シナリオ・原画ががあのleafビジュアルノベルの高水コンビ!
作曲に親友である折戸伸治!!
この超大物が作ったPLAYMデビュー作リアライズが面白くないわけありません。
強力な能力。具現化され力を持ったエゴを手に入れてしまった少年少女たち。
不条理な力を手にしてしまい葛藤する者。
その力に飲まれる者。
快楽を貪るために使う者。
孤高ゆえに強さを手に入れた者。
ゲームのように相手を狩ることに走る者。
己を、信念を見失い、戦うために戦う者。
エゴを悪用する者を狩るPK(プレイヤーキラー)。
交錯する思惑の外でそれを眺める者。
彼らの織り成す現代群雄劇。
暴力事件を起こし、陸上部に居場所をなくし、
退屈な繰り返しの日々を送る主人公。
彼が何の前振りもなくいきなり蛍光オレンジの謎の物体と遭遇するところから
物語は始まります。
で、冷静に見えないはずのこの蛍光オレンジのエゴを観察していたせいで
これに付けねらわれることとなってしまった主人公。
寸でのところで助けにはいる謎のギア型エゴ。
気に入らないと詰め寄ってきた女生徒を謎の力で返り討ちにした
クラスメイトの芝浦八重。
屋上で彼女の話すエゴという力。
渡す物があるので明日もここに来てと言い去る彼女。
これは一体どういうことなのか?
俄然物語は加速を始めます。
が、このあたりは重要ではないので冗長にならないように
ギアの正体は親友の修二だとあっさり本人が告白します。
そして、力に目覚めないと危険なので彼のギアで主人公のエゴを攻撃して
『エゴ』(混乱するので今後は力のほうをプロクシと記します)の力に
目覚めさせることとなります。
ここで説明ですが、エゴとはその人のあり方そのものです。
相手のエゴを傷つけるとそれを奪い自分の力に出来ます。
深く傷つくことは下手すると廃人になる危険なのですが、
身を守る術がなければどうせ廃人にされると、この方法を取った修二の
親友を思いやる心に感動の嵐です。
廃人にされないように廃人になりうる方法……? ??
気にせず逝きましょう。
そして次々と起こる急展開。
二日目にしてヒロインの一人八重交通事故で死亡。
主人公は彼女のプロクシと融合して東日本最強のエゴ使いとなります。
そうです。
訓練とか特訓とかで強くなるとかいう泥臭いことはオンリーユーにでも任せてろ
という何とも今風でスタイリッシュでクールな展開です。
その後もPK討伐プレイヤーの襲撃や関西の強力プロクシユーザー襲撃事件など
さまざまな事件に巻き込まれますが、最強の力を惜しげもなく使って
危なげなくクールに進んでいきます。
特に関西プロクシユーザーのイベントは爽快です。
ゴジラに挑む自衛隊のように次々と破壊される関東プロクシユーザーたち。
この強敵に主人公はどう対抗していくのか!?
なんて展開はニトロにでもやらせておけと言わんばかりに最強の力を使って瞬殺。
実にスマートです。
ここと前後してサブキャラ達の物語が展開します。
群雄劇ですから当然ですね。
彼らのシナリオに触れてみましょう。
麻生春秋
今作中最も萌えると評判の春秋少年。
プロクシ使いによるコミュニティを作ろうとするのです。
浅見邦彦
八重を殺した人です。
信念を捨ててまでして八重を殺したのに主人公にあっさり負けて
自分を見失ってしまいます。
彼が主人公を倒し、自分を取り戻すために、仲間を食ってまで力をつけようとする
彼の生き様はまさに漢と書いて男と読むといった熱い展開となります。
暑苦しいだけじゃなく、幼馴染寺田千佳との不器用でもどかしい付き合いに
ちょっぴり切なくなれます。
彼は裏の主人公といってもいいでしょう。
伏見修二
プロクシを悪用する者を倒す必要悪・PKとして狙い狙われる
そんな日常の中で偶然出会い、偶然共同戦線を張ることとなった
宮路沙耶とのラブロマンス。
ハードボイルドな話です。
主人公と女性陣のストーリーはどうしたですって?
リアライズは漢達の群雄劇ですよ?
ヒロインなんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのですよ!!
いよいよ物語は膨らみを見せてきましたが、ここで意外性爆発の急展開!
先に春秋から。
先代プロクシユーザーにうざがられて女性化した自分と倒錯した世界へ。
いきなりのバットエンドですが、出る釘は打たれるということを言いたいので
これで無問題ですね。
次に修二。
実は八重は生きていました。
彼女は自分が死んだことにして彼女の関東最強であるプロクシによる人類救済
……もとい『市街救済』という恐ろしい計画を練っていたのです!!
この恐るべき敵を相手に、勝ち目がないと分かりながら戦いを挑み
主人公に後を託して廃人になってしまいます。
テリーマン効果って奴ですね。
この時主人公と修二がお互いに『お前に出会えたおかげで俺は救われたんだ』
というシーンは涙なしではプレイできません。
そして主人公
沙耶と春秋の協力を得て、最強のボス八重に挑みます。
が、彼女からもらった力を失ってあっさり負けます。
最強対ルーキーですのでご都合主義で倒せたら
せっかくのリアルな世界が台無しです。
トゥルーエンドでも刺し違えるのがやっとです。
世の中甘くはなという超リアルリアリティなお話ですね。
邦彦は……誰でしたっけそれ?
そんな人いましたか?
結末を聞くと未完成品を無理やり売ったように聞こえるでしょうが
このゲームにはとてつもない仕掛けがあったのです。
実は……このゲームは群雄劇ではなかったのです!
このゲームは八重が主人公たちから奪ったエゴを通して彼らの世界を見ていたのです。
つまり、主人公は八重だったのです!
ラスボスが主人公というこの斬新な構成。さすが高橋氏です。
ただ、プレイしたほぼ全ての人が彼の壮大にして深遠なトリックに気がつけず
後に出た雑誌のインタビューではじめてそれを知ったというのは非情に残念でなりません。
受け手が馬鹿ではどんな面白いオチも生きてこない。
これがこのゲームの最大の悲劇悲劇だったのではないでしょうか?
水無月絵がアレですって?
リアルな世界には萌え絵のような奇形なんて不要なのですよ?