エロゲ最萌ロリトーナメント!! Round21!!
追憶の彼方
そもそも俺が…。口にさせられた龍神神楽(龍神村の名酒)の勢いに任せて
桜花も、不可抗力で一線を越えたのだが…。あれから俺たちは、酒に酔って
いたのではない。――御酒で俺を祓ったのは桜花だ。正月を祝う甘酒でなく。
悪戯か、はたは本気の恋(こい)――故意(こい)からか。従姉さんの目を
盗んで、強度の小瓶を蔵からくすね、湯を仕舞う頃合に独り、残って温まる
俺の寝目(いめ)…微睡(まどろみ)を狙って…。
――あのとき、一切が取り止めなく霞んだまま…。ちろちろと、はらりと…
幾千の結晶が、千路の間を埋めようと降り積もり、舞い落ち、吸い込まれる
ように湯面へ融ける。
湯舟から上がり、素のまま浴衣を羽織って、暫し待っていた…このまま――
来る年を迎えるのも悪くないと。
行く年が去った頃合、湯気が霧のようで…。不意の物音に駆け寄ると、押し
寝かされたような夜桜が、仄りとしな垂れて見えた。
瞳を覗き込まれる。一糸纏わぬ夜桜は、満開の雪花さえ、ちゃちに感じる程
の麗姿。――対の櫻蕾(おうらい)と、見え隠れする単(ひとえ)の花弁が、
柔らかな乳白を朱に染め、恥じらこそ行為を清めると…そう囁いていた。
そこに人など居らず…降りていたのかも知れない。錯覚だろうが――あの美
(うる)わしさは、幼さと交じってこそ…神掛(みが)かるようで。
俺は努めて節制に徹し、焦りを装いつつ、とにかく場を移そうと――想いに
流されないように、お茶を濁そうと謀ったが…。初めから退路は…断たれて
いた。――無防備だった…まったく。
抱き上げ、啄(つい)ばむような接吻で魅入られ…応えて。――そのまま…
口移し。熱い水が、澄んだ雪のことまで綺麗さっぱり、完全に心から飛ばし、
あとはただ、絆を祝う夜更け。――どうせ誰も来ないと『分かってた』から。
――酔ってるのに?
【彼方】「『おまえのせいじゃない』さ。少なくとも俺は、踏み越えた強さ
に感謝してる」
【桜花】「わらわも…の。『そなたのせいではない』ゆえに」
小さくても散りたいと訴えた。小さくても…綺麗に散らせて欲しいからと。
直向に。不慣れな手つきでおずと含み、なんどもしゃぶって…、迸りまで
愛しそうに飲んで、温かいと…咽びながら悦んで、幼い身へ納めてくれた。
――可愛い…こんなに、可愛かったのかと想った。
何度と吹き散らしても花弁は褪せず、気が済むことはなかった。――本当に
好きだからと、一心に。幾ら結んでも、足りないほどに優くて…。
――銀色を攫(さら)う雪龍が、雪化粧をと迸り、一夜だけ神凪を舞ってか、
御酒を寿ぐ粛若(しゃくじゃく)の御器を、初しい巫姫(みき)に見立て、
朱酌(すざく)に代えて…俺に染めろと、誘った。
もしも…、仮にだが、長じない命(みこと)があるなら、その心(うら)を
焦がす焔(ほむら)は千歳に燈りながら、『明かされぬ待つ宵』を過ごす。
それは耐え難いことだ――俺には…墨汁(ぼくじゅう)へ清水を投じる柄杓
(ひしゃく)もなく、雪龍は千の冬を見送るばかりで、輪廻は淀む一方。
櫻乃姫を想うすべは、縁(よすが)に従い、迎えてあげることの他にない。
凡そに倣って、身へ心が追いつかないのではなく、桜の花は逆だから。散ら
せることで満してあげれば、戸惑いも解ける…。
【桜花】「『抱っこ』もよいが、背伸びもよいの」
火照りも醒め、添寝してやりながら、髪を撫でてやると、そう茶化された。
姫とは若いほどによい、と。熟さない桜桃(さくらんぼう)は色あせず、
落ちることはない、と。――こんな眼差しを見ると、いつも思い知る。
【彼方】「それは――時と場合に因るな」
【桜花】「むぅ…連れない言乃葉だの」
互いを信じるしかない…少なくとも桜花は、俺に素の笑みを毀(こぼ)して
くれている。枷を嵌めたくはない。――小さな身に、押し込められた想いは
芽吹かず、咲くこともないまま、ひとつの例外もなく摘み取られてしまうな
んて…余りに酷だろう。
たった一例でも、泡沫(うたかた)でも、俺が叶えてやれるのなら、そうす
るだけだ。
(了)
投稿規制で少し書き込みが遅れました…。ごめんなさい。
苦しい一戦ですが、頑張っている桜花を応援してあげて下さい。