もう駄目だ……
雪山で遭難して三日になる。連れの体力も限界に近い。
山小屋に非難したものの、零下の気温の中で、
俺と連れは絶望に打ちひしがれていた。
寒い……震える身体がどうしても収まらない。
吐く息はもはや白くない。体温がどんどん下がっているからだ。
走馬灯の様に過去の記憶が蘇る。
腹を痛めて生んでくれた母さん、厳格ながらも俺を思ってくれた父さん。
兄貴。喧嘩ばっかしてたけどよ、苛められてた俺を助けてくれたのはお前だったよな。
妹。悪い、もう少しお前に優しくしてやれば良かったよな。
雪子……御免、もう戻れそうにない。お前にももう逢えないのかもしれない。
最愛の彼女の顔が頭によぎったその時、連れが息絶え絶えに言った。
「なぁ……外、見に行かないか? 今、雪小降りなんだろ……?
絶景、だよな……? 死ぬ前に……」
俺はその言葉にうなずいた。「あぁ、そうしよう」
俺と連れは肩を貸し合いながら立ち上がり、山小屋の扉を開放した。
外はまさしく絶景だった。一面が白銀に染まっていた。
白銀色の、世界か。連れが言う。
ありがとよ、お前に逢えて良かったぜ……連れが崩れ落ちようとする。
俺も崩れ落ちる。雪の感触が頬に優しい。
雪って冷たいのに、優しい感触がするもんだな……そんな事を考えていた。
駄目だ。薄れて行く視界。疲れた……白く霞んでいく世界。雪子、さよなら。
俺は眼を閉じ、安らかな眠りにつこうとした。
と、その時!!
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