(8/14)
個室は思いのほか広かった。
真ん中にベッドが置かれ、部屋の隅には小物入れが見える。
ベッドの下には脱衣籠が置いてあり、壁には電話が設置されていた。
(マッサージとかカイロプラティックとか、そんな感じの部屋だな)
とりあえず、智樹はベッドに腰掛け、受付で買ったマルボロに火をつけた。
「げほ、げっほっ!!」
咳き込む。吸ったこと無い智樹には当然の結果だった。
「慣れないことはしちゃ駄目だな…」
ひとしきり咳き込み、落ち着いたと思った瞬間、個室のドアが開いた。
「いらっしゃいませ!」
智樹は顔を上げた。
お辞儀をする、その女の方を見やる。
「初めまして」
へそが丸見えになる位の短いセーラー服のブラウス。
綺麗な足を惜しげも無く晒す、超ミニスカート。
ほんのり化粧をしているものの、それを露骨に感じさせない。
「ユカリです。今日は指名してくれてありがとう!」
ショートヘアがさらりと揺らし、女が顔を上げる。
そこに、笑顔の由香里が、いた。
(9/14)
「ゆ、由香里…」
智樹は思わず涙が出そうになった。最早会えないと思っていた由香里が、
今、自分に向かって微笑んでいる。その事実にただ感動していた。
そして今二人がどこにいるのかも、その瞬間智樹は忘れてしまっていた。
だが、ユカリの一言で時間が動き出す。智樹以外の時間が。
「先に、シャワーを浴びましょう」
ユカリはしずしずと歩み寄り、智樹の服に手をかける。
「もう外は寒いですよねー。 あ、服はここに掛けときますね」
何が起きている?彫像のように立ち尽くす智樹。脳がまだ、正常に機能していない。
「ユカリが全部脱がせちゃいますからね」
固まったままの智樹の服を、テキパキと脱がせるユカリ。ブリーフ一枚になった時点で一気に智樹は覚醒した。
「あぁ、あのえっと!」
智樹の動揺に構わず、ユカリは一気にブリーフをずり下げる。
晒された智樹のモノは少し皮が被っていた。
「クスッ、気にしなくてもいいのに。これ位、普通ですよ?」
(なにについて普通?大きさ?形?長さか?それとも包茎具合か?)
混乱。智樹を混乱が支配する。羞恥も自尊も愛情も絶望も、ないまぜにしての混乱…だった。
「さ、行きましょ」
智樹の腰にタオルを巻いた後、ユカリが左腕を智樹の腕に絡めた。そして右手で慣れた手つきで電話を掛ける。
「お客さん、シャワー入ります」
『お客さん』
この一言で智樹は遅すぎる理解をした。
決して満たされぬ由香里を癒す、彼女自身が見つけた方法。
ああそうか
彼女はここで
『自分を選んでくれる男』を愛しているのだ。
10/14)
ユカリに促され、曲がりくねった廊下の先にあるシャワー室に入る。
ユカリはセーラー服のままだ。
「はいうがい薬。お口をゆすいでくださいね」
言われた通りに口をゆすぐ智樹。その間にユカリは智樹をスポンジで洗い始める。
人に体を洗われる感覚にしばし酔う。そこで智樹はやっと口を開いた。
「ユカリ…ちゃんはここ長いの?」
お決まりの台詞だ。しかもあまりよろしくない切り出し。
「えーとぉ、2ヶ月くらいかな。まだまだ新人ですよ?」
さらりと答えるユカリ。客のあしらいも慣れたものだ。
「へ、へぇ…そうだね。まだまだ新人うっ…」
いきなりユカリの泡塗れの手に股間を擦られ、智樹は思わずうめいた。
「あん、駄目っ、暴れないで。ここでイッらもったいないですよ」
正直果てそうだったが、何とか智樹は耐えた。シャワーで泡を流され、体を拭かれる。
「じゃ、お部屋にもどりましょ」
個室へ戻る時も、ユカリは腕を絡めてきた。
再び個室に戻った智樹とユカリ。智樹はどうしていいか分からずにいた。
「そろそろ始めましょうか」
「あ、あの、俺…こんな店初めてで、そのどうしていいか…」
情けなくもあったが事実は事実。智樹は正直にそれを告白した。
するとユカリは優しく微笑み、プレイの説明をし出した。
「お客さんのコースだとぉ…『萌え萌えイメージプレイ』からです。
これは私に感情移入してもらう為のお芝居のこと。あ、ここでのお触りは無しですからね」
智樹には理解不能だった。が、構わずユカリは続けた。聞けば分かる、ということらしい。
「ありがちな所でお客さんは学生。ユカリはそのクラスメイト兼恋人ってとこでどうかな?」
奇しくも由香里の指定したシチュエーションは恋人だった時の二人と同じものだった。
これならさほど苦労せずに演じれるだろう。
智樹は狂い始めた思考でそう判断し、提案に了解した。
(11/14)
〜萌え萌えイメージプレイ進行中〜
「永沢クン…やっと二人きりになれたね」
よりそう由香里。
「二人っきりの時は名前で呼ぶ。そう言ったろ」
すかさず智樹が注意する。いつかあった風景かもしれない。
「ごめん。まだ慣れなくって。癖かな」
「そうだな。由香里の悪い癖だ」
自分を軽く小突き、はにかむ由香里。これもいつかあった風景か…?
「ね、私達、ずっとこのままでいられる?」
「どうかな…みんなお前のこと、好きみたいだからな…」
由香里の髪を撫でながら、智樹の心は遥か彼方に飛んでいた。
「でも…」
そして、あの時言えなかった言葉を紡ぐ。万感の想いを込めて…
「俺が一番、お前のこと好きなんだぜ」
どちらともなく抱き合う。由香里の柔らかさを堪能し、髪の毛のいい匂いで深呼吸する。
「いいかい…?」
「…うん」
智樹はこの瞬間酔っていた。酔って、酔って、『ここがどこなのか』をまたもや忘れていた。
〜萌え萌えイメージプレイ終了〜
「お客さん演技上手すぎ〜。結構グッっときたよ」
するりと、ユカリが体をかわす。智樹の腕が空を切り、よろめきかかった。
「じゃ、ローション作ってきますので、仰向けに寝ていてくださいね」
智樹は呆然としつつも、素直にベッドに体を預けた。
智樹の股間にタオルをかけたユカリは、部屋を薄明かりにし、そそくさと個室を出ていった。
(12/14)
待つこと数分。智樹は不安と奇妙な期待を抱きつつ、その時を待った。
「お・ま・た・せ」
ユカリが洗面器を持って帰ってきた。洗面器からは湯気がたっている。
「じゃ、そのまま楽にしていてくださいね」
洗面器を小物入れの上に置き、ユカリは智樹の股間のタオルを外す。久々の外気に股間が縮こまる。
ベッド横に移動したユカリは、ゆっくりした動きで智樹の腰をまたぎ、その上で中腰になった。
異常に短いスカートの裾からパンティが…見え隠れしている。
「クスッ」
智樹の視線に気付いたのか、微笑むユカリ。そして、おもむろにスカートをするり、と脱いだ。
続けてブラウスを脱ぎ去る。最後のブラジャーは…焦らすように外した。
仰向けの姿勢から見るユカリのトップレス…シンプルなリボンをあしらった純白のパンティから上へと
奥まり、そしてその形良いバストの辺りでこちらに迫る、その線…
迫力だった。小さくて可愛い由香里の体とは、とても思えなかった。
「じゃ、まずはご挨拶から」
そう言って中腰の姿勢から前かがみになるユカリ。丁度智樹の目の前に、二つのバストが晒される格好だ。
「さ、どうぞ」
ユカリに促され、恐る恐るその魅惑の膨らみに手を伸ばす智樹。
触れる。揉む。埋める… 何て、感触…!
「…柔らかい…」
「えへへ、ありがと。…吸ったり、舐めたりとかも、いいんだよ…」
許可がおり、智樹はすかさず乳首にむしゃぶりついた。許可がないと何もできない。してはいけない。
風俗初心者の智樹は、そんな男に成り下がっていた。
(13/15)
「ん…ふぅ…あぁん」
智樹は夢中で顔面に押し付けられるユカリのバストを弄ぶ。
時折漏れる、ユカリの切なげな声が行為に拍車をかける。
永遠に続いて欲しいと思った時間…でも終わりはすぐに訪れた。
「んんっ…時間…無くなっちゃうから、ご挨拶はここまで…ね」
ユカリの胸が智樹の顔から離れていく。乳首と智樹の舌を繋ぐ唾液の線がつぅ、と垂れる。
智樹の顔はべとべとだった。
再び中腰になったユカリ。そして今度は例の洗面器から何かをすくい出す。
「あ…それ何?」
「ん…ローションですよ。これをこうして…」
ローションを手に取り、智樹の胸に、腹にぬりたくる。それは少し暖かかった。
「じゃ…行きますよぉ」
ユカリはクルッと180度向きを変える。そして腰を滑らせ、自分の股間を智樹の顔面の方へとずらした。
いわゆる69の体勢だ。ユカリのローションに濡れたあそこが、パンティごしに智樹の目前に配される。
「な、何を…うううっ!」
智樹の股間…既にギンギンにそそり立っていたそれが、とてつもなく柔らかいモノにつつまれた。
それは、さっきまで智樹が弄んでいたユカリのバストだった。
ぐにぐにと刺激される。思わず智樹は呻いた。8の時を描く動き、迫っては引いていくユカリの股間と
そこから匂い立つ芳香は、智樹に異次元の快楽を与え続ける。
「う…ぐぁ…」
「いいの…? 気持ちいい? でもまだイッちゃ駄目…」
さらにユカリは体を180度移動させ、元の中腰の位置に戻る。
その直後、上半身を智樹の胸にぴったりと密着させた。
ちょうど騎乗位の体勢から体を前に倒した感じだ。
そして、素早く手にローションを絡ませ、うまい具合に彼女の足の間に位置した智樹の逸物を包む。
いわゆる手コキである。
しかし密着したこの体勢では、ユカリの膣に包まれているかのようだった。
それ程ユカリの動きは巧みで、隙を見せない。
(14/15)
ユカリは手を少し強めに握り、智樹の逸物を1/3位の部分までを包む。
「お客さんに…ユカリの初めてをあげる。このまま…真っ直ぐ突いて…!」
耳元で囁くユカリ。擬似バージン。初めての客へのサービスのつもりらしい。
しかし、その一言で智樹の理性は完全に焼き切れた。
智樹はぐい、と腰を突き出す。その圧力に合わせて、ユカリは少しずつ手の力を緩め、処女喪失を演出する。
「痛っ…入ってくるぅ…お客さんのおチンチン、ユカリの中に入ってくるよぉ…」
切なげに喘ぐユカリに、うんうん、とうわ言のように頷く智樹。その目は歓喜の涙が溢れていた。
やがて、ユカリの手に智樹のものがすっぽり収まった。しばし息を整えるフリをするユカリ。
「もう…大丈夫。…動いて、いいよ」
その言葉を合図に、智樹は腰を降り始めた。ユカリの手コキ目掛けて…
ユカリはクス、と微笑み、智樹の腰の動きに合わせて、手コキを微調整する。
「あっ…はぁ…っ…いい、いいよ、おチンチン気持ちいいよぉ…」
嬌声を上げるユカリ。勿論演技だ。しかし智樹は気付かない。
「ああ、ユカリ… 由香里…」
智樹はずんずんと腰を振り、夢中でユカリの感触を堪能する。
反対にユカリの方は冷静で、喘ぐ演技をしつつも、手の位置、握力、角度に変化をつけ、執拗に擦リ上げる。
「あん… あん… もっとぉ…もっと突いて! もっとユカリを感じてっ!」
端から見れば、さぞかし滑稽極まりない絵図なのだろう。
だが、これはSEXだ。
智樹と「ユカリ」との間に、限られた時間の中でのみ許される最大級の愛の交換。
たとえ偽りの契りだとしても…今、智樹は至福の中にいるのだ。
(15/15)
「あぅっ…はんっ…ひうっ… んん?」
智樹の逸物がびくびくと震え出したことにユカリは気付いた。
「…お客さん…もう…イキそう?」
慈愛の表情で智樹に質問し、射精のタイミングをうかがう。
「も…もう限界…イく…イク!」
智樹はそれだけ言うと、狂ったように腰を動かし出した。
「イっていい、イっていいよ、イきたい時にイっていいから。ユカリの中で気持ちよくイってっ!」
手の動きを早めるユカリ。
手コキに叩きつける智樹の腰がユカリの体をぐいぐいと持ち上げる。
そして…
ドピュ、ドォピュゥゥゥッッッ!!
弾丸のように飛び出す智樹の精液。そしてそれは、ユカリのお腹やへそにと幾つもの線を描いた。
射精に合わせて、由香里は手の速度を落とす。そして最後の一滴までもを念入りに搾り出だした。
「ユカリの…中に…いーっぱい出せたね…」
ユカリは優しく智樹の頬に口付けをし、その汗だくの体をぎゅっ…と抱きしめる。
最高の快楽の果てに射精した智樹の顔は安らかだった。
最後までユカリを演じきった由香里。
一仕事終えた清々しさに満ちたその笑顔は、紛れも無いプロの風格を湛えていた。