奈先輩、お母さんみたい・・・。」
「えっ?そう・・・ですか・・・?」
頬を染める百合奈先輩。
「きっと良いお母さんになると思いますよ。」
「ありがとう・・・ございます。」
少し百合奈先輩の表情が曇った。
「でも・・・私は呪われていますから・・・母親には、なれません・・・。」
「お姉ちゃん?なんで?」
ゆうなちゃんがクリクリした瞳を百合奈先輩に向けて尋ねる。
それに対して先輩は力なく微笑むと、
「そういう・・・運命なんです・・・。」
そう言ってまた悲しそうな表情をした。

「切り拓く事もせず、受け入れるか・・・。それも良かろう。」

「えっ!?」
私の背後で声がした。
振り返るとそこには着物姿の童女と長い刀を持った女子高生の姿があった。
私は咄嗟にみんなの方へ駆ける。
「誰っ!?さっきの放送の人の仲間!?」
「仲間・・・ではなかろう?」
童女が女子高生に聞く。
「当然・・・。遊びの付き合い、かな・・・。」
木にもたれ、長い黒髪を手で梳きながら物憂げに返す。
衝撃だった。
364想いという名の痛み:04/03/08 22:45 ID:P/EgjIMp
「ひどい・・・っ!”遊び”なんてひどいもんっ!!」
私は叫んでいた。
「遊びで・・・?命を失っている人がたくさんいるのに・・・。そんな簡単に言い切れるような事じゃないっ!!」
「橘さん・・・。」
「大輔ちゃんも!篠宮先生も!みんなみんな何も悪い事してないのにっ!何で死ななくちゃならないのっ!?そんなの間違ってるっ!!」
大輔ちゃんを庇って倒れた篠宮先生。
私を庇ってその命を落とした大輔ちゃん。
全てが信じられなかった。夢だと思いたかった。

「あのさ・・・」
心底呆れた口調で私に語りかけてくる。
「そういう事・・・ウチらに言わないでくれるかな・・・?関係、ないから・・・。」
「リリスの戯れで我等はここに入り込んだだけだと言うに・・・。」
童女も呆れ顔だった。
そして二人は何事か話すと・・・
「あんまり気が進まないけど・・・」
音もなく鞘から刀を抜き放つ女子高生。
「きゃあっ!!」
ゆうなちゃんが百合奈先輩にしがみつく。
私の後ろでは、まいなちゃんが震えながらも相手を睨み付けていた。
「――行かせてもらうよっ!」
そういってこちらに向かって駆けて来る。
「このっ!!」
私は手近な石を拾って投げつけた。
だが、それはあっさりと弾かれる。
こちらに一瞬、睨みを入れるとそのまま百合奈先輩の所へ。
365想いという名の痛み:04/03/08 22:46 ID:P/EgjIMp
(始めからあっちが狙い!?)
「橘さんっ!」
百合奈先輩がゆうなちゃんを私の所へ突き飛ばしてくる。
私はゆうなちゃんをしっかり抱き止め、再度、百合奈先輩に刃を向ける女子高生目掛けて投石する。
「邪魔。」
横に逃げた先輩を確認してから私の石を弾く。
「先輩!」
「はあっ・・・!あっ!」
「百合奈先輩っ!?」
百合奈先輩の呼吸がおかしい。
「う・・・くっ・・・。」
左胸を抑えてうずくまる。
「百合奈先輩!!」
「く、薬が、ないので・・・・・・ぐっ!」
異常な状況下で失念していた。
そうだった。百合奈先輩、心臓が・・・。
ここに来てから激しい運動がずっと続いていた。無理があって当然だった。
「たち・・・ばな、さん・・・逃げて・・・」
苦しい呼吸の中で、それでも百合奈先輩は私に言った。
「私は・・・もう・・・限界です・・・・・・」
「そんなこと・・・しません。」
私はきっぱりと言い切った。
「もう、誰かが死ぬのを黙って見ているのは嫌です。」
「ふむ・・・なかなか座興としては面白い。どれ・・・」
童女がゆっくりとこちらに近づいてくる。
366想いという名の痛み:04/03/08 22:47 ID:P/EgjIMp
「来ないでっ!」
私は刀をしまい、こちらを眺めている女子高生とは対照的に、まだこちらに向かって来る童女に叫んだ。
「なに、取って食うわけではない。静かにしておれ。」
「え・・・?」
口を開きかけた私の喉元にいつの間にか刀が突きつけられていた。
「ちょっと、動かないで。私も面倒なのはイヤだから・・・。」
童女はそのまま苦しそうに喘いでいる百合奈先輩の元へ行き、
「ふふ・・・・・・。」
ドスッ。
「いやあああああっ!!」
ゆうなちゃんが泣き叫ぶ。
それは、異常な光景だった。

童女の赤い爪が、百合奈先輩のうなじに突き刺さったのだから・・・。

目を見開いた百合奈先輩に童女が囁く。
「何を欲する?何を求める?否定するのではない・・・受け入れよ・・・。」
「あ・・・・・・。」
そして爪を抜く。
不思議な事に、血は出なかった。
「さて、どうなることやら・・・。」
「あ・・・」
苦しそうに心臓のある辺りを押さえる百合奈先輩。
「さて、では我らは次の座興を楽しむとしよう・・・。」
「・・・酷いね。楽しんでるつもりなんだ?あれで・・・。」
女子高生はそういって森の中に消えていく童女を追い、その姿を消していく。
「もう、帰って久しぶりに初美と遊びたいな・・・。」
367想いという名の痛み:04/03/08 22:48 ID:P/EgjIMp
「おねえちゃん!だいじょうぶ!?」
心配そうに駆け寄ったゆりなちゃんに、百合奈先輩は苦し紛れの笑顔で言った。
「何とか・・・大丈夫です。ごめんなさい、突き飛ばしてしまって・・・。」
ゆうなちゃんは首を振る。
「百合奈先輩・・・」
「はい・・・大丈夫です・・・。落ち着きました。少し、動きすぎたのだと思います・・・。」
うなじを何気なく見るが、大した傷はない。
(一体・・・?)
「もう少し休んだら、また移動しましょう。」
百合奈先輩の意見でまた、休むことにした。
まいなちゃんからもらったキャンディーを一つ、口に入れる。
ミルクのほのかな甘さがした。
もう一つをまいなちゃんに。
「はい。」
「ん、ありがと。」
可愛い笑顔がこぼれる。
「いいなぁ・・・。」
羨ましそうにしているゆうなちゃんには百合奈先輩が。
「どうぞ。」
「あ。ありがとう。」
見透かされたことが恥ずかしかったのか、頬を染めるゆうなちゃん。
一時の休息は、何かの前触れのようで・・・。
私は少し身震いした。



【橘 天音@Canvas〜セピア色のモチーフ〜(カクテルソフト)分類:招 状態:○ 装備:キャンディー 】
【君影 百合奈@Canvas〜セピア色のモチーフ〜(カクテルソフト)分類:狩 状態:○(赤い爪の呪縛) 装備:キャンディー 】
【朝倉ゆうな@はじめてのおいしゃさん(ZERO)分類:招 状態:○ 装備:キャンディー】
【朝倉まいな@はじめてのおいしゃさん(ZERO)分類:招 状態:○ 装備:キャンディー】
368DESIRE:04/03/09 00:45 ID:000Y9V7r
突然の乱入者を検分する、初音とアル
とりあえず乃絵美を蝕んでいるのが強力な呪詛であることは一目見て分かった。
それが自分たちの操るものとは根源的に違う原理のものであることも…。
…だが、こんな強力な術を操れる者がいたのだろうか?
「原理としいては人間の肉体の許容量以上の力を強引に与える事で精神に負荷を与え
そしてゆくゆくは肉体もろとも崩壊させる、こんな感じかしら」
「あくまでも”力”を与えるというところが厭らしい手口だな、これでは被害者は認識できまい」
「ええ、腐っていく果実が腐ったことを認識できないのと同じように、そのことに最後まで気がつかないまま
消える事になっていたでしょうね」
ともかく解呪が先だ、見るとかなり進行が早い…このまま死なれては相手が誰なのかもわからない。
それにかなり上質の力を持っているのが見ただけでわかる、こんな美味しい獲物を逃す手は無い。
初音は心の中で舌なめずりして同時に今度は悪戯っぽくアルを見る、
この娘にもちょいと一役買って貰うとするか…。

「これだけではいかんともし難いですわ、後は本人に聞かないと、幸いにも力の質は似ておりますので、この娘から
 魔力を切り離し、肉体と精神の負荷を抜いてやれば自ずから元に戻るかと」
「呪詛返しか?、ならば手伝うぞ」
「で、その方法ですが」
と、いうなり初音はよろよろと起きあがり、乃絵美へとのしかかる。
「お、おい!いきなり何を!」
「これが1番効率のよい方法だというのは貴方もご存知ではなくって?」
古来、房中術というものもある、確かに人から人への力の受け渡しに最も適しているのは、
直接的な肉体の交わりをおいて他に無い。
「それに消耗した私たちの力も回復できて一石二鳥ですわ」
369DESIRE:04/03/09 00:46 ID:000Y9V7r

「これだけではいかんともし難いですわ、後は本人に聞かないと、幸いにも力の質は似ておりますので、この娘から
 魔力を切り離し、肉体と精神の負荷を抜いてやれば自ずから元に戻るかと」
「呪詛返しか?、ならば手伝うぞ」
「で、その方法ですが」
と、いうなり初音はよろよろと起きあがり、乃絵美へとのしかかる。
「お、おい!いきなり何を!」
「これが1番効率のよい方法だというのは貴方もご存知ではなくって?」
古来、房中術というものもある、確かに人から人への力の受け渡しに最も適しているのは、
直接的な肉体の交わりをおいて他に無い。
「それに消耗した私たちの力も回復できて一石二鳥ですわ」

しかしアルにしてみれば、理屈ではわかるが倫理的に受け入れられる行為ではない。
「奏子に悪いと思わないのか!!」
「思わないわ、私が愛しているのはかなこ只一人よ、他の誰を戯れに抱いたところでそれは所詮戯れ、
 私の思いは揺るぎもしないわ」
そう断言されるとアルはぐぅの音も出ない、初音の言葉に嘘は無いと言う事を知っているのだから、
「それに貴方も我慢できないのではなくって?」
初音はアルの太股から滴る液体を見逃してはいなかった。

「そんなに妾を浮気の共犯にしたいのか?」
「大丈夫よ、心に定めた殿方は彼一人なのでしょう?心の操さえ守れれば身体なんて些細なことよ」
立場が逆なら…と言いかけてアルは考え込む、考えて見れば九朗も自分に隠れていい思いをしているではないか…。
だとすれば、自分も気持ち良くなって何が悪いのだろう?
それにこれは負荷抗力だ、目の前の少女を救うためのやむを得ぬ行為だ、それに失った力も回復できる。
「いいか!これはその娘を救うためだぞ!、断じてあらぬ悦楽にふけろうなどと考えてはおらぬからな」
そう言いつつも我慢できなかったのだろう、アルは初音を押しのけるように乃絵美にのしかかるのであった。
370DESIRE:04/03/09 00:50 ID:000Y9V7r
かくして行為は終わった、呪縛の解けた乃絵美はやすらかに寝息を立てている。
アルも初音もうっとりと頬を赤らめながら寄り添って眠っていた。

「九郎、妾を置いて逝くな!死ぬときは共に…」
が、いきなりアルはバネ仕掛けの人形のように跳ね起きる、寝汗で身体はぐっしょりと濡れていた…
何かものすごく悪い夢を見たような気がするが思い出せない…。

ともかくアルは自分の状態を確認する、力が戻っている…、そして傍らの初音は未だに眠りの中だ。
今なら容易く寝首を掻けるだろう、しかしアルは何もしようとはしなかった。
1度救った相手を倒す事などこの少女の考えには無かった。
それに、倒すのならば堂々と名乗りをあげた上での事にしたい、でなければこの誇り高き蜘蛛に失礼なように思えた。
(好色で残忍で冷酷で傲慢で…しかし憎めぬ、不思議な娘よ)
「かなこ…」
そんなアルの複雑な心境も露知らず、最愛の少女との睦み合いを夢見ている初音だった。

と、もう一つ起きあがる影がある。
それは初音の呪縛から解放された水月だった、彼女も眠りから覚めたようだった。
「あああああっ!!孝之ぃ!!」
だが水月は目覚めるなりいきなり悲鳴をあげ、そして手当たり次第に周囲を引っ掻きまくる。
まさに狂乱といってもよかった。
「どうしてよ!!どうして起こしたのよぅ!!」
泣き叫ぶ水月をやんわりと嗜めるアル。
「バカな事を…かりそめの幸せの中に逃避してそれが何になる」

「汝は立ち向かわなければならないのだぞ、その身体の中に宿る新しい命のためにも」
新しい命、その言葉を聞いた瞬間、水月は凍りついたように固まる。
「なんだ知らなかったのか?」
「ねぇ?どういうこと!!ねぇ」
「言ったとおりだ、汝の身体には赤子がいる、汝は母親となるのだぞ」
母親、という言葉にまたぴくりと身体を震わせる水月。
371DESIRE:04/03/09 00:51 ID:000Y9V7r
「生き抜いて元気な子を産まねばならぬな、子を産み、育むは我ら女の最大の喜びなのだから」
アルは水月の背中を撫でてやりながら、優しく水月に諭す。
だからアルは気がつかなかった、水月がとても危うげな笑顔を浮かべている事に…
「これで勝てる…ようやく…初めて勝てるわ…遙に」

【比良坂初音@アトラク=ナクア(アリスソフト) 状態:○(睡眠中) (鬼) なし 行動目的:休息】
【アル・アジフ@斬魔大聖デモンベイン (ニトロプラス) 状: ○ ネクロノミコン(自分自身) (招)行動目的: 休息(初音とは休戦) 島からの脱出】
【速瀬水月@君が望む永遠(age) 状態:○(狩) スナイパーライフル(鬼側の武器を初音が持ってきた)
 行動目的 不明】
【伊藤乃絵美 @With you〜見つめていたい(F&C) 状態:○(睡眠中) 所持品:ナイフ 行動方針:不明 】
372MIND BREAKER :04/03/09 23:04 ID:dKReC/Fs
がくん、ハタヤマの腰が大きく沈む。
「あれ?」
これはここまで無理を重ねてきた、いわゆるちょっとした過労といった程度だったが、
ハタヤマの脳裏には別の理由が思い浮かんだ。
(そろそろ毒を出さないと・・・)
それに…ハタヤマは先ほどの暴走を思い出す、あれほどの魔力を放出した事は今までになかった。
その分身体に早くガタがきてもおかしくは無い。

ハタヤマはアーヴィの顔を眺める…だめだ、とてもこんなことは頼めない。
いつものように魔物のふりをして襲うしかないのか、いやそれもダメだ、この状況では不自然過ぎる。

そうこうしている間にも、刻一刻と自分の身体に毒素が充満しつつある、そんないやな感覚を覚えるハタヤマ。
所詮、生あるものは死の恐怖から逃れることはかなわない。
ましてハタヤマはつい先ほどその恐怖に直面したばかりだ。
いかに強がっていようとも、あの時怒りで我を失っていようとも、あの赤いロッドを構えた
少女の残像は、決して消えることはなかった。
身体の傷は治っても、心の傷はそう簡単には癒せないのだ。

そんなハタヤマの顔を見て、アーヴィが尋ねる
「ハタヤマさん、具合悪いの?困った事があったら何でも私にいってね」
その微笑を見てしまったハタヤマの中で恐怖とは別の感情も大きくなっていく
もう我慢できない…。
(なんでもいってねっていうことはきっと大丈夫だよね、アーヴィちゃんなら)
「あのさ…実は僕、病気なんだ…それでね」
373MIND BREAKER :04/03/09 23:05 ID:dKReC/Fs
ハタヤマは流石に恥ずかしげにもじもじと話す、人前であの姿をさらすことになるとは、
だが、どういうわけかアーヴィになら何でも打ち明けられるような、そんな不思議な気分だった。
「身体の中の毒を吸い出してもらわないといけないんだ…だから」
その時、また胸がちくりと痛んだ、そしてその痛みと同時にまたあの少女の幻影が浮かび上がる、
そしてついにハタヤマの理性のタガは外れてしまったのだった。
「アーヴィちゃん!!こんな僕を知っても嫌いにならないで!!」
そう叫ぶと同時にハタヤマの身体がおぞましい触手の集合体へと変化していく、
生殖器の無いハタヤマがいわゆる「毒」を放出するにはこの方法しかないのだった。

「こすってよ・・・こここすって毒を出すだけでいいんだから、ね?ね?ね?」
迫りくる死に対する恐怖(実際は篠原さんの暗示に過ぎないのだが)とそれとは違う別の欲望も、
ハタヤマから自制心を奪いつつあった。
あまりにも凶悪に鎌首をもたげる男性自身たちに、アーヴィはがたがたと震えながら悲鳴を上げる。
アーヴィにとって、それは戦場で遭遇したいかなる魔物よりもはるかにおぞましく醜いものとしか思えなかった。
それはまさに本能的な恐怖だった。

「この姿じゃないと出来ないんだ、気持ちよくしてくれないと毒を放出できないんだ
も、もう時間が無いんだ、お願いだよぉ
異形の姿になりながら哀願するハタヤマ、その姿にさらに後ろ去るアーヴィ
「痛くしないよ、ほんのちょっとだけなんだ」
うにょにょと男性器の群れが一斉に動き出す、それを見たアーヴィもまた恐怖で理性がキレてしまった。
「こないでぇ!!化け物!!」
374MIND BREAKER :04/03/09 23:05 ID:dKReC/Fs
アーヴィの手から放たれた雷撃がハタヤマの触手を焼く。
その痛みで触手をぶんぶんと振りまわして暴れるハタヤマ、それは身体の痛みのためだけではない、
化け物…その言葉がハタヤマの心にズキンと突き刺さっていた。
その中の数本が勢い余ってアーヴィの身体にぶち当たる。
避けきれず宙を舞うアーヴィ、その先には大木があった。

ガン!
大木にもろに叩きつけられたアーヴィの後頭部から鈍い音が響くと同時に、その身体は途端に力を失っていく。
そしてその弾みでアーヴィの太ももの間にハタヤマの触手がすっぽりと挟まりこむ。
(き・・・気持ちいい)
生存欲とそして肉欲で桃色になった脳細胞はもはや歯止めが利かない。
しかしそうしている間にもアーヴィの身体からは温もりが失われていく、
しかしそれでもハタヤマは、
「もう少しだから、ほんの少しだけですむから」
と、うわ言のように叫びながら、洗ったら匂いもすぐに取れるよなどと叫びながら、
触手の動きを止めようとはしなかったのであった。


「ふぅ…」
ハタヤマはいい汗をかいたとばかりに額をぬぐう、が、すぐにバツが悪そうに振り帰る。
「あの…その、ごめん…僕ぅ」
しかしアーヴィは返事をしない、只の屍のようだといわんばかりに。
「意地悪しないでよ…」
ハタヤマはアーヴィの手を握って、それから慌てて離す。
その手はまるで氷のように冷たくなっていた。
「嘘でしょ?冗談でしょ?ねぇ、僕が悪かったから起きてよう」
ハタヤマはアーヴィの身体を揺さぶるが、改めてその冷たさに愕然とする。
もう認めざるを得なかった…アーヴィは死んだ、そして殺したのは…。
「僕?」
375MIND BREAKER :04/03/09 23:06 ID:dKReC/Fs
違うよね?これは夢だよね、ホッペをつねる…痛い。
その痛みが教えてくれた、これは現実だと、そしてお前は人殺しだと、
いっそ全てを否定できれば、狂気の世界に逃避できればどれだけ楽だったか、
しかし出来なかった…もう認めてしまったのだから。

ハタヤマは泣いた、これほどまでに涙を流せるのかというほど泣いた。
そしてなぜこんなに悲しいのか、その理由も彼は気がついてしまった。
そう、彼はアーヴィに恋をしていたのだ。
それは失って初めてわかった、あまりにも残酷すぎる事実だった。

「君のお兄さんに、お父さんになんて言えばいいんだ…」
美しく聡明な兄、たくましく心やさしい父、そして一騎当千の仲間たち
彼らがいつか必ず助けに来てくれると彼女は信じていた。
そんな彼らが、もうすでにここにやって来ていたら、そしてもし出会ったら、
何と詫びればいいのだろう?
彼女が心から誇りに思う家族や仲間たちとの幸せな日々…それを僕が…
「僕が、僕が壊したんだぁ!命惜しさに欲望に負けて!」

いっそ身を投げようと木に登ろうとするが、ぬいぐるみの身体では登ることが出来ない、
ならばと水溜りに顔をつけるが、浅すぎて窒息できない。
だが結局の所の結論はこうだ・・・それでも彼は死にたくなかったのだ。
ここまでのことをしでかしておいてなお、彼は生きていたかったのだ。
それに自分が死んでもアーヴィはもう戻ってこない。
そのあたりまえのことにも彼は気がついていたから…。
376MIND BREAKER :04/03/09 23:11 ID:dKReC/Fs
何も出来ない無力感にハタヤマの目は濁っていく。
誰であろうと、もうヴィルヘルムであろうともハタヤマの心を救うことは出来ないだろう、
例えハタヤマが許されることはあっても…。
いななる罪であろうとも犯した罪は許されることがあっても、消えることは無い、
烙印となって生きている限りその者を苛み続ける。
その烙印を消す事ができるのは、それは罪人の心のみでしかない。
つまりハタヤマがハタヤマ自身が自分を許さない限り、永遠に彼は苦しみ続けるしかない。
結局人は自分で自分を救わなければ誰にも救われない、そんな生き物なのである。

「こんな…こんな力さえなければ…アーヴィちゃんは死なずに…すんだんだ」
自分を呪いつづけるハタヤマだったが、やがて呟きが途絶える。
こんな…力?
ハタヤマの脳裏にある考えが閃いた、だがそれはまさに恐るべき、もはや人の考えではなく
まさに獣の知恵としか思えぬ悪魔の計画だった。
この力があれば……。

そうだ…この力で僕がアーヴィちゃんになればいいんだ。
アーヴィちゃんの代わりになって生きればいいんだ、最初は上手くいかないかもしれないけど、
いろいろ練習すればきっとちゃんとしたアーヴィちゃんになれるよ。
それはまさに死者への、残された遺族たちにとっての冒涜・愚弄以外の何者でもなかったが、
それでも彼にとってはそれが最善の方法だと思った、そしてそれを行う事に決めたのだ。
377MIND BREAKER :04/03/09 23:14 ID:dKReC/Fs
一言弁護するならば彼は罪から逃れるためにこのようなことを思い立ったのではない、
彼は正面から自分の罪に向き合い、そして罪を償うために選んだのだ。
そしてもう一つ、これはハタヤマヨシノリという存在がこの瞬間から消滅することも、
意味していた、だってこれから先の日々を彼はアーヴィとして過ごすのだから。 

「でも、こんな僕なんていない方が…消えた方がいいよね」
ハタヤマはメタモル魔法でアーヴィに変身し、アーヴィの亡骸から服を剥ぎ取り身につける。
そうすると確かに見た目だけはアーヴィをほぼ再現できたといってもよかった。
しかし服の外から出ている手足や顔はアーヴィでも、服の中はおぞましい魔物の形をしている。
今のハタヤマの実力ではこれが精一杯なのだ。

ハタヤマは自分の顔を水面に写す、そこにはアーヴィが微笑んでいた。
「うん…大丈夫、ちゃんと君になれたみたいだ、服の下はまだ無理だけど、いつかは…」
そこで遠くにいた水鳥が一斉に飛び立つ、水面が揺れてそこに映るアーヴィの顔が僅かに歪む。
「ひぃぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃっ!
 ちゃんとちゃんと君になれるようになるからあ、もっと練習するからぁっ!!」
水面に映る自分の顔に向かって土下座するハタヤマだった。

こうしてハタヤマヨシノリは消滅し、アーヴィは甦ったのである。
ただし胴体にはびっしりとウロコが這えて、おまけにスカートの端から尻尾が見えていたりしてたが。

【ハタヤマ・ヨシノリ@メタモルファンタジー(エスクード):所持品:魔力増幅の杖:状態○ 招 行動方針 アーヴィとして生きる・死にたくない】
【アーヴィ:死亡】
378MIND BREAKER :04/03/09 23:24 ID:dKReC/Fs
【ハタヤマ・ヨシノリ(アーヴィに不完全変身中)@メタモルファンタジー(エスクード):所持品:魔力増幅の杖:状態○ 招 行動方針 アーヴィとして生きる・死にたくない】
【アーヴィ:死亡】
379一時を……:04/03/10 02:01 ID:6TbEvdqQ
 廃墟となった民家……もとい古い建物へ向かう三人の姿があった。
 二人は鴉丸兄妹。
 羅喉に背負われた少女の名は、スイートリップもとい七瀬凛々子。

 「しかし、これは酷い有様だな……」
 凛々子を背に抱えながら、羅喉が言う。
 空より落ちてきた凛々子を拾った羅喉と雪は、近くの民家に姿を寄せていた。
 「ええ、まるで廃墟……」
 遠くから見た時では、気づけなかったが、町もとい民家は、荒廃していた。
 「だが、何か不思議だ……。
  寂れたという感じではない、まるで最初からこうであったかのように……」
 それもそのはず。
 その廃墟や港等は、世界創造の時のイメージとして紛れ込んだものが、姿を現したものである。
 更にこの時代で囲炉裏を囲う家ばかりなのは珍しい。
 まるで昔話に出てくる農民の家のようだ。
 
 なにはともあれ。
 二人は、手近な民家を選ぶとそこへ入り、凛々子を横にした。
 「鍋に薪……大分揃っているな」
 たまたま入った民家に揃っていたのかは解らないが、
 少なくとも、薪や昔ながらの調理器具はある程度家内の台所と思える場で発見できた。
 「お兄様」
 居間の方から雪の呼ぶ声がする。
 「どうした?」
 「大分潰れてぼろくなってますけど、布団を発見しました」
 「そうか、解ったそっちに行こう」
 囲炉裏にくべる薪を抱え、羅喉は、雪のいる居間部分へと行く。
380一時を……:04/03/10 02:02 ID:6TbEvdqQ
 「これは、また見事な煎餅布団だな……」
 (ここは、江戸時代か?)
 と思いつつも、羅喉は、不思議と余り埃で汚れた様子のない布団を敷き凛々子を寝かせる。
 (一体ここはどんな世界だと言うのだ……)

 バチバチ。
 囲炉裏の周りに三人がいる。
 あいからわずまだ凛々子は、寝たまま。
 「お兄様、これからどうしましょうか?」
 火の前で身体を暖めながら、雪が羅喉へと話し掛ける。
 「取り合えず、食料さえあれば、暮らしていく分には不自由なさそうなのだが……」
 薪は限りがあるとはいえ、森へ出て行けば調達は可能だ。
 鍋と年代ものそうな包丁などもあった。
 辺りの民家も探したが、ないのは食料と水。
 水は、海に流れ込んでいる川の水が飲めるかもしれない。
 とすると目下の問題は、食料と言う事になる。
 だが、海もある。 森もある。
 浜大根でもいいし、丘ひじきだっていい。
 贅沢さえ言わなければ、困る事はないと思われた。
 一番の問題は、そんな事よりも、今彼らが置かれている現状を把握すると言う事だ。
 (私達、いや私を襲ってきた四人組……。
  彼女達は、一体何者だったのだろうか……)
 時代錯誤ないでたちをした四人の侍娘達。
 それと構成されているこの民家。
 (もしかして、本当にタイムスリップでもしてしまったのだろうか?)
 羅喉は、一瞬そう考えたが、波止場の様子は現代なのを思い出して、
いやいや、と首を振る。
 「どうしたものか……」
 何はともあれ、まずは、この露出の多い少女、凛々子が目を覚ますのを待つ事にしたのだが……。
381一時を……:04/03/10 02:02 ID:6TbEvdqQ


 『メッツァー!! 覚悟しなさい!!』
 グレイブを掲げた凛々子が下魔達と戦っている。
 だが虚しくも、次第に身体をいいように弄られ、彼女は恥辱を与えられていく。
 『所詮、お前は私の玩具でしかないのだよ……』
 上魔に捉えられた彼女の前にメッツァーが冷酷な笑みと、
これから始まる凌辱劇に対しての高揚の表情を浮かべる。
 『例え、どんなに戒められようともあなたには絶対に従いません!!』
 『その言葉何時まで吐き続けれるか楽しみだな……』
 そこで彼女の見ていた夢は途切れた。

 意識の中で、凛々子は空間を漂っていた。
 光に飲まれ、不思議な意識の濁流に飲まれる。
 彼女は、この世界に辿り着く、元の世界で起こった事の夢を見ていた。
 やがて、夢は終わり、暗い過去から解放される。
 『私は、絶対に屈しない』
 『でも、受け入れてしまえば楽になる』
 『火村クン……』
 少女の思いと弱さ、クィーングロリアの騎士としての決意が、彼女の中で入り乱れる。
 
 どのくらいの時間が経っただろうか?
 『よくもよくもよくもよくもよヨクモヨクモヨクモヨクモ……』
 突如として、彼女の意識の中にドス黒い負の感情が流れてきた。
 『これは……!?』
 凛々子の中に鮮明に映る魔獣と一匹の少女の姿。
 『アーヴィちゃんをアーヴィちゃんをアーヴィチャンヲ』
 魔獣の意識がダイレクトに彼女に響く。
 どうやら、あの少女が悪者で、あの魔獣にとって大切な人を、
アーヴィという人を傷つけられたのだろう。
 凛々子は、そう認識した。
382一時を……:04/03/10 02:08 ID:6TbEvdqQ
 

 「雪、大丈夫か!?」
 羅喉が、頭を抑える雪の元に駆け寄る。
 「凄い負の感情……。 絶望と憎悪に満ち溢れる……」
 ハタヤマの黒い意識を受け取った雪。
 「しっかりしろ!! 自分を強く持つんだ!!」
 羅喉は、雪を抱きしめる事で、彼女の不安を少しでも取り除こうとする
 頭を抑え、ハタヤマの黒い感情に同調し、
また彼の苦しみを理解し、同情をする雪。
 (私には、感じられない?
  雪だけが感じ取れると言うのか!?)
 「お兄様、この人かわいそう!!」
 どのくらい続いただろうか?
 時間にすれば10分程であったが、二人には、
そして凛々子の意識の中でも大分長いように思えた。
 「……収まったか?」
 落ち着きを取り戻した雪の姿を心配そうに眺める羅喉。
 「……はい。 すみませんお兄様」
 「いや、いい……。 雪が無事な事こそ私にとっての喜びだ」

 ごそっ。
 彼女らの横で音がした。
 (敵かっ!?)
 構えをすかさず取る羅喉であったが、そうではなかった。
 彼らが音をした方へと向けた先、凛々子の布団。
 「ここは……」
 彼女が目を覚ましたのだった。

【鴉丸羅喉@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 狩 状態○ 所持品:なし 行動目的:雪を護りぬく】
【鴉丸雪@OnlyYou-リ・クルス-(アリスソフト) 招 状態○ 所持品:グレイブ(凛々子の武器) 行動目的:兄についていく】
【七瀬凛々子(スイートリップ)@魔法戦士スイートナイツ(Triangle) 招 状態△と○の中間(軽傷有り) 所持品:なし 】
「ひまだな〜」
 ここは中央要塞内の魔力保持者の軟禁部屋。
 軟禁部屋とはいっても、設備は一流ホテルのスイート並みだ。
 豪華なベッドにテーブル、バスルームまで付いている。
 もちろん、テレビなどの電化製品は何一つ無かったが。
「ひまだよ〜」
 だらけた声が聞こえる。
 今のこの部屋の住人、山辺美希は退屈していた。
 食事を終え、ケルヴァンからこの世界の話を聞いて、一眠りして先ほど起きたところだ。
 それからしばらくはただ部屋でごろごろしていたが、そろそろ限界に近づいていた。
「霧ちんも魔力持ってたらよかったのになぁ」
 あっさり裏切ってしまった友達のことを思う。
 彼女と一緒なら、退屈などしていないはずだ。
「う〜ん、後は黒須先輩も一緒にこっちの世界に来てれば…いやいやダメダメ。
こんな部屋に先輩と二人っきりでいたら、貞操の大ピンチというか絶体絶命?」
 なにせ自分にセクシャルハラスメントの何たるかを叩き込んでくれやがりました師匠です。
 豪華ベッドを見た瞬間、セクハラモードにシフトした彼奴めは猛り狂う漢魂全開で襲い掛かってくるに違いないのです。
 師弟である以上、いつかは倒さねばならない相手ですが(どうもそれが常識らしいです)、今はまだ力不足。
 めくるめく官能時空に強制連行されるのがオチなのです。
 ていうか、あのエロ大帝のエロパワーはエロ無尽蔵なので永久(とわ)に勝てないんじゃないかと思う次第。
 まあ、セクハラで倒すというのも何か術中に嵌まってる気がするから別にいいけれど。
「うっす、やはり自分としてはもうちょっと処女でいたい所存であります。サー」
 架空の上官に敬礼すると、何とかこの退屈状態を打開する素敵作戦はないかと考える。
「…そういえば」
 ベッド脇にあるブザーに目を留める。
 世話係のメイドさんが、「御用の際はこのブザーでお知らせください」と言っていた。
 最初の世話係の人は、屈強な人じゃない人(魔族)だったけど、怖いからこっちのメイドさんがいいと言ったら替えてくれた。
 お役御免を言い渡されたときの、寂しそうな顔が印象的だった。
(人じゃない人でも、表情ってわかるもんなんだなぁ)
 それはともかく、とりあえず押してみる。
 ブー、という音が鳴った。
 ――30秒後。
 コンコン、とドアがノックされる。
「美希様、お呼びになりましたでしょうか」
「あ、は〜い。入ってくださーい」
 失礼いたします、と返答してからメイドが入ってくる。
「それで美希様、ご用件は」
「退屈なんです」
「はい」
「退屈なんです」
「はい」
「退屈なんです」
「はい、それでしたら、この中央施設内をご見学などなされますか?」
「はい、ご見学します。サー」
 サーではない。
「かしこまりました。では私がご案内させていただきますので、私の後について来ていただけますでしょうか」
 流された。
 美希はこのメイドさんをスキテキシュ(訳注:好敵手)と認めた。
「は〜い。では早速行きましょう」
 連れ立って部屋を出る。
「む、3時方向に階段が見えます。こっちですか、サー」
 ついて来いというのに、先頭に立って歩き出す。
 そしてサーではない。
「美希様、そちらではなくこちらです」
 逆方向だった。
 結局、後について歩くことになる。
 そして、美希の大冒険が始まった。

「美希様、ここが食堂です。主に兵士の方々や私達メイドが食事を取りに訪れています」
 食堂にはまばらに人影(人じゃないのも)がある。
 人じゃない人とメイドさんが楽しげに談笑している席もあったりして、美希はちょっとカルチャーショックを受けた。
(…不思議な光景だ…)
 食堂内のレイアウトがファミレス風味なのも、違和感に拍車をかけていた。
 ショーケースに入ったメニューを見ると、さすがになんだかわからないものが多い。
 だが、見た感じシチューやハンバーグに似ているものもあった。
「ここって、私も食事できるんですか?」
「はい、お口に合うかどうかはわかりませんが可能です」
「本当ですか! じゃあ今度食べ……て、死んだりはしないですよね?」
「……さあ?」
「……」
「次にまいりますか?」
「…はい、サー」

「美希様、ここが兵士詰め所です。ここから兵士の方々が戦いに赴かれます」
 詰め所内は雑然としていた。
 数多の兵士達が、武器の手入れやストレッチなどをしてめいめいにすごしている。
 何人かの兵士が美希達に気づいて、こちらを見た。
「ど、どーもー」
 屈強な兵士達の姿に多少引きながら手を振ると、数人が手を振り返してくれる。
「あ、あはは…」
 愛想笑いをしながら手を振っていた美希だったが、手を振り返す兵士の中に初代世話係を見つけた。
「あ! ども、こんちです〜!」
 ぶんぶんと手を振る。初代世話係は照れたようににんまりと笑った。
 相変わらず恐ろしげな顔のはずだが、あの寂しそうな表情を見ているせいか愛嬌のある顔に見えてくる。
「美希様、そろそろ次にまいりましょう」
「いえっさー」
 最後にもう一度大きく手を振る。
 初代世話係が他の兵士達にからかわれたり小突かれたりしているのを横目で見ながら、美希達は詰め所を後にした。
「美希様、ここが休憩室です。休憩シフトも決められていますので、今は誰も…あ」
「あ」
「あ」
「あ」
 美希とメイドと、中で逢瀬を重ねていたらしい男女の声がハモる。
 数秒、時間が止まった後、
 ――パタン
 おもむろにメイドは扉を閉めた。
「さ、美希様、次にまいりましょう」
「見てちゃあダメかな?」
「ダメだと思います」

「美希様、ここが作戦室です。ケルヴァン様が配下の方々に指示を出していらっしゃいます」
 あんぐりと口をあけたケルヴァンがこっちを見ている。
「どもです〜」
 美希のあいさつにハッと自分を取り戻すと、つかつかと歩いてくる。
 表情は険しい。
「なぜ、ここに彼女を連れてきた!」
 目の前に来るや否や、メイドに詰め寄る。
「申し訳ございません。美希様が退屈なされておりましたので、施設の見学でもと…」
「だからといって作戦室に連れてくるバカがどこにいるか!」
「わ、私が悪いんです!」
 突然、美希が発言する。
「ごめんなさい、ケルヴァンさん。私が無理言って連れてきてもらったんです…」
「美希様…」
 メイドは驚いたように美希を見て絶句する。
 しゅん、として心底申し訳なさそうに謝る美希に、ケルヴァンはそれ以上怒れなくなってしまった。
 なにしろ美希は、ケルヴァンが「この娘こそは」と目を付けている覇王の資質を持つかもしれない娘である。
 いたずらに悪印象を与えるわけにはいかなかった。
「む、コホン…いや、こちらこそ大声を上げてしまい失礼をした。
まだここに慣れていないことでもあるし、今回の事は不問としよう。
申し訳ないが、今後は作戦室への訪問は遠慮していただきたい」
 姿勢を正してそう言うと、今度はメイドに向き直る。
「要塞内を案内するのはかまわんが、今は部屋に戻れ。少し面倒事が起きた」
「かしこまりました、ケルヴァン様」
 メイドの返事に肯くと、美希に向かって一礼する。
「私はこれで失礼するが、部屋に戻っていていただきたい。外出できるようになったらお知らせしよう」
「は〜い、わかりました」
 それでは、と言い残し、ケルヴァンは作戦室を出ていく。
 その後を、部屋の隅にいた胴着姿の少女がついていった。

「…美希様…先ほどは、申し訳ありませんでした」
「あ、いえいえ、ああ言えば黙ってくれるかな〜? …と。面倒だったし」
 こともなげに言う。完全に確信犯だ。
「ところで、面倒事ってなんでしょう?」
「さあ、私は存じ上げません」
 ん〜、としばし黙考していた美希だったが、にまり笑うとメイドに向けて提案した。
「モノは相談なのですが、サー」
「何でしょう、美希様」
「は、明日の戦場を生き抜くために、ここで追跡技術を習得しておくべきかと愚考する次第であります」
 後をつけようと言っている。
「それは、無駄かと思われます。相手がケルヴァン様では、すぐに気づかれてしまうかと…」
「そーですか…じゃあ、仕方がないので次の場所に行きましょう」
 さっき部屋に戻ると同意したばかりである。
「…美希様」
「ダメですか?」
 うっ、とメイドは言葉に詰まった。助け舟を出してもらった手前がある。
「…ダメですか?」
 結局…、さらに訓練施設と大浴場と中庭を見学して暇指数をゼロに戻した美希は、ようやく部屋に戻ることにした。
「いや〜楽しかったなぁ♪」
「それはなによりです、美希様」
「他にもまだ案内されてないところありますか?」
「はい。少々離れたところになりますが、幼稚園がございます。後は、建築中ですが病院など」
 会話に花を咲かせつつ、二人は自室のある建物に入っていった。

 ……後ほど、美希もメイドも後悔することになる。
 あの時、ケルヴァンに「部屋に戻れ」と言われた時に素直に戻っているべきだったと。
 なぜなら、そこで、――それを見てしまったから。

  ――ドシャッ

 赤い、赤いものを撒き散らし、それは上の階から落ちてきた。
 落ちてもなお、両手に刀を握ったままの若い男。ただし、上半身のみ。
 一瞬前の空気とはあまりに違う眼前の光景に、二人は息すらも止まったかのように身動き一つ出来ず立ちすくむ。
 眼鏡をかけた少女が階段を降りてくる。上半身だけの男を抱きかかえ、歩き出す。
 二人から離れる方向に歩いていくためか、それとも抱きかかえた男しか見えていないのか、少女は二人に気づかない。
 前方に弓を持った胴着姿の少女が見える。
 作戦室でケルヴァンの後を追っていった少女だ。
 胴着姿の少女が弓を射、男の命の火が消える。そして眼鏡の少女もまた男の後を追い、自害して果てた。

 メイドは、必死にこみ上げる嘔吐感を堪えていた。
 おびただしい血の赤。腹から垂れ下がる内臓。立ち込める血の匂い。
 通常なら、もうとっくに嘔吐していただろう。
 だが今は美希がいる。
 これから仕えていくべき美希の前で失態を演じるわけにはいかない。その一念だけで彼女は堪えていた。
 そう、美希もこんな不快な思いを感じているはずだ。
 彼女は美希を気遣おうと、美希の顔を見る。
「……」
 美希は無表情だった。
 人の死を見たショックも、こみ上げる嘔吐感も、そこには見て取ることが出来ない。
 それどころか、にへへと笑っていたあの顔すら、そこから連想できそうもなかった。
(美希…様…?)
「……気分悪いよ……行こ?」
 メイドの手を引いて、自分から歩き出す。
 階段を上る途中で、声が聞こえてきた。
「わたしはただ…わたしはただ…わたしはただ…わたしはただ…」
 美希の足が止まる。
 その声を聞いて止まる。
 ただ、ただ繰り返すその言葉を。
 何回も、何回も、何回も…何週も…永遠に続く無限のループ。
(逃げられない…のかな…)
 霧と、先輩と、その他の人たちと、生きて、死んで、また生きて、また死んで、永遠に繰り返す世界。
 この世界に来て、逃げられたと思った。
 だけど…
(同じ…なのかな…)
 人が生きる、人が死ぬ、人が殺す、人を殺す、悪意に満ちた、理性を失いやすい世界。
「わたしはただ…わたしはただ…わたしはただ…わたしはただ…」
 声は続く。繰り返す。何度も、何度も、何度も、何…
(だまって!!)

  ――パンッ

 何かがはじけたような音がして、声が止まった。
 その場に、静寂が戻ってくる。
「……うっ」
 嘔吐感が、来た。
「う…げえええぇぇ」
「美希様!」
 堪えようがなかった。言いようのない不快感を胸に感じ、美希は派手に嘔吐していた。
【山辺美希(覚醒?)@CROSS†CHANNEL(FlyingShine) 招 状態○ 所持品:なし】
【ケルヴァン・ソリード@幻燐の姫将軍1と2(エウシュリー) 鬼 状態○ 所持品:ロングソード】
【神風@魔獣枠 状態○ 所持品:弓】

【高町恭也@とらいあんぐるハート3(JANIS) 死亡】
【高町美由希@とらいあんぐるハート3(JANIS)死亡】
【リニア@モエかん(ケロQ) 死亡】
391葉鍵信者:04/03/10 19:01 ID:5mtC7zW9
MIND BREAKER
一旦無効で話し合いをします。
話し合いの必要性、問題点などは、議論スレや書き手BBSにこれから書くものを参照ください。
話し合いが終わり、結論出るまでは、それに続く話の投下は止めて下さい。
392策謀の城:04/03/12 01:09 ID:xG8iqPNX
ケルヴァンは部下がリニアの残骸を片付けているのを眺めていた。
(少々判断を急ぎ過ぎたか・・・?)
あのまましばらく放置しておけばヴィルヘルムに対する当て馬として使うことくらいはできたかもしれない。
しかしリニアが彼らの仲間にいたことを考えると自分の事は明確な敵として認知されており、
その認識を覆す事は相当困難であったに違いない。
そもそもリニアはヴィルヘルムの部屋は知らなかったが、ケルヴァンの部屋は知っていた。
結局こうなるのは時間の問題だったともいえる。

(結界の力で初音の蜘蛛を避けていたのがこのように裏目に出るとはな・・・)
初期の段階でこの事態を把握していれば、もう少し策を練る時間もあったのだが、ケルヴァンが状況を知った時には既に手遅れであった。
(ヴィルヘルムの目をこの件に向ける事ができるのが幸いと言った所か・・・。細工が露見しては元も子もないからな)

突然───ケルヴァンの体から力が抜ける。
(何だ───!?)
咄嗟に傍の壁に背中からもたれ込んで自重を支える。
気がつくとケルヴァンは息が上がっているのが分かった。

大きく息を吸い込み───ゆっくり吐き出す。
幸い、周りの部下達には気づかれていないようだ。

(やはり少し無理が過ぎたか)
ケルヴァンはリニアだったものの残骸を見ながら溜息をついた。
(魔獣と言っても代償なしで創造することなどできぬ・・・神風に力を割きすぎたな)
393策謀の城:04/03/12 01:10 ID:xG8iqPNX
闘神ユプシロンに対抗するために、創造した神風はユプシロン程ではなかったが、かなりの戦闘力を持っていた。
(しかしこれほどまでに力を消耗することになるとは・・・それに召還装置にした細工もかなりの魔力を消耗した)
一時的にとはいえ、只でさえヴィルヘルムや初音に比べ劣っている魔力を消耗するのは、
ケルヴァンにとって本来得策ではないのだが・・・
(この状況ではそのリスクもやむなし、か)

そもそも本来ならばリニアはケルヴァンの持つ切り札の一つであった。
ヴィルヘムルと本格的に相対することになった時に古代魔道兵器「ゾルガッシュ」に改造し手駒となるはずであったのだが・・・
(結界内に召還者が出現するなどという事があるとはな・・・)
そして召還者に情をかけ、ケルヴァンと敵対した。
(和樹の監視を強化しておく必要があるな・・・リニアの二の舞というわけにもいかん)
いざとなれば一度記憶を消去する準備も必要であろう。
表面では取り繕っているが、ヴィルヘルムとケルヴァンは実質敵同士となっているようなものだ。
(これ以上手駒を失う訳にはいかんしな・・・)
今ケルヴァンの指揮下にある信用できる駒は神風、和樹の2人しかいないのだ。
そして和樹は解明できていない部分が多すぎて信用しきれないのも事実だ。
(あの魔力保持者の娘共がもう少し才覚があるのであればな・・・今の段階では足手纏いしかなるまい)

(それとこれからあの男がどう出るかだな・・・)
幸い───今回リニア諸共、魔力保持者を殺害したことに関してはヴィルヘルムから文句がでることはないだろう。
(事実、我々の意思に──いや、ヴィルヘルムの意思に逆らったのは間違いないのだからな)
今回は追及されないだろうが、これからも同じ事が続くのであればヴィルヘルムも黙ってはいるまい。
394策謀の城:04/03/12 01:11 ID:xG8iqPNX
(早めに例の死者の記憶を読み取る力に対しての対策をしなければな・・・)
とは言っても既にケルヴァンに算段は整っているのだが。
ヴィルヘルムが魂の力で召還装置を作動させれば、ケルヴァンが意図した人物を召還するように細工したのだ。
ヴィルヘルムが何も言ってきてもそれこそ装置の暴走、で話しがつく。
(こちらとてやられたままというわけにはいかないからな・・・そろそろ反撃開始といくか)
・・・それでもひとまずは休息だ。
(できれば私の魔力が回復するまで召還は控えて欲しいものだが・・・不確定要素に頼るとは私も墜ちたな)

【ケルヴァン・ソリード@幻燐の姫将軍1と2(エウシュリー )状態△(魔力消耗状態) 所持品 ロングソード 鬼】
【犬死せし者達の直後の話です】
395誓いより強きもの:04/03/13 06:29 ID:6I7qFvIQ
「今日子、あまり無理すんなよ」
「何言ってんの!!光陰こそへばるんじゃないわよ!・・・って言ってもあんたに限ってそれはないわね〜」
空虚の呪縛から開放された今日子は自我を取り戻した。
光陰の『因果』にも空虚の反応はしない。
(空虚に何があったのか・・・魔力にも食い合わせって奴があるのか?)
いまだに空虚の不気味な沈黙に奇妙な不自然さを感じている光陰であったが、その事は頭から振り払う。
(今日子が自由になったんだ。何を迷う事があるんだ・・・もう今日子は人を殺さなくてもいいんだから)
光陰は並んで歩く今日子の様子を少し観察する。
普段から活発でお転婆娘と呼んでも差し支えないであろう今日子ではあるが・・・今の彼女にはどこか無理をしている雰囲気がある。
(あえて普段以上に明るく振舞ってる・・・そういうことなんだろうな)
これから行く場所とそこですることを考えればある種当然の行動なのかもしれないが。

今日子の提案を聞いた時、行くべきかどうか光陰は迷った。
そしてその場所に近付きつつある今ますます光陰の心は揺れている。

スパーン!!

「ってぇ!いきなり何するんだ」
突如光陰に今日子のハリセンが炸裂する。
「なんて顔してんのよ・・・らしくないじゃない。
あんたはいつも通り憎ったらしいくらい余裕の顔してればいいのよ!でないと・・・」
今日子のハリセンが振りあがるのを見て、光陰は習性で咄嗟にハリセンに対して身構える。
しかしハリセンの音は響かず・・・

(不安になるから・・・)

今日子の小さな声が聞こえただけだった。
396誓いより強きもの:04/03/13 06:30 ID:6I7qFvIQ

「それに・・・あたし全部覚えてるからね・・・マナの塵に変えたスピリット達、この世界に来て最初に殺してしまった女の人、
あのおやじ、・・・さっきの男の人」
今日子の表情には後悔の念が浮かんでいる。
「今日子・・・お前本当に大丈夫なのか・・・別に行く必要なんかないんだぞ」
「あたしはやった事をちゃんと見ないといけないの・・・その行動があたしの意思じゃなかったとしても。
この手に残ってる感触はまぎれもなく本当にあったことなんだから・・・
空虚の束縛が解けた今、あたし自身の気持ちを整理しないといけない」

そう・・・今日子の言った場所とは、高円寺沙由香の遺体がある廃墟なのだった。

だから光陰はまだ迷っている。
今日子は光陰が知る限りそんなに強い精神を持っていない。
自分のした事を改めて直視することで今度こそ精神が完全に壊れてしまうのではないか?その懸念は頭の片隅に付きまとっている。
しかし・・・このままではいずれ今日子は罪の意識に苛まれやはり壊れてしまうだろう。
(偉そうなこと言っといて・・・俺は結局何もしてやれないのか)
あの時───今日子を守る誓いを立てた場所に再び戻ろうとしている。
光陰は『因果』の刀身に映る自分の顔を覗き込む。
(あの男・・・八雲だったか。俺と同じ目をしてやがったな)
その目は愛する者を守るために不器用な手段しかとれない人間の目であった。
(あの男は・・・守れたのだろうか?)
八雲辰人の最後の顔は・・・未練を残したものではなく何かをやり遂げたような、そんな清々しいものだった。
だからあの男はきっと守りきったのだろう。
(俺は・・・今日子を守れるんだろうか)

「ねえ・・・光陰?」
397誓いより強きもの:04/03/13 06:31 ID:6I7qFvIQ
今日子が光陰の様子を見て声をかけて来る。
(・・・なにやってんだ俺は。今日子を不安させてどうするんだ!!)
「・・・る・・から」
「え?」
今日子の声は余りに小さく・・・光陰の耳には一部分しか聞き取れなかった。
今日子は意を決したのか今度ははっきりと
「全部・・・覚えてるから。あたしが人を殺した事も・・・あんたが言ってくれた事も」
「今日子・・・お前・・・ってぇ!!」
光陰の言葉を途中で遮って今日子のハリセンが振り回される。
「とろとろ歩かない!さっさと行くよ!!」
今日子は叩くだけ叩いて、早足で光陰を追い越して先に突き進む。

この調子ならきっと大丈夫だろう。
もし・・・一人で背負えきれない罪なら二人で分ければいい。
何をしても今日子を守る。
その一方的な誓いは、今約束になったから。

【碧光陰@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○ 所持品 永遠神剣第六位『因果』】
【岬今日子@永遠のアセリア(ザウス)招 状態○ 所持品 永遠神剣第六位『空虚』(意識は無貌の神)】
398葉鍵信者:04/03/13 08:45 ID:dL3cAmdV
受け継いだモノ
一旦無効で話し合いをする事となりました。
詳細は、書き手BBSをご参照ください。
399決して敵には容赦せず:04/03/14 05:39 ID:iBX33h+n
「はぁ……ランスにはがっかりね」
 そうぼやきながら山腹を歩く悪魔の名はカレラ。
 魔術を学ぶ気がないのなら、とっとと鬼としての仕事をしてこいと
ケルヴァンに叱咤されて中央から叩きだされたのは、ランスが中央を出発してからすぐのこと。
 魔力保有者の保護など冗談じゃないし、非保有者の駆除もそれはそれでかったるい。
かといってケルヴァン、というよりヴィルヘルムに逆らうというのもさらに面倒なことになりそうなので、
とりあえず仕事をするふりをしながら、ランスでも見つけて遊ぼうかと思っていたのだが……

「ちょっと興ざめね。もう少し胆力のある奴だとおもってたんだけど」
 拡声器によって流れた山頂のランスの痴態は、カレラの耳にも届いていた。
 正直、落胆した。犯るなら犯るでもう少し堂々としてほしいと思う。

「しょうがないわね。一人二人適当に狩って、仕事しているところをアピールして後はさぼろうかしら」
 そう思い、翼をはためかせて空にあがり獲物がいないかと辺りを見回すカレラ。
「あら……?」
 その視界にうつるのは、山頂より少し山道を下りたところで腰を下ろしているツインテールの少女と、
それよりさらに下から山頂へと登ってくる二人組みの侍の姿だ。
 二人組みの方は見覚えがある。確か新撰組という、ヴィルヘルム側の人間だ。
 ツインテールの少女からは魔力を感じない。殺してよい存在ということである。
「……このままだと出会ってしまいそうだけど……そうね。
さっさとノルマこなしたいし、獲物を譲ってもらおうかしら」
 カレラはそう呟くと、まずは新撰組の方へ向って翼をはためかせた。

 それよりさらに山裾のほうには、木々の合間を駆け抜けるアイの姿があった。
(やられたちゃったね……)
 その表情は険しい。ヴィルヘルムの放送を機にしてうまく逃げおおせたものの、
やはり自分が敗北したというのは動かしがたい事実だと思う。
「あいつは強い……でも今度あったら必ず……!」
400名無しさん@初回限定:04/03/14 05:40 ID:iBX33h+n
「何が必ずなのかしら?」
「――――!?」
 アイは驚きと共に、足を止めた。
 アイの行く手をさえぎるように、音も無く一人の少女が立ちふさがったのだ。
小柄で小枝のような四肢にあまりに似合わない巨大ハンマーが、嫌でも目に付く。

「何かから逃げているようね。山頂の出来事は私にも聞こえたけれど、教えてくれないかしら?」
「……魔力保有者。面倒ね」
「魔力保有者?」

 フゥ、とアイは呼吸を落ち着けた。
 見た目に騙されるな。こいつもまた、人外の存在だ。そう、自分に言い聞かせる。
 まずは気を静め、冷静に対処しないと。

「放送は聴いたわね? そういうこと。私は管理側のものだけど、
魔力を持つものたちを保護して、協力を要請するように命じられている」
「それで私は魔力を持つ者だというのね? ……それで協力を拒めば?」
 アイは黙ってロッドを構えた。
 それを見て、ハンマーの少女――――モーラは肩をすくめた。
「分かりやすいわね」
「細かいやりとり、嫌いなの」
「あなた……本気で勧誘する気ないでしょ?」
「面倒なの、嫌いなの」
「まあ、確かに無駄なやりとりね。この状況で協力する気なんて起きるはずもないし。
はっきりいうと、あなたの上司狂ってるとしかと思えないわ」
「それには、同感、かな」
401決して敵には容赦せず:04/03/14 05:41 ID:iBX33h+n
 言葉を交すのはそれで終わり。
 両者は地をけり、ロッドとハンマーが振るわれた。
 

「獲物を譲ってくれ……ですか?」
 突如現れた黒い翼を持つ半裸の女の言葉に、沖田はオウム返しに呟いた。
 聞けば、この女もまたヴィル側の人間らしい。
 定められた合言葉を答え、管理側の人間しか知らぬことも知っていたのでそれには間違いないと思うが……
「だけど、それだったら三人でかかればいいと思うんですが……」
「そんな大層な相手ではないわ。それに、ちょっと独特だけど見目の少女だったし、
殺す前に個人的に色々楽しみたいの。ダメかしら?」
「それは……どうしましょう、芹沢さん」
「うーん……個人的にはどうでもいいんだけど。でも歳江ちゃんがうるさそうなのよねぇ」
「あ、確かにそれはちょっと怖いかも……」

 カレラの提案に悩む沖田と芹沢。
 と、その時、ピィーという甲高い音が響いた。
 
「――――!! 芹沢さん!」
「なんかマズイことあったみたいねぇ」
 険しい顔をする二人に、カレラが首をかしげる。

「なに? 今の」
「撤退の合図です。この山の向こう側に私達の同士達がいるんですが……そちらで何か起きたようですね」
「ふーん。それじゃここから立ち去るのね?」
「はい。あの合図があった以上私達はいかなくちゃならないですが……カレラさんも気をつけて下さい。
山頂にはやっぱり何かあるみたいです」
402決して敵には容赦せず:04/03/14 05:42 ID:iBX33h+n
「OKOK、気をつけるわね」
 軽い調子で沖田の忠告を聞き流すカレラに、まだ沖田は何か言いたかったようだが、
諦めたように頭を振ると、ペコリと目礼をして芹沢と共に山を下っていった。


 山裾の森中における戦いは、モーラの方が押していた。
(格闘戦では向こうが上……!)
 歯を食いしばり、手にしたロッドでハンマーを受け流すアイ。
 まともに受けたのなら、腕がへし折れる。
モーラの打撃はそれほどに重い。
(こんな細腕なのに凄い力――――!)
 だが、それはハンマーを使う時点で、予想していたことでもある。

 アイとて魔法少女として怪異と戦う身である。
姿に似合わぬ怪力の持ち主と戦うことが、これで初めてというわけではない。

 だから、彼女は彼女なりに冷静な思考で勝機をうかがう。
そして――――

(ここだ!)

 ハンマーを受け流し、モーラがハンマーを手元に戻すよりも早く、間合いをつめてその懐にもぐりこむ。

「――――!?」
 その動作に、モーラが不可解な表情を浮かべた。アイのロッドも長手物なのだ。
間合いを詰めて真価を発揮する武器ではないはずなのに――――

 だが、アイの武器はロッドだけではない。密着した状態で集中力を高め、
あえて隠し玉として温存しておいた魔法を発動する。

「な――――!?」
 魔法の風撃を受けて、吹き飛ぶモーラ。意外な攻撃をくらい、モーラの顔に驚愕の表情が浮かぶ。
403葉鍵信者:04/03/14 06:00 ID:eFjj+4ki
審議終了しましたー。
受け継いだモノは、NGとなりました。
MIND BREAKERは通す事となりました。
後者は、これより24時間は、続く話の投下が不可となります。
その間に投下された場合は、NGとなりますのでお気をつけを。
前者の方は、以前のを繰り上げるかどうかまだ決めているので、
代わる物の投下をすると同じくNGとなるのでお気をつけを。
404決して敵には容赦せず:04/03/14 06:00 ID:iBX33h+n
 そして、その機を逃すアイではない。
「もらった!!」
「く―――!!」

 ロッドが走り――――
 ハンマーを手放し顔と胸をガードするモーラのその腕の下をロッドは潜り抜け、モーラの腹を貫いた。


「ガ……ハァ……」
 鮮血を吐き、モーラはガックリと膝を突く。
 贓物がこぼれぬようにするためにか、両腕で刺し貫かれた腹を覆う。

「残念。私の勝ちのようね」
 一方、アイは荒い息をつきながらもロッドを構えなおし、モーラの方へむける。

「……いい気に……ならないで……」
 かすれた声で、途切れ途切れにモーラは言葉を吐いた。
「私は……ここで死ぬようだけど……私より強い人は……いる……
その人たちが……必ずあなた達を倒すわ……」
「悔しいけど、それはこちらも同じ。総帥をはじめとして私より強い人はたくさんいるわ」
「……だとしても……きっと……誰かが……あなた達を倒すわ……ぐぅ……」
 体力が尽きてきたのか、モーラはうめいた。

 それでも彼女はアイをにらみつけたまま、言葉を続ける。
「それとも……自信があるというの……? 絶対に負けないという……」
「絶対ではないけれど、中央を落とすのは難しいと思う。
数は多くないけれど、化け物のように強い人は幾人かいるし……
中央も四つの結界塔でまもられてるもの」

 それから、アイはスッと目を細めた。
405決して敵には容赦せず:04/03/14 06:02 ID:iBX33h+n
「だから、ここで死ぬのはけして不幸じゃない。早いか遅いかの違いだけ。
悪く思わないで。私、敵には容赦しない主義だから」
 止めを刺そうと、ロッドを握る手に力が込められる。

だが――――

「奇遇ね。それは私も同じだわ」
「!?」
 急にハッキリとしたモーラの声にアイはギョッとした。
 そういえば、いつの間にか出血が止まっているし、モーラの腕に覆われて腹の傷口を見ることも出来ない――――

 気づくのが遅すぎた。いや、いっそ気付くべきではなかった。

 アイが驚愕した、その瞬間を狙ってモーラは跳び、
ロッドをかいくぐってアイの腹に拳を叩き込む。
「グ――――ガ――――!?」
 ダンピールの怪力によって振るわれたその一撃。
 アイは辛うじて意識をつなぎとめるも、ロッドを取り落とし、ガクリと膝を落とした。

 霞む視界で、モーラをにらむ。モーラの腹の傷が見る間にふさがっていくのを見て、うめいた。
「再生……能力!?」
「そのとおりよ。さっきの不意打ちは見事だったけど……
あの瞬間に私がわざとハンマーを捨てて頭と心臓を守ったことに気付くべきだったわね」

 形勢は逆転した。
 モーラはハンマーを拾い上げ、振りかざして、
「悪く思わないでね。私も敵には容赦しない主義なの」
 冷たい声でそう告げる。
406決して敵には容赦せず:04/03/14 06:03 ID:iBX33h+n
 だが、それが振り下ろされる直前で――――


「な、なにするさ!? あんた!!」


 山頂の方から、怒声とも悲鳴ともつかぬ叫び声があがり、一瞬だけモーラの注意がそっちにそれた。

「ヅゥゥッ!!」
 この与えられた最後の機に、アイは残された力を総動員して横っ飛びに跳んだ。
 転がりながらロッドを拾い上げ、
「くらって!!」
 魔法を発動させる。

 それが、モーラに直撃したかどうか確かめる余裕はなかった。
 アイは相手が追ってこないことを祈りながら、全速力で森の中へと翔けていった。


「チッ……」
 モーラは舌打ちした。
 アイの最後の魔法は跳躍することでかわすことが出来たが、
それで相手の離脱を許してしまった。

 追えば追いつけるかもしれないが――――

「チッ……!」
 モーラは再度舌打ちすると、アイとは反対の山頂の方向へ、
大空寺あゆの叫び声があがった方へ走った。
407決して敵には容赦せず
【モーラ@ヴェドゴニア(招)状態:△(腹部ダメージ、時間と共に再生) 装備:巨大ハンマー】
【大空寺あゆ@君が望む永遠(招)状態:○ 装備:スチール製盆】
【アイ@魔法少女アイ(鬼)状態:△(腹部に一時的なダメージ) 装備:ロッド】
【沖田鈴音@行殺!新撰組 (鬼)状態; ○  装備:日本刀】
【カモミール芹沢 @行殺!新撰組 (鬼)状態: ○ 装備:鉄扇】
【カレラ@VIPER-V6・GTR (鬼(招?)) 状態:○ 装備:媚薬】