【SS投稿スレッド@エロネギ板 #4】

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138人と鬼と修羅と歯車様
 気だるいとある日。とある夕刻。とあるカフェの店内。貸しきられ、伽藍とした
その場所に奇妙な集団がいた。まあ、たった四名で集団と表現するのは誇張である
かもしれないが。

 奇妙、とはいっても彼らの外見がそれほど奇矯なわけではない。構成は青年二人に
少年二人。浅い青のジャケットを着た二十歳前後の青年、擦り切れた黒一色の長衣を
羽織った男、飾り気のないロングコートに袖を通している少年。

 そして、一見して中高校の制服と分かるものに身を包んだ少年が、わずかに緊張
した様子を見せながら立ち上がった。

「えー本日は『ニトロ主人公親睦会』にご出席して頂き、真にありがとう御座います。
僭越ですが、司会は僕こと友永和樹が務めさせていただきます」

 ぱらぱらとまばらな拍手。内一人である、いかにも剣鬼然とした男は顔を上げる
事さえしなかった。が、和樹は特に気にしたふうもなく、几帳面に全員に対して頭を
下げる。

「ありがとう御座います。それではさっそく、最初の議題に移りましょう」
139その1。自己紹介。:03/02/03 01:40 ID:KaGIPy04
 作品順でということになり、まずはジャケットを着た青年が億劫そうに口を開く。

「吾妻玲二。ファントムに出演。普通の暗殺者だ。ルートはエレンED」

 次いでロングコートの少年が、

「伊藤惣太。ヴェドゴニアで一応主役をやってた。ただの後天性吸血鬼。ルートは
リャノーン」

 二人の紹介が終わると、長衣の男は切れ長の目をうっすらと開き、告げた。

「孔濤羅。鬼哭街に。凶手だ。……ところで、ルート?」

 そして司会の和樹が改めて名乗る。

「皆さん始めまして。僕は友永和樹です。“Hello,World.”のほうにお邪魔させて
もらっていました」

 少し恥ずかしそうに頬を紅潮させ、

「ルートは千絵莉さんノーマルENDです」
「生きてたのかお前!?」
140その2。戦闘能力。:03/02/03 01:40 ID:KaGIPy04
「ではお尋ねします。皆さん銃弾とか、かわせますか? 僕は二号機ででしたら、
拳銃弾ぐらいはなんとかなります」
「俺もまあ、よく『見れば』かわせるな」

 少年達の言葉に、濤羅は嘲るように片頬を吊り上げる。

「人を超えた性能、人を超えた身体能力。……つくづく下らんな。なぜお前達は
目に見えるものばかりに気を取られるのだ?」

 別段気を害したわけではないが、わずかに惣太が眉根を寄せた。

「眼の色境にあらずとも、万物は紛れもなくそこに存る。耳の声境に。鼻の香境に。
舌の味境に身の触境に。……そして意の法境に。世界は、森羅万象は平素と変わらぬ
姿でそこに『存る』のだから。虚よりなお空。空よりなお清。清より果ての浄の境地」

 冷たく唇を歪め、彼は続ける。

「極めたなどと妄言は吐けぬが、内家の深淵にわずかながら触れたこの身。……まあ、
突撃銃程度の掃射であれば、如何ほどのものでもない」

 おー、と思わず感嘆の声をあげてしまう。いや、何を言っているのかは全く
分からなかったのだが。と、

「あれ? 玲二さん、さっきから静かですね?」
「……俺、もうモンゴル料理食いに帰っていい?」
141その3。恋人。:03/02/03 01:43 ID:KaGIPy04
「エレン」
「リャノーン」
「ち、ち、千絵莉、さん、です」
「…………」

 ちょっと無言。気まずい雰囲気を振り掃うために、玲二が言う。

「とりあえずヤラハタ君は置いといてだ」
「誰がだ!」
「えーでもー、ぐずぐずに病んだ妹魂兄ちゃんにそんな甲斐性ないだろう?」
「ハーレム作れば甲斐性があることになるのか!? 歴代ニトロ主人公の中で
貴様だけだろう! そんな倫理観欠如なEDがあるのは!」
「そっちは俺であって俺じゃないんだよ! ルートが違うだろうがルートが!」
「ルートルートとさっきからお前達は何を訳の分からない事を言ってるんだ!」
「そうですね。僕も濤羅さんの言葉は不適切かと思います」
「!?」

 さまざまな感情のこもった視線が交錯するその場で、和樹が小鳥のように首を
傾げる。そして無機頭脳の特性を生かして収集した情報を舌に乗せた。

「玲二さんはまず(ピー)歳の時にクロウディアさんと関係を持ち、次に(ピー)歳の
玲二さんより年下である(ピー)歳のキャルさんと一夜限りの関係を築き、その
キャルさんと物理的に縁を切ってから、エレンさんと一緒に生活を送っています」

「き、きさま! さては初回版の玲二だな!」
142その4。男の友人。:03/02/03 01:44 ID:KaGIPy04
「…………」
「…………」
「元兄だ……」
「お前殺したじゃん」
「…………」

 ぎちぎちと、音をたてて空気が軋んでいく。その空気に耐えられなくなったのか、
和樹が無理矢理といった様子で発言する。

「えーと、僕は圭介が……」
「三章で心配するどころか思い出しさえしなかったのに?」
「…………」

 次。
143その5。幕。:03/02/03 01:44 ID:KaGIPy04
「ええー、では皆さん、長い間お疲れ様でした。最後に締めとなる質問をさせて
頂いて、お開きにしようと思います」

 ぱちぱちと、まばらな拍手。ただ今度はおざなりながら濤羅も手を鳴らしていた。
その様子に少しだけ和樹は顔をほころばせてから、一つ咳払いをする。

「ニトロプラスの次回作となりますデモベイン。その主人公に対して、初見の
印象をお答え下さい」

 反応は、とても速かった。

「明るそうで嫌い。洗脳されろ」
「幸せになりそうで嫌。夜の公園で噛まれやがれ」
(このゲーム、妹いないのかな……)

「え、えー、司会は友永和樹でお送りしました。それでは皆さん、さようなら」