・資本主義=企業の利益と消費者の利益を最優先するシステムであり、労働者の労働力を搾取して企業の利益を増やすシステム
・消費社会=必要からではなく、好みからモノを消費する。消費による心の満足を効用とする社会
・高度消費社会=好みが多様になり、<人それぞれ>の消費をする社会
月姫とエロゲー業界の考察をするに辺り、上の3つの概念を念頭に置こう。「貴様が月姫マンセーなのは、状況にすぎん!」という
アンチの心情は、とりあえず措く。
企業は、自身の利益と消費者の利益という2つの矛盾する目的を果たさなければならない。美少女ゲームの市場は上の高度消費社会
の典型である。自動車ならば、安くて安全な車を求める大多数がいて、マニアックな好みの者は少数である。だが、エロゲーは、好みが人それ
ぞれである。そこで、エロゲー業界は、ある程度は消費者集団が安定しているネコミミ好き、メイド好き、純愛好き、CG好き、シナリオ好き
・・・などの好みを愛するゲームを作って市場に出すことになる。企業の利益も必要なため、いきおい、冒険(利益が不透明な分野に挑戦)
や、機会費用の少ない(作るのに、考えまくったり、カネや時間をかけまくったりしない)ものを求める。
出版や一部の消費者からは、「好みは狙っていても、どれも同じようなネコミミじゃんか、個性出せ」「市場を消耗させる気か?」と危惧されている。
が、それは「資本主義」の「企業」だから利益のために仕方ないのである。そこで月姫だが、さっきの出版や一部の消費者は「月姫をみろ」とか
「個性的で努力してる同人がお前らの脅威だぞ」と叫ぶ。だが、高度消費社会の中では、月姫は好みの中でも「女性のトラウマを綿密に描いたものが
いい」とか「説明が長ったらしいものがいい」とか、そういった好みにのみヒットする代物である。CGマンセーの人や陵辱してハァハァがいい人には、
ねこまたぎに過ぎないし、繰り返すが企業の利益からある程度の利益を生み出せるものを作るのは企業として妥当な行動である。
エロゲー業界は投資が微量で済む(参入障壁が小さい)メリットがある反面、同人市場というデメリットもある。同様の設備投資で近い作品を作り、
独自の流通(即売会・同人ショップ・通販)と市場を持ち、消費者がエロゲーユーザーと被っている同人サークルはウザい。このような中、企業は、
自分の強みを出して自分のブランド(名称と結びついたイメージ・信頼)を出していかなければならない。この中で企業として評価すべきなのは、
アリスソフトであり、エルフである。アリスソフトは、同じゲームは作らない。常に、今いるスタッフと設備の中でできる最大限の努力をしている。
『大悪司』はヒットしたが、その続編は出さない。続編もヒットするだろうが、それによって「毎回異なる良質のゲームを作るアリスソフト」というブランド
を失う恐れのためだ。ファイナルファンタジーシリーズを出すスクェアの方針に近い。また、エルフはCGに絶対の自信を持ち、CGを活かせるゲーム
を常に作っている。そして「毎回CGでみせるエルフ」というブランドが付く。
リーフは、シナリオとBGMがブランドになっているが、毎回毎回単発止まりのきらいだ。「ToHeart」は、様々な好みをミックスして、それだけ多くの
ユーザーに受けるようにし、利益を上げた。だが、これ以上利益はでないとリーフは判断したのだろう。リーフは毎回違ったものに挑戦するから
お客さんを飽きさせませんと言うかのように「彼女付き」「同人」「古物商」・・・と作ってきていたが、それぞれが単発で終わっていて、先が続くのか?
疑問を抱かせる。「お、さすがリーフ、やってるじゃん」と言い得る流れが「WHITE ALBUM」以降、ないのである。
『美少女ゲームマニアックス2』(?)のコラムに描かれたエロゲー会社勤務の地獄は、資本主義の立場で言えば企業は契約の範囲(といっても、
シナリオ作成以外も、何でもやらす、というのは酷い)で社員をコキ使って労働者の利益を搾取するのは当然であり、それを酷い企業と言うのは
当たらないだろう。だが、問題のある原画担当(好みの絵しか書かないから、結局、シナリオ作成の契約を交わしたコラム執筆者が原画担当の仕事
まで被ることになった。これは、アダム・スミスの言う分業社会論から言って、妥当ではない。分業をしてシステムを回さないのだから)を放置するなど、
その会社は消費者に満足の行く作品を作る体制を整える意欲に乏しい。経済学は、こういう企業はやがて消費者から見放されて市場を退場する
だろう、と言える。
・・・書くのがウザくなった。ゴメン、続けられん。結論は、エロゲー会社は、利益のために同じようなものばっかり作って月姫を見習わなくても、
高度消費社会を前提とする限り問題はない、しかし、自分のブランドを構築する努力はしないと、市場から退場する恐れがある、という事である。
何だ、月並なレポートだな。