駄目スレ

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21名無しさん@初回限定
今日は名雪も秋子さんもいない。一日中真琴と一緒にいられるわけだ。
祐一「おい! 焼きそばできたから降りてこい!!」
真琴「あぅ〜っ」
祐一「あう〜、じゃないだろ。お前最近大人しかったから、昨夜は油断してて
   中華そばくらったけどな。食べ物無駄にしたらいけないんだよ。わかるだろ?」
真琴「う〜」
祐一「う〜、じゃない。そこに突っ立ててもしょうがないだろ。冷めたらおいしくなくなるんだぞ」
真琴は階段の上からこちらを見下ろしたままだ。降りてこようというそぶりはない。
それどころか手すりにしがみついた格好でしゃがみ込んでしまう。
最近真琴の様子はおかしかった。箸もちゃんと持てなくなってしまったし、
風呂も名雪と一緒じゃないと入れなくなってしまったようだった。
祐一「おい!まさか階段まで降りられなくなったって言うんじゃないだろうな!」
階段を駆け上がって真琴の小さな手を手すりから無理矢理引き剥がした。
なんだかとてもイライラしていた。何故かはわからなかった。
真琴「いやぁ、怖い…。祐一…」
青ざめた顔をこちらに向けてくる。違う。真琴は、、、こんなのは真琴じゃない。
祐一「いいかげんにしろっ!」
力ずくで立ち上がらせて背中を押した。
真琴「…っ!!」
22名無しさん@初回限定:02/05/24 21:53 ID:IfCEQf3Z
真琴「うぅ〜…」
真琴は階下でうずくまって呻いていた。
ゆっくりと階段を下りて、その姿を見下ろす。
とても悲しい気持ちになった。何もかもが壊れていく。
そう思った。
祐一「おい、立てよ」
真琴「あぅ〜っ」
もぞもぞと緩慢な動作。立とうという意志があるのか良くわからなかった。
祐一「おら!」
真琴「ッ! イタイイタイ!」
髪の毛を鷲掴みにして引き起こす。真っ直ぐに立てない様子の真琴を
リビングまで引きずるようにして連れてきた。
いつも食事をするテーブルではなく、応接間の背の低いテーブルに、昼食の焼きそばが
用意されている。
床に座った方が今の真琴には楽だろうと思い、そちらに用意したことを思い出した。
泣き出してしまった真琴を放り出して箸立てから箸を二組取り出す。
片方を真琴に握らせた。
23流水塔 ◆skb1Nfqs :02/05/24 21:58 ID:KJ7OnvQK
葱にも葉鍵の遺伝子が残っていたとはな。
24名無しさん@初回限定:02/05/24 22:25 ID:IfCEQf3Z
祐一「食えよ」
真琴の向かいに座り、自分の焼きそばを食べはじめると、
真琴がハラハラと涙をこぼしながらこちらを見ていた。
その瞳には怯えのような、不機嫌な飼い主の機嫌を探るような、
そんな気配があるように感じられた。一瞬、激しい衝動に沸き上がった。
どうにかそれを押さえ込む。
祐一「早く食えよ」
真琴「ぇぅぅ…ぐしゅ…」
真琴は鼻をすすりあげると、諦めたように焼きそばを食べはじめた。
静かな食事の音に、時々嗚咽が混じる。
自分の分を食べてしまうと、真琴の箸を持つ手に目がいった。
真琴は子供がスプーンかフォークを握る様にして箸を使っている。
オレが立ち上がると、真琴はビクリと肩を震わせてオレの方を見た。
そのまま真琴の右後ろにしゃがんだ。
祐一「なあ、真琴。箸の使い方はそうじゃないだろ」
真琴の手を開いて、ちゃんとした持ち方にさせてやった。
祐一「ちゃんと使えてただろ。外に出た時恥ずかしいから、ちゃんとしないとダメだ」
祐一「そうだ、今度本場の肉まん食べに連れて行ってやるよ。な、だからちゃんとしないとな」
真琴「う、うん」
頭をくしゃりと撫でてやった。
25名無しさん@初回限定:02/05/24 23:01 ID:IfCEQf3Z
しかし、それから何時までたっても真琴は箸を開かせることができなかった。
焼きそばはもうすっかり冷めてしまっている。
真琴「っう…え、えっぅ…」
また、真琴の手から箸が転がり落ちた。オレはすぐに拾って真琴に握らせてやる。
もう何度目になるのかわからなかった。
真琴「グスっ、祐一ぃ。やっぱり、出来ない」
祐一「出来なくないだろッッ!!」
オレの怒声に真琴が肩を竦める。隣2軒くらいまで聞こえてしまったかも知れない。
祐一「なあ、一緒に肉まん食べに行きたいだろ?他にもお前が好きなものがあるかも
   知れないんだぞ。頑張らなくちゃ一緒に行けないんだぞ。」
祐一「元通りにならないと、一緒に、いられないんだぞ…」
泣きながら食事を再開する。
しかし、そのまま小一時間も立つと、ついに真琴は箸を放り投げてしまった。
祐一「お前ッ!」
オレは真琴の腕を掴むと、箸が転がってる方へ真琴を思いっきり放り投げた。
もんどりを打って転がる真琴。
祐一「箸を拾え!拾うんだよッ!!」
真琴「もうやだぁ…嫌だよ、祐一怖い」
祐一「な…こ、コノォ!」
うずくまる真琴の肩を蹴り飛ばすと、その首根っこを掴んで床に押しつけた。
祐一「箸を取るんだよ!見えるだろ!!お前の目の前に転がってるこの箸だよ!!」
真琴「イタイ!イタイよ!! 祐一やめて、許してよぉ…」
何かがオレの中で切れた。激しい、焦燥に似た感覚がオレの中を焦がしていた。
オレはもう、全力で真琴の頭を床にこすりつけるように押さえつけ、自分でもわけのわからない
言葉を叫んでいた。右手をめちゃくちゃに振り下ろしていた。
真琴「イタイイタイイタイ!イタイィィッッ!! もうやだ、やだよ!! 何で? やだよぉ…
   誰かァ、、誰か助けてよお! 祐一ぃ、祐一、どこ行っちゃったのぉ?! 助けて、ゆぅっ…って…」

  誰かの泣き顔が見えた… その子の涙を止めてあげたいと思った… 
     …その子を、抱きしめてあげたいと思っていた…
でも、オレにできたことは、ただ、泣きながら拳を振り下ろすことだけだった…