〜死神少女と画家〜
昔、死神でありながら死神の仕事がイヤで天界から逃げたした少女がいた。
しかし、下界に降りてきた少女は死神だと言う理由で人間達に虐げられた。
そうして身も心も傷ついた少女は
雪の降るある日、静かな公園のベンチで寒さに震えていた。
そして少女は一人の若い画家に出会った。
画家は凍えそうな少女を見つけると、自分の着ているコートを少女にかけ、
驚いた顔で画家を見上げる少女に優しく微笑むと
近くの店でパンとスープを買い、それを少女に与えた。
少女は生まれて初めて人の優しさを経験した。
少女の瞳からは自然と涙が溢れていた。
―続くかも
凍えるような寒い日に、行く当てのない少女を放っておけず、
画家は彼の家で彼女を養うことにした。
古びた小さな家に着き、凍えた少女を暖炉で暖めると、
画家は少女に名前をたずねた。
すると少女は首を横に降り、うつむきながらポツリと答えた
『わからない…。でもみんなは、ボクのこと“死神”って呼ぶの』
画家は少し考えると、暖炉の前で膝を抱えてしゃがんでいる少女に名前をつけた。
『それじゃあ、今日から君の名前は天(そら)だ。いいかい?』
少女は不思議そうに画家を見つめながらこくりとうなずくと
小さく自分の名をつぶやいた。
―これがボクの名前…
少女は自分の名前が心の奥底まで染み渡り
うれしさが静かに胸の中を広がっていくのを感じた。
この日、少女は初めて名前と友達をもらった。
それから、しばらく少女にとって幸せな日が続いた。
そしてある日、少女は画家に訊ねた。
『どうしてボクはみんなに虐められるんだろう?』
画家はその問いに答えることが出来なかった。
『きっとボクの姿はとっても醜くて、そのせいで虐められるんだろうなぁ』
そうして少女は寂しげにため息をついた。
すると画家は立ち上がり
『そのままじっとしてて!』
画家は真剣な表情で少女を見つめ筆を取り、画板に絵を描き始めた。
『えっ?ちょ…ちょっと!』
少女は慌てて席を立とうとするが、画家の表情が真剣なので
絵を描き終わるまで、真っ赤になって恥じらいながらも言われた通りにじっとしていた。
そしてしばらくして画家は絵を描き終え、それを少女に渡した。
『ほら見てご覧。これが君だよ。ちっとも醜くなんてない。』
しかし少女はそれを見るのを拒んだ。
『イヤだよっ!ボクの醜い姿なんか見たくないよ!』
その日から画家は少女の絵を描き続けるようになった。
少女に彼の絵を見てもらうために。
そして少女が自分のその愛くるしい姿に自信を持ってもらうため。