優勝者最萌トーナメント対策・支援スレ

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「はじめてのぶどうがり 〜はじめてのしゅうかくぅ〜」

 秋の連休を利用して、少し離れた町に、ぶどう狩りに来た。
 もちろん、一人じゃない。ゆうなちゃんと、まいなちゃんが一緒だ。というより、普段の
慰労を兼ねた僕の病院の「社員旅行」のようなものだ。社員旅行というには少しショボい
かもしれないが。でも、ちょっと洒落たペンション予約して、一応一泊なんだけどなあ。
 どうせ家族同然のお付き合いをしているので、朝倉のご両親も誘ったのだが、体よく
断られてしまった。どうやら、自分たちは夫婦水入らずで別の場所にいくつもりになった
らしい。双子は残念がったが、まあ仕方が無い。
 休みの日の朝、僕は前もって悪友の一人に借りておいた4WDのワゴン車に、可愛い
双子を乗せて3、4時間ほどかかる高原の観光地に向かった。
 予約を入れておいたペンションにチェックインした後、すぐに歩いて10分ほどのところ
にある、ぶどう園へ遊びに向かった。
 農園の人に案内されて、一面に広がるぶどう棚の下を歩いていく。
 「わぁ〜〜〜…。いっぱい、成ってるねぇ、おにいちゃん」
 ゆうなちゃんが、ずーっと上を見上げながらつぶやく。
 「ほんと。まいな、こんなにたくさんのぶどう見たのはじめてよ、お兄ちゃん」
 双子の妹のまいなちゃんも、悪戯そうな瞳をくりくりと輝かせている。
 「そうだね。ここにあるのは…、巨峰、かな?」
 僕は低い枝にぶつからないよう、少しだけ腰をかがめながら応えた。手を伸ばせば
届く位置に、つやつやと黒光りするぶどうの房が、傷避けの薄紙から覗いていた。
 「さて。それじゃこの辺ではじめようか、ゆうなちゃん、まいなちゃん」
 「「はーい! おにいちゃん」」
 ぶどう畑の真ん中辺り。大きな房があちこちに下がっているのを見渡しながら、僕が
二人に切り採り用のハサミを渡すと、二人は元気に答えた。
 こういうところは、二人が僕の病院に入院してた患者さんだった頃と少しも変わって
ないんだな。僕は、ぶどうの房を見比べる双子の後姿を見ながら、ふと思った。今は、
僕の病院を一緒に支えてくれる双子の看護士さん。いいや。僕にとってはそれ以上の、
もはや離れることのできない二人。今日は、来てよかったな。
 僕がぼうっとしていると、どうやら二人は最初に採る房を選んだらしい。上を見つめ
ながら、小さな手に持ったハサミを懸命に伸ばしている。
 「んしょ…んしょ…、あ、あれあれ?」
 ゆうなちゃんが、爪先立ちで背伸びしている。
 「ううーんんっ! ………、うう〜〜〜んっ!!」
 まいなちゃんが、近くの幹に半分よじ登るようにして手を伸ばしている。
 ………。って、あ、あらら? もしかして、二人とも…?
 「「…、お、おにいちゃん! 届かないようっ!」」
 うわぁ〜。考えてみれば当たり前のことだ。双子の身長は、僕の胸元くらいまでしか
ない。ぶどう棚は別に変わったものじゃないから、僕くらいの身長で手を伸ばせば楽に
届く高さだ。となれば、双子がどう頑張っても届くはずがない。
 「とどかない〜っ、とどかない〜!」
 歌うようにいいながらピョンピョン飛び跳ねる まいなちゃん。
 「ふぇぇ、ぶどうさん、おっこちてこないかなぁ?」
 目をまん丸にしてぶどうの房を見上げる ゆうなちゃん。
 なんだか、童話とかに出てきそうな場面なんですけど?
 僕は周りをぐるりと見た。辺りには僕たちの他に誰もいない。かなり離れたところに、
小さな木製の脚立のようなものがあるのを見つけた。脚立があれば、二人もぶどうに
手が届くかな? しかし、あそこまで取りに行くのも面倒だ。それに一つしかないみたい
だから、場所を移動するたびに動かすのも骨だな。
 仕方ない。二人に楽しんでもらうために来たんだし。ちょっと頑張っちゃおうかな。
 「解った解った。じゃ、順番に、ね?」
 「「順番???」」
 僕は、こちらを振り向いた双子を手招きした。
 「まずは、ゆうなちゃんからでいいかな?」
 「ふぇ? ゆうなから、ってなあに? …ひゃんっ!?」
 僕は腰を落とすと、ゆうなちゃんのちっちゃなお尻のあたりに腕を廻し、ぐうっと抱き
寄せた。そしてそのまま、よっと声をかけて立ち上がる。
 「ほら、これなら届くよ」
 「ふえええ♪ たかいたかい〜」
 ゆうなちゃんの頭が、ぶどう棚にこすれるくらいの高さになる。そのまま少し歩いて、
ゆうなちゃんが採ろうとしていたぶどうの下に移動した。
 「さあ、ゆうなちゃん、採って。あ、ハサミ入れる前に、房の付け根をちゃんと持って」
 「うん〜♪ ……んしょっ、と。わぁ〜、採れたぁ、採れたよぅ、おにいちゃん!」
 パチンっ、と音がして ゆうなちゃんの嬉しそうな声が降って来た。
 彼女をそうっと下ろして、今度は待っている まいなちゃんに声をかける。
 「次は、まいなちゃんの番だね」
 「ええ♪ じゃ、おねがいね、お兄ちゃん」
 まいなちゃんが声をはずませて、くるりと後ろを向いた。あ、あれ?
 「え? そっち向きでいいの?]
 「あら、だってこのほうが、お兄ちゃんも まいなも、前を見やすいじゃない、ね?」
 なるほど。こういう体を使うことでは、まいなちゃん、よく頭が回る。
 僕は、まいなちゃんの腰に右の頬を寄せる。肩口を、小さく引き締まって形のいい
まいなちゃんのお尻に押し付け、腕を腰から下腹にかけて、うんっと持ち上げた。
 「えへへ、なんか小鳥になったみたいだよ、お兄ちゃん」
 目の前まで迫った蔓や葉に軽く触れながら、まいなちゃんは、くすぐったいような声で
そう言った。お目当ての房に手を伸ばし、まいなちゃんも最初のぶどうを手に入れる。
 ゆうなちゃんの採ったものは、見るからに大きな粒がついた熟れごろの一房だった。
まいなちゃんが手にしているのは、大きさは並だけれど粒がびっしりと実った立派な房
だ。双子は、それぞれが手にした今日最初の収穫をお互いに見せっこして、にっこりと
微笑んだ。
 「うん、大きくて甘そうなのが採れたね。後で食べようか」
 「んとねぇ、んとねぇ、これは、お父さんと…」
 「…お母さんへのお土産にするのよ、お兄ちゃん。そーんなに慌てなくたって、まいな
 と ゆうなちゃんが、食べきれないくらい採ってあげるからだいじょうぶよ!」
 「んとんと、いーっぱい採って、病院のおじいちゃんやおばあちゃんにも、持ってって
 あげようね、まいなちゃん」
 「それがいいわ! まいなたちが採ったぶどうだもん。みんなにあげたら、きっとお薬
 よりもずーっと体にいいに決まってるわよね、ゆうなちゃん♪」
 そういって、二人はそれぞれが持った籠に、そのぶどうを大事そうに納めた。
 ああ、そうなんだ。この素直さ。時々駄々をこねたり、我が侭を言ったり、僕を困らせ
たりもするけれど。この二人が心の底にいつも持っているこの優しさ。僕は彼女たちの
純粋で、穢れを知らない心にこそ魅かれたんだ。
 「 まいな 張り切って採る」
 僕は、広々とした畑をあちらへこちらへ飛び回る双子を追って歩く。そして、二人の
求めるままに何度も何度も、そのほっそりした体を抱き上げた。ぶどうの蔓に小さな手
が触れる度、パチンッ、チョキッと音がして、甘い香りと共に秋の実りは双子の女神の
籠に納められていった。
 そうして一時間ほども続けただろうか。いかに華奢で軽い二人とはいえ、日頃の運動
不足を痛感している僕は、次第に腰に違和感を覚えていた。まずい。そ、そろそろ休憩
させてもらわないと。
 「タイムタイム。ちょっと休もうよ、ゆうなちゃん、まいなちゃん」
 既に手にした籠が一杯だったこともあり、二人もすぐに賛成した。夢中になって採って
たからなあ。二人共、のども渇いたんだろう。連れ立って、ぶどう園の入り口の辺りまで
引き返し、木陰に設えられた休憩所に腰を下ろした。
 農園の人に頼んで、選んだぶどうを清水で洗ってもらう。真っ白なお皿に、水滴をキラ
キラ滴らせたぶどうが載って運ばれてきた。
 「えへへへ、おいしそ〜ぉ♪」
 「ふぇ、いい匂いだねぇ〜♪」
 「さあ、食べよう」
 「「いっただっきまぁ〜す」」
 房からぶどうの粒を一つずつ手に取る。採りたてのぶどうは、はじけるばかりの弾力
に富んで、指の間で宝石のように輝いた。口の中に放り込み、厚い皮を噛んで果肉を
剥き出し、もごもごやって種をよける。強い芳香と痺れるような甘みが口一杯に広がる。
 「「 あまぁ〜いっ♪」」
 双子が揃ってほっぺたに手をあて、はちきれんばかりの笑顔を見せる。
 二人は、お皿にこんもりと盛られたぶどうの房から次々と粒を取り、口に運ぶ。ぽんっ、
もごもご…、「んんん〜、おいしーっ!」、もきゅもきゅ、プッ。見る見るうちに、ぶどうは
二人のお口に消えて行き、傍らの小皿に皮と種が溜まっていった。
 やがて、二人の手が止まりかける。
 「ん? もういいのかい? おいしいけど一遍にそうたくさんは食べられないかもね」
 僕がそう笑いかけると、二人は首を横に振りながら答えた。
 「ううん、まいな、まだまだ食べられるわよ。こぉ〜んなにおいしいんだもの。でも…」
 「ふに〜、食べられるけど、ゆうな、ちょっとお口が疲れちゃったよぅ…」
 あ、そういうことか。皮と種をお口の中で選り分けて、いちいち出すのに舌が疲れた、
と、そういいたいのか。僕は、透き通ったぶどうの果汁をほんのりと付けて瑞々しく光る
双子のちっちゃな唇を見ながら納得した。二人のつつましやかなお口には、少し粒が
大きすぎたかな。
 「ふーん。それは残念。じゃ、しばらくお口を休めててね。その間、僕が二人の分まで
 食べてあげるから」
 ちょっと悪戯心を起こして、僕はそんなことを言いながら三つほどの粒をまとめて口
に放り込んだ。
 「「あ! あああ〜っ! ずるいよぅ、おにいちゃん!」」
 二人がテーブルに身を乗り出しながら、同時に抗議の声を上げた。
 「もうっ! お兄ちゃんの意地悪! いいんだもん、いいんだもーん!」
 まいなちゃんが、ぷっと膨れて見せる。
 「う、ううう〜〜〜〜」
 ゆうなちゃんが、本気で恨めしそうに僕を見つめる。あ、やりすぎたかも。
 「ふぉ…もごもご、お゛めんお゛めん、ひょっひょ、いいふぎは(ちょっと、言い過ぎた)」
 口の中にぶどうを入れたまま、焦って僕がそう言いかけた、その時。
 「…んんん、んに!」
 むちゅ…、もにゅもにゅ、、ちゅ〜〜〜〜っ!
 「!? む! むむむむっ!」
 ゆうなちゃんが、テーブル越しに、僕の口めがけて吸い付いてきた。ちっちゃなお口
を僕に押し付けると、ゆうなちゃんはチロチロと舌を使って僕の口をこじ開ける。彼女
の、くすぐったいような舌先が僕の中に入り込んで来た。僕が驚いていると、目を閉じ
た ゆうなちゃんは、ちゅーちゅーと僕の口を吸い始めた。まるで、お母さんのおっぱい
にしゃぶりついた赤ちゃんのように、一心に吸い続け…、そしてまんまと僕からぶどう
の粒を奪ってしまった。
 「ぷはぁっ!」
 「っはぁ〜、んん、もにゅもにゅ…ごっくん! ふに〜、ごちそうさまぁ〜」
 やられた。恐るべし、食い物の恨み。まさか、ゆうなちゃんが そんな大胆な策を講じ
てこようとは…。そんなに食べたかったの、ぶどう?
 「ゆうなちゃんばっかり、ずるい! まいなにも、ちょうだい!」
 むちゅ…、もにゅもにゅ、、ちゅ〜〜〜〜っ!
 「!! む! むむむむっ!」
 時間差攻撃かよ! 僕が ゆうなちゃんのディープキッス攻撃に呆然としていた隙を、
今度は まいなちゃんに襲われた。そして…、当然、彼女にもぶどうを掻っ攫われた。
 「っふぅ、ん、ん、むぐもぐむぐ…ごっくん! うふっ、ちょっと、お兄ちゃんの味♪」
 う。そんな流し目で見るのはやめなさい、まいなちゃん。で、でも、二人とも、ちょっと
ひどいんじゃない? 今度は僕が二人に抗議しようとしたが、あっさりと遮られた。
 「おにいちゃん、おにいちゃん! 今度は ゆうな! ゆうなの番だよぅ! 早く早くぅ」
 ゆうなちゃんは、いつの間にやら手に新しいぶどうの粒を持って、テーブルの上を
四つんばいでにじにじと僕のほうに迫っていた。え゛? 新しい粒って、それは、わぁ!
 むぎゅ!
 ゆうなちゃんの白く細い指が、僕の口にぶどうを押しつけ、あっという間に押し込む。
僕が声を出そうとして口を開きかけた途端、またもやむちゅっと吸い付かれてしまう。
 むちゅ…、もにゅもにゅ、、ちゅ〜〜〜〜っ! つるん! もぐもぐ…ごっくん!
 「次! 次は まいな よ!」
 ひえーっ! むぎゅ!
 むちゅ…、もにゅもにゅ、、ちゅ〜〜〜〜っ! ちゅるっ! もぐもぐ…ごっくん!
 「ゆうな、ゆうなの番! お口開けて、おにいちゃん!」
 むぎゅ!
 むちゅ…、もにゅもにゅ、、ちゅ〜〜〜〜っ! つるる〜! もぐもぐ…ごっくん!
 ………。
 双子のディープキッスという飴と、強制ぶどう皮むき器(種取り機能付き)という鞭と
の間で、ぼうっとしながら何故か、くるみ割り人形の心理的状態というものが何となく
考察できた、ような気がする…。  (つづくw)