例えこの手が離れても〜はぐれageスレ第3章〜

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>>356の続き)
 炎の花が開き、着弾の振動が地表を揺らした。
 ミサイル群は命中こそしなかったが、目標の動きを止めるには充分な役割を果たした。
「おーっしゃあ!」
 紅蓮から黒へと変わる爆炎の間を、武の機体が突進してゆく。バンディッドのLLの間近に
接近した白いLLの右腕が高速度で相手を捕らえた。
 フロントスクリーンに武の攻撃を受け、機体をのけぞらせるLLの姿が映る。しかし、それは
すぐに動き出し、武の機体との距離を離し始めた。
「逃がすかよ!!」
 武の操作を追って、LLの両肩から白銀色の煙が噴出し、あっという間に15m四方を覆った。
 フェイクミスト。スモークとチャフの機能を併せ持った接近戦用兵器である。相手のレーダー
には、機体が突然分身した状態で映っているはずである。
 ミストの中心にいた武には、それにもかかわらず敵の位置がしっかりと把握できている。
"Impact knuckle"に内蔵されたマーキング・ジェルの効果である。
 視界を遮断され、動きを鈍らせたバンディッドのLLに肉薄した武の機体から繰り出された
第2撃が相手の股関節部をまともに襲った。
 動きを封じられた機体の視覚センサーにさらに左拳が打ち込まれ、戦闘力を失ったLLが
地表に腰を下ろす。メインフレーム各所からは青白いスパークが迸っていた。
「よし。…純夏、そっちは…」
「ええい、このおっ!」
 ライブ状態のコミュニケーション・ウインドウからはテンションの高い声が聞こえてくる。レーダー
を頼りにそこに目を向けると、2機のLLが接近戦を繰り広げていた。
                                               (続く)