エロゲ最萌ロリトーナメント!! Round21!!

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692鳥居 神奈
追憶の彼方

そもそも俺が…。口にさせられた龍神神楽(龍神村の名酒)の勢いに任せて
桜花も、不可抗力で一線を越えたのだが…。あれから俺たちは、酒に酔って
いたのではない。――御酒で俺を祓ったのは桜花だ。正月を祝う甘酒でなく。
悪戯か、はたは本気の恋(こい)――故意(こい)からか。従姉さんの目を
盗んで、強度の小瓶を蔵からくすね、湯を仕舞う頃合に独り、残って温まる
俺の寝目(いめ)…微睡(まどろみ)を狙って…。

――あのとき、一切が取り止めなく霞んだまま…。ちろちろと、はらりと…
幾千の結晶が、千路の間を埋めようと降り積もり、舞い落ち、吸い込まれる
ように湯面へ融ける。
湯舟から上がり、素のまま浴衣を羽織って、暫し待っていた…このまま――
来る年を迎えるのも悪くないと。

行く年が去った頃合、湯気が霧のようで…。不意の物音に駆け寄ると、押し
寝かされたような夜桜が、仄りとしな垂れて見えた。
瞳を覗き込まれる。一糸纏わぬ夜桜は、満開の雪花さえ、ちゃちに感じる程
の麗姿。――対の櫻蕾(おうらい)と、見え隠れする単(ひとえ)の花弁が、
柔らかな乳白を朱に染め、恥じらこそ行為を清めると…そう囁いていた。

そこに人など居らず…降りていたのかも知れない。錯覚だろうが――あの美
(うる)わしさは、幼さと交じってこそ…神掛(みが)かるようで。
693鳥居 神奈:03/01/24 18:04 ID:sgEoHU4V
俺は努めて節制に徹し、焦りを装いつつ、とにかく場を移そうと――想いに
流されないように、お茶を濁そうと謀ったが…。初めから退路は…断たれて
いた。――無防備だった…まったく。

抱き上げ、啄(つい)ばむような接吻で魅入られ…応えて。――そのまま…
口移し。熱い水が、澄んだ雪のことまで綺麗さっぱり、完全に心から飛ばし、
あとはただ、絆を祝う夜更け。――どうせ誰も来ないと『分かってた』から。

――酔ってるのに?

【彼方】「『おまえのせいじゃない』さ。少なくとも俺は、踏み越えた強さ
に感謝してる」
【桜花】「わらわも…の。『そなたのせいではない』ゆえに」

小さくても散りたいと訴えた。小さくても…綺麗に散らせて欲しいからと。
直向に。不慣れな手つきでおずと含み、なんどもしゃぶって…、迸りまで
愛しそうに飲んで、温かいと…咽びながら悦んで、幼い身へ納めてくれた。

――可愛い…こんなに、可愛かったのかと想った。

何度と吹き散らしても花弁は褪せず、気が済むことはなかった。――本当に
好きだからと、一心に。幾ら結んでも、足りないほどに優くて…。
694鳥居 神奈:03/01/24 18:04 ID:sgEoHU4V
――銀色を攫(さら)う雪龍が、雪化粧をと迸り、一夜だけ神凪を舞ってか、
御酒を寿ぐ粛若(しゃくじゃく)の御器を、初しい巫姫(みき)に見立て、
朱酌(すざく)に代えて…俺に染めろと、誘った。

もしも…、仮にだが、長じない命(みこと)があるなら、その心(うら)を
焦がす焔(ほむら)は千歳に燈りながら、『明かされぬ待つ宵』を過ごす。
それは耐え難いことだ――俺には…墨汁(ぼくじゅう)へ清水を投じる柄杓
(ひしゃく)もなく、雪龍は千の冬を見送るばかりで、輪廻は淀む一方。

櫻乃姫を想うすべは、縁(よすが)に従い、迎えてあげることの他にない。
凡そに倣って、身へ心が追いつかないのではなく、桜の花は逆だから。散ら
せることで満してあげれば、戸惑いも解ける…。

【桜花】「『抱っこ』もよいが、背伸びもよいの」

火照りも醒め、添寝してやりながら、髪を撫でてやると、そう茶化された。
姫とは若いほどによい、と。熟さない桜桃(さくらんぼう)は色あせず、
落ちることはない、と。――こんな眼差しを見ると、いつも思い知る。

【彼方】「それは――時と場合に因るな」
【桜花】「むぅ…連れない言乃葉だの」
695鳥居 神奈:03/01/24 18:12 ID:gxgnUaMk
互いを信じるしかない…少なくとも桜花は、俺に素の笑みを毀(こぼ)して
くれている。枷を嵌めたくはない。――小さな身に、押し込められた想いは
芽吹かず、咲くこともないまま、ひとつの例外もなく摘み取られてしまうな
んて…余りに酷だろう。

たった一例でも、泡沫(うたかた)でも、俺が叶えてやれるのなら、そうす
るだけだ。

(了)


投稿規制で少し書き込みが遅れました…。ごめんなさい。

苦しい一戦ですが、頑張っている桜花を応援してあげて下さい。