バトル・ロワイアル 【今度は本気】 第5部

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581戦鬼は集う(23):04/02/24 03:24 ID:3wZRA0Ns

「!」
「あれ〜〜?」
「え?」
(こ、こここれは双葉嬢ちゃんの…)

「・・・・・・」
ザドゥは一瞬立ち止まり、周囲を一瞥し、僅かに口を開く。
「これは気か……」
ザドゥは一目で燐光の正体を見破った。
燐光は双葉が植物の心を具現化し浮かび上がらせたもの。
ザドゥやケイブリスが操る『気』とは大体一緒だ。
ザドゥは通信機を手に取りスイッチを押して智機に言う。
「椎名聞こえるか?私の前には素敵医師とカモミールがいる。参加者の方はどうなっ
ている?」
(なっ!?センセの居場所バレてるがよ?)
木に隠れて、隙をうかがっていた素敵医師の目が驚きで見開かれる。
「ザっちゃん〜」と、カモミールも一歩踏み出し……
「智機ちゃんとなに話してるの〜〜アタシにもおせ〜て〜」
……不服げに、再び涎を垂らしながら言う。
智機の返事を待たずに、二人と視線を合わせないままでザドゥは口を開いた。
「……カモミール…」
「な〜に?」
「・・・・・・・・?」
「…お前は俺が覚ませてやる…そして…」
「??」
言葉の意味が分からず首をかしげるカモミール。
ザドゥは素敵医師が潜む茂みへ視線を移すと…
「素敵医師よ…貴様のその思い上がりは…俺が砕く」

582戦鬼は集う(24):04/02/24 03:25 ID:3wZRA0Ns
ザドゥの闘気が白い炎の様に変化し、そのまま素敵医師の方へ向かう。

ビーッ!

通信機が鳴った。
『椎名だ。仁村知佳の方に変化があった』
「ほう」
『仁村知佳、シークレットポイント2地点で所在を確認。朽木双葉と式神は巨大
楡の木に、しおりは貴方の背後に、他の参加者は依然不明のままだ』
「そうか」
『もし貴方が敗れるような事があれば、我々の望みも叶わなくなる恐れがある。油断
して敗れたりしないようにして頂きたい!以上だ』
通信は切れる。
「フン……」

「か、カモミール!ザドゥの大将をぶっ飛ばして、遊んでやるがよっ!」
通信が切れる瞬間を見計らって、右手に注射器を持ちつつ逃走を計ろうとしている素
敵医師が命令を下す。

「んーーーーぶっとばす〜?」
首をかしげて一瞬考え込むカモミール。
「あっ、でも遊びだから、いっか♪」
そう言ってカモミールは銃剣を縦に構え、ザドゥに向かってダッシュする。
「……」
一瞬で虎徹の攻撃範囲にまで接近するほどの俊足を発揮する。
ザドゥの左肩に目掛けて振り下ろされる虎徹!
それに怯むことなくザドゥはそれよりも数瞬早く、後ろに退き、自分のマントを掴
む。
バサアァァっ!
カモミールが二撃をを放つべく剣を返したのと同時にそれは起こった。
583戦鬼は集う(25):04/02/24 03:26 ID:3wZRA0Ns

マントが銃剣を受け止め、彼の闘気がゆらぎ――虎徹を包んだマントが一瞬、白く光
りからめ取った。

ぎゅむっ!

「!?」

ザドゥはそのまま、腕を横に振る。
刃はすっぽ抜け、使い手もろとも振った方へ投げ飛ばされる。
カモミールは銃剣を握ったまま地に足から受身をとる。
対峙する両者。カモミールは楽しげな声で言う。

「あはっ♪あははははっ…ザッちゃんやっぱりつよ〜い」
「・・・・・・・・」
ザドゥはそれには答えずマントを見た。
普通の銃剣をからめ取ったのでは、ありえない現象。
気によって一瞬強化されたはずのマントは、いつの間にかズタズタ切り裂かれてい
た。
(ただの銃剣ではないな……)
ザドゥは心中でそう呟くと、警戒を解かないまま素敵医師が逃げていった先を見る。
(奴の事だ……このまま逃げた訳ではなかろう)
視線をカモミールの方へ移したまま、地面の石ころを拾う。
「次はザッちゃんの番〜。かかってきて〜アタシが存分に遊んだげるから」
彼女は虎徹を背に仕舞い、鉄扇を構えてザドゥを挑発する。
ヒュッとザドゥは素敵医師のいる方へ投石した。

584戦鬼は集う(26):04/02/24 03:31 ID:3wZRA0Ns
「あきゃ!?」
石は木陰から手を伸ばしていた素敵医師の手の甲ヌイに命中。
慌ててもう一方の手で突撃銃を拾い上げ、身を隠した。
対峙するザドゥとカモミール。
手の出せない素敵医師としおり。
森は既に白い光に包まれている。ザドゥは更に別の方向へ石を投げた。

……………

石と葉がこすれる音の他は何の物音もしなかったかの様な沈黙。
だが、無反応に動じずザドゥは投げた方角へ話し掛けた。

「貴様も…奴が狙いだろう?」
「「!」」 反応するしおりと素敵医師。
その声に二投目の石を投げた森の茂み、音も無く、何かが蠢く気配がした。
「…信じられないわ……」
静かで澄んだ声だった。
「不意でも討つ積もりだったのか?」
抑揚の無い声でザドゥは言う。
「まさか……あなたがここにいるなんて……」
輝く木々から出てきたのは黒い魔剣を携えたアイン。
《お嬢ちゃん……!》
「・・・・・・・・・」
カオスの声を受け、アインはいつに無く緊張した面持ちで周囲を一瞥する。
その視線の先にはしおりとカモミール。

(あの子……)
ゲーム開始時に見かけた、双子の幼い少女の姉の方しおり。
アインが見た時は紛れも無く最弱の部類に入る人間の参加者。
しおりは汚れた服を別にすれば、獣を思わせる両耳以には外見上変化は見当たらな
い。
だが、放つ威圧感はプロの暗殺者であるアインも怖いと感じさせるほどのもの。
585戦鬼は集う(27):04/02/24 03:38 ID:3wZRA0Ns

昨日、灯台で戦い、まりなを殺害した主催者の一人カモミール芹沢。
直に接近戦を行ったわけではないので、正確な実力はアインには判断できなかった
が、遺作あたりよりは強いだろうというのは解る。
今の彼女はあの時と様子が全く違っていた。
それはアインに忌まわしいあの時の記憶を、薬物で操られる遙を嫌でも思い出させる。
そんなカモミールから感じられる威圧感はしおりと同核。


「・・・・・・・」
アインの右頬に冷汗が落ちる。
アインの本能はすで逃走を呼びかけている。
が、それに抗いザドゥに問い掛けた。
「あなた……『貴様も』と言ったわね…。どういう意味なの…?」
「…………」
ザドゥはしばし考えたが、やがてゆっくりと口を開いた。
586戦鬼は集う(28):04/02/24 03:39 ID:3wZRA0Ns
その頃、楡の木の洞の中では呪符を両手にかざし、双葉が乱れた呼吸を整えてた。
彼女の肌にはうっすらとミミズ腫れの様な赤い大きな文字のようなものが浮き上がっ
ている。
(どうやら…効いてきたようね)
実家の古文書に書いてあった解毒薬の効力が現れ始めたのだった。
「!」
地上に放った式神がアインを見つけたのに双葉は気づいた。
(これではっきりする……!主催者があたし達に何したのか。そして……)
双葉は式神に視覚を移す。
アインの後姿が見える。誰かと話しているようだが、近づきすぎると気づかれる恐れ
があるので離れている。
(しっかし…何なのよ?あの黒い剣は)
カオスを不思議に思う双葉。
今の彼女にはカオスが『例の武器』であることや、近くにザドゥとしおりがいること
には気づいていない。
むしろ、それを探る事さえ今の彼女にとっては重要な事ではなかった。
(今度こそ……今度こそ!)
双葉は気合を込めて術の詠唱を始めた。


587戦鬼は集う(29):04/02/24 03:41 ID:3wZRA0Ns

(二日目 PM4:35 東の森・西部)

両手両足のない二体のレプリカが煙を吐きながら、木の枝に引っかかっている。
「……計算が違ったというのか?思ったよりエネルギーが尽きるのが早かったな」
重火器を装備した一体のレプリカ智機が戸惑いを含んだ声色で呟く。

レプリカの智機の中にはオリジナルの智機にも備わっていた飛空機能が搭載されてい
るのがいる。
それらは両手両足に飛空用のパーツをつけることにより、短時間のジェット飛行を可
能にする。
校舎跡からレプリカを二体、楡の木広場近くに空輸する予定だったのである。
結果は智機も予想できなかったエネルギー切れでやや目的地から離れての木の上での
不時着で終わったが。
(此処からだと現場に辿り着くのに、十分以上かかるな…間に合えばいいが)
散った木の葉を払いのけながら本体の智機とシンクロして作戦を考える。
レプリカ二体を消費してまで、智機が東の森に拘った理由は現地点で二つ。
素敵医師の薬品の回収と、参加者の身柄の確保。
弱った参加者を二人以上捕獲できれば、心置きなく他の参加者を始末できるとそう考
えたからである。
彼女は全滅させた後に、捕獲した参加者同士を戦わせるつもりだ。
「いささかオーバーだろうが…オマエにはまだ働いてもらうぞ」
「・・・・・・・」
智機がそう話し掛けた相手は―――
鹿野はまみれになっている、両腕に刃を生やしている強化体だった。     


                    
                ↓

588戦鬼は集う(30):04/02/24 03:44 ID:3wZRA0Ns
【アイン(No23)】
【現在地:楡の木広場付近】【スタンス:素敵医師殺害】
【所持品:スパス12 、魔剣カオス、小型包丁4本、針数本
     鉛筆、マッチ、包帯、手袋、ピアノ線】
【備考:左眼失明、首輪解除済み
     抜刀時、身体能力上昇(振るうたびに精神に負担)】


【朽木双葉(No16)】
【現在位置:楡の木広場】
【所持品:呪符多数、薬草多数、自家製解毒剤1人分
       ベレッタM92F(装填数15+1×3)、メス1本】
【スタンス:アイン打倒、首輪の解除、素敵医師と共闘】
【能力:植物の交信と陰陽術と幻術、植物の兵器化】
【能力制限:兵器化の乱用は肉体にダメージ】
【備考:双葉は能力制限の原因は首輪だと考えている
 朽木双葉、自家製解毒剤服用済みで効果発揮、首輪装着
 解毒剤の効力:毒物排出・浄化、身体中に呪紋が浮き出る、数時間持続】


【式神星川(双葉の式神)】
【現在位置:楡の木広場付近】
【所持品:植物兵器化用の呪符10枚】
【スタンス:???】
【能力:幻術と植物との交信】

589戦鬼は集う(31):04/02/24 03:47 ID:3wZRA0Ns
【素敵医師】
【現在位置:楡の木広場付近】
【所持品:メス2本・専用メス8本、注射器数十本・薬品多数
       小型自動小銃(弾数無数)、謎の黒い小型機械
       カード型爆弾二枚、閃光弾一つ、防弾チョッキ、ヘルメット】
【スタンス:アインの鹵獲+???、朽木双葉と共闘】
【備考:主催者サイドから離脱、独立勢力化
     再生能力(限りあり)、擬似死能力】


【カモミール・芹沢】
【現在位置:素敵医師に同じ】
【所持品:虎徹刀身・銃身(弾数無数、魔力付加で威力増大)
      鉄扇、トカレフ】
【スタンス;素敵医師の指示次第。ただし、やや暴走気味】
【備考:薬物により身体能力上昇
    重度の麻薬中毒により正常な判断力無し。
    薬物の影響により腹部損傷、左腕硬質化(武器にもなる)】
                 
590戦鬼は集う(32):04/02/24 03:50 ID:3wZRA0Ns
【主催者:ザドゥ】【現在位置:楡の木広場付近】 【所持品:マント、通信機】
【スタンス:素敵医師への懲罰、参加者への不干渉】
【備考:我流の格闘術と気を操る、右手に中度の火傷あり】

【しおり(No28)】【現在位置:楡の木広場付近】 【所持品:日本刀】
【スタンス:しおり人格・参加者殺害、さおり人格・隙あらば無差別に殺害】
【備考:凶化・身体能力上昇。発火能力使用 弱いながら回復能力あり、首輪を装着中
    多重人格=現在はしおり人格が主導】

【主催者:椎名智機】 【現在位置:本拠地・管制室】
【所持武器:レプリカ智機(学校付近に10体待機、本拠地に40体待機
      6体は島中を徘徊)
       (本体と同じく内蔵型スタン・ナックルと軽・重火器多数所持)】
【スタンス:素敵医師の薬品の回収、アイン・双葉・しおりを利用・捕獲】
【能力:内蔵型スタンナックル、軽重火器装備、他】
【備考:楡の木広場付近にレプリカ一体と強化型一体を派遣】

【レプリカ智機】
【所持品:突撃銃二丁、ガス弾一個、ヒートブレイド、アタッシュケース
      筋弛緩剤などの毒薬、注射3本】
【レプリカ智機強化型(白兵タイプ)】
【武装:高周波ブレード二刀、車輪付、特殊装甲(冷火耐性、高防御)
内臓型ビーム砲】
【備考:レプリカは智機本体と同調、強化型は自動操縦 強化型は本拠地に後3体いる】
591名無しさん@初回限定:04/02/27 00:12 ID:X4+Llf0R
                   
592名無しさん@初回限定:04/02/29 13:34 ID:atCm2jWi
上の見えない
593名無しさん@初回限定:04/02/29 19:14 ID:tIqtcoPe
>戦鬼は集う
再開でいきなり1話に30レスは長く感じたな。
ちょっと読むのに躊躇したぞ。
内容自体は戦闘及び強者集結燃えの一言に尽きるな。
594名無しさん@初回限定:04/02/29 22:58 ID:tTSdPzAl
乙。
なかなか読み応えがあったな。

しかし、新バトロワとこの旧バトロワ見てると、エロゲ全キャラを使っての
バトロワの難しさがわかるな。
旧はその閉鎖性から遅々として進まず、書き手が減っていった。
その点、新は参加しやすいが、その代償として・・・
まあ、言うまい。

とりあえず、旧の書き手氏、完結までがんばってくれ。
595名無しさん@初回限定:04/03/04 01:39 ID:zcPfRY5l
596策動(1):04/03/07 02:30 ID:uzjadQ1u

男は殺す。女は俺のものにする。主催者打ち殺して、島を出る
それはゲーム開始時のランスのスタンス

彼はこれまで自由奔放に生きてきた。
命の危険にさらされた回数も二桁時では効かない。
むしろ自ら、それに突っ込み、生還する。
それを可能とする実力も、自信も、悪運もあった。

―――だが、このゲームに至っては

双葉を追い続けた事があって、彼は女性参加者の大半を助けられないまま、神の声で
知ったゲームの真相に激しく動揺した。
自覚は無かったけれど…彼はそういう自分をとても不甲斐なく感じた。
かつて…この島に来る前にある国の兵隊に追われ続けた時以上に。
ケイブリスの放送以後、彼は焦り続けていた。
597名無しさん@初回限定:04/03/10 05:11 ID:pyy67fRX
598名無しさん@初回限定:04/03/13 01:25 ID:y7jNJL9J
599名無しさん@初回限定:04/03/16 01:50 ID:0pDLyWaO

(二日目 PM4:01 西の森付近) 

魔窟堂野武彦(No12)を先頭に気絶しているランス(No2)を除く五人は歩き続ける。
今日の午前中、竜神社に向かう途中に見つけた西の森の小屋を目指して。
その頃、魔窟堂の後ろには月夜御名紗霧(No36)がバッグの中から取り出した、青
いキャップのマジックペンのような物をやや不機嫌そうに見ていた。

「あの……紗霧さん、これは何なのですか?」
横に並んで歩いていたユリーシャ(No1)はおずおずと尋ねる。
「……筆の一種です。魔窟堂さんの支給品がチョークである以上、役立てるのは難し
いですね」
「参加者の支給品なんだろ?調べたのか?」
二人の様子を後ろから見ていた高町恭也(No8)は紗霧に言う。
現におもちゃと思われていたパーティーガバメントには鋼線が仕込まれていたのを
知っての問い。
「既に中身も調べてますよ。それでも、あまり使い道のある物品とはとても…」
と、言ってペンをバッグに仕舞う。
色とりどりのマジックペンの入ったペンケース。
森に向かう道中、茂みに捨てられてあったそれを紗霧らが回収したのである。
ペンケースには十二本入るスペースがあったが、入ってあったのは十本だった。
600策動(3):04/03/19 00:47 ID:NxfHNo9U

多分、参加者の誰かに支給された道具で、他のペンは不要と判断し破棄したものだろ
うと紗霧は推測した。
実はもう一つ、それもバッグの中に入っていた道具を紗霧たちは回収しているのだ
が、それも武器防具の類のものではない。
こうなると紗霧としてはどうしても、神の声から発せられた『役立つモノ』を早期に
回収する必要があると思った。

「おっ?」
そんな紗霧を尻目に西の森に入ったところ背に担いだランスが身動きし、まひるは反
応する。
「…ん…ぐ…」
ランスはうめき声をあげ、目を開き始めた。
「ランスさま!」
まひるの後方を歩いていたユリーシャはそれに気づき喜びの声を上げ、まひるはゆっ
くりとランスを降ろし始める。
「・・・・・・・・・」
ランスは草むらに座り込み、目をこすりながら周囲を見始める。
「気が付いたようじゃの!」
足を止め、ランスのほうに駆け寄る魔窟堂。
周り囲む三人とは別に、紗霧と恭也は数メートル離れてそれを見守る。
そして、ランスは周り囲む三人の姿を認め、言葉を発した。
601名無しさん@初回限定:04/03/22 02:21 ID:ugVTfWrx
602名無しさん@初回限定:04/03/22 02:22 ID:Rdnh3dHm
 
603策動(4):04/03/24 02:26 ID:xJJE8tin
「ユリーシャ…か……」
「はい……ランスさまが…身体を張って下さったおかげで…こうして…」
安堵の息を漏らすランスに、はにかんだ笑顔で応えるユリーシャ。
(うんうん……恋人同士の再会…いつ見ても感動するシチュエーションじゃわい)
(姫さん良かったあ……)
そんな二人を見て感動する魔窟堂とまひる。
「がはは…当然だろう……」
そう返答したランスは言葉を切る。そして再び周囲を見回して言った。
「…ユリーシャ…ここはどこだ?それにこの二人誰だ?」
かすりの着物を着た老人と、白ずくめの赤毛の少女(外見)を見て疑問を投げかけ
た。
「あ!あ、あのお二人は私とランスさまを助けてくださった方々です」
ユリーシャはやや慌てた様子でランスに説明をする。
その説明を聞いたランスの顔色が変わった。
「助けてくれた…だと?」
「わしの名は魔窟堂野武彦。主催者打倒を目指して行動しておる。ランス殿、おぬし
も……」
「おいっ、ユリーシャどういうことだ?俺は…ケイブリスの野郎はどうなったんだ!
?」
魔窟堂の自己紹介を聞かずに、ユリーシャに問うランス。
「そ、それは……」
「たいした怪我ではないし、あの怪物はここには居らん。じゃが、お嬢ちゃんが駆け
つけてこなんだら、手遅れになるところじゃッた」
604名無しさん@初回限定:04/03/27 00:24 ID:1JfNC96Q
               
605策動(5):04/03/30 00:52 ID:LFF02x4+

「駆けつけただと?ユリーシャお前……」
「……ランスさま…私…」
「ランス殿、悔しいのはわかるが…お嬢ちゃんを責めてはいかん」
「じじいは黙ってろ!俺は待っていろと……」
「・・・・・・・」
問うランスに対し、ユリーシャはただ黙って彼の目を見つめている。
「いろ…と…」
「…………」
まくし立てようとしたランスだったが、彼女の様子に冷静さを取り戻していく。
しばしの沈黙の後、ユリーシャは言った。
「わた…私はランスさまに死んで欲しくありません……だから…だから…言いつ
けを破りました」
目を伏せ、だがしっかりとした様子でランスと対峙するユリーシャ。
「・・・・・・」
その彼女にランスは息を飲み、考えた後。深く息を吐いて言った。
「……でかした…ユリーシャ…」
「!」
彼女は顔を上げる。そしてランスは、
「心配かけちまって悪かったな…」と彼女に言ったのだった。
606策動(6):04/03/30 01:44 ID:5DPS6mSo

「こちらがまひるさんで…」
「よろしく!」
「この方が高町恭也さんです」
「……………」
「ん?」
ユリーシャの口からまひる達が紹介されてく中。ランスは恭也を見て声を上げた。
「お前は………………………昼の?おい!知佳ちゃんはどうした!?」
恭也の事と同時に知佳の事も思い出し、ランスは詰め寄る。
「ランスさま?お知り合いだったのですか?」
「……………」
ユリーシャの疑問を他所に二人は対峙する。
「……ここには…いない」
「何だと?まさか…」
「あの…知佳さんって…どちらさまで…」
「えと…恭也さんの恋人だよ」と、まひるは返答する。
「え?」
「ひ、広場さん」
戸惑うユリーシャと恭也。
「なにっ?ふざけるな知佳ちゃんは俺様のものだ」
ランスの勘違いした発言に、むっとした恭也は言う。
「仁村さんは渡さない」
「何勘違いしてる。第一…」
「知佳さん、行方不明何ですよね」と森の奥から声が響いた。
「…!ランスさま…この人は……………月夜御名」
声を聞き、ユリーシャは遠慮がちに最後の紹介しようとする。
「紗霧です」と言葉を続けた。
身を隠して様子を見ていた彼女はようやくその姿を現したのだった。
607名無しさん@初回限定:04/04/02 01:25 ID:QSwwwW5K
                  
608名無しさん@初回限定:04/04/05 02:01 ID:CXnmbtDi
609名無しさん@初回限定:04/04/08 01:57 ID:Wv5WRee9
                  
610名無しさん@初回限定:04/04/11 01:50 ID:W7haTkt+
611名無しさん@初回限定:04/04/14 03:25 ID:AHusZTEi

「むっ、むむむむむっ!」
紗霧をはっきりと眼前で確認したランスは感嘆の呻き声をあげる。
「お、お前は…お前は…」と、ランスは紗霧を目の前にしていつものように寸評を
入れようと言葉を発しようとするが、うまく言葉にできない。
ランスの評価が決して低い訳ではなく、むしろ出会った女性参加者の中では最高とい
える。どこがいいのか言うのがはばかれるくらいだ。
「と、とにかく!グッドだ!!」と、彼は親指を立てて言った。
「何が良しなのかは皆目検討が付きませんが……初めまして」
「おう!紗霧ちゃんだったな。こっちこそよろしくな。がはははははっ」
「……あのー……」
紗霧の呆れたような、冷めたような眼差しに気づかない上機嫌なランスに対してまひ
るが問う。
「ん……なんだ?」
「姫さんの恋人なんでしょ?どうして知佳ちゃんや紗霧さんに対してそんな…」
「………?」
怪訝な表情なまひるを前にランスは一瞬、その問いの意味が解らなかったが、少し考
え返答した。
「姫さんって…ユリーシャのことか?世界中のいい女は俺様のものだ。それぐらい理
解しているだろ?」
「…………っ。あのさ…姫さんに悪いって思わないの?」
「何?」と、ランスは思わずユリーシャの方を向いた。
「……!」
呆然とした表情で、悲しみと怒りが微妙に入り混じった視線を送っていたユリーシ
ャはぴくりと身体を震わせる。
「おい―ー―」
「ラ、ランスさまっ」
言い終わる前にユリ―シャはランスに駆け寄り抱きついた。
612名無しさん@初回限定:04/04/15 01:45 ID:X3E9qMBS
えーまだ続いたてたの〜?
613名無しさん@初回限定:04/04/18 01:39 ID:NRNXO9E2
              
614名無しさん@初回限定:04/04/20 06:59 ID:KA0ZFmTY
すげぇな
615策動(8):04/04/22 23:07 ID:FhRdPpzF

「な、何だ?」
ユリ―シャはそれには答えず、そのままランスをずいずいと押して数歩後退させ、
立ち止まりつつ、少し考えてからランスに言った。
「どうか…どうか…やめてください…!」
切羽詰った彼女の言葉を察したのかランスも小声で返答した。
「何、慌ててんだ?やめろとは……」
「………このままでは…ランスさまが…嫌われてしまいます」
「なあに言ってる。俺様のハイパーへい…」
「皆さんが…嫌がっております…」
「ん」
押し殺した声で言うユリーシャにつられたのか、ランスはふと他の4人を見た。
「…!」
その四人とユリーシャの様子に気づいて、ランスは『しまった』と思った。
まひるは明らかに警戒した様子でランスとユリーシャを見つめ、紗霧はただ無表情
にこちらを見つめていて。
恭也と魔窟堂も警戒と困惑で彩られた表情でこちらを見ている。
「……………」
(こんなんじゃ…女の子達を守りきることができねえじゃねえか…)
ユリーシャに見つめられながらランスはしばし黙考し、バツが悪そうに頭をかきなが
ら四人に言った。
「い、いきなり変なこと言って悪かったな……」
616策動(9):04/04/26 01:26 ID:BgKYcrTs

「…………」
そして、ランスはユリーシャの方を見て、背中を軽く叩いた。
「え?」
次はまひるの方を向いてランスは言う。
「俺様の名前はランス。ユリーシャは俺様の女だ」
「…………」
「納得できんかもしれんが……そういう事だ」
少し嬉しそうなのユリーシャと言いつくろう(?)ランスを見て、まひるは無言で
複雑な表情のまま見つめた。
「ま、まあ…まひる殿」
魔窟堂はまひるをなだめるように声をかけて、ランスに向き合う。
「ランス殿、さっき言った通り、わしらは主催者打倒を目指しておる。良ければ
わしらと手を……」
「組んでほしいなんてまだ一言も言ってません」
と、魔窟堂の声を遮って、抑揚のない声で紗霧は言った。
「…ぬう……」「さ、紗霧さん……」と、魔窟堂とユリーシャは声を詰まらせる。
二人から見てもさっきのランスの言動は女性から(まひるは一応男だが)すれ
ば悪い印象を与えるものだ。状況が状況でも、それだけに反論はしにくい。
(ぐっ………)
いつもなら俺様一人、紗霧ちゃん一人という状況なら力ずくで…とランスは考えた
かもしれない。
だが今、彼は命の危険だけでなくあらゆる面で追い込まれている。
完全な異界で、誰一人助けられないまま、ただ敵に殺される。
そうなることはランスにとって、最も迎えたくない結末。
ザドゥとケイブリス以外の敵にさえ今戦えばそうなってしまう可能性が高い以上、
ここで遭遇した四人と離れるわけには行かないと彼は思った。
617名無し達の空:04/04/28 11:11 ID:hT91gTzk
おもしろいな

age
618名無しさん@初回限定:04/05/01 10:32 ID:N6ws7JHI
619名無しさん@初回限定:04/05/04 10:59 ID:TzogKxw7
              
620名無しさん@初回限定:04/05/07 03:12 ID:NKDzwq2L

「俺の目的は……」
自らの焦りを押し隠すかのように強い口調で…
「ん?」
「・・・・・・主催者の野郎をぶっ殺し、女の子達を助けることだ」
真剣な表情で言い放つ。
「……で?貴方がそれを成し得られる根拠は?」
「………俺様の―――」
淡々と受け応えする紗霧に対し、ランスは少し考え、口を開こうとする。
が、彼女はそれを言葉で遮る。
「単に強いだけでは、ダメですよ」
「?」
「だ、だがの…紗霧殿……そのままでは…」「紗霧さん……どうか、ランスさまを…」
「ユリ―シャさん。さっきの彼の反応を見て、何とも思わなかったんですか?」
「……!」「お、おいっ…一体何を…」
「価値観は人それぞれと言いますが……これから我々の行動の大きな妨げになるのな
ら、歓迎はできません。戦力は現状ままで充分です」
「・・・・・信用できないってのか?」
拒絶される事自体は、この島に来る前にも何度かあった。
その度に自らの実力を見せ付けたり、仕返ししたりして見返してきた。
だが、今回のは……何故かランス自身その理由は思い当たらなかったが、かなり悔し
いと思った。それは彼が故郷から旅立った頃を思い出させるものだった。
そう言われたからなのか紗霧は視線をランスから、恭也とまひるの方に移す。
そして紗霧は「高町さん。彼の事、どう思いますか?」と言った。

621名無しさん@初回限定:04/05/10 02:40 ID:qAKa+vK7
             
622名無しさん@初回限定:04/05/13 04:27 ID:+gMBbevJ
623名無しさん@初回限定:04/05/16 02:11 ID:eo9eXFn8
624名無しさん@初回限定:04/05/16 02:33 ID:R3lbBRuB
こっちは頑張ってくれ。
625名無しさん@初回限定:04/05/17 04:05 ID:Cm60LyiE

626名無しさん@初回限定:04/05/20 00:37 ID:3aAKjQV1
                    
627策動(11):04/05/23 04:21 ID:0/ufal2f

「………ランス」
「…なんだお前?」
 しばし考え後に恭也はランスに問い掛ける。
「あんたにいくつか訊きたい事があるんだ」
「・・・・・・・・」
「男はどうするつもりなんだ?」
「……?」
 ランスと恭也の戦闘自体を知らないまひるは首をかしげた。
 昨日の昼のランスが恭也らに言い放った暴言を思い出しての質問。
「・・・・・・・・」
「……………」
 他の三人は恭也の問いに対し、それぞれ思う事は微妙に違うものの、固唾を
飲んでランスの答えを待つ。
「…とりあえず参加者には危害を加えないでやる」
「……どうしてなんだ?」
「主催者のヤロウどもをぶち倒すのが理由じゃ不満か?」
訝しげに互いを見る二人。
 ふと恭也は思い出す。
 あの時、一緒にいたアリスメンディがいないことに。
 今日の午前6時の放送の内容を。
「・・・・・・・」
 女性を自分の所有物と考え人の命(男)をどうとも思っていない独自の価値観
 多くの危険要素を持つ以上、安易に仲間に加えるのはためらわれる。
 魔窟堂やまひるに危害を加えないとも限らないからだ。
 だが、さっきのランスとユリーシャのやりとりの中で見せた彼の思いやりは本
物に見えた。
 今の彼は昨日の昼の頃と比べてやや精彩に欠けてる様に思える。
 もし、その原因がアリスの死に直結するなら、まだ、分かり合える部分がある
かもしれないと恭也は思う。
 危険である事には変わりはないが、かといってこのまま排斥するのも悪いよう
な気がするのも事実。
628名無しさん@初回限定:04/05/26 14:35 ID:amFCu9Y7
629名無しさん@初回限定:04/05/29 17:34 ID:H0RATB2Z
630名無しさん@初回限定
ほしゅ